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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-24
(54)【発明の名称】気管内チューブ支持デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/04 20060101AFI20240417BHJP
【FI】
A61M16/04 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565267
(86)(22)【出願日】2022-04-22
(85)【翻訳文提出日】2023-12-14
(86)【国際出願番号】 US2022071882
(87)【国際公開番号】W WO2022226541
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】63/179,130
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506138351
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴァハーブザーデ-ハグ,アンドリュー
(57)【要約】
開示されているのは、所定の位置でチューブ内に屈曲を作り出すために気管内チューブ上に設置されるデバイスである。一態様では、気管内チューブ曲げ器具は、器具の近位端と器具の遠位端との間に角度を作り出す背骨部分と、背骨部分に押し当ててチューブ材を捕捉するように構築された複数の湾曲延長部とを備える。別の態様では、気管内チューブ曲げ器具は、第一の近位端において基部に取り付けられて、第一の遠位端においてナブを有する、第一のプロングを含む。第二のプロング及び第三のプロングは、第二及び第三の近位端において基部にそれぞれ取り付けられ、第二及び第三の遠位端においてブリッジ構造を介して互いに接続されている。ブリッジにおけるポケットが、ナブを捕捉して、気管内チューブを曲がり位置に保持するように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気管内チューブ曲げ器具であって、
器具の近位端と器具の遠位端の間の角度を作り出す、部分的に湾曲した表面を少なくとも含む、背骨部分と、
前記背骨部分に押し当てて前記気管内チューブを捕捉するように構築された、複数の湾曲延長部分と
を備える、気管内チューブ曲げ器具。
【請求項2】
前記複数の湾曲延長部分の各々は、前記背骨部分に押し当てて前記気管内チューブを定位置に把持するように構築された、一連の隆起を備える、請求項1に記載の気管内チューブ曲げ器具。
【請求項3】
前記背骨部分と、前記複数の湾曲延長部分とは、60度から90度の間の角度だけ、前記気管内チューブを曲げるように構築されている、請求項1に記載の気管内チューブ曲げ器具。
【請求項4】
前記背骨部分と、前記複数の湾曲延長部とは、60度未満又は90度超の角度だけ、チューブ材を曲げるように構築されている、請求項1に記載の気管内チューブ曲げ器具。
【請求項5】
隣接する延長部分の間に開口をさらに備える、請求項1に記載の気管内チューブ曲げ器具。
【請求項6】
器具に沿って長手方向に配向された、器具の第一端に近接する丸形タブ構造をさらに備える、請求項1に記載の気管内チューブ曲げ器具。
【請求項7】
前記丸形タブ構造は、器具の前記第一端における断面で見たときに、前記複数の湾曲延長部分のうちの一つのエッジへと延びる回転位置を有するか、又は器具の前記第一端における断面で見たときに、前記複数の湾曲延長部分のうちの一つと反対側の回転位置を有する、請求項6に記載の気管内チューブ曲げ器具。
【請求項8】
前記丸形タブ構造は、器具の第一端における断面で見たときに、前記複数の湾曲延長部分のうちの一つのエッジと、前記複数の湾曲延長部のうちの前記一つの反対側との間の回転位置を有する、請求項6に記載の気管内チューブ曲げ器具。
【請求項9】
前記丸形タブ構造は、安全ストリングを通して、患者から器具を除去することを可能にするための穴を有する、請求項6に記載の気管内チューブ曲げ器具。
【請求項10】
