(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】ロータ、電機、ロータの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/02 20060101AFI20240416BHJP
B29C 70/68 20060101ALI20240416BHJP
B29C 70/30 20060101ALI20240416BHJP
H02K 1/27 20220101ALI20240416BHJP
【FI】
H02K15/02 K
B29C70/68
B29C70/30
H02K1/27
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513551
(86)(22)【出願日】2022-03-15
(85)【翻訳文提出日】2023-11-08
(86)【国際出願番号】 CN2022080974
(87)【国際公開番号】W WO2023142239
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】202210104689.7
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523423757
【氏名又は名称】▲シ▼博朗達複合材料有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZIBO LANGDA COMPOSITE MATERIAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 2164, Qinglongshan Road, High-Tech Zone, Zibo, Shandong 255000, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002103
【氏名又は名称】弁理士法人にじいろ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】劉鵬
【テーマコード(参考)】
4F205
5H615
5H622
【Fターム(参考)】
4F205AA36
4F205AC03
4F205AD03
4F205AD15
4F205AD16
4F205AG03
4F205AG14
4F205AH33
4F205AR12
4F205AR15
4F205HA02
4F205HA23
4F205HA37
4F205HA45
4F205HB01
4F205HB11
4F205HC17
4F205HF05
4F205HK04
4F205HK05
4F205HT19
4F205HT26
5H615AA01
5H615PP02
5H615PP06
5H615RR02
5H622PP03
(57)【要約】
本出願は、ロータ、電機およびロータの製造方法を提供し、電機の技術分野に属する。製造方法は、いくつかのシート材、永久磁石部品またはロータコイルとを組み立ててロータプリフォームを形成するステップと、形状固定、硬化のステップを経てロータを形成するステップとを含み、前記シート材は、シート状の前もって樹脂を含浸させた繊維織物により形成され、いくつかの前記シート材の形状は、いくつかの前記シート材が位置合わせして積層されたあと前記永久磁石部品またはロータコイルの取付のための取付室を有するロータボディを形成できる形状である。形状固定、硬化のステップを経て形成されたロータは、珪素鋼板が積層して形成されたロータに存在する質量密度に関する技術的問題を解決し、ロータの質量密度が小さく、ロータが高速回転するときに引張強度が高い技術的効果を奏する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
いくつかのシート材(1)と、永久磁石部品(2)またはロータコイルとを組み立ててロータプリフォームを形成するステップと、
形状固定、硬化のステップを経てロータを形成するステップとを含み、
前記シート材(1)は、シート状の前もって樹脂を含浸させた繊維織物により形成され、いくつかの前記シート材(1)の形状は、いくつかの前記シート材(1)が位置合わせして積層されたあと前記永久磁石部品(2)またはロータコイルの取付のための取付室を有するロータボディを形成できる形状である
ことを特徴とするロータの製造方法。
【請求項2】
前記ロータは、インナーロータであり、
いくつかのシート材(1)と、永久磁石部品(2)またはロータコイルとを組み立ててロータプリフォームを形成する前記ステップは、
いくつかのシート材(1)と、ロータ軸と、永久磁石部品(2)またはロータコイルとを組み立ててロータプリフォームを形成するステップを含み、
前記インナーロータを製造するためのいくつかの前記シート材(1)の形状は、いくつかの前記シート材(1)が位置合わせして積層されたあと前記ロータ軸の取付のための回転軸室と前記取付室とを有するロータボディを形成できる形状である
ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
いくつかの前記シート材は、形状が同じであり、いずれも第1中心孔(12)と、前記第1中心孔(12)の周りに設けられたいくつかの第1弧状孔(11)とを含み、いくつかの前記シート材(1)が位置合わせして積層されたあと、前記第1中心孔(12)が前記回転軸室として形成され、前記第1弧状孔(11)が永久磁石部品(2)を取り付けるための取付室として形成され、
または、
いくつかの前記シート材の形状が完全一致ではないようにされ、前記シート材(1)は、積層によりロータボディの両端部を構成するいくつかの第1シート材と、積層によりロータボディの中間部を構成するいくつかの第2シート材とを含み、前記第1シート材および第2シート材のそれぞれに第2中心孔が設けられており、前記第2シート材に前記第2中心孔の周りに設けられた第2弧状孔が設けられており、いくつかの前記シート材(1)が位置合わせして積層されたあと、前記第2中心孔が位置合わせされて前記回転軸室として形成され、前記第2弧状孔が位置合わせしてロータコイルを取り付けるための取付室として形成される
