(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド及びその製造方法並びに用途
(51)【国際特許分類】
C01B 21/086 20060101AFI20240416BHJP
H01M 10/0567 20100101ALI20240416BHJP
【FI】
C01B21/086
H01M10/0567
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571640
(86)(22)【出願日】2021-11-05
(85)【翻訳文提出日】2023-11-17
(86)【国際出願番号】 CN2021129083
(87)【国際公開番号】W WO2022262175
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】202110670267.1
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523024990
【氏名又は名称】深▲セン▼市研一新材料有限責任公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】岳 敏
(72)【発明者】
【氏名】余 意
(72)【発明者】
【氏名】胡 向兵
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ14
5H029HJ00
5H029HJ02
5H029HJ14
5H029HJ15
(57)【要約】
リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド及びその製造方法並びに用途であって、ここで、三酸化硫黄及びアンモニアを原料としてイミノジスルホン酸を合成し、イミノジスルホン酸をジクロロスルホキシドで塩素化してビスクロロスルホニルイミドを得、次いでフッ素化及びリチウム化を順次行ってリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを得る。この方法は、優れた収率及び純度を有し、従来のプロセスに比べて、原料が簡単で、生じる廃液・廃ガス・固形廃棄物が少なく、環境に優しく、副反応が少なく、コストが低いなどの利点を有し、産業化が容易である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法であって、
三酸化硫黄とアンモニアとを高圧反応釜で反応させ、イミノジスルホン酸を得るステップ(1)であって、反応圧力が0.8~1.5Mpaであるステップ(1)と、
ジクロロスルホキシドとステップ(1)で得られたイミノジスルホン酸とを反応させ、減圧蒸留してビスクロロスルホニルイミドを得るステップ(2)と、
ステップ(2)で得られたビスクロロスルホニルイミドとフッ化水素とを反応させ、減圧蒸留してビスフルオロスルホニルイミドを得るステップ(3)と、
ステップ(3)で得られたビスフルオロスルホニルイミドとフッ化リチウムとを反応させ、固液分離、精製及び乾燥してリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを得るステップ(4)と、を含む、
ことを特徴とするリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
【請求項2】
ステップ(1)において、前記アンモニアと三酸化硫黄とのモル比は、1:2~3である、
ことを特徴とする請求項1に記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
【請求項3】
ステップ(1)において、前記反応圧力は、0.8~1.0MPaである、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
【請求項4】
ステップ(1)において、前記反応温度は、20~30℃である、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
【請求項5】
ステップ(1)において、前記反応時間は、4~6hである、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
【請求項6】
ステップ(2)において、反応温度は、80~100℃である、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
【請求項7】
ステップ(2)において、反応時間は、12~16時間である、
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
【請求項8】
ステップ(2)において、前記イミノジスルホン酸とジクロロスルホキシドとのモル比は、1:2.0~2.5であり、好ましくは1:2.2~2.5である、
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
【請求項9】
ステップ(3)において、ビスクロロスルホニルイミドとフッ化水素とのモル比は、1:2.0~3.0である、
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
【請求項10】
ステップ(3)において、反応温度は、80~150℃であり、好ましくは90~120℃であり、好ましくは、反応時間は、14~20hである、
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
【請求項11】
ステップ(4)において、ビスフルオロスルホニルイミドとフッ化リチウムとのモル比は、1:0.85~1.00である、
ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
【請求項12】
ステップ(4)において、反応温度は、120℃~160℃であり、好ましくは、反応時間は、30~60分間である、
ことを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の製造方法により製造されたリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドであって、当該リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの純度は、≧99.6%である、
ことを特徴とするリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載の製造方法により製造されたリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド又は請求項13に記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドのリチウムイオン電池における用途。
【請求項15】
ビスクロロスルホニルイミドの製造方法であって、