前記背骨部分の延長ノッチであって、前記気管内チューブに対して器具の位置を固定する、前記気管内チューブのパイロットバルーンチューブを係合するように構築された、延長ノッチをさらに備える、請求項1に記載の気管内チューブ曲げ器具。
【請求項11】
第一の近位端において基部に取り付けられ、第一の遠位端においてナブを有する、第一のプロング、及び
第二及び第三の近位端において前記基部にそれぞれ取り付けられ、第二及び第三の遠位端においてブリッジ構造を介して互いに接続された、第二のプロング及び第三のプロングを備え、前記ブリッジにおけるポケットが、前記ナブを捕捉するように構成され、器具が、前記第一、第二、及び第三のプロングによって捕捉された気管内チューブを曲げるように構築されている、気管内チューブ曲げ器具。
【請求項12】
前記第一、第二、及び第三のプロングは、前記ナブが前記ポケットによって捕捉されることにより、前記気管内チューブを所定の角度だけ曲げるように構成されている、請求項11に記載の気管内チューブ曲げ器具。
【請求項13】
前記所定の角度は、60度から90度の間である、請求項12に記載の気管内チューブ曲げ器具。
【請求項14】
前記所定の角度は、60度未満、又は90度超である、請求項12に記載の気管内チューブ曲げ器具。
【請求項15】
リング部分と、
前記リング部分から発出する、ストラップ部分であって、前記リング部分の面において前記リング部分を横切って通過する気管内チューブを曲げて、ある角度だけ前記チューブの曲げを生じさせるように構築されており、またストラップの表面に歯を含む、ストラップ部分と、
前記発出と反対側の前記リング内の穴に位置する爪部であって、前記歯と係合して、ストラップを締め付けてストラップが緩むのを防止することを可能にするように構築されている、爪部と
を備える、気管内チューブ曲げ器具。
【請求項16】
前記リング部分、前記ストラップ部分、及び前記爪部は、前記角度だけ前記チューブを曲げるように構築されており、前記角度は60度から90度の間である、請求項15に記載の気管内チューブ曲げ器具。
【請求項17】
前記リング部分、前記ストラップ部分、及び前記爪部は、前記角度だけ前記チューブを曲げるように構築されており、前記角度は60度未満又は90度超である、請求項15に記載の気管内チューブ曲げ器具。
【請求項18】
器具が、アクリル材料、ABSプラスチック、ポリエチレン、シリコーン、樹脂、又は他のプラスチック若しくはゴム材料、金属、金属合金、又はそれらの組合せを含む、請求項1から17のいずれかに記載の器具。
【請求項19】
患者の口を通して気管中へ、前記気管の第一の所定の場所まで気管内チューブを挿入するステップと、
前記気管内チューブを、前記気管内チューブに沿って第二の所定の場所で所定の角度だけ曲げるために、挿入の前又は後で、気管内チューブ曲げ器具を、前記気管内チューブに取り付けるステップであって、前記曲がった気管内チューブが、患者の喉頭にかかる圧力又は力を低減又は除去する、ステップと
を含む、挿管の方法。
【請求項20】
前記所定の角度は、60度から90度の間である、請求項19に記載の挿管の方法。
【請求項21】
前記所定の角度は、60度未満又は90超である、請求項19に記載の挿管の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関係出願の相互参照
本特許文献は、2021年4月23日付け出願の「ENDOTRACHEAL TUBE SUPPORT DEVICES」という名称の米国仮特許出願第63/179,130号の優先権、及び利益を主張するものである。前述の特許出願の内容は、本特許文献の開示の一部として、その全文が参照により組み込まれる。
【0002】
本特許文献は、気管内チューブに関し、特に、患者傷害を防止するために気管内チューブの形状を制御するためのデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
