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特表2024-518034リン元素を酸化鉄含有及びホスファート含有材料から分離するための方法
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  • 特表-リン元素を酸化鉄含有及びホスファート含有材料から分離するための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-24
(54)【発明の名称】リン元素を酸化鉄含有及びホスファート含有材料から分離するための方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/40 20220101AFI20240417BHJP
   B09B 3/70 20220101ALI20240417BHJP
   B09B 101/55 20220101ALN20240417BHJP
   B09B 101/30 20220101ALN20240417BHJP
   B09B 101/70 20220101ALN20240417BHJP
   B09B 101/90 20220101ALN20240417BHJP
【FI】
B09B3/40
B09B3/70
B09B101:55
B09B101:30
B09B101:70
B09B101:90
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023563178
(86)(22)【出願日】2022-04-07
(85)【翻訳文提出日】2023-10-13
(86)【国際出願番号】 IB2022053262
(87)【国際公開番号】W WO2022219466
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】A60112/2021
(32)【優先日】2021-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(31)【優先権主張番号】A60145/2021
(32)【優先日】2021-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(31)【優先権主張番号】A113/2021
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523388331
【氏名又は名称】ラドマット アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エドリンガー、アルフレッド
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA02
4D004AA36
4D004AA43
4D004BA06
4D004CA29
4D004CA34
4D004CC11
4D004DA03
4D004DA10
4D004DA20
(57)【要約】
リン元素を、酸化鉄含有及びホスファート含有材料から分離するための方法であって、少なくとも以下のステップ:少なくとも1種の酸化鉄含有及びホスファート含有材料を提供するステップと、少なくとも1種のアルミニウム担体を、少なくとも1種の酸化鉄含有及びホスファート含有材料に添加し、少なくとも1種のアルミニウム担体を、少なくとも1種の酸化鉄含有及びホスファート含有材料と共に溶融して、アルミニウム含有、及び場合による酸化アルミニウム含有ホスファートスラグ溶融物を形成するステップと、アルミニウム含有、及び場合による酸化アルミニウム含有ホスファートスラグ溶融物を、溶融容器(11)中でガス状元素リン、鉄及びAl含有スラグに反応させるステップと、ガス状元素リンを引き出し、鉄及びAl含有スラグを抜き取るステップとを含む、方法。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン元素を、酸化鉄含有及びホスファート含有材料から、特に廃棄物、例えば下水スラッジ(灰)、動物性ミール、骨粉及び/又は製鉄所スラグから、好ましくは、アパタイト、リン鉱石及び/又はリン灰土等の材料と共に分離するための方法であって、
少なくとも以下のステップ:
少なくとも1種の酸化鉄及びホスファート含有材料を提供するステップと、
少なくとも1種のアルミニウム担体を、少なくとも1種の酸化鉄及びホスファート含有材料に添加し、少なくとも1種のアルミニウム担体を、少なくとも1種の酸化鉄及びホスファート含有材料と共に溶融して、アルミニウム含有及び場合による酸化アルミニウム含有ホスファートスラグ溶融物(4)を形成するステップと、
アルミニウム含有及び場合によるアルミナ含有ホスファートスラグ溶融物を、溶融容器(11)中でガス状元素リン、鉄及びAl含有スラグに反応させるステップと、
ガス状元素リンを抽出し、鉄及びAl含有スラグを抜き取るステップと
を含む、上記方法。
【請求項2】
少なくとも1種の酸化鉄及びホスファート含有材料(21)が、溶融容器(11)中にホスファートスラグ溶融物(4)として提供され、少なくとも1種のアルミニウム担体(7)が、ホスファートスラグ溶融物(4)に添加されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
固体材料、詳細には石灰担体及び/又はアパタイト及び/又はリン鉱石を有する下水スラッジ灰が、酸化鉄及びホスファート含有材料(21)として提供されること、並びに固体金属アルミニウムが、少なくとも1種のアルミニウム担体(7)として添加されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
Al担体が、アルミニウム含有及び場合によるアルミナ含有ホスファートスラグ溶融物(4)に添加されることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
アルミニウム含有及び場合による酸化アルミニウム含有ホスファートスラグ溶融物(4)の塩基性(CaO/SiO)が、好ましくはCaO担体及び/又はSiO担体を添加することにより、0.65から1.4、好ましくは0.85から1.2、より好ましくは1の値に調整されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
