(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】p53におけるC135Y、R175H又はM237I変異を認識するT細胞受容体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20240416BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240416BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20240416BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240416BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240416BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240416BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240416BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20240416BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240416BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240416BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240416BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20240416BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240416BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240416BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240416BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240416BHJP
A61K 31/7088 20060101ALN20240416BHJP
【FI】
C12N15/12
C12N15/63 Z ZNA
C12N15/86 Z
C12N5/10
C12N1/21
C12N1/19
C12N1/15
C07K14/725
C12Q1/02
A61P35/00
A61P17/00
A61K38/17
A61K48/00
A61K35/76
A61K35/17
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K31/7088
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568469
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(85)【翻訳文提出日】2023-12-29
(86)【国際出願番号】 US2022028066
(87)【国際公開番号】W WO2022236050
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510002280
【氏名又は名称】アメリカ合衆国
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】キム、サンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ザカラキス、ニコラオス
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンバーグ、スティーヴン エー.
(72)【発明者】
【氏名】ロウリー、ザ サード、フランク ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】パークハースト、マリア アール.
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QR80
4B063QS28
4B063QX01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AA94X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA01
4C084CA18
4C084DC50
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA13
4C084ZA89
4C084ZB26
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB31
4C085BB41
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4C085BB43
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4C085EE01
4C085GG02
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA13
4C086ZA89
4C086ZB26
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB64
4C087BB65
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA66
4C087NA05
4C087NA13
4C087ZA89
4C087ZB26
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA50
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
ヒトp53
C135Y、ヒトp53
R175H、又はヒトp53
M237Iに対して抗原特異性を有する単離又は精製されたT細胞受容体(TCR)が開示される。関連するポリペプチド及びタンパク質、並びに関連する核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、及び医薬組成物も提供される。哺乳動物におけるがんの存在を検出する方法、及び哺乳動物におけるがんを治療又は予防する方法も開示される。
【選択図】
図1C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトp53
C135Y、ヒトp53
R175H、又はヒトp53
M237Iのアミノ酸配列に対して抗原特異性を有する単離又は精製されたT細胞受容体(TCR)であって、前記TCRが、
(1)配列番号2~4の全て;
(2)配列番号5~7の全て;
(3)配列番号2~7の全て;
(4)配列番号17~19の全て;
(5)配列番号20~22の全て;
(6)配列番号17~22の全て;
(7)配列番号32~34の全て;
(8)配列番号35~37の全て;
(9)配列番号32~37の全て;
(10)配列番号47~49の全て;
(11)配列番号50~52の全て;
(12)配列番号47~52の全て;
(13)配列番号62~64の全て;
(14)配列番号65~67の全て;又は
(15)配列番号62~67の全て
のアミノ酸配列を含むTCR。
【請求項2】
(1)配列番号8;
(2)配列番号9;
(3)配列番号8及び9の両方;
(4)配列番号10;
(5)配列番号11;
(6)配列番号10及び11の両方;
(7)配列番号23;
(8)配列番号24;
(9)配列番号23及び24の両方;
(10)配列番号25;
(11)配列番号26;
(12)配列番号25及び26の両方;
(13)配列番号38;
(14)配列番号39;
(15)配列番号38及び39の両方;
(16)配列番号40;
(17)配列番号41;
(18)配列番号40及び41の両方;
(19)配列番号53;
(20)配列番号54;
(21)配列番号53及び54の両方;
(22)配列番号55;
(23)配列番号56;
(24)配列番号55及び56の両方;
(25)配列番号68;
(26)配列番号69;
(27)配列番号68及び69の両方;
(28)配列番号70;
(29)配列番号71;又は
(30)配列番号70及び71の両方
のアミノ酸配列を含む、請求項1のTCR。
【請求項3】
(1)配列番号12;
(2)配列番号13;
(3)配列番号12及び13の両方;
(4)配列番号14;
(5)配列番号15;
(6)配列番号14及び15の両方;
(7)配列番号27;
(8)配列番号28;
(9)配列番号27及び28の両方;
(10)配列番号29;
(11)配列番号30;
(12)配列番号29及び30の両方;
(13)配列番号42;
(14)配列番号43;
(15)配列番号42及び43の両方;
(16)配列番号44;
(17)配列番号45;
(18)配列番号44及び45の両方;
(19)配列番号57;
(20)配列番号58;
(21)配列番号57及び58の両方;
(22)配列番号59;
(23)配列番号60;
(24)配列番号59及び60の両方;
(25)配列番号72;
(26)配列番号73;
(27)配列番号72及び73の両方;
(28)配列番号74;
(29)配列番号75;又は
(30)配列番号74及び75の両方
のアミノ酸配列を含む、請求項1又は2のTCR。
【請求項4】
前記ヒトp53
C135Yアミノ酸配列が、TCTYSPALNKMF
YQLAKTCPVQLWV(配列番号90)である、請求項1~3のいずれか1項のTCR。
【請求項5】
TCTYSPALNKMF
CQLAKTCPVQLWV(配列番号89)の野生型ヒトp53アミノ酸配列に対して抗原特異性を有しない、請求項1~4のいずれか1項のTCR。
【請求項6】
前記ヒトp53
R175Hアミノ酸配列が、HMTEVVR
HC(配列番号92)である、請求項1~3のいずれか1項のTCR。
【請求項7】
HMTEVVR
RC(配列番号91)の野生型ヒトp53アミノ酸配列に対して抗原特異性を有しない、請求項1~3及び6のいずれか1項のTCR。
【請求項8】
前記ヒトp53
M237Iアミノ酸配列が、VGSDCTTIHYNY
ICNSSCMGGMNRR(配列番号94)である、請求項1~3のいずれか1項のTCR。
【請求項9】
VGSDCTTIHYNY
MCNSSCMGGMNRR(配列番号93)の野生型ヒトp53アミノ酸配列に対して抗原特異性を有しない、請求項1~3及び8のいずれか1項のTCR。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項のTCRの機能的部分を含む、単離又は精製されたポリペプチドであって、
(1)配列番号2~4の全て;
(2)配列番号5~7の全て;
(3)配列番号2~7の全て;
(4)配列番号17~19の全て;
(5)配列番号20~22の全て;
(6)配列番号17~22の全て;
(7)配列番号32~34の全て;
(8)配列番号35~37の全て;
(9)配列番号32~37の全て;
(10)配列番号47~49の全て;
(11)配列番号50~52の全て;
(12)配列番号47~52の全て;
(13)配列番号62~64の全て;
(14)配列番号65~67の全て;又は
(15)配列番号62~67の全て
のアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【請求項11】
(1)配列番号8;
(2)配列番号9;
(3)配列番号8及び9の両方;
(4)配列番号10;
(5)配列番号11;
(6)配列番号10及び11の両方;
(7)配列番号23;
(8)配列番号24;
(9)配列番号23及び24の両方;
(10)配列番号25;
(11)配列番号26;
(12)配列番号25及び26の両方;
(13)配列番号38;
(14)配列番号39;
(15)配列番号38及び39の両方;
(16)配列番号40;
(17)配列番号41;
(18)配列番号40及び41の両方;
(19)配列番号53;
(20)配列番号54;
(21)配列番号53及び54の両方;
(22)配列番号55;
(23)配列番号56;
(24)配列番号55及び56の両方;
(25)配列番号68;
(26)配列番号69;
(27)配列番号68及び69の両方;
(28)配列番号70;
(29)配列番号71;又は
(30)配列番号70及び71の両方。
のアミノ酸配列を含む、請求項10のポリペプチド。
【請求項12】
(1)配列番号12;
(2)配列番号13;
(3)配列番号12及び13の両方;
(4)配列番号14;
(5)配列番号15;
(6)配列番号14及び15の両方;
(7)配列番号27;
(8)配列番号28;
(9)配列番号27及び28の両方;
(10)配列番号29;
(11)配列番号30;
(12)配列番号29及び30の両方;
(13)配列番号42;
(14)配列番号43;
(15)配列番号42及び43の両方;
(16)配列番号44;
(17)配列番号45;
(18)配列番号44及び45の両方;
(19)配列番号57;
(20)配列番号58;
(21)配列番号57及び58の両方;
(22)配列番号59;
(23)配列番号60;
(24)配列番号59及び60の両方;
(25)配列番号72;
(26)配列番号73;
(27)配列番号72及び73の両方;
(28)配列番号74;
(29)配列番号75;又は
(30)配列番号74及び75の両方。
のアミノ酸配列を含む、請求項10又は11のポリペプチド。
【請求項13】
(1)第1のポリペプチド鎖が、配列番号2~4の全てのアミノ酸配列を含む、
(2)第2のポリペプチド鎖が、配列番号5~7の全てのアミノ酸配列を含む、
(3)第1のポリペプチド鎖が、配列番号2~4の全てのアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖が、配列番号5~7の全てのアミノ酸配列を含む、
(4)第1のポリペプチド鎖が、配列番号17~19の全てのアミノ酸配列を含む、
(5)第2のポリペプチド鎖が、配列番号20~22の全てのアミノ酸配列を含む、
(6)第1のポリペプチド鎖が、配列番号17~19の全てのアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖が、配列番号20~22の全てのアミノ酸配列を含む、
(7)第1のポリペプチド鎖が、配列番号32~34の全てのアミノ酸配列を含む、
(8)第2のポリペプチド鎖が、配列番号35~37の全てのアミノ酸配列を含む、
(9)第1のポリペプチド鎖が、配列番号32~34の全てのアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖が、配列番号35~37の全てのアミノ酸配列を含む、
(10)第1のポリペプチド鎖が、配列番号47~49の全てのアミノ酸配列を含む、
(11)第2のポリペプチド鎖が、配列番号50~52の全てのアミノ酸配列を含む、
(12)第1のポリペプチド鎖が、配列番号47~49の全てのアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖が、配列番号50~52の全てのアミノ酸配列を含む、
(13)第1のポリペプチド鎖が、配列番号62~64の全てのアミノ酸配列を含む、
(14)第2のポリペプチド鎖が、配列番号65~67の全てのアミノ酸配列を含む、又は
(15)第1のポリペプチド鎖が、配列番号62~64の全てのアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖が、配列番号65~67の全てのアミノ酸配列を含む、
第1及び第2のポリペプチド鎖を含む、単離又は精製されたタンパク質。
【請求項14】
(1)第1のポリペプチド鎖が、配列番号8のアミノ酸配列を含む、
(2)第2のポリペプチド鎖が、配列番号9のアミノ酸配列を含む、
(3)第1のポリペプチド鎖が、配列番号8のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖が、配列番号9のアミノ酸配列を含む、
(4)第1のポリペプチド鎖が、配列番号10のアミノ酸配列を含む、
(5)第2のポリペプチド鎖が、配列番号11のアミノ酸配列を含む、
(6)第1のポリペプチド鎖が、配列番号10のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖が、配列番号11のアミノ酸配列を含む、
(7)第1のポリペプチド鎖が、配列番号23のアミノ酸配列を含む、
(8)第2のポリペプチド鎖が、配列番号24のアミノ酸配列を含む、
(9)第1のポリペプチド鎖が、配列番号23のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖が、配列番号24のアミノ酸配列を含む、
(10)第1のポリペプチド鎖が、配列番号25のアミノ酸配列を含む、
(11)第2のポリペプチド鎖が、配列番号26のアミノ酸配列を含む、
(12)第1のポリペプチド鎖が、配列番号25のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖が、配列番号26のアミノ酸配列を含む、
(13)第1のポリペプチド鎖が、配列番号38のアミノ酸配列を含む、
(14)第2のポリペプチド鎖が、配列番号39のアミノ酸配列を含む、
(15)第1のポリペプチド鎖が、配列番号38のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖が、配列番号39のアミノ酸配列を含む、
(16)第1のポリペプチド鎖が、配列番号40のアミノ酸配列を含む、
(17)第2のポリペプチド鎖が、配列番号41のアミノ酸配列を含む、
(18)第1のポリペプチド鎖が、配列番号40のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖が、配列番号41のアミノ酸配列を含む、
(19)第1のポリペプチド鎖が、配列番号53のアミノ酸配列を含む、
(20)第2のポリペプチド鎖が、配列番号54のアミノ酸配列を含む、
(21)第1のポリペプチド鎖が、配列番号53のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖が、配列番号54のアミノ酸配列を含む、
(22)第1のポリペプチド鎖が、配列番号55のアミノ酸配列を含む、
(23)第2のポリペプチド鎖が、配列番号56のアミノ酸配列を含む、
(24)第1のポリペプチド鎖が、配列番号55のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖が、配列番号56のアミノ酸配列を含む、
(25)第1のポリペプチド鎖が、配列番号68のアミノ酸配列を含む、
(26)第2のポリペプチド鎖が、配列番号69のアミノ酸配列を含む、
(27)第1のポリペプチド鎖が、配列番号68のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖が、配列番号69のアミノ酸配列を含む、
(28)第1のポリペプチド鎖が、配列番号70のアミノ酸配列を含む、
(29)第2のポリペプチド鎖が、配列番号71のアミノ酸配列を含む、又は
(30)第1のポリペプチド鎖が、配列番号70のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖が、配列番号71のアミノ酸配列を含む、
請求項13のタンパク質。
【請求項15】