ことを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ロータは、アウタロータであり、前記アウタロータを製造するためのいくつかの前記シート材(1)の形状は、いくつかの前記シート材(1)が位置合わせして積層されたあと中心室と前記取付室とを有するロータボディを形成できる形状であり、前記中心室が、ステータ(8)の取付のためのステータ室と、前記ステータ室の両端に位置するとともに軸受の取付のための軸受室とを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記アウタロータを製造するためのいくつかの前記シート材(1)の形状は、いくつかの前記シート材の形状が完全一致ではないようにされ、前記シート材(1)は、積層によりロータボディの両端部を構成するいくつかの第3シート材と、積層によりロータボディの中間部を構成するいくつかの第4シート材とを含み、前記第3シート材に第3中心孔が設けられており、いくつかの前記第3シート材が組み立てられたあと、前記第3中心孔が位置合わせされて前記軸受室として形成され、第4シート材に第4中心孔が設けられており、いくつかの第4シート材が積層して組み立てられたあと、前記第4中心孔が位置合わせされて前記ステータ室として形成され、前記第3中心孔の直径が前記ステータ(8)の外径より大きい
ことを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記第3シート材および第4シート材のそれぞれに第3弧状孔が設けられており、いくつかの前記シート材(1)が位置合わせして積層されたあと、前記第3弧状孔が位置合わせされて永久磁石部品を取り付けるための取付室として形成され、
または、
前記第4シート材に第4弧状孔が設けられており、いくつかの前記第4シート材が位置合わせして積層されたあと、前記第4弧状孔が位置合わせされてロータコイルを取り付けるための取付室として形成される
ことを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
形状固定のステップの前に、ロータプリフォームに円周方向に沿って前もって樹脂を含浸させた繊維糸または繊維帯(9)を巻き付けるステップをさらに含む
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
形状固定のステップは、前もって樹脂を含浸させた繊維糸または繊維帯(9)が巻き付けられたロータプリフォームの表面において形状固定帯できつく巻くことにより加圧、形状固定を行うステップ、または前もって樹脂を含浸させた繊維糸または繊維帯(9)を巻き付けたロータプリフォームを金型に入れて加圧、形状固定を行うステップを含む
ことを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
硬化のステップは、形状固定されたロータプリフォームを硬化炉に入れて加熱、硬化を行ってロータを得るステップを含む
ことを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項10】
a.前記シート材(1)の厚さが0.05~0.5mmであること、
b.前記シート材(1)において前記繊維織物の体積の割合が67~70%であり、前記樹脂の体積の割合が30%~33%であること、
c.前記シート材(1)は、前もって樹脂を含浸させた連続繊維織物をカットすることにより得たものであること、
d.前記繊維織物が炭素繊維織物であり、前記樹脂が熱硬化性樹脂であること
の特徴のa~dの少なくとも1つを満たす
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
ロータボディと、永久磁石部品(2)またはロータコイルとを備え、
前記ロータボディは、取付室を有し、いくつかのシート材(1)が前記ロータボディの軸方向に沿って積層されて硬化により一体として形成されたものであり、前記シート材(1)は、シート状の前もって樹脂を含浸させた繊維織物により形成されたものであり、
前記永久磁石部品(2)または前記ロータコイルは、前記取付室内に設置される
ことを特徴とするロータ。
【請求項12】
前記ロータは、インナーロータであり、ロータ軸をさらに備え、前記ロータボディに回転軸室がさらに設けられており、前記回転軸室が前記ロータ軸の取付のためものである
ことを特徴とする請求項11に記載のロータ。
【請求項13】
いくつかの前記シート材は、形状が同じであり、いずれも第1中心孔(12)と、前記第1中心孔(12)の周りに設けられたいくつかの第1弧状孔(11)とを有し、いくつかの前記シート材(1)が位置合わせして積層されることにより、前記第1中心孔(12)が前記回転軸室として形成されており、前記第1弧状孔(11)が永久磁石部品(2)を取り付けるための取付室として形成されており、
または、
いくつかの前記シート材の形状が完全一致ではなく、前記シート材(1)は、積層によりロータボディの両端部を構成するいくつかの第1シート材と、積層によりロータボディの中間部を構成するいくつかの第2シート材とを含み、前記第1シート材および第2シート材のそれぞれに第2中心孔が設けられており、前記第2シート材において前記第2中心孔の周りに設けられた第2弧状孔を有し、いくつかの前記シート材(1)が位置合わせして積層されることにより、前記第2中心孔が位置合わせされて前記回転軸室として形成されており、前記第2弧状孔が位置合わせされてロータコイルを取り付けるための取付室として形成されている
ことを特徴とする請求項12に記載のロータ。
【請求項14】
前記ロータは、アウタロータであり、いくつかの前記シート材(1)が位置合わせして積層されることにより中心室と前記取付室とを有するロータボディが形成され、前記中心室が、ステータ(8)の取付のためのステータ室と、前記ステータ室の両端に位置するとともに軸受の取付のための軸受室とを含む
ことを特徴とする請求項11に記載のロータ。
【請求項15】
