(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】同種異系CAR T細胞療法のために幹細胞を操作すること
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20240416BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20240416BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240416BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240416BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240416BHJP
C12N 15/867 20060101ALN20240416BHJP
【FI】
C12N5/10
C12N5/0783
C12N15/62 Z
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/867 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570368
(86)(22)【出願日】2022-05-12
(85)【翻訳文提出日】2024-01-11
(86)【国際出願番号】 US2022028996
(87)【国際公開番号】W WO2022241120
(87)【国際公開日】2022-11-17
(32)【優先日】2021-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523429139
【氏名又は名称】アピア バイオ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】カン, ジンジュ エス.
(72)【発明者】
【氏名】ウィゾレック, ジェフリー スコット
(72)【発明者】
【氏名】ワン, シー
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー, マイケル
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA44
(57)【要約】
本開示は、増強された抗腫瘍表現型を有するT細胞を生産する方法を提供する。T細胞は、造血幹細胞にTCR、CARおよび少なくとも1つのさらなる導入遺伝子を導入することによって、造血幹細胞から作製される。同種異系細胞療法は、一用量の処置のために、しばしば数十億個の細胞を必要とする。幹細胞の能力は拡大増殖に関して潜在的に限界がないため、本発明の方法は、大規模に高品質の細胞生産物を生産し、それらの生産物を処置のために迅速に利用可能にするのに極めて適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作されたインバリアントナチュラルキラーT細胞を生産する方法であって、
T細胞受容体(TCR)、キメラ抗原受容体(CAR)および少なくとも1つのさらなる導入遺伝子をコードする1またはそれを超える核酸を造血幹細胞(HSC)に導入することと、前記HSCを、前記TCRおよびCARを発現し、ならびに前記導入遺伝子を含むインバリアントナチュラルキラーT(iNKT)細胞に変換させることと
を含む、方法。
【請求項2】
前記1またはそれを超える核酸が単一のベクターによって提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記単一のベクターがレンチウイルスベクターを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記1またはそれを超える核酸を導入することが、複数のベクターを介して少なくとも2つの異なる核酸分子を前記HSCに組み込むことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも2つの異なる核酸分子がレンチウイルスベクターを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも2つの異なる核酸分子が前記HSCに順次にまたは同時に導入される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記HSCが前駆細胞に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記前駆細胞が多能性幹細胞である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記1またはそれを超える核酸が、リボソームスキッピングを誘導する配列をさらにコードする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記配列が2A配列をコードする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記iNKT細胞が、α/βiNKT細胞またはγ/δiNKT細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記1またはそれを超えるさらなる導入遺伝子が、サイトカイン、チェックポイント阻害剤、トランスフォーミング増殖因子βシグナル伝達の阻害剤、サイトカイン放出症候群の阻害剤または神経毒性の阻害剤の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記サイトカインが、IL-2、IL-7、IL-15、IL-12、IL-18またはIL-21の1つを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記CARが単一ドメイン抗体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記CARが重鎖抗体の可変領域を含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年5月14日に出願された米国仮特許出願第63/188,872号に基づく恩典および優先権を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み入れられる。
技術分野
【0002】
本開示は、同種異系細胞療法において使用するために幹細胞を操作する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
インビトロでのT細胞の生成および拡大増殖は、癌処置を含む広範囲の臨床用途に有用である。例えば、臨床データは、腫瘍抗原特異的受容体を有する操作されたT細胞が、転移性癌の退縮を引き起こすために、一部の患者において有用であることを示す。残念ながら、すべての患者がそのような処置から恩恵を受けるわけではない。1つの説明は、インビトロでの拡大増殖中に、いくつかのT細胞が疲弊または老化し、これがインビボでの治療の有効性および持続性を制限することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
要旨
本開示は、増強された抗腫瘍表現型を有するT細胞を生産するためのシステムおよび方法を提供する。特に、本開示は、T細胞受容体(TCR)、キメラ抗原受容体(CAR)および少なくとも1つのさらなる導入遺伝子を含む複数の導入遺伝子で操作された幹細胞(例えば、HSC)からT細胞を作製する方法を提供する。HSCから出発することによって、本発明のシステムおよび方法は、改善された抗腫瘍表現型を有するT細胞の製造のために、幹細胞の自己再生および細胞分化能を活用する。特に、本開示は、TCR、CARおよび少なくとも1つのさらなる導入遺伝子をコードする核酸の、CD34+幹細胞内への導入を提供する。TCRおよびCARの組み合わされた発現は、T細胞に特異的癌細胞標的化特性を提供するのに有用である。さらに、少なくとも1つのさらなる導入遺伝子を与えられているため、本発明の方法によって生産されたT細胞は、標的癌細胞と接触したときに癌を処置するのに有用なカーゴ(例えば、サイトカイン)を装備する。
【0005】
幹細胞(例えば、HSC)の利点には、再生および拡大増殖の能力が含まれる。同種異系細胞療法は、一用量の処置のために、しばしば数十億個の細胞を必要とする。幹細胞の能力は拡大増殖に関して潜在的に限界がないため、本発明の方法は、大規模に高品質の細胞生産物を生産し、それらの生産物を処置のために迅速に利用可能にするのに極めて適している。さらに、幹細胞の顕著な特徴は、異なる細胞型に分化する能力である。本開示の文脈において、分化の能力は、例えば、とりわけ、ナチュラルキラーT細胞、αβT細胞、γδT細胞を含む多岐にわたるT細胞サブタイプを生産し得る細胞製造プラットフォームを提供する。
【0006】
一局面において、本発明は、操作されたインバリアントナチュラルキラーT細胞を生産する方法を提供する。この方法は、T細胞受容体(TCR)、キメラ抗原受容体(CAR)および少なくとも1つのさらなる導入遺伝子をコードする1またはそれを超える核酸を造血幹細胞(HSC)に導入することと、前記HSCを、前記TCRおよびCARを発現し、ならびに前記導入遺伝子を含むインバリアントナチュラルキラーT(iNKT)細胞に変換させることとを含む。好ましい態様において、1またはそれを超える核酸は、レンチウイルスベクターなどの単一のベクターによって提供される。しかし、いくつかの例では、例えば、大きな導入遺伝子を組み込む場合、複数のベクター(例えば、レンチウイルスベクター)など、少なくとも2つの異なる核酸分子を使用して1またはそれを超える核酸を組み込むことが有用であり得る。少なくとも2つの異なる核酸分子は、HSCに順次にまたは同時に導入され得る。
【0007】
好ましい態様において、本発明の方法は、レンチウイルス形質導入を介して核酸をHSCに導入することを含む。1またはそれを超える核酸の導入は、少なくとも1つの、TCR、CARおよびさらなる導入遺伝子を発現するHSCを提供する。さらなる導入遺伝子の組み込みは、改善された細胞拡大増殖、持続性、安全性および/または抗腫瘍活性などの改善された機能的特性を有する治療用T細胞を提供するために有用である。1またはそれを超えるさらなる導入遺伝子は、サイトカイン、チェックポイント阻害剤、トランスフォーミング増殖因子βシグナル伝達の阻害剤、サイトカイン放出症候群の阻害剤または神経毒性の阻害剤の任意の1つまたはそれより多くを含み得る。例えば、IL-2、IL-7、IL-15、IL-12、IL-18またはIL-21の1つまたはそれより多くをコードする導入遺伝子が提供され得る。
【0008】
したがって、いくつかの例において、本発明の方法は、例えば、IL-2、IL-7、IL-1-15の1つまたはそれより多くをコードする核酸を導入することによって、改善された拡大増殖および持続能力を有するCAR T細胞の製造を提供する。いくつかの例において、方法は、例えば、IL-12、IL-18の1つまたはそれより多くをコードする導入遺伝子の導入によって、CAR T細胞に増加したIFN-g生産、したがって改善されたT細胞効力を提供し得る。他の例において、本発明の方法は、IL-21を含む導入遺伝子を導入することによってナイーブT細胞生産を増強するのに有用である。いくつかの例において、本明細書に記載されている方法は、例えば、IL-6、GM-CSFまたはサイトカイン放出症候群および神経毒性の他の媒介物質の阻害剤を導入することによって、改善された安全性特性を有するCAR T細胞の生産を提供する。方法は、例えば、TGF-B、チェックポイントの阻害剤を介して、腫瘍微小環境に対抗するのに有用な搭載物を提供することによって、改善された有効性を有するCAR T細胞を提供し得る。
図面の簡単な説明
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、T細胞を生産するための方法を図示する。
【0010】
【
図2】
図2は、3つの異なるプロセスによるエクスビボT細胞製造の段階を例示する。
【0011】
【
図3】
図3は、インビトロでT細胞を生産するための2つのプロセスの比較を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な説明
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞の臨床試験は、B細胞悪性腫瘍などのある種の病状の処置において顕著な結果を示す。しかしながら、現在、CAR T細胞療法を伴う商業的方法は、特定の目的のための生成に伴う物流および高いコストによってその広範な使用が制約される自己CAR T細胞を伴う。同種異系CAR T細胞療法は、患者の処置のために直ちに利用可能な予め作製された細胞ストックを提供することによって、自己細胞の限界に対処する。しかし、その潜在的可能性にもかかわらず、治療上有効な同種異系CAR T細胞の一貫した生産のための方法は確立されていない。ほとんどのプロトコルは、例えば、少なくとも2つの活性化工程を有する長期間のエクスビボ培養を必要とし、これは潜在的に過剰な分化、T細胞疲弊および/または細胞の老化をもたらし、インビボでの有効性を低下させる。参照により組み入れられる、Jafarzadeh,2020,Prolonged Persistence of Chimeric Antigen Receptor(CAR)T Cell in Adoptive Cancer Immunotherapy:Challenges and Ways Forward,Frontiers in Immunology,11(702):1-17を参照されたい。
【0013】
本開示は、改善された表現型および細胞機能を有するT細胞を製造するための信頼できる方法を提供する。いくつかの局面によれば、本開示は、短縮されたエクスビボ培養時間を有するT細胞生産のための方法を提供する。本発明のある方法は、エクスビボ活性化を省略することによってエクスビボ培養を短縮させ、これにより、エクスビボ製造プロセスが最長2~3週間短縮する。本発明の他の方法は、単一の活性化工程を提供する。本発明の方法は、長時間に及ぶ活性化および/または拡大増殖プロセスが、対象への投与後にインビボで起こり得ることを認識する。エクスビボ細胞培養を短縮することによって、本発明の方法は、T細胞生産中に転写の変化および/または表現型の変化が起こる機会を最小限に抑える。さらに、エクスビボ培養時間を短縮することは、T細胞維持のために必要とされる高価な細胞培養消耗品の量を低減させる。
【0014】
異なる局面において、本開示は、単一の活性化工程でT細胞生産物を作製するための多段階ワークフローを提供する。この方法は、1つ以下のインビトロT細胞活性化工程を用いて、HSCの、T細胞へのインビトロ分化および成熟を含むプロセスを実施することを含む。T細胞生産物は、処置または研究のために使用され得る。T細胞製造の従来の方法は、少なくとも2つの別個のインビトロT細胞活性化工程を必要とする。
【0015】
複数の活性化工程は、一般に、複数の培地の種類、すなわち異なる活性化因子を含有する培地を含む。有利には、単一の活性化工程によってT細胞を生産することは、細胞培養の時間を短縮し、T細胞疲弊に関連するより少ないマーカーを発現するより効果的なT細胞生産物を生産する。
【0016】
