(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】組換えI型ヒト化コラーゲンポリペプチド及びその製造方法並びに使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20240416BHJP
C07K 14/78 20060101ALI20240416BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240416BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240416BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240416BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240416BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240416BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20240416BHJP
C07K 1/22 20060101ALI20240416BHJP
C12P 1/00 20060101ALI20240416BHJP
A61K 8/65 20060101ALI20240416BHJP
A61K 38/39 20060101ALI20240416BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240416BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
C12N15/12
C07K14/78 ZNA
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12N1/21
C12N1/19
C12N1/15
C12P21/02 A
C07K1/22
C12P1/00 A
A61K8/65
A61K38/39
A61P43/00 111
A61K9/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571715
(86)(22)【出願日】2022-04-26
(85)【翻訳文提出日】2023-11-16
(86)【国際出願番号】 CN2022089283
(87)【国際公開番号】W WO2023024552
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】202110968550.2
(32)【優先日】2021-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523434823
【氏名又は名称】シャンシー チンポー バイオ-ファーマシューティカル カンパニー,リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100227592
【氏名又は名称】孔 詩麒
(72)【発明者】
【氏名】ヤン シア
(72)【発明者】
【氏名】ルー チェンヤン
(72)【発明者】
【氏名】ラン シアオピン
(72)【発明者】
【氏名】ホー チェンルイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン チエン
(72)【発明者】
【氏名】ワン リンリン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C083
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA19
4B064CA21
4B064CB01
4B064CC24
4B064CE11
4B064CE12
4B064DA01
4B064DA10
4B065AA26X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BD14
4B065CA24
4B065CA41
4B065CA44
4C076AA11
4C076BB16
4C076CC29
4C076FF11
4C083AD431
4C083AD432
4C083CC01
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA44
4C084DA40
4C084MA16
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZC41
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045DA50
4H045EA01
4H045EA15
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA23
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、組換えI型ヒト化コラーゲンポリペプチド及びその製造方法並びに使用を公開した。本発明で提供される組換えI型ヒト化コラーゲンポリペプチドは、SEQ ID No.1に示される配列のn個の反復配列を含み、ここで、nが1以上の整数であり、nが2以上の整数である場合、各反復配列同士が直接接続されており、必要に応じて、前記組換えI型ヒト化コラーゲンポリペプチドのN末端に、TEVプロテアーゼにより切除可能なアミノ酸配列を含む。本発明で提供される組換えI型ヒト化コラーゲンポリペプチドは細胞接着を促進する活性を有し、前記組換えタンパク質のアミノ酸配列は天然コラーゲンアミノ酸配列から選択され、ヒトに利用される時に免疫反応を起こさず、また製造方法が簡単で、低コストで比較的高生産量のコラーゲンを得ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えI型ヒト化コラーゲンポリペプチドであって、
前記組換えI型ヒト化コラーゲンポリペプチドは、SEQ ID No.1に示される配列のn個の反復配列を含み、ここで、nが1以上の整数であり、nが2以上の整数である場合、各反復配列同士が直接接続されており、必要に応じて、前記組換えI型ヒト化コラーゲンポリペプチドのN末端に、TEVプロテアーゼにより切除可能なアミノ酸配列を含む。
【請求項2】
請求項1に記載の組換えI型ヒト化コラーゲンポリペプチドであって、