(1)第1のポリペプチド鎖が、配列番号12のアミノ酸配列を含む、
(2)第2のポリペプチド鎖が、配列番号13のアミノ酸配列を含む、
(3)第1のポリペプチド鎖が、配列番号12のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖が、配列番号13のアミノ酸配列を含む、
(4)第1のポリペプチド鎖が、配列番号14のアミノ酸配列を含む、
(5)第2のポリペプチド鎖が、配列番号15のアミノ酸配列を含む、
(6)第1のポリペプチド鎖が、配列番号14のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖が、配列番号15のアミノ酸配列を含む、
(7)第1のポリペプチド鎖が、配列番号27のアミノ酸配列を含む、
(8)第2のポリペプチド鎖が、配列番号28のアミノ酸配列を含む、
(9)第1のポリペプチド鎖が、配列番号27のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖が、配列番号28のアミノ酸配列を含む、
(10)第1のポリペプチド鎖が、配列番号29のアミノ酸配列を含む、
(11)第2のポリペプチド鎖が、配列番号30のアミノ酸配列を含む、
(12)第1のポリペプチド鎖が、配列番号29のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖が、配列番号30のアミノ酸配列を含む、
(13)第1のポリペプチド鎖が、配列番号42のアミノ酸配列を含む、
(14)第2のポリペプチド鎖が、配列番号43のアミノ酸配列を含む、
(15)第1のポリペプチド鎖が、配列番号42のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖が、配列番号43のアミノ酸配列を含む、
(16)第1のポリペプチド鎖が、配列番号44のアミノ酸配列を含む、
(17)第2のポリペプチド鎖が、配列番号45のアミノ酸配列を含む、
(18)第1のポリペプチド鎖が、配列番号44のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖が、配列番号45のアミノ酸配列を含む、
(19)第1のポリペプチド鎖が、配列番号57のアミノ酸配列を含む、
(20)第2のポリペプチド鎖が、配列番号58のアミノ酸配列を含む、
(21)第1のポリペプチド鎖が、配列番号57のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖が、配列番号58のアミノ酸配列を含む、
(22)第1のポリペプチド鎖が、配列番号59のアミノ酸配列を含む、
(23)第2のポリペプチド鎖が、配列番号60のアミノ酸配列を含む、
(24)第1のポリペプチド鎖が、配列番号59のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖が、配列番号60のアミノ酸配列を含む、
(25)第1のポリペプチド鎖が、配列番号72のアミノ酸配列を含む、
(26)第2のポリペプチド鎖が、配列番号73のアミノ酸配列を含む、
(27)第1のポリペプチド鎖が、配列番号72のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖が、配列番号73のアミノ酸配列を含む、
(28)第1のポリペプチド鎖が、配列番号74のアミノ酸配列を含む、
(29)第2のポリペプチド鎖が、配列番号75のアミノ酸配列を含む、又は
(30)第1のポリペプチド鎖が、配列番号74のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖が、配列番号75のアミノ酸配列を含む、
請求項13又は14のタンパク質。
【請求項16】
請求項1~9のいずれか1項のTCR、請求項10~12のいずれか1項のポリペプチド、又は請求項13~15のいずれか1項のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む、単離又は精製された核酸。
【請求項17】
5’から3’に向かって第1の核酸配列及び第2の核酸配列を含む単離又は精製された核酸であって、前記第1及び第2の核酸配列が、それぞれ、配列番号8及び9;9及び8;10及び11;11及び10;12及び13;13及び12;14及び15;15及び14;23及び24;24及び23;25及び26;26及び25;27及び28;28及び27;29及び30;30及び29;38及び39;39及び38;40及び41;41及び40;42及び43;43及び42;44及び45;45及び44;53及び54;54及び53;55及び56;56及び55;57及び58;58及び57;59及び60;60及び59;68及び69;69及び68;70及び71;71及び70;72及び73;73及び72;74及び75;又は75及び74のアミノ酸配列をコードする核酸。
【請求項18】
第1のヌクレオチド配列と第2のヌクレオチド配列との間に挿入された第3のヌクレオチド酸配列を更に含み、前記第3のヌクレオチド配列が切断可能なリンカーペプチドをコードする、請求項17の単離又は精製された核酸。
【請求項19】
切断可能なリンカーペプチドが、アミノ酸配列RAKRSGSGATNFSLLKQAGDVEENPGP(配列番号80)を含む、請求項18の単離又は精製された核酸。
【請求項20】
配列番号16、31、46、61、及び76からなる群から選択されるアミノ酸配列をコードする、請求項19の単離又は精製された核酸。
【請求項21】
請求項16~20のいずれか1項の核酸を含む、組み換え発現ベクター。
【請求項22】
トランスポゾンベクター又はレンチウイルスベクターである、請求項21の組換え発現ベクター。
【請求項23】
請求項16~20のいずれか1項の核酸又は請求項21若しくは22のベクターによってコードされる、単離又は精製されたTCR、ポリペプチド、又はタンパク質。
【請求項24】
細胞における請求項16~20のいずれか1項の核酸又は請求項21若しくは22のベクターの発現から生じる、単離又は精製されたTCR、ポリペプチド、又はタンパク質。
【請求項25】
ヒトp53
C135Y、ヒトp53
R175H、又はヒトp53
M237Iのアミノ酸配列に対して抗原特異性を有するTCRを発現する宿主細胞を生成する方法であって、請求項21又は22のベクターの細胞への導入を可能にする条件下で、インビトロにおいて前記細胞を前記ベクターと接触させることを含む方法。
【請求項26】
請求項16~20のいずれか1項の核酸、又は請求項21若しくは22の組み換え発現ベクターを含む、単離又は精製された宿主細胞。
【請求項27】
細胞がヒトリンパ球である、請求項26の宿主細胞。
【請求項28】
細胞が、T細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、不変ナチュラルキラーT(iNKT)細胞、及びナチュラルキラー(NK)細胞からなる群から選択される、請求項26の宿主細胞。
【請求項29】
請求項26~28のいずれか1項の宿主細胞を含む、単離又は精製された細胞集団。
【請求項30】
請求項1~9、23、若しくは24のいずれか1項のTCR、請求項10~12、23、若しくは24のいずれか1項のポリペプチド、又は請求項13~15、23、若しくは24のいずれか1項のタンパク質を製造する方法であって、TCR、ポリペプチド、又はタンパク質が製造されるように、請求項26~28のいずれか1項の宿主細胞、又は請求項29の、宿主の細胞集団を培養することを含む、方法。
【請求項31】
(a)請求項1~9、23、若しくは24のいずれか1項のTCR、請求項10~12、23、若しくは24のいずれか1項のポリペプチド、請求項13~15、23、若しくは24のいずれか1項のタンパク質、請求項16~20のいずれか1項の核酸、請求項21又は22の組み換え発現ベクター、請求項26~28のいずれか1項の宿主細胞、又は請求項29の宿主細胞集団と、(b)薬学的に許容し得る担体とを含む、医薬組成物。
【請求項32】
哺乳動物におけるがんの存在を検出する方法であって:
(a)がんの細胞を含む試料と、請求項1~9、23、若しくは24のいずれか1項のTCR、請求項10~12、23若しくは24のいずれか1項のポリペプチド、請求項13~15、23若しくは24のいずれか1項のタンパク質、請求項16~20のいずれか1項の核酸、請求項21又は22の組み換え発現ベクター、請求項26~28のいずれか1項の宿主細胞、請求項29の宿主細胞集団、又は請求項31の医薬組成物とを接触させ、それによって、複合体を形成させること;及び
(b)前記複合体を検出すること、
を含み、
複合体の検出が、哺乳動物におけるがんの存在を示す、方法。
【請求項33】
哺乳動物におけるがんに対する免疫応答の誘導における使用のための、請求項1~9、23、若しくは24のいずれか1項のTCR、請求項10~12、23、若しくは24のいずれか1項のポリペプチド、請求項13~15、23、若しくは24のいずれか1項のタンパク質、請求項16~20のいずれか1項の核酸、請求項21若しくは22の組み換え発現ベクター、請求項26~28のいずれか1項の宿主細胞、請求項29の宿主細胞の集団、又は請求項31の医薬組成物。
【請求項34】
哺乳動物におけるがんの治療又は予防における使用のための、請求項1~9、23、若しくは24のいずれか1項のTCR、請求項10~12、23、若しくは24のいずれか1項のポリペプチド、請求項13~15、23、若しくは24のいずれか1項のタンパク質、請求項16~20のいずれか1項の核酸、請求項21若しくは22の組み換え発現ベクター、請求項26~28のいずれか1項の宿主細胞、請求項29の宿主細胞の集団、又は請求項31の医薬組成物。
【請求項35】
前記哺乳動物に対して自己である、請求項33又は34に記載の使用のための細胞の集団。
【請求項36】
前記哺乳動物に対して同種である、請求項33又は34に記載の使用のための細胞の集団。
【請求項37】
がんが上皮がんである、請求項32の方法、又は請求項33~36のいずれか1項に記載の使用のための、TCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、若しくは医薬組成物。
【請求項38】
がんが胆管がん、黒色腫、結腸がん、直腸がん、卵巣がん、子宮内膜がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、神経膠芽細胞腫、子宮頸がん、頭頸部がん、乳がん、膵臓がん、又は膀胱がんである、請求項32の方法、又は請求項33~36のいずれか1項に記載の使用のための、TCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、若しくは医薬組成物。
【請求項39】
前記がんが、ヒトp53においてC135Y、R175H、又はM237Iの変異を含むことが知られている、請求項32に記載の方法、又は請求項33~38のいずれか1項に記載の使用のためのTCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組み換え発現ベクター、宿主細胞、細胞の集団、若しくは医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2021年5月7日に出願された米国仮特許出願番号第63/185,805号(参照によりその全体が本明細書に組込まれる)の利益を主張する。
【0002】
連邦政府支援の研究又は開発に関する陳述
本発明は、連邦政府の支援を受け、プロジェクト番号BC010985の下、米国国立衛生研究所、米国国立がん研究所によりなされた。本発明において、連邦政府は一定の権利を有する。
【0003】
電子的に提出された物件の参照による組込み
本明細書と同時に提出され、以下の通り識別される、コンピューターで読み取り可能なヌクレオチド/アミノ酸の配列表は、参照により、その全体が本明細書に組込まれる:2022年4月21日付けの「759875_ST25.txt」という名前の133,457バイトのASCII(テキスト)ファイル1件。
【背景技術】
【0004】
幾つかのがんは、特に該がんが転移性且つ切除不能になったとき、非常に限られた治療法の選択肢しか有しない場合がある。例えば、外科手術、化学療法、及び放射線療法等の治療法の進歩にもかかわらず、多くのがん、例えば、膵臓、結腸直腸、肺、子宮内膜、卵巣、及び前立腺のがんの予後は不良である場合がある。従って、がんの更なる治療法に対するアンメットニーズが存在する。
【発明の概要】
【0005】
発明の簡単な要旨
本発明の一態様は、ヒトp53C135Y、ヒトp53R175H、又はヒトp53M237Iのアミノ酸配列に対して抗原特異性を有する単離は精製されたT細胞受容体(TCR)であって:(1)配列番号2~4の全て;(2)配列番号5~7の全て;(3)配列番号2~7の全て;(4)配列番号17~19の全て;(5)配列番号20~22の全て;(6)配列番号17~22の全て;(7)配列番号32~34の全て;(8)配列番号35~37の全て;(9)配列番号32~37の全て;(10)配列番号47~49の全て;(11)配列番号50~52の全て;(12)配列番号47~52の全て;(13)配列番号62~64の全て;(14)配列番号65~67の全て;又は(15)配列番号62~67の全てのアミノ酸配列を含む、TCRを提供する。
【0006】
本発明の更なる態様は、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、及び本発明のTCRに関連する医薬組成物を提供する。
【0007】
本発明のなお更なる態様は、哺乳動物におけるがんの存在を検出する方法、哺乳動物におけるがんに対する免疫応答を誘導する方法、及び哺乳動物におけるがんを治療又は予防する方法を提供する。
【0008】
本発明の追加の態様は、TCRを発現する宿主細胞を生成する方法、及びTCR、ポリペプチド、又はタンパク質を生成する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図面の幾つかの観点の簡単な説明
【0010】
【
図1A】
図1Aは、標的細胞を有する腫瘍断片番号F1~F24からの患者4316のTILを共培養した後に測定したIFN-γスポットの数(2e4細胞あたり)を示すグラフである。標的細胞は、(i)p53 C135Yを含むペプチドプール(PP)をパルスした;(ii)p53 C135Yをコードしているタンデムミニ遺伝子(TMG)RNA若しくは関係性のないTMGでトランスフェクションした;又は(iii)DMSO(コントロール)で処理した自己樹状細胞(DC)であった。PMS/イオノマイシンで処理したTILをポジティブコントロールとした。変異体p53反応性を有する断片22を枠で囲む。
【
図1B】
図1Bは、フローサイトメトリーによって測定したときの、患者4316からのTILを、DMSO(ビヒクル)、関係性のないペプチドKIAA1328 K386R、又は指定の変異体p53-C135Yペプチドをパルスした自己DCと共培養した後の4-1BB及びCD4を発現しているTILのパーセンテージを示す。PMA/イオノマイシンで処理したTILをポジティブコントロールとした。
【
図1C】
図1Cは、4316-D TCRで形質導入したPBLを、連続希釈した25merペプチドp53-C135Y又はWT p53-C135をパルスした自己未成熟DCと共培養した後の、4-1BBを発現しているマウスTCR定常領域発現T細胞(mTCR
+)のパーセンテージを示すグラフである。
【
図2】
図2は、フローサイトメトリーによって測定したときの、p53 R175Hに対する体外感作(IVS)後(右列)又はIVSなし(左列)の、患者4141からのTILを標的細胞と共培養した後のOXO40及び4-1BBを発現しているT細胞のパーセンテージを示す。標的細胞は、DMSO、変異体p53 R175Hペプチド、又は対応するWT p53 R175ペプチドをパルスした自己DCであった。T細胞活性化マーカー4-1BB及びOX40を上方制御した活性化T細胞を太字で示す。ME、最小エピトープ。
【
図3A】
図3Aは、腫瘍断片番号F1~F24からの患者4304のTILを標的細胞と共培養した後に測定したIFN-γスポットの数(2e4細胞あたり)を示すグラフである。標的細胞は、(i)p53 M237Iを含むPPをパルスした;(ii)p53 M237IをコードしているTMG RNA若しくは関係性のないTMGでトランスフェクションした;又は(iii)DMSO(コントロール)で処理した自己DCであった。PMS/イオノマイシンで処理したTILをポジティブコントロールとした。
【
図3B】
図3Bは、フローサイトメトリーによって測定したときの、患者4304の腫瘍消化物から選別されたCD39及びCD103を発現しているCD4
+T細胞のパーセンテージを示す。
【
図3C】
図3Cは、標的細胞をエフェクター細胞と共培養した後に測定したIFN-γスポットの数(2e4細胞あたり)を示すグラフである。エフェクター細胞は、患者4304の腫瘍から選別されたCD4
+CD103
+CD39
+(四角)、CD4
+CD103
-CD39
+(三角)、又はCD4
+CD103
-CD39
-(円)細胞であった。標的細胞は、(i)p53 M237Iを含むPPをパルスした;(ii)p53 M237IをコードしているTMG RNA若しくはコントロールTMGでトランスフェクションした;又は(iii)DMSO(コントロール)で処理した自己DCであった。単独で(TILのみ)培養したTILをコントロールとした。
【
図3D-3F】
図3D~3Fは、エフェクター細胞を、連続希釈した25merペプチドp53-M237I又はWT p53-M237をパルスした自己未成熟DCと共培養した後の、4-1BBを発現しているマウスTCR定常領域発現CD3
+CD4
+T細胞(mTCR
+)のパーセンテージを示すグラフである。エフェクター細胞は、4304 TCR-2(
図3D)、4304 TCR-4(
図3E)、又は4304 TCR-K(
図3F)をコードしている組み換え発現ベクターで独立して形質導入したPBLであった。
【
図4A-4B】
図4A~4Bは、4141 IVS TCR形質導入細胞を腫瘍細胞株SK-MEL-5(4A)、SAOS2(4A)、SAOS2 R175H(4A)、CEM/C1(4B)、TYK-nu(4B)、又はKLE(4B)と共培養した後の、4-1BB及びOX40を発現している4141 IVS TCR形質導入細胞のパーセンテージを示す。細胞株は、p53 R175H及びHLA-A
*02:01の発現について陽性(+)又は陰性(-)であることが示されている。
【
図5A-5B】
図5A-5Bは、9のp53スプライスバリアントのアミノ酸配列のアラインメントを示す。SP|P04637|P53_HUMAN(配列番号1);SP|P04637-2|P53_HUMAN(配列番号81);SP|P04637-3|P53_HUMAN(配列番号82);SP|P04637-4|P53_HUMAN(配列番号83);SP|P04637-5|P53_HUMAN(配列番号84);SP|P04637-6|P53_HUMAN(配列番号85);SP|P04637-7|P53_HUMAN(配列番号86);SP|P04637-8|P53_HUMAN(配列番号87);及びSP|P04637-9|P53_HUMAN(配列番号88)。アラインメントは
図5Aに示すN末端から始まり、
図5Bに示すC末端まで続く。
【
図6】
図6は、フローサイトメトリーによって測定したときの、4316-D TCR形質導入細胞を標的細胞と共培養した後の4-1BB及びOX40を発現している4316-D TCR形質導入細胞のパーセンテージを示す。標的細胞は、IFN-γの非存在下(上段)又はIFN-γの存在下(下段)においてDMSO(左列)、WT p53(中列)、又は変異体p53ペプチド(右列)をパルスした4316自己患者由来異種移植片(PDX)腫瘍細胞であった。