本発明の方法は、より少ないインビトロ細胞培養物でT細胞生産物を生産するのに有用である。インビトロ細胞培養を減少させることによって、本発明の方法は、より効果的であり、より少ない疲弊した/機能不全のT細胞を含有するT細胞生産物を生産する。T細胞生産物は、2またはそれを超えるT細胞活性化工程によって生産されるT細胞より、より低いレベルのT細胞疲弊に関与するタンパク質、例えばPD-1、CTLA-4、LAG-3、TIM-3、2B4/CD244/SLAMF4、CD160、TIGITを発現し得る。T細胞生産物はまた、より高レベルのIL-2を発現し得る。
【0017】
ある態様は、T細胞を生産するための多段階プロセスを含み、工程の1つのみT細胞活性化。単一の活性化工程は、活性化培地、例えば抗体などのT細胞活性化試薬を含む培地中でT細胞を培養することによって行われ得る。
【0018】
いくつかの例において、活性化工程は、末梢血単核細胞(PMBC)をベースとする活性化を含む。PMBCをベースとする活性化は、α-ガラクトシルセラミド(aGC)を搭載したPBMC、可溶性抗CD3/28陽性PBMCおよび可溶性抗CD2/3/28陽性PBMCにT細胞を導入することを含むことができる。いくつかの例において、活性化工程は、抗原提示細胞(aAPC)をベースとするT細胞活性化工程を含む。したがって、活性化工程は、T細胞をaAPCに導入することを含むことができる。好ましくは、aAPCは照射される。aAPCは、CD80-CD83-CD137L-CAR抗原を発現する操作されたK562細胞であり得る。aAPCは、aAPC+CD1dおよび/またはaAPC+CD1d+/-aGCであり得る。他の例において、活性化工程は、フィーダーを用いないことをベースとするT細胞活性化工程を含む。フィーダーを用いないことをベースとするT細胞活性化工程は、抗CD3、抗CD28、抗CD2/3/28、CD3/28を含む可溶性抗体をT細胞に導入することを含むことができる。いくつかの態様において、方法は、IL-7/15、IL-2、IL-2+21、IL-12またはIL-18の1つまたはそれより多くを含む培養培地を含む。いくつかの態様において、培地はIL-15を含有する。
【0019】
さらに、他の局面によれば、本発明の方法は、増強された抗腫瘍活性を有するT細胞を生産するのに有用である。本開示は、TCR、CARおよび少なくとも1つのさらなる導入遺伝子を含む複数の導入遺伝子が組み込まれた幹細胞(例えば、HSC)からT細胞を生産するためのシステムおよび方法を提供する。幹細胞から生産プロセスを開始することによって、本発明のシステムおよび方法は、「より若い」表現型および増強された抗腫瘍活性を有するT細胞の製造のために、自己再生および細胞分化能力を活用する。特に、本開示は、少なくとも1つの、TCR、CARおよび少なくとも1つのさらなる導入遺伝子をコードする核酸の、CD34陽性幹細胞への導入を提供する。TCRおよびCARおよびさらなる導入遺伝子の組み合わされた発現は、癌を処置するのに有用な特異的癌細胞標的化特性をT細胞に提供するのに有用である。
【0020】
図1は、T細胞を生産するための方法101を図示する。特に、本発明の局面にしたがってT細胞を生産するための方法の一般的な概要を提供するために、単純なフロー図が例示されている。方法101は、幹細胞(例えば、CD34+造血幹細胞/前駆細胞)を取得すること105と;(例えば、TCR、CARおよびさらなる導入遺伝子をコードする)1またはそれを超える核酸を幹細胞に導入すること109と;T細胞を生産するために幹細胞のインビトロ分化および成熟を実施すること111と;T細胞活性化工程を行わずに(例えば、同種異系療法または研究のために)細胞を提供すること113と、を含む。
【0021】
方法101は、幹細胞を得ること105を含む。好ましくは、細胞はCD34+細胞である。1つの非限定的な例において、CD34+幹細胞は、造血幹細胞/前駆細胞である。造血幹細胞または前駆細胞は、造血と呼ばれるプロセスにおいて他の血液細胞を生じさせる幹細胞である。
【0022】
造血幹細胞/前駆細胞は、健康なドナーから取得され得る。造血幹細胞/前駆細胞は、例えば、骨髄、末梢血、羊水または臍帯血から取得され得る。造血幹細胞/前駆細胞は、臍帯の末端をクランプで締め、クランプで締められた末端の間から血液を針で吸引することによって、臍帯血から取得され得る。造血幹細胞/前駆細胞は、正の免疫磁気分離技術を用いて臍帯血から単離され得、シトラート-ホスファート-デキストロース(CPD)が抗凝固剤として臍帯血に添加され得る。臍帯血からの細胞は凍結保存され、使用するまで例えば-80℃の温度で保存され得る。
【0023】
本開示の方法を実施する際に、幹細胞を得ること105は、好ましくは、造血幹細胞/前駆細胞を含む凍結保存されたCD34+臍帯血細胞のバイアルを受け取ることを含む。凍結保存された臍帯血細胞のバイアルは、例えばドライアイス上の断熱容器に入れて、細胞バンクから受け取られ得る。
【0024】
凍結保存された臍帯血細胞のバイアルは、当技術分野で公知の方法に従って解凍され得る。例えば、37度の水浴中にバイアルを約1~2分間配置することによって、細胞のバイアルを解凍し得る。いくつかの好ましい態様において、細胞が解凍されると、形質導入効率を高めるためにウイルスと標的細胞の共局在化を促進する試薬で予め被覆された組織培養皿の上に細胞を播種する。
【0025】
CD34+細胞は、標準的な6ウェル皿に、例えば、10,000細胞/ウェル、15,000細胞/ウェルまたは20,000細胞/ウェルまたは25,000細胞/ウェルまたはそれを超えて播種され得る。好ましくは、細胞はウェルあたり15,000細胞で播種される。
【0026】
方法101は、TCR、CARおよび/またはさらなる導入遺伝子の1つまたはそれより多くをコードする1またはそれを超える核酸をCD34+幹細胞に導入すること109をさらに含む。好ましくは、1またはそれを超える核酸は、TCR、CARまたはさらなる導入遺伝子の少なくとも2つをコードする。例えば、いくつかの態様において、幹細胞に導入109された1またはそれを超える核酸は、少なくともTCRおよびCARをコードし、癌細胞の表面上に発現された特定のタンパク質を標的とすることができるT細胞を生産する。他の態様において、幹細胞に導入109された1またはそれを超える核酸は、TCR、CARおよびさらなる導入遺伝子のそれぞれをコードする。
【0027】
好ましい態様において、核酸を介して導入されるTCRはiNKT TCRである。iNKT TCRは、iNKT細胞受容体のα鎖、iNKT細胞受容体のβ鎖の一方または両方を含み得る。好ましくは、iNKT細胞受容体は、幹細胞がα-ガラクトシルセラミドを認識するように幹細胞によって発現される。さらに、好ましい態様は、少なくとも1つのCARをコードする核酸を導入することを含む。CARは、後述されているように、第1世代、第2世代または第3世代のCARであり得る。CARは、癌に関連する抗原に対して特異的な受容体を細胞に提供するのに有用である。例えば、いくつかの態様において、抗原はメソテリン、グリピカン3、CD19またはBCMAのうちの1つを含む。
【0028】
本発明の方法によって生産されるT細胞は、少なくとも1つのさらなる導入遺伝子を発現するように遺伝子改変され得る。導入遺伝子は、例えば、サイトカイン、チェックポイント阻害剤、トランスフォーミング増殖因子βシグナル伝達の阻害剤、サイトカイン放出症候群の阻害剤または神経毒性の阻害剤のうちの1つであり得る。したがって、本発明の方法は、増強されたエフェクター機能を有するT細胞を生産するのに有用であり得る。
【0029】
例えば、いくつかの例において、本発明の方法は、IL-2、IL-7、IL-1-15の1つまたはそれより多くをコードする導入遺伝子の導入によって提供される、改善された拡大増殖および持続能力を有するCAR T細胞の製造に有用である。いくつかの例において、方法は、例えば、IL-12、IL-18の1つまたはそれより多くをコードする導入遺伝子の導入によって、CAR T細胞に増加したIFN-g生産、したがって改善されたT細胞効力を提供し得る。いくつかの例において、本発明の方法は、IL-21を含む導入遺伝子を導入することによってナイーブT細胞生産を増強するのに有用である。いくつかの例において、本明細書に記載されている方法は、例えば、IL-6、GM-CSFまたはサイトカイン放出症候群および神経毒性の他の媒介物質の阻害剤を導入することによって、改善された安全性特性を有するCAR T細胞の生産を提供する。方法は、例えば、TGF-B、チェックポイントの阻害剤を介して、腫瘍微小環境に対抗するのに有用な搭載物を提供することによって、改善された有効性を有するCAR T細胞を提供し得る。
【0030】
幹細胞に1またはそれを超える核酸を導入すること109は、ウイルス形質導入法または非ウイルス形質移入によって達成され得る。いくつかの例において、例えば、1またはそれを超える核酸を導入するための方法は、例えばSleeping Beautyトランスポゾン/トランスポザーゼ系を使用する非ウイルス法を含む。Sleeping Beautyトランスポゾン系は、正確に定義されたDNA配列を細胞の染色体に導入するように設計された合成DNAトランスポゾンを含む。この系は、トランスポザーゼが複数の不活性な魚配列から復活された、Tc1/mariner型系を使用する。有利には、非バイアル(vial)法は、費用節約という利益を提供し、ある種のウイルスの使用に関連するリスクを低減し得る。しかしながら、非ウイルス方法には、低下した効率が伴い得る。したがって、好ましい態様は、ウイルス形質導入によって、例えばレトロウイルスを介して、核酸を幹細胞に導入する。
【0031】
ウイルス形質導入方法は、その汎用性がよく知られており、レンチウイルスベクターの使用を含み、これは、分裂細胞および非分裂細胞の両方を有意な量の核酸で形質導入するのに有用である。レンチウイルスベクターの使用は安全であると考えられており、しばしば長期の導入遺伝子発現を提供する。したがって、方法101は、好ましくは、レンチウイルス形質導入を介して34+幹細胞に1またはそれを超える核酸を導入する109。幹細胞のレンチウイルス形質導入に関する論述については、参照によって組み入れられるJang,2020,Optimizing lentiviral vector transduction of hematopoietic stem cells for gene therapy,Gene Therapy(27):545-556を参照のこと。
【0032】
本発明の方法は、核酸を幹細胞に導入するための任意の1つのプロセスまたは検査手順によって限定されない。いくつかの例において、単一のレンチウイルスベクターが使用される。単一のレンチウイルスベクターは、TCR、CARおよびさらなる導入遺伝子のそれぞれをコードし得る。他の例では、少なくとも2つの異なるレンチウイルスベクターが使用され、少なくとも2つのレンチウイルスベクターのそれぞれ1つは、形質導入に際して、TCR、CARおよびさらなる導入遺伝子のそれぞれが幹細胞に形質導入されるように、TCR、CARおよびさらなる導入遺伝子の少なくとも1つをコードする。さらに、1つより多くのレンチウイルスベクターが使用される例では、方法101は、2つ(またはそれを超える)のレンチウイルスベクターを幹細胞に導入する時間的順序によって限定されない。ベクターは、同じ形質導入において、同時に、または順次に導入され得る。
【0033】
方法101は、幹細胞(例えば、HSC)の、T細胞へのインビトロ分化および成熟を含むプロセスを実施すること111をさらに含む。
【0034】
細胞製造方法101の1つの利点は、単一の出発材料、すなわち幹細胞から多岐にわたるT細胞サブタイプを生産する能力にある。本発明の方法によって生産されるT細胞としては、例えば、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、メモリーT細胞、制御性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、インバリアントナチュラルキラーT細胞、αβT細胞、γδT細胞が挙げられ得る。好ましい態様において、方法101は、インバリアントナチュラルキラーT細胞を生産することを含む。インバリアントナチュラルキラーT(iNKT)細胞の生産は、それらの同種異系細胞療法用途にとって好ましい。特に、移植片対宿主病を誘発することなく、癌を処置するために抗原特異的T細胞応答を活性化および拡大するその能力。
【0035】
したがって、方法101は、幹細胞(例えば、HSC)の、T細胞(例えば、iNKT)へのインビトロ分化および成熟プロセスを実施すること111を含む。以下で詳細に論述されているように、幹細胞のインビトロ分化および成熟を実施すること111は、好ましくは、そのプロセスがT細胞の活性化および拡大増殖のその後のインビトロ工程を含まないという条件で行われる。
【0036】
CD34陽性細胞のT細胞への分化は段階的に起こり得る。第1の段階は、CD34陽性幹細胞の、CD4およびCD8二重陰性T細胞へのインビトロ分化を含み得る。CD34陽性幹細胞の分化は、一般に、例えば1~2週間、培養下で、CD34陽性幹細胞をサイトカインおよび/またはケモカインの組み合わせに導入することを含む。いくつかの例において、サイトカインおよび/またはケモカインは、STEMCELLによってStemSpanの商品名で販売されている補助物質などの市販の前駆細胞拡大増殖補助物質によって提供され得る。インビトロプロセスを実施すること111の態様は、CD4およびCD8二重陰性T細胞の、CD4およびCD8二重陽性細胞への成熟をさらに含む。いくつかの例において、二重陰性細胞を成熟させることは、STEMCELLによってStemSpanの商品名で提供される前駆細胞成熟培地などの市販の前駆細胞成熟培地中で細胞を培養することを含む。いくつかの態様において、細胞は、前駆細胞成熟培地中で7日間培養される。
【0037】
方法101のある態様によれば、CD34+幹細胞のT細胞へのインビトロ分化および成熟プロセスを実施すること111は、CD4陽性CD8陽性T細胞を生産する。CD4陽性CD8陽性T細胞はナイーブT細胞であり得る。ナイーブT細胞は、一般に、L-セレクチン(CD62L)およびC-Cケモカイン受容体7型(CCR7)の表面発現を特徴とする。いくつかの例において、活性化マーカーCD25、CD44またはCD69の非存在およびメモリーCD45ROアイソフォームの非存在。ナイーブT細胞は、サブユニットIL-7受容体α、CD127および共通γ鎖、CD132からなる機能的IL-7受容体も発現し得る。ナイーブT細胞は、保存のために凍結保存され得るか、または同種異系細胞療法処置中に対象に導入され得る。対象の内部では、ナイーブT細胞は、最初の抗原刺激を待ちながら末梢リンパ管を循環し得る。ナイーブ細胞のTCRを通じて最初の刺激時が発生すると、細胞は、活性化、共刺激および接着に関連する表面分子の発現を調節し始める。これらの分子の発現パターンは、エフェクターおよび抗原を経験したT細胞サブセットをさらに定義するために使用され得る。
【0038】
いくつかの態様において、CD4陽性CD8陽性T細胞は、凍結保存および/または同種異系細胞療法レシピエントへの投与の前に、インビトロで拡大増殖される。CD4陽性CD8陽性T細胞の拡大増殖は、IL-7、IL-15、CD3、CD28、CD2、α-ガラクトシルセラミドの1つまたはそれより多くの存在下で細胞を培養することを含み得る。
