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特表2024-518024ループ電源式フィールド装置用の低電力無線通信を用いた電力管理
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-24
(54)【発明の名称】ループ電源式フィールド装置用の低電力無線通信を用いた電力管理
(51)【国際特許分類】
   H04W 84/10 20090101AFI20240417BHJP
   G08C 19/02 20060101ALI20240417BHJP
   G08C 17/02 20060101ALI20240417BHJP
   H04B 1/38 20150101ALN20240417BHJP
【FI】
H04W84/10 110
G08C19/02 301
G08C17/02
H04B1/38
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560536
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(85)【翻訳文提出日】2023-11-28
(86)【国際出願番号】 US2022021266
(87)【国際公開番号】W WO2022212113
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】17/216,830
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597115727
【氏名又は名称】ローズマウント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】コロレフ,エフゲニー
【テーマコード(参考)】
2F073
5K011
5K067
【Fターム(参考)】
2F073AA03
2F073AA11
2F073AA12
2F073AA19
2F073AA25
2F073AB01
2F073AB04
2F073BB01
2F073BB04
2F073BC01
2F073BC02
2F073CC02
2F073CC03
2F073CC07
2F073CC12
2F073CC14
2F073CD03
2F073CD11
2F073CD28
2F073DD01
2F073DE02
2F073DE06
2F073DE13
2F073EE01
2F073EE12
2F073FF01
2F073FF12
2F073FG01
2F073FG02
2F073GG01
2F073GG03
2F073GG07
2F073GG08
2F073HH08
2F073HH09
5K011BA04
5K011DA02
5K011EA04
5K011KA14
5K011LA01
5K011LA08
5K067AA43
5K067BB27
5K067GG02
5K067LL11
(57)【要約】
ループ電源式フィールド装置(32)は、プロセス通信ループ(36)に接続可能な複数の端子(52、54)と、その複数の端子(52、54)のうちの一つに接続され、制御信号に基づいてループ制御モジュール(56)を流れる電流量を制御する、ように構成されたループ制御モジュール(56)とを含む。フィールド装置のメインプロセッサー(58)は、ループ制御モジュール(68)からその動作電流(I_Main)を受信するように、そのループ制御モジュール(56)に動作可能に接続され、プロセス変数出力に基づいて、制御信号を供給する、ように構成される。低電力無線通信モジュール(56)は、ループ制御モジュール(56)から動作電流(I_BLE)を受信するように、そのループ制御モジュール(56)に動作可能に接続される。低電力無線通信モジュール(68)は、フィールド装置のメインプロセッサー(58)に通信可能に接続される。低電力無線通信モジュール(68)は、アクティブモードとスリープモードとを有する。低電力無線通信モジュール(68)は、低電力無線通信モジュール(68)がスリープモードにある間に使用可能な動作電流(I_BLE)の測定値を取得し、その動作電流(I_BLE)の測定値に基づいて、低電力無線通信モジュール(68)のアクティブサイクルを変更する、ように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィールド装置が、
プロセス通信ループに接続可能な複数の端子と、
前記複数の端子の一つに接続され、制御信号に基づいてループ制御モジュールを流れる電流量を制御する、ように構成された前記ループ制御モジュールと、
前記ループ制御モジュールからその動作電流(I_Main)を受信するように動作可能に前記ループ制御モジュールと接続され、プロセス変数出力に基づいて制御信号を供給する、ように構成されたフィールド装置のメインプロセッサーと、