いくつかの前記シート材の形状が完全一致ではなく、前記シート材(1)は、積層によりロータボディの両端部を構成するいくつかの第3シート材と、積層によりロータボディの中間部を構成するいくつかの第4シート材とを含み、前記第3シート材に第3中心孔が設けられており、いくつかの前記第3シート材が組み立てられることにより、前記第3中心孔が位置合わせされて前記軸受室として形成されており、第4シート材に第4中心孔が設けられており、いくつかの第4シート材が積層して組み立てられることにより、前記第4中心孔が位置合わせされて前記ステータ室として形成されており、そして前記第3中心孔の直径が前記ステータ(8)の外径より大きい
ことを特徴とする請求項14に記載のロータ。
【請求項16】
前記第3シート材および第4シート材のそれぞれに第3弧状孔が設けられており、いくつかの前記シート材(1)が位置合わせして積層されることにより、前記第3弧状孔が位置合わせされて永久磁石部品を取り付けるための取付室として形成されており、
または、
前記第4シート材に第4弧状孔が設けられており、いくつかの前記第4シート材が位置合わせして積層されることにより、前記第4弧状孔が位置合わせされてロータコイルを取り付けるための取付室として形成されている
ことを特徴とする請求項15に記載のロータ。
【請求項17】
補強層をさらに含み、前記補強層が、前記ロータボディの円周方向に沿って巻き付けられるとともに前記ロータボディと硬化により一体に形成された前もって樹脂を含浸させた繊維糸または繊維帯(9)により形成されたものである
ことを特徴とする請求項11~16のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項18】
前記補強層の外部に設けられた形状固定帯層をさらに含み、前記形状固定帯層がロータの硬化して形状固定することのためのものである
ことを特徴とする請求項17に記載のロータ。
【請求項19】
a.前記シート材(1)の厚さが0.05~0.5mmであること、
b.前記シート材(1)において前記繊維織物の体積の割合が67~70%であり、前記樹脂の体積の割合が30%~33%であること、
c.前記シート材(1)は、前もって樹脂を含浸させた連続繊維織物をカットすることにより得たものであること、
d.前記繊維織物が炭素繊維織物であり、前記樹脂が熱硬化性樹脂であること
の特徴のa~dの少なくとも1つを満たす
ことを特徴とする請求項11~16のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項20】
前記ロータ軸の取付室がスプライン孔であり、前記ロータ軸の外周面に前記スプライン孔と嵌合するスプラインが形成されている
ことを特徴とする請求項12または13に記載のロータ。
【請求項21】
請求項11~19のいずれか1項に記載のロータを備える
ことを特徴とする電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、電機の技術分野に属し、特に、ロータ、電機、ロータの製造方法に関する。
【0002】
関係出願の相互参照
本出願は、2022年01月28日に中国国家知識産権局に提出された、出願番号が2022101046897であり、名称が「ロータ、電機、ロータの製造方法」である中国出願に基づいて優先権を主張し、その内容のすべては本出願に参照として取り込まれる。
【背景技術】
【0003】
従来の電動機のロータは、軸受が取り付けられた軸に支持され、電動機のステータコイルの磁気に感応して回転する。従来のロータは、いくつかの珪素鋼板を積層して形成されたロータボディと、ロータボディに巻き付いた導線コイルまたはロータボディに密着したアルニコ永久磁石とを備える。軸もロータボディも金属製のものであり、使用される金属材料はいずれも密度が7g/cm3超であるため、ロータ全体の質量密度が比較的大きい。ロータ全体の質量密度が比較的大きい場合、実際の使用では下記の問題がある。第1に、電動機の瞬時始動、瞬時停止のとき、ロータの慣性モーメントが大きいので効果的に制御することができない。第2に、支持部例えば軸受に対する慣性圧力が大きくてひどい摩耗を招いてしまい、特に、ロータが高速で回転するとき、軸受の耐摩耗性に対する要求がさらに高い。第3に、ロータが高速回転するときに密度による遠心力が金属材料の引張強度より大きい場合、ロータの変形または破壊を招いてしまう。第4に、ロータの質量密度が大きくてロータの応答が遅れ、これによってロータの回転速度に対する精確な制御の実現が困難である。
【発明の概要】
【0004】
従来技術において、電動機のロータのロータボディが珪素鋼板を積層して製造されており、これによって、ロータ全体の質量密度が大きいので、瞬時の始動、停止の制御が困難で、軸支持部に対する慣性圧力が大きくて摩耗しやすく、ロータが高速で回転するときにロータの変形または破壊を招きやすく、回転速度に対する精確な制御の実現が困難であり、これに対して、本出願は、当該技術的問題を解決できるロータ、電動機およびロータの製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
本出願に係るロータの製造方法は、
いくつかのシート材、永久磁石部品またはロータコイルとを組み立ててロータプリフォームを形成するステップと、形状固定、硬化のステップを経てロータを形成するステップとを含み、前記シート材は、シート状の前もって樹脂を含浸させた繊維織物により形成され、いくつかの前記シート材の形状は、いくつかの前記シート材が位置合わせして積層されたあと前記永久磁石部品またはロータコイルの取付のための取付室を有するロータボディを形成できる形状である。
【0006】
さらに、前記ロータは、インナーロータであり、いくつかのシート材と、永久磁石部品またはロータコイルとを組み立ててロータプリフォームを形成する前記ステップは、いくつかのシート材と、ロータ軸と、永久磁石部品またはロータコイルとを組み立ててロータプリフォームを形成するステップを含み、前記インナーロータを製造するためのいくつかの前記シート材の形状は、いくつかの前記シート材が位置合わせして積層されたあと前記ロータ軸の取付のための回転軸室と前記取付室とを有するロータボディを形成できる形状である。
【0007】
