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特表2024-517959分析用ガス状サンプルを抜き取ることを含むオレフィンポリマーを調製するためのプロセス
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  • 特表-分析用ガス状サンプルを抜き取ることを含むオレフィンポリマーを調製するためのプロセス 図1
  • 特表-分析用ガス状サンプルを抜き取ることを含むオレフィンポリマーを調製するためのプロセス 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】分析用ガス状サンプルを抜き取ることを含むオレフィンポリマーを調製するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/34 20060101AFI20240416BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
C08F2/34
C08F10/00 510
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570189
(86)(22)【出願日】2022-05-17
(85)【翻訳文提出日】2023-11-18
(86)【国際出願番号】 EP2022063256
(87)【国際公開番号】W WO2022243278
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】21174311.7
(32)【優先日】2021-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500289758
【氏名又は名称】バーゼル・ポリオレフィン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】メイエル,ゲルハルドゥス
(72)【発明者】
【氏名】スヘラー,ウルフ
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリウス,ヘイケ
(72)【発明者】
【氏名】ハーン,グレゴール
【テーマコード(参考)】
4J011
【Fターム(参考)】
4J011AA01
4J011MA01
4J011MA02
4J011MA14
4J011MA15
4J011MA16
4J011MA19
4J011MB01
(57)【要約】
【解決手段】 固体粒子重合触媒および有機金属化合物の存在下、重合装置内でオレフィンポリマーを調製する方法であって、前記重合装置からガス状ストリームを取り出すステップと、前記有機金属化合物と反応する化学基を表面に有する粒子状固体床に前記ガス状ストリームを通過させるステップと、前記ガス状ストリームのサンプルを分析装置に供給するステップと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィンポリマーを調製するためのプロセスであって、
固体粒子重合触媒、有機金属化合物、およびオレフィンまたはオレフィンと1種以上の他のオレフィンとの組み合わせを、重合反応器または重合反応器の組み合わせを含む重合装置に供給するステップと、
前記重合触媒および前記有機金属化合物の存在下、20~200℃の温度および0.1MPa~20MPaの圧力下で、前記オレフィンを単独重合させるか、または前記オレフィンと前記1種以上の他のオレフィンとを共重合させるステップと、
前記重合装置からガス状ストリームを抜き取るステップと、
前記有機金属化合物と反応する化学基を表面に有する粒子状固体床に前記ガス状ストリームを通過させるステップと、
前記ガス状サンプルを分析するための分析装置に前記ガス状ストリームのサンプルを供給するステップとを含む、プロセス。
【請求項2】
前記分析装置はガスクロマトグラフである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記有機金属化合物はアルキルアルミニウムである、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記粒子状固体は、カルシウム、アルミニウム、ケイ素、マグネシウム、若しくはチタン元素の酸化物または混合酸化物であるか、または前記粒子状固体はZrOまたはBである、請求項1~3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記有機金属化合物と反応する前記粒子状固体表面の化学基は、OH基、吸着水または歪んだSi-O-Siブリッジである、請求項1~4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記粒子状固体は、湿度インジケータを備えたシリカゲルである、請求項1~5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記重合装置から抜き取られたガス状ストリームは、1Nl/h~5000Nl/h、好ましくは1Nl/h~500Nl/hの流量で前記重合装置から抜き取られた連続ガス状ストリームである、請求項1~6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記分析装置には、一定間隔で前記ガス状ストリームのサンプルが提供される、請求項1~7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
2つ以上の前記ガス状ストリームを前記重合装置の異なる位置で抜き取り、次いで、2つ以上の前記ガス状ストリームの一部または全部のサンプルを分析するための1つの前記分析装置に供給するか、または、2つ以上の前記ガス状ストリームの一部または全部が、前記重合装置から抜き取られた1つの前記ガス状ストリームのサンプルのみを提供される専用の分析装置を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記粒子状固体床は、50cm~10000cmの容積を有する容器に収容される、請求項1~9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記粒子状固体床は、直径が6mm~100mmのパイプと、前記パイプに前記ガス状ストリームを導入するための入口と、前記パイプからガス状ストリームを抜き取るための出口とを含む容器内に収容され、前記入口と前記出口との間の距離が、0.2m~10mである、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記容器は、前記パイプに前記粒子状固体床を導入するための前記パイプの一端にある第1弁と、前記パイプから前記粒子状固体床を除去するための前記パイプの他端にある第2弁とをさらに含み、および/または
前記パイプの前記入口および前記出口には、前記粒子状固体床を前記パイプ内に保持するために、35m~2mmのメッシュサイズを有するスクリーンが設けられている、請求項10または11に記載のプロセス。
【請求項13】
ガス状サンプルを分析して得られた結果が、オレフィンポリマーを調製するためのプロセスを制御するためのコントローラに測定信号として供給される、請求項1~12のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
直径が6mm~100mmのパイプと、前記パイプにガス状ストリームを導入するための入口と、前記パイプから前記ガス状ストリームを抜き取るための出口と、前記パイプに前記粒子状固体床を導入するための前記パイプの一端にある第1弁と、前記パイプから前記粒子状固体床を除去するための前記パイプの他端にある第2弁とを含み、前記パイプの前記入口および前記出口には、35m~2mmのメッシュサイズを有するスクリーンが設けられており、前記入口と前記出口との間の距離が0.2m~10mである、容器。
【請求項15】
固体粒子重合触媒および有機金属化合物の存在下、20~200℃の温度および0.1MPa~20MPaの圧力下で、重合反応器または重合反応器の組み合わせを含む重合装置中で、オレフィンを単独重合させるか、またはオレフィンと1種以上の他のオレフィンとを共重合させることを含む、オレフィン重合プロセスを制御する方法であって、
- 前記重合装置からガス状ストリームを抜き取るステップと、
- 前記有機金属化合物と反応する化学基を表面に有する粒子状固体床に前記ガス状ストリームを通過させるステップと、
- ガス状サンプルを分析するための分析装置に前記ガス状ストリームのサンプルを供給するステップと、
- 前記サンプルを分析し、前記重合装置内の条件に関する情報を取得するステップと、
