(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】非対称SOT‐MRAMメモリセルユニットを製造する為の方法、非対称SOT‐MRAMメモリセルユニットを製造する為の方法を実行することにより得られるメモリセルユニット
(51)【国際特許分類】
H10B 61/00 20230101AFI20240416BHJP
H10N 50/80 20230101ALI20240416BHJP
【FI】
H10B61/00
H10N50/80 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023569934
(86)(22)【出願日】2022-05-17
(85)【翻訳文提出日】2023-12-11
(86)【国際出願番号】 EP2022063257
(87)【国際公開番号】W WO2022243279
(87)【国際公開日】2022-11-24
(32)【優先日】2021-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514255523
【氏名又は名称】サントレ ナティオナル ド ラ ルシェルシェ シアンティフィク
(71)【出願人】
【識別番号】520179305
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ パリ-サクレー
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS-SACLAY
(71)【出願人】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゴダン, ジル
(72)【発明者】
【氏名】ミロン, イオアン ミハイ
(72)【発明者】
【氏名】ブル, オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ラヴェロソナ, ダフィーヌ
【テーマコード(参考)】
4M119
5F092
【Fターム(参考)】
4M119CC05
4M119CC10
4M119DD17
4M119DD24
4M119EE03
4M119JJ13
5F092AB06
5F092AC26
5F092BB10
5F092BB23
5F092BB34
5F092BB35
5F092BB36
5F092BB43
5F092BB55
5F092BC03
(57)【要約】
【要約】 非対称SOT‐MRAMメモリセルユニットを製造する為の方法(50)であって、メモリセルユニットが、導体トラックと、導体トラックに配置されて自由磁化した少なくとも一つの磁性領域を具備するパッドとを具備する方法であり、少なくとも一つの延伸した第1磁性層を具備する複数の延伸層の積層体を作成するステップ(100)と、積層体の上面にマスクを堆積するステップ(200)と、マスクを担持する積層体の上面のイオン照射を通して延伸した第1磁性層に第1磁性領域を画定するステップ(400,500)とを包含して、第1磁性層を形成する材料の磁気特性を改変するようにイオン照射のパラメータが適応される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非対称SOT‐MRAMメモリポイントを製造する為の方法(50)であって、前記メモリポイント(1)は、導電性トラック(4)と、前記導電性トラックに配置されて自由磁化した少なくとも一つの第1磁性領域(11)を含むパッド(5)とを含み、
少なくとも一つの延伸した第1磁性層(111)を含む複数の延伸層による積層体(101)を製作するステップ(100)と、
前記積層体(101)の上面にマスク(220)を堆積するステップ(200)と、
前記マスクを担持する前記積層体の前記上面のイオン照射により延伸した前記第1磁性層(111)に前記第1磁性領域(11)を画定するステップであって、前記イオン照射のパラメータが前記第1磁性層(111)の構成材料の磁気特性を改変するように適応される(400,500)、ステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記イオン照射により、前記マスクの存在のために前記イオン照射中に露出されない前記第1磁性層(111)の区域の磁気特性を保持しながら、前記イオン照射中に露出される前記第1磁性層(111)の区域の磁気特性を改変できる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
イオン照射による前記画定するステップは、照射期間中に、前記マスクを担持する前記積層体の前記上面に対するイオン発生源の相対変位を含み、前記照射の前記パラメータは、前記照射期間全体に露出している区域の磁気特性を除去するように適応されているが、前記照射期間のうちわずかの間のみ露出している区域の前記磁気特性を除去するのには不充分である、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
イオン照射による前記画定するステップは、第1照射方向(d1)での第1照射(400)と、続く第2照射方向(d2)での第2照射(500)とを含み、前記第1照射及び前記第2照射のパラメータが、前記第1照射中と前記第2照射中の両方に露出される区域の磁気特性を除去するのに充分であるが、前記第1照射中のみ又は前記第2照射中のみ露出される区域の磁気特性を除去するのには不充分であるように選択される、請求項1又は請求項2による方法。
【請求項5】
前記第1イオン照射と前記第2イオン照射との間に、前記マスクを改変するステップを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記イオン照射は、好ましくは10keVと100keVの間、さらにより好ましくは30keVに等しい低エネルギーの軽イオン、好ましくはHe+を、10
