(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】屈折力シフトの制御が改善された、レンズレットを有するレンズをコーティングする方法
(51)【国際特許分類】
G02C 7/02 20060101AFI20240416BHJP
G02C 7/00 20060101ALI20240416BHJP
G02B 1/00 20060101ALI20240416BHJP
G02C 13/00 20060101ALI20240416BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20240416BHJP
【FI】
G02C7/02
G02C7/00
G02B1/00
G02C13/00
G02B1/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568606
(86)(22)【出願日】2022-05-03
(85)【翻訳文提出日】2023-11-07
(86)【国際出願番号】 EP2022061887
(87)【国際公開番号】W WO2022233896
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598142955
【氏名又は名称】エシロール アンテルナショナル
【氏名又は名称原語表記】ESSILOR INTERNATIONAL
【住所又は居所原語表記】147,rue de Paris,F-94277 Charenton-le-Pont,France
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【氏名又は名称】赤木 啓二
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】オリビエ デュク
(72)【発明者】
【氏名】エレーヌ ギユー
【テーマコード(参考)】
2H006
2K009
【Fターム(参考)】
2H006BA03
2K009AA15
2K009DD02
2K009DD06
(57)【要約】
本開示は、レンズレットで少なくとも部分的に覆われた主面を有する光学レンズをコーティングする方法に関する。光学レンズは、コーティング流体中に浸漬され、水平な第1の方向に向かって主面が面するように定められる初期位置に到達するように引き出され、光学レンズをコーティングしているコーティング流体は乾燥される。光学レンズを引き出した後、且つコーティング流体の乾燥前又は乾燥中に、光学レンズを、第1の方向に対して80°~100°の角度を有する最終方向に向かって主面が上向きに面するように定められる最終位置に傾け、第1の方向及び最終方向は垂直平面を定める。代わりに又は組み合わせて、光学レンズを引き出している間に、光学レンズを機械式ブレードに沿って摺動させることにより光学レンズからコーティング流体の一部が除去される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズレットで少なくとも部分的に覆われた主面を有する光学レンズをコーティングする方法であって、
前記方法は、
- 前記光学レンズをコーティング流体中に浸漬することと、
- 前記光学レンズを前記コーティング流体から引き出して、水平な第1の方向(X
0)に向かって前記主面が面するように定められる初期位置(1)に到達させることと、
- 前記光学レンズをコーティングしている前記コーティング流体を乾燥させることと、
を含み、
前記方法は、前記光学レンズを引き出した後、且つ前記コーティング流体の乾燥前又は乾燥中に、前記光学レンズを、前記第1の方向(X
0)に対して80°~100°の角度を有する最終方向(X
F)に向かって前記主面が上向きに面するように定められる最終位置(3)に傾けることを含み、前記第1の方向(X
0)及び前記最終方向(X
F)は垂直平面(X
0X
F)を定める、方法。
【請求項2】
前記光学レンズを前記最終位置に傾けることは、
前記光学レンズを、前記初期位置(1)から、前記垂直平面(X
0X
F)内の第2の方向(X
i)に向かって前記主面が上向きに面するように定められる中間位置(2)に傾けることであって、前記第2の方向(X
i)は、前記第1の方向(X
0)に対して105°~125°の角度を有する、ことと、次いで、
前記光学レンズを前記中間位置(2)から前記最終位置(3)まで傾けることと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光学レンズを前記コーティング流体から引き出すことは、一定の引出し速度で行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記光学レンズを前記コーティング流体から引き出すことは、徐々に減少する引出し速度で行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、前記光学レンズを引き出した後、且つ傾ける前に、最大で3秒に等しい所定時間だけ待って、前記光学レンズをコーティングしている前記コーティング流体の一部が滴り落ちることを可能にすることを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記光学レンズを傾けることは、滑らかな連続移動に従って行われる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記光学レンズをコーティングしている前記コーティング流体を乾燥させることは、前記光学レンズの前記主面における温度を制御することを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記光学レンズをコーティングしている前記コーティング流体を乾燥させることは、前記光学レンズの前記主面におけるガス流量を制御することを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
レンズレットで少なくとも部分的に覆われた主面を有する光学レンズをコーティングする方法であって、前記方法は、
前記光学レンズをコーティング流体中に浸漬することと、
前記光学レンズを前記コーティング流体から引き出して、水平な第1の方向(X
0)に向かって前記主面が面するように定められる初期位置(1)に到達させることと、
前記光学レンズをコーティングしている前記コーティング流体を乾燥させることと、を含み、