スズ浴が、アルミニウム含有及び場合による酸化アルミニウム含有ホスファートスラグ溶融物(4)の下に溶融容器(11)中に陰極体(15)として配置され、好ましくはグラファイト、白金又はマグネタイトスピネルの少なくとも1つの陽極体(13)が、アルミニウム含有及び場合による酸化アルミニウム含有ホスファートスラグ溶融物(4)中に浸かるように配置されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
直流、好ましくは3Vから15Vの、好ましくは6Vから12Vの、より好ましくは8Vから10Vの直流が、陰極体及び陽極体に適用されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
直流が、陰極体(15)及び陽極体(13)から得られることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
陰極体(15)が、溶融容器(11)における底面(10)の部分的領域に配置された陥凹(14)における、溶融容器(11)の第1の領域(A)に配置されること、及び、少なくとも1つの陽極体(13)が、第1の領域(A)と異なる溶融容器(11)の第2の領域(B)に配置されること、並びにガス状リンが第1の領域(A)から引き出され、酸素が第2の領域(B)から引き出されることを特徴とする、請求項6から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法を実行するためのデバイスであって、耐火物内張ハウジング(3)により形成される溶融容器(11)、溶融容器(11)に配置されたアルミニウム及び場合による酸化アルミニウムを含有するホスファートスラグ溶融物(4)、ホスファートスラグ溶融物(4)の上のハウジング(3)により閉じられたガスチャンバ、並びに酸化鉄及びホスファート含有材料(21)のための供給デバイス(5)、並びにガス状リン元素のための少なくとも1つの排出デバイス(9)を含む、上記デバイス。
【請求項11】
供給デバイス(5)が、ハウジング(3)を貫通する第1のチューブ(6)を含み、そこに少なくとも1種のアルミニウム担体(7)のための、好ましくはスクリューコンベヤーの形態の搬送デバイス(8)が配置されることを特徴とする、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
供給デバイス(5)が、ハウジング(3)を貫通する第1のチューブ(6)を含み、その第1のチューブ(6)内に第2のチューブ(19)が配置され、好ましくは第1のチューブ(6)と同心の環状間隙(20)を形成し、第1のチューブ(6)及び第2のチューブ(19)の一方が、酸化鉄及びホスファート含有物質(21)を供給するように設計され、第1のチューブ(6)及び第2のチューブ(19)のもう一方が、アルミニウム担体(7)を供給するように設計され、第1のチューブ(6)が、第2のチューブ(19)を超えて突出し、その末端(6a)においてハウジング(3)に貫入することを特徴とする、請求項10に記載のデバイス。
【請求項13】
デバイス(1)が、アルミニウム含有及び場合による酸化アルミニウム含有ホスファートスラグ溶融物(4)の下に配置された陰極体(15)、並びにアルミニウム含有及び場合による酸化アルミニウム含有ホスファートスラグ溶融物(4)に浸かった少なくとも1つの陽極体(13)を有することを特徴とする、請求項10から12までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項14】
陰極体(15)が、溶融容器(11)の底面(10)に配置された陥凹(14)における、溶融容器(11)の第1の領域(A)に配置されること、並びに、少なくとも1つの陽極体(13)が、第1の領域(A)から横方向に間隔が空けられた溶融容器(11)の第2の領域(B)に配置され、さらなる排出デバイス(17)が、第2の領域(B)に配置されることを特徴とする、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
第1の領域(A)と第2の領域(B)との間において、ガス空間を互いに分離した2つのセクションに分ける分割壁(16a)が、アルミニウム含有及び場合による酸化アルミニウム含有ホスファートスラグ溶融物(4)に浸かることを特徴とする、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
陰極体(15)が、スズ浴により形成されることを特徴とする、請求項13から15までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項17】
スズ浴が、陥凹(14)に配置された炭素含有体(18)に収められることを特徴とする、請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
少なくとも1つの陽極体(13)が、グラファイト、白金又はマグネタイトスピネルで形成されることを特徴とする、請求項13から15までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項19】
少なくとも1つの陽極体(13)が、高合金鋼で形成され、鋼鉄が、好ましくは白金(16)でコーティングされていることを特徴とする、請求項13から15までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項20】
少なくとも1つの陽極体(13)が、スズ溶融物、塩溶融物若しくはナトリウム溶融物のための、又は、好ましくは窒素若しくはアルゴンによるガス冷却のための、好ましくは陽極体(13)の内側に配置されたチャネルにより冷却可能になるように設計されていることを特徴とする、請求項13から19までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項21】