【0039】
本発明の方法は、インビトロ培養工程を減らすためにインビボ活性化機構を利用する。2つの活性化工程を経ることなくT細胞が生産され、対象の体内に導入されると、T細胞が例えば二次リンパ器官において樹状細胞などの適切に活性化された抗原提示細胞(APC)に遭遇したときに、T細胞は完全に活性化される。APCが主要組織適合抗原複合体(MHC)クラスII分子を介して適切なペプチドリガンドを提示すれば、ペプチドリガンドはTCRによって認識される。これは、T細胞を活性化するために重要である。APCによって送達される2つの他の刺激シグナルも必要とされ得る。これらのシグナルは、CD80およびCD86などの、APC表面上の2つの異なるリガンドによって、T細胞上の表面分子、例えばCD28に提供され得る。活性化のために重要な他の因子には、エフェクターT細胞の異なるサブセットへのT細胞分化を指示することに関与する因子、例えばIL-6、IL-12およびTGF-βなどのサイトカインが含まれる。活性化されたT細胞のCD28依存性共刺激は、活性化されたT細胞自体によるIL-2の生産をもたらすことができる。IL-2の発現に続いて、ICOSおよびCD40Lなどの他の制御分子に加えて、CD25としても知られるIL-2受容体の第3の成分(α鎖と呼ばれる)の上方制御も存在し得る。IL-2のその高親和性受容体への結合は細胞増殖を促進するが、APC、主に樹状細胞は、環境条件に応じて、様々なサイトカインを生成するか、またはサイトカイン産生エフェクター細胞へのCD4+Tリンパ球の分化を誘導する表面タンパク質を発現する。
【0040】
図2は、3つの異なるプロセスによるエクスビボT細胞製造の段階を例示する。具体的には、T細胞を作製するための従来のエクスビボプロセス203を、本発明の短縮されたエクスビボプロセス205、207と比較して例示する。従来のプロセス203では、成熟T細胞は、少なくとも2回のインビトロ活性化工程に供され、そのうちの2つが示されている。このプロセス203は、少なくとも35日のエクスビボ細胞培養完了、例えば少なくとも42日、しばしばより長い時間を必要とし得る。逆に、プロセス205は、T細胞活性化を省略するので、わずか21日以内にT細胞を生成することができる。活性化工程を省略することによって、T細胞のエクスビボ培養は実質的に短縮され、例えば2~3週間である。第3のプロセス207は、単一の活性化工程を含む。単一の活性化工程は、有効量のT細胞を生産するのに役立ち得る。2つの活性化工程ではなくただ1つの活性化を使用することによって、本発明の方法は、先行技術のT細胞製造プロセスよりも少なくとも14日間短い時間でT細胞を生成することができる。
【0041】
図3は、インビトロでT細胞を生産するための2つの培養プロセスの比較を提供する。第1のプロセス303は、2つの活性化工程を含む。例えば、CD3/CD28/CD2およびIL-15を含む異なる活性化培地で二重陽性T細胞を処理することによって達成される2段階活性化プロセスは、製造プロセスを少なくとも1週間、一般にはそれを超えて増加させる。第2のプロセス305は、インビトロ活性化を省略する。
【0042】
本発明の方法は、単一の活性化工程を含み得る。単一の活性化工程は、T細胞を活性化試薬とともに7日以下の期間培養することを含むことができる。他の態様において、単一の活性化工程は、活性化培地中でT細胞を6日以下または5日以下または4日以下または3日以下または2日以下または1日以下培養することを含む。他の態様において、単一の活性化工程は、活性化培地中でT細胞を8日より長く、または9日より長く、または10日より長く、または11日より長く、または12日より長く、または13日より長く、または14日より長く培養しないことを含む。単一の活性化工程は、単一の種類の活性化培地とともにT細胞を培養することを含むことができる。単一の種類の活性化培地は、可溶性抗体などの活性化試薬を含むことができる。単一の活性化工程は、T細胞をaAPCなどの抗原提示細胞と共培養することを含むことができる。単一の活性化工程は、T細胞をPBMCと共培養することを含むことができる。
【0043】
本発明の方法は、造血幹細胞/前駆細胞からのT細胞の生産を含む。造血幹細胞/前駆細胞は、一般に、臍帯血中に見出され得るCD34+細胞に関連した。いくつかの例において、細胞は前駆細胞に由来し得る。いくつかの例において、細胞は、胚性幹細胞などの多能性幹細胞である。
【0044】
HSCから生産された同種異系CAR T細胞は、ある種の病状に対する治癒的治療アプローチを提供し得る。しかしながら、いくつかの制約としては、同種異系細胞療法に関連する罹患率および死亡率の大部分の原因であるドナーT細胞媒介性のアロ反応性プロセスであるGVHDが挙げられる。いくつかの臨床研究は、ドナーiNKT細胞が疾患再発のリスクを増加させることなくGVHDを予防することができることを示す。ドナーCAR iNKT細胞の養子移入とそれに続くインビボ活性化および/または拡大増殖は、GVHDの症候を予防または緩和し得る。この保護効果は、アロ反応性T細胞のTh2極性化およびドナー制御性T細胞(Treg)の拡大増殖を通じて媒介され得る。同種異系iNKT細胞は、本発明の方法によって作製された場合、GVHDを引き起こさないので、本明細書中に記載されている方法は、「オフザシェルフの」CAR免疫療法のための理想的なプラットフォームを提供する。
【0045】
本発明の方法は、TCRの抗原認識領域の機能的再編成を介して抗原特異性を獲得する治療的に活性を有するT細胞を製造するのに有用である。TCRは、主要組織適合抗原複合体分子に結合された抗原を認識することに関与するT細胞(またはTリンパ球)の表面上に見出される分子である。TCRは、少なくとも2つの異なるタンパク質鎖(例えば、ヘテロ二量体)から構成され得る。ほとんどの(例えば、95%)T細胞では、これはα鎖およびβ鎖からなるのに対して、いくつかの(例えば、5%)T細胞では、これはγ鎖およびδ鎖からなる。このようなT細胞は、細胞表面TCR分子に抗原特異性を有し得、古典的CD3陽性、α-βTCR CD4陽性、CD3陰性α-βTCR CD8陽性、γδT細胞、ナチュラルキラーT細胞などを含むがこれらに限定されない異なる表現型のサブセットへインビボで分化する。さらに、T細胞は、ナイーブ、セントラルメモリー、エフェクターメモリー、ターミナルエフェクターなどを含むがこれらに限定されない様々な活性化状態をさらに含み得る。
【0046】
好ましい態様において、本発明の方法は、CAR T細胞の製造を提供する。CAR T細胞は、免疫療法において使用するための、人工T細胞受容体を産生するように遺伝子操作されたT細胞である。CAR(すなわち、キメラ抗原受容体)は、例えばレトロウイルスベクターによって促進されるCARのコード配列の導入を介して、TCRを有する幹細胞にモノクローナル抗体の特異性を移植するために使用され得る。CARは、T細胞に特定のタンパク質を標的とする新しい能力を与えるように操作された受容体タンパク質である。これらの受容体は、抗原結合機能とT細胞活性化機能の両方を単一の受容体中に組み合わせるので、キメラである。したがって、本発明の方法は、癌細胞をより効果的に標的とし、破壊するために、癌細胞を認識する改変されたT細胞を生産することによる免疫療法のための生産物を提供する。
【0047】
本発明の方法を実施する際には、養子免疫療法治療において使用されるエフェクター細胞(例えば、T細胞)を操作するのに適した任意のCARが本発明において使用され得る。本発明において使用され得るCARとしては、参照によって組み入れられるKim and Cho,2020,Recent Advances in Allogeneic CAR-T Cells,Biomolecules,10(2):263に記載されているものが挙げられる。
【0048】
CARは一般に、細胞外ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを含む。細胞外ドメインは、抗原結合/認識領域/ドメインを含み得る。CARの抗原結合ドメインは、特定の抗原、例えば腫瘍抗原、病原体抗原(例えば、ウイルス抗原)、CD(表面抗原分類)抗原に結合するのに有用である。細胞外ドメインは、新生タンパク質を小胞体内に誘導するシグナルペプチドも含み得る。CARがグリコシル化され、細胞膜に固定されるべき場合には、シグナルペプチドは必須であり得る。膜貫通ドメインは、膜を貫く疎水性αヘリックスである。異なる膜貫通ドメインは、異なる受容体安定性をもたらす。抗原認識後、受容体はクラスターを形成し、シグナルが細胞に伝達される。最も一般的に使用される細胞内成分は、3つのITAMを含有するCD3Xiである。これは、抗原が結合された後に活性化シグナルをT細胞に伝達する。CARは、抗原結合ドメインを膜貫通ドメインに連結するスペーサー領域も含むことができる。スペーサー領域は、抗原認識を容易にするために抗原結合ドメインが異なる方向に配向することを許容するのに十分に柔軟であるべきである。スペーサーは、IgG1からのヒンジ領域または免疫グロブリンのCH2CH3領域およびCD3の一部であり得る。
【0049】
現在、3つの世代のCARが存在する。第1世代CARは、典型的には、T細胞受容体鎖の細胞質シグナル伝達ドメインに融合された、膜貫通ドメインに融合された抗体由来の抗原認識ドメイン(例えば、一本鎖可変断片(scFv))を含む。第1世代CARは、典型的には、内因性TCRからのシグナルの一次伝達物質であるCD3 Xi鎖由来の細胞内ドメインを有する。第1世代CARは、デノボ抗原認識を提供し、HLAによって媒介される抗原提示とは無関係に、単一融合分子内のCARのCD3 Xi鎖シグナル伝達ドメインを介してCD4+T細胞およびCD8+T細胞の両方の活性化を引き起こすことができる。1つの非限定的な例では、T細胞は、細胞傷害性を腫瘍細胞に向けるように指示する人工TCRを発現するように遺伝子操作することができ、考察については、参照により組み入れられるEshhar 1993,Specific activation and targeting of cytotoxic lymphocytes through chimeric single chains consisting antibody-binding domains and the gamma or zeta subunits of the immunoglobulin and T-cell receptors,Proc Natl Acad Sci,90,720-724を参照されたい。第2世代CARは、第1世代CARと類似しているが、CD28または4-1BBなどの2つの共刺激ドメインを含む。これらの細胞内シグナル伝達ドメインの関与は、T細胞増殖、サイトカイン分泌、アポトーシスに対する耐性およびインビボ持続性を改善する。第3世代CARは、T細胞活性をさらに増強するために、CD28-41BBまたはCD28-OX40などの複数の共刺激ドメインを組み合わせる。
【0050】
いくつかの例において、本発明の方法は、さらなる導入遺伝子(すなわち、CARまたはTCRの1つに加えた導入遺伝子)を提供するためにHSCの遺伝子改変を行うことを含む。例えば、いくつかの態様において、さらなる導入遺伝子は1またはそれを超えるサイトカインをコードする。サイトカインは、免疫系のある種の細胞によって分泌され、他の細胞に影響を及ぼすインターフェロン、インターロイキンおよび増殖因子などの物質に関する。本発明の態様によれば、IL-2、IL-7、IL-15、IL-12、IL-18またはIL-21の1つまたはそれより多くをコードする導入遺伝子が、T細胞機能または腫瘍有効性を促進するために提供され得る。
【0051】
CAR T細胞への1またはそれを超える導入遺伝子の導入は、T細胞拡大増殖および持続性(例えば、IL-2、IL-7/15を使用する)、IFN-g産生およびT細胞効力(例えば、IL-12、IL-18による)などの特性を改善し、ナイーブサブセットを増強し(例えば、IL-21)、安全性を改善し(例えば、IL-6、GM-CSFまたはCRSおよび神経毒性の他の媒介物質の阻害剤を介して)または腫瘍微小環境と対抗することによって有効性を改善し得る(TGF-B、チェックポイント等)。
【0052】
例えば、IL-12およびIL-18は、CAR T細胞のある種のエフェクター機能を増強することにおいて主要な役割を果たす。IL-12は、ある種のNK細胞およびTリンパ球を活性化し、Th-1型応答を誘導し、IFN-γ分泌を増加させることが知られている。IL-12の誘導性発現は、リンパ腫、肝細胞癌腫、卵巣腫瘍およびB16黒色腫などのある種の病状に対するCAR T細胞の抗腫瘍能力を増強し得る。IL-18はまた、CAR T細胞の治療可能性を改善するために使用されてきた。最初にIFN-γの強力な誘導物質として同定されたIL-18は、T細胞およびNK細胞の活性化ならびにTh-1細胞の極性化に寄与し得る。例えば、Meso標的化CAR T細胞には、IFN-γの分泌を増強し、癌細胞を根絶するために、IL-18をコードする導入遺伝子が提供され得る。さらなる考察については、参照により組み入れられる、Tian,2020,Gene modification strategies for next-generation CAR T cells against solid cancers,Journal of Hematology&Oncology,volume 13(5)を参照されたい。
【0053】
IL-7、IL-15およびIL-21は、幹細胞様メモリーT細胞表現型の生成を促進するのに有用である。この表現型は、インビボでのT細胞の増加された拡大増殖および持続性をもたらし得る。いくつかの例において、IL-2をコードする導入遺伝子が提供され得る。T細胞をIL-2とともに生産することにより、例えば、栄養素の感知および取り込みに関与するタンパク質の誘導および生産を促進することによって、腫瘍環境に応答する改善された能力を有するT細胞が提供され得る。
【0054】
いくつかの態様において、導入遺伝子はサイトカイン放出症候群の阻害剤である。サイトカイン放出症候群は、しばしばCAR-T細胞療法に関連する重篤で生命を脅かす可能性がある副作用に関する。サイトカイン放出症候群は、例えばIFN-γおよびIL-6を含む過剰な炎症性サイトカイン放出によって引き起こされる急速な(過剰)免疫反応として現れる。サイトカイン放出症候群に関与する多くのサイトカインは、JAK-STAT経路を通じて機能することが知られている。したがって、いくつかの態様において、本発明の方法は、インビボCAR-T細胞増殖、抗腫瘍活性およびサイトカインレベルを改善するために、JAK経路の阻害剤を発現するCAR-T細胞を生産することを含む。例えば、IL-6、JAK-STATまたはBTKの機能を阻害する導入遺伝子が提供され得る。さらに、阻害剤は、神経毒性の阻害にさらに有用であり得る。CAR T細胞関連神経毒性は、発作および昏睡などの重度の神経障害をしばしば引き起こす症候群である。
【0055】
他の例において、方法は、導入遺伝子をHSCに導入することを含み、導入遺伝子は、チェックポイント阻害剤、例えば、免疫チェックポイント阻害剤である。免疫チェックポイントは、免疫系のある種の局面の制御因子である。正常な生理的条件では、チェックポイントは、免疫系が宿主抗原に応答することを可能にし、健康な組織を保存する。癌では、これらの分子は腫瘍細胞の回避を促進する。いくつかの例において、導入遺伝子は、抗カテプシン抗体、ガレクチン-1遮断および抗OX40アゴニスト抗体などの抗体または抗体断片をコードし得る。抗体は、分泌されるか、または細胞の表面上に発現され得る。例えば、PD1またはPDL1を標的とする抗体が分泌され得る。