前記方法は、前記光学レンズを引き出している間に、前記光学レンズを機械式ブレードに沿って摺動させることによって前記光学レンズから前記コーティング流体の一部を除去することを含む、方法。
【請求項10】
前記方法は、前記光学レンズを引き出した後、且つ前記コーティング流体の乾燥前又は乾燥中に、前記光学レンズを、前記第1の方向(X
0)に対して80°~100°の角度を有する最終方向(X
F)に向かって前記主面が上向きに面するように定められる最終位置(3)に傾けることを含み、前記第1の方向(X
0)及び前記最終方向(X
F)は垂直平面(X
0X
F)を定める、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
処理ユニットにアクセス可能であり、かつ前記処理ユニットによって実行されたときに請求項1~10のいずれか一項に記載の方法の少なくとも一部を前記処理ユニットに実行させる、1つ以上の記憶された命令シーケンス、を含むコンピュータプログラム。
【請求項12】
請求項11に記載のコンピュータプログラムの1つ以上の記憶された命令シーケンスを記憶している、非一時的記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼科光学の分野に属する。本開示は全般的には光学レンズのコーティングに関する。
【0002】
具体的には、レンズレットで少なくとも部分的に覆われた主面を有する光学レンズをコーティングするための方法、並びに対応するコンピュータプログラム、記憶媒体及び処理回路が開示される。
【背景技術】
【0003】
眼科産業において、光学レンズに表面処理を施すことが何十年にもわたって知られている。
【0004】
例えば、一部のレンズ処方は、目の保護のために遮光機能を必要とする。色付けが、透明なレンズを遮光レンズに変換する最も一般的な方法である。レンズを形成する材料に応じて、光学レンズを大量に染色することは必ずしも可能ではない。例えば、ポリカーボネートは、染料分子を容易に吸収することがない。したがって、ポリカーボネートベースの光学レンズは、色付けのために、染料分子を容易に吸収する色付け可能なハードコーティングに依存する。
【0005】
光学レンズをハードコーティングでコーティングするために、最も一般的な方法は、浸漬コーティング及びスピンコーティングである。
【0006】
浸漬コーティング法に関する既知の再発生している問題は、結果として生じるハードコーティングの厚さを制御することである。
【0007】
いくつかの用途では、ベースレンズ基材上にマイクロレンズ等の複数のレンズレットを設けて、光学物品の屈折力の局所変化を提供することが望ましいことが分かっている。例えば、米国特許出願公開第2017/0131567号明細書から、レンズの表面上に形成された複数のマイクロレンズを備えるレンズであって、マイクロレンズによって提供される屈折力の局所変化によって近視の進行を抑制又は遅延させることができる、レンズが既知である。
【0008】
これとの関連で、その表面のうちの少なくとも一面上にレンズレットを備える基材をコーティングすることが、レンズレットにおける結果として生じる屈折力に影響を及ぼす。この影響は、基材を製造するときに事前にレンズレットの屈折力を調整することにより補償できる。しかし、そのような調整は、ハードコーティングの特定の予想される厚さの影響を補償するためにのみ計算できる。
【0009】
その結果、レンズレットにおける屈折力へのハードコーティングの影響を、レンズレットの屈折力を均一に調整することにより補償する場合、ハードコーティングの厚さが光学レンズの至る所で完全に均一であると想定することが更に必要である。
【0010】
更に、所与の球面レンズレットにわたってハードコーティングの厚さが均一でない場合、ハードコーティングによって非球面性が導入され、そのようなレンズレットは着用者にとって歪んだように見える。
【0011】
これに関連して、コーティング層の厚さに関する許容誤差を厳しくする必要がある。これは、コーティング層の厚さの不均一性から生じるレンズレットのいかなる変形をも最小化することを可能にできる。その結果、その主面のうちの少なくとも一面上にレンズレットを備える光学レンズの球面性又は非球面性がより良好に制御され得る。これは、全ての最終製品の生産の信頼性及び効率を高めることができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、添付の独立請求項によって定義される。本明細書で開示される概念の追加の特徴及び利点が、以下の説明に記述されている。
【0013】
本開示は、その状況を改善することを目的としている。この目的のため、本開示は、レンズレットで少なくとも部分的に覆われた主面を有する光学レンズをコーティングする方法について記載し、その方法は、
- 光学レンズをコーティング流体中に浸漬することと、
- 光学レンズをコーティング流体から引き出して、水平な第1の方向に向かって主面が面するように定められる初期位置に到達させることと、
- 光学レンズをコーティングしているコーティング流体を乾燥させることと、を含み、
本方法は、光学レンズを引き出した後、且つコーティング流体の乾燥前又は乾燥中に、光学レンズを、第1の方向に対して80°~100°の角度を有する最終方向に向かって主面が上向きに面するように定められる最終位置に傾けることを含み、第1の方向及び最終方向は垂直平面を定める。
【0014】
初期位置、すなわち垂直位置では、流体は、重力の効果により光学レンズの下側エッジ(下側端部)に向かって流れる傾向がある。レンズレットを複雑な構造体であると考えると、同じ効果がレンズレットのスケールで当てはまり、その結果、流体の量はより多くなり、したがってレンズレットの下側エッジで過剰な厚さを有する傾向がある。
【0015】
光学レンズを傾けることにより、流体は、その上にレンズレットが配置される、光学レンズの主面全体にわたって、より良好に広がる傾向がある。特に、光学レンズの主面上の所与のレンズレットを考慮すると、実質的に水平な最終位置に光学レンズがある場合、流体はレンズレットの表面上にわたってより一様な厚さを有する傾向がある。
【0016】
したがって、流体でコーティングされた、レンズレットを有する光学レンズを、実質的に水平の最終位置に傾け、次いで、そのような最終位置にある間にコーティング流体を乾燥させることにより、レンズレットを有する光学レンズがもたらされ、そのハードコーティングは、従来技術において知られているよりも一様な厚さを有する。
【0017】
一実施例では、光学レンズを最終位置に傾けることは、以下を含む:
