(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】ブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤の共結晶形態
(51)【国際特許分類】
C07D 231/38 20060101AFI20240416BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240416BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240416BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240416BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240416BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240416BHJP
A61K 31/415 20060101ALI20240416BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240416BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
C07D231/38 B CSP
A61P35/00
A61P35/02
A61P25/00
A61P29/00
A61P19/02
A61P29/00 101
A61K31/415
A61K47/32
A61K47/38
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570216
(86)(22)【出願日】2022-05-11
(85)【翻訳文提出日】2023-11-13
(86)【国際出願番号】 US2022028663
(87)【国際公開番号】W WO2022240920
(87)【国際公開日】2022-11-17
(32)【優先日】2021-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516115430
【氏名又は名称】ロクソ オンコロジー, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Loxo Oncology, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100103182
【氏名又は名称】日野 真美
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】コーテス,デイビッド アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ヒルデン,ロリ ラクエル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076CC04
4C076CC09
4C076CC27
4C076EE16
4C076EE32
4C076EE33
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC36
4C086GA14
4C086GA15
4C086MA02
4C086MA05
4C086NA14
4C086ZA96
4C086ZB11
4C086ZB15
4C086ZB26
4C086ZB27
(57)【要約】
BTK-I関連疾患及び障害を含む、BTK阻害剤で治療することができる疾患の治療及び予防に有用なBTK-Iを含む共結晶形態、これらの共結晶形態の特徴付け、並びにこれらの共結晶形態を作製する方法が本明細書に提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(S)-5-アミノ-3-(4-((5-フルオロ-2-メトキシベンズアミド)メチル)フェニル)-1-(1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミドと、アジピン酸及びショウノウ酸からなる群から選択されるコフォーマとの、共結晶形態。
【請求項2】
(S)-5-アミノ-3-(4-((5-フルオロ-2-メトキシベンズアミド)メチル)フェニル)-1-(1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミドと、アジピン酸と、を含む、請求項1に記載の共結晶形態。
【請求項3】
(S)-5-アミノ-3-(4-((5-フルオロ-2-メトキシベンズアミド)メチル)フェニル)-1-(1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド対アジピン酸の比が、約2:1である、請求項2に記載の共結晶形態。
【請求項4】
10.4°、14.2°、15.1°、17.0°、及び21.6°からなる群から選択されるピークのうちの1つ以上と組み合わせて、18.7°の回折角2シータにおける回折ピークを有し、前記回折角の許容差が±0.2度である、CuKα放射線を使用するX線粉末回析パターンを特徴とする、請求項3に記載の共結晶形態。
【請求項5】
14.2°、17.0°、及び21.6°からなる群から選択されるピークのうちの1つ以上と組み合わせて、18.7°の回折角2シータにおける回折ピークを有し、前記回折角の許容差が±0.2度である、CuKα放射線を使用するX線粉末回析パターンを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の共結晶形態。
【請求項6】
17.0°及び21.6°からなる群から選択されるピークのうちの1つ以上と組み合わせて、18.7°の回折角2シータにおける回折ピークを有し、前記回折角の許容差が±0.2度である、CuKα放射線を使用するX線粉末回析パターンを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の共結晶形態。
【請求項7】
174.6、167.6、166.1、157.5、155.5、152.7、150.9、150.3、141.1、140.4、130.1、129.3、127.7、126.6、123.6、120.7、120.2、118.5、116.5、114.1、112.8、91.2、63.6、58.6、56.8、52.2、44.0、34.5、33.2、25.1、24.7、13.8、及び13.2ppmにおけるアダマンタンの高磁場共鳴を基準とするピークを含み、許容差が±0.2ppmである、
13C固体NMRスペクトルを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の共結晶形態。
【請求項8】
174.6、91.2、44.0、13.8、及び13.2ppmにおけるアダマンタンの高磁場共鳴を基準とするピークを含み、許容差が±0.2ppmである、
13C固体NMRスペクトルを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の共結晶形態。
【請求項9】
(S)-5-アミノ-3-(4-((5-フルオロ-2-メトキシベンズアミド)メチル)フェニル)-1-(1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミドと、ショウノウ酸と、を含む、請求項1に記載の共結晶形態。
【請求項10】
(S)-5-アミノ-3-(4-((5-フルオロ-2-メトキシベンズアミド)メチル)フェニル)-1-(1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド対ショウノウ酸の比が、約1:1である、請求項9に記載の共結晶形態。
【請求項11】
7.2°、8.3°、12.6°、14.5°、及び16.7°からなる群から選択されるピークのうちの1つ以上と組み合わせて、17.7°の回折角2シータにおける回折ピークを有し、前記回折角の許容差が±0.2度である、CuKα放射線を使用するX線粉末回析パターンを特徴とする、請求項10に記載の共結晶形態。
【請求項12】
7.2°、14.5°、及び16.7°からなる群から選択されるピークのうちの1つ以上と組み合わせて、17.7°の回折角2シータにおける回折ピークを有し、前記回折角の許容差が±0.2度である、CuKα放射線を使用するX線粉末回析パターンを特徴とする、請求項1又は9又は10に記載の共結晶形態。
【請求項13】
7.2°及び14.5°からなる群から選択されるピークのうちの1つ以上と組み合わせて、17.7°の回折角2シータにおける回折ピークを有し、前記回折角の許容差が±0.2度である、CuKα放射線を使用するX線粉末回析パターンを特徴とする、請求項1又は9又は10に記載の共結晶形態。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の共結晶形態を含み、1つ以上のポリマーと、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と、を更に含む、薬学的組成物。
【請求項15】
前記1つ以上のポリマーが、PVP-VA、HPMC、及びHPMCASから選択される、請求項14に記載の薬学的組成物。
【請求項16】
前記HPMCASが、HPMCAS-L、HPMCAS-M、又はHPMCAS-Hである、請求項15に記載の薬学的組成物。
【請求項17】
前記HPMCASが、HPMCAS-Mである、請求項16に記載の薬学的組成物。
【請求項18】
前記薬学的組成物が、約90重量部のポリマー及び約10重量部の共結晶形態、約80重量部のポリマー及び約20重量部の共結晶形態、約70重量部のポリマー及び約30重量部の共結晶形態、又は約50重量部の共結晶形態及び約50重量部のポリマーを含む、請求項14~17のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項19】
