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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】航空機
(51)【国際特許分類】
   B64C 39/00 20060101AFI20240416BHJP
   B64U 10/20 20230101ALI20240416BHJP
【FI】
B64C39/00 A
B64U10/20
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570206
(86)(22)【出願日】2022-05-23
(85)【翻訳文提出日】2023-12-21
(86)【国際出願番号】 EP2022063841
(87)【国際公開番号】W WO2022243559
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】21175290.2
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518221564
【氏名又は名称】シクロテック ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ホフライザー,クレメンス
(72)【発明者】
【氏名】キナスト,ルーカス
(57)【要約】
本発明は、航空機(100)であって、長手方向と垂直方向と横断方向とを定義する航空機本体(120)と、各々の関連する回転軸(5)の周りで回転可能であり、各々の関連する推力ベクトルを発生させる少なくとも2つの推進デバイス(1)であって、第1の数の推進デバイスは、横断方向に対して平行な第1の直線に沿って配置されており、第2の数の推進デバイスは、横断方向に対して平行な第2の直線に沿って配置されており、第1の直線は、第2の直線から間隔を空けて配置されており、航空機の重心は、第1の直線と第2の直線との間に配置されている、少なくとも2つの推進デバイス(1)とを含む航空機(100)に関する。航空機は、ホバー飛行を実施するように適合されており、ホバー飛行中、関連する回転軸(5)のそれぞれは、航空機本体の横断方向に実質的に方向付けられており、少なくとも2つの推進デバイスのそれぞれが、各々の関連する回転軸の周りで実質的に同じ回転方向に回転する。回転軸の更に別の向きを有する航空機構成も考えられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機(100)であって、
- 長手方向(101)と垂直方向(103)と横断方向(102)とを定義する航空機本体(120)であって、前記長手方向は、前記航空機(100)のテール(122)からノーズ(121)への方向に対応し、前記垂直方向は、前記航空機(100)が地面の上に載置されているときの地球の引力の方向に対応し、前記横断方向は、前記長手方向及び前記垂直方向に対して垂直である、航空機本体(120)と、
- それぞれ、関連する回転軸(5)の周りで回転可能であり、各々の関連する推力ベクトル(701、702)を発生させる少なくとも2つの推進デバイス(1、1F、1R)であって、
第1の数の前記推進デバイス(1F)は、前記横断方向(102)に対して平行な第1の直線に沿って配置されており、第2の数の前記推進デバイス(1R)は、前記横断方向(102)に対して平行な第2の直線に沿って配置されており、
前記第1の直線は、前記第2の直線から間隔を空けて配置されており、
前記航空機(100)の重心は、前記長手方向(101)に関して、前記第1の直線と前記第2の直線との間に配置されている、
少なくとも2つの推進デバイス(1、1F、1R)と、
を含み、
前記航空機(100)は、前記航空機の前記重心(150)に関して前記航空機に作用する全ての力及び前記航空機に作用する全てのトルクが実質的に消失するホバー飛行を実施するように適合されている、航空機(100)において、
前記ホバー飛行において、
- 前記関連する回転軸(5)のそれぞれは、前記航空機本体の前記横断方向(102)に実質的に方向付けられており、
- 前記少なくとも2つの推進デバイス(1、1F、1R)のそれぞれは、前記各々の関連する回転軸(5)の周りで実質的に同じ回転の方向(51)に回転する
ことを特徴とする、
航空機(100)。
【請求項2】
前記第1の数の前記推進デバイス(1F)は、前記長手方向(101)に関して前記航空機の前部領域に配置されており、前記第2の数の前記推進デバイス(1R)は、前記長手方向(101)に関して前記航空機の後部領域に配置されている、請求項1に記載の航空機(100)。
【請求項3】
ホバー飛行を実施しているときの前記航空機の前記重心(150)は、前記前部領域の前記推進デバイス(1F)が配置されている前記直線から長手方向の距離lに配置され、
【数1】

であり、
【数2】

であり、
式中、
minは、一方の前記前部領域に配置された前記推進デバイス(1F)の前記推力ベクトル(701)と他方の前記後部領域に配置された前記推進デバイス(1R)の前記推力ベクトル(702)との間の最小許容比、
maxは、一方の前記前部領域に配置された前記推進デバイス(1F)の前記推力ベクトル(701)と他方の前記後部領域に配置された前記推進デバイス(1R)の前記推力ベクトル(702)との間の最大許容比、
lは、前記第1の直線と前記第2の直線との間の距離、
は、前記前部領域に配置された前記推進デバイス(1F)の特性数、
は、前記後部領域に位置する前記推進デバイス(1R)の特性数である、
請求項2に記載の航空機(100)。
【請求項4】
ホバー飛行中に平行に整列される前記関連する回転軸を有するように適合されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の航空機(100)。
【請求項5】
航空機(200)であって、
- 航空機胴体(220)と、
- 前記航空機胴体の周囲に取り付けられており、各々の関連する回転軸(5A、5B)の周りで回転可能であり、各々の関連する推力ベクトル(2001、2002、2003、2004)を発生させる少なくとも3つの推進デバイス(1A、1B)と、
を含み、
前記航空機(200)は、前記航空機の重心(250)に関して前記航空機に作用する全ての力及び前記航空機に作用する全てのトルクが実質的に消失するホバー飛行を実施するように適合されている、航空機(200)において、前記ホバー飛行中、
- 前記少なくとも3つの推進デバイス(1A)のうちの2つの前記関連する回転軸(5A)は、第1の方向(201)に実質的に整列しており、前記少なくとも3つの推進デバイス(1B)のうちの他の前記関連する回転軸(5B)は、第2の方向(202)に実質的に整列しており、
- 前記第1の方向(201)は前記第2の方向(202)に平行ではなく、
- 回転軸(5A)が前記第1の方向(201)に方向付けられた前記2つの推進デバイス(1A)のそれぞれは、ホバー飛行中に前記各々の関連する回転軸(5A)の周りで実質的に同じ回転方向に回転する、
ことを特徴とする、航空機(200)。
【請求項6】
- 前記航空機胴体の周囲に取り付けられており、各々の関連する回転軸(5A、5B)の周りで回転可能であり、各々の関連する推力ベクトル(2001、2002、2003、2004)を発生させる少なくとも4つの推進デバイス(1A、1B)
を含み、
前記航空機(200)は、前記ホバー飛行を実施するように適合されており、前記ホバー飛行中、
- 前記少なくとも4つの推進デバイス(1A)のうちの2つの前記関連する回転軸(5A)は、前記第1の方向(201)に実質的に整列しており、前記少なくとも4つの推進デバイス(1B)のうちの更なる2つの前記関連する回転軸(5B)は、前記第2の方向(202)に実質的に整列しており、
- ホバー飛行中に回転軸(5A)が前記第1の方向(201)に方向付けられる前記2つの推進デバイス(1A)のそれぞれは、前記各々の関連する回転軸(5A)の周りで実質的に同じ回転方向に回転する、及び/又はホバー飛行中に回転軸(5B)が前記第2の方向(202)に方向付けられる前記2つの推進デバイス(5B)のそれぞれは、前記各々の関連する回転軸(5B)の周りで実質的に同じ回転方向に回転する、
請求項5に記載の航空機(200)。
【請求項7】
3つの推進デバイスが、正三角形の辺を形成するように前記航空機胴体の周囲に配置されており、
- 前記航空機胴体(220)は、前記三角形の幾何学的中心に位置し、
- 前記第1の方向は、前記3つの推進デバイスのうちの2つが位置する直線によって定義され、
- 前記第2の方向は、前記第1の方向に対して実質的に垂直であり、
- 前記第1の方向を向いている前記直線上に位置する前記2つの推進デバイスそれぞれの前記回転軸は、前記直線と0°~30°の範囲の角度を含む、
請求項5に記載の航空機(200)。
【請求項8】
n個の推進デバイスが、n>3であるn個の辺を持つ正多角形の頂点を形成するように、前記航空機胴体の周囲に配置されており、
- 前記航空機本体(220)は、n個の辺を持つ前記多角形の幾何学的中心に位置し、
- 前記第1の方向は、前記n個の推進デバイスのうちの2つが位置する第1の直線によって定義され、
- 前記第2の方向は、前記n個の推進デバイスのうちの更に別の2つが位置する第2の直線によって定義され、
- 前記第1の方向を向いている前記第1の直線上に位置する前記2つの推進デバイスそれぞれの前記回転軸は、前記第1の直線と0°~18°の範囲の角度を含む、
請求項6に記載の航空機(200)。
【請求項9】
前記第1の直線と前記第2の直線との間の前記角度は、72°~90°の範囲である、請求項8に記載の航空機(200)。
【請求項10】
- 前記第2の方向(202)は、前記第1の方向(201)に対して実質的に垂直であり、
- 前記少なくとも4つの推進デバイス(1A)のうちの2つは、前記第1の方向(201)に沿って配置されており、前記少なくとも4つの推進デバイス(1B)のうちの他の2つは、前記第1の方向に対して実質的に垂直な前記第2の方向(202)に沿って配置されている、
請求項6~9のいずれか一項に記載の航空機(200)。
【請求項11】
ホバー飛行を実施しているときの前記航空機の前記重心(250)は、前記推進デバイス(1B)が前記第2の方向(202)に配置されている直線から前記第1の方向(201)の距離l34に配置され、
【数3】

であり、
【数4】

であり、
式中、
minは、前記第1の方向に沿って配置された前記推進デバイス(1A)の前記推力ベクトル(2001、2002)の間の最小許容比、
maxは、前記第1の方向に沿って配置された前記推進デバイス(1A)の前記推力ベクトル(2001、2002)の間の最大許容比、
34は、前記第2の方向(202)に沿って配置された前記推進デバイス(1B)の特性数、
lは、前記第1の方向に配置された前記推進デバイス(1A)の幾何学的中心間の距離であり、
及び/又は
ホバー飛行を実施しているときの前記航空機の前記重心(250)は、前記推進デバイス(1A)が前記第1の方向(201)に配置されている直線から前記第2の方向(202)の距離l12に配置され、
【数5】