デバイス(1)が、直流を陰極体(15)及び陽極体(13)に適用するための手段を含むことを特徴とする、請求項13から20までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項22】
デバイス(1)が、直流を陰極体(15)から、及び陽極体(13)から得るための手段を含むことを特徴とする、請求項13から21までのいずれか一項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン元素を、酸化鉄含有及びホスファート含有材料から、特に廃棄物、例えば下水スラッジ(灰)、動物性ミール(animal meal)、骨粉及び/又は製鉄所スラグから、好ましくは、アパタイト、リン鉱石及び/又はリン灰土等の材料と共に、また、本発明による方法を実行するための装置へと分離するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リン鉱石の価格は、好適な原料供給源が不足しているため、最近は一定した上昇を起こしている。さらに、活用されるリン鉱石は、著しいレベルのウラン、カドミウム、セレン及び他の有害な副生成物を含有することがますます増えてきている。そのような付随する元素は、莫大な費用をかけてしか除去できず、その結果、そのような汚染した鉱石からのホスファートの使用は、ますます不経済になってきている。
【0003】
一方、廃棄物は、比較的高レベルのリン化合物を含有することがある。これは、例えば、下水スラッジ、動物性ミール、骨粉及び/又は製鋼所スラグに当てはまる。
【0004】
リン元素(P、白リン)から調製され得る高純度リン出発材料は、詳細には食品生産に、また、医薬品産業に必要とされる。しかし、生成は、ますます困難になりつつあり、現在は、少なくとも欧州ではもはや実行されていない。
【0005】
上で言及されているタイプの出発材料から、特に廃棄物、例えば下水スラッジ、動物性ミール、骨粉及び/若しくは製鉄所スラグから、並びに/又はアパタイト、リン鉱石及び/又はリン灰土等の材料からの、リン元素の回収における主な問題は、例えば、ヴェーラー法中に、様々なリン種を包含する酸化鉄含有及びホスファート含有材料のシリカート及び炭素含有付随物質から形成されるリンスラッジの形成にある。リンスラッジは高度に毒性であり、その廃棄により、以前に公知のプロセスを使用したリン元素の抽出は、経済的な観点から、程度の差はあれ見込みがなくなるので、大きな問題となる。さらに、従来のプロセスにおいて、リン元素の回収では、揮発性物質であり無臭ガスとして高度に毒性であるホスフィン(詳細にはPH、また本発明の文脈では全般的にPH)の形成が主な問題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、したがって、リンスラッジ又はホスフィンを形成することなく、前述の出発材料からリン元素の回収を可能にする方法並びに対応する装置を作り出すタスクに基づく。同時に、従来技術の方法と比較して、望ましくない鉄-リン合金、例えばリン化鉄、ferrophos及びFePの形成、並びにCO排出が避けられるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このタスクを解決するために、本発明による方法は、少なくとも以下のステップ:
少なくとも1種の酸化鉄及びホスファート含有材料を提供するステップと、
少なくとも1種のアルミニウム担体を、少なくとも1種の酸化鉄及びホスファート含有材料に添加し、少なくとも1種のアルミニウム担体を、少なくとも1種の酸化鉄及びホスファート含有材料と共に溶融して、アルミニウム含有及び場合による酸化アルミニウム含有ホスファートスラグ溶融物を形成するステップと、
アルミニウム含有及び場合によるアルミナ含有ホスファートスラグ溶融物を、溶融容器中でガス状元素リン、鉄及びAl含有スラグに反応させるステップと、
ガス状元素リンを抽出し、鉄及びAl含有スラグを抜き取るステップと
を含む。
【0008】
本発明による方法では、出発材料は、少なくとも1種のアルミニウム担体と共に溶融する。アルミニウム含有ホスファートスラグ溶融物であり、場合により最初に酸化アルミニウムを既に含有することがある生じた溶融物では、続いてリン元素(P、ガス状)及び金属鉄の発熱が起きる。本発明による方法は、したがって、異なる還元段階に存在するレドックスパートナー酸化鉄、酸化リン(ホスファート)とアルミニウムの間における自己熱レドックス反応(autothermal redox reaction)を利用し、それによって、レドックス反応は強く発熱し、反応はしたがってそれ自体で維持される。
【0009】
溶融相では、ホスファートスラグは、容易に移動可能な導電性カチオン及びアニオンクラスター(イオン錯体)を形成する。例えば、カチオンクラスターは、Fe2+、Ca2+、Mg2+、Na、Kなどから形成され、アニオンクラスターは、例えばPO43-、SiO3-、SiO 4-、SiO 2-及びAlO 3-から形成される。ホスファートスラグ溶融物の酸化リンの慎重な電熱(溶融流の電気分解)及び/又はアルサーミック(aluthermic)部分的還元により、ホスファートのガス状Pへの、また、酸化鉄の金属鉄へのきわめて迅速な還元が引き起こされる。本発明による方法の発熱性のため、大量の熱が放出され、その結果反応がそれ自体で維持され、冷却されなければならないこともある。
【0010】
有利には、アルミニウムドロスがアルミニウム担体として使用されることを条件とすることがある。ドロスは、金属アルミニウムを生成するためのアルミナの電気分解中に、又は、スクラップアルミニウムの溶融中に生成される。ドロスは、金属アルミニウムからなるが、これは、酸化アルミニウム皮膜に囲まれている。ドロスは、対応する電解槽又は溶融槽の表面におけるアルミニウムのアルミナへの酸化のため形成され、廃棄することは困難である。例えば、フッ化物を使用することにより酸化皮膜を破壊する試みがなされているが、これは、こうしたプロセスからのさらに深刻な廃棄物及び排気の問題を明らかに引き起こす。そこで、本発明による方法におけるドロスの使用は、還元に望ましいアルミニウムに加えて、アルミナ、すなわち本発明による方法の反応生成物も添加され、その結果、激しい発熱反応が緩和され、発熱がしたがって低下するという利点を有する。同時に、特に高いアルミナ含有量のスラグが得られ、これにより、このスラグを含有するセメントでの傑出した早期強度値が確保される。
