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特表2024-517927ウイルス感染に対するペプチドワクチン
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】ウイルス感染に対するペプチドワクチン
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/50 20060101AFI20240416BHJP
   C07K 14/165 20060101ALI20240416BHJP
   C07K 16/10 20060101ALI20240416BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20240416BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240416BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240416BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240416BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240416BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20240416BHJP
   C07K 14/74 20060101ALI20240416BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240416BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20240416BHJP
   A61K 39/215 20060101ALI20240416BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20240416BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240416BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
C12N15/50
C07K14/165 ZNA
C07K16/10
C07K14/725
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N5/0783
C07K14/74
C07K16/28
C12Q1/04
A61K39/215
A61P31/14
A61P37/04
G01N33/53 Y
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023569810
(86)(22)【出願日】2022-04-26
(85)【翻訳文提出日】2024-01-04
(86)【国際出願番号】 CN2022089266
(87)【国際公開番号】W WO2022242432
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】63/190,116
(32)【優先日】2021-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523423953
【氏名又は名称】ヴァチーノ バイオテック カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】VACINO BIOTECH CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ジア-ミン
(72)【発明者】
【氏名】リー, イ-ル
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QR48
4B063QS33
4B063QX01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA23
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA45
4B065CA46
4C085AA03
4C085AA38
4C085BA71
4C085DD62
4C085DD86
4C085EE06
4C085FF24
4C085GG03
4H045AA10
4H045AA11
4H045BA10
4H045BA15
4H045CA01
4H045CA40
4H045CA42
4H045DA50
4H045DA76
4H045DA86
4H045EA20
4H045EA31
4H045EA53
4H045FA20
4H045FA74
(57)【要約】
ウイルス感染に対する免疫原性組成物、特に、主要組織適合複合体(MHC)分子と結合すること及びコロナウイルスに対する広域スペクトル免疫を誘導することができるペプチドを有する免疫原性組成物が提供される。
【選択図】 図5B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1~配列番号26、及び配列番号1~配列番号26と少なくとも80%相同であるそのバリアント配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドであって、バリアントが、主要組織適合複合体(MHC)の分子と結合する、及び/又はバリアントペプチドと交差反応するT細胞を誘導する、ペプチド。
【請求項2】
MHCクラスI又はII分子と結合する能力を有し、MHCと結合したときにCD4及び/又はCD8T細胞によって認識されることができる、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のペプチドをコードする核酸。
【請求項4】
請求項1若しくは2に記載のペプチド又は請求項3に記載の核酸を含む免疫原性組成物。
【請求項5】
薬学的に許容できる担体及び/又はアジュバントをさらに含む、請求項4に記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のペプチドを特異的に認識する抗体。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のペプチドと結合することができるT細胞受容体。
【請求項8】
前記ペプチドがMHC分子と結合している、請求項7に記載のT細胞受容体。
【請求項9】
請求項1又は2に記載のペプチド、請求項3に記載の核酸、請求項6に記載の抗体又はその断片、及び請求項7又は8に記載のT細胞受容体又はその断片からなる群から選択される1つの構成成分を含む組換え宿主細胞。
【請求項10】
樹状細胞、T細胞、又はナチュラルキラー(NK)細胞から選択される、請求項9に記載の組換え宿主細胞。
【請求項11】
活性化Tリンパ球を産生するためのin vitro又はex vivo方法であって、T細胞を、適切な抗原提示細胞又は抗原提示細胞を模倣する人工構築物の表面に発現された、抗原負荷ヒトクラスI又はII MHC分子と、前記T細胞を抗原特異的な様式で活性化させるのに十分な期間in vitro又はex vivoで接触させるステップを含み、前記抗原が、請求項1又は2に記載のペプチドである、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法によって産生された活性化Tリンパ球であって、請求項1又は2に記載のペプチドを提示している細胞を選択的に認識する、活性化Tリンパ球。
【請求項13】
請求項1又は2に記載のペプチド、請求項3に記載の核酸、請求項6に記載の抗体又はその断片、請求項7又は8に記載のT細胞受容体又はその断片、請求項9又は10に記載の組換え宿主細胞、及び請求項12に記載の活性化Tリンパ球からなる群から選択される少なくとも1つの活性成分を含む医薬組成物。
【請求項14】
薬学的に許容できる担体、並びに/又は薬学的に許容できる賦形剤及び/若しくは安定化剤をさらに含む、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
それを必要とする対象における病原性感染の予防又は治療における使用のための、請求項4若しくは5に記載の免疫原性組成物又は請求項13若しくは14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
請求項15に記載の使用のための請求項4若しくは5に記載の免疫原性組成物又は請求項13若しくは14に記載の医薬組成物であって、前記病原性感染がコロナウイルスによって誘導される、免疫原性組成物又は医薬組成物。
【請求項17】
請求項16に記載の使用のための請求項4若しくは5に記載の免疫原性組成物又は請求項13若しくは14に記載の医薬組成物であって、前記コロナウイルスが重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)である、免疫原性組成物又は医薬組成物。
【請求項18】
動物又はヒト対象における抗コロナウイルス抗体の生成における使用のための、請求項4若しくは5に記載の免疫原性組成物又は請求項13若しくは14に記載の医薬組成物。
【請求項19】
請求項18に記載の使用のための請求項4若しくは5に記載の免疫原性組成物又は請求項13若しくは14に記載の医薬組成物であって、前記抗コロナウイルス抗体が、コロナウイルスとの結合親和性を有することによって特徴付けられる、免疫原性組成物又は医薬組成物。
【請求項20】
請求項19に記載の使用のための請求項4若しくは5に記載の免疫原性組成物又は請求項13若しくは14に記載の医薬組成物であって、前記コロナウイルスが重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)である、免疫原性組成物又は医薬組成物。
【請求項21】
MHC分子と結合している請求項1又は2に記載のペプチドを含む、複合体。
【請求項22】
請求項1又は2に記載の2つ以上のペプチド及び2つ以上のMHC分子を含む、請求項21に記載の複合体。
【請求項23】
前記2つ以上のペプチドの各々が、前記2つ以上のMHC分子のうちの1つと結合している、請求項21又は22に記載の複合体。
【請求項24】
前記2つ以上のMHC分子の各々が、デキストラン骨格と結び付いている、請求項21~23のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項25】
前記複合体がフルオロフォアをさらに含み、任意選択で、前記フルオロフォアがデキストラン骨格と結び付いている、請求項21~24のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項26】
個体における現在又は以前のコロナウイルス感染の存在又は非存在を決定するための方法における請求項1若しくは2に記載のペプチド又は請求項21~25のいずれか一項に記載の複合体の使用であって、前記方法が、請求項1若しくは2に記載のペプチド又は請求項21~25のいずれか一項に記載の複合体を、前記個体から得られた試料と接触させるステップ、及び前記ペプチド又は複合体と前記試料中に含まれる分子との間の結合の存在又は非存在を決定するステップを含む、使用。
【請求項27】
前記分子が抗体又はT細胞受容体である、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
結合の存在が、現在若しくは以前のコロナウイルス感染の存在を示す、及び/又は結合の非存在が、現在若しくは以前のコロナウイルス感染の非存在を示す、請求項26又は27に記載の使用。
【請求項29】
コロナウイルス特異的T細胞を特定するための方法における、請求項1若しくは2に記載のペプチド又は請求項21~25のいずれか一項に記載の複合体の使用であって、前記方法が、請求項1若しくは2に記載のペプチド又は請求項21~25のいずれか一項に記載の複合体を、個体から得られた試料と接触させるステップ、及び前記ペプチド又は複合体と前記試料中に含まれるT細胞受容体との間の結合の存在又は非存在を決定するステップを含む、使用。
【請求項30】
前記個体が、前記コロナウイルスに現在感染している、請求項29に記載の使用。
【請求項31】
前記個体が、前記コロナウイルスに以前に感染していたが、現在は感染していない、請求項29又は30に記載の使用。
【請求項32】
コロナウイルス特異的T細胞受容体を特定するための方法における、請求項1若しくは2に記載のペプチド又は請求項21~25のいずれか一項に記載の複合体の使用であって、前記方法が、請求項1若しくは2に記載のペプチド又は請求項21~25のいずれか一項に記載の複合体をT細胞受容体と接触させるステップ、及び前記ペプチド又は複合体と前記T細胞受容体との結合の存在又は非存在を決定するステップを含む、使用。
【請求項33】
結合の存在が、前記T細胞受容体がコロナウイルス特異的T細胞受容体であることを示す、及び/又は結合の非存在が、前記T細胞受容体がコロナウイルス特異的T細胞受容体ではないことを示す、請求項32に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
[0001]本出願は、その開示の全体が参照により組み込まれている、2021年5月18日に出願された米国特許仮出願第63/190,116号の優先権及び利益を主張する。
【0002】
[発明の背景]
1.発明の分野
