IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ラング バイオテクノロジー ピービーシーの特許一覧

特表2024-5178763D印刷されたヒドロゲル物体の光硬化性の強化
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】3D印刷されたヒドロゲル物体の光硬化性の強化
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/52 20060101AFI20240416BHJP
   A61L 27/16 20060101ALI20240416BHJP
   A61L 27/18 20060101ALI20240416BHJP
   A61L 27/20 20060101ALI20240416BHJP
   A61L 27/22 20060101ALI20240416BHJP
   A61L 27/54 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
A61L27/52
A61L27/16
A61L27/18
A61L27/20
A61L27/22
A61L27/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568357
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(85)【翻訳文提出日】2023-12-20
(86)【国際出願番号】 US2022028172
(87)【国際公開番号】W WO2022236125
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】63/185,305
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VELCRO
(71)【出願人】
【識別番号】516346377
【氏名又は名称】ラング バイオテクノロジー ピービーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100131990
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 玲恵
(72)【発明者】
【氏名】メリケン,モーラ キャロライン
(72)【発明者】
【氏名】ムルチン,ララ
(72)【発明者】
【氏名】シアー,バーバラ
(72)【発明者】
【氏名】リン,リッチモン
(72)【発明者】
【氏名】モリス,デレク
(72)【発明者】
【氏名】トリグ,リナ
(72)【発明者】
【氏名】アルバレス,ルイス
(72)【発明者】
【氏名】サファヴィア,ムハンマドアリー
(72)【発明者】
【氏名】モダレシファー,マスード
(72)【発明者】
【氏名】ヴィディアム,カリヤン
(72)【発明者】
【氏名】コウル,アマン
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AB11
4C081AB12
4C081AB13
4C081AB15
4C081AB16
4C081AB18
4C081AB19
4C081BB03
4C081BC02
4C081CA051
4C081CA052
4C081CA081
4C081CA082
4C081CA101
4C081CA102
4C081CA171
4C081CA172
4C081CA181
4C081CA182
4C081CD011
4C081CD012
4C081CD021
4C081CD022
4C081CD031
4C081CD032
4C081CD041
4C081CD042
4C081CD062
4C081CD081
4C081CD082
4C081CD091
4C081CD092
4C081CD111
4C081CD112
4C081CD121
4C081CD122
4C081CD151
4C081CD152
4C081CD172
4C081CD32
4C081CE02
4C081DA01
4C081DA03
4C081DA06
(57)【要約】
本開示は、強化型ヒドロゲル構造、ヒドロゲル構造を強化する方法、および強化型ヒドロゲル構造を使用して虚血性障害を処置する方法について提示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元(3D)ヒドロゲル構造を強化する方法であって、未硬化の光硬化性バイオインク中に浸漬されたメッシュを、前記構造と接触させるステップと、未硬化の光硬化性バイオインク中に浸漬された前記メッシュを照射し、これにより前記3Dヒドロゲル構造に接着させるステップとを含む方法。
【請求項2】
前記構造が、チューブの形状を含むか、または実質的に同一の形状、サイズであるか、および/または臓器もしくは臓器の断片と同一の相対的寸法を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記臓器または臓器の断片が、血管、気管、気管支、食道、尿管、尿細管、胆管、腎管、胆管、肝管、神経導管、CSFシャント、肺、腎臓、心臓、肝臓、脾臓、脳、胆嚢、胃、膵臓、膀胱、リンパ管、骨格骨、軟骨、皮膚、腸、筋肉、喉頭、または咽頭を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記血管が、肺動脈、腎動脈、冠動脈、末梢動脈、肺静脈、または腎静脈を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記構造が、血液透析グラフトを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記構造が、第1の末端と第2の末端とを備える中空管を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記構造が、第1のサブチューブと第2のサブチューブとを備え、それぞれ第1の末端を有し、前記構造が、チューブのジョイントを形成するために、その第1の末端において相互に接続する前記第1のサブチューブと前記第2のサブチューブとを備え、前記メッシュが前記ジョイントと接触している、請求項2~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記メッシュが、前記チューブの前記第1および/または前記第2の末端と接触している、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記チューブの前記第1の末端と前記第2の末端との間の距離が、チューブ長部を定義し、前記メッシュが、前記第1の末端および/または前記第2の末端から、前記メッシュと接触している前記第1の末端および/または前記第2の末端から前記チューブ長部のX%離れている、前記チューブ上の所定ポイントまでの距離により定義される前記チューブの部分長部と接触しており、Xが、約0.01%~約0.1%、約0.1%~約1%、約1%~約5%、約5%~約10%、約10%~約20%、約20%~約30%、約30%~約40%、または約40%~約50%から選択される、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記部分長部が、約1mm~約2.5mm、約2.5mm~約5mm、約5mm~約7.5mm、約7.5mm~約1cm、または約1cm~約2.5cmを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記メッシュが、実質的に平面であり、約0.1μm~約2mmの厚さを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記メッシュが、前記チューブの部分長部の周囲をらせん状に取り巻くか、または前記チューブの内表面および/または外表面上において前記チューブを包囲する、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記接触させるステップが、前記メッシュを、前記チューブの内表面および/または外表面と接触させることを含む、請求項2~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記メッシュが、前記チューブの前記内部および外表面の両方に接触する、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記メッシュが、前記チューブの前記第1の末端および/または前記第2の末端において、チューブのエッジを取り囲むように、前記チューブの前記内表面から前記チューブの前記外表面までラッピングする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記構造が、実質的に肺葉、肺、肺の気道樹、肺血管系の形状、またはその組合せである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
強化が、前記構造を通る気流を維持することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
強化が、前記構造の、縫合されると予想される部位、ひび割れている部位、引き裂かれている部位、脆弱化している部位、機械的ストレスに晒されている部位、低厚化している部位、感染している部位、または罹患している部位においてなされる、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
強化が、前記チューブの屈曲抵抗性および/または崩壊防止を含む、請求項2~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
強化が、前記構造の縫合部位においてなされ、前記構造の縫合引っ張り力を、約2.5倍~約5倍、約5倍~約7.5倍、約7.5倍~約10倍、約10倍~約15倍、または約15倍超増加させる、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