さらに、いくつかの前記シート材は、形状が同じであり、いずれも第1中心孔と、前記第1中心孔の周りに設けられたいくつかの第1弧状孔とを含み、いくつかの前記シート材が位置合わせして積層されたあと、前記第1中心孔が前記回転軸室として形成され、前記第1弧状孔が永久磁石部品を取り付けるための取付室として形成され、または、いくつかの前記シート材の形状が完全一致ではないようにされ、前記シート材は、積層によりロータボディの両端部を構成するいくつかの第1シート材と、積層によりロータボディの中間部を構成するいくつかの第2シート材とを含み、前記第1シート材および第2シート材のそれぞれに第2中心孔が設けられており、前記第2シート材に前記第2中心孔の周りに設けられた第2弧状孔が設けられており、いくつかの前記シート材が位置合わせして積層されたあと、前記第2中心孔が位置合わせされて前記回転軸室として形成され、前記第2弧状孔が位置合わせしてロータコイルを取り付けるための取付室として形成される。
【0008】
さらに、前記ロータは、アウタロータであり、前記アウタロータを製造するためのいくつかの前記シート材の形状は、いくつかの前記シート材が位置合わせして積層されたあと中心室と前記取付室とを有するロータボディを形成できる形状であり、前記中心室が、ステータの取付のためのステータ室と、前記ステータ室の両端に位置するとともに軸受の取付のための軸受室とを含む。
【0009】
さらに、前記アウタロータを製造するためのいくつかの前記シート材の形状は、いくつかの前記シート材の形状が完全一致ではないようにされ、前記シート材は、積層によりロータボディの両端部を構成するいくつかの第3シート材と、積層によりロータボディの中間部を構成するいくつかの第4シート材と、前記第3シート材に第3中心孔が設けられており、いくつかの前記第3シート材が組み立てられたあと、前記第3中心孔が位置合わせされて前記軸受室として形成され、第4シート材に第4中心孔が設けられており、いくつかの第4シート材が積層して組み立てられたあと、前記第4中心孔が位置合わせされて前記ステータ室として形成され、前記第3中心孔の直径が前記ステータの外径より大きい。
【0010】
さらに、前記第3シート材および第4シート材のそれぞれに第3弧状孔が設けられており、いくつかの前記シート材が位置合わせして積層されたあと、前記第3弧状孔が位置合わせされて永久磁石部品を取り付けるための取付室として形成され、または、前記第4シート材に第4弧状孔が設けられており、いくつかの前記第4シート材が位置合わせして積層されたあと、前記第4弧状孔が位置合わせされてロータコイルを取り付けるための取付室として形成される。
【0011】
さらに、形状固定のステップの前に、ロータプリフォームに円周方向に沿って前もって樹脂を含浸させた繊維糸または繊維帯を巻き付けるステップをさらに含む。
【0012】
さらに、形状固定のステップは、前もって樹脂を含浸させた繊維糸または繊維帯が巻き付けられたロータプリフォームの表面において形状固定帯できつく巻くことにより加圧、形状固定を行うステップ、または前もって樹脂を含浸させた繊維糸または繊維帯を巻き付けたロータプリフォームを金型に入れて加圧、形状固定を行うステップを含む。
【0013】
さらに、硬化のステップは、形状固定されたロータプリフォームを硬化炉に入れて加熱、硬化を行ってロータを得るステップを含む。
【0014】
さらに、a.前記シート材の厚さが0.05~0.5mmであること、b.前記シート材において前記繊維織物の体積の割合が67~70%であり、前記樹脂の体積の割合が30%~33%であること、c.前記シート材は、前もって樹脂を含浸させた連続繊維織物をカットすることにより得たものであること、d.前記繊維織物が炭素繊維織物であり、前記樹脂が熱硬化性樹脂であること、の特徴のa~dの少なくとも1つを満たす。
【0015】
本出願に係るロータは、ロータボディと、永久磁石部品またはロータコイルとを備え、前記ロータボディは、取付室を有し、いくつかのシート材が前記ロータボディの軸方向に沿って積層されて硬化により一体として形成されたものであり、前記シート材は、シート状の前もって樹脂を含浸させた繊維織物により形成されたものであり、前記永久磁石部品またはロータコイルは、前記取付室内に設置される。
【0016】
さらに、前記ロータは、インナーロータであり、ロータ軸をさらに備え、前記ロータボディに回転軸室がさらに設けられており、前記回転軸室が前記ロータ軸の取付のためのものである。
【0017】
さらに、いくつかの前記シート材は、形状が同じであり、いずれも第1中心孔と、前記第1中心孔の周りに設けられたいくつかの第1弧状孔とを有し、いくつかの前記シート材が位置合わせして積層されることにより、前記第1中心孔が前記回転軸室として形成されており、前記第1弧状孔が永久磁石部品を取り付けるための取付室として形成されており、または、いくつかの前記シート材の形状が完全一致ではなく、前記シート材は、積層によりロータボディの両端部を構成するいくつかの第1シート材と、積層によりロータボディの中間部を構成するいくつかの第2シート材とを含み、前記第1シート材および第2シート材のそれぞれに第2中心孔が設けられており、前記第2シート材において前記第2中心孔の周りに設けられた第2弧状孔を有し、いくつかの前記シート材が位置合わせして積層されることにより、前記第2中心孔が位置合わせされて前記回転軸室として形成されており、前記第2弧状孔が位置合わせされてロータコイルを取り付けるための取付室として形成されている。
【0018】
さらに、前記ロータは、アウタロータであり、いくつかの前記シート材が位置合わせして積層されることにより中心室と前記取付室とを有するロータボディが形成され、前記中心室が、ステータの取付のためのステータ室と、前記ステータ室の両端に位置するとともに軸受の取付のための軸受室とを含む。
【0019】
さらに、いくつかの前記シート材の形状が完全一致ではなく、前記シート材は、積層によりロータボディの両端部を構成するいくつかの第3シート材と、積層によりロータボディの中間部を構成するいくつかの第4シート材とを含み、前記第3シート材に第3中心孔が設けられており、いくつかの前記第3シート材が組み立てられることにより、前記第3中心孔が位置合わせされて前記軸受室として形成されており、第4シート材に第4中心孔が設けられており、いくつかの第4シート材が積層して組み立てられることにより、前記第4中心孔が位置合わせされて前記ステータ室として形成されており、そして前記第3中心孔の直径が前記ステータの外径より大きい形状を満たす。