14イオン/cm
2と10
17イオン/cm
2の間、好ましくは10
16イオン/cm
2に等しい強度で実行される、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記マスク(220)を前記堆積するステップの後でイオン照射による前記画定するステップの前に、イオン照射中に使用されるイオン流が前記第1磁性層(111)に達し得るように、堆積された前記マスク(220)の周囲で前記積層体(101)の上層をエッチング加工することに存するエッチング加工ステップ(300)を含む、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
複数の延伸層の積層体(101)を製作するステップ(100)は、導電層(104,110)と前記第1磁性層(111)と中間層(112)と第2磁性層(113)と電極層(114)とを半導体基板(102)に重ねることにより成る、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
イオン照射による前記画定するステップの後に、前記マスクを除去することと、前記パッドのいずれかの側で導電性トラックを露出させるように前記積層体をエッチング加工することと、前記導電層(4)の両端部の各々とともに前記パッド(5)に電極(A,B,C)を製作することとに存する前記メモリポイント(600)を仕上げるステップを含む、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の前記製造方法(50)を実行することにより得られる非対称SOT‐MRAMメモリポイント(601)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の全般的分野は、非対称SOT‐MRAMタイプの不揮発性メモリの分野である。より詳しくは、本発明はSOT‐MRAMメモリポイントを製造する為の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MRAM(「磁気ランダムアクセスメモリ」)は、厚さの小さい複数の領域による積層体で構成されるパッドを有するメモリポイントを含む。この複数の領域は、自由磁化を有する少なくとも一つの第1磁性領域と、固定磁化を有する第2磁性領域と、第1及び第2磁性領域の間の境界面にトンネル障壁を形成する領域とを含む。
【0003】
第1及び第2磁性領域における磁化の方向は、これらの領域の平面に対して平行であるか、又はこれらの領域の平面に対して垂直であるかであり得る。本明細書では、垂直磁化方向の事例が詳しく記載されるが、この教示は平行磁化方向の事例にもそのまま拡張される。
【0004】
第1磁性領域の磁化方向により2進情報を記憶すること可能である。
【0005】
STT‐MRAM(スピン移行トルクMRAM)メモリポイントについては、パッドを通して(すなわち領域の面に対して垂直に)書込み電流を注入することにより2進情報の書込みが行われ、そしてまたパッドを通して読取り電流を注入することにより記憶情報の読取りが行われる。
【0006】
この技術は、幾つかの短所、とりわけ、高い書込み電流密度によるメモリの急速な経年変化に関係する書込み速度の低下と、STT‐MRAMメモリポイントアレイ内の読取り及び書込みステップの間のエラーのリスクがある。
【0007】
それゆえ、SOT‐MRAM(スピン軌道トルクMRAM)メモリポイントが提供されており、その為に導電性トラックの中央にパッドが配置され、トラックの二つの端部には電極が装着されている。
【0008】
そして、導電性トラックを通して、すなわちパッド領域の面に対して平行に二つの電極の間に書込み電流を注入することにより書込みが行われ、一方で、パッドを通して領域の平面に対して垂直に読取り電流を注入することによりSTT‐MRAMメモリポイントについて読取りが行われる。
【0009】
しかしながら、効果的に作動させる為に、SOT‐MRAMメモリポイントは、書込み電流の注入方向と同一線上の成分を有する外側磁気バイアス磁場に置かれるべきである。それでも、このような磁場を発生させる為の手段は、SOT‐MRAMメモリを統合する際の主な難題の原因である。
【0010】
そういうわけで、より最近には、非対称SOT‐MRAMメモリポイントが提供されている。例えば、特許文献1は、非対称SOT‐MRAMメモリポイントの多様な実施形態を記載している。
【0011】
上述の文献では、パッド領域の平面に対して垂直であり、かつ導電性トラックへの書込み電流の注入方向に対して平行である基準平面についてもはや対称的でないようにパッドを成形することにより、結果的に非対称性が得られる。
【0012】
この幾何学的非対称性は、基準平面についてのミラー対称性に中断を生じることを可能にし、これは外側磁気バイアス磁場の印加と実質的に同じ効果を有する。非対称SOT‐MRAMメモリポイントにより、外側磁場を使用することはもはや必要でない。
【0013】
パッドはさらに、導電性トラックへの電流の注入方向に応じて第1磁性領域の磁化の変動を可能にする先端を有すると有利である。これらの先端は非常に小さく、パッドの工業生産をさらにより困難にする。
【0014】
非対称SOT‐MRAMメモリポイントの価値は今では証明されているので、これらの不揮発性メモリデバイスを工業規模で製造するという問題が生じる。
【0015】
実際に、研究所では、工業使用に適合したサイズ、一般的には100nm未満でサンプルを製造する為に実行される方法は、一般的に電子線リソグラフィを使用する。
【0016】