前記TEVプロテアーゼにより切除可能なアミノ酸配列は、SEQ ID No.4に示される配列を含み、好ましくは、SEQ ID No. 4に示される配列とSEQ ID No. 1に示される配列とが直接接続されている。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の組換えI型ヒト化コラーゲンポリペプチドであって、
前記組換えI型ヒト化コラーゲンポリペプチドは、次のことを含む:
a)SEQ ID No.3に示されるアミノ酸配列;
b)SEQ ID No.3に示されるアミノ酸配列と90%、92%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列であって、かつSEQ ID No.3に示されるアミノ酸配列の細胞接着効果を保持しているアミノ酸配列;
c)SEQ ID No.3に示されるアミノ酸配列において、1個又は複数個のアミノ酸残基が付加、置換、欠失若しくは挿入されたアミノ酸配列であって、かつSEQ ID No.3に示されるアミノ酸配列の細胞接着効果を保持しているアミノ酸配列;又は
d)SEQ ID No.3に示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列であって、かつSEQ ID No.3に示されるアミノ酸配列の細胞接着効果を保持しているアミノ酸配列であり、
前記ストリンジェントな条件は、中ストリンジェントな条件、中-高ストリンジェントな条件、高ストリンジェントな条件又は超高ストリンジェントな条件である。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の組換えI型ヒト化コラーゲンポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項5】
請求項4に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項6】
請求項5に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項に記載の組換えI型ヒト化コラーゲンポリペプチドの製造方法であって、
(一)請求項6に記載の宿主細胞を培地中で培養し、ポリペプチドを製造する工程と、
(二)前記ポリペプチドを取得して精製し、好ましくはNiカラム及び/又は陰イオン交換クロマトグラフィーにより前記ポリペプチドを精製する工程と、
(三)任意に前記ポリペプチドを酵素消化し、好ましくはTEVプロテアーゼで前記ポリペプチドを酵素消化する工程と、
を含む、前記方法。
【請求項8】
好ましくは組織工学製品、化粧品、健康食品又は医薬品である製品の製造における、請求項1~3のいずれか1項に記載の組換えI型ヒト化コラーゲンポリペプチドの使用。
【請求項9】
請求項1~3のいずれか1項に記載の組換えI型ヒト化コラーゲンポリペプチドを含む製品であって、この製品が組織工学製品、化粧品、健康食品又は医薬品であることが好ましい。
【請求項10】
細胞接着促進作用を有する製品の製造における、請求項1~3のいずれか1項に記載の組換えI型ヒト化コラーゲンポリペプチドの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権及び関連出願
本願は、2021年8月23日に提出された「組換えI型ヒト化コラーゲンポリペプチド及びその製造方法並びに使用」を発明の名称とする202110968550.2号中国発明特許出願の優先権を主張し、その付録を含む全内容は引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は遺伝子工学技術分野に属し、具体的に、組換えI型ヒト化コラーゲンポリペプチド及びその製造方法並びに使用に関する。
【背景技術】
【0003】
コラーゲン(collagen)はタンパク質の1種であり、一般的に、白色で透明な無分岐の原線維であり、皮膚や骨の基本的な支持物であり、全タンパク質の25%~35%を占めており、主に人体の皮膚、血管、骨格、筋腱、歯及び軟骨などに分布し、これらの組織の主なマトリックス及び支持物であり、各組織を保護し結びつけ、ヒト体内で重要な生理学的機能を発揮している。したがって、コラーゲンは医薬品や化粧品などの業界で広く利用されることができる。コラーゲンのヒト体内分布と機能の特徴により、コラーゲンを間質性コラーゲン、基底膜コラーゲン及び細胞外コラーゲンに分けることができる。間質性コラーゲン分子は、体全体のコラーゲンのほとんどを占め、I型、II型、III型コラーゲン分子を含み、I型コラーゲンは主に皮膚、筋腱などの組織に分布し、医学的に最も広く利用されている。
【0004】
しかし、天然コラーゲンは水に不溶で性質が不均一であるため、人体で直接利用することが困難であり、化学的手段による処理を経てから利用することが多い。また、現在市場で販売されているコラーゲン製品はいずれも豚、牛、魚などの動物組織から採取したもので、ウイルス感染のリスクを回避することが難しい。また、人体と適合できないため、免疫拒絶反応やアレルギー症状を引き起こすことがある。ヒト胎盤の原料からコラーゲンを抽出しようとすると、供給源が限られているのみならず、さらに違法のため、厳しい法的処罰も課せられる。したがって、現在コラーゲンは化粧品や健康食品にしか使われておらず、コラーゲン本来の生物学的機能をまったく発揮できていない。
【0005】
従来、コラーゲンの製造方法は、動物由来の組織を酸、アルカリ、酵素による分解法で処理し、コラーゲン誘導体を抽出することで行われる方法である。これらの方法で抽出したコラーゲン自体はすでに本来の生物活性を失っており、生物医学分野に応用してその本来の機能を発揮することができない。製造されたコラーゲン製品のほとんどは引張強度が低く、純粋なコラーゲンはヒト体内で急速に分解されるため、潜在的な抗原性を持つ可能性がある。また、コラーゲンの由来、加工技術や原料配合比により、製品の栄養成分や飼料価値が異なる。そして、皮革材料は加工中に多くの化学物質に暴露するのみならず、細菌にも汚染されやすい。これらの問題はコラーゲンの利用を厳しく制限している。海外の研究機関では、ヒト化コラーゲンを含む遺伝子を持つマウスを飼育し、ヒト化コラーゲンを含む乳汁を得ているが、このような生産はコストが高すぎ、生産期間が長すぎて大規模な生産には踏み切れない。
【0006】