【0020】
さらに、前記第3シート材および第4シート材のそれぞれに第3弧状孔が設けられており、いくつかの前記シート材が位置合わせして積層されることにより、前記第3弧状孔が位置合わせされて永久磁石部品を取り付けるための取付室として形成されており、または、前記第4シート材に第4弧状孔が設けられており、いくつかの前記第4シート材が位置合わせして積層されることにより、前記第4弧状孔が位置合わせされてロータコイルを取り付けるための取付室として形成されている。
【0021】
さらに、補強層をさらに含み、前記補強層が、前記ロータボディの円周方向に沿って巻き付けられるとともに前記ロータボディと硬化により一体に形成された前もって樹脂を含浸させた繊維糸または繊維帯により形成されたものである。
【0022】
さらに、前記補強層の外部に設けられた形状固定帯層をさらに含み、前記形状固定帯層がロータの硬化して形状固定することのためのものである。
【0023】
さらに、a.前記シート材の厚さが0.05~0.5mmであること、b.前記シート材において前記繊維織物の体積の割合が67~70%であり、前記樹脂の体積の割合が30%~33%であること、c.前記シート材は、前もって樹脂を含浸させた連続繊維織物をカットすることにより得たものであること、d.前記繊維織物が炭素繊維織物であり、前記樹脂が熱硬化性樹脂であること、の特徴のa~dの少なくとも1つを満たす。
【0024】
さらに、前記ロータ軸の取付室がスプライン孔であり、前記ロータ軸の外周面に前記スプライン孔と嵌合するスプラインが形成されている。
【0025】
本出願に係る電機は、上記のロータを備える。
【0026】
本出願に係るロータは、ロータボディがいくつかの前もって樹脂を含浸させた繊維織物であるシート材が積層されて硬化により一体として形成されるため、このように得たロータボディの密度が1.55g/cm3~3g/cm3であり、金属製のロータボディの密度よりはるかに小さく、したがってロータ全体の質量密度が小さくなる。ロータの質量密度が小さくなると、下記の利点を有する。第1に、ロータ軸を支持する軸支持部例えば軸受に対する慣性圧力が小さくなり、ロータ軸と軸受との間の摩擦力もそれに応じて小さくなり、したがって、軸受の寿命を延ばすことができる。第2に、ロータは、質量密度による慣性モーメントが小さくなり、静止状態から定格回転速度になることに要する始動時間が短縮され、定格回転速度から静止状態になることに要する停止時間が短縮され、これによって、ロータの瞬時の始動、停止の制御がより容易である。第3に、ロータが高速回転するときに質量密度による遠心力が小さくなり、遠心力によるロータ材料への引張力が小さくなり、高速の実現により有利である。第4に、ロータの質量密度が小さくなるため、ロータの変速に要する応答時間が短縮され、高速回転する過程におけるロータの回転速度に対する精確な制御の実現により有利である。また、複合材料で構成される複数層のシート材を硬化させて一体として形成されたロータボディは、樹脂を基体とし、複数層のシート状の繊維織物を補強体とし、各層の繊維織物がロータボディの軸方向において均一に分布し、これによって、ロータボディの各部分も均一に補強され、特に、径方向において引張強度が良好であり、ロータボディ全体が高強度の力学的機能を有する。
【0027】
ロータは、ロータボディの円周方向に沿って巻き付けられるとともにロータボディと硬化により一体として形成された前もって樹脂を含浸させた繊維糸または前もって樹脂を含浸させた繊維帯により形成された補強層をさらに含み、これによって、ロータが円周方向において良好な引張強度を有し、これによって、永久磁石部品またはロータコイルの遠心力による外向きの押圧力を抵抗することができる。押圧力を抵抗する力は、外層の円周方向における前もって樹脂を含浸させた炭素繊維糸または繊維帯に対する引張力であり、炭素繊維は、引張強度が高い特性があり、より安定であり、より原理と合致し、したがって、ロータが高速運動するときに遠心力に起因したロータの変形または破壊が発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本出願の具体的な実施形態または従来技術における技術案をより明瞭に説明するため、以下、具体的な実施形態または従来技術の説明に用いられる図面を簡単に説明する。説明する図面は、本出願のいくつかの実施形態にすぎず、当業者が発明能力を用いなくても、これらの図面に基づいて他の関連図面を得ることも可能である。
【
図1】本出願の実施例1によるインナーロータに使用されるシート材の模式的構成図である。
【
図2】本出願の実施例1によるインナーロータの模式的構成図(前もって樹脂を含浸させた繊維糸または繊維帯が示されていない)である。
【
図4】本出願に係る永久磁石部品の模式的構成図である。
【
図5】本出願に係る軸スリーブの模式的構成図である。
【
図7】本出願の実施例3によるアウタロータを使用して組み立てた電機の模式的構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、実施例を参照しながら本出願の技術案を明瞭かつ完全に説明する。説明する実施例は、本出願の一部の実施例にすぎず、すべての実施例ではない。本出願における実施例に基づいて、当業者が発明能力を用いることなく得たすべての他の実施例も、本出願の保護範囲に属する。
【0030】
電機は、電動機と発電機とを含み、本出願に係るロータは、電動機のインナーロータまたはアウタロータとして適用でき、発電機のインナーロータまたはアウタロータとしても適用できる。
【0031】
実施例1