- 前記サンプルを分析して得られた情報に基づいて、前記重合装置内の重合条件を所定値に適合させるステップと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、オレフィンポリマーを調製するためのプロセスを提供する。本開示は、特に、重合反応器または重合反応器の組み合わせを含む重合装置からガス状サンプルを抜き取り、分析装置に供給するオレフィンポリマーを調製するためのプロセスを提供する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンは広く使用されている市販のポリマーである。ポリオレフィンを製造するための適切なプロセスには、固体重合触媒と助触媒および/または捕集剤としての有機金属化合物の存在下での懸濁重合プロセスおよび気相重合プロセスが含まれる。懸濁重合は、通常、撹拌槽反応器またはループ反応器で行われる。気相重合を行うのに好適な反応器は、例えば、流動床反応器、撹拌気相反応器、または互いに接続された2つの異なる気相重合ゾーンを有するマルチゾーンループ反応器である。例えば、流動床反応器およびマルチゾーンループ反応器シリーズにおけるオレフィンの重合は、EP3524343A1、WO 2018/115236A1およびWO 2016/150997A1に開示されている。
【0003】
重合反応を制御するには、重合反応器内の反応混合物の組成、または重合反応器を組み合わせて使用する場合は各重合反応器内の反応混合物の組成に関する情報が必要である。これは、一般に、重合反応器または重合反応器の組み合わせ、または気相が存在する重合装置の1つの装置からガス状サンプルを抜き取り、ガス状サンプルの組成を例えばガスクロマトグラフで分析することによって達成される。米国特許第4,469,853号は、ガスクロマトグラフィーによってそれらの特性を決定するパラメータを検出し、検出されたパラメータに対応する信号を生成し、それらの信号を所定の値と比較し、パラメータを制御することによって、所定の特性を有するポリオレフィンを調製するためのプロセスを開示している。米国特許第2012/0283395 A1号は、気相重合反応器システムおよびループスラリー重合反応器システムを開示しており、各反応器システムは、反応器内の反応条件を制御および/または監視するために使用可能な測定システムを含む。この文献は、ガス状サンプルの組成を決定するための分析装置が、ガスクロマトグラフ、質量分析計、またはラマンプローブなどのクロマトグラフ分析装置であり得ることを開示している。
【0004】
ガス分析の品質を向上させ、分析機器の寿命を延ばすために、ガス状サンプルは分析装置に供給される前に頻繁にフィルタを通過する。例えば、米国特許第3,556,730号は、そのようなフィルタがガラス繊維で満たされたチャンバまたは紙要素を使用するフィルタであり得ることを開示している。しかしながら、オレフィン重合反応器から採取されたサンプルのガス成分の分析では信頼性の低い結果が生じることが多く、分析装置の再校正やサンプル分注装置の洗浄が必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、重合反応器内の反応混合物の組成を確実に測定することができ、分析装置のメンテナンスコストを低減することができる、オレフィンポリマーを調製するための改良プロセスを提供することが求められている。
【0006】
本開示は、オレフィンポリマーを調製するためのプロセスであって、
固体粒子重合触媒、有機金属化合物、およびオレフィンまたはオレフィンと1種以上の他のオレフィンとの組み合わせを、重合反応器または重合反応器の組み合わせを含む重合装置に供給するステップと、
重合触媒および有機金属化合物の存在下、20~200℃の温度および0.1MPa~20MPaの圧力下で、オレフィンを単独重合させるか、またはオレフィンと1種以上の他のオレフィンとを共重合させるステップと、
重合装置からガス状ストリームを抜き取るステップと、
有機金属化合物と反応する化学基を表面に有する粒子状固体床にガス状ストリームを通過させるステップと、
ガス状サンプルを分析するための分析装置にガス状ストリームのサンプルを供給するステップと、を含む、プロセスを提供する。
【0007】
いくつかの実施形態では、分析装置はガスクロマトグラフである。
【0008】
いくつかの実施形態では、有機金属化合物はアルキルアルミニウムである。
【0009】
いくつかの実施形態では、粒子状固体は、カルシウム、アルミニウム、ケイ素、マグネシウム、もしくはチタン元素の酸化物または混合酸化物であるか、または、粒子状固体は、ZrOまたはBである。
【0010】
いくつかの実施形態では、有機金属化合物と反応する粒子固体表面の化学基は、OH基、吸着水または歪んだSi-O-Siブリッジである。
【0011】
いくつかの実施形態では、粒子状固体は、湿度インジケータを備えたシリカゲルである。
【0012】
いくつかの実施形態では、重合装置から抜き取られたガス状ストリームは、1Nl/h~500Nl/hの流量で重合装置から抜き取られた連続ガス状ストリームである。
【0013】
いくつかの実施形態では、分析装置には、一定間隔でガス状ストリームサンプルが提供される。
【0014】
いくつかの実施形態では、2つ以上のガス状ストリームを重合装置の異なる位置で抜き取り、次いで、2つ以上のガス状ストリームの一部または全部のサンプルを、サンプルを分析するための1つの分析装置に供給するか、または、2つ以上のガス状ストリームの一部または全部が、重合装置から抜き取られた1つのガス状ストリームのサンプルのみを提供される専用の分析装置を有する。
【0015】
いくつかの実施形態では、粒子状固体床は、50cm~10000cmの容積を有する容器に収容される。
【0016】
いくつかの実施形態では、粒子状固体床は、直径が6mm~100mmのパイプと、パイプ内にガス状ストリームを導入するための入口と、パイプからガス状ストリームを抜き取るための出口とを含む容器内に収容され、入口と出口との間の距離が0.2m~10mである
【0017】
いくつかの実施形態では、容器は、パイプに粒子状固体床を導入するためのパイプの一端にある第1弁と、パイプから粒子状固体床を除去するためのパイプの他端にある第2弁とをさらに含む、および/または、
パイプの入口と出口には、粒子状固体床をパイプ内に保持する35m~2mmのメッシュサイズを有するスクリーンが設けられている。
【0018】
いくつかの実施形態では、ガス状サンプルを分析して得られた結果が、オレフィンポリマーを調製するためのプロセスを制御するためのコントローラに測定信号として供給される。
【0019】
本開示は、また、直径が6mm~100mmのパイプと、前記パイプにガス状ストリームを導入するための入口と、前記パイプからガス状ストリームを抜き取るための出口と、前記パイプに粒子状固体床を導入するための前記パイプの一端にある第1弁と、前記パイプから粒子状固体床を除去するための前記パイプの他端にある第2弁とを備え、前記パイプの前記入口と前記出口には、35m~2mmのメッシュサイズを有するスクリーンが設けられており、前記入口と前記出口との間の距離が0.2m~10mである、容器を提供する。
【0020】
本開示はまた、固体粒子重合触媒および有機金属化合物の存在下、20~200℃の温度および0.1MPa~20MPaの圧力下で、重合反応器または重合反応器の組み合わせを含む重合装置中で、オレフィンを単独重合させるか、またはオレフィンと1種以上の他のオレフィンとを共重合させることを含むオレフィン重合プロセスを制御する方法であって、
- 重合装置からガス状ストリームを抜き取るステップと、
- 有機金属化合物と反応する化学基を表面に有する粒子状固体床にガス状ストリームを通過させるステップと、
- ガス状サンプルを分析するための分析装置にガス状サンプルを供給するステップと、
- サンプルを分析し、重合装置内の条件に関する情報を取得するステップと、
- サンプルを分析して得られた情報に基づいて、重合装置内の重合条件を所定値に適合させるステップと、を含む、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本開示のプロセスを実施することができる一連の重合反応器を含む重合装置のセットアップを概略的に示す。