光学レンズを、初期位置から、垂直平面内の第2の方向に向かって主面が上向きに面するように定められる中間位置に傾けることであって、第2の方向は、第1の方向に対して105°~125°の角度を有する、こと、次いで、
光学レンズを中間位置から最終位置まで傾けること。
【0018】
初期位置では、コーティング流体は下向きの所与の方向に流れることを考慮すると、中間位置では、コーティング流体を反対方向に逆流させることが可能である。このような中間位置は、乾燥前に、光学レンズの主面全体にわたって、より具体的には各特定のレンズレットの表面全体にわたって、比較的粘性のあるコーティング流体を均等に広げるためには特に興味深い。
【0019】
このように均一に広げることの結果として、レンズレットの外観及び結果としてもたらされる光学レンズの光学的機能が、ハードコーティングの存在により均一に影響を受ける。一様な厚さを有するハードコーティングの影響は、非一様な厚さを有するハードコーティングの影響よりもより容易に補償できる。
【0020】
一実施例では、光学レンズをコーティング流体から引き出すことは、一定の引出し速度で行われる。
【0021】
一実施例では、光学レンズをコーティング流体から引き出すことは、徐々に減少する引出し速度で行われる。
【0022】
引出し速度は、コーティング層の一様性に影響を及ぼす調整可能パラメータの一例である。特定の一定の引出し速度を、又は引出し速度の特定の減速を選択することは、特に粘性及び表面張力の観点でのコーティング流体の物理的性質、及び基材への物理的接着の観点でのその相互作用の物理的性質に依存する選択である。
【0023】
一実施例では、本方法は、光学レンズを引き出した後、且つ傾ける前に、最大で3秒に等しい所定時間だけ待って、光学レンズをコーティングしているコーティング流体の一部が滴り落ちることを可能にすることを含む。
【0024】
コーティング流体の一部が滴り落ちるようにすることにより、光学レンズ上に残っているコーティング流体の総量が減少し、乾燥後に、より薄いハードコーティング層がもたらされる。
【0025】
一実施例では、光学レンズを傾けることは、滑らかな連続移動に従って行われる。
【0026】
滑らかな連続移動により、初期位置における下側エッジに位置する光学レンズの一部分に向かってコーティング流体が流れることを徐々に止めることが可能になり、次いで後退させることが可能になり、かつレンズレットで覆われた主面にわたって均一に広がることが可能になる。
【0027】
一実施例では、光学レンズをコーティングしているコーティング流体を乾燥させることは、光学レンズの主面における温度を制御することを含む。
【0028】
典型的には、ハードコーティング層を所定の時間で乾燥させるように溶媒を特定の速度で蒸発させるために、単一の温度平坦部、又は一連の増加する温度平坦部が選択されてもよい。
【0029】
一実施例では、光学レンズをコーティングしているコーティング流体を乾燥させることは、光学レンズの主面におけるガス流量を制御することを含む。
【0030】
ガス流を確立することは、蒸発した溶媒を排気することを可能にする。したがって、ガスは飽和状態からは遠いままであり、溶媒の蒸発はドライハードコーティングが形成されるまで続きうる。
【0031】
別の態様では、レンズレットで少なくとも部分的に覆われた主面を有する光学レンズをコーティングする方法が提案され、本方法は、
- 光学レンズをコーティング流体中に浸漬することと、
- 光学レンズをコーティング流体から引き出して、水平な第1の方向に向かって主面が面するように定められる初期位置に到達させることと、
- 光学レンズをコーティングしているコーティング流体を乾燥させることと、を含み、
本方法は、光学レンズを引き出している間に、光学レンズを機械式ブレードに沿って摺動させることによって光学レンズからコーティング流体の一部を除去することを含む。
【0032】
機械式ブレードは、さもなければ光学レンズの底部に蓄積して、乾燥後にコーティング層の局所的な過剰な厚さを引き起こすことになる、過剰な量のコーティング流体を除去することを可能にする。
【0033】
一実施例では、本方法は、光学レンズを引き出した後、且つコーティング流体の乾燥前又は乾燥中に、光学レンズを、第1の方向に対して80°~100°の角度を有する最終方向に向かって主面が上向きに面するように定められる最終位置に斜けることを含み、第1の方向及び最終方向は垂直平面を定める。
【0034】
これは、実際に、提案される両方の態様を組み合わせ、それによって、その主面のうちの少なくとも一面上にレンズレットを備えハードコーティングで覆われている光学レンズであって、ハードコーティングの厚さが光学レンズの表面全体にわたってかつ各特定のレンズレットの表面にわたって特に一様である光学レンズを実現することに関して、複合的な利点を提供することに対応する。
【0035】
本発明の実施形態は、コンピュータプログラムを更に提供し、これは、処理ユニットにアクセスすることが可能で、かつ処理ユニットにより実行されたときに提案される方法の少なくとも一部を処理ユニットに実行させる1つ以上の記憶された命令シーケンスを含む。
【0036】
本発明の実施形態は、上記のコンピュータプログラムの1つ以上の記憶された命令シーケンスを記憶する記憶媒体を更に提供する。
【0037】
本発明の実施形態は、メモリに接続されておりかつ少なくとも1つ以上のモータとの通信インターフェースに接続された処理ユニットを備える処理回路を更に提供し、この処理回路は、少なくとも、1つ以上のモータに命令して、レンズレットで少なくとも部分的に覆われている主面を有する光学レンズの位置及び/又は向きを制御させることによって、上記方法を実現するように構成されている。
【0038】
上記の方法、コンピュータプログラム、記憶媒体及び処理回路は、光学レンズの主面をコーティングするコーティング層を一様にすることを可能にし、前述する主面はレンズレットで少なくとも部分的に覆われている。
【0039】
本明細書で提供される記載及びその利点をより完全に理解するために、ここで、添付の図面及び詳細な説明に関連して以下の簡単な説明を参照し、同様の参照番号は、同様の部品を表す。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1は、例示的実施形態による、光学レンズを単一ステップで傾けることを示す。
【
図2】
図2は、例示的実施形態による、光学レンズを2ステップで傾けることを示す。
【
図3】
