(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】TIE2アゴニスト抗体及びその用途
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20240416BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240416BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240416BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240416BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240416BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240416BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240416BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240416BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240416BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240416BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240416BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240416BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20240416BHJP
A61P 27/06 20060101ALI20240416BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240416BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240416BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240416BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240416BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240416BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240416BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240416BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240416BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240416BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240416BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240416BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240416BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61P35/00
A61P35/04
A61P27/02
A61P37/06
A61P17/06
A61P27/06
A61P19/02
A61P9/10
A61P37/02
A61P29/00 101
A61P1/04
A61P9/00
A61P29/00
A61P1/00
A61P1/16
A61P3/10
A61P25/00
A61P13/12
A61K39/395 N
A61K45/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568205
(86)(22)【出願日】2022-05-04
(85)【翻訳文提出日】2023-11-24
(86)【国際出願番号】 KR2022006431
(87)【国際公開番号】W WO2022235090
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】10-2021-0093451
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】519444052
【氏名又は名称】インスティチュート フォー ベーシック サイエンス
【氏名又は名称原語表記】INSTITUTE FOR BASIC SCIENCE
(71)【出願人】
【識別番号】518366555
【氏名又は名称】コリア アドバンスト インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】キム ホミン
(72)【発明者】
【氏名】コ ギュヨン
(72)【発明者】
【氏名】チョ ギョンヒ
(72)【発明者】
【氏名】ペ ジョミル
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA02
4B064CA05
4B064CA06
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4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、ヒトTie2のIg3 Fn3ドメインに結合するTie2アゴニスト抗体又はその抗原結合断片に関し、前記抗体の結合により、ホモダイマーTie2が多角形組立体を形成し、クラスタリング及び活動化され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Tie2アゴニスト抗体又はその抗原結合断片であって、
前記抗体は、ヒトTie2のIg3 Fn3(membrane proximal fibronectin type III)ドメインに結合し、
前記抗体の結合により、ホモダイマーTie2が多角形組立体を形成し、クラスタリング及び活性化されることを特徴とする抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
前記抗体は、配列番号1の配列を含む重鎖可変領域(VH)、配列番号3の配列を含む重鎖定常ドメイン(CH)、配列番号2の配列を含む軽鎖可変領域(VL)、及び配列番号4の配列を含む軽鎖定常領域(CL)を含むFabであることを特徴とする、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
配列番号5又は配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;及び
配列番号6又は配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;を含む、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;又は
配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;を含む、請求項3に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項の抗体又はその抗原結合断片をコーディングする核酸。
【請求項6】
配列番号9乃至14からなる群から選ばれる配列を含むことを特徴とする、請求項5に記載の核酸。
【請求項7】
請求項5に記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項8】
請求項7に記載の発現ベクターで形質転換された細胞。
【請求項9】
次の段階を含むTie2アゴニスト抗体又はその抗原結合断片の製造方法:
(a)請求項8の細胞を培養する段階;及び
(b)前記培養された細胞から抗体又はその抗原結合断片を回収する段階。
【請求項10】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合断片を有効成分として含む血管新生疾患の予防又は治療用組成物。
【請求項11】
前記血管新生疾患は、癌、転移(metastasis)、糖尿病網膜症(diabetic retinopathy)、未熟児網膜症(retinopathy of prematurity)、角膜移植拒絶反応(corneal graft rejection)、黄斑変性(macular degeneration)、血管新生緑内障(neovascular glaucoma)、全身紅色症(erythrosis)、増殖性網膜症(proliferative retinopathy)、乾癬(psoriasis)、血友病性股関節炎(hemophilic arthritis)、動脈硬化性プラーク(atherosclerotic plaques)の毛細管形成、ケロイド(keloid)、傷顆粒化(wound granulation)、血管癒着(vascular adhesion)、関節リウマチ(rheumatoid arthritis)、退行性関節炎(osteoarthritis)、自己免疫疾患(autoimmune diseases)、クローン病(Crohn’s disease)、レステノシス(restenosis)、アテローム性動脈硬化症(atherosclerosis)、腸狭窄(intestinal adhesions)、猫ひっかき病(cat scratch disease)、潰瘍(ulcer)、肝硬変症(liver cirrhosis)、腎臓炎(nephritis)、糖尿病性腎臓疾患(diabetic nephropathy)、真性糖尿病(diabetes mellitus)、炎症疾患(inflammatory diseases)及び神経変性疾患(neurodegenerative diseases)からなる群から選ばれたことを特徴とする、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記癌は、食道癌(esophageal cancer)、胃癌(stomach cancer)、大腸癌(large intestine cancer)、直腸癌(rectal cancer)、口腔癌(oral cancer)、咽頭癌(pharynx cancer)、喉頭癌(larynx cancer)、肺癌(lung cancer)、結腸癌(colon cancer)、乳癌(breast cancer)、子宮頸部癌(uterine cervical cancer)、子宮内膜癌(endometrial cancer)、卵巣癌(ovarian cancer)、前立腺癌(prostate cancer)、睾丸癌(testis cancer)、膀胱癌(bladder cancer)、腎臓癌(renal cancer)、肝癌(liver cancer)、膵臓癌(pancreatic cancer)、骨癌(bone cancer)、結合組織癌(connective tissue cancer)、皮膚癌(skin cancer)、脳腫瘍(brain cancer)、甲状腺癌(thyroid cancer)、白血病(leukemia)、ホジキンリンパ腫(Hodgkin’s lymphoma)、リンパ腫(lymphoma)及び多発性骨髓血液癌(multiple myeloid blood cancer)で構成された群から選ばれたことを特徴とする、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合断片を含む、他の血管新生疾患治療剤との併用投与用組成物。
【請求項14】
Tie2アゴニスト抗体又はその抗原結合断片を含み、
前記抗体は、ヒトTie2のIg3 Fn3(membrane proximal fibronectin type III)ドメインに結合し、
ホモダイマーTie2との結合によって形成された抗体の多角形組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトTie2のIg3 Fn3(membrane proximal fibronectin type III)ドメインに結合するTie2アゴニスト抗体又はその抗原結合断片に関し、前記抗体の結合により、ホモダイマー(homodimer)Tie2が多角形組立体(polygonal assembly)を形成し、クラスタリング(clustering)及び活性化され得る。
【0002】
【背景技術】
【0003】
血管新生は、個体の発生、成長、保存及び恒常性維持過程で多様な調節因子によって躍動的に発生する。この過程で新しく形成された血管は、周囲の細胞に栄養素、酸素、ホルモンなどの多様な生体材料を運送するチャンネルとしての役割をする。機能及び構造的に非正常的な血管は、多様な疾患の発病及び進行の直・間接的な原因になる。腫瘍血管は、機能及び構造の欠陥で低酸素症を悪化させ、腫瘍の進行及び他の組織への転移をもたらし、腫瘍組織の中心に抗癌剤がうまく伝達されないようにする。欠陥がある血管は、癌以外にも、他の各種疾病や疾患で確認され得る。その例としては、多様な眼科疾患(例えば、糖尿病性黄斑浮腫、老人性黄斑変性)、ウイルス感染及び敗血症などの急性炎症反応を挙げることができる。よって、病理的血管を正常化できる治療剤が存在するなら、血管異常を有する多様な患者の治療に適用することができる。
【0004】
非正常的な血管新生を抑制し、血管透過性を減少させるために、直接Tie2を活性化させる方案が考慮されている。Tie2受容体に直接結合し、Tie2のリン酸化及び活性化を誘導する組換えタンパク質も開発されており、多数の前臨床癌及び眼球モデルでその治療効果が試験されている。その代表的な例としては、COMP-Angl及びVasculotideがある。これらの製剤は、抗血管新生活性及び抗浸透活性を示したが、非常に短い半減期及び不安定な物理化学的性質を有するという短所がある。また、小分子化合物(AKB-9778)が脱リン酸化酵素VE-PTPの阻害剤として開発された。VE-PTPは、リン酸化されたTie2からリン酸基を除去し、Tie2を不活性化させる役割をする。このような化合物は、他の受容体も非特異的に活性化させるという短所があるが、VE-PTPを阻害することによってTie2活性を間接的に増加させる作用をする。また、Tie2活性化抗体が開発されている(US6365154B1、US20170174789A1)。このような抗体は、血管内皮細胞の生存率を高め、血管漏出を抑制した。興味深いことに、植物抽出物のうちの一つがTie2活性を誘導し、スキンケア化粧品として使用され得ることが請求されている(例えば、JP2011102273A、JP2018043949A、JP2015168656A)。
【0005】
このように、Tie2は、血管の成長及び安定性を促進する内皮細胞特異的受容体チロシンキナーゼであって、虚血性及び炎症性血管疾患の魅力的な治療対象になり得る。Tie2アゴニスト抗体及びオリゴマーアンジオポエチン(Angpt1)変異体は、潜在的な治療剤として開発されてきた。ただし、Tie2のクラスター化及び活性化での役割に対する基本メカニズムは明確に確認されなかった。また、Angpt1変異体は、生産及び保管に困難を伴う。
【0006】
このような技術的背景の下で、本出願の発明者等は、Tie2アゴニスト抗体を開発するために努力した結果、ヒトTie2アゴニスト抗体を開発し、Tie2のFn3ドメインに特異的に結合することによってTie2ホモダイマーが多角形組立体に連結され、クラスター化及び活性化され得ることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0007】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、Tie2アゴニスト抗体又はその抗原結合断片を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、前記抗体又はその抗原結合断片をコーディングする核酸を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、前記核酸を含むベクター、前記ベクターで形質転換された細胞及びその製造方法を提供することにある。
【0012】
本発明の更に他の目的は、前記抗体又はその抗原結合断片を含む血管新生疾患の予防又は治療用組成物を提供することにある。
【0013】
