IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ゼテオ テック、 インク.の特許一覧

特表2024-518022充填ベッドシステムおよび方法を使用したエアロゾル化生体材料粒子の捕捉による呼吸器疾患の診断
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-24
(54)【発明の名称】充填ベッドシステムおよび方法を使用したエアロゾル化生体材料粒子の捕捉による呼吸器疾患の診断
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/497 20060101AFI20240417BHJP
   G01N 33/569 20060101ALI20240417BHJP
   G01N 1/22 20060101ALI20240417BHJP
   G01N 1/02 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
G01N33/497 A
G01N33/569 G
G01N33/569 B
G01N1/22 B
G01N1/02 W
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023559992
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(85)【翻訳文提出日】2023-11-14
(86)【国際出願番号】 US2022022964
(87)【国際公開番号】W WO2022212796
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】63/325,435
(32)【優先日】2022-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/249,357
(32)【優先日】2021-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/169,130
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520148932
【氏名又は名称】ゼテオ テック、 インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100086531
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100093241
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 正昭
(74)【代理人】
【識別番号】100101801
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 英治
(74)【代理人】
【識別番号】100095496
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 榮二
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ダペン
(72)【発明者】
【氏名】ブライデン、ウェイン、エイ.
(72)【発明者】
【氏名】マクローリン、マイケル
【テーマコード(参考)】
2G045
2G052
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045AA28
2G045BA13
2G045BB03
2G045BB11
2G045CB22
2G045DA80
2G045FB02
2G045FB03
2G052AA04
2G052AA05
2G052AA34
2G052AA36
2G052AB16
2G052AB20
2G052AB22
2G052AD02
2G052AD42
2G052AD46
2G052BA22
2G052ED07
2G052ED11
2G052GA24
2G052HA02
(57)【要約】
COVID―19などの気道疾患を含むいくつかの疾患に対する迅速かつ低コストのポイントオブケアアッセイを可能にする、呼吸器疾患に特徴的な呼気中のエアロゾル化粒子を捕捉および分析するための方法および装置が開示される。開示された方法およびシステムは、充填ベッドカラムを使用してエアロゾル化粒子を選択的に捕捉する。捕捉された粒子は溶媒を使用して溶出され、MALDI―TOFMSなどの分析装置を使用して分析される。
【選択図】図9A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸器疾患に感染し、当該感染患者の呼吸を補助するために人工呼吸器に接続された患者を監視するための呼気収集システムにおいて、
上記患者によって生成される呼気中のエアロゾル化粒子を選択的に捕捉するための充填層カラムをそれぞれに1または複数のサンプル捕捉要素であって、当該サンプル捕捉要素が上記人工呼吸器の呼気チューブに取り外し可能に接続されている上記1または複数のサンプル捕捉要素と、
ポンプ、電源、およびコントローラのうちの少なくとも1つを備えるサブシステムであって、当該サブシステムは、上記サンプル捕捉要素と流体連通して配置され、上記サンプル捕捉要素の動作を制御するように構成され、上記ポンプは、呼気エアロゾルがサンプル捕捉要素に引き込むように構成される、上記サブシステムとを有することを特徴とする呼気収集システム。
【請求項2】
上記サブシステムが、上記サンプル捕捉要素と上記ポンプとの間に配置されたCOセンサーおよび粒子計数器のうちの少なくとも1つをさらに有する請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
上記サブシステムは、ポータブル筐体内に配置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
上記サンプル捕捉要素と上記ポンプとの間に配置され、通過する水蒸気、揮発性有機成分、および不揮発性有機成分のうちの少なくとも1つを含む呼気凝縮液(EBC)を充填ベッドを通じて捕捉するように構成されたトラップをさらに有する請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
上記充填ベッドカラムが、樹脂、セルロース、シリカ、アガロース、および水和Feナノ粒子のうちの少なくとも1つを有する固体粒子を有する請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
上記充填ベッドカラムが、表面にC18官能基を具備する樹脂ビーズ、表面に硫酸エステル官能基を具備するセルロースビーズ、およびそれらの混合物の少なくとも1つを有する請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
上記樹脂ビーズおよびセルロースビーズが少なくとも約20μmの公称直径を具備する請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
上記樹脂ビーズおよびセルロースビーズが、約40ミクロン~約150ミクロンの公称直径を具備する請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
上記ビーズが2つの多孔質ポリマーフリットディスクの間に充填される請求項6に記載のシステム。
【請求項10】
上記ポンプを使用して上記ベッドを通して引き出される公称流量が、約200ml/分~約3L/分である請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
呼吸器疾患に感染した患者を監視するためのシステムにおいて、
請求項1に記載の呼気収集システムと、
呼吸器疾患に特有の捕捉されたエアロゾル粒子を充填ベッドカラムから1または複数の液体サンプルに抽出するサンプル抽出システムと、
上記1または複数の液体サンプルの中のエアロゾル粒子を分析する分析装置とを有することを特徴とするシステム。
【請求項12】
上記抽出システムは、上記充填ベッドカラムを少なくとも1つの溶媒でフラッシュし、上記充填ベッドからエアロゾル粒子を含む溶媒を収集する手段を有する請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
上記少なくとも1つの溶媒が、アセトニトリル、メタノール、トリフルオロ酢酸(TFA)、イソプロパノール(IPA)のうちの少なくとも1つを有し、残りが水である請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
上記1または複数の溶媒が、水中約50体積%~約70体積%のアセトニトリル、水中約50体積%~約70体積%のイソプロパノール、水中約0.05体積%のTFAを有する請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
上記分析装置が、PCR、ELISA、rt―PCR、質量分析計(MS)、MALDI―MS、ESI―MS、およびMALDI―TOFMS、並びにLC―MS/MSのうちの少なくとも1つを有する請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
呼気中のエアロゾル粒子が、微生物、ウイルス、代謝産物バイオマーカー、脂質バイオマーカー、および呼吸器疾患に特徴的なプロテオームバイオマーカーのうちの少なくとも1つを有する請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
呼吸器疾患に感染し、当該感染患者の呼吸を補助するために人工呼吸器に接続された患者を監視するための方法において、
感染患者の呼吸を補助するために設けられた人工呼吸器の呼気チューブに取り外し可能に接続されたサンプル収集システムを提供するステップであって、当該システムは、
上記患者によって生成される呼気中のエアロゾル粒子を選択的に捕捉するための充填ベッドカラムをそれぞれに有する1または複数のサンプル捕捉要素であって、上記エアロゾル粒子は呼吸器疾患に特徴的である、上記1または複数のサンプル捕捉要素と、
上記サンプル捕捉要素と流体連通し、上記呼気エアロゾルを上記サンプル捕捉要素の中に引き込むように構成されたポンプとを有する、上記スサンプル収集システムを提供するテップと、
捕捉されたエアロゾル粒子を上記充填ベッドカラムから1または複数の液体サンプルに抽出するステップと、
上記1または複数の液体サンプル中のエアロゾル粒子を分析して、呼吸器疾患の有無を判定するステップとを有することを特徴とする方法。
【請求項18】
上記サンプル収集システムを上記人工呼吸器の呼気チューブに取り外し可能に接続する前に、70%ACN、水、および0.05%TFAのうちの少なくとも1つを使用してカラムを洗浄するステップをさらに有する請求項17に記載の方法。
【請求項19】
上記抽出ステップが、上記充填ベッドカラムを最初に約50体積%のACNでフラッシュするステップと、続いて約70体積%のIPAでフラッシュするステップとを有する請求項17に記載の方法。
【請求項20】
サンプル処理ステップをさらに有し、
当該サンプル処理ステップは、
上記1または複数のサンプルをMALDIマトリックスと混合するステップと、
1または複数の混合サンプルおよびMALDIマトリックスを1または複数のサンプルプレートに被着させるステップとを有する請求項17に記載の方法。
【請求項21】
サンプル処理ステップをさらに有し、当該サンプル処理ステップは、上記サンプル抽出システムから抽出された上記1または複数の液体サンプルをタンパク質消化に供して、上記呼吸器疾患に特徴的なペプチドサンプルを生成するステップを有する請求項17に記載の方法。
【請求項22】
上記サンプル処理ステップが、さらに、
ペプチドサンプルをMALDIマトリックスと混合するステップと、
混合サンプルおよびMALDIマトリックスをサンプルプレートに被着させるステップとを有する請求項21記載の方法。
【請求項23】
上記分析するステップが、PCR、ELISA、rt―PCR、質量分析計(MS)、MALDI―MS、ESI―MS、およびMALDI―TOFMS、並びにLC―MS/MSのうちの少なくとも1つを使用して上記サンプルプレートを分析する請求項20に記載の方法。
【請求項24】
上記分析するステップが、PCR、ELISA、rt―PCR、質量分析計(MS)、MALDI―MS、ESI―MS、およびMALDI―TOFMS、並びにLC―MS/MSのうちの少なくとも1つを使用して上記サンプルプレートを分析する請求項22に記載の方法。
【請求項25】
呼吸器疾患の存在を調べるために密閉空間内の周囲の空気をサンプリングし、周囲の空気中のエアロゾル粒子を捕捉するためのシステムにおいて、
サンプル収集モジュールであって、
雰囲気空気中に存在する呼気からエアロゾル化粒子を選択的に捕捉するための充填ベッドカラムをそれぞれに備える1または複数のサンプル捕捉要素と、
1または複数のサンプル捕捉要素に入る前に周囲の空気を加湿するネブライザとを有する、上記サンプル収集モジュールと、
水ポンプ、電源、コントローラ、1または複数のサンプル捕捉要素を通して周囲の空気を引き込むエアポンプ、並びに、上記ネブライザおよび上記水ポンプと流体連通する水容器のうちの少なくとも1つを有する流体モジュールであって、当該流体モジュールは、上記サンプル収集モジュールの動作を制御するように構成される、上記流体モジュールとを有することを特徴とするシステム。
【請求項26】
上記流体モジュールが、上記サンプル捕捉要素と上記ポンプとの間に配置されたCOセンサーおよび粒子計数器のうちの少なくとも1つをさらに有する請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
上記サンプル収集モジュールおよび上記流体モジュールがそれぞれ可搬型筐体内に配置される請求項25に記載のシステム。
【請求項28】
上記サンプル収集モジュールおよび上記流体モジュールは、クイック接続/切断カップリングを使用して、互いに流体的かつ電気的に接続されるように構成され、当該クイック接続/切断カップリングは、適切な機械的および電気的接触を検出し、上記筐体の1つに配置されたグラフィカルユーザーインターフェイスおよび可聴アラームの少なくとも1つを介してユーザーに警告するように構成される請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
上記サンプル収集モジュールおよび上記流体モジュールが同じ携帯用筐体内に配置される請求項25に記載のシステム。
【請求項30】
各充填ベッドカラムが、表面にC18官能基を有する樹脂ビーズ、表面に硫酸エステル官能基を有するセルロースビーズ、およびそれらの混合物の少なくとも1つを有する請求項25に記載のシステム。
【請求項31】
上記樹脂ビーズおよびセルロースビーズが少なくとも約20μmの公称直径を具備する請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
上記樹脂ビーズおよびセルロースビーズが、約40ミクロン~約200ミクロンの公称直径を具備する請求項30に記載のシステム。
【請求項33】
上記ポンプを使用して各捕捉要素を通して引き出される公称流量が少なくとも約20L/分である請求項25に記載のシステム。
【請求項34】
上記サンプル収集モジュールが、上記水ポンプおよび上記水容器のうちの少なくとも一方と流体連通して配置された貯水器をさらに有し、上記ネブライザが水中に浸漬され、上記貯水器の出口近くに配置される請求項25に記載のシステム。
【請求項35】
上記ネブライザーが超音波ミスト噴霧器である請求項34に記載のシステム。
【請求項36】
雰囲気空気中の呼吸器疾患病原体を検出するためのシステムにおいて、
当該システムは、
雰囲気空気中のエアロゾル粒子をサンプリングして捕捉するための請求項25に記載のシステムと、
呼吸器疾患に特有の捕捉されたエアロゾル粒子を各充填層カラムから1または複数の液体サンプルに抽出するサンプル抽出システムと、
上記1または複数の液体サンプルの中の上記エアロゾル粒子を分析する分析装置とを有することを特徴とするシステム。
【請求項37】
上記抽出システムが、各充填ベッドカラムを少なくとも1つの溶媒でフラッシュし、各充填ベッドからエアロゾル粒子を含む溶媒を収集する手段を有する請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
上記少なくとも1つの溶媒は、アセトニトリル、メタノール、イソプロパノール(IPA)のうちの少なくとも1つを有し、残りは水である請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
上記1または複数の溶媒が、水中約50体積%~約70体積%のアセトニトリル、および、水中約50体積%~約70体積%のイソプロパノールを有する請求項37に記載のシステム。
【請求項40】
上記分析装置が、PCR、ELISA、rt―PCR、質量分析計(MS)、MALDI―MS、ESI―MS、および、MALDI―TOFMS、並びに、LC―MS/MSのうちの少なくとも1つを有する請求項36に記載のシステム。
【請求項41】
密閉空間内の雰囲気空気中の呼吸器疾患病原体を検出するための方法において、
それぞれに充填ベッドカラムを備える1または複数のサンプル捕捉要素を使用して、雰囲気空気中の呼気からエアロゾル化粒子を選択的に捕捉するステップであって、雰囲気空気は、上記1または複数のサンプル捕捉要素に入る前に加湿され、エアポンプを使用して、上記1または複数のサンプル捕捉要素に引き込まれる、上記ステップと、
呼吸器疾患に特有の捕捉されたエアロゾル粒子を各充填層カラムから1または複数の液体サンプルに抽出するステップと、
上記1または複数の液体サンプルの中のエアロゾル粒子を分析するステップとを有することを特徴とする方法。
【請求項42】
上記充填ベッドカラムが、表面にC18官能基を有する樹脂ビーズ、表面に硫酸エステル官能基を有するセルロースビーズ、および、それらの混合物の少なくとも1つを有する請求項41に記載の方法。
【請求項43】
上記抽出ステップが、アセトニトリル、メタノール、イソプロパノール(IPA)のうちの少なくとも1つで上記充填ベッドカラムをフラッシュするステップを含み、残りは水である請求項41に記載の方法。
【請求項44】
サンプル処理ステップをさらに有し、
当該サンプル処理ステップは、
上記1または複数のサンプルをMALDIマトリックスと混合するステップと、
1または複数の混合サンプルおよびMALDIマトリックスを1または複数のサンプルプレートに被着するステップとを有する請求項41に記載の方法。
【請求項45】
サンプル処理ステップをさらに有し、当該サンプル処理ステップは、上記サンプル抽出システムから抽出された上記1または複数の液体サンプルをタンパク質消化に供して、上記呼吸器疾患に特徴的なペプチドサンプルを生成するステップを有する請求項41に記載の方法。
【請求項46】
上記サンプル処理ステップが、さらに、
ペプチドサンプルをMALDIマトリックスと混合するステップと、
当該混合サンプルおよびMALDIマトリックスをサンプルプレートに被着するステップとを有する請求項45に記載の方法。
【請求項47】
上記分析装置が、PCR、ELISA、rt―PCR、質量分析計(MS)、MALDI―MS、ESI―MS、およびMALDI―TOFMS、並びに、LC―MS/MSのうちの少なくとも1つを有する請求項46に記載の方法。
【請求項48】
エアロゾル化した細菌およびウイルスを捕捉するためのサンプル捕捉要素において、
ポンプを使用して充填ベッドカラムを通して引き込まれた呼気および雰囲気空気のうちの少なくとも1つにおいてエアロゾル化された細菌およびウイルス粒子を選択的に捕捉するための充填ベッドカラムを有し、
当該充填ベッドカラムが、
表面にC18官能基を有する樹脂ビーズ、表面に硫酸エステル官能基を有するセルロースビーズ、およびそれらの混合物のうちの少なくとも1つを有し、上記樹脂ビーズおよびセルロースビーズは、約40ミクロン~約200ミクロンの公称直径を具備することを特徴とするサンプル捕捉要素。
【請求項49】
上記ビーズが、上記充填ベッドカラムにおいて2つの多孔質ポリマーフリットディスクの間に充填される請求項48に記載のサンプル捕捉要素。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
この出願は、その利益を主張する。2021年3月31日に出願され、「充填ベッドシステムおよび方法を使用したエアロゾル化生体材料粒子の捕捉による呼吸器疾患の診断」というタイトルの米国仮出願第63/169130号、2021年9月28日に出願され、「充填ベッドシステムおよび方法を使用したエアロゾル化生体材料粒子の捕捉による呼吸器疾患の診断」というタイトルの米国仮出願第63/249357号、および、2022年3月30日に出願され、「充填ベッドシステムおよび方法を使用したエアロゾル化生体材料粒子の捕捉による呼吸器疾患の診断」というタイトルの米国特許第63/325435号に関連しており、その利益を主張し、これらの全開示内容は、その全体が参照によりここに組み込まれる。
【連邦政府の資金提供による研究開発】
【0002】
なし。
【技術分野】
【0003】
この開示は、COVID―19などの気道疾患を含むいくつかの疾患に対する迅速かつ低コストのポイントオブケアアッセイを可能にする、呼気および他のエアロゾル中のウイルスおよび細菌粒子などのエアロゾル化有機生体材料を捕捉および分析するための方法および装置に関する。より具体的には、これに限定されないけれども、この開示は、MALDI―TOFMSを含む質量分析法を使用して、COVID―19および結核などの呼吸器疾患を検出するために、呼気および他のエアロゾル中の不揮発性有機物を分析するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0004】
コロナウイルス病(COVID―19)は、新たに出現したコロナウイルスSARS―CoV―2によって引き起こされる疾患である。この新しいコロナウイルスは呼吸器ウイルスであり、主に感染者が咳やくしゃみをしたときに発生する飛沫、または唾液の飛沫や鼻からの分泌物を介して広がる。新しいコロナウイルスは非常に伝染性が高く、進行中のCOVID―19パンデミックを引き起こした。これは、このウイルスがインフルエンザよりも急速に広がっていることを示唆している。緩和を支援するには、迅速な検出ツールが必要である。
【0005】