【0011】
変換は、リンの中間体、並びにホスファート及びリンと出発材料の付随物質の化合物のいずれも形成され得ないほど急激に起き、したがってリンスラッジ及びホスフィンの形成が防止され、効率的に避けられる。アルミナート及び非金属付随物質はスラグに蓄積するが、重金属は場合により、例えば、下水スラッジ若しくは製鋼所スラグに含有され、又は、ミルスケールは、形成された鉄で合金化する。このように、純粋リンは、ガス相で直接的に得られ、最初に形成されるPは、それ自体公知の冷却方法、例えば水を用いた冷却及びクエンチにより、又は好ましくは再生熱交換器を用いた間接的冷却により、さらなるリン変形例、例えばPに変換され得る。
【0012】
衝撃冷却後、形成されたスラグは、高品質の水硬結合剤としてセメント産業に使用でき、これに対して、必要な場合は、スラグを標的分析する必要性に応じて、追加の凝集物がスラグに添加され得る。例えば、金属アルミニウムの添加を増加することにより、標的スラグのSiO含有量を減少させることができる一方、同時にアルミニウム含有量を増加する。このケースでは、アルミニウム含有量がやや増加したFeSi含有溶融鉄が生成される。この鉄合金は、有利には、鋼鉄冶金(steel metallurgy)で脱酸素合金添加(deox alloy addition)として使用され得る。
【0013】
出発材料及びアルミニウム担体の混合に関して、本発明の好ましい実施形態によれば、少なくとも1種の酸化鉄及びホスファート含有材料は、溶融容器中のホスファートスラグ溶融物として提供することができ、少なくとも1種のアルミニウム担体が、ホスファートスラグ溶融物に添加される。このケースでは、ホスファートスラグ溶融物は、望ましくない毒性物質の形成が初めから避けられるように、汚染物質を既にほとんど含まない酸化プロセスから提供できる。
【0014】
本発明の好ましい代替実施形態によれば、出発材料並びにアルミニウム担体の混合に関して、固体材料が、特に、酸化鉄及びホスファート含有材料として提供される、石灰担体及び/又はアパタイト及び/又はリン鉱石を有する下水スラッジ灰であること、並びに、固体金属アルミニウムが、少なくとも1種のアルミニウム担体として添加されることも条件とすることがある。このケースでは、アルミニウム担体は、したがって、既に存在するホスファートスラグ溶融物に添加されないが、出発材料は固体形態で、添加中に固体アルミニウム担体の金属アルミニウムと接触する。本明細書では、物質は、好ましくは、反応表面を大きくするために微細粉末にすり潰される。添加するステップにより得られた混合物は、最初に何らかの手法で着火されなければならない。これは、スパークプラグ若しくは火炎で達成され得、又は溶融容器に既に存在するホスファートスラグの溶融により達成され得る。反応が進行すると、それ自体が、レドックス反応の発熱性のため維持される。
【0015】
既に数回言及されているように、酸化鉄、酸化リンとアルミニウムの間におけるレドックス反応は、高度に発熱性であり、したがって大量の熱が本発明による方法で生成され、その大半が、冷却される反応を必要とする。様々な冷却コイル、熱交換器などによって、溶融容器又はホスファートスラグ溶融物を冷却する明らかな可能性に加えて、本発明の好ましい実施形態によれば、この目的のために、Al担体がアルミニウム含有及び場合によるアルミナ含有ホスファートスラグ溶融物に添加される手法で進行することも可能である。Al(酸化アルミニウム)も、本発明による方法のレドックス反応の生成物である。好ましくは冷アルミナ担体を添加すると、レドックス反応の平衡が出発材料にシフトし、ひいては反応速度が、また熱の放出も阻害される。このように、ホスファートスラグ溶融物又は溶融容器の過熱は、非反応化学種をプロセスに導入することなく、熱放出の時点で効率的に避けることができる。この文脈において、Alの添加が高速固着セメント(fast-binding cement)の生成に好適であるため、標的スラグのAl含有量を増加させることが特に有利である。
【0016】
最適化したプロセス制御では、とりわけ溶融物の望ましい粘度に関して、アルミニウム含有及び場合によるアルミナ含有ホスファートスラグ溶融物の塩基性(CaO/SiO)が、好ましくはCaO担体及び/又はSiO担体を添加することにより、本発明の好ましい実施形態に対応する0.65から1.4、好ましくは0.85から1.2及び特に好ましくは1の値に調整されることは好都合である。詳細には、標的スラグの化学分析は、以下の比率の主な成分(wt%単位)を示す:
CaO 22~56
Al 32~55
SiO 1~22
Fe 0.15~3
MgO 2~15
P 0.05~1.2
これは、高品質のアルミナ溶融セメントの方向分析に対応する。
【0017】
好ましくは、スズ浴は、アルミニウム含有及び場合によるアルミナ含有ホスファートスラグ溶融物の下の、溶融容器中の陰極体として提供され、好ましくはグラファイト、白金又はマグネタイトスピネルでできている少なくとも1つの陽極体は、アルミニウム含有及び場合によるアルミナ含有ホスファートスラグ溶融物に浸かるように提供される。これは、以下に説明される本発明による方法の電気化学的影響を実現する。陽極体のための材料の選択は、様々な態様に従ってなされ得る。グラファイト電極は、本発明の方法において、確かに購入するには安価であるが、これらは、発生期の酸素により比較的急速に分解されて、二酸化炭素を形成する。しかし、二酸化炭素の形成は、気候保護の理由で避けられるべきであり、頻繁な陽極交換は、経済的な観点から望ましくない。白金又は磁鉄鉱、とりわけマグネタイトスピネルでできている陽極は、とりわけ白金のケースでは高価であるが、きわめて長い実用寿命を有することを観察した。別の利点は、そのような電極において酸素しか生成されず、二酸化炭素が生成されないことである。
【0018】
金属アルミニウムの使用をできるだけ最小限にするために、直流、好ましくは3Vから15Vの、好ましくは6Vから12Vの、より好ましくは8Vから10Vの直流が、本発明の好ましい実施形態に対応する陰極体及び陽極体に適用されることを条件とすることがある。これにより反応は、電気分解により自然化学平衡を超えて推進できる。形成された鉄はスズ浴に蓄積し、スズ浴が飽和に達した場合、スズ浴をアンダーコーティングする。