これらの方法は、非対称SOT‐MRAMメモリパッドを必要な精度で画定するのを可能にするが、製造速度の低下により特徴づけられる。これはとりわけ、各メモリポイントの形状を画定するのに使用される樹脂の日射を行うのに電子ビームを移動させる必要があることによる。それゆえ、このような方法は、例えば、300mmの半径のある半導体ウェハに数十億のメモリポイントを可能な限り迅速に構築することが試みられる工業生産には適合していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】仏国特許発明第3031622号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
それゆえ、本発明の目的は、とりわけ、業界で必要とされる処理量でSOT‐MRAMメモリポイントを製造する為の方法を提供することによりこの問題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
その為に、本発明の一つの目的は、非対称SOT‐MRAMメモリポイントを製造する為の方法であり、メモリポイントは、導電性トラックと、導電性トラックに配置されて自由磁化した少なくとも一つの磁性領域を含むパッドとを含み、この方法は、少なくとも一つの延伸した第1磁性層を含む複数の延伸層による積層体を製作するステップと、積層体の上面にマスクを堆積するステップと、マスクを担持する積層体の上面へのイオン照射により延伸した第1磁性層に第1磁性領域を画定するステップであって、イオン照射のパラメータが、第1磁性層の構成材料の磁気特性を改変するように適応されている、ステップとを含む点で特徴づけられる。
【0020】
特定の実施形態によれば、方法は、別々に、あるいは技術的に可能な組合せにより採用される以下の特徴のうち一以上を含む。
イオン照射により、マスクの存在のためにイオン照射中に露出されない第1磁性層の区域の磁気特性を保持しながらイオン照射中に露出される第1磁性層の区域の磁気特性を改変できる。
イオン照射による画定するステップは、照射方向を改変するように、マスクを担持する積層体の上面に対するイオン発生源の照射期間中の相対変位を含み、照射パラメータは、照射期間全体にわたって露出される区域の磁気特性を除去するのに充分であるが照射期間のうちわずかのみに露出される区域の磁気特性を除去するのには不充分であるように適応化される。
イオン照射による画定するステップは、第1照射方向での第1照射と、続く第2照射方向での第2照射とを含み、第1照射及び第2照射のパラメータは、第1照射中と第2照射中の両方に露出される区域の磁気特性を除去するのに充分であるが、第1照射中のみあるいは第2照射中のみに露出される区域の磁気特性を除去するのには不充分であるように選択される。
方法は、第1及び第2イオン照射の間にマスクを改変するステップを含む。
イオン照射は、好ましくは10keVと100keVの間、より好ましくは30keVに等しい低エネルギーの軽イオン、好ましくはHe+を、1014イオン/cm2と1017イオン/cm2の間、好ましくは1016イオン/cm2に等しい強度で実行される。
方法は、マスクを堆積するステップの後でイオン照射による画定するステップの前に、イオン照射中に使用されるイオン流が第1磁性層に達することができるように堆積されるマスクの周囲で積層体の上層をエッチング加工することに存するエッチング加工ステップを含む。
複数の延伸層による積層体を製作するステップは、導電層と第1磁性層と中間層と第2磁性層と電極層とを半導体基板に重ねることに存する。
方法は、イオン照射による画定するステップの後に、マスクを除去することと、パッドのいずれかの側で導電性トラックを露出させるように積層体をエッチング加工することと、導電層の端部の各々とともにパッドに電極を製作することとに存するメモリポイントを仕上げるステップを含む。
【0021】
発明の一つの目的は、上記方法を実行することにより得られる非対称SOT‐MRAMメモリポイントでもある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
非限定的な例としてのみ挙げられる特定実施形態についての以下の詳細な説明を読むと、本発明とその利点がより良く理解され、この説明は添付図面を参照して行われる。
【
図1】垂直磁化タイプの非対称SOT‐MRAMのメモリポイントの理論的表示である。
【
図2】
図1に表示されているタイプのメモリポイントを得ることを可能にする、本発明による製造方法の一実施形態についてのブロックとしての表示である。
【
図3】
図2の方法のステップの各々の終了時に得られるコンポーネントを表示する。
【
図4】
図2の方法のステップの各々の終了時に得られるコンポーネントを表示する。
【
図5】
図2の方法のステップの各々の終了時に得られるコンポーネントを表示する。
【
図6】
図2の方法のステップの各々の終了時に得られるコンポーネントを表示する。
【
図7】
図2の方法のステップの各々の終了時に得られるコンポーネントを表示する。
【
図8】
図2の方法のステップの各々の終了時に得られるコンポーネントを表示する。
【
図9】
図2の方法を実行することにより得られるメモリパッドを詳しく表示している。多数のメモリポイントを半導体ウェハに同時に製造する為の
図2の方法の工業的実行を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
1.製造されるメモリデバイス
製造が予定されるメモリポイントの一例が
図1に表示されている。これは垂直磁化タイプの非対称SOT‐MRAMのメモリポイントである。
【0024】
このメモリポイント1は、導電性トラック4の上方にパッド5を具備する。導電性トラック4は好ましくは基板2に形成される。
【0025】
