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特表2024-517929ポリアミド並びに対応するポリマー組成物及び物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】ポリアミド並びに対応するポリマー組成物及び物品
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/26 20060101AFI20240416BHJP
   C08L 77/06 20060101ALI20240416BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
C08G69/26
C08L77/06
C08K7/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023569815
(86)(22)【出願日】2022-05-11
(85)【翻訳文提出日】2024-01-09
(86)【国際出願番号】 EP2022062847
(87)【国際公開番号】W WO2022238511
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】21305605.4
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ベルトラン, アルテュール レネ アンリ
(72)【発明者】
【氏名】ジェオル, ステファン
(72)【発明者】
【氏名】フロレス, ジョエル
【テーマコード(参考)】
4J001
4J002
【Fターム(参考)】
4J001DA01
4J001DB03
4J001DC13
4J001EB09
4J001EB14
4J001EC14
4J001EC15
4J001EC16
4J001EE16D
4J001FA01
4J001FB05
4J001FB06
4J001FC03
4J001FC05
4J001FC06
4J001FC07
4J001GA12
4J001GB03
4J001GB05
4J001JB07
4J001JB09
4J001JB42
4J002CL031
4J002DA016
4J002DL006
4J002FA046
4J002FD016
4J002GB01
4J002GC00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
ジカルボン酸成分(DC)及びジアミン成分(DA)を含む反応混合物(RM)中のモノマーの重縮合から形成される非晶質の、透明な脂肪族ポリアミド(PA)が本明細書で記載される。ジカルボン酸成分(DC)は、25mol%~80mol%の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(「1,4-CHDA」)とアゼライン酸、セバシン酸又はそれらの組合せから選択される20mol%~75mol%の線状の、脂肪族ジカルボン酸とを含む。ジアミン成分(DA)は、イソホロンジアミン(「IPDA」);4、4‘-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)(「MACM」);4,4‘-メチレン-ビス(シクロヘキサン)(「PACM」);1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(「1,3-BAC」)、ビス(アミノメチル)ノルボルナン(「BAMN」)及びそれらの2つ以上の任意の組合せからなる群から選択される脂環式ジアミンを含む。意外にも、ポリアミド(PA)は、(少なくとも一部分において線状脂肪族ジカルボン酸のために)バイオベースでありながら、優れた光学的透明度、改善されたUV安定性及び望ましくは高いTgを有することが見いだされた。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の割合:
- 25.0~80.0mol%のRPA1
- 20.0~75.0mol%のRPA2で、それぞれ、以下の式
【化1】
[式中:
- Rは、イソホロンジアミン(「IPDA」);4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)(「MACM」);4,4’-メチレン-ビス-シクロヘキシルアミン(「PACM」);1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(「1,3-BAC」)、ビス(アミノメチル)ノルボルナン(「BAMN」)、1,2-シクロヘキサンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、4-メチルシクロヘキサン-1,3-ジアミン、2-メチルシクロヘキサン-1,3-ジアミン、1,8-ジアミノ-p-メンタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン(「PACP」)、4,4’-メタンジイルビス(2,6-ジメチルシクロヘキサンアミン)及びそれらの2つ以上の任意の組合せからなる群から選択されるジアミンの二価基であり;
- nは、7又は8である]
で表される繰り返し単位RPA1及びRPA2を含む非晶質ポリアミド(PA)であって、
前記ポリアミド(PA)が、160℃~260℃、好ましくは160℃~220℃のガラス転移温度(「Tg」)を有する
ポリアミド(PA)。
【請求項2】
- 25mol%~80mol%の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(「1,4-CHDA」)と
- アゼライン酸、セバシン酸及びそれらの組合せからなる群から選択される20mol%~75mol%の線状の、脂肪族ジカルボン酸と
を含み、ここで、mol%は、ジカルボン酸成分(DA)中のジカルボン酸の総モル数に対するものである、ジカルボン酸成分(DC)と、
- イソホロンジアミン(「IPDA」);4、4‘-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)(「MACM」);4,4‘-メチレン-ビス(シクロヘキシル)アミン(「PACM」);1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(「1,3-BAC」)、ビス(アミノメチル)ノルボルナン(「BAMN」)、1,2-シクロヘキサンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、4-メチルシクロヘキサン-1,3-ジアミン、2-メチルシクロヘキサン-1,3-ジアミン、1,8-ジアミノ-p-メンタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン(「PACP」)、4,4’-メタンジイルビス(2,6-ジメチルシクロヘキサンアミン)及びそれらの2つ以上の任意の組合せからなる群から選択される脂環式ジアミン
を含むジアミン成分(DA)と
を含む反応混合物(RM)の重縮合から形成される繰り返し単位を含む非晶質の、脂肪族ポリアミド(PA)であって、
前記反応混合物中のジアミンの総モル数は、前記反応混合物中のジカルボン酸の総モル数と好ましくは実質的に等モルであり、
前記ポリアミド(PA)が、ASTM D3418に従って測定されるように、160℃~260℃、好ましくは160℃~220℃のガラス転移温度(「Tg」を有する、
但し:
- 前記反応混合物(RM)は、第三級アミン、ラクタム及びアミノ酸を含まない且つ
- 前記脂環式ジカルボン酸がPACMである場合、前記PACMは、30%以下のトランス-トランス比を含む
ことを条件とする
ポリアミド(PA)。
【請求項3】
前記脂環式ジアミンは、IPDA、MACM、PACM、1,3-BAC、BAMN及びそれらの2つ以上の任意の組合せからなる群から選択される、請求項1又は2に記載のポリアミド(PA)。
【請求項4】
それぞれ、以下の式
【化2】
[式中、Rは、とりわけ、IPDA、MACM、PACM、1,3-BAC、BAMN及びそれらの2つ以上の任意の組合せからなる群から選択される、前記ジアミンの二価基であり、nは、7又は8である]
で表される繰り返し単位RPA1及びRPA2を含む、請求項2又は3に記載のポリアミド(PA)。
【請求項5】
前記ジカルボン酸成分(DC)は、前記1,4-CHDA及び線状カルボン酸から本質的になる又はそれらからなる、請求項2~4のいずれか一項に記載のポリアミド(PA)。
【請求項6】
前記ジアミン成分(DA)は、前記脂環式ジアミンから本質的になる又はそれからなる、請求項2~5のいずれか一項に記載のポリアミド(PA)。
【請求項7】