[0002]本発明は、ウイルス感染に対する免疫原性組成物、特に、主要組織適合複合体(MHC)分子に結合すること及びコロナウイルスに対する広域スペクトル免疫を誘導することができるペプチドを有する免疫原性組成物に関する。
【0003】
2.先行技術の説明
[0003]重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)は、2019年後期以来、世界的規模のパンデミック感染症であるコロナウイルス疾患2019(COVID-19)を引き起こすウイルスである。SARS-CoV-2は、2022年4月3日時点で、6,152,095人の死者を含むCOVID-19の489,779,062人の確認例が、WHOに報告されている(https://covid19.who.int)。これらの数は、依然として急速に増え続けている。
【0004】
[0004]SARS-CoV-2は、進化の過程で人々の間に蔓延することにより存続している。今日までに、世界中で発見されたSARS-CoV-2ウイルスの6つの主なサブタイプがある。SARS-CoV-2のスパイクタンパク質のP681H(B.1.1.207)、N501Y/69-70del/P681H(B.1.1.7、アルファバリアント)、N501Y/K417N/E484K(B.1.351、ベータバリアント)、N501Y/E484K/K417T(P.1、ガンマバリアント)の位置の変異、デルタの10個の変異(B.1.617.2)及びオミクロンの30個の変異(B.1.1.529)が発生した。SARS-COV-2ウイルスの変異は継続しており、より悪いことには、COVID-19ウイルスの2つの異なるサブタイプのハイブリッドがXD、XE及びXFなどとして発生した。COVID-19のパンデミックを止めるために広域スペクトルCOVID-19ワクチンを開発することは、SARS-CoV-2の高い変異率のせいで急を要する。
【0005】
[発明の概要]
[0005]本発明は、コロナウイルススパイクタンパク質に基づき設計されたペプチドに関する。ペプチドは、ヒトにおけるコロナウイルス感染を診断、予防、又は治療するために使用される場合がある。本発明者らは、異なるコロナウイルスの間で保存されているペプチドであって、主要組織適合複合体(MHC)の分子に結合することができる、いくつかのペプチドを設計した。ワクチン組成物への1つ又は複数のこのようなペプチドの包含は、1つ若しくは複数のコロナウイルスに対する防御能、及び/又は既存のコロナウイルス感染を治療する能力を付与し得る。各ペプチドはまた、例えば、試料中の、ペプチドと結合することができる分子(例えば、T細胞受容体又は抗体)の存在又は非存在を検出することによって、コロナウイルス感染の存在又は非存在を診断するために使用されている場合がある。コロナウイルスは、例えば、ヒトの流行又はパンデミックにおいて関与が示唆されるコロナウイルスであり得る。コロナウイルスは、例えば、人畜共通起源のコロナウイルスであり得る。コロナウイルスは、例えば、ベータコロナウイルス(Betacoronavirus)属のメンバーであり得る。コロナウイルスは、例えば、サルベコロナウイルス(Sarbecoronavirus)亜属のメンバーであり得る。コロナウイルスは、例えば、SARSコロナウイルス又はSARSコロナウイルス2であり得る。
【0006】
[0006]したがって、本発明は、配列番号1~配列番号26、及び配列番号1~配列番号26と少なくとも80%相同であるそのバリアント配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドを提供し、その際、バリアントは、MHCの分子と結合する、及び/又はバリアントペプチドと交差反応するT細胞を誘導する。
【0007】
[0007]本発明は、以下も提供する:
本発明のペプチドをコードする核酸;
本発明のペプチド又は本発明の核酸を含む免疫原性組成物;
本発明のペプチドを特異的に認識する抗体;
本発明のペプチドと結合することができるT細胞受容体。
本発明のペプチド、本発明の核酸、本発明の抗体又はその断片、及び本発明のT細胞受容体又はその断片からなる群から選択される1つの構成成分を含む組換え宿主細胞;
活性化Tリンパ球を産生するためのin vitro又はex vivo方法であって、in vitro又はex vivoでT細胞を、適切な抗原提示細胞又は抗原提示細胞を模倣する人工構築物の表面に発現された抗原負荷ヒトクラスI又はII MHC分子と、T細胞を抗原特異的な様式で活性化するのに十分な期間接触させることを含み、抗原が本発明のペプチドである、方法;
本発明のペプチドを提示している細胞を選択的に認識する、上記方法によって産生された活性化Tリンパ球。
本発明のペプチド、本発明の核酸、本発明の抗体又はその断片、本発明のT細胞受容体又はその断片、本発明の組換え宿主細胞、及び本発明の活性化Tリンパ球からなる群から選択される少なくとも1つの活性成分を含む医薬組成物;
それを必要とする対象における病原性感染を予防又は治療するための方法であって、対象に、本発明の免疫原性組成物又は医薬組成物の有効量を投与することを含む方法;
それを必要とする対象における病原性感染の予防又は治療における使用のための本発明の免疫原性組成物又は医薬組成物;
それを必要とする対象における病原性感染の予防又は治療のための医薬の製造のための、本発明の免疫原性組成物又は医薬組成物の使用;
抗コロナウイルス抗体を生成するための方法であって、本発明の免疫原性組成物を動物又はヒト対象に投与することを含む方法;
動物又はヒト対象における抗コロナウイルス抗体の生成における使用のための本発明の免疫原性組成物;
動物又はヒト対象における抗コロナウイルス抗体の生成のための医薬の製造のための、本発明の免疫原性組成物の使用;
MHC分子と結合された本発明のペプチドを含む複合体;
個体における現在又は以前のコロナウイルス感染の存在又は非存在を決定するための方法であって、本発明のペプチド又は複合体を、個体から得られた試料と接触させるステップ、及びペプチド又は複合体と試料中に含まれる分子との結合の存在又は非存在を決定するステップを含む方法;
個体における現在又は以前のコロナウイルス感染の存在又は非存在を決定するための方法における本発明のペプチド又は複合体の使用;
コロナウイルス特異的T細胞を特定するための方法であって、本発明のペプチド又は複合体を、個体から得られた試料と接触させるステップ、及びペプチド又は複合体と、試料中に含まれるT細胞受容体との結合の存在又は非存在を決定するステップを含む方法;
コロナウイルス特異的T細胞を特定するための方法における本発明のペプチド又は複合体の使用;
コロナウイルス特異的T細胞受容体を特定するための方法であって、本発明のペプチド又は複合体をT細胞受容体と接触させるステップ、及びペプチド又は複合体とT細胞受容体との結合の存在又は非存在を決定するステップを含む方法;
コロナウイルス特異的T細胞受容体を特定するための方法における本発明のペプチド又は複合体の使用。
【0008】
[0008]これら及び他の態様は、以下の図面と共に採用される好ましい実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。
【0009】
[0009]添付の図面は、本発明の1つ以上の実施形態を例示するものであり、書面の説明と一緒になって本発明の原理を説明するために役立つ。可能な限り、図面全体にわたり実施形態の同じ又は同様の要素を参照するために同じ参照番号が使用される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】濃度1nM、3nM、及び8.9nMでの本発明のペプチド1(配列番号1)、ペプチド12(配列番号12)、及びCMVpp65495-503(配列番号27;陽性対照)のHLAクラスI結合能を示す図である。異なる濃度のペプチドをβ2-ミクログロブリン軽鎖サブユニット及びビオチン標識組換えHLA-A201と共にインキュベートして、ペプチド-HLA複合体を形成させた。次いで、ストレプトアビジンコーティングビーズによってペプチド-HLA複合体を捕捉し、フローサイトメトリーで抗ヒトβ2-ミクログロブリン抗体によって検出した。各データ点は、形成されたペプチド-HLA複合体の数に対応する平均蛍光強度を表し、エラーバーは、標準偏差を表す(n=2)。
図2】本発明のペプチド1~26(配列番号1~26)の濃度8.9nMでのHLAクラスI結合能を示す図である。図1に描写するようにMHC-ペプチド結合アッセイを行った。各バーは、形成されたペプチド-HLA複合体の数に対応する平均蛍光強度を表し、エラーバーは、標準偏差を表す(n=2)。
図3】本発明のペプチド1(配列番号1)及びペプチド12(配列番号12)のMHCクラスIテトラマーアッセイの結果を示す図である。ヒトPBMCを、ペプチド1(配列番号1)又はペプチド12(配列番号12)と結合するMHCクラスIテトラマーで20分間処理し、抗CD8抗体で共染色し、次いで、フローサイトメータで分析した。標準誤差を表すエラーバー付きの平均として結果を表示する(n=3)。*p<0.05。
図4A】本発明のペプチド1(配列番号1)に応答した、ペプチド処理の12日目のCD4 T細胞のサイトカイン(IFN-γ及びIL-4)放出を示す図である。ヒトPBMCを濃度0.4、2、10、50、250nMのペプチド1(配列番号1)で12日間処理し、次いで、細胞内サイトカイン染色及びマルチパラメータフローサイトメトリーに供した。各データ点は、サイトカインの量に対応する平均蛍光強度を表し、エラーバーは、標準誤差を表す(n=3)。
図4B】本発明のペプチド12(配列番号12)に応答した、ペプチド処理の12日目のCD4 T細胞のサイトカイン(IFN-γ及びIL-4)放出を示す図である。ヒトPBMCを濃度0.4、2、10、50、250nMのペプチド12(配列番号12)で12日間処理し、次いで、細胞内サイトカイン染色及びマルチパラメータフローサイトメトリーに供した。各データ点は、サイトカインの量に対応する平均蛍光強度を表し、エラーバーは、標準誤差を表す(n=3)。
図5A】各免疫処置の2週間後のBALB/cマウスにおける総IgG量を示す図である。BALB/cマウス(n=10/群)に、45μgの本発明のペプチド1(配列番号1)を2週間間隔で3回(0、14、及び28日目に)筋肉内注射した。初回注射の1日前及び各注射の2週間後(-1、13、27、及び41日目)に抗血清を収集し、総IgG ELISAアッセイに供した。各点は、個々の血清試料の総IgG量を表す。各箱ひげ図は、25~75パーセンタイルの測定値を示す。エラーバーは、10及び90パーセンタイルに対応し、各ボックスの水平バーは、平均を表す。***p<0.001。
図5B】3回目の免疫処置の2週間後のBALB/cマウスにおける抗スパイクIgG力価を示す。図5Aに描写するようにマウスに免疫処置し(n=10/群)、初回注射の1日前(-1日目、投薬前)及び3回目の注射の2週間後(41日目、投薬後)に抗血清を収集し、抗スパイクIgG ELISAアッセイに供した。各点は、個別の血清試料の抗スパイクIgG力価を表す。各箱ひげ図は、25~75パーセンタイルの測定値を示す。エラーバーは、10及び90パーセンタイルに対応し、各ボックスの水平バーは、平均を表す。***p<0.001。
図6A】3回目の免疫処置の2週間後のBALB/cマウスにおける総IgG量を示す図である。BALB/cマウス(n=3~4/群)に、400μgの本発明のペプチド12(配列番号12)を2週間間隔で3回(0、14、及び28日目に)筋肉内注射した。初回注射の1日前(-1日目、投薬前)及び3回目の注射の2週間後(41日目、投薬後)に抗血清を収集し、総IgG ELISAアッセイに供した。各点は、個々の血清試料の総IgG量を表し、水平バーは、各群の平均を表す。***p<0.001。
図6B】3回目の免疫処置の2週間後のBALB/cマウスにおける抗スパイクIgG力価を示す図である。図6Aに描写したように抗血清を収集し(n=4/群)、抗スパイクIgG ELISAアッセイに供した。各点は、個々の血清試料の抗スパイクIgG力価を表し、水平バーは、各群の平均を表す。*p<0.05、***p<0.001。
図7A】3回目の免疫処置の2週間後のBALB/cマウスにおける総IgG量を示す図である。BALB/cマウス(n=5/群)に、1%(v/v)PLCL-PEG-PLCLと共に製剤化された200μgの本発明のペプチド1(配列番号1)を2週間間隔で3回経口投与した(0、14、及び28日目)。初回注射の1日前(-1日目、投薬前)及び3回目の注射の2週間後(41日目、投薬後)に抗血清を収集し、総IgG ELISAアッセイに供した。各点は、個々の血清試料の総IgG量を表し、水平バーは、各群の平均を表す。***p<0.001。
図7B】3回目の免疫処置の2週間後のBALB/cマウスにおける抗スパイクIgG力価を示す図である。図7Aに描写したように抗血清を収集し(n=5/群)、抗スパイクIgG ELISAアッセイに供した。各点は、個々の血清試料の抗スパイクIgG力価を表し、水平バーは、各群の平均を表す。**p<0.01。
【0011】
[好ましい実施形態の詳細な説明]
[0021]本発明は、配列番号1~配列番号26及び配列番号1~配列番号26と少なくとも80%相同であるそのバリアント配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドに関し、その際、バリアントは、主要組織適合複合体(MHC)の分子と結合する、及び/又はバリアントペプチドと交差反応するT細胞を誘導する。配列番号1~26は、表1に示される。
[0022]
【0012】
【表1】
【0013】