【
図7A】
図7Aは、前臨床異種移植マウスの作製及び処理プロトコルを示す概略図である。免疫不全雌性NSG(NOD scid gamma)マウスに、p53 R175H変異及びHLA-A
*02:01を天然に発現する200万のTYK-nu卵巣細胞を注射した。2週間後、これらマウスをビヒクル又は1000万のT細胞で処理した。その後、次の30日間にわたり腫瘍の成長を評価した。
【
図7B-7C】
図7B~7Cは、形質導入細胞の養子細胞移入(ACT)後30日間にわたって測定した担がんマウスの平均腫瘍サイズ(mm
2)を示すグラフである。2頭の健常ドナー(健常ドナー1(7B)及び健常ドナー2(7C))からのPBLを、指定のTCRで独立して形質導入した。マウスは3つの処理群:PBSビヒクル(丸)、p53 Y220Cを標的とする関係性のないTCRで形質導入したT細胞(三角)、4141 IVS TCRで形質導入したT細胞(四角)に分けられ、nは5であった。これらを、4141-TCR1a2で形質導入したT細胞(星)で処理したマウスと比較した。得られた結果は、両健常ドナーから得られた細胞と一致していた。
【発明を実施するための形態】
【0011】
腫瘍タンパク質P53(「TP53」又は「p53」とも称される)は、例えば、細胞分裂を制御することによって腫瘍抑制因子として作用する。p53タンパク質は、細胞の核内に位置し、そこでDNAに直接結合する。DNAが損傷を受けると、p53タンパク質は、DNAを修復するか又は損傷を受けた細胞をアポトーシスさせるかの決定に関与する。DNAを修復することができる場合、p53は他の遺伝子を活性化させて損傷を修復する。DNAを修復することができない場合、p53タンパク質は、細胞が分裂するのを阻止し、該細胞にシグナルを伝達してアポトーシスさせる。変異したか又は損傷を受けたDNAを有する細胞の分裂を停止させることによって、p53は腫瘍の発達を阻止するのに役立つ。WT(正常)全長p53は、配列番号1のアミノ酸配列を含む。
【0012】
p53タンパク質における変異によって、p53タンパク質の腫瘍抑制因子機能が低下するか又は失われることがある。或いは又は更に、p53変異は、ドミナントネガティブ方式でWTp53に干渉することによる機能獲得型変異であり得る。変異p53タンパク質は、様々なヒトがん、例えば、胆管がん、黒色腫、結腸がん、直腸がん、卵巣がん、子宮内膜がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、神経膠芽腫、子宮頸がん、頭頸部がん、乳がん、膵臓がん、又は膀胱がんのいずれかで発現し得る。
【0013】
本発明の一態様は、ヒトp53C135Y、ヒトp53R175H、又はヒトp53M237Iのアミノ酸配列に対して抗原特異性を有する単離又は精製されたT細胞受容体(TCR)を提供する。以後、「TCR」に対する言及は、特に規定のない限り、TCRの機能的部分及び機能的バリアントも指す。p53の変異は、本明細書では、全長WTp53(配列番号1)のアミノ酸配列を参照することによって定義される。p53の変異は、本明細書では、特定の位置に存在するアミノ酸残基、続いて、位置番号、続いて、検討中の特定の変異において該残基に置き換わったアミノ酸を参照することによって記載される。p53のアミノ酸配列(例、p53ペプチド)は、全長のWT p53タンパク質の全てのアミノ酸残基よりも少ない場合がある。従って、位置番号は、本明細書においては、p53アミノ酸配列の特定の例における対応する残基の実際の位置は異なる場合があることを理解した上で、WT全長p53タンパク質(即ち、配列番号1)を参照することにより定義される。位置が配列番号1によって定義されるので、用語「C135Y」は、配列番号1の135位に存在するシステインがチロシンによって置換されていることを示し、「R175H」は、配列番号1の175位に存在するアルギニンがヒスチジンで置換されていることを示し、「M237I」は、配列番号1の237位に存在するメチオニンがイソロイシンによって置換されていることを示す。例えば、p53アミノ酸配列の具体例が、例えばTCTYSPALNKMFCQLAKTCPVQLWV(配列番号89)(配列番号1の連続アミノ酸残基123~147に対応する例示的なWT p53ペプチド)である場合、「C135Y」とは、たとえ配列番号89における下線付きアルギニンの実際の位置が13であろうと、配列番号89における下線付きシステインのチロシンによる置換を指す。以下、C135Y変異を有するヒトp53アミノ酸配列を「C135Y」又は「p53C135Y」と称する。以下、R175H変異を有するヒトp53アミノ酸配列を「R175H」又は「p53R175H」と称する。以下、M237I変異を有するヒトp53アミノ酸配列を「M237I」又は「p53M237I」と称する。本明細書で使用するとき、「変異型p53」は、ヒトp53C135Y、ヒトp53R175H、又はヒトp53M237Iを指す。
【0014】
P53には、9の既知のスプライスバリアントがある。本明細書に記載のp53変異は、9のp53スプライスバリアント全てに亘って保存されている。9のp53スプライスバリアントのアラインメントを
図5に示す。従って、本発明のTCRは、9のp53スプライスバリアントのいずれかによってコードされる、本明細書に記載の任意の変異p53アミノ酸配列に対して抗原特異性を有し得る。位置は配列番号1によって定義される通りであるため、p53の特定のスプライスバリアントのアミノ酸配列の実際の位置は、配列番号1の対応する位置に相対的に定義され、及び配列番号1によって定義される位置は、特定のスプライスバリアント中における実際の位置とは異なり得る。従って、例えば、変異は、配列番号1の、393アミノ酸の配列の表示された位置に対応する、p53の特定のスプライスバリアントのアミノ酸配列中におけるアミノ酸残基の置換を指し、スプライスバリアント中における実際の位置は異なり得るとの理解である。
【0015】
本発明の一態様においては、TCRは、配列番号1によって定義される通り、135位に変異を有するヒトp53に対して抗原特異性を有する。135位でのp53変異は、ミスセンス変異であり得る。従って、135位での変異は、135位に存在する天然(WT)アルギニン残基の、アルギニン以外の任意のアミノ酸残基との置換であり得る。本発明の一態様においては、TCRは、ヒトp53C135Yアミノ酸配列に対して抗原特異性を有する。例えば、TCRは、TCTYSPALNKMFYQLAKTCPVQLWV(配列番号90)のヒトp53C135Yアミノ酸配列に対して抗原特異性を有し得る。本発明の一態様においては、TCRは、TCTYSPALNKMFCQLAKTCPVQLWV(配列番号89)の野生型ヒトp53アミノ酸配列に対して抗原特異性を有しない。
【0016】
本発明の一態様においては、TCRは、配列番号1によって定義される通り、175位に変異を有するヒトp53に対して抗原特異性を有する。175位でのp53変異は、ミスセンス変異であり得る。従って、175位での変異は、175位に存在する天然(WT)アルギニン残基の、アルギニン以外の任意のアミノ酸残基との置換であり得る。本発明の一態様においては、TCRは、ヒトp53R175Hアミノ酸配列に対して抗原特異性を有する。例えば、TCRは、HMTEVVRHC(配列番号92)のヒトp53R175Hアミノ酸配列に対して抗原特異性を有し得る。本発明の一態様においては、TCRは、HMTEVVRRC(配列番号91)の野生型ヒトp53アミノ酸配列に対して抗原特異性を有しない。
【0017】
本発明の一態様においては、TCRは、配列番号1によって定義される通り、237位に変異を有するヒトp53に対して抗原特異性を有する。237位でのp53変異は、ミスセンス変異であり得る。従って、237位での変異は、237位に存在する天然(WT)メチオニン残基の、メチオニン以外の任意のアミノ酸残基との置換であり得る。本発明の一態様においては、TCRは、ヒトp53M237Iアミノ酸配列に対する抗原特異性を有する。例えば、TCRは、VGSDCTTIHYNYICNSSCMGGMNRR(配列番号94)のヒトp53M237Iアミノ酸配列に対して抗原特異性を有し得る。本発明の一態様においては、TCRは、VGSDCTTIHYNYMCNSSCMGGMNRR(配列番号93)の野生型ヒトp53アミノ酸配列に対して抗原特異性を有しない。
【0018】
本発明の一態様においては、本発明のTCRは、HLA(ヒト白血球抗原)分子依存的に変異p53を認識することができ得る。「HLA分子依存的に」とは、本明細書で用いるとき、TCRが、該TCRを単離した患者で発現するHLA分子の枠の中で、変異p53に結合したときに免疫応答を惹起することを意味する。本発明のTCRは、適用可能なHLA分子によって提示された変異p53を認識することができ得、変異p53に加えてHLA分子にも結合し得る。
【0019】
本発明の一態様においては、本発明のTCRは、HLAクラスII分子によって提示されるC135Yを認識することができる。これに関して、TCRは、HLAクラスII分子の関係でのC135Yへの結合に際して、免疫応答を誘発し得る。本発明のTCRは、HLAクラスII分子により提示されるC135Yを認識することができ、C135Yに加えてHLAクラスII分子に結合し得る。
【0020】
本発明の一態様においては、本発明のTCRは、HLAクラスII分子によって提示されるM237Iを認識することができる。これに関して、TCRは、HLAクラスII分子の関係でのM237Iへの結合に際して、免疫応答を誘発し得る。本発明のTCRは、HLAクラスII分子により提示されるM237Iを認識することができ、M237Iに加えてHLAクラスII分子に結合し得る。
【0021】
本発明の一態様においては、HLAクラスII分子は、HLA-DRヘテロ二量体である。HLA-DRヘテロ二量体は、α鎖及びβ鎖を含む細胞表面受容体である。HLA-DRα鎖はHLA-DRA遺伝子によりコードされる。HLA-DRβ鎖は、HLA-DRB1遺伝子、HLA-DRB3遺伝子、HLA-DRB4遺伝子、又はHLA-DRB5遺伝子によってコードされる。HLA-DRB1遺伝子によってコードされる分子の例としては、HLA-DR1、HLA-DR2、HLA-DR3、HLA-DR4、HLA-DR5、HLA-DR6、HLA-DR7、HLA-DR8、HLA-DR9、HLA-DR10、HLA-DR11、HLA-DR12、HLA-DR13、HLA-DR14、HLA-DR15、HLA-DR16、及びHLA-DR17が挙げられ得るが、これらに限定されない。HLA-DRB3遺伝子はHLA-DR52をコードする。HLA-DRB4遺伝子はHLA-DR53をコードする。HLA-DRB5遺伝子はHLA-DR51をコードする。
【0022】
一態様においては、HLAクラスII分子のα鎖は、HLA-DRA1*01:01:00対立遺伝子により発現する。一態様においては、HLAクラスII分子のβ鎖は、HLA-DRB1*07:01:00対立遺伝子により発現する。本発明の一態様においては、HLAクラスII分子は、HLA-DRB7:HLA-DRAヘテロ二量体である。好ましい態様においては、HLAクラスII分子は、HLA-DRA1*01:01:00鎖及びHLA-DRB1*07:01:00鎖のヘテロ二量体である。特に好ましい態様においては、変異型p53は、C135Yであり、HLAクラスII分子は、HLA-DRA1*01:01鎖及びHLA-DRB1*07:01鎖のヘテロ二量体である。
【0023】
一態様においては、HLAクラスII分子のα鎖は、HLA-DRA1*01:01:00対立遺伝子により発現する。一態様においては、HLAクラスII分子のβ鎖は、HLA-DRB1*01:01:00対立遺伝子により発現する。本発明の一態様においては、HLAクラスII分子は、HLA-DRB1:HLA-DRAヘテロ二量体である。好ましい態様においては、HLAクラスII分子は、HLA-DRA1*01:01:00鎖及びHLA-DRB1*01:01:00鎖のヘテロ二量体である。特に好ましい態様においては、変異型p53は、M237Iであり、HLAクラスII分子は、HLA-DRA1*01:01鎖及びHLA-DRB1*01:01鎖のヘテロ二量体である。
【0024】
本発明の一態様においては、本発明のTCRは、HLAクラスI分子によって提示されるR175Hを認識することができる。これに関して、TCRは、HLAクラスI分子の関係でのR175Hへの結合に際して、免疫応答を誘発し得る。本発明のTCRは、HLAクラスI分子により提示されるR175Hを認識することができ、R175Hに加えてHLAクラスI分子に結合し得る。
【0025】
本発明の一実施形態においては、HLAクラスI分子はHLA-A分子である。HLA-A分子は、α鎖及びβ2ミクログロブリンのヘテロ二量体である。HLA-Aα鎖はHLA-A遺伝子によってコードされ得る。β2ミクログロブリンは、アルファ鎖のアルファ1、アルファ2及びアルファ3ドメインに非共有結合して、HLA-A複合体を構築する。HLA-A分子は任意のHLA-A分子であり得る。本発明の一実施形態においては、HLAクラスI分子はHLA-A2分子である。HLA-A2分子は、任意のHLA-A2分子であり得る。HLA-A2分子の例としては、HLA-A*02:01、HLA-A*02:02、HLA-A*02:03対立遺伝子、HLA-A*02:05、HLA-A*02:06、HLA-A*02:07対立遺伝子、又はHLA-A*02:11対立遺伝子によってコードされるものが挙げられ得るが、これらに限定されない。好ましくは、HLAクラスI分子は、HLA-A*02:01対立遺伝子によってコードされる。
【0026】
養子細胞移入に使用される細胞で発現した場合を含む、本発明のTCRは、多くの利点のいずれか1以上を提供し得る。変異p53は、がん細胞で発現し、正常非がん細胞では発現しない。特定の理論又は機序に縛られるものではないが、本発明のTCRは、有利には、例えば毒性を最小化又は排除することによって、正常非がん細胞の破壊を最小化又は排除すると同時に、がん細胞の破壊を目的とし、それによって、低減すると考えられる。更に、本発明のTCRは、有利には、例えば化学療法、外科手術、又は放射線照射等の他の種類の治療には応答しない変異p53陽性がんを成功裏に治療又は予防することができる。更に、本発明のTCRは、変異p53を高い結合活性で(highly avid)認識することができ、これによって、操作されていない腫瘍細胞(例えば、インターフェロン(IFN)-γで処理されていない、変異p53及び適用可能なHLA分子の一方又は両方をコードしているベクターをトランスフェクションしていない、p53変異を有するp53ペプチドをパルスしていない、又はこれらの組み合わせの腫瘍細胞)を認識する能力が付与され得る。p53における変異は様々な腫瘍型に共通している。全ての腫瘍のおよそ半分はp53に変異を有し、そのうちの約半分はミスセンス変異である。R175H変異は一般的であり、全固形がん患者の約5%が有している。C135Y変異及びM237I変異も再発率が高く、それぞれ全がん患者の約0.4%が有している。従って、本発明のTCRは、免疫療法による治療の適格性を有する可能性のある患者の数を増加させることができる。
【0027】
語句「抗原特異性」とは、本明細書で用いるとき、TCRが、高い結合活性で変異p53に特異的に結合し、免疫学的に認識できることを意味する。例えば、(a)変異p53ペプチド(例えば、約0.1ng/mL~約10,000ng/mL、0.1ng/mL、0.5ng/mL、1ng/mL、5ng/mL、10ng/mL、100ng/mL、500ng/mL、1,000ng/mL、5,000ng/mL、10,000ng/mL、又は上記値のうちのいずれか2つによって規定される範囲)をパルスした抗原陰性適用可能なHLA分子陽性の標的細胞又は(b)標的細胞が変異p53を発現するように変異p53をコードしているヌクレオチド配列を導入した抗原陰性適用可能なHLA分子陽性の標的細胞と共培養した際に、TCRを発現している約1×104~約1×105個のT細胞が少なくとも約200pg/mL以上(例えば、200pg/mL以上、300pg/mL以上、400pg/mL以上、500pg/mL以上、600pg/mL以上、700pg/mL以上、1000pg/mL以上、5,000pg/mL以上、7,000pg/mL以上、10,000pg/mL以上、20,000pg/mL以上、又は上記値のうちのいずれか2つによって規定される範囲)のIFN-γを分泌した場合、該TCRが変異p53に対して「抗原特異性」を有するとみなしてよい。本発明のTCRを発現している細胞は、より高濃度の変異p53ペプチドをパルスした抗原陰性適用可能なHLA分子陽性の標的細胞と共培養した際にもIFN-γを分泌することができる。
【0028】
或いは又は更に、ネガティブコントロールで発現するIFN-γの量と比較して、(a)変異p53ペプチドをパルスした抗原陰性適用可能なHLA分子陽性の標的細胞又は(b)標的細胞が変異p53を発現するように変異p53をコードしているヌクレオチド配列を導入した抗原陰性適用可能なHLA分子陽性の標的細胞と共培養した際に、TCRを発現しているT細胞が少なくとも2倍のIFN-γを分泌した場合、該TCRが変異p53に対して「抗原特異性」を有するとみなしてよい。ネガティブコントロールは、例えば、(i)(a)同濃度の関係性の無いペプチド(例えば、変異p53ペプチドとは異なる配列を有する幾つかの他のペプチド)をパルスした抗原陰性適用可能なHLA分子陽性の標的細胞若しくは(b)標的細胞が関係性の無いペプチドを発現するように該関係性の無いペプチドをコードしているヌクレオチド配列を導入した抗原陰性適用可能なHLA分子陽性の標的細胞と共培養した、該TCRを発現しているT細胞、又は(ii)(a)同濃度の変異p53ペプチドをパルスした抗原陰性適用可能なHLA分子陽性の標的細胞若しくは(b)標的細胞が変異p53を発現するように変異p53をコードしているヌクレオチド配列を導入した抗原陰性適用可能なHLA分子陽性の標的細胞と共培養した、形質導入されていないT細胞(例えば、該TCRを発現しないPBMC由来)であってよい。IFN-γ分泌は、当技術分野において公知の方法、例えば、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって測定することができる。パルスされたペプチドの濃度は、本発明の他の態様に関して本明細書に記載の通りであってよい。
【0029】
或いは又は更に、IFN-γを分泌するネガティブコントロールT細胞の数と比較して、(a)変異p53ペプチドをパルスした抗原陰性適用可能なHLA分子陽性の標的細胞又は(b)標的細胞が変異p53を発現するように変異p53をコードしているヌクレオチド配列を導入した抗原陰性適用可能なHLA分子陽性の標的細胞と共培養した際に、IFN-γを分泌するTCRを発現しているT細胞の数が少なくとも2倍であった場合、該TCRが変異p53に対して「抗原特異性」を有するとみなしてよい。ペプチドの濃度及びネガティブコントロールは、本発明の他の態様に関して本明細書に記載の通りであってよい。IFN-γを分泌する細胞の数は、当技術分野において公知の方法、例えば、酵素免疫スポット(ELISPOT)アッセイによって測定することができる。
【0030】