であり、
【数6】

であり、
【数7】

は、前記第2の方向(202)に沿って配置された前記推進デバイス(1B)の前記推力ベクトル(2003、2004)の間の最小許容比、
【数8】

は、前記第2の方向(202)に沿って配置された前記推進デバイス(1B)の前記推力ベクトル(2003、2004)の間の最大許容比、
12は、前記第1の方向(201)に沿って配置された前記推進デバイス(1A)の特性数、
l’は、前記第2の方向に配置された前記推進デバイス(1B)の幾何学的中心の距離である、
請求項10に記載の航空機(200)。
【請求項12】
ホバー飛行中、前記推進デバイスの1つ以上が、前記推進デバイスの1つ以上に関連する各々の特定の所定の推力ベクトルを発生させると、前記航空機の前記重心(150、250)が、前記航空機の前記重心に関して前記航空機に作用する全ての力及び前記航空機に作用する全てのトルクを実質的に消失させるように位置決めされるように更に適合されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の航空機(100、200)。
【請求項13】
前記航空機は、ほぼ等しい関連するある所定の推力ベクトルでホバー飛行を実行するように更に適合されている、請求項1~12のいずれか一項に記載の航空機(100、200)。
【請求項14】
前記航空機の前記重心(150、250)を変位させるための変位デバイスを更に含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の航空機(100、200)。
【請求項15】
前記推進デバイスに燃料を供給するための燃料タンク及び/又は前記推進デバイスに電力を供給するためのバッテリーを更に含み、
前記変位デバイスは、前記航空機内の前記燃料タンクからの燃料又は前記バッテリーを位置変更し、それにより、前記推進デバイスの1つ以上が前記各々の特定の所定の推力ベクトルを発生させると前記航空機がホバー飛行を実施するように前記重心(150、250)を位置決めするように適合されている、請求項14に記載の航空機(100、200)。
【請求項16】
前記推進デバイスの前記推力ベクトルを個別に制御するための推力ベクトル制御を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の航空機(100、200)。
【請求項17】
請求項1~4又は12~16のいずれか一項に記載の航空機(100)を製造する方法であって、以下の工程、すなわち、
- 前記関連する回転軸(5)のそれぞれが前記航空機本体(120)の前記横断方向(102)に実質的に方向付けられており、
- 前記少なくとも2つの推進デバイス(1F、1R)のそれぞれが前記各々の関連する回転軸(5)の周りで実質的に同じ回転の方向(51)に回転する場合に、
- 前記推進デバイス(1F、1R)の1つ以上が、前記推進デバイス(1F、1R)の1つ以上と関連する特定の所定の推力ベクトルをそれぞれ発生させて、前記航空機の前記重心に関して前記航空機に作用する全ての力及び前記航空機に作用する全てのトルクが実質的に消失するホバー飛行を前記航空機に実施させるように前記航空機の前記重心(150)を位置決めする工程
を含む、方法。
【請求項18】
請求項5~16のいずれか一項に記載の航空機(200)を製造する方法であって、以下の工程、すなわち、
- 前記少なくとも3つの推進デバイス(1A)のうちの2つの前記関連する回転軸(5A)が実質的に前記第1の方向(201)に整列され、前記少なくとも3つの推進デバイス(1B)のうちの他の前記関連する回転軸(5B)は、実質的に前記第2の方向(202)に整列され、
- 回転軸が前記第1の方向(201)に方向付けられた前記2つの推進デバイス(1A)のそれぞれが、ホバー飛行中に前記各々の関連する回転軸(5A)の周りで実質的に同じ回転方向に回転する場合に、
- 前記推進デバイス(1A、1B)の1つ以上が、前記推進デバイス(1A、1B)の1つ以上と関連する特定の所定の推力ベクトルをそれぞれ発生させて、前記航空機の前記重心(250)に関して前記航空機に作用する全ての力及び前記航空機に作用する全てのトルクが実質的に消失するホバー飛行を前記航空機に実施させるように前記航空機の前記重心(250)を位置決めする工程
を含む、方法。
【請求項19】
航空機(100)を制御する方法であって、
- 長手方向と垂直方向と横断方向とを定義する航空機本体(120)であって、前記長手方向は、前記航空機のテール(122)からノーズ(121)への方向に対応し、前記垂直方向は、前記航空機(100)が地面の上に載置されているときの地球の引力の方向に対応し、前記横断方向は、前記長手方向及び前記垂直方向に対して垂直である、航空機本体(120)と、
- 各々の関連する回転軸(5)の周りで回転可能であり、各々の関連する推力ベクトルを発生させる少なくとも2つの推進デバイス(1、1F、1R)であって、
第1の数の前記推進デバイス(1F)は、前記横断方向(102)に対して平行な第1の直線に沿って配置されており、第2の数の前記推進デバイス(1R)は、前記横断方向(102)に対して平行な第2の直線に沿って配置されており、
前記第1の直線は、前記第2の直線から間隔を空けて配置されており、
前記航空機(100)の重心は、前記長手方向(101)に関して、前記第1の直線と前記第2の直線との間に配置されている、
少なくとも2つの推進デバイス(1、1F、1R)と、
を有し、
以下の工程、すなわち、
- 前記少なくとも2つの推進デバイスに関連する前記回転軸のそれぞれが前記航空機本体の前記横断方向に実質的に方向付けられており、前記少なくとも2つの推進デバイスのそれぞれが、前記各々の関連する回転軸の周りで実質的に同じ回転方向に回転する場合に、前記航空機がホバー飛行を実施するように、前記関連する推力ベクトルを決定する工程であって、
ホバー飛行中、前記航空機の前記重心(150)に関して前記航空機に作用する全ての力及び前記航空機に作用する全てのトルクが実質的に消失する、
関連する推力ベクトルを決定する工程と、
- 前記各々の推進デバイスが前記特定の関連する推力ベクトルを発生させるように、前記推進デバイス(1F、1R)のそれぞれを実質的に同じ回転の方向に駆動する工程と、
を含む、
方法。
【請求項20】
航空機(200)を制御する方法であって、
- 航空機胴体(220)と、
- 前記航空機胴体の周囲に取り付けられ、各々の関連する回転軸(5A、5B)の周りで回転可能であり、各々の関連する推力ベクトルを発生させる少なくとも3つの推進デバイス(1A、1B)と、
を有し、
以下の工程、すなわち、
- 前記少なくとも3つの推進デバイス(1A)に関連する前記回転軸(5A)のうちの2つが第1の方向(201)に実質的に整列しており、前記各々の関連する回転軸(5A)の周りで実質的に同じ回転方向に回転する場合、及び/又は前記少なくとも3つの推進デバイス(1B)に関連する前記回転軸(5B)のその他が前記第1の方向に平行ではない第2の方向(202)に実質的に整列している場合に、前記航空機がホバー飛行を実施するように前記関連する推力ベクトルを決定する工程であって、
ホバー飛行中、前記航空機の重心(250)に関して前記航空機に作用する全ての力及び前記航空機に作用する全てのトルクが実質的に消失する、
関連する推力ベクトルを決定する工程と、
- 前記少なくとも3つの推進デバイス(1A)のうちの2つの前記関連する回転軸(5A)を実質的に前記第1の方向(201)に整列させ、前記少なくとも3つの推進デバイス(1B)のもう1つの前記関連する回転軸(5B)を実質的に前記第2の方向(202)に整列させる工程と、
- 前記各々の推進デバイスが関連する回転方向に回転し、前記特定の関連する推力ベクトルを発生させるように、前記推進デバイス(1A、1B)のそれぞれを駆動する工程であって、
前記第1の方向に実質的に方向付けられた回転軸を有する前記2つの推進デバイス(1A)のそれぞれは、前記各々の関連する回転軸(5A)の周りで実質的に同じ回転方向に回転する、
駆動する工程と、
を含む、方法。
【請求項21】
前記決定される関連する推力ベクトルの全ては、ほぼ同一になるように選択される、請求項19又は20に記載の航空機(100、200)を制御する方法。
【請求項22】
- 前記推進デバイスが、前記推進デバイスと関連する前記特定の所定の推力ベクトルを発生させると、前記航空機の前記重心に関して前記航空機に作用する全ての力及び前記航空機に作用する全てのトルクを実質的に消失させるように前記航空機の前記重心(150、250)を位置決めする工程
を更に含む、請求項19~21のいずれか一項に記載の航空機(100、200)を制御する方法。
【請求項23】
前記推進デバイス(1、1F、1R、1A、1B)のそれぞれは構造的に同一である、請求項1~22のいずれか一項に記載の航空機(100、200)又は方法。
【請求項24】
前記推進デバイス(1、1F、1R、1A、1B)はサイクロジャイロロータを含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の航空機(100、200)又は方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機並びに航空機を製造及び制御する方法に関する。特に、本発明は、同じ方向に回転する推進デバイス、特にサイクロジャイロロータによって安定したホバリング飛行を実施することができる航空機に関する。
【背景技術】
【0002】
推進デバイスとしてサイクロジャイロロータを使用する航空機は、サイクロジャイロと呼ばれる。ヘリコプターと同様に、サイクロジャイロもまた、垂直離着陸(VTOL)機、すなわち、滑走路なしで垂直に離着陸することができる航空機である。
【0003】
サイクロジャイロロータは、以下ロータブレードと呼ばれる回転翼による推力発生の原理に基づく。ヘリコプターの推進システムに使用されているような古典的な回転翼とは対照的に、サイクロジャイロロータのブレードの回転軸は、ブレード/ロータブレードの長手方向軸に対して平行に整列している。サイクロジャイロロータ全体の推力の方向は、回転軸に垂直である。
【0004】
ホバリング飛行又は一定速度での前進飛行などの静止動作では、いずれの場合においても必要最小限の推進力で総推力に最大限寄与するために、サイクロジャイロロータの全てのロータブレードは、理想的には、常時、流れの方向に対して可能な限り最良に方向付けられるべきである。流れの方向に対するロータブレードの最大ピッチは、発生する推力の大きさに直接影響する。ロータが回転する際、1回転の間に各ロータブレードのピッチを連続的に変更しなければならない。したがって、サイクロジャイロロータの各ロータブレードは、ピッチ角の周期的な変更を行う。ピッチ角のこの周期的な変更は、ピッチ運動と呼ばれる。
【0005】
ピッチ運動を発生させるための様々なピッチ機構が知られている。例えば、各ロータブレードは、1つ以上の接続ロッドを介して偏心支承軸に接続され得る。生じるロータブレードのピッチ運動は、各ロータの回転によって周期的に繰り返される。
【0006】
サイクロジャイロ用の推進デバイスの様々な実施形態は、例えば、欧州特許出願公開第3548378(A1)号及び欧州特許出願公開第3715249(A1)号に記載されている。
【0007】
ロータブレードの周期的な調整により、ロータの回転軸に垂直な推力ベクトルを発生させる。ロータブレードピッチを周期的に変更するためにオフセットデバイスが使用され、したがって、推力ベクトルは、ロータの回転軸に垂直な平面全体内で回転させることができる(推力ベクトル制御)。推力ベクトルに加えて、ロータは、回転軸の周りで、ロータの回転の方向と反対のトルクを発生させる。このトルクは、ロータブレードに作用する空気力、すなわち揚力及び抗力の接線成分から生じる。
【0008】
空気がロータに対して外から流れる場合、空気力学的特性、したがって、発生する推力ベクトルの特性が変化する。ロータが前進飛行中の場合、空気は、前方からロータに能動的に吹き付けられる。変化する特性は、マグヌス効果によってほぼ説明することができる。これは、「流れの中で回転する球体が、流れの方向に対して垂直な横力を受ける」ことを示す。
【0009】
横力の方向は、本体又はこの場合はサイクロジャイロロータの回転の方向に依存する。
【0010】
しかしながら、例えば、I.S.Hwangらによる論文“Development of a Four-Rotor Cyclocopter”from Journal of Aircraft,Vol. 45, No. 6, November-December 2008,pages 2151 ff.及びM.Benedictらによる論文“Experimental Optimization of MAV-Scale Cycloidal Rotor Performance” from Journal of the American Helicopter Society 56, 022005(2011)から周知の航空機又はサイクロジャイロでは、入射流が一定のままである一方で、ロータは反対方向に回転する。この場合、すなわちロータが反対方向に回転する場合、マグヌス効果によって生じるロータの横力は同じ方向に作用せず、したがって、同じ揚力が必要となる一方で、総推力は減少する又はパワー要件は増加する可能性がある。したがって、より高い前進速度及び反対の回転方向では、マグヌス効果の負の効果をロータによってもはや補償することができない可能性がある。その結果、航空機はもはや飛行できず、ロータを揚力発生構成要素として使用することはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、高速であっても前進飛行において安定した飛行姿勢をとることができる航空機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題は、請求項1に記載の特徴を有する航空機、請求項5に記載の特徴を有する航空機、請求項17及び18にそれぞれ記載の航空機を製造する方法、並びに請求項19及び20にそれぞれ記載の航空機を制御する方法によって解決される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項2~4、6~16及び21~24に開示される。
【0013】
本発明の第1の態様によれば、航空機であって、長手方向と垂直方向と横断方向とを定義する航空機本体であって、長手方向は、航空機のテールからノーズへの方向に対応し、垂直方向は、航空機が地面の上に載置されているときの地球の引力の方向に対応し、横断方向は、長手方向及び垂直方向に対して垂直である、航空機本体と、各々の回転軸の周りで回転可能であり、各々の推力ベクトルを発生させる少なくとも2つの推進デバイスとを含む航空機が提供される。第1の数の推進デバイスは、横断方向に対して平行な第1の直線に沿って配置されており、第2の数の推進デバイスは、横断方向に対して平行な第2の直線に沿って配置されている。第1の直線は、第2の直線から間隔を空けて配置されており、航空機の重心は、長手方向に関して、第1の直線と第2の直線との間に配置されている。航空機は、それにより、航空機の重心に関して航空機に作用する全ての力及び航空機に作用する全てのトルクが実質的に消失するホバー飛行を実施するように適合されており、ホバー飛行中、関連する回転軸のそれぞれは、航空機本体の横断方向に実質的に方向付けられており、少なくとも2つの推進デバイスのそれぞれが、各々の関連する回転軸の周りで実質的に同じ回転方向に回転する。
【0014】
本発明によれば、回転軸と横断方向に延びて回転軸と交差する軸との間に含まれる角度が45°未満、好ましくは30°未満、より好ましくは15°未満である場合に、回転軸は、航空機本体の横断方向に実質的に方向付けられている。
【0015】
したがって、本発明の目的においては、ホバー飛行中に、全ての回転軸が数学的に正確に平行である必要は必ずしもない。実際、回転軸と横断方向に延びて回転軸と交差する軸との間の角度が5°~30°、特に好ましくは10°~20°の範囲であれば好都合な場合がある。
【0016】
更に、本発明によれば、推進デバイスは、ある推進デバイスの角速度のベクトルと横断方向を向いた固定されているが任意のベクトルとのスカラー積が全ての推進デバイスに関して同じ記号を有する場合、実質的に同じ回転の方向に回転している。これは、検討中の全ての推進デバイス又は検討中の各推進デバイスが実質的に同じ回転の方向に回転していることを確認するために、横断方向のベクトルが最初に固定されることを意味する。その後、第1の推進デバイスに関して、その角速度ベクトルと固定ベクトルとのスカラー積が計算され、その後、第2の推進デバイスに関して、その角速度ベクトルと固定ベクトルとのスカラー積が計算されるなどである。最後に、このようにして計算されたスカラー積の記号(正又は負)のみが比較される。全ての記号が同じであれば、検討中の推進デバイス又は検討中の各推進デバイスは、本発明の意味において実質的に同じ回転の方向に回転している。
【0017】
したがって、本発明の目的においては、ホバー飛行中に、全ての回転軸が数学的に正確に平行である必要も、全ての推進デバイスが回転軸の周りを同じ回転速度又は角速度で(大きさの点で)回転する必要も必ずしもない。
【0018】
航空機が実質的に同じ方向に回転する推進デバイスを用いてホバー飛行を実施するように設計することにより、推進デバイスのパワー消費の低減が達成される。簡単に言えば、本発明に従って発生するマグヌス効果が推進デバイスの推力の一部を代替し、したがって、前進飛行中のパワー要件がホバー飛行と比較して減少する。したがって、前進飛行中に推進デバイスに対してより多くの残余パワーが残されるため、前進飛行中の航空機の敏捷性が特に向上する。
【0019】
マグヌス効果は、流れの中で回転する球体が、流れの方向に対して垂直な横力を受けることを示す。実質的に同じ方向に回転する本発明による推進デバイスの場合、この効果により、垂直方向に追加の推力ベクトル又は力を発生させることができる。したがって、推進デバイスの総揚力は増加する。マグヌス効果は、推進デバイスによって加えられる推進力の一部を代替し、したがって、前進飛行中のパワー要件がホバー飛行と比較して減少する。ここで、ロータが前進飛行中のとき、それに対して空気が前方から能動的に流れている。本発明による構成では、流入は一定のままであるが、実質的に同じ方向に回転する推進デバイスによって、マグヌス効果の追加の横力が推進デバイスの推進力と実質的に同じ方向に作用することで、同じ揚力を要する一方で、総推進力が増加する又はパワー要件が減少する。したがって、特に前進速度がより高く、実質的に同じ回転方向の前進飛行において、マグヌス効果の正の効果により、航空機を安定した飛行姿勢に維持するために推進デバイスが必要とし得るパワー及び/又は回転速度を少なくすることが可能である。
【0020】
特に好ましい実施形態では、航空機は、ホバー飛行中、推進デバイスの1つ以上が、それと関連する特定の所定の推力ベクトルを発生させると、航空機の重心が、航空機の重心に関して航空機に作用する全ての力及び航空機に作用する全てのトルクを実質的に消失させるように位置決めされるように更に適合されている。この指示に関連するのは、長手方向に関する航空機の重心が、推進デバイスの1つ以上が最大推力又は最大推力ベクトルで駆動されるときに航空機がホバリング可能であることにより決定される範囲内でなければならないという制約である。換言すれば、重心が前記範囲内であれば、推進デバイスは、航空機がホバリング飛行を実施できるようにするための適切な推力ベクトルを発生させることが可能である。
【0021】
ホバー飛行中、進入速度は基本的に前進飛行中よりも低い。本発明による航空機ではホバリング飛行に関する推進デバイスの推力ベクトルが指定されており、ホバリング飛行の重心の位置は決定されていることから、前進飛行中の安定した飛行姿勢も可能になることが確実である。上述したように、進入速度が大きいほど、本発明によるマグヌス効果によって生じる正の効果が大きくなる。したがって、本発明によるホバー飛行中の航空機の構成により、航空機が特に前進飛行中に安定した飛行姿勢をとることができることが確実となる。なぜなら、前進飛行中は、マグヌス効果により、ホバー飛行の場合よりも推力ベクトルの増加が大きくなるからである。
【0022】
本発明による推進デバイスを有する航空機を設計及び構成する場合、推進デバイスの全ての力及びトルクを考慮しなければならない。基本的に、推進力又は推力ベクトルを用いて、必要な揚力を発生させる及び/又は航空機の飛行姿勢を制御する。この目的のために、航空機は、好都合には、ホバー飛行及び/又は前進飛行中に必要な推進力又は必要な推力ベクトルを調整する推力ベクトル制御システムを含む。
【0023】
本発明による推進デバイスはそれぞれ、回転の方向に対してトルクを発生させる。この、推進デバイスの回転の方向に対する回転軸の周りのトルクは、とりわけ、空気抵抗によって生じる接線方向の空気力からもたらされる。したがって、一定の回転速度を維持するために、推進デバイスは、接線方向の空気力によって生じるトルクを打ち消す(駆動)トルクを発生させなければならない。しかしながら、推進デバイスが飛行段階中にもそのような(推進)トルクを発生できるようにするためには、別のトルクが必要となり、この別のトルクは、推進デバイスを空中で「支持する」ために、航空機本体が(作用反作用の法則に従って)加えなければならない。この後者のトルクは、空気力に対して一定の回転速度を維持するために、接線方向の空気力によって発生するトルクの大きさとほぼ等しく(散逸効果は無視)、また、接線方向の空気力によって発生するトルクと同じ方向を向いている。空気力によって発生するトルクは、推進デバイスの回転の方向と逆であるため、航空機本体によって加えられるトルクも、推進デバイスの回転の方向と逆である。空気力によるトルクと推進デバイスによるトルクの大きさが実質的に等しく、しかし反対方向を向いていると仮定すると、推進デバイスの回転により残る正味のトルクは、航空機本体によって加えられるトルクである。
【0024】
本発明によれば、このトルク又はこれらのトルクは、各々の推進デバイスに割り当てられた推力ベクトルを考慮し、ホバリング飛行中に航空機の重心に関して航空機に作用する全ての力及び航空機に作用する全てのトルクが実質的に消失するように航空機の重心を位置決めすることにより補償される。
【0025】
本発明によれば、推進デバイスは実質的に同じ方向に回転するため、上述の航空機本体によって発生するこれら全ての推進デバイスのトルクも、実質的に同じ方向に作用する。したがって、トルクは付加され、互いに打ち消し合うことはない。
【0026】
ホバリング飛行中のみならず前進飛行中の安定した飛行姿勢を達成できるようにするために、航空機に作用する全ての力及びトルクの平衡が満たされなければならない。この計算は、運動量の定理及び角運動量とトルクとの間の関係を用いて行われる。
【0027】
運動量の定理は、
【数1】

であり、
ここで、mは、航空機の質量、
【数2】

は、航空機の重心の加速度ベクトル、及びFは、航空機に作用する力ベクトルに対応する。
【0028】
角運動量とトルクとの間の関係は、
【数3】

であり、
ここで、
【数4】

は、角運動量ベクトル(スピンベクトル)の時間変化、Mは、航空機に作用するトルクベクトルである。
【0029】
安定した飛行姿勢(ホバリング飛行、前進飛行中の均一な速度など)の要件に関して、加速度ベクトル
【数5】

及び角運動量ベクトルの時間変化
【数6】

はゼロでなければならない。したがって、全ての外力の合計(F)及び重心の周りの全てのトルクの合計(M)の両方は、足すとそれぞれゼロにならなればならない。ホバー飛行中に航空機に作用する力は、重力と推進デバイスの推進力である。航空機の重心に対して作用するトルクは、航空機の重心から関連する距離に支持される推進デバイスの推力ベクトルによって発生するトルク、及び航空機本体によって発生する(支持)トルクであり、これらは全て、実質的に同じ方向を向いている。
【0030】
したがって、力とトルクの平衡は、推進デバイスの推進力又は推力ベクトル並びにそれに応じたそれらの航空機の重心からの距離を選択することにより達成することができる。
【0031】
好ましくは、第1の数の推進デバイスは、長手方向に関して航空機の前方領域に配置されており、第2の数の推進デバイスは、長手方向に関して航空機の後方領域に配置されている。好ましくは、航空機は、3つの推進デバイスを含む。特に好ましくは、航空機は、4つの推進デバイスを含み、推進デバイスのうちの2つは、長手方向に関して航空機の前方領域に配置されおり、他の2つの推進デバイスは、長手方向に関して航空機の後方領域に配置されている。航空機の全長は長手方向に測定される。航空機の領域をより簡単に説明するために、以下、航空機の最前部分に相対的な長手方向座標0が割り当てられ、航空機の最後部分に相対的な長手方向座標100%が割り当てられる。この慣例では、最前部は、航空機の全長の0~40%の(長手方向)範囲に相当するように決定され、最後部は、航空機の全長の60%~100%の(長手方向)範囲に相当するように決定される。更に、前方領域に位置する2つの推進デバイスが、横断方向に対して平行に方向付けられた共通の直線上にある場合は好都合である。後部エリアに配置された2つの推進デバイスが、横断方向に対して平行に整列する共通の直線上にある場合も適切である。
【0032】
有利には、前方エリア内の推進デバイスは、横断方向に対して平行に延びる第1の直線に沿って配置されており、後部エリアの推進デバイスは、横断方向に対して平行に延びる第2の直線に沿って配置されている。それにより、ホバリング飛行を実施しているときの航空機の重心は、前方領域内の推進デバイスが配置されている直線から長手方向の距離lに配置され、
【数7】