図2図2は、本開示に係る粒子状固体床を収容するための容器を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示は、オレフィンポリマーを調製するためのプロセスを提供する。オレフィンポリマーを調製するためのオレフィンは、特に1-オレフィン、すなわち末端二重結合を有する炭化水素であるが、これに限定されるものではない。非極性オレフィン化合物が好ましい。特に好ましい1-オレフィンは、直鎖状または分岐状のC~C12-1-アルケン、特にエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセンなどの直鎖状または分岐状のC~C10-1-アルケンまたは4-メチルーペンテンなどの直鎖状または分岐状のC~C10-1-アルケン;1,3-ブタジエン、1,4-ヘキセン、1,7-オクテンなどの共役および非共役ジエンである。種々の1-オレフィンの混合物を重合することもできる。好適なオレフィンはまた、二重結合が1種以上の環系を有してもよい環構造の一部であるオレフィンを含む。例は、シクロペンテン、ノルボルネン、テトラシクロドデセンもしくはメチルノルボルネン、または5-エチリデン-2-ノルボルネン、ノルボルナジエンもしくはエチルノルボルナジエンなどのジエンである。2つ以上のオレフィンの混合物、例えば2つ、3つまたは4つのオレフィンの混合物を重合することも可能である。
【0023】
オレフィンポリマーは、オレフィン単独重合、またはオレフィンと1種以上の他のオレフィンとの共重合により得ることができる。オレフィンポリマーは、特に、ポリエチレンまたはプロピレンを単独重合または共重合させることにより得られ、特に、ポリエチレンを単独重合または共重合させることにより得ることができる。プロピレン重合における好ましいコモノマーは、エチレン、1-ブテンおよび/または1-ヘキセンを多くとも60重量%、好ましくは0.5~35重量%である。エチレン重合におけるコモノマーとしては、C~C-1-アルケン、特に1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセンおよび/または1-オクテンを多くとも20重量%使用することが好ましい。エチレンが0.1重量%~12重量%の1-ヘキセンおよび/または1-ブテンと共重合されているオレフィンポリマーが特に好ましい。
【0024】
本開示のプロセスでは、オレフィンまたはオレフィンと1種以上の他のオレフィンとの組み合わせとともに重合反応器または重合反応器の組み合わせを含む重合装置に供給される固体粒子重合触媒および有機金属化合物の存在下、20~200℃、好ましくは30~150℃、特に好ましくは40~130℃、0.1MPa~20MPa、特に好ましくは0.3MPa~5MPaの圧力範囲で、オレフィンを単独重合させるか、またはオレフィンと1種以上の他のオレフィンとを共重合させる。
【0025】
重合触媒は、助触媒としての有機金属化合物と組み合わせてオレフィンの重合に使用できる任意の慣用の固体粒子重合触媒であってよい。これは、チーグラー触媒またはチーグラー・ナッタ触媒、酸化クロムをベースとしたフィリップス触媒、またはシングルサイト触媒を使用して、重合を実行できることを意味する。本開示の目的のためにシングルサイト触媒は、化学的に均一な遷移金属配位化合物に基づく触媒である。さらに、これらの触媒の2種以上の混合物を用いてオレフィンを重合することもできる。このような混合触媒は一般にハイブリッド触媒と呼ばれる。これらの触媒の調製およびオレフィン重合への使用は公知である。
【0026】
好ましい触媒は、好ましくはチタンまたはバナジウムの化合物、マグネシウムの化合物、および場合により担体材料として電子供与体化合物および/または粒子状無機酸化物を含むチーグラーまたはチーグラー・ナッタ型のものである。チタン化合物としては、一般的に3価または4価のチタンのハロゲン化物やアルコキシドが用いられるが、チタンアルコキシハロゲン化合物や各種チタン化合物の混合物も考えられる。ハロゲンとして塩素を含むチタン化合物を用いることが好ましい。固体成分の製造には、さらにマグネシウム化合物の少なくとも1種を用いることが好ましい。このタイプの好適な化合物は、ハロゲン化マグネシウム、特に塩化物または臭化物などのハロゲン含有マグネシウム化合物およびマグネシウム化合物であり、ハロゲン化マグネシウムは、例えばハロゲン化剤と反応させることにより、従来の方法で得ることができる。粒子状固体を製造するためのマグネシウム化合物としては、二塩化マグネシウムまたは二臭化マグネシウムに加えて、ジ(C~C10-アルキル)マグネシウム化合物を用いることが好ましい。ジーグラーまたはジーグラー-ナッタ型触媒を調製するのに好適な電子供与体化合物は、例えば、アルコール、グリコール、エステル、ケトン、アミン、アミド、ニトリル、アルコキシシランおよび脂肪エーテルである。これらの電子供与体化合物は、単独で使用することもできるし、他の電子供与体化合物と混合して使用することもできる。好ましい電子供与体化合物は、アミド、エステルおよびアルコキシシランからなる群から選択される。
【0027】
また、好ましくは、無機担体にクロム化合物を塗布した後、350~1000℃の範囲の温度で触媒前駆体を活性化することにより、6価未満のクロムを6価状態に変換することにより調製されるフィリップス型クロム触媒クロム触媒である。クロム以外に、マグネシウム、カルシウム、ホウ素、アルミニウム、リン、チタン、バナジウム、ジルコニウム、亜鉛などの他の元素を用いることができる。特に、チタン、ジルコニウムまたは亜鉛を用いることが好ましい。上記の要素の組み合わせも可能である。触媒前駆体は、活性化前または活性化中にフッ化物をドープすることができる。フィリップス型触媒の担体としては、アルミナ、シリカ(例えばシリカゲルの形態で)、チタニア、ジルコニアまたはこれらの混合酸化物またはゲル、リン酸アルミニウムが挙げられる。細孔表面積を例えばホウ素、アルミニウム、ケイ素またはリンの元素の化合物によって変化させることにより、より好適な担体材料を得ることができる。シリカゲルを使用することが好ましい。好ましくは球状または粒状のシリカゲルであり、前者も噴霧乾燥可能である。活性化されたクロム触媒は、続いて予備重合または予備還元することができる。予備還元は、通常250~500℃、好ましくは300~400℃で、コバルトを用いて、または水素を介して活性化剤中で行われる。
【0028】
本開示の方法で使用するための好ましい触媒もまた、担持シングルサイト触媒である。特に適しているのは、モノ-Cp錯体に基づく触媒、メタロセン触媒として一般的に指定されているビス-Cp錯体に基づく触媒、または後遷移金属錯体、特に鉄-ビスイミン錯体に基づく触媒のような、大きな体積のσまたはπ結合有機配位子を含むものである。さらに好ましい触媒は、2種以上のシングルサイト触媒の混合物、または少なくとも1種のシングルサイト触媒を含む異種触媒の混合物である。フィリップス型クロム触媒の担体として好適な材料は、シングルサイト触媒の担体としても有用である。
【0029】
本開示のプロセスに用いる固体粒子重合触媒は、有機金属化合物と組み合わせて使用される。好ましい有機金属化合物は、元素周期律表の第1、2、12、13または14族の金属の有機金属化合物、特に第13族の金属の有機金属化合物、特に有機アルミニウム化合物である。好ましい助触媒は、例えば、有機金属アルキル、有機金属アルコキシド、有機金属ハロゲン化物である。
【0030】
有機金属化合物は、一方では固体粒子重合触媒の助触媒として使用され、他方では重合反応器に取り込まれることがあり、触媒毒として作用することがある極性化合物と反応する捕集剤として使用される。
【0031】
好ましい有機金属化合物は、リチウムアルキル、マグネシウムまたは亜鉛アルキル、マグネシウムアルキルハロゲン化物、アルミニウムアルキル、シリコンアルキル、シリコンアルコキシドおよびシリコンアルキルハロゲン化物を含む。より好ましくは、有機金属化合物は、アルキルアルミニウムおよびアルキルマグネシウムを含む。さらにより好ましくは、有機金属化合物はアルキルアルミニウム、最も好ましくはトリアルキルアルミニウム化合物、またはアルキル基がハロゲン原子、例えば塩素または臭素で置換されたこのタイプの化合物を含む。このようなアルミニウムアルキルの例は、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウムもしくはジエチルアルミニウムクロリド、またはそれらの混合物である。
【0032】
本開示のプロセスは、重合反応器または重合反応器の組み合わせを含む重合装置において、工業的に知られているすべての低圧重合方法を使用して実施することができる。これらの重合反応器は、例えば、撹拌槽反応器またはループ反応器であってもよく、または、重合反応器は、流動床反応器、撹拌気相反応器、または2つの互いに接続された異なる気相重合ゾーンを有するマルチゾーンループ反応器であってもよい。重合はバッチ式で、または好ましくは1つ以上の段階、例えば1、2、3または4段階で連続的に実施することができる。溶液法、懸濁法、気相法がすべて可能である。このタイプのプロセスは、当業者には通常知られている。上記重合プロセスでは、特に気相流動床反応器またはマルチゾーン循環気相反応器における気相重合、および特にループ反応器または撹拌槽反応器における懸濁重合が好ましい。