前記脂環式ジアミンの濃度は少なくとも80mol%である、請求項2~6のいずれか一項に記載のポリアミド(PA)。
【請求項8】
前記ポリアミド(PA)は、少なくとも20%のバイオベース炭素含有量を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリアミド(PA)。
【請求項9】
前記ジアミンはIPDAである、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリアミド。
【請求項10】
前記ジアミンは、IPDAと、MACM、PACM、1,3-BAC及びBAMNからなる群の中で選択される少なくとも1種のジアミンとの組合せである、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリアミド。
【請求項11】
前記ジアミンは、IPDAと、MACM及びPACMからなる群の中で選択される少なくとも1種のジアミンとの組合せである、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリアミド。
【請求項12】
前記ジアミンは、IPDAとMACMとの組合せ又はIPDAと、MACMとPACMとの組合せである、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリアミド。
【請求項13】
前記反応混合物(RM)中のモル比IPDA/IPDA以外のジアミンは、50/50~100/0である、請求項2と組み合わせて請求項9~12のいずれか一項に記載のポリアミド。
【請求項14】
モル比IPDAの二価基/IPDA以外の前記ジアミンの二価基は、50/50~100/0である、請求項1と組み合わせて請求項9~12のいずれか一項に記載のポリアミド。
【請求項15】
モル比RPA1/RPA2は、0.4~2.3である、請求項1と又は請求項4と組み合わせて請求項1~14のいずれか一項に記載のポリアミド。
【請求項16】
重縮合して前記ポリアミド(PA)中の前記繰り返し単位を形成する前記反応混合物(RM)中の芳香族モノマーの濃度は、重縮合して前記ポリアミド(PA)を形成する前記反応混合物中のモノマーの総数に対して、5mol%未満、好ましくは2mol%未満、好ましくは1mol%未満又は好ましくは0.5mol%未満である、請求項2~15のいずれか一項に記載のポリアミド(PA)。
【請求項17】
前記1,4-CHDA濃度は、
- 25.0mol%~80.0mol%;又は
- 30.0mol%~80.0mol%;又は
- 25.0mol%~75.0mol%;又は
- 30.0mol%~75.0mol%;又は
- 25.0mol%~60.0mol%;又は
- 30.0mol%~60.0mol%;又は
- 25.0mol%~65.0mol%;又は
- 45.0mol%~65.0mol%;又は
- 25.0mol%~35.0mol%;又は
- 45.0mol%~55.0mol%;又は
- 55.0mol%~65.0mol%
である、請求項2~16のいずれか一項に記載のポリアミド(PA)。
【請求項18】
繰り返し単位(RPA1)の割合は、
- 25.0mol%~80.0mol%;又は
- 30.0mol%~80.0mol%;又は
- 25.0mol%~75.0mol%;又は
- 30.0mol%~75.0mol%;又は
- 25.0mol%~60.0mol%;又は
- 30.0mol%~60.0mol%;又は
- 25.0mol%~65.0mol%;又は
- 45.0mol%~65.0mol%;又は
- 25.0mol%~35.0mol%;又は
- 45.0mol%~55.0mol%;又は
- 55.0mol%~65.0mol%
であり、この割合は、ポリマー中の繰り返し単位の総数を基準とする、請求項1又は請求項8~15のいずれか一項に記載のポリアミド(PA)。
【請求項19】
前記ポリアミド(PA)の繰り返し単位は、前記繰り返し単位RPA1及びRPA2から本質的になる又はそれらからなる、請求項1と又は請求項4と組み合わせて請求項1~18のいずれか一項に記載のポリアミド(PA)。
【請求項20】
少なくとも185℃又は少なくとも195℃のTgを示す、請求項1~19のいずれか一項に記載のポリアミド(PA)。
【請求項21】
1g当たり5.0ジュール(「J/g」)未満、好ましくは3.0J/g未満、より好ましくは2.0J/g未満、最も好ましくは1.0J/g未満の融解熱(「ΔH」)を示す、請求項1~20のいずれか一項に記載のポリアミド(PA)。
【請求項22】
1,000g/mol~40,000g/molの範囲の数平均分子量(「Mn」)を有し、前記数平均分子量Mnが、PMMA標準物質を使ってASTM D5296を用いるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される、請求項1~21のいずれか一項に記載のポリアミド(PA)。
【請求項23】
前記ポリアミド(PA)の前記繰り返し単位は、いかなる芳香族部分も実質的に含まない、請求項1~22のいずれか一項に記載のポリアミド(PA)。
【請求項24】
前記繰り返し単位はいかなる芳香族部分も含有しない、請求項1~23のいずれか一項に記載のポリアミド(PA)。
【請求項25】
- 請求項1~24のいずれか一項に記載のポリアミド(PA)と、
- 補強剤、強化剤、可塑剤、着色剤、顔料、帯電防止剤、染料、潤滑剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、核形成剤、酸化防止剤、加工助剤及びそれらの2つ以上の任意の組合せからなる群から選択される構成要素と
を含む、それらから本質的になる又はそれらからなるポリマー組成物(C)。
【請求項26】
ガラス繊維及び炭素繊維からなる群から選択される補強剤を含む、請求項25に記載のポリマー組成物(C)。
【請求項27】
少なくとも1種の補強繊維又は充填剤を含む、請求項25に記載のポリマー組成物(C)。
【請求項28】
ハロゲンを含まない難燃剤を含む、請求項25~27のいずれか一項に記載のポリマー組成物(C)。
【請求項29】
少なくとも1種の強化剤を含む、請求項25~28のいずれか一項に記載のポリマー組成物(C)。
【請求項30】
ポリアミド(PA)の総量は、
- 30.0重量%超;又は
- 35.0重量%超;又は
- 40.0重量%超;又は
- 45.0重量%超;又は
- 50.0重量%超;又は
- 60.0重量%超;
であり、この量は前記ポリマー組成物(C)の総重量を基準とする、請求項25~29のいずれか一項に記載のポリマー組成物(C)。
【請求項31】
ポリアミド(PA)の総量は、
- 99.95重量%未満;
- 99.0重量%未満;又は
- 95.0重量%未満;又は
- 90.0重量%未満;又は
- 80.0重量%未満;
であり、この量は前記ポリマー組成物(C)の総重量を基準とする、請求項25~30のいずれか一項に記載のポリマー組成物(C)。
【請求項32】
物品は、縫合糸、血液透析膜、血管カテーテル、足場、カテーテルバルーン、創傷包帯、呼吸マスク、及び医療用チューブからなる群から選択される、請求項1~24のいずれか一項に記載のポリアミド(PA)又は請求項25~31のいずれか一項に記載のポリマー組成物(C)を含む物品。
【請求項33】
物品はフィラメントか又は粉末かのどちらかである、請求項1~24のいずれか一項に記載のポリアミド(PA)又は請求項25~31のいずれか一項に記載のポリマー組成物(C)を含む物品。
【請求項34】
物品は携帯電子デバイス構成部品である、請求項1~24のいずれか一項に記載のポリアミド(PA)又は請求項25~31のいずれか一項に記載のポリマー組成物(C)を含む物品。
【請求項35】
物品は自動車部品である、請求項1~24のいずれか一項に記載のポリアミド(PA)又は請求項25~31のいずれか一項に記載のポリマー組成物(C)を含む物品。
【請求項36】
物品は調理器具構成部品である、請求項1~24のいずれか一項に記載のポリアミド(PA)又は請求項25~31のいずれか一項に記載のポリマー組成物(C)を含む物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年5月11日出願の欧州特許出願第21305605.4号の優先権を主張するものであり、その内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に完全に援用される。本出願とこのPCT出願との間に用語又は表現の明確さに影響を与えるであろう何らかの矛盾がある場合には、本出願のみが参照されるべきである。
【0002】