図3は、乾燥中のコーティングの不必要な流れに起因する非一様な厚さを有する層でコーティングされた光学レンズの外観を表す。
【
図4】
図4は、例示的実施形態による、
図3の光学レンズよりも、より一様な厚さを有する層でコーティングされた光学レンズの外観を表す。
【
図5】
図5は、例示的実施形態による、例示的な処理回路を表す。
【
図6】
図6は、例示的実施形態による、コンピュータで実施される方法のフローチャートを表す。
【
図7A-7D】
図7A-7Cは、それぞれ、例示的実施形態による、真っ直ぐな機械式ブレードの側面図、正面図、拡大正面図を表す。
図7Dは、例示的実施形態による、別の真っ直ぐな機械式ブレードの拡大正面図を表す。
【
図8A-8C】
図8A-8Cは、それぞれ、例示的実施形態による、湾曲した機械式ブレードの側面図、拡大側面図、及び正面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本開示は、レンズレットで少なくとも部分的に覆われた主面を有する光学レンズ、好ましくは眼科用レンズの、ハードコーティングの厚さの一様性を制御するという同じ課題を解決する代替の手法について記載する。これら手法は、もちろん結合されてもよい。
【0042】
その最終結果は、そのハードコーティングがレンズレットの光学的機能に均一な影響又は屈折力シフトをもたらす光学レンズである。そのような影響は、レンズレットを製造するときにレンズレットの光学的機能を適宜均一にオフセットさせることにより上流で容易に補償できる。
【0043】
光学レンズの構造的な態様は、以降で説明される。光学レンズは、光学レンズの主面上の凸状前側(物体側とも呼ばれる)上に、又は凹状後側(眼球側とも呼ばれる)上に、又は主面の両側上に配置されてもよいレンズレットを備える。
【0044】
レンズレットは、それらが配置される主面においてバンプ及び/又は窪みを形成し得る。レンズレットの輪郭は、円形、又は多角形、例えば六角形であってもよい。
【0045】
より具体的には、以下では、レンズレットは、光学デバイスの屈折力の局所変化を誘起する離散的な光学素子である。
【0046】
より具体的には、レンズレットは、マイクロレンズであってもよい。マイクロレンズは球面、トーリックであってもよく、又は非球面形状を有してもよく、回転対称であってもなくてもよい。マイクロレンズは、単焦点、円柱度数又は非焦点を有し得る。好ましい実施形態では、近視又は遠視の進行を阻止するために、レンズレット又はマイクロレンズを使用することができる。その場合、ベースレンズ基材は、近視又は遠視を矯正する屈折力を提供するベースレンズを備え、レンズレット又はマイクロレンズはそれぞれ、装着者が近視を有する場合、ベースレンズの屈折力よりも大きな屈折力を提供してもよく、又は装着者が遠視を有する場合、ベースレンズの屈折力よりも小さい屈折力を有してもよい。
【0047】
レンズレット又はマイクロレンズはまた、フレネル構造、各々がフレネル構造を定めるマイクロレンズなどの回折構造、永続的な技術的なバンプ、又は位相シフト要素であってもよい。それは、マイクロプリズム等の屈折光学素子、及び小さな突起若しくはキャビティ等の光分散光学素子、又は基材上に凹凸を生み出す任意のタイプの素子であり得る。
【0048】
レンズレット又はマイクロレンズは、米国特許出願公開第2021109379A1号明細書に記載されているようなπ-フレネルレンズレットであり、すなわち、その位相関数が、名目波長においてπ位相ジャンプを有するフレネルレンズレットであり得る。これは、その位相ジャンプが2πの複数倍の値である一焦点フレネルレンズとは対照的である。そのようなレンズレットは、不連続な形状を有する構造体を含む。換言すれば、そのような構造体の形状は、レンズレットが属する光学レンズの主面のベースレベルからの距離の観点での標高関数により説明でき、その関数は不連続を呈するか、又はその導関数が不連続を呈する。
【0049】
本発明のレンズレットは、0.5マイクロメートル(μm)以上且つ1.5ミリメートル(mm)以下の直径を有する円に内接可能な輪郭形状を有してもよい。
【0050】
本発明のレンズレットは、それらが配置されている主面と直角をなす方向に測定したときに、0.1μm以上且つ50μm以下である最大高さを有する。その主面は、表面と定義されることができ、平面、球面、円筒、又は更に複雑な表面であることができ、全ての微細構造体の中心位置を含む。この主面は、レンズ内に微細構造体が埋め込まれているときは、仮想表面であり得る、又は、微細構造体が埋め込まれないときは、眼用レンズの物理的な外面に近い又は同一であり得る。そのとき、微細構造体の高さは、この主面への局所的な垂直軸を使用し、微細構造体の各点について、この軸に沿った、主面に対する最大の正の偏差と最小の負の偏差との差を計算することにより決定することができる。
【0051】
レンズレットは、周期的な又は擬似周期的なレイアウトを有してもよいが、ランダムな位置を有してもよい。レンズレットの例示的レイアウトは、一定の格子ステップを有する格子、ハニカムレイアウト、複数の同心リング、例えば微細構造体間にスペースがない、隣接、であってもよい。
【0052】
これら構造体は、強度、曲率、又は光偏差において光学波面の修正を提供することができ、ここで、波面の強度は、構造体が吸収性することができ且つ波面強度を0%~100%の範囲で局所的に吸収することができるように構成され、曲率は、構造体が波面曲率を±20ジオプタの範囲で局所的に修正することができるように構成され、光偏差は、構造体が光を±1°~±30°の範囲の角度で局所的に散乱することができるように構成されている。
【0053】
構造体間の距離は、構造体(別個の微細構造体)の0倍(隣接)~3倍の範囲であり得る。
【0054】
今日では、光学レンズに、通常はハードコーティングを介して、様々なタイプの追加機能を設けることができる。ハードコーティングは、例えば銀、硫化亜鉛、氷晶石などから構成されるフィルムを積層した層で作製される、以前に使用されていたソフトコーティングよりも一般に優れている。実際、ハードコーティングは堅牢であり、そのエッジは、水分に曝されたとき及び通常使用時に、ソフトコーティングよりも劣化の影響を受けにくく、波長の透過率は、ソフトコーティングと比較して非常に優れており、時間経過と共に及び使用を通して一定のままである。
【0055】