前記共結晶形態が、約20重量部を構成し、前記1つ以上のポリマーが、約80重量部を構成する、請求項14~17のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項20】
前記組成物が、約20重量%未満のBTK-Iと異なるコフォーマとの他の共結晶形態を含有する、請求項14~17のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項21】
前記組成物が、約10重量%未満のBTK-Iと異なるコフォーマとの他の共結晶形態を含有する、請求項14~17のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項22】
BTK関連がんの治療を、それを必要とする患者において行う方法であって、有効量の請求項1~13のいずれか一項に記載の共結晶形態又は請求項14~21のいずれか一項に記載の薬学的組成物を前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項23】
前記BTK関連がんが、B細胞悪性腫瘍、B細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、慢性リンパ球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、有毛細胞白血病、B細胞非ホジキンリンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、及び多発性骨髄腫からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記BTK関連がんが、マントル細胞リンパ腫、慢性リンパ球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、濾胞性リンパ腫、及び辺縁帯リンパ腫からなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
多発性硬化症の治療を、それを必要とする患者において行う方法であって、有効量の請求項1~13のいずれか一項に記載の共結晶形態又は請求項14~21のいずれか一項に記載の薬学的組成物を前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項26】
関節炎の治療を、それを必要とする患者において行う方法であって、有効量の請求項1~13のいずれか一項に記載の共結晶形態又は請求項14~21のいずれか一項に記載の薬学的組成物を前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項27】
前記関節炎が、リウマチ性関節炎である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
療法における使用のための、請求項1~13のいずれか一項に記載の共結晶形態又は請求項14~21のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項29】
BTK関連がんの治療における使用のための、請求項1~13のいずれか一項に記載の共結晶形態又は請求項14~21のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項30】
前記BTK関連がんが、B細胞悪性腫瘍、B細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、慢性リンパ球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、有毛細胞白血病、B細胞非ホジキンリンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、及び多発性骨髄腫からなる群から選択される、請求項29に記載の使用のための共結晶形態又は薬学的組成物。
【請求項31】
前記BTK関連がんが、マントル細胞リンパ腫、慢性リンパ球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、濾胞性リンパ腫、及び辺縁帯リンパ腫からなる群から選択される、請求項30に記載の使用のための共結晶形態又は薬学的組成物。
【請求項32】
多発性硬化症の治療における使用のための、請求項1~13のいずれか一項に記載の共結晶形態又は請求項14~21のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項33】
関節炎の治療における使用のための、請求項1~13のいずれか一項に記載の共結晶形態又は請求項14~21のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項34】
前記関節炎が、リウマチ性関節炎である、請求項33に記載の使用のための共結晶形態又は薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ブルトン型チロシンキナーゼ(Bruton's Tyrosine Kinase、BTK)阻害剤の新規共結晶形態、共結晶形態を含む薬学的組成物、B細胞悪性腫瘍、B細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫(marginal zone lymphoma、MZL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma、DLBCL)、慢性リンパ球性白血病(chronic lymphocytic leukemia、CLL)、小リンパ球性リンパ腫(small lymphocytic lymphoma、SLL)、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、マントル細胞リンパ腫(mantle cell lymphoma、MCL)、濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma、FL)、有毛細胞白血病、B細胞非ホジキンリンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症(Waldenstrom's macroglobulinemia、WM)、多発性骨髄腫(multiple myeloma、MM)、関節炎、特にリウマチ性関節炎(rheumatoid arthritis、RA)、及び多発性硬化症(multiple sclerosis、MS)などのBTKの阻害によって治療可能な状態を治療するために共結晶形態を使用する方法、並びに共結晶形態の合成において有用なプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
BTKは、例えば、無痛性及び侵襲性成熟B細胞非ホジキンリンパ腫、CLL、SLL、WM、MCL、FL、DLBCL、B細胞前リンパ球性白血病、有毛細胞白血病、並びにMZLを含む、多数のB細胞白血病及びリンパ腫にわたる治療に有用な分子標的である。B細胞は、同種異系幹細胞移植の生命を脅かす合併症である慢性移植片対宿主病(chronic graft versus host disease、cGVHD)の発症において際立った役割を果たすことも報告されており、cGVHDの予防及び治療のためのB細胞標的化療法の研究が促されている。
【0003】
BTK阻害剤は、当該技術分野において、例えば、国際公開第2013/010136号、米国特許第9090621号、国際公開第2015/127310号、国際公開第2015/095099号、及び米国特許出願公開第2014/221333号において既知である。
【0004】
更に、がんに加えて、特定のBTK阻害剤が、RA及び/又はMSのための臨床試験において研究されていることが報告されている(例えば、国際公開第2021/202825号及び国際公開第2020/016850号)。化合物、(S)-5-アミノ-3-(4-((5-フルオロ-2-メトキシベンズアミド)メチル)フェニル)-1-(1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド(本明細書では、「BTK-I」と称される)及びその薬学的に許容される塩は、国際公開第2017/103611号に開示されている。
【0005】
更に、BTK-Iの噴霧乾燥分散(spray dried dispersion、SDD)製剤は、国際公開第2020/028258号に開示されている。
【0006】
薬学的製剤の調製及び製造のために固体状態安定性及び化学安定性を提供するBTK-Iの新規形態が所望される。薬学的組成物は、1つ以上のポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン酢酸ビニル(polyvinylpyrrolidone vinyl acetate、PVP-VA)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxypropylmethylcellulose、HPMC)、又はヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(hydroxypropylmethylcellulose acetate succinate、HPMCAS)、例えば、HPMCAS-L、HPMCAS-M、若しくはHPMCAS-Hを含み得る。薬学的組成物はまた、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤を含み得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の特定の実施形態の目的は、安定しており、低吸湿性を有する共結晶形態を提供することである。本開示の特定の実施形態の目的は、現在の製剤よりも少ない操作プロセス工程を必要とする共結晶形態を利用することである。共結晶形態は、サプライチェーンの簡略化及び単位操作のより少ない数という利点を含む、より少ない操作プロセス工程をもたらし得る。共結晶形態は、錠剤、カプセル、及び懸濁液などの製剤に共結晶を組み込むために1回移動させるなど、異なる場所からの物質移動が少ない。SDD製剤は、第1の場所で医薬品有効成分(Active Pharmaceutical Ingredient、API)を製造することから開始し、SDD中にAPIを組み込むために第2の場所に移動し、次いで、錠剤、カプセル、及び懸濁液などの製剤中にAPIを有するSDDを組み込むために第3の場所に移動することが、一般的に認識されている。本開示の特定の実施形態の目的はまた、現在の製剤よりも少ない溶媒を必要とする共結晶形態を利用し、より少ない環境影響をもたらすことである。