さらに、結核(TB)は、毎日4000人を超える死者を出し、世界的な死因(殺人者)としてHIV/AIDSを上回っている(Patterson,B等、2018)。発生率の低下は、報告されている年率1.5%と不十分なままであり、治療だけで疾患の負担が大幅に軽減されるとは考えにくい。HIVが非常に蔓延しているコミュニティでは、結核菌(Mtb)のジェノタイピング研究により、再発ではなく、最近の感染が結核症例の大部分(54%)を占めることがわかる。結核感染の物理的プロセスはよくわかっていないままであり、感染性エアロゾルの生成、放出、および吸入における重要なイベントを解明するための新しい技術の適用は遅れている。空気中の感染性粒子を特徴付ける実証研究はほとんどない。調査を悩ませている2つの主要な問題は、自然に生成されたMtb粒子が低濃度であることと、空気中のサンプルの環境および患者由来の細菌および真菌汚染の合併症である。それにもかかわらず、空中浮遊探知の多くの試みがなされてきた。ウガンダでの2004年の概念実証研究とその後の実現可能性研究では、肺結核患者から咳によって生成されたエアロゾルがサンプリングされた。2つの実行可能なカスケードインパクターを備えたサンプリングチャンバに直接咳をすると、1~6日間の化学療法を受けたにもかかわらず、参加者の4分の1以上から陽性培養が得られた。同じ装置を使用した追跡調査では、エアロゾルの細菌負荷が高い参加者は、家庭での感染率が高くなり、病気の発見につながる可能性があり、定量的な空中サンプリングが臨床的に関連する感染性の尺度として役立つ可能性があることを示唆することがわかった。したがって、伝染の中断は、結核の発生率に急速で測定可能な影響を与える可能性がある。
【0006】
結核の伝染を制御する最良の方法は、活動性TB症例を迅速に特定して治療することである(Wood,R.C.等、2015)。肺結核の診断は、通常、患者の喀痰の微生物学的、顕微鏡的、または分子的分析によって行われる。ほとんどの発展途上国における結核感染の「ゴールドスタンダード」検査は、喀痰サンプルに基づく塗抹培養である。サンプルを培養プレートに塗抹し、Mtbに特異的な染色剤を加え、顕微鏡を使用して染色した細胞を数える。塗抹標本の細胞の濃度が設定されたしきい値よりも高い場合、サンプルは陽性として分類される。TB数がこのしきい値を下回っている場合は、陰性と分類される。診断には数時間かかる場合がある。診断サンプルとしての喀痰の必要性は、患者から喀痰を採取するという課題とその複雑な組成のために制限要因となっている。材料の粘度は、テストの感度を制限し、サンプル間の不均一性を高め、テストに関連するコストと労力を増加させる。さらに、喀痰(咳を必要とする)は、医療従事者にとって職業上の危険となる。喀痰には、サンプル媒体としていくつかの欠点がある。まず、良好な喀痰サンプルを提供できる患者は約50%にすぎない。たとえば、8歳前後の子供は、通常、喉の奥から痰を「咳き込む」能力が発達していないため、要求に応じてサンプルを作成できないことがよくある。お年寄りや病気の方はたんを吐き出す力がないかもしれない。他の人は単に喉に痰がないかもしれない。したがって、喀痰分析に基づく診断方法では、診断が必要な患者の50%もの患者に診断を提供できない可能性がある。喀痰は、患者が抗生物質で治療されてから1~2日後に採取された場合、診断サンプルとしては有用ではない。これは、検体が肺の奥深くにある病状を代表するものではなくなったためであり、治療開始後数日以内に、喀痰中の生きているMtbの数が大幅に減少する。結核感染の診断のためのサンプル媒体として、尿と血液が提案されている。血液は侵襲性が高く、多くの場合HIV陽性である血液サンプルの処理コストが高くなる。これは、世界の一部の地域では、多くの結核患者がHIVの重複感染も抱えているためである。さらに、活動性結核に感染している患者は、血中に多くの結核細胞が循環していない可能性がある。尿ベースの診断法も提案されているけれども、これらの検査は生きている結核菌以外の病気のバイオマーカーを探しており、広範な臨床使用が検証されていない。
【0007】
採取および取り扱いがより容易で、より安全で、より均一なサンプルは、TB診断を単純化するであろう。呼気はエアロゾル(「EBA」)と蒸気を含み、これらを非侵襲的に収集して特徴を分析し、肺の生理学的および病理学的プロセスを解明する(Hunt、2002)。アッセイ用に呼気を捕らえるために、呼気を凝縮装置に通して、呼気凝縮液(「EBC」)と呼ばれる流体の蓄積を生成する。EBCは主に水蒸気に由来するけれども、サイトカイン、脂質、界面活性剤、イオン、酸化生成物、アデノシン、ヒスタミン、アセチルコリン、セロトニンなどの不揮発性化合物に溶解している。さらに、EBCは、アンモニア、過酸化水素、エタノール、その他の揮発性有機化合物など、潜在的に揮発性の水溶性化合物をトラップする。EBCのpHは容易に測定できる。EBCには、エアロゾル化された気道内膜液および揮発性化合物が含まれており、肺で進行中の生化学的および炎症性活動を非侵襲的に示す。EBCへの関心が急速に高まったのは、肺疾患において、EBCには感染者と健康な個人を区別するために使用できる測定可能な特徴があるという認識から生じている。これらのアッセイは、急性および慢性喘息、慢性閉塞性肺疾患、成人呼吸窮迫症候群、職業病、および嚢胞性線維症における気道および肺の酸化還元偏差、酸塩基状態、および炎症の程度と種類の証拠を提供する。希釈度が不確実で可変であることを特徴とするEBCは、本来の気道内膜液内の個々の溶質濃度を正確に評価できない場合がある。ただし、濃度が健康状態と病気の間で大幅に異なる場合、またはサンプルに含まれる溶質の比率に基づいている場合は、有用な情報を提供できる。
【0008】
Patterson等(2018)は、特注の呼吸エアロゾルサンプリングチャンバ(RASC)を使用した。これは、患者由来の呼気エアロゾルサンプリングを最適化し、1人の患者から呼吸可能なエアロゾルを分離して蓄積するように設計された新しい装置である。環境サンプリングにより、チャンバ内の空気中のエージング期間後に存在するMtbが検出される。新たに診断された35人のGeneXpert(Cepheid,Inc.,Sunnyvale,CA)の喀痰陽性結核患者が、約1.4mの容積を有するRASCチャンバ内で1時間の監禁中に監視された。GeneXpert遺伝子アッセイは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に基づいており、結核診断のためにサンプルを分析し、結核サンプルに薬剤耐性遺伝子があるかどうかを示すために使用して良い。TBのGeneXpertPCRアッセイでは、喀痰サンプルを受け入れ、約1時間で陽性または陰性の結果を得ることができる。チャンバには、空気力学的な粒子サイズの検出、実行可能および実行不可能なサンプリングデバイス、リアルタイムのCOモニタリング、および咳の録音が組み込まれていた。微生物培養と液滴デジタルポリメラーゼ連鎖反応(ddPCR)を使用して、各バイオエアロゾルコレクションデバイスでMtbを検出した。Mtbはエアロゾルサンプルの77%で検出され、サンプルの42%が抗酸菌培養で陽性であり、92%がddPCRで陽性であった。咳の発生率と培養可能なバイオエアロゾルとの間に相関関係が見つかった。Mtbは、実行可能なすべてのカスケードインパクターステージで検出され、エアロゾルサイズ2.0~3.5μmにピークがあった。これは、エアロゾル培養陽性の呼気1リットルあたり0.09CFUの中央値と、呼気微粒子バイオエアロゾルの推定濃度中央値4.5x10CFU/mlを示唆している。Mtbは、RASCチャンバを使用して未治療のTB患者の大多数が吐き出したバイオエアロゾルで検出された。分子検出は、固体培地でのMtb培養よりも感度が高いことがわかった。
【0009】
Mtbは、培養、ddPCR、電子顕微鏡法、イムノアッセイ、および細胞染色(例えば、oramineおよびdmn―Tre)によってEBAにおいて同定することができる。これらのうち、PCRおよびイムノアッセイは、迅速かつ種レベルに特異的な可能性を秘めている。PCRおよびその他のゲノミクスに基づく技術は、菌株レベルに特異的である。質量分析は、細菌感染から得られた培養物のひずみレベルに特異的であることも示されている。たとえば、Bruker Daltonics(ドイツ)のBiotyperは、ヒトに感染を引き起こす最大15,000株の細菌を特定できることが示されている。これらの技術は、EBAから結核感染を特定できることが示されている。リポアラビノマンナンに基づくものなど、Mtb検出のためのイムノアッセイもよく知られている。
【0010】
TBの場合、TBに感染した人々は、個人が診療所に出向いたときに受動的な症例発見を通じて診断されることが多い。能動的症例発見(「ACF」)は、一次医療制度の外で結核感染が疑われる人々に連絡する他の方法を含むと一般に考えられている。WHOによると、ACFは「迅速に適用できる検査、審査、またはその他の手順を使用して、活動性結核が疑われる人々を体系的に特定すること」である。ACFの目標は、感染者を早期に治療して、感染の平均期間を短縮し、それによって病気の蔓延を減らすことである。結核の場合、診療所に助けを求めるまでに、その人は約10人から約115人に結核を感染させている可能性がある。ACFは重大な結核感染の減少または防止に役立つ。喀痰分析や血液分析などの診断システムと方法は、自動化されておらず、自律的に操作されていないか、迅速ではない。多くは分析ごとに消費される高価なアッセイを伴っているため、特に発展途上国や発展途上国では、積極的な症例発見には一般的な有用性がない。前述のように、EBA分析は、高価なアッセイや消耗品の必要性が排除されるため、迅速な分析、携帯性、および低コストを提供する結核検出のための説得力のある診断ツールであると思われる。McDevitt等(2013)は、インフルエンザ診断のためのEBA分析装置および方法を報告している。インパクターを使用して呼気から大きな粒子(>4μm)を除去し、続いて小さな粒子(<4μm)を湿式フィルムコレクターで除去している。収集された粒子の2つのサイズのビンは、ゲノミクスに基づく方法である逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(rt―PCR)を使用して、インフルエンザウイルスについて分析された。PCR技術は、酵素を含む他の生体分子と組み合わせた生体分子プローブを使用して、特定の配列がサンプルに存在する場合、DNAの特定の配列を増幅する。標的配列は、同定されている疾患に特異的であると考えられている。McDevitt等は、EBAサンプルを使用してインフルエンザを診断できることを示した。開示された装置および方法には、実用的な観点からいくつかの欠点がある。まず、呼気エアロゾルのサンプルは、体積が数ミリリットルの個別のサンプルに収集されるため、サンプルを濃縮するにはかなりの労力が必要である。さらに、診断装置は、サンプル収集器に結合または統合されておらず、ACFツールとして使用するのに適していない。RNAアッセイを自動化して、結核分析のための自律的な診断ツールを作成する機能は明らかではない。特定の患者によって十分な量の咳または呼気エアロゾルが生成されたかどうかを判断する方法は記載されていない。その結果、サンプルがインフルエンザに対して陰性であることが判明した場合、それは不適切なサンプル収集に起因する偽陰性が原因である可能性がある。種々の呼吸操作中に生成されるエアロゾル化された肺液の量に関して、個々の人の間で大きなばらつきがあることはよく知られている。
【0011】
GeneXpert Ultraは、PCR技術を使用する最先端のゲノミクスベースのポイントオブケア診断装置である。結核やその他の呼吸器疾患のACFを実行するためにEBAサンプル収集方法と統合することができるけれども、サンプル収集時間が長すぎて実用的ではない。Patterson等は、20~200の結核菌が通常EBAで生成され、1時間のサンプリング期間で収集できることを示している。GeneXpertUltraを診断アッセイとして使用するには、最低1時間のサンプリングが必要である。GeneXpertは、空気中の病原体について空気サンプルを分析するために空気をサンプリングするシステムと統合することができる。BDSシステム(Northup Grumman,Edgewood,MD)は、郵便物が配送センターを通過する際に炭疽菌を引き起こす細菌胞子について、米国郵政公社の郵便物をスクリーニングするために使用されている。湿式壁サイクロンとGeneXpertPCRシステムを組み合わせて、自律的に空気をサンプリングし、病原体が存在するかどうかを報告する。ただし、GeneXpertUltraアッセイは、テストあたりのコストが比較的高く、アッセイを完了して結果を出すまでに約1時間かかる。一般に、PCRベースの診断は、サンプリングと分析に必要な時間が長く、検査あたりのコストが比較的高いため、ACFアプリケーションの結核スクリーニングには適していない。
【0012】
診断アッセイに関連する時間は、フィールドテストまたは「ポイントオブケア」テストにとって重要なパラメータである。定義上、ACFは医療システムの外で行われるため、ACFはフィールド診断アッセイの一例である。米国では、ポイントオブケア検査で20分以内に回答が得られる必要がある。そうでない場合、検査は遅すぎて、短い患者待ち時間を達成するには受け入れられないと見なされる。発展途上国、特に結核の流行歴のある国では、GeneXpertを使用して約1時間で診断を下すことができる。前述のように、このアッセイは「テストあたりのコスト」ベースで実装するには費用がかかるため、まだ広く展開されていない。費用がかかるため、健康そうに見える(無症候性)が結核に感染している可能性がある患者のスクリーニングには使用されず、他の検査や要因に基づいて強く疑われる診断を確認するために使用される。
【0013】
Fennelly等(2004)は、活動的な患者であることが知られている個人を使用して、咳エアロゾルおよび2つのアンダーソンカスケードインパクタを含む収集チャンバを使用するTB分析を記載した。個人は、激しい咳を5分間ずつ2回繰り返すように求められた。影響を受けたサンプルの培養には30~60日かかったため、このアプローチは自動化に適していない。臨床サンプルとしてのEBAの困難な側面は、息から収集できる呼気微粒子のサンプル量が比較的少ないことである。さらに、収集された質量のかなりの部分が水であることである。診断情報を含む分子(「バイオマーカー」)は、ナノリットルまたはピコグラムの量しかない。さらに、エアロゾル収集方法は、呼気中のバイオマスの大部分を捕捉するのに効果的でなければならない。呼気には、潮呼吸、深呼吸、咳、くしゃみなど、種々の操作によって肺から吐き出される空気が含まれる。強制肺活量(FVC)などの特定のタイプの深呼吸操作を使用して、肺活量の最大量を測定するために、可能な限り息を吸い込み、可能な限り遠く(または深く)息を吐き出して肺活量を最大化することができる。強制呼気量(FEV)は、人が強制的に息を吐き出すことができる空気の量を測定する。吐き出された空気の量は、強制呼吸の最初の秒(FEV1)、2番目の秒(FEV2)、および/または3番目の秒(FEV3)の間に測定することができる。強制肺活量(FVC)は、FEVテスト中に吐き出された空気の総量である。努力呼気量と努力肺活量は、スパイロメトリーで測定される肺機能検査である。強制呼気量は、肺機能の重要な測定値である。
【0014】
呼吸器疾患は呼気エアロゾルおよび呼気凝縮物から検出できることが研究により示されているけれども、結核、インフルエンザ、肺炎などの感染症または疾患の最新の臨床検査では、喀痰、血液、または鼻腔スワブを利用し続けている。呼気分析ツールは、呼気中に存在する微量の検体を効率的に収集および濃縮する方法およびデバイスが不足しているため、商品化されていない。さらに、特定の診断に十分な呼気量を評価する基準や方法論がない。開示された例示的なデバイスおよび方法は、呼気エアロゾルおよび呼気凝縮物を高流速、高効率で、比較的濃縮されたサンプルに収集することによって、これらの制限を克服する。さらに、エアロゾルのサイズ選別を組み込んで、特定の検体の信号対雑音比を増加させてから、検体を収集することができる。次に、濃縮されたサンプルをいくつかの方法で分析することができるけれども、好ましくは、目的の分析物に対して感度が高く、迅速で、高度に特異的な方法を使用する。より好ましくは、分析は迅速かつほぼリアルタイムである。質量分析、リアルタイムPCR、およびイムノアッセイは、感度が高く、特異的で、ほぼリアルタイムである可能性が最も高い。
【0015】
喀痰分析よりも迅速かつ信頼性が高く、血液分析よりも侵襲性が低い、質量分析(「MS」)などの高速診断ツールと組み合わせることができ、高速で、感度が高く、特異的で、好ましくは、テストあたりのコストが低いことを特徴としている診断アッセイを実現できるサンプル収集方法が必要とされている。このようなシステムは、結核やその他の肺や気道の病気の積極的な症例発見(ACF)に使用できる。効果的であるためには、ACFのシステムは「診断ごと」に迅速かつ安価でなければならない。結核の伝染を予防的に防ぎ、実際に結核に感染している少数の人を探索するために、多数の個人をスクリーニングするためには、検査あたりのコストが低いことが必要条件である。おそらく「風邪」に感染している患者がライノウイルスに感染している可能性があるため、インフルエンザやその他の病原性ウイルスのポイントオブケア診断にも低コストのデバイスおよび方法が必要になる。場合によっては、呼吸器感染症は細菌または真菌微生物によって引き起こされ、抗生物質で治療できる場合がある。それ以外の場合、微生物は抗生物質に耐性がある可能性があり、抗生物質に対する微生物の耐性を特定できる診断方法が望ましい。不十分なサンプル量による偽陰性の発生を最小限に抑えながら、気道内のウイルス感染と細菌感染を区別するための迅速なEBAメソッドが望まれる。質量分析、PCRを含むゲノミクス法、およびイムノアッセイは、感度と特異性が高い可能性がある。質量分析、特にMALDI飛行時間型質量分析(MALDI―TOFMS)は、感度が高く、特異的で、ほぼリアルタイムであることが実証されているため、EBAおよびEBCサンプルの分析に適した診断ツールである。
【発明の概要】
【0016】
呼吸器疾患に感染し、当該感染患者の呼吸を補助するために人工呼吸器に接続された患者を監視するための例示的な呼気収集システムが開示され、この呼気収集システムは、上記患者によって生成される呼気中のエアロゾル化粒子を選択的に捕捉するための充填層カラムをそれぞれに1または複数のサンプル捕捉要素であって、当該サンプル捕捉要素が上記人工呼吸器の呼気チューブに取り外し可能に接続されている上記1または複数のサンプル捕捉要素と、ポンプ、電源、およびコントローラのうちの少なくとも1つを備えるサブシステムであって、当該サブシステムは、上記サンプル捕捉要素と流体連通して配置され、上記サンプル捕捉要素の動作を制御するように構成され、上記ポンプは、呼気エアロゾルがサンプル捕捉要素に引き込むように構成される、上記サブシステムとを有する。当該サブシステムは、上記サンプル捕捉要素と上記ポンプとの間に配置されたCOセンサーおよび粒子計数器のうちの少なくとも1つをさらに有して良い。上記サブシステムは、ポータブル筐体内に配置されて良い。上記システムは、上記サンプル捕捉要素と上記ポンプとの間に配置され、通過する水蒸気、揮発性有機成分、および不揮発性有機成分のうちの少なくとも1つを含む呼気凝縮液(EBC)を充填ベッドを通じて捕捉するように構成されたトラップをさらに有して良い。上記充填ベッドカラムは、樹脂、セルロース、シリカ、アガロース、および水和Feナノ粒子のうちの少なくとも1つを有する固体粒子を有して良い。上記充填ベッドカラムは、表面にC18官能基を具備する樹脂ビーズ、表面に硫酸エステル官能基を具備するセルロースビーズ、およびそれらの混合物の少なくとも1つを有して良い。上記樹脂ビーズおよびセルロースビーズが少なくとも約20μmの公称直径を具備して良い。上記樹脂ビーズおよびセルロースビーズは、約40ミクロン~約150ミクロンの公称直径を具備して良い。上記ビーズは2つの多孔質ポリマーフリットディスクの間に充填されて良い。上記ポンプを使用して上記ベッドを通して引き出される公称流量が、約200ml/分~約3L/分であって良い。
【0017】
呼吸器疾患に感染した患者を監視するための事例的なシステムが開示され、この事例的なシステムは、上述の呼気収集システムと、呼吸器疾患に特有の捕捉されたエアロゾル粒子を充填ベッドカラムから1または複数の液体サンプルに抽出するサンプル抽出システムと、上記1または複数の液体サンプルの中のエアロゾル粒子を分析する分析装置とを有する。上記抽出システムは、上記充填ベッドカラムを少なくとも1つの溶媒でフラッシュし、上記充填ベッドからエアロゾル粒子を含む溶媒を収集する手段を有して良い。上記少なくとも1つの溶媒は、アセトニトリル、メタノール、トリフルオロ酢酸(TFA)、イソプロパノール(IPA)のうちの少なくとも1つを有し、残りが水であって良い。上記1または複数の溶媒は、水中約50体積%~約70体積%のアセトニトリル、水中約50体積%~約70体積%のイソプロパノール、水中約0.05体積%のTFAを有して良い。上記分析装置は、PCR、ELISA、rt―PCR、質量分析計(MS)、MALDI―MS、ESI―MS、およびMALDI―TOFMS、並びにLC―MS/MSのうちの少なくとも1つを有して良い。呼気中のエアロゾル粒子は、微生物、ウイルス、代謝産物バイオマーカー、脂質バイオマーカー、および呼吸器疾患に特徴的なプロテオームバイオマーカーのうちの少なくとも1つを有して良い。
【0018】
呼吸器疾患に感染し、当該感染患者の呼吸を補助するために人工呼吸器に接続された患者を監視するための例示的な方法が開示され、当該方法は、感染患者の呼吸を補助するために設けられた人工呼吸器の呼気チューブに取り外し可能に接続されたサンプル収集システムを提供するステップであって、当該システムは、上記患者によって生成される呼気中のエアロゾル粒子を選択的に捕捉するための充填ベッドカラムをそれぞれに有する1または複数のサンプル捕捉要素であって、上記エアロゾル粒子は呼吸器疾患に特徴的である、上記1または複数のサンプル捕捉要素と、上記サンプル捕捉要素と流体連通し、上記呼気エアロゾルを上記サンプル捕捉要素の中に引き込むように構成されたポンプとを有する、上記スサンプル収集システムを提供するテップと、捕捉されたエアロゾル粒子を上記充填ベッドカラムから1または複数の液体サンプルに抽出するステップと、上記1または複数の液体サンプル中のエアロゾル粒子を分析して、呼吸器疾患の有無を判定するステップとを有する。当該事例的な方法は、上記サンプル収集システムを上記人工呼吸器の呼気チューブに取り外し可能に接続する前に、70%ACN、水、および0.05%TFAのうちの少なくとも1つを使用してカラムを洗浄するステップをさらに有して良い。上記抽出ステップは、上記充填ベッドカラムを最初に約50体積%のACNでフラッシュするステップと、続いて約70体積%のIPAでフラッシュするステップとを有して良い。当該事例的な方法は、サンプル処理ステップをさらに有して良く、当該サンプル処理ステップは、上記1または複数のサンプルをMALDIマトリックスと混合するステップと、1または複数の混合サンプルおよびMALDIマトリックスを1または複数のサンプルプレートに被着させるステップとを有して良い。当該事例的な方法は、サンプル処理ステップをさらに有して良く、当該サンプル処理ステップは、上記サンプル抽出システムから抽出された上記1または複数の液体サンプルをタンパク質消化に供して、上記呼吸器疾患に特徴的なペプチドサンプルを生成するステップを有して良い。上記サンプル処理ステップは、さらに、ペプチドサンプルをMALDIマトリックスと混合するステップと、混合サンプルおよびMALDIマトリックスをサンプルプレートに被着させるステップとを有して良い。上記分析するステップは、PCR、ELISA、rt―PCR、質量分析計(MS)、MALDI―MS、ESI―MS、およびMALDI―TOFMS、並びにLC―MS/MSのうちの少なくとも1つを使用して上記サンプルプレートを分析して良い。
