(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】剥離コーティングを調製するための組成物及びコーティング基材を調製する方法
(51)【国際特許分類】
C09D 183/04 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
C09D183/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568361
(86)(22)【出願日】2021-05-24
(85)【翻訳文提出日】2023-11-06
(86)【国際出願番号】 CN2021095485
(87)【国際公開番号】W WO2022246594
(87)【国際公開日】2022-12-01
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ユー
(72)【発明者】
【氏名】ファン、フーミン
(72)【発明者】
【氏名】パン、シー
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ジグァン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ホンユ
(72)【発明者】
【氏名】リュー、ジホア
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038DG262
4J038DL031
4J038GA03
4J038JC39
4J038KA04
4J038NA10
4J038PC08
(57)【要約】
剥離コーティングを形成するための組成物は、(A)1分子当たり平均して少なくとも2個のカルビノール官能基を有するオルガノポリシロキサンを含む。オルガノポリシロキサン(A)は、組成物の総重量に基づいて、50~99重量%の量で組成物中に存在する。組成物は、(B)ポリイソシアネートをさらに含む。組成物を用いて形成された剥離コーティングは、発泡体ではない。この組成物を用いて形成された剥離コーティングも開示される。加えて、基材上に配置された剥離コーティングを含むコーティング基材を調製する方法、並びにその方法に従って形成されたコーティング基材が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離コーティングを形成するための組成物であって、前記組成物が、
(A)1分子当たり平均して少なくとも2個のカルビノール官能基を有するオルガノポリシロキサンであって、前記オルガノポリシロキサン(A)が、前記組成物の総重量に基づいて50~99重量%の量で前記組成物中に存在する、オルガノポリシロキサンと、
(B)ポリイソシアネートと、を含み、
前記組成物を用いて形成された前記剥離コーティングが、発泡体ではない、組成物。
【請求項2】
(i)前記組成物が、(C)触媒をさらに含み、(ii)前記組成物が、物理発泡剤を含まず、(iii)前記組成物が、化学発泡剤を含まないか、又は(iv)(i)~(iii)の任意の組み合わせである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記オルガノポリシロキサン(A)が、(i)少なくとも1個のSiO
4/2単位を含み、(ii)平均して3個以上のカルビノール官能基を含み、(iii)少なくとも1個のペンダントカルビノール官能基を含み、(iv)少なくとも1個の末端カルビノール官能基を含むか、又は(v)(i)~(iv)の任意の組み合わせである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
(i)前記カルビノール官能基が、互いに同じであり、(ii)前記カルビノール官能基が、独立して、一般式-D-O
a-(C
bH
2bO)
c-H(式中、Dは、共有結合又は2~18個の炭素原子を有する二価炭化水素連結基であり、下付き文字aは、0又は1であり、下付き文字bは、下付き文字cによって示される各部分において独立して2~4から選択され、下付き文字cは、0~500であるが、但し、下付き文字a及びcが同時に0ではないことを条件とする)を有するか、又は(iii)(i)及び(ii)の両方である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
(i)前記カルビノール官能基が、一般式
-D-O
a-[C
2H
4O]
d[C
3H
6O]
e[C
4H
8O]
f-H
(式中、Dは、共有結合又は2~18個の炭素原子を有する二価炭化水素連結基であり、下付き文字aは、0又は1であり、0≦d≦500、0≦e≦500、及び0≦f≦500であるが、但し、1≦d+e+f≦500であることを条件とする)を有するか、(ii)前記カルビノール官能基が、ペンダントであるか、又は(iii)(i)及び(ii)の両方である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記オルガノポリシロキサン(A)が、以下の平均式を有し、
[Z
1]
v[R
1
3SiO
1/2]
w[R
1
2XSiO
1/2]
x[R
1
2SiO
2/2]
y[R
1XSiO
2/2]
z[SiO
4/2]
1.0
式中、0≦v≦12、0≦w≦8、0≦x≦8、40≦y≦1,000、0≦z≦8、但し、2≦(x+z)≦8であることを条件とし、各R
1が、独立して選択される置換又は非置換ヒドロカルビル基であり、各Xは、独立して選択されたカルビノール官能基であり、Z
1が、独立して(O
1/2SiR
1
2-D
1-R
1SiO
2/2)又は(O
1/2SiR
1
2-D
1-R
1
2SiO
1/2)であり、ここで、各R
1が、独立して選択され、上で定義され、各D
1が、独立して選択される二価の連結基である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記オルガノポリシロキサン(A)が、以下の平均式SiY
4を有し、式中、各Yが、独立して、以下の式を有し、
【化1】
式中、各R
1が、独立して選択された置換又は非置換ヒドロカルビル基であり、各Xが、独立して選択されるカルビノール官能基であり、各D
1が、独立して選択される二価の連結基であり、各下付き文字m’が、独立して、10~250である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
(i)前記ポリイソシアネート(B)が、脂肪族ポリイソシアネートを含み、(ii)前記組成物が、有機ポリオールを含まないか、又は(iii)(i)及び(ii)の両方である、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
(D)開始剤、(E)鎖延長剤、及び/又は(F)担体賦形剤のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
(i)前記組成物が、75~125のイソシアネート指数を有し、(ii)前記組成物が、90℃で1分未満で硬化させることができるか、又は(iii)(i)及び(ii)の両方である、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物から形成される、剥離コーティング。
【請求項12】
コーティング基材を形成する方法であって、前記方法が、
組成物を前記基材上に適用することと、
前記組成物を硬化させて、前記基材上に剥離コーティングを提供し、それにより、前記コーティング基材を形成することと、を含み、
前記組成物が、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物である、方法。
【請求項13】
前記組成物を前記基材上に適用することが、前記基材上に湿潤堆積物を形成し、前記組成物を硬化させることが、前記湿潤堆積物をある時間にわたって高温にさらすことを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
(i)前記高温が、70~100℃であり、(ii)前記時間が、45秒~75秒であるか、又は(iii)(i)及び(ii)の両方である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記基材が、セルロース及び/又はポリマーを含む、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項12~15のいずれか一項に記載の方法に従って形成された基材上に配置された剥離コーティングを含む、コーティング基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
なし。
【0002】
(発明の分野)
本発明の開示は、概して、組成物、より具体的には、剥離コーティングを調製するための組成物及び関連する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
シリコーン組成物は、当該技術分野において既知であり、非常に多くの産業及び最終用途において利用されている。このような最終用途の1つは、接着剤を除去することができる剥離コーティング又は剥離ライナーを形成することである。例えば、シリコーン組成物を利用して、紙などの様々な基材をコーティングして、感圧接着剤(例えばテープ)を積層するための剥離ライナーを得てもよい。このようなシリコーン組成物は、典型的には、付加硬化性である。
【0004】
従来の剥離ライナーは、典型的には、不飽和炭化水素基を有するオルガノポリシロキサンと、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとの、ヒドロシリル化反応触媒の存在下での高温での付加反応(又はヒドロシリル化)によって形成される。特定の用途では、剥離ライナーは、コーティングプロセスを介して、高速で形成される。従来の剥離ライナーの形成における硬化速度は、特に重要である。加えて、多くの従来の剥離ライナーは、硬化に必要とされる高温に起因する軟化又は他の望ましくない影響を受けやすい基材上に形成され、このことが、利用され得る基材の種類を制限する。
【発明の概要】
【0005】
剥離コーティングを形成するための組成物が開示される。組成物は、(A)1分子当たり平均して少なくとも2個のカルビノール官能基を有するオルガノポリシロキサンを含む。オルガノポリシロキサン(A)は、組成物の総重量に基づいて、50~99重量%の量で組成物中に存在する。組成物は、(B)ポリイソシアネートをさらに含む。組成物を用いて形成された剥離コーティングは、発泡体ではない。この組成物を用いて形成された剥離コーティングも開示される。
【0006】
加えて、基材上に配置された剥離コーティングを含むコーティング基材を調製する方法、並びにその方法に従って形成されたコーティング基材が開示される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
剥離コーティングを形成するための組成物が開示される。組成物は、(A)1分子当たり平均して少なくとも2個のカルビノール官能基を有するオルガノポリシロキサンを含む。オルガノポリシロキサン上のカルビノール官能基は、シラノール基とは区別され、カルビノール官能基は、炭素結合ヒドロキシル基を含み、シラノール官能基は、ケイ素結合ヒドロキシル基を含む。別の言い方をすると、カルビノール官能基は、式-COHの部分を含み、一方で、シラノール官能基は、式-SiOHのものである。これらの官能基は、異なって機能し、例えば、シラノール官能基は、容易に凝縮して、シロキサン(-SiOSi-)結合を提供し得るが、一般に、カルビノール官能基では(少なくともシラノール官能基の加水分解と同じ触媒作用下では)発生しない。成分(A)のカルビノール官能基は、互いに同じであり得るか、又は異なり得る。特定の実施形態では、オルガノポリシロキサン(A)は、1分子当たり平均して少なくとも3個、あるいは少なくとも4個のカルビノール官能基を含む。例えば、オルガノポリシロキサン(A)は、1分子当たり平均して2~8個、あるいは3~8個、あるいは3~7個、あるいは3~6個、あるいは3~5個のカルビノール官能基を含み得る。
【0008】
特定の実施形態では、カルビノール官能基は、独立して、一般式-D-Oa-(CbH2bO)c-Hを有し、式中、Dは、共有結合又は2~18個の炭素原子を有する二価炭化水素連結基であり、下付き文字aは、0又は1であり、下付き文字bは、下付き文字cによって示される各部分において独立して2~4から選択され、下付き文字cは、0~500であるが、但し、下付き文字a及びcが同時に0ではないことを条件とする。
【0009】
一実施形態では、下付き文字cは、少なくとも1であり、その結果、カルビノール官能基のうちの少なくとも1つは、以下の一般式を有し、
-D-Oa-[C2H4O]x’[C3H6O]y’[C4H8O]z’-H
式中、Dは、共有結合又は2~18個の炭素原子を有する二価炭化水素連結基であり、下付き文字aは、0又は1であり、0≦x’≦500、0≦y’≦500、及び0≦z’≦500であるが、但し、1≦x’+y’+z’≦500であることを条件とする。これらの実施形態では、カルビノール官能基は、代替的にポリエーテル基又は部分と称され得るが、ポリエーテル基又は部分は、-COR0ではなく、-COHで終端し、R0は、一価炭化水素基であり、これは、特定の従来のポリエーテル期又は部分の場合である。当該技術分野において理解されるように、下付き文字xによって示される部分は、エチレンオキシド(ethylene oxide、EO)単位であり、下付き文字yによって示される部分は、プロピレンオキシド(propylene oxide、PO)単位であり、下付き文字zによって示される部分は、ブチレンオキシド(butylene oxide、BO)単位である。EO、PO、及びBO単位は、存在する場合、ポリエーテル基又は部分中のブロック又はランダム化された形態であり得る。EO、PO、及びBO単位の相対量は、存在する場合、オルガノポリシロキサン(A)、組成物、及び得られる剥離コーティングの所望の特性に基づいて選択的に制御され得る。例えば、かかるアルキレンオキシド単位のモル比は、親水性及び他の特性に影響を及ぼし得る。
【0010】
成分(A)の各カルビノール官能基は、カルビノール官能基当たり1個より多い-COH部分を含んでもよい。別の言い方をすると、単一のカルビノール官能基置換基は、1個より多いカルビノール官能部分を含んでいてもよい。例として、カルビノール官能基中のEO、PO、又はBO単位のいずれかは、ペンダントOH基を含んでもよく、即ち、EO、PO、又はBO基の水素原子は、OH基で置換されてもよい。一例に過ぎないが、カルビノール官能基は、式-D-O-CH2CH(OH)CH2OHのものであってもよい。
【0011】
一実施形態では、成分(A)は、典型的には実質的に直鎖である。実質的に直鎖とは、成分(A)がM及びDシロキシ単位を含むか、それらから本質的になるか、又はそれらのみからなることを意味する。当該技術分野で容易に理解されるように、Mシロキシ単位は、式[R3SiO1/2]のものであり、Dシロキシ単位は、式[R2SiO2/2]のものである。従来、M及びDシロキシ命名法は、メチル置換のみに関連して利用されている。しかし、本開示の目的のために、上記のM及びDシロキシ単位において、Rは、独立して、置換若しくは非置換ヒドロカルビル基又はカルビノール官能基から選択されるが、但し、Rのうちの少なくとも2個が、独立して選択されたカルビノール官能基であることを条件とする。Mシロキシ単位が少なくとも1個のカルビノール官能基を含む場合、カルビノール官能基は、末端である。Dシロキシ単位が少なくとも1個のカルビノール官能基を含む場合、カルビノール官能基は、ペンダントである。実質的に直鎖のオルガノポリシロキサンは、平均式:Ra’SiO(4-a’)/2を有してもよく、式中、各Rは、独立して選択され、上で定義され、Rのうちの少なくとも2個が、独立して選択されたカルビノール官能基であるという条件を含み、下付き文字a’は、1.9≦a’≦2.2であるように選択される。
【0012】