或いは又は更に、同じ標的細胞と共培養したネガティブコントロールT細胞についてELISPOTによって検出されたスポット数と比較して、(a)変異p53ペプチドをパルスした抗原陰性適用可能なHLA分子陽性の標的細胞又は(b)標的細胞が変異p53を発現するように変異p53をコードしているヌクレオチド配列を導入した抗原陰性適用可能なHLA分子陽性の標的細胞と共培養した際に、TCRを発現しているT細胞についてのELISPOTによって少なくとも2倍のスポットが検出された場合、該TCRが変異p53に対して「抗原特異性」を有するとみなしてよい。ペプチドの濃度及びネガティブコントロールは、本発明の他の態様に関して本明細書に記載の通りであってよい。
【0031】
或いは又は更に、変異p53を発現している標的細胞で刺激した後に例えばフローサイトメトリーによって測定したとき、TCRを発現しているT細胞が4-1BB及びOX40の一方又は両方の発現を上方制御した場合、該TCRが変異p53に対して「抗原特異性」を有するとみなしてよい。
【0032】
本発明の一態様は、例えば、TCRのアルファ(α)鎖、TCRのベータ(β)鎖、TCRのガンマ(γ)鎖、TCRのデルタ(δ)鎖、又はこれらの組み合わせ等の2本のポリペプチド(即ち、ポリペプチド鎖)を含むTCRを提供する。本発明のTCRのポリペプチドは、TCRが変異p53に対して抗原特異性を有する限り、任意のアミノ酸配列を含んでいてよい。
【0033】
本発明の一態様においては、TCRは、TCRの相補性決定領域(CDR)1、CDR2、及びCDR3を含む可変領域をそれぞれ含む、2本のポリペプチド鎖を含む。本発明の一態様においては、TCRは、α鎖のCDR1(CDR1α)、α鎖のCDR2(CDR2α)、及びα鎖のCDR3(CDR3α)を含む第1のポリペプチド鎖と、β鎖のCDR1(CDR1β)、β鎖のCDR2(CDR2β)、及びβ鎖のCDR3(CDR3β)を含む第2のポリペプチド鎖とを含む。本発明の一態様においては、TCRは、(1)配列番号2~7の全て(4316-D TCR);(2)配列番号17~22の全て(4141 IVS TCR);(3)配列番号32~37の全て(4304 TCR-2);(4)配列番号47~52の全て(4304 TCR-4);又は(5)配列番号62~67の全て(4304 TCR-K)のアミノ酸配列を含む。この段落における上述の9のアミノ酸配列のコレクションのそれぞれ1つは、変異ヒトp53に対して抗原特異性を有する5の異なるTCRのそれぞれの6のCDR領域を示す。各コレクションにおける6のアミノ酸配列は、それぞれ、CDR1α、CDR2α、CDR3α、CDR1β、CDR2β、及びCDR3βに対応する。
【0034】
TCRは、配列番号2~7、17~22、32~37、47~52、及び62~67のうちのいずれか1以上のアミノ酸配列を含み得る。本発明の一態様においては、TCRは、ヒトp53C135Y、ヒトp53R175H、又はヒトp53M237Iのアミノ酸配列に対して抗原特異性を有する単離又は精製されたTCRを含み、該TCRは以下のアミノ酸配列を含む:(1)配列番号2~4の全て;(2)配列番号5~7の全て;(3)配列番号2~7の全て;(4)配列番号17~19の全て;(5)配列番号20~22の全て;(6)配列番号17~22の全て;(7)配列番号32~34の全て;(8)配列番号35~37の全て;(9)配列番号32~37の全て;(10)配列番号47~49の全て;(11)配列番号50~52の全て;(12)配列番号47~52の全て;(13)配列番号62~64の全て;(14)配列番号65~67の全て;又は(15)配列番号62~67の全て。
【0035】
本発明の一態様においては、TCRは、合わせて上記CDRのコレクションのうちの1つを含む、α鎖可変領域のアミノ酸配列及びβ鎖可変領域のアミノ酸配列を含む。これに関して、該TCRは以下のアミノ酸配列を含む:(1)配列番号8及び9の両方;(2)配列番号10及び11の両方;(3)配列番号23及び24の両方;(4)配列番号25及び26の両方;(5)配列番号38及び39の両方;(6)配列番号40及び41の両方;(7)配列番号53及び54の両方;(8)配列番号55及び56の両方;(9)配列番号68及び69の両方;又は(10)配列番号70及び71の両方。この段落における上述のアミノ酸配列のコレクションのそれぞれ1つは、変異ヒトp53に対して抗原特異性を有する5の異なるTCRのそれぞれの2の可変領域を示す。各コレクションにおける2のアミノ酸配列は、それぞれ、TCRのα鎖の可変領域及びβ鎖の可変領域に対応する。
【0036】
TCRは、例えば、配列番号8、9、10、11、23、24、25、26、38、39、40、41、53、54、55、56、68、69、70、及び71のうちのいずれか1以上のアミノ酸配列を含み得る。本発明の一態様においては、該TCRは以下のアミノ酸配列を含む:(1)配列番号8;(2)配列番号9;(3)配列番号8及び9の両方;(4)配列番号10;(5)配列番号11;(6)配列番号10及び11の両方;(7)配列番号23;(8)配列番号24;(9)配列番号23及び24の両方;(10)配列番号25;(11)配列番号26;(12)配列番号25及び26の両方;(13)配列番号38;(14)配列番号39;(15)配列番号38及び39の両方;(16)配列番号40;(17)配列番号41;(18)配列番号40及び41の両方;(19)配列番号53;(20)配列番号54;(21)配列番号53及び54の両方;(22)配列番号55;(23)配列番号56;(24)配列番号55及び56の両方;(25)配列番号68;(26)配列番号69;(27)配列番号68及び69の両方;(28)配列番号70;(29)配列番号71;又は(30)配列番号70及び71の両方。
【0037】
本発明のTCRは、定常領域を更に含み得る。定常領域は、例えばヒト又はマウス等の任意の好適な種に由来していてよい。本発明の一態様においては、TCRは、マウスの定常領域を更に含む。本明細書で用いるとき、用語「マウス」又は「ヒト」は、本明細書に記載のTCR又はTCRの任意の構成要素(例えば、相補性決定領域(CDR)、可変領域、定常領域、アルファ鎖、及び/又はベータ鎖)に言及するとき、それぞれマウス又はヒト由来のTCR(又はその構成要素)、即ち、それぞれマウスT細胞又はヒトT細胞を起源とするか又は該細胞によってかつて発現されたTCR(又はその構成要素)を意味する。本発明の一態様においては、TCRは、マウスα鎖定常領域及びマウスβ鎖定常領域を含み得る。マウスα鎖定常領域は、改変されていてもよく、改変されていなくてもよい。改変マウスα鎖定常領域は、例えば米国特許第10,174,098号に記載の通り、例えば、システイン置換されていてもよく、LVL改変されていてもよく、又はシステイン置換及びLVL改変の両方が行われていてもよい。マウスβ鎖定常領域は、改変されていてもよく、改変されていなくてもよい。改変マウスβ鎖定常領域は、例えば米国特許第10,174,098号に記載の通り、例えば、システイン置換されていてよい。本発明の一態様においては、TCRは、配列番号77又は78のアミノ酸配列を含むシステイン置換LVL改変マウスα鎖定常領域を含む。本発明の一態様においては、TCRは、配列番号79のアミノ酸配列を含むシステイン置換マウスβ鎖定常領域を含む。
【0038】
本発明の一態様においては、本発明のTCRは、TCRのα鎖及びTCRのβ鎖を含み得る。TCRのα鎖は、α鎖の可変領域及びα鎖の定常領域を含み得る。この種のα鎖は、TCRの任意のβ鎖と対合し得る。β鎖は、β鎖の可変領域及びβ鎖の定常領域を含み得る。
【0039】
幾つかの態様においては、本明細書に開示されるα鎖及び/又はβ鎖のいずれかのアミノ酸配列は、C末端にアミノ酸配列RAKR(配列番号95)を更に含む。
【0040】
本発明の一態様においては、TCRは以下のアミノ酸配列を含み得る:(1)配列番号12及び13の両方;(2)配列番号14及び15の両方;(3)配列番号27及び28の両方;(4)配列番号29及び30の両方;(5)配列番号42及び43の両方;(6)配列番号44及び45の両方;(7)配列番号57及び58の両方;(8)配列番号59及び60の両方;(9)配列番号72及び73の両方;又は(10)配列番号74及び75の両方。この段落における上述のアミノ酸配列のコレクションのそれぞれ1つは、変異ヒトp53に対して抗原特異性を有する、5の異なるTCRのそれぞれのα鎖及びβ鎖を示す。各コレクションにおける2のアミノ酸配列は、それぞれ、TCRのα鎖及びβ鎖に対応する。
【0041】
TCRは、配列番号12、13、14、15、27、28、29、30、42、43、44、45、57、58、59、60、72、73、74、及び75のうちのいずれか1以上のアミノ酸配列を含み得る。本発明の一態様においては、該TCRは以下のアミノ酸配列を含む:(1)配列番号12;(2)配列番号13;(3)配列番号12及び13の両方;(4)配列番号14;(5)配列番号15;(6)配列番号14及び15の両方;(7)配列番号27;(8)配列番号28;(9)配列番号27及び28の両方;(10)配列番号29;(11)配列番号30;(12)配列番号29及び30の両方;(13)配列番号42;(14)配列番号43;(15)配列番号42及び43の両方;(16)配列番号44;(17)配列番号45;(18)配列番号44及び45の両方;(19)配列番号57;(20)配列番号58;(21)配列番号57及び58の両方;(22)配列番号59;(23)配列番号60;(24)配列番号59及び60の両方;(25)配列番号72;(26)配列番号73;(27)配列番号72及び73の両方;(28)配列番号74;(29)配列番号75;又は(30)配列番号74及び75の両方。
【0042】
本明細書に記載の本発明のTCRの機能的バリアントは、本発明の範囲に含まれる。用語「機能的バリアント」とは、本明細書で用いるとき、親のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質に対して実質的な又は著しい配列の同一性又は類似性を有するTCR、ポリペプチド、又はタンパク質を指し、該機能的バリアントは、該バリアントがそのバリアントであるTCR、ポリペプチド、又はタンパク質の生物活性を保持している。機能的バリアントは、例えば、親のTCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質と同様の程度、同一程度、又はより高程度、親TCRが抗原特異性を有するか又は親のポリペプチド若しくはタンパク質が特異的に結合する変異p53に特異的に結合する能力を保持している、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質(親のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質)のバリアントを包含する。親のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質に関連して、機能的バリアントは、例えば、それぞれ親のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質に対してアミノ酸配列が少なくとも約30%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又はそれ以上同一であってよい。
【0043】
機能的バリアントは、例えば、少なくとも1の保存的アミノ酸置換を有する親のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質のアミノ酸配列を含み得る。保存的アミノ酸置換は、当技術分野において公知であり、特定の物理的及び/又は化学的特性を有するあるアミノ酸が、同じ化学的又は物理的特性を有する別のアミノ酸に交換されるアミノ酸置換を含む。例えば、保存的アミノ酸置換は、酸性アミノ酸の別の酸性アミノ酸(例えば、Asp又はGlu)による置換、非極性側鎖を有するアミノ酸の、別の非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、Ala、Gly、Val、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Trp、Val等)による置換、塩基性アミノ酸の別の塩基性アミノ酸(Lys、Arg等)による置換、極性側鎖を有するアミノ酸の、別の極性側鎖を有するアミノ酸(Asn、Cys、Gln、Ser、Thr、Tyr等)による置換等であってよい。
【0044】
或いは又は更に、機能的バリアントは、少なくとも1の非保存的アミノ酸置換を有する親のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質のアミノ酸配列を含み得る。この場合、非保存的アミノ酸置換が、機能的バリアントの生物活性に干渉もせず、阻害もしないことが好ましい。好ましくは、非保存的アミノ酸置換は機能的バリアントの生物活性を増強し、その結果、機能的バリアントの生物活性が、親のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質と比べて増大する。
【0045】
TCR、ポリペプチド、又はタンパク質は、本明細書に記載の指定のアミノ酸配列(複数可)から本質的になっていてよく、その結果、該TCR、ポリペプチド、又はタンパク質の他の構成要素、例えば、他のアミノ酸が、該TCR、ポリペプチド、又はタンパク質の生物活性を実質的に変化させることはない。
【0046】
また、本明細書に記載のTCRのいずれかの機能的部分を含むポリペプチドが本発明によって提供される。用語「ポリペプチド」は、本明細書で用いるとき、オリゴペプチドを含み、そして、1以上のペプチド結合によって連結された一本鎖のアミノ酸を指す。
【0047】
本発明のポリペプチドに関して、機能的部分は、変異p53に特異的に結合する限り、該機能的部分がその一部であるTCRの連続アミノ酸を含む任意の部分であってよい。用語「機能的部分」は、TCRに関連して使用されるとき、本発明のTCRの任意の部分又は断片であって、該部分又は断片がその一部であるTCR(親TCR)の生物活性を保持している部分又は断片を指す。機能的部分は、例えば、親TCRと同様の程度、同一程度、又はより高程度、(例えば、適用可能なHLA分子依存的に)変異p53に特異的に結合するか又はがんを検出、治療、若しくは予防する能力を保持しているTCRの部分を包含する。親TCRに関連して、機能的部分は、例えば、親TCRの約10%、約25%、約30%、約50%、約70%、約80%、約90%、約95%、又はそれ以上を構成し得る。
【0048】
機能的部分は、該部分のアミノ若しくはカルボキシ末端又は両末端に、親TCRのアミノ酸配列にはみられない追加のアミノ酸を含んでいてもよい。望ましくは、追加のアミノ酸は、例えば、変異p53に特異的に結合する、及び/又はがんを検出する、がんを治療若しくは予防する能力を有する等の機能的部分の生物学的機能に干渉しない。より望ましくは、追加のアミノ酸は、親TCRの生物活性と比較して生物活性を増強する。
【0049】
ポリペプチドは、本発明のTCRのα鎖及びβ鎖のいずれか又は両方の機能的部分、例えば、本発明のTCRのα鎖及び/又はβ鎖の可変領域(複数可)のCDR1、CDR2、及びCDR3のうちの1以上を含む機能的部分を含み得る。本発明の一態様においては、該ポリペプチドは以下のアミノ酸配列を含み得る:(1)配列番号2~7の全て;(2)配列番号17~22の全て;(3)配列番号32~37の全て;(4)配列番号47~52の全て;又は(5)配列番号62~67の全て。ポリペプチドは、配列番号2~7、17~22、32~37、47~52、及び62~67のうちのいずれか1以上のアミノ酸配列を含み得る。本発明の一態様においては、該ポリペプチドは以下のアミノ酸配列を含む:(1)配列番号2~4の全て;(2)配列番号5~7の全て;(3)配列番号2~7の全て;(4)配列番号17~19の全て;(5)配列番号20~22の全て;(6)配列番号17~22の全て;(7)配列番号32~34の全て;(8)配列番号35~37の全て;(9)配列番号32~37の全て;(10)配列番号47~49の全て;(11)配列番号50~52の全て;(12)配列番号47~52の全て;(13)配列番号62~64の全て;(14)配列番号65~67の全て;又は(15)配列番号62~67の全て。
【0050】
本発明の一態様においては、本発明のポリペプチドは、例えば、上記CDR領域の組み合わせを含む本発明のTCRの可変領域を含み得る。これに関して、該ポリペプチドは、例えば、以下のアミノ酸配列を含み得る:(1)配列番号8及び9の両方;(2)配列番号10及び11の両方;(3)配列番号23及び24の両方;(4)配列番号25及び26の両方;(5)配列番号38及び39の両方;(6)配列番号40及び41の両方;(7)配列番号53及び54の両方;(8)配列番号55及び56の両方;(9)配列番号68及び69の両方;又は(10)配列番号70及び71の両方。ポリペプチドは、例えば、配列番号8、9、10、11、23、24、25、26、38、39、40、41、53、54、55、56、68、69、70、及び71のうちのいずれか1以上のアミノ酸配列を含み得る。本発明の一態様においては、該ポリペプチドは以下のアミノ酸配列を含む:(1)配列番号8;(2)配列番号9;(3)配列番号8及び9の両方;(4)配列番号10;(5)配列番号11;(6)配列番号10及び11の両方;(7)配列番号23;(8)配列番号24;(9)配列番号23及び24の両方;(10)配列番号25;(11)配列番号26;(12)配列番号25及び26の両方;(13)配列番号38;(14)配列番号39;(15)配列番号38及び39の両方;(16)配列番号40;(17)配列番号41;(18)配列番号40及び41の両方;(19)配列番号53;(20)配列番号54;(21)配列番号53及び54の両方;(22)配列番号55;(23)配列番号56;(24)配列番号55及び56の両方;(25)配列番号68;(26)配列番号69;(27)配列番号68及び69の両方;(28)配列番号70;(29)配列番号71;又は(30)配列番号70及び71の両方。
【0051】
本発明の一態様においては、本発明のポリペプチドは、上記本発明のTCRの定常領域を更に含み得る。これに関して、該ポリペプチドは、例えば、(i)配列番号77~79のうちの1又は(ii)配列番号79及び配列番号77及び78のうちの1のアミノ酸配列を含み得る。
【0052】
本発明の一態様においては、本発明のポリペプチドは、本発明のTCRのα鎖及びβ鎖を含み得る。これに関して、該ポリペプチドは、例えば、以下のアミノ酸配列を含む:(1)配列番号12及び13の両方;(2)配列番号14及び15の両方;(3)配列番号27及び28の両方;(4)配列番号29及び30の両方;(5)配列番号42及び43の両方;(6)配列番号44及び45の両方;(7)配列番号57及び58の両方;(8)配列番号59及び60の両方;(9)配列番号72及び73の両方;又は(10)配列番号74及び75の両方。ポリペプチドは、配列番号12、13、14、15、27、28、29、30、42、43、44、45、57、58、59、60、72、73、74、及び75のうちのいずれか1以上のアミノ酸配列を含み得る。本発明の一態様においては、該ポリペプチドは以下のアミノ酸配列を含む:(1)配列番号12;(2)配列番号13;(3)配列番号12及び13の両方;(4)配列番号14;(5)配列番号15;(6)配列番号14及び15の両方;(7)配列番号27;(8)配列番号28;(9)配列番号27及び28の両方;(10)配列番号29;(11)配列番号30;(12)配列番号29及び30の両方;(13)配列番号42;(14)配列番号43;(15)配列番号42及び43の両方;(16)配列番号44;(17)配列番号45;(18)配列番号44及び45の両方;(19)配列番号57;(20)配列番号58;(21)配列番号57及び58の両方;(22)配列番号59;(23)配列番号60;(24)配列番号59及び60の両方;(25)配列番号72;(26)配列番号73;(27)配列番号72及び73の両方;(28)配列番号74;(29)配列番号75;又は(30)配列番号74及び75の両方。
