(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】熱管理を改善した予燃焼室点火プラグ
(51)【国際特許分類】
H01T 13/16 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
H01T13/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568512
(86)(22)【出願日】2022-04-26
(85)【翻訳文提出日】2023-12-22
(86)【国際出願番号】 EP2022060997
(87)【国際公開番号】W WO2022238105
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】102021204751.3
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】カスケ,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ブランクマイスター,マティアス
【テーマコード(参考)】
5G059
【Fターム(参考)】
5G059AA03
5G059AA10
5G059CC02
5G059CC03
5G059FF08
5G059GG05
5G059KK23
(57)【要約】
本発明は、中央電極(2)および少なくとも1つの接地電極(3)と、ハウジング(4)と、前記中央電極(2)を前記ハウジング(4)に対し電気絶縁している絶縁体(5)と、少なくとも1つのキャップ穴(60)を備えたキャップ(6)と、所定のガス容積(V)を備えた予燃焼室(7)とを含む予燃焼室点火プラグに関する。前記絶縁体(5)は足領域(50)を有し、前記足領域は、軸線方向(X-X)において足長さ(L)にわたって前記予燃焼室(7)内へ突出して、前記ガス容積(V)と接触している。前記足長さ(L)に対する前記ガス容積(V)の比率(R)は、R=40ないし300mm
2の範囲内である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-中央電極(2)および少なくとも1つの接地電極(3)と、
-ハウジング(4)と、
-前記中央電極(2)を前記ハウジング(4)に対し電気絶縁している絶縁体(5)と、
-少なくとも1つのキャップ穴(60)を備えたキャップ(6)と、
-所定のガス容積(V)を備えた予燃焼室(7)と、
を含み、
-前記絶縁体(5)が足領域(50)を有し、前記足領域が、軸線方向(X-X)において足長さ(L)にわたって前記予燃焼室(7)内へ突出して、前記ガス容積(V)と接触しており、
-前記足長さ(L)に対する前記ガス容積(V)の比率Rが、R=40ないし300mm
2の範囲内である、
予燃焼室点火プラグ。
【請求項2】
前記比率Rが80ないし200mm
2の範囲内にあり、特に85ないし135mm
2の範囲内にある、請求項1に記載の予燃焼室点火プラグ。
【請求項3】
前記足長さ(L)が3ないし4mmの範囲の長さであり、且つガス容積(V)が350ないし400mm
3の範囲であるとき、前記比率Rが87.5ないし133.3mm
2の範囲内にあり、特に100mm
2±10mm
2の範囲内にある、請求項1~2のいずれか一項に記載の予燃焼室点火プラグ。
【請求項4】
前記絶縁体(5)の前記足領域(50)の前記足長さ(L)が、隙間(9)の隙間長さ(L1)と前記足領域の予燃焼室長さ(L2)との和によって構成され、前記隙間(9)は前記絶縁体(5)と前記ハウジング(4)との間に形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の予燃焼室点火プラグ。
【請求項5】
前記予燃焼室長さ(L2)が前記隙間長さ(L1)よりも大きい、請求項4に記載の予燃焼室点火プラグ。
【請求項6】
前記隙間長さ(L1)が前記足長さ(L)のほぼ1/3である、請求項4または5に記載の予燃焼室点火プラグ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の予燃焼室点火プラグを含んでいる内燃機関。
【請求項8】