【0056】
複数の態様において、トランスフォーミング増殖因子βの阻害剤を発現するCAR T細胞が生産される。操作された細胞は、それらの有効性を制限する不利な微小環境に直面する。環境を調節することは、CAR T細胞が増殖し、生存し、および/または癌細胞を死滅させる能力を促進するために有用であり得る。腫瘍環境内の主な阻害機構の1つは、トランスフォーミング増殖因子βである。したがって、本発明のいくつかの局面は、トランスフォーミング増殖因子βの阻害剤をコードする導入遺伝子を導入することを含む。阻害剤は、例えば、抗体またはその断片であり得る。抗体または抗体断片は、トランスフォーミング増殖因子βの正常な機能を妨害するためにCAR T細胞から分泌され得る。
【0057】
いくつかの態様において、方法は、腫瘍微小環境のマーカーを通じて固形腫瘍型を標的とするためにCAR T細胞を作製することを含む。他の態様において、方法は、単一ドメイン抗体(VHH)をベースとするキメラ抗原受容体を有するCAR T細胞を作製し、これは腫瘍特異的標的を必要とせずに腫瘍微小環境のマーカーを認識するために使用され得る。本発明によるVHHをベースとするCAR T細胞は、免疫チェックポイント受容体を通じてまたは間質および細胞外マトリックスマーカーを通じて腫瘍微小環境を標的とし得、同系の免疫適格動物モデルにおいて固形腫瘍に対して有効である。したがって、本発明の方法は、腫瘍特異的抗原発現を欠如し得る腫瘍を標的とするCAR T細胞を作製するのに有用である。重鎖のみの抗体の可変領域(VHHまたはナノボディ)は、伝統的な短鎖可変断片(scFv)と同等の親和性を有する小さい安定なラクダ類由来の単一ドメイン抗体断片である。VHHは一般にscFvよりも免疫原性が低く、そのサイズが小さいため、scFvによって見られるエピトープとは異なるエピトープにアクセスすることができる。したがって、本発明によって提供されるVHHは、CAR T細胞において適切な抗原認識ドメインとしての役割を果たすことができる。scFvとは異なり、VHHは、V領域対合に伴う追加の折り畳みおよび組み立て工程を必要としない。VHHは、大規模なリンカー最適化または他の種類の再設定を必要とせずに表面ディスプレイを可能にする。様々な、VHHをベースとする認識ドメインを切り替えることができるため、それぞれの新しい通常の抗体の形式をscFvに設定し直す必要なしに利用できる高度にモジュラー式のプラットフォームが得られる。
【0058】
さらに、多くの微小環境は、PD-L1などの阻害性分子の発現を伴う。認識ドメインとしてVHHを使用して、例えばPD-L1特異的CAR T細胞、本発明の方法によって生産されたCAR T細胞は、腫瘍微小環境を標的とすることができる。PD-L1は、腫瘍細胞上ならびに浸潤骨髄細胞およびリンパ球上に広く発現される。PD-L1を認識するCARは、免疫阻害を軽減し、同時に腫瘍微小環境におけるCAR T細胞活性化を可能にするはずである。したがって、PD-L1を標的とするCAR T細胞は、腫瘍微小環境を再プログラムし、免疫抑制シグナルを減衰させ、炎症を促進し得る。例えば、Xie,2019に論述されているように、腫瘍微小環境を標的とする、ナノボディをベースとするCAR T細胞は、免疫適格マウスにおける固形腫瘍の成長を阻害する、参照によって組み入れられるPNAS April 16,2019 116(16)7624-7631。
【0059】
本開示の態様によれば、CD34+幹細胞は、CAR、TCRおよびさらなる導入遺伝子(例えば、サイトカイン)の1つまたはそれより多くを発現するように遺伝子操作される。腫瘍またはウイルス抗原特異的細胞を提供するための細胞の最初の遺伝子改変のために、レトロウイルスベクターがウイルス形質導入のために使用され得る。レトロウイルスベクターと培養中のヒト細胞に感染する適切なパッケージングとの組み合わせは、当技術分野で公知である。好ましい態様において、第3世代レンチウイルスベクターが使用され得る。ベクターは、好ましい抗原を標的とするために抗体または抗体断片の配列を含有するcDNA配列で改変され得る。例えば、各々が参照により組み入れられるCarpenito,2008,Control of large,established tumor xenografts with genetically retargeted human T cells containing CD28 and CD137 domains,PNAS,106(9)3360-3365;Li,2017,Redirecting T Cells to Glypican-3 with 41BB Zeta Chimeric Antigen Receptors Results in Th1 Polarization and Potent Antitumor Activity,Human Gene Therapy,28(5):437-448;Adusumilli,2014,Regional delivery of mesothelin-targeted CAR T cell therapy generates potent and long-lasting CD4-dependent tumor immunity,Science Translational Medicine,261(6):1-14に記載されているように。
【0060】
本開示のいくつかの局面は、複数の導入遺伝子をHSCに導入し、発現させることを含む。複数の遺伝子の発現を促進するために、核酸上において、2A配列、すなわち2Aペプチドのコードドメインで導入遺伝子を分離することが有用であり得る。2A自己切断ペプチドまたは2Aペプチドは、タンパク質の翻訳中にリボソームスキッピングを誘導することができる18~22アミノ酸長のペプチドのクラスである。細胞内では、2Aペプチドのコードドメインが2つのタンパク質(例えば、TCRおよびCAR)の2つのコードドメインの間に挿入されると、ペプチドは、リボソームスキッピングのために、独立して折り畳まれる2つのタンパク質に翻訳される。
【0061】
本発明の方法は、臨床適用のために、操作されたHSCをT細胞に形質転換するのに有用である。形質転換の方法は、一般に、HSCのT細胞への分化を含む。細胞分化は、細胞がある細胞型から別の細胞型に変化するプロセスである。通常、細胞は、より特殊化された型に変化する。HSCのT細胞への分化は、多段階の分化を含み得る。第1段階として、CD34+細胞をCD4 CD8二重陰性T細胞に分化させ得る。二重陰性T細胞の生成は、造血サイトカインを含む細胞因子のカクテルの存在下でのCD34+細胞の培養によって達成され得る。カクテルは、造血系指定のために、SCF(例えば、hSCF)、Flt3L(例えば、hFlt3L)および少なくとも1つのサイトカインおよびbFGFを含み得る。サイトカインは、IL-3、IL-15、IL-7、IL-12およびIL-21を含むがこれらに限定されないTh1サイトカインであり得る。細胞は、CD34、CD31、CD43、CD45、CD41a、ckit、Notch1、IL7Rαの発現について、FACSによって免疫表現型的に分析され得る。
【0062】
二重陰性T細胞は、機能的な不活化されたT細胞を生産するために抗原非依存性成熟プロセスを介してさらに分化され得る。このプロセスは、リンパ系前駆細胞拡大増殖培地中で二重陰性T細胞を培養することを含み得る。培地は、例えば、フィーダー細胞およびSCF、Flt3Lおよび少なくとも1つのサイトカインを含み得る。サイトカインは、IL-3、IL-15、IL-7、IL-12およびIL-21を含むがこれらに限定されないTh1サイトカインであり得る。いくつかの態様において、サイトカインは、細胞の生存および/または機能的可能性を増大させ得る。
【0063】
活性化および/または拡大増殖工程を経ていないT細胞を含むT細胞を含む細胞生産物は、新生物、病原体感染または感染性疾患の処置のために、対象に全身的にまたは直接提供することができる。一態様において、本発明のT細胞は、関心対象の器官(例えば、新生物によって影響を受けた器官)に直接注射され得る。あるいは、T細胞およびそれを含む組成物は、例えば循環系(例えば、腫瘍血管系)への投与によって、関心対象の器官に間接的に提供することができる。好ましくは、T細胞の活性化および拡大増殖は、対象への導入後にインビボで起こる。
【0064】
本発明のT細胞およびそれを含む組成物は、任意の生理学的に許容され得るビヒクルに入れて、通常は血管内に投与され得るが、骨または細胞が再生および分化のための適切な部位を見出し得る他の好都合な部位(例えば、胸腺)にも導入され得る。通常、少なくとも10万個の細胞が投与され、時には100億個またはそれを超える細胞が投与される。
【0065】
本発明の方法は、同種異系細胞療法の投与のための薬学的組成物と組み合わされ得る細胞の組成物を提供する。本発明の治療用組成物(例えば、HSC由来のCAR T細胞を含む薬学的組成物)を投与する場合、本発明の治療用組成物は、一般に、単位投与量の注射可能な形態(溶液、懸濁液、エマルジョン)で調合される。組成物は、治療有効濃度で提供され得る。治療有効濃度は、処置に際して有益なまたは所望の臨床結果をもたらすのに十分な量である。有効量は、1またはそれを超える用量で対象に投与され得る。処置に関して、有効量は、疾患の進行を緩和し、改善し、安定化し、逆転させ、もしくは遅延させるか、またはその他、疾患の病理学的帰結を軽減するのに十分な量である。有効量は、一般に、症例ごとに医師によって決定され、当業者の技術の範囲内である。有効量を達成するための適切な投与量を決定するときには、通例、いくつかの因子が考慮に入れられる。これらの因子には、対象の年齢、性別および体重、処置されている症状、症状の重症度ならびに投与される抗原結合断片の形態および有効濃度が含まれる。
【0066】
本発明の抗原特異的T細胞を使用する養子免疫療法の場合、1,000万~100億の範囲の細胞用量が注入され得る。T細胞を対象に投与すると、T細胞は抗原依存性活性化プロセスを経験し得る。
【0067】
本開示は、細胞療法および/または研究のためのT細胞の製造方法を提供する。いくつかの局面において、方法は、エクスビボ細胞培養の時間を短縮することによってT細胞製造の経済的な方法を提供する。いくつかの関連する局面において、本発明の方法は、増強された細胞傷害効果を有するT細胞の製造を提供する。以前には、長期細胞培養には、ある種の細胞型の転写および表現型の変化が伴っていた。培養中のT細胞の転写および表現型の変化はあまり特性評価されていないが、本開示は、長期培養中の細胞の意図せぬ変化が、同種異系細胞において認められた治療有効性の観察された低下および生産物バッチの変動性を説明し得ることを認識している。例えば、T細胞の長期細胞培養は、エフェクター機能の喪失を反映する上昇したレベルの疲弊マーカーを生じ得る。例えば、長期培養には、PD1、LAG3の増加した発現が伴い得る。CD244、CD160、さらなる考察については、参照により組み入れられる、Wherry,2016、Molecular and cellular insights into T cell exhaustion,Nat Rev Immunol,15(8):486-499を参照されたい。エクスビボ製造を短縮することによって、本発明の方法は、治療上有効なT細胞の一貫した生産に有用である。
【0068】
したがって、一局面において、本開示は、T細胞を生産する方法を提供する。この方法は、造血幹細胞(HSC)のT細胞へのインビトロ分化および成熟を含むプロセスを実施することを含み、ただし、このプロセスは、T細胞の活性化および/または拡大増殖のその後のインビトロ工程を含まない。むしろ、T細胞の活性化および/または拡大増殖は、好ましくは、対象への導入後にインビボで起こる。有利なことに、インビトロ活性化および/またはT細胞拡大増殖を省略することにより、従来のT細胞製造プロセスから数週間(例えば、少なくとも2週間)が節約され、これは増強された細胞傷害効果を有するT細胞を生産するのに有用であり得る。
【0069】
本発明の方法は、安全であり、有効である同種異系療法を生産するのに有用である。いくつかの例において、方法は、生産物の品質を確保するために、製造中の1またはそれを超える時点で細胞生産物を性質決定することを含み得る。いくつかの態様において、本発明の方法は、T細胞によって発現される1またはそれを超えるタンパク質を同定するために、T細胞を分析することを含む。1またはそれを超えるタンパク質は、1またはそれを超えるCCR7、CD62LまたはCD45RAを含み得る。タンパク質は、ナイーブ幹細胞に伴われるマーカーを含み得る。分析することは、好ましくは、細胞表面タンパク質を分析するハイスループット法、例えば、FACSなどのバルク中の個々の細胞の蛍光シグナルに基づく方法を含む。
【0070】
要求に応じて処置を利用できることは、同種異系細胞療法の1つの利点である。方法は、臨床適用前に細胞の製造を含み得るので、いくつかの好ましい方法は、T細胞を凍結保存することを含み得る。T細胞を凍結保存することは、患者によって細胞が必要とされるまで細胞を安全かつ効果的に保存するのに有用である。凍結保存することは、そこで細胞生産物を患者に投与することができる臨床施設への細胞生産物の輸送にも有用である。いくつかの好ましい態様において、二重陽性T細胞(例えば、ナイーブT細胞)は、インビトロ活性化工程を行わずに凍結保存される。
【0071】
過去10年間にわたって、免疫療法は新世代の癌医療となってきた。特に、細胞ベースの細胞療法は大いに有望であることが示されている。顕著な例はCAR操作された養子T細胞療法であり、これはある種の血液癌を顕著な有効性で標的とする。しかしながら、処置のための現在のプロトコルのほとんどは、患者から収集された免疫細胞が製造され、この単一の患者を処置するために使用される自家養子細胞移入からなる。このようなアプローチは、費用がかかり、製造労働集約的であり、必要とするすべての患者に広く送達することが困難である。同種異系免疫細胞生産物は、本明細書に記載されている方法によって、大規模に製造することができ、したがって、より多数の患者を処置するために容易に配布することができ、したがって、大きな需要がある。
【0072】
いくつかの態様は、操作されたiNKT細胞または操作されたiNKT細胞の集団に関する。少なくともいくつかの事例では、操作されたiNKT細胞は、CARおよび/または操作されたT細胞受容体を含む。細胞との関連で論じられる任意の態様は、このような細胞の集団に適用され得る。特定の態様において、操作されたiNKT細胞は、以下の:i)インバリアントαT細胞受容体コード配列の全部もしくは一部;ii)インバリアントβT細胞受容体コード配列の全部もしくは一部またはiii)自殺遺伝子の1つ、2つおよび/または3つを含む核酸を含む。さらなる態様において、i)インバリアントαT細胞受容体の全部もしくは一部;ii)インバリアントβT細胞受容体の全部もしくは一部および/またはiii)自殺遺伝子産物をコードする配列を有する核酸を含む操作されたiNKT細胞が存在する。
【0073】