三酸化硫黄とアンモニアとを高圧反応釜で反応させ、イミノジスルホン酸を得るステップ(1)であって、反応圧力が0.8~1.5Mpaであるステップ(1)と、
ジクロロスルホキシドとステップ(1)で得られたイミノジスルホン酸とを反応させ、減圧蒸留してビスクロロスルホニルイミドを得るステップ(2)と、を含む、
ことを特徴とするビスクロロスルホニルイミドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学合成技術分野に属し、具体的にはリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド及びその製造方法並びに用途に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン、モバイル電源、タブレットPCなどの製品による牽引を受け、国内のリチウム電池産業の生産額が持続的に増加していると同時に、リチウムイオン電池の用途は、電子系消費製品にとどまらず、動力とエネルギー貯蔵という2つの新たな用途方向はリチウム電池に無限の市場空間をもたらした。また、その適用分野の拡大に伴い、電池特性の更なる改善に対する要求も高まっている。現在最も広く用いられている電解質リチウム塩は六フッ化リン酸リチウムであり、その優れた総合性能にもかかわらず、不安定で、吸水しやすく、寿命が短く、低温性能が悪いなどの自身の欠点により、リチウムイオン電池のますます拡大する用途要求を満たすには不十分である。
【0003】
六フッ化リン酸リチウムに比べ、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)は、より良い熱安定性、化学的安定性、より高い導電性及びより低い腐食速度を有し、六フッ化リン酸リチウムに取って代わる可能性があり、新世代のリチウム塩となると考えられ、リチウム電池及びスーパーキャパシタに広く応用できる。リチウムイオン二次電池電解質として、高純度、無水などの厳しい要求を満たす必要がある。水分導入後、昇温による水の同伴、乾燥による水の除去で分解するまでは完全に除去することは困難であった。従来、第1ステップの中間体であるビスクロロスルホニルイミドを生成する際に、強腐食性原料であるクロロスルホン酸、スルファミン酸及びジクロロスルホキシドを採用してビスクロロスルホニルイミドを合成することが多く、収率が低い上に不純物が多く、環境への影響が大きい。
【0004】
特許文献1には、スルホンアミドをジクロロスルホキシド、クロロスルホン酸と反応させてビスクロロスルホニルイミドを得、次いで三フッ化アンチモン及び炭酸カリウム(セシウム又はルビジウム)と反応させてビスフルオロスルホニルイミドカリウム(セシウム又はルビジウム)を得、最後にビスフルオロスルホニルイミドカリウム(セシウム又はルビジウム)及び過塩素酸リチウム又は四フッ化ホウ酸リチウムを複分解反応させてリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを得ることが開示されており、プロセスが複雑であり、収率が低い。
【0005】
特許文献2には、スルファミン酸及びハロスルホン酸をトリエチルアミンと反応させ、ビス(スルホニル)イミドを生成し、次いで水酸化カリウムを加え、カリウムビス(スルホニル)イミド三塩を生成し、次いで、塩化オキサリルを加え、カリウムビス(クロロスルホニル)イミドを生成し、最後にフッ化水素を加え、黄金色のビス(フルオロスルホニル)イミドを得る、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド又はナトリウムビス(フルオロスルホニル)イミドの生産方法が開示されており、プロセスが比較的複雑であり、収率及び純度に関するデータは何も与えられていない。
【0006】
特許文献3には、クロロスルホン酸をアンモニアと反応させてイミノジスルホン酸を生成し、これをニトロシルフルオリドでフッ素化し、ビスフルオロスルホニルイミドを生成し、次いで水酸化リチウムを加え、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを生成する、フルオロスルホニルイミドカリウム塩の製造方法が開示されており、ニトロシルフルオリドが不安定であり、トルエン溶媒などを用いる必要があり、リチウム化の過程で水酸化リチウムを採用すると水分が生成し、反応生成物の純度が低いことになる。
【0007】
特許文献4には、フルオロスルホン酸を用いて尿素と反応させてビスフルオロスルホニルイミドを製造し、次いでリチウム化してリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを得ることが開示されており、全ての操作も耐フッ化水素酸の装置で行う必要があり、設備投資が大きく、操作リスクが高い。
【0008】
特許文献5には、塩化シアン及び三酸化硫黄を用いてクロロスルホン酸イソシアネートを生成し、次いでクロロスルホン酸と反応させてビスクロロスルホニルイミドを製造することが開示されており、塩化シアンが猛毒ガスであり、安全環境に大きな影響を与える。
【0009】
特許文献6には、SO2F2及びNH3を原料とし、テトラメチルプロピレンジアミン(TMPDA)を塩基とし、アセトニトリルを溶媒とし、10~15℃で反応させ、反応終了後に低沸点液体を減圧分離し、メタノールを用いて粘稠な生成物を30℃で溶解し、さらにメタノール溶液にテトラブチルアンモニウムブロミド水溶液を1当量滴下したところ、白色固体が析出し、濾過後に収率84.4%のテトラブチルアンモニウムビスフルオロスルホニルイミド金属塩を得ることが開示されている。SO2F2は毒性が大きく、完全に無色、無臭であり、著しい予防措置を取らなければならない。
【0010】
特許文献7には、SO2F2、アンモニア及び6倍当量のフルオロ塩を60℃に加熱して反応させてビスフルオロスルホニルイミド金属塩を直接生成することが開示されている。同様にSO2F2は毒性が大きく、完全に無色、無臭であり、著しい予防措置を取らなければならない。
【0011】
特許文献8には、SO2F2、NH3及びEt3Nの物質量比が2:1:3であり、アセトニトリルを溶媒とし、氷水浴下で90%を超える収率でトリエチルアミンビスフルオロスルホニルイミド金属塩及び少量の副生成物を得て、トリエチルアミンビスフルオロスルホニルイミド金属塩溶液に様々な金属水酸化物をゆっくりと加え、トリエチルアミンを除去して生成物であるビスフルオロスルホニルイミド金属塩を得ることが開示されている。SO2F2、NH3及びEt3Nという安価な原料を用いてビスフルオロスルホニルイミドトリエチルアミン塩を効果的に合成し、且つこの塩は優れたイオン交換能を有し、効率よく交換してビスフルオロスルホニルイミド金属塩を得ることができる。しかしこの反応では、過剰のトリエチルアミンはSO2F2が加水分解生成物であるフルオロスルホン酸トリエチルアミン塩及び他の副生成物を生成することを促進する。この方法をリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造に直接用いる場合、後続の精製処理コストが高い。また、スルフリルフルオリドは、コストが高く、製造が難しく、毒性が大きく、腐食性が強く、安全環境に大きな影響を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】中国特許第101747242号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第107265419号明細書