気管内チューブは、全身麻酔を必要とする外科的処置を受ける患者や、様々な形態の呼吸不全の患者に、機械呼吸(mechanical ventilation)を提供するために使用される。短期間の挿管は数えずに、年間に百万人の米国住民が、侵襲的な機械呼吸を必要としている。一部の患者は、数日から数週間の間、挿管されている場合がある。気道/気管に気管内チューブが存在すると、患者が抜管された後に喉頭の瘢痕化(scarring)や狭窄(stenosis)を引き起こす可能性のある、合併症がないわけではない。喉頭の瘢痕化は、成功裏に治療するのが非常に難しい場合がある。そのため、気管内チューブによる患者の傷害を防ぐために、新しいデバイスと技術が必要である。
【発明の概要】
【0004】
チューブを所定の角度に曲げて患者の傷害を防止するために、気管内チューブ又はその他の医療用チューブを曲げるためのデバイスが開示される。一態様において、気管内チューブ曲げ器具が開示される。この器具は、器具の近位端と器具の遠位端との間に角度を作り出す、部分的に湾曲した表面を少なくとも含む、背骨部分(backbone portion)と、背骨部分に押し当てて気管内チューブを捕捉するように構築された、複数の湾曲延長部分とを含む。
【0005】
この器具には、様々な組合せで、以下の特徴を含めることができる。複数の湾曲延長部分の各々は、背骨部分に押し当てて気管内チューブを定位置に把持するように構築された一連の隆起(ridges)を備える。背骨部分及び複数の湾曲延長部分は、60度から90度の間の角度だけ気管内チューブを曲げるように構築されている。背骨部分と複数の湾曲延長部とは、60度未満又は90度超の角度だけチューブ材を曲げるように構築されている。この器具は、隣接する延長部分の間に開口をさらに含む。この器具は、器具に沿って長手方向に配向された、器具の第一端に近接する丸形タブ構造をさらに含む。この器具は、背骨部分の延長ノッチであって、気管内チューブに対して器具の位置を固定する、気管内チューブのパイロットバルーンチューブを係合するように構築された、延長ノッチをさらに含む。丸形タブ構造は、器具の第一端における断面で見たときに、複数の湾曲延長部分のうちの一つのエッジへと延びる回転位置を有するか、又は器具の第一端における断面で見たときに、複数の湾曲延長部分のうちの一つと反対側の回転位置を有する。丸形タブ構造は、器具の第一端における断面で見たときに、複数の湾曲延長部分のうちの一つのエッジと、複数の湾曲延長部のうちの一つの反対側との間の回転位置を有する。丸形タブ構造は、安全ストリングを通して、患者から器具を除去することを可能にするための穴を有する。
【0006】
別の態様において、別の気管内チューブ曲げ器具が開示される。この器具は、第一の近位端において基部に取り付けられて、第一の遠位端においてナブ(nub)を有する、第一のプロング(prong)を含む。この器具は、第二及び第三の近位端において基部にそれぞれ取り付けられ、第二及び第三の遠位端においてブリッジ構造を介して互いに接続された、第二のプロング及び第三のプロングをさらに含み、ブリッジにおけるポケットが、ナブを捕捉するように構成され、器具が、第一、第二、及び第三のプロングによって捕捉された気管内チューブを曲げるように構築されている。
【0007】
以下のその他の開示された特徴を、様々な組合せで含めることができる。第一、第二、及び第三のプロングは、ナブがポケットによって捕捉されることにより、気管内チューブを所定の角度だけ曲げるように構成されている。所定の角度は、60度から90度の間である。所定の角度は、60度未満、又は90度超である。
【0008】
別の態様において、別の気管内チューブ曲げ器具が開示される。この器具は、リング部分と、リング部分から出ているストラップ部分とを含み、ここにおいて、ストラップ部分はリング部分の面においてリング部分を横切って通過する気管内チューブを曲げて、ある角度だけチューブの曲げを生じさせるように構築されており、またストラップ部分は、ストラップの表面に歯を含む。この器具は、発出と反対側のリング内の穴に位置する爪部であって、歯と係合して、ストラップを締め付けてストラップが緩むのを防止することを可能にするように構築されている、爪部をさらに含む。
【0009】
この器具には、以下の、及び他の開示された特徴を含めることができる。リング部分、ストラップ部分、及び爪部は、前述の角度だけチューブを曲げるように構築されていると共に、前述の角度は60度から90度の間である。リング部分、ストラップ部分、及び爪部は、前述の角度だけチューブを曲げるように構築されていると共に、前述の角度は60度未満又は90度超である。