【0053】
本発明の一態様は、更に、本明細書に記載のポリペプチドのうちの少なくとも1つを含むタンパク質を提供する。「タンパク質」とは、1本以上のポリペプチド鎖を含む分子を意味する。一態様においては、本発明のタンパク質は以下の第1及び第2のポリペプチド鎖を含み得る:(1)第1のポリペプチド鎖は、配列番号2~4の全てのアミノ酸配列を含む、(2)第2のポリペプチド鎖は、配列番号5~7の全てのアミノ酸配列を含む、(3)第1のポリペプチド鎖は、配列番号2~4の全てのアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号5~7の全てのアミノ酸配列を含む、(4)第1のポリペプチド鎖は、配列番号17~19の全てのアミノ酸配列を含む、(5)第2のポリペプチド鎖は、配列番号20~22の全てのアミノ酸配列を含む、(6)第1のポリペプチド鎖は、配列番号17~19の全てのアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号20~22の全てのアミノ酸配列を含む、(7)第1のポリペプチド鎖は、配列番号32~34の全てのアミノ酸配列を含む、(8)第2のポリペプチド鎖は、配列番号35~37の全てのアミノ酸配列を含む、(9)第1のポリペプチド鎖は、配列番号32~34の全てのアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号35~37の全てのアミノ酸配列を含む、(10)第1のポリペプチド鎖は、配列番号47~49の全てのアミノ酸配列を含み、(11)第2のポリペプチド鎖は、配列番号50~52の全てのアミノ酸配列を含む、(12)第1のポリペプチド鎖は、配列番号47~49の全てのアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号50~52の全てのアミノ酸配列を含む、(13)第1のポリペプチド鎖は、配列番号62~64の全てのアミノ酸配列を含み、(14)第2のポリペプチド鎖は、配列番号65~67の全てのアミノ酸配列を含む、又は(15)第1のポリペプチド鎖は、配列番号62~64の全てのアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号65~67の全てのアミノ酸配列を含む。
【0054】
本発明の一態様においては、タンパク質は以下の第1及び第2のポリペプチド鎖を含む:(1)第1のポリペプチド鎖は、配列番号8のアミノ酸配列を含む、(2)第2のポリペプチド鎖は、配列番号9のアミノ酸配列を含む、(3)第1のポリペプチド鎖は、配列番号8のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号9のアミノ酸配列を含む、(4)第1のポリペプチド鎖は、配列番号10のアミノ酸配列を含み、(5)第2のポリペプチド鎖は、配列番号11のアミノ酸配列を含む、(6)第1のポリペプチド鎖は、配列番号10のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号11のアミノ酸配列を含む、(7)第1のポリペプチド鎖は、配列番号23のアミノ酸配列を含む、(8)第2のポリペプチド鎖は、配列番号24のアミノ酸配列を含む、(9)第1のポリペプチド鎖は、配列番号23のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号24のアミノ酸配列を含む、(10)第1のポリペプチド鎖は、配列番号25のアミノ酸配列を含む、(11)第2のポリペプチド鎖は、配列番号26のアミノ酸配列を含む、(12)第1のポリペプチド鎖は、配列番号25のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号26のアミノ酸配列を含む、(13)第1のポリペプチド鎖は、配列番号38のアミノ酸配列を含む、(14)第2のポリペプチド鎖は、配列番号39のアミノ酸配列を含む、(15)第1のポリペプチド鎖は、配列番号38のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号39のアミノ酸配列を含む、(16)第1のポリペプチド鎖は、配列番号40のアミノ酸配列を含み、(17)第2のポリペプチド鎖は、配列番号41のアミノ酸配列を含む、(18)第1のポリペプチド鎖は、配列番号40のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号41のアミノ酸配列を含む、(19)第1のポリペプチド鎖は、配列番号53のアミノ酸配列を含み、(20)第2のポリペプチド鎖は、配列番号54のアミノ酸配列を含む、(21)第1のポリペプチド鎖は、配列番号53のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号54のアミノ酸配列を含む、(22)第1のポリペプチド鎖は、配列番号55のアミノ酸配列を含む、(23)第2のポリペプチド鎖は、配列番号56のアミノ酸配列を含む、(24)第1のポリペプチド鎖は、配列番号55のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号56のアミノ酸配列を含む、(25)第1のポリペプチド鎖は、配列番号68のアミノ酸配列を含む、(26)第2のポリペプチド鎖は、配列番号69のアミノ酸配列を含む、(27)第1のポリペプチド鎖は、配列番号68のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号69のアミノ酸配列を含む、(28)第1のポリペプチド鎖は、配列番号70のアミノ酸配列を含む、(29)第2のポリペプチド鎖は、配列番号71のアミノ酸配列を含む、又は(30)第1のポリペプチド鎖は、配列番号70のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号71のアミノ酸配列を含む。
【0055】
本発明の一態様においては、タンパク質は、以下の第1及び第2のポリペプチド鎖を含む:(1)第1のポリペプチド鎖は、配列番号12のアミノ酸配列を含む、(2)第2のポリペプチド鎖は、配列番号13のアミノ酸配列を含む、(3)第1のポリペプチド鎖は、配列番号12のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号13のアミノ酸配列を含む、(4)第1のポリペプチド鎖は、配列番号14のアミノ酸配列を含む、(5)第2のポリペプチド鎖は、配列番号15のアミノ酸配列を含む、(6)第1のポリペプチド鎖は、配列番号14のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号15のアミノ酸配列を含む、(7)第1のポリペプチド鎖は、配列番号27のアミノ酸配列を含む、(8)第2のポリペプチド鎖は、配列番号28のアミノ酸配列を含む、(9)第1のポリペプチド鎖は、配列番号27のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号28のアミノ酸配列を含む、(10)第1のポリペプチド鎖は、配列番号29のアミノ酸配列を含む、(11)第2のポリペプチド鎖は、配列番号30のアミノ酸配列を含む、(12)第1のポリペプチド鎖は、配列番号29のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号30のアミノ酸配列を含む、(13)第1のポリペプチド鎖は、配列番号42のアミノ酸配列を含む、(14)第2のポリペプチド鎖は、配列番号43のアミノ酸配列を含む、(15)第1のポリペプチド鎖は、配列番号42のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号43のアミノ酸配列を含む、(16)第1のポリペプチド鎖は、配列番号44のアミノ酸配列を含む、(17)第2のポリペプチド鎖は、配列番号45のアミノ酸配列を含む、(18)第1のポリペプチド鎖は、配列番号44のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号45のアミノ酸配列を含む、(19)第1のポリペプチド鎖は、配列番号57のアミノ酸配列を含む、(20)第2のポリペプチド鎖は、配列番号58のアミノ酸配列を含む、(21)第1のポリペプチド鎖は、配列番号57のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号58のアミノ酸配列を含む、(22)第1のポリペプチド鎖は、配列番号59のアミノ酸配列を含む、(23)第2のポリペプチド鎖は、配列番号60のアミノ酸配列を含む、(24)第1のポリペプチド鎖は、配列番号59のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号60のアミノ酸配列を含む、(25)第1のポリペプチド鎖は、配列番号72のアミノ酸配列を含む、(26)第2のポリペプチド鎖は、配列番号73のアミノ酸配列を含む、(27)第1のポリペプチド鎖は、配列番号72のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号73のアミノ酸配列を含む、(28)第1のポリペプチド鎖は、配列番号74のアミノ酸配列を含む、(29)第2のポリペプチド鎖は、配列番号75のアミノ酸配列を含む、又は(30)第1のポリペプチド鎖は、配列番号74のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号75のアミノ酸配列を含む。
【0056】
本発明のタンパク質は、TCRであってよい。或いは、該タンパク質の第1の及び/又は第2のポリペプチド鎖(複数可)が、他のアミノ酸配列、例えば免疫グロブリン又はその一部分をコードしているアミノ酸配列を更に含む場合、本発明のタンパク質は、融合タンパク質であってもよい。これに関して、本発明の一態様は、また、少なくとも1の他のポリペプチドと共に、本明細書に記載の本発明のポリペプチドのうちの少なくとも1つを含む融合タンパク質を提供する。他のポリペプチドは、融合タンパク質の別々のタンパク質として存在してもよく、又は本明細書に記載の本発明のポリペプチドのうちの1つとインフレームで(タンデムに)発現するポリペプチドとして存在してもよい。他のポリペプチドは、免疫グロブリン、CD3、CD4、CD8、MHC分子、CD1分子、例えば、CD1a、CD1b、CD1c、CD1d等が挙げられるがこれらに限定されない、任意のペプチド性若しくはタンパク質性の分子、又はこれらの一部分をコードしていてよい。
【0057】
融合タンパク質は、1コピー以上の本発明のポリペプチド及び/又は1コピー以上の他のポリペプチドを含み得る。例えば、融合タンパク質は、1、2、3、4、5、又はそれ以上のコピーの本発明のポリペプチド及び/又は他のポリペプチドを含み得る。融合タンパク質を作製する好適な方法は、当技術分野において公知であり、例えば、組み換え法が挙げられる。
【0058】
本発明の幾つかの態様においては、本発明のTCR、ポリペプチド、及びタンパク質は、α鎖及びβ鎖を連結するリンカーペプチドを含む単一のタンパク質として発現し得る。これに関して、本発明のTCR、ポリペプチド、及びタンパク質は、リンカーペプチドを更に含み得る。リンカーペプチドは、有利には、宿主細胞における組み換え体のTCR、ポリペプチド、及び/又はタンパク質の発現を促進し得る。リンカーペプチドは、任意の好適なアミノ酸配列を含み得る。例えば、リンカーペプチドは、RAKRSGSGATNFSLLKQAGDVEENPGP(配列番号80)のアミノ酸配列を含み得る。リンカーペプチドを含むコンストラクトが宿主細胞によって発現されたら、リンカーペプチドを切断してもよく、その結果、分離されたα鎖及びβ鎖が得られる。本発明の一態様においては、TCR、ポリペプチド、又はタンパク質は、全長α鎖、全長β鎖、及びα鎖とβ鎖との間に位置するリンカーペプチドを含むアミノ酸配列を含み得る。
【0059】
幾つかの態様においては、本明細書に開示されるTCR、ポリペプチド又はタンパク質は、シグナルペプチドを含む、本明細書に開示される通りのα鎖及び/又はβ鎖を含む。幾つかの態様においては、本明細書に開示されるα鎖及び/又はβ鎖のいずれかのシグナルペプチドの配列は、2位の野生型残基と置換されたロイシン、リジン、アラニン又はヒスチジン残基を含む。
【0060】
幾つかの態様においては、本明細書に開示されるTCR、ポリペプチド又はタンパク質は、シグナルペプチドを欠く、本明細書に開示される通りのα鎖及び/又はβ鎖の成熟型を含む。
【0061】
本発明のタンパク質は、本明細書に記載の本発明のポリペプチドのうちの少なくとも1つを含む、組み換え抗体又はその抗原結合部分であってよい。本明細書で用いるとき、「組み換え抗体」とは、本発明のポリペプチドのうちの少なくとも1つ、及び抗体のポリペプチド鎖又はその抗原結合部分を含む組み換え(例えば、遺伝的に操作された)タンパク質を指す。抗体のポリペプチド又はその抗原結合部分は、抗体の重鎖、軽鎖、重鎖若しくは軽鎖の可変領域若しくは定常領域、単鎖可変領域(scFv)、又はFc、Fab、若しくはF(ab)2’の断片であってよい。抗体のポリペプチド鎖又はその抗原結合部分は、組み換え抗体の別々のポリペプチドとして存在してよい。或いは、抗体のポリペプチド鎖又はその抗原結合部分は、本発明のポリペプチドとインフレームで(タンデムに)発現するポリペプチドとして存在してもよい。抗体のポリペプチド又はその抗原結合部分は、本明細書に記載の抗体及び抗体断片のいずれかを含む、任意の抗体又は任意の抗体断片のポリペプチドであってよい。
【0062】
本発明のTCR、ポリペプチド、及びタンパク質は、その生物活性、例えば、変異p53に特異的に結合する能力、哺乳動物におけるがんを検出する能力、又は哺乳動物におけるがんを治療若しくは予防する能力等を保持している限り、任意の長さであってよい、即ち、任意の数のアミノ酸を含み得る。例えば、ポリペプチドは、約50~約5000アミノ酸長の範囲、例えば、50、70、75、100、125、150、175、200、300、400、500、600、700、800、900、1000又はそれ以上のアミノ酸長であってよい。これに関して、本発明のポリペプチドは、オリゴペプチドも含む。
【0063】
本発明の本発明のTCR、ポリペプチド、及びタンパク質は、1以上の天然に存在するアミノ酸の代わりに合成アミノ酸を含んでいてもよい。このような合成アミノ酸は、当技術分野において公知であり、例えば、アミノシクロヘキサンカルボン酸、ノルロイシン、α-アミノn-デカン酸、ホモセリン、S-アセチルアミノメチル-システイン、トランス-3-及びトランス-4-ヒドロキシプロリン、4-アミノフェニルアラニン、4-ニトロフェニルアラニン、4-クロロフェニルアラニン、4-カルボキシフェニルアラニン、β-フェニルセリンβ-ヒドロキシフェニルアラニン、フェニルグリシン、α-ナフチルアラニン、シクロヘキシルアラニン、シクロヘキシルグリシン、インドリン-2-カルボン酸、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、アミノマロン酸、アミノマロン酸モノアミド、N’-ベンジル-N’-メチル-リシン、N’,N’-ジベンジル-リシン、6-ヒドロキシリシン、オルニチン、α-アミノシクロペンタンカルボン酸、α-アミノシクロヘキサンカルボン酸、α-アミノシクロヘプタンカルボン酸、α-(2-アミノ-2-ノルボルナン)-カルボン酸、α,γ-ジアミノ酪酸、α,β-ジアミノプロピオン酸、ホモフェニルアラニン、及びα-tert-ブチルグリシンが挙げられる。
【0064】
本発明のTCR、ポリペプチド、及びタンパク質を、グリコシル化、アミド化、カルボキシル化、リン酸化、エステル化、N-アシル化、例えばジスルフィド架橋を介して環化、又は酸付加塩に変換、及び/又は任意で二量体化若しくは多量体化、又はコンジュゲートしてもよい。
【0065】
本発明のTCR、ポリペプチド、及び/又はタンパク質は、当技術分野において公知の方法、例えば、デノボ合成によって得ることができる。また、ポリペプチド及びタンパク質は、標準的な組み換え法を使用し、本明細書に記載の核酸を用いて組み換え的に生成することができる。例えば、Green and Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,4th ed.,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY(2012)を参照。或いは、さまざまな営利団体が、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、及び/又はタンパク質を商業的に合成することもできる。これに関して、本発明のTCR、ポリペプチド、及びタンパク質は、合成であってもよく、組み換え体であってもよく、単離されていてもよく、及び/又は精製されていてもよい。
【0066】
本発明の一態様は、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質のいずれかをコードしているヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。「核酸」は、本明細書で用いるとき、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、及び「核酸分子」を含み、一般的に、DNA又はRNAのポリマーを意味し、これらは、一本鎖であっても二本鎖であってもよく、天然の、非天然の、又は改変されたヌクレオチドを含有していてもよく、そして、改変されていないオリゴヌクレオチドのヌクレオチド間にみられるホスホジエステルの代わりに、天然の、非天然の、又は改変されたヌクレオチド間結合、例えば、ホスホロアミデート結合又はホスホロチオエート結合を含有していてもよい。一態様においては、核酸は、相補的DNA(cDNA)を含む。核酸は、任意の挿入、欠失、逆位、及び/又は置換を含まないことが一般に好ましい。しかし、幾つかの例では、本明細書で論じた通り、核酸が1以上の挿入、欠失、逆位、及び/又は置換を含むことが好適である場合もある。
【0067】
本発明の態様は、5’から3’に向かって、第1の核酸配列及び第2の核酸配列を含む単離又は精製された核酸であって、該第1及び第2の核酸配列が、それぞれ、配列番号8及び9;9及び8;10及び11;11及び10;12及び13;13及び12;14及び15;15及び14;23及び24;24及び23;25及び26;26及び25;27及び28;28及び27;29及び30;30及び29;38及び39;39及び38;40及び41;41及び40;42及び43;43及び42;44及び45;45及び44;53及び54;54及び53;55及び56;56及び55;57及び58;58及び57;59及び60;60及び59;68及び69;69及び68;70及び71;71及び70;72及び73;73及び72;74及び75;又は75及び74のアミノ酸配列をコードする、核酸を提供する。
【0068】
本発明の一態様においては、核酸は、第1及び第2のヌクレオチド配列の間に介在する第3のヌクレオチド酸配列を更に含み、該第3のヌクレオチド配列は、切断可能なリンカーペプチドをコードする。例えば、切断可能なリンカーペプチドは、配列RAKRSGSGATNFSLLKQAGDVEENPGP(配列番号80)のアミノ酸配列を含み得る。本発明の一態様においては、核酸は、配列番号16、31、46、61、及び76からなる群から選択されるアミノ酸配列をコードする。
