IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ディヘシス デジタル ヘルス システムズ ゲーエムベーハーの特許一覧

特表2024-518009患者に最適化した投与剤形の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-24
(54)【発明の名称】患者に最適化した投与剤形の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/00 20060101AFI20240417BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240417BHJP
   A61K 33/26 20060101ALI20240417BHJP
   A61K 31/714 20060101ALI20240417BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20240417BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240417BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240417BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240417BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240417BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20240417BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240417BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20240417BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240417BHJP
   A61P 5/44 20060101ALI20240417BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240417BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20240417BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20240417BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20240417BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240417BHJP
   A61P 9/06 20060101ALI20240417BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20240417BHJP
   A61P 7/10 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
A61K9/00
A61K45/00
A61K33/26
A61K31/714
A61K31/519
A61P29/00 101
A61P35/00
A61P9/00
A61P25/00
A61P7/00
A61P1/16
A61P1/18
A61P13/12
A61P5/44
A61P43/00 111
A61P25/16
A61P7/06
A61P9/12
A61P9/10
A61P9/06
A61P7/02
A61P43/00 116
A61P7/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534728
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(85)【翻訳文提出日】2023-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2021084678
(87)【国際公開番号】W WO2022135919
(87)【国際公開日】2022-06-30
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
(71)【出願人】
【識別番号】521524335
【氏名又は名称】ディヘシス デジタル ヘルス システムズ ゲーエムベーハー
【住所又は居所原語表記】Marie-Curie-Strasse 19, 73529 Schwaebisch-Gmuend, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダハトラー、マルクス
(72)【発明者】
【氏名】フーバー、ゲラルト
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA99
4C076CC01
4C076CC03
4C076CC04
4C076CC07
4C076CC09
4C076CC11
4C076CC14
4C076CC16
4C076CC17
4C076CC21
4C076CC24
4C076CC27
4C076CC29
4C084AA17
4C084NA10
4C084ZA011
4C084ZA151
4C084ZA361
4C084ZA421
4C084ZA511
4C084ZA541
4C084ZA551
4C084ZA751
4C084ZA811
4C084ZA831
4C084ZB151
4C084ZB261
4C084ZC081
4C084ZC201
4C084ZC411
4C084ZC421
4C084ZC431
4C086AA01
4C086CB09
4C086DA39
4C086HA11
4C086NA10
4C086ZA55
(57)【要約】
本願は個人に特化した医薬の方法に関する。具体的には、本発明は、3Dおよび/または2Dプリントで製造される医薬投与剤形の製造方法に関する。投与剤形の投与に関連した広く多様なパラメータは、患者特異的データおよび疾患特異的データに依存して変更可能であり、患者の治療経過中に適用できる。こうして、患者の治療の質を今後改善し、患者の安全性の観点から、この質を著しく向上させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に最適化した医薬投与剤形の製造方法であって、
(1)疾患状態にある患者の個人データ及び/又は疾患関連データを分析する工程と、ここで随意に、前記患者は前記患者の疾患状態を治療するための活性成分に暴露されることを特徴とし、
(1a)必要に応じて、前記患者が前記疾患状態を治療するための活性成分に未だ暴露されたことがない場合、前記した患者の疾患状態を治療するために、1つ以上の活性成分を選択する工程と、
(1b)必要に応じて、前記した患者の疾患状態を治療するための工程(1)の分析に基づき、前記の先に治療した活性成分が、別の活性成分と比較して欠点を有する場合、前記した患者の疾患状態を治療するために、1つ以上の前記別の活性成分を選択する工程と、
(2)工程(1)に係る前記したデータの分析から、前記先に治療した活性成分の、又は医薬剤形のために工程(1a)又は工程(1b)で選択した前記活性成分の、少なくとも1つの投与関連パラメータを決定する工程と、ここで必要に応じ、前記患者の同じ及び/又は別の疾患を治療するため追加され、前記患者が暴露されている活性成分の潜在的副作用及び/又は影響を考慮することを特徴とし、
(3)3D及び/又は2Dプリントを使用し、工程(2)で決定した前記少なくとも1つの投与関連パラメータに従い、前記活性成分を含有する第1の投与剤形を決定する工程と、ここで、前記少なくとも1つの投与関連パラメータを、前記3D及び/又は2Dプリント用に1以上の対応するプリントパラメータに変換することを特徴とし、
(4)前記第1投与剤形を投与された前記患者の個人データ及び/又は疾患関連データを分析する工程と、
(5)工程(4)の前記データ分析に従い、投与剤形について前記した1つの活性成分又は複数の活性成分の、前記少なくとも1つの投与関連パラメータを調節する工程と、
(6)3D及び/又は2Dプリントを用いて工程(5)で調節した前記少なくとも1つの投与関連パラメータに従い、前記活性成分を含有する追加の投与剤形をプリントする工程と、及び随意に、
(7)工程(4)から工程(6)を繰り返す工程と、
を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記投与関連パラメータは、前記投与剤形の単位投与ごとの活性成分量、前記患者における投与部位での及び/又は前記投与剤形の投与経路に沿って、前記投与剤形から放出される前記活性成分の放出動態、前記投与剤形中の前記活性成分の濃度、前記投与剤形中の前記活性成分の濃度分布、前記投与剤形の大きさ、前記投与剤形の幾何学的形状、前記投与剤形のコーティングパラメータ、前記投与剤形の表面構造、前記投与剤形の内部構造、前記投与剤形中の前記活性成分の分布、及びこれら2つ以上の組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1の方法。
【請求項3】
前記患者の個人パラメータは、年齢、性別、成長状態、遺伝的要因、身長、体重、体表面積、肥満指数、一般的健康状態、薬物消費、食習慣及び飲酒習慣、睡眠習慣、身体活動、及びこれら2つ以上の組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1又は請求項2の方法。
【請求項4】