一般に、Rに好適なヒドロカルビル基は、独立して、直鎖状、分枝状、環状、又はそれらの組み合わせであり得る。環状ヒドロカルビル基は、アリール基、及び飽和又は非共役環状基を包含する。環状ヒドロカルビル基は、独立して、単環式又は多環式であってもよい。直鎖及び分枝鎖ヒドロカルビル基は独立して、飽和又は不飽和であってもよい。直鎖及び環状ヒドロカルビル基の組み合わせの一例は、アラルキル基である。ヒドロカルビル基の全般的な例としては、アルキル基、アリール基、アルケニル基、ハロカーボン基など、並びにそれらの誘導体、変形体、及びそれらの組み合わせが挙げられる。好適なアルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル(例えば、イソプロピル及び/又はn-プロピル)、ブチル(例えば、イソブチル、n-ブチル、tert-ブチル、及び/又はsec-ブチル)、ペンチル(例えば、イソペンチル、ネオペンチル、及び/又はtert-ペンチル)、ヘキシル、ヘキサデシル、オクタデシル、並びに6~18個の炭素原子を有する分枝鎖飽和炭化水素基が挙げられる。好適な非共役環状基の例としては、シクロブチル基、シクロヘキシル基、及びシシロヘプチル(cycyloheptyl)基が挙げられる。好適なアリール基の例としては、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル、ベンジル、及びジメチルフェニルが挙げられる。好適なアルケニル基の例としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘプテニル基、ヘキセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、及びシクロヘキセニル基が挙げられる。好適な一価ハロゲン化炭化水素基(すなわち、ハロ炭素基又は置換炭化水素基)の例としては、ハロゲン化アルキル基、アリール基、及びそれらの組み合わせが挙げられる。ハロゲン化アルキル基の例としては、1つ以上の水素原子が、F又はClなどのハロゲン原子で置換された、上述のアルキル基が挙げられる。ハロゲン化アルキル基の具体例としては、フルオロメチル、2-フルオロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、4,4,4-トリフルオロブチル、4,4,4,3,3-ペンタフルオロブチル、5,5,5,4,4,3,3-ヘプタフルオロペンチル、6,6,6,5,5,4,4,3,3-ノナフルオロヘキシル、及び8,8,8,7,7-ペンタフルオロオクチル、2,2-ジフルオロシクロプロピル、2,3-ジフルオロシクロブチル、3,4-ジフルオロシクロヘキシル、及び3,4-ジフルオロ-5-メチルシクロヘプチル、クロロメチル、クロロプロピル、2-ジクロロシクロプロピル、及び2,3-ジクロロシクロペンチル基、並びにそれらの誘導体が挙げられる。ハロゲン化アリール基の例としては、1つ以上の水素原子が、F又はClなどのハロゲン原子で置換された、上述のアリール基が挙げられる。ハロゲン化アリール基の具体例としては、クロロベンジル基及びフルオロベンジル基が挙げられる。
【0013】
具体的な実施形態では、カルビノール官能基ではない各Rは、独立して、1~32個、あるいは1~28個、あるいは1~24個、あるいは1~20個、あるいは1~16個、あるいは1~12個、あるいは1~8個、あるいは1~4個、あるいは1個の炭素原子を有するアルキル基から選択される。
【0014】
成分(A)が直鎖である実施形態では、成分(A)は、一般式を有していてもよく、
【0015】
【化1】
式中、各Rは、独立して選択され、上で定義され、但し、Rのうちの少なくとも2個が、独立して、カルビノール官能基を含み、下付き文字nが、0~1,000、あるいは1~800、あるいは5~500であるという条件を含む。下付き文字nは、代替的に成分(A)の重合度(degree of polymerization、DP)と称され得る。典型的には、DPは、粘度に反比例し、他の全て(例えば、置換基)は、等しい。下付き文字nは、あるいは0より大きく95まで、あるいは0より大きく90まで、あるいは0より大きく85まで、あるいは0より大きく80まで、あるいは0より大きく75まで、あるいは0より大きく70まで、あるいは0より大きく65までである。あるいは、下付き文字nは、5~70、あるいは10~65である。
【0016】
成分(A)が直鎖である場合の具体的な実施形態では、各カルビノール官能基は、一般式-D-Oa-(CbH2bO)c-Hを有し、ペンダントであり、式中、D及び下付き文字a~cは、上で定義され、その結果、オルガノポリシロキサン(A)は、以下の一般式を有し、
【0017】
【化2】
式中、各R
1は、独立して選択された置換又は非置換ヒドロカルビル基であり、各Xは、-D-O
a-(C
bH
2bO)
c-Hであり、式中、D及び下付き文字a~cは、上で定義され、各下付き文字R
2は、R
1及びXから独立して選択され、下付き文字p及びqは、各々1~99であるが、但し、p+q≦100、あるいは5<(p+q)<70、あるいは10<(p+q)<65であることを条件とする。上記の一般式において、下付き文字q及びpで示されるシロキシ単位は、ランダム化され得るか、又はブロック形態であり得る。上記の一般式は、その特定の順序を必要とすることなく、下付き文字qで示されるR
1
2SiO
2/2単位、及び下付き文字pで示されるR
2XSiO
2/2単位の数に基づいて、この実施形態における成分(A)の平均単位式を表すことを意図している。したがって、この一般式は、代替的に[(R
1)
3SiO
1/2]
2[(R
1)
2SiO
2/2]
q[(R
1)XSiO
2/2]
pとして記載されてもよく、式中、下付き文字q及びpは、上で定義されている。これらの実施形態では、カルビノール官能基は、ポリエーテル基であり、ポリエーテル基は、成分(A)中でペンダントである。各R
1がメチルである場合、成分(A)のこの実施形態は、トリメチルシロキシ末端ブロックであり、ジメチルシロキシ単位(下付き文字qで示される)を含む。
【0018】
成分(A)が直鎖である場合の他の実施形態では、各カルビノール官能基は、一般式-D-Oa-(CbH2bO)c-Hを有し、末端であり、式中、D及び下付き文字a~cは、上で定義され、その結果、オルガノポリシロキサン(A)は、以下の一般式を有し、
【0019】
【化3】
各R
1が、独立して選択され、上で定義されている場合、各Xは独立して選択され、上で定義されており、q’は1~100、あるいは5~70、あるいは10~65である。さらに他の実施形態では、成分(A)は直鎖であり、カルビノール官能基は、直鎖及びペンダントの両方の位置にある。
【0020】
Dは、典型的には、オルガノポリシロキサン(A)を調製する官能基である。例えば、オルガノポリシロキサン(A)は、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと不飽和カルビノール化合物(本明細書において、アルコール化合物、又は不飽和アルコール化合物と称される場合がある)との間のヒドロシリル化反応によって形成されてもよい。そのような実施形態では、オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、カルビノール官能基が所望される場所(例えば、末端及び/又はペンダント)にケイ素結合水素原子を含む。不飽和アルコール化合物は、式Z-Oa-(CbH2bO)c-Hを有していてもよく、式中、Zは、エチレン性不飽和基であり、下付き文字a、b、及びcは、上記で定義されるとおりである。ヒドロカルビル基の適切な例は、Rについて上で定義されている。
【0021】
上記のヒドロシリル化反応において、Zで表されるエチレン性不飽和基は、2~18個、あるいは2~16個、あるいは2~14個、あるいは2~12個、あるいは2~8個、あるいは2~4個、あるいは2個の炭素原子を有するアルケニル及び/又はアルキニル基であり得る。「アルケニル」は、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する非環状、分枝鎖又は非分枝鎖の一価炭化水素基を意味する。その具体例としては、ビニル基、アリル基、及びヘキセニル基が挙げられる。「アルキニル」は、1つ以上の炭素-炭素三重結合を有する非環状、分枝鎖又は非分枝鎖の一価炭化水素基を意味する。その具体例としては、エチニル、プロピニル、及びブチニル基が挙げられる。エチレン性不飽和基の様々な例としては、CH2=CH-、CH2=CHCH2-、CH2=CH(CH2)4-、CH2=CH(CH2)6-、CH2=C(CH3)CH2-、H2C=C(CH3)-、H2C=C(CH3)-、H2C=C(CH3)CH2-、H2C=CHCH2CH2-、H2C=CHCH2CH2CH2-、HC≡C-、HC≡CCH2-、HC≡CCH(CH3)-、HC≡CC(CH3)2-、及びHC≡CC(CH3)2CH2-が挙げられる。典型的には、エチレン性不飽和は、Zの末端にある。当該技術分野で理解されるように、エチレン性不飽和は、脂肪族不飽和と称され得る。したがって、Dが-CH2CH2-である場合、例えば、不飽和カルビノール化合物は、式CH2=CH-Oa-(CbH2bO)c-Hを有し得る。D中の炭素原子の数は、エチレン性不飽和基中の炭素原子数の官能基であり、これは、成分(A)を調製するためのヒドロシリル化反応後でさえも一定のままである。
【0022】
例として、不飽和アルコール化合物は、アリルエトキシレート、ビニルオキシブチルエトキシレート、イソプレニルエトキシレート、ビニルブチルプロポキシレート、及び/又はポリエチレングリコールモノアリルエーテルなどのアルケニルアルコキシレートを含むことができる。
【0023】
特定の実施形態では、成分(A)を形成するために利用されるヒドロシリル化反応触媒は、第VIII族~第XI族遷移金属を含む。第VIII族~第XI族遷移金属への言及は、最新のIUPAC命名法に基づく。第VIII族遷移金属は、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、及びハシウム(Hs)であり、第IX族遷移金属は、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、及びイリジウム(Ir)であり、第X族遷移金属は、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、及び白金(Pt)であり、第XI族遷移金属は、銅(Cu)、銀(Ag)、及び金(Au)である。それらの組み合わせ、それらの錯体(例えば、有機金属錯体)、及び他の形態のそのような金属は、ヒドロシリル化反応触媒として使用され得る。
【0024】
ヒドロシリル化反応触媒に好適な触媒の追加の例としては、レニウム(Re)、モリブデン(Mo)、第IV族遷移金属(すなわち、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、及び/又はハフニウム(Hf))、ランタニド、アクチニド、並びに第I族及び第II族の金属錯体(例えば、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、ストロンチウム(Sr)などを含むもの)が挙げられる。それらの組み合わせ、それらの錯体(例えば、有機金属錯体)、及び他の形態のそのような金属は、ヒドロシリル化反応触媒として使用され得る。
【0025】
ヒドロシリル化反応触媒は、任意の好適な形態であり得る。例えば、ヒドロシリル化反応触媒は固体であり得、その例としては、白金系触媒、パラジウム系触媒、及び同様の貴金属系触媒、並びにニッケル系触媒が挙げられる。その具体例としては、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、コバルト、及び同様の元素、並びにまた白金-パラジウム、ニッケル-銅-クロム、ニッケル-銅-亜鉛、ニッケル-タングステン、ニッケル-モリブデン、及び複数の金属の組み合わせを含む同様の触媒が挙げられる。固体触媒のさらなる例としては、Cu-Cr、Cu-Zn、Cu-Si、Cu-Fe-AI、Cu-Zn-Ti、及び同様の銅含有触媒などが挙げられる。
【0026】
ヒドロシリル化反応触媒は、固体担体の中又は上にあってもよい。担体の例としては、活性炭、シリカ、シリカアルミナ、アルミナ、ゼオライト、及びその他の無機粉末/粒子(例えば硫酸ナトリウム)などが挙げられる。ヒドロシリル化反応触媒はまた、ビヒクル、例えば、ヒドロシリル化反応触媒を可溶化する溶媒、代替的に、ヒドロシリル化反応触媒を単に運ぶが可溶化しないビヒクルに配置され得る。かかるビヒクルは、当該技術分野において公知である。
【0027】
具体的な実施形態では、ヒドロシリル化反応触媒は、白金を含む。これらの実施形態では、ヒドロシリル化反応触媒は、例えば、白金黒、塩化白金酸、塩化白金酸六水和物、塩化白金酸と一価アルコールとの反応生成物、白金ビス(エチルアセトアセテート)、白金ビス(アセチルアセトネート)、塩化白金、及びそのような化合物とオレフィン又はオルガノポリシロキサンとの錯体、並びにマトリックス又はコアシェル型化合物にマイクロカプセル化された白金化合物などの化合物によって例示される。マイクロカプセル化されたヒドロシリル化触媒、及びその調製方法はまた、当該技術分野において既知である。
【0028】
ヒドロシリル化反応触媒としての使用に好適なオルガノポリシロキサンとの白金錯体としては、1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン白金錯体が挙げられる。これらの錯体は、樹脂マトリックス中にマイクロカプセル化されていてもよい。代替的に、ヒドロシリル化反応触媒は、1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン白金錯体を含み得る。ヒドロシリル化反応触媒は、クロロ白金酸を、ジビニルテトラメチルジシロキサンなど脂肪族不飽和有機ケイ素化合物、又はアルケン-白金-シリル錯体と反応させることを含む方法によって調製され得る。アルケン-白金-シリル錯体は、例えば、0.015モルの(COD)PtCl2を、0.045モルのCOD及び0.0612モルのHMeSiCl2と混合することによって調製され得るものであり、ここで、CODは、シクロオクタジエンである。
【0029】
ヒドロシリル化反応触媒は、触媒量、すなわち、所望の条件でのその硬化を促進するのに十分な量又は分量で組成物中において利用される。ヒドロシリル化反応触媒は、単一ヒドロシリル化反応触媒、又は2つ以上の異なるヒドロシリル化反応触媒を含む混合物であり得る。
【0030】
代替的に、Dは、成分(A)がヒドロシリル化以外の反応、例えば、縮合反応又は開環反応を介して形成される場合、共有結合であり得る。
【0031】
上で紹介したように、他の実施形態では、オルガノポリシロキサン(A)は分枝鎖であり、即ち、成分(A)は少なくとも1つのT及び/又はQシロキシ単位を含む。1つの具体的な実施形態では、オルガノポリシロキサン(A)は、Q分枝鎖ポリマーであり、即ち、オルガノポリシロキサン(A)は、単一のQシロキシ単位を含む。他の実施形態では、オルガノポリシロキサン(A)は、2つ以上のQ単位を含む。さらに他の実施形態では、オルガノポリシロキサン(A)は、1つ以上のT単位、又はQ単位と組み合わせたT単位を含む。オルガノポリシロキサン(A)がT単位及び/又はQ単位に起因する分枝鎖を含む場合であっても、オルガノポリシロキサン(A)は、典型的には25℃で流動性である。「流動性」とは、オルガノポリシロキサン(A)が25℃で流動性であり、及び/又は25℃で測定可能な粘度を有することを意味する。特定の実施形態では、オルガノポリシロキサン(A)は、任意の溶媒、例えば、有機溶媒の非存在下で流動性である。具体的な実施形態では、オルガノポリシロキサン(A)は、任意の溶媒の非存在下で25℃で液体である。対照的に、Q-分枝鎖ポリマーと区別できるMQ樹脂は、典型的には、溶媒に溶解しない限り室温で固体である。
【0032】
オルガノポリシロキサン(A)が分枝鎖である特定の実施形態では、オルガノポリシロキサン(A)は、以下の平均式を有し、
[Z1]v[R1
3SiO1/2]w[R1
2XSiO1/2]x[R1
2SiO2/2]y[R1XSiO2/2]z[SiO4/2]1.0
式中、0≦v≦12、0≦w≦8、0≦x≦8、40≦y≦1,000、0≦z≦8、但し、2≦(x+z)≦8であることを条件とし、各R1は独立して選択され、上記で定義され、各Xは、独立して選択されたカルビノール官能基であり、Z1は、独立して式(O1/2SiR1
2-D1-R1SiO2/2)又は(O1/2SiR1
2-D1-R1
2SiO1/2)の部分であり、ここで、各R1は、独立して選択され、上で定義され、各D1は、独立して選択される二価の連結基である。下付き文字vによって示される部分において、ケイ素原子は、典型的にはヒドロシリル化からの二価炭化水素基であるD1を介して連結される。下付き文字v、w、x、y及びzは、Qシロキシ単位当たりの各特定のシロキシ単位のモル数を表す。上記の平均式において、下付き文字v、w、x、y、及びzは、1つのQシロキシ単位が存在することに基づいて正規化される。しかし、これは、オルガノポリシロキサン(A)が1つのQシロキシ単位だけを含むことを意味するものではない。特定の実施形態では、オルガノポリシロキサン(A)は、1つだけのQシロキシ単位を含む。他の実施形態では、オルガノポリシロキサン(A)は、Qシロキシ単位を含み、これらは成分(A)中で一緒に結合していてもよい。さらに他の実施形態では、オルガノポリシロキサン(A)は、2つより多いQシロキシ単位、即ち複数のQシロキシ単位を含み、これらは成分(A)中で一緒にクラスター化されていてもよい。
【0033】