【0033】
本開示の好ましい実施形態では、重合プロセスは、懸濁媒体中での懸濁重合であり、好ましくはイソブタンまたは炭化水素のような不活性炭化水素の混合物中での懸濁重合であり、モノマー自体での懸濁重合である。懸濁重合温度は、通常20℃~115℃の範囲であり、圧力は0.1MPa~10MPaの範囲である。懸濁液の固形分は、通常、10重量%~80重量%の範囲内である。重合は、撹拌オートクレーブのようなバッチ式のものであってもよいし、管状反応器のような連続的なものであってもよいし、好ましくはループ反応器のようなものであってもよい。米国特許第3,242,150号および米国特許第3,248,179号に記載されているフィリップスPFプロセスによって実施することができる。
【0034】
好適な懸濁媒体は、懸濁反応器に一般的に知られている全ての媒体である。懸濁媒体は、不活性であり、反応条件下で液体または超臨界であり、これらの出発物質を生成物混合物から蒸留により回収することを可能にするために、使用されるモノマーおよびコモノマーの沸点とは著しく異なる沸点を有するべきである。一般的な懸濁媒体は、イソブタン、ブタン、プロパン、イソペンタン、ペンタンおよびヘキサンのような炭素数4~12の飽和炭化水素、またはこれらの混合物であり、ディーゼル油とも呼ばれる。
【0035】
好ましい懸濁重合プロセスでは、重合は、2個、好ましくは3個または4個の一連の撹拌容器中で行われる。各反応器で調製されるポリマー画分の分子量は、反応混合物に水素を添加することにより設定されることが好ましい。重合プロセスは、第1反応器内のモノマー量に基づく最高の水素濃度と最低のコモノマー濃度とを設定して行うことが好ましい。後続のさらなる反応器では、水素濃度は徐々に減少し、コモノマー濃度は、それぞれの場合において再びモノマーの量に基づいて変更される。モノマーとしてはエチレンまたはプロピレンが好ましく、コモノマーとしては炭素数4~10の1-オレフィンが好ましい。
【0036】
さらに好ましい懸濁重合プロセスは、ループ反応器内での懸濁重合であり、この場合、重合混合物が管状反応管を通して連続的にポンピングされる。ポンピング循環の結果、反応混合物の連続的な混合が達成され、導入された触媒および供給されたモノマーが反応混合物中に分配される。また、ポンピング循環により、懸濁ポリマーの沈降が防止される。反応器壁を介した反応熱の除去もポンプ循環によって促進される。一般に、これらの反応器は、反応熱を除去するために冷却ジャケットに囲まれた1つ以上の上昇脚と1つ以上の下降脚とを有するループ反応器管と、垂直脚を連結する水平管部とから実質的に構成されている。インペラポンプ、触媒供給設備およびモノマー供給設備、並びに排出設備、つまり通常沈降脚は、通常は下部管セクションに設置される。しかしながら、反応器は、蛇行配置を得るために、2つ以上の垂直管セクションを有することもできる。
【0037】
懸濁重合は、懸濁媒体に対して少なくとも5モル%、好ましくは10モル%のエチレン濃度でループ反応器中にて行われることが好ましい。ここで、懸濁媒体とは、供給懸濁媒体、例えば単独のイソブタンを意味するのではなく、供給懸濁媒体とそれに溶解されたモノマーとの混合物を意味する。エチレン濃度は、懸濁媒体のガスクロマトグラフィー分析により、容易に測定することができる。
【0038】
本開示の特に好ましい実施形態では、重合プロセスは気相重合、すなわちモノマーの気相から固体ポリマーを得るプロセスとして行われる。このような気相重合は、通常、0.1MPa~20MPa、好ましくは0.5MPa~10MPa、特に1.0MPa~5MPaの圧力下、および40~150℃、好ましくは65°C~125℃の重合温度で行われる。
【0039】
好適な気相重合反応器は、水平または垂直撹拌反応器、流動床気相反応器またはマルチゾーン循環反応器、好ましくは流動床気相反応器またはマルチゾーン循環反応器である。
【0040】
流動層重合反応器は、重合体粒子層内で重合を行う反応器であって、通常はガス流を分配する機能を有するガス分配格子の下方にある反応器の下端部にガスを導入し、上端部で再びガスを排出することにより、重合体粒子層を流動状態に維持することを特徴とする。その後、反応器ガスは、圧縮機と熱交換器とを備えたガスリサイクルラインを介して反応器の下端に戻される。ループ反応器ガスは、通常、重合されるオレフィンと、窒素などの不活性ガスおよび/またはエタン、プロパン、ブタン、ペンタンまたはヘキサンなどの低級アルカンと、必要に応じて水素などの分子量調整剤との混合物である。不活性ガスとして窒素またはプロパンを、必要に応じてさらなる低級アルカンと組み合わせて使用することが好ましい。反応器ガスの速度は、第一に重合ゾーンとして機能する管内に存在する微細ポリマーの混合床を流動化し、第二に重合熱を効果的に除去するために十分に高くなければならない。重合は、循環する反応ガスの一部を露点以下に冷却し、それぞれ液相および気相として、または二相混合物として反応器に戻し、反応ガスを冷却するために気化エンタルピーを追加的に利用する凝縮または超凝縮によっても行うことができる。
【0041】
マルチゾーン循環反応器は、2つの重合ゾーンが互いに接続され、ポリマーが交互に複数回通過する気相反応器である。この反応器は、例えば、WO 97/04015A1およびWO 00/02929A1に記載されており、2つの相互に連結された重合ゾーン、成長ポリマー粒子が急速流動または輸送条件下で上方に流れる上昇管、および成長ポリマー粒子が重力下で緻密な形で流れる下降管を有する。上昇管を出たポリマー粒子は下降管に入り、下降管を出たポリマー粒子は再び上昇管に導入されて、2つの重合ゾーンの間にポリマー循環が確立され、ポリマーは2つのゾーンを交互に複数回通過する。また、1つのマルチゾーンループ反応器の2つの重合ゾーンは、上昇管と下降管で異なる重合条件を設定することにより、異なる重合条件で運転することができる。このために、上昇管を出てポリマー粒子を同伴するガス状混合物が下降管に入るのを部分的または全体的に防止することができる。これは、例えば、ガスおよび/または液体混合物の形態のバリア流体を、下降管、好ましくは下降管の上部に供給することによって達成することができる。バリア流体は、上昇管内に存在するガス状混合物の組成とは異なる適切な組成を有するべきである。添加されたバリア流体の量は、ポリマー粒子の流れとは反対の上向きのガス状ストリームを生成するように調整することができ、特にその頂部では、上昇管からの粒子同伴ガス状混合物のバリアとして作用する。このようにして、1つのマルチゾーンループ反応器内で2つの異なるガス組成ゾーンを得ることが可能である。さらに、補充モノマー、コモノマー、水素のような分子量調整剤および/または不活性流体を、好ましくはバリア供給点の下で、下降管の任意の点で導入することも可能である。したがって、下降管に沿って異なるモノマー、コモノマー、水素濃度も容易に生成され、その結果、重合条件の一層の区別が可能となる。
【0042】
本発明に係る気相重合方法は、重合希釈剤としてのC~Cアルカンの存在下で行うことが好ましく、特にエチレンの単独重合または共重合の場合にはプロパンの存在下で行うことがより好ましい。
【0043】
必要に応じて、異なるまたは同一の重合反応器を直列に接続して重合カスケードを形成することもできる。2つ以上の異なるまたは同一の重合方法を使用する反応器を並列に配置することも可能である。
【0044】
本開示の特に好ましい実施形態では、オレフィンポリマーを調製するためのプロセスは、一連の2つ以上の気相反応器中で行われる。より好ましくは、オレフィンの重合は、流動床反応器とマルチゾーン循環反応器とを含む系列で行われる。好ましくは、流動床反応器は、マルチゾーンループ反応器の上流に配置される。このような一連の気相反応器は、追加の重合反応器をさらに含んでもよい。これらの追加の反応器は、気相反応器または懸濁反応器のような任意の種類の低圧重合反応器であってもよく、予備重合段階を含んでいてもよい。
【0045】
本開示のプロセスにおいて、ガス状ストリームは、重合反応器または重合反応器の組み合わせを含む重合装置から抜き取られる。重合が気相重合である場合、ガス状ストリームは重合装置内の任意の位置から抜き取ることができる。好ましくは、ガス状ストリームは、重合装置内の反応ガスが存在する位置から抜き取られる。これは、重合が気相重合である場合、ガス状ストリームは反応器から直接抜き取られてもよく、例えば流動床反応器またはマルチゾーンループ反応器での重合の場合、ガス状ストリームはガスリサイクルラインから抜き取られてもよいことを意味する。重合が懸濁液で完全に満たされていない重合反応器内で行われる懸濁重合である場合、ガス状ストリームは、反応器内の懸濁液レベルよりも高い重合反応器内の蒸気セクションから抜き取られることが好ましい。特に、ループ反応器のように完全に充填された重合反応器で重合を行う場合、ガス状ストリームは、重合反応器から直接ではなく、気相が存在する重合装置の一部の装置から抜き取られてもよい。このような装置は、例えば、重合反応器の下流に設置されたフラッシュ容器、またはフラッシュ容器に接続された装置であってもよい。
