(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】組換えハプトグロビン(Hp)ベータ鎖を作製するための発現系
(51)【国際特許分類】
C12N 15/63 20060101AFI20240416BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240416BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20240416BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20240416BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20240416BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20240416BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20240416BHJP
A61K 38/38 20060101ALI20240416BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240416BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
C12N15/63 Z ZNA
C12N5/10
C12P21/02 C
C07K14/47
C07K16/00
A61P7/00
A61K38/02
A61K38/38
A61K39/395 Y
A61P9/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568209
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(85)【翻訳文提出日】2023-12-13
(86)【国際出願番号】 EP2022062257
(87)【国際公開番号】W WO2022234070
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】501091604
【氏名又は名称】ツェー・エス・エル・ベーリング・アクチエンゲゼルシャフト
(71)【出願人】
【識別番号】515098691
【氏名又は名称】ウニヴェルズィテート チューリッヒ
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】レベッカ・ブッチャー
(72)【発明者】
【氏名】キャサンリン・オウザレク
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ジェンティネッタ
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク・シャー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ヒューゲルスホーファー
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA01
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA02
4C084BA03
4C084BA22
4C084BA41
4C084BA44
4C084DA36
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA361
4C084ZA362
4C084ZA511
4C084ZA512
4C085AA34
4C085BB42
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、組換えハプトグロビン(Hp)ベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片を作製するための発現系、組換えHp分子、ならびに無細胞ヘモグロビン(Hb)と関連する状態を処置および/または防止するためのその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物細胞内で組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片を作製するための発現系であって、
(a)N末端切断型プロハプトグロビン(proHp)をコードし、N末端切断型proHpが、(i)ハプトグロビンアルファ鎖の少なくとも14の連続C末端アミノ酸残基、および(ii)ハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片を含み、N末端切断型proHpが、ハプトグロビンアルファ鎖の少なくとも14の連続C末端アミノ酸残基と、ハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片との間に、内部酵素切断部位を含む、第1の核酸配列;ならびに
(b)N末端切断型proHpを、酵素切断部位において切断することが可能である酵素をコードする、第2の核酸配列
を含み;
第1の核酸配列および第2の核酸配列が、哺乳動物細胞へと導入され、その後、細胞内で、N末端切断型proHpおよび酵素が発現されると、酵素は、N末端切断型proHpを、内部酵素切断部位において切断し、これにより、ハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片を、N末端切断型proHpから放出することが可能である
発現系。
【請求項2】
proHpは、ヒトproHpである、請求項1に記載の発現系。
【請求項3】
ヒトproHpは、配列番号1との、少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の発現系。
【請求項4】
N末端切断型proHpは、配列番号1のアミノ酸残基148~406との、少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の発現系。
【請求項5】
N末端切断型proHpは、配列番号1のアミノ酸残基148~406との、少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の発現系。
【請求項6】
N末端切断型proHpは、配列番号1のアミノ酸残基148~406との、少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の発現系。
【請求項7】
N末端切断型proHpは、配列番号1のアミノ酸残基148~406から本質的になる、請求項2に記載の発現系。
【請求項8】
内部酵素切断部位は、フーリン切断部位、セリンプロテアーゼ切断部位、システインプロテアーゼ切断部位、アスパラギン酸プロテアーゼ切断部位、メタロプロテアーゼ切断部位、およびトレオニンプロテアーゼ切断部位からなる群から選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載の発現系。
【請求項9】
内部酵素切断部位は、セリンプロテアーゼ切断部位である、請求項8に記載の発現系。
【請求項10】
セリンプロテアーゼ切断部位は、C1r様タンパク質(C1rLP)切断部位またはその機能的変異体である、請求項9に記載の発現系。
【請求項11】
プロテアーゼは、C1rLPまたはその機能的変異体である、請求項9または請求項10に記載の発現系。
【請求項12】
C1rLPは、配列番号4との、少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の発現系。
【請求項13】
N末端切断型proHpは、Hpα鎖の14の連続C末端アミノ酸残基と、Hpβ鎖との間に、ジスルフィド結合を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の発現系。
【請求項14】
N末端切断型proHpは、ハプトグロビンアルファ鎖の少なくとも14の連続C末端アミノ酸残基の中のシステイン残基と、配列番号1のアミノ酸位置266に対応する位置におけるシステイン残基との間のジスルフィド結合を含む、請求項13に記載の発現系。
【請求項15】
N末端切断型proHpは、配列番号1のアミノ酸位置149に対応する位置におけるシステイン残基と、266に対応する位置におけるシステイン残基との間のジスルフィド結合を含む、請求項13に記載の発現系。
【請求項16】
第1の核酸配列によりコードされる、N末端切断型proHpは、さらなる機能的部分を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の発現系。
【請求項17】
さらなる機能的部分は、治療剤である、請求項16に記載の発現系。
【請求項18】
さらなる機能的部分は、アルブミン、免疫グロブリンのFcドメインまたはそのFcRn結合性断片、およびヘモペキシンまたはそのヘム結合性断片からなる群から選択される、請求項16または請求項17に記載の発現系。
【請求項19】
さらなる機能的部分は、ヘモペキシンまたはそのヘム結合性断片である、請求項18に記載の発現系。
【請求項20】
さらなる機能的部分は、ハプトグロビンアルファ鎖の少なくとも14の連続C末端アミノ酸残基のうちの1つまたはそれ以上へと連結されている、請求項16~19のいずれか1項に記載の発現系。
【請求項21】
さらなる機能的部分は、ハプトグロビンアルファ鎖の少なくとも14の連続C末端アミノ酸残基のN末端へと連結されている、請求項20に記載の発現系。
【請求項22】
さらなる機能的部分は、リンカーを介して、ハプトグロビンアルファ鎖の少なくとも14の連続C末端アミノ酸残基のN末端へと連結されている、請求項21に記載の発現系。
【請求項23】
リンカーは、ペプチドリンカーである、請求項22に記載の発現系。
【請求項24】
哺乳動物細胞内のN末端切断型proHpの発現は、第1の核酸配列に作動可能に連結された、第1の哺乳動物調節配列により駆動され、哺乳動物細胞内のセリンプロテアーゼの発現は、第2の核酸配列に作動可能に連結された、第2の哺乳動物調節配列により駆動される、請求項18~23のいずれか1項に記載の発現系。
【請求項25】
第1の哺乳動物調節配列は、第2の哺乳動物調節配列と異なる、請求項20に記載の発現系。
【請求項26】
哺乳動物細胞内のポリペプチドの発現は、第1の核酸配列に作動可能に連結された、第1の哺乳動物調節配列により駆動され、哺乳動物細胞内のセリンプロテアーゼの発現は、第2の核酸配列に作動可能に連結された、第2の哺乳動物調節配列により駆動される、請求項18~25のいずれか1項に記載の発現系。
【請求項27】
第1の哺乳動物調節配列は、第2の哺乳動物調節配列と異なる、請求項26に記載の発現系。
【請求項28】
哺乳動物細胞内で、組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片を作製するための発現ベクターであって、
(a)請求項1~27のいずれか1項に記載の、第1の核酸配列;および
(b)請求項1~27のいずれか1項に記載の、第2の核酸配列
を含む発現ベクター。
【請求項29】
第1の核酸配列と、第2の核酸配列とは、共通の哺乳動物調節配列に作動可能に連結されている、請求項28に記載の発現ベクター。
【請求項30】
第1の核酸配列は、第1の哺乳動物調節配列に作動可能に連結され、第2の核酸配列は、第2の哺乳動物調節配列に作動可能に連結され、第1の哺乳動物調節配列は、第2の哺乳動物調節配列と異なる、請求項28に記載の発現ベクター。
【請求項31】
請求項1~27のいずれか1項に記載の発現系、または請求項28~30のいずれか1項に記載の発現ベクターをトランスフェクトされるか、またはこれらにより形質導入された哺乳動物細胞。
【請求項32】
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、請求項31に記載の哺乳動物細胞。
【請求項33】
ヒト胎児腎細胞である、請求項31に記載の哺乳動物細胞。
【請求項34】
組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片を作製する方法であって、
(a)請求項1~27のいずれか1項に記載の発現系、または請求項28~30のいずれか1項に記載の発現ベクターを、哺乳動物細胞へと導入して、トランスフェクト哺乳動物細胞を作製する工程;
(b)トランスフェクト哺乳動物細胞による、組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片の作製を可能とするのに十分な条件下で、十分な時間にわたり、工程(a)のトランスフェクト哺乳動物細胞を培養する工程;および
(c)工程(b)で作製された、組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片を回収する工程
を含む方法。
【請求項35】
細胞は、CHO細胞である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
細胞は、ヒト胎児腎細胞である、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
(i)ハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片、および(ii)N末端切断型ハプトグロビンアルファ鎖を含み、N末端切断型ハプトグロビンアルファ鎖は、ハプトグロビンアルファ鎖の少なくとも14の連続C末端アミノ酸残基を含み、ハプトグロビンアルファ鎖の少なくとも14の連続C末端アミノ酸残基は、ハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片と非連続であり、N末端切断型ハプトグロビンアルファ鎖は、ハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片へと接合されている、組換えヘモグロビン結合性分子。
【請求項38】
N末端切断型ハプトグロビンアルファ鎖は、ハプトグロビンベータ鎖内またはそのヘモグロビン結合性断片内の、第1のシステイン残基と、ハプトグロビンアルファ鎖の少なくとも14の連続C末端アミノ酸残基の中の、第2のシステイン残基との間のジスルフィド結合により、ハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片へと接合されている、請求項37に記載の組換えヘモグロビン結合性分子。
【請求項39】
さらなる機能的部分をさらに含む、請求項37または請求項38に記載の組換えヘモグロビン結合性分子。
【請求項40】
さらなる機能的部分は、N末端切断型ハプトグロビンアルファ鎖へと接合されている、請求項39に記載の組換えヘモグロビン結合性分子。
【請求項41】
さらなる機能的部分は、ヘム結合性部分、免疫グロブリンのFcドメインまたはそのFcRn結合性断片、およびアルブミンからなる群から選択される、請求項39または請求項40に記載の組換えヘモグロビン結合性分子。
【請求項42】
さらなる機能的部分は、ヘム結合性部分である、請求項41に記載の組換えヘモグロビン結合性分子。
【請求項43】
ヘム結合性部分は、ヘモペキシンまたはそのヘム結合性断片である、請求項42に記載の組換えヘモグロビン結合性分子。
【請求項44】
ハプトグロビンベータ鎖は、配列番号1のアミノ酸残基162~406との、少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項37~43のいずれか1項に記載の組換えヘモグロビン結合性分子。
【請求項45】
請求項34~36のいずれか1項に記載の方法により作製される組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片。
【請求項46】
治療有効量の、請求項45に記載の組換えハプトグロビンベータ鎖もしくはそのヘモグロビン結合性断片、または請求項37~44のいずれか1項に記載の組換えヘモグロビン結合性分子と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項47】
対象における無細胞ヘモグロビン(Hb)と関連する状態を処置または防止する方法であって、それを必要とする対象へと、治療有効量の、請求項45に記載の組換えハプトグロビンベータ鎖もしくはそのヘモグロビン結合性断片、または請求項37~44のいずれか1項に記載の組換えヘモグロビン結合性分子を、ハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片が、無細胞Hbと複合体を形成し、これにより、無細胞Hbを中和することを可能とするのに十分な期間にわたり投与する工程を含む方法。
【請求項48】
対象における赤血球溶解および無細胞ヘモグロビン(Hb)の放出と関連する状態の処置または防止における使用のための医薬組成物であって、治療有効量の、請求項45に記載の組換えハプトグロビンベータ鎖もしくはそのヘモグロビン結合性断片、または請求項37~44のいずれか1項に記載の組換えヘモグロビン結合性分子と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項49】
対象における赤血球溶解および無細胞ヘモグロビン(Hb)の放出と関連する状態の処置または防止のための医薬の製造における、治療有効量の、請求項45に記載の組換えハプトグロビンベータ鎖もしくはそのヘモグロビン結合性断片、または請求項37~44のいずれか1項に記載の組換えヘモグロビン結合性分子の使用。
【請求項50】
対象における赤血球溶解および無細胞ヘモグロビン(Hb)の放出と関連する状態の処置または防止における使用のための、治療有効量の、請求項45に記載の組換えハプトグロビンベータ鎖もしくはそのヘモグロビン結合性断片、または請求項37~44のいずれか1項に記載の組換えヘモグロビン結合性分子。
【請求項51】
状態は、出血性脳卒中または異常ヘモグロビン症である、請求項47に記載の方法、請求項48に記載の使用のための組成物、または請求項49に記載の使用。
【請求項52】
状態は、異常ヘモグロビン症である、請求項51に記載の方法、使用のための組成物、または使用。
【請求項53】
異常ヘモグロビン症は、鎌状赤血球病である、請求項52に記載の方法、使用のための組成物、または使用。
【請求項54】
異常ヘモグロビン症は、α-サラセミアまたはβ-サラセミアである、請求項52に記載の方法、使用のための組成物、または使用。
【請求項55】
状態は、出血性脳卒中である、請求項51に記載の方法、使用のための組成物、または使用。
【請求項56】
出血性脳卒中は、自発性出血または外傷性出血である、請求項55に記載の方法、使用のための組成物、または使用。
【請求項57】
出血性脳卒中は、脳室内出血またはくも膜下出血である、請求項56に記載の方法、使用のための組成物、または使用。
【請求項58】
くも膜下出血は、動脈瘤性くも膜下出血である、請求項57に記載の方法、使用のための組成物、または使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、組換えハプトグロビン(Hp)ベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片を作製するための発現系、組換えHp分子、ならびに無細胞ヘモグロビン(Hb)レベルの異常と関連する状態を処置および/または防止するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
赤血球溶解は、ヘモグロビン(Hb)の、血漿への放出を引き起こす、赤血球(red blood cells)(赤血球(erythocytes))の破裂により特徴付けられ、酵素欠損、異常ヘモグロビン症(例えば、サラセミア)、遺伝性球状赤血球症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、およびSCA(spur cell anaemia)などの赤血球異常の他、脾腫、自己免疫障害(例えば、新生児の溶血性疾患)、遺伝子障害(例えば、鎌状赤血球病またはG6PD欠損症)、微小血管症性溶血、グラム陽性菌感染(例えば、連鎖球菌属、腸球菌属、およびブドウ球菌属)、寄生虫感染(例えば、プラスモディウム属)、毒素、外傷(例えば、火傷)、出血性脳卒中、敗血症、アテローム性動脈硬化、輸血(特に、大量輸血)などの外因性因子と関連する貧血性障害、ならびに人工心肺支援を使用する患者における貧血性障害の顕著な特徴である(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;および非特許文献5を参照されたい)。
【0003】
溶血と関連する状態を伴う患者において見られる有害作用は、大部分が、Hbおよびヘムなど、赤血球に由来する鉄および鉄含有化合物の放出に帰せられる。生理学的条件下で、無細胞ヘモグロビンは、典型的に、ハプトグロビン(Hp)などの可溶性タンパク質が結合しており(非特許文献6を参照されたい)、マクロファージおよび肝細胞へと輸送される。しかし、溶血の発生が、加速し、かつ/または病理学的性格を帯びる状況下では、Hpの緩衝能は圧倒される。結果として、Hbは、第2鉄含有ヘモグロビンへと、急速に酸化され、第2鉄含有ヘモグロビンは、遊離ヘム(プロトポルフィリンIXおよび鉄を含む;非特許文献7を参照されたい)を放出する。ヘムは、いくつかの生物学的過程において(例えば、ヘモグロビンおよびミオグロビンなどの必須タンパク質の部分として)、極めて重要な役割を果たすが、遊離ヘムは、毒性が高い。例えば、遊離ヘムは、酸化還元活性鉄の供給源であり、酸化還元活性鉄は、脂質膜(非特許文献8を参照されたい)、タンパク質、および核酸を損傷する、毒性の高い反応性酸素分子種(ROS)をもたらす。ヘム毒性は、脂質膜へと介入するその能力により、さらに悪化し、この場合、ヘム毒性は、膜構成要素の酸化を引き起こし、細胞の溶解および死を促進する(非特許文献9を参照されたい)。
【0004】
持続的な低レベルの細胞外Hb/ヘムへの曝露による進化圧力は、生理学的定常状態下、および軽度の溶血時における、遊離Hb/ヘムの有害作用をコントロールする代償機構をもたらした。これらのシステムは、Hbまたはヘムに結合する血漿タンパク質であって、HbスカベンジャーであるHp、ならびにヘモペキシン(Hpx)およびα1マイクログロビンなどのヘムスカベンジャータンパク質を含む血漿タンパク質の群の放出を含む(非特許文献10を参照されたい)。
【0005】
上記で言及された通り、血漿Hpは、無細胞Hbに対するスカベンジャーとして作用し、無細胞Hbに結合して、中和Hb:Hp複合体を形成する(非特許文献11を参照されたい)。しかし、Hbの量が、血漿Hpのスカベンジング能を超えると、特に、血管内および腎臓組織内における、Hbの局所的蓄積は、患者に有害な二次転帰をもたらしうる酸化ストレスを結果としてもたらす。Hpによりもたらされる保護は、Hbによる、少なくとも2つの毒性学的帰結を弱める。第1に、Hb:Hp複合体の大きな分子サイズは、無細胞Hbの溢出を防止する。この機構は、腎機能を保護し、遊離Hbの、血管壁へのアクセスを限定することにより、血管内の一酸化窒素(NO)ホメオスタシスを保存する(非特許文献12を参照されたい)。第2に、Hb:Hp複合体の形成は、ヘムの、そのグロビン鎖から、タンパク質および反応性脂質への転移を限定する形で、Hb分子の構造を安定化させる(非特許文献7を参照されたい)。これらの機構は、大部分が、溶血に続く、Hpの抗酸化機能の一因をなす。
【0006】
内因性Hpは、主に、無細胞Hb毒性に対して、著明な保護をもたらしうるが、より顕著な急性溶血時、または遷延性溶血時には、急速に消費され、枯渇させられる(非特許文献13を参照されたい)。したがって、Hpの置換は、in vitroおよび溶血についての動物モデルにおいて、前臨床概念実証を裏付ける治療モダリティーであると考えられている。前臨床研究は、プールされたヒト血漿画分から精製されたHpの治療的可能性について、大部分を査定した。しかし、この手法は、(1)異なるHp表現型(1-1、2-1、および2-2)の混合物は、置換療法が長期化すると、一部の患者において、中和抗体応答を誘発しうること;(2)表現型が異なると、効能も異なりうること;および(3)表現型の形態が、異なる薬物動態を裏付けうることなど、臨床的実践に関連する、いくつかの限界を有する。したがって、血漿由来Hpの潜在的限界を考慮すると、組換えタンパク質の作製は、血漿由来Hpについての前述の限界のうちの少なくとも一部を回避するか、または他の形で緩和する、妥当な治療戦略をもたらしうる。加えて、組換えタンパク質作製戦略は、機能性、バイオアベイラビリティー、および薬物動態が増強された治療剤をもたらしうる。しかし、前駆体分子(proHp)を発現させることによって組換えHpを作製しようとする近年の試みは、Hbへの結合の低減について言及している(非特許文献14を参照されたい)。よって、HpのHbスカベンジング特性が有益となる、無細胞Hbと関連する状態を処置および/または防止する代替的治療または改善された治療が、依然として必要とされつつある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Hoppeら(1998、Curr Opin Pediatr、10(1):49~52)
【非特許文献2】Roumenina(2016、Trends in Molecular Medicine、22(3):200~213)
【非特許文献3】Merle(2019、PNAS、116(13):6280~6285)
【非特許文献4】Larsen(2010、Science Translational Medicine:2(51):51~71)
【非特許文献5】Balla G(2019、Int J Mol Sci、20(15):3675)
【非特許文献6】C.B.F.Andersenら、2012、Nature、489(7416):456~459
【非特許文献7】Schaerら(2014、Frontiers in PHYSIOLOGY、5:1~13)
【非特許文献8】Deuelら(2015、Free Radical Biology and Medicine、89:931~943
【非特許文献9】Jeneyら(2002、Blood、100(3):879~87)
【非特許文献10】Schaerら、2013、Blood、121(8):1276~84
【非特許文献11】Shimら、1965、Nature、207:1264~1267
【非特許文献12】Azarovら、2008、Nitric Oxide、18(4):296~302
【非特許文献13】Borettiら、2014、Frontiers in Physiology、5:385
【非特許文献14】Heinderyckxら、1988~1989、Mol Biol Rep、13(4):225~32
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、少なくとも部分的に、機能的なハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片が、哺乳動物発現系内において、N末端切断型プロハプトグロビン(proHp)から作製されることの、本発明者らによる驚くべき発見に基づく。さらに、N末端切断型proHpは、Hpx、Fc、またはアルブミンなどの機能的部分を運び、これにより、治療特性が改善された構築物を作製するように修飾されると有利である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本明細書で開示される一態様では、哺乳動物細胞内で組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片を作製するための発現系であって、
(a)N末端切断型プロハプトグロビン(proHp)をコードし、N末端切断型proHpが、(i)ハプトグロビンアルファ鎖の少なくとも14の連続C末端アミノ酸残基、および(ii)ハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片を含み、N末端切断型proHpが、ハプトグロビンアルファ鎖の少なくとも14の連続C末端アミノ酸残基と、ハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片との間に、内部酵素切断部位を含む、第1の核酸配列;ならびに
(b)N末端切断型proHpを、酵素切断部位において切断することが可能である酵素をコードする、第2の核酸配列
を含み;
第1の核酸配列および第2の核酸配列が、哺乳動物細胞へと導入され、その後、細胞内で、N末端切断型proHpおよび酵素が発現されると、酵素は、N末端切断型proHpを、内部酵素切断部位において切断し、これにより、ハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片を、N末端切断型proHpから放出することが可能である
発現系が提供される。
【0010】
本明細書で開示される別の態様では、哺乳動物細胞内で、組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片を作製するための発現ベクターであって、
(a)本明細書に記載される、第1の核酸配列;および
(b)本明細書に記載される、第2の核酸配列
を含む発現ベクターが提供される。
【0011】
本開示はまた、本明細書で記載される発現系または発現ベクターを含む哺乳動物細胞へも拡張される。
【0012】
本明細書で開示される別の態様では、組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片を作製する方法であって、
(a)哺乳動物細胞へと、本明細書に記載される発現系を導入して、改変哺乳動物細胞を作製する工程;
(b)組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片の作製を可能とするのに十分な条件下で、十分な時間にわたり、工程(a)で作製された改変哺乳動物細胞を培養する工程;および
(c)工程(b)で作製された、組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片を回収する工程
を含む方法が提供される。
【0013】
本明細書で開示される別の態様では、本明細書で記載される方法により作製される組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片が提供される。
【0014】
本明細書で開示される別の態様では、(i)ハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片、および(ii)N末端切断型ハプトグロビンアルファ鎖を含み、N末端切断型ハプトグロビンアルファ鎖は、ハプトグロビンアルファ鎖の少なくとも14の連続C末端アミノ酸残基を含み、ハプトグロビンアルファ鎖の少なくとも14の連続C末端アミノ酸残基は、ハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片と非連続であり、N末端切断型ハプトグロビンアルファ鎖は、ハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片へと接合されている、組換えヘモグロビン結合性分子が提供される。
【0015】
本開示はまた、治療有効量の、本明細書で記載される組換えヘモグロビン結合性分子、または本明細書で記載される組換えハプトグロビンベータ鎖もしくはそのヘモグロビン結合性断片と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物へも拡張される。
【0016】
本明細書で開示される別の態様では、対象における無細胞ヘモグロビン(Hb)と関連する状態を処置または防止する方法であって、それを必要とする対象へと、治療有効量の、本明細書で記載される組換えヘモグロビン結合性分子、または本明細書で記載される組換えハプトグロビンベータ鎖もしくはそのヘモグロビン結合性断片を、ハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片が、無細胞Hbと複合体を形成し、これにより、無細胞Hbを中和することを可能とするのに十分な期間にわたり投与する工程を含む方法が提供される。ある実施形態では、状態は、赤血球溶解と関連する。
【0017】
本明細書ではまた、対象における無細胞ヘモグロビン(Hb)と関連する状態の処置または防止における使用のための医薬組成物であって、治療有効量の、本明細書で記載される組換えヘモグロビン結合性分子、または本明細書で記載される組換えハプトグロビンベータ鎖もしくはそのヘモグロビン結合性断片と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物も開示される。
【0018】
本明細書で開示される別の態様では、対象における無細胞ヘモグロビン(Hb)と関連する状態の処置または防止のための医薬の製造における、治療有効量の、本明細書で記載される組換えヘモグロビン結合性分子、または本明細書で記載される組換えハプトグロビンベータ鎖もしくはそのヘモグロビン結合性断片の使用が提供される。
【0019】
本開示はまた、対象における無細胞ヘモグロビン(Hb)と関連する状態の処置または防止における使用のための、治療有効量の、本明細書で記載される組換えヘモグロビン結合性分子、または本明細書で記載される組換えハプトグロビンベータ鎖もしくはそのヘモグロビン結合性断片へも拡張される。
【0020】
本明細書で引用される、任意の特許または特許出願を含む、全ての参考文献は、本発明の十分な理解を可能とするように、参照により本明細書に組み込まれる。しかしながら、本明細書における、任意の既往刊行物(またはこれに由来する情報)、または任意の公知の対象物に対する言及は、この既往刊行物(またはこれに由来する情報)、または公知の対象物が、本明細書が関する企図の分野における、共通の一般的知見の一部を形成することの承認もしくは容認、または任意の形態の示唆ではなく、示唆として理解されるべきではない。