強化が、生物学的組織またはグラフト材料に接続するための前記構造の部位においてなされる、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記接触させるステップおよび前記照射するステップが、メッシュの2以上の層を形成するために2回以上反復される、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記2以上の層が、積層され、任意選択で互い違いになっている、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記メッシュまたはメッシュの1つもしくは複数の層が、ポリグラクチン(Vicryl(登録商標))、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、モノフィラメントプロピレン(SoftMesh、Parietex-TET、TIGR、またはMarlex)、ダクロン、テフロン(登録商標)、ポリテトラフルオールエチレン、ポリカプロラクトン(PCL)、PGA/PCL混合物、PGA/PLA/PCL混合物、またはその組合せをそれぞれ独立して含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記メッシュまたはメッシュの1つまたは複数の層が、ニットメッシュ、織製メッシュ、綾織物、繻子織物、絽、縫い目を有するノンインターレース織物、縫い目を有さないノンインターレース織物、三軸織物、粗目織物、目の詰んだ織物、四軸織物、2次元従来型二軸編組織物、三軸編組織物、2次元緯糸編地、経糸編地、らせん編地、2次元経糸組込緯糸編地、2D緯糸組込緯糸編地、2D経糸組込経糸編地、2D緯糸組込経糸編地、2D緯糸組込らせん編地フェルト、結合型不織メッシュ、編組管状織物、薄層、2次元緯糸組込0°/90°編地、経糸組込0°/90°編地、経糸組込±45°編地、有孔薄層、編組平織物、機械式ニードリングによる2D不織布、ハイドロエンタングルメントによる2D不織布、ニッティングループ面による2D不織布、ニッティングループリバース面による2D不織布、Velcro、レース、一方向ノンインターレース織物、二軸ノンインターレース織物、多軸ノンインターレース織物、一方向マルチステッチ2D織物、二方向マルチステッチ2D織物、四方向マルチステッチ2D織物、3D完全インターレース円状織製の事前成形構造、3D直交織物、またはその組合せをそれぞれ独立に含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記構造が、重合化した(メタ)アクリレートおよび/または(メタ)アクリルアミドヒドロゲルを含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記構造が、重合化したポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、重合化したポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリルアミド、重合化したポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート/(メタクリルアミド)、ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸の塩、ポリメタクリル酸の塩、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリビニルアルコール、ポリ酸無水物、例えばポリ(メタクリル酸)無水物、ポリ(アクリル酸)無水物、ポリセバシン酸無水物等、コラーゲン、ポリ(ヒアルロン酸)、ヒアルロン酸含有ポリマーおよびコポリマー、ポリペプチド、デキストラン、デキストラン硫酸、キトサン、キチン質、アガロースゲル、フィブリンゲル、ダイズ由来ヒドロゲル、アルギネートに基づくヒドロゲル、ポリ(アルギン酸ナトリウム)、ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、リチウムフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィナート(LAP)、ならびにその組合せを含むポリマーを含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記光硬化性インクが、約100~約400nmの波長を有する光に反応し、および/またはそれを吸収する光重合開始剤および/または色素を含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記光硬化性インクおよび/または前記メッシュが、ペプチド、抗凝固剤、核酸、小分子、生物製剤、または免疫抑制剤から選択される活性な薬剤をさらに含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記ペプチドが、アルギニルグリシルアスパラギン酸(RGD)、コラーゲンI、コラーゲンII、コラーゲンIII、コラーゲンIV、コラーゲンIX、エラスチン、ラミニン、フィブロネクチン、任意のその断片、またはその組合せを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記免疫抑制剤が、プレドニゾン、抗CD34抗体、ヘパリン、FGF-2、フィブロネクチン、VEGF、第XI因子、タクロリムス(プログラフ)、シクロスポリン(ネオーラル)、ミコフェノール酸モフェチル(セルセプト)、イムラン(アザチオプリン)、ラパミューン(ラパマイシンおよびシロリムス)、またはその組合せを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記抗凝固剤が、酸化型再生セルロース(ORC)、抗CD34抗体、ヘパリン、FGF-2、フィブロネクチン、VEGF、第XI因子、またはその組合せを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記照射が、約1秒~約10秒、約10秒~約30秒、約30秒~約1分、約1分~約3分、約3分~約6分、約6分~約12分、約12分~約30分、または約30分超である、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
接触させるステップが、前記構造およびメッシュの両方を、相互に接触するように印刷することを含む、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
強化が、1,000mmHg以上のバースト圧力を前記構造に対して、および/または1.5N以上の縫合糸保持強度を前記構造に対して付与することを含む、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
虚血性疾患をそれを必要としている対象において処置する方法であって、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法により製造された強化型構造を前記対象中に移植するステップを含む方法。
【請求項37】
三次元(3D)ヒドロゲル構造と、光硬化性または光硬化インク中に浸漬されたメッシュを含む層とを含む組成物であって、光硬化性または光硬化インク中に浸漬されたメッシュを含む前記層が前記構造と接触している、組成物。
【請求項38】
前記インクが光硬化性であるが、光硬化されていない、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
前記インクが光硬化されている、請求項37に記載の組成物。
【請求項40】
前記構造が、チューブの形状を含むか、または実質的に同一の形状、サイズであるか、および/または臓器もしくは臓器の断片と同一の相対的寸法を有する、請求項37~39のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項41】
前記臓器が、血管、気管、気管支、食道、尿管、尿細管、胆管、腎管、胆管、肝管、神経導管、CSFシャント、肺、腎臓、心臓、肝臓、脾臓、脳、胆嚢、胃、膵臓、膀胱、骨格骨、軟骨、皮膚、腸、筋肉、喉頭、または咽頭を含む、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
前記血管が、肺動脈、腎動脈、冠動脈、末梢動脈、肺静脈、または腎静脈を含む、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
前記構造が、血液透析グラフトを含む、請求項37~42のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項44】
前記構造が、第1の末端と第2の末端とを備える中空管を含む、請求項40~43のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項45】
前記構造が、第1のサブチューブと第2のサブチューブとを備え、それぞれ第1の末端を有し、前記構造が、前記構造のジョイントを形成するために、その第1の末端において相互に接続する前記第1のサブチューブと前記第2のサブチューブとを備え、前記メッシュが前記ジョイントと接触している、請求項40~44のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項46】
前記メッシュが、前記チューブの前記第1および/または前記第2の末端と接触している、請求項44または45に記載の組成物。
【請求項47】
前記チューブの前記第1の末端と前記第2の末端との間の距離が、チューブ長部を定義し、前記メッシュが、前記第1の末端および/または前記第2の末端から、前記メッシュと接触している前記第1の末端および/または前記第2の末端から前記チューブ長部のX%離れている、前記チューブ上の所定ポイントまでの距離により定義される前記チューブの部分長部と接触しており、Xが、約0.01%~約0.1%、約0.1%~約1%、約1%~約5%、約5%~約10%、約10%~約20%、約20%~約30%、約30%~約40%、または約40%~約50%から選択される、請求項44~46のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項48】
前記部分長部が、約1mm~約2.5mm、約2.5mm~約5mm、約5mm~約7.5mm、約7.5mm~約1cm、または約1cm~約2.5cmを含む、請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
前記メッシュが、実質的に平面であり、約0.01μm~約0.1μm、約0.1μm~約10μm、約10μm~約100μm、約100μm~約1mm、約1mm~約1.5mm、約1.5mm~約2mm、約2mm~約2.5mm、または約2.5mm超の厚さを含む、請求項37~48のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項50】
前記メッシュが、前記チューブの部分長部の周囲をらせん状に取り巻くか、または前記チューブの内表面および/または外表面上において前記チューブを包囲する、請求項47~49のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項51】