本発明は、アゼライン酸又はセバシン酸から形成される繰り返し単位を含み、高いガラス転移温度及びバイオ含有量を有するポリアミドに関する。本発明は、更に、ポリアミドを含むポリマー組成物及び物品に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの用途設定におけるポリアミドの広範な普及を考えると、再生可能な資源からのポリアミドを開発することへのますます増加する産業界要求がある。例えば、ドデカン酸をベースとするそのようなポリアミドの開発に進展があったが、そのようなポリアミドは、比較的低いTgを有し、それ故に、高温用途に対する適性は限定される。
【0004】
中国特許第107383369号明細書は、芳香族酸(イソフタル酸)の繰り返し単位を含むポリアミドを開示している。このポリアミドのTgについての言及はない。特開2003-261766号公報は、芳香族酸(イソフタル酸)の繰り返し単位を含むポリアミドを開示している。このポリアミドのTgは、本特許請求される範囲内ではない。独国特許第1520924号明細書は、特許請求されるようなポリアミドを開示していない。米国特許第2,965,616号明細書は、非晶質ポリアミドを開示していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光学的透明度とUV安定性との良好な組合せを示し、且つバイオベースであることができる高いTgのポリアミドが必要とされている。本発明のポリアミドは、この技術的課題を解決することを目的とする。
【0006】
本発明は、添付のセットの特許請求の範囲に記載されている。したがって、本発明の目的は、請求項1~24のいずれか一項において定義されるようなポリアミドである。ポリアミド(PA)つまり非晶質の、脂肪族ポリアミド(PA)は、
以下の割合:
- 25.0~80.0mol%のRPA1
- 20.0~75.0mol%のRPA2
での、それぞれ、以下の式:
【化1】
[式中、
- Rは、イソホロンジアミン(「IPDA」);4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)(「MACM」);4,4’-メチレン-ビス-シクロヘキシルアミン(「PACM」);1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(「1,3-BAC」)、ビス(アミノメチル)ノルボルナン(「BAMN」)、1,2-シクロヘキサンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、4-メチルシクロヘキサン-1,3-ジアミン、2-メチルシクロヘキサン-1,3-ジアミン、1,8-ジアミノ-p-メンタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン(「PACP」)、4,4’-メタンジイルビス(2,6-ジメチルシクロヘキサンアミン)及びそれらの2つ以上の任意の組合せからなる群から選択されるジアミンの二価基であり;ジアミンは、より特に、IPDA、MACM、PACM、1,3-BAC、BAMN及びそれらの2つ以上の任意の組合せからなる群から選択され;
- nは、7又は8である]
で表される繰り返し単位RPA1及びRPA2を含み;
及びここで、ポリアミド(PA)は、160℃~260℃、好ましくは160℃~220℃のガラス転移温度(「Tg」)を有する。
【0007】
本発明の別の目的は、請求項25~29のいずれか一項に定義されるような組成物である。本発明の別の目的は、請求項30~34のいずれか一項に定義されるような物品である。これらの目的に関するより正確且つ詳細な事項は、これから以下に提供される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様において、本発明は、ジカルボン酸成分(DC)及びジアミン成分(DA)を含む反応混合物(RM)の重縮合から形成される繰り返し単位を含む非晶質の、脂肪族ポリアミド(PA)を指向する。ジカルボン酸成分(DC)は、25mol%~80mol%の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(「1,4-CHDA」)と、アゼライン酸(HOOC-(CH-COOH)、セバシン酸(HOOC-(CH-COOH)及びそれらの組合せからなる群から選択される20mol%~75mol%の線状の、脂肪族ジカルボン酸とを含み、ここで、mol%は、ジカルボン酸成分(DA)中のジカルボン酸の総モルに対するものである。ジアミン成分(DA)は、イソホロンジアミン(「IPDA」);4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)(「MACM」);4,4’-メチレン-ビス-シクロヘキシルアミン(「PACM」);1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(「1,3-BAC」)、ビス(アミノメチル)ノルボルナン(「BAMN」)、1,2-シクロヘキサンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、4-メチルシクロヘキサン-1,3-ジアミン、2-メチルシクロヘキサン-1,3-ジアミン、1,8-ジアミノ-p-メンタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン(「PACP」)、4,4’-メタンジイルビス(2,6-ジメチルシクロヘキサンアミン)及びそれらの2つ以上の任意の組合せからなる群から選択される脂環式ジアミンを含み;ここで、mol%は、ジアミン成分(DA)中のジアミンの総量に対するものである。ポリアミド(PA)は、ASTM D3418に従って測定されるように、160℃~260℃、好ましくは160℃~220℃のガラス転移温度(「Tg」)を有する。反応混合物(RM)は、第三級アミン、ラクタム及びアミノ酸を含まない。その上、脂環式ジカルボン酸がPACMである場合、PACMは、30%以下のトランス-トランス比を含む。いくつかの実施形態において、ポリアミド(PA)は透明である。
【0009】
いくつかの実施形態において、脂環式ジアミンは、IPDA、MACM、PACM、1,3-BAC BAMN及びそれらの2つ以上の任意の組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、ジカルボン酸成分(DC)は、1,4-CHDA及び線状カルボン酸から本質的になる。いくつかの実施形態において、ジアミン成分(DA)は、脂環式ジアミンから本質的になる。いくつかの実施形態において、脂環式ジアミンの濃度は少なくとも80mol%である。いくつかの実施形態において、ポリアミド(PA)は、少なくとも20%のバイオベース炭素含有量を有する。
【0010】
別の態様において、本発明は、ポリアミド(PA)と、補強剤、強化剤、可塑剤、着色剤、顔料、帯電防止剤、染料、潤滑剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、核形成剤、酸化防止剤、加工助剤及びそれらの2つ以上の任意の組合せからなる群から選択される成分とを含むポリマー組成物(C)を指向する。
【0011】
いくつかの実施形態において、ポリマー組成物(C)は、ガラス繊維及び炭素繊維からなる群から選択される補強剤を含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、ポリマー組成物(C)は、ハロゲンを含まない難燃剤を含む。
【0013】
別の態様において、本発明は、ポリアミド(PA)又はポリマー組成物(C)を含む物品であって、物品が、縫合糸、血液透析膜、血管カテーテル、足場、カテーテルバルーン、創傷包帯、呼吸マスク、及び医療用チューブからなる群から選択される物品を指向する。
【0014】
別の態様において、本発明は、ポリアミド(PA)又はポリマー組成物(C)を含む物品であって、物品が、フィラメントか、又は粉末かのどちらかである物品を指向する。
【0015】
別の態様において、本発明は、ポリアミド(PA)又はポリマー組成物(C)を含む物品であって、物品が携帯電子デバイス構成部品である物品を指向する。
【0016】
別の態様において、本発明は、ポリアミド(PA)又はポリマー組成物(C)を含む物品であって、物品が自動車部品である物品を指向する。
【0017】