本発明の更に他の目的は、前記抗体又はその抗原結合断片を含む、他の血管新生疾患治療剤との併用投与用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、本発明は、Tie2アゴニスト抗体又はその抗原結合断片であって、前記抗体は、ヒトTie2のIg3 Fn3(membrane proximal fibronectin type III)ドメインに結合し、前記抗体の結合により、ホモダイマーTie2が多角形組立体を形成し、クラスタリング及び活性化されることを特徴とする抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0015】
具体的には、本発明は、配列番号1の配列を含む重鎖可変領域(VH)、配列番号3の配列を含む重鎖定常領域(CH)、配列番号2の配列を含む軽鎖可変領域(VL)及び配列番号4の配列を含む軽鎖定常領域(CL)を含むFabを提供する。
【0016】
具体的には、本発明は、配列番号5又は配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;及び配列番号6又は配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;を含むヒト化抗体を提供する。
【0017】
また、本発明は、前記抗体又はその抗原結合断片をコーディングする核酸を提供する。
【0018】
また、本発明は、前記核酸を含むベクターを提供する。
【0019】
また、本発明は、前記ベクターで形質転換された細胞を提供する。
【0020】
また、本発明は、次の段階を含む前記抗体又はその抗原結合断片の製造方法を提供する:(a)前記細胞を培養する段階;及び(b)前記培養された細胞から抗体又はその抗原結合断片を回収する段階。
【0021】
また、本発明は、前記抗体又はその抗原結合断片を有効成分として含む血管新生関連疾患の予防又は治療用組成物を提供する。
【0022】
また、本発明は、前記抗体又はその抗原結合断片を含む、他の血管新生疾患治療剤との併用投与用組成物を提供する。本発明は、前記抗体又はその抗原結合断片を患者に投与する段階を含む血管新生疾患の予防又は治療方法に関する。本発明は、前記抗体又はその抗原結合断片を血管新生疾患の予防又は治療用製剤の製造に使用するための用途に関する。
【0023】
また、本発明は、Tie2アゴニスト抗体又はその抗原結合断片を含み、前記抗体は、ヒトTie2のIg3 Fn3(membrane proximal fibronectin type III)ドメインに結合し、ホモダイマーTie2との結合によって形成された抗体の多角形組立体を提供する。
【0024】
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1a-1b】Tie2活性化マウスモノクロナール抗体の生成を示した図である。
【0026】
a.Tie2受容体の概略的ドメイン構造及びハイブリドーマ技術によるモノクロナール抗体生成戦略。Ig免疫グロブリン類似ドメイン;EGF表皮成長因子類似ドメイン;Fn、fibronectin type IIIドメイン。
【0027】
b.SPR及びBLI分析によってそれぞれ決定されたヒト(左側)又はマウス(右側)Tie2に対するhTAABの結合動態。平衡解離定数(KD、M)は、オフ速度とオン速度の比率(koff/kon)として計算された。速度論的パラメーターは、1:1結合モデルを用いてBiacore Insight Evaluation Softwareのグローバルフィッティング機能で決定された。
【0028】
【
図2a-2d】Tie2 Fn2-3の構造比較結果を示した図である。
【0029】
a.キメラhTAAB Fab単独(黒色の線)とTie2 ECD変異体(Ig3-Fn3、マゼンタ色の線;Fn1-3青色の線;及びFn2-3黄色の線)複合体のサイズ排除クロマトグラフィー(左側)。溶出分画は、還元及び非還元の条件下でSDS-PAGE及びクマシーブルー染色によって分析された(右側)。
【0030】
b.キメラhTAAB Fab結合Tie2 Fn2-3モノマー(黒色)と以前に報告されたTie2 Fn2-3(赤色、PDB:5MYBチェーンA)及びFn1-3(緑色、PDB:5UTKチェーンA)のモノマー構造比較。構造はリボンダイアグラムとして表示。
【0031】
c.キメラhTAAB Fab結合Tie2 Fn2-3ダイマー(黒色)と以前に報告されたTie2 Fn2-3ダイマー構造(赤色、PDB:5MYB)との比較。
【0032】
d.キメラhTAAB Fab結合Tie2 Fn2-3ダイマー(黒色)と以前に報告されたTie2 Fn1-3ダイマー構造(PDB:5UTK)との比較。結晶格子内の2個の非対称単位Tie2 Fn1-3ダイマーは、それぞれ緑色と青緑色で着色されている。
【0033】
【
図3a-3d】Tie2 Fn2-3と複合体を形成したhTAAB Fabの全般的構造を示した図である。
【0034】
a.2:2 hTie2 Fn2-3/キメラhTAAB Fab複合体の全体構造。ダイマー複合体の2倍軸は、黒色の楕円で表示されている。キメラhTAAB Fabの重鎖及び軽鎖は、それぞれ濃いオレンジ色及び薄いオレンジ色で表示されている。hTie2 Fn2-3ダイマーは浅緑色及び青緑色で表示されている。
【0035】
b.ヒト及びマウスTie2 Fn2-3ドメインの配列比較。マウスTie2配列での点は、ヒトTie2と同一の残基を示す。
【0036】
c.表面の表現は、Tie2 Fn2-3(上側)とキメラhTAAB Fab(下側)との相互作用インターフェースを示すオープンブックビューである。hTie2 Fn2-3とキメラhTAAB Fabの色相は、
図3aの色相と同一であるが、それぞれの結合面に反転している。キメラhTAAB Fabの6個のCDRループは、他の色の線で表示されている(下側)。
【0037】
d.hTAABの重鎖(上側)及び軽鎖(下側)の可変領域と最も近いヒト及びマウス可変領域の生殖細胞系列遺伝子の配列比較。マウス及びヒトの生殖細胞系列配列での点は、hTAABと同一の残基を示す。(b-d)キメラhTAAB Fabの重鎖及び軽鎖と相互作用するhTie2残基は、それぞれ濃いオレンジ色及び薄いオレンジ色で表示され、重鎖及び軽鎖の全てと相互作用するV730は赤色で強調表示される(bとc、上側)。hTie2 Fn3と相互作用するキメラhTAAB Fab残基は青緑色で表示されている(c、下側及びd)。
【0038】
【
図4a-4d】キメラhTAAB FabとhTie2 Fn3との間の結合インターフェースに対する分析結果を示した図である。
【0039】
a.主要分子相互作用(A、B、C領域)の拡大図。hTie2 Fn3/キメラhTAAB Fab相互作用(赤色、緑色及び青色のボックス)及びhTie2二量体化(黒色のボックス)に関与する残基は、ステッキとして表示されてラベリングされている。水素結合及び静電気相互作用は点線で表示されている。
【0040】
b.hTAAB結合に関与するA、B、C領域の主要アミノ酸残基。hTAAB相互作用残基は左側に羅列されており、Tie2の対応する相互作用残基は右側に羅列されている。残基パートナー間の相互作用は、赤色(イオン相互作用)、黒色(水素結合)、青色(疎水性相互作用)で表示される。
【0041】
c.PyMOLのポアソン-ボルツマン(Poisson-Boltzmann)方程式によって計算されたhTie2 Fn2-3/キメラhTAAB Fab複合体の静電気電位。構造は、静電気特性(青色:正電荷で帯電、赤色:負電荷で帯電)を反映したカラー地図と共に、オープンブックビュー及び表面の表現として表示される。相互作用する領域は黄色の線で強調表示される。
【0042】
d.hTie2 Fn2-3及びキメラhTAAB Fabの疎水性残基が表面に現れ、相互作用インターフェースは黒色の線で表示されている。
【0043】
【
図5a-5d】Tie2、Tie1 Fn2-Fn3ドメイン及びキメラhTAAB Fabの配列アラインメント(sequence alignments)結果を示した図である。
【0044】
a.ヒト(H.sapiens、UniProt:Q02763)、マウス(M.musculus、UniProt:Q02858)、ラット(R.norvegicus、UniProt:D3ZCD0)、サル(M.fascicularis、UniProt:A0A2K5VRI3)、ウシ(B.taurus、UniProt:Q06807)及びイヌ(C.familiaris、UniProt:F1P8U6)Tie2 Fn2-3の配列整列。
【0045】
b.ヒト(H.sapiens、UniProt:Q02763)とマウス(M.musculus、UniProt:Q02858)Tie2 Fn2-3、及びヒト(H.sapiens、UniProt:P35590)とマウス(M.musculus、UniProt:Q06806)Tie1 Fn2-3の配列整列。
【0046】
c.キメラhTAABの重鎖可変領域と最も近いマウス及びヒト生殖細胞系列遺伝子の配列整列(上側)、及びキメラhTAABの重鎖ガンマ1定常領域(hIGHV1*01)と最も近いマウス生殖細胞系列遺伝子の配列整列(下側)。d.キメラhTAABの軽鎖可変領域と最も近いマウス及びヒト生殖細胞系列遺伝子の配列整列(上側)、及びキメラhTAABの軽鎖カッパ定常領域(hIGKC1*01)と最も近いマウス生殖細胞系列遺伝子の配列整列(下側)。
【0047】
(a-d)青色の四角形は、キメラhTAAB Fab重鎖とhTie2 Fn3インターフェースで相互作用する各残基を示す。白色の四角形は、キメラhTAAB Fab軽鎖とhTie2 Fn3との間の相互作用残基を示す。赤色の円形は、hTie2残基V730を示しており、重鎖及び軽鎖の全てと相互作用する。灰色の円形は、キメラhTAAB Fabの重鎖と軽鎖との間の相互作用に関与する残基を示す。Tie2のFn3ドメインとFn3ドメインとの間のダイマー相互作用に関与する各残基は、オレンジ色の三角形として表示されている。赤色のボックスは完全な配列保存を示し、黄色のボックスは、物理化学的特性によって70%以上の類似性を有する残基を示す。二次的構造の各構成は、矢印(βスタンド)及び螺旋(α-ヘリックス)の整列で表示されている。配列整列は、T-Coffee(http://tcoffee.crg.cat)及びESPriptサーバー(http://espript.ibcp.fr)を用いて作成された。
【0048】
【
図6】hTAAB IgG結合がTie2ダイマーの多角形組立体を仲介することを示す結果を示した図である。
【0049】
a.HUVECをキメラhTAAB Fab又はhTAABマウスIgG1(1μg/ml及び10μg/ml)で処理した後の、Tie2の相対的リン酸化比率に対する免疫染色分析(左側)。p-Tie2/Tie2の比率の比重計分析(右側;平均±SD n=3;***p<0.001 vs. 対照群)。
【0050】
b.キメラhTAAB Fab又はhTAAB IgG1(1μg/ml及び10μg/ml)でHUVECを処理した後の、Aktの相対リン酸化比率に対する免疫染色分析(左側)。p-Akt/Aktの比率の比重計分析(右側;平均±SD n=3;*p<0.05、***p<0.001 vs. 対照群)。
【0051】
c.hTie2 Fn2-3、hTie2 ECD、hTAAB/hTie2 Fn2-3複合体及びhTAAB/hTie2 ECD複合体のサイズ排除クロマトグラフィー-SEC-MALS(multiangle light scattering)分析。サンプルは、3mg/ml(hTie2 Fn2-3)又は1mg/ml(他の全てのもの)のタンパク質の濃度で0.5ml/minのPBS内のSuperdex200増加10/300GLカラムで分析した。分子量(kDa)及び280nmでの吸光度を溶出体積(ml)に対してグラフで表示した。
【0052】
d.Tie2ダイマー変異デザイン。Fn3ドメイン間の逆平行βシート相互作用インターフェースの両末端での残基D682及びN691(黄色)をシステインに変化させ、2個の二硫化結合を形成できるようにし、構成Tie2 Ig3-Fn3ダイマーを生成した。
【0053】
e.精製されたhTie2 Ig3-Fn3 D682C/N691Cは、還元及び非還元の条件下でSDS-PAGE及びクマシーブルー染色によって分析された。
【0054】
f.hTAAB IgG1と複合体を形成したhTie2 Ig3-Fn3 D682C/N691Cのサイズ排除クロマトグラフィー。精製したhTie2 Ig3-Fn3 D682C/N691CをhTAAB IgG1と2:1のモル比(Tie2モノマー:hTAAB IgG1)で2時間にわたってインキュベートし、これをサイズ排除クロマトグラフィーに適用した。ネガティブ染色EM及び2Dクラス平均に使用される分画はEM分析として表示される。
【0055】
g.Tie2ダイマー変異体/hTAAB IgG1複合体の代表的な2Dクラス平均(上側)。4対4、5対5及び6対6組立体内のTie2ダイマー/hTAAB IgG1複合体の周期的高次構造は、Tie2 Fn2-3/キメラhTAAB Fab複合体、Tie2 Ig1-Fn1(PDB:4K0V)及びヒトIgG1のFc断片(PDB:5VGP)の結晶構造を使用し、四角形、五角形及び六角形のそれぞれの閉鎖リング構造に対する2Dクラス平均に基づいてモデリングされた(下側)。スケールバー、20nm。
【0056】
h.ネガティブ染色EMグリッドで観察されたTie2ダイマー/hTAAB IgG1複合体内の多角形の5対5組立体の3Dモデル。非対称単位の結晶における2:2 Tie2 Fn2-3/キメラhTAAB Fab複合体は、赤色の線で表示されている。
【0057】
【
図7】Tie2ダイマー突然変異/hTAAB IgG1複合体のネガティブ染色EM分析結果を示した図である。
【0058】
a.hTAAB IgG1と複合体を形成した精製されたhTie2 Ig3-Fn3 N691C/D682Cネガティブ染色EM分析の代表的な顕微鏡写真(左側;スケールバー、100nm)。正方晶系、五角形、六角形の閉環構造の代表的な粒子イメージ(右側;スケールバー、20nm)。
【0059】
b.hTie2 Ig3-Fn3 N691C/D682C及びhTAAB IgG1複合体のサイズ排除クロマトグラフィーでの凝集ピークのネガティブ染色EM分析の代表的な顕微鏡写真、スケールバー、100nm。
【0060】
【
図8】リガンド非依存性Tie2の二量体化は、hTAABを通じたTie2のクラスタリング及び活性化に必須的であることを示す結果を示した図である。
【0061】
a.Tie2モノマー変異デザイン。Fn3-Fn3’ダイマーインターフェースの残基V685、V687及びK700(黄色)は、電荷反発を通じてFn3-Fn3’ダイマーインターフェースを破壊するために、負電荷残基(V685D/V687D/K700E)に変異され、構成的Tie2モノマーを生産した(左側)。全長Tie2-GFPWT及びHEK293T細胞でのライブセルイメージング及びTie2活性化分析に使用された構成的Tie2ダイマー及びモノマー変異に対する概略図(右側)。
【0062】
b.hTAAB及びCOMP-Ang1で処理した後、HEK293T細胞でTie2(全長Tie2 WT、Tie2ダイマー変異(D682C/N691C)又はモノマー変異(V685D/V687D/K700E))に対する共焦点時間の経過を示す写真。イメージは60倍の倍率で表示される。スケールバー、10μm。
【0063】
c及びd.COMP-Angpt1(1μg/ml)又はhTAAB IgG1(10μg/ml)で1時間にわたって処理した後、WT Tie2、構成的ダイマーTie2変異(D682C/N691C)又は構成的モノマーTie2変異(V685D/V687D/K700E)を一時的に発現するHEK293T細胞でのTie2とAktの相対的リン酸化比率に対する免疫ブロット分析(c)。p-Tie2/Tie2及びp-Akt/Aktの比率に対する比重計分析(d)が表示されている(平均±SD n=3;*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001 vs.対照群)。
【0064】
e.細胞膜でのhTAABを通じたTie2活性化モデル。hTAAB IgGはTie2ホモダイマーのFn3ドメインに結合し、リガンド非依存性Tie2ダイマーを高次元の円形組立体にクラスター化するように誘導する。Tie2クラスタリングは、隣接したダイマー間の自己リン酸化に最も適した方式で不活性化キナーゼダイマーを構成する。
【0065】
【
図9】hTAABの構造ベースのヒト化を示した図である。
【0066】
a.IgG1、IgG2及びIgG4サブクラス形態のうちキメラhTAAB抗体の概略図。鎖間の二硫化結合は黒色の線で表示されている。重鎖と軽鎖の可変領域はそれぞれ濃いオレンジ色と薄いオレンジ色で表示されている。重鎖と軽鎖の定常領域はそれぞれ緑色と青色で表示されている。
【0067】
b及びc.マウスIgG1又はヒトキメラIgG1、IgG2又はIgG4(1μg/ml及び10μg/ml)形態のhTAABでHUVECを処理した後の、Tie2とAktの相対的リン酸化比率に対する免疫染色分析(b)。p-Tie2/Tie2及びp-Akt/Aktの比率に対する比重計分析(c)が表示されている(平均±SD n=3;*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001 vs. 対照群)。