【0019】
しかし或いは、反応が、程度の差はあれ完了した場合、出発材料の品質、並びにホスファートスラグ溶融物の塩基性及び温度の最適な調整のため、直流に関しては、陰極体及び陽極体から引き抜かれることも好ましい。このケースでは、本発明による方法は、陽極と陰極との間に、考えられる任意の手法で使用され得る外部電流の流れを誘起し得る電圧を形成することにより電気エネルギーを提供する。同時に、このガルバニックチェーン(galvanic chain)は、ホスファートスラグ溶融物における反応の進展を測定するためにも使用され得る。ホスファートスラグ溶融物の酸化鉄及び酸化リンが完全に還元され、元素形態で存在する場合、電流は流れない。したがって、実験は、電流の流れが、ホスファートスラグ還元の進展に応じて減少することを示した。さらに添加されたアルミニウム(金属アルミニウム)は、ここで還元されたホスファートスラグ溶融物ともはや反応しない。
【0020】
陰極反応及び陽極反応の生成物を別々に得ることを可能にするために、本発明の好ましい実施形態によれば、陰極体が、溶融容器における底面の部分的領域に配置された陥凹における、溶融容器の第1の領域に提供されること、及び少なくとも1つの陽極体が、第1の領域と異なる溶融容器の第2の領域に提供されること、及びガス状リンが第1の領域から引き出され、酸素が第2の領域から引き出されることを条件とする。陰極体を、陽極体が配置された領域とは異なる領域に配置することにより、陰極及び陽極反応の生成物が、溶融容器又は溶融容器のガス空間において別々の位置に発生し、ひいては、別々に引き出すこともできる。陰極において、これらは鉄及びガス状リンであり、陽極において、不活性陽極のケースでは、ガス状形態の酸素のみが生成される。形成された鉄が、スズ浴に蓄積し、スズ浴が飽和に達した場合、スズ浴をアンダーコーティングし、陥凹から引き出せる。
【0021】
本発明による方法を実行するための本発明によるデバイスは、耐火物内張ハウジングにより形成される溶融容器、溶融容器に配置されたアルミニウム及び場合による酸化アルミニウムを含有するホスファートスラグ溶融物、ホスファートスラグ溶融物の上のハウジングにより閉じられたガスチャンバ、並びに酸化鉄及びホスファートを含有する物質のための供給デバイス、並びにガス状リン元素のための少なくとも1つの排出デバイスを含む。
【0022】
本発明によるこのデバイスでは、アルミニウム担体は、酸化鉄含有及びホスファート含有材料、出発材料と共に溶融できる。アルミニウム、及び場合によりアルミナを含有するホスファートスラグ溶融物である生じた溶融物では、金属アルミニウムの添加速度に対応するリン元素(P、ガス状)及び金属鉄の発熱放出が起きる。還元又は変換の後で、元のホスファートスラグ溶融物は、リン及び鉄を実質的に含まない。
【0023】
本発明による方法の好ましい実施形態に関連して以前に記載されているように、少なくとも1種の酸化鉄及びホスファート含有材料が、溶融容器にホスファートスラグ溶融物として提供され、少なくとも1種のアルミニウム担体がホスファートスラグ溶融物に添加される場合、本発明による装置は、好ましくは供給デバイスが、ハウジングを貫通する第1のチューブを有し、そこに少なくとも1種のアルミニウム担体のための、好ましくはスクリューコンベヤーの形態の搬送デバイスが配置されることを特徴とする。この第1のチューブを通して、アルミニウム担体が、デバイスのハウジング中に、また、最終的にホスファートスラグ溶融物中に導入され得、そこでこれらは、ホスファートスラグ溶融物と共に溶融される。ホスファートスラグ溶融物の還元プロセスは、金属アルミニウムの添加速度に対応する。
【0024】
以前に記載されている本発明の代替変形によれば、固体材料、特に石灰担体及び/又はアパタイト及び/又はリン鉱石を有する下水スラッジ灰が、酸化鉄及びホスファート含有材料として提要されること、並びに、固体金属アルミニウムが、アルミニウム担体として添加されることを条件とする。この時、アルミニウムスクラップ、好ましくはマグネシウム合金化されたもの、ホスファート含有鋼鉄スラグ、ホスファート含有ミルスケールなどの固体としての添加も考えられる。このケースでは、本発明によるデバイスは、好ましくは供給デバイスが、ハウジングを貫通する第1のチューブを含み、その第1のチューブ内に第2のチューブが配置され、好ましくは第1のチューブと同心の環状間隙を形成し、第1及び第2のチューブの一方が、酸化鉄及びホスファートを含有する材料を供給するように設計され、第1及び第2のチューブのもう一方が、アルミニウム担体を供給するように設計され、第1のチューブが、第2のチューブを超えて突出し、その末端においてハウジングを貫通することを特徴とする。この供給デバイスにより、2つの固体成分、すなわち酸化鉄含有及びホスファート含有材料、又は出発材料、並びにアルミニウム担体がデバイスへと一緒に供給されることが可能となり、それによって、第1のチューブが、第2のチューブを超えて突出し、その末端においてハウジングを貫通することで、供給デバイスにおける2つの成分の間で接触が確立され、これにより、自己熱が維持された反応の先端の形成が引き起こされ、そこでアルミニウム担体が酸化鉄含有及びホスファート含有物質と共に溶融し、また、そこで発熱が低下する反応が始まる。生じたアルミニウム含有及び、必要な場合はアルミナ含有ホスファートスラグ溶融物は、次いで溶融容器及び既存のホスファートスラグ溶融物の内部へと通過し、そこで鉄及びリン元素への完全な変換が起こる。第1及び第2のチューブの両方が、成分を搬送する好適な搬送手段を含み得る。第2のチューブの末端領域では、発火デバイスがアルミニウム担体、並びに酸化鉄含有及びホスファート含有材料に対して設けられるが、前述の成分2つの混合物の発火は、ホスファートスラグ溶融物の加熱によりもたらされることもある。
【0025】