別の態様において、本発明は、ポリアミド(PA)又はポリマー組成物(C)を含む物品であって、物品が調理器具構成部品である物品を指向する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ジカルボン酸成分(DC)及びジアミン成分(DA)を含む反応混合物(RM)中のモノマーの重縮合から形成される非晶質の脂肪族ポリアミド(PA)が本明細書で記載される。ジカルボン酸成分(DC)は、25mol%~80mol%の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(「1,4-CHDA」)とアゼライン酸、セバシン酸又はそれらの組合せから選択される20mol%~75mol%の線状の、脂肪族ジカルボン酸とを含む。ジアミン成分(DA)は、イソホロンジアミン(「IPDA」);4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)(「MACM」);4,4’-メチレン-ビス-シクロヘキサン(「PACM」);1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(「1,3-BAC」)、ビス(アミノメチル)ノルボルナン(「BAMN」)及びそれらの2つ以上の任意の組合せからなる群から選択される脂環式ジアミンを含む。意外にも、ポリアミド(PA)は、(少なくとも一部分において線状の脂肪族ジカルボン酸のために)バイオベースでありながら、脂環式ジアミン、芳香族二酸及び少なくとも12個の炭素原子を含有する脂肪族線状長鎖二酸から調製される業界で公知の非晶質ポリアミドと比べて、優れた光学的透明度、改善されたUV安定性及び望ましくも高いTgを有することが見いだされた。本明細書で用いるところでは、用語脂肪族は、また、特に明記しない限り、脂環式への言及を含む。
【0019】
ポリアミド(PA)は、下でより詳細に記載されるように、ポリアミド(PA)が高められた温度に曝される用途設定へそれらが望ましくも組み込まれることができるように、比較的高いガラス転移温度(「Tg」)を有する。ポリアミド(PA)は160℃~260℃のTgを有する。この比較的高いTgは、少なくとも一部分において、ジカルボン酸成分(DC)中の環状脂肪族ジカルボン酸による、並びに反応混合物(RM)中のアミノ酸及びラクタムの欠如によるものである。線状脂肪族ジカルボン酸に関して、それは、ポリアミド(PA)にバイオベース含有量を提供するのみならず、湿った環境中での状態調節前及び/又は後にTgの低下をまた軽減する。すなわち、線状脂肪族ジカルボン酸が9個未満又は10個超の炭素原子を有する場合に、湿った環境中での状態調節前及び/又は後に結果として生じたポリアミドのTgは、ジカルボン酸(DC)が9又は10個の炭素原子を有する線状の、脂肪族ジカルボン酸を含有する対応する反応混合物(RM)と比べて、低下する。同様に、アミノ酸、カプロラクタムなどのラクタム又は第三級アミンを含む反応混合物の重縮合から形成された繰り返し単位を含むポリアミドは、そのようなモノマーを含まない反応混合物(RM)から形成された類似のポリアミドと比べて、一般に、増加した吸湿を有する。それ故に、周囲環境に曝される用途設定に存在する場合に、増加した吸湿は、Tgの低下をもたらす。したがって、反応混合物(RM)は、アミノ酸、ラクタム及び第三級アミンを含まない。本明細書で用いるところでは及び特に明記しない限り、「含まない」は、指示されたモノマーの濃度が、場合によっては、重縮合を受けてポリアミド(PA)を形成する、反応混合物(RM)中の成分、ジカルボン酸成分(DC)又はジアミン成分の総モル数に対して、5mol%未満、3mol%未満、2mol%未満、1mol%未満、0.5mol%未満又は0.1mol%未満であることを意味する。例えば、ラクタムを含まないは、ラクタムの濃度が、反応混合物(RM)中のモノマーの総モル数に対して、上記の範囲内であることを意味する。別の例として、指示されたジカルボン酸を含まないは、指示されたジカルボン酸の濃度が、ジカルボン酸成分(DC)中のジカルボン酸の総モル数に対して、上で与えられた範囲内であることを意味する。その上別の例として、指示されたジアミンを含まないは、指示されたジアミンの濃度が、ジアミン成分(DA)中のジアミンの総モル数に対して、上で与えられた範囲内であることを意味する。
【0020】
アゼライン酸及びセバシン酸は、重要なバイオベース含有量をポリアミド(PA)に付与する。特に、アゼライン酸は、動物及び植物油脂中に存在する天然に存在する脂肪酸である、オレイン酸のオゾン分解から製造することができる。セバシン酸も、生物学的起源から製造される。特に、セバシン酸は、ヒマシ油から製造される。したがって、ポリアミド(PA)は、かなりのバイオベース含有量を有するのみならず、そのバイオベース含有量はその上、上で詳細に記載されたように、ポリアミド(PA)のTgの上昇を促進する。バイオベース含有量(本明細書ではバイオベース炭素含有量とも言われる)は、実施例におけるように計算することができる。いくつかの実施形態において、ポリアミド(PA)は、少なくとも15%又は少なくとも20%のバイオベース炭素含有量を有する。
【0021】
特性の組合せのために、とりわけ、それらが非晶質及び透明である(例えば光学的透明度を有する)ために、ポリアミド(PA)は、材料を通して見ることができると同時に水/水蒸気に対する良好な耐性が必要とされる調理器具窓又は容器などの用途に好適である。
【0022】
本発明のポリアミド(PA)は、脂肪族(特に脂環式)であり、それは、耐UV性を確保する及び分岐などの副反応を制限するために特に重要である。すなわち、反応混合物(RM)は、重縮合してポリアミド(PA)中の繰り返し単位を形成する芳香族モノマー(アリール基を含有するモノマー)を含まない。すなわち、重縮合してポリアミド(PA)中の繰り返し単位を形成する芳香族モノマーの濃度は、重縮合してポリアミド(PA)を形成する反応混合物(RM)中のモノマーの総数に対して、5mol%未満、2mol%未満、1mol%未満又は0.5mol%未満である。いくつかのそのような実施形態において、それぞれ、それぞれのジカルボン酸成分(DC)及びジアミン成分(DA)中の芳香族ジカルボン酸モノマーの濃度及び芳香族ジアミンモノマーの濃度は、5mol%未満、2mol%未満、1mol%未満又は0.5mol%未満である。
【0023】
実施形態によれば、ポリアミド(PA)の繰り返し単位は、いかなる芳香族部分(例えばアリール環又はベンゼン環)も実質的に含まず、より特にいかなる芳香族部分も含有しない。
【0024】
いくつかの実施形態において、反応混合物(RM)は、上記のように、ジカルボン酸成分(DC)及びジアミン(DA)成分から本質的になる、又はそれらからなる。そのような実施形態において、反応混合物(RM)中のジカルボン酸及びジアミンの総濃度は、重縮合してポリアミド(PA)を形成する反応混合物(RM)中のモノマーの総モル数に対して、少なくとも95mol%、少なくとも97mol%、少なくとも98mol%、少なくとも99mol%又は少なくとも99.5mol%である。
【0025】
本出願において、任意の説明は、特定の実施形態に関連して記載されているが、本開示の他の実施形態に適用可能であり、それらと交換可能である。要素又は成分が、列挙された要素又は成分のリストに含まれる及び/又はそのリストから選択されると言われる場合、本出願で明確に検討される関連実施形態において、要素又は成分は、個別の列挙された要素若しくは成分のいずれか1つであることができるか、又は明確に列挙された要素若しくは成分の任意の2つ以上からなる群からまた選択することができ;要素又は成分のリストに列挙されたいかなる要素又は成分も、そのようなリストから省略され得;終点による数値範囲の本明細書におけるいかなる列挙も、列挙された範囲内に組み込まれた全ての数字並びに範囲の終点及び同等物を含むことが理解されるべきである。
【0026】
ジカルボン酸成分(DC)
ジカルボン酸成分(DC)成分は、25mol%~80mol%の1,4-CHDAとアゼライン酸、セバシン酸又はそれらの組合せから選択される20mol%~75mol%の線状の、脂肪族ジカルボン酸とを含む、反応混合物(RM)中の全てのジカルボン酸を含む。ジカルボン酸の濃度に言及する場合、濃度は、特に明記しない限り、ジカルボン酸成分(DC)中の全てのジカルボン酸の総モル数に対するものであることが理解されるであろう。
【0027】
1,4-CHDAの濃度
いくつかの実施形態において、1,4-CHDA濃度は、25mol%~80mol%又は30mol%~80mol%である。いくつかの実施形態において、1,4-CHDA濃度は、25mol%~75mol%又は30mol%~75mol%である。いくつかの実施形態において、1,4-CHDA濃度は、25mol%~60mol%又は30mol%~60mol%である。いくつかの実施形態において、1,4-CHDA濃度は25.0mol%~65.0mol%である。
【0028】
いくつかの実施形態において、1,4-CHDA濃度は45.0mol%~65.0mol%である。この範囲の濃度において、Tgは、少なくとも185℃又は少なくとも195℃さえであり得る。1.4-CHDA濃度は、請求項17において規定される通りであり得る。
【0029】