【0068】
d.hTAAB及びヒト化TAAB(hzTAAB)の重鎖及び軽鎖可変領域の配列と最も近いヒト生殖細胞系列遺伝子との整列。ヒト生殖細胞系列及びhzTAAB配列での点は、親抗体hTAABと同一の残基を示す。hTAABのCDR及びhzTAABのグラフトCDRは青色で表示される。親抗体hTAABで逆変異された残基は緑色で表示され、緑色の三角形として表示される。二次構造の構成(β鎖)は矢印として表示されている。
【0069】
e-h.Tie2 Fn2-Fn3/キメラhTAAB Fab複合体の結晶構造で採用されたキメラhTAAB Fv構造に重畳したhzTAAB-H1L1 Fvの相同性モデル構造。キメラhTAABの重鎖及び軽鎖はそれぞれ濃いオレンジ色と明るいオレンジ色で表示され、hzTAAB-H1L1の重鎖及び軽鎖は紫色とピンク色で表示されている。
【0070】
f-h.Tie2活性化抗体の構造ベースのヒト化に対する理論的説明。VH-VLペアリング及びCDRコンフォメーション(f)及びTie2 Fn3(g)に対する親和力を維持するために重要な軽鎖残基は、マウスhTAAB配列に逆変異した。CDRコンフォメーションを維持するために重要な重鎖残基は、マウスhTAAB配列に逆変異した(h)。変異は矢印として表示され、各残基は(e)と同じ色で表示される。
【0071】
i.SPR分析によって測定されたhTie2 ECDに対するヒト化TAAB(hzTAAB-H1L1、hzTAAB-H2L1、hzTAAB-H1L2及びhzTAAB-H2L2、及び以前に報告されたヒト化構造3H7H12G4)の結合動態。平衡解離定数(KD、M)は、オフ速度とオン速度の比率(koff/kon)として計算された。速度論的パラメーターは、1:1の結合モデルを用いてBiacore Insight Evaluation Softwareのグローバルフィッティング機能で決定された。垂直点線は、解離段階の開始を示す。
【0072】
【
図10a-10c】ヒト化Tie2活性化抗体を分析した結果を示した図である。
【0073】
a.IgG1ベースのヒト化Tie2活性化抗体(hzTAAB H1L1、H1L2、H2L1及びH2L2)のサイズ排除クロマトグラフィー。
【0074】
b.hzTAABの溶出分画を濃縮し、還元(左側)及び非還元(右側)の条件下でSDS-PAGE及びクマシーブルー染色によって分析した。
【0075】
c.BLI(biolayer interferometry)分析によって測定されたmTie2 Ig3-Fn3に対するhzTAABの結合キネティック。オクテットRED96機器を用いて得られたセンサーグラムとして確認されたmTie2 Ig3-Fn3の結合(A)及び解離(D)。表示された抗体を抗ヒトIgG Fcキャプチャー(AHC)バイオセンサーに固定化した後、バイオセンサーをマウスTie2 Ig3-Fn3の1600nMの溶液を含むウェルに浸し、結合を測定した後で力学バッファーで洗浄し、解離を測定した。
【0076】
【
図11】ヒト化TAABがHUVECでTie2とその下流信号を活性化することを示す結果を示した図である。
【0077】
a及びb.異なる濃度(0.02μg/ml、0.1μg/ml、0.5μg/ml、2.5μg/ml、12.5μg/ml及び50μg/ml)のhTAAB(a)又は3H7H12G4(b)でHUVECを処理した後の、Tie2の相対的リン酸化比率に対する免疫染色分析。ABTAA(2.5μg/ml)+Angpt2を陽性対照群として使用した。p-Tie2/Tie2の比率の比重計分析を示す(右側)。
【0078】
c及びd.異なる濃度(1μg/ml及び10μg/ml)のヒト化TAAB(hzTAAB-H1L1、H1L2、H2L1、H2L2)又はhTAAB(c)でHUVECを処理した後の、Tie2とAktの相対的リン酸化比率に対する免疫染色分析。p-Tie2/Tie2及びp-Akt/Aktの比率の比重計分析(d)が表示されている(平均±SD n=3;*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001 vs. 対照群)。
【0079】
e及びf.3H7H12G4又はhzTAAB-H2L2の異なる濃度(0.1μg/ml、0.5μg/ml、2.5μg/ml及び12.5μg/ml)でHUVECを処理した後の、Tie2とAktの相対的リン酸化比率に対する免疫染色分析。p-Tie2/Tie2及びp-Akt/Aktの比率の比重計分析(f)が表示されている。
【0080】
g及びh.HUVECでのhzTAAB-H2L2の生物学的効果。HUVECの血清欠乏誘導細胞死に対するhzTAAB-H2L2効果(上側)。HUVECは、10μg/mlのhzTAA-H2L2、hTAAB又は1μg/mlのCOMP-Angpt1を含む無血清培地で培養した。移動活性は、改変されたボイデンチャンバーアッセイ(modified Boyden chamber assay)(中央)を用いて測定された。HUVECは、8μmの空隙膜の上層に播種された。10μg/mlのhzTAA-H2L2、hTAAB又は1μg/mlのCOMP-Angpt1を含む無血清培地を下部チャンバーに追加した。移動した細胞を固定し、これを9時間培養した後で染色した。HUVECをマトリゲル被覆ウェル(Matrigel-coated wells)にプレーティングし、10μg/mlのhzTAA-H2L2、hTAAB又は1μg/mlのCOMP-Angpt1を含む無血清培地で培養した。位相差顕微鏡イメージは、処理7時間後に収得した。管形成活性は、管の長さ(下側)として測定された。スケールバー、100μm。TUNEL陽性細胞、移動したHUVEC及び(g)生成細胞の定量化(h)(平均±SD n=3;*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001 vs. 対照群)。
【0081】
i.細胞間の接触に対するhzTAAB-H2L2誘導Tie2電位及びFOXO1のhzTAAB-H2L2誘導核の除去を示すHUVECの共焦点イメージ。血清飢餓HUVECをhTAAB-H2L2(10μg/ml)又はCOMP-Angpt1(1μg/ml)で30分間処理した。対照群として、未処理群は使用されなかった。ヤギ抗ヒトTie2及びAlexaFluor 488結合ロバ抗ヤギ抗体をTie2視覚化に使用し、ウサギ抗FOXO1及びAlexa Fluor594結合ロバ抗ウサギ抗体をFOXO1視覚化に使用した。スケールバー、20μm。DAPI 4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール。
【0082】
【
図12a-12d】全長Tie2クラスタリングのモデルを示した図である。
【0083】
a.キメラhTAAB Fab/Tie2 Fn2-3複合体間の結晶パッキング相互作用に対する模式図。キメラhTAAB Fab及びTie2 Fn2-3の色に対する説明は
図3aに記載される。結晶パッキングによって導入されたFn2ドメイン間の水平方向の相互作用は、黒色のボックスで表示されている。
【0084】
b.(A)黒色のボックスで表示された結晶パッキング相互作用の拡大図。結晶パッキングによって媒介される重要な結合残基が表示されている。水素結合及び静電気相互作用は点線で表示されている。
【0085】
c.hTAABを介したTie2クラスタリング提案モデル。Tie2 Fn2-3/キメラhTAAB Fab、ヒトIgG1のFc断片(PDB:5VGP)の結晶構造、及び以前に報告されたTie2構造:Tie2 Ig1-Fn1(PDB:4K0V)、Tie2 Fn1-3(PDB:5MYA)及びTie2チロシンキナーゼドメイン(PDB:6MWE)を使用し、五角形の閉鎖リング構造の2Dクラス平均を基準にして5対5組立体内の全長Tie2ダイマー/hTAAB IgG1複合体の周期的高次構造をモデリングした。膜貫通ドメインは、以前に報告されたEGFRの二量体化モチーフのNMR構造(PDB:5LV6)で採択された。
【0086】
d.COMP-Ang1を通じたTie2クラスタリング提案モデル。Tie2s(C)及びAng1 FLD/Tie2 Ig1-Fn1複合体(PDB:4K0V)とCOMPコイルドコイル(coiled-coil)ドメイン(PDB:1VDF)(CとD)のモデル構造を使用し、hTAAB媒介全長Tie2クラスタリング(C)のモデルにより、全長Tie2ダイマーとCOMP-Ang1複合体の5:1の組立体の環状複合体をモデリングした。Angpt FLD結合Tie2 Ig2ドメインは黄色で表示される。
【0087】
【発明を実施するための形態】
【0088】
他の方式で定義されない限り、本明細書で使用された全ての技術的及び科学的用語は、本発明の属する技術分野で熟練した専門家によって通常理解されるのと同一の意味を有する。一般に、本明細書の命名法は、本技術分野でよく知られており、通常使用されるものである。
【0089】
本出願の発明者等は、Tie2 Fn(membrane proximal fibronectin type III)ドメインをターゲットとするヒトTie2アゴニスト抗体hTAABを開発した。Tie2/hTAAB複合体の構造は、Tie2クラスタリングの新しいモードを通じて作動する。
【0090】
ヒトTie2アゴニスト抗体であるhTAABがTie2/hTAAB複合体の構造を形成することによってTie2クラスタリングの新規モードで作動し、Tie2 Fn3ドメインに特異的に結合することによって、Tie2ホモダイマーが多角形組立体に連結される。このような構造は、以前に結晶格子で観察された側面Tie2アレイとは対照的である。また、Fn3-Fn3'ダイマーインターフェースの破壊は、hTAABによって誘発されるTie2のクラスター化信号を非活性化させた。このような結果は、hTAABによって誘発されるTie2多角形組立体に対するFn3媒介Tie2ホモ二量体化の重要性を強調し、Tie2アゴニストがTie2のクラスター化及び活性化をどのように誘導するのかに対する理解を提供する。また、hTAABの構造ベースのヒト化抗体の製作成功は、潜在的な臨床可能性を作り出す。
【0091】
このような観点で、本発明は、Tie2アゴニスト抗体又はその抗原結合断片であって、前記抗体は、ヒトTie2のIg3 Fn3(membrane proximal fibronectin type III)ドメインに結合し、前記抗体の結合により、ホモダイマーTie2が多角形組立体を形成し、クラスタリング及び活性化されることを特徴とする抗体又はその抗原結合断片に関する。
【0092】
また、Tie2アゴニスト抗体又はその抗原結合断片を含み、前記抗体は、ヒトTie2のIg3 Fn3(membrane proximal fibronectin type III)ドメインに結合し、ホモダイマーTie2との結合によって形成された抗体の多角形組立体に関する。
【0093】
本明細書で使用された「抗体(antibody)」という用語は、Tie2に特異的に結合する抗体を意味する。本発明の範囲には、Tie2に特異的に結合する完全な抗体形態のみならず、前記抗体分子の抗原結合断片も含まれる。
【0094】
完全な抗体は、2個の全長軽鎖及び2個の全長重鎖を有する構造であって、それぞれの軽鎖は重鎖とジスルフィド結合で連結されている。重鎖定常領域は、ガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)及びエプシロン(ε)タイプを有し、サブクラスとして、ガンマ1(γ1)、ガンマ2(γ2)、ガンマ3(γ3)、ガンマ4(γ4)、アルファ1(α1)及びアルファ2(α2)を有する。軽鎖の定常領域は、カッパ(κ)及びラムダ(λ)タイプを有する。
【0095】
抗体の抗原結合断片又は抗体断片とは、抗原結合機能を保有している断片を意味し、Fab、F(ab’)、F(ab’)2及びFvなどを含む。抗体断片のうちのFabは、軽鎖及び重鎖の可変領域、軽鎖の定常領域及び重鎖の1番目の定常領域(CH1)を有する構造であって、1個の抗原結合部位を有する。Fab’は、重鎖CH1ドメインのC-末端に一つ以上のシステイン残基を含むヒンジ領域(hinge region)を有するという点でFabと相違する。F(ab’)2抗体は、Fab’のヒンジ領域のシステイン残基がジスルフィド結合をなしながら生成される。Fvは、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のみを有している最小の抗体断片である。二重鎖Fv(two-chain Fv)は、非共有結合で重鎖可変領域と軽鎖可変領域とが連結されており、単鎖Fv(single-chain Fv、scFv)は、一般に、ペプチドリンカーを介して重鎖の可変領域と軽鎖の可変領域とが共有結合で連結されたり、又はC-末端で直ぐ連結されており、二重鎖Fvのようにダイマー構造をなすことができる。このような抗体断片は、タンパク質加水分解酵素を用いて得ることができ(例えば、全体の抗体をパパインで制限切断するとFabを得ることができ、ペプシンで切断するとF(ab’)2断片を得ることができる。)、遺伝子組換え技術を通じて製作することもできる。
【0096】
一つの実施例において、本発明に係る抗体は、Fv形態(例えば、scFv)であったり、完全な抗体形態である。また、重鎖定常領域は、ガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)及びエプシロン(ε)のうちいずれか一つのイソタイプから選択され得る。例えば、定常領域は、ガンマ1(IgG1)、ガンマ3(IgG3)又はガンマ4(IgG4)である。軽鎖定常領域は、カッパ又はラムダ型であり得る。
【0097】
本明細書で使用される「重鎖」という用語は、抗原に特異性を付与するための十分な可変領域配列を有するアミノ酸配列を含む可変領域VH及び3個の定常領域CH1、CH2及びCH3を含む全長重鎖及びその断片を全て意味する。また、本明細書で使用される「軽鎖」という用語は、抗原に特異性を付与するための十分な可変領域配列を有するアミノ酸配列を含む可変領域VL及び定常領域CLを含む全長軽鎖及びその断片を全て意味する。
【0098】
本発明の抗体は、モノクロナール抗体、多特異的抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖Fvs(scFV)、単鎖抗体、Fab断片、F(ab’)断片、ジスルフィド-結合Fvs(sdFV)及び抗イディオタイプ(抗Id)抗体、又は前記各抗体のエピトープ-結合断片などを含むが、これに限定されるものではない。
【0099】
前記モノクロナール抗体は、実質的に同質的抗体集団から収得した抗体、すなわち、集団を占めている個々の抗体が微量で存在し得る可能な天然発生的突然変異を除いては、同一のものを称する。モノクロナール抗体は、高度に特異的であるので、単一抗原部位に対抗して誘導される。典型的に相違する決定因子(エピトープ)に対して指示された相違する抗体を含む通常の(ポリクロナール)抗体製剤とは対照的に、それぞれのモノクロナール抗体は、抗原上の単一決定因子に対して指示される。
【0100】
「エピトープ」は、抗体が特異的に結合できるタンパク質決定部位(determinant)を意味する。エピトープは、通常、化学的に活性である表面分子群、例えば、アミノ酸又は糖側鎖で構成され、一般に、特定の3次元の構造的特徴のみならず、特定の電荷特性を有する。立体的エピトープ及び非立体的エピトープは、変性溶媒の存在下で前者に対する結合は消失するが、後者に対する結合は消失しないという点で区別される。
【0101】
前記「ヒト化」形態の非ヒト(例:ミュリン)抗体は、非ヒト免疫グロブリンから由来した最小配列を含有する一つ以上の非ヒト抗体(供与体又は供給源抗体)から由来した一つ以上のアミノ酸配列(例えば、CDR配列)を含むキメラ抗体である。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、受容体の超可変領域からの残基を目的とする特異性、親和性及び能力を保有している非ヒト種(供与体抗体)、例えば、マウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類の超可変領域路からの残基に取り替えたヒト免疫グロブリン(受容体抗体)である。ヒト化のために、受容体ヒト抗体の可変領域の一つ以上のフレームワークドメイン(framework domain、FR)内の残基が非ヒト種供与体抗体から相応する残基に取り替えられ得る。これを通じて、グラフティングされたCDRの適切な3次元構成を維持するように助け、これによって、親和性及び抗体安定性を改善することができる。ヒト化された抗体は、例えば、抗体の性能をさらに細密化するために、追加の受容体抗体又は供与体抗体で現れない新しい残基を含むことができる。
【0102】
前記「ヒト抗体」は、ヒト免疫グロブリンから由来する分子であって、相補性決定領域及び構造領域を含む抗体を構成する全てのアミノ酸配列全体がヒトの免疫グロブリンで構成されていることを意味する。
【0103】
