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特表2024-517918不飽和ポリエステル樹脂のための(メタ)アクリレート系反応性希釈剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】不飽和ポリエステル樹脂のための(メタ)アクリレート系反応性希釈剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 283/01 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
C08F283/01
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023569651
(86)(22)【出願日】2022-04-28
(85)【翻訳文提出日】2023-11-27
(86)【国際出願番号】 EP2022061293
(87)【国際公開番号】W WO2022238128
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】21172951.2
(32)【優先日】2021-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケミカルアンカー
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ザビーネ ケッメルト
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン ベストゲン
(72)【発明者】
【氏名】マルガリタ シュタイン
(72)【発明者】
【氏名】ドリス ザール
(72)【発明者】
【氏名】エリーザベト クラマー
(72)【発明者】
【氏名】ヒラル シャー
【テーマコード(参考)】
4J127
【Fターム(参考)】
4J127AA03
4J127BB041
4J127BB071
4J127BB181
4J127BC021
4J127BC131
4J127BD131
4J127BE371
4J127BE37Y
4J127BF151
4J127BF401
4J127BG051
4J127BG181
4J127CB061
4J127CB141
4J127CB151
4J127CB152
4J127CB222
4J127CB281
4J127CB282
4J127CC111
4J127CC112
4J127DA21
4J127DA64
4J127EA07
4J127FA02
4J127FA03
4J127FA04
4J127FA05
4J127FA14
4J127FA49
(57)【要約】
本発明は、不飽和ポリエステル樹脂のスチレンフリー硬化を可能にする(メタ)アクリレート系の反応性希釈剤組成物に関する。反応性希釈剤組成物は、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、および少なくとも1つの(メタ)アクリレート部位と少なくとも1つの追加のエチレン性不飽和部位とを含む相溶化剤を含有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸エステルモノマーと相溶化剤とを含有する反応性希釈剤組成物であって、
前記相溶化剤が、少なくとも1つの(メタ)アクリレート部位と少なくとも1つの追加のエチレン性不飽和部位とを含み、ビニルエーテル(メタ)アクリレート、アリルエーテル(メタ)アクリレート、およびアルケニル(メタ)アクリレートからなる群から選択されており、
前記(メタ)アクリル酸エステルモノマーと前記相溶化剤とが、互いに異なる化合物である、
反応性希釈剤組成物。
【請求項2】
前記ビニルエーテル(メタ)アクリレートが、モノビニルエーテルモノ(メタ)アクリレート、モノビニルエーテルジ(メタ)アクリレート、モノビニルエーテルトリ(メタ)アクリレート、モノビニルエーテルテトラ(メタ)アクリレート、ジビニルエーテルモノ(メタ)アクリレート、ジビニルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジビニルエーテルトリ(メタ)アクリレート、トリビニルエーテルモノ(メタ)アクリレート、およびトリビニルエーテルジ(メタ)アクリレートから選択されている、請求項1記載の反応性希釈剤組成物。
【請求項3】
前記アリルエーテル(メタ)アクリレートが、モノアリルエーテルモノ(メタ)アクリレート、モノアリルエーテルジ(メタ)アクリレート、モノアリルエーテルトリ(メタ)アクリレート、モノアリルエーテルテトラ(メタ)アクリレート、ジアリルエーテルモノ(メタ)アクリレート、ジアリルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジアリルエーテルトリ(メタ)アクリレート、トリアリルエーテルモノ(メタ)アクリレート、およびトリアリルエーテルジ(メタ)アクリレートから選択されている、請求項1または2記載の反応性希釈剤組成物。
【請求項4】
前記アルケニル(メタ)アクリレートが、(メタ)アクリレートとは異なる1つ以上のエチレン性不飽和アルケニル(C=C)部位を含むモノ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、およびテトラ(メタ)アクリレートから選択されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の反応性希釈剤組成物。
【請求項5】