具体的な実施形態では、下付き文字vは、0である。別の具体的な実施形態では、下付き文字vは、2~12、あるいは2~11、あるいは2~10、あるいは2~8、あるいは2~7、あるいは2~6、あるいは3~6、あるいは3~5である。これら又は他の実施形態では、下付き文字wは、0~8、あるいは2~8、あるいは3~8、あるいは4~8、あるいは5~8、あるいは6~8、あるいは7又は8、あるいは8である。これらの又は他の実施形態では、下付き文字xは、0~8、あるいは0~6、あるいは0~4、あるいは0~3、あるいは0~2、あるいは0又は1、あるいは0である。これらの又は他の実施形態では、下付き文字yは、40~500、あるいは40~400、あるいは40~300、あるいは40~200、あるいは50~150、あるいは60~125である。これらの又はその他の実施形態では、下付き文字zは、1~8、あるいは2~7、あるいは3~6、あるいは3~5、あるいは4である。D1は、典型的には二価炭化水素基であり、2~12個、あるいは2~10個、あるいは2~8個、あるいは2~6個、あるいは2~4個、あるいは2個の炭素原子を有する。例えば、ヒドロシリル化反応がケイ素結合ビニル基を含む場合、D1は、2個の炭素原子を有する。
【0034】
オルガノポリシロキサン(A)が分枝鎖である場合、オルガノポリシロキサン(A)は、様々な方法で調製することができる。例えば、オルガノポリシロキサン(A)は、上述のように、例えば、不飽和アルコール化合物とオルガノハイドロジェンポリシロキサンとのヒドロシリル化によって調製されてもよく、この実施形態では、オルガノハイドロジェンポリシロキサン自体が分枝鎖である。
【0035】
他の実施形態では、オルガノポリシロキサン(A)は、初期オルガノシロキサン、オルガノハイドロジェンシロキサン、及びアルコール化合物のヒドロシリル化によって調製される。アルコール化合物は、一般に、オルガノポリシロキサン(A)のカルビノール官能基を与えるヒドロシリル化反応に関与するための末端不飽和基を含み、その例は、カルビノール官能基に関して上に記載されている。オルガノポリシロキサン(A)が単一のQシロキシ単位を含む場合、初期オルガノシロキサンは、式MVi
4Qのものであってもよく、式中、MViは、式(CH3)2(CH2=CH)SiO1/2のものであり、Qは、式SiO4/2のものである。オルガノポリシロキサン(A)が2つのQシロキシ単位を含む場合、初期オルガノシロキサンは、式MVi
3Q-QMVi
3のものであってもよい。ここで例示したビニル基は、任意のケイ素結合アルケニル基又はアルキニル基で置換されてもよい。
【0036】
オルガノハイドロジェンシロキサンは、ペンダント及び/又は末端ケイ素結合水素原子を含む可能性があり、これは、得られるオルガノポリシロキサン(A)の構造に影響を及ぼす。一実施形態では、初期オルガノシロキサンとオルガノハイドロジェンシロキサンとを最初に反応させて、残留ケイ素結合水素原子(又は水素化ケイ素官能基)を含む反応中間体を得て、次いでこの反応中間体をアルコール化合物と反応させてオルガノポリシロキサン(A)を得る。他の実施形態では、初期オルガノシロキサン、オルガノハイドロジェンシロキサン、及びアルコール化合物を同時に反応させる。
【0037】
オルガノハイドロジェンシロキサンが末端ケイ素結合水素原子のみを含む場合、オルガノハイドロジェンシロキサンは、各Mシロキシ単位のエチレン性不飽和基とのヒドロシリル化後に、初期オルガノシロキサンの各Mシロキシ単位から伸長する直鎖状オルガノシロキサン鎖を形成し、次いで、アルコール化合物で(これもヒドロシリル化を介して)保護され、これによりカルビノール官能基が得られる。例えば、これらの実施形態では、オルガノポリシロキサン(A)が単一のQシロキシ単位を含む場合、オルガノポリシロキサン(A)は、以下の式:Si-([OSiR2]-D1-[-SiR2O1/2][R2SiO2/2]m’[XR2SiO1/2])4を有してもよく、式中、各Rは独立して選択され、上で定義され、各D1は独立して選択され、上で定義され、各下付き文字m’は独立して10~250であり、各Xは独立して選択されたカルビノール官能基である。オルガノポリシロキサン(A)が、末端ケイ素結合水素原子のみを含むオルガノハイドロジェンシロキサンを用いて形成される場合、Z1は、典型的には、(O1/2SiR1
2-D1-R1
2SiO1/2)であり、式中、R1及びD1は、独立して選択され、上で定義されている。
【0038】
オルガノハイドロジェンシロキサンが末端ケイ素結合水素原子のみを含む特定の実施形態では、オルガノポリシロキサン(A)は、下式を有し、
[O1/2SiR1
2-D1-R1
2SiO1/2]v[R1
2XSiO1/2]x[R1
2SiO2/2]y[SiO4/2]1.0,
式中、R1、D1、X、v、x、及びyは、上に定義される。
【0039】
オルガノポリシロキサン(A)の1つの例示的な実施形態について上記の平均式に記載されるように、単一のQシロキシ単位が存在するにもかかわらず、4つを超える末端Mシロキシ単位が存在し得る。対照的に、従来のオルガノポリシロキサンでは、M単位対Q単位の比は通常4:1以下である。M単位対Q単位の比は、以下に記載されるようにオルガノポリシロキサン(A)を形成する際に付与され得る追加の分枝鎖の関数である。
【0040】
例えば、オルガノハイドロジェンシロキサンがペンダントケイ素結合水素原子のみを含む場合、オルガノポリシロキサン(A)は、さらなる分枝鎖を含む。例えば、この実施形態では、オルガノポリシロキサン(A)が単一のQ単位を含む場合、オルガノポリシロキサン(A)は、(上記の実施形態のように)4つではなく8つの末端M単位を含む。これらの実施形態では、下付き文字vによって示される部分Z1は、典型的には0より大きく、最も典型的には下付き文字vは4である。
【0041】
オルガノハイドロジェンシロキサンの具体例としては、ペンダントケイ素結合水素原子のみを含み、オルガノポリシロキサン(A)は、式Si-Y4を有してもよく、式中、各Yは独立して、以下の構造を有し、
【0042】
【化4】
式中、各R
1、各D
1、各m’、及び各Xは、独立して選択され、上で定義されている。Y中のSiR
2O
2/2及びSiRXO
2/2単位は、Yによって表される部分内の任意の位置にあってもよいことが理解されるべきである。例えば、SiRXO
2/2単位は、別のSiR
2O
2/2単位によってM単位から空間があけられてもよい。これらの実施形態では、オルガノポリシロキサン(A)は、代替的に、Si-[OSiR
2-D
1-Y
1]によって表されてもよく、式中、各Y
1は、2つのR
3SiO
1/2単位、1つのSiRXO
2/2ユ単位、及び1~250個のSiR
2O
2/2単位を、Y
1をD
1に連結する-SiRO
2/2単位と共に含む。
【0043】
オルガノハイドロジェンシロキサンがペンダントケイ素結合水素原子のみを含む場合、オルガノハイドロジェンシロキサンは、エチレン性不飽和基とのヒドロシリル化後に初期オルガノシロキサンの各Mシロキシ単位を保護するが、初期オルガノシロキサンのQシロキシ単位から離れて伸長しない、直鎖状オルガノシロキサン鎖を形成する。オルガノポリシロキサン(A)が、ペンダントケイ素結合水素原子のみを含むオルガノハイドロジェンシロキサンで形成される場合、Z1は、典型的には、(O1/2SiR1
2-D1-R1SiO2/2)であり、式中、R1及びD1は、独立して選択され、上で定義されている。Z1は、初期オルガノシロキサンのMシロキシ単位及びそれを用いてヒドロシリル化されるオルガノハイドロジェンシロキサンのシロキシ単位を表す。
【0044】
オルガノハイドロジェンシロキサンがペンダントケイ素結合水素原子のみを含む特定の実施形態では、オルガノポリシロキサン(A)は、下式を有し、
[O1/2SiR1
2-D1-R1SiO2/2]v[R1
3SiO1/2]w[R1
2SiO2/2]y[R1XSiO2/2]z[SiO4/2]1.0
式中、R1、D1、X、v、w、y、及びzは、上で定義されている。
【0045】
他の実施形態では、オルガノハイドロジェンシロキサンは、ペンダント及び末端ケイ素結合水素原子の両方を有する。これらの実施形態では、オルガノポリシロキサン(A)は、XR2SiO1/2及びXRSiO2/2シロキシ単位の両方を含んでもよく、式中、X及びRは独立して選択され、上で定義されている。
【0046】
別の具体的な実施形態では、オルガノポリシロキサン(A)は、初期オルガノシロキサン、環状オルガノハイドロジェンシロキサン、及びアルコール化合物の反応によって調製される。これらの実施形態では、環状オルガノハイドロジェンシロキサンは開環重合反応を受け、オルガノポリシロキサン(A)中にDシロキシ単位の形成をもたらす。この実施形態では、初期オルガノシロキサンは、いかなるヒドロシリル化反応も受けないので、ケイ素結合エチレン性不飽和基を必要としない。したがって、初期オルガノシロキサンは、式Si-[OSiR3]4のものであることができ、式中、各Rは独立して選択され、上で定義されている。各Rがメチルである場合、最初のオルガノシロキサンは、M4Q、又はSi-[OSi(CH3)3]4である。しかし、初期オルガノシロキサンは、Mシロキシ単位がケイ素結合エチレン性不飽和基、例えばビニル基を含むように、ヒドロシリル化を含む上述のものと同じであってもよい。
【0047】
環状オルガノハイドロジェンシロキサンは、式(RHSiO2/2)nを有し、式中、Rは独立して選択され、上で定義され、nは3~15の整数である。環状オルガノハイドロジェンシロキサンでは、各Rは、典型的には、独立して選択されたアルキル基であり、最も典型的には、各Rは、メチル基である。
【0048】
下付き文字nは、3~15、あるいは3~12、あるいは3~10、あるいは3~8、あるいは3~6、あるいは4~5である。加えて、(ii)環状オルガノハイドロジェンシロキサンは、異なる環状シロキサンのブレンド、例えば、nが4であるものと、nが5であるものとのブレンドを含み得る。具体的な実施形態では、(ii)環状オルガノハイドロジェンシロキサンは、シクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンなどのシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンなどのシクロペンタシロキサン、シクロヘキサシロキサン、及びそれらの組み合わせの群から選択される。
【0049】
典型的には、環状オルガノハイドロジェンシロキサンは、ケイ素結合水素原子を含まない環状シロキサンと共に利用されて、初期オルガノシロキサン中の環状オルガノハイドロジェンシロキサンの開環重合から形成される反応中間体中に存在するケイ素結合水素原子の数を選択的に制御する。環状シロキサンは、式(R2SiO2/2)nを有し、式中、Rは独立して選択され、上で定義され、nは3~15の整数である。環状シロキサンでは、各Rは、典型的には、独立して選択されたアルキル基であり、最も典型的には、各Rは、メチル基である。下付き文字nは、3~15、あるいは3~12、あるいは3~10、あるいは3~8、あるいは3~6、あるいは4~5である。
【0050】
当業者は、環状オルガノハイドロジェンシロキサン対環状シロキサンのモル比に基づいて、反応中間体中のケイ素結合水素原子の数を最適化することができる。例えば、特定の実施形態では、オルガノポリシロキサン(A)が4つのケイ素結合カルビノール官能基を含むように、反応中間体が4つのケイ素結合水素原子を含むことが望ましい場合がある。一実施形態では、環状オルガノハイドロジェンシロキサン対環状シロキサンのモル比は、1:1~1:20、あるいは1:2~1:19、あるいは1:3~1:18、あるいは1:4~1:17、あるいは1:5~1:15、あるいは1:6~1:14、あるいは1:6~1:13、あるいは1:7~1:12、あるいは1:7~1:11であり得る。
【0051】
初期オルガノシロキサン及び環状オルガノハイドロジェンシロキサン(及び任意の環状オルガノシロキサン)は、重合触媒の存在下で反応する。典型的には、重合触媒は、初期オルガノシロキサンと環状オルガノハイドロジェンシロキサン(及び任意の環状オルガノシロキサン)との間の反応が酸触媒反応又は塩基触媒反応のいずれかであるよう、酸又は塩基である。したがって、特定の実施形態では、重合触媒は、強酸触媒、強塩基触媒、及びそれらの組み合わせの群から選択され得る。強酸触媒は、トリフルオロメタンスルホン酸などであり得る。重合触媒は、典型的には、強塩基触媒である。典型的には、この強塩基触媒はホスファゼン触媒であるが、ホスファゼン塩基触媒の代わりに、KOHなどの他の強塩基触媒を使用し得る。
【0052】
ホスファゼン触媒は、概して少なくとも1つの-(N=P<)-単位(即ち、ホスファゼン単位)を含み、通常、最大10個のそのようなホスファゼン単位を有するオリゴマーであり、例えば、1.5から最大5のホスファゼン単位の平均を有する。ホスファゼン触媒は、例えば、クロロホスファゼン(ホスホニトリルクロリド)などのハロホスファゼン、酸素含有ハロホスファゼン、ホスファゼニウム塩などのホスファゼンのイオン性誘導体、特にパークロロオリゴホスファゼニウム塩などのハロゲン化ホスホニトリルのイオン性誘導体、又はその部分的に加水分解された形態であり得る。
【0053】
特定の実施形態では、重合触媒は、ホスファゼン塩基触媒を含む。ホスファゼン塩基触媒は、当技術分野で知られる任意のものであってもよいが、典型的には、以下の化学式
((R3
2N)3P=N)t(R3
2N)3-tP=NR3
[式中、各R3は、水素原子、R1及びそれらの組み合わせの群から独立して選択され、tは1~3の整数である]を有する。R3がR1である場合、R3は、典型的には、1~20個、あるいは1~10個、あるいは1~4個の炭素原子を有するアルキル基である。任意の(R3
2N)部分の2つのR3基は、同じ窒素(N)原子に結合し、連結し、典型的には5又は6個のメンバーを有する複素環を完成させることができる。
【0054】
あるいは、ホスファゼン塩基触媒は塩であり得、以下の代替化学式
[((R3
2N)3P=N)t(R3
2N)3-tP=N(H)R3]+[A-]、又は
[((R3
2N)3P=N)s(R3
2N)4-sP]+[A-]
[式中、各R3は独立して選択され、上で定義され、下付き文字tは上で定義され、下付き文字sは1~4の整数であり、[A]はアニオンであり、典型的には、フルオリド、ヒドロキシド、シラノレート、アルコキシド、カーボネート、バイカーボネートの群から選択される]のうちの1つを有し得る。一実施形態では、ホスファゼン塩基は水酸化アミノホスファゼニウムである。
【0055】
重合触媒の存在下での初期オルガノシロキサンと環状オルガノハイドロジェンシロキサン(及び任意の環状オルガノシロキサン)との反応は、環状オルガノハイドロジェンシロキサン(及び任意の環状オルガノシロキサン)の開環、及びDシロキシ単位の反応中間体への組み込みをもたらす。利用される環状オルガノハイドロジェンシロキサン(及び任意の環状オルガノシロキサン)の相対量は、反応中間体中のDシロキシ単位の所望の含有量の関数である。
【0056】
特定の実施形態では、初期オルガノシロキサンと環状オルガノハイドロジェンシロキサン(及び任意の環状オルガノシロキサン)は、溶媒の存在下で、高温、例えば125~175℃で反応する。好適な溶媒は、炭化水素であってもよい。好適な炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、若しくはキシレンなどの芳香族炭化水素、及び/又はヘプタン、ヘキサン、若しくはオクタンなどの脂肪族炭化水素が挙げられる。あるいは、溶媒は、ジクロロメタン、1,1,1-トリクロロエタン、又は塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素であってもよい。ビス(トリメチルシリル)水素リン酸塩などの錯化剤を反応後に使用し、重合触媒の活性を阻害し得る。当業者は、その選択及び反応条件の関数である、使用される重合触媒の触媒量を容易に決定し得る。例えば、これらの実施形態では、反応中間体は、以下の式:[R3SiO1/2]4[RHSiO2/2]v’[R2SiO2/2]y[SiO4/2]1.0を有してもよく、式中、各Rは独立して選択され、上で定義され、yは上で定義され、v’は2~10、あるいは2~8、あるいは2~6、あるいは3~5である。
【0057】
次いで、初期オルガノシロキサン及び環状オルガノハイドロジェンシロキサン(及び任意の環状オルガノシロキサン)を介して形成された反応中間体を、アルコール化合物でヒドロシリル化して、オルガノポリシロキサン(A)を得ることができる。アルコール化合物の例は、好適なヒドロシリル化反応触媒と共に上に記載されている。反応中間体が直前に記載した式を有する場合、それを用いて形成されるオルガノポリシロキサン(A)は、式:[R3SiO1/2]4[RXSiO2/2]v’[R2SiO2/2]y[SiO4/2]1.0を有し、式中、各Rは独立して選択され、上で定義され、yは上で定義され、v’は上で定義され、各Xは独立して選択され、上で定義される。
【0058】