当業者は、1,4-CHDAについて与えられたこれらの濃度が、ポリアミド(PA)中の繰り返し単位RPA1の割合にまた対応することを理解する。ポリアミド(PA)中の繰り返し単位RPA1の割合は、それ故に、請求項18において規定される通りであり得る。
【0030】
線状の、脂肪族ジカルボン酸の濃度
いくつかの実施形態において、線状の、脂肪族ジカルボン酸濃度は、20mol%~75mol%又は30mol%~75mol%である。いくつかの実施形態において、線状の、脂肪族ジカルボン酸濃度は、25mol%~60mol%又は30mol%~60mol%である。いくつかの実施形態において、線状の、脂肪族ジカルボン酸濃度は35.0mol%~75.0mol%である。当業者は、上記のはっきりと述べられた範囲内の追加の線状の、脂肪族ジカルボン酸濃度範囲が考えられ、本開示内であることを認めるであろう。
【0031】
当業者は、線状の、脂肪族ジカルボン酸についてのこれらの濃度が、ポリアミド(PA)中の繰り返し単位RPA2の割合にまた対応することを理解する。
【0032】
いくつかの実施形態において、ジカルボン酸成分(DC)は、1,4-CHDAと線状の、脂肪族ジカルボン酸とから本質的になる又はそれらからなる。そのような実施形態において、1,4-CHDAと線状の、脂肪族ジカルボン酸との総濃度は、少なくとも95mol%、少なくとも97mol%、少なくとも98mol%、少なくとも99mol%又は少なくとも99.5mol%である。
【0033】
本発明は、したがって、より特に、その繰り返し単位が繰り返し単位RPA1及びRPA2から本質的になる又はそれらからなるポリアミド(PA)に関する。
【0034】
ジアミン成分(DA)
ジアミン成分(DA)は、IPDA、MACM、PACM、1,3-BAC、BAMN、1,2-シクロヘキサンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、4-メチルシクロヘキサン-1,3-ジアミン、2-メチルシクロヘキサン-1,3-ジアミン、1,8-ジアミノ-p-メンタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン(「PACP」)、4,4’-メタンジイルビス(2,6-ジメチルシクロヘキサンアミン)及びそれらの2つ以上の任意の組合せからなる群から選択される脂環式ジアミンを含む、反応混合物(RM)中の全てのジアミンを含む。好ましくは、脂環式ジアミンは、IPDA、MACM、PACM、1,3-BAC、BAMN及びそれらの2つ以上の任意の組合せからなる群から選択される。最も好ましくは、脂環式ジアミンは、IPDA、MACM、PACM又はそれらの2つ以上の任意の組合せからなる群から選択される。
【0035】
好ましい実施形態(E)によれば、ジアミン成分(DA)はIPDAを含む。この好ましい実施形態(E)によれば、ジアミンは、IPDA又はIPDAと、MACM、PACM、1,3-BAC及びBAMNからなる群の中で選択される少なくとも1種のジアミンとの組合せ、又はIPDAと、MACM及びPACMからなる群の中で選択される少なくとも1種のジアミンとの組合せである。更にいっそう特に、ジアミンは、IPDA又はIPDAとMACMとの組合せ又はIPDAと、MACMとPACMとの組合せである。この実施形態(E)によれば、反応混合物(RM)中のモル比IPDA/IPDA以外のジアミンは、好ましくは50/50~100/0であり得る。この好ましい実施形態(E)で、ポリアミドは、特性の良い組合せを示す。
【0036】
上述のように、ポリアミド(PA)は非晶質である。したがって、ジアミン成分(DA)中の脂環式ジアミンがPACMである限りは、トランス-トランス異性体比は、ガスクロマトグラフィーによって測定されるように(シス-シス、トランス-トランス、シス-トランスを含む)異性体の全体含有量の30モル%未満である。トランス-トランス異性体比が30mol%又はそれ以上である場合、結果として生じるポリアミドは、一般に半結晶性である。トランス-トランス異性体は、シクロヘキサン置換基(すなわち、-NH及び-CH-)が、PACM分子を構成する両シクロヘキサン環について、シクロヘキサン環の反対面上に置かれている立体異性体に対応する。
【0037】
いくつかの実施形態において、脂環式ジアミンの濃度は、少なくとも75mol%、少なくとも80mol%、少なくとも85mol%、少なくとも90mol% 少なくとも95mol%又は少なくとも99mol%である。いくつかの実施形態において、ジアミン成分(DA)は、脂環式ジアミンから本質的になる。そのような実施形態において、脂環式ジアミン濃度は、少なくとも95mol%、少なくとも97mol%、少なくとも98mol%、少なくとも99mol%又は少なくとも99.5mol%である。ジアミンの濃度に言及する場合、濃度は、特に明記しない限り、ジアミン成分(DA)中の全てのジアミンの総モル数に対するものであることが理解されるであろう。
【0038】
本発明のポリアミド(PA)
ポリアミド(PA)は、上で記載されたように、ジアミン成分及びジカルボン酸成分中のモノマーの重縮合から形成される。ポリアミド(PA)は、それぞれ、以下の式:
【化2】
(式中、Rは、IPDA、MACM、PACM、1,3-BAC及びBAMNからなる群から選択されるジアミンの二価基であり、nは、7又は8である)
で表される、繰り返し単位RPA1及びRPA2を含有する又はそれらを含む。明確にするために、ジアミンの二価基は、指示されたジアミンの2つのアミンを取り除くことから形成される二価基である。その上、ジカルボン酸成分(DC)がアゼライン酸を含む場合、nは7であり、ジカルボン酸成分(DC)がセバシン酸を含む場合、nは8である。
【0039】
前述のように、脂肪族ジカルボン酸は、アゼライン酸(HOOC-(CH-COOH)、セバシン酸(HOOC-(CH-COOH)及びそれらの組合せからなる群から選択される。それ故に、上記の式において、nは7であり得る。nはまた8であり得る。ポリアミド(PA)が、n=7の繰り返し単位及びn=8の繰り返し単位を含有することも可能である。
【0040】
好ましい実施形態(E)によれば、繰り返し単位RPA1及びRPA2は、IPDAの二価基を含む。この好ましい実施形態(E)によれば、R1は、IPDAの又はIPDAと、MACM、PACM、1,3-BAC及びBAMNからなる群の中で選択される少なくとも1種のジアミンとの組合せの又はIPDAと、MACM及びPACMからなる群の中で選択される少なくとも1種のジアミンとの組合せの二価基である。更にいっそう特に、R1は、IPDAの又はIPDAとMACMとの組合せの又はIPDAと、MACMとPACMとの組合せの二価基である。実施形態(E)によれば、IPDAの二価基/IPDA以外のジアミンの二価基のモル比は、好ましくは50/50~100/0であり得る。
【0041】
いくつかの実施形態において、ポリアミド(PA)中の繰り返し単位RPA1及びRPA2の総濃度は、少なくとも50mol%、少なくとも60mol%、少なくとも70mol%、少なくとも80mol%、少なくとも90mol%、少なくとも95mol%、少なくとも97mol%、少なくとも98mol%、少なくとも99mol%又は少なくとも99.5mol%である。繰り返し単位のmol%に言及する場合、濃度は、特に明記しない限り、指示されたポリマー中の繰り返し単位の総数に対するものであることが理解されるであろう。本発明は、またより特に、その繰り返し単位が、繰り返し単位RPA1及びRPA2から本質的になる又はそれらからなるポリアミド(PA)に関する。
【0042】
いくつかの実施形態において、繰り返し単位RPA1対RPA2の数の比は、2.3~0.4である。
【0043】
上で詳細に説明されたように、ポリアミド(PA)は、比較的高いTgを有する。より具体的には、ポリアミド(PA)は、160℃~260℃、好ましくは160℃~220℃のTgを有する。Tgは、少なくとも185℃、少なくとも195℃さえであり得る。Tgは、ASTM D3418に従って測定することができる。Tgは、DSC(示差走査熱量測定法)によって、とりわけ40℃~320℃のDSC測定によって測定することができる。実施例において開示される方法を用いることができる。本方法は、40℃~320℃のDSCによりTgを評価することに存し、ここで、第1の加熱ランプ、第1の冷却及び第2の加熱(全て10℃/分で)後に、Tgは、第3の加熱(40℃/分)において測定される。
【0044】
その上、上で説明されたように、ポリアミド(PA)は非晶質である。本明細書で用いるところでは、非晶質ポリアミドは、1グラム当たり5ジュール(「J/g」)未満、好ましくは3J/g未満、より好ましくは2J/g未満、最も好ましくは1J/g未満の融解熱(「ΔH」)を有する。ΔHは、20℃/分の加熱速度を用いてASTM D3418に従って測定することができる。