前記相溶化剤が、4-(ビニルオキシ)ブチルメタクリレート、2-(アリルオキシ)エチルメタクリレート、イソプレノールメタクリレート、2,2-ビス((アリルオキシ)メチル)ブチルメタクリレート、2-((アリルオキシ)メチル)-2-エチルプロパン-1,3-ジイルビス(2-メチルアクリレート)、およびオイゲノールメタクリレートからなる群から選択されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の反応性希釈剤組成物。
【請求項6】
前記相溶化剤が、4-(ビニルオキシ)ブチルメタクリレート、2-(アリルオキシ)エチルメタクリレート、およびイソプレノールメタクリレートである、請求項1から5までのいずれか1項記載の反応性希釈剤組成物。
【請求項7】
前記(メタ)アクリル酸エステルモノマーが、直鎖または分岐のアルキルC~C20を有するアルキル(メタ)アクリレート、(アルキル)アリール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(ポリ)エーテルメタクリレート、およびジメタクリレート、トリメタクリレート、テトラメタクリレートから選択されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の反応性希釈剤組成物。
【請求項8】
前記(メタ)アクリル酸エステルモノマーが、メチルメタクリレート、グリセロールホルマールメタクリレート、イソプロピリデングリセロールメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、ポリエチレングリコール200ジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ブチルジグリコールメタクリレート、およびエチルトリグリコールメタクリレートから選択されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の反応性希釈剤組成物。
【請求項9】
前記(メタ)アクリル酸エステルモノマーが、ベンジルメタクリレートであり、前記相溶化剤が、4-(ビニルオキシ)ブチルメタクリレート、2-(アリルオキシ)エチルメタクリレート、またはイソプレノールメタクリレートである、請求項1から8までのいずれか1項記載の反応性希釈剤組成物。
【請求項10】
前記(メタ)アクリル酸エステルモノマーの量対前記相溶化剤の量の比が、1:1~70:1である、請求項1から9までのいずれか1項記載の反応性希釈剤組成物。
【請求項11】
前記(メタ)アクリル酸エステルモノマーの量対前記相溶化剤の量の比が、10:1~25:1である、請求項1から10までのいずれか1項記載の反応性希釈剤組成物。
【請求項12】
重合禁止剤をさらに含有する、請求項1から11までのいずれか1項記載の反応性希釈剤組成物。
【請求項13】
前記重合禁止剤が、ヒドロキノン、ヒドロキノンエーテル、フェノチアジン、N,N’-(ジフェニル)-p-フェニレンジアミン、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、p-フェニレンジアミン、メチレンブルー、または立体障害を有するフェノールからなる群から選択される、請求項12記載の反応性希釈剤組成物。
【請求項14】
(a)前記(メタ)アクリル酸エステルモノマーを50重量%~99重量%、
(b)前記反応性希釈剤組成物を1重量%~50重量%、
(c)禁止剤を0重量%~0.5重量%
含有する、請求項1から13までのいずれか1項記載の反応性希釈剤組成物。
【請求項15】
少なくとも不飽和ポリエステル樹脂と、請求項1から14までのいずれか1項記載の反応性希釈剤組成物とを含有する、硬化性樹脂組成物。
【請求項16】
少なくとも1種の有機または無機添加剤をさらに含有する、請求項15記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項17】
請求項15または16記載の硬化性樹脂組成物と、少なくとも1種の促進剤とを含有する、予備促進配合物。
【請求項18】
不飽和ポリエステル樹脂を硬化させる方法であって、
(a)請求項15または16記載の硬化性樹脂組成物、あるいは請求項17記載の予備促進配合物を準備すること、
(b)任意選択的に少なくとも1種の有機または無機添加剤を添加すること、および
(c)開始剤を添加することにより硬化プロセスを開始すること
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
不飽和ポリエステル(UP)樹脂は、二塩基性有機酸と多価アルコールとの反応によって形成される不飽和合成樹脂である。不飽和ポリエステル樹脂は、例えばコーティング、接着剤、リライニング、ゲルコート、または複合材料などの様々な用途で広く使用されている。シートモールディングコンパウンド(SMC)やバルクモールディングコンパウンド(BMC)などの複合材料では、UP樹脂がガラス繊維などの固体材料で強化されて、繊維強化プラスチック(FRP)になる。フィラー含有量が高いUP樹脂は、パテ、ポリマーコンクリート、ケミカルアンカー、着色ペースト、または人造大理石に使用される。
【0002】
UP樹脂は、スチレンなどの反応性希釈剤、すなわち架橋/硬化反応性を有する溶媒を使用して硬化させることができる。典型的には、UP樹脂は、高スチレン含有量(通常は最大50重量%)で硬化される。したがって、ほとんどのUP樹脂は不飽和ポリエステルのスチレン溶液からなる。規制、健康、および安全上の理由から、多くの企業は、樹脂中の、臓器に損傷を与えると共に生殖毒性を有すると推定されるスチレンの量を削減し、ひいては、スチレンが削減された系、さらには、スチレンフリーの系を開発することを目指している。スチレンを置き換えるために、スチレンの構造類似体が使用されることが多いものの、このことは、スチレンの直接使用を回避するための一時しのぎの解決策にすぎない。このような回避策の例は、4-メチルスチレン、4-tert-ブチルスチレン、または2,4,6-トリメチルスチレンである。