であり、
【数8】

であり、
式中、
minは、一方の前部エリアに配置された推進デバイスの推力ベクトルと他方の後部エリアに配置された推進デバイスの推力ベクトルとの間の最小許容比、
maxは、一方の前部エリアに配置された推進デバイスの推力ベクトルと他方の後部エリアに配置された推進デバイスの推力ベクトルとの間の最大許容比、
lは、第1の直線と第2の直線との間の距離、
は、前部エリアに位置する推進デバイスの特性数、
は、後部エリアに位置する推進デバイスの特性数である。
【0033】
好ましくは、航空機は、ホバー飛行中に平行に整列される関連する回転軸を有するように更に設計されている。
【0034】
最後に、本発明によれば、航空機が、本発明による効果に寄与する少なくとも2つの推進デバイスに加えて、実質的に同じ回転の方向に回転しない他の推進デバイスを含むことも排除されないことに留意されたい。
【0035】
本発明の第2の態様によれば、航空機胴体と、航空機胴体の周囲に取り付けられており、各々の関連する回転軸の周りで回転可能であり、各々の関連する推力ベクトルを発生させる少なくとも3つの推進デバイスとを含む航空機が提供される。航空機は、それにより、航空機の重心に関して航空機に作用する全ての力及び航空機に作用する全てのトルクが実質的に消失するホバー飛行を実施するように適合されており、ホバー飛行中、少なくとも3つの推進デバイスのうちの2つの関連する回転軸は、第1の方向に実質的に整列しており、少なくとも3つの推進デバイスのうちの他の関連する回転軸は、第2の方向に実質的に方向付けられており、第1の方向は第2の方向に平行ではなく、回転軸が第1の方向に方向付けられた2つの推進デバイスのそれぞれは、ホバー飛行中に各々の関連する回転軸の周りで実質的に同じ回転方向に回転する。
【0036】
本発明による用語「第1/第2の方向に実質的に整列している」及び「実質的に同じ方向に回転する」を理解するために、本発明の第1の態様を参照されたい。そこに記載されている定義は第2の態様に適宜適用される。
【0037】
第1の方向を向く(基準)軸が第2の方向を向く(基準)軸に平行でない場合、第1の方向は第2の方向に平行ではない。好ましくは、第1の方向と第2の方向との間の角度は、30°~110°の範囲、好ましくは40°~100°の範囲、より好ましくは60°~95°の範囲である。
【0038】
好ましくは、少なくとも3つの推進デバイスは、航空機胴体の周囲で実質的に一平面内に取り付けられている。好ましくは、航空機胴体は、平面、すなわち航空機胴体に交差する平面内にある。更に、第1の方向及び第2の方向がこの平面内にある場合は有利である。
【0039】
ここで、「実質的に一平面内に取り付けられている」とは、推進デバイス又はそれらの取付点が一平面内に正確に同様に含まれる必要はないことを意味する。したがって、推進デバイスの1つ以上が平面の外に枢着されている及び/又は推進デバイスが平面に対して垂直にずれている場合も本発明に従う。便宜上、垂直のずれは、航空機胴体の垂直範囲によって制約される、すなわち、便宜上、推進デバイスは、推進デバイスの回転軸が、航空機胴体に接触し、航空機胴体の垂直範囲だけ離隔した2つの水平面間に形成される空間の領域内に含まれるように取り付けられる。垂直範囲は、航空機が(平坦な)地面の上に載置されているときの重力の方向に関連する。
【0040】
好ましくは、第1の方向に実質的に方向付けられている少なくとも3つの推進デバイスのうちの2つの回転軸のそれぞれは、2つの推進デバイスを通る直線に実質的に平行であるように方向付けられている。直線が推進デバイスの幾何学的中心(この用語については以下で更に説明する)又は支承点を通る場合は好都合である。
【0041】
本発明によれば、回転軸は、回転軸と直線との間に含まれる角度が45°未満、好ましくは30°未満、より好ましくは15°未満であれば、直線に実質的に平行である。
【0042】
特に好ましくは、本発明の第2の態様による航空機は、航空機胴体の周囲に取り付けられ、各々の関連する回転軸の周りで回転可能であり、各々の関連する推力ベクトルを発生させる少なくとも4つの推進デバイスを含む。航空機は、それにより、ホバリング飛行を実施するように適合されており、ホバリング飛行中、少なくとも4つの推進デバイスのうちの2つの関連する回転軸は、第1の方向に実質的に方向付けられており、少なくとも4つの推進デバイスのうちの別の2つの関連する回転軸は、第2の方向に実質的に方向付けられており、第1の方向に方向付けられた回転軸を有する2つの推進デバイスのそれぞれは、ホバー飛行中、各々の関連する回転軸の周りで実質的に同じ回転方向に回転する、及び/又は第2の方向に方向付けられた回転軸を有する2つの推進デバイスのそれぞれは、ホバー飛行中、各々の関連する回転軸の周りで実質的に同じ方向に回転する。
【0043】
従来技術と比較した場合に本発明の第2の態様による航空機が備える利点は、原則的に、本発明の第1の態様の航空機に関連して既に説明したものに対応する。したがって、繰り返しを避けるために、特に推進デバイスが同じ方向に回転する場合におけるマグヌス効果の正の寄与の利用に関するその説明を最初に参照されたい。マグヌス効果の後者の寄与と関連して、航空機胴体の周囲における推進デバイスの、以下では「星形」とも呼ばれる配置では、前進飛行中、原則として、推進デバイスの一部のみに対して飛行方向の空気が流れることを考慮しなければならない。したがって、前進飛行中のマグヌス効果は、実質的に等しい回転的回転(rotational rotation)により、回転軸が飛行の方向に対して本質的に垂直に方向付けられた推進デバイスにおいて最大である。すなわち、本発明の第2の態様による推進デバイスの配置においては、ホバー飛行中、回転軸が第1の方向に方向付けられた2つの推進デバイスのそれぞれが、ホバー飛行中に、各々の関連する回転軸の周りで実質的に同じ回転方向に回転するように、又は少なくとも4つの推進デバイスの場合、回転軸が第2の方向に方向付けられた2つの推進デバイスのそれぞれが、ホバー飛行中に、各々の関連する回転軸の周りで実質的に同じ回転方向に回転するように航空機が構成されていれば十分である。この場合、実質的に同じ方向に回転しない2つの推進デバイスは反対方向に回転することが可能である。これらの2つの推進デバイスが反対方向に回転する場合、トルクは互いに直接打ち消し合う。しかしながら、航空機が少なくとも4つの推進デバイスを含む場合、航空機は、ホバー飛行中、回転軸が第1の方向に方向付けられた2つの推進デバイスのそれぞれが、ホバー飛行中に、その各々の関連する回転軸の周りで実質的に同じ回転方向に回転し、回転軸が第2の方向に方向付けられた2つの推進デバイスのそれぞれが、ホバー飛行中に、その各々の関連する回転軸の周りで実質的に同じ回転方向に回転するように構成されていると特に有利である。これにより、航空機が、前進飛行中に第1の方向及び第2の方向の両方においてマグヌス効果の正の効果を利用することを確実にすることができる。したがって、航空機は、飛行方向の変更中、より柔軟で安定する。
【0044】
特に好ましい実施形態では、航空機は、ホバー飛行中、推進デバイスの1つ以上が、それと関連する特定の所定の推力ベクトルを発生させると、航空機の重心が、航空機の重心に関して航空機に作用する全ての力及び航空機に作用する全てのトルクを実質的に消失させるように位置決めされるように更に適合されている。この指示に関連するのは、航空機の重心が、推進デバイスの1つ以上が最大推力又は最大推力ベクトルで駆動されるときに航空機がホバリング可能であることにより決定される範囲内でなければならないという制約である。換言すれば、重心が前記範囲内であれば、推進デバイスは、航空機がホバー飛行を実施できるようにするための適切な推力ベクトルを発生させることが可能である。
【0045】
好ましくは、第1の方向に実質的に方向付けられている少なくとも4つの推進デバイスのうちの2つの回転軸のそれぞれは、2つの推進デバイスを通る直線に実質的に平行であるように方向付けられている。第2の方向に実質的に方向付けられている少なくとも4つの推進デバイスのうちの更なる2つの回転軸のそれぞれが、前記2つの更なる推進デバイスを通る直線に実質的に平行であるように方向付けられる場合は好ましい。直線が推進デバイスの幾何学的中心又は支承点を通る場合は好ましい。
【0046】
本発明の第1の態様と同様に、実質的に同じ方向に回転する推進デバイスによって発生する1つ又は複数のトルクの補償は、本発明によれば、推進デバイスと関連し、推進デバイスに関して予め決定されている推力ベクトルをそれぞれ考慮して、ホバー飛行中、航空機の重心に関して航空機に作用する全ての力及び航空機に作用する全てのトルクが実質的に消失するように航空機の重心を位置決めすることにより実施される。ホバー飛行中のみならず前進飛行中の安定した飛行姿勢を達成できるようにするために、航空機に作用する全ての力及びトルクの平衡が満たされなければならない。この計算は、本発明の第1の態様に関連して既に記載し、説明した運動量の定理及び角運動量トルク関係を用いて行われる。したがって、そこでの記述はここでも適用され、これについて以下で更に説明する。
【0047】
3つの推進デバイスが、三角形、好ましくは正三角形の辺を形成するように航空機胴体の周囲に配置されている場合は有利である。航空機胴体は三角形の幾何学的中心に位置していると好都合である。第1の方向は、3つの推進デバイスのうちの2つが位置する直線によって定義され、第2の方向は、第1の方向に対して実質的に垂直である。更に、第1の方向を向いている直線上に位置する2つの推進デバイスそれぞれの回転軸は、前記直線と0°~45°、便宜上0°~30°の範囲の角度を含む。幾何学的中心は、三角形内の全ての点の平均(すなわち、一定密度を持つ三角形の面積にわたる平均)に対応する。回転軸と第1の方向を向いている直線との間の角度が30°であるように選択された場合、推進デバイスの回転軸は、幾何学的中心の方(又は幾何学的中心から離れる方)を向いている。しかしながら、角度は、各推進デバイスに関して異なるように選択することもできる。直線が推進デバイスの幾何学的中心又は支承点を通って配置される場合は好都合である。
【0048】
n個の推進デバイスが、n>3であるn個の辺を持つ多角形の辺、便宜上、n>3であるn個の辺を持つ正多角形の辺を形成するように、航空機胴体の周囲に配置されている場合は有利である。便宜上、航空機胴体は、n個の辺を持つ多角形の幾何学的中心に位置する。ここで、第1の方向は、n個の推進デバイスのうちの2つが位置する第1の直線によって定義され、第2の方向は、n個の推進デバイスのうちの更に別の2つが位置する第2の直線によって定義される。第1の方向を向いている第1の直線上に位置する2つの推進デバイスそれぞれの回転軸は、第1の直線と、0°~45°の範囲、便宜上、0°~30°、便宜上、0°~20°の範囲、特に好ましくは0°~18°の範囲の角度を含む。異なる推進デバイスの回転軸線は、それにより、第1の直線と、異なる角度を含むことができる。
【0049】
第2の方向を向いている第2の直線上にある2つの推進デバイスそれぞれの回転軸が、第2の直線と、0°~45°の範囲、便宜上、0°~30°、0°~20°の範囲、特に好ましくは0°~18°の範囲の角度を内包する場合も適切である。異なる推進デバイスの回転軸線は、それにより、第2の直線と、異なる角度を含むことができる。
【0050】
角度が上記のように選択された場合、推進デバイスの回転軸が、n個の辺を持つ多角形の幾何学的中心の方(又は幾何学的中心から離れる方)を向くことが可能である。
【0051】
特に好ましくは、これは、推進デバイスが、正三角形、正方形、5、6、7個の辺を有する正多角形、又は8個の辺を有する正多角形などの辺を形成するように、航空機が、航空機胴体の周囲に配置された3、4、5、6、7、8つなどの推進デバイスを含むことを意味する。航空機の胴体は、n個の辺を有する多角形の実質的に中心に配置されることが好都合であり、この場合、n個の辺を有する多角形の重心ではなく幾何学的中心を意味する。なぜなら、本発明によれば、航空機の重心は、幾何学的中心(幾何学的重心)と必ずしも一致している必要はないからである。n個の辺を有する多角形の幾何学的中心は、三角形の幾何学的中心に従って定義される。
【0052】
n=2j、j>1であることが好都合である。したがって、航空機胴体は、2j個の辺を有する正多角形のそれぞれ対向する2つの推進デバイスの間に位置していることが更に好都合である。この場合、2つの特定の対向する推進デバイスのそれぞれに関連する回転軸が、2つの特定の対向する推進デバイスが位置する直線によって定義される方向を実質的に向く場合は有利である。更に、航空機が、ホバリング飛行中に2つの各々の対向する推進デバイスをそれらの関連する回転軸の周りで実質的に同じ方向に回転させることによりホバリング飛行を実施するように適合されている場合は有利である。したがって、この場合、本発明によるj方向が定義され得る。
【0053】
有利には、第1の直線と第2の直線との間の角度は、60°~100°、好ましくは60°~90°、特に好ましくは70°~90°、特に好ましくは72°~90°の範囲である。後に示すように、(2j+1)個の辺(j>1)を有する正多角形に関しては、第1の直線と第2の直線との間の角度が90°・(1-1/(2j+1))であるように第1の直線及び第2の直線(又は対応する方向)を選択すると特に有利である。したがって、(2j+1)個の辺を有する(任意の)多角形に関しては、第1の直線と第2の直線との間の角度の特に好ましい範囲は、[90°・(1-1/(2j+1));90°]によって与えられる。第1の直線に沿って配置された推進デバイスの回転軸と第1の直線との間の角度が範囲[0°;90°/(2j+1)]である場合、及び/又は第2の直線に沿って配置された推進デバイスの回転軸と第2の直線との間の角度が範囲[0°;90°/(2j+1)]である場合、推進デバイスの回転軸が、(2j+1)個の辺を有する多角形の幾何学的中心の方向(又は幾何学的中心から離れる方向)を向く構成を実装可能である。
【0054】
2j個の辺(j>1)を有する正多角形の場合、90°-90°/(2j)・(2j mod 4)の角度を内包するように第1の直線及び第2の直線を選択すると好都合である。したがって、第1の直線及び第2の直線はそれぞれ、2j個の辺を有する多角形の幾何学的中心を通る。したがって、2j個の辺を有する(任意の)多角形に関しては、第1の直線と第2の直線との間の角度の特に好ましい範囲は、[90°-90°/j;90°]によって与えられる。
【0055】
第1の直線及び第2の直線が、それらの間の角度が範囲[60°;90°]であり、第1の直線に沿って配置された推進デバイスの回転軸と第1の直線との間の角度が範囲[0°;30°]である、及び/又は第2の直線に沿って配置された推進デバイスの回転軸と第2の直線との間の角度が範囲[0°;30°]であるように決定される場合、推進デバイスは、推進デバイスの回転軸が幾何学的中心の方(又は幾何学的中心から離れる方)を向くように、航空機胴体の周囲にn個(n>2)の辺を有する(任意の)正多角形で配置され得る。n>3であると見なされる場合、推進デバイスの回転軸とそれを通る第1の直線又は第2の直線との間の角度が範囲[0°;18°]であれば十分である。
【0056】
便宜上、第2の方向は、第1の方向に対して実質的に垂直、より好ましくは垂直であり、少なくとも4つの推進デバイスの2つは第1の方向に沿って配置されており、少なくとも4つの推進デバイスの他の2つは、第1の方向に対して実質的に垂直な第2の方向に沿って配置されている。これは、推進デバイスが航空機胴体の周囲で正方形の辺に配置され得る場合の一例である。
【0057】
好ましくは、ホバリング飛行を実施しているときの航空機の重心は、推進デバイスが第2の方向に配置されている直線から第1の方向の距離l34に配置され、
【数9】

であり、
【数10】

であり、
式中、
minは、第1の方向に沿って配置された推進デバイスの推力ベクトル間の最小許容比、
maxは、第1の方向に沿って配置された推進デバイスの推力ベクトル間の最大許容比、
34は、第2の方向に沿って配置された推進デバイスの特性数、
lは、第1の方向に配置された推進デバイスの幾何学的中心間の距離である。
【0058】
好ましくは、ホバリング飛行を実施しているときの航空機の重心は、推進デバイスが第1の方向に配置されている直線から第2の方向の距離l12に配置され、
【数11】