【特許文献3】韓国特許第10-2223112号公報
【特許文献4】米国特許第5916475号明細書
【特許文献5】国際公開第2009/123328号
【特許文献6】米国特許出願公開第2012/0245386号明細書
【特許文献7】国際公開第2010/140580号
【特許文献8】国際公開第2010/113835号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明が解決しようとする技術的問題は、以下のとおりである。従来技術でリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造に用いられる原料は、毒性が大きく、腐食性が強く、生産コストが高く、収率及び純度が低く、環境に対する影響が大きい。
【0014】
従来技術の不足に対して、本発明の第1目的は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法を提供し、用いられる原料が簡単で、製造コストが低く、排ガスの発生が少なく、環境に対する影響が小さく、反応収率が高く、製品の純度が高く、産業化が容易であることであり、本発明の第2目的は、上記製造方法により製造されたリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを提供することであり、本発明の第3目的は、上記製造方法により製造されたリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド又は上記リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドのリチウムイオン電池における用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の技術的解決手段は、以下のとおりである。
【0016】
本発明は、ビスフルオロスルホンアミドの製造方法を提供し、
三酸化硫黄とアンモニアとを高圧反応釜で反応させ、イミノジスルホン酸を得るステップ(1)であって、反応圧力が0.8~1.5Mpaであるステップ(1)と、
ジクロロスルホキシドとステップ(1)で得られたイミノジスルホン酸とを反応させ、減圧蒸留してビスクロロスルホニルイミドを得るステップ(2)と、
ステップ(2)で得られたビスクロロスルホニルイミドとフッ化水素とを反応させ、減圧蒸留してビスフルオロスルホニルイミドを得るステップ(3)と、
ステップ(3)で得られたビスフルオロスルホニルイミドとフッ化リチウムとを反応させ、固液分離、精製及び乾燥してリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを得るステップ(4)と、を含む。
【0017】
好ましくは、上記製造方法において、ステップ(1)において、前記アンモニアと三酸化硫黄とのモル比は、1:2~3である。
【0018】
好ましくは、上記製造方法において、ステップ(1)において、前記反応圧力は、0.8~1.0MPaであり、好ましくは、反応温度は、20~30℃であり、さらに好ましくは、反応時間は、4~6hである。
【0019】
好ましくは、上記製造方法において、ステップ(2)において、反応温度は、80~100℃であり、好ましくは、反応時間は、12~16時間である。
【0020】
好ましくは、上記製造方法において、ステップ(2)において、前記イミノジスルホン酸とジクロロスルホキシドとのモル比は、1:2.0~2.5であり、好ましくは1:2.2~2.5である。
【0021】
好ましくは、上記製造方法において、ステップ(3)において、ビスクロロスルホニルイミドとフッ化水素とのモル比は、1:2.0~3.0である。
【0022】
好ましくは、上記製造方法において、ステップ(3)において、反応温度は、80~150℃であり、好ましくは90~120℃であり、好ましくは、反応時間は、14~20hである。
【0023】
好ましくは、上記製造方法において、ステップ(4)において、ビスフルオロスルホニルイミドとフッ化リチウムとのモル比は、1:0.85~1.00である。
【0024】
好ましくは、上記製造方法において、ステップ(4)において、反応温度は、120℃~160℃であり、好ましくは、反応時間は、30~60分間である。
【0025】
本発明は、上記製造方法により製造されたリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドをさらに提供し、当該リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの純度は、≧99.6%である。
【0026】
本発明は、上記製造方法により製造されたリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド又は上記リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドのリチウムイオン電池における用途をさらに提供する。
【0027】
本発明は、ビスクロロスルホニルイミドの製造方法をさらに提供し、
三酸化硫黄とアンモニアとを高圧反応釜で反応させ、イミノジスルホン酸を得るステップ(1)であって、反応圧力が0.8~1.5Mpaであるステップ(1)と、
ジクロロスルホキシドとステップ(1)で得られたイミノジスルホン酸とを反応させ、減圧蒸留してビスクロロスルホニルイミドを得るステップ(2)と、を含む。
【発明の効果】
【0028】
本発明の有益な効果は、以下のとおりである。
本発明は、三酸化硫黄及びアンモニアを原料としてイミノジスルホン酸を製造し、ジクロロスルホキシドを塩素化してビスクロロスルホニルイミドを得、次いでフッ素化及びリチウム化を順次行ってリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを製造し、用いられる原料が簡単で、製造コストが低く、生じる廃液・廃ガス・固形廃棄物が少なく、腐食性が少なく、過程が環境に優しく、副反応が少なく、優れた収率を有し、製品の純度が高く、大規模工業生産の生産量と品質に対する要求を満たすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