TEV Proteaseは大腸菌で組換え発現させたHisタグ(6×His tag)付きタバコエッチ病ウイルス(Tobacco Etch Virus、TEV)のシステイン酸プロテアーゼであり、セプタペプチド配列Glu-Asn-Leu-Tyr-Phe-Gln-Gly/Serを特異的に識別し、GlnとGly/Serアミノ酸残基の間で酵素消化することができ、融合タンパク質からのGlutathione S-transferase(GST)、His又は他のタグの除去によく利用される。
【0007】
そのため、人体に迅速に吸収され、製造方法が簡単で、コストが低く、同時にヒト化コラーゲンの機能及び特性を発揮できる製品の開発が急務となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記本分野で異種コラーゲンの生物活性が低く、免疫反応を誘発させやすく、また、ヒト化コラーゲンの生産コストが高く、周期が長く、大規模の生産ができないなどによるコラーゲンの利用率が低いことなどの一連の問題に鑑みて、組換えI型ヒト化コラーゲンポリペプチド、さらにその製造方法及び使用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の側面において、本発明は、組換えI型ヒト化コラーゲンポリペプチドであって、SEQ ID No.1に示される配列のn個の反復配列を含み、ここで、nが1以上の整数であり、nが2以上の整数である場合、各反復配列同士が直接接続されており、必要に応じて、前記組換えI型ヒト化コラーゲンポリペプチドのN末端に、TEVプロテアーゼにより切除可能なアミノ酸配列を含む組換えI型ヒト化コラーゲンポリペプチドを提供する。
【0010】
さらに、前記組換えI型ヒト化コラーゲンポリペプチドにおいて、前記TEVプロテアーゼにより切除可能なアミノ酸配列は、SEQ ID No.4に示される配列を含み、好ましくは、SEQ ID No. 4に示される配列とSEQ ID No. 1に示される配列とが直接接続されている。
【0011】
さらに、前記組換えI型ヒト化コラーゲンポリペプチドは、以下を含む:a.SEQ ID No.3に示されるアミノ酸配列;b.SEQ ID No.3に示されるアミノ酸配列と90%、92%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列であって、かつSEQ ID No.3に示されるアミノ酸配列の細胞接着効果を保持しているアミノ酸配列;c.SEQ ID No.3に示されるアミノ酸配列において、1個又は複数個のアミノ酸残基が付加、置換、欠失若しくは挿入されるアミノ酸配列であって、かつSEQ ID No.3に示されるアミノ酸配列の細胞接着効果を保持しているアミノ酸配列;又はd.SEQ ID No.3に示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列であって、かつSEQ ID No.3に示されるアミノ酸配列の細胞接着効果を保持しているアミノ酸配列である。前記ストリンジェントな条件は、中ストリンジェントな条件、中-高ストリンジェントな条件、高ストリンジェントな条件又は超高ストリンジェントな条件である。
【0012】
第2の側面において、本発明は、前記組換えI型ヒト化コラーゲンポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0013】
第3の側面において、本発明は、前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供する。
【0014】
第4の側面において、本発明は、前記発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0015】
第5の側面において、本発明は、(一)本発明の第4の側面における宿主細胞を培地中で培養し、ポリペプチドを製造する工程と、(二)前記ポリペプチドを取得して精製し、好ましくはNiカラム及び/又は陰イオン交換クロマトグラフィーにより前記ポリペプチドを精製する工程と、(三)任意に前記ポリペプチドを酵素消化し、好ましくはTEVプロテアーゼで前記ポリペプチドを酵素消化する工程と、を含む、前記組換えI型ヒト化コラーゲンポリペプチドの製造方法を提供する。
【0016】
第6の側面において、本発明は、好ましくは組織工学製品、化粧品、健康食品又は医薬品の製品の製造における、前記組換えI型ヒト化コラーゲンポリペプチドの使用を提供する。
【0017】
第7の側面において、本発明は、前記組換えI型ヒト化コラーゲンポリペプチドを含む製品を提供し、この製品は、好ましくは組織工学製品、化粧品、健康食品又は医薬品である。
【0018】
第8の側面において、本発明は、細胞接着促進作用を有する製品の製造における、前記組換えI型ヒト化コラーゲンポリペプチドの使用を提供する。
【発明の効果】
【0019】
上記の技術的解決手段の実施により、本発明で製造された組換えI型ヒト化コラーゲンは、I型コラーゲンの他の断片よりも優れた細胞接着効果を有し、そのアミノ酸配列が天然コラーゲンアミノ酸配列から選択されるため、人体に適用しても免疫反応を起こさず、同時にその製造方法が簡単であり、低コストでより高い生産量のコラーゲンを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、組換えI型ヒト化コラーゲンTC1R4誘導発現後のタンパク質電気泳動図である。第1のレーンは分子量マーカーであり、第2のレーンは精製後のTC1R4タンパク質であり、TC1R4タンパク質を電気泳動により検出された分子量が約38kDaであり、SEQ ID No.3に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質に対応する。
【
図2】
図2は、ヒト化コラーゲン、C1S4T、C1S5T、TC1R4タンパク質ポリペプチドの生物接着活性の測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。特に断りのない限り、本発明で使用される機器、装置、試薬、材料などは従来の商業的手段により入手することができる。
【0022】
本明細書において、「てもよい」という用語は、何らかの処理を行う場合と行わない場合の両方の意味を含む。本明細書において、「任意の」又は「任意に」とは、次に説明する事態又は状況が発生してもよく又は発生しなくてもよいを意味し、この説明は、この事態が発生する場合と発生しない場合の両方の意味を含む。
【0023】