【0021】
ここで、例示的なものであるに過ぎないことが意図される、以下の図面を参照しながら、本発明の実施形態が記載される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】ヒトハプトグロビンの例示的な例についての構造を示す図であり;(A)ヒトHp1およびヒトHp2についての概略表示である。Hp1のα鎖と、Hp2のα鎖とに共通であるアミノ酸配列を示し、緑色で強調する(配列番号14および17)。Hp2のα鎖内の、青色で影を付されたアミノ酸配列(Hp2配列の2行目[中])は、顕著に異なる分子表現型を決定する。アステリスクは、ジスルフィド結合の形成に要求されるシステイン残基を指定する。矢印は、C1rLP切断部位を指し示す。(B)1つのα鎖間ジスルフィド結合を伴う、Hp1-1ホモ二量体、および2つのα鎖間ジスルフィド結合を伴う、3つの変異体Hp2-2環状ホモ多量体のタンパク質四次構造である。
【
図2】ヘム-アルブミンの、ヘム-Hpxへの転移を追跡するためのスペクトルデコンボリューションを描示する図である。12.5μMのヘム-アルブミンおよびヒトHpxを含有する反応混合物について、時間経過(37℃で、3時間)にわたり、一連のUV-VISスペクトルを記録した。最初のスペクトル(t=0)を、オレンジ(明色)で強調し、最後のスペクトル(t=3時間後)を、青色(暗色)で強調する。
【
図3-1】(A)ヒトプロハプトグロビン2FSのアミノ酸配列を示す図である。シグナルペプチド(アミノ酸残基1~18;MSALGAVIALLLWGQLFA;配列番号15)を、黄色で強調する。Arg161(R)の後におけるC1rLP切断部位を、矢印で指し示す。アルファ(α)鎖は、青色で強調し(アミノ酸残基19~161)、ベータ(β)鎖は、明緑色で強調する(アミノ酸残基162~406)。鎖間ジスルフィド結合および鎖内ジスルフィド結合を形成するシステイン残基は、アミノ酸位置33、52、86、92、149、266、309、340、351、および381にある。CD163結合性部位は、アミノ酸残基318、320、322、および323により同定される。本明細書で記載される変異体のアミノ酸残基は、開始メチオニンとしての+1により番号付けされ、Hp2FSのアミノ酸配列に基づく。この関連で、アミノ酸Asp70、Lys71、Asn129、およびGlu130を強調する。(B)プロハプトグロビン2FSポリペプチド鎖の、アルファ鎖およびベータ鎖へプロセシングについての概略表示である。鎖間ジスルフィド結合および鎖内ジスルフィド結合(S-S)の位置を指し示す。(C)トランスフェクトFS293F細胞内で作製された、rHp1SおよびrHp2FSについての、還元型SDS-PAGEのクーマシー染色である。Hpα鎖は、12kDaまたは19kDaに現れ、Hpβ鎖は、47kDaに現れる。加えて、切断されなかったproHp1およびproHp2は、それらの予測サイズである、53kDaまたは57kDaに現れる。C1r-LP(+)の共発現により、全てのproHpは、そのサブユニットへと、効率的に切断される。C1r-LPは、68kDaに現れる。(D)C1r-LPの非存在下で切断されなかったproHp、および低分子Hpβ鎖の他、C1r-LPの共発現の存在下におけるHisタグ付けプロテアーゼを示す抗8Hisウェスタンブロットである。
【
図4-1】ハプトグロビンベータ断片の、Expi293F細胞内における発現および精製を示す図である。(A)各々が、C末端8×Hisタグを伴う、組換えベータ断片構築物を描示する概略図である。アミノ酸および鎖内ジスルフィド結合(S-S)の位置を指し示す。(B)C末端8×Hisタグを伴う、さらなる14アミノ酸を伴う、組換えベータ断片構築物を描示する概略図である。C1r-LPによる、プレタンパク質のプロセシング、アミノ酸、ならびに鎖間ジスルフィド結合および鎖内ジスルフィド結合(S-S)の位置を指し示す。(C)(左パネル)一過性にトランスフェクトされたExpi293F細胞内で作製された、組換えHpベータ断片構築物についての、還元型SDS-PAGEのクーマシー染色である。N末端伸長型ベータ断片である、Huハプトグロビン2FS(148~406)-8Hisをコードする構築物と、Hu-C1r-LP-FLAGをコードする構築物とによる共トランスフェクションを行って、新生ポリペプチドの切断を確認した。(中パネル)一過性にトランスフェクトされたExpi293F細胞内で作製された、組換えHpベータ断片構築物についての還元型SDS-PAGEに対する抗Hisウェスタンブロットである。(右パネル)一過性にトランスフェクトされたExpi293F細胞内で作製された、組換えHpベータ断片構築物についての還元型SDS-PAGEに対する抗Hpウェスタンブロットである。(D)(左パネル)ニッケルアフィニティー精製された、N末端伸長型Huハプトグロビン2FS(148~406)-8Hisについて、Superdex 200 Increase 5/150カラム、およびMT-PBS移動相を伴うAgilent 1260 Infinity HPLC上で実施された、解析用SECのクロマトグラムである。(右パネル)29.9kDaである、そのバックグラウンド分子量を上回って泳動する、ハプトグロビンのダブレットバンドである、特徴的な糖型を示す、4~12%のビス-トリスによるSDS-PAGEゲルである。
【
図5】ハプトグロビンベータ断片融合タンパク質の分子デザインを示す概略を提示する図である。(A)N末端融合パートナーまたはC末端融合パートナーのいずれかを伴う、組換えHpベータ断片構築物(アミノ酸162~406)を描示する概略図である。アミノ酸および鎖内ジスルフィド結合(S-S)の位置を指し示す。(B)N末端融合パートナーまたはC末端融合パートナーのいずれかを伴う、さらなるN末端の14アミノ酸を伴う、組換えHpベータ断片構築物(アミノ酸148~406)を描示する概略図である。C1r-LPによる、プレタンパク質のプロセシングである。アミノ酸、ならびに鎖間ジスルフィド結合および鎖内ジスルフィド結合(S-S)の位置を指し示す。
【
図6-1】Huヘモペキシン-Huハプトグロビンベータ融合タンパク質の、Expi293F細胞内における発現および精製を示す図である。(A)(i)N末端におけるヒトヘモペキシン(Hpx;アミノ酸1~462)に続き、Gly-Serリンカーを含有し、次いで、アミノ酸162~406をコードするヒトHpベータ断片);(ii)アミノ酸266における不対合システインが、アラニンへと突然変異させられた、アミノ酸162~406をコードするヒトHpベータ断片;(iii)C1r-LP切断部位と、鎖内ジスルフィド結合のために要求されるシステインとを保持する、アミノ酸148~406をコードするヒトHpベータ断片と融合された、組換えベータ断片構築物を描示する概略図である。アミノ酸および鎖間ジスルフィド結合(S-S)の位置を指し示す。(B)(左パネル)一過性にトランスフェクトされたExpi293F細胞内で作製された、組換えHpx-Hpベータ断片構築物についての、還元型SDS-PAGEのクーマシー染色である。N末端伸長型ベータ断片である、Huハプトグロビン2FS(148~406)をコードする構築物と、Hu-C1r-LP-FLAGをコードする構築物とによる共トランスフェクションを行って、新生ポリペプチドの切断を確認した。(中パネル)一過性にトランスフェクトされたExpi293F細胞内で作製された、組換えHpx-Hpベータ断片構築物についての還元型SDS-PAGEに対する抗Hisウェスタンブロットである。(右パネル)一過性にトランスフェクトされたExpi293F細胞内で作製された、組換えHpベータ断片構築物についての還元型SDS-PAGEに対する抗Hpウェスタンブロットである。(C)SECおよびSDS-PAGEによる、凝集物含量およびタンパク質プロセシングについての解析である。(i)ニッケルアフィニティー精製された、Huヘモペキシン-Huハプトグロビン2FS(162~406)-8Hisについて、Superdex 200 16/600カラム、およびMT-PBS移動相を伴うAKTAxpressシステム上で実施された、調製用SECのクロマトグラムである。矢印の位置は、予測サイズの融合タンパク質を含有するピークを示す。(ii)ニッケルアフィニティー精製された、N末端伸長型Huヘモペキシン-Huハプトグロビン2FS(148~406)-8His/Hu-C1r-LP-FLAGについて、Superdex 200 Increase 5/150カラム、およびMT-PBS移動相を伴う、Agilent 1260 Infinity HPLCシステム上で実施された、解析用SECのクロマトグラムである。矢印の位置は、予測サイズの融合タンパク質を含有するピークを示す。(iii)ニッケルアフィニティー精製された、Huヘモペキシン-Huハプトグロビン2FS(148~406)-8Hisの純度および適正なプロセシングを示す、還元型SDS-PAGEゲルおよび非還元型SDS-PAGEゲル(4~12%のビス-トリス)である。
【
図7-1】HSA-Huハプトグロビンベータ融合タンパク質の、Expi293F細胞内における発現および精製を示す図である。(A)N末端におけるヒト血清アルブミン(HSA)を含有し、(i)Gly-Serリンカーに続く、アミノ酸162~406をコードするヒトHpベータ断片);(ii)Gly-Serリンカーに続く、アミノ酸266における不対合システインが、アラニンへと突然変異させられた、アミノ酸162~406をコードするヒトHpベータ断片;(iii)C1r-LP切断部位と、鎖内ジスルフィド結合のために要求されるシステインとを保持する、アミノ酸148~406をコードするヒトHpベータ断片と融合された、組換えベータ断片構築物を描示する概略図である。アミノ酸および鎖間ジスルフィド結合(S-S)の位置を指し示す。(B)(左パネル)一過性にトランスフェクトされたExpi293F細胞内で作製された、組換えHSA-Hpベータ断片構築物についての、還元型SDS-PAGEのクーマシー染色である。N末端伸長型ベータ断片である、Huハプトグロビン2FS(148~406)をコードする構築物と、Hu-C1r-LP-FLAGをコードする構築物とによる共トランスフェクションを行って、新生ポリペプチドの切断を確認した。(中パネル)一過性にトランスフェクトされたExpi293F細胞内で作製された、組換えHSA-Hpベータ断片構築物についての還元型SDS-PAGEに対する抗HSAウェスタンブロットである。(右パネル)一過性にトランスフェクトされたExpi293F細胞内で作製された、組換えHpベータ断片構築物についての還元型SDS-PAGEに対する抗Hpウェスタンブロットである。(C)SECおよびSDS-PAGEによる、凝集物含量およびタンパク質プロセシングについての解析である。(i)HSAアフィニティー精製された、HSA-GS13-Huハプトグロビン(162~406)について、Superdex 200 16/600カラム、およびMT-PBS移動相を伴うAKTAxpressシステム上で実施された、調製用SECのクロマトグラムである。矢印の位置は、予測サイズの融合タンパク質を含有するピークを示す。(ii)HSAアフィニティー精製された、N末端伸長型HSA-Huハプトグロビン2FS(148~406)/Hu-C1r-LP-FLAGについて、Superdex 200 Increase 5/150カラム、およびMT-PBS移動相を伴う、Agilent 1260 Infinity HPLCシステム上で実施された、解析用SECのクロマトグラムである。矢印の位置は、予測サイズの融合タンパク質を含有するピークを示す。(iii)HSAアフィニティー精製された、HSA-Huハプトグロビン2FS(148~406)の純度および適正なプロセシングを示す、還元型SDS-PAGEゲルおよび非還元型SDS-PAGEゲル(4~12%のビス-トリス)である。
【
図8-1】Fc-Huハプトグロビンベータ融合タンパク質の、Expi293F細胞内における発現および精製を示す図である。(A)(i)アミノ酸162~406をコードするヒトHpベータ断片のN末端と融合された、ヒトIgG1Fc;(ii)マウスIgG2aに続く、C1r-LP切断部位と、鎖内ジスルフィド結合のために要求されるシステインとを保持する、アミノ酸148~406をコードするヒトHpベータ断片を含有する、組換えベータ断片構築物を描示する概略図である。アミノ酸および鎖間ジスルフィド結合(S-S)の位置を指し示す。(B)(左パネル)一過性にトランスフェクトされたExpi293F細胞内で作製された、組換えFc-Hpベータ断片構築物についての、還元型SDS-PAGEのクーマシー染色である。N末端伸長型ベータ断片である、Huハプトグロビン2FS(148~406)をコードする構築物と、Hu-C1r-LP-FLAGをコードする構築物とによる共トランスフェクションを行って、新生ポリペプチドの切断を確認した。(中パネル)一過性にトランスフェクトされたExpi293F細胞内で作製された、組換えFc-Hpベータ断片構築物についての還元型SDS-PAGEに対する抗Fcウェスタンブロットである。(右パネル)一過性にトランスフェクトされたExpi293F細胞内で作製された、組換えHpベータ断片構築物についての還元型SDS-PAGEに対する抗Hpウェスタンブロットである。(C)SECおよびSDS-PAGEによる、凝集物含量およびタンパク質プロセシングについての解析である。(i)プロテインAアフィニティー精製された、N末端伸長型muIgG2aFc-Huハプトグロビン2FS(148~406)/Hu-C1r-LP-FLAGについて、Superdex 200 Increase 5/150カラム、およびMT-PBS移動相を伴うAgilent 1260 Infinityシステム上で実施された、解析用SECのクロマトグラムである。矢印の位置は、予測サイズの融合タンパク質を含有するピークを示す。(ii)プロテインAアフィニティー精製された、muIgG2aFc-Huハプトグロビン2FS(148~406)の純度および適正なプロセシングを示す、還元型SDS-PAGEゲルおよび非還元型SDS-PAGEゲル(4~12%のビス-トリス)である。
【
図9-1】ヘモペキシン-MSA-Huハプトグロビンベータ融合タンパク質の、Expi293F細胞内における発現および精製を示す図である。(A)N末端におけるヒトヘモペキシン(Hpx;アミノ酸1~462)に続き、マウス血清アルブミン(msa)を含有し、次いで、i)アミノ酸162~406をコードするヒトHpベータ断片;ii)C1r-LP切断部位と、鎖内ジスルフィド結合のために要求されるシステインとを保持する、アミノ酸148~406をコードするヒトHpベータ断片と融合された、組換えHpベータ断片構築物を描示する概略図である。アミノ酸および鎖間ジスルフィド結合(S-S)の位置を指し示す。(B)(左パネル)一過性にトランスフェクトされたExpi293F細胞内で作製された、組換えHpx-msa-Hpベータ断片構築物についての、還元型SDS-PAGEのクーマシー染色である。N末端伸長型ベータ断片である、Huハプトグロビン2FS(148~406)をコードする構築物と、Hu-C1r-LP-FLAGをコードする構築物とによる共トランスフェクションを行って、新生ポリペプチドの切断を確認した。(中パネル)一過性にトランスフェクトされたExpi293F細胞内で作製された、組換えFc-Hpベータ断片構築物についての還元型SDS-PAGEに対する抗MSAウェスタンブロットである。(右パネル)一過性にトランスフェクトされたExpi293F細胞内で作製された、組換えHpベータ断片構築物についての還元型SDS-PAGEに対する抗Hpウェスタンブロットである。(C)SECおよびSDS-PAGEによる、凝集物含量およびタンパク質プロセシングについての解析である。(i)CaptureSelect HSAアフィニティー精製された、Huヘモペキシン-HSA-Huハプトグロビン2FS(162~406)について、Superdex 200 16/600カラム、およびMT-PBS移動相を伴うAKTAxpressシステム上で実施された、調製用SECのクロマトグラムである。矢印の位置は、予測サイズの融合タンパク質を含有するピークを示す。(ii)Mimetic Blueアフィニティー精製された、N末端伸長型Huヘモペキシン-MSA-Huハプトグロビン2FS(148~406)/Hu-C1r-LP-FLAGについて、Superdex 200 Increase 5/150カラム、およびMT-PBS移動相を伴う、Agilent 1260 Infinity HPLCシステム上で実施された、解析用SECのクロマトグラムである。矢印の位置は、予測サイズの融合タンパク質を含有するピークを示す。(iii)Mimetic Blueアフィニティー精製された、Huヘモペキシン-MSA-Huハプトグロビン2FS(148~406)の純度および適正なプロセシングを示す、還元型SDS-PAGEゲルおよび非還元型SDS-PAGEゲル(4~12%のビス-トリス)である。
【
図10-1】Huヘモペキシン-mIgG2aFc-Huハプトグロビン2FS(148~406)融合タンパク質の、Expi293F細胞内における発現および精製を示す図である。(A)N末端におけるヒトヘモペキシン(Hpx;アミノ酸1~462)に続き、Gly-Serリンカー、マウスIgG2aFcを含有し、次いで、C1r-LP切断部位と、鎖内ジスルフィド結合のために要求されるシステインとを保持する、アミノ酸148~406をコードするヒトHpベータ断片と融合された、組換えHpベータ断片構築物を描示する概略図である。アミノ酸および鎖間ジスルフィド結合(S-S)の位置を指し示す。(B)(左パネル)一過性にトランスフェクトされたExpi293F細胞内で作製された、組換えHuヘモペキシン-mIgG2aFc-Huハプトグロビン2FS(148~406)構築物についての、還元型SDS-PAGEのクーマシー染色である。構築物と、Hu-C1r-LP-FLAGをコードする構築物とによる共トランスフェクションを行って、新生ポリペプチドの切断を確認した。(中パネル)一過性にトランスフェクトされたExpi293F細胞内で作製された、組換えFc-Hpベータ断片構築物についての還元型SDS-PAGEに対する抗Fcウェスタンブロットである。(右パネル)一過性にトランスフェクトされたExpi293F細胞内で作製された、組換えHpベータ断片構築物についての還元型SDS-PAGEに対する抗Hpウェスタンブロットである。(C)SECおよびSDS-PAGEによる、凝集物含量およびタンパク質プロセシングについての解析である。(i)プロテインAアフィニティー精製された、N末端伸長型Huヘモペキシン-mIgG2aFc-Huハプトグロビン2FS(148~406)/Hu-C1r-LP-FLAGについて、Superdex 200 Increase 5/150カラム、およびMT-PBS移動相を伴うAgilent 1260 Infinityシステム上で実施された、解析用SECのクロマトグラムである。(ii)プロテインAアフィニティー精製された、Huヘモペキシン-mIgG2aFc-Huハプトグロビン2FS(148~406)の純度および適正なプロセシングを示す、還元型SDS-PAGEゲルおよび非還元型SDS-PAGEゲル(4~12%のビス-トリス)である。
【
図11-1】サイズ除外HPLCクロマトグラムに基づく、定性的Hb結合データを示す図である。青線は、Hb+rHp混合物(等モル濃度における)のシグナル(405nm)を表す。(A)Huハプトグロビン(148~406)-8His、HSA-Huハプトグロビン(148~406)-8His、およびmuIgG2aFc-Huハプトグロビン(148~406)-8Hisである。(B)Huヘモペキシン-Huハプトグロビン(148~406)-8His、Huヘモペキシン-msa-Huハプトグロビン2FS(148~406)-8His、およびHuヘモペキシン-mIgG2aFc-Huハプトグロビン2FS(148~406)-Hisである。ヘモペキシンは、陰性対照として使用した。赤線は、405nmにおいて記録された、Hb単独のシグナルを表す。全てのサイズ除外HPLCトレースは、赤色のHbピーククロマトグラムに適合するように、スケーリングを同一とした。
【
図12】ヘモグロビンに結合するその能力に関して解析された、各Hp変異体についての、代表的センサーグラムを示す図である。個々のHp変異体を、バイオセンサー表面上に固定化した。ベースラインを記録した後、7つの濃度にわたるヘモグロビンについて調べた(15、7.5、3.75、1.88、0.94、0.47、および0.32nM)。参照(アッセイ緩衝液参照)を減算した後、データを加工し、1:1結合モデルを使用してグローバルフィッティングした。当てはめの精度は、カイ2およびR2により記載した。Hbを、グレーの曲線で示し、当てはめられた曲線を、赤の実線として示す。(A)Huハプトグロビン1-1である。(B)Huハプトグロビン2FS(148~406)-8Hisである。(C)Huヘモペキシン-Huハプトグロビン2FS(148~406)-8Hisである。
【
図13】ヘモペキシンドメインを含有する、異なるハプトグロビン変異体のヘム結合能を示す図である。12.5μMのHb(Fe3+)および5μMのHpタンパク質(Huヘモペキシン-msa-Huハプトグロビン2FS(148~406)を除き、4μMを使用した)を含有する反応混合物について、経過時間にわたり(37℃で、5時間にわたり)、一連のUV-VISスペクトルを記録することにより、表示の異なるHp変異体の存在下で、ヘム-アルブミンからのヘムの放出を測定した。ヘム-アルブミン(青色の曲線)は、所与の任意の時点において、Hbに結合したヘムの濃度を示す。ヘモペキシン:ヘム(赤色の曲線)は、所与の任意の時点において、ヘム-アルブミンから転移したヘムの濃度を示す。
【
図14】スカベンジャー受容体であるCD163に結合するその能力に関して解析された、各Hp変異体についての、代表的センサーグラムを示す図である。ヒトCD163受容体を、バイオセンサー表面上に固定化した。ベースラインを記録した後、6つの濃度にわたる複合体について調べた。参照(アッセイ緩衝液参照)を減算した後、データを加工し、1:1結合モデルを使用してグローバルフィッティングした。当てはめの精度は、カイ2およびR2により記載した。Hbを、グレーの曲線で示し、当てはめられた曲線を、赤の実線として示す。加えて、2つの組換え変異体についての定常状態解析により、KDを決定した。(A)Huハプトグロビン1-1:Hb複合体(50~1.56nM)である。(B)Huハプトグロビン2FS(148~406):Hb複合体(2000~31.25nM)である。(C)Huヘモペキシン-Huハプトグロビン2FS(148~406):Hb複合体(1500~234.4nM)である。
【
図15】異なるHp変異体の添加の後における、NO依存性血管拡張のレスキューを比較して、血管機能を示す図である。NOに対する血管拡張性応答は、Hbの添加の後で測定し、その後における、Hbスカベンジャーの添加の後で、再度測定した。Hp変異体(血漿Hp1-1、recHp1-1、recHpCD163low、miniHp、およびSuperScavenger)の効果を、基準である、Hp2-2(青色;各ウィンドウの左側のデータセット)と比較した。
【
図16-1】異なるHp変異体の保護効果を比較して、脂質過酸化を示す図である。(A)37℃で4時間にわたるインキュベーションの後における蛍光発光を使用して、等モル濃度のHp変異体と、rLPとを伴うHbの混合物中における、MDAの発生を測定した。スカベンジャータンパク質を伴わないHbを、陽性対照として使用し、rLP単独を、陰性対照として使用した。(B)異なるHbスカベンジャー(10μM)およびrLP(2g/L)を、ある範囲にわたる濃度(0~100μM)のHbと共に、37℃で、4時間にわたりインキュベートした。脂質過酸化は、TBARSアッセイを使用して定量した。
【
図17-1】(A)血漿由来ヘム:Hx;ならびに(B)ヘム:Hx-Hp複合体および複合体化していない(挿入図)スカベンジャータンパク質の、ビオチニル化LRP1クラスターIIIに対する結合アフィニティーを示す図である。グレーの曲線は、流体相にある、ある範囲のリガンド濃度(全ての濃度は、2000~31.25nMである)についてのセンサーグラムを表す。当てはめは、赤色の曲線により指し示される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
そうでないことが規定されない限りにおいて、本明細書で使用される、全ての技術用語および学術用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解される意味と同じ意味を有する。
【0024】
そうでないことが指定されない限りにおいて、本明細書で使用される不定冠詞である「ある(a)」、「ある(an)」、および「その」は、複数形の側面を含む。したがって、例えば、「ある薬剤」への言及は、単一の薬剤、ならびに2つまたはそれ以上の薬剤を含む;「ある組成物」への言及は、単一の組成物、ならびに2つまたはそれ以上の組成物を含む;などである。
【0025】
本明細書で使用される、「約」という用語は、列挙された値の±10%を意味する。
【0026】
文脈が、そうでないことを要求しない限りにおいて、本明細書および後続の特許請求の範囲を通して、「~を含む(comprise)」、ならびに「~を含む(comprises)」および「~を含むこと」などの変化形は、言明された整数もしくは工程、または整数もしくは工程の群の包含を含意するが、他の任意の整数もしくは工程、または整数もしくは工程の群の除外は含意しないように理解されるものとする。
【0027】
「~からなること」という用語は、その整数もしくは工程、または整数もしくは工程の群を含み、かつ、これらに限定され、他の任意の整数もしくは工程、または整数もしくは工程の群を除外することである、「~だけからなること」を意味する。
【0028】
「~から本質的になること」という用語は、言明された整数もしくは工程、または整数もしくは工程の群の包含を含意するが、本発明の作業を実質的に変更しないか、または本発明の作業に寄与する、他の整数もしくは工程、または整数もしくは工程の群もまた含まれる。
【0029】
逆の指定がない場合、本明細書を通して、含量「%」に対してなされる言及は、w/w(重量/重量)%を意味すると理解されるものとする。例えば、全タンパク質に対して、少なくとも80%ハプトグロビン含量を含む溶液は、全タンパク質に対する、少なくとも80w/w%のハプトグロビン含量を含む組成物を意味すると理解されるものとする。
【0030】
本明細書の他の箇所で言及される通り、本発明は、少なくとも部分的に、機能的なハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片が、哺乳動物発現系内において、N末端切断型プロハプトグロビン(proHp)から作製されることの、本発明者らによる驚くべき発見に基づく。N末端切断型proHpは、Hpx、Fc、およびアルブミンなどの機能的部分を運び、これにより、治療特性が改善された構築物を作製するように改変されると有利でありうる。さらに、本発明者らは、予測外に、本明細書で記載される発現系が、機能的ハプトグロビンβ鎖の、安定的なトランスフェクションおよび発現を結果としてもたらし、これにより、一過性のトランスフェクションを達成するのがせいぜいであり、一般に、機能的Hpβ鎖を発現することができない既存の発現系と識別されるので有利であることを見出した。本明細書で記載される発現系はまた、融合パートナーが、β鎖断片に対してN末端に配置され、ジスルフィド結合を介してシステイン間残基へと好都合なことに連結されている、融合タンパク質またはコンジュゲートを含む、融合タンパク質またはコンジュゲートの作出も可能として有利である。
【0031】
したがって、本明細書で開示される一態様では、哺乳動物細胞内で組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片を作製するための発現系であって、
(a)N末端切断型プロハプトグロビン(proHp)をコードし、N末端切断型proHpが、(i)ハプトグロビンアルファ鎖の少なくとも14の連続C末端アミノ酸残基、および(ii)ハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片を含み、N末端切断型proHpが、ハプトグロビンアルファ鎖の少なくとも14の連続C末端アミノ酸残基と、ハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片との間に、内部酵素切断部位を含む、第1の核酸配列;ならびに
(b)N末端切断型proHpを、酵素切断部位において切断することが可能である酵素をコードする、第2の核酸配列
を含み;
第1の核酸配列および第2の核酸配列が、哺乳動物細胞へと導入され、その後、細胞内で、N末端切断型proHpおよび酵素が発現されると、酵素は、N末端切断型proHpを、内部酵素切断部位において切断し、これにより、ハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片を、N末端切断型proHpから放出することが可能である
発現系が提供される。
【0032】
N末端切断型プロハプトグロビン
ハプトグロビン(Hp)は、主に、肝臓内で合成される、豊富な血漿タンパク質である。Hpは、溶血時に赤血球から放出されることがある遊離ヘモグロビン(Hb)に対する、高アフィニティーのスカベンジャーである。2つのタンパク質の間で形成される複合体(Hb:Hp複合体)は、腎臓内、血管内、および遊離Hbにアクセス可能な周囲組織内における遊離Hbの毒性影響を弱める、多数の保護活性をもたらす。Hpによりもたらされる保護は、Hbによる、2つの主な毒性学的帰結を弱める。第1に、Hb:Hp複合体の大きな分子サイズは、遊離Hbの溢出を防止する。この機構は、腎機能を保護し、遊離Hbの、血管壁へのアクセスを限定することにより、血管内の一酸化窒素(NO)ホメオスタシスを保存する。第2に、Hb:Hp複合体の形成は、ヘムの、そのグロビン鎖から、タンパク質および反応性脂質への転移を限定する形で、Hb分子の構造を安定化させる。これらの機構は、大部分が、溶血時における、Hpの抗酸化機能の一因をなす。Hpはまた、T細胞の免疫応答、細胞増殖の調節、血管新生、および動脈の再構築においても役割を果たすことが示されている。
【0033】
Hpは、プロテアーゼであるC1rLPにより、タンパク質分解的にプロセシングされる単一のポリペプチド前駆体である、プロハプトグロビン(proHp)として合成される(KrzysztofおよびFries、PNAS、2004、101(40):14390~14395)。プロハプトグロビン(proHp)は、Hp mRNAの一次翻訳産物である。小胞体内で、proHpは、ジスルフィド結合の形成を介して二量体化し、C1r-LP(protease complement C1r subcomponent-like protein)により、タンパク質分解的に切断される。結果として、Hpは、大半の哺乳動物において、2つのα鎖の間における、単一のジスルフィド結合(S-S)により連結された、2つのα軽鎖および2つのβ重鎖からなる、150kDaの二量体タンパク質として存在する。大半の哺乳動物のHpタンパク質は、(αβ)2構造(ヒトでは、Hp1-1と称される)をもたらす2つのα鎖の間の界面を介して一体に連結された、2つの(αβ)単量体から構成される。ヒトでは、Hp1およびHp2と名指される、Hp遺伝子の2つの対立遺伝子の存在に起因して、3つのHp表現型が存在する。Hp1対立遺伝子の遺伝子内重複により発生する、Hp2対立遺伝子は、わずかに大きなα鎖をコードするが、他の点では、Hp1対立遺伝子と同一である。α鎖を接続するシステイン残基は、コードされるHp2タンパク質内で重複しているため、表現型である、Hp2-1と、Hp2-2とは、あるスペクトルにわたる、多様なHp(αβ)多量体を提示する。ハプトグロビン-ヘモグロビンは、各々が、ヘモグロビンのαβ二量体と相互作用する、ハプトグロビン鎖の二量体からなる。各末端において、ハプトグロビンのβ鎖は、ヘモグロビン二量体と、安定的な複合体を形成する。クリアランス受容体であるCD163との相互作用もまた、β鎖により媒介される。
【0034】
Hpの主要な機能(すなわち、HbおよびCD163に結合する機能)は、配列番号1において示される、ヒトproHpのアミノ酸残基162~406に対応するアミノ酸残基によりコードされるβ鎖により媒介される。しかし、これらのアミノ酸配列をコードする構築物の、哺乳動物細胞内における組換え発現は、タンパク質産物の発現を結果としてもたらさない。ここで、驚くべきことに、proHpのタンパク質分解性切断部位に対してN末端側において、少なくともさらなる14アミノ酸を導入し、この構築物を、セリンプロテアーゼと共に共発現させることにより、HbおよびCD163への結合を保持するHpβ鎖のロバストな発現が達成されることが、本発明者らにより見出された。本発明者らはまた、驚くべきことに、N末端切断型proHpが、N末端切断型proHpのβ鎖構成要素を、Fc、アルブミン、またはヘモペキシン(Hpx)などの機能的部分とコンジュゲートまたは連結することにより改変され、それでもなお、改変構築物を、比較的高収量でもたらすことも見出し、また、機能的部分が、それらのそれぞれの標的である、Hbおよびヘム(かつ、Hpx融合タンパク質の場合、CD163またはCD91)に対する結合アフィニティーを保持することにも言及した。
【0035】