本発明による方法に電気化学的に影響を及ぼすために、本発明によるデバイスは、好ましくは、デバイスが、アルミニウム含有及び場合によるアルミナ含有ホスファートスラグ溶融物下に配置された陰極体を有し、少なくとも1つの陽極体が、アルミニウム含有及び場合によるアルミナ含有ホスファートスラグ溶融物に浸かるようにさらに設計される。陰極体及び陽極体は、回路を形成する電気リードを用いた公知の方法で得られる。
【0026】
陰極反応及び陽極反応の生成物を別々に得ることを可能とするために、本発明の好ましい実施形態によれば、陰極体が、溶融容器の底面に配置された陥凹における、溶融容器の第1の領域に配置されること、及び、少なくとも1つの陽極体が、第1の領域から横方向に間隔が空けられた溶融容器の第2の領域に配置され、さらなる抜き出しデバイスが第2の領域に配置されることを条件とする。陰極体を、陽極体が配置された領域とは異なる領域に配置することにより、陰極及び陽極反応の生成物が、溶融容器又は溶融容器のガス空間において別々の位置に発生し、ひいては、別々に引き出すこともできる。陰極において、これらは鉄及びガス状リンであり、陽極において、不活性陽極のケースでは、ガス状形態の酸素のみが生成される。形成された鉄が、スズ浴に蓄積し、スズ浴が飽和に達した場合、スズ浴をアンダーコーティングし、陥凹から引き出せる。
【0027】
本発明による装置のガス空間における陰極反応及び陽極反応の生成物の最大限完全な分離を達成するために、本発明は、好ましくは、ガス空間を互いに分離した2つのセクションに分ける分割壁が、第1のセクションと第2のセクションとの間におけるアルミニウム含有及び場合によるアルミナ含有ホスファートスラグ溶融物に浸かるようにさらに設計される。したがって、陰極反応の生成物は、陽極を有する第1の領域に入り得ず、逆の場合も同じであり、この手段で別々に引き出せる。
【0028】
一方、発熱反応において陰極反応及び陽極反応のガス状生成物が組み合わせられる場合、ごく純粋なPが形成される。この反応で形成されたPは、加水分解により食品グレードのリン酸に直接変換でき、その結果使用できるほど純粋である。
【0029】
本発明の好ましい実施形態によれば、陰極体は、スズ浴により形成される。陰極としてのスズ浴は、本発明による方法中に本発明によるデバイスで形成された鉄に加えて、ある状況下で、例えば、下水スラッジ、製鋼所スラグ又はミルスケールに含有され得る重金属が、形成される鉄において合金化し、ひいては固着するという利点を有する。スズ浴が鉄で飽和するとすぐに、本発明による方法で形成された鉄は、スズ浴をアンダーコーティングし、抜き出せる。
【0030】
本発明によるデバイスの実用寿命を延長するために、スズ浴は、本発明の好ましい実施形態に対応する陥凹に配置された炭素含有体に収容される。炭素含有体は、好ましくは、グラファイト体として形成され得、又は炭素含有塊からなり得る。
【0031】
本発明の好ましい実施形態によれば、陽極体は、グラファイト、白金又はマグネタイトスピネルで形成され得る。グラファイト電極は、従来技術に幅広く使用され、本発明による方法を本発明によるデバイスで実行する場合、陽極において、CO及び場合によるCOの形成を引き起こす。CO(一酸化炭素)は、続いて熱的にリサイクルされ得る。グラファイト陽極は、この方法で消費され、定期的に更新されなければならない。記載されている他の陽極材料の利点は、本発明による方法に関連して上で既に説明されている。
【0032】
代替実施形態によれば、COを含まない方法を可能にするために、本発明は、少なくとも1つの陽極体が、高合金鋼から形成され、鋼鉄が、好ましくは白金でコーティングされていることでさらに具体化され得る。白金でのコーティングは、高合金鋼陽極の良好な実用寿命を本質的に延長し、触媒性質ももたらす。
【0033】
さらに、ゼーダーベルグ電極の陽極体としての使用も考えられる。
【0034】
上で言及されているように、本発明による方法を実行する場合、大量の熱が本発明によるデバイスで放出され、これは、ときに装置に影響を与えるおそれがある。これを防止するために、少なくとも1つの陽極体は、本発明の好ましい実施形態に対応するように、好ましくは、スズ溶融物、塩溶融物若しくはナトリウム溶融物のための、又は、好ましくは窒素若しくはアルゴンによるガス冷却のための陽極体の内側に配置されたチャネルにより冷却されるように設計できる。
【0035】
以前に記載されているように、アルミニウムの使用をできるだけ最小限にするために、直流、好ましくは3Vから15Vの、好ましくは6Vから12Vの、より好ましくは8Vから10Vの直流が、陰極体及び陽極体に適用されることを条件とすることがある。これにより反応は、電気分解により自然化学平衡を超えて推進できる。この目的に向けて、本発明の好ましい実施形態によれば、デバイスは、直流を陰極体及び陽極体に適用するための手段を有する。
【0036】
しかし或いは、反応が、程度の差はあれ完了した場合、出発材料の品質、並びにホスファートスラグ溶融物の塩基性及び温度の最適な調整のため、直流に関しては、陰極体及び陽極体から引き抜かれることも好ましい。このケースでは、本発明による方法は、任意の考えられる手段で使用され得る電気エネルギーを提供する。この目的に向けて、デバイスは、本発明の好ましい実施形態に従って、直流を陰極体から、及び陽極体から得るための手段を有する。陽極反応は、以下のように指定され得る:
Al→Al3++3e
これは、電子放出、及び結果として金属アルミニウムの酸化を表す。
【0037】
陰極反応は、本明細書では以下のように指定され得る:
3++3e→P
Fe3++3e→Fe
これは、電子取込み、したがって酸化鉄及び酸化リンの還元を表す。
【0038】
本発明は、図面で示される実施形態の実施例への言及により、以下でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は、本発明による第1のデバイスの略図を示す図である。
図2図2は、陰極体及びいくつかの陽極体を有する本発明によるデバイスの表示を示す図である。
図3図3は、好ましくは図1によるデバイスに対する、本発明によるデバイスの第1の実施形態による供給デバイスを示す図である。