図1~6に示すように、本出願の実施例1によるロータは、インナーロータであり、発電機または電動機に適用することができる。具体的に、ロータは、ロータ軸と、ロータボディと、永久磁石部品2とを備える。ロータボディは、ロータ軸に取り付けられ、ロータボディに取付室および回転軸室が設けられており、ロータボディは、いくつかのシート材1がロータボディの軸方向に沿って積層されて硬化により一体として形成されたものである。シート材1は、シート状の前もって樹脂を含浸させた繊維織物により形成されたものである。永久磁石部品2が取付室内に設置され、ロータ軸が回転軸室に挿通されて取り付けられる。ロータボディの形状によっては、積層して設置されたシート材1の形状が同じであってもよく、異なってもよく、積層により所要のロータボディの形状を形成できればよい。本出願の実施例1において、好ましくは、すべてのシート材1の形状が、同じであり、いずれも円形シート状である。シート材には、いずれも第1中心孔12と、第1中心孔12の周りに設けられたいくつかの第1弧状孔11とを有し、いくつかのシート材1が位置合わせして積層されたあと、第1中心孔12が回転軸室として形成され、第1弧状孔11が永久磁石部品2を取り付けるための取付室として形成される。
【0032】
繊維、樹脂の密度がいずれも金属の密度7g/cm3よりもはるかに小さいため、いくつかの前もって樹脂を含浸させた繊維織物のシート材が積層して硬化により一体として形成されたロータボディの密度1.55g/cm3~3g/cm3も金属の密度よりはるかに小さく、このように得たロータ全体の質量密度が小さくなる。ロータの質量密度が小さくなると、下記の利点を有する。第1に、ロータ軸を支持する軸支持部例えば軸受7に対する慣性圧力が小さくなり、ロータ軸と軸受との間の摩擦力もそれに応じて小さくなり、したがって、軸受7の寿命を延ばすことができる。第2に、ロータは、質量密度による慣性モーメントが小さくなり、静止状態から定格回転速度になることに要する始動時間が短縮され、定格回転速度から静止状態になることに要する停止時間が短縮され、これによって、ロータの瞬時の始動、停止の制御がより容易である。第3に、ロータが高速回転するときに質量密度による遠心力が小さくなり、遠心力によるロータ材料への引張力が小さくなり、高速の実現により有利である。第4に、ロータの質量密度が小さくなるため、ロータの変速に要する応答時間が短縮され、高速回転する過程におけるロータの回転速度に対する精確な制御の実現により有利である。
【0033】
また、複合材料で構成される複数層のシート材を硬化させて一体として形成されたロータボディは、樹脂を基体とし、複数層のシート状の繊維織物を補強体とし、各層の繊維織物がロータボディの軸方向において均一に分布し、これによって、ロータボディの各部分も均一に補強され、特に、径方向において引張強度が良好であり、ロータボディ全体が高強度の力学的機能を有する。永久磁石部品2は、ロータボディの取付室内に挿入されるように取り付けられており、組立が容易であるとともに、高速回転するときに、振り出されて抜けることがなく、したがって、ロータの使用寿命が延ばされる。好ましくは、永久磁石部品2は、弧状のアルニコ永久磁石である。
【0034】
さらに、ロータは補強層をさらに含み、補強層が、ロータボディの円周方向に沿って巻き付けるとともにロータボディと一体に硬化する前もって樹脂を含浸させた繊維糸または繊維帯9により形成され、好ましくは、前もって樹脂を含浸させた繊維糸または繊維帯9は、前もって樹脂を含浸させた炭素繊維糸または炭素繊維帯である。繊維複合材料が織物材料であるため、織物の力学的方向において引張り耐性、安定性および易施工性を有し、そしてロータボディの外層において前もって樹脂を含浸させた炭素繊維糸または炭素繊維帯により縛ることにより、ロータが円周方向において良好な引張強度を有し、これによって、永久磁石部品2の遠心力による外向きの押圧力を抵抗することができる。押圧力を抵抗する力は、外層の円周方向における前もって樹脂を含浸させた炭素繊維糸または炭素繊維帯に対する引張力であり、炭素繊維は、引張強度が高い特性があり、より安定であり、より原理と合致し、したがって、ロータが高速運動するときに遠心力に起因したロータの変形または破壊が発生しない。
【0035】
さらに、ロータは、補強層の外部に設けられた形状固定帯層をさらに含み、形状固定帯層がロータの硬化して形状固定することのためのものである。形状固定帯層として、BOPP帯を用いることが好ましい。BOPP帯は、二軸延伸ポリプロピレンフィルムであり、ロータボディにきつく巻くことにより加圧、形状固定を行うためのものである。無論、本出願の実施例によるロータに形状固定帯層を設けず、ロータを製造するときに直接金型により形状固定を行うようにしてもよい。
【0036】
好ましくは、シート材1の厚さが0.05~0.5mmであり、シート材1において繊維織物の体積の割合が67~70%であり、樹脂の体積の割合が30%~33%である。
【0037】
樹脂は、熱硬化性樹脂を採用することができる。熱硬化性樹脂は、分子の重合架橋により硬化して溶融しなくて剛性を有する三次元網目状構造を形成できる物質である。熱硬化性樹脂として、エポキン樹脂、ポリエステル樹脂、ビニルエステル、ビスマレイミド、熱硬化性ポリイミド、シアネートエステルなどの、繊維との親和性が高く、補強が顕著である合成樹脂を採用することができる。
【0038】
樹脂は、熱可塑性樹脂を採用してもよい。熱可塑性樹脂は、加熱すると軟化して、再び冷却すると固まる合成樹脂である。熱可塑性樹脂は、PPSポリフェニレンスルファイド、PEEKポリエーテルエーテルケトン、PEKKポリエーテルケトンケトン、PE-ポリエチレン、PP-ポリプロピレン、PVC-ポリ塩化ビニル、PS-ポリスチレン、PA-ポリアミック、POM-ポリオキシメチレン、PC-ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ゴムなどの、繊維との親和性が高く、補強が顕著である合成樹脂を採用することができる。
【0039】
繊維織物は、引張強度が1000Mpa超である合成長繊維または合成短繊維である。これらの繊維は、樹脂との親和性が高く、引張強度を顕著に増強できる特性を有する。繊維織物として使用可能な繊維は、炭素繊維、アラミド繊維、石英繊維、バサルト繊維、ガラス繊維などの、樹脂との親和性が高く、補強が顕著であり、引張強度が1000Mpa超である合成長繊維または合成短繊維が挙げられる。
【0040】