「N末端切断型proHp」という用語は、切断されなければ、完全なHpα鎖の一部を形成する、切断型N末端により、天然(自然に存在する)proHp分子の長さより短いアミノ酸配列を有する、proHpの断片を意味するように理解されるものとする。proHpは、N末端切断型proHpが、少なくともHpα鎖の14の連続C末端アミノ酸残基を保持する限りにおいて、そのN末端において、任意の数のアミノ酸残基だけ切断される場合がある。ある実施形態では、発現されるN末端切断型proHpは、Hpα鎖の14の連続C末端アミノ酸残基と、Hpβ鎖との間に、ジスルフィド結合を含む。ある実施形態では、N末端切断型proHpは、ハプトグロビンアルファ鎖の少なくとも14の連続C末端アミノ酸残基の中のシステイン残基と、配列番号1のアミノ酸位置266に対応する位置におけるシステイン残基との間のジスルフィド結合を含む。ある実施形態では、N末端切断型proHpは、配列番号1において示される、ヒトproHpのアミノ酸位置149および266に対応する位置において、システイン残基を含む。
【0036】
本開示は、特異的アミノ酸配列を有するN末端切断型proHp、または特異的核酸配列によりコードされるN末端切断型proHpに限定されず、N末端切断型proHpが、
(i)ハプトグロビンアルファ鎖の少なくとも14の連続C末端アミノ酸残基;
(ii)ハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片;および
(iii)ハプトグロビンアルファ鎖の少なくとも14の連続C末端アミノ酸残基と、ハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片との間に、内部酵素切断部位
を、適切に含む限りにおいて、任意の適切なN末端切断型proHpが、本発明に従い使用されることが理解されるものとする。
【0037】
当業者はまた、Hpα鎖の、適切なアミノ酸配列についても熟知しており、それについての例示的な例は、配列番号1のアミノ酸残基19~160、配列番号2のアミノ酸残基19~100、および配列番号3のアミノ酸残基19~101を含む。ある実施形態では、ハプトグロビンアルファ鎖の少なくとも14の連続C末端アミノ酸残基は、配列番号1のアミノ酸残基148~161(すなわち、VCGKPKNPANPVQR;配列番号8)に対する、少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。
【0038】
当業者はまた、HbおよびCD163に結合することが可能なHpβ鎖の領域から構成される、Hpβ鎖の、適切なアミノ酸配列についても熟知しており、それについての例示的な例は、配列番号1のアミノ酸残基162~406(ヒトproHpアイソフォーム1;proHp1)、配列番号2のアミノ酸残基102~340(ヒトproHpアイソフォーム2;proHp2)、および配列番号3のアミノ酸残基103~343(ヒトproHpアイソフォーム3;proHp3)を含む。ある実施形態では、Hpβ鎖は、配列番号1のアミノ酸残基162~406に対する、少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。ある実施形態では、Hpβ鎖は、配列番号2のアミノ酸残基102~340に対する、少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。ある実施形態では、Hpβ鎖は、配列番号3のアミノ酸残基103~343に対する、少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。ある実施形態では、Hpβ鎖は、配列番号1のアミノ酸残基162~406に対する、少なくとも85%(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。ある実施形態では、Hpβ鎖は、配列番号2のアミノ酸残基102~340に対する、少なくとも85%(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。ある実施形態では、Hpβ鎖は、配列番号3のアミノ酸残基103~343に対する、少なくとも85%(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。ある実施形態では、Hpβ鎖は、配列番号1のアミノ酸残基162~406に対する、少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。ある実施形態では、Hpβ鎖は、配列番号2のアミノ酸残基102~340に対する、少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。ある実施形態では、Hpβ鎖は、配列番号3のアミノ酸残基103~343に対する、少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。
【0039】
ある実施形態では、Hpβ鎖は、配列番号1のアミノ酸残基162~406に対する、少なくとも95%(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。ある実施形態では、Hpβ鎖は、配列番号2のアミノ酸残基102~340に対する、少なくとも95%(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。ある実施形態では、Hpβ鎖は、配列番号3のアミノ酸残基103~343に対する、少なくとも95%(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。
【0040】
当業者により、一部の場合に、選択される、N末端切断型proHpの配列は、意図される治療的使用を含む、意図される使用に依存することもまた理解されるであろう。例を目的として述べると、組換えHpが、ヒト対象における状態の処置および/または防止のために使用される場合、N末端切断型proHpのアミノ酸配列は、組換えHpの、対象への投与が、ヒトproHpに由来するのでなければin vivoにおける、その効能を低減する、組換えHpに対する抗体を生成させる可能性を最小化することを含む理由で、ヒトproHpに由来すると有利であろう。同様に、組換えHpが、獣医科適用のためなど、非ヒト対象における状態の処置および/または防止のために使用される場合、N末端切断型proHpのアミノ酸配列は、非ヒト対象に天然である、proHpアイソフォームに由来すると有利であろう。当業者は、適切なproHpの非ヒトアイソフォームについて熟知しており、それについての例示的な例は、イヌ科動物、ネコ科動物、ウマ科動物、ウシ科動物、ヒツジ科動物、および霊長動物のproHpを含む。霊長動物proHpの例示的な例は、GenBank受託番号:AFH32200およびJAB04820において記載されている。ある実施形態では、N末端切断型proHpは、ヒトN末端切断型proHpに由来するアミノ酸配列を有する。したがって、ある実施形態では、ハプトグロビンは、ヒトハプトグロビンである。当業者は、適切なヒトproHpのアミノ酸配列について熟知しており、それについての例示的な例は、GenBank受託番号:NP_005134(ヒトHpアイソフォーム1の前駆体であるproHp;配列番号1;また、アイソフォームHp1またはHp1Fとも称される)、NP_001119574(ヒトHpアイソフォーム2の前駆体であるproHp;配列番号2;また、アイソフォームHp2またはHp2SSとも称される)、およびNP_001305067(ヒトHpアイソフォーム3の前駆体であるproHp;配列番号3;また、アイソフォームHp3とも称される)において記載されている、ヒトproHpのアミノ酸配列を含む。ヒトHpアイソフォームの亜型もまた、当業者に公知であり、それについての例示的な例は、(i)配列番号1において示される、それぞれ、アミノ酸位置70および71における残基AspおよびLysを含む、Hp1F(配列番号1);(ii)配列番号1の、それぞれ、アミノ酸位置70および71に対応する位置における残基AsnおよびGluを含む、Hp1S;(iii)配列番号2において示される、それぞれ、アミノ酸位置70および71における残基AsnおよびGlu、ならびに、それぞれ、アミノ酸位置129および130における残基AsnおよびGluを含む、Hp2SS(配列番号2);ならびに(iv)配列番号2の、それぞれ、アミノ酸位置70および71に対応する位置における残基AspおよびLys、ならびに、それぞれ、アミノ酸位置129および130に対応する位置における残基AsnおよびGluを含む、Hp2FSを含む。
【0041】
ある実施形態では、ハプトグロビンは、本明細書で記載されるヒトハプトグロビンアイソフォームである、Hp1Fである。別の実施形態では、ハプトグロビンは、本明細書で記載されるヒトハプトグロビンアイソフォームである、Hp1Sである。別の実施形態では、ハプトグロビンは、本明細書で記載されるヒトハプトグロビンアイソフォームである、Hp2FSである。別の実施形態では、ハプトグロビンは、本明細書で記載されるヒトハプトグロビンアイソフォームである、Hp2SSである。
【0042】
ある実施形態では、proHpは、配列番号1に対する、少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。ある実施形態では、proHpは、配列番号1に対する、少なくとも85%(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。ある実施形態では、proHpは、配列番号1に対する、少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。ある実施形態では、proHpは、配列番号1に対する、少なくとも95%(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。ある実施形態では、proHpは、配列番号2に対する、少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。ある実施形態では、proHpは、配列番号2に対する、少なくとも85%(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。ある実施形態では、proHpは、配列番号2に対する、少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。ある実施形態では、proHpは、配列番号2に対する、少なくとも95%(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。ある実施形態では、proHpは、配列番号3に対する、少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。ある実施形態では、proHpは、配列番号3に対する、少なくとも85%(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。ある実施形態では、proHpは、配列番号3に対する、少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。ある実施形態では、proHpは、配列番号3に対する、少なくとも95%(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。
【0043】
ある実施形態では、N末端切断型proHpは、配列番号1のアミノ酸残基148~406に対する、少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。ある実施形態では、N末端切断型proHpは、配列番号1のアミノ酸残基148~406に対する、少なくとも85%(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。ある実施形態では、N末端切断型proHpは、配列番号1のアミノ酸残基148~406に対する、少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。ある実施形態では、N末端切断型proHpは、配列番号1のアミノ酸残基148~406に対する、少なくとも95%(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。
【0044】
ある実施形態では、N末端切断型proHpは、配列番号2のアミノ酸残基89~347に対する、少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。ある実施形態では、N末端切断型proHpは、配列番号2のアミノ酸残基89~347に対する、少なくとも85%(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。ある実施形態では、N末端切断型proHpは、配列番号2のアミノ酸残基89~347に対する、少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。ある実施形態では、N末端切断型proHpは、配列番号2のアミノ酸残基89~347に対する、少なくとも95%(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。
【0045】
ある実施形態では、N末端切断型proHpは、配列番号3のアミノ酸残基89~347に対する、少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。ある実施形態では、N末端切断型proHpは、配列番号3のアミノ酸残基89~347に対する、少なくとも85%(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。ある実施形態では、N末端切断型proHpは、配列番号3のアミノ酸残基89~347に対する、少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。ある実施形態では、N末端切断型proHpは、配列番号3のアミノ酸残基89~347に対する、少なくとも95%(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。
【0046】
「少なくとも80%」への言及は、例えば、最適アライメント解析または最良適合解析の後における、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、および100%の配列同一性を含む。比較ウィンドウを位置合わせするための、最適の配列アライメントは、アルゴリズム(Genetics Computer Group、575 Science Drive Madison、WI、USAによる、Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0内の、GAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)のコンピュータへの実装により行われる場合もあり、または選択される多様な方法のうちのいずれかによりもたらされる、精査および最良のアライメント(すなわち、比較ウィンドウにわたり、最高相同性百分率を結果としてもたらすアライメント)により行われる場合もある。また、例えば、Altschulら(1997)、Nucl.Acids.Res.、25:3389により開示される、BLASTファミリーのプログラムも参照される。配列解析についての詳細な議論は、Ausubelら(1994~1998)、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley & Sons Incの、19.3部において見出される。
【0047】
本明細書で使用される、「配列同一性」という用語は、配列が、比較ウィンドウにわたり、ヌクレオチド対ヌクレオチドベースで、またはアミノ酸対アミノ酸ベースで、同一であるか、または構造的に類似する程度を指す。したがって、「配列同一性百分率」は、例えば、比較ウィンドウにわたり最適にアライメントされた2つの配列を比較し、同一である核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)、または同一であるアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、Cys、およびMet)が、両方の配列内で生じる位置の数を決定して、マッチした位置の数を求め、マッチした位置の数を、比較ウィンドウ内の位置の総数(すなわち、ウィンドウサイズ)で除し、結果に100を乗じて、配列同一性百分率を求めることにより計算される。例えば、「配列同一性」とは、ソフトウェアに付属するリファレンスマニュアルにおいて使用される、標準デフォルト値を使用して、DNASISコンピュータプログラム(Version 2.5 for Windows;米国、カリフォルニア州、サウスサンフランシスコ、日立ソフトウェアエンジニアリング株式会社から入手可能である)により計算される「マッチ百分率」である。
【0048】
本明細書で使用される、「配列同一性」という用語は、ヌクレオチドレベルまたはアミノ酸レベルで比較される配列の間の、正確な同一性を含む。本明細書では、この用語はまた、ヌクレオチドレベルまたはアミノ酸レベルにおける、不正確な同一性(すなわち、類似性)を含むようにも使用され、この場合、配列の間の任意の差違(複数可)は、しかしながら、構造レベル、機能レベル、生化学レベル、および/またはコンフォメーションレベルにおいて、互いと類縁であるアミノ酸に関する任意の差違である(またはヌクレオチド、前記ヌクレオチドによりコードされるアミノ酸の文脈における任意の差違)。例えば、アミノ酸レベルにおいて、非同一性(類似性)が見られる場合、「類似性」は、しかしながら、構造レベル、機能レベル、生化学レベル、および/またはコンフォメーションレベルにおいて、互いと類縁であるアミノ酸を含む。ある実施形態では、ヌクレオチドおよび配列の比較は、類似性ではなく、同一性のレベルでなされる。例えば、ロイシンで、イソロイシン残基またはバリン残基が置換される。これは、保存的置換と称される。ある実施形態では、アミノ酸配列は、修飾が、修飾されたポリペプチドの結合特異性または機能活性に対して、非修飾ポリペプチドと比較した場合に、影響を及ぼさないか、または影響が無視できるように、その中に含有されるアミノ酸残基のうちのいずれかの保存的置換を目的として修飾される。
【0049】
本明細書で記載される配列同一性は、典型的に、配列をアライメントし、必要な場合、最大の相同性百分率を達成するように、ギャップを導入し、任意の保存的置換を、配列同一性の部分としては考慮せずにおいた後において、対応するペプチド配列の残基と同一である、候補配列内のアミノ酸残基の百分率に関する。N末端またはC末端のいずれの伸長も、挿入も、配列同一性または配列相同性を低減するものとしてはみなされないものとする。
【0050】
本明細書ではまた、N末端切断型proHpの機能的変異体も想定される。本明細書で使用される、「機能的変異体」という用語は、proHp(ヒトproHpまたは非ヒトproHp)の天然(自然に存在する)アイソフォームとの、少なくとも一部のアミノ酸配列同一性を共有するが、Hbに結合する能力を保持するペプチドを指す。本明細書のこの文脈では、「機能的変異体」および「Hb結合性機能変異体」という用語は、互換的に使用される。機能的変異体は、C末端が切断されたproHp(すなわち、C末端切断型Hpβ鎖)へと拡張されるが、C末端切断型proHpは、当業者が熟知する、Hpβ鎖のHb結合性領域のうちの、少なくとも一部を適切に保持することが理解されるものとする。さらに、当業者は、Hb結合活性を保持する、C末端切断型Hpβ鎖を含む機能的変異体についてスクリーニングする適切な方法について熟知しており、表面プラズモン共鳴(SPR)およびサイズ除外クロマトグラフィー(例えば、HPLC)など、それについての例示的な例は、本明細書の他の箇所に記載されている。これらの方法についてはまた、その内容が、参照により本明細書に組み込まれる、Schaerら(2018、BMC Biotechnol.、18:15)においても記載されている。
【0051】
本開示はまた、保存的なアミノ酸の置換、欠失、または挿入を含む、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換により、天然配列と異なる機能的変異体へも拡張される。ある実施形態では、機能的変異体は、修飾が、機能的変異体の、Hbへの結合特異性または機能活性に対して、非修飾(例えば、天然)分子と比較した場合に、影響を及ぼさないか、または影響が無視できるように、その中に含有されるアミノ酸残基のうちのいずれかの保存的置換を目的として、天然配列と異なるアミノ酸配列を含む。当業者はまた、1つまたはそれ以上のアミノ酸の置換、欠失、または挿入を含み、Hb結合活性を保持する機能的変異体についてスクリーニングする適切な方法についても熟知しており、それについての例示的な例は、本明細書の他の箇所に記載されている。
【0052】
一部の実施形態では、機能的変異体は、配列番号1のアミノ酸残基148~406、配列番号2のアミノ酸残基89~347、または配列番号3のアミノ酸残基89~347に対する、少なくとも60%、好ましくは、少なくとも65%、好ましくは、少なくとも70%、好ましくは、少なくとも75%、好ましくは、少なくとも80%、好ましくは、少なくとも85%、好ましくは、少なくとも90%、好ましくは、少なくとも93%、好ましくは、少なくとも95%、好ましくは、少なくとも96%、好ましくは、少なくとも97%、好ましくは、少なくとも98%、または、好ましくは、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。
【0053】
ある実施形態では、N末端切断型proHpは、配列番号1のアミノ酸残基148~406との、少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。ある実施形態では、N末端切断型proHpは、配列番号1のアミノ酸残基148~406との、少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。ある実施形態では、N末端切断型proHpは、配列番号1のアミノ酸残基148~406との、少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。ある実施形態では、N末端切断型proHpは、配列番号1のアミノ酸残基148~406を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。
【0054】
ある実施形態では、N末端切断型proHpは、配列番号2のアミノ酸残基89~347との、少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。ある実施形態では、N末端切断型proHpは、配列番号2のアミノ酸残基89~347との、少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。ある実施形態では、N末端切断型proHpは、配列番号2のアミノ酸残基89~347との、少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。ある実施形態では、N末端切断型proHpは、配列番号2のアミノ酸残基89~347を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。
【0055】
ある実施形態では、N末端切断型proHpは、配列番号3のアミノ酸残基89~347との、少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。ある実施形態では、N末端切断型proHpは、配列番号3のアミノ酸残基89~347との、少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。ある実施形態では、N末端切断型proHpは、配列番号3のアミノ酸残基89~347との、少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。ある実施形態では、N末端切断型proHpは、配列番号2のアミノ酸残基89~347を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。
【0056】
好ましい実施形態では、N末端切断型proHpは、ハプトグロビンアルファ鎖の少なくとも14の連続C末端アミノ酸残基と、ハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片との間に、天然の内部酵素切断部位を含む;すなわち、内部酵素切断部位は、N末端切断型proHpのアミノ酸配列が由来するproHpに対して、天然である。ヒトproHpアイソフォーム1(配列番号1)において、内部酵素切断部位は、この部位における酵素的切断が、Hpアルファ鎖(配列番号1のアミノ酸残基19~161)を、Hpベータ鎖(配列番号1のアミノ酸残基162~406)から切り離すように、配列番号1のアミノ酸位置161および162に配置される。ヒトproHpアイソフォーム2(配列番号2)において、内部酵素切断部位は、この部位における酵素的切断が、Hpアルファ鎖(配列番号2のアミノ酸残基19~162)を、Hpベータ鎖(配列番号2のアミノ酸残基163~407に対応する)から切り離すように、配列番号1のアミノ酸位置162および163に配置される。ヒトproHpアイソフォーム3(配列番号3)において、内部酵素切断部位は、この部位における酵素的切断が、Hpアルファ鎖(配列番号3のアミノ酸残基19~162)を、Hpベータ鎖(配列番号3のアミノ酸残基163~407に対応する)から切り離すように、配列番号3のアミノ酸位置162および163に配置される。
【0057】
他の実施形態では、N末端切断型proHpをコードする、第1の核酸配列は、ハプトグロビンアルファ鎖の少なくとも14の連続C末端アミノ酸残基と、ハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片との間に、内部酵素切断部位を含みうる;すなわち、内部酵素切断部位は、N末端切断型proHpのアミノ酸配列が由来するproHpに対して、非天然である。この文脈では、内部酵素切断部位は、第2の核酸配列によりコードされる酵素が、非天然の酵素切断部位において、N末端切断型proHpを切断することが可能であるよう、それが、発現系の第2の核酸配列によりコードされる酵素と適合性となるように選択される。当業者は、それらの対応する酵素と同様に、適切な非天然の内部酵素切断部位を熟知しているであろう。適切な非天然の内部酵素切断部位の例示的な例は、フーリン切断部位、非天然のセリンプロテアーゼ切断部位、システインプロテアーゼ切断部位、アスパラギン酸プロテアーゼ切断部位、メタロプロテアーゼ切断部位、およびトレオニンプロテアーゼ切断部位を含む。したがって、本明細書で開示される、ある実施形態では、内部酵素切断部位は、フーリン切断部位、非天然のセリンプロテアーゼ切断部位、システインプロテアーゼ切断部位、アスパラギン酸プロテアーゼ切断部位、メタロプロテアーゼ切断部位、およびトレオニンプロテアーゼ切断部位からなる群から選択される。
【0058】
ある実施形態では、内部酵素切断部位は、セリンプロテアーゼ以外の切断部位である。好ましい実施形態では、セリンプロテアーゼ切断部位は、本明細書の他の箇所で記載される、C1r様タンパク質(C1rLP)切断部位またはその機能的変異体である。
【0059】
さらなる機能的部分
本明細書で開示される発現系では、第1の核酸配列によりコードされる、N末端切断型proHpは、1つまたはそれ以上の、さらなる機能的部分をさらに含みうる。ある実施形態では、機能的部分は、ハプトグロビンアルファ鎖の少なくとも14の連続C末端アミノ酸残基のうちの1つまたはそれ以上と、連結されているか、融合されているか、コンジュゲートされているか、カップリングされているか、テザリングされているか、または他の形で接合されている。ある実施形態では、さらなる機能的部分は、ハプトグロビンベータ鎖のアミノ酸残基のうちの1つまたはそれ以上と、連結されているか、融合されているか、コンジュゲートされているか、カップリングされているか、テザリングされているか、または他の形で接合されている。ある実施形態では、さらなる機能的部分は、少なくとも14の連続C末端アミノ酸残基の中のシステイン残基において、ジスルフィド結合により、N末端切断型proHpと、連結されているか、融合されているか、コンジュゲートされているか、カップリングされているか、テザリングされているか、または他の形で接合されている。ある実施形態では、さらなる機能的部分は、配列番号1の149位に対応するアミノ酸位置に対応するシステイン残基において、ジスルフィド結合により、N末端切断型proHpと、連結されているか、融合されているか、コンジュゲートされているか、カップリングされているか、テザリングされているか、または他の形で接合されている。
【0060】
一部の実施形態では、機能的部分は、N末端切断型proHpに、共有結合的に結合している。他の実施形態では、N末端切断型proHpは、融合タンパク質の一部としての、1つまたはそれ以上の異種部分と融合されているか、カップリングされているか、または他の形で接合されている。1つまたはそれ以上の、さらなる機能的部分は、本明細書で記載されるハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片の活性および/または安定性を、適切に改善するか、増強するか、または他の形で拡張するであろう。
【0061】
本明細書で記載される組換えタンパク質の単離を容易とするために、N末端切断型proHpまたはその機能的変異体が、アフィニティークロマトグラフィーによる単離などの単離を可能とする、異種ポリペプチドと、翻訳により融合された(共有結合的に連結された)、融合ポリペプチドが作製される。適切な異種ポリペプチドは、当業者に公知であり、それについての例示的な例は、Hisタグ(例えば、8ヒスチジン残基)、GSTタグ(グルタチオン-S-トランスフェラーゼ)、V5タグ、HAタグ、CBP(キチン結合性タンパク質)タグ、MBP(マルトース結合性タンパク質)タグ、ストレプトアビジンタグ、SBP(ストレプトアビジン結合性タンパク質)、Mycタグ、およびビオチンタグを含む。
【0062】
一部の実施形態では、本明細書で記載される、N末端切断型proHpは、in vivoにおける、組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片の半減期を延長するための機能的部分へと接合されていると適切である。当業者は、適切な半減期を延長する機能的部分について熟知しており、それについての例示的な例は、ポリエチレングリコール(PEG化)、グリコシル化PEG、ヒドロキシルエチルデンプン(HES化)、ポリシアル酸、エラスチン様ポリペプチド、ヘパロサンポリマー、およびヒアルロン酸を含む。本明細書で開示される、ある実施形態では、機能的部分は、ポリエチレングリコール(PEG化)、グリコシル化PEG、ヒドロキシルエチルデンプン(HES化)、ポリシアル酸、エラスチン様ポリペプチド、ヘパロサンポリマー、およびヒアルロン酸からなる群から選択される。半減期を延長する機能的部分は、当業者に公知である、任意の適切な手段により、N末端切断型proHpまたはその機能的変異体と連結されており(例えば、融合されているか、コンジュゲートされているか、テザリングされているか、または他の形で接合されている)、これについての例示的な例は、例えば、その全ての内容が、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,256,253号において記載されている、化学的リンカーを介する例である。
【0063】
他の実施形態では、機能的部分は、半減期増強タンパク質(HLEP)である。当業者は、適切な半減期増強タンパク質について熟知しており、それについての例示的な例は、アルブミンおよびその断片を含む。したがって、ある実施形態では、HLEPは、アルブミンまたはその断片である。アルブミンまたはその断片のN末端は、N末端切断型proHpのアルファ鎖および/またはベータ鎖のC末端と、連結されているか、融合されているか、コンジュゲートされているか、カップリングされているか、テザリングされているか、または他の形で接合されている。代替的に、または加えて、アルブミンまたはその断片のC末端は、N末端切断型proHpのアルファ鎖および/またはベータ鎖のN末端と、連結されているか、融合されているか、コンジュゲートされているか、カップリングされているか、テザリングされているか、または他の形で接合されている。1つまたはそれ以上のHLEPは、組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片が、無細胞Hbに結合する能力を消失させないことを条件として、N末端切断型proHpのアルファ鎖および/またはベータ鎖のN末端部分またはC末端部分(複数可)と融合されている。しかし、やはり、無細胞Hbと複合体を形成し、これにより、無細胞Hbを中和することが可能である限りにおいて、組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片の、無細胞Hbへの結合の、ある程度の低減は、許容可能であることが理解されるものとする。
【0064】
本明細書では、「ヒト血清アルブミン」(HSA)および「ヒトアルブミン」(HA)および「アルブミン」(ALB)という用語は、互換的に使用される。「アルブミン」および「血清アルブミン」という用語は、より広義の用語であり、ヒト血清アルブミン(ならびにその断片および変異体)の他、他の分子種に由来するアルブミン(ならびにその断片および変異体)を包含する。
【0065】
本明細書で使用される、「アルブミン」とは、集合的に、アルブミンの1つまたはそれ以上の機能活性(例えば、生物学的活性)を有する、アルブミンのポリペプチドもしくはアミノ酸配列、またはアルブミンの断片もしくは変異体を指す。特に、「アルブミン」とは、ヒトアルブミンもしくは他の脊椎動物に由来するアルブミンの成熟形態もしくはその断片、またはこれらの分子もしくはその断片の類似体もしくは変異体を含む、ヒトアルブミンまたはその断片を指す。
