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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-24
(54)【発明の名称】耐火性物品及び組成物
(51)【国際特許分類】
   B22C 9/08 20060101AFI20240417BHJP
【FI】
B22C9/08 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023562660
(86)(22)【出願日】2022-04-14
(85)【翻訳文提出日】2023-11-30
(86)【国際出願番号】 EP2022060119
(87)【国際公開番号】W WO2022219156
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】21168913.8
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511239074
【氏名又は名称】フォセコ インターナショナル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Foseco International Limited
【住所又は居所原語表記】1 Midland Way,Central Park,Barlborough Links,Derbyshire S43 4XA,United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グラナ-スアレス,ローラ
(72)【発明者】
【氏名】クビアク,ミハエル
(72)【発明者】
【氏名】フォッセベルド,フランク
【テーマコード(参考)】
4E093
【Fターム(参考)】
4E093PB03
4E093PB07
(57)【要約】
金属鋳造における押湯システムで使用する耐火性物品及び該耐火性物品を作製するための組成物を提供するもので、前記組成物は、粒子状耐火性材料、酸化性燃料、酸化剤、増感剤、及び結合剤を含み、0.5~5重量%のCaSOを含む。
【選択図】 無し
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属鋳造における押湯システムで使用する耐火性物品を作製するための組成物であって、前記組成物は、
粒子状耐火性材料、
酸化性燃料、
酸化剤、
増感剤、及び
結合剤、を含み、
0.5~5重量%のCaSOを含む、組成物。
【請求項2】
前記組成物は、2.0重量%未満のフッ素を含むか、又はフッ素を実質的に含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記増感剤は、水に不溶性のフッ素化合物を含む、前記請求項の何れか1項に記載の組成物。
【請求項4】
前記フッ素化合物は、フッ化カルシウム(CaF)である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記酸化剤は、酸化鉄(Fe及び/又はFe)、フェロシライト(FeSiO)、硝酸カリウム(KNO)、二酸化マンガン(MnO)、二酸化チタン(TiO)及び酸化銅(CuO)からなる群から選択される1又は2種以上の酸化剤を含む、前記請求項の何れか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が2~30重量%の酸化剤を含む、前記請求項の何れか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記酸化性燃料は金属を含み、任意選択で前記酸化性燃料がアルミニウムであり、任意選択で前記酸化性燃料がアルミニウム箔及び/又は粒子状アルミニウムを含む、前記請求項の何れか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記酸化性燃料は金属ケイ素を含む、前記請求項の何れか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物は、
i)少なくとも10重量%の酸化性燃料、及び/又は
ii)30重量%以下の酸化性燃料、
を含む、前記請求項の何れか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記酸化性燃料は、アトマイズ粉末を含み、任意選択で前記アトマイズ粉末はアトマイズアルミニウム及び/又はアトマイズ金属ケイ素を含む、前記請求項の何れか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記アトマイズ粉末は、少なくとも60重量%のアトマイズアルミニウムを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記アトマイズ粉末は、少なくとも10重量%のアトマイズ金属ケイ素を含む、請求項10又は請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記酸化性燃料は、少なくとも30重量%のアトマイズ粉末を含む、請求項10乃至請求項12の何れか1項に記載の組成物。
【請求項14】
キャリア流体をさらに含み、任意選択で、前記キャリア流体は水である、前記請求項の何れか1項に記載の組成物。
【請求項15】