前記疾患関連データは、血圧、心拍数、ECG所見、EEG所見、超音波検診所見、CT所見、MRI所見、疾患組織の生検所見、血球数測定、血液電解質レベル、血液肝臓レベル、腎臓血液と尿レベル、血液脂質レベル、血糖レベル、ビタミン代謝データ、代謝相互作用、薬物治療スケジュール、副作用プロファイル、尿の状態、ウイルス所見、バクテリア所見、菌所見、寄生虫所見、疾患のステージ、疾患の経過、及びこれら2つ以上の組み合わせからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1~3の何れか1項の方法。
【請求項5】
前記疾患状態は、内臓疾患、リューマチ疾患、腫瘍疾患、循環器疾患、神経疾患、及び血液疾患からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1~4の何れか1項の方法。
【請求項6】
前記内臓疾患は、腎臓、肝臓、及び膵臓の移植からなる群より選択されることを特徴とする、請求項5の方法。
【請求項7】
前記活性成分は、グルココルチコイド、カルシニューリン阻害剤、及びイノシンモノホスヘートデヒドロゲナーゼ阻害剤からなる群より選択されることを特徴とする、請求項6の方法。
【請求項8】
前記疾患状態はリューマチ疾患であり、前記活性成分はグルココルチコイド、カルシニューリン阻害剤、イノシンモノホスヘートデヒドロゲナーゼ阻害剤、及びチロシンキナーゼ阻害剤からなる群より選択されることを特徴とする、請求項5の方法。
【請求項9】
前記疾患状態は腫瘍疾患であり、前記活性成分はチロシンキナーゼ阻害剤から選択されることを特徴とする、請求項5の方法。
【請求項10】
前記神経疾患はパーキンソン病であり、前記活性成分はドーパミン拮抗剤から選択されることを特徴とする、請求項5の方法。
【請求項11】
前記血液疾患は貧血病であることを特徴とする、請求項5の方法。
【請求項12】
前記活性成分は、鉄製剤、ビタミンB12及び葉酸からなる群より選択されることを特徴とする、請求項11の方法。
【請求項13】
前記循環器疾患は高血圧、脳梗塞、心室細動、及び心臓発作リスクからなる群より選択されることを特徴とする、請求項5の方法。
【請求項14】
前記活性成分は、抗高血圧剤及び抗凝血剤からなる群より選択されることを特徴とする、請求項13の方法。
【請求項15】
前記抗凝血剤は、ビタミンK拮抗剤、トロンビン阻害、及びファクターXa阻害剤からなる群より選択されることを特徴とする、請求項14の方法。
【請求項16】
前記抗高血圧剤は、カルシウム拮抗剤、βブロッカー、ACE阻害剤、利尿剤、及びAT1阻害剤からなる群より選択されることを特徴とする、請求項14の方法。
【請求項17】
工程(1)及び工程(4)の前記分析は、コンピュータ支援で実行されることを特徴とする、請求項1~16の何れか1項の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの投与関連パラメータを決定することは、工程(2)においてコンピュータ支援で実行され、工程(5)の前記少なくとも1つの投与関連パラメータを調節することは、コンピュータ支援で実行されることを特徴とする、請求項1~17の何れか1項の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つの投与関連パラメータを、前記3D及び/又は2Dプリント用に1つ以上のプリントパラメータに変換することは、コンピュータ支援で実行されることを特徴とする、請求項1~18の何れか1項の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個人個人に特化した医薬の方法に関し、詳細には、医薬の投与剤形の製造方法に関する。この投与剤形は3D及び/又は2Dプリントで製造される。この方法によって、患者データ及び疾患特異的データの分析結果に応じて、投与剤形に係る広く多様なパラメータを変化させ、患者の治療過程に合わせることができる。こうして、患者のための治療の質を今後改善でき、患者の安全性の観点から治療の質を著しく向上できる。
【背景技術】
【0002】
現在の医薬製造方法を用い、患者個人に特化した薬剤を実現することは、容易でないばかりではなく、非常な労力と困難をともなってのみ実現可能である。個人用に複数の活性成分を調合すること、又はもっと稀に、複数の活性成分を組合わせることが、数種類の標準投与量及び投与剤形において、現在可能なだけであるからである。しかし、結局こうしたことは、患者が普通最も許容できる固形投与剤形(例えば、錠剤、カプセル、薄いフィルム等)に適用されている。
【発明の概要】
【0003】
従って、本発明の課題は、所望の活性成分の投与剤形を供給できる方法を提供することである。1以上の活性成分を用いる治療過程で、患者個人個人のために、患者の個人パラメータ及び疾患特異的パラメータに依存して、この投与剤形は常に最適化される。上記した課題は、本明細書及び請求の範囲に特徴づけられる本発明の実施形態によって解決される。
【発明を実施するための形態】
【0004】
特に本発明は、患者に最適化した医薬投与剤形の製造方法を提供する。この製造方法は以下の工程を有する。
(1)疾患状態にある患者の個人データ及び/又は疾患関連データを分析する工程。ここで、前記患者は疾患状態を治療するための活性成分に、随意に暴露されていてもよい。
(1a)もし疾患状態を治療するための活性成分に、患者が未だ暴露されていない場合、必要に応じて、患者の疾患状態を治療するために、1以上の活性成分を選択する工程;
(1b)もし先に使用した活性成分が、工程(1)の分析に基づいて別の活性成分と比べて患者の疾患状態を治療するのに不利益を有する場合、患者の疾患状態を治療するため1以上の別の活性成分を選択する工程;
(2)工程(1)のデータ分析による医薬剤形について、先に使用した活性成分、或いは工程(1a)又は(1b)で選択した活性成分、について少なくとも1つの投与関連パラメータを決定する工程。但し、必要に応じ、患者の同じ又は別の疾患を治療するために患者が暴露された追加活性成分の潜在的副作用及び/又は影響を、適切に考慮する;
(3)3D及び/又は2Dプリントによって工程(2)で決定した少なくとも1つの投与関連パラメータに従い、活性成分を含む最初の投与剤形をプリントする工程。ここで、前記した少なくとも1つの投与関連パラメータを、3D及び/又は2Dプリント用に1以上の対応するプリントパラメータに変換する;
(4)最初の投与剤形を投薬している患者の個人データ及び疾患関連データを分析する工程;
(5)工程(4)のデータ分析に従い、前記活性成分又は複数の活性成分に係る前記した少なくとも1つの投与関連パラメータを、投与剤形用に調節する工程;
(6)工程(5)で調節した前記した少なくとも一つの投与関連パラメータに従い、活性成分を含有する追加の投与剤形を3D及び/又は2Dプリントによってプリントする工程;ここで随意、
(7)工程(4)から工程(6)を繰り返す。
【0005】
本発明方法は、患者が活性成分で未だ治療されていない場合にも設計できる。この場合は工程(1)に記載され、特定疾患に適用される1以上の活性成分が、最初に選択される。
本発明によれば、患者の「疾患」又は「疾患状態」の用語は、医薬投与剤形を用いて治療できる任意の病的状態を含む。ここで、本発明の「治療可能」の用語は、病的状態の経過が、それぞれの医療環境の下でよい方向に影響を受けることを意味する。例えば、癌や悪性腫瘍など重篤な疾患の場合、治療を受けない疾患の経過と比較して、個々の疾患について通常観察される期間にわたり、生存率が統計的に顕著に増大するケースなどである。また、別のケースでは、「治療可能」とは、疾患状態が少なくとも悪化しない、好適には改善する、また理想的には疾患が治ることを、通常意味する。さらに、移植など別の状態では、「治療可能」の用語は、治療しなかった状態を超えて移植組織が非常に長い期間生存することを含む。本発明によれば、「疾患」又は「病的状態」の用語は、患者が将来病的状態になる実際の危険性を示すので、本発明方法は、病的状態の予防及び機能回復に寄与する投与剤形の製造も当然含むものである。
【0006】
随意の工程(1b)で示したように、本発明方法は、患者が1以上の活性成分(つまり、1以上の「先に用いた」活性成分)で治療されているケースに適用されるが、状況(例えば、先に用いた活性成分での治療で起きる不耐容性、薬剤-薬剤相互作用、疾患の不満足な経過)によっては、先に用いた活性成分を、それぞれの疾患に必要な更なる/別の活性成分で置き換える。
別の実施形態では、本発明方法を用い、工程(1)のデータ分析後に1以上の活性成分を最初に選択することなしに、1以上の活性成分を用いて実際の治療を最適化できる。つまり、前記方法の過程は、工程(1)の後の工程(2)に継続する。
【0007】
本発明方法の工程(1)では、個人データ及び/又は疾患関連データ(これ以降、患者の「個人パラメータ」又は「疾患関連パラメータ」とも称する)を分析する。こうしたデータは、治療医師など医療提供者の、或いは病院、クリニック、及び/又は保養地などの医療施設にある医療記録によって普通に入手できるが、好適にはデジタル化された形態がよい。患者の「個人」データとは、疾患それ自身とは独立した患者の個人パラメータをいうが、一方で、これらデータは通常、疾患自身に影響、又は疾患の経過に影響、或いは少なくとも影響を与える可能性がある。本発明方法の工程(1)で分析又は分析可能な個人データは、年齢、成長状態、性別、遺伝的素因、身長、体重、体表面積、肥満指数、一般的健康状態、薬物消費(例えば、好適には、アルコール、ニコチン、マリファナなどの「ソフト」ドラッグの消費)及び/又はコカイン、ヘロイン、メタドンなどの「ハード」ドラッグの消費、食習慣(脂肪、炭水化物、タンパク質含量、食物摂取タイミング、食物摂取の規則性)及び飲酒習慣(好適には、毎日の飲酒量)、睡眠習慣、身体活動、及び以上の2つ以上の組み合わせ、などより好適に選択される。患者の「疾患関連データ」とは、患者の疾患状態に関する情報を与えるパラメータを称し、普通、診断手順を介して収集される。このように収集された疾患関連データは、工程(1)で分析される、又は分析できる可能性があるが、好適には、血圧、心拍数、ECG所見、EEG所見、超音波検診所見、CT所見、MRI所見、疾患組織の生検所見、血球数測定、血液電解質レベル、血液肝臓レベル、腎臓血液と尿レベル、血液脂質レベル、血糖レベル、ビタミン代謝データ、代謝相互作用、薬物治療スケジュール、副作用プロファイル、尿の状態、ウイルス所見、バクテリア所見、菌所見、寄生虫所見、疾患のステージ、疾患の経過、及び上記2つ以上の組み合わせ、から好適に選択される。