【0019】
呼吸器疾患の存在を調べるために密閉空間内の周囲の空気をサンプリングし、周囲の空気中のエアロゾル粒子を捕捉するための事例的なシステムが開示され、当該システムは、サンプル収集モジュールであって、雰囲気空気中に存在する呼気からエアロゾル化粒子を選択的に捕捉するための充填ベッドカラムをそれぞれに備える1または複数のサンプル捕捉要素と、1または複数のサンプル捕捉要素に入る前に周囲の空気を加湿するネブライザとを有する、上記サンプル収集モジュールと、水ポンプ、電源、コントローラ、1または複数のサンプル捕捉要素を通して周囲の空気を引き込むエアポンプ、並びに、上記ネブライザおよび上記水ポンプと流体連通する水容器のうちの少なくとも1つを有する流体モジュールであって、当該流体モジュールは、上記サンプル収集モジュールの動作を制御するように構成される、上記流体モジュールとを有する。上記流体モジュールは、上記サンプル捕捉要素と上記ポンプとの間に配置されたCOセンサーおよび粒子計数器のうちの少なくとも1つをさらに有して良い。上記サンプル収集モジュールおよび上記流体モジュールは、それぞれ可搬型筐体内に配置されて良い。上記サンプル収集モジュールおよび上記流体モジュールは、クイック接続/切断カップリングを使用して、互いに流体的かつ電気的に接続されるように構成されて良く、当該クイック接続/切断カップリングは、適切な機械的および電気的接触を検出し、上記筐体の1つに配置されたグラフィカルユーザーインターフェイスおよび可聴アラームの少なくとも1つを介してユーザーに警告するように構成されて良い。上記サンプル収集モジュールおよび上記流体モジュールが同じ携帯用筐体内に配置されて良い。各充填ベッドカラムは、表面にC18官能基を有する樹脂ビーズ、表面に硫酸エステル官能基を有するセルロースビーズ、およびそれらの混合物の少なくとも1つを有して良い。上記樹脂ビーズおよびセルロースビーズは、少なくとも約20μmの公称直径を具備して良い。上記樹脂ビーズおよびセルロースビーズは、約40ミクロン~約200ミクロンの公称直径を具備して良い。上記ポンプを使用して各捕捉要素を通して引き出される公称流量が少なくとも約20L/分であって良い。上記サンプル収集モジュールは、上記水ポンプおよび上記水容器のうちの少なくとも一方と流体連通して配置された貯水器をさらに有して良く、上記ネブライザが水中に浸漬され、上記貯水器の出口近くに配置されて良い。上記ネブライザーは、超音波ミスト噴霧器であってよい。
【0020】
雰囲気空気中の呼吸器疾患病原体を検出するための事例的なシステムが開示され、当該システムは、雰囲気空気中のエアロゾル粒子をサンプリングして捕捉するための上述のシステムと、呼吸器疾患に特有の捕捉されたエアロゾル粒子を各充填層カラムから1または複数の液体サンプルに抽出するサンプル抽出システムと、上記1または複数の液体サンプルの中の上記エアロゾル粒子を分析する分析装置とを有する。上記抽出システムは、各充填ベッドカラムを少なくとも1つの溶媒でフラッシュし、各充填ベッドからエアロゾル粒子を含む溶媒を収集する手段を有して良い。上記少なくとも1つの溶媒は、アセトニトリル、メタノール、イソプロパノール(IPA)のうちの少なくとも1つを有して良く、残りは水であって良い。上記1または複数の溶媒は、水中約50体積%~約70体積%のアセトニトリル、および、水中約50体積%~約70体積%のイソプロパノールを有して良い。上記分析装置は、PCR、ELISA、rt―PCR、質量分析計(MS)、MALDI―MS、ESI―MS、および、MALDI―TOFMS、並びに、LC―MS/MSのうちの少なくとも1つを有して良い。
【0021】
密閉空間内の雰囲気空気中の呼吸器疾患病原体を検出するための例示的な方法が開示され、当該方法は、それぞれに充填ベッドカラムを備える1または複数のサンプル捕捉要素を使用して、雰囲気空気中の呼気からエアロゾル化粒子を選択的に捕捉するステップであって、雰囲気空気は、上記1または複数のサンプル捕捉要素に入る前に加湿され、エアポンプを使用して、上記1または複数のサンプル捕捉要素に引き込まれる、上記ステップと、呼吸器疾患に特有の捕捉されたエアロゾル粒子を各充填層カラムから1または複数の液体サンプルに抽出するステップと、上記1または複数の液体サンプルの中のエアロゾル粒子を分析するステップとを有する。上記充填ベッドカラムは、表面にC18官能基を有する樹脂ビーズ、表面に硫酸エステル官能基を有するセルロースビーズ、および、それらの混合物の少なくとも1つを有して良い。上記抽出ステップは、アセトニトリル、メタノール、イソプロパノール(IPA)のうちの少なくとも1つで上記充填ベッドカラムをフラッシュするステップを有して良く、残りは水である。当該事例的な方法は、サンプル処理ステップをさらに有して良く、当該サンプル処理ステップは、上記1または複数のサンプルをMALDIマトリックスと混合するステップと、1または複数の混合サンプルおよびMALDIマトリックスを1または複数のサンプルプレートに被着するステップとを有して良い。当該事例的な方法は、サンプル処理ステップをさらに有し、当該サンプル処理ステップは、上記サンプル抽出システムから抽出された上記1または複数の液体サンプルをタンパク質消化に供して、上記呼吸器疾患に特徴的なペプチドサンプルを生成するステップを有して良い。上記サンプル処理ステップは、さらに、ペプチドサンプルをMALDIマトリックスと混合するステップと、当該混合サンプルおよびMALDIマトリックスをサンプルプレートに被着するステップとを有して良い。上記分析装置は、PCR、ELISA、rt―PCR、質量分析計(MS)、MALDI―MS、ESI―MS、およびMALDI―TOFMS、並びに、LC―MS/MSのうちの少なくとも1つを有して良い。
【0022】
エアロゾル化した細菌およびウイルスを捕捉するための例示的なサンプル捕捉要素が開示され、当該サンプル捕捉要素は、ポンプを使用して充填ベッドカラムを通して引き込まれた呼気および雰囲気空気のうちの少なくとも1つにおいてエアロゾル化された細菌およびウイルス粒子を選択的に捕捉するための充填ベッドカラムを有して良く、当該充填ベッドカラムが、表面にC18官能基を有する樹脂ビーズ、表面に硫酸エステル官能基を有するセルロースビーズ、およびそれらの混合物のうちの少なくとも1つを有し、上記樹脂ビーズおよびセルロースビーズは、約40ミクロン~約200ミクロンの公称直径を具備して良い。上記ビーズは、上記充填ベッドカラムにおいて2つの多孔質ポリマーフリットディスクの間に充填されて良い。
【0023】
この開示の他の特徴および利点は、以下の説明および添付の図面に部分的に記載され、ここでは、この開示の好ましい側面が説明および示され、部分的に、添付図面と関連して把握される以下の詳細な説明を吟味することを通じて、当業者に明らかになり、また、この開示の実施を通じて学習するであろう。この開示の利点は、添付の特許請求の範囲で具体的に指摘されている手段および組み合わせによって実現および達成されて良い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
この開示の上述の側面および多くの付随する利点は、添付の図面と併せて、以下の詳細な説明を参照することによってより良く理解されるようになるので、より容易に把握されるであろう。
図1図1は、充填ベッドカラムを有する例示的な呼気サンプル収集システムの模式図である。
図2図2は、サンプル収集システムを有する呼吸器疾患の例示的な診断システムの模式図である。
図3図3は、充填ベッドカラムを有するシステムを使用する例示的な診断方法の模式図である。
図4図4は、充填ベッドカラムを含む例示的な呼気サンプル収集システムの概略図である。
図5図5は、充填ベッドカラムを含む例示的な周囲エアロゾルサンプル収集システムの概略図である。
図6A図6Aは、対照サンプル中のMS2キャプシドタンパク質(A)のイオン強度を示す直接注入質量分析の結果を示す。
図6B図6Bは、捕捉されたエアロゾルサンプル中のMS2キャプシドタンパク質(B)のイオン強度を示す直接注入質量分析の結果を示す。
図7A図7Aは、Nanoflow―LC質量分析法による、対照サンプル中のMS2キャプシドタンパク質(A)の選択イオンクロマトグラムを示す。
図7B図7Bは、Nanoflow―LC質量分析法による、捕捉されたエアロゾルサンプル中のMS2キャプシドタンパク質(B)の選択イオンクロマトグラムを示す。
図8A図8Aは、例示的なサンプル捕捉要素を通過する流速に対する、C18ビーズサイズ(A)の影響を示す。
図8B図8Bは、例示的なサンプル捕捉要素を通過する流速に対する、ビーズ量(B)の影響を示す。
図8C図8Cは、例示的なサンプル捕捉要素を通過する流速に対する、入口ポリマーフリット細孔サイズ(C)の影響を示す。
図9A図9Aは、(A)集中治療室でCOVID―19と診断された患者に接続された人工呼吸器とともに使用する例示的な呼気エアロゾル収集システムの概略図を示す。
図9B図9Bは、(B)人工呼吸器に接続されたエアロゾル収集システムを操作するように構成された例示的な携帯アクセサリおよび制御システムの概略図を示す。
図10図10は、雰囲気空気サンプリングのための例示的なエアロゾル収集システムの概略図である。
図11A図11Aは、14人の被験者から採取した呼気サンプルとブランク間の脂質と代謝物バイオマーカーの分離を示すPCAおよびPLS―DA分析(A)を示す。
図11B図11Bは、呼気エアロゾルサンプル中の脂質と代謝物バイオマーカーの両方についてデータフィルタリングを行った場合と行わない場合のダイナミックレンジ分布(B)を示す。
図11C図11Cは、CO正規化を行った場合と行わない場合の脂質および代謝産物バイオマーカーのイオン強度(C)を示す。
図12A図12Aは、流体モジュールおよびサンプル収集モジュールを示す雰囲気空気サンプリングのための例示的なエアロゾルサンプル収集システムの等角図(A)である。
図12B図12Bは、流体モジュールの等角図(B)である。
図12C図12Cは、流体モジュールの等角図(C)である。
図12D図12Dは、流体モジュールを使用したミスト生成の模式図を示す。
図13A図13Aは、4つの雰囲気空気サンプルのボトムアッププロテオミクスを使用して同定されたタンパク質の数(A)である。
図13B図13Bは、4つの空気サンプル中のケラチン9レベル(B)である。
図14図14は、例示的なC18充填ベッドカラムサンプル捕捉要素およびボタンサンプラーを使用して捕捉されたエアロゾル化BSAタンパク質のプロテインブルー染色の結果を示す。
図15A図15Aは、例示的なサンプル捕捉要素で処理されていないSARS―CoV―2ウイルスサンプルの培地中の熱酸消化ペプチドのMALDI TOF質量スペクトル(A)を示す。
図15B図15Bは、例示的なサンプル捕捉要素から抽出されたSARS―CoV―2ウイルス粒子の熱酸消化ペプチドのピーク割り当てを含むMALDI TOF質量スペクトル(B)を示す。
図15C図15Cは、SARS―CoV―2サンプルのボトムアッププロテオミクスを使用して構築されたペプチドイオン強度の分布(C)を示す。
図15D図15Dは、例示的なサンプル捕捉要素から抽出されたSARS―CoV―2ウイルス粒子のボトムアッププロテオミクスを使用して構築されたペプチドイオン強度の分布(D)を示す。
図15E図15Eは、種々の許容欠落部位切断数を使用したマスコットデータベース検索を使用した例示的なサンプル捕捉要素から抽出されたSARS―CoV―2ウイルス粒子のペプチド質量フィンガープリント(E)を示す。
【0025】
図中のすべての参照番号、識別子、およびコールアウトは、ここに完全に記載されているかのように、この参照によってここに組み込まれる。図の要素に番号を付けないことは、いかなる権利も放棄することを意図したものではない。番号のない参照は、図や付録の英字で識別されることもある。
【0026】
以下の詳細な説明は、詳細な説明の一部を形成する添付の図面への参照を含む。図面は、例示として、開示されたシステムおよび方法が実施され得る具体的な実施例を示している。「例」または「オプション」として理解されるべきこれらの実施例は、当業者がこの発明を実施することを可能にするのに十分詳細に説明される。この発明の範囲から逸脱することなく、実施例を組み合わせることができ、他の実施例を利用することができ、または構造的または論理的変更を行うことができる。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味で解釈されるべきではなく、この発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびそれらの法的均等物によって定義される。
【0027】
この開示において、エアロゾルは、一般に、空気またはガス中に分散した粒子の懸濁液を意味する。「自律的な」診断システムおよび方法とは、「医療専門家による介入なし、または最小限の介入で」診断テスト結果を生成することを意味する。米国FDAは、医療機器に関連するリスクに基づいて、また機器の安全性と有効性を合理的に保証する規制の量を評価することによって、医療機器を分類している。デバイスは、クラスI、クラスII、またはクラスIIIの3つの規制クラスのいずれかに分類される。クラスIにはリスクが最も低いデバイスが含まれ、クラスIIIにはリスクが最も高いデバイスが含まれる。すべてのクラスの機器は、一般規制の対象となる。一般規制は、すべての医療機器に適用される食品医薬品化粧品(FD&C)法の基本要件である。体外診断用製品は、病気またはその後遺症を治癒、軽減、治療、または予防するために、健康状態の決定を含む、病気またはその他の状態の診断に使用することを意図した試薬、機器、およびシステムである。このような製品は、人体から採取した標本の収集、準備、および検査に使用することを目的としている。ここで開示される例示的なデバイスは、自律的に動作し、信頼性の高い結果を生成することができ、その結果、クラスIデバイスとして規制される可能性を有する。結核感染の負担が大きい世界のいくつかの地域では、医療訓練を受けた職員へのアクセスが非常に限られている。自律的な診断システムは、自律的でない診断システムよりも優先される。
【0028】
この開示において、単数表記(英語の「a」または「an」という用語に相当するもの)は、1つまたは複数を含むために使用され、「または」(「or」)という用語は、特に明記されていない限り、非排他的な「または」を指すために使用されている。さらに、ここで使用され、他に定義されていない表現または用語は、説明のみを目的としており、限定を目的としていないことを理解されたい。この開示で別段の定めがない限り、「約」という用語の範囲を解釈するために、開示される値(寸法、動作条件など)に関連する誤差範囲は、この開示で示される値の±10%である。パーセンテージとして開示された値に関連する誤差範囲は、示されたパーセンテージの±1%である。特定の単語の前に使用される「実質的に」(「substantially」)という単語には、「指定された範囲のかなりの部分」、および「指定されたものの大部分ではあるが全部ではない」という意味が含まれる。特に明記しない限り、パーセンテージとして開示されている化学物質、溶媒などの濃度は、体積%を指す。
【詳細な説明】
【0029】
呼気エアロゾル粒子は、代謝産物、脂質、およびタンパク質などの種々の不揮発性有機生体分子を含む。さらに、不揮発性分子は、サブミクロンサイズから約10ミクロンサイズまでの広い粒子サイズ分布を有する。呼気から種々の粒子サイズの種々のタイプの不揮発性分子を効率的に捕捉できる、呼気収集および疾患診断システムおよび方法が必要である。この発明の具体的な側面は、開示された方法およびシステムの構成、原理、および動作を説明する目的で、かなり詳細に以下に説明される。しかし、種々の変更を加えることができ、この発明の範囲は、記載された例示的な態様に限定されない。
【0030】
呼気分析(「EBA」)に基づく例示的な診断システム2000(図2)は、サンプル抽出システム2002および分析システム2003と流体連通して配置された呼気サンプル収集システム1000を有して良い。
【0031】
例示的な呼気サンプル収集システム1000(図1)は、不揮発性生物(細菌およびウイルスを含むがこれらに限定されない)、および分子(小さい分子、脂質、およびタンパク質を含む)を含む呼気エアロゾルを選択的に非常に高効率の吸着材料上に捕捉するために充填ベッドカラムを有するサンプル捕捉要素1001を有して良い。トラップ1003は、チューブ1002を使用してカラム1001と流体連通している。トラップ1003は、ガラスまたはプラスチック材料で製造して良い。トラップ1003は、氷浴または他の適切な手段を使用して周囲温度未満に冷却されて良い。トラップ1003は、呼気凝縮物(EBC)として収集カラムを通過する可能性がある水蒸気、他の揮発性(チェック)および不揮発性分子を収集するために使用されて良い。ベンチレータを使用した患者の呼吸の呼気分析中、サンプル捕捉要素1001は、ベンチレータのレスピレーターチューブのカプノグラフィポートに取り外し可能に接続され、出口のすぐ近くまたは患者の肺からの出口に配置される。正常に呼吸している人の呼吸分析中、要素1001は、患者が呼吸するように指示されるマウスピース(図示せず)に取り外し可能に接続されてもよく、または、ここで以前に開示された呼吸操作を実行して良い。例えば、捕捉要素1001は、呼気分析中に患者が着用する、呼気収集要素1007(図1)、例えば、応急処置CPRレスキューマスク(例えば、Dixie USA EMS Supply Co.により供給される、型番EVR―CPR01)の下流(出口で)に取り外し可能に結合されて良い。呼気の第1の部分が捕捉要素1001に向けられ、第2の部分がHEPAフィルタ1009に向けられるように、呼気の流れを分割するために、フロースプリッタ1008が呼気収集要素1007と捕捉要素1001との間に配置されてもよい。フロースプリッタ1008が収集要素1007に統合されて良い。さらに、大粒子トラップ1012を捕捉要素1001の上流に配置して、捕捉要素1001に入る前に呼気の流れから呼気凝縮物の大きな粒子(約10μmより大きい)を除去して良い。ポンプ1006を使用して、捕捉要素1001の充填ベッドカラムへ呼気を吸引して良い。例示的なポンプ1006は、携帯用ダイヤフラムポンプ(例えば、Parker Hannifin Corp.、部品番号:D737―23―01)である。ポンプ1006からの流量は、ニードル弁1005を使用して調整して、所望の流量を実現して良い。逆止弁(一方向流弁)1011は、ポンプ1006と捕捉要素1001との間に配置することができ、ポンプ1006が充填ベッドカラムを通して呼気を吸引している場合にのみ開位置になるように構成される。流れがない場合、弁1011は閉鎖位置に配置される。約200ml/分~600ml/分の公称流量を使用して良い。さらに、いくつかの捕捉要素1001を並行して使用して、流速を最大12L/分まで増加させて良い。さらに、1または複数の捕捉要素が収集モードにある場合、1つまたは複数が溶出モードであって良く、一部が待機モードにあって良い。呼気サンプル量が適切であったかどうかを判断するために、呼気収集要素1007とサンプル捕捉要素1001との間にCOセンサーおよび粒子カウンター(図示せず)を配置して良い。COモニタリングおよび粒子カウントにより、呼気量の割合を概算できる。トラップ1003の下流にHEPAフィルタを配置して良い。捕捉要素1001は、冷却ジャケットまたは他の手段を使用して冷却し、温度を周囲温度より低くして、不揮発性有機物粒子の収集効率を高めて良い。呼気サンプル収集システムは、捕捉要素への入口の上流に配置された加湿器1010をさらに備えて、呼気を加湿し、充填ベッドカラム内の湿度を上昇させて良い。
【0032】
呼気収集要素1007は、個人の顔を受け入れるように構成されたぴったりとフィットするマスクを有して良く、ストラップなどを使用して患者/個人の顔/頭に取り外し可能に取り付けて良い。個人は、オプションの封じ込めブースに座って、患者のEBAを試験室またはエリアの雰囲気空気から隔離して良い。要素1007は、当該要素1007の壁にエアロゾル粒子を堆積させることなく、上述のようにポンプ1006を使用して、患者の口および鼻から放出された呼吸エアロゾル粒子を収集し、捕捉要素1001に導くために使用されて良い。要素1007は、以前の患者によって放出された病原体で患者が汚染または感染するリスクを制限するために使い捨てとして良い。代替的には、要素1007は再利用可能であって良く、その場合、これは滅菌されて良い。
【0033】
捕捉要素1001内の例示的な充填ベッドカラムは、Sigma Aldrichおよび他のベンダーによって供給されるHamilton PRP―C18樹脂ビーズを有して良い。ベッドは、フリットディスクなどの2枚の多孔質フィルタプレートの間で適所に保持されて良い。例えば、平均孔径が35μmを超えるポリエチレンディスクをベッドの上流に配置し、平均孔径が10μmのポリエチレンディスク(Boca Scientific、Dedham、MA)をベッドの下流に配置して良い。35μmフリットディスクはより速い空気流量を可能にし、小さい10μmフリットディスクはすべてのC18樹脂を良好にトラップする。例示的な要素1001では、充填ベッドは、約12μmから約20μmの間の公称直径を有する約25mgのC18樹脂ビーズを有して良い。呼気中の不揮発性有機成分は、ビーズ上のC18官能基と相互作用して除去可能に捕捉される。水、揮発性物質、およびその他の親水性分子はベッドを通過し、ガラストラップ1003にトラップされて良い。
【0034】
C18官能基に加えて、不揮発性分子に親和性を示す他の官能基を、樹脂ビーズなどの固相ビーズに固定化されたカラム内の吸着剤として使用して良い。固相ビーズは、樹脂、セルロース、シリカ、アガロース、および水和Feナノ粒子などのポリマーおよび粒子から製造されて良い。吸着材料は、他の官能基を有して良く、この官能基は、これに限定されないけれども、固相ビーズ上に配置されたオクタデシル、オクチル、エチル、シクロヘキシル、フェニル、シアノプロピル、アミノプロピル、2,3―ジヒドロキシプロポキシプロピル、トリメチル―アミノプロピル、カルボキシプロピル、ベンゼンスルホン酸、およびプロピルスルホン酸を含む。官能基は、また、イオン交換相、ポリマー相、抗体、グリカン、脂質、DNA、およびRNAのうちの少なくとも1つを有して良い。
【0035】