例えば、基板2は、酸化ケイ素でコーティングされたシリコンウェハから成る。
【0026】
導電性トラック4は、導電性材料、例えば銅Cuなどの金属で製作される。領域10に使用可能な材料は、下記のように、トラック4にも使用され得る。トラック4と層10の両方に同じ材料が使用されると有利である。代替的に、層10は単にトラック4の肉厚部である。
【0027】
導電性トラック4は方向jに沿って直線的である。
【0028】
両端部の近傍で、導電性トラック4は、端子A及びBをそれぞれ構成する電極20及び21を担持している。
【0029】
パッド5は、導電性トラック4の実質的に中央に配置される。
【0030】
パッド5は、厚さの小さい領域を重ね合わせたものを具備する。この領域は、導電性トラック4の平面に対して直交する垂直方向nに沿って積層される。
【0031】
領域は、単一の材料から、あるいは異なる材料による幾つかの単層の積層体から形成され得る。
【0032】
このようにして、パッド5は、導電性トラック4から始めて、垂直方向nに沿って、導電性接触領域10と第1磁性領域11と中間領域12と第2磁性領域13と電極領域14とを連続で具備する。
【0033】
導電性接触領域10は導電性材料で製作される。例えば、Pt(白金)、W(タングステン)、Ir(イリジウム)、Ru(ルテニウム)、Pd(パラジウム)、Cu(銅)、Au(金)、Bi(ビスマス)、又はHf(ハフニウム)などの非磁性金属、あるいはこれらの金属の幾つかの合金、あるいはこれらの金属又はこれらの金属の合金の一部による幾つかの単層の積層体であり得る。これは、磁性材料、一般的にはPtMn(白金マンガン)、IrMn(イリジウムマンガン)、FeMn(鉄マンガン)などの反強磁性材料でもよい。
【0034】
導電性接触領域10は、0.5nmと200nmの間、好ましくは0.5nmと100nmの間、より好ましくは0.5nmと3nmの間の厚さを有する。
【0035】
導電性トラック4は第1磁性領域11の構成材料の成長に適しておりスピン軌道トルク(SOT)メカニズムの発生を可能にすると仮定すると、導電性接触領域10は省略されてもよい。その際にトラック4は一般的に、導電性接触領域10について上に挙げられた材料から成る。
【0036】
第1及び第2磁性領域11及び13は、磁性材料又は複合磁性材料、あるいは磁性及び非磁性材料の幾つかの単層で製作される。例えば、FePt(鉄白金)、FePd(鉄パラジウム)、CoPt(コバルト白金)など独自の垂直磁気異方性を有する合金、あるいはGdCo(ガドリニウムコバルト)又はTbFeCo(テルビウム鉄コバルト)など希土類/遷移金属合金であり得る。近傍の領域との境界面により誘発される垂直磁気異方性を有する金属又は合金、とりわけCo(コバルト)、Fe(鉄)、CoFe(コバルト鉄)、CoFeB(コバルト鉄ホウ素)、FeB(鉄ホウ素)、Ni(ニッケル)、Py(ピリジン)、CoNi(銅ニッケル)でもよい。
【0037】
第1磁性領域11は、0.7nmと3nmの間、より正確には0.8nmと1.4nmの間の厚さを有する。
【0038】
第2磁性領域13は、第1領域11のものより通常大きい厚さを有する。実際には、幾つかの単層を重ねることにより製作されることが多い。
【0039】
中間領域12は非磁性材料で製作される。領域12の材料は導電性であるが、好ましくは絶縁性である。例えば、MgO(酸化マグネシウム)、SiO(一酸化ケイ素)、AlO(酸化アルミニウム)、TiO(酸化チタン)、TaO(酸化タンタル)、HfO(酸化ハフニウム)、あるいはSiN(窒化ケイ素)、BN(窒化ホウ素)などの誘電性窒化物でもよい。
【0040】
本明細書で言及される材料の化学式は、その成分間の化学量を指定していないという意味で、とりわけ検討対象の材料を形成する結晶ではこの化学量が実現されないので包括的であることが留意されるべきである。
【0041】
例えば、中間領域12は0.5nmと200nmの間、好ましくは0.5nmと100nmの間、より好ましくは0.5nmと3nmの間の厚さを有する。
【0042】
いずれにしても、中間領域12は、絶縁材料から成る場合には、トンネル効果により電子が通過するのに充分なほど薄い。
【0043】
電極領域14は導電性材料で製作される。領域14は電気端子Cを構成する。
【0044】
パッド領域の平面に対して垂直な磁化したメモリポイントの事例では、垂直方向nに非対称のシステムを作出するように非磁性領域10及び12の間に構造的な相違が好ましくは存在する。この相違は、とりわけこれら二つの領域の材料、厚さ、あるいは材料の成長モードの相違から結果的に生じ得る。
【0045】
やはり垂直磁化した持つメモリポイントの事例では、第1及び第2磁性領域11及び13の磁性材料は、垂直方向nに向けられた磁化を有するような条件で形成される。
【0046】
第2磁性領域13の磁性材料は、永久磁化方向(捕捉磁化)を保持するような条件で形成される。例えば、第2磁性領域13の磁化は垂直方向nと同じ方向である。
【0047】
他方で、第1磁性領域11の磁性材料は、磁化方向が改変することができる(自由磁化)ような条件で形成される。したがって、第1磁性領域11の磁化は、垂直方向nと同じ方向(「上」配向)と、垂直方向nと反対の方向(「下」配向)のいずれかである。
【0048】
図1に表示されていない電流発生器は、導電性トラック4を通した端子A及びBの間での書込み電流の循環を可能にする。書込み電流は、導電性トラック4の平面において実質的に方向jに沿っていずれかの方向に循環する。
【0049】
メモリポイント1の「プログラミング」、すなわち一方向又は他方向における第1磁性領域11の磁化配向の変動は、方向jに沿って、すなわちパッド5の構成領域の平面に対して平行に、書込み電流を循環させることにより行われる。
【0050】