【0003】
スチレンは生理学に不利な特性を有するにもかかわらず、非常に安価で希釈力が高く、またポリエステル樹脂の不飽和部分と容易に共重合するため、UP樹脂において継続的に使用されている。
【0004】
(メタ)アクリル酸およびそのエステル(すなわち(メタ)アクリレート)は、スチレンと比較して危険性が低く、安全に取り扱うことができるため、(メタ)アクリレートを反応性希釈剤として、または反応性希釈剤組成物中でそれぞれ使用することが特に望ましいと考えられる。メタクリレートはビニルエステル樹脂の反応性希釈剤であるとされている。ビニルエステル樹脂は、(メタ)アクリル酸またはヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応によって(メタ)アクリレート末端基で官能化されたエポキシ樹脂である。この末端基は、反応性希釈剤としてのメタクリレートを用いた最終硬化段階で容易に架橋する。しかしながら、(メタ)アクリレートはUP樹脂と簡単には共重合/架橋しないため、そのような樹脂の反応性希釈剤として使用することはできない。
【0005】
以上のことから、本発明の目的は、UP樹脂のための、スチレンフリーの新規な(メタ)アクリレート系の反応性希釈剤組成物を提供することであった。理想的には、そのような(メタ)アクリレート系の反応性希釈剤組成物は、蒸気圧が低い(メタ)アクリレートを含み、VOC(VOC=揮発性有機化合物)を含まないか、またはVOCが低減された反応性希釈剤組成物さえもたらす。
【0006】
技術水準
中国特許出願公開第111978477号明細書は、複合材料、特にシートモールディングコンパウンド原料、シートモールディングコンパウンド製品、ならびにそれらの製造方法および利用の分野に関する。シートモールディングコンパウンドは、不飽和ポリエステル樹脂、低収縮剤、開始剤、希釈モノマー、スルフヒドリル含有化合物、ガラス微小球、難燃剤、および強化材を含有する。
【0007】
同明細書には、本発明による反応性希釈剤組成物は記載されていない。同様に、同明細書には、この反応性希釈剤組成物を含有する硬化性樹脂組成物、または硬化性樹脂組成物を含有する予備促進配合物は記載されておらず、また本願の反応性希釈剤組成物を含有する硬化性樹脂組成物を提供することによって不飽和ポリエステル樹脂を硬化させる方法も開示されていない。
【0008】
国際公開第2013/124273号は、(リ)ライニングに適したメタクリレート含有樹脂を含む熱硬化性ラジカル硬化性樹脂組成物に関する。
【0009】
この樹脂組成物は、
(a)メタクリレート含有樹脂を30~70重量%、
(b)不飽和ジカルボン酸ビルディングブロックとしてのフマル酸ビルディングブロックと、ジオールビルディングブロックとしてのアルコキシル化ビスフェノールAおよび/またはアルコキシル化ビスフェノールFビルディングブロックとを含む不飽和ポリエステル樹脂を2.5~20重量%、
(c)(a)、(b)、および(d)と共重合可能な、ベンジルメタクリレートではないエチレン性不飽和化合物を1~40重量%、
(d)ベンジルメタクリレート-(請求項1および第1頁第26行目から第2頁第3行目までを参照)を5~60重量%
含有する。
【0010】
同号には、本発明による反応性希釈剤組成物は記載されていない。同様に、同号には、この反応性希釈剤組成物を含有する硬化性樹脂組成物、または硬化性樹脂組成物を含有する予備促進配合物は記載されておらず、また本願の反応性希釈剤組成物を含有する硬化性樹脂組成物を提供することによって不飽和ポリエステル樹脂を硬化させる方法も開示されていない。
【0011】
特開2003-206306号公報は、メチルメタクリレート含有成形材料に関する。この成形材料は、ビニルモノマー(a)と、ビニルモノマー(b)と、ポリマー(c)とを含む樹脂(A)、フィラー(B)、および硬化剤(C)を含有する。
【0012】
同公報には、本発明による反応性希釈剤組成物は記載されていない。同様に、同公報には、この反応性希釈剤組成物を含有する硬化性樹脂組成物、または硬化性樹脂組成物を含有する予備促進配合物は記載されておらず、また本願の反応性希釈剤組成物を含有する硬化性樹脂組成物を提供することによって不飽和ポリエステル樹脂を硬化させる方法も開示されていない。
【0013】
発明の概要
第1の態様では、本発明は、(メタ)アクリル酸エステルモノマーと相溶化剤とを含有するか、またはそれらからなる反応性希釈剤組成物であって、相溶化剤が、少なくとも1つの(メタ)アクリレート部位と少なくとも1つの追加のエチレン性不飽和部位とを含む反応性希釈剤組成物を提供する。
【0014】
第2の態様では、本発明は、少なくとも不飽和ポリエステル樹脂(UPR)と、上記反応性希釈剤組成物とを含有する硬化性樹脂組成物に関する。
【0015】
第3の態様では、本発明は、上記硬化性樹脂組成物と、少なくとも1種の促進剤とを含有する予備促進配合物に関する。
【0016】
第4の態様では、本発明は、不飽和ポリエステル樹脂を硬化させるスチレンフリーの方法であって、
(a)上記硬化性樹脂組成物、あるいは上記予備促進配合物を準備すること、
(b)任意選択的に上記少なくとも1種の有機または無機添加剤を添加すること、および
(c)開始剤を添加することにより硬化プロセスを開始すること
を含む方法を提供する。
【0017】
発明の詳細な説明
