(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】エンチノスタットの新規形態
(51)【国際特許分類】
C07D 213/30 20060101AFI20240416BHJP
A61K 31/4406 20060101ALI20240416BHJP
A61P 43/00 20060101ALN20240416BHJP
A61P 35/00 20060101ALN20240416BHJP
【FI】
C07D213/30 CSP
A61K31/4406
A61P43/00 111
A61P35/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023569678
(86)(22)【出願日】2022-05-10
(85)【翻訳文提出日】2023-12-20
(86)【国際出願番号】 EP2022062611
(87)【国際公開番号】W WO2022238389
(87)【国際公開日】2022-11-17
(32)【優先日】2021-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522460852
【氏名又は名称】マクファーラン スミス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】ボノー、ティエリー
(72)【発明者】
【氏名】プレンティス、ゾエ
【テーマコード(参考)】
4C055
4C086
【Fターム(参考)】
4C055AA01
4C055BA01
4C055CA02
4C055CA17
4C055CB10
4C055DA01
4C055GA03
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC17
4C086GA14
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA20
4C086ZB26
4C086ZC20
(57)【要約】
本開示は、エンチノスタットの様々な結晶形態及びそれらの調製のためのプロセスに関し、特に、マレイン酸を有するエンチノスタット化合物の形態A、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態A、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態B、及びコハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Cに関する。本開示はまた、これらの形態のエンチノスタットのいずれかを含む医薬組成物、及び医薬の調製又は疾患の治療におけるこれらの形態の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CuKα線によって測定した際に、26.0°、18.6°、18.1° 2θ±0.2° 2θにX線粉末回折ピークを有することを特徴とする、マレイン酸を有するエンチノスタットの形態A。
【請求項2】
示差走査熱量測定によって測定した際に、約155℃±3℃での吸熱事象の開始及び約161℃±3℃での発熱事象の開始を更に特徴とする、請求項1に記載のマレイン酸を有するエンチノスタットの形態A。
【請求項3】
請求項1に記載のマレイン酸を有するエンチノスタットの形態Aを調製するための方法であって、
a)エンチノスタットとマレイン酸との組み合わせをメタノール中に溶解して、溶液を形成する工程と、
b)前記溶液を冷却して、マレイン酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aを固体として得る工程と、を含む、方法。
【請求項4】
エンチノスタット対マレイン酸のモル比が、約1:0.5である、請求項4に記載の方法。
【請求項5】
請求項1に記載のマレイン酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aを調製するための方法であって、
a)エタノールを、エンチノスタットとマレイン酸とを含む凍結乾燥固体と組み合わせて、スラリーを形成することであって、エンチノスタット対マレイン酸のモル比が、約1:0.5である、形成することと、
b)前記スラリーを室温から約50℃まで温度サイクルさせて、マレイン酸を有するエンチノスタットの形態Aを得ることと、を含む、方法。
【請求項6】
前記スラリーの前記温度サイクルが、各温度について約4時間で行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記スラリーの前記温度サイクルが、各温度について約4日で行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
エンチノスタットとマレイン酸とを含む前記凍結乾燥固体が、(i)エンチノスタットとマレイン酸との混合物をアセトニトリルと水との溶媒混合物中に溶解して、溶液を形成する追加の工程であって、エンチノスタット対マレイン酸のモル比が、約1:0.5である、追加の工程と、(ii)前記溶液を凍結乾燥させて、エンチノスタットとマレイン酸とを含む前記凍結乾燥固体を得る追加の工程と、を含んで調製される、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記溶解工程(i)が、前記溶媒混合物中のエンチノスタットとマレイン酸との前記混合物を超音波処理することを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記凍結乾燥工程(ii)が、約2日間にわたって起こる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
エンチノスタットとマレイン酸とを含む前記凍結乾燥固体が、非晶質である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
CuKα線によって測定した際に、約26.0°、18.7°及び18.3° 2θ±0.2° 2θにX線粉末回折ピークを有することを特徴とする、コハク酸を有するエンチノスタットの形態A。
【請求項13】
示差走査熱量測定によって測定した際に、約136℃±3℃での吸熱事象の開始を更に特徴とする、請求項12に記載のコハク酸を有するエンチノスタットの形態A。
【請求項14】
請求項12に記載のコハク酸を有するエンチノスタットの形態Aを調製するための方法であって、
a)エンチノスタットとコハク酸との組み合わせをメタノール中に溶解して、溶液を形成する工程と、
b)前記溶液を冷却して、コハク酸を有するエンチノスタットの形態Aを固体として得る工程と、を含む、方法。
【請求項15】
エンチノスタット対コハク酸のモル比が、約1:0.5~0.75である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項12に記載のコハク酸を有するエンチノスタットの形態Aを調製するための方法であって、
a)メタノール及びDMFから選択される溶媒を、エンチノスタットとコハク酸とを含む凍結乾燥固体と組み合わせて、スラリーを形成する工程であって、エンチノスタット対コハク酸のモル比が、約1:0.5である、工程と、
b)前記スラリーを室温から約50℃まで温度サイクルさせて、コハク酸を有するエンチノスタットの形態Aを得る工程と、を含む、方法。
【請求項17】
前記スラリーの前記温度サイクルが、各温度について約4時間で行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記スラリーの前記温度サイクルが、各温度について約4日で行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
CuKα線によって測定した際に、17.7、20.8、21.5、25.4、26.5、23.9及び21.7° 2θ±0.2° 2θから選択される2つ以上のX線粉末回折ピークを有することを特徴とする、コハク酸を有するエンチノスタットの形態B。
【請求項20】
示差走査熱量測定によって測定した際に、約134℃±3℃での吸熱事象の開始を更に特徴とする、請求項19に記載のコハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態B。
【請求項21】
請求項19に記載のコハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Bを調製するための方法であって、
a)酢酸エチル、酢酸イソプロピル、及びメチルイソブチルケトンから選択される溶媒を、エンチノスタットとコハク酸とを含む凍結乾燥固体と組み合わせて、スラリーを形成することであって、エンチノスタット対コハク酸のモル比が、約1:0.5である、形成することと、