【0008】
もちろん、疾患関連データは、これから製造される投与剤形で治療される疾患に依存する。典型的な例を用いて、以下により詳しく説明する。経口投与剤形で普通に治療される疾患は、例えば、腸、腎臓、肝臓、膵臓、胆嚢などの内臓疾患がある。腎臓、肝臓又は膵臓移植の場合、免疫抑制剤療法を非常に正確に調節する。つまり、カルシニューリン阻害剤(シクロスポリン及び/又はタクロリムス及び/又はエバロリムスなど)、グルココルチコイド(ヒドロコルチゾン及び/又はメチルプレドニゾロン)、及び/又はイノシンモノホスヘート、デヒドロゲナーゼ阻害剤(ミコフェノール酸誘導体又は塩、例えば、ミコフェノール酸モフェチル、ミコフェノール酸ナトリウム)などの1つ以上の免疫抑制剤が含まれる。この場合、例えば、患者の個人データ、特に体重、性別及び/又は年齢、又は体表面積、並びに、投与に関連するパラメータに影響又は少なくとも潜在的に影響するデータも分析される。後者のデータには、活性成分の量、必要なコーティング(例えば、腸溶コーティングなど、免疫抑制剤など、工程(5)を参照)があり、特に、これが最初の移植なのか、或いは追加の移植なのか、もしその場合、免疫抑制剤に投与量に影響する可能性がある、既に患者が有する疾患及び/又は合併症にどのようなものがあるのか、例えば、アレルギー疾患、不耐容性、投与される免疫用製剤との潜在的相互作用などを分析する。
また、別の実施形態では、もし工程(1b)において、移植患者が既に1つ以上の免疫抑制剤の治療を受けている場合、過去に投与された免疫抑制剤に対して患者が1以上の不耐容性を示すことがあるので、(例えば、シクロスポリンに代わって)異なる免疫抑制剤が選択される。例えば、先に活性成分であったシクロスポリンに代わって、別の活性成分であるタクロリムス又は他の数種の免疫抑制剤を投与すべきである。例えば、先に活性成分であったミコフェノール酸モフェチルに代わって、別の活性成分であるミコフェノール酸ナトリウムを投与すべきである。
また、さらに別の実施形態では、工程(1a)の1つ以上の第1の活性成分を選択することなく、且つ、工程(1b)の1つ以上の別の活性成分を選択することなく、免疫抑制剤の投与関連パラメータを選択するために、工程(1)の分析結果を次の工程(2)に移行して使用する。ある実施形態では、免疫抑制治療の始めに、つまり、工程(1a)を含む方法において、引き続き、免疫抑制剤のより高用量の投与剤形を継続して用いるために、まず、低投与量を選択する。つまり、対応する個人パラメータ及び/又は疾患関連パラメータの分析プロセスに従い、工程(2)から工程(6)の方法を行う(いわゆるアップタイトレーション(漸増))。また、さらに別の実施形態では、例えば、コルチコイドの投与剤形の場合、既在又は今後の治療方法において、1つ以上の活性成分から絞り込みを行い、継続的により低い用量の免疫抑制剤投与剤形を工程(2)及び工程(3)で調合することが、本発明方法によって実現できる。
もちろん、免疫抑制剤について述べた上記のアップタイトレーション(漸増)及びダウンタイトレーション(漸減)もまた、別の活性成分に適用できる。
【0009】
別の実施形態では、リューマチ疾患の治療用に、投与剤形が製造される。すでに上記したように、個人個人の患者のパラメータが分析される。関節腫脹が存在又は進行中のような典型的な身体特徴に加え、疾患特異的パラメータは、好適には、炎症パラメータなどの血液測定値を含む。特に、いわゆるリューマチ要因(例えば、E. Feist,K.Egerer, G.-R.Burmester,Z.Rheumatol.2007,66:212-21参照)や、同じく、環状シトルリン化ペプチド(ACPA)の抗体を含む。また、上記した免疫抑制剤に加えて、他の活性成分又は活性成分群があり、例えば、エルロチニブなどのチロシンキナーゼ阻害剤なども、本発明の製造方法において使用される。
【0010】
さらにまた、限定しない好適な適応症領域、及び活性成分又はその分類をそれぞれあげると、例えば、腫瘍(例示物質としてチロシンキナーゼ阻害剤など)、パーキンソン病などの神経疾患(活性成分はロピニロールなどのドーパミン拮抗剤)、血液疾患つまり貧血などの血液病(代表的な活性成分は、鉄製剤、ビタミンB12及び葉酸を含む)及び骨髄異形成症候群(MSD)、及び循環器系疾患(活性成分には、アセチルサリチル酸などの血液凝固阻止剤、フェンプロクモン及びワーファリンなどのビタミンK拮抗剤、ダビガトランなどのトロンビン阻害剤、アピキサバンなどのファクターXa阻害剤が含まれ、脳梗塞、心室細動治療用、及び心筋梗塞の予防つまり心筋梗塞リスクに適用される)。循環器系疾患に関しては、特に高血圧について言及する。脳梗塞及び心筋梗塞(つまり、脳梗塞及び/又は心筋梗塞を患う危険性がある)など、すでに言及した疾患の進行開始点とともに、高血圧はしばしば生じ、上記疾患が進行する開始点を表す。高血圧の文脈で本発明において有用な活性成分は、カルシウム拮抗剤、βブロッカー、ACE阻害剤、利尿剤及びAT1ブロッカーなどの抗高血圧剤である。従って、本発明によれば、特に血圧、ECG,周辺血管、冠血管、肺血管及び/又は脳血管の超音波検査での知見による臨床パラメータ、及び同様にして、クレアチンキネナーゼ及び/又はトロポニンIレベルなどの血液パラメータに依存して、本発明方法を用いる治療を適用することは、有益な可能性をもたらす。例えば、各抗凝血剤及び/又は抗高血圧剤、並びにこれらの組み合わせ及び/又は活性成分の量を選択することによって適用できる。
【0011】
本発明方法によって、最適化した投与量・作用効果又は投与量・副作用の関係をもつ投与剤形を更に追加してプリントするために、投与関連パラメータを適用することで、小児病及び老人病の分野にも有益に使用できる。一方、若い患者の場合、特に子供の場合、本発明方法は、プリントした投与剤形の大きさが患者個々人に適するように用いられる。特に、経口投与の投与剤形を飲み込むことだけが困難ならば、当然、個人個人で異なる大きさから始めることができる。本発明方法は、投与関連パラメータを特に正確に調節することで、小児科患者用の投与剤形を実現可能である。子供や若者にとって、患者の年齢や疾患の進行状態に対して正確に投与量を調節し、別の活性成分を用いて副作用を減らし、交差反応を減らすことが特に重要である。他方、老人病では本発明方法を使用して、老齢患者が特別にもつ必要性に適する、患者に最適化した投与剤形をプリントする。こうした老齢患者とは、70歳以上の、好ましくは75歳以上の、特に好適には80歳以上の患者をさす。このことは、特にプリントする用量に関係する。何故ならば、老齢患者は小さな用量の投与剤形をしっかり握ることが困難だからである。また、本発明方法を使用して、老齢患者の投与剤形を、しばしば老齢患者が飲み込むのに苦労するような錠剤などの古典的な投与剤形から、吸引可能な投与剤形に変更できる。小児科患者及び老齢患者の両者ともに、本発明方法から利益を得られる。特に、服用日又は服用時ごとに数種類の活性成分の投与が必要な場合、多剤併用投与剤形、つまり、数種類の活性成分による投与剤形を製造し、個々に適用できる。一般に、複数の活性成分を用いる個々の投与剤形の最適化は、全ての患者にとって有益である。例えば、患者が追加の活性成分を服用するとき、既に投与された1つ以上の別の活性成分など既存の投与剤形を変更することができる。この変更によって、新しい活性成分(もちろん、数種類の活性成分であってよい)を、このとき随意に、投与剤形内の規定領域を介して、別の活性成分と一緒に投与する。これら領域の各々は活性成分を含有し、前記規定領域は、別の活性成分を用いる別の領域とは分離、例えば、障壁層で分けられており、患者個々人の新投与剤形としてプリントされる(本発明方法の工程(3)及び/又は工程(6))。
本発明の範囲に入るその他の疾患としては、例えば、高血圧症、動脈硬化症、心不整脈、狭心症、心臓発作、脳梗塞などの循環器系疾患があげられる。
【0012】
各活性成分及び疾患の治療に関連したパラメータについて、本発明方法によって製造される投与剤形は、如何なる限定もされないことは、当業者にとって明確である。当業者は、疾患関連パラメータを選択し、自身の経験に基づき個々にそれら変数を特定適応症に取入れ、各投与剤形の製造に取入れることができる。
本発明方法の工程(2)において、(先に使用した)活性成分、或いは工程(1a)又は工程(1b)で選択された活性成分の少なくとも1つの投与関連パラメータは、工程(1)のデータ分析による投与剤形として選択される。ここで、必要な場合には、患者が暴露される、患者の同じ又は別の疾患を治療するための追加活性成分に関する、潜在的副作用及び/又は影響を考慮に入れる。
【0013】
活性成分の投与剤形の「投与関連パラメータ」とは、薬剤投与量、薬物濃度、薬剤放出、投与経路、投与可能量、耐容性及び/又は安定性(物理的及び/又は化学的パラメータ)、及び活性成分の投与剤形の効能に影響を与える投与剤形に関する任意のパラメータのことである。ここで、「投与関連パラメータ」は、患者に既に投与された1つ以上の活性成分の(工程(1a)又は工程(1b)が無い場合)、又は(工程(1a)が実施される場合の)条件における1つ以上の新活性成分の、又は(工程(1b)での)1つ以上の別の活性成分の、何れか一つに関するものである。典型的及び好適な投与関連パラメータとは、例えば、投与剤形を単位投与する毎の活性成分量、投与部位での及び/又は患者における投与剤形の投与経路に沿った(薬物動態学及び薬物動力学)、投与剤形由来の活性成分の放出動力学、投与剤形中の活性成分濃度、投与剤形中の活性成分又はその他成分の濃度分布、活性剤形の大きさ、活性剤形の幾何学的形状、投与剤形のコーティングパラメータ、投与剤形の表面構造、投与剤形の内部構造、投与剤形中の活性成分及びその他成分の分布、並びに上記パラメータの2つ以上の組み合わせがあげられる。