【0066】
本明細書で記載される融合タンパク質は、ヒトアルブミンの自然に存在する多型変異体および/またはヒトアルブミンの断片を含むと適切でありうる。一般的に述べると、アルブミンの断片または変異体は、少なくとも10、好ましくは、少なくとも40、または、最も好ましくは、70アミノ酸を超える長さであろう。
【0067】
ある実施形態では、HLEPは、FcRn受容体への結合が増強されたアルブミン変異体である。このようなアルブミン変異体は、Hpまたはその機能的類似体の血漿半減期の、野生型アルブミンと融合されたHpまたはその機能的な断片と比較した延長をもたらしうる。本明細書で記載される融合タンパク質のアルブミン部分は、ヒトアルブミンの少なくとも1つのサブドメインもしくはドメイン、またはこれらの保存的修飾を含むと適切でありうる。
【0068】
一部の実施形態では、リンカー配列は、N末端切断型proHpと、機能的部分との間に配置される。リンカー配列は、1つまたはそれ以上のアミノ酸、特に、1つ~50、好ましくは、1つ~30、好ましくは、1つ~20、好ましくは、1つ~15、好ましくは、1つ~10、好ましくは、1つ~5つ、または、より好ましくは、1つ~3つ(例えば、1つ、2つ、または3つ)のアミノ酸からなり、互いと同等の場合もあり、互いと異なる場合もあるペプチドリンカーでありうる。前記リンカー配列内に存在する、好ましいアミノ酸は、GlyおよびSerを含む。好ましい実施形態では、リンカー配列は、本明細書で開示される方法に従い処置される対象に対して、実質的に非免疫原性である。実質的に非免疫原性であるとは、リンカー配列が、それが投与される対象において、リンカー配列または組換えハプトグロビンベータ鎖もしくはそのヘモグロビン結合性断片に対する検出可能な抗体応答を惹起しないことを意味する。好ましいリンカーは、グリシン残基とセリン残基との交替から構成される。当業者は、適切なリンカーについて熟知しており、それについての例示的な例は、WO2007/090584において記載されている。ある実施形態では、N末端切断型proHpと、機能的部分との間のペプチドリンカーは、ヒトタンパク質内で、天然のドメイン間リンカーとして用いられるペプチド配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。それらの天然環境におけるこのようなペプチド配列は、この配列に対する、天然の寛容を仮定しうるように、タンパク質表面に近接して配置され、免疫系にアクセス可能である。例示的な例は、WO2007/090584において与えられている。適切な切断可能リンカー配列は、例えば、WO2013/120939において記載されている。
【0069】
適切なHLEP配列についての例示的な例は、下記に記載される。同様に、本明細書では、N末端における、HLEPの1つまたはそれ以上のアミノ酸の欠失を含む、それぞれのHLEPの正確な「N末端アミノ酸」、もしくは正確な「C末端アミノ酸」との融合体、またはそれぞれのHLEPの「N末端部分」もしくは「C末端部分」との融合体が開示される。融合タンパク質は、1つを超えるHLEP配列、例えば、2つまたは3つのHLEP配列を含みうる。これらの複数のHLEP配列は、Hpのアルファ鎖および/またはベータ鎖のC末端部分と、タンデムで、例えば、一連のリピートとして融合されている。
【0070】
本明細書で記載される、融合タンパク質のHLEP部分は、野生型HELPの変異体でありうる。融合タンパク質のHELP部分に関して使用される場合における、「変異体」という用語は、保存的であるか、または非保存的である、挿入、欠失、および/または置換を含むように理解されるものとし、この場合、このような変化は、組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片が、無細胞Hbと複合体を形成し、これにより、無細胞Hbを中和する能力を、実質的に変更しない。HLEPは、任意の脊椎動物、とりわけ、任意の哺乳動物、例えば、ヒト、サル、ウシ、ヒツジ、またはブタに由来すると適切でありうる。哺乳動物以外のHLEPは、雌鶏およびサケのHLEPを含むがこれらに限定されない。
【0071】
ある実施形態では、機能的部分は、半減期延長ポリペプチドである。ある実施形態では、半減期延長ポリペプチドは、アルブミン、アルブミン-ファミリーのメンバーまたはその断片、ヘモペキシン、流体力学体積が大きな溶媒和ランダム鎖(例えば、XTEN(Schellenbergerら、2009、Nature Biotechnol.27:1186~1190を参照されたい))、ホモアミノ酸リピート(HAP)またはプロリン-アラニン-セリンリピート(PAS)、アファミン、アルファ-フェトタンパク質、ビタミンD結合性タンパク質、トランスフェリンまたはその変異体もしくは断片、ヒト絨毛性ゴナドトロピンβサブユニットのカルボキシル末端ペプチド(CTP)、新生児Fc受容体(FcRn)、特に、免疫グロブリン定常領域およびその部分、例えば、Fc断片に結合することが可能であるポリペプチド、生理学的条件下で、アルブミン、アルブミン-ファミリーのメンバー、もしくはこれらの断片、または免疫グロブリン定常領域またはその部分に結合することが可能であるポリペプチドまたは脂質からなる群から選択される。ある実施形態では、免疫グロブリン定常領域またはその部分は、免疫グロブリンG1(IgG1)のFc断片、免疫グロブリンG2(IgG2)のFc断片、免疫グロブリンA(IgA)のFc断片、またはこれらのFc受容体結合性断片である。本明細書で使用される、半減期増強ポリペプチドは、組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片の治療活性または生物学的活性を安定化させるか、または延長する、特に、組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片のin vivo半減期を延長することが可能である、全長半減期増強タンパク質、またはその1つもしくはそれ以上の断片でありうる。このような断片は、10またはそれ以上のアミノ酸の長さの断片である場合もあり、HLEP配列に由来する、少なくとも約15、好ましくは、少なくとも約20、好ましくは、少なくとも約25、好ましくは、少なくとも約30、好ましくは、少なくとも約50、または、より好ましくは、少なくとも約100、またはそれ以上の連続アミノ酸を含む場合もあり、あるいは、HLEP断片が、HLEPの非存在下における、それぞれのHpと比較して、少なくとも10%、好ましくは、少なくとも20%、または、より好ましくは、少なくとも25%の、機能的な半減期の延長をもたらす限りにおいて、それぞれのHLEPの特異的ドメインの一部または全部を含む場合もある。当業者は、機能的部分が、機能的な半減期の延長を、組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片にもたらす(in vivoまたはin vitroにおいて)のかどうかを決定する方法について熟知しており、それについての例示的な例は、本明細書の他の箇所に記載されている。
【0072】
本明細書で記載される、コンジュゲートおよび融合タンパク質は、N末端切断型proHpと、HLEPなど、1つまたはそれ以上の機能的部分とをコードする、少なくとも2つのDNA配列の、インフレームにおける接続により創出される。当業者は、コンジュゲートまたは融合タンパク質をコードするDNA配列の翻訳が、単一のペプチド配列を結果としてもたらすことを理解するであろう。本明細書で開示される実施形態に従うペプチドリンカーをコードするDNA配列の、インフレームにおける挿入の結果として、組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片、適切なリンカー、および機能的部分を含むコンジュゲートまたは融合タンパク質が得られる。
【0073】
本明細書で開示される、ある実施形態では、機能的部分は、アルブミンまたはその断片、ヘモペキシン、トランスフェリンまたはその断片、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのC末端ペプチド、XTEN配列、ホモアミノ酸リピート(HAP)、プロリン-アラニン-セリンリピート(PAS)、アファミン、アルファ-フェトタンパク質、ビタミンD結合性タンパク質、生理学的条件下で、アルブミンまたは免疫グロブリン定常領域に結合することが可能であるポリペプチド、新生児Fc受容体(FcRn)、特に、免疫グロブリン定常領域およびその部分、好ましくは、免疫グロブリンのFc部分に結合することが可能であるポリペプチド、ならびに前出のうちのいずれかの組合せからなる群から選択されるポリペプチドを含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。別の実施形態では、機能的部分は、ヒドロキシルエチルデンプン(HES)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリシアル酸(PSA)、エラスチン様ポリペプチド、ヘパロサンポリマー、ヒアルロン酸およびアルブミン結合性リガンド、例えば、脂肪酸鎖、および前出のうちのいずれかの組合せからなる群から選択される。
【0074】
ある実施形態では、機能的部分は、ヘモペキシンまたはそのヘム結合性断片である。ヘモペキシンは、90°の角度で、一体にかみ合う、2つの厚い円板に相似する、2つの4枚羽βプロペラドメインにより形成され、ドメイン間リンカーペプチドにより接続される、439アミノ酸長の単一ペプチド鎖から構成される、61kDaの血漿β-1B糖タンパク質である。血管内溶血および血管外溶血の結果として、血中へと放出されるヘムは、ドメイン間リンカーペプチドにより形成されるポケット内の、2つの4枚羽βプロペラドメインの間で結合している。残基である、His213およびHis266は、ヘムの鉄原子に配位結合して、ヘモグロビンと同様の、安定的なビス-ヒスチジル錯体をもたらす。「ヘム結合性断片」という用語は、それが、天然分子としての無細胞ヘムに対する結合アフィニティーのうちの、少なくとも一部を保持するように、天然ヘモペキシン分子のうちの、十分な数の連続アミノ酸残基または非連続アミノ酸残基を含む、天然ヘモペキシン分子の断片を意味する用語として理解されるものとする。当業者は、ヘモペキシンの断片が、ヘム結合性活性を保持するのかどうかを決定するための適切な方法について熟知しており、例示的な例は、本明細書の他の箇所に記載されている。ある実施形態では、ヘモペキシンのヘム結合性断片は、天然のヘモペキシンタンパク質に対する、少なくとも50%、好ましくは、少なくとも55%、好ましくは、少なくとも60%、好ましくは、少なくとも65%、好ましくは、少なくとも70%、好ましくは、少なくとも75%、好ましくは、少なくとも80%、好ましくは、少なくとも85%、好ましくは、少なくとも90%、または、より好ましくは、少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。ある実施形態では、ヘモペキシンは、ヒトヘモペキシンである。ある実施形態では、ヒトヘモペキシンは、NP_000604(配列番号12)において示されるアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。
【0075】
ヘモペキシンは、シアル酸、マンノース、ガラクトース、およびグルコサミンを含む、約20%の炭水化物を含有する。おそらく、6つのジスルフィド架橋を占める、12のシステイン残基が、タンパク質配列内で見出された。ヘモペキシンは、高アフィニティー(Kd<1pM)でヘムに結合し、血流から、肝臓へのヘム特異的キャリアとして機能するその能力のために、ヘム毒性に対する防御の最前線を表す。ヘモペキシンは、ヘムに、等モル比で結合するが、ヘムが、タンパク質に共有結合的に結合している証拠は存在しない。ヘムへの結合に加えて、ヘモペキシン調製物はまた、セリンプロテアーゼ活性(Linら、2016、Molecular Medicine、22:22~31)、ならびに抗炎症活性および炎症促進活性、細胞接着の阻害、ならびにある特定の二価金属イオンへの結合を呈することなど、他のいくつかの機能を有することも報告されている。内因性ヘモペキシンは、生理学的定常状態下における遊離ヘムの有害作用を制御しうる一方、高レベルのヘムが、内因性ヘモペキシンの枯渇をもたらし、ヘム媒介性酸化性組織損傷を引き起こす、溶血と関連する状態などの病態生理状態下では、定常ヘムレベルの維持に、ほとんど効果を及ぼさない。研究は、鎌状赤血球病(SCD)およびβ-サラセミアなどの溶血性障害についての実験マウスモデルにおいて、ヘモペキシン注入が、ヘム誘導性内皮活性化、炎症、および酸化性損傷を緩和することを示した。ヘモペキシンの投与はまた、溶血性動物において、炎症促進性サイトカインのレベルを著明に低減し、ヘム誘導性血管収縮に対抗することも示されている。
【0076】
ある実施形態では、機能的部分は、Fc領域またはそのFcRn結合性断片を含む、免疫グロブリン分子である。免疫グロブリンFc領域(Fc)は、治療用タンパク質の半減期を延長することが、当技術分野で公知である(例えば、Dumont JAら、2006.BioDrugs、20:151~160を参照されたい)。重鎖のIgG定常領域は、3つのドメイン(CH1~CH3)およびヒンジ領域からなる。免疫グロブリン配列は、任意の哺乳動物に由来する場合もあり、サブグラスである、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のそれぞれに由来する場合もある。抗原結合性ドメインを伴わないIgGおよびIgG断片もまた、HLEPとして使用される場合を含む、機能的部分として使用される。Hpまたはその機能的類似体は、抗体のヒンジ領域、なおまたは、切断可能な場合もある、ペプチドリンカーを介して、IgGまたはIgG断片へと接続されると適切でありうる。いくつかの特許および特許出願が、治療用タンパク質の、in vivo半減期を増強する、治療用タンパク質の、免疫グロブリン定常領域への融合について記載している。例えば、US2004/0087778およびWO2005/001025は、融合されていなければin vivoにおいて急速に消失させられるペプチドの半減期を延長する、生物学的に活性であるペプチドとの、Fcドメインまたは免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部の融合タンパク質について記載している。Fc-IFN-β融合タンパク質は、生物学的活性の増強、循環半減期の延長、および可溶性の増大を達成することが記載された(WO2006/000448A2)。血清半減期が延長され、in vivoにおける効力が増大した、Fc-EPOタンパク質(WO2005/063808A1)の他、全てが、半減期増強特性を伴う、G-CSF(WO2003/076567A2)、グルカゴン様ペプチド1(WO2005/000892A2)、凝結因子(WO2004/101740A2)、およびインターロイキン10(米国特許第6,403,077号)とのFc融合体も開示された。
【0077】
本発明に従い使用される、適切なHLEPの例示的な例はまた、その内容が、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる、WO2013/120939A1においても記載されている。
【0078】
発現系
他の箇所で言及される通り、本開示は、
(a)N末端切断型プロハプトグロビン(proHp)をコードし、N末端切断型proHpが、(i)ハプトグロビンアルファ鎖の少なくとも14の連続C末端アミノ酸残基、および(ii)ハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片を含み、N末端切断型proHpが、ハプトグロビンアルファ鎖の少なくとも14の連続C末端アミノ酸残基と、ハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片との間に、内部酵素切断部位を含む、第1の核酸配列;ならびに
(b)N末端切断型proHpを、酵素切断部位において切断することが可能である酵素をコードする、第2の核酸配列
を含み;
第1の核酸配列および第2の核酸配列が、哺乳動物細胞へと導入され、その後、細胞内で、N末端切断型proHpおよび酵素が発現されると、酵素は、N末端切断型proHpを、内部酵素切断部位において切断し、これにより、ハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片を、N末端切断型proHpから放出することが可能である、
哺乳動物発現系を提示する。
【0079】
本明細書で記載される発現系は、例えば、発現されるタンパク質(複数可)内の機能を保存するのに要求される、タンパク質の適正なフォールディングおよび翻訳後修飾を容易とすることにより、生物学的活性を維持する可能性が高い組換えタンパク質を産生することが可能であるので、哺乳動物細胞を利用すると有利である。本明細書の他の箇所で言及される通り、本発明者らは、予測外に、それらの発現系が、機能的ハプトグロビンβ鎖の、安定的なトランスフェクションおよび発現を結果としてもたらし、これにより、一過性のトランスフェクションを達成するのがせいぜいであり、一般に、機能的タンパク質を作出することができない、既存の発現系と識別されるので有利であることを見出した。したがって、本明細書で記載される発現系は、哺乳動物細胞内における、機能的な組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片の、安定的なトランスフェクションおよび発現が可能である。当業者は、組換えタンパク質を調製する適切な方法について熟知しており、それについての例示的な例は、所望される、本明細書で記載される組換えタンパク質をコードする、1つまたはそれ以上の核酸配列を含む、1つまたはそれ以上の核酸分子の、前記核酸配列を発現することが可能である、適切な宿主細胞への導入、前記宿主細胞を、前記核酸配列の発現に適する条件下でインキュベートする工程、および前記組換えタンパク質を回収する工程を含む。
【0080】
遺伝子コードについての知見に基づき、組換えタンパク質をコードする核酸分子を調製するための適切な方法であって、おそらく、組換え融合タンパク質を発現させ、かつ/またはこれを分泌させるために使用される宿主細胞(例えば、ヒト細胞および非ヒト哺乳動物細胞)の性質に基づき、コドンを最適化する工程を含む方法もまた、当業者に公知であろう。組換えタンパク質の発現に適する哺乳動物細胞もまた、当業者に公知であり、それについての例示的な例は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞およびその派生細胞(例えば、CHO-K1細胞およびCHO pro-3細胞)、マウス骨髄腫細胞(例えば、NS0細胞およびSp2/0細胞)、ヒト胎児腎細胞(例えば、HEK293細胞)を含む。哺乳動物細胞内のタンパク質発現はまた、BacMamシステムなどの技法により、ウイルス媒介形質導入を使用しても達成される。この技術は、哺乳動物細胞への単純な形質導入のために、組換えバキュロウイルスを利用し、構造研究のための、ミリグラム単位量のタンパク質の作製を可能とする。COS細胞およびVero細胞(いずれも、アフリカグリーンモンキー腎臓細胞)、HeLa(ヒト子宮頸がん)、ならびにNS0(マウス骨髄腫)など、他の細胞系もまた、構造研究のために使用されている。NS0など、これらの細胞系の一部は、トランスフェクトすることが、より困難である。トランスフェクションは、通例、電気穿孔を使用して達成され、安定的な細胞系を作製する場合に限り使用される。本明細書で記載される組換えタンパク質を含む、組換えタンパク質の発現に適する哺乳動物細胞の例示的な例については、U2OS細胞、A549細胞、HT1080細胞、CAD細胞、P19細胞、NIH3T3細胞、L929細胞、N2a細胞、ヒト胎児腎臓293細胞、HEK293T細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞系、MCF-7、Y79細胞、SO-Rb50細胞、HepG2細胞、DUKX-X11細胞、J558L細胞、およびベビーハムスター腎臓(BHK)細胞など、Khan KH(2013、Adv.Pharm.Bull.、3(2):257~263)において記載されている。
【0081】
また、「Short Protocols in Molecular Biology、5版、全2巻、A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology」(Frederick M.Ausubel(編著)、Roger Brent(編)、Robert E.Kingston(編)、David D.Moore(編)、J.G.Seidman(編)、John A.Smith(編)、Kevin Struhl(編)、J Wiley & Sons、London)も参照される。
【0082】
本発明のある態様では、本発明に従う第1の核酸配列および第2の核酸配列を含む哺乳動物細胞が提供され、この場合、哺乳動物は、細胞内における、N末端切断型proHpおよびセリンプロテアーゼの発現が可能であり、セリンプロテアーゼは、C1rLP切断部位内部におけるN末端切断型proHpを切断し、これにより、ハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片を、本発明のN末端切断型proHpから放出することが可能である。適切な哺乳動物細胞は、当業者に公知であり、それについての例示的な例は、CHO細胞、COS-7細胞、Vero細胞、NIH3T3細胞、L929細胞、N2a細胞、BHK細胞、マウスES細胞、およびHeLa細胞、HEK-293細胞、HEK-293T細胞、U20S細胞、A549細胞、HT1080細胞、WI-38細胞、MRC-5細胞、Namalwa細胞、HepG2細胞などのヒト細胞を含む。
【0083】
本明細書で使用される、「~をコードする」、「~をコードすること」などの用語は、核酸が、別の核酸またはポリペプチドをもたらす能力を指す。例えば、核酸配列は、それが、典型的に、宿主細胞内で、転写および/または翻訳されて、ポリペプチドを産生するか、または転写および/または翻訳されて、ポリペプチドを産生する形態へとプロセシングされる場合に、ポリペプチド「をコードする」と言われる。このような核酸配列は、コード配列、またはコード配列および非コード配列の両方を含みうる。したがって、「~をコードする」、「~をコードすること」などの用語は、DNA分子の転写の結果として得られるRNA産物、RNA分子の翻訳の結果として得られるタンパク質、RNA産物を形成するDNA分子の転写、および、その後における、RNA産物の翻訳の結果として得られるタンパク質、またはRNA産物をもたらすDNA分子の転写、プロセシングされたRNA産物(例えば、mRNA)をもたらすRNA産物のプロセシング、および、その後における、プロセシングされたRNA産物の翻訳の結果として得られるタンパク質を含む。一部の実施形態では、本明細書で記載されるペプチド配列、または本明細書で記載される融合タンパク質をコードする核酸配列は、適切な宿主細胞内の発現のためにコドン最適化される。例えば、組換えタンパク質が、ヒト対象における無細胞ヘモグロビン(Hb)と関連する状態を処置または防止するために使用される場合、核酸配列は、コドン最適化ヒト核酸配列でありうる。John Hopkins University Build a Genomeウェブサイト上の、「Software Tools」内に配置された、「Gene Design」ツールの、「Reverse Translation」オプションを使用する方法など、コドン最適化に適する方法は、当業者に公知であろう。
【0084】
本明細書の他の箇所で言及される通り、配列は、組換えタンパク質内で、当業者に公知である任意の手段により、互いと連結されている。「連結する」および「連結された」という用語は、ペプチド結合を介する、2つの配列(例えば、ペプチド配列)の直接的な連結を含む;すなわち、1つの配列のC末端は、ペプチド結合を介して、別の配列のN末端に、共有結合的に結合している。「連結する」および「連結された」という用語はまた、それらの意味の中に、2つの配列(例えば、ペプチド配列)の、散在したリンカーエレメントを介する連結も含む。
【0085】
核酸配列の単離およびクローニングは、標準的技法(例えば、Ausubelら、同前を参照されたい)を使用して達成される。例えば、所望される任意の核酸配列は、標準的技法により、RNAを抽出し、次いで、RNA鋳型からcDNAを合成することにより(例えば、RT-PCRにより)、ウイルスから直接得られる。次いで、核酸配列は、直接、または1つもしくはそれ以上のサブクローニング工程の後で、適切な発現ベクターへと挿入される。当業者は、使用される正確なベクターの詳細が、それほど重要ではないことを理解するであろう。適切なベクターについての例示的な例は、プラスミド、ファージミド、コスミド、バクテリオファージ、バキュロウイルス、レトロウイルス、またはDNAウイルスを含む。次いで、所望の組換えタンパク質(複数可)は、下記でより詳細に記載される通りに、発現され、精製される。代替的に、核酸配列は、当業者に公知である、標準的なin vitro部位指向性突然変異誘発法により、上で記載された突然変異など、1つまたはそれ以上の突然変異を導入するように、さらに操作される。突然変異は、コード配列を構成する、適切なヌクレオチドのうちの1つまたはそれ以上の、欠失、挿入、置換、反転、またはこれらの組合せにより導入される。これは、例えば、そのためのプライマーがデザインされ、1つまたはそれ以上のヌクレオチドのミスマッチ、挿入、または欠失を組み込む、PCRベースの技法により達成される。突然変異の存在は、多数の標準的技法、例えば、制限解析またはDNAシーケンシングにより検証される。組換えタンパク質を作製するための方法は、当業者に周知である。組換えタンパク質をコードするDNA配列は、その選択が当業者に公知である、適切な発現ベクターへと挿入される。発現ベクターについての適切な例は、以下の発現ベクターを含むが、これらに限定されない。組換えタンパク質(複数可)が、CHO細胞、COS細胞、およびNIH3T3細胞などの哺乳動物細胞内で発現される場合、発現ベクターは、これらの細胞内の発現に必要なプロモーター、例えば、SV40プロモーター(Mulliganら、Nature、277:108(1979))(例えば、初期サルウイルス40プロモーター)、MMLV-LTRプロモーター、EF1αプロモーター(Mizushimaら、Nucleic Acids Res.、18:5322(1990))、またはCMVプロモーター(例えば、ヒトサイトメガロウイルス即初期プロモーター)を含む。組換え発現ベクターは、宿主細胞内のベクターの複製を調節する配列(例えば、複製起点)、および選択用マーカー遺伝子など、さらなる配列も運びうる。選択用マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を容易とする(例えば、米国特許第4,399,216号、同第4,634,665号、および同第5,179,017号を参照されたい)。例えば、典型的に、選択用マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞に、G418、ハイグロマイシン、またはメトトレキサートなど、薬物に対する耐性を付与する。選択用マーカーを伴うベクターの例は、pMAM、pDR2、pBK-RSV、pBK-CMV、pOPRSV、およびpOP13を含む。
【0086】
発現ベクターは、コートタンパク質または融合タンパク質をコードするDNA配列の、効率的な転写に要求される転写エレメントなどの調節エレメントをさらに含みうることが理解されるであろう。ベクターへと組み込まれる適切な調節エレメントの例示的な例は、高レベルの核酸の転写を駆動する、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、およびポリアデニル化シグナル(例えば、宿主細胞に従い選択される、CMVエンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメント、またはSV40エンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメントなど、SV40、CMV、アデノウイルスなどに由来する)を含む。
【0087】
ある実施形態では、本明細書で記載される核酸は、本明細書ではまた、発現カセットとも称される、核酸カセットへと組み込まれる。核酸カセットまたは発現カセットは、核酸配列、典型的に、異種核酸配列(例えば、本明細書では、核酸構築物として記載される)を、ベクターへと導入するようにデザインされた核酸配列を意味することが意図される。発現カセットは、カセットの配列の各末端において、目的の核酸配列(複数可)の挿入を容易とする、末端制限酵素リンカー(すなわち、制限酵素認識ヌクレオチド)を含みうる。各末端における末端制限酵素リンカーは、同じ末端制限酵素リンカーの場合もあり、異なる末端制限酵素リンカーの場合もある。一部の実施形態では、末端制限酵素リンカーは、核酸、またはカセットが導入されたアルファウイルスゲノムの、意図されない消化が生じないように、希少な制限酵素認識/切断配列を含みうる。適切な末端制限酵素リンカーは、当業者に公知であろう。ある実施形態では、Pac Iのための制限酵素認識ヌクレオチド(TTAATTAA)が、各発現カセットの5’末端へと付加され、Sbf Iのための制限酵素認識ヌクレオチド(CCTGCAGG)が、各発現カセットの3’末端へと付加される。
【0088】
ある実施形態では、転写調節的制御配列および翻訳調節的制御配列は、プロモーター配列、5’側非コード領域、転写調節タンパク質もしくは翻訳調節タンパク質に対する機能的結合性部位などのシス側調節領域、上流のオープンリーディングフレーム、内部リボソーム侵入部位(IRES)、転写開始部位、翻訳開始部位、ならびに/またはリーダー配列、終結コドン、翻訳停止部位、および3’側非翻訳領域をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0089】
ある実施形態では、第1の核酸と、第2の核酸とは、同じ発現カセットへとクローニングされ、個別のプロモーターの制御下にある。別の実施形態では、第1の核酸と、第2の核酸とは、同じ発現カセットへとクローニングされ、同じプロモーターの制御下にある。この文脈では、単一のプロモーターは、2つのオープンリーディングフレームの発現を駆動する。別の実施形態では、第1の核酸と、第2の核酸とは、個別の発現カセットへとクローニングされる。本明細書で記載される発現系は、一部の文脈では、個別の発現ベクター内の、第1の核酸配列および第2の核酸配列の各々を含むので有利であることが理解されるものとする。したがって、ある実施形態では、発現系は、(i)本明細書で記載される、第1の核酸配列を含む、第1の発現ベクターと、(ii)本明細書で記載される、第2の核酸配列を含む、第2の発現ベクターとを含む。
【0090】
本明細書で想定される発現カセットはまた、発現カセットにより感染させられるか、形質転換されるか、もしくはトランスフェクトされている宿主細胞、または発現カセットにより感染させられていないか、形質転換されていないか、もしくはトランスフェクトされていない宿主細胞の同定における使用のために適する、1つまたはそれ以上の選択用マーカー配列も含みうる。マーカーは、例えば、抗生剤または他の化合物に対する耐性または感受性を増大させるか、または低下させるタンパク質をコードする遺伝子、その活性が、当技術分野で公知である標準的アッセイにより検出可能である酵素(例えば、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ)をコードする遺伝子、および発現カセットを有する形質転換細胞またはトランスフェクト細胞、宿主、コロニー、またはプラークの表現型に、目視可能な影響を及ぼす遺伝子(例えば、緑色蛍光のタンパク質であるGFPなど、多様な蛍光タンパク質)を含む。
【0091】
本開示はまた、本明細書で記載されるポリヌクレオチド組成物を含む宿主細胞へも拡張される。
【0092】
本明細書で使用された、宿主細胞は、本明細書で記載されるポリヌクレオチド組成物を含む細胞を意味するように理解される。宿主細胞は、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞系、または哺乳動物細胞系でありうる。好ましい実施形態では、宿主細胞は、本明細書で記載されるポリヌクレオチド組成物が投与される対象の内部の細胞である。
【0093】
宿主細胞は、本明細書で記載されるポリヌクレオチド組成物を発現し、本明細書で記載される組換えタンパク質を産生しうるように、ベクターによりトランスフェクトされ、かつ/または感染させられる場合もあり、その後代の場合もある。
【0094】
適切な宿主細胞系は、当業者に公知であり、例えば、確立された細胞培養物コレクションを介して市販されている。次いで、このような細胞は、組換えproHpを作製するのに使用されるか、または要求に応じて、他の使用のために使用される。例示的方法は、ポリヌクレオチド組成物(例えば、場合により、発現配列の制御下にある)を含む細胞を、組換えタンパク質の最適の作製を可能とする細胞培養条件下で培養し、次いで、当業者に公知である標準的技法を使用して、組換えタンパク質が、細胞または細胞培養物培地から単離される工程を含みうる。本開示はまた、組換えハプトグロビンベータ鎖およびそのヘモグロビン結合性断片の他、本明細書の他の箇所で記載される、1つまたはそれ以上の機能的部分のうちのいずれかを含む、本明細書で記載される、N末端切断型proHpを発現するように改変された培養哺乳動物細胞から単離された組換えタンパク質へも拡張される。
【0095】