b)前記スラリーを室温から約50℃まで温度サイクルさせて、コハク酸を有するエンチノスタットの形態Bを得ることと、を含む、方法。
【請求項22】
前記スラリーの温度サイクルが、各温度で約4時間行われる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記スラリーの温度サイクルが、各温度で約4日間行われる、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
CuKα線によって測定した際に、約4.0、8.0、15.7、19.0、19.4、26.7及び24.1° 2θ±0.2° 2θから選択される2つ以上のX線粉末回折ピークを有することを特徴とする、コハク酸を有するエンチノスタットの形態C。
【請求項25】
示差走査熱量測定によって測定した際に、約134℃±3℃での吸熱事象の開始を特徴とする、請求項24に記載のコハク酸を有するエンチノスタットの形態C。
【請求項26】
請求項24に記載のコハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Cを調製するための方法であって、
a)メチルエチルケトンを、エンチノスタットとコハク酸とを含む凍結乾燥固体と組み合わせて、スラリーを形成することであって、エンチノスタット対コハク酸のモル比が、約1:0.5である、形成することと、
b)前記スラリーを室温から約50℃まで温度サイクルさせて、コハク酸を有するエンチノスタットの形態Cを得ることと、を含む、方法。
【請求項27】
前記スラリーの温度サイクルが、各温度で約4時間行われる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記スラリーの温度サイクルが、各温度で約4日間行われる、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
薬学的有効量の、請求項1に記載のマレイン酸を有するエンチノスタットの形態A、請求項12に記載のコハク酸を有するエンチノスタットの形態A、請求項19に記載のコハク酸を有するエンチノスタットの形態B、及び請求項26に記載のコハク酸を有するエンチノスタットの形態Cのうちの1つ以上と、薬学的に許容される賦形剤と、を含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エンチノスタットの様々な結晶形態及びそれらの調製のためのプロセスに関する。本開示はまた、これらの形態のエンチノスタットのいずれかを含む医薬組成物、及び医薬の調製又は疾患の治療におけるこれらの形態の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
エンチノスタット、N-(2-アミノフェニル)-4-[N-(ピリジン-3-イル)-メトキシカルボニルアミノメチル]-ベンズアミドは、ホルモン療法及びいくつかの承認されたPD-1/PD-L1アンタゴニストと組み合わせて複数の固形腫瘍において研究されている、選択的な経口の週1回のクラスI HDAC阻害剤である。エンチノスタットは、以下の構造を有する:
【0003】
【0004】
米国特許第7,973,166号及びRE45,499号は、形態A、形態B、形態C、及び非晶質形態を含むエンチノスタットの様々な多形を開示している。国際公開第2017/081278号は、エンチノスタットの更なる多形、具体的には形態D及び形態E、並びに形態Aを調製するためのプロセスを開示している。国際公開第2017/216761号は、エンチノスタットの更なる結晶形態、安定な非晶質形態、エンチノスタットの非晶質固体分散体、及びそれらの調製のためのプロセスを開示している。
【0005】
米国特許出願公開第2020/0270213号は、エンチノスタットのフマル酸、コハク酸、マレイン酸、及びアジピン酸の共結晶又は塩を含む、エンチノスタットの様々な共結晶又は塩を開示している。エンチノスタット及びマレイン酸化合物は、9.8°±0.2°、15.9°±0.2°、19.7°±0.2°、23.2°±0.2°、14.1°±0.2°、14.8°±0.2°、17.7°±0.2°、18.9°±0.2°、14.5°±0.2°、21.4°±0.2°、23.8°±0.2°及び24.8°±0.2°の2θ値において、Cu-Kα線を使用して測定されるX線粉末回折ピークを有すると記載されている。エンチノスタット及びコハク酸化合物は、3.7°±0.2°、7.3°±0.2°、9.2°±0.2°、9.5°±0.2°、16.6°±0.2°、17.2°±0.2°、17.8°±0.2°、18.5°±0.2°、19.0°±0.2°、20.4°±0.2°、20.8°±0.2°及び24.6°±0.2°の2θ値において、Cu-Kα線を使用して測定されるX線粉末回折ピークを有すると記載されている。
【0006】
これらの参考文献のいずれも、18.6°及び18.1°±0.2° 2θにピークを有するマレイン酸で形成されたエンチノスタット共結晶又は塩を開示していない。更に、これらの参考文献はいずれも、以下のいずれかを有するコハク酸で形成されたエンチノスタット共結晶又は塩を開示していない;18.7°及び18.3°±0.2° 2θにピーク;21.5°、26.5°、23.9°、及び21.7°±0.2° 2θから選択される2つ以上のピーク;又は4.0°、8.0°、15.7°及び19.0°±0.2° 2θから選択される2つ以上のピーク。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、エンチノスタットの様々な結晶形態、すなわち、マレイン酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aと呼ばれる、マレイン酸を用いて形成されたエンチノスタット共結晶又は塩、並びにコハク酸を用いて形成されたエンチノスタット共結晶又は塩の3つの異なる多形、すなわち、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態A、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態B、及びコハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Cを対象とする。本発明は更に、これらの形態の調製のためのプロセスを対象とする。本発明はまた、これらの形態の1つ以上を含む医薬組成物、及び医薬の調製又は疾患の治療におけるそれらの使用を対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】マレイン酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aの代表的なXRPDパターンを提供する。
【
図2】マレイン酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aの代表的な
1H NMRを提供する。
【
図3】マレイン酸を有するエンチノスタット化合物の形態AのTGAプロット及びDSCプロットの代表的なオーバーレイを提供する。
【
図4】コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aの代表的なXRPDパターンを提供する。
【
図5】コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aの代表的な
1H NMRを提供する。
【
図6】コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態AのTGAプロット及びDSCプロットの代表的なオーバーレイを提供する。
【
図7】コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aの代表的なGVS動態プロットを提供する。
【
図8】コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aの代表的なGVS等温線プロットを提供する。
【
図9】コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Bの代表的なXRPDパターンを提供する。
【
図10】コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Bの代表的な
1H NMRを提供する。
【