本発明者らは、UP樹脂のスチレンフリー硬化を可能にする(メタ)アクリレート系の反応性希釈剤組成物を開発した。
【0018】
より具体的には、本発明者らは、相溶化剤、すなわち少なくとも1つの(メタ)アクリレート部位と少なくとも1つの追加のエチレン性不飽和部位とを含む多官能性、好ましくは二官能性の分子を添加すると、UP樹脂が(メタ)アクリレートと共重合することを見出した。前記少なくとも1つの追加のエチレン性不飽和部位は、例えばビニル、アリル、またはアルケニルであってよい。
【0019】
したがって、本発明は、(メタ)アクリル酸エステルモノマーと相溶化剤とを含有するか、またはそれらからなる反応性希釈剤組成物であって、相溶化剤が、少なくとも1つの(メタ)アクリレート部位と少なくとも1つの追加のエチレン性不飽和部位とを含む反応性希釈剤組成物を提供する。(メタ)アクリル酸エステルモノマーと相溶化剤とは、互いに異なる化合物である。
【0020】
本発明の文脈において、「(メタ)アクリレート」という用語は、メタクリル酸またはアクリル酸のエステルを指す。
【0021】
相溶化剤において、少なくとも1つの(メタ)アクリレート部位および少なくとも1つの追加のエチレン性不飽和部位は、C~C20の鎖長を有する直鎖、環状、または分岐のアルキルまたは(アルキル)アリール基を含むリンカー部位によって連結されていてよく、前記リンカー部位は、O、N、またはSなどの1つ以上のヘテロ原子を任意選択的に含む。
【0022】
相溶化剤は、ビニルエーテル(メタ)アクリレート、アリルエーテル(メタ)アクリレート、およびアルケニル(メタ)アクリレートからなる群から選択することができる。ビニルエーテル(メタ)アクリレートとしては、例えばモノビニルエーテルモノ(メタ)アクリレート、モノビニルエーテルジ(メタ)アクリレート、モノビニルエーテルトリ(メタ)アクリレート、モノビニルエーテルテトラ(メタ)アクリレート;ジビニルエーテルモノ(メタ)アクリレート、ジビニルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジビニルエーテルトリ(メタ)アクリレート;およびトリビニルエーテルモノ(メタ)アクリレート、トリビニルエーテルジ(メタ)アクリレートが挙げられる。アリルエーテル(メタ)アクリレートとしては、例えば、モノアリルエーテルモノ(メタ)アクリレート、モノアリルエーテルジ(メタ)アクリレート、モノアリルエーテルトリ(メタ)アクリレート、モノアリルエーテルテトラ(メタ)アクリレート;ジアリルエーテルモノ(メタ)アクリレート、ジアリルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジアリルエーテルトリ(メタ)アクリレート;およびトリアリルエーテルモノ(メタ)アクリレート、トリアリルエーテルジ(メタ)アクリレートが挙げられる。アルケニル(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリレートとは異なる1つ以上のエチレン性不飽和アルケニル(C=C)部位を含むモノ、ジ、トリ、およびテトラ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0023】
有利には、相溶化剤は、4-(ビニルオキシ)ブチルメタクリレート、2-(アリルオキシ)エチルメタクリレート、イソプレノールメタクリレート、2,2-ビス((アリルオキシ)メチル)ブチルメタクリレート、2-((アリルオキシ)メチル)-2-エチルプロパン-1,3-ジイルビス(2-メチルアクリレート)、およびオイゲノールメタクリレートからなる群から選択され;4-(ビニルオキシ)ブチルメタクリレート、2-(アリルオキシ)エチルメタクリレート、およびイソプレノールメタクリレートは、良好な樹脂相溶性および硬化特性を示すため特に好ましい。
【0024】
(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、直鎖または分岐のアルキルC1~C20を有するアルキル(メタ)アクリレート、(アルキル)アリール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(ポリ)エーテルメタクリレート、ジメタクリレート、トリメタクリレート、テトラメタクリレート、およびそれらの混合物から選択することができる。
【0025】
適切な(メタ)アクリル酸エステルモノマーの例は、メチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、iso-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)クリレート、2-プロピルヘプチル(メタ)アクリレート、iso-デシル(メタ)アクリレート、iso-トリデシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジヒドロジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルホスフェート(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エチルトリグリコール(メタ)アクリレート、ブチルジグリコール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリセロールホルマール(メタ)アクリレート、イソプロピリデングリセリン(メタ)アクリレート、イソソルビドモノ(メタ)アクリレート、イソソルビドジ(メタ)アクリレート、3(4),8(9)-ジメタクリロイルオキシメチル-トリシクロ[5.2.1.0(2.6)]デカン(3,8-ジヒドロキシメチル-トリシクロ[5.2.1.02.6]デカンのジメタクリレート)、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール200ジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートおよびその異性体、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、PPG250ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、およびそれらの混合物である。