前記ループ制御モジュールから動作電流(I_BLE)を受信するように動作可能にループ制御モジュールに接続された低電力無線通信モジュールであって、前記フィールド装置のメインプロセッサーに通信可能に接続されている、前記低電力無線通信モジュールと、
を含み、及び、
前記フィールド装置が、ループ電源式フィールド装置であり、低電力無線通信モジュールが、アクティブモードとスリープモードとを有し、低電力無線通信モジュールが、低電力無線通信モジュールが前記スリープモードにある間に、使用可能な動作電流(I_BLE)の測定値を取得し、前記動作電流(I_BLE)の測定値に基づいて、前記低電力無線通信モジュールのアクティブサイクルを変更する、ように構成される、
フィールド装置。
【請求項2】
前記低電力無線通信モジュールが、各々が他方とは反対のスイッチ状態を有する一対の相補的スイッチを含み、前記一対の相補的スイッチは、前記スイッチ状態を制御するために、前記低電力無線通信モジュールのプロセッサーに動作可能に接続される、請求項1に記載のフィールド装置。
【請求項3】
前記一対の相補的スイッチの第一のスイッチが、前記アクティブモードの間は閉じられ、前記低電力無線通信モジュールのプロセッサーに接続されるメインコンデンサーを充電する、請求項2に記載のフィールド装置。
【請求項4】
前記低電力無線通信モジュールのプロセッサーが、前記低電力無線通信モジュールがスリープモードにあり、テストコンデンサーが充電されている測定動作の間は、前記一対の相補的スイッチの前記第一のスイッチが開き、第二のスイッチが閉じるように命令する、ように構成されている、請求項3に記載のフィールド装置。
【請求項5】
前記低電力無線通信モジュールが、前記テストコンデンサーに動作可能に接続され、前記低電力無線通信モジュールのプロセッサーをスリープモードからアクティブモードに変更させる信号を生成する、ように構成されたテスト電流スーパーバイザーを含む、請求項4に記載のフィールド装置。
【請求項6】
前記テスト電流スーパーバイザーが、前記テストコンデンサーの電圧が選択された閾値電圧に達した場合に、前記信号を生成する、ように構成されている、請求項5に記載のフィールド装置。
【請求項7】
前記テスト電流スーパーバイザーが、コンパレーターである、請求項5に記載のフィールド装置。
【請求項8】
前記テストコンデンサーが、約0.15マイクロファラドの値を有する、請求項5に記載のフィールド装置。
【請求項9】
前記テストコンデンサーが、約0.3マイクロファラドの値を有する、請求項5に記載のフィールド装置。
【請求項10】
前記低電力無線通信モジュールが、2.4~2.4835GHzの周波数で通信する、ように構成されている、請求項1に記載のフィールド装置。
【請求項11】
前記フィールド装置のメインプロセッサーが、プロセスセンサーの値を測定し、前記測定された値に基づいて前記プロセス変数出力を生成する、ように前記プロセスセンサーに動作可能に接続される、請求項1に記載のフィールド装置。
【請求項12】
前記プロセス変数出力が、4~20ミリアンペアの範囲の電流として供給され、前記フィールド装置が、前記ループ電流によって全体に電力供給される、ように構成されている、請求項11に記載のフィールド装置。
【請求項13】
ループ電源式フィールド装置用の低電力無線通信モジュールであって、前記低電力無線通信モジュールが、少なくとも一つのリモート装置と無線通信し、可変動作電流(I_BLE)を受信する、ように構成され、
前記低電力無線通信モジュールが、
各々が他方とは反対のスイッチ状態を有する一対の相補的スイッチであって、前記一対の相補的スイッチが制御信号によって制御される、一対の相補的スイッチと、
前記一対の相補的スイッチに接続され、前記制御信号を供給する、ように構成された低電力無線通信モジュールのプロセッサーと、
を含み、及び、
前記低電力無線通信モジュールが、アクティブモードとスリープモードとを有し、前記低電力無線通信モジュールが、前記低電力無線通信モジュールが前記スリープモードにある間に使用可能な動作電流(I_BLE)の測定値を取得し、前記動作電流(I_BLE)の測定値に基づいて、前記低電力無線通信モジュールのアクティブサイクルを変更する、ように構成されている、
低電力無線通信モジュール。
【請求項14】
前記低電力無線通信モジュールのプロセッサーが、前記低電力無線通信モジュールがスリープモードにあり、テストコンデンサーが充電されている測定動作中に、前記一対の相補的スイッチの第一のスイッチが開き、第二のスイッチが閉じるように命令する、ように構成される、請求項13に記載の低電力無線通信モジュール。
【請求項15】
前記低電力無線通信モジュールが、前記テストコンデンサーに動作可能に接続され、前記低電力無線通信モジュールのプロセッサーをスリープモードからアクティブモードに変更させる信号を生成する、ように構成されたテスト電流スーパーバイザーを含む、請求項14に記載の低電力無線通信モジュール。