導電性トラック4における書込み電流の循環方向(端子A及びBの間での方向jと、端子B及びAの間での方向jと反対の方向のいずれか)に応じて、「上」又は「下」の磁化方向を選択することにより第1磁性領域11がプログラミングされる。
【0051】
メモリポイント1の状態を読み込む為に、端子Cと端子A又はBのいずれかとの間に(
図1に表示されていない読取り回路により)読取り電圧が印加される。パッド5の抵抗の測定値は、第1及び第2磁性領域11及び13の間での相対的な磁化方向を示す。
【0052】
外側磁気バイアス磁場がなくてもこの作用が有効となる為に、方向j及びnにより規定される基準平面についての幾何学的非対称性がパッド5により導入される。
【0053】
このようにして、
図1に示されている実施形態では、パッド5は上面図で「V」形状を有するように成形される。基準平面はパッド5の対称平面(例えば、パッド5により形成される「V」の先端部分の2等分線に沿った平面など。先端部分はパッド5により形成される「V」の2本の横アームの始点である)と一致しないように、導電性トラック4上にパッドが配置される。
【0054】
2.本発明による製造方法についての概略情報
概略的に言えば、本発明による製造方法では、イオン照射技術が実行される。
【0055】
イオン照射は、材料をエッチング加工するか、又は原子を注入することにより材料の構造を改変するのに当該技術で使用される周知の技術である。
【0056】
しかしながら、いくつかの条件(使用されるイオンの性質、イオンビームの強度、露出時間等)では磁性材料の特性がイオン照射により変更され得ることが、最近、確認されている。イオン流を磁性材料に照射することにより、とりわけ、おそらくはこれが完全に取り除かれるまでこの磁性材料の磁化の幅を減少させることが可能である。
【0057】
本発明による方法はこの特性を使用して、その形状が製造されるパッドの第1磁性領域のものに対応する磁性領域を、磁性材料で製作された延伸した磁性層において範囲を定める。
【0058】
その為に、非ゼロの入射角度でイオン照射が行われる間に、マスキング柱体により延伸した磁性層に投じられる陰影が、陰影区域の内側の磁気特性の改変を防止するような手法で、延伸した磁性層の上方にマスキング柱体が配置される。他方で、陰影区域の外側では、磁性材料の磁気特性が変更されるかあるいは完全に取り除かれる。
【0059】
多様な入射方向(すなわち多様な入射平面及び/又は多様な入射角度)について照射ステップを行うことにより、製作されるパッドの第1磁性領域の輪郭を延伸した磁性層に正確に描くようにマスキング柱体により投じられる陰影を移動させることが可能であると、有利である。
【0060】
3.図1のメモリポイントを製造する為の本発明による方法の一実施形態の詳細な説明
図2を参照してより正確に記すと、製造方法50は以下のステップを含む。
【0061】
ステップ100では、複数の延伸層を重ねることにより積層体が製作される。これらの延伸層の性質とこれらが重ねられる順序は、製造されるメモリポイント、この事例において本実施形態では、
図1のメモリポイント1に対応する。
【0062】
図3に表示されているように、ステップ100の終了時において、得られるコンポーネント101は、基板102と導電性トラック104と導電性接触層110と第1磁性層111と中間層112と第2磁性層113と電極層114とを含む。
【0063】
ステップ200で、一次マスキング柱体が延伸層による積層体に堆積される。
【0064】
これは、例えば、Ta(タンタル)、W(タングステン)、Ti(チタン)、又はPt(白金)などの金属材料、あるいはUV(紫外)光又は電子ビームにより構築され得る樹脂で製作される。後者の可能性は工業用途について好適である。
【0065】
これは、周知の構築技術を使用して容易に製作され得る形状、例えば円形底部を備える円筒体を有する。一次マスキング柱体は高さH0と直径D0とを有する。
【0066】
一次マスキング柱体の製作は、例えば、フォトレジストの層を堆積することにより行われる。そしてUVリソグラフィにより、おそらくはその後で柱体の側面形状を整えるイオンエッチング加工により、この肉厚層に柱体が成形される。成形ステップ中に材料が消費されるので、一次マスキング柱体に必要な高さH0が成形終了時に得られるように初期層の厚さが選択される。
【0067】
図4に表示されているように、ステップ200の終了時に得られるコンポーネント201は、延伸層による積層体の上方に一次マスキング柱体220を有する。これは、製造されるパッド5の「V」形状の先端部分となるはずのものとの垂直整合位置にある。
【0068】
ステップ300では、例えば第1磁性層111の上面が露出されるまで、一次マスキング柱体の周囲にある積層体の延伸上層を取り除くように従来の技術を実行することにより、一次マスキング柱体を担持する積層体がエッチング加工されると、有利である。
【0069】
一次マスキングパッドの整形ステップに連続するものとしてエッチング加工ステップが行われ得ることに留意されるべきである。
【0070】
図5では、ステップ300の終了時に得られるコンポーネント301が表示されている。積層体の下層がエッチング加工により改変されない場合に、積層体の上層はこの時、製作されるパッド5の対応領域に限定されている。このようにして、コンポーネント301は、中間領域312と第2磁性領域313と電極領域314とを有する。これらの上部領域と、その上にある一次マスキング柱体220とが、マスキング柱体320を共に形成する。
【0071】
マスキング柱体は一般的に、10nmと150nmの間の高さH、好ましくは50nmの高さHと、5nmと100nmの間の直径D、好ましくは10nmと30nmの間の直径Dとを有する。
【0072】