【0008】
したがって、BTK-Iの共結晶形態及びその薬学的組成物が本明細書に記載される。本開示の特定の実施形態は、上記目的の一部又は全てを満たす。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様において、BTK-Iと、アジピン酸及びショウノウ酸からなる群から選択されるコフォーマとの共結晶形態が本明細書に開示される。この態様の実施形態において、BTK-I及びアジピン酸を含む共結晶形態が本明細書に開示される。
【0010】
態様の別の実施形態において、(S)-5-アミノ-3-(4-((5-フルオロ-2-メトキシベンズアミド)メチル)フェニル)-1-(1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド対アジピン酸の比が約2:1である共結晶形態(本明細書において「BTK-I及びヘミ-アジピン酸共結晶形態」と称される)が本明細書に開示される。
【0011】
態様の別の実施形態において、18.7°におけるピークと、8.1°、10.4°、11.7°、12.1°、14.2°、15.1°、17.0°、17.3°、18.1°、19.2°、19.9°、20.4°、20.9°、21.6°、22.1°、23.7°、24.3°、24.8°、25.5°、26.1°、27.2°、27.4°、28.3°、又は29.8°における1つ以上のピークとを含み、回折角の許容差が±0.2度である、CuKα放射線を使用するX線粉末回折(x-ray powder diffraction、XRPD)パターンを有することを特徴とするBTK-I及びヘミ-アジピン酸共結晶形態が本明細書に開示される。態様の別の実施形態において、10.4°、14.2°、15.1°、17.0°、及び21.6°からなる群から選択されるピークのうちの1つ以上と組み合わせて、18.7°の回折角2シータにおける回折ピークを有し、回折角の許容差が±0.2度である、CuKα放射線を使用するXRPDパターンを特徴とするBTK-I及びヘミ-アジピン酸共結晶形態が本明細書に開示される。態様の別の実施形態において、14.2°、17.0°、及び21.6°からなる群から選択されるピークのうちの1つ以上と組み合わせて、18.7°の回折角2シータにおける回折ピークを有し、回折角の許容差が±0.2度である、CuKα放射線を使用するXRPDパターンを特徴とするBTK-I及びヘミ-アジピン酸共結晶形態が本明細書に開示される。態様の別の実施形態において、17.0°及び21.6°からなる群から選択されるピークのうちの1つ以上と組み合わせて、18.7°の回折角2シータにおける回折ピークを有し、回折角の許容差が±0.2度である、CuKα放射線を使用するXRPDパターンを特徴とするBTK-I及びヘミ-アジピン酸共結晶形態が本明細書に開示される。態様の別の実施形態において、回折角2シータにおける回折ピークが18.7°である共結晶形態が本明細書に開示される。態様の別の実施形態において、回折角2シータにおける1つ以上のピークが17.0°及び21.6°からなる群から選択される共結晶形態が本明細書に開示される。
【0012】
態様の別の実施形態において、BTK-I及びヘミ-アジピン酸共結晶形態の13C固体NMRスペクトルが、174.6、167.6、166.1、157.5、155.5、152.7、150.9、150.3、141,1、140.4、130.1、129.3、127.7、126.6、123.6、120.7、120.2、118.5、116.5、114.1、112.8、91.2、63.6、58.6、56.8、52.2、44.0、34.5、33.2、25.1、24.7、13.8、13.2ppmにおけるアダマンタンの高磁場共鳴(δ=29.5ppm)を基準とするピークを含み、許容差が±0.2ppmであることを特徴とするBTK-I及びヘミ-アジピン酸共結晶形態が本明細書に開示される。態様の別の実施形態において、174.6、91.2、44.0、13.8、及び13.2ppmにおけるアダマンタンの高磁場共鳴を基準とするピークを含み、許容差が±0.2ppmである、13C固体NMRスペクトルを特徴とする共結晶形態が本明細書に開示される。態様の別の実施形態において、例えば、以下のような構造によって表され得る、BTK-I及びヘミ-アジピン酸共結晶形態が本明細書に開示される:
【0013】
【0014】
この態様の実施形態において、BTK-Iとショウノウ酸との共結晶形態が本明細書に開示される。この態様の別の実施形態において、(S)-5-アミノ-3-(4-((5-フルオロ-2-メトキシベンズアミド)メチル)フェニル)-1-(1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド及びショウノウ酸を含む共結晶形態(本明細書において「BTK-I及びショウノウ酸共結晶形態」と称される)が本明細書に開示される。この態様の別の実施形態において、(S)-5-アミノ-3-(4-((5-フルオロ-2-メトキシベンズアミド)メチル)フェニル)-1-(1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド対ショウノウ酸の比が約1:1であるBTK-I及びショウノウ酸共結晶形態(本明細書において「BTK-I及びモノ-ショウノウ酸共結晶形態」と称される)が本明細書に開示される。この態様の別の実施形態において、17.7°におけるピークと、7.2°、8.3°、10.2°、11.7°、11.9°、12.6°、13.4°、13.8°、14.5°、15.6°、15.8°、16.7°、19.0°、20.4°、21.1°、23.6°、25.5°、26.1°、又は27.2°における1つ以上のピークとを含み、許容差が±0.2ppmである、CuKα放射線を使用するXRPDパターンを有することを特徴とするBTK-I及びモノ-ショウノウ酸共結晶形態が本明細書に開示される。この態様の別の実施形態において、7.2°、8.3°、12.6°、14.5°、及び16.7°からなる群から選択されるピークのうちの1つ以上と組み合わせて、17.7°の回折角2シータにおける回折ピークを有し、回折角の許容差が±0.2度である、CuKα放射線を使用するXRPDパターンを特徴とするBTK-I及びモノ-ショウノウ酸共結晶形態が本明細書に開示される。この態様の別の実施形態において、7.2°、14.5°、及び16.7°からなる群から選択されるピークのうちの1つ以上と組み合わせて、17.7°の回折角2シータにおける回折ピークを有し、回折角の許容差が±0.2度である、CuKα放射線を使用するXRPDパターンを特徴とするBTK-I及びモノ-ショウノウ酸共結晶形態が本明細書に開示される。この態様の別の実施形態において、7.2°及び14.5°からなる群から選択されるピークのうちの1つ以上と組み合わせて、17.7°の回折角2シータにおける回折ピークを有し、回折角の許容差が±0.2度である、CuKα放射線を使用するXRPDパターンを特徴とするBTK-I及びモノ-ショウノウ酸共結晶形態が本明細書に開示される。この態様の別の実施形態において、回折角2シータにおける回折ピークが17.7°である共結晶形態が本明細書に開示される。この態様の別の実施形態において、回折角2シータにおける1つ以上のピークが7.2°及び14.5°からなる群から選択される共結晶形態が本明細書に開示される。この態様の別の実施形態において、例えば、以下のような構造によって表され得る、BTK-I及びモノ-ショウノウ酸共結晶形態が本明細書に開示される:
【0015】
【0016】
別の態様において、共結晶形態を含み、1つ以上のポリマーを更に含む薬学的組成物が本明細書に開示される。本明細書に開示されるこの態様の実施形態において、PVP-VA、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、又はHPMCAS、例えば、HPMCAS-L、HPMCAS-M、若しくはHPMCAS-Hである。
【0017】
本明細書に開示されるこの態様の別の実施形態において、共結晶形態を含む薬学的組成物は、約90重量部の共結晶形態及び約10重量部のポリマー、約80重量部の共結晶形態及び約20重量部のポリマー、約70重量部の共結晶形態及び約30重量部のポリマー、又は約50重量部の共結晶形態及び約50重量部のポリマーを含み得る。本明細書に開示されるこの態様の別の実施形態において、薬学的組成物は、約80重量部の共結晶形態及び約20重量部のポリマーを含む。
【0018】
本明細書に開示されるこの態様の別の実施形態において、薬学的組成物は、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤を更に含む。この態様の別の実施形態において、薬学的組成物、及び薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤が本明細書に開示される。この態様の別の実施形態において、薬学的組成物が本明細書に開示され、本組成物は、約20重量%未満のBTK-Iと異なるコフォーマとの他の共結晶形態を含有する。この態様の別の実施形態において、薬学的組成物が本明細書に開示され、本組成物は、約10重量%未満のBTK-Iと異なるコフォーマとの他の共結晶形態を含有する。この態様の別の実施形態において、薬学的組成物が本明細書に開示され、本組成物は、約5重量%未満のBTK-Iと異なるコフォーマとの他の共結晶形態を含有する。