特定の実施形態では、成分(A)は、1~1,000mPa・s、代替的に1~900mPa・s、代替的に10~700mPa・s、代替的に10~600mPa・sの25℃における毛細管粘度(ガラス製毛細管を介した動粘度)を有する。毛細管粘度は、1970年7月20日のDow Corning Corporate試験方法CTM 0004に従って測定され得る。CTM0004は、当該技術分野において既知であり、ASTM D445、IP 71に基づく。典型的には、成分(A)がカルビノール官能基としてペンダントポリエーテル基を有する場合、成分(A)は、成分(A)が(上記の例示的な構造に記載されるような)ポリエーテル基ではない末端カルビノール官能基を含む場合よりも高い粘度を有する。例えば、成分(A)がペンダントポリエーテル基を含む場合、25℃における毛細管粘度は、典型的には、200~900、代替的に300~800、代替的に400~700、代替的に500~600mPa・sである。対照的に、成分(A)が、ポリエーテル基ではない末端カルビノール官能基のみを含む場合、成分(A)は、0mPa・s超~250mPa・s、代替的に0mPa・s超~100mPa・s、代替的に0mPa・s超~75mPa・s、代替的に10mPa・s~75mPa・s、代替的に25mPa・s~75mPa・sの25℃における毛細管粘度を有し得る。具体的な実施形態では、成分(A)は、25℃で25~1,000、あるいは50~800、あるいは60~700、あるいは70~600、あるいは80~500、あるいは90~400mPa・sの毛細管粘度を有する。
【0059】
これら又は他の実施形態では、成分(A)は、100~2,000、代替的に200~1,750、代替的に300~1,500、代替的に400~1,200g/モルのOH当量を有し得る。OH当量を決定する方法は、官能価及び分子量に基づいて当該技術分野において既知である。
【0060】
組成物は、組成物の総重量に基づいて、50~99、あるいは55~99、あるいは60~99、あるいは65~99、あるいは70~99、あるいは75~99重量パーセントの量でオルガノポリシロキサン(A)を含む。
【0061】
組成物は、(B)ポリイソシアネートをさらに含む。成分(B)に好適なポリイソシアネートは、2つ以上のイソシアネート官能基を有し、従来の脂肪族、脂環式、芳香脂肪族及び芳香族イソシアネートを含む。ポリイソシアネート(B)は、ジフェニルメタンジイソシアネート(diphenylmethane diisocyanate、「MDI」)、ポリマージフェニルメタンジイソシアネート(polymeric diphenylmethane diisocyanate、「pMDI」)、水素化MDI(H12MDI)、トルエンジイソシアネート(toluene diisocyanate、「TDI」)、ヘキサメチレンジイソシアネート(hexamethylene diisocyanate、「HDI」)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(dicyclohexylmethane diisocyanate、「HMDI」)、イソホロンジイソシアネート(isophorone diisocyanate、「IPDI」)、シクロヘキシルジイソシアネート(cyclohexyl diisocyanate、「CHDI」)、ナフタレンジイソシアネート(naphthalene diisocyanate、「NDI」)、フェニルジイソシアネート(phenyl diisocyanate、「PDI」)、及びそれらの組み合わせの群から選択され得る。特定の実施形態では、ポリイソシアネート(B)は、pMDIを含むか、本質的にpMDIからなるか、又はpMDIである。一実施形態では、ポリイソシアネート(B)は、式OCN-R’-NCOのものであり、式中、R’は、アルキル部分、アリール部分、又はアリールアルキル部分である。この実施形態では、ポリイソシアネート(B)は、任意の数の炭素原子、典型的には4~20個の炭素原子を含み得る。
【0062】
成分(B)に好適なポリイソシアネートの具体例としては、アルキレン部分中に4~12個の炭素を有するアルキレンジイソシアネート、例えば、1,12-ドデカンジイソシアネート、2-エチル-1,4-テトラメチレンジイソシアネート、2-メチル-1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、及び1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、例えば、1,3-及び1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、並びにこれらの異性体の任意の混合物、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン、2,4-及び2,6-ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート、並びに対応する異性体混合物、4,4’-2,2’-及び2,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、並びに対応する異性体混合物、並びに芳香族ジイソシアネート及びポリイソシアネート、例えば、2,4-及び2,6-トルエンジイソシアネート、及び対応する異性体混合物、4,4’-、2,4’-、及び2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、及び対応する異性体混合物、4,4’-、2,4’-及び2,2-ジフェニルメタンジイソシアネート及びポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネートの混合物、並びにMDI及びトルエンジイソシアネート(TDI)の混合物が挙げられる。
【0063】
ポリイソシアネート(B)は、修飾多価イソシアネート、即ち、有機ジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートの部分的な化学反応によって得られる生成物を含み得るか、又はそれらであってもよい。好適な修飾多価イソシアネートの例としては、エステル基、尿素基、ビウレット基、アロファネート基、カルボジイミド基、イソシアヌレート基、及び/又はウレタン基を含有するジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートが挙げられる。好適な修飾多価イソシアネートの具体例としては、ウレタン基を含有し、総重量に基づいて5~40、あるいは10~40、あるいは15~33.6重量部のNCO含有量を有する有機ポリイソシアネート、例えば、最大6000の分子量を有する低分子量ジオール、トリオール、ジアルキレングリコール、トリアルキレングリコール、又はポリオキシアルキレングリコール、修飾4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート又は2,4-及び2,6-トルエンジイソシアネートが挙げられ、個々に又は混合物として使用され得るジ及びポリオキシアルキレングリコールの例としては、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、及びポリオキシプロピレンポリオキシエチレングリコール又は-トリオールが挙げられる。ポリイソシアネート(B)の総重量に基づいて3.5~29重量部のNCO含有量を有し、ポリエステルポリオール及び/又はポリエーテルポリオールから生成される、NCO基を含有するプレポリマー、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-及び4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートの混合物、2,4-及び/若しくは2,6-トルエンジイソシアネート、又はポリマーMDIも好適である。さらに、(2)イソシアネート成分の総重量に基づいて、例えば、4,4’-及び2,4’-、及び/若しくは2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、並びに/又は2,4’-及び/若しくは2,6-トルエンジイソシアネートに基づいて、15~33.6重量部のNCO含有量を有するカルボジイミド基を含有する液体ポリイソシアネートもまた、好適であり得る。修飾ポリイソシアネートは、任意選択的に、2,4’-及び4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリマーMDI、2,4’-及び/又は2,6-トルエンジイソシアネートなどの未修飾有機ポリイソシアネートと一緒に混合又はそれらと混合され得る。
【0064】
ポリイソシアネート(B)は、官能性、分子量、粘度、又は構造に基づいて互いに異なる2つ以上のポリイソシアネートの任意の組み合わせを含み得ることを理解されたい。具体的な実施形態では、ポリイソシアネート(B)は、pMDIを含むか、本質的にpMDIからなるか、又はpMDIである。
【0065】
ポリイソシアネート(B)は、典型的には、2.0~5.0、あるいは2.0~4.5、あるいは2.0~4.0、あるいは、2.0~3.5の官能性を有する。
【0066】
これらの又は他の実施形態では、ポリイソシアネート(B)は、15~60、あるいは15~55、あるいは20~48.5重量%の重量のNCOを有する。NCOの含有量を重量で決定する方法は、特定のイソシアネートの官能性及び分子量に基づいて、当該技術分野において既知である。
【0067】
ポリイソシアネート(B)は、1典型的には、75~200、あるいは75~130、あるいは75~125、あるいは85~125、あるいは90~120、あるいは95~120、あるいは100~120、あるいは80~120、あるいは85~115、あるいは90~110、あるいは90~105、あるいは90~100のイソシアネート指数を提供する量で組成物中に存在する。イソシアネート指数は、イソシアネート反応性水素官能基に対するNCOのモル比を100倍したものである。イソシアネート指数及びその計算方法は、当該技術分野において周知である。
【0068】
特定の実施形態では、組成物は、(C)触媒をさらに含む。典型的には、組成物は、触媒(C)を含む。しかし、成分(A)及び(B)は、典型的には、触媒(C)の非存在下で反応性であり、その結果、触媒(C)は、より低い温度で反応を加速するために利用され、これは、典型的には、剥離コーティングを調製する際に望ましい。
【0069】
一実施形態では、触媒は、スズ触媒を含む。好適なスズ触媒としては、有機カルボン酸のスズ(II)塩、例えば、酢酸スズ(II)、オクタン酸スズ(II)、エチルヘキサン酸スズ(II)、及びラウリン酸スズ(II)が挙げられる。一実施形態では、触媒は、有機カルボン酸のジアルキルスズ(IV)塩である、ジラウリン酸ジブチルスズを含む。好適な有機金属触媒、例えばジラウリン酸ジブチルスズの具体例は、商標DABCO(登録商標)でAir Products and Chemicals,Inc(Allentown,PA)から市販されている。有機金属触媒はまた、二酢酸ジブチルスズ、マレイン酸ジブチルスズ、及び二酢酸ジオクチルスズなどの有機カルボン酸の他のジアルキルスズ(IV)塩を含み得る。
【0070】
他の好適な触媒の例としては、塩化鉄(II);塩化亜鉛;オクタン酸鉛;トリス(N,N-ジメチルアミノプロピル)-s-ヘキサヒドロトリアゾンを含む、トリス(ジアルキルアミノアルキル)-s-ヘキサヒドロトリアジン、水酸化テトラメチルアンモニウムなど水酸化テトラアルキルアンモニウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムなどアルカリ金属水酸化物;ナトリウムメトキシド及びカリウムイソプロポキシドなどアルカリ金属アルコキシド;並びに10~20個の炭素原子及び/又はOH側基を有する長鎖脂肪酸のアルカリ金属塩が挙げられる。
【0071】
他の好適な触媒、特に三量体化触媒のさらなる例としては、N,N,N-ジメチルアミノプロピルヘキサヒドロトリアジン、カリウム、酢酸カリウム、N,N,N-トリメチルイソプロピルアミン/ギ酸塩、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0072】
他の好適な触媒、具体的には三級アミン触媒のなおさらなる例としては、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエトキシエタノール、トリエチルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、トリエチレンジアミン(1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンとしても知られる)、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、N,N,N’,N’,N’’-ペンタメチルジプロピレントリアミン、トリス(ジメチルアミノプロピル)アミン、N,N-ジメチルピペラジン、テトラメチルイミノ-ビス(プロピルアミン)、ジメチルベンジルアミン、トリメチルアミン、トリエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N-メチルピロリドン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、ビス(2-ジメチルアミノ-エチル)エーテル、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン(「DMCHA」)、N,N,N’,N’,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、1,2-ジメチルイミダゾール、3-(ジメチルアミノ)プロピルイミダゾール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、及びそれらの組み合わせが挙げられる。触媒(C)は、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(「DBU」)に基づく遅延作用三級アミンを含み得る。代替的に又は追加的に、触媒(C)は、N,N,N’-トリメチル-N’-ヒドロキシエチル-ビスアミノエチルエーテル及び/又はエチレンジアミンを含み得る。三級アミン触媒は、ほぼ同一の化学量論量のフェノール又はギ酸など酸性プロトン含有酸を添加することによって、遅延作用触媒として使用するためにさらに修飾することができる。かかる遅延作用触媒は、Air Products及びEvonikから市販されている。
【0073】
他の好適な触媒のさらなる例としては、金属キレート、例えば、アルミニウムアセチルアセトネート、TiCH、酸化チタン(IV)アセチルアセトネート、酢酸ビスマス(III)、アルミニウムジ(イソプロポキシド)アセト酢酸エステル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0074】
触媒(C)は、そのまま使用し得るか、又は賦形剤中に配置され得る。賦形剤は、当該技術分野において既知であり、組成物の任意選択成分として以下にさらに記載される。賦形剤を利用し、触媒(C)を溶解する場合、賦形剤は、溶媒と称され得る。賦形剤は、イソシアネート反応性、例えば、ジプロピレングリコールなどアルコール官能性賦形剤であり得る。
【0075】
触媒(C)は、様々な量で用いることができる。触媒(C)は、異なる触媒の任意の組み合わせを含み得る。
【0076】
組成物は、任意選択的に、(D)阻害剤、(E)鎖延長剤、(F)賦形剤、(G)固定添加剤、(H)ミスト防止添加剤、及び/又は(I)剥離改質剤から選択される少なくとも1つの添加剤を含んでもよい。特定の実施形態では、組成物は、従来の有機ポリオール、例えばポリエーテル及び/又はポリエステルポリオールを実質的に含まない。従来の有機ポリオールは、成分(A)とは異なり、シロキサン骨格を含まない。組成物が従来のポリオールを実質的に含まないことに関して、実質的に含まないとは、組成物が、組成物の総重量に基づいて4重量%未満、あるいは3重量%未満、あるいは2重量%未満、あるいは1重量%未満、あるいは0重量%の量で従来の有機ポリオールを含むことを意味する。
【0077】
特定の実施形態では、組成物は、阻害剤(D)をさらに含む。(D)阻害剤は、同じ出発物質を含むが(D)阻害剤が省略された組成物と比較し、組成物の反応速度又は硬化速度を変更するために使用され得る。(D)阻害剤は、メチルブチノール、エチニルシクロヘキサノール、ジメチルヘキシノール、及び3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-ブチン-3-オール、1-プロピン-3-オール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3-フェニル-1-ブチン-3-オール、4-エチル-1-オクチン-3-オール、及び1-エチニル-1-シクロヘキサノールなどのアセチレン系アルコール、並びにそれらの組み合わせなどのアセチレン系アルコール;1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン、及びそれらの組み合わせによって例示されるメチルビニルシクロシロキサンなどのシクロアルケニルシロキサン;エン-イン化合物、例えば3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン;ベンゾトリアゾールなどのトリアゾール;ホスフィン;メルカプタン;ヒドラジン;アミン、例えばテトラメチルエチレンジアミン;ジアルキルフマレート、ジアルケニルフマレート、ジアルコキシアルキルフマレート、マレエート、例えばジアリルマレエート;ニトリル;エーテル;一酸化炭素;シクロオクタジエン、ジビニルテトラメチルジシロキサンなどのアルケン;アルコール、例えばベンジルアルコール;並びにこれらの組み合わせによって例示される。あるいは、阻害剤(D)は、アセチレン系アルコール(例えば、1-エチニル-1-シクロヘキサノール)及びマレエート(例えば、ジアリルマレエート、ビスマレエート、又はn-プロピルマレエート)並びにそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得る。阻害剤(D)の別の例は、アセチルアセトンである。