前記内燃機関が移動型内燃機関である、請求項7に記載の内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予燃焼室の領域で熱最適化を行った、特に移動型内燃機関のための予燃焼室点火プラグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
予燃焼室点火プラグは、従来技術から種々の構成のものが知られている。従来技術では、予燃焼室点火プラグは従来主に定置型ガス機関で使用され、定置型ガス機関は、通常比較的高い負荷を持ったただ1つの作動点でのみ作動する。この場合、この作動点に対しそれぞれの予燃焼室点火プラグが設計される。しかしながら、定置型ガス機関のためのこの種の予燃焼室点火プラグは、移動型内燃機関に対して、たとえば自動車においてそのまま使用することはできない。というのは、移動型の分野で使用すると、内燃機関は作動中に異なる負荷範囲で、特に部分負荷範囲でも作動されるからである。異なる負荷範囲を持つ移動型作動により、予燃焼室点火プラグの予燃焼室のキャップまたは壁領域に、望ましくない蓄熱が発生することがあり、これが不意のグロー点火につながることがある。しかし、この種の望ましくないグロー点火は内燃機関を損傷させるとともに、内燃機関の燃料消費量および排気機能に悪影響を及ぼすことがある。
【発明の概要】
【0003】
これに対し、請求項1の構成要件を備えた本発明による予燃焼室点火プラグには、予燃焼室点火プラグの作動時の望ましくないグロー点火を回避できるという利点がある。これによって、この種の望ましくないグロー点火による内燃機関の損傷の危険が回避される。さらに、特に移動型内燃機関に対し、点火時点を個別に選択でき、また作動中に変化させることもでき、しかもこれによって点火プラグにおける熱問題は発生しない。したがって、予燃焼室点火プラグのキャップまたは予燃焼室の領域での望ましくない蓄熱を回避でき、その結果この予燃焼室点火プラグは、特に移動型内燃機関での作動のために設置されている。その際、それにもかかわらず、この予燃焼室点火プラグは簡潔に構成されていて、特に大量生産に適しており、これによって製造コストを著しく低減させることができる。これは、本発明によれば、予燃焼室点火プラグが中央電極と少なくとも1つの接地電極とを有していることによって達成される。さらに、予燃焼室点火プラグは、ハウジングと、中央電極をハウジングに対し電気絶縁している絶縁体と、少なくとも1つのキャップ穴を備えたキャップとを含んでいる。その際、予燃焼室点火プラグの予燃焼室は、キャップの内部にしてハウジングの部分領域内にある。その際、予燃焼室はガスで充填されているガス容積Vを有する。さらに、絶縁体は足領域を有し、足領域は予燃焼室内へ突出して、軸線方向X-Xに足長さLを有し、この足長さにおいて絶縁体の外壁領域は予燃焼室の壁領域を形成している。したがって、絶縁体の足領域はガス容積Vと接触している。その際、足領域の軸線方向の足長さLに対するガス容積Vの比率Rは、R=V:L=40ないし300mm2の範囲内にある。比率Rがこの範囲内にあれば、仮に内燃機関が一定の負荷範囲で作動されずに、異なる負荷範囲で、特に部分負荷範囲で作動されても、予燃焼室点火プラグの作動中に蓄熱が発生しないよう保証することができる。
【0004】
なお、予燃焼室のガス容積Vは、ガスで充填されている容積として定義されている。この場合、ガス容積は特に接地電極の数量および大きさ、並びに、中央電極および接地電極の幾何学的構成によっても影響される。キャップ穴の容積は、予燃焼室のガス容積Vにカウントしない。
【0005】
このようにして、キャップまたは予燃焼室の領域での蓄熱による望ましくないグロー点火によって発生する誤点火を回避できるので、予燃焼室点火プラグによる確実な、改善された燃焼を達成できる。したがって、内燃機関の効率および内燃機関の排気物質を著しく改善することができる。
【0006】
従属項は、本発明の有利な更なる構成を示している。
【0007】
好ましくは、足領域の足長さLに対するガス容積Vの比率RはR=80ないし200mm2の範囲内にあり、さらに有利にはR=85ないし135mm2の範囲内にある。
【0008】
本発明の更なる有利な構成によれば、足領域の足長さLが3ないし4mmの範囲であり、且つガス容積Vが350ないし400mm3の範囲であるとき、Rは87.5ないし133.3の範囲内にある。その際、特に有利には範囲Rは100mm2±10mm2の範囲内にある。