前記メッシュが、前記チューブの内表面および/または外表面と接触している、請求項40~49のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項52】
前記メッシュが、前記チューブの前記内部および外表面の両方に接触している、請求項51に記載の組成物。
【請求項53】
前記メッシュが、前記チューブの前記第1の末端および/または前記第2の末端において、チューブのエッジを取り囲むように、前記チューブの前記内表面から前記チューブの前記外表面までラッピングされる、請求項52に記載の組成物。
【請求項54】
前記メッシュが、前記チューブの前記内表面または前記外表面のいずれかに接触しており、前記表面の周囲をラッピングする、請求項50または51に記載の組成物。
【請求項55】
前記構造が、実質的に肺葉、肺、肺の気道樹、肺血管系の形状、またはその組合せである、請求項37~54のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項56】
前記メッシュが、前記構造の、縫合するための部位、ひび割れている部位、引き裂かれている部位、脆弱化している部位、機械的ストレスに晒されている部位、低厚化している部位、感染している部位、および/または罹患している部位に接触する、請求項37~55のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項57】
前記構造および前記メッシュが、同一であるがメッシュを欠いている構造の引っ張り力よりも、約2.5倍~約5倍、約5倍~約7.5倍、約7.5倍~約10倍、約10倍~約15倍、または約15倍超上回る引っ張り力を含む、請求項37~56のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項58】
前記メッシュが、生物学的組織またはグラフト材料に接続するための、またはそれと接続する前記構造の部位と同様である、請求項37~57のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項59】
光硬化性または光硬化インク中に浸漬されたメッシュを含む1つまたは複数の追加の層をさらに含む、請求項37~58のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項60】
前記メッシュまたはその1つまたは複数の層が、ポリグラクチン(Vicryl(登録商標))、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、モノフィラメントプロピレン(SoftMesh、Parietex-TET、TIGR、またはMarlex)、ダクロン、テフロン(登録商標)、ポリテトラフルオールエチレン、ポリカプロラクトン(PCL)、PGA/PCL混合物、PGA/PLA/PCL混合物、またはその組合せを含む、請求項37~59のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項61】
前記メッシュまたはその1つまたは複数の層が、ニットメッシュ、織製メッシュ、綾織物、繻子織物、絽、縫い目を有するノンインターレース織物、縫い目を有さないノンインターレース織物、三軸織物、粗目織物、目の詰んだ織物、四軸織物、2次元従来型二軸編組織物、三軸編組織物、2次元緯糸編地、経糸編地、らせん編地、2次元経糸組込緯糸編地、2D緯糸組込緯糸編地、2D経糸組込経糸編地、2D緯糸組込経糸編地、2D緯糸組込らせん編地フェルト、結合型不織メッシュ、編組管状織物、薄層、2次元緯糸組込0°/90°編地、経糸組込0°/90°編地、経糸組込±45°編地、有孔薄層、編組平織物、機械式ニードリングによる2D不織布、ハイドロエンタングルメントによる2D不織布、ニッティングループ面による2D不織布、ニッティングループリバース面による2D不織布、Velcro、レース、一方向ノンインターレース織物、二軸ノンインターレース織物、多軸ノンインターレース織物、一方向マルチステッチ2D織物、二方向マルチステッチ2D織物、四方向マルチステッチ2D織物、3D完全インターレース円状織製の事前成形構造、3D直交織物、またはその組合せを含む、請求項37~60のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項62】
前記構造が、重合化した(メタ)アクリレートおよび/または(メタ)アクリルアミドヒドロゲルを含む、請求項37~61のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項63】
前記構造が、重合化したポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、重合化したポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリルアミド、重合化したポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート/(メタクリルアミド)、ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸の塩、ポリメタクリル酸の塩、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリビニルアルコール、ポリ酸無水物、例えばポリ(メタクリル酸)無水物、ポリ(アクリル酸)無水物、ポリセバシン酸無水物等、コラーゲン、ポリ(ヒアルロン酸)、ヒアルロン酸含有ポリマーおよびコポリマー、ポリペプチド、デキストラン、デキストラン硫酸、キトサン、キチン質、アガロースゲル、フィブリンゲル、ダイズ由来ヒドロゲル、アルギネートに基づくヒドロゲル、ポリ(アルギン酸ナトリウム)、ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、リチウムフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィナート(LAP)、ならびにその組合せを含むポリマーを含む、請求項37~62のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項64】
前記光硬化性インクが、約100~約400nmの波長を有する光に反応し、および/またはそれを吸収するものを含む、請求項37~63のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項65】
前記光硬化性インクおよび/または前記メッシュが、ペプチド、抗凝固剤、核酸、小分子、生物製剤、または免疫抑制剤から選択される活性な薬剤を含む、請求項37~64のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項66】
前記ペプチドが、アルギニルグリシルアスパラギン酸(RGD)、コラーゲンI、コラーゲンII、コラーゲンIII、コラーゲンIV、コラーゲンIX、エラスチン、ラミニン、フィブロネクチン、任意のその断片、またはその組合せを含む、請求項65に記載の組成物。
【請求項67】
前記免疫抑制剤が、プレドニゾン、タクロリムス(プログラフ)、シクロスポリン(ネオーラル)、ミコフェノール酸モフェチル(セルセプト)、イムラン(アザチオプリン)、ラパミューン(ラパマイシン、シロリムス)、またはその組合せを含む、請求項65に記載の組成物。
【請求項68】
抗凝固剤が酸化型再生セルロース(ORC)を含む、請求項65に記載の組成物。
【請求項69】
前記構造およびメッシュが、1,000mmHg以上のバースト圧力、および/または1.5N以上の縫合糸保持強度を含む、請求項37~68のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項70】
前記活性な薬剤が、抗CD34抗体、ヘパリン、FGF-2、フィブロネクチン、VEGF、第XI因子、またはその組合せを含む、請求項65に記載の組成物。
【請求項71】
1つまたは複数種類の細胞を含む、請求項37~70のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項72】
前記細胞が、哺乳動物細胞、幹細胞由来の細胞、血管細胞、または肺気道細胞のうちの1つまたは複数を含む、請求項71に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2021年5月6日出願の米国仮特許出願第63/185、305号明細書の優先権を主張し、その全内容は本明細書において参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
三次元(3D)ヒドロゲル構造は、様々なバイオメディカル用途においてその使用が拡大傾向にある。しかしながら、ヒドロゲル構築物の機械的特性は、このような構築物の耐久性に関係する問題をしばしばもたらす可能性がある。
【0003】
過去には、当業者は、冗長で時間がかかり、再現するのが困難なプロセスにおいて、ヒドロゲル構造の表面上に「皮膚」を形成することにより、機械的特性を変化させた。それに加えて、「皮膚」は時にそれ自体が脆弱であった。例えば、Raghavanらは、中空の円筒構造を創出するために同心円モールドを採用する複雑な方法論を使用した。デリケートな材料はモールドから取り出すのが困難であり、第2のステップでは、チューブの表面が、ゲル構造内でポリマー鎖の架橋を引き起こす薬剤で処理される。同法は、この処理の深度をコントロールするのが困難である。
【0004】
別の同業者は、機械的特性を変化させる化学反応を、ヒドロゲル全体を通じて誘発するための添加剤を使用した。これはいくつかの異なる欠点を有する。1つは、材料特性をこのように変化させたとき、細胞と相互作用する柔らかいヒドロゲルスキャフォールドの有益な特性が失われることである。このアプローチの第2の欠点は、追加の材料タイプを系に添加する必要があることである(細胞応答に対してマイナス効果を有し得る)。このより複雑な移植物は、規制承認を得るのにもより長時間を要する。例えば、Gaharwarは、コラーゲンに基づくヒドロゲルに対して少量の球形磁気ナノ粒子を添加するプロセスを通じて、ヒドロゲルの剛性を10倍およびその強靭性を20倍増加させることができた。他者、例えばFukao(J. Mater. Chem. B, 2020,8, 5184-5188)等は、セラミック粒子を添加することによりヒドロゲルを強靭化した。このアプローチは、セラミックが存在しても組織の治癒に対して有害とならない限定された用途においてのみ有効である。