【0014】
工程(1a)を含む方法の場合(つまり、新活性成分のみで先に用いた活性成分無しの場合)、投与剤形のデータ分析に必要且つ適用された全ての投与関連パラメータは、明白に最適になるよう通常、決定される。また、このことは、工程(1b)が実施される本発明方法の実施形態における場合でも同じである(つまり、先に用いた活性成分を除く1つ以上の新活性成分を選択する場合)。本発明方法は、個々の患者投与剤形を最適化するだけに限定されるものではない。むしろ、本発明によれば、数人の患者、好ましくは複数の患者について最適化された投与剤形の前記パラメータを記録することが想定される。例えば、一台のコンピュータ又は数台若しくは複数台接続されたコンピュータのデータベースに、こうしたパラメータは保存され、患者として類似の個人パラメータ及び投与関連パラメータをもつ別の患者のために最適化した投与剤形を提供するために、これらパラメータを利用できる。ここで、前記した患者たちの最適化投与剤形は既に知られており、好ましくは、データベースに保存されている。従って、こうした実施形態によって、更なる患者の治療を、より成功裏に且つ速く行うことができる。また、本発明によれば、既存の及び更に記録された投与形態に関する記録パラメータを、人工知能に係る方法及び装置に評価させて学習させることも想定できる。例えば、本発明の最適化方法を一層改善するために、ディープラーニング方法及び対応する装置によってできる。従って、こうした実施形態では、1つ以上の(最初の)活性成分を好適に選択し、工程(1a)及び続く工程(2)でパラメータ化し、工程(3)で対応する最初の投与剤形をプリントする。ここで、前記最初の投与剤形は、同一及び/又は類似した個人パラメータ及び/又は疾患関連パラメータの場合に由来する既存のデータベースで公知の投与剤形に基づいて、提供される。その後、以下に述べるように更なる工程が実行される。本発明方法に関する実施形態では、すでに患者に処置されている1つ以上の活性成分をすでに含有する投与剤形が調合される。この投与剤形は、本発明方法によって、個人パラメータ及び疾患関連パラメータに適用される(ここで、随意の工程(1a)又は(1b)は実施されない)。こうして、投与に関する1つ以上のパラメータは、工程(2)で選択される。ある実施形態では、既存の薬物治療と比較して、これはただ1つのパラメータであるかもしれない。例えば、活性成分の投与量の変更、放出薬動力学の変化、又は投与剤形の大きさの変更など。もちろん、工程(1)で実行される分析に基づいて、分析済みの患者の個人パラメータ及び/又は疾患関連パラメータに前記投与剤形を適合させるために、投与関連パラメータを任意に組み合わせることも、工程(2)で選択できる。この実施形態では、好ましくは、人工知能に係る方法及び装置、例えば、ディープラーニング方法及び対応装置を使用し、既に同一又は類似の場合に由来する入手可能なパラメータを使用する上記した工程に従って、最適化(又は最適化前の)投与剤形を作成できる。また、必要に応じて追加適用もできる。
【0015】
投与関連パラメータを決定するとき、患者の同じ又は別の疾患治療に使う、患者が暴露される追加活性成分の潜在的副作用及び/又は影響を、必要に応じ考慮に入れる。このことは、標準化された投与剤形に比較して、本発明方法が特に有利な点である。つまり、1つの活性成分又は複数の活性成分の投与剤形を調合するとき、本発明方法は、患者の(変動する)個人パラメータ及び疾患特異的パラメータを考慮に入れるのみならず、これから調合される投与剤形中にプリントされる活性成分、および同じく患者に投与される別の活性成分が、少なくとも改善された副作用又は作用特性をもつことを確保できるからである。理想的には、最小の副作用特性をもち最大の治療的成功をもたらす最適な投薬を、患者に適用するべきである。
工程(2)に従い、投与関連パラメータを決定した後、3D及び/又は2Dプリント加工にこうしたパラメータが利用される。一般に、必要な(新たな)投与関連パラメータの全てを工程(2)で決定した場合、追加のプリント加工は、通常又は既存のパラメータ値に由来する追加パラメータを引き続き使用し、原則、自由選択可能な2D又は3Dプリント加工を用いて、投与剤形を作り出す。
本発明方法の工程(3)及び/又は工程(6)の投与剤形を作成する通常のプリント加工は、例えば、フィラメント溶融製作(FFF)又は溶融層モデリング(FLM)などの押出加工、ボクセルプリント(ダイレクトジェットともいう)又はバインダージェットなどのジェット加工、及びスポットプリント加工などが含まれる。
【0016】
本発明の好適な押出しプリント加工は、WO2020/240030A1に記載され、以下の工程を有する。
・FFF又はFLM 3Dプリントのために設計された医薬プリント装置を提供する工程。
・FFF又はFLM 3Dプリント用に適合した出発物を提供する工程。ここで、前記出発物は、少なくとも第1群及び第2群の出発物を形成する。前記第1群の出発物の構成は前記第2群の出発物の構成と異なるか、又は上記で規定した本発明の少なくとも一つのパラメータが前記第1群の出発物と前記第2群の出発物との間で異なる。さらに、前記出発物の少なくとも一つの群は、薬剤、機能性食品活性剤、及び栄養補助食品活性剤からなる群より選択される少なくとも一つの活性薬剤を含有する。
・投与剤形が生成されるまでプリント装置を用い、それぞれフィラメント及びインク状の前記した少なくとも第1群及び第2群の出発物をプリントする工程。
好ましい押出加工は、原則的にFFF3Dプリント又はFLM3Dプリントの公知の構成物を用いて実行できる。なお、FFF加工に関して、例えばWO2016/038356A1に関連した開示が参照できる。
好適な押出プリント加工という意味で、「出発物」とは、FFF3Dプリント又はFLM 3Dプリントに適した材料のことである。この材料は、対応するプリント装置により基本的に知られた方法で加工され、プリントされて3D物体を形成する。ここで、前記加工過程において、出発物又は同義語の出発材料は、フィラメント形状でプリントできる基本組成を有する。一般に押出プリント加工では、大概プリント装置のプリントヘッドに位置する加熱装置で加熱されて出発物は流動可能な状態に変換される。続いて、層状にされてプリントヘッドから一般に押し出され、構築基台の上でフィラメント形状になる。
好適なFFF3D加工用の出発材料つまり出発物は、フィラメント構造について例示される形状を一般に有するフィラメントである。
FLM加工用の出発材料つまり出発物は、一般に細粒、ペレット、粉末及び/又は薄片である。
【0017】
好適な押出加工の一実施形態では、他の又は追加する群の出発物は、同じ活性成分を含有する。ここで、ある1群の出発物中の活性成分濃度は、別の1群又は別の複数群の出発物中の活性成分濃度と相違する。換言すれば、この実施形態では、出発物つまり出発材料はプリントされ、少なくとも2つの群を形成する。両方の群、又は(2群よりも多い場合)少なくとも2つの群は同じ活性成分を含有するが、各々の活性成分濃度は相違する。また、更に好適な実施形態では、2つ以上、好ましくは3、4、6、7又は8つの群の出発物が供給され、フィラメント状にプリントされる。各群は1つの活性成分を有するが、前記活性成分は別の複数群の出発物中の各々別の複数の活性成分と相違する。別の実施形態では、1つ以上の活性成分、例えば、2、3、又は4つの活性成分、この中では特に2つの活性成分が好適であり、1群以上の出発物中に存在する。
また、活性成分を何も含まない、少なくとも1群の出発物が存在する。つまりプリントされて、活性成分を何も含有しない好適な投与剤形中に、固形フィラメント構造物が存在する。
好適な押出加工の別の実施形態では、複数群の出発物つまり出発材料は、プリントされたフィラメントが薬物放出特性と異なる特性を有することもできる。
もちろん、出発物又は好適な押出加工でプリントされたフィラメントについて、上記した様々な特性を組み合わせることもできる。
【0018】
さらにまた、好適な押出加工の実施形態では、同じ構成分をもつ(つまり、上記した様に本発明の少なくとも1つの同じ必須パラメータをもつ)各群の出発物は、別の群の出発物とは異なる検知可能な顕著な特徴を有する。こうした結果、異なる構成物(又は、それぞれ異なるパラメータ)をもつプリントされた複数のフィラメントは、区別される。上記した様に、好適な顕著な特徴には、例えば、フィラメントの直径、フィラメントの長さ、可視色素、蛍光色素、表面組織、形状、光沢、多孔性、粗さ及び吸収性、又は電磁放射に関する反射特性が含まれる。
好適には、押出加工は、第1群の出発物の1つ以上の層をフィラメントの形でプリントし、続いて第2群の出発物の1つ以上の層をフィラメントの形でプリントし、必要に応じ、出発物の複数追加する群の1つ以上の層をフィラメントの形でプリントする。出発物の各群は、交互に層状にプリントできる。また、この方法は、例えば、出発材料の化学的安定性を最適化するために、活性成分を含有しない層によっても実施できる。
【0019】
また、好ましい押出加工に関する別の好適な実施形態では、上記のように作成した投与剤形が、プリントされたフィラメントを含有しない少なくとも1つの部分体積を有するように、複数群の出発物をプリントする。この方法は当業者に公知の方法で実施してもよく、ある実施形態では、空気又は不活性気体(例えば窒素)を含む空洞を形成する。また、別の実施形態では、(プリントされたフィラメント中の活性成分と比較して)同じ又は異なる活性成分を含む(固体又は半固体の)構成物の周りに、フィラメントがプリントされる。別の好適な実施形態では、フィラメントをプリントし(例えば、投与剤形の構成物中に空隙を作成できるようにクロスレイヤして)、数個の空隙、好ましくは複数の空隙を形成する。これら空隙は、好適には周囲の環境と連通しており、スポンジ状の多孔質、好ましくは高度に多孔質の投与剤形を形成する。
また、さらに好ましい実施形態、好ましい押出加工の詳細、及びそこでプリントされた好適な投与剤形については、WO2020/240030A1を参照し、その全開示内容を引用して本明細書中に組み入れる。