【0010】
開示された器具は、アクリル材料、ABSプラスチック、ポリエチレン、シリコーン、樹脂、又は他のプラスチック若しくはゴム材料、金属、金属合金、又はそれらの組合せを含む材料から製造することができる。
【0011】
別の態様において、挿管の方法が開示される。この方法は、患者の口を通して気管中へ、気管の第一の所定の場所まで、気管内チューブを挿入するステップを含む。この方法は、気管内チューブを、気管内チューブに沿って第二の所定の場所で所定の角度だけ曲げるために、挿入の前又は後で、気管内チューブ曲げ器具を、気管内チューブに取り付けるステップであって、曲がった気管内チューブが、患者の喉頭にかかる圧力又は力を低減又は除去する、ステップをさらに含む。
【0012】
以下の他の開示された特徴を含めることができる。所定の角度は、60度から90度の間である。所定の角度は、60度未満又は90度超である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】患者に傷害を与える可能性のあるチューブにおける典型的な湾曲部と、患者に傷害を与えない開示されたデバイスにより生じる別の湾曲部とを有する気管内チューブによる口腔気管挿管(orotracheal intubation)の例を示す図。
図2】カフ(cuff)、パイロットバルーン、及びパイロットバルーンチューブを含む、典型的な気管内チューブの例を示す図。
図3A】スリーブ型実施形態を示す図。
図3B】例示的なスリーブ型実施形態のイメージ図。
図3C】パイロットバルーンチューブを係合するためのスリーブ上のノッチと、気管内チューブ上のスリーブの位置を調節するためのタブとを備える、例示的なスリーブ型実施形態を示すイメージ図。
図3D図3Cに示されているのと異なる位置の気管内チューブ上のスリーブの位置を調節するためのタブを備える、例示的なスリーブ型実施形態を示す図。
図3E】スリーブ型実施形態に沿って除去された異なる量の材料を示す図。
図4A】三本プロング型実施形態を示す例示的な図。
図4B】例示的な三本プロング型実施形態を示すイメージ図。
図5】例示的なクランピング型実施形態を示す図。
図6A】気管内チューブにおける典型的な屈曲を示すイメージ図。
図6B】スリーブ型クリップが60度を生成するチューブ上に設置されている、気管内チューブにおける屈曲を示すイメージ図。
図6C】スリーブ型クリップが70度の屈曲を生成するチューブ上に設置されている、気管内チューブにおける屈曲を示すイメージ図。
図6D】スリーブ型クリップが90度の屈曲を生成するチューブ上に設置されている、気管内チューブにおける屈曲を示すイメージ図。
図7】例示的なスリーブ型実施形態の断面図。
図8】処置の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
気管内チューブは、患者に機械呼吸を提供する。標準的な気管内チューブは、喉頭(「声帯」)に力と圧力を与え、患者が抜管処置された後の瘢痕形成や狭窄、並びに気管や食道などの他の傷害につながることのある傷害を引き起こす可能性がある。治療が非常に困難である、後部声門狭窄症(PGS: posterior glottic stenosis)と呼ばれる喉頭瘢痕が形成される可能性がある。そのような患者は、気管切開チューブを必要としたまま、話す能力がない状態で放置される可能性がある。その他の傷害も発生する可能性がある。
【0015】
開示されるのは、標準的な気管内チューブの側壁上に設置して、チューブの長さに沿った所定の一箇所以上の位置において、チューブに屈曲を作り出すことのできる、デバイスである。チューブの屈曲は、「声帯」/気道及び気管の後面にチューブによって加えられる圧力を排除するか、又は大幅に低減させることができる。幾つかの例示的な実施形態において、このデバイスは、気管内チューブの本体の上に嵌るブラケット又はスリーブである。このスリーブは、チューブのまわりに部分的に、又は完全に巻き付く延長部によって、チューブ上の定位置に保持することができる。スリーブは、管腔の開通性(luminal patency)を損なうことなく、チューブの長手方向軸に沿ってチューブの別の部分に対して、チューブの一部分をある角度で保持するのに十分な剛性を有する。