例示的な診断システム2000(図2)は、サンプル抽出システム2002および分析システム2003と流体連通して配置された呼気サンプル収集システム2001を有して良い。サンプル収集システム2001は、先に説明した、例示的なサンプル収集システム1000(図2)を有して良い。サンプル抽出システム2002は、捕捉された不揮発性有機物をシステム1000の充填ベッドカラムから抽出するために使用して良く、システム2000においてインラインまたはオフラインで配置されて良い。システム2002がオフラインで配置されると、呼気サンプル収集の最後に、捕捉要素1001がシステム1000から取り外され、抽出システム2002内の有機溶媒で溶出されて、充填ベッドカラムから不揮発性有機物が除去されて良い。例示的な有機溶媒は、充填ベッドカラムから捕捉された不揮発性有機物(強い極性の不揮発性有機分子、タンパク質など)を抽出するための水中約50~70%アセトニトリルを含むけれども、これらに限定されない。抽出は、充填ベッドから極性の低い脂質分子を抽出するために、同一または他の溶媒を使用して繰り返してよく、この溶媒は、水中に50~70%イソプロパノールを含むけれども、これに限定されない。他の有機溶媒は、水中に約50%から約70%のメタノール、および約50%のクロロホルム中の約50%のメタノールを含む。システム2002がインラインに配置される場合、COセンサーおよび粒子カウンターのうちの少なくとも1つは、抽出システム2002の上流に配置されて良い。システム2002は、溶媒容器、溶媒を溶媒容器から充填ベッドカラムに移送するポンプ、および、不揮発性バイオマーカーを含む溶媒を他の容器またはカップに収集するための容器を有して良い。代替的には、システム2002は、溶媒を充填ベッドカラムに注入し、不揮発性有機物およびバイオマーカーを含む抽出液を適切なカップまたは容器、または小容量を有する他の実験用チューブに収集するための注入器を有して良い。溶媒中の捕捉されたサンプルは、分析システム2003でさらに処理および分析されて良い。
【0036】
分析システム2003は、サンプル処理システム2004および少なくとも1つの診断装置2005を有して良い。サンプル処理システム2004は、以下のステップのうちの1または複数を実行するために必要な要素を有して良い。
【0037】
(a)カップ、バイアル、およびサンプルプレートのうちの少なくとも1つにサンプルを配置するステップ。たとえば、シリーズ110Aスポットサンプラー(エアロゾルデバイス)は、円形のウェル形状(ウェル容量75μL)またはティアドロップウェル形状(ウェル容量120μL)の32ウェルプレートを使用し、これを加熱して溶媒と余分な液体/液体を蒸発させてサンプルを濃縮させる。
(b)サンプルをカップに入れ、真空源または凍結乾燥装置にさらして、溶媒を蒸発させてサンプルを濃縮するステップ。および;
(c)タンパク質およびウイルス粒子の高温消化ステップ。
【0038】
サンプルは、化学汚染粒子を除去するために遠心分離されて良い。多くの診断デバイスが、分析システム2003における使用に適合させて良く、これは、ゲノミクスベースのアッセイ(PCR、rt―PCR、全ゲノム配列決定など)、バイオマーカー認識アッセイ(ELISAなど)、および質量分析(MS)などのスペクトル分析を実行するデバイスを含むけれども、これらに限定されない。これらの診断装置の中では、分析速度の点でMSが好ましい。バイオマーカーの同定に適したMS技術は、エレクトロスプレーイオン化(ESI)およびマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)飛行時間型MS(TOFMS)である。ESIは、高分解能質量分析計と組み合わせて良い。MALDI―TOFMSデバイスはコンパクトで軽量で、消費電力が100ワット未満で、15分未満でサンプル分析を行うことができる。MALDI―TOFMSは、ACFに適したポイントオブケア診断に適した診断デバイスである。サンプルは、MSの真空チャンバに挿入され、紫外線レーザーからのレーザーパルスにさらされる前に乾燥していなければならない。サンプルとレーザーとの間のこの相互作用は、生物学的物質の特徴である大きく有益な、生物学的イオンクラスターを生成する。微量レベルの水のみ、またはアセトニトリル、メタノール、およびイソプロパノールのいずれかが水中に50%~70%などの微量レベルの有機溶媒のみを有する濃縮サンプルが、サンプル処理システム2004によって提供される場合、MSを使用したサンプル分析には5分未満の時間しかかからないであろう(サンプル前処理を含む)。これは、サンプルから水分を蒸発させるのに必要な時間が短いからである。
【0039】
MALDI―TOFMSは、生/活性エージェントを同定するために使用されて良く、これら生/活性エージェントは、これに限定されないけれども、炭疽菌胞子(複数株)、Y.ブドウ球菌エンテロトキシン(SEA)、ブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)、リシン、アブリン、エボラザイール株、アフラトキシン、サキシトキシン、コノトキシン、腸内細菌ファージT2(T2)、HT―2毒素(HT2)、コブラ毒素、B.globigii胞子、B.cereus胞子、B.thuringiensis Al Hakam胞子、B.anthracis Sterne胞子、Y.enterocolitica、E.coli、MS2ウイルス、T2ウイルス、アデノウイルス、およびNGA(不揮発性)、ブラジキニン、オキシトシン、サブスタンスP、アンギオテンシン、ジアゼパム、コカイン、ヘロイン、フェンタニルを含む。さらに、ここに開示される例示的なシステムおよび方法は、人の呼気サンプルからのSARS―CoV―2の正確な検出および識別を達成するために使用されて良い。
【0040】
「マトリックス支援レーザー脱離イオン化」(MALDI)では、レーザーからの光(しばしば紫外線波長)を優先的に吸収するマトリックス化学物質によって標的粒子(分析物)をコーティングする。マトリックスが存在しない場合、生物学的分子は、質量分析計でレーザービームにさらされると、熱分解によって分解する。マトリックス化学物質は、また、気化した分子に電荷を転送し、イオンを生成し、電界によってフライトチューブを加速する。微生物学とプロテオミクスは、質量分析の主要な応用分野になっている。例としては、細菌の同定、化学構造の発見、タンパク質機能の導出などがある。MALDI―MSは、藻類の脂質プロファイリングにも使用されている。MALDI―MSでは、通常、トリフルオロ酢酸(TFA)などの酸と、α―シアノ―4―ヒドロキシ桂皮酸などのMALDIマトリックス化学物質で構成される液体が溶媒に溶解され、サンプルに添加される。溶媒は、アセトニトリル、水、エタノール、およびアセトンを含む。TFAは、通常、サンプルの質量スペクトルに対する塩不純物の影響を抑えるために添加される。水は親水性タンパク質の溶解を可能にし、アセトニトリルは疎水性タンパク質の溶解を可能にする。MALDIマトリックス溶液をMALDIプレート上のサンプルにスポットして、サンプル上にMALDIマトリックス材料の均一で均質な層を得る。溶媒は蒸発し、再結晶化されたマトリックスのみが残り、サンプルはマトリックス結晶全体に広がる。酸はサンプルの細胞膜を部分的に分解し、MSでのイオン化および分析にタンパク質を利用できるようする。その他のMALDIマトリックス材料は、3,5―ジメトキシ―4―ヒドロキシケイ皮酸(シナピン酸)、α―シアノ―4―ヒドロキシケイ皮酸(α―シアノまたはα―マトリックス)、および2,5―ジヒドロキシ安息香酸(DHB)を含み、これは米国特許第8,409,870号に説明されるとおりである。
【0041】
さらに、トラップ1003(図1)に収集された揮発性有機化合物は、ヒータを用いて温められ、GC―MS、GC―IMS、揮発性イオンクロマトグラフィー、または揮発性有機化合物の分析に適したその他のタイプの分析方法を実施する診断デバイスへと一掃されて良い。
【0042】
ウイルス(例えば、SARS―CoV―2)の検出は、困難な課題であるウイルスタンパク質の検出に集中している。ウイルス検出のための例示的な方法は、バックグラウンドマトリックス(例えば、他の非ウイルス生体分子、夾雑物)から標的ウイルスを引き抜くためのグリカンベースの捕捉マトリックス(ビーズ)を有して良い。ウイルスを含むであろうサンプルのアリコートは、例えばサンプル収集システム1000を使用して収集され、これは、他のバックグラウンド汚染物質も含み得、かれが、捕捉プローブを担持するビーズに被着されて良い。グリカン、ヘパリン、および炭水化物のうちの少なくとも1つは、樹脂ビーズまたはいくつかの他のタイプのビーズに結合された捕捉材料またはプローブとして使用されて良い。オプションの洗浄ステップを使用して、非標的ウイルス汚染物質を除去して良い。濃縮および精製されたウイルスは、適切な溶媒を使用して、ギ酸または酢酸を含むことができる有機酸を含む密閉加熱チャンバにビーズから溶出し、約120℃に約10分間加熱されて、タンパク質性毒素を特定のペプチドフラグメントに消化されて良い。この高温酸性タンパク質消化プロトコルは、アスパラギン酸残基でタンパク質を切断し、再現性の高いペプチドパターンを生成する。ここで説明される捕捉および消化プロセスは、それぞれ抗体および酵素で達成されて良い。このMALDI―TOFMSのサンプル処理の例を使用すると、きれいなバッファーで100ng/mL(S/Nが約50:1の)を超えるリシン生物毒素に対する感度が達成された。3:1のS/N(信号対雑音比)で、10ng/mL未満の検出限界(LOD)が達成されるであろう。MALDI―TOFMS分析システムで使用される1μLのサンプルの場合、約10ng/mLのLODはプローブ上の約10pg(10―12g)の総質量に相当し、これは約20,000ウイルス粒子に相当する。上に開示された方法を実施するための例示的なマイクロ流体サンプル処理システムは、空気から、または鼻スワブなどの他の供給源から収集されたサンプルを分析するように構成されて良い。グリカンベースの捕捉カラムおよびその他のマイクロフルイディクスコンポーネントは再利用可能である。システムの1つのチャネルで数百のサンプルを測定するのに十分な容量を提供するために、バッファー、弱酸、およびアルコールを含む大型の液体リザーバーを使用して良い。複数のサンプルを同時に処理するために、複数のシステムを並行して実行して良い。壊れやすく高価な生体分子試薬を必要としないため、このシステムは費用対効果に優れている。
【0043】
熱酸消化は、アスパラギン酸残基でタンパク質を再現可能に切断し、既知の質量を有する既知のペプチド配列を作成する。これらのペプチド質量分布は、前駆タンパク質に特徴的である。したがって、目的のタンパク質がバックグラウンド物質から大きく離れている場合、消化は、優れた特異性を提供する。さらに、ペプチドの質量分布はゲノムによって直接決定され、翻訳後修正が考慮される。新しいウイルスが分離されると、すぐに、その配列が迅速に決定される。SARS―CoV―2ウイルスのRNA配列は、最新のバイオインフォマティクスツール(ExPASyバイオインフォマティクスポータル)を使用してタンパク質配列を正確に予測するために使用できる。これらのタンパク質は、バイオインフォマティクスツールを使用してイン・シリコで(コンピュータを用いて)「消化」され、理論上のペプチドマップを作成できる。したがって、SARS―COV―2消化から生じるペプチドを予測し、実験データと比較して、生物の特定のMALDITOFMSシグネチャを生成することができる。報告によると、SARS―CoVの主要なタンパク質は、約46kDaのヌクレオキャプシドタンパク質と139kDaのスパイクタンパク質によって特徴付けられることが示唆されている。妥当な量の他のタンパク質は、E、M、およびNタンパク質である。
【0044】
標的ウイルスの検出特異性は、特にバックグラウンドが他のタンパク質を含む場合、ある程度のバックグラウンド除去を必要とする。大量の外因性タンパク質が存在する場合、ペプチドマップは、非ターゲットペプチドによって支配される可能性がある。先に述べたように、グリカン修飾アガロースビーズに基づくウイルス毒素のアフィニティキャプチャプローブを使用すると、バックグラウンドタンパク質やその他の生体分子が過剰に存在する場合でも、毒素を容易にクリーンアップできる。SARS―CoV―2などのウイルス標的について呼気を分析する場合、呼気中の他のヒトタンパク質が、検出の特異性に干渉する可能性がある。最高の特異性を確保するには、親和性に基づくサンプルのクリーンアップが必要である。ウイルス検出には、上述のグリカン修飾ビーズと比較して、より選択的な親和性を提供するビーズ材料が必要になる場合がある。例えば、デキストランベースの吸着剤は、コロナウイルスを含むウイルスの精製に使用して良いけれども、この樹脂の標的ウイルスに対する親和性は満足できるものではないかもしれない。代わりに、炭水化物は、SARS―CoVやSARS―CoV―2などの標的ウイルスを含むウイルスおよびタンパク質の精製に使用して良い。さらに、ヘパリン、およびヘパラン硫酸を、樹脂ビーズに結合する結合剤として使用して良い。セファロースビーズに共有結合したヘパリン(GE Healthcare Life Sciences、Heparin Sepharose 6 Fast Flow アフィニティ樹脂、製品番号 17099801)は、グリカンキャプチャービーズの代わりに使用されて良い。この樹脂は、呼気からウイルス粒子を収集するためのビーズベースのキャプチャアフィニティキャプチャシステムを可能にするかもしれない。例示的な診断システムでは、呼気サンプルは、サンプル収集システム1000内の捕捉ベッドを通して引き出され、呼気から粒子を収集して良い。樹脂ビーズ(ベッド)を洗浄して、バックグラウンド物質を除去して良い。次いで、ビーズに吸着されたウイルス粒子は、高濃度の酸溶液、例えば、約12.5%の酢酸、約5%のTFA、約5%のギ酸、および約10%のHClのうちの少なくとも1つを使用して溶離されて、高温酸消化チャンバに送られ、特徴的なペプチドを生成して良い。ペプチドサンプルをMALDIマトリックスと混合し、MALDI TOFMS分析に適した基質として沈着させて良い。サンプルは、MALDIマトリックスでプレコートされた適切な基板またはディスク上に被着しても良い。
【0045】
図3は、例示的なシステム2000を使用する例示的な診断方法3000の模式図である。例示的な方法3000を使用して、呼気に基づいて自律的なポイントオブケア診断を実行して良い。ステップ3001において、個人(すなわち患者)は着席するように指示されて良い。椅子は、必要に応じて封じ込めブースに配置されて良い。ステップ3002において、サンプル呼気収集要素1007を個人の頭部に取り外し可能に取り付けて良い。次に、個人は、呼吸をするか、事前に設定された反復回数を含むことができる1または複数の所定の操作3003を実行するように指示される。息中の不揮発性有機物は、システム1000を使用して捕捉され、ステップ3004でシステム2002を使用して抽出され、適切な溶媒を使用して溶出される。サンプル収集中、人間の呼気は、吸引ポンプによって引き出される所定の流量で、カラムを通過する。呼気に含まれる不揮発性分子は捕捉要素1001の機能化ビーズ(例えば、樹脂ビーズに固定化されたC18官能基)と相互作用するため、これらの分子は要素1001のカラムベッドに捕捉され、他方、親水性分子は、ほとんどが、息中の水と水性電解質で構成され、これがコラムを通過する。人間の呼気中の不揮発性有機分子は、水素結合や非共有相互作用などの分子間力を介してアルキル鎖に強い親和性を示す。カラムベッドからの不揮発性分子の溶出は、有機溶媒を使用して達成して良く、これは上述のアセトニトリル、メタノール、およびイソプロパノールを含むけれども、これらに限定されない。ステップ3005において、コンポーネント2004を使用してサンプルをさらに処理して良い。サンプル処理のタイプは、診断装置のタイプおよび対象の不揮発性分析物粒子に依存する。上述のように、ウイルスサンプルを熱酸消化チャンバで処理して、特徴的なペプチドを生成して良い。ペプチドサンプルをMALDIマトリックスと混合し、MALDI TOFMS分析に適した基質として沈着させて良い。サンプルは、MALDIマトリックスでプレコートされた適切な基板またはディスク上に被着しても良い。次いで、ステップ3006において、サンプルが診断装置によって分析される。診断装置がMALDI―TOFMSである場合、サンプル処理は、サンプルをMALDI―TOFMSサンプルディスク上にプレーティングし、ディスクを加熱してサンプルを濃縮し、ディスクを乾燥させるステップも有して良い。サンプルディスクは、MALDI―TOFMSを使用して分析される。TOFMS検出器は、MALDI―TOF/MS中に断片化されたCOVID―19型ウイルスペプチドの分析と配列決定を可能にするために、イオンゲートおよびリフレクトロンを組み込むように変更されて良い。得られたスペクトルは、特定の呼吸器感染症に対して陽性であることがわかっているサンプルのスペクトル、既知のデータベースのスペクトル、および健康であることがわかっている患者のサンプルのスペクトルと比較され、患者の診断がなされる。次いで、結果を臨床医または患者に伝達して良い。
【0046】
呼気収集要素1007が患者に取り付けられ、サンプル抽出が開始されると、例示的なシステムおよび方法は、(必要な操作を行った後に患者に椅子を離れるように求めることを除いて)自律的であることが好ましく、そのまま診断のテスト結果を生成する。SARS―CoV―2のようなウイルス粒子の場合、粒子の直径は約0.1ミクロンであり、感度は約10から10個のウイルス粒子の間であって良い。
【0047】
報告は、インフルエンザ患者およびCOVID―19患者からの鼻および喉のスワブの分析が、約10から1010のウイルス粒子のウイルス数を生成することを示唆している。患者の呼気中のウイルス粒子数についてはあまり知られていない。他の報告では、インフルエンザ患者が約30分間の呼吸で10個以上の粒子を吐き出したことが示唆されている。SARS―CoV―2のアウトプットがインフルエンザのアウトプットと類似している場合、呼気中の10から10粒子のアウトプットと粒子収集効率が99.9%を超えるものであれば、ここに開示される例示的な手法およびシステムを使用して呼気中の標的ウイルス粒子を特定するには十分なはずである。例示的なシステムおよび方法を使用した検出時間は、サンプル抽出(呼吸操作)、サンプル収集、サンプル処理(消化)、およびMALDI TOF―MSを使用した分析のステップを含めて、約10分から20分の間であろう。この検出時間は、既存の検出システムと比較して非常に高速である。
【0048】
例示的なサンプル処理構成要素は、充填ベッドカラム1001からサンプルを自律的に抽出し、サンプルクリーンアップを実行し、熱酸分解を行い、MALDI―TOFSサンプル基板またはディスク上へのプレーティングする準備が整ったサンプルを提供するための、熱酸分解モジュールまたはカートリッジを有して良い。カートリッジは、使用ごとにカートリッジをフラッシュする機能を追加することにより、再利用できるように設計されて良い。
【0049】
他の例示的なサンプル収集システム7000(図4)に開示される。例示的なサンプル捕捉要素7001は、C18結合樹脂ビーズを含む充填ベッドカラムを有して良い。これらの樹脂ビーズは、表面にC18官能基が固定化されている。捕捉要素7001は、軽微な修正を加えて、応急処置CPRレスキューマスク7007に接続または取り外し可能に取り付けられて良い。通常は蘇生バッグに接続するマスク7007のステム7008を変更して、HEPAフィルタ7009に取り外し可能に接続して良い。HEPAフィルタは、雰囲気空気からの汚染物質による呼気の汚染を防ぐ。マスクへの酸素入口7010は、通常ステムの下に位置し、対象者がマスクを着用したときに人の対象者の顎に近接するように構成されており、捕捉要素7001に取り外し可能に接続するように変更されて良い。要素7001は、入口7010を通してマスク7007に取り外し可能に挿入されて良く、または、マスク7007と実質的に漏れのない嵌合を形成するためにマスク7007に取り外し可能に接続または挿入されて良い。マスク7007は、マスクを患者の顔に密着させるために、被験者の頭の後ろで輪にすることができる弾性バンドまたは紐を含んで良い。先に述べたように構成されたマスク7007は、要素7001の口とカラムの入口との間の直接接触を防ぎ、唾液によるカラム入口の汚染を最小限に抑えるか、または排除し、呼気からの不揮発性有機粒子の収集も最大化する。氷水に浸したトラップ7003は、捕捉要素7001の後(下流)に設置して良い。ポンプ7006を使用する流速(空気吸引速度)は、ニードルバルブ7005を使用して制御し、約600mL/分で吸引することができる。約200ml/分~600ml/分の公称流量を使用して良い。オプションのHEPAフィルタ7011をトラップ7003とニードルバルブ7005との間に取り付けて良い。要素7001のカラムベッドへの逆流を防止するために、チェックバルブ(図1を参照)などの他の流体コンポーネントをシステム7000に取り付けて良い。呼気中のCOは、要素7001のカラムベッドを通過する。呼気サンプルの量および/または呼吸操作が適切かどうかを判断するために、呼吸捕捉要素7001の出口とトラップ7003の間にCOセンサーを配置して良い。COモニタリングにより、吐き出された空気量の割合を概算できる。要素7001の出口とトラップ7003との間に粒子カウンタを設置して、カラムベッドを出る粒子のサイズおよび数を検出することもでき、また、カラムベッドの飽和およびカラムベッドからの不揮発性有機分子の破過を検出するためにも使用して良い。例示的なシステム7000は、また、捕捉要素7001のバイパスライン(図示せず)を備えて、要素7001のカラムベッドにルーティングする前に呼吸量の標準化を可能にして良い。COセンサーおよび粒子カウンターも、バイパスラインに流体的に接続されて良い。不揮発性有機分子を捕捉するための捕捉要素7001のカラムベッド内の官能基で固定化された固体ビーズの能力は、約0.05mg(不揮発性有機物)/mgビーズと約0.5mg/mgの間であって良い。例示的な捕捉要素のカラムベッドにおけるC18結合樹脂ビーズの容量は、約0.1mg/mgであって良い。すなわち、25mgのC18ビーズを具備するカラムベッドは、約2.5mgの不揮発性有機分子を捕捉または吸着する能力を有するであろう。
【0050】
C18官能基に加えて、不揮発性分子に親和性を示す他の官能基を、樹脂ビーズなどの固相ビーズに固定化されたカラム内の吸着剤として使用して良い。固相ビーズは、樹脂、セルロース、シリカ、アガロース、および水和Feナノ粒子などのポリマーおよび粒子から製造されて良い。吸着材料は、固相ビーズ上に配置された他の官能基を含んで良く、当該官能基は、これに限定されないけれども、オクタデシル、オクチル、エチル、シクロヘキシル、フェニル、シアノプロピル、アミノプロピル、2,3―ジヒドロキシプロポキシプロピル、トリメチル―アミノプロピル、カルボキシプロピル、ベンゼンスルホン酸、およびプロピルスルホン酸を含む。官能基は、また、イオン交換相、ポリマー相、抗体、グリカン、脂質、DNA、およびRNAのうちの少なくとも1つを有して良い。
【0051】
ここに記載される例示的なシステムおよび方法は、呼吸器感染症に対する診断能力に必ずしも限定されない。例えば、肺癌は、また、バイオマーカーを末梢肺液に放出する可能性があり、これらのバイオマーカーは、開示されたシステムおよび方法によって容易に検出されるであろう。さらに、血液は肺の肺胞内層と密接に接触するため、体の他の部分(肺以外)の感染症やがんのバイオマーカーが肺胞内層を越えて末梢の肺液に移動する可能性があり、これが、EBAの分析によって検出可能である。結果として、この発明の範囲は、呼吸器疾患の検出および診断に限定されない。例示的なシステムおよび方法は、リシンなどのエアロゾル化学粒子を捕捉し、粒子を分析して化学攻撃の脅威を防ぐために使用されて良い。