[0023]配列番号1~26を設計するために、ヒトSARS-CoV-2スパイクタンパク質のよく保存された領域を選択し、ヒト白血球抗原(HLA)の分子構造に基づき9~10残基長を有する短鎖抗原ペプチドを生成した。次いで、これらのペプチドをHLA結合アッセイに供して、それらとHLA分子との結合活性を確認し、ペプチドの中からHLAと強い結合活性を有するペプチドを選択した。したがって、本発明のペプチドは、特にMHCクラスI分子における、MHC分子と結合することができる。
【0014】
[0024]一部の実施形態では、本発明のペプチドは、MHCクラスI又はII分子と結合する能力を有し、ペプチドがMHCと結合したときに、ペプチドは、CD4及び/又はCD8 T細胞によって認識されることができる。
【0015】
[0025]一部の実施形態では、バリアント配列は、配列番号1~配列番号26と少なくとも80%相同である。一部の実施形態では、バリアント配列は、配列番号1~配列番号26と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも95%相同である。各々の可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
【0016】
[0026]本明細書に使用される場合、「コロナウイルス(CoV)」という用語は、哺乳類及び鳥類に疾患を引き起こすコロナウイルス科(Coronaviridae)の関連RNAウイルスの群を指す。7つのヒトコロナウイルス(HCoV)、すなわち、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)及び新型コロナウイルス(2019-nCoV、別名SARS-CoV-2)がこれまでに特定されている。高病原性SARS-CoV、MERS-CoV、及び2019-nCoVとは異なり、4つのいわゆる一般HCoVは、一般的に軽度の上気道の病気を引き起こし、成人におけるかぜ症例の15%~30%の原因となるが、重症及び生命を脅かす下気道感染が、時々、乳児、高齢者、又は免疫無防備状態の患者に起こる可能性がある(Encyclopedia of Virology.2021:428~440)。
【0017】
[0027]本明細書に使用される場合、「重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)」という用語は、コロナウイルス疾患2019(COVID-19)を引き起こすコロナウイルス株を指す。SARS-CoV-2は、ゲノムサイズが29,903塩基のポジティブセンス一本鎖RNAウイルスである。各SARS-CoV-2ビリオンは、直径50~200ナノメートルであり、S(スパイク)、E(エンベロープ)、M(膜)、及びN(ヌクレオカプシド)タンパク質として知られる4つの構造タンパク質を有する。Nタンパク質は、RNAゲノムを収容し、S、E、及びMタンパク質は、一緒になって、ウイルスエンベロープを生み出す。スパイクタンパク質は、ウイルスが宿主細胞の膜に付着し、それと融合できるようにすることを担うタンパク質であり;具体的には、そのS1サブユニットが付着を触媒し、S2サブユニットが融合を触媒する。
【0018】
[0028]本明細書に使用される場合、「主要組織適合複合体(MHC)」という用語は、免疫システムが外来物質を認識するのを助ける、細胞表面に見出されるタンパク質をコードする遺伝子の群を指す。MHCタンパク質は、すべての高等脊椎動物に見出される。ヒトにおいて、複合体はまた、ヒト白血球抗原(HLA)システムと呼ばれる。MHCは、主に膜結合形態で存在し、免疫システムの調節を担う。MHCは、細胞表面で外来又は自己タンパク質のペプチド断片を提示し、細胞傷害性T細胞のT細胞受容体(TCR)がそれを認識及び結合できるようにすることによって、細胞傷害性T細胞を活性化する。MHCは、主に2種類に分類される場合がある。MHCクラスIは、ほぼすべての細胞の表面に存在し、一方、MHCクラスIIは、NK細胞、マクロファージ、及び樹状細胞などの抗原提示細胞(APC)にだけ存在する。MHCクラスIは、それに特異的ペプチド断片が負荷された場合、TCRを発現している細胞傷害性T細胞を選択的に活性化することができ、したがって、膜結合ドメインが除去された組換えMHCクラスIは、癌又は感染症の治療のために使用される。MHCクラスIIとは異なり、溝にペプチドが負荷されていない場合、MHCクラスIの大部分は不安定である。したがって、組換えMHCクラスIは、標的合成ペプチドを負荷している形態で、又はα鎖と融合された形態で調製される。加えて、微生物を使用して発現された場合に再フォールディングが適正に行われないおそれがあるというリスクがあるので、組換えMHCクラスIは一般的に動物細胞を使用して発現される。当技術分野において、HLA及びMHCは、同じ意味で互換的に使用され、HLAはヒトにおいてMHCの代わりに使用される。本明細書において、「HLA」及び「MHC」という用語は、同じ意味で互換的に使用され得る。
【0019】
[0029]本明細書に使用される場合、本発明のペプチドを記載するために使用される命名法は、従来の常法に従い、その際、アミノ基(N末端)及び/又は5’は、左側に表示され、カルボキシル基(C末端)及び/又は3’は、右側に表示される。
【0020】
[0030]本明細書に使用される場合、「ペプチド」という用語は、L型及びD型の両方を含むアミノ酸の分子鎖を指す。アミノ酸は、必要ならば、例えばマンノシル化、グリコシル化、アミド化(詳細にはC末端アミド)、カルボキシル化又はリン酸化によって、in vivo又はin vitroで修飾することができるが、これらの修飾は本来の分子の生物学的活性を保存しなければならないことを条件とする。加えて、ペプチドは、キメラタンパク質の一部分であってもよい。
【0021】
[0031]ペプチドの機能的誘導体もまた、本発明に含まれる。機能的誘導体は、配列全体のうち1つ以上のアミノ酸が異なっているペプチドを含むことが意図され、ペプチドは、欠失、置換、逆位又は付加を有する。生物学的及び免疫学的活性を本質的には変更しないと予期できるアミノ酸置換が記載されている。関連アミノ酸の間でのアミノ酸交換又は進化において頻繁に発生した交換には、とりわけ、Ser/Ala、Ser/Gly、Asp/Gly、Asp/Asn及びIle/Valが含まれる。
【0022】
[0032]本発明によるペプチドは、合成的に又は組換えDNA技術によって産生することができる。合成ペプチドを産生するための方法は、当技術分野において周知である。
【0023】
[0033]ペプチド合成のための有機化学的方法は、均一相の、又はいわゆる固相の助けを借りた、縮合反応による、必要なアミノ酸のカップリングを含むと考えられる。縮合反応は、以下のように実行することができる:縮合剤の存在下での遊離カルボキシル基及び保護された他の反応基を有する化合物(アミノ酸、ペプチド)と、遊離アミノ基及び保護された他の反応基を有する化合物(アミノ酸、ペプチド)との縮合。活性化カルボキシル基及び遊離の又は保護された他の反応基を有する化合物(アミノ酸、ペプチド)と、遊離アミノ基及び遊離の又は保護された他の反応基を有する化合物(アミノ酸、ペプチド)との縮合。カルボキシル基の活性化は、とりわけ、カルボキシル基を、酸ハロゲン化物、アジド、無水物、イミダゾリド又は活性化エステル、例えば、N-ヒドロキシ-スクシンイミド、N-ヒドロキシ-ベンゾトリアゾール又はp-ニトロフェニルエステルに変換することによって実行することができる。
【0024】
[0034]上記縮合反応のための最も一般的な方法は:カルボジイミド法、アジド法、混合酸無水物法及び活性化エステルを使用する方法、例えば、The Peptides,Analysis,Synthesis,Biology、1~3巻(Gross、E.及びMeienhofer、J.編)1979、1980、1981(Academic Press、Inc.)に記載されている方法である。
【0025】
[0035]所与のアミノ酸配列の「バリアント」によって、本発明者らは、配列番号1~配列番号26からなる所与のアミノ酸配列からなるペプチドと実質的に同じ方法でMHC分子と依然として結合することができるように、アミノ酸残基の、例えば1つ又は2つの側鎖が、(例えばそれらを別の天然アミノ酸残基の側鎖又は何か他の側鎖に交換することによって)変更されていることを意味する。例えば、ペプチドは、HLA-A*02などの適切なMHC分子の結合溝と相互作用及び結合する能力を改善するとはいかないまでも、少なくとも維持するように修飾される場合がある。
【0026】
[0036]当業者は、特異的ペプチドのバリアントによって誘導されたT細胞が、ペプチド自体と交差反応することができるかを評価することができよう。
【0027】
[0037]本発明はまた、本発明のペプチドをコードする核酸に関する。したがって、核酸は、配列番号1~26のいずれか1つ、又はそのバリアントを含む又はそれからなるペプチドをコードする。
【0028】
[0038]本明細書に使用される場合、「ペプチドをコードする核酸」という用語は、ペプチドをコードするヌクレオチド配列を指す。特定のペプチド、オリゴペプチド、又はポリペプチドをコードする核酸は、天然であってもよく、また、合成的に構築されたものであってもよい。核酸(例えばポリヌクレオチド)は、例えば、ポリヌクレオチドの一本及び/若しくは二本鎖、又はネイティブ若しくは安定化形態の、デオキシリボ核酸(DNA)、相補性DNA(cDNA)、ペプチド核酸(PNA)、リボ核酸(RNA)、又はそれらの組合せ、例えば、ホスホロチオエート骨格を有するポリヌクレオチドの場合があり、核酸がペプチドをコードする限り、核酸はイントロンを含有する場合も、含有しない場合もある。
【0029】
[0039]本発明はまた、本発明のペプチド又は本発明の核酸を含む免疫原性組成物に関する。したがって、免疫原性組成物は、配列番号1~26のいずれか1つ又はそのバリアントを含む又はそれからなるペプチドを含む。或いは、免疫原性組成物は、配列番号1~26のいずれか1つ、又はそのバリアントを含む又はそれからなるペプチドをコードする核酸を含む。
【0030】
[0040]一部の実施形態では、免疫原性組成物は、薬学的に許容できる担体及び/又はアジュバントをさらに含む。
【0031】
[0041]一部の実施形態では、免疫原性組成物は、少なくとも1つの本発明のペプチドを含む。一部の実施形態では、免疫原性組成物は、2つ以上の本発明のペプチドを含む。本発明のペプチドを含む免疫原性組成物は、ペプチドワクチンとも呼ばれる。
【0032】
[0042]本明細書に使用される場合、「ペプチドワクチン」という用語は、特定の病原体に対する免疫を改善する少なくとも1つのペプチドから構成される製剤を指す。
【0033】
[0043]一部の実施形態では、免疫原性組成物は、本発明の少なくとも1つのペプチドをコードする核酸を含む。一部の実施形態では、免疫原性組成物は、本発明の2つ以上のペプチドをコードする核酸を含む。一部の実施形態では、核酸はDNAである。一部の実施形態では、核酸はRNAである。一部の実施形態では、核酸はmRNAである。
【0034】
[0044]本明細書に使用される場合、「免疫原性組成物」という用語は、免疫応答を産生することができる組成物を指す。
【0035】
[0045]一部の実施形態では、免疫原性組成物は、投与されると、T細胞の活性化を示す。一部の実施形態では、免疫原性組成物は、投与されると、CD4 T細胞の活性化を示す。一部の実施形態では、免疫原性組成物は、投与されると、CD8 T細胞の活性化を示す。一部の実施形態では、免疫原性組成物は、投与されると、CD4 T細胞及びCD8 T細胞の複合活性化を示す。
【0036】
[0046]一部の実施形態では、免疫原性組成物は、投与されると、本発明のペプチド内のエピトープに対する(任意の免疫グロブリンクラスの)特異的抗体の産生を示す。各々の可能性は、別々の実施形態を表す。
【0037】
[0047]本明細書に使用される場合、「アジュバント」という用語は、活性薬剤ではない、医薬組成物の任意の構成成分を指す。
【0038】
[0048]一部の実施形態では、アジュバントは、油エマルジョン、サイトカイン、免疫刺激複合体(ISCOM)、サポニン型補助剤、モンタナイド(Montanide)ISA 51VG、リポソーム、水酸化アルミニウム(アラム)、ウシ血清アルブミン(BSA)、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、リポ多糖(LPS)又は誘導体、例えばモノホスホリルリピドA(MPL)、CpG DNA、微生物DNA/RNA、ナノ粒子(例えば、金粒子)、細菌ゴースト、TNFaに対するリガンド又はアゴニスト抗体、TLR(Toll様受容体)ベースのアジュバント(例えば、Heitら、Eur.J.Immunol.、2007、37:2063~2074参照)又はそれらの組合せを含む群から選択される。
【0039】
[0049]本明細書に使用される場合、「薬学的に許容できる担体」又は「薬学的に許容できる賦形剤」は、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗細菌及び抗真菌剤、等張化及び吸収強化又は遅延剤、並びに生理学的に適合性の他の賦形剤又は添加剤を含む。特定の実施形態では、担体は、鼻腔内、静脈内、筋肉内、皮内、皮下、非経口、経口、経粘膜又は経皮投与に適する。投与経路に応じて、活性化合物は、酸の作用及び化合物を不活性化し得る他の自然条件から化合物を保護するために材料中にコーティングされる場合がある。薬学的活性物質のためのこのような媒質及び薬剤の使用は、当技術分野において周知である。
【0040】