それゆえ一次マスキング柱体の高さH0と直径D0とは、所望の高さH及び直径Dと上層の厚さとに応じて選択される。
【0073】
次に、第1イオン照射ステップ400が行われる。
【0074】
イオン流は、第1入射方向d1(
図6)の向きである。第1入射平面は第1入射方向d1と垂直方向nとにより規定される。導電性トラックの平面では、第1入射平面は、方向jと第1角度a1を形成する。第1入射平面において、イオン流は、垂直方向nと第1入射角度i1を形成する。
【0075】
このステップ中には、マスキング柱体320により延伸した第1磁性層411に第1陰影421が投じられる。
【0076】
マスキング柱体320の高さHと第1入射方向d1とは、この第1陰影421がパッドに望ましい「V」形状の第1アームの輪郭と一致するように選択される。
【0077】
この第1陰影421の内側に位置し、それゆえイオン流に露出されない延伸した第1磁性層411の一部は、その磁気特性を保持する。
【0078】
他方で、投影されたこの陰影の外側に位置し、それゆえイオン流に露出される磁性層411の一部は、その磁気特性を徐々に失う。第1イオン照射のパラメータは、ステップ400の終了時に磁化幅が少なくとも半分になるように選択される。
【0079】
これは
図6に表示されており、
図6において、ステップ400の終了時に得られるコンポーネント401は、区域423で最大磁化幅Mを、区域422で磁化幅M/2を有する第1磁性層411を含む。
【0080】
そして、第2イオン照射ステップ500が行われる。
【0081】
イオン流は、第2入射方向d2の向きである。第2入射平面は、第2入射方向d2と垂直方向nとにより規定される。導電性トラックの平面において、入射平面は方向jと第2角度a2を形成する。この第2入射平面において、イオン流は、垂直方向nと第2入射角度i2を形成する。
【0082】
このステップ中には、マスキング柱体320により延伸した第1磁性層に第2陰影521が投じられる。
【0083】
例えば、照射中に、マスキング柱体320により投じられる第2陰影はパッドに望ましい「V」形状の第2アームの輪郭の範囲を定め、第2角度a2は180°-a1に等しく、第2入射角度i2はi1に等しい。
【0084】
第2陰影の内側に位置し、それゆえイオン流に露出されない延伸した第1磁性層411の一部は、第1照射(ステップ400)の後に得た磁気特性を保持する。
【0085】
他方で、この第2陰影の外側に位置し、それゆえイオン流に露出される延伸した性層411の一部は、その磁気特性を徐々に失う。
【0086】
例えば、磁化幅Mを2で割る為に、第2イオン照射のパラメータは第1照射のパラメータに等しくなるように選択される。
【0087】
そしてステップ500の終了時に得られるコンポーネント501は、以下を含む第1磁性層511を有する。
第1及び第2陰影421,521の交点にあって(またマスキング柱体320の下に延在して)、磁化幅Mを有し、磁性材料が露出されていない区域531。
第1陰影421の内側で区域531に対して相補的であって、磁化幅M/2を有し、第2イオン照射500中に磁性材料が露出された区域532。
第2陰影521の内側で区域531に対して相補的であって、磁化幅M/2を有し、第1イオン照射400中に磁性材料が露出された区域533。
第1陰影421の外側かつ第2陰影521の外側にあって、ゼロ磁化幅を有し、第1イオン照射400中と第2イオン照射500中の両方で磁性材料が露出された区域534。
【0088】
こうして、パッドの第1磁性領域の形状が延伸した第1磁性層511で「モデリング」された。
【0089】
最終仕上げステップ600では、電極領域14を露出させて端子Cを形成するように一次マスキング柱体220が除去される。一次マスキング柱体が樹脂で製作される時には、この作業が必要である。他方で、導電性材料で製作され、かつそれゆえ読取り電流の循環を可能にする時には、一次マスキング柱体は保持され得る。
【0090】
延伸した第1磁性層511は、導電性トラック4を露出させるようにエッチング加工される。このエッチング加工ステップは奥行において正確であるが、パッドの磁気活性領域が照射により正確に範囲が定められるので、側面が正確である必要はない。端子A及びBを形成するように、電極20及び21が導電性トラック4の端部に配置される。
【0091】
したがって、
図8に表示されているように、方法50を実行することにより得られるメモリポイント601の形状は、メモリポイント5のものと正確に対応するわけではない。パッド605は、基板2上の導電性トラック4とパッド5のような上層12,13,14とを含むが、パッド5の層10及び11のものとは異なる形状を有して、より延伸され、例えば矩形を有する導電性接触層610と第1磁性層611とを有する。この第1磁性層611で、磁気活性領域すなわちパッド605の第1磁性領域は、所望の幾何学的非対称性を備えるように正確に範囲が定められる。メモリポイント601は実際には、この事例では垂直磁化をした非対称SOT‐MRAMタイプのものである。
【0092】
読取り時に、パッド605の電気抵抗を測定することにより判断されるのは、中間領域12により設けられるトンネル接合の各側での相対的な磁化配向であるので、パッドの第1及び第2磁性領域が同じ幾何学形状を有していないという事実は問題ではない。
【0093】
代替的に、上層の形状は一次マスキング柱体のフットプリントに対応することに留意すべきである。後者が円筒形以外の幾何学形状を有する場合には、上層の幾何学形状はこれを反映するだろう。
【0094】
最後に、イオンの侵入長Rから見て、イオンに露出されるパッドの側面の下に位置する第1磁性層の材料の一部が照射され、この箇所の磁性を改変する。入射角度が小さいと、この一部の延在範囲が広くなる。それゆえ、第1磁性領域を画定することが望ましい、投じられた陰影の延在範囲から見て、照射パラメータについての妥協点を見つける必要がある。一つの解決法は、とりわけ、侵入長Rを減少させるようにイオンビームのエネルギーを低下させることである。