別の実施形態では、フィラメントをプリントする代わりに、冷却、又は化学的、物理的な何れかの方法によって、塗布後に硬化するインクをプリントする。従って、こうした加工過程では、FFF加工について述べた工程を適用する。
【0020】
本発明方法中、工程(3)及び/又は工程(6)の投与剤形を作成するための好適なジェット加工は、WO2020/240028A1に記載される。この加工は以下の工程を有する。
(i)好適な容量増加剤を使用して製造される目的物の2次元又は3次元表現を設定するする工程、
(ii)成形装置又は前記成形装置に設置された目的物に、好適な容量増加剤をプリントする工程、
(iii)前記容量増加剤が少なくとも一部接触又は重なり合うように、追加の容量増加剤をプリントする工程、
(iv)前記目的物が作成されるまで、工程(ii)及び工程(iii)を繰り返す工程。
ここで、容量増加剤の少なくとも1つは、投与される医薬活性成分を少なくとも1つ含む。容量増加剤は、基礎成分又は基礎物質を有するが、これら成分又は物質は、少なくとも1つの活性成分と同程度のプリント温度における流動性を有し、各容量増加剤のプリント後に固化し、及び/又は容量増加剤は互いに表面付着する。
【0021】
本発明で好適なジェット加工についていえば、製造される投与剤形は3次元の物体である。本発明によれば、現実に2次元又は3次元プリント加工で製造される物体は、本発明の場合には医薬投与剤形であるが、3つの空間的方向に延伸すると理解される。本発明の好適なジェット加工で、容量増加剤を少なくとも一部含有する唯一の層が、成形装置又は成形装置に既に置かれた目的物にプリントされる場合、本発明の好適なジェット加工は、2Dプリント加工としても記載される。容量増加剤が、例えば、液滴として塗布される場合、続く水蒸気の除去及び乾燥後、容量増加剤は2次元的に広がった単位として巨視的には現れるが、一方で、微視的には3次元構造が存在する。従って、本発明によれば、前記投与剤形は本発明の実施形態中、3次元に拡張した構造をもつ。
ジェット加工の好適な実施形態では、投与剤形は一層一層ごとに構築される。つまり、工程(ii)及び(iii)において、容量増加剤は一層一層プリントされる。好ましくは、容量増加剤は列単位又はカラム単位でプリントされる。
また、本発明の好適なジェット加工は、特に、構成物が高い柔軟性をもつこと、及び製造された半固形又は固形投与剤形を成形するのに実施可能な多数の選択肢をもつこと、といった特徴をもつ。従って、ジェット加工の好適な実施形態では、様々な容量増加剤は、様々な種類の活性成分、及び/又は様々な基礎成分又は基礎物質を有する。さらにまた、容量増加剤の形状及び/又は体積(以後ボクセルと称する)は、同一又は異なっていてもよい。
【0022】
好ましいジェット加工において、投与剤形は完全に容量増量剤から構成されることも当然想定される。ここで、全ての容量増加剤は単一の同じ活性成分を含有する。また、各容量増加剤は同量の活性成分、又は同濃度の活性成分を含有できることも想定される。容量増加剤は基本的に自由に設定可能であり、例えば、液滴、球状、尖状、円筒状、立方体、立方体様、又はその他の形状をとり得る。(球、円筒、立方体、立方体様と述べた)前記幾何学的形状は、ボクセルが基本的にこの形状をとることを意味する。好ましくは、容量増加剤がプリント後に固化したとき、本発明の好適なボクセル形状は、より一般的にはペレットであり、好適には略球形又は円筒形、及び粒状であると理解される。従って、好適なボクセルの形状は、特に、液滴形状、ペレット形状、円筒形状、及び粒状形状をしたボクセルである。すでに詳しく述べたように、容量増加剤の形状(例えば上記した例)及び大きさは、お互い基本的に独立して自由に組み合わせることができる。
【0023】
本発明方法の好適な実施形態では、プリントされた容量増加剤の体積は原則自由に選択できるということを利用する。原理的に、医薬の投与剤形の体積は、それぞれ、その放出部位に向かう又は放出部位で崩壊する間、外側から内側に向かって縮小する。このことによって、単位時間ごとに放出される活性成分量の減少が生じる。投与剤形が崩壊する過程にわたり、可能な限り均一に活性成分を放出するために、本発明では、プリントされた容量増加剤の体積が外側から内側に向かって増加するように、容量増加剤をプリントすることを提供する。本発明によれば、前記したことは、容量増加剤の対応する複数の層をプリントすることで実現される。この結果、容量増加剤の体積は、外側から内側に向かって層から層へと増加、または一群の同体積の層から更なる複数の同体積の層に向かって増加する。
【0024】
すでに述べたように、様々な活性医薬成分(active pharmaceutical ingradients:APIs)は、好適なジェット加工を用いて投与剤形中に含有できる。さらに、数種類の(つまり2以上)活性成分を容量増加剤の中に含有できる。当然、容量増加剤は、各容量増加剤が1種類のAPIを含有するようにプリントできる。しかし、異なる(2種類以上)APIが、別々の容量増加剤中に存在するようにプリントしてもよい。容量増加剤もまた、様々な濃度のAPI(つまり、容量増加剤ごとのAPI量)を含有するようにプリントできる。関連した実施形態では、少なくとも、活性成分含有容量増加剤と接触又は重なり合う第1群の容量増加剤が同量の活性成分を含有し、並びに少なくとも、容量増加剤と接触する第2群の容量増加剤が第1群の活性成分量とは異なる活性成分量を含有するために、活性成分含有容量増加剤を構成してプリントするように、本発明の加工過程を設計できる。従って、ジェット方法で調合した投与量中に、濃度勾配を確立できる。本発明のこの実施形態は、本発明の好適な変形例にも使用され、上記した様に、外側から内側に向かって投与剤形中の容量増加剤の体積を増加し、活性成分を均一に放出できる。よって、活性成分を可能な限り均一に放出するために、容量増加剤の中で活性成分の濃度が外側から内側に向かって増加するように、容量増加剤が好適にプリントされる。
【0025】
また、幾つかの実施形態では、周囲の媒体に接近しやすいプリントされた容量本体(つまりプリントされた投与剤形)の表面積によって、単位時間ごとの活性成分放出率が制御されるように投与剤形を提供できる。例えば、ゼロ次放出では、活性物質の放出を2倍にすることが、少なくとも1次近似として、(周囲の媒体に接近容易な)表面積を2倍にすることで実現できる。好適な実施形態では、例えば、巨視的には通常の投与剤形形状(錠剤など)をもつが、一方で、略同じ大きさで何倍も大きな表面積をもつような、ハニカム構造をプリントできる。
好適なジェット加工に係る投与剤形を製造する場合、様々な活性医薬成分をもつ複数群の容量増加剤を形成できる。少なくとも第1群の活性成分含有容量増加剤は、第1の活性医薬成分を含み、少なくとも第2群の活性成分含有容量増加剤は、前記第1活性成分とは異なる第2の活性医薬成分を含むようにできる。また、様々な群の容量増加剤を、1つの投与剤形内に一緒にグループ化されるように、プリントしてもよい。このことは、各群の容量増加剤が互いに接触するように、第1及び/又は第2群の容量増加剤(及び、プリントされる目的物の中に2つを超える活性成分が存在する場合、それぞれ追加の群)が、プリントされることを意味する。
【0026】
好適なジェット加工の追加実施形態では、目的物内に1つ以上の群を形成するように、活性成分含有容量増加剤がプリントされる。ここで、前記活性成分含有容量増加剤は一部が、又は別の実施形態では全てが、非活性成分含有容量増加剤で囲まれる。この非活性成分含有容量増加剤によって、外部環境から前記活性成分含有容量増加剤は分離又は遮蔽される。この結果、例えば、活性成分含有コア、又は少なくとも群間で接触する活性成分含有容量増加剤の内部の群(つまり、同じ又は異なる種類の活性成分、又は同じ又は異なる量の活性成分をもつ、隣接した容量増加剤の数個の内部群)を有する投与剤形が製造される。この内部群の周囲には、非活性成分含有容量増加剤が配置される。ここで、「外部環境」とは、目的物を取り囲む環境である。また、コア領域、つまり互いに直接結合した容量増加剤の内部群の周囲の「外部環境」とは、プリントされた投与剤形内、つまり、活性成分を含有しない容量増加剤内に存在する別の領域が、少なくとも一部、又はある程度完全に、活性成分を含む複数群の容量増加剤を、前記プリントされた1つの投与剤形内の別の個々又は複数群の容量増加剤から分離することを意味するものとして理解される。つまり、追加の(つまり数種類の別の)活性成分を含む、別の個々又は複数群の容量増加剤に完全に囲まれた状況でも、異なって調合された容量増加剤どうしの間に遮蔽層又は遮蔽領域を形成するため、この活性成分を含む容量増加剤が分離されることを意味するものとして、「外部環境」は理解される。
好適な実施形態では、上記した配置を利用して、個々の活性成分含有容量増加剤を空間的に分離する。例えば、個々の活性成分が化学的に不安定になることを防止、及び/又は互いに化学的配合禁忌の様々な容量増加剤を分離するために行われる(例えば、容量増加剤どうしが互いに反応する、又はその構造及び/又は効能を損なうとの理由である)。
【0027】
別の実施形態では、薬物乱用浄化錠剤又はカプセルも提供される。例えば、これら薬剤は、活性成分(例えば、オピオイド又は中毒性活性成分)が投与剤形から、例えば、圧潰又は別の作用機序で漏れ出るのを、阻止して誤用を防止する。従って、本発明の好適な実施形態では、数群又は数層の容量増加剤が、前記活性成分(例えば、上記した潜在的に誤用しやすい成分)と一緒にプリントされる。こうして、前記活性成分の作用効果を打ち消し、前記活性成分を分解、又は、前記活性成分の潜在的誤用を少なくとも制限、特に好適には防止する成分を含有する数群又は数層の容量増加剤で、前記有害な活性成分は取り囲まれる。数群(又は数層)の活性成分と乱用防止成分との間に、1群以上又は1層以上の容量増加剤を供給してもよい。これら容量増加剤は、活性成分も乱用防止成分も含有しない(好適な実施形態では、こうした容量増加剤は基礎構築物質を含有するだけである)。こうして、上記した容量増加剤によって、乱用防止成分を含む容量増加剤から活性成分含有容量増加剤が分離される。
