(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】神経学的状態を治療するための薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20240416BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240416BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240416BHJP
A61K 31/416 20060101ALI20240416BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20240416BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240416BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240416BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240416BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240416BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20240416BHJP
A61P 25/06 20060101ALI20240416BHJP
A61P 21/02 20060101ALI20240416BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20240416BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240416BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20240416BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20240416BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240416BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240416BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20240416BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240416BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20240416BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240416BHJP
A61K 31/16 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P43/00 105
A61K35/76
A61K31/416
A61K31/713
A61K48/00
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A61P25/28
A61P25/16
A61P25/08
A61P25/06
A61P21/02
A61P25/18
A61P35/00
A61K9/127
A61K9/51
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/06
A61K9/08
A61K9/12
A61K47/34
A61K31/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568675
(86)(22)【出願日】2022-05-10
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 IL2022050486
(87)【国際公開番号】W WO2022239001
(87)【国際公開日】2022-11-17
(32)【優先日】2021-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】515166314
【氏名又は名称】イッサム リサーチ ディベロップメント カンパニー オブ ザ ヘブライ ユニバーシティー オブ エルサレム リミテッド
【氏名又は名称原語表記】YISSUM RESEARCH DEVELOPMENT COMPANY OF THE HEBREW UNIVERSTY OF JERUSALEM LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アマル、ハイサム
(72)【発明者】
【氏名】ドム、アブラハム ヤコブ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C087
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA12
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4C206ZB26
(57)【要約】
nNOS活性を低下させる薬剤を含む方法及び組成物、並びに有益な臨床効果がニューロン一酸化窒素シンターゼ(nNOS)活性の低下によって達成される疾患又は状態の治療におけるその使用が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニューロン一酸化窒素シンターゼ(nNOS)活性の低下によって有益な臨床効果が達成される疾患又は状態を治療する方法であって、その治療を必要とする対象に、有効量の、nNOS活性を低下させる活性剤を含む組成物を投与し、それによって、nNOS活性の低下によって有益な臨床効果が達成される前記疾患又は状態を治療することを含む、方法。
【請求項2】
nNOS活性の低下によって有益な臨床効果が達成される前記疾患又は状態の治療に使用するための、nNOS活性を低下させる活性剤を含む薬学的組成物。
【請求項3】
前記nNOS活性の低下が、中枢神経系(CNS)におけるものである、請求項1に記載の方法又は請求項2に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
前記nNOS活性の低下が、他の組織と比較して前記対象の前記CNSにおいて選択的又は優先的である、請求項3に記載の方法又は使用のための組成物。
【請求項5】
前記低下が、脳におけるnNOS活性の低下である、請求項3若しくは4に記載の方法又は使用のための組成物。
【請求項6】
前記組成物が、nNOS特異的である活性剤を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法又は請求項2~5のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
前記投与の様式が、前記CNSにおいて選択的かつ優先的にnNOS活性の低下を達成する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法又は請求項2~6のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
前記投与の様式が、局所投与を含む、請求項7に記載の方法又は使用のための組成物。
【請求項9】
前記組成物が、前記薬剤を前記対象の前記CNSに輸送する担体を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法又は請求項2~7のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項10】
前記担体が、アデノ随伴ウイルスを含む、請求項9に記載の方法又は使用のための組成物。
【請求項11】
前記薬剤が、nNOS発現を減少させる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法又は請求項2~9のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
前記薬剤が、nNOS翻訳を減少させる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法又は請求項2~9のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項13】
前記薬剤が、nNOS酵素活性を阻害する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法又は請求項2~9のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項14】
前記薬剤が、小分子、競合ペプチド及び抗体又はそれらの断片からなる群から選択される、請求項13に記載の方法又は使用のための組成物。
【請求項15】
前記薬剤が、式Iによって表されるか、
【化1】
又はその薬学的に許容される塩であり、
式中
R
1は、水素、アルキル及びシクロアルキルから選択され、好ましくは水素であり、
R
2~R
5は、各々独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロ脂環式、ヘテロアリール、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオール、アミン、カルボキシレート、チオカルボキシレート、及びポリ(アルキレングリコール)部分から選択される、請求項13若しくは14に記載の方法又は使用のための組成物。
【請求項16】
R
1が、水素である、請求項15に記載の方法又は使用のための組成物。
【請求項17】
R
2~R
5の各々が、水素である、請求項15若しくは16に記載の方法又は使用のための組成物。
【請求項18】
そのアニオン性塩の形態である、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法又は使用のための組成物。
【請求項19】
そのカチオン性塩の形態である、請求項16若しくは17に記載の方法又は使用のための組成物。
【請求項20】
前記薬剤が、アミノ酸系阻害剤である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法又は請求項2~14のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項21】
前記薬剤が、PIN又は一酸化窒素シンターゼ相互作用タンパク質(NOSIP)である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記薬剤が、選択的nNOS阻害剤である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法又は請求項2~6のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項23】
前記薬剤が、NO前駆体のレベルを低下させる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法又は請求項2~9のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項24】
前記薬剤が、GSNOレダクターゼレベルのレベルを増加させる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法又は請求項2~9のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項25】
前記薬剤が、nNOS特異的核酸配列である、請求項11に記載の方法又は使用のための組成物。
【請求項26】
前記薬剤が、アンチセンス又はsiRNAである、請求項25に記載の方法又は使用のための組成物。
【請求項27】
前記薬剤が、DNA編集剤である、請求項11若しくは25に記載の方法又は使用のための組成物。
【請求項28】
前記薬剤が、nNOSの発現を選択的に低下させるためのCRISPR/Cas9である、請求項27に記載の方法又は使用のための組成物。
【請求項29】
前記薬剤のための担体が、ウイルス送達ベクターである、請求項11及び25~28のいずれか一項に記載の方法又は使用のための組成物。
【請求項30】
前記疾患又は状態が、神経疾患又は状態である、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法又は請求項2~29のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項31】
前記疾患又は状態が、脳障害である、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法又は請求項2~30のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項32】
前記疾患又は状態が、自閉症スペクトラム障害(ASD)である、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法又は請求項2~30のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項33】
前記疾患又は状態が、ADD又はADHDである、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法又は請求項2~30のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項34】
前記疾患又は状態が、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、統合失調症、依存症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、てんかん、双極性疾患及び片頭痛からなる群から選択される、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法又は請求項2~30のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項35】
前記疾患又は状態が、神経発達障害、精神障害又は神経変性疾患である、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法又は請求項2~30のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項36】
前記疾患又は状態が、神経起源又は神経外胚葉起源のがんである、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法又は請求項2~29のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項37】
前記がんが、神経芽細胞腫、神経膠腫、神経節膠腫、中枢神経細胞腫、神経節芽細胞腫、髄芽細胞腫及び原始神経外胚葉性腫瘍(PNET)からなる群から選択される、請求項36に記載の方法又は使用のための組成物。
【請求項38】
前記神経芽細胞腫が、ALKにおける変異を含む、請求項37に記載の方法又は使用のための組成物。
【請求項39】
前記投与が、前記対象の前記CNSの線条体及び/又は皮質に対して行われる、請求項32に記載の方法又は使用のための組成物。
【請求項40】
前記組成物が、CNS選択的送達ビヒクルを含む、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法又は請求項2~39のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項41】
前記CNS選択的送達ビヒクルが、ナノ粒子、リポソーム又はエキソソームを含む、請求項40に記載の方法又は使用のための組成物。
【請求項42】
前記送達ビヒクルが、前記対象のBBBを通過する取り込みを増強するためのリガンド又は受容体を含む、請求項41に記載の方法又は使用のための組成物。
【請求項43】
前記組成物が、前記対象のBBBを通る侵入を増強するために超音波又は磁気刺激とともに投与される、請求項1~42のいずれか一項に記載の方法又は請求項2~42のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項44】
前記組成物の投与時に、前記対象の神経細胞における生理学的に利用可能な一酸化窒素のレベルが少なくとも20%低減される、請求項1~43のいずれか一項に記載の方法又は請求項2~43のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項45】
前記組成物の投与時に、前記対象の血漿中のニトロ-チロシンの濃度が少なくとも20%低減される、請求項1~44のいずれか一項に記載の方法又は請求項2~44のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項46】
ニューロン一酸化窒素シンターゼ(nNOS)活性を低下させる治療活性剤と、薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的組成物であって、前記組成物及び前記治療活性剤が、対象への前記組成物の投与時に、前記nNOS活性の低下が、他の組織と比較して前記対象の中枢神経系(CNS)において選択的又は優先的にもたらされるように選択される、薬学的組成物。
【請求項47】
前記組成物が、前記対象の前記CNSへの局所投与のために構成されている、請求項46に記載の薬学的組成物。
【請求項48】
前記組成物が、前記対象の脳への局所投与のために構成されている、請求項47に記載の薬学的組成物。
【請求項49】
前記組成物が、前記治療活性剤を前記対象の前記中枢神経系に対して選択的に送達するように構成されている、請求項46又は47に記載の薬学的組成物。
【請求項50】
前記組成物が、前記治療活性剤を前記対象の脳に対して選択的に送達するように構成されている、請求項46又は47に記載の薬学的組成物。
【請求項51】
前記治療活性剤が、nNOSに対して選択的である、請求項46~50のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項52】
前記治療活性剤を長期間にわたって脳又は中枢神経系に選択的に送達するように構成されている、請求項46~51のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項53】
脳内のnNOS活性を低下させるのに十分な量の前記治療活性剤を、少なくとも1日、又は少なくとも1週間、少なくとも12日の期間中、送達するように構成されている、請求項52に記載の薬学的組成物。
【請求項54】
経口、経鼻、又は頬粘膜送達又は投与のために製剤化されている、請求項46~53のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項55】
前記担体が、水溶液を含む、請求項54に記載の薬学的組成物。
【請求項56】
前記担体が、水溶液中にナノ粒子として分散されているか、又は水溶液若しくは媒体と接触するとナノ粒子分散液を形成する、少なくとも1つの脂質、少なくとも1つの界面活性剤、及び水混和性有機溶媒の混合物を含む、請求項54又は55に記載の薬学的組成物。
【請求項57】
錠剤、カプセル、シロップ、溶液、スプレー、エアロゾル又は分散液の形態である、請求項54~56のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項58】
注射による投与のために製剤化されている、請求項46~53のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項59】
前記担体が、水溶液を含む、請求項58に記載の薬学的組成物。
【請求項60】
前記担体が、水溶液中にナノ粒子として分散されているか、又は水溶液若しくは媒体と接触するとナノ粒子分散液を形成する、少なくとも1つの脂質、少なくとも1つの界面活性剤、及び水混和性有機溶媒の混合物を含む、請求項58又は59に記載の薬学的組成物。
【請求項61】
前記担体が、前記治療活性剤の持続放出のためのデポーを形成する、請求項58に記載の薬学的組成物。
【請求項62】
前記担体が、好ましくは少なくとも1種の生分解性ポリマーを含む、ポリマー担体である、請求項61に記載の薬学的組成物。
【請求項63】
前記ポリマー担体が、ポリ(セバシン-co-リシノール)酸を含む、請求項62に記載の薬学的組成物。
【請求項64】
前記ポリマー担体が、PLGA、PLA、PCL、ポリカーボネート又はそれらの組み合わせを含む、請求項62に記載の薬学的組成物。
【請求項65】
前記担体が、水性担体であり、前記治療活性剤が、前記水性担体に溶解可能である、請求項46~53のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項66】
nNOS活性の低下によって有益な臨床効果が達成される疾患又は状態の治療に使用するための、請求項46~65のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項67】
nNOS活性を低下させ、かつnNOS特異的である、薬剤と、薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的組成物であって、経口送達又は投与のために製剤化されている、薬学的組成物。
【請求項68】
請求項15~19のいずれか一項に記載の式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物であって、経口、経鼻、又は頬粘膜送達又は投与のために製剤化されている、薬学的組成物。
【請求項69】
1日当たり1~4回の経口投与を必要とする対象に、それを行うための、請求項67又は68に記載の薬学的組成物。
【請求項70】
請求項15~19のいずれか一項に記載の式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的組成物であって、前記式Iの組成物又はその前記塩を、少なくとも1日又は少なくとも1週間の期間中、放出するように製剤化されている、薬学的組成物。
【請求項71】
注射による投与のために製剤化されている、請求項70に記載の薬学的組成物。
【請求項72】
前記担体が、好ましくは少なくとも1種の生分解性ポリマーを含む、ポリマー担体である、請求項70又は71に記載の薬学的組成物。
【請求項73】
前記ポリマー担体が、ポリ(セバシン-co-リシノール)酸を含む、請求項72に記載の薬学的組成物。
【請求項74】
前記ポリマー担体が、PLGA、PLA、PCL、ポリカーボネート又はそれらの組み合わせを含む、請求項72に記載の薬学的組成物。
【請求項75】
有益な臨床効果がニューロン一酸化窒素シンターゼ(nNOS)活性の低下によって達成される医学的状態の治療に使用するための、請求項46~74のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項76】
対象の神経細胞中の生理学的に利用可能な一酸化窒素のレベルを少なくとも20%低下させることによって有益な効果が達成される医学的状態の治療に使用するための、請求項46~74のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項77】
自閉症スペクトラム障害の治療を必要とする対象においてそれを行う方法であって、有効量の、nNOS活性を低下させる活性剤を含む組成物を前記対象に投与することを含み、前記nNOS活性の低下が、他の組織と比較して前記対象の脳において選択的又は優先的であり、それによって前記自閉症スペクトラム障害を治療する、方法。
【請求項78】
自閉症スペクトラム障害の治療を必要とする対象においてそれを行う方法であって、有効量の請求項46~74のいずれか一項に記載の組成物を前記対象に投与し、それによって前記自閉症スペクトラム障害を治療することを含む、方法。
【請求項79】
自閉症スペクトラム障害の治療を必要とする対象においてその治療に使用するための、請求項46~74のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項80】
神経がんの治療を必要とする対象においてそれを行う方法であって、有効量の、nNOS活性を低下させる活性剤を含む組成物を前記対象に投与することを含み、前記nNOS活性の低下が、他の組織と比較して前記対象の各々の神経組織において選択的又は優先的であり、それによって前記神経がんを治療する、方法。
【請求項81】
神経がんの治療を必要とする対象においてそれを行う方法であって、有効量の請求項46~74のいずれか一項に記載の組成物を前記対象に投与し、それによって前記がんを治療することを含む、方法。
【請求項82】
神経がんの治療を必要とする対象においてその治療に使用するための、請求項46~74のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項83】
前記神経がんが、神経芽細胞腫である、請求項82に記載の使用のための組成物。
【請求項84】
前記薬剤が、請求項15~19のいずれか一項に記載の式Iによって表される、請求項77、78、79及び80のいずれか一項に記載の方法又は請求項79、82若しくは83のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項85】
自閉症スペクトラム障害(ASD)の実験動物モデルを作製する方法であって、有効量の、前記動物の脳内のNOレベルを増加させてASD様表現型を生じさせる組成物を前記実験動物に投与することを含む、方法。
【請求項86】
前記組成物が、NO供与体を含む、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記NO供与体が、S-ニトロソ-N-アセチルペニシラミン(SNAP)を含む、請求項85又は86に記載の方法。
【請求項88】
前記投与が、全身性である、請求項85~87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
前記投与が、前記動物の前記脳に直接行われる、請求項85~87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
前記NO供与体が、SNAP、ニトレート、ニトライト、N-ニトロソ、C-ニトロソ、S-ニトロソ、複素環式化合物、金属/NO複合体、ジアゼニウムジオレート、S-ニトロソチオール、シドノンイミン及びニトロプルシドナトリウム(SNP)からなる群から選択される、請求項85又は86に記載の方法。
【請求項91】
請求項85~90のいずれか一項に記載の方法に従って作製された、動物モデル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2021年5月10日に出願された米国仮特許出願第63/186,389号の優先権の利益を主張し、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表の説明
2022年5月10日に作成され、4,096バイトを含み、本出願の出願と同時に提出された「91961SequenceListing.txt」と題するASCIIファイルは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、そのいくつかの実施形態では、治療法に関し、より詳細には、明確ではないが、自閉症スペクトラム障害(autistic spectrum disorders、ASD)及び神経由来がんなどであるがこれらに限定されない、ニューロン一酸化窒素シンターゼ(neuronal nitric oxide synthase、nNOS)の異常活性に関連する神経学的状態を治療するための薬学的組成物及び方法に関する。
【0004】
一酸化窒素(以下、「NO」(Nitric oxide))は、最小のシグナル伝達分子である。NOは、「諸刃の剣」とも呼ばれる。多くの蓄積された証拠は、NOが多くの脳関連障害の発生における重要な因子の1つであることを示唆している。S-ニトロシル化(SNO)(システインにおけるNO媒介翻訳後修飾)は、広範囲の顕著な細胞内タンパク質を標的とし、シグナル伝達経路の変化をもたらし、シナプス、ニューロン及び行動の欠損に収束し得る。したがって、NOは神経発生を促進するが、異常なSNOは、自閉症スペクトラム障害(ASD)などの異なる神経発達障害の原因であり得る。この「諸刃の剣」機能は、NOの濃度にも依存する。低濃度では、NOは、シナプス活性、シナプス可塑性シナプス活性、シナプス可塑性、及び小胞輸送の調節に関与する。しかしながら、高濃度では、NOは毒性である可能性があり、表現型の改変及び細胞死をもたらす可能性がある。これはスーパーオキシドラジカル(O2
-)と反応し、最終的に酸化ストレス中にDNA、脂質、及びタンパク質への損傷を誘導するペルオキシニトライト(ONOO-)を形成する。
【0005】
NOは、タンパク質S-ニトロシル化(SNO)、チロシン窒化、及びS-ニトロソグルタチオン(GSNO)形成を介して細胞シグナル伝達に影響を及ぼし得る。ストレス条件下でのタンパク質チロシンニトロ化(NO過剰産生)は、ニトロソ化ストレスの可能性のあるマーカーと考えられてきた。3-ニトロチロシン(Ntyr)は、ニトロ化剤として作用するペルオキシニトライトによって媒介されるチロシンニトロ化の生成物である。
【0006】
SNOは、システインがニトロソチオールに変換される、システインチオールの可逆的NO媒介翻訳後修飾である。SNOは、広範囲の重要な酵素及び受容体の局在化及び活性において主要な役割を果たし、多くのシグナル伝達経路、軸索輸送、シナプス可塑性、及びタンパク質アセンブリの調節をもたらす。したがって、異常なSNOシグナル伝達及びNtyrの増加は、以下に要約されるように、多くの神経変性障害、神経発達障害、及び神経精神障害、並びに神経腫瘍の進行に寄与し得る。
【0007】
NOは細胞内に貯蔵され得ないため、その活性を媒介するために新たな合成が必要である。
【0008】
NOは、3つのタイプのNOシンターゼ、nNOS、iNOS及びeNOSによって産生される。ニューロン一酸化窒素シンターゼを表すnNOSは、ニューロン組織中に見出される。
【0009】
一酸化窒素シンターゼ(EC 1.14.13.39)(NOS)は、L-アルギニンからの一酸化窒素(NO)の産生を触媒する酵素のファミリーである。哺乳動物では、NOSアイソザイムをコードする3つの異なる遺伝子、すなわちニューロン性(nNOS又はNOS-1)、サイトカイン誘導性(iNOS又はNOS-2)、及び内皮性(eNOS又はNOS-3)のものが存在する。iNOS及びnNOSは可溶性であり、サイトゾル中に主に存在する一方、eNOSは膜結合型である。
【0010】
ニューロン一酸化窒素シンターゼ(nNOS)は、中枢神経系及び末梢神経系の両方の神経組織において一酸化窒素(NO)を産生する。その機能としては、中枢神経系(central nervous system、CNS)におけるシナプス可塑性、末梢神経系及びCNSにおけるシナプス伝達及び軸索伸長、並びに複数の神経障害をもたらす異常なシグナル伝達が挙げられる。
【0011】
nNOSはまた、細胞間の連絡において役割を果たし、原形質膜と会合する。
【0012】
骨格筋におけるnNOSの細胞内局在は、ジストロフィンへのnNOSの固定によって媒介される。nNOSは、更なるN末端ドメインであるPDZドメインを含む。nNOSをコードする遺伝子は、第12染色体上に位置する。
【0013】
nNOSは、ニューロン、星状細胞、脳血管の外膜及び心筋細胞において見出されている。脳組織に加えて、nNOSは、他の組織においても免疫組織化学によって見出されている。nNOSは、非競合的基質阻害剤として作用する7-ニトロインダゾールによって特異的に阻害されることが知られている。
【0014】
ASDの病因は、少なくとも部分的に、機能障害及び認知障害をもたらし得るシナプス機能障害に関連し得ることが示されている(1)。従来の研究では、遺伝子、例えばSHANK3及びCNTNAP2及び他のものにおける変異が、ASDに強く関連する共通のシナプス関連細胞経路に集中していることが示されている(2)。
【0015】
変異体モデルSHANK3ヒト遺伝子におけるシステインチオール(SNO)のNO媒介翻訳後修飾(post-translational modification、PTM)は、自閉症スペクトラム障害(ASD)を含む様々な神経精神疾患をもたらすことが見出されている。経路の解析の結果、ASDにおいて影響を受けたプロセスが増加することが示されている。3-ニトロチロシンの有意な増加が、成体変異体の皮質領域において見出され、酸化ストレス及びニトロソ化ストレスの両方をシグナル伝達している(5)。興味深いことに、nNOSノックダウン(6)は、培養細胞においてASD様表現型を示している。
【0016】
神経芽細胞腫(neuroblastoma、NB)は、胎児発生中の神経堤細胞に由来する神経芽細胞腫瘍のスペクトルを指す。小児がんは、NBと同様に、全ての神経芽細胞腫瘍の97%を占める。NBは、世界中で、1歳未満の小児の間で最も一般的な腫瘍である。
【0017】
広範な努力にもかかわらず、NBの根底にある機構は、ほとんど不明瞭なままである。NBを含む種々の腫瘍の発がんの必須調節因子の1つは、一酸化窒素(NO)である。SNOのプロセスは、上記のように、異なるがんの発症に関連し得ることが理解されるであろう(Mishra et al.,2020)。この翻訳後修飾(PTM)は、腫瘍抑制効果又は腫瘍促進効果のいずれかを付与することが報告されており、がん進行のあらゆる段階に関与するプロセスとして記載されている(Sharma et al.,2021)。SNOによって影響され得る経路の1つは、細胞増殖、代謝、及び腫瘍形成の重要な調節因子であるラパマイシンの機構的標的(mechanistic target of rapamycin、mTOR)である(Johnsen et al.,2008)。従来の研究において、マウス脳のSNO-プロテオーム分析を使用して、NOレベルが上昇した場合、mTOR経路がSNOによって有意に増幅されることが見出されている(Mencer et al.,2021)。
【0018】
更なる背景技術としては、以下が挙げられる:
Haim-Zada et al.2017.Stable polyanhydride synthesized from sebacic acid and ricinoleic acid.J.Controlled Release,257:156-162、
Aquilano K,Filomeni G,Baldelli S,Piccirillo S,De Martino A,Rotilio G,Ciriolo MR(2007)Neuronal nitric oxide synthase protects neuroblastoma cells from oxidative stress mediated by garlic derivatives.J Neurochem 101:1327-1337、
Berry T et al.(2012)The ALKF1174L mutation potentiates the oncogenic activity of MYCN in neuroblastoma.Cancer Cell 22:117-130、
Burke AJ,Sullivan FJ,Giles FJ,Glynn SA(2013)The yin and yang of nitric oxide in cancer progression.Carcinogenesis 34:503-512、
Ciani E,Guidi S,Della Valle G,Perini G,Bartesaghi R,Contestabile A(2002)Nitric oxide protects neuroblastoma cells from apoptosis induced by serum deprivation through cAMP-response element-binding protein(CREB)activation.J Biol Chem 277:49896-49902、
Corasaniti M,Melino G,Navarra M,Garaci E,Finazzi-Agro A,Nistico G(1995)Death of cultured human neuroblastoma cells induced by HIV-1 gp120 is prevented by NMDA receptor antagonists and inhibitors of nitric oxide and cyclooxygenase.Neurodegeneration 4:315-321、
Fujibayashi T,Kurauchi Y,Hisatsune A,Seki T,Shudo K,Katsuki HJJops(2015)Mitogen-activated protein kinases regulate expression of neuronal nitric oxide synthase and neurite outgrowth via non-classical retinoic acid receptor signaling in human neuroblastoma SH-SY5Y cells.129:119-126、
Gao R-N,Levy IG,Woods WG,Coombs BA,Gaudette LA,Hill G(1997)Incidence and mortality of neuroblastoma in Canada compared with other childhood cancers.Cancer Causes Control 8:745-754、
Gordon JL,Hinsen KJ,Reynolds MM,Smith TA,Tucker HO,Brown MA(2021)Anticancer potential of nitric oxide(NO)in neuroblastoma treatment.RSC Adv 11:9112-9120、
Hickok JR,Thomas DD(2010)Nitric oxide and cancer therapy:the emperor has NO clothes.Curr Pharm Des 16:381-391、
Huang Z,Fu J,Zhang Y(2017)Nitric oxide donor-based cancer therapy:advances and prospects.J Med Chem 60:7617-7635、
Kiessling MK,Curioni-Fontecedro A,Samaras P,Lang S,Scharl M,Aguzzi A,Oldrige DA,Maris JM,Rogler G(2016)Targeting the mTOR complex by everolimus in NRAS mutant neuroblastoma.PLoS One 11:e0147682、
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Vahora H,Khan MA,Alalami U,Hussain A(2016)The potential role of nitric oxide in halting cancer progression through chemoprevention.J Cancer Prev 21:1。
【発明の概要】
【0019】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、神経型一酸化窒素合成酵素(nNOS)活性の低下によって有益な臨床効果が達成される疾患又は状態を治療する方法であって、その治療を必要とする対象に、各々の実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載の、有効量の、nNOS活性を低下させる活性剤を含む組成物を投与し、それによって、nNOS活性の低下によって有益な臨床効果が達成される疾患又は状態を治療することを含む方法が提供される。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、nNOS活性の低下によって有益な臨床効果が達成される疾患又は状態の治療に使用するための、各々の実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載のnNOS活性を低下させる活性剤と、任意選択で薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物が提供される。
【0021】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、nNOS活性の低下は、中枢神経系(CNS)におけるものである。
【0022】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、nNOS活性の低下は、他の組織と比較して、対象のCNSにおいて選択的又は優先的である。
【0023】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、低下は、脳におけるnNOS活性の低下である。
【0024】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、組成物は、nNOS特異的である活性剤を含む。
【0025】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、投与様式は、CNSにおいて選択的かつ優先的にnNOS活性の低下を達成する。
【0026】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、投与様式は局所投与を含む。
【0027】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、組成物は、薬剤を対象のCNSに運ぶ担体を含む。
【0028】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、担体は、アデノ随伴ウイルスを含む。
【0029】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、薬剤はnNOS発現を減少させる。
【0030】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、薬剤はnNOSの翻訳を減少させる。
【0031】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、薬剤はnNOS酵素活性を阻害する。
【0032】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、薬剤は、小分子、競合ペプチド及び抗体、又はそれらの断片からなる群から選択される。
【0033】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、薬剤は、nNOSの活性部位に結合し、基質結合を遮断する。
【0034】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、薬剤は、Nω-ニトロアルギニン、又は本明細書に記載の任意の小分子薬剤である。
【0035】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、薬剤は、式Iによって表されるか、
【0036】
【化1】
又はその薬学的に許容される塩であり、
式中
R
1は、水素、アルキル及びシクロアルキルから選択され、好ましくは水素であり、
R
2~R
5は、各々独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロ脂環式、ヘテロアリール、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオール、アミン、カルボキシレート、チオカルボキシレート、及びポリ(アルキレングリコール)部分から選択される。
【0037】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、R1は、水素である。
【0038】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、R2~R5の各々は、水素である。
【0039】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、式Iの化合物は、そのアニオン性塩の形態である。
【0040】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、式Iの化合物は、そのカチオン性塩の形態である。
【0041】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、薬剤は、アミノ酸系阻害剤である。
【0042】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、薬剤は、PIN又は一酸化窒素シンターゼ相互作用タンパク質(nitric oxide synthase interacting protein、NOSIP)である。
【0043】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、薬剤は、選択的nNOS阻害剤である。
【0044】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、薬剤は、NO前駆体のレベルを低下させる。
【0045】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、薬剤は、GSNOレダクターゼレベルのレベルを増加させる。
【0046】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、薬剤は、nNOS特異的核酸配列である。
【0047】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、薬剤は、アンチセンス又はsiRNAである。
【0048】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、薬剤は、DNA編集剤である。
【0049】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、薬剤は、nNOSの発現を選択的に低下させるためのCRISPR/Cas9である。
【0050】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、薬剤のための担体は、ウイルス送達ベクターである。
【0051】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、疾患又は状態は、神経疾患又は状態である。
【0052】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、疾患又は状態は、脳障害である。
【0053】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、疾患又は状態は、自閉症スペクトラム障害(ASD)である。
【0054】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、疾患又は状態は、ADD又はADHDである。
【0055】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、疾患又は状態は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、統合失調症、依存症、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis、ALS)、てんかん、双極性疾患及び片頭痛からなる群から選択される。
【0056】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、疾患又は状態は、神経発達障害、精神障害又は神経変性疾患である。
【0057】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、疾患又は状態は、神経起源又は神経外胚葉起源のがんである。
【0058】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、がんは、神経芽細胞腫、神経膠腫、神経節膠腫、中枢神経細胞腫、神経節芽細胞腫、髄芽細胞腫及び原始神経外胚葉性腫瘍(primitive neuroectodermal tumor、PNET)からなる群から選択される。
【0059】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、神経芽細胞腫は、ALKにおける変異を含む。
【0060】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、投与は、対象のCNSの線条体及び/又は皮質に対して行われる。
【0061】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、組成物は、CNS(例えば、脳)選択的送達ビヒクルを含む。
【0062】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、脳選択的送達ビヒクルは、ナノ粒子、リポソーム又はエキソソームを含む。