本発明に従う発現系は、ハプトグロビンアルファ鎖の少なくとも14の連続C末端アミノ酸残基と、ハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片とを含む、N末端切断型proHpをコードする、第1の核酸配列を含む。ハプトグロビンベータ鎖のヘモグロビン結合性断片は、断片が、無細胞Hbと複合体を形成し、これにより、その生物学的活性を中和する能力を保持することを条件として、任意の適切な長さでありうる。N末端切断型proHpは、ハプトグロビンアルファ鎖の少なくとも14の連続C末端アミノ酸残基と、ハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片との間に、内部C1r様タンパク質(C1rLP)切断部位をさらに含む。好ましい実施形態では、ハプトグロビンアルファ鎖の少なくとも14の連続C末端アミノ酸残基は、少なくとも1つのシステイン残基を含む。ある実施形態では、システイン残基は、ハプトグロビンアルファ鎖の少なくとも14の連続C末端アミノ酸残基アミノ酸位置14に配置される。ハプトグロビンアルファ鎖の少なくとも14の連続C末端アミノ酸残基の中のシステイン残基は、組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片の発現および/または精製の一助となりうる、ジスルフィド結合がなければ遊離である、ベータ鎖のシステイン残基とのジスルフィド結合を形成しうると有利である。
【0096】
一部の実施形態では、哺乳動物細胞内のN末端切断型proHpの発現は、第1の核酸配列に作動可能に連結された、第1の哺乳動物調節配列により駆動され、哺乳動物細胞内のセリンプロテアーゼの発現は、第2の核酸配列に作動可能に連結された、第2の哺乳動物調節配列により駆動される。第1の哺乳動物調節配列は、第2の哺乳動物調節配列と同じ配列の場合もあり、異なる配列の場合もある。ある実施形態では、第1の哺乳動物調節配列は、第2の哺乳動物調節配列と異なる。
【0097】
本開示はまた、本明細書で記載される通り、哺乳動物細胞内で、組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片を作製するための発現ベクターへも拡張される。ベクターは、本明細書で記載される、第1の核酸配列と、本明細書で記載される、第2の核酸配列とを含みうる。第1の核酸と、第2の核酸とは、同じ哺乳動物調節配列に作動可能に連結されている場合もあり、異なる哺乳動物調節配列に作動可能に連結されている場合もある。したがって、一部の実施形態では、第1の核酸配列と、第2の核酸配列とは、共通の哺乳動物調節配列に作動可能に連結されている。他の実施形態では、第1の核酸配列は、第1の哺乳動物調節配列に作動可能に連結され、第2の核酸配列は、第2の哺乳動物調節配列に作動可能に連結され、この場合、第1の哺乳動物調節配列は、第2の哺乳動物調節配列と異なる。本明細書の他の箇所で言及される通り、本開示はまた、(i)本明細書で記載される、第1の核酸配列を含む、第1の発現ベクターと、(ii)本明細書で記載される、第2の核酸配列を含む、第2のベクターとを含む発現系へも拡張される。第1の核酸配列および第2の核酸配列は各々、本明細書で記載される通り、調節配列、好ましくは、哺乳動物調節配列に作動可能に連結されている。
【0098】
本開示はまた、組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片を作製する方法であって、哺乳動物細胞へと、本明細書で記載される発現系または本明細書で記載される発現ベクター(複数可)を導入する工程を含む方法へも拡張される。当業者は、発現系または発現ベクター(複数可)を、哺乳動物細胞へと導入する適切な方法について熟知しているであろう。例えば、生物学的トランスフェクション法(例えば、ウイルス媒介型トランスフェクション法)、化学的トランスフェクション法(例えば、カチオン性ポリマー、リン酸カルシウム、カチオン性脂質、またはカチオン性アミノ酸によるトランスフェクション法)または物理的トランスフェクション法(例えば、直接的な注射、バイオリスティック法による粒子送達、電気穿孔、レーザー照射、超音波穿孔、または磁気ナノ粒子によるトランスフェクション法)が利用される。ある実施形態では、発現系または発現ベクター(複数可)の、哺乳動物細胞への導入は、カチオン性、脂質ベースのトランスフェクション試薬を使用して達成される。
【0099】
本明細書で記載される発現系またはベクター(複数可)が、哺乳動物細胞へと導入され、細胞が、適切な条件下で培養される場合、N末端切断型proHpおよびセリンプロテアーゼは、細胞内で発現される。理論または特定の適用方式に限定されずに述べると、発現時に、発現されたセリンプロテアーゼは、C1rLP切断部位の内部で発現されるN末端切断型proHpを切断し、ハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片を、N末端切断型proHpから放出することが理解される。細胞は、組換えハプトグロビンベータ鎖、またはそのヘモグロビン結合性断片の作製を可能とするのに十分な条件下で、これに十分な時間にわたり培養されると適切であろう。当業者は、市販の細胞培養培地を含む、適切な培養条件および培養培地について熟知しており、それについての例示的な例は、例えば、LaurentiおよびOoi(2013、998:10.1007/978-1-62703-351-0_2、「Methods in Molecular biology」(Clifton、N.J.);ならびにKaufman RJ(2000、Mol.Biotechnol.、16:151~160)において記載されている。組換えタンパク質発現の反応速度解析は哺乳動物細胞型の間で変動しうることに留意して、本明細書で開示される発現系を有する哺乳動物細胞内の組換えタンパク質の適切な発現を可能とするのに十分な培養条件および時間は、利用される哺乳動物細胞(複数可)の種類に依存することに留意されたい。いずれにせよ、培養条件および培養時間は、規定の実験により最適化される。
【0100】
適切な哺乳動物細胞の非限定例は、本明細書の他の箇所に記載されており、ヒト細胞、ウシ科動物細胞、ヒツジ科動物細胞、ウマ科動物細胞、ヤギ細胞、ウサギ細胞、モルモット細胞、ラット細胞、ハムスター細胞、またはマウス細胞、HEK293(ヒト胎児腎臓)細胞、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞、およびマウス骨髄腫細胞を含む。適切な哺乳動物細胞の、他の例示的な例は、HeLa細胞、HEK293T細胞、U2OS細胞、A549細胞、HT1080細胞、CAD細胞、P19細胞、NIH3T3細胞、L929細胞、N2a細胞、HEK293細胞、CHO細胞、MCF-7細胞、Y79細胞、SO-Rb50細胞、HepG2細胞、DUKX-X11細胞、J558L細胞、およびBHK細胞を含む。ある実施形態では、哺乳動物細胞は、ヒト細胞である。別の実施形態では、哺乳動物細胞は、ヒト胎児細胞、好ましくは、ヒト胎児腎細胞(例えば、HEK293)である。
【0101】
本発明は、本明細書で記載される発現系を運ぶように改変された哺乳動物細胞をさらに提供する。
【0102】
組換えハプトグロビンベータ鎖、またはそのヘモグロビン結合性断片は、当技術分野で公知である、任意の適切な方法を使用して単離および精製される。一部の例では、精製は、実施例において例示されるタンデムクロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーにより実施される。
【0103】
第2の核酸配列によりコードされる酵素
本明細書の他の箇所で言及される通り、本明細書で開示される発現系は、本明細書で記載される酵素切断部位において、第1の核酸配列によりコードされる、N末端切断型proHpを切断することが可能である酵素をコードする、第2の核酸配列を含む。したがって、第2の核酸配列によりコードされる酵素の選出は、N末端切断型proHpの、ハプトグロビンアルファ鎖の少なくとも14の連続C末端アミノ酸残基と、ハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片との間の、内部酵素切断部位に依存することが理解されるであろう;すなわち、第2の核酸配列によりコードされる酵素は、第1の核酸配列および第2の核酸配列が、哺乳動物細胞内で発現されると、酵素切断部位において、N末端切断型proHpを、適切に切断することが可能であるように、内部酵素切断部位と適合性となるであろう。当業者は、適切な内部酵素切断部位について熟知しており、フーリン切断部位、非天然のセリンプロテアーゼ切断部位、システインプロテアーゼ切断部位、アスパラギン酸プロテアーゼ切断部位、メタロプロテアーゼ切断部位、およびトレオニンプロテアーゼ切断部位など、それについての例示的な例は、本明細書の他の箇所に記載されている。ある実施形態では、本明細書で記載される、発現系の第2の核酸配列によりコードされる酵素は、フーリン、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、およびトレオニンプロテアーゼからなる群から選択される。ある実施形態では、本明細書で記載される、発現系の第2の核酸配列によりコードされる酵素は、セリンプロテアーゼである。
【0104】
当業者は、適切なセリンプロテアーゼについて熟知しており、それについての例示的な例は、例えば、Di Cera(IUBMB Life、2009、61(5):510~515)において記載されている。ある実施形態では、セリンプロテアーゼは、C1r様セリンプロテアーゼであるC1rLPまたはその機能的変異体である。C1rLPに関して使用される場合の、「機能的変異体」という用語は、保存的アミノ酸置換または非保存的アミノ酸置換を含む、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換、欠失、および/または挿入により、その天然の対応物と異なり、このような差違が、内部C1rLP切断部位において、変異体が、N末端切断型proHpを切断する能力を、実質的に変更しないアミノ酸配列を有するセリンプロテアーゼを含むように理解されるものとする。機能的変異体は、自然に存在する機能的変異体の場合もあり、当業者に公知の方法を使用する、組換えまたは合成による(例えば、化学合成により作製される)機能的変異体の場合もある。C1rLPの機能的変異体は、C1rLPアイソフォーム1(例えば、GenBank受託番号:NP_057630;配列番号4)、C1rLPアイソフォーム2(例えば、GenBank受託番号:NP_001284569;配列番号5)、C1rLPアイソフォーム3(例えば、GenBank受託番号:NP_001284571;配列番号6)、およびC1rLPアイソフォーム4(例えば、GenBank受託番号:NP_001284572;配列番号7)など、その例が当業者に公知である、自然に存在するアイソフォームへと拡張される。ある実施形態では、セリンプロテアーゼであるC1rLPは、配列番号4~7のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。ある実施形態では、セリンプロテアーゼまたはその機能的変異体は、配列番号4のアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。別の実施形態では、セリンプロテアーゼまたはその機能的変異体は、配列番号5のアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。別の実施形態では、セリンプロテアーゼまたはその機能的変異体は、配列番号6のアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。別の実施形態では、セリンプロテアーゼまたはその機能的変異体は、配列番号7のアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。ある実施形態では、セリンプロテアーゼまたはその機能的変異体は、例えば、最適のアライメントまたは最良適合解析の後で、配列番号4~7のうちのいずれか1つに対する、少なくとも80%、好ましくは、少なくとも85%、好ましくは、少なくとも86%、好ましくは、少なくとも87%、好ましくは、少なくとも88%、好ましくは、少なくとも89%、好ましくは、少なくとも90%、好ましくは、少なくとも91%、好ましくは、少なくとも92%、好ましくは、少なくとも93%、好ましくは、少なくとも94%、好ましくは、少なくとも95%、好ましくは、少なくとも96%、好ましくは、少なくとも97%、好ましくは、少なくとも98%、好ましくは、少なくとも99%、または、好ましくは、100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になるC1rLPである。ある実施形態では、セリンプロテアーゼまたはその機能的変異体は、例えば、最適のアライメントまたは最良適合解析の後で、配列番号4に対する、少なくとも80%、好ましくは、少なくとも85%、好ましくは、少なくとも86%、好ましくは、少なくとも87%、好ましくは、少なくとも88%、好ましくは、少なくとも89%、好ましくは、少なくとも90%、好ましくは、少なくとも91%、好ましくは、少なくとも92%、好ましくは、少なくとも93%、好ましくは、少なくとも94%、好ましくは、少なくとも95%、好ましくは、少なくとも96%、好ましくは、少なくとも97%、好ましくは、少なくとも98%、好ましくは、少なくとも99%、または、好ましくは、100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になるC1rLPである。ある実施形態では、セリンプロテアーゼまたはその機能的変異体は、例えば、最適のアライメントまたは最良適合解析の後で、配列番号5に対する、少なくとも80%、好ましくは、少なくとも85%、好ましくは、少なくとも86%、好ましくは、少なくとも87%、好ましくは、少なくとも88%、好ましくは、少なくとも89%、好ましくは、少なくとも90%、好ましくは、少なくとも91%、好ましくは、少なくとも92%、好ましくは、少なくとも93%、好ましくは、少なくとも94%、好ましくは、少なくとも95%、好ましくは、少なくとも96%、好ましくは、少なくとも97%、好ましくは、少なくとも98%、好ましくは、少なくとも99%、または、好ましくは、100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になるC1rLPである。ある実施形態では、セリンプロテアーゼまたはその機能的変異体は、例えば、最適のアライメントまたは最良適合解析の後で、配列番号6に対する、少なくとも80%、好ましくは、少なくとも85%、好ましくは、少なくとも86%、好ましくは、少なくとも87%、好ましくは、少なくとも88%、好ましくは、少なくとも89%、好ましくは、少なくとも90%、好ましくは、少なくとも91%、好ましくは、少なくとも92%、好ましくは、少なくとも93%、好ましくは、少なくとも94%、好ましくは、少なくとも95%、好ましくは、少なくとも96%、好ましくは、少なくとも97%、好ましくは、少なくとも98%、好ましくは、少なくとも99%、または、好ましくは、100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になるC1rLPである。ある実施形態では、セリンプロテアーゼまたはその機能的変異体は、例えば、最適のアライメントまたは最良適合解析の後で、配列番号7に対する、少なくとも80%、好ましくは、少なくとも85%、好ましくは、少なくとも86%、好ましくは、少なくとも87%、好ましくは、少なくとも88%、好ましくは、少なくとも89%、好ましくは、少なくとも90%、好ましくは、少なくとも91%、好ましくは、少なくとも92%、好ましくは、少なくとも93%、好ましくは、少なくとも94%、好ましくは、少なくとも95%、好ましくは、少なくとも96%、好ましくは、少なくとも97%、好ましくは、少なくとも98%、好ましくは、少なくとも99%、または、好ましくは、100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になるC1rLPである。
【0105】
医薬組成物およびその使用
本開示はまた、本明細書で記載される方法に従い調製される、治療有効量の、組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片を含み、場合により、薬学的に許容される担体を含む医薬組成物へも拡張される。
【0106】
本開示はまた、(i)ハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片、および(ii)N末端切断型ハプトグロビンアルファ鎖を含み、N末端切断型ハプトグロビンアルファ鎖は、ハプトグロビンアルファ鎖の少なくとも14の連続C末端アミノ酸残基を含み、ハプトグロビンアルファ鎖の少なくとも14の連続C末端アミノ酸残基は、ハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片と非連続であり、N末端切断型ハプトグロビンアルファ鎖は、ハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片へと接合されている、組換えヘモグロビン結合性分子へも拡張される。「非連続的」とは、組換えヘモグロビン結合性分子が、天然proHpのアルファ鎖と、ベータ鎖とを架橋するアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を含まないことを意味する。
【0107】
ある実施形態では、組換えヘモグロビン結合性分子の、N末端切断型ハプトグロビンアルファ鎖は、ハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片内のシステイン残基と、ハプトグロビンアルファ鎖の少なくとも14の連続C末端アミノ酸残基の中のシステイン残基との間で形成されるジスルフィド結合により、本明細書で記載される、ハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片へと接合されている。ある実施形態では、ハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片は、配列番号1のアミノ酸残基162~406との、少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0108】
別の実施形態では、ヘモグロビン結合性分子は、さらなる機能的部分をさらに含む。ある実施形態では、さらなる機能的部分は、N末端切断型ハプトグロビンアルファ鎖へと接合されている。当業者は、適切な機能的部分について熟知しており、それについての例示的な例は、本明細書の他の箇所に記載されている。ある実施形態では、さらなる機能的部分は、ヘム結合性部分、免疫グロブリンのFcドメインまたはそのFcRn結合性断片、およびアルブミンからなる群から選択される。ある実施形態では、さらなる機能的部分は、ヘム結合性部分である。好ましい実施形態では、ヘム結合性部分は、ヘモペキシンまたはそのヘム結合性断片である。
【0109】
ある実施形態では、組成物は、約2μM~約20mMの組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片を含む。ある実施形態では、組成物は、約2μM~約5mMの組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片を含む。ある実施形態では、組成物は、約100μM~約5mMの組換えハプトグロビンベータ鎖もしくはそのヘモグロビン結合性断片、またはこれらの機能的類似体を含む。ある実施形態では、組成物は、約2μM~約300μMの組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片を含む。ある実施形態では、組成物は、約5μM~約50μMの組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片を含む。ある実施形態では、組成物は、約10μM~約30μMの組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片を含む。
【0110】
本明細書で開示される医薬組成物は、任意の適切な投与経路のために製剤化され、その例示的な例は、血管内投与、髄腔内投与、頭蓋内投与、および脳室内投与を含む。
【0111】
ある実施形態では、本明細書で開示される医薬組成物は、髄腔内投与のために製剤化される。当業者は、適切な髄腔内送達系について熟知しており、それについての例示的な例は、その内容が、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる、Kilburnら(2013、「Intrathecal Administration」、Rudek M.、Chau C.、Figg W.、McLeod H.(編)、「Handbook of Anticancer Pharmacokinetics and Pharmacodynamics.Cancer Drug Discovery and Development」、Springer、New York、NY)により記載されている。
【0112】
別の実施形態では、本明細書で開示される医薬組成物は、頭蓋内投与のために製剤化される。当業者は、適切な頭蓋内送達系について熟知しており、それについての例示的な例は、その内容が、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる、Upadhyayら(2014、PNAS、111(45):16071~16076)により記載されている。
【0113】
別の実施形態では、本明細書で開示される医薬組成物は、脳室内投与のために製剤化される。当業者は、適切な脳室内送達系について熟知しており、それについての例示的な例は、その内容が、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる、Cookら(2009、Pharmacotherapy.29(7):832~845)により記載されている。
【0114】
本開示はまた、本明細書で記載される医薬組成物の単位剤形へも拡張される。適切な医薬組成物およびその単位剤形は、さらなる活性化合物または主要成分を伴うか、またはこれを伴わずに、常套的比率で常套的成分を含むことが可能であり、このような単位剤形は、利用されることが意図される、毎日の投与量範囲に見合う、任意の適切な有効量の有効成分を含有しうる。
【0115】
本明細書で記載される組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片、およびこれを含む医薬組成物は、出血性脳卒中、鎌状赤血球病、赤血球溶解、および異常ヘモグロビン症を含むがこれらに限定されない、無細胞ヘモグロビン(Hb)と関連する状態の処置のために使用される。
【0116】
出血性脳卒中は、典型的に、局所的出血(bleeding)(出血(haemorrhage))を引き起こす、脳内血管の破断により特徴付けられる。出血の位置は、変動する場合があり、出血性脳卒中の種類は、この位置により特徴付けられる。出血性脳卒中の例は、i)脳内血管の破裂を伴う、脳内出血;ii)脳血管系への出血である、脳室内出血;およびiii)くも膜下腔として公知である、脳と、脳を覆う組織との間の空隙内の出血を伴う、くも膜下出血(SAH)を含む。SAHは、動脈瘤性くも膜下出血(aSAH)と称される、動脈瘤破裂により引き起こされることが最も多い。SAHの他の原因は、頭部損傷、出血障害、および抗凝血剤の使用を含む。出血性脳卒中は、当業者が熟知している通り、自然経過、評価、および管理が異なる、ある範囲の病態からなる。一般に、病因に応じて、原発性出血性脳卒中、または続発性出血性脳卒中と類別される。
【0117】
当業者は、対象における出血性脳卒中を診断し、特に、SAHを診断する方法について熟知しており、それについての例示的な例は、脳血管造影、コンピュータ断層撮影(CT)、ならびに対象のCSF中における、oxyHbおよびビリルビンについての分光光度解析(例えば、Cruickshank AM.、2001、「ACP Best Practice No 166」、J.Clin.Path.、54(11):827~830を参照されたい)を含む。
【0118】
当業者により、出血性脳卒中は、自発性出血(例えば、動脈瘤の破裂の結果としての)の場合もあり、外傷性出血(例えば、頭部に対する外傷の結果としての)の場合もあることが理解されるであろう。ある実施形態では、出血性脳卒中は、また、非外傷性出血としても公知である、自発性出血である。ある実施形態では、出血性脳卒中は、外傷性出血である。
【0119】
一部の実施形態では、出血性脳卒中は、脳室内出血またはくも膜下出血である。くも膜下出血は、動脈瘤性くも膜下出血(aSAH)でありうる。
【0120】
異常ヘモグロビン症とは、ヘモグロビンに影響を及ぼす遺伝子異常により特徴付けられる遺伝性障害群である。これらの異常は、αグロビン遺伝子内、またはβグロビン遺伝子内の、突然変異および/または欠失により引き起こされる。異常ヘモグロビン症の例は、ヘモグロビン内の構造異常と関連する、鎌状赤血球病、およびヘモグロビン産生の不全と関連する、サラセミアを含む。赤血球溶解および無細胞Hbの放出と関連する、他の異常ヘモグロビン症も、当業者に公知である。αグロビン鎖合成の欠損と関連するのか、βグロビン鎖合成の欠損と関連するのかに応じて、広く、αサラセミアおよびβサラセミアとして類別されるサラセミアには、多くの形態が見られる。異常ヘモグロビン症の各障害は、当業者が熟知している通り、自然経過、評価、および管理が異なる、固有かつ高度に可変的な病態と関連する。当業者は、対象における異常ヘモグロビン症を診断する方法について熟知しているであろう。例えば、診断は、赤血球指数を伴う赤血球数、ならびにヘモグロビンについての電気泳動および/またはクロマトグラフィーなどのヘモグロビン検査に続き、該当する場合におけるDNA検査を伴いうる。
【0121】
一部の実施形態では、異常ヘモグロビン症は、鎌状赤血球病である。他の実施形態では、異常ヘモグロビン症は、サラセミアである。サラセミアは、α-サラセミアの場合もあり、β-サラセミアの場合もある。
【0122】
当業者は、本明細書で開示される組換えハプトグロビンベータ鎖もしくはそのヘモグロビン結合性断片、または医薬組成物が、無細胞Hbと関連する、任意の疾患、状態、または障害の処置または防止における使用に適することを理解するであろう。このような疾患、状態、および障害は、当業者に公知である。
【0123】
本明細書で使用される、「治療有効量」という用語は、組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片の量または濃度が、Hpが、存在する無細胞Hbに結合し、この無細胞Hbと複合体を形成することを可能とし、これにより、中和しなければ有害である、無細胞Hbの生物学的作用を中和するのに十分であることを意味する。当業者により、ペプチドの治療有効量は、それらについての例示的な例が、組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片が、対象へと、直接投与(例えば、血管内投与、髄腔内投与、頭蓋内投与、または脳室内投与)されるのか、医薬組成物として投与されるのか、処置される対象の健康状態および全身状態、処置される対象の分類群、状態の重症度(例えば、出血の程度)、投与経路、中和される無細胞Hbの濃度および/または量、ならびに前出のうちのいずれかの組合せを含む、いくつかの因子に応じて変動しうることが理解されるであろう。
【0124】
本明細書では、「~を処置すること」、「処置」、「~を処置する」などの用語は、無細胞Hbと関連する状態と関連する1つまたはそれ以上の症状を和らげるか、最小化するか、軽減するか、緩和するか、改善するか、または他の形で阻害することを意味するように、互換的に使用される。本明細書では、「~を処置すること」、「処置」などの用語はまた、無細胞Hbと関連する状態の発生を防止すること、または無細胞Hbと関連する状態を発症する素因があるか、もしくはこの危険性があるが、未だ、それを有すると診断されていない対象における、無細胞Hbと関連する状態の発症もしくは後続の進行を遅延させることを意味するようにも、互換的に使用される。この文脈では、「~を処置すること」、「処置」などの用語は、「予防」、「予防的」、および「防止的」などの用語と、互換的に使用される。しかし、本明細書で開示される方法は、処置される対象において、無細胞Hbと関連する状態が生じることを、完全に防止する必要はないことを理解されたい。本明細書で開示される方法は、対象における無細胞Hbと関連する状態を、処置の非存在下で、それらが他の形で観察される場合より、症状の減少および/または有害症状の重症度の低下が見られる程度に和らげるか、軽減するか、緩和するか、改善するか、または他の形で阻害すれば十分でありうる。したがって、本明細書で記載される方法は、無細胞Hbと関連する状態の数および/または重症度を低減しうる。
【0125】
組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片の治療有効量は、典型的に、当業者により決定される、比較的広範な範囲内に収まるであろう。組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片の適切な治療有効量についての例示的な例は、約2μM~約20mM、好ましくは、約2μM~約5mM、好ましくは、約100μM~約5mM、好ましくは、約2μM~約300μM、好ましくは、約5μM~約100μM、好ましくは、約5μM~約50μM、または、より好ましくは、約10μM~約30μMを含む。
【0126】
ある実施形態では、組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片の治療有効量は、約2μM~約20mMである。ある実施形態では、組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片の治療有効量は、約2μM~約5mMである。ある実施形態では、組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片の治療有効量は、約100μM~約5mMである。ある実施形態では、組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片の治療有効量は、約2μM~約300μMである。ある実施形態では、組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片の治療有効量は、約5μM~約50μMである。ある実施形態では、組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片の治療有効量は、約10μM~約30μMである。
【0127】
ある実施形態では、組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片の治療有効量は、Hb中和される無細胞の濃度と、少なくとも等モル量である。出血性脳卒中の場合、組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片の治療有効量は、CSF中に、約3μM~約300μMの無細胞Hbを複合体化させるのに十分な量である。CSF中の、無細胞Hbの濃度を測定する、適切な方法は、当業者に公知であり、それについての例示的な例は、その内容が、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる、Cruickshank AM.、2001、「ACP Best Practice No 166」、J.Clin.Path.、54(11):827~830;およびHugelshofer M.ら、2018、World Neurosurg.、120:e660~e666において記載されている。
【0128】
組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片の投与量はまた、最適の治療応答をもたらすようにも調整される。例えば、いくつかの分割用量が、毎日の、毎週、もしくは他の適切な時間間隔で投与されるか、または投与量は、状況の要請により指し示されるのに応じて低減される。
【0129】
ある実施形態では、組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片の投与量は、無細胞Hbを実質的に中和するのに十分である。「~を実質的に中和する」とは、本明細書で記載される、治療用組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片の非存在下における、無細胞Hbの生物学的効果と比較した、少なくとも10%、好ましくは、約10%~約20%、好ましくは、約15%~約25%、好ましくは、約20%~約30%、好ましくは、約25%~約35%、好ましくは、約30%~約40%、好ましくは、約35%~約45%、好ましくは、約40%~約50%、好ましくは、約45%~約55%、好ましくは、約50%~約60%、好ましくは、約55%~約65%、好ましくは、約60%~約70%、好ましくは、約65%~約75%、好ましくは、約70%~約80%、好ましくは、約75%~約85%、好ましくは、約80%~約90%、好ましくは、約85%~約95%、または、最も好ましくは、約90%~100%の低減百分率として、主観的に、または定性的に表される、無細胞Hbの量の低減であって、少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%の低減を含む低減を意味する。当業者は、無細胞Hbの量が、(定性的に、または定量的に)測定または決定される方法について熟知しているであろう。
【0130】
