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特表2024-517992ABP信号の決定方法、及び、ABP信号の決定システム、並びにコンピュータプログラム製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】ABP信号の決定方法、及び、ABP信号の決定システム、並びにコンピュータプログラム製品
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/021 20060101AFI20240416BHJP
   A61B 5/02 20060101ALI20240416BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
A61B5/021
A61B5/02 350
A61B5/11
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571354
(86)(22)【出願日】2022-05-20
(85)【翻訳文提出日】2023-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2022063773
(87)【国際公開番号】W WO2022243535
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】102021205185.5
(32)【優先日】2021-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500341779
【氏名又は名称】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト・ツール・フェルデルング・デル・アンゲヴァンテン・フォルシュング・アインゲトラーゲネル・フェライン
(74)【代理人】
【識別番号】100106404
【弁理士】
【氏名又は名称】江森 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100112977
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 有子
(72)【発明者】
【氏名】マリアン ヘッシャー
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン ホプフナー
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムート トッドマン
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
【Fターム(参考)】
4C017AA04
4C017AA20
4C017AC20
4C017AC30
4C017BC11
4C017FF05
4C017FF30
4C038VA04
4C038VB40
(57)【要約】
ABP信号の決定方法及びABP信号の決定システム、並びに、コンピュータプログラム製品を提供する。
本発明は、ABP信号の決定方法及び決定システム、並びに、コンピュータプログラム製品に関し、少なくとも1つの心臓運動誘発信号が検出され、検出された心臓運動誘発信号が、少なくとも1つのABP信号に変換され、当該変換が、機械学習によって決定されたモデルによって実行され、心臓運動誘発信号が変換される入力値を構成し、ABP信号が変換されてなる出力値を構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ABP信号(1)の決定方法であって、
少なくとも1つの心臓運動誘発信号を検出するステップと、
前記少なくとも1つの検出された心臓運動誘発信号を少なくとも1つのABP信号(1)に変換するステップと、を有し、
前記変換するステップは、機械学習によって決定されたモデルによって実行され、前記心運動に起因する信号が入力値を構成し、前記ABP信号が、前記変換の出力値を構成することを特徴とするABP信号の決定方法。
【請求項2】
少なくとも1つの心臓運動誘発信号が、SCG信号(2)であることを特徴とする請求項1に記載のABP信号の決定方法。
【請求項3】
少なくとも1つ、又は、別の心臓運動誘発信号が、PCG信号であることを特徴とする請求項1又は2に記載のABP信号の決定方法。
【請求項4】
少なくとも1つ、又は、別の心臓運動誘発信号が、BCG信号であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のABP信号の決定方法。
【請求項5】
前記変換は、オートエンコーダ、畳み込みニューラルネットワーク、LSTMネットワーク、又は、神経変換ネットワークの少なくとも一つのニューラルネットワーク(NN)によって実行されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のABP信号の決定方法。
【請求項6】
前記モデルを決定するために、前記変換によって決定されたABP信号と、基準ABP信号と、の間の偏差を決定するための誤差関数が分析され、当該誤差関数の分析において、前記変換によって決定されたABP信号、及び/又は、基準ABP信号、及び/又は、偏差の異なる信号部分が、異なって重み付けされることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のABP信号の決定方法。
【請求項7】
少なくとも1つの心臓の動きに誘発される信号が、非接触で検出されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のABP信号の決定方法。
【請求項8】
少なくとも1つの心臓運動誘発信号が、前記変換の前にフィルタリングされ、当該フィルタリングされた心臓運動誘発信号が、ABP信号(1)に変換されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のABP信号の決定方法。
【請求項9】
少なくとも1つの心臓の動きに誘発される信号が、装置(4)の検出手段によって生成され、変換が装置(4)の算出手段(T)によって実行されるか、又は、心臓の動きに誘発される信号が他装置の算出手段(T)に送信されて、前記変換が、他装置の算出手段(T)によって実行されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のABP信号の決定方法。
【請求項10】
少なくとも1つの心臓の動きに誘発された信号が、装置(4)の検出手段によって生成され、変換によって決定されたABP信号(1)が、装置(4)の表示手段(A)に表示されるか、又は、少なくとも1つの心臓の動きに誘発された信号が、他装置の表示手段に送信されて、他装置の表示手段によって表示されることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のABP信号の決定方法。
【請求項11】
少なくとも1つの心動誘導信号の変換の前に、検出手段の機能テストが、実施され、操作性が検出された場合にのみ心動誘導信号が変換され、
及び/又は、少なくとも1つの心動誘導信号の変換の前に、検出された信号の信号品質が決定され、前記心臓運動誘発信号が、前記信号品質が所定値以上である場合にのみ変換され、
及び/又は、少なくとも1つの心臓運動誘発信号の変換の前に、心臓に対する検出手段の配置が決定され、前記心臓運動誘発信号が、検出手段の配置が、所定位置に対応するか、又は、所定位置から所定量未満だけ逸脱する場合にのみ変換されることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載のABP信号の決定方法。
【請求項12】
ABP信号(1)の決定システムであって、当該決定システム(3)が、少なくとも1つの検出手段と、少なくとも1つの算出手段(T)とを備え、少なくとも1つの検出された心臓運動誘発信号が、前記算出手段(T)によって少なくとも1つのABP信号(1)に変換可能であり、当該変換は、機械学習によって決定されたモデルによって実行され、前記心臓運動誘発信号を、心運動に起因する信号として、変換の入力値とし、前記ABP信号(1)を、前記変換された出力値とすることを特徴とするABP信号の決定システム。
【請求項13】
前記検出手段が、保育器(9)、ベッド(13)、車両用シート(17)、心臓のペースメーカ、又は、ペット用品の少なくとも一つの内部又は一部に組み込まれていることを特徴とする、請求項12に記載のABP信号の決定システム。
【請求項14】
コンピュータプログラムを含むコンピュータプログラム製品であって、コンピュータプログラムが、コンピュータ、オートメーションシステム、コンピュータシステムのいずれかにおいて実行される際に、請求項1~11のいずれか一項に記載のABP信号の決定方法の1つのステップ、複数のステップ、又は、すべてのステップを実行するためのソフトウェア手段を含むことを特徴とする、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ABP信号の決定方法(生成方法と称する場合もある。)、及び、ABP信号の決定システム、並びに、これらのABP信号の決定方法や決定システムを含んでなるコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血圧は、高血圧関連疾患の場合など、医療診断のための重要な指標である。多くの場合、診断のために連続的な血圧信号、すなわち、いわゆる大動脈血圧信号であるABP信号を検出することが必要な場合や、検出するのが望ましい場合がある。
そして、このような連続的な血圧信号は、通常、生体を傷つけないよう、侵襲的に記録されなければならない。
この点、従来の方法では、例えば、カニューレ、又は、カテーテルを血管に導入し、血圧を連続的に検出する必要があった。
更に、例えば、上腕カフ装置のような、血圧を測定するための非侵襲的測定装置も知られている。
しかしながら、これらの血圧測定方法等は、個々の時点における血圧測定、すなわち、連続的な血圧測定ではなく、不連続な血圧測定しかできないという問題があった。
又、これらの血圧測定装置は、機械的に血流を遮断するか、少なくとも血流を減少させなければならないという問題があった。
更に、カフを身体のしっかりした箇所、例えば、上腕における腕の曲げ部から約1~2cm上の箇所に装着する必要があるため、カフを膨らませるなどして、測定手順によっては誤差が生じやすいという問題もあった。
同様に、カフが、測定箇所に対して、きつすぎたり、緩すぎたりしないようにすべきという使用上の問題もあった。
その上、十分な休止時間なしに血圧測定を繰り返すと、測定値が変化する可能性があり、連続的な血圧検出をした場合、その正確性が、更に低下する場合が見られた。
【0003】
同様に、これらの従来の血圧測定方法は、接触式であるため、場合によっては患者側の感染リスクが高まるという問題もあった。
又、従来の血圧方法は、患者によっては、不快であったり、痛みを伴うことさえ生じるという問題も見られた。
【0004】
そこで、他の既知のアプローチでは、例えば、心臓と指のような2点間のいわゆる脈波伝播時間を測定するために、例えば、ECG装置、又は、SCG検出手段及びPPG装置のような複数の測定システムを利用している。すなわち、脈波伝播時間によって、その後の血圧測定が可能になる。
しかしながら、かかる血圧測定方法では、様々な測定システムと、測定方法を組み合わせる必要があり、比較的精巧である反面、不正確になりやすいという側面もあった。
同様に、このような測定方法によれば、従来の血圧測定を行うために、各測定の前に、人固有の較正を行う必要があるという問題も見られた。
【0005】
他の既知の血圧測定方法に関する改良アプローチとして、かかる血圧測定をより正確に行うために、PPG信号を利用するものが提案されている。