重鎖及び/又は軽鎖の一部が特別な種から由来したり、特別な抗体クラス又はサブクラスに属する抗体内の相応する配列と同一であったり、これと相同性である一方で、残りの鎖は、更に他の種から由来したり、更に他の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体内の相応する配列と同一であったり、これと相同性である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)のみならず、目的とする生物学的活性を示す前記抗体の断片が含まれる。
【0104】
本願で使用された「抗体可変ドメイン」という用語は、相補性決定領域(CDR;すなわち、CDR1、CDR2、及びCDR3)、及びフレームワーク領域(FR)のアミノ酸配列を含む抗体分子の軽鎖及び重鎖部分を称する。VHは、重鎖の可変ドメインを称する。VLは、軽鎖の可変ドメインを称する。
【0105】
「相補性決定領域」(CDR;すなわち、CDR1、CDR2、及びCDR3)は、抗原結合のために必要な存在である、抗体可変ドメインのアミノ酸残基を称する。各可変ドメインは、典型的に、CDR1、CDR2及びCDR3として確認された3個のCDR領域を有する。
【0106】
「フレームワーク領域」(FR)は、CDR残基以外の可変ドメイン残基である。各可変ドメインは、典型的に、FR1、FR2、FR3及びFR4として確認された4個のFRを有する。
【0107】
Tie2抗体は、1価又は2価であって、単鎖又は二重鎖を含む。機能的に、Tie2抗体の結合親和性は、10-5M乃至10-12Mの範囲内にある。例えば、Tie2抗体の結合親和性は、10-6M乃至10-12M、10-7M乃至10-12M、10-8M乃至10-12M、10-9M乃至10-12M、10-5M乃至10-11M、10-6M乃至10-11M、10-7M乃至10-11M、10-8M乃至10-11M、10-9M乃至10-11M、10-10M乃至10-11M、10-5M乃至10-10M、10-6M乃至10-10M、10-7M乃至10-10M、10-8M乃至10-10M、10-9M乃至10-10M、10-5M乃至10-9M、10-6M乃至10-9M、10-7M乃至10-9M、10-8M乃至10-9M、10-5M乃至10-8M、10-6M乃至10-8M、10-7M乃至10-8M、10-5M乃至10-7M、10-6M乃至10-7M又は10-5M乃至10-6Mである。
【0108】
本出願の具体的な実施例によると、前記抗体は、配列番号1の配列を含む重鎖可変領域(VH)、配列番号3の配列を含む重鎖定常領域(CH)、配列番号2の配列を含む軽鎖可変領域(VL)及び配列番号4の配列を含む軽鎖定常領域(CL)を含むFabであり得る。
【0109】
【0110】
本発明に係る具体的な実施例において、ヒト化抗体hzTAAB、例えば、hzTAAB-H1とhzTAAB-L1を製作した。前記ヒト化抗体hzTAABは、配列番号5又は配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;及び配列番号6又は配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;を含むことができる。
【0111】
具体的には、第3項において、
【0112】
配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
【0113】
配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
【0114】
配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;又は
【0115】
配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含むことができる。
【0116】
【0117】
本発明の抗体又は抗体断片は、Tie2を特異的に認識できる範囲内で、本明細書に記載した本発明の抗Tie2抗体の配列のみならず、その生物学的均等物も含むことができる。例えば、抗体の結合親和度及び/又はその他の生物学的特性をさらに改善するために、抗体のアミノ酸配列に追加的な変化を与えることができる。このような変形は、例えば、抗体のアミノ酸配列残基の欠失、挿入及び/又は置換を含む。このようなアミノ酸変異は、アミノ酸側鎖置換体の相対的類似性、例えば、疎水性、親水性、電荷、サイズなどに基づいて構成される。アミノ酸側鎖置換体のサイズ、形状及び種類に対する分析により、アルギニン、リシン及びヒスチジンは、いずれも正電荷を帯びた残基であり;アラニン、グリシン及びセリンは類似するサイズを有し;フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンは類似する形状を有することが分かる。よって、このような考慮事項に基づいて、アルギニン、リシン及びヒスチジン;アラニン、グリシン及びセリン;そして、フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンは、生物学的に機能均等物であると言える。
【0118】
上述した生物学的均等活性を有する変異を考慮すると、本発明の抗体が有するアミノ酸配列又はこれをコーディングする核酸分子は、配列番号に記載の配列と実質的な同一性(substantial identity)を示す配列も含むものとして解釈される。前記実質的な同一性は、前記本発明の配列と任意の他の配列とを最大限に対応するようにアラインし、当業界で通常のアルゴリズムを用いてアラインされた配列を分析した場合、最小90%の相同性、最も好ましくは最小95%の相同性、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上の相同性を示す配列を意味する。配列比較のためのアラインメント方法は、当業界に公知となっている。NCBI BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)は、NBCIなどで接近可能であり、インターネット上でblastp、blasm、blastx、tblastn及びtblastxなどの配列分析プログラムと連動して用いることができる。BLSATは、www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/で接続可能である。このプログラムを用いた配列相同性比較方法は、www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/blast_help.htmlで確認することができる。
【0119】
これに基づいて、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、明細書に記載の明示された配列又は全体の配列と比較して、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上の相同性を有することができる。このような相同性は、当業界に公知となった方法による配列比較及び/又は整列によって決定され得る。例えば、配列比較アルゴリズム(すなわち、BLAST又はBLAST 2.0)、手動整列、又は肉眼検査を用いて本発明の核酸又はタンパク質のパーセント配列相同性を決定することができる。
【0120】
本発明は、他の観点において、前記抗体又はその抗原結合断片をコーディングする核酸に関する。
【0121】
前記核酸は、配列番号9乃至14で構成された群から選ばれる配列を含むことができる。
【0122】
本発明の抗体又はその抗原結合断片をコーディングする核酸を分離し、抗体又はその抗原結合断片を組換え的に生産することができる。核酸を分離し、これを複製可能なベクター内に挿入することによって追加的にクローニングしたり(DNAの増幅)、又は追加的に発現させる。これに基づいて、本発明は、更に他の観点において、前記核酸を含むベクターに関する。
【0123】
「核酸」は、DNA(gDNA及びcDNA)及びRNA分子を包括的に含む意味を有し、核酸で基本構成単位であるヌクレオチドは、自然のヌクレオチドのみならず、糖又は塩基部位が変形した類似体(analogue)も含む。本発明の重鎖及び軽鎖可変領域をコーディングする核酸の配列は変形可能である。前記変形は、ヌクレオチドの追加、欠失、又は非保存的置換又は保存的置換を含む。
【0124】
前記抗体を暗号化するDNAは、通常の過程を用いて(例えば、抗体の重鎖と軽鎖を暗号化するDNAと特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に分離又は合成する。多くのベクターが入手可能である。ベクター成分には、一般に、次のうちの一つ以上が含まれるが、それに制限されない:信号配列、複製起点、一つ以上のマーカー遺伝子、増強因子要素、プロモーター、及び転写終決配列。
【0125】
本明細書で使用される「ベクター」という用語は、宿主細胞で目的遺伝子を発現させるための手段であって、プラスミドベクター;コスミドベクター;バクテリオファージベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター及びアデノ随伴ウイルスベクターなどのウイルスベクターなどを含む。前記ベクターにおいて、抗体をコーディングする核酸はプロモーターと作動的に連結されている。
【0126】
「作動的に連結」は、核酸発現調節配列(例:プロモーター、シグナル配列、又は転写調節因子結合位置のアレイ)と他の核酸配列との間の機能的な結合を意味し、これによって、前記調節配列は、前記他の核酸配列の転写及び/又は解読を調節するようになる。
【0127】
原核細胞を宿主とする場合は、転写を進行できる強力なプロモーター(例えば、tacプロモーター、lacプロモーター、lacUV5プロモーター、lppプロモーター、pLλプロモーター、pRλプロモーター、rac5プロモーター、ampプロモーター、recAプロモーター、SP6プロモーター、trpプロモーター及びT7プロモーターなど)、解読の開始のためのリボソーム結合部位及び転写/解読終決配列を含むことが一般的である。また、例えば、真核細胞を宿主とする場合は、哺乳動物細胞のゲノムから由来したプロモーター(例:メタロチオニンプロモーター、β-アクチンプロモーター、ヒトヘログロビンプロモーター及びヒト筋肉クレアチンプロモーター)又は哺乳動物ウイルスから由来したプロモーター(例:アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、HSVのtkプロモーター、マウス乳房腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、HIVのLTRプロモーター、モロニーウイルスのプロモーターエプスタインバーウイルス(EBV)のプロモーター及びラウス肉腫ウイルス(RSV)のプロモーター)が利用可能であり、転写終決配列としてポリアデニル化配列を一般的に有する。
【0128】
場合によって、ベクターは、それから発現される抗体断片の精製を容易にするために他の配列と融合されることもある。融合される配列は、例えば、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(Pharmacia、USA)、マルトース結合タンパク質(NEB、USA)、FLAG(IBI、USA)及び6x His(hexahistidine;Quiagen、USA)などを含む。
【0129】
前記ベクターは、選択標識として当業界で通常用いられる抗生剤耐性遺伝子を含み、例えば、アンピシリン、ゲンタマイシン、カルベニシリン、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、カナマイシン、ジェネティシン、ネオマイシン及びテトラサイクリンに対する耐性遺伝子がある。
【0130】
本発明は、更に他の観点において、前記言及したベクターで形質転換された細胞に関する。本発明の抗体を生成させるために使用された細胞は、原核生物、酵母又は高等真核細胞であり得るが、これに制限されるものではない。
【0131】
エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)、バチルス・サブティリス及びバチルス・チューリンゲンシスなどのバチルス属菌株、ストレプトマイセス(Streptomyces)、シュードモナス(Pseudomonas)(例えば、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida))、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)及びスタフィロコッカス(Staphylococcus)(例えば、スタフィロコッカス・カルノーサス(Staphylocus carnosus))などの原核宿主細胞を用いることができる。
【0132】
ただし、動物細胞に対する関心が最も大きく、有用な宿主細胞株の例は、COS-7、BHK、CHO、CHOK1、DXB-11、DG-44、CHO/-DHFR、CV1、COS-7、HEK293、BHK、TM4、VERO、HELA、MDCK、BRL 3A、W138、Hep G2、SK-Hep、MMT、TRI、MRC 5、FS4、3T3、RIN、A549、PC12、K562、PER.C6、SP2/0、NS-0、U20S、又はHT1080であり得るが、これに制限されるものではない。
【0133】
本発明は、更に他の観点において、(a)前記細胞を培養する段階;及び(b)前記培養された細胞から抗体又はその抗原結合断片を回収する段階;を含む前記抗体又はその抗原結合断片の製造方法に関する。
【0134】
前記細胞は、各種培地で培養することができる。市販用培地は、いずれも制限なく培養培地として使用することができる。当業者に公知となっているその他の全ての必須補充物が適当な濃度で含まれることもある。培養条件、例えば、温度、pHなどが、発現のために選別された宿主細胞と共に既に使用されており、これは当業者にとって明白であろう。
【0135】
前記抗体又はその抗原結合断片の回収は、例えば、遠心分離又は限外ろ過によって不純物を除去し、その結果物を、例えば、親和クロマトグラフィーなどを用いて精製することができる。追加的な他の精製技術として、例えば、陰イオン又は陽イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーなどが使用され得る。
【0136】
本発明は、更に他の観点において、前記抗体又はその抗原結合断片を有効成分として含む血管新生疾患の予防又は治療用組成物に関する。
【0137】
前記血管新生は、以前に存在した血管からの新しい血管の形成又は成長を意味し、「血管新生関連疾患(angiogenesis-related disease)」は、血管新生の発生又は進行と関連する疾患を意味する。前記抗体で治療可能であれば、その疾病は、限定なく血管新生関連疾患の範囲に含まれ得る。血管新生関連疾患の例としては、癌、転移(metastasis)、糖尿病網膜症(diabetic retinopathy)、未熟児網膜症(retinopathy of prematurity)、角膜移植拒絶反応(corneal graft rejection)、黄斑変性(macular degeneration)、血管新生緑内障(neovascular glaucoma)、全身紅色症(erythrosis)、増殖性網膜症(proliferative retinopathy)、乾癬(psoriasis)、血友病性股関節炎(hemophilic arthritis)、動脈硬化性プラーク(atherosclerotic plaques)の毛細管形成、ケロイド(keloid)、傷顆粒化(wound granulation)、血管癒着(vascular adhesion)、関節リウマチ(rheumatoid arthritis)、退行性関節炎(osteoarthritis)、自己免疫疾患(autoimmune diseases)、クローン病(Crohn’s disease)、レステノシス(restenosis)、アテローム性動脈硬化症(atherosclerosis)、腸狭窄(intestinal adhesions)、猫ひっかき病(cat scratch disease)、潰瘍(ulcer)、肝硬変症(liver cirrhosis)、腎臓炎(nephritis)、糖尿病性腎臓疾患(diabetic nephropathy)、真性糖尿病(diabetes mellitus)、炎症疾患(inflammatory diseases)及び神経変性疾患(neurodegenerative diseases)を含むが、これに限定されるものではない。また、前記癌は、食道癌(esophageal cancer)、胃癌(stomach cancer)、大腸癌(large intestine cancer)、直腸癌(rectal cancer)、口腔癌(oral cancer)、咽頭癌(pharynx cancer)、喉頭癌(larynx cancer)、肺癌(lung cancer)、結腸癌(colon cancer)、乳癌(breast cancer)、子宮頸部癌(uterine cervical cancer)、子宮内膜癌(endometrial cancer)、卵巣癌(ovarian cancer)、前立腺癌(prostate cancer)、睾丸癌(testis cancer)、膀胱癌(bladder cancer)、腎臓癌(renal cancer)、肝癌(liver cancer)、膵臓癌(pancreatic cancer)、骨癌(bone cancer)、結合組織癌(connective tissue cancer)、皮膚癌(skin cancer)、脳腫瘍(brain cancer)、甲状腺癌(thyroid cancer)、白血病(leukemia)、ホジキンリンパ腫(Hodgkin’s lymphoma)、リンパ腫(lymphoma)及び多発性骨髓血液癌(multiple myeloid blood cancer)で構成された群から選ばれるが、これに限定されるものではない。