さらなる局面は、NK活性化受容体の増加したレベル、NK阻害受容体の減少したレベルおよび/または細胞傷害性分子の増加したレベルを有する操作されたiNKT細胞に関する。いくつかの態様において、NK活性化受容体は、NKG2Dおよび/またはDNAM-1を含む。いくつかの態様において、細胞傷害性分子は、パーフォリンおよび/またはグランザイムBを含む。いくつかの態様において、阻害剤受容体はKIRを含む。増加または減少は、健康な個体から単離された遺伝子操作されていないiNKTにおける同じマーカーのレベルに対するものであり得る。さらなる局面は、操作されたiNKT細胞の集団に関し、細胞の集団はNK活性化受容体の増加したレベル、NK阻害受容体の減少したレベルおよび/または細胞傷害性分子の増加したレベルを有する。
【0074】
いくつかの態様において、操作されたiNKT細胞は、異種プロモーターの調節下にある核酸を含み、異種プロモーターとは、そのプロモーターが核酸の転写を調節する同じゲノムプロモーターではないことを意味する。操作されたiNKT細胞は、その一部または全部が本明細書に記載されている多くの態様において異種プロモーターの調節下にある1またはそれを超えるコード配列を含む外因性核酸を含むことが企図される。
【0075】
特定の態様において、少なくとも1つのインバリアントナチュラルキラーT細胞受容体(iNKT TCR)および外因性自殺遺伝子産物を発現する操作されたインバリアントナチュラルキラーT(iNKT)細胞が存在し、少なくとも1つのiNKT TCRは、外因性核酸からおよび/または組換え的に修飾されたプロモーター領域の転写調節下にある内因性インバリアントTCR遺伝子から発現される。iNKT TCRは、「CD Id分子によって提示される脂質抗原を認識するTCR」を指す。iNKT TCRは、α-TCR、β-TCRまたはその両方を含み得る。いくつかの事例において、利用されるTCRは、MAIT細胞TCR、GEM細胞TCRまたはγ/δTCRなどの、「インバリアントTCR」のより広い群に属することができ、それぞれ、HSC操作されたMAIT細胞、GEM細胞またはγ/δT細胞をもたらす。
【0076】
ある態様において、自殺遺伝子は酵素ベースである、すなわち自殺遺伝子の遺伝子産物は酵素であり、自殺機能は酵素活性に依存する。1またはそれを超える自殺遺伝子は、単一の細胞またはクローン集団において利用され得る。いくつかの態様において、自殺遺伝子は、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-TK)、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)、シトシンデアミナーゼ(CD)、カルボキシペプチダーゼG2、シトクロムP450、リナマラーゼ、βラクタマーゼ、ニトロレダクターゼ(NTR)、カルボキシペプチダーゼAまたは誘導性カスパーゼ9をコードする。すべて参照によりそれらの全体が組み入れられる米国特許第8628767号、米国特許出願公開第20140369979号、米国特許出願公開第20140242033号および米国特許出願公開第20040014191号におけるなどの、自殺遺伝子使用のための当該技術分野における方法が使用され得る。さらなる態様において、TK遺伝子は、ウイルスTK遺伝子、すなわちウイルス(vims)由来のTK遺伝子である。特定の態様において、TK遺伝子は単純ヘルペスウイルスTK遺伝子である。いくつかの態様において、自殺遺伝子産物は、基質によって活性化される。チミジンキナーゼは、ガンシクロビル、ペンシクロビルまたはこれらの誘導体によって活性化される自殺遺伝子産物である。ある態様において、自殺遺伝子産物を活性化する基質は、検出されるために標識される。いくつかの例において、画像化のために標識され得る基質。いくつかの態様において、自殺遺伝子産物は、TCR-αまたはTCR-βの一方または両方をコードする同じまたは異なる核酸分子によってコードされ得る。ある態様において、自殺遺伝子は、sr39TKまたは誘導性カスパーゼ9である。代替の態様において、細胞は外因性自殺遺伝子を発現しない。いくつかの態様において、操作されたiNKT細胞は、α-ガラクトシルセラミド(a-GC)に特異的に結合する。
【0077】
さらなる態様において、細胞は、少なくとも1つのHLA-IもしくはHLA-II分子を欠如しているか、または少なくとも1つのHLA-IもしくはHLA-II分子の低下した表面発現を有する。いくつかの態様において、HLA-Iおよび/またはHLA-P分子の表面発現の欠如は、個々のHLA-I/II分子をコードする遺伝子を破壊することによって、またはすべてのHLA-I複合体分子の共通成分であるB2M(β2ミクログロブリン)をコードする遺伝子を破壊することによって、またはすべてのHLA-II遺伝子の発現を調節する極めて重要な転写因子であるCIITA(クラスII主要組織適合抗原複合体トランス活性化因子)をコードする遺伝子を破壊することによって達成される。特定の態様において、細胞は、1もしくはそれを超えるHLA-Iおよび/もしくはHLA-II分子の表面発現を欠如しているか、または50、60、70、80、90、100%(またはその中の任意の導出可能な範囲)だけ(または少なくともそれだけ)低下したレベルのこのような分子を発現する。いくつかの態様において、細胞が遺伝子編集によって操作されたので、HLA-IまたはHLA-IIは、iNKT細胞において発現されない。
【0078】
いくつかの態様において、iNKT細胞は、細胞に導入された、組換えベクターまたは組換えベクターからの核酸配列を含む。ある態様において、組換えベクターはウイルスベクターであるか、またはウイルスベクターであった。さらなる態様において、ウイルスベクターは、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ヘルペスウイルスもしくはアデノウイルスであるか、またはそれらであった。ある種のウイルスベクターの核酸は、宿主ゲノム配列に組み込まれることが理解される。
【0079】
「ベクター」または「構築物」(遺伝子送達または遺伝子導入「ビヒクル」と称されることがある。)は、インビトロまたはインビボのいずれかで宿主細胞に送達されるべきポリヌクレオチドを含む高分子、分子の複合体またはウイルス粒子を指す。ポリヌクレオチドは、直鎖状または環状分子であり得る。ベクターの一般的な種類である「プラスミド」は、染色体DNAとは独立して複製することができる、染色体DNAとは別個の染色体外DNA分子である。ある事例において、プラスミドは環状であり、二本鎖である。
【0080】
特定のタンパク質を「コードする」「遺伝子」、「導入遺伝子」、「ポリヌクレオチド」、「コード領域」、「配列」、「セグメント」、「断片」または「導入遺伝子」は、適切な制御配列の調節下に置かれた場合に、インビトロまたはインビボで転写され、必要に応じて遺伝子産物、例えばポリペプチドに翻訳もされる核酸分子である。コード領域は、cDNA、ゲノムDNAまたはRNA形態のいずれかで存在し得る。DNA形態で存在する場合、核酸分子は一本鎖(すなわち、センス鎖)または二本鎖であり得る。コード領域の境界は、5’(アミノ)末端の開始コドンおよび3’(カルボキシ)末端の翻訳終止コドンによって決定される。遺伝子には、原核生物または真核生物のmRNA由来のcDNA、原核生物または真核生物のDNA由来のゲノムDNA配列および合成DNA配列が含まれ得るが、これらに限定されない。転写終結配列は、通常、遺伝子配列の3’側に位置する。
【0081】
「細胞」という用語は、本明細書では当技術分野におけるその最も広い意味で使用され、多細胞生物の組織の構造単位であり、細胞を外部から隔離する膜構造によって取り囲まれ、自己複製能を有し、遺伝情報および遺伝情報を発現するための機構を有する生体(living body)を指す。本明細書で使用される細胞は、天然に存在する細胞または人工的に改変された細胞(例えば、融合細胞、遺伝子改変細胞など)であり得る。
【0082】
iNKT細胞は、マウスからヒトまで高度に保存されたαβTリンパ球の小さな集団である。iNKT細胞は、癌、感染症、アレルギーおよび自己免疫を含む多くの疾患の制御において重要な役割を果たすことが示唆されてきた。刺激されると、iNKT細胞は、細胞集団としておよび単一細胞レベルで、大量のエフェクターサイトカイン、例えばIFN-γおよびIL-4などを迅速に放出する。次いで、これらのサイトカインは、自然免疫系のナチュラルキラー細胞および樹状細胞(DC)ならびに活性化されたDCを介した適応免疫系のCD4ヘルパーおよびCD8細胞傷害性通常型αβT細胞などの様々な免疫エフェクター細胞を活性化する。それらの固有の活性化機構のために、iNKT細胞は、抗原およびMHC、拘束とは無関係に複数の疾患を攻撃することができ、iNKT細胞を魅力的な普遍的治療剤にする。
【0083】
以前に、主に癌を標的とする一連のiNKT細胞をベースとした臨床試験が行われてきた。最近の試験は、頭頸部扁平上皮細胞癌腫を有する患者における抗腫瘍免疫の促進を報告し、iNKT細胞をベースとする免疫療法の可能性が証明された。しかしながら、今日までのほとんどの臨床試験は、内因性iNKT細胞の直接的な活性化またはエクスビボ拡大増殖に基づいており、それによって少数の患者に短期的な限定された臨床的利益しかもたらさないので、満足のいく結果を与えていない。ヒトにおけるiNKT細胞の低い頻度および高い変動性(血中で約0.01~1%)ならびに活性化後のこれらの細胞の急速な枯渇は、これらの試験の成功を制限する主な障害であると考えられる。
【0084】
iNKT細胞は、人工多能性幹(iPS)細胞から操作されてきた。参照により組み入れられる、米国特許第8,945,922号を参照されたい。iPS細胞は、外因性の核再プログラミング因子Oct4、Sox2、Klf4およびc-Mycなどで体細胞を形質導入することによって生産される。残念ながら、外因性核再プログラミング因子の転写レベルは、多能性状態への細胞移行とともに減少するので、安定なiPS細胞株生産の効率は減少し得る。さらに、Oct4、Sox2、Klf4およびc-Mycは腫瘍形成をもたらす癌遺伝子であるので、外因性核再プログラミング因子の転写がiPS細胞中で再開し、iPS細胞に由来する細胞からの新生物の発生を引き起こすことができる。
【0085】
本発明の方法は、例えば、それらの各々が参照により組み入れられる米国特許出願公開第20170283481号および国際出願第2019241400号に論述されているように、iNKT細胞を生産するために使用され得る。
【0086】
一例として、いくつかの態様において、本発明の方法は、iNKT TCR核酸配列がCD4/DN/CD8サブセットまたはTh1、Th2もしくはTh17サイトカインを生産するサブセットなどのiNKT細胞のサブセットから得られ、二重陰性iNKT細胞を含むiNKT細胞を生産する。いくつかの態様において、iNKT TCR核酸配列は、黒色腫、腎臓癌、肺癌、前立腺癌、乳癌、リンパ腫、白血病、血液悪性腫瘍などの癌を有したかまたは有するドナー由来のiNKT細胞から得られる。いくつかの態様において、iNKT TCR核酸分子は、1つのiNKT細胞からのTCRα鎖配列および異なるiNKT細胞からのTCRβ鎖配列を有する。いくつかの態様において、TCRα鎖配列がそれから得られるiNKT細胞およびTCRβ鎖配列がそれから得られるiNKT細胞は、同じドナーに由来する。いくつかの態様において、TCRα鎖配列がそれから得られるiNKT細胞のドナーは、TCRβ鎖配列がそれから得られるiNKT細胞のドナーとは異なる。いくつかの態様において、TCRα鎖配列および/またはTCRβ鎖配列は、発現のためにコドン最適化されている。いくつかの態様において、TCRα鎖配列および/またはTCRβ鎖配列は、修飾されていない配列によってコードされるポリペプチドと比較して1またはそれを超えるアミノ酸置換、欠失および/または切断を有するポリペプチドをコードするように修飾されている。いくつかの態様において、iNKT TCR核酸分子は、CD1d上に提示されるα-ガラクトシルセラミド(α-GalCer)を認識するT細胞受容体をコードする。いくつかの態様において、iNKT TCR核酸分子は発現ベクター中に含有される。いくつかの態様において、発現ベクターはレンチウイルス発現ベクターである。いくつかの態様において、発現ベクターは、iNKT TCR核酸分子がMIGベクターのIRES-EGFPセグメントを置き換えるMIGベクターである。いくつかの態様において、発現ベクターはphiNKT-EGFPである。
【0087】
「キメラ抗原受容体」または「CAR」という用語は、免疫エフェクター細胞上に任意の特異性を移植する操作された受容体を指す。これらの受容体は、モノクローナル抗体の特異性をT細胞上に移植するために使用され、それらのコード配列の導入はレトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターによって促進される。これらの受容体は、異なる供給源由来の部分から構成されるので、キメラと呼ばれる。これらの分子の最も一般的な形態は、CD3-ζ膜貫通およびエンドドメイン、CD28もしくは41BB細胞内ドメインまたはこれらの組み合わせに融合された、モノクローナル抗体に由来する一本鎖可変断片(scFv)の融合物である。このような分子は、scFvによるその標的の認識に応答してシグナルの伝達をもたらす。このような構築物の例は、(ジシアロガングリオシドGD2を認識する)ハイブリドーマ14g2aに由来するscFvの融合物である14g2a-ζである。T細胞がこの分子を発現すると(例として、オンコレトロウイルスベクター形質導入によって達成される)、T細胞は、GD2を発現する標的細胞(例えば、神経芽細胞腫細胞)を認識して死滅させる。悪性B細胞を標的とするために、研究者らは、B系列分子であるCD19に対して特異的なキメラ免疫受容体を使用して、T細胞の特異性をリダイレクトした。免疫グロブリン重鎖および軽鎖の可変部分は、柔軟なリンカーによって融合されてscFvを形成する。このscFvの前には、新生タンパク質を小胞体およびその後の表面発現に導くシグナルペプチド(これは切断される)が存在する。柔軟なスペーサーは、抗原結合を可能にするために、scFvが異なる方向に配向することを可能にする。膜貫通ドメインは、細胞内に突出し、所望のシグナルを伝達するシグナル伝達エンドドメインの元の分子に通常由来する典型的な疎水性αヘリックスである。
【0088】