更に、従来の血圧測定方法として、心電図信号(SCG信号)を検出することが知られており、これは心前庭運動信号とも呼ばれる。ここで、心前庭とは、心臓の前の胸壁の一部を意味している。従って、心前部運動信号は、胸壁の一部の動きに関する情報を含むことができる。
特に、かかる心前部運動信号は、心臓の動きに起因する前庭の動き、特に振動に関する情報が含まれる。
従って、このような心前部運動信号に基づいて、心臓弁、例えば大動脈弁や僧帽弁の動きについても検出することができ、関連する特性を特定することができる。
ECG検査で可視化された電気刺激は、心周期内の各筋肉運動の前に発生する電気刺激を意味するが、SCG信号は、その結果、心前庭位置で測定される運動を表している。そして、このような血圧測定におけるアプローチでは、例えば、加速度センサや、ジャイロスコープなどの広く使用されている慣性センサが使用され、その他、圧力センサや、レーダセンサを使用することもできる。
【0006】
同様に、従来の血圧測定方法として、心音図信号の検出に基づく測定方法も知られており、これは音波を受信することによって決定される音声信号を検知するものである。従って、かかる音波は、心臓の動きによって引き起こされると言える。
【0007】
同様に、従来の血圧測定方法として、心音図信号の検出も知られており、これらは心臓の動きによって生じる身体全体の共鳴を検出するものである。
従って、このような心電波形は、全身で検出されるため、特定の測定点に限定されないという利点がある。
【0008】
又、モバイル心電計、及び、ポータブル心電計の分野における研究の大部分は、心臓の周波数、心臓の周波数変動、呼吸の周波数などのバイタルパラメータの抽出につき集中している。
これらのバイタルパラメータは、利用者の病状に関する貴重な情報を提供するにもかかわらず、医師の診断の可能性を広げるためには、血圧を継続的に検出することが望ましいと言える。
【0009】
更に、心臓病学においても機械学習の方法が知られている。複数の既知の方法は、EEGやECG信号で示されているように、生体信号の複雑さやノイズを減らすことによって、健康データを圧縮するために、畳み込みオートエンコーダを使用することを特徴としている。
【0010】
そして、ECGデータの分析に、ニューラルネットワークを使用する以外に、他のタイプのセンサからの信号に機械学習を適用した多くの論文がある。
CNN(畳み込みニューラルネットワーク)は、PPGセンサ(光電脈波センサ)の心拍数の推定や、SCGデータからの心血管障害の自動識別に使用することができる。
【0011】
そこで、特許文献1として、WO2020/009387A1が知られているが、円形ニューラルネットワークを用いてセグメント血圧を推定する方法及び装置を開示している。
この特許文献1では、生体信号が検出され、分析される一方で、特性情報が抽出され、特性情報に基づいて血圧パラメータが算出されることが開示されている。
更に、将来の時点の血圧が、ニューラルネットワークによって決定され、この決定のための入力値は、算出された血圧である。
【0012】
更に、特許文献2として、US2019/274552A1が知られているが、カフを使用しない血圧測定が開示されている。
この目的達成のために、血圧モニターは、BCG信号から血圧関連特性を抽出し、抽出された特性の少なくとも一部に基づいて血圧を推定するプロセッサを備えている。そして、血圧推定器としての、血圧を推定するプロセッサは、機械学習の方法によって決定することができる。
【0013】
更に、特許文献3として、健康モニタリングシステムを開示したUS2020/330050A1が知られている。そして、特に、加速度センサの出力信号が「ピークパターン検出器」に供給され、それが血圧推定器の入力信号となることが開示されている。
【0014】
以上の説明のように、これらの特許文献は、血圧を決定するための重要な特徴として、検出された信号からの特性抽出を開示しており、抽出された特性は、血圧を決定/推定するための方法の入力値を構成することである。
例えば、特許文献3であるUS2020/330050A1は、重要な特徴としてピーク値の検出と推定を開示しており、これらのピーク値の時点は、血圧を推定する非線形回帰モデルの入力値を構成する。
【0015】
又、特許文献2である、US2019/274552A1では、BCG信号から血圧関連特性を抽出し、これを血圧推定の基礎として使用することを重要な技術的特徴として開示している。
更に、特許文献1である、WO2020/009387A1は、生体信号から特性を抽出し、抽出した特性に基づいて過去の血圧関連パラメータを算出することを重要な技術的特徴として開示している。そして、その血圧関連パラメータをニューラルネットワークの入力値として用いて将来の血圧を決定する。
但し、かかる特性抽出は、精巧で誤差が生じやすく、推定血圧信号の品質を低下させる可能性がある。更に、特性の決定にはさらなる計算量が必要となるという問題があった。
【0016】
同様に、非特許文献1に示すように、エムエスイミチアズら(M.S.Imtiaz et al)による、2013年、第26回IEEEにおける、電子及びコンピュータ技術のカナダ会議 (CCECE)、レジーナ、SK、カナダで発表された2013ppに開示された、「心電図と、最高血圧との関係("Correlation between seismocardiogram and systolic blood pressure")」についての知見がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】WO2020/009387A1(特許請求の範囲等)
【特許文献2】US2019/274552A1(特許請求の範囲等)
【特許文献3】US2020/330050A1(特許請求の範囲等)
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】M.S.Imtiaz et al, "Correlation between seismocardiogram and systolic blood pressure," 2013 26th IEEE Canadian Conference on Electrical and Computer Engineering (CCECE), Regina, SK, Canada, 2013, pp:10.1109/CCECE.2013.6567773
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
従って、特に連続的なABP信号の決定方法及びABP信号の決定システム、並びに、できるだけ少ない計算労力で、上述の欠点を含む侵襲的な検出が回避される、ABP信号の容易で正確かつ信頼性の高い決定を可能にするコンピュータプログラム製品を提供することが、従来、重要な技術的課題となっていた。
【0020】
よって、本発明に関する技術的課題の解決は、独立請求項の特徴を有する本発明の主題から導かれることになる。
又、本発明の更に、有利な実施態様は、従属請求項の特徴を有する主題から導かれることになる。
【課題を解決するための手段】
【0021】
すなわち、本発明によって提案されるのは、大動脈血圧信号、又は、動脈血圧信号を意味する場合があるAPB信号の決定方法であり、少なくとも1つの心運動に起因する信号が検出される。
そして、心運動に起因する信号とは、心運動に起因する信号を意味する場合がある。又、複数の心運動に起因する信号を検出されることも可能であり、特に様々な種類の信号を検出することも可能であるが、これについては後述する。
特に、ABP信号は、連続的なABP信号であることが好ましい。これはABP信号の時系列的な進行、特に、波状の時系列のABP信号が決定されることを意味している。特に、連続大動脈血圧信号は、大動脈血圧を規定し、連続動脈血圧信号は、所定の判定期間の各時点の動脈の血圧を規定することになる。
【0022】
特に、心運動に起因する信号は、SCG信号(心電波形信号)、PCG信号(心音心電波形信号)、又は、BCG信号(バリスタ心電波形信号)であっても良い。
これらの心運動に起因する信号は、適切な検出手段によって決定することができる。例えば、SCG信号は、適切なSCG検出手段によって、PCG信号は、適切なPCG検出手段によって、BCG信号は適切なBCG検出手段によって、それぞれ検出されて、データとして決定され得る。
しかしながら、特に、ECG信号は、心臓の動きを誘発する信号であって、その逆ではないため、心臓の動きによって誘発される信号は、特にECG信号ではないと言える。
【0023】
このようなSCG検出手段は、例えば、少なくとも1つの加速度センサ、例えば、MEMS加速度センサ、特にMEMSジャイロセンサ、又は、レーダセンサ、特にドップラーレーダセンサで構成することができる。
従って、既に説明したように、SCG信号は、心臓の動きに関する情報を含むか、又は、エンコードすることにより決定することが好ましい。
このような加速度センサは、一軸、又は、三軸圧電加速度センサ、又は、MEMS加速度センサ、三軸MEMS加速度センサ、又は、ジャイロスコープ、レーザードップラー振動計、マイクロ波ドップラーレーダセンサ、又は、いわゆる空中超音波モーションカメラ(AUSMC)であることが好ましい。
又、PCG検出手段は、特に、マイクロフォン、特に、例えば、携帯電話などのモバイルエンドデバイスのマイクロフォン、又はレーザマイクロフォンから構成され得る。
更に、BCG検出手段は、例えば、少なくとも1つの圧力センサ、例えば、ロードセルとして実装された圧力センサから構成されていることが好ましい。
【0024】
そして、検出された少なくとも1つの心臓運動誘発信号は、少なくとも1つのABP信号に変換されることになる。
例示的な変換処理については、以下に、詳細に説明する。すなわち、検出された複数の心臓運動誘発信号を、ABP信号に変換することも可能である。
【0025】
例えば、大動脈血圧は、心臓の動きに影響されるため、ABP信号には心臓の動きに関する情報も含まれるか、或いは符号化されるため、心臓の動きによる信号と、ABP信号は、心臓の活動に関して同等の情報量を持つことが意外にも発見されている。
従って、逆に言えば、心臓運動誘発信号には、心臓の機械的活動に関する情報も含まれる。心運動に起因する信号は、日常的な病院や診療所での診断には特に使用されず、その解釈は、通常医師のトレーニングの一部ではないため、適切な処理なしでは使用者にとって通常理解不能である。
そのため、より多くの人々にとって通常有益なABP信号を変換によって決定することができ、例えば、診断目的のための医療的適用性が高まることになる。
【0026】
同様に、有利なことに、患者に機械的に接触したり、侵襲的な検出をしたりすることは、心臓の動きに誘発される信号の検出には絶対的に必要な構成ではないと言える。
【0027】
好ましくは、心臓の動きに誘発される信号は、非接触の方法で、すなわち、関連するセンサによって患者に機械的に接触することなく検出される。
これは、検出手段が、患者から離れた位置、例えば、患者が休息するマットレスの中、又は患者が座る座席の中に配置されることによって行われ得る。
又、検出手段が、例えば、レーダセンサで構成されている場合は、患者、又は、患者の胸部が、レーダセンサの検出範囲に位置するように検出手段を配置すればよい。
【0028】
しかし、心臓の動きに誘発される信号を、患者に機械的に接触するセンサ、又は、検出のために患者内、又は、患者上に配置されるセンサによって検出することも可能である。
例えば、検出手段が、ペースメーカ、特に、速度適応型ペースメーカに内蔵されることも可能である。かかるペースメーカは、このような検出手段、特に検出手段によって検出された信号に応じて患者の心拍のリズムを適応させるために、例えば、脈拍の要求と同様に、現在の運動状態に適応させるために、加速度センサとして実装された検出手段を含むことができる。
これを可能にするために、加速度センサの出力信号に応じて活動が識別され、例えば負担が増加した場合(例えば、歩行から階段昇降に変化した場合)、心拍のリズムがそれに応じて増加することが好ましい。
又、このために使用される加速度センサは、心臓の動きに起因する信号を検出するために使用することもできる。