本発明はまた、対象における無細胞ヘモグロビン(Hb)と関連する状態を処置または防止する方法であって、それを必要とする対象へと、本明細書で記載される方法に従い調製された、治療有効量の、組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片を、ハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片が、無細胞Hbと複合体を形成し、これにより、無細胞Hbを中和することを可能とするのに十分な期間にわたり投与する工程を含む方法も提供する。
【0131】
本明細書で記載されるハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片、および医薬組成物は、当技術分野で公知である、任意の適切な方法により、対象へと投与される。例えば、本明細書で記載されるハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片、および医薬組成物は、経口送達、注射による送達、非経口送達、皮下送達、静脈内送達、硝子体内送達、または筋内送達投与される。一部の実施形態では、ハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片、および医薬組成物はまた、持続送達のためにも製剤化される。
【0132】
ある実施形態では、方法は、対象へと、治療有効量の、組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片を、血管内投与する工程を含む。
【0133】
ある実施形態では、方法は、対象へと、治療有効量の、組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片を、頭蓋内投与する工程を含む。
【0134】
ある実施形態では、方法は、対象へと、治療有効量の、組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片を、髄腔内投与する工程を含む。ある実施形態では、方法は、対象の脊柱管へと、治療有効量の、組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片を、髄腔内投与する工程を含む。ある実施形態では、方法は、対象のくも膜下腔へと、治療有効量の、組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片を、髄腔内投与する工程を含む。
【0135】
ある実施形態では、方法は、対象へと、治療有効量の、組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片を、脳室内投与する工程を含む。
【0136】
本明細書で使用される、「対象」という用語は、処置または予防が所望される哺乳動物対象を指す。適切な対象の例示的な例は、霊長動物、とりわけ、ヒト、ネコおよびイヌなどの愛玩動物、ウマ、ロバなどの作業動物、ヒツジ、ウシ、ヤギ、ブタなどの家畜、ウサギ、マウス、ラット、モルモット、ハムスターなどの実験動物、ならびにシカ、ディンゴなど、動物園および野生動物公園における捕獲野生動物などの捕獲野生動物を含む。ある実施形態では、対象は、ヒトである。さらなる実施形態では、対象は、(i)出生~約2歳、(ii)約2~約12歳、または(iii)約12~約21歳の年齢の小児科患者である。
【0137】
本開示はまた、対象における無細胞ヘモグロビン(Hb)と関連する状態の処置または防止のための医薬の製造における、本明細書で記載される方法に従い調製される、治療有効量の、組換えハプトグロビンベータ鎖またはそのヘモグロビン結合性断片の使用へも拡張される。
【0138】
補助治療
本明細書で記載される、無細胞Hbと関連する状態を処置または防止する方法は、無細胞Hbと関連する状態を低減、阻害、防止するか、または他の形で緩和するようにデザインされた、1つまたはそれ以上の別の処置戦略と併せて、逐次的に実施されると適切な場合もあり、組み合わせて(例えば、同時に)実施されると適切な場合もある。ある実施形態では、本明細書で記載される方法は、対象へと、赤血球溶解および無細胞Hbの放出と関連する状態を処置または防止するための、少なくとも1つのさらなる治療剤を投与する工程をさらに含む。当業者は、無細胞ヘモグロビン(Hb)と関連する、1つまたはそれ以上の状態を処置または防止するための、適切な補助治療および治療剤について熟知しており、それについての例示的な例は、
(i)凝血障害の是正:例えば、ビタミンKアンタゴニスト(VKA)、新規経口抗凝血剤(ダビガトラン、リバーロキサバン、およびアピキサバンなどのNOAC)、FEIBA(Factor VIII inhibitor bypass activity)、および活性化組換え第VII因子(rFVIIa)、プロトロンビン複合体濃縮製剤、活性炭、抗血小板療法(APT)、およびアスピリン単剤療法を使用する;
(ii)降圧:例えば、それについての例示的な例が、(i)クロルサリドン、クロルチアジド、ジクロロフェンアミド、ヒドロフルメチアジド、インダパミド、およびヒドロクロロチアジドを含むチアジド;ブメタニド、エタクリン酸、フロセミド、およびトルセミドなどのループ利尿剤;アミロリドおよびトリアムテレンなどのカリウム保持剤;およびスピロノラクトン、エピレノンなどのアルドステロンアンタゴニストなどの利尿剤;(ii)アセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、ベバントロール、ビソプロロール、ボピンドロール、カルテオロール、カルベジロール、セリプロロール、エスモロール、インデノロール、メタプロロール、ナドロール、ネビボロール、ペンブトロール、ピンドロール、プロパノロール、ソタロール、テルタトロール、チリソロール、およびチモロールなどのベータ遮断剤;(iii)アムロジピン、アラニジピン、アゼルニジピン、バルニジピン、ベニジピン、ベプリジル、シナルジピン、クレビジピン、ジルチアゼム、エホニジピン、フェロジピン、ガロパミル、イスラジピン、ラシジピン、レミルジピン、レルカニジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニルバジピン、ニモデピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、マニジピン、プラニジピン、およびベラパミルなどのカルシウムチャネル遮断剤;(iv)ベナゼプリル;カプトプリル;シラザプリル;デラプリル;エナラプリル;ホシノプリル;イミダプリル;ロシノプリル;モエキシプリル;キナプリル;キナプリラト;ラミプリル;ペリンドプリル;ペリンドロプリル;クァニプリル;スピラプリル;テノカプリル;トランドラプリル、およびゾフェノプリルなどのアンジオテンシン転換酵素(ACE)阻害剤;(v)オマパトリラト、カドキサトリルおよびエカドトリル、フォシドトリル、サムパトリラト、AVE7688、ER4030などの中性エンドペプチダーゼ阻害剤;(vi)テゾセンタン、A308165、およびYM62899などのエンドセリンアンタゴニスト;(vii)ヒドララジン、クロニジン、ミノキシジル、およびニコチニルアルコールなどの血管拡張剤;(viii)カンデサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、プラトサルタン、タソサルタン、テルミサルタン、バルサルタン、ならびにEXP-3137、FI6828K、およびRNH6270、などのアンジオテンシンII受容体アンタゴニスト;(ix)ニプラジロール、アロチノロール、およびアモスラロールなどのα/β遮断剤;(x)テラゾシン、ウラピジル、プラゾシン、ブナゾシン、トリマゾシン、ドキサゾシン、ナフトピジル、インドラミン、WHIP164、およびXENOlOなどのアルファ1遮断剤;ならびに(xi)ロフェキシジン、チアメニジン、モキソニジン、リルメニジン、およびグアノベンズなどのアルファ2アゴニストを含む降圧剤;
(ii-b)血管拡張剤:例えば、ヒドララジン(アプレゾリン)、クロニジン(カタプレス)、ミノキシジル(ロニテン)、ニコチニルアルコール(ロニアコール)、シドノン、およびニトロプルシドナトリウム;
(iii)発作、グルコース、および温度の管理:例えば、抗てんかん薬、血中グルコースレベルを制御するインスリン注入、正常体温の維持および低体温療法;
(iv)手術による処置:例えば、血腫除去(手術による血栓除去)、減圧開頭術(DC)、低侵襲手術(MIS;大脳基底核出血の針吸引など)、組換え組織型プラスミノーゲン活性化因子(rtPA)を伴うMIS;
(v)手術のタイミング:例えば、発症の4~96時間後;
(vi)トロンビン阻害:例えば、ヒルジン、アルガトロバン、セリンプロテアーゼ阻害剤(例えば、ナファモスタットメシル酸塩);
(vii)ヘムおよび鉄毒性の防止:例えば、スズ-メソポルフィリンなどの非特異的ヘムオキシゲナーゼ(HO)阻害剤、デフェロキサミンなどの鉄キレート剤;
(viii)PPARgアンタゴニストおよびアゴニスト:例えば、ロシグリタゾン、15d-PGJ2、およびピオグリタゾン;
(ix)ミクログリア活性化の阻害:例えば、ツフツシン断片1~3(ミクログリア/マクロファージ阻害因子)またはミノサイクリン(テトラサイクリンクラスの抗生剤);
(x)Nrf2(NF-erythroid-2-related factor 2)の上方調節;
(xi)シクロオキシゲナーゼ(COX)の阻害:例えば、セレコキシブ(選択的COX-2阻害剤);
(xii)マトリックスメタロプロテイナーゼ;
(xiii)TNF-αモジュレーター:例えば、CGS21680などのアデノシン受容体アゴニスト、ORF4-PEなどのTNF-α特異的アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド;
(xiv)昇圧:例えば、カテコールアミン;および
(xv)TLR4シグナル伝達の阻害剤:例えば、抗体である、Mts510およびTAK-242(シクロヘキサン誘導体)
を含む。
【0139】
ある実施形態では、さらなる治療剤は、本明細書の他の箇所で記載される通り、N末端切断型proHpが、連結されているか、コンジュゲートされているか、テザリングされているか、または他の形で接合されている、1つまたはそれ以上の機能的部分である。ある実施形態では、さらなる治療剤は、免疫グロブリンFc領域またはそのFc受容体結合性断片、アルブミンまたはその断片、ヘモペキシン、トランスフェリンまたはその断片、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのC末端ペプチド、XTEN配列、ホモアミノ酸リピート(HAP)、プロリン-アラニン-セリンリピート(PAS)、アファミン、アルファ-フェトタンパク質、ビタミンD結合性タンパク質、生理学的条件下で、アルブミンまたは免疫グロブリン定常領域に結合することが可能であるポリペプチド、新生児Fc受容体(FcRn)、特に、免疫グロブリン定常領域およびその部分、好ましくは、免疫グロブリンのFc部分に結合することが可能であるポリペプチド、ならびに前出のうちのいずれかの組合せからなる群から選択される。別の実施形態では、機能的部分は、ヒドロキシルエチルデンプン(HES)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリシアル酸(PSA)、エラスチン様ポリペプチド、ヘパロサンポリマー、ヒアルロン酸およびアルブミン結合性リガンド、例えば、脂肪酸鎖、および前出のうちのいずれかの組合せからなる群から選択される。
【0140】
ある実施形態では、さらなる治療剤は、血管拡張剤である。当業者は、適切な血管拡張剤について熟知しており、それについての例示的な例は、シドノンおよびニトロプルシドナトリウムを含む。したがって、本明細書で開示される、ある実施形態では、さらなる治療剤は、シドノンおよびニトロプルシドナトリウムからなる群から選択される。
【0141】
鎌状赤血球病およびα-サラセミアまたはβ-サラセミアなど、異常ヘモグロビン症の処置に適する補助治療は、骨髄移植および/または輸血を含む。鎌状赤血球病の症状を処置するのに使用される、さらなる治療剤は、鎮痛剤、抗生剤、ACE阻害剤、ヒドロキシ尿素、L-グルタミン、鉄キレート剤、葉酸、ヘモグロビン酸素アフィニティーモジュレーター(例えば、ボクセロトール)、および抗体(例えば、クリザンルズマブ)を含みうる。
【0142】
当業者は、本明細書で記載される本発明が、具体的に記載された変動および改変以外の変動および改変の下に置かれることを承知しているであろう。本明細書で記載される本発明は、全てのこのような変動および改変を含むことが理解されるものとする。本発明はまた、本明細書で、個別に、または集合的に言及されるか、または指し示される、全てのこのような工程、構成、方法、組成物、および化合物、ならびに前記の工程または構成のうちのいずれか2つまたはそれ以上の、任意の組合せおよび全ての組合せも含む。
【0143】
ここで、例示だけを目的とすることが意図され、本明細書の前出で記載された一般性の範囲を限定することは意図されない、以下の実施例に言及しながら、本発明のある特定の実施形態が記載される。
【0144】
配列表:
配列番号1:ハプトグロビン2FSヒトHpアイソフォーム1の前駆体であるproHp;NP_005134
1 MSALGAVIAL LLWGQLFAVD SGNDVTDIAD DGCPKPPEIA HGYVEHSVRY QCKNYYKLRT
61 EGDGVYTLND KKQWINKAVG DKLPECEADD GCPKPPEIAH GYVEHSVRYQ CKNYYKLRTE
121 GDGVYTLNNE KQWINKAVGD KLPECEAVCG KPKNPANPVQ RILGGHLDAK GSFPWQAKMV
181 SHHNLTTGAT LINEQWLLTT AKNLFLNHSE NATAKDIAPT LTLYVGKKQL VEIEKVVLHP
241 NYSQVDIGLI KLKQKVSVNE RVMPICLPSK DYAEVGRVGY VSGWGRNANF KFTDHLKYVM
301 LPVADQDQCI RHYEGSTVPE KKTPKSPVGV QPILNEHTFC AGMSKYQEDT CYGDAGSAFA
361 VHDLEEDTWY ATGILSFDKS CAVAEYGVYV KVTSIQDWVQ KTIAEN
配列番号2:ヒトHpアイソフォーム2の前駆体であるproHp;NP_001119574
1 MSALGAVIAL LLWGQLFAVD SGNDVTDIAD DGCPKPPEIA HGYVEHSVRY QCKNYYKLRT
61 EGDGVYTLNN EKQWINKAVG DKLPECEAVC GKPKNPANPV QRILGGHLDA KGSFPWQAKM
121 VSHHNLTTGA TLINEQWLLT TAKNLFLNHS ENATAKDIAP TLTLYVGKKQ LVEIEKVVLH
181 PNYSQVDIGL IKLKQKVSVN ERVMPICLPS KDYAEVGRVG YVSGWGRNAN FKFTDHLKYV
241 MLPVADQDQC IRHYEGSTVP EKKTPKSPVG VQPILNEHTF CAGMSKYQED TCYGDAGSAF
301 AVHDLEEDTW YATGILSFDK SCAVAEYGVY VKVTSIQDWV QKTIAEN
配列番号3:ヒトHpアイソフォーム3の前駆体であるproHp;NP_001305067
1 MSALGAVIAL LLWGQLFAVD SGNDVTDIAD DGCPKPPEIA HGYVEHSVRY QCKNYYKLRT
61 EGDGVYTLND KKQWINKAVG DKLPECEAVC GKPKNPANPV QRILGGHLDA KGSFPWQAKM
121 VSHHNLTTGA TLINEQWLLT TAKNLFLNHS ENATAKDIAP TLTLYVGKKQ LVEIEKVVLH
181 PNYSQVDIGL IKLKQKVSVN ERVMPICLPS KDYAEVGRVG YVSGWGRNAN FKFTDHLKYV
241 MLPVADQDQC IRHYEGSTVP EKKTPKSPVG VQPILNEHTF CAGMSKYQED TCYGDAGSAF
301 AVHDLEEDTW YATGILSFDK SCAVAEYGVY VKVTSIQDWV QKTIAEN
配列番号4:ヒトC1r-LP;NP_057630
1 MPGPRVWGKY LWRSPHSKGC PGAMWWLLLW GVLQACPTRG SVLLAQELPQ QLTSPGYPEP
61 YGKGQESSTD IKAPEGFAVR LVFQDFDLEP SQDCAGDSVT ISFVGSDPSQ FCGQQGSPLG
121 RPPGQREFVS SGRSLRLTFR TQPSSENKTA HLHKGFLALY QTVAVNYSQP ISEASRGSEA
181 INAPGDNPAK VQNHCQEPYY QAAAAGALTC ATPGTWKDRQ DGEEVLQCMP VCGRPVTPIA
241 QNQTTLGSSR AKLGNFPWQA FTSIHGRGGG ALLGDRWILT AAHTIYPKDS VSLRKNQSVN
301 VFLGHTAIDE MLKLGNHPVH RVVVHPDYRQ NESHNFSGDI ALLELQHSIP LGPNVLPVCL
361 PDNETLYRSG LLGYVSGFGM EMGWLTTELK YSRLPVAPRE ACNAWLQKRQ RPEVFSDNMF
421 CVGDETQRHS VCQGDSGSVY VVWDNHAHHW VATGIVSWGI GCGEGYDFYT KVLSYVDWIK
481 GVMNGKN
配列番号5:ヒトC1r-LP;NP_001284569
1 MPGPRVWGKY LWRSPHSKGC PGAMWWLLLW GVLQACPTRG SVLLAQELPQ QLTSPGYPEP
61 YGKGQESSTD IKAPEGFAVR LVFQDFDLEP SQDCAGDSVT ISFVGSDPSQ FCGQQGSPLG
121 RPPGQREFVS SGRSLRLTFR TQPSSENKTA HLHKGFLALY QTVGALTCAT PGTWKDRQDG
181 EEVLQCMPVC GRPVTPIAQN QTTLGSSRAK LGNFPWQAFT SIHGRGGGAL LGDRWILTAA
241 HTIYPKDSVS LRKNQSVNVF LGHTAIDEML KLGNHPVHRV VVHPDYRQNE SHNFSGDIAL
301 LELQHSIPLG PNVLPVCLPD NETLYRSGLL GYVSGFGMEM GWLTTELKYS RLPVAPREAC
361 NAWLQKRQRP EVFSDNMFCV GDETQRHSVC QGDSGSVYVV WDNHAHHWVA TGIVSWGIGC
421 GEGYDFYTKV LSYVDWIKGV MNGKN
配列番号6:ヒトC1r-LP;NP_001284571
1 MPGPRVWGKY LWRSPHSKGC PGAMWWLLLW GVLQACPTRG SVLLAQELPQ QLTSPGYPEP
61 YGKGQESSTD IKAPEGFAVR LVFQDFDLEP SQDCAGDSVT ISFVGSDPSQ FCGQQGSPLG
121 RPPGQREFVS SGRSLRLTFR TQPSSENKTA HLHKGFLALY QTVAVNYSQP ISEASRGSEA
181 INAPGDNPAK VQNHCQEPYY QAAAAASTPS LFLCLSSFTP QGHSPVQPQG PGKTDRMGRR
241 FFSVCLSADG QSPPLPRIRR PSVLPEPSWA TSPGKPSPVS TAVGAGPCWG TDGSSLLPTP
301 STPRTVFLSG RTRV
配列番号7:ヒトC1r-LP;NP_001284572
1 MPGPRVWGKY LWRSPHSKGC PGAMWWLLLW GVLQACPTRG SVLLAQELPQ QLTSPGYPEP
61 YGKGQESSTD IKAPEGFAVR LVFQDFDLEP SQDCAGDSVT ISFVGSDPSQ FCGQQGSPLG
121 RPPGQREFVS SGRSLRLTFR TQPSSENKTA HLHKGFLALY QTVGECPSWG CREGASVPSH
181 DPGIFKP
配列番号8:Hpα鎖の14の連続C末端アミノ酸残基
VCGKPKNPANPVQR
配列番号9:ヒト血清アルブミン(HAS);NP_000468
1 MKWVTFISLL FLFSSAYSRG VFRRDAHKSE VAHRFKDLGE ENFKALVLIA FAQYLQQCPF
61 EDHVKLVNEV TEFAKTCVAD ESAENCDKSL HTLFGDKLCT VATLRETYGE MADCCAKQEP
121 ERNECFLQHK DDNPNLPRLV RPEVDVMCTA FHDNEETFLK KYLYEIARRH PYFYAPELLF
181 FAKRYKAAFT ECCQAADKAA CLLPKLDELR DEGKASSAKQ RLKCASLQKF GERAFKAWAV
241 ARLSQRFPKA EFAEVSKLVT DLTKVHTECC HGDLLECADD RADLAKYICE NQDSISSKLK
301 ECCEKPLLEK SHCIAEVEND EMPADLPSLA ADFVESKDVC KNYAEAKDVF LGMFLYEYAR
361 RHPDYSVVLL LRLAKTYETT LEKCCAAADP HECYAKVFDE FKPLVEEPQN LIKQNCELFE
421 QLGEYKFQNA LLVRYTKKVP QVSTPTLVEV SRNLGKVGSK CCKHPEAKRM PCAEDYLSVV
481 LNQLCVLHEK TPVSDRVTKC CTESLVNRRP CFSALEVDET YVPKEFNAET FTFHADICTL
541 SEKERQIKKQ TALVELVKHK PKATKEQLKA VMDDFAAFVE KCCKADDKET CFAEEGKKLV
601 AASQAALGL
配列番号10:ヒトCD163;NP_981961
1 MSKLRMVLLE DSGSADFRRH FVNLSPFTIT VVLLLSACFV TSSLGGTDKE LRLVDGENKC
61 SGRVEVKVQE EWGTVCNNGW SMEAVSVICN QLGCPTAIKA PGWANSSAGS GRIWMDHVSC
121 RGNESALWDC KHDGWGKHSN CTHQQDAGVT CSDGSNLEMR LTRGGNMCSG RIEIKFQGRW
181 GTVCDDNFNI DHASVICRQL ECGSAVSFSG SSNFGEGSGP IWFDDLICNG NESALWNCKH
241 QGWGKHNCDH AEDAGVICSK GADLSLRLVD GVTECSGRLE VRFQGEWGTI CDDGWDSYDA
301 AVACKQLGCP TAVTAIGRVN ASKGFGHIWL DSVSCQGHEP AIWQCKHHEW GKHYCNHNED
361 AGVTCSDGSD LELRLRGGGS RCAGTVEVEI QRLLGKVCDR GWGLKEADVV CRQLGCGSAL
421 KTSYQVYSKI QATNTWLFLS SCNGNETSLW DCKNWQWGGL TCDHYEEAKI TCSAHREPRL
481 VGGDIPCSGR VEVKHGDTWG SICDSDFSLE AASVLCRELQ CGTVVSILGG AHFGEGNGQI
541 WAEEFQCEGH ESHLSLCPVA PRPEGTCSHS RDVGVVCSRY TEIRLVNGKT PCEGRVELKT
601 LGAWGSLCNS HWDIEDAHVL CQQLKCGVAL STPGGARFGK GNGQIWRHMF HCTGTEQHMG
661 DCPVTALGAS LCPSEQVASV ICSGNQSQTL SSCNSSSLGP TRPTIPEESA VACIESGQLR
721 LVNGGGRCAG RVEIYHEGSW GTICDDSWDL SDAHVVCRQL GCGEAINATG SAHFGEGTGP
781 IWLDEMKCNG KESRIWQCHS HGWGQQNCRH KEDAGVICSE FMSLRLTSEA SREACAGRLE
841 VFYNGAWGTV GKSSMSETTV GVVCRQLGCA DKGKINPASL DKAMSIPMWV DNVQCPKGPD
901 TLWQCPSSPW EKRLASPSEE TWITCDNKIR LQEGPTSCSG RVEIWHGGSW GTVCDDSWDL
961 DDAQVVCQQL GCGPALKAFK EAEFGQGTGP IWLNEVKCKG NESSLWDCPA RRWGHSECGH
1021 KEDAAVNCTD ISVQKTPQKA TTGRSSRQSS FIAVGILGVV LLAIFVALFF LTKKRRQRQR
1081 LAVSSRGENL VHQIQYREMN SCLNADDLDL MNSSGGHSEP H
配列番号11:ヒトLRP1;NP_002323
1 MLTPPLLLLL PLLSALVAAA IDAPKTCSPK QFACRDQITC ISKGWRCDGE RDCPDGSDEA
61 PEICPQSKAQ RCQPNEHNCL GTELCVPMSR LCNGVQDCMD GSDEGPHCRE LQGNCSRLGC
121 QHHCVPTLDG PTCYCNSSFQ LQADGKTCKD FDECSVYGTC SQLCTNTDGS FICGCVEGYL
181 LQPDNRSCKA KNEPVDRPPV LLIANSQNIL ATYLSGAQVS TITPTSTRQT TAMDFSYANE
241 TVCWVHVGDS AAQTQLKCAR MPGLKGFVDE HTINISLSLH HVEQMAIDWL TGNFYFVDDI
301 DDRIFVCNRN GDTCVTLLDL ELYNPKGIAL DPAMGKVFFT DYGQIPKVER CDMDGQNRTK
361 LVDSKIVFPH GITLDLVSRL VYWADAYLDY IEVVDYEGKG RQTIIQGILI EHLYGLTVFE
421 NYLYATNSDN ANAQQKTSVI RVNRFNSTEY QVVTRVDKGG ALHIYHQRRQ PRVRSHACEN
481 DQYGKPGGCS DICLLANSHK ARTCRCRSGF SLGSDGKSCK KPEHELFLVY GKGRPGIIRG
541 MDMGAKVPDE HMIPIENLMN PRALDFHAET GFIYFADTTS YLIGRQKIDG TERETILKDG
601 IHNVEGVAVD WMGDNLYWTD DGPKKTISVA RLEKAAQTRK TLIEGKMTHP RAIVVDPLNG
661 WMYWTDWEED PKDSRRGRLE RAWMDGSHRD IFVTSKTVLW PNGLSLDIPA GRLYWVDAFY
721 DRIETILLNG TDRKIVYEGP ELNHAFGLCH HGNYLFWTEY RSGSVYRLER GVGGAPPTVT
781 LLRSERPPIF EIRMYDAQQQ QVGTNKCRVN NGGCSSLCLA TPGSRQCACA EDQVLDADGV
841 TCLANPSYVP PPQCQPGEFA CANSRCIQER WKCDGDNDCL DNSDEAPALC HQHTCPSDRF
901 KCENNRCIPN RWLCDGDNDC GNSEDESNAT CSARTCPPNQ FSCASGRCIP ISWTCDLDDD
961 CGDRSDESAS CAYPTCFPLT QFTCNNGRCI NINWRCDNDN DCGDNSDEAG CSHSCSSTQF
1021 KCNSGRCIPE HWTCDGDNDC GDYSDETHAN CTNQATRPPG GCHTDEFQCR LDGLCIPLRW
1081 RCDGDTDCMD SSDEKSCEGV THVCDPSVKF GCKDSARCIS KAWVCDGDND CEDNSDEENC
1141 ESLACRPPSH PCANNTSVCL PPDKLCDGND DCGDGSDEGE LCDQCSLNNG GCSHNCSVAP
1201 GEGIVCSCPL GMELGPDNHT CQIQSYCAKH LKCSQKCDQN KFSVKCSCYE GWVLEPDGES
1261 CRSLDPFKPF IIFSNRHEIR RIDLHKGDYS VLVPGLRNTI ALDFHLSQSA LYWTDVVEDK
1321 IYRGKLLDNG ALTSFEVVIQ YGLATPEGLA VDWIAGNIYW VESNLDQIEV AKLDGTLRTT
1381 LLAGDIEHPR AIALDPRDGI LFWTDWDASL PRIEAASMSG AGRRTVHRET GSGGWPNGLT
1441 VDYLEKRILW IDARSDAIYS ARYDGSGHME VLRGHEFLSH PFAVTLYGGE VYWTDWRTNT
1501 LAKANKWTGH NVTVVQRTNT QPFDLQVYHP SRQPMAPNPC EANGGQGPCS HLCLINYNRT
1561 VSCACPHLMK LHKDNTTCYE FKKFLLYARQ MEIRGVDLDA PYYNYIISFT VPDIDNVTVL
1621 DYDAREQRVY WSDVRTQAIK RAFINGTGVE TVVSADLPNA HGLAVDWVSR NLFWTSYDTN
1681 KKQINVARLD GSFKNAVVQG LEQPHGLVVH PLRGKLYWTD GDNISMANMD GSNRTLLFSG
1741 QKGPVGLAID FPESKLYWIS SGNHTINRCN LDGSGLEVID AMRSQLGKAT ALAIMGDKLW
1801 WADQVSEKMG TCSKADGSGS VVLRNSTTLV MHMKVYDESI QLDHKGTNPC SVNNGDCSQL
1861 CLPTSETTRS CMCTAGYSLR SGQQACEGVG SFLLYSVHEG IRGIPLDPND KSDALVPVSG
1921 TSLAVGIDFH AENDTIYWVD MGLSTISRAK RDQTWREDVV TNGIGRVEGI AVDWIAGNIY
1981 WTDQGFDVIE VARLNGSFRY VVISQGLDKP RAITVHPEKG YLFWTEWGQY PRIERSRLDG
2041 TERVVLVNVS ISWPNGISVD YQDGKLYWCD ARTDKIERID LETGENREVV LSSNNMDMFS
2101 VSVFEDFIYW SDRTHANGSI KRGSKDNATD SVPLRTGIGV QLKDIKVFNR DRQKGTNVCA
2161 VANGGCQQLC LYRGRGQRAC ACAHGMLAED GASCREYAGY LLYSERTILK SIHLSDERNL
2221 NAPVQPFEDP EHMKNVIALA FDYRAGTSPG TPNRIFFSDI HFGNIQQIND DGSRRITIVE
2281 NVGSVEGLAY HRGWDTLYWT SYTTSTITRH TVDQTRPGAF ERETVITMSG DDHPRAFVLD
2341 ECQNLMFWTN WNEQHPSIMR AALSGANVLT LIEKDIRTPN GLAIDHRAEK LYFSDATLDK
2401 IERCEYDGSH RYVILKSEPV HPFGLAVYGE HIFWTDWVRR AVQRANKHVG SNMKLLRVDI
2461 PQQPMGIIAV ANDTNSCELS PCRINNGGCQ DLCLLTHQGH VNCSCRGGRI LQDDLTCRAV
2521 NSSCRAQDEF ECANGECINF SLTCDGVPHC KDKSDEKPSY CNSRRCKKTF RQCSNGRCVS
2581 NMLWCNGADD CGDGSDEIPC NKTACGVGEF RCRDGTCIGN SSRCNQFVDC EDASDEMNCS
2641 ATDCSSYFRL GVKGVLFQPC ERTSLCYAPS WVCDGANDCG DYSDERDCPG VKRPRCPLNY
2701 FACPSGRCIP MSWTCDKEDD CEHGEDETHC NKFCSEAQFE CQNHRCISKQ WLCDGSDDCG
2761 DGSDEAAHCE GKTCGPSSFS CPGTHVCVPE RWLCDGDKDC ADGADESIAA GCLYNSTCDD
2821 REFMCQNRQC IPKHFVCDHD RDCADGSDES PECEYPTCGP SEFRCANGRC LSSRQWECDG
2881 ENDCHDQSDE APKNPHCTSQ EHKCNASSQF LCSSGRCVAE ALLCNGQDDC GDSSDERGCH
2941 INECLSRKLS GCSQDCEDLK IGFKCRCRPG FRLKDDGRTC ADVDECSTTF PCSQRCINTH
3001 GSYKCLCVEG YAPRGGDPHS CKAVTDEEPF LIFANRYYLR KLNLDGSNYT LLKQGLNNAV
3061 ALDFDYREQM IYWTDVTTQG SMIRRMHLNG SNVQVLHRTG LSNPDGLAVD WVGGNLYWCD
3121 KGRDTIEVSK LNGAYRTVLV SSGLREPRAL VVDVQNGYLY WTDWGDHSLI GRIGMDGSSR
3181 SVIVDTKITW PNGLTLDYVT ERIYWADARE DYIEFASLDG SNRHVVLSQD IPHIFALTLF
3241 EDYVYWTDWE TKSINRAHKT TGTNKTLLIS TLHRPMDLHV FHALRQPDVP NHPCKVNNGG
3301 CSNLCLLSPG GGHKCACPTN FYLGSDGRTC VSNCTASQFV CKNDKCIPFW WKCDTEDDCG