【0095】
それゆえ、本発明による方法の実行の結果として得られるメモリポイントの外部形状が、少なくとも第1非対称磁性領域(自由磁化)を含むパッドの下層においてとりわけ、理論的なメモリパッドの外部形状と異なっており、これら下層の外部形状は任意(例えば対称的)であることに当業者は気付くだろう。それゆえ、製作の手法、すなわち本発明の方法の多様なステップをメモリポイントは反映している。言い換えると、この方法の実行により得られるメモリポイントはこの方法に特有である。
【0096】
4.工業生産
図9に概略的に表示されているように、上に提示された方法により、多数のメモリポイントが基板ウェハ700に同時に生産され得る。
【0097】
図9に示されているように、多様な延伸層の成長後に、マトリクスパターンに従って一次マスキング柱体が堆積される。
【0098】
第1方向d1での第1照射(
図9の左側)により、全てのパッドに望ましい「V」形状の第1アームをモデリングすることが可能である。
【0099】
第2方向d2での第2照射(
図9の右側)により、全てのパッドに望ましい「V」形状の第2アームをモデリングすることが可能である。
【0100】
方法ステップの実行の終了時に、一次マスキング柱体の初期パターンに従って配置されたパッド605の集合を担持する基板ウェハ700が得られる。
【0101】
したがって、
図2のステップを1回反復すると、多数のメモリポイントが同時に製造される。
【0102】
それゆえ、この方法は非対称SOT‐MRAMメモリポイントの製造の工業化を可能にすることを当業者は理解するだろう。
【0103】
5.イオン照射のパラメータ
好ましくは、イオン照射は軽イオン、好ましくはHe+の照射である。
【0104】
これらのイオンは、10keVと100keVの間、例えば30keVの低エネルギーを有する。
【0105】
イオン流の強度はその流束量で特徴付けられる。これは1014イオン/cm2と1017イオン/cm2の間、好ましくは1016イオン/cm2である。
【0106】
このような特性により、イオンビームは、カスケード衝突を伴わず、また物理エッチング加工や原子の注入を伴わずに、原子の均衡位置の周囲での数オングストロームの原子変位のみを誘発する。これは、磁性材料が除去されるまでその全体的な磁化の調整を可能にする。それゆえ、低エネルギービームは、照射により誘発される材料への原子の混合により被制御手法で材料の構造を改変することを可能にする。
【0107】
工業用途では、断面全体にわたって実質的に一定の入射角度で半導体ウェハのものなど大きな表面を照射できるようにイオンビームが広い断面を有すると有利である。
【0108】
マスキング柱体の底部において陰影効果により照射されない部分は、横延在範囲dを有する。
【0109】
第1概算:d=H×tan(i)について、Hはマスキング柱体の高さであり、iはイオンの入射角度(垂直ビームについては0°、水平ビームについては90°)である。
【0110】
高さH=50nm、i=0°についてd=0、i=45°についてd=50nm、i=80°についてd=280nmのマスキング柱体を仮定する。
【0111】
このようにして、イオンビームのパラメータ、マスキング柱体のパラメータ、および製作されるパッドの形状のパラメータに応じて、入射角度は0°から90°の範囲である。
【0112】
所与の材料でのイオンの侵入長Rは、イオンのエネルギーとビームの強度とに応じた重要なパラメータである。それゆえ、侵入長Rは、第1磁性層に達するように照射される材料の厚さに応じて規定される。上記の強度及びエネルギーは、広範囲の侵入長R、結果的に通過する厚さについての考察を可能にする。
【0113】
侵入長を考慮に入れると、陰影効果により全く照射されない部分は横延在範囲d:tan(i)×[H-R×cos(i)]を有し、Hはマスキング柱体の高さ、iはイオンの角度、Rはイオンの侵入長である。
【0114】
例えば、20keVのエネルギーについて、侵入長Rは一般的に60nmである。高さH=50nmのマスキング柱体では、θ=0°についてd=0、i=45°についてd=8nm、i=80°についてd=200nmである。
【0115】
6.製造方法の代替実施形態
上に記載された方法は多様な手法で改変され得る。
【0116】
マスキング柱体をエッチング加工した後には、照射ステップの為のマスクとしてパッドの金属上層のみを使用して、一次マスキング柱体から樹脂を取り出すことが好ましい。
【0117】
第1磁性層を露出させるエッチング加工ステップを実行することは必要でない。これは、とりわけ第1磁性層の上方に位置する層の特徴を考慮して、侵入長Rに応じたものである。第1磁性層の上方に位置する層の全て又は一部を取り除く必要なく照射により第1磁性層の磁化を改変することが可能である場合には、加速によって方法の実行を促進する為のみならば、それを行なわないことが好ましい。
【0118】
そのうえ、ステップの順序が改変され得る。例えば、下層に限定された部分的積層体を設けることが考えられ、露出する延伸層は第1磁性層である。その際に一次マスキングパッドは第1磁性層に直接堆積され、イオン照射により、所望の幾何学形状をした領域がここに範囲が定められる。そして一次マスキングパッドが取り除かれると、パッドの構成要素としての上部領域、つまり中間領域、第2磁性領域、そして電極領域が堆積される。
【0119】
またそのうえ、この方法は、