本明細書において、「医療機器」とは、人体に直接又は間接的に使用される機器、装置、器具、体外診断用医薬品及び校正品、材料及び他の類似品や関連する物品を指す。
【0024】
本明細書において、「組織工学製品」とは、組織工学に使用される製品を指す。組織工学とは、細胞生物学と材料工学を結合し、インビトロ又はインビボで組織や器官を構築するための新興学科である。
【0025】
本発明の一部は、以下の発明者による先行研究における知見に基づくものである。大腸菌中で、例えばGEKGSPGADGPAGAPGTPGPQGIAGQRGVVGLPGQRGERGFPGLPGPSGEPGKQGPSGAS(SEQ ID No.1)を反復配列として複数含むポリペプチドが発現される場合、ポリペプチドは通常短縮タンパク質であるため、全長タンパク質のヒンジ領域構造を欠如している。そのため、組換え発現ポリペプチドのゲル化性を高めるために、通常、ポリペプチドのC末端にヒンジ領域アミノ酸GPPGPCCGGG(SEQ ID No.2)などの配列を付加してゲル化に資することが必要がある(参考文献:Journal Of Biochemistry.2004;136:643-649)。したがって、出願番号が201811438582.6である発明特許の出願において、例えばT16aなどC末端にSEQ ID No.2を含むポリペプチド配列を設計したが、T16aのような配列のポリペプチドは振とう培養したり又は発酵培養したりする際に、ほとんどの目的ポリペプチドがコロイド沈殿物を形成して溶解及び精製できず、収率が非常に低いことを発見した。この課題を解決するために、反復配列を複数含むポリペプチドを得るように、各反復配列(SEQ ID No.1)間に非コラーゲンアミノ酸リンカーを付加することにより、またこのようなポリペプチドの改変も主にリンカーアミノ酸残基及びC末端ヒンジ領域アミノ酸、即ちC末端安定化配列に集中することを特徴とするポリペプチドを提供することができる。
【0026】
驚くべきことに、発明者はSEQ ID No.1の結晶構造を解析した結果、SEQ ID No.1領域はヒンジ領域が関与しないことを前提に、非常に安定したコラーゲン三量体構造を形成できることを発見した。出願番号が201811438582.6の発明特許出願において、発明者がポリペプチド配列をさらに改変した際に、上記出願に係るポリペプチドにおいて、C末端安定化配列の関与を必要としないことを発見した。また、この場合、ポリペプチドは組換え発現すると同時に、早期にコロイド構造を形成し、後期のタンパク質の精製に影響を与えることはない。
【0027】
本発明に使用されるSEQ ID No.1反復配列は、GEKGSPGADGPAGAPGTPGPQGIAGQRGVVGLPGQRGERGFPGLPGPSGEPGKQGPSGAS(SEQ ID No.1)である。本発明のポリペプチドは、反復配列間にリンカーが存在しない前提で、SEQ ID No.1に示される反復配列を複数含むことができる。本明細書では、リンカーは1個以上のアミノ酸残基であってもよい。本発明において、接着の実施例で検証された特性を実現できる限り、反復配列の数に特に制限されることがない。反復配列の数は、4個、即ちSEQ ID No.3に示される配列を含むポリペプチドが好ましい。
GEKGSPGADGPAGAPGTPGPQGIAGQRGVVGLPGQRGERGFPGLPGPSGEPGKQGPSGASGEKGSPGADGPAGAPGTPGPQGIAGQRGVVGLPGQRGERGFPGLPGPSGEPGKQGPSGASGEKGSPGADGPAGAPGTPGPQGIAGQRGVVGLPGQRGERGFPGLPGPSGEPGKQGPSGASGEKGSPGADGPAGAPGTPGPQGIAGQRGVVGLPGQRGERGFPGLPGPSGEPGKQGPSGAS(SEQ ID No.3)。
【0028】
本発明のポリペプチド配列は、発現時にそのN末端にENLYFQ(SEQ ID No.4)配列を付加されていなければならず、TEVプロテアーゼ切除により、例えばSEQ ID No.3に示される配列のポリペプチドを直接得ることができる。ENLYFQ(SEQ ID No.4)配列は、当初の反復配列のN末端に直接接続され、即ち、
ENLYFQGEKGSPGADGPAGAPGTPGPQGIAGQRGVVGLPGQRGERGFPGLPGPSGEPGKQGPSGASGEKGSPGADGPAGAPGTPGPQGIAGQRGVVGLPGQRGERGFPGLPGPSGEPGKQGPSGASGEKGSPGADGPAGAPGTPGPQGIAGQRGVVGLPGQRGERGFPGLPGPSGEPGKQGPSGASGEKGSPGADGPAGAPGTPGPQGIAGQRGVVGLPGQRGERGFPGLPGPSGEPGKQGPSGAS(SEQ ID No.5)が好ましい。
【0029】
研究において、発明者は、SEQ ID No.3に示される配列のポリペプチドが出願番号が201811254050.7である発明特許出願に記載の組換えI型ヒト化コラーゲンよりも高い活性を有することを見出した。
【0030】
本発明において、ポリペプチドは組換えI型ヒト化コラーゲンであり、本明細書において組換えヒト化コラーゲンと交換して使用されることができる。
【0031】
本発明において、組換えヒト化コラーゲンは本分野の常法に従って製造されることができる。例えば、(1)大腸菌遺伝子工学菌の構築、(2)大腸菌遺伝子工学菌の発酵培養、(3)組換えヒト化コラーゲンの誘導及び発現、(4)組換えヒト化コラーゲンの精製、及び必要に応じて酵素消化といった工程で製造されることができる。
【0032】
上記の工程(1)において、大腸菌遺伝子工学菌の構築は、a.目的の遺伝子断片を得る;b.得られた目的の遺伝子断片をpET-32a発現ベクターに挿入して組換え発現プラスミドを得る;c.組換え発現プラスミドを大腸菌感受性細胞BL21(DE3)に導入し、スクリーニングして陽性大腸菌遺伝子工学菌を得るといった工程で行われることができる。
【0033】
上記の工程(2)及び(3)において、大腸菌遺伝子工学菌の発酵培養及び組換えヒト化コラーゲンの誘導及び発現は、a.形質転換されたLBプレートからスクリーニング後の大腸菌遺伝子工学菌単コロニーを選択し、アンピシリン抗生物質を含む1000mlのLB培地中で37℃、220rpmで菌液OD600が0.9~1.1となるように培養し、b.最終濃度0.5mMのIPTGを添加して誘導し、18℃で一晩培養し、遠心分離して菌体を収集するといった工程で行われることができる。
【0034】