【0063】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、送達ビヒクルは、対象のBBBを通過する取り込みを増強するためのリガンド又は受容体を含む。
【0064】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、組成物は、対象のBBBを通過する進入を増強するために、超音波又は磁気刺激とともに投与される。
【0065】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、組成物の投与時に、対象の神経細胞における生理学的に利用可能な一酸化窒素のレベルは、少なくとも20%低下する。
【0066】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、組成物の投与時に、対象の血漿中のニトロ-チロシンの濃度は、少なくとも20%低下する。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、各々の実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載のニューロン一酸化窒素合成酵素(nNOS)活性を低下させる治療活性剤と、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物であって、組成物及び治療活性剤が、対象への組成物の投与時に、他の組織と比較して対象の中枢神経系(CNS)又は脳において選択的又は優先的にnNOS活性の低下がもたらされるように選択されている、薬学的組成物が提供される。
【0068】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、対象の神経細胞(例えば、nNOSを発現している)又はCNS(例えば、脳)におけるnNOS活性の低下は、少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%である。いくつかの実施形態によれば、他の組織又は器官におけるNOS活性の低下は、10%以下、又は5%以下、又は2%以下、又は1%以下である。
【0069】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、対象の神経細胞(例えば、nNOSを発現する)又はCNS(例えば、脳)におけるnNOS活性の低下は、他の組織又は器官と比較して、少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%高い。
【0070】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、組成物は、対象のCNSへの局所投与のために構成されている。
【0071】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、組成物は、対象の脳への局所投与のために構成されている。
【0072】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、組成物は、治療活性剤を対象の中枢神経系に対して選択的に送達するように構成されている。
【0073】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、組成物は、治療活性剤を対象の脳に対して選択的に送達するように構成されている。
【0074】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、治療活性剤は、nNOSに対して選択的である。
【0075】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、組成物は、長期間にわたって脳又は中枢神経系に治療活性剤を選択的に送達するように構成されている。
【0076】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、組成物は、少なくとも1日間、又は少なくとも1週間、少なくとも12日間の期間中に、脳内のnNOS活性を低下させるのに十分な量の治療活性剤を送達するように構成されている。
【0077】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、薬学的組成物は、経口、経鼻、又は頬粘膜送達又は投与のために製剤化されている。
【0078】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、担体は、水溶液を含む。
【0079】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、担体は、水溶液中に分散された、少なくとも1つの脂質、少なくとも1つの界面活性剤、及び水混和性有機溶媒の混合物を含む。
【0080】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、薬学的組成物は、錠剤、カプセル、シロップ、溶液、スプレー、エアロゾル、又は分散液の形態である。
【0081】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、薬学的組成物は、注射による投与のために製剤化されている。
【0082】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、担体は、水溶液を含む。
【0083】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、担体は、少なくとも1つの脂質、界面活性剤の少なくとも1つ、及び水混和性有機溶媒の混合物を含み、一部の実施形態によれば、混合物は、水溶液と接触すると、水溶液中に分散された脂質ナノ粒子を形成する。
【0084】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、担体は、治療活性剤の持続放出のためのデポーを形成する。
【0085】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、担体は、好ましくは少なくとも1つの生分解性ポリマーを含むポリマー担体である。
【0086】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、ポリマー担体は、ポリ(セバシン-co-リシノール)酸を含む。
【0087】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、ポリマー担体は、PLGA、PLA、PCL、ポリカーボネート、又はそれらの組み合わせを含む。
【0088】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、担体は、水性担体であり、治療活性剤は、水性担体に溶解可能である。
【0089】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、本明細書に記載のnNOS活性の低下によって有益な臨床効果が達成される疾患又は状態の治療に使用するための、各々の実施形態のいずれかにおける本明細書に記載の薬学的組成物が提供される。
【0090】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、nNOS活性を低下させ、かつnNOS特異的である薬剤及び薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物であって、経口送達又は投与のために製剤化されている薬学的組成物が提供される。
【0091】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、各々の実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載されている式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物であって、経口、経鼻、又は頬粘膜送達又は投与のために製剤化されている薬学的組成物が提供される。
【0092】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、担体は、水溶液を含む。
【0093】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、化合物は、水溶解性又は水不混和性であるその薬学的に許容される塩を含む。
【0094】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、担体は、水溶液中に分散された脂質ナノ粒子を更に含む。
【0095】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、薬学的組成物は、その組成物を必要とする対象に1日当たり1~4回経口投与するためのものである。
【0096】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、nNOS活性を低下させ、かつnNOS特異的である薬剤及び薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物であって、担体が水溶液及び水溶液中に分散された脂質ナノ粒子を含む、薬学的組成物が提供される。
【0097】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、各々の実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載されている式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物であって、担体が、水溶液と、水溶液中に分散された脂質ナノ粒子とを含む、薬学的組成物が提供される。
【0098】
これらの実施形態のいくつかによれば、担体は、本明細書に記載のPNL製剤を水溶液と接触させる際に形成される。
【0099】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、nNOS活性を低下させ、nNOS特異的である薬剤と、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物であって、担体が、少なくとも1つの脂質、少なくとも1つの界面活性剤(好ましくは親水性)、及び水混和性有機溶媒の混合物を含み、水溶液又は媒体(例えば、生理学的媒体)と接触すると、水溶液又は媒体中の脂質ナノ粒子の分散液を形成する、薬学的組成物が提供される。
【0100】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載されている式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物であって、担体が、少なくとも1つの脂質、少なくとも1つの界面活性剤(好ましくは親水性)、及び水混和性有機溶媒の混合物を含み、水溶液又は媒体(例えば、生理学的媒体)と接触すると、水溶液又は媒体中の脂質ナノ粒子の分散液を形成する、薬学的組成物が提供される。
【0101】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載のnNOS活性を低下させる薬剤と、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物であって、少なくとも1日又は少なくとも1週間の期間中に式Iの組成物又はその塩を放出するように製剤化されている、薬学的組成物が提供される。
【0102】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載されている式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物であって、少なくとも1日又は少なくとも1週間の期間中に式Iの組成物又はその塩を放出するように製剤化されている、薬学的組成物が提供される。
【0103】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、薬学的組成物は、注射による投与のために製剤化されている。
【0104】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、担体は、好ましくは少なくとも1つの生分解性ポリマーを含むポリマー担体である。
【0105】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、ポリマー担体は、ポリ(セバシン-co-リシノール)酸を含む。
【0106】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、ポリマー担体は、PLGA、PLA、PCL、ポリカーボネート、又はそれらの組み合わせを含む。
【0107】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、有益な臨床効果がニューロン一酸化窒素シンターゼ(nNOS)活性の低下によって達成される、医学的状態の治療に使用するための、各々の実施形態のいずれかにおける本明細書に記載の薬学的組成物が提供される。
【0108】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、対象の神経細胞における生理学的に利用可能な一酸化窒素のレベルを少なくとも20%低下させることによって有益な効果が達成される、医学的状態の治療に使用するための、それぞれの実施形態のいずれかにおける本明細書に記載の薬学的組成物が提供される。
【0109】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、自閉症スペクトラム障害の治療を必要とする対象において自閉症スペクトラム障害を治療する方法が提供され、この方法は、各々の実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載されるような、有効量の、nNOS活性を減少させる活性薬剤を含む組成物を対象に投与することを包含し、ここで、nNOS活性の減少は、他の組織と比較して対象の脳において選択的又は優先的であり、それによって自閉症スペクトラム障害を治療するものである。
【0110】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、自閉症スペクトラム障害の治療を必要とする対象において自閉症スペクトラム障害を治療する方法であって、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載されている、有効量の、薬学的組成物を対象に投与し、それによって自閉症スペクトラム障害を治療することを含む方法が提供される。
【0111】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、自閉症スペクトラム障害の治療を必要とする対象において自閉症スペクトラム障害の治療に使用するための、それぞれの実施形態のいずれかにおける本明細書に記載の薬学的組成物が提供される。
【0112】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、神経がんの治療を必要とする対象において神経がんを治療する方法であって、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載の、有効量の、nNOS活性を低下させる活性薬剤を含む組成物を対象に投与することを含み、nNOS活性の低下が、他の組織と比較して対象の各々の神経組織において選択的又は優先的であり、それによって神経がんを治療する、方法が提供される。
【0113】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、神経がんの治療を必要とする対象において神経がんを治療する方法であって、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載の、有効量の、薬学的組成物を対象に投与し、それによってがんを治療することを含む、方法が提供される。これらの実施形態のいくつかによれば、神経がんは、神経芽細胞腫である。
【0114】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、それぞれの実施形態のいずれかにおける本明細書に記載の薬学的組成物であって、神経がんの治療を必要とする対象において神経がんを治療するために使用するための、薬学的組成物が提供される。
【0115】
これらの実施形態のいくつかによれば、nNOS活性を低下させる薬剤は、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載されている式Iの化合物又はその塩である。
【0116】
これらの実施形態のいくつかによれば、神経がんは、神経芽細胞腫である。
【0117】
これらの実施形態の一部によれば、nNOS活性を低下させる薬剤は、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載されている式Iの化合物又はその塩であり、がんは、神経芽細胞腫である。
【0118】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、薬剤は、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載の式Iによって表される。
【0119】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、自閉症スペクトラム障害(ASD)の実験動物モデルを作製する方法であって、有効量の、動物の脳内のNOレベルを増加させてASD様表現型を生じさせる組成物を実験動物に投与するステップを含む、方法が提供される。
【0120】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、組成物は、NO供与体を含む。
【0121】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、NO供与体は、S-ニトロソ-N-アセチルペニシラミン(S-nitroso-N-acetylpenicillamines、SNAP)を含む。
【0122】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、投与は、全身性である。
【0123】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、投与は、動物の脳に直接行われる。
【0124】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、NO供与体は、SNAP、ニトレート、ニトライト、N-ニトロソ、C-ニトロソ、S-ニトロソ、複素環式化合物、金属/NO複合体、ジアゼニウムジオレート、S-ニトロソチオール、シドノンイミン、及びニトロプルシドナトリウム(sodium nitroprusside、SNP)からなる群から選択される。
【0125】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載の方法に従って作製された動物モデルが提供される。
【0126】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、7-ニトロインダゾールを哺乳動物に送達するための薬学的組成物が提供される。
【0127】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本明細書に記載の薬学的組成物は、7-ニトロインダゾールの経口送達用である。
【0128】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本明細書に記載の薬学的組成物は、長期間にわたる注射による7-ニトロインダゾールの送達のためのものである。
【0129】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本明細書に記載の薬学的組成物は、ポリマー微粒子組成物である。
【0130】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ポリマーは、PLGAである。
【0131】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本明細書に記載の薬学的組成物は、プロナノ分散脂質製剤(pro-nanodispersion lipid、PNL)又はそれから形成される水溶液中の脂質粒子の分散体である。
【0132】
いくつかの実施形態によれば本発明では、本明細書に記載の薬学的組成物は、水性媒体への添加時にナノ粒子を形成する、界面活性剤、脂質、及び溶媒の溶液又は混合物を含む。
【0133】
いくつかの実施形態によれば本発明では、本明細書に記載の薬学的組成物は、生分解性ポリマーから構成されるマイクロスフェアを含む。
【0134】
いくつかの実施形態によれば本発明では、本明細書に記載の薬学的組成物は、長期間にわたる持続放出、持続放出若しくは徐放投与、又は標的化された緩徐送達及び調節送達を有する、皮下又は筋肉内投与される組成物を含む。
【0135】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本発明の薬学的組成物本明細書に記載の薬学的組成物は、経口投与のための軟ゼラチンカプセルに充填される。
【0136】
本発明のいくつかの実施形態によれば、薬学的組成物本明細書に記載の薬学的組成物は、注射用水に分散されたマイクロスフェアを含む。
【0137】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本明細書に記載の薬学的組成物は、注射用のペースト状生分解性ポリマー担体中に分散された活性薬剤(本明細書に記載されるようにnNOS活性を低下させる薬剤)を含む。
【0138】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、本明細書に記載されるように、二価及び三価金属イオン又はアンモニウム対イオンを有する7-ニトロインダゾール塩が提供される。
【0139】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、自閉症スペクトラム障害(ASD)を治療するための方法であって、そのような治療を必要とする対象に、有効量の、ニューロン性NO低減組成物を投与することを含む方法が提供される。
【0140】
本発明のいくつかの実施形態によれば、NO低減組成物は、本明細書に記載されるように、低分子、アミノ酸ベースの分子、又は核酸ベースの分子のうちの1つ以上(又は数種類の分子の組み合わせ)を含む。
【0141】
本発明のいくつかの実施形態によれば、NOの低減は、以下の機構のうちの1つによるものであり得る:
nNOS遺伝子からの発現の減少、
酵素レベルでのnNOS活性の阻害、
L-アルギニンレベルの減少、及び
GSNOレダクターゼレベル又は活性の増加(GSNOのレベルの減少)。
【0142】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、自閉症スペクトラム障害の動物モデルを作製するための方法であって、有効量の、一酸化窒素ドナーを実験動物に投与することを含む方法が提供される。
【0143】
本発明のいくつかの実施形態によれば、投与は、全身投与である。
【0144】
本発明のいくつかの実施形態によれば、投与は、CNS標的化送達システムによる。
【0145】
本発明のいくつかの実施形態によれば、投与は、脳に対するものである。
【0146】
本発明のいくつかの実施形態によれば、投与は、嗅覚組織に送達されるナノ粒子を使用して脳に対して行われる。
【0147】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び/又は科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似又は同等の方法及び材料を、本発明の実施形態の実施又は試験において使用することができるが、例示的な方法及び/又は材料を以下に記載する。矛盾する場合には、定義を含む本特許明細書が優先される。更に、材料、方法、及び実施例は例示に過ぎず、必ずしも限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0148】
本発明のいくつかの実施形態を、添付の図面を参照して、単なる例として本明細書の以下に記載する。ここで図面を詳細に具体的に参照するが、示される詳細はあくまで例示であり、本発明の実施形態を例証によって議論する目的のものであることを強調する。この点に関して、図面を用いた説明は、本発明の実施形態がどのように実施され得るかを当業者に明らかにするものである。
【0149】
図面は以下のとおりである。
【
図1A】ASDの子供の血液試料中のNtyrの上昇したレベルを、彼らの対照の典型的に発達した子供と比較して示す、ウェスタンブロット(WB)分析(
図1A)を示す。
**P<0.01。対照(n=5)及びASD(n=10)。
【
図1B】ASDの子供の血液試料中のNtyrの上昇したレベルを、彼らの対照の典型的に発達した子供と比較して示す、棒グラフ(
図1B)を示す。
**P<0.01。対照(n=5)及びASD(n=10)。
【
図1C】野生型マウス(C57BL/6マウス、WT1)及び2つのASDマウスモデル(SHANK3マウスモデル(M1)及びCNTNAP2マウスモデル(M2))から調製された皮質組織のウェスタンブロット(Western blot、WB)分析(
図1C)及び棒グラフ(
図1C及び
図1D)を示す。
**P<0.01。対照(n=5)及びASD(n=5)。
【
図1D】野生型マウス(C57BL/6マウス、WT1)及び2つのASDマウスモデル(SHANK3マウスモデル(M1)及びCNTNAP2マウスモデル(M2))から調製された皮質組織のウェスタンブロット(Western blot、WB)分析(
図1C)及び棒グラフ(
図1C及び
図1D)を示す。
**P<0.01。対照(n=5)及びASD(n=5)。
【
図1E】野生型マウス(C57BL/6マウス、WT1)及び2つのASDマウスモデル(SHANK3マウスモデル(M1)及びCNTNAP2マウスモデル(M2))から調製された皮質組織のウェスタンブロット(Western blot、WB)分析(
図1C)及び棒グラフ(
図1C及び
図1D)を示す。
**P<0.01。対照(n=5)及びASD(n=5)。
【
図2A】
図2A~
図2Bは、新奇物体認識(novel object recognition、NOR)試験(
図2A)及び3つのチャンバー社交性試験(
図2B)において決定される、WTマウスに対するS-ニトロ-N-アセチルペニシラミン(SNAP、NO供与体)処理の効果を示す棒グラフである。SNAPは、WTの挙動を変化させる。WT及びSNAPマウスは、未処理のWTと比較して、馴染みの物体(NOR)及び空のケージ(社交性試験)に有意に関心があった。
【
図2B】
図2A~
図2Bは、新奇物体認識(novel object recognition、NOR)試験(
図2A)及び3つのチャンバー社交性試験(
図2B)において決定される、WTマウスに対するS-ニトロ-N-アセチルペニシラミン(SNAP、NO供与体)処理の効果を示す棒グラフである。SNAPは、WTの挙動を変化させる。WT及びSNAPマウスは、未処理のWTと比較して、馴染みの物体(NOR)及び空のケージ(社交性試験)に有意に関心があった。
【
図3A】NOR(
図3A)及び3つのチャンバーの社交性(
図3B)試験において決定された、変異マウスに対する7-NI処理の効果を示す棒グラフである。7-NIは、変異マウスにおける自閉症行動を逆転させた。
【
図3B】NOR(
図3A)及び3つのチャンバーの社交性(
図3B)試験において決定された、変異マウスに対する7-NI処理の効果を示す棒グラフである。7-NIは、変異マウスにおける自閉症行動を逆転させた。
【
図3C】野生型マウス(wild-type、WT)、SHANK3モデルマウス(M1)、及び7-NIで処理したSHANK3モデルマウス(M1+7-NI)から調製した皮質組織のウェスタンブロット(WB)分析(
図3C)及び定量的棒グラフ(
図3D)を示す。
【
図3D】野生型マウス(wild-type、WT)、SHANK3モデルマウス(M1)、及び7-NIで処理したSHANK3モデルマウス(M1+7-NI)から調製した皮質組織のウェスタンブロット(WB)分析(
図3C)及び定量的棒グラフ(
図3D)を示す。
【
図3E】野生型マウス(WT)、CNTNAP2
(-/-)モデルマウス(M2)、及び7-NIで処理したCNTNAP2
(-/-)モデルマウス(M2+7-NI)から調製した皮質組織のウェスタンブロット(WB)分析(
図3E)及び定量的棒グラフ(
図3F)を示す。
【
図3F】野生型マウス(WT)、CNTNAP2
(-/-)モデルマウス(M2)、及び7-NIで処理したCNTNAP2
(-/-)モデルマウス(M2+7-NI)から調製した皮質組織のウェスタンブロット(WB)分析(
図3E)及び定量的棒グラフ(
図3F)を示す。
【
図3G】野生型マウス(WT)、SHANK3モデルマウス(M1)、及び7-NIで処理したSHANK3モデルマウス(M1+7-NI)のニューロンの皮質領におけるニトロチロシンを示す共焦点顕微鏡画像(
図3G)及び定量的棒グラフ(
図3H)を示す。
【
図3H】野生型マウス(WT)、SHANK3モデルマウス(M1)、及び7-NIで処理したSHANK3モデルマウス(M1+7-NI)のニューロンの皮質領におけるニトロチロシンを示す共焦点顕微鏡画像(
図3G)及び定量的棒グラフ(
図3H)を示す。
【
図4A】新奇物体認識試験(NOR、
図4A)、3チャンバー社交性試験(
図4B)、高架式十字迷路試験(
図4C)、及びガラス玉覆い隠し試験(
図4D)の概略図を示す。
【
図4B】新奇物体認識試験(NOR、
図4A)、3チャンバー社交性試験(
図4B)、高架式十字迷路試験(
図4C)、及びガラス玉覆い隠し試験(
図4D)の概略図を示す。
【
図4C】新奇物体認識試験(NOR、
図4A)、3チャンバー社交性試験(
図4B)、高架式十字迷路試験(
図4C)、及びガラス玉覆い隠し試験(
図4D)の概略図を示す。
【
図4D】新奇物体認識試験(NOR、
図4A)、3チャンバー社交性試験(
図4B)、高架式十字迷路試験(
図4C)、及びガラス玉覆い隠し試験(
図4D)の概略図を示す。
【
図5A】SNAPの10日間、毎日20mg/kgのi.p.注射による投与が、野生型(WT)マウス及びSNAP処理マウスについての行動試験分析において決定して、C57BL/6マウスにおいてASD様表現型を誘導することを示す。これらの結果は、
図2A~
図2Bに示される実験の結果を確証する。
図5Aは、
図4Aに示す新奇物体認識試験で得られたデータを示す棒グラフであり、物体探索時間を示す。WTマウスは、馴染みの物体よりも新奇な物体を探索するのに有意に多くの時間を費やした(左のバー、n=21、
**P<0.01)。SNAP処理マウスは、新奇な物体に対しても馴染みの物体に対しても有意な選好を示さず、新奇探索傾向及び関心の欠如を示した(右のバー、n=19、ns=有意ではない)。
【
図5B】SNAPの10日間、毎日20mg/kgのi.p.注射による投与が、野生型(WT)マウス及びSNAP処理マウスについての行動試験分析において決定して、C57BL/6マウスにおいてASD様表現型を誘導することを示す。これらの結果は、
図2A~
図2Bに示される実験の結果を確証する。
図5Bは、
図4Bに示す3チャンバー社交性試験で得られたデータを示す棒グラフであり、馴染みのマウス(S1)又は新奇なマウス(S2)のいずれかと相互作用した時間を示す。WTマウスは、馴染みのマウスよりも新奇なマウスと相互作用するのにより多くの時間を費やした(左のバー、n=31、
*P<0.05)一方、SNAP処理マウスは、新奇なマウスとの社会的相互関係に関与する有意な選好を示さなかった(右のバー、n=32、ns=有意でない)。
【
図5C】SNAPの10日間、毎日20mg/kgのi.p.注射による投与が、野生型(WT)マウス及びSNAP処理マウスについての行動試験分析において決定して、C57BL/6マウスにおいてASD様表現型を誘導することを示す。これらの結果は、
図2A~
図2Bに示される実験の結果を確証する。
図5Cは、
図4Cに示される高架式十字迷路試験において得られたデータを示す棒グラフであり、オープンアームにおいて費やされた時間を示す。SNAP処理マウス(n=16)は、それらのWT対応物と比較して、オープンアームにおいて有意に減少した時間を示した(n=32、
*P<0.05)。
【
図5D】SNAPの10日間、毎日20mg/kgのi.p.注射による投与が、野生型(WT)マウス及びSNAP処理マウスについての行動試験分析において決定して、C57BL/6マウスにおいてASD様表現型を誘導することを示す。これらの結果は、
図2A~
図2Bに示される実験の結果を確証する。
図5Dは、
図4Dに示したガラス玉覆い隠し試験において得られたデータを示す棒グラフであり、覆い隠されたガラス玉の数を示す。分析は、WTマウスがSNAP処理マウスよりも多くのガラス玉を覆い隠したことを示し、新奇探索傾向の欠如及び関心の制限を示した(WT及びWT+SNAPについてそれぞれn=20、17。
***P<0.001)。データを平均±SEMとして示す。両側t検定を行った。
**P<0.05。
【
図6A】6週齢(
図6A)及び10月齢(
図6B及び
図6C)の野生型(WT)マウス、SHANK3ノックアウトマウス(M1)及び7-NI処理マウス(M1+7NI)(10日間毎日80mg/kgのi.p.注射)についての新奇物体認識試験(
図4A参照)で得られたデータを示す棒グラフを表す。
図6Aにおいて、WTマウスは、馴染みの物体よりも新奇な物体を探索するのに有意に長い時間を費やしたことが分かる(n=21、
**P<0.01)。M1マウスは、新奇な物体を探索する関心も馴染みの物体も探索する関心を有意には示さず、新奇探索傾向及び関心の欠如を示した(n=33、ns=有意でない)。7-NI処理マウス(M1+7NI)は、馴染みの物体よりも新奇な物体を探索する時間の有意な増加を示した(n=41、
***P<0.001)。データを平均±SEMとして示す。両側t検定を行った。
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001。同様の傾向が、
図6B及び
図6Cに見られるように、老齢マウスにおいて観察された。
【
図6B】6週齢(
図6A)及び10月齢(
図6B及び
図6C)の野生型(WT)マウス、SHANK3ノックアウトマウス(M1)及び7-NI処理マウス(M1+7NI)(10日間毎日80mg/kgのi.p.注射)についての新奇物体認識試験(
図4A参照)で得られたデータを示す棒グラフを表す。
図6Aにおいて、WTマウスは、馴染みの物体よりも新奇な物体を探索するのに有意に長い時間を費やしたことが分かる(n=21、
**P<0.01)。M1マウスは、新奇な物体を探索する関心も馴染みの物体も探索する関心を有意には示さず、新奇探索傾向及び関心の欠如を示した(n=33、ns=有意でない)。7-NI処理マウス(M1+7NI)は、馴染みの物体よりも新奇な物体を探索する時間の有意な増加を示した(n=41、
***P<0.001)。データを平均±SEMとして示す。両側t検定を行った。
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001。同様の傾向が、
図6B及び
図6Cに見られるように、老齢マウスにおいて観察された。
【
図6C】6週齢(
図6A)及び10月齢(
図6B及び
図6C)の野生型(WT)マウス、SHANK3ノックアウトマウス(M1)及び7-NI処理マウス(M1+7NI)(10日間毎日80mg/kgのi.p.注射)についての新奇物体認識試験(
図4A参照)で得られたデータを示す棒グラフを表す。
図6Aにおいて、WTマウスは、馴染みの物体よりも新奇な物体を探索するのに有意に長い時間を費やしたことが分かる(n=21、
**P<0.01)。M1マウスは、新奇な物体を探索する関心も馴染みの物体も探索する関心を有意には示さず、新奇探索傾向及び関心の欠如を示した(n=33、ns=有意でない)。7-NI処理マウス(M1+7NI)は、馴染みの物体よりも新奇な物体を探索する時間の有意な増加を示した(n=41、
***P<0.001)。データを平均±SEMとして示す。両側t検定を行った。
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001。同様の傾向が、
図6B及び
図6Cに見られるように、老齢マウスにおいて観察された。
【
図7A】野生型(WT)マウス、CNTNPA2変異マウス(M2)、及び7-NI処理マウス(M2+7NI、10日間毎日80mg/kgのi.p.注射)についての、3チャンバー社交性試験(
図7A)及び高架式十字迷路試験(
図7B)において得られたデータを示す。7-NIは、両方の試験において自閉症表現型を逆転させた。
【
図7B】野生型(WT)マウス、CNTNPA2変異マウス(M2)、及び7-NI処理マウス(M2+7NI、10日間毎日80mg/kgのi.p.注射)についての、3チャンバー社交性試験(
図7A)及び高架式十字迷路試験(
図7B)において得られたデータを示す。7-NIは、両方の試験において自閉症表現型を逆転させた。
【
図8A】0、20、50、及び80mg/kgの7-NIで処理されたSHANK3変異マウスの行動試験分析を示すグラフである。
図8Aは、オープンフィールド試験で観察された平均速度を示す。80mg/kg処理マウスと20及び50mg/kg処理マウスとの間に有意差は観察されなかった。一元配置分散分析を行った。ns=有意でない。N=5。
図8Bは、オープンフィールド試験で観察された移動距離を示す。80、20、及び50mg/kg処理マウス間の総移動距離に有意差は観察されなかった。一元配置分散分析を行った。ns=有意でない。N=5。
図8Cは、社交性試験、第1セッションにおいて、よそ者マウスと相互作用する時間を示す。80mg/kg処理マウスは、低用量の7-NIで処理されたマウスと比較して、よそ者マウスとの相互作用により多くの時間を費やした。一元配置分散分析を行った。
*P<0.05、
**P<0.01。N=5。
図8Dは、社交性試験における新奇なよそ者マウス(S2)との相互作用の時間を示す。80mg/kg処理マウスは、低用量の7-NIで処理されたそれらの対応物と比較して、新奇なマウスとの相互作用により多くの時間を費やした。一元配置分散分析を行った
***P<0.001。N=5。
【
図8B】0、20、50、及び80mg/kgの7-NIで処理されたSHANK3変異マウスの行動試験分析を示すグラフである。
図8Aは、オープンフィールド試験で観察された平均速度を示す。80mg/kg処理マウスと20及び50mg/kg処理マウスとの間に有意差は観察されなかった。一元配置分散分析を行った。ns=有意でない。N=5。
図8Bは、オープンフィールド試験で観察された移動距離を示す。80、20、及び50mg/kg処理マウス間の総移動距離に有意差は観察されなかった。一元配置分散分析を行った。ns=有意でない。N=5。
図8Cは、社交性試験、第1セッションにおいて、よそ者マウスと相互作用する時間を示す。80mg/kg処理マウスは、低用量の7-NIで処理されたマウスと比較して、よそ者マウスとの相互作用により多くの時間を費やした。一元配置分散分析を行った。
*P<0.05、
**P<0.01。N=5。
図8Dは、社交性試験における新奇なよそ者マウス(S2)との相互作用の時間を示す。80mg/kg処理マウスは、低用量の7-NIで処理されたそれらの対応物と比較して、新奇なマウスとの相互作用により多くの時間を費やした。一元配置分散分析を行った
***P<0.001。N=5。
【
図8C】0、20、50、及び80mg/kgの7-NIで処理されたSHANK3変異マウスの行動試験分析を示すグラフである。
図8Aは、オープンフィールド試験で観察された平均速度を示す。80mg/kg処理マウスと20及び50mg/kg処理マウスとの間に有意差は観察されなかった。一元配置分散分析を行った。ns=有意でない。N=5。
図8Bは、オープンフィールド試験で観察された移動距離を示す。80、20、及び50mg/kg処理マウス間の総移動距離に有意差は観察されなかった。一元配置分散分析を行った。ns=有意でない。N=5。
図8Cは、社交性試験、第1セッションにおいて、よそ者マウスと相互作用する時間を示す。80mg/kg処理マウスは、低用量の7-NIで処理されたマウスと比較して、よそ者マウスとの相互作用により多くの時間を費やした。一元配置分散分析を行った。
*P<0.05、
**P<0.01。N=5。
図8Dは、社交性試験における新奇なよそ者マウス(S2)との相互作用の時間を示す。80mg/kg処理マウスは、低用量の7-NIで処理されたそれらの対応物と比較して、新奇なマウスとの相互作用により多くの時間を費やした。一元配置分散分析を行った
***P<0.001。N=5。
【
図8D】0、20、50、及び80mg/kgの7-NIで処理されたSHANK3変異マウスの行動試験分析を示すグラフである。
図8Aは、オープンフィールド試験で観察された平均速度を示す。80mg/kg処理マウスと20及び50mg/kg処理マウスとの間に有意差は観察されなかった。一元配置分散分析を行った。ns=有意でない。N=5。
図8Bは、オープンフィールド試験で観察された移動距離を示す。80、20、及び50mg/kg処理マウス間の総移動距離に有意差は観察されなかった。一元配置分散分析を行った。ns=有意でない。N=5。
図8Cは、社交性試験、第1セッションにおいて、よそ者マウスと相互作用する時間を示す。80mg/kg処理マウスは、低用量の7-NIで処理されたマウスと比較して、よそ者マウスとの相互作用により多くの時間を費やした。一元配置分散分析を行った。
*P<0.05、
**P<0.01。N=5。
図8Dは、社交性試験における新奇なよそ者マウス(S2)との相互作用の時間を示す。80mg/kg処理マウスは、低用量の7-NIで処理されたそれらの対応物と比較して、新奇なマウスとの相互作用により多くの時間を費やした。一元配置分散分析を行った
***P<0.001。N=5。
【
図9A】分化したSH-SY-5Y細胞、SH-SY-5Y+SHANK3 siRNA処理、及びSHANK3 siRNA+nNOS si-RNA群を有するSH-SY-5Y細胞における、シナプトフィジン及び3-ニトロチロシンの比較免疫蛍光分析を示す。ウサギMAP2+一次マウスモノクローナル3-ニトロチロシン(
図9A~
図9B)。一次ウサギモノクローナルシナプトフィジン+一次マウスMap2(
図9C~
図9D)。細胞を、抗マウス二次Alexa fluor488(緑色)/594(赤色)、及び抗ウサギ二次Alexa fluor488(緑色)/594(赤色)、コンジュゲート二次抗体DAPI(青色)とともにインキュベートした。
図9A及び
図9Cに示される画像は、共焦点顕微鏡を使用して取得した。
図9B及び
図9Dの棒グラフに示されるデータは、平均±SEMである。一元配置ANOVA、続いてフィッシャーのLSD多重比較事後検定を行った。
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001。
【
図9B】分化したSH-SY-5Y細胞、SH-SY-5Y+SHANK3 siRNA処理、及びSHANK3 siRNA+nNOS si-RNA群を有するSH-SY-5Y細胞における、シナプトフィジン及び3-ニトロチロシンの比較免疫蛍光分析を示す。ウサギMAP2+一次マウスモノクローナル3-ニトロチロシン(
図9A~
図9B)。一次ウサギモノクローナルシナプトフィジン+一次マウスMap2(
図9C~
図9D)。細胞を、抗マウス二次Alexa fluor488(緑色)/594(赤色)、及び抗ウサギ二次Alexa fluor488(緑色)/594(赤色)、コンジュゲート二次抗体DAPI(青色)とともにインキュベートした。
図9A及び
図9Cに示される画像は、共焦点顕微鏡を使用して取得した。
図9B及び
図9Dの棒グラフに示されるデータは、平均±SEMである。一元配置ANOVA、続いてフィッシャーのLSD多重比較事後検定を行った。
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001。
【
図9C】分化したSH-SY-5Y細胞、SH-SY-5Y+SHANK3 siRNA処理、及びSHANK3 siRNA+nNOS si-RNA群を有するSH-SY-5Y細胞における、シナプトフィジン及び3-ニトロチロシンの比較免疫蛍光分析を示す。ウサギMAP2+一次マウスモノクローナル3-ニトロチロシン(
図9A~
図9B)。一次ウサギモノクローナルシナプトフィジン+一次マウスMap2(
図9C~
図9D)。細胞を、抗マウス二次Alexa fluor488(緑色)/594(赤色)、及び抗ウサギ二次Alexa fluor488(緑色)/594(赤色)、コンジュゲート二次抗体DAPI(青色)とともにインキュベートした。
図9A及び
図9Cに示される画像は、共焦点顕微鏡を使用して取得した。
図9B及び
図9Dの棒グラフに示されるデータは、平均±SEMである。一元配置ANOVA、続いてフィッシャーのLSD多重比較事後検定を行った。
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001。
【
図9D】分化したSH-SY-5Y細胞、SH-SY-5Y+SHANK3 siRNA処理、及びSHANK3 siRNA+nNOS si-RNA群を有するSH-SY-5Y細胞における、シナプトフィジン及び3-ニトロチロシンの比較免疫蛍光分析を示す。ウサギMAP2+一次マウスモノクローナル3-ニトロチロシン(
図9A~
図9B)。一次ウサギモノクローナルシナプトフィジン+一次マウスMap2(
図9C~
図9D)。細胞を、抗マウス二次Alexa fluor488(緑色)/594(赤色)、及び抗ウサギ二次Alexa fluor488(緑色)/594(赤色)、コンジュゲート二次抗体DAPI(青色)とともにインキュベートした。
図9A及び
図9Cに示される画像は、共焦点顕微鏡を使用して取得した。
図9B及び
図9Dの棒グラフに示されるデータは、平均±SEMである。一元配置ANOVA、続いてフィッシャーのLSD多重比較事後検定を行った。
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001。
【
図10A】2%w/v 7-NIを含まない(MA-9-61-ストック)及び含む(MA-9-61-A)例示的なプレナノ分散脂質(PNL)製剤を含有するバイアルの写真(
図10A)、各製剤の水性分散液を含有するバイアルの写真(
図10B)、及び各製剤のDLS粒径データ(
図10C)を示す。
【
図10B】2%w/v 7-NIを含まない(MA-9-61-ストック)及び含む(MA-9-61-A)例示的なプレナノ分散脂質(PNL)製剤を含有するバイアルの写真(
図10A)、各製剤の水性分散液を含有するバイアルの写真(
図10B)、及び各製剤のDLS粒径データ(
図10C)を示す。
【
図10C】2%w/v 7-NIを含まない(MA-9-61-ストック)及び含む(MA-9-61-A)例示的なプレナノ分散脂質(PNL)製剤を含有するバイアルの写真(
図10A)、各製剤の水性分散液を含有するバイアルの写真(
図10B)、及び各製剤のDLS粒径データ(
図10C)を示す。
【
図12A】7-NIの代表的なUVスペクトル及びそこから生成された355nmでのメタノール中の標準曲線(
図12A)、並びに37℃でのリン酸緩衝溶液(phosphate buffer solution、PBS)中のPSARAゲル製剤(MA-8-75-A)からの7-NIの放出を示すプロットを示す。製剤中の薬物含量は5%w/wである。
【
図12B】7-NIの代表的なUVスペクトル及びそこから生成された355nmでのメタノール中の標準曲線(
図12A)、並びに37℃でのリン酸緩衝溶液(phosphate buffer solution、PBS)中のPSARAゲル製剤(MA-8-75-A)からの7-NIの放出を示すプロットを示す。製剤中の薬物含量は5%w/wである。
【
図13A】野生型(対照)マウス、SHANK3変異マウス(SHANK3)及び7-NI処理SHANK3マウス(単回投与-治療)(SHANK3
-/-。本明細書の実施例12に記載される5%w/w 7-NI PSARAゲル製剤のi.p.注射)についての行動試験分析を示す。実験は注射の4日後に開始した。
図13Aは、オープンフィールド試験-運動活性において得られたデータを示す(単回投与後4日目)。
図13B~
図13Cは、1日目(単回投与後9日目)(
図13B)及び2日目(単回投与後10日目)(
図13C)の3チャンバー社交性試験で得られたデータを示す。SHANK3マウスは、対照マウスと比較して、よそ者1マウスと相互作用する時間に有意な変化を示さなかった。7-NI処理マウスは、未処理SHANK3マウスと比較して、よそ者1マウスと相互作用する時間を有意に増加させた(
図13B、対照、SHANK3、及び処理マウスについてそれぞれn=4、4、4、。ns=有意ではない、
**P<0.01)。SHANK3マウスは、対照マウスと比較して、よそ者2マウスとの相互作用に費やした時間が有意に少なかった。7-NI処理マウスは、未処理SHANK3マウスと比較して、よそ者2マウスとの相互作用に費やした時間が有意に多かった。(
図13C、対照、SHANK3、及び処理についてそれぞれn=4、4、4。