金属鋳造における押湯システムで使用する耐火性物品であって、前記耐火性物品は前記請求項の何れか1項に記載の組成物から形成される、耐火性物品。
【請求項16】
前記耐火性物品は押湯スリーブである、請求項15に記載の耐火性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属鋳造で使用する耐火性物品(refractory article)、及び該耐火性物品の製造に使用するための組成物に関する。具体的には、本発明は、金属鋳造に使用するためのフッ素を含まない組成物及び耐火性物品、例えば押湯スリーブ(feeder sleeve)に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な鋳造プロセスにおいて、溶融金属は、鋳造物の形状を画定する予め形成された鋳型キャビティ(mould cavity)に注がれる。溶融金属が冷却され凝固すると、収縮して引け巣が生じ、その結果、最終的な鋳造物に許容できない欠陥が生じる。これは鋳造業界ではよく知られた問題であり、鋳型に一体化された押湯装置(feeders or risers)を使用することによる対処が行われている。各押湯装置は、鋳型キャビティと連通する追加の(通常は密閉された)容積又はキャビティを備え、鋳造中に溶融金属が、鋳型キャビティから押湯キャビティに入るようにする。鋳造物の凝固中、鋳造物の収縮を補うために、押湯キャビティ内の溶融金属は鋳型キャビティの中へ逆方向に流れる。
【0003】
鋳造物が所定通り押湯が供給され、金属の収縮中に生じるボイドが充填されるには、押湯キャビティ内に入っている金属は、鋳型キャビティ内の金属よりも長時間、溶融状態を維持する必要がある。このため、押湯装置には、通常は、断熱性の高い耐火性材料から作られた押湯スリーブが配備されており、押湯キャビティ内の金属の熱損失を低減し、溶融状態が長く維持されるようにしている。また、押湯キャビティ内の金属を積極的に加熱するために、発熱性押湯スリーブが配備されることもある。
【0004】
発熱性スリーブはテルミット反応を利用するもので、酸化性燃料(通常はアルミニウム等の金属)が酸化剤(典型的には酸化鉄、二酸化マンガン、硝酸カリウム又はそれらの組合せ)によって酸化され、溶融金属と同様な温度の熱を発生する。テルミット反応は、溶融金属が押湯キャビティに入り、燃料及び酸化剤と接触する際の溶融金属の熱によって開始する。
【0005】
発熱性押湯スリーブは、所定の押湯用途又は鋳造物の種類に対して、はるかに小さな押湯の使用が可能という点で有利である。これは、押湯で無駄になる金属の量を減らし、製造できる鋳造物の複雑さを減らし、鋳型ごとに製造できる鋳造物の数を減らすという点で利点がある。長年にわたり、発熱性押湯スリーブの最適化に多大な努力が払われてきた。新しい発熱性スリーブを評価する際に一般的に考慮される重要なパラメータは、点火時間、到達最高温度(Tmax)、及び発熱反応の持続時間(燃焼時間)である。燃料及び/又は酸化剤の量を増やしても発熱反応の持続時間が長くなるとは限らない。多くの場合、燃料の全てが消費されるわけではないので、燃料や酸化剤の充填量を増やしても経済的や実用的でない場合がある。発熱性スリーブの効率を改善するために、発熱テルミット反応を開始させるのに必要なエネルギーを減少させる増感剤又は開始剤(initiator)が開発されている。
【0006】
鋳造産業では、カリウムクリオライト(KAIF)及びナトリウムクリオライト(NaAIFe)等のフッ化物ベースの開始剤/増感剤が広く使用されており、最も効果的かつ実用的な増感剤であると認識されている。しかし、フッ化物を含有するスリーブの残留物が鋳型砂(mould sand)を汚染することによる環境的及び技術的な問題がある。鋳物工場は、フッ化物が乾燥廃棄物及び水浸出性成分の両方に含まれる廃砂の処分に関する問題の増大に直面しており、その結果、管理された処分を行うためのコストが上昇している。もう一つの問題は、再循環された鋳型砂にフッ化物残留物が蓄積すると、砂の耐火性が低下し、鋳造物表面に欠陥(「フィッシュアイ(fish eye)」として知られている)が形成されることである。
【0007】
米国特許第6360808号は、フッ化物レベルの低減が、アルミニウムドロスをアルミニウム及びフッ化物源の両方として使用することによって達成される組成物を開示している。米国特許出願公開第2009/0199991A1号は、フッ化物レベルを低減することができるメタロセンを含む組成物を開示している。米国特許第5180759号は、発熱性組成物の全フッ化物含有量を低減するためにフッ素化された有機ポリマーの使用を開示している。ヨーロッパ特許第1543897B1号及び米国特許第第6972059B1号は、いずれもフッ化物を含まない組成物を開示している。これは、マグネシウムを開始剤として使用するものであるが、マグネシウムは反応性が高いため、発熱性混合物の製造や処理に困難を生じている。
【0008】
スラリールートで製造される押湯スリーブの場合、不溶性材料を使用する必要があるため、技術的に実現可能なフッ化物増感剤の代替物を入手することが困難である。不溶性フッ化物塩の代替物となり得る特定のII族塩化物は、必要な不溶性を示すかもしれないが、増感剤として有効性が少ないことが知られており、必要な性能要件を満たすことができない。
【0009】
本発明は、これらの問題を念頭に開発されたものである。