上記の工程(4)において、組換えヒト化コラーゲンポリペプチドの精製及び酵素消化は、a.Tris緩衝液(25mM Tris、200mM NaCl、pH 8.0)で菌体を再懸濁し、菌体を破砕し、遠心分離して上澄み液を収集し、b.Ni6FF親和性カラムにより組換えヒト化コラーゲンを結合し、20mMイミダゾール含有洗浄緩衝液で不純なタンパク質をすすいだ後、250mMイミダゾール含有溶液目的タンパク質を溶出し、TEVプロテアーゼを加え、16℃で、2h酵素消化し、最後に目的コラーゲンポリペプチドを得るといった工程で行われることができる。
【0035】
宿主細胞は真菌や酵母などの真核細胞であってもよく、腸内細菌科細菌などの原核細胞であってもよい。当業者は、上記大腸菌株の代わりに、他の発現株を宿主細胞として用いることができると理解されたい。
【0036】
本発明はまた、本発明のポリペプチドをコードする核酸配列を含む核酸分子を提供する。核酸はDNA又はcDNAであってもよい。核酸分子は、主に本発明に記載のペプチドをコードする核酸配列から構成されていてもよいし、又は本発明に記載のペプチドをコードする核酸配列のみから構成されていてもよい。このような核酸分子は、当業者に既知の方法によって合成することができる。遺伝暗号の縮退性のため、当業者は、異なる核酸配列の核酸分子が同じアミノ酸配列をコードすることができると理解されるべきである。
【0037】
本発明はまた、本発明に記載の核酸配列を含むベクターを提供する。適切なベクターはベクター構築の分野で知られているものであり、プロモーターの選択や例えばエンハンサーなどの他の調節エレメントを含む。本発明に記載のベクターは細胞への導入に適した配列を含む。例えば、ベクターは、発現ベクターであってもよく、このベクターにおいて、上記ポリペプチドのコード配列はそれ自体のシス作用調節エレメントによって制御され、ベクターは宿主細胞の遺伝子統合や遺伝子置換などを容易にするように設計される。
【0038】
当業者であれば、本発明において、「ベクター」という用語は、DNA分子、例えば、プラスミド、ファージ、ウイルス、又は1つ又は複数個異種又は組換え核酸配列を含む他のベクターを含むことが理解されるであろう。適切なファージ及びウイルスベクターは、λ-ファージ、EMBLファージ、サルウイルス、ウシイボウイルス、Epstein-Barrウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、マウス肉腫ウイルス、マウス乳癌ウイルス、スローウイルスなどを含むが、これらに限定されない。
【0039】
本発明のポリペプチドは、SEQ ID No.3に示されるアミノ酸配列の細胞接着効果を保持している限り、SEQ ID No.3に示される配列又はSEQ ID No.3に示される配列において、1個又は複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入及び/又は付加される配列を含む。「複数個」は、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個又は11個であってもよい。
【0040】
アミノ酸の付加とは、本発明のポリペプチドがSEQ ID No.3に示されるアミノ酸配列の細胞接着効果を保持している限り、アミノ酸配列、例えばSEQ ID NO.3のC末端又はN末端にアミノ酸を付加することを指す。
【0041】
アミノ酸の置換とは、本発明のポリペプチドがSEQ ID No.3に示されるアミノ酸配列の細胞接着効果を保持している限り、アミノ酸配列、例えばSEQ ID No.3に示される配列のある位置に存在するあるアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されることを指す。
【0042】
アミノ酸の挿入とは、本発明のポリペプチドがSEQ ID No.3に示されるアミノ酸配列の細胞接着効果を保持している限り、アミノ酸配列、例えばSEQ ID No.3に示される配列の適切な位置にアミノ酸残基が挿入され、挿入されたアミノ酸残基が全部又は一部が互に隣接していてもよく、又は挿入されたアミノ酸同士が互いに隣接していなくてもよい。本明細書では、アミノ酸の挿入位置は各反復配列の間ではない。
【0043】
アミノ酸の欠失とは、本発明のポリペプチドがSEQ ID No.3に示されるアミノ酸配列の細胞接着効果を保持している限り、アミノ酸配列、例えばSEQ ID No.3に示される配列から1個、2個又は3個以上のアミノ酸を欠失させることができることを指す。
【0044】
本発明において、置換は保存的アミノ酸の置換であってもよく、SEQ ID No.3に示されるアミノ酸配列と比較して、3個、より好ましくは2個のアミノ酸又は1個のアミノ酸が類似する又は近い性質を有するアミノ酸に置換されてペプチドを形成することを指す。これらの保存的変異ペプチドは、以下の表に従ってアミノ酸置換を行って製造することができる。
【表1】
【0045】
本明細書で使用されるように、「中ストリンジェントな条件」、「中-高ストリンジェントな条件」、「高ストリンジェントな条件」又は「超高ストリンジェントな条件」といった用語は、核酸ハイブリダイゼーション及び洗浄の条件を表す。ハイブリダイゼーション反応を行うためのガイドラインは、本文に組み込まれるCurrent Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、N.Y. (1989)、6.3.1-6.3.6を参照されたい。この文献には、水性方法及び非水性方法が記載されており、いずれも使用することができる。例えば、具体的なハイブリダイゼーション条件は以下の通りである。(1)低ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件とは、6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)で、約45℃で、次いで少なくとも50℃で、0.2×SSC、0.1%SDSで2回洗浄する条件である(低ストリンジェントな条件では、洗浄温度を55℃まで上昇させることができる。);(2)中ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件とは、6×SSC、約45℃、次いで60℃で、0.2×SSC、0.1%SDSで1回又は複数回洗浄する条件である;(3)高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件とは、6×SSC、約45℃で、次いで65℃で、0.2×SSC、0.1%SDSで1回又は複数回洗浄し、且つ好ましい条件である;(4)超高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件とは、0.5Mリン酸ナトリウム、7%SDSで、65℃で、次いで65℃で、0.2×SSC、1%SDSで1回又は複数回洗浄する条件である。