【0016】
その他の実施形態において、デバイスは、標準的な気管内チューブが通過する、三本の「プロング」を有し、そこでは、これらのプロングがチューブを所定の角度で曲げる。幾つかの実施形態では、デバイスは、気管内チューブそれ自体の側壁中に一体化して、チューブの長さに沿った所望の位置において、チューブに屈曲を作り出すことができる。
【0017】
図1は、100において、現在の医療技術を用いた挿入後に典型的である曲線118を有する気管内チューブ110による、口腔気管挿管の例を示す。気管内チューブ110の第一端112は、人工呼吸器(ventilator)に接続し、呼吸を誘発する。第二端114は、カフを含む。曲線118は、チューブ材の剛性及び記憶、並びにチューブを曲らせる、喉又は気管での接触によりチューブ上にかかる力によって影響を受ける。チューブ材の曲率118は、116で喉頭の後面に圧力をかける。この圧力は、患者の傷害を引き起こす可能性がある。チューブ材は、患者の口を通して喉や気管にチューブを挿入できるほどの剛性を有する。
【0018】
図1は、150において、本特許文献で開示されたデバイスの一つによって曲率118から変更された曲率140を有する気管内チューブ120での口腔気管挿管の例を示す。図1の例では、150において、チューブが、126の喉頭の後面に圧力をかけないか、又は圧力を大幅に低減するように、気管内チューブ120の曲率を変化させる、三本プロング130を備えるデバイスが示されている。気管内チューブ120は、人工呼吸器に接続する第一端122と、100で示される第一端及び第二端と類似又は同一の、第二端124を有する。150の例において、曲率140は、チューブ材の剛性の影響と、チューブと接触する、開示のデバイスの三本プロング130からチューブにかかる力の影響とを受ける。チューブ材の曲率140は、126の喉頭の後面に圧力を加えないか、又はほとんど圧力を加えない。この圧力の欠如は、患者への傷害を防止する。
【0019】
図2は、チューブ205、カフ210、パイロットバルーン220、及びパイロットバルーンチューブ225を含む典型的な気管内チューブ200の例を示す。気管内チューブは、患者に挿入されるチューブ205の端部において、チューブの端部付近にカフ210を有する。カフ210は、拡張して、人工呼吸器からの空気又は酸素が患者の肺に注入されることを確実にするシールを提供する。パイロットバルーン220は、カフ210が膨張しているか否かを示すために使用される。カフ210が膨張すると、パイロットバルーン220が膨張し、カフ210が膨張しないときは、パイロットバルーン220は膨張しない。パイロットバルーン220は、空気がそれを通りカフとパイロットバルーンの間を通過する、パイロットバルーンチューブ225を介して、膨張させられる。開示されたデバイスの幾つかの例示的な実施形態では、デバイスに組み込まれた係合機構を使用して、パイロットバルーンチューブと係合させて、チューブ205に沿ってカフ210に向かうデバイスのスライド移動を停止させてもよい。さらなるスライドを停止させることによって、デバイスは、チューブ205に沿った既知の場所に固定され、デバイスが、カフに向かって必要以上に遠くまで移動するのが防止される。
【0020】
図3Aは、300において、スリーブ型実施形態の例を示す。300で示される例において、気管内チューブ(図示せず)はスリーブ310中に押し込まれる。スリーブは、気管内チューブのまわりに巻き付く、湾曲延長部320を有する。スリーブ310の端部から見たとき、湾曲延長部320は、スリーブ310と湾曲延長部320とが、チューブのまわりに180度を超えて接触するように、巻き付くことができる。例えば、延長部は、チューブの190度若しくは200度、又は別の角度をカバーするように延びてもよい。チューブ材の180度超をカバーすることは、スリーブ内にチューブ材を捕捉するのを助ける。幾つかの実施形態では、スリーブの内側の隆起322を使用して、スリーブの内側にチューブ材をさらに把持して、定位置に保持してもよい。