であり、
【数12】

であり、
式中、
【数13】

は、第2の方向に沿って配置された推進デバイスの推力ベクトル間の最小許容比、
【数14】

は、第2の方向に沿って配置された推進デバイスの推力ベクトル間の最大許容比、
12は、第1の方向に沿って配置された推進デバイスの特性数、
l’は、第2の方向に配置された推進デバイスの幾何学的中心の距離である。
【0059】
第1の態様による航空機及び第2の態様による航空機では、ほぼ同じ関連するある所定の推力ベクトルでホバリング飛行を実施することが有利な場合がある。
【0060】
同様に、第1の態様又は第2の態様の航空機のいずれにおいても、航空機の重心を変位させるための変位デバイスを更に含むと有利な場合がある。便宜上、この点に関して、航空機は、推進デバイスに燃料を供給するための燃料タンク及び/又は推進デバイスに電力を供給するためのバッテリーを更に含み、変位デバイスは、航空機内の燃料タンクからの燃料又はバッテリーを位置変更し、それにより、推進デバイスの1つ以上が各々の関連するある所定の推力ベクトルを発生させると航空機がホバー飛行を実施するように重心を位置決めするように適合されている。したがって、航空機の重心は、動的に移動させることができる。したがって、この利点は、航空機の重心を多種多様な飛行姿勢に最適に適合させることができることである。重心の移動は、航空機制御システムによって実施され得る。
【0061】
好ましくは、第1の態様又は第2の態様による航空機は、推進デバイスの推力ベクトルを個別に制御するための推力ベクトル制御を含む。
【0062】
本発明の第3の態様によれば、本発明の第1の態様による航空機を製造する方法であって、以下の工程、すなわち、
- 関連する回転軸のそれぞれが航空機本体の横断方向に実質的に方向付けられており、
- 少なくとも2つの推進デバイスのそれぞれが各々の関連する回転軸周りで実質的に同じ回転方向に回転する場合に、
- 推進デバイスの1つ以上が、推進デバイスの1つ以上と関連する特定の所定の推力ベクトルをそれぞれ発生させて、航空機の重心に関して航空機に作用する全ての力及び航空機に作用する全てのトルクが実質的に消失するホバー飛行を航空機に実施させるように航空機の重心を位置決めする工程
を含む方法が提供される。
【0063】
本発明の第4の態様によれば、本発明の第2の態様による航空機を製造する方法であって、
- 少なくとも3つの推進デバイスのうちの2つの関連する回転軸が第1の方向に実質的に方向付けられており、少なくとも3つの推進デバイスのうちの他の関連する回転軸は第2の方向に実質的に方向付けられており、
- 回転軸が第1の方向に整列された2つの推進デバイスのそれぞれが、ホバー飛行中に各々の関連する回転軸の周りで実質的に同じ回転方向に回転する場合に、
- 推進デバイスの1つ以上が、推進デバイスの1つ以上と関連する特定の所定の推力ベクトルをそれぞれ発生させて、航空機の重心に関して航空機に作用する全ての力及び航空機に作用する全てのトルクが実質的に消失するホバー飛行を航空機に実施させるように航空機の重心を位置決めする工程
を含む、方法が提供される。
【0064】
航空機が少なくとも4つの推進デバイスを含む好ましいケースでは、少なくとも4つの推進デバイスのうちの2つの関連する回転軸は第1の方向に実質的に方向付けられており、少なくとも4つの推進デバイスのうちの他の2つの関連する回転軸は第2の方向に実質的に方向付けられており、第1の方向に方向付けられた回転軸を有する2つの推進デバイスのそれぞれは、ホバー飛行中に、各々の関連する回転軸の周りで実質的に同じ回転方向に回転する、及び/又は第2の方向に方向付けられた回転軸を有する2つの推進デバイスのそれぞれは、ホバー飛行中に、各々の関連する回転軸の周りで実質的に同じ回転方向に回転する。
【0065】
本発明の第5の態様によれば、長手方向と垂直方向と横断方向とを定義する航空機本体であって、長手方向は、航空機のテールからノーズへの方向に対応し、垂直方向は、航空機が地面の上に載置されているときの地球の引力の方向に対応し、横断方向は、長手方向及び垂直方向に対して垂直である、航空機本体と、各々の関連する回転軸の周りでそれぞれ回転可能であり、各々の関連する推力ベクトルを発生させる少なくとも2つの推進デバイスであって、第1の複数の前記推進デバイスは、前記横断方向に対して平行な第1の直線に沿って配置されており、第2の複数の前記推進デバイスは、前記横断方向に対して平行な第2の直線に沿って配置されており、前記第1の直線は、前記第2の直線から間隔を開けて配置されており、前記航空機の重心は、前記長手方向に関して、前記第1の直線と前記第2の直線との間に配置されている、少なくとも2つの推進デバイスと、を有する航空機を制御する方法が提供される。本方法は、以下の工程、すなわち、
- 少なくとも2つの推進デバイスに関連する回転軸のそれぞれが航空機本体の横断方向に実質的に方向付けられており、少なくとも2つの推進デバイスのそれぞれが、各々の関連する回転軸の周りで実質的に同じ回転方向に回転する場合に、航空機がホバー飛行を実施するように、関連する推力ベクトルを決定する工程であって、
ホバー飛行中、航空機の重心に関して航空機に作用する全ての力及び航空機に作用する全てのトルクが実質的に消失する、
関連する推力ベクトルを決定する工程と、
- 各々の推進デバイスが特定の関連する推力ベクトルを発生させるように、推進デバイスのそれぞれを実質的に同じ回転の方向に駆動する工程と、
を含む。
【0066】
本発明の第6の態様によれば、航空機胴体と、航空機胴体の周囲に支持され、それぞれ関連する回転軸の周りで回転可能であり、各々の関連する推力ベクトルを発生させる少なくとも3つの推進デバイスとを有する航空機を制御する方法であって、
- 少なくとも3つの推進デバイスに関連する回転軸のうちの2つが第1の方向に実質的に方向付けられており、各々の関連する回転軸の周りで実質的に同じ回転方向に回転する場合、及び/又は少なくとも3つの推進デバイスに関連する回転軸のその他が第1の方向に平行ではない第2の方向に実質的に方向付けられている場合に、航空機がホバー飛行を実施するように関連する推力ベクトルを決定する工程であって、
ホバー飛行中、航空機の重心に関して航空機に作用する全ての力及び航空機に作用する全てのトルクが実質的に消失する、
関連する推力ベクトルを決定する工程と、
- 少なくとも3つの推進デバイスのうちの2つの関連する回転軸を実質的に第1の方向に整列させ、少なくとも3つの推進デバイスのもう1つの関連する回転軸を実質的に第2の方向に整列させる工程と、
- 各々の推進デバイスが関連する回転方向に回転し、特定の関連する推力ベクトルを発生させるように、推進デバイスのそれぞれを駆動する工程であって、
各第1の方向に実質的に方向付けられた回転軸を有する推進デバイスのそれぞれは、各々の関連する回転軸の周りで実質的に同じ回転方向に回転する、
駆動する工程と、
を含む、方法が提供される。
【0067】
好ましくは、本方法は、少なくとも4つの推進デバイスを有する航空機を制御するためのものであり、以下の工程、すなわち、
- 少なくとも4つの推進デバイスに関連する回転軸のうちの2つが第1の方向に実質的に方向付けられており、各々の関連する回転軸の周りで実質的に同じ回転方向に回転する場合、及び/又は少なくとも4つの推進デバイスに関連する回転軸の他の2つが第1の方向に平行ではない第2の方向に実質的に方向付けられており、各々の関連する回転軸の周りで実質的に同じ回転方向に回転する場合に、航空機がホバー飛行を実施するように関連する推力ベクトルを決定する工程であって、
ホバー飛行中、航空機の重心に関して航空機に作用する全ての力及び航空機に作用する全てのトルクが実質的に消失する、
関連する推力ベクトルを決定する工程と、
- 少なくとも4つの推進デバイスのうちの2つの関連する回転軸を実質的に第1の方向に整列させ、少なくとも4つの推進デバイスのうちの他の2つの関連する回転軸を実質的に第2の方向に整列させる工程と、
- 各々の推進デバイスが関連する回転方向に回転し、特定の関連する推力ベクトルを発生させるように、推進デバイスのそれぞれを駆動する工程であって、
第1の方向に実質的に方向付けられた回転軸を有する推進デバイスのそれぞれは、各々の関連する回転軸の周りで実質的に同じ回転方向に回転する、及び/又は第2の方向に実質的に方向付けられた回転軸を有する2つの推進デバイスのそれぞれは、各々の関連する回転軸の周りで実質的に同じ回転方向に回転する、
駆動する工程と、
を含む。
【0068】
好ましくは、第5の態様又は第6の態様による航空機を制御する方法では、決定される関連する推力ベクトルの全ては、ほぼ同一になるように選択される。
【0069】
有利には、第5の態様又は第6の態様による航空機を制御する方法は、以下の工程、すなわち、
- 推進デバイスが、推進デバイスと関連する特定の所定の推力ベクトルを発生させると、航空機の重心に関して航空機に作用する全ての力及び航空機に作用する全てのトルクを実質的に消失させるように航空機の重心を位置決めする工程
を更に含む。
【0070】
本発明の第3の態様から第6の態様による方法の利点は、第1の態様及び第2の態様による本発明による航空機に関連して既に説明したものと同じである。したがって、第1の態様及び第2の態様の有用で有利な好ましい実施形態は、本発明の第3の態様から第6の態様に適宜適用される。
【0071】
好ましくは、本発明の態様のいずれかによる航空機又は方法において、推進デバイスはそれぞれ構造的に同一である。
【0072】
特に好ましくは、本発明の任意の態様による任意の航空機又は方法において、推進デバイスは、サイクロジャイロロータを含む。
【0073】
好ましい実施形態では、各サイクロジャイロロータは、推進デバイス又はサイクロジャイロロータの各々の関連する回転軸の周りの円形路に沿って回転可能な複数のロータブレードと、結合デバイスと取付デバイスとを含むピッチ機構であって、複数のロータブレードのそれぞれは、推進デバイス又はサイクロジャイロロータの回転軸に平行なそのロータブレード取付軸の周りで取付デバイスによって枢動可能に取り付けられている、ピッチ機構とを含む。更に、サイクロジャイロロータは、便宜上、オフセットデバイスを含み、オフセットデバイスに、各ロータブレードが、各ロータブレードと関連する係留点で結合デバイスによって結合されている。それにより、オフセットデバイスは、推進デバイス又はサイクロジャイロロータの回転軸に平行な調節可能なオフセット距離に取り付けられた偏心支承軸を画定する。その結果、オフセット距離が非ゼロ値に設定されると、推進デバイス又はサイクロジャイロロータの回転軸の周りの円形路に沿ったロータブレードの回転により、ロータブレードのピッチ運動が生じる。
【0074】
しかしながら、この場合、打ち消さなければならないのは本質的に重力であるため、一般に、航空機の揚力の要件はほぼ一定であり、通常、増加は必要ない。しかしながら、オフセットデバイスの助けを借りて、この場合もこの増加により推進力を低減させることができ、結果的に、ロータのパワー消費が減少する。
【0075】
以下、本発明の好ましい実施形態を、以下の図を参照して記載する。
【図面の簡単な説明】
【0076】
図1】本発明の第1の態様による航空機の斜視図である。
図2a】推進デバイス並びにそれに作用する力及びトルクの概略図である。
図2b】航空機の前進飛行中の推進デバイス、並びに入射流を考慮に入れた、それに作用する力及びトルクの概略図である。
図3a】本発明の第1の態様による航空機の概略上面図である。
図3b】本発明の第1の態様による航空機並びにそれに作用する力及びトルクの概略側面図である。
図3c】航空機の好ましい重心位置を示すための、4つの平行で等サイズの推進デバイスを有する航空機の例示的な構成である。
図4】安定した飛行姿勢のための条件を一般化するための、本発明の第1の態様による航空機の概略上面図である。
図5】本発明による推進デバイスの斜視図である。
図6】本発明の第2の態様による航空機の斜視図である。
図7a】本発明の第2の態様による航空機並びにそれに作用する力及びトルクの概略上面図である。
図7b】本発明の第2の態様による構成の航空機並びにそれに作用する力及びトルクを第1の側面から見た概略図である。
図7c】本発明の第2の態様による構成の航空機並びにそれに作用する力及びトルクを第2の側面から見た概略図である。
図7d】航空機の好ましい重心位置を示すための、星形構成に配置された等サイズの4つの推進デバイスを有する本発明の第2の態様による航空機の例示的な構成である。
図8a】重心の決定を説明するための、本発明の第2の態様による、n個の推進デバイスを有する航空機の上面断面図である。
図8b】n個の推進デバイスを有する航空機の側断面図である。
図9a】3つの推進デバイスを有する本発明の第2の態様による航空機の概略図である。
図9b】7つの推進デバイスを有する本発明の第2の態様による航空機の概略図である。
図9c】6つの推進デバイスを有する本発明の第2の態様による航空機の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0077】
図1は、航空機本体120と複数の推進デバイス1F、1Rとを含む本発明の第1の態様による航空機100の斜視図を示す。各推進デバイス1F、1Rは、各々の取付デバイス又は支持デバイスによって航空機本体120に取り付けられ得る。
【0078】
図示の航空機100は、例えば、航空車両、有人航空機、ドローン、又はいわゆるマイクロエアビークル(MAV)であり得る。
【0079】
航空機について更に説明するために、長手方向101又は長手方向軸、横断方向102又は横断方向軸、及び垂直方向103又は垂直軸を定義する座標系が導入される。座標系は、航空機100に固定的に固定されているとされる。基準方向101、102、103又は軸は、以下のように定義される。長手方向101は、航空機100のテール122からノーズ121への方向に対応する。したがって、図1に示される例示的な実施形態において、長手方向101は、(航空機100が地面の上に載置されているときには地面に平行な)水平面内にあり、航空機100のテール122(すなわち後部)から航空機100のバウ121又はノーズ121(すなわち前部)へと延びる。垂直方向103又は垂直軸は、航空機100が(平坦な)地面の上に載置されているときの地球の引力の方向に対応する。換言すれば、垂直方向103は、長手方向101を含む前述の水平面に垂直である。横断方向102又は横断方向軸は、長手方向101及び垂直方向103の両方に対して垂直である。換言すれば、横断方向102は、長手方向101を含む前述の水平面内にあり、長手方向101に対して垂直である。
【0080】
図示の航空機100は、4つの推進デバイス1F、1Rを有する。図示の推進デバイス1F、1Rは、サイクロジャイロロータである。したがって、図1に示される航空機100は、サイクロジャイロと呼ばれることがある。推進デバイスについては、図5に関連してより詳細に説明する。これらの推進デバイス1F、1Rのそれぞれは、それに関連する回転軸5の周りで回転するように取り付けられている。各推進デバイス1F、1Rは、それらの長手方向軸の周りで枢動可能に取り付けられた複数のロータブレード2を含む。これにより、推進デバイス1F、1Rの回転中にロータブレード2の傾斜角を変化させることが可能になる。ロータブレード2のチルト角を制御するのみならず、推進デバイス1F、1Rの回転速度(以下、回転の速度とも呼ばれる)を制御することにより、発生する推進力又はそれを記述する推力ベクトルの大きさのみならず方向も変化させることができる。
【0081】
図1では、4つの推進デバイス1Fのうちの2つが航空機100の前(ノーズ)部に位置しており、他の2つの推進デバイス1Rが航空機100の後(テール)部に位置していることが分かる。航空機の前部及び後部は、以下のように定義される。航空機の全長は長手方向101に測定され、航空機の最前部(すなわち、航空機100のノーズ121)に相対的な長手方向座標0が割り当てられ、航空機100の最後部122に相対的な長手方向座標100%が割り当てられる。この慣例では、前方部又は範囲は、航空機の全長の0~40%の(長手方向)範囲に相当するように決定され、後方部又は範囲は、航空機の全長の60%~100%の(長手方向)範囲に相当するように決定される。
【0082】
前部の2つの推進デバイス1Fは、横断方向102又は横断方向軸に対して平行な共通の直線上にあり、同様に、後部の2つの推進デバイス1Rは、横断方向102又は横断方向軸に対して平行な共通の直線上にある。前記直線は、推進デバイスが(強固に)結合される共通の回転軸である必要は必ずしもないことに留意されたい。各推進デバイス1F、1Rは、それに関連する独自の回転軸5を介して回転することができ、特にそれらの回転速度を別々に制御するために、各推進デバイス1を個々に制御することができる可能性もある。更に、本発明によれば、全ての推進デバイス1F、1Rが同じ水平面内にある必要はない。図1に示すように、航空機の後部の2つの推進デバイス1Rが前部の2つの推進デバイス1Fに対して高く配置されていれば好都合な場合がある。これには、後部の推進デバイス1Rがより良好な流入を受け、乱気流及び前部の推進デバイス1Fによって引き起こされる乱流の影響を受けにくいという利点がある。
【0083】
推進デバイス1F、1Rと関連する回転軸5は、図1の実施形態の横断方向102に対して平行に整列している。しかしながら、本発明によれば、全ての回転軸5が互いに平行であることが絶対に必要というわけではない。本発明によれば、関連する回転軸5のそれぞれが航空機本体120の横断方向102に実質的に整列していれば十分である。本発明によれば、回転軸5と横断方向に延びて回転軸5と交差する軸との間に含まれる角度が45°未満、好ましくは30°未満、特に好ましくは15°未満であれば、回転軸5は、航空機本体120の横断方向102に実質的に方向付けられている。したがって、「横断方向に実質的に整列している」という指定は、回転軸5が互いに正確に平行であることも排除するものではない。
【0084】
本発明による航空機100は、図示の4つの推進デバイス1F、1Rのそれぞれを各々の関連する回転軸5の周りで同じ回転方向に回転させることによってホバリング飛行を実施するように設計されている。これにより航空機100に課される設計上の制約については、更なる図、特に図3a及び図3bに関連して説明する。
【0085】
回転軸5が航空機本体120の横断方向102に実質的に方向付けられている一般的なケースにおいては、本発明によれば、推進デバイス1のそれぞれが各々の関連する回転軸5の周りで実質的に同じ回転方向に回転することが必要である。序文で既に詳細に説明したように、これは、特定の推進デバイス1F、1Rの角速度のベクトルと横断方向102に任意に向けられた固定的に予め決定されているベクトルとのスカラー積が、全ての推進デバイス1R、1Fに関して同じ記号を有する場合に満たされる。
【0086】
図2aは、ある回転速度で回転軸5の周りを回転する推進デバイス1に作用する力7及びトルク8を示す。図2aには、推進デバイス1の正面図のみが示されており、これは概略図である。図示のケースでは、推進デバイス1に空気は流入しないものと仮定する。図示のケースでは、推進デバイス1は時計回りに回転する。したがって、この回転に対応する角速度のベクトルは、(右手の法則に従って)ブレード平面内に向かっている。
【0087】
推進デバイス1に作用する推力ベクトルF,7は、推進デバイス1の回転軸5に垂直である。サイクロジャイロロータが推進デバイス1として使用される場合、推力ベクトルF,7は、サイクロジャイロロータのロータブレードの定期的な調整によって発生する。サイクロジャイロロータのオフセットデバイスによって、定期的なロータブレードの調整を変更することができ、したがって、推力ベクトルをサイクロジャイロロータの回転軸5に垂直な平面全体内で回転させることができ、推力ベクトルの大きさを変えることができる。便宜上、この目的のために推力ベクトル制御が使用される。
【0088】
推力ベクトルF,7に加えて、推進デバイス1は、回転軸5の周りで、回転の方向51と反対のトルクM,8を発生させる。回転軸5の周りのこのトルクM,8は、推進デバイス1の空気力(揚力及び抗力)又はそれらの接線成分から生じ、サイクロジャイロロータの場合、空気力は、主に、回転するロータブレードによるものである。したがって、一定の回転速度を維持するために、推進デバイス1は、空気力によって生じるトルクを打ち消す(駆動)トルクを発生させなければならない。しかしながら、推進デバイス1が飛行段階中にもそのような(推進)トルクを発生できるようにするためには、別のトルクM,8が必要となり、トルクM,8は、推進デバイス1を空中で「支持する」ために、航空機本体が(作用反作用の法則に従って)加えなければならない。この後者のトルクM,8は、空気力に対して一定の回転速度を維持するために、空気力によって発生するトルクの大きさとほぼ等しく(散逸効果は無視)、また、空気力によって発生するトルクと同じ方向を向いている。空気力によって発生するトルクは、推進デバイス1の回転の方向51と逆であるため、航空機本体によって加えられるトルクM,8も、推進デバイス1の回転の方向51と逆である。空気力によるトルクと推進デバイスによるトルクの大きさが実質的に等しいが反対方向を向いていると仮定すると、推進デバイス1の回転により残る正味のトルクは、航空機本体によって加えられるトルクM,8である。
【0089】
したがって、このトルクM,8は、推進デバイス1の駆動トルクに等しい。したがって、トルクM,8は、推力ベクトルF,7の大きさに直接関連し得る。したがって、図1と関連して既に言及し、図3a及び図3bに関して更にまた説明する本発明による航空機の設計上の制約は、トルクM,8と推力ベクトルF,7との間の数学的物理的関係を用いて述べることができる。
【0090】
数学的に(及び物理的に)、推進力又は対応する推力ベクトルF,7と(駆動)トルクM,8との間の関係は、プロペラの一般方程式に従うことにより説明することができる。回転軸に対するロータブレードの位置のために、古典的なプロペラはサイクロジャイロロータとは異なるが、両概念における推力の発生は、ロータブレードによる空気の目標とする一方向の変位に基づいている。以下で使用される方程式は、完全性を期すために、本明細書の付録で導出されたものである。
【0091】
最初に、空気を変位するために必要なパワーを考える。このパワーPairは、いわゆる運動量理論(付録を参照)から導出することができ、以下の式になる。
air=F*V、 (1)
式中、Fは、推力ベクトルの大きさ、Vは、推進デバイスの平面内の総気流速度である。推進デバイスの前記平面は、推進デバイスの回転軸を通り、気流の方向、したがって推力ベクトルFに対して垂直な平面である。
【0092】
このパワーは、推進デバイス1によって提供される。第一に、推進デバイスのパワーPpropulsionには、一般に、以下が当てはまる。
propulsion=M*ω、 (2)
式中、Mは、(駆動)トルクM,8の大きさ、ωは、推進デバイス1の回転速度(角速度のベクトルの大きさ)である。
【0093】
効率ηを用いて表すことができる2つのパワーPairとPpropulsionとの間の関係は、以下のように表すことができる。
air=η*Ppropulsion (3)
【0094】
効率ηは、駆動パワーがPpropulsionが気流にどれほど効果的に変換されるかを示す。一方の推進デバイス1の回転速度ωと半径r,52との間の比率、他方の総流速Vは、推進デバイス1の無次元パラメータであり、ここでは、H(プロペラの場合、これは通常、「進行率」と呼ばれる)で示される。
【数15】
【0095】
(駆動)トルクM,8と推進力又は推力ベクトルF,7との間の関係は、したがって、方程式(3)から開始し、方程式(1)、(2)及び(4)を挿入することで確立することができる。
【数16】
【0096】
この関係は、この場合、推進デバイス1の主要な数値H、r及びηにのみ依存する。したがって、(駆動)トルクM,8(の大きさ)と推進力又は推力ベクトルF,7との間の関係は、一般的な比例係数aを有する線形関数
M=a*F (6)
として表すことができ、表すことができる。
【0097】
この関係は、後に更に使用する。
【0098】
図2bは、前進飛行中の推進デバイス1を概略的に示す。図示の推進デバイス1を含む航空機の移動方向は、矢印110で示される。推進デバイス1の駆動トルクに対応するトルクM,8については、図2aに関連して既に説明した。推進デバイス1が、外側からの空気9によって逆流することが示されている。空気の流れ9は、推進デバイス1における空気力学的特性、したがって、発生する推力ベクトルの特性を変化させる。航空機、したがって推進デバイス1が前進飛行中である場合、空気は、前方から推進デバイス1に対して能動的に流れる。
【0099】
序文で述べたように、推進デバイス1において変化する特性は、マグヌス効果によってほぼ説明することができる。マグヌス効果は、流れの中で回転する球体が、流れの方向に対して垂直な横力を受けることを示す。
【0100】
横力の方向は、ここでは推進デバイス1の本体の回転の方向51に依存する。図2aに関して説明した推進力(その垂直成分Frotor,71は図2bに示されている)に加えて、マグヌス効果により、推力ベクトルへの追加の推進力又は追加の寄与Fmagnus,72が垂直方向に発生する。これにより、推進デバイス1の垂直方向に作用する総推進力、いわゆる揚力が増加する。しかしながら、一般に、航空機の揚力に関する要求は概ね一定であり、この場合、打ち消さなければならないのは本質的に地球の引力であるため、通常、増加は必要ない。
【0101】
前進飛行中に推力ベクトルへの顕著な寄与Fmagnus,72が発生することで、推進デバイス1によって発生する推力ベクトルの寄与Frotor,71を低減させることができる。これは、推進デバイス1のパワー消費の減少に関連する。簡潔に説明すると、マグヌス効果が推進デバイス1の推進力の一部を代替し、それにより前進飛行中のパワー要件がホバー飛行と比較して減少する。
【0102】
しかしながら、入射流9が一定のままで推進デバイス1が反対方向に回転する場合、マグヌス効果の追加の横力Fmagnus,72は、推進力Frotor,71と反対に作用し、したがって、総推進力は減少する、又は同じ要求揚力に対するパワー要件が増加する。
【0103】
本発明による航空機において、説明するマグヌス効果の正の効果は、航空機のホバー飛行及び前進飛行中に、全ての推進デバイスが関連する回転軸の周りで同じ回転方向に回転するという点において活用される。上記でより詳細に説明したように、回転軸が航空機本体の横断方向に実質的に方向付けられている一般的な配置では、推進デバイスは、実質的に同じ回転の方向に回転する。
【0104】
推進デバイス1がそれらの各々の関連する回転軸の周りで実質的に同じ方向に回転する場合、航空機が前進飛行に速く飛行するほど横力Fmagnus,72による揚力への寄与が大きくなる。すなわち、また、航空機の前進飛行中の安定した姿勢を実現するためには、航空機を入射空気速度9が一般に最も低いホバー飛行に構成すれば十分である。
【0105】
ホバー飛行中のみならず前進飛行中の安定した飛行姿勢のための条件(航空機に作用する全ての力及びトルクの平衡)については、序文で既に全般的に述べられている。以下、これらの条件から、図3a及び図3bと関連して、本発明の第1の態様による航空機の設計上の制約が導かれる。
【0106】
図3aに、本発明の第1の態様による航空機100が非常に概略的な平面図で示されている。図1に関連して既に説明した航空機本体120に加えて、推進デバイス1F及び推進デバイス1R、それらとそれぞれ関連する回転軸5及び長手方向101及び横断方向102、航空機100の重心S,150も見ることができる。重心S,150の位置又は配置は、実質的に同じ回転の方向に回転する推進デバイス1によって発生する同じ方向のトルクを平衡させるために極めて重要である。これについては、図3bを参照してより詳細に説明する。
【0107】
図3bは、図3aに上面図で示される本発明の第1の態様による航空機を側面図及び非常に概略的な図で示す。この側面図では、航空機の前部エリアに配置された2つの推進デバイス1Fのうちの1つのみと、航空機の後部に配置された2つの推進デバイス1Rの1つとを見ることができる。更に、図3bでは、4つの推進デバイス1F及び推進デバイス1Rは、水平面内に配置されている。しかしながら、以下の説明は、全ての推進デバイスが水平面内に位置しているわけではない場合にも当てはまる。推進デバイス1F及び推進デバイス1Rに関連する回転軸は、互いに平行であり、横断方向に対して平行である(シートの平面内を指す)。
【0108】
本発明によれば、4つの推進デバイス1F、1Rは全て、ある割り当てられた回転速度で同じ回転の方向51に回転する。図3bにおいて、全ての推進デバイス1F及び推進デバイス1Rは、時計回りに回転する。これは、4つの推進デバイスが全て、図3aに示される横断方向(y軸)に対して時計回りであることを意味する。換言すれば、推進デバイス1F、1Rに関連する角速度の各ベクトルと横断方向の単位ベクトルとのスカラー積は正である。使用する基準座標系とは無関係に、推進デバイスは、前進飛行中に入射空気と最初に出会う推進デバイスの表面が地球の引力の方向と逆に回転するように回転するとも表現することができる。推進デバイスが時計回りに回転する場合、マグヌス効果は、特に正の効果を有する。これは、いずれの数の推進デバイスにも当てはまる。
【0109】
上記で説明したように、推力ベクトルは、各推進デバイス1F、1Rの回転によって発生する。図3bによる表記では、前部エリアに配置された2つの推進デバイス1Fによって共に発生する推力ベクトルは、F,701で示されており、後部エリアに配置された2つの推進デバイス1Rによって共に発生する推力ベクトルは、F,702で示されている。全ての推進デバイス1F及び推進デバイス1Rが同じ回転の方向51に回転するため、生じる全ての(駆動)トルクM,81、M,82もまた、同じ方向に作用する。ここで、M,81は、両前部推進デバイス1Fの(駆動)トルクを示し、M,82は、両後部推進デバイス1Rの(駆動)トルクを示す。
【0110】
ここで、運動量の定理及び角運動量平衡の定理が、航空機の重心S,150の周りに設定され、図示のケースでは、垂直方向103(z軸)における運動量の定理及び横断方向(y軸)の周りの角運動量平衡の定理のみが関連する。これは、力又はトルクがここでしか作用しないからである。
【0111】
したがって、安定したホバリングの条件は、
ΣF=F-F-F=0 (7)
ΣMs,y=F*l-F*l-M-M=0 (8)
である。
【0112】
推力ベクトルF及び推力ベクトルFは、2つの平衡条件を満たすように調整され得る。便利なことに、推力ベクトルは、推力ベクトル制御によって設定される。l,131及びl,132は、長手方向に関する、それぞれ前部領域の推進デバイス1F及び後部領域の推進デバイス1Rから重心S,150の距離を示す。F,160は、航空機全体の重量の力を示す。
【0113】
しかしながら、この2つの平衡条件を用いて、ある指定の推力ベクトルF及び推力ベクトルFに関する前記ホバリング条件が満たされるように航空機の重心を決定することも可能である。
【0114】
図3bに示されるトルクM,81及びトルクM,82は、それぞれ、2つの推進デバイス1F及び2つの推進デバイス1Rの駆動トルクに対応する。対応する推進デバイス1F及び推進デバイス1RのトルクM,81及びトルクM,82の大きさと、推力ベクトルF,701及び推力ベクトルF,702の大きさとの間にはそれぞれ数学的物理的関係がある。これは、上記の方程式(6)によって決定される。すなわち、トルクM,81及びトルクM,82の大きさは、それぞれ、発生する推力ベクトルF,701及び推力ベクトルF,702の大きさに比例する。したがって、トルクを自由に制御することはできない。
【0115】
方程式(6)に関連して上記で述べたように、任意の推進デバイスの比例係数aは、推進デバイスの効率、その角速度、及び推進デバイスの他の主要な数値に本質的に依存する。
【0116】
各推進デバイスは、異なる比例係数aを有することができる有する。しかしながら、同じ設計又はサイズを持つ異なる推進デバイスのaの値は、典型的には、同じオーダーの大きさをとる。便宜上、それらは本質的に同一である。
【0117】
方程式(6)によれば、トルクM,81及びトルクM,82の大きさM,Mは、それぞれ、
=a*F,i∈{1,2}
のように書くことができる。
【0118】
この結果は、トルクの方程式(8)は以下、
ΣMs,y=F*l-F*l-F*a-F*a=0
のようになる。
【0119】
ここで、この方程式は、それぞれ、2つの推力ベクトルF,701及び推力ベクトルF,702の大きさFと大きさFの比に変換することができる。
【数17】
【0120】
方程式(9)は、航空機の構成式としての役割を果たすことができる。方程式(9)は、当初、(F、F、l、lのセットから)3つの自由に選択可能な量を含んでいる。しかしながら、安定した飛行姿勢では、方程式(7)も考慮する必要があるため、前述の4つの量のうちの2つしか自由に選択することはできない。
【0121】
したがって、方程式(7)及び方程式(9)を満たすためのいくつかのやり方がある。
【0122】
(i)第1のケースの設計では、航空機が対称に設計されることが必要となり得る。すなわち、前部回転軸5、すなわち航空機の前部領域に配置された推進デバイス1Fの回転軸と、後部回転軸5、すなわち航空機の後部領域に配置された推進デバイス1Rの回転軸は、重心S,150から等距離にある。換言すれば、重心S,150は、長手方向に関して、前部回転軸5と後部回転軸5との間の中間に位置する。この場合、l=lとなる。したがって、方程式(9)及び
【数18】