【0069】
好ましくは、本発明の核酸は、組み換え体である。本明細書で用いるとき、用語「組み換え体」とは、(i)天然若しくは合成の核酸セグメントを生細胞で複製可能な核酸分子に連結させることによって生細胞の外部で構築される分子、又は(ii)上記(i)に記載されているものの複製によって得られる分子を指す。本明細書における目的のために、複製は、インビトロ複製であってもインビボ複製であってもよい。
【0070】
核酸は、当技術分野において公知の手順を用いて、化学合成及び/又は酵素ライゲーション反応に基づいて構築され得る。例えば、Green及びSambrookら、前記を参照。例えば、核酸は、天然に存在するヌクレオチド、又は分子の生物学的安定性を増大させるか若しくはハイブリダイゼーションの際に形成される二本鎖の物理的安定性を増大させるために設計された様々に修飾されたヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート誘導体及びアクリジン置換ヌクレオチド)を用いて、化学的に合成することができる。核酸を作製するために用いることができる修飾ヌクレオチドの例としては、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ-D-ガラクトシルキュェオシン、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-置換アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、ベータ-D-マンノシルキュェオシン、5’-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、プソイドウラシル、キュエオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、及び2,6-ジアミノプリンが挙げられるが、これらに限定されない。或いは、本発明の核酸のうちの1以上は、さまざまな営利団体によって合成されうる。
【0071】
本発明の一態様においては、核酸は、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質のいずれかをコードしている、コドン最適化されたヌクレオチド配列を含む。特定の理論又は機序に縛られるものではないが、ヌクレオチド配列のコドン最適化は、mRNA転写物の翻訳効率を増大させると考えられる。ヌクレオチド配列のコドン最適化は、ネイティブなコドンを、同じアミノ酸をコードしているが細胞内でより容易に利用可能なtRNAによって翻訳され得る別のコドンで置換し、それによって、翻訳効率を増大させることを伴い得る。また、ヌクレオチド配列の最適化は、翻訳に干渉するmRNAの二次構造を低減し、それによって、翻訳効率を増大させることもできる。
【0072】
また、本発明の一態様は、本明細書に記載の核酸のいずれかのヌクレオチド配列に対して相補的なヌクレオチド配列、又は本明細書に記載の核酸のいずれかのヌクレオチド配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。
【0073】
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列は、好ましくは、高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする。「高ストリンジェンシー条件」とは、ヌクレオチド配列が、非特異的ハイブリダイゼーションよりも検出可能に多い量で、標的配列(本明細書に記載の核酸のいずれかのヌクレオチド配列)に特異的にハイブリダイズすることを意味する。高ストリンジェンシー条件は、正確な相補的配列を有するポリヌクレオチド又は幾つかの散在している不一致しか含有していないものを、該ヌクレオチド配列に一致している幾つかの小さな領域(例えば、3~10塩基)を偶然有するランダム配列と識別する条件を含む。このような相補的な小さな領域は、14~17又はそれ以上の塩基の全長相補体よりも容易に融解するので、高ストリンジェンシーハイブリダイゼーションによって容易に識別可能になる。比較的高ストリンジェンシー条件は、例えば、約0.02~0.1M NaCl又は等価物、約50~70℃の温度によって提供されるもの等の低塩及び/又は高温条件を含む。このような高ストリンジェンシー条件は、ヌクレオチド配列とテンプレート又は標的鎖との間の(もし存在するとしても)わずかな不一致しか許容せず、本発明のTCRのいずれかの発現を検出するのに特に好適である。一般的に、漸増量のホルムアミドを添加することによって、条件をよりストリンジェントにすることができると理解される。
【0074】
また、本発明の一態様は、本明細書に記載の核酸のいずれかと少なくとも約70%以上、例えば、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。これに関して、核酸は、本明細書に記載のヌクレオチド配列のいずれかから本質的になっていてよい。
【0075】
本発明の核酸は、組み換え発現ベクターに組み込むことができる。これに関して、本発明の一態様は、本発明の核酸のいずれかを含む組み換え発現ベクターを提供する。本発明の一態様においては、組み換え発現ベクターは、α鎖、β鎖、及びリンカーペプチドをコードしているヌクレオチド配列を含む。
【0076】
本明細書における目的のために、用語「組み換え発現ベクター」は、コンストラクトがmRNA、タンパク質、ポリペプチド、又はペプチドをコードしているヌクレオチド配列を含み、宿主細胞内で該mRNA、タンパク質、ポリペプチド、又はペプチドを発現させるのに十分な条件下でベクターを該細胞と接触させたときに、該細胞に該mRNA、タンパク質、ポリペプチド、又はペプチドを発現させる、遺伝的に改変されたオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドのコンストラクトを意味する。本発明のベクターは、全体としては天然に存在しない。しかし、ベクターの一部が天然に存在していてもよい。本発明の組み換え発現ベクターは、DNA及びRNAが挙げられるがこれらに限定されない任意の種類のヌクレオチドを含んでいてよく、該DNA及びRNAは、一本鎖であっても二本鎖であってもよく、合成されても天然源から部分的に入手されてもよく、天然の、非天然の、又は改変されたヌクレオチドを含有していてもよい。組み換え発現ベクターは、天然に存在するヌクレオチド間結合、天然には存在しないヌクレオチド間結合、又は両方の種類の結合を含んでいてよい。好ましくは、天然には存在しないか又は改変されたヌクレオチド又はヌクレオチド間結合は、ベクターの転写も複製も妨げない。
【0077】
本発明の組み換え発現ベクターは、任意の好適な組み換え発現ベクターであってよく、任意の好適な宿主細胞を形質転換又はトランスフェクションするために用いることができる。好適なベクターとしては、プラスミド及びウイルス等、伝播及び増殖用、若しくは発現用、又は両方のために設計されたものが挙げられる。ベクターは、トランスポゾン/トランスポゼースシリーズ、pUCシリーズ(Fermentas Life Sciences)、pBluescriptシリーズ(Stratagene,LaJolla,CA)、pETシリーズ(Novagen,Madison,WI)、pGEXシリーズ(Pharmacia Biotech,Uppsala,Sweden)、及びpEXシリーズ(Clontech,Palo Alto,CA)からなる群から選択され得る。λGT10、λGT11、λZapII(Stratagene)、λEMBL4、及びλNM1149等のバクテリオファージベクターを用いてもよい。植物発現ベクターの例としては、pBI01、pBI101.2、pBI101.3、pBI121、及びpBIN19(Clontech)が挙げられる。動物発現ベクターの例としては、pEUK-Cl、pMAM、及びpMAMneo(Clontech)が挙げられる。好ましくは、組み換え発現ベクターは、トランスポゾンベクター又はウイルスベクター、例えば、レンチウイルスベクター又はレトロウイルスベクターである。
【0078】
本発明の組み換え発現ベクターは、例えば、Green及びSambrookら、前記に記載されている標準的な組み換えDNA技術を用いて調製することができる。円形又は線形である発現ベクターのコンストラクトは、原核又は真核の宿主細胞において機能する複製系を含有するように調製することができる。複製系は、例えば、ColEl、2μプラスミド、λ、SV40、ウシパピローマウイルス等に由来していてよい。
【0079】
望ましくは、組み換え発現ベクターは、制御配列、例えば、必要に応じて、そして、ベクターがDNAベースであるかRNAベースであるかを考慮して、ベクターが導入される宿主細胞の種類(例えば、細菌、真菌、植物、又は動物)に特異的な転写及び翻訳の開始及び終止のコドンを含む。
【0080】
組み換え発現ベクターは、形質転換又はトランスフェクションされた宿主細胞の選別を可能にする1以上のマーカー遺伝子を含んでいてよい。マーカー遺伝子は、殺生物剤耐性、例えば、抗生物質、重金属等に対する耐性、原栄養性を与えるための栄養要求性宿主における補完等を含む。本発明の発現ベクターに好適なマーカー遺伝子は、例えば、ネオマイシン/G418耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ヒスチジノール耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、及びアンピシリン耐性遺伝子を含む。
【0081】
組み換え発現ベクターは、TCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質をコードしているヌクレオチド配列に、又はTCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質をコードしているヌクレオチド配列に相補的であるか若しくはハイブリダイズするヌクレオチド配列に作動可能に連結しているネイティブ又は非ネイティブのプロモータを含んでいてよい。例えば、強い、弱い、誘導性、組織特異的、及び発生段階特異的なプロモータの選択は、当業者の技能の範囲内である。同様に、ヌクレオチド配列とプロモータとの組み合わせも当業者の技能の範囲内である。プロモータは、非ウイルスプロモータ、例えば、ヒト伸長因子-1αプロモータであってもよく、ウイルスプロモータ、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)プロモータ、SV40プロモータ、RSVプロモータ、及びマウス幹細胞ウイルスの末端反復配列にみられるプロモータであってもよい。
【0082】
本発明の組み換え発現ベクターは、一過的発現用、安定的発現用、又は両方のために設計することができる。また、組み換え発現ベクターは、構成的発現用又は誘導性発現用に作製することができる。
【0083】
更に、組み換え発現ベクターは、自殺遺伝子を含むように作製してもよい。本明細書で用いるとき、用語「自殺遺伝子」とは、自殺遺伝子を発現している細胞を死に至らしめる遺伝子を指す。自殺遺伝子は、該遺伝子が発現する細胞に対して剤、例えば薬物に対する感受性を付与し、そして、該細胞が該剤と接触したとき又は該剤に曝露されたときに該細胞を死に至らしめる遺伝子であってよい。自殺遺伝子は、当技術分野において公知であり、例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、シトシンデアミナーゼ、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、及びニトロレダクターゼを含む。
【0084】
本発明の別の態様は、本発明の他の態様に関して本明細書に記載する核酸又はベクターのいずれかによってコードされる単離又は精製されたTCR、ポリペプチド、又はタンパク質を提供する。
【0085】
本発明の更に別の態様は、本発明の他の態様に関して本明細書に記載する核酸又はベクターのいずれかが発現した結果得られる、単離又は精製されたTCR、ポリペプチド、又はタンパク質を提供する。
【0086】
本発明の別の態様は、更に、本明細書に記載の核酸のいずれか又は組み換え発現ベクターのいずれかを含む宿主細胞を提供する。本明細書で用いるとき、用語「宿主細胞」とは、本発明の組み換え発現ベクターを含有し得る任意の種類の細胞を指す。宿主細胞は、真核細胞、例えば、植物、動物、真菌、又は藻類であってもよく、原核細胞、例えば、細菌又は原生動物であってもよい。宿主細胞は、培養細胞又は初代細胞、即ち、生物、例えばヒトから直接単離された細胞であってよい。宿主細胞は、接着細胞又は懸濁細胞、即ち、懸濁液中で成長する細胞であってよい。好適な宿主細胞は、当技術分野において公知であり、例えば、DH5α大腸菌細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、サルVERO細胞、COS細胞、HEK293細胞等が挙げられる。組み換え発現ベクターを増幅又は複製する目的の場合、宿主細胞は、好ましくは、原核細胞、例えばDH5α細胞である。組み換え体のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質を生成する目的の場合、宿主細胞は、好ましくは、哺乳動物細胞である。最も好ましくは、宿主細胞は、ヒト細胞である。例えば、宿主細胞は、ヒトリンパ球であってよい。本発明の一態様においては、宿主細胞は、T細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、インバリアントナチュラルキラーT(iNKT)細胞、及びナチュラルキラー(NK)細胞からなる群から選択される。宿主細胞は、任意の細胞型であってよく、任意の種類の組織に由来していてよく、任意の発生段階であってよいが、宿主細胞は、好ましくは、末梢血リンパ球(PBL)又は末梢血単核細胞(PBMC)である。より好ましくは、宿主細胞は、T細胞である。
【0087】
本明細書における目的のために、T細胞は、任意のT細胞、例えば、培養T細胞、例えば初代T細胞、又は培養T細胞株由来のT細胞、例えばJurkat、SupT1等、又は哺乳動物から得られたT細胞であってよい。哺乳動物から得られる場合、T細胞は、血液、骨髄、リンパ節、胸腺、又は他の組織若しくは流体を含むがこれらに限定されない多数の供給源から得ることができる。また、T細胞は、濃縮又は精製されていてもよい。好ましくは、T細胞は、ヒトT細胞である。T細胞は、任意の種類のT細胞であってよく、任意の発生段階であってよく、CD4+/CD8+二重陽性T細胞、CD4+ヘルパーT細胞、例えば、Th1及びTh2細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、メモリーT細胞(例えば、セントラルメモリT細胞及びエフェクタメモリT細胞)、ナイーブT細胞等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
また、本明細書に記載の少なくとも1の宿主細胞を含む細胞の集団が本発明の一態様によって提供される。細胞の集団は、組み換え発現ベクターのいずれも含まない少なくとも1の他の細胞、例えば宿主細胞(例えば、T細胞)、又はT細胞以外の細胞、例えばB細胞、マクロファージ、好中球、赤血球、肝細胞、内皮細胞、上皮細胞、筋肉細胞、脳細胞等に加えて、記載される組み換え発現ベクターのいずれかを含む宿主細胞を含む不均質な集団であってよい。或いは、細胞の集団は、組み換え発現ベクターを含む(例えば、から本質的になる)宿主細胞を主に含む、実質的に均質な集団であってもよい。また、集団は、該集団の全ての細胞が、組み換え発現ベクターを含む1の宿主細胞のクローンであり、その結果、該集団の全ての細胞が組み換え発現ベクターを含む、細胞のクローン集団であってもよい。本発明の一態様においては、細胞の集団は、本明細書に記載の組み換え発現ベクターを含む宿主細胞を含むクローン集団である。
【0089】
本発明の一態様においては、集団内の細胞数を、急速に増幅させることができる。T細胞数の増幅は、例えば、米国特許第8,034,334号、同第8,383,099号、米国特許出願公開第2012/0244133号、Dudley et al.,J.Immunother.,26:332-42(2003)、及びRiddell et al.,J.Immunol.Methods,128:189-201(1990)に記載されている通り、当技術分野において公知の多数の方法のいずれかによって実現することができる。一態様においては、T細胞数の増幅は、該T細胞をOKT3抗体、IL-2、及びフィーダーPBMC(例えば、放射線照射された同種PBMC)と共に培養することによって実行される。
【0090】
本発明の態様は、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質のいずれかを生成する方法であって、該TCR、ポリペプチド、又はタンパク質が生成されるように、本明細書に記載の宿主細胞又は宿主細胞の集団のいずれかを培養することを含む方法を提供する。
【0091】
本発明のTCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組み換え発現ベクター、及び宿主細胞(その集団を含む)は、単離及び/又は精製されてもよい。用語「単離された」は、本明細書で用いるとき、その天然環境から取り出されていることを意味する。用語「精製された」は、本明細書で用いるとき、純度が増大したことを意味し、「純度」は相対的な用語であり、必ずしも絶対純度と解釈される訳ではない。例えば、純度は、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%であってもよく、約100%であってもよい。
【0092】
本発明のTCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組み換え発現ベクター、及び宿主細胞(その集団を含む)(以後、これらの全てをまとめて「本発明のTCR材料」と称する)は、医薬組成物等の組成物に製剤化してもよい。これに関して、本発明の一態様は、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、及び宿主細胞(その集団を含む)のいずれかと、薬学的に許容し得る担体とを含む医薬組成物を提供する。本発明のTCR材料のいずれかを含有する本発明の医薬組成物は、1つを超える本発明のTCR材料、例えばポリペプチド及び核酸、又は2つ以上の異なるTCRを含んでいてもよい。或いは、医薬組成物は、別の薬学的活性剤(複数可)又は薬物(複数可)、例えば、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メトトレキサート、パクリタキセル、リツキシマブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン等の化学療法剤と組み合わせて、本発明のTCR材料を含んでいてもよい。
【0093】
好ましくは、担体は、薬学的に許容し得る担体である。医薬組成物に関して、担体は、検討中の具体的な本発明のTCR材料に従来使用されているもののいずれかであってよい。投与可能な組成物を調製する方法は、当業者に公知であるか又は明らかであり、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,22nd Ed.,Pharmaceutical Press(2012)により詳細に記載されている。薬学的に許容し得る担体は、使用条件下で有害な副作用も毒性も有しないものであることが好ましい。