上記技術的解決手段をよりよく理解するために、本願の技術的解決手段を具体的な実施例により詳細に説明すると、本願の実施例及び実施例における具体的な特徴は、本願の技術的解決手段の詳細な説明であり、本願の技術的解決手段を限定するものではなく、衝突することなく、本願の実施例及び実施例における技術的特徴は、互いに組み合わせることができることを理解されたい。
【0030】
本発明にて提供されるリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法は、4段階反応法であり、その対応する化学反応式は、以下のとおりである。
2SO3+NH3→HN(SO3H)2
HN(SO3H)2+2SOCl2=HN(SO2Cl)2+2HCl↑+2SO2↑
HN(SO2Cl)2+2HF→HN(SO2F)2+2HCl↑
HN(SO2F)2+LiF→LiN(SO2F)2+HF↑
【0031】
本発明は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法を提供する。
【0032】
本発明の好ましい実施形態において、具体的には、当該製造方法は、
三酸化硫黄とアンモニアとを高圧反応釜で反応させ、イミノジスルホン酸を得るステップ(1)であって、反応圧力が0.8~1.5Mpaであるステップ(1)と、
ジクロロスルホキシドとステップ(1)で得られたイミノジスルホン酸とを反応させ、減圧蒸留してビスクロロスルホニルイミドを得るステップ(2)と、
ステップ(2)で得られたビスクロロスルホニルイミドとフッ化水素とを反応させ、減圧蒸留してビスフルオロスルホニルイミドを得るステップ(3)と、
ステップ(3)で得られたビスフルオロスルホニルイミドとフッ化リチウムとを反応させ、固液分離、精製及び乾燥してリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを得るステップ(4)と、を含む。
【0033】
ステップ(1)において、前記アンモニアと三酸化硫黄とのモル比は、1:2~3である。三酸化硫黄を過剰採用し、アンモニアを完全に反応させ、アンモニアが過剰してさらにイミノジスルホン酸と反応し、不要な副生成物を生成することを回避する。反応圧力は、0.8~1.5Mpaであり、圧力が0.8MPaよりも低い場合、アンモニアが液化できず、反応の進行困難さが大きく、1.5MPaよりも高い場合、反応の収率及び反応速度に有意差がなく、且つ大きな安全上の懸念をもたらすため、好ましくは、反応圧力は、0.8~1.0MPaであり、さらに好ましくは、反応温度は、20~30℃であり、反応温度が20℃よりも低い場合、反応速度が遅くなり、反応収率が低下し、30℃よりも高い場合により高い圧力でアンモニアを液化する必要があり、よりさらに好ましくは、反応時間は、4~6hである。
【0034】
ステップ(1)は、高圧反応釜で行われ、具体的には、まず三酸化硫黄を反応釜に加え、次いでこれにアンモニアを流し、窒素ガスで加圧し、反応終了後、窒素ガスを放出して放圧し、80℃に昇温して未反応の三酸化硫黄を除去し、イミノジスルホン酸を得る。
【0035】
ステップ(2)において、反応温度は、80~100℃であり、好ましくは、反応時間は、12~16時間である。イミノジスルホン酸とジクロロスルホキシドとのモル比は、1:2.0~2.5であり、好ましくは1:2.2~2.5である。この反応では、1当量のイミノジスルホン酸と2当量のジクロロスルホキシドとを反応させ、反応温度が高く、還流過程で一部のジクロロスルホキシドが損失するため、一般的にジクロロスルホキシドの最低使用量は、2.2当量であり、ジクロロスルホキシドが2.5当量を超えると、反応収率及び反応速度に有意な影響を与えない。反応終了後、反応生成物を120~130℃で3~5h減圧蒸留し、減圧蒸留真空度が-0.05MPa~-0.09MPaであり、ビスクロロスルホニルイミドを得る。
【0036】
ステップ(3)において、ビスクロロスルホニルイミドとフッ化水素とのモル比は、1:2.0~3.0である。反応温度は、80~150℃であり、好ましくは90~120℃であり、好ましくは、反応時間は、14~20hである。反応終了後、窒素ガスを系内に4h吹き込み、発生した塩化水素ガス及び未反応のフッ化水素ガスを除去する。
【0037】
ステップ(3)において、減圧蒸留は90~110℃で行われ、減圧蒸留の真空度は、-0.05MPa~-0.09MPaであり、減圧蒸留時間は、2~3hであり、減圧蒸留して得られた留分は、ビスフルオロスルホニルイミドであり、蒸留残留物は次のビスフルオロスルホニルイミドの製造反応に関与する。
【0038】
ステップ(4)において、ビスフルオロスルホニルイミドとフッ化リチウムとのモル比は、1:0.85~1.00である。この反応では、フッ化リチウムの後処理が困難であり、残留したフッ化リチウムの除去が困難であるため、フッ化リチウムを完全に反応させることが好ましい。反応温度は、120℃~160℃であり、好ましくは、反応時間は、30~60分間であり、反応終了後、窒素ガスを系内に1h吹き込み、発生したフッ化水素ガスを除去し、次いで得られたリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを精製、乾燥し、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを得、前記精製操作は、反応生成物をジクロロメタンで洗浄し、残留したビスフルオロスルホニルイミドを除去し、次いでジエチルエーテルで溶解し、濾過により不純物を除去し、次いで蒸発濃縮し、有機溶媒を加えて濃縮液を再結晶し、最後に乾燥してリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを得ることを含む。
【0039】
本発明の製造方法により製造されたリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドは、純度が≧99.6%である。
【0040】
本発明は、上記製造方法により製造されたリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド又は上記リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドのリチウムイオン電池における用途をさらに提供する。
【0041】
本発明は、ビスクロロスルホニルイミドの製造方法をさらに提供し、
三酸化硫黄とアンモニアとを高圧反応釜で反応させ、イミノジスルホン酸を得るステップ(1)であって、反応圧力が0.8~1.5Mpaであるステップ(1)と、
ジクロロスルホキシドとステップ(1)で得られたイミノジスルホン酸とを反応させ、減圧蒸留してビスクロロスルホニルイミドを得るステップ(2)と、を含む。
【0042】
(実施例)