【0019】
別の態様において、有効量の本発明の共結晶又はその薬学的組成物を投与することを含む、がんの治療を、それを必要とする患者において行う方法が本明細書に開示される。この態様の実施形態において、BTK-I及びヘミ-アジピン酸共結晶形態、及びBTK-Iを投与することを含む、BTK関連がんの治療を、それを必要とする患者において行う方法が本明細書に開示される。この態様の別の実施形態において、BTK-I及びモノ-ショウノウ酸共結晶形態を投与することを含む、BTK関連がんの治療を、それを必要とする患者において行う方法が本明細書に開示される。本明細書に開示されるこの態様の別の実施形態において、BTK関連がんは、B細胞悪性腫瘍、B細胞リンパ腫、MZL、DLBCL、CLL、SLL、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、MCL、FL、有毛細胞白血病、B細胞非ホジキンリンパ腫、WM、B細胞前リンパ球性白血病、及びMMからなる群から選択される。本明細書に開示されるこの態様の別の実施形態において、BTK関連がんは、MCLである。本明細書に開示されるこの態様の別の実施形態において、BTK関連がんは、CLLである。本明細書に開示されるこの態様の別の実施形態において、BTK関連がんは、SLLである。本明細書に開示されるこの態様の別の実施形態において、BTK関連がんは、FLである。本明細書に開示されるこの態様の別の実施形態において、BTK関連がんは、MZLである。本明細書に開示されるこの態様の別の実施形態において、MZLは、脾臓、結節、又は結節外である。本明細書に開示されるこの態様の別の実施形態において、BTK関連がんは、DLBCLである。本明細書に開示されるこの態様の別の実施形態において、BTK関連がんは、B細胞非ホジキンリンパ腫、MCL、CLL、又はSLLである。本明細書に開示されるこの態様の別の実施形態において、BTK関連がんは、MCL、CLL、SLL、WM、FL、及びMZLからなる群から選択される。
【0020】
別の態様において、有効量の本発明の共結晶又はその薬学的組成物を患者に投与することを含む、ブルトン型チロシンキナーゼの阻害を、それを必要とする患者において行う方法が本明細書に開示される。
【0021】
別の態様において、有効量の本発明の共結晶又はその薬学的組成物を投与することを含む、MSの治療を、それを必要とする患者において行う方法が本明細書に開示される。
【0022】
別の態様において、有効量の本発明の共結晶又はその薬学的組成物を投与することを含む、関節炎、より具体的にはRAの治療を、それを必要とする患者において行う方法が本明細書に開示される。
【0023】
別の態様において、療法における使用のための本発明の共結晶又はその薬学的組成物が本明細書に開示される。この態様の実施形態において、がんの治療における使用のための本発明の共結晶又はその薬学的組成物が本明細書に開示される。この態様の別の実施形態において、BTK関連がんの治療における使用のためのBTK-I及びヘミ-アジピン酸共結晶形態が本明細書に開示される。この態様の別の実施形態において、BTK関連がんの治療における使用のためのBTK-I及びモノ-ショウノウ酸共結晶形態が本明細書に開示される。本明細書に開示されるこの態様の別の実施形態において、BTK関連がんは、B細胞悪性腫瘍、B細胞リンパ腫、MZL、DLBCL、CLL、SLL、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、MCL、FL、有毛細胞白血病、B細胞非ホジキンリンパ腫、WM、B細胞前リンパ球性白血病、及びMMからなる群から選択される。本明細書に開示されるこの態様の別の実施形態において、BTK関連がんは、MCLである。本明細書に開示されるこの態様の別の実施形態において、BTK関連がんは、CLLである。本明細書に開示されるこの態様の別の実施形態において、BTK関連がんは、SLLである。本明細書に開示されるこの態様の別の実施形態において、BTK関連がんは、FLである。本明細書に開示されるこの態様の別の実施形態において、BTK関連がんは、MZLである。本明細書に開示されるこの態様の別の実施形態において、MZLは、脾臓、結節、又は結節外である。本明細書に開示されるこの態様の別の実施形態において、BTK関連がんは、DLBCLである。本明細書に開示されるこの態様の別の実施形態において、BTK関連がんは、B細胞非ホジキンリンパ腫、MCL、CLL、又はSLLである。本明細書に開示されるこの態様の別の実施形態において、BTK関連がんは、MCL、CLL、SLL、WM、FL、及びMZLからなる群から選択される。
【0024】
別の態様において、ブルトン型チロシンキナーゼの阻害における使用のための本発明の共結晶又はその薬学的組成物が本明細書に開示される。
【0025】
別の態様において、MSの治療における使用のための共結晶又はその薬学的組成物が本明細書に開示される。
【0026】
別の態様において、関節炎、特にRAの治療における使用のための共結晶又はその薬学的組成物が本明細書に開示される。
【0027】
別の態様において、がんの治療のための薬剤の製造における本発明の共結晶又はその薬学的組成物の使用が本明細書に開示される。この態様の実施形態において、BTK関連がんの治療のための薬剤の製造におけるBTK-I及びヘミ-アジピン酸共結晶形態の使用が本明細書に開示される。この態様の別の実施形態において、BTK関連がんの治療のための薬剤の製造におけるBTK-I及びモノ-ショウノウ酸共結晶形態の使用が本明細書に開示される。本明細書に開示されるこの態様の別の実施形態において、BTK関連がんは、B細胞悪性腫瘍、B細胞リンパ腫、MZL、DLBCL、CLL、SLL、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、MCL、FL、有毛細胞白血病、B細胞非ホジキンリンパ腫、WM、B細胞前リンパ球性白血病、及びMMからなる群から選択される。本明細書に開示されるこの態様の別の実施形態において、BTK関連がんは、MCLである。本明細書に開示されるこの態様の別の実施形態において、BTK関連がんは、CLLである。本明細書に開示されるこの態様の別の実施形態において、BTK関連がんは、SLLである。本明細書に開示されるこの態様の別の実施形態において、BTK関連がんは、FLである。本明細書に開示されるこの態様の別の実施形態において、BTK関連がんは、MZLである。本明細書に開示されるこの態様の別の実施形態において、MZLは、脾臓、結節、又は結節外である。本明細書に開示されるこの態様の別の実施形態において、BTK関連がんは、DLBCLである。本明細書に開示されるこの態様の別の実施形態において、BTK関連がんは、B細胞非ホジキンリンパ腫、MCL、CLL、又はSLLである。本明細書に開示されるこの態様の別の実施形態において、BTK関連がんは、MCL、CLL、SLL、WM、FL、及びMZLからなる群から選択される。
【0028】
別の態様において、ブルトン型チロシンキナーゼを阻害するための薬剤の製造における本発明の共結晶又はその薬学的組成物の使用が本明細書に開示される。
【0029】
別の態様において、MSの治療のための薬剤の製造における共結晶又はその薬学的組成物の使用が本明細書に開示される。
【0030】
別の態様において、関節炎、特にRAの治療のための薬剤の製造における共結晶又はその薬学的組成物の使用が本明細書に開示される。
【0031】
別の態様において、アジピン酸をBTK-I及びヘミ-アジピン酸共結晶形態溶媒中に懸濁及び部分的に溶解させる工程と、BTK-Iを添加し、加熱しながら撹拌する工程と、BTK-I及びヘミ-アジピン酸共結晶形態を単離する工程と、を含む、BTK-I及びヘミ-アジピン酸共結晶形態の調製のためのプロセスが本明細書に開示される。この態様の実施形態において、単離する工程が、真空下で濾過し、続いて窒素流下で乾燥させることによるものであるプロセスが本明細書に開示される。この態様の別の実施形態において、熱が約55℃であるプロセスが本明細書に開示される。この態様の別の実施形態において、撹拌する工程が約500rpmであるプロセスが本明細書に開示される。この態様の別の実施形態において、加熱しながら撹拌する工程が約1時間起こるプロセスが本明細書に開示される。この態様の別の実施形態において、BTK-I及びヘミ-アジピン酸共結晶形態溶媒が、酢酸エチル、シクロペンチルメチルエーテル、イソプロピルアルコール、及びアセトニトリルからなる群から選択されるプロセスが本明細書に開示される。この態様の別の実施形態において、BTK-I及びヘミ-アジピン酸共結晶形態溶媒が酢酸エチルであるプロセスが本明細書に開示される。
【0032】
別の態様において、BTK-Iを、ショウノウ酸で飽和されたBTK-I及びモノ-ショウノウ酸共結晶溶媒中に懸濁する工程と、加熱しながら撹拌し、続いて加熱せずに撹拌する工程と、BTK-I及びモノ-ショウノウ酸共結晶形態を単離する工程と、を含む、BTK-I及びモノ-ショウノウ酸共結晶形態の調製のためのプロセスが本明細書に開示される。この態様の実施形態において、単離する工程が、真空下で濾過することによるものであるプロセスが本明細書に開示される。この態様の別の実施形態において、熱が約50℃であるプロセスが本明細書に開示される。この態様の別の実施形態において、撹拌する工程が約800rpmであるプロセスが本明細書に開示される。この態様の別の実施形態において、加熱しながら撹拌する工程が約2時間起こるプロセスが本明細書に開示される。この態様の別の実施形態において、加熱せずに撹拌する工程が2時間を超えて起きるプロセスが本明細書に開示される。この態様の別の実施形態において、BTK-I及びモノ-ショウノウ酸共結晶溶媒がシクロペンチルメチルエーテルであるプロセスが本明細書に開示される。