【0094】
担体の選択は、具体的な本発明のTCR材料によって、並びに本発明のTCR材料を投与するために使用される具体的な方法によって部分的に決定される。従って、本発明の医薬組成物の様々な好適な製剤が存在する。好適な製剤は、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、腫瘍内、又は腹腔内に投与するためのもののいずれかを含み得る。1つを超える経路を用いて本発明のTCR材料を投与してよく、特定の例では、特定の経路が別の経路よりも即時且つより有効な応答を提供し得る。
【0095】
好ましくは、本発明のTCR材料は、例えば静脈内に注射することによって投与される。本発明のTCR材料が、本発明のTCRを発現している宿主細胞であるとき、注射用の細胞のための薬学的に許容し得る担体としては、任意の等張担体、例えば、通常生理食塩水(水中約0.90%w/v NaCl、水中約300mOsm/L NaCl、又は水1リットルあたり約9.0g NaCl)、NORMOSOL R電解質溶液(Abbott,Chicago,IL)、PLASMA-LYTE A(Baxter,Deerfield,IL)、水中約5%デキストロース、又は乳酸リンゲル液を挙げることができる。一態様においては、薬学的に許容し得る担体にヒト血清アルブミンを補給する。
【0096】
投与される本発明のTCR材料の量又は用量(例えば、本発明のTCR材料が1以上の細胞である場合は細胞数)は、好適な時間枠にわたって被験体又は動物において効果、例えば治療的又は予防的応答をもたらすのに十分でなければならない。例えば、本発明のTCR材料の用量は、投与時点から約2時間以上、例えば、12~24時間又はそれ以上の期間、がん抗原(例えば、変異p53)に結合するか又はがんを検出、治療、若しくは予防するのに十分でなければならない。特定の態様においては、期間は更に長くてもよい。用量は、具体的な本発明のTCR材料の有効性及び動物(例えば、ヒト)の状態、並びに治療される動物(例えば、ヒト)の体重によって決定される。
【0097】
投与される用量を決定するための多くのアッセイが、当技術分野において公知である。例えば、それぞれ異なる用量のT細胞を与えた哺乳動物のセット間で、所与の用量の本発明のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質を発現しているT細胞を哺乳動物に投与した際に標的細胞が溶解するか又はこのようなT細胞によってIFN-γが分泌される程度を比較することを含むアッセイを用いて、哺乳動物に投与する開始用量を決定することができる。特定の用量を投与した際に標的細胞が溶解する又はIFN-γが分泌される程度は、当技術分野において公知の方法によってアッセイすることができる。
【0098】
本発明のTCR材料の用量は、具体的な本発明のTCR材料の投与に付随する可能性のある任意の有害な副作用の存在、性質、及び程度によっても決定される。典型的には、主治医が、様々な要因、例えば、年齢、体重、全体的な健康状態、食生活、性別、投与される本発明のTCR材料、投与経路、及び治療されるがんの重篤度を考慮して、各個々の患者を治療するための本発明のTCR材料の投与量を決定する。本発明のTCR材料が細胞の集団である一態様においては、注入1回あたりに投与される細胞数は、例えば、約1×106~約1×1012細胞又はそれ以上で変動し得る。特定の態様においては、1×106細胞未満を投与してもよい。
【0099】
当業者は、本発明のTCR材料を任意の数の方法で修飾してよく、その結果、該修飾を通して本発明のTCR材料の治療又は予防の有効性が増大することを容易に理解するであろう。例えば、本発明のTCR材料を、直接又は架橋を介して間接的に化学療法剤にコンジュゲートしてもよい。化合物の化学療法剤へのコンジュゲートの実施は、当技術分野において公知である。当業者は、架橋及び/又は化学療法剤が本発明のTCR材料に結合した時点で本発明のTCR材料の機能、即ち、変異p53に結合するか又はがんを検出、治療、若しくは予防する能力には干渉しない限り、本発明のTCR材料の機能に必須ではない本発明のTCR材料の部位が、架橋及び/又は化学療法剤を結合させるのに理想的な部位であることを認識する。
【0100】
本発明の医薬組成物、TCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組み換え発現ベクター、宿主細胞、又は細胞の集団は、がんを治療又は予防する方法において使用できることが企図される。特定の理論に縛られるものではないが、本発明のTCRは変異p53に特異的に結合し、その結果、TCR(又は関連する本発明のポリペプチド若しくはタンパク質)は、細胞によって発現されたとき、変異p53を発現している標的細胞に対する免疫応答を媒介することができると考えられる。これに関して、本発明の一態様は、哺乳動物におけるがんを治療又は予防する方法であって、本明細書に記載の医薬組成物、TCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質のいずれか、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、タンパク質のいずれかをコードしているヌクレオチド配列を含む任意の核酸若しくは組み換え発現ベクター、又は本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質のいずれかをコードしている組み換えベクターを含む任意の宿主細胞若しくは細胞の集団を、哺乳動物におけるがんを治療又は予防するのに有効な量、該哺乳動物に投与することを含む方法を提供する。
【0101】
本発明の一様態は、哺乳動物におけるがんの治療又は予防において用いるための、本明細書に記載の医薬組成物、TCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質のいずれか、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、タンパク質のいずれかをコードしているヌクレオチド配列を含む任意の核酸若しくは組み換え発現ベクター、又は本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質のいずれかをコードしている組み換えベクターを含む任意の宿主細胞若しくは細胞の集団を提供する。
【0102】
用語「治療する」及び「予防する」、並びにそれから派生する語は、本明細書で用いるとき、必ずしも100%、即ち、完全な治療又は予防を意味するものではない。どちらかといえば、当業者が潜在的な利点又は治療効果を有すると認識する、様々な程度の治療又は予防が存在する。これに関して、本発明の方法は、哺乳動物における任意の量の任意のレベルのがんの治療又は予防を提供することができる。更に、本発明の方法によって提供される治療又は予防は、治療又は予防されるがんの1以上の病態又は症状の治療又は予防を含み得る。例えば、治療又は予防は、腫瘍の退縮を促進することを含み得る。また、本明細書における目的のために、「予防」は、がん又はその症状若しくは病態の発生を遅らせることを包含し得る。或いは又は更に、「予防」は、がん又はその症状若しくは病態の再発を防ぐ又は遅らせることを包含し得る。
【0103】
本発明の医薬組成物、TCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組み換え発現ベクター、宿主細胞、又は細胞の集団はまた、哺乳動物におけるがんに対する免疫応答を誘導する方法において使用できることが企図される。これに関して、本発明の態様は、哺乳動物におけるがんに対する免疫応答を誘導する方法であって、本明細書に記載の医薬組成物、TCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質のいずれか、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、タンパク質のいずれかをコードするヌクレオチド配列を含む任意の核酸若しくは組み換え発現ベクター、又は本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質のいずれかをコードする組み換えベクターを含む任意の宿主細胞若しくは細胞の集団を、該哺乳動物におけるがんに対する免疫応答を誘導するのに有効な量、該哺乳動物に投与することを含む方法を提供する。
【0104】
本発明の態様は、哺乳動物におけるがんに対する免疫応答の誘導における使用のための、本明細書に記載の医薬組成物、TCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質のいずれか、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、タンパク質のいずれかをコードするヌクレオチド配列を含む任意の核酸若しくは組み換え発現ベクター、又は本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質のいずれかをコードする組み換えベクターを含む任意の宿主細胞若しくは細胞の集団を提供する。
【0105】
また、哺乳動物におけるがんの存在を検出する方法も本発明の一態様によって提供される。該方法は、(i)本明細書に記載の本発明のTCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組み換え発現ベクター、宿主細胞、細胞の集団、又は医薬組成物のいずれかを、哺乳動物由来の1以上の細胞を含む試料と接触させ、それによって、複合体を形成させることと、(ii)該複合体を検出することとを含み、該複合体の検出が、該哺乳動物におけるがんの存在を示す。
【0106】
哺乳動物におけるがんを検出する本発明の方法に関して、細胞の試料は、全細胞、その溶解物、又は全細胞溶解物の画分、例えば、核若しくは細胞質の画分、全タンパク質画分、又は核酸画分を含む試料であってよい。
【0107】
本発明の検出方法の目的のために、接触は、哺乳動物に対してインビトロ又はインビボで行ってよい。好ましくは、インビトロで接触させる。
【0108】
また、複合体の検出は、当技術分野において公知の任意の数の方法を通して行うことができる。例えば、本明細書に記載の本発明のTCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組み換え発現ベクター、宿主細胞、又は細胞の集団を、検出可能な標識、例えば、放射性同位体、フルオロフォア(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE))、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ)、及び元素粒子(例えば、金粒子)等で標識してよい。
【0109】
宿主細胞又は細胞の集団が投与される本発明の方法の目的のために、細胞は、哺乳動物にとって同種又は自己である細胞であってよい。好ましくは、細胞は、哺乳動物にとって自己である。
【0110】
本発明の方法に関して、がんは、例えば、急性リンパ球性がん、急性骨髄性白血病、胞巣状横紋筋肉腫、骨がん、脳がん、乳がん、肛門、肛門管、又は肛門直腸のがん、眼のがん、肝内胆管のがん、関節のがん、頸部、胆嚢、又は胸膜のがん、鼻、鼻腔、又は中耳のがん、口腔のがん、膣のがん、外陰部のがん、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、食道がん、子宮頸がん、消化管カルチノイド腫瘍、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、腎臓がん、喉頭がん、肝臓がん、肺がん、悪性中皮腫、黒色腫、多発性骨髄腫、上咽頭がん、非ホジキンリンパ腫、中咽頭のがん、卵巣がん、陰茎のがん、膵臓がん、腹膜、網、及び腸間膜のがん、咽頭がん、前立腺がん、直腸がん、腎がん、皮膚がん、小腸がん、軟組織がん、胃がん、精巣がん、甲状腺がん、子宮のがん、尿管がん、並びに膀胱がんのいずれかを含む任意のがんであってよい。好ましい一態様においては、がんは、変異p53を発現するがんである。がんは、配列番号1により定義される135位、175位、及び237位のうちの1以上に変異を有するp53を発現し得る。がんは、以下のヒトp53変異のうちの1以上を有するp53を発現し得る:C135Y、R175H、又はM237I。本発明の一態様においては、がんは、上皮がんである。本発明の一態様においては、がんは、胆管がん、黒色腫、結腸がん、直腸がん、卵巣がん、子宮内膜がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、神経膠芽腫、子宮頸がん、頭頸部がん、乳がん、膵臓がん、又は膀胱がんである。がんは、ヒトp53におけるC135Y、R175H、又はM237Iの変異を含むことが知られている場合がある。
【0111】
本発明の方法において言及される哺乳動物は、任意の哺乳動物であってよい。本明細書で用いるとき、用語「哺乳動物」とは、げっ歯目の哺乳動物、例えばマウス及びハムスター、並びにウサギ目の哺乳動物、例えばウサギを含むがこれらに限定されない任意の哺乳動物を指す。哺乳動物は、ネコ及びイヌを含む食肉目の哺乳動物であることが好ましい。哺乳動物は、ウシ及びブタを含む偶蹄目、又はウマを含む奇蹄目の哺乳動物であることがより好ましい。哺乳動物は、霊長目、サル目(Ceboids又はSimoids)(サル)、又は真猿亜目(ヒト及び類人猿)の哺乳動物であることが最も好ましい。特に好ましい哺乳動物は、ヒトである。
【実施例】
【0112】
以下の実施例は、本発明を更に説明するが、無論、いかなる方法でもその範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0113】
本実施例は、患者4316のTILにおける抗p53-C135Y反応性の同定について示す。
【0114】
結腸直腸がん患者4316から切除した腫瘍を24の断片に切断し、サイトカインIL-2の存在下で培養して、エクスビボでTILを成長させた。TILを標的細胞と共培養することによって、p53 C135Yを含む患者の腫瘍でみられる体細胞変異について断片(F1~F24と付番)をスクリーニングした。標的細胞は、(i)p53 C135Yを含むPPをパルスした;(ii)p53 C135YをコードするTMG RNA若しくは関係性のないTMGでトランスフェクションした;又は(iii)DMSO(ジメチルスルホキシド)(コントロール)で処理した自己DCであった。PMA(ホルボール12-ミリステート13-アセテート)/イオノマイシンで処理したTILをポジティブコントロールとした。IFN-γの生成をELISpotアッセイによって測定した。結果を
図1Aに示す。断片番号F22がp53-C135Yを認識するTILを含有すると同定された。
【0115】
断片22からのTILを解析し、p53-C135Yに対する反応性について試験した。標的細胞は、表1に示すp53-C135Yペプチドのうちの1つをパルスした自己DCであった。ネガティブコントロールとして、関係性のないペプチドKIAA1328 K386R又はDMSO(ビヒクル)をパルスした標的細胞を含めた。PMA/イオノマイシンで処理したTILをポジティブコントロールとした。共培養後、T細胞活性化マーカーである細胞表面4-1BB発現のフローサイトメトリー分析によって反応性を測定した。結果を
図1Bに示す。
図1Bに示すように、表1に示す3のp53-C135YペプチドのいずれかとTILを共培養した後に反応性が観察された。
【0116】
【0117】
実施例2
本実施例は、実施例1の反応性TILからの抗p53-C135Y TCRの単離について示す。
【0118】
反応性TILを再刺激し、単一細胞T-細胞受容体(TCR)シーケンシングのために4-1BBの上方制御によって選別して96ウェルプレートに入れた。TCR、即ち、4316-D TCRが見出された。
【0119】
TCRのアルファ鎖及びベータ鎖の可変領域の配列を、単一細胞TCRシーケンシングによって同定した。アルファ鎖及びベータ鎖の可変領域のアミノ酸配列を表2に示す。CDRを下線で示す。N末端シグナルペプチドを太字フォントで示す。
【0120】
【0121】
実施例3
本実施例は、患者4141のTILにおける抗p53-R175H反応性の同定について示す。
【0122】
結腸直腸がん患者4141からのTILを、新抗原反応性T細胞を濃縮するために体外感作に供した後、DMSO、変異体p53 R175HペプチドHMTEVVR
HC(配列番号92)、又は対応するWT p53 R175ペプチドHMTEVVR
RC(配列番号91)に対する試験を行った。T細胞活性化マーカーである4-1BB及びOX40を、フローサイトメトリーによって測定した。結果を
図2に示す。
【0123】
実施例4
本実施例は、実施例3の反応性TILからの抗p53-R175H TCRの単離について示す。
【0124】
反応性TILを再刺激し、単一細胞TCRシーケンシングのために4-1BBの上方制御によって選別して96ウェルプレートに入れた。TCR、即ち、4141 IVS TCRが見出された。
【0125】
TCRのアルファ鎖及びベータ鎖の可変領域の配列を、単一細胞TCRシーケンシングによって同定した。アルファ鎖及びベータ鎖の可変領域のアミノ酸配列を表3に示す。CDRを下線で示す。N末端シグナルペプチドを太字フォントで示す。
【0126】
【0127】
実施例5
本実施例は、患者4304のTILにおける抗p53-M237I反応性の同定について示す。
【0128】
結腸直腸がん患者4304から切除した腫瘍を24の断片に切断し、サイトカインIL-2の存在下で培養して、エクスビボでTILを成長させた。TILを標的細胞と共培養することによって、p53 M237Iを含む患者の腫瘍でみられる体細胞変異について断片(F1~F24と付番)をスクリーニングした。標的細胞は、(i)p53 M237Iを含むPPをパルスした;(ii)p53 M237IをコードするTMG RNA若しくは関係性のないTMGでトランスフェクションした;又は(iii)DMSO(コントロール)で処理した自己DCであった。PMA/イオノマイシンで処理したTILをポジティブコントロールとした。IFN-γの生成をELISpotアッセイによって測定した。結果を
図3Aに示す。断片番号F24がp53-M237Iを認識するTILを含有すると同定された。
【0129】
断片24からのTILを解析し、p53-M237Iに対する反応性について試験した。標的細胞は、
図3Aのペプチドプールを構成する個々の変異体ペプチドを独立してパルスした自己DCであった。PMA/イオノマイシンで処理したTILをポジティブコントロールとした。培地のみ及びDMSOをパルスしたDCをコントロールとした。共培養後、ELISPOTアッセイによってIFN-γの発現を測定することにより反応性を試験した。IFN-γ陽性スポットの数を表4に示す。表4に示すように、TILを変異型p53ペプチド(p53-M237I)VGSDCTTIHYNY
ICNSSCMGGMNRR(配列番号94)と共培養した後に反応性が観察された。表4中、「ブランク」は、いかなるT細胞も標的細胞も含まないブランクウェルを意味する。
【0130】
【0131】
フローサイトメトリーによって患者4304の腫瘍消化物からCD4
+CD103
+CD39
+、CD4
+CD103
-CD39
+、又はCD4
+CD103
-CD39
-細胞を選別した。この選別に使用したゲーティングスキームを
図3Bに示す。
【0132】