【0052】
ここに記載の例示的なシステムおよび方法において、サンプル捕捉要素1001内の充填ベッドカラムの長さ(L)は約3mmである。チューブの公称内径は約7mm(D)である。約12μm~20μmの公称粒径(Dp)を有する約25mgのC18樹脂ビーズを含む例示的な充填ベッドは、約350から約580までのD/Dp比で約150~250のL/Dp比をもたらす。これらのカラムパラメータは、ベッド内の望ましくない局所的な流れ分布を防止し、実質的にすべての樹脂ビーズがベッドを通るエアロゾル流に確実にさらされるようにすることが判明した。
【0053】
少なくとも1つの呼吸器疾患の診断のために周囲エアロゾル粒子を捕捉(または収集)するための例示的なシステムおよび方法が開示される。例示的なエアロゾル収集システム900(図5)は、周囲エアロゾル放出チャンバ901と、好ましくは放出チャンバに直接流体的に取り外し可能に接続されたサンプル捕捉要素902とを有して良い。捕捉要素902は、エアロゾル中の細菌やウイルス粒子などの不揮発性有機成分を選択的に捕捉するための充填ベッドを有する。ポンプ903は、サンプル捕捉要素と流体連通して配置され、サンプル捕捉要素を通してエアロゾル流を引き込むように構成されている。収集システム900の粒子捕捉効率は、雰囲気空気中のほとんどの有機粒子の範囲をカバーする約0.3μmから約10μmの範囲の粒子サイズに対して少なくとも約99%であって良い。裸のウイルス粒子のサイズは非常に小さく、多くの場合100nm程度であるけれども、雰囲気空気から収集されたウイルス粒子(例:COVID―19を引き起こすSARS―CoV―2ウイルス)を構成する可能性がある呼気呼吸器粒子(呼気エアロゾル、EBA)のサイズは異なる。)は、多くの場合、サイズが約100nmから約5μmの範囲であると測定される。さらに、エアロゾル塊のかなりの部分は、直径約2μmを超える粒子で構成される。ウイルス粒子は通常、水、界面活性剤、タンパク質、塩、その他の化学物質を含む水性肺液中に懸濁している。粒子の発生は、会話中や深呼吸を引き起こすその他の活動中に最も多くなる。これらの粒子は吐き出された後、通常、水分の損失により収縮する。その後、例示的な周囲エアロゾル収集システム900を使用して捕捉される場合、EBA質量の大部分は、約1μmから約5μmの間のサイズの粒子を含むと予想される。使用前に、充填ベッドカラムを約70%アセトニトリル(ACN)、続いて約0.05%トリフルオロ酢酸(TFA)で洗浄(またはフラッシュ)して良い。約400μLの70%アセトニトリルおよび約400μLの0.05%トリフルオロ酢酸(TFA)を使用して、約25mgのC18ビーズを含む例示的なカラムを洗浄することができる。さらに、例示的なカラムは、70%ACNで1回、0.05%TFAで3回洗浄されて良い。例示的なカラムは、使用前に湿った状態または濡れた状態に保たれる。約25mgのC18ビーズを含む充填層カラムの場合、洗浄ステップ後にビーズをロードするために約100μLの0.05%TFAを使用して良い。凍結を避けるために、好ましくは、カラムの両端にキャップをして約4℃で保存して良い。
【0054】
他の例示的な側面において、複数の充填ベッドカラムをカラムの束として、例えばサンプル収集カートリッジとして構成して良い。カートリッジは、ポンプを使用して流れがカートリッジを通って引き出されるときに、エアロゾルサンプルを複数の充填ベッドカラムに実質的に均一に分配するために、エアロゾルサンプル流と流体連通して配置された適切な入口分配要素を有して良い。カートリッジは、複数の充填ベッドカラムを通してエアロゾルサンプルを引き出すために、ポンプと流体連通して配置された適切な出口分配要素を有して良い。例示的なサンプル収集カートリッジは、室内空気中に存在する呼気エアロゾルの高空気流量(例えば、約200L/分~約500L/分)収集のための方法および装置を使用して、エアロゾルサンプルを捕捉するために使用されて良い。これらの方法および装置は、MALDI―TOFMSおよび大気サンプルからのCOVID―19などの疾患の積極的症例発見(ACF)に適した高感度かつ特異的なオンサイトゲノム分析と組み合わされて良く、これは、本出願人の出願に係る、「現場での迅速な分析のための高流量エアロゾル捕捉を使用した呼吸器疾患監視システムと方法」というタイトルの米国特許出願第17/586679号に開示されるようなものであり、その開示は参照してここに全体として組み込む。代替的には、少なくとも1つの充填ベッドカラムまたは捕捉要素を含む例示的なサンプル収集システムを互いに平行に配置して、呼気エアロゾル中の不揮発性粒子を各カラムまたは捕捉要素に選択的に捕捉して良い。各充填ベッドカラムは、約200mgのC18樹脂ビーズを有して良い。捕捉要素の下流に位置する1または複数の適切なポンプを選択して、各充填ベッドカラムに必要な流量を提供して良い。約20L/分の例示的な流量でエアロゾルサンプルを各カラムに通して、各ベッドで約10重量%(不揮発性粒子20mg/C18ビーズ200mg)の捕捉容量を実現して良い。互いに平行に配置された4つのベッドを有するサンプル捕捉要素は、4つのベッドを通じて約80L/分の総流量を提供して良い。ベッドの数は、サンプル捕捉要素を通過する所望のエアロゾルサンプル流量を実現するために拡大または縮小して良い。例えば、10本の例示的な充填ベッドカラムを束またはカートリッジ内で互いに平行に配置して、カートリッジを通して約200L/分のエアロゾルサンプルを処理することができる。各ベッドにおけるC18ビーズの量を減らすと、ベッドの長さが減少し、各ベッドを通る圧力損失が減少する結果として各ベッドを通る流量が増加する可能性がある。
【0055】
上述したように、呼気中の不揮発性有機エアロゾル粒子を含むエアロゾルサンプルの供給源は、個々の顔を受け入れるように構成されたCPAPマスクなどの呼気収集要素を使用して収集された呼気サンプルを有して良い。次いで、呼気中のエアロゾル粒子を、C18ビーズを含む充填ベッドカラムを通して引き込み、不揮発性の呼気粒子を捕捉して良い。充填ベッドカラムを有する例示的なサンプル捕捉要素は、標的領域の雰囲気空気中に存在する呼気から、例えば、病院や診療所の待合室、救急車、手術室、集中治療室などの雰囲気空気中にある呼気から、不揮発性有機粒子を捕捉するために使用されて良い。部屋、例えば病院の手術室に存在する雰囲気空気中の不揮発性有機粒子を収集するための例示的なエアロゾル収集システム1400(図10)が開示される。不揮発性粒子は、雰囲気空気中に分散した呼気エアロゾル粒子を有して良く、微生物、ウイルス、代謝産物バイオマーカー、脂質バイオマーカー、および呼吸器疾患に特徴的なプロテオームバイオマーカーのうちの少なくとも1つを有して良い。システム1400は、適切なポンプ1406を使用して雰囲気空気が少なくとも1つの要素1407を通して引き込まれる(または引き込まれる)ときに、不揮発性粒子を選択的に捕捉するために、C18樹脂ビーズの充填ベッドカラムを有する少なくとも1つのサンプル捕捉要素1407を有して良い。捕捉要素1407は、入口端1408および出口端1409において迅速接続/切断継手またはフィッティングを使用して、筐体1401内に取り外し可能に配置されて良い。例示的なクイック接続/切断カップリングは、McMaster―Carr(オハイオ州クリーブランド)によって供給されるプラグおよびソケット継手(ラッチロックソケット、ツイストロックソケットなど)を有して良い。ポンプ1406は、筐体1401の内部に配置され、電源1402からの電力を使用して駆動されて良い。筐体1401内のカップリングおよび嵌合フィッティングは、適切な機械的および電気的接続/接触を検出し、例えばグラフィカルユーザを介してユーザに警告するための電気接点を有して良く、これは、可聴アラームなどを介して、エンクロージャ1401に配置されたインターフェースを使用して良い。代替的には、ポンプ1406は、筐体1401の外部に配置されて良く、外部電源によって駆動される病室吸引機またはポンプを含んで良い。エアロゾル収集システム1400システムは、捕集要素1407に入る前に周囲の空気を加湿して充填ベッドカラム内の湿度を約95%RHまで増加させるネブライザ要素1404をさらに有して良く、これにより要素1407の粒子捕捉効率を高めることができる。代替的には、ネブライザ1404は、水を細かいスプレーまたはミストに変換する噴霧器または加湿器の形態であって良い。容器1405に貯蔵された水は、ポンプ1403を使用して要素1404に供給されて良い。電源1402は、ポンプ1403およびネブライザ1404を動作させるための電力を供給して良い。例示的なネブライザは、Aeroneb labマイクロポンプネブライザおよび制御モジュール(Aerogen、アイルランド)である。例示的なポンプには、ダイヤフラムポンプおよび蠕動ポンプが含まれる。捕捉要素1407の直径は、約10mmから約20mmの間であって良い。捕捉要素1407の内径は約16mmであって良い。充填ベッドは、公称粒径が約75μm~約150μmのC18樹脂ビーズを含んで良い。各捕捉要素のベッド重量は約200mgであり、ベッドの長さは約3mmから約5mmの間であって良い。C18粒子は、上流の多孔質ポリマーフリットディスクと下流の多孔質ポリマーフリットディスクとの間に充填されて良い。上流ディスクおよび下流ディスクの孔径は、それぞれ約90μmおよび35μmであって良い。例示的な筐体1401の寸法は、約11インチ×11インチ×5インチ(長さ×高さ×奥行き)であって良い。例8に記載されているように、システム1400の捕捉要素1407を使用して雰囲気空気粒子の99.8%を超える粒子が捕捉され、これは粒子捕捉効率が、毎時約2×106の高いガス時空間速度においてさえ少なくとも99%であったことを示唆している。代替的には、水ポンプ1403、ポンプ1406、電源1402、ネブライザ1404、および水容器1405は、筐体1401の外部、例えば、筐体1401のサイズを縮小するための別個の筐体またはサブシステム内に配置されて良い。これによりは筐体1401からは基本的にノイズが発生しない。この例示的な側面において、筐体1401は、1または複数のサンプル捕捉要素1407を有して良く、病院の手術室の患者の近くに配置して良い。
【0056】
室内に存在する雰囲気空気中の不揮発性有機粒子を収集するための他の例示的なエアロゾル収集システム1400A(図12A~D)において、水ポンプ1403、水容器1405、電源モジュール1402、および空気ポンプ1406(図示せず))は、流体モジュール1410内に配置されて良い。水容器1405は、約1.3リットルの水容量を具備して良い。モジュール1410は、ペリカンケース、または持ち運び可能または容易に持ち運び可能な他の適切な筐体であって良い。入力電力は、壁の電気コンセント(120VAC)に取り外し可能に接続され得るケーブル1411を介して供給されて良い。モジュール1410は、また、オン/オフ電源スイッチ1412を有して良い。モジュール1410は、適切な可撓性チューブを使用してサンプル収集モジュール1413と流体連通するように構成される。モジュール1410および1413は、互いに近くに配置されて良く、また、互いに距離を置いて配置されて良い。例えば、モジュール1413は病院の手術室(OR)内に配置されて良いけれども、流体モジュールは、モジュール1410内のポンプによって生成される騒音を最小限に抑えるために、部屋の外、または離れた場所に配置されて良い。容器1405内の水は、ポンプ1403を使用してリザーバ1414に移送される。リザーバ1414は、所定の体積の水を保持するように構成されて良く、過剰な水は容器1405に溢れて戻る。ネブライザ1404は、リザーバ1414の出口近くに配置されて良い。ネブライザ1404は、超音波ミスト噴霧器(例えば、DHTSによって製造される)であって良く、これは3.7~12VDC電源またはバッテリーによって駆動される。アトマイザは、収集モジュール1413内に配置された電源によって電力を供給されて良い。ネブライザ1404は、直径20mmであり、約113kHzで動作して良い。ネブライザ1404によって生成された水ミストは、導管1415を通ってマニホールド1416に送られる。マニホールド1416は、第2のマニホールド1419内の空気サンプル入口ポート1418に近接して配置された複数の出口ポート1417を有して良い。マニホールド1419は、複数のサンプル捕捉をサポートして良い。例示的なサンプル要素1407に関する詳細は先に説明した。サンプル収集中、水ミストが継続的に生成され、ポート1417を通って出て、エアポンプ1406(図10)を使用してポート1418を通って捕捉要素1407に引き込まれる雰囲気空気を加湿する。収集モジュール1413内のミストから凝縮したあらゆる水(サンプル捕捉要素を出る凝縮物)は、収集モジュール1413の下に適切に配置されたリザーバ1420に収集される。
【0057】
各捕捉要素1407内の充填ベッドは、ポンプ1406を使用して約20L/分の流量で雰囲気空気が各捕捉要素に引き込まれるため、サンプル収集中に湿った状態に保たれる。ポンプ1403は、水を約1.3ml/分でリザーバ1414に供給して良い。水の流量は、約1ml/分と約2ml/分の間とすることができる。この流量で、約1.3リットルの開始水量を使用して、流体モジュール1410は、水ミストを捕捉要素1407に約16時間供給することができる。サンプル収集後、捕捉要素は収集モジュール1413から取り外され、適切な有機溶媒を使用してエアロゾル粒子が抽出される。有機溶媒は、アセトニトリル(ACN)、メタノール、およびイソプロパノール(IPA)のうちの少なくとも1つを有し、残りは水である。溶媒は、小さな代謝産物やタンパク質などの極性粒子をベッドから溶出するために、水中に約50体積%~約70体積%のアセトニトリルを有して良い。他の溶媒は、ベッドから脂質などの非極性粒子を溶出するために、水中に約50体積%~約70体積%のイソプロパノールを有して良い。捕捉要素1407の直径は、約10mmから約20mmの間であって良い。捕捉要素1407の内径は約16mmであって良い。充填ベッドは、公称粒径が約75μm~約150μmのC18樹脂ビーズを有して良い。各捕捉要素のベッド重量は約200mgであり、ベッドの長さは約3mmから約5mmの間であって良い。C18粒子は、上流の多孔質ポリマーフリットディスクと下流の多孔質ポリマーフリットディスクとの間に充填されて良い。上流ディスクおよび下流ディスクの孔径は、それぞれ約90μmおよび35μmであって良い。エアロゾル化ウイルス粒子を捕捉するために、例示的なサンプル捕捉要素1001、7001、1301、902、および1407は、硫酸エステル固定化セルロースビーズを有して良い。代替的には、サンプル収集モジュール1413において、1または複数の捕捉要素はC18ビーズの充填ベッドを有して良く、1または複数の捕捉要素1407は硫酸エステル固定化セルロースビーズの充填ベッドを有して良い。代替的には、サンプル収集モジュール1413において、1または複数の捕捉要素は、C18ビーズと硫酸エステル固定化セルロースビーズとの混合物の充填ベッドを有して良い。例示的な硫酸塩ビーズは、Cellufine硫酸塩ビーズ(JKC Corp.、日本)を良い。粒子直径は、約40μmから約130μmの間であって良い。例示的なサンプル捕捉要素は、充填ベッドカラムとして配置された約100mgの硫酸エステル固定化セルロースビーズを有して良い。例示的なサンプル捕捉要素は、約6.8mmの内径および約30mmの長さを具備して良い。
【0058】
システム1400または1400Aを使用する例示的なエアロゾルサンプル収集方法において、サンプル捕捉要素1407が収集モジュール1413のポート1421に挿入される。水ポンプ1403およびネブライザ1404が通電されて水ミストを生成し、ポート1418を通して引き込まれた雰囲気空気を加湿する。次に、雰囲気空気サンプルは、所定のサンプリング時間の間、ポンプ1406を使用して各サンプル捕捉要素1407に引き込まれる。サンプリング時間は、病院の手術室での手術期間をカバーするために変更されて良い。場合によっては、サンプリング時間は約8時間になることがあろう。次いで、各捕捉要素1407を筐体1401から取り出し、有機溶媒で洗浄して、捕捉された不揮発性有機物を各要素1407内の充填ベッドから溶出する。上述したように、有機溶媒は、アセトニトリル(ACN)、メタノール、およびイソプロパノール(IPA)のうちの少なくとも1つを有し、残りは水で良い。溶媒は、小さな代謝産物やタンパク質などの極性粒子をベッドから溶出するために、水中に約50体積%~約70体積%のアセトニトリルを有して良い。他の溶媒は、ベッドから脂質などの非極性粒子を溶出するために、水中に約50体積%~約70体積%のイソプロパノールを有して良い。ベッドは、最初に水中のACNで洗浄され、続いて水中のIPAで洗浄されて良い。次いで、粒子は、凍結乾燥を使用して濃縮され、PCR、ELISA、rt―PCR、質量分析計(MS)、MALDI―MS、ESI―MS、およびMALDI―TOFMSのうちの少なくとも1つを有する診断装置を使用して分析されて良い。抽出された粒子は、また、例えばウイルス粒子から特徴的なペプチドを生成するために高温消化ステップに供されても良い。
【0059】
人工呼吸器1305と流体連通する充填ベッドカラムを有する例示的なサンプル捕捉要素1301を配置することによって、呼気エアロゾルを捕捉するための例示的なシステム1300(図9A)、および方法が開示される。人工呼吸器1305は生命維持装置であり、自力呼吸ができない患者のための集中治療室において使用される。たとえば、新型コロナウイルス感染症(COVID―19)の重篤な症状のある患者は、呼吸するために人工呼吸器の補助が必要になる場合がある。チューブ1306は、患者の口または鼻を通して気管に直接挿入される。人工呼吸器は、このチューブを通して空気を肺に押し込み、人に強制的に吸入させる。人工呼吸器は、通常、1秒間空気を強制的に送り込み、約3秒間停止して患者が同じチューブから息を吐き出せるようにし、その後このサイクルを繰り返す。捕捉要素1301の入口端1302は、粒子の損失を最小限に抑えるために、取り外し可能に、好ましくは人工呼吸器の呼気チューブに直接接続される。出口端1303は、要素1301内の充填ベッドカラムを通して約200ml/分~約2.5L/分の流量で呼気を引き込むためのチューブを使用してポンプ1304に取り外し可能に接続される。システム7000(図7)と同様に、システム1300は、凝縮液を収集するために、端部1303とポンプ1304との間に配置されたトラップを有して良い。トラップは周囲温度より低い温度まで冷却されて良い。オプションのHEPAフィルターとニードルバルブまたは流量計を、トラップとポンプの間に取り付けて良い。呼気中のCOは充填ベッドカラムを通過する。呼気サンプル量が適切であるかどうかを判断するために、出口端1303とトラップとの間にCOセンサーが配置されて良い。COモニタリングにより、呼気量を概算することができる。出口端1303とトラップとの間に粒子計数器を設置して、充填ベッドカラムから出る粒子のサイズと数を検出することもでき、これを使用してベッドの飽和と、不揮発性有機分子(細菌およびウイルス粒子)のカラムベッドから突破を検出することもできる。要素1301内のC18ビーズの不揮発性有機分子を捕捉する能力は、約0.05mg(不揮発性有機物)/mgビーズ~約0.5mg/mgの間であって良い。例示的な捕捉要素におけるカラムベッド内のC18結合樹脂ビーズの容量は、約0.1mg/mgであって良い。すなわち、25mgのC18ビーズを有するカラムベッドは、約2.5mgの不揮発性有機分子を捕捉または吸着する能力によって特徴付けられると考えられる。ポンプ1304はダイヤフラムポンプであって良い。COセンサーからのデータは、ポータブルデバイスで一般的に使用されるSDカードなどの不揮発性メモリカードに記録されて良い。流量センサーを設置して、C18充填層カラムを通過する流量を監視して良い。代替的には、流量コントローラーを使用して、一定の流量、たとえば充填ベッドカラムを通る流量500mL/minを達成することもできる。例示的な捕捉要素1301を使用して、病院の集中治療室に配置された人工呼吸器からの呼気エアロゾルサンプリングを可能にするために、ポンプ1304を、COセンサ1311、関連する電源1307、システム制御コンポーネント、および必要な流体コンポーネント(チューブ、クイックカップリングなど)をポータブルシステム1313(図9B)に接続する。捕捉要素1301は、ポート1314を介してシステム1313(図9B)と流体連通するように配置されて良く、これは、急速接続/切断カップリングを有して良い。ポンプ1304を使用して捕捉要素1301から出た呼気の一部は、COセンサ1311と流体接続されたリザーバ1312に送られて良い。リザーバ1312は、十分に密閉された容器であって良く、COセンサからの空気漏れを防ぐために使用される。システム1313は、要素1301を使用して呼気のサンプリングを開始および停止するためのユーザーインターフェースおよびオンオフスイッチを有して良い。さらに、流量コントローラおよび流量制限器1309などの構成要素も携帯システム1313にパッケージ化することができる。ポンプ1304はダイヤフラムポンプとすることができる。ポータブルシステム1313は、11インチ×7.5インチ×5.5インチ(長さ×奥行き×高さ)であってもよく、ポンプによって引き起こされる騒音レベルを45dB未満に低減するためにフォームパッドなどのノイズキャンセリング材料を有して良い。所定のサンプル収集期間の後、サンプル捕捉要素1301をシステム1300から取り外すされて良い。次いで、要素1301を110℃で約10分間オートクレーブ滅菌して、捕捉されたエアロゾル粒子を抽出する前に要素1301を消毒することができる。捕捉された不揮発性エアロゾル粒子は、70%アセトニトリル(ACN)、約50%~約70%メタノール、および約50%から約70%のイソプロピルアルコール(IPA)を有する、約200μLから約400μLの溶媒でコラムを洗浄(フラッシング)んすることにより抽出されて良い。例えば、50%ACNフラッシュを使用して第1段階フラッシュで代謝産物とタンパク質を溶出し、続いて70%IPAフラッシュを使用して充填ベッドカラムから脂質を溶出して良い。捕捉されたバイオエアロゾル粒子を保存するために、必要に応じて一晩凍結乾燥することにより充填ベッドカラムから有機溶媒を除去して良い。有機溶媒は、加熱ブロック上で約70℃で約30分間インキュベートすることによっても除去することができる。最後に、ベッドを約0.05%のTFAで洗浄して良い。代謝物、タンパク質、脂質の分析方法は、タンパク質プロファイリングのための銀染色、タンパク質含有量のためのタンパク質アッセイ、メタボロミクスおよび脂質オミックスのためのボトムアッププロテオミクスおよびLC―MS/MS、並びに分子プロファイリング用MALDI―TOF質量分析法などを含む。例示的な試験では、人工呼吸器に接続された捕捉要素1301を使用して、肺炎に感染した患者からの呼気エアロゾルが収集された。その後の分析中に、収集された総呼気空気量、呼気中のCO含有量、タンパク質含有量、MALDI―TOF総イオン強度、MALDI―TOF MS単一ピーク(4820m/z)強度の変数で構成されるピアソンの相関ヒートマップによって明らかになったように、プロテインアッセイを使用して測定されたタンパク質含有量とMALDI―TOF MSを使用して測定された分子プロファイリングが、患者の肺炎感染の良好な指標であることが判明した。