【0046】
実際の利用では、本発明のポリペプチド又はその薬学的に許容される塩、その誘導体又はその薬学的に許容される塩、上記複合体、上記多量体及び上記組成物を医薬品として患者に直接投与してもよく、又は適切なベクター又は賦形剤と混合した後に患者に投与してもよい。ここで、ベクター材料は、水溶性ベクター材料(例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、有機酸など)、難溶性ベクター材料(例えば、エチルセルロース、ステアリン酸コレステロールなど)、腸溶性ベクター材料(例えば、セルロースアセテートフタレート及びカルボキシメチルセルロースなど)を含むが、これらに限定されない。好ましくは水溶性ベクター材料である。これらの材料を用い、錠剤、カプセル、ペレット、エアゾール剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、リポソーム、経皮剤、経口錠剤、坐剤、凍結乾燥粉末注射剤などを含むが、これらに限定されない様々な剤形に製造することができる。坐剤は膣座薬であってもよく、膣環であってもよく、膣用途に適した軟膏、クリーム又はゲルであってもよい。上記ポリペプチド剤形は一般製剤、徐放製剤、制御放出製剤及び様々な微粒子投与システムであり得る。単位投与剤形を錠剤に製造するために、本分野の公知している様々なベクターを広く利用することができる。ベクターの例として、例えばデンプン、デキストリン、硫酸カルシウム、ラクトース、マンニトール、スクロース、塩化ナトリウム、グルコース、尿素、炭酸カルシウム、カオリン、微結晶セルロース、ケイ酸アルミニウムなどの稀釈剤及び吸収剤、例えば水、グリセリン、ポリエチレングリコール、エタノール、プロパノール、デンプンペースト、デキストリン、シロップ、蜂蜜、グルコース溶液、アラビアゴムペースト、ゼラチンペースト、カルボキシメチルセルロースナトリウム、シェラック、メチルセルロース、ン酸カリウム、ポリビニルピロリドンなどの湿潤剤与及び結合剤、例えば乾燥デンプン、アルギン酸塩、寒天粉、褐藻デンプン、炭酸水素ナトリウムとクエン酸、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレン、ソルビトール脂肪酸エステル、ドデシルスルホン酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロースなどの崩壊剤、例えばスクロース、ステアリン酸グリセリド、カカオバター、水素化油などの崩壊抑製剤、例えば第4級アンモニウム塩、ドデシル硫酸ナトリウムなどの吸収促進剤、例えばタルク粉、シリカ、コーンスターチ、ステアリン酸塩、ホウ酸、液体パラフィン、ポリエチレングリコールなどの潤滑剤が挙げられる。また、錠剤を例えば糖衣錠、フィルムコーティング錠、腸溶性コーティング錠、又は2層錠及び多層錠のようなコーティング錠にさらに製造することができる。単位投与剤形を丸剤に製造するために、当業者に公知している様々なベクターを広く利用することができる。ベクターの例として、例えばグルコース、ラクトース、デンプン、カカオバター、水素化植物油、ポリビニルピロリドン、Gelucire、カオリン、タルク粉などの稀釈剤及び吸収剤、例えばアラビアゴ、キサゴンゴム、ゼラチン、エタノール、蜂蜜、液状糖、米ペースト又は小麦粉ペーストなどの結合剤、例えば寒天粉、乾燥デンプン、アルギン酸塩、ドデシルスルホン酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロースなどの崩壊剤が挙げられる。単位投与剤形を坐剤に製造するために、当業者に公知している様々なベクターを広く利用することができる。ベクターの例として、例えば、ポリエチレングリコール、レシチン、カカオバター、高級アルコール、高級アルコールのエステル、ゼラチン、半合成グリセリドなどが挙げられる。単位投与剤形を例えば溶液、乳剤、凍結乾燥粉末注射剤及び懸濁剤などの注射用製剤に製造するために、例えば、水、エタノール、ポリエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、エトキシ化イソステアリルアルコール、酸化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルなど、当業者に慣用しているすべての稀釈剤を使用することができる。また、等張注射液を製造するために、注射用製剤に適量の塩化ナトリウム、グルコース又はグリセリンを添加することができ、さらに、一般的な助溶剤、緩衝剤、pH調整剤などを添加することもできる。さらに、必要に応じて、医薬品製剤に着色剤、防腐剤、香料、矯味剤、甘味料又は他の材料を添加することもできる。
【0047】
上記剤形の使用は、皮下注射、静脈注射、筋肉内注射及び腹腔内注射、脳内注射又は輸液などを含む注射投与、例えば直腸、膣及び舌下などの腔内投与、例えば鼻内投与、粘膜投与などの呼吸投与により投与することができる。上記投与経路は注射投与であることが好ましく、注射経路は皮下注射ことが好ましい。
【0048】
本発明のポリペプチド又はその薬学的に許容される塩、その誘導体又はその薬学的に許容される塩、上記複合体、上記多量体及び上記組成物の投与量は、例えば予防又は治療しようとする疾患の性質及び重症度、患者又は動物の性別、年齢、体重及び個体反応、使用される特定の有効成分、投与経路及び投与回数などの多くの要素により決められる。上記の投与量は、単一投与量の形態、又は例えば2つ、3つ又は4つなどの複数の投与量の形態で適用されることができる。任意の具体的な患者に対して、具体的な治療上有効な用量レベルは治療する障害とこの障碍の重症度、使用する具体的な有効成分の活性、使用される具体的な組成物、患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別及び食事、使用される具体的な有効成分の投与時間、投与経路及び排泄率、治療継続時間、使用される具体的な有効成分と組み合わせて使用又は同時に使用される医薬品、及び医療分野で公知の類似要素などの様々な要素に基づいて決められるべきである。例えば、この分野では、有効成分の投与量は、所望の治療効果を得るために必要なレベルを下回ることから開始し、所望の治療効果が得られるまで徐々に投与量を増加させる。