【0138】
ここで使用された「予防(prevention or prophylaxis)」という用語は、本発明の抗体又は組成物を投与し、関心疾患の開始を抑制又は遅延させる全ての措置を示す。「治療(treatment or therapy)」という用語は、本発明の抗体又は組成物を投与し、関心疾患の症状を改善又は好転させる全ての措置を示す。
【0139】
本発明の抗体を含む組成物は、好ましくは、薬学的組成物であって、本分野で典型的に使用される適切なビヒクル、賦形剤又は希釈剤をさらに含むことができる。
【0140】
薬学的に許容可能なビヒクルを含む薬学的組成物は、錠剤、丸薬、粉末、顆粒剤、カプセル剤、サスペンション、内服液、エマルジョン、シロップ、滅菌水溶液、非水溶液、凍結乾燥物(lyophilizates)及び坐薬などの多様な経口又は非経口服用形態であり得る。これと関連して、本発明の薬学的組成物は、フィラー、増粘剤、バインダー、湿潤剤、錠剤分解物質(disintegrant)、インターフェース活性剤などの希釈剤又は賦形剤で組み合わせて剤形化され得る。経口投与のための固相製剤は、錠剤、丸薬、粉末、顆粒剤、カプセル剤などの形態であり得る。これらの固相剤と関連して、本発明の化合物は、デンプン、炭酸カルシウム、スクロース、ラクトース、又はゼラチンなどの一つ以上の賦形剤を組み合わせて剤形化され得る。簡単な賦形剤、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどの潤滑剤をさらに使用することができる。経口投与のための液体製剤は、サスペンション、内服液、エマルジョン、シロップなどであり得る。水又は液体パラフィンなどの簡単な希釈剤、湿潤剤、甘味剤、芳香族、防腐剤などの多様な賦形剤を液体製剤内に含ませることができる。また、本発明の薬学的組成物は、滅菌水溶液、非水溶性溶媒、サスペンション、エマルジョン、凍結乾燥物、坐薬などの非経口服用形態であり得る。注入可能なプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物性油及びオレイン酸エチルなどのエステルが非水溶性溶媒及びサスペンションに適切であり得る。坐薬の基本物質は、ウイテプゾール(Witepsol)、マクロゴール(macrogol)、ツイン61(Tween 61)、カカオバター(cacao butter)、ラウリンバター(laurin butter)及びグリセロゼラチン(glycerogelatin)を含む。
【0141】
本発明の組成物は、薬学的に有効な量で投与される。ここで使用された「薬学的に有効な量(pharmaceutically effective amount)」という用語は、全ての医学的治療に適用可能な適合した利益と危険の比率(benefit/risk ratio)で十分な疾患治療用薬学的組成物の量を示す。有効量は、治療しなければならない疾患の重症度、患者の年齢及び性別、疾患の種類、薬剤の活性度、薬剤に対する敏感度、投与時間、投与経路、分泌速度、治療期間、薬剤の共投与及び本分野で知られている他のパラメーターを含む多様な要因によって変わる。本発明の組成物は、単独で又は他の治療法と組み合わせて投与され得る。この場合、従来の治療法と共に順次又は同時に投与され得る。また、前記組成物は、1回投与されたり、又は多数回に分けて投与され得る。これらの要因を完全に考慮すると、副作用なしで最大の効果を得るのに十分な最小量を投与することが重要であり、この服用量は、本分野の専門家によって容易に決定され得る。本発明の薬学的組成物の服用量は、特に限定されないが、患者の健康状態及び体重、疾患の重症度、薬の種類、投与経路及び投与時間を含む多様な要因によって変更される。組成物は、1日に1回又は多数回に分けて、ラット、マウス、家畜、ヒトなどを含む哺乳類内に典型的に許容された経路、例えば、経口に、直腸に、静脈に(intravenously)、皮下に(subcutaneously)、子宮内に(intrauterinely)又は脳血管内に(intracerebrovascularly)投与され得る。
【0142】
本発明は、更に他の観点において、前記抗体又は前記組成物を必要とする個体に投与する段階を含む血管新生を抑制する方法、血管新生関連疾患予防又は治療方法に関する。
【0143】
本発明の方法は、血管新生の抑制を必要とする個体に薬学的に有効な量の薬学的組成物を投与する段階を含む。前記個体は、イヌ、ウシ、ウマ、ウサギ、マウス、ラット、ニワトリ及びヒトなどの哺乳類であり得るが、これに限定されるものではない。薬学的組成物は、非経口的に(parenterally)、皮下に(subcutaneously)、腹腔内に(intraperitoneally)、肺内に(intrapulmonarily)又は鼻内に(intranasally)、そして、必要であれば、局所治療のために病変内に(intralesional)適切な方法によって投与され得る。本発明の薬学的組成物の好ましい服用量は、個体の健康状態及び体重、疾患の重症度、薬剤の種類、投与経路及び投与時間を含む多様な要因によって変わり、本分野の当業者によって容易に決定され得る。
【0144】
本発明は、更に他の観点において、前記抗体を含む癌予防又は治療用薬学的組成物又は前記抗体又は前記組成物を必要とする個体に投与する段階を含む癌の予防又は治療方法に関する。「抗体」、「予防」及び「治療」などの用語は、上記で言及した通りである。
【0145】
本発明の抗体で治療可能であれば、癌は制限されない。より詳細には、本発明の抗体は、血管新生を抑制することによって癌の発生又は進行を予防することができる。癌の例は、食道癌(esophageal cancer)、胃癌(stomach cancer)、大腸癌(large intestine cancer)、直腸癌(rectal cancer)、口腔癌(oral cancer)、咽頭癌(pharynx cancer)、喉頭癌(larynx cancer)、肺癌(lung cancer)、結腸癌(colon cancer)、乳癌(breast cancer)、子宮頸部癌(uterine cervical cancer)、子宮内膜癌(endometrial cancer)、卵巣癌(ovarian cancer)、前立腺癌(prostate cancer)、睾丸癌(testis cancer)、膀胱癌(bladder cancer)、腎臓癌(renal cancer)、肝癌(liver cancer)、膵臓癌(pancreatic cancer)、骨癌(bone cancer)、結合組織癌(connective tissue cancer)、皮膚癌(skin cancer)、脳腫瘍(brain cancer)、甲状腺癌(thyroid cancer)、白血病(leukemia)、ホジキンリンパ腫(Hodgkin’s lymphoma)、リンパ腫(lymphoma)及び多発性骨髓血液癌(multiple myeloid blood cancer)を含むが、これに限定されるものではない。
【0146】
また、本発明の抗体は、他の抗体又は生物学的活性剤又は多様な目的のための物質と組み合わせて使用され得る。本発明は、このような観点において、前記抗体又はその抗原結合断片を含む、他の血管新生疾患治療剤との併用投与用組成物に関する。
【0147】
前記他の血管新生疾患治療剤としては、抗血管新生薬物、消炎薬物及び/又は抗癌薬物を薬物を挙げることができる。これを通じて、互いの抵抗性を克服させ、効能を増進させることができる。
【0148】
本発明に係る組成物で他の血管新生疾患治療剤と併用投与される場合、Tie2抗体及び他の血管新生疾患治療剤は、順次又は同時に投与され得る。例えば、抗血管新生薬物、消炎薬物及び/又は抗癌薬物を対象体に投与した後、活性成分としてTie2に対する抗体又はその抗原結合断片を含む組成物を前記対象体に投与したり、前記組成物を対象体に投与した後、抗血管新生薬物、消炎薬物及び/又は抗癌薬物を前記対象体に投与する。場合によって、前記組成物は、抗血管新生薬、消炎薬物及び/又は抗癌薬物と同時に対象体に投与することができる。
【0149】
【0150】
【実施例】
【0151】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は、単に本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されるものとして解釈されないことは、当業界で通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【0152】
実施例1.Tie2活性化マウスモノクローナル抗体の生成
【0153】
1.1 組換えタンパク質の発現及び精製
【0154】
マウス免疫のための組換えTie2タンパク質は、hTie2 Ig3-Fn3(ヒトTie2残基349-738、GenBank accession number:AAH35514.2)をコーディングする遺伝子をpFuse-hIgG1-Fcベクター(pFuse-hg1fc1、InvivoGen)にクローニングし、Expi293F細胞で一時的に発現することによって生成された。
【0155】
ヒトTie2 Ig3-Fn3(349T-738P)
アミノ酸配列(SEQ ID NO:19)
TPKIVDLPDHIEVNSGKFNPICKASGWPLPTNEEMTLVKPDGTVLHPKDFNHTDHFSVAIFTIHRILPPDSGVWVCSVNTVAGMVEKPFNISVKVLPKPLNAPNVIDTGHNFAVINISSEPYFGDGPIKSKKLLYKPVNHYEAWQHIQVTNEIVTLNYLEPRTEYELCVQLVRRGEGGEGHPGPVRRFTTASIGLPPPRGLNLLPKSQTTLNLTWQPIFPSSEDDFYVEVERRSVQKSDQQNIKVPGNLTSVLLNNLHPREQYVVRARVNTKAQGEWSEDLTAWTLSDILPPQPENIKISNITHSSAVISWTILDGYSISSITIRYKVQGKNEDQHVDVKIKNATITQYQLKGLEPETAYQVDIFAENNIGSSNPAFSHELVTLPESQAP
【0156】
DNA配列(SEQ ID NO:20)
ACCCCAAAGATAGTGGATTTGCCAGATCATATAGAAGTAAACAGTGGTAAATTTAATCCCATTTGCAAAGCTTCTGGCTGGCCCCCTACCTACTAATGAAGAAATGACCCTGGTGAAGCCGGATGGGACAGTGCTCCCCCAAAAAGACTTTAACCATACGGATCATTTCTCAGTAGCCATGCTCTCAGTGTGAACACAGTGGCTGGGATGGTGGAAAAGCCCTTCAACATTTCTGTTAAAGTTCTTCAAAAGCCCCTGAATGCCCCAAACGTGATTGACACTGGACATAACTTTGCTGTCATCAACATCAGCTCTGAGCCTTACTTTGGGGGATGGACCACCTAGTACTACGATTGTTACACTCAACTATTTGGAACCTCGGACAGAATATGAACTCTGTGTGCAACTGGTCCGTCGTGGAGAGGGTGGGGAGAGGCATCCTGGACCTGTGAGACGCTTCACAACAGCTTCTATCGGACTCCCTCCTCAGAGGTCTAAATCTCCTGCCTAAAAGTCAGACCCTGTAGTTGAAGTGGAGAGAAGGTCTGTGCAAAAAAGTGATCAGCAGAATATTAAAGTTCCAGGCAACTTGACTTCGGTGCTACTTAACAACTTACATCCCAGGGAGCAGTACGTGGTCCGAGCTAGAGTCAACACCAAGGCCCAGGGGGAGAGGAGAGGAGTGGAGTGAAGTCTCACTGCTTGGACCCTTAGTAGCTGTGATTTCTTGGACAATATTGGATGGCTATTCTATTTCTTCTATTACTATCCGTTACAAGGTTCAAGGCAAGAATGAAGACCACCCACGTTGATGTGAAGATAAAGAATGCCACCATACACTCTCAAGCACCA
【0157】
【0158】
具体的には、Expi293F細胞(2×106細胞/ml)をExpi293発現培地(A1435103、ThermoFisher)で培養し、hTie2 Ig3-Fn3をコーディングするプラスミドを、ExpiFectamine293形質感染キット(A14524、ThermoFisher)を用いてExpi293F細胞に形質感染した。細胞を振盪培養器(orbital shaker、125rpm)で8% CO2及び37℃で5日間培養した。遠心分離によって細胞を除去した後、分泌されたhTie2 Ig3-Fn3-Fc融合タンパク質を含む培養上清液を、HiTrap MabSelect SuRe親和度カラム(11003494、GE Healthcare)を備えたAKTA精製システム(GE Healthcare)で精製した。精製したhTie2 Ig3-Fn3-Fc融合タンパク質をアミコンウルトラ(Amicon Ultra)遠心フィルター(UFC8030、Millipore)を用いて濃縮し、バッファーをPBSに取り替えた。融合タンパク質のFcタグは、22℃で18時間にわたってトロンビン切断(27-0846-01、GE Healthcare)によって除去された。hTie2 Ig3-Fn3タンパク質は、HiTrap MabSelect SuRe親和度カラムで切断されたFcタグを除去することによって追加的に精製した。
【0159】
結晶化のためのヒトTie2を準備するために、hTie2 Fn2-3(残基541-735)をコーディングする遺伝子(次に記載)をpET-28a(69864、Novagen)にクローニングし、E.coli BL21(DE3)RIL(230240、Agilent Technologies)で発現させた。
【0160】
ヒトTie2 Fn2-3(541I-735S)
アミノ酸配列(SEQ ID NO:21)
IGLPPPRGLNLLPKSQTTLNLTWQPIFPSSEDDFYVEVERRSVQKSDQQNIKVPGNLTSVLLNNLHPREQYVVRARVNTKAQGEWSEDLTAWTLSDILPPQPENIKISNITHSSAVISWTILDGYSISSITIRYKVQGKNEDQHVDVKIKNATITQYQLKGLEPETAYQVDIFAENNIGSSNPAFSHELVTLPES
【0161】
DNA配列(SEQ ID NO:22)
ATCGGACTCCCTCCTCCAAGAGGTCTAAATCTCCTGCCTAAAAGTCAGACCACTCTAAATTTGACCTGGCAACCAATATTTCCAAGCTCGGAAGATGACTTTTATGTTGAAGTGGAGAAGAGGTCTGTAAAAAAGTGATCAGGAGATTGAGTGAGTGAGTGAGTGAGTGAGTGAGTGACAACACCAAGGCCCAGGGGGAATGGAGTGAAGATCTCACTGCTTGGACCCTTAGTGACATTCTTCCTCCTCAACCAGAAAACATCAAGATTTCCAACATTACACACTCCTCGGCTGTGATTTCTTGGACAATATTGGATGGCTATTCTATTTTTTTTTTCTCTATTACTATCCGTTACAAGGTTCAAGGCGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGATATCAGCTCAAGGGCCTAGAGCCTGAAACAGCATACCAGGTGGACATTTTTGCAGAGAACAACATAGGGTCAAGCAACCCAGCCTTTTCTCATGAACTGGTGACCCTCCCAGAATCT
【0162】