【0045】
いくつかの実施形態において、ポリアミド(PA)は、1,000g/mol~40,000g/mol、例えば2,000g/mol~35,000g/mol、4,000~30,000g/mol、又は5,000g/mol~20,000g/molの範囲の数平均分子量(「Mn」)を有する。数平均分子量Mnは、PMMA標準物質を使ってASTM D5296を用いるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。
【0046】
ポリアミド(PA)の調製方法
本明細書で記載されるポリアミド(PA)は、ポリアミド及びポリフタルアミドの合成に適合した任意の従来法によって調製することができる。ポリアミド(PA)の調製のための都合のよいルートは重縮合である。これは、少なくともTg+50℃よりも高い温度T*で反応混合物(RM)を加熱することを含む。
【0047】
優先的に、本発明のポリアミド(PA)は、30重量%未満、優先的には20重量%未満、更にいっそう優先的には10重量%未満の水の存在下で、少なくともTg+50℃の温度T*に至るまでモノマーを反応させることによって(加熱することによって)調製され、ここで重量%は、反応混合物の総重量に対するものである。
【0048】
T*は、好ましくは少なくとも250℃、少なくとも275℃さえである。
【0049】
重縮合は、有利には、撹拌反応器、押出機又は混練機などのうまく撹拌される容器で行われる。重縮合は、好ましくは、撹拌反応器で行われる。容器は、また有利には、反応の揮発性生成物を除去するための手段を備えている。反応混合物の粘度は、時間と共に増加するので、攪拌機は、重合の開始時に及び重縮合の転化がほぼ完了したときに十分な撹拌を反応混合物に提供するように改造成される。
【0050】
実施例1に開示される条件が、本発明のポリアミドの調製のために都合よく用いられ得る。
【0051】
いくつかの実施形態において、反応混合物中のジアミンの総モル数は、反応混合物中のジカルボン酸の総モル数と実質的に等モルである。本明細書で用いるところでは、実質的に等モルは、指示されたモル数の±15%である値を意味する。例えば、反応混合物中のジアミン及びジカルボン酸濃度との関連で、反応混合物中のジアミンの総モル数は、反応混合物中のジカルボン酸の総モル数の±15%である。ポリアミド(PA)は、アミン部分又はカルボン酸部分と反応することができる一官能性分子であり、及びポリアミド(PA)の分子量を制御するために使用される、連鎖制限剤を含有し得る。例えば、(反応混合物に添加される)連鎖制限剤は、酢酸、プロピオン酸、安息香酸及び/又はベンジアミンであることができる。
【0052】
触媒も都合よく使用することができる。触媒の例は、亜リン酸、オルト-リン酸、メタ-リン酸、次亜リン酸ナトリウムなどのアルカリ金属次亜リン酸塩及びフェニルホスフィン酸である。ホスファイトなどの、安定剤も使用され得る。
【0053】
ポリマー組成物(C)
ポリマー組成物(C)は、本発明のポリアミド(PA)を含む。ポリアミド(PA)は、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として、30重量%超、35重量%超、40重量%超又は45重量%超の総量で組成物(C)中に存在し得る。この量は、50.0重量%超又は60.0重量%超さえであり得る。
【0054】
ポリアミド(PA)は、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として、99.95重量%未満、99重量%未満、95重量%未満、90重量%未満、80重量%未満、70重量%未満又は60重量%未満の総量で組成物(C)中に存在し得る。ポリアミド(PA)は、例えば、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として、35~70重量%、例えば40~55重量%の範囲の量で組成物(C)中に存在し得る。
【0055】
組成物(C)は、また、補強剤、強化剤、可塑剤、着色剤、顔料、帯電防止剤、染料、潤滑剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、核形成剤、酸化防止剤、加工助剤及びそれらの2つ以上の任意の組合せからなる群から選択される成分を含み得る。
【0056】
補強繊維又は充填剤とも呼ばれる、幅広い選択の補強剤が、本発明による組成物に添加され得る。それらは、繊維状補強剤及び粒子状補強剤から選択することができる。繊維状補強充填剤は、平均長さが幅及び厚さの両方よりも著しく大きい、長さ、幅及び厚さを有する材料であると本明細書では考えられる。一般に、そのような材料は、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20又は少なくとも50の長さと最大の幅及び厚さとの間の平均比として定義される、アスペクト比を有する。いくつかの実施形態において、補強繊維(例えばガラス繊維又は炭素繊維)は、3mm~50mmの平均長さを有する。いくつかのそのような実施形態において、補強繊維は、3mm~10mm、3mm~8mm、3mm~6mm、又は3mm~5mmの平均長さを有する。代わりの実施形態において、補強繊維は、10mm~50mm、10mm~45mm、10mm~35mm、10mm~30mm、10mm~25mm又は15mm~25mmの平均長さを有する。補強繊維の平均長さは、ポリマー組成物(C)への組み込み前の補強繊維の平均長さと見なすことができ、或いはポリマー組成物(C)中の補強繊維の平均長さと見なすことができる。
【0057】
補強充填剤は、鉱物充填剤(タルク、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの)、ガラス繊維、炭素繊維、合成ポリマー繊維、アラミド繊維、アルミニウム繊維、チタン繊維、マグネシウム繊維、炭化ホウ素繊維、ロックウール繊維、スチール繊維及びウォラストナイトから選択され得る。
【0058】
繊維状充填剤の中で、ガラス繊維が好ましく;それらには、Additives for Plastics Handbook,2nd edition,John Murphyの5.2.3章、43~48頁に記載されているような、チョップドストランドA-、E-、C-、D-、S-、及びR-ガラス繊維が含まれる。好ましくは、充填剤は、繊維状充填剤から選択される。それは、より好ましくは、高温用途に耐えることができる補強繊維である。
【0059】
補強剤は、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として、15重量%超、20重量%超、25重量%超又は30重量%超の総量で組成物(C)中に存在し得る。補強剤は、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として、65重量%未満、60重量%未満、55重量%未満又は50重量%未満の総量で組成物(C)中に存在し得る。
【0060】
補強充填剤は、例えば、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として、20~60重量%、例えば30~50重量%の範囲の量で組成物(C)中に存在し得る。
【0061】
組成物(C)は、また、強化剤を含み得る。強化剤は、一般に、Tgが、例えば室温未満、0℃未満又は-25℃未満さえである、低いTgを示す。それらの低いTgの結果として、強化剤は、典型的には室温でエラストマー的である。強化剤は、官能化されたポリマー骨格であることができる。
【0062】
強化剤のポリマー骨格は、ポリエチレン及びそれらのコポリマー、例えばエチレン-ブテン;エチレン-オクテン;ポリプロピレン及びそれらのコポリマー;ポリブテン;ポリイソプレン;エチレン-プロピレン-ゴム(EPR);エチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム(EPDM);エチレン-アクリレートゴム;ブタジエン-アクリロニトリルゴム、エチレン-アクリル酸(EAA)、エチレン-酢酸ビニル(EVA);アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンゴム(ABS)、ブロックコポリマースチレンエチレンブタジエンスチレン(SEBS);ブロックコポリマースチレンブタジエンスチレン(SBS);メタクリレート-ブタジエン-スチレン(MBS)タイプのコア-シェルエラストマー、又は上記の1つ以上の混合物を含むエラストマー骨格から選択することができる。
【0063】
強化剤が官能化されている場合、骨格の官能化は、官能化を含むモノマーの共重合によって又は更なる成分でのポリマー骨格のグラフト化によって生じることができる。
【0064】