【発明の概要】
【0010】
本発明の第1の態様では、金属鋳造に使用する耐火性物品を製造するための組成物が提供される。この組成物は、粒子状耐火性材料(particulate refractory material)、酸化性燃料(oxidisable fuel)、酸化剤(oxidant)、増感剤(sensitiser)及び結合剤(binder)を含む。組成物は、0.5~5重量%のCaSOを含む。
【0011】
幾つかの実施形態において、耐火性組成物は、0.5~3重量%又は1~2重量%のCaSOを含む。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の組成物は、硫酸カルシウム(CaSO)を含み、該硫酸カルシウムは主に増感剤として作用し、また酸化剤としても作用する。CaSOを増感剤としての使用は、発熱性テルミット反応の点火時間を短縮及び/又は燃焼効率を増大させるので、フッ化物増感剤の使用を低減又は排除することができる。フッ化物増感剤の量を減少させることにより、鋳型砂中のフッ素汚染が減少し、それによりフッ素汚染砂の処理に関連する環境問題及びコスト問題が緩和され、鋳造欠陥の原因となり得る再循環鋳型砂中にフッ素の蓄積が防止される。幾つかの実施形態において、組成物は、硫酸カルシウムに加えて、酸化剤及び/又は増感剤を含む。
【0013】
本発明の内容において、「増感剤」及び「開始剤」という用語は互換的に使用されることができ、発熱性テルミット反応を開始させるのに必要なエネルギーを減少させる物質を指すために使用されることは理解されるであろう。
【0014】
幾つかの実施形態において、組成物は、硫酸カルシウムではない増感剤を、4.0重量%以下、3.5重量%以下、3重量%以下、2.5重量%以下、2重量%以下、1.5重量%以下、1.25重量%以下、1.0重量%以下、0.5重量%以下、又は0.25重量%以下含む。
【0015】
幾つかの実施形態において、組成物は、フッ素を、4.0重量%以下、3.5重量%以下、3重量%以下、2.5重量%以下、2重量%以下、1.5重量%以下、1.25重量%以下、1.0重量%以下、0.5重量%以下、0.4重量%以下、0.3重量%以下、0.2重量%以下、0.1重量%以下又は0.05重量%以下含む。幾つかの実施形態において、組成物は実質的にフッ素を含まない、すなわち組成物に含まれるフッ素は微量以下である。フッ素化合物は、鋳造品質及び環境上の理由から好ましくないことがあるので、組成物に含まれるフッ素をできるだけ少なくしてテルミット反応の所望の特性を維持することが好ましい。
【0016】
好ましい一連の実施形態において、組成物は、水に不溶性のフッ素化合物を含む。幾つかの実施形態において、組成物は、フッ素を含まないか、又は水溶性のフッ素を実質的に含まない。本発明者らは、水に不溶性のフッ素化合物もまた、増感剤として作用し得ることを見い出した。水に不溶性のフッ素化合物は、例えば、組成物から形成された耐火性物品を金属鋳造工程で使用後、鋳型を再生(reclamation)する間、鋳型砂をフッ素(又はフッ素化合物)で汚染しないので、特に好ましい。
【0017】
好ましい一連の実施形態において、増感剤はフッ化カルシウム(CaF)を含む。フッ化カルシウムは水に不溶性の鉱物であり、テルミット反応において増感剤として作用することが見出された。理論に拘束されることを望むものではないが、フッ化カルシウムは、少なくとも部分的には触媒的に作用して、アルミニウム金属上に酸化物層を妨げる作用を有すると考えられている。幾つかの実施形態では、増感剤はフッ化マグネシウム(MgF)を含むことができる。
【0018】
本明細書で使用される「フッ素」という用語は、フッ素を、イオン形態又は共有結合形態、例えばフッ化物の形態で含むあらゆる化合物のことを言うことを意図していることは理解されるであろう。本出願の中で、「フッ素を含まない」製品とは、形態に関係なく、フッ素を全く含まないか、又は極く微量のフッ素を含む製品、すなわちフッ素とフッ化物の両方を含まない製品である。
【0019】
酸化剤はテルミット反応の一部として酸化性燃料を酸化する。本発明では、CaSOは酸化剤としても増感剤としても作用し得るが、本明細書で使用される「酸化剤」という用語は、CaSOではない組成物中に存在するあらゆる酸化剤を指すために使用されることは理解されるであろう。好適な酸化剤として、酸化鉄(Fe、FeO及び/又はFe)、フェロシライト(FeSiO)、二酸化マンガン(MnO)、硝酸ナトリウム(NaNO)、硝酸カリウム(KNO)、塩素酸ナトリウム(NaClO)、塩素酸カリウム(KClO)、硫酸ストロンチウム(SrSO)、硫酸バリウム(BaSO)、二酸化チタン(TiO)、酸化銅(CuO)、これらの物質及び組合せを含む天然鉱物が挙げられる。
【0020】
幾つかの実施形態において、酸化剤は、水に実質的に不溶性の酸化剤を含む。物質は、水中での溶解性が20℃で0.5g/100ml未満の場合、水に実質的に不溶性であると考えられる。不溶性の酸化剤を使用することは、耐火性物品が固体成分の水性スラリーを用いて組成物から調製され得ること、またコアショット法による製造に適している点において有利である。水に実質的に不溶性の酸化剤として、酸化鉄、二酸化マンガン、酸化銅、硫酸ストロンチウム、硫酸バリウム、二酸化チタンが挙げられる。
【0021】