図3Aは、300において、三つの延長部と、スリーブ内の二つの開口とを備える、スリーブを示す。幾つかの実施形態は、より多くの、又はより少ない、延長部及び開口を有してもよい。例えば、一実施形態は、四つの延長部と三つの開口とを有してもよい。幾つかの例示的な実施形態では、スリーブは、開口又は延長部を有さなくてもよい。これらの実施形態では、チューブは、チューブにクリップ留めされる延長部を有するのではなく、スリーブを通して挿入してもよい。スリーブ310の様々な実施形態は、気管内チューブ材を、60~90度、又は別の角度に曲げることができる。幾つかの例示的な実施形態では、スリーブ300は、湾曲延長部320と共に曲がり位置に捕捉された気管内チューブを保持する、背骨315を有するものとして記載されている。曲がった気管内チューブは、圧力が喉頭の後面にかかるのを防止して、それによって患者に対する傷害を予防する。
【0021】
図3Bは、スリーブ型実施形態の例のイメージを示す。図3Bは、340にスリーブを、205にチューブを示す。パイロットバルーンチューブ225も、イメージに示されている。
【0022】
図3Cは、パイロットバルーンチューブ225と係合するためのノッチ又は係合スロット354と、スリーブに圧力を印加してスリーブを気管内チューブに沿って移動させるか、又はチューブの周りでスリーブを回転させることを可能にするタブ352とを備えた、例示的なスリーブ型実施形態350のイメージを示す。ノッチ又は係合スロット354は、ノッチ又はスロットを作り出すために、スリーブ材料が除去されている、スリーブ350の領域である。スリーブ350が気管内チューブを下降して移動されると、ノッチ又は係合スロット352が、気管内チューブから出るパイロットバルーンチューブ225を捕捉し、気管内チューブを下降するスリーブ350のさらなるスライドを停止させる。ノッチ又は係合スロット354は、気管内チューブの側部から出るパイロットバルーンチューブ材に対して、スリーブの安定した位置決めを可能にする。357で示されているのは、例示的なスリーブの外側部分と、タブ内の穴353を備える、タブ352である。355に示されているのは、例示的なスリーブの内側様相である。351で示されているのは、例示的なスリーブの内側上位様相である。
【0023】
図3Cに示されるスリーブ型実施形態は、気管内チューブに沿ったスリーブの調節を可能にするタブ252と、安全ストリングを可能にする穴352と、ノッチ又は係合スロット354とを追加で備える、上述の実施形態に類似している。タブ352は、スリーブの上位様相に位置して、一旦、気管内チューブ上に固定されるとスリーブ位置への容易な調節を可能にする。タブ352は、タブのための材料があるところなら、回転面のどこもでも置くことができる。タブは、スリーブの開口内に配置されていない。幾つかの例示的な実施形態では、タブは、352で示されるように、開口の途中の場所の反対側の回転位置に設置される。この位置において、タブは、スリーブの内側部分に沿っている。穴又はアイレット(eyelet)353(アスタリスクで示す)が、スリーブへの安全ストリング(図示せず)の取り付けを容易にするために、タブ352を通して設置される。安全ストリングは、スリーブが口の中の気管内チューブから外れ、回収が必要になった場合に、患者からスリーブを取り外すことを可能にする。安全ストリングは、穴又はアイレットを通過するループとするか、又はストリングが穴又はアイレット353を通って引っ張られるのを防ぐためにストッパ又は結び目を備える、ある長さのストリングとすることができる。
【0024】
図3Dに示される別の例示的な実施形態では、スリーブ360は、スリーブ内の開口の場所と反対側の回転位置、又は図3Cに示されたタブ352の位置から時計回りに約90度回転した(タブに最も近いスリーブの端部から見た場合)回転位置に設置されるタブ362を有する。この位置では、タブはスリーブの内側部分に沿っている。ノッチ、穴又はアイレット、及び安全ストリング(図示せず)は、図3Cについて記述された特徴と同様に、図3Dに示されたスリーブに含めることができる。代替的に、タブは、図3C図3Dに示されるものの間の回転位置に、又はスリーブ上、又はスリーブを下方に並進させた、別の回転位置にさえ設置することもできる。
【0025】