により、前部推進デバイス1Fは、後部推進デバイス1Rよりも大きい推力を発生させなければならないことになり、したがって、F>Fである。したがって、前部推進デバイス1Fは、後部推進デバイス1Rよりも大きく設計しなければならない。
【0123】
したがって、この構成では、重心S,150は前方に移動する傾向があり、結果的に、l<lとなり、推進デバイス1F及び推進デバイス1Rの必要な推力ベクトルF及び推力ベクトルFはそれぞれ増加し続ける。
【0124】
(ii)第2のケースの設計では、推進デバイス1Fと推進デバイス1Rは、構造的に同一であることが特に好ましい。すなわち、それらは構造的に同一であり、例えば、同じサイズ、同じスパン、同じ数のロータブレード、同じ直径を有する、及び/又は同様の若しくは同じ(最大)推進力/推力ベクトルを発生させる。したがって、この場合、F=F又はF≒Fである。
【0125】
=F≡Fにより、方程式(7)から、当初、F=F/2が成り立つ。したがって、方程式(9)から、
-a=l+a
が得られる。
【0126】
前部推進デバイス1Fと後部推進デバイス1Rとの間の長手方向の距離がl=l+lであれば、先の方程式から、
【数19】

が成り立つ。
【0127】
航空機の重心S,150は、前部推進デバイス1Fの前部回転軸5と後部推進デバイス1Rの後部回転軸5との間の中央l/2から後部推進デバイス1Rの後部回転軸5に向かって(a+a)/2だけ長手方向に移動することは理解される。典型的には、この場合、a=a≡aである。
【0128】
ここで、航空機が、推進デバイス1F及び推進デバイス1Rの対ごとに、それぞれ、構造的に同一の等サイズの推進デバイス1F及び推進デバイス1R、したがってほぼ等しい大きさの推進力/推力ベクトルF,701及び推力ベクトルF,702を有して構成されている場合、重心S,150は、したがって、推進デバイスによって発生するトルクM,81及びトルクM,82が重心S,150の位置によって純粋に釣り合うように最適に位置決めされ得る。前記最適位置は、方程式(10)及び方程式(11)によって決定される。
【0129】
ここで、及び以下において、長手方向101における推進デバイスの位置及び重心のみが、考慮に際して役割を果たすことに留意しなければならない。横断方向及び垂直方向103に関する推進デバイスの取り付け又は及び重心の位置決めは、ここでは無関係であり、当業者の裁量に委ねられる。しかしながら、2つの、横断方向及び垂直方向103における好ましくは対称な支承又は位置決めが好ましい。
【0130】
(iii)本発明によれば、第1のケースの設計(i)の態様と第2のケースの設計(ii)の態様とを組み合わせることも可能である。すなわち、航空機の重心S,150は、推進デバイスの個々の推進デバイスのある所定の、更には異なる推力ベクトル/推進力における安定したホバリング飛行の条件(7)及び条件(8)が満たされるように、推進デバイス1F及び推進デバイス1Rのそれぞれ前部回転軸と後部回転軸との間の中央から移動させることができる。
【0131】
実際の用途では、全体の重心S,150が、ケースの設計(i)、(ii)又は(iii)において説明した指定の最適な位置に正確に位置決めされ得るように航空機の質量を配置することは必ずしも可能ではなく、例えば、ケースの設計(i)ではl=lであり、ケースの設計(ii)では、l及びlが方程式(10)及び方程式(11)によって与えられる。したがって、それぞれ推進デバイス1F及び推進デバイス1Rの対の推進力/推力ベクトルF,701及び推力ベクトルF,702とのトルクバランスを支持することがなお可能であるように重心S,150を位置付けることができる範囲を以下に定義する。この目的のために、推進デバイスの対iは、最大許容(通常所定の)推進力/最大許容推力ベクトルFi,maxを発生させることができると仮定する。Fi,maxは、最適構成Fi,optに対応する推進力以上であると仮定する。これは、航空機が、安定したホバー飛行にとどまるためには、少なくともFi,optの推進力を必要とするという理由によるものであり、好ましいケースでは、推進デバイスの各対は、とりわけ、重心S,150の位置を最適位置から偏位させるために使用することができる推力余剰も生成する。Fi,maxは、推進デバイスの推力ベクトル制御によって許容される最大推力であり、したがって、常に、最適設計の推力Fi,opt以上でなければならない。
【0132】
方程式(7)に従ってインパルス定理を考慮すると、
1,opt≦F1,max ⇒ F2,opt≧F2,min≡F-F1,max
が得られる。
【0133】
これにより、最大許容推力ベクトル比
【数20】

を定義することが可能になる。
【0134】
したがって、
2,opt≦F2,max ⇒ F1,opt≧F1,min≡F-F2,max
であり、
したがって、最小許容推力ベクトル比は、
【数21】

である。
【0135】
これらの推力ベクトル比F/Fは、方程式(9)によっても記述されており、方程式(9)を用いて、長手方向における前部回転軸5から重心S,150の最大許容距離が、
【数22】

のように決定され、
長手方向における前部回転軸5から重心S,150の最小許容距離は、
【数23】

のように決定される。
【0136】
重心S,150が
【数24】

の範囲外である場合、
方程式(10)に従って、推進デバイス1F及び推進デバイス1Rのそれぞれ推進力F,701及び推進力F,702により、最適位置からの重心S,150のずれを補償することはもはや不可能である。
【0137】
図3cは、第1の態様による本発明を実施するために航空機の重心S,150が適切に位置付けられ得る上記のエリアを示す役割を果たす。図3cは、それぞれ航空機の横断方向に対して平行な2つの直線に沿って配置された推進デバイス1F、1Rを含む航空機を概略的に示す。図3a及び図3bに関連して既に説明したように、便宜上、航空機は、4つの推進デバイス1F、1Rを含み、そのうちの2つ1Fは、前部領域に配置されており、そのうちの2つ1Rは後部領域に配置されている。更に、推進デバイス1F、1Rは構造的に同一であり(ケースの設計(ii)と同様)、ここでは特に、a=a≡aであると仮定する。
【0138】
最初に、トルク補償は、純粋に重心S,150の位置により実現されると更に仮定し、
1,opt=F2,opt=Fopt ⇒ M1,opt=M2,opt=Mopt
が当てはまる。ここで考慮される航空機の例においては、対応する総質量によって発生する総重量力は、
=1000N
と仮定し、比/比例係数は、典型的には、
a=0.2m、
長手方向における推進デバイスの距離は、
l=l+l=2m
と定義される。
【0139】
これらの指定に基づき、方程式(10)及び方程式(11)により、最適重心位置
【数25】

が得られる。
【0140】
航空機の全体の重心S,150を位置l1,opt=1.2mに配置することが不可能な場合、トルク補償を、推進デバイス1F、1Rの推進力/推力ベクトルによって補償することができるように重心S,150の位置を位置付けることができる範囲がここで定義される。この目的のために、便宜上、推力ベクトル制御によって制御される、直線に沿って配置された全ての推進デバイスによって発生させることができる最大許容推進力は、
i,max=550N
と定義される。
【0141】
この指定により、最大許容推力ベクトル比及び最小許容推力ベクトル比
【数26】

及び方程式(12)に従って重心の位置の範囲
【数27】

を計算することを可能にする。
【0142】
すなわち、この例では、重心は、対応する前部推進デバイス1Fの前部回転軸から長手方向に1.1~1.3m離れたところに便利に位置付けられる。
【0143】
図4は、本発明の第1の態様による航空機100の更なる実施形態を示す。この図4は、主に、任意の数K>2の推進デバイス1に関して、図3a、図3b及び図3cと関連して得られた結果を一般化する役割を果たす。上記では、本発明による考察において、これは主に、長手方向における推進デバイス1の位置決めの問題であることが既に指摘されている。したがって、推進デバイスは、例えば、垂直方向において異なる高さに配置することができる。長手方向は、図4にx軸101として区別される。航空機のK個の推進デバイスがN>1本の直線gに沿って配置されていると仮定する。先で述べたように、前記直線は、航空機100の構造部品ではなく、推進デバイス1の幾何学的配置を単に示す役割を果たす。ある直線g(添え字iで示され、i=1,…,N)上に、n(i=1,…,N)の推進デバイス1が配置される。したがって、
【数28】

である。
【0144】
更に、添え字iを有する直線g上に配置された全てのnの推進デバイス1が、大きさ
【数29】

(ここで、Fijは、直線g上に配置されたj番目の推進デバイスによって発生する推力ベクトル)を持つ総推進力/総推力ベクトルを発生させ、添え字iを有する直線g上に配置された全てのnの推進デバイスの総(駆動)トルクの大きさは、Mであると仮定する。したがって、各i=1,…,Nについて、方程式(6)に従って以下の関係が成り立つ。
=a*F
ここで、添え字iを有する各直線gに対して、比/比例係数aが導入される。
【0145】
直線g(これに沿って推進デバイス1が配置される)は、横断方向102に対して平行に整列しているが、本発明によれば、推進デバイス1の全ての回転軸5が互いに又は横断方向102に対して平行に(数学的に正確に)整列されることが絶対に必要というわけではないことに留意されたい。特にホバー飛行中に、最初に定義した意味において、推進デバイス1の回転軸5が実質的に横断方向102に整列されていれば十分である。図4では、いくつかの推進デバイス1の回転軸5が横断方向102に対して正確に平行に整列されていないことが示されている。本発明によれば、それにもかかわらず、推進デバイス1は、横断方向102に対して平行な直線g上に配置されている。なぜなら、それらの幾何学的中心は、そのような直線g上に実質的に位置しているからである。平行な直線上における配置の条件を満たすために、推進デバイス1の支承点がそのような直線g上に実質的に位置することも可能である。
【0146】
添え字iを有する直線gはそれぞれ、長手方向101(x軸)の座標x(i=1,…,N)を持つ点に位置し、ここで、一般性を制限することなく、x-xi-1>0であると仮定する。線gの長手方向の位置xは固定されているが任意である。
【0147】
航空機100の重心S,150は、長手方向101に対して座標Xに位置する。図3a、図3b、図3cに関連して、重心から直線の距離l及び距離lを考慮したが、ここでは、直線gの長手方向101に対する座標を使用することに留意されたい。これは、ここではより便利であることが判明している。それにもかかわらず、直線gの座標と重心S,150からのそれらの距離lとの間の関係は、容易に確立することができ、
=|x-X
である。
【0148】
導入された記号を用いて、方程式(7)及び方程式(8)から、安定したホバリング又は前進飛行の条件を以下
【数30】

のように一般化することができる。
【0149】
方程式(13)を代入すると、方程式(14)から、
【数31】

が成り立つ。
したがって、重心S,150の座標Xに関しては、
【数32】

になる。
【0150】
ここで、中間結果に留意されたい。推力ベクトルFが与えられれば、方程式(15)から、重心S,150の座標Xを計算することが可能である。しかし、方程式(13)は、安定した飛行姿勢に関して満たされなければならない別の条件を提供する。したがって、N個全ての推力ベクトルFが任意に与えられるわけではなく、N-1個のみが与えられる。すなわち、安定した飛行姿勢、特にホバリング飛行における重心S,150の位置Xは、N-1個の推力ベクトルが与えられれば決定される。与えられる推力ベクトルの値は、当然ながら、また、等しくなり得る。
【0151】
長手方向に対する、最前の直線g、又は長手方向に対する、航空機100のバウ121若しくはノーズ121に最も近い推進デバイスから重心S,150の距離は、
【数33】

である。
【0152】
ここで、最初に、直線g上に配置された推進デバイス1が、各直線に対してほぼ等しい推進力/推力ベクトルFを発生させる、すなわち、F≒F≒・・・≒FN-1≒F≡Fであるケースについて考える。したがって、重心S,150は、推進デバイス1によって発生するトルクMが重心S,150の位置によって純粋に釣り合うように、最適に配置される。前記最適位置は、方程式(13)及び方程式(15)によって決定される。方程式(13)から、
【数34】