図11】コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態BのTGAプロット及びDSCプロットの代表的なオーバーレイを提供する。
【
図12】コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Cの代表的なXRPDパターンを提供する。
【
図13】コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Cの代表的な
1H NMRを提供する。
【
図14】コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態CのTGAプロット及びDSCプロットの代表的なオーバーレイを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明は、当業者が様々な実施形態を作製及び使用することを可能にするために提示される。具体的なデバイス、技術、及び用途の説明は、例としてのみ提示される。本明細書に記載された実施例に対する種々の修正は、当業者には容易に明らかとなり、本明細書に記載の全般的原理は、種々の実施形態の趣旨及び範囲から逸脱することなく、その他の実施例及び用途に適用されてもよい。したがって、様々な実施形態は、本明細書に記載及び示される実施例に限定されることを意図するものではないが、特許請求の範囲と一致する範囲が与えられるべきである。
【0010】
用語/定義
本明細書で使用される場合、特に指定されない限り、用語「約(about)」及び「およそ(approximately)」は、例えば、特定の温度又は温度範囲、例えば、溶融、脱水、脱溶媒和又はガラス転移事象を含むDSC又はTGA熱事象を説明する特定の温度又は温度範囲;例えば、温度又は湿度の関数としての質量変化などの質量変化;例えば、質量又は百分率の観点からの溶媒又は水分の含有量;又は、例えば、IR分光法若しくはラマン分光法若しくはXRPDによる分析などにおけるピーク位置;などの、特定の固体形態を特徴付けるために提供される数値又は値の範囲に関連して使用される場合に、その値又は値の範囲が、特定の固体形態を依然として説明しながら当業者に合理的であるとみなされる程度まで逸脱し得ることを示している。
【0011】
本明細書で使用される場合、別段の指定がない限り、「医薬組成物」という用語は、薬学的有効量の、マレイン酸を含むエンチノスタット化合物の形態A、コハク酸を含むエンチノスタット化合物の形態A、コハク酸を含むエンチノスタット化合物の形態B、及びコハク酸を含むエンチノスタット化合物の形態Cのうちの1つ以上と、薬学的に許容される賦形剤とを包含することが意図される。本明細書で使用するとき、用語「医薬組成物」は、錠剤、丸剤、粉剤、液剤、懸濁液、エマルション、顆粒剤、カプセル剤、坐剤、又は注射製剤などの医薬組成物を含む。
【0012】
本明細書で使用される場合、特に指定されない限り、本明細書で使用される用語「結晶性」及び関連用語は、化合物、物質、改質物、材料、構成成分又は生成物を記載するために使用される場合、特に指定されない限り、化合物、物質、改質物、材料、構成成分又は生成物がX線回折によって決定されるように実質的に結晶性であることを意味する。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st edition,Lippincott,Williams and Wilkins,Baltimore,Md.(2005);The United States Pharmacopeia,23rd ed.,1843-1844(1995)を参照されたい。
【0013】
本明細書で使用される場合、特に明記されていない限り、「共結晶」及び「共結晶系」は、特に、超分子シントンアプローチを利用して設計できる非共有相互作用を介して相互作用する化学量論比において2つ以上の異なる成分から構成される固体材料を指す。成分の少なくとも1つがエンチノスタットであり、かつコフォーマーが第2の医薬的に許容される化合物である、共結晶は、コフォーマーとの医薬的エンチノスタット共結晶と呼ばれる。
【0014】
本明細書で使用される場合、別段の指定がない限り、「塩」は、酸と塩基との反応によって生成される物質を指す。塩は、塩基の陽イオン(カチオン)と酸の陰イオン(アニオン)とからなる。本開示では、「塩」は、エンチノスタットとマレイン酸との間で形成される化合物、及びエンチノスタットとコハク酸との間で形成され、本明細書で特定される特性を有する化合物を指す。
【0015】
本明細書で使用される場合、特に指定されない限り、用語「賦形剤」とは、薬学的に許容される有機又は無機担体物質を意味する。賦形剤は、有効な活性成分を含有する製剤を増量する目的で含まれる(したがって、しばしば「増量剤」、「充填剤」又は「希釈剤」と呼ばれる)、又は薬物吸収若しくは溶解性を促進するなど、最終剤形中の活性成分に対して治療的強化を付与するために含まれる、薬剤の活性成分と共に配合された天然又は合成物質であってもよい。賦形剤はまた、予想される貯蔵寿命にわたる変性の防止などのインビトロ安定性の補助に加えて、粉末流動性又は非付着特性を促進することによってなど、活性物質の取り扱いを補助するために、製造プロセスにおいて有用であり得る。
【0016】
本明細書で使用される場合、特に指定されない限り、用語「患者」とは、治療、観察、又は実験の対象である動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを意味する。好ましくは、患者は、治療及び/又は予防される疾患又は障害の少なくとも1つの症状を経験及び/又は呈している。更に、患者は、治療及び/又は予防される障害、疾患又は病状のいずれの症状も呈していない場合があるが、医師、臨床医、又は他の医療専門家により、当該障害、疾患、又は病状を発症するリスクがあるとみなされている。
【0017】
本明細書で使用される場合、本明細書における用語「多型」、「多型形態」又は関連する用語は、分子、塩のイオン、又は結晶形態の結晶格子内の溶媒又はコフォーマーの添加及び処理の異なる配置又は立体配座の結果として、2つ以上の形態で存在し得るAPI(活性医薬成分)遊離塩基又はその塩の結晶形態を意味する。
【0018】
本明細書で使用される場合、特に指定されない限り、結晶形態に関する用語「実質的に」又は「実質的に含まない/純性」とは、その形態が、約30重量%未満、約20重量%未満、約15重量%未満、約10重量%未満、約5重量%未満、又は約1重量%未満の不純物を含有することを意味する。不純物には、例えば、多形形態におけるもの以外のその他の多形形態、水及び溶媒が含まれる場合がある。
【0019】
本明細書で使用される場合、特に指定されない限り、用語「治療する(treat)」、「治療すること(treating)」及び「治療(treatment)」とは、疾患若しくは障害の根絶若しくは寛解、又は疾患若しくは障害に関連する1つ以上の症状の根絶又は寛解を意味する。ある特定の実施形態では、これらの用語は、このような疾患若しくは障害を有する患者に1つ以上の治療剤を投与することに起因する疾患若しくは障害の蔓延又は悪化を最小限に抑えることを指す。いくつかの実施形態では、これらの用語は、特定の疾患の症状の発症後に、その他の追加の活性剤の有無にかかわらず、本明細書で提供される化合物を投与することを意味する。エンチノスタットは、乳がんの治療のためにホルモン療法と組み合わせて研究されている。他の研究は、免疫チェックポイント療法と組み合わせたエンチノスタットが、免疫チェックポイント療法が以前に試みられたが、それにもかかわらず疾患が進行したNSCLC及び黒色腫などの「炎症性」腫瘍において最も有効であり得ることを示している。
【0020】
本明細書で使用される場合、別段の指定がない限り、「室温」という用語は、周囲温度又は作業実験室温度範囲、約18℃~約25℃を指す。
【0021】
本明細書で使用される場合、別段の定めがない限り、「大気圧」という用語は、約760mmHgを指す。
【0022】
したがって、本開示の目的は、実質的に純粋であり、安定であり、拡張可能である、マレイン酸を有するエンチノスタット化合物の形態A、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態A、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態B、及びコハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Cを提供することである。また、本開示の目的は、単離及び取り扱いが可能な、マレイン酸を有するエンチノスタット化合物の形態A、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態A、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態B、及びコハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Cを提供することである。