幾つかの実施形態において、酸化剤は、酸化鉄(Fe及び/又はFe)、フェロシライト(FeSiO)、硝酸カリウム(KNO)、二酸化マンガン(MnO)、二酸化チタン(TiO)及び酸化銅(CuO)からなる群から選択される1又は複数の酸化剤を含む。幾つかの実施形態において、酸化剤は、酸化鉄(Fe及び/又はFe)、フェロシライト(FeSiO)及び硝酸カリウム(KNO)の組合せを含む。
【0022】
幾つかの実施形態において、組成物は、酸化剤を、少なくとも2重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも12重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%又は少なくとも25重量%含む。幾つかの実施形態において、組成物は、酸化剤を、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、12重量%以下、又は10重量%以下含む。幾つかの実施形態において、組成物は、酸化剤を、2~30重量%、5~25重量%又は10~20重量%含む。
【0023】
幾つかの実施形態において、酸化性燃料は金属を含む。幾つかの実施形態において、金属は、アルミニウム、マグネシウム、ケイ素、スズ、亜鉛及びそれらの合金のうちの1又は2種以上から、単独で又は混合物として選択される。幾つかの実施形態では、酸化性燃料は、アルミニウム及び金属ケイ素を含む。異なる反応性を有する異なる酸化性金属の組合せにより、テルミット反応の特性(例えば、点火時間、燃焼時間、最高温度など)を調整するのに役立ち得る。例えば、理論に拘束されることを望むものではないが、本発明の発明者らは、ケイ素はアルミニウムよりも高い活性化エネルギーを有し、高いエネルギー出力も有しているので、酸化性燃料として金属ケイ素及びアルミニウムの組合せを用いることは、フッ化物増感剤の非存在下でテルミット反応の特性のバランスをとるのに役立ち得ることを見出した。
【0024】
酸化性燃料は、粒子状材料(例えば、微粉末、粗粉末、粉砕物(grindings)又はそれらの組合せ)、箔、スキミング、ドロス又はそれらの組合せの形態であってよい。幾つかの実施形態において、酸化性燃料は、金属箔と粒子状金属との組合せを含む。幾つかの実施形態において、酸化性燃料は、アトマイズ粉末(atomised powder)の形態、すなわち非常に微細な粉末形態の金属を含む。アトマイズ粉末形態の酸化性燃料は、他の形態の酸化性燃料よりも反応性が高いかもしれない。酸化性燃料を異なる形態の組合せで用いることにより、テルミット反応の特性を調整し、フッ化物増感剤の非存在下でこれらの特性のバランスをとることもできる。
【0025】
幾つかの実施形態において、酸化性燃料はアトマイズ粉末を含み、該アトマイズ粉末はアトマイズアルミニウム、アトマイズケイ素又はそれらの組合せを含む。幾つかの実施形態において、アトマイズ粉末は、アトマイズアルミニウムを、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%又は少なくとも95重量%含む。幾つかの実施形態において、アトマイズ粉末は、アトマイズケイ素を、少なくとも2重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%又は少なくとも40重量%含む。幾つかの実施形態において、アトマイズ粉末は、アトマイズアルミニウムを60~95重量%、アトマイズケイ素を5~40重量%含む。
【0026】
アトマイズアルミニウム粉は、D90粒子径が150μm未満、140μm未満、130μm未満、120μm未満、110μm未満又は100μm未満を有するものでよく、D50粒子径が80μm未満、70μm未満、60μm未満、50μm未満又は40μm未満を有するものでよく、及び/又はD10粒子径が30μm未満、25μm未満、20μm未満、15μm未満又は10μm未満を有するものであってよい。幾つかの実施形態では、酸化性燃料は、D90粒子径が130μm未満、D50粒子径が60μm未満、及びD10粒子径が20μm未満のアトマイズアルミニウム粉を含む。
【0027】
アトマイズケイ素粉は、D90粒子径が65μm未満、55μm未満、45μm未満、35μm未満又は25μm未満のものでよい。幾つかの実施形態において、酸化性燃料は、D90粒子径が45μm未満のアトマイズケイ素を含む。
【0028】
幾つかの実施形態において、酸化性燃料は、130μm未満のD90粒子径を有するアトマイズアルミニウムと、45μm未満のD90粒子径を有するアトマイズケイ素とを含む。
【0029】
幾つかの実施形態において、酸化性燃料は、アトマイズ粉末を、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%又は少なくとも70重量%含む。幾つかの実施形態では、酸化性燃料は、アトマイズ粉末を、80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下、50重量%以下又は40重量%以下含む。幾つかの実施形態において、酸化性燃料は、アトマイズ粉末を20~80重量%、30~70重量%、又は40~60重量%含む。酸化性燃料中のアトマイズ粉末の正確な割合は、使用される様々な金属の種類と割合に依存する場合がある。例えば、ケイ素の割合が低いか、全く使用されていない場合、より高い割合のアトマイズアルミニウムが必要となる。