【0060】
ここで先に説明したように、サンプル捕捉要素902(図5)の充填ベッドカラムは、Sigma Aldrichおよび他のベンダーによって供給されるHamilton PRP―C18樹脂ビーズを有して良い。樹脂ビーズは、約12μmから約20μmの間の公称直径によって特徴付けられて良い。好ましくは、C18ビーズの公称直径は約20μmである。充填ベッドは、フリットディスクなどの2枚の多孔質フィルタープレートの間の所定の位置に保持されて良い。例えば、平均孔径が35μmを超えるポリエチレンディスクをベッドの上流に配置し、平均孔径が10μmのポリエチレンディスク(Boca Scientific、マサチューセッツ州デダム)をベッドの下流に配置することができる。35μmフリットディスクにより、ベッドを通過する空気流量が増加し、ベッドによる望ましくない圧力降下が最小限に抑えられる。他方、より小さな10μmフリットディスクは、C18樹脂ビーズがカラムから漏れ出るのを防ぐ。充填ベッドは、約25mgのC18樹脂ビーズを有して良い。呼気中の細菌やウイルス粒子を含む不揮発性有機成分は、ビーズ上のC18官能基と除去可能に相互作用して捕捉される。水、揮発性有機分子および他の親水性分子はベッドを通過し、サンプル捕捉要素902とポンプ903との間に配置された適切なトラップ904内に捕捉され得る。トラップ904は、周囲温度未満に冷却され得る。サンプル捕捉要素902は、周囲温度以下の温度まで冷却され得る。携帯型レーザー粒子計数器(オレゴン州グランツパスのMetOne Instruments)905を捕捉要素902の下流に設置して、捕捉要素902によって捕捉されなかった任意の粒子の粒子数および粒子サイズを測定することができる。粒子数および粒子サイズのデータを使用して、要素902の捕捉効率を粒子サイズの関数として推定することができる。C18樹脂ビーズは、ビーズ上の炭素鎖とウイルスや微生物の表面に存在する有機分子との間に表面親和性をもたらす。たとえば、細菌の細胞表面は、さまざまな構造のグリカンで構成されている。さらに、ワックス状のミコール酸が結核菌の表面を覆っている。これらの有機分子は一般に疎水性であり、充填層内のC18ビーズのアルキル鎖に対して顕著な親和性を示す。化学的特性に加えて、充填ベッドカラムの粒子サイズと層の長さは、物理吸着による粒子の捕捉を実現するために慎重に選択されている。エアロゾル化ウイルス粒子および溶液中のウイルス粒子を捕捉するために、例示的なサンプル捕捉要素1001、7001、1301、902、および1407は、硫酸エステル固定化セルロースビーズを有して良い。例示的な硫酸塩ビーズは、Cellufine硫酸塩ビーズ(JKC Corp.、日本)を有して良い。粒子直径は、約40μmから約130μmの間であって良い。例示的なサンプル捕捉要素は、充填ベッドカラムとして配置された約100mgの硫酸エステル固定化セルロースビーズを有して良い。例示的なサンプル捕捉要素は、約6.8mmの内径および約30mmの長さを具備して良い。例8に示すように、硫酸エステル固定化ビーズの充填ベッドカラムを使用して抽出されたSARS―CoV―2ウイルス粒子の熱消化、MALDI TOFMSを使用した分析、およびペプチドフィンガープリントプロトコルを使用したスペクトルの処理により、核タンパク質(N)のための、また、SARS―CoV―2の迅速な識別のためのペプチドフィンガープリントのマッチングを可能にするであろう。
【0061】
次に、サンプル捕捉要素902の充填ベッドカラムから捕捉されたエアロゾル粒子が、分析に適した溶媒を使用して抽出されて良い。適切な抽出システムは、充填ベッドカラムを溶媒でフラッシュし、不揮発性有機物を含む溶媒を充填ベッドから除去するための手段を含んで良い。溶媒は、アセトニトリル、メタノール、酸、イソプロパノールのうちの少なくとも1つを有し、残りは水であって良い。溶媒は、水中に約50体積%~約70体積%のアセトニトリルを有して良い。溶媒は、水中に約50体積%~約70体積%のイソプロパノールを有して良い。溶媒は、水中に、約50体積%~約70体積%のメタノールを有して良い。溶媒は、約12.5体積%の酢酸、約5体積%のTFA、約5体積%のギ酸、および約10体積%のHClのうちの少なくとも1つを有して良い。充填ベッドは、水溶性無機汚染物質粒子を除去するために溶媒抽出の前に少なくとも1回水で洗浄されて良い。次いで、収集されたサンプルは、PCR、ELISA、rt―PCR、質量分析計(MS)、MALDI―MS、ESI―MS、およびMALDI―TOFMSのうちの少なくとも1つを有する診断装置を使用して分析されて良い。代替的には、収集ステップの後、C18ビーズを70%イソプロパノールなどの適切な抽出溶媒を有するキャップ付きチューブに移し、手で振るか遠心分離にかけて、捕捉されたエアロゾルを溶媒に抽出して良い。ここに開示される例示的なシステムおよび方法において、C18ビーズおよび/またはカラムは、最初に有機溶媒でビーズを洗浄し、続いて水やPBS緩衝液などの無機溶媒で洗浄した後に再使用して良い。MALDI―TOFMSなどのトップダウンプロテオミクスを可能にする診断装置が使用されて良い。トップダウンプロテオミクスでは、細菌やウイルスからの無傷のタンパク質イオンまたは大きなタンパク質断片が、MS分析のために気相断片化にさらされる。
【0062】
開示された例示的なシステムおよび方法は、呼気中のタンパク質、代謝産物、および脂質の特徴のベースラインを確立するために使用することができ、その後、様々な呼吸器疾患を有する患者の呼気を区別するために使用することができ、呼気中の不揮発性エアロゾルの分析に基づく疾患検出のための強力な診断ツールを提供することができる。
[例]
【0063】
例1.例示的な充填ベッドカラム900およびMALDI TOF―MSを使用した、エアロゾル化した細菌およびウイルス粒子の捕捉および分析
【0064】
エアロゾル化された大腸菌K12株、バクテリオファージMS2、シュードモナス・フルオレセンス1013、およびエルシニア・ローデイCDC3022―85の捕捉および分析を調べた。約20μLのウイルスまたは細菌を含む水サンプルからのエアロゾル粒子は、Sono―Tek超音波ノズル(ニューヨーク州ミルトン)を使用して生成された。ノズルは、約0.3μmから約10μmの範囲のサイズ、中央粒径約2μmのエアロゾル粒子を生成するように調整された。粒子を、公称容量約50mlの放出チャンバー901(50ml円錐管)に導き、充填ベッドカラムを通して約500ml/分の流速で約10分間引き込んだ。捕捉要素902内の充填ベッドカラムは、サイズ約20μmの約25mgのC18樹脂ビーズを含んでいた。ビーズを70%アセトニトリルで1回、0.05%トリフルオロ酢酸で3回洗浄した。洗浄後、ビーズは使用前に湿った状態で保管された。この目的のために、使用前にビーズが乾燥するのを防ぐために、カラム902の両端に蓋をして冷蔵庫に保管して良い。カラムベッドは長さ約3mm、直径約7mmであった。ベッド容積は約0.115ccであった。したがって、500ml/分の流量で、ガス時間空間速度(GHSV、ベッド容積に対する流量の比)は、1時間あたり約260,000と計算された。捕捉要素902は、50ml円錐管の底部近くに取り外し可能に取り付けられた。ポータブルレーザー粒子計数器(オレゴン州グランツパスのMetOne Instruments)905を使用して、捕捉要素902の上流および下流で約0.3μmから約10μmの範囲の粒子サイズを測定した。トラップ904は、氷水で冷却された実験用ガラスリザーバで構成され、また、カラムを通過するエアロゾル凝縮物(例えば、水蒸気)を収集するために要素902の下流に配置された。バクテリオファージMS2の捕捉要素902の上流および下流の粒子数を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
表1に示される粒子数に基づいて、MS2粒子の約99.8%が捕捉要素902の充填ベッドカラムに捕捉され、これは、粒子捕捉効率が、ガス時空間速度が1時間あたり約260,000であっても、少なくとも99%であることを示唆している。充填ベッドカラムの寸法(長さ、直径)、および、ベッドを通過する流量は、少なくとも250,000/hのガス空間速度を実現するために変更されて良い。いかなる特定の理論にも束縛されるものではないけれども、少なくとも99%の粒子捕捉効率は、約250,000/時~約3,000,000/時の間のガス空間速度で測定され得る。エアロゾル化した大腸菌粒子については、少なくとも99%の捕捉効率も測定された。したがって、長さ約3mmの例示的な充填ベッドカラムは、約0.3μmほどの小さな粒子を含み、著しく高い粒子捕捉効率をもたらし、約0.05mmおよび約0.15mとの間の厚さのエレクトレットおよびテフロン(登録商標)フィルターなどのフィルター基材を使用した捕捉効率を超えた。前述したように、充填層のL/Dpは約150~250であり、層を通る局所的な流れを防止し、実質的にすべてのビーズおよび表面積を露出させてバイオエアロゾル粒子を捕捉(化学吸着または物理吸着)させる。約10分間粒子を捕捉した後、充填ベッドカラムを約400μLの水で3回洗浄し、その後、捕捉された生体材料を200μLの70%イソプロパノールで溶出した。洗浄および溶出ステップ中に収集されたサンプルは、質量分析法を使用して分析された。
【0067】
サンプルのMALDI―TOF質量スペクトルは、1000~15000m/zの線形モードで操作されるShimadzu Axima CFR―plus質量分析計を使用して取得された。直接注入およびナノフローLC質量分析には、EASY―nLC1000システムと組み合わせたLTQ Orbitrapシステム(Thermo Fisher Scientific)を使用した。直接注入の流量は約3μL/分だった。LC―MS分析では、サンプルをマイクロフローC18カラム(Acclaim(商標) PepMap(商標) 100、75μmx2μmx25cm、Thermo Fisher Scientific)に注入し、溶媒B(99%アセトニトリル、0.1%ギ酸)の90分で5%から65%の勾配を使用してタンパク質を分離した。イオンの断片化は、衝突誘起解離(CID)法を使用して実行された。イオンフラグメンテーションのカバレッジを向上させるために、段階的CIDアプローチが使用され、それぞれ0%、10%、15%、20%、25%、30%、および35%の衝突エネルギーを使用してトップダウン質量スペクトルが取得された。トップダウン質量分析データ分析中に、Xcaliburソフトウェア(Thermo Fisher Scientific)を使用してモノアイソトピック質量がデコンボリューションされ、ProSight Lite(Northwestern University)を使用して断片化イオンが検査および特定された。
【0068】
洗浄サンプルおよび溶出サンプル(充填カラムベッドの抽出後)を、MALDI―TOFMSを使用して分析した。結果は、細菌の特徴が溶出サンプル中によく表現されていることを示し、ここに開示されるエアロゾル捕捉および溶出方法およびシステムが、完全なまたはオリジナルの(全細胞)生体材料の分析を提供することを示唆している。さらに、コントロールサンプルと溶出サンプル間の信号対雑音比は区別できず、充填カラムベッドを使用した捕捉と抽出が非常に効果的であることを示唆している。実際、溶出サンプルを素早く遠心分離した後、細菌物質がチューブの底に淡いペレットとして視覚化され、収集システムの捕捉能力が過剰に強力であることが示唆された。
【0069】
ほとんどのウイルスはタンパク質の殻を持っている。MS2は、開示された例示的なシステムおよび方法のウイルスを捕捉する能力を評価するための代表的なウイルスモデルとして使用された。MALDI―TOF質量分析により、MS2の歴史的バイオマーカーであるカプシドタンパク質が溶出サンプル中に観察されることが示された。MS2キャプシドタンパク質(13729 Da、MH+)の同一性は、実験的断片化イオンをインシリコタンパク質断片化パターンと照合する際に信頼性の高い統計スコアが構築されるトップダウン質量分析アプローチを使用して確認された。したがって、MALDI―TOFMS全細胞特性評価およびトップダウンタンパク質同定を使用して、開示されたエアロゾル捕捉システムおよび方法がエアロゾル化ウイルス粒子を捕捉するために使用できることを確認した。トップダウン質量分析法を使用して観察された結果をさらに確認するために、直接注入質量分析法およびナノフローLC質量分析法を定量分析に使用した。直接注入質量分析は、レフェリーインスリンの信号強度が約3.6E+6であることを示した(図6A~B)。MS2キャプシドタンパク質のシグナル強度は、対照サンプルと捕捉サンプル(充填層カラムからエアロゾルを抽出することによって得られたサンプル)の両方で約1.1E+5であり、例示的なエアロゾル捕捉システムおよび方法、並びにMALDI―TOFMS分析を使用すると明らかなサンプル損失が観察されないことを示唆している。この観察は、分子定量分析のゴールドスタンダードであるナノフローLC質量分析を使用してさらに確認された。LC質量分析の結果(図7A~B)は、MS2キャプシドタンパク質のピーク面積およびイオン強度が対照サンプルと捕捉サンプルの両方で実質的に同一であることを示し、例示的なエアロゾル捕捉システムおよび方法が高い生化学的捕捉効率を維持していることを示唆した。いかなる特定の理論にも束縛されるものではないけれども、ベッドを通過するガスの時空間速度においてさえ、開示されたエアロゾル捕捉方法の優れた捕捉効率に寄与するいくつかの要因が挙げられるけれども、これには、これに限定されないけれども、ウイルスおよび細菌粒子などのエアロゾル化有機生体材料に対するC18樹脂ビーズの高い保持能力、使用前の充填ベッドの準備、エアロゾル放出チャンバー901などのエアロゾル粒子源への捕捉要素の直接配置、およびエアロゾル化粒子を捕捉するために使用される独特の充填ベッドカラムパラメータが含まれる。上述したように、充填ベッドカラムの寸法は、約500ml/分の流速で十分な保持時間を提供し、樹脂ビーズ上の炭素鎖とウイルス表面の有機分子間の良好な接触を保証する。さらに、ウイルスや微生物を含むエアロゾル粒子がC18ビーズに直接さらされるため、「壁の損失」が最小限に抑えられた。壁の損失は、粒子が装置の側面または壁に堆積する他のエアロゾル収集方法では通常存在する。MS2キャプシドタンパク質の定量分析により、開示されたエアロゾル収集システムおよび方法の優れた捕捉効率が実証された。さらに、真空ポンプが使用されないため、開示されたシステムおよび方法は、「ソフト収集技術」として扱われて良い。なぜならば、他の微生物培養研究に必要な全細胞ウイルス、細菌、その他の微生物の生存能力が保存されるからである。
【0070】
例2.例示的な充填ベッドカラム特性
【0071】
膜ベースのエアロゾル収集装置の商業的使用は、エアロゾル収集中の水滴および他の環境粒子の蓄積によって引き起こされる目詰まりおよび圧力降下の問題に悩まされている。これには大きな膜表面積が必要となり、コストが増加し、寄生電力が高く、騒音の多いエアポンプが必要になる。エアロゾル捕捉試験は、公称直径約10μmおよび約20μmのC18ビーズを使用して実施された。ビーズはポリマーフリットディスクの間に詰められた。上流側ディスクと下流側ディスクの平均細孔径はそれぞれ約35μmと10μmであった。HPLCグレードの水および大腸菌栄養細胞をチャンバー901内にエアロゾル化し、ポンプ903、好ましくはダイヤフラムポンプを使用して例示的な充填ベッドカラム902を通して吸引した。大腸菌は、公称寸法が長さ約1μm~約2μm、直径約1μmの桿菌である。ポンプ流量を2.5L/分に設定し、ベッドを通る実際の流量を流量計を使用して測定した(図5を参照)。テストは、C18ビーズの充填ベッドカラムを使用して実施されました。図8Aに示すように、約25mg、20μmのC18ビーズを含むベッドを通る測定流量は、ベッド(長さ約3mm)がHPLCグレードの水エアロゾルに曝露された場合には約750ml/分であり、HPLCグレードの水エアロゾルに曝露された場合には約600ml/分であった。ベッドは30分間の捕捉時間にわたって大腸菌エアロゾルに曝露された。この結果は、約20μmのC18ビーズの25mgベッドがこれらのテスト中に飽和しなかったことを示唆しており、ベッド内のビーズの量が減少されて良いことを示している。代替的には、25mgベッドを使用して捕捉時間を延長することもできる。対照的に、ベッドが10μmC18ビーズを含む場合、ベッドがHPLCグレードの水エアロゾルに曝露されると、流速は約30分で約200ml/minから約50ml/minに減少した。さらに、ベッドが大腸菌エアロゾルに曝露されたとき、流速は約100ml/分から約3ml/分に減少し、10μmのビーズを含むベッドを通る顕著な圧力降下を示した。これらの結果は、捕捉要素902の充填ベッドカラム内の少なくとも約20μmの粒径のC18ビーズが好ましいことを示唆している。
【0072】
さらに、充填ベッドカラム内のC18ビーズの量、およびベッドの入口端に配置されたポリマーフリットディスクの孔径を変えることによって、ベッド全体にわたる圧力損失の増加による流量減少への影響を調べた。ポンプの流量は2.5L/minに設定され、ベッドを通過する実際の流量は流量計を使用して測定された。公称直径約20μmのC18ビーズの量は、充填ベッドカラム内で約25mgから約40mgに増加した。上流側ディスクと下流側ディスクの平均細孔径はそれぞれ約35μmと10μmであった。ベッドの量を約25mgから約40mgに増加させると、ベッドの長さを約3mmから約5mmに増加した。それぞれの場合において、ベッドをエアロゾル化されたHPLCグレードの水エアロゾルに曝露した後、ベッドを通る流量を監視した。結果(図8B)は、ベッド中のC18ビーズの量を約25mgから約40mgに増加させると、30分間の収集時間の後、流速が約700ml/分から約150ml/分に減少したことを示している。さらに、別の一連のテストでは、入口ポリマーフリットディスクの孔径を35μmから約10μmに変更した。大腸菌(栄養細胞)のエアロゾルに曝露すると、流量は、30分間の収集時間(図8C)で約600ml/分から約250ml/分に減少した。
【0073】
例3.人工呼吸器に接続された例示的な充填ベッドカラムを使用した、COVID―19と診断された患者の呼気エアロゾルの捕捉および分析
【0074】
例示的なシステム1300(図9A)は、COVID―19疾患と診断された患者の治療専用の病院の集中治療室(ICU)で評価された。サンプル捕捉要素1301内に約25mgのC18ビーズ(公称直径20μm)を含む充填床カラムを通る流量を500ml/分に設定した。システム1300に取り付ける前に、捕捉要素を70%アセトニトリルで1回洗浄し、次に0.05%TFAで3回洗浄した。捕捉要素は、充填ベッド内のC18ビーズの乾燥を防ぐために、使用前に4℃で保管された。次に、呼気エアロゾルを各患者から500ml/分の流量で約4時間収集した。収集期間の後、充填ベッドカラムを収集システムから取り外した。カラムを約200μL~約400μLの70%ACNまたは70%IPAで洗浄した。有機溶媒を一晩凍結乾燥することにより充填ベッドカラムから除去した。有機溶媒は、また、素子1301を約70℃の加熱ブロック上に約30分間置くことによって除去することもできる。捕捉されたエアロゾル粒子は、約40μL~100μLの0.05%TFAを使用して抽出または分離された。次に、SDS―PAGE電気泳動と銀染色、MALDI―TOFMS(全細胞トップダウンプロテオミクス)、およびボトムアッププロテオミクスを使用してサンプルを分析した。
【0075】
収集した全サンプル約5μlをSDS―PAGE電気泳動に使用し、これはCriterion Tris―HClゲルシステム(Bio―Rad Laboratories、カリフォルニア州ハーキュリーズ)を使用して実施した。SDS―PAGE電気泳動後、タンパク質バンドを視覚化するために銀染色キット(Thermo Fisher Scientific)を使用してSDS―PAGEゲルを調製した。ウシ血清アルブミンを内部陽性対照として使用した。3つの患者サンプルすべてでタンパク質のバンドが観察された。BSA対照サンプルに基づいて、3つのサンプルのタンパク質含有量は少なくとも100ngであると推定された。
【0076】
全細胞MALDI―TOFMS分析のために、0.2μLの分析物を、70%ACN中で調製された0.2μLのα―シアノ―4―ヒドロキシ桂皮酸MALDIマトリックス(CHCA)と混合した。混合物をMALDIサンプルキャップ上に堆積させ、質量スペクトルは、本出願人の出願に係る、「エアロゾル粒子の迅速かつ自律的検出のシステムおよび方法」と題する特許出願第PCT/US20/48042号に開示された例示的なMALDI―TOF質量分析システムを使用して、収集した。この出願は、参照してその全体をここに組み込む。MALDI―TOFスペクトルは、患者#3および#4のサンプルから収集された。両方のサンプルで質量ピークが観察された。MALDI―TOF MSから生成されたピークパターンは、検出と分類のためのパターン認識アルゴリズムを使用して検査された。
【0077】