【請求項16】
前記テスト電流スーパーバイザーは、前記テストコンデンサーの電圧が閾値電圧に達した場合に、前記信号を生成する、ように構成されている、請求項15に記載の低電力無線通信モジュール。
【請求項17】
前記閾値電圧が、1.8ボルトである、請求項16に記載の低電力無線通信モジュール。
【請求項18】
前記テスト電流スーパーバイザーが、コンパレーターである、請求項16に記載の低電力無線通信モジュール。
【請求項19】
前記可変動作電流が、300マイクロアンペアと5ミリアンペアとの間で変化する、請求項16に記載の低電力無線通信モジュール。
【請求項20】
ループ電源式フィールド装置を動作させる方法であって、
低電力無線通信モジュールへの供給電流(I_BLE)を測定するか否かを決定すること、
前記供給電流を選択的にテストコンデンサーに振り向け、前記低電力無線通信モジュールのプロセッサーをスリープ状態にすること、
前記テストコンデンサーの電圧が閾値に達した場合に、前記プロセッサーを前記スリープ状態から復帰させること、
前記プロセッサーがスリープ状態にある間に経過した時間の量を決定すること、及び、
前記テストコンデンサーの値と時間の量に基づいて、前記供給電流を計算すること、
を含む方法。
【請求項21】
前記時間の量の決定が、前記プロセッサーが前記スリープ状態に入る前の第一のリアルタイムクロック値と、前記プロセッサーが前記スリープ状態を終了するときの第二のリアルタイムクロック値と、を記録することによって実行される、請求項20記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
フィールド装置は、製造プロセス又は精製プロセス等のプロセスに接続可能であり、プロセスに関連するパラメータを測定及び制御する一つ以上の機能を提供することによってプロセスをサポートする装置である。フィールド装置は、フィールドに設置することができるため、このような名前が付けられている。「フィールド」とは、一般的に、気候の極端な変化、振動、湿度の変化、電磁波又は高周波の干渉、又はその他の環境上の課題にさらされる可能性のあるプロセス設備の外部領域である。したがって、そのようなフィールド装置の堅牢な物理的パッケージには、一度に長期間(数年等)の「フィールド」で動作する能力が提供される。
【0002】
プロセス変数送信機等のフィールド装置は、プロセス制御産業で、プロセス変数を遠隔地で検出するために使用される。アクチュエータ等のフィールド装置は、プロセス制御産業で、流量、温度等のプロセスの物理的パラメータを遠隔地で制御するために使用される。プロセス変数は、プロセス変数送信機等のフィールド装置から制御室へ、プロセスに関する情報を制御装置へ供給するために送信されることができる。その後、制御装置は、アクチュエータ等のフィールド装置に、制御情報を、プロセスのパラメータを変更するために送信することができる。例えば、プロセス流体の圧力に関する情報を制御室に送信し、石油精製等のプロセスを制御するために使用することができる。
【0003】
プロセス変数送信機は、化学、パルプ、石油、ガス、製薬、食品、及びその他の流体処理プラントにおいて、スラリー、液体、蒸気、及びガス等の流体に関連するプロセス変数を監視するために使用される。プロセス変数には、圧力、温度、流量、レベル、pH、導電率、濁度、密度、濃度、化学組成、及びその他の流体特性が含まれる。プロセスアクチュエータには、制御弁、ポンプ、ヒーター、攪拌機、冷却器、ソレノイド、ベント、及びその他の流体制御装置が含まれる。
【0004】
情報を伝送するための一つの典型的な技術は、プロセス制御ループを流れる電流の量を制御することを含む。電流は、制御室内の電流源から供給され、プロセス変数送信機は、フィールドのその場所から電流を制御する。例えば、4mA信号は、ゼロの読み取り値を示すために使用することができ、20mA信号は、フルスケールの読み取り値を示すために使用することができる。場合によっては、通信機能を追加するために、4-20mA信号にデジタル情報を重畳することができる。4-20mA信号にデジタル通信を重ねるプロセス通信プロトコルの一例としては、HART(Highway Addressable Remote Transducer)プロトコルが挙げられる。さらに、このような装置は、4-20mA電流のループから全ての動作電力を受け取ることが可能である。これらの装置は、「ループ電源式」と見なされる。
【0005】
最近、このようなループ電源式装置に、低電力ブルートゥース(登録商標)(BLE)モジュールの形式の汎用無線通信を組み込む試みがなされている。BLEは、2.4~2.4835GHzの通信スペクトラム内の、従来のブルートゥース(登録商標)チャネルのサブセットのチャネルで動作する無線通信技術である。BLEは、従来のブルートゥースと比較して、同様の通信範囲を維持しながら、電力と費用を削減することを目的として提供される。