本出願の実施例において、好ましくは、繊維織物が炭素繊維であり、樹脂が熱硬化性樹脂であり、このようにして形成したロータは、ロータ軸および永久磁石部品2以外の他の部分は、質量密度が1.6g/cm3未満である複合材料により構成される。本出願に係るロータは、従来のロータに対して、質量密度が顕著に低下し、高速場面により適する。
【0041】
さらに、ロータ軸の取付室がスプライン孔であり、ロータ軸の外周面にスプライン孔と嵌合するスプラインが形成されている。スプライン孔とスプラインとの嵌合によれば、一方、ロータ軸がロータボディに挿入されたあと、ロータボディを駆動して同期回動させることができ、他方、ロータ軸におけるスプラインにより、シート材1が積層して取り付けられるときにシート材1に対して位置決めをすることができ、これによって、積層されたシート材1がロータ軸に取り付けられたあと、すべてのシート材1における第1弧状孔11が位置合わせされる。
【0042】
ロータ軸は、一体成形してもよく、別体の中心軸4および軸スリーブ3を組み立てて形成してもよい。後者の場合、中心軸4と軸スリーブ3とが締まりばめで一体に結合され、好ましくは、中心軸4が鋼製軸であり、軸スリーブ3が銅製軸スリーブであり、スプラインが軸スリーブ3に形成される。
【0043】
本出願の実施例は、実施例1によるインナーロータを製造する製造方法を提供する。この製造方法は、いくつかのシート材1と、永久磁石部品2と、ロータ軸とを組み立ててロータプリフォームを形成するステップと、形状固定、硬化のステップを経てロータを形成するステップとを含む。シート材1は、シート状の前もって樹脂を含浸させた繊維織物により形成され、いくつかのシート材1の形状は、位置合わせして積層されたあとロータ軸の取付のための回転軸室と、永久磁石部品2の取付のための取付室とを有するロータボディを形成できる形状である。
【0044】
シート材1と、永久磁石部品2と、ロータ軸とを組み立ててロータプリフォームを形成し、そして、形状固定、硬化のステップを経てロータを形成する。このようにして、組立が容易であるとともに、硬化を経て形成されたロータのシート材1と、永久磁石部品2と、ロータ軸とが一体に形成され、これによって、ロータが回転するときの騒音を低減することができる。
【0045】
他の一実施形態として、実施例1によるインナーロータの製造方法は、いくつかのシート材1と、永久磁石部品2とを組み立ててロータプリフォームを形成し、形状固定、硬化のステップを経てロータを形成し、そしてロータの回転軸室内にロータ軸を挿入するようにしてもよい。
【0046】
本実施例において、使用されるいくつかのシート材は、形状が同じであり、いずれも第1中心孔12と、第1中心孔12の周りに設けられたいくつかの第1弧状孔11とを含み、いくつかのシート材1が位置合わせして積層されたあと、第1中心孔12が回転軸室として形成され、第1弧状孔11が永久磁石部品2を取り付けるための取付室として形成される。
【0047】
ロータプリフォームの具体的な組立について、工具によりロータ軸と、永久磁石部品2とを予め固定し、そしてロータ軸、永久磁石部品2にシート材1を1枚ずつ外挿してロータプリフォームを形成するようにしてもよく、工具によりいくつかのシート材1を一体に積層して、そしてロータ軸、永久磁石部品2を挿入するようにしてもよく、ロータ軸にすべてのシート材1を外挿したあと、永久磁石部品2などを挿入するようにしてもよく、組立方式がこれに限定されない。
【0048】
好ましくは、形状固定のステップの前に、ロータプリフォームに円周方向に沿って前もって樹脂を含浸させた繊維糸または繊維帯9を巻き付けることによりロータボディの外部に補強層を形成し、該補強層とロータボディとを硬化させて一体として形成させるステップをさらに含む。
【0049】
具体的に、形状固定のステップは、前もって樹脂を含浸させた繊維糸または繊維帯9が巻き付けられたロータプリフォームの表面において形状固定帯できつく巻くことにより加圧、形状固定を行うステップを含み、好ましくは、形状固定帯は、BOPP帯であり、BOPP帯が二軸延伸ポリプロピレンフィルムである。
【0050】
選択可能な形態として、形状固定のステップは、前もって樹脂を含浸させた繊維糸または繊維帯9を巻き付けたロータプリフォームを直接金型に入れて加圧、形状固定を行うようにしてもよい。
【0051】
硬化のステップは、形状固定されたロータプリフォームを硬化炉に入れて加熱、硬化を行ってロータを得るステップを含む。
【0052】
好ましくは、シート材1の厚さが0.05~0.5mmであり、シート材1において繊維織物の体積の割合が67~70%であり、樹脂の体積の割合が30%~33%である。
【0053】
樹脂は、熱硬化性樹脂を採用してもよく、熱可塑性樹脂を採用してもよい。
【0054】
繊維織物は、引張強度が1000Mpa超である合成長繊維または合成短繊維である。
【0055】
本実施例において、好ましくは、繊維織物が炭素繊維織物であり、樹脂が熱硬化性樹脂である。
【0056】
シート材1は、射出成形、圧縮成形、真空注入TRMによる成形、SMC圧縮成形、前もって樹脂を含浸させた繊維脂織物積層成形プロセスにより成形することができ、そしてウェット法により樹脂を含浸させたまたはホットメルト法により前もって樹脂を含浸させた繊維糸または繊維帯により巻き付けて形状固定の補強を行う。
【0057】
実施例2
本出願の実施例2によるインナーロータは、下記の点において実施例1によるロータと相違している。本出願の実施例2において、ロータボディに設置される部材は、永久磁石部品2ではなく、ロータコイルである。また、シート材の形状も若干異なり、本出願の実施例2において、シート材1は、積層によりロータボディの両端部を構成するいくつかの第1シート材と、積層によりロータボディの中間部を構成するいくつかの第2シート材とを含み、第1シート材および第2シート材のいずれにも第2中心孔が設けられており、第2シート材において第2中心孔の周りに設けられた第2弧状孔を有し、いくつかのシート材1が位置合わせして積層されたあと、第2中心孔が位置合わせされて回転軸室として形成され、第2弧状孔が位置合わせされてロータコイルを取り付けるための取付室として形成される。ロータコイルは、金属コア6と、金属コア6に巻回されるコイル5とを含む。
【0058】