【0030】
幾つかの実施形態において、組成物は、酸化性燃料を、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%又は少なくとも25重量%含む。幾つかの実施形態において、組成物は、酸化性燃料を、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、15重量%以下又は10重量%以下含む。幾つかの実施形態において、組成物は、酸化性燃料を、5~30重量%、10~25重量%又は15~25重量%含む。
【0031】
組成物は、充填剤として作用し、絶縁特性をもたらす粒子状耐火性材料を含む。粒子状耐火性材料は、粉末、顆粒、繊維又はそれらの任意の組み合わせの形態であってよい。幾つかの実施形態において、粒子状耐火性材料は、シリカ、カンラン石、アルミナ、アルミノケイ酸塩(シャモットを含む)、軽石、マグネシア、クロマイト、ジルコン、及びそれらの組合せから選択される。
【0032】
好ましくは、組成物は、粒子状耐火性材料を、少なくとも30重量%、少なくとも35重量%、少なくとも40重量%、少なくとも45重量%、又は少なくとも50重量%含む。幾つかの実施形態において、組成物は、粒子状耐火性材料を、70重量%以下、65重量%以下、60重量%以下、55重量%以下、又は50重量%以下含む。
【0033】
追加的又は代替的に、粒子状耐火性材料は、1g/cm未満又は0.5g/cm未満の密度を有する軽量材料を含む。このような軽量材料は、断熱を提供するために特に有用である。適当な軽量材料として、パーライト、珪藻土、焼成籾殻(籾殻灰)、耐火性繊維、フライアッシュフローター(中空のマイクロスフェア)、セノスフェア(cenospheres)、その他の天然又は合成の中空スフェア(アルミナ、アルミナ、シリカ又はアルミノシリケートなど)及びそれらの組合せが挙げられる。
【0034】
本発明で使用するのに適した結合剤として、樹脂(例えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂又は尿素ホルムアルデヒド樹脂)、ガム(例えば、アラビアガム又はキサンタンガム)、亜硫酸塩灰汁、デンプン、アクリル分散物、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ及びそれらの組合せが挙げられる。幾つかの実施形態において、結合剤は、樹脂とデンプンとの組合せを含む。幾つかの実施形態において、結合剤は、2種以上のデンプンを含んでもよい。幾つかの実施形態において、1又は2種以上のデンプンは、小麦デンプン、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、ワキシーメイズデンプン、米デンプン、大豆デンプン、タピオカデンプン、変性デンプン、カチオンデンプン、熱膨潤性デンプン、及びそれらの組合せを含むものでよい。幾つかの実施形態において、1又は2種以上のデンプンは、部分的に又全てが予めゼラチン化されていてもよい。一連の実施形態において、1又は2種以上のデンプンは、予めゼラチン化されていないデンプンと予めゼラチン化されたデンプンとの組合せを含み、両方とも小麦デンプンであることが好ましい。
【0035】
好ましい一連の実施形態において、結合剤は無毒性及び/又は生物分解性である。デンプンは、容易に分解し、使用後に鋳型砂を汚染しないので、特に好ましい。デンプンは、例えば、鋳型砂の再生中に洗い落とされるだけでよく、その後に専門家の水処理を必要としない。
【0036】
幾つかの実施形態において、組成物は、結合剤を、0.5~5重量%、又は1~4重量%、又は1.5~3.5重量%、又は2~3重量%含む。
【0037】
幾つかの実施形態において、組成物は、水などのキャリア流体をさらに含む。好ましくは、組成物は、耐火性物品を製造するための懸濁固体成分のスラリーが生成されるように組成物の他の成分が溶解しないキャリア流体を含む。
【0038】
本発明の第2の態様では、金属鋳造における押湯システム(feeding system)で使用するための耐火性物品が提供される。耐火性物品は、本明細書に記載の組成物から形成される。
【0039】
耐火性物品は、スラリー法(真空成形)又はコアシューティング法(ブローイング(blowing)又はラミング(ramming))を含む様々な方法によって製造されることができる。結合剤の選択は、耐火性物品が製造される方法に依存する場合がある。
【0040】
幾つかの実施形態において、耐火性物品は発熱性の耐火性物品である。耐火性物品は、金属鋳造物に押湯供給を補助するために鋳造工場で使用される多くの製品、例えば、押湯スリーブ(単に「押湯」又は「スリーブ」としても知られている)、及び鋳造物又は鋳型アッセンブリの一部を覆う他の形状の物品(例えば、押湯ボード、プロファイルコア、発熱性パッド(padding)、及びスリーブとコアの組合せ)を含み得る。
【0041】
幾つかの実施形態では、耐火性物品は押湯スリーブである。押湯スリーブの形状は特に限定されない。押湯スリーブは、円形又は楕円形の断面を有するものでよく、平行又は傾斜した側面を有していてもよく、開閉可能であってもよい。押湯スリーブが閉じている実施形態では、ドーム状又は平坦なカバーを有することができる。押湯スリーブは、円筒形(すなわち、円形の断面と平行な側面を有する)又は円錐台形状(すなわち、円形の断面と傾斜した側面を有する)であってもよい。