好ましくは、CARは特定の腫瘍抗原に向けられる。CARが向けられ得る腫瘍細胞抗原の例としては、例えば、少なくとも5T4、8H9、anbbインテグリン、BCMA、B7-H3、B7-H6、CAIX、CA9、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD123、CD138、CD171、CEA、CSPG4、EGFR、ErbB2(HER2)を含むEGFRファミリー、EGFRvIII、EGP2、EGP40、ERBB3、ERBB4、ErbB3/4、EPCAM、EphA2、EpCAM、葉酸受容体-a、FAP、FBP、胎児AchR、FRcc、GD2、G250/CAIX、GD3、グリピカン-3(GPC3)、Her2、IL-13Rcx2、ラムダ、Lewis-Y、カッパ、KDR、MAGE、MCSP、メソテリン、Mucl、Mucl6、NCAM、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、PRAME、PSC1、PSCA、PSMA、ROR1、SP17、サバイビン、TAG72、TEM、癌胎児性抗原、HMW-MAA、AFP、CA-125、ETA、チロシナーゼ、MAGE、ラミニン受容体、HPV E6、E7、BING-4、カルシウム活性化型塩化物チャネル2、サイクリン-B1、9D7、EphA3、テロメラーゼ、SAP-1、BAGEファミリー、CAGEファミリー、GAGEファミリー、MAGEファミリー、SAGEファミリー、XAGEファミリー、NY-ESO-1/LAGE-1、PAME、SSX-2、Melan-A/MART-1、GP100/pmell7、TRP-1/-2、P.ポリペプチド、MC1R、前立腺特異的抗原、b-カテニン、BRCA1/2、CML66、フィブロネクチン、MART-2、TGF^RII、またはVEGF受容体(例えば、VEGFR2)が挙げられる。CARは、第1世代、第2世代、第3世代またはそれより後の世代のCARであり得る。CARは、任意の2つの同一でない抗原に対して二重特異性であり得るか、または2つより多い同一でない抗原に対して特異的であり得る。
【0089】
いくつかの態様において、核酸は、本明細書に論述されているように、a-TCRおよび/またはb-TCRをコードする核酸配列を含み得る。ある態様において、1つの核酸は、a-TCRとb-TCRの両方をコードする。さらなる態様において、核酸は、自殺遺伝子産物をコードする核酸配列をさらに含む。いくつかの態様において、選択されたCD34+細胞に導入される核酸分子は、a-TCR、b-TCRおよび自殺遺伝子産物をコードする。他の態様において、方法は、選択されたCD34+細胞に自殺遺伝子産物をコードする核酸を導入することも含み、この場合には、TCR遺伝子の少なくとも1つをコードする核酸とは異なる核酸分子が、自殺遺伝子産物をコードする。
【0090】
操作されたiNKT細胞およびiNKT細胞集団を調製し、作製し、製造し、および使用するための方法が提供される。方法は、複数の態様において、以下の工程の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15またはそれより多くを含む:造血細胞を得る工程;造血前駆細胞を得る工程;1またはそれを超える造血細胞になることができる前駆細胞を得る工程;iNKT細胞になることができる前駆細胞を得る工程;1またはそれを超える細胞表面マーカーを使用して混合された細胞の集団から細胞を選択する工程;細胞の集団からCD34+細胞を選択する工程;細胞の集団からCD34+細胞を単離する工程;CD34+細胞とCD34-細胞を互いに分離する工程;CD34以外のまたはCD34に追加した細胞表面マーカーに基づいて細胞を選択する工程;iNKT T細胞受容体(TCR)をコードする1またはそれを超える核酸を細胞に導入する工程;iNKT T細胞受容体(TCR)をコードするウイルスベクターに細胞を感染させる工程;iNKT T細胞受容体(TCR)をコードする1またはそれを超える核酸で細胞を形質移入する工程;iNKT T細胞受容体(TCR)をコードする発現構築物で細胞を形質移入する工程;iNKT T細胞受容体(TCR)をコードする外因性核酸を細胞のゲノムに組み込む工程;自殺遺伝子産物をコードする1またはそれを超える核酸を細胞に導入する工程;自殺遺伝子産物をコードするウイルスベクターに細胞を感染させる工程;自殺遺伝子産物をコードする1またはそれを超える核酸で細胞を形質移入する工程;自殺遺伝子産物をコードする発現構築物で細胞を形質移入する工程;自殺遺伝子産物をコードする外因性核酸を細胞のゲノムに組み込む工程;1もしくはそれを超えるポリペプチドをコードする1もしくはそれを超える核酸および/または遺伝子編集のための核酸分子を細胞に導入する工程;1もしくはそれを超えるポリペプチドをコードするウイルスベクターおよび/または遺伝子編集のための核酸分子に細胞を感染させる工程;1もしくはそれを超えるポリペプチドをコードする1もしくはそれを超える核酸および/または遺伝子編集のための核酸分子で細胞を形質移入する工程;1もしくはそれを超えるポリペプチドをコードする発現構築物および/または遺伝子編集のための核酸分子で細胞を形質移入する工程;1もしくはそれを超えるポリペプチドをコードする外因性核酸および/または遺伝子編集のための核酸分子を組み込む工程;細胞のゲノムを編集する工程;細胞のプロモーター領域を編集する工程;iNKT TCR遺伝子のプロモーター領域および/またはエンハンサー領域を編集する工程;1またはそれを超える遺伝子の発現を排除する工程;単離されたヒトCD34+細胞における1またはそれを超えるHLA-I/II遺伝子の発現を排除する工程;遺伝子編集のための1またはそれを超える核酸を細胞に形質移入する工程;単離されたまたは選択された細胞を培養する工程;単離されたまたは選択された細胞を拡大増殖させる工程;1またはそれを超える細胞表面マーカーについて選択された細胞を培養する工程;iNKT TCRを発現する単離されたCD34+細胞を培養する工程;単離されたCD34+細胞を拡大増殖させる工程;iNKT細胞を生産または拡大増殖させるための条件下で細胞を培養する工程;人工胸腺オルガノイド(ATO)系において細胞を培養してiNKT細胞を生産する工程;無血清培地中で細胞を培養する工程;Notchリガンドを発現する間質細胞の選択された集団と無血清培地とを含む3D細胞凝集体を含む、ATO系において細胞を培養する工程。一態様において、1またはそれを超える工程が除外され得ることが特に企図されている。
【0091】
操作されたiNKT細胞を作製するために使用され得る細胞は、造血前駆幹細胞である。細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)、骨髄細胞、胎児肝細胞、胚性幹細胞、臍帯血細胞またはこれらの組み合わせに由来し得る。本開示は、造血幹細胞(HSC)および/または造血前駆細胞(HPC)から操作されたインバリアントナチュラルキラーT(iNKT)細胞である「HSC-iNKT細胞」ならびにその作製方法および使用方法を包含する。本明細書で使用される場合、「HSC」は、HSC、HPCまたはHSCとHPCの両方を指すために使用される。「造血幹および前駆細胞」または「造血前駆体細胞」は、造血系列に運命づけられているが、さらなる造血分化が可能な細胞を指し、造血幹細胞、多分化能造血幹細胞(血液芽細胞)、骨髄系前駆細胞、巨核球前駆細胞、赤血球前駆細胞およびリンパ球系前駆細胞を含む。「造血幹細胞(HSC)」は、骨髄系(単球およびマクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球、赤血球、巨核球/血小板、樹状細胞)およびリンパ球系系列(T細胞、B細胞、NK細胞)を含む全ての血液細胞型を生じる多分化能性幹細胞である。本開示において、HSCは、「造血幹および前駆細胞」および「造血前駆体細胞」の両方を指す。造血幹および前駆細胞は、CD34を発現してもよく、または発現しなくてもよい。造血幹細胞は、CD133を共発現し得、CD38発現について陰性、CD90について陽性、CD45RAについて陰性、系列マーカーについて陰性またはこれらの組み合わせであり得る。造血前駆/前駆体細胞には、CD34(+)/CD38(+)細胞およびCD34(+)/CD45RA(+)/lin(-)CD10+(リンパ球系共通前駆細胞)、CD34(+)CD45RA(+)lin(-)CD10(-)CD62L(hi)(リンパ球系への分化能を保持する多分化能性前駆細胞)、CD34(+)CD45RA(+)lin(-)CD10(-)CD123+(顆粒球-単球前駆細胞)、CD34(+)CD45RA(-)lin(-)CD10(-)CD123+(骨髄系共通前駆細胞)またはCD34(+)CD45RA(-)lin(-)CD10(-)CD123-(巨核球-赤血球前駆細胞)が含まれる。
【0092】
ある方法は、1またはそれを超える核酸を細胞に導入する前に、選択されたCD34+細胞を培地中で培養することを含む。細胞を培養することは、選択されたCD34+細胞を、1またはそれを超える増殖因子を含む培地とインキュベートすることを含むことができる。いくつかの態様において、1またはそれを超える増殖因子は、c-kitリガンド、flt-3リガンドおよび/またはヒトトロンボポエチン(TPO)を含む。さらなる態様において、培地は、c-kitリガンド、flt-3リガンドおよびTPOを含む。いくつかの態様において、1またはそれを超える増殖因子の濃度は、それぞれの増殖因子またはこれらの特定の増殖因子の全ての合計のいずれかに関して約5ng/ml~約500ng/mlである。培地中の単一の増殖因子または増殖因子の組み合わせの濃度は、約5、約10、約15、約20、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約55、約60、約65、約70、約75、約80、約85、約90、約95、約100、約105、約110、約115、約120、約125、約130、約135、約140、約145、約150、約155、約160、約165、約170、約175、約180、約185、約190、約195、約200、約205、約210、約215、約220、約225、約230、約235、約240、約245、約250、約255、約260、約265、約270、約275、約280、約285、約290、約295、約300、約305、約310、約315、約320、約325、約330、約335、約340、約345、約350、約355、約360、約365、約370、約375、約380、約385、約390、約395、約400、約410、約420、約425、約430、約440、約441、約450、約460、約470、約475、約480、約490、約500(または導出可能な任意の範囲)ng/mlもしくはmg/mlもしくはそれより多く、少なくとも約5、少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、少なくとも約30、少なくとも約35、少なくとも約40、少なくとも約45、少なくとも約50、少なくとも約55、少なくとも約60、少なくとも約65、少なくとも約70、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約85、少なくとも約90、少なくとも約95、少なくとも約100、少なくとも約105、少なくとも約110、少なくとも約115、少なくとも約120、少なくとも約125、少なくとも約130、少なくとも約135、少なくとも約140、少なくとも約145、少なくとも約150、少なくとも約155、少なくとも約160、少なくとも約165、少なくとも約170、少なくとも約175、少なくとも約180、少なくとも約185、少なくとも約190、少なくとも約195、少なくとも約200、少なくとも約205、少なくとも約210、少なくとも約215、少なくとも約220、少なくとも約225、少なくとも約230、少なくとも約235、少なくとも約240、少なくとも約245、少なくとも約250、少なくとも約255、少なくとも約260、少なくとも約265、少なくとも約270、少なくとも約275、少なくとも約280、少なくとも約285、少なくとも約290、少なくとも約295、少なくとも約300、少なくとも約305、少なくとも約310、少なくとも約315、少なくとも約320、少なくとも約325、少なくとも約330、少なくとも約335、少なくとも約340、少なくとも約345、少なくとも約350、少なくとも約355、少なくとも約360、少なくとも約365、少なくとも約370、少なくとも約375、少なくとも約380、少なくとも約385、少なくとも約390、少なくとも約395、少なくとも約400、少なくとも約410、少なくとも約420、少なくとも約425、少なくとも約430、少なくとも約440、少なくとも約441、少なくとも約450、少なくとも約460、少なくとも約470、少なくとも約475、少なくとも約480、少なくとも約490、少なくとも約500(または導出可能な任意の範囲)ng/mlもしくはmg/mlもしくはそれより多く、または多くとも約5、多くとも約10、多くとも約15、多くとも約20、多くとも約25、多くとも約30、多くとも約35、多くとも約40、多くとも約45、多くとも約50、多くとも約55、多くとも約60、多くとも約65、多くとも約70、多くとも約75、多くとも約80、多くとも約85、多くとも約90、多くとも約95、多くとも約100、多くとも約105、多くとも約110、多くとも約115、多くとも約120、多くとも約125、多くとも約130、多くとも約135、多くとも約140、多くとも約145、多くとも約150、多くとも約155、多くとも約160、多くとも約165、多くとも約170、多くとも約175、多くとも約180、多くとも約185、多くとも約190、多くとも約195、多くとも約200、多くとも約205、多くとも約210、多くとも約215、多くとも約220、多くとも約225、多くとも約230、多くとも約235、多くとも約240、多くとも約245、多くとも約250、多くとも約255、多くとも約260、多くとも約265、多くとも約270、多くとも約275、多くとも約280、多くとも約285、多くとも約290、多くとも約295、多くとも約300、多くとも約305、多くとも約310、多くとも約315、多くとも約320、多くとも約325、多くとも約330、多くとも約335、多くとも約340、多くとも約345、多くとも約350、多くとも約355、多くとも約360、多くとも約365、多くとも約370、多くとも約375、多くとも約380、多くとも約385、多くとも約390、多くとも約395、多くとも約400、多くとも約410、多くとも約420、多くとも約425、多くとも約430、多くとも約440、多くとも約441、多くとも約450、多くとも約460、多くとも約470、多くとも約475、多くとも約480、多くとも約490、多くとも約500(または導出可能な任意の範囲)ng/mlもしくはmg/mlもしくはそれより多くであり得る。
【0093】