が成り立つ。
【0153】
したがって、方程式(15)から、
【数35】

が成り立つ。
【0154】
この場合、a≡a,i=1,…,Nと便利に仮定することができる。
【0155】
重心S,150の(長手方向、x)座標Xの最大許容範囲は、同じく上述の一般的なケースに関する図3bの考察と同様に、方程式(13)、方程式(14)及び方程式(15)を用いて決定され得る。
【0156】
図5は、本発明による航空機で使用され得る推進デバイスの一実施形態を示す。これらの推進デバイス1はそれぞれ、回転軸の周りで回転可能に取り付けられている。各推進デバイス1は、それらの長手方向軸の周りで枢動するように取り付けられた複数のロータブレード2を含む。これにより、推進デバイス1の回転中にロータブレード2の傾斜角を変化させることが可能になる。ロータブレード2の傾斜角を制御するのみならず、推進デバイス1の回転速度を制御することにより、発生する推力ベクトルの大きさ及び方向を変化させることができる。
【0157】
図5は、本発明による推進デバイス1の斜視図を示す。推進デバイス1は円筒状の形状である。図示の推進デバイス1は、サイクロジャイロロータである。この推進デバイス1は、それぞれが関連するピッチ機構3を有する5つのロータブレード2と、オフセットデバイス4と、ディスク11とを含む。異なる数のロータブレードを有する推進デバイスも可能である。ロータブレード2は、推進デバイス1の回転軸の周りに回転可能に取り付けられている。オフセットデバイス4は、推進デバイス1の回転軸に対して偏心的に取り付けられた偏心支承軸を画定する。図5では、オフセットデバイスは、オフセットディスクとして示されている。オフセットディスクは、偏心支承軸の周りで自由に回転可能であるように取り付けられている。オフセットディスク4の偏心支承部は、ピッチ機構3の偏心支承部を意味する。ピッチ機構3の偏心支承部により、推進デバイス1の回転軸の周りで一回転する間に、ロータブレード2の位置の変化を生じさせる。図示のピッチ機構3はそれぞれ、結合デバイス31及び支承デバイス33を含む。各ロータブレード2は、対応する支承デバイス33によって枢動可能に支持されている。ロータブレード2は、推進デバイス1の回転軸に平行な軸の周りで支持されている。この軸は、ロータブレード支承軸33である。ロータブレード2の支承は、例えば、1つ以上のピン、いわゆるメインピンなどの支承手段の助けを借りて行うことができる。支承手段は、好ましくは、支承デバイス33の一部である。ロータブレード支承軸33は、ロータブレード2の重心を通ることができる。しかしながら、ロータブレード2は、重心から離れたところで支持されることが好ましい。ピッチ機構3の結合デバイス31は、ロータブレード2が推進デバイス1の回転軸の周りで回転するとピッチ運動を行うように、ロータブレード2をオフセットデバイス4に結合する。ただし、偏心支承軸が推進デバイス1の回転軸と一致しないことを条件とする。結合デバイス31の一方の端部は、係留点でオフセットデバイス4に結合されている。結合デバイス31の他方の端部部分は、ロータブレード2に結合されている。
【0158】
オフセットディスク4は、自由に回転可能に取り付けられている。オフセットディスク4の回転軸は、好ましくは、推進デバイス1の回転軸に平行に、あるオフセット距離で延びる。これにより、推進デバイス1の回転軸に対するオフセットディスク4の偏心的な取り付けがもたらされる。このオフセット距離は調整可能であり得る。調整可能な偏心量を有するオフセットデバイス4は、例えば遊星歯車によって実現され得る。オフセット距離がゼロでない場合、ロータブレード2のピッチ運動が生じる。
【0159】
結合デバイス31は、結合点32でロータブレード2に結合されている。この目的のために、結合デバイス31は、結合手段を含んでもよい。図5に示される推進デバイス1では、結合デバイス31は、接続ロッド(「コンロッド」)と、ピン、いわゆるピッチリンクピンとを含む。ピンは、本発明による結合手段の構成的な実施形態である。図5に示される実施形態例では、結合手段31は、ロータブレード2への直接接続によってではなく接続要素61を使用することによって、ロータブレード2に結合点32で結合されている。それにより、接続要素61の一端は、ロータブレード2に強固に接続されている。この接続は、好ましくは、ロータブレード取付点で行われる。接続要素61の他端は、結合デバイス/接続ロッド31に結合されている。この場合、ピッチ運動は、接続ロッド31を用いた結合デバイスを介して、接続要素61を介し、ロータブレード2に間接的に導入される。
【0160】
しかしながら、本発明によれば、ロータブレード2への結合デバイス31の直接結合も可能である。
【0161】
ピッチ機構の結合デバイス31が推進デバイス1の回転軸に対して偏心的に取り付けられているという理由で、ロータブレード2が推進デバイス1の回転軸の周りで回転すると、結合点32は、ロータブレード支承軸33に対して円弧上で移動する。これにより、ロータブレード2のピッチ運動が生じる。これは、したがって、ロータブレード支承軸33の周りのロータブレード2の振り子運動である。
【0162】
推進デバイス1の直径は、推進デバイス1の回転軸からロータブレード支承軸33又は支承点までの距離の2倍に相当する。この直径は、回転中のブレード速度に関連し、したがって、発生する推力に関連する。本発明による推進デバイス1の例示的実施形態では、直径は、150mm~2000mm、好ましくは300mm~500mmの範囲、特に好ましくは、350mmである。
【0163】
更に、図5に示される推進デバイス1は、ディスク11を含む。このディスク11は、ロータブレード2を推進デバイス1の残りの構成要素から空力的に分離するように設計されている。そのようなディスク11は、推進デバイス1が高速で操作される場合に特に有利である。
【0164】
推進デバイス1のスパンは、ロータブレード2の長さによって定義される。推進デバイス1のスパンは、2つのディスク11の間の(長手方向の)距離である。
【0165】
本発明により使用され得るサイクロジャイロロータのうちの1つのスパンは、便宜上、数センチメートル~2メートル、好ましくは、350~420mmである。有利には、本発明による航空機にはいくつかのサイクロジャイロロータが使用される。それらのスパン幅は、最大25%、便宜上、最大10%だけ互いにずれていることが好ましい。それらの直径は、最大25%、好ましくは、最大10%だけ互いに異なることが好ましい。
【0166】
図5に示されるロータブレード2は、対称なプロファイルを有する。本発明は、対称なプロファイルを有するロータブレードを有する推進デバイスに限定されない。
【0167】
推進デバイス1は、結合された2つの回転運動により推力又は推力ベクトルを発生させる。第1の回転運動は、推進デバイス1の回転軸の周りのロータブレード2の回転である。この第1の回転運動は、推進デバイスの回転軸の周りの円形路に沿ったロータブレード2の移動を生じさせる。具体的には、ロータブレード支承軸33又はロータブレード支承点は円形路に沿って移動する。各ロータブレード支承軸33は、ロータブレード2の長手方向軸に平行である。ロータブレード2の長手方向軸は、推進デバイス1の回転軸に平行である。したがって、ロータブレード2の長手方向軸は、ロータブレード支承軸33にも平行である。推進デバイス1の推力の方向は、推進デバイス1の回転軸に垂直である。最適な推力発生のために、全てのロータブレード2は、常時、流れの方向に対して可能な限り最良に方向付けられるべきである。これにより、各ロータブレード2が総推力に最大に寄与することを確実にする。推進デバイス1がその回転軸の周りで回転すると、各ロータブレード2のピッチは、上述のピッチ機構により連続的に変化する。各ロータブレード2は、ピッチ角の周期的な変更、すなわち往復運動を行う。これがピッチ運動である。同時に、結合点32は、ロータブレード支承軸33の周りで円弧上を移動する。これが第2の回転運動である。
【0168】
発生する推進力/推力ベクトルの大きさ及び方向は、ロータブレード2のピッチに依存する。したがって、推進デバイス1の回転軸に対するオフセットデバイス4又はピッチ機構3の偏心支承部の距離は、発生する推進力/推力ベクトルの大きさに影響する。オフセットデバイス4の偏心支承部を周方向に、すなわち推進デバイス1の回転軸に対して一定距離で移動させることにより、発生する推力ベクトルの方向を変化させる。
【0169】
図5では、ピッチ機構3は推進デバイス1の片側にのみ示されているが、安定性の理由から、対応するピッチ機構を推進デバイスの反対側にも取り付けることが適切な場合がある。例えば、ピッチ機構は、推進デバイスの中央にも取り付けることができる。
【0170】
図6は、航空機胴体220と複数の推進デバイス1A及び1Bとを含む本発明の第2の態様による航空機200の斜視図を示す。航空機胴体220の周囲に配置された4つの推進デバイス1A及び1Bが示されている。各推進デバイス1A及び1Bは、それぞれアーム221及びアーム222を介して航空機胴体220に接続されている。推進デバイス1A及び推進デバイス1Bはそれぞれ、適切な取付デバイス又は支持デバイスによってアーム221及びアーム222にそれぞれ取り付けられ得る。アーム221及びアーム222それぞれの存在は必須ではない。推進デバイス1A及び推進デバイス1Bはまた、他の手法で航空機本体220に結合されてもよい。ここでは、航空機本体220並びに推進デバイス1A及び推進デバイス1Bは、実質的に一平面内にある。
【0171】
図示の航空機200は、例えば、航空車両、有人航空機、ドローン、又はいわゆるマイクロエアビークル(MAV)であり得る。
【0172】
示される航空機200について更に説明するために、第1の方向201、第2の方向202、及び垂直方向203又は垂直軸を定義する基準座標系が導入される。垂直方向203又は垂直軸は、航空機200が地面の上に載置されているときの地球の引力の方向に対応する。垂直方向203は、航空機胴体220並びに推進デバイス1A及び推進デバイス1Bが位置する前述の平面に垂直である。第1の方向201及び第2の方向202、又はそれらの各々の軸は、前記平面内にあり、したがって、それぞれ、垂直方向に対して垂直である。本明細書で考慮される本発明の第2の態様の航空機200に必須なのは、第1の方向201と第2の方向202が互いに平行でないことである。図示の実施形態では、第1の方向201と第2の方向202は、互いに垂直である。
【0173】
このように定義される方向は、航空機200に強固に固定されたものである。
【0174】
図示の航空機200は、4つの推進デバイス1A及び1Bを有する。図示の推進デバイス1A及び推進デバイス1Bは、それぞれ、サイクロジャイロロータである。サイクロジャイロロータのより詳細な説明は、図5に関連して既に行った。各推進デバイス1A及び推進デバイス1Bは、それに関連する回転軸5の周りで回転するように取り付けられている。各推進デバイス1A及び推進デバイス1Bは、それらの長手方向軸の周りで枢動するように取り付けられた複数のロータブレード2を含む。これにより、推進デバイス1A又は推進デバイス1Bの回転中にロータブレード2の傾斜角を変化させることが可能になる。ロータブレード2のチルト角を制御するのみならず、それぞれ推進デバイス1A及び推進デバイス1Bの回転速度(以下、回転の速度とも呼ばれる)を制御することにより、発生する推進力及びそれを記述する推力ベクトルの大きさのみならず方向もそれぞれ変化させることができる。
【0175】
図6では、4つの推進デバイス1A及び推進デバイス1Bは、本質的に、矩形又は正方形の辺を形成していることが分かる。この矩形又は正方形の幾何学的中心に、胴体220が配置されている。便宜上、推進デバイス1A及び推進デバイス1Bはそれぞれ、中心又は胴体から等距離にある。この目的のために、アーム221とアーム222は、同じ長さを有し得る。この場合、推進デバイス1A及び推進デバイス1Bは、正方形の辺に配置されている。
【0176】
前記矩形又は正方形の反対側の辺に対応する2つの推進デバイス1Aは、共通の直線上にあり、図示の例では、この直線は、第1の方向201に対して実質的に平行であり、同様に、同様に前記矩形又は正方形の反対側の辺に対応する2つの推進デバイス1Bは、第2の方向202に対して実質的に平行な共通の直線上にある。前記直線は、推進デバイスが(強固に)結合される共通の回転軸である必要は必ずしもないことに留意されたい。各推進デバイス1A、1Bは、それに関連する独自の回転軸5A、5Bを介して回転することができ、特にそれらの回転速度を別々に制御するために、各推進デバイス1A、1Bを個々に制御することができる可能性もある。
【0177】
図6の実施形態では、推進デバイス1Aに関連する回転軸5Aは、第1の方向201に実質的に整列している。図6の実施形態例では、推進デバイス1Bに関連する回転軸5Bは、第1の方向202に実質的に整列している。図6では、回転軸5A、5Bは、第1の方向201又は第2の方向202に対して正確に平行に整列していないことが分かる。事実、本発明によれば、これは、関連する回転軸5A、5Bのそれぞれが第1の方向201及び第2の方向202それぞれに実質的に整列している場合に既に当てはまる。本発明によれば、回転軸5Aと第1の方向201に延びて回転軸5Aと交差する軸との間に含まれる角度が45°未満、好ましくは30°未満、より好ましくは15°未満であれば、回転軸5Aは、第1の方向201に実質的に整列している。したがって、「第1の方向に実質的に整列している」という指定は、回転軸5Aが第1の方向201に対して正確に平行であることも排除するものではない。同様のことは、第2の推進デバイス1Bの回転軸5B及び第2の方向202にも当てはまる。
【0178】
本発明による航空機200は、図示の2つの推進デバイス1Aのそれぞれを、各々の関連する回転軸5Aの周りで実質的に同じ回転方向に回転させること、及び/又は図示の2つの推進デバイス1Bのそれぞれを、各々の関連する回転軸5Bの周りで実質的に同じ回転方向に回転させることによってホバリング飛行を実施するように設計されている。これにより発生する航空機200に対する設計上の制約については、更なる図、特に図7a及び図7bに関連して説明する。
【0179】
図7aに、本発明の第2の態様による航空機200が非常に概略的な平面図で示されている。第一に、図6に関連して既に説明した航空機胴体220、推進デバイス1A、1A及び推進デバイス1B、1B、それらとそれぞれ関連する回転軸5A及び回転軸5B、第1の方向201及び第2の方向202を見ることができ、第1の方向201は第2の方向202に対して垂直である。
【0180】
数学的物理的関係を説明するために、(デカルト)直交座標系を導入することが有用である。図7a及び図7bでは、x軸、y軸及びz軸を有するデカルト座標系が使用される。概して、本発明による第1の方向及び第2の方向は、デカルト座標系の軸に対応している必要はないことに留意されたい。第1及び第2の(及び場合により更なる)方向は、推進デバイスの回転軸を定義する役割を果たし、(デカルト)直交座標系は、航空機の意図的な数学的記述の役割を果たすことを目的とする。
【0181】
更に、航空機200の重心S,250が示されている。重心S,250の位置又は配置は、それぞれ実質的に同じ方向に回転する推進デバイス1A、1A及び推進デバイス1B、1Bによって発生する同じ方向のトルクを平衡させるために重要である。これについては、図7bに関してより詳細に説明する。図示の例では、重心S,250は、航空機200が、(正の)第1の方向201(ここでは、正のx方向と一致する)における前進飛行と(正の)第2の方向202(ここでは、正のy方向と一致する)における前進飛行の両方においてマグヌス効果を利用することができるように配置されている。航空機200が前進飛行において第1の方向201に移動するとき、推進デバイス1B、1Bは、関連する回転軸5Bの周りで実質的に同じ回転方向に、有利には時計回り方向に回転する。第1の態様に関連して上記で定義したように、これは、2つの推進デバイス1B、1Bは、図7aに示される第2の方向(y軸)に対して時計回りであることを意味する。換言すれば、推進デバイス1B、1Bに関連する角速度の各ベクトルと第2の方向の単位ベクトルとのスカラー積は正である。使用する基準座標系とは無関係に、推進デバイス1B、1Bは、前進飛行中に入射空気と最初に出会う推進デバイス1B、1Bの表面が地球の引力の方向と反対方向に回転するように回転するとも表現することができる。航空機200が前進飛行において第2の方向202に移動する場合、推進デバイス1A、1Aは、関連する回転軸5Aの周りで実質的に同じ回転方向に、有利には反時計回り方向に回転する。上記の定義は、適宜適用される。図7aに示される座標系において、これは、推進デバイス1A、1Aに関連する角速度の各ベクトルと第1の方向の単位ベクトルとのスカラー積が負であることを意味する。使用する基準座標系とは無関係に、推進デバイス1A、1Aは、前進飛行中に入射空気と最初に出会う推進デバイス1A、1Aの表面が地球の引力の方向と逆に回転するように回転することも事実である。
【0182】
最後に、回転軸5A及び回転軸5Bそれぞれの周りの推進デバイスの回転により発生する推力ベクトルF,2001、F,2002、F,2003、及びF,2004が描かれている。推力ベクトルF,2001、F,2002、F,2003、及びF,2004は、像平面から外を指しており、すなわち、揚力が発生している。
【0183】
第1の方向(x軸)における前進飛行において、推進デバイス1B、1Bが同じ方向に回転している状態で、推進デバイス1A、1Aが反対方向に、すなわち一方が時計回りに、他方が反時計回りに回転することも可能である。同様のことが第2の方向(y軸)における前進飛行に当てはまる。推力ベクトルF,2001、F,2002、F,2003、及びF,2004の方向は、影響を受けないままである。
【0184】
図7b及び図7cは、図7aの上面図に示される本発明の第2の態様による航空機を異なる側面図及び非常に概略的な図で示す。図7bの側面図では、2つの推進デバイス1A、1A及び2つの推進デバイス1B、1Bのうちの1つが見える。図7cの側面図では、2つの推進デバイス1B、1B及び2つの推進デバイス1A、1Aのうちの1つが見える。推進デバイス1A、1Aに関連する回転軸5Aは、第1の方向201(ここではx方向)に対して平行であり、推進デバイス1B、1Bに関連する回転軸5Bは、第2の方向(ここではy方向)(シートの平面内を指す)に対して平行である。
【0185】
本発明により考慮される実施形態では、推進デバイス1B、1Bは、ある割り当てられた回転速度で同じ回転の方向251に回転する。図7bにおいて、2つの推進デバイス1B、1Bは、上記で定義したように時計回りに回転する。既に説明したように、各推進デバイス1B、1Bの回転は推力ベクトルを発生させる。図7bによる表記では、2つの推進デバイス1B、1Bによって共に発生する推力ベクトルは、F34,2034によって示され、ここで、F34=F+F図7aを参照)である。推進デバイス1B、1Bは同じ回転の方向251に回転するため、発生する全ての(駆動)トルクM34,280も同じ方向に作用し、ここで、M34,280は、両推進デバイス1B、1Bの(駆動)トルクを示し、すなわち、M34=M+Mである。
【0186】
推進デバイス1A、1Aは、それぞれ推力ベクトルF,2001及びF,2002を発生させる。推進デバイス1A、1Aの回転の方向は、第1の方向201における前進飛行に有利な航空機の設計を考慮する本考察においては重要ではない。しかしながら、対称性の理由から、等しく回転する推進デバイス1A、1Aであっても安定した飛行姿勢、特に、安定した前進飛行が可能であるように航空機を設計することが好ましい。これについて、以下で更に説明する。
【0187】
図7bに関して、運動量の定理及び角運動量平衡の定理が、航空機の重心S,250に関して適用され、図示のケースでは、垂直方向203(z軸)における運動量の定理及び第2の方向202(y軸)の周りの角運動量平衡の定理のみが関連する。これは、力又はトルクがここでしか作用しないからである。
【0188】
したがって、安定したホバー飛行の条件は、
ΣF=F-F-F-F34=0 (17)
ΣMs,y=F*l+F34*l34-F*l-M34=0 (18)
である。
【0189】
推力ベクトルF、F及びF34(の大きさ)は、2つの平衡条件を満たすように調整され得る。推力ベクトルを推力ベクトル制御によって調整すると便利である。
【0190】
しかしながら、2つの平衡条件を用いて、ある一定の推力ベクトルF、F,及びF34に関する前記ホバリング条件が満たされるように航空機の重心を決定することも可能である。
【0191】
図7bに示されるトルクM34,280は、両推進デバイス1B、1Bの(駆動)トルクに対応する。本発明の第1の態様に関連して既に説明したように、トルクM34,280の大きさと推力ベクトルF34の大きさとの間には数学的物理的関係がある。これは、上記の方程式(6)によって決定される。各推進デバイスは、異なる比例係数aを有することができる。しかしながら、同じ設計又はサイズを持つ異なる推進デバイスのaの値は、典型的には、同じオーダーの大きさをとる。便宜上、それらは本質的に同一である。
【0192】
方程式(6)によれば、トルクの大きさM、M、M、Mは、
=a*F,i∈{1,2,3,4}
のように書くことができる。
【0193】
考慮される実施形態では、同じ回転の方向を有する推進デバイス1B、1Bの回転軸が平行に整列していることで、MとMは平行であるため、大きさの観点から同様のことが当てはまり、
|M+M|=M+M=M34≡a34*F34
である。
【0194】
ここで、上記の方程式は、一般的に考えられる本質的に同じ方向を向いた回転軸のケースの良い近似式としても有効であることに言及しておく。
【0195】
これにより、以下のようなトルク方程式(18)
ΣMs,y=F*l+F34*l34-F*l-F34*a34=0
が得られる。
【0196】
ここで、F、Fは、それぞれ推進デバイス1A及び1Aによって発生する推力ベクトルF,2001;F,2002の大きさを示し、l,231は、第1の方向に関して決定される航空機の重心S,250から推力ベクトルF,2001の距離であり(この距離lは、航空機の重心S,250と推進デバイス1Aの回転軸5Aに沿った幾何学的中心との間の、第1の方向に関する距離と同定することができ、換言すれば、lは、航空機の重心S,250から推進デバイス1Aのスパンの半分までの、第1の方向に関する距離である)、l232は、第1の方向に関して決定される航空機の重心S,250から推力ベクトルF,2002の距離(この距離lは、航空機の重心S,250と回転軸5Aに沿った推進デバイス1Aの幾何学的中心との間の、第1の方向に関する距離と同定することができ、換言すれば、lは、航空機の重心S,250から推進デバイス1Aのスパンの半分までの、第1の方向に関する距離である)、F34は、両推進デバイス1B及び推進デバイス1Bによって発生する推力ベクトルの大きさF34=F+F,2034であり、l34,234は、第1の方向に関して決定される、航空機の重心S,250と、一方では、推力ベクトルF34,2034との間の、又は他方では、同等に、推進デバイス1B及び推進デバイス1Bの回転軸、若しくは同等に、推進デバイス1B及び推進デバイス1Bを通る直線との間の距離であり(ここでは、推進デバイス1B及び推進デバイス1Bは、第2の方向に少なくともほぼ平行な直線上にあると仮定する)、a34は、推進デバイス1B及び推進デバイス1Bに割り当てられた比例係数である。
【0197】
ここで、この方程式は、それぞれ、2つの推力ベクトルF,2001及びF,2002の大きさFと大きさFの比に変換することができる。
【数36】
【0198】
方程式(19)は、航空機の構成式としての役割を果たすことができる。方程式(19)は、当初、(F、F、F34、l、l、l34のセットから)4つの自由に選択可能な量を含んでいる。しかしながら、安定した飛行姿勢では、方程式(17)も考慮する必要があるため、前述の4つの量のうちの3つしか自由に選択することはできない。
【0199】
運動量の定理が垂直方向203(z軸)において確立され、角運動量平衡の定理が第1の方向201(x軸)の周りで確立されるケースにおける対応する構成式も得られる。この目的のために、図7cを参照する。このような考察は、第2の方向(y軸)における前進飛行に関しても本発明によれる効果、すなわち特にマグヌス効果の正の寄与を用いたい場合に必要である。
【0200】
したがって、安定したホバー飛行の条件は、
ΣF=F-F-F-F12=0 (20)
ΣMs,x=F*l+F12*l12-F*l-M12=0 (21)
である。
【0201】
これらの項は、方程式(17)及び方程式(18)の場合と同様であるが、添え字は、1→3、2→4、3→1、4→2に変化している。したがって、個々の式は繰り返さない。特に、M12,285は、推進デバイス1A、1Aによって発生する総トルクである。
【0202】
方程式(6)に関して方程式(17)及び方程式(18)に関連する見解を考慮すると、トルク方程式(21)は、
ΣMs,x=F*l+F12*l12-F*l-F12*a12=0
のように書くことができる。
【0203】
ここでは、F、Fは、推進デバイス1B及び推進デバイス1Bによって発生する推力ベクトルF,2003;F,2004の大きさをそれぞれ示し(図7aを参照)、l,236は、第2の方向に関して決定される航空機の重心S,250から推力ベクトルFの距離であり(この距離lは、航空機の重心S,250と回転軸5Bに沿った推進デバイス1Bの幾何学的中心との間の、第2の方向に関する距離と同定することができ、換言すれば、lは、航空機の重心S,250から推進デバイス1Bのスパンの半分までの、第2の方向に関する距離である)、l,237は、第2の方向に関して決定される、航空機の重心S,250から推力ベクトルFの距離であり(この距離lは、航空機の重心S,250と回転軸5Bに沿った推進デバイス1Bの幾何学的中心との間の、第2の方向における距離と同定することができ、換言すれば、lは、航空機の重心S,250から推進デバイス1Bのスパンの半分までの第2の方向に関する距離である)、F12は、両推進デバイス1A及び推進デバイス1Aによって発生する推力ベクトルの大きさF12=F+F,2012であり、l12,239は、第2の方向に関して決定される、航空機の重心S,250と、一方では、推力ベクトルF12,2012との間の、又は他方では、同等に、推進デバイス1A及び推進デバイス1Aの回転軸、若しくは同等に、推進デバイス1A及び推進デバイス1Aを通る直線との間の距離であり(ここでは、推進デバイス1A及び推進デバイス1Aは、第1の方向に少なくともほぼ平行な直線上にあると仮定する)、a12は、推進デバイス1A及び推進デバイス1Aに割り当てられた比例係数である。
【0204】
ここで、この方程式は、それぞれ、2つの推力ベクトルF及びFの大きさFと大きさFの比に変換することができる。
【数37】
【0205】
推進デバイス1A、1A、1B及び1Bの星形配置のトポロジーのため、各場合において、一対の推進デバイス1A、1A又は推進デバイス1B、1Bが必要な推力の半分を発生させれば便利である。これにより、境界条件
12=F34 (23)
がもたらされる。
【0206】
これは、全ての推力ベクトルF、F、F、及びFが同じでなければならないことを必ずしも示唆するわけではなく、対向する2つの推進デバイスの推力ベクトルの合計が同じであれば十分であることに留意されたい。しかしながら、全ての推力ベクトルF、F、F、及びFは、個々に異なることもできる。
【0207】
推進デバイスが航空機胴体220の好ましくは中心に取り付けられることが必要な場合、別の有用な境界条件が生じる。すなわち、以下
【数38】

が適用され、
式中、推力ベクトル及び推進デバイス1A、1Aの幾何学的中心の距離l,230に関しては、それぞれ、l=l+lを使用し、推力ベクトル又は推進デバイス1B、1Bの幾何学的中心の距離l’,235に関しては、l’=l+lを使用した。便宜的に、l’=lである。
【0208】
これらの境界条件(23)及び(24a)から、以下の構成式
【数39】

が得られ、
境界条件(23)及び(24b)から、
【数40】

が得られる。
比例係数が等しい(a12=a34≡a)と仮定すると好都合である。
【0209】
ここで、次の工程は、方程式(17)、(18)、(20)及び(21)を用いて自由に事前設定可能な推力ベクトルの数を決定することである。推進デバイスの位置が固定されていると仮定した場合、前記方程式には以下の未知数、F、F、F、F、l12及びl34がある。更に、方程式(17)と方程式(20)は同一の制約を与えることに留意しなければならない。したがって、6つの未知数に対して3つの方程式を有する。重心は、l12及びl34によって決定され、方程式(17)、(18)、(20)及び(21)は推力ベクトルを指定する。4つの推力ベクトルのうちの3つF、F、Fは、所望に応じて指定することができる。更なる境界条件が考慮されれば、それに応じて自由に定義可能な推力ベクトルの数は減少する。
【0210】
方程式(17)、(20)、(25a)、(25b)を満たすためのいくつかのやり方がある。
【0211】
(i)第1のケースの設計では、航空機が対称に設計されることが必要となり得る。すなわち、重心S,250は、推進デバイス1A、1A及び/又は推進デバイス1B、1B(の重心)の間の正確に中間にある。この場合、l=l及び/又はl=lである。方程式(25a)、(25b)から、
【数41】