***P<0.001、
**P<0.01)。ガラス玉覆い隠し試験で得られたデータを
図13Dに示し、ここでは単回投与後7日目の覆い隠されたガラス玉の数を示す。分析は、SHANK3マウスが対照マウスよりも有意に少ないガラス玉を覆い隠したことを示し、新奇探索傾向の欠如及び関心の制限を示した。7-NI処理マウスは、SHANK3マウスと比較してより多くのガラス玉を覆い隠した(対照、SHANK3、及び処理マウスについてそれぞれn=4、4、4、
***P<0.001、
***P<0.001)。高架式十字迷路試験(Elevated plus maze test)で得られたデータを
図13Eに示す(単回投与後12日目)。SHANK3マウスは、対照の対応物と比較して、オープンアームで過ごした時間に有意な変化を示さなかった。7-NI処理マウスは、それらの未処理同腹仔SHANK3と比較して、オープンアームにおいて有意により多くの時間を費やした。(対照、SHANK3及び処理についてそれぞれn=4、4、4。ns=有意ではない、
***P<0.05)。データを平均±SEMとして示す。両側t検定を行った。
**P<0.05。
【
図13B】野生型(対照)マウス、SHANK3変異マウス(SHANK3)及び7-NI処理SHANK3マウス(単回投与-治療)(SHANK3
-/-。本明細書の実施例12に記載される5%w/w 7-NI PSARAゲル製剤のi.p.注射)についての行動試験分析を示す。実験は注射の4日後に開始した。
図13Aは、オープンフィールド試験-運動活性において得られたデータを示す(単回投与後4日目)。
図13B~
図13Cは、1日目(単回投与後9日目)(
図13B)及び2日目(単回投与後10日目)(
図13C)の3チャンバー社交性試験で得られたデータを示す。SHANK3マウスは、対照マウスと比較して、よそ者1マウスと相互作用する時間に有意な変化を示さなかった。7-NI処理マウスは、未処理SHANK3マウスと比較して、よそ者1マウスと相互作用する時間を有意に増加させた(
図13B、対照、SHANK3、及び処理マウスについてそれぞれn=4、4、4、。ns=有意ではない、
**P<0.01)。SHANK3マウスは、対照マウスと比較して、よそ者2マウスとの相互作用に費やした時間が有意に少なかった。7-NI処理マウスは、未処理SHANK3マウスと比較して、よそ者2マウスとの相互作用に費やした時間が有意に多かった。(
図13C、対照、SHANK3、及び処理についてそれぞれn=4、4、4。
***P<0.001、
**P<0.01)。ガラス玉覆い隠し試験で得られたデータを
図13Dに示し、ここでは単回投与後7日目の覆い隠されたガラス玉の数を示す。分析は、SHANK3マウスが対照マウスよりも有意に少ないガラス玉を覆い隠したことを示し、新奇探索傾向の欠如及び関心の制限を示した。7-NI処理マウスは、SHANK3マウスと比較してより多くのガラス玉を覆い隠した(対照、SHANK3、及び処理マウスについてそれぞれn=4、4、4、
***P<0.001、
***P<0.001)。高架式十字迷路試験(Elevated plus maze test)で得られたデータを
図13Eに示す(単回投与後12日目)。SHANK3マウスは、対照の対応物と比較して、オープンアームで過ごした時間に有意な変化を示さなかった。7-NI処理マウスは、それらの未処理同腹仔SHANK3と比較して、オープンアームにおいて有意により多くの時間を費やした。(対照、SHANK3及び処理についてそれぞれn=4、4、4。ns=有意ではない、
***P<0.05)。データを平均±SEMとして示す。両側t検定を行った。
**P<0.05。
【
図13C】野生型(対照)マウス、SHANK3変異マウス(SHANK3)及び7-NI処理SHANK3マウス(単回投与-治療)(SHANK3
-/-。本明細書の実施例12に記載される5%w/w 7-NI PSARAゲル製剤のi.p.注射)についての行動試験分析を示す。実験は注射の4日後に開始した。
図13Aは、オープンフィールド試験-運動活性において得られたデータを示す(単回投与後4日目)。
図13B~
図13Cは、1日目(単回投与後9日目)(
図13B)及び2日目(単回投与後10日目)(
図13C)の3チャンバー社交性試験で得られたデータを示す。SHANK3マウスは、対照マウスと比較して、よそ者1マウスと相互作用する時間に有意な変化を示さなかった。7-NI処理マウスは、未処理SHANK3マウスと比較して、よそ者1マウスと相互作用する時間を有意に増加させた(
図13B、対照、SHANK3、及び処理マウスについてそれぞれn=4、4、4、。ns=有意ではない、
**P<0.01)。SHANK3マウスは、対照マウスと比較して、よそ者2マウスとの相互作用に費やした時間が有意に少なかった。7-NI処理マウスは、未処理SHANK3マウスと比較して、よそ者2マウスとの相互作用に費やした時間が有意に多かった。(
図13C、対照、SHANK3、及び処理についてそれぞれn=4、4、4。
***P<0.001、
**P<0.01)。ガラス玉覆い隠し試験で得られたデータを
図13Dに示し、ここでは単回投与後7日目の覆い隠されたガラス玉の数を示す。分析は、SHANK3マウスが対照マウスよりも有意に少ないガラス玉を覆い隠したことを示し、新奇探索傾向の欠如及び関心の制限を示した。7-NI処理マウスは、SHANK3マウスと比較してより多くのガラス玉を覆い隠した(対照、SHANK3、及び処理マウスについてそれぞれn=4、4、4、
***P<0.001、
***P<0.001)。高架式十字迷路試験(Elevated plus maze test)で得られたデータを
図13Eに示す(単回投与後12日目)。SHANK3マウスは、対照の対応物と比較して、オープンアームで過ごした時間に有意な変化を示さなかった。7-NI処理マウスは、それらの未処理同腹仔SHANK3と比較して、オープンアームにおいて有意により多くの時間を費やした。(対照、SHANK3及び処理についてそれぞれn=4、4、4。ns=有意ではない、
***P<0.05)。データを平均±SEMとして示す。両側t検定を行った。
**P<0.05。
【
図13D】野生型(対照)マウス、SHANK3変異マウス(SHANK3)及び7-NI処理SHANK3マウス(単回投与-治療)(SHANK3
-/-。本明細書の実施例12に記載される5%w/w 7-NI PSARAゲル製剤のi.p.注射)についての行動試験分析を示す。実験は注射の4日後に開始した。
図13Aは、オープンフィールド試験-運動活性において得られたデータを示す(単回投与後4日目)。
図13B~
図13Cは、1日目(単回投与後9日目)(
図13B)及び2日目(単回投与後10日目)(
図13C)の3チャンバー社交性試験で得られたデータを示す。SHANK3マウスは、対照マウスと比較して、よそ者1マウスと相互作用する時間に有意な変化を示さなかった。7-NI処理マウスは、未処理SHANK3マウスと比較して、よそ者1マウスと相互作用する時間を有意に増加させた(
図13B、対照、SHANK3、及び処理マウスについてそれぞれn=4、4、4、。ns=有意ではない、
**P<0.01)。SHANK3マウスは、対照マウスと比較して、よそ者2マウスとの相互作用に費やした時間が有意に少なかった。7-NI処理マウスは、未処理SHANK3マウスと比較して、よそ者2マウスとの相互作用に費やした時間が有意に多かった。(
図13C、対照、SHANK3、及び処理についてそれぞれn=4、4、4。
***P<0.001、
**P<0.01)。ガラス玉覆い隠し試験で得られたデータを
図13Dに示し、ここでは単回投与後7日目の覆い隠されたガラス玉の数を示す。分析は、SHANK3マウスが対照マウスよりも有意に少ないガラス玉を覆い隠したことを示し、新奇探索傾向の欠如及び関心の制限を示した。7-NI処理マウスは、SHANK3マウスと比較してより多くのガラス玉を覆い隠した(対照、SHANK3、及び処理マウスについてそれぞれn=4、4、4、
***P<0.001、
***P<0.001)。高架式十字迷路試験(Elevated plus maze test)で得られたデータを
図13Eに示す(単回投与後12日目)。SHANK3マウスは、対照の対応物と比較して、オープンアームで過ごした時間に有意な変化を示さなかった。7-NI処理マウスは、それらの未処理同腹仔SHANK3と比較して、オープンアームにおいて有意により多くの時間を費やした。(対照、SHANK3及び処理についてそれぞれn=4、4、4。ns=有意ではない、
***P<0.05)。データを平均±SEMとして示す。両側t検定を行った。
**P<0.05。
【
図13E】野生型(対照)マウス、SHANK3変異マウス(SHANK3)及び7-NI処理SHANK3マウス(単回投与-治療)(SHANK3
-/-。本明細書の実施例12に記載される5%w/w 7-NI PSARAゲル製剤のi.p.注射)についての行動試験分析を示す。実験は注射の4日後に開始した。
図13Aは、オープンフィールド試験-運動活性において得られたデータを示す(単回投与後4日目)。
図13B~
図13Cは、1日目(単回投与後9日目)(
図13B)及び2日目(単回投与後10日目)(
図13C)の3チャンバー社交性試験で得られたデータを示す。SHANK3マウスは、対照マウスと比較して、よそ者1マウスと相互作用する時間に有意な変化を示さなかった。7-NI処理マウスは、未処理SHANK3マウスと比較して、よそ者1マウスと相互作用する時間を有意に増加させた(
図13B、対照、SHANK3、及び処理マウスについてそれぞれn=4、4、4、。ns=有意ではない、
**P<0.01)。SHANK3マウスは、対照マウスと比較して、よそ者2マウスとの相互作用に費やした時間が有意に少なかった。7-NI処理マウスは、未処理SHANK3マウスと比較して、よそ者2マウスとの相互作用に費やした時間が有意に多かった。(
図13C、対照、SHANK3、及び処理についてそれぞれn=4、4、4。
***P<0.001、
**P<0.01)。ガラス玉覆い隠し試験で得られたデータを
図13Dに示し、ここでは単回投与後7日目の覆い隠されたガラス玉の数を示す。分析は、SHANK3マウスが対照マウスよりも有意に少ないガラス玉を覆い隠したことを示し、新奇探索傾向の欠如及び関心の制限を示した。7-NI処理マウスは、SHANK3マウスと比較してより多くのガラス玉を覆い隠した(対照、SHANK3、及び処理マウスについてそれぞれn=4、4、4、
***P<0.001、
***P<0.001)。高架式十字迷路試験(Elevated plus maze test)で得られたデータを
図13Eに示す(単回投与後12日目)。SHANK3マウスは、対照の対応物と比較して、オープンアームで過ごした時間に有意な変化を示さなかった。7-NI処理マウスは、それらの未処理同腹仔SHANK3と比較して、オープンアームにおいて有意により多くの時間を費やした。(対照、SHANK3及び処理についてそれぞれn=4、4、4。ns=有意ではない、
***P<0.05)。データを平均±SEMとして示す。両側t検定を行った。
**P<0.05。
【
図14A】7-NIの最適濃度(
図14A)、及びsiRNAによるnNOSの成功したノックダウン(
図14B~
図14E)を示す。
図14Aは、MTT(用量反応曲線)によって測定されたSH-SY5Yの細胞生存率を示す比較プロットを示す。細胞処理のための7-NIの濃度は100μMであった。データは100%で示した。
【
図14B】7-NIの最適濃度(
図14A)、及びsiRNAによるnNOSの成功したノックダウン(
図14B~
図14E)を示す。
図14Bは、nNOSの代表的なブロットである。1:SH-SY5Y;2:SH-SY5Y+陰性対照(negative control、NC);及び3:SH-SY5Y+si-nNos。
【
図14C】7-NIの最適濃度(
図14A)、及びsiRNAによるnNOSの成功したノックダウン(
図14B~
図14E)を示す。
図14Cは、nNOS免疫蛍光の代表的な蛍光画像を示す。青色はDAPI(核のマーカー)を示し、緑色はNeuN(ニューロンのマーカー)を示し、赤色はnNOSを示す。
【
図15A】SH-SY5Y細胞におけるnNOS活性及びNOレベルに対する7-NI及びnNOSサイレンシングの効果を示す棒グラフである。
図15Aは、細胞溶解物におけるNADPH-ジアフォラーゼ活性を示す。585nmでの吸光度を、総タンパク質について正規化した。データは、平均±SEM(n=3)、
*P<0.05、
**P<0.01として表す。
【
図15B】SH-SY5Y細胞におけるnNOS活性及びNOレベルに対する7-NI及びnNOSサイレンシングの効果を示す棒グラフである。
図15Bは、Griessアッセイによって測定されたニトライトレベル(NOレベルのマーカー)を示す。データは、平均±SEM(n=3)、
*P<0.05、
**P<0.01として表す。
【
図16A】SH-SY5Y細胞増殖に対する7-NI及びnNOSサイレンシングの効果を示す(クローン原性増殖アッセイ)。
図16Aは、処理されていないSH-SY5Y細胞、並びに7-NI、si-nNOS RNA(サイレンシングされたnNOS)、及びビヒクル(陰性対照、NC)で処理されたSH-SY5Y細胞を有するプレートの代表的な画像を示す。
【
図16B】SH-SY5Y細胞増殖に対する7-NI及びnNOSサイレンシングの効果を示す(クローン原性増殖アッセイ)。
図16Bは、細胞コロニーの数を示す棒グラフである。データは、平均±SEM(n=3)、
*P<0.05、
**P<0.01として表す。
【
図17A】3-ニトロチロシン、mTORシグナル伝達経路の成分、及びシナプトフィジンのレベルのウェスタンブロット分析で得られたデータを示す。細胞群:SH-SY5Y、SH-SY5Y+7-NI、及びSH-SY5Y+si-nNOS(nNOSノックダウン);各群についてn=9。
図17Aは、SH-SY5Y(1)、SH-SY5Y+7-NI(2)、及びSH-SY5Y+si-nNOS(3)の細胞溶解物から調製されたタンパク質の代表的なWBを示す。
【
図17B】3-ニトロチロシン、mTORシグナル伝達経路の成分、及びシナプトフィジンのレベルのウェスタンブロット分析で得られたデータを示す。細胞群:SH-SY5Y、SH-SY5Y+7-NI、及びSH-SY5Y+si-nNOS(nNOSノックダウン);各群についてn=9。
図17Bは、3群の細胞における3-Ntyrの相対存在量を示す棒グラフである。
【
図17C】3-ニトロチロシン、mTORシグナル伝達経路の成分、及びシナプトフィジンのレベルのウェスタンブロット分析で得られたデータを示す。細胞群:SH-SY5Y、SH-SY5Y+7-NI、及びSH-SY5Y+si-nNOS(nNOSノックダウン);各群についてn=9。
図17Cは、3群の細胞溶解物から調製されたタンパク質(p-mTOR、mTOR、TSC2、pAKT、AKT、pRPS6、RPS6、及びSyp)の代表的なウェスタンブロッティング(WB)を示す。
【
図17D】3-ニトロチロシン、mTORシグナル伝達経路の成分、及びシナプトフィジンのレベルのウェスタンブロット分析で得られたデータを示す。細胞群:SH-SY5Y、SH-SY5Y+7-NI、及びSH-SY5Y+si-nNOS(nNOSノックダウン);各群についてn=9。
図17Dは、p-mTOR、mTOR、TSC2、pAKT、AKT、pRPS6、RPS6、及びSypの相対存在量を示す棒グラフである。データをβ-アクチンについて正規化し、平均±SEMとして表した。一元配置ANOVA、続いてフィッシャーのLSD多重比較事後検定を行った。
*P<0.05、
**P<0.01。
【
図18A】nNOS活性が阻害されたSH-SY5Y細胞におけるシナプトフィジン及び3-ニトロチロシンの免疫蛍光を示す。細胞(処理あり又はなし)を4%パラホルムアルデヒド中で後固定し、次いで、別の細胞群において、一次ウサギモノクローナルSyp(赤色)、及び一次マウスモノクローナルNeuN(緑色)又は一次マウスモノクローナル3-Ntyr(緑色)抗体のいずれかとともにインキュベートした。細胞を、抗マウスAlexa fluor488又は抗ウサギAlexa fluor594などの各々の二次抗体とともにインキュベートし、次いで、両方の細胞群においてDAPI(青色)とともにマウントした。共焦点顕微鏡を用いて画像を取得した。細胞群:SH-SY5Y、SH-SY5Y+7-NI、及びSH-SY5Y+si-nNOS。各群は、3つの独立した実験セットからなり、三連で行った。初期の細胞播種数は、約10
6/cm
2であった。
図18Aは、Syp及び3-Ntyr免疫蛍光の代表的な画像を示す。
【
図18B】nNOS活性が阻害されたSH-SY5Y細胞におけるシナプトフィジン及び3-ニトロチロシンの免疫蛍光を示す。細胞(処理あり又はなし)を4%パラホルムアルデヒド中で後固定し、次いで、別の細胞群において、一次ウサギモノクローナルSyp(赤色)、及び一次マウスモノクローナルNeuN(緑色)又は一次マウスモノクローナル3-Ntyr(緑色)抗体のいずれかとともにインキュベートした。細胞を、抗マウスAlexa fluor488又は抗ウサギAlexa fluor594などの各々の二次抗体とともにインキュベートし、次いで、両方の細胞群においてDAPI(青色)とともにマウントした。共焦点顕微鏡を用いて画像を取得した。細胞群:SH-SY5Y、SH-SY5Y+7-NI、及びSH-SY5Y+si-nNOS。各群は、3つの独立した実験セットからなり、三連で行った。初期の細胞播種数は、約10
6/cm
2であった。
図18B~
図18Cは、3群の細胞におけるSyp(
図18B)及びN-Tyr(
図18C)免疫蛍光の相対蛍光強度を示す棒グラフである。データを平均±SEMとして示す。一元配置ANOVA、続いてフィッシャーのLSD多重比較事後検定を行った。
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001。スケールバーは100μmである。
【
図18C】nNOS活性が阻害されたSH-SY5Y細胞におけるシナプトフィジン及び3-ニトロチロシンの免疫蛍光を示す。細胞(処理あり又はなし)を4%パラホルムアルデヒド中で後固定し、次いで、別の細胞群において、一次ウサギモノクローナルSyp(赤色)、及び一次マウスモノクローナルNeuN(緑色)又は一次マウスモノクローナル3-Ntyr(緑色)抗体のいずれかとともにインキュベートした。細胞を、抗マウスAlexa fluor488又は抗ウサギAlexa fluor594などの各々の二次抗体とともにインキュベートし、次いで、両方の細胞群においてDAPI(青色)とともにマウントした。共焦点顕微鏡を用いて画像を取得した。細胞群:SH-SY5Y、SH-SY5Y+7-NI、及びSH-SY5Y+si-nNOS。各群は、3つの独立した実験セットからなり、三連で行った。初期の細胞播種数は、約10
6/cm
2であった。
図18B~
図18Cは、3群の細胞におけるSyp(
図18B)及びN-Tyr(
図18C)免疫蛍光の相対蛍光強度を示す棒グラフである。データを平均±SEMとして示す。一元配置ANOVA、続いてフィッシャーのLSD多重比較事後検定を行った。
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001。スケールバーは100μmである。
【発明を実施するための形態】
【0150】
本発明は、そのいくつかの実施形態では、治療法に関し、より詳細には、明確ではないが、自閉症スペクトラム障害(ASD)及び神経由来がんなどであるがこれらに限定されない、ニューロン一酸化窒素シンターゼ(nNOS)の異常活性に関連する神経学的状態を治療するための薬学的組成物及び方法に関する。
【0151】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の説明に記載されるか又は実施例によって例示される詳細に必ずしも限定されないことが理解されるべきである。本発明は、他の実施形態が可能であり、又は様々な方法で実施若しくは実行することが可能である。
【0152】
本発明者らは、例えば、ASD、アルツハイマー病、及び神経芽細胞腫などの神経学的状態が、特にニューロンにおける一酸化窒素(NO)(例えば、遊離の生理学的に利用可能なNO)の有意な上昇を特徴とすることを認識し、驚くべきことに、nNOS阻害剤による治療が罹患表現型の逆転をもたらし、それによって、上昇したNOレベルに関連する神経学的状態を治療する際のnNOS活性の阻害又は低下の役割を実証することを明らかにした。
【0153】
本発明者らは、nNOS活性の阻害において、並びに上昇したNOレベル及び/又は異常なnNOS活性に関連する神経学的状態の治療において使用可能な薬学的組成物を設計した。
【0154】
本発明の実施形態は、生理学的に利用可能な一酸化窒素のレベル(例えば、量又は濃度)を低下させること及び/又はnNOSの活性を低下させることを必要とする対象において、それを行うための方法に関する。
【0155】
本発明の実施形態は、有益な臨床効果がnNOS活性の低下によって達成される疾患又は状態、例えば、限定されないが、ASD又は神経起源のがん(神経由来がん又は神経がん)を治療する方法に関する。
【0156】
本発明の実施形態は更に、上記方法のいずれかにおいて使用可能な薬学的組成物に関する。
【0157】
本発明のいくつかの実施形態は、nNOSの活性を低下させる活性剤が、対象のCNS(例えば、脳)におけるnNOS活性を選択的又は優先的に低下させる薬学的組成物及び/又は方法に関する。
【0158】
本発明のいくつかの実施形態は、選択的nNOS阻害剤である薬剤を含む薬学的組成物に関する。
【0159】
方法及び使用:
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、nNOS活性の低下によって有益な臨床効果が達成される疾患又は状態を治療する方法であって、その治療を必要とする対象に、有効量の、nNOS活性を低下させる活性剤を含む組成物を投与し、それによってnNOS活性の低下によって有益な臨床効果が達成される疾患又は状態を治療することを含む方法が提供される。
【0160】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、nNOS活性の低下によって有益な臨床効果が達成される疾患又は状態の治療に使用するための、nNOS活性を低下させる活性剤と、任意選択で薬学的に許容される担体とを含む組成物が提供される。
【0161】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、本明細書に記載の方法及び使用は、それらを必要とする対象の神経細胞における生理学的に利用可能な一酸化窒素(NO)のレベル(例えば、量)を低下させるためのものである。いくつかの実施形態によれば、低下は、少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%である。
【0162】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、本明細書に記載の方法及び使用は、それらを必要とする対象のCNS(例えば、脳)中の生理学的に利用可能な一酸化窒素(NO)のレベル(例えば、量)を低下させるためのものである。いくつかの実施形態によれば、低下は、少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%である。
【0163】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、有益な臨床効果が罹患組織における生理学的に利用可能な一酸化窒素の量の減少によって達成される疾患又は状態を治療する方法であって、それらを必要とする対象に、有効量の、nNOS活性を減少させる活性剤を含む組成物を投与し、それによって疾患又は状態を治療することを含む方法が提供される。いくつかの実施形態によれば、組成物の有効量は、生理学的に利用可能な一酸化窒素の量を少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%減少させる量である。いくつかの実施形態によれば、罹患組織は、神経細胞を含む。いくつかの実施形態によれば、罹患組織は、対象のCNS(例えば、脳)にある。
【0164】
nNOSの活性の低下させること、又は生理的に利用可能な一酸化窒素の量を低下させることは、対象の血漿中のNtyrの量を決定することによって、又は以下で更に詳細に論じるような当技術分野で公知の任意の他の方法によって測定することができる。
【0165】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、本明細書に記載の方法及び使用は、CNS又は脳におけるnNOS活性を低下させるためのものである。
【0166】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、本明細書に記載の方法及び使用は、神経細胞、例えば、CNS又は脳における生理学的に利用可能な一酸化窒素の量を減少させるためのものである。
【0167】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、脳内のnNOS活性の低下によって有益な臨床効果が達成される疾患又は状態を治療する方法であって、その治療を必要とする対象に、有効量の、nNOS活性を低下させる活性剤を含む組成物を投与することを含み、該nNOS活性の低下が、他の組織と比較して対象の脳内で選択的又は優先的であり、それによって脳内のnNOS活性の低下によって有益な臨床効果が達成される疾患又は状態を治療する方法が提供される。
【0168】
代替的又は追加的に、nNOS活性を低下させる活性剤を含む組成物であって、脳におけるnNOS活性の低下によって有益な臨床効果が達成される疾患又は状態の治療を必要とする対象においてそれを行うための活性剤を含む組成物であって、該nNOS活性の低下が、他の組織と比較して対象の脳において選択的又は優先的であるように製剤化されている組成物が提供される。
【0169】
本明細書中で使用される場合、「治療すること」及び「治療」という用語は、状態の進行を抑止すること、実質的に阻害すること、遅らせること若しくは逆転させること、状態の臨床的症状若しくは審美的症状を実質的に改善すること、又は状態の臨床的症状若しくは審美的症状の出現を実質的に予防することを含む。
【0170】
特定の実施形態によれば、「治療」という用語は、望ましくない行動の重症度又は持続時間の低減、望ましくない行動のブースト間の持続時間の増加、行動が起こる前の行動の予防、発達の改善、及び全体的な状態の改善を指すことができる。
【0171】
特定の実施形態によれば、「治療」及び「治療する」という用語は、予防を除外する。
【0172】
本明細書で使用される場合、「有益な臨床効果がnNOS活性の低下によって達成される疾患又は状態」は、医学的疾患又は状態に罹患していない対照対象における一酸化窒素(NO)レベルと比較して、NOレベルの上昇が明らかである医学的状態を指す。特定の実施形態によれば、対照対象は、治療される対象と同じ性別、発達段階及び民族群の対照集団に属する。
【0173】
本明細書中で使用される場合、「脳におけるnNOS活性の減少によって有益な臨床効果が達成される疾患又は状態」は、中枢神経系(CNS)における医学的状態に罹患していない対照対象における一酸化窒素(NO)レベルと比較して、CNSの一部において一酸化窒素(NO)レベルの上昇が明らかである医学的状態をいう。特定の実施形態によれば、対照対象は、治療される対象と同じ性別、発達段階及び民族群の対照集団に属する。
【0174】
本明細書中で使用される場合、「nNOS」は、ヒトの染色体12、12q24.22、BRENDA 1.14.13.39上に位置するNOS1遺伝子のタンパク産物をいう。これはまた、ヒトにおいてNOS1遺伝子によってコードされる酵素であるNOS1としても知られている。nNOS遺伝子は、ヒトにおいて受託番号P29475で示されている。
【0175】
他の非ヒト動物由来のオルソログもまた、本明細書において企図される。一酸化窒素シンターゼ(EC 1.14.13.39)(NOS)は、L-アルギニンからの一酸化窒素(NO)の産生を触媒するシンターゼのファミリーである。NOは、その酵素源及び組織局在化に依存して身体全体にわたって多様な機能を有する化学メッセンジャーである。NOS1が主に存在する脳及び末梢神経系において、NOは、神経伝達物質の多くの特性を示し、長期増強に関与し得る。
【0176】
ニューロンNOS(NOS1)、内皮NOS(NOS3)、及び誘導性NOSマクロファージNOSは、別個のアイソフォームである。ニューロン形態及びマクロファージ形態の両方は、例えば、フラビンアデニンジヌクレオチド(flavin adenine dinucleotide、FAD)、フラビンモノヌクレオチド(FMN)、NADPH、及びテトラヒドロビオプテリンを含むいくつかの電子供与体(補因子)を必要とする酸化酵素の中では珍しい。全ての一酸化窒素シンターゼアイソフォームは、カルシウム-カルモジュリン制御される。例えば、nNOSは100nMを超えるカルシウム濃度で活性化される。
【0177】
本明細書で使用される場合、「nNOS活性」は、別段の指示がない限り、末梢神経系及び/又は中枢神経系を含む、ニューロン細胞又は神経組織(ニューロン組織)における遊離(生理学的に利用可能な)一酸化窒素(NO)の産生を指す。
【0178】
「nNOS活性」はまた、nNOSを発現する神経細胞を含む神経組織(CNS、例えば脳)又は末梢器官におけるnNOS酵素による遊離(生理学的に利用可能な)一酸化窒素(NO)の産生ということもできる。
【0179】
NOSによるNOの生成は、L-アルギニンのグアニジン基の窒素原子の5電子酸化を触媒することによって行われる。L-ArgのL-シトルリンへの酸化は、Nω-ヒドロキシ-L-アルギニン(NOHLA)を中間体として生成する2つの連続したモノ酸素化反応を介して起こる。2モルのO2及び1.5モルのNADPHが、形成されたNO 1モル当たり消費される。
【0180】
nNOS活性は、遊離NOの産生を妨害することによって、例えば、モノ酸素化反応に関与する1つ以上の補因子のレベル及び/又はその基質(L-アルギニン)のレベルに影響をすることによって、並びに/又は例えば、基質競合阻害剤によって、L-アルギニンへのその結合のレベルを妨害することによって、もたらされ得る(増加又は減少され得る)。
【0181】
nNOSによる遊離NOの制御されない産生(健康な状態と比較して増加した)は、以下及び以下の実施例の節に記載されるようなモデル動物においてASD様症状を誘発し得る。
【0182】
nNOS活性の低下は、nNOSタンパク質産物、それをコードするDNA若しくはmRNAのレベルを下方制御することによって、又は酵素の活性を阻害することによって達成することができる。これは、酵素の細胞局在化を妨害すること、その固有の活性を阻害すること、又はアクチベーター若しくはそのエフェクターの活性を阻害することによって達成することができ、各代替物は、本発明の個々の実施形態とみなされる。
【0183】
例えば、nNOS活性の阻害は、遊離NOの産生を妨害することによって、例えば、一酸素化反応に関与する1つ以上の補因子のレベルを低下させることによって、及び/又はその基質(L-アルギニン)のレベルを低下させることによって、及び/又はL-アルギニンへのその結合のレベルを妨害することによって、例えば、基質競合阻害剤によって行うことができる。
【0184】
nNOSの選択的阻害は、他のNOSアイソフォームの阻害と比較して、nNOS触媒性NO産生に関与するが、他のアイソフォームによって触媒されるNO産生には関与しない補因子のレベルを妨害することによって、及び/又は他のNOSアイソフォームに対する親和性と比較してより高いnNOSに対する親和性を有する基質競合阻害剤を使用することによって行うことができる。いくつかの態様において、選択的nNOS阻害剤は、eNOS又はiNOSに対するその解離定数(Ki)よりも少なくとも10倍又は少なくとも100倍又は少なくとも1,000倍高い、nNOSに対する解離定数(Ki)によって決定されるnNOSに対する親和性を有する。
【0185】
酸化窒素シンターゼ活性アッセイは、市販されている。これらのアッセイとしては、例えば、AbcamによるNOS活性アッセイキット、例えばab211083が挙げられる。活性パラメータは、チロシンニトロ化、NO2、NO3などであり得る。
【0186】
代替的又は追加的に、nNOSレベルは、タンパク質又はmRNAレベルで決定することができる。
【0187】
nNOSタンパク質レベルは、免疫学的アッセイ、例えばウェスタンブロッティング、ELISAを使用して、例えば、Cosmo Bio USA又はLSBioから入手可能なもの、例えばLS-F4243などのELISAアッセイキットを使用することによって、決定することができる。
【0188】
Dotsch et al.Int J Cancer.2000 Oct 15;88(2):172-5は、mRNAレベルでのnNOSの決定を教示する。
【0189】
本明細書で使用される場合、「有益な臨床効果がnNOS活性の低下によって達成される疾患又は状態」は、発症又は進行がニューロン細胞における一酸化窒素(NO)の過剰産生(正常/健康なCNS組織におけるそのレベルと比較して)に依存する医学的状態を指す。これは典型的には、(末梢又は中枢神経系の)健康な神経組織と比較して、nNOSにおける調節不全の(増加した)活性によって達成される。
【0190】
いくつかの実施形態では、「有益な臨床効果がnNOS活性の低下によって達成される疾患又は状態」は、発症又は進行がCNS(例えば、脳)における一酸化窒素(NO)の過剰産生(正常/健康なCNS組織におけるそのレベルと比較して)に依存する医学的状態を指す。これは典型的には、健康なCNSと比較して、nNOSにおける調節不全の(増加した)活性によって達成される。
【0191】
有益な効果は、少なくとも1つの病理学的症状の減少に関する。
【0192】
本明細書で使用される場合、「疾患又は状態に関連する少なくとも1つの症状の減少」は、統計的に有意な減少、例えば、症状の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は更には完全な消失を指す。
【0193】
当業者であれば、症状のレベル又はその存在若しくは非存在を決定する方法が分かるであろう。
【0194】
特定の実施形態によれば、nNOS活性(又は発現)の低下/減少は、最適には、CNSの正常/健常組織におけるそのレベル若しくはNOのレベルまで、又は患者の医学的状態を改善するレベルまで、のそれである。
【0195】
本発明の実施形態による例示的な疾患又は状態としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、統合失調症、依存症、ALS、てんかん、双極性疾患、片頭痛、加えて、全ての種類の神経発達障害並びに不均衡なNOレベルに関連する神経変性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。更なる例としては、うつ病、ADD、ADHD、並びに手術中又は手術後の新生児の外傷、低酸素性虚血性脳症などのCNSの低酸素性及び虚血性状態が挙げられるが、これらに限定されない。スフィンゴ脂質代謝性疾患(すなわち、GM1-ガングリオシドーシス、GM2-ガングリオシドーシス、テイ=サックス病、サンドホフ病、GM2-ガングリオシドーシスのABバリアント、ファブリー病、ゴーシェ病、異染性白質ジストロフィー、クラッベ病、ニーマン・ピック病、A型、B型、C型又はファーバー病)などの中枢神経系に関与する代謝性疾患。参照により本明細書に完全に記載されるのと同程度に組み込まれる、Tripathi MK,Kartawy M and Amal H.The role of nitric oxide in brain disorders:Autism spectrum disorder and other psychiatric,neurological,and neurodegenerative disorders.Redox Biol.2020:101567を参照されたい。
【0196】
本発明者らは、以下の実施例のセクションに示すように、nNOS阻害剤で処理したマウスモデルにおけるASD様症状の軽減を示した。
【0197】
特定の実施形態によれば、疾患又は状態は、脳障害である。
【0198】
特定の実施形態によれば、疾患又は状態は、記憶障害又は気分障害である。
【0199】
特定の実施形態によれば、疾患又は状態は、神経精神障害である。
【0200】
特定の実施形態によれば、疾患又は状態は、自閉症スペクトラム障害(ASD)である。
【0201】
特定の実施形態によれば、「自閉症スペクトラム障害」という用語は、高機能広汎性発達障害、アスペルガー症候群、特定不能の広汎性発達障害(pervasive developmental disorder not otherwise specified、PDD-NOS)、及び小児期崩壊性障害を含む、以前に自閉症(自閉性障害)と診断された状態を指す。
【0202】
「自閉症スペクトラム障害」又はASDという用語はまた、例えば、ADD、ADHD、ADNP(Helsmoortel-ファンデルAa)症候群及びNAP(ダブネチド)症候群、並びにそれらに関連する状態(例えば、アルツハイマー疾患)を含む、例えば、以下に定義されるようなASD症状(例えば、コミュニケーション障害及び社会的相互関係障害)を含む、他の病気又は医学的状態を包含する。
【0203】
「ASDの治療」という用語は、社会的コミュニケーション及び社会的相互関係に関する問題、行動、関心、又は活動の制限された反復パターンの存在、自傷行動(SIB)、視覚、音、接触、及び匂いを含む感覚に対する異常な応答、一貫した発話リズムを維持することにおける問題、知覚障害に現れる発達上の問題、発生度、関連、発話及び言語、及び運動性の障害を含み、記憶欠損及び他の認知機能不全も含む、ASDに関連する少なくとも1つの望ましくないパラメータ、特徴付け、行動の改善を指す。
【0204】
特定の実施形態によれば、ASDは、以下に提供されるように、DSM-5に従って定義される。
A.現在又は過去に、以下によって認められる、複数の状況にわたる社会的コミュニケーション及び社会的相互関係における持続的欠損(例は例示であり、網羅的なものではない):
1.社会的-感情的相互関係における欠陥、例えば、異常な社会的アプローチ、及び正常な会話のやりとりにおける問題、関心、感情、又は情動の共有の能力がないこと、社会的相互関係を開始又はそれに応答しないこと、など。
2.社会的相互関係のために使用される非言語コミュニケーション行動における欠陥、例えば、不十分に統合された言語及び非言語コミュニケーション、アイコンタクト及びボディランゲージの異常、又はジェスチャーの理解及び使用の能力がないこと、顔の表情及び非言語コミュニケーションの完全な欠如、など。
3.関係を発達させ、維持し、理解する際の能力の欠陥、例えば、様々な社会的状況に適合するように行動を調整する能力がないこと、創作遊びを共有すること、又は友人を作ることが困難であること、ピアに関心がないこと。
【0205】
重症度は、社会的コミュニケーション障害及び制限された行動の反復パターンに基づく。(以下の表1を参照)。
B.現在又は過去に、以下のうちの少なくとも2つによって認められる、挙動、関心、又は活動の制限された反復パターン(例は例示であり、網羅的ではない):
1.常同性又は反復性の運動動作、物体の使用、又は発話(例えば、単純な運動常同性、おもちゃを並べること又は物体をひっくり返すこと、反響言語、特異なフレーズ)。
2.同一性へのこだわり、習慣の順守に柔軟性のないこと、又は儀式化されたパターン若しくは言語非言語行動(例えば、小さな変化での極端な苦悩、移行の困難、硬直な思考パターン、挨拶儀式、毎日同じルートを取るか又は食物を食べる必要がある)。
3.強度又は焦点が異常である高度に制限され、固定された関心(例えば、異常な物体への強い執着又は普通ではない物体に対する没頭、過度に限局した又は固執性の関心)。
4.感覚のインプットに対する過度若しくは過少な反応性、又は環境の感覚的側面における異常な関心(例えば、疼痛/温度に対する明白な無関心、特定の音又は触感に対する有害反応、物体の過剰な匂い又は接触、光又は運動への視覚的魅了)。
【0206】
重症度は、社会的コミュニケーション障害及び制限された行動の反復パターンに基づく。(以下の表Aを参照)。
C.症状は、初期発生期に存在しなければならない(しかし、社会的要求が制限された能力を超えるまで完全に顕在化しない場合もあり、又は後の人生において学習された戦略によって隠される場合もある)。
D.症状は、社会的、職業的、又は現在の機能の他の重要な領域において臨床的に有意な障害を引き起こす。
E.これらの障害は、知的障害(知的発達障害)又は全体的な発達遅延によって十分には説明されない。知的障害及び自閉症スペクトラム障害が頻繁に併発し、自閉症スペクトラム障害及び知的障害の併存診断を行うためには、社会的コミュニケーションが一般的な発達レベルに対して予想されるもの未満であるべきである。
【0207】
自閉性障害、アスペルガー障害、又は他に特定されない広汎性発達障害の十分に確立されたDSM-IV診断を有する個体には、自閉症スペクトラム障害の診断を行うべきである。社会的コミュニケーションに顕著な欠陥を有するが、その症状が他に自閉症スペクトラム障害の基準を満たさない個体は、社会的(プラグマティック)コミュニケーション障害について評価されるべきである。
【0208】
以下を特定すべきである:
知的障害を伴うか伴わないか、
言語障害を伴うか伴わないか、
(コード時の注記:関連する医学的又は遺伝的状態を識別するために追加コードを使用する。)
別の神経発達障害、精神障害、又は行動障害に関連するか、
(コード時の注記:関連する神経発達障害、精神障害、又は行動障害を識別するために追加コードを使用する。)
緊張病を伴うか
既知の医学的若しくは遺伝的状態又は環境因子に関連するか、
【0209】
【0210】
特定の実施形態によれば、状態は、社会的なコミュニケーション障害である。DSM-5による診断基準を以下に要約する。
A.以下の全てによって認められる、言語及び非言語コミュニケーションの社会的使用における持続的な困難:
1.社会的状況に適した方法で、挨拶及び情報共有などの社会的目的のために通信を使用する際の欠陥。
2.教室では運動場とは異なる話し方、子供には大人とは異なる話し方をすること、及び過度に形式的な言語の使用を避けることなど、聴取者の状況又はニーズに合致するようにコミュニケーションを変更する能力の障害。
3.会話を交互にすること、誤解されたときに言い換えること、及び対話を調整するために言語信号及び非言語信号をどのように使用するかを知ることなど、会話及び話術のルールを守ることの困難性。
4.何が明示的に述べられていないか(例えば、推論を行うこと)、及び言語の文字どおりでない又は曖昧な意味(例えば、イディオム、ユーモア、メタファー、解釈のために文脈に依存する複数の意味)を理解することが困難である。
B.欠陥が、個々に又は組み合わせで、有効なコミュニケーション、社会的参加、社会的関係、学業成績、又は職業成績における機能的制限をもたらす。
C.症状の発症が、初期発生期である(しかしながら、社会的コミュニケーションの要求が制限された能力を超えるまで、欠損が完全に顕在化しない場合がある)。
D.症状が、別の医学的若しくは神経学的状態、又は領域若しくは単語構造及び文法における低い能力に起因せず、自閉症スペクトラム障害、知的障害(知的発達障害)、全体的な発達遅延、又は別の精神障害によって十分に説明されない。
【0211】
ASD及びSCDの各々は、併存疾患又は代替的な実施形態として本明細書において企図される。
【0212】
以下の共起も企図され、その各々は代替実施形態とみなされる。
【0213】
遺伝的障害。自閉症の症例の約10~15%は、特定可能なメンデル(単一遺伝子)状態、染色体異常、又は他の遺伝的症候群を有し、ASDは、いくつかの遺伝的障害に関連する[Zafeiriou DI,Ververi A,Vargiami E(2007).「Childhood autism and associated comorbidities」.Brain Dev.29(5):257-272.doi:10.1016/j.braindev.2006.09.003]。
【0214】
知的障害。知的障害の基準も満たす自閉症個体の割合は、25%~70%のいずれかであると報告されている[Dawson et al.Learning and Memory:A Comprehensive Reference.Vol.2.Elsevier.pp.759-772.doi:10.1016/B978-012370509-9.00152-2.ISBN 978-0-12-370504-4.OCLC 775005136]。
【0215】
不安障害は、ASDを有する小児の間で一般的であり、有病率は11%~84%の範囲である[White et al.2009 Clin Psychol Rev.29(3):216-229]。
【0216】
てんかんは、年齢、認知レベル、及び言語障害のタイプに起因するてんかんのリスクの変動を伴う[Spence et al.ediatr Res.65(6):599-606.doi:10.1203/PDR.0b013e31819e7168]。
【0217】
フェニルケトン尿症などのいくつかの代謝異常は、自閉症の症状に関連する[Manzi et al.J Child Neurol.23(3):307-314.doi:10.1177/0883073807308698]。
【0218】
注意欠陥多動性障害(attention deficit hyperactivity disorder、ADHD)、チック障害、注意欠陥障害(ADD)及びこれらの状態の他のものがしばしば存在し、これらの併発状態はますます受け入れられている。
【0219】
睡眠障害は、小児期のある時点でASDを有する個体の約3分の2に影響を及ぼす。これらは、最も一般的には、不眠の症状、例えば、入眠困難、頻繁な夜間覚醒、及び早朝覚醒を含む。
【0220】
特定の実施形態によれば、疾患又は状態は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、統合失調症、依存症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、てんかん、双極性疾患及び片頭痛からなる群から選択される。
【0221】
特定の実施形態によれば、疾患又は状態は、神経発達障害、精神障害又は神経変性疾患である。
【0222】
NOは、がんの発生に関与する。本発明者らは、神経芽腫(NB)細胞におけるNO産生の阻害が、選択的nNOS阻害剤7-NIを使用する薬理学的介入によって、又はnNOSの発現をサイレンシングするための特異的遺伝子サイレンシングツールを使用する遺伝的除去によって、NB悪性腫瘍を抑制することができることを示した。この効果は、増殖の減少、NB Sypのマーカーのレベルの有意な減少(MIETTINEN and RAPOLA,1987)、及び3-Ntyrのレベルの減少によって見られるニトロソ化ストレスによって明らかにされた。本発明者は更に、nNOSのがん促進効果が、mTORシグナル伝達経路の活性化によって媒介されること、及び選択的nNOS阻害剤7-NIが、mTORシグナル伝達の活性化及びヒトNB細胞の悪性度の両方を有意に阻害することができることを初めて示した。これらの結果は、nNOS-mTOR軸が、NB治療のための新規な可能性のある標的として役立ち得ることを示唆する。
【0223】
特定の実施形態によれば、疾患又は状態は、神経起源又は神経外胚葉起源のがんであり、本明細書では神経がん又は神経由来がんとも呼ばれる。
【0224】
特定の実施形態によれば、がんは、神経芽細胞腫、神経膠腫、神経節膠腫、中枢神経細胞腫、神経節芽細胞腫、髄芽細胞腫及び原始神経外胚葉性腫瘍(PNET)からなる群から選択される。
【0225】
特定の実施形態によれば、がんは、神経芽細胞腫である。
【0226】
特定の実施形態によれば、神経芽細胞腫は、ALKにおける変異を含む。チロシンキナーゼ受容体未分化リンパ腫キナーゼ(anaplastic lymphoma kinase、ALK)は、神経芽細胞腫において異常に活性化され得、体細胞ALK変異は、患者の6%~10%において生じる。
【0227】
特定の実施形態によれば、腫瘍は、原発性腫瘍である。
【0228】
特定の実施形態によれば、腫瘍は、転移性腫瘍である。
【0229】
特定の実施形態によれば、腫瘍は、腫瘍転移である。
【0230】
特定の実施形態によれば、腫瘍は、再発性腫瘍である。
【0231】
特定の実施形態によれば、腫瘍は、第一選択(例えば化学療法)治療に耐性である。
【0232】
活性薬剤(nNOS活性を低下させる薬剤):
治療される医学的状態にかかわらず、本発明の実施形態は、有効量の、本明細書で定義されるnNOS活性を低下させる活性剤を含む組成物の投与に関する。いくつかの実施形態では、活性薬剤は、本明細書に記載のように、神経細胞において生理学的に利用可能なNOの量を減少させる。
【0233】
特定の実施形態によれば、nNOS活性の低下は、他の組織と比較して、対象の神経細胞又は神経組織において選択的又は優先的である。
【0234】
特定の実施形態によれば、nNOS活性の低下は、他の組織と比較して、対象の末梢及び/又は中枢神経系において選択的又は優先的である。
【0235】
特定の実施形態によれば、nNOS活性の低下は、他の組織と比較して対象の脳において選択的又は優先的である。
【0236】
代替的又は追加的に、nNOS活性を低下させる活性剤及び薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物が提供され、組成物及び活性剤は、対象への投与時に、本明細書に記載のように、他の組織と比較して対象の神経組織において選択的又は優先的にnNOS活性の低下がもたらされるようなものである。
【0237】
このような組成物はまた、本明細書中で「nNOS低減組成物」又は代替的に「NO低減組成物」と称される。
【0238】
本明細書中で使用される場合、「nNOS活性を減少させる活性薬剤」とは、その固有の触媒活性、他の細胞タンパク質又は因子と相互作用する能力、その細胞局在化に影響を及ぼすこと、及び/又は細胞内のそのレベル若しくはNOのレベルに影響を及ぼすことのいずれか1つによって、nNOSの活性を減少させる物質又は身体的条件をいう。