【0006】
BLEは、フィールド装置に、スマートフォン及び/又はタブレット等の近傍の汎用装置と無線通信する能力を提供する。この簡素化により、そのようなフィールド装置の試運転、較正、保守、トラブルシューティング、及び修理等のために、そのフィールド装置と情報交換する必要があるユーザにとって、大きな利便性が提供される。しかし、BLEモジュールは、そのようなループ電源式装置が接続される4-20mA電流ループによって供給される電力よりも多くの電力を簡単に消費してしまう可能性がある。したがって、ループ電源式フィールド装置におけるBLEの採用性と互換性を高めるために、ループ電源式フィールド装置に対してより優れた電力管理を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0007】
概要
ループ電源式フィールド装置は、プロセス通信ループに接続可能な複数の端子と、その複数の端子の一つに接続され、制御信号に基づいてループ制御モジュールを流れる電流量を制御する、ように構成されたループ制御モジュールと、を含む。フィールド装置メインプロセッサーは、ループ制御モジュールに動作可能に接続され、ループ制御モジュールからその動作電流(I_Main)を受信し、プロセス変数出力に基づいて制御信号を供給する、ように構成される。低電力無線通信モジュールは、ループ制御モジュールに動作可能に接続され、ループ制御モジュールから動作電流(I_BLE)を受け取る。低電力無線通信モジュールは、フィールド装置メインプロセッサーに通信可能に接続される。低電力無線通信モジュールは、アクティブモードとスリープモードを有する。低電力無線通信モジュールは、低電力無線通信モジュールがスリープモードである間に使用可能な動作電流(I_BLE)の測定値を取得し、その動作電流(I_BLE)の測定値に基づいて、低電力無線通信モジュールのアクティブサイクルを変更する、ように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本明細書に記載の実施形態が有用な環境を示すプロセス制御システムのシステムブロック図である。
図2】一実施形態に係る、フィールド装置電子回路のシステム・ブロック図である。
図3】一実施形態に係る、BLE電子回路モジュールのシステムブロック図である。
図4】一実施形態に係る、電力管理中のC_storeの充放電を示すタイミング図である。
図5】I_activeがI_BLEより大きい場合の、2つのBLEイベントを示すタイミング図である。
図6】一実施形態に係る、改良型BLE電子回路モジュールの概略図である。
図7】一実施形態に係る、I_BLE測定のタイミング図である。
図8】一実施形態に係る、改良された統合I_BLE測定を有する低電力ブルートゥースモジュールの動作方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
統合されたBLEを有するフィールド装置を提供する場合、ループ電源式装置に使用可能な入力電力で、最大のブルートゥースデータのスループットを供給することは困難である。さらに、ブルートゥースシステムへの使用可能な入力電力では、継続的なBLE動作をサポートするには十分でないことがよくある。したがって、電力蓄積コンデンサーが使用される。以下に説明する様々な実施形態に従って、ブルートゥースシステムへの使用可能な入力電力を検出し、その使用可能な入力電力に従ってブルートゥースデータのスループットを調整するための、低コストで電力効率の高い方法が提供される。本発明の実施形態は、低電力ブルートゥースを使用する通信に関して説明されるが、実施形態は、他のタイプの低電力無線通信でも実施可能であることが明確に意図される。
【0010】
図1は、本明細書に記載される実施形態が有用となる一つの特定の環境を示す、プロセス制御システム30のシステムブロック図である。プロセス制御システム30は、プロセス制御ループ36を介して制御室34に接続されたプロセス装置32を含む。プロセス装置32は、管46のようなプロセス流体容器に接続される。本明細書で使用されるようなフィールド装置は、信号をプロセスパラメータに関連付けるか、又はプロセスパラメータの変化に応答して作用する、任意の装置である。したがって、フィールド装置32は、管46のようなプロセス容器内の圧力、温度、又はレベルのようなプロセス変数を検知するプロセス変数送信機であることができる。さらに、フィールド装置32は、プロセスの動作を監視するか、又はプロセス制御ループ上のそのプロセスに関連する情報を送信する、装置であることができる。プロセス制御ループ36は、プロセス装置32を制御室34に接続し、フィールド装置32に通電電流を供給する。図示の例では、プロセス制御ループ36は、二線式で4-20mAのプロセス制御ループである。
【0011】