【0042】
幾つかの実施形態では、耐火性物品は押湯ボードであり、これは接合されたマットの形態であってよい。接合されたマットは、押湯パターンの周りに巻き付けられるか、又は従来の押湯スリーブの中に配備される。あるいは、押湯ボードは、開放スリーブの上に配置される押湯蓋として用いられることができ、ボードの形状は、押湯スリーブの形状によって定められる。通常、押湯蓋は円形又は楕円形の断面を有する。
【0043】
幾つかの実施形態において、耐火性物品は、ウィリアムスコア(Williams core)(ウィリアムスくさびとしても知られている)である。ウィリアムスコアは、鋭く尖ったエッジを有する物品であり、典型的には円錐形又はくさび形であって、押湯効果を改善し安定させるために閉鎖スリーブの頂部に配置される。ウィリアムスコアは、押湯スリーブと一体的に形成されてもよいし、別個に製造されてからスリーブの内側に固定されてもよい。
【0044】
幾つかの実施形態において、耐火性物品は、スリーブ部品と、鋳造表面に接触するブレーカコア部品との組合せを含むことができ、当該鋳造表面は、所望の鋳造物の形状に適合するように特別に設計されたプロファイル形状を有する。
【0045】
幾つかの実施形態において、耐火性物品は、パッドとして知られるプロファイル形状を含んでいてもよく、それにより、パッドの発熱性を利用して、スリーブの押湯距離(feeding distance)を長くしたり、パッドの下の鋳造部の凝固時間を遅らせたり、制御したりすることができる。一実施形態では、パッドは、単一ユニットを形成するためにスリーブ部品と組み合わせて使用される。
【0046】
第1の態様に関連して記載された任意選択的特徴及び実施形態のいずれもが、第2の態様の組成物にも同様に適用され得ることは理解されるであろう。
【0047】
<実験手順>
標準の円筒形試験体は、ジョージフィッシャー(Georg Fischer)(+GF+)法を用いて作製された。グリーン(未硬化)押湯スリーブは、まずスラリー法を用いて製造された。次に、グリーン押湯スリーブを細かく刻み、平刃パドルミキサーを用いて、成分を完全に混合し、組成が均一になるまで混合した。混合物のサンプルを円筒形の精密試験体(内径50mm)の中にゆるく詰め、+GF+サンドランマー(タイプSPRA)に載せ、3回のラミング運動で混合物を圧縮した。高さが公差マーク内であることを確認した後、試験体をエジェクター(ストリッピングポスト)を用いて取り除いた。その後、試験体を160℃の乾燥オーブンに90分間入れて硬化させた。得られた円筒形試験体の寸法は50mmx50mmであった。
【0048】
試験体の全体的組成(固形分ベースにて)は次のとおりである。
硫酸カルシウム:0.5~5重量%
フッ素ベースの増感剤:0~2重量%
酸化鉄(Fe)酸化剤:7~10重量%
硝酸カリウムとフェロシライトを含む酸化剤:10~20重量%
アルミニウム:10~20重量%
ケイ素:1~5重量%
結合剤:0.5~5重量%
高密度耐火性充填剤:40~60重量%
低密度耐火性充填剤:0~5重量%
【0049】
アルミニウムは、アルミニウムの箔、粉末及び粉砕物の混合物を含んでいる。ケイ素はアトマイズケイ素粉を含んでいる。高密度耐火性充填剤は、サンド、シャモット、軽石、アルミノケイ酸塩材料の混合物を含み、低密度耐火性充填剤はセノスフェアを含んでいる。
【0050】
高密度耐火性充填剤と低密度耐火性充填剤の割合は、全成分のバランスが合計100重量%になるように適宜調整した。
【0051】
<点火時間(ignition time)及び燃焼時間(burn time)>
社内の試験装置(Amitec)を用いて、標準試験体を電気加熱された炭化ケイ素(SiC)プレートの上に載せて、予熱し、1400℃に維持した。点火時間は、試験体が加熱装置上に置かれてから点火するまでの時間を測定した(単位は秒)。試験体は、点火すると直ちに、砂床に移し、そこで燃え尽きるまで放置した。燃焼時間は、点火から燃焼終了までの時間として測定した(秒単位で報告)。
【0052】
望ましい点火時間と燃焼時間は、用途によって異なる。短い点火時間は、鋳造物に押湯を非常に迅速に供給することが不可欠である小さな押湯スリーブに特に有用である。大きな押湯スリーブでは、鋳造物は長い時間供給されるので、長い燃焼時間が有用であり、点火時間はそれほど重要ではない。
【0053】
<1150℃超の最高温度及び時間>
Al保護管を、グリーン標準試験体の正確な中心位置に25mmの深さまで押し込んで該試験体に取り付けた。次いで、試験体を乾燥し、保護管に挿入したプロッターに熱電対を接続した。試験体を点火し、到達した最高温度(Tmax)と1150℃超の時間(t>1150℃)をプロッターにより記録した。
【0054】
鋳造用途では、押湯スリーブは、押湯内の金属が液体として維持される場合にのみ有用な目的を果たす。鉄系金属の液相線温度は1150℃の領域にあるため、t>1150℃では燃焼時間よりも押湯スリーブの性能をより正確に示す指針になり得る。
【0055】
<実施例1>
フッ素ベースの増感剤の割合を変化させた組成物を用いて、上記のように一連の試験体を作製し、試験した。試験結果は以下の表1に示されている。
【0056】
【表1】
【0057】