【0046】
図1は、本開示のプロセスを実施できる、流動床反応器およびマルチゾーン循環反応器を含む一連の重合反応器を含む重合装置のセットアップを概略的に示す。
【0047】
第1気相反応器である流動床反応器(1)は、ポリエチレン粒子流動床(2)と、ガス分配格子(3)と、減速ゾーン(4)とを含む。減速ゾーン(4)の直径は、反応器流動床部分の直径に比べて一般的に増大する。反応器(1)の底部に配置されたガス分配格子(3)を介して供給される上向きのガスは、ポリエチレン層を流動状態に維持する。リサイクルライン(5)を通って減速ゾーン(4)の頂部から出た反応ガス状混合物のガス状ストリームは、圧縮機(6)によって圧縮され、熱交換器(7)に移送され、そこで冷却された後、位置(8)でガス分配格子(3)の下方の点で流動床反応器(1)の底部に再循環される。必要に応じて、リサイクルガスは、凝縮材料、すなわち凝縮モードで反応器を運転するために、熱交換器内の1種以上のリサイクルガス成分の露点以下に冷却され得る。リサイクルガスは、未反応モノマーに加えて、アルカンのような不活性凝縮性ガスと、窒素のような不活性不凝縮性ガスとを含むことができる。補給モノマー、水素ガス、および任意の不活性ガスまたはプロセス添加剤を、例えば圧縮機(6)の上流のライン(9)を介して、さまざまな位置で反応器(1)に供給することができる。一般に、触媒は、好ましくは流動床(2)の下部に配置されたライン(10)を介して反応器(1)内に供給される。
【0048】
流動床反応器(1)で得られたポリエチレン粒子は、流動床反応器(1)からのガス状混合物が第2気相反応器に入るのを避けるために、ライン(11)を介して不連続に吐出され、固気分離器(12)に供給される。固気分離器(12)を出たガスは排気ガスとしてライン(13)を通って反応器から出ていき、分離されたポリエチレン粒子はライン(14)を通って第2気相反応器に供給される。
【0049】
流動床反応器(1)内の反応ガスの組成を分析するために、ガス状ストリームは、圧縮機(6)と熱交換器(7)との間の位置でリサイクルライン(5)からサンプリングライン(15)を介して抜き取られる。
【0050】
第2気相反応器は、ポリエチレン粒子が繰り返し通過する上昇管(22)と下降管(23)とを含むマルチゾーンループ反応器(21)である。上昇管(22)内では、ポリエチレン粒子が矢印(24)の方向に高速流動化条件で上方に流れる。下降管(23)内では、ポリエチレン粒子が重力により矢印(25)方向に下方に流れる。上昇管(22)と下降管(23)とは、相互接続ベンド(26)、(27)を介して適宜連通する。
【0051】
ポリエチレン粒子および反応ガス状混合物は、上昇管(22)を流れた後、上昇管(22)を出て、固気分離ゾーン(28)に送られる。このような固気分離は、サイクロンのような遠心分離機のような従来の分離装置を用いて実現することができる。ポリエチレン粒子は、分離ゾーン(28)から下降管(23)に入る。
【0052】
分離ゾーン(28)を出た反応ガス状混合物は、圧縮機(30)および熱交換器(31)を備えたリサイクルライン(29)を介して上昇管(22)に再循環される。圧縮機(30)と熱交換器(31)との間では、リサイクルライン(29)が分岐されており、ガス状混合物は2つの分離された流れに分割されており、ライン(32)はリサイクルガスの一部を相互接続ベンド(27)に送り、ライン(33)はリサイクルガスの他の一部を上昇管(22)の底部に送り、そこで高速流動化条件を確立する。
【0053】
第1気相反応器からのポリエチレン粒子は、ライン(14)を通って位置(34)の相互接続ベンド(27)でマルチゾーンループ反応器(21)に入る。マルチゾーンループ反応器(21)で得られたポリエチレン粒子は、吐出ライン(35)を介して、下降管(23)の底部から連続的に吐出される。
【0054】
分離ゾーン(28)を出たガス状混合物の一部は、圧縮機(30)を通過した後、リサイクルライン(29)を出て、ライン(36)を通って熱交換器(37)に送られ、そこでモノマーおよび任意の不活性ガスが部分的に凝縮する温度に冷却される。分離容器(38)は、熱交換器(37)の下流に配置される。分離された液体は、ライン(39)を介して分離容器(38)から引き出され、ポンプ(44)によってライン(40)、(41)、(42)、(43)を介して下降管(23)内に供給され、ここで、ライン(40)を介して導入された供給流れは、上昇管(22)の反応ガス混合物が下降管(23)内に入るのを防止するためのバリアを生成するために供給される。補充モノマー、補充コモノマー、および任意の不活性ガスおよび/またはプロセス添加剤は、ライン(45)、(46)、(47)を介してライン(41)、(42)、(43)に導入され、モノマー供給点(48)、(49)、(50)で下降管(23)に供給され得る。補充モノマー、補充コモノマー、および任意の不活性ガスおよび/またはプロセス添加剤は、ライン(51)を介してリサイクルライン(29)にさらに導入され得る。分離容器(38)内にて気相状態で得られたガス状混合物は、ライン(52)を通ってリサイクルライン(29)に再循環される。
【0055】
下降管(23)の底部には、下降管(23)から相互接続ベンド(27)を介して上昇管(22)へのポリエチレン粒子の流れを調整するための調整可能な開口部を有する制御弁(53)が取り付けられている。制御弁(53)の上方では、リサイクルライン(29)からライン(54)を通って供給されるある量のリサイクルガス状混合物は下降管(23)に導入され、制御弁(53)を流れるポリエチレン粒子を促進する。
【0056】
上昇管(22)および下降管(23)内の反応ガスの組成を分析するために、ガス状ストリームは、圧縮機(30)と熱交換器(31)との間の位置で、サンプリングライン(55)を通ってリサイクルライン(29)から抜き取られ、サンプリングライン(56)を通って下降管(23)から抜き取られる。
【0057】
本開示のプロセスでは、重合装置から抜き取られたガス状ストリームが分析装置に供給される。分析装置は、ガスクロマトグラフ、
ラマンプローブ、赤外線検出器、質量分析計、または熱伝導率検出器であってもよい。
分析装置は、ガスクロマトグラフであることが好ましい。
【0058】
ガス状ストリームは、分析装置に導入する前に、有機金属化合物と反応する化学基を表面に有する粒子状固体床を通過する。
【0059】
本開示の好ましい実施形態では、有機金属化合物と反応する化学基を表面に有する粒子状固体は、タルク、層状珪酸塩、無機酸化物などの多孔質材料である。
【0060】
粒子状固体として好適な無機酸化物は、周期律表第2族、第3族、第4族、第5族、第13族、第14族、第15族および第16族元素の酸化物の中に見出すことができる。カルシウム、アルミニウム、ケイ素、マグネシウムまたはチタン元素の酸化物または混合酸化物が好ましい。他の無機酸化物は、単独で、または上記の酸化物、例えば、ZrOまたはBと組み合わせて使用できる。好ましい酸化物は、シリカ、特にシリカゲルまたは熱分解シリカ、アルミナまたはシリコン-アルミニウム混合酸化物の形態である。好ましい混合酸化物は、例えば、焼成ハイドロタルサイトである。式SiO・aAlで表されるシリカを用いることも好ましく、ここで、aは0~2、好ましくは0~0.5である。粒子状固体の粒子は、粒子状であってもよく、あるいは噴霧乾燥形態であってもよく、粒子状固体の粒子は、例えば、平均粒子径が5nmから5mのより小さい一次粒子からなる。
【0061】
有機金属化合物と反応する化学基を表面に有する粒子固体は、平均粒子径が50m~10mm、より好ましくは200m~5mmである。粒子状固体の比表面積は、ISO 9277:2010に規定されるBET法によるガス吸着法により測定される比表面積が200m/g~1000m/g、より好ましくは500m/g~800m/gの範囲である。
【0062】
粒子状固体表面の有機金属化合物と反応する化学基は、好ましくはOH基、吸着水、または特に焼成固体のひずみSi-O-Siブリッジである。
【0063】
有機金属化合物と反応させることにより、粒子状固体表面の活性化学基が消費される。従って、粒子状固体床内の有機金属化合物と活性表面基との反応が起こるゾーンは、粒子状固体床を通過する。好ましくは、重合装置から抜き取られたガス状ストリームが通過する粒子状固体床の全ての反応性表面基が有機金属化合物と反応する前に、該粒子状固体床が有機金属化合物と反応する化学基を表面に有する新規な粒子状固体床に置換される。