本発明で用いられた原料又は試薬は、いずれも市場の主流メーカーから購入されたものであり、生産メーカー又は濃度を明記していない場合、いずれも日常的に入手可能な二級規格の原料又は試薬であり、所望の作用を果たすことができれば、特に制限されない。本実施例で用いられた計器設備は、いずれも市場の主要なメーカーから購入されたものであり、所望の役割を果たすことができれば、特に限定されない。本実施例では、具体的な技術又は条件を明記していない場合、当業者内の文献に記述された技術又は条件に従って、又は製品の明細書に従って行った。
計器について、
高圧反応釜は、威海環宇化学工業機械有限公司の2L高圧釜を採用し、
イオンクロマトグラフィーは、メトローム833型高圧イオンクロマトグラフィーを採用し、
核磁気共鳴分析装置は、ドイツBruker社のAVANCE-400を採用した。
【0043】
(実施例1)
(1)高圧反応釜に三酸化硫黄160.0g(分子量80.06g/mol)を加え、温度を25℃に制御し、反応釜にアンモニア17.0g(分子量17.03g/mol)を流し、次いで窒素ガスを釜内圧力が0.8Mpaになるまで流し、20℃で6時間反応させ、反応が完了し、釜内の窒素ガスを放出し、80℃に加熱して残りの三酸化硫黄を除去し、生成物165.3gを得、生成物は1H-NMRスペクトルによりイミノジスルホン酸(分子量177.15g/mol)と同定され、当該イミノジスルホン酸の1H-NMRスペクトルは、1H-NMR(400M, DMSO-d6):δ:4.31(s, 2H), δ:6.91(s, 1H)である。
(2)ステップ(1)で得られたイミノジスルホン酸165.3gを反応器に加え、80℃に加熱し、これにジクロロスルホキシド245.1g(分子量118.97g/mol)をゆっくりと滴下し、反応中に発生したオフガスを水酸化カリウムアルカリ液で吸収し、12時間撹拌反応させた後に室温まで下げ、真空度-0.05MPa、120℃の条件で5h減圧蒸留を行い、生成物180.5gを得、生成物は1H-NMRスペクトルによりビスクロロスルホニルイミド(分子量214.03g/mol)と同定された。
(3)ステップ(2)で得られたビスクロロスルホニルイミド180.5gを反応器に加え、80℃に加熱し、HF(分子量20.01g/mol)ガス33.8gをゆっくりと流し、14時間反応させた後に室温まで下げ、反応器内に窒素ガスを4時間吹き込み、次いで-0.05MPa、90℃で3h減圧蒸留を行い、ビスフルオロスルホニルイミド126.8g(分子量181.13g/mol)を得た。
(4)フッ化リチウム(分子量25.94g/mol)18.15gを反応器に加え、120℃に加熱し、ステップ(3)で得られたビスフルオロスルホニルイミド126.8gをゆっくりと滴下し、30分間反応させた後、反応器内に窒素ガスを1時間吹き込み、室温まで下げ、濾過により得られた濾過ケーキをジクロロメタンで洗浄し、次いでエチルエーテルで濾過ケーキを溶解し、濾過して不純物を除去して濾液を得、ロータリーエバポレーターで30重量%まで濃縮し、次いで炭酸ジメチルで濃縮液を再結晶し、最後に真空乾燥してリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド117.8g(分子量187.07g/mol)を得た。メトローム833型高圧イオンクロマトグラフィーによりリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの純度を測定した。
関連パラメータのテスト結果を表1に示した。
【0044】
(実施例2)
(1)高圧反応釜に三酸化硫黄239gを加え、温度を25℃に制御し、反応釜にアンモニア17.0gを流し、次いで窒素ガスを釜内圧力が1.0Mpaになるまで流し、30℃で5時間反応させ、反応が完了し、釜内の窒素ガスを放出し、80℃に加熱して残りの三酸化硫黄を除去し、生成物168.3gを得、生成物は1H-NMRスペクトルによりイミノジスルホン酸と同定され、当該イミノジスルホン酸の1H-NMRスペクトルは、1H-NMR(400M, DMSO-d6):δ:4.31(s, 2H), δ:6.91(s, 1H)である。
(2)ステップ(1)で得られたイミノジスルホン酸168.3gを反応器に加え、100℃に加熱し、これにジクロロスルホキシド282gをゆっくりと滴下し、反応中に発生したオフガスを水酸化カリウムアルカリ液で吸収し、16時間撹拌反応させた後に室温まで下げ、真空度-0.09MPa、130℃の条件で3h減圧蒸留を行い、生成物189.8gを得、当該生成物は1H-NMRスペクトルによりビスクロロスルホニルイミドと同定された。
(3)ステップ(2)で得られたビスクロロスルホニルイミド189.8gを反応器に加え、90℃に加熱し、HFガス53gをゆっくりと流し、20時間反応させた後に室温まで下げ、反応器内に窒素ガスを4時間吹き込み、次いで-0.09MPa、110℃で2h減圧蒸留を行い、ビスフルオロスルホニルイミド141.8gを得た。
(4)フッ化リチウム17.28gを反応器に加え、160℃に加熱し、ステップ(3)で得られたビスフルオロスルホニルイミド141.8gをゆっくりと滴下し、60分間反応させた後、反応器内に窒素ガスを1時間吹き込み、室温まで下げ、次いでジクロロメタンで反応生成物を洗浄し、濾過により得られた濾過ケーキをジクロロメタンで洗浄し、次いでエチルエーテルで濾過ケーキを溶解し、濾過して不純物を除去して濾液を得、ロータリーエバポレーターで30重量%まで濃縮し、次いで炭酸ジメチルで濃縮液を再結晶し、最後に真空乾燥してリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド115.05gを得た。メトローム833型高圧イオンクロマトグラフィーによりリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの純度を測定した。
関連パラメータのテスト結果を表1に示した。
【0045】
(実施例3)
(1)高圧反応釜に三酸化硫黄200.2gを加え、温度を25℃に制御し、反応釜にアンモニア17.0gを流し、次いで窒素ガスを釜内圧力が0.9Mpaになるまで流し、25℃で6時間反応させ、反応が完了し、釜内の窒素ガスを放出し、80℃に加熱して残りの三酸化硫黄を除去し、生成物166.7gを得、生成物は1H-NMRスペクトルによりイミノジスルホン酸と同定され、当該イミノジスルホン酸の1H-NMRスペクトルは、1H-NMR(400M, DMSO-d6):δ:4.31(s, 2H), δ:6.91(s, 1H)である。
(2)ステップ(1)で得られたイミノジスルホン酸166.7gを反応器に加え、90℃に加熱し、これにジクロロスルホキシド268.9gをゆっくりと滴下し、反応中に発生したオフガスを水酸化カリウムアルカリ液で吸収し、14時間撹拌反応させた後に室温まで下げ、真空度-0.05MPa、125℃の条件で4h減圧蒸留を行い、生成物186.2gを得、当該生成物は1H-NMRスペクトルによりビスクロロスルホニルイミドと同定された。