【0078】
あるいは、阻害剤(D)は、シリル化アセチレン系化合物であってもよい。理論に束縛されるものではないが、シリル化アセチレン系化合物を添加すると、シリル化アセチレン系化合物を含有していない組成物又は上述したものなどの有機アセチレン系アルコール阻害剤を含有する組成物のヒドロシリル化からの反応生成物と比較したとき、組成物のヒドロシリル化反応から調製される反応生成物の黄変が低減すると考えられる。
【0079】
シリル化アセチレン系化合物は、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)トリメチルシラン、((1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ)トリメチルシラン、ビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルシラン、ビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)シランメチルビニルシラン、ビス((1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ)ジメチルシラン、メチル(トリス(1,1-ジメチル-2-プロピニルオキシ))シラン、メチル(トリス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ))シラン、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルフェニルシラン、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルヘキセニルシラン、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)トリエチルシラン、ビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)メチルトリフルオロプロピルシラン、(3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オキシ)トリメチルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジフェニルメチルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルフェニルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルビニルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルヘキセニルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)ジメチルヘキセニルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)ジメチルビニルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)ジフェニルメチルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)トリメチルシラン、及びそれらの組み合わせによって例示される。あるいは、阻害剤(D)は、メチル(トリス(1,1-ジメチル-2-プロピニルオキシ))シラン、((1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ)トリメチルシラン、又はこれらの組み合わせによって例示される。阻害剤(D)として有用なシリル化アセチレン系化合物は、当該技術分野において既知の方法、例えば、上述のアセチレン系アルコールを、酸受容体の存在下でクロロシランと反応させて、シリル化することによって調製してもよい。
【0080】
具体的な実施形態では、阻害剤(D)は、アセチレン系アルコール、シリル化アセチレン系アルコール、エン-イン化合物、トリアゾール、ホスフィン、メルカプタン、ヒドラジン、アミン、フマレート、マレエート、エーテル、一酸化炭素、及びそれらの2つ以上の組み合わせを含むか、又はそれらから選択される。
【0081】
組成物中に存在する阻害剤(D)の量は、組成物の所望のポットライフ、組成物が一部分型組成物であるか多部分型組成物であるか、使用される特定の阻害剤、並びに成分(A)~(C)の選択及び量を含む様々な要因に依存する。しかし、阻害剤(D)が存在する場合の量は、組成物の総重量に基づいて、0%~1%、あるいは0%~5%、あるいは0.001%~1%、あるいは0.01%~0.5%、あるいは0.0025~0.025であってよい。
【0082】
特定の実施形態では、組成物は、鎖延長剤(E)をさらに含む。特定の実施形態では、鎖延長剤(E)は、オルガノポリシロキサン鎖延長剤を含む。利用される場合、オルガノポリシロキサン鎖延長剤は、成分(A)とは区別される。具体的な実施形態では、オルガノポリシロキサン鎖延長剤は、2つの末端ケイ素結合カルビノール官能基を含む直鎖オルガノポリシロキサンである。オルガノポリシロキサン鎖延長剤が使用され、2個の末端ケイ素結合カルビノール官能基を含む直鎖オルガノポリシロキサンを含む場合、成分(A)は、成分(A)が分枝鎖であること、成分(A)が1分子当たり平均して少なくとも3個のケイ素結合カルビノール官能基を含むことなどに基づいて、成分(E)と異なっていてもよい。
【0083】
特定の実施形態では、組成物は、オルガノポリシロキサン鎖延長剤をさらに含み、オルガノポリシロキサン鎖延長剤は、式R2XSiO(SiR2O2/2)n’SiR2Xを有し、式中、各Rは、独立して選択され、上で定義され、Xは、独立して選択され、上で定義され、下付き文字n’は、3~250、あるいは5~200、あるいは5~150、あるいは5~100、あるいは5~50である。しかし、オルガノポリシロキサン鎖延長剤は、ペンダントケイ素結合カルビノール官能基、又はペンダント及び末端ケイ素結合カルビノール官能基の両方を含んでもよい。
【0084】
他の実施形態では、鎖延長剤(E)は、有機であってもよく、又はシロキサン結合を含まなくてもよい。そのような実施形態では、鎖延長剤(E)は、ポリウレタン及び/又はポリイソシアヌレート組成物からの任意の従来の鎖延長剤(E)であってもよい。典型的には、そのような実施形態では、鎖延長剤(E)は、1分子当たり2個のヒドロキシル基を含む。開始剤は、例えば、ネオペンチルグリコール;1,2-プロピレングリコール;1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチルプロパン-1,3-ジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,5-ヘキサンジオールなどアルカンジオール;エチレングリコール;ジエチレングリコール;トリエチレングリコール;及びこれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0085】
典型的には、組成物が鎖延長剤(E)をさらに含む場合、鎖延長剤(E)は、成分(A)との混和性のためにオルガノポリシロキサン鎖延長剤を含む。しかし、以下に記載される成分(F)の存在に依存して、混和性は、成分(A)と、上記の有機鎖延長剤を含む他の形態の鎖延長剤(E)との間で改善され得る。異なる鎖延長剤の組み合わせを利用してもよい。
【0086】
利用される場合、鎖延長剤(E)は、100重量部の成分(A)に基づいて、0重量部より多く50重量部まで、あるいは10~50重量部、あるいは20~40重量部の量で利用され得る。
【0087】
特定の実施形態では、組成物は、担体賦形剤とも呼ばれ得る賦形剤(F)をさらに含む。賦形剤(F)は、典型的には、組成物の成分を可溶化し、また、成分が可溶化する場合、賦形剤(F)は溶媒として示すことができる。好適な賦形剤としては、直鎖状及び環状の両方のシリコーン、有機油、有機溶媒、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0088】
典型的には、賦形剤(F)は、組成物中に存在する場合、有機液体である。有機液体としては、油又は溶媒と考えられるものが挙げられる。有機液体としては、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、3個を超える炭素原子を有するアルコール、アルデヒド、ケトン、アミン、エステル、エーテル、グリコール、グリコールエーテル、ハロゲン化アルキル及びハロゲン化芳香族が例示されるが、それらに限定されない。炭化水素は、イソドデカン、イソヘキサデカン、アイソパーL(C11~C13)、アイソパーH(C11~C12)、水素化ポリデセン、芳香族炭化水素、及びハロゲン化炭化水素を含む。エーテル及びエステルとしては、イソデシルネオペンタノエート、ネオペンチルグリコールヘプタノエート、グリコールジステアレート、ジカプリリルカーボネート、ジエチルヘキシルカーボネート、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、エチル-3エトキシプロピオネート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、トリデシルネオペンタノエート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(propylene glycol methylether acetate、PGMEA)、プロピレングリコールメチルエーテル(propylene glycol methylether、PGME)、ジエチレングリコールブチルエーテル、オクチルドデシルネオペンタノエート、ジイソブチルアジペート、ジイソプロピルアジペート、プロピレングリコールジカプリレート/ジカプレート、オクチルエーテル、及びオクチルパルミテートが挙げられる。独立した化合物として、又は賦形剤(F)の成分として好適な追加の有機流体としては、脂肪、油、脂肪酸、及び脂肪族アルコールが挙げられる。賦形剤(F)はまた、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、テトラデカメチルヘキサシロキサン、ヘキサデアメチルヘプタシロキサン、ヘプタメチル-3-{(トリメチルシリル)オキシ)}トリシロキサン、ヘキサメチル-3,3,ビス{(トリメチルシリル)オキシ}トリシロキサン ペンタメチル{(トリメチルシリル)オキシ}シクロトリシロキサン、並びにポリジメチルシロキサン、ポリエチルシロキサン、ポリメチルエチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、カプリリルメチコン、及びそれらの任意の混合物などの、25℃で1~1,000mm2/秒の範囲の粘度を有する低粘度オルガノポリシロキサン又は揮発性メチルシロキサン又は揮発性エチルシロキサン又は揮発性メチルエチルシロキサンであり得る。
【0089】
具体的な実施形態では、賦形剤(F)は、ポリアルキルシロキサン;テトラヒドロフラン、ミネラルスピリット、ナフサ;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、又はn-プロパノールなどのアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、又はメチルイソブチルケトンなどのケトン、ベンゼン、トルエン、又はキシレンなどの芳香族炭化水素;ヘプタン、ヘキサン若しくはオクタンなどの脂肪族炭化水素;プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、又はエチレングリコールn-ブチルエーテルなどのグリコールエーテル;又はそれらの組み合わせから選択される。
【0090】
一実施形態では、賦形剤(F)は、極性賦形剤である。具体的な一実施形態では、賦形剤(F)が極性である場合、賦形剤(F)はアセトンを含むか、あるいはアセトンである。
【0091】
賦形剤(F)の量は、選択された賦形剤の種類、及び組成物中に存在する他の成分の量及び種類を含む様々な要因に依存する。しかし、組成物中の賦形剤(F)の量は、組成物の総重量に基づいて、0~80、あるいは1~50、あるいは1~40、あるいは1~35、あるいは1~30、あるいは5~30、あるいは10~30、あるいは15~25重量%であってもよい。賦形剤(F)は、例えば、混合及び送達を補助するために、組成物の調製中に添加してもよい。賦形剤(F)の全部又は一部は、組成物から剥離コーティングを調製する前及び/又はそれと同時を含め、組成物が調製された後に任意選択的で除去され得る。
【0092】
特定の実施形態では、組成物は、固定添加剤(G)をさらに含む。好適な固定添加剤は、ビニルアルコキシシランとエポキシ官能性アルコキシシランとの反応生成物;ビニルアルコキシシランとエポキシ官能性アルコキシシランとの反応生成物;並びに1分子当たり少なくとも1個の脂肪族不飽和炭化水素基及び少なくとも1つの加水分解性基を有するポリオルガノシロキサンとエポキシ官能性アルコキシシランとの組み合わせ(例えば、物理的なブレンド及び/又は反応生成物)(例えば、ヒドロキシ末端ビニル官能性ポリジメチルシロキサンとグリシドキシプロピルトリメトキシシランとの組み合わせ)により例示される。あるいは、固定添加剤は、ポリオルガノシリケート樹脂を含んでもよい。好適な固定添加剤及びその調製方法は、例えば、米国特許第9,562,149号、米国特許出願公開第2003/0088042号、同第2004/0254274号、及び同第2005/0038188号、並びに欧州特許第0 556 023号によって開示されている。
【0093】
好適な固定添加剤のさらなる例としては、遷移金属キレート、アルコキシシランなどのハイドロカルボノオキシシラン、アルコキシシランとヒドロキシ官能性ポリオルガノシロキサンとの組み合わせ、又はこれらの組み合わせが挙げられる。固定添加剤(G)は、エポキシ基、アセトキシ基、又はアクリレート基などの接着促進基を有する少なくとも1つの置換基を有するシランでもよい。接着促進基は、追加的に又は代替的に、任意の加水分解性基であってもよい。あるいは、固定添加剤(G)は、そのようなシラン、例えば、接着促進基を有するオルガノポリシロキサンの部分縮合物を含んでもよい。あるいは、固定添加剤(G)は、アルコキシシランとヒドロキシ官能性ポリオルガノシロキサンとの組み合わせを含んでもよい。
【0094】
あるいは、固定添加剤(G)は、不飽和又はエポキシ官能性化合物、例えば不飽和又はエポキシ官能性シランを含んでもよい。固定添加剤(G)は、不飽和又はエポキシ官能性アルコキシシランを含んでもよい。例えば、官能性アルコキシシランは、少なくとも1つの不飽和有機基又はエポキシ官能性有機基を含んでもよい。エポキシ官能性有機基は、3-グリシドキシプロピル及び(エポキシシクロヘキシル)エチルによって例示される。不飽和有機基は、3-メタクリロイルオキシプロピル、3-アクリロイルオキシプロピル、及び、ビニル、アリル、ヘキセニル、ウンデシレニル(undecylenyl)などの不飽和一価炭化水素基により例示される。不飽和化合物の具体例1つは、ビニルトリアセトキシシランである。
【0095】
好適なエポキシ官能性アルコキシシランの具体例としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、(エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシシラン、(エポキシシクロヘキシル)エチルジエトキシシラン及びこれらの組み合わせが挙げられる。好適な不飽和アルコキシシランの例としては、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ヘキセニルトリメトキシシラン、ウンデシレニルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0096】
また、固定添加剤(G)は、これらの化合物のうちの1つ以上の反応生成物又は部分反応生成物を含んでもよい。例えば、具体的な実施形態では、固定添加剤(G)は、ビニルトリアセトキシシランと3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランとの反応生成物又は部分反応生成物を含んでもよい。代替的に又は追加的に、固定添加剤(G)は、アルコキシ又はアルケニル官能性シロキサンを含んでもよい。