となる。
【0212】
【数42】

により、それぞれ正の第1の方向又は正の第2の方向に配置された推進デバイス1A、1Bは、それぞれ負の第1の方向又は負の第1の方向に配置された推進デバイス1A、1Bよりも大きい推力を発生させなければならないことになり、したがって、F>F及び/又はF>Fである。したがって、正の方向に配置された推進デバイスは、負の方向に配置された推進デバイスよりも大きく設計しなければならない。換言すれば、前進飛行方向において前部に配置される推進デバイスは、後部に配置される推進デバイスよりも大きく設計しなければならない。
【0213】
したがって、この場合の設計では、重心S,250は、正の第1の方向及び/又は第2の方向に移動する傾向があり、結果的に、l<l及び/又はl<lとなり、推進デバイス1A、1A又は1B、1Bの必要とされる推力ベクトルFと推力ベクトルF又はFとFの差は更に増加する。
【0214】
(ii)第2のケースの設計では、2つの推進デバイス1A、1Aは、特に好ましくは、構造の観点において同一に設計される、及び/又は2つの推進デバイス1B、1Bは、構造の観点において同一に設計される。すなわち、それらは構造的に同一であり、例えば、同じサイズ、同じスパン、同じ数のロータブレードを有する、及び/又は同様の若しくは同じ(最大)推進力/推力ベクトルを発生させる。この場合、したがって、F=F(又はF≒F)及び/又はF=F(又はF≒F)である。
【0215】
方程式(25a)及び方程式(25b)から、
【数43】

となる。
【0216】
前進飛行方向に関して、航空機の重心S,250は、それぞれ対向する推進デバイス1A、1A及び推進デバイス1B、1Bの間の(幾何学的)中心l/2から、第1の方向201及び/又は第2の方向に沿って、それぞれ方程式(24a)及び方程式(24b)に従い、
【数44】

だけ後部推進デバイス1A、1Bの方に移動することは理解される。
【0217】
ここで、航空機が、推進デバイス1A、1A又は推進デバイス1B、1Bの対ごとに、構造的に同一の等サイズの推進デバイス1A、1A及び/又は推進デバイス1B、1B、したがってほぼ等しい大きさの推進力/推力ベクトルを有して構成されている場合、重心S,250は、したがって、推進デバイスによって発生するトルクが重心S,250の位置によって純粋に釣り合うように最適に位置決めされ得る。前記最適位置は、方程式(27a)及び/又は方程式(27b)によって決定される。
【0218】
ここで、及び以下において、等しく回転する推進デバイス1B、1Bに関しては、第1の方向201における重心の位置のみが、考慮に際して役割を果たすことに留意しなければならない。第2の方向及び垂直方向203に対する重心の支承又は位置決めは、ここでは無関係であり、当業者の裁量に委ねられる。したがって、等しく回転する推進デバイス1A、1Aに関しては、第2の方向における重心の位置のみが、考慮に際して役割を果たすこととなる。この場合、第1の方向201及び垂直方向203に対する重心の支承又は位置決めは無関係である。しかしながら、航空機が第1の方向に前進するときと第2の方向に前進するときの両方でマグヌス効果の正の効果を利用する場合、重心の最適位置は方程式(27a)及び方程式(27b)の両方によって決定されるため、垂直方向203に対するその位置のみを依然として自由に選択可能である。
【0219】
(iii)本発明によれば、第1のケースの設計(i)の態様と第2のケースの設計(ii)の態様とを組み合わせることも可能である。すなわち、航空機の重心S,250は、推進デバイスの個々の推進デバイスのある所定の、更には異なる推力ベクトル/推進力における安定したホバリング飛行の条件(17)、(20)、(25a)、(25b)が満たされるように、航空機胴体220の幾何学的中心から移動させることができる。
【0220】
実際の用途では、全体の重心S,250が、(i)、(ii)、又は(iii)において説明した所定の最適位置に正確に位置決めされ得るように、航空機の質量を配置することは必ずしも可能ではない(ケースの設計(i)では、l=l及び/又はl=lであり、ケースの設計(ii)については、方程式(26a)、(26b)、(27a)、(27b)を参照)。したがって、推進デバイス1A、1Aの対の推進力/推力ベクトルF,2001,F,2002によるトルク補償及び推進デバイス1B、1Bの対の推進力/推力ベクトルF,2003,F,2004によるトルク補償をそれぞれ支持することがなお可能であるように重心S,250を位置付けることができる範囲を以下に定義する。
【0221】
この目的のために、最初に、推進デバイス1A、1A、1B、1Bのうちの1つは、最大許容(通常所定の)推進力/最大許容推力ベクトルFi,maxを発生させることができると仮定する。Fi,maxは、最適構成Fi,optに対応する推進力以上であると仮定する(本発明の第1の態様に関連して同じく既により詳細に説明したように)。
【0222】
方程式(17)に従って運動量の定理を考慮すると、最初に、以下
1,opt≦F1,max ⇒ F2,opt≧F2,min≡F-F1,max-F34,opt
が得られ、
したがって、最大許容推力ベクトル比
【数45】

が得られる。
【0223】
2,opt≦F2,max ⇒ F1,opt≧F1,min≡F-F2,max-F34,opt
の場合、
これは、最小許容推力ベクトル比
【数46】

となる。
【0224】
方程式(17)及び方程式(20)において、方程式(23)の境界条件、F12=F34を用いると、
【数47】

が得られる。
【0225】
これらの推力ベクトル比F/Fは、方程式(25a)によっても記述されており、方程式(25a)を用いて、前進飛行における前方推進デバイス1Aの幾何学的中心から重心S,250の第1の方向201における最大許容距離は
【数48】

のように計算することができ、
前進飛行における前方推進デバイス1Aの幾何学的中心から重心S,250の第1の方向201における最小許容距離は
【数49】

のように計算することができる。
【0226】
第1の方向201に関する重心S,250が
【数50】

の範囲外である場合、
方程式(26a)に従って、推進デバイス1A、1Aの推進力F,2001又はF,2002により、最適位置からの重心S,250のずれを補償することはもはや不可能である。
【0227】
方程式(24a)によって、推進デバイス1B、1Bの回転軸又は推進デバイス1B、1Bを通る直線に関する第1の方向における許容範囲(28)も指定することができる。したがって、範囲の指定は、距離l34並びに対応する限界l34,min及び限界l34,maxの助けを借りて行われる。
【0228】
同様に、第2の方向(ここではy方向)に関する重心S,250の許容範囲については、
【数51】

ここで、
【数52】


また、
【数53】

が得られる。
【0229】
方程式(24b)によって、推進デバイス1A、1Aの回転軸又は推進デバイス1A、1Aを通る直線に関する第2の方向における許容範囲(29)も指定することができる。したがって、範囲の指定は、距離l12並びに対応する限界l12,min及び限界l12,maxの助けを借りて行われる。
【0230】
図7dは、第2の態様による本発明を実施するために航空機の重心S,250を適切に位置付けることができる上記の範囲を説明する役割を果たす。図7dは、図7a及び図7bに関連して説明したものに対応する推進デバイス1A1、1A及び1B3、1Bを備える航空機を概略的に示す。更に、推進デバイス1A1、1A2、1B3、1Bは、構造の観点において同一に設計されており(上記のケースの設計(ii)を参照)、ここでは特に、a=a=a=a=a12=a34≡aであると仮定する。
【0231】
最初に、トルク補償は、純粋に重心S,250の位置により実現されると更に仮定し、
1,opt=F2,opt=Fopt ⇒ M1,opt=M2,opt=Mopt
が当てはまる。ここで考慮される航空機の例においては、対応する総質量によって発生する総重量力は、
=1000N
と仮定し、比/比例係数は、典型的には、
a=0.2mであり、
第1の方向(図7a、7bではx方向)における推進デバイスの距離は、
l=l+l=2m
と定義される。
【0232】
これらの指定に基づき、方程式(25a)及び方程式(26a)により、最適重心位置
【数54】

が与えられる。
【0233】
航空機の全体の重心S,250を位置l1,opt=1.1mに配置することが不可能な場合、トルク補償を、推進デバイス1A、1A、1B、1Bの推進力/推力ベクトルによって補償することができるように重心S,250の位置を位置付けることができる範囲をここで定義する。この目的のために、便宜上、推力ベクトル制御によって制御される、第1の方向に配置された推進デバイス1A、1Aそれぞれによって発生させることができる最大許容推進力は、
1,max=F2,max=275N
と定義される。
【0234】
この指定により、及び方程式(23)による境界条件
【数55】

を用いることにより、最大許容推力ベクトル比及び最小許容推力ベクトル比
【数56】

並びに方程式(28)による重心の位置の範囲
【数57】

を計算することができる。すなわち、この例では、前進飛行方向に関して、第1の方向に関する重心は、便宜上、2つの推進デバイス1Aの幾何学的中心から1.05~1.15mに位置付けられる。方程式(27a)を用いて、この結果は、以下のようにも表すことができる、すなわち、第1の方向に関して、重心は、便宜上、推進デバイス1B、1Bの回転軸又は2つの推進デバイス1B、1Bを通る直線から0.05~0.15m離れたところに位置付けられる。
【0235】
航空機が対称に設計されていると仮定すると、lの許容範囲について同じ値が得られる。両方の条件を考慮した場合、重心S,250は、推進デバイス及び航空機胴体によって定義される平面に関して、指定された限界によって決定される正方形のエリア内に適切に配置される。垂直方向に関する位置決めは限定されない。
【0236】
最後に、本発明による第2の態様は、4つの推進デバイスを有する航空機に限定されないことを更に述べる。例えば、2つを超える推進デバイスが一方向に沿って配置されること、又はまた、いくつかの推進デバイスが互いに平行な直線上に配置されることも可能である。
【0237】
ここで、方程式(17)、(18)、(20)、(21)を、n個(n>2)の推進デバイス1Cを有する本発明による航空機に関して一般化する。図8aは、そのような航空機の平面断面図を示し、図8bは、航空機の側断面図である。航空機の数学的物理的記述は、x軸、y軸、及びz軸を有するデカルト座標系で行われると仮定する。n個の推進デバイス1C及び航空機胴体220は、xy平面内、すなわちz=0の平面内に位置している。推進デバイス1Cは、航空機胴体220の周囲に、z=0の平面内に配置されている(星形)。座標系の原点Oを航空機の幾何学的中心に置く。次いで、r,i∈{1,…,n}を、対応する推進デバイス1Cのi番目の推力ベクトルに対する位置ベクトルとする。sを、航空機の重心S,250に対する位置ベクトルとする。航空機の重量の力のベクトルは、F=(0,0,F)である。ここで対象となる安定したホバリング飛行の場合、推力ベクトルは、推進デバイスによって発生するF,i∈{1,…,n}であり、
,=(0,0,-F),i∈{1,…,n}
である。
【0238】
最後に、ホバー飛行において、推進デバイスは、角速度ω,i∈{1,…,n}で回転し、ここで扱うのは、xy平面内にあるベクトルである。序文で既に詳細に説明した、航空機によって加えられなければならないトルクは、したがって、関係M=a*Fを考慮して計算することができ、
【数58】

である。
【0239】
方程式(17)、(18)、(20)、(21)の平衡条件は、したがって、
【数59】

である。
「×」は、外積を表す。
【0240】
角運動量平衡の定理から、重心S,250の位置ベクトルsは、以下のように決定することができ、
【数60】

を用い、
グラスマン恒等式
【数61】

を用い、
は(r-s)に常に垂直であり、それらのスカラー積はゼロであること
・(r-s)=0 ⇒ (F・(r-s))*F=0
を考慮すると、
最初に、
【数62】

が得られ、
最終的に、重心S,250の位置ベクトルs
【数63】

が得られる。
【0241】
方程式(32)は、1つはトルクのx成分、もう1つはそれらのy成分に関する2つの条件を提供する。方程式(31)及び方程式(32)(方程式(30)の関係を考慮する)は、したがって、n個の推力ベクトルの大きさF及び重心の2つの座標に関する3つの条件を提供する。これにより、指定され得るn+2-3=n-1のn個の推力ベクトルが残る。したがって、ここで考慮されるより一般的なケースにおいては、n個の推進デバイス1Cのうちの1つ以上の推力ベクトルを変化させ、方程式(32)によるトルク補償を、推進デバイスの推進力/推力ベクトルによって補償することができるように重心S,250を位置決めする(方程式(33)を参照)ことを必要とすることによって、推進デバイス1C及び航空機胴体220が位置する平面に関する適切な範囲も決定することができる。この目的のために、推進デバイスの1つ以上を最大許容推力で駆動することが有用な可能性がある。
【0242】
考慮される構成の重心の最適位置が2つの直線の交点によって決定されるという点で、第1の方向及び/又は第2の方向(これに沿って推進デバイスが実質的に同じ方向に回転する)を、2つの所定の前進飛行方向に対して垂直な方向として考慮すると好都合である。この場合、重心は、したがって、(i)第1の方向に対して垂直な、推進デバイス及び航空機胴体によって定義される平面内にある方向に関して、及び/又は(ii)第2の方向に対して垂直な、推進デバイス及び航空機胴体によって定義される平面内にある方向に関して、幾何学的中心から移動していることが好ましい。
【0243】
図9aは、3つの推進デバイス1C、1C、1Cが、正三角形の辺を形成するように航空機の航空機胴体220の周囲に配置された本発明の第2の態様による実施形態を示す。推進デバイス1C及び推進デバイス1Cは、真直g上に配置されていることが示されており、gは、それにより本発明による第1の方向を定義する。図示の実施形態では、推進デバイス1Cは、直線gに垂直であり、航空機の幾何学的中心G、この場合正三角形の幾何学的中心Gを通る、直線g上に配置されている。直線gは、本発明による第2の方向を定義する。ここでは、推進デバイス1C、1C及び1Cの回転軸5C、5C2、5Cはそれぞれ、幾何学的中心Gの方を(又は幾何学的中心Gから離れる方を)向いている。図示の実施形態では、回転軸5Cのみが、gによって定義される第2の方向に正確に平行に整列されている。回転軸5C、5Cは、gによって定義される第1の方向に正確に平行ではない。単純な幾何学的考察の助けを借りて分かるように、回転軸5Cは、直線g(第1の方向)と角度α=30°を含み、同様に、回転軸5Cは、直線g(第1の方向)と角度α=30°を含む。そのような角度は、本発明による第1の方向に実質的に整列する回転軸線の概念内に含まれる。しかしながら、角度は、より小さくなるように選択することもできることが好ましい。推進デバイス1C1、1Cがこれらの回転軸の周りを上記で定義したように実質的に同じ回転の方向に回転する場合、ここで、本発明による成功は、航空機が特にgによって定義される第2の方向に沿って移動するときにも生じる。推進デバイス1C、1Cがそれぞれ関連する回転軸5C及び回転軸5Cの周りを実質的に同じ回転の方向に回転する場合、本発明による利点は、特に航空機が角の二等分線1C-G-1Cに沿って移動するときに正の効果を有する。
【0244】
図9bは、7つの推進デバイス1C,...,1Cが航空機胴体220の周囲で一平面内に配置された本発明の第2の態様による航空機を示す。推進デバイス1C,...,1Cは、正七角形の頂点を形成するように配置されている。各推進デバイスは、関連する回転軸5C,...,5Cの周りに回転可能に取り付けられている。図示の実施形態では、回転軸5C,...,5Cは、それぞれ航空機及び七角形の幾何学的中心Gを向いている。この実施形態は、(奇数の)n=2j+1(j>1)個の推進デバイス1C,...,1C2j+1が、(2j+1)個の辺を有する正多角形の頂点を形成するように航空機胴体220の周囲に配置される一般的なケースについて説明することを目的とする。関連する回転軸5C,...,5C2j+1は、幾何学的中心Gの方(又は幾何学的中心Gから離れる方)を向くべきである。この場合、第1の直線gを、2つの推進デバイス1C及び1C(n+1)/2を通るように考慮すると好都合であり、この直線gは、本発明による第1の方向を定義する。更に、2つの推進デバイス1C及び1Ck+(n-1)/2
【数64】

(ここで、
【数65】

は、その引数を最も近い整数に丸めるものである)を通る第2の直線gを考慮すると好都合である。この直線gは、本発明による第2の方向を定義する。
【0245】
単純な幾何学的考察の助けを借りると、各回転軸線5C及び5C(n+1)/2は、直線g(すなわち第1の方向)と角度α=α(n+1)/2=90°/nを内包し、回転軸5C及び回転軸5Ck+(n-1)/2と直線gとの間の角度α=αk+(n-1)/2=90°/nにも同様のことが当てはまることが分かる。図示の七角形の場合、したがって、α=α=α=α=90°/7≒12.86°が存在する。(2j+1)個の辺を持つ正多角形に関しては、したがって、第1の方向及び第2の方向をそれぞれ定義する直線g及び直線g上にある推進デバイスの回転軸が、関連する直線g及び直線gそれぞれと角度0°~90°/nを内包する場合は有利である。
【0246】
とgとの間の角度εは、幾何学的関係を用いることによって容易に考えつくことができるような
【数66】

によって与えられる。
【0247】
図9cは、6つの推進デバイス1C,...,1Cが航空機胴体220の周囲で一平面内に配置された本発明の第2の態様による航空機を示す。推進デバイス1C,...,1Cは、正六角形の頂点を形成するように配置されている。各推進デバイスは、関連する回転軸5C,...,5Cの周りに回転可能に取り付けられている。図示の実施形態では、回転軸5C,...,5Cは、それぞれ航空機及び六角形の幾何学的中心Gを向いている。この例は、(偶数の)n=2j(j>1)個の推進デバイス1C,...,1C2jが、2j個の辺を有する正多角形の頂点を形成するように、航空機胴体220の周囲に配置される一般的なケースについて説明することを目的とする。航空機胴体220は、2j個の辺を有する正多角形の各対向する2つの推進デバイスの間に位置している。関連する回転軸5C,...,5C2jは、幾何学的中心Gの方(又は幾何学的中心Gから離れる方)を向くようになっている。この場合、2つの推進デバイス1C及び1Cn/2+1を通るように第1の直線gを考慮すると好都合であり、この直線gは、本発明による第1の方向を定義する。更に、2つの推進デバイス1C及び1Ck+n/2
【数67】

を通る第2の直線g考慮すると好都合である。この直線gは、本発明による第2の方向を定義する。
【0248】
図示の実施形態では、直線g及び直線g上に配置された推進デバイスの回転軸線は、それぞれ第1の方向及び第2の方向に(数学的に正確に)平行に整列される。
【0249】
特に好ましくは、第1の方向と第2の方向は、互いに実質的に垂直、具体的には垂直である。これは、推進デバイスが、4j個の辺を持つ多角形の頂点を形成する場合には常に可能である。
【0250】
上述の2j個の頂点に関するgとg(すなわち第1の方向と第2の方向)との間の角度εは、幾何学的関係を用いることによって容易に推論できるような
【数68】

によって与えられる。
【0251】
上記の実施形態から、n個の辺を持つ正多角形の頂点における任意の数(偶数又は奇数)の推進デバイスの配置に関して、それぞれ第1の方向及び第2の方向を定義する直線g及び直線g上にある推進デバイスの回転軸が、対応する直線g及びgと角度を形成し、0°~30°(n>2の場合)、特に好ましくは0°~18°(n>3の場合)の角度を成せば十分であり、更に、直線g及び直線g(したがって第1の方向及び第2の方向)が、それらの間の角度が60°以上、特に60°~90°の範囲であるように選択されれば好都合であることが分かる。
【0252】
付録(推力とパワーとの間の関係の導出)
推力及びパワーの導出は運動量理論に基づき、推進デバイス/ロータは、ロータブレードの数及び形状に関する情報を伴わないアクチュエータディスクと見なされる。流れは、一次元、非定常、非圧縮性、及び無摩擦として単純化して定義され、その結果、対応する質量、運動量及びエネルギーの保存則がもたらされる。以下では、アクチュエータディスク平面内の全ての量に付加的な添え字aを与え、アクチュエータディスク平面(流入平面)のはるか上方の全ての量は付加的な添え字0を有し、アクチュエータディスク平面(流出平面)のはるか下方の全ての量に付加的な添え字∞を付す。
【0253】
質量保存の法則:
流れに関する仮定により、質量流は質量保存の法則に従う。
【数69】
【0254】
運動量保存:
流れに関する仮定により、推進力は、運動量保存の法則に従う。
【数70】
【0255】
ロータは流入平面に影響を及ぼさないため、vi0=0となり、ここから、
【数71】

が成り立つ。アクチュエータディスク平面に質量流を挿入すると、
F=ρ*A*(v+via)*vi∞
が得られる。
【0256】
エネルギー保存の法則:
流れに関する仮定及びvi0=0により、アクチュエータディスク平面に関して単位時間当たりに行われるパワー又は仕事量は、エネルギーの保存の法則に従う。
【数72】
【0257】
アクチュエータディスク平面に質量流を挿入することにより、
【数73】