【0049】
本発明に記載のヒト化コラーゲンC1S4T及びヒト化コラーゲンC1S5Tは、出願番号201811254050.7、発明の名称「ポリペプチド、その製造方法及び使用」の特許出願に記載されている。
【0050】
本発明の態様をより明確に説明するために、以下に具体的な実施例を用いてさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の一部の実施例に過ぎない。
【0051】
実施例1:組換えI型ヒト化コラーゲンTC1R4の製造
【0052】
1.TC1R4遺伝子発現ベクターの構築
本実施例で使用された組換えI型ヒト化コラーゲンTC1R4全長タンパク質配列は、SEQ ID No.3に示されるアミノ酸配列であり、全長240aaである。TC1R4タンパク質の発現後に精製するために、本発明において、SEQ ID No.3に示されるアミノ酸配列のN末端に例えばSEQ ID No.4に示されるアミノ酸配列が結合され、全長246aaのSEQ ID No.5に示されるアミノ酸配列を形成した。大腸菌のコドンに対して、このアミノ酸配列に対応するコード配列に対してコドン最適化を行い、その対応する遺伝子の全長が738bpである(詳細は、SEQ ID No.6における下線付き配列を参照)。その後の発現ベクターの構築を容易にするために、コード配列の5’末端に制限酵素消化部位配列を付加し、3’末端に終止コドン配列及び制限酵素消化部位配列を付加した。最適化された遺伝子配列は、GGTACCGAAAACCTGTATTTCCAGGGTGAAAAAGGTAGTCCGGGTGCAGATGGTCCGGCCGGTGCACCTGGTACACCGGGTCCTCAGGGCATTGCAGGCCAGCGTGGTGTTGTGGGCCTGCCGGGTCAGCGCGGTGAACGTGGTTTTCCGGGTCTGCCGGGTCCGAGCGGCGAACCTGGTAAACAGGGCCCGAGTGGTGCAAGCGGTGAAAAAGGCAGTCCGGGCGCAGATGGTCCTGCAGGTGCCCCTGGTACACCTGGTCCGCAGGGTATTGCAGGTCAGCGCGGCGTGGTGGGCCTGCCTGGTCAACGTGGCGAACGTGGTTTCCCGGGCCTGCCGGGACCGTCAGGTGAACCTGGCAAACAGGGCCCTAGCGGTGCAAGTGGCGAAAAAGGTAGCCCGGGCGCAGACGGCCCGGCAGGTGCACCTGGCACACCTGGTCCTCAGGGTATTGCGGGCCAGCGCGGCGTTGTTGGTCTGCCTGGCCAGCGTGGCGAACGCGGTTTTCCGGGCCTGCCTGGCCCGTCAGGCGAACCTGGAAAACAGGGCCCAAGTGGTGCAAGTGGTGAAAAAGGAAGTCCGGGCGCCGATGGCCCGGCCGGTGCGCCTGGTACGCCTGGTCCTCAAGGCATTGCCGGTCAGCGCGGAGTTGTTGGCCTGCCGGGCCAGCGTGGAGAACGCGGTTTCCCGGGTCTGCCTGGTCCGAGTGGTGAACCGGGTAAACAGGGTCCGAGCGGTGCATCATAACTCGAG(SEQ ID No.6)である。
北京盛元科萌遺伝子バイオ科技有限公司に遺伝子断片の合成を依頼し、合成したTC1R4遺伝子断片をKpnI(NEB社内製品番号:R0136L)及びXhoI(NEB社内製品番号:R0146L)の酵素消化部位を介してpET-32a発現ベクター(EMD Biosciences(Novagen)社)に挿入し、対応する組換え発現プラスミドを得た。
【0053】
2.組換え発現プラスミドの形質転換
上記成功裏に構築された発現プラスミドを大腸菌感受性細胞BL21(DE3)(Merck社)に形質転換した。具体的な過程は以下の通りである。(一)1μLのプラスミドを取り、100μLの大腸菌感受性細胞BL21(DE3)に取り、氷上に30min静置し、(二)この混合物を42℃の水浴で90s加熱し、次いで速やかに氷上に2min静置し、(三)この混合物に700μL非抵抗性LB(10g/Lタンパク質ペプトン、5g/L酵母抽出物、10g/L塩化ナトリウム)を加え、37℃、220rpmの条件下で1h培養し、(四)200μLの菌液を取り、アンピシリン含有LBプレート上(10g/Lタンパク質ペプトン、5g/L酵母抽出物、10g/L塩化ナトリウム、15g/L寒天、100μg/mLアンピシリン)に均一に塗布し、(五)プレートを、はっきり見えるようなコロニーが成長するまで37℃の恒温槽で約16h倒置培養した。
【0054】
3.組換えI型ヒト化コラーゲンTC1R4の発現誘導
形質転換されたLBプレートからモノクローナルコロニーを選択し、1000ml LB(100μg/mLアンピシリン抗生物質を含む)培地中で37℃、220rpmで菌液OD600が0.9~1.1となるように培養し、最終濃度0.5mMのIPTG(Sigma社、製品番号:I5502-1G)を加えて発現を誘導し、誘導条件は18℃、220rpmで一晩培養した。最後に遠心分離して菌体を収集し、-20℃で保存するか、直ちに次のステップの精製に進んだ。
【0055】
4.組換えI型ヒト化コラーゲンTC1R4の精製
Tris緩衝液(25mM Tris、200mM塩化ナトリウム、pH 8.0)約100mlで上記の菌体(1L)沈殿物を再懸濁し、ホモジナイザ(GEA)で細菌を破砕した後、17000rpmで30min遠心分離し、可溶性タンパク質と封入体を完全に分離させた。
5倍カラム容積の結合緩衝液(Binding buffer)(25mM Tris、200mM NaCl、pH 8.0)を用い、Ni6FF(Cytiva社、製品番号:30210)親和性カラムを平衡化させた。次いでタンパク質上清を加え、目的組換えタンパク質をカラムに十分に結合させた。次に、20mMイミダゾール(Sigma社)含有洗浄緩衝液(washing buffer)(20mMイミダゾール、25mM Tris、200mM NaCl、pH 8.0)で不純なタンパク質をすすぎ、250mMイミダゾール含有溶液(250mMイミダゾール、25mM Tris、200mM NaCl、pH 8.0)で目的タンパク質を溶出した。次いで適量のTEVプロテアーゼ(Sigma、T4455)を加え、16℃で2hインキュベートした後、ベクタータンパク質が除去される目的のコラーゲンである貫通液を採取した。得られた生成物を一晩透析し、その後凍結乾燥して乾燥粉末として使用した。