光学レンズ上にハードコーティングを塗布するために、浸漬コーティング技術が使用されてもよい。光学レンズを浸漬コーティングすることは、最初に、流体で充填されたタンクに光学レンズを浸漬することを伴う。そのような流体は、その一例がワニスであり、揮発性溶媒中のコーティング材料の溶液である。コーティングが主面のうちの1つに、又はそのような表面の一部にだけ塗布される場合、例えば、光学レンズの残部を、後で剥がすことになるフィルムで覆うことが可能である。浸漬された後、光学レンズをタンクから引き出し乾燥させる。溶媒の蒸発により、コーティング材料は光学レンズを覆う硬質層を形成する。そのような蒸発は、ガス流を用いることにより、並びに周囲圧力及び周囲温度の制御により加速できる。
【0056】
特定の量のコーティング材料が光学レンズ上に塗布されること、及び、その量のコーティング材料が広げられて概ね均一な厚さを有する層を形成することを確実にすることが不可欠である。特に、層は、あらゆる所与のレンズレットの表面上に均一な厚さを有するべきである。そのために、全てのステージにおいて様々なパラメータが制御可能である。
【0057】
例えば、コーティング流体の組成は、その物理的性質、特に粘性及び表面張力に影響を及ぼす。これらは両方とも、コーティング流体が乾燥前に複雑な表面によってどの程度良好に保持されるかに影響する。したがって、コーティング流体の組成は、溶媒及び溶質の性質という観点で、並びに溶質の濃度という観点で、制御可能なパラメータの一例である。本明細書との関連で、コーティング流体は、その主面の一方又は両方上にレンズレットを備える光学レンズをコーティングするのに好適な組成を有することが常に想定される。
【0058】
例えば、光学レンズがタンクから引き出される速度と、その変動とが、コーティングが光学レンズの表面上にどのように保持されるかに影響を及ぼす。したがって、制御可能なパラメータの例は、タンクから光学レンズを引き出す際に、一定速度で行うか、又はそうではなく、ハードコーティングの厚さ均一性を達成するにはより好ましい、徐々に減少する速度で実施するかである。
【0059】
光学レンズが流体タンク内に浸漬されて、次いでタンクから完全に引き出されるときに生じる問題は、重力に起因して、光学レンズをコーティングしている流体が下向きに流れ、下側エッジに蓄積する傾向があるということである。これは光学レンズの全体的スケールにおいて真であるが、単一のレンズレットのより小さいスケールにおいても真であり、したがって、全てのレンズレットの下側エッジにメニスカスが形成される。
【0060】
下側エッジでのメニスカスの形成は、流体が乾燥した後の局所的な過剰な厚さを意味する。換言すれば、コーティング層は、厚さ勾配を呈し、レンズレットの屈折力に不均一な影響を及ぼす。
【0061】
そのような厚さ変動を防止する、又は少なくとも低減させるために、一実施形態では、コーティング流体の乾燥前及び/又は乾燥中に、引き出された、流体がコーティングされた光学レンズを、傾けることが提案される。
【0062】
ここで
図1を参照すると、そのような光学レンズを単一ステップで傾けることの例が示される。
【0063】
流体タンクから光学レンズを完全に引き出した時点で、光学レンズは初期位置(1)において垂直に保持される。初期位置(1)の想定される定義は、そのような位置において、各主面の輪郭が、対応する垂直平面内にあるということである。例えばレンズレットが前方主面上に配置されることを考慮した、想定される代替の定義は、初期位置(1)において、前方主面の幾何中心における、前方主面に対する法線が、水平な初期方向X0に向くということである。
【0064】
互いに直交する標準基底ベクトル(X,Y,Z)であって、Xが初期方向X0に対応する第1の方向を指し、Yが水平な第2の方向を指し、Zが、垂直な第3の方向を指す、標準基底ベクトル(X,Y,Z)を定義することができる。そのような場合、光学レンズが初期位置(1)にある場合、主面の輪郭はそれぞれ、その輪郭に属する点によって、かつベクトルY及びZによって定義され得る、対応する平行平面内にある。
【0065】
光学レンズは、初期位置(1)から、光学レンズが水平になる最終位置(3)に到達するまで傾けられる。
図1では、傾けることは、単一工程で実施され、初期位置(1)から最終位置(3)への光学レンズの回転であり、その回転は、ベクトルYが指す軸を中心とする80°~100°の角度によるものである。
【0066】
この回転は、例えば、初期位置(1)から最終位置(3)への90°の角度の傾けと考えられる。そのような場合、最終位置(3)では、各主面の輪郭は、その輪郭に属する点によって、かつベクトルX及びYによって定義され得る対応する水平平面内にある。前方主面の幾何中心における、前方主面に対する法線は、最終方向XFに向き、これは、垂直であり、上に向き、ベクトルZに対応する。
【0067】
光学レンズを80°~100°の角度で傾けて最終位置(3)に到達させることにより、光学レンズをコーティングしているコーティング流体の層が平坦になり、その厚さは、レンズレットが配置される主面全体にわたってより一様になる。いかなる局所的な過剰な厚さも最小化される。
【0068】
光学レンズは、初期位置(1)を起点として、直ちに、又は、例えば3秒以下に設定された所定時間の後のいずれかに、上述したように傾けられて、過剰な量のコーティング流体がタンク内へと滴って戻ることを可能にすることができる。そのような所定時間は、制御可能なパラメータの例である。
【0069】
傾けることそれ自体は特定の速度で実施されてもよく、そのような傾ける速度は、制御可能なパラメータの他の例である。例えば、回転移動は、3~10秒の所定時間以内に一定速度で実施されてもよい。
【0070】
乾燥は、例えば、最終位置(3)にある間に、1つ以上の温度平坦部を含み得る所定の温度プログラムを光学レンズに適用することにより、約15~20分間で実施されてもよい。このプロセス全体にわたって、光学レンズはガス流に曝されてもよい。温度プログラム、並びにガスの性質及び流量の全てが、制御可能なパラメータの更なる例であり、これらを調整して、特定のコーティング流体のための最適化されたパラメータセットを形成すること、及び/又はコーティング層の特定の目標厚さを達成することができる。
【0071】
ここで
図2を参照すると、そのような光学レンズを2ステップで傾けることが示される。
【0072】
図2では、光学レンズは、
図1のように同じ初期位置(1)から同じ最終位置(3)に傾けられるが、両方の位置の間における移行は単調ではない。
【0073】
むしろ、光学レンズは、最初に、ベクトルYが指す軸を中心とする光学レンズの回転の結果、中間位置(2)に到達する。この回転は、その後に到達する、初期位置(1)に対する最終位置(3)における目標の角度差である80°~100°を超える。そうなったときに初めて、光学レンズは逆に傾けられて最終位置(3)に到達する。