【0097】
あるいは、固定添加剤(G)は、上述のようなヒドロキシ末端ポリオルガノシロキサンとエポキシ官能性アルコキシシランとの反応生成物などのエポキシ官能性シロキサン、又はヒドロキシ末端ポリオルガノシロキサンとエポキシ官能性アルコキシシランとの物理的ブレンドを含んでもよい。固定添加剤(G)は、エポキシ官能性アルコキシシランとエポキシ官能性シロキサンとの組み合わせを含んでもよい。例えば、固定添加剤(G)は、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及びヒドロキシ末端メチルビニルシロキサンと3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランとの反応生成物の混合物、又は3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランとヒドロキシ末端メチルビニルシロキサンとの混合物、又は3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランとヒドロキシ末端メチルビニル/ジメチルシロキサンコポリマーとの混合物によって例示される。
【0098】
固定添加剤(G)として使用するのに好適なアセトキシシランの例としては、テトラアセトキシシラン、オルガノトリアセトキシシラン、ジオルガノジアセトキシシラン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。アセトキシシランは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、及び三級ブチルなどのアルキル基;ビニル、アリル、又はヘキセニルなどのアルケニル基;フェニル、トリル、又はキシリルなどのアリール基;ベンジル又は2-フェニルエチルなどのアラルキル基;並びに3,3,3-トリフルオロプロピルなどのフッ素化アルキル基を含有してもよい。例示的なアセトキシシランとしては、テトラアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、プロピルトリアセトキシシラン、ブチルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、オクチルトリアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、フェニルメチルジアセトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ジフェニルジアセトキシシラン、テトラアセトキシシラン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、固定添加剤(G)は、オルガノトリアセトキシシラン、例えば、メチルトリアセトキシシランとエチルトリアセトキシシランとを含む混合物を含む。
【0099】
固定添加剤(G)における使用又は固定添加剤(G)としての使用に好適なアミノ官能性アルコキシシランの例は、H2N(CH2)2Si(OCH3)3、H2N(CH2)2Si(OCH2CH3)3、H2N(CH2)3Si(OCH3)3、H2N(CH2)3Si(OCH2CH3)3、CH3NH(CH2)3Si(OCH3)3、CH3NH(CH2)3Si(OCH2CH3)3、CH3NH(CH2)5Si(OCH3)3、CH3NH(CH2)5Si(OCH2CH3)3、H2N(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH3)3、H2N(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH2CH3)3、CH3NH(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH3)3、CH3NH(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH2CH3)3、C4H9NH(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH3)3、C4H9NH(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH2CH3)3、H2N(CH2)2SiCH3(OCH3)2、H2N(CH2)2SiCH3(OCH2CH3)2、H2N(CH2)3SiCH3(OCH3)2、H2N(CH2)3SiCH3(OCH2CH3)2、CH3NH(CH2)3SiCH3(OCH3)2、CH3NH(CH2)3SiCH3(OCH2CH3)2、CH3NH(CH2)5SiCH3(OCH3)2、CH3NH(CH2)5SiCH3(OCH2CH3)2、H2N(CH2)2NH(CH2)3SiCH3(OCH3)2、H2N(CH2)2NH(CH2)3SiCH3(OCH2CH3)2、CH3NH(CH2)2NH(CH2)3SiCH3(OCH3)2、CH3NH(CH2)2NH(CH2)3SiCH3(OCH2CH3)2、C4H9NH(CH2)2NH(CH2)3SiCH3(OCH3)2、C4H9NH(CH2)2NH(CH2)3SiCH3(OCH2CH3)2、及びそれらの組み合わせによって例示される。
【0100】
固定添加剤(G)に適したオキシモシランの例としては、メチルトリオキシモシラン、エチルトリオキシモシラン、プロピルトリオキシモシラン、及びブチルトリオキシモシランなどのアルキルトリオキシモシラン;メトキシトリオキシモシラン、エトキシトリオキシモシラン、及びプロポキシトリオキシモシランなどのアルコキシトリオキシモシラン;又はプロペニルトリオキシモシラン若しくはブテニルトリオキシモシランなどのアルケニルトリオキシモシラン;ビニルオキシモシランなどのアルケニルオキシモシラン;ビニルメチルジオキシモシラン、ビニルエチルジオキシモシラン、ビニルメチルジオキシモシラン、若しくはビニルエチルジオキシモシランなどのアルケニルアルキルジオキシモシラン;又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0101】
固定添加剤(G)に好適なケトキシモシラン架橋剤の例としては、メチルトリス(ジメチルケトキシモ)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシモ)シラン、メチルトリス(メチルプロピルケトキシモ)シラン、メチルトリス(メチルイソブチルケトキシモ)シラン、エチルトリス(ジメチルケトキシモ)シラン、エチルトリス(メチルエチルケトキシモ)シラン、エチルトリス(メチルプロピルケトキシモ)シラン、エチルトリス(メチルイソブチルケトキシモ)シラン、ビニルトリス(ジメチルケトキシモ)シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトキシモ)シラン、ビニルトリス(メチルプロピルケトキシモ)シラン、ビニルトリス(メチルイソブチルケトキシモ)シラン、テトラキス(ジメチルケトキシモ)シラン、テトラキス(メチルエチルケトキシモ)シラン、テトラキス(メチルプロピルケトキシモ)シラン、テトラキス(メチルイソブチルケトキシモ)シラン、メチルビス(ジメチルケトキシモ)シラン、メチルビス(シクロヘキシルケトキシモ)シラン、トリエトキシ(エチルメチルケトキシム)シラン、ジエトキシジ(エチルメチルケトキシム)シラン、エトキシトリ(エチルメチルケトキシム)シラン、メチルビニルビス(メチルイソブチルケトキシモ)シラン、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0102】
あるいは、固定添加剤(G)は、遷移金属キレートを含んでもよい。好適な遷移金属キレートとしては、チタネート、ジルコニウムアセチルアセトネートなどのジルコネート、アルミニウムアセチルアセトネートなどのアルミニウムキレート、及びこれらの組み合わせが挙げられる。あるいは、固定添加剤(G)は、遷移金属キレートとアルコキシシランとの組み合わせ、例えば、グリシドキシプロピルトリメトキシシランとアルミニウムキレート又はジルコニウムキレートとの組み合わせを含んでもよい。
【0103】
組成物に存在する固定添加剤(G)を利用する場合の特定の量は、基材の種類及びプライマーを使用の有無を含む様々な要因に依存する。特定の実施形態では、固定添加剤(G)は、成分(B)の100重量部当たり、0~2重量部の量で組成物中に存在する。あるいは、固定添加剤(G)は、成分(B)の100重量部当たり、0.01~2重量部の量で組成物中に存在する。
【0104】
特定の実施形態では、組成物は、ミスト防止添加剤(H)をさらに含む。ミスト防止添加剤(H)は、コーティングプロセス、特に高速コーティング装置によるコーティングプロセスにおけるシリコーンミスト形成を低減又は抑制するために、組成物中で利用してもよい。ミスト防止添加剤(H)は、組成物の適用中のミスト化を低減、最小化、又は排除するために好適な任意の化合物又は成分であってもよい。一実施形態では、ミスト防止添加剤(H)は、オルガノハイドロジェンケイ素化合物、オキシアルキレン化合物、又は、1分子中に少なくとも3個のケイ素結合アルケニル基を有するオルガノアルケニルシロキサン、及び好適な触媒の反応生成物を含むか、又はそれらである。具体的な実施形態では、ミスト防止添加剤(H)は、Q型分枝鎖ジメチルビニル末端オルガノポリシロキサンを含む。別の具体的な実施形態では、ミスト防止添加剤(H)は、MDQ樹脂を含む。ミスト防止添加剤(H)は、25℃で30,000~50,000、あるいは35,000~45,000センチポアズの粘度を有し得る。好適なミスト防止添加剤は、例えば、米国特許出願公開第2011/0287267号、米国特許第8,722,153号、同第6,586,535号、及び同第5,625,023号に開示されている。
【0105】
組成物中で利用されるミスト防止添加剤(H)の量及びその選択は、組成物のために選択される他の出発物質の量及び種類を含む様々な要因に依存するだろう。例えば、成分(A)が、直鎖であるか、又はわずかに分枝鎖である場合、ミスト防止添加剤(H)を利用してもよく、これは高度な分枝鎖構造又は樹脂構造を有していてもよい。しかし、成分(A)が分枝鎖又は樹脂状である場合、ミスト防止添加剤(H)を利用してもよく、これは直鎖又は部分的にのみ分枝鎖あってもよい。ミスト防止添加剤(H)は、典型的には、組成物の総重量に基づいて、0%~10%、あるいは0.1%~3%の量で利用される。この量は、成分(A)と関連する量を除外し、成分(A)とは別個の異なるミスト防止添加剤(H)にのみ関連する。
【0106】
特定の実施形態では、組成物は、剥離力(組成物から形成された剥離コーティングと、感圧型接着剤を含むラベルなどの剥離コーティングに接着するものとの間の接着力)のレベルを制御する(減少させる)ために、組成物中で利用可能な剥離改質剤(I)をさらに含む。必要とされるか、又は所望の剥離力を有する剥離コーティングは、剥離改質剤(I)のレベル又は濃度を調節することによって、調整剤を含まない組成物から配合することができる。成分(I)に好適な剥離改質剤の例としては、トリメチルシロキシ末端ジメチル、フェニルメチルシロキサンが挙げられる。あるいは、剥離改質剤(I)は、ヒドロキシル基又はアルコキシ基を有するオルガノポリシロキサン樹脂と、少なくとも1つのヒドロキシル基又は加水分解性基を有するジオルガノポリシロキサンとの縮合反応生成物であってもよい。好適な剥離改質剤の例は、例えば、米国特許第8,933,177号及び米国特許出願公開第2016/0053056号に開示されている。
【0107】
組成物を用いて形成された剥離コーティングは、発泡体ではない。当該技術分野で理解されているように、イソシアネートとイソシアネート反応性成分との間の従来の反応は、発泡剤の存在下で実施され、発泡体を得ることができる。発泡剤は、物理発泡剤及び化学発泡剤として分類することができる。物理発泡剤は、大気圧及び硬化に関連する高温(例えば、100℃以上)にさらされている間、液体から気体の状態へと相変化を受ける。相変化は、典型的には、物理発泡剤の沸点温度に関連する。対照的に、化学発泡剤は、組成物中の1つ以上の他の成分と、又は化学発泡剤の他の分子と反応して、気体を副生成物として放出する。このような発泡剤は、典型的には、ポリウレタン及び/又はポリイソシアヌレート発泡体を形成する際に利用される。しかし、組成物を用いて形成される剥離コーティングは発泡体ではなく、特定の実施形態では、組成物は、物理発泡剤、化学発泡剤、又は物理発泡剤及び化学発泡剤の両方を含まない。当該技術分野において理解されるように、成分が物理発泡剤を構成するかどうかの決定は、組成物を用いて剥離コーティングを形成する際の温度を含む加工パラメータの関数である(即ち、成分の物理的特性、及び剥離コーティングの形成中に成分が沸騰又は揮発するかどうかに基づく)。例えば、組成物の特定の成分は、特に高い加工温度(例えば120℃より高い)で揮発し得るが、組成物が発泡剤を含まないように組成物を用いて剥離コーティングを調製するために利用される加工温度では揮発しない。上で紹介したように、組成物は、典型的には化学発泡剤を含まない。化学発泡剤は、成分(A)、(B)及び任意選択成分(C)~(I)とは区別される。これらの成分の選択に応じて、気体は、少なくとも、剥離コーティングを形成する際の反応の副生成物であり得る。しかし、剥離コーティングの調製において副生成物として何らかの気体が形成される場合、気体は、剥離コーティングが発泡体ではないような従来の化学発泡剤を用いて形成される気体よりもはるかに多いレベルで発生する。
【0108】
例えば、反応性希釈剤、芳香剤、防腐剤、着色剤、染料、顔料、酸化防止剤、熱安定剤、難燃剤、流動制御添加剤、殺生物剤、充填剤(増量及び補強充填剤を含む)、界面活性剤、チキソトロープ剤、pH緩衝剤などを含む、他の任意選択成分が組成物中に存在してもよい。組成物は、任意の形態であってもよく、組成物にさらに組み込まれていてもよい。
【0109】
あるいは、組成物及びそれから形成される剥離コーティングは、微粒子を含まないか、又は組成物の0~30重量%などの限られた量の微粒子(例えば、充填剤及び/又は顔料)のみを含み得る。微粒子は、剥離コーティングを形成するのに使用されるコーティング機器に凝集するか、又はそうでなければアンカーする場合がある。さらに、光学的透明性が所望の場合、微粒子は、剥離コーティング及びそれを使用して形成された剥離ライナーの光学的特性、例えば、透明性を妨げる可能性がある。微粒子は、被着体の接着に不利になることがある。
【0110】
特定の実施形態では、組成物は、フルオロオルガノシリコーン化合物を含まない。硬化中、フルオロ化合物は、その表面張力が低いため、組成物の界面又はそれと共に形成された剥離コーティング、及び組成物が適用され、剥離コーティングが形成される基材、例えば組成物/PETフィルム界面に急速に移行し得ると考えられる。このような移動は、フッ素含有バリアを作製することによって、基材への剥離コーティング(組成物を硬化させることによって調製される)の接着を防ぐことがある。バリアを作製することにより、フルオロオルガノシリコーン化合物は、組成物のいずれの成分も界面で反応することが防がれ、硬化及び関連する特性に影響を及ぼすことがある。さらに、フルオロオルガノシリコーン化合物は、通常、高価である。
【0111】
その硬化可能な形態の組成物は、成分(A)~(B)、並びに上記の任意の任意選択成分を、任意の添加順序で、任意選択的にマスターバッチ内にて、任意選択的に剪断下、組み合わせることによって調製され得る。以下でより詳細に説明するように、組成物は、一部分型、二部分型、又は2K組成物、又は多部分型組成物であり得る。例えば、組成物は、イソシアネート反応性成分と、イソシアネート成分とを含み得る。成分(A)は、イソシアネート反応性成分中に存在し、成分(B)は、イソシアネート成分中に存在する。触媒(C)は、典型的には、イソシアネート反応性成分中に存在するが、あるいは、イソシアネート反応性成分及びイソシアネート成分とは別個の第3の成分中に存在してもよい。特定の実施形態では、イソシアネート成分は、ポリイソシアネート(B)からなり、残りの成分は、イソシアネート反応性成分中に存在する。成分は、典型的には、それを用いて剥離コーティングを形成するときに浴として組成物を与えるように組み合わされる。
【0112】
組成物でコーティング基材を調製する方法は、基材上に組成物を適用すること、即ち、配置することを含む。本方法は、基材上で組成物を硬化させ、その結果、基材上に剥離コーティングを形成させて、コーティング基材を得ることをさらに含む。高温、例えば、50~180℃、あるいは50~120℃、あるいは50~90℃、あるいは70~90℃で加熱することによって硬化を行って、コーティング基材を得てもよい。当業者であれば、組成物の成分及び基材組成物又は構造体の材料の選択を含む様々な要因に応じて、適切な温度を選択することができる。組成物は、従来の剥離コーティングを調製するために利用される従来の組成物と比較して、より低い温度で硬化し、したがって、エネルギー消費の削減、及び高温で軟化又は変形し得る異なる種類の基材の使用を可能にする。