官能化された強化剤の具体的な例は、とりわけ、エチレンと、アクリル酸エステルとグリシジルメタクリレートとのターポリマー、エチレンとアクリル酸ブチルエステルとのコポリマー;エチレンと、アクリル酸ブチルエステルとグリシジルメタクリレートとのコポリマー;エチレン-無水マレイン酸コポリマー;無水マレイン酸でグラフトされたEPR;無水マレイン酸でグラフトされたスチレンコポリマー;無水マレイン酸でグラフトされたSEBSコポリマー;無水マレイン酸でグラフトされたスチレン-アクリロニトリルコポリマー;無水マレイン酸でグラフトされたABSコポリマーである。
【0065】
強化剤は、組成物(C)の総重量を基準として、1重量%超、2重量%超又は3重量%超の総量で組成物(C)中に存在し得る。強化剤は、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として、30重量%未満、20重量%未満、15重量%未満又は10重量%未満の総量で組成物(C)中に存在し得る。
【0066】
ポリマー組成物(C)は、また、可塑剤、着色剤、顔料(例えば、カーボンブラック及びニグロシンなどの黒色顔料)、帯電防止剤、染料、潤滑剤(例えば、線状低密度ポリエチレン、ステアリン酸カルシウム若しくはマグネシウム又はモンタン酸ナトリウム)、熱安定剤、光安定剤、難燃剤(例えばハロゲンを含まない難燃剤)、核形成剤及び酸化防止剤などの、当技術分野において一般に使用される他の従来の添加剤を含み得る。ハロゲンを含まない難燃剤の例としては、アルミニウムのホスフィン酸塩が挙げられるが、それらに限定されない。
【0067】
組成物(C)は、少なくとも1種のハロゲンを含まない難燃剤、とりわけリン系の難燃剤を含み得る。リン系難燃剤は、金属アルキルホスフィネートからなる群の中で選択され得る。金属アルキルホスフィネートの例は、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、例えばClariant製の商品名Exolit(登録商標)で知られるものである。良好なレベルの難燃性を確実にするリン系難燃剤の別の例は、下に開示される。
【化3】
【0068】
ポリマー組成物(C)は、また、1種以上の他のポリマー、好ましくは本発明のポリアミド(PA)とは異なるポリアミドを含み得る。とりわけ、脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミド、及びより一般的には芳香族若しくは脂肪族飽和二酸と、脂肪族飽和若しくは芳香族第一級ジアミン、ラクタム、アミノ酸又はこれらの異なるモノマーの混合物との間の重縮合によって得られるポリアミドなど、半結晶性又は非晶質ポリアミドを挙げることができる。
【0069】
ポリマー組成物(C)の調製
本発明は、更に、上で詳述されたような組成物(C)の製造方法であって、前記方法が、ポリアミド(PA)と、特定の成分、例えば充填剤、強化剤、安定化剤、及び任意の他の任意選択の添加剤とを溶融ブレンドする工程を含む方法に関する。
【0070】
任意の溶融ブレンディング方法が、本発明との関連でポリマー原料と非ポリマー原料とを混合するために用いられ得る。例えば、ポリマー原料及び非ポリマー原料は、一軸スクリュー押出機若しくは二軸スクリュー押出機、撹拌機、一軸スクリュー若しくは二軸スクリュー混錬機、又はバンバリーミキサーなどの、溶融ミキサーへ供給され得、この添加工程は、全ての原料の同時添加又はバッチ式の漸次添加であり得る。ポリマー原料及び非ポリマー原料がバッチ式に徐々に添加される場合、ポリマー原料及び/又は非ポリマー原料の一部がまず添加され、次いで、十分に混合された組成物が得られるまで、その後に添加される残りのポリマー原料及び非ポリマー原料と溶融混合される。補強剤が長い物理的形状(例えば、長い繊維並びに連続繊維)を示す場合、補強された組成物を調製するために延伸押出成形又は引抜成形が用いられ得る。
【0071】
物品及び用途
本発明は、また、本発明のポリアミド(PA)を含む物品に、及び上記のコポリマー組成物(C)を含む物品に関する。物品は、望ましくは、縫合糸、血液透析膜、血管カテーテル、足場(例えば、靱帯及び腱修復のための)、カテーテルバルーン、創傷包帯、呼吸マスク(例えば顔面防護具構成部品)、並びに医療用チューブを含むが、それらに限定されないヘルスケア用途へ組み入れることができる。
【0072】
物品は、また望ましくは、コーヒー自動販売機構成部品、出前容器、真空容器、及び台所用品を含むが、それらに限定されない調理器具構成部品へ組み入れることができる。
【0073】
物品は、とりわけ、携帯電子デバイス、LEDパッケージング、石油・ガス構成部品、食品接触構成部品(食品フィルム及びケーシング、哺乳瓶、飲料水用のボトルを含むが、それらに限定されない)、電気及び電子構成部品(コンピューティング、データシステム及びオフィス設備のための動力装置構成部品並びに表面実装技術適合性コネクタ及びコンタクトを含むが、それらに限定されない)、医療機器構成部品(補聴器及びイヤホン用の構成部品、保護マスク用のぞき窓を含むが、それらに限定されない、消費者構成部品(家電製品、度付き眼鏡及びサングラス用の光学眼鏡フレーム、安全眼鏡、日焼け防止レンズ/眼鏡レンズ用のフレーム、化粧品パッケージング、歯ブラシを含むが、それらに限定されない) 建設構成部品(冷却及び加熱系用の、パイプ、コネクタ、多岐管及びバルブ;ボイラー及びメーター構成部品;ガス系パイプ及びフィッティング);並びにミニサーキットブレーカー用の電気的保護デバイス、接触器、スイッチ及びソケットを含むが、それらに限定されない)、工業部品、配管構成部品(パイプ、バルブ、フィッティング、多岐管、シャワー蛇口及びシャワー止水栓を含むが、それらに限定されない)、自動車部品、並びに航空宇宙用構成部品(インテリアキャビン構成部品を含むが、それらに限定されない)に使用することができる。
【0074】
本物品は、例えば、携帯電子デバイス構成部品であり得る。本明細書で用いるところでは、「携帯電子デバイス」は、便利に運ばれ、様々な場所で使用されることを意図される電子デバイスを言う。携帯電子デバイスとしては、携帯電話、携帯情報端末(「PDA」)、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、ウェアラブルコンピューティングデバイス(例えば、スマートウォッチ、スマートグラス等)、カメラ、携帯オーディオプレーヤー、携帯ラジオ、全地球測位システム受信機、及び携帯ゲームコンソールを挙げることができるが、それらに限定されない。
【0075】
携帯電子デバイス構成部品は、例えば、無線アンテナ及び組成物(C)を含み得る。この場合に、無線アンテナは、WiFiアンテナ又はRFIDアンテナであることができる。携帯電子デバイス構成部品は、また、アンテナハウジングであり得る。携帯電子デバイス構成部品の更なる例としては、マイクロスピーカー、マイクロスイッチ、マイクロレシーバー、コネクタ、カメラモジュール、カメラレンズプロテクター、バックハウジング、バッテリーカバー、シャーシ及びフレームが挙げられるが、それらに限定されない。
【0076】
いくつかの実施形態では、携帯電子デバイス構成部品は、アンテナハウジングである。いくつかのそのような実施形態では、無線アンテナの少なくとも一部は、ポリマー組成物(C)上に配置される。その上又はその代わりに、無線アンテナの少なくとも一部をポリマー組成物(C)からずらす(例えば接触させない)ことができる。いくつかの実施形態では、デバイス構成部品は、取付け穴又は他の締結デバイス(それ自体と、回路基板、マイクロホン、スピーカー、ディスプレイ、バッテリー、カバー、ハウジング、電気若しくは電子コネクタ、ヒンジ、無線アンテナ、スイッチ、又はスイッチパッドを含むが、それらに限定されない、携帯電子デバイスの別の構成部品との間のスナップフィットコネクタを含むが、それらに限定されない)を持った取付け構成部品のものであることができる。いくつかの実施形態では、携帯電子デバイスは、入力デバイスの少なくとも一部であることができる。
【0077】
石油・ガス構成部品の例としては、コンプレッサーリング、ポペット、バックアップシールリング、電気コネクタ、ラビリンスシール、モーターエンドプレート、ベアリング、ブッシング、サックロッドガイド及びダウンホールチュービングが挙げられるが、それらに限定されない。
【0078】