【0033】
別の態様において、本発明のプロセスのいずれかによって得ることができるBTK-Iの共結晶形態が本明細書に開示される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】BTK-I結晶性遊離形態(下)、BTK-I及びヘミ-アジピン酸共結晶形態(中)、並びにBTK-I及びショウノウ酸共結晶形態(上)のX線粉末回折オーバーレイである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
定義
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって通例理解されている意味を有する。本明細書で使用される場合、以下の用語は、特に指定されない限り、以下の用語に帰する意味を有する。
【0036】
ヘキサン二酸としても既知のアジピン酸は、以下の式で例示される構造を有する:
【0037】
【0038】
rel-(1R,3S)-1,2,2-トリメチルシクロペンタン-1,3-ジカルボン酸又は(1R,3S)-rel-1,2,2-トリメチルシクロペンタン-1,3-ジカルボン酸としても既知のショウノウ酸は、以下の式で例示される構造を有する:
【0039】
【0040】
5-アミノ-3-[4-[[(5-フルオロ-2-メトキシ-ベンゾイル)アミノ]メチル]フェニル]-1-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチル-エチル]ピラゾール-4-カルボキサミド又は(S)-5-アミノ-3-(4-((5-フルオロ-2-メトキシベンズアミド)メチル)フェニル)-1-(1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミドとしても既知の化合物BTK-Iは、以下に例示される構造を有する:
【0041】
【0042】
BTK-Iは、米国特許第10,342,780号に記載されているように調製することができる。
【0043】
「治療」、「治療する」、「治療すること」などの用語は、障害の進行を遅延させること、停止させること、又は反転させることを含むことを意味する。これらの用語はまた、障害又は状態が実際に排除されない場合でも、かつ障害又は状態の進行自体が遅延又は反転されない場合でも、障害又は状態のうちの1つ以上の症状を緩和、寛解、減衰、排除、又は軽減することを含む。
【0044】
「有効量」という用語は、化合物の、それを必要とする患者に療法的利益を提供することができる量を意味する。特定の患者における有効量は、化合物又はその塩が投与されるかどうか;患者のサイズ、年齢、性別、及び全般的健康状態;がん、疾病、又は疾患のステージ及び/又は重症度;以前の療法に対する個々の患者の応答性;患者が、以前の療法後に疾患、疾病、又はがんの再発を有するかどうか;投与様式;投与される製剤のバイオアベイラビリティ特徴;選択された投与レジメン;及び他の併用薬の使用などの要因によって影響され得る。
【0045】
「療法的利益」という用語は、生存の改善、症状の低減、機能的能力の回復、又は慢性状態を発症する機会の低下を意味する。そのような療法的利益の測定には、全生存期間、無進行生存期間、進行期間、無疾患生存期間、無事象生存期間、治療失敗までの期間、次の治療までの期間、臨床利益の持続期間、応答の持続期間、客観的応答率、完全応答、病理学的完全応答、疾患制御率、臨床利益率、健康に関連した生活の質、及びマイルストーン生存期間の増加が含まれる。以下を参照されたい:A.Delgado and A.K.Guddati,Clinical Endpoints in Oncology-a Primer,Am J Cancer Res,2021;11(4):1121-1131。
【0046】
本明細書で使用される場合、「患者」という用語は、ヒトを指す。
【0047】
記載をより簡潔にするために、本明細書の定量的表現のうちのいくつかは、約量X~約量Yの範囲として列挙される。範囲が列挙される場合、範囲は、その列挙された上限及び下限に限定されず、むしろ、約量X~約量Yの全範囲、又はその中の任意の範囲を含むことが理解される。
【0048】
「室温」又は「RT(Room temperature)」とは、一般的な実験室の周囲温度を指し、通常は約25℃である。
【0049】
本明細書で使用される場合、「賦形剤」という用語は、組成物を所望の形態に製剤化するのに必要な任意の物質を指す。例えば、好適な賦形剤には、希釈剤又は充填剤、結合剤又は造粒剤又は接着剤、崩壊剤、潤滑剤、粘着防止剤、流動促進剤、分散剤又は湿潤剤、溶解遅延剤又は促進剤、吸着剤、緩衝剤、キレート剤、保存剤、着色剤、香味料、及び甘味料が含まれるが、これらに限定されない。
【0050】
「薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤」は、ヒトへの生物学的に活性な薬剤の送達のために当該技術分野において概して許容されている媒体である。「薬学的に許容される担体」又は「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、生物学的に又はそれ以外でも望ましくないものではない、任意及び全ての溶媒、共溶媒、錯化剤、分散媒体、コーティング、フィルム、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤、並びに吸収遅延剤などを含む。薬学的に活性な物質のためのそのような媒体及び薬剤の使用は、当該技術分野において周知である。任意の従来の媒体又は薬剤が活性成分と不適合である場合を除き、治療用製剤におけるその使用が意図されている。補助的な活性成分もまた、製剤中に組み入れられ得る。加えて、本技術分野で通例使用されているような、様々な賦形剤が含まれ得る。これら及び他のそのような化合物は、文献、例えば、Merck Index,Merck & Company,Rahway,N.Jに記載されている。薬学的組成物中に様々な成分を含めるための考慮事項は、例えば、Gilman et al.(Eds.).2010、Goodman and Gilman’s:The Pharmacological Basis of Therapeutics,12th Ed.,The McGraw-Hill Companiesに記載されている。
【0051】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、特に文脈によって明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。
【0052】
本明細書で使用される場合、範囲及び量は、「約」特定の値又は範囲として表すことができ、特に「約」は、数値の5%又は10%以内を意味する。約には正確な量も含まれる。したがって、「約5グラム」は、「約5グラム」及び「5グラム」も意味する。本明細書で表される範囲は、その範囲内の整数及びその分数を含むことも理解される。例えば、5グラム~20グラムの範囲は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、及び22グラムなどの整数値、並びに4.5、4.75、5.25、6.5、8.75、11.95、及び21.95グラムを含むが、これらに限定されない範囲内の分数を含む。
【0053】
本明細書で使用されるとき、「必要に応じた」又は「必要に応じて」は、引き続いて記載された事象又は状況が起きるか又は起きないこと、並びに記載が、当該事象又は状況が起こる場合の例及びそれが起こらない場合の例を含むことを意味する。例えば、「必要に応じて触媒を含む」反応混合物は、反応混合物が触媒を含むか、又は触媒を含まないことを意味する。
【0054】
本明細書で使用される場合、「相対強度」は、関連するスペクトルにおける最も高いピークに対する任意のピークのパーセンテージを意味する。
【0055】
明確さのために別個の実施形態の文脈で記載される本開示のある特定の特徴はまた、単一の実施形態において組み合わせて提供され得ることが理解される。逆に、簡潔さのために単一の実施形態の文脈で記載される開示の様々な特徴はまた、別個に、又は任意の好適な部分的組み合わせとして提供され得る。
【0056】
本明細書に記載の態様に関する実施形態の全ての組み合わせは、かかる組み合わせが可能な態様を包含する程度まで、あたかもありとあらゆる組み合わせが個別に明示的に列挙されたかのように、本開示によって具体的に包含される。加えて、本明細書に記載の態様に含まれる実施形態の全ての部分的組み合わせ、及び本明細書に記載の他の全ての態様に含まれる実施形態の全ての部分的組み合わせも、あたかも全ての実施形態のありとあらゆる部分的組み合わせが、本明細書に明示的に列挙されているかのように、本開示によって具体的に包含される。
【0057】
以下の例により、本開示を更に説明する。
【0058】
XRPDパターンは、実施例1及び実施例2に記載の機器で得られる。各々について、乾燥粉末は、石英試料ホルダーに充填され、滑らかな表面は、ガラススライドを使用して得られる。結晶形態回折パターンは、周囲温度及び相対湿度で収集される。結晶ピーク位置は、8.853及び26.774 2θ°のピークを有する内部NIST 675標準に基づいて全体パターンシフト後、MDI-Jadeで決定される。
【0059】