【0026】
有利には、(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、メチルメタクリレート、グリセロールホルマールメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、ポリエチレングリコール200ジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ブチルジグリコールメタアクリレート、およびエチルトリグリコールメタクリレートから選択される。
【0027】
低い蒸気圧を有する反応性希釈剤としてのメタクリレートモノマーは、低VOC樹脂組成物、さらには無VOC樹脂組成物を配合するのに有利であることに注目される。複合樹脂にスチレンを使用すると、作業雰囲気中にスチレン蒸気が放出される。これにより、作業者および環境が危険な蒸気にさらされる。メチルメタクリレートはスチレンと比較して危険性が低い化合物であるが、蒸気圧が高いため、これもVOCとして分類される。したがって、VOC含有量を低減するためには、分子量がより高く、ひいては蒸気圧もより低いベンジルメタクリレート、グリセロールホルマールメタクリレート、または1,4-ブタンジオールジメタクリレートのようなメタクリレートモノマーを使用することが好ましい。
【0028】
本発明の特に好ましい実施形態では、(メタ)アクリル酸エステルモノマーはベンジルメタクリレートであり、相溶化剤は4-(ビニルオキシ)ブチルメタクリレート、2-(アリルオキシ)エチルメタクリレート、またはイソプレノールメタクリレートである。
【0029】
本発明は、さらに、
(a)(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたは異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの混合物を50重量%~99重量%;
(b)少なくとも1つの(メタ)アクリレート部位と少なくとも1つの追加のエチレン性不飽和部位とを含む相溶化剤を1重量%~50重量%、
(c)重合禁止剤を0重量%~0.5重量%
含有する反応性希釈剤組成物に関する。
【0030】
各成分(a)、(b)、および(c)の含有量は、反応性希釈剤組成物の合計量を基準とする。特定の実施形態では、(a)、(b)、および(c)の割合は合計100重量%である。
【0031】
(メタ)アクリル酸エステルモノマーおよび相溶化剤は、上で詳しく定義した意味を有する。
【0032】
(メタ)アクリル酸エステルモノマーの量対相溶化剤の量の比は、1:1~70:1、または3:1~40:1、または10:1~25:1、好ましくは20:1である。
【0033】
望ましくない重合を防止するために、本発明による反応性希釈剤組成物中で重合禁止剤(安定剤)を使用することができる。本発明の文脈において、「(重合)禁止剤」および「安定剤」という用語は同義的に使用される。有利には、重合禁止剤は、ヒドロキノン、ヒドロキノンエーテル、例えばヒドロキノンモノメチルエーテルまたはジ-tert-ブチルカテコール、フェノチアジン、N,N’-(ジフェニル)-p-フェニレンジアミン、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、p-フェニレンジアミン、メチレンブルー、または立体障害を有するフェノールからなる群から選択される。好ましくは、重合禁止剤は、ヒドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン、2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチル-フェノール、オクタデシル-3-(3,5)-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート(IRGANOX1076など)、および4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、ならびにそれらの混合物から選択される。
【0034】
さらに、本発明は、少なくとも不飽和ポリエステル樹脂と、上記反応性希釈剤組成物とを含有する硬化性樹脂組成物に関する。
【0035】
好ましい実施形態では、硬化性樹脂組成物は、
(a)不飽和ポリエステル樹脂を30重量%~65重量%、
(b)反応性希釈剤組成物を35重量%~70重量%、
(c)1種以上の更なる有機または無機添加剤を0重量%~20重量%
含有する。
【0036】
各成分(a)、(b)、および(c)の含有量は、硬化性樹脂組成物の合計量を基準とする。特定の実施形態では、(a)、(b)、および(c)の割合は合計100重量%である。
【0037】
本発明の方法によって硬化される適切なUP樹脂は、いわゆるオルト樹脂、イソ樹脂、イソNPG樹脂、およびジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂である。上で定義したUP樹脂は一般に知られており、市販されている。