【0064】
本開示の好ましい実施形態では、有機金属化合物と反応する化学基を表面に有する粒子状固体は、湿度インジケータを備えたシリカゲルである。重合装置から抜き取られたガス状ストリームが湿度インジケータを備えたシリカゲル粒子層を通過すると、有機金属化合物は通常着色された湿度インジケータと反応してシリカゲル粒子の色を変化させることができる。これにより、有機金属化合物との反応による反応表面基の消費を容易に監視することができる。
【0065】
本開示の好ましい実施形態では、重合装置から抜き取られるガス状ストリームは、1Nl/h~5000Nl/h、好ましくは1Nl/h~500Nl/h、より好ましくは5Nl/h~350Nl/h、特に10Nl/h~250Nl/hの流量で重合装置から抜き取られる連続ガス状ストリームである。単位「Nl」は、101325Pa(=1.01325 bar)と0℃の標準条件下で体積1リットルのガス量である標準リットルを理解しなければならない。
【0066】
本開示の好ましい実施形態では、分析装置には、一定間隔でガス状ストリームサンプルが提供される。
【0067】
本開示の好ましい実施形態では、2つ以上、例えば2つ、3つ、4つまたは5つのガス状ストリームを重合装置の異なる位置でから抜き取り、2つ以上のガス状ストリームの一部またはすべてのサンプルが、サンプルを分析するための1つの分析装置に供給されるか、または2つ以上のガス状ストリームの一部または全部は、重合装置から抜き取られた1つのガス状ストリームのサンプルのみを提供される専用の分析装置を有する。
【0068】
本開示に係る重合装置内の材料組成を分析するために、ガス状ストリームが重合装置から抜き取られる。ガス状ストリームは、好ましくは、ガスクロマトグラフなどの分析装置内に近接するか、好ましくは位置するサンプリングループ内に送られる。サンプリングループは、所定の体積のガス状サンプルを供給した後、それを例えば不活性キャリアガスによって分析ユニット内に移送する。分析装置は通常、すべての測定成分の合計が100%になるように校正される。しかしながら、重合触媒および有機金属化合物の存在下でオレフィンの重合を行う重合装置からガス状ストリームを抜き取ると、この校正値が不安定となり、全成分の測定合計が減少し続けることが分かった。サンプルループ内に微細な固体粒子が蓄積することにより、サンプルループの体積がゆっくりと収縮し、その結果、分析装置に加わる体積が減少し、分析値が歪むことが分かった。測定された成分の合計が100%から離れるほど、測定の精度は低くなる。さらに、分析装置の再較正によって、測定された成分の合計を100%に戻すことが可能であるが、再較正のたびに、許容できなくなった偏差に達するまでの時間はますます短くなる。分析装置を5~10回再校正した後、サンプルループとサンプリングバルブを洗浄することは避けられない。洗浄中は、分析装置は使用できない。制御なしで重合装置内にて重合を実行すると、ポリマー生成物が指定の特性プロファイルに達しなくなったり、重大なプロセスインシデントが発生したりする可能性があるため、このような制御なしの重合装置の操作は一般に避けられる。その結果、洗浄中に重合装置内の重合を停止する必要が生じ、製造ロスが生じたり、代替分析装置が必要となり、追加の努力が必要となる可能性がある。
【0069】
重合装置から抜き取られたガス状ストリームを、有機金属化合物と反応する化学基を表面に有する粒子状固体床を通過させることにより、分析装置のサンプリング装置内に微細な固体粒子が堆積することを回避し、全成分の測定合計を安定に保つ。有機金属化合物と反応する化学基を表面に有する粒子状固体床にガス状ストリームを通過させることにより、粒子状固体床を出たガス状ストリーム中の有機金属化合物の濃度が、重合装置から取り出されたガス状ストリーム中の有機金属化合物の濃度に対して、好ましくは99%未満、より好ましくは99.5%未満、より好ましくは99.8%未満、特に99.9%未満である。
【0070】
有機金属化合物と反応する化学基を表面に有する粒子状固体床は、50cm~1000cm、好ましくは100cm~5000cm、より好ましくは200cm~2500cmの容積を有する容器に収容されていることが好ましい。
【0071】
図2は、本開示に係る粒子状固体床を収容するための容器を概略的に示す。
【0072】
容器は、頂部および底部にフランジ(102)、(103)を有する垂直管(101)を含む。フランジ(102)には、シリカなどの有機金属化合物と反応する化学基を表面に有する粒子状固体床を管(101)に充填するためのボールバルブ(105)を備える第1短管要素(104)が取り付けられている。フランジ(103)には、管(101)を空にするためのボール弁(107)を備える第2の短管要素(106)が取り付けられている。
【0073】
垂直管(101)は、管(101)の上端近傍のフランジ(109)を終端とする短水平管(108)と、管(101)の下端近傍のフランジ(111)を終端とする短水平管(110)とを備えている。フランジ(111)には、管(101)にガス状ストリームを供給する細管(112)が接続されている。フランジ(109)には、ガス状ストリームが管(101)を通過した後に管(101)からガス状ストリームを抜き取るための細管(113)が接続されている。粒子状固体床を管(101)内に保持するために、フランジ(111)と管(112)との間の接続部、およびフランジ(109)と管(113)との間の接続部は、鋼製のスクリーン(114)、(115)を備える。
【0074】
本開示の好ましい実施形態では、粒子状固体床は、直径が6mm~100mmのパイプを含む容器に収容され、好ましくは10mm~80mm、特に15mm~50mmのパイプを含み、このパイプは、パイプにガス状ストリームを導入するための入口と、パイプからガス状ストリームを抜き取るための出口とを有し、入口と出口との間の距離が、0.2m~10m、好ましくは0.3m~5m、特に0.4m~2mである。
【0075】
前記容器は、前記パイプに前記粒子状固体床を導入するための前記パイプの一端にある第1弁と、前記パイプから前記粒子状固体床を除去するための前記パイプの他端にある第2弁とをさらに含むことが好ましい。好ましい実施形態では、パイプの入口および出口に、粒子状固体床をパイプ内に保持する35m~2mm、好ましくは50m~1.5mm、特に100m~1mmのメッシュサイズを有するスクリーンが設けられていることが好ましい。特に好ましい実施形態では、容器は、パイプの端部に第1および第2弁を含み、パイプの入口および出口にはスクリーンが設けられている。
【0076】
したがって、一実施形態では、本開示は、直径が6mm~100mm、好ましくは10mm~80mm、特に15mm~50mmのパイプと、パイプにガス状ストリームを導入するための入口と、パイプからガス状ストリームを抜き取るための出口と、パイプに粒子状固体床を導入するためのパイプの一端にある第1バルブと、パイプから粒子状固体床を除去するためのパイプの他端にある第2バルブとを含み、パイプの入口と出口には、35m~2mm、好ましくは50m~1.5mm、特に100m~1mmのメッシュサイズを有するスクリーンが設けられ、入口と出口との間の距離は、0.2m~10m、好ましくは0.3m~5m、特に0.4m~2mである。
【0077】
本開示の重合プロセスの好ましい実施形態では、ガス状サンプルを分析して得られた結果は、オレフィンポリマーを調製するための方法を制御するためのコントローラに測定信号として供給される。
【0078】
したがって、一実施形態では、本開示は、固体粒子重合触媒および有機金属化合物の存在下、20~200℃の温度および0.1MPa~20MPaの圧力下で、重合反応器または重合反応器の組み合わせを含む重合装置中で、オレフィンを単独重合させるか、またはオレフィンと1つ以上の他のオレフィンとを共重合させることを含む、オレフィン重合プロセスを制御する方法であって、
- 重合装置からガス状ストリームを抜き取るステップと、
- 有機金属化合物と反応する化学基を表面に有する粒子状固体床にガス状ストリームを通過させるステップと、
- ガス状サンプルを分析するための分析装置にガス状サンプルを供給するステップと、
- サンプルを分析し、重合装置内の条件に関する情報を取得するステップと、
- サンプルを分析して得られた情報に基づいて、重合装置内の重合条件を所定値に適合させるステップと、を含む、方法を提供する。
したがって、本開示は、オレフィン重合プロセスを制御するためのこのようなプロセスを含む、オレフィンポリマーを調製するための方法も提供する。
【0079】