【0029】
このような検出手段によって検出された信号は、次いで、例えば、データ伝送の適切な方法によって無線方式で、例えば、算出手段に伝送されてもよく、そして、算出手段は、次に、変換を実行することができる。
このような外部にあっても良い算出手段は、例えば、モバイルエンドデバイスの算出手段であっても好ましい。或いは、ペースメーカが、変換を実行する算出手段を備えていることも考えられる。
このようなペースメーカの算出手段は、組み込みシステムの形で内蔵されていても好ましい。例えば、算出手段は変換を実行するために特別に設計された集積回路として実装することができる。そして、かかる集積回路は、例えば、ニューラルネットワークの機能を提供することも好ましい。
【0030】
又、心臓のペースメーカに内蔵された検出手段を使用することにより、心臓の近くに配置された既存のセンサの利用が可能となり、その結果、心臓の動きに起因する信号の信号品質が良好となる。
この結果、測定精度が向上し、本発明に従って決定されるABP信号の精度も向上する。更に、心臓のペースメーカの検出手段を含む医療製品として、ECG信号を決定するシステムの簡便な認証も、既に認証された心臓のペースメーカの拡張利用により可能となる。
【0031】
従って、この変換により、例えば、心前部の動き、これらの動きによって引き起こされる音波、又は、体全体の動きを表す少なくとも1つの心臓の動きに誘発される信号が、大動脈血圧の時系列的な進行を表す信号、又は、再現する信号に変換されることになる。
【0032】
ABP信号への変換は、好ましくは直接変換である。このような変換は、複数の部分変換を含むこともでき、心臓の動きに誘発された信号は、例えば最初の部分変換で中間信号に変換され、中間信号はさらなる部分変換でABP信号に変換されることが好ましい。もちろん2回以上の部分変換を行うことも可能である。
【0033】
従って、提案された変換による決定方法は、必ずしもそうではないが、非接触で、しかし、いずれにせよ非侵襲的な方法で行われるABP信号の簡単で信頼性の高い決定を有利にもたらすことができる。
又、所定の変換による決定方法は、ABP信号の信頼できる長期間の記録を可能にし、特に、心臓の動きに誘発される信号を問題なくそのような期間にわたって記録することができる。その後、特に非侵襲的な方法で決定が行われ、変換することができるので、24時間を超える期間にわたって記録することができる。
【0034】
更に、心臓の動きに誘発される信号を検出するのに適した検出手段を含む既存の装置に、特許請求された方法を有利に実施し、その結果、これらの装置がABP信号を決定できるように後付けすることが可能である。
例えば、携帯電話には、通常、加速度センサが搭載されている。従って、例えば、携帯電話機を患者の胸部に置き、加速度センサの出力信号を検出することにより、SCG信号を決定することができる。
これらの出力信号は、提案された変換によってABP信号に変換することができる。更に、PCG信号の決定には、携帯電話のマイクロフォンを使用することもできる。
【0035】
本発明によれば、所定のデータ変換は、機械学習(AI学習)によって決定されたモデルによって行われることが特徴である。
【0036】
更に、心運動に起因する信号は、変換の入力値を構成し、ABP信号は、変換の出力値を構成する。特に、心運動に起因する信号から変換の入力値を構成する特性の抽出は行われない。
従って、未処理の心拍動誘発信号、又は、フィルタリングされた心拍動誘発信号が変換の入力値を構成することが可能であり、フィルタリングは特性抽出の役割を果たさない。
更に、かかる変換は、特に、所定の特性を決定するステップを含んでいなくとも良い。又、心電信号が変換の唯一の入力値を構成することもある。換言すれば、心臓の動きに起因する信号を除けば、他の入力値は変換において考慮されないと言える。
【0037】
ここで、機械学習(AI学習)という用語は、学習データに基づいてモデルを定義する方法を含んでも良いし、又は、そのような学習データに基づいてモデルを定義する方法を意味する。
例えば、ティーチングがあり、かつ、学習の手法によってモデルを定義することが可能であり、そのための学習データ、すなわち、入力データと、出力データと、からなる学習データセットが挙げられる。
入力データとして、ここでは心臓の動きに誘発された信号を提供することができ、これらの心臓の動きに誘発された信号に対応するABP信号が出力データとして提供される。
【0038】
特に、このようなトレーニングデータの入力データ及び出力データは、心臓運動誘発信号及びABP信号を同時に決定することにより、結果として決定することができる。そして、これらの同時に決定されたデータは、その後、トレーニングのための入力データ及び出力データを構成する。
このようなデータを同時に決定する方法及び装置は、本明細書の冒頭で説明した先行技術から公知である。例えば、モデルは、心電図、心音図、又は、心音図と、血圧信号の相互関係をここで学習することができる。このようなティーチングとしての機能や、学習の方法は、当業者に知られている。
又、モデルを定義するために、ティーチングなしに、学習の方法を使用することも考えられる。学習データを決定するために、例えば、連続的な大動脈血圧信号(ABP信号)と、同時に、心電波形信号(SCG信号)を記録することができる。
【0039】
例えば、第1のステップにおいて、同時に、ABP信号の侵襲的で連続的な検出と、心臓の動きに誘発される信号、特にSCG信号の連続的な検出とを、被検者の第1のグループのメンバーに対して行うことができる。ここで、ABP信号は、被検者の血管において直接測定することができる。
【0040】
次に、このようにして検出された被検者グループのデータと、このサンプルで利用可能な振幅、特に収縮期と拡張期の振幅に基づいて、心臓運動誘発信号をABP信号に変換するための第1のモデルのトレーニングが行われる。このようなモデル決定に使用するトレーニングデータを第1トレーニングデータと呼ぶ。
【0041】
その後、非侵襲的に、時間的に離散的に、すなわち連続的にではなく、血圧信号を検出し、同時に連続的に、別の被検者グループのメンバーの心臓の動きに誘発される信号を検出することによって、さらなるトレーニングデータを決定することができる。血圧の時間離散測定は、例えば、上腕カフ測定装置によって実施することができる。
次に、他の被検者グループの被検者の心臓運動誘発信号のABP信号への変換が、第1のモデルを用いて実施されてもよいが、変換によって決定されたABP信号、特に収縮期と拡張期の振幅は、その後、時間離散測定値に基づいて、特に変換によって決定された振幅と時間離散測定で測定された振幅との偏差が最小になるように補正されることが好ましい。
この補正は、最初のトレーニングデータセットが振幅値のすべての変種を含まない可能性があるため、臨床検査室の条件、例えば、活動せずに横になっている状態、場合によっては鎮静状態などによって、横になっている場合に有利である。
【0042】
このようにして変換・補正されたABP信号と、他の被検者グループの心臓の動きに誘発された信号は、別のトレーニングデータセットを構成することが好ましい。
例えば、更新されたモデルのトレーニングは、最初のトレーニングデータセットと他のトレーニングデータセットの全体に基づいて実施されることが可能であり、この場合、全体は融合されたトレーニングデータセットと呼ばれることもある。
従って、さらなる侵襲的な測定を必要とすることなく、トレーニングデータセットの拡張が可能となる。このトレーニングデータセットの拡張は、当該トレーニングデータセットを拡張するために簡単な方法で繰り返すこともできる。
【0043】
モデルの準備の後、すなわちトレーニング段階の後、このようにしてパラメータ化されたモデルは、いわゆる推論段階において、心臓の動きに誘発された信号の形で入力データから決定されるべきABP信号を決定するために、すなわち、提案された変換を実行するために使用される。この結果、信頼性の高い高品質のABP信号が決定される。
【0044】
従って、かかるモデルが、ユーザ、又は、患者非特異的、及び/又は、検出手段非特異的な方法で決定されることが可能であり、このようにして決定されたモデルは、その後、特定のユーザ、及び/又は、特定の検出手段に対して変換を実行するために使用される。
これは、モデルが特定の使用者、及び/又は、特定の検出手段に対して個別に決定されるのではなく、推論段階において個々の使用者、及び/又は、個々の検出手段に対して使用され得ることを意味し得る。
従って、モデルを各ユーザ、及び/又は、各検出手段に対して新たにトレーニングする必要をなくすことが可能である。
特に好ましくは、適切な大きさのデータセットを用いて一度トレーニングし(トレーニング段階)、その後、モデルとして、例えば全てのユーザに対して、ユーザ、及び/又は、検出手段とは無関係に使用することができる(推論段階)。
この結果、特に、各ユーザ及び/又は各検出手段に対して特定のトレーニングを行う必要がないため、方法の適用性が改善されるという利点がある。例えば、異なる検出手段によって決定された信号を変換するために同じモデルを使用することができる。
【0045】
ここで、適切なデータセットは、好ましくは、少なくとも所定数の異なる病人、又は、健常者について、及び/又は少なくとも所定数の生理学について、及び/又は少なくとも所定数の異なる疾患について決定されたデータを含むことが好ましい。
【0046】
但し、SCG信号、PCG信号、又は、BCG信号のみを用いて、同じ特性を有する入力データを用いてモデルを学習させることももちろん可能である。
その場合には、同じ特性を有するこれらの信号を検出するために、様々な検出手段、又は、検出手段の様々な構成を用いることができる。
但し、ユーザ固有及び/又は検出手段固有の方法で、モデルを決定することも勿論可能である。
【0047】
機械学習のための適切な数学的アルゴリズムには、決定木ベースの手法、アンサンブル手法(例えば、ブースティング、ランダムフォレスト)ベースの手法、回帰ベースの手法、ベイズ手法(例えば、ベイズ信念ネットワーク)ベースの手法、カーネル手法(例えば、サポートベクターマシン)ベースの手法、インスタンス(例えば、k-最近傍)ベースの手法、アソシエーションルール学習ベースの手法、ボルツマンマシンベースの手法、人工ニューラルネットワーク(パーセプトロンなど)ベースの手法、ディープラーニング(畳み込みニューラルネットワーク、積層オートエンコーダなど)ベースの手法、次元削減ベースの手法、正則化手法ベースの手法等の少なくとも一つが含まれ、これらが使用されることが好ましい。
【0048】
例えば、ニューラルネットワークをトレーニングする場合、変換の所望の品質を確保するために、定期的に大量のトレーニングデータが必要となる。
トレーニングデータの量は、基礎となる問題の複雑さ、要求される精度、及びトレーニングされるネットワークの望ましい適応性などの要因に依存する場合がある。
応用分野、すなわちネットワークが展開されるドメインは、これらの要因の決定、従って学習データの量の決定において、最も重要な要素であることが多い。
領域に関する十分な事前知識があれば、最適解への収束を早めたり、そもそもネットワークの学習でそのような収束が可能になるようなデータを準備することができ、それによって必要な学習データ量を減らすことができる。
【0049】
提案された決定方法は、医療環境で使用されることも好ましい。従って、高い精度が望まれる。更に、ABP信号と心臓の動きに起因する信号は、検出するためのセンサが異なるため、比較的に複雑である。
しかし、その結果、ニューラルネットワークをトレーニングするためのデータ量が膨大になる。必要なデータ量を減らすために考えられるステップは、学習データ、特に入力データ及び/又は出力データをフィルタリングすることである。
特に、トレーニングデータセットの入力データ及び出力データは、心臓運動誘発信号及びABP信号を同時に決定し、次いでトレーニング前にそれらをフィルタリングすることによって決定することができる。