図2は、一実施形態に係るフィールド装置32の電子回路50のシステムブロック図である。電子回路50は、プロセス制御ループ36(図1に示す)のような二線式プロセス制御ループに接続可能な一対の端子52、54を含む。図示された例では、端子52は、鎖線62で図式的に図示されているように、メイン電子回路60のメインプロセッサー58から受信された信号に基づいて、そこを流れる電流のレベルを、設定するか又は決定することができる、4-20mAループ制御モジュール56に接続される。ループ制御モジュール56から出力されるループ電流は、I_Loopと表記される。この電流はノード64に流入され、そこで、メイン電子回路電流(I_Main)と、低電力ブルートゥース電子回路電流(I_BLE)と、に分割される。理解することができるように、I_Mainは、メインプロセッサー58を含むメイン電子回路60に動作電流を供給する。メイン電子回路60は、フィールド装置の動作に関連する全ての機能を提供する。例えば、図示された実施形態において、メイン電子回路60は、プロセス変数(例えば、圧力)を示すセンサー信号66に、接続されるか、又はこれを受信し、検出されたプロセス変数に基づいて、プロセス変数出力を生成する。プロセス変数出力は、メインプロセッサー58によって、ループ制御モジュール56に、プロセス変数に対応するループ電流を設定するように命令することによって提供される。また、参照されるように、BLE電子回路68は、電流I_BLEによって給電される。BLE電子回路68は、メインプロセッサーが、BLE電子回路68を使用して一つ以上のリモート装置と無線通信できるように、メインプロセッサー58に通信可能に接続される。BLE電子回路モジュール68は、市販の低電力ブルートゥース集積回路、又は低電力ブルートゥース仕様に準拠する任意のカスタム回路、を含むことができる。参照されるように、BLE電子回路68は、アンテナとして図式的に図示されたBLE無線通信ポート70に動作可能に接続される。
【0012】
理解することができるように、BLE電子回路モジュール68を有するフィールド装置のために使用可能な入力電力は、測定されたプロセス変数(参照数字「66」で図式的に図示される)に基づいて、フィールド装置メインプロセッサー58によって制御される4-20mAのループ制御に基づいて変化する。BLE電子回路のために使用可能な電流(I_BLE)は、以下に示す式1によって制御される。
【0013】
式1:
【数1】
【0014】
I_Loopは4-20mAのループ電流であり、I_Mainはメイン電子回路の電流である。メイン電子回路とBLE電子回路からの戻り電流は、コモン回路(図2でGと表記)に接続される。I_LoopとI_Mainは、互いに非同期であり、任意の時点で変更される。電流I_Loopは、フィールド装置の測定プロセスの関数である。電流I_Mainは、フィールド装置の機能動作に基づいてアクティブである。例えば、プロセス変数送信機サブシステムとのデジタル通信が進行中の場合、I_Mainは、1mA増加する。結果として、電流I_BLEは、I_LoopとI_Mainの値によって、時間と共に変化する。一例として、I_BLEは、300μAから5mAの間で変化する。
【0015】
図3は、一実施形態に係るBLE電子回路モジュール68のシステムブロック図である。図3に示されるように、I_BLEは、電圧制限値VMAXを有する理想電流源80として表される。BLEプロセッサー82は、BLE動作(例えば、BLE無線通信ポートを介したデータ通信)を担う主要なBLE電力負荷である。BLEアクティブ電流(I_active)は、使用可能な入力電流I_BLEよりも高い場合がある。例えば、テキサス州ダラスのテキサス・インスツルメンツ(Texas Instruments)社からCC2642R2Fという商品名で販売されている市販のBLEプロセッサーのI_activeは3mAである。しかし、上述のように、I_BLEとして供給される電位の電流は、300μAという低電流値であることができる。その結果、BLE電子回路68は、I_activeがI_BLEよりも大きい場合に、アクティブモード中にBLE電子回路68に電力を供給する電力源として、コンデンサーC_store84を利用する。スリープモード中、BLEプロセッサー82はスリープ状態になり、I_activeはわずか数マイクロアンペアであるため、C_storeは、電流I_BLEによって、最大電圧VMAXまでリチャージされる。
【0016】
図示されているように、VCAP86は、BLEプロセッサー82の電圧供給源である。電圧VCAPは、I_activeとI_BLEとの間の電流差に比例する。I_activeがI_BLEより大きい場合、BLE電子回路のアクティブタイムは、電圧VCAPの電圧低下を回避するために制限される。実際、アクティブタイムの制限値に達すると、BLEプロセッサー82は、全ての動作を停止し、スリープモードに入らなければならない。動作は、C_storeがVMAXまでリチャージされた後にのみ再開することができる。アクティブタイムは、BLEプロセッサー82のリアルタイムクロックを使用して追跡される。