[0050]一部の実施形態では、ペプチド抗原は、ポリマー、例えば、ポリ(ラクチド-co-カプロラクトン)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(ラクチド-co-カプロラクトン)(PLCL-PEG-PLCL)、ポリ(ε-カプロラクトン)-ポリ(エチレングリコール)-ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL-PEG-PCL)、又は非限定的にカルボキシメチルセルロース(CMC)、キトサン、及び1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)などの、ペプチドの封入及び送達のための、当技術分野において公知の他のポリマーと会合している。
【0041】
[0051]一部の実施形態では、アジュバントは添加されない。一部の実施形態では、1つのアジュバントが添加される。一部の実施形態では、アジュバントの組合せが添加される。
【0042】
[0052]本発明はまた、本発明のペプチドを特異的に認識する抗体に関する。したがって、抗体は、配列番号1~26のいずれか1つ、又はそのバリアントを含む又はそれからなるペプチドを特異的に認識する。
【0043】
[0053]本明細書に使用される場合、「抗体」という用語は、抗原の抗原決定基の特徴と相補的な内面形状及び電荷分布を有する三次元結合空間を有する、ポリペプチド鎖のフォールディングから形成された少なくとも1つの結合ドメインを含むポリペプチド又はポリペプチドの群を指す。抗体は、典型的には、ポリペプチド鎖の2つの同一ペアを含む四量体形態を有し、各ペアは、1つの「軽」鎖及び1つの「重」鎖を有する。各軽/重鎖ペアの可変領域は、抗体結合部位を形成する。抗体は、オリゴクローナル、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ラクダ化、CDR接合、多重特異性、二重特異性、触媒的、ヒト化、完全ヒト、抗イディオタイプ、及び可溶性又は結合形態で標識することができる抗体のみならず、単独で又は他のアミノ酸配列と組み合わせた、エピトープ結合断片を含む断片、そのバリアント又は誘導体であり得る。抗体は、任意の種からのものであり得る。抗体という用語はまた、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、一本鎖抗体(svFC)、二量体可変領域(ダイアボディー(Diabody))及びジスルフィド連結可変領域(dsFv)を含むが、それに限定されるわけではない結合断片を含む。特に抗体は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的活性断片、すなわち、抗原結合部位を含有する分子を含む。抗体断片は、Fc領域又はその断片を含むが、それに限定されるわけではない別の免疫グロブリンドメインと融合されている場合もあり、融合されていない場合もある。当業者は、scFv-Fc融合体、可変領域(例えば、VL及びVH)~Fc融合体及びscFv-scFv-Fc融合体を含むが、それに限定されるわけではない、他の融合産物が生成され得ることをさらに認識している。
【0044】
[0054]免疫グロブリン分子は、任意の種類(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、クラス(例えば、IgGl、IgG2、IgG3、IgG4、IgAl及びIgA2)又はサブクラスであり得る。
【0045】
[0055]「抗体(antibody)」又は「抗体(antibodies)」という用語は、本明細書において広い意味で使用され、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体の両方を含む。「抗体」という用語には、インタクトな又は「完全」免疫グロブリン分子に加えて、所望の特性のいずれかを示す限り、すなわち本発明によるペプチド又はそのバリアントを特異的に認識する限り、それらの免疫グロブリン分子の断片(例えばCDR、Fv、Fab及びFc断片)又はポリマー及び免疫グロブリン分子のヒト化バージョンが含まれる。本発明の抗体は、可能ならばいつでも、商業的供給源から購入することができる。本発明の抗体はまた、周知の方法を使用して生成してもよい。本発明の抗体は、治療薬又は診断薬として使用することができる。
【0046】
[0056]本発明はまた、本発明のペプチドと結合することができるT細胞受容体に関する。したがって、T細胞受容体は、配列番号1~26のいずれか1つ、又はそのバリアントを含む又はそれからなるペプチドと結合することができる。
【0047】
[0057]一部の実施形態では、ペプチドは、MHC分子と結合している。
【0048】
[0058]本明細書に使用される場合、「T細胞受容体」(TCR)という用語は、アルファポリペプチド鎖(アルファ鎖)及びベータポリペプチド鎖(ベータ鎖)を含むヘテロ二量体分子を指し、その際、ヘテロ二量体性受容体は、HLA分子によって提示されたペプチド抗原と結合することができる。本用語はまた、いわゆるガンマ/デルタTCRを含む。
【0049】
[0059]本発明はまた、本発明のペプチド、本発明の核酸、本発明の抗体又はその断片、及び本発明のT細胞受容体又はその断片からなる群から選択される1つの構成成分を含む組換え宿主細胞に関する。したがって、組換え宿主細胞は、配列番号1~26のいずれか1つ、又はそのバリアントを含む又はそれからなるペプチド、配列番号1~26のいずれか1つ、又はそのバリアントを含む又はそれからなるペプチドをコードする核酸、配列番号1~26のいずれか1つ、又はそのバリアントを含む又はそれからなるペプチドを特異的に認識する抗体又は断片、及び配列番号1~26のいずれか1つ、又はそのバリアントを含む又はそれからなるペプチドと結合することができるT細胞受容体からなる群から選択される1つの構成成分を含む。
【0050】
[0060]一部の実施形態では、組換え宿主細胞は、樹状細胞、T細胞、又はナチュラルキラー(NK)細胞などの抗原提示細胞から選択される。
【0051】
[0061]本発明はまた、活性化Tリンパ球を産生するためのin vitro又はex vivo方法であって、T細胞を、適切な抗原提示細胞又は抗原提示細胞を模倣する人工構築物の表面に発現された抗原負荷ヒトクラスI又はII MHC分子と、T細胞を抗原特異的な様式で活性化させるのに十分な期間in vitro又はex vivoで接触させるステップを含む方法に関し、その際、抗原は本発明のペプチドである。
【0052】
[0062]本発明はまた、上述のin vitro又はex vivo方法によって産生された活性化Tリンパ球に関し、その際、活性化Tリンパ球は、本発明のペプチドを提示している細胞を選択的に認識する。したがって、活性化Tリンパ球は、配列番号1~26のいずれか1つ、又はそのバリアントを含む又はそれからなるペプチドを提示している細胞を選択的に認識した。
【0053】
[0063]本発明はまた、本発明のペプチド、本発明の核酸、本発明の抗体又はその断片、本発明のT細胞受容体又はその断片、本発明の組換え宿主細胞、及び本発明の活性化Tリンパ球からなる群から選択される少なくとも1つの活性成分を含む医薬組成物に関する。したがって、医薬組成物は、配列番号1~26のいずれか1つ、又はそのバリアントを含む又はそれからなるペプチド、配列番号1~26のいずれか1つ、又はそのバリアントを含む又はそれからなるペプチドをコードする核酸、配列番号1~26のいずれか1つ、又はそのバリアントを含む又はそれからなるペプチドを特異的に認識する抗体又は断片、及び配列番号1~26のいずれか1つ、又はそのバリアントを含む又はそれからなるペプチドと結合することができるT細胞受容体からなる群から選択される少なくとも1つの活性成分を含む。
【0054】
[0064]一部の実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容できる担体、並びに/又は薬学的に許容できる賦形剤及び/若しくは安定化剤をさらに含む。
【0055】
[0065]本明細書に使用される場合、「医薬組成物」という用語は、医学的設定でのヒトへの投与に適した組成物を指す。好ましくは、医薬組成物は、無菌であり、GMPガイドラインに従って生産される。
【0056】
[0066]本発明の医薬組成物を調製する際に、薬物動態及び体内分布を変更するために、ペプチド抗原を修飾すること、又はペプチドを他の薬剤と組み合わせる若しくはコンジュゲートすることが望ましい場合がある。薬物動態及び体内分布を変更するいくつかの方法が、当業者に公知である。このような方法の例には、他のタンパク質、脂質(例えば、リポソーム)、炭水化物、又は合成ポリマーから構成される小胞中でのタンパク質、タンパク質複合体及びポリヌクレオチドの保護が含まれる。例えば、薬物動態及び体内分布の特徴を強化するために、本発明のワクチン剤をリポソームに組み入れることができる。例えば、米国特許第4,235,871号、同第4,501,728号及び同第4,837,028号に記載されているように、多種多様な方法がリポソームを調製するために利用可能である。リポソーム送達媒体との使用のために、ペプチドは、典型的には、リポソーム若しくは脂質小胞に内封されるか、又は小胞外側に結合される。
【0057】
[0067]本発明はまた、それを必要とする対象における病原性感染を予防又は治療するための方法であって、対象に、本発明の免疫原性組成物又は医薬組成物の有効量を投与することを含む方法に関する。本発明はまた、それを必要とする対象における病原性感染の予防又は治療における使用のための本発明の免疫原性組成物又は医薬組成物に関する。本発明はまた、それを必要とする対象における病原性感染の予防又は治療のための医薬の製造のための本発明の免疫原性組成物又は医薬組成物の使用に関する。
【0058】
[0068]一部の実施形態では、病原性感染は、コロナウイルスによって誘導される。一部の実施形態では、コロナウイルスは重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)である。
【0059】
[0069]一部の実施形態では、本発明は、病原性感染を治療又は予防する方法であって、濃縮されたT細胞集団を、それを必要とする対象に投与することを含む方法を提供し、その際、濃縮されたT細胞集団は、免疫原性組成物をT細胞集団にin vitroで投与することによって得られる。
【0060】
[0070]本明細書に使用される場合、物質の「有効量」又は「十分な量」は、臨床結果を含む有益又は所望の結果を引き起こすのに十分な量であり、そのため、「有効量」は、物質が適用される状況に依存する。免疫原性組成物を投与することに関連して、有効量は、免疫応答を誘発するために十分な本発明の免疫原性組成物を含有する免疫学的有効量である。医薬組成物を投与することに関連して、有効量は、所望の生理学的結果を維持する又はもたらすのに十分な本発明の医薬組成物を含有する薬学的有効量である。有効量は、1回分以上の用量で投与することができる。
【0061】
[0071]本明細書に使用される場合、「免疫学的有効量」という用語は、特異的Tリンパ球媒介免疫応答及び/又は液性応答を誘発するために、組み合わせた、有効な、必要な投薬量及び期間での、量を指す。この応答は、例えば、抗体濃度/力価アッセイを使用する(例えばELISAを介する)、抗体産生、増殖、特異的サイトカイン活性化及び/又は細胞傷害活性を検出するためのアッセイを含むが、それに限定されるわけではない、T細胞活性化のための従来アッセイによって決定することができる。
【0062】
[0072]本明細書に使用される場合、「薬学的有効量」という用語は、疾患、障害、又はそれらの組合せを治療、低減、除去、実質的に予防若しくは発症予防すること、又はそれらの組合せを含むが、それに限定されるわけではない、所望の生理学的結果を維持する又はもたらすことができる又はそれに十分な量を指す。薬学的有効量は、順次又は同時に投与される1回以上の用量を含み得る。当業者は、徐放処方を含むが、それに限定されるわけではない、様々な種類の処方を説明するために本発明の用量を調整することを知っている。本明細書に使用される場合、「発症予防的」という用語は、疾患、障害、又はそれらの組合せの任意の態様を実質的に予防又は発症予防することができる組成物を指す。本明細書に使用される場合、「治療的」という用語は、疾患、障害、又はそれらの組合せの任意の態様を治療、低減、その進行を停止、その進行を減速、有利に変更、除去すること、又はそれらの組合せができる組成物を指す。
【0063】
[0073]免疫原性組成物に関連して本明細書に使用される場合の「用量」という用語は、対象によって一度に採られる(投与又は受容される)免疫原性組成物の測定された割当て分を指す。
【0064】
[0074]本明細書に使用される場合、「免疫処置」という用語は、抗原に対する哺乳動物対象の反応を増大させる工程であって、その結果、対象が感染に抵抗する又は感染を克服する能力を改善する工程を指す。
【0065】
[0075]本明細書に使用される場合、「ワクチン接種」という用語は、哺乳動物対象の体内へのワクチンの導入を指す。
【0066】
[0076]本明細書に使用される場合、「対象」という用語は、動物を、より詳細には非ヒト哺乳動物及びヒト生物を指す。非ヒト動物対象はまた、動物の出生前形態、例えば、胚又は胎児などを含むことがある。非ヒト動物の非限定的な例には、ウマ、ウシ、ラクダ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、非ヒト霊長類、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、モルモット、ブタが含まれる。一部の実施形態では、対象はヒトである。ヒト対象はまた、胎児を含むことがある。