【0023】
結晶形態及び非晶質形態を特徴付けるための技術としては、示差走査熱量測定(differential scanning calorimetry:DSC)、熱重量分析(thermal gravimetric analysis:TGA)、吸収重量法(gravimetric vapor sorption:GVS)、X線粉末回折(X-ray powder diffractometry:XRPD)、プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)、及び溶解度評価が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
XRPD
XRPDディフラクトグラムを、Cu Kα線(40kV、40mA)及びGeモノクロメータを取り付けたθ-2θゴニオメータを使用して、Bruker D8回折計で収集した。入射ビームは、2.0mmの発散スリット、続いて0.2mmの散乱防止スリット及びナイフエッジを通過する。回折ビームは、2.5°ソーラスリットを備えた8.0mm受光スリットを通過し、続いて、Lynxeye検出器を通過する。データ収集及び分析に使用されるソフトウェアは、それぞれ、Diffrac Plus XRD Commander及びDiffrac Plus EVAである。試料は、受け取ったままの粉末を使用して、フラットプレート試験片として、周囲条件で実施する。試料を、平坦な表面上に穏やかに押圧することによって、又は切断された空洞内に充填することによって、研磨されたゼロバックグラウンド(510)シリコンウェハ上で調製する。試料を、それ自体の面内で回転させる。標準的なデータ収集方法の詳細は以下のとおりである。
・角度範囲:2~42° 2θ
・ステップサイズ:0.05° 2θ
・収集時間:0.5秒/ステップ(総収集時間:6.40分)
【0025】
1H NMR
オートサンプラーを装備し、DRX400コンソール又はSMARTプローブ付きAV3+コンソールによって制御されたBruker 400MHz機器上で1H NMRスペクトルを収集した。特に明記しない限り、試料をDMSO-d6溶媒中で調製する。標準のBruker搭載の実験(1H、13C{1H}、DEPT135)を使用して、Topspinソフトウェア内のICON-NMR構成を使用して自動実験を取得した。ACD Spectrus Processorを使用してオフライン分析を行う。
【0026】
DSC
50位置オートサンプラーを装備したTA Instruments Discovery DSC上でDSCデータを収集する。典型的には、ピンホールアルミニウムパン中で0.5~3mgの各試料を、25℃~300℃に10℃/分で加熱する。50mL/分で乾燥窒素のパージを、試料上に維持する。測定器制御ソフトウェアは、TRIOSであり、データは、TRIOS又はUniversal Analysisを使用して分析する。
【0027】
TGA
25位置オートサンプラーを装備したTA Instruments Discovery TGA上でTGAデータを収集する。典型的には、各試料5~10mgを予め秤量したアルミニウムDSCパンに載せ、周囲温度から350℃まで10℃/分で加熱する。25ml/分での窒素のパージを、試料上に維持する。測定器制御ソフトウェアは、TRIOSであり、データは、TRIOS又はUniversal Analysisを使用して分析する。
【0028】
GVS
収着等温線は、Isochema HISorpソフトウェアによって制御される秘伝IGASorp水分収着分析器を使用して得られる。試料温度は、Grant LT ecocool 150再循環水浴によって25℃に維持する。湿度は、乾燥窒素及び湿潤窒素の流れを250ml/分の総流量で混合することによって制御する。相対湿度は、試料付近に位置する較正したVaisala RHプローブ(動作範囲0~95%RH)によって測定される。%RHの関数としての試料の重量変化(質量緩和)は、微量天秤(精度±0.001mg)によって絶えず監視される。典型的には、20~30mgの試料を、周囲条件下で、風袋引きしたメッシュステンレス鋼バスケット中に入れる。試料を、40%RH及び25℃(典型的な室内条件)でロード及びアンロードする。水分収着等温線は、以下に概説するように実施される(2回のスキャンは1回の完全なサイクルを与える)。標準的な等温線は、0~90%RHの範囲にわたって、10%RHの間隔において25℃で実施される。
【0029】
【0030】
4時間溶解度
十分な試料を1.0mlの培地に懸濁して、約10mg/mlの遊離形態の化合物の最大予想濃度とする。次いで、得られた懸濁液を25℃/750rpmで4時間振盪する。試料溶液のpHを1時間後にチェックして、所望のpHが終始(±0.2)維持されていることを確認する。平衡化後、外観を記録し、飽和溶液の最終pHを測定する。次いで、試料をガラス「C」ファイバーフィルター(粒子保持サイズ1.2μm)で濾過した後、必要に応じて緩衝液で希釈する。定量は、約0.15mg/mlの標準溶液を参照してHPLCによって行う。異なる体積の標準試料溶液、希釈試料溶液及び未希釈試料溶液を注入する。溶解度は、標準注入における主ピークと同じ保持時間で見出されるピークの積分によって決定されるピーク面積を使用して計算される。
【0031】
溶解度測定のためのHPLC法は、以下のとおりである。
【0032】
【0033】
分析は、ダイオードアレイ検出器を備えたAgilent HP1100/Infinity II 1260シリーズシステムで、OpenLABソフトウェアを使用して実施した。
【0034】
溶解度媒体の詳細は、以下のとおりである。
【0035】
【0036】
一実施形態において、マレイン酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aは、以下を含んで、調製される:
a)エンチノスタットとマレイン酸との組み合わせをメタノール中に溶解して、溶液を形成すること、及び
b)溶液を冷却して、マレイン酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aを固体として得ること。
【0037】
一実施形態において、エンチノスタット対マレイン酸のモル比は、約1:0.5である。一実施形態において、エンチノスタットの重量(g)当たり約8~12体積(mL)、特に約10体積のメタノールが、使用される。一実施形態において、溶解は、約45~55℃、特に約50℃で起こる。一実施形態において、冷却は、約0~10℃、特に約5℃までである。一実施形態において、冷却は、約0.1℃/分の速度である。一実施形態は、単離された固体を濾過することを更に含む。更なる実施形態は、単離された固体を乾燥させることを含む。マレイン酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aは、当業者に公知の任意の従来の方法によって乾燥させることができる。一実施形態において、それは真空下で乾燥される。
【0038】
別の実施形態において、マレイン酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aは、以下を含んで、調製される:
a)エタノールを、エンチノスタットとマレイン酸とを含む凍結乾燥固体と組み合わせて、スラリーを形成することであって、エンチノスタット対マレイン酸のモル比が、約1:0.5である、形成すること、及び
b)スラリーを熟成させて、マレイン酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aを得ること。
【0039】
一実施形態において、エンチノスタットとマレイン酸とを含む凍結乾燥固体は、非晶質である。使用されるエタノールの体積は、凍結乾燥固体を溶解するのに十分な体積ではなく、スラリーを形成するのに十分である限り、重要ではない。一実施形態において、凍結乾燥固体中のエンチノスタットの重量(g)当たり約10体積(mL)のエタノールが使用される。一実施形態において、熟成は、室温及び約50℃で、各温度で約4時間の温度サイクルを含む。一実施形態において、熟成は、数日間、例えば、約1~4日間、特に約4日間起こる。一実施形態において、熟成は、懸濁液をもたらす。一実施形態において、懸濁液は、熟成工程後に濾過される。一実施形態において、マレイン酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aは、乾燥される。マレイン酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aは、当業者に公知の任意の従来の方法によって乾燥させることができる。一実施形態において、乾燥は、真空下である。