いくつかの態様において、細胞は無細胞培地中で培養される。ある態様において、無血清培地は、外から添加されたアスコルビン酸をさらに含む。特定の態様において、方法は、アスコルビン酸培地を添加することを含む。さらなる態様において、無血清培地は、以下の外から添加された成分:FLT3リガンド(FLT3L)、インターロイキン7(IL-7)、幹細胞因子(SCF)、トロンボポエチン(TPO)、幹細胞因子(SCF)、IL-2、IL-4、IL-6、IL-15、IL-21、TNF-α、TGF-β、インターフェロン-γ、インターフェロン-λ、TSLP、チモペンチン、プレオトロフィンまたはミッドカインのうちの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16全て(またはその中の導出可能な範囲)をさらに含む。さらなる態様において、無血清培地は1またはそれを超えるビタミンを含む。いくつかの事例において、無血清培地は、以下のビタミンの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12(またはその中の任意の導出可能な範囲)を含む:ビオチン、DLαトコフェロールアセタート、DLα-トコフェロール、ビタミンA、塩化コリン、パントテン酸カルシウム、パントテン酸、葉酸ニコチンアミド、ピリドキシン、リボフラビン、チアミン、イノシトール、ビタミンB12またはこれらの塩を含む。ある態様において、培地は、ビオチン、DLα-トコフェロールアセタート、DLα-トコフェロール、ビタミンAもしくはこれらの組み合わせもしくは塩を含むか、またはビオチン、DLα-トコフェロールアセタート、DLα-トコフェロール、ビタミンAもしくはこれらの組み合わせもしくは塩を少なくとも含む。さらなる態様において、無血清培地は1またはそれを超えるタンパク質を含む。いくつかの態様において、無血清培地は、以下のタンパク質:アルブミンまたはウシ血清アルブミン(BSA)、BSAの画分、カタラーゼ、インスリン、トランスフェリン、スーパーオキシドジスムターゼのうちの1、2、3、4、5、6つもしくはそれより多く(またはその中の任意の導出可能な範囲)またはこれらの組み合わせを含む。他の態様において、無血清培地は、以下の化合物:コルチコステロン、D-ガラクトース、エタノールアミン、グルタチオン、L-カミチン(camitine)、リノール酸、リノレン酸、プロゲステロン、プトレシン、亜セレン酸ナトリウムもしくはトリヨード-I-チロニンのうちの1、2、3、4、5、、7、8、9、10もしくは11またはこれらの組み合わせを含む。さらなる態様において、無血清培地は、B-27サプリメント、異種成分不含有のB-27サプリメント、GS21(商標)サプリメントまたはこれらの組み合わせを含む。さらなる態様において、無血清培地は、アミノ酸、単糖類および/もしくは無機イオンを含むか、またはアミノ酸、単糖類および/もしくは無機イオンをさらに含む。いくつかの局面において、無血清培地は、以下のアミノ酸:アルギニン、システイン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、グルタミン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、チロシンもしくはバリンのうちの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12もしくは13、またはこれらの組み合わせを含む。他の局面において、無血清培地は、以下の無機イオン:ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、窒素もしくはリンのうちの1、2、3、4、5もしくは6つ、またはこれらの組み合わせもしくは塩を含む。さらなる局面において、無血清培地は、以下の元素:モリブデン、バナジウム、鉄、亜鉛、セレン、銅もしくはマンガンのうちの1、2、3、4、5、6もしくは7つ、またはこれらの組み合わせを含む。
【0094】
いくつかの方法において、細胞は人工胸腺オルガノイド(ATO)系中で培養される。ATO系は、細胞の凝集体である三次元(3D)細胞凝集体を含む。ある態様において、3D細胞凝集体は、Notchリガンドを発現する間質細胞の選択された集団を含む。いくつかの態様において、3D細胞凝集体は、CD34+形質導入細胞を物理的マトリックスまたは足場上の間質細胞の選択された集団と混合することによって作製される。さらなる態様において、方法は、CD34+形質導入細胞および間質細胞を遠心分離して、物理的マトリックスまたは足場上に配置された細胞ペレットを形成することを含む。ある態様において、間質細胞は、完全なままの、部分的なもしくは改変されたDLL1、DLL4、JAG1、JAG2またはこれらの組み合わせであるNotchリガンドを発現する。さらなる態様において、NotchリガンドはヒトNotchリガンドである。他の態様において、NotchリガンドはヒトDLL1である。
【0095】
細胞は直ちに使用され得、または将来の使用のために保存され得る。ある態様において、iNKT細胞を作製するために使用される細胞は凍結されるが、生産されたiNKT細胞は、いくつかの態様において凍結され得る。いくつかの局面において、細胞は、デキストロース、1またはそれを超える電解質、アルブミン、デキストランおよびDMSOを含む溶液中にある。他の態様において、細胞は、無菌であり、非発熱原性であり、および等張性である溶液中に存在する。いくつかの態様において、操作されたiNKT細胞は、造血幹細胞に由来する。いくつかの態様において、操作されたiNKT細胞は、G-CSF動員CD34+細胞に由来する。いくつかの態様において、細胞は、癌を有しないヒト患者からの細胞に由来する。いくつかの態様において、細胞は内因性TCRを発現しない。
【0096】
操作されたiNKT細胞は、患者を処置するために使用され得る。いくつかの態様において、方法は、以前に凍結および解凍されたことがあってもよく、またはなくてもよい細胞集団に1またはそれを超える追加の核酸を導入することを含む。この使用は、オフザシェルフのiNKT細胞を作製することの利点の1つを提供する。特定の態様において、1またはそれを超える追加の核酸は、1またはそれを超える治療用遺伝子産物をコードする。治療用遺伝子産物の例としては、少なくとも以下のものが挙げられる:1。抗原認識分子、例えばCAR(キメラ抗原受容体)および/もしくはTCR(T細胞受容体);2。共刺激分子、例えば、CD28、4-1BB、4-1BBL、CD40、CD40L、ICOS;ならびに/または3。サイトカイン、例えば、IL-1cc、IL-Ib、IL-2、IL-4、IL-6、IL-7、IL-9、IL-15、IL-12、IL-17、IL-21、IL-23、IFN-g、TNF-a、TGF-b、G-CSF、GM-CSF;4。
【0097】
転写因子、例えば、T-bet、GATA-3、RORyt、FOXP3およびBcl-6。治療用抗体は、キメラ抗原受容体、一本鎖抗体、モノボディ、ヒト化抗体、抗体、二重特異性抗体、一本鎖FV抗体またはこれらの組み合わせと同様に含まれる。
【0098】
いくつかの態様において、本発明は、操作された細胞または組成物を対象に送達するための薬物送達装置、例えばシリンジとともに一括された本発明による1またはそれを超える操作された細胞または組成物を含むキットを提供する。いくつかの態様において、本発明は、操作された細胞を培養および/または保存するための1またはそれを超える試薬とともに一括された本発明による1またはそれを超える操作された細胞または組成物を含むキットを提供する。いくつかの態様において、本発明は、細胞、例えばCARおよび少なくとも1つのさらなる導入遺伝子を含むiNKT細胞を活性化する1またはそれを超える作用物質とともに一括された本発明による1またはそれを超える操作された細胞または組成物を含むキットを提供する。いくつかの態様において、本発明は、OP9-DL1間質細胞および/またはMS5-DL4間質細胞とともに一括された本発明による1またはそれを超える操作された細胞または組成物を含むキットを提供する。いくつかの態様において、本発明は、抗原提示細胞またはCD1d発現人工抗原提示細胞とともに一括された本発明による1またはそれを超える操作された細胞または組成物を含むキットを提供する。
【0099】
本発明の方法は、任意の数の症状および/または疾患を処置するための操作された細胞を製造する方法を提供する。いくつかの態様において、本発明は、対象を処置する方法であって、本発明による1もしくはそれを超える操作された細胞、本発明の方法に従って作製された1もしくはそれを超える操作された細胞、または本発明による1もしくはそれを超える組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。いくつかの態様において、対象は、マウスまたは試験動物などの動物である。いくつかの態様において、対象はヒトである。いくつかの態様において、対象は、癌、細菌感染症、ウイルス感染症、アレルギーまたは自己免疫疾患を有する。いくつかの態様において、癌は、黒色腫、腎臓癌、肺癌、前立腺癌、乳癌、リンパ腫、白血病または血液悪性腫瘍である。いくつかの態様において、対象は、結核、HIVまたは肝炎を有する。いくつかの態様において、対象は、喘息または湿疹を有する。いくつかの態様において、対象は、I型糖尿病、多発性硬化症または関節炎を有する。いくつかの態様において、対象は、治療有効量の1またはそれを超える操作された細胞が投与される。いくつかの態様において、1またはそれを超える操作された細胞の治療有効量は、処置されている対象の体重1kg当たり約10×107~約10×109細胞である。いくつかの態様において、方法は、前記1またはそれを超える操作された細胞の投与前、投与中および/または投与後に、iNKT細胞を活性化する作用因子、例えば、α-GalCerまたはその塩またはエステル、α-GalCerを提示する樹状細胞または人工APCを投与することをさらに含む。
【0100】
ある局面において、本開示は、増強された抗腫瘍表現型を有するT細胞を生産するためのシステムおよび方法を提供する。特に、本開示は、T細胞受容体(TCR)、キメラ抗原受容体(CAR)および少なくとも1つのさらなる導入遺伝子を含む複数の導入遺伝子で操作された幹細胞(例えば、HSC)からT細胞を作製する方法を提供する。HSCから出発することによって、本発明のシステムおよび方法は、改善された抗腫瘍表現型を有するT細胞の製造のために、幹細胞の自己再生および細胞分化能を活用する。特に、本開示は、TCR、CARおよび少なくとも1つのさらなる導入遺伝子をコードする核酸の、CD34+幹細胞内への導入を提供する。TCRおよびCARの組み合わされた発現は、T細胞に特異的癌細胞標的化特性を提供するのに有用である。さらに、少なくとも1つのさらなる導入遺伝子を与えられているため、本発明の方法によって生産されたT細胞は、標的癌細胞と接触したときに癌を処置するのに有用なカーゴ(例えば、サイトカイン)を装備する。
【0101】
例えば、好ましい態様において、本発明の方法は、レンチウイルス形質導入を介して核酸をHSCに導入することを含む。1またはそれを超える核酸の導入は、少なくとも1つの、TCR、CARおよびさらなる導入遺伝子を発現するHSCを提供する。さらなる導入遺伝子の組み込みは、改善された細胞拡大増殖、持続性、安全性および/または抗腫瘍活性などの改善された機能的特性を有する治療用T細胞を提供するために有用である。
【0102】
1またはそれを超えるさらなる導入遺伝子は、サイトカイン、チェックポイント阻害剤、トランスフォーミング増殖因子βシグナル伝達の阻害剤、サイトカイン放出症候群の阻害剤または神経毒性の阻害剤の任意の1つまたはそれより多くを含み得る。例えば、IL-2、IL-7、IL-15、IL-12、IL-18またはIL-21の1つまたはそれより多くをコードする導入遺伝子が提供され得る。
【0103】
したがって、いくつかの例において、本発明の方法は、例えば、IL-2、IL-7、IL-1-15の1つまたはそれより多くをコードする核酸を導入することによって、改善された拡大増殖および持続能力を有するCAR T細胞の製造を提供する。いくつかの例において、方法は、例えば、IL-12、IL-18の1つまたはそれより多くをコードする導入遺伝子の導入によって、CAR T細胞に増加したIFN-g生産、したがって改善されたT細胞効力を提供し得る。他の例において、本発明の方法は、IL-21を含む導入遺伝子を導入することによってナイーブT細胞生産を増強するのに有用である。いくつかの例において、本明細書に記載されている方法は、例えば、IL-6、GM-CSFまたはサイトカイン放出症候群および神経毒性の他の媒介物質の阻害剤を導入することによって、改善された安全性特性を有するCAR T細胞の生産を提供する。方法は、例えば、TGF-B、チェックポイントの阻害剤を介して、腫瘍微小環境に対抗するのに有用な搭載物を提供することによって、改善された有効性を有するCAR T細胞を提供し得る。
【0104】
本発明のある方法は、単一のインビトロ活性化工程を含む。いくつかの例において、T細胞は、試薬で短時間、例えば1~3日間活性化され、この後、活性化試薬は、細胞を継続的に刺激しないように、したがって細胞を疲弊させないようにしばしば培地から除去される。活性化後、活性化されたT細胞集団は、急速に拡大増殖し得る、例えば、24時間ごとに数が倍増し得る。拡大増殖を促進するために、いくつかの試薬が添加され得る。いくつかの態様において、方法は、IL-7/15、IL-2、IL-2+21、IL-12またはIL-18の1つまたはそれより多くが補充され得る培養培地を含む。
【0105】
いくつかの例において、単一の活性化工程は、PMBCをベースとするT細胞活性化を含む。したがって、活性化工程は、aGCを搭載したPBMC、可溶性抗CD3/28陽性PBMCおよび可溶性抗CD2/3/28陽性PBMCをT細胞に導入することを含み得る。いくつかの例において、活性化工程は、抗原提示細胞(aAPC)をベースとするT細胞活性化工程を含む。したがって、活性化工程は、T細胞をaAPCに導入することを含むことができる。aAPCは、CD80-CD83-CD137L-CAR抗原を発現する操作されたK562細胞であり得る。aAPCは、aAPC+CD1dおよび/またはaAPC+CD1d+/-aGCであり得る。他の例において、活性化工程は、フィーダーを用いないことをベースとするT細胞活性化工程を含む。フィーダーを用いないことをベースとするT細胞活性化工程は、抗CD3、抗CD28、抗CD2/3/28、CD3/28を含む可溶性抗体をT細胞に導入することを含むことができる。いくつかの態様において、T細胞活性化工程は、活性化拡大増殖培養培地に添加された異なるサイトカインIL-7/15、IL-2、IL-2+21、IL-12、IL-18の存在下でT細胞を培養することを含む。
【実施例】
【0106】
以下の実施例は、本発明の方法によって提供される、CD34+細胞からT細胞(例えば、iNKT)を製造するための有用な例示的プロトコルを提供する。さらなる例および考察については、参照により組み入れられる国際公開第2019241400号を参照されたい。
【0107】
実施例1:CD34+HSPC細胞培養およびレンチウイルス形質導入
-2日目:刺激前
【0108】
1.0.5mL/ウェルの、PBS中に希釈された20μg/mlレトロネクチン(RN)で、24ウェル非組織培養処理済プレートの適切な数のウェル(約15×103細胞/ウェルまたは0.1×106アリコートに対して6ウェルを播種することが推奨される)をコートする。1mg/mLのRN原液アリコートは、60マイクロリットルのアリコートで、-20℃で保存され得る。
【0109】
2.室温(RT)で2時間(h)インキュベートする。
【0110】
3.RNを吸引し、0.5ml/ウェルの、PBS中に希釈された2%BSAと交換する。30%BSAアリコートは、-20℃で保存される。
【0111】
4.室温で30分間インキュベートする。
【0112】
5.吸引し、0.5ml/ウェルのPBSと交換する。
【0113】
6.標準的な手順に従ってCD34+細胞の0.1×106アリコートをStem Cell Media中に解凍し、300gで10分間回転させる。
【0114】
7.上清を吸引し、Stem Cell Media中に再懸濁し、血球計数器を用いて計数し、細胞数を記録する。いくつかの例において、本出願人は、0.1×106アリコートの細胞数が低すぎて信頼性がないことを認めた。
【0115】
8.Stem Cell MediaでCD34+細胞を0.05×106細胞/mlに希釈する。
【0116】
9.RNコートされたウェルからPBSを吸引し、300ul細胞/ウェル(約15×103細胞/ウェル)を播種する。
【0117】