このようにすると、モデルの決定/生成に必要なメモリ要件と必要な計算時間及び/又は容量の両方が削減される。例えば、フィルタ、特にバンドパスフィルタ、例えばバターワースフィルタを用いてトレーニングデータをフィルタリングし、トレーニングデータ中の高周波成分だけでなく低周波成分も減衰させることが可能である。
又、例えば、バンドパスフィルタの最初の低いカットオフ周波数は、0.5Hzであって、もう一つの高いカットオフ周波数は、200Hzであることが好ましい。
同様に、ハイパス及び/又はローパスフィルタ、又は、トレーニングデータから関連する望ましくない周波数をフィルタリングする他のフィルタ(例えば、多項式フィルタ)を利用することも考えられる。
しかし、決定された信号をフィルタリングせずに、トレーニングに使用することもできる。
【0050】
別の実施形態では、少なくとも1つの心臓運動誘発信号はSCG信号である。これにより、SCG信号が確実に決定され得るので、ABP信号の信頼性の高い提供が有利にもたらされる。
更に、SCG信号は広い周波数スペクトル(特に、BCG信号と比較してより広い周波数スペクトル)を有し、従って高い情報密度を有し、非接触で決定することができることが有利である。
特に、SCG信号は心臓弁の動きに関する情報を含むことができる。有利なことに、SCG信号は、特にBCG信号と比較して、より高い周波数の成分を含むため、モーションアーチファクトが少ない。
これらの特性は、結果的に高い信号品質をもたらす。同様に、SCG信号を用いてモデルを決定することは、十分に速い収束で可能であることが判明している。
【0051】
或いは、心運動に起因する信号はPCG信号である。PCG信号は、広い周波数スペクトル、特に、SCG信号やBCG信号に比べて広い周波数スペクトルを持つため、ABP信号を正確に決定するのに有利である。
従ってPCG信号も情報密度が高いと言える。或いは、心運動に起因する信号はBCG信号である。かかるBCG信号は、全身で測定できるため、ABP信号の柔軟な検出と決定に有利である。
特に異なる複数の心運動誘発信号、例えば、複数のSCG信号、複数のBCG信号、又は、複数のPCG信号が検出されることが考えられる。
同様に、SCG信号、PCG信号、BCG信号からなる信号セットのうち少なくとも2つの異なる信号が検出され、これらの異なる信号を少なくとも1つのABP信号に変換することによって少なくとも1つのABP信号が決定されることもある。
又、異なる心運動誘発信号から融合心運動誘発信号を決定し、これを少なくとも1つのABP信号に変換することも考えられる。
【0052】
別の実施形態では、変換によって決定されたABP信号と、基準ABP信号と、の偏差を決定するための誤差関数が、モデルを決定するために分析されることが好ましい。そして、変換によって決定されたABP信号、及び/又は基準ABP信号、及び/又は偏差(偏差信号)の異なる信号部分は、誤差関数の分析において異なる重み付けがされることが好ましい。
従って、ABP信号固有の誤差関数を使用することができる。基準ABP信号は基本的な真理を表し、例えば、既知の、例えば侵襲的なABP検出手段によって検出された、入力データとして、すなわち、心臓の動きに誘発された信号と平行して検出されたABP信号であることも好ましい。
誤差関数は、変換の結果、すなわち変換によって決定されたABP信号と、基本的に、真値と、の間の偏差を決定、又は、定量化するために使用される。
この偏差は、次に、機械学習による変換のためのモデルの決定、特にトレーニング、特にニューラルネットワークの決定に影響を及ぼし、モデルは例えば偏差が減少するように適合される。ここで、例えば、平均二乗偏差、又は、平均絶対偏差が、偏差として決定されることも好ましい。
【0053】
このような偏差の決定のために、変換によって決定されたABP信号、又は、基準ABP信号の様々な信号部分が異なるように重み付けされ、残りの信号のすべての信号部分が同じように重み付けされることが可能である。
好ましくは、偏差の決定のために、変換によって決定されたABP信号のすべての信号部分と基準ABP信号のすべての信号部分とが同じように重み付けされる。
しかしながら、偏差を表す信号の異なる部分が異なるように重み付けされることも好ましい。
偏差信号における重み付け部分は、変換によって決定されたABP信号、及び/又は、基準ABP信号における、所定の関連部分に時系列的に対応する部分であっても好ましい。
【0054】
前述の信号の少なくとも1つにおける異なる信号部分の異なる重み付けは、モデルの品質、従って変換によって決定されるABP信号の信号品質を有利に改善することができる。
異なる信号部分の異なる重み付けは、特に、ABP信号の特徴的な、従って関連性の高い部分の重み付けを、関連性の低い部分よりも高くすることを可能にする。
関連するABP信号部分は、例えば、入力装置を用いて信号部分を選択することにより、専門家が特定することができる。
しかしながら、代わりに、例えば所定の信号特性を有する部分を識別する適切な検出方法によって、関連する信号部分の自動検出を行うことも考えられる。
このような検出方法では、例えば、位相変換が行われる。この場合、所定の信号特性を有する部分に所定の重み付けが割り当てられることがある。
信号における関連部分は、収縮期部分、又は、拡張期部分であっても好ましい。
【0055】
収縮期部分は、ABP信号と同時に記録されたECG信号におけるRピークで開始し、Rピークに続くT波が終了する時点で終了する時間セグメントとすることができる。
拡張期部分は、ABP信号と同時に記録されたECG信号におけるT波の終わりから始まり、このT波の終わりに続くRピークが発生する時点で終わる時間セグメントであっても好ましい。
ABP信号のある期間は、2つの局所極大を示すことがあり、時間的に最初に発生する第1の局所極大は、それに続く第2の局所極大よりも振幅が大きいといえる。
ABP信号のこの期間において、収縮期部分は、血圧が最初の局所最大値まで上昇する前に短時間観察され、2つの局所最大値の間の局所最小値に達したときに終了する時間セグメントである。拡張期部分は、その後に開始し、次の収縮期部分の開始時に終了することになる。
【0056】
別の実施形態では、変換はニューラルネットワークによって実行される。例えば、ニューラルネットワークは、オートエンコーダとして、又は、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)として、又は、RNN(リカレントニューラルネットワーク)として、又は、abLSTMネットワーク(長期短期記憶ネットワーク)として、又は、神経変換ネットワークとして、又は前述のネットワークの少なくとも2つの組み合わせとして実施され得る。
このようなニューラルネットワーク、特に、オートエンコーダとして実施されたニューラルネットワークは、ここで上述のトレーニングデータの助けを借りてトレーニングすることができ、検出された心臓の動きに起因する信号のABP信号への変換の実施は、トレーニング後に可能になる。
【0057】
ここで、オートエンコーダとしてのニューラルネットワークの実施は、有利には、変換に必要な計算労力が低いので、変換を、例えば、携帯電話のような組込みシステム及びポータブルエンドデバイスによって、簡単な方法で、確実かつ迅速に実行することができる。
【0058】
CNNとしての実施は、有利なことに、ネットワークの複雑さを低減することを可能にし、従って、低い計算能力を有する装置に適している。これは、学習段階と推論段階の両方に関係する。
又、CNNでは学習に必要な期間が短く、特に、比較的に高い計算能力を必要とするLSTMネットワークよりも短いことも有利である。
【0059】
しかし、LSTMネットワークとしての実施は、そのアーキテクチャが時間に関連する依存関係を考慮に入れているため、時系列の分析に特に適している。その結果、変換とそれによって決定されるABP信号の品質が高くなるという利点がある。
【0060】
代替的な実施形態では、変換は所定の数学的モデルによって、或いは、例えば、ユーザによって予め決定され得る所定の変換関数によって実行されることが好ましい。
特に、心運動に起因する信号につき、ABP信号に変換するための数学的モデルに沿って、適切にパラメータ化することが好ましい。この結果、ABP信号の代替、信頼性、及び高速決定が更に有利になる。
【0061】
又、別の実施形態では、少なくとも1つの心臓の動きに誘発される信号が非接触で検出されることが好ましい。
このような信号が、複数検出される際、正確に1つが検出されてもよく、又は、複数ではあるが、全てではない場合、或いは、代替的にすべての信号が、非接触方式で検出されたような場合でも好ましい。これと関連する利点は、上記にて既に説明したとおりである。
【0062】
又、別の実施形態では、少なくとも1つの心臓運動誘発信号は変換の前にフィルタリングされ、次いで、フィルタリングされた心臓運動誘発信号が、ABP信号に変換されることが好ましい。
このようなフィルタリングは、特に、ハイパスフィルタリング、又は、バンドパスフィルタリング、又は、バンドストップフィルタリングとすることができる。
かかるフィルタリングを実施するための関連フィルタとしては、特に、バターワースフィルタ、又は、多項式フィルタであっても好ましい。
そして、かかるフィルタリングが、ハイパスフィルタリングである場合、ハイパスフィルタのカットオフ周波数は、心臓の動きに起因する信号に対するモーションアーチファクトの影響を確実に低減するために、例えば、5Hz~8Hzの範囲とすることができる。
又、かかるフィルタリングが、バンドパスフィルタリングである場合、第1のカットオフ周波数は、例えば、5Hz(包含的、又は、排他的)~8Hz(包含的、又は、排他的)の範囲内であってよい。別のカットオフ周波数は、例えば、8Hz~30Hzの範囲外にあるモーションアーチファクトの影響を同様に確実に低減するために、30Hz(包含的、又は、排他的)~35Hz(包含的、又は、排他的)の範囲内であっても好ましい。
又、かかるフィルタリングは、特に、バターワースフィルタ、又は、多項式フィルタによって実施することが好ましい。これにより、特に心臓の動きに起因する信号の検出中に患者が動いた場合でも、ABP信号のより正確な判定及び決定が有利に行われる。
【0063】
又、別の実施形態では、少なくとも1つの心臓運動誘発信号は、装置の検出手段によって決定されることになる。
例示的な検出手段については既に上記で説明したが、ここで、かかる装置とは、検出手段を構成するユニットを指す。例えば、かかる装置は、携帯電話やタブレットPCであっても好ましい。
しかし、もちろん、このような装置の他の実施形態も考えられる。
更に、変換は、装置の算出手段によって実行されることが好ましい。言い換えれば、装置は、検出手段と、算出手段との両方から構成されることが好ましい。
ここで、算出手段は、マイクロコントローラ、又は、集積回路として実装された手段、或いは、マイクロコントローラ、又は、集積回路それ自体から構成され得る。
【0064】
例えば、プログラマブル又はハードワイヤード部品、特に、チップ(例えばASIC、FPGA)によって、完全な変換、又は、部分的な変換を実行することが可能である。
このようなコンポーネントは、それ自体で、又は、システムインパッケージ(SiP)の一部として、変換を実行することができる。
又、心臓の動きに起因する信号を検出するためのセンサ、例えば、MEMS加速度センサ、又は、別の電子部品、例えば、SoC(システムオンチップ)として変換を実行するための手段を直接統合することも可能である。
【0065】
この結果、例えば、エンドデバイス、特に、モバイルエンドデバイスにおいてABP信号の集中検出と決定が有利に行われる。
【0066】
説明した信号処理のための手段とは別に、装置は、信号記憶のための手段、信号伝送のための手段、及び表示のための手段を備えることも可能である。
一方、装置が、説明した手段のうちの一つも構成しないか、又は全てを構成しないこともあり得る。この場合、検出された心臓の動きに起因する信号は、1つ、又は、複数の他の手段から構成される別の他装置に送信することができる。