ボトムアッププロテオミクスの場合、各サンプル5μlを使用した。約50μlの50mM重炭酸アンモニア(pH8.5)を各サンプルに添加した。タンパク質の還元は、ジチオスレイトールを最終濃度5mMで添加し、37°Cで30分間インキュベートすることによって実行された。還元後、タンパク質のアルキル化を行った後、ヨードアセトアミドを最終濃度15mMで添加し、室温で1時間インキュベートした。トリプシン(Thermo Fisher Scientific)を一晩のタンパク質消化に使用した。消化後、C18パックチップ(Glygen、メリーランド州コロンビア)を使用してペプチドをクリーンアップした。次に、MALDI―TOF質量分析を含む質量分析分析用に、20μlの0.1%ギ酸中のペプチドサンプルをしました。サンプルは、LTQ Quadrupole―Orbitrap質量分析計(Thermo Fisher Scientific)に接続されたEASY―nLC 1000 システム(Thermo Fisher Scientific)を使用して処理された。タンデム質量分析では、ペプチドをAcclaim PepMap 100 C18トラップカラム(0.2mm×20mm、Thermo Fisher Scientific)に流速5μl/minでロードし、EASY―Spray HPLCカラム(75μm×150mm、Thermo Fisher Scientific)で分離した。HPLCグラジエントは、5%~55%の移動相(75%アセトニトリルおよび0.1%ギ酸)を使用し、流速300nl/minで60分間実施した。質量分析データ収集は、データ依存取得モードで実行された。プリカーサースキャンの解像度は30,000、プロダクトイオンのスキャン解像度は15,000に設定された。プロダクトイオンのフラグメンテーションは、総エネルギーの30%の高エネルギー衝突誘起解離を使用して達成された。ボトムアッププロテオミクスの生データファイルは、標準的な推奨事項と指示に従って、「ヒト」および「SARS―COV―2」タンパク質データベース(uniprot.org)に対してMaxQuant Andromedaソフトウェア(maxquant.org)で処理された。ヒトタンパク質データベースにはレビューされた20,395個のタンパク質が含まれ、SARS―COV―2タンパク質データベースにはレビューされた13個のタンパク質が含まれていた。液体クロマトグラフィープロファイルと消化ペプチドから生成されたペプチドフィンガープリントは、3つの患者サンプルすべてについてLC―MSおよびMALDI―TOF MSを使用して同定された。合計222個のタンパク質が3つの患者サンプルすべてで同定された。ほとんどのタンパク質はヒトの血液に由来することが判明し、肺と血液の間に活発な相互作用があることが示された。表2に示すように、典型的な肺タンパク質とSARS―COV―2タンパク質が同定された。
【0078】
【表2】
【0079】
例4.例示的な収集システム1400を使用した雰囲気空気エアロゾル粒子の捕捉
【0080】
雰囲気空気中の粒子の捕捉は、4つの捕捉要素1407を備える例示的なシステム1400を使用して試験された。各要素1407は、内径約16mmのポリマーチューブ中の2つの多孔質フリットディスクの間に詰められた、公称直径約75μmと150μmとの間の約200mgのC18ビーズを含んでいた。充填ベッドの長さは約3mmであり、ベッド容積は約0.6ccであった。ポンプ1406を使用して、空気を約20L/分の流量で各カラムに通した。サンプル捕捉前に、充填層を水で湿らせた。粒子サイズと粒子数は、Met One Instruments粒子カウンターを使用して測定された。捕捉要素1407の上流と下流の粒子数を表3に示す。
【0081】
【表3】
【0082】
表3に示される粒子数に基づくと、システム1400の捕捉要素1407を使用して雰囲気空気粒子の99.8%を超える粒子が捕捉され、これは粒子捕捉効率が、ガス時空間速度1時間当たり約2×10であっても少なくとも99%であることを示唆している。タンパク質、脂質、代謝産物のバイオマーカーや病原体全体などの不揮発性有機エアロゾルを捕捉するために使用される場合、ベッドの捕捉能力は約10wt.―%になる可能性がある。
【0083】
例5.呼気中の代謝物および脂質のベースラインを確立するための、健康なヒト対象から収集した呼気の分析
【0084】
例示的なシステム7000では、要素7001のカラムは、公称直径が約55μmと105μmとの間の約35mgのC18ビーズを含んでいた。C18ビーズの充填ベッドを、約90μmの孔径を有する上流の多孔質フリットと約35μmの孔径を有する下流のフリットとの間に配置した。要素7001の直径は約6mm、ベッドの長さは約3mmであった。約0.09ccのベッド容積と約3L/minのベッドを通過する流量では、ベッドを通過するガス時間空間速度(GHSV)は1時間あたり約2x10と高く、流量を増加させる際の柔軟性が可能になる。ベッドをさらに通過させるか、ベッドの体積を減らす。以下で説明するように、この高い空間速度でも、代謝産物や脂質などの不揮発性有機粒子の効率的な捕捉が実証された。3つの捕捉要素(カラム)7001を使用して、各被験者から呼気エアロゾルを時間的に連続的に捕捉した:最初のカラムについては10分間、その後、第2のカラムについては10分間、その後、第3のカラムについては10分間、最初のカラムをACNを使用して洗浄し、代謝物を溶出した。2番目のカラムを300μLの70%IPAで洗浄して脂質を溶出した。3番目のカラムはコントロールとして使用され、HEPAフィルターで濾過された空気のみが収集された。サンプル収集中、COセンサーを使用して各個人の呼気中のCOレベルを感知し、記録した。COセンサーはカラムの出口とポンプの間にあった。
【0085】
溶出された代謝産物および脂質サンプルを一晩凍結乾燥した。乾燥サンプルは、LC―MS/MS分析用に溶液として調製された。LC―MS分析におけるトータルイオンクロマトグラフィー(TIC)は、ピークの位置合わせと強度の正規化に使用された。代謝物と脂質の同定は、オープンソースソフトウェアMS―DIAL(理研メタボロミクス社のPRIMeプラットフォーム)を使用した正確な質量測定とMS/MSスペクトルマッチングに基づいて行われた。軽微なピークを除去するために、以下のようにデータをフィルタリング(データフィルタリング)した。イオン強度の低いピークは無視し、また、ピークが一人の被験者のみでのみ識別された場合、これらのピークはアーチファクトとして扱い、無視した。3番目のカラムからのサンプル(HEPAフィルターで濾過した空気)のイオンピークをベースラインフィルターとして使用し、これらのピークをすべての呼気サンプルから除外した。各被験者からのサンプル収集中に測定された個々のCO濃度は、個々の呼気サンプルのイオン強度の正規化に使用された。つまり、イオン強度値を個々のCO濃度で割ったものである。最初のカラム(サンプル捕捉要素)を使用したサンプル収集中の個々のCO濃度(ppm)は、最小約6850ppmと最大約12799ppmの間であった。2番目のカラムを使用したサンプル収集中に、CO濃度は4925ppmから16453ppmの間に低下した。この研究から構築された最終的なヒト呼気サンプルデータベースには、分子の同定、保持時間、全質量、およびイオン断片化情報(MS/MS)が含まれていた。
【0086】
データサイエンスソフトウェアRStudioを使用して、主成分分析(PCA)および部分最小二乗判別分析(PLS―DA)を使用して、呼気およびブランクサンプルを視覚化した。図11Aに示すように、人間の呼気中の代謝産物および脂質の両方について、呼気サンプルとHEPA濾過空気(ブランク)サンプルとの間で明確な分離が観察された。同様の分離は、健康な被験者および呼吸器疾患に感染した被験者からの呼気サンプルの分析中にも予想される。また、図11Bに示されるように、約1804個の代謝物および1150個の脂質が呼気サンプル中で同定されたが、HEPA濾過された空気(ブランク)サンプル中では同定されなかった。相対標準偏差(RSD、0~300%)は、脂質が100%RSD未満の多数の同定によって特徴づけられることを示し、これは14人の被験者からの呼気採取サンプルに関連する脂質の平均からの標準偏差が非常に小さいことを示唆している。そして、例示的なシステムおよび方法を使用して収集および溶出された呼気エアロゾルからの脂質バイオマーカーが、健康な患者と呼吸器疾患に感染した患者とを識別するために使用され得るという大きな確信を与える。最後に、(14人の被験者の)個々の捕捉サンプルからのイオン強度は、サンプル収集中に測定されたCO濃度を使用して正規化された。図11Cに示すように、この正規化プロトコルは、特定の被験者の脂質と代謝物の両方のバイオマーカーのイオン強度の特定の変動(それぞれのケースで上位5つのイオン強度)を強調表示し、健康な個人の代謝物と脂質のバイオマーカーの特性をよりよく理解するために使用でき、これは、感染患者から収集されたデータの解釈中に使用される。
【0087】
例6.例示的な収集システム1400Aを使用した雰囲気空気エアロゾル粒子の捕捉およびボトムアッププロテオミクス
【0088】
雰囲気空気中の粒子の捕捉は、4つの捕捉要素1407を備える例示的なシステム1400Aを使用して試験された。各要素1407は、内径約16mmのポリマーチューブ中の2つの多孔質フリットディスクの間に詰められた、約75μmと150μmとの間の公称直径の約200mgのC18ビーズを有していた。充填ベッドの長さは約3mmであり、ベッド容積は約0.6ccであった。空気は、ポンプ1406を使用して約20L/分の流量で各カラムを通して引き込まれ、サンプル捕捉要素に入る前に加湿された。4つのサンプルが収集された。すなわち、(1)8時間の空気サンプリングを伴う1人用(1人)のオフィスから、(2)8人がいるカフェテリアから、2時間の空気サンプリングから、(3)および2つのサンプルは、病院内の人通りの少ない無人の手術室で7時間の空気サンプリングである。サンプル収集後、各充填ベッドカラム内のエアロゾル粒子を2mLの10~80%有機溶媒を使用して溶出し、続いて一晩凍結乾燥して有機溶媒を除去した。各サンプルについて、残留タンパク質をプロテインシルバー染色とボトムアッププロテオミクスで評価した。
【0089】
オフィスの空気サンプリングサンプルからは60のタンパク質が同定され、カフェテリアの空気サンプルからは72のタンパク質が同定され、人通りの少ない手術室(OR)の空気サンプル#1からは84のタンパク質が同定され、そして交通量の少ない手術室の空気サンプル#2(図13A)からは38のタンパク質が同定された。典型的なタンパク質が同定され、4つのサンプルすべてでケラチンが含まれていた(表4)。これは人間の活動によるタンパク質の証拠であった。ケラチン―9のレベルを評価したところ、1人が占有している部屋から収集されたオフィスサンプルが最も多くのケラチン―9を含んでいることが示された(図13B)。
【0090】
【表4】
【0091】
例7.C18充填ベッドカラムを備えた例示的なサンプル捕捉要素および市販のボタンサンプラーを使用したエアロゾル化タンパク質の捕捉
【0092】
例示的なサンプル捕捉要素は、公称直径が約45μm~120μmのC18ビーズの充填ベッドカラムから構成されていた。カラム中のC18ビーズの量は約200mgであり、ベッドの長さは約3mmであった。捕捉要素の長さおよび直径(ID)は、それぞれ約60mmおよび約15.9mmであった。ボタンサンプラー(SKC Ltd、英国)は、吸入可能な粉塵(空気力学的直径100μm)の収集特性を改善するように設計された多孔質曲面入口を備えたフィルターサンプラー(孔径1μmを超える25mmフィルター)で構成されていた。粉塵はバイオエアロゾルによる総微生物数のバイオエアロゾルを含む。
【0093】
約2mg/mlのBSA濃度を有する人工唾液(NCZ―APS―0012)バックグラウンド溶液中にBSAタンパク質を含むタンパク質溶液を、ジョンズ・ホプキンス大学の応用物理学研究所の動的濃縮エアロゾル発生器を使用してエアロゾル化した。例示的なサンプル捕捉要素の場合、機械ポンプを使用して、約10L/分で充填ベッドカラムを通してエアロゾルを吸引した。サンプル収集後、C18ビーズ充填ベッドカラムを2mLの70%CANで溶出し、有機溶媒を一晩凍結乾燥して除去した。サンプルを50μLの水に懸濁し、SDS―PAGE電気泳動、青色染色、およびボトムアッププロテオミクスに使用した。
【0094】
図14は、例示的なC18充填ベッドカラムおよびボタンサンプラーを使用して収集されたサンプルのプロテインブルー染色を示す。見てわかるように、C18例示的な充填ベッドカラムのタンパク質捕捉効率は、ボタンサンプラーを使用して得られたものよりも大幅に優れてした。さらに、銀染色の場合、BSAタンパク質のバンド(約66kDa)はボタンサンプラーで収集されたサンプルには見られなかった。対照的に、BSAタンパク質バンドは、例示的なC18充填層カラムで収集されたすべてのサンプルで見られた。無傷のBSAタンパク質に加えて、そのダイマー型(約140kDa)およびトリマー型(約200kDa)が、C18充填層カラムで収集されたすべてのサンプルで見られた。
【0095】
例8.硫酸エステル官能基を使用したSARS―CoV―2ウイルスの捕捉および分析
【0096】
SARS―CoV―2南アフリカ株は、細胞株Vero E6 TMPR332を使用して増殖させた。0.3mLのウイルスをPBS緩衝液と混合して、最終体積を4.7mLとした。増殖培地を組織培養容器からデカントし、20mLのPBSで3回穏やかに洗浄した。5mLの希釈ウイルスをピペットで容器に移し、37℃で15分間インキュベートした。20mLの未添加培地を各容器に添加し、約80%のCPEが達成されるまで2日間インキュベートした。収穫時のCPEは90%だった。TCID50は2.32e+7(Reed&Muench法により計算)に濃縮された。精製ステップでは、ウイルスを100,000gで60分間超遠心分離し、上清をデカントし、ペレットを1mLの水に再懸濁した。次に、ウイルスを70℃で30分間加熱不活化した。
【0097】
サンプル捕捉要素は、硫酸エステル固定化セルロースビーズ(Cellufine(登録商標)Sulfate)を含んでいた。充填ベッドカラムは、直径約40mm~約130mmのビーズを含んでいた。充填ベッドカラム(長さ30mm×内径6.8mm)は、約100mgのビーズを含んでいた。カラムを1mLの洗浄溶液(1×PBS中の0.2MNaCl)で1回洗浄した。900μLのSAR―CoV―2ウイルスサンプルを100μLの10×PBSで調製し、1×PBS溶液の最終溶液を作成した。ウイルスを含むサンプル溶液全体をシリンジを使用してカラムにロードし、カラムに押し込んだ。カラムから出たサンプルを収集し、さらに5回カラムに押し込み、ベッド内のウイルス捕捉を最大化した。非結合タンパク質を完全に除去するために、1xPBS洗浄溶液中の0.2MのNaClの2mLをカラムに3回押し込んだ。続いて、カラム内に空気を送り込み、洗浄液がカラム内に確実に残るようにした。次に、捕捉されたウイルス粒子を、1xPBS溶出液中の1.5MのNaClの900μLを使用して溶出した。
【0098】
溶出したサンプルを2つのサンプルに分割し、各サンプルを熱酸消化に供した。このステップの前に、溶出したサンプルを遠心分離機で濾過しました。200μLの溶出ウイルスを250μLのHPLC水と混合し、3k(3kDa MWCO)フィルターカラムにロードした。サンプルを微量遠心分離機で14,000gで25分間遠心分離した。3kカラムに450μLのHPLC水で満たし、再度遠心分離した。このプロセスを3回繰り返した。新しいホールドチューブ内でカラムを上下逆にし、10,000gで10分間遠心分離した。このサンプルは熱酸分解に使用された。3kろ過で生成したサンプルに約50.5μLの水を加えて、最終サンプル量を87.5μLにした。酢酸12.5μLを加えて12.5%酸溶液(合計100μL)を作成した。サンプルを約140℃で約15分間熱酸消化に供した。
【0099】
次に、サンプルをMALDI―TOF質量分析法を使用して分析した。CHCAマトリックスは、70%アセトニトリル中で約9mg/mLの濃度で調製された。約1μlの熱酸サンプルをMALDIプレート上に置いた。サンプルが部分的に乾燥したら、約1μlのCHCA溶液を上に置き、ピペッティングで上下に混合した。サンプルは、市販のBruker Daltonics microflexLRF MALDI―TOF質量分析計を使用して分析された。MALDI―TOF質量スペクトルはポジティブ線形モードで取得され、すべてのスペクトルについて700~21,000m/zの質量範囲で平均600プロファイルが収集された。オンラインプログラムMASCOTペプチド質量フィンガープリント(マサチューセッツ州ボストンのマトリックス サイエンス)を使用して、ペプチド質量フィンガープリントを特定した。S/N>10の質量ピークは、分析のために「質量値」に抽出された。「SwissProt」タンパク質データベースを使用し、分類には「すべてのエントリ」を選択した。酵素は「Formic_acid」として定義され、さまざまな欠損切断番号(0~9)が許可された。ペプチド耐性は0.5Daに設定され、モノアイソトピックタイプが選択された。
【0100】
図15A~Bは、硫酸エステル充填ベッドカラムから抽出されたウイルスサンプルからの熱酸消化ペプチドのMALDI TOF質量スペクトルが、硫酸エステル充填ベッドカラムで処理されなかったサンプルのスペクトルと比較して、より明確なプロファイルを示したことを示す。ボトムアッププロテオミクスをペプチド同定に使用し、硫酸エステル充填層カラムで処理しなかったサンプル中にVeroE6細胞タンパク質のペプチドが最も豊富に存在することを示した(図15C)。対照的に、硫酸エステル充填ベッドカラムから抽出されたサンプルは、SARS―CoV―2タンパク質のペプチドが最も豊富であることを示した(図15D~E)。ウイルスペプチドは、硫酸エステル充填層カラムから抽出されたサンプル中の著しく高いイオン強度によっても特徴づけられた(図15D)。これらの結果は、硫酸エステル固定化セルロースビーズがエアロゾル化ウイルス粒子の捕捉に使用できることを示している。さらに、ボトムアッププロテオミクスにより、同定されたペプチドがSARS―CoV―2に特徴的なNタンパク質に対応することが示された。ボトムアッププロテオミクスからのペプチド同定情報を使用して、SARS―CoV―2に特徴的なMALDI―TOF MSスペクトル(図15B)において6つの質量ピークが同定された。熱酸による加水分解における典型的な質量シフトの特徴である+115.1が、これらのピーク割り当てで観察された。
【0101】
濃縮後に同定されたペプチドのほとんどはNタンパク質に対応するため、例示的な捕捉要素から抽出されたサンプルからのMALDI―TOF MS質量ピークは、ペプチド質量フィンガープリンティングを使用し、SARS―CoV―2検出に続くNタンパク質の同定に使用されて良い。シグナル対ノイズ比が10を超える37個の質量ピークが選択され、MASCOTペプチド質量フィンガープリントプログラムで処理された。熱酸によるタンパク質の加水分解は切断の失敗を引き起こすため、許容される切断の失敗が識別スコアに及ぼす影響を評価した。結果は、切断ミスが0より大きい場合、MALDI―TOF質量スペクトルプロファイルを使用してNタンパク質を確実に同定できることを示した(図15E)。同定結果の中で、許容された3つの欠落切断部位が最良のスコアをもたらし、より大きな欠落切断数が使用された場合でもスコアは大きく変化しなかった。その結果、高速MALDI―TOF MSとペプチドマスフィンガープリンティングの組み合わせがSARS―CoV―2の検出に使用できることが示された。
【0102】
例示的な硫酸エステル充填ベッドカラムおよびサンプル抽出、処理および分析方法は、他のウイルス粒子も捕捉および同定するために使用されて良い。MALDI―TOF MSおよびMascotデータベース検索を使用して同定されたペプチドは、SARS―CoV―2ウイルスの異なる株を区別するためにも使用されて良い。たとえば、イータ/B.1.525株は、参照データベースUniProtKB―P0DTC9(NCAP_SARS2)の天然変異体からのアミノ酸位置2および3でSD>Y遷移を具備している。アルファ/B.1.1.7は、天然変異体のアミノ酸位置3にD>L遷移がある。イータ/B.1.525は、自然変異体からのアミノ酸位置12にA>G遷移がある。オミクロン/B.1.1.529は、自然変異体からのアミノ酸位置13にP>L遷移がある。Omicron/B.1.1.529では、自然の変種からアミノ酸位置31~33が欠落している。デルタ/B.1.617.2は、自然変異体からのアミノ酸位置63にD>G遷移がある。ガンマ/P.1は、自然変異体からのアミノ酸位置80にP>R遷移がある。デルタ/B.1.617.2およびカッパ/B.1.617.1は、自然変異体からのアミノ酸位置377にD>Y遷移がある。
【0103】
要約は、37C.F.R.§1.72(b)に準拠して、読者が大まかな把握から技術的開示の性質と要点を迅速に判断できるようにするために提供されている。特許請求の範囲または意味を解釈または制限するために使用されるべきではない。
【0104】
この開示は、それを実施する好ましい形態に関連して説明されてきたけれども、当業者は、この開示の精神から逸脱することなく、それに多くの修正を加えることができることを理解するであろう。したがって、この開示の範囲が先の説明によって制限されることを意図するものではない。
【0105】
この開示の本質から逸脱することなく、種々の変更を行うことができることも理解されたい。このような変更も暗黙的に説明に含まれている。それらは依然としてこの開示の範囲内にある。この開示は、独立して、そしてシステム全体として、そして方法および装置モードの両方において、開示の多くの側面をカバーする特許をもたらすことを意図していることを理解されたい。
【0106】
さらに、この開示および特許請求の範囲の種々の要素のそれぞれは、また、種々の方法で達成されて良い。この開示は、任意の装置実装のバリエーション、方法またはプロセスの実装、あるいはこれらの任意の要素の単なるバリエーションであろうと、そのような各バリエーションを包含すると理解されるべきである。
【0107】
特に、各要素の単語は、機能または結果のみが同じであっても、同等の装置用語または方法用語によって表現され得ることを理解されたい。このような同等の、より広い、またはさらに一般的な用語は、各要素または動作の説明に含まれると見なす必要がある。このような用語は、この開示が権利を与えられている暗黙的に広い範囲を明示するために必要な場合に置き換えることができる。すべての動作は、その動作をとるための手段として、またはその動作を引き起こす要素として表現される可能性があることを理解する必要がある。同様に、開示される各物理的要素は、その物理的要素が促進する動作の開示を包含すると理解されるべきである。
【0108】
さらに、使用される各用語に関して、本出願におけるその利用がそのような解釈と矛盾しない限り、例えば、技術者によって認識されている標準的な技術辞書とランダムハウスウェブスターのUnabridgedDictionaryの最新版の少なくとも1つに含まれている、共通の辞書定義は、各用語およびすべての定義、代替用語、および同義語について、ここに組み込まれるものとして理解されるべきである。
【0109】
さらに、「有する」(comprising、comprise)という移行句の使用は、従来のクレーム解釈に従って、本明細書の「オープンエンド」クレームを維持するために使用される。したがって、文脈上別段の必要がない限り、「有する」は、記載された要素またはステップあるいは要素またはステップのグループを含むことを意味することを意図しているけれども、他の要素またはステップあるいは要素またはステップのグループを除外することを意味するものではない。そのような用語は出願人に法的に許容される最も広い範囲を提供するための最も広範な態様で解釈されるべきである。
【0110】
[参考文献]
1. Fennelly K.P., Martyny J.W., Fulton K.E., Orme I.M., Cave D.M., et al. (2004) Cough-generated aerosols of Mycobacterium tuberculosis: a new method to study infectiousness. Am J Respir Crit Care Med 169: 604-609.