得られた結果は、硫酸カルシウムを含む組成物が、増感剤のフッ化物が低レベルでも、良好な発熱性能を達成することを示している。フッ化物の少ない組成物(E1及びE2)を用いて作製した試験体は、フッ化物の多い組成物(E3)よりも添加時間がわずかに長く最高温度は低かったが、燃焼時間及び1150℃を超える時間は有意に長かった。
【0058】
<実施例2>
低フッ化物の組成物について、アトマイズアルミニウム粉と粗粒アルミニウムの比率を変化させた別の一連の試験体を作製し、評価した。試験結果は以下の表2に示されている。
【0059】
【表2】
【0060】
得られた結果は、微細な(反応性の高い)アルミニウムと粗い(反応性の低い)アルミニウムの割合を変えることにより、フッ化物の少ない耐火性物品の反応特性がどのように調整され得るかを示している。一般的に、低フッ化物組成物は、アトマイズアルミニウム粉の割合が高い方が、アトマイズアルミニウム粉の割合が低い場合よりも、点火時間が短く、燃焼時間が長いことを示している。
【0061】
<実施例3>
本発明による押湯スリーブ(E9、E10及びE11)を、以下の組成物を用いて作製した市販の発熱性押湯スリーブ(C1)と比較した:
【0062】
【表3】
【0063】
組成物E1~E3を使用して作製された押湯スリーブは、市販の押湯スリーブC1と同様の押湯性能を有することを示しているが、組成物中のフッ素ベースの増感剤は有意に少ないことがわかる。本発明者らはさらに、使用されたフッ化カルシウムが水不溶性であることは、金属鋳造工程が実施された後の鋳型砂の再生中に汚染の問題がないことを意味することを見出した。デンプンやキサンタンガムのような生分解性結合剤の使用と組み合わせることにより、実施例の押湯スリーブの環境特性は、市販の押湯スリーブと比較して大いに改善される。
【手続補正書】
【提出日】2023-02-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
米国特許第6360808号は、フッ化物レベルの低減が、アルミニウムドロスをアルミニウム及びフッ化物源の両方として使用することによって達成される組成物を開示している。米国特許出願公開第2009/0199991A1号は、フッ化物レベルを低減することができるメタロセンを含む組成物を開示している。米国特許第5180759号は、発熱性組成物の全フッ化物含有量を低減するためにフッ素化された有機ポリマーの使用を開示している。ヨーロッパ特許第1543897B1号及び米国特許第第6972059B1号は、いずれもフッ化物を含まない組成物を開示している。これは、マグネシウムを開始剤として使用するものであるが、マグネシウムは反応性が高いため、発熱性混合物の製造や処理に困難を生じている。鋳造インゴットの露出表面の上に保護カバーを形成する。CN106631051は、耐火断熱用として使用する耐火性れんが又は壁タイル及びこれらを製造するための組成物を開示している。RU2163579は、耐火壁の製造に使用される発熱性モルタル用組成物を開示している。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属鋳造における押湯システムで使用する耐火性物品を作製するための組成物であって、前記組成物は、
粒子状耐火性材料、
酸化性金属燃料、
酸化剤、
増感剤、及び
結合剤、を含み、
0.5~5重量%のCaSO 、及び
2.0重量%未満のフッ素、を含む、組成物。
【請求項2】
前記組成物は、1.0重量%未満のフッ素を含むか、又はフッ素を実質的に含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記増感剤は、水に不溶性のフッ素化合物を含む、前記請求項の何れか1項に記載の組成物。
【請求項4】
前記フッ素化合物は、フッ化カルシウム(CaF)である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記酸化剤は、酸化鉄(Fe及び/又はFe)、フェロシライト(FeSiO)、硝酸カリウム(KNO)、二酸化マンガン(MnO)、二酸化チタン(TiO)及び酸化銅(CuO)からなる群から選択される1又は2種以上の酸化剤を含む、前記請求項の何れか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が2~30重量%の酸化剤を含む、前記請求項の何れか1項に記載の組成物。
【請求項7】
記酸化性燃料がアルミニウムであり、任意選択で前記酸化性燃料がアルミニウム箔及び/又は粒子状アルミニウムを含む、前記請求項の何れか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記酸化性燃料は金属ケイ素を含む、前記請求項の何れか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物は、
i)少なくとも10重量%の酸化性燃料、及び/又は
ii)30重量%以下の酸化性燃料、
を含む、前記請求項の何れか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記酸化性燃料は、アトマイズ粉末を含み、任意選択で前記アトマイズ粉末はアトマイズアルミニウム及び/又はアトマイズ金属ケイ素を含む、前記請求項の何れか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記アトマイズ粉末は、少なくとも60重量%のアトマイズアルミニウムを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記アトマイズ粉末は、少なくとも10重量%のアトマイズ金属ケイ素を含む、請求項10又は請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記酸化性燃料は、少なくとも30重量%のアトマイズ粉末を含む、請求項10乃至請求項12の何れか1項に記載の組成物。