【0239】
言及したように、いくつかの実施形態では、薬剤(「nNOS阻害剤」又は「ニューロンNO低減組成物」とも称される)は、他の組織と比較して、治療されるニューロン細胞又は神経組織、例えば、対象のCNS(例えば、脳)においてnNOS活性の低下が選択的又は優先的に達成されるように作用している。nNOSは、種々の組織、例えば、脳、網膜、前頭皮質、心臓、結腸、結腸筋、直腸、前立腺、及び膵臓において発現される。
【0240】
あるいは、又は更に、本発明のいくつかの実施形態によれば、薬剤は、nNOSに対して活性であり、nNOS選択性に関して本明細書中上記で記載したように、NOS2及び/又はNOS3などの他のNOS酵素の活性に影響を及ぼさない。
【0241】
これらの実施形態のいずれかは、個々に又は組み合わせて、他のNOS(例えば、iNOS)酵素又はnNOSが発現される他の組織に作用することなく、罹患部位(又は素因部位)においてのみ薬剤の活性を確実にする。
【0242】
一実施形態によれば、薬剤はnNOS発現を減少させる。
【0243】
一実施形態によれば、薬剤はnNOS翻訳を減少させる。
【0244】
一実施形態によれば、薬剤はnNOS酵素活性を阻害する。
【0245】
特定の実施形態によれば、薬剤は、他のタンパク質とのnNOS相互作用又はその二量体化に影響を及ぼす。例えば、タンパク質はホモ二量体として作用する。それはDLG4と相互作用する。相互作用は、おそらくNOS1とCAPONとの間の会合によって妨げられる。CAPON及びRASD1と三元複合体を形成する。CAPON及びSYN1と三元複合体を形成する。ZDHHC23と相互作用する。NOSIPと相互作用する。これは、(類似性によって)そのシナプス位置を損ない得る。HTR4と相互作用する。VAC14と(類似性によって)相互作用する。SLC6A4と(類似性によって)相互作用する。(N末端ドメインを介して)DLG4と(PDZドメインのN末端タンデム対を介して)相互作用する。
【0246】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、組成物中の活性剤は、小分子、アミノ酸ベースの分子(ペプチド、タンパク質、抗体又はそれをコードするRNA)、又は核酸ベースの分子(例えば、アンチセンス及び阻害剤RNAを含むRNA:DNA)又はいくつかのタイプの分子の組み合わせであり得る。
【0247】
特許請求の範囲に記載のタンパク質性薬剤をコードするRNAが使用される場合、例えば米国特許出願公開第2015/0030576号に記載されているように、その安定性及び生物学的利用能を改善するための手段がとられることが理解される。
【0248】
上述したように、遊離NOの量の減少は、以下の機構の1つによるものであり得る:
1.その遺伝子からのnNOSの発現の減少(転写又は翻訳レベルで)、又はゲノム編集によって達成されるようなDNAレベルでの減少。
2.酵素レベルでのnNOS活性の阻害(小分子、競合ペプチド、抗体、抗体断片による)
3.NOの前駆体であるL-アルギニンレベルの減少。小分子の標的化質量分析(Triple quad)を使用して、アルギニンの正確な濃度を測定することができる
4.GSNOレダクターゼレベル又は活性の増加(GSNOのレベルの減少)。WBを用いてタンパク質発現を測定し、ELISAを用いてその活性を測定することによって、本発明者らは、レベル及び活性について結論を下すことができる。
【0249】
本明細書中で使用される場合、フレーズ「発現又は活性を減少させる」又は「発現又は活性を下方制御する」(交換可能に使用される)とは、転写及び/又は翻訳を妨害する種々の分子(例えば、RNAサイレンシング剤)を使用して、ゲノムレベル(例えば、相同組換え及び部位特異的エンドヌクレアーゼ)及び/又は転写レベルで、あるいはタンパク質レベル(例えば、アプタマー、低分子及び阻害性ペプチド、アンタゴニスト、ポリペプチドを切断する酵素、抗体など)で、タンパク質(例えば、nNOS)の発現を下方制御することをいう。
【0250】
特定の実施形態によれば、nNOS遺伝子は、受託番号P29475で示される。本発明の一実施形態によれば、遺伝子からの発現は、転写又は翻訳レベルで選択的に低減され得る。
【0251】
同じ培養条件について、発現又は活性は、概して、同じ種であるが、薬剤と接触していないか、又はビヒクル対照(対照とも呼ばれる)と接触している細胞における発現又は活性と比較して表される。
【0252】
発現の下方制御は、一時的又は永久的のいずれかであり得る。
【0253】
特定の実施形態によれば、発現を下方制御することは、各々RT-PCR又はウェスタンブロットによって検出される、mRNA及び/又はタンパク質の非存在を指す。
【0254】
nNOS発現を検出するためのプライマーは、十分に当業者の能力の範囲内であり、そのいくつかは、以下の実施例の節において本明細書中以下に記載される。
【0255】
他の特定の実施形態によれば、発現を下方制御することは、各々RT-PCR又はウェスタンブロットによって検出される、mRNA及び/又はタンパク質のレベルの減少を指す。低下は、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%の低下であり得る。
【0256】
nNOS発現を下方制御することができる薬剤の非限定的な例を、以下に詳細に記載する。
【0257】
核酸剤:
核酸レベルでの下方制御は、典型的には、核酸骨格、DNA、RNA、それらの模倣物又はそれらの組み合わせを有する核酸剤を使用して達成される。核酸剤は、DNA分子からコードされ得るか、又は細胞それ自体に提供され得る。
【0258】
特定の実施形態によれば、下方制御剤は、ポリヌクレオチドである。
【0259】
特定の実施形態によれば、下方制御剤は、nNOSをコードする遺伝子又はmRNAにハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドである。
【0260】
特定の実施形態によれば、下方制御剤は、nNOSと直接相互作用する。
【0261】
特定の実施形態によれば、薬剤は、nNOSに直接結合する。
【0262】
特定の実施形態によれば、薬剤は、nNOSに間接的に結合する(例えば、nNOSのエフェクターに結合する)。より具体的には、nNOS阻害剤(例えば、7-NI)は、TSC2の脱ニトロシル化をもたらし、これは、mTORシグナル伝達の低下をもたらす。
【0263】
特定の実施形態によれば、下方制御剤は、RNAサイレンシング剤又はゲノム編集剤である。
【0264】
したがって、nNOSの下方制御は、RNAサイレンシングによって達成することができる。本明細書中で使用される場合、フレーズ「RNAサイレンシング」とは、対応するタンパク質コード遺伝子の発現の阻害又は「サイレンシング」を生じるRNA分子によって媒介される調節機構の群[例えば、RNA干渉(RNAi)、転写遺伝子サイレンシング(transcriptional gene silencing、TGS)、転写後遺伝子サイレンシング(post-transcriptional gene silencing、PTGS)、クエリング(quelling)、共抑制、及び翻訳抑制]をいう。RNAサイレンシングは、植物、動物、及び真菌を含む多くのタイプの生物において観察されている。
【0265】
本明細書で使用される場合、「RNAサイレンシング剤」という用語は、標的遺伝子の発現を特異的に阻害又は「サイレンシング」することができるRNAを指す。特定の実施形態では、RNAサイレンシング剤は、転写後サイレンシング機構を介してmRNA分子の完全なプロセシング(例えば、完全な翻訳及び/又は発現)を防止することができる。RNAサイレンシング剤は、非コードRNA分子、例えば、対になった鎖を含むRNA二重鎖、並びにそのような小さな非コードRNAが生成され得る前駆体RNAを含む。例示的なRNAサイレンシング剤としては、siRNA、miRNA及びshRNAなどのdsRNAが挙げられる。
【0266】
一実施形態では、RNAサイレンシング剤は、RNA干渉を誘導することができる。
【0267】
別の実施形態では、RNAサイレンシング剤は、翻訳抑制を媒介することができる。
【0268】
本発明の一実施形態によれば、RNAサイレンシング剤は、標的RNA(例えば、nNOS)に特異的であり、他の標的(例えば、(iNOS又はeNOS)又は標的遺伝子に対して99%以下の全体的相同性、例えば、標的遺伝子に対して98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%未満(PCR、ウェスタンブロット、免疫組織化学及び/又はフローサイトメトリーによって決定される)の全体的相同性を示すスプライスバリアントを交差阻害又はサイレンシングしない。
【0269】
RNA干渉とは、低分子干渉RNA(siRNA)によって媒介される動物における配列特異的転写後遺伝子サイレンシングのプロセスを指す。
【0270】
以下は、本発明の特定の実施形態に従って使用することができるRNAサイレンシング剤に関する詳細な説明である。
【0271】
dsRNA、siRNA、及びshRNA-細胞中の長いdsRNAの存在は、ダイサーと呼ばれるリボヌクレアーゼIII酵素の活性を刺激する。ダイサーは、低分子干渉RNA(siRNA)として知られるdsRNAの短い断片へのdsRNAのプロセシングに関与する。ダイサー活性に由来する短い干渉RNAは、典型的には約21~約23ヌクレオチド長であり、約19塩基対の二重鎖を含む。RNAi応答はまた、siRNA二重鎖のアンチセンス鎖に相補的な配列を有する一本鎖RNAの切断を媒介する、一般にRNA誘導サイレンシング複合体(RNA-induced silencing complex、RISC)と称されるエンドヌクレアーゼ複合体を特徴とする。標的RNAの切断は、siRNA二重鎖のアンチセンス鎖に相補的な領域の中央で起こる。
【0272】
したがって、本発明のいくつかの実施形態は、mRNAからのタンパク質発現を下方制御するためのdsRNAの使用を企図する。
【0273】
一実施形態によれば、30bpより長いdsRNAが使用される。様々な研究により、長いdsRNAを使用して、ストレス反応を誘導することなく、又は有意なオフターゲット効果を引き起こすことなく、遺伝子発現をサイレンシングすることができることが実証されている(例えば、Strat et al.,Nucleic Acids Research,2006,Vol.34,No.13 3803-3810、Bhargava A et al.Brain Res.Protoc.2004;13:115-125、Diallo M.,et al.,Oligonucleotides.2003;13:381-392、Paddison P.J.,et al.,Proc.Natl Acad.Sci.USA.2002;99:1443-1448、Tran N.,et al.,FEBS Lett.2004;573:127-134を参照)。
【0274】
本発明のいくつかの実施形態によれば、dsRNAは、インターフェロン経路が活性化されていない細胞において提供される(例えば、Billy et al.,PNAS 2001,Vol 98,pages 14428-14433、及びDiallo et al,Oligonucleotides,October 1,2003,13(5):381-392.doi:10.1089/154545703322617069を参照)。
【0275】
本発明の実施形態によれば、長いdsRNAは、遺伝子発現を下方制御するためのインターフェロン及びPKR経路を誘導しないように特異的に設計される。例えば、Shinagwa及びIshii[Genes & Dev.17(11):1340-1345,2003]は、RNAポリメラーゼII(Pol II)プロモーターから長い二本鎖RNAを発現するための、pDECAPと名付けられたベクターを開発した。pDECAP由来の転写物は、ds-RNAの細胞質内への輸送を容易にする5’-cap構造及び3’-ポリ(A)テールの両方を欠くため、pDECAP由来の長いds-RNAは、インターフェロン応答を誘導しない。
【0276】
哺乳動物系におけるインターフェロン及びPKR経路を回避する別の方法は、トランスフェクション又は内因性発現のいずれかを介した低分子阻害性RNA(siRNA)の導入によるものである。
【0277】
「siRNA」という用語は、RNA干渉(RNAi)経路を誘導する低分子阻害性RNA二重鎖(概して18~30塩基対)を指す。典型的には、siRNAは、中央19bp二重鎖領域及び末端上の対称2塩基3’-オーバーハングを有する21量体として化学合成されるが、25~30塩基長の化学合成されたRNA二重鎖は、同じ位置の21量体と比較して100倍もの効力の増加を有し得ることが最近記載されている。RNAiの誘発においてより長いRNAを使用して得られた観察された効力の増加は、生成物(21量体)の代わりに基質(27量体)をダイサーに提供することに起因すること、及びこれがsiRNA二重鎖のRISCへの侵入の速度又は効率を改善することが示唆される。本教示に従って使用され得る例示的なsiRNAは、以下の実施例の節及び配列番号3~8において提供される。
【0278】
3’-オーバーハングの位置は、siRNAの効力に影響を及ぼし、アンチセンス鎖上に3’-オーバーハングを有する非対称二重鎖は、概して、センス鎖上に3’-オーバーハングを有するものよりも強力であることが見出されている(Rose et al.,2005)。これは、アンチセンス転写物を標的化する場合に反対の有効性パターンが観察されるため、RISCへの非対称鎖ローディングに起因し得る。
【0279】
二本鎖干渉RNA(例えば、siRNA)の鎖は、ヘアピン又はステムループ構造(例えば、shRNA)を形成するように接続され得る。したがって、上述したように、本発明のいくつかの実施形態のRNAサイレンシング剤は、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)であってもよい。
【0280】
本教示に従って使用され得る例示的なsiRNAは、以下の実施例の節及び配列番号9~14において提供される。
【0281】
本明細書で使用される「shRNA」という用語は、相補的配列の第1及び第2の領域を含むステムループ構造を有するRNA剤を指し、領域の相補性及び配向の程度は、領域間で塩基対合が生じるのに十分であり、第1及び第2の領域はループ領域によって連結され、ループは、ループ領域内のヌクレオチド(又はヌクレオチド類似体)間の塩基対合の欠如から生じる。ループ中のヌクレオチドの数は、3~23、又は5~15、又は7~13、又は4~9、又は9~11の間の数である。ループ中のヌクレオチドのいくつかは、ループ中の他のヌクレオチドとの塩基対相互作用に関与し得る。ループを形成するために使用され得るオリゴヌクレオチド配列の例としては、5’-CAAGAGA-3’(配列番号1)及び5’-UUACAA-3’(配列番号2)(国際特許出願第2013/126963号及び同第2014/107763号)が挙げられる。得られた一本鎖オリゴヌクレオチドが、RNAi機構と相互作用することができる二本鎖領域を含むステムループ又はヘアピン構造を形成することは、当業者によって認識されるであろう。
【0282】
本発明のいくつかの実施形態での使用に適したRNAサイレンシング剤の合成は、以下のように行うことができる。最初に、nNOS mRNA配列を、AAジヌクレオチド配列についてAUG開始コドンの下流でスキャンする。各AA及び3’隣接19ヌクレオチドの出現を、可能性のあるsiRNA標的部位として記録する。好ましくは、siRNA標的部位は、非翻訳領域(UTR)が調節タンパク質結合部位においてよりリッチであるため、オープンリーディングフレームから選択される。UTR結合タンパク質及び/又は翻訳開始複合体は、siRNAエンドヌクレアーゼ複合体の結合に干渉し得る[Tuschl ChemBiochem.2:239-245]。しかし、5’UTRに向けられたsiRNAが細胞GAPDH mRNAの約90%の減少を媒介し、タンパク質レベルを完全に無効にしたGAPDHについて実証されたように(www(dot)ambion(dot)com/techlib/tn/91/912.html)、非翻訳領域に向けられたsiRNAも有効であり得ることが理解されよう。
【0283】
第二に、可能性のある標的部位を、NCBIサーバー(www(dot)ncbi(dot)nlm(dot)nih(dot)gov/BLAST/)から入手可能なBLASTソフトウェアなどの任意の配列アラインメントソフトウェアを使用して、適切なゲノムデータベース(例えば、ヒト、マウス、ラットなど)と比較する。他のコード配列に対して有意な相同性を示す推定標的部位は除外される。
【0284】
適格な標的配列をsiRNA合成のための鋳型として選択する。好ましい配列は、55%より高いG/C含量を有する配列と比較して、遺伝子サイレンシングを媒介する際により有効であることが証明されているため、低いG/C含量を含む配列である。いくつかの標的部位は、好ましくは、評価のために標的遺伝子の長さに沿って選択される。選択されたsiRNAのより良好な評価のために、陰性対照を併用することが好ましい。陰性対照siRNAは、好ましくは、siRNAと同じヌクレオチド組成を含むが、ゲノムに対する有意な相同性を欠く。したがって、siRNAのスクランブルされたヌクレオチド配列が好ましくは使用されるが、ただし、それは任意の他の遺伝子に対していかなる有意な相同性も示さない。
【0285】
上述したように、本発明のいくつかの実施形態のRNAサイレンシング剤は、RNAのみを含有する分子に限定される必要はなく、化学修飾されたヌクレオチド及び非ヌクレオチドを更に包含することが理解されるであろう。
【0286】
miRNA及びmiRNA模倣物-別の実施形態によれば、RNAサイレンシング剤はmiRNAであり得る。
【0287】
特定の実施形態によれば、miRNAはmiR-146a又はその合成バージョンである。他の企図されるmiRSとしては、hsa-miR-146a-5p(MIRT735124)、hsa-miR-1273f(MIRT783312)、hsa-miR-143-3p(MIRT783811)、hsa-miR-147a(MIRT783856)、hsa-miR-3622a-5p(MIRT784976)、hsa-miR-3911(MIRT785428)、hsa-miR-4269(MIRT785560)、hsa-miR-4708-5p(MIRT786482)、hsa-miR-4710(MIRT786499)、hsa-miR-4770(MIRT786696)、hsa-miR-4792(MIRT786788)、hsa-miR-574-5p(MIRT787873)、hsa-miR-6088(MIRT788038)、hsa-miR-644a(MIRT788184)、hsa-miR-6715b-5p(MIRT788450)、hsa-miR-6768-5p(MIRT788631)、hsa-miR-6867-5p(MIRT789213)、hsa-miR-7855-5p(MIRT789601)、hsa-miR-8485(MIRT789865)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0288】
「マイクロRNA」、「miRNA」、及び「miR」という用語は同義であり、遺伝子発現を調節する約19~28ヌクレオチド長の非コード一本鎖RNA分子の集合を指す。miRNAは、広範な生物(ウイルス→ヒト)において見出され、発生、恒常性、及び疾患の病因において役割を果たすことが示されている。
【0289】
以下は、miRNA活性の機構の簡単な説明である。
【0290】
miRNAをコードする遺伝子は転写され、pri-miRNAとして知られるmiRNA前駆体の産生をもたらす。pri-miRNAは、典型的には、複数のpri-miRNAを含むポリシストロン性RNAの一部である。pri-miRNAは、ステム及びループを有するヘアピンを形成し得る。ステムは、ミスマッチ塩基を含み得る。
【0291】
pri-miRNAのヘアピン構造は、RNase IIIエンドヌクレアーゼであるドローシャ(Drosha)によって認識される。ドローシャは、典型的には、pri-miRNA中の末端ループを認識し、ステムへの約2つのヘリックスターンを切断して、pre-miRNAとして知られる60-70ヌクレオチド前駆体を生成する。ドローシャは、RNase IIIエンドヌクレアーゼに典型的なスタッガードカット(staggered cut)でpri-miRNAを切断して、5’リン酸及び約2ヌクレオチド3’オーバーハングを有するpre-miRNAステムループを得る。ドローシャ切断部位を越えて伸長するステムの約1旋回(約10ヌクレオチド)が、効率的なプロセシングに必須であると推定される。次いで、pre-miRNAは、Ran-GTP及び輸送受容体Ex-portin-5によって核から細胞質に能動的に輸送される。
【0292】
次いで、pre-miRNAの二本鎖ステムは、RNase IIIエンドヌクレアーゼでもあるダイサーによって認識される。ダイサーはまた、ステムループの基部の5’リン酸及び3’オーバーハングを認識し得る。次いで、ダイサーは、ステムループの基部から離れて2つのヘリックスターンの末端ループを切断し、更なる5’リン酸及び約2ヌクレオチドの3’オーバーハングを残す。ミスマッチを含み得る得られたsiRNA様二重鎖は、成熟miRNA及びmiRNA*として知られる同様のサイズの断片を含む。miRNA及びmiRNA*は、pri-miRNA及びpre-miRNAの対向するアームに由来し得る。miRNA*配列は、クローニングされたmiRNAのライブラリーにおいて見出され得るが、典型的には、miRNAよりも低い頻度で見出され得る。
【0293】
miRNAは、最初はmiRNA*を有する二本鎖種として存在するが、最終的には一本鎖RNAとして、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)として知られるリボ核タンパク質複合体に組み込まれる。様々なタンパク質がRISCを形成することができ、これにより、miRNA/miRNA*二重鎖に対する特異性、標的遺伝子の結合部位、miRNAの活性(抑制又は活性化)、及びmiRNA/miRNA*二重鎖のどの鎖がRISCにロードされるかを変動させることができるようになる。
【0294】
miRNA:miRNA*二重鎖のmiRNA鎖が、RISCにロードされるとき、miRNA*は除去され分解される。RISCにロードされるmiRNA:miRNA二重鎖の鎖は、5’末端があまり強く対合していない鎖である。miRNA:miRNA*の両末端がほぼ同等の5’対合を有する場合、miRNA及びmiRNA*の両方が遺伝子サイレンシング活性を有し得る。
【0295】
RISCは、特にmiRNAのヌクレオチド2~7による、miRNAとmRNAとの間の高レベルの相補性に基づいて標的核酸を同定する。
【0296】
多くの研究が、翻訳の効率的な阻害を達成するためのmiRNAとそのmRNA標的との間の塩基対形成要件を検討している(Bartel 2004,Cell 116-281によって概説されている)。哺乳動物細胞では、miRNAの最初の8ヌクレオチドが重要であり得る(Doench & Sharp 2004 GenesDev 2004-504)。しかしながら、マイクロRNAの他の部分もmRNA結合に関与し得る。更に、3’における十分な塩基対合は、5’における不十分な対合を補償することができる(Brennecke et al,2005 PLoS 3-e85)。全ゲノムに対するmiRNA結合を分析する計算研究は、標的結合におけるmiRNAの5’側の塩基2~7の特異的役割を示唆したが、通常「A」であることが見出された第1のヌクレオチドの役割も認識された(Lewis et at 2005 Cell 120-15)。同様に、Krek et al.(2005,Nat Genet 37-495)によって、ヌクレオチド1~7又は2~8を用いて標的が同定及び検証された。
【0297】
mRNA中の標的部位は、5’UTR、3’UTR、又はコード領域中にあってもよい。興味深いことに、複数のmiRNAは、同じ又は複数の部位を認識することによって、同じmRNA標的を調節し得る。ほとんどの遺伝的に同定された標的における複数のmiRNA結合部位の存在は、複数のRISCの協同的作用が最も効率的な翻訳阻害を提供することを示し得る。
【0298】
miRNAは、2つの機構:mRNA切断又は翻訳抑制のいずれかによって遺伝子発現を下方調節するようにRISCに指示し得る。mRNAがmiRNAに対してある程度の相補性を有する場合、miRNAはmRNAの切断を特定し得る。miRNAが切断をガイドする場合、切断は、典型的には、miRNAの残基10及び11に対合するヌクレオチドの間である。あるいは、miRNAがmiRNAに対する必要な程度の相補性を有さない場合、miRNAは翻訳を抑制し得る。動物は、miRNAと結合部位との間の相補性の程度がより低い可能性があるため、翻訳抑制は動物においてより優勢であり得る。
【0299】
miRNA及びmiRNA*の任意の対の5’及び3’末端に可変性が存在し得ることに留意すべきである。この変動性は、切断部位に関するドローシャ及びダイサーの酵素的プロセシングにおける変動性に起因し得る。miRNA及びmiRNA*の5’末端及び3’末端における可変性はまた、pri-miRNA及びpre-miRNAのステム構造におけるミスマッチに起因し得る。ステム鎖のミスマッチは、異なるヘアピン構造の集団をもたらし得る。ステム構造の可変性はまた、ドローシャ及びダイサーによる切断産物の可変性をもたらし得る。
【0300】
「マイクロRNA模倣物」又は「miRNA模倣物」という用語は、RNAi経路に入り、遺伝子発現を調節することができる合成非コードRNAを指す。miRNA模倣物は、内因性miRNAの機能を模倣し、成熟二本鎖分子又は模倣前駆体(例えば、又はプレmiRNA)として設計することができる。miRNA模倣物は、修飾又は非修飾RNA、DNA、RNA-DNAハイブリッド、又は代替核酸化学(例えば、LNA又は2’-O,4’-C-エチレン架橋核酸(ENA))から構成され得る。成熟二重鎖miRNA模倣物の場合、二重鎖領域の長さは、13~33、18~24又は21~23ヌクレオチドの間で変動し得る。miRNAはまた、合計で少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39又は40ヌクレオチドを含み得る。miRNAの配列は、pre-miRNAの最初の13~33ヌクレオチドであり得る。miRNAの配列はまた、pre-miRNAの最後の13~33ヌクレオチドであり得る。
【0301】
miRNA模倣物の調製は、化学合成又は組換え法などの当技術分野で公知の任意の方法によって行うことができる。
【0302】
細胞をmiRNAと接触させることは、例えば成熟二本鎖miRNA、pre-miRNA又はpri-miRNAで細胞をトランスフェクトすることによって達成され得ることが、本明細書の上記に提供される説明から理解されるであろう。
【0303】
pre-miRNA配列は、45~90、60~80又は60~70ヌクレオチドを含み得る。
【0304】
pri-miRNA配列は、45~30,000、50~25,000、100~20,000、1,000~1,500、又は80~100ヌクレオチドを含み得る。
【0305】
アンチセンス-アンチセンスは、そのmRNAに特異的にハイブリダイズすることによって遺伝子の発現を防止又は阻害するように設計された一本鎖RNAである。nNOSの下方制御は、nNOSをコードするmRNA転写産物と特異的にハイブリダイズすることができるアンチセンスポリヌクレオチドを用いて行うことができる。
【0306】
nNOSを効率的に下方制御するために使用することができるアンチセンス分子の設計は、アンチセンスアプローチに重要な2つの態様を考慮しながら行われなければならない。第1の態様は、適切な細胞の細胞質へのオリゴヌクレオチドの送達であり、一方、第2の態様は、その翻訳を阻害する様式で細胞内の指定されたmRNAに特異的に結合するオリゴヌクレオチドの設計である。
【0307】
先行技術は、オリゴヌクレオチドを多種多様な細胞型に効率的に送達するために使用することができるいくつかの送達戦略を教示している[例えば、Jaaskelainen et al.Cell Mol Biol Lett.(2002)7(2):236-7、Gait,Cell Mol Life Sci.(2003)60(5):844-53、Martino et al.J Biomed Biotechnol.(2009)2009:410260、Grijalvo et al.Expert Opin Ther Pat.(2014)24(7):801-19、Falzarano et al,Nucleic Acid Ther.(2014)24(1):87-100、Shilakari et al.Biomed Res Int.(2014)2014:526391、Prakash et al.Nucleic Acids Res.(2014)42(13):8796-807及びAsseline et al.J Gene Med.(2014)16(7-8):157-65を参照]。
【0308】
更に、標的mRNA及びオリゴヌクレオチドの両方における構造変化のエネルギー論を説明する熱力学的サイクルに基づいて、それらの標的mRNAに対する最も高い予測結合親和性を有する配列を同定するためのアルゴリズムも利用可能である[例えば、Walton et al.Biotechnol Bioeng 65:1-9(1999)を参照されたい]。このようなアルゴリズムは、細胞におけるアンチセンスアプローチを実施するために首尾よく使用されている。
【0309】
更に、インビトロ系を使用して特定のオリゴヌクレオチドの有効性を設計及び予測するためのいくつかのアプローチもまた公開された(Matveeva et al.,Nature Biotechnology 16:1374-1375(1998))。
【0310】
したがって、高度に正確なアンチセンス設計アルゴリズム及び広範な種々のオリゴヌクレオチド送達系の生成は、当業者が、過度の試行錯誤実験に頼る必要なく、公知の配列の発現を下方制御するために適切なアンチセンスアプローチを設計及び実施することを可能にする。
【0311】
例えば、nNOS mRNA(nNOSタンパク質をコードする)に対して標的化された適切なアンチセンスオリゴヌクレオチドは、以下の配列のものである。
【0312】
Korneev et al.[Scientific Reports volume 5,Article number:11815(2015)]は、本明細書において企図される長いNAT(Mm-antiNos1RNA)並びにその合成バージョンを報告している。
【0313】
核酸剤はまた、以下に要約されるように、DNAレベルで作動し得る。
【0314】
nNOSの下方制御は、遺伝子構造における機能喪失変化(例えば、点変異、欠失及び挿入)を含む標的変異の導入を介して遺伝子(例えば、NOS1)を不活性化することによっても達成することができる。
【0315】
本明細書中で使用される場合、句「機能喪失改変」とは、発現産物(すなわち、mRNA転写物及び/又は翻訳されたタンパク質)の発現レベル及び/又は活性の下方制御を生じる、遺伝子(例えば、NOS1)のDNA配列における任意の変異をいう。このような機能喪失変化の非限定的な例としては、以下が挙げられる。ミスセンス変異、すなわち、タンパク質中のアミノ酸残基を別のアミノ酸残基に変化させ、それによってタンパク質の酵素活性を消失させる変異;ナンセンス変異、すなわち、タンパク質に終止コドン、例えば、酵素活性を欠くより短いタンパク質をもたらす初期終止コドンを導入する変異;フレームシフト変異、すなわち、核酸の変異、通常は欠失又は挿入であって、タンパク質のリーディングフレームを変化させ、終止コドンをリーディングフレームに導入することによって早期終結をもたらすことができるか(例えば、短縮されたタンパク質、酵素活性を欠くもの)、又はタンパク質の二次若しくは三次構造に影響を及ぼし、非変異ポリペプチドの酵素活性を欠く非機能的タンパク質をもたらすより長いアミノ酸配列をもたらすことができる変異;破壊された酵素活性を有する、フレームシフト変異又は改変された終止コドン変異によるリードスルー変異(すなわち、終止コドンがアミノ酸コドンに変異される場合);プロモーター変異、すなわち、通常は遺伝子の転写開始部位の5’側のプロモーター配列における変異であって、特定の遺伝子産物の下方制御をもたらす変異;調節変異、すなわち、遺伝子産物の発現に影響を及ぼす、遺伝子の上流若しくは下流の領域又は遺伝子内の変異;欠失変異、すなわち、遺伝子配列中のコード核酸を欠失させ、フレームシフト変異又はインフレーム変異をもたらし得る変異(コード配列内、1つ以上のアミノ酸コドンの欠失);挿入変異、すなわち、コード又は非コード核酸を遺伝子配列に挿入し、フレームシフト変異又は1つ以上のアミノ酸コドンのインフレーム挿入をもたらし得る変異;反転、すなわち、反転したコード配列又は非コード配列をもたらす変異;スプライス変異、すなわち、異常なスプライシング又は不十分なスプライシングをもたらす変異;及び複製変異すなわち、複製されたコード配列又は非コード配列をもたらす変異であって、インフレームであり得るか、又はフレームシフトを引き起こし得る変異。
【0316】
特定の実施形態によれば、遺伝子の機能喪失改変は、遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子を含み得る。
【0317】
本明細書で使用される「対立遺伝子」という用語は、遺伝子座の1つ以上の代替形態のいずれかを指し、その対立遺伝子の全てが形質又は特徴に関連する。二倍体細胞又は生物において、所与の遺伝子の2つの対立遺伝子は、一対の相同染色体上の対応する遺伝子座を占める。
【0318】
他の特定の実施形態によれば、遺伝子の機能喪失変化は、遺伝子の両方の対立遺伝子を含む。このような場合、例えば、NOS1はホモ接合型又はヘテロ接合型であり得る。この実施形態によれば、ホモ接合性は、例えばNOS1遺伝子座における両方の対立遺伝子が同じヌクレオチド配列によって特徴付けられる状態である。ヘテロ接合性とは、例えばNOS1遺伝子座における遺伝子の異なる状態を指す。
【0319】
目的の遺伝子に核酸改変を導入する方法は、当該技術分野において周知であり(例えば、参照によりその内容を本明細書に組み込む、Genesis(2013)51:-618、Capecchi,Science(1989)244:1288-1292、Santiago et al.Proc Natl Acad Sci USA(2008)105:5809-5814、国際特許出願第2014/085593号、同第2009/071334号及び同第2011/146121号、米国特許第8771945号、同第8586526号、同第6774279号及び米国特許出願公開第2003/0232410号、同第2005/0026157号、同第2006/0014264号を参照)、これらは、標的化相同組換え、部位特異的リコンビナーゼ、PBトランスポザーゼ、及び操作されたヌクレアーゼによるゲノム編集を含む。目的の遺伝子に核酸改変を導入するための薬剤は、公的に入手可能な供給源から設計され得るか、又はTransposagen、Addgene及びSangamo Biosciencesから市販品を入手し得る。
【0320】
以下は、核酸改変を目的の遺伝子に導入するために使用される種々の例示的な方法、及び本発明の特定の実施形態に従って使用され得る核酸改変を実施するための薬剤の説明である。
【0321】
操作されたエンドヌクレアーゼを使用するゲノム編集-このアプローチは、人工的に操作されたヌクレアーゼを使用して、ゲノム中の所望の位置で特定の二本鎖切断を切断及び作製し、次いで、これを、相同組換え修復(homology directed repair、HDR)及び非相同末端結合(NFfEJ)などの細胞内因性プロセスによって修復する、逆遺伝学的方法を指す。NFfEJは、二本鎖切断においてDNA末端を直接連結するが、HDRは、切断点で失われたDNA配列を再生するための鋳型として相同配列を利用する。ゲノムDNAに特定のヌクレオチド修飾を導入するために、所望の配列を含有するDNA修復テンプレートがHDR中に存在しなければならない。ほとんどの制限酵素はDNA上の数個の塩基対をそれらの標的として認識し、認識された塩基対の組み合わせがゲノム全体の多くの位置で見出され、所望の位置に限定されない複数の切断をもたらす確率が非常に高いため、従来の制限エンドヌクレアーゼを使用してゲノム編集を行うことができない。この課題を克服し、部位特異的一本鎖又は二本鎖切断を作製するために、いくつかの異なるクラスのヌクレアーゼが現在までに発見され、生物工学によって作製されている。これらには、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(Zinc finger nuclease、ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(transcription-activator like effector nuclease、TALEN)及びCRISPR/Cas系が含まれる。
【0322】
メガヌクレアーゼ-メガヌクレアーゼは、一般に、4つのファミリー、すなわちLAGLIDADGファミリー、GIY-YIGファミリー、His-Cysボックスファミリー及びHNHファミリーに分類される。これらのファミリーは、触媒活性及び認識配列に影響を及ぼす構造モチーフによって特徴付けられる。例えば、LAGLIDADGファミリーのメンバーは、保存されたLAGLIDADGモチーフの1つ又は2つのコピーのいずれかを有することによって特徴付けられる。メガヌクレアーゼの4つのファミリーは、保存された構造要素、したがって、DNA認識配列特異性及び触媒活性に関して互いに広く分離されている。メガヌクレアーゼは、微生物種において一般的に見出され、非常に長い認識配列(>14bp)を有するという独特の特性を有し、したがって、それらを所望の位置での切断に対して天然で非常に特異的にする。これは、ゲノム編集において部位特異的二本鎖切断を行うために利用することができる。当業者は、これらの天然に存在するメガヌクレアーゼを使用することができるが、そのような天然に存在するメガヌクレアーゼの数は限られている。この課題を克服するために、変異誘発及びハイスループットスクリーニング法を使用して、固有の配列を認識するメガヌクレアーゼ変異型が作製されている。例えば、様々なメガヌクレアーゼが融合されて、新しい配列を認識するハイブリッド酵素が作製されている。あるいは、メガヌクレアーゼのDNA相互作用性アミノ酸を改変して、配列特異的メガヌクレアーゼを設計することができる(例えば、米国特許第8,021,867号を参照されたい)。メガヌクレアーゼは、例えば、Certo,MT et al.Nature Methods(2012)9:073-975、米国特許第8,304,222号、同第8,021,867号、同第8,119,381号、同第8,124,369号、同第8,129,134号、同第8,133,697号、同第8,143,015号、同第8,143,016号、同第8,148,098号、又は同第8,163,514号に記載されている方法を使用して設計することができ、各々の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。あるいは、部位特異的切断特性を有するメガヌクレアーゼは、市販の技術、例えば、Precision BiosciencesのDirected Nuclease Editor(商標)ゲノム編集技術を使用して得ることができる。
【0323】
ZFN及びTALEN-2つの異なるクラスの操作されたヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)及び転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)は、両方とも、標的化された二本鎖切断を生成するのに有効であることが証明されている(Christianet al.,2010、Kim et al.,1996、Li et al.,2011、Mahfouz et al.,2011、Miller et al.,2010)。
【0324】
基本的に、ZFN及びTALEN制限エンドヌクレアーゼ技術は、特異的DNA結合ドメイン(各々一連のジンクフィンガードメイン又はTALE反復のいずれか)に連結された非特異的DNA切断酵素を利用する。典型的には、そのDNA認識部位及び切断部位が互いに離れている制限酵素が選択される。切断部分は分離され、次いでDNA結合ドメインに連結され、それによって所望の配列に対して非常に高い特異性を有するエンドヌクレアーゼが得られる。このような特性を有する例示的な制限酵素はFokIである。更に、FokIは、ヌクレアーゼ活性を有するために二量体化を必要とするという利点を有し、これは、各ヌクレアーゼパートナーが固有のDNA配列を認識するため、特異性が劇的に増加することを意味する。この効果を増強するために、ヘテロ二量体としてのみ機能することができ、増大した触媒活性を有するFokIヌクレアーゼが開発されている。ヘテロ二量体機能ヌクレアーゼは、望ましくないホモ二量体活性の可能性を回避し、したがって、二本鎖切断の特異性を増加させる。
【0325】
したがって、例えば、特定の部位を標的化するために、ZFN及びTALENはヌクレアーゼ対として構築され、対の各メンバーは、標的化された部位で隣接する配列に結合するように設計される。細胞内で一過性に発現されると、ヌクレアーゼはそれらの標的部位に結合し、FokIドメインはヘテロ二量体化して二本鎖切断を生じる。非相同末端結合(nonhomologous end-joining、NHEJ)経路を介したこれらの二本鎖切断の修復は、ほとんどの場合、小さな欠失又は小さな配列挿入をもたらす。NHEJによってなされる各修復は独特であるため、単一のヌクレアーゼ対の使用は、標的部位においてある範囲の異なる欠失を有する対立遺伝子系列を生成することができる。欠失は、典型的には、数塩基対から数百塩基対の長さのいずれかの範囲であるが、より大きな欠失は、2対のヌクレアーゼを同時に使用することによって、細胞培養において首尾よく生成されている(Carlson et al.,2012、Lee et al.,2010)。加えて、標的領域に対して相同性を有するDNAの断片がヌクレアーゼ対と併せて導入される場合、二本鎖切断は、相同組換え修復を介して修復されて、特異的修飾を生成することができる(Li et al.,2011、Miller et al.,2010、Urnov et al.,2005)。
【0326】
ZFN及びTALENの両方のヌクレアーゼ部分は類似の特性を有するが、これらの操作されたヌクレアーゼ間の差異は、それらのDNA認識ペプチドにある。ZFNはCys2-His2ジンクフィンガーに依存し、TALENはTALEに依存する。これらのDNA認識ペプチドドメインの両方は、それらがそれらのタンパク質において組み合わせで天然に見出されるという特徴を有する。Cys2-His2ジンクフィンガーは、典型的には、3 bp離れた反復において見出され、そして種々の核酸相互作用タンパク質において多様な組み合わせで見出される。一方、TALEは、アミノ酸と認識されるヌクレオチド対との間に1対1の認識比を有する反復で見出される。ジンクフィンガー及びTALEの両方が反復パターンで生じるため、異なる組み合わせを試みて、多種多様な配列特異性を作製することができる。部位特異的ジンクフィンガーエンドヌクレアーゼを作製するためのアプローチとしては、とりわけ、例えば、モジュラーアセンブリ(ここで、トリプレット配列と相関するジンクフィンガーが、必要とされる配列をカバーするために一列に結合される)、OPEN(ペプチドドメイン対トリプレットヌクレオチドの低ストリンジェンシー選択、その後のペプチド組み合わせ対細菌系における最終標的の高ストリンジェンシー選択)、及びジンクフィンガーライブラリーの細菌ワンハイブリッドスクリーニングが挙げられる。ZFNは、設計することができ、また、例えば、Sangamo Biosciences(商標)(Richmond,CA)から市販品を入手することもできる。
【0327】
TALENを設計及び入手するための方法は、例えば、Reyon et al.Nature Biotechnology 2012 May;30(5):460-5、Miller et al.Nat Biotechnol.(2011)29:143-148、Cermak et al.Nucleic Acids Research(2011)39(12):e82及びZhang et al.Nature Biotechnology(2011)29(2):149-53に記載されている。最近開発されたウェブベースのプログラム名Mojo Handは、ゲノム編集用途のためのTAL及びTALEN構築物を設計するためにMayo Clinicによって導入されたwww(dot)talendesign(dot)orgを介してアクセスすることができる)。TALENは、設計することができ、また、例えば、Sangamo Biosciences(商標)(Richmond,CA)から市販品を入手することもできる。
【0328】
ZFINは、(他のベンダーの中でも)nNOS特異的Talen編集ツール(ZDB-TALEN-181114-1)を商品化している。
【0329】
CRISPR-Cas系-多くの細菌及び古細菌は、侵入ファージ及びプラスミドの核酸を分解することができる内因性RNAベースの適応免疫系を含有する。これらの系は、RNA成分を産生するクラスター化された規則的な間隔の短い回文配列リピート(CRISPR)遺伝子と、タンパク質成分をコードするCRISPR関連(Cas)遺伝子とからなる。CRISPR RNA(crRNA)は、特定のウイルス及びプラスミドに対する相同性の短いストレッチを含有し、対応する病原体の相補的核酸を分解するようにCasヌクレアーゼを方向付けるガイドとして作用する。Streptococcus pyogenesのII型CRISPR/Cas系の研究は、3つの成分:Cas9ヌクレアーゼ、標的配列に対して20塩基対のホモロジーを含有するcrRNA、及びトランス活性化crRNA(tracrRNA)がRNA/タンパク質複合体を形成し、一緒になって配列特異的ヌクレアーゼ活性に十分であることを示している(Jinek et al.Science(2012)337:816-821.)。crRNAとtracrRNAとの間の融合から構成される合成キメラガイドRNA(gRNA)が、インビトロでcrRNAに相補的であるDNA標的を切断するようにCas9を誘導し得ることが更に実証された。また、合成gRNAと組み合わせたCas9の一過性発現を使用して、様々な異なる種において標的化二本鎖ブレーキを産生することができることも実証された(Cho et al.,2013、Cong et al.,2013、DiCarlo et al.,2013、Hwang et al.,2013a,b、Jinek et al.,2013、Mali et al.,2013)。
【0330】
ゲノム編集のためのCRIPSR/Cas系は、2つの異なる成分:gRNA及びエンドヌクレアーゼ、例えば、Cas9を含有する。
【0331】
gRNAは、典型的には、標的相同配列(crRNA)と、単一のキメラ転写産物においてcrRNAをCas9ヌクレアーゼ(tracrRNA)に連結する内因性細菌RNAとの組み合わせをコードする20ヌクレオチド配列である。gRNA/Cas9複合体は、gRNA配列と相補的ゲノムDNAとの間の塩基対合によって標的配列に動員される。Cas9の結合を成功させるために、ゲノム標的配列は、標的配列の直後に正しいプロトスペーサー隣接モチーフ(Protospacer Adjacent Motif、PAM)配列も含有しなければならない。gRNA/Cas9複合体の結合は、Cas9がDNAの両方の鎖を切断して二本鎖切断を引き起こすことができるように、Cas9をゲノム標的配列に局在化させる。ZFN及びTALENと同様に、CRISPR/Casによって産生された二本鎖ブレーキは、相同組換え又はNHEJを受けることができる。
【0332】
Cas9ヌクレアーゼは、2つの機能ドメイン:RuvC及びHNHを有し、各々が異なるDNA鎖を切断する。これらのドメインの両方が活性である場合、Cas9は、ゲノムDNAにおいて二本鎖切断を引き起こす。
【0333】
CRISPR/Casの重要な利点は、合成gRNAを容易に作製する能力と結びついたこの系の高効率が、複数の遺伝子が同時に標的化されることを可能にすることである。更に、変異を有する細胞の大部分は、標的遺伝子中に二対立遺伝子変異を示す。
【0334】
しかしながら、gRNA配列とゲノムDNA標的配列との間の塩基対形成相互作用における明らかな柔軟性により、標的配列に対する不完全な一致がCas9によって切断されるようになる。
【0335】
RuvC-又はHNH-のいずれかである単一の不活性触媒ドメインを含有するCas9の改変バージョンは、「ニッカーゼ」と呼ばれる。1つの活性ヌクレアーゼドメインのみで、Cas9ニッカーゼは、標的DNAの一方の鎖のみを切断し、一本鎖切断又は「ニック」を生成する。一本鎖切断又はニックは、通常、インタクトな相補的DNA鎖を鋳型として使用して、HDR経路を介して迅速に修復される。しかしながら、Cas9ニッカーゼによって導入された2つの近位の反対鎖ニックは、「二重ニック」CRISPR系と呼ばれることが多い二本鎖切断として処理される。二重ニックは、遺伝子標的に対する所望の効果に応じて、NHEJ又はHDRのいずれかによって修復することができる。したがって、特異性及びオフターゲット効果の低下が重要である場合、いずれかのgRNA単独ではゲノムDNAを変化させないニックが生じるため、Cas9ニッカーゼを使用して、ゲノムDNAの近接及び反対鎖上に標的配列を有する2つのgRNAを設計することにより、オフターゲット効果が低下される。
【0336】