が成り立つ。
【0258】
推進力を用いると、パワーは、
【数74】

になる。
【0259】
これらの方程式から直接、関係
【数75】

が得られ、
性能は、
P=F*(v+via)=F*V
…総流速
として表現することができる。
【符号の説明】
【0260】
参照符号のリスト
100 本発明の第1の態様による航空機
120 航空機本体
1F 前部エリアに配置された推進デバイス
1R 後部エリアに配置された推進デバイス
101 航空機100の長手方向
102 航空機100の横断方向
103 航空機100の垂直方向
121 航空機100のバウ/ノーズ
122 航空機100のテール
1 推進デバイス
2 推進デバイスのロータブレード
3 ピッチ機構
31 結合デバイス
32 結合点
33 支承デバイス
4 オフセットデバイス
11 推進デバイス1のディスク
5 推進デバイスの回転軸
51 推進デバイスの回転の方向
52 推進デバイスの半径
61 接続要素
7、71 推進デバイスにかかる力/推力ベクトル
72 推力ベクトルに対するマグヌス効果の寄与
8 推進デバイスにかかるトルク
9 空気流入
110 航空機の移動方向を示す矢印
150 航空機100の重心
701 推進デバイス1Fによって発生する総推力ベクトル
702 推進デバイス1Rによって発生する総推力ベクトル
81 推進デバイス1Fによって発生する総トルク
82 推進デバイス1Rによって発生する総トルク
131 重心150と推進デバイス1Fとの間の長手方向に関する距離
132 重心150と推進デバイス1Rとの間の長手方向に関する距離
160 航空機の重量
推進デバイスが配置されたi番目の直線
直線gに沿って配置された推進デバイスの数
N 直線の総数
K 推進デバイスの総数
ij 直線g上に配置されたj番目の推進デバイスによって発生する推力ベクトル
直線g上に配置された全ての推進デバイスによって発生する推力ベクトル
直線g上に配置された全ての推進デバイスによって発生するトルク
線gの長手方向座標
重心150の長手方向座標
200 本発明の第2の態様による航空機
220 航空機胴体
1A、1B、1C、1A、1A、1B、1B、1C 航空機推進デバイス200
221、222 推進デバイス1A、1Bを航空機胴体220に結合するためのアーム
201 第1の方向
202 第2の方向
203 垂直方向
5A 推進デバイス1Aの回転軸
5B 推進デバイス1Bの回転軸
5C 推進デバイス1Cの回転軸
α 回転軸5Cと第1の方向又は第2の方向との間の角度
ε 第1の方向と第2の方向との間の角度
250 航空機200の重心
G 幾何学的中心
O 座標系の原点
2001、2002 推進デバイス1A及び推進デバイス1Aによってそれぞれ発生する推力ベクトル
2003、2004 推進デバイス1B及び推進デバイス1Bによってそれぞれ発生する推力ベクトル
2012 推進デバイス1A、1Aによって発生する総推力ベクトル
2034 推進デバイス1B、1Bによって発生する総推力ベクトル
230 推進デバイス1A、1Aの推力ベクトル/幾何学的中心間の距離
231 航空機の重心250から推力ベクトル2001の距離
232 航空機の重心250から推力ベクトル2002の距離
234 重心250と、推力ベクトルF34,2034/推進デバイス1B、1Bの回転軸/推進デバイス1B、1Bを通る直線との間の距離
235 推進デバイス1B、1Bの推力ベクトル/幾何学的中心間の距離
236 航空機の重心250から推力ベクトル2003の距離
237 航空機の重心250から推力ベクトル2004の距離
239 重心250と、推力ベクトルF12,2012/推進デバイス1A、1Aの回転軸/推進デバイス1A、1Aを通る直線との間の距離
251 推進デバイス1B、1Bの回転の方向
280 推進デバイス1B、1Bによって発生する総トルク
285 推進デバイス1A、1Aによって発生する総トルク
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図3c
図4
図5
図6
図7a
図7b
図7c
図7d
図8a
図8b
図9a
図9b
図9c
【手続補正書】
【提出日】2024-01-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機(100)であって、
- 長手方向(101)と垂直方向(103)と横断方向(102)とを定義する航空機本体(120)であって、前記長手方向は、前記航空機(100)のテール(122)からノーズ(121)への方向に対応し、前記垂直方向は、前記航空機(100)が地面の上に載置されているときの地球の引力の方向に対応し、前記横断方向は、前記長手方向及び前記垂直方向に対して垂直である、航空機本体(120)と、
- それぞれ、関連する回転軸(5)の周りで回転可能であり、各々の関連する推力ベクトル(701、702)を発生させる少なくとも2つの推進デバイス(1、1F、1R)であって、
第1の数の前記推進デバイス(1F)は、前記横断方向(102)に対して平行な第1の直線に沿って配置されており、第2の数の前記推進デバイス(1R)は、前記横断方向(102)に対して平行な第2の直線に沿って配置されており、
前記第1の直線は、前記第2の直線から間隔を空けて配置されており、
前記航空機(100)の重心は、前記長手方向(101)に関して、前記第1の直線と前記第2の直線との間に配置されている、
少なくとも2つの推進デバイス(1、1F、1R)と、
を含み、
前記航空機(100)は、前記航空機の前記重心(150)に関して前記航空機に作用する全ての力及び前記航空機に作用する全てのトルクが実質的に消失するホバー飛行を実施するように適合されている、航空機(100)において、
前記ホバー飛行において、
- 前記関連する回転軸(5)のそれぞれは、前記航空機本体の前記横断方向(102)に実質的に方向付けられており、
- 前記少なくとも2つの推進デバイス(1、1F、1R)のそれぞれは、前記各々の関連する回転軸(5)の周りで実質的に同じ回転の方向(51)に回転する
ことを特徴とする、
航空機(100)。
【請求項2】
前記第1の数の前記推進デバイス(1F)は、前記長手方向(101)に関して前記航空機の前部領域に配置されており、前記第2の数の前記推進デバイス(1R)は、前記長手方向(101)に関して前記航空機の後部領域に配置されている、請求項1に記載の航空機(100)。
【請求項3】
ホバー飛行を実施しているときの前記航空機の前記重心(150)は、前記前部領域の前記推進デバイス(1F)が配置されている前記直線から長手方向の距離lに配置され、
【数1】

であり、
【数2】

であり、
式中、
minは、一方の前記前部領域に配置された前記推進デバイス(1F)の前記推力ベクトル(701)と他方の前記後部領域に配置された前記推進デバイス(1R)の前記推力ベクトル(702)との間の最小許容比、
maxは、一方の前記前部領域に配置された前記推進デバイス(1F)の前記推力ベクトル(701)と他方の前記後部領域に配置された前記推進デバイス(1R)の前記推力ベクトル(702)との間の最大許容比、
lは、前記第1の直線と前記第2の直線との間の距離、
は、前記前部領域に配置された前記推進デバイス(1F)の特性数、
は、前記後部領域に位置する前記推進デバイス(1R)の特性数である、
請求項2に記載の航空機(100)。
【請求項4】
ホバー飛行中に平行に整列される前記関連する回転軸を有するように適合されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の航空機(100)。
【請求項5】
航空機(200)であって、
- 航空機胴体(220)と、
- 前記航空機胴体の周囲に取り付けられており、各々の関連する回転軸(5A、5B)の周りで回転可能であり、各々の関連する推力ベクトル(2001、2002、2003、2004)を発生させる少なくとも3つの推進デバイス(1A、1B)と、
を含み、
前記航空機(200)は、前記航空機の重心(250)に関して前記航空機に作用する全ての力及び前記航空機に作用する全てのトルクが実質的に消失するホバー飛行を実施するように適合されている、航空機(200)において、前記ホバー飛行中、
- 前記少なくとも3つの推進デバイス(1A)のうちの2つの前記関連する回転軸(5A)は、第1の方向(201)に実質的に整列しており、前記少なくとも3つの推進デバイス(1B)のうちの他の前記関連する回転軸(5B)は、第2の方向(202)に実質的に整列しており、
- 前記第1の方向(201)は前記第2の方向(202)に平行ではなく、
- 回転軸(5A)が前記第1の方向(201)に方向付けられた前記2つの推進デバイス(1A)のそれぞれは、ホバー飛行中に前記各々の関連する回転軸(5A)の周りで実質的に同じ回転方向に回転する、
ことを特徴とする、航空機(200)。
【請求項6】
- 前記航空機胴体の周囲に取り付けられており、各々の関連する回転軸(5A、5B)の周りで回転可能であり、各々の関連する推力ベクトル(2001、2002、2003、2004)を発生させる少なくとも4つの推進デバイス(1A、1B)
を含み、
前記航空機(200)は、前記ホバー飛行を実施するように適合されており、前記ホバー飛行中、
- 前記少なくとも4つの推進デバイス(1A)のうちの2つの前記関連する回転軸(5A)は、前記第1の方向(201)に実質的に整列しており、前記少なくとも4つの推進デバイス(1B)のうちの更なる2つの前記関連する回転軸(5B)は、前記第2の方向(202)に実質的に整列しており、
- ホバー飛行中に回転軸(5A)が前記第1の方向(201)に方向付けられる前記2つの推進デバイス(1A)のそれぞれは、前記各々の関連する回転軸(5A)の周りで実質的に同じ回転方向に回転する、及び/又はホバー飛行中に回転軸(5B)が前記第2の方向(202)に方向付けられる前記2つの推進デバイス(5B)のそれぞれは、前記各々の関連する回転軸(5B)の周りで実質的に同じ回転方向に回転する、
請求項5に記載の航空機(200)。
【請求項7】
3つの推進デバイスが、正三角形の辺を形成するように前記航空機胴体の周囲に配置されており、
- 前記航空機胴体(220)は、前記三角形の幾何学的中心に位置し、
- 前記第1の方向は、前記3つの推進デバイスのうちの2つが位置する直線によって定義され、
- 前記第2の方向は、前記第1の方向に対して実質的に垂直であり、
- 前記第1の方向を向いている前記直線上に位置する前記2つの推進デバイスそれぞれの前記回転軸は、前記直線と0°~30°の範囲の角度を含む、
請求項5に記載の航空機(200)。
【請求項8】
n個の推進デバイスが、n>3であるn個の辺を持つ正多角形の頂点を形成するように、前記航空機胴体の周囲に配置されており、
- 前記航空機本体(220)は、n個の辺を持つ前記多角形の幾何学的中心に位置し、
- 前記第1の方向は、前記n個の推進デバイスのうちの2つが位置する第1の直線によって定義され、
- 前記第2の方向は、前記n個の推進デバイスのうちの更に別の2つが位置する第2の直線によって定義され、
- 前記第1の方向を向いている前記第1の直線上に位置する前記2つの推進デバイスそれぞれの前記回転軸は、前記第1の直線と0°~18°の範囲の角度を含む、
請求項6に記載の航空機(200)。
【請求項9】
前記第1の直線と前記第2の直線との間の前記角度は、72°~90°の範囲である、請求項8に記載の航空機(200)。
【請求項10】
- 前記第2の方向(202)は、前記第1の方向(201)に対して実質的に垂直であり、
- 前記少なくとも4つの推進デバイス(1A)のうちの2つは、前記第1の方向(201)に沿って配置されており、前記少なくとも4つの推進デバイス(1B)のうちの他の2つは、前記第1の方向に対して実質的に垂直な前記第2の方向(202)に沿って配置されている、
請求項6~9のいずれか一項に記載の航空機(200)。
【請求項11】
ホバー飛行を実施しているときの前記航空機の前記重心(250)は、前記推進デバイス(1B)が前記第2の方向(202)に配置されている直線から前記第1の方向(201)の距離l34に配置され、
【数3】

であり、
【数4】

であり、
式中、
minは、前記第1の方向に沿って配置された前記推進デバイス(1A)の前記推力ベクトル(2001、2002)の間の最小許容比、
maxは、前記第1の方向に沿って配置された前記推進デバイス(1A)の前記推力ベクトル(2001、2002)の間の最大許容比、
34は、前記第2の方向(202)に沿って配置された前記推進デバイス(1B)の特性数、
lは、前記第1の方向に配置された前記推進デバイス(1A)の幾何学的中心間の距離であり、
及び/又は
ホバー飛行を実施しているときの前記航空機の前記重心(250)は、前記推進デバイス(1A)が前記第1の方向(201)に配置されている直線から前記第2の方向(202)の距離l12に配置され、
【数5】

であり、
【数6】

であり、
【数7】

は、前記第2の方向(202)に沿って配置された前記推進デバイス(1B)の前記推力ベクトル(2003、2004)の間の最小許容比、
【数8】

は、前記第2の方向(202)に沿って配置された前記推進デバイス(1B)の前記推力ベクトル(2003、2004)の間の最大許容比、
12は、前記第1の方向(201)に沿って配置された前記推進デバイス(1A)の特性数、
l’は、前記第2の方向に配置された前記推進デバイス(1B)の幾何学的中心の距離である、
請求項10に記載の航空機(200)。
【請求項12】
ホバー飛行中、前記推進デバイスの1つ以上が、前記推進デバイスの1つ以上に関連する各々の特定の所定の推力ベクトルを発生させると、前記航空機の前記重心(150、250)が、前記航空機の前記重心に関して前記航空機に作用する全ての力及び前記航空機に作用する全てのトルクを実質的に消失させるように位置決めされるように更に適合されている、請求項1又は5に記載の航空機(100、200)。
【請求項13】
前記航空機は、ほぼ等しい関連するある所定の推力ベクトルでホバー飛行を実行するように更に適合されている、請求項1又は5に記載の航空機(100、200)。
【請求項14】
前記航空機の前記重心(150、250)を変位させるための変位デバイスを更に含む、請求項1又は5に記載の航空機(100、200)。
【請求項15】
前記推進デバイスに燃料を供給するための燃料タンク及び/又は前記推進デバイスに電力を供給するためのバッテリーを更に含み、
前記変位デバイスは、前記航空機内の前記燃料タンクからの燃料又は前記バッテリーを位置変更し、それにより、前記推進デバイスの1つ以上が前記各々の特定の所定の推力ベクトルを発生させると前記航空機がホバー飛行を実施するように前記重心(150、250)を位置決めするように適合されている、請求項14に記載の航空機(100、200)。
【請求項16】
前記推進デバイスの前記推力ベクトルを個別に制御するための推力ベクトル制御を含む、請求項1又は5に記載の航空機(100、200)。
【請求項17】
請求項1に記載の航空機(100)を製造する方法であって、以下の工程、すなわち、
- 前記関連する回転軸(5)のそれぞれが前記航空機本体(120)の前記横断方向(102)に実質的に方向付けられており、
- 前記少なくとも2つの推進デバイス(1F、1R)のそれぞれが前記各々の関連する回転軸(5)の周りで実質的に同じ回転の方向(51)に回転する場合に、
- 前記推進デバイス(1F、1R)の1つ以上が、前記推進デバイス(1F、1R)の1つ以上と関連する特定の所定の推力ベクトルをそれぞれ発生させて、前記航空機の前記重心に関して前記航空機に作用する全ての力及び前記航空機に作用する全てのトルクが実質的に消失するホバー飛行を前記航空機に実施させるように前記航空機の前記重心(150)を位置決めする工程
を含む、方法。
【請求項18】
請求項5に記載の航空機(200)を製造する方法であって、以下の工程、すなわち、
- 前記少なくとも3つの推進デバイス(1A)のうちの2つの前記関連する回転軸(5A)が実質的に前記第1の方向(201)に整列され、前記少なくとも3つの推進デバイス(1B)のうちの他の前記関連する回転軸(5B)は、実質的に前記第2の方向(202)に整列され、
- 回転軸が前記第1の方向(201)に方向付けられた前記2つの推進デバイス(1A)のそれぞれが、ホバー飛行中に前記各々の関連する回転軸(5A)の周りで実質的に同じ回転方向に回転する場合に、
- 前記推進デバイス(1A、1B)の1つ以上が、前記推進デバイス(1A、1B)の1つ以上と関連する特定の所定の推力ベクトルをそれぞれ発生させて、前記航空機の前記重心(250)に関して前記航空機に作用する全ての力及び前記航空機に作用する全てのトルクが実質的に消失するホバー飛行を前記航空機に実施させるように前記航空機の前記重心(250)を位置決めする工程
を含む、方法。
【請求項19】
航空機(100)を制御する方法であって、
- 長手方向と垂直方向と横断方向とを定義する航空機本体(120)であって、前記長手方向は、前記航空機のテール(122)からノーズ(121)への方向に対応し、前記垂直方向は、前記航空機(100)が地面の上に載置されているときの地球の引力の方向に対応し、前記横断方向は、前記長手方向及び前記垂直方向に対して垂直である、航空機本体(120)と、
- 各々の関連する回転軸(5)の周りで回転可能であり、各々の関連する推力ベクトルを発生させる少なくとも2つの推進デバイス(1、1F、1R)であって、
第1の数の前記推進デバイス(1F)は、前記横断方向(102)に対して平行な第1の直線に沿って配置されており、第2の数の前記推進デバイス(1R)は、前記横断方向(102)に対して平行な第2の直線に沿って配置されており、
前記第1の直線は、前記第2の直線から間隔を空けて配置されており、
前記航空機(100)の重心は、前記長手方向(101)に関して、前記第1の直線と前記第2の直線との間に配置されている、
少なくとも2つの推進デバイス(1、1F、1R)と、
を有し、
以下の工程、すなわち、
- 前記少なくとも2つの推進デバイスに関連する前記回転軸のそれぞれが前記航空機本体の前記横断方向に実質的に方向付けられており、前記少なくとも2つの推進デバイスのそれぞれが、前記各々の関連する回転軸の周りで実質的に同じ回転方向に回転する場合に、前記航空機がホバー飛行を実施するように、前記関連する推力ベクトルを決定する工程であって、
ホバー飛行中、前記航空機の前記重心(150)に関して前記航空機に作用する全ての力及び前記航空機に作用する全てのトルクが実質的に消失する、
関連する推力ベクトルを決定する工程と、
- 前記各々の推進デバイスが前記特定の関連する推力ベクトルを発生させるように、前記推進デバイス(1F、1R)のそれぞれを実質的に同じ回転の方向に駆動する工程と、
を含む、
方法。
【請求項20】
航空機(200)を制御する方法であって、
- 航空機胴体(220)と、
- 前記航空機胴体の周囲に取り付けられ、各々の関連する回転軸(5A、5B)の周りで回転可能であり、各々の関連する推力ベクトルを発生させる少なくとも3つの推進デバイス(1A、1B)と、
を有し、
以下の工程、すなわち、
- 前記少なくとも3つの推進デバイス(1A)に関連する前記回転軸(5A)のうちの2つが第1の方向(201)に実質的に整列しており、前記各々の関連する回転軸(5A)の周りで実質的に同じ回転方向に回転する場合、及び/又は前記少なくとも3つの推進デバイス(1B)に関連する前記回転軸(5B)のその他が前記第1の方向に平行ではない第2の方向(202)に実質的に整列している場合に、前記航空機がホバー飛行を実施するように前記関連する推力ベクトルを決定する工程であって、
ホバー飛行中、前記航空機の重心(250)に関して前記航空機に作用する全ての力及び前記航空機に作用する全てのトルクが実質的に消失する、
関連する推力ベクトルを決定する工程と、
- 前記少なくとも3つの推進デバイス(1A)のうちの2つの前記関連する回転軸(5A)を実質的に前記第1の方向(201)に整列させ、前記少なくとも3つの推進デバイス(1B)のもう1つの前記関連する回転軸(5B)を実質的に前記第2の方向(202)に整列させる工程と、
- 前記各々の推進デバイスが関連する回転方向に回転し、前記特定の関連する推力ベクトルを発生させるように、前記推進デバイス(1A、1B)のそれぞれを駆動する工程であって、
前記第1の方向に実質的に方向付けられた回転軸を有する前記2つの推進デバイス(1A)のそれぞれは、前記各々の関連する回転軸(5A)の周りで実質的に同じ回転方向に回転する、
駆動する工程と、
を含む、方法。
【請求項21】
前記決定される関連する推力ベクトルの全ては、ほぼ同一になるように選択される、請求項19又は20に記載の航空機(100、200)を制御する方法。
【請求項22】
- 前記推進デバイスが、前記推進デバイスと関連する前記特定の所定の推力ベクトルを発生させると、前記航空機の前記重心に関して前記航空機に作用する全ての力及び前記航空機に作用する全てのトルクを実質的に消失させるように前記航空機の前記重心(150、250)を位置決めする工程
を更に含む、請求項19又は20に記載の航空機(100、200)を制御する方法。
【請求項23】
前記推進デバイス(1、1F、1R、1A、1B)のそれぞれは構造的に同一である、請求項1又は5に記載の航空機(100、200)。
【請求項24】
前記推進デバイス(1、1F、1R、1A、1B)はサイクロジャイロロータを含む、請求項1又は5に記載の航空機(100、200)。
【国際調査報告】