【0067】
[0077]本明細書に使用される場合、「対象」という用語は、治療が望まれる任意の対象、特に哺乳動物対象、例えばヒトを指す。
【0068】
[0078]一部の実施形態では、それを必要とする対象は、病原性感染を患っている。一部の実施形態では、それを必要とする対象は、病原性感染に感受性である。一部の実施形態では、それを必要とする対象は、病原性感染に潜在的に感受性である。
【0069】
[0079]本明細書に使用される場合、「治療する」、「治療すること」、又は「治療」という用語は、その少なくとも1つの症状の軽減、その重症度の低減、又はその進行の阻害を包含する。処置は、疾患、障害、又は状態が完全に治癒されたことを意味する必要はない。有効な治療であるために、本明細書における有用な組成物は、疾患、障害、若しくは状態の重症度を低減すること、それに関連する症状の重症度を低減すること、又は患者若しくは対象の生活の質の改善をもたらすことだけを必要とする。
【0070】
[0080]一部の実施形態では、本発明のペプチドワクチンは、他の対象へのトランスフェクション又は伝染を低減する。
【0071】
[0081]一部の実施形態では、本発明のペプチドワクチンは、共刺激分子、薬剤又はアジュバントと共に又はそれなしに有効量で投与される。本発明の方法により、ペプチドワクチンは、このような治療を必要とする対象に、病原体感染を予防及び/又は回復させるのに十分な時間及び条件で投与され得る。
【0072】
[0082]一部の実施形態では、免疫原性組成物は、皮内、筋肉内、皮下、静脈内、心房内、関節内、腹腔内、非経口、経口、直腸、鼻腔内、肺内、及び経皮送達、又は眼、耳、皮膚若しくは粘膜への外用によるものを含む多様な投与様式によって対象に投与され得る。或いは、抗原は、任意選択で生物学的に適切な液体又は固体担体中の、対象(自己)又は別の対象(同種)由来の細胞、組織又は器官への直接暴露によってex-vivoで投与され得る。
【0073】
[0083]ペプチドワクチンは、それ自体で、又は適切な補助剤若しくはアジュバントと組み合わせて、注射を介して対象に投与され得る。或いは、ペプチドワクチンは、例えば、溶液を噴霧することによって、粘膜を経由して経皮投与され得る。ペプチドの単位用量は、典型的には、約0.001mg~100mg、より典型的には約1μg~約1,000μgの間の範囲であり、患者に1回又は繰り返して投与され得る。
【0074】
[0084]本発明内での使用のためにペプチド又はタンパク質抗原の免疫原性を強化するために、ペプチド若しくはタンパク質抗原及び/又は共刺激分子を発現させるためのベクターと共に製剤化できる又はそれとコンジュゲートできる補助剤又はアジュバントの例には、サイトカイン(例えばGM-CSF)、BCG細菌細胞構成成分などの細菌細胞構成成分、QuillAと呼ばれる樹皮から抽出された免疫刺激複合体(ISCOM)、QS-21、サポニン型補助剤、モンタナイドISA 51VG、リポソーム、水酸化アルミニウム(アラム)、ウシ血清アルブミン(BSA)、破傷風トキソイド(TT)、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、及びTLR(Toll様受容体)ベースアジュバントが含まれる(例えば、Heitら、Eur.J.Immunol.(2007)37:2063~2074参照)。
【0075】
[0085]本発明はまた、抗コロナウイルス抗体を生成するための方法であって、本発明の免疫原性組成物を動物又はヒト対象に投与することを含む方法に関する。本発明はまた、動物又はヒト対象における抗コロナウイルス抗体の生成における使用のための本発明の免疫原性組成物に関する。本発明はまた、動物又はヒト対象における抗コロナウイルス抗体の生成のための医薬の製造のための本発明の免疫原性組成物の使用に関する。
【0076】
[0086]一部の実施形態では、抗コロナウイルス抗体は、コロナウイルスとの結合親和性を有することによって特徴付けられる。一部の実施形態では、抗コロナウイルス抗体は、アルファコロナウイルスペプチドに対する抗体である。一部の実施形態では、コロナウイルスは、229E又はNL63である。一部の実施形態では、抗コロナウイルス抗体は、ベータコロナウイルスペプチドに対する抗体である。一部の実施形態では、コロナウイルスは、OC43、HKU1、MERS-CoV、SARS-CoV及びSARS-CoV-2である。
【0077】
[0087]一部の実施形態では、動物は、ウマ、ウシ、ラクダ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、非ヒト霊長類、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、モルモット又はブタである。動物はまた、動物の出生前形態、例えば、胚又は胎児などを含むことがある。
【0078】
[0088]本発明はまた、MHC分子と結合された本発明のペプチドを含む複合体に関する。したがって、複合体は、MHC分子と結合された、配列番号1~26のいずれか1つ、又はそのバリアントを含む又はそれからなるペプチドを含む。
【0079】
[0089]一部の実施形態では、MHC分子はMHCクラス1分子である。一部の実施形態では、MHC分子はMHCクラスII分子である。好ましくは、MHC分子はMHCクラスI分子である。MHCクラスI分子は、任意のHLAスーパータイプであり得る。例えば、MHCクラスI分子は、スーパータイプA2であり得る。
【0080】
[0090]一部の実施形態では、複合体は、2つ以上の本発明のペプチド及び2つ以上のMHC分子を含む。例えば、複合体は、本発明の3つ以上、例えば、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、10個以上のペプチドを含み得る。複合体は、3つ以上、例えば、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、10個以上のMHC分子を含み得る。複合体は、例えば、本発明の3つ以上、例えば、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、10個以上のペプチド及び3つ以上、例えば、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、10個以上のMHC分子をそれぞれ含み得る。複合体は、MHC分子と同じ数の本発明のペプチドを含み得る。複合体は、MHC分子の数と異なる数の本発明のペプチドを含み得る。複合体は、例えば、4つのMHC分子を含み得る。複合体は、MHCテトラマーを含む又はそれからなる場合がある。複合体は、例えば、12個のMHC分子を含み得る。複合体は、MHCドデカマーを含む又はそれからなる場合がある。
【0081】
[0091]複合体が本発明の2つ以上のペプチドを含む場合、2つ以上のペプチドの各々は同じ場合がある。或いは、2つ以上のペプチドの各々は異なる場合がある。複合体が本発明の3つ以上のペプチドを含む場合、3つ以上のペプチドの各々は同じ場合がある。複合体が本発明の3つ以上のペプチドを含む場合、3つ以上のペプチドの各々は異なる場合がある。複合体が本発明の3つ以上のペプチドを含む場合、3つ以上のペプチドのうちの一部が同じことがあり、3つ以上のペプチドのうちの一部が異なることがある。
【0082】
[0092]複合体が2つ以上のMHC分子を含む場合、2つ以上のMHC分子のうちの各々は同じ場合がある。或いは、2つ以上のMHC分子のうちの各々は異なる場合がある。複合体が本発明の3つ以上のペプチドを含む場合、3つ以上のMHC分子のうちの各々は同じ場合がある。複合体が本発明の3つ以上のペプチドを含む場合、3つ以上のMHC分子のうちの各々が異なる場合がある。複合体が3つ以上のMHC分子を含む場合、3つ以上のMHC分子のうちの一部が同じことがあり、3つ以上のMHC分子のうちの一部が異なることがある。
【0083】
[0093]一部の実施形態では、複合体は、本発明の2つ以上のペプチド及び2つ以上のMHC分子を含み、各ペプチドは、2つ以上のMHC分子のうちの1つと結合している場合がある。すなわち、複合体に含まれる各ペプチドは、複合体に含まれるMHC分子と結合している場合がある。好ましくは、複合体に含まれる各ペプチドは、複合体に含まれる別のMHC分子と結合している。すなわち、複合体に含まれる各MHC分子は、複合体に含まれる1つ以下のペプチドと好ましくは結合している。しかし、複合体は、MHC分子と結合していない本発明の1つ以上のペプチドを含み得る。複合体は、本発明のペプチドと結合していない1つ以上のMHC分子を含み得る。
【0084】
[0094]複合体に含まれる1つ又は複数のMHC分子は、互いに連結されている場合がある。例えば、複合体の1つ以上のMHC分子の各々は、骨格分子又はナノ粒子と結び付いている場合がある。一部の実施形態では、2つ以上のMHC分子の各々は、デキストラン骨格と結び付いている。すなわち、複合体は、MHCデキストラマーを含む又はそれからなる場合がある。1つ又は複数のMHC分子をデキストラン骨格に結び付けるための機序は、当技術分野において公知である。任意の数のMHC分子がデキストラン骨格に結び付いていてもよい。例えば、本発明の1つ以上、2つ以上、3つ以上のペプチド及び3つ以上のMHC分子がデキストラン骨格と結び付いている場合がある。
【0085】
[0095]一部の実施形態では、複合体は、フルオロフォアをさらに含み、任意選択で、フルオロフォアは、デキストラン骨格と結び付いている。フルオロフォアは、当技術分野において周知であり、それには、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)、PE(フィコエリトリン)及びAPC(アロフィコシアニン)が含まれる。複合体は、任意の数のフルオロフォアを含み得る。例えば、複合体は、本発明の2つ以上、3つ以上、例えば、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、10個以上のペプチド及び3つ以上、例えば、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、10個以上のフルオロフォアを含み得る。複合体が複数のフルオロフォアを含む場合、複合体に含まれるフルオロフォアは、同じ場合も異なる場合もある。複合体が、デキストラン骨格などの骨格を含む場合、フルオロフォアは、好ましくは、デキストラン骨格に結び付いている。フルオロフォアをデキストラン骨格に結び付けるための機序は、当技術分野において公知である。
【0086】
[0096]本発明はまた、個体における現在又は以前のコロナウイルス感染の存在又は非存在を決定するための方法であって、本発明のペプチド又は複合体を個体から得られた試料と接触させるステップ、及びペプチド又は複合体と試料中に含まれる分子との結合の存在又は非存在を決定するステップを含む方法に関する。本発明はまた、個体における現在又は以前のコロナウイルス感染の存在又は非存在を決定するための方法における本発明のペプチド又は複合体の使用に関し、その際、方法は、本発明のペプチド又は複合体を個体から得られた試料と接触させるステップ、及びペプチド又は複合体と試料中に含まれる分子との結合の存在又は非存在を決定するステップを含む。
【0087】
[0097]試料は、例えば、血液試料、血清試料、血漿試料、尿試料、唾液試料、又は個体に存在する粘膜表面を拭うことによって得られた試料であり得る。好ましくは、試料は、血液試料、血清試料、又は血漿試料である。
【0088】
[0098]一部の実施形態では、分子は、抗体又はT細胞受容体である。分子は、例えば、抗体又は抗体断片であり得る。抗体又は抗体断片は、B細胞の表面にある、又はB細胞に含まれる場合がある。抗体又は抗体断片は、試料中で遊離している場合がある。分子は、例えば、T細胞受容体であり得る。T細胞受容体は、CD4 T細胞受容体であり得る。T細胞受容体は、CD8 T細胞受容体であり得る。T細胞受容体は、T細胞の表面にある、又はT細胞に含まれる場合がある。T細胞はCD4 T細胞であり得る。T細胞はCD8 T細胞であり得る。
【0089】
[0099]ペプチド又はペプチド含有複合体と分子との結合を検出するための方法は、当技術分野において周知であり、それには、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、酵素結合免疫吸着スポット(エリスポット)、及びフローサイトメトリーが含まれる。
【0090】
[0100]一部の実施形態では、結合の存在は、現在若しくは以前のコロナウイルス感染の存在を示す、及び/又は結合の非存在は、現在若しくは以前のコロナウイルス感染の非存在を示す。
【0091】
[0101]現在のコロナウイルス感染では、コロナウイルス粒子又はその構成成分(例えば、ペプチド、タンパク質)は、個体内に存在し得る。現在のコロナウイルス感染では、コロナウイルス粒子又はその構成成分(例えば、ペプチド、タンパク質)に特異的な抗体、B細胞、CD8 T細胞及び/又はCD4 T細胞は、個体内に存在し得る。好ましくは、現在のコロナウイルス感染では、(i)コロナウイルス粒子又はその構成成分(例えば、ペプチド、タンパク質)並びに(ii)コロナウイルス粒子又はその構成成分(例えば、タンパク質)に特異的な抗体、B細胞、CD8 T細胞及び/又はCD4 T細胞は、個体内に存在する。
【0092】