2つの不活性触媒ドメインを含有するCas9酵素の改変バージョン(デッドCas9又はdCas9)は、ヌクレアーゼ活性を有さないが、それでもgRNA特異性に基づいてDNAに結合することができる。dCas9は、不活性酵素を既知の調節ドメインに融合させることによって、遺伝子発現を活性化又は抑制するためのDNA転写調節因子のプラットフォームとして利用することができる。例えば、ゲノムDNA中の標的配列へのdCas9単独の結合は、遺伝子転写に干渉し得る。
【0337】
Feng Zhang研究所のTarget Finder、Michael Boutros研究所のTarget Finder(E-CRISP)、RGEN Tools:Cas-OFFinder、CasFinder:Flexible algorithm for identifying specific Cas9 targets in genomes及びCRISPR Optimal Target Finderなど、標的配列の選択及び/又は設計を助けるために利用可能な多くの公的に利用可能なツール、並びに異なる種における異なる遺伝子についてバイオインフォマティクス的に決定された固有のgRNAのリストが存在する。
【0338】
以下のベンダーは、NOS1編集のためのCRISPRベースの製品を提供する。
Applied Biological Materials(abm):NOS1に対するCRISPRクローン。
すぐに使用できるノックアウトベクター又はウイルスとしてのNOS1 CRISPR sgRNA+Cas9:
Cas9タンパク質、Cas9ヌクレアーゼベクター/ウイルス、Cas9発現細胞株も利用可能である。
NOS1のためのOriGene CRISPRノックアウト
GA103232
GA202933
NOS1のためのSynthego CRISPR産物:DIY CRISPRキット:遺伝子ノックアウトキット、合成sgRNA、Cas9/操作細胞:不死化KOプール、KOクローン、iPSC KO、iPSC KI/フリーバイオインフォマティクスツール:CRISPRノックアウト設計ツール、CRISPR解析ツール
NOS1のためのVectorBuilder CRISPRベクター(すなわち、ノックアウト、ノックイン、CRISPRa、CRISPRi)
NOS1 CRISPRベクターのためのVectorBuilderウイルスパッケージング(すなわち、レンチウイルス、AAV、アデノウイルス)
NOS1のためのSanta Cruz Biotechnology(SCBT)CRISPR
NOS1 CRISPR/Cas9 KOプラスミド(h)
NOS1 CRISPR活性化プラスミド(h)
ヒト標的のためのNOS1 ZCRISPRプラスミド(h)は、Santa-Cruz及び他の供給業者から入手可能である。
【0339】
CRISPRシステムを使用するために、gRNA及びCas9の両方が標的細胞において発現されるべきである。挿入ベクターは、単一のプラスミド上に両方のカセットを含み得るか、又はカセットは、2つの別々のプラスミドから発現される。CRISPRプラスミドは、Addgeneからのpx330プラスミドなどが市販されている。
【0340】
「ヒット・アンド・ラン」又は「イン・アウト」は、2ステップの組換え手順を含む。第1のステップにおいて、二重ポジティブ/ネガティブ選択可能マーカーカセットを含む挿入型ベクターが、所望の配列改変を導入するために使用される。挿入ベクターは、標的遺伝子座に相同な単一の連続領域を含有し、目的の変異を有するように改変される。この標的化構築物を、相同領域内の1つの部位で制限酵素を用いて線状化し、細胞にエレクトロポレートし、そしてポジティブ選択を行って相同組換え体を単離する。これらの相同組換え体は、選択カセットを含む介在ベクター配列によって分離される局所的重複を含有する。第2のステップにおいて、標的化されたクローンをネガティブ選択に供して、複製された配列間の染色体内組換えを介して選択カセットを喪失した細胞を同定する。局所的な組換えイベントは重複を除去し、組換え部位に応じて、対立遺伝子は導入された変異を保持するか、又は野生型に復帰する。最終的な結果は、任意の外因性配列を保持することなく所望の改変を導入することである。
【0341】
「二重置換」又は「タグ及び交換」戦略は、ヒット及びランアプローチと同様の2ステップでの選抜手順を含むが、2つの異なる標的化構築物の使用を必要とする。第1のステップでは、3’及び5’ホモロジーアームを有する標準的なターゲティングベクターを使用して、変異が導入される位置の近くに二重ポジティブ/ネガティブ選択可能カセットを挿入する。エレクトロポレーション及びポジティブ選択の後、相同的に標的化されたクローンを同定する。次に、所望の変異と相同な領域を含む第2の標的化ベクターを、標的化クローンにエレクトロポレーションし、ネガティブ選択を適用して、選択カセットを除去し、変異を導入する。最終的な対立遺伝子は、望ましくない外因性配列を排除しながら、所望の変異を含む。
【0342】
部位特異的リコンビナーゼ-P1バクテリオファージ由来のCreリコンビナーゼ及び酵母Saccharomyces cerevisiae由来のFlpリコンビナーゼ部位特異的DNAリコンビナーゼであって、各々固有の34塩基対DNA配列を認識する部位特異的DNAリコンビナーゼ(各々「Lox」及び「FRT」と呼ばれる)及びLox部位又はFRT部位のいずれかに隣接する配列は、各々Creリコンビナーゼ又はFlpリコンビナーゼの発現時に部位特異的組換えを介して容易に除去され得る。例えば、Lox配列は、13塩基対逆方向反復に隣接する非対称8塩基対スペーサー領域から構成される。Creは、13塩基対の逆方向反復配列に結合し、スペーサー領域内で鎖切断及び再連結を触媒することによって、34塩基対のlox DNA配列を組換える。スペーサー領域においてCreによって作製された互い違いのDNA切断は、6塩基対によって分離されて、相同性センサーとして作用する重複領域を与え、同じ重複領域を有する組換え部位のみが組換えることを確実にする。
【0343】
基本的に、部位特異的リコンビナーゼ系は、相同組換え後の選択カセットの除去のための手段を提供する。この系はまた、時間的又は組織特異的な様式で不活性化又は活性化され得る条件的に改変された対立遺伝子の生成を可能にする。注目すべきことに、Cre及びFlpリコンビナーゼは、34塩基対のLox又はFRT「瘢痕(scar)」を残す。残存するLox又はFRT部位は、典型的には、改変された遺伝子座のイントロン又は3’UTRに残され、現在の証拠は、これらの部位が通常、遺伝子機能を有意に妨害しないことを示唆する。
【0344】
したがって、Cre/Lox及びFlp/FRT組換えは、目的の変異、2つのLox配列又はFRT配列、及び典型的には2つのLox配列又はFRT配列の間に配置された選択可能カセットを含む3’相同性アーム及び5’相同性アームを有する標的化ベクターの導入を含む。ポジティブ選択を適用し、標的変異を含む相同組換え体を同定する。ネガティブ選択と組み合わせたCre又はFlpの一過性発現は、選択カセットの切除を生じ、そしてカセットが失われた細胞を選択する。最終的な標的対立遺伝子は、外因性配列のLox又はFRT scarを含む。
【0345】
トランスポザーゼ-本明細書で使用される場合、「トランスポザーゼ」という用語は、トランスポゾンの末端に結合し、ゲノムの別の部分へのトランスポゾンの移動を触媒する酵素を指す。
【0346】
本明細書で使用される場合、「トランスポゾン」という用語は、単一細胞のゲノム内の異なる位置に移動することができるヌクレオチド配列を含む可動性遺伝因子を指す。このプロセスにおいて、トランスポゾンは変異を引き起こすことができ、及び/又は細胞のゲノム中のDNAの量を変化させることができる。
【0347】
細胞、例えば脊椎動物においても転移することができるいくつかのトランスポゾン系、例えばスリーピング・ビューティー(Sleeping Beauty)[Izsvak and Ivics Molecular Therapy(2004)9,147-156]、piggyBac[Wilson et al.Molecular Therapy(2007)15,139-145]、Tol2[Kawakami et al.PNAS(2000)97(21):11403-11408]又はFrog Prince[Miskey et al.Nucleic Acids Res.Dec 1,(2003)31(23):6873-6881]などが単離され、設計されている。概して、DNAトランスポゾンは、単純なカットアンドペースト様式で1つのDNA部位から別のDNA部位に移動する。これらのエレメントの各々は、それら自体の利点を有し、例えば、スリーピング・ビューティーは、領域特異的変異誘発において特に有用であり、一方、Tol2は、発現された遺伝子に組み込まれる最も高い傾向を有する。スリーピング・ビューティー及びpiggyBacには、高活性系が利用可能である。最も重要なことに、これらのトランスポゾンは、異なる標的部位選択性を有し、したがって、重複するが異なる遺伝子セットにおいて配列変化を導入することができる。したがって、遺伝子の可能な限り最良の適用範囲を達成するために、2つ以上の要素の使用が特に好ましい。基本的な機構は、異なるトランスポザーゼ間で共有され、したがって、本発明者らは、piggyBac(PB)を例として記載する。
【0348】
PBは、キャベツシャクトリムシガ、Trichoplusia niから最初に単離された2.5kb昆虫トランスポゾンである。PBトランスポゾンは、トランスポザーゼPBaseに隣接する非対称末端反復配列からなる。PBaseは、末端反復を認識し、「カットアンドペースト」に基づく機構を介して転移を誘導し、テトラヌクレオチド配列TTAAで宿主ゲノムに優先的に転移する。挿入の際、TTAA標的部位は、PBトランスポゾンがこのテトラヌクレオチド配列に隣接するように複製される。動員されると、PBは典型的にはそれ自体を正確に切除して単一のTTAA部位を再確立し、それによって宿主配列をそのプレトランスポゾン状態に回復させる。切除後、PBは新しい位置に転移するか、又はゲノムから永久的に失われ得る。
【0349】
典型的には、トランスポザーゼ系は、Cre/Lox又はFlp/FRTの使用と同様に、相同組換え終了後に選択カセットを除去するための代替手段を提供する。したがって、例えば、PBトランスポザーゼ系は、目的の変異を含有する3’及び5’ホモロジーアーム、内因性TTAA配列の部位における2つのPB末端反復配列、並びにPB末端反復配列の間に配置された選択カセットを有するターゲティングベクターの導入を含む。ポジティブ選択を適用し、標的変異を含む相同組換え体を同定する。ネガティブ選択と組み合わせたPBase除去の一過性発現は、選択カセットの切除をもたらし、カセットが失われた細胞を選択する。最終的な標的対立遺伝子は、外因性配列を有さない導入された変異を含む。
【0350】
PBが配列変化の導入に有用であるためには、特定の変異が挿入される位置に比較的近接して天然TTAA部位が存在しなければならない。
【0351】
組換えアデノ随伴ウイルス(recombinant adeno-associated virus、rAAV)プラットフォームを使用するゲノム編集-このゲノム編集プラットフォームは、生きた哺乳動物細胞のゲノムにおけるDNA配列の挿入、欠失又は置換を可能にするrAAVベクターに基づく。rAAVゲノムは、約4.7 kb長である、ポジティブセンス又はネガティブセンスのいずれかの一本鎖デオキシリボ核酸(single-stranded deoxyribonucleic acid、ssDNA)分子である。これらの一本鎖DNAウイルスベクターは、高い形質導入率を有し、ゲノム中の二本鎖DNA切断の非存在下で内因性相同組換えを刺激する独特の特性を有する。当業者は、所望のゲノム遺伝子座を標的とするようにrAAVベクターを設計し、細胞において全体的及び/又はわずかな内因性遺伝子改変の両方を行うことができる。rAAVゲノム編集は、それが単一の対立遺伝子を標的とし、いかなるオフターゲットゲノム改変ももたらさないという利点を有する。rAAVゲノム編集技術は市販されており、例えば、Horizon(商標)(Cambridge,UK)からのrAAV GENESIS(商標)システムである。
【0352】
薬剤は、ランダム変異を引き起こす変異原であり得、nNOSの発現レベル及び/又は活性の下方制御を示す細胞が選択され得ることが理解されるであろう。
【0353】
変異原は、遺伝物質、化学物質又は放射線物質であり得るが、これらに限定されない。例えば、変異原は、限定されないが、紫外線、ガンマ線又はアルファ粒子などの電離放射線であってもよい。他の変異原としては、塩基アナログ(コピーエラーを引き起こし得る)、亜硝酸などの脱アミノ化剤、挿入剤(例えば臭化エチジウム)、アルキル化剤(例えばブロモウラシル)、トランスポゾン、天然及び合成アルカロイド、臭素及びその誘導体、アジ化ナトリウム、ソラレン(例えば、紫外線と組み合わせて)が挙げられ得るが、これらに限定されない。変異原は、ICR191、1,2,7,8-ジエポキシオクタン(DEO)、5-azaC、N-メチル-N-ニトロソグアニジン(MNNG)又はエチルメタンスルホネート(ethyl methane sulfonate、EMS)などであるがこれらに限定されない化学変異原であり得る。
【0354】
有効性を評価し、配列変化を検出するための方法は、当該分野で周知であり、そしてDNA配列決定、電気泳動、酵素ベースのミスマッチ検出アッセイ及びハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、PCR、RT-PCR、RNase保護、インサイチュハイブリダイゼーション、プライマー伸長、サザンブロット、ノーザンブロット及びドットブロット分析)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0355】
特定の遺伝子における配列変化はまた、例えば、クロマトグラフィー、電気泳動法、免疫検出アッセイ(例えば、ELISA及びウェスタンブロット分析)並びに免疫組織化学を使用して、タンパク質レベルで決定され得る。
【0356】
更に、当業者は、構築物との相同組換え事象を受けた形質転換細胞を効率的に選択するためのポジティブ選択マーカー及び/又はネガティブ選択マーカーを含むノックイン/ノックアウト構築物を容易に設計し得る。ポジティブ選択は、外来DNAを取り込んだクローンの集団を濃縮する手段を提供する。このような陽性マーカーの非限定的な例としては、グルタミンシンテターゼ、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(dihydrofolate reductase、DHFR)、抗生物質耐性を付与するマーカー(例えば、ネオマイシン、ハイグロマイシン、ピューロマイシン、及びブラストサイジンS耐性カセット)が挙げられる。ネガティブ選択マーカーは、マーカー配列(例えば、陽性マーカー)のランダムな組み込み及び/又は排除に対して選択するために必要である。このようなネガティブマーカーの非限定的な例としては、ガンシクロビル(GCV)を細胞傷害性ヌクレオシドアナログに変換する単純ヘルペス-チミジンキナーゼ(HSV-TK)、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(ARPT)が挙げられる。
【0357】
修飾されたDNA又はRNA分子を含む修飾された核酸は、本明細書に記載のポリヌクレオチド中の天然に存在する核酸の代わりに使用され得る。修飾核酸は、本明細書に記載のポリヌクレオチドの半減期、安定性、特異性、送達、溶解性、及びヌクレアーゼ耐性を改善することができる。例えば、siRNA剤は、上記の有益な性質を付与するヌクレオチドアナログから部分的に又は完全に構成され得る。Elmen et al.(Nucleic Acids Res.33:439-447,2005)に記載されるように、合成RNA様ヌクレオチド類似体(例えば、ロックド核酸(locked nucleic acid、LNA))を用いて、標的遺伝子産物に対してサイレンシング活性を示すsiRNA分子を構築することができる。
【0358】
修飾核酸は、核酸の成分、すなわち糖、塩基、及びリン酸部分の1つ以上が、天然に存在するものとは異なる、好ましくはヒトの体内に存在するものとは異なる分子を含む。ヌクレオシド代用物は、リボリン酸骨格が、ハイブリダイゼーションがリボリン酸骨格(例えば、リボリン酸骨格の非荷電模倣物)で見られるものと実質的に同様であるように、塩基が正しい空間関係で提示されることを可能にする非リボリン酸構築物で置き換えられている分子である。
【0359】
修飾は、任意の二本鎖RNA(例えば、任意のRNAi剤(例えば、siRNA、shRNA、dsRNA、又はmiRNA)、RNA様分子、DNA分子、及びDNA様分子に組み込むことができる。ポリヌクレオチドのアンチセンス鎖及びセンス鎖の一方又は両方を修飾することが望ましい場合がある。ポリヌクレオチドはサブユニット又はモノマーのポリマーであるため、以下に記載される改変の多くは、核酸内で繰り返される位置で生じる(例えば、塩基、又はリン酸部分、又はリン酸部分の非連結Oの改変)。いくつかの場合には、修飾は、核酸中の対象位置の全てで起こるが、多くの場合、実際にはほとんどの場合には起こらない。例えば、修飾は、3’又は5’末端位置でのみ生じてもよく、末端領域、例えば、末端ヌクレオチド上の位置又は鎖の最後の2、3、4、5、若しくは10ヌクレオチドでのみ生じてもよい。修飾は、二本鎖領域、一本鎖領域、又はその両方で起こり得る。例えば、非連結O位置でのホスホロチオエート修飾は、一方又は両方の末端でのみ起こり得るか、末端領域、例えば、末端ヌクレオチド上の位置又は鎖の最後の2、3、4、5、若しくは10ヌクレオチドでのみ起こり得るか、又は二本鎖及び一本鎖領域、特に末端で起こり得る。同様に、修飾は、センス鎖、アンチセンス鎖、又はその両方で起こり得る。いくつかの場合において、センス鎖及びアンチセンス鎖は、同じ改変又は同じクラスの改変を有するが、他の場合において、センス鎖及びアンチセンス鎖は、異なる改変を有し、例えば、いくつかの場合において、1つの鎖(例えば、センス鎖)のみを改変することが所望され得る。
【0360】
本明細書に記載のポリヌクレオチドへの修飾の導入のための2つの主要な目的は、生物学的環境における分解からのそれらの保護の助長、及び薬理学的特性(例えば、薬力学的特性)の改善であり、これらは以下で更に議論される。ポリヌクレオチドの糖、塩基、又は骨格に対する他の適切な修飾は、参照により本明細書に組み込まれるPCT公開第2004/064737号に記載されている。ポリヌクレオチドは、参照により本明細書に組み込まれるPCT公開第2004/094345号に記載されている塩基などの天然に存在しない塩基を含むことができる。ポリヌクレオチドは、天然に存在しない糖(例えば、非炭水化物環状担体分子)を含むことができる。本明細書に記載のポリヌクレオチドに使用するための天然に存在しない糖の例示的な特徴は、参照により本明細書に組み込まれるPCT公開第2004/094595号に記載されている。
【0361】
本明細書に記載のポリヌクレオチドのいずれも、ヌクレアーゼ耐性を増加させるのに有用なヌクレオチド間結合(例えば、キラルホスホロチオエート結合)を含むことができる。加えて、又は代わりに、ポリヌクレオチドは、ヌクレアーゼ耐性を増加させるためにリボース模倣物を含むことができる。ヌクレアーゼ耐性を増加させるための例示的なヌクレオチド間結合及びリボース模倣物は、米国特許出願公開第2005/0164235号に記載されている。
【0362】
本明細書に記載の任意のポリヌクレオチドは、リガンドコンジュゲートモノマーサブユニット及びオリゴヌクレオチド合成のためのモノマーを含み得る。例示的なモノマーは、米国特許出願公開第2005/0107325号に記載されている。
【0363】
任意のポリヌクレオチドは、米国特許出願公開第2005/0164235号に記載されているようなZXY構造を有し得る。
【0364】
任意のポリヌクレオチドは、両親媒性部分と複合体化され得る。RNAi剤とともに使用するための例示的な両親媒性部分は、米国特許出願公開第2005/0164235号に記載されている。
【0365】
別の可能性によって、適切な制御エレメント(プロモーター)プロモーターの下で、アンチセンス又はiRNAをコードするDNA配列が対象に送達される。1つの選択肢によれば、発現制御エレメントは、CMV及びU1snRNAなどのユニバーサルプロモーターである。本発明の実施形態によれば、発現調節エレメントは、ニューロン特異的プロモーターであり、その結果、発現はニューロンにおいてのみ起こり、配列にニューロンに対する(アンチセンス)選択性を発現させる。そのようなニューロン特異的プロモーターの非限定的な例は、シナプシンIプロモーターCamkII、MeCP2、NSE及びHb9である。
【0366】
あるいは、配列は、脳への送達(以下を参照のこと)によって、好ましくはウイルス送達系の使用によって、CNSに送達され得る。好ましい実施形態は、アデノ随伴ウイルス(adeno-associated virus、AAV)によるものであり、特に、他のAAV血清型と比較して血液脳関門を通過する能力が高いため、CNS送達に好ましいベクターとなっている血清型9のアデノ随伴ウイルス(AAV9)送達によるものである。更なるウイルス送達系は、レンチウイルス及び単純ヘルペスウイルスである。
【0367】
タンパク質レベルで作用する薬剤:
抗体:
特定の実施形態によれば、nNOSを下方制御することができる薬剤は、nNOSに特異的に結合することができる抗体又は抗体断片である。好ましくは、抗体はnNOSの少なくとも1つのエピトープに特異的に結合する。本明細書で使用される場合、「エピトープ」という用語は、抗体のパラトープが結合する抗原上の任意の抗原決定基を指す。エピトープ決定基は、通常、アミノ酸又は炭水化物側鎖などの分子の化学的に活性な表面基からなり、通常、特異的な三次元構造特性並びに特異的な電荷特性を有する。
【0368】
nNOSは細胞内に局在するため、nNOSに特異的に結合することができる抗体又は抗体断片は、典型的には細胞内抗体である。
【0369】
細胞内抗体(イントラボディとも呼ばれる)は、細胞内で産生され、同じ細胞内の抗原に結合する抗体である。
【0370】
重要なことに、全長抗体は、抗体の立体構造及び安定性を維持するために必要とされるタンパク質フォールディング及び分子内ジスルフィド結合に影響を及ぼすその還元条件に起因して、分泌前にサイトゾルにおいて機能的ではない。抗体にその例外的な標的特異性を付与する相補性決定領域は、重鎖及び軽鎖の両方の可変領域に位置する。したがって、細胞内抗原(この場合nNOS)を標的とするために、細胞質ゾル安定性のために更に操作することができる一本鎖可変断片(scFv)内に特異性提供領域を組み込んだ抗体断片を使用することが可能である。scFvは、単一のポリペプチドであり、これはインビボ発現に有利な特徴であり、他の疾患の中でもウイルス感染及びがんの治療薬として研究されている。
【0371】
更に、可変(V)領域ドメインを単独で使用して、ドメイン抗体又はDabを形成することができる。これらは、従来のヒトIgから、又はラクダ科動物(ラクダ又はラマ)及び軟骨魚類(エイ又はテンジクザメ)由来のものから操作することができ、その免疫系は、ヒトIgにおいて見出される定常Fc領域を反映する保存されたフレームワークに融合された進化した高親和性V様ドメインを有することが見出された。単一の重鎖V領域又は軽鎖V領域が細胞内で発現され得ることが報告されている。これらは、細胞内ドメイン抗体と呼ばれ、安定性のために分子内ジスルフィド結合を必要とせず、したがって、サイズ(細胞内標的化のための重要な因子)を最小化しながら標的特異性を保持する抗体の最小フォーマットを表す。
【0372】
特定の実施形態によれば、イントラボディは、標的タンパク質の分解を引き起こすERターゲティングのためのシグナル、カスパーゼの活性化を介してプログラム細胞死を誘導するために使用される抗体-抗原相互作用依存性アポトーシス、及び標的タンパク質のタンパク質分解を引き起こす自殺イントラボディ技術を含む。
【0373】
ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体並びにそれらの断片を産生する方法は、当該分野で周知である(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York,1988を参照されたい)。
【0374】
nNOS特異的抗体は、当技術分野において周知である。これらは、脳細胞(例えば、ニューロン)において作用するための抗体断片及び細胞内抗体を調製するために使用され得る。
【0375】
このような抗体の例としては、Thermo Fisherによる37-2800、abcamによるEP1855Y及びEPR 24351-6が挙げられるが、これらに限定されない。
【0376】
これらは、細胞内で作用するように、及び/又はヒトへの使用のために、長さ及び配列によって改変され得る。
【0377】
アプタマー:
nNOSを下方制御するために本発明のいくつかの実施形態とともに使用することができる別の薬剤は、アプタマーである。本明細書で使用される場合、「アプタマー」という用語は、タンパク質などの特定の分子標的に結合する二本鎖又は一本鎖RNA分子を指す。タンパク質特異的アプタマーを設計するために使用することができる様々な方法が当技術分野で公知である。当業者は、効率的な選抜のために、Stoltenburg R,Reinemann C,and Strehlitz B(Biomolecular engineering(2007)24(4):381-403)に記載のようなSELEX(Systematic Evolution of Ligands by Exponential Enrichment、指数的富化によるリガンドの系統的進化)を採用することができる。Creative Biolabsは、SELEXによるアプタマー開発サービスを提供している。
【0378】
nNOS安定性に影響を及ぼす薬剤:
上記タンパク質のいずれかを下方制御するために使用され得る別の企図される薬剤としては、タンパク質分解標的化キメラ(PROTAC)が挙げられる。このような薬剤は、ユビキチンリガーゼ(例えば、E3ユビキチンリガーゼ)に結合するリガンド、及び上記のタンパク質(nNOS)の1つに対するリガンド、並びに必要に応じて2つのリガンドを連結するリンカーを含む、ヘテロ二官能性である。PROTACの標的タンパク質への結合は、標的タンパク質上の曝露されたリジンのユビキチン化、続いてユビキチンプロテアソーム系(ubiquitin proteasome system、UPS)媒介タンパク質分解をもたらす。
【0379】
ドミナントネガティブnNOS及び競合阻害剤:
nNOSの少なくとも触媒部分又は結合部分の非機能的類似体も、それがホモ二量体として作用するため、nNOSを下方制御する薬剤として使用できることが理解されるであろう。
【0380】
いくつかの実施形態によれば、薬剤は、アミノ酸系阻害剤とも呼ばれるアミノ酸系薬剤である。
【0381】
いくつかの実施形態によれば、薬剤は、PIN又は一酸化窒素シンターゼ相互作用タンパク質(NOSIP)である。
【0382】
nNOSのN末端は、nNOS活性を阻害し得るPINと呼ばれるタンパク質に結合し得ることが示されている。PINはnNOS二量体を不安定化させ、nNOS活性を阻害することが見出されている。最近、PINが、nNOS二量体化ではなく、NO及びO2の産生を阻害することが実証された。
【0383】
NO産生を阻害する別のタンパク質は、一酸化窒素シンターゼ相互作用タンパク質(NOSIP)である。NOSIP及びnNOSは、中枢神経系及び末梢神経系の異なる領域に共局在する。NOSIPは、nNOSを安定に発現する神経上皮腫細胞株においてnNOS活性に負の影響を及ぼす。加えて、培養された一次ニューロンにおけるNOSIPの過剰発現は、末端樹状突起へのnNOS輸送を制限し、nNOSを細胞体に向ける。これらの知見は、NOSIPが、nNOSの活性及び局在化を調節することによって神経系におけるNO産生を調節することを示唆する。ニューロン活性によるNOSIP上方制御は、ニューロンにおけるNO産生を防止し得る。
【0384】
代替的又は追加的に、nNOSタンパク質機能(例えば、触媒作用又は相互作用)を妨害する小分子又はペプチドを使用することができる。
【0385】
nNOSを下方制御するために本発明のいくつかの実施形態とともに使用することができる別の薬剤は、nNOS活性化又は基質結合を防止する分子である。
【0386】
特定の実施形態によれば、薬剤はnNOSの活性部位に結合し、基質結合を遮断する。種々のアミノ酸がnNOSの活性部位を規定する。これらは、例えば、フェニルアラニン589、トリプトファン592、チロシン593、グルタミン酸597、アスパラギン酸602、アルギニン601、メチオニン341、ヒスチジン342、チロシン711が挙げられる。
【0387】
小分子阻害剤:
特定の実施形態によれば、ニューロンNOシンターゼの阻害剤である小分子を活性薬剤として使用することができる。非限定的な例は、Nω-ニトロアルギニンであり、これは、酵素の活性部位に結合し、基質結合を遮断するnNOSの強力な競合阻害剤であるが、eNOSに対してほとんど選択性を示さないことが周知である。
【0388】
例えばアルギニン類似体は、nNOS競合阻害剤として使用することができる。
【0389】
本発明に従って使用することができるnNOS阻害剤としては、7-ニトロ-チオシトルリン(7-NI)、L-NG-メチル-L-アルギニン(L-NMMA)、L-NG-プロピル-L-アルギニン(N-PLA)、L-NG-ニトロアルギニン(L-NNA)、L-NG-ニトロアルギニンメチルエステル(L-NAME)、L-チオシトルリン、S-メチル-L-インダゾール、S-メチル-L-チオシトルリン、エチル-L-NIO、ビニル-L-NIO、7-NI-Br(3-ブロモ-7-ニトロインダゾール)、及びメチレンブルーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0390】
Tocris及び他の供給業者から入手可能な阻害剤としては、ARL 17477二塩酸塩、3-ブロモ-7-ニトロインダゾール、IC 87201(nNOS-PSD95タンパク-タンパク相互作用阻害剤である)、L-NIO二塩酸塩及びNω-プロピル-L-アルギニン塩酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0391】
ApexBio並びに他の供給元から入手可能な阻害剤としては、(S)-メチルイソチオ尿素硫酸塩、1400W二塩酸塩、2,4-ジアミノ-6-ヒドロキシピリミジン、2-イミノピペリジン塩酸塩及び3-ブロモ-7-ニトロインダゾールが挙げられるが、これらに限定されない。
特定の実施形態によれば、薬剤(又は選択的nNOS阻害剤)は、JI-8(シス-N1-[4-6-アミノ-(4-メチルピリジン-2-イルメチル)ピロリジン-3-イル]-N2-[2-(3’’-フルオロフェニル)エチル]エタン-1,2-ジアミン)及び、例えば、Yu et al.,Dev Neurosci.2011 Oct;33(3-4):312-319、Ji et al.,Ann Neurol.2009b;65:209-217、及びJi et al,J Am Chem Soc.2008;130:3900-3914に記載される構造類似体であり、これらは参照により本明細書に完全に記載されているかのように組み込まれる。
特定の実施形態によれば、薬剤は、Nω-ニトロアルギニンである。
【0392】
特定の実施形態によれば、薬剤は、NO前駆体のレベルを低下させる。
【0393】
特定の実施形態によれば、薬剤は、GSNOレダクターゼレベルのレベルを増加させ、それによってNO前駆体のレベルを低下させる。
【0394】
参照により本明細書に完全に記載されているかのように組み込まれる米国特許出願公開第2021/0239400号は、本教示に従って使用することができるnNOS阻害剤を開示している。
【0395】
米国特許出願公開第2020/0222714号は、nNOS活性の阻害のための光線療法を開示している。
【0396】
特定の実施形態によれば、nNOS阻害剤(薬剤)は、7-NIであり、その構造類似体を含む。
【0397】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、7-NIの構造類似体は、式Iによって集合的に表され、
【0398】
【化2】
又はその薬学的に許容される塩であり、
式中
R
1は、水素、アルキル及びシクロアルキルから選択され、好ましくは水素であり、
R
2~R
5は、各々独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロ脂環式、ヘテロアリール、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオール、アミン、カルボキシレート、チオカルボキシレート、ポリ(アルキレングリコール部分)、単糖、二糖、及びオリゴ糖から選択される。
【0399】
特定の実施形態によれば、R2~R5の1つは、フルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨードを含むハロであり、好ましくはブロモである。特定の実施形態によれば、R2はハロ、好ましくはブロモである。このような化合物は、Br-7-NIとして知られている。
【0400】
特定の実施形態によれば、R2~R5の各々は、水素である。そのような化合物は公知であり、本明細書では7-ニトロ-インダゾール(7-NI)と呼ぶ。
【0401】
いくつかの実施形態によれば、式Iによって表される化合物は、本明細書で定義されるように、nNOS阻害剤として、好ましくは選択的nNOS阻害剤として作用する。
【0402】
いくつかの実施形態によれば、式Iによって表される化合物は、その薬学的に許容される塩の形態である。
【0403】
本明細書中で使用される場合、句「薬学的に許容される塩」とは、親化合物及びその対イオンの荷電種をいい、これは、典型的には、親化合物の溶解特性を改変するため、及び/又は親化合物による生物に対する任意の有意な刺激を減少させるために使用されるが、投与された化合物の生物学的活性及び特性を無効にしない。あるいは、本明細書に記載の化合物の薬学的に許容される塩は、化合物の合成中に、例えば、反応混合物から化合物を単離する過程又は化合物を再結晶化する過程で形成することができる。
【0404】
本実施形態のいくつかの文脈において、本明細書に記載の化合物の薬学的に許容される塩は、任意選択で酸付加塩及び/又は塩基付加塩であり得る。
【0405】
酸付加塩は、薬学的に許容される塩を形成する、選択された酸に由来する少なくとも1つの対イオンと組み合わせて、正に荷電した形態である(例えば、塩基性基がプロトン化されている)化合物の少なくとも1つの塩基性(例えば、アミン及び/又はグアニジニル)基を含む。したがって、本明細書に記載の化合物の酸付加塩は、化合物の1つ以上の塩基性基と1つ以上の当量の酸との間で形成される複合体であり得る。
【0406】
塩基付加塩は、薬学的に許容される塩を形成する、選択された塩基に由来する少なくとも1つの対イオンとの組み合わせで負に荷電した形態となる(例えば、酸性基が脱プロトン化されている)化合物の、少なくとも1つの酸性基を含む。したがって、本明細書に記載の化合物の塩基付加塩は、化合物の1つ以上の酸性基と1つ以上の当量の塩基との間で形成される複合体であり得る。
【0407】
化合物中の荷電基と塩中の対イオンとの間の化学量論比に応じて、酸付加塩及び/又は塩基付加塩は、一付加塩又は重付加塩のいずれかであり得る。
【0408】
「一付加塩」という語句は、本明細書で使用される場合、付加塩が1モル当量の化合物当たり1モル当量の対イオンを含むように、対イオンと荷電形態の化合物との化学量論比が1:1である塩を指す。
【0409】
「重付加塩」という語句は、本明細書で使用される場合、付加塩が化合物1モル当量当たり2モル当量以上の対イオンを含むように、対イオンと化合物の荷電形態との化学量論比が1:1より大きく、例えば、2:1、3:1、4:1などである塩を指す。
【0410】
薬学的に許容される塩の非限定的な例は、本明細書ではアニオン性塩とも称されるアンモニウムカチオン及びその酸付加塩、並びに/又は本明細書ではカチオン性塩とも称される脱プロトン化アミン及びその塩基付加塩であろう。
【0411】
塩基付加塩は、薬学的に許容される塩を形成するナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウムなどのカチオン対イオンを含むことができる。例示的なこのようなカチオン性塩は、以下及び以下の実施例の節において更に詳細に記載される。
【0412】
酸付加塩としては、塩酸付加塩を与える塩酸、臭化水素酸付加塩を与える臭化水素酸、酢酸付加塩を与える酢酸、アスコルビン酸付加塩を与えるアスコルビン酸、ベシル酸付加塩を与えるベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸付加塩を与えるカンファースルホン酸、クエン酸付加塩を与えるクエン酸、マレイン酸付加塩を与えるマレイン酸、リンゴ酸付加塩を与えるリンゴ酸、メタンスルホン酸(メシラート)付加塩を与えるメタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸付加塩を与えるナフタレンスルホン酸、シュウ酸付加塩を与えるシュウ酸、リン酸付加塩を与えるリン酸、p-トルエンスルホン酸付加塩を与えるトルエンスルホン酸、コハク酸付加塩を与えるコハク酸、硫酸付加塩を与える硫酸、酒石酸付加塩を与える酒石酸、及びトリフルオロ酢酸付加塩を与えるトリフルオロ酢酸のような種々の有機及び無機酸が挙げられ得るが、これらに限定されない。これらの酸付加塩の各々は、これらの用語が本明細書で定義されるように、一付加塩又は重付加塩のいずれかであり得る。
【0413】
例示的なこのようなアニオン性塩は、以下及び以下の実施例の節において更に詳細に記載される。
【0414】
薬学的組成物:
各々の実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載の薬剤(例えば、nNOS阻害剤)は、生物にそれ自体で、又は適切な担体若しくは賦形剤と混合された薬学的組成物中で、投与することができる。
【0415】
本明細書で使用される場合、「薬学的組成物」とは、本明細書中に記載される1つ以上の活性成分と、他の化学成分(例えば、生理学的に適切な担体及び賦形剤)との調製物をいう。薬学的組成物の目的は、生物への化合物の投与を容易にすることである。
【0416】
本教示は、それらの使用にかかわらず薬学的組成物を企図し、各実施形態は、個別に又は他の実施形態と組み合わせて考慮されるべきであることが理解されよう。
【0417】
本明細書において、「活性成分」という用語は、生物学的効果の原因となる薬剤を指す。
【0418】
用語「活性成分」、「活性薬剤」及び「治療活性薬剤」は、本明細書において互換的に使用される。
【0419】
以下、互換的に使用され得る「生理学的に許容される担体」及び「薬学的に許容される担体」という語句は、生物に著しい刺激を引き起こさず、投与された化合物の生物学的活性及び特性を無効にしない担体又は希釈剤を指す。アジュバントは、これらの語句に含まれる。
【0420】
本明細書において、「賦形剤」という用語は、活性成分の投与を更に容易にするために薬学的組成物に添加される不活性物質を指す。賦形剤の非限定的な例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖及び種々のタイプのデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油及びポリエチレングリコールが挙げられる。
【0421】
薬物の処方及び投与のための技術は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」,Mack Publishing Co.,Easton,PA,最新版に見出され得、これは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0422】
適切な投与経路としては、例えば、経口送達、直腸送達、経粘膜送達、特に経鼻送達、腸管送達又は非経口送達(筋肉内注射、皮下注射及び髄内注射並びに髄腔内注射、直接脳室内注射、心臓内(例えば、右心室腔若しくは左心室腔への注射、総冠状動脈への注射)、静脈内注射、腹腔内注射、鼻腔内注射又は眼内注射を含む)が挙げられ得る。
【0423】
中枢神経系(CNS)への薬物送達のための従来のアプローチとしては、以下が挙げられる:神経外科的戦略(例えば、脳内注射又は脳室内注入);BBBの内因性輸送経路の1つを利用しようとする、薬剤の分子操作(例えば、それ自体がBBBを通過することができない薬剤と組み合わせて、内皮細胞表面分子に対して親和性を有する輸送ペプチドを含むキメラ融合タンパク質の産生);薬剤の脂溶性を増加させるように設計された薬理学的戦略(例えば、水溶性薬剤の脂質又はコレステロール担体へのコンジュゲーション);高浸透圧破壊(頚動脈内へのマンニトール溶液の注入又はアンジオテンシンペプチドなどの生物学的活性剤の使用に起因する)によるBBBの統合性の一時的破壊。しかしながら、これらの戦略の各々は、侵襲的外科的治療に関連する固有のリスク、内因性輸送系に固有の制限によって課されるサイズ制限、CNSの外側で活性であり得るキャリアモチーフから構成されるキメラ分子の全身投与に関連する望ましくない可能性のある生物学的副作用、及びBBBが破壊される脳の領域内での脳損傷の可能性のあるリスク、などの制限を有し、これによりいずれが最適な送達方法であるとはいえない。
【0424】
あるいは、例えば、患者の組織領域に薬学的組成物を直接注射することによって、全身的ではなく局所的に薬学的組成物を投与してもよい。
【0425】
「組織」という用語は、1つ又は複数の機能を実行するように設計された細胞からなる生物の一部を指す。例としては、脳組織が挙げられるが、これに限定されない。
【0426】
本発明のいくつかの実施形態の薬学的組成物は、当該分野で周知のプロセスによって(例えば、従来の混合プロセス、溶解プロセス、顆粒化プロセス、糖衣錠作製プロセス、粉末化プロセス、乳化プロセス、カプセル化プロセス、捕捉プロセス又は凍結乾燥プロセスによって)製造され得る。
【0427】
したがって、本発明のいくつかの実施形態に従って使用するための薬学的組成物は、薬学的に使用することができる調製物への活性成分の加工を容易にする賦形剤及び助剤を含む1つ以上の生理学的に許容される担体を使用して、従来の様式で製剤化することができる。適切な製剤は、選択される投与経路に依存する。
【0428】
言及されるように、本教示はまた、活性薬剤(すなわち、nNOS阻害剤)の化学構造に依存する送達ビヒクルの使用を企図する。
【0429】
送達ビヒクル、すなわち、リポソーム、ナノカプセル、微粒子、ミクロスフェア、脂質粒子、小胞などの担体を使用して、本明細書に記載の核酸分子を送達することができる。
【0430】
リポソームの形成及び使用は、概して当業者に公知である。最近、血清安定性及び循環半減期が改善されたリポソームが開発された(米国特許第5,741,516号)。更に、可能性のある薬物担体としてのリポソーム及びリポソーム様調製物の種々の方法が記載されている(米国特許第5,567,434号、同第5,552,157号、同第5,565,213号、同第5,738,868号、及び同第5,795,587号)。
【0431】
リポソームは、他の手順によるトランスフェクションに対して通常耐性である多くの細胞型とともに首尾よく使用されている。更に、リポソームは、ウイルスベースの送達系に典型的なDNA長の制約を受けない。リポソームは、遺伝子、薬物、放射線治療剤、ウイルス、転写因子及びアロステリックエフェクターを種々の培養細胞株及び動物に導入するために効果的に使用されている。更に、リポソーム媒介薬物送達の有効性を試験するいくつかの成功した臨床試験が完了している。
【0432】
リポソームは、水性媒体中に分散されたリン脂質から形成され、多重膜同心二重層小胞(多重膜小胞(MLV)とも呼ばれる)を自発的に形成する。MLVは、概して、25nm~4μmの直径を有する。MLVの超音波処理は、コアに水溶液を含有する、200~500Åの範囲の直径を有する小さな単層小胞(SUV)の形成をもたらす。
【0433】
あるいは、ナノカプセル又はナノ粒子製剤を使用してもよい。ナノカプセルは、概して、安定かつ再現可能な方法で物質を捕捉することができる。ナノ粒子は、静脈内に投与された場合にBBBを通して薬物を輸送するために、並びにその輸送に影響を及ぼす因子を輸送するために使用することができる。
【0434】
NPは、天然又は合成起源を有することができ、サイズが1~1000nmで変動し得るコロイド状担体である。合成NPは、ポリ(エチレンイミン)(PEI)、ポリ(アルキルシアノアクリレート)、ポリ(アミドアミン)デンドリマー(PAMAM)、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリエステル(ポリ(乳酸)(PLA)などのポリマー材料から、又は金、二酸化ケイ素(シリカ)などの無機材料から調製され得る。これらの担体は、それらに吸着、捕捉又は共有結合することによって薬物を輸送することができる。天然NPは、多糖類(キトサン及びアルギン酸塩)、アミノ酸(ポリ(リジン)、ポリ(アスパラギン酸)(PASA))、又はタンパク質(ゼラチン及びアルブミン)などの天然ポリマーから生成される。天然のNPは、内皮細胞によって発現される特定の受容体/輸送体と相互作用する生物学的シグナルを提供するという利点を有する。
【0435】
BBB透過を促進するために、いくつかのリガンドがNPにコンジュゲートされている。このような分子は、以下の4つの異なる型に分類することができる:
(i)BBB受容体又は輸送体と直接相互作用する、血流からのタンパク質の吸着を媒介するリガンド;(ii)それ自体がBBB受容体又は輸送体と直接相互作用するリガンド;(iii)電荷及び疎水性を増加させるリガンド;並びに
(iv)血液循環時間を改善するリガンド(例えば、PEG)。
【0436】
NPが血液脳関門を通過するのを補助するための他の方法としては、限定されないが、受容体媒介輸送、輸送体媒介輸送、吸収性媒介輸送、及び細胞透過性輸送が挙げられる。
【0437】
別の方法としては、Filler et al.2010 BMC Neuroscience volume 11,Article number:8「Tri-partite complex for axonal transport drug delivery achieves pharmacological effect」に開示されているような、末梢からの軸索輸送に基づく逆行性トレーサーの使用が挙げられる。一実施形態によれば、トリパータイト分子構造概念は、軸索輸送促進分子、ポリマーリンカー、及びレトログレードトレーサーを含む。
【0438】
本明細書において考察され、当技術分野において公知であるように、軸索輸送は、細胞の位置を明らかにし、ニューロン投射を追跡するために典型的に使用される化合物である、組織化学的トレーサーとも呼ばれるニューロントレーサーによってもたらされ得る。逆行性トレーサーは、終末に、又は軸索若しくは他のニューロン突起に沿って取り込まれ、細胞体に輸送されるが、順行性トレーサーは、ニューロンの細胞体から離れて移動する。「逆行性トレーサー」という用語は、末梢からDRGへの軸索輸送をもたらす能力によって特徴付けられる分子を指す。逆行性トレーサーの非限定的な例は、例えば、Xiangmin Xu.et al.,Neuron,2020,107(6),1029-1047、Christine,S.et al.,Frontiers in Neuroscience,2019,13,897、Kumar,P.,Mater Methods 2019;9:2713、Lanciego,J.L.et al.,Brain Structure and Function,2020,225,1193-1224、及びYao,F.et al.,PLoS ONE,13(10),e0205133に記載され、これらの内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0439】
例示的な逆行性トレーサーとしては、西洋ワサビペルオキシダーゼ(horseradish peroxidase、HRP)、デキストラン、イソレクチン、イソレクチンB4(IB4)、コレラトキシンサブユニットB、コムギ胚芽凝集素(wheat germ agglutinin、WGA)、ヒドロキシスチルバミジン(蛍光色素)、RABVなどのウイルスベースのトレーサー、及び任意の公知の軸索逆行性輸送剤又はトレーサーが挙げられる。
【0440】
本発明の文脈において「逆行性トレーサー残留物」又は「逆行性トレーサーの残留物」という用語は、互換的に、コンジュゲートの投与部位から核周囲部へのコンジュゲートの軸索輸送を付与又は可能にするコンジュゲートの部分を指す。
【0441】
RNAを送達するために使用され得る哺乳動物ウイルスベクターとしては、オンコレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、及びレンチウイルスが挙げられる。
【0442】
特に、HSVベクターは、中枢神経系(CNS)に対して向性であり、ニューロンにおいて生涯にわたる潜伏感染を確立することができる。
【0443】
AAVは、当該分野で公知の任意の適切な方法に従って、組成物中で対象に送達され得る。好ましくは生理学的に適合性の担体中に(例えば、組成物中に)懸濁されたAAVは、対象、例えば、ヒト、マウス、ラット、ネコ、イヌ、ヒツジ、ウサギ、ウマ、ウシ、ヤギ、ブタ、モルモット、ハムスター、ニワトリ、シチメンチョウ、又は非ヒト霊長類に投与され得る。ある特定の実施形態では、組成物は、AAVを単独で、又は1つ以上の他のウイルス(例えば、1つ以上の異なる導入遺伝子を有する第2のAAVコード)と組み合わせて含み得る。
【0444】