3361 DHSDEPPDCP EFKCRPGQFQ CSTGICTNPA FICDGDNDCQ DNSDEANCDI HVCLPSQFKC
3421 TNTNRCIPGI FRCNGQDNCG DGEDERDCPE VTCAPNQFQC SITKRCIPRV WVCDRDNDCV
3481 DGSDEPANCT QMTCGVDEFR CKDSGRCIPA RWKCDGEDDC GDGSDEPKEE CDERTCEPYQ
3541 FRCKNNRCVP GRWQCDYDND CGDNSDEESC TPRPCSESEF SCANGRCIAG RWKCDGDHDC
3601 ADGSDEKDCT PRCDMDQFQC KSGHCIPLRW RCDADADCMD GSDEEACGTG VRTCPLDEFQ
3661 CNNTLCKPLA WKCDGEDDCG DNSDENPEEC ARFVCPPNRP FRCKNDRVCL WIGRQCDGTD
3721 NCGDGTDEED CEPPTAHTTH CKDKKEFLCR NQRCLSSSLR CNMFDDCGDG SDEEDCSIDP
3781 KLTSCATNAS ICGDEARCVR TEKAAYCACR SGFHTVPGQP GCQDINECLR FGTCSQLCNN
3841 TKGGHLCSCA RNFMKTHNTC KAEGSEYQVL YIADDNEIRS LFPGHPHSAY EQAFQGDESV
3901 RIDAMDVHVK AGRVYWTNWH TGTISYRSLP PAAPPTTSNR HRRQIDRGVT HLNISGLKMP
3961 RGIAIDWVAG NVYWTDSGRD VIEVAQMKGE NRKTLISGMI DEPHAIVVDP LRGTMYWSDW
4021 GNHPKIETAA MDGTLRETLV QDNIQWPTGL AVDYHNERLY WADAKLSVIG SIRLNGTDPI
4081 VAADSKRGLS HPFSIDVFED YIYGVTYINN RVFKIHKFGH SPLVNLTGGL SHASDVVLYH
4141 QHKQPEVTNP CDRKKCEWLC LLSPSGPVCT CPNGKRLDNG TCVPVPSPTP PPDAPRPGTC
4201 NLQCFNGGSC FLNARRQPKC RCQPRYTGDK CELDQCWEHC RNGGTCAASP SGMPTCRCPT
4261 GFTGPKCTQQ VCAGYCANNS TCTVNQGNQP QCRCLPGFLG DRCQYRQCSG YCENFGTCQM
4321 AADGSRQCRC TAYFEGSRCE VNKCSRCLEG ACVVNKQSGD VTCNCTDGRV APSCLTCVGH
4381 CSNGGSCTMN SKMMPECQCP PHMTGPRCEE HVFSQQQPGH IASILIPLLL LLLLVLVAGV
4441 VFWYKRRVQG AKGFQHQRMT NGAMNVEIGN PTYKMYEGGE PDDVGGLLDA DFALDPDKPT
4501 NFTNPVYATL YMGGHGSRHS LASTDEKREL LGRGPEDEIG DPLA
配列番号12:ヒトヘモペキシン(Hpx);NP_000604
1 MARVLGAPVA LGLWSLCWSL AIATPLPPTS AHGNVAEGET KPDPDVTERC SDGWSFDATT
61 LDDNGTMLFF KGEFVWKSHK WDRELISERW KNFPSPVDAA FRQGHNSVFL IKGDKVWVYP
121 PEKKEKGYPK LLQDEFPGIP SPLDAAVECH RGECQAEGVL FFQGDREWFW DLATGTMKER
181 SWPAVGNCSS ALRWLGRYYC FQGNQFLRFD PVRGEVPPRY PRDVRDYFMP CPGRGHGHRN
241 GTGHGNSTHH GPEYMRCSPH LVLSALTSDN HGATYAFSGT HYWRLDTSRD GWHSWPIAHQ
301 WPQGPSAVDA AFSWEEKLYL VQGTQVYVFL TKGGYTLVSG YPKRLEKEVG TPHGIILDSV
361 DAAFICPGSS RLHIMAGRRL WWLDLKSGAQ ATWTELPWPH EKVDGALCME KSLGPNSCSA
421 NGPGLYLIHG PNLYCYSDVE KLNAAKALPQ PQNVTSLLGC TH
配列番号13:Hu-LRPAP1;NP_002328
1 MAPRRVRSFL RGLPALLLLL LFLGPWPAAS HGGKYSREKN QPKPSPKRES GEEFRMEKLN
61 QLWEKAQRLH LPPVRLAELH ADLKIQERDE LAWKKLKLDG LDEDGEKEAR LIRNLNVILA
121 KYGLDGKKDA RQVTSNSLSG TQEDGLDDPR LEKLWHKAKT SGKFSGEELD KLWREFLHHK
181 EKVHEYNVLL ETLSRTEEIH ENVISPSDLS DIKGSVLHSR HTELKEKLRS INQGLDRLRR
241 VSHQGYSTEA EFEEPRVIDL WDLAQSANLT DKELEAFREE LKHFEAKIEK HNHYQKQLEI
301 AHEKLRHAES VGDGERVSRS REKHALLEGR TKELGYTVKK HLQDLSGRIS RARHNEL
配列番号14:Hp1のα鎖と、Hp2のα鎖とに共通であるアミノ酸配列
VDSGNDVTDIADDGCPKPPEIAHGYVEHSVRYQCKNYYKLRTEGDGVYTLN
配列番号15:ヒトIgG4 Fc領域のアミノ酸配列
ESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
配列番号16:マウスIgG2a Fc領域のアミノ酸配列
APNLLGGPSVFIFPPKIKDVLMISLSPIVTCVVVDVSEDDPDVQISWFVNNVEVHTAQTQTHREDYNSTLRVVSALPIQHQDWMSGKEFKCKVNNKDLPAPIERTISKPKGSVRAPQVYVLPPPEEEMTKKQVTLTCMVTDFMPEDIYVEWTNNGKTELNYKNTEPVLDSDGSYFMYSKLRVEKKNWVERNSYSCSVVHEGLHNHHTTKSFSRTPGK
配列番号17:Hp1のα鎖と、Hp2のα鎖とに共通であるアミノ酸配列
NEKQWINKAVGDKLPECEAVCGKPKNPANPVQR
【0145】
【0146】
B.一般的手順
B.1.細胞の培養
Expi293F(商標)細胞および哺乳動物用発現ベクターであるpcDNA3.1は、Invitrogen(商標)、Thermo Fisher Scientific(R790-07、V790-20)から得た。細胞は、GIBCO(登録商標)Expi293 Expression Medium(Invitrogen(商標)、Thermo Fisher Scientific)中で培養した。全ての組織培養培地に、Antibiotic-Antimycotic(GIBCO(登録商標)、Thermo Fisher Scientific:15240-096)を補充し、細胞は、37℃、8%CO2の雰囲気を伴うインキュベーター内で維持した。
【0147】
B.2.抗体
His Tag抗体[FITC];GenScript;型番:A01620
ヤギ抗ヒトIgG[FITC];Southern Biotech
ハプトグロビンに対するポリクローナル抗体;Acris Antibodies;型番:AP08546PU-N
【0148】
B.3.cDNAプラスミドの作出
本明細書で使用される、多様なタンパク質のアミノ酸配列は、Genbank(登録商標)データベースに記録されており、受託番号を割り当てられている(下記の表1を参照されたい)。
【0149】
【0150】
各々が、開始メチオニンのすぐ上流(+1位)に、Kozakコンセンサス配列(Kozak1987)(GCCACC)を伴うcDNAを、ヒトにおける発現のために、Geneart(登録商標)(Invitrogen(商標)、Thermo Fisher Scientific)によりコドン最適化し、合成した。標準的なPCRベースの突然変異誘発法を使用して、変異体分子を作出した。各cDNAが完成したら、NheIおよびXhoIで消化し、pcDNA3.1(Invitrogen(商標)、Thermo Fisher Scientific)へとライゲーションした。製造元の指示書に従い、QIAGEN Plasmid Gigaキット(12191)を使用して、プラスミドDNAの大スケール調製を実行した。BigDye(商標) Terminator Version 3.1 Ready Reaction Cycle Sequencing(Invitrogen(商標)、Thermo Fisher Scientific)、およびApplied Biosystems 3130xl Genetic Analyzerを使用して、両方の鎖をシーケンシングすることにより、全てのプラスミド構築物のヌクレオチド配列を検証した。
【0151】
B.4.組換えタンパク質の作出のための一過性トランスフェクション
Expi293F
Expi293F細胞を使用する、発現プラスミドの一過性トランスフェクションは、製造元の指示書に従い、Expifectamine(商標)Transfection Reagent(Invitrogen(商標)、Life Technologies)を使用して実施した。細胞は、1ml当たりの生存細胞1×106個の最終濃度でトランスフェクトし、シェーキングインキュベーター(Infors)内、8%CO2中、37℃で、6日間にわたりインキュベートした。トランスフェクションの4時間後に、Pluronic F68(GIBCO、Life Technologies)を、0.1%v/vの最終濃度まで添加した。トランスフェクションの24時間後に、細胞培養物に、LucraTone Lupin(Millipore)を、0.5%v/vの最終濃度まで補充した。細胞培養物上清を、2500rpmにおける遠心分離により採取し、次いで、through0.45μmのフィルター(Nalgene)内を流過させてから精製した。
【0152】
ExpiCHO
huLRP1可溶性ミニ受容体結合性ドメインIII(90%)を、huLRPAP1(human LDL receptor related protein associated protein 1;RAP、10%)と併せてコードする発現プラスミドの、ExpiCHO-S(商標)細胞を使用する、一過性トランスフェクションは、製造元の指示書に従い、Expifectamine(商標)Transfection Reagent(Invitrogen、Life Technologies)を使用して実施した。細胞は、1ml当たりの生存細胞6×106個の最終濃度でトランスフェクトし、シェーキングインキュベーター(Infors)内、8%CO2中、37℃で、20時間にわたりインキュベートした。20時間後、エンハンサー(商標)およびFeed(商標)を、培養物へと添加した。次いで、培養物を、32℃、5%CO2、70%の湿度で、さらに5日間にわたりインキュベートした。トランスフェクション後5日目に、第2のFeed(商標)を、培養物へと添加し、32℃、5%CO2、湿度70%のインキュベーターへと戻した。細胞培養物上清を、2500rpmにおける遠心分離により採取し、次いで、through0.45μmのフィルター(Nalgene)内を流過させてから精製した。培養物上清中における、組換えhuLRP1可溶性ミニ受容体の発現は、SDS-PAGE(NuPAGEシステム、Thermo Fisher Scientific、MA、USA)により確認し、また、抗His抗体(His Tag抗体[FITC]、GenScript、型番:A01620)を使用するウェスタンブロット解析によっても確認した。
【0153】
B.5.Hisタグ付けタンパク質の精製
Hp(148~406)変異体
Hisタグ付け組換えHp(148~406)変異体を、タンデムクロマトグラフィーのための自動化法を使用する、AKTAxpressシステム(Cytiva)上で精製した。具体的には、30mlのExpi293F上清を、10mMのイミダゾール;20mMのNaH2PO4;500mMのNaCl(pH7.4)中で平衡化させた、1mlのHisTrap Excelカラム(Cytiva)へとロードした。その後、500mMのイミダゾール;20mMのNaH2PO4;500mMのNaCl(pH7.4)を使用する、保持ループへの溶出の前に、結合したHisタグ付けタンパク質を、25mMのイミダゾール;20mMのNaH2PO4;500mMのNaCl(pH7.4)で洗浄して、非特異的相互作用タンパク質を低減した。次いで、MT-PBSへの緩衝液交換のために、HisTrap Excelカラムから捕捉された溶出液を、HiPrep 26/10脱塩カラム(Cytiva)へと注入した。
【0154】
0.22umのフィルターを介する流過の前に、Amicon Ultra-15遠心分離限外濾過デバイス(Merck-Millipore、MS、USA)を使用して、全てのサイズの分子種を含有するタンパク質含有画分を、プールし、濃縮した。次いで、Trinean DropSense96システム(Trinean)を使用して、OD280により、タンパク質濃度を測定し、NuPAGE 4~12% Bis-Trisゲル(Thermo Fisher Scientific)上のSDS-PAGE分離により、純度を検証した。MT-PBSを移動相とする、Agilent 1260 Infinity HPLCへと接続された、解析用Superdex 200 Increase(15/50)サイズ除外カラムを使用して、溶液の高次分子種レベルを評価した。比較のために、1ulの、Phenomenex製のAqueous SEC1(AL0-3042)分子量標準物質を、解析の一部として試行にかけ、結果を重ね合わせた。
【0155】
Hp(162~406)変異体
Hisタグ付け組換えHp(162~406)変異体を、タンデムクロマトグラフィーのための自動化法を使用する、AKTAxpressシステム(Cytiva)上で精製した。具体的には、1~2LのExpi293F上清を、10mMのイミダゾール;20mMのNaH2PO4;500mMのNaCl(pH7.4)中で平衡化させた、5mlのHisTrap Excelカラム(Cytiva)へとロードした。その後、500mMのイミダゾール;20mMのNaH2PO4;500mMのNaCl(pH7.4)を使用する、保持ループへの溶出の前に、結合したHisタグ付けタンパク質を、25mMのイミダゾール;20mMのNaH2PO4;500mMのNaCl(pH7.4)で洗浄して、非特異的相互作用タンパク質を低減した。次いで、MT-PBS移動相中の、凝集物と、サイズ分子種との調製用分離のために、HisTrap Excelカラムから捕捉された溶出液を、Superdex 200 26/60 HiPrepサイズ除外カラム(Cytiva)へと注入した。
【0156】
0.22umのフィルターを介する流過の前に、Amicon Ultra-15遠心分離限外濾過デバイス(Merck-Millipore、MS、USA)を使用して、予測されたサイズのタンパク質を含有する画分を、プールし、濃縮した。次いで、Trinean DropSense96システム(Trinean)を使用して、OD280により、タンパク質濃度を測定し、NuPAGE 4~12% Bis-Trisゲル(Thermo Fisher Scientific)上のSDS-PAGE分離により、純度を検証した。MT-PBSを移動相とする、Agilent 1260 Infinity HPLCへと接続された、解析用Superdex 200 Increase(15/50)サイズ除外カラムを使用して、溶液の高次分子種レベルを評価した。比較のために、1ulの、Phenomenex製のAqueous SEC1(AL0-3042)分子量標準物質を、解析の一部として試行にかけ、結果を重ね合わせた。
【0157】
B.6.アルブミン融合タンパク質の精製
マウスアルブミン融合タンパク質
Hp(148~406)変異体
マウスアルブミン(MSA)融合型Hp(148~406)変異体を、タンデムクロマトグラフィーのための自動化法を使用する、AKTAxpressシステム(Cytiva)上で精製した。具体的には、30mlのExpi293F上清を、10mMのトリス;150mMのNaCl(pH7.5)中で平衡化させた、5mlのMimetic Blue multi species albuminアフィニティーカラム(Astrea Bioseparations)へとロードした。その後、30mMのオクタノエート;10mMのトリス;150mMのNaCl(pH7.4)を使用する、保持ループへの溶出の前に、結合したMSA融合タンパク質を、10mMのトリス;150mMのNaCl(pH7.5)で洗浄して、非特異的相互作用タンパク質を低減した。次いで、MT-PBSへの緩衝液交換のために、Mimetic Blueカラムから捕捉された溶出液を、HiPrep 26/10脱塩カラム(Cytiva)へと注入した。
【0158】
0.22umのフィルターを介する流過の前に、Amicon Ultra-15遠心分離限外濾過デバイス(Merck-Millipore、MS、USA)を使用して、全てのサイズの分子種を含有するタンパク質含有画分を、プールし、濃縮した。次いで、Trinean DropSense96システム(Trinean)を使用して、OD280により、タンパク質濃度を測定し、NuPAGE 4~12% Bis-Trisゲル(Thermo Fisher Scientific)上のSDS-PAGE分離により、純度を検証した。MT-PBSを移動相とする、Agilent 1260 Infinity HPLCへと接続された、Superdex 200 Increase(15/50)サイズ除外カラムを使用して、溶液の高次分子種レベルを評価した。比較のために、1ulの、Phenomenex製のAqueous SEC1(AL0-3042)分子量標準物質を、解析の一部として試行にかけ、結果を重ね合わせた。
【0159】
Hp(162~406)変異体
MSA融合型Hp(162~406)変異体を、タンデムクロマトグラフィーのための自動化法を使用する、AKTAxpressシステム(Cytiva)上で精製した。具体的には、1~2LのExpi293F上清を、10mMのトリス;150mMのNaCl(pH7.5)中で平衡化させた、5mlのMimetic Blue multi species albuminアフィニティーカラム(Astrea Bioseparations)へとロードした。その後、30mMのオクタノエート;10mMのトリス;150mMのNaCl(pH7.4)を使用する、保持ループへの溶出の前に、結合したMSA融合タンパク質を、10mMのトリス;150mMのNaCl(pH7.5)で洗浄して、非特異的相互作用タンパク質を低減した。次いで、MT-PBS移動相中の、凝集物と、サイズ分子種との調製用分離のために、Mimetic Blueカラムから捕捉された溶出液を、Superdex 200 26/60 HiPrepサイズ除外カラム(Cytiva)へと注入した。
【0160】
0.22umのフィルターを介する流過の前に、Amicon Ultra-15遠心分離限外濾過デバイス(Merck-Millipore)を使用して、予測されたサイズのタンパク質を含有する画分を、プールし、濃縮した。次いで、Trinean DropSense96システム(Trinean)を使用して、OD280により、タンパク質濃度を測定し、NuPAGE 4~12% Bis-Trisゲル(Thermo Fisher Scientific)上のSDS-PAGE分離により、純度を検証した。MT-PBSを移動相とする、Agilent 1260 Infinity HPLCへと接続された、解析用Superdex 200 Increase(15/50)サイズ除外カラムを使用して、溶液の高次分子種レベルを評価した。比較のために、1ulの、Phenomenex製のAqueous SEC1(AL0-3042)分子量標準物質を、解析の一部として試行にかけ、結果を重ね合わせた。
【0161】
ヒトアルブミン融合タンパク質
Hp(148~406)変異体
ヒトアルブミン(HSA)融合型Hp(148~406)変異体を、タンデムクロマトグラフィーのための自動化法を使用する、Janus G3 liquid handler(Perkin Elmer)上で精製した。具体的には、3.5mlのExpi293F上清を、10mMのトリス;150mMのNaCl(pH7.5)中で平衡化させた、200μlのCaptureSelect HSAアフィニティーカラム(Thermo)へとロードした。その後、2MのMgCl2;20mMのトリス(pH7.4)中における溶出の前に、結合したHSA融合タンパク質を、10mMのトリス;150mMのNaCl(pH7.5)で洗浄して、非特異的相互作用タンパク質を低減した。次いで、MT-PBSへの緩衝液交換のために、CaptureSelect HSAアフィニティーカラムから回収された溶出液を、CentriPure 96脱塩アレイ(emp Biotech GmbH)へと分注した。脱塩試料は、それ以上濃縮しなかった。
【0162】
次いで、Trinean DropSense96システム(Trinean)を使用して、OD280により、タンパク質濃度を測定し、NuPAGE 4~12% Bis-Trisゲル(Thermo Fisher Scientific)上のSDS-PAGE分離により、純度を検証した。MT-PBSを移動相とする、Agilent 1260 Infinity HPLCへと接続された、Superdex 200 Increase(15/50)サイズ除外カラムを使用して、溶液の高次分子種レベルを評価した。比較のために、1ulの、Phenomenex製のAqueous SEC1(AL0-3042)分子量標準物質を、解析の一部として試行にかけ、結果を重ね合わせた。
【0163】
Hp(162~406)変異体
HSA融合型Hp(162~406)変異体を、タンデムクロマトグラフィーのための自動化法を使用する、AKTAxpressシステム(Cytiva)上で精製した。具体的には、1~2LのExpi293F上清を、10mMのトリス;150mMのNaCl(pH7.5)中で平衡化させた、5mlのCaptureSelect HSAアフィニティーカラム(Thermo)へとロードした。その後、20mMのトリス(pH7.4)を使用する、保持ループへの溶出の前に、結合したHSA融合タンパク質を、10mMのトリス;150mMのNaCl(pH7.5)で洗浄して、非特異的相互作用タンパク質を低減した。次いで、MT-PBS移動相中の、凝集物と、サイズ分子種との調製用分離のために、CaptureSelect HSAアフィニティーカラムから捕捉された溶出液を、Superdex 200 26/60 HiPrepサイズ除外カラム(Cytiva)へと注入した。
【0164】
0.22umのフィルターを介する流過の前に、Amicon Ultra-15遠心分離限外濾過デバイス(Merck-Millipore)を使用して、予測されたサイズのタンパク質を含有する画分を、プールし、濃縮した。次いで、Trinean DropSense96システム(Trinean)を使用して、OD280により、タンパク質濃度を測定し、NuPAGE 4~12% Bis-Trisゲル(Thermo Fisher Scientific)上のSDS-PAGE分離により、純度を検証した。MT-PBSを移動相とする、Agilent 1260 Infinity HPLCへと接続された、解析用Superdex 200 Increase(15/50)サイズ除外カラムを使用して、溶液の高次分子種レベルを評価した。比較のために、1ulの、Phenomenex製のAqueous SEC1(AL0-3042)分子量標準物質を、解析の一部として試行にかけ、結果を重ね合わせた。
【0165】
B.7.Fc融合タンパク質の精製
Hp(148~406)変異体
Hp Fc融合変異体を、タンデムクロマトグラフィーのための自動化法を使用する、AKTAxpressシステム(Cytiva)上で精製した。具体的には、30mlのExpi293F上清を、MT-PBS中で平衡化させた、1mlのMabSelect SuRe pccカラム(Cytiva)へとロードした。その後、0.1Mの酢酸ナトリウム(pH3.0)を使用する、保持ループへの溶出の前に、結合したFc融合タンパク質を、500mMのL-Arg;10mMのトリス;150mMのNaCl(pH7.5)で洗浄して、凝集物および内毒素を低減した。次いで、MabSelect SuRe pccカラムから捕捉された溶出液を、MT-PBS中で平衡化させたSuperdex 200 16/60サイズ除外カラム(Cytiva)へと注入して、サイズにより、Hp分子種を分離した。次いで、MT-PBSへの緩衝液交換のために、Mimetic Blueカラムから捕捉された溶出液を、HiPrep 26/10脱塩カラム(Cytiva)へと注入した。
【0166】
0.22umのフィルターを介する流過の前に、Amicon Ultra-15遠心分離限外濾過デバイス(Merck-Millipore、MS、USA)を使用して、全てのサイズの分子種を含有するタンパク質含有画分を、プールし、濃縮した。次いで、Trinean DropSense96システム(Trinean)を使用して、OD280により、タンパク質濃度を測定し、NuPAGE 4~12% Bis-Trisゲル(Thermo Fisher Scientific)上のSDS-PAGE分離により、純度を検証した。MT-PBSを移動相とする、Agilent 1260 Infinity HPLCへと接続された、Superdex 200 Increase(15/50)サイズ除外カラムを使用して、溶液の高次分子種レベルを評価した。比較のために、1ulの、Phenomenex製のAqueous SEC1(AL0-3042)分子量標準物質を、解析の一部として試行にかけ、結果を重ね合わせた。
【0167】
Hp(162~406)変異体
Hp Fc融合変異体を、タンデムクロマトグラフィーのための自動化法を使用する、AKTAxpressシステム(Cytiva)上で精製した。具体的には、30mlのExpi293F上清を、MT-PBS中で平衡化させた、5mlのMabSelect SuRe pccカラム(Cytiva)へとロードした。その後、0.1Mの酢酸ナトリウム(pH3.0)を使用する、保持ループへの溶出の前に、結合したFc融合タンパク質を、500mMのL-Arg;10mMのトリス;150mMのNaCl(pH7.5)で洗浄して、凝集物および内毒素を低減した。次いで、MabSelect SuRe pccカラムから捕捉された溶出液を、MT-PBS中で平衡化させたSuperdex 200 16/60サイズ除外カラム(Cytiva)へと注入して、サイズにより、Hp分子種を分離した。次いで、MT-PBS移動相中の、凝集物と、サイズ分子種との調製用分離のために、Mimetic Blueカラムから捕捉された溶出液を、Superdex 200 26/60 HiPrepサイズ除外カラム(Cytiva)へと注入した。
【0168】
0.22umのフィルターを介する流過の前に、Amicon Ultra-15遠心分離限外濾過デバイス(Merck-Millipore)を使用して、予測されたサイズのタンパク質を含有する画分を、プールし、濃縮した。次いで、Trinean DropSense96システム(Trinean)を使用して、OD280により、タンパク質濃度を測定し、NuPAGE 4~12% Bis-Trisゲル(Thermo Fisher Scientific)上のSDS-PAGE分離により、純度を検証した。MT-PBSを移動相とする、Agilent 1260 Infinity HPLCへと接続された、解析用Superdex 200 Increase(15/50)サイズ除外カラムを使用して、溶液の高次分子種レベルを評価した。比較のために、1ulの、Phenomenex製のAqueous SEC1(AL0-3042)分子量標準物質を、解析の一部として試行にかけ、結果を重ね合わせた。
【0169】
B.8.ヘモグロビンの、新規タンパク質への結合の定性的測定
Hb結合性タンパク質を、ヒトヘモグロビン(HbA)と共に、37℃、異なる濃度で、1時間にわたりインキュベートした。HbのHp結合画分およびHp非結合画分(無細胞Hb)は、LPG-3400SD quaternary pumpおよび光ダイオードアレイ検出器(DAD)(ThermoFisher)へと接合された、Ultimate 3000SD HPLCを使用する、SEC-高速液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)により決定した。血漿試料およびHb標準物質は、流量を1mL/分とする移動相としてのPBS、pH7.4(Bichsel)により、Diol-300(3μm、300×8.0mm)カラム(YMC CO Ltd.)上で分離した。全ての試料について、2つの波長(λ=280nmおよびλ=414nm)を記録した。血漿の結合Hbおよび非結合Hbは、両方のピークのピーク面積を計算することにより決定した(Hb:Hpについて6分間の保持時間;無細胞Hbについて8分間の保持時間)。
【0170】
B.9.ハプトグロビンのビオチニル化
ビオチニル化は、製造プロトコールに従い、EZ-Link(商標)NHS-PEG Solid Phase Biotinylationキット(型番:21450;Thermo Scientific)により実施した。略述すると、タンパク質を、PBS中で、0.5~0.2mg/mlの間の濃度へと希釈した。蒸留水を、NHS-PEG4-Biotinへと添加して、1mMの溶液を作出した。目的の各タンパク質へと、以下:
【数1】
の通りに計算される、適量の1mMビオチン試薬を添加する。
【0171】
反応物を、速やかに混合し、室温で、30分間にわたりインキュベートした。反応は、平衡化させた脱塩カラムを使用する、1000×gで、2分間ずつ、3回にわたる遠心分離を介して、過剰量のビオチン試薬を除去することにより停止させる。新たな回収チューブを取り付け、1000×gで、2分間にわたり、ビオチニル化試料を、稠密樹脂ベッドの中心へゆっくりと適用して、試料を回収する。タンパク質濃度を計算した。
【0172】
B.10.ヘモグロビンの、新規タンパク質への結合の定量的測定
Streptavidin pre-coated biosensors(型番:18-5019;ForteBio)を使用した。異なるHp変異体を、上で記載された通りにビオチニル化させ、アッセイ緩衝液(PBS、0.01%のBSA、0.002%のTween20)中、各実験について表示の濃度で固定化させた。Hp変異体を、アッセイ緩衝液(PBS、0.01%のBSA、0.002%のTween20)中で希釈した。Hp変異体についての会合/解離反応速度解析は、各実験について表示のHb濃度で実施した。各結合工程についての設定は、Huハプトグロビン2FS(148~406)-8Hisについての例としての、表2(「表2:Huハプトグロビン2FS(148~406)-8His*について使用された、反応速度評価のためのOctetRED96の実験設定」)において示される通りに選び出した。参照のための対照(リガンドを伴うが、解析物を伴わずにロードされたセンサー)を、あらゆる実験に組み入れた。データは、以下の設定によるOctetRED96(ForteBio)上、30℃で得た:
【0173】
【0174】
データは、Data Analysis Software(ForteBio、Version 9.0)により解析した。データは、y軸に照らしたベースラインアライメント、工程間補正、参照センサー減算、およびサビツキー-ゴーレイフィルタリングを介する曲線の平滑化を実施することにより加工した。加工された反応速度データセットは、1:1結合モデルを使用してグローバルフィッティングした。当てはめの精度は、測定結果が、データを解析するのに使用されるモデルから計算された結果に、どのくらいよく相似するのかを表すパラメータである、カイ2およびR2により記載した。
【0175】
B.11.ヘムの、新規タンパク質への結合の測定
ヘム結合法については、Lipiski、2013において記載されており、若干適合させた。略述すると、ヘム-アルブミン(PBS中に12.5μMである)を、ヘム結合性タンパク質(例えば、ヒトヘモペキシン)と共にインキュベートした。ヘム-アルブミンの、ヘム-Hpxへの転移を、時間経過にわたり追跡するために、Cary 60 UV-VIS Spectrophotometer(Agilent Technologies)を使用して、一連のUV-VISスペクトルを記録した(350~650nm)。各時点について、反応混合物中のヘム-アルブミンおよびヘム-Hpxの濃度を、SciPyによるローソン-ハンソンNNLS(Non Negative Least Squares)アルゴリズム(www.scipy.org)を適用することによる、フルスペクトルのデコンボリューションにより分解した。met-Hbからの、ヘム喪失速度(急速速度および緩徐速度)を、R(r-project.org)を使用する非線形回帰により、以下の双指数関数モデル:
【数2】
を、データへと当てはめることにより計算した。
【0176】
B.12.BLIによる、CD163クリアランス受容体への結合
Streptavidin pre-coated biosensors(型番:18-5019;ForteBio)を使用した。ビオチニル化ヒトCD163受容体を、アッセイ緩衝液(PBS、0.01%のBSA、0.002%のTween20)中、各実験において表示の濃度で固定化させた。Hp:ヘモグロビン複合体を、アッセイ緩衝液(10mMのHEPES、150mMのNaCl、3mMのEDTA、25mMのCaCl2、0.05%のTween20、0.1%のBSA)中で希釈した。ハプトグロビン:ヘモグロビンについての会合/解離反応速度解析は、各実験について表示のHb濃度で実施した。各結合工程についての設定は、表において示される通りに選び出した。参照のための対照(リガンドを伴うが、解析物を伴わずにロードされたセンサー)を、あらゆる実験に組み入れた。データは、以下の表3の設定によるOctetRED96(ForteBio)上、30℃で得た:
【0177】
【0178】
データは、Data Analysis Software(ForteBio、Version 9.0)により解析した。データは、y軸に照らしたベースラインアライメント、工程間補正、参照センサー減算、およびサビツキー-ゴーレイフィルタリングを介する曲線の平滑化を実施することにより加工した。加工された反応速度データセットは、1:1結合モデルを使用してグローバルフィッティングした。当てはめの精度は、測定結果が、データを解析するのに使用されるモデルから計算された結果に、どのくらいよく相似するのかを表すパラメータである、カイ2およびR2により記載した。
【0179】
B.13.BLIによる、LRP1クリアランス受容体断片への結合
Streptavidin pre-coated biosensors(型番:18-5019;ForteBio)を使用した。ビオチニル化LRP1/CD91ドメイン3を、アッセイ緩衝液(PBS、0.1%のBSA、0.02%のTween20)中、15μg/mLの濃度で固定化させた。ヘム-Hpx複合体を、アッセイ緩衝液(10mMのHEPES、150mMのNaCl、3mMのEDTA、25mMのCaCl2、0.05%、0.1%のBSA、Tween20)中で希釈した。ヘム-ヘモペキシン複合体についての会合/解離反応速度解析は、各実験について表示の濃度で実施した。各結合工程についての設定は、表4において示される通りに選び出した。参照のための対照(リガンドを伴うが、解析物を伴わずにロードされたセンサー)を、あらゆる実験に組み入れた。データは、以下の設定によるOctetRED96(ForteBio)上、30℃で得た:
【0180】
【0181】
データは、Data Analysis Software(ForteBio、Version 9.0)により解析した。データは、y軸に照らしたベースラインアライメント、工程間補正、参照センサー減算、およびサビツキー-ゴーレイフィルタリングを介する曲線の平滑化を実施することにより加工した。加工された反応速度データセットは、1:1結合モデルを使用してグローバルフィッティングした。当てはめの精度は、測定結果が、データを解析するのに使用されるモデルから計算された結果に、どのくらいよく相似するのかを表すパラメータである、カイ2およびR2により記載した。
【0182】
B.14.BLI実験のための許容基準
正確な反応速度の当てはめのために、最大で1つのデータ点(合計で7つのデータ点のうち)を、計算から除外して、表5における基準を達成した。
【0183】
【0184】
C.結果
【実施例1】
【0185】
野生型ヒトハプトグロビンのアミノ酸配列およびプロセシング
Hpを、小胞体内で、補体C1r様タンパク質を介するタンパク質分解により、αサブユニット(9kDa)およびβサブユニット(33kDa)へとプロセシングされ、これらが、ジスルフィド結合を介して連結されて、Hp単量体を形成する、単一のポリペプチド鎖(proHp)として合成した。各Hp単量体タンパク質は、1つのHb α-β二量体に結合しうる(K
dを10
-15として)。脱酸素化Hbは、Hpに結合しない。ヒトでは、Hpは、それらのそれぞれのα鎖内だけにおいて異なる、すなわち、ベータ鎖は、不変体である、Hp1およびHp2という、2つの対立遺伝子形態として存在する。Hp2対立遺伝子は、エクソン3と、エクソン4との重複により、Hp1対立遺伝子から生じる(YangFら、1983、PNAS、80(219):5875~5879)。Hp1対立遺伝子は、Hp 1F=D69 K70およびHp1S=N69 E70を、本明細書で使用される番号付けの慣例とする、アルファ鎖内の2つのアミノ酸:Asp52Asn、Lys53Gluだけ異なる、Hp 1FおよびHp 1Sへとさらに細分される(van der Straten Aら、1984、FEBS Lett.、168:103~107)。Hpの構造を、
図1に示す。
【実施例2】
【0186】
哺乳動物細胞内における、Huハプトグロビンベータ鎖タンパク質の作出
Huハプトグロビン(162~406)-8His、およびHuハプトグロビン2FSβ(162~406、C266A)-8His
哺乳動物細胞内で作出されるHpのベータ断片を作出するために、cDNA構築物である、ヒトHpのベータ断片が、Hp 2FSポリペプチド鎖内の、アミノ酸162におけるC1rLP切断部位の直後において開始される、Huハプトグロビン(162~406)-8Hisをデザインした(
図3A、
図4A)。アミノ酸266における不対合システインが、アラニンへと突然変異させられた、さらなる変異体である、Huハプトグロビン2FSβ(162~406、C266A)-8His(C266A、
図4A)もまた作出した。これらの発現構築物の、Expi293F細胞への、一過性トランスフェクションが、いかなるタンパク質も作出できなかったことは、β鎖の構造が破壊されたため、哺乳動物細胞内で不安定であったことを指し示す(
図4B)。
【0187】
Huハプトグロビン2FS(148~406)-8His
C1rLP切断部位と、鎖内ジスルフィド結合のために要求されるシステインとを保持する、アミノ酸148~406をコードするヒトHpベータ断片構築物である、Huハプトグロビン2FS(148~406)-8Hisを作出し(
図4B)、これらを、α鎖の残りのN末端アミノ酸のプロセシングを可能とする、C1rLPをコードする構築物と併せて、Expi293F細胞にトランスフェクトした。融合パートナーが、ベータ断片に対してN末端側に配置され、ドメイン間ジスルフィド結合を介して連結されている、将来的なタンパク質の作出を可能とするように、プロセシングを保持した。
図4Cは、Huハプトグロビン(162~406)-8His、およびHuハプトグロビン2FSβ(162~406、C266A)-8Hisと対照的に、Huハプトグロビン2FS(148~406)-8Hisのロバストな発現が観察されたことを示す。Superdex 200 Increase 5/150カラムを使用する、精製培養物上清についてのサイズ除外クロマトグラフィー解析(さらなる脱塩工程と組み合わされた、ニッケルアフィニティークロマトグラフィー)は、タンパク質が、凝集を伴わずに均質であることを指し示した(
図4D)。タンパク質の純度、および適正なプロセシングは、SDS-PAGE解析により検証した(
図4D)。
【実施例3】
【0188】
哺乳動物細胞内における、N末端融合パートナーまたはC末端融合パートナーを伴うHuハプトグロビンベータ鎖タンパク質変異体の作出
N末端またはC末端において、ヒトヘモペキシン(Hpx)、Hpx+マウス血清アルブミン(MSA)、またはヒトHpx+Fc、ヒト血清アルブミン(HSA)、マウス血清アルブミン(MSA)、マウスIgG2aのFcドメインと融合された、huハプトグロビンベータ鎖(162~406または148~406)をコードする、一連のタンパク質を作出した(
図5Aおよび5B)。融合パートナーが、ベータ断片(アミノ酸148~406)に対してN末端側に配置され、ドメイン間ジスルフィド結合を介して連結されている、将来的なタンパク質の作出を可能とするように、プロセシングを保持した。
【0189】
ヘモペキシン-Huハプトグロビンベータ融合タンパク質の作出
N末端におけるヒトヘモペキシン(Hpx;アミノ酸1~462;配列番号12)に続き、Gly-Serリンカーを含有する、一連の構築物を作出し、次いで、配列番号1のアミノ酸162~406に対応するヒトHpベータ断片(
図6Ai);配列番号1のアミノ酸残基266に対応する位置における不対合システインが、アラニンへと突然変異させられた、配列番号1のアミノ酸162~406に対応するヒトHpベータ断片(
図6Aii);およびC1r-LP切断部位(配列番号4)と、鎖内ジスルフィド結合の形成のために要求されるシステインを保持する、配列番号1のアミノ酸148~406に対応するヒトHpベータ断片(
図6Aiii)と融合した。Hpアルファ鎖と、Hpベータ鎖との接合部におけるプロセシングを可能とするC1r-LPをコードする構築物との比を、90:10として、ハプトグロビンのアミノ酸148~406を含有する構築物を、Expi293F細胞に共トランスフェクトした。
図6Bは、Huハプトグロビン(162~406)またはHuハプトグロビン(162~406、C266A)を含有するHpx構築物と対照的に、構築物であるHuヘモペキシン-Huハプトグロビン2FS(148~406)-Hisのロバストな発現、および予測された部位における、C1r-LPによるタンパク質分解性切断が観察されたことを示す。精製培養物上清についての解析用SEC(脱塩を後続させる、ニッケルアフィニティークロマトグラフィー)は、Huヘモペキシン(1~462)-Huハプトグロビン(162~406)-8Hisについて観察されたブロードピーク(
図6Ci)と比較して、Huヘモペキシン-Huハプトグロビン2FS(148~406)-Hisは、凝集が劇的に低減された、予測サイズの均質タンパク質(
図6Cii)として作製されたことを指し示した。タンパク質の純度、および適正なプロセシングは、還元型SDS-PAGE解析、および非還元型SDS-PAGE解析により検証した(
図6Ciii)。
【0190】
HSA-Huハプトグロビンベータ融合タンパク質の作出
N末端リンカーにおけるヒト血清アルブミン(HSA)を含有し、次いで、介在13×Gly-Serリンカーを伴う、アミノ酸162~406をコードするヒトHpベータ断片(
図7Ai);アミノ酸266における不対合システインが、アラニンへと突然変異させられた、アミノ酸162~406をコードするヒトHpベータ断片、および介在13×Gly-Serリンカー(
図7Aii);C1r-LP切断部位と、鎖内ジスルフィド結合のために要求されるシステインとを保持する、アミノ酸148~406をコードするヒトHpベータ断片(
図7Aiii)と融合された、一連の構築物を作出し、これらを、この部位を含有する構築物のための、α鎖の残りのN末端アミノ酸のプロセシングを可能とするC1r-LPをコードする構築物と併せて、Expi293F細胞にトランスフェクトした。
図7Bは、Huハプトグロビン(162~406)またはHuハプトグロビン(162~406、C266A)を含有するHSA構築物と対照的に、構築物であるHSA-Huハプトグロビン2FS(148~406)のロバストな発現、および予測された部位における、C1r-LPによるタンパク質分解性切断が観察されたことを示す。Superdex 200 Increase 5/150カラムを使用する、精製培養物上清についての解析用SEC解析(さらなる脱塩工程と組み合わされた、ニッケルアフィニティークロマトグラフィー)は、HSA-Huハプトグロビン2FS(148~406)が、均質であり、凝集も、ほぼ無視できる程度であることを指し示した(
図7Cii)。これに対し、調製用SECクロマトグラムは、予測サイズ(矢印により指し示される)のHSA-GS13-Huハプトグロビン(162~406)が、極めて少量であり、作製された素材の大部分が、多量体化されるか、または凝集させられたことを示す(
図7Ci)。タンパク質の純度、および適正なプロセシングは、還元型SDS-PAGE解析、および非還元型SDS-PAGE解析により検証した(
図7Ciii)。
【0191】
Fc-Huハプトグロビンベータ融合タンパク質の作出
アミノ酸162~406をコードするヒトHpベータ断片(
図8Ai)へと融合された、N末端におけるヒトIgG1Fcを含有する構築物;およびC1r-LP切断部位と、鎖内ジスルフィド結合のために要求されるシステインとを保持する、アミノ酸148~406をコードするヒトHpベータ断片へと融合された、マウスIgG2aFcを含有する構築物を作出し(
図8Aii);これらを、この部位を含有する構築物のための、α鎖の残りのN末端アミノ酸のプロセシングを可能とする、C1rLPをコードする構築物と併せて、Expi293F細胞にトランスフェクトした。
図8Bは、Huハプトグロビン(162~406)を含有するFc構築物と対照的に、構築物であるHSA-Huハプトグロビン2FS(148~406)の発現、および予測された部位における、C1r-LPによるタンパク質分解性切断が観察されたことを示す。HuIgG1Fc-Huハプトグロビン(162~406)構築物からは、いかなるタンパク質も発現されず、精製されなかった。これに対し、muIgG2aFc-Huハプトグロビン2FS(148~406)は、ロバストに発現され、C1r-LPにより、適正にプロセシングされ、アフィニティー精製された素材についての解析用SECは、Fc二量体について、予測サイズの主要ピークを明らかにした。しかし、発現された融合タンパク質は、均質ではなく、高分子量の分子種、および低分子量の分子種の両方を含有した(
図8Cii)。
【0192】
ヘモペキシン-MSA-Huハプトグロビンベータ融合タンパク質の作出
N末端におけるヒトヘモペキシン(Hpx;アミノ酸1~462)に続き、マウス血清アルブミン(MSA)を含有し、次いで、アミノ酸162~406をコードするヒトHpベータ断片(
図9Ai);アミノ酸162~406をコードするヒトHpベータ断片、またはC1r-LP切断部位と、鎖内ジスルフィド結合のために要求されるシステインとを保持する、アミノ酸148~406をコードするヒトHpベータ断片(
図9Aii)へと融合された構築物を作出し;これらを、この部位を含有する構築物のための、α鎖の残りのN末端アミノ酸のプロセシングを可能とする、C1rLPをコードする構築物と併せて、Expi293F細胞にトランスフェクトした。
図9Bは、Huハプトグロビン(162~406)を含有するHpx構築物と対照的に、構築物であるHuヘモペキシン-msa-Huハプトグロビン2FS(148~406)のロバストな発現、および予測された部位における、C1r-LPによるタンパク質分解性切断が観察されたことを示す。Huヘモペキシン-msa-Huハプトグロビン(162~406)についての調製用SECは、それが、高次分子種の比率が大きな、極めて低収量であることを示した(
図9Ci)。これに対し、精製培養物上清についての解析用SEC(脱塩を後続させる、Mimetic Blueアフィニティー)は、Huヘモペキシン-msa-Huハプトグロビン2FS(148~406)が、予測サイズの均質タンパク質として作製されることを指し示した(
図9Cii)。精製Huヘモペキシン-msa-Huハプトグロビン2FS(148~406)の純度およびプロセシングは、還元型SDS-PAGE解析、および非還元型SDS-PAGE解析により検証した(
図9Ciii)。
【0193】
ヘモペキシン-Fc-Huハプトグロビンベータ融合タンパク質の作出
N末端におけるヒトヘモペキシン(Hpx;アミノ酸1~462)に続き、Gly-Serリンカー、マウスIgG2aFcを含有し、次いで、C1r-LP切断部位と、鎖内ジスルフィド結合のために要求されるシステインとを保持する、アミノ酸148~406をコードするヒトHpベータ断片へと融合された構築物を作出し(
図10A)、これらを、この部位を含有する構築物のための、α鎖の残りのN末端アミノ酸のプロセシングを可能とする、C1rLPをコードする構築物と併せて、Expi293F細胞にトランスフェクトした。
図10Bは、Huハプトグロビン(162~406)を含有する構築物が、Huハプトグロビン(162~406)高発現、および予測された部位における、C1r-LPによるタンパク質分解性切断を裏付けたことを示す。Superdex 200 Increase 5/150カラムを使用する、精製培養物上清についてのサイズ除外クロマトグラフィー解析(さらなる脱塩工程と組み合わされた、MabSelect SuRe PCCアフィニティークロマトグラフィー)は、Huヘモペキシン-mIgG2aFc-Huハプトグロビン2FS(148~406)から作製されたタンパク質が、均質ではなく、大きな比率の凝集物を含有し(
図10Ci)、これはまた、ウェスタンブロットでも目視可能である(
図10B)ことを指し示した。精製Huヘモペキシン-mIgG2aFc-Huハプトグロビン2FS(148~406)の純度およびプロセシングは、還元型SDS-PAGE解析、および非還元型SDS-PAGE解析により検証した(
図10Cii)。
【実施例4】
【0194】
ヘモグロビンへの結合の測定
Hpベータ断片のアミノ酸148~406をコードする変異体を、ヘモグロビンへの結合について評価した(発現不良およびタンパク質凝集のために、野生型ベータ断片(配列番号1のアミノ酸残基162~406)を含有する、いかなる変異体も、ヘモグロビンへの結合について調べなかった)。
【0195】
SECによる、ヘモグロビンへの定性的結合
以下の変異体:Huハプトグロビン2FS(148~406)-8His;Huヘモペキシン-Huハプトグロビン2FS(148~406)-8His;HSA-Huハプトグロビン2FS(148~406)-8His;muIgG2aFc-Huハプトグロビン2FS(148~406)-8His;Huヘモペキシン-msa-Huハプトグロビン2FS(148~406)-8His;およびHuヘモペキシン-mIgG2aFc-Huハプトグロビン2FS(148~406)-Hisを、ヘモグロビンへの結合能力に関して、定性的に解析した。
【0196】
第1の工程では、上記の組換え変異体の全てを、Hbへの結合との関係で、定性的に解析した。略述すると、組換え変異体を、37℃で、1時間にわたり、異なる濃度のヒトヘモグロビンと共にインキュベートした。試料は、SECカラム(Diol-300;3μm、300×8.0mm)上で分離し、吸光度を405nmとして記録した。
図11に示される通り、Hb結合性変異体と共にインキュベートされると、ヘモグロビンについてのHPLCトレース(青線)が、左へとシフトしたことは、Hb単独についてのHPLCトレースと比較した、サイズの増大(赤線)を指し示す。この定性的結合評価に基づき、全てのHpベータ断片(148~406)は、融合タンパク質と独立に、ヘモグロビンに結合することが可能である。
【0197】
BLIによる、ヘモグロビンへの定量的結合
ヒトにおいて、血漿ハプトグロビン(Hp)は、ヘモグロビンに、高アフィニティーで結合する。定量的査定のために、Hp媒介性Hb結合を、以下のHp変異体について決定し、データを、ヒト血漿由来Hp1-1:Huハプトグロビン2FS(148~406)-8His;Huヘモペキシン-Huハプトグロビン2FS(148~406)-8His;およびHuハプトグロビン1-1(血漿由来)と比較した。
【0198】
ビオチニル化変異体を、ストレプトアビジンコーティングバイオセンサー上に固定化し、Hbへの結合について評価した。表6に示される通り、ヒトHp1-1(血漿由来)への結合は、高アフィニティーの相互作用(144pM±39)を結果としてもたらす。Hpベータ断片(Huハプトグロビン2FS(148~406)-8His)だけについても、KDを188pM±42とする、同一の結合挙動が観察された。興味深いことに、固定化二官能性のSuperScavenger(Huヘモペキシン-Huハプトグロビン2FS(148~406)-8His)は、他の2つの被験変異体と比較して、ほぼ2倍速いオン速度(kon:4.4×1051/M秒)、およびやや遅いオフ速度(koff:1.9×10-51/秒)に帰せられる、結合アフィニティーの増大を示した。
【0199】
【実施例5】
【0200】
ヘムへの結合の測定
ヘモペキシンドメイン(ヘム結合性ドメイン)を含有する変異体を、それらのヘム結合能について評価し、野生型ヘモペキシン(血漿由来ヘモペキシン)と比較した。略述すると、かつ、上で記載された通りに、各々変異体を、ヘモペキシンと同様に低アフィニティーのヘムドナーとして作用する、ヘム-アルブミンと共にインキュベートした。スペクトルは、5時間にわたり、持続的に記録し、データは、ヘム-アルブミンおよびヘモペキシン:ヘムからなる参照スペクトルに対して、デコンボリューションした。R Studioを使用して、データに、双指数関数モデル(方法において記載される)を当てはめ、
図13に示される通りにプロットした。表7は、3つの被験変異体のヘム結合能について、血漿由来ヘモペキシンと比較してまとめる。3つの変異体は全て、表示の時点における、ヘモペキシンに結合したヘムの濃度を示す赤色の曲線により指し示される通り、ヘム-アルブミンヘムから転移したヘムに結合すると考えられる。ヘムへの結合は、最初の数分間中の極めて急速な結合に続く、飽和近傍における、はるかに緩徐な結合挙動のために、双指数関数として記載される。これは、全ての変異体について当てはまり、血漿由来ヘモペキシンとほぼ同等である。活性との関連で、興味深いことに、全ての変異体は、mIg2aFcを含有する融合タンパク質(約80%の活性である)を除き、ほぼ100パーセント結合する。速度定数を、表にまとめる。
【0201】
【実施例6】
【0202】
CD163への結合の測定
ヒトCD163(Hbスカベンジャー受容体)は、単球系統の細胞内でほぼもっぱら発現される、130kDaの糖タンパク質であり、最高の発現は、クッパー細胞および赤脾髄マクロファージを含む、成熟組織内のマクロファージ内で検出される。構造的に、CD163は、細胞外領域内のSRCRドメインの存在により特徴付けられる、タンパク質のSRCR(scavenger receptor cysteine-rich)ファミリーに属する。CD163は、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体に対する、天然の高アフィニティースカベンジャー受容体であり、主に、単球上およびマクロファージ上において、高レベルで発現され、このため、単球/マクロファージ系統に由来する細胞のマーカーとしてもまた使用される。正常生理学的条件下では、Hpは、放出されたHbを捕捉し、これを、複合体を内部化するCD163発現マクロファージへと方向付けることによりHbの毒性に対抗する。
【0203】
全ての被験Hp変異体におけるHbへの結合挙動が、極めて類似することの帰結として、ヘモグロビンとの複合体を作出し、ハプトグロビン1-1(血漿由来):ヘモグロビン複合体と比較された、固定化CD163受容体に結合するそれらの能力について探索した。
【0204】
ヒトヘモグロビンと複合体させられた、以下の変異体:Huハプトグロビン2FS(148~406)-8His;Huヘモペキシン-Huハプトグロビン2FS(148~406)-8His;およびHuハプトグロビン1-1(血漿由来)を、CD163受容体に対する結合能との関係で解析した。
【0205】
図14に示される通り、いずれの組換えHp変異体も、血漿由来の野生型ハプトグロビン1-1:ヘモグロビン複合体と比較して、異なるアフィニティーはでではあるが、固定化CD163に結合することが見出された。いずれの組換え変異体の結合挙動も、Hp1-1:Hbと比較して、解離の増大を示し、1:1反応速度当てはめモデルによる、適正なKDの決定は困難であった。したがって、定常状態解析を実施して、反応速度定数(KD)を推定した。下記の表8にまとめられる通り、ヘモグロビンと複合体化した、Huハプトグロビン2FS(148~406)およびHuヘモペキシン-Huハプトグロビン2FS(148~406)のいずれも、Hp1-1を用いて生成させたハプトグロビン:ヘモグロビン複合体と比較して、約7分の1および50分の1のアフィニティーを有した。この観察は、潜在的に、血漿から精製されたHp1-1と比較して、1つの結合性部位(Hpのベータ鎖内の結合性部位)だけの存在により説明される。
【0206】
【実施例7】
【0207】
ヘモグロビンの存在下における、血管一酸化窒素シグナル伝達の保存
A.材料および方法
血管機能アッセイ
血管機能アッセイは、Hugelhoferら、2019、J Clin Invest.、129(12):5219~5235に記載されている通りに、地域の食肉処理場から得られた、新鮮なブタ脳底動脈(n=20)を使用して実施した。略述すると、脳底動脈を摘出した後で、これを、2mm長の切片へと切断した。次いで、血管輪切片を、Multi-Channel Myograph System 620 M(Danish Myo Technology)のピンへとマウントし、クレブス-ヘンゼライト緩衝液中に浸漬した。既に、Hugelshoferら、2020、J Vasc Resら、57:106~112において記載されている通り、最適の受動前張力(因子k=0.80とするIC1)に達するように血管を伸張させた後で、10μMのプロスタグランジンF2α(PGF2α;Sigma、Buchs、Switzerland)を、収縮前作用剤(pre-contracting agent)として添加した。これに続き、MAHMA-NONOate(ENZO Life Sciences)の添加により、NO依存性血管拡張を誘導した。全ての血管について、実験は、3つの段階:第1段階:Hbの非存在下における、クレブス-ヘンゼライト緩衝液(KHB)中におけるNO依存性血管拡張(NO-dip);第2段階:10μMのHbの添加の後における血管拡張(dip);および第3段階:等モル量のハプトグロビン(10μM)の添加の後における血管拡張からなった。各血管について記録された拡張応答を、Hb曝露を伴わない、NO性最大拡張(初期血管拡張:100%と同等)、およびMAHMA-NONOateの添加の前における緊張性収縮のレベル(0%と同等)に対して正規化した。
【0208】
HbおよびrLP(reconstituted lipoprotein)
ex vivo実験における使用のためのHbは、既に記載されている通り、期限切れのヒト血液濃縮製剤から精製した(Elmerら、2011、J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci.、879(2):131~138)。Hb濃度は、スペクトルデコンボリューションを伴う分光光度法により決定され、総ヘム量に対するモル濃度として与えられ、これは、Hbの単鎖サブユニットと同等量である(α鎖またはβ鎖;1MのHb四量体は、4Mのヘムと同等量である)。スカベンジャータンパク質(Hp;組換えHp構築物およびヘモペキシン)について、1モルは、1モルのヘムと同等の結合能であると考えられた。これらの研究で使用された全てのHbについて、分光光度法により決定された第1鉄含有Hb(HbFe2+O2)の画分は、常に98%を超えた。rLP(reconstituted lipoprotein)は、CSL Behring、Bern、Switzerlandから得た。
【0209】
リポタンパク質過酸化アッセイ
ハプトグロビン変異体が、Hb酸化反応を防止する効果は、rLPを伴う、Hb-ハプトグロビン複合体のインキュベーションの後における脂質過酸化の最終産物である、マロンジアルデヒド(MDA)の形成を測定することにより定量した。rLP(2mg/mL)と、Hbまたはハプトグロビン変異体と複合体化したHb(10μM)とを含有する、30μLの96ウェルプレートを、37℃で、4時間にわたりインキュベートした。その後、TBARSアッセイを使用して、MDAの濃度を測定した(Deuelら、2015、Free Radical Biology and Medicine、89:931~943)。略述すると、1MのHCl中に750mMのトリクロロ酢酸125μLを、試料へと添加するのに続き、ボルテクシング(5秒間)した後、1MのNaOH中に25mMの2-チオバルビツール酸100μLを添加した。80℃で、60分間にわたるインキュベーション時間の後、上清中のTBARSを定量した。より高感度であるが、相対的な定量を達成するために、励起波長として510nmを使用して、蛍光発光を550nmで測定した。
【0210】
B.結果
ex vivo血管機能実験における、血管一酸化窒素シグナル伝達の保存は、Hpのサイズおよび融合パートナーに依存する
異なるHp変異体のNO温存能について評価するために、Hbスカベンジャーの添加の後における、NO依存性血管拡張性応答に対するレスキューが測定される、確立されたex vivo血管機能アッセイを使用した。全ての実験において、10μMのHbの、KHBへの添加は、Hbを伴わない対照血管拡張を10%(相対弛緩の中央値:9.7%)下回る、血管弛緩の抑制を結果としてもたらした。その後における、Hbスカベンジャーの添加は、全てのHp変異体について、NOドナーを施した場合における、血管拡張の回復を結果としてもたらした(
図15)。全ての実験において、ヒト血漿由来Hp2-2を、比較のための基準/ゴールドスタンダードとして使用した。血漿Hp1-1、recHp1-1、およびrecHpCD163lowによる群では、レスキューは、Hp2-2と比較して同様であり、差違の証拠は、見られなかった(表9)。分子量が小さいminiHpについて、レスキューは、Hp2-2によるレスキューほど顕著ではなかった(Hp2-2の中央値:87.93%、miniHpの中央値:67.99%、p値<0.0001)。二官能性構築物(SuperScavenger、Hpx-Hp構築物)は、中間のレスキューを示した(中央値:48.13%)。これは、Hb(αβ)
2-Hp 1-1複合体より小さいが、Hb(αβ)
1-miniHp複合体より大きい、Hb(αβ)
1-Hp-Hpx複合体のサイズと関連する可能性が高い。
【0211】
【0212】
脂質過酸化の防止は、Hp変異体に依存しない
組換えハプトグロビン変異体の抗酸化能について査定するために、本発明者らは、Hbと、in vivoにおけるHb過酸化反応のための、主要な生理学的脂質基質である、不飽和ホスファチジルコリンを含有するrLPとの混合物中における、MDAの発生を測定した(Deuelら、2015;Free Radic Biol Med.、89:931-43)。Hbを、等モル量のHpと混合したところ、査定されるHp変異体に関わらず、37℃で、4時間にわたるインキュベーションの後において、MDAは、検出されなかった(
図16A)。次いで、本発明者らは、Hpに関して、化学量論未満~化学量論を超える濃度の範囲の漸増濃度のHbで実験を繰り返した(
図16B)。この実験で、本発明者らは、組換えHp変異体が、Hpβ鎖と等モルであるHb濃度までの濃度で、脂質過酸化を防止することを見出した。Hpを超える、Hbの過剰濃度においても、濃度-酸化関係は、Hb単独の場合と同一の形状に従った。唯一の例外は、化学量論を超えるHb濃度においてもなお、MDAの発生の著明な低下を示す、Hp-Hpx SuperScavengerにより観察された。この観察は、Hpによる相乗作用的保護をもたらす、Hpxのヘム指向性抗酸化機能(Deuelら、2015)と符合した。
【0213】
血漿由来Hxを伴うヘム:Hx複合体、およびHx-Hp融合タンパク質を伴うヘム:Hx複合体の、LRP1への結合
Hxの、ヘムとの複合体形成は、そのスカベンジング受容体である、CD91/LRP1との会合をもたらす(Hvidbergら、2005、Blood、106(7):2572~9)。したがって、結合実験の最後のセットにおいて、本発明者らは、Hx-Hp融合タンパク質が、CD91/LRP1に結合する能力について、ヘムと複合体化した血漿由来Hxと比較して探索した。全長受容体は、組換え発現が困難であるので、本発明者らは、CD91/LRP1の断片(クラスターIII)だけを固定化させた。既往の研究において、本発明者らは、4つのクラスターのうち、クラスターIIIが、ヘム:Hxに対する結合性部位を含有することを同定した(未公表データ)。表10に示される通り、本発明者らは、いずれのヘム複合体も、高ナノモル範囲のKDにより、ほぼ同等な形で、固定化受容体断片に結合することを見出した。
図17に例示された通り、ヘムの非存在では、LRP1に結合しないHxと対照的に、非複合体化Hx-Hpは、極めて低度ながら、固定化LRP1への結合アフィニティーを示した。これが、融合タンパク質の人工足場に起因するのかどうかは、未だ探索されていない。
【0214】
【0215】
考察
本発明者らは、Hpが、適切なサイズ、構造、および機能を有する分子をもたらす、一過性真核生物発現系内で、機能的タンパク質としての高収量の発現が可能であることを既に示している(Schaer、Owczarekら、2018,BMC Biotechnol.、18:15)。
【0216】
Hpの主要な機能(Hbによる結合およびCD163への結合)は、Hpβ鎖により媒介される(Melamed-Frank、2001、Blood、98(13):3693~8;およびAlayash、Andersenら、2013、Trends in Biotechnology、31(1):2~3を参照されたい)。Hbへの結合に要求される、ハプトグロビンの最小ドメインをさらに特徴付けるために、ヒトHpのβ鎖が、Hpポリペプチド鎖内の、C1r-LP切断部位の直後に起始する構築物を作出した。アミノ酸266における不対合システインが、アラニンへと突然変異させられた、さらなる変異体もまた作出した。しかし、これらの発現構築物の、一過性トランスフェクションが、タンパク質を作出できなかったことは、β鎖の構造が破壊されたために、哺乳動物細胞内で不安定であったことを指し示す。予測外にも、ヒトHpβ鎖が、Hpα鎖の、さらなる14の連続N末端アミノ酸をさらに含み、これにより、C1r-LP切断部位と、鎖内ジスルフィド結合のために要求されるシステインとを保持する、代替デザイン構築物は、機能的Hpβ鎖タンパク質の、ロバストかつ安定的な発現を結果としてもたらした。改変構築物はまた、ドメイン間ジスルフィド結合を介して、Hpβ鎖断片へと連結された融合パートナー(例えば、さらなる機能的部分)が、例えば、N末端切断型Hpアルファ鎖のN末端に配置された、融合タンパク質の作出も可能とする。これは、二重ターゲティング型治療用分子の作製を可能とするので有利であり、その例示的な例は、無細胞ヘモグロビンおよび無細胞ヘムの、いずれのスカベンジャーとしても使用される、ハプトグロビン-ヘモペキシン(Hp-Hpx)コンジュゲートを含む。
【配列表】
【国際調査報告】