【0056】
5.組換えI型ヒト化コラーゲンTC1R4の純度検出
得られたTC1R4タンパク質をSDS-PAGEで純度を測定した。具体的な過程は以下の通りである。精製後のタンパク質液20μLを取り、5μl 5×のタンパク質担持緩衝液(250mMのTris-HCl(pH 6.8)、10%SDS、0.5%ブロモフェノールブルー、50%グリセリン、5%β-メルカプトエタノール)を加え、100℃の沸騰水で5min煮て、次いで1ウェルあたり10μlをSDS-PAGEタンパク質ゲルに加え、電圧150Vで1h電気泳動した後、コールマーズライトブルー染色溶液(0.1%コールマーズライトブルーR-250、25%エタノール、10%氷酢酸)でタンパク質染色を3min行い、次にタンパク質脱色液(10%酢酸、5%エタノール)を用いて脱色を行った。
【0057】
結果を
図1に示すように、TC1R4は電気泳動により得られたの見かけの分子量が38kDaであり、分子量はTC1R4のポリペプチドに対応しており、ポリペプチドTC1R4が正しく発現されていることが示された。
【0058】
実施例2:組換えI型ヒト化コラーゲンTC1R4の質量分析による検出
【0059】
【0060】
DTT還元及びヨードアセトアミドアルキル化処理した後、TC1R4タンパク質サンプルにトリプシンを加えて一晩酵素分解させた。酵素分解後に得られたペプチド断片をさらにC18ZipTipで脱塩し、その後、プレート上でマトリックスα-cyano-4-hydroxycinnamic acid(CHCA)と混合した。最後に、マトリックス支援レーザー脱離イオン化-飛行時間型質量分析計MALDI-TOF/TOF UltraflextremeTM、Brucker、Germanyで分析を行った(ペプチドマスフィンガープリンティング技術はProtein J.201635:212-7を参照)。
【0061】
データベースの検索は、ローカルmascotサイトのPeptide Mass Fingerprintウェブページから処理された。タンパク質同定結果は、酵素分解後に生成されたペプチド断片の一次質量分析に基づいて得られた。検索パラメータ:Trypsin酵素分解、2つの欠落した切断部位を設定した。システインのアルキル化は固定修飾、メチオニンの酸化は可変修飾とした。同定に用いたデータベースはSwissprotである。
【0062】
【0063】
ポリペプチドの配列と比較する:
GEKGSPGADGPAGAPGTPGPQGIAGQRGVVGLPGQRGERGFPGLPGPSGEPGKQGPSGASGEKGSPGADGPAGAPGTPGPQGIAGQRGVVGLPGQRGERGFPGLPGPSGEPGKQGPSGASGEKGSPGADGPAGAPGTPGPQGIAGQRGVVGLPGQRGERGFPGLPGPSGEPGKQGPSGASGEKGSPGADGPAGAPGTPGPQGIAGQRGVVGLPGQRGERGFPGLPGPSGEPGKQGPSGAS(SEQ ID NO:3)
【0064】
計算した結果、ペプチド断片の被覆率は98.75%であり、非常に信頼性の高い検出結果でった。
【0065】
実施例3:組換えI型ヒト化コラーゲンTC1R4の生物活性の検出
コラーゲンの活性の検出方法は、文献Juming Yao、 Satoshi Yanagisawa、 Tetsuo Asakura、 Design、 Expression and Characterization of Collagen-Like Proteins Based on the Cell Adhesive and Crosslinking Sequences Derived from Native Collagens、 J Biochem. 136、 643-649(2004)を参照されたい。具体的な実施方法は以下の通りである。
【0066】
(1)紫外吸収法により、商品化されたヒト化コラーゲン(Sigma、C7774)、本発明で提供された組換えI型ヒト化コラーゲンTC1R4、組換えIII型コラーゲンC1S4T、組換えIII型コラーゲンC1S5T(ここで、前記タンパク質C1S4T、C1S5Tの配列は、出願番号201811254050.7の特許出願を参照)を含む対象タンパク質サンプルの濃度を測定した。
【0067】
具体的に、サンプルの215nm及び225nmにおける紫外吸収をそれぞれ測定し、経験式C(μg/mL)= 144×(A215-A225)によりタンパク質の濃度を計算した。A215<1.5の場合に検出すべきことに留意すべきである。この方法の原理は、ペプチド結合の遠紫外光下での特徴吸収を測定し、発色団含有量の影響を受けず、干渉物質が少なく、操作が簡単で、コールマーズライトブルーに発色しないヒト化コラーゲン及びその類似物の検出に適している。(参考文献:Walker JM. The Protein Protocols Handbook、 second edition. HumanaPress. 43-45.)。タンパク質の濃度を測定した後、PBSですべての測定しようとするタンパク質の濃度を0.5mg/mlに調整した。
【0068】
(2)96ウェルプレートに各種タンパク質溶液及びブランクPBS対照溶液を100μL加え、室温で60min静置した。
【0069】
(3)各ウェルに(清華大学童佩先生より提供された)培養状態の良い3T3細胞を105個入れ、37℃で60minインキュベートした。
【0070】
(4)各ウェルをPBSで4回洗浄した。
【0071】
(5)LDH検出キット(Roche、04744926001)を用いてOD492nmの吸光度を検出した。空白対照の数値から細胞の接着率を算出できる。計算式は以下の通りである。
細胞接着率=(試験ウェル-空白ウェル)×100%/(陽性ウェル-空白ウェル)。
【0072】
細胞の接着率はコラーゲンの活性を反映することができる。タンパク質の活性が高いほど、短時間で細胞に壁に接着するのに役立つよい外部環境を提供することができる。
【0073】
結果を
図2に示すように、比較すればから明らかなように、本発明の組換えI型ヒト化コラーゲンTC1R4は、商品化されたヒト化コラーゲン、組換えIII型コラーゲンC1S4T、組換えIII型コラーゲンC1S5Tよりも、より優れた生物接着活性を有することが分かった。
【配列表】
【国際調査報告】