【発明の概要】
【0005】
したがって、反復可能であり、過度に複雑なデバイスを生み出さず、および/または柔らかいヒドロゲルスキャフォールドの有益な特性を劇的に変化させない方式で、ヒドロゲル構造の機械的特性を改善する必要性が当技術分野において存在する。
【0006】
本開示のいくつかの実施形態は、三次元(3D)ヒドロゲル構造を強化する方法であって、未硬化の光硬化性バイオインク中に浸漬されたメッシュを、該構造と接触させるステップと、未硬化の光硬化性バイオインク中に浸漬されたメッシュを照射し、これにより3Dヒドロゲル構造に接着させるステップとを含む方法を対象とする。
【0007】
本開示のいくつかの実施形態は、三次元(3D)ヒドロゲル構造と、光硬化性または光硬化インク中に浸漬されたメッシュを含む層とを含む組成物であって、光硬化性または光硬化インク中に浸漬されたメッシュを含む層が該構造と接触している、組成物を対象とする。
【0008】
本開示のいくつかの実施形態は、虚血性疾患をそれを必要としている対象において処置する方法であって、本明細書で開示される強化された構造または組成物を移植するステップを含む方法を対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】組織工学操作された血管グラフト(TEVG)の機械的特性(バースト圧力、縫合糸保持力、および圧縮率)を伏在静脈(SV)と比較して示す、例示的グラフを示す図である。バースト圧力:2134mmHg=284kPa;縫合糸保持強度:1.92N;および圧縮率:25.6%/100mmHg。Pashneh-Tala et al., Tissue Engineering: Part B, Volume 22, pg. 68, Number 1, 2016を参照されたい。
図2-1】ヒドロゲルチューブ上でバーストテストを展開するための実験装置を示す図である。図2A:プラグおよびフレアを備えたチューブを通過するFormlabs。図2B:結束バンドを用いたルアーロック標準フィッティング。
図2-2】ヒドロゲルチューブ上でバーストテストを展開するための実験装置を示す図である。図2C:自着性包帯、steri-strip、および接着剤/ペーパー(スティックおよびリップチューブ)を用いて強化されたFormlabsの固定。図2D:チューブの接着剤および濾紙による強化。
図2-3】ヒドロゲルチューブ上でバーストテストを展開するための実験装置を示す図である。図2E図2A図2B、および図2Cに示す構築物の技術図面。図2F:水平なコンフィギュレーションを維持し、およびチューブの浮力により惹起されるチューブの屈曲を除去するために容器の底部に固定されたチューブ。
図2-4】ヒドロゲルチューブ上でバーストテストを展開するための実験装置を示す図である。図2G:接着剤の利用を除去するためのチューブ装置。図2H:増強された取り付け端部を有するチューブ。図2I:増強された取り付け端部(R3=内径およびR6=外径)を有するチューブ。
図3-1】実施例8に記載するような縫合糸引っ張りテスト装置を示す図である。図3A:万力にクランプ固定された、縫合糸引っ張りテスト用の膜を取り付けるための治具(治具に挿入された膜内に縫合糸を留置する(図3B)ためのU字形ポートを備える)。図3C:浸漬された強化ヒドロゲル。図3D:縫合糸引っ張りテストを行う際に握把して力を発生させるためのサンドペーパーサポートを備える治具。
図3-2】実施例8に記載するような縫合糸引っ張りテスト装置を示す図である。図3E:縫合糸タイプ、3/8円を縫合糸引っ張りテストで使用した。
図4-1】実施例5で議論されるブタ動脈の接続を示す図である。図4A:巾着縫合技術。図4B図4Bに示す巾着縫合を介して天然の血管に連結したコネクター。
図4-2】実施例5で議論されるブタ動脈の接続を示す図である。図4C:光硬化するチューブ上のメッシュ。図4D:チューブの周囲に配置され、光硬化されるメッシュ。図4E:チューブ上に配置され、光硬化されるメッシュ。図4F:のこぎり状の上端は、光硬化したインクを切断する可能性がある。
図5】実施例4のVicryl(商標)(Somerville、NJ)埋込み型グラフト強化を示す図である。図5A:メッシュを用いて強化され、Gore-tex(商標)(Flagstaff、AZ)平滑壁面型血管グラフトに縫合された管状ヒドロゲル。図5B:Vicryl織製メッシュ強化型チューブ(左側パネル)とその拡大したメッシュ(右側パネル)。図5C:Vicrylニットメッシュ強化型チューブ(左側パネル)とその拡大したメッシュ(右側パネル)。
図6】実施例3のメッシュ強化型チューブ縫合糸引っ張り実験用の装置を示す図である。チューブは万力内に配置されており、縫合糸がチューブ末端のメッシュを貫通している。
図7】実施例3の7回の異なる縫合引っ張り実験(強化型チューブ(ライン5~7)およびネイキッド非強化型チューブ(ライン1~3))について、引っ張りに必要とされた力を表すグラフデータを示す図である。Y軸はチューブに加えられた力を示し、X軸は引っ張りに影響を及ぼす変位距離を示す。
図8】メッシュ強化型チューブとメッシュを有さないチューブについて、実施例3の引っ張り力実験結果を示す図である。強化型管状ヒドロゲルは、非改変型管状ヒドロゲルと比較して、縫合糸引っ張り力において8倍の増加を示す。
図9】実施例4のePTFE血管グラフ実験装置を示す図であり、末端は共に近接しており、連続縫合を用いて縫合され、角結びを用いてしっかりと牽引および結ばれ、シアノアクリレート接着剤を用いてユニオンシールされ、水+インディアインクがチューブを通じてポンプ搬送され、リークは観測されなかった。
図10-1】実施例6のウサギPA(肺動脈)実験装置を示す図である。図10A:ブタに移植されたメッシュ強化型チューブ。図10B:天然のウサギ組織にin vivoで連結したチューブ。
図10-2】実施例6のウサギPA(肺動脈)実験装置を示す図である。図10C:ウサギのPAにカップリングした3D印刷されたグラフト材料のループ(矢印で示す)。
図11】実施例10に基づくブタPA欠陥実験装置を示す図であり、ブタの肺動脈に移植された強化型チューブを示す(図10Aも参照されたい)。
図12】PA欠陥矯正の概略を示す図である。図12A:単離、クランプ固定、および切断されたPAを示す。図12Bは、3D印刷されたチューブにエンドツーエンドで接着されたポリエチレンスペーサー(中央のより長いチューブ)を示す(矢印を3D印刷されたチューブ上に重ねて配置する)。図12C:動物を麻酔し、肺動脈を切断し、図12Bに示すデバイスを、各末端において、切断されたPAの各末端のそれぞれに縫合する。
図13】連続ポンプ搬送実験用の実験装置を示す図である。
図14】縫合性能を増強するための強化された末端の導入を示す図である。異なるエネルギーレベルを用いて印刷された3つのヒドロゲルシートを示す。目視検査により認められるようなメッシュネットワークを、シート材料のバルクよりも高いエネルギーを用いて印刷した。いずれの場合にも、バルク材料を48mJ/cmで印刷した一方、メッシュのストランドは、ラベル表示するようにより高いエネルギーである。エネルギー増加領域を、グレースケールを使用することによりコントロールして画像内の曝露をコントロールした。
図15】実施例6に基づくカフまたはスリーブ実験装置を示す図である。図15A:チュービングと印刷されたチューブとの界面を矢印で示す。平滑末端化チップニードルをヒドロゲルチューブの内部に滑り込ませた。シアノアクリレート接着剤を用いて固定した。図15B:両方の末端を平滑末端化チップニードルに直接連結し、DPBS+インディアインクを用いて灌流し、1×PBS中に浸漬し、次に1ストローク当たり0.1mL/約25ストローク/分=2.5mL/分でポンプ搬送し、一晩循環させた。
図16】3D印刷されたヒドロゲル血管を示す図である。
図17-1】17A(602チューブサンプル)、17B(ブタ頸動脈組織単独)に関する引っ張り力実験の実験結果を示す図である。
図17-2】17C(602Nチューブおよび頸動脈に対する引っ張り力)に関する引っ張り力実験の実験結果を示す図である。
図18】バースト/サイクリング実験を示す図であり、バーストテストB用のチュービングに接続したサンプルでは、系の圧力が本実験の最大圧力に達するまで時間経過と共に圧力が増加することを表す。サンプルの破綻は生じなかった。
図19】試料(図19A)および破綻を生じさせるために引っ張られた試料(図19B)が配置された、実施例7に基づく引っ張りテスト実験用の装置を示す図である。
図20-1】図20Aは代表的な602n曲線を示し、図20Bはブタ頸動脈の引っ張り荷重を示す図である。図20Bは引っ張りテストを示す。
図20-2】図20Cは、図20Aおよび図20Bの2つのグラフを重ね合わせた図を示す。ヒドロゲル単独と天然組織との間の差異の大きさを表すので、重ね合わせた図は重要である。
図21図14のデバイスの技術図面(CAD図面)を示す図である。
図22】縫合性能を増加させるためのチューブ末端における埋込みパターンを示す図である。
図23】リーク性の導管に観察されたひび割れを修繕するための強化プロセスの利用を示す図である(図23A)。メッシュを用いた肺葉スキャフォールドヒドロゲルの強化を示す図である(図23B)。手順を以下のように実施した:1.物体内のひび割れを特定する。2.未硬化のインクをひび割れた表面3上にピペットを介して適用する。フラッシュライトを用いて適する波長の光を、表面4からおよそ3インチの距離において2~4秒適用する。物体を再テストし、ひび割れが遷延する場合には手順を繰り返す。
図24図24Aは未硬化の602Nインクを示す図であり、図24Bは硬化したインクを示す図である。
図25】実施例に基づく3D気道印刷を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、三次元(3D)ヒドロゲル構造を強化する方法を対象とする実施形態を含む。追加の実施形態は、強化型三次元(3D)ヒドロゲル構造、および虚血性疾患をそれを必要としている対象において処置する方法であって、強化型三次元(3D)ヒドロゲル構造を移植するステップを含む方法を含む。
【0011】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」には、記載内容が別途明確に規定しない限り、複数形の指示物が含まれる。例えば、「a cell(一細胞)」と記載する場合、それは2つ以上の細胞の組合せ等を含む。
【0012】