10.37℃、5%CO2で12~18時間インキュベートする。
【0118】
-1日目:形質導入
【0119】
1.濃縮されたレンチウイルスベクター(LVV)を解凍し、穏やかにピペット操作して混合する(ボルテックス撹拌は行わず、再凍結させない)。
【0120】
2.形質導入チューブを準備する。
a.100~200のMOIに十分な体積を計算することによって、適切な体積のLVVを1.5mlチューブに移す。
b.適切な体積のPGE2を同じチューブに添加して、総培養体積の10nMの最終濃度を達成する。
c.適切な体積のポロキサマーを同じチューブに添加して、1μg/μl総培養体積の最終濃度を達成する。
【0121】
3.形質導入チューブの内容物を適切な培養ウェルに添加し、プレートを穏やかに揺り動かして混合する
【0122】
4.細胞を37℃、5%CO2で24時間インキュベートする。
【0123】
0日目 採取
【0124】
1.穏やかにピペット操作することによって細胞を収集して、プレートから細胞を取り出し、コニカルチューブに移す。
【0125】
2.等体積の冷X-VIVO-15でウェルを洗浄して、まだプレートに付着しているすべての細胞を除去し、コニカルチューブに移す。
【0126】
3.顕微鏡下で確認し、必要に応じて冷X-VIVO-15でさらなる洗浄を行って、プレートからすべての細胞を収集する。
【0127】
4.300gで10分間回転させ、上清を吸引する。
【0128】
5.段階2(すなわち、実施例2)に進む。
【0129】
実施例2:iNKT-CAR細胞の作製;分化
0~14日目:分化(期間:2週間)
【0130】
1.PBS中に1:200希釈された、STEMCELLによってStemSpanの商品名で提供されるリンパ系分化材料などのリンパ系分化コーティング材料(LDCM)で、1ml/ウェルで、12ウェル非組織培養処理済プレートの適切な数のウェル(1,000~2,000細胞/ウェルまたは12ウェル/15,000細胞を播種することが推奨される)をコートする。4℃で12~18時間インキュベートする。
【0131】
2.LDCMを吸引し、2ml/ウェルのPBSを添加する
【0132】
3.STEMCELLによってStemSpanの商品名で販売されているリンパ系前駆細胞拡大増殖培地などのリンパ系前駆細胞拡大増殖培地(LPEM)中に、段階1(すなわち、実施例1)で収集された形質導入されたCD34+細胞を再懸濁する。
【0133】
4.LPEMで細胞密度を1~2×103細胞/mlに調整する
【0134】
5.LDCMでコートされたプレートからPBSを吸引する
【0135】
6.LCDMでコートされたプレート中に0.75ml細胞/ウェルを播種する
【0136】
7.細胞を37℃、5%CO2でインキュベートする
【0137】
8.3日目に、0.25ml/ウェルの新鮮なLPEMを添加し、培養を継続する
【0138】
9.7および11日目に、細胞を乱すことなく、<0.5ml/ウェルを慎重に除去し、0.5ml/ウェルの新鮮なLPEMを補充する。
【0139】
10.14日目まで培養を継続する
【0140】
11.段階3(すなわち、実施例3)に進む
【0141】
実施例3:iNKT-CAR細胞の作製;成熟
14~21+日目:成熟(期間:1~2週間)
【0142】
1.PBS中に1:200希釈された2ml/ウェルのLDCMで、6ウェル非組織培養処理済プレートの適切な数のウェル(50~100×103/ウェルを播種することが推奨される)をコートする。播種の前日に調製する場合には4℃で12~18時間インキュベートし、または播種の当日に調製する場合には37℃で2時間インキュベートする。
【0143】
2.LDCMを吸引し、4mL/ウェルのPBSを添加する
【0144】
3.14日目に、Beckman CoulterによってVi-Cell XRの商品名で提供される細胞生存率計数器などの細胞生存率計数器を使用して細胞を採取し、計数する。
a.穏やかにピペット操作することによって細胞を収集して、プレートから細胞を取り出し、コニカルチューブに移す。
b.1ml/4ウェルの冷SFEM IIでウェルを洗浄して、まだプレートに付着しているすべての細胞を除去し、コニカルチューブに移す
c.顕微鏡下で確認し、必要に応じて冷SFEM IIでさらなる洗浄を行って、プレートから細胞を収集する。
【0145】
4.0.2×106細胞のアリコートを取り出し、フロー染色のために96ウェルV底プレート中に播種する。
【0146】
5.適切な体積の細胞を取り出して段階3のために播種し、300gで10分間ペレット化する。
【0147】
6.上清を吸引する。
【0148】
7.STEMCELLによってStemSpanの商品名で提供されるT細胞前駆細胞成熟培地などのT細胞前駆細胞成熟培地(TPMM)中に2.5~5×104細胞/mlで細胞を再懸濁する。
【0149】
8.LDCMでコートされたプレートからPBSを吸引する。
【0150】
9.LDCMでコートされたプレート中に2ml細胞/ウェルを播種する。
【0151】
10.細胞を37℃、5%CO2でインキュベートする
【0152】
11.残存する細胞を300gで10分間ペレット化する。
【0153】
12.残存する細胞を吸引し、適切な体積の、STEMCELLによってCryoStor CS10の商品名で販売されている凍結保存溶液などの凍結保存溶液中に再懸濁して、2~5×106細胞/mLを達成する。
【0154】
13.1ml/クライオバイアルの一定分量に分割し、適切に(例えば、マイナス80℃の冷凍庫内で)凍結し、凍結の24時間以内に液体窒素保存に移す。
【0155】
14.17日目に、2ml/ウェルの新鮮なTPMMを添加し、培養を継続する。
【0156】
15.21日目に、ウェルの中央の細胞から100μlをピペットで取ることによってフローサイトメトリー用の試料を採取し、フロー染色のために96ウェルV底プレート中に播種する。
【0157】
16.ウェルの中心の細胞からさらに100μlを採取し、細胞生存率計数器を用いて計数する。
【0158】
17.TCR発現が50%超であり、CD4/CD8二重陽性発現が20%超であり、および細胞サイズが減少している場合には(HSCからT細胞への発達を示す)、細胞は凍結保存され、同種異系療法に対して提供され得るか、または必要に応じて、段階4によって提供されるように拡大増殖され得る。これらのパラメータが満たされなければ、必要な栄養供給および分割を行って培養を継続する。2ml/ウェル未満を除去し、3~4日ごとに2ml/ウェルの新鮮なTPMMを補充し、集密状態に近づけば培養物を分割する。上記の基準が満たされるまで、24/25日目および28日目にこの確認を再度行う。
【0159】
段階4:iNKT-CAR細胞の作製;必要に応じた拡大増殖:
21~28日目(21日目に基準が満たされたと仮定して、しかるべく調整する):刺激(期間:1週間)
【0160】
1.21日目に、細胞を採取し、細胞生存率計数器を使用して細胞を計数する(関連するエクセルシート中に計数を記録する)
a.穏やかにピペット操作することによって細胞を収集して、プレートから細胞を取り出し、コニカルチューブに移す
b.4ウェルあたり2mlの、ThermoFisherによってOpTmizerの商品名で提供される細胞拡大増殖培地などの冷細胞拡大増殖培地(EM)でウェルを洗浄して、プレートにまだ付着しているすべての細胞を除去し、コニカルチューブに移す
c.顕微鏡下で確認し、必要に応じて冷EMでさらなる洗浄を行って、プレートから細胞を収集する。
d.0.2×106細胞のアリコートを取り出し、フロー染色のために96ウェルV底プレート中に播種する。
e.適切な体積の細胞を取り出して段階4のために播種し、300gで10分間ペレット化する。
f.上清を吸引する。
g.10ng/mlのIL-7およびIL-15を含むEM中に、2×106細胞/mlで細胞を再懸濁する
【0161】
2.所望の刺激の方法に応じて、以下の指示の一部に従う。iNKT-CAR細胞の最終濃度は、1×106mlの条件の間に固定される
a.刺激なし
i.10ng/mlのIL-7およびIL-15を含むEM培地で細胞を1×106細胞/mlに希釈する
ii.細胞を播種し、37℃、5%CO2でインキュベートする
b.コートされたCD3/可溶性CD28
i.1.23μg/mlのCD3でプレートを37℃で2時間コートし、使用前にPBSで洗浄する。
ii.10ng/mlのIL-7およびIL-15を含むEMで細胞を1×106細胞/mlに希釈する。
iii.可溶性CD28を細胞懸濁液に1μg/mlで添加する。
iv.細胞を播種し、37℃、5%CO2でインキュベートする。
c.PBMCと可溶性CD3/可溶性CD28
i.ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を解凍し、6,000ラドで照射する。
ii.10ng/mlのIL-7およびIL-15を含むEM中にPBMCを再懸濁する。
iii.iNKT-CAR細胞の最終濃度が1×106細胞/mlになるように、iNKT-CAR細胞をPBMCと1:2~3(iNKT-CAR:PBMC)の比で組み合わせる。
iv.可用性CD3および可溶性CD28を細胞懸濁液に1μg/mlで添加する。
v.細胞を播種し、37℃、5%CO2でインキュベートする。
d.StemCell TechnologiesによってImmunoCult Human CD3/CD28 T Cell Activatorの商品名で販売されている活性化因子などのCD3/CD28 T細胞活性化因子を与える。
i.10ng/mlのIL-7およびIL-15を含むEM培地で細胞を1×106細胞/mlに希釈する。
ii.CD3/CD28 T細胞活性化因子を25μl/mlで細胞懸濁液に添加する。
iii.細胞を播種し、37℃、5%CO2でインキュベートする。
e.StemCell TechnologiesによってImmunoCult Human CD3/CD28/CD2 T Cell Activatorの商品名で販売されている活性化因子などのCD3/CD28/CD2 T細胞活性化因子を与える。
i.10ng/mlのIL-7およびIL-15を含むEMで細胞を1×106細胞/mlに希釈する。
ii.CD3/CD28/CD2 T細胞活性化因子を25μl/mlで細胞懸濁液に添加する。
iii.細胞を播種し、37℃、5%CO2でインキュベートする。
f.aGCを搭載したPBMC
i.ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を解凍する。
ii.2μg/mlのaGCを含むEM中に10×106細胞/mlで再懸濁し、37℃、5%CO2で1時間インキュベートする。
iii.aGCを搭載したPBMCを収集し、6,000ラドで照射した。
iv.EMで少なくとも2回細胞の洗浄を行い、結合していないaGCを除去する
v.10ng/mlのIL-7およびIL-15を含むEM中にPBMCを再懸濁する。
vi.iNKT-CAR細胞の最終濃度が1×106細胞/mlになるように、iNKT-CAR細胞をPBMCと1:2~3(iNKT-CAR:PBMC)の比で組み合わせる。
vii.細胞を播種し、37℃、5%CO2でインキュベートする。
g.K562-CD80-CD83-CD137L-A2ESO人工抗原提示細胞(aAPC)。
i.培養物中からaAPCを収集し、10,000ラドで照射する。
ii.iNKT-CAR細胞の最終濃度が1×106細胞/mlになるように、iNKT-CAR細胞をaAPCと4:1(iNKT-CAR:aAPC)の比で組み合わせる。
iii.細胞を播種し、37℃、5%CO2でインキュベートする。
h.K562-CD80-CD83-CD137L-A2ESO-CD1d人工抗原提示細胞(aAPC-CD1d)。
i.培養物中からaAPCを収集し、10,000ラドで照射する。
ii.iNKT-CAR細胞の最終濃度が1×106細胞/mlになるように、iNKT-CAR細胞をaAPCと4:1(iNKT-CAR:aAPC)の比で組み合わせる。
iii.細胞を播種し、37℃、5%CO2でインキュベートする。
i.aGCを搭載したK562-CD80-CD83-CD137L-A2ESO-CD1d人工抗原提示細胞(aAPC-CD1d)。
i.培養物中からaAPCを収集する。
ii.2μg/mlのaGCを含むEM中に(α-GalCer Prep SOP参照)10×106細胞/mlで再懸濁し、37℃、5%CO2で1時間インキュベートする。
iii.aGCを搭載したaAPCを収集し、10,000ラドで照射した。
iv.iNKT-CAR細胞の最終濃度が1×106細胞/mlになるように、iNKT-CAR細胞をaAPCと4:1(iNKT-CAR:aAPC)の比で組み合わせる。
v.細胞を播種し、37℃、5%CO2でインキュベートする。
【0162】
3.24日目に、細胞計数器を使用して細胞を計数し(関連するエクセルシートに計数を記録する)、10ng/mlのIL-7およびIL-15を含むEMを使用して細胞を1×106細胞/mlに希釈し、必要に応じて培養容器を移動する。PBMCまたはaAPCを利用する場合、この時点で得られた細胞数は解釈することがより困難なことがあり得、この場合には、細胞を乱すことなく培養培地の半分を慎重に除去し、10ng/mlのIL-7およびIL-15を含む等しい体積の新鮮なEMを添加する。PBMCまたはaAPCなしの条件が希釈を必要としなければ、同じくこの半培地交換を行う。
【0163】
4.26日目に、細胞生存率計数器を使用して細胞を計数し(関連するエクセルシートに計数を記録する)、10ng/mlのIL-7およびIL-15を含むEMを使用して細胞を1×106細胞/mlに希釈し、必要に応じて培養容器を移動する。
【0164】
5.28日目に細胞を採取し、Vi-Cellを使用して計数する(関連するエクセルシートに計数を記録する)
a.0.2×106細胞のアリコートを取り出し、フロー染色のために96ウェルV底プレート中に播種する。
b.さらなるフロー染色性質決定のために、0.2×106個の細胞のアリコートを取り出し、96ウェルV底プレート中に播種する。
c.1×106個の細胞のアリコートを取り出し、10ng/mlのIL-7およびIL-15を含むEMを使用して1×106細胞/mlに希釈し、長期的な追跡のために播種する(必要に応じて行われる工程、細胞凍結が完了した後に優先順位を決める)。
d.残存する細胞を300gで10分間ペレット化し、上清を吸引する。
e.適切な体積の凍結保存培地中に再懸濁して、25~50×106細胞/mLを達成する。
f.1ml/クライオバイアルの一定分量に分割し、適切に凍結し、凍結の24時間以内に液体窒素保存に移す。
参照による組み入れ
【0165】
特許、特許出願、特許公報、学術誌、書籍、論文、ウェブコンテンツなどの他の文書の参照および引用が、本開示を通じて為されている。このような文書はすべて、あらゆる目的のためにそれらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。
均等物
【0166】
本明細書で示され、記述されるものに加えて、本発明の種々の改変および多くのそのさらなる態様が、本明細書で引用される科学的文献および特許文献への参照を含む本文書の全内容から当業者に明らかになるであろう。本明細書の主題には、その種々の態様およびその均等物において、本発明の実施に適合され得る重要な情報、例示およびガイダンスが含まれる。
【国際調査報告】