選別された細胞集団を標的細胞と独立して共培養することによって、選別された集団中の細胞数を増加させた。標的細胞は、(i)p53 M237Iを含むPPをパルスした;(ii)p53 M237IをコードするTMG RNA若しくはTMGコントロールでトランスフェクションした;又は(iii)DMSO(コントロール)で処理した自己DCであった。TMGコントロールは、患者4304と同じ変異を共有していない他の患者によって発現された関係性のない変異をコードしていた。単独で培養したTILをコントロールとした。共培養後、ELISPOTによってIFN-γの分泌を測定することにより反応性を試験した。結果を
図3Cに示す。選別されたCD4
+CD103
+CD39
+又はCD4
+CD103
-CD39
+細胞を、p53 M237Iを含有するPPをパルスした標的細胞と共培養した後に、反応性が観察された。
【0133】
実施例6
本実施例は、実施例5の反応性TILからの抗p53-M237I TCRの単離について示す。
【0134】
反応性TILを再刺激し、単一細胞TCRシーケンシングのために4-1BBの上方制御によって選別して96ウェルプレートに入れた。3のTCR、即ち、4304 TCR-2、4304 TCR-4、4304 TCR-Kがみられた。
【0135】
TCRのアルファ鎖及びベータ鎖の可変領域の配列を、単一細胞TCRシーケンシングによって同定した。アルファ鎖及びベータ鎖の可変領域のアミノ酸配列を表5に示す。CDRを下線で示す。N末端シグナルペプチドを太字フォントで示す。
【0136】
【0137】
【0138】
実施例7
本実施例は、実施例2、4、及び6のそれぞれのTCRをコードしているレトロウイルスベクターの構築について示す。
【0139】
表2、3、及び5のTCRのα鎖及びβ鎖の可変領域をコードしているヌクレオチド配列を取得し、コドンを最適化した。TCRβVDJ領域をマウスTCRβ定常鎖に融合させた。TCRαVJ領域をマウスTCRα定常鎖に融合させた。特定の理論又は機序に縛られるものではないが、ヒトのTCRα鎖及びTCRβ鎖の定常領域を対応するマウス定常領域で置換すると、TCRの発現及び機能性が改善すると考えられる(Cohen et al.,Cancer Res.,66(17):8878-86 (2006))。
【0140】
さらに、マウスのTCRα及びTCRβの定常鎖をシステインで修飾した。マウスTCRα定常鎖に膜貫通型疎水性変異を導入した。特定の理論又は機序に縛られるものではないが、これら修飾は、導入されたTCR鎖を優先的に対合させ、TCRの表面発現及び機能性を高めると考えられる(Cohen et al.,Cancer Res.,67(8):3898-903(2007);Haga-Friedman et al.,J.Immu.,188:5538-5546(2012))。
【0141】
MSGV1ベクターの5’NcoI部位へのTCR発現カセットのクローニングを促進し、コザック配列を導入するために、TCRVα鎖のN末端シグナルペプチドにおける2番目のアミノ酸をヒスチジン(H)、ロイシン(L)、又はリジン(K)に変更し、TCRVβ鎖のN末端シグナルペプチドにおける2番目のアミノ酸をアラニン(A)に変更した。
【0142】
定常領域に対するこれら修飾を含む、5のTCRのそれぞれの全長のα鎖及びβ鎖を表5に示す。表6中、CDRを下線で示し、定常領域をイタリック体で示し、定常領域の修飾アミノ酸残基を下線及び太字で示す。
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
表6のTCRのα鎖及びβ鎖をコードしているヌクレオチド配列を、以下の発現カセット構成を有するMSGV1ベースのレトロウイルスベクターにクローニングした:5’NcoI-VDJβ-mCβ-フリン/SerGly/P2A-VJα-mCα-EcoRI3’。
【0147】
TCRβ鎖及びTCRα鎖は、フリンSer/Gly P2AリンカーRAKRSGSGATNFSLLKQAGDVEENPGP(配列番号80)によって分離されていた。特定の理論又は機序に縛られるものではないが、リンカーは、2本の鎖の発現効率を同等にすると考えられる(Szymczak et al.,Nat.Biotechnol.,22(5):589-94(2004))。
【0148】
レトロウイルスベクターのTCR発現カセットは、5’から3’に向かって、リンカーによって分離されたTCRβ鎖及びTCRα鎖をコードしていた。それぞれの各TCR発現カセットがコードするアミノ酸配列を表7に示す。表7中、CDRを下線で示し、定常領域をイタリック体で示し、リンカーを太字で示す。
【0149】
【0150】
【0151】
実施例8
本実施例は、実施例7のレトロウイルスベクターによってコードされている4316-D TCRの結合活性について示す。
【0152】
健常ドナーの末梢血リンパ球(PBL)を実施例7の4316-D TCRレトロウイルスベクターで形質導入した(エフェクター細胞)。標的細胞は、連続希釈した25merペプチドp53-C135Y TCTYSPALNKMFYQLAKTCPVQLWV(配列番号90)又はWT p53-C135 TCTYSPALNKMFCQLAKTCPVQLWVU(配列番号89)をパルスした自己未成熟DCであった。
【0153】
エフェクター細胞を標的細胞と共培養することによって、CD4 4316-D TCRの結合活性を測定した。4-1BBを発現しているマウスTCR定常領域発現T細胞のパーセンテージを測定することによって、反応性を測定した。結果を
図1Cに示す。形質導入細胞はp53-C135Yを認識した。
【0154】
実施例9
本実施例は、実施例7のレトロウイルスベクターによってコードされる4316-D TCRが、HLA-DRB1*07:01/HLA-DRA1*01:01ヘテロ二量体によって提示されるp53-C135Yを認識することを実証する。
【0155】
エクソーム及びmRNAシーケンシングを用いて、患者4316が発現したMHCクラスII分子を決定した。発現したMHCクラスII分子を表8に示す。
【0156】
【0157】
エフェクター細胞は、実施例7の4316-D TCRレトロウイルスベクターで形質導入した同種PBLであった。標的細胞は、表8に示すHLAクラスIIヘテロ二量体のうちの1で独立してトランスフェクションし、DMSO、野生型p53-C135 25-merペプチドTCTYSPALNKMFCQLAKTCPVQLWV(配列番号89)(1μg/mL)、又はp53-C135Y 25-merペプチドTCTYSPALNKMFYQLAKTCPVQLWV(配列番号90)(1μg/mL)をパルスした30,000のCOS7細胞であった。
【0158】
20,000のエフェクター細胞を標的細胞と18時間共培養した後、ELISPOTアッセイによってIFN-γの発現を測定することにより反応性を試験した。4316-D TCR形質導入細胞を、HLA-DRA*01:01/HLA-DRB1*07:01ヘテロ二量体をコードするヌクレオチド配列で形質導入したp53-C135Y 25mer負荷標的細胞と共培養したときにのみ、反応性が観察された。これらデータは、4316-D TCRがDRB1*07:01によって制限されていることを示す。
【0159】
実施例10
本実施例は、実施例7のレトロウイルスベクターによってコードされる4141 IVS TCRの結合活性及び特異性について示す。
【0160】
エフェクター細胞は、実施例7の4141 IVS TCRレトロウイルスベクターで形質導入した健常ドナーPBLであった。標的細胞は、表9に示す濃度の連続希釈されたME p53-R175HペプチドHMTEVVRHC(配列番号92)又はWT p53-R175ペプチドHMTEVVRRC(配列番号91)をパルスしたHLA-A*02+T2白血病細胞であった。
【0161】
【0162】
20,000のエフェクター細胞を100,000の標的細胞と18時間共培養することによって、4141 IVS TCRの結合活性及び特異性を判定した。IFN-γの生成をELISpotアッセイによって測定した(N=3)。結果は4141 IVS TCRで形質導入した細胞が、100pg/mL以上の濃度でパルスされたME p53-R175Hペプチドを認識したことを示す。4141 IVS TCRで形質導入した細胞は、WT p53-R175ペプチドを認識しなかった。これらデータは、4141 IVS TCRが変異体p53 R175Hに高度に特異的であることを示す。
【0163】
実施例11
本実施例は、実施例7のレトロウイルスベクターによってコードされる4141 IVS TCRが、HLA-A*02:01によって提示されるp53-R175Hを認識することを実証する。
【0164】
エクソーム及びmRNAシーケンシングを用いて、患者4141が発現したMHCクラスI分子を決定した。発現したMHCクラスI分子を表10に示す。
【0165】
【0166】
エフェクター細胞は、実施例7の4141 IVS TCRレトロウイルスベクターで形質導入した健常ドナーPBLであった。標的細胞は、表10に示すHLAクラスI分子のうちの1つで独立してトランスフェクションし、DMSO、ME p53-R175HペプチドHMTEVVRHC(配列番号92)(1μg/mL)、又はWT p53-R175ペプチドHMTEVVRRC(配列番号91)(1μg/mL)をパルスした30,000のCOS7細胞であった。表10中のHLA-ALLとは、表10に示す6のHLAクラスI分子を全て発現している標的細胞を指し、これをポジティブコントロールとした。
【0167】
20,000のエフェクター細胞を標的細胞と18時間共培養した後、ELISPOTアッセイによってIFN-γの発現を測定することにより反応性を試験した。4141 IVS TCR形質導入細胞を、HLA-A*02:01をコードしているヌクレオチド配列で形質導入したp53-R175H 9mer負荷標的細胞と共培養したときにのみ、反応性が観察された。これらデータは、4141 IVS TCRがHLA-A*02:01によって制限されていることを示す。
【0168】
実施例12
本実施例は、実施例7のそれぞれのレトロウイルスベクターによってコードされる4304 TCR-4、4304 TCR-K、又は4304 TCR-2の結合活性について示す。
【0169】
健常ドナーPBLを、実施例7の4304 TCR-4、4304 TCR-K、又は4304 TCR-2レトロウイルスベクターで独立して形質導入した(エフェクター細胞)。標的細胞は、連続希釈した25merペプチドp53-M237I VGSDCTTIHYNYICNSSCMGGMNRR(配列番号94)又はWT p53-M237 VGSDCTTIHYNYMCNSSCMGGMNRR(配列番号93)をパルスした自己未成熟DCであった。
【0170】
エフェクター細胞を標的細胞と共培養することによって、TCRの結合活性を測定した。4-1BBを発現しているマウスTCR定常領域発現CD3
+CD4
+T細胞のパーセンテージを測定することによって、反応性を測定した。結果を
図3D~Fに示す。形質導入された細胞はp53-M237Iを認識した。
【0171】
実施例13
本実施例は、実施例7のそれぞれのレトロウイルスベクターによってコードされている4304 TCR-4、4304 TCR-K、又は4304 TCR-2が、HLA-DRB1*01:01/HLA-DRA1*01:01ヘテロ二量体によって提示されるp53-M237Iを認識することを実証する。
【0172】
エクソーム及びmRNAシーケンシングを用いて、患者4304が発現したMHCクラスII分子を決定した。発現したMHCクラスII分子を表11に示す。
【0173】
【0174】
エフェクター細胞は、実施例7のそれぞれのレトロウイルスベクターによってコードされている4304 TCR-4、4304 TCR-K、又は4304 TCR-2が形質導入された健常ドナーPBLであった。標的細胞は、表11に示すHLAクラスIIヘテロ二量体のうちの1つで独立してトランスフェクションし、DMSO、ME p53-M237IペプチドVGSDCTTIHYNYICNSSCMGGMNRR(配列番号94)(1μg/mL)、又はWT p53-M237ペプチドVGSDCTTIHYNYMCNSSCMGGMNRR(配列番号93)(1μg/mL)をパルスした30,000のCOS7細胞であった。単独で培養したエフェクター細胞及びPMA/イオノマイシンで処理したエフェクター細胞をコントロールとした。DMSOで処理し、表11に示したHLAクラスIIヘテロ二量体全てでトランスフェクションした標的細胞をコントロールとした。標的細胞はまた、コントロールとして、表11に示したHLAクラスIIヘテロ二量体全てでトランスフェクションし、WT p53-M237ペプチドをパルスした。
【0175】
20,000のエフェクター細胞を標的細胞と18時間共培養した後、ELISPOTアッセイによってIFN-γの発現を測定することにより反応性を試験した。4304 TCR-4、4304 TCR-K、又は4304 TCR-2で形質導入した細胞を、HLA-DRA1*01:01/HLA-DRB1*01:01ヘテロ二量体をコードするヌクレオチド配列で形質導入したp53-M237I 25mer負荷標的細胞と共培養したときにのみ、反応性が観察された。これらデータは、4304 TCR-4、4304 TCR-K、及び4304 TCR-2がHLA-DRA1*01:01/HLA-DRB1*01:01ヘテロ二量体によって制限されていることを示す。
【0176】
実施例14
本実施例は、4141 IVS TCRが、HLA及びp53変異特異的に腫瘍細胞を認識することを示す。
【0177】
実施例7の4141 IVS TCRレトロウイルスベクターで形質導入した健常ドナーT細胞を、p53 R175H若しくはHLA-A
*02:01又はその両方について陽性である腫瘍細胞株のパネルと共培養した。フローサイトメトリーによって4141 IVS TCR
+CD8
+T細胞においてT細胞活性化マーカーである4-1BB及びOX40を測定した。結果を
図4A~4Bに示す。結果は、TCR形質導入細胞は、p53 R175H及びHLA-A
*02:01の両方について陽性である腫瘍細胞株を認識したことを示した。TCR形質導入細胞は、p53 R175H又はHLA-A
*02:01のいずれかについて陰性である腫瘍細胞株を認識しなかった。
【0178】
実施例15
本実施例は、p53 C135Y反応性4316-D TCRによる自己腫瘍細胞認識について示す。
【0179】
健常ドナーの末梢血リンパ球に実施例7の4316-D TCRレトロウイルスベクターをレトロウイルスによって形質導入した。形質導入細胞を標的細胞と16時間共培養することによって、形質導入細胞が自己腫瘍細胞を認識する能力を試験した。標的細胞は、IFN-γの非存在下又はIFN-γの存在下において、DMSO、実施例8のWT p53、又は実施例8の変異体p53ペプチドをパルスした患者4316からの自己PDX腫瘍細胞であった。T細胞活性化マーカーである4-1BB及びOX40を用いてフローサイトメトリーによってT細胞の活性化を測定した。結果を
図6に示す。結果は、形質導入T細胞が、IFN-γ及び変異体p53ペプチドの両方で処理された標的細胞と共培養したときに4-1BB及びOX40の発現を上方制御したことを示す。
【0180】
実施例16
本実施例は、4141 IVS TCRが前臨床異種移植マウスモデルにおいて抗腫瘍活性を発揮することを示す。
【0181】
2頭の健常ドナー(健常ドナー1及び健常ドナー2)からのPBLを、実施例7の4141 IVS TCRレトロウイルスベクターで独立して形質導入した。前臨床マウスモデルを用いて、形質導入細胞の抗腫瘍活性を4141-TCR1a2(米国特許出願第17/620,942号に開示)で形質導入したPBLと比較した。雌性NSGマウスに、p53 R175H変異及びHLA-A
*02:01を天然で発現するTYK-nu卵巣がん細胞を200万移植した。2週間後、移植した腫瘍の大きさが約30mm
2に達した時点で、マウスを無作為化し、ビヒクル(PBS)、p53 Y220Cを標的とする関係性のないTCRで形質導入したT細胞1,000万、又は4141 IVS TCRで形質導入したT細胞1,000万で処理した(N=5)。ACT処理後、これらマウスにヒト組換えインターロイキン2(IL-2)(180,000IU)を1日3回静脈内注射した。このプロセスを
図7Aに示す。ACT後30日間にわたり、マウスの平均腫瘍サイズを評価し、4141-TCR1a2で形質導入した細胞で処理したマウスの平均腫瘍サイズと比較した。この実験は、2頭の健常ドナー(健常ドナー1及び健常ドナー2)からの形質導入PBLを用いて2回行った。これら実験の結果を
図7B~7Cに示す。4141 IVS TCR発現T細胞で処理したマウスは、健常ドナー1及び健常ドナー2の両実験において、PBS又は関係性のないTCRで処理したマウスに比べて腫瘍成長の著しい遅延を示した。4141 IVS TCRによる処理の結果、4141-TCR1a2による処理と比較して優れた抗腫瘍活性が得られた。
【0182】
刊行物、特許出願及び特許を含む、本明細書に引用した全ての参考文献は、それぞれの参考文献が参照によって組込まれることが個々に且つ具体的に示されているのと同程度及びその全体が本明細書に記載されているのと同程度まで、参照によって本明細書に組込まれる。
【0183】
本発明の説明に関して(特に、以下の特許請求の範囲に関して)、用語「a」及び「an」及び「the」及び「少なくとも1」並びに同様の指示対象の使用は、本明細書に特記しないか文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方をカバーすると解釈すべきである。1以上の事項の列挙の後での用語「少なくとも1」の使用(例えば、「A及びBのうち少なくとも1」)は、本明細書に特記しないか又は文脈と明らかに矛盾しない限り、列挙した事項から選択された1の事項(A若しくはB)又は列挙した事項のうち2以上の任意の組合せ(A及びB)を意味すると解釈すべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含有する(containing)」は、特記しない限り、オープンエンドの用語(即ち、「~を含むがそれらに限定されない」を意味する)と解釈すべきである。本明細書の値の範囲の記述は、本明細書に特記しない限り、その範囲内に入る各個別の値に個々に言及する省略方法として働くことのみを意図しており、各個別の値は、それが本明細書に個々に記述されているかのように本明細書に組込まれる。本明細書に記載の全ての方法は、本明細書に特記しないか又は文脈と特に明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施できる。本明細書に提供される任意の及び全ての例又は例示的語句(例、「等(such as)」)の使用は、本発明をよりよく説明することのみを意図しており、特段特許請求されない限り、本発明の範囲に限定を課すものではない。本明細書の全ての語句は、特許請求されていない任意の要素を本発明の実施に必須のものとして示していると解釈すべきではない。
【0184】
発明を実施するための、発明者が知る最良の形態を含む、本発明の好ましい態様が本明細書に記載される。これらの好ましい態様のバリエーションは、上述の説明を読めば当業者に明らかとなり得る。本発明者らは、当業者がかかるバリエーションを適宜用いることを予期しており、本発明者らは、本明細書に具体的に記載されたのとは異なる方法で本発明が実施されることを意図している。従って、本発明は、適用法によって許容されるとおり、本明細書に添付した特許請求の範囲に記載の主題の全ての改変及び均等物を含む。更に、その全ての可能なバリエーションでの上記要素の任意の組合せが、本明細書に特記しないか又は文脈と特に明らかに矛盾しない限り、本発明によって包含される。
【配列表】
【国際調査報告】