適切な担体は、AAVが指向される適応症を考慮して、当業者によって容易に選択され得る。例えば、1つの適切な担体としては、生理食塩水が挙げられ、これは、種々の緩衝液(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水)とともに処方され得る。他の例示的な担体としては、滅菌生理食塩水、ラクトース、スクロース、リン酸カルシウム、ゼラチン、デキストラン、寒天、ペクチン、落花生油、ゴマ油、及び水が挙げられる。担体の選択は、本発明を限定するものではない。
【0445】
必要に応じて、本発明の組成物は、AAV及び担体に加えて、他の従来の薬学的成分(例えば防腐剤、化学安定剤)を含み得る。適切な例示的な防腐剤としては、クロロブタノール、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、二酸化硫黄、没食子酸プロピル、パラベン、エチルバニリン、グリセリン、フェノール、及びパラクロロフェノールが挙げられる。適切な化学安定剤としては、ゼラチン及びアルブミンが挙げられる。
【0446】
所望の効果又は「治療効果」を達成するために必要とされるAAVビリオンの用量(例えば、ベクターゲノム/体重1キログラム当たりの用量の単位(vg/kg))は、AAV投与の経路、治療効果を達成するために必要とされる遺伝子又はRNA発現のレベル、治療される特定の疾患又は障害、及び遺伝子又はRNA産物の安定性を含むがこれらに限定されないいくつかの因子に基づいて変化する。当業者は、特定の疾患又は障害を有する対象を治療するためのAAVビリオン用量範囲を、前述の因子、並びに当該分野で周知の他の因子に基づいて容易に決定し得る。AAVの有効量は、概して、対象当たり約109~1016ゲノムコピーを含む約10ul~約100mLの範囲の溶液である。他の体積の溶液を使用してもよい。使用される容量は、典型的には、とりわけ、対象のサイズ、AAVの用量、及び投与経路に依存する。例えば、髄腔内又は脳内投与のために、1ul~10ul又は10ul~100ulの範囲の体積が使用され得る。静脈内投与の場合、10ul~100ul、100ul~1mL、1mL~10mL、又はそれ以上の範囲の体積を使用することができる。場合によっては、対象当たり約1010~1012個のAAVゲノムコピーの用量が適切である。ある特定の実施形態では、対象当たり1012個のAAVゲノムコピーが、CNS組織を標的化するのに有効である。一部の実施形態では、AAVは、対象当たり1010、1011、1012、1013、1014、又は1015ゲノムコピーの用量で投与される。一部の実施形態では、AAVは、1kg当たり1010、1011、1012、1013、又は1014ゲノムコピーの用量で投与される。
【0447】
いくつかの実施形態では、AAV組成物は、特に高いAAV濃度(例えば、約1013GC/ml以上)が存在する場合、組成物中のAAV粒子の凝集を減少させるように製剤化される。AAVの凝集を減少させるための方法は、当該技術分野において周知であり、例えば、界面活性剤の添加、pH調整、塩濃度調整などが挙げられる(例えば、Wright et al.(2005)Molecular Therapy 12:171-178)。
【0448】
薬学的に受容可能な賦形剤及び担体溶液の処方は、種々の治療レジメンにおいて本明細書中に記載される特定の組成物を使用するための適切な投薬レジメン及び治療レジメンの開発と同様に、当業者に周知である。典型的には、これらの製剤は、少なくとも約0.1%以上の活性成分を含有し得るが、活性成分の百分率は、当然ながら変動してもよく、好都合には、製剤全体の重量又は体積の約1又は2%~約70%又は80%以上であり得る。当然ながら、各治療上有用な組成物中の活性成分の量は、化合物の任意の所与の単位用量において適切な投与量が得られるように調製され得る。溶解度、バイオアベイラビリティ、生物学的半減期、投与経路、製品貯蔵寿命などの因子、並びに他の薬理学的考慮事項は、そのような医薬製剤を調製する当業者によって企図され、したがって、様々な投与量及び治療レジメンが望ましい場合がある。
【0449】
注射用途に適した医薬形態としては、滅菌水溶液又は分散液、及び滅菌注射用溶液又は分散液の即時調製のための滅菌粉末が挙げられる。分散液は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びそれらの混合物中、並びに油中で調製することもできる。保存及び使用の通常の条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を防止するために保存剤を含有する。多くの場合、形態は無菌であり、容易な注射可能性が存在する程度に流動性である。それは製造及び貯蔵の条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、及び/又は植物油を含有する溶媒又は分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散液の場合には必要とされる粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤及び抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなど)によってもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖又は塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物中で使用することによってもたらすことができる。
【0450】
注射用水溶液の投与のために、例えば、溶液は、必要であれば、適切に緩衝化され得、液体希釈剤は、最初に、十分な生理食塩水又はグルコースで等張にされる。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下及び腹腔内投与に特に適している。これに関連して、使用され得る滅菌水性媒体は、当業者に公知である。例えば、1用量を1mLの等張NaCl溶液に溶解し、1000mLの皮下注入液に添加するか、又は提案された注入部位に注射することができる(例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」15th Editionを参照)。投与量のいくらかの変動は、宿主の状態に依存して必然的に生じる。投与に従事する者は、いずれにしても、個々の宿主に対する適切な用量を決定する。
【0451】
滅菌注射用溶液は、必要に応じて、本明細書に列挙される種々の他の成分とともに、適切な溶媒中に必要量の活性AAVを組み込み、続いて濾過滅菌することによって調製される。概して、分散液は、種々の滅菌された活性成分を、基本分散媒及び上に列挙したものからの必要な他の成分を含有する滅菌ビヒクル中に組み込むことによって調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥技術及び凍結乾燥技術であり、これらは、予め滅菌濾過されたその溶液から、活性成分及び任意の更なる所望の成分の粉末を生じる。
【0452】
本明細書に開示される組成物はまた、中性又は塩の形態で製剤化されてもよい。薬学的に許容される塩としては、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基と形成される)が挙げられ、これは、無機酸(例えば、塩酸若しくはリン酸)又は有機酸(例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸など)と形成される。遊離カルボキシル基を用いて形成される塩はまた、無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、又は水酸化第二鉄)、及び有機塩基(例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなど)から誘導され得る。製剤化すると、溶液は、投与製剤に適合する様式で、治療的に有効である量で投与される。製剤は、注射用溶液、薬物放出カプセルなどの様々な剤形で容易に投与される。
【0453】
本明細書中で使用される場合、「担体」は、任意の及び全ての溶媒、分散媒、ビヒクル、コーティング、希釈剤、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、緩衝液、担体溶液、懸濁液、コロイドなどを含む。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体及び薬剤の使用は、当該分野で周知である。補助的な活性成分もまた、組成物に組み込まれ得る。「薬学的に許容される」という語句は、宿主に投与された場合にアレルギー反応又は同様の不都合な反応を生じない分子実体及び組成物を指す。
【0454】
リポソーム、ナノカプセル、微粒子、ナノカプセル、微粒子、ミクロスフェア、脂質粒子、小胞など)は、本発明の組成物の適切な宿主細胞への導入のために使用され得る。特に、ベクター送達成分は、脂質粒子、リポソーム、小胞、ナノスフェア、又はナノ粒子などのいずれかにカプセル化された送達のために製剤化され得る。
【0455】
上記の送達方法に加えて、以下の技術もまた、組成物を宿主に送達する代替方法として企図される。ソノフォレシス(sonophoresis)(すなわち、超音波)は、循環系への及び循環系を通過する薬物透過の速度及び効力を増強するためのデバイスとして使用されており、米国特許第5,656,016号に記載されている。企図される他の薬物送達代替法は、骨内注射(米国特許第5,779,708号)、マイクロチップデバイス(米国特許第5,797,898号)、眼科用製剤、経皮マトリックス(米国特許第5,770,219号及び第5,783,208号)及びフィードバック制御送達(米国特許第5,697,899号)である。
【0456】
本発明の薬学的組成物を調製するために、結合体、ベクター、脂質、ナノ粒子、リポソーム、アジュバント又は希釈剤は、薬学的に受容可能な担体又は賦形剤と更に混合され得る。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences and U.S.Pharmacopeia:National Formulary,Mack Publishing Company,Easton,Pa.(1984)を参照されたい。
【0457】
治療剤の製剤は、例えば、凍結乾燥粉末、スラリー、水溶液又は懸濁液の形態で、許容される担体、賦形剤又は安定剤と混合することによって調製することができる(例えば、Hardman,et al.(2001)Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,McGraw-Hill,New York,N.Y.、Gennaro(2000)Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Lippincott,Williams,and Wilkins,New York,N.Y.、Avis,et al.(eds.)(1993)Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications,Marcel Dekker,NY、Lieberman,et al.(eds.)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets,Marcel Dekker,NY、Lieberman,et al.(eds.)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems,Marcel Dekker,NY、Weiner and Kotkoskie(2000)Excipient Toxicity and Safety,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.)。
【0458】
単独で又は別の薬剤と組み合わせて投与される治療組成物の毒性及び治療有効性は、例えば、LD50(集団の50%に対して致死的な用量)及びED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を決定するための、細胞培養物又は実験動物における標準的な薬学的手順によって決定され得る。毒性と治療効果との間の用量比が治療指数(LD50/ED50)である。特定の態様では、高い治療指数を示す治療組成物が望ましい。これらの細胞培養アッセイ及び動物研究から得られたデータは、ヒトに使用するための投薬量の範囲を処方する際に使用され得る。そのような化合物の投与量は、好ましくは、毒性がほとんど又は全くないED50を含む循環濃度の範囲内にある。投与量は、使用される剤形及び投与経路に応じて、この範囲内で変動し得る。
【0459】
投与の様式は、変化し得る。適切な投与経路としては、経口、直腸、経粘膜、腸管、非経口、筋肉内、皮下、皮内、髄内、くも膜下腔内、直接脳室内、静脈内、腹腔内、鼻腔内、眼内、吸入、吹送、局所、皮膚、経皮、又は動脈内が挙げられる。
【0460】
特定の実施形態では、組成物又は治療薬は、注射などの侵襲的経路によって投与することができる。本発明の更なる実施形態では、組成物、治療剤、又はその薬学的組成物は、静脈内、皮下、筋肉内、動脈内、関節内(例えば、関節炎関節において)、腫瘍内に、又は吸入、エアロゾル送達によって投与される。非侵襲的経路による投与(例えば、経口、例えば、丸剤、カプセル剤又は錠剤)も、本発明の範囲内である。
【0461】
薬理学的薬剤が血液/脳関門を通過するという問題を克服するために、髄腔内投与が更に好ましい投与形態である。髄腔内投与は、薬物が脳脊髄液に達するように、薬物を脊柱管、より具体的にはくも膜下腔に注射することを含む。この方法は、脊髄麻酔、化学治療、及び鎮痛剤に一般的に使用される。髄腔内投与は、腰椎穿刺(ボーラス注射)又はポート-カテーテルシステム(ボーラス又は注入)によって行うことができる。カテーテルは、最も一般的には、腰椎の椎弓板の間に挿入され、先端は、所望のレベル(概して、L3~L4)まで包膜腔に通される。髄腔内製剤は、賦形剤として水及び生理食塩水を最も一般的に使用するが、EDTA及び脂質も同様に使用されている。
【0462】
組成物は、当技術分野で公知の医療デバイスを用いて投与することができる。例えば、本発明の薬学的組成物は、例えば、予め充填されたシリンジ又は自己注射器を含む、皮下注射針による注射によって投与することができる。
【0463】
本発明の薬学的組成物はまた、無針皮下注射デバイスを用いて投与され得、米国特許第6,620,135号、同第6,096,002号、同第5,399,163号、同第5,383,851号、同第5,312,335号、同第5,064,413号、同第4,941,880号、同第4,790,824号、又は同第4,596,556号に開示されている装置などが挙げられる。
【0464】
あるいは、薬学的組成物を、全身的ではなく局所的に、例えば、所望の標的部位への直接注射を介して、しばしばデポー剤又は徐放性製剤で投与し得る。更に、標的化薬物送達系において、例えば、組織特異的抗体でコーティングされたリポソームにおいて、例えば、脳を標的化する組成物を投与し得る。リポソームは、所望の組織を標的とし、それによって選択的に取り込まれる。
【0465】
投与レジメンは、治療組成物の血清又は組織代謝回転速度、症状のレベル、及び生物学的マトリックス中の標的細胞の接近可能性を含むいくつかの要因に依存する。好ましくは、投与レジメンは、同時に望ましくない副作用を最小限に抑えながら、標的疾患状態の改善をもたらすのに十分な治療組成物を送達する。したがって、送達される生物製剤の量は、特定の治療組成物及び治療される状態の重症度に部分的に依存する。
【0466】
適切な用量の決定は、例えば、治療に影響を及ぼすことが当該分野で公知であるか又は推測されるパラメータ又は因子を使用して、臨床医によって行われる。概して、用量は、最適用量よりもいくらか少ない量で開始し、その後、任意の負の副作用に対して所望の又は最適な効果が達成されるまで、少量ずつ増加させる。重要な診断尺度としては、例えば炎症の症状の尺度、又は産生される炎症性サイトカインのレベルが挙げられる。概して、使用される生物製剤は、治療の標的とされる動物と同じ種に由来し、それによって試薬に対する任意の免疫応答を最小化することが望ましい。
【0467】
本明細書中で使用される場合、用語「治療有効量」、「治療有効用量」及び「有効量」とは、単独で又は更なる治療剤と組み合わせて細胞、組織又は対象に投与された場合に、疾患若しくは状態の1つ以上の症状又はこのような疾患若しくは状態の進行において測定可能な改善を引き起こすのに有効である、本核酸分子、変異体タンパク質/ポリペプチド及び/又はモジュレーターの量をいう。治療有効用量は更に、症状の少なくとも部分的な改善、例えば、関連する医学的状態の治療、治癒、予防若しくは改善、又はそのような状態の治療、治癒、予防若しくは改善の速度の増加をもたらすのに十分な薬剤の量を指す。単独で投与される個々の活性成分に適用される場合、治療有効用量は、その成分単独を指す。組み合わせに適用される場合、治療有効用量は、組み合わせて、連続して、又は同時に投与されるかどうかにかかわらず、治療効果をもたらす活性成分の組み合わせた量を指す。治療剤の有効量は、診断尺度又はパラメータの少なくとも10%、通常、少なくとも20%、好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも40%、最も好ましくは少なくとも50%の改善をもたらす。有効量はまた、疾患重症度を評価するために主観的尺度が使用される場合に、主観的尺度の改善をもたらし得る。本薬剤/組成物は、対象における状態の症状の発症若しくは改善、又は神経病理、例えば運動ニューロン疾患に関連する細胞病理の矯正などの所望の生物学的転帰の達成を予防又は遅延することができる。
【0468】
例えば、アンチセンスRNA又はiRNAは、nNOS遺伝子又はnNOS mRNA中の配列に相補的であり、それにハイブリダイズし、その発現を減少させることができる、適切な担体中のRNA分子として送達され得る。典型的には、アンチセンスは、その安定性を増加させるために化学的に修飾される。いくつかの実施形態では、化学修飾は、オリゴヌクレオチドの骨格の修飾である。いくつかの実施形態では、化学修飾は、オリゴヌクレオチドの糖の修飾である。いくつかの実施形態では、化学修飾は、オリゴヌクレオチドの核酸塩基の修飾である。いくつかの実施形態では、化学修飾は、オリゴヌクレオチドの細胞内安定性を増加させる。いくつかの実施形態では、化学修飾は、例えば、プロテアーゼに対する耐性を増加させることによって、インビボでのオリゴヌクレオチドの安定性を増加させる。いくつかの実施形態では、化学修飾は、オリゴヌクレオチドが細胞に侵入する能力を増加させる。いくつかの実施形態では、化学修飾は、標的RNAに結合する能力を改善する。いくつかの実施形態では、化学修飾は、オリゴヌクレオチドの半減期を増加させるか、又は別の関連する薬物動態特性を改善する。いくつかの実施形態では、化学修飾は、オリゴヌクレオチドの3’末端からのポリメラーゼ伸長を阻害する。いくつかの実施形態では、化学修飾は、ポリメラーゼによるオリゴヌクレオチドの認識を阻害する。いくつかの実施形態では、化学修飾は、二本鎖誘発分解を阻害する。いくつかの実施形態では、化学修飾は、RISC媒介性分解を阻害する。いくつかの実施形態では、化学修飾は、RISC媒介性分解又は任意の並行核酸分解経路を阻害する。
【0469】
特定の実施形態では、連続したヌクレオチド塩基は、リン酸-リボース骨格、リン酸-デオキシリボース骨格、ホスホロチオエート-デオキシリボース骨格、2’-O-メチル-ホスホロチオエート骨格、ホスホロジアミデートモルホリノ骨格、ペプチド骨格、2-メトキシエチルホスホロチオエート骨格、交互ロックド核酸骨格、拘束エチル骨格、及びホスホロチオエート骨格、N3’-P5’ホスホロアミデート、2’-デオキシ2’-フルオロ-β-dアラビノ核酸、シクロヘキセン核酸骨格、トリシクロDNA(tcDNA)核酸骨格、リガンド結合アンチセンス、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される骨格によって連結される。
【0470】
本発明のいくつかの実施形態の組成物は、必要に応じて、有効成分を含有する1つ以上の単位剤形を含有し得る、FDA承認キットなどのパック又はディスペンサー装置で提供され得る。パックは、例えば、ブリスターパックなどの金属箔又はプラスチック箔を含み得る。パック又はディスペンサー装置には、投与のための説明書が添付され得る。パック又はディスペンサーはまた、医薬品の製造、使用又は販売を規制する政府機関によって規定された形態で容器に付随する通知によって収容され得、この通知は、組成物の形態又はヒト若しくは動物への投与の機関による承認を反映する。そのような通知は、例えば、処方薬について米国食品医薬品局によって承認されたラベルのもの、又は承認された製品挿入物のものであってもよい。
【0471】
例示的な組成物:
本明細書において「製剤」とも呼ばれる薬学的組成物は、薬学的に許容される担体及び少なくとも1つの活性剤から構成される。活性剤は、各々の実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載のように、小分子、アミノ酸ベースの化合物(ペプチド、タンパク質、抗体若しくは抗体断片)又は核酸ベースの化合物(アンチセンスを含むRNA、及びiRNA、及びDNA)であり得る。
【0472】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、各々の実施形態及びそれらの任意の組み合わせのいずれかにおいて本明細書に記載されているnNOS活性を低下させる治療活性剤と、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物であって、組成物及び治療活性剤が、対象への組成物の投与時に、他のNOSアイソフォームと比較してnNOS活性の低下が選択的又は優先的にもたらされるように選択される、薬学的組成物が提供される。
【0473】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、各々の実施形態及びそれらの任意の組み合わせのいずれかにおいて本明細書に記載のnNOS活性を低下させる治療活性剤と、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物であって、組成物及び治療活性剤が、対象への組成物の投与時に、他の組織と比較して対象の神経細胞又は神経組織において選択的又は優先的にnNOS活性の低下がもたらされるように選択される、薬学的組成物が提供される。
【0474】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、各々の実施形態及びそれらの任意の組み合わせのいずれかにおいて本明細書に記載のnNOS活性を低下させる治療活性剤と、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物であって、組成物及び治療活性剤は、対象への組成物の投与時に、他の組織と比較して対象の末梢又は中枢神経系において選択的又は優先的にnNOS活性の低下がもたらされるように選択される、薬学的組成物が提供される。
【0475】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、各々の実施形態及びそれらの任意の組み合わせのいずれかにおいて本明細書に記載のnNOS活性を低下させる治療活性剤と、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物であって、組成物及び治療活性剤が、対象への組成物の投与時に、他の組織と比較して対象のCNS(例えば、脳)において選択的又は優先的にnNOS活性の低下がもたらされるように選択される、薬学的組成物が提供される。
【0476】
NOは体内で産生され、多くの生理学的プロセスに関与するため、所望の組織(例えば、神経組織、脳など)において選択的にNOの量を減少させることが望ましい。これは、例えば、脳内のNOを減少させるために選択的である活性剤、及び/又はニューロンNOシンターゼに特異的/選択的であるNOシンターゼの阻害剤を使用することによって行うことができる。ニューロンNOシンターゼ阻害剤は、そのニューロンNOシンターゼ酵素に特異的な小分子、酵素のmRNAに特異的なアンチセンス及びiRNA、これらのアンチセンス及びiRNAを発現することができるDNA、又はニューロンNOシンターゼの発現を選択的に減少させるための組み合わせ系、例えばCRISPR CASであり得る。このような薬剤は、本明細書中上記に記載される。
【0477】
代替として、又は組み合わせて、神経組織(例えば、脳)におけるNO低減の選択性は、神経組織(例えば、CNS)に対して選択的に送達される担体、又は神経組織(例えば、CNS)への送達を標的とする要素を有する送達システム(身体よりも神経組織又はCNSにより多く送達する)の特性によって引き起こされ得る。選択性が送達/標的化システムによる場合、送達(及び以下に説明される担体)が神経組織(例えば、CNS)選択性を与えるものであるため、活性剤(例えば、非選択的NOシンターゼ阻害剤)はニューロン特異的である必要はない。
【0478】
あるいは、又は組み合わせて、神経組織(例えば、CNS、脳)に対する選択性は、それが所望の組織(例えば、脳)に局所的に投与される投与様式(特に、核酸に基づく薬剤の投与に関連する)によって示される。
【0479】
NOの低減における脳選択性は、以下の機構のうちの1つによって行うことができる:
本明細書に記載のような、遺伝子/mRNAに対して選択的な薬剤(eNOS及びiNOS遺伝子に対して活性ではない)を使用することによるnNOSの発現の減少;
本明細書に記載のような、iNOS及びeNOSを阻害しないnNOSの選択的阻害剤;
nNOSに対して選択的ではないが、全てのNOS[全てのNOS(eNOS、iNOS、nNOS)の一般的な阻害剤]を還元することができる還元剤、又は本明細書に記載のような、CNSにそれらのカーゴを選択的に送達するように標的化された送達系(担体など)によって送達されるeNOS(NOS3)、iNOS(NOS2)、nNOS(NOS1)遺伝子の発現を減少させる薬剤、を使用すること;及び/又は
nNOSに対して選択的でなくてもよいが、脳内投与によって、又は本明細書に記載のような脳標的送達ビヒクルによって脳に対して選択的に送達される薬剤を使用すること。
【0480】
特定の実施形態によれば、組成物は、nNOS特異的(nNOS選択的)である活性剤を含む。
【0481】
特定の実施形態によれば、投与様式は、CNSにおけるnNOS活性の低下を達成する。
【0482】
特定の実施形態によれば、組成物の投与様式は、局所投与を含む。
【0483】
nNOSの活性又はその発現レベル/局在化を決定する方法は、当技術分野で周知であり、本明細書を通して本明細書に記載されている。これらの方法は、nNOS又は脳発現NOSに対する方法の選択性を検証する。
【0484】
特定の実施形態によれば、薬剤は、選択的nNOS阻害剤である。
【0485】
nNOS阻害剤は、他の酵素、特に他の一酸化窒素シンターゼ酵素と比較して、少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%高い程度までnNOS活性を低下させる場合に、選択的であると考えられる。
【0486】
nNOS阻害剤は、nNOSに対するその解離定数(Ki)が、他のNOSアイソフォームに対するそのKiと比較して、少なくとも10倍、又は少なくとも100倍、又は少なくとも1,000倍低い場合に、選択的であると考えられる。
【0487】
nNOS阻害剤は、nNOSに対するそのIC50が、他のNOSアイソフォームに対するそのIC50と比較して、少なくとも2倍、又は少なくとも5倍、又は少なくとも10倍低い場合に、選択的であると考えられる。
【0488】
特定の実施形態によれば、nNOS低減組成物は、担体中に、脳内の生理学的に利用可能なNOの量を減少させることができる1つ以上の活性薬剤を含む、任意の薬学的組成物を指す。「ニューロン」特異性は、本明細書に記載のように、nNOSを特異的に減少させ、他のいかなるNOS酵素も実質的に減少させない薬剤の特性、又は(本明細書に説明される送達系又は投与様式のいずれかによって)一般的なNO減少剤をニューロンに輸送する担体の特性であり得る。
【0489】
理論に束縛されるものではないが、nNOS活性/発現の上方制御(iNOS及びeNOSとは対照的に)は、疾患の発症又は進行に関連することが示唆される。したがって、必ずしもnNOSに対して選択的ではない阻害剤による治療は、依然として選択的阻害を達成するであろう。
【0490】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、薬学的組成物は、各々の実施形態のいずれかにおける本明細書に記載の活性剤を、本明細書に記載の所望の組織(例えば、本明細書に記載の神経組織、例えば脳)又はニューロン細胞において、好ましくは本明細書に記載の選択的な様式で、生理学的に利用可能な一酸化窒素の量を減少させる有効量で含むものである。
【0491】
これらの実施形態による薬学的組成物は、経口、頬粘膜、舌下、非経口、経鼻、経皮、又は組織内投与のために、特に、長期間にわたる反復投与又は連続、延長若しくは徐放投与又は標的化された緩徐及び調節送達のために設計され得る。
【0492】
これらの実施形態による薬学的組成物は、高い全身バイオアベイラビリティ及び任意選択で徐放を提供するために設計することができる。
【0493】
これらの実施形態による薬学的組成物は、治療有効濃度の活性薬剤を長期間にわたって放出する反復投与又は持続徐放投与、又は標的化された緩徐送達及び調節送達のために適用することができる。製剤は、皮下又は筋肉内注射のための安定な水溶液、リポソーム、エマルジョン並びにナノ及びマイクロ粒子分散液を含む。製剤は、薬剤の局所送達及び経皮送達のための軟膏、クリーム及びゲルの形態であり得る。
【0494】
本明細書で使用される場合、持続放出又は制御放出は、インプラント又は注射SC、IM又は組織から、少なくとも48時間、血液中又は指定された組織(例えば、本明細書に記載の神経組織)中に活性薬剤の活性レベルを保持することを指す。
【0495】
例示的な実施形態では、持続放出又は制御放出は、経口又は鼻腔内投与後少なくとも2時間、活性薬剤の活性レベルを血液中に保持することを指す。
【0496】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、各々の実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載のようなnNOSの活性を選択的に低下させる活性薬剤を含む薬学的組成物が提供される。
【0497】
本発明の例示的な実施形態によれば、活性剤は、本明細書に記載のようなJI-8又はその構造類似薬である。
【0498】
本発明の例示的な実施形態によれば、活性剤は、7-NI、又は各々の実施形態のいずれかにおける本明細書に記載の式Iによって表される化合物、及びそれらの任意の組み合わせである。
【0499】
7-NIは、水不溶性であり、生体膜を通過する能力が低い。その標的部位は、神経系、例えば脳における受容体である。したがって、7-NIを所望の神経組織(例えば、脳、末梢及び/又は中枢神経系)に送達することが必要とされる。
【0500】
いくつかの実施形態によれば、これは、IV注射を介して、又は鼻から脳への鼻腔スプレーによって送達されるナノ粒子を使用して、可能となる。
【0501】
加えて、本明細書に記載の製剤は、使用される送達系のタイプに応じて、長期間にわたって高い血中レベルを可能にしながら、7-NIを早期分解又は代謝から保護することができる。
【0502】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載の薬学的組成物は、各々の実施形態のいずれか及びそれらの任意の組み合わせにおける本明細書に記載の活性薬剤、好ましくは低分子量nNOS阻害剤(例えば、本明細書に記載の7-NI若しくは式Iの化合物、又は本明細書に記載のJI-8若しくはその構造類似薬)などの低分子量薬剤を含む。
【0503】
いくつかの実施形態によれば、活性薬剤は、7-NI又は本明細書に記載の式Iの化合物である。
【0504】
プレナノ分散脂質(PNL)組成物:
いくつかの実施形態によれば、薬学的組成物又は製剤は、水溶液と接触するとナノ分散液を形成する担体プレナノ分散担体を含む。例示的な実施形態では、組成物又は製剤は、プレナノ分散脂質(PNL)組成物又は製剤である。例示的な実施形態では、組成物は、プレナノ分散脂質製剤から形成されたナノ粒子が分散している水性担体を含む。
【0505】
そのような製剤は、経口摂取後の活性薬剤(例えば、7-NI)のバイオアベイラビリティを増加させる。
【0506】
PNL製剤は、典型的には、少なくとも1つの脂質、少なくとも1つの界面活性剤、水混和性溶媒(例えば、食用溶媒)の混合物を含む担体を含み、任意選択で、乳化剤、分散剤及び他の成分を更に含む。界面活性剤、脂質、及び溶媒の混合物は、水性媒体(例えば、生理学的媒体)又は水溶液と接触するとナノ粒子を形成する。
【0507】
特定の実施形態によれば、PNL製剤の担体は、GRASとみなされる成分を含む。
【0508】
PNL製剤に関する実施形態に関連して使用するのに適した例示的な脂質としては、限定されないが、脂肪酸、脂肪アルコール、トリグリセリド、硬化植物油、ミグリオール、植物油及びワックスのうちの1つ以上などの固体及び液体脂質が挙げられる。具体例は、以下の実施例のセクションに列挙されている。
【0509】
PNL製剤に関する実施形態に関連して使用するのに適した例示的な界面活性剤としては、限定されないが、親水性若しくは両親媒性の界面活性剤又は分散剤、例えば、限定されないが、Tween(登録商標)ファミリーの界面活性剤、Span(登録商標)ファミリーの界面活性剤、PEG-脂質及びPEG-水素化ヒマシ油のうちの1つ以上が挙げられる。具体例は、以下の実施例のセクションに列挙されている。
【0510】
PNL製剤に関する実施形態の文脈において使用するのに適した例示的な水不混和性溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、乳酸エチル、酢酸エチル、及びプロピレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。具体例は、以下の実施例のセクションに列挙されている。
【0511】
いくつかの実施形態では、PNL製剤中の担体は、活性剤(例えば、7-NI又は式Iの化合物)が可溶であり、水性媒体と接触すると、例えば、200 nm以下、好ましくは100 nm未満、好ましくは50 nm未満の平均サイズ(例えば、直径)を有するナノ粒子に自発的に分散する透明な液体である。
【0512】
プロナノ分散脂質(PNL)ベースの製剤は、例えば、嚥下時に液体内容物が胃液と相互作用して、GI管表面を通過して血流に入ることを可能にするナノ分散剤を形成する軟ゼラチンカプセルに充填された液体製剤として、それ自体経口投与に適している。
【0513】
PNL製剤は、活性薬剤(例えば、本明細書に記載のような式Iの化合物の7-NI)の可溶化剤及び生体膜を通過するためのナノ分散として機能する。粒径が小さいほど、生物学的利用能は改善される。
【0514】
本明細書に記載のような経口投与のための薬学的組成物の他の形態も、PNL製剤のために企図される。
【0515】
PNL製剤は、液体形態であってもよく、コップ一杯の水又は清涼飲料に分散させて飲料として摂取することができる。
【0516】
PNL製剤は、プロナノ分散混合物が、注射、経口、経鼻投与(例えば、経鼻スプレーとして)又は眼科投与(例えば、点眼剤として)のためのナノディスパージョン(水溶液中に分散されたナノ粒子)を形成する水溶液を含むことができる。
【0517】
不活性成分(担体を構成する)の選択は、送達のタイプ及び投与様式に対する最終製剤の安全性を考慮すべきである。
【0518】
注射用PNL組成物は、皮下(subcutaneous、SC)、筋肉内(intramuscular、IM)又は静脈内(intravenous、IV)投与のために承認されている成分を含むべきであり、局所又は全身毒性又は刺激を引き起こすべきではない。同様に、点眼剤及び鼻スプレーのための組成物は、特定の成分に対するこれらの組織表面の感受性を考慮すべきである。
【0519】
本明細書に記載のPNL製剤は、治療される対象に有効用量を提供する経口、眼、鼻、経皮、皮下、及び頬粘膜送達のために使用することができる。
【0520】
水性媒体中の分散液は、投与の直前に調製され得るか、又は予め調製され得る。
【0521】
いくつかの実施形態によれば、各々の実施形態のいずれかにおける本明細書に記載のPNL組成物又は製剤は、活性薬剤として、本明細書に記載の7-NI若しくは式Iの化合物、又はその薬学的に許容可能な塩、例えば、本明細書に記載の7-NI脂質塩を含む。
【0522】
制御/持続放出組成物:
いくつかの実施形態によれば、薬学的組成物又は製剤は、活性薬剤の制御放出又は持続放出のために構成されている。
【0523】
これらの実施形態のいくつかによれば、そのような製剤は、活性薬剤(例えば、本明細書に記載の7-NI又は式Iの化合物若しくはその塩)の生物学的利用能を、制御された速度で、例えば数日から数ヶ月の期間にわたって周囲組織に増加させる注射用及び埋め込み用の製剤である。
【0524】
注射用の制御放出製剤及び持続放出製剤としては、ポリマー又は液体ベースのナノ粒子、マイクロ粒子、挿入物、注射用無水ペースト状製剤、体内でゲル化して活性薬剤(例えば、7-NI又は式Iの化合物)を1日~数週間又は数ヶ月の期間にわたって放出するインサイチューインプラント(例えば、デポー)を形成するポリマー液体製剤が挙げられ得る。いくつかの実施形態によれば、そのような製剤は、生分解性ポリマーの異なる形態及び構造から調製することができる。例示的な生分解性ポリマーとしては、ヒトにおいて既に使用されているものが挙げられ、ラクチド、グリコリド、カプロラクトン及びエチレン/プロピレンカーボネートから作製されるポリエステル、並びにセバシン酸ベースのポリ無水物が挙げられるが、これらに限定されない。ゼラチン、コラーゲン、ヒアルロン酸、酸化セルロース又はアミロース、キトサンなどを含むがこれらに限定されない、タンパク質及び多糖ベースの天然ポリマー担体も企図される。
【0525】
例示的な実施形態では、くさび又はロッド又は繊維の形態のポリマーインプラント(例えば、デポー)は、トロカール又は16~21G針を使用して体内に挿入される。インプラントは、ポリマーと活性剤(例えば、7-NI又は本明細書に記載の式Iの化合物)との均質な溶融混合物を形成することによって調製され、これは体内への挿入に適した所望の形態に成形される。あるいは、デバイスは、ポリマー-活性剤均質粉末の圧縮成形によって調製される。
【0526】
高分子注射用徐放性組成物は、例えば、筋肉内又は皮下投与のために構成することができる。これらの組成物は、数日から数ヶ月の期間にわたって薬物を絶えず放出する。非経口制御薬物送達のためのインサイチュデポー形成系は、広範囲の粘度を有する微粒子、ポリマー液体又はペーストの水性分散液の形態であり得る。このような系は、通常、溶媒/共溶媒系に溶解又は分散された生分解性担体を含有するが、薬物は、送達系の液相に分散又は溶解される。皮下又は筋肉内注射すると、固体デポーが注射部位に形成される。このようなシステムの投与は、移植のためにしばしば必要とされる外科的手順よりもはるかに侵襲性が低く、費用がかからない。
【0527】
活性剤の持続放出のための例示的な注射用製剤は、以下の実施例の節において設計され、例示されている。
【0528】
例示的な実施形態によれば、持続放出製剤は、例えば、米国特許出願公開第2004/0161464号及び同第2004/0161464号(Domb)に記載されているように、担体としての使用に適合されたポリエステル及びポリ無水物を含有するリシノール酸及びヒマシ油から作製される。生分解性担体は、リシノール酸オリゴエステルと、37℃未満の温度で液体又はペーストである少なくとも1つのカルボン酸及び少なくとも1つのヒドロキシ基又はカルボン酸基を有する脂肪族分子とから合成される。例示的な実施形態では、組成物は、室温でペースト状かつ注射可能である、6:4~8:2 w/w比のリシノール酸及びセバシン酸のコポリマーから作製される。これらのポリマーは、水性媒体に浸漬されるか、又は組織に注入されると、それらの粘度を増加させる。
【0529】
PLGAから調製された注射用マイクロ粒子及びナノ粒子もまた、制御/持続放出のために企図される。マイクロスフェア及びナノスフェアは、ポリマーを活性薬剤(例えば、7-NI又は式Iの化合物)とともにクロロホルム、DMSOなどの有機溶媒に溶解し、界面活性剤を含有する貧溶媒を添加して、ポリマー-薬物溶液の液滴を形成し、その後、溶媒蒸発(貧溶媒として水の場合)又は液滴から有機貧溶媒への拡散によってマイクロスフェア及びナノスフェアを形成することによって調製することができる。粒子のサイズは、ポリマー-薬物溶液の濃度、抗溶媒比、界面活性剤含量、溶媒蒸発又は浸出及び調製条件(温度、使用される溶媒、混合速度及び蒸発助剤を含む)によって制御され得る。
【0530】
粒状組成物
いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載の薬学的組成物は、注射(例えば、静脈内投与による)のために製剤化され、活性剤(7-NI又は式Iの化合物若しくはその塩)が捕捉又は封入されている脂質又はポリマーナノ粒子又はリポソームを含む。
【0531】
いくつかの実施形態によれば、活性薬剤は、生分解性ポリマー又は脂質担体に組み込まれる。
【0532】
いくつかの実施形態によれば、担体は、マイクロ粒子又はナノ粒子の形態である。
【0533】
いくつかの実施形態によれば、マイクロ又はナノ粒子組成物は、経口投与、経口吸入、鼻腔スプレー、IV、IM若しくはSC注射、又は経皮送達を介した投与のために製剤化される。本発明のいくつかの実施形態によれば、投与は、嗅覚組織に送達されるナノ粒子を使用して脳に対して行われる。
【0534】
これらの実施形態の文脈における使用に適した例示的な生分解性ポリマーとしては、ラクチドホモ及びグリコリド又はカプロラクトンとのコポリマー、ポリカプロラクトン及びそのコポリマー並びに水中に分散された注射用粒子の形態、注射用ポリマーペーストの形態又は挿入物の形態の他の生分解性ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。リポソーム型又はリポスフェア型の分散液も企図される。
【0535】
カプセル化された活性薬剤は、血流から活性薬剤を排除するRAS能力を低下させるPEG鎖などの流体力学的表面を特徴とし得る。
【0536】
例示的な実施形態では、活性薬剤は、R2~R5の1つ以上が本明細書で定義されるポリ(アルキレングリコール)部分である式Iの化合物である。
【0537】
ナノ粒子及びマイクロ粒子を作製する方法は、ポリマー溶液中の活性剤(例えば、7-NI又は式Iの化合物若しくはその塩)の溶液又は分散液の沈殿を含み、その沈殿は、制御された条件下で貧溶媒で行い、活性剤を捕捉したナノ粒子及びマイクロ粒子を形成させる。例えば、ジクロロメタンに溶解したPLGA 75:25の溶液を、エタノール中の活性剤(例えば、7-NI又は式Iの化合物若しくはその塩)溶液と混合して、ポリマー:7NIを100:1~65:35 w/w比で含有する透明な溶液を形成する。この溶液を、貧溶媒として界面活性剤を含有する撹拌ヘプタン中に滴下して添加し、沈殿時に粒子を形成する。あるいは、ポリマー/活性剤溶液を、ポリビニルアルコール又はTween(登録商標)及び/若しくはSpan(登録商標)界面活性剤の混合物などの界面活性剤を含有する撹拌水溶液に添加し、溶媒をゆっくり蒸発させると、ナノ粒子及びマイクロ粒子が形成される。粒子のサイズは制御され、溶媒:貧溶媒の比、溶液中のポリマー及び7NIの濃度、混合速度及び混合のタイプ(オーバーヘッド、スターラー、超音波)、温度などによって調整することができる。
【0538】
7-ニトロインダゾール塩製剤:
式Iの化合物の薬学的に許容される塩(例えば、7-ニトロインダゾールの塩)を含む薬学的組成物も企図される。7-ニトロインダゾールは、長期間服用する必要がある水不溶性分子である。そのような組成物は、反復投与において、又は長期間にわたる連続延長(徐放)投与において、又は標的化された緩徐送達及び調節送達において使用することができる。製剤は、経口、経鼻、短期及び長期放出注射用製剤並びに経皮及び局所製剤後の7-ニトロインダゾールの生物学的利用能を増加させることができる。
【0539】
7-ニトロインダゾールのインダゾール部分は、アゾールのN-Hからプロトンを脱離させて、正に荷電した部分、例えば二価及び三価金属イオン、アンモニウム及びホスホニウムカチオン対応物など、と塩を形成することによって塩を形成する傾向がある。加えて、芳香環の一部である塩基性アミンは、HCl、リン酸塩、H2SO4及び有機酸を含むプロトン含有分子と塩を形成する。これらの塩は、非塩7-ニトロインダゾールとは異なる特性を有し、これには、溶解性、熱的特性及び安定性、化学的安定性、製剤化の容易さ、制御放出、生体膜の通過及び生体分布が含まれる。
【0540】
例示的な塩及びそれを含有する組成物は、以下の実施例の節に記載されている。
【0541】
これらの実施形態による塩は、本明細書に記載の薬学的組成物又は製剤のいずれかに含まれ得る。
【0542】
経口又は経鼻投与のための薬学的組成物:
いくつかの実施形態では、経口又は経鼻剤形のために、活性薬剤(例えば、7-ニトロインダゾール又は式Iの化合物若しくはその塩)は、GI吸収を可能にするためにナノ粒子として溶解又は分散され得る。例示的な実施形態では、活性剤(例えば、7-ニトロインダゾール又は式Iの化合物若しくはその塩)の無水予備濃縮溶液は、界面活性剤、脂質及び食用溶媒の特定の混合物中で形成され、水性媒体、すなわち胃又は腸の流体への添加時にナノ粒子を自発的に形成し、PNL組成物/製剤に関連して本明細書に記載のように、高収率で吸収されて活性剤の経口バイオアベイラビリティを数倍増加させる。これらの脂質ベースの製剤は、軟ゼラチンカプセル中で送達され得るか、又は多孔性シリカ若しくは別の担体中に吸収され得、一般的な錠剤組成物中に組み込まれ得、経口摂取時にGI液に放出されてナノ粒子を形成してGI管を通して血流に吸収される錠剤に圧縮され得る。これらの脂質ベースの製剤は、例えば、噴霧可能な製剤として経鼻送達することができる。
【0543】
これらの実施形態のいくつかによれば、本明細書に記載のような経口投与のための薬学的組成物は、少なくとも25%の生物学的利用能を可能にする剤形で製剤化される。例示的な実施形態では、経口投与される組成物は、1日当たり10~1000mg、又は200~1000mg、又は200~600mg(これらの間の任意の中間値及び部分範囲を含む)、更には2,000mgまでの用量で使用され、これは、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回又はそれ以上の単位剤形であり得る。1日当たり10~100mgの低用量では、1~4週間の持続放出経口製剤を設計することができる。
【0544】
低用量も鼻スプレー送達において企図される。
【0545】
例示的な実施形態例示的な実施形態では、特定の血液レベル又は脳組織濃度を達成するために、各用量が1~10mgを含有し得る1日当たり1~10回(例えば、8回)のスプレー用量を適用することができる。
【0546】
例示的な実施形態では、各スプレーは、1~10mgの活性薬剤を含有し得る50~200マイクロリットルである。例示的な実施形態では、100mgまでの1日用量が企図される。
【0547】
注射用薬学的組成物:
注射用ポリマー送達システムは、好ましくは、1日用量及び製剤に応じて、数週間から数ヶ月の期間にわたって薬物を送達するように構成されている。例示的な注射用製剤は、リスペリドン及びLHRH類似体などの薬物の長期送達のために臨床で使用されているポリ(ラクチド-グリコリド)コポリマーに基づく。
【0548】
活性剤の持続放出を提供する注射用の更なる例示的な製剤としては、本明細書に記載の持続放出/制御放出組成物又は微粒子組成物/製剤が挙げられる。
【0549】
持続放出注射用組成物の用量は、典型的には、送達システムが活性剤を送達しようとする日数を乗じた1日用量の関数である。望ましい1日用量未満であり得る活性剤の維持用量もまた、これらの実施形態の文脈において企図される。この維持用量は、例えば、本明細書に記載のような低い1日用量で、経口用量又は経鼻用量又は経皮パッチと組み合わせることができる。
【0550】
頬粘膜投与のための薬学的組成物:
いくつかの実施形態によれば、活性剤(例えば、7-ニトロインダゾール又は式Iの化合物若しくはその塩)の頬粘膜送達は、頬粘膜送達に適した担体、例えば、架橋ポリアクリル酸、カルボポール940若しくはカルボポール970、又は/及びヒドロキシプロピルセルロース(hydroxypropyl cellulose、HPC)若しくはヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxypropyl methyl cellulose、HPMC)に吸収された、各々の実施形態のいずれかにおける本明細書に記載のPNL製剤を使用して実施することができる。
【0551】
例示的な実施形態では、活性剤(例えば、7-ニトロインダゾール又は式Iの化合物若しくはその塩)及びPNL吸収固体は、10:0~6:4のカルボポール対HPCのw/w比で混合され、直径13mmの錠剤に圧縮される。製剤中のカルボポールが多いほど、頬粘膜への接着が強くなる。
【0552】
矯味矯臭剤、異なるポリマー組成物及び着色剤などのバッカル錠において一般的に使用される他の成分を、粘膜付着性錠剤に圧縮する前に粉末混合物に添加することができる。例示的な製剤では、7-NI(10mg)を、1:1:0.5:0.2 w/wのTween(登録商標)20、Span(登録商標)80、ゴマ油及びChremophor 40Rの透明溶液200マイクロリットルに溶解する。この溶液を400mgのカルボポール940に吸収させ、100mgのHPCと混合する。乾燥粉末を、2トンの圧力を用いて13mmの錠剤に圧縮する。錠剤はヒトの頬粘膜によく付着し、4時間その場に留まり、時間とともに侵食され、除去され、7INを頬粘膜に放出する。