ガス状ストリームサンプルを分析して得られた結果から、重合装置内の状態に関する情報が得られる。これらのデータは、特定のグレードまたは条件の重合条件を決定するために使用される一方で、測定された重合条件を所定の値に適合させるために使用され得る。この適合は、オペレータが手動で行うことも、自動で行うこともできる。本開示の好ましい実施形態では、ガス状ストリームのサンプルを分析して得られた結果は、オレフィン重合プロセスを制御するためのコントローラに測定信号として供給される。
実施例
比較例A
【0080】
図1に示すように、2つの反応ゾーンを連結した一連の流動床反応器およびマルチゾーンループ反応器(MZCR)では、1-ヘキセン含有量が0重量%~4重量%の範囲内にあるエチレン1-ヘキセンコポリマーを複数のグレードで製造し、60℃~110℃の温度範囲、1MPa~10MPaの圧力下での平均収量は100kg/hである。重合を行うための触媒系は、TiClをMgCl担体に担持してなる触媒固体を含むジーグラー・ナッタ触媒系である。共触媒としてトリイソブチルアルミニウムを用い、25g/h~50g/hの供給速度で重合に供給した。
【0081】
重合は、サンプリングライン(15)、(55)、(56)を介して反応ガスを抜き取り、MAXUM Edition IIガスクロマトグラフ(Siemens AG、N U+00DC rnberg、Germany;図1に図示せず)に移送して、流動床反応器(1)およびマルチゾーンループ反応器(21)の上昇管(22)および下降管((23)内のガス組成を測定することによって制御される。ガスクロマトグラフには、ライン(15)、(55)、(56)を介して反応ガスを交互に供給した。反応ガスの組成を決定するための重合ゾーンを選択し、したがって適切なサンプリングラインを選択した後、サンプリングライン(15)、(55)および(56)の1つを通して反応ガスを連続的に抜き取り、最初にガスクロマトグラフを微粒子から保護するためにインライン15Mパティキュレートフィルタ(Swagelok Company,Solon,Ohio,USA)を通過させ、次いで減圧器によって圧力を0.17MPa(abs)まで低下させた。0.17MPaの減圧器の後に測定された反応ガスの流量は、選択されたすべてのサンプリングライン(15)、(55)および(56)について30Nl/hであった。ガスクロマトグラフに近い空間では、流量5Nl/hの側流を分岐して、注入ループを含むサンプルバルブに供給すると同時に、ライン(15)、(55)、(56)を介して抜き取られた反応ガスの残りの部分を排気ガス中に送った。反応ガスの流量が実際にサンプルバルブに供給されるガスの流量よりも高い作動サンプリングライン(15)、(55)、(56)を選択して、重合装置からガスを抜き取ってガスクロマトグラフに最終的に導入するまでの間のデッドタイムを低減させた。
【0082】
測定を行うには、サンプルバルブの位置を切り替え、分析対象の反応ガスが予め通過していた注入ループをキャリアガスラインに組み込んだ後、注入ループの内容物をキャリアガスによりガスクロマトグラフに移送した。次のGCクロマトグラムを取得するために、サンプルバルブを元の位置に戻し、分析対象の反応ガスを注入ループに再び通した。注入ループが再びキャリアガス状ストリームに組み込まれる前に、反応ガスによる注入ループのフラッシングを少なくとも1分間継続した。ガスクロマトグラフは、平均して、1時間あたり20個のガスクロマトグラフを記録する速度で動作した。
【0083】
すべての測定成分の合計が定期的に減少し、最終的には注入ループとサンプルバルブを洗浄する必要がある。このような洗浄操作の後、測定された全成分の合計が100%になるようにガスクロマトグラフを校正した。この値は不安定である。すべての測定成分の合計は低下を続けていた。2週間後にはすべての測定成分の合計が80%を下回り、ガスクロマトグラフィー測定の正確性が大幅に低下した。ガスクロマトグラフを再較正することにより、すべての測定成分の合計を100%にリセットすることができ、すべての測定成分の合計が低下し続け、再び80%を下回るまで10日間、ガスクロマトグラフを十分な精度で再使用することができ、さらなる再較正が必要となる。1週間後、すべての測定成分の合計は再び80%を下回った。GCの測定精度が許容できる場合、重合を終了し、ガスクロマトグラフを取り外し、注入ループとサンプルバルブを洗浄してから重合を再開し、平均して2日間の重合中断を生じないようにするために、さらなる時間短縮を回避する。
実施例1
【0084】
実施例Aで行われた一連の重合は、平均して、同じ条件で継続されるが、図2に示すように、減圧装置とガスクロマトグラフのサンプルバルブへの側流が分岐する位置との間のサンプリングラインにシリカ床を含む容器が設置される。この容器は、内径が25mmであり、フランジ(102)からフランジ(103)までの長さが850mmである管(101)を備えている。容器には、湿度インジケータを備えたシリカ(シリカゲルオレンジ色、2~5mm、インジケータ付き、pearls、Carl Roth GmbH+Co KG、カールスルーエ、ドイツ))が充填されている。スクリーン(114)、(115)は、20メッシュのスクリーン(メッシュサイズ850μm)として選択された。
【0085】
重合は4週間行われたが、すべての測定成分の合計は全期間で99%以上のままであった。4週間後、重合を中断し、容器(101)を空にした。シリカの約4分の1がオレンジ色から暗褐色に変化した。
実施例2
【0086】
新しいシリカを用いて実施例1を繰り返した。重合を3か月間実施した。すべての測定成分の合計は95%にまで減少したが、それでも高精度で重合を制御することが可能となった。その後、シリカ床を容器(101)から取り外した。二酸化ケイ素のごく一部はまだオレンジ色から濃い茶色に変化していない。
実施例3
【0087】
実施例2を繰り返したが、湿度インジケータを備えた別のシリカ(シリカゲルオレンジ、粒状、0.2~1mm、Sigma-Aldrich、Merck KGaA、Darmstadt、ドイツ)を使用し、スクリーン(114)、(115)は100メッシュスクリーン(メッシュサイズ150μm)である。
【0088】
すべての測定成分の合計は96%に減少し、それでも高精度で重合を制御することが可能となった。3か月後に容器(101)を空にすると、シリカの大部分は濃い茶色に変化したが、一部はまだオレンジ色であることが示された。
【0089】
実施例1~3は、有機金属化合物と反応する化学基を表面に有する粒子状固体床を設置することにより、オレフィン重合装置内のガスクロマトグラフを、アルキルアルミニウム助触媒の存在下で、ガスクロマトグラフ分注装置の洗浄を繰り返すことなく、および/またはガスクロマトグラフを再校正することなく、高精度に運転することができることを示している。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2023-11-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィンポリマーのを調製するためのプロセスであって、
固体粒子重合触媒、有機金属化合物、およびオレフィンまたはオレフィンと1種以上の他のオレフィンとの組み合わせを、重合反応器または重合反応器の組み合わせを含む重合装置に供給するステップと、
前記重合触媒および前記有機金属化合物の存在下、20~200℃の温度および0.1MPa~20MPaの圧力下で、前記オレフィンを単独重合させるか、または前記オレフィンと前記1種以上の他のオレフィンとを共重合させるステップと、
前記重合装置からガス状ストリームを抜き取るステップと、
前記有機金属化合物と反応する化学基を表面に有する粒子状固体床に前記ガス状ストリームを通過させるステップと、
前記ガス状サンプルを分析するための分析装置に前記ガス状ストリームのサンプルを供給するステップとを含む、プロセス。
【請求項2】
前記分析装置はガスクロマトグラフであり、および/または前記重合装置から抜き取られたガス状ストリームは、1Nl/h~5000Nl/h、好ましくは1Nl/h~500Nl/hの流量で前記重合装置から抜き取られた連続ガス状ストリームである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記有機金属化合物はアルキルアルミニウムであり、および/または、前記粒子状固体は、カルシウム、アルミニウム、ケイ素、マグネシウム、若しくはチタン元素の酸化物または混合酸化物であるか、または前記粒子状固体はZrOまたはBである、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記有機金属化合物と反応する前記粒子状固体表面の化学基は、OH基、吸着水または歪んだSi-O-Siブリッジであり、および/または、前記粒子状固体は、湿度インジケータを備えたシリカゲルである、請求項1~3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