任意の所与の結晶形態について、回折ピークの相対強度が、結晶モルフォロジ及び晶癖などの要因に起因する優先配向によって変動し得ることは、結晶学分野において周知である。優先配向の効果が存在する場合、ピーク強度は改変されるが、形態の特徴的なピーク位置は不変である。例えば、The United States Pharmacopeia#23,National Formulary #18,pages1843-1844,1995を参照されたい。更に、所与の任意の結晶形態について、角ピーク位置がわずかに変化し得ることも、結晶学の分野において周知である。例えば、ピーク位置は、試料が分析される温度の変動、試料変位、又は内部標準の存在若しくは不在によってシフトすることができる。この場合、±0.2 2θ°のピーク位置変動性は、示された結晶形態の明確な同定を妨げることなく、これらの潜在的な変動を考慮に入れると推定される。結晶形態の確認を特徴的なピークの任意の固有の組み合わせに基づいて行うことができる。
【0060】
固体NMRは、100.6MHzの周波数で作動するBruker Ultrashield 400WB Plus磁石を備えたBruker Avance III HDで得られる。用いられたプローブは、Bruker MAS 4 BL CP BB DVT N-P/Hである。取得パラメータは次のとおりである:31104走査、34ミリ秒の取得時間、4.6秒のパルス間遅延、10kHzのMAS周波数、1.5ミリ秒の接触時間、及びSPINAL64デカップリングスキーム。データは、29.5ppm±0.2ppmにおけるアダマンタンを外部基準にしている。
【実施例1】
【0061】
(S)-5-アミノ-3-(4-((5-フルオロ-2-メトキシベンズアミド)メチル)フェニル)-1-(1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド(「BTK-I」)、ヘミ-アジピン酸共結晶形態(「BTK-I及びヘミ-アジピン酸共結晶形態」)
【0062】
【0063】
酢酸エチル(60mL)中のアジピン酸(2.42g、16.56mmol)を懸濁し、部分的に溶解し、混合物を55℃まで加熱する。(S)-5-アミノ-3-(4-((5-フルオロ-2-メトキシベンズアミド)メチル)フェニル)-1-(1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド(15.08g、31.45mmol)を添加し、混合物を500rpm、55℃で撹拌する。固体は決して完全には溶解しないが、次の数分でスラリーは、明るい黄褐色から明るい白色に変化する。反応物を1時間撹拌し、熱源を除去する。白色固体を真空下でナイロンフィルター上に単離し、窒素流下で15分間乾燥させる。固体を65℃の真空オーブンで48時間乾燥させて、表題化合物(16.3g、94.3%)を得る。BTK-I及びヘミ-アジピン酸共結晶形態の13C固体NMR(101MHz)は、δ174.6、167.6、166.8、166.1、157.5、155.5、152.7、150.9、150.3、141,1、140.4、132.1、130.1、129.3、127.7、126.6、123.6、120.7、120.2、118.5、116.5、114.1、112.8、91.2、63.6、58.6、56.8、52.2、44.0、34.5、33.2、25.1、24.7、13.8、13.2におけるピークを含む。
【0064】
BTK-I及びヘミ-アジピン酸共結晶形態のXRPD
BTK-I及びヘミ-アジピン酸共結晶形態固体のXRPDパターンは、CuKα(1.5418Å)源及びVantec検出器を備えた、35kV及び50mAで動作しているBruker D4 Endeavor X線粉末回折計で得られる。BTK-I及びヘミ-アジピン酸共結晶形態試料は、0.008の2θ°の工程サイズ及び0.5秒/工程の走査速度で、かつ1.0mmの発散スリット、6.6mmの固定散乱防止スリット、及び11.3mmの検出スリットを使用して、4~40の2θ°で走査される。
【0065】
BTK-I及びヘミ-アジピン酸共結晶形態のXRPD
BTK-I及びヘミ-アジピン酸共結晶形態の調製された試料は、以下の表1に記載の回折ピーク(2-シータ値)を有するものとして、特に、14.2、17.0、及び21.6からなる群から選択されるピークのうちの1つ以上と組み合わせて、18.7におけるピークを有するものとして、CuKα放射線を使用するXRPDパターンを特徴とし、回折角の許容差は、±0.2度である。
【0066】
【0067】
代替的実施例1
BTK-I及びヘミ-アジピン酸共結晶形態
代替的に、BTK-I及びヘミ-アジピン酸共結晶形態は、酢酸エチル以外の溶媒を使用して作製することができ、例えば、溶媒としてのイソプロピルアルコールは、以下のように行うことができる:(S)-5-アミノ-3-(4-((5-フルオロ-2-メトキシベンズアミド)メチル)フェニル)-1-(1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド(1.75g、3.65mmol)及びアジピン酸(0.266g、1.82mmol)をイソプロピルアルコール(20mL)に懸濁する。スラリーを80℃まで加熱する。全ての固体が溶解する。溶液を65℃まで冷却し、次いで1重量%共結晶を播種する。線状冷却勾配を使用して、混合物を8時間かけて55℃まで冷却する。撹拌を200rpmで維持する。固体を、真空濾過を使用してWhatman(登録商標)#1フィルター上に単離して、表題化合物(1.37g、68.3%)を得る。
【実施例2】
【0068】
(S)-5-アミノ-3-(4-((5-フルオロ-2-メトキシベンズアミド)メチル)フェニル)-1-(1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド、(1R,3S)-1,2,2-トリメチルシクロペンタン-1,3-ジカルボン酸(「ショウノウ酸」)(「BTK-I及びモノ-ショウノウ酸共結晶形態」)
【0069】
【0070】
(S)-5-アミノ-3-(4-((5-フルオロ-2-メトキシベンズアミド)メチル)フェニル)-1-(1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド(466mg、0.97mmol)を、ショウノウ酸で飽和したシクロペンチルメチルエーテル(20mL)に懸濁し、50℃、800rpmで撹拌する。反応物は、白色固体(最初はわずかに黄褐色)のスラリーになる。混合物を50℃で2時間スラリーとして撹拌する。熱源を取り除き、混合物を室温で一晩撹拌する。白色固体を真空下で濾過によって単離して、表題化合物(564mg、収率87.4%)を得る。
【0071】
BTK-I及びモノ-ショウノウ酸共結晶形態のXRPD
BTK-I及びモノ-ショウノウ酸共結晶形態固体のXRPDパターンは、CuKα(1.5418Å)源及びLinxeye検出器を備えた、40kV及び40mAで動作しているBruker D8 Endeavor X線粉末回折計で得られる。BTK-I及びモノ-ショウノウ酸共結晶形態試料は、0.009の2θ°の工程サイズ及び0.5秒/工程の走査速度で、かつ0.3°の一次スリット開口、及び3.9°の位置検知形検出器(position sensitive detector、PSD)開口を使用して、4~42の2θ°で走査される。
【0072】
BTK-I、(1R,3S)-1,2,2-トリメチルシクロペンタン-1,3-ジカルボン酸のXRPD
BTK-I、(1R,3S)-1,2,2-トリメチルシクロペンタン-1,3-ジカルボン酸の調製された試料は、表2に記載の回折ピーク(2-シータ値)を有するものとして、特に、7.2、14.5、及び16.7からなる群から選択されるピークのうちの1つ以上と組み合わせて、17.7におけるピークを有するものとして、CuKα放射線を使用するXRPDパターンを特徴とし、回折角の許容差は、±0.2度である。
【0073】
【手続補正書】
【提出日】2023-11-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式を含む、(S)-5-アミノ-3-(4-((5-フルオロ-2-メトキシベンズアミド)メチル)フェニル)-1-(1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミドの結晶形態:
【化1】
【請求項2】
18.7°±0.2°の2シータ角におけるXRPDピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを有する、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項3】
8.1°±0.2°、10.4°±0.2°、11.7°±0.2°、12.1°±0.2°、14.2°±0.2°、15.1°±0.2°、17.0°±0.2°、17.3°±0.2°、18.1°±0.2°、19.2°±0.2°、19.9°±0.2°、20.4°±0.2°、20.9°±0.2°、21.6°±0.2°、22.1°±0.2°、23.7°±0.2°、24.3°±0.2°、24.8°±0.2°、25.5°±0.2°、26.1°±0.2°、27.2°±0.2°、27.4°±0.2°、28.3°±0.2°、又は29.8°±0.2の2シータ角における1つ以上のXRPDピークを更に含むX線粉末回折(XRPD)パターンを有する、請求項2に記載の結晶形態。
【請求項4】
18.7°±0.2°、17.0°±0.2°、及び21.6°±0.2°の2シータ角におけるXRPDピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを有する、請求項2に記載の結晶形態。
【請求項5】
18.7°±0.2°、14.2°±0.2°、17.0°±0.2°、及び21.6°±0.2°の2シータ角におけるXRPDピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを有する、請求項2に記載の結晶形態。
【請求項6】
請求項1に記載の結晶形態と、薬学的に許容される担体、希釈剤、及び/又は賦形剤と、を含む、薬学的組成物。