【0028】
また、本発明によれば、非活性成分含有容量増加剤によって少なくとも一部囲まれる活性成分含有容量増加剤を用いる実施形態も利用できる。例えば、徐放性錠剤又はカプセル、或いは腸溶性錠剤又はカプセルなどの緩効性剤形実施形態を製造するのに利用できる。
また、本発明に係る好適なジェット加工を、目的物、特に、所望する用途のために選択した部位又は選択した領域でAPIを放出する医薬投与剤形の製造に使用できる(所謂「薬剤ターゲッティング」)。つまり、プリントされた投与剤形から薬物を放出制御するために好適に使用される。従って、このような実施形態を使用して、特定の薬物又は複数の薬物を好適な作用部位又は標的部位に送達する。例えば(及び好適には)、以下の経口投与の例が挙げられる。従って、本発明のある実施形態では、本発明の医薬投与剤形中の容量増加剤のコア領域が、1つ以上の所望の活性成分を含有し、及びこのコア領域の周囲(又はこのコア体積の周囲)に1層以上の容量増加剤を配置することが想定される。これら容量増加剤は、例えば、腸の中でpH依存的に分解する。前記容量増加剤は、pH依存的に腸内においてそれぞれ分解又は溶解し、腸の所定領域で外側層がpH依存的に分解し、コア領域だけが周囲の環境に暴露されて、活性成分をその場に放出する。上記したことは、(シェラック、メタクリル酸とメタクリルメタクリレートとのコポリマー、修飾セルロースなどの)ポリマー、及び/又はこの分野でよく知られ、そのpH依存的分解又はpH依存的溶解度が微細に調節できるポリビニルアルコール誘導体類によって、そのほとんどが達成される。この結果、本発明によれば、投与剤形の活性成分含有コア領域をpH依存的に暴露させることが、腸の各部位、特に小腸(十二指腸、空腸及び回腸)について実行できる。腸又は選択された腸の部位など特定の作用部位又は標的部位で目標とした放出を提供することは、このような構築物質中に含まれる相応のpH依存的分解ポリマー、又はpH依存的溶解ポリマーからなる容量増加剤を用いたpH依存的分解層、又はpH依存的溶解層からなる容量増加剤についてだけに限定されることはない。他の作用機構を、別に又は追加して実施することもできる。よって、本発明によれば、1層以上の容量増加剤を形成し、例えば、活性成分含有コア領域又は1以上の中間層の上に直接、容量増加剤をプリントできる。ここで、前記中間層は存在可能で、その構築物質は細菌分解性成分を含有又はその成分からなる。当業者に公知の細菌分解性成分は、澱粉又はセルロースなどがあり、この目的に適する。好ましくは、このような層は、結腸で活性成分を放出するのに使える。好適な実施形態では上記した複数の種類の層、例えば、(1層以上の)pH依存的分解層及び細菌分解性層は、組み合わせることができる。こうして、医薬活性成分を組み合わせた投与剤形もプリントできる。なお、この投与剤形中、第1の活性成分を有する容量増加剤は、構築物質中に細菌分解性成分を含有(又はこの成分からなる)する1層以上の容量増加剤によって囲まれたコア領域に供給される。続いて、第2の活性成分を含有する1層以上の容量増加剤がプリントされ、引き続き、構築物質中の1つ以上のpH分解性ポリマーを含有する(又はこれらポリマーからなる)1以上の層がプリントされる。もちろん、別法として、複数の薬剤ターゲティング層の実施形態では、前記コア領域だけが1つ以上の活性成分を含有してもよい。
【0029】
好適なジェット加工は無菌条件でも実施できるため、本発明のプリント加工は、インプラント及び/又は注射液、或いは活性成分を放出する液滴状活性成分を提供するためにも使用できる。
また、非常に異なる材料(活性成分及び基礎構成物又は物質)を、プリントされる容量増加剤に使用できるという事実は、好ましいジェット加工の柔軟度を大きくすることにも貢献する。
個々に適用された容量増加剤どうしを結合することは、様々な方法で達成できる。例えば、一実施形態では、溶融可能な材料を使用するとき、こうしたボクセルどうしの結合は、支持構造体に塗布したのち、固化によって達成できる。この固化は様々なメカニズムで達成可能であり、単純冷却及び/又は既知物質の化学的メカニズムなどが含まれる。別の実施形態では、好適な結合剤をボクセル材料に、例えば、散布や溶液で添加できる。ボクセルを塗布したのち、材料は硬化する。ここで、プリント装置の適当な熱源から供給される熱によって、結合剤による硬化は効果的に行える。熱源としては、光源、好適にはレーザー装置がある。結合剤による硬化は、適当な反応開始分子及び/又は適当な波長の光によって化学的に実行できる。なお、後者の光は、レーザー装置による発光が好ましい。また、追加の実施形態では、容量増加剤の流動体は、1つ以上の反応開始化合物、概して1種類以上のポリマーのモノマーが含まれ、ボクセル塗布後、光、熱又は他の重合開始剤などの好ましい方法によって、重合が開始される。この重合によって、塗布したボクセルは硬化し、隣り合うボクセルと結合する。
なお、好適なジェット加工、並びにそこでプリントされる投与剤形の好適な実施形態及び詳細については、WO2020/2400288A1を参照し、その開示内容全体を本明細書に引用して組み入れる。
【0030】
プリント温度で流動化可能な好ましい担体材料は、この中に活性医薬成分が存在しても、押出及びジェット加工の両方で熱溶融押出(HME)に普通使用できる、低融点ワックス及びポリマーなどの担体である。また、低融点担体に加えて、HME混合物或いはより一般的に容量増加剤混合物は、他の加工用試剤及び添加剤を含むことができる。添加剤には、結合剤、充填剤、可塑剤、抗酸化剤、香料、甘味料などがあげられる。適当なHME担体及び可塑剤は、例えば、Crowley et al.(2007)Drug Development and Industrial Pharmacy,33,909-926(担体:917~919ページ、特に表1;plasticisers:917及び920ページ、特に表2)。なお、本明細書中に、上記記載部分を特に参照して組み入れる。
【0031】
工程(3)及び/又は工程(6)における、本発明の好適なスポットプリント加工は、以下の工程を有する。
(a)固形投与剤形を少なくとも3Dプリントできるプリンターを提供する工程;
ここでで、前記プリンターは、
前記投与剤形がプリントされる構築基台と、
前記構築基台上の前記投与剤形用に、少なくとも1つの医薬活性成分を含有する構築物質からなる複数の点(以後、点群と称する)の配列を塗布するために設計されたプリントヘッドと、を有する。
前記構築物質は、プリントされた状態で、好適には加熱によって流動性があり、冷却による固化で少なくとも半固体になることが好ましい。
(b)前記構築基台の上に前記構築物質からなる点群の配列を塗布する工程;
ここで、前記点群は互いに重なり合っている、或いは、互いに接触している又はしていなくてもよい。
(c)工程(b)で塗布された前記構築物質の点群を、少なくとも半固体化、好適には固体化する工程;
(d)追加する点群の配列が、前記先に塗布した配列の点群と少なくとも一部重なり合うように、前記先に塗布した点群の配列に前記追加配列を塗布する工程;
(e)前記投与剤形が形成されるまで、工程(b)から工程(d)を繰り返す工程。
ここで、上記プリント加工の「点」とは、本質的に円形で、液状、少なくとも流動形状でプリント装置のプリントヘッドから射出された単位体積の構築物質が衝突してできた、本来3次元構造物である。前記流動形状とは、通常液滴形状であり、(略)回転楕円形又は(略)球形である。前記構築物質は前記構築基台の上に堆積(工程(b))、又は少なくとも部分的に先に堆積した点群の上に堆積する(工程(d)又は工程(e))。
【0032】
上記したように、投与剤形は本発明によって調合できる。ここで、少なくとも1つの医薬活性成分を含有する構築物質が使用される。好適な実施形態では、相乗的に作用する2つ以上の医薬活性成分の組み合わせを提供する。このような組み合わせは、単一の構築物質中に存在してもよい。別の実施形態では、様々な活性医薬成分が異なる構築物質中に存在できる。
好適なスポットプリント加工における活性成分は、塗布される点を形成する複数群の構築物質中に存在できる。よって、本発明によれば、ある1つの活性成分は、ある1つの構築物質中に存在可能であり、その構築物質から第1集団の点群が形成される。さらに、1つ(以上の)別の活性成分が、別の集団の点群に存在できる(つまり、各活性成分を含有する少なくとも2種類の構築物質が存在する)。ここで、異なる活性成分は、異なる構築物質中に含まれることが好ましい。また、活性成分を含有することなく、各構築成分は同一又は相違することが可能である。このようなことは、それぞれの活性成分に合わせた、pH,溶解度、密度、イオン環境、粒子径、色、粘度、溶出速度、温度、等張性などの特性を、それぞれの活性成分に応じて、提供するために実施される。本発明のある実施形態では、2つ以上の医薬活性成分の組み合わせを提供する。ここで、特定の適応症を目指した医薬活性成分は、ある1つの構成成分中に含有され、追加の医薬活性成分は、同じ又は別の構成成分中に存在する。こうすることで、最初の活性成分で潜在的に生じる副作用を少なくとも減らす、できれば抑制する。こうした用例は、好適なスポットプリント加工の好ましい実施形態を表す。
【0033】
本発明の好適なスポットプリント加工の好ましい実施形態では、同じ活性成分を有する点群、又は同じ活性成分の組み合わせを有する点群、或いは同じ活性成分濃度を有する点群は、投与剤形の共同区画に配置され、同じ群中、点どうしが少なくとも同じ側面で互いに少なくとも一部隣接するようにする。従って、好適には、同じ活性成分をもつ点群、同じ活性成分の組み合わせをもつ点群、又は同じ活性成分濃度をもつ点群は各々、少なくとも1つの共通層、又は少なくとも1層の少なくとも1つの隣接部分などで、少なくとも1つの共通区画を形成する。なお、この共通区画は、投与剤形の最長寸法に対して水平又は垂直に配置できる。別の実施形態では、同じ活性成分をもつ点群、同じ活性成分の組み合わせをもつ点群、又は同じ活性成分濃度をもつ点群は、数個の区画中に併合できる(例えば、2以上の層及び/又は2以上の部分層)。こうした区画は、様々なpH条件、溶解度、胃液への耐性、その他の溶解挙動などの様々な活性成分放出特性を有する。(例えば、ある複数の区画の点群、又はある1つの区画の点群が、バースト放出物質を含有する。ここで、バースト放出実施形態の形成方法では、好適には、構築物質中にバースト放出物質がない点群部分を、バースト放出部分が取り囲むように、バースト放出区画の点群が塗布される。つまり、少なくとも1層、好適には数層の、投与剤形の各寸法において構築物質中にバースト放出物質をもつ点群が、バースト放出物質なしの投与剤形の一部分を取り囲む。)