図4図4は、直流が電極で得られる、本発明の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1では、本発明によるデバイスは、符号1により指し示される。デバイス1は、軟鋼板でできており、耐火材2を供給されたハウジング3を含んで、溶融容器11を形成する。本発明に好適な耐火材は、Alマトリックス中のマグネシウムスピネルと見出され、この材料は、焼結した耐火コンクリートとして公知である。コランダムレンガも、耐火材として好適である。ホスファートスラグ溶融物4は、酸化鉄含有及びホスファート含有材料としてハウジングに配置される。デバイス1の供給デバイス5は、第1のチューブ6と共にハウジング3を貫通する。金属アルミニウムを含有するアルミニウム担体7又はAl担体は、供給デバイス5の第1のチューブ6を通して供給され得、これは、スクリューコンベヤーの形態の搬送デバイス8により達成される。供給デバイス5が、ホスファートスラグ溶融物4に浸かり、それによってアルミニウム担体7が、ホスファートスラグ溶融物の深部に直接達し、そこでこれらが酸化鉄及びホスファート含有材料、すなわちホスファートスラグ溶融物4と共に溶融し、リン元素及び鉄に急速に変換される。リンは、抜き出しデバイス9を経由して抜き出され、鉄が溶融容器11の底面10に集まる。そこで鉄を抜くことができる。ホスファートスラグ溶融物4は、さらなる出発材料の添加なしで、ホスファートを含まないセメントスラグに変換する。
【0041】
図2では、同一部分に同一の符号で印が付けられている。デバイス1は、図2によれば、アルミニウム含有ホスファートスラグ溶融物4の下に配置された陰極体15を有し、複数の陽極体13は、アルミニウム含有ホスファートスラグ溶融物4に浸かり、陰極体15は、スズ浴により形成される。このケースでは、スズ浴は、溶融容器11の底面10における陥凹14に配置され、反応の進展につれて、形成された鉄によりアンダーコーティングされる。スズ浴は、陥凹に位置するグラファイト体18に含有される。陰極体15の下における鉄層の形成は、符号12により指定される。電流は、次いでグラファイト体18、鉄層12及びスズ浴15を通して導入される。陽極体13は、グラファイト又は高合金鋼で形成され得、コーティング16を付与され得る。
【0042】
陰極体15は、溶融容器11の第1の領域Aに配置され、第1の領域Aは、領域Aから横方向に間隔が空けられた第2の領域Bから、ホスファートスラグ溶融物4に浸かった分割壁16aにより分離される。Pの形態のリン元素は、抽出デバイス9で抽出され、コーティングした陽極体のケースでは、酸素(O)は、第2の領域Bにつながるさらなる抽出デバイス17で脱出する。直流は、公知の方法で陰極及び陽極に適用される。
【0043】
供給デバイス5は、図3によれば、ハウジング3に貫入する第1のチューブ6を有し、その第1のチューブ6内に第2のチューブ19が、第1のチューブ6と同心に配置され、環状間隙20を形成する。第1のチューブ6が、第2のチューブ19を超えて突出し、その末端6aにおいてハウジング3を貫通する。2つの固体成分、すなわち酸化鉄及びホスファート含有材料21及び出発材料21のそれぞれと、このケースでは金属アルミニウムであり、デバイスに一緒に供給されるアルミニウム担体7は、互いに接触し、これにより、自己熱が維持された反応の先端22の形成が引き起こされ、そこでアルミニウム担体7が酸化鉄及びホスファート含有材料21と共に溶融する。生じたホスファートスラグ溶融物4が、アルミニウムを含有し、酸化アルミニウムは液滴で表され、溶融容器の内部及び既に存在するホスファートスラグ溶融物に入ると、鉄及びリン元素への完全な変換が起こる。第2のチューブ6の末端6aの領域では、発火デバイス23は、アルミニウム担体7及び酸化鉄及びホスファート含有物質21のために提供され得る。
【0044】
図4で示されている実施形態では、陽極体13は、供給デバイス5の第1のチューブ6の周囲に配置され、直流を陰極体15及び陽極体13から得るための手段が提供される。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-02-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン元素を、酸化鉄含有及びホスファート含有材料から、特に廃棄物、例えば下水スラッジ(灰)、動物性ミール、骨粉及び/又は製鉄所スラグから、好ましくは、アパタイト、リン鉱石及び/又はリン灰土等の材料と共に分離するための方法であって、少なくとも 以下のステップ:
少なくとも1種の酸化鉄及びホスファート含有材料を提供するステップと、
少なくとも1種のアルミニウム担体を、少なくとも1種の酸化鉄及びホスファート含有材料に添加し、少なくとも1種のアルミニウム担体を、少なくとも1種の酸化鉄及びホスファート含有材料と共に溶融して、アルミニウム含有及び場合による酸化アルミニウム含有ホスファートスラグ溶融物(4)を形成するステップと、
アルミニウム含有及び場合による酸化アルミニウム含有ホスファートスラグ溶融物を、溶融容器(11)中でガス状元素リン、鉄及びAl含有スラグに反応させるステップと、
ガス状元素リンを抜き出し、鉄及びAl含有スラグを抜き取るステップと
を含み、
スズ浴が、溶融容器(11)中でアルミニウム含有及び場合による酸化アルミニウム含有ホスファートスラグ溶融物(4)の下に陰極体(15)として配置され、好ましくはグラファイト、白金又はマグネタイトスピネルの少なくとも1つの陽極体(13)が、アルミニウム含有及び場合による酸化アルミニウム含有ホスファートスラグ溶融物(4)中に浸かるように配置され、直流、好ましくは3Vから15Vの、好ましくは6Vから12Vの、特に、好ましくは8Vから10Vの直流が、陰極体及び陽極体に適用される、又は、直流が、陰極体(15)から、及び陽極体(13)から得られることを特徴とする、上記方法。
【請求項2】
少なくとも1種の酸化鉄及びホスファート含有材料(21)が、溶融容器(11)中にホスファートスラグ溶融物(4)として提供され、少なくとも1種のアルミニウム担体(7)が、ホスファートスラグ溶融物(4)に添加されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