【0017】
VCAPスーパーバイザー(supervisor:監視装置)87は、一実施形態としては、電圧VCAPがVMAXに達した場合に、BLEプロセッサー82に信号を送る電圧コンパレーターである。そのとき、BLEプロセッサー82は、スリープモードから中断され、BLE動作を継続するために、アクティブモードに切り替わることができる。アクティブモードは、アクティブ制限時間に達するまで再開され、その後、C_storeのリチャージが繰り返される。
【0018】
図4は、一実施形態に係る、電力管理中のC_storeの充電及び放電を示す、タイミング図である。参照されるように、時間tにおいて、BLEプロセッサー82は、参照数字「90」で図式的に示されるアクティブモードに入り、その間、電圧値VCAP86は、VMAXからVlowに低下する。これが発生すると、アクティブモード90が停止され、BLEプロセッサー82は、C_storeがリチャージ(recharge:再充電)される間、スリープモードに入る。このリチャージタイムは、参照数字「92」で図式的に示される。リチャージタイムは、VCAPがVMAXに達し、VCAPスーパーバイザー87が、BLEプロセッサー82へのインターラプト(interrupt:割り込み)94を生成したときに終了する。アクティブタイムの伝達関数は、以下の式2に示されるように規定される。
【0019】
式2:
【数2】
【0020】
式2のアクティブタイムは、I_activeがI_BLEより大きい状態である場合に対して定義され、それ以外の場合には、電圧値VCAPは、全サイクルタイム中にわたりVMAXに留まる。リチャージタイム伝達関数は、以下の式3に示されるように規定される。
【0021】
式3:
【数3】
【0022】
I_activeがI_BLEよりはるかに小さいので、I_activeが無視できることを除けば、式3のリチャージタイム伝達関数は式2と同様である。サイクルタイムは、アクティブタイムとリチャージタイムを合計したものである。したがって、サイクルタイム=アクティブタイム+リチャージタイムである。
【0023】
本明細書に記載される実施形態は、一般的に、I_BLEに必要な電流が、電流ループによって現在供給できる電流よりも大きい場合の状況で対処される。
【0024】
図5は、I_activeがI_BLEよりも大きい場合の、2つの例示的なBLEイベントを示す、タイミング図である。アクティブモードのイベントには2つのタイプがある。一つのイベントタイプは、例えば、固定のアドバタイズ(advertisement:接続待ち)間隔T_advを有するBLEアドバタイズ等の周期的なものであり、第二のイベントタイプは、BLEプロセッサーイベント等である。BLEプロセッサーイベントは、例えば、暗号アルゴリズムで使用されるセキュリティキーの生成等、一般的なプロセッサータスクである。所定のT_adv内では、BLEプロセッサーイベントのアクティブタイムは、最小値I_BLEによって制限される。BLEプロセッサーイベントのアクティブサイクルタイムとリチャージサイクルタイムの合計時間は、電圧VMAXでC_storeを用いてアドバタイズイベントを開始できるように、T_advよりも短くする必要がある。また、リチャージタイムは、上記の式3に従って、最小値I_BLEを考慮する必要がある。リチャージタイムは、最小値I_BLEで最大となる。
【0025】
実際のI_BLEが、I_BLE最小値よりも大きい場合には、問題が発生する。この場合、図5の破線100で示される式3に基づいて、リチャージタイムが短縮される。さらに、リチャージタイムが短縮されることにより、アクティブタイムの制限値を増加させることができる。この結果、BLEシステムの効率が向上する。しかし、BLEプロセッサーが、実際のI_BLE値を認識していない場合、電源式マネージャの設計では、I_BLEの全ての値に対して、最小値I_BLEを使用するように、デフォルト設定される。その結果、BLEシステムは、最小値I_BLEよりも高いI_BLEにおいて、データスループットの非効率に悩まされる。本明細書に記載された実施形態に従って、BLE電子回路は、低コストで電力効率の高いI_BLE測定機能を備える。さらに、I_BLE測定の処理は、測定されたI_BLEの関数として、アクティブタイムを最大化するような方法で行われる。
【0026】