【0034】
好適には、本発明の好適なスポットプリント方法を提供するプリンターは、構築物質の貯蔵器と連通する少なくとも1つのプリントヘッドを有する。そこで、少なくとも1つのプリントヘッドは、工程(b)から工程(e)の構築物質を塗布するために、一定量の構築物質を取り出すことができる。貯蔵器は、構築物質の種類及び密度に依存して、様々な方法で形成される。例えば、液体構築物質の場合、貯蔵器は、構築物質用の導管を介してプリントヘッドに接続される液体用容器である。構築物質は、通常は吸い上げられてこの導管を通ってプリントヘッドに運ばれる。別の実施形態では、構築物質は、貯蔵器内に固体又は半固体形状で存在する。例えば、粉末又は細粒であり、運搬機構によって固体又は半固体物質がプリントヘッドに供給される。この実施形態では、プリントヘッドは一般的に構築物質を少なくとも流動可能に、好ましい実施形態では液体形状に変換する、加熱又は溶融装置を有する。続いて、液体になった構築物質は、構築基台の上に点を形成する単位容積にて、通常存在する分注装置によってプリントヘッドから分注、つまりプリントされる。
【0035】
好適なスポットプリント加工の別の実施形態では、構築物質は固体又は少なくとも半固体フィラメントの形状もとり得る。この結果、フィラメントは供給路又は供給チューブに存在し、これらは貯蔵器となる。こうした貯蔵器の形状は様々な形をとることができるので、完全に固体フィラメントの構築物質の場合、線状の実施形態が普通提供される。好適なフィラメントの構築物質は、通常長尺の円筒構造であり、一般に多かれ少なかれ弾力性があるので、螺旋形などの曲線の貯蔵コイルにもなってプリンヘッドに供給できる。例えば、押出又は圧縮機構を使う。仮に、貯蔵器スプールに渦巻き状にフィラメントを供給するのに弾力性が不十分な場合、短い直線フィラメント棒の形で、貯蔵器マガジンからフィラメントを供給できる。
また、液体構築物質の場合、その単位体積で分注する圧電駆動手段を有し、構築物質はインクジェットプリンターのように分注される。2Dプリント加工では、圧電分注装置などの公知の技術で、(以下に例示するように)液体が普通に堆積される。例えば、3Dプリントで先に述べたような工程で作成された投与剤形の少なくとも一部の表面の上に、例えば、追加工程(vi)で液体を普通に乾燥、又は(化学的、物理的、及び/又はレーザー装置で有効にできる光への暴露)によって少なくとも一部の表面上に、液体を固定する。もちろん、投与剤形内に2Dプリントされた1つ以上の層を塗布し、2D層を塗布した後で、3Dプリント工程を行うことも可能である(当然、最後の2Dプリント層に続いて行ってもよい)。
【0036】
また、別の実施形態では、プリンターは1を超える、特に好適には2から10個のプリントヘッドを有する。複数のプリントヘッドをもつ本発明の実施形態は、様々な機能を有する。ある一実施形態では、1を超えるプリントヘッドを用いて、1単位の投与剤形をプリントする、例えば、上記した様に様々な特性を有する様々な構築物質をプリントすることが想定できる。3D及び2Dプリントヘッドは、複数のプリンターを用いる実施形態で提供される。また、以下で説明するように、本発明で使用できるプリントヘッドは、3D及び2Dプリント両方のために設計される。また、本発明によれば、1を超えるプリントヘッドを用いて、複数の投与剤形を同時にプリントすることも想定できる。本発明によれば、数個の異なる投与剤形を同時にプリントすることも当然可能である。つまり、複数組のプリントヘッド、又は、少なくとも複数組といえるプリントヘッドを形成し、数個の投与剤形の上に様々な成分物質を同時にプリントする。この結果、同時にプリントされた投与剤形は、今度はその成分において同じ又は異なることができる。従って、プリントヘッドの数は、プリントされた投与剤形の数を増やすために、10個のプリントヘッドをかなり超えることができる。11を超えるプリントヘッドをもつ方法の実施形態では、各プリントヘッドが構築物質の貯蔵器と連通していることが好ましい。個々のプリントヘッドは、工程(ii)から(v)で構築物質を塗布するために、一定量の構築物質を取り出すことができる。上記の貯蔵器実施形態では、互いに別個のプリントヘッドについて同じ又は異なっていてもよい。
従って、本発明では、点群は単位容積の構築物質を塗布するために作成されることが好ましい。単位容積は、20pLから30μLの容積を持ち、必要に応じて数単位の容積を、むろん引き続き使用できる。
【0037】
スポットプリント加工の別の好ましい実施形態では、プリントヘッド又は複数のプリントヘッドは、少なくとも1つのプリントヘッドを、2Dプリント及び3Dプリントの両方に適用する。本発明の別の実施形態では、装置は少なくとも1つ以上の3Dプリントヘッドをもち、必要ならば、1つの2Dプリントヘッドをもつ。3Dプリントヘッドは、半固体及び溶融構成物質を塗布するために設計される。一方、2Dプリントヘッドはプリントヘッド内で加熱することなく既に液体である塗布物質を塗布するために設計される。例えば、インクつまり活性成分溶液、活性成分乳状液、及び活性成分懸濁液などが塗布される。
好ましい実施形態では、工程(b)及び更に行った工程(b)(本発明に係る方法の工程(e)に従い)で塗布される点群が、それ以前の工程(工程(b)又は工程(e)に従い行った形成工程の各工程(b))で塗布された点群に重なるように、点群が塗布される。従ってこの実施形態では、1層中の点群が先に形成された層と完全に重なり合う場合、塗布された点群がレンガ状に配置されるという意味で、特に安定な配置を形成する投与剤形が作成される。その一方で、先に形成された層と一部重なり合う点群の層を塗布することで、特に隙間をもつ薄い配置が提供される。この結果、周辺環境に暴露される投与剤形の表面積をより大きくすることで、特に、投与剤形を服用する被検体、例えば、人間の患者の消化管において、周囲の環境に暴露される投与剤形の溶解速度又は分解速度を調節できる。
上記した様に、本発明の好適な実施形態では、構築物質はフィラメントとして存在し、3Dプリントの場合、プリントヘッドは、好適には、加熱手段を持つプリントヘッドを用い、一定量のフィラメントを溶融するように適用される。こうして、工程(b)で構築基台の上に点群の整列を塗布し、及び工程(d)で先に塗布した点群整列の上に更なる点群整列を塗布する。
【0038】
プリントされた構築物質の固化(少なくとも半固体状態)及び工程(c)における個々に塗布された点群間の結合は、様々な方法で実行できる。例えば、一実施形態では、溶融可能な材料が使用されるとき、こうした点群間の結合は、支持構造に塗布した後、固化することによって実施できる。こうした方法はいろいろな機構で実施され、例えば、単純冷却及び/又は既知物質による化学的機構で実施できる。別の実施形態では、適当な結合剤を、例えば、分散液や溶液などで構築物質に適用すると、点を塗布した後、結合剤によって硬化する。この結合剤による硬化は、例えば、光源、好適にはレーザー装置などの適当な熱源をプリンター装置に設置して有効に行える。また、結合剤による硬化は、好適な反応開始分子により化学的に、及び/又は適当な波長の光によって効果的に行える。なお、後者の光については、レーザー装置で発光する光が好適である。またさらに追加の実施形態では、構築物質は、1つ以上の原料化合物、一般的に1以上の種類のポリマーのモノマーを含むことができ、点群の塗布後、それぞれ塗布された点を隣接する点群に、硬化させて結合させる、光、熱又は他の重合開始剤などの適当な方法を用いて、重合反応が開始される。
その中に1つ又は複数の活性成分が存在している、プリント温度で流動化する適当な担体材料は、好適なスッポトプリント加工の場合に用いられる。例えば、低融点ワックス及びポリマーなどの熱溶融押出(HME)に概して使用できる担体があげられる。低融点担体に付け加えて、HME混合物、更に一般的には構築物質混合物は、別の加工用薬品及び補助剤、例えば、結合剤、可塑剤、抗酸化剤、香料、甘味料などを含有できる。適当なHME担体及び可塑剤は、当業者に公知であり開示されている。例えば、Crowley et al.(2007)Drug Development and Industrial Pharmacy,33,909-926(担体: p.917からp.919,特に表1; 可塑剤: p.917及びp.920,特に表2)。ここで特に、好適なスポットプリント加工の上記記載に参照して引用する。
【0039】
本発明方法は、投与剤形又は医療機器を完全に初めから組み立てたものにのみ限定されるわけではない。この方法は、組み立て装置上に既に存在する目的物にも適用できる。例えば、従来法又は追加の方法で先に製造された投与剤形も含まれる。例えば、本発明方法でこの投与剤形は修飾され、又は活性成分抜きの目的物(プラセボ担体とも称する)の上に、活性成分含有容量増加剤が、本発明に従ってプリントされる。例えば、薬剤抜きのフィルム、又は食用紙などの他の平面な材料を用意して、薬剤含有ODF(Orally degradable film:経口分解フィルム又はOrally disssolvable film:経口溶解フィルム)製品を提供する。別の実施形態では、供給された膏薬材料をプリントできる。例えば、傷の治りを促進する活性成分を含む、本発明の容量増加剤とともにプリントされる。また、別の実施形態では、API含有容量増加剤を使う本発明の加工過程、及びそれに続く溶媒含有液体のプリントによって、溶融層モデリングプロセスで製造したプラセボ担体がプリントされる。こうして、プリントされた層は交互に重なりあう。