本明細書で使用される場合、「重量パーセント」(「wt%」とも表現される)とは、組成物の総重量に対する1つまたは複数の成分の割合(%)を指す。したがって、10グラムの化合物Aを含む質量100グラムを有する組成物は、化合物Aについて10%の重量パーセントを有する。本明細書で使用される場合、重量パーセントは質量パーセントと同義的に使用される。
【0013】
本明細書の複数の実施形態において、様々なパターンの織物およびその織物構造が記載されるが、それらは、Bilisik et al., “3D Fabrics for Technical textile Applications” Submitted: March 15th 2015Reviewed: July 14th 2015Published: March 24th 2016, DOI: 10.5772/61224において定義されている。テキスタイル専門用語のこれらの定義は、当技術分野において周知されている:ニットメッシュは、インターロッキングループとなるように形成されて一連の開口部を生成する一本の繊維から構成される。織製メッシュは、相互に交差して一連の開口部を創出する複数の繊維からなる。フェルトは別途不織布としても知られ、タングリング、または熱、化学物質、圧力、もしくはその組合せの適用によりインターロックしている個々の繊維のマットである。結合型不織布は、マットのもつれた繊維の交点を結びつける第2の材料を含有するフェルトである。編組みされた扁平または管状のメッシュは、3本以上の繊維を交絡させることにより生み出される扁平ではなく円形の断面を有する構築物である。Velcroは、一連のループおよびフックであり、共に圧迫されたとき、フックをループ内に捕捉することによりもつれた状態になる。レースは、ツイスティング、ブレイディング、ルーピング、インターレーシング、またはその組合せにより生み出される織布様の構造を有する織物である。
【0014】
本明細書で引用されたすべての参考資料は、本明細書により参考としてそのまま組み込まれる。定義は、本明細書全体を通じて使用される特定の用語の理解を円滑化するために提供される。本明細書で使用される技術的および科学的用語は、別途定義されなければ、当業者により一般的に理解される意味を有する。当業者にとって公知の任意の適する材料および/または方法が、本明細書に記載される方法を実施する際に利用可能である。
【0015】
用語「投与すること」または「移植すること」は、本明細書で使用される場合、投与を規定すること、ならびに実際に投与することを含み、また処置される対象に対して、他者例えば外科医によって物理的に投与することを含む。
【0016】
本明細書で使用される場合、「対象」または「患者」または「個体」とは、任意の対象、患者、または個体を指し、この用語は本明細書において交換可能に使用される。こうしたことから、用語「対象」、「患者」、および「個体」は、哺乳動物、特にヒトを含む。
【0017】
本明細書で使用される場合、用語「含むこと(comprising)」または「含む(comprises)」は、構成物および方法は列挙された要素を含むが、その他を排除しないことを意味するように意図されている。「から実質的になる」は、構成物および方法を定義するために使用されるとき、記載された目的のために組み合わせた場合、その組合せに対して何らかの本質的な意義を有するその他の要素を排除することを意味するものとする。したがって、本明細書で定義するような要素から実質的に構成される組成物は、請求項に係る発明の基本的および新規的特性に顕著に影響を及ぼさないその他の材料またはステップを排除しない。「からなる」は、その他の成分および実質的な方法ステップについて、その痕跡的要素を超えるものを排除することを意味するものとする。これらの移行句のそれぞれにより定義される実施形態は、本発明の範囲内である。一実施形態がこれらの用語のうちの1つ(例えば、「含む」)により定義されるとき、本開示は、例えば前記実施形態「から実質的になる」、およびそれ「からなる」のような代替的実施形態も含むものと理解すべきである。
【0018】
「実質的に(substantially)」または「実質的に(essentially)」とは、ほぼ全体または完全、例えばある所定の数量の95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ超を意味する。
【0019】
用語「約」は当業者により理解され、この用語が使用される文脈に依存してある程度変化する。該用語が使用される文脈を前提としても、当業者にとって明白ではない用語の使用が存在する場合には、「約」は、特定の用語の±10%までを意味する。例えば、いくつかの実施形態では、該用語は特定の用語の±5%を意味する。用語「約」が先行する数値を用いて、特定の範囲が本明細書に提示される。用語「約」は、それに後続する正確な数、ならびに該用語に後続する数に近接または近似する数に対して文言上のサポートを提供するために本明細書において使用される。数が特に引用された数に近接または近似するかどうか判定する際には、引用されない近接または近似する数は、それが提示される文脈において、特に引用された数の実質的等価を表す数であり得る。
【0020】
数値の範囲が提示される場合、その範囲の上限と下限との間の中間に位置する各数値(文脈より別途明確に指示されない限り、下限値の単位の10分の1まで)、およびその記載された範囲内の任意のその他の記載された数値または中間に位置する数値が本発明の内に包含されるものと理解される。これらのより小さい範囲の上限および下限はより小さい範囲に独立に含まれ得るが、やはり本発明の内に包含され、記載された範囲内の任意の特別に除外される限界の制約を受ける。記載された範囲が限界の一方または両方を含む場合、該限界のいずれかまたは両方を除く範囲も本開示に含まれる。
【0021】
本明細書で使用される場合、用語「処置」または「処置する」とは、下記事項を含む、患者における疾患もしくは状態、または関連する障害のあらゆる処置を意味する:
【0022】
疾患または状態を阻害することまたは予防すること、すなわち臨床症状、例えば脳虚血に起因する神経学的欠陥等の発現を阻止するかまたは抑制することも「処置」にやはり含まれ、それは、神経保護を提供すること;および/または疾患または状態を軽減すること、すなわち臨床症状の後退を引き起こすこと(例えば、神経学的性能を増加させること、または神経学的欠陥を低下させること)である。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「グレースケーリング」または「ボクセル印刷」とは、メッシュデザインの物体中へのin situ処理を指す。パラメーターが変更され、空間内の特定の3Dポイント、または得られた物体内のボクセルにおいて硬化を変化させるように印刷することができる。各ボクセルは完全に異なるパラメーターを用いて印刷可能であり、したがって物体は、同一材料から印刷され得るが、ただし特性が異なる。
【0024】
本出願は、下記の文書:(a)2021年5月6日出願の、「USE OF FUNCTIONALIZED AND NON-FUNCTIONALIZED ECMS, ECM FRAGMENTS, PEPTIDES AND BIOACTIVE COMPONENTS TO CREATE CELL ADHESIVE 3D PRINTED OBJECTS」と題する米国仮特許出願第63/185293号明細書、ならびに2022年5月6日出願の、同一表題による米国非仮特許および/またはPCT出願;(b)2021年5月6日出願の、「MODIFIED 3D-PRINTED OBJECTS AND THEIR USES」と題する米国仮特許出願第63/185302号明細書、ならびに2022年5月6日出願の、同一表題による米国非仮特許および/またはPCT出願;(c)2021年5月6日出願の、「CONTROLLING THE SIZE OF 3D PRINTING HYDROGEL OBJECTS USING HYDROHILIC MONOMERS, HYDROPHOBIC MONOMERS, AND CROSSLINKERS」と題する米国仮特許出願第63/185300号明細書、ならびに2022年5月6日出願の、同一表題による米国非仮特許および/またはPCT出願;(d)2021年5月6日出願の、「ADDITIVE MANUFACTURING OF HYDROGEL TUBES FOR BIOMEDICAL APPLICATIONS」と題する米国仮特許出願第63/185299号明細書、ならびに2022年5月6日出願の、同一表題による米国非仮特許および/またはPCT出願;(e)2021年5月6日出願の、「MICROPHYSIOLOGICAL 3-D PRINTING AND ITS APPLICATIONS」と題する米国仮特許出願第63/185298号明細書、ならびに2022年5月6日出願の、同一表題の米国非仮特許および/またはPCT出願のそれぞれを参照によりそのまま組み込む。
【0025】
三次元(3D)ヒドロゲル構造を強化する方法およびそれを含む組成物
本開示のある特定の実施形態は、三次元(3D)ヒドロゲル構造を強化する方法であって、未硬化の硬化可能バイオインク中に浸漬された強化スキャフォールドを、該構造と接触させるステップと、未硬化の硬化可能バイオインク中に浸漬された強化スキャフォールドを照射し、これにより3Dヒドロゲル構造に接着させるステップとを含む方法と関連する。いくつかの実施形態では、硬化可能バイオインクは、例えば特定の波長におけるUV照射を介して光硬化性である。
【0026】
別の態様では、本開示は、三次元(3D)ヒドロゲル構造と、光硬化性または光硬化インク中に浸漬されたメッシュを含む層とを含む組成物であって、光硬化性または光硬化インク中に浸漬されたメッシュを含む層が該構造と接触している、組成物を提供する。
【0027】
ヒドロゲル構造の3D形状は特に限定されず、またチューブの形状であってもよいし、または実質的に同一の形状、サイズであってもよいし、および/または臓器もしくは臓器の断片と同一の相対的寸法を有する。
【0028】