【0074】
代わりに、中間位置(2)において、前方主面の幾何中心における、前方主面に対する法線が中間方向Xiに向いて、初期方向X0に対して105°~125°の角度をなす。
【0075】
初期位置(1)にあるときの光学レンズの下側エッジは、そのような中間位置(2)にあるときの上側エッジになる。これにより、コーティング流体が、傾ける前とは反対方向に流れることが可能になる。
【0076】
したがって、光学レンズを中間位置(2)まで回転させることにより、光学レンズを最終位置(3)にまでだけ回転させることとは対照的に、コーティングのいかなる局所的な過剰な厚さも更に後退する。したがって、コーティング流体が高い粘性に起因してゆっくりとしか流れることができない場合は、上述したような単一ステップで傾けることと比較して、2ステップで傾けることにより、コーティング層の比較的良好な平坦化が可能になる。
【0077】
ここで
図3を参照すると、これは、円形の輪郭を有する球面レンズレット(4)を有するコーティングされた光学レンズの写真であり、レンズレットは、同心リングの形状で凸表面上に隣接して配置されている。
【0078】
図3の光学レンズは、コーティング流体タンクに垂直に浸漬されることにより浸漬コーティングされ、次いで垂直に引き出され、垂直のまま乾燥されており、このプロセスでは傾けられることはない。
【0079】
図3は、とりわけ、水平に置かれたコーティングされた光学レンズの凸面の一部分を描いている。
図3の左側は、乾燥プロセス中での光学レンズの上側に対応する。逆に、
図3の右側は、乾燥プロセス中での光学レンズの下側に対応する。
【0080】
各レンズレットが、その光学特性に有害な、同様に変形した三日月形の外観を有することが分かる。実際、光学レンズを引き出した後にコーティング流体を乾燥させている間に、コーティング流体の流れに起因して、各レンズレット(4)の下方末端においてメニスカスが系統的に形成された。そのようなメニスカスの固化により、領域(5)において、レンズレットをコーティングしているハードコーティングの、三日月形状の局所的な過剰な厚さに至る。
【0081】
ここで
図4を参照すると、これは別のコーティングされた光学レンズの写真である。そのようなレンズは、光学レンズがコーティング流体で充填されたタンクから引き出されて初期位置に到達し、次いで、初期位置に対して80°~100°の角度を有する最終位置に向かって傾けられ、最後に、最終位置に保持されている間に乾燥されるという点だけが、
図3に示すものとは異なる。
【0082】
図4では、各レンズレット(4)が略球形の外観を有し、
図3で見られた過剰な厚さの三日月形領域がないことが分かる。したがって、傾けることに起因して、光学レンズをコーティングした後に、レンズレットの一般的な外観が保持され、すなわち、コーティング前のレンズレットの実際の形状に一致する。より重要なことに、レンズレットの光学特性は、単一のレンズレットのスケール、及びレンズレット同士のスケールの両方で、すなわち光学レンズ全体のスケールで、ハードコーティングにより均一に影響を受ける。
【0083】
図1及び
図2に関連して上述し、
図4に描かれるような光学レンズに至る方法は、オペレータによって手動で実施されてもよく、又は半自動化されてもよく、又は更には完全自動化されてもよい。様々な制御可能なパラメータの異なる値をテストし、次いで、例えば、
図4に示されるような写真を捕捉することにより、結果として生じるコーティングされた光学レンズの品質をチェックし、最終的に、制御可能なパラメータの最適化されたセットを承認するためには、半自動化が必要である。完全自動化は、その主面のうちの少なくとも一面上にレンズレットを有し、複数のレンズレットにわたって均一な厚さでコーティング層を有する、コーティングされた光学レンズの大量生産を確実に可能にするための鍵である。
【0084】
典型的には、光学レンズは、レンズホルダにより保持されてもよく、レンズホルダは、モータ、例えばステッパモータを動作させることにより、並進及び回転させることができる。並進及び回転移動は、半自動化の場合はオペレータにより制御される、又は完全自動化の場合は予めプログラムされている、のいずれかであってもよい。
【0085】
ここで
図5を参照すると、例示的な処理回路が示され、
図6を参照すると、1つ以上の命令を含むコンピュータプログラムの一般的なアルゴリズムが示される。命令は、そのような処理回路により実行されてもよく、そのようにして、レンズレットで少なくとも部分的に覆われた主面を有する光学レンズをコーティングする方法が実施されてもよい。
【0086】
図5に示す処理回路(100)は、処理ユニット(101)を備え、これは、上記のコンピュータプログラムを記憶できる非一時的メモリ(102)に作動可能に結合されており、かつ光学レンズを保持するレンズホルダを並進及び/又は回転させるモータを作動させることを少なくとも可能にする通信インターフェース(103)に作動可能に結合されている。通信インターフェース(103)は、人間-コンピュータインターフェースとの相互作用に由来する命令を受信することを更に可能にしてもよい。通信インターフェース(103)は、光学レンズにおける温度を制御するための熱生成器、及び/又は光学レンズにおけるガス流量を制御するための弁、を動作させることを更に可能にしてもよい。前述したように、温度及びガス流量は、コーティングされた光学レンズの乾燥を最適化する目的の制御可能なパラメータであり得る。
【0087】
処理ユニットは、保持された光学レンズを、コーティング流体で充填されたタンク内に浸漬する(10)ように、レンズホルダを並進させるための1つ以上のモータを作動させる。
【0088】
次いで、処理ユニットは、保持された光学レンズをタンクから引き出す(20)ように、レンズホルダを並進させるための1つ以上のモータを作動させる。そのような並進移動は、初期速度及び加速度によって定義でき、これらは両方とも、制御可能な又は調整可能なパラメータである。
【0089】
任意選択で、最大で3秒の調整可能な待ち時間により、過剰なコーティング流体が光学レンズからタンクに滴り落ちて戻ることを可能にできる。
【0090】
次いで、処理ユニットは、引き出された光学レンズを回転させるように、レンズホルダを回転させるための1つ以上のモータを作動させる。回転は、例えば
図1に示すような単一ステップ回転(31)と、例えば