【0038】
例えば、オルト樹脂は、無水フタル酸、無水マレイン酸、またはフマル酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、または水素化ビスフェノールAなどのグリコールとに基づく。一般的には、1,2-プロピレングリコールから誘導されたものは、反応性希釈剤と組み合わせて使用される。イソ樹脂は、通常、イソフタル酸、無水マレイン酸、またはフマル酸と、グリコールとから調製される。これらの樹脂は、典型的には、オルト樹脂よりも高レベルの反応性希釈剤を含み得る。ビスフェノールAフマル酸エステルは、エトキシル化ビスフェノールAとフマル酸とに基づく。クロレンドは、UP樹脂の調製において塩素/臭素含有無水物またはフェノールから調製される樹脂である。
【0039】
硬化性樹脂組成物は、フィラー、繊維、顔料、分散剤、禁止剤、助剤、および促進剤などの有機または無機の添加剤をさらに含み得る。繊維強化プラスチックを製造するための繊維の例は、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ポリアミド繊維、ホウ素繊維、セラミック繊維、金属繊維、および天然繊維(例えばジュート、ケナフ、工業用麻、亜麻(リネン)、ラミーなど)、またはそれらの任意の組み合わせである。繊維の含有量は、繊維の種類、使用される製造プロセス、および最終的な利用分野によって異なる。例えば、SMC配合物では、例えばガラス繊維の含有量は、好ましくは、最大40重量%の高フィラー含有量と組み合わせて最大35重量%である。SMC用途における樹脂含有量は、好ましくは10重量%~20重量%である。BMC配合物は、好ましくは60重量%の高いフィラー含有量と、好ましくは15重量%の低い繊維含有量を含む。ハンドレイアップでは、60重量%までの繊維含有量であることが好ましい。スプレーアップ用途では、主にチョップドグラスファイバーを使用する、30~35重量%の適度なガラス繊維含有量が好ましい。フィラメントワインディングおよび引抜成形では、30~80重量%のガラスロービングが使用される。
【0040】
硬化性樹脂組成物は、少なくとも1種のフィラーを含み得る。そのようなフィラーは、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、石英、タルク、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、および/またはカオリンからなる群から選択することができる。難燃性のために、ATH(三水酸化アルミニウム)または酸化アンチモンがフィラーとして添加される。代わりに、またはそれに加えて、繊維強化樹脂は、禁止剤、遅延剤、チキソトロープ剤(ヒュームドシリカなど)、および/またはUV吸収剤、またはそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の更なる添加剤も含み得る。
【0041】
硬化性樹脂組成物は、顔料として、酸化鉄、二酸化チタン、硫化亜鉛、酸化亜鉛、および/または有機もしくは無機の着色顔料をさらに含み得る。
【0042】
促進剤としては、アンモニウム、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属のカルボン酸塩、および1,3-ジケトン、例えばアセチルアセトンまたはジエチルアセトアセトアミドが適している。
【0043】
上記のものに加えて、本発明は、上記反応性硬化性樹脂組成物と、少なくとも1種の促進剤とを含有する予備促進配合物を提供する。適切な促進剤は、コバルト(II)塩または錯体、例えばコバルトのハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、酸化物、またはカルボン酸塩である。適切なカルボン酸塩は、例えば乳酸塩、2-エチルヘキサン酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、シュウ酸塩、ラウリン酸塩、オレイン酸塩、リノール酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、アセチルアセトン酸塩、オクタン酸塩、ノナン酸塩、ヘプタン酸塩、ネオデカン酸塩、またはナフテン酸塩である。コバルト(II)塩または錯体は、好ましくはコバルトアルキルカルボン酸塩、例えばエチルヘキサン酸コバルト(II)、オクタン酸コバルト(II)、またはアセチルアセトン酸コバルト、またはコバルトのシクロペンタジエニル系錯体である。コバルト(2-エチルヘキサノエート)、コバルト(ネオデカノエート)、またはコバルト(ナフテネート)が特に好ましい。さらに、ポリマーに結合したコバルト促進剤が適している。
【0044】
あるいは、銅(I)または銅(II)の塩または錯体に基づく促進剤が適している。適切な銅の塩または錯体は、例えば銅のハロゲン化物(塩化物など)、硝酸塩、硫酸塩、またはアルキルカルボン酸塩である。適切なカルボン酸塩は、例えば乳酸塩、2-エチルヘキサン酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、シュウ酸塩、ラウリン酸塩、オレイン酸塩、リノール酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、アセチルアセトン酸塩、オクタン酸塩、ノナン酸塩、ヘプタン酸塩、ネオデカン酸塩、またはナフテン酸塩である。銅(I)または銅(II)の塩または錯体は、好ましくはアルキルカルボン酸塩である。銅(II)アセトネートおよび銅(II)-(2-エチルヘキサノエート)が特に好ましい。