【0040】
一実施形態において、エンチノスタットとマレイン酸とを含む凍結乾燥固体は、以下を含んで、調製される:
a)エンチノスタットとマレイン酸との混合物をアセトニトリルと水との溶媒混合物中に溶解して、溶液を形成することであって、エンチノスタット対マレイン酸のモル比が、約1:0.5である、形成すること、及び
b)溶液を凍結乾燥させて、エンチノスタットとマレイン酸とを含む凍結乾燥固体を得ること。
【0041】
一実施形態において、エンチノスタットとマレイン酸とを含む凍結乾燥固体は、非晶質である。一実施形態において、溶媒混合物中のアセトニトリル対水の比は、約1:1である。一実施形態において、エンチノスタットの重量(g)当たり約25~35体積(mL)、特に約30体積の溶媒混合物が、使用される。一実施形態において、溶解することは、溶媒混合物中のエンチノスタットとマレイン酸との混合物を超音波処理することを更に含む。一実施形態において、凍結乾燥は、ドライアイス/アセトン浴中で溶液を凍結させることを含む。更なる実施形態において、凍結乾燥は、凍結乾燥器の使用を含む。一実施形態において、凍結乾燥は、数日間にわたって、特に約2日間にわたって起こる。
【0042】
別の実施形態において、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aは、以下を含んで、調製される:
a)エンチノスタットとコハク酸との組み合わせをメタノール中に溶解して、溶液を形成すること、及び
b)溶液を冷却して、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aを固体として得ること。
【0043】
一実施形態において、エンチノスタット対コハク酸のモル比は、約1:0.5~0.75である。一実施形態において、エンチノスタット対コハク酸のモル比は、約1:0.5である。別の実施形態において、エンチノスタット対コハク酸のモル比は、約1:0.75である。一実施形態において、エンチノスタットの重量(g)当たり約8~12体積(mL)、特に約10体積のメタノールが使用される。一実施形態において、溶解は、約45~55℃、特に約50℃で起こる。一実施形態において、冷却は、約0~10℃、特に約5℃までである。一実施形態において、冷却は、約0.1℃/分の速度である。一実施形態は、単離された固体を濾過することを更に含む。更なる実施形態は、単離された固体を乾燥させることを含む。コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aは、当業者に公知の任意の従来の方法によって乾燥させることができる。一実施形態において、乾燥は、真空下である。
【0044】
別の実施形態において、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aは、以下を含んで、調製される:
a)メタノール及びDMFから選択される溶媒を、エンチノスタットとコハク酸とを含む凍結乾燥固体を組み合わせて、スラリーを形成することであって、エンチノスタット対コハク酸のモル比が、約1:0.5である、形成すること、及び
b)スラリーを熟成させて、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aを得ること。
【0045】
一実施形態において、エンチノスタットとコハク酸とを含む凍結乾燥固体は、非晶質である。一実施形態において、溶媒はメタノールである。別の実施形態において、溶媒はDMFである。使用される溶媒の体積は、凍結乾燥固体を溶解するのに十分な体積ではなく、スラリーを形成するのに十分である限り、重要ではない。一実施形態において、凍結乾燥固体中のエンチノスタットの重量(g)当たり約10体積の溶媒が使用される。一実施形態において、熟成は、室温及び約50℃で、各温度で約4時間の温度サイクルを含む。一実施形態において、熟成は、数日間、例えば、約1~4日間、特に約4日間起こる。一実施形態において、熟成は溶液をもたらす。更なる実施形態において、溶液を蒸発に供して、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aを得る。コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aは、当業者に公知の任意の従来の方法によって乾燥させることができる。一実施形態において、乾燥は、真空下である。
【0046】
一実施形態において、エンチノスタットとコハク酸とを含む凍結乾燥固体は、以下を含んで、調製される:
a)エンチノスタットとコハク酸との混合物をアセトニトリルと水との溶媒混合物中に溶解して、溶液を形成することであって、エンチノスタット対コハク酸のモル比が、約1:0.5である、形成すること、及び
b)溶液を凍結乾燥させて、エンチノスタットとコハク酸とを含む凍結乾燥固体を得ること。
【0047】
一実施形態において、エンチノスタットとコハク酸とを含む凍結乾燥固体は、非晶質である。一実施形態において、溶媒混合物中のアセトニトリル対水の比は、約1:1である。一実施形態において、エンチノスタットの重量(g)当たり約55~65体積(mL)、特に約60体積の溶媒混合物が、使用される。一実施形態において、溶解することは、溶媒混合物中のエンチノスタットとコハク酸との混合物を超音波処理することを更に含む。一実施形態において、凍結乾燥は、ドライアイス/アセトン浴中で溶液を凍結させることを含む。一実施形態において、凍結乾燥は、凍結乾燥器の使用を含む。一実施形態において、凍結乾燥は、数日間にわたって、特に約3日間にわたって起こる。
【0048】
別の実施形態において、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Bは、以下を含んで、調製される:
a)酢酸エチル、酢酸イソプロピル、及びメチルイソブチルケトンから選択される溶媒を、エンチノスタットとコハク酸とを含む凍結乾燥固体と組み合わせて、スラリーを形成することであって、エンチノスタット対コハク酸のモル比が、約1:0.5である、形成すること、及び
b)スラリーを熟成させて、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Bを得ること。
【0049】
一実施形態において、エンチノスタットとコハク酸とを含む凍結乾燥固体は、非晶質である。一実施形態において、溶媒は酢酸エチルである。別の実施形態において、溶媒は酢酸イソプロピルである。更なる実施形態において、溶媒はメチルイソブチルケトンである。使用される溶媒の体積は、凍結乾燥固体を溶解するのに十分な体積ではなく、スラリーを形成するのに十分である限り、重要ではない。一実施形態において、凍結乾燥固体中のエンチノスタットの重量(g)当たり約10体積の溶媒が使用される。一実施形態において、熟成は、室温及び約50℃で、各温度で約4時間の温度サイクルを含む。一実施形態において、熟成は、数日間、例えば、約1~4日間、特に約4日間起こる。一実施形態において、熟成は、懸濁液をもたらす。一実施形態において、懸濁液は、濾過される。コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Bは、当業者に公知の任意の従来の方法によって乾燥させることができる。一実施形態において、乾燥は、真空下である。
【0050】
一実施形態において、エンチノスタットとコハク酸とを含む凍結乾燥固体は、以下を含んで、調製される:
a)エンチノスタットとコハク酸との混合物をアセトニトリルと水との溶媒混合物中に溶解して、溶液を形成することであって、エンチノスタット対コハク酸のモル比が、約1:0.5である、形成すること、及び
b)溶液を凍結乾燥させて、エンチノスタットとコハク酸とを含む凍結乾燥固体を得ること。
【0051】
一実施形態において、エンチノスタットとコハク酸とを含む凍結乾燥固体は、非晶質である。一実施形態において、溶媒混合物中のアセトニトリル対水の比は、約1:1である。一実施形態において、エンチノスタットの重量(g)当たり約55~65体積(mL)、特に約60体積の溶媒混合物が、使用される。一実施形態において、溶解することは、溶媒混合物中のエンチノスタットとコハク酸との混合物を超音波処理することを更に含む。一実施形態において、凍結乾燥は、ドライアイス/アセトン浴中で溶液を凍結させることを含む。一実施形態において、凍結乾燥は、凍結乾燥器の使用を含む。一実施形態において、凍結乾燥は、数日間にわたって、特に約3日間にわたって起こる。