固体材料、詳細には石灰担体及び/又はアパタイト及び/又はリン鉱石を有する下水スラッジ灰が、酸化鉄及びホスファート含有材料(21)として提供されること、並びに固体金属アルミニウムが、少なくとも1種のアルミニウム担体(7)として添加されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
Al担体が、アルミニウム含有及び場合による酸化アルミニウム含有ホスファートスラグ溶融物(4)に添加されることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
アルミニウム含有及び場合による酸化アルミニウム含有ホスファートスラグ溶融物(4)の、CaO/SiOの重量比である、塩基性が、好ましくはCaO担体及び/又はSiO担体を添加することにより、0.65から1.4、好ましくは0.85から1.2、より好ましくは1の値に調整されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
陰極体(15)が、溶融容器(11)における底面(10)の部分的領域に配置された陥凹(14)における、溶融容器(11)の第1の領域(A)に配置されること、及び、少なくとも1つの陽極体(13)が、第1の領域(A)と異なる溶融容器(11)の第2の領域(B)に配置されること、並びにガス状リンが第1の領域(A)から引き出され、酸素が第2の領域(B)から引き出されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法を実行するためのデバイスであって、耐火物内張ハウジング(3)により形成される溶融容器(11)、溶融容器(11)に配置されたアルミニウム及び場合による酸化アルミニウムを含有するホスファートスラグ溶融物(4)、ホスファートスラグ溶融物(4)の上のハウジング(3)により閉じられたガスチャンバ、並びに酸化鉄及びホスファート含有物質(21)のための供給デバイス(5)、並びにガス状リン元素のための少なくとも1つの抽出デバイス(9)を含み、デバイス(1)が、アルミニウム含有及び場合による酸化アルミニウム含有ホスファートスラグ溶融物(4)の下に配置された陰極体(15)、並びにアルミニウム含有及び場合による酸化アルミニウム含有ホスファートスラグ溶融物(4)に浸かった少なくとも1つの陽極体(13)を含むことを特徴とする、上記デバイス。
【請求項8】
供給デバイス(5)が、ハウジング(3)を貫通する第1のチューブ(6)を含み、そこに少なくとも1種のアルミニウム担体(7)のための、好ましくはスクリューコンベヤーの形態の搬送デバイス(8)が配置されることを特徴とする、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
供給デバイス(5)が、ハウジング(3)を貫通する第1のチューブ(6)を含み、その第1のチューブ(6)内に第2のチューブ(19)が配置され、好ましくは第1のチューブ(6)と同心の環状間隙(20)を形成し、第1のチューブ(6)及び第2のチューブ(19)の一方が、酸化鉄及びホスファート含有物質(21)を供給するように設計され、第1のチューブ(6)及び第2のチューブ(19)のもう一方が、アルミニウム担体(7)を供給するように設計され、第1のチューブ(6)が、第2のチューブ(19)を超えて突出し、その末端(6a)においてハウジング(3)に貫入することを特徴とする、請求項7に記載のデバイス。
【請求項10】
陰極体(15)が、溶融容器(11)の底面(10)に配置された陥凹(14)における、溶融容器(11)の第1の領域(A)に配置されること、並びに、少なくとも1つの陽極体(13)が、第1の領域(A)から横方向に間隔が空けられた溶融容器(11)の第2の領域(B)に配置され、さらなる抽出デバイス(17)が、第2の領域(B)に配置されることを特徴とする、請求項7から9までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
第1の領域(A)と第2の領域(B)との間において、ガス空間を互いに分離した2つのセクションに分ける分割壁(16a)が、アルミニウム含有及び場合による酸化アルミニウム含有ホスファートスラグ溶融物(4)に浸かることを特徴とする、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
陰極体(15)が、スズ浴により形成されることを特徴とする、請求項7から11までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項13】
スズ浴が、陥凹(14)に配置された炭素含有体(18)に収められることを特徴とする、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
少なくとも1つの陽極体(13)が、グラファイト、白金又はマグネタイトスピネルで形成されることを特徴とする、請求項7から11までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項15】
少なくとも1つの陽極体(13)が、高合金鋼で形成され、鋼鉄が、好ましくは白金(16)でコーティングされていることを特徴とする、請求項7から11までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項16】
少なくとも1つの陽極体(13)が、スズ溶融物、塩溶融物若しくはナトリウム溶融物のための、又は、好ましくは窒素若しくはアルゴンによるガス冷却のための、好ましくは陽極体(13)の内側に配置されたチャネルにより冷却可能になるように設計されていることを特徴とする、請求項7から13までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項17】
デバイス(1)が、直流を陰極体(15)及び陽極体(13)に適用するための手段を含むことを特徴とする、請求項7から14までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項18】
デバイス(1)が、直流を陰極体(15)から、及び陽極体(13)から得るための手段を含むことを特徴とする、請求項7から15までのいずれか一項に記載のデバイス。

【国際調査報告】