【0113】
組成物は、任意の好適な様式で基材上に配置又は分配することができる。典型的には、組成物は、ウェットコーティング技術により、湿潤形態で塗布される。組成物は、i)スピンコーティング、ii)ブラシコーティング、iii)ドロップコーティング、iv)スプレーコーティング、v)ディップコーティング、vi)ロールコーティング、vii)フローコーティング、viii)スロットコーティング、ix)グラビアコーティング、x)メイヤーバーコーティング、又はxi)i)~x)のうちのいずれか2つ以上の組み合わせによって適用することができる。典型的には、組成物を基材上に配置することにより、基材上に湿潤堆積物が生じ、次いで、これが硬化されて、硬化したフィルム、即ち基材上の組成物から形成された剥離コーティングを含む、コーティング基材を得る。
【0114】
基材は限定されず、いずれの基材であってもよい。硬化したフィルムは、基材から分離可能であってもよく、又はその選択に応じて、物理的及び/又は化学的に基材に結合されていてもよい。基材は、湿潤堆積物を硬化するための、一体型ホットプレート又は一体型若しくは独立型の炉を有してもよい。基材は、任意選択的に、連続的又は非連続的な形状、サイズ、寸法、表面粗さ、及び他の特性を有してもよい。あるいは、基材は、高温の軟化点温度を有してもよい。しかし、組成物及び方法は、そのようには限定されない。
【0115】
あるいは、基材は、熱硬化性及び/又は熱可塑性であってもよいプラスチックを含んでもよい。しかし、基材は、代替的に、ガラス、金属、セルロース(例えば、紙)、木材、厚紙、板紙、シリコーン、若しくはポリマー材料、又はこれらの組み合わせであり得か、又は含んでもよい。
【0116】
好適な基材の具体例としては、クラフト紙、ポリエチレンコーティングクラフト紙(PEKコーティング紙)、感熱紙、普通紙などの紙基材;ポリアミド(polyamide、PA)などのポリマー基材;ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)、ポリブチレンテレフタレート(polybutylene terephthalate、PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(polytrimethylene terephthalate、PTT)、ポリエチレンナフタレート(polyethylene naphthalate、PEN)、液晶ポリエステルなどのポリエステル;ポリエチレン(polyethylene、PE)、ポリプロピレン(polypropylene、PP)、ポリブチレンなどのポリオレフィン;スチレン樹脂;ポリオキシメチレン(polyoxymethylene、POM);ポリカーボネート(polycarbonate、PC);ポリメチレンメタクリレート(polymethylenemethacrylate、PMMA);ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride、PVC);ポリフェニレンスルフィド(polyphenylene sulfide、PPS);ポリフェニレンエーテル(polyphenylene ether、PPE);ポリイミド(polyimide、PI);ポリアミドイミド(polyamideimide、PAI);ポリエーテルイミド(polyetherimide、PEI);ポリスルホン(polysulfone、PSU);ポリエーテルスルホン;ポリケトン(polyketone、PK);ポリエーテルケトン;ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol、PVA);ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone、PEEK);ポリエーテルケトンケトン(polyetherketoneketone、PEKK);ポリアリレート(polyarylate、PAR);ポリエーテルニトリル(polyethernitrile、PEN);フェノール樹脂;フェノキシ樹脂;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セロハンなどのセルロース;ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素化樹脂;ポリスチレン型、ポリオレフィン型、ポリウレタン型、ポリエステル型、ポリアミド型、ポリブタジエン型、ポリイソプレン型、フルオロ型などの熱可塑性エラストマー;並びにこれらのコポリマー及び組み合わせが挙げられる。
【0117】
硬化性組成物、又は湿潤堆積物は、典型的には、ある時間にわたって、高温で硬化される。時間は、典型的には、組成物の硬化、即ち架橋をもたらすのに十分である。時間は、0時間より長く8時間まで、あるいは0時間より長く2時間まで、あるいは0時間より長く1時間まで、あるいは0分より長く30分まで、あるいは0分より長く15分まで、あるいは0分より長く10分まで、あるいは0分より長く5分まで、あるいは0分より長く2分まで、あるいは0秒より長く90秒まで、あるいは0秒より長く80秒まで、あるいは0秒より長く70秒まで、あるいは0秒より長く60秒までであってもよい。時間は、利用される高温、選択される温度、所望のフィルム厚さ、及び組成物中の任意の賦形剤の存在の有無を含む、様々な要因に依存する。
【0118】
組成物を硬化させることは、典型的には、0.1秒~50秒、あるいは1秒~10秒、あるいは0.5秒~30秒の滞留時間を有する。選択される滞留時間は、基材の選択、選択される温度、及びライン速度に応じて異なり得る。本明細書で使用するとき、滞留時間は、組成物又は湿潤堆積物が高温にさらされる時間を指す。滞留時間は、組成物、湿潤堆積物、又はその部分的に硬化した反応中間体が、典型的には硬化を開始する高温にさらされなくなった後であっても進行中の硬化がある場合があるので、硬化時間とは区別される。あるいは、コーティングされた物品は、オーブン内のコンベヤーベルト上で調製することができ、滞留時間は、オーブンの長さ(例えばメートル単位)をコンベヤーベルトのライン速度(例えば、メートル/秒)で割ることによって計算することができる。
【0119】
時間は、硬化の反復、例えば、第1の硬化及び後硬化に細分することができ、第1の硬化は、例えば1時間であり、後硬化は、例えば3時間である。高温は、このような反復において、室温を上回る任意の温度から、独立して選択されてもよく、各反復において同じであってもよい。
【0120】
賦形剤(F)の任意選択的な存在及び選択に応じて、組成物の硬化はまた、乾燥ステップを含んでもよい。例えば、組成物が賦形剤(F)を含む場合、乾燥ステップは、典型的には、組成物からの賦形剤(F)の乾燥又は除去も取り除く。乾燥は、硬化と同時に行われてもよく、又は硬化と別個であってもよい。
【0121】
フィルム及びコーティング基材の厚さ及び他の寸法に応じて、コーティング基材は、反復プロセスを介して形成することができる。例えば、第1の堆積物を形成し、第1の高温に第1の時間にわたってさらして、部分的に硬化した堆積物を得ることができる。次いで、第2の堆積物を、上述の部分的に硬化した堆積物上に配置し、第2の高温に第2の時間にわたってさらして、第2の部分的に硬化した堆積物を得ることができる。この部分的に硬化した堆積物はまた、第2の高温に第2の時間にわたってさらされる間にさらに硬化する。第3の堆積物を、第2の部分的に硬化した堆積物上に配置し、第3の高温に第3の時間にわたってさらして、第3の部分的に硬化した堆積物を得ることができる。第2の部分的に硬化した堆積物はまた、第2の高温に第2の時間にわたってさらされる間にさらに硬化する。このプロセスを、コーティングされた物品を所望どおりに構築するために、例えば1~50回繰り返すことができる。部分的に硬化した層の複合体は、最終後硬化、例えば、上述の高温及び時間にさらされ得る。各高温及び時間は独立して選択されてもよく、互いに同じであっても異なっていてもよい。物品が反復プロセスを介して形成されるとき、各堆積物は、独立して選択されてもよく、組成物において選択される成分、それらの量、又は両方は異なってもよい。あるいは、さらに、各反復層は、このような反復プロセスにおいて部分的に硬化されるだけというよりも、完全に硬化され得る。
【0122】
あるいは、堆積物は、ウェットフィルムを含んでもよい。あるいは、反復プロセスは、部分的に硬化した層の硬化状態に応じて、ウェットオンウェットであってもよい。あるいは、反復プロセスは、ウェットオンドライであってもよい。
【0123】
基材上に組成物から形成されたフィルムを備えるコーティング基材は、フィルム及び基材の相対厚さを含む様々な寸法を有してもよい。フィルムは、最終用途に応じて変化し得る厚さを有する。フィルムは、0より大きく4,000μmまで、あるいは0より大きく3,000μmまで、あるいは0より大きく2,000μmまで、あるいは0より大きく1,000μmまで、あるいは0より大きく500μmまで、あるいは0より大きく250μmまでの厚さを有してもよい。しかし、他の厚さ、例えば、0.1~200μmも想到される。例えば、フィルムの厚さは、0.2~175μm、あるいは、0.5~150μm、あるいは、0.75~100μm、あるいは、1~75μm、あるいは、2~60μm、あるいは3~50μm、あるいは、4~40μmであってもよい。あるいは、基材がプラスチックである場合、フィルムは、0超~200μm、あるいは0超~150μm、あるいは0超~100μmの厚さを有してもよい。
【0124】
所望であれば、フィルムは、その最終用途に応じて、さらなる処理を受けることができる。例えば、フィルムは、酸化物堆積(例えば、SiO2堆積)、レジスト堆積、及びパターニング、エッチング、化学ストリッピング、コロナ若しくはプラズマストリッピング、金属被覆、又は金属堆積を受けることができる。このようなさらなる処理技術は、全般的に既知である。このような堆積は、化学蒸着(低圧化学蒸着、プラズマ増強化学蒸着、及びプラズマ支援化学蒸着など)、物理蒸着、又は他の真空蒸着技術であってもよい。多くのこのようなさらなる処理技術は、高温、特に真空蒸着を伴い、優れた熱的安定性を考慮すると、これに対してフィルムは十分に適している。しかし、フィルムの最終用途に応じて、このようなさらなる処理によりフィルムを利用することができる。
【0125】
コーティング基材は、多様な最終用途に利用することができる。例えば、コーティング基材は、コーティング用途、包装用途、接着剤用途、繊維用途、布地又は織物用途、建築用途、輸送用途、エレクトロニクス用途、又は電気用途に利用することができる。しかし、組成物は、コーティング基材を調製する以外の最終用途、例えばシリコーンゴムなどの物品の調製に利用することができる。
【0126】
あるいは、コーティング基材は、例えば、アクリル樹脂型感圧接着剤、ゴム型感圧接着剤、及びシリコーン型感圧接着剤、並びにアクリル樹脂型接着剤、合成ゴム型接着剤、シリコーン型接着剤、エポキシ樹脂型接着剤、及びポリウレタン型接着剤などの任意の感圧接着剤を含む、テープ又は接着剤用の剥離ライナーとして利用することができる。基材の各主表面は、両面テープ又は接着剤のためにその上に配置されたフィルムを有し得る。
【0127】
あるいは、組成物が、例えば剥離コーティング又はライナーを形成するために剥離コーティング組成物として配合される場合、剥離コーティング組成物は、例えば、成分を共に混合して一部分型組成物を調製することによって調製され得る。しかし、使用時(例えば、基材に適用する直前)に部分が組み合わされるまで、カルビノール官能性を有する成分(例えば、成分(A))及びイソシアネート官能性を有する成分(例えば、成分(B))が別個の部分に貯蔵される多部分型組成物として剥離コーティング組成物を調製することが望ましい場合がある。組成物が剥離コーティング組成物である場合、剥離コーティング組成物を利用して上述のようにコーティング基材を形成することができ、剥離コーティングは、基材、例えば、基材の表面に剥離コーティング組成物を適用し、硬化することによって形成される。
【0128】
剥離コーティング組成物は、スプレー、ドクターブレード、ディッピング、スクリーン印刷などの任意の簡便な手段によって、又はロールコーター、例えば、オフセットウェブコーター、キスコーター、若しくはエッチングされたシリンダーコーターによって基材に適用することができる。
【0129】
本発明の剥離コーティング組成物は、上述のものなどの任意の基材に適用することができる。あるいは、剥離コーティング組成物は、ポリマーフィルム基材、例えばポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、又はポリスチレンフィルムに適用することができる。剥離コーティング組成物は、あるいは、プラスチックコーティング紙、例えば、ポリエチレンでコーティングされた紙、グラシン、スーパーカレンダー紙、又はクレーコーティングクラフトをはじめとする、紙基材に適用することができる。剥離コーティング組成物は、あるいは、金属箔基材、例えばアルミニウム箔に適用することができる。
【0130】
ある特定の実施形態では、コーティング基材を調製する方法は、基材上に剥離コーティング組成物を適用又は配置する前に、基材を処理することをさらに含んでもよい。基材の処理は、プラズマ処理又はコロナ放電処理などの任意の簡便な手段によって実施することができる。あるいは、基材は、プライマーを適用することによって処理することができる。特定の例では、剥離コーティング組成物から剥離コーティングを基材上に形成する前に基材が処理される場合、剥離コーティングのアンカーは改善され得る。
【0131】
剥離コーティング組成物が賦形剤(F)を含む場合、その方法は、賦形剤(F)を除去することをさらに含んでもよく、これは、賦形剤(F)の全て又は一部を除去するのに十分な時間、50~100℃で加熱することなどの任意の従来の手段によって実施されてもよい。方法は、剥離コーティング組成物を硬化して、基材の表面上に剥離コーティングを形成することをさらに含んでもよい。硬化は、100℃~200℃で加熱するなどの任意の従来の手段によって実施することができる。
【0132】
製造コーター条件下で、硬化は、120℃~150℃の空気温度で、1秒~6秒、あるいは1.5秒~3秒の滞留時間で行うことができる。加熱は、オーブン、例えば、空気循環オーブン若しくはトンネル炉内で、又は加熱されたシリンダの周りにコーティングされたフィルムを通すことによって行うことができる。
【0133】
以下の実施例は、本発明を例示することを意図しており、決して本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない。実施例で利用される特定の成分を下の表1に記載し、続いて、実施例でも使用される特性決定及び評価の手順を記載する。
【0134】
材料
以下の表1に簡単な要約を示し、ある特定の略語、簡略表記、及び実施例で使用される成分に関する情報を記載する。重合度(DP)は、典型的には、例えば、NMR、IR、及び/又はGPC(例えば、ポリスチレンなどの標準に対する)からの数平均DPとして報告される。
【0135】
【0136】
機器及び特性評価パラメータ
以下の機器及び特性評価手順/パラメータを使用して、以下の実施例で調製された化合物の様々な物理的特性を評価した。
【0137】
核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance:NMR)スペクトル法
核磁気共鳴(NMR)スペクトルを、ケイ素を含まない10mmのチューブ及びCDCl3/Cr(AcAc)3溶媒を使用して、NMR BRUKER AVIII(400MHz)上で得た。29Si-NMRスペクトルの化学シフトを、内部溶媒共鳴を基準とし、テトラメチルシランに対して報告する。
【0138】
ゲル浸透クロマトグラフィ(Gel Permeation Chromatography、GPC)
ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)分析は、示差屈折計、オンライン示差粘度計、低角度光散乱(LALS:15°及び90°の検出角度)、及びカラム(2 PL Gel Mixed C、Varian)から構成される三重検出器を備えたAgilent 1260 Infinity IIクロマトグラフ上で実施した。移動相として、トルエン(HPLC grade、Biosolve)を、流速1mL/分で使用した。
【0139】
ヒドロキシル含有量
ヒドロキシル含有量を滴定により決定した。特に、ヒドロキシル基は、ピリジン媒体中、110℃で無水フタル酸と反応させることによってエステル化された。エステル化反応は、1-メチルイミダゾールによって触媒された。溶解性を改善するために、それぞれの場合において4mLのTHFを利用した。過剰の無水フタル酸を水で加水分解し、形成されたフタル酸を標準水酸化ナトリウム溶液で電位差滴定した。ヒドロキシル含有量は、ブランクと試料溶液の滴定の差から計算され、%ヒドロキシル(%OH、wt/wt)又はヒドロキシル価(mg KOH/g試料)として表される。