【0009】
さらに有利には、絶縁体の足領域の足長さLは、隙間長さL1と予燃焼室長さL2との和によって形成される。その際、隙間長さL1は絶縁体とハウジングとの間の領域に設けられ、この領域には小さな半径方向隙間が形成されている。その際、予燃焼室長さL2は足領域の残りの長さであり、この残りの長さは予燃焼室内へ突出し、絶縁体とハウジングとの間の隙間の領域での半径方向間隔よりも大きな半径方向間隔を有している。
【0010】
特に有利には、予燃焼室長さL2は隙間長さL1よりも大きい。好ましくは、隙間長さL1は足長さLのほぼ1/3である。
【0011】
さらに、本発明は本発明による予燃焼室点火プラグを備えた移動型内燃機関に関する。移動型内燃機関は、特に有利には、ガソリンまたはガス状燃料、たとえば天然ガスまたは水素で作動する。本発明による予燃焼室点火プラグを使用することにより、内燃機関の効率、および、異なる負荷状態での、特に種々の部分負荷状態での排気機能も、著しく改善することができる。
【0012】
次に、添付の図面を参照して、本発明の有利な実施例を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の有利な実施例による予燃焼室点火プラグの部分断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、
図1を参照して、本発明の第1の有利な実施例による予燃焼室点火プラグ1を詳細に説明する。
【0015】
図1から明らかなように、予燃焼室点火プラグ1は、予燃焼室7を定義しているハウジング4とキャップ6とを含んでいる。キャップ6は、たとえば溶着によりハウジング4と結合されている。
【0016】
予燃焼室点火プラグ1は、さらに、中央電極2と複数の接地電極3とを含んでいる。接地電極3は、ハウジング4の開口部40内に固定されている。なお、接地電極の数量は好ましくは1と4の間である。
【0017】
さらに、キャップ6に複数のキャップ穴60が設けられ、これらのキャップ穴は、予燃焼室7と内燃機関の燃焼室8との間でのガス交換を可能にしている。内燃機関は、好ましくは、異なる負荷状態で、すなわち完全負荷と種々の部分負荷状態で作動する移動型内燃機関である。
【0018】
さらに
図1から明らかなように、予燃焼室7はガス容積Vを有している。なお、ガス容積Vはガスで充填されている予燃焼室7の容積である。予燃焼室7のこのガス容積Vは、キャップ穴60を通じて燃料・空気・混合物で充填され、それ故ガス容積Vの大きさに応じてより多くの、または、より少ないエネルギーを受容することができる。キャップ穴60の容積は、ガス容積Vにカウントしない。
【0019】
その際、中央電極2をハウジング4から電気的に絶縁している絶縁体5は、予燃焼室点火プラグ1の軸線方向X-Xにおいて予燃焼室7内へ突出している足領域50を有している。なお、絶縁体5の足領域50は、その外壁が予燃焼室7内にあるガスと接触して存在しているような領域である。
【0020】
その際、
図1から明らかなように、足領域50は予燃焼室点火プラグの軸線方向X-Xにおいて足長さLを有し、この足長さで足領域50は予燃焼室のガス容積Vと接触して存在している。
【0021】
この場合、
図1からさらに明らかなように、絶縁体5とハウジング4との間には、環状隙間として形成されている隙間9が設けられている。その際、隙間9は軸線方向X-Xにおいて隙間長さL1を有している。その際、残りの足長さLは絶縁体5の足領域50の予燃焼室長さL2によって形成される。その際、隙間長さL1は好ましくは足長さLのほぼ1/3である。
【0022】
さて、驚くべきことに、足長さLに対するガス容積Vの比率R(R=V:L)が予燃焼室7の熱収支に対する極めて重要な指標であることが明らかになった。この場合、比率は、特に、足領域50でもって予燃焼室7内へ突出している絶縁体5がその熱特性に基づいて、通常は金属から製造されているハウジング4とは異なる熱伝導係数を有するという役割を果たしている。これによって、足長さLは予燃焼室7の熱収支に著しく影響する。特に、絶縁体5により予燃焼室7から軸線方向X-Xへ合目的的に熱を逃がすことができる。