【0040】
(本発明方法における工程(3)及び/又は工程(6)の)プリント加工工程は、コンピュータ支援の下で実行されることが好ましい。従って、プリントされる投与剤形の計算で得た3次元画像を、一般的なCADプログラムの支援を受けて大概、生成する。プリントされる目的物のコンピュータ生成画像は、実存する投与剤形をスキャンすることでも得られる。本方法では、コンピュータ生成画像は、所望の容量増加剤(ボクセル)、点群又は所望のフィラメント要素に細分化される。こうした要素は原則的に自由に選択可能であり、容量増加剤が小さいほど、実際の目的物の解像度は大きくなる。
個々の容量増加剤は、活性成分、担体つまり基礎物質又は基礎成分、及び/又は追加の補助剤として、その分量とともに割り当てられ、最終的にプリントされる。なお、追加補助剤には、着色剤及び必要なその他の材料が含まれる。好適なジェット加工用の適当なプリント装置は、例えば、米国特許のUS2017/03,68755 A1及び US 6,070,107に記載される。
【0041】
特に好適な実施形態では、本発明方法は、さらに工程(3)及び/又は工程(6)に、2D及び/又は3Dプリントを使用し少なくとも1つの着色剤を塗布する工程を有する。ここで、好適には対応するボクセル、好適には小体積のボクセルを、好適なジェット加工、及び/又はインクジェットプリントなどの2次元プリントなどの別の方法を用いて、投与剤形の上に視認できる少なくとも1つの情報構造物を形成するようにする。こうして、投与剤形の上又は少なくともその一部に塗布された物質がプリントされて、この工程は実施される。その際、着色剤は、活性成分含有容量増加剤と切り離して塗布することもできる。
好適には、着色剤は、活性医薬成分を含有する容量増加剤と一緒に塗布できる。ある一つの実施形態では、一度に1物質によって、活性成分が塗布された領域又は区画に印が付けられる。従って、本実施形態では、目的物中の活性成分及び完成した目的物中の活性成分の分布に関する情報を、色符号で伝達できる。本発明の本実施形態の発展形では、様々な量又は濃度の各活性成分が活性成分含有区画中に堆積され、次に、こうした量や濃度が各着色剤の濃度によって表示される。もちろん、異なる着色剤を、例えば、1つのボクセル中に混ぜることも可能であり、可視スペクトル全域を混合物の適切な区画に用いることも一般的にできる。
本発明によれば、「着色剤」の用語は、発光、特に蛍光を発する物質も含む。
【0042】
着色剤で生じる情報構造物は、様々な情報を表すことが可能である。この結果、数個の異なる情報構造物は、異なる着色剤によって使用可能となる。このような着色剤は自由に選択できて組み合わせも可能である。特に、本発明によれば、少なくとも1つの情報構造物は、目的物にプリントされた活性成分の種類、及び/又は投与剤形中に存在する活性成分の量、及び/又は投与剤形に係る投与時間又は投与期間、投与剤形に係る投与日、及び/又は患者関連データ(例えば、名前、年齢、性別、薬物治療と疾患、及び/又は健康及び介護保険提供者、及び/又は担当医、及び/又は医薬品剤形を提供する製薬会社、及び/又は医薬品剤形(又は医療機器)を提供する医療施設)などを、符号化できる。
この情報構造物は可能な広域な用途から選択できる。例えば、1つの成分又は複数の成分が、QRコード、文字、及び/又は数字の形態でプリントされる。もちろん、線、格子、点、2次元パターンなどの幅広い種類のパターンがプリントできる。この結果、ボクセルプリントの好適な実施形態では、最も多様性に富んだ可能性を基本的に提供する。符号をプリントした画像は、従って活性成分を含有し、同時に、上記したような患者、医師、薬剤師及び/又は医療或いは薬剤専門家に関する所望のデータを符号化する。
選択した特定の追加製造プロセスに依存して着色剤が存在する場合、その着色剤は各プリントされた基礎成分中の活性医薬成分と一緒に存在できることは、当業者には明らかである。この方法では、1つの着色剤(又は複数の着色剤)は、所定の容量増加剤用に供された構築物質中の活性成分と一緒に存在することが好ましい。
以上説明したように、本発明の投与剤形は、広く多様な情報構造物を有する。好適には、本発明の投与剤形は、上記した方法において述べられた情報構造物を有する。
【0043】
本発明の加工過程を用いてプリントできる活性成分含有目的物は、特に半固体又は固体の医薬投与剤形であり、例えば、錠剤、カプセル、インプラント、パッチ、座薬又は薄いフィルムの剤形が含まれる。本発明方法で製造される錠剤は、多様性に富み、楕円形錠剤、ひし形錠、植込錠、複数用途錠、分散性錠剤、徐放性錠剤、膣錠及び座薬、点眼錠、コーティング錠、マトリックス錠、咀嚼錠、フィルムコート錠剤、放出調節錠剤、ラッカー錠剤、腸溶剤及び薬剤乱用抑制剤などが含まれる。
また、活性医薬成分の投与剤形として本発明の文脈において考慮される特に適当な目的物は、活性成分含有の局所投与剤形、コンタクトレンズ、局部適用に活性成分を好適に放出する貼り薬などの医療用具である。
本発明方法の工程(4)において、患者の個人及び疾患関連パラメータを再度分析し、患者が工程(3)でプリントされた投与剤形を服用した後、工程(3)でプリントされた前記投与剤形(又は複数の投与剤形)の治療を受ける状態となる。従って、前記したパラメータは、工程(3)でプリントされた投与剤形に影響を受ける。
本発明に係る方法の工程(5)では、工程(4)のパラメータ分析に基づいて、活性成分又は複数の活性成分の少なくとも1つの投与関連パラメータを適用し、最後に工程(6)で、少なくとも1つ適用されたパラメータを用いて2D及び/又は3Dプリントで、新しい投与剤形を作成する。
本発明の随意の工程(7)で述べたように、分析工程(4)、活性成分の投与関連パラメータの調節工程(5)、及び投与剤形のプリント工程(6)は、調節したパラメータに基づいて繰り返すことができる。本発明によれば、変化する可能性のある個人及び疾患関連パラメータに投与剤形を絶えず適合させるために、こうした工程を繰り返す方法が好ましい。
【0044】
本発明に係る方法の工程(3)及び工程(6)で使用するプリント加工は、同じ又は異なっていてもよいことは、当業者には明白である。よって、ある実施形態では、押出加工(例えば、先に詳述した好適な加工、又はそれ自体公知な別の3D/2D押出プリント加工)を、工程(3)に使用し、ジェット加工(例えば、先に詳述した好適な方法の前記加工)、又はスポットプリント加工(例えば、先に詳述した前記加工)を、又は逆もまた同様に、1つ又はそれ以上の工程(6)に使用し、その結果、特に調節される投与関連パラメータに依存して、全ての可能な組み合わせを選択できる。
免疫抑制剤の例に続き、個人及び疾患関連データの分析は、先ず、少なくとも1つの投与関連パラメータを選択することに使用される(例えば、1つ以上の免疫抑制剤の投与量)。例えば、最初のパラメータ(工程(1a)において新しい治療が行われるか、又は別の活性成分が選択される(工程(1b))が行われる場合)、或いは、先に行われた治療と比較して変化させたパラメータの何れか一方のパラメータに基づいて、(最初の)投与剤形がプリントされる(本発明によれば、前記投与形剤形は例として述べた1つ以上の免疫抑制剤を含んでいてよい)。例示した前記免疫抑制剤を参照とすると、本発明によれば、それぞれ3つの異なる投与剤形(3つの免疫抑制剤部類の各々について1投与剤形)をプリント、又は1つの投与剤形に2又は全部で3つの免疫抑制剤を組み合わせることができる。この場合、必要に応じて好適なプリント加工の文脈で詳述したように、プリント加工における複数の投与剤形中に、適当な放出特性及び/又は好適な放出層を、普通に含有できるる。また、免疫抑制剤及びコルチコイド類例を用いて説明したように、1以上の活性成分を、患者に最適化した高めの用量設定及び/又は低めの用量設定において、本発明方法を使用することもできる。
本発明に従って最初にプリントされた投与剤形を用い、治療中の患者の個人及び疾患関連パラメータを分析し終えた後、1以上の投与関連パラメータが、前記分析に基づいて次に適用される。次に、免疫抑制剤治療を最適化して現状必要な条件に適合させるために、免疫抑制剤の1以上の投与剤形が、再度プリントされる。こうして、長期間にわたり、治療の成果が向上できる。つまり、移植拒絶症を防ぐ意味で免疫抑制剤を用いた場合、移植手術した生存者は長生きできる。
コンピュータ支援が好ましい上記した工程(3)及び工程(6)に加えて、本発明に係る方法の別の工程も、コンピュータ支援であることが好ましい。
【0045】
本発明によれば、工程(1)及び工程(4)での分析は、コンピュータで支援される。この結果、投与量の調節に必要な、各影響パラメータ(つまり、個人及び/又は疾患関連パラメータ)は、内科医又は薬剤師により決定される。ここで可能性がある影響パラメータはすでに上記したが、例えば、年齢、体重、体表面積、身長、肝臓の状態、腎臓の状態、代謝の影響、患者の一般的状態、性別、既往歴、社会的状態と治療に対する執着度、薬剤安全性、固執度、活性成分、活性成分濃度、不適合性、アレルギー、相互作用及び摂取適合性などが含まれる。
アルゴリズムについては、統計解析及び質問票を用いて得ることができる。解析や質問票は、数学モデルを用いて求められ、特定の薬剤で治療される広範囲の患者について最適な投与量が求められる。個人に特化した薬剤処方は、評価及びその結果の投与量調節にも影響を与える。
同様、本発明によれば、工程(2)の少なくとも1つの投与関連パラメータの決定、及び工程(5)の少なくとも1つの投与関連パラメータの調節は、コンピュータで支援される。このため、質問票及び治療成功因子を通常決定し、続いて、患者の変化しうるパラメータ及び生体データに対応させる。こうしたことにより、AI学習システムを介して、続く評価に関する基礎を形作る。
また、少なくとも1つの投与関連パラメータを、3D及び/又は2Dプリント用の1以上のプリントパラメータへの変換に適用することが好ましい。
【国際調査報告】