(3)ステップ(2)で得られたビスクロロスルホニルイミド186.2gを反応器に加え、100℃に加熱し、HFガス43.52gをゆっくりと流し、16時間反応させた後に室温まで下げ、反応器内に窒素ガスを4時間吹き込み、次いで-0.05MPa、100℃で3h減圧蒸留を行い、ビスフルオロスルホニルイミド134.4gを得た。
(4)フッ化リチウム17.3gを反応器に加え、140℃に加熱し、ステップ(3)で得られたビスフルオロスルホニルイミド134.4gをゆっくりと滴下し、45分間反応させた後、反応器内に窒素ガスを1時間吹き込み、室温まで下げ、次いでジクロロメタンで反応生成物を洗浄し、濾過により得られた濾過ケーキをエチルエーテルで溶解し、濾過して不純物を除去して濾液を得、ロータリーエバポレーターで30重量%まで濃縮し、次いで炭酸ジメチル濃縮液を再結晶し、最後に真空乾燥して114.1gリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを得た。メトローム833型高圧イオンクロマトグラフィーによりリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの純度を測定した。
関連パラメータのテスト結果を表1に示した。
【0046】
(実施例4)
(1)高圧反応釜に三酸化硫黄183.8gを加え、温度を25℃に制御し、反応釜にアンモニア17.0gを流し、次いで窒素ガスを釜内圧力が1.5Mpaになるまで流し、30℃で4時間反応させ、反応が完了し、釜内の窒素ガスを放出し、80℃に加熱して残りの三酸化硫黄を除去し、生成物164.9gを得、当該生成物は1H-NMRスペクトルによりイミノジスルホン酸と同定され、当該イミノジスルホン酸の1H-NMRスペクトルは、1H-NMR(400M, DMSO-d6):δ:4.31(s, 2H), δ:6.91(s, 1H)である。
(2)ステップ(1)で得られたイミノジスルホン酸164.9gを反応器に加え、90℃に加熱し、これにジクロロスルホキシド222.63gをゆっくりと滴下し、反応中に発生したオフガスを水酸化カリウムアルカリ液で吸収し、13時間撹拌反応させた後に室温まで下げ、真空度-0.05MPa、125℃の条件で4h減圧蒸留を行い、生成物181.73gを得、当該生成物は1H-NMRスペクトルによりビスクロロスルホニルイミドと同定された。
(3)ステップ(2)で得られたビスクロロスルホニルイミド181.73gを反応器に加え、150℃に加熱し、HFガス47.57gをゆっくりと流し、18時間反応させた後に室温まで下げ、反応器内に窒素ガスを4時間吹き込み、次いで-0.05MPa、100℃で3h減圧蒸留を行い、ビスフルオロスルホニルイミド127.96gを得た。
(4)フッ化リチウム17.41gを反応器に加え、150℃に加熱し、ステップ(3)で得られたビスフルオロスルホニルイミド127.96gをゆっくりと滴下し、40分間反応させた後、反応器内に窒素ガスを1時間吹き込み、室温まで下げ、濾過により得られた濾過ケーキをジクロロメタンで洗浄し、次いでエチルエーテルで濾過ケーキを溶解し、濾過して不純物を除去して濾液を得、ロータリーエバポレーターで30重量%まで濃縮し、次いで炭酸ジメチル濃縮液を再結晶し、最後に真空乾燥して115.0gリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを得た。メトローム833型高圧イオンクロマトグラフィーによりリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの純度を測定した。
関連パラメータのテスト結果を表1に示した。
【0047】
(比較例1)
(1)窒素ガス雰囲気下で、スルファミン酸97.09g(97.09g/mol)、クロロスルホン酸116.53g(分子量116.53g/mol)及びジクロロスルホキシド261.7gを反応器に順次加え、130℃に加熱して24時間反応させ、反応終了後に常圧蒸留により低沸点化合物を除去し、次いで減圧蒸留を行い、112~114℃/2mmHgの留分を収集し、室温まで下げてビスクロロスルホニルイミド175.1gを得た。反応式は以下のとおりである。
NH2SO3H+ClSO3H+2SOCl2→Cl2HNO4S2+3HCl↑+SO2↑
(2)ステップ(1)で得られたビスクロロスルホニルイミド175.1gを反応器に加え、80℃に加熱し、HFガス32.78gをゆっくりと流し、14時間反応させた後に室温まで下げ、反応器内に窒素ガスを4時間吹き込み、次いで-0.05MPa、90℃で3h減圧蒸留を行い、ビスフルオロスルホニルイミド120.20gを得た。
(3)フッ化リチウム5.0gを反応器に加え、120℃に加熱し、ステップ(2)で得られたビスフルオロスルホニルイミド34.91gをゆっくりと滴下し、30分間反応させた後、反応器内に窒素ガスを1時間吹き込み、室温まで下げ、次いでジクロロメタンで反応生成物を洗浄し、濾過により得られた濾過ケーキをエチルエーテルで溶解し、濾過して不純物を除去して濾液を得、ロータリーエバポレーターで30重量%まで濃縮し、次いで炭酸ジメチル濃縮液を再結晶し、最後に真空乾燥してリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド31.92gを得た。メトローム833型高圧イオンクロマトグラフィーによりリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの純度を測定した。
関連パラメータのテスト結果を表1に示した。
【0048】
(比較例2)
ステップ(1)及び(2)は、比較例1と同じである。
(3)フッ化リチウム5.0gを反応器に加え、70℃に加熱し、ステップ(2)で得られたビスフルオロスルホニルイミド34.91gをゆっくりと滴下し、12時間反応させた後、反応器内に窒素ガスを1時間吹き込み、室温まで下げ、次いでジクロロメタンで反応生成物を洗浄し、濾過により得られた濾過ケーキをエチルエーテルで溶解し、濾過して不純物を除去して濾液を得、ロータリーエバポレーターで30重量%まで濃縮し、次いで炭酸ジメチル濃縮液を再結晶し、最後に真空乾燥してリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド30.04gを得た。メトローム833型高圧イオンクロマトグラフィーによりリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの純度を測定した。
関連パラメータのテスト結果を表1に示した。
【0049】
【0050】
表1から明らかなように、本発明の実施例の純度はいずれも比較例1~2よりも優れ、実施例1~4の総収率は63.11%~72.4%であり、いずれも比較例よりも優れる。
【0051】