2. Hunt, J., "Exhaled breath condensate: An evolving tool for noninvasive evaluation of lung disease," J. Allergy Clin. Immunol. 2002; 110:28-34.
3. Benjamin Patterson, Carl Morrow, Vinayak Singh, Atica Moosa, Melitta Gqada, Jeremy Woodward, Valerie Mizrahi, Wayne Bryden, Charles Call, Shwetak Patel, Digby Warner, Robin Wood, "Detection of Mycobacterium tuberculosis bacilli in bio-aerosols from untreated TB patients," Gates Open Research 2018, 1:11.
4. Wood R., Morrow C., Barry C.E., III, Bryden W.A., Call C.J., Hickey A.J., et al.: Real-Time Investigation of Tuberculosis Transmission: Developing the Respiratory Aerosol Sampling Chamber (RASC). PLoS One. 2016; 11(1): e0146658.
5. Rachel C. Wood, Angelique K. Luabeya, Kris M. Weigel, Alicia K. Wilbur, Lisa Jones-Engel, Mark Hatherill, and Gerard A. Cangelosi, "Detection of Mycobacterium tuberculosis DNA on the oral mucosa of tuberculosis patients," Sci. Rep. 5, 8668
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C
図12D
図13A
図13B
図14
図15A
図15B
図15C
図15D
図15E
【手続補正書】
【提出日】2023-01-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸器疾患に感染し、人工呼吸器を用いて呼吸している患者を監視するための呼気収集システムにおいて、
入口端、出口端、および、上記患者によって生成される呼気中のエアロゾル化粒子を選択的に捕捉するための充填層カラムをそれぞれに有する、1または複数のサンプル捕捉要素であって、当該1または複数サンプル捕捉要素の上記入口端が上記人工呼吸器の呼気チューブの一端に直接的に取り外し可能に接続され、上記呼気チューブの他端が上記患者の口または鼻を通じて直接的に器官に挿入される、上記1または複数のサンプル捕捉要素と、
ポンプ、電源、およびコントローラのうちの少なくとも1つを備えるサブシステムであって、当該サブシステムは、上記1または複数のサンプル捕捉要素の上記出口端と流体連通して配置され、上記1または複数のサンプル捕捉要素の動作を制御するように構成され、上記ポンプは、呼気エアロゾルが上記1または複数のサンプル捕捉要素に引き込むように構成される、上記サブシステムとを有することを特徴とする呼気収集システム。
【請求項2】
上記サブシステムが、上記サンプル捕捉要素と上記ポンプとの間に配置されたCOセンサーおよび粒子計数器のうちの少なくとも1つをさらに有し、上記粒子計数器は上記ベッドの飽和、および、上記充填ベッドカラムからのエアロゾル化粒子の通り抜けを検出するように構成される請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
上記サブシステムは、ポータブル筐体内に配置され、上記ポータブル筐体は、上記ポンプにより引き起こされるノイズのレベルを約45dB未満に減少させるように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
上記サンプル捕捉要素と上記ポンプとの間に配置され、通過する水蒸気、揮発性有機成分、および不揮発性有機成分のうちの少なくとも1つを含む呼気凝縮液(EBC)を充填ベッドを通じて捕捉するように構成されたトラップをさらに有する請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
上記充填ベッドカラムが、樹脂、セルロース、シリカ、アガロース、または水和Feナノ粒子のうちの1または複数を有する固体粒子を有する請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
上記充填ベッドカラムが、表面にC18官能基を具備する樹脂ビーズ、表面に硫酸エステル官能基を具備するセルロースビーズ、またはそれらの混合物の1または複数を有する請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
上記樹脂ビーズおよびセルロースビーズが少なくとも約20μmの公称直径を具備する請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
上記樹脂ビーズおよびセルロースビーズが、約40ミクロン~約150ミクロンの公称直径を具備する請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
(削除)
【請求項10】
上記ポンプを使用して上記ベッドを通して引き出される公称流量が、約200ml/分~約3L/分である請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
呼吸器疾患に感染した患者を監視するためのシステムにおいて、
請求項1に記載の呼気収集システムと、
呼吸器疾患に特有の捕捉されたエアロゾル粒子を充填ベッドカラムから1または複数の液体サンプルに抽出するサンプル抽出システムと、
上記1または複数の液体サンプルの中のエアロゾル粒子を分析する分析装置とを有することを特徴とするシステム。
【請求項12】
上記抽出システムは、上記充填ベッドカラムを少なくとも1つの溶媒でフラッシュし、上記充填ベッドからエアロゾル粒子を含む溶媒を収集する手段を有する請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
上記少なくとも1つの溶媒が、アセトニトリル、メタノール、トリフルオロ酢酸(TFA)、イソプロパノール(IPA)のうちの少なくとも1つを有し、残りが水である請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
上記1または複数の溶媒が、水中約50体積%~約70体積%のアセトニトリル、水中約50体積%~約70体積%のイソプロパノール、水中約0.05体積%のTFAを有する請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
上記分析装置が、PCR、ELISA、rt―PCR、質量分析計(MS)、MALDI―MS、ESI―MS、およびMALDI―TOFMS、並びにLC―MS/MSのうちの少なくとも1つを有する請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
呼気中のエアロゾル粒子が、微生物、ウイルス、代謝産物バイオマーカー、脂質バイオマーカー、および呼吸器疾患に特徴的なプロテオームバイオマーカーのうちの少なくとも1つを有する請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
呼吸器疾患に感染し、人工呼吸器を用いて呼吸している患者を監視するための方法において、
上記患者により生成される呼気中のエアロゾル化粒子を選択的にサンプル収集システムを用いて捕捉するステップであって、当該サンプル収集システムは、
入口端、出口端、および、上記患者によって生成される呼気中のエアロゾル粒子を選択的に捕捉するための充填ベッドカラムを、それぞれに有する1または複数のサンプル捕捉要素であって、当該1または複数サンプル捕捉要素の上記入口端が上記人工呼吸器の呼気チューブの一端に直接的に取り外し可能に接続され、上記呼気チューブの他端が上記患者の口または鼻を通じて直接的に器官に挿入される、上記1または複数のサンプル捕捉要素と、
上記1または複数のサンプル捕捉要素の上記出口端と流体連通し、上記呼気エアロゾルを上記サンプル捕捉要素の中に引き込むように構成されたポンプとを有する、上記スサンプル収集システムを提供するテップと、
捕捉されたエアロゾル粒子を上記充填ベッドカラムから1または複数の液体サンプルに抽出するステップと、
上記1または複数の液体サンプル中のエアロゾル粒子を分析して、呼吸器疾患の有無を判定するステップとを有することを特徴とする方法。
【請求項18】
上記サンプル収集システムを上記人工呼吸器の呼気チューブに取り外し可能に接続する前に、70%ACN、水、および0.05%TFAのうちの少なくとも1つを使用してカラムを洗浄するステップをさらに有する請求項17に記載の方法。
【請求項19】
上記抽出ステップが、上記充填ベッドカラムを最初に約50体積%のACNでフラッシュするステップと、続いて約70体積%のIPAでフラッシュするステップとを有する請求項17に記載の方法。
【請求項20】
サンプル処理ステップをさらに有し、
当該サンプル処理ステップは、
上記1または複数のサンプルをMALDIマトリックスと混合するステップと、
1または複数の混合サンプルおよびMALDIマトリックスを1または複数のサンプルプレートに被着させるステップとを有する請求項17に記載の方法。
【請求項21】
サンプル処理ステップをさらに有し、当該サンプル処理ステップは、上記サンプル抽出システムから抽出された上記1または複数の液体サンプルをタンパク質消化に供して、上記呼吸器疾患に特徴的なペプチドサンプルを生成するステップを有する請求項17に記載の方法。
【請求項22】
上記サンプル処理ステップが、さらに、
ペプチドサンプルをMALDIマトリックスと混合するステップと、
混合サンプルおよびMALDIマトリックスをサンプルプレートに被着させるステップとを有する請求項21記載の方法。
【請求項23】
上記分析するステップが、PCR、ELISA、rt―PCR、質量分析計(MS)、MALDI―MS、ESI―MS、およびMALDI―TOFMS、並びにLC―MS/MSのうちの少なくとも1つを使用して上記サンプルプレートを分析する請求項20に記載の方法。
【請求項24】
上記分析するステップが、PCR、ELISA、rt―PCR、質量分析計(MS)、MALDI―MS、ESI―MS、およびMALDI―TOFMS、並びにLC―MS/MSのうちの少なくとも1つを使用して上記サンプルプレートを分析する請求項22に記載の方法。
【請求項25】
呼吸器疾患の存在を調べるために密閉空間内の周囲の空気をサンプリングし、周囲の空気中のエアロゾル粒子を捕捉するためのシステムにおいて、
サンプル収集モジュールであって、
雰囲気空気中に存在する呼気からエアロゾル化粒子を選択的に捕捉するための充填ベッドカラムをそれぞれに備える1または複数のサンプル捕捉要素と、
1または複数のサンプル捕捉要素に入る前に周囲の空気を加湿するように構成されたネブライザとを有する、上記サンプル収集モジュールと、
上記ネブライザに水を供給するように構成された水ポンプ、電源、コントローラ、1または複数のサンプル捕捉要素を通して周囲の空気を引き込むように構成されたエアポンプ、並びに、上記ネブライザおよび上記水ポンプと流体連通する水容器のうちの少なくとも1つを有する流体モジュールであって、当該流体モジュールは、上記サンプル収集モジュールの動作を制御するように構成される、上記流体モジュールとを有し、上記密閉空間は病院または救急車の中の1または複数の、部屋、カフェテリア、集中治療ユニットであることを特徴とするシステム。
【請求項26】
上記流体モジュールが、上記サンプル捕捉要素と上記ポンプとの間に配置されたCOセンサーおよび粒子計数器のうちの少なくとも1つをさらに有する請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
上記サンプル収集モジュールおよび上記流体モジュールがそれぞれ可搬型筐体内に配置される請求項25に記載のシステム。
【請求項28】
上記サンプル収集モジュールおよび上記流体モジュールは、クイック接続/切断カップリングを使用して、互いに流体的かつ電気的に接続されるように構成され、当該クイック接続/切断カップリングは、適切な機械的および電気的接触を検出し、上記筐体の1つに配置されたグラフィカルユーザーインターフェイスおよび可聴アラームの少なくとも1つを介してユーザーに警告するように構成される請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
上記サンプル収集モジュールおよび上記流体モジュールが同じ携帯用筐体内に配置される請求項25に記載のシステム。
【請求項30】
各充填ベッドカラムが、表面にC18官能基を有する樹脂ビーズ、表面に硫酸エステル官能基を有するセルロースビーズ、およびそれらの混合物の少なくとも1つを有する請求項25に記載のシステム。
【請求項31】
上記樹脂ビーズおよびセルロースビーズが少なくとも約20μmの公称直径を具備する請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
上記樹脂ビーズおよびセルロースビーズが、約40ミクロン~約200ミクロンの公称直径を具備する請求項30に記載のシステム。
【請求項33】
上記ポンプを使用して各捕捉要素を通して引き出される公称流量が少なくとも約20L/分である請求項25に記載のシステム。
【請求項34】
上記サンプル収集モジュールが、上記水ポンプおよび上記水容器のうちの少なくとも一方と流体連通して配置された貯水器をさらに有し、上記ネブライザが水中に浸漬され、上記貯水器の出口近くに配置される請求項25に記載のシステム。
【請求項35】
上記ネブライザーが超音波ミスト噴霧器である請求項34に記載のシステム。
【請求項36】
雰囲気空気中の呼吸器疾患病原体を検出するためのシステムにおいて、
当該システムは、
雰囲気空気中のエアロゾル粒子をサンプリングして捕捉するための請求項25に記載のシステムと、
呼吸器疾患に特有の捕捉されたエアロゾル粒子を各充填層カラムから1または複数の液体サンプルに抽出するサンプル抽出システムと、
上記1または複数の液体サンプルの中の上記エアロゾル粒子を分析する分析装置とを有することを特徴とするシステム。
【請求項37】
上記抽出システムが、各充填ベッドカラムを、水中のアセトニトリル、メタノール、イまたはソプロパノール(IPA)の1または複数を含む溶媒でフラッシュし、各充填ベッドからエアロゾル粒子を含む溶媒を収集する手段を有する請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
(削除)
【請求項39】
上記媒が、水中約50体積%~約70体積%のアセトニトリル、および、水中約50体積%~約70体積%のイソプロパノールを有する請求項37に記載のシステム。
【請求項40】
上記分析装置が、PCR、ELISA、rt―PCR、質量分析計(MS)、MALDI―MS、ESI―MS、および、MALDI―TOFMS、並びに、LC―MS/MSのうちの少なくとも1つを有する請求項36に記載のシステム。
【請求項41】
密閉空間内の雰囲気空気中の呼吸器疾患病原体を検出するための方法において、
それぞれに充填ベッドカラムを備える1または複数のサンプル捕捉要素を有するサンプル収集モジュールを使用して、雰囲気空気中の呼気からエアロゾル化粒子を選択的に捕捉するステップであって、雰囲気空気は、上記1または複数のサンプル捕捉要素に入る前に加湿され、エアポンプを使用して、上記1または複数のサンプル捕捉要素に引き込まれる、上記ステップと、
上記サンプル収集モジュールの動作を制御するために流体モジュールを供給するステップであって、上記流体モジュールは、水を上記ネブライザに供給するように構成された水ポンプ、電源、コントローラ、および、上記空気ポンプの少なくとも1つを有する、上記ステップ、
呼吸器疾患に特有の捕捉されたエアロゾル粒子を各充填層カラムから1または複数の液体サンプルに抽出するステップと、
上記1または複数の液体サンプルの中のエアロゾル粒子を分析するステップとを有し、上記密閉空間は病院または救急車の中の1または複数の、部屋、カフェテリア、集中治療ユニットであることを特徴とする方法。
【請求項42】
上記充填ベッドカラムが、表面にC18官能基を有する樹脂ビーズ、表面に硫酸エステル官能基を有するセルロースビーズ、および、それらの混合物の少なくとも1つを有する請求項41に記載の方法。
【請求項43】
上記抽出ステップが、アセトニトリル、メタノール、イソプロパノール(IPA)のうちの少なくとも1つで上記充填ベッドカラムをフラッシュするステップを含み、残りは水である請求項41に記載の方法。
【請求項44】
サンプル処理ステップをさらに有し、
当該サンプル処理ステップは、
上記1または複数のサンプルをMALDIマトリックスと混合するステップと、
1または複数の混合サンプルおよびMALDIマトリックスを1または複数のサンプルプレートに被着するステップとを有する請求項41に記載の方法。
【請求項45】
サンプル処理ステップをさらに有し、当該サンプル処理ステップは、上記サンプル抽出システムから抽出された上記1または複数の液体サンプルをタンパク質消化に供して、上記呼吸器疾患に特徴的なペプチドサンプルを生成するステップを有する請求項41に記載の方法。
【請求項46】
上記サンプル処理ステップが、さらに、
ペプチドサンプルをMALDIマトリックスと混合するステップと、
当該混合サンプルおよびMALDIマトリックスをサンプルプレートに被着するステップとを有する請求項45に記載の方法。
【請求項47】
上記分析装置が、PCR、ELISA、rt―PCR、質量分析計(MS)、MALDI―MS、ESI―MS、およびMALDI―TOFMS、並びに、LC―MS/MSのうちの少なくとも1つを有する請求項46に記載の方法。
【請求項48】
エアロゾル化した細菌およびウイルスを捕捉するためのサンプル捕捉要素において、
ポンプを使用して充填ベッドカラムを通して引き込まれた呼気および雰囲気空気のうちの少なくとも1つにおいてエアロゾル化された細菌およびウイルス粒子を選択的に捕捉するように構成された充填ベッドカラムを有し、
当該充填ベッドカラムが、
表面にC18官能基を有する樹脂ビーズ、表面に硫酸エステル官能基を有し、サンプル捕捉前は湿状態に保持されているセルロースビーズ、およびそれらの混合物のうちの少なくとも1つを有し、上記樹脂ビーズおよびセルロースビーズは、約40ミクロン~約200ミクロンの公称直径を具備し、粒子捕捉効率は少なくとも99%であることを特徴とするサンプル捕捉要素。
【請求項49】
上記ビーズが、上記充填ベッドカラムにおいて2つの多孔質ポリマーフリットディスクの間に充填される請求項48に記載のサンプル捕捉要素。
【国際調査報告】