【0052】
別の実施形態において、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Cは、以下を含んで、調製される:
a)メチルエチルケトンを、エンチノスタットとコハク酸とを含む凍結乾燥固体と組み合わせて、スラリーを形成することであって、エンチノスタット対コハク酸のモル比が、約1:0.5である、組み合わせること、及び
b)スラリーを熟成させて、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Cを得ること。
【0053】
一実施形態において、エンチノスタットとコハク酸とを含む凍結乾燥固体は、非晶質である。使用されるメチルエチルケトンの体積は、凍結乾燥固体を溶解するのに十分な体積ではなく、スラリーを形成するのに十分である限り、重要ではない。一実施形態において、凍結乾燥固体中のエンチノスタットの重量(g)当たり約10体積のメチルエチルケトンが使用される。一実施形態において、熟成は、室温及び約50℃で、各温度で約4時間の温度サイクルを含む。一実施形態において、熟成は、数日間、例えば、約1~4日間、特に約4日間起こる。一実施形態において、熟成によりペーストが得られ、ペーストは蒸発乾固される。コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Cは、当業者に公知の任意の従来の方法によって乾燥させることができる。一実施形態において、乾燥は、真空下である。
【0054】
一実施形態において、エンチノスタットとコハク酸とを含む凍結乾燥固体は、以下を含んで、調製される:
a)エンチノスタットとコハク酸との混合物をアセトニトリルと水との溶媒混合物中に溶解して、溶液を形成することであって、エンチノスタット対コハク酸のモル比が、約1:0.5である、形成すること、及び
b)溶液を凍結乾燥させて、エンチノスタットとコハク酸とを含む凍結乾燥固体を得ること。
【0055】
一実施形態において、エンチノスタットとコハク酸とを含む凍結乾燥固体は、非晶質である。一実施形態において、溶媒混合物中のアセトニトリル対水の比は、約1:1である。一実施形態において、エンチノスタットの重量(g)当たり約55~65体積(mL)、特に約60体積の溶媒混合物が、使用される。一実施形態において、溶解することは、溶媒混合物中のエンチノスタットとコハク酸との混合物を超音波処理することを更に含む。一実施形態において、凍結乾燥は、ドライアイス/アセトン浴中で溶液を凍結させることを含む。一実施形態において、凍結乾燥は、凍結乾燥器の使用を含む。一実施形態において、凍結乾燥は、数日間にわたって、特に約3日間にわたって起こる。
【0056】
発明の一実施形態は、マレイン酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aを対象とする。本発明の別の実施形態は、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aを対象とする。更なる実施形態は、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Bを対象とする。更なる実施形態は、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Cを対象とする。本発明の更なる実施形態は、本明細書に記載のプロセス実施形態によって調製されたこれらの形態のいずれかを対象とする。
【0057】
本開示はまた、マレイン酸を含むエンチノスタット化合物の形態A、コハク酸を含むエンチノスタット化合物の形態A、コハク酸を含むエンチノスタット化合物の形態B、及びコハク酸を含むエンチノスタット化合物の形態Cのうちの1つ以上と、薬学的に許容される賦形剤と、を含む、医薬組成物を包含する。医薬組成物は、当技術分野で公知の任意の方法に従って調製することができる。
【0058】
本開示は、疾患を治療する際に使用するための医薬を調製する際の、マレイン酸を伴うエンチノスタット化合物の形態A、コハク酸を伴うエンチノスタット化合物の形態A、コハク酸を伴うエンチノスタット化合物の形態B、及びコハク酸を伴うエンチノスタット化合物の形態Cのうちの1つ以上の使用を提供する。
【0059】
本開示は、それを必要とする患者に、マレイン酸を有するエンチノスタット化合物の形態A、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態A、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態B、及びコハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Cのうちの1つ以上を含む医薬組成物を投与することによって、疾患を治療する方法を提供する。本明細書に記載される共結晶又は塩を含むエンチノスタットは、乳がんの治療のためにホルモン療法と組み合わせて、及びNSCLC及び黒色腫の治療のために免疫チェックポイント療法と組み合わせて、使用され得る。本明細書に記載の共結晶又は塩を含むエンチノスタットは、白血病、結腸直腸がん、卵巣がん、口腔がん、肺がん、乳がん、前立腺がん、及び黒色腫を含む悪性腫瘍の治療、並びに自己免疫疾患の治療にも有用であり得る。本明細書に記載される共結晶又は塩を含むエンチノスタットは、上述の疾患のいずれかを治療するのに有用な医薬を調製するのにも使用され得る。
【0060】
医薬組成物の用量は、広範囲にわたって変更されてもよい。投与される最適用量及び投与レジメンは、当業者によって容易に決定されてもよく、投与様式、調剤の強度、及び疾患病状の進行と共に変化する。加えて、患者の性別、年齢、体重、食事、身体活動、投与回数、及び付随疾患を含む、治療される特定の患者に関連する因子により、用量及び/又はレジメンを調節する必要が生じる。
【実施例】
【0061】
本明細書における以下の実施例1~6は、様々なエンチノスタット共結晶又は塩の例示的な実施形態を提供する。
【0062】
実施例1-マレイン酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aの調製
エンチノスタット(750mg)と0.5当量のマレイン酸(120mg)との固体混合物を、超音波処理を用いてMeCN/水(1:1)(30vol、22.5ml)中に溶解する。溶液を4mlバイアルに分割し、それぞれ1.5mlとする(約50mgの遊離形態等価物)。溶液をドライアイス/アセトン浴中で凍結させ、2日間にわたって凍結乾燥させて、共非晶質材料を得る。得られた共非晶質材料をエタノール500μlで湿潤させ、各温度で約4時間間隔で4日間熟成させる(RT/50℃)。4日後、得られた灰色の懸濁液を濾過した後、吸引下で乾燥させる。乾燥固体をXRPDによって分析し、マレイン酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aであると決定する。
【0063】
マレイン酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aは、そのXRPDパターンピークを特徴とする。2θ及びピークの相対%強度値を表1に示す。
【0064】
【0065】
角度測定値は、±0.2° 2θである。一実施形態において、マレイン酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aについての重要な定義ピークは、18.6及び18.1° 2θにおけるピークを含む。別の実施形態において、マレイン酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aについての重要な定義ピークは、26.0° 2θにおけるピークを更に含む。
【0066】
図1は、マレイン酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aの代表的な試料の代表的なXRPDパターンを提供する。
【0067】
図2は、約0.4当量のマレイン酸及び微量の残留エタノールの存在を示す、マレイン酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aの代表的な
1H NMRを提供する。
【0068】
図3は、マレイン酸を有するエンチノスタット化合物の形態AのTGAプロット及びDSCプロットの代表的なオーバーレイを提供する。TGAは、約135~170℃の間で約5.7重量%の損失を示し、DSCは、約155℃で開始する吸熱、及び約161℃で開始する発熱を示す。