実施例1に比べ、比較例1は、スルファミン酸、クロロスルホン酸及びジクロロスルホキシドを採用してビスクロロスルホニルイミドを製造し、ビスクロロスルホニルイミドの収率は81.8%であり、実施例1のビスクロロスルホニルイミドの総収率84.48%よりも低く、そのためリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの総収率も実施例1よりも低かった。合成ルートから分かるように、比較例1の方法で1モルのビスクロロスルホニルイミドを生産し、2モルの二酸化硫黄ガス及び3モルの塩化水素ガスを発生させるが、本発明を採用すると2モルの塩化水素ガス及び2モルの二酸化硫黄ガスのみを発生させ、排ガスの発生量が減少し、且つ本発明の原料が簡単で、製造コストが低く、腐食性が小さく、環境に対する影響が小さい。比較例1ではフルオロスルホン酸リチウムなどの不純物が残留し、純度が低下した。
【0052】
比較例2は、スルファミン酸、クロロスルホン酸及びジクロロスルホキシドを採用してビスクロロスルホニルイミドを製造し、且つリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの合成は低反応温度及び長反応時間のプロセスを採用し、収率及び純度がより低かった。
【0053】
以上説明したように、本発明は、三酸化硫黄及びアンモニアを原料としてイミノジスルホン酸を製造し、ジクロロスルホキシドを塩素化してビスクロロスルホニルイミドを得、次いでフッ素化及びリチウム化を順次行ってリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを製造し、用いられる原料が簡単で、生産コストが低く、生じる廃液・廃ガス・固形廃棄物が少なく、過程が環境に優しく、副反応が少なく、優れた収率を有し、製品の純度が高く、大規模工業生産の生産量と品質に対する要求を満たすことができる。
【0054】
以上は本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明を何ら限定するものではなく、本発明の精神と原則内で行われた修正、均等な置換、改良などは、いずれも本発明の保護範囲に含まれることが必要である。
【0055】
(付記)
(付記1)
リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法であって、
三酸化硫黄とアンモニアとを高圧反応釜で反応させ、イミノジスルホン酸を得るステップ(1)であって、反応圧力が0.8~1.5Mpaであるステップ(1)と、
ジクロロスルホキシドとステップ(1)で得られたイミノジスルホン酸とを反応させ、減圧蒸留してビスクロロスルホニルイミドを得るステップ(2)と、
ステップ(2)で得られたビスクロロスルホニルイミドとフッ化水素とを反応させ、減圧蒸留してビスフルオロスルホニルイミドを得るステップ(3)と、
ステップ(3)で得られたビスフルオロスルホニルイミドとフッ化リチウムとを反応させ、固液分離、精製及び乾燥してリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを得るステップ(4)と、を含む、
ことを特徴とするリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
【0056】
(付記2)
ステップ(1)において、前記アンモニアと三酸化硫黄とのモル比は、1:2~3である、
ことを特徴とする付記1に記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
【0057】
(付記3)
ステップ(1)において、前記反応圧力は、0.8~1.0MPaである、
ことを特徴とする付記1又は2に記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
【0058】
(付記4)
ステップ(1)において、前記反応温度は、20~30℃である、
ことを特徴とする付記1~3のいずれか一つに記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
【0059】
(付記5)
ステップ(1)において、前記反応時間は、4~6hである、
ことを特徴とする付記1~4のいずれか一つに記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
【0060】
(付記6)
ステップ(2)において、反応温度は、80~100℃である、
ことを特徴とする付記1~5のいずれか一つに記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
【0061】
(付記7)
ステップ(2)において、反応時間は、12~16時間である、
ことを特徴とする付記1~6のいずれか一つに記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
【0062】
(付記8)
ステップ(2)において、前記イミノジスルホン酸とジクロロスルホキシドとのモル比は、1:2.0~2.5であり、好ましくは1:2.2~2.5である、
ことを特徴とする付記1~7のいずれか一つに記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
【0063】
(付記9)
ステップ(3)において、ビスクロロスルホニルイミドとフッ化水素とのモル比は、1:2.0~3.0である、
ことを特徴とする付記1~8のいずれか一つに記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
【0064】
(付記10)
ステップ(3)において、反応温度は、80~150℃であり、好ましくは90~120℃であり、好ましくは、反応時間は、14~20hである、
ことを特徴とする付記1~9のいずれか一つに記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
【0065】
(付記11)
ステップ(4)において、ビスフルオロスルホニルイミドとフッ化リチウムとのモル比は、1:0.85~1.00である、
ことを特徴とする付記1~10のいずれか一つに記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
【0066】
(付記12)
ステップ(4)において、反応温度は、120℃~160℃であり、好ましくは、反応時間は、30~60分間である、
ことを特徴とする付記1~11のいずれか一つに記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
【0067】
(付記13)
付記1~12のいずれか一つに記載の製造方法により製造されたリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドであって、当該リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの純度は、≧99.6%である、
ことを特徴とするリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド。