細胞は、50μg/mlのカナマイシンを添加したLB培地において37℃でOD600が0.4になるまで増殖させた。0.05mM IPTG(イソプロピルβ-d-1-チオガラクトピラノシド)でタンパク質の発現を誘導し、18℃で15時間にわたって培養した。遠心分離によって細胞を回収し、これを溶解緩衝液(20mM HEPES pH7.5、200mM NaCl)に再懸濁し、氷中の超音波処理によって溶解した。遠心分離(13,000×g、4℃で0.5時間)によって細胞破片を除去した後、上清液をNi-NTAアガロース親和性カラム(30210、QIAGEN)に適用した。カラム体積の5倍に該当する洗浄バッファー(20mM HEPES pH7.5、200mM NaCl、50mMイミダゾール)で洗浄した後、タンパク質を溶出バッファー(20mM HEPES、pH7.5、200mM NaCl 400mMイミダゾール)で溶出し、20mM HEPES pH7.5及び200mM NaClで平衡化したHiLoad16/600 Superdex 200pgカラム(28-9893-35、GE Healthcare)を用いてサイズ排除クロマトグラフィーで追加的に精製した。結晶化のためのキメラhTAAB Fabを準備するために、キメラhTAAB Fabに対する合成された重鎖及び軽鎖を細胞質分泌に対する変形pBAD発現ベクターにクローニングした。E.coli Top10F(Invitrogen)細胞をプラスミドpBAD-Fabで形質転換した後、100μg/mlのアンピシリンを添加したLB培地において37℃で増殖させた。OD600 1.0において0.2%のアラビノースでタンパク質の発現を誘導し、細胞を30℃で15時間にわたって増殖させた。遠心分離によって細胞を回収し、溶解緩衝液(20mM HEPES pH7.5、200mM NaCl)に再懸濁し、氷中の超音波処理によって溶解した。遠心分離(13,000×g、4℃で30分間)によって細胞破片を除去した後、可溶性キメラhTAAB Fabを含む上清液をNi-NTAアガロース親和性クロマトグラフィーカラム(QIAGEN)に適用し、カラムの5倍洗浄バッファー(20mM HEPES、pH7.5、200mM NaCl、50mMイミダゾール)で洗浄した。タンパク質を溶出バッファー(20mM HEPE pH7.5、200mM NaCl 400mMイミダゾール)で溶出し、20mM HEPES pH7.5及び200mM NaClで平衡化したHiLoad16/600 Superdex 200pgカラムを用いてサイズ排除クロマトグラフィーでさらに精製した。精製したタンパク質と抗体を分注し、これらを-80℃で保存した。
【0163】
1.2 B細胞ハイブリドーマの免疫化及び生成
【0164】
5週齢のBALB/cマウスは、精製されたhTie2-Ig3-Fn3(100μg/注射)を補助剤と混合した後、週2回6週間免疫化した。免疫化されたマウスの血清における抗Tie2抗体は、hTie2 ELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)によって評価された。抗体(1:5000希釈)が適切に増加すると(OD>1.0)、免疫化したマウスの脾臓からBリンパ球を分離し、これを(SP2/0)と融合させた。融合細胞をHAT(ヒポキサンチン(hypoxanthine)、アミノプテリン(aminopterin)及びチミジン(thymidine))培地で培養し、融合骨髄腫細胞とBリンパ球のみでハイブリドーマ細胞を選択して培養した。
【0165】
B細胞ハイブリドーマは、10%のウシ胎児血清(FBS)、ペニシリン(100U/ml)及びストレプトマイシン(100mg/ml)を添加したDMEM(Dulbecco’s Modified Eagle Medium)で維持された。B細胞ハイブリドーマで抗Tie2抗体を生産するために、細胞をPBSで洗浄し、血清未含有培地(SFM、12045-076、Gibco)で3日間培養した。
【0166】
生き残ったハイブリドーマ細胞を96ウェルプレートに分注し、培養上清液をhTie2 ELISAでテストした。限界希釈によるクローン選択のために、+信号を示すハイブリドーマプールを選択した。
【0167】
1.3 モノクロナール抗体をコーディングするDNAの配列決定
【0168】
ハイブリドーマ細胞(2×106細胞/ml)を10%のFBS含有DMEMで培養した後、RNeasyミニキット(Qiagen)を用いてトータルRNAを取得した。RNAの濃度を測定し、cDNAを逆転写(RT)によって合成した。重鎖及び軽鎖可変領域の遺伝子配列は、マウス(Mouse)Ig-プライマー(Primer)セット(Novagen)及び合成されたcDNAをテンプレートとして使用するPCRにより、94Cで5分間、その後、94Cで1分間、50Cで1分間、72Cで2分後、72Cで6分間4℃まで徐々に冷却する過程を35周期で行った。各反応で得られたPCR産物をTAベクターにクローニングし、DNA配列を決定し、各抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域をコーディングするヌクレオチド配列を生成した。
【0169】
1.4 Tie2活性化マウスモノクローナル抗体の生成
【0170】
Tie2のECDは、リガンド結合とは関係なく、膜近位Fn3を通じてダイマーを形成する。リガンド結合ドメイン(ligand-binding domains:LBD)に結合する多量体Angpt1は、Tie2の活性化及びダウンストリーム信号伝達のために、このような事前に形成されたTie2ダイマーをさらに高次元のオリゴマー又は「Tie2クラスター」に架橋する。しかし、LBDをターゲットとする単一抗体に対するTie2クラスタリングを誘導するには、事前に形成されたTie2ホモダイマーのLBDが非常に遠くにある(~260Å)。このような概念に基づいて、膜近位Tie2 Fnドメインに結合する抗Tie2抗体が多量体のAngpt1のようにTie2オリゴマー化及び活性化を誘導できると仮定した。
【0171】
mTie2ではなく、hTie2のIg3-Fn3をターゲットとするhTie2活性化マウスモノクローナル抗体であるhTAABを生成した。
【0172】
【0173】
実施例2.結晶構造を通じてV字状のTie2ダイマーに結合された2個のhTAAB Fab確認
【0174】
マウスhTAABの重鎖可変領域(VH)又は軽鎖可変領域(VL)を、ヒト重鎖定常領域(CH)又は軽鎖定常領域(CL)のそれぞれを発現するバックボーンベクターにクローニングし、Tie2活性化抗体hTAABのヒト-マウスキメラIgG1、IgG2及びIgG4抗体が生成された。マウスhTAABの重鎖可変領域をコーディングするDNA断片を配列「EcoRV-信号配列-VH-NheI」として合成した(Bioneer、Inc)。合成されたDNA断片をEcoRV及びNheIで切断し、pFUSE-CHIg-hG1(IgG1イソタイプ)及びpFUSE-CHIg-hG2(IgG2イソタイプ)ベクターにそれぞれクローニングした(InvivoGen)。ヒトIgG4キメラ抗体を製作するために、マウスhTAABの重鎖可変領域(VH)をコーディングするDNAを、クローニングのためにEcoRI及びNheI部位を含むプライマーを用いてPCRで増幅した。次に、PCR産物を、ヒトIgG4抗体の重鎖定常領域(CH)を発現する変形pOptiVEC-TOPOベクターにサブクローニングした。キメラ軽鎖発現ベクターは、EcoRI及びBsiWI制限部位を含むプライマーを使用し、マウスhTAABの軽鎖可変領域をコーディングするDNA断片をPCR増幅することによって構築された。
【0175】
ヒトIgG1重鎖定常領域(CH1~CH3)
アミノ酸配列(SEQ ID NO:23)
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVDVSHEDPEVKFVWDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0176】
DNA配列(SEQ ID NO:24)
GCTAGCACCAAGGGCCCCTCGGTCTTCCCCCTGGCACCCTCCTCCAAGAGCACCTCTGGGGGCACAGCGGCCCTGGGCTGCCTGGTCAAGGACTACTTCCCGAACCGGTGACGGTGTGTGAGAACTCAGGCGCCCTGCCGTGGTGTCCCTCCAGCAGCTTCCACGAAGACCCTGAGGTCAAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTACAACAGACACGTGTGTGTGTGTGCGCCCCCACCCCTCTCGCACCAGGACTGGCTGAATGGCAAGGACCGACCGACCGACCGACCACCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCGGGAGGAGATGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTATCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCGCGGAGAACAACTACAGAGCCGCGTGACCGACCGACCGCGCGCGCCCCCGCCGACCGACCGACCGACCGACCGACCGACCGACCGCCGACCGACCGCCGGAACGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCATGAGGCTCTGCACAACCACTACACGCAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCCGGGTAAA
【0177】
【0178】
ヒトIgG2重鎖定常領域(CH1~CH3)
アミノ酸配列(SEQ ID NO:25)
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVERKCCVECPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDVFNGKEYKCKVSNKGLPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0179】
DNA配列(SEQ ID NO:26)
GCTAGCACCAAGGGCCCATCGGTCTTCCCCCTGGCGCCCTGCTCCAGGAGCACCTCCGAGAGCACAGCGGCCCTGGGCTGCCTGGTCAAGGACTACTTCCCGAACCGGTGACGGTGTCGTGGAACTCAGGCGCTCTGCCCTAGCAACTTCGGCACCCAGACCTACACCTGCAACGTAGATCACAAGCCCAGCAACACCAAGGTGGACAAGACAGTTGAGCGCAAATGTTGTGTCGAGTGCCCACCGTGCCCAGCACCACCTGTGGCAGACCGTCAGTCTTCCTTCCCCCCCCACAACCGAGTGAGTGACCGACCGTCCAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCACGGGAGGAGCAGTTCAACAGCACGTTCCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTTGTGCACCAGGACTGGCTGAACGGAAGGAGTACAAGTGCAACCCCGACCACCCCCCACCCCACCCTGCCCCCATCCCGGGAGGAGATGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTACCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGAGAACAACTACAAGACCACGCCCCTCCCATGCTGACTGAGCGACCGACCGACCGACCGACCGACCGACCGACCGACCCATGCTCCGTGATGCATGAGGCTCTGCACAACCACTACACGCAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCCGGGTAAA
【0180】
ヒトIgG4重鎖定常領域(CH1~CH3)
アミノ酸配列(SEQ ID NO:27)
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVDVSQEDPEVQFVQFVWDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
【0181】
DNA配列(SEQ ID NO:28)
GCTAGCACCAAGGGCCCCTCGGTCTTCCCCCTGGCGCCCTGCTCCAGGAGCACCTCCGAGAGCACAGCCGCCCTGGGCTGCCTGGTCAAGGACTACTTCCCGAACCGGTGACGGTGTCGTGGAACTCAGGCGCCCTGACCGTGTCCAGCAGCTTGGGCACGAAGACCTACACCTGCAACGTAGATCACAAGCCCAGCAACACCAAGGTGGACAAGAGAGTTGAGTCCAAATATGGTCCCCCATGCCCATCATCCCCAGCACCTGAGTTCCTGGGGGACCATCAGTCTTCTCTGTTCCCCCCAACCACCAGAGCACTCTCATGATCGCGACCCCGAGGTCCAGTTCAACTGGTACGTGGATGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTTCAACAGCACGTGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAACGGAGAGGAGTACGACCCCGACCCCAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCAGGAGGAGATGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTACCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGGGAGAACACTACAAGACCACGCCTCCCGTGTGTGGACTCCGACGGCTCGCTGAGCGACCGATCGATTGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCATGAGGCTCTGCACAACCACTACACACAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCTGGGTAAA
【0182】
次に、PCR産物を、ヒトカッパ軽鎖の定常領域を発現する変形pcDNA3.3-TOPOベクタにサブクローニングした。
【0183】
ヒトカッパ軽鎖定常領域(GenBank accession number:AAA58989.1)
アミノ酸配列(SEQ ID NO:29)
TVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
DNA配列(SEQ ID NO:30)
ACGGTGGCTGCACCATCTGTCTTCATCTTCCCGCCATCTGATGAGCAGTTGAAATCTGGAACTGCCTCTGTTGTGTGCCTGCTGAATAACTTCTATCCCAGAGAGGCCAAAGTACAGTGGAAGGTGGATAACGCCCTCCAATCGGGTAACTCCCAGGAGAGTGTCACAGAGCAGGACAGCAAGGACAGCACCTACAGCCTCAGCAGCACCCTGACGCTGAGCAAAGCAGACTACGAGAAACACAAAGTCTACGCCTGCGAAGTCACCCATCAGGGCCTGAGCTCGCCCGTCACAAAGAGCTTCAACAGGGGAGAGTGC
【0184】
Expi293発現システム(ThermoFisher)を用いてキメラ抗体を製造した。Expi293F細胞を、ExpiFectamine 293形質感染キット(A14524、ThermoFisher)を用いて重鎖及び軽鎖発現ベクターで共同形質感染した後、形質感染した細胞をExpi293発現培地で5日間培養した。培養上清液を0.45μmのフィルターでろ過し、HiTrap MabSelect SuReカラム(11003494、GE Healthcare)を備えたAKTA精製装置(GE Healthcare)を用いて抗体を精製した。
【0185】
hTAAB結合のエピトープを確認するために、hTAAB結合のTie2の最小ドメインを確認した。hTie2 Ig3-Fn3を用いて抗体生成のためのマウスを免疫化したので、まず、hTie2のIg3-Fn3、Fn1-3又はFn2-3を含む3つの組換えタンパク質を製作した(
図1、Tie2構造を参照)。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を使用し、hTAAB重鎖可変領域とヒトγ1定常領域及び軽鎖可変領域とヒトκ定常領域の融合から構築された組換えキメラhTAAB Fabへの結合をテストした。キメラhTAAB Fabのみのクロマトグラフィープロフィールは、キメラhTAAB FabをhTie2 Ig3-Fn3、Fn1-3又はFn2-3と混合すると前方に移動する単一ピークを示した(