【請求項14】
キャリア流体をさらに含み、任意選択で、前記キャリア流体は水である、前記請求項の何れか1項に記載の組成物。
【請求項15】
金属鋳造における押湯システムで使用する耐火性物品であって、前記耐火性物品は前記請求項の何れか1項に記載の組成物から形成される、耐火性物品。
【請求項16】
前記耐火性物品は押湯スリーブである、請求項15に記載の耐火性物品。
【手続補正書】
【提出日】2023-05-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
米国特許第6360808号は、フッ化物レベルの低減が、アルミニウムドロスをアルミニウム及びフッ化物源の両方として使用することによって達成される組成物を開示している。米国特許出願公開第2009/0199991A1号は、フッ化物レベルを低減することができるメタロセンを含む組成物を開示している。米国特許第5180759号は、発熱性組成物の全フッ化物含有量を低減するためにフッ素化された有機ポリマーの使用を開示している。ヨーロッパ特許第1543897B1号及び米国特許第第6972059B1号は、いずれもフッ化物を含まない組成物を開示している。これは、マグネシウムを開始剤として使用するものであるが、マグネシウムは反応性が高いため、発熱性混合物の製造や処理に困難を生じている。CA974764は、ホットトッピング組成物を開示しており、該組成物は反応により、鋳造インゴットの露出面の上に保護カバーを形成する。CN106631051は、耐火断熱物として使用する耐火性れんが又は壁タイル及びこれらを製造するための組成物を開示している。RU2163579は、耐火壁の製造に使用される発熱性モルタル用組成物を開示している。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属鋳造における押湯システムで使用する耐火性物品を作製するための組成物であって、前記組成物は、
40~60重量%の粒子状耐火性材料、
10~25重量%の酸化性金属燃料、
10~30重量%の酸化剤、
増感剤、及び
結合剤、を含み、
0.5~5重量%のCaSO 、及び
1.5重量%以下のフッ素、を含む組成物。
【請求項2】
前記組成物は、1.0重量%以下のフッ素を含むか、又はフッ素を含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記増感剤は、水に不溶性のフッ素化合物を含む、前記請求項の何れか1項に記載の組成物。
【請求項4】
前記フッ素化合物は、フッ化カルシウム(CaF)である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記酸化剤は、酸化鉄(Fe及び/又はFe)、フェロシライト(FeSiO)、硝酸カリウム(KNO)、二酸化マンガン(MnO)、二酸化チタン(TiO)及び酸化銅(CuO)からなる群から選択される1又は2種以上の酸化剤を含む、前記請求項の何れか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記酸化性燃料がアルミニウムであり、任意選択で前記酸化性燃料がアルミニウム箔及び/又は粒子状アルミニウムを含む、前記請求項の何れか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記酸化性燃料は金属ケイ素を含む、前記請求項の何れか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記酸化性燃料は、アトマイズ粉末を含み、任意選択で前記アトマイズ粉末はアトマイズアルミニウム及び/又はアトマイズケイ素金属を含む、前記請求項の何れか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記アトマイズ粉末は、少なくとも60重量%のアトマイズアルミニウムを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項10】
前記アトマイズ粉末は、少なくとも10重量%のアトマイズケイ素金属を含む、請求項又は請求項に記載の組成物。
【請求項11】
前記酸化性燃料は、少なくとも30重量%のアトマイズ粉末を含む、請求項乃至請求項10の何れか1項に記載の組成物。
【請求項12】
キャリア流体をさらに含み、任意選択で、前記キャリア流体は水である、前記請求項の何れか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記耐火性物品は、発熱性の耐火性物品である、前記請求項の何れか1項に記載の組成物。
【請求項14】
金属鋳造における押湯システムで使用するための耐火性物品であって、前記耐火性物品は前記請求項の何れか1項に記載の組成物から形成される、耐火性物品。
【請求項15】
前記耐火性物品は押湯スリーブである、請求項14に記載の耐火性物品。
【国際調査報告】