図2に示すような2ステップ回転(32)との間で選択されてもよい。回転速度及び加速度は、調整可能パラメータである。
【0091】
最後に、調整可能温度プログラムの後に、例えば、空気、又はコーティングを酸化から保護されるべきであるときはアルゴンなどの不活性ガス、であってもよいガスの調整可能な流量下で、光学レンズが乾燥される(40)。
【0092】
その結果、光学レンズは、レンズレットにわたって均一な厚さを有する乾燥したドライハードコーティング層で覆われる。
【0093】
次いで、このプロセスは、同じ光学レンズ上で、同じコーティング流体を用いて、場合によっては異なる値の調整可能パラメータを用いて、繰り返されてもよく、それによって、二層ハードコーティングを形成する。
【0094】
このプロセスはまた、同じ光学レンズ上で、異なるコーティング流体を用いて、場合によっては異なる値の調整可能パラメータを用いて、繰り返されてもよく、それによって、多層ハードコーティングを形成し、これらの層は、異なる組成を有し異なる性質を提供する。
【0095】
機械式ドロップブレイキングデバイスとも呼ばれる機械式ブレードを使用して、光学レンズの主面上のコーティング膜を一様にすることが更に提案され、そのような主面はレンズレットを備える。
【0096】
そうするために、光学レンズは、レンズの底部と機械式ブレードとの間に永続的な接触が存在するように維持される。そのように保持されているレンズは、浸漬コーティングされ、次いで、均一な又は累進的な引出し速度で引き出される。
【0097】
レンズがコーティング流体から引き出されているとき、表面張力現象(毛管力)に起因して、コーティング膜は機械式ブレードにより「引っ張り出される」。その結果、コーティング層の厚さ、並びにその厚さがレンズレットの見かけの形状及び屈折力に及ぼす影響は一様になる。
【0098】
換言すれば、このような機械式ブレードが光学レンズに永続的に接触するように配置された場合、コーティング流体で充填されたタンクから光学レンズを能動的に引き出している間に機械式ブレードが過剰なコーティング流体を受動的に除去する結果として、コーティング層の厚さは一様になる。
【0099】
コーティング層の厚さは、
図1及び
図2に示すように光学レンズを能動的に回転させることにより更に一様になり得る。
【0100】
ここで
図7A、
図7B、
図7C、
図7D、
図8A、
図8B及び
図8Cを参照すると、異なるタイプの機械式ブレード(7)の異なる図が示され、コーティング流体で充填されたタンクから光学レンズ(6)が引き出されているときに、その主面のうちの一面上にレンズレットを備える光学レンズ(6)に接触していることが分かる。
【0101】
具体的には、
図7A、
図7B及び
図7Cは、面取りのない真っ直ぐな機械式ブレードの異なる図を示す。
図7Dは、面取りを有する真っ直ぐな機械式ブレードを示す。
図8A、
図8B及び
図8Cは、湾曲した機械式ブレードの、又は凹凸状の機械式ブレードの湾曲部分の異なる図を示す。
【0102】
機械式ブレードは、金属製であり、又はコーティング流体の流れを可能にする他の材料から作製されている。ブレードの幅は小さく、例えば0.5mm~2mmの幅を有し、それによって、光学レンズ(6)上に跡などの側面欠陥が生じることが防止される。光学レンズ(6)との接触点においてブレード(7)の幅を更に減らすために、
図7Dに示すような追加の面取りが可能である。
【0103】
ブレードは、
図7A、
図7B、
図7C及び
図7Dに示すように真っ直ぐであってもよい。ブレードは、
図8A、
図8B及び
図8Cに示すように湾曲していてもよく、又はブレード(7)と、レンズ(6)の凸面及び凹面との間で良好な接触点を確実にするために、特に厚いエッジを有するレンズにとって、凹凸状であってもよい。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0103
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0103】
ブレードは、
図7A、
図7B、
図7C及び
図7Dに示すように真っ直ぐであってもよい。ブレードは、
図8A、
図8B及び
図8Cに示すように湾曲していてもよく、又はブレード(7)と、レンズ(6)の凸面及び凹面との間で良好な接触点を確実にするために、特に厚いエッジを有するレンズにとって、凹凸状であってもよい。
本開示に係る発明は、下記の態様を含む:
<態様1>
レンズレットで少なくとも部分的に覆われた主面を有する光学レンズをコーティングする方法であって、
前記方法は、
- 前記光学レンズをコーティング流体中に浸漬することと、
- 前記光学レンズを前記コーティング流体から引き出して、水平な第1の方向(X
0
)に向かって前記主面が面するように定められる初期位置(1)に到達させることと、
- 前記光学レンズをコーティングしている前記コーティング流体を乾燥させることと、
を含み、
前記方法は、前記光学レンズを引き出した後、且つ前記コーティング流体の乾燥前又は乾燥中に、前記光学レンズを、前記第1の方向(X
0
)に対して80°~100°の角度を有する最終方向(X
F
)に向かって前記主面が上向きに面するように定められる最終位置(3)に傾けることを含み、前記第1の方向(X
0
)及び前記最終方向(X
F
)は垂直平面(X
0
X
F
)を定める、方法。
<態様2>
前記光学レンズを前記最終位置に傾けることは、
前記光学レンズを、前記初期位置(1)から、前記垂直平面(X
0
X
F
)内の第2の方向(X
i
)に向かって前記主面が上向きに面するように定められる中間位置(2)に傾けることであって、前記第2の方向(X
i
)は、前記第1の方向(X
0
)に対して105°~125°の角度を有する、ことと、次いで、
前記光学レンズを前記中間位置(2)から前記最終位置(3)まで傾けることと、
を含む、態様1に記載の方法。
<態様3>
前記光学レンズを前記コーティング流体から引き出すことは、一定の引出し速度で行われる、態様1又は2に記載の方法。
<態様4>
前記光学レンズを前記コーティング流体から引き出すことは、徐々に減少する引出し速度で行われる、態様1又は2に記載の方法。
<態様5>
前記方法は、前記光学レンズを引き出した後、且つ傾ける前に、最大で3秒に等しい所定時間だけ待って、前記光学レンズをコーティングしている前記コーティング流体の一部が滴り落ちることを可能にすることを含む、態様1~4のいずれか一項に記載の方法。
<態様6>