[0102]以前のコロナウイルス感染では、コロナウイルス粒子又はその構成成分(例えば、ペプチド、タンパク質)は、個体に存在しない場合がある。以前のコロナウイルス感染では、コロナウイルス粒子又はその構成成分(例えば、ペプチド、タンパク質)に特異的な抗体、B細胞、CD8 T細胞及び/又はCD4 T細胞は、個体内に存在し得る。好ましくは、以前のコロナウイルス感染では、コロナウイルス粒子又はその構成成分(例えば、ペプチド、タンパク質)は、個体に存在せず、コロナウイルス粒子又はその構成成分(例えば、ペプチド、タンパク質)に特異的な抗体、B細胞、CD8 T細胞及び/又はCD4 T細胞は、個体内に存在する。
【0093】
[0103]本発明はまた、コロナウイルス特異的T細胞を特定するための方法であって、本発明のペプチド又は複合体を個体から得られた試料と接触させるステップ、及びペプチド又は複合体と試料に含まれるT細胞受容体との結合の存在又は非存在を決定するステップを含む方法に関する。本発明はまた、コロナウイルス特異的T細胞を特定するための方法における本発明のペプチド又は複合体の使用に関し、その際、方法は、本発明のペプチド又は複合体を、個体から得られた試料と接触させるステップ、及びペプチド又は複合体と試料に含まれるT細胞受容体との結合の存在又は非存在を決定するステップを含む。
【0094】
[0104]試料は、例えば、血液試料、血清試料、血漿試料、尿試料、唾液試料、又は個体に存在する粘膜表面を拭うことによって得られた試料であり得る。好ましくは、試料は、血液試料である。
【0095】
[0105]T細胞受容体はCD4 T細胞受容体であり得る。T細胞受容体はCD8 T細胞受容体であり得る。好ましくは、T細胞受容体はCD8 T細胞受容体である。
【0096】
[0106]T細胞受容体は、T細胞の表面にある、又はT細胞に含まれる場合がある。T細胞はCD4 T細胞であり得る。T細胞はCD8 T細胞であり得る。好ましくは、T細胞はCD8 T細胞である。
【0097】
[0107]ペプチド又はペプチド含有複合体とT細胞受容体との結合を検出するための方法は、当技術分野において周知であり、それには、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、酵素結合免疫吸着スポット(エリスポット)、及びフローサイトメトリーが含まれる。
【0098】
[0108]結合の存在は、1つ以上のコロナウイルス特異的T細胞の存在を示し得る。結合の非存在は、コロナウイルス特異的T細胞の非存在を示し得る。
【0099】
[0109]一部の実施形態では、個体は、現在コロナウイルスに感染している。現在のコロナウイルス感染では、コロナウイルス粒子又はその構成成分(例えば、ペプチド、タンパク質)は、個体内に存在し得る。現在のコロナウイルス感染では、コロナウイルス粒子又はその構成成分(例えば、ペプチド、タンパク質)に特異的な抗体、B細胞、CD8 T細胞及び/又はCD4 T細胞は、個体内に存在し得る。好ましくは、現在のコロナウイルス感染では、(i)コロナウイルス粒子又はその構成成分(例えば、ペプチド、タンパク質)及び(ii)コロナウイルス粒子又はその構成成分(例えば、ペプチド、タンパク質)に特異的な抗体、B細胞、CD8 T細胞及び/又はCD4 T細胞は、個体内に存在する。
【0100】
[0110]一部の実施形態では、個体は、以前はコロナウイルスに感染していたが、現在は感染していない。以前のコロナウイルス感染では、コロナウイルス粒子又はその構成成分(例えば、ペプチド、タンパク質)は、個体に存在しない場合がある。以前のコロナウイルス感染では、コロナウイルス粒子又はその構成成分(例えば、ペプチド、タンパク質)に特異的な抗体、B細胞、CD8 T細胞及び/又はCD4 T細胞は、個体内に存在し得る。好ましくは、以前のコロナウイルス感染では、コロナウイルス粒子又はその構成成分(例えば、ペプチド、タンパク質)は、個体に存在せず、コロナウイルス粒子又はその構成成分(例えば、ペプチド、タンパク質)に特異的な抗体、B細胞、CD8 T細胞及び/又はCD4 T細胞は、個体内に存在する。したがって、コロナウイルス粒子又はその構成成分(例えば、ペプチド、タンパク質)は、個体に存在しない場合があるが、コロナウイルス粒子又はその構成成分(例えば、ペプチド、タンパク質)に特異的な抗体、B細胞、CD8 T細胞及び/又はCD4 T細胞は、個体内に存在し得る。
【0101】
[0111]本発明はまた、コロナウイルス特異的T細胞受容体を特定するための方法であって、本発明のペプチド又は複合体をT細胞受容体と接触させるステップ、及びペプチド又は複合体とT細胞受容体との結合の存在又は非存在を決定するステップを含む方法に関する。本発明はまた、コロナウイルス特異的T細胞受容体を特定するための方法における本発明のペプチド又は複合体の使用に関し、その際、方法は、本発明のペプチド又は複合体をT細胞受容体と接触させるステップ、及びペプチド又は複合体とT細胞受容体との結合の存在又は非存在を決定するステップを含む。
【0102】
[0112]一部の実施形態では、結合の存在は、T細胞受容体がコロナウイルス特異的T細胞受容体であることを示し、及び/又は結合の非存在は、T細胞受容体がコロナウイルス特異的T細胞受容体ではないことを示す。
【0103】
[0113]T細胞受容体はCD4 T細胞受容体であり得る。T細胞受容体はCD8 T細胞受容体であり得る。好ましくは、T細胞受容体はCD8 T細胞受容体である。
【0104】
[0114]T細胞受容体は、T細胞の表面にある、又はT細胞に含まれる場合がある。T細胞はCD4 T細胞であり得る。T細胞はCD8 T細胞であり得る。好ましくは、T細胞はCD8 T細胞である。
【0105】
[0115]ペプチド又はペプチド含有複合体とT細胞受容体との結合を検出するための方法は、当技術分野において周知であり、それには、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、酵素結合免疫吸着スポット(エリスポット)、及びフローサイトメトリーが含まれる。
【0106】
[0116]本明細書に記載される場合の技術用語及び科学用語の意味は、当業者が明白に理解することができる。
【0107】
[0117]本明細書に使用される場合、値と組み合わせた場合の「約」、「およそ」、又は「ほぼ」という用語は、参照値の±10%を指す。例えば、長さ約1000ナノメートル(nm)は、長さ1000nm±100nmを指す。
【0108】
[0118]本明細書に使用される場合、及び添付の特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかに他のことを示していない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「ポリヌクレオチド」への参照は、複数のこのようなポリヌクレオチドを含み、「ポリペプチド」への参照は、1つ以上のポリペプチド及び当業者に公知のその等価物などへの参照を含む。特許請求の範囲は、いずれかの任意選択の要素を除外するように作成される場合があることにさらに留意されたい。このように、この陳述は、クレーム要素の列挙、又は「否定的な」限定の使用に関連して、「唯一」、「のみ」及び同類のものなどの排他的な用語の使用のための先行詞として役立つことが意図されている。
【0109】
[0119]「A、B、及びCのうちの少なくとも1つなど」に類似した慣例が使用される場合、一般に、このような構成は、当業者が慣例を理解する意味で意図されている(例えば、「A、B、及びCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、A単独、B単独、C単独、A及びBを一緒に、A及びCを一緒に、B及びCを一緒に、並びに/又はA、B、及びCを一緒に有するシステムを含むが、それに限定されるわけではない、など)。明細書、特許請求の範囲、又は図面であろうと、2つ以上の代替的な用語を提示している事実上任意の離接語及び/又は離接句は、用語のうちの1つ、用語のうちのいずれか、用語のうちの両方を含む可能性を企図すると理解されるべきであることが、当業者によってさらに理解されよう。例えば、「A又はB」という語句は、「A」又は「B」又は「A及びB」の可能性を含むことが理解されよう。
【0110】
[0120]本発明は、限定よりもむしろ実証の目的で提供される以下の実施例によってさらに例示される。当業者は、本開示に照らして、開示された具体的な実施形態に多くの変化を加えることができ、それでも、本発明の精神及び範囲から逸脱せずに同様又は類似の結果を得ることができることを認識すべきである。
【0111】
[0121][実施例]
[0122]実施例1 抗原ペプチドのMHCクラスIに対する結合能のアッセイ
[0123]材料及び方法
[0124]MHC-ペプチド結合アッセイ。MHC-ペプチド結合アッセイを使用して、本発明の各抗原ペプチドが、集団において最も一般的なヒトMHCクラスIアレルであるHLA-A201と結合する能力を決定した(Wills、M.R.ら、J.Virol.1996、70:7569~7579;Weekes、M.P.ら、J.Virol.1999、73:2099~2108;Reiser、J.B.ら、Acta Cryst.Sect.F Struct.Biol.Cryst.Commun.2009、65:1157~1161)。製造業者の説明書によりMHCクラスI再フォールディングアッセイ(イージマー(easYmer)、immunAware Aps、Copenhagen、Denmark)を予備形成した。簡潔には、本発明の各抗原ペプチド(配列番号1~26)をβ2-ミクログロブリン軽鎖サブユニット及びビオチン標識組換えHLA-A201と共に18℃で48時間インキュベートして、ペプチド-HLA複合体を形成させた。次いで、ビオチン標識ペプチド-HLA複合体をストレプトゾシンコーティングビーズによって捕捉し、フローサイトメトリーで、PEコンジュゲートされた抗ヒトβ2-ミクログロブリンによって検出した。HLA-A201に対して45nMの結合親和性(IC50)を有する公知のHLA-A201強結合性ペプチドであるサイトメガロウイルス(CMV)pp65タンパク質由来ペプチド(495NLVPMVATV503;配列番号27;以下ではCMVpp65495-503)(Hassan C.ら、J.Biol.Chem.2015、290:2593~2603)を陽性対照として使用した。陰性対照ではペプチドを使用しなかった。
【0112】
[0125]結果
[0126]本発明のペプチドは、ヒトMHCクラスIに対する結合能を有する。図1に示すように、本発明のペプチド1(配列番号1)及びペプチド12(配列番号12)の両方は、HLA-A201に対して3nM及び8.9nMの濃度の、CMVpp65495-503(配列番号27;陽性対照)よりも高い結合親和性を有する。特に、HLA-A201に対する8.9nMのペプチド1(配列番号1)及びペプチド12(配列番号12)の結合親和性は、CMVpp65495-503(配列番号27;陽性対照)の結合親和性よりもそれぞれ1.8及び2.1倍高い。
【0113】
[0127]加えて、図2に示すように、本発明の抗原ペプチド(配列番号1~26)のうちのすべては、8.9nMの濃度の、HLA-A201に対する強い結合親和性を示す。
【0114】
[0128]実施例1の結果は、本発明のペプチド(配列番号1~26)が、集団において最も一般的なヒトMHCクラスIアレルであるHLA-A201に対して強い結合親和性を有することを示す。したがって、本発明のペプチドのうちの1つがヒト対象の集団に投与されるとき、対象の大部分においてペプチドはMHCクラスIと結合して後続の免疫応答を誘起する。
【0115】
[0129]実施例2 MHCクラスIテトラマーアッセイ
[0130]MHCテトラマー試薬は、抗原特異的T細胞の迅速で簡単な検出を可能にする。MHCテトラマー技術は、MHC-ペプチド複合体が抗原特異的T細胞を単一細胞レベルで認識する能力に基づく。この技術は、研究者が感染症、癌、及び自己免疫疾患に関与する担当のT細胞応答を正確に測定できるようにする。抗原特異的T細胞免疫応答の存在は、ワクチン及び治療法の開発のための抗腫瘍又は抗ウイルス応答の最も重要で、意義のあるアウトカムであると考えられている。ワクチン開発のための抗原特異的T細胞免疫応答の存在の重要性及び意義のため、本実施例では抗原特異的T細胞を検出するためにMHCテトラマーアッセイを使用した。
【0116】
[0131]材料及び方法
[0132]MHCクラスIテトラマーアッセイ。製造業者の説明書によりMHCクラスIテトラマーアッセイ(イージマー(登録商標)、immunAware Aps、Copenhagen、Denmark)を行った。簡潔には、本発明の75μM ペプチド1(配列番号1)又はペプチド12(配列番号12)3μLを、ddHO 45μL、フォールディング緩衝液(×6)12μL、及びイージマー(登録商標)12μLと混合し、18℃で48時間インキュベートして、およそ500nMのフォールディングしたモノマーを得た。次いで、得られたフォールディングしたモノマー50μLを0.2mg/mLストレプトゾシン-フルオロフォア2.1μLの相当物と混合し、4℃の暗条件で少なくとも1時間インキュベートしてモノマーをテトラマー化した。ヒトT細胞の染色のためにテトラマーをFACS緩衝液(1v/v% BSA及び0.1v/v% NaNを有するPBS)で30nMに希釈した。
【0117】