【0069】
マレイン酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aは、40℃/75%RHで少なくとも2週間安定であり、XRPDによって形態の変化を示さない。
【0070】
実施例2-マレイン酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aの調製
エンチノスタット(50mg)と0.5当量のマレイン酸(9.5mg)との固体混合物を、50℃でメタノール(500μl、10vol)中に溶解し、0.1℃/分で5℃に冷却する。5℃で懸濁液が形成され、これを濾過によって単離した後、吸引下で乾燥させる。固体をXRPDによって分析し、マレイン酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aであると決定する。
【0071】
実施例3-コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aの調製
エンチノスタット(750mg)と0.5当量のコハク酸(122mg)との固体混合物を、超音波処理を用いてMeCN/水(1:1)(45ml、60vol)中に溶解する。溶液を4mlバイアルに分割し、それぞれ3mlとする(約50mg遊離形態等価物)。溶液をドライアイス/アセトン浴中で凍結させ、3日間にわたって凍結乾燥させて、共非晶質材料を得る。得られた共非晶質材料をメタノール(500μl)で湿潤させ、各温度で約4時間間隔で4日間熟成させる(RT/50℃)。4日後、透明な溶液が得られ、蓋をしないままにしてメタノールを蒸発させると、固体が沈殿する。固体を蒸発乾固させる。乾燥固体をXRPDによって分析し、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aであると決定する。
【0072】
コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aは、そのXRPDパターンピークを特徴とする。2θ及びピークの相対%強度値を表2に示す。
【0073】
【0074】
角度測定値は、±0.2° 2θである。一実施形態において、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aについての重要な定義ピークは、18.7及び18.3° 2θにおけるピークを含む。別の実施形態において、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aについての重要な定義ピークは、26.0° 2θにおけるピークを更に含む。
【0075】
図4は、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aの代表的なXRPDパターンを提供する。
【0076】
図5は、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aの代表的な
1H NMRを提供し、約0.5当量のコハク酸及び微量のメタノールの存在を示す。
【0077】
図6は、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態AのTGAプロット及びDSCプロットの代表的なオーバーレイを提供する。TGAプロットは、分解するまで重量損失を示さない。DSCプロットは、約136℃での吸熱の開始を示す。
【0078】
図7は、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aの代表的なGVS動態プロットを提供する。
図8は、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aの代表的なGVS等温線プロットを提供する。GVSは、約0.5重量%の可逆的な水取り込みを示す。GVS後のXRPDは、GVS中に結晶形態の変化がないことを示す。
【0079】
コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aは、XRPDによって証明されるように、少なくとも28日間、40℃/75%RH及び25℃/97%RHで安定なままである。
【0080】
エンチノスタットの既知の形態と比較した、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aの4時間溶解度を以下に提供する。
【0081】
【0082】
マレイン酸を有するエンチノスタット化合物の形態AのXRPDパターンは、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態AのXRPDパターンと同様であることに留意されたい。マレイン酸及びコハク酸の構造は非常に類似しており、エンチノスタット化合物は類似の構造、したがってXRPDパターンを有し得る可能性がある。
【0083】
拘束されることを望むものではないが、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aは、エンチノスタットの無水ヘミコハク酸共結晶であると考えられる。
【0084】
実施例4-コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aの調製
エンチノスタット(500mg)及びコハク酸(0.5当量、84mg)をメタノール(5ml、10vol)に50℃で溶解する。その後、溶液を、0.1℃/分で、5℃まで冷却する。5℃で2日後、得られた懸濁液を濾過し、吸引下で乾燥させる。単離した固体を室温で真空下で1.5時間乾燥させる。固体は、XRPDによってコハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Aとして同定される。
【0085】
実施例5-コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Bの調製
エンチノスタット(750mg)と0.5当量のコハク酸(122mg)との固体混合物を、超音波処理を用いてMeCN/水(1:1)(45ml、60vol)中に溶解する。溶液を4mlバイアルに分割し、それぞれ3mlとする(約50mgの遊離形態等価物)。溶液をドライアイス/アセトン浴中で凍結させ、3日間にわたって凍結乾燥させて、共非晶質材料を得る。得られた共非晶質材料をメチルイソブチルケトン(500μl)で湿潤させ、各温度で約4時間間隔で4日間熟成させる(RT/50℃)。4日後、懸濁液を得た。懸濁液を濾過し、吸引下で乾燥させた。乾燥固体をXRPDによって分析し、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Bであると決定する。
【0086】
コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Bは、そのXRPDパターンピークを特徴とする。2θ及びピークの相対%強度値を表3に示す。
【0087】
【0088】
角度測定値は、±0.2° 2θである。一実施形態において、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Bについての重要な定義ピークは、21.5、26.5、23.9及び21.7° 2θから選択される少なくとも2つのピークを含む。別の実施形態において、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Bについての重要な定義ピークは、20.8、25.4、及び17.7° 2θにおける1つ以上のピークを更に含む。
【0089】
図9は、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Bの代表的なXRPDパターンを提供する。
【0090】
図10は、約0.5当量のコハク酸及び微量の残留メチルイソブチルケトンの存在を示す、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Bの代表的な
1H NMRを提供する。
【0091】
図11は、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態BのTGAプロット及びDSCプロットの代表的なオーバーレイを提供する。TGAプロットは、約110~160℃の間で約4.4重量%の損失を示す。DSCプロットは、約134℃での吸熱の開始を示す。
【0092】
コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Bは、XRPDによって証明されるように、少なくとも7日間、40℃/75%RHで安定なままである。