【0068】
(付記14)
付記1~12のいずれか一つに記載の製造方法により製造されたリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド又は付記13に記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドのリチウムイオン電池における用途。
【0069】
(付記15)
ビスクロロスルホニルイミドの製造方法であって、
三酸化硫黄とアンモニアとを高圧反応釜で反応させ、イミノジスルホン酸を得るステップ(1)であって、反応圧力が0.8~1.5Mpaであるステップ(1)と、
ジクロロスルホキシドとステップ(1)で得られたイミノジスルホン酸とを反応させ、減圧蒸留してビスクロロスルホニルイミドを得るステップ(2)と、を含む、
ことを特徴とするビスクロロスルホニルイミドの製造方法。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法であって、
三酸化硫黄とアンモニアとを高圧反応釜で反応させ、イミノジスルホン酸を得るステップ(1)であって、反応圧力が0.8~1.5Mpaであるステップ(1)と、
ジクロロスルホキシドとステップ(1)で得られたイミノジスルホン酸とを反応させ、減圧蒸留してビスクロロスルホニルイミドを得るステップ(2)と、
ステップ(2)で得られたビスクロロスルホニルイミドとフッ化水素とを反応させ、減圧蒸留してビスフルオロスルホニルイミドを得るステップ(3)と、
ステップ(3)で得られたビスフルオロスルホニルイミドとフッ化リチウムとを反応させ、固液分離、精製及び乾燥してリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを得るステップ(4)と、を含む、
ことを特徴とするリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
【請求項2】
ステップ(1)において、前記アンモニアと三酸化硫黄とのモル比は、1:2~3である、
ことを特徴とする請求項1に記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
【請求項3】
ステップ(1)において、前記反応圧力は、0.8~1.0MPaである、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
【請求項4】
ステップ(1)において、前記反応温度は、20~30℃である、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
【請求項5】
ステップ(1)において、前記反応時間は、4~6hである、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
【請求項6】
ステップ(2)において、反応温度は、80~100℃である、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
【請求項7】
ステップ(2)において、反応時間は、12~16時間である、
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
【請求項8】
ステップ(2)において、前記イミノジスルホン酸とジクロロスルホキシドとのモル比は、1:2.0~2.5で
ある、
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
【請求項9】
ステップ(2)において、前記イミノジスルホン酸とジクロロスルホキシドとのモル比は、1:2.2~2.5である、
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
【請求項10】
ステップ(3)において、ビスクロロスルホニルイミドとフッ化水素とのモル比は、1:2.0~3.0である、
ことを特徴とする請求項1~
9のいずれか一項に記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
【請求項11】
ステップ(3)において、反応温度は、80~150℃で
ある、
ことを特徴とする請求項1~
10のいずれか一項に記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
【請求項12】
ステップ(3)において、反応温度は、90~120℃である、
ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
【請求項13】
ステップ(4)において、ビスフルオロスルホニルイミドとフッ化リチウムとのモル比は、1:0.85~1.00である、
ことを特徴とする請求項1~
12のいずれか一項に記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
【請求項14】
ステップ(4)において、反応温度は、120℃~160℃で
ある、
ことを特徴とする請求項1~
13のいずれか一項に記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
【請求項15】
ステップ(3)において、反応時間は、14~20hであり、及び/又は、ステップ(4)において、反応時間は、30~60分間である、
ことを特徴とする請求項1~14のいずれか一項に記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
【請求項16】
請求項1~
15のいずれか一項に記載の製造方法により製造されたリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドであって、当該リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの純度は、≧99.6%である、
ことを特徴とするリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド。
【請求項17】
請求項1~
15のいずれか一項に記載の製造方法により製造されたリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド又は請求項
16に記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドのリチウムイオン電池における用途。
【請求項18】
ビスクロロスルホニルイミドの製造方法であって、
三酸化硫黄とアンモニアとを高圧反応釜で反応させ、イミノジスルホン酸を得るステップ(1)であって、反応圧力が0.8~1.5Mpaであるステップ(1)と、
ジクロロスルホキシドとステップ(1)で得られたイミノジスルホン酸とを反応させ、減圧蒸留してビスクロロスルホニルイミドを得るステップ(2)と、を含む、
ことを特徴とするビスクロロスルホニルイミドの製造方法。
【国際調査報告】