本出願の実施例による、実施例2によるインナーロータを製造する製造方法は、実施例1によるインナーロータの製造方法と類似するが、下記の点において相違している。
【0059】
いくつかのシート材1と、ロータコイルと、ロータ軸とを組み立ててロータプリフォームを形成する具体的なステップが異なり、ロータ軸をいくつかの第1シート材における第2中心孔、いくつかの第2シート材における第2中心孔に順に挿通し、そしていくつかの第2シート材における第2弧状孔内にロータコイルを挿入し、そしてロータ軸にいくつかの第1シート材を取り付けるようにしてもよく、ロータ軸をいくつかの第2シート材の第2中心孔に挿入し、ロータコイルをいくつかの第2シート材の第2弧状孔に挿入し、そしていくつかの第1シート材をロータ軸の両端からそれぞれ外挿することにより、いくつかの第1シート材と、いくつかの第2シート材と、いくつかの第1シート材とを積層してロータボディを形成するようにしてもよい。具体的な組立方式がさまざまあり、上記の内容に限定されない。
【0060】
ロータコイルが取り付けられたロータを硬化させるとき、ロータコイルにおける導線の絶縁層を保護するため、低温硬化を採用することができ、例えば、硬化温度を60°にする。絶縁層が耐高温性を有するコイルを選択してもよい。
【0061】
実施例3
図7に示すように、本出願の実施例3によるアウタロータは、発電機および電動機に使用できる。具体的に、アウタロータは、ロータボディとロータコイルとを備える。ロータボディは、いくつかのシート材1がロータボディの軸方向に沿って積層されて硬化により一体として形成されたものである。シート材1は、シート状の前もって樹脂を含浸させた繊維織物により形成されたものである。いくつかのシート材1が位置合わせして積層されたあと中心室と取付室とを有するロータボディが形成され、中心室が、ステータ8の取付のためのステータ室と、ステータ室の両端に位置するとともに軸受7を取り付けるための軸受室とを含む。
【0062】
ロータボディを構成するシート材は、具体的に設置するときに形状を完全一致ではないように設計する。具体的に、シート材1は、積層によりロータボディの両端部を構成するいくつかの第3シート材と、積層によりロータボディの中間部を構成するいくつかの第4シート材とを含み、第3シート材に第3中心孔が設けられており、いくつかの第3シート材が組み立てられたあと、第3中心孔が位置合わせされて軸受室として形成され、第4シート材に第4中心孔が設けられており、いくつかの第4シート材が積層して組み立てられたあと、第4中心孔が位置合わせされてステータ室として形成され、第3中心孔の直径がステータの外径より大きく、このようにしてステータ8をロータ内に挿入して取り付けることが容易である。第4シート材に第4弧状孔が設けられており、いくつかの第4シート材が位置合わせして積層されたあと、第4弧状孔が位置合わせされてロータコイルを取り付けるための取付室として形成される。ロータコイルは、金属コア6と、金属コア6に巻回されるコイル5とを含む。
【0063】
同様に、アウタロータは、補強層と、補強層の外部に設けられた形状固定帯層とをさらに含み、具体的な設置について実施例1の内容を参照できるため、ここで説明を省略する。樹脂、繊維織物の種類、シート材の厚さなども実施例1の内容を参照できる。
【0064】
本出願の実施例による、実施例3によるアウタロータを製造する製造方法は、下記の点において実施例1と相違している。実施例3によるアウタロータは、いくつかのシート材1とロータコイルとを組み立ててロータプリフォームを形成するだけでよい。具体的に組み立てるとき、いくつかの第4シート材における第4弧状孔にロータコイルを挿通し、そしていくつかの第3シート材をいくつかの第4シート材の両側にそれぞれ積層してロータボディを形成する。具体的な組立方式がさまざまあり、上記の内容に限定されない。
【0065】
同様に、アウタロータに取り付けられる部材はロータコイルであるため、硬化するとき、ロータコイルにおける導線の絶縁層を保護するため、低温硬化を採用することができ、例えば、硬化温度を60°にする。絶縁層が耐高温性を有するコイルを選択してもよい。
【0066】
実施例4
本出願の実施例4によるアウタロータは、下記の点において実施例3によるアウタロータと相違している。本出願の実施例4において、ロータボディに設置される部材は、ロータコイルではなく、永久磁石部品2であり、シート材の形状も若干異なる。本出願の実施例4において、第3シート材および第4シート材のいずれにも第3弧状孔が設けられており、いくつかのシート材1が位置合わせして積層されたあと、第3弧状孔が位置合わせされて永久磁石部品2を取り付けるための取付室として形成される。
【0067】
本出願の実施例による、実施例4によるアウタロータを製造する製造方法は、下記の点において実施例1と相違している。実施例4によるアウタロータは、いくつかのシート材1と永久磁石部品2とを組み立ててロータプリフォームを形成するだけでよい。具体的に組み立てるとき、工具により永久磁石部品2を固定し、シート材1を1枚ずつ永久磁石部品2に積層して取り付け、まずいくつかの第3シート材を取り付け、そしていくつかの第4シート材を取り付け、最後にいくつかの第3シート材を取り付けるようにしてもよく、いくつかの第3シート材と、いくつかの第4シート材と、いくつかの第3シート材とを一体に積層し、そして永久磁石部品2を挿入するようにしてもよい。具体的な組立方式がさまざまあり、上記の内容に限定されない。
【0068】
本出願の実施例による電機は、上記の実施例によるロータを備える。
【0069】
なお、上記の各実施例は、本出願の技術案を説明するためのものにすぎず、それを限定するものではない。上記の各実施例を用いて本出願を詳細に説明したが、当業者にとって、上記の各実施例に記載された技術案を変更し、またはそのうちの一部または全部の技術的特徴に対して均等置換を行うこともできる。これらの変更または置換は、該当技術案の本質を本出願の各実施例による技術案の範囲から逸脱させない。
【符号の説明】
【0070】
1 シート材
11 第1弧状孔
12 第1中心孔
2 永久磁石部品
3 軸スリーブ
4 中心軸
5 コイル
6 金属コア
7 軸受
8 ステータ
9 前もって樹脂を含浸させた繊維糸または繊維帯
【国際調査報告】