従って、このようにして決定されたABP信号は、例えば、他装置の表示手段によって視覚化することもできる。
又、ABP信号は、例えば、装置の記憶手段によって記憶することもできる。更に、例えば装置の適切な通信手段を介して、ABP信号を装置から外部システムに送信することも可能である。
【0067】
或いは、心臓の動きに起因する信号は、検出手段から装置外部の算出手段に送信され、この装置外部の算出手段によって変換が実行されることも好ましい。装置外部の算出手段は、特にサーバー手段であってもよいし、他装置の算出手段であってもよい。
【0068】
この場合にも、心臓の動きに起因する信号は、例えば、装置の表示手段によって視覚化することができ、そのために、装置の外部の算出手段によって実行された変換によって決定されたABP信号が装置に再送信される。
このようにして決定されたABP信号を、装置外部の表示手段で視覚化することももちろん可能である。このために、ABP信号を関連する他装置に送信して表示させることができる。
更に、このようにして決定されたABP信号は、例えば、装置外部の記憶手段、又は、算出手段、或いは、装置外部の別の記憶手段、又は、算出手段によって、記憶されたり、更に、処理されたりすることができる。
ここで、装置外部の算出手段は、ネットワーク、特にインターネットのサーバー手段であってもよいし、サーバー手段を形成する装置の態様としてもよい。
特に、装置外部の算出手段は、クラウドベースのサービスを提供するサーバー手段の一部であることも好ましい。
装置外部の算出手段への伝送は、好ましくは、例えば、適切な伝送手段によって、無線方式で行われ得る。しかし、有線方式で伝送を構成することももちろん可能である。
【0069】
この結果、有利なことに、検出手段も備える装置の算出手段が、変換によって過度の負担を受けることがない。
従って、比較的に低い計算能力を提供する装置によって心臓の動きに起因する信号の検出を実施することが可能であり、その結果、関連する変換及び潜在的なさらなる処理を、比較的に高い計算能力を有する他の計算システムによって実施することができる。
【0070】
別の実施形態では、少なくとも1つの心臓運動誘発信号は装置の検出手段によって決定され、変換によって決定されたABP信号は装置の表示手段、又は、外部の表示手段、例えば別の他装置の表示手段に表示されることが好ましい。
例えば、心臓の動きに誘発された信号が、装置から装置外部の算出手段に送信され、そこで変換が行われ、このようにして決定されたABP信号が、他装置、例えば、他の携帯電話機に送信され、その表示手段に表示されることも可能である。
ABP信号は、機器に再送信され、その表示手段で表示されることもある。ABP信号は、特に装置外の算出手段がサーバー手段、又は、その一部である場合、ブラウザのディスプレイによって表示されることもある。
このようにして、本発明に従って決定されたABP信号に基づいて遠隔監視を実施することが可能である。
【0071】
別の実施形態では、検出手段の機能テストは、少なくとも1つの心臓運動誘発信号の変換の前に実施され、心臓運動誘発信号は、操作性が検出された場合にのみ変換されることが好ましい。操作性が検出されるのは、例えば、検出手段が、時系列的に変化する出力信号を決定する場合である。
そして、時系列的に一定の出力信号が決定される場合、又は、出力信号が一定の出力信号から所定量以上逸脱しない場合、操作性がないことが検出され得る。或いは、累積的に、出力信号が所定のノイズ特性、特にホワイトノイズの特性から所定以上逸脱した特性を示す場合に、操作性が検出されることがある。この場合、操作性につき、問題ない旨が検出され得ることになる。そうでない場合は、操作性の欠如を検出することができる。
又、出力信号のサンプリングレートが、目標サンプリングレートを逸脱している場合、及び/又は、出力信号の定量化が許容定量化値を逸脱している場合にも、操作性の欠如が検出されることがある。操作性がない場合、すなわち、操作性の欠如の場合、所定の変換は実行されないことになる。
この結果、有利なことに、検出手段の動作可能性が想定される場合にのみ、所定の変換が実行される。このようにして、本発明の決定方法を実施する際のエネルギー消費が低減されることになる。
【0072】
代替的に又は累積的に、検出された信号の信号品質は、少なくとも1つの心臓運動誘発信号の変換の前に決定され、心臓運動誘発信号は、信号品質が所定量以上である場合にのみ変換されることが好ましい。信号品質は、例えば、信号対雑音比、又は、この比を表す量とすることができる。
この比が、所定量より大きい場合、変換が実行されることが好ましい。又、信号品質は、心運動に起因する信号の一部における所定の基準信号曲線と検出信号曲線との偏差が所定量以下である場合に、所定量よりも大きくても好ましい。これは、いわゆるテンプレート比較とも呼ばれることがある。
ここで、心運動に起因する信号の古典的な信号形状、すなわち基準信号曲線が決定され、記憶されることが好ましい。次いで、検出された心運動に起因する信号の信号曲線と、基準信号曲線との間の偏差が、当業者にとって公知の方法を用いて決定されることも好ましい。
【0073】
信号品質は、例えば、ニューラルネットワークのような適切なモデルを用いて決定することもできる。このようなモデルのトレーニングデータは、例えばユーザによって決定されてもよいし、信号品質を表す品質基準を心運動に起因する信号に割り当てる、自動化又は半自動化された方法で決定されてもよい。
この割り当てについても、アノテーションとも呼ばれるが、心運動に起因する信号は、入力データを構成し、品質基準は、トレーニングデータセットの出力データを構成することになる。
従って、このようなトレーニングデータは、特に、検出手段の様々な空間的位置、特に、心臓に対する相対的位置、様々なSNR、様々な周囲条件下、患者の様々な動きの状態等において、心運動に起因する信号を決定し、アノテーションを付けることによって決定することができる。
【0074】
更に、このような信号品質を決定するためのモデル、特にニューラルネットワークが、機械学習によって決定された変換用モデルを決定するための学習データのフィルタリングにも使用されることが考えられる。
従って、ここでは、信号品質が所定値よりも高い変換用モデルの学習のための入力データとして、このような心臓の動きに起因する信号のみが使用される。
【0075】
変換を実行するための前提条件として、信号品質を分析することで、信頼性の高い高品質の変換が実行されることが有利に保証される。
【0076】
信号品質に加えて、例えばニューラルネットワークのような適切なモデルを用いて品質を損なう原因を決定することも可能である。
このようなモデルのトレーニングデータは、例えばユーザによって決定されるか、又は、半自動化又は全自動化された方法で、心運動に起因する信号に品質を損なう原因を割り当てることができる。この割り当てについても、アノテーションと呼ばれることがある。
ここで、心運動に起因する信号は、入力データを構成し、品質を損なう原因は、トレーニングデータセットの出力データの一部を構成することになる。
そして、品質を損なう原因としては、例えば、アーチファクトの存在、検出にとって不利な空間的位置、特に心臓に対しての検出手段の配置、及び/又は、不利な周囲条件、若しくは、運動条件の存在等が考えられる。
【0077】
品質を損なう原因がこのようにして決定され得る場合には、例えば表示手段を介してユーザにその原因を知らせることができる。更に、ユーザは、その原因を改善するための行動の指示(推奨)を受けることができる。
【0078】
更に、代替的に又は累積的に、少なくとも1つの心臓運動誘発信号の変換の前に、位置、すなわち心臓に対する検出手段の空間的位置及び/又は向きが決定され、心臓運動誘発信号は、位置が所定の位置に対応するか、又は、そこから所定量未満だけ逸脱する場合にのみ変換される。
例えば、位置が所定の位置に対応するとき、又は、位置から所定の量未満だけ逸脱するときにのみ、心運動誘発信号が所定の信号特性を示すことが可能である。
そこで、心電誘導信号の信号特性を求め、所定の信号特性と比較することができる。乖離が所定量より小さい場合、その位置は所定位置に対応するか、所定量より小さく乖離している。
【0079】
又、例えば、ニューラルネットワークのような適切なモデルを用いて位置を決定することも可能である。
このようなモデルのトレーニングデータは、例えば、ユーザによって決定されてもよいし、半自動化又は全自動化された方法で心臓の動きに誘発される信号に位置を割り当てることもできる。この割り当てについても、アノテーションと呼ばれることがある。
ここで、心臓の動きに起因する信号は入力データを構成し、位置は、トレーニングデータセットの出力データの一部を構成することになる。
このようなトレーニングデータは、特に、検出手段の様々な空間的位置、特に心臓に対する相対的位置において心臓の動きに誘発される信号を決定し、それに対応してアノテーションを付けることによって決定することができる。
位置が決定され得る場合、ユーザは、例えば表示手段を介して、位置、特にその正しさを通知され得る。
更に、所定位置から所定量以上逸脱している場合には、ユーザは、位置を変更するための行動の指示(推奨)を受けることができる。
【0080】
変換を実行するための前提条件としての位置の決定により、有利なことに、信頼できる高品質の変換が実行されることが保証される。
例えば、心臓の動きに起因する信号を検出するための検出手段が誤った方法で配置されること、例えば、加速度センサが身体の表面上に静止しないこと、従って変換によって決定されるABP信号の品質が低下すること等を回避することができる。
【0081】
操作性、及び/又は、信号品質、及び/又は、位置を決定するために、変換を意図した心運動誘発信号が分析されて、操作性が検出され、及び/又は信号品質が所定値以上であり、及び/又は、位置が所定位置から所定量以上ずれていない場合に、その信号が変換のために使用されることが考えられる。
或いは、動作可能性、及び/又は、信号品質、及び/又は、位置は、変換を意図していない心拍動誘発信号に基づいて決定されてもよく、動作可能性が検出され、及び/又は、信号品質が所定値以上であり、及び/又は、位置が所定位置から所定量以上ずれていない場合に、変換のための心拍動誘発信号のさらなる検出が実行されることが好ましい。
【0082】
或いは、信号品質、及び/又は、心臓に対する検出手段の配置は、SCG信号以外のバイタルパラメータ、例えば呼吸の特性を表すパラメータを決定し、そのパラメータに応じて、信号品質が所定値以上であるか、又は、等しいか、及び/又は配置が所定の配置に対応するか、又は、所定量未満逸脱しているかを決定することによっても決定することができる。
この目的達成のために、例えば、信号品質、及び/又は、配置に対するパラメータの所定の割り当てが分析され得る。
このようにして、例えば、ABP信号に関連する情報を検出するために、システムが身体上に携帯され、適切な位置に配置されていることを保証することができる。
【0083】
例えば、呼吸の特徴を表す、生のデータ信号を、例えば、高速フーリエ変換を用いて時間範囲から周波数範囲に変換することができる。次いで、例えば、下記式に準じて、信号エネルギーEを計算することができる。
【0084】
【数1】
【0085】
ここで、上記式中、記号Eは、呼吸範囲の信号エネルギーを表しており、記号Aは、呼吸範囲のそれぞれの周波数(例えば0.1Hz~0.6Hz)の振幅を表しており、uRは、呼吸周波数の下限、及び、oRは、呼吸周波数の上限を表している。
【0086】
次に、信号エネルギーが、所定の閾値より小さい場合、呼吸がないことが検出される。信号エネルギーが、所定の閾値より、大きいか等しい場合、呼吸の存在を検出することができる。
呼吸がない場合、決定システムは、身体に装着されておらず、そのため配置が、所定の配置から所定量以上ずれていると仮定することができる。
この場合、心臓の動きに起因する信号の変換は行われないことになる。この結果、有利なことに、検出手段の正しい利用条件を満足することが、想定される場合にのみ変換が実行される。