自動車部品の例としては、熱管理システムの構成要素(サーモスタットハウジング、水入口/出口バルブ、水ポンプ、水ポンプインペラ、並びにヒーターコア及びエンドキャップを含むが、それらに限定されない)、空気管理システム構成要素(ターボチャージャーアクチュエータ、ターボチャージャーバイパスバルブ、ターボチャージャーホース、EGRバルブ、CACハウジング、排出ガス再循環システム、電子制御スロットルバルブ、及び熱風ダクトを含むが、それらに限定されない)、トランスミッション構成要素及びランチ装置構成要素(デュアルクラッチトランスミッション、自動マニュアルトランスミッション、連続可変トランスミッション、自動トランスミッション、トルクコンバーター、デュアルマスフライホイール、パワーテイクオフ、クラッチシリンダー、シールリング、スラストワッシャー、スラストベアリング、ニードルベアリング、及びチェックボールを含むが、それらに限定されない)、自動車電子部品、自動車照明部品(モーターエンドキャップ、センサー、ECUハウジング、ボビン及びソレノイド、コネクタ、回路保護/リレー、アクチュエータハウジング、Liイオンバッテリーシステム、並びにヒューズボックスを含むが、それらに限定されない)、トラクションモーター及びパワーエレクトロニクス構成要素(バッテリーパックを含むが、それらに限定されない)、燃料及び選択的触媒還元(「SCR」)システム(SCRモジュールハウジング及びコネクタ、SCRモジュールハウジング及びコネクタ、燃料フランジ、ロールオーバーバルブ、クイックコネクト、フィルターハウジング、燃料レール、燃料供給モジュール、燃料ホース、燃料ポンプ、燃料インジェクターOリング、及び燃料ホースを含むが、それらに限定されない)、流体システム構成要素(例えば燃料システム構成要素)(入口及び出口バルブ、並びに流体ポンプ構成要素を含むが、それらに限定されない)、内部構成要素(例えばダッシュボード構成要素、ディスプレイ構成要素、及びシート構成要素)、並びに構造及び軽量化構成要素(例えばギア及びベアリング、サンルーフ、ブラケット及びマウント、電気式バッテリーハウジング、熱管理構成要素、ブレーキシステム要素、並びにポンプ及びEGRシステム)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0079】
ポリアミド(PA)、ポリマー組成物(C)及びそれらから調製された物品は、また、単層又は多層物品において、包装用途向けのガスバリア材料として使用され得る。
【0080】
ポリアミド(PA)、ポリマー組成物(C)、及びそれらか調製された物品は、また、自動車用途において、例えば空気導入系、冷却及び加熱系、駆動系及び燃料系、ビーム及び構造支持体、パン及びカバーにおいて使用することができる。
【0081】
物品は、本発明のポリアミド(PA)又はポリマー組成物(C)から、熱可塑性樹脂に適している任意のプロセス、例えば押出、射出成形、ブロー成形、回転成形又は圧縮成形によって成形することができる。ポリアミド(PA)及びポリマー組成物(C)は、また、ハイブリッド構造を構築するために予め形成された形状をオーバーモールドする際に使用することができる。
物品は、本発明のポリアミド(PA)又はポリマー組成物(C)から、例えばフィラメントの形態にある材料の押出の工程を含むプロセスによって、又は材料のレーザー焼結の工程を含むプロセス(この場合は材料は粉末形態である)によって、印刷することができる。
【0082】
本発明は、また、付加製造システムで3次元(3D)物体を製造する方法であって、
- 本発明のポリアミド(PA)又はポリマー組成物(C)を含む部品材料を提供する工程と、
- この部品材料から3次元物体の層を印刷する工程と
を含む方法に関する。
【0083】
ポリアミド(PA)又はポリマー組成物(C)は、それ故に、3D印刷のプロセス、例えば、熱溶解積層法(FDM)としても知られる、溶融フィラメント製造法に使用されるスレッド又はフィラメントの形態にあることもできる。
【0084】
ポリアミド(PA)又はポリマー組成物(C)は、また、3D印刷のプロセス、例えば選択的レーザー焼結法(SLS)に使用される、粉末、例えば実質的に球形の粉末の形態にあることができる。
【0085】
ポリアミド(PA)又はポリマー組成物(C)は、また、望ましくは、連続ガラス繊維又は炭素繊維入りの熱可塑性複合材料(例えばテープ)中へ組み入れることができる。
【0086】
ポリアミド(PA)、組成物(C)及び物品の使用
本発明は、上で記載されたような、携帯電子デバイス構成部品を製造するための上記のポリアミド(PA)、組成物(C)又は物品の使用に関する。
本発明は、また、物体を3D印刷するための上記のポリアミド(PA)又は組成物(C)の使用に関する。
【0087】
参照により本明細書に援用される任意の特許、特許出願、及び刊行物の開示が、それが用語を不明確にし得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【実施例
【0088】
本実施例は、ポリアミドの合成、熱的性能、及び機械的性能を実証する。サンプルを形成するために使用された原材料は、以下に示す通りである:
- IPDA(Aldrichから入手)
- 1,4-CHDA(Aldrichから入手)
- 1,6-ヘキサン二酸(Aldrichから入手)(表1では「C6」)、アジピン酸としても知られる。
- 1,10-デカン二酸(Aldrichから入手)(表1では「C10」)、セバシン酸としても知られる。このモノマーは、10個のバイオベース炭素原子を有する。
- 1,9-ノナン二酸(Aldrichから入手)(表1では「C9」)、アゼライン酸としても知られる。このモノマーは、9個のバイオベース炭素原子を有する。
- 1,12-ドデカン二酸(Aldrichから入手)
- 1,15-ペンタデカン二酸(Cathayから入手)(表1では「C15」)。
- MACM(Aldrichから入手)
- PACM(Acrosから入手)
【0089】
ポリアミドの合成
この実施例は、ポリアミドの合成を実証する。各反応混合物についてのサンプルパラメータを表1に示す。ポリマー中のバイオベース炭素含有量は、バイオベース炭素原子の数(バイオベースモノマーに由来する)割るポリマー中の全ての炭素原子(バイオベース及び非バイオベースモノマーに由来する)の比と定義される。
【0090】
【表1】
【0091】
実施例1:
105.7g(0.62mol)のIPDA、86.4g(0.43mol)の1,10-デカン二酸、31.5g(0.18mol)の1,4-CHDA、4.1gの次亜リン酸ナトリウム一水和物の水溶液(5重量%、2mmol)及び30gの脱イオン水を、機械撹拌機を備えたステンレス鋼オートクレーブに導入した。オートクレーブを窒素でパージし、次いで密封し、反応器の温度を300℃に至るまで徐々に上げた。同時に、圧力は上昇し、最大11バールに達するに任せ、それよりも上で過剰の蒸気を留出させた。圧力を次いで開放し、オートクレーブを20分の間に減圧(約100mbar)にした。結果として生じたポリマーを次いでストランドとして排出し、ペレット化した。
【0092】
実施例2、3、4、5、並びに全ての比較例CE1、CE2、CE3、CE4、CE5、CE6及びCE7を、実施例3と同じ手順を用いて、しかし表1に示される適切なモノマー組合せ及びモル濃度を使用して調製する。
【0093】
熱性能
熱性能を実証するために、Tgを上記の通りに測定した。より具体的には、各サンプルについて、Tgを40℃~320℃でのDSC測定によって評価した。第1の加熱ランプ、第1の冷却及び第2の加熱(全て10℃/分で)後に、Tgを第3の加熱(40℃/分)で測定した。Tgを表1に表示する。
【0094】
CE1及びCE2とのE1及びE2の比較は、意外にも、少なくとも脂環式ジアミン(IPDA)と、CHDAとC10(1,10-デカン二酸)二酸との化合から形成されたポリアミドが、同時に少なくとも20%のバイオベース炭素含有量を有しながら、160℃よりも高いTgをもたらしたことを実証する。同様に、CE3、CE4、CE5、CE6、及びCE7とのE4の比較は、意外にも、少なくとも脂環式ジアミン(MACM)と、CHDAとC9二酸(1,9-ノナン二酸)との化合から形成されたポリアミドが、Tg>160℃及び少なくとも20%のバイオベース炭素含有量を有する非晶質の、透明なポリアミドをもたらしたことを実証する。
【0095】
更に、E4及びE5は、意外にも、少なくとも脂環式ジアミンと、CHDAとC10二酸(1,10-デカン二酸)との化合から形成されたポリアミド、結果として生じたポリアミドが、Tg>180℃及び少なくとも20%のバイオベース炭素含有量を有しながら、非晶質の、透明なポリマーであったことを実証する。
【0096】
上記の実施形態は、例示的であり、限定的ではないことを意図する。追加の実施形態は、本発明の概念内にある。加えて、本発明は、特定の実施形態に関連して記載されているが、当業者は、本発明の主旨及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細における変更が行われ得ることを認めるであろう。上記の文書の参照によるいかなる援用も、本明細書での明白な開示に反する主題が援用されないように限定される。
【国際調査報告】