図1のパッドのもの以外の領域による積層体で構成されるパッドを製造することが予定される時にも改変され得る。例えば、導電性接触領域は、事実上は導電性トラックの肉厚部であり得る。この事例で、最終ステップは、延伸した導電層に食い込むようにエッチング加工を継続することに存する。
【0120】
やはり例えば、第2磁性層は好ましいが必要ではない。これを省略すると、積層プロセスが簡易化され、イオンビームに対する第1磁性層のアクセス性が高くなるのでエッチング加工ステップの費用を低下させる。
【0121】
別の幾何学形状を有するパッドを製造することが予定される時にも、方法が改変され得る。「V」形状パッドを製造する代わりに、例えば三角形パッドの製造が望ましい場合には、投射される陰影の経路がパッドの第1磁性領域に対応する三角形区域を第1磁性層において範囲を定めるように、イオン発生源が連続移動でマスキング柱体に対して変位される単一のステップにより、二つの照射ステップが置き換えられ得る。陰影区域の外側で磁性材料がその磁化を失い、陰影区域の内側で磁性材料が磁化の全て又は一部を保持するように、照射パラメータが調節される。
【0122】
やはり例えば、一部の幾何学形状は、マスキングパッドが別の幾何学形状で製作されること、及び/又は、第1及び第2照射の間にマスクの幾何学形状を改変するステップを必要とし得る。例えば、方向jに沿って直線的である中央部分と、中央部分に対して角度を成して配置される両端部の各々での先端部分とを含むパッドを製作することが望ましい。先端部分は、方向j及びnにより画定されるこの基準平面の同じ側に位置する。そして、第1マスキングステップでは、両端部の一方に第1円筒体を担持する平行六面体のバーを含むようにマスキングパッドが製作される。このようにして、第1照射は、中央部分の一部と製作されるパッドの第1先端部分とを磁性材料において範囲を定めることを可能にする。そして、第2マスキングステップでは、マスキングパッドから第1円筒体を除去することによりマスキングパッドが改変され、平行六面体のバーの他端部に第2円筒体が堆積される。そして、第2照射により、中央部分の一部と製作されるパッドの第2先端部分とを磁性材料において範囲を定めるのを可能にする。マスキングパッドの同じ側に残したままで垂直方向nを中心として発生源を回転させた後に第2照射が行われると、有利である。第2照射の角度は、例えば180°-a1に等しく、a1は第1照射の角度である。
【0123】
例えば、異なる数の照射ステップ、とりわけ単一の照射ステップが使用され得る。例えば、方向n及びjにより画定される基準平面についてそれでも非対称である単純な形状を画定することが望ましい。その際には、円筒形パッドと、0°及び90°とは異なる角度a1を有する単一の方向d1での照射とを使用して、単一のマスキングステップが使用される。その際には、磁性材料において範囲が定められる部分は、前述のように
図9の左側の上面図に表示されている第1照射ステップ400の後で得られる形状を有するだろう。この事例で、単一の露出で露出区域の磁化を解消するように、照射パラメータが調節される。その際に、残りのステップは、省略されるステップ500を除いて前の記載と同一である。
【0124】
パッドの構成領域の平面に対して垂直な磁化の事例について方法が記載されたが、パッドの構成領域の平面に対して平行な磁化の事例にも等しく適用される。
【0125】
7.磁気特性の勾配による非対称性を持つパッドと本製造方法の限定的な事例
本方法では、とりわけメモリポイントの基準平面に対して直交する入射平面において、単一のイオン照射ステップでも非対称パッドを得ることが可能である。
【0126】
実際に、イオン照射中に、投じられた陰影は絶対的に正確には範囲が定められないので、続く照射では、投じられた陰影の縁部の近傍で磁性材料の磁気特性が勾配を有する。
【0127】
これはとりわけ、マスク形成柱体の上縁部に対応する、投じられた陰影の縁部に当てはまる。基準平面に対して直交する入射平面で照射が行われる事例では、その際にこの勾配は方向j及びnに対して垂直に配向される。それでも、この磁化勾配は、方向j及び方向nにより画定される基準平面についてのミラー対称性を中断する。結果的に、この磁化勾配の存在は、製造されたパッドに非対称性を引き起こすのに充分である。事実上は、同じ磁化を有して楕円形であり、互いに入れ子状であって方向jに対して垂直に互いから偏心している基本の磁性単層の重ね合わせから成る第1磁性領域のようである。それゆえ、パッドの非対称性は幾何学的非対称性であるとも言える。開放範囲10°,180°の入射角度を選択することで、単一のイオン照射により、基準平面に対して垂直な成分を有する勾配を得ること、それゆえ非対称SOT‐MRAMメモリポイントを製作することが可能になる。
【符号の説明】
【0128】
1 メモリポイント
2 基板
4 導電性トラック
5 パッド
10 導電性接触領域
11 第1磁性領域
12 中間領域
13 第2磁性領域
14 電極領域
20 電極
21 電極
101 コンポーネント
102 基板
104 導電性トラック
110 導電性接触層
111 第1磁性層
112 中間層
113 第2磁性層
114 電極層
201 コンポーネント
220 一次マスキング柱体
301 コンポーネント
312 中間領域
313 第2磁性領域
314 電極領域
320 マスキング柱体
401 コンポーネント
411 第1磁性層
421 第1陰影
422 区域
423 区域
501 コンポーネント
511 第1磁性層
521 第2陰影
531 区域
532 区域
534 区域
533 区域
601 メモリポイント
605 パッド
610 導電性接触層
611 第1磁性層
700 基板ウェハ
A 端子
B 端子
M 最大磁化幅
a1 第1角度
a2 第2角度
d1 第1照射方向
d2 第2照射方向
i1 第1入射角度
i2 第2入射角度
j 方向
n 垂直方向
【国際調査報告】