【0553】
頬粘膜送達は、典型的には、頬粘膜を通した浸透によって用量制限され、いくつかの実施形態では、投与は、1日当たり1~100mgの低用量である。
【0554】
経皮投与のための薬学的組成物
経皮製剤は、7-NIを含むほとんどの分子について皮膚浸透が低いため、通常、活性剤の低用量送達に適用される。大きな表面パッチからの成人又は子供のための維持用量が適切である場合、そのようなパッチは、一般的な経皮パッチ上に適用されるペースト状製剤中に活性剤(例えば、7-ニトロインダゾール又は式Iの化合物若しくはその塩)を埋め込むことによって調製することができる。活性剤の皮膚への浸透を促進するために、アゾン、PEG及び他の薬剤などの促進剤を添加してもよい。
【0555】
経皮送達については、組成物の局所刺激に注意を払うべきである。許容可能な用量及び製剤は、活性薬剤の送達のために適用される皮膚表面積が1時間当たりの所望の用量に調整されるように、可能な限り高い用量に達する目的で使用される。
【0556】
いくつかの実施形態では、経皮パッチは、1週間にわたって皮膚に適用され得、所望であれば、毎週繰り返し交換され得る。あるいは、経皮パッチは、毎日、又は2、3若しくは4日毎に対象の皮膚に適用される。
【0557】
脳選択的送達システムによるnNOS低減剤の送達
本発明のいくつかの実施形態によれば、各々の実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載の核酸ベースのnNOS阻害剤(例えば、プロモーター及び/又は遺伝子及び/又は他の核酸ベースの材料)を含む薬学的組成物が提供される。
【0558】
このようなnNOS阻害剤の送達は、直接送達又は全身送達のいずれかによって、CNSへの送達に適した任意の送達系によって行うことができる。
【0559】
そのようなnNOS阻害剤のCNSへの非限定的な送達系又は送達ビヒクルは、典型的には200nm未満のサイズを有するナノ粒子である。これらは、脂質ベースのナノ粒子、ポリマーナノ粒子、デンドリマー及び無機ナノ粒子を含み得、これらのうちのいくつかは、BBBを通過するように調整され得る。
【0560】
別の投与方法は、BBBを通過することもできるリポソームの使用によるものである。
【0561】
好ましくは、BBBを通過するナノ粒子取り込みを増強するために輸送体又は受容体のリガンドを使用することによって、能動的に標的化された送達を使用することが可能である。このアプローチのための好ましい経路は、受容体(又は輸送体)媒介トランスサイトーシスであり、それによって、カーゴ(例えば、ナノ粒子)が、脳ECにおける頂端面と基底面との間を輸送する。例えば、低密度リポタンパク質は、受容体媒介プロセスによってECを通してトランスサイトーシスを受け、リソソーム区画を迂回し、脳側の基底外側表面で放出される。
【0562】
脳送達のための別のビヒクルとしては、細胞によって分泌される小さな細胞外小胞であるエキソソームが挙げられる。他の合成ナノ粒子に対するエキソソームの主な利点は、それらの非免疫原性の性質であり、長く安定した循環をもたらす。
【0563】
BBBはアミノ酸への輸送体を含有するため、送達のためにBBBの天然に存在するアルギニン輸送体を使用することは、脳への送達のための単純な実行可能なアプローチであり得る。
【0564】
別のアプローチは、化合物又は電気刺激を使用してBBBを一時的に開き、高濃度の全身投与された配列が脳に到達することを可能にすることである。そのような化合物の例は、セレポート(ブラジキニン類似体)又はレガデノソン(アデノシン受容体アゴニスト)である。
【0565】
浸透を増加させる別の方法は、超音波によるものであり、近年、薬物がBBBを通過することを容易にする魅力的な技術となっている。非侵襲的技術であるマイクロバブル増強診断超音波(MEUS)は、薬物がBBTBを通過するのを効果的に助けた。別のアプローチは、経頭蓋磁気刺激(transcranial magnetic stimulation、TMS)であり、これは、ニューロン活動を刺激し、グルタミン酸放出を増加させ、BBBを横切る薬物送達を促進する。(Xiaowei Dong,Theranostics.2018;8(6):1481-149でレビューされ、その全開示内容が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0566】
所望の送達ビヒクルの投与経路は、更なる放射線ベースの操作(例えば、本質的にBBBに入る粒子を使用する)を伴わない全身投与;BBBを一過性に開くために、様々な操作と併せて(例えば、マイクロバブル増強診断超音波(MEUS)、経頭蓋磁気刺激(TMS)と併せて)化合物を使用する全身投与;経鼻投与であり得る。
【0567】
CNS(例えば、脳)への標的化送達のためのビヒクルはまた、各々の実施形態及びそれらの任意の組み合わせのいずれかにおいて本明細書に記載のようなnNOS活性を低下させる他の薬剤のいずれかを含む薬学的組成物中の担体として利用することができる。
【0568】
CNS(例えば、脳)への直接投与によるnNOS活性を低下させる薬剤の送達
一実施形態により、投与は、各々の実施形態及びそれらの任意の組み合わせのいずれかにおいて本明細書に記載のように、実質への直接注射によるか、又は脳室内若しくは髄腔内(大槽若しくは腰部)経路を介した脳脊髄液への注射による。
【0569】
脳への好ましい局所投与は、脳室内経路を介した脳脊髄液への投与によって行うことができる。別の選択肢は、大槽注射経路への送達であり、これは、脳脊髄液(cerebrospinal fluid、CSF)への送達のための代替方法として最近採用されており、これは、CNS全体にわたる広範な遺伝子送達をもたらす。
【0570】
例示的な使用:
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、nNOS活性を低下させる薬剤として、本明細書の各々の実施形態のいずれかに記載の式Iの化合物又はその塩を含む、本明細書の各々の実施形態及びその任意の組み合わせのいずれかに記載の薬学的組成物が提供される。
【0571】
いくつかの実施形態によれば、薬学的組成物は、本明細書に記載の疾患又は状態のいずれかの治療において使用するためのものである。例としては、限定されるものではないが、本明細書で定義されるASDアルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、統合失調症、依存症、ALS、てんかん、双極性疾患、片頭痛、加えて、Tripathi et al.Redox Biol.2020:101567に記載されているような全ての種類の神経発達障害並びに神経変性疾患が挙げられる。
【0572】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、各々の実施形態のいずれか及びそれらの任意のいずれか及びそれらの任意の組み合わせにおいて本明細書で定義される自閉症スペクトラム障害を治療する方法であって、各々の実施形態のいずれか及びそれらの任意の組み合わせにおいて本明細書で記載される、有効量の、nNOS活性を低下させる活性剤を含む組成物を対象に投与することを含む方法が提供される。
【0573】
いくつかの実施形態によれば、nNOS活性の低下は、本明細書に記載のように、他の組織と比較して、対象のニューロン細胞又は神経組織(例えば、CNS又は脳)において選択的又は優先的である。
【0574】
いくつかの実施形態によれば、nNOS活性の低下は、本明細書に記載のように、nNOSを発現する神経細胞を含む神経組織(CNS、例えば、脳)又は末梢器官におけるものである。
【0575】
いくつかの実施形態によれば、nNOS活性の低下は、本明細書に記載のように、他のNOSアイソフォームと比較して選択的である。
【0576】
いくつかの実施形態によれば、nNOS活性の低下は、本明細書に記載のように、生理学的に利用可能なNOの量が対象の神経細胞において選択的に低下されるように選択的である。
【0577】
いくつかの実施形態によれば、nNOS活性の低下は、本明細書に記載されているように、生理学的に利用可能なNOの量が対象のCNS又は脳において選択的に低下されるように選択的である。
【0578】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、各々の実施形態のいずれか及びそれらの任意の組み合わせにおいて本明細書で定義される自閉症スペクトラム障害の治療を必要とする対象においてその治療を行う方法であって、本明細書に記載の例示的な組成物を含む、各々の実施形態のいずれか及びそれらの任意の組み合わせにおいて本明細書に記載の薬学的組成物の有効量を対象に投与することを含む方法が提供される。
【0579】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、各々の実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載の自閉症スペクトラム障害の治療を必要とする対象において、その治療のために使用するための、本明細書に記載の例示的な組成物を含む、各々の実施形態のいずれか及びそれらの任意の組み合わせにおいて本明細書に記載の薬学的組成物が提供される。
【0580】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、各々の実施形態のいずれか及びそれらの任意のいずれか及びそれらの任意の組み合わせにおいて本明細書で定義される神経由来がんを治療する方法であって、各々の実施形態のいずれか及びそれらの任意の組み合わせにおいて本明細書で記載される、有効量の、nNOS活性を低下させる活性剤を含む組成物を対象に投与することを含む方法が提供される。
【0581】
いくつかの実施形態によれば、nNOS活性の低下は、本明細書に記載のように、他の組織と比較して、対象の各々の神経組織又は各々のニューロン細胞において選択的又は優先的である。
【0582】
いくつかの実施形態によれば、nNOS活性の低下は、本明細書に記載のように、他のNOSアイソフォームと比較して選択的である。
【0583】
いくつかの実施形態によれば、nNOS活性の低下は、本明細書に記載されているように、生理学的に利用可能なNOの量が各々の神経組織又は各々のニューロン細胞において選択的に低下されるように選択的である。
【0584】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、各々の実施形態のいずれか及びそれらの任意の組み合わせにおいて本明細書で定義される神経由来がんの治療を必要とする対象において、その治療をする方法であって、本明細書に記載の例示的な組成物を含む、各々の実施形態のいずれか及びそれらの任意の組み合わせにおいて本明細書に記載の薬学的組成物の有効量を対象に投与することを含む方法が提供される。
【0585】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、各々の実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載の神経由来がんの治療を必要とする対象において、その治療のために使用するための、本明細書に記載の例示的な組成物を含む、各々の実施形態のいずれか及びそれらの任意の組み合わせにおいて本明細書に記載の薬学的組成物が提供される。
【0586】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、神経由来がんは、本明細書で定義される神経芽細胞腫である。
【0587】
これらの実施形態のいずれかの一部によれば、薬学的組成物は、各々の実施形態及びそれらの任意の組み合わせのいずれかにおいて本明細書に記載の徐放性組成物である。
【0588】
これらの実施形態の一部によれば、本明細書に記載の方法及び使用は、少なくとも1日、好ましくは少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも1週間、任意選択で少なくとも2週間、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、及びそれ以上である投与間の時間間隔で、組成物を(例えば、本明細書に記載の注射によって、又は経皮で)反復投与することによって行われる。これらの実施形態のいくつかによれば、これは、各々の実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載の制御持続放出組成物を使用して行うことができる。
【0589】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、対象は哺乳動物、例えばヒトである。
【0590】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、対象は、各々の実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載の疾患又は状態、例えば、ASD又は神経芽細胞腫などの慢性疾患又は状態に罹患している。
【0591】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、対象は、新生児又は乳児であり、例えば、0~10歳である。
【0592】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、対象は青年であり、例えば、10~20 10歳である。
【0593】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部によれば、対象は成人であり、例えば、少なくとも20歳である。
【0594】
動物モデル:
本発明は、S-ニトロソ-N-アセチルペニシラミン(SNAP)の投与が、C57BL/6マウスモデルにおいてNO利用能誘導性ASD様表現型を増加させるNOドナーであるという第2の知見に基づく。
【0595】
ASDの研究は、良好な動物モデルの欠如によって困難であるため、この知見は、WT動物に有効量のNOドナーを投与することによって、実験動物においてASDモデルを作製する方法をもたらす。
【0596】
したがって、本発明の一態様によれば、自閉症スペクトラム障害ASDの実験動物モデルを作製する方法であって、上記動物の脳内のNOレベルを増加させてASD様表現型を生じさせる組成物の有効量を上記実験動物に投与するステップを含む方法が提供される。
【0597】
本明細書中で使用される場合、「ASD様表現型」は、分子及び/又は行動表現型をいう。分子マーカーの例としては、シナプトフィジン、GAD1、PSD-95及びVGATが挙げられるが、これらに限定されない。
【0598】
行動パラメータ及びそれらを試験する方法の例としては、限定されるものではないが、運動活動(オープンフィールド試験、不安様行動も試験する)、社会的行動(3チャンバー社交性試験)、不安様行動(高架式十字迷路)、探索的活動、並びに反復及び制限行動(新奇物体認識)、及び/又は制限行動(ガラス玉覆い隠し試験)が挙げられる。
【0599】
特定の実施形態によれば、動物モデルは哺乳動物である。
【0600】
特定の実施形態によれば、動物は齧歯類、例えば、マウス、ラット又はウサギである。
【0601】
特定の実施形態によれば、マウスは幼若マウス(例えば、6週齢)である。
【0602】
本明細書中で使用される場合、「上記動物の脳におけるNOレベルを増加させる組成物」とは、nNOS活性を増加させ、その分解を防止し、非ASD動物において正常であるレベルを超える神経組織からのNOの枯渇を防止する任意の物質又は身体状態をいう。
【0603】
特定の実施形態によれば、組成物は、脳における異種(外因性)nNOS又はその相同体の発現を増加させるための核酸配列を含む。代替的又は追加的に、核酸剤は、内因性nNOSの発現を増加させるように調節領域の活性を増加させるためのものである。
【0604】
NO供与体の投与は、全身性であってもよいし、本明細書に記載のように脳に直接投与されてもよい。
【0605】
特定の実施形態によれば、投与は、全身性である。
【0606】
特定の実施形態によれば、投与は、上記動物の上記脳に直接行われる。
【0607】
特定の実施形態によれば、組成物は、NO供与体を含む。
【0608】
特定の実施形態によれば、NO供与体は、S-ニトロソ-N-アセチルペニシラミン(SNAP)を含む。
【0609】
他の例示的なNO供与体としては、SNAP、ニトレート、ニトライト、N-ニトロソ、C-ニトロソ、S-ニトロソ、複素環、金属/NO複合体、ジアゼニウムジオレート;ニトログリセリン、イソソルバイド-5-モノニトレート、ニコランジル、四硝酸ペンタエリスリトール等の有機ニトレート;ニトロプルシドナトリウム(SNP)、S-ニトロソチオール、例えばS-ニトロソ-N-アセチルペニシラミン(SNAP)及びS-ニトロソグルタチオン;シドノンイミン(例えば、モルシドミン、SIN-1);並びにNONOエート(ate)(例えば、JS-K、スペルミンNONOエート、及びプロリチウム-NONOエート)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0610】
以下の実施例のセクションは、このような動物モデルの適格性を記載する。そのような動物から得ることができる組織及び細胞(並びに細胞株)も本明細書で企図される。
【0611】
本教示の実施形態は、薬物スクリーニング及び診断アッセイの開発などの研究における、そのような動物及びそれに由来する細胞/組織の使用に関する。
【0612】
特定の実施形態によれば、本明細書に記載の方法に従って作製された動物モデルが提供される。
【0613】
本出願から取得される特許の存続期間中に、本明細書に記載のnNOS活性を低下させる多くの関連薬剤が開発されることが予想され、「活性薬剤」という用語の範囲は、全てのそのような新しい技術を先験的に含むことが意図される。
【0614】
本明細書で使用される場合、用語「約」は±10%又は±5%を指す。
【0615】
「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する(having)」という用語及びそれらの活用形は、「含むが、これに限定されない」ことを意味する。
【0616】
用語「~からなる」は、「~を含み、~に限定される」ことを意味する。
【0617】
「から本質的になる」という用語は、組成物、方法又は構造が、追加の成分、ステップ及び/又は部分を含んでもよいが、追加の成分、ステップ及び/又は部分が、特許請求される組成物、方法又は構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変更しない場合に限ることを意味する。
【0618】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数の言及を含む。例えば、「化合物」又は「少なくとも1つの化合物」という用語は、複数の化合物(それらの混合物を含む)を含み得る。
【0619】
本出願を通して、本発明の様々な実施形態は、範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は、単に便宜上及び簡潔さのためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではないことが理解されるべきである。したがって、範囲の記載は、具体的に開示された全ての可能な部分範囲並びにその範囲内の個々の数値を有すると考えられるべきである。例えば、1~6などの範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲、並びにその範囲内の個々の数、例えば、1、2、3、4、5、及び6を具体的に開示しているとみなされるべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0620】
数値範囲が本明細書で示されるときはいつでも、示された範囲内の任意の引用された数字(分数又は整数)を含むことを意味する。第1の指示数及び第2の指示数「の間の範囲/範囲」、並びに第1の指示数「から」第2の指示数「までの範囲/範囲」という句は、本明細書において互換的に使用され、第1及び第2の指示数、並びにそれらの間の全ての分数及び整数を含むことを意味する。
【0621】
本明細書中で使用される場合、用語「方法」とは、所定のタスクを達成するための様式、手段、技術及び手順をいい、これらとしては、化学分野、薬学分野、生物学分野、生化学分野及び医学分野の実施者に公知であるか、又はこれらから容易に開発される様式、手段、技術及び手順が挙げられるが、これらに限定されない。
【0622】
特定の配列表を参照する場合、このような参照はまた、例えば、配列決定エラー、クローニングエラー、又は塩基置換、塩基欠失若しくは塩基付加を生じる他の変化から生じるマイナーな配列バリエーションを含むとして、その相補的配列に実質的に対応する配列を包含すると理解されるべきであるが、ただし、このようなバリエーションの頻度は、50ヌクレオチド中1未満、あるいは100ヌクレオチド中1未満、あるいは200ヌクレオチド中1未満、あるいは500ヌクレオチド中1未満、あるいは1000ヌクレオチド中1未満、あるいは5,000ヌクレオチド中1未満、あるいは10,000ヌクレオチド中1未満である。
【0623】
本出願に開示される任意の配列番号(SEQ ID NO)は、そのSEQ ID NOがDNA配列形式又はRNA配列形式でのみ発現される場合であっても、そのSEQ ID NOが言及される文脈に依存して、DNA配列又はRNA配列のいずれかを指し得ることが理解される。
【0624】
本明細書に記載の活性薬剤(例えば、小分子活性薬剤)のいずれも、本明細書で定義される薬学的に許容される塩、そのプロドラッグ、水和物又は溶媒和物の形態であり得る。
【0625】
本明細書で使用される場合、「プロドラッグ」という用語は、体内で活性化合物に変換される化合物を指す。プロドラッグは、典型的には、例えば吸収を増強することによって投与を容易にするように設計される。プロドラッグは、例えば、エステル基で修飾された活性化合物を含んでいてもよく、例えば、化合物のヒドロキシル基のいずれか1つ以上がアシル基、場合により(C1-4-アシル(例えば、アセチル)基によって修飾されてエステル基を形成し、及び/又は化合物のカルボン酸基のいずれか1つ以上がアルコキシ又はアリールオキシ基、場合により(C1-4-アルコキシ(例えば、メチル、エチル)基によって修飾されてエステル基を形成する。
【0626】
「溶媒和物」という用語は、溶質(本明細書に記載の複素環式化合物)及び溶媒によって形成される可変化学量論(例えば、ジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-、ヘキサ-など)の複合体を指し、溶媒は溶質の生物学的活性を妨害しない。
【0627】
「水和物」という用語は、溶媒が水である、上で定義した溶媒和物を指す。
【0628】
本明細書に記載の活性薬剤は多形として使用することができ、本実施形態は更に、活性薬剤の任意の同形体及びそれらの任意の組み合わせを包含する。
【0629】
本明細書に記載の化合物及び構造は、特定の立体異性体が具体的に示されない限り、本明細書に記載の化合物のエナンチオマー及びジアステレオマーを含む任意の立体異性体を包含する。
【0630】
本明細書で使用される場合、「エナンチオマー」という用語は、互いの完全な反転/反射(鏡像)によってのみ、その対応物に対して重ね合わせることができる化合物の立体異性体を指す。鏡像異性体は、右手及び左手のように互いを指すため、「利き手」を有すると言われる。鏡像異性体は、それ自体が掌性を有する環境(例えば、全ての生物系)に存在する場合を除いて、同一の化学的特性及び物理的特性を有する。本実施形態の文脈において、化合物は、1つ以上のキラル中心を示し得、その各々は、(R)又は(S)立体配置及び任意の組み合わせを示し、本発明のいくつかの実施形態による化合物は、(R)又は(S)立体配置を示す任意のそれらのキラル中心を有し得る。
【0631】
本明細書で使用される「ジアステレオマー」という用語は、互いに鏡像異性体ではない立体異性体を指す。ジアステレオマーは、化合物の2つ以上の立体異性体が、等価な(関連する)立体中心の全てではないが1つ以上で異なる立体配置を有し、互いの鏡像ではない場合に生じる。2つのジアステレオ異性体が1つの立体中心のみで互いに異なる場合、それらはエピマーである。各立体中心(キラル中心)は、2つの異なる立体配置を生じ、したがって、2つの異なる立体異性体を生じる。本発明の文脈において、本発明の実施形態は、立体配置の任意の組み合わせ、すなわち任意のジアステレオマーで生じる複数のキラル中心を有する化合物を包含する。
【0632】
本明細書全体を通して使用される場合、「アルキル」という用語は、直鎖及び分枝鎖基を含む任意の飽和脂肪族炭化水素を指す。好ましくは、アルキル基は1~20個の炭素原子を有する。数値範囲が、例えば、「1~20」として本明細書で記載されるとき、それは、この場合炭化水素基が、1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子など、20個以下の炭素原子を含有し得ることを意味する。より好ましくは、アルキルは1~10個の炭素原子を有する中程度の大きさのアルキルである。最も好ましくは、他に示さない限り、アルキルは、1~4個の炭素原子を有する低級アルキルである。アルキル基は、置換されていてもよく、無置換であってもよい。置換されている場合、置換基は、例えば、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、スルホネート、スルフェート、シアノ、ニトロ、アジド、ホスホニル、ホスフィニル、オキソ、イミン、オキシム、ヒドラゾン、カルボニル、チオカルボニル、尿素基、チオ尿素基、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、S-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、スルホンアミド、グアニル、グアニジニル、ヒドラジン、ヒドラジド、チオヒドラジド、及びアミノであってよく、これらの用語は本明細書で定義されている。
【0633】
本明細書において、「アルケニル」という用語は、直鎖及び分枝鎖基を含む、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素を表す。好ましくは、アルケニル基は2~20個の炭素原子を有する。より好ましくは、アルケニルは2~10個の炭素原子を有する中間サイズのアルケニルである。最も好ましくは、他に示さない限り、アルケニルは、2~4個の炭素原子を有する低級アルケニルである。アルケニル基は、置換されていても置換されていなくてもよい。置換アルケニルは、1つ以上の置換基を有し得、ここで、各置換基は、独立して、例えば、アルキニル、シクロアルキル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、スルホネート、スルフェート、シアノ、ニトロ、アジド、ホスホニル、ホスフィニル、オキソ、イミン、オキシム、ヒドラゾン、カルボニル、チオカルボニル、尿素基、チオ尿素基、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、S-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、スルホンアミド、グアニル、グアニジニル、ヒドラジン、ヒドラジド、チオヒドラジド、及びアミノであり得る。
【0634】
本明細書において、「アルキニル」という用語は、直鎖及び分枝鎖基を含む、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素を表す。好ましくは、アルキニル基は2~20個の炭素原子を有する。より好ましくは、アルキニルは2~10個の炭素原子を有する中間サイズのアルキニルである。最も好ましくは、他に示さない限り、アルキニルは、2~4個の炭素原子を有する低級アルキニルである。アルキニル基は、置換されていても置換されていなくてもよい。置換アルキニルは、1つ以上の置換基を有し得、ここで、各置換基は、独立して、例えば、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、スルホネート、スルフェート、シアノ、ニトロ、アジド、ホスホニル、ホスフィニル、オキソ、イミン、オキシム、ヒドラゾン、カルボニル、チオカルボニル、尿素基、チオ尿素基、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、S-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、スルホンアミド、グアニル、グアニジニル、ヒドラジン、ヒドラジド、チオヒドラジド、及びアミノであり得る。
【0635】
「シクロアルキル」基は、飽和又は不飽和の全炭素単環式又は縮合環(すなわち、隣接する炭素原子対を共有する環)基であって、1つ以上の環が完全に共役したπ電子系を有さない基を指す。シクロアルキル基の非限定的な例は、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタン、シクロヘプタトリエン、及びアダマンタンである。シクロアルキル基は、置換されていても置換されていなくてもよい。置換されている場合、置換基は、例えば、アルキル、アリケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、スルホネート、スルフェート、シアノ、ニトロ、アジド、ホスホニル、ホスフィニル、オキソ、イミン、オキシム、ヒドラゾン、カルボニル、チオカルボニル、尿素基、チオ尿素基、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、S-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、スルホンアミド、グアニル、グアニジニル、ヒドラジン、ヒドラジド、チオヒドラジド、及びアミノであってよく、これらの用語は本明細書で定義されている。シクロアルキル基が不飽和である場合、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合及び/又は少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含み得る。
【0636】
「アリール」基は、完全に共役したπ電子系を有する全炭素単環式又は縮合環多環式、すなわち、隣接する炭素原子対を共有する環を指す。アリール基の例は、限定されないが、フェニル、ナフタレニル及びアントラセニルである。アリール基は置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。置換されている場合、置換基は、例えば、アルキル、アリケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、スルホネート、スルフェート、シアノ、ニトロ、アジド、ホスホニル、ホスフィニル、オキソ、イミン、オキシム、ヒドラゾン、カルボニル、チオカルボニル、尿素基、チオ尿素基、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、S-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、スルホンアミド、グアニル、グアニジニル、ヒドラジン、ヒドラジド、チオヒドラジド、及びアミノであってよく、これらの用語は本明細書で定義されている。
【0637】
「ヘテロアリール」基は、例えば、窒素、酸素及び硫黄などの1つ以上の原子を環中に有し、加えて、完全に共役したπ電子系を有する単環式又は縮合環(すなわち、隣接する原子対を共有する環)を指す。ヘテロアリール基の非限定的な例としては、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリン及びプリンが挙げられる。ヘテロアリール基は、置換されていても置換されていなくてもよい。置換されている場合、置換基は、例えば、アルキル、アリケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、スルホネート、スルフェート、シアノ、ニトロ、アジド、ホスホニル、ホスフィニル、オキソ、イミン、オキシム、ヒドラゾン、カルボニル、チオカルボニル、尿素基、チオ尿素基、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、S-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、スルホンアミド、グアニル、グアニジニル、ヒドラジン、ヒドラジド、チオヒドラジド、及びアミノであってよく、これらの用語は本明細書で定義されている。
【0638】
「ヘテロ脂環式」基は、環中に窒素、酸素及び硫黄などの1つ以上の原子を有する単環式又は縮合環基を指す。環はまた、1つ以上の二重結合を有し得る。しかしながら、環は完全に共役したπ電子系を有さない。ヘテロ脂環式基は置換されていても置換されていなくてもよい。置換されている場合、置換基は、例えば、アルキル、アリケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、スルホネート、スルフェート、シアノ、ニトロ、アジド、ホスホニル、ホスフィニル、オキソ、イミン、オキシム、ヒドラゾン、カルボニル、チオカルボニル、尿素基、チオ尿素基、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、S-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、スルホンアミド、グアニル、グアニジニル、ヒドラジン、ヒドラジド、チオヒドラジド、及びアミノであってよく、これらの用語は本明細書で定義されている。代表的な例は、ピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、モルホリンなどである。
【0639】
本明細書において、用語「アミン」及び「アミノ」は各々、-NR’R’’基又は-N+R’R’’R’’’基のいずれかを指し、式中、R’、R’’及びR’’’は各々、本明細書において定義されるように、水素又は置換若しくは非置換アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロ脂環式(その環炭素を介してアミン窒素に結合している)、アリール、又はヘテロアリール(その環炭素を介してアミン窒素に結合している)である。任意に、R’、R’’及びR’’’は、水素又は1~4個の炭素原子を含むアルキルである。場合により、R’及びR’’(及び存在する場合にはR’’’)は水素である。置換されている場合、アミンの窒素原子に結合しているR’、R’’又はR’’’炭化水素部分の炭素原子は、オキソによって置換されておらず(他に明示的に示されていない限り)、したがって、R’、R’’及びR’’’は、(例えば)カルボニル、C-カルボキシ又はアミドではなく、これらの基は本明細書で定義されている。
【0640】
「アジド」基は、-N=N+=N-基を指す。
【0641】
「アルコキシ」基は、本明細書中で定義されるように、-O-アルキル、-O-アルケニル、-O-アルキニル、-O-シクロアルキル、及び-O-ヘテロ脂環式基のいずれかを指す。
【0642】
「アリールオキシ」基は、本明細書で定義されるように、-O-アリール及び-O-ヘテロアリール基の両方を指す。
【0643】
「ヒドロキシ」基は、-OH基を指す。
【0644】
「チオヒドロキシ」又は「チオール」基は、-SH基を指す。
【0645】
「チオアルコキシ」基は、本明細書中で定義されるような、-S-アルキル、-S-アルケニル、-S-アルキニル、-S-シクロアルキル、及び-S-ヘテロ脂環式基のいずれかを指す。
【0646】
「チオアリールオキシ」基は、本明細書で定義される-S-アリール及び-S-ヘテロアリール基の両方を指す。
【0647】
「カルボニル」又は「アシル」基は、-C(=O)-R’基(式中、R’は本明細書中上記で定義されるとおりである)を指す。
【0648】
「チオカルボニル」基は、-C(=S)-R’基を指し、式中、R’は、本明細書に定義されるとおりである。
【0649】
「C-カルボキシ」基は、-C(=O)-O-R’基を指し、式中、R’は、本明細書に定義されるとおりである。
【0650】
「O-カルボキシ」基は、R’C(=O)-O基(式中、R’は、本明細書で定義されるとおりである)を指す。
【0651】
「カルボン酸」基は、-C(=O)OH基を指す。
【0652】
「オキソ」基は、=O基を指す。
【0653】
「イミン」基は=N-R’基(式中、R’は、本明細書で定義されるとおりである)を指す。
【0654】
「オキシム」基は、=N-OH基を指す。
【0655】
「ヒドラゾン」基は、=N-NR’R’’基を指し、式中、R’及びR’’の各々は、本明細書で定義されるとおりである。
【0656】
「ハロ」基は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を指す。
【0657】
「スルフィニル」基は、-S(=O)-R’基を指し、式中、R’は、本明細書で定義されるとおりである。
【0658】
「スルホニル」基は、-S(=O)2-R’基を指し、式中、R’は、本明細書で定義されるとおりである。
【0659】
「スルホネート」基は、-S(=O)2-O-R’基を指し、式中、R’は、本明細書で定義されるとおりである。
【0660】
「スルフェート」基は、-O-S(=O)2-O-R’基を指し、式中、R’は、本明細書で定義されるとおりである。
【0661】
「スルホンアミド」又は「スルホンアミド」基は、本明細書で定義されるS-スルホンアミド基及びN-スルホンアミド基の両方を包含する。
【0662】
「S-スルホンアミド」基は、-S(=O)2-NR’R’’基を指し、R’及びR’’の各々は、本明細書で定義されるとおりである。
【0663】
「N-スルホンアミド」基は、R’S(=O)2-NR’’-基を指し、式中、R’及びR’’の各々は、本明細書で定義されるとおりである。
【0664】
「O-カルバミル」基は、-OC(=O)-NR’R’’基を指し、式中、R’及びR’’の各々は、本明細書で定義されるとおりである。
【0665】
「N-カルバミル」基は、R’OC(=O)-NR’’-基を指し、式中、R’及びR’’の各々は、本明細書で定義されるとおりである。
【0666】
「O-チオカルバミル」基は、-OC(=S)-NR’R’’基を指し、式中、R’及びR’’の各々は、本明細書で定義されるとおりである。
【0667】
「N-チオカルバミル」基は、R’OC(=S)NR’’-基を指し、式中、R’及びR’’の各々は、本明細書で定義されるとおりである。
【0668】
「S-チオカルバミル」基は、-SC(=O)-NR’R’’基を指し、式中、R’及びR’’の各々は、本明細書で定義されるとおりである。
【0669】
「アミド」又は「アミド」基は、本明細書で定義されるC-アミド及びN-アミド基を包含する。
【0670】
「C-アミド」基は、-C(=O)-NR’R’’基を指し、式中、R’及びR’’の各々は、本明細書で定義されるとおりである。
【0671】
「N-アミド」基は、R’C(=O)-NR’’-基を指し、式中、R’及びR’’の各々は、本明細書で定義されるとおりである。
【0672】
「尿素基」は、-N(R’)-C(=O)-NR’’R’’’基を指し、式中、R’、R’’及びR’’の各々は、本明細書で定義されるとおりである。
【0673】
「チオ尿素基」は、-N(R’)-C(=S)-NR’’R’’’基を指し、式中、R’、R’’及びR’’の各々は、本明細書で定義されるとおりである。
【0674】
「ニトロ」基は、-NO2基を指す。
【0675】
「シアノ」基は、-C≡N基。
【0676】
「ホスホニル」又は「ホスホネート」という用語は、-P(=O)(OR’)(OR’’)基を表し、R’及びR’’は上で定義された通りである。
【0677】
「ホスフェート」という用語は、-O-P(=O)(OR’)(OR’’)基を表し、R’及びR’’の各々は本明細書中上記で定義されている通りである。
【0678】
「ホスフィニル」という用語は、-PR’R’’基を表し、R’及びR’’の各々は、上で定義された通りである。
【0679】
「ヒドラジン」という用語は、-NR’-NR’’R’’’基を表し、R’、R’’及びR’’’は本明細書で定義されるとおりである。
【0680】
本明細書で使用される場合、「ヒドラジド」という用語は、-C(=O)-NR’-NR’’R’’’基を記載し、式中、R’、R’’及びR’’’は、本明細書で定義されるとおりである。
【0681】
本明細書で使用される場合、「チオヒドラジド」という用語は、-C(=S)-NR’-NR’’R’’’基を記載し、式中、R’、R’’及びR’’’は、本明細書で定義されるとおりである。
【0682】
「グアニジニル」基は、-RaNC(=NRd)-NRbRc基を指し、式中、Ra、Rb、Rc及びRdの各々は、R’及びR’’について本明細書で定義されるとおりであり得る。
【0683】
「グアニル」又は「グアニン」基は、RaRbNC(=NRd)-基を指し、式中、Ra、Rb及びRdは、本明細書で定義されるとおりである。
【0684】
本明細書中で使用される場合、用語「アルキレングリコール」は、-O-[(CR’R’’)z-O]y-R’’’末端基又は-O-[(CR’R’’)z-O]y連結基を記載し、式中、R’、R’’及びR’’’は、本明細書中で定義されるとおりであり、zは、1~10、好ましくは2~6、より好ましくは2又は3の整数であり、そしてyは、1以上の整数である。好ましくは、R’及びR’’は両方とも水素である。zが2であり、yが1である場合、この基はエチレングリコールである。zが3であり、yが1である場合、この基はプロピレングリコールである。yが2~4である場合、アルキレングリコールは、本明細書においてオリゴ(アルキレングリコール)と称される。
【0685】
yが4より大きい場合、アルキレングリコールは、本明細書においてポリ(アルキレングリコール)と称される。本発明のいくつかの実施形態では、ポリ(アルキレングリコール)基又は部分は、zが10~200、好ましくは10~100、より好ましくは10~50であるように、10~200個の繰り返しアルキレングリコール単位を有することができる。
【0686】
本明細書で使用される「糖類」という用語は、単糖類、二糖類及びオリゴ糖類を包含する。本明細書で使用され、当技術分野で周知である「単糖」という用語は、加水分解によって更に分解することができない単一の糖分子からなる糖の単純な形態を指す。単糖類の最も一般的な例としては、グルコース(デキストロース)、フルクトース、ガラクトース、及びリボースが挙げられる。単糖は、炭素原子数に従って、グリセルアルデヒド及びジヒドロキシアセトンなどの3個の炭素原子を有する炭水化物、すなわちトリオース、4個の炭素原子を有するテトロース、例えば、エリトロース、トレオース及びエリトルロース、5個の炭素原子を有するペントース、例えばアラビノース、リキソース、リボース、キシロース、リブロース及びキシルロース、6個の炭素原子を有するヘキソース、例えば、アロース、アルトロース、ガラクトース、グルコース、グロース、イドース、マンノース、タロース、フルクトース、プシコース、ソルボース及びタガトース、7個の炭素原子を有するヘプトース、例えばマンノヘプツロース、セドヘプツロース、8個の炭素原子を有するオクトース、例えば、2-ケト-3-デオキシ-マンノ-オクトネート、9個の炭素原子を有するノノース(例えば、シアロース)及び10個の炭素原子を有するデコース(decose)、として分類することができる。単糖は、スクロース(一般的な糖)のような二糖及びオリゴ糖の構成単位である。
【0687】
明確にするために別々の実施形態の文脈で説明される本発明の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈で記載されている本発明の様々な特徴は、別々に、又は任意の適切なサブコンビネーションで、又は本発明の任意の他の記載された実施形態において適切なように提供されてもよい。様々な実施形態の文脈で説明される特定の特徴は、実施形態がそれらの要素なしで動作しない場合を除き、それらの実施形態の本質的な特徴とみなされるべきではない。
【0688】
上記で説明され、以下の特許請求の範囲の項で請求される本発明の様々な実施形態及び態様は、以下の実施例において実験的な裏付けがなされる。
【実施例】
【0689】
ここで以下の実施例を参照するが、これらの実施例は、上記の説明とともに、本発明のいくつかの実施形態を非限定的に例示するものである。
【0690】
第I部
nNOS阻害によるASD様表現型の軽減
材料及び方法
動物モデル:
SHANK3及びCNTNAP2変異マウスをJackson Laboratoryから入手し、自閉症スペクトラム障害に関連する行動及びシナプス異常を試験するために使用した。他に示されない限り、WTマウス及び変異マウスは、6週齢である。
【0691】
SHANK3変異は、SHANK3マウスにおいて一酸化窒素(NO)レベルの増加及びS-ニトロソ-プロテオームの変化をもたらすことが見出された。本発明者らは、この変異が、小胞放出及びシナプス機能に関与する重要なタンパク質のS-ニトロシル化をもたらし、自閉症様行動をもたらし得ることを示した(Amal et al.Molecular Psychiatry 2018,www(dot)doi(dot)org/10(dot)1038/s41380-018-0113-6)。
【0692】
SNAP処理プロトコル:
S-ニトロソ-N-アセチルペニシラミン(SNAP)は、Tzamal D-Chemから入手した。WTマウス又は変異マウスをSNAPで腹腔内処理した。各マウスに、実験の各日に20mg/kg体重の用量を与えた。処理の2時間後に行動試験を開始した。SNAPを最初にDMSO中に可溶化し(溶解度は20mg/mlである)、更なる体積を0.9%生理食塩水で補充した。対照動物をビヒクル(0.9%生理食塩水及びDMSO)で処理した。全ての動物を最後の処理の24時間後に屠殺した[1]。
【0693】
7-NI処理:
7-ニトロ-インダゾール(7-NI)は、Tzamal D-Chemから入手した。
WT、SHANK 3-変異体及び/又はCASPR2-KOマウスを7-NIで腹腔内処理した。別段の指示がない限り、各マウスに、実験の各日に80mg/kg体重の用量を与えた。処理の2時間後に行動試験を開始した。7-NIを最初にDMSO中に可溶化し(溶解度は32mg/mlである)、別段の指示がない限り、トウモロコシ油を用いて更なる体積にした。対照動物を各々のビヒクル(例えば、トウモロコシ油及びDMSO)で処理した。全ての動物を最後の処理の24時間後に屠殺した。
【0694】
行動分析:
オープンフィールド試験:マウスを、中心領域及び周辺領域に仮想的に分割されたオープンフィールド(45×45cm)において試験した。動物の活動をビデオトラッキング(Noldus Ethovision)によって記録した。各マウスに装置を5分間探索させた。移動した距離、後戻り及び回転の数、グルーミングバウトの数及び累積グルーミング時間、首振り又は単収縮の数、中心への進入の数、並びに中心及び周辺領域で過ごした時間を記録した。測定値を5分間隔で記録した。
【0695】
新奇物体認識(
図4Aを参照されたい):物体認識及び記憶のための新奇物体試験は、白色オープンフィールドアリーナ(45×45cm)において実施する。試験では、2つの異なる材料から構成され、形状が均一でない、各々がほぼマウスのサイズである2つの固有の新奇物体のセットを用いる[4]。試験は、1回の10分間の慣れセッション、5分間の慣れセッション及び5分間の認識試験からなり、各ビデオを追跡した(Noldus Ethovision)。馴化の間、動物に空のオープンフィールドを自由に探索させた。セッションの終わりに、それらをオープンフィールドから一時的な清浄な保持ケージ内の場所に約2分間移した。2つの同一の物体を各壁から10cmの正中線上に置き、動物をオープンフィールドに戻し、ホームケージに戻す前に5分間物体を探索させた。翌日、1つの馴染みの物体及び1つの新奇な物体を、同じ物体が慣れセッション中に配置された場所に対してオープンフィールドに配置し、マウスに5分間の認識試験のためにそれらを探索させた。動物の半分がオープンフィールドの右側に置かれた新奇な物体に曝露され、動物の半分がオープンフィールドの左側に置かれた新奇な物体に曝露されるように、新奇な物体の位置の側を無作為に割り当てた。各セッションの間に、オープンフィールド及び物体を70%エタノールで注意深く洗浄し、乾燥させた。各物体の調査に費やした総時間、物体相互作用の数、及び最初の物体相互作用の潜時について、習熟及び認識セッションをスコア化した。馴化及び馴化の間に各側で費やした時間、並びに馴化期の間に2つの同一の物体を嗅ぐのに費やした時間を使用して、先天的な側の偏りを調べた。両方の物体を嗅ぐのに費やした合計時間を、一般的な探索の尺度として使用した。
【0696】
3チャンバー社交性試験(
図4Bを参照されたい):社交性並びに社会的新奇性及び社会的認知に対する選好を、3チャンバー装置で試験した。被験マウスを最初に中央の中立チャンバーに入れ、全てのドアを閉じて10分間探索させた。次に、ドアを開け、マウスに他の2つの空のチャンバー(1及び2)を更に10分間自由に探索させた。この馴化の間、副嗜好性の欠如が確認された。
【0697】
2つの円筒形ワイヤケージを、一方をチャンバー1内に、他方をチャンバー2内に配置した。社交性試験のために、試験動物を中央チャンバーに導入し、5分間調整させた。次に、馴染みのないマウスを一方のサイドチャンバー内のワイヤケージに導入し、他方のサイドチャンバーは空のままとした。馴染みのないマウスを内部に入れて試験マウスがワイヤケージを探索するのに費やした時間を5分間記録した。