いくつかの実施形態では、ヒドロゲル構造の3D形状は、実質的に同一の形状、サイズであるか、および/または臓器または臓器の断片と同一の相対的寸法を有する。ある特定の実施形態では、臓器または臓器の断片として、血管、気管、気管支、食道、尿管、尿細管、胆管、腎管、胆管、肝管、神経導管、CSFシャント、肺、腎臓、心臓、肝臓、脾臓、脳、胆嚢、胃、膵臓、膀胱、リンパ管、骨格骨、軟骨、皮膚、腸、筋肉、喉頭、または咽頭が挙げられる。さらなる実施形態では、血管形状として、肺動脈、腎動脈、冠動脈、末梢動脈、肺静脈、または腎静脈が挙げられる。ある特定の実施形態では、構造は、血液透析グラフトを含む。その他の実施形態は、構造が実質的に肺葉、肺、肺の気道樹、肺血管系の形状、またはその組合せである場合を含む。いくつかの実施形態では、強化は、外部圧力が構造に加わるとき、構造を通る気体流または血液(液体)流を維持するステップを含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、ヒドロゲル構造の3D形状はチューブの形状にある。ある特定の実施形態では、構造は、第1の末端と第2の末端とを備える中空管を含む。いくつかの実施形態では、構造は、第1のサブチューブと第2のサブチューブとを備え、それぞれ第1の末端を有し、該構造は、チューブのジョイントを形成するために、その第1の末端において相互に接続する第1のサブチューブと第2のサブチューブとを備え、強化スキャフォールドが該ジョイントに接触している。いくつかの実施形態では、強化スキャフォールドは、チューブの第1および/または第2の末端と接触している。
【0030】
ある特定の実施形態は、チューブ長部を定義するチューブの第1の末端と第2の末端の間の距離を含み、強化スキャフォールドは、第1の末端および/または第2の末端から、強化スキャフォールドと接触している前記第1の末端および/または前記第2の末端からチューブ長部のX%離れている、チューブ上の所定ポイントまでの距離により定義されるチューブの部分長部と接触しており、Xは、約0.01%~約0.1%、約0.1%~約1%、約1%~約5%、約5%~約10%、約10%~約20%、約20%~約30%、約30%~約40%、または約40%~約50%から選択される。いくつかの実施形態では、部分長部は、約1mm~約2.5mm、約2.5mm~約5mm、約5mm~約7.5mm、約7.5mm~約1cm、または約1cm~約2.5cmを含む。
【0031】
強化スキャフォールドは特に限定されない。本開示の例示的強化スキャフォールドとして、ニットメッシュ、織製メッシュ、不織構築物(例えば、フェルト)、結合型不織構築物、編組管状織物、編組平織物、薄層、有孔の薄層、velcro、およびレース(または裁断したときに端部がほぐれないその他の織物)が挙げられる。追加の材料として、本明細書において参照により組み込まれているBilisik, K., et al, “3D fabrics for technical textile applications”に記載されているものが挙げられる。ある特定の実施形態では、強化スキャフォールドはメッシュである。いくつかの実施形態では、強化スキャフォールドは、実質的に平面であり、約0.1μm~約2mmの厚さを含む。例えば、強化スキャフォールド厚さの実施形態は、約0.1μm、0.2μm、0.3μm、0.4μm、0.5μm、0.6μm、0.7μm、0.8μm、0.9μm、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、15μm、20μm、50μm、100μm、150μm、200μm、250μm、500μm、750μm、1mm、1.1mm、1.2mm、1.3mm、1.4mm、1.5mm、1.6mm、1.7mm、1.8mm、1.9mm、2mm、およびその間の内部範囲を含む。
【0032】
本開示の強化スキャフォールド材料の非限定的な例として、ポリグラクチン(Vicryl(登録商標)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、モノフィラメントプロピレン(例えば、SoftMesh、Parietex-TET、TIGR、Marlex)、ダクロン、テフロン(登録商標)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetraflourethylene)、ポリカプロラクトンメッシュ、PGA/PCL、PGA/PLA/PCL、およびその組合せが挙げられる。好ましい実施形態では、95/5PCL/PGAメッシュが使用される。この材料は、およそ9~12カ月といった好ましい分解時間を有する。いくつかの実施形態では、材料は2種類以上の繊維から作成される。例えば、材料が2種類以上の繊維から作成されるとき、繊維の少なくとも1つはより迅速に分解することができ、その結果、例えば組織の内方成長が増強されるように、経時的に密度が低下する強化スキャフォールドをもたらす。例として、PGAの繊維が組み込まれた(織込まれた、または編込まれた、または編組みされた)PLAメッシュである複合物が挙げられる。別の事例は、PGA繊維が組み込まれたPCL繊維との複合物である。
【0033】
強化スキャフォールドの留置は、構造の一部または全部の機械的特性を改善するために調節可能である。いくつかの実施形態では、強化スキャフォールドは、チューブの部分長部の周囲をらせん状に取り巻くか、またはチューブの内表面および/または外表面上においてチューブを包囲する。いくつかの実施形態では、強化スキャフォールドは、チューブの内部および外表面の両方に接触する。その他の実施形態では、強化スキャフォールドは、チューブの第1の末端および/または第2の末端において、チューブのエッジを取り囲むように、チューブの内表面からチューブの外表面までラッピングする。
【0034】
本開示は、構造の、縫合されると予想される部位、ひび割れている部位、引き裂かれている部位、脆弱化している部位、機械的ストレスに晒されている部位、低厚化している部位、感染している部位、および/または罹患している部位を強化するステップも含む。いくつかの実施形態では、強化は、チューブの屈曲抵抗性および/または崩壊防止を含む。いくつかの実施形態では、強化は、構造の縫合部位においてなされ、構造の縫合引っ張り力を、構造の非強化型縫合部位に対して約2.5倍~約5倍、約5倍~約7.5倍、約7.5倍~約10倍、約10倍~約15倍、または約15倍超増加させる。
【0035】
追加の実施形態は、生物学的組織またはグラフト材料に接続するための構造の部位における強化を含む。
【0036】
三次元(3D)ヒドロゲル構造は特に限定されず、また例えば、1つまたは複数の異なる重合化したモノマーからなる複合構造であり得る。本発明で使用され得るヒドロゲル材料は、それを作成する方法と同様に当業者にとって公知であり得る。例えば、Caloet al., European polymer Journal Volume 65, April 2015, Pages 252-267に記載されるようなヒドロゲルが使用され得る。いくつかの実施形態では、ヒドロゲル構造は、重合化した(メタ)アクリレートおよび/または(メタ)アクリルアミドヒドロゲルを含む。いくつかの実施形態では、構造は、重合化したポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、重合化したポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリルアミド、重合化したポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート/(メタクリルアミド)、ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸の塩、ポリメタクリル酸の塩、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリビニルアルコール、ポリ酸無水物、例えばポリ(メタクリル酸)無水物、ポリ(アクリル酸)無水物、ポリセバシン酸無水物等、コラーゲン、ポリ(ヒアルロン酸)、ヒアルロン酸含有ポリマーおよびコポリマー、ポリペプチド、デキストラン、デキストラン硫酸、キトサン、キチン質、アガロースゲル、フィブリンゲル、ダイズ由来のヒドロゲル、アルギネートに基づくヒドロゲル、ポリ(アルギン酸ナトリウム)、ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、リチウムフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィナート(LAP)、ならびにその組合せを含むポリマーを含む。いくつかの実施形態では、ヒドロゲルポリマーのMwは、約400Da、500Da、600Da、700Da、800Da、900Da、1000Da、1100Da、1200Da、1300Da、1400Da、1500Da、1600Da、1700Da、1800Da、1900Da、2000Da、2100Da、2200Da、2300Da、2400Da、2500Da、2600Da、2700Da、2800Da、2900Da、3000Da、3100Da、3200Da、3300Da、3400Da、3500Da、3600Da、3700Da、3800Da、3900Da、4000Da、4100Da、4200Da、4300Da、4400Da、4500Da、4600Da、4700Da、4800Da、4900Da、5000Da、5100Da、5200Da、5300Da、5400Da、5500Da、5600Da、5700Da、5800Da、5900Da、6000Da、6100Da、6200Da、6300Da、6400Da、6500Da、7000Da、7500Da、8000Da、8500Da、9000Da、9500Da、10000Da、15000Da、または20000Daである。
【0037】
いくつかの実施形態では、ヒドロゲルは架橋したポリマーを含む。いくつかの実施形態では、ポリマーは、ポリマー内の架橋可能部分の割合(%)に基づき、架橋率約0%~約10%、約10%~約20%、約20%~約30%、約30%~約40%、約40%~約50%、約50%~約60%、約60%~約70%、約70%~約80%、約80%~約90%、または約90%~約100%である。架橋可能部分は、例えば、(メタ)アクリレート基を含み得る。
【0038】
硬化可能バイオインクは特に限定されない。いくつかの実施形態では、バイオインクは、三次元(3D)ヒドロゲル構造で使用されるモノマーと組成において同一であるかまたは類似している。いくつかの実施形態では、硬化可能バイオインクは、光硬化性インク、例えば100~400nmの範囲のUVスペクトルにおいて光硬化し得るインクである。考え得るインクとして、100~400nmの範囲において光に反応し、およびそれを吸収する光重合開始剤および/または色素が挙げられる。光重合開始剤として、例えば、ベンゾフェノン、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(BAPO)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、2,2’-アゾビス[2-メチル-n-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、リチウムフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィナート(LAP)、およびエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィナートを挙げることができる。