【0093】
実施例6-コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Cの調製
エンチノスタット(750mg)と0.5当量のコハク酸(122mg)との固体混合物を、超音波処理を用いてMeCN/水(1:1)(45ml、60vol)中に溶解する。溶液を4mlバイアルに分割し、それぞれ3mlとする(約50mg遊離形態等価物)。溶液をドライアイス/アセトン浴中で凍結させ、3日間にわたって凍結乾燥させて、共非晶質材料を得る。得られた共非晶質材料をメチルエチルケトン(500μl)で潤させ、各温度で約4時間間隔で4日間熟成させる(RT/50℃)。4日後、ペーストが得られる。ペーストをキャップしないままにして蒸発乾固させる。乾燥固体をXRPDによって分析し、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Cであると決定する。
【0094】
コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Cは、そのXRPDパターンピークを特徴とする。2θ及びピークの相対%強度値を表4に示す。
【0095】
【0096】
角度測定値は、±0.2° 2θである。一実施形態において、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Cについての重要な定義ピークは、4.0、8.0、15.7、及び19.0° 2θから選択される少なくとも2つのピークを含む。別の実施形態において、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Cについての重要な定義ピークは、19.4、26.7、及び24.1° 2θにおける1つ以上のピークを更に含む。
【0097】
図12は、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Cの代表的なXRPDパターンを提供する。
【0098】
図13は、エンチノスタット化合物の形態Cの代表的な
1H NMRを提供する。
【0099】
これは、約0.5当量のコハク酸の存在を示し、残留溶媒は存在しない。
【0100】
図14は、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態CのTGAプロット及びDSCプロットの代表的なオーバーレイを提供する。TGAプロットは、約105~160℃で約3.7重量%の損失を示す。DSCプロットは、約134℃での吸熱の開始を示す。
【0101】
コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Cは、XRPDによって証明されるように、少なくとも7日間、40℃/75%RHで安定なままである。
【0102】
拘束されることを望むものではないが、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態A、コハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態B、及びコハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Cは、エンチノスタットのヘミコハク酸共結晶の多形であると考えられる。
【0103】
上記の実施例は、本開示の理解を助けるために記載されており、以下に続く特許請求の範囲に記載される本開示のいずれかを限定するものと意図されない、及びそのように解釈されるべきではない。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CuKα線によって測定した際に、約26.0°、18.7°及び18.3°2θ±0.2°2θにX線粉末回析ピークを有することを特徴とする、コハク酸を有するエンチノスタットの形態A。
【請求項2】
示差走査熱量測定によって測定した際に、約136℃±3℃での吸熱事象の開始を更に特徴とする、請求項1に記載のコハク酸を有するエンチノスタットの形態A。
【請求項3】
請求項1に記載のコハク酸を有するエンチノスタットの形態Aを調製するための方法であって、
a)エンチノスタットとコハク酸との組み合わせをメタノール中に溶解して、溶液を形成する工程と、
b)前記溶液を冷却して、コハク酸を有するエンチノスタットの形態Aを固体として得る工程と、を含む、方法。
【請求項4】
エンチノスタット対コハク酸のモル比が、約1:0.5~0.75である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
請求項1に記載のコハク酸を有するエンチノスタットの形態Aを調製するための方法であって、
a)メタノール及びDMFから選択される溶媒を、エンチノスタットとコハク酸とを含む凍結乾燥固体と組み合わせて、スラリーを形成する工程であって、エンチノスタット対コハク酸のモル比が、約1:0.5である、工程と、
b)前記スラリーを室温から約50℃まで温度サイクルさせて、コハク酸を有するエンチノスタットの形態Aを得る工程と、を含む、方法。
【請求項6】
前記スラリーの前記温度サイクルが、各温度について約4時間で行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記スラリーの前記温度サイクルが、各温度について約4日で行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
CuKα線によって測定した際に、17.7、20.8、21.5、25.4、26.5、23.9及び21.7°2θ±0.2°2θから選択される2つ以上のX線粉末回折ピークを有することを特徴とする、コハク酸を有するエンチノスタットの形態B。
【請求項9】
示差走査熱量測定によって測定した際に、約134℃±3℃での吸熱事象の開始を更に特徴とする、請求項8に記載のコハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態B。
【請求項10】
請求項8に記載のコハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Bを調製するための方法であって、
a)酢酸エチル、酢酸イソプロピル、及びメチルイソブチルケトンから選択される溶媒を、エンチノスタットとコハク酸とを含む凍結乾燥固体と組み合わせて、スラリーを形成することであって、エンチノスタット対コハク酸のモル比が、約1:0.5である、形成することと、
b)前記スラリーを室温から約50℃まで温度サイクルさせて、コハク酸を有するエンチノスタットの形態Bを得ることと、を含む、方法。
【請求項11】
前記スラリーの温度サイクルが、各温度で約4時間行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記スラリーの温度サイクルが、各温度で約4日間行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
CuKα線によって測定した際に、約4.0、8.0、15.7、19.0、19.4、26.7、及び24.1°2θ±0.2°2θから選択される2つ以上のX線粉末回折ピークを有することを特徴とする、コハク酸を有するエンチノスタットの形態C。
【請求項14】
示差走査熱量測定によって測定した際に、約134℃±3℃での吸熱事象の開始を特徴とする、請求項13に記載のコハク酸を有するエンチノスタットの形態C。
【請求項15】
請求項13に記載のコハク酸を有するエンチノスタット化合物の形態Cを調製するための方法であって、
a)メチルエチルケトンを、エンチノスタットとコハク酸とを含む凍結乾燥固体と組み合わせて、スラリーを形成することであって、エンチノスタット対コハク酸のモル比が、約1:0.5である、形成することと、
b)前記スラリーを室温から約50℃まで温度サイクルさせて、コハク酸を有するエンチノスタットの形態Cを得ることと、を含む、方法。
【請求項16】
前記スラリーの温度サイクルが、各温度で約4時間行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記スラリーの温度サイクルが、各温度で約4日間行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
薬学的有効量の、請求項1に記載のコハク酸を有するエンチノスタットの形態A、請求項8に記載のコハク酸を有するエンチノスタットの形態B、及び請求項15に記載のコハク酸を有するエンチノスタットの形態Cのうちの1つ以上と、薬学的に許容される賦形剤と、を含む、医薬組成物。
【国際調査報告】