2つ以上の前記ガス状ストリームを前記重合装置の異なる位置で抜き取り、次いで、2つ以上の前記ガス状ストリームの一部または全部のサンプルをサンプルを分析するための1つの前記分析装置に供給するかか、または、2つ以上の前記ガス状ストリームの一部または全部が、前記重合装置から抜き取られた1つの前記ガス状ストリームのサンプルのみを提供される専用の分析装置を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記粒子状固体床は、50cm~10000cmの容積を有する容器に収容され、前記粒子状固体床は、直径が6mm~100mmのパイプと、前記パイプに前記ガス状ストリームを導入するための入口と、前記パイプからガス状ストリームを抜き取るための出口とを含む容器内に収容され、前記入口と前記出口との間の距離が、0.2m~10mである、請求項1~5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記容器は、前記パイプに前記粒子状固体床を導入するための前記パイプの一端にある第1弁と、前記パイプから前記粒子状固体床を除去するための前記パイプの他端にある第2弁とをさらに含み、および/または
前記パイプの前記入口および前記出口には、前記粒子状固体床を前記パイプ内に保持するために、35m~2mmのメッシュサイズを有するスクリーンが設けられている、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
ガス状サンプルを分析して得られた結果が、オレフィンポリマーを調製するためのプロセスを制御するためのコントローラに測定信号として供給される、請求項1~7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
直径が6mm~100mmのパイプと、前記パイプにガス状ストリームを導入するための入口と、前記パイプから前記ガス状ストリームを抜き取るための出口と、前記パイプに前記粒子状固体床を導入するための前記パイプの一端にある第1弁と、前記パイプから前記粒子状固体床を除去するための前記パイプの他端にある第2弁とを含み、前記パイプの前記入口および前記出口には、35m~2mmのメッシュサイズを有するスクリーンが設けられており、前記入口と前記出口との間の距離が0.2m~10mである、容器。
【請求項10】
固体粒子重合触媒および有機金属化合物の存在下、20~200℃の温度および0.1MPa~20MPaの圧力下で、重合反応器または重合反応器の組み合わせを含む重合装置中で、オレフィンを単独重合させるか、またはオレフィンと1種以上の他のオレフィンとを共重合させることを含む、オレフィン重合プロセスを制御する方法であって、
- 前記重合装置からガス状ストリームを抜き取るステップと、
- 前記有機金属化合物と反応する化学基を表面に有する粒子状固体床に前記ガス状ストリームを通過させるステップと、
- ガス状サンプルを分析するための分析装置に前記ガス状ストリームのサンプルを供給するステップと、
- 前記サンプルを分析し、前記重合装置内の条件に関する情報を取得するステップと、
- 前記サンプルを分析して得られた情報に基づいて、前記重合装置内の重合条件を所定値に適合させるステップと、を含む、方法。

【手続補正書】
【提出日】2024-01-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィンポリマーのを調製するためのプロセスであって、
固体粒子重合触媒、有機金属化合物、およびオレフィンまたはオレフィンと1種以上の他のオレフィンとの組み合わせを、重合反応器または重合反応器の組み合わせを含む重合装置に供給するステップと、
前記重合触媒および前記有機金属化合物の存在下、20~200℃の温度および0.1MPa~20MPaの圧力下で、前記オレフィンを単独重合させるか、または前記オレフィンと前記1種以上の他のオレフィンとを共重合させるステップと、
前記重合装置からガス状ストリームを抜き取るステップと、
前記有機金属化合物と反応する化学基を表面に有する粒子状固体床に前記ガス状ストリームを通過させるステップと、
前記ガス状サンプルを分析するための分析装置に前記ガス状ストリームのサンプルを供給するステップとを含む、プロセス。
【請求項2】
前記分析装置はガスクロマトグラフであり、および/または前記重合装置から抜き取られたガス状ストリームは、1Nl/h~5000Nl/h、好ましくは1Nl/h~500Nl/hの流量で前記重合装置から抜き取られた連続ガス状ストリームである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記有機金属化合物はアルキルアルミニウムであり、および/または、前記粒子状固体は、カルシウム、アルミニウム、ケイ素、マグネシウム、若しくはチタン元素の酸化物または混合酸化物であるか、または前記粒子状固体はZrOまたはBである、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記有機金属化合物と反応する前記粒子状固体表面の化学基は、OH基、吸着水または歪んだSi-O-Siブリッジであり、および/または、前記粒子状固体は、湿度インジケータを備えたシリカゲルである、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項5】
2つ以上の前記ガス状ストリームを前記重合装置の異なる位置で抜き取り、次いで、2つ以上の前記ガス状ストリームの一部または全部のサンプルをサンプルを分析するための1つの前記分析装置に供給するかか、または、2つ以上の前記ガス状ストリームの一部または全部が、前記重合装置から抜き取られた1つの前記ガス状ストリームのサンプルのみを提供される専用の分析装置を有する、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項6】
前記粒子状固体床は、50cm~10000cmの容積を有する容器に収容され、前記粒子状固体床は、直径が6mm~100mmのパイプと、前記パイプに前記ガス状ストリームを導入するための入口と、前記パイプからガス状ストリームを抜き取るための出口とを含む容器内に収容され、前記入口と前記出口との間の距離が、0.2m~10mである、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項7】
前記容器は、前記パイプに前記粒子状固体床を導入するための前記パイプの一端にある第1弁と、前記パイプから前記粒子状固体床を除去するための前記パイプの他端にある第2弁とをさらに含み、および/または
前記パイプの前記入口および前記出口には、前記粒子状固体床を前記パイプ内に保持するために、35m~2mmのメッシュサイズを有するスクリーンが設けられている、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
ガス状サンプルを分析して得られた結果が、オレフィンポリマーを調製するためのプロセスを制御するためのコントローラに測定信号として供給される、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項9】
直径が6mm~100mmのパイプと、前記パイプにガス状ストリームを導入するための入口と、前記パイプから前記ガス状ストリームを抜き取るための出口と、前記パイプに前記粒子状固体床を導入するための前記パイプの一端にある第1弁と、前記パイプから前記粒子状固体床を除去するための前記パイプの他端にある第2弁とを含み、前記パイプの前記入口および前記出口には、35m~2mmのメッシュサイズを有するスクリーンが設けられており、前記入口と前記出口との間の距離が0.2m~10mである、容器。
【請求項10】
固体粒子重合触媒および有機金属化合物の存在下、20~200℃の温度および0.1MPa~20MPaの圧力下で、重合反応器または重合反応器の組み合わせを含む重合装置中で、オレフィンを単独重合させるか、またはオレフィンと1種以上の他のオレフィンとを共重合させることを含む、オレフィン重合プロセスを制御する方法であって、
- 前記重合装置からガス状ストリームを抜き取るステップと、
- 前記有機金属化合物と反応する化学基を表面に有する粒子状固体床に前記ガス状ストリームを通過させるステップと、
- ガス状サンプルを分析するための分析装置に前記ガス状ストリームのサンプルを供給するステップと、
- 前記サンプルを分析し、前記重合装置内の条件に関する情報を取得するステップと、
- 前記サンプルを分析して得られた情報に基づいて、前記重合装置内の重合条件を所定値に適合させるステップと、を含む、方法。
【国際調査報告】