【0087】
ABP信号は、特に人間のABP信号であることが好ましく、すなわち、人間の医療用途の信号であることが好ましい。
しかしながら、本発明のABP信号の決定方法は、動物のABP信号の決定、すなわち獣医学的応用のための信号の決定にも適用することができる。
例えば、診断目的のために、ABP信号が検出され動物における、特に控えめであって、非侵襲的なABP検出をする際には、有利なことに、動物におけるストレスのかなりの低減をもたらすことになる。
【0088】
すなわち、動物に装着するハーネスや胸ストラップに、検出手段を組み込むことができる。従って、このようなセンサは、動物の飼育者自身が購入し、適用することができる。
例えば、ハーネス/胸ストラップの加速度センサは、動物の心臓の動きに誘発される信号を検出し、説明した変換を可能にすることができる。
同様に、本決定方法は、獣医師が日常的な検査に使用することもできる。動物は、通常、心臓血管系の疾患の症状を非常に遅い時期にしか示さないので、この方法では、そのような疾患の初期段階ですでに診断を可能にすることができる。
ここで、獣医師は、適切な検出手段、又は、検出手段を含む装置、例えばスマートフォンを適用することにより、簡単な方法で動物のABPを検出することができる。又、このような検査コンセプトは、鯉などの愛玩魚や馬、ラクダなどにも適用可能であり、このような動物を含む競技スポーツの分野では特に興味深い。
【0089】
畜産動物の領域では、医療モニタリングはコストや労力に応じて、例えば獣医師によるコホート診断のような小規模なものしか定期的に実施されていない。
しかし、ABPモニタリングは、動物の福祉に関連する貴重な情報を医師にもたらしてくれると考えられ、例えば、生産性、健康状態、ストレス評価、溶連菌などの細菌感染の早期発見などに役立つことになる。
但し、現在までのところ、一般的な方法を用いた個々の動物のABPモニタリングは、非常に精巧で高価である。
提案された方法は、例えば、レーダセンサを使用することにより、心臓の動きに誘発される信号を非接触で検出する場合、費用対効果が高く、容易なモニタリングの可能性を提供する。
従って、動物を非接触で、従って衛生的な方法でモニターすることができる。このモニタリングは、ブタや反芻動物のような養殖動物だけでなく、魚類にも考えられる。提案された方法は、動物研究にも利用できる。又、動物園や野生動物公園でも、できるだけストレスを与えずに動物の健康を確保するために応用できる。
提案された決定方法は、非接触で適用できるという利点がある。もう一つの利点は、適用が容易であり、可用性が高いことである。同様に、病院のベッドや介護施設のベッド、或いは家庭環境におけるSCG検出手段にも適用できる可能性がある。
【0090】
同様に、一般医や特に専門医が不足しがちな農村部でも簡単に使用できることも利点である。提案された方法は、このようなシナリオにおける遠隔医療アプリケーションに簡単かつコスト効率よく導入することができる。
【0091】
更に、SCG信号2を検出できるシステム、例えば加速度センサやジャイロスコープを含む既存の装置は、ソフトウェアの更新によって提案された方法を実行できるようにすることができる。
従って、本決定方法によって提供される機能は、本決定方法の幅広い適用性を保証する多数の装置に後付けすることができる。
【0092】
更なる利点は、簡単で信頼性の高い長期的な心前胸部運動(SCG信号)の検出が可能であることであり、これにより特に24時間を超える長期的で信頼性の高いABP信号の決定も可能となる。
同様に有利な点は、必要とされるセンサは費用効果が高く、必要とされるセンサはすでに多くの使用可能な機器に設置されており、従って本決定方法の実施に使用することができることである。
同様に、提案された方法は、すでに決定されたSCG信号2をABP信号1に変換する場合にも適用できる。これは科学的研究において特に興味深いと言える。
【0093】
更に、提案されるのは、ABP信号の決定システムであって、このABP信号の決定システムは、少なくとも1つの心臓運動誘発信号を検出するための少なくとも1つの検出手段と、少なくとも1つの算出手段と、を備えていることが好ましい。
上記で説明したように、検出手段と、算出手段はそれぞれ装置の一部であることも好ましい。
しかしながら、検出手段と、少なくとも1つの算出手段が、それぞれ互いに異なる装置の一部であることも好ましい。
又、ABP信号の決定システムが、複数の心運動に起因する信号を検出するための複数の検出手段から構成されることも考えられ、それも又、好ましい態様である。
【0094】
更に、検出された少なくとも1つの心臓運動誘発信号は、算出手段によって少なくとも1つのABP信号に変換可能である。
この目的のために、検出手段によって検出された信号を、例えば伝送システムによって算出手段に伝送することが必要とされ得る。
本発明のABP信号の決定システムによれば、所定の変換は、機械学習によって決定されたモデルによって行われる。
更に、心臓の動きに起因する信号が、入力値を構成し、ABP信号が、変換の出力値を構成することになる。
【0095】
本発明のABP信号の決定システムは、関連する言及された利点を含み、開示された明細書に記載された実施形態の1つによるABP信号の決定方法の実施を有利にする。
従って、本発明のABP信号の決定システムは、そのような決定方法に関し、本システムを使用して実施できるように構成されている。
【0096】
別の実施形態では、検出手段は、保育器に組み込まれていることが好ましい。例えば、検出手段は、ドップラーレーダセンサで構成され、特に、保育器のマットレス上に横たわる患者の胸部が、レーダセンサの検出範囲内に配置されるように、この場合、保育器の天井に配置されても好ましい。
或いは、検出手段は、保育器の底部、又は、マットレスの中/上に配置された加速度センサとして構成したり、又は、実施したりすることも好ましい。
【0097】
或いは、検出手段をベッド、特に病院のベッドに配置することもできる。検出手段が、例えば、ドップラーレーダセンサとして実装されている場合、マットレスの下、又は、ベッドの上方、例えば昇降ポールに取り付けて配置することができる。
【0098】
同様に、先に説明した、マットレス内/上、又は、ベッドベース内/上に配置される加速度センサとしての検出手段の実施も考えられる。又、ベッドのマットレス内/上に配置される圧力センサとして検出手段を取り付けて、実装することも可能である。
【0099】
更に、検出手段は、代替的に車両用シートに組み込まれることも好ましい。ここで、ドップラーレーダセンサとして実装された検出手段は、例えば、シート背もたれの中/上に配置されても好ましい。
又、圧力センサとして実装された検出手段をシート背もたれの中/上に配置しても好ましい。加速度センサとして実装された検出手段についても同様である。
更に、検出手段は、心臓のペースメーカに内蔵される。更に、検出手段は、ペット用品、例えば、チェストストラップ、ホルター、首輪などの内部又は一部に、代替的に組み込まれることも好ましい。
【0100】
従って、ABP信号を生成し、決定するための、ABP信号の決定システムであって、インキュベータから構成され、検出手段が、インキュベータ内/インキュベータ上、又は、インキュベータのマットレス内/マットレス上に配置されている決定システムも含まれていることが好ましい。
すなわち、ABP信号の決定システムであって、ベッドで構成され、検出手段がベッドの中/上、又は、ベッドのマットレスの中/上に配置されているシステムについて説明する。
よって、ABP信号の決定システムであって、車両用シートを備え、検出手段は車両用シートの中/上に配置されるシステムを構成することも好ましい。
又、ABP信号の決定システムであって、心臓のペースメーカを更に備えており、検出手段は、心臓のペースメーカの中/上に配置されているシステムとして構成することも好ましい。
更に、ABP信号の決定システムが、記載されており、このシステムは、更にペット用品を備えており、検出手段は、ペット用品内/ペット用品上に、配置されていることも好ましい。
もちろん、ABP信号の決定システムとして、他の用途も考えられる。すなわち、保育器、ベッド、マットレス、車両用シート、心臓のペースメーカ、及びこのようなシステムの検出手段を少なくとも含むペット用品も含まれる。
【0101】
更に、所定のコンピュータプログラムを含むコンピュータプログラム製品が提案される。
従って、かかるコンピュータプログラムは、コンピュータ、又は、オートメーションシステムによって、又は、コンピュータシステムにおいてコンピュータプログラムが実行される場合に、本開示に記載の実施形態の1つによるABP信号の決定方法の1つ、複数の決定方法、又は、すべての決定方法のステップを実行するためのソフトウェア手段を含むことが好ましい。
【0102】
更に、コンピュータ上、又は、オートメーションシステム内で実行されたときに、コンピュータ、又は、オートメーションシステムに、本開示に記載された実施形態の1つによるABP信号の決定方法の1つ、又は、複数のステップ、又は、すべてのステップを実行させるプログラムであることが好ましい。
そして、それに加えて、或いは、単独で、そのプログラムが、特に、非一過性の形態で記憶されたプログラム記憶媒体、及び/又は、そのプログラム記憶媒体を構成するコンピュータ、及び/又は、物理的、例えば、電気的、例えば、技術的に決定された信号波、例えば、プログラムを表す情報を搬送するデジタル信号波、例えば、ここで説明されるプロセスステップの1つ、又は、すべてを実行することができるコード手段からなる上述のプログラムであることも好ましい。
【0103】
これは、本発明による決定方法が、例えば、コンピュータの実施方法であることを意味する。
例えば、本発明による決定方法の全てのステップ、又は、一部のステップ、或いは、ステップの全体よりも少ないステップのみがコンピュータによって実施されることも好ましい。
コンピュータ実施方法の実施形態は、データ処理方法を実施するためのコンピュータの使用である。
例えば、コンピュータは、少なくとも1つのマイクロコントローラ、又は、プロセッサと、例えば、電子的、及び/又は、光学的にデータを(技術的に)処理するための少なくとも1つのメモリと、を備えることが好ましい。
又、プロセッサは、半導体として、例えば、少なくとも部分的に、n型ドープ半導体及び/又はp型ドープ半導体、少なくともII、III、IV、V、Vl半導体材料、ドープされたシリコン、及び/又は、ガリウムヒ素である物質、又は、それらの混合物としての組成物から構成されていることも好ましい。
説明したステップ、特に変換については、例えば、コンピュータによって実行されることが好ましい。決定ステップ、計算ステップ、又は、変換ステップは、技術的方法の範囲内、或いは、プログラムの範囲内等でデータを決定するためのステップである。
ここで、コンピュータは、例えば、任意のタイプのデータ処理装置であり、例えば、電子データ処理装置である。又、コンピュータは、例えば、デスクトップPC、ノートブック、ネットブックなど、一般にそのようにみなされる装置であってもよいが、例えば、携帯電話や組み込みプロセッサなど、プログラム可能な装置であっても好ましい。
従って、コンピュータは、「サブコンピュータ」のシステム(ネットワーク)を含むことができ、各サブコンピュータは、個別のコンピュータを表す。コンピュータ、又は、自動化システムによって実行、又は、実施されるステップは、特に、判定ステップ及び/又は検証ステップであることが好ましい。
【0104】
コンピュータプログラム製品は、本開示に記載された実施形態の1つによるABP信号を決定する方法の実施を有利に実現するものであり、その技術的利点は上述したとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0105】
図1図1は、本発明によるABP信号の決定方法を説明するための概略図である。
図2図2は、第1の実施形態による、本発明によるABP信号を決定するシステム説明するために供する概略ブロック図である。