【0045】
あるいは、鉄塩または鉄錯体に基づく促進剤も適している。好ましくは、前記鉄(II)配位化合物は、単座および多座のN-ドナー配位子および/またはO-ドナー配位子が配位した鉄(II)種からなる群から選択される。あるいは、促進剤系(b)中に存在する鉄塩または鉄錯体は、鉄のハロゲン化物、カルボン酸塩、1,3-ジオキソ錯体、およびシクロペンタジエニルに基づく鉄錯体からなる群から選択することもできる。
【0046】
硬化は、通常、本発明による硬化性樹脂組成物に促進剤および開始剤を添加することによって、または予備促進配合物に開始剤を添加することによって開始される。
【0047】
したがって、本発明は、不飽和ポリエステル樹脂を硬化させるスチレンフリーの方法であって、
(a)上記硬化性樹脂組成物、あるいは上記予備促進配合物を準備すること、
(b)任意選択的に上記少なくとも1種の有機または無機添加剤を添加すること、および
(c)開始剤を添加することにより硬化プロセスを開始すること
を含む。
【0048】
UP樹脂の硬化に適した過酸化物としては、従来使用されているケトンペルオキシド、ペルオキシエステル、ジアリールペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、およびペルオキシジカーボネートなどの無機過酸化物および有機過酸化物が挙げられるが、ペルオキシカーボネート、ペルオキシケタール、ヒドロペルオキシド、ジアシルペルオキシド、および過酸化水素も挙げられる。好ましい過酸化物は、有機ヒドロペルオキシド、ケトンペルオキシド、ペルオキシエステル、およびペルオキシカーボネートである。さらにより好ましいものは、ヒドロペルオキシドおよびケトンペルオキシドである。好ましいヒドロペルオキシドとしては、クミルヒドロペルオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、イソプロピルクミルヒドロペルオキシド、tert-アミルヒドロペルオキシド、2,5-ジメチルヘキシル-2,5-ジヒドロペルオキシド、ピナンヒドロペルオキシド、パラメンタンヒドロペルオキシド、テルペンヒドロペルオキシド、およびピネンヒドロペルオキシドが挙げられる。好ましいケトンペルオキシドとしては、メチルエチルケトンペルオキシド、メチルイソプロピルケトンペルオキシド、メチルイソブチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、およびアセチルアセトンペルオキシドが挙げられる。2種以上の過酸化物の混合物、例えばヒドロペルオキシドまたはケトンペルオキシドとペルオキシエステルとの組み合わせも使用することができる。
【0049】
特に好ましい過酸化物はメチルエチルケトンペルオキシドである。当業者であれば、これらの過酸化物を従来の添加剤、例えばフィラー、顔料、および鈍感剤と組み合わせることができることを理解するであろう。鈍感剤の例は、親水性エステルおよび炭化水素系溶媒である。樹脂を硬化させるために使用される過酸化物の量は、好ましくは樹脂100あたり少なくとも0.1(phr)、より好ましくは少なくとも0.5phr、最も好ましくは少なくとも1phrである。過酸化物の量は、好ましくは8phr以下、より好ましくは5phr以下、最も好ましくは2phr以下である。
【0050】
有利には、開始剤は有機過酸化物であり、好ましくはメチルエチルケトンペルオキシド(MEKP)、ベンゾイルペルオキシド(BPO)、クメンヒドロペルオキシド(CuHP)、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0051】
繊維強化プラスチック製品の硬化プロセスは、開始剤系、促進剤系、硬化速度を調整する化合物、および硬化させる樹脂組成物に応じて、-15℃から250℃までの任意の温度で行うことができる。好ましくは、これは、ハンドレイアップ、スプレーアップ、フィラメントワインディング、樹脂トランスファー成形、コーティング(例えばゲルコートおよび標準的なコーティング)、ボタン製造、遠心鋳造、波形シートもしくはフラットパネル、リライニングシステム、コンパウンドの流し込みによるキッチンシンクなどの用途で一般的に使用される周囲温度で行われる。ただし、最高180℃、より好ましくは最高150℃、最も好ましくは最高100℃の温度が使用されるシートモールディングコンパウンド(SMC)、バルクモールディングコンパウンド(BMC)、引抜成形技術などにおいて使用することもできる。
【0052】
通常、繊維強化樹脂(繊維強化プラスチック-FRP)は、相対強度が高く、製品の表面状態が良好であり、耐食性が高く、耐薬品性が高いという利点を有している。そのような利点を活かし、これらは、基本的に、住宅資材、産業資材、タンク、コンテナ、船舶、自動車、電車などの部品として使用される。
【0053】
実施例
モノマーの合成手順
1.1 モノマーの基本合成手順
全ての反応および生成物の取り扱いは、周囲条件で一般的な実験用ガラス器具の中で行った。メチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸無水物(MAAH)、(メタ)アクリロイルクロリド、2-アリルオキシエタノール、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、イソプレノール、オイゲノール、2-((アリルオキシ)メチル)-2-エチルプロパン-1,3-ジオール、2,2-ビス((アリルオキシ)メチル)ブタン-1-オールは、商業/工業的な供給業者から入手し、さらに精製することなく受け取ったままの状態で使用した。