【請求項7】
ポリビニルピロリドン酢酸ビニル(PVP-VA)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、又はヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)からなる群から選択される1つ以上のポリマーを含む、請求項6に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記HPMCASが、HPMCAS-L、HPMCAS-M、及びHPMCAS-Hからなる群から選択される、請求項7に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)関連がんの治療における使用のための、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項10】
前記BTK関連がんが、B細胞悪性腫瘍、B細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、慢性リンパ球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、有毛細胞白血病、B細胞非ホジキンリンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、及び多発性骨髄腫から選択される、請求項9に記載の使用のための結晶形態。
【請求項11】
前記BTK関連がんが、慢性リンパ球性白血病である、請求項10に記載の使用のための結晶形態。
【請求項12】
前記BTK関連がんが、小リンパ球性リンパ腫である、請求項10に記載の使用のための結晶形態。
【請求項13】
前記BTK関連がんが、マントル細胞リンパ腫である、請求項10に記載の使用のための結晶形態。
【請求項14】
多発性硬化症の治療における使用のための、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項15】
関節炎の治療における使用のための、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項16】
前記関節炎が、リウマチ性関節炎である、請求項15に記載の使用のための結晶形態。
【請求項17】
請求項1に記載の結晶形態を調製するためのプロセスであって、
溶媒中で、(S)-5-アミノ-3-(4-((5-フルオロ-2-メトキシベンズアミド)メチル)フェニル)-1-(1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミドと、アジピン酸とを混合することと、
前記混合物を約55℃まで加熱することと、を含む、プロセス。
【請求項18】
前記溶媒が、酢酸エチル、シクロペンチルメチルエーテル、イソプロピルアルコール、及びアセトニトリルからなる群から選択される、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記混合物が、約500rpmで撹拌される、請求項17に記載のプロセス。
【請求項20】
請求項1に記載の結晶形態を単離することを更に含む、請求項18に記載のプロセス。
【請求項21】
請求項1に記載の結晶形態を単離することを更に含む、請求項19に記載のプロセス。
【請求項22】
請求項1に記載の結晶形態を調製するためのプロセスであって、
溶媒中で、(S)-5-アミノ-3-(4-((5-フルオロ-2-メトキシベンズアミド)メチル)フェニル)-1-(1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミドと、アジピン酸とを混合することと、
前記混合物を約80℃まで加熱することと、を含む、プロセス。
【請求項23】
前記混合物が、約65℃まで冷却され、1重量%の請求項1に記載の結晶形態が播種される、請求項22に記載のプロセス。
【請求項24】
請求項1に記載の結晶形態を単離することを更に含む、請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
以下の式を含む、(S)-5-アミノ-3-(4-((5-フルオロ-2-メトキシベンズアミド)メチル)フェニル)-1-(1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミドの結晶形態:
【化2】
【請求項26】
17.7°±0.2°の2シータ角におけるXRPDピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを有する、請求項25に記載の結晶形態。
【請求項27】
7.2°±0.2°、8.3°±0.2°、10.2°±0.2°、11.7°±0.2°、11.9°±0.2°、12.6°±0.2°、13.4°±0.2°、13.8°±0.2°、14.5°±0.2°、15.6°±0.2°、15.8°±0.2°、16.7°±0.2°、19.0°±0.2°、20.4°±0.2°、21.1°±0.2°、23.6°±0.2°、25.5°±0.2°、26.1°±0.2°、又は27.2°±0.2°の2シータ角における1つ以上のXRPDピークを更に含むX線粉末回折(XRPD)パターンを有する、請求項26に記載の結晶形態。
【請求項28】
7.2°±0.2°、14.5°±0.2°、16.7°±0.2°、及び17.7°±0.2°の2シータ角におけるXRPDピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを有する、請求項26に記載の結晶形態。
【請求項29】
7.2°±0.2°、14.5±0.2°、及び17.7°±0.2°の2シータ角におけるXRPDピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを有する、請求項26に記載の結晶形態。
【請求項30】
請求項25に記載の結晶形態と、薬学的に許容される担体、希釈剤、及び/又は賦形剤と、を含む、薬学的組成物。
【請求項31】
ポリビニルピロリドン酢酸ビニル(PVP-VA)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、又はヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)からなる群から選択される1つ以上のポリマーを含む、請求項30に記載の薬学的組成物。
【請求項32】
前記HPMCASが、HPMCAS-L、HPMCAS-M、及びHPMCAS-Hからなる群から選択される、請求項31に記載の薬学的組成物。
【請求項33】
ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)関連がんの治療における使用のための、請求項25に記載の結晶形態。
【請求項34】
前記BTK関連がんが、B細胞悪性腫瘍、B細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、慢性リンパ球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、有毛細胞白血病、B細胞非ホジキンリンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、及び多発性骨髄腫から選択される、請求項33に記載の使用のための結晶形態。
【請求項35】
前記BTK関連がんが、慢性リンパ球性白血病である、請求項34に記載の使用のための結晶形態。
【請求項36】
前記BTK関連がんが、小リンパ球性リンパ腫である、請求項34に記載の使用のための結晶形態。
【請求項37】
前記BTK関連がんが、マントル細胞リンパ腫である、請求項34に記載の使用のための結晶形態。
【請求項38】
多発性硬化症の治療における使用のための、請求項25に記載の結晶形態。
【請求項39】
関節炎の治療における使用のための、請求項25に記載の結晶形態。
【請求項40】
前記関節炎が、リウマチ性関節炎である、請求項39に記載の使用のための結晶形態。
【請求項41】
請求項25に記載の結晶形態を調製するためのプロセスであって、
溶媒中で、(S)-5-アミノ-3-(4-((5-フルオロ-2-メトキシベンズアミド)メチル)フェニル)-1-(1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミドと、ショウノウ酸とを混合することと、
前記混合物を約50℃まで加熱することと、を含む、プロセス。
【請求項42】
前記溶媒が、酢酸エチル、シクロペンチルメチルエーテル、イソプロピルアルコール、及びアセトニトリルからなる群から選択される、請求項41に記載のプロセス。
【請求項43】
前記混合物が、約800rpmで撹拌される、請求項41に記載のプロセス。
【請求項44】
請求項25に記載の結晶形態を単離することを更に含む、請求項42に記載のプロセス。
【請求項45】
請求項25に記載の結晶形態を単離することを更に含む、請求項43に記載のプロセス。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0056
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0056】
本明細書に記載の態様に関する実施形態の全ての組み合わせは、かかる組み合わせが可能な態様を包含する程度まで、あたかもありとあらゆる組み合わせが個別に明示的に列挙されたかのように、本開示によって具体的に包含される。加えて、本明細書に記載の態様に含まれる実施形態の全ての部分的組み合わせ、及び本明細書に記載の他の全ての態様に含まれる実施形態の全ての部分的組み合わせも、あたかも全ての実施形態のありとあらゆる部分的組み合わせが、本明細書に明示的に列挙されているかのように、本開示によって具体的に包含される。
本願発明には以下の態様が含まれる。
項1.