図2a)。また、キメラhTAAB FabとこのようなhTie2ドメインは共溶出した。このような結果は、hTie2 Fn2-3がhTAAB結合に十分であり、hTie2 Fn2-3とキメラhTAAB Fabが安定した複合体を形成できることを示す(
図2a、黄色)。
【0186】
【0187】
検索モデルとしてデュルバルマブ(Durvalumab)Fab(PDB:5X8M)とTie2 Fn2-3構造(PDB:5MYAチェーンB)を使用し、分子置換を通じて2.1Å解像度(表1)でhTie2 Fn2.3/キメラhTAAB Fab複合体の結晶構造を決定した。結晶学的非対称ユニットには、2回対称の異種四量体hTie2 Fn2.3/キメラhTAAB Fab複合体(2:2化学量論的)が含まれていた。
【0188】
【0189】
二つのキメラhTAAB Fabは、2倍軸に垂直な平面に対して約15°の勾配で各hTie2 Fn3ドメインの側面に結合した(
図3aの右側)。このような結晶構造は、hTAAB結合Fn3ドメインに対する2個の主要エピトープを明らかにし、これらは、重鎖結合の場合は濃いオレンジ色、軽鎖結合の場合は明るいオレンジ色で表示された(
図3b及びc、上端)。異種四量体hTie2 Fn2-3/キメラhTAAB Fab複合体のうちの二つのhTie2 Fn2-3モノマーは同一の全体構造を共有し、以前に報告されたTie2 Fn2-3(PDB:5MYB;赤色)及びFn1-3(PDB:5UTK;緑色)の結晶構造と類似することが分かり、Fn2とFn3との間の堅固な結合を示す(
図2b;Cα平均二乗偏差は、各hTie2 Fn2-3モノマー間で約1.050Å、5MYBで1.506Å、及び5UTKで1.999Åである)。注目すべきことは、hTie2 Fn2-3/キメラhTAAB Fab複合体におけるhTie2ダイマー間の構成とインターフェースも、以前の研究(5MYBと5UTKのダイマー2モデル)(
図2c、d)で発見されたものと一致した。
【0190】
このような結果は、hTAAB結合がhTie2ホモダイマーのコンフォメーション変化を起こさなかったことを示す。4個のキメラhTAAB Fabのドメイン(重鎖可変領域(VH)、重鎖定常ドメイン(CH)、軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域(CL)としては、βシートのペアからなる典型的なIgドメインフォールドを採用した。重鎖CDR(HCDR1、HCDR2及びHCDR3)及び軽鎖(LCDR1、LCDR2及びLCDR3)CDRは、hTie2 Fn3ドメインとの接触に関与した(
図3cの下端)。6個のCDR以外に、軽鎖フレームワーク領域(FR)残基R46、Y49、S53及びR66も、hTie2 Fn3ドメインと相互作用した(
図3d)。以上の内容をまとめると、結晶構造に関する発見は、二つのhTAAB FabがV字状のTie2ダイマーの側面、特にFn3ドメインに結合することを明らかにした。
【0191】
実施例3.Tie2 Fn3とhTAABの相互作用及び同型Fn3相互作用
【0192】
キメラhTAAB Fabは、約57%の重鎖接触(512.8Å
2;濃いオレンジ色)と43%の軽鎖接触(384.7Å2;薄いオレンジ色)からなる897.5Å
2の総埋没表面積を有する大きな相互作用インターフェースを介してhTie2 Fn3に結合する。(
図3c)。キメラhTAAB FabとhTie2 Fn3との間の結合インターフェースは、A、B、C領域の3つの領域に分けることができる(
図4a、b及び
図5)。
【0193】
A領域の相互作用は、主に、hTAAB重鎖(HCDR1及びHCDR2)とhTie2 Fn3ドメインとの間のイオン相互作用と水素結合によって媒介される。hTAAB HCDR1(S28、T30、S31及びW33)及びHCDR2(H52、D55及びE57)の各残基は、hTie2 Fn3 βA[E643、N644、I645(主鎖)、K646、I647(主鎖)]及びβG(H727)残基と多くの相互作用を形成する(
図4aの上端左側と下端左側及び
図4c)。
【0194】
B領域では、hTAABのHCDR3、LCDR1、LCDR2及びLCDR3は、疎水性相互作用によってhTie2 Fn3の広い表面をカバーし、総埋没表面積は413.5Aである。hTie2 Fn3の各残基I647、I650、A707、V730及びL732は、HCDR3残基L100及びY101、及びLCDRのI31、Y49、A50、Y91及びA92と疎水性コア相互作用のネットワークを形成する(
図4a、下端左側及び
図4d)。このような疎水性相互作用は、hTie2 Fn3残基(Q677、E705及びE728)とhTAAB軽鎖残基(S53、R66及びR46)との間の水素結合及び静電気相互作用をそれぞれ含む隣接したC領域の相互作用によって安定化される(
図4a、下端中央及び
図4c)。
【0195】
興味深いことに、C領域の相互作用に関与するhTAAB軽鎖残基は、CDRループではなく、FRのβ鎖(βC’のR46、βC’のS53及びβDのR66)にある。hTAAB相互作用に関与するほとんどのhTie2 Fn3残基は、多様な種類の間で高度に保存されているが(
図5a)、hTAAB結合インターフェースの中心にあるhTie2の疎水性バリン(V730)は、マウス及びラットで長く荷電された側鎖(アルギニン)に置換されており(
図3b及び
図5a)、hTAABがマウスTie2に結合できない理由を説明している(
図1eの右側)。しかし、hTAABの全てのエピトープは、ヒトとサルのTie2間に貯蔵されており、hTAABがサルのTie2と交差反応を示すことを示唆している(
図5a)。また、Tie2とTie1のFn2-3ドメイン、特に、hTAAB相互作用に関与する残基間の配列類似性が低いので、hTAABがTie1に結合する可能性は低い(
図5b)。
【0196】
以前のTie2アポ構造(5MYB及び5UTKのDimer2モデル)と一致するように、Fn3-Fn3’インターフェースは、同型Fn3βC’(D682~K690)の主鎖原子間の水素結合で構成されており、連続する逆平行βシートを形成する(
図4aの右側)。ダイマーインターフェースは、V685とV687が関与する疎水性相互作用及び相互静電相互作用、特に、D682-N691’、D682’-N691、Y697-Q683’、Y697’-Q683、K700-E703’及びK700’-E703(
図4a、右側下側)によってさらに安定化される。Fn3-Fn3’間の広い埋没インターフェース(704Å
2)、-4.7kcal/molの低い溶解化自由エネルギー収得(Pisaサーバ分析)及びhTAABの存在とは関係なく、Tie2ホモダイマーの一貫したV字状構成を通じて、同型膜近位Fn3ドメイン間の特定の相互作用がリガンド非依存性Tie2ホモダイマーの形成に寄与することを意味する。
【0197】
結晶構造及びFn2変異体を用いた機能分析によると、事前に形成されたTie2ダイマーの側面クラスターにFn2相互作用が必須的であると提示されてきた。驚くべきことに、構造にTie2 Fn2-3/hTAAB Fab複合体が含まれており、タンパク質結晶の空間群が二つの構造間で異なる場合にも、結晶パッキングで隣接したホモダイマーのFn2ドメイン間で同一の相互作用が観察された(
図12a、b)。しかし、結晶パッキンング格子でTie2 Fn3に結合されたFab及びFab
*は互いにほぼ平行であるので(
*表示は、Tie2 Fn2-3/hTAAB Fab複合体の対称メート内のドメイン又は残基を示すのに使用する。)、一つのIgG1のうちの2個のFabアーム間の可能な角度(115°-148°)から逸脱している。したがって、hTAAB IgG1が、事前に形成されたTie2ダイマーのFn2媒介側面クラスタリングに関与する可能性は低いが、このような類型のTie2クラスタリングは、さらに高い次元のAngpt1で発生し得る。
【0198】
実施例4.hTAAB IgG結合を通じてTie2ダイマーの多角形組立体を誘導する。
【0199】
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC;C2519A、Lonza)をEGM-2内皮増殖培地(CC-3162;Lonza)で維持し、加湿5% CO2培養器において37℃で培養した。Expi293F細胞(A14527、ThermoFisher)をExpi293発現培地(A1435102、ThermoFisher)で維持し、37℃及び8% CO2加湿振盪培養器で培養した。
【0200】
多量体Angpt1又はCOMP-Angpt1は、Tie2の高次クラスタリングを誘発する可能性があり、これは、血管安定化のために、ECでTie2とその下流信号を活性化するためのキーである。Tie2受容体の主要下位信号伝達タンパク質であるAktリン酸化のレベルを免疫ブロット(immunoblotting)技法で測定した。興味深いことに、hTAAB Fabのみならず、hTAAB IgG1も、一次培養HUVECでTie2とAktの濃度依存性活性化を誘導した(
図6a及び
図6b)。この結果は、hTAAB FabのTie2自体への結合がTie2のクラスター化及び活性化を誘導するのに十分であることを意味した。すなわち、hTAAB IgG1は、2価Fabアームを通じてTie2クラスタリングを促進することができる。しかし、異種四量体hTie2 Fn2-3/キメラhTAAB Fab複合体のうちのFab重鎖の2個のC末端間の距離は170Åより大きいことが分かり(
図3a)、同型Tie2ダイマーに結合する2個のFabは二つの異なるIgG分子から由来する。異種四量体hTie2 Fn2-3/キメラhTAAB Fab複合体の結晶構造とは異なり、SEC-多角度光散乱(MALS)分析を通じて、hTie2 Fn2-3及びhTie2 ECDが溶液中でモノマーであることが明らかになった。また、hTie2 Fn2-3又はhTie2 ECDに結合するhTAABは、オリゴマー化を誘導できなかった(
図6c)。このデータと以前の各報告は、溶液中の組換えTie2外部ドメインの多量体状態に対して矛盾していた。しかし、リガンドに依存しないTie2の二量体化は、全長Tie2によって賦課される空間的制約を通じて生理的条件下で細胞膜で発生し得る。このような二量体化は、結晶構造で示される同型のFn3-Fn3’相互作用と共に、細胞内のキナーゼドメインのうちの触媒ループと活性化ループとの間のYIA配列を通じて特に発生し得る。
【0201】
生理学的細胞膜でリガンド非依存性Tie2ダイマーを模倣するために、構成的Tie2ダイマーを人為的に生成した。同型Fn3-Fn3’相互作用に関与する2個の残基D682とN691をシステイン(D682C及びN691C)に突然変異させ、二硫化結合を導入した(
図6d、e)。その後、精製されたhTie2 Ig3-Fn3 D682C/N691CダイマーをhTAAB IgG1と1:1の比率で培養し、全長hTAAB IgG1が予め形成されたTie2ダイマーのクラスタリングをどのように誘導するのかを調査した。SECによって凝集体を除去した後、ネガティブ染色電子顕微鏡(EM)を使用し、生成された複合体(肩のピーク)の構造配列を調査した(
図6f及び
図7)。驚くべきことに、ネガティブ染色EM粒子の2D分類は、全長hTAAB IgG1がhTie2 Ig3-Fn3 D682C/N691Cダイマーの正方形、五角形及び六角形の高次組立体に交差結合することを示した(
図6g)。このような多角形組立体は、各頂点でIgG1のFcドメイン及びFabアームのうちの一つに結合し、2個のIgG1を連結する一つのTie2ダイマーを特徴とする。Ig3ドメインとFn1ドメインとの間のループの柔軟性により、Ig3ドメインがネガティブ染色EMの2D平均で拡散されたように見えたが、多角形の側面を横切るhTie2 Ig3-Fn3 D682C/N691Cダイマーの堅固なFn1-3ドメインは区別された。ネガティブ染色EMで観察された結果とhTie2 Fn2-3/キメラhTAAB Fab複合体の結晶構造に基づいて、五角形組立体の3Dモデル(5~5hTAAB IgG及びhTie2 Ig3-Fn3 D682C/N691Cダイマー)を生成することができる(
図6h)。
【0202】
実施例5.リガンド非依存性Tie2の二量体化は、hTAAB媒介Tie2のクラスタリング及び活性化に必須的である。
【0203】
細胞膜内のTie2/hTAAB多角形組立体の生物学的関連性及び重要性を評価した。Tie2ダイマー(D682C/N691C)を用いてFn3-Fn3’ダイマーインターフェース(
図8a)を破壊することによって、全長Tie2-GFP構造体と共にTie2モノマー(V685D/V687D/K700E)を作った。このような構造を使用し、Tie2を内生的に発現しないHEK293T細胞を一時的に形質感染させた。細胞で全長Tie2-GFP野生型(WT)と持続的ダイマー及びモノマーTie2変異体の適切な原形質膜の発現を確認した後(
図8b)、GFPタグTie2 WT及び変異体のクラスターをモニターした。ライブセルイメージングでWT Tie2及びTie2ダイマークラスターがhTAAB又はCOMP-Angpt1の添加後に細胞の表面に形成されたが、Tie2モノマーはクラスターを形成できなかった(
図8b)。次に、同一の条件でTie2とAktのリン酸化をモニタリングすることによって、HTAAB IgG1又はCOMP-Angpt1がTie2の活性化に及ぼす影響を調査した。Fn3-Fn3ダイマーインターフェースの破壊(Tie2モノマーの構築)により、hTAAB及びCOMP-Angpt1によって誘導されたTie2及びAktのリン酸化を除去したが、WT Tie2及びダイマーTie2は、二つのTie2アゴニストによって同様に活性化された(
図8c、d)。このような結果は、WT Tie2が原形質膜に同型ダイマーとして存在し、Fn3ドメイン間の分子間相互作用に起因するリガンド非依存性同型Tie2二量体化が、hTAABを介したTie2のクラスタリング及び活性化に必須的であることを示す。
【0204】
実施例6.ヒト化TAABは、HUVECでTie2とその下流信号を活性化する。
【0205】
6.1 ヒト化抗体の製造
【0206】
マウスhTAABのFv領域は、Tie2 Fn2-3/キメラhTAAB Fab複合体の構造及びIGHV1-46*01及びIGKV1-17*01複合体のモデル構造によってヒト化された。
【0207】
IMGT(International ImmunoGeneTics information system)のIMGT/DomainGapAlignオンラインツールを使用し、マウスhTAABFv配列をヒト生殖細胞系列遺伝子の配列と比較した(http://www.imgt.org)。マウスhTAABの重鎖及び軽鎖可変領域のそれぞれで最も高い配列相同性を示すIGHV1-46*01及びIGKV1-17*01をヒトフレームワーク(FR)供与体として選択した。IGHV1-46*01及びIGKV1-17*01のCDR(IMGTナンバリングで定義)をマウスhTAABで対応するものに取り替え、hzTAAB-H1及びhzTAAB-L1を生成した。VH-VLペアリング、CDRコンフォメーション及びTie2 Fn3に対する親和度を維持するために、重要な選択残基をhzTAAB-H1及びhzTAAB-L1に追加的に置換し、hzTAAB-H2及びhzTAAB-L2を生成した。得られたヒト化Fv遺伝子(hzTAAB-H1、hzTAAB-H2、hzTAAB-L1、hzTAAB-L2)を合成し(Bioneer)、哺乳動物細胞での発現のために最適化された。まず、ヒト免疫グロブリンカッパの軽鎖定常領域(GenBank accession number:AAA58989.1)及びヒト免疫グロブリンガンマ1重鎖定常領域(GenBank accession number:AWK57454.1)をpOptiVEC-TOPO及びpcDNA3.3-TOPOベクターにクローニングし、ここに合成されたヒト化軽鎖及び重鎖の可変領域(hzTAAB-H1、hzTAAB-H2、hzTAAB-L1又はhzTAAB-L2)を連続的にクローニングした。
【0208】
ヒトカッパ軽鎖定常領域(GenBank accession number:AAA58989.1)
アミノ酸配列(SEQ ID NO:31)
TVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0209】
DNA配列(SEQ ID NO:32)
ACGGTGGCTGCACCATCTGTCTTCATCTTCCCGCCATCTGATGAGCAGTTGAAATCTGGAACTGCCTCTGTTGTGTGCCTGCTGAATAACTTCTATCCCAGAGAGGCCAAAGTACAGTGGAAGGTGGATAACGCCCTCCAATCGGGTAACTCCCAGGAGAGTGTCACAGAGCAGGACAGCAAGGACAGCACCTACAGCCTCAGCAGCACCCTGACGCTGAGCAAAGCAGACTACGAGAAACACAAAGTCTACGCCTGCGAAGTCACCCATCAGGGCCTGAGCTCGCCCGTCACAAAGAGCTTCAACAGGGGAGAGTGC
【0210】
ヒトIgG1重鎖定常領域(CH1~CH3)(GenBank accession number:AWK57454.1)