【0698】
次に、社会的記憶を調べるために、新奇なマウスを空のケージに導入し、試験したマウスが、馴染みのマウスと比較して新奇なマウスに関心があるかどうかを調べる。
【0699】
高架式十字迷路試験(
図4Cを参照のこと):高架式十字迷路は、4つのアーム(30×5cm)からなり、2つは開いており、他の2つは閉じている。プラットフォームは白色プレキシガラス製であった。装置を床から45cm上に上げた。マウスを迷路の中央プラットフォーム上に置き、オープンアームの1つに向け、それを自由に動かすことによって、上記の試験を開始した。各セッションは5分間続けた。閉じたアーム及び開いたアームで費やした時間を記録した。
【0700】
ガラス玉覆い隠し試験(
図4Dを参照のこと):ガラス玉覆い隠しアッセイは、マウスにおける不安様及び/又は反復様行動のいずれかを評価するためのツールである。対象を、3cmの新鮮な寝床を有する通常の清潔なケージ(長さ28cm×幅18cm×高さ12cm)において試験した。対象をまず空のケージに入れて5分間慣らした。次に、それを空の清潔なケージに一時的に入れ、20個の暗青色ガラス玉(直径15mm)を、ケージ表面全体を覆うように4×5配置で寝床の上に等距離に配置した。次いで、対象を試験ケージに戻し、15分間のセッションの間に探索させ、ガラス玉を覆い隠させ、これをビデオテープに録画した。セッションの終わりに、対象を取り除き、覆い隠されたガラス玉(50%のガラス玉が寝床材料で覆われている)の数を記録した。
【0701】
実施例1
ASDモデルにおける3-ニトロチロシン(Ntyr)の増加
3-ニトロチロシン(3-Ntyr)は、NO2基の付加をもたらすニトロ化剤の作用を介して(フェノール性水酸基に対してオルト位で)生じる、タンパクにおける翻訳後修飾であり、タンパクチロシンニトロ化(PTN)をもたらす。PTNの本質的な特徴は、それが安定な翻訳後修飾であり、ランダムに起こらないことである。3-Ntyrは、ニトロソ化ストレスの信頼できるマーカーを表す。
【0702】
ASDを有する10名の参加者(年齢:2~6歳、男性)、並びに通常の教育を受けており、神経精神医学的診断を受けていない5名の血縁関係のない、年齢及び性別が一致した対照参加者(年齢:2~6歳男性)を、ASDを有する小児におけるバイオマーカーを評価する進行中の臨床治験(0501-20-SZMC)の一部としてシャーレ・ゼデック医療センターの外来神経小児科クリニックから募集した。試験は、シャーレ・ゼデック医療センターの施設内治験審査委員会によって承認され、参加者の親は、参加者登録前に書面によるインフォームドコンセントを提供した。
【0703】
ウェスタンブロットを行って、NTyrレベルを決定した。
【0704】
【0705】
ヒト血液試料のウェスタンブロット(WB)分析は、それらの典型的に開発された対応物(TD)と比較して、ASDにおいて有意に上昇したレベルのNtyrを示し、これは、
図1Bに提示される定性分析においても実証されるように、ASD個体におけるニトロソ化ストレスの増加したレベルを示す(
図1A)。
**P<0.01。対照(n=5)及びASD(n=10)。
【0706】
野生型マウス(C57BL/6マウス)及び2つのASDマウスモデル-SHANK3マウスモデル(M1)及びCNTNAP2マウスモデル(M2)から調製された皮質組織のWB分析は、
図1D及び
図1Eに提示される各々の定性分析においても実証されるように、野生型と比較して両方のASDマウスモデルにおいてより高いレベルのNtyrを示した(
図1C)。
*P<0.05。WT(n=5)及びM1、M2(n=5)。
【0707】
実施例2
SNAP投与は、C57BL/6マウスモデルにおいてASD様表現型を誘導する
S-ニトロソ-N-アセチルペニシラミン(SNAP)は、NO利用能を増加させるNO供与体であり、その後、ニトロソ化ストレス及び異常なSNOシグナル伝達をもたらす。野生型マウスをSNAPにより、腹腔内(IP)で、20mg/kg/日で7日間処理した。マウス行動に対するSNAP投与の潜在的効果を調べるために、新奇物体認識試験(NOR)及び社交性試験を実施し(
図4A~
図4B参照)、得られたデータを各々
図2A~
図2Bに示す。
【0708】
図2Aに示すように、NOR試験は、SNAP処理マウスが新奇な物体に対する選好を示すことができなかったのに対して、対照群は新奇な物体を探索するのに有意により多くの時間を費やしたことを示した。
【0709】
図2Bに示すように、社交性試験は、対照群がよそ者ケージと相互作用するのにより多くの時間を費やしたことを示し、高い社交性を示した。逆に、SNAP処理マウスは、社会的相互関係に関与する選好を全く示さなかった。
【0710】
実施例3
7-NI投与は、CNTNAP2及びSHANK3マウスモデルにおけるASD様表現型を逆転させる
7-ニトロインダゾール(7-NI)は、ニューロン酸化窒素シンターゼの選択的阻害剤である。
変異マウスに、上記のように、7-NIを腹腔内(interparentally、IP)で、80mg/kg/日で7日間投与した。マウス行動に対する7-NI投与の効果を調べるために、新奇物体認識試験(NOR)及び社交性試験を実施し(
図4A~
図4B参照)、得られたデータを各々
図3A~
図3Bに示す。
【0711】
図3Aに示されるように、NOR試験は、7-NI処理マウスが、馴染みの物体よりも新奇な物体に対して有意な選好を示したが、ビヒクル処理マウスは、7-NI処理マウスと比較して、新奇な物体を探索するのに有意に短い時間を費やしたことを示した。
【0712】
図3Bに示されるように、社交性試験は、7-NI処理マウスが、よそ者ケージとの相互作用に有意により多くの時間を費やした一方で、ビヒクル処理マウスは、社会的相互関係に対するいかなる選好も示さなかったことを示した。
【0713】
これらのデータは、NO産生及びシグナル伝達を阻害することが、ASD表現型を逆転及び減弱させる可能性があり得ることを示す。
【0714】
これらの知見を更に確証するために、3-ニトロチロシンの発現を、SHANK3変異体群(M1)及び7-NIで処理したSHANK3群(M1+7-NI)と比較して野生型(WT)の皮質組織において、またCNTNAP2
(-/-)変異体群(M2)及び7-NIで処理したCNTNAP2
(-/-)変異体群(M2+7-NI)と比較して野生型(WT)の皮質組織において試験し、得られたデータを
図3C~
図3D(M1について)及び
図3E~
図3F(M2について)に示す。
【0715】
図3C~
図3Fに示すように、3-Ntyrのニトロソ化マーカーは、両方のモデルの変異マウスにおいて有意に増加し、それによりnNOS阻害剤(7-NI)による治療は、ASDの両方のマウスモデルにおいて3-Ntyrの発現を減少させた。
【0716】
これらの知見は、NO及びSNOがASD病因に関与していること、7-NIの治療がニトロソ化ストレスの逆転をもたらすこと、及び3-NtyrがnNOS阻害剤の活性の指標マーカーとして使用できることを実証する。
【0717】
試験したマウスのニューロンにおける皮質領の3-ニトロチロシンレベルも共焦点顕微鏡によって評価し、得られたデータを
図3G及び
図3Hに示す。見られるように、7-NI治療は、非処理マウスのニューロンと比較して、ニューロンにおける3-ニトロチロシンレベルを約50%減少させた。
【0718】
実施例4
SNAP投与後のC57BL/6マウスモデルにおける追加の行動分析
マウス行動に対するSNAP投与の潜在的効果を更に調べるために、上記のプロトコルに従って、C57BL/6野生型マウス(WT)をSNAPで処理した後(両親間(IP)、20mg/kg/日で10日間)、行動試験の大きなセットを実施した。
【0719】
最初に、新奇物体認識試験(NOR)を実施して、マウスにおける新奇探索傾向及び関心の制限を評価した。この試験は、馴染みの物体よりも新奇な物体を探索するのに長い時間を費やすマウスの自発的傾向に基づく(
図4A参照)。
図5Aに示されるように、NOR試験は、WTマウスが馴染みの物体よりも新奇な物体を探索するのに有意に多くの時間を費やしたが、SNAP処理マウスは新奇な物体に対する選好を示すことができなかったことを示し、関心の欠如及びSNAP処理群の間での新奇探索傾向の減少を示した。
【0720】
3チャンバー社交性試験を実施例2と同様に行い(
図4Bも参照)、よそ者マウスとの社会的相互関係に関与するマウスの関心を評価した。概して、マウスは、他のマウスとより多くの時間を過ごすことを好み(社交性)、マウスは、馴染みのものよりも新奇な侵入者を調査する傾向を有する(社会的新奇性)。この試験は、2つの異なるセッションで行われる:第1のセッション(
図4Bの上図を参照)では、マウスは、よそ者マウス(よそ者)及び空のケージに遭遇し、このセッションは、社交性を決定し、一方、第2のセッション(
図4Bの下図を参照)では、マウスは、第1の侵入者(S1)及び新奇な侵入者(S2)に遭遇し、このセッションは、社会的新奇性を決定する。
【0721】
分析は、WT及びSNAP処理マウスの両方が、空のケージよりもよそ者マウスとの相互作用により多くの時間を費やしたことを示した(データは示さず)。
図5Bに示されるように、第2のセッションは、WTマウスが、馴染みのマウス(S1)よりもよそ者マウス(S2)と相互作用するのにより多くの時間を費やしたことを示し、これは、WTマウス間の高い社交性及び社会的新奇性を示している。逆に、SNAP処理マウスは、マウスとの社会的相互関係に関与する有意な選好を示さず、おそらくSNAP処理後の社会的新奇性の障害を示した。
【0722】
高架式十字迷路試験(
図4Cを参照されたい)を実施して、マウス間の不安様行動、典型的には閉鎖アームで過ごした時間として定量化された不安を評価した。
図5Cに示されるように、分析は、SNAP処理マウスが、WT群と比較して閉鎖アームにおいて有意により多くの時間を費やしたことを示し、これは、SNAPで処理されたマウス間の不安行動の可能性を反映している。
【0723】
(
図4Dに示されるような)ガラス玉覆い隠し試験を、反復行動及び関心の制限の指標として利用した。
図5Dに示されるように、分析は、SNAP処理マウスがそれらのWT対応物と比較して有意に少ないガラス玉を覆い隠したことを示した。これらの結果は、SNAP処理マウスにおいて新奇な物体を探索する関心がないことを示している。
【0724】
まとめると、これらの結果は、高濃度のNOが、ASDにおいて観察されるものと同様の行動及び認知欠損を誘導する可能性があり得ることを示唆する。これらには、新奇探索傾向の減少、反復行動、社会的新奇性の障害、及び不安様行動が含まれる。
【0725】
実施例5
7-NI投与後のCNTNAP2マウスモデル及びSHANK3マウスモデルにおける更なる行動分析
上記の実施例3及び4に記載した行動試験を行った。
【0726】
一組の試験では、マウスを3つの試験群、すなわちWTマウス、SHANK3ノックアウトマウス(M1)、及び7-NIを投与したSHANK3ノックアウトマウス(M1+7NI)(慢性IP注射、80mg/kg/日、10日間、行動試験開始3日前)に分けた。
【0727】
新奇物体認識試験で得られたデータを
図6Aに示すが、WTマウスは馴染みの物体よりも新奇な物体を探索するのに有意に多くの時間を費やしたが、M1マウスは新奇な物体に対する有意な選好を示さず、新奇探索傾向の減少及び関心の制限を反映していることを示している。7-NIで処理した後、M1マウスは、馴染みの物体よりも新奇な物体に対して有意な選好を示した。
【0728】
別のセットの試験において、新奇物体認識試験(
図4Aを参照のこと)を、老齢(10ヶ月)WTマウス、SHANK3ノックアウトマウス(M1)、及び7-NIを投与されたSHANK3ノックアウトマウス(M1+7NI)(慢性IP注射、80mg/kg/日、10日間、行動試験を開始する3日前)を用いて行った。
【0729】
得られたデータを
図6B及び
図6Cに示し、老齢自閉症マウスも記憶を失ったことを示し、これは7-NI処理によって回復した。
【0730】
別のセットの試験では、認知機能に対する阻害NOの潜在的効果を、ASD-CNTNAP2-/-変異マウスの追加のマウスモデルでアッセイした。マウスを3つの試験群、すなわちWTマウス、CNTNAP2-/-変異マウス(M2)、及び7-NIを投与された変異マウス(M2+7NI)に分けた。3チャンバー社交性試験を行い(
図4B参照)、データを
図7Aに示す。分析は、変異マウス(M2)が、それらのWT同腹子と比較して、よそ者マウスと相互作用する時間が明らかに少ないことを示し、変異マウス間の社交性の欠如を示した。7-NI処理マウス(M2+7NI)は、それらの未処理対応物-M2と比較して、よそ者マウスと相互作用するのに有意に長い時間を費やした。高架式十字迷路試験(
図4C参照)も実施し、得られたデータを
図7Bに示す。分析は、変異マウス(M2)が、WTマウスと比較して、閉鎖アームにおいて有意により多くの時間を費やしたことを示し、おそらく、変異マウス間の不安の増加を示した。7-NIによる処理の後、マウスは、未処理の変異マウスと比較して、不安様行動がより少なかった。まとめると、これらの結果は、SHANK3変異マウスにおいて観察された自閉症表現型が、NO産生の阻害を介して逆転される可能性があり得ることを示唆している。
【0731】
実施例6
SHANK3マウスの7-NI処理の用量依存的効果
用量依存的試験を実施して、マウス行動に対して最大の効果を生じ得る最適用量を決定した。SHANK3変異マウス(各群についてn=5)を、0、20、50、及び80mg/kgの用量の7-NI(i.p)で処理した。この後、このモデルで観察された自閉症の表現型を逆転させることができる7-NIの適切な用量を評価するための一連の行動試験を行った。
【0732】
最初に、オープンフィールド試験を行って、移動距離及び速度によって測定されるマウスにおける一般的な運動活動レベルを調べた。
図8A~
図8Bに示すように、20mg/kg、50mg/kg及び80mg/kgでの処理後の試験群の間で、運動活性の有意差は観察されなかった。これは、より高用量の7-NIがマウスの運動に影響を及ぼさないことを示す。
【0733】
上述し、
図4Bに示すように、3チャンバー社交性試験を行って、よそ者マウスとの社会的相互関係に関与するマウスの関心を評価した。
図8Cに示されるように、80mg/kgで処理されたマウスは、20mg/kgの7-NIを投与されたマウスと比較して、よそ者マウスとの相互作用に有意により長い時間を費やした。50mg/kgと比較して、統計的に差は有意ではないが、80mg/kg治療群は、よそ者マウスとの相互作用により多くの時間を費やした。
【0734】
図8Dに示されるように、試験の第2のセッションは、80mg/kgの7-NIで処理されたマウスが、低用量の7-NIで処理されたそれらの対応物と比較して、新奇なマウス(S2)と相互作用するのにより多くの時間を費やしたことを示した。
【0735】
全体として、これらの結果は、80mg/kgの7-NIが、社会的行動の障害を含む自閉症表現型の最大の逆転をもたらしたことを示す。
【0736】
実施例7
サイレンシングされたSHANK3のバックグラウンドにおけるnNOSのsiRNAサイレンシングは、シナプトフィジンマーカーにより決定されるASD表現型を軽減する
siRNA(5-3 RNA)でSHANK3をサイレンシングすることによって、ASDの細胞培養モデルを開発した。ニューロン細胞株SHSY-5Y細胞におけるCGA UGA UAA GCA GUU UGC AAA GCU U(配列番号3)の後、以下のRNA(5-3)CCU UGU CCA ACA UGC UCC UAG AGA U(配列番号4)を用いてnNOSでサイレンシングを行った。
【0737】
SHSY-5Y細胞(処理あり又はなし)を4%パラホルムアルデヒド中で処理後に固定し、一次ウサギMAP2+一次マウスモノクローナル3-ニトロチロシン(
図9A~
図9B)及び一次ウサギモノクローナルシナプトフィジン+一次マウスMap2(
図9C~
図9D)とともにインキュベートした。その後、細胞を抗マウス二次Alexa fluor488(緑色)/594(赤色)及び抗ウサギ二次Alexa fluor488(緑色)/594(赤色)結合二次抗体とともにインキュベートした。洗浄後、細胞をDAPI(青色)でマウントした。共焦点顕微鏡を用いて画像を取得した。各群は、9つの独立した実験セットを含んでいた(最初の細胞播種数-約10
6個)。
【0738】
SHANK3サイレンシングされたバックグラウンドに対する核酸サイレンシングの効果をサポートするために、本発明者らは、SHSY-5Y細胞の初代培養上のnNOSにsiRNAを適用した。SHANK3si-RNA群におけるnNOSのサイレンシング(二重ノックダウン)は、ニトロチロシン産生の減少を示している(
図9A~
図9B)。シナプトフィジンは、シナプス形成の信頼性のあるマーカーであり(Kathuria et al.Mol Psychiatry,2018 Mar;23(3):735-746)、ASDは、SHANK3si-RNAによる処理後のSHSY-5Y細胞において下方制御されることが見出された(
図9C~
図9D)。SHANK3si-RNA群においてnNOSをノックダウンすると(二重ノックダウン)、シナプトフィジンタンパク質発現の回復が観察された(
図9C~
図9D)。
【0739】
第II部:
例示的な製剤
7-ニトロインダゾール(7-NI)は、一酸化窒素シンターゼ(NOS)を阻害し、ニューロンNOSの選択的阻害剤として広く使用されている(J.Neurol.Sci.1998,160,9-15を参照されたい)。現在利用可能な他の薬物と比較して、7-NIは、ニューロンNOSに対して10倍の選択性を示す(Pharm Res.,2001,18,1607-1612)。NOSに対する高い選択性にもかかわらず、7-NIは、非常に高い用量であっても2時間を超えない短い半減期を有する(Biopharm.Drug Dispos.2000,21,221-228を参照されたい)。7-NIの使用は、水性媒体中での非常に低い溶解度によって更に制限され、したがって、7-NIは、油(例えば、落花生油又はトウモロコシ油)中に溶解した後にIP注射によって一般に投与される。したがって、動物において最適レベルを維持するためには、80mg/kg以上の高い薬物日用量が必要とされる。
【0740】
したがって、7-NIの経口、経鼻、舌下、又は頬粘膜投与を可能にすることができるか、又は10日間以上にわたって生物学的媒体中で7-NIの一定の放出を提供する持続放出製剤として作用する、改善された7-NI(又はその誘導体若しくは類似体)製剤を設計する必要性が存在する。
【0741】
以下の実施例は、本実施形態の文脈において7-NIの使用を容易にするために本発明者らによって設計された例示的な製剤を記載する。
【0742】
実施例8
注射及び経口送達のための7-ニトロインダゾールプロナノ分散脂質製剤(PNL)
ブランクPNL製剤は、概して、一般的な界面活性剤/分散剤、粒子形成脂質、及び食用溶媒を混合することによって調製される。
【0743】
以下の表1は、本発明のいくつかの実施形態による例示的なPNL配合物を示す。表1に列挙された成分及びその量/濃度は、列挙された成分の各々が、同じ機能性を示し、安全であると考えられる代替成分によって置き換えることができ、また各成分の相対量は、溶解性及び/又は安定性を改善するために変更又は調整することができるため、それを限定とみなすべきではない。
【0744】
【0745】
製剤は、室温又は高温で成分を混合して、7-ニトロインダゾールが約20%w/vで溶解する透明な液体を形成することによって調製することができる。
【0746】
製剤は、室温で液体又は半固体であり、任意選択で、本明細書に記載のように、経口嚥下のために軟ゼラチンカプセルに充填することができ、又は経口投与のために錠剤として製剤化することができ、又は鼻腔スプレー、吸入、点眼剤若しくは注射による投与のために水と混合してナノ分散液を形成することができる。
【0747】
例示的な手順において、7-ニトロインダゾール-PNLを含有する錠剤を、表1に記載される製剤を使用して調製した。磁器乳鉢に、300mgのシリカ粉末、Neusilin US2を、40mgの7-NIを含有する200マイクロリットルのPNL配合物とともに添加した。均質な混合物が得られるまで、混合物を乳鉢及び乳棒で十分にブレンドした。その後、100mgのHPMC及び錠剤化助剤Syloid 244 FT(5mg)を、均質な混合物が得られるまで幾何学的混合で添加した。粉末混合物を、1.3cm平面パンチを使用して錠剤を製造するために、計装シングルパンチ打錠機のダイに手動で供給した。錠剤は、直接圧縮によって調製した。圧縮力は10秒間3トンに設定した。
【0748】
実施例9
経口、経鼻及び経眼送達のための例示的な7-ニトロインダゾールプロナノ分散脂質製剤(PNL)又は7-NI
7-NIの経口送達のための例示的なPNL製剤を、MCT、Tween(登録商標)80;Kollipor RH 40;Kollipor HS 15;プロピレングリコール;Labrasol(登録商標);及び7-ニトロインダゾール(7-NI)を使用して、以下のように調製した。
【0749】
MCT:中鎖トリグリセリド(MCT)は、部分的に人工の脂肪である。この名称は、炭素原子がそれらの化学構造において配置される方法を指す。MCTは、概して、実験室でヤシ油及びパーム核油を加工することによって作製される。比較すると、通常の食事性脂肪は長鎖トリグリセリドである。MCTは薬剤としても使用される。MCTは、非常に病気(悪液質又は消耗性症候群)の人々における不随意体重減少のために、単独で、又は通常の薬剤とともに、経口摂取又は注射針で与えられる。MCTは、肥満、発作、運動能力、及び他の状態にも使用されるが、これらの他の使用をサポートする良好な科学的証拠はない。
【0750】
Tween(登録商標)80:ポリソルベート80は、食品及び化粧品においてしばしば使用される非イオン性界面活性剤及び乳化剤である。この合成化合物は、粘性の水溶性黄色液体である。
【0751】
Labrasol(登録商標):Labrasolは、カプリン酸及びカプリル酸の中鎖脂肪酸トリグリセリドのPEG誘導体である(カプリロカプロイルポリオキシル-8グリセリド)。これは、少量のモノ-、ジ-及びトリグリセリド、並びに主にカプリル酸(C8)及びカプリン酸(C10)のPEG-8(MW 400)モノエステル及びジエステルからなる。これは、その良好な可溶化力及び自発的自己乳化能力のために、PNL製剤において広く使用されている。
【0752】
Kolliphor(登録商標)RH 40:Kolliphor RH 40は、40モルのエチレンオキシドを1モルの水素化ヒマシ油と反応させることによって得られる非イオン性可溶化剤及び乳化剤である。Kolliphor(登録商標)RH 40の主成分は、グリセロールポリエチレングリコールオキシステアレートであり、これは、脂肪酸グリセロールポリグリコールエステルとともに、製品の疎水性部分を形成する。親水性部分は、ポリエチレングリコール及びグリセロールエトキシレートからなる。Kolliphor(登録商標)RH 40は、20℃で白色から黄色がかったペーストである。Kolliphor(登録商標)RH 40は、広く使用され、承認された可溶化剤であり、化学的に安定であり、実質的に無味であり、それを経口適用のための良好な成分にし、特に脂溶性ビタミンの水溶液に適しており、他の不飽和エトキシ化界面活性剤と比較して胃腸管において消化されにくいため、分散液及びエマルジョンを調製するのに適している。
【0753】
Kolliphor(登録商標)HS 15:Kolliphor(登録商標)HS 15は、15モルのエチレンオキシドを1モルの12-ヒドロキシステアリン酸と反応させることによって得られる非イオン性可溶化剤及び乳化剤である。Kolliphor(登録商標)HS 15は、12-ヒドロキシステアリン酸のポリグリコールモノエステル及びポリグリコールジエステル(=親油性部分)と、約30%の遊離ポリエチレングリコール(=親水性部分)とからなる。遊離ポリエチレングリコールは、HPLCによって決定することができる。Kolliphor(登録商標)HS 15は、非経口投与の間に低い免疫原性を提供するように設計された。
【0754】
プロピレングリコール:プロピレングリコールは、アルコールと同じ化学群に属する合成食品添加物である。これは、無色、無臭、わずかにシロップ状の液体であり、水よりも少し濃い。実際には味がない。
【0755】
以下の表2は、例示的なPNLブランク配合物を構成する成分を示す。
【0756】
【0757】
全ての材料をガラスバイアル中で秤量し、澄んだ透明な液体が得られるまで70℃で20分間加熱した。完全な混合及び均質性を確実にするために、混合物を適時に撹拌した。その後、混合物を室温まで2時間冷却した。
【0758】
選択された重量%の薬物をPNL混合物に添加し、70℃で30分間撹拌することによって、7-NI充填PNL製剤を調製した。薬物をPNL混合物中に溶解させた。その後、混合物を室温まで1時間冷却した。
【0759】
図10Aは、7-NIを含まない及び含む、得られたPNL溶液の写真を表し、両方の配合物が室温で透明であることを示す。
【0760】
PNLの安定性を、それを室温で3日間保つことによって試験した。相分離は観察されなかった。
【0761】
図10Bに示すように、手で振ったとき、7-NIを含むPNL製剤及び7-NIを含まないPNL製剤の両方が、37℃の水中に即座に分散した。
【0762】
動的光散乱(dynamic light scattering、DLS)を使用して、得られたナノ粒子水性分散液のサイズを確認した。100μLの新たに調製したPNLを10mLのDDWに分散させ、100μLの分散液を1mLのDDWで希釈して分析した。
【0763】
内蔵ソフトウェアを備えたZetasizer(Nano ZS、Malvern Instruments、UK)を使用して、動的光散乱(DLS)を行い、ナノ粒子のサイズを決定した。緩衝液中のほぼ1mLのナノ粒子分散液をガラスキュベット(正方形開口部を有する12mmガラスセル、セルタイプ:PCS1115)に入れた。各NPバッチを適切な量の緩衝液で適切に希釈した。測定角度は、機器自動選択モードにおいて173°後方散乱(NIBS)で選択した。
【0764】
NPのz平均は、粒子から散乱された光の強度の自己相関関数を使用して計算し、機器ソフトウェアによって球形であると仮定された。
【0765】
全ての測定は、NPの各バッチについて25℃で3回行った。
【0766】
得られたDLSデータを以下の表3及び
図10Cに示す。見られるように、7-NIを含まない製剤と2%w/wの7-NIを含む製剤との間に実質的な差は観察されない。
【0767】
水性PNL分散液の安定性を、室温で3日間貯蔵した後に調べた。得られたデータを以下の表3に示す。貯蔵時に、7-NI含有PNL分散液のナノ分散液の沈降及びサイズの有意な変化は観察されなかった。
【0768】
【0769】
室温で3日間保存したときのPNL製剤の分散性も試験した。3日間保存した後、100μLのPNL製剤を10mLのDDWに分散させ、凝集について調べた。得られたデータを表4に示し、両方のPNL製剤において凝集がないことを実証する。
【0770】
【0771】
得られたデータは、設計された2%w/wの7-NI含有PNL製剤が安定な製剤であり、DDW中での分散時に凝集を示さないことを実証する。PNLナノ分散液は、水中で振とうすることによって容易に調製され、分散液中の粒子のサイズは20nm未満である。設計された7-NI担持PNL製剤は、7-NIの経口薬物送達、並びに脳への直接送達のための点眼剤又は鼻から脳への鼻腔スプレーに適している。
【0772】
実施例10
持続放出注射用製剤のための7-ニトロインダゾールを充填した例示的なポリマー微粒子
PLGA 75/25微粒子調製物:
100mgのPLGA 75/25(100kDa)、5mgのPLGA 75/25(14kDa)及び25mgの7-ニトロインダゾールを5mLのジクロロメタンに溶解させる。有機混合物を、100mLの0.2%PVAアンモニア水溶液に絶えず撹拌しながら滴下する。全ての有機溶媒が蒸発するまで混合物を室温で5時間撹拌し、次いでエタノールを添加して粒子を沈殿させる。溶媒をデカントし、微粒子を水で2回洗浄し、次いで0.1mL量の0.1%(w/v)Pluronic(登録商標)127で凍結乾燥する。約35ミクロンの平均粒径を有する、約20%w/wの7-ニトロインダゾールが充填された粒子が得られる。インビトロ放出は、37℃で生理的リン酸緩衝液中で決定するが、その際、放出される溶媒を特定の時点で交換し、7-ニトロインダゾール濃度についてUV又はHPLCによって分析する。20日を超える一定の放出が得られる。
【0773】
実施例11
7-ニトロインダゾール塩の調製手順
7-ニトロインダゾールのインダゾール部分は、(i)アゾールのN-Hからプロトンを除去し、それによって、本明細書では7-NIのカチオン性塩と称される、例えば、二価及び三価金属イオン、アンモニウムイオン及びホスホニウムイオンを含む、正に荷電した部分(例えば、カチオン)と塩を形成する負に荷電したインダゾールを得ることによって、又は(ii)本明細書では7-NIのアニオン性塩と称される、プロトン含有分子、例えば、HCl、リン酸、ホスホン酸、硫酸、スルホン酸、及び有機酸を使用して、芳香環の一部である塩基性アミンをプロトン化することによって、塩を形成する傾向がある。このような塩は、7-NIと比較して異なる特性又は改善された特性(例えば、溶解性、熱的特性及び安定性、化学的安定性、製剤化の容易さ、制御放出、生体膜の通過及び生体内分布が挙げられる)を付与し得る。
【0774】
以下は、7-NIの例示的な塩の調製を記載する。同様の塩は、本明細書に記載の7-NIの類似体又は誘導体を用いて調製することができる。
【0775】
塩は、例えば、注射、経口投与、又は鼻腔スプレー投与のための水溶液又は脂質溶液に製剤化することができる。
【0776】
例えば、インダゾールのN-Hプロトンを引き抜いて、カチオン性対応物と塩(カチオン性塩)を形成するインダゾールアニオンを形成することによって形成される塩は、望ましい溶解度を提供する様々なカチオン形成材料を使用して調製することができる。したがって、溶解度は、塩のタイプを選択することによって調整することができる。例えば、ホスファチジルコリンなどの脂質カチオンは、脂溶性7-NIを形成する。トリエチルアンモニウムが末端に付されたPEGがインダゾールアニオンと塩を形成する場合、親水性PEG鎖は分子を親水性にする。
【0777】
7-ニトロインダゾールのカチオン性塩:
カチオン対応物との塩は、対応する塩基を7-ニトロインダゾールと反応させることによって調製される。塩は、FTIR、DSC/TGA熱分析、元素分析及び/又はNMRによって分析される。
【0778】
7-ニトロインダゾールのカリウム/ナトリウム塩(
図11A):インダゾール又はトリアゾール又はピラゾールのカリウム塩についての合成手順を使用して、7-ニトロインダゾールのカリウム/ナトリウム塩を合成する[7~9]。水及び2-プロパノール(1:1)混合物に溶解したモル当量の7-ニトロインダゾールに、モル当量の1M水酸化カリウム/ナトリウム水溶液を添加し、15分間撹拌する。溶液を真空下80℃で蒸発乾固させ、次いで真空オーブン中110℃で4時間更に乾燥させる。
【0779】
7-ニトロインダゾールのカルシウム/マグネシウム塩(
図11B):7-ニトロインダゾール及び水素化カルシウム/マグネシウムを使用して、7-ニトロインダゾールのカルシウム/マグネシウム塩を合成する。乾燥THFに溶解した7-ニトロインダゾール(少なくとも2モル当量)の溶液に、CaH
2/MgH
2を添加し、得られた反応混合物を一晩撹拌する。その後、溶液を真空下で蒸発乾固させる。
【0780】
7-ニトロインダゾールの亜鉛塩(
図11C):7-ニトロインダゾールの亜鉛塩を、ピラゾールの亜鉛塩[10]のための合成手順を使用して合成する。H
2O中のZn(OAc)
2(1モル当量)の溶液に、MeOH中の7-ニトロインダゾール(少なくとも2モル当量)の溶液を撹拌下で添加する。得られた懸濁液(例えば、1:1H
2O:MeOH混合物)を48時間撹拌し、その後濾過する。得られた固体塩を水で洗浄し、真空下で乾燥させる。
【0781】
7-ニトロインダゾールの鉄/コバルト塩
図11D):7-ニトロインダゾールの鉄(III)又はコバルト(III)塩を、ピラゾールのFe(III)又はCo(III)塩の合成手順を使用して合成する[11]。Fe(アセチルアセトネート)
3(Fe(acac)
3)(1モル当量)又はCo(acac)
3(1モル当量)及び過剰の7-ニトロインダゾール(例えば、15モル当量)の混合物を、密閉フラスコ中、窒素下、180℃で6時間、撹拌せずに加熱する。混合物を冷却し、沈殿した固体をアセトンで洗浄して過剰の7-ニトロインダゾールを除去し、次いで濾別して、7-ニトロインダゾールのFe(III)/Co(III)塩を得る。アセトンを蒸発させて、未反応の7-ニトロインダゾールを回収することができる。
【0782】
7-ニトロインダゾールのコリン塩(
図11E):7-ニトロインダゾール及び水酸化コリンを使用して7-ニトロインダゾールのコリン塩を合成する。メタノールに溶解した1モル当量の7-ニトロインダゾールに、1モル当量の水酸化コリンを加え、得られた溶液を一晩撹拌する。その後、溶液を真空中で乾燥するまで蒸発させ、次いで凍結乾燥器中で更に乾燥させる。
【0783】
7-ニトロインダゾールのアニオン性塩:
7-ニトロインダゾールの硫酸塩(
図11F):ピラゾールの硫酸塩の合成手順を使用して、7-ニトロインダゾールの硫酸塩を合成する[12~15]。7-ニトロインダゾール(1又は2モル当量)をアセトニトリル又は別の有機非プロトン性溶媒に溶解し、次いで濃H
2SO
4(1モル当量)を冷却条件下で滴下する。反応混合物を24時間撹拌し、窒素ガス流の存在下で還流する。得られた固体をジエチルエーテルで3回洗浄し、真空オーブン中で一晩乾燥させる。
【0784】
7-NIのリン酸塩及びメシル酸塩を同様に調製する。リン酸対イオンは、例えば、酢酸、フマル酸、及びヘキサン酸を含む有機カルボキシレートで置き換えることができる。
【0785】
実施例12
7-NIの制御放出のためのポリマーゲル製剤
本発明者らは、一旦投与されると、10日間以上にわたって生物学的媒体中で7-NIの一定の放出を提供する、生分解性ポリマーベースの処方物を設計した。
【0786】
例示的な製剤は、ポリ(セバシン酸-co-リシノール酸)(PSARA)ゲルを含むポリマーゲル担体に基づく。
【0787】
7-NI担持ポリマーゲルの調製:
分子量9200のPSA:RAペースト状注射用ポリマーを、以前に調製されたように調製した[Journal of Controlled Release,2017,257,156-162]。7-NI微粉末をポリマーペーストに徐々に添加し、十分に混合して均一な微細ペーストを形成する重量混合によって、7-NIを含むPSA:RA製剤を室温で薬物とともに調製した。ペーストを処理のためにシリンジに充填する。PSA:RA製剤中の7-NIの最終組成は、5%w/wであった。製剤は、19G又は21G針を通して注射可能である。
【0788】
ポリマーゲル中の7-NIの測定:
7-NIの定量は、355nmでの吸収波長を検出することによってメタノール中で行った。
図12Aに示すように、1~20μg/mLの濃度範囲のメタノール中の7-NIの標準曲線を作成した。
【0789】
7-NIの放出を、pH7.2及び37℃の10mMリン酸緩衝液中で、75rpmでの一定の振とう下でモニターした。PBS中の7-NIの溶解度は、0.14mg/mLであることが見出され、これは、文献に報告された溶解度と一致する(例えば、Biopharm.Drug Dispos.2000、21、221-228を参照されたい)。放出溶媒をメタノールで適切に希釈し、吸光度を記録した。
【0790】
少量の7-NIゲル製剤を20mLガラスバイアルに入れ、15mLのPBSをそれに添加した。次いで、バイアルを37℃に加熱し、7-NIの放出を、経時的に記録された吸光度スペクトルに基づいて決定した。各時点で、全ての放出された培地を新鮮な緩衝液と交換した。試料を三連で調製した。
図12Bは、ポリマーゲル製剤からの7-NIの放出プロファイルを示す。図から分かるように、に、7-NIの放出は、PBS中で7日間続いた。
【0791】
実施例13
SHANK3マウスモジュール挙動に対する、7NIを充填させたポリ(セバシン酸-co-リシノール酸)(PSARA)ゲル製剤の効果
7-NIを充填させた高濃度の7-NIの持続放出のためのPSA:RA注射用製剤を、上記の実施例12に記載のように調製した。
【0792】
7 NIを含むポリ(セバシン酸リシノール酸)(PSARA)ゲル製剤の100μL注射を使用して、SHANK3マウスにおけるASD様行動の逆転におけるその効果を評価した。運動活動、社会的相互関係、不安及び興味行動を、本明細書に記載の行動分析を使用して調べた。得られたデータを
図13A~
図13Eに示す。
【0793】
図13Aに示すように、注射後4日目に行ったオープンフィールド試験では、治療した変異マウスと各々の対照群との間に運動活性の有意な変化はなかった。
図13B~
図13Cに示されるように、3チャンバー社交性試験(9日目+10日目)において、1日目及び2日目の両方において、処理マウスは、未処理マウスと比較して、新奇な動物/物体のケージの周りでより多くの時間を過ごし、7-NIが社交性行動に対して逆転効果を有することを示す。
図13Dに示すように、ガラス玉覆い隠し試験(7日目)において、変異マウスはガラス玉を覆い隠さず、これは興味の喪失を示し得るが、処理マウスは10個のガラス玉のうち平均8個を覆い隠し、7-NI治療がマウスの興味を高めることを示した。
図13Eに示されるように、これらのマウスについての不安行動を、高架式十字迷路試験において決定し、得られた結果は、処理マウスが、未処理マウスと比較して、オープンアームにおいて有意により多くの時間を費やしたことを示す。
【0794】
パートIII:
nOS阻害の抗神経がん効果
材料及び方法
SH-SY5Y細胞培養及び薬物処理:
ヒトNB SH-SY5Y細胞をアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection、ATCC)から入手し、10%ウシ胎児血清、2mM L-グルタミン、及び100 U/mlペニシリン-G/100mg/mlストレプトマイシンを補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)及びHam’s F-12(1:1)中で、加湿雰囲気中で維持した(37℃、5%CO
2)。細胞を、25cm
2及び75cm
2プレート上に、ウェスタンブロッティング(WB)については各々7.0×10
5及び2.1×10
6細胞/cm
2の密度で、免疫蛍光については1×10
5の密度でプレーティングした。SH-SY5Y細胞を100μMの7-ニトロインダゾール(7-NI)で24時間処理した(Fujibayashi et al.,2015)。この濃度は、MTT生存率アッセイを用いた用量反応実験(
図14A)において確認された。
【0795】
MTT細胞生存率アッセイ:
神経芽細胞腫細胞増殖に対する7-NIの効果を、比色3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニル-テトラゾール(MTT)アッセイ(Sigma-Aldrich)を使用して決定した。各実験において、各処理を5回又は6回並行して行った。
【0796】
siRNAトランスフェクション:
SH-SY5Y細胞を6ウェルプレート並びに22mm2カバースリップに6.0×104細胞/cm2密度で播種し、リポフェクトアミンRNAi MAX(56530 Invitrogen)を製造業者のプロトコルに従い使用して、20 nM nNOS siRNA(NOS1HSS1072、Invitrogen)で24時間トランスフェクトした。次いで、細胞をリン酸緩化衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、WBのために回収し、免疫蛍光のために固定した(Fujibayashi et al.,2015)。
【0797】
クローン原性生存アッセイ:
細胞を6ウェルプレートに500/ウェル又は1000/ウェルの濃度で3連で播種した。24時間後、7-NIを添加するか(100μMで24時間)、又は細胞を上記のようにsiRNA-nNOSで一過的にトランスフェクトした後、血清含有培地に交換した。細胞を14日間インキュベートして、目に見えるコロニーを形成させた。コロニーをクリスタルバイオレットで染色し、PBSで洗浄し、風乾し、画像化した。ImageJソフトウェアを使用してコロニーを可視化した。50個を超えるコロニーを同定し、計数した(Lopez-Rivera et al.,2014)。
【0798】
NADPH-ジアフォラーゼ活性の測定:
NADPH-ジアフォラーゼ活性アッセイを使用して、ニトロブルーテトラゾリウム塩(NBT)の可視ホルマザンへのNADPH依存性還元に基づいてNOS活性を決定した(Amaroli and Chessa,2012;Seckler et al.,2020)。6ウェル培養プレート中で増殖させたSH-SY5Y細胞を、0.1%Triton X-100、2mM EDTA、及びプロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma、St.Louis,MO)を含有する50mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4)中で溶解させた。100μlの溶解物を、5mM EDTA、0.5mM NBT及び0.5mM NADPHを含有する250μlの50mMトリス-HCl、pH7.5に添加した。37℃で15分間インキュベートした後、ホルマザンの生成を585nmで分光光度的に測定した。データを吸光度単位として表し、各試料のタンパク質含量について正規化した。タンパク濃度は、標準としてBSAを用いたビシンコニン酸(BCA)タンパクアッセイにより測定した(Ortiz-Ortiz et al.,2009)。Griess Assay Kit(Beyotime、Shanghai,China)を製造業者の指示に従って使用して、放出されたNOを測定した。
【0799】
ニトライトアッセイ:
放出されたNOを、製造業者の指示に従いGriessアッセイキット(Sigma-Aldrich、カタログ番号23479)を使用して測定した。
【0800】
ウェスタンブロット(WB):
細胞を、50mM Tris-HCl、1%Nonidet P-40、0.25%デオキシコール酸ナトリウム、150mM NaCl、プロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤カクテルを含有する氷冷RIPA緩衝液(pH7.4)中で溶解した。超音波処理後、溶解物を4℃で30分間、17,000gで遠心分離し、上清を回収した。タンパク質濃度を、BCAタンパク質アッセイで決定した。タンパク質をSDS-PAGEによって分離し、PVDF膜に転写し、以下の抗体でプローブした:Abcam製の抗pMTOR(ウサギ、1:1000希釈)、抗mTOR(ウサギ、1:1000希釈)、抗TSC2(ウサギ、1:1000希釈)、抗nNOS(ウサギ、diled 1:1000)、抗pAKT(ウサギ、1:1000希釈)、抗AKT(ウサギ、1:1000希釈)、抗pRPS6(ウサギ、1:1000希釈)、抗RPS6(マウス、1:1000希釈)、抗シナプトフィジン(マウス、1:1000希釈)、抗β-アクチン(ウサギ、1:1000希釈)、抗-3-ニトロチロシン(ウサギ、1:5000希釈)。抗3-ニトロシンを除く全ての一次抗体は、Cell Signaling Technologyから購入した。次いで、ブロットを、増強化学発光(enhanced chemiluminescence、ECL)システム(Choiら、2018)を使用して可視化した。
【0801】
共焦点顕微鏡法:
ポリ-D-リジンでコーティングしたカバースリップ上で培養した細胞をPBSで3回洗浄し、4%パラホルムアルデヒド中、室温で15~20分間固定した。固定した細胞をPBSで3回洗浄し、透過化緩衝液(0.1%Triton X-100を含有するPBS)の存在下、室温で5分間インキュベートした。PBSで3回洗浄した後、細胞をブロッキング緩衝液(1%BSA、1%ヤギ血清、及び0.1%トリトンX-100を含有するPBS、pH7.4)で室温で30分間ブロッキングし、次いで、以下の抗体:Abcam製の抗nNOS(ウサギ、1:200希釈)、抗NeuN(マウス、1:200希釈)、抗シナプトフィジン(ウサギ、1:200希釈)、抗-3-ニトロチロシン(マウス、1:200希釈)とともに4℃で一晩インキュベートした。抗3-ニトロシンを除く全ての一次抗体は、Cell Signaling Technologyから購入した。次いで、試料をAlexa 488又はAlexa 594結合二次抗体とともに2時間インキュベートし、次いで、DAPI含有封入剤で封入した。マウントしたスライドを共焦点顕微鏡下で観察した(Choi et al.,2018)。
【0802】
統計的分析:
各実験を少なくとも3回繰り返し、個々の実験の結果の間で満足のいく相関が達成された。示されたデータは、各群について3-4個の培養ディッシュの平均である。各実験において、群間の差を、一元配置ANOVA、続いてフィッシャーのLSD多重比較事後検定を使用して評価し、P<0.05の値を統計的有意性を示すとみなした。データを平均±SEMとして表す。
【0803】
実施例14
7-NIは神経芽細胞腫細胞生存率に影響を及ぼす
図14A~
図14Eは、7-NIの最適濃度(
図14A)、及びsiRNAによるnNOSの成功したノックダウン(
図14B~
図14E)を示す。
図14Aは、MTT(用量反応曲線)によって測定されたSH-SY5Yの細胞生存率を示す比較プロットを示す。細胞処理のための7-NIの濃度は100μMであった。データは100%で示した。
図14Bは、nNOSの代表的なブロットである。1、SH-SY5Y;2、SH-SY5Y+陰性対照(NC);及び3、SH-SY5Y+si-nNOS。
図14Cは、nNOS免疫蛍光の代表的な蛍光画像を示す。青色はDAPI(核のマーカー)を示し、緑色はNeuN(ニューロンのマーカー)を示し、赤色はnNOSを示す。
図14Dは、nNOSの相対存在量を示す棒グラフである。
図14Eは、nNOSの相対蛍光強度を示す棒グラフである。
【0804】
実施例15
7-NIによるSH-SY5YにおけるNO産生(ジアフォラーゼ活性)の阻害及びnNOSのサイレンシング
SH-SY5Y細胞は、高レベルのNADPHジアホラーゼ活性を示し、これは、7-NIでの処理又はsiRNAによるnNOSノックダウンによって有意に阻害された(
図15A)。Greissアッセイはまた、7-NIで処理した、又はnNOSサイレンシング後のSH-SY5Y細胞におけるニトライト含量の減少を示した(
図15B)。
【0805】
実施例16
nNOS阻害/ノックダウンは、NO媒介腫瘍増殖を防止する
クローン原性生存アッセイは、SH-SY5Y細胞のnNOSサイレンシング及び7-NI処理後のコロニー数の減少を示した(
図16A~
図16B)。これは、処理された細胞の増殖能力の低下を示す。
【0806】
実施例17
nNOS阻害/ノックダウンは、TSC-2 Sニトロシル化を防止し、mTORシグナル伝達経路の活性を低下させる
7-NIによるSH-SY5Y細胞の処理は、3-Ntyrレベルを半減させた。3-Ntyrレベルの同様の変化が、nNOSノックダウン後の細胞において観察された(
図17A~
図17B)。7-NIによるSH-SY5Y細胞の処理又はnNOSのサイレンシングは、mTORC1シグナル伝達経路の重要な負の調節因子であるTSC-2のレベルの有意な増加をもたらした(Way et al.,2009)。これらの介入はまた、mTORのリン酸化の減少をもたらした。このシグナル伝達経路の上流成分であるプロテインキナーゼ-B(AKT)、及びその下流標的であるRPS6(
図17C~
図17D)のリン酸化も減少した。7-NI及びnNOSの遺伝的除去は、シナプトフィジンのレベルを有意に減少させた(Syp、
図17C~
図17D)。
【0807】
実施例18
nNOSノックダウン又はnNOS阻害後のシナプトフィジンの免疫蛍光の減少
SH-SY5Y細胞は、比較的高い強度の3-Ntyr及びSyp免疫蛍光を示した。nNOSの薬理学的阻害又はノックダウンは、3-Ntyr及びSypの強度を有意に減少させた(
図18A~
図18C)。
【0808】
本発明をその特定の実施形態に関連して説明してきたが、多くの代替形態、修正形態及び変形形態が当業者には明らかであることは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の趣旨及び広い範囲内に入る全てのそのような代替形態、修正形態、及び変形形態を包含することが意図される。
【0809】
本明細書で言及される全ての刊行物、特許及び特許出願は、あたかも個々の刊行物、特許又は特許出願が参照されたときに参照により本明細書に組み込まれるべきであると具体的かつ個別に記載されているかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれるべきであることが本出願人の意図である。加えて、本出願における任意の参考文献の引用又は特定は、そのような参考文献が本発明に対する先行技術として利用可能であることの承認として解釈されるべきではない。セクションの見出しが使用される限りにおいて、それらは必ずしも限定するものとして解釈されるべきではない。加えて、本出願の任意の優先権書類は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0810】
付番に係る参考文献
(他の参考文献は、本明細書に列挙されるとおりである)
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