図3Eは、スリーブ型実施形態において、開口に対応して、異なる量の材料が除去されている図を示す。370において、スリーブ374は、開口372及び373において材料が除去されている。基準線371は、スリーブの長さに沿ったスリーブの中心を示す。372及び373で除去される材料は、同一とする、すなわち開口部372及び373が同じ形状を有するか、又は開口部372及び373は、異なる形状(図示せず)とする、すなわち異なる量の材料が除去されてもよい。375において、スリーブ377は、スリーブ374と同様であって、上述したように、同一の又は異なる形状とすることができる、開口379及び376を有する。基準線378も示されている。図3Eの例に示されるように、372及び373におけるよりも、376及び379において、より大きい開口に対応して、より多くの材料が除去されている。
【0026】
図4Aは、400において、三本プロング型実施形態の例を示す。400に示される例において、気管内チューブ(図示せず)は、プロング412とプロング410(複数)の間でプレスされるか又はスライドさせられる。図の400において、気管内チューブは、プロング412とプロング410の間を、ページ左から出て、ページ右に通り過ぎる。チューブがプロングの間を通された後に、プロング412をプロング410に向かって曲げると共に、プロング410をプロング412に向かって曲げて、次いで、ナブ415がポケット420中に係合され、それによってプロング412を定位置に保持するように、プロング410を越えてプロング412を曲げてもよい。プロング410及び412の曲げによって、気管内チューブは、基部430と平行の面内で曲がる。三本プロングデバイスの様々な実施形態は、気管内チューブ材を60~90度、又は別の角度に曲げることができる。気管内チューブの曲げは、喉頭の後面に圧力がかかるのを防ぎ、それによって患者への傷害を防止する。
【0027】
図4Bは、三本プロング型実施形態の例のイメージを示す。450で示されているのは、プロングが互いの方向に曲げられて、ナブがポケットに係合される以前の、三本プロングデバイスである。450で示されているのは、プロングが互いに向かって曲げられて、ナブがポケットと係合された後の、同じ三本プロングである。450に気管内チューブは示されていないが、チューブ材が存在する場合には、ページを通り過ぎることになる。460において、存在する場合には、チューブは、ページから出て左へ、ページを過ぎて右へ進むことになる。
【0028】
図5は、クランピング型実施形態の例示図500を示す。クランピング型実施形態は、リング510と、リングの開口525における爪部527を係合する歯522を含むストラップ520とを含む。爪部527を介して前方方向に引っ張られた歯522を備える、ストラップ520の部分は、爪部527によってロックされて、逆方向にスライドしない。幾つかの例示的な実施形態では、爪部は、その目的で設計された工具で開放することができる。気管内チューブ540は、リング510の面と平行に設置される。ストラップ520は、ストラップ520に沿った接触点における気管内チューブ540と、リング510の二つの側部とに圧力を与え、チューブ540の曲がりを生じさせる位置において、チューブ540の上に設置される。ストラップ520は、リング510の一部として製造するか、又はリングとストラップは別個に製造して、熱的技法によって互いに取り付けることができる。チューブ540に発生する曲がりの量は、爪部527を介して引っ張られるストラップ520の長さの量によって制御することができる。
【0029】
図6Aは、気管内チューブ540における典型的な屈曲を図解するイメージ600を示す。このイメージにおいて、気管内チューブの一端が、開始場所に設置され、チューブは、曲率を調節するためにチューブに沿って圧力を加えることなく、自然曲線に曲げられている。図6Aの例において、開始場所と終了場所の間の距離は約10.25インチである。
【0030】
図6Bは、スリーブ型実施形態612がチューブ上に設置されて、60度の屈曲生成している、気管内チューブにおける屈曲を図解するイメージ610を示す。このイメージでは、気管内チューブの一端が開始位置に設置され、チューブは