図3図3は、別の実施形態による、本発明によるABP信号を決定するシステムを説明するために供する概略図である。
図4図4は、本発明による決定方法を説明するために供する概略フロー図である。
図5図5は、別の実施形態によるABP信号を決定するシステムの概略図である。
図6図6は、別の実施形態によるABP信号を決定するシステムの概略図である。
図7図7は、別の実施形態によるABP信号を決定するシステムの概略図である。
図8図8は、本発明による決定方法の例示的な応用例を説明するために供する概略図である。
図9図9は、インキュベータを含むABP信号の決定システムを説明するために供する概略図である。
図10図10は、病院のベッドを含むABP信号の決定システムを説明するために供するシステムの概略図である。
図11図11は、車両用シートを含むABP信号の決定システムを説明するために供するシステムの概略図である。
図12図12は、別の実施形態における本発明による決定方法を説明するために供する概略図である。
図13図13は、図12に示したニューラルネットワークの決定/学習を説明するために供する概略図である。
図14図14は、別の実施形態における本発明による決定方法を説明するために供する概略フロー図である。
図15図15(a)は、ABP信号を決定するシステムの検出手段を含む犬用ストラップを説明するために供する概略図であり、図15(b)は、ABP信号を生成するシステムの検出手段を含むホルターを説明するために供する概略図である。
図16図16は、ABP信号を決定するシステムを含むペースメーカを説明するために供する概略図である。
図17図17は、異なる信号部分の重み付けを説明するために供する例示図である。
【発明を実施するための形態】
【0106】
以下の説明では、図中に示す同一の参照数字は、同一、又は、類似の技術的特徴を有する要素を示すこととする。
【0107】
図1は、ABP信号1の決定方法を示す概略図である。ここで、SCG信号2によって具現化される心臓運動誘発信号が検出される。これは、以下でより詳細に説明するSCG検出手段Sによって行われる。
次に、検出されたSCG信号2は、変換ユニットTによってABP信号1に変換され、この変換ユニットTは特に算出手段として実施されるか、又は、算出手段から構成されることが好ましい。
代替的に、又は、累積的に、又PCG信号が心臓運動誘発信号として検出され、例えばPCG検出手段によってABP信号1に変換され得る。更に、代替的、又は、累積的に、BCG信号も心臓運動誘発信号として検出され、例えば、BCG検出手段によってABP信号1に変換される。
【0108】
図2は、ABP信号1(図1参照)を決定するシステム3の概略ブロック図である。システム3は、SCG検出手段Sと、算出手段として実装された少なくとも1つの変換ユニットTとから構成される。SCG検出手段と、変換ユニットは、例えば携帯電話などの装置4の一部であることが示されている。
【0109】
図3は、他の実施形態によるABP信号1を決定するシステム3の説明図である。上で説明したように、システム3は、SCG検出手段Sと、算出手段として実装された変換ユニットTとから構成されることが好ましい。
更に、ABP信号1が視覚化される表示手段Aが図示されている。ここでは、SCG検出手段S、変換ユニットT、及び表示手段Aが、装置4の一部であることが図示されている。
【0110】
図2及び図3に示されるSCG検出手段は、例えば、加速度センサ、圧力センサ、又は、レーダセンサ、特にドップラーレーダセンサとして実装されてもよいし、そのようなセンサ等で構成されても好ましい。
同様に、SCG検出手段は、ジャイロセンサとして実装されても好ましいし、そのようなジャイロセンサから構成されても好ましい。
【0111】
図4は、本発明による方法の概略フロー図である。ここで、SCG信号は、検出ステップS1において、特に上記で説明したSCG検出手段Sによって検出される。
任意のフィルタリングステップS2において、このようにして検出されたSCG信号2がフィルタリングされ、例えば、ハイパスフィルタリングされる。SCG信号2のいわゆるデトレンディングも実施することができる。
変換ユニットTにおいて実施され得る変換ステップS3において、SCG信号はABP信号に変換される。
従って、心電図も連続的な大動脈血圧信号に変換することができる。変換ステップS3は又、複数の部分的な変換からなることもある。
後処理ステップS4では、このようにして決定されたABP信号、又は、このようにして決定された大動脈血圧信号が記憶され、少なくとも1つの他のシステムに伝送され、及び/又は例えば適切な表示手段A上で視覚化される。
【0112】
図5は、別の実施形態によるABP信号1(図1参照)を決定するためのシステム3を示す概略図である。
このSCG検出手段Sにより、SCG信号2(図1参照)が検出可能である。この装置は更に、装置4と他装置との間のデータ伝送のための通信手段Kを備える。
このHUB手段5は、演算手段として実装された変換ユニットTと、送信されたSCG信号を受信するための通信手段Kとを含む。
更に、SCG信号2のABP信号1への変換は、HUB手段5によって行われる。
そして、このようにして決定されたABP信号1は、HUB手段5の図示しない表示手段に表示されることが可能である。
又、図示しないHUB手段5の記憶手段によって記憶されたり、更に、通信手段Kによって送信されたりすることも可能である。
【0113】
図6は、ABP信号1を決定するためのシステム3の別の説明図である。
図5に示された実施形態とは対照的に、SCG検出手段Sによって決定されたSCG信号2は、通信手段Kを介していわゆるクラウドベースのサービスを提供するサーバー手段6に送信される。
このサーバー手段6は、装置4から送信されたSCG信号2のABP信号1への変換を実行する図示しない変換ユニットTを含んでいることも好ましい。
図6では、変換された信号すなわちABP信号1が装置4に再送信され、装置4の通信手段Kで受信されることが図示されている。そして、このようにして受信されたABP信号は、装置4によって、例えば図示されていない装置4の表示手段Aによって、記憶されたり、更に、処理されたり、視覚化されたりする。
ここで、少なくとも1つの後処理ステップは、HUB手段5、又は、サーバー手段6によって実行されることが可能である。又、上述した後処理ステップの個々、全部ではないが複数、或いは全部が、HUB手段5又は外部のサーバー手段6によって実行されることも可能である。
【0114】
図7は、本発明の別の実施形態による、ABP信号1を決定するシステム3の概略図である。
図6に示された実施形態とは対照的に、装置4のSCG検出手段Sによって検出されたSCG信号2はサーバー手段6に送信され、その変換ユニットは装置4の通信手段Kを介してABP信号1への変換を実行する。このようにして変換されたABP信号1は、サーバー手段6によって他装置7に送信され、他装置7の通信手段Kによって受信される。
更に、このようにして決定されたABP信号1は、その後、他装置7の記憶手段に記憶されたり、他装置7の演算手段によって更に、処理されたり、他装置7の図示しない表示手段によって表示されたりする。
【0115】
図8は、ABP信号1を決定するためのシステム3(例えば、図2参照)の概略的な応用例を示している。
ここでは、図示されていないSCG検出手段Sと、算出手段として実装された変換ユニットTとを含む携帯電話機(4)として実装された装置が、使用者/患者8の胸部に配置されている。もちろん、携帯電話機(4)の代わりに、SCG検出手段Sを含む別の装置を使用することも考えられる。
SCG検出手段Sにより、SCG信号2が決定され、装置4の変換ユニット(図示せず)によりABP信号1に変換され、装置4の表示手段Aにより視覚化される。
【0116】
図9は、別の実施形態によるABP信号1(図1参照)を決定するためのシステム3の説明図である。システム3は、保育器9と、保育器9内のマットレス10上に横たわる患者8(例えば未熟児)とからなることが好ましい。
保育器9は、更に、患者8の安静空間を覆う蓋11を備えることが好ましい。そして、蓋の上には、ドップラーレーダセンサ12として実装されたSCG検出手段Sが配置されていることが好ましい。
ここで、このドップラーレーダセンサ12は、患者8の胸部がこのドップラーレーダセンサ12の検出範囲に位置するように配置されている。或いは、例えば、圧力センサや加速度センサとして実装されたSCG検出手段Sを、マットレス10の中/上や、マットレス10が支持された保育器9の底部の中/上に配置することも可能である。
患者8が、未熟児、又は、新生児である場合、特に新生児の心臓の周波数が比較的に高いため、保育器9の周囲にいる他の人の干渉の影響を確実に低減することができるため、適切なフィルタリング方法によって、環境アーチファクトを完全に、又は、大部分除去したABP信号1を決定することができる。
【0117】
図10は、別の実施形態によるABP信号1(図1参照)を決定するためのシステム3を示す概略図である。
システム3は、マットレス14を含むベッド13からなる。システム3は、マットレス14の中/上に配置された圧力センサ、又は、加速度センサ15として実装されたSCG検出手段Sを更に、備えることが好ましい。
もちろん、例えば、ベッド13の昇降ポール16に配置されるドップラーレーダセンサを使用することも考えられる。
【0118】
図11は、別の実施形態によるABP信号1(図1参照)を決定するためのシステム3を示す概略図である。
ここで、システム3は、車両用シート17と、車両用シート17の背もたれ部に配置された圧力、又は、加速度センサ18として実装されたSCG検出手段Sとから構成されている。
勿論、SCG検出手段Sをドップラーレーダセンサとして実装し、バックレスト内/上又はそれ以外の車両の位置に適切な方法で配置することも考えられる。
【0119】
バイタルデータ、特に血圧の通常のモニタリング、及び通常の血圧に基づく病態の診断とは別に、図8、9、10、11に示される実施形態は、安価で連続的、かつ非侵襲的なモニタリングを可能にし、従って、これまで診断されなかった可能性のある病態、例えば、これまで診断されなかった高血圧の検出も可能になる。
【0120】
図12は、別の実施形態における本発明による方法の概略図である。ここでは、SCG信号2が、SCG信号からABP信号1への変換を実行するニューラルネットワークNNの入力データを構成することが図示されている。
従って、ニューラルネットワークNNの出力信号は、提案されたように決定されるABP信号1である。
この場合、変換ユニットTは、ニューラルネットワークNNとして実施されるか、ニューラルネットワークNNで構成されるか、又は、ニューラルネットワークNNの機能を実行することができる。
【0121】
図13は、図12に示されたニューラルネットワークNNの作成/トレーニングの概略図である。
このプロセスでは、同時に検出されたSCG信号2及びABP信号1の形態のトレーニングデータが、ニューラルネットワークNNに入力され、ニューラルネットワークNNの出力データであるニューラルネットワークによって決定されたABP信号1のトレーニングデータセットのABP信号からの偏差が最小になるように、ニューラルネットワークNNのパラメータが適合される。
又、トレーニングデータセットは、ABP信号と心電図、すなわちSCG信号の組み合わせ測定から得られる。
【0122】
トレーニングデータを作成するために、例として、連続大動脈血圧信号と、心震度信号を同時に記録した。SCG信号の記録/検出には、シマー社(Shimmer Research Ltd.)が販売するECGユニットShimmer3を使用した。このシステムは、心電図信号とSCG信号の同時検出を可能にする。
並行して、ABP信号を検出するための侵襲的な臨床大動脈血圧測定が実施され、更に、ECG信号を検出するための臨床表面ECGが、フィリップス社(Phillips社)の臨床電気生理学システムによって記録された。検出された2つのECG信号(Shimmer3-ECG信号及び臨床表面ECG信号)、特にそれぞれのECG信号のセクションIは、SCG信号と、ABP信号の同期に使用された。