図6は、本発明の一実施形態に係る、改良されたBLE電子回路モジュールの概略図である。改良型モジュール110のいくつかの構成要素は、モジュール68(図3に示す)に関して説明された構成要素と類似しており、同様の構成要素には同様の番号が付されている。参照されるように、BLEプロセッサー82に関して、追加の入力及び追加の出力が採用される。図示された例では、I_BLE測定動作と、図3で参照された前述の動作と、の間で選択するために、BLEプロセッサー82に対して、2つの相補的アナログスイッチ112、114が追加されている。相補的アナログスイッチとして、アナログスイッチ112の一方が係合されるとき、他方のアナログスイッチは係合が解除されなければならない。より具体的には、SW_Mainスイッチ114が閉じられている場合、SW_Testスイッチ112は開いており、BLEシステムは、図3に関して上述したように正確に動作する。しかしながら、SW_Testスイッチ112が閉じられ、SW_Mainスイッチ114が開いている場合、BLEプロセッサー82は、電流I_BLEの測定を実行する。図6は、また、Ctest116及びBLEプロセッサー82に動作可能に接続されたI_BLEスーパーバイザー117を示す。一例としては、I_BLEスーパーバイザー117は、コンパレーターである。I_BLEスーパーバイザー117は、VTSTが閾値VTHに達した場合、BLEプロセッサー82に信号(VINT)を供給する。
【0027】
図7は、一実施形態に係る、I_BLE測定のタイミング図である。時間t0において、BLEプロセッサー82は、アクティブモードからスリープモードに変更し、リアルタイムクロックを開始する。I_BLE測定の持続時間であるTest_Timeの間、BLEプロセッサー82は、スリープモードのままであり、電流I_activeは、数マイクロアンペアである。時間t0において、電流I_BLEは、SW_Testスイッチ112によって向きを変えられ、その電圧が閾値電圧VTH118に達するまで、テストコンデンサーCtest116を充電する。VTSTがVTHに達した場合、I_BLEスーパーバイザー117(電圧コンパレーター)の出力信号VINTは、論理ローから論理ハイに切り替わり、BLEプロセッサー82がスリープから中断される。その時点で、BLEプロセッサー82は、アクティブモードに切り替わり、リアルタイムクロックを停止し、SW_Testスイッチ112を開く(これにより、SW_Mainスイッチ114を閉じられる)。次に、BLEプロセッサー82は、C_store84から電力が供給されている間に、簡単なI_BLE計算を実行する。I_BLE測定計算は、式3を再配列して以下の式5を提供することによって実行される。
【0028】
式5:
【数5】
【0029】
式5の定数VTH及びCtestは、I_BLE測定の電力効率を高める上で重要な役割を果たす。上記した市販のBLEモジュールのBLEプロセッサー動作電圧は、1.8ボルトである。したがって、電圧レベルのシフトを避けるには、VTHを1.8Vに設定することが有利である。同じBLEプロセッサーのリアルタイムクロック分解能は、約30マイクロ秒である。したがって、Ctestは、Test_TimeがI_BLEスパンに対して十分長くなるように選択される。BLEプロセッサーのリアルタイムクロックよりも高精度タイマーを使用することは、タイマーの電流が比較的大きいため、一般的には推奨されない。以下の表1は、VTH=1.8Vでの、I_BLEの下限値300μAと、上限値3mAの、2つのCtestの例を示している。3μAは、BLEプロセッサーのI_activeであり、I_BLEの最大値MAXは、5mAである。
【0030】
【表1】
【0031】
上記の表1に記載されているように、電力消費の列は、I_BLE測定を実施するために使用可能な総電力のパーセンテージである。上記の例のBLE測定電子回路の場合、使用可能な総電力は約380マイクロジュールである。I_BLE測定の精度は、表1の例2を参照して、より大きなCtestを選択することによって改善することができる。ただし、Ctestの値が低いほど、Test_Timeが高速になることから、電力消費量が少なくなる。
【0032】
この場合のC_storeのリチャージタイムが速いため、I_BLEの値が大きい場合には、高精度のI_BLE_measは必要ない場合がある。これは、I_BLEがI_activeよりも大きい場合(例えば、I_BLE=5mA、及びI_active=3mA)に特に当てはまり、この場合、VCAPスーパーバイザー87は、VCAP電圧が継続的にVMAXレベルにあり、C_storeのリチャージタイムはゼロにとどまることをBLEプロセッサーに通知する。
【0033】
I_BLE測定の頻度は、電流I_BLEの予想変化率に依存する。フィールド装置のループ変化率の時定数は、一実施形態としては、12mSである。I_Mainの変化率を定量化することは困難であるが、一桁のミリ秒の範囲であると仮定することができる。これらの変化率と表1の例1を考慮すると、I_BLEの測定頻度は、200Hz又は5ミリ秒に1回、に設定することができる。
【0034】