【0140】
GC-MS
オルガノポリシロキサン1及び2を形成する際の残留反応物を、DB-5msカラム(Agilent 122-5533、30m×250μm×1.0μm)を備えたAgilent 6890N Gas ChromatographyシステムでのGC-MSによって測定し、決定した。
【0141】
動的粘度(Dynamic Viscosity、DV)
動的粘度(DV)を、CPA-52Zスピンドルを備えるBrookfield DV-III Ultra Programmable粘度計で、0.5mLの体積の試料を用いて、25℃の温度で測定した。
【0142】
X線蛍光(X-Ray Fluorescence、XRF)
X線蛍光(XRF)は、Oxford Instruments Lab-X3500ベンチトップXRFアナライザーで実施した。
【0143】
コート重量(Coat Weight、CW)
コーティングされていないPETをブランクとして使用して、各剥離コーティングのコート重量をXRFによって測定した。コート重量は、FINAT試験方法No.7(FINAT Technical Handbook,7th Edition,2005)に従って測定した。
【0144】
こすり落とし後のコート重量(CWRO)
所与の剥離コーティングのコート重量(CW)を測定した後、剥離コーティングを摩耗試験に供した。具体的には、各剥離コーティングを、Elcometer 1720 Abrasion Testerを用いて、30サイクル/分の速度で30サイクル摩擦した。摩耗試験後、こすり落とし後のコート重量(CWRO)をXRFによって測定した。
【0145】
固定率(RO%)
固定率(RO%)を以下のように計算した:(CWRO/CW)×100。
【0146】
剥離力(RF-RT)
室温での剥離力を測定するために、180°剥離試験を利用した。具体的には、Tesa 7475標準テープを各剥離コーティング上に積層して積層試料を得て、20g/cm2の荷重錘を各積層試料上に室温で20時間配置した。20時間後、荷重錘を取り除いた。30分後、剥離力を、FINAT試験方法No.10(FINAT Technical Handbook 7th edition,2005)に従ってChemInstruments AR-1500によって測定した。
【0147】
経時剥離力(RF-70℃)
70℃での経時剥離力を測定するために、180°剥離試験を利用した。具体的には、Tesa 7475標準テープを各剥離コーティング上に積層して積層試料を得て、20g/cm2の荷重錘を各積層試料上に70℃で20時間配置した。20時間後、荷重錘を取り除いた。室温で30分後、剥離力を、FINAT試験方法No.10(FINAT Technical Handbook 7th edition,2005)に従ってChemInstruments AR-1500によって測定した。
【0148】
その後の接着強度(Subsequent Adhesive Strength、SAS)
SASは、移動の指標であり、最初にNitto Denko 31Bテープを各剥離コーティング上に積層して積層試料を得て、20g/cm2の荷重錘を各積層試料上に70℃で20時間配置することによって測定した。20時間後、荷重錘を取り除いた。室温で30分後、各積層試料をPET基材上に1時間配置した。次いで、剥離力をChemInstruments AR-1500によって測定して、RF剥離値を得た。PET基材ではなくPTFE基材を用いて、各剥離コーティングについて同じ手順を実施し、得られた剥離力をRFPTFE値と呼ぶ。SASは、FINAT試験方法No.11(FINAT Technical Handbook 7th edition,2005)に従って、式RF剥離/RFPTFE×100%によって計算した。
【0149】
調製例1:カルビノール官能基を有するオルガノポリシロキサンの合成
300グラムの有機ケイ素化合物及び13グラムの初期オルガノシロキサン1を500mLの3つ口フラスコに入れ、5分間混合した。次に、0.5グラムのヒドロシリル化触媒をこのフラスコに入れ、フラスコの内容物を室温でさらに5分間混合した。フラスコの内容物を、30分間混合しつつ、70℃まで加熱した。25.2グラムのアルコール化合物をこのフラスコに入れ、フラスコの内容物をさらに5分間混合した。追加量の0.9グラムのヒドロシリル化触媒をこのフラスコに入れ、撹拌しながら温度を70℃でさらに60分間保持した。フラスコの内容物を加熱した温度を100℃に上昇させ、さらに60分間保持した。次いで、温度を60℃に下げ、フラスコの内容物に60分間高減圧を適用した。カルビノール官能基を有するオルガノポリシロキサン(「オルガノポリシロキサン1」)が得られ、室温に冷却してフラスコから回収した。オルガノポリシロキサン1のMn、Mw、PDI、及びヒドロキシル含有量を上述のように測定し、以下の表2及び3に報告した。表3において、ヒドロキシル含有量は、オルガノポリシロキサン1の2つの異なるバッチについて測定され、ヒドロキシル含有量は、各バッチについて3回測定された。オルガノポリシロキサン1を含有する反応生成物において、残留アルコール化合物は検出されず、1ppm未満であり、残留初期オルガノシロキサン1は、100ppm未満であることが検出された。
【0150】
【0151】
【0152】
調製例2:水素化ケイ素官能基を有するオルガノポリシロキサンの合成
60グラムの初期オルガノシロキサン2、415.8グラムの環状シロキサン、37.5グラムの環状オルガノハイドロジェンシロキサン、及び48グラムの平衡触媒を、機械的撹拌器、N2入口、及び凝縮器を備えた1000mLの三つ口フラスコに入れた。フラスコにN2を10分間パージし、フラスコの内容物を60℃で48時間加熱した。48時間後、フラスコの内容物を遠心分離し、綿及びシリカを通して濾過して、平衡触媒を除去した。次に、フラスコの内容物を70℃で1時間回転蒸発させて他の揮発物を除去し、生成物を得た。生成物は、式M4D36DH
4Qの反応中間体である。
【0153】
調製例3:カルビノール官能基を有するオルガノポリシロキサンの合成
484グラムの調製実施例2の反応中間体、111.8グラムのアルコール化合物、242グラムの溶媒2、0.484グラムの酢酸ナトリウム(NaAc)、及び1.21グラムのヒドロシリル化触媒を、機械的撹拌器、N2入口、及び凝縮器を備えた1000mLの3つ口フラスコに入れた。フラスコの内容物を室温で10分間、400rpmで撹拌し、混合した。次いで、フラスコを70℃で2時間加熱した。次いで、フラスコの内容物を綿及びシリカを通して濾過して、生成物を得た。生成物を溶媒2中の10gのVE(1%溶液)と合わせ、70℃で1時間回転蒸発させ、次いで110℃の油ポンプを利用して、揮発性種をさらに2時間ストリッピングする。カルビノール官能基を有するオルガノポリシロキサン(「オルガノポリシロキサン2」)が得られ、室温に冷却してフラスコから回収した。
【0154】
実施例1~3及び比較例1~4:組成物
剥離コーティングを調製するための組成物を調製した。組成物は、二部分型組成物であった:(1)(A)部は、イソシアネート1又は2を、溶媒1(利用する場合)と共に含む。(2)(B)部は、残りの成分を含む。表4は、実施例1~3及び比較例1~4の各組成物中の成分の相対量を示す。表4の値はグラムである(単位のないモル比であるNCO/OH指数を除く)。C.E.は比較例を示す。
【0155】
【0156】
実施例1~3及び比較例1~4:剥離コーティング
実施例1~3及び比較例1~4の組成物を用いて剥離コーティングを形成した。各実施例において、各組成物のB部を容器に入れ、続いてA部を入れて混合物を得た。各混合物を、機械的撹拌器を使用して、1000rpmで1分間、十分にブレンドした。混合後、各混合物を、室温でコーターを用いて約1μmの制御された厚さで基材上にコーティングして、基材上に湿潤堆積物を得た。次いで、基材上の湿潤堆積物を、所定の温度(90℃)に設定したオーブンに入れて、湿潤堆積物が硬化して剥離コーティングを与えるかどうかを決定した。各組成物の残りの体積を、ゲル化時間測定のために室温で維持した。剥離コーティングを上述のように評価し、結果を以下の表5に示す。
【0157】
【0158】
実施例1:剥離力に対する温度の影響
上記の手順に基づいて、実施例1の組成物を用いて3つの追加の剥離コーティングを形成した。特に、得られる剥離力及び経時剥離力に対する温度の影響を決定するために、これらの追加の剥離コーティングを異なる温度で硬化させることによって形成した。実施例1の組成物を用いて形成された追加の剥離コーティングにおける唯一の違いは、特定の剥離コーティングを形成するために利用された所定の温度であった。結果を以下の表6に記載する。
【0159】
【0160】
実施例4~8及び比較例5:組成物
剥離コーティングを調製するための追加の組成物実施例4~8及び比較例5で調製した。実施例4~8及び比較例5では、組成物は、二部分型組成物であった:(1)(A)部は、イソシアネート1を、溶媒1(利用する場合)と共に含む。(2)(B)部は、残りの成分を含む。表7は、実施例4~8及び比較例5の各組成物中の成分の相対量を示す。表7の値はグラムである(単位のないモル比であるNCO/OH指数を除く)。C.E.は比較例を示す。
【0161】
【0162】
実施例4~8及び比較例5;剥離コーティング
実施例4~8及び比較例5の組成物を用いて剥離コーティングを形成した。各実施例において、各組成物のB部を容器に入れ、続いてA部を入れて混合物を得た。各混合物を、機械的撹拌器を使用して、1000rpmで1分間、十分にブレンドした。混合後、各混合物を、室温でコーターを用いて約1μmの制御された厚さで基材上にコーティングして、基材上に湿潤堆積物を得た。次いで、基材上の湿潤堆積物を、所定の温度(90℃)に設定したオーブンに入れて、湿潤堆積物が1分間で硬化して剥離コーティングを与えるかどうかを決定した。各組成物の残りの体積を、ゲル化時間測定のために室温で維持した。結果を以下の表8に記載する。
【0163】
【0164】
実施例9~12:組成物
剥離コーティングを調製するための組成物を、硬化速度を決定する目的で調製した。以下の表9は、実施例9~12の各組成物中の成分の相対量を示す。表9の値は、固形分を除いてグラムである。
【0165】
【0166】
次いで、実施例9~12の組成物を硬化特性について分析した。特に、各組成物を90℃で1分間及び90℃で2分間加熱して、6番のマイヤーバーを介して基材上に各組成物を適用した後に各特定の組成物が硬化して0.8~1.5g/m2の範囲内のコート重量を有する未硬化フィルムを与えるかどうかを決定した。加えて、各組成物について、室温における4時間後及び24時間後の流動性を測定した。結果を以下の表10に示す。表10では、「D」は、反応生成物の完全乾燥を示し、Tは、反応生成物が粘着性である(即ち、完全に乾燥していない)ことを示す。D及びTによって表される乾燥は、触ることによって測定される。流動性は目視検査によって測定される。
【0167】
【0168】
全ての量、比及び百分率は、特に指示しない限り、重量に基づく。組成物中の全ての出発物質の量は、総計100重量%である。「発明の概要」及び「要約書」は、参照により本明細書に組み込まれる。冠詞「a」、「an」、及び「the」は各々、明細書の文脈によって特に指示されない限り、1つ以上を指す。単数形は、別途記載のない限り、複数形を含む。範囲の開示は、その範囲自体及び範囲内に包含される任意のもの、並びに端点を含む。例えば、2.0~4.0の範囲の開示は、2.0~4.0の範囲だけでなく、2.1、2.3、3.4、3.5、及び4.0も個別に含み、並びに範囲内に包含される任意の他の数も含む。さらに、例えば、2.0~4.0の範囲の開示は、例えば、2.1~3.5、2.3~3.4、2.6~3.7、及び3.8~4.0の部分集合、並びにその範囲内に包含される任意の他の部分集合も含む。同様に、マーカッシュ群の開示は、その群全体を含み、そこに包含される任意の個別の要素及び下位群も含む。例えば、マーカッシュ群「水素原子、アルキル基、アルケニル基又はアリール基」の開示には、その要素である個々のアルキル、下位群であるアルキル及びアリールを含み、かつマーカッシュ群に包含される任意の他の個々の要素及び下位群を含んでいる。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離コーティングを形成するための組成物であって、前記組成物が、
(A)1分子当たり平均して少なくとも2個のカルビノール官能基を有するオルガノポリシロキサンであって、前記オルガノポリシロキサン(A)が、前記組成物の総重量に基づいて50~99重量%の量で前記組成物中に存在する、オルガノポリシロキサンと、
(B)ポリイソシアネートと、を含み、
前記組成物を用いて形成された前記剥離コーティングが、発泡体ではない、組成物。
【請求項2】
(i)前記組成物が、(C)触媒をさらに含み、(ii)前記組成物が、物理発泡剤を含まず、(iii)前記組成物が、化学発泡剤を含まないか、又は(iv)(i)~(iii)の任意の組み合わせである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記オルガノポリシロキサン(A)が、(i)少なくとも1個のSiO
4/2単位を含み、(ii)平均して3個以上のカルビノール官能基を含み、(iii)少なくとも1個のペンダントカルビノール官能基を含み、(iv)少なくとも1個の末端カルビノール官能基を含むか、又は(v)(i)~(iv)の任意の組み合わせである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
(i)前記カルビノール官能基が、互いに同じであり、(ii)前記カルビノール官能基が、独立して、一般式-D-O
a-(C
bH
2bO)
c-H(式中、Dは、共有結合又は2~18個の炭素原子を有する二価炭化水素連結基であり、下付き文字aは、0又は1であり、下付き文字bは、下付き文字cによって示される各部分において独立して2~4から選択され、下付き文字cは、0~500であるが、但し、下付き文字a及びcが同時に0ではないことを条件とする)を有するか、又は(iii)(i)及び(ii)の両方である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
(i)前記カルビノール官能基が、一般式
-D-O
a-[C
2H
4O]
d[C
3H
6O]
e[C
4H
8O]
f-H
(式中、Dは、共有結合又は2~18個の炭素原子を有する二価炭化水素連結基であり、下付き文字aは、0又は1であり、0≦d≦500、0≦e≦500、及び0≦f≦500であるが、但し、1≦d+e+f≦500であることを条件とする)を有するか、(ii)前記カルビノール官能基が、ペンダントであるか、又は(iii)(i)及び(ii)の両方である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項6】
前記オルガノポリシロキサン(A)が、以下の平均式を有し、
[Z
1]
v[R
1
3SiO
1/2]
w[R
1
2XSiO
1/2]
x[R
1
2SiO
2/2]
y[R
1XSiO
2/2]
z[SiO
4/2]
1.0
式中、0≦v≦12、0≦w≦8、0≦x≦8、40≦y≦1,000、0≦z≦8、但し、2≦(x+z)≦8であることを条件とし、各R
1が、独立して選択される置換又は非置換ヒドロカルビル基であり、各Xは、独立して選択されたカルビノール官能基であり、Z
1が、独立して(O
1/2SiR
1
2-D
1-R
1SiO
2/2)又は(O
1/2SiR
1
2-D
1-R
1
2SiO
1/2)であり、ここで、各R
1が、独立して選択され、上で定義され、各D
1が、独立して選択される二価の連結基である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項7】
前記オルガノポリシロキサン(A)が、以下の平均式SiY
4を有し、式中、各Yが、独立して、以下の式を有し、
【化1】
式中、各R
1が、独立して選択された置換又は非置換ヒドロカルビル基であり、各Xが、独立して選択されるカルビノール官能基であり、各D
1が、独立して選択される二価の連結基であり、各下付き文字m’が、独立して、10~250である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の組成物から形成された剥離コーティング。
【請求項9】
コーティング基材を形成する方法であって、前記方法が、
組成物を前記基材上に適用することと、
前記組成物を硬化させて、前記基材上に剥離コーティングを提供し、それにより、前記コーティング基材を形成することと、を含み、
前記組成物が、請求項1又は2に記載の組成物である、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法に従って形成された基材上に配置された剥離コーティングを含む、コーティング基材。
【国際調査報告】