[0133]次に、FACS緩衝液中およそ1~2×10個のヒト末梢血単核細胞(PBMC、HLA-A201)(STEMCELL Technologies Inc、Vancouver、British Columbia、Canada)を96ウェルマイクロプレートに蒔いた。細胞を700×gで3分間遠心分離し、上清を除いた。希釈されたテトラマー40μLで細胞を再懸濁し、室温(RT)の暗条件で20分間インキュベートした。細胞を冷FACS緩衝液で1回洗浄し、700×gで3分間遠心分離した。上清を除去した後、細胞を抗CD8抗体で共染色し、4℃の暗条件で30分間インキュベートした。細胞を冷FACS緩衝液で2回洗浄し、FACS緩衝液に再懸濁し、フローサイトメータ(BD LSRフォルテッサ(LSRFortessa)(商標)X20、Franklin Lakes、NJ、U.S.)で分析した。
【0118】
[0134]統計解析。統計解析のためにマイクロソフト-エクセルを使用した。スチューデントのt検定を使用して有意性を計算した。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
【0119】
[0135]結果
[0136]本発明のペプチドは、抗原特異的T細胞免疫応答を誘導する。図3に示すように、本発明のペプチド1(配列番号1)及びペプチド12(配列番号12)の抗原特異的細胞傷害性T細胞(CTL)は、ヒトPBMC(HLA-A201)におけるMHCクラスIテトラマー染色によって検出することができる。結果は、本発明の抗原ペプチドが少なくとも抗原特異的CTL(すなわち、CD8 T細胞)免疫応答を誘導することを示している。ペプチド-テトラマー複合体は、対応する特異的CTLを検出することができ、これらの応答性CTLは、ペプチドを有する外因性生物又は内因性細胞を認識することができる。ペプチドに対するCTLの認識により、生物又は感染細胞を除去することができる。
【0120】
[0137]加えて、結果は、ペプチド1(配列番号1)又はペプチド12(配列番号12)へのHLAクラスIテトラマーの結合は、ヒトPBMC中のおよそ2.2~3.3%のCD8 T細胞と会合することを示している。成体ヒトにおよそ4×1010個のCD8 T細胞が存在すると推定されているので(Alanio、C.ら、Blood、2010、115(18):3718~3725)、本発明のペプチドは、成体ヒト体内のおよそ0.9~1.3×10個のCD8 T細胞を、ウイルス感染細胞を認識すること及び細胞にアポトーシスを誘導することに従事させることができる。
【0121】
[0138]実施例3 細胞内サイトカインアッセイ
[0139]抗原ペプチドがT細胞応答を誘導する能力をさらに検証するために、細胞内サイトカイン染色を使用して、本発明のペプチドに応答したCD4 ヘルパーT細胞のサイトカイン産生を検出した。
【0122】
[0140]材料及び方法
[0141]細胞内サイトカイン染色及び多重パラメータフローサイトメトリー。およそ1~2×10個のヒトPBMC(HLA-A201)(STEMCELL Technologies Inc、Vancouver、British Columbia、Canada)を96ウェルマイクロプレートのエックス-ビボ(X-VIVO)(商標)15培地に蒔いた。250nM~0.4nMに5倍系列希釈した本発明のペプチド1(配列番号1)又はペプチド12(配列番号12)でPBMCを処理した。培養培地を5日毎に更新し、ペプチドによる処理後12日目に細胞を収集し、製造業者の説明書により抗CD4-PerCP-Cy5.5とコンジュゲートした抗体、IFN-γ-FITCクロムとコンジュゲートした抗体、及びIL4-PEクロムとコンジュゲートした抗体で染色した。その後、細胞を冷FACS緩衝液で2回洗浄し、FACS緩衝液に再懸濁し、フローサイトメータ((BD LSRフォルテッサ(商標)X20、Franklin Lakes、NJ、U.S.)で分析した。
【0123】
[0142]結果
[0143]本発明のペプチドは、細胞性免疫及び液性免疫の両方を強化するサイトカインを分泌するように免疫細胞を刺激する。図4Aに示すように、本発明のペプチド1(配列番号1)は、より高いレベルの濃度250nMのIFN-γ及び濃度50nMのIL-4を分泌するようにヘルパーT細胞(CD4細胞)を刺激した。図4Bに示すように、本発明のペプチド12(配列番号12)は、より高いレベルの濃度10nM及び250nMのIFN-γ並びに濃度10nMのIL-4を分泌するようにCD4細胞を刺激した。
【0124】
[0144]結果は、本発明のペプチドが、それぞれ細胞性免疫及び液性免疫を表すサイトカインIFN-γ及びIL-4を分泌するようにヘルパーT細胞を刺激することができることを示している。加えて、IFN-γを分泌するようにヘルパーT細胞を刺激することによって、本発明のペプチドは、実施例2の結果に対応するCTL免疫応答を強化する。
【0125】
[0145]実施例4 筋肉内注射によるペプチド1の免疫原性アッセイ
[0146]材料及び方法
[0147]マウスの免疫処置。本発明の抗原ペプチドの免疫原性を決定するために、マウスモデルの例として本発明のペプチド1(配列番号1)を使用した。Envigo(Indianapolis、IN、USA)によって供給された10匹の雌性BALB/cマウス(7~9週齢)に、45μgのペプチド1(配列番号1)を2週間間隔で(0、14、及び28日目に)3回筋肉内注射した。各免疫処置日の前(-1、13、及び27日目)に血清を収集した。最終の採血を41日目に行った。単離された血清を血清学的分析まで-80℃で保管した。最初の注射の1日前に収集された血清試料(-1日目、投薬前群)及び3回目の注射の2週間後に収集された血清試料(41日目、投薬後群)を抗スパイクIgG ELISAアッセイのために使用した。
【0126】
[0148]総IgG ELISA。IgG(総)マウス無コートELISAキット(カタログ番号88-50400、Thermo Fisher Scientific、MA、USA)を製造業者の説明書により総IgG ELISA製造業者のために使用した。簡潔には、ヌンク(Nunc)(商標)マキシソープ(MaxiSorp)(商標)9018 ELISAプレートに、コーティング緩衝液中の100μL/ウェルの捕捉抗体をコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。プレートを400μL/ウェルの洗浄緩衝液で2回洗浄した。ウェルをブロッキング緩衝液250μLでブロッキングし、室温で2時間インキュベートした後、プレートを2回洗浄した。標準をアッセイ緩衝液Aで2倍系列希釈して、標準曲線を作成した。次いで、100μL/ウェルのアッセイ緩衝液Aをブランクのウェルに添加し、90μL/ウェルのアッセイ緩衝液Aを試料ウェルに添加した。血清試料をアッセイ緩衝液A中に少なくとも10,000倍希釈し、次いで、10μL/ウェルの予備希釈血清試料を適切なウェルに添加した。50μL/ウェルの希釈された検出抗体をすべてのウェルに添加した。次いで、プレートに蓋をし、室温で2時間インキュベートし、インキュベーション後に4回洗浄した。100μL/ウェルの基質溶液を各ウェルに添加し、プレートを室温で15分間インキュベートした。その後、停止溶液100μLを各ウェルに添加し、マイクロプレートリーダを用いてプレートをOD450nmで読み取った。
【0127】
[0149]抗スパイクIgG ELISA。ヒトSARS-CoV-2スパイク(トリマー)IgG ELISAキット(カタログ番号BMS2325、Thermo Fisher Scientific、MA、USA)を製造業者の説明書により抗スパイクIgG ELISAのために使用した。簡潔には、ヒトSARS-CoV-2スパイク(トリマー)コーティングプレート(96ウェル)を洗浄緩衝液で洗浄し、次いで、アッセイ緩衝液90μL及びアッセイ緩衝液希釈試料10μLをプレートのウェルに添加した。プレートカバーでプレートに蓋をし、37℃で30分間インキュベートした。インキュベーション後、プレートを洗浄緩衝液で洗浄し、抗マウスホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートされた検出抗体(A90-131P、Bethyl、TX、USA)100μLをプレートのウェルに添加した。プレートカバーでプレートに蓋をし、37℃でさらに30分間インキュベートした。インキュベーション後、プレートを洗浄緩衝液で洗浄し、基質溶液(テトラメチルベンジジン、TMB)100μLをプレートのウェルに添加した。プレートを室温で15分間インキュベートした。インキュベーション後、停止溶液100μLをプレートのウェルに添加した。次いで、マイクロプレートリーダを用いてプレートをOD 450nmで読み取った。
【0128】
[0150]統計解析。Prism5(GraphPad Software Inc.、San Diego、CA、USA)を統計解析のために使用した。t検定を使用して有意性を計算した。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
【0129】
[0151]結果
[0152]本発明のペプチドの筋肉内投与は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質に対する免疫原性を誘導する。図5Aに示すように、マウスへの本発明のペプチド1(配列番号1)の筋肉内投与は、総IgG抗体を誘導し、2回目の投与後に有効性はプラトーに達する。結果は、本発明のペプチドが免疫原性を有することを示す。
【0130】
[0153]図5Bに示すように、マウスへの本発明のペプチド1(配列番号1)の筋肉内投与は、抗スパイクIgG抗体を誘導した。結果は、本発明のペプチドがヒトSARS-CoV-2スパイクタンパク質に対する特異的抗体を産生するようにマウスを誘導することをさらに示している。
【0131】
[0154]実施例5 筋肉内注射によるペプチド12の免疫原性アッセイ
[0155]材料及び方法
[0156]マウスの免疫処置。本発明の抗原ペプチドの免疫原性を決定するために、本発明のペプチド12(配列番号12)をマウスモデルの例として使用した。BioLASCO(Taiwan Co.Ltd)によって供給された4匹の雌性BALB/cマウス(7~9週齢)に、400μgのペプチド12(配列番号12)を2週間間隔で3回(0、14、及び28日目に)筋肉内注射した。最初の注射の1日前(-1日目、投薬前群)及び3回目の注射の2週間後(41日目、投薬後群)に血清を収集した。単離された血清を血清分析まで-80℃で保管した。
【0132】
[0157]総IgG ELISA。実施例4に記載されるように総IgG ELISAアッセイを行った。
【0133】
[0158]抗スパイクIgG ELISA。実施例4に記載されるように抗スパイクIgG ELISAアッセイを行った。
【0134】
[0159]統計解析。実施例4に記載されるように統計解析を行った。
[0160]結果
[0161]本発明のペプチドの筋肉内投与は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質に対する免疫原性を誘導する。図6Aに示すように、マウスへの本発明のペプチド12(配列番号12)の筋肉内投与は、総IgG抗体を誘導した。結果は、本発明のペプチドが免疫原性を有することを示している。本実施例の結果は、実施例2の結果にも対応し、実施例2では、本発明のペプチドは、IL-4を分泌するようにヘルパーT細胞を刺激し、IL-4は、抗体を産生するようにB細胞を活性化する。
【0135】
[0162]図6Bに示すように、マウスへの本発明のペプチド12(配列番号12)の筋肉内投与は、抗スパイクIgG抗体を誘導した。結果は、本発明のペプチドがヒトSARS-CoV-2スパイクタンパク質に対する特異的抗体を産生するようにマウスを誘導することをさらに示している。
【0136】
[0163]実施例6 経口投与によるペプチド1の免疫原性アッセイ
[0164]材料及び方法
[0165]マウスの免疫処置。本発明の抗原ペプチドの免疫原性を決定するために、本発明のペプチド1(配列番号1)をマウスモデルの例として使用した。BioLASCO(Taiwan Co.Ltd)によって供給された5匹の雌性BALB/cマウス(7~9週齢)に、1%(v/v)の77mg/mL PLCL-PEG-PLCL(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO、USA)と共に製剤化された1μg/μLペプチド1(配列番号1;200μg/回)200μLを2週間間隔で3回(0、14、及び28日目に)経口投与した。最初の用量の1日前(-1日目、投薬前群)及び3回目の用量の2週間後(41日目、投薬後群)に血清を収集した。単離された血清を血清学的分析まで-80℃で保管した。
【0137】
[0166]総IgG ELISA。実施例4に記載するように総IgG ELISAアッセイを行った。
【0138】
[0167]抗スパイクIgG ELISA。実施例4に記載するように抗スパイクIgG ELISAアッセイを行った。
【0139】
[0168]統計解析。実施例4に記載するように統計解析を行った。
[0169]結果
[0170]本発明のペプチドの経口投与は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質に対する免疫原性を誘導する。図7Aに示すように、マウスへの本発明のペプチド1(配列番号1)の経口投与は、総IgG抗体を誘導した。結果は、本発明のペプチドが免疫原性を有することを示している。
【0140】
[0171]図7Bに示すように、マウスへの本発明のペプチド1(配列番号1)の経口投与は、抗スパイクIgG抗体を誘導した。結果は、本発明のペプチドが、ヒトSARS-CoV-2スパイクタンパク質に対する特異的抗体を産生するようにマウスを誘導することをさらに示している。
【0141】