【0054】
オイゲノールメタクリレートは、例えばStanzione, J.F., III, Sadler, J.M., La Scala, J.J. and Wool, R.P. (2012), Lignin Model Compounds as Bio‐Based Reactive Diluents for Liquid Molding Resins. ChemSusChem, 5: 1291-1297に記載されているものなどの文献の手順に従って合成した。
【0055】
イソプレノールメタクリレートは、例えばJacob M. Berlin, Katie Campbell, Tobias Ritter, Timothy W. Funk, Anatoly Chlenov, and Robert H. Grubbs, Ruthenium-Catalyzed Ring-Closing Metathesis to Form Tetrasubstituted Olefins Org. Lett. 2007 9 (7), 1339-1342に記載されているものなどの文献の手順に従って合成した。
【0056】
4-(ビニルオキシ)ブチルメタクリレートは、例えばFarzad Seidi, a Victor Druet, a Nguyen Huynh, a Treethip Phakkeereea and Daniel Crespy Hemiaminal ether linkages provide a selective release of payloads from polymer conjugates Chem. Commun., 2018,54, 13730-13733に記載されているものなどの文献の手順に従って合成した。
【0057】
2-(アリルオキシ)エチルメタクリレートは、例えばXiao-Guang Sun, Craig L. Reeder, and John B. Kerr Synthesis and Characterization of Network Type Single Ion Conductors Macromolecules 2004, 37, 6, 2219-2227に記載されているものなどの文献の手順に従って合成した。
【0058】
2,2-ビス((アリルオキシ)メチル)ブチルメタクリレートおよび2-((アリルオキシ)メチル)-2-エチルプロパン-1,3-ジイルジメチルアクリレートは、米国特許第4640940号明細書に記載されているものなどの文献の手順に従って合成した。
【0059】
モノマーの基本分析手法
NMRスペクトルは、別段の記載がない限り、300KでBruker Avance 300または400分光計で記録し、残留溶媒の共鳴を内部標準とした(H NMR:THF-d8:1.72ppm、C:7.16ppm、トルエン-d8(tol-d8):2.08ppm;CDCl:7.26ppm。13C{H}NMR:THF-d8:25.31ppm、C:128.06ppm、CDCl:77.16ppm)。化学シフトδは、外部標準であるテトラメチルシランを基準としてppmで与えられる(H、13C{H})。Hおよび13C NMRシグナルは、一部は2D NMRスペクトル(H、H-COSY;H、13C-HSQC;H、13C-HMQC)に基づいて割り当てた。
【0060】
重合および複合樹脂
3.1 使用される成分
【表1-1】
【表1-2】
【0061】
3.2 方法
3.2.1 バルク重合および重合時間の決定
バルク重合のために、UPR樹脂の原液および様々な反応性希釈剤を調製した。固体のUPR樹脂を100℃で3時間溶融した。加熱した樹脂に反応性希釈剤を添加し、ローラーベッド上で12~24時間均質化した。調製した原液を、表1~表3に従って様々な相溶化剤と混合した。促進剤を添加し、混合物を2分間撹拌することによって均質化し、続いて開始剤溶液を添加した。混合物を再度1.5分間撹拌し、次いで標準試験管(18×180mm)に移し、硬化させた。硬化した樹脂を乾燥オーブン中にて80℃で8時間、後硬化させた。
【0062】
3.2.2 機械的試験
引張試験は、EN ISO527-1に従って行った。約110~115gの樹脂配合物を使用してフィルムをキャストした(湿潤フィルム厚さ4mmで計算)。フィルムを室温で24時間かけて硬化させた。全てのサンプルを、引張試験の前にオーブン中にて80℃で8時間、後硬化させた。
【0063】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【0064】
参考例は、相溶化剤を添加しないと不透明なポリマー樹脂が形成されることを示している。不透明さは相分離を表し、したがって反応性希釈剤とUPR樹脂との非相溶性を表す。実施例1~6は、相溶化剤を添加すると、相分離を示すことなく透明なポリマーが形成されることを示している。実施例7~12は、反応性希釈剤の混合物も使用できることを示している。実施例11~12は、相溶化剤の性能が反応性希釈剤の適切な選択に依存することも示している。相溶化剤の性能は、2つの異なる過酸化物と2つの異なる促進剤とを使用して示されるように、使用される硬化系に依存しない。
【0065】
【表3】
【0066】
試験した相溶化剤化合物の添加により、相溶化剤TMP-モノアリルエーテルジメタクリレートを除いて、透明なポリマーの形成が示された。
【0067】
【表4】
【0068】
機械的試験からは、反応性希釈剤としてのベンジルメタクリレートを相溶化剤と組み合わせて使用したスチレンフリーのUPR配合物が、標準的なスチレンに基づくUPR樹脂と同等の機械的特性をもたらすことが示された。
【国際調査報告】