【0023】
その際、比率Rが40ないし300mm2の範囲内にあれば、予燃焼室7の内部で一時的に蓄熱の事態になることを確実に阻止できる。これによって、予燃焼室7の領域でのいわゆるヒートポケットを阻止でき、よって望ましくないグロー点火を防止できる。これによって、内燃機関を損傷から防護することができる。
【0024】
R=V/L=85ないし135mm2であれば、特に有利である。
【0025】
特に、内燃機関が移動型内燃機関として構成されていれば、内燃機関を種々の負荷状態で作動させることができ、しかもこれによってキャップ6および予燃焼室7の領域での予燃焼室点火プラグの熱収支に顕著に悪影響することはない。
【0026】
このように、ガス容積Vと足長さLとの比率Rによって予燃焼室7の熱収支に驚くほどに好影響を与えることができる。
【0027】
その際、移動型内燃機関に対しては、足領域50の足長さLを3ないし4mmの範囲の長さに選定し、加えて予燃焼室7のガス容積Vを350ないし400mm3の範囲に選定するのが特に有利である。
【0028】
このようにして、移動型内燃機関はその完全なエンジン特性マップにおいて信頼性をもって作動することができ、その結果本発明による予燃焼室点火プラグは特に自動車への適用に特に適している。特に、移動型内燃機関の各負荷範囲における本発明による驚くべき規定により、確実な点火を達成できる。
【符号の説明】
【0029】
1 予燃焼室点火プラグ
2 中央電極
3 接地電極
4 ハウジング
5 絶縁体
6 キャップ
7 予燃焼室
9 隙間
50 足領域
L 足長さ
L1 隙間長さ
L2 予燃焼室長さ
R 足長さLに対するガス容積Vの比率(R=V:L)
V ガス容積
X-X 予燃焼室点火プラグの軸線方向
【手続補正書】
【提出日】2023-12-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-中央電極(2)および少なくとも1つの接地電極(3)と、
-ハウジング(4)と、
-前記中央電極(2)を前記ハウジング(4)に対し電気絶縁している絶縁体(5)と、
-少なくとも1つのキャップ穴(60)を備えたキャップ(6)と、
-所定のガス容積(V)を備えた予燃焼室(7)と、
を含み、
-前記絶縁体(5)が足領域(50)を有し、前記足領域が、軸線方向(X-X)において足長さ(L)にわたって前記予燃焼室(7)内へ突出して、前記ガス容積(V)と接触しており、
-前記足長さ(L)に対する前記ガス容積(V)の比率Rが、R=40ないし300mm
2の範囲内である、
予燃焼室点火プラグ。
【請求項2】
前記比率Rが80ないし200mm
2の範囲内に
ある、請求項1に記載の予燃焼室点火プラグ。
【請求項3】
前記比率Rが85ないし135mm
2
の範囲内にある、請求項1に記載の予燃焼室点火プラグ。
【請求項4】
前記足長さ(L)が3ないし4mmの範囲の長さであり、且つガス容積(V)が350ないし400mm
3の範囲であるとき、前記比率Rが87.5ないし133.3mm
2の範囲内に
ある、請求項1~
3のいずれか一項に記載の予燃焼室点火プラグ。
【請求項5】
前記足長さ(L)が3ないし4mmの範囲の長さであり、且つガス容積(V)が350ないし400mm
3
の範囲であるとき、前記比率Rが100mm
2
±10mm
2
の範囲内にある、請求項1~3のいずれか一項に記載の予燃焼室点火プラグ。
【請求項6】
前記絶縁体(5)の前記足領域(50)の前記足長さ(L)が、隙間(9)の隙間長さ(L1)と前記足領域の予燃焼室長さ(L2)との和によって構成され、前記隙間(9)は前記絶縁体(5)と前記ハウジング(4)との間に形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の予燃焼室点火プラグ。
【請求項7】
前記予燃焼室長さ(L2)が前記隙間長さ(L1)よりも大きい、請求項
6に記載の予燃焼室点火プラグ。
【請求項8】
前記隙間長さ(L1)が前記足長さ(L)のほぼ1/3である、請求項
6に記載の予燃焼室点火プラグ。
【請求項9】
請求項1~
3のいずれか一項に記載の予燃焼室点火プラグを含んでいる内燃機関。
【請求項10】
前記内燃機関が移動型内燃機関である、請求項
9に記載の内燃機関。
【国際調査報告】