[0172]本発明のペプチドは、ヒトMHC分子との結合のために特異的に設計されており、したがって、これらのペプチドは、HLA-A201に対して高い親和性を有する(図2に示す)。しかし、本発明のペプチドはまた、マウスMHC分子に対して、より低い親和性も有する。例えば、本発明のペプチド1(配列番号1)は、マウスMHCクラスH2-Kd、H2-Ld及びH-2-Dd分子に対して、それぞれ2.2、78.1、及び82.5μMの最大半値阻害濃度(IC50)を有すると推定されている(https://www.iedb.org)。本発明のペプチドは、マウスMHC分子に対して、より低い親和性を有するが、マウスにおいて免疫応答を依然として誘導することができる(図5A~7Bに示す)。これらの結果は、本発明のペプチドが、異なるサブタイプのMHC分子との免疫応答だけでなく、ヒト対象においてより高い免疫応答も誘起できることを示している。
【0142】
[0173]結論として、本発明のペプチドは、MHC分子と、特にMHCクラスI分子と、強い結合親和性を示し、CD4 T細胞応答及びCD8 T細胞応答の両方を誘導し、CTL応答に関与し、筋肉内経路及び経口経路の両方を介してヒトSARS-CoV-2スパイクタンパク質に対する特異的抗体の産生を刺激する。本発明のペプチドは、ヒトSARS-CoV-2スパイクタンパク質の十分に保存された領域に基づき設計され、細胞性免疫応答及び液性免疫応答の両方を誘導するので、ペプチドは、コロナウイルス、特にSARS-CoV-2に対する広域スペクトルワクチンの開発のための重要な候補である。
【0143】
[0174]本発明の上記実施形態の範囲から逸脱せずに、もちろん、上記実施形態に多くの変更及び改変を行うことができる。したがって、科学及び有用技術における進歩を促進するために、本発明が開示され、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることが意図される。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
【配列表】
2024517927000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-01-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1~配列番号26、及び配列番号1~配列番号26と少なくとも80%相同であるそのバリアント配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドであって、バリアントが、主要組織適合複合体(MHC)の分子と結合する、及び/又はバリアントペプチドと交差反応するT細胞を誘導する、ペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載のペプチドをコードする核酸。
【請求項3】
請求項に記載のペプチドを特異的に認識する及び/又は前記ペプチドと結合することができる、抗体又はT細胞受容体
【請求項4】
前記ペプチドがMHC分子と結合している、請求項に記載の抗体又はT細胞受容体。
【請求項5】
請求項1に記載のペプチド、請求項に記載の核酸、並びに請求項3又は4に記載の抗体又はT細胞受容体からなる群から選択される1つの構成成分を含む組換え宿主細胞。
【請求項6】
請求項1に記載のペプチドを提示している細胞を選択的に認識する、活性化Tリンパ球。
【請求項7】
それを必要とする対象における病原性感染の予防又は治療における使用のための医薬組成物であって、請求項1に記載のペプチド、請求項2に記載の核酸、請求項3に記載の抗体又はT細胞受容体、並びに請求項6に記載の活性化Tリンパ球からなる群から選択される少なくとも1つの活性成分を含み、任意選択で、薬学的に許容できる担体、アジュバント、薬学的に許容できる賦形剤及び/又は安定化剤を含む、医薬組成物
【請求項8】
それを必要とする対象における病原性感染の予防又は治療における使用のための医薬組成物であって、請求項5に記載の組換え宿主細胞の少なくとも1つの活性成分と、任意選択で、薬学的に許容できる担体、アジュバント、薬学的に許容できる賦形剤及び/又は安定化剤を含む、医薬組成物。
【請求項9】
請求項に記載の使用のための医薬組成物であって、前記病原性感染がコロナウイルスによって誘導される、医薬組成物。
【請求項10】
請求項8に記載の使用のための医薬組成物であって、前記病原性感染がコロナウイルスによって誘導される、医薬組成物。
【請求項11】
請求項に記載の使用のための医薬組成物であって、前記コロナウイルスが重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)である、医薬組成物。
【請求項12】
請求項8に記載の使用のための医薬組成物であって、前記コロナウイルスが重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)である、医薬組成物。
【請求項13】
MHC分子と結合している請求項1に記載のペプチドを含む、複合体。
【請求項14】
請求項1に記載の2つ以上のペプチド及び2つ以上のMHC分子を含み、任意選択で前記MHC分子がデキストラン骨格と結び付いている、請求項13に記載の複合体。
【請求項15】
個体における現在又は以前のコロナウイルス感染の存在又は非存在を決定するための方法であって、請求項1に記載のペプチド又は請求項13若しくは14に記載の複合体を、前記個体から得られた試料と接触させるステップ、及び前記ペプチド又は複合体と前記試料中に含まれる分子との間の結合の存在又は非存在を決定するステップを含む、方法
【請求項16】
前記分子が抗体又はT細胞受容体である、請求項15に記載の方法
【請求項17】
コロナウイルス特異的T細胞を特定するための方法であって、前記方法が、請求項1に記載のペプチド又は請求項13又は14に記載の複合体を、T細胞受容体と又は個体から得られた試料と接触させるステップ、及び前記ペプチド又は複合体と、及び、前記T細胞受容体と又は前記試料中に含まれるT細胞受容体との間の結合の存在又は非存在を決定するステップを含む、方法
【請求項18】
前記個体が、前記コロナウイルスに現在感染している、或いは、前記コロナウイルスに以前に感染していたが、現在は感染していない、請求項17に記載の方法
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
[0008]これら及び他の態様は、以下の図面と共に採用される好ましい実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。
本発明は以下であってもよい。
項目1
配列番号1~配列番号26、及び配列番号1~配列番号26と少なくとも80%相同であるそのバリアント配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドであって、バリアントが、主要組織適合複合体(MHC)の分子と結合する、及び/又はバリアントペプチドと交差反応するT細胞を誘導する、ペプチド。
項目2
MHCクラスI又はII分子と結合する能力を有し、MHCと結合したときにCD4 及び/又はCD8 T細胞によって認識されることができる、項目1に記載のペプチド。
項目3
項目1又は2に記載のペプチドをコードする核酸。
項目4
項目1若しくは2に記載のペプチド又は項目3に記載の核酸を含む免疫原性組成物。
項目5
薬学的に許容できる担体及び/又はアジュバントをさらに含む、項目4に記載の免疫原性組成物。
項目6
項目1又は2に記載のペプチドを特異的に認識する抗体。
項目7
項目1又は2に記載のペプチドと結合することができるT細胞受容体。
項目8
前記ペプチドがMHC分子と結合している、項目7に記載のT細胞受容体。
項目9
項目1又は2に記載のペプチド、項目3に記載の核酸、項目6に記載の抗体又はその断片、及び項目7又は8に記載のT細胞受容体又はその断片からなる群から選択される1つの構成成分を含む組換え宿主細胞。
項目10
樹状細胞、T細胞、又はナチュラルキラー(NK)細胞から選択される、項目9に記載の組換え宿主細胞。
項目11
活性化Tリンパ球を産生するためのin vitro又はex vivo方法であって、T細胞を、適切な抗原提示細胞又は抗原提示細胞を模倣する人工構築物の表面に発現された、抗原負荷ヒトクラスI又はII MHC分子と、前記T細胞を抗原特異的な様式で活性化させるのに十分な期間in vitro又はex vivoで接触させるステップを含み、前記抗原が、項目1又は2に記載のペプチドである、方法。
項目12
項目11に記載の方法によって産生された活性化Tリンパ球であって、項目1又は2に記載のペプチドを提示している細胞を選択的に認識する、活性化Tリンパ球。
項目13
項目1又は2に記載のペプチド、項目3に記載の核酸、項目6に記載の抗体又はその断片、項目7又は8に記載のT細胞受容体又はその断片、項目9又は10に記載の組換え宿主細胞、及び項目12に記載の活性化Tリンパ球からなる群から選択される少なくとも1つの活性成分を含む医薬組成物。
項目14
薬学的に許容できる担体、並びに/又は薬学的に許容できる賦形剤及び/若しくは安定化剤をさらに含む、項目13に記載の医薬組成物。
項目15
それを必要とする対象における病原性感染の予防又は治療における使用のための、項目4若しくは5に記載の免疫原性組成物又は項目13若しくは14に記載の医薬組成物。
項目16
項目15に記載の使用のための項目4若しくは5に記載の免疫原性組成物又は項目13若しくは14に記載の医薬組成物であって、前記病原性感染がコロナウイルスによって誘導される、免疫原性組成物又は医薬組成物。
項目17
項目16に記載の使用のための項目4若しくは5に記載の免疫原性組成物又は項目13若しくは14に記載の医薬組成物であって、前記コロナウイルスが重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)である、免疫原性組成物又は医薬組成物。
項目18
動物又はヒト対象における抗コロナウイルス抗体の生成における使用のための、項目4若しくは5に記載の免疫原性組成物又は項目13若しくは14に記載の医薬組成物。
項目19
項目18に記載の使用のための項目4若しくは5に記載の免疫原性組成物又は項目13若しくは14に記載の医薬組成物であって、前記抗コロナウイルス抗体が、コロナウイルスとの結合親和性を有することによって特徴付けられる、免疫原性組成物又は医薬組成物。
項目20
項目19に記載の使用のための項目4若しくは5に記載の免疫原性組成物又は項目13若しくは14に記載の医薬組成物であって、前記コロナウイルスが重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)である、免疫原性組成物又は医薬組成物。
項目21
MHC分子と結合している項目1又は2に記載のペプチドを含む、複合体。
項目22
項目1又は2に記載の2つ以上のペプチド及び2つ以上のMHC分子を含む、項目21に記載の複合体。
項目23
前記2つ以上のペプチドの各々が、前記2つ以上のMHC分子のうちの1つと結合している、項目21又は22に記載の複合体。
項目24
前記2つ以上のMHC分子の各々が、デキストラン骨格と結び付いている、項目21~23のいずれか一項に記載の複合体。
項目25
前記複合体がフルオロフォアをさらに含み、任意選択で、前記フルオロフォアがデキストラン骨格と結び付いている、項目21~24のいずれか一項に記載の複合体。
項目26
個体における現在又は以前のコロナウイルス感染の存在又は非存在を決定するための方法における項目1若しくは2に記載のペプチド又は項目21~25のいずれか一項に記載の複合体の使用であって、前記方法が、項目1若しくは2に記載のペプチド又は項目21~25のいずれか一項に記載の複合体を、前記個体から得られた試料と接触させるステップ、及び前記ペプチド又は複合体と前記試料中に含まれる分子との間の結合の存在又は非存在を決定するステップを含む、使用。
項目27
前記分子が抗体又はT細胞受容体である、項目26に記載の使用。
項目28
結合の存在が、現在若しくは以前のコロナウイルス感染の存在を示す、及び/又は結合の非存在が、現在若しくは以前のコロナウイルス感染の非存在を示す、項目26又は27に記載の使用。
項目29
コロナウイルス特異的T細胞を特定するための方法における、項目1若しくは2に記載のペプチド又は項目21~25のいずれか一項に記載の複合体の使用であって、前記方法が、項目1若しくは2に記載のペプチド又は項目21~25のいずれか一項に記載の複合体を、個体から得られた試料と接触させるステップ、及び前記ペプチド又は複合体と前記試料中に含まれるT細胞受容体との間の結合の存在又は非存在を決定するステップを含む、使用。
項目30
前記個体が、前記コロナウイルスに現在感染している、項目29に記載の使用。
項目31
前記個体が、前記コロナウイルスに以前に感染していたが、現在は感染していない、項目29又は30に記載の使用。
項目32
コロナウイルス特異的T細胞受容体を特定するための方法における、項目1若しくは2に記載のペプチド又は項目21~25のいずれか一項に記載の複合体の使用であって、前記方法が、項目1若しくは2に記載のペプチド又は項目21~25のいずれか一項に記載の複合体をT細胞受容体と接触させるステップ、及び前記ペプチド又は複合体と前記T細胞受容体との結合の存在又は非存在を決定するステップを含む、使用。
項目33
結合の存在が、前記T細胞受容体がコロナウイルス特異的T細胞受容体であることを示す、及び/又は結合の非存在が、前記T細胞受容体がコロナウイルス特異的T細胞受容体ではないことを示す、項目32に記載の使用。
【国際調査報告】