その後、特にいわゆるダイナミック・タイム・ワーピング(DTW)法、又は、自動化された個々のセグメント・シフトの助けを借りて、残りの非同期が補正された。
【0123】
図14は、別の実施形態における本発明による方法の概略フロー図である。
第1の事前検出ステップS0aにおいて、心臓の動きに起因する信号を検出するための検出手段Sの動作可能性が判定される。
操作性が与えられた場合、検出手段Sによって検出された信号の信号品質が、第2の事前検出ステップS0bにおいて決定される。操作性が与えられていない場合、方法は中断され、適切な場合には、エラー信号がユーザに出力される。
【0124】
信号品質が、所定の閾値より高い場合、第3の事前検出ステップS0cにおいて、心臓に対する検出手段Sの空間的位置及び/又は向きが決定される。
信号品質が、所定の閾値より高くない場合、方法は中断され、適切な場合、エラー信号がユーザに出力される。所定場所としての、相対的位置が、目標相対位置から、所定量以上逸脱していない場合、SCG信号が、前述の図4を参照して既に説明したように、検出ステップS1において、特に前述のSCG検出手段Sによって検出される。
他のステップS2,S3,S4は、図4に図示したステップS2,S3,S4と同一であるので、関連する説明を参照する。相対的位置が、目標相対位置から所定量以上ずれた場合、方法は中断され、必要に応じてエラー信号がユーザに出力される。再位置決めのための信号がユーザに出力されることもある。
【0125】
図15(a)は、ABP信号1を決定するためのシステム3(図1参照)のSCG検出手段Sを含む犬用ストラップ19の概略図である。
図示されているSCG検出手段Sは、加速度センサ18として実装されている。
又、SCG検出手段Sは、犬用ストラップ19を意図通りに着用する犬20の胸部に接する部分に、犬用ストラップ19が配置されていることが図示されている。
【0126】
図15(b)は、ABP信号1を決定するためのシステム3(図1参照)のSCG検出手段Sを含む馬用のホルター21(以降、単にホルター21と称する場合がある。)の概略図である。
そして、SCG検出手段Sは、加速度センサ18として実装されている。又、SCG検出手段Sに関し、ホルター21を意図通りに装着する馬22の背中上部に接する部分に、ホルター21が配置されることが図示されている。
しかしながら、SCG検出手段Sを、意図してホルター21を着用する馬22の腹部、又は、胸部に接するホルター21の部分に配置することも考えられる。
【0127】
図16は、ABP信号1を決定するためのシステム3を含むペースメーカ23の概略図である。
図示されているのは、加速度センサ18として実装されたSCG検出手段Sからなるペースメーカ23であって、レート適応型心臓ペースメーカである。図示されていないのは、ペースメーカ23の通信手段Kであり、この通信手段Kは、変換によって決定されたABP信号1を体外の装置、例えば表示手段A、又は、サーバー手段6に送信することができる。
ただし、ペースメーカ23が、変換ユニットTを備えることは必須ではなく、例えば、ペースメーカ23が、変換ユニットTを備えず、SCG検出手段Sの出力信号(生信号)が、通信手段Kを介して、例えば、ペースメーカ外部の演算手段に送信されることも可能である。
【0128】
図17は、誤差関数を分析するための様々な信号部分の重み付けの例示的な図である。
上図にはABP信号が示されている。ABP信号では、2つの異なる信号部分SA1,SA2が図示され、異なる信号部分は矩形で囲まれている。
第1の信号部分SA1は、収縮期部分に対応した信号であり、第2の信号部分は、拡張期部分に対応した信号である。そして、中央に位置する第2の線は、個々の信号部分SA1,SA2に割り当てられた重み付け係数w1,w2を示している。例えば、第1の重み付け係数w1が、第1の信号部分SA1に割り当てられ、第2の重み付け係数w2が第2の信号部分SA2に割り当てられている。第1の重み付け係数w1は、第2の重み付け係数w2よりも小さいことが分かる。但し、重み付け係数が1より大きいこともあり得る。
しかし、ABPに関連する信号部分SA1、SA2が、関連しない残りの信号部分に対してより高く重み付けされるように、すべての重み付け係数w1、w2が1に等しく、或いは、1より大きいことも可能である。
第3の下側の線は、重み付けされたABP信号の信号曲線を示し、第1の信号部分SA1におけるABP信号の振幅は重み付けされ、特に第1の重み付け係数w1が乗算され、第2の信号部分SA2では第2の重み付け係数w2が乗算される。
重み付けは、ABP信号と窓関数との畳み込みによっても行われる。
この重み付けにより、特に振幅補正を行うことができる。このようにすることで、例えば平均二乗誤差の方法を用いた偏差の決定で見られるような、信号の大きな変化が小さな変化よりも高く重み付けされることを避けることができる。
しかし、ABP信号の場合、小さな上昇、例えば、第1の信号部分SA1で縁取られた信号曲線における上昇が重要な情報を含んでいる場合がある。
このようにして、変換によって決定されたABP信号の異なる信号部分と基準ABP信号の異なる信号部分とが重み付けされ、重み付けの後、重み付けされた信号間の偏差が、変換のためのモデル、特にニューラルネットワークをトレーニングするために決定されることが考えられる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【手続補正書】
【提出日】2023-11-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ABP信号(1)の決定方法であって、
少なくとも1つの心臓運動誘発信号を検出するステップと、
前記少なくとも1つの検出された心臓運動誘発信号を少なくとも1つのABP信号(1)に変換するステップと、を有し、
前記変換するステップは、機械学習によって決定されたモデルによって実行され、当該実行の際に、心運動に起因する信号を入力値とし、前記ABP信号を前記変換された出力値として、前記心臓運動誘発信号を前記ABP信号に変換することを特徴とするABP信号の決定方法。
【請求項2】
少なくとも1つの心臓運動誘発信号が、SCG信号(2)であることを特徴とする請求項1に記載のABP信号の決定方法。
【請求項3】
少なくとも1つ、又は、別の心臓運動誘発信号が、PCG信号であることを特徴とする請求項1に記載のABP信号の決定方法。
【請求項4】
少なくとも1つ、又は、別の心臓運動誘発信号が、BCG信号であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のABP信号の決定方法。
【請求項5】
前記変換が、ニューラルネットワーク(NN)により実行されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のABP信号の決定方法。
【請求項6】
前記ニューラルネットワークは、畳み込みニューラルネットワークであることを特徴とする、請求項5に記載のABP信号の決定方法。
【請求項7】
前記モデルを決定するために、前記変換によって決定されたABP信号と、参照ABP信号と、の間の偏差を決定するための誤差関数が分析され、当該誤差関数の分析において、前記変換によって決定されたABP信号、及び/又は、参照ABP信号、及び/又は、偏差の異なる信号部分が、異なって重み付けされることを特徴とする、請求項1又は2に記載のABP信号の決定方法。
【請求項8】
少なくとも1つの心臓の動きに誘発される信号が、非接触で検出されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のABP信号の決定方法。
【請求項9】
少なくとも1つの心臓運動誘発信号が、前記変換の前にフィルタリングされ、当該フィルタリングされた心臓運動誘発信号が、ABP信号(1)に変換されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のABP信号の決定方法。
【請求項10】
少なくとも1つの心臓の動きに誘発される信号が、装置(4)の検出手段によって発生され、前記変換が、装置(4)の算出手段(T)によって実行されるか、又は、心臓の動きに誘発される信号が、他装置の算出手段(T)に送信され、前記変換が、他装置の算出手段(T)によって実行されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のABP信号の決定方法。
【請求項11】
少なくとも1つの心臓の動きに誘発された信号が、装置(4)の検出手段によって発生され、前記変換によって決定されたABP信号(1)が、前記装置(4)の表示手段(A)に表示されるか、又は、少なくとも1つの心臓の動きに誘発された信号が、他装置の表示手段に送信され、当該他装置の表示手段によって表示されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のABP信号の決定方法。
【請求項12】
少なくとも1つの心動誘導信号の変換の前に、前記検出手段の機能テストが実施され、当該機能テストが実施される際に、操作性が検出された場合にのみ、前記心動誘導信号が変換され、
及び/又は、少なくとも1つの心動誘導信号の変換の前に、検出された信号の信号品質が決定され、当該信号品質が決定される際に、前記心臓運動誘発信号が、前記信号品質が所定値以上である場合にのみ変換され、
及び/又は、少なくとも1つの心臓運動誘発信号の変換の前に、心臓に対する検出手段の配置が決定され、当該検出手段の配置が決定される際に、前記心臓運動誘発信号が、前記検出手段の配置につき、所定位置に対応するか、又は、前記検出手段の配置が、所定位置から、所定量未満だけ逸脱する場合にのみ変換されるかのいずれかであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のABP信号の決定方法。
【請求項13】
検出された心臓運動誘発信号が、変換する際の唯一の入力値であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のABP信号の決定方法。
【請求項14】
ABP信号が、連続的に決定されてなるABP信号であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のABP信号の決定方法。
【請求項15】
前記連続的に決定されてなるABP信号が、所定の判定期間の各時点の血圧を規定することを特徴とする、請求項14に記載のABP信号の決定方法。
【請求項16】
ABP信号(1)の決定システムであって、当該決定システム(3)が、少なくとも1つの検出手段と、少なくとも1つの算出手段(T)とを備え、少なくとも1つの検出された心臓運動誘発信号が、前記算出手段(T)によって、少なくとも1つのABP信号(1)に変換可能であり、当該変換は、機械学習によって決定されたモデルによって実行され、当該実行の際に、前記心臓運動誘発信号を、心運動に起因する信号として、変換の入力値とし、前記ABP信号(1)を、前記変換された出力値として、前記心臓運動誘発信号を前記ABP信号に変換することを特徴とするABP信号の決定システム。
【請求項17】
前記検出手段が、保育器(9)、ベッド(13)、車両用シート(17)、心臓のペースメーカ、又は、ペット用品の少なくとも一つの内部に組み込まれていることを特徴とする、請求項16に記載のABP信号の決定システム。
【請求項18】
コンピュータプログラムを含むコンピュータプログラム製品であって、前記コンピュータプログラムが、コンピュータ、オートメーションシステム、又は、コンピュータシステムのいずれかにおいて実行されるときに、請求項1又は2に記載のABP信号の決定方法の1つのステップ、複数のステップ、又は、すべてのステップを実行するためのソフトウェア手段を含むことを特徴とする、コンピュータプログラム製品。
【国際調査報告】