【0039】
ある特定の実施形態では、ヒドロゲルは3D印刷された物体を含む。当業者は、当技術分野において公知の印刷方法について理解するが、その非限定的な例として、選択的レーザー焼結(SLS)法、熱溶解積層(FDM)法、3Dインクジェット印刷法、デジタル光処理(DLP)法、およびステレオリソグラフィ法が挙げられる。熱溶解積層(FDM)法では、CADファイルにより定義されるツールパスに追随する押出ヘッドによりインクが積層される。材料は、厚さ20μmほどの微細な層として積層され、部品はボトムアップ式に、1回に1層ずつ構築される。熱溶解積層法に基づくいくつかの3Dプリンターは、2つの異なる材料(一方は構築材料であり、また他方はサポート材料、例えば支柱等である)を押し出すことができるデュアルプリントノズルヘッドを備える。サポート材料は水で洗浄可能である。
【0040】
3Dインクジェット印刷は、スピード、低コスト、高分解能、および使い易さについて効果的に最適化され、エンジニアリングデザインの構想段階から初期段階機能テストを通じて可視化するのに適したものにしている。インクジェット印刷法では、噴射ステップとそれに後続するUV/Vis光によって複雑な3D物品がインク組成物から生成される。インクジェット印刷プロセスにおける光硬化性インクは、CADファイルにより定義されるパターンを有する構築プラットフォーム上のいくつかのノズルを通じて噴射され得る。
【0041】
3D印刷技術の中でも有効な技術は、デジタル光プロセス(DLP)法、またはステレオリソグラフィ(SLA)である。DLP法またはSLA法を使用する3Dプリンターでは、インク材料がバット上に層形成されるかまたはシート上に展開され、インクの事前に決定されたエリアまたは表面が、デジタルマイクロミラーデバイスまたは回転ミラーによりコントロールされる紫外-可視(UV/Vis)光に曝露される。DLP法では、追加の層が繰り返しまたは連続して積層され、各層は所望の3D物品が形成されるまで硬化される。SLA法は、インクが一列の放射ビームにより凝固するという点でDLP法とは異なる。3D印刷のその他の方法は、3D Printing Techniques and Processes by Michael Degnan, Dec 2017, Cavendish Square Publishing, LLCに見出すことができ、その開示は、本明細書により参考として組み込まれる。
【0042】
本開示の組成物は、指示書または添付文書と共に包装されるか、またはキット内に含まれ得る。そのような指示書または添付文書は、組成物の有効期間を考慮しながら、推奨される保管条件、例えば時間、温度、および光等に対処し得る。そのようなキットは、患者への医学的移植および患者に対するフォローアップ介護に関する指示書も含み得る。そのような指示書または添付文書は、組成物の特別な長所、例えば現場、管理された病院、クリニック、またはオフィス条件の外部での使用を必要とし得る調製物について、その保管のし易さ等にも対処し得る。1つの態様では、指示書は、組成物の管理者、製作者、またはレシピエントに対するビジュアルエイド/絵入りおよび/または文書による指示を含み得る。
【0043】
1つの態様では、キットは本明細書に開示されるような1つまたは複数の組成物を含み得るが、その場合、組成物は、製品の物理的完全性を保護するために、第1の保護的パッケージング、または第2の保護的パッケージング、または第3の保護的パッケージング内に密閉され得る。第1、第2、または第3の保護的パッケージングのうちの1つまたは複数は、フォイルパウチを含み得る。キットはデバイスの使用説明書をさらに含み得る。1つの態様では、キットは2つ以上のデバイスを収納する。
【0044】
虚血性疾患を処置する方法
1つの態様では、虚血性疾患を、それを必要としている対象において処置する方法が提供され、同方法は、本明細書のいずれかの実施形態に記載の方法(未硬化の光硬化性バイオインク中に浸漬されたメッシュを構造と接触させるステップと、未硬化の光硬化性バイオインク中に浸漬されたメッシュを照射し、これにより3Dヒドロゲル構造に接着させるステップとを含む)により製造された強化型構造を移植するステップを含む。
【0045】
蛇行または屈曲した動脈および静脈が、ヒトおよび動物において一般的に観察される。軽度の蛇行は無症候性であるが、重度の蛇行は、遠位臓器において虚血性発作を引き起こす可能性がある。臨床所見から、蛇行した動脈および静脈は、加齢、アテローム性動脈硬化症、高血圧症、遺伝的欠陥、および糖尿病と関連付けられた。Han et al., J. Vasc. Res. 2012 May; 49(3): 185-197。本開示の強化型チューブを、屈曲するかまたは屈曲が始まる可能性のある血管中に移植することで、虚血性障害を処置し、および/またはそれが発生または進行するの防止し得る。
【0046】
虚血性疾患は、大脳または全身の虚血性障害を含み得る。1つの実施形態では、大脳または全身の虚血性障害は、微小循環障害、分娩時脳虚血、心停止または蘇生術期間中/後の脳虚血、手術時の問題に起因する脳虚血、頚動脈手術期間中の脳虚血、脳に対する血液供給動脈の狭窄に起因する慢性脳虚血、静脈洞血栓症または大脳静脈の血栓症、脳血管奇形、糖尿病網膜症、高血圧、高コレステロール血症、心筋梗塞、心不全、心機能不全、うっ血性心機能不全、心筋炎、心膜炎、心膜心筋炎、冠状動脈性心疾患、狭心症、先天性心疾患、ショック、四肢の虚血、腎動脈の狭窄、糖尿病網膜症、マラリアと関連する血栓症、人工心臓弁、貧血、脾機能亢進症候群、肺気腫、肺線維症、勃起不全、または肺浮腫から選択される。
【0047】
例えば、本開示の方法は、医学的に公認された尺度により測定した場合、大脳または全身の虚血性障害について、その1つまたは複数の特徴における改善を示す可能性がある。改善は、例えば約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%であり得る。
【0048】
改善を測定するための医学的に公認された尺度または技術として、例えばコレステロールテスト、高感度C反応性タンパク質テスト、リポタンパク質(a)、血漿セラミド、ナトリウム利尿ペプチド、低密度リポタンパク質コレステロール、高密度リポタンパク質コレステロール、トリグリセリド、心電図(EKG)、Holterモニター、ストレステスト、心エコー図、陽電子放出断層撮影法(PET)、タリウムスキャン、心筋潅流スキャン、移植可能なループレコーダー、傾斜テーブルテスト、電気生理学試験、冠血管造影法、磁気共鳴画像法、磁気共鳴血管造影法、心臓CTスキャン、およびイベントレコーダーが挙げられる。
【0049】
本明細書で開示される強化型チューブを含む合成血管または組織工学操作された血管グラフトを外科移植する方法は本実施例に開示されており、また当業者にとって公知である。Koobatian et al., J Vis Exp. 2015; (98): 52354。TEVGを外科的に移植するための当技術分野において公知の方法は、本明細書に開示されるように、すなわちTEVGを天然の血管または組織に縫合する前に本明細書に記載されるような前記血管を強化するために、当業者によって改変され得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、対象は、ヒトまたは動物である。いくつかの実施形態では、対象は、ヒト、ウマ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、鳥類、または爬虫類から選択される。
【0051】
本明細書に記載される実施形態は、下記の実施例によりさらに例証されるが、ただしいかなる場合においてもそれに限定されない。
【実施例
【0052】
[実施例1]:メッシュを使用して強化型胸膜を作成する方法
本記載事項の目的は、本発明のスキャフォールドにおいてメッシュを適用した場合の胸膜に対する効果を文書化することである。換気実験より、本プロセスの有効性が明らかである。このメッシュを試すために、出願者は、図25の印刷物のうちの1つを使用したが、換気テスト期間中に胸膜においてリークした。そこで、VKML90/10PLGAをスキャフォールドの周囲に適用し、メッシュを602Nにより被覆した。602Nチューブは、表1に示すような下記成分を含有する。
【0053】
【表1】
【0054】
波長385(nm)のハンドヘルドUV光を、表面において重合化するまで、印刷物のすべての部分に1分間適用した。次に被覆されたピースをバッファー中に1時間配置した後、それをバイオリアクターに組み立て、人工呼吸器と接続した。
【0055】
[実施例2]:ブタで使用するための長さ6cmのチューブ-メッシュ末端の調製
この実験は、強化メッシュをヒドロゲルチューブに連結し、光を使用して硬化させるための手順を確立した。実施したステップは以下の通りであった:
1.チューブを切り取る。
2.キムワイプを用いて適用するための末端を十分にワイプする。こうすることで、過剰のバッファーが取り除かれ、新規調製物とオリジナルの物体との間にバリア層が生ずるのを防止する。
3.末端を調製物内に浸漬するかまたはバルブピペットを用いて液滴を滴下する。
4.織物の末端を適用し、フラッシュライトを用いてその場で仮止めする。
5.周囲をラッピングし、継続して浸漬し、固定されるまで硬化させる。
6.UV源をリングスタンドに取り付ける。
7.リングスタンドより懸架されたランプを用いて、チューブを光源に非常に接近させた。
8.メッシュ末端の小さな領域に仮止めする。必要に応じて調製物を添加しながらゆっくりと回転させる。
9.チューブの全円周がメッシュにより覆われたとき、外科用鋏を用いて余分な部分を切り落とす。
10.602N調製物のドリップでグラフトを継続してコーティングし、回転させながら硬化させる。これは、指がUV光に曝露されないように、チューブをプラスチックロッド上に配置するのに役立つ。時々、緊密な結合を確実にするために、ピンセットを用いてメッシュをチューブの表面に押しつける。
11.チューブを曲げながら、メッシュとの界面において接着に隙間が生じないかチェックする。隙間がまったく観察されず、また若干引っ張ってもメッシュが動かなければ、チューブをPBSの浴に漬けて未硬化の材料をすべて洗い流す。
【0056】
[実施例3]:
縫合糸引っ張りアッセイ