(S)-5-アミノ-3-(4-((5-フルオロ-2-メトキシベンズアミド)メチル)フェニル)-1-(1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミドと、アジピン酸及びショウノウ酸からなる群から選択されるコフォーマとの、共結晶形態。
項2.
(S)-5-アミノ-3-(4-((5-フルオロ-2-メトキシベンズアミド)メチル)フェニル)-1-(1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミドと、アジピン酸と、を含む、項1に記載の共結晶形態。
項3.
(S)-5-アミノ-3-(4-((5-フルオロ-2-メトキシベンズアミド)メチル)フェニル)-1-(1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド対アジピン酸の比が、約2:1である、項2に記載の共結晶形態。
項4.
10.4°、14.2°、15.1°、17.0°、及び21.6°からなる群から選択されるピークのうちの1つ以上と組み合わせて、18.7°の回折角2シータにおける回折ピークを有し、前記回折角の許容差が±0.2度である、CuKα放射線を使用するX線粉末回析パターンを特徴とする、項3に記載の共結晶形態。
項5.
14.2°、17.0°、及び21.6°からなる群から選択されるピークのうちの1つ以上と組み合わせて、18.7°の回折角2シータにおける回折ピークを有し、前記回折角の許容差が±0.2度である、CuKα放射線を使用するX線粉末回析パターンを特徴とする、項1~3のいずれか一項に記載の共結晶形態。
項6.
17.0°及び21.6°からなる群から選択されるピークのうちの1つ以上と組み合わせて、18.7°の回折角2シータにおける回折ピークを有し、前記回折角の許容差が±0.2度である、CuKα放射線を使用するX線粉末回析パターンを特徴とする、項1~3のいずれか一項に記載の共結晶形態。
項7.
174.6、167.6、166.1、157.5、155.5、152.7、150.9、150.3、141.1、140.4、130.1、129.3、127.7、126.6、123.6、120.7、120.2、118.5、116.5、114.1、112.8、91.2、63.6、58.6、56.8、52.2、44.0、34.5、33.2、25.1、24.7、13.8、及び13.2ppmにおけるアダマンタンの高磁場共鳴を基準とするピークを含み、許容差が±0.2ppmである、13C固体NMRスペクトルを特徴とする、項1~3のいずれか一項に記載の共結晶形態。
項8.
174.6、91.2、44.0、13.8、及び13.2ppmにおけるアダマンタンの高磁場共鳴を基準とするピークを含み、許容差が±0.2ppmである、13C固体NMRスペクトルを特徴とする、項1~3のいずれか一項に記載の共結晶形態。
項9.
(S)-5-アミノ-3-(4-((5-フルオロ-2-メトキシベンズアミド)メチル)フェニル)-1-(1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミドと、ショウノウ酸と、を含む、項1に記載の共結晶形態。
項10.
(S)-5-アミノ-3-(4-((5-フルオロ-2-メトキシベンズアミド)メチル)フェニル)-1-(1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド対ショウノウ酸の比が、約1:1である、項9に記載の共結晶形態。
項11.
7.2°、8.3°、12.6°、14.5°、及び16.7°からなる群から選択されるピークのうちの1つ以上と組み合わせて、17.7°の回折角2シータにおける回折ピークを有し、前記回折角の許容差が±0.2度である、CuKα放射線を使用するX線粉末回析パターンを特徴とする、項10に記載の共結晶形態。
項12.
7.2°、14.5°、及び16.7°からなる群から選択されるピークのうちの1つ以上と組み合わせて、17.7°の回折角2シータにおける回折ピークを有し、前記回折角の許容差が±0.2度である、CuKα放射線を使用するX線粉末回析パターンを特徴とする、項1又は9又は10に記載の共結晶形態。
項13.
7.2°及び14.5°からなる群から選択されるピークのうちの1つ以上と組み合わせて、17.7°の回折角2シータにおける回折ピークを有し、前記回折角の許容差が±0.2度である、CuKα放射線を使用するX線粉末回析パターンを特徴とする、項1又は9又は10に記載の共結晶形態。
項14.
項1~13のいずれか一項に記載の共結晶形態を含み、1つ以上のポリマーと、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と、を更に含む、薬学的組成物。
項15.
前記1つ以上のポリマーが、PVP-VA、HPMC、及びHPMCASから選択される、項14に記載の薬学的組成物。
項16.
前記HPMCASが、HPMCAS-L、HPMCAS-M、又はHPMCAS-Hである、項15に記載の薬学的組成物。
項17.
前記HPMCASが、HPMCAS-Mである、項16に記載の薬学的組成物。
項18.
前記薬学的組成物が、約90重量部のポリマー及び約10重量部の共結晶形態、約80重量部のポリマー及び約20重量部の共結晶形態、約70重量部のポリマー及び約30重量部の共結晶形態、又は約50重量部の共結晶形態及び約50重量部のポリマーを含む、項14~17のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
項19.
前記共結晶形態が、約20重量部を構成し、前記1つ以上のポリマーが、約80重量部を構成する、項14~17のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
項20.
前記組成物が、約20重量%未満のBTK-Iと異なるコフォーマとの他の共結晶形態を含有する、項14~17のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
項21.
前記組成物が、約10重量%未満のBTK-Iと異なるコフォーマとの他の共結晶形態を含有する、項14~17のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
項22.
BTK関連がんの治療を、それを必要とする患者において行う方法であって、有効量の項1~13のいずれか一項に記載の共結晶形態又は項14~21のいずれか一項に記載の薬学的組成物を前記患者に投与することを含む、方法。
項23.
前記BTK関連がんが、B細胞悪性腫瘍、B細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、慢性リンパ球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、有毛細胞白血病、B細胞非ホジキンリンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、及び多発性骨髄腫からなる群から選択される、項22に記載の方法。
項24.
前記BTK関連がんが、マントル細胞リンパ腫、慢性リンパ球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、濾胞性リンパ腫、及び辺縁帯リンパ腫からなる群から選択される、項23に記載の方法。
項25.
多発性硬化症の治療を、それを必要とする患者において行う方法であって、有効量の項1~13のいずれか一項に記載の共結晶形態又は項14~21のいずれか一項に記載の薬学的組成物を前記患者に投与することを含む、方法。
項26.
関節炎の治療を、それを必要とする患者において行う方法であって、有効量の項1~13のいずれか一項に記載の共結晶形態又は項14~21のいずれか一項に記載の薬学的組成物を前記患者に投与することを含む、方法。
項27.
前記関節炎が、リウマチ性関節炎である、項26に記載の方法。
項28.
療法における使用のための、項1~13のいずれか一項に記載の共結晶形態又は項14~21のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
項29.
BTK関連がんの治療における使用のための、項1~13のいずれか一項に記載の共結晶形態又は項14~21のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
項30.
前記BTK関連がんが、B細胞悪性腫瘍、B細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、慢性リンパ球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、有毛細胞白血病、B細胞非ホジキンリンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、及び多発性骨髄腫からなる群から選択される、項29に記載の使用のための共結晶形態又は薬学的組成物。
項31.
前記BTK関連がんが、マントル細胞リンパ腫、慢性リンパ球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、濾胞性リンパ腫、及び辺縁帯リンパ腫からなる群から選択される、項30に記載の使用のための共結晶形態又は薬学的組成物。
項32.
多発性硬化症の治療における使用のための、項1~13のいずれか一項に記載の共結晶形態又は項14~21のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
項33.
関節炎の治療における使用のための、項1~13のいずれか一項に記載の共結晶形態又は項14~21のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
項34.
前記関節炎が、リウマチ性関節炎である、項33に記載の使用のための共結晶形態又は薬学的組成物。
【国際調査報告】