前記光学レンズを傾けることは、滑らかな連続移動に従って行われる、態様1~5のいずれか一項に記載の方法。
<態様7>
前記光学レンズをコーティングしている前記コーティング流体を乾燥させることは、前記光学レンズの前記主面における温度を制御することを含む、態様1~6のいずれか一項に記載の方法。
<態様8>
前記光学レンズをコーティングしている前記コーティング流体を乾燥させることは、前記光学レンズの前記主面におけるガス流量を制御することを含む、態様1~7のいずれか一項に記載の方法。
<態様9>
レンズレットで少なくとも部分的に覆われた主面を有する光学レンズをコーティングする方法であって、前記方法は、
前記光学レンズをコーティング流体中に浸漬することと、
前記光学レンズを前記コーティング流体から引き出して、水平な第1の方向(X
0
)に向かって前記主面が面するように定められる初期位置(1)に到達させることと、
前記光学レンズをコーティングしている前記コーティング流体を乾燥させることと、を含み、
前記方法は、前記光学レンズを引き出している間に、前記光学レンズを機械式ブレードに沿って摺動させることによって前記光学レンズから前記コーティング流体の一部を除去することを含む、方法。
<態様10>
前記方法は、前記光学レンズを引き出した後、且つ前記コーティング流体の乾燥前又は乾燥中に、前記光学レンズを、前記第1の方向(X
0
)に対して80°~100°の角度を有する最終方向(X
F
)に向かって前記主面が上向きに面するように定められる最終位置(3)に傾けることを含み、前記第1の方向(X
0
)及び前記最終方向(X
F
)は垂直平面(X
0
X
F
)を定める、態様9に記載の方法。
<態様11>
処理ユニットにアクセス可能であり、かつ前記処理ユニットによって実行されたときに態様1~10のいずれか一項に記載の方法の少なくとも一部を前記処理ユニットに実行させる、1つ以上の記憶された命令シーケンス、を含むコンピュータプログラム。
<態様12>
態様11に記載のコンピュータプログラムの1つ以上の記憶された命令シーケンスを記憶している、非一時的記憶媒体。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズレットで少なくとも部分的に覆われた主面を有する光学レンズをコーティングする方法であって、
前記方法は、
- 前記光学レンズをコーティング流体中に浸漬することと、
- 前記光学レンズを前記コーティング流体から引き出して、水平な第1の方
向に向かって前記主面が面するように定められる初期位
置に到達させることと、
- 前記光学レンズをコーティングしている前記コーティング流体を乾燥させることと、
を含み、
前記方法は、前記光学レンズを引き出した後、且つ前記コーティング流体の乾燥前又は乾燥中に、前記光学レンズを、前記第1の方
向に対して80°~100°の角度を有する最終方
向に向かって前記主面が上向きに面するように定められる最終位
置に傾けることを含み、前記第1の方
向及び前記最終方
向は垂直平
面を定める、方法。
【請求項2】
前記光学レンズを前記最終位置に傾けることは、
前記光学レンズを、前記初期位
置から、前記垂直平
面内の第2の方
向に向かって前記主面が上向きに面するように定められる中間位
置に傾けることであって、前記第2の方
向は、前記第1の方
向に対して105°~125°の角度を有する、ことと、次いで、
前記光学レンズを前記中間位
置から前記最終位
置まで傾けることと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光学レンズを前記コーティング流体から引き出すことは、一定の引出し速度で行われる、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記光学レンズを前記コーティング流体から引き出すことは、徐々に減少する引出し速度で行われる、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、前記光学レンズを引き出した後、且つ傾ける前に、最大で3秒に等しい所定時間だけ待って、前記光学レンズをコーティングしている前記コーティング流体の一部が滴り落ちることを可能にすることを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
前記光学レンズを傾けることは、滑らかな連続移動に従って行われる、請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
前記光学レンズをコーティングしている前記コーティング流体を乾燥させることは、前記光学レンズの前記主面における温度を制御することを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
前記光学レンズをコーティングしている前記コーティング流体を乾燥させることは、前記光学レンズの前記主面におけるガス流量を制御することを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項9】
レンズレットで少なくとも部分的に覆われた主面を有する光学レンズをコーティングする方法であって、前記方法は、
前記光学レンズをコーティング流体中に浸漬することと、
前記光学レンズを前記コーティング流体から引き出して、水平な第1の方
向に向かって前記主面が面するように定められる初期位
置に到達させることと、
前記光学レンズをコーティングしている前記コーティング流体を乾燥させることと、を含み、
前記方法は、前記光学レンズを引き出している間に、前記光学レンズを機械式ブレードに沿って摺動させることによって前記光学レンズから前記コーティング流体の一部を除去することを含む、方法。
【請求項10】
前記方法は、前記光学レンズを引き出した後、且つ前記コーティング流体の乾燥前又は乾燥中に、前記光学レンズを、前記第1の方
向に対して80°~100°の角度を有する最終方
向に向かって前記主面が上向きに面するように定められる最終位
置に傾けることを含み、前記第1の方
向及び前記最終方
向は垂直平
面を定める、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
プログラムが記録されている非一時的
コンピュータ可読記憶媒体
であって、このプログラムは、プロセッサによって実行されたときに請求項1に記載の方法を実装するためのプログラムである、非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【国際調査報告】