アミノ酸配列(SEQ ID NO:33)
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0211】
DNA配列(SEQ ID NO:34)
GCTAGCACCAAGGGCCCATCGGTCTTCCCCCTGGCACCCTCCTCCAAGAGCACCTCTGGGGGCACAGCGGCCCTGGGCTGCCTGGTCAAGGACTACTTCCCCGAACCGGTGACGGTGTCGTGGAACTCAGGCGCCCTGACCAGCGGCGTGCACACCTTCCCGGCTGTCCTACAGTCCTCAGGACTCTACTCCCTCAGCAGCGTGGTGACCGTGCCCTCCAGCAGCTTGGGCACCCAGACCTACATCTGCAACGTGAATCACAAGCCCAGCAACACCAAGGTGGACAAGAAAGTTGAGCCCAAATCTTGTGACAAAACTCACACATGCCCACCGTGCCCAGCACCTGAACTCCTGGGGGGACCGTCAGTCTTCCTCTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACCCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACATGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCACGAAGACCCTGAGGTCAAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTACAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAATGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGCCCTCCCAGCCCCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAACCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCGGGAGGAGATGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTATCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTACAGCAAGCTCACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGCAGGGGAACGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCATGAGGCTCTGCACAACCACTACACGCAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCCGGGTAAA
【0212】
ヒト化軽鎖及び重鎖を含むプラスミドを、ExpiFectamine 293形質感染キット(A14524、ThermoFisher)を用いてExpi293F細胞に形質感染した。細胞を振盪培養器(orbital shaker、125rpm)において8% CO2及び37℃で5日間培養した。収得した培養上清液を遠心分離することによって細胞を除去し、PBSで平衡化したProAカラム(Amicogen)で親和度クロマトグラフィーによって抗体を分離した。結合された抗体を0.1Mのグリシン-HCl、pH2.7で溶出し、1M Tris-Cl、pH9.0で中和した。溶出された抗体は、PBSで平衡化されたSuperdex 200 Gain 10/300GLカラム(28-9909-44、GE Healthcare)を用いてサイズ排除クロマトグラフィーによってさらに精製された。抗体の純度は、還元及び非還元SDS-PAGEを用いて評価し、精製した抗体を分注した後、これを-80℃で貯蔵した。
【0213】
6.2 ヒト化Tie2活性化抗体の相同性モデリング
【0214】
SWISS-MODEL相同性モデリングは、Tie2 Fn2-3/キメラhTAAB Fab複合体の構造内のhTAAB Fvの構造をテンプレートとして使用し、hTAAB CDRをグラフティングしたヒト生殖細胞系列IGHV1-46*01及びIGKV1-17*01の配列を用いて行われた。最も高いQMEAN-Z(Qualitative Model Energy ANalysis-Z)点数(-0.37)を有する結果モデルは、追加構造ベースのヒト化のためにhTAABFv構造と整列した。
【0215】
【0216】
【0217】
hTAAB強力なTie2アゴニスト活性は、血管疾患の臨床応用で有望である。したがって、Tie2に結合して活性化できる能力を維持しながら、マウスの起源による免疫原性を最小化できるようにマウスhTAABをヒト化しようとした。FabドメインとFcドメインとの間のヒンジでの二硫化結合の長さ、配列及び個数が異なるので、IgGサブクラスのヒンジの柔軟性はやや変動的であってもよく、それぞれのサブクラスに対するFcドメインと関連するFab-Fab角度及びFab配向も変動的であってもよい。
【0218】
hTAABのFab-Fab角度とFab配向がTie2の多角形組立体の重要な決定要因になり得ることを考慮した上で、ヒンジの柔軟性がTie2の活性化に影響を及ぼすかどうかを調査した。このために、hTAABの可変領域を含むキメラIgG1、IgG2又はIgG4を製作し(
図9a)、そのTie2アゴニスト活性を親抗体マウスhTAABの活性と比較した。Tie2とAktのリン酸化は、IgGサブクラスのヒンジの柔軟性と相関していた(IgG1>IgG4>IgG2)。最も堅固な鎖を有するIgG2イソタイプは、最も低いTie2アゴニスト活性を示した(
図9b、c)。このような結果は、hTAABによる空間にうまく配置されたTie2クラスターの形成がTie2活性化に重要であることを示す。このような観察に基づいて、hTAABヒト化のためにIgG1形式を選択した。
【0219】
IMGT(International ImmunoGeneTics information system)(http://www.imgt.org)のIMGT/Domain Gap Alignツールを用いてCDRの境界を定義し、マウスhTAABの重鎖可変領域(66%)及び軽鎖可変領域(68%)において最も高い配列相同を示すので、ヒト生殖細胞系列遺伝子IGHV1-46
*01及びIGKV1-17
*01をヒトFR供与体として選択した(
図9d及び
図5c-d)。
【0220】
ヒトTie2に対するマウスhTAAB及びヒト化IgG1の結合動態は、認証等級CM5シリーズSセンサーチップ(BR100399、GE Healthcare)を備えたBiacore T200システムを用いた表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定された。3mM EDTA(ethylenediaminetetraacetic acid)及び0.05%(v/v)のP20製剤(HBS-EP+)を含むHEPESバッファー生理食塩水(0.01M HEPES、0.15M NaCl)を反応及びランニングバッファー(BR100669、GE Healthcare)として使用した。ヒトTie2 ECD(社内製造;ヒトTie2の残基23-735、GenBank accession number:AAH35514.2)は、pH5.5 10mMの酢酸塩を使用したアミンカップリングを通じてCM5センサーチップの表面に固定化された。その後、HBS-EP+バッファーで希釈したマウスhTAAB及びヒト化IgG1を7つの異なる濃度(0nM、2nM、4nM、8nM、16nM、32nM及び64nM)の抗原固定化センサーチップに300秒間30μl/分の流動速度で適用した。センサーチップに結合した分析対象物は、HBS-EP+ランニングバッファーで300秒間洗浄して解離した。結合(kon M-1s-1)及び解離(koff、s-1)定数は、両方とも300秒間隔で測定された。平衡解離定数(KD、M)は、オフ速度とオン速度の比率(koff/kon)として計算された。速度論的パラメータは、1:1結合モデルを用いてBiacore Insight Evaluation Softwareのグローバルフィッティング機能で決定された。
【0221】
マウスTie2に対するマウスhTAABとヒト化IgG1の結合動態は、Octetシステム(ForteBio)を使用したBLI(Biolayer Interferometry)によって測定された。分析は30℃で実施した。動態バッファー(0.01%の毒素を含まないBSA 0.002% Tween-20、PBS内の0.005%のNaN3)で10分間水和した後、マウスhTAAB(各10μg/ml)を抗マウスIgG Fcキャプチャー(AMC)バイオセンサー(ForteBio)にロードした。AbコテーィングされたセンサーをマウスTie2 Ig3-Fn3(残基349-737)の1600nMの溶液とインキュベートし、結合曲線を600秒間記録した。解離は、反応速度バッファーで600秒間測定した。
【0222】
選択されたヒト生殖細胞系列FR供与体のCDR部分をハイブリドーママウス抗体hTAABの対応するCDRに単純に取り替え、既存のCDRをグラフティングした。hTAAB HCDR2のコンフォメーションを維持するために、S59をヒト化抗体hTAAB重鎖のHCDR2に隣接したR59残基に取り替えた。ヒト化Tie2活性化抗体(hzTAAB)の重鎖及び軽鎖(hzTAAB-H1及びhzTAAB-L1)のCDRが移植される可変領域は、ヒトIgγ1重鎖の定常領域(GenBank accession number:AWK57454.1)を含むpOptiVEC-TOPOベクターに、及びヒトIgκ軽鎖の定常領域(GenBank accession number:AAA58989.1)を含むpcDNA3.3-TOPOベクターにそれぞれクローニングした。HEK293F細胞でhzTAAB-H1とhzTAAB-L1を共発現させ、タンパク質A親和度クロマトグラフィー及びSECによって全長IgG1として均一性に対する抗体を精製した後(
図10a、b)、SPRを用いてhTie2 ECDに対するhzTAAB-H1L1の結合動態を評価した。hTie2に結合するhzTAAB-H1L1は、親抗体hTAABに比べて遥かに低い親和力及び速い分解速度(k
on=2.5×10
5M
-1s
-1;k
off=5.6×10
-3s
-1;K
D=2.2×10
-8M)を示し(
図9f)、既存のCDRグラフティングは、hTie2に対するhTAABの結合親和力を維持するのに不十分であることを示す。
【0223】
hTAAB構造ベースのヒト化と関連して、結晶構造の親抗体hTAABのFv(可変断片)構造をテンプレートとして使用し、hzTAAB-H1とhzTAAB-L1の相同モデリングを行った。親抗体hTAAB Fv構造を製作されたhzTAAB-H1L1Fvモデルに置き、VH-VLペアリング、CDRのコンフォメーション、及びhTie2への結合親和性を維持するために重要なFR残基を確認した(
図9e)。hzTAAB-H1L1と親抗体hTAABのVH-VLインターフェース比較分析を通じて、LFR2のhTAAB軽鎖残基であるN34及びL36(hzTAAB-L1でのG34及びY36)はHCDR3のY101を安定化し、HFR4のW105で立体障害効果(steric hindrance)を減少させることが明らかになった。また、LFR3でのhTAAB軽鎖残基D55(hzTAAB-L1のQ55)は、LFR2でR46と相互作用することによってLCDR2ヘアピンループのコンフォメーションを維持するために重要である(
図9eのf参照)。LFR3でのhTAAB軽鎖残基R66(hzTAAB-L1のG66)も、hTie2のE705との電荷相互作用を通じてTie2に結合するのに重要である(
図9eのg参照)。このような根拠に基づいて、hzTAAB-L1の選択された残基を対応するマウスhTAAB残基(G34N、Y36L、Q55D及びG66R)に逆変異させることによってhzTAAB-L2を生成した(
図9d)。重鎖(hzTAAB-H2)に対して、hzTAAB-H1のHFR3でR72及びT74を親抗体hTAAB残基V72及びK74に変異させ、HCDR2のP53及びS54と相互作用することによってHCDR2のコンフォメーションを安定化させることができる(
図9eのhを参照)。
【0224】
hzTAAB-H1L1に続いて、HEK293F細胞での全長IgG1として、重鎖及び軽鎖の様々な組み合わせによって他の3個のhzTAAB(hzTAAB-H1L2、hzTAAB-H2L1及びhzTAAB-H2L2)を生産した(
図10a、b)。精製後、SPRを使用し、得られた抗体hTie2 ECDに対する結合キネティックを評価した。hzTAAB-H2L1の結合親和力(k
on=2.8×10
5M
-1s
-1;k
off=3.3×10
-3s
-1;K
D=1.1×10
-8M)は、hzTAAB-H1L1(k
on=2.5×10
5M
-1s
-1;k
off=5.6×10
-3s
-1;K
D=2.2×10
-8M)よりやや高いが、その解離速度は、親抗体hTAAB(k
on=1.4×10
5M
-1s
-1;k
off=6.0×10
-4s-1;K
D=4.2×10
-9M)より遥かに高かった(
図9i)。しかし、軽鎖の逆変異は、hzTAAB-H1L2(k
on=1.1×10
5M
-1s
-1;k
off=9.6×10
-4s
-1;K
D=8.5×10
-9M)及びhzTAAB H2L2(k
on=1.4×10
5M
-1s
-1;k
off=7.3×10
-4s
-1;K
D=5.2×10
-9M)のhTie2 ECDに対する親和度を大幅に改善した(
図9i)。得られたヒト化抗体(hzTAAB-H1L2及びhzTAAB-H2L2)の親和度は、親抗体hTAABの親和度に匹敵する程度であり、主に解離速度が大幅に減少した。また、Tie2結合親和力を、以前に報告された3H7H12G4というヒト化抗体3H7と比較すると、hzTAAB-H2L2は、3H7H12G4よりも4,700倍さらに高い親和力を示し、これは、構造ベースのhTAABヒト化過程での改善を提案している(
図9i)。親抗体hTAABと同様に、ヒト化抗体は、いずれもmTie2に結合しなかった(
図10c)。
【0225】
【0226】
その後、hzTAAB処理時のTie2とAktのリン酸化を調査し、これをhTAAB又は3H7H12G4処理後のリン酸化と比較した。Tie2結合親和力と一致するように、以前に開発された3H7H12G4は、hTAABに比べて遥かに低いTie2アゴニスト活性を示した(
図11a、b)。4個のhzTAABのうちのhzTAAB-H2L2は、HUVECでTie2とAktのリン酸化を最も強力に誘導した(
図11c、d)。これは、hTAABのTie2アゴニスト活性に匹敵する。また、hzTAAB-H2L2と3H7H12G4とを比較すると、hzTAAB-H2L2は、優れたTie2アゴニスト活性を示した(
図11e、
図11f)。
【0227】
したがって、hzTAAB-H2L2は、COM-Angpt1及び親抗体hTAABと類似する程度で、ECの生存、移動、管形成及び細胞間の接触部位へのTie2転位(translocation)及び核から細胞質ゾルへのFOXO1転位を強力に誘導する(
図11g-i)。以上の内容をまとめると、構造ベースのヒト化戦略は、親抗体hTAABの結合親和度及びTie2アゴニスト活性を成功的に保有させる。
【0228】
【産業上の利用可能性】
【0229】
本出願の発明者等は、Tie2 Fn(membrane proximal fibronectin type III)ドメインをターゲットとするヒトTie2アゴニスト抗体hTAAB及びそのヒト化抗体を開発した。Tie2/hTAAB複合体の構造は、Tie2クラスタリングの新しいモードを通じて作動する。hTAABがTie2/hTAAB複合体の構造を形成することによってTie2クラスタリングの新規モードで作動し、Tie2 Fn3ドメインに特異的に結合することによって、Tie2ホモダイマーが多角形組立体に連結されることを確認した。hTAABによって誘発されるTie2多角形組立体に対するFn3媒介Tie2ホモ二量体化の重要性を確認し、Tie2アゴニストがTie2のクラスター化及び活性化をどのように誘導するのかを理解することができる。また、hTAABの構造ベースのヒト化抗体を作製することによって、潜在的な臨床適用可能性を確認した。
【0230】
【0231】
以上では、本発明の内容の特定の部分を詳細に記述したが、当業界で通常の知識を有する者にとって、このような具体的な記述は単に好ましい実施様態に過ぎなく、これによって本発明の範囲が制限されないことは明らかであろう。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付の特許請求の範囲とそれらの等価物によって定義されると言えるだろう。
【配列表】
【国際調査報告】