方法:3本の短いチューブを、テスト用として、縫合糸引っ張り値を測定するためのInstron装置(図6)上に準備した。切り取られたチューブの切片は、実施例2に記載されている6cmチューブと同じ方式で、一方の末端に適用されたメッシュを有した。実験では、メッシュを有さないチューブと強化型メッシュチューブとを比較した。すべて、長さ10cmの同一バッチに由来した。
【0057】
3mmのバイトをインクでマークし、次にニードルをその標的マークに貫通させ、細いピンセットを使用して糸を引き抜いた。縫合糸を装置のトップグリップに固定した。
【0058】
結果:強化型チューブのすべてにおいて、メッシュの領域がチューブ本体から剥ぎ取られた。縫合糸がメッシュそのものから抜去されるようなケースは観察されなかった。非強化型チューブは縫合糸によって容易に切断され、引き上げるのに必要とされた力はおよそ8~10分の1であった(図8)。
【0059】
[実施例4]:リークを生じることなく縫合されたヒドロゲル
この実験の目的は、強化型ヒドロゲルチューブをPTFEグラフトチューブに縫合し、接合されたチューブ内に液体を注入し、リークがないことを実証することである。
【0060】
方法:強化型チューブを実施例2に記載するように調製した。PTFEグラフトチューブの末端およびチューブのメッシュ強化型末端を、図5Aに示すように共に縫合した。
【0061】
結果:赤色インクを含む水を、図9に示すようにグラフトを通じて注入した。リークは認められなかった。ヒドロゲルチューブの末端を塞いだが、界面における漏出は観察されなかった。
【0062】
[実施例5]:ブタ(porcine/pig)で使用するための埋込み型グラフト縫合糸アンカー
この実験の目的は、ブタモデルに導入するためのより機能的な血管グラフトを創出することであった。最終的な目標は、動物モデル内で縫合するのに適する印刷された部品を作成するために、602N血管グラフト増強法を開発することであった。
【0063】
作成した血管グラフトチューブについて外科医から得られたフィードバック後においても、602Nチューブを天然の血管に接続する際の問題が継続した。これまでは、硬質プラスチック製バーブコネクターがグラフトの末端に連結され(シアノアクリレートを使用して)、巾着縫合糸(図4A)を天然の血管に緊結することで、該血管をコネクター周囲において締めつけている(図4B)。シアノアクリレートはヒドロゲルチューブを硬くし、また末端を脆弱化させ/長期使用に適さなくするが、それに加えて、ウサギモデルにおいてコネクター内に血塊を形成することが観察された。より強靭な界面を開発することが必要である。
【0064】
ヒドロゲル内に外科用メッシュアンカーを埋め込むことにより、出願者はコネクターに対する必要性を完全に除去し、グラフトが天然の血管に直接縫合されるのを可能にする。
【0065】
材料および方法:フラッシュライト:Sunlite365nmUVフラッシュライト(ガラス中央部で20mW/cmのパワーとして測定された)、使用インク:602N。始めに、365nmUVフラッシュライトを、ペトリ皿内で50umの602Nを硬化させることによりテストした。フラッシュライトをドロップレットからおよそ5cm離して保持し、およそ10秒間点灯させた(図24Aは未硬化の602Nインクを示し、また図24Bは硬化したインクを示す)。
【0066】
第1のテストサンプルを、12ply医学ガーゼのシートを使用して作成した。ガーゼのストリップを裁断し(1×5cm)、602Nグラフトの末端周囲に巻き付けた(5mmID、1.5mm壁厚)。小型バルブペットを、約1mLの未硬化インクをガーゼの最上部に分配するのに使用し、UVフラッシュライトを用いておよそ30秒間硬化させた。
【0067】
結果:12plyガーゼアンカーテストの初回結果は非常に有望であった。糸がゆるんでいると、インクを硬化させる前に、一部のエリアにおいてガーゼアンカーが収縮し/ほつれる原因となった。見栄えの悪い外観にもかかわらず、ガーゼは、縫合糸のストレスを表面全体に行き渡らせることができ、またグラフトが破れを伴わずに縫合糸を瑕疵なく保持することを可能にした。補強されたエリアは縫合針による貫通を可能にし、中レベルの張力において破れまたは破砕の兆候を示さなかった。
【0068】
最初の強化型グラフトを、1層12plyガーゼを用いて作成した(各末端に2cmの切片)。閉鎖ループ縫合糸を用いたテストが奏功し、グラフトに破砕/割れは認められなかった。強化型ガーゼグラフトは、破れたりまたは破断したりすることなく張力に耐えることができた。追加の強化型グラフトを、Vicryl外科用メッシュを使用しながら同一の技術を用いて作成し、評価およびフィードバック用として外科チームに送付した。補強物を、厚さ1mmの層としておよそ2mLのインクを用いて構造に硬化させ、1側面当たりおよそ40秒間、インクを硬化させた。
【0069】
Formlab Elastic v1 Resin印刷アンカーを印刷することにより追加の補強物をテストし、602NおよびUVフラッシュライトを用いてそれを末端に固定した。プラスチックコネクターに置き換わるようにアンカーを設計し、巾着縫合接続を可能にした。インクが硬化したらアンカーがグラフトに固定されるように、ネット/メッシュ末端を設計し、および巾着縫合糸を固定し、圧縮力に耐えるように、溝付きバンドを設計した。導入後、様々な結果が得られたが、のこぎり状のエッジ(図4D)が、グラフトが新規に硬化したインクにより切断され、グラフトから離断する原因となった(図4F)。
【0070】
[実施例6]:ポンプ搬送実験
図15の装置の組立てに関して、Cole Parmer社(Barrington,IL)製Ismatec Reglo ICCを、タイゴンチューブ、ルアーロックと共に使用した。結果:リークを起こさずにオールナイトでポンプ搬送した後、破断点に達するまで圧力は増加した。破断の発生:1ストローク当たり0.5mL/1分当たり約80ストローク=40mL/分で搬送しても、チューブルアーロックは取り付け界面から離断しなかった。最終的な寸法:2mmOD、1.5mmID。
【0071】
[実施例7]:引っ張りテスト
バーストテスト取り付け装置から回収された動脈の単一矩形部分を、これまでのドッグボーンサンプルと同じ速度で破断するまで引っ張った。図20A図20Cに示すように、すべてのデータをMPaに変換した。
【0072】
[実施例8]:縫合糸引っ張りテスト
方法:
a)図3A図3Dに示す装置を使用しながら、テストを開始する前に、使用するグリップ面を選択し、それをグリップに対して押し当てる。面は5mmのバイト距離チャンネルを有する。
b)膜は、Caを含まずMgを含まないDPBS中に、テストする前、最低2時間、37℃で保管すべきである。
c)膜をバッファーから取り出し、底部エッジをキムワイプに対して軽くブロットする。膜の最上部エッジをグリップ治具の最上部エッジに位置合わせする。
●膜内のノッチによる表示に従い、基層が底部側に位置することを確実にする。
●膜がグリップ用のサンドペーパー表面と接触していることを確実にする。
●指がきつく感じられるまでグリップを締める。膜がグリップ面マウントの最上部より上方まで引っ張り上げられるので、締め過ぎないこと。
d)針と縫合糸チャンネルの底部との間の接触を保ちながら、新しい縫合糸を挿入する。出口側から針をしっかり掴むことにより膜を通じて縫合糸を慎重に引っ張り、軽く引き出す。
e)縫合糸末端の位置を合わせ、テープエッジに対して直角の方向で、それをテープ片上に共に固定し、次に上部グリップの一方の面に対してテープを押しつける。上部グリップ面上で縫合糸のエッジを中心部に配置する。
f)しっかりと閉鎖するまでグリップを締める。
g)縫合糸の長さ方向から大部分のたるみを取り除くためにジョグ機能を使用する。若干量の曲がりを縫合糸に残す。最終的なたるみは、本方法内の事前負荷機能を使用して除去される。
h)ゼロ変位およびゼロ負荷
i)テストを開始する。
【0073】
[実施例9]:強化型チューブを用いて修復されたブタ肺動脈
目的:人工肺動脈が血流により誘発された生理学的圧力を維持する能力を評価すること。動物モデルが必要とされる。ブタモデルが、それがヒト肺系のサイズと類似するという点で再現性をもたらし、またいくつかのトランスレーショナルリサーチにおけるその応用について周知されている。
【0074】
方法:
1.ケタミン(20mg/kg)、アセプロマジン(1.1mg/kg)、およびアトロピン(0.04mg/kg)の筋肉内注射により、手術前30分にブタを鎮静化する。
2.動物を手術台上に配置する。ECGプローブ、直腸プローブ温度計、およびパルスオキシメーターを動物上に配置して、手術全体を通じて心拍数、体温、および飽和度をモニターする。
3.プロポフォール(0.14mg/kg)の静脈内低速ボーラス注射により麻酔を誘発する。
4.手術全体にわたり麻酔を維持するために、0.4mg/kg/分の用量で、1.4mL/分のプロポフォール輸液を開始する。痛覚消失のためにメロキシカム(0.4mg/kg)の筋肉内注射を投与する。手術全体を通じて麻酔の深度をモニターし(心拍数、眼神経反射、顎の緊張度)、必要な場合にはプロポフォールの用量を増加させる。
5.手術全体を通じてリンガー溶液の持続的静脈内輸液を投与する(50~60滴/分)。
6.ブタを腹臥位で据付け、リドカイン(10mg/mL)スプレーを披裂軟骨上に注入する。
7.リドカインスプレーから5分後に、6.5気管内チューブを用いてブタに挿管し、Ohmeda7800人工呼吸器を使用しながら、100%酸素を用いて速やかに換気する(7mL/kgの1回換気量および25~28呼吸/分の呼吸速度)。
8.開胸に備え、右側を下にしてブタを配置する。
9.メロキシカム(0.2mg/kg)の第2回筋肉内注射を投与し、およびブピバカイン(1mg/kg)の皮下注射を開口部位に投与する。
10.およそ15cmの切開を、右第2肋間腔を通じて実施する。
11.解離操作を実施して肺動脈を露出させる。迷走神経を避けるために特別な注意を払う。
12.人工血管を移植するための十分な空間を確保するために、ピンセットを用いて大静脈を遠ざける。
13.肺動脈をクランプで固定して血液が通過するのを停止させる。人工血管コネクターを導入するために、不完全な切開を肺動脈上で実施する。
14.切開部を通じてサンプルグラフトを肺動脈に挿入し、縫合糸を用いてその場で締めつける。クランプを動脈から除去して、血流が人工肺動脈を通過するのを可能にする。
図1
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図5
図6
図7
図8
図9
図10-1】
図10-2】
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17-1】
図17-2】
図18
図19
図20-1】
図20-2】
図21
図22
図23
図24
図25
【国際調査報告】