図8は、一実施形態に係る、改善された統合I_BLE測定を有する低電力ブルートゥースモジュールを動作させる方法のフロー図である。この方法では、測定されたI_BLE値に基づいて、BLEプロセッサーイベントのサイクルタイムを推定することができる。サイクルタイムは、I_BLE測定頻度に基づいて定期的に再計算される。BLEプロセッサーイベントの持続時間、すなわちアクティブタイムは、推定されたサイクルタイムがアドバタイズ期間に近づくまで延長される。サイクルタイムの推定は、電流I_BLEのハイからローへの高速な遷移中のBLEプロセッサーイベントが終了する前に、アドバタイズ期間を超える傾向がある。この問題を軽減するために、タイムバッファがサイクルタイムの最後に追加される。このタイムバッファの期間は短くする必要があり、そうしないと、この方法のデータスループット効率の利点が減少する。タイムバッファを最小化するために、I_BLEの測定頻度を増やすか、他の方法を使用することができる。
【0035】
方法200は、I_active、VTH、VMAX、及びT_advの形式で、定数204を受信するブロック202から開始される。ブロック202では、VCAPがVMAXに等しく、アクティブモードが使用される。次に、ブロック206では、BLEプロセッサーのリアルタイムクロックが、T_start値を設定及び記録するために使用される。ブロック208では、SW_Mainアナログスイッチ114が閉じられ(図6を参照)、SW-Testスイッチ112が開かれる。ブロック210では、BLEプロセッサー82が、BLEプロセッサーイベントを実行する。プロセッサーイベントが実行された後、制御がブロック212に渡され、そこでI_BLEを測定する時間であるか否かが決定される。I_BLEを測定する時間ではない場合、制御がブロック210に戻り、BLEプロセッサー82は別のプロセッサーイベントを実行することができる。理解することができるように、このプロセスは、最終的にI_BLEを測定する時間になるまで繰り返されることができ、そのとき制御が、線260を介して、ブロック214に渡される。
【0036】
ブロック214では、BLEプロセッサー82が、SW_Mainアナログスイッチ114を開き、SW_Testスイッチ112を閉じる。次に、制御がブロック216に渡され、BLEプロセッサー82が、そのリアルタイムクロックに基づいて時間t0を記録する。次に、ブロック218で示されるように、BLEプロセッサー82が、スリープモード又はスタンバイモードに変更される。ブロック220では、方法200は、VINT信号又は割り込みが受信されたか否かを決定する。受信されていない場合には、方法は、VINTが最終的に受信されるまで待機し、受信された時点で制御がブロック222に渡される。ブロック222では、BLEプロセッサー82がアクティブモードに変更され、制御がブロック224に渡され、BLEプロセッサー82がそのリアルタイムクロックに基づいてT_nowを記録する。次に、制御がブロック226に渡され、SW_Testスイッチ112が開かれ、SW_Mainスイッチ114が閉じられる。次に、制御がブロック228に渡され、BLEプロセッサー82がI_BLE_meas=Ctest(VTH/(T_now-t0))を計算する。制御がブロック230に渡され、BLEプロセッサー82が、VCAP=VMAX-((I_active-I_BLE_meas)*(T_now-T_start)/Cstore)を計算する。次に、ブロック232では、リチャージタイムが、C_store*(VMAX-VCAP)/I_BLE_measに等しいものとして計算される。最後に、制御がブロック234に渡され、サイクルタイムが、(T_now-T_start)+リチャージタイムとして計算される。これらの値が計算されると、制御がブロック236に渡され、サイクルタイム+タイムバッファが、T_adv未満であるか否かが決定される。T_adv未満である場合には、制御が、線240を介して、ブロック210に戻される。しかし、T_adv未満でない場合には、制御がブロック242に渡され、そこでBLEプロセッサー82が、BLEプロセッサーイベントを終了する。BLEプロセッサーイベントが終了すると、制御がブロック244に渡され、そこでBLEプロセッサー82がスリープモード又はスタンバイモードに変更され、ブロック246でサイクルが終了する。
【0037】
要約すると、図8に関して説明された方法は、アクティブタイムを、測定されたI_BLEの関数として、概ね最大化し、それは事質的にデータスループットを最大化する。
【0038】
本発明は、好ましい実施形態を参照して説明されたが、当業者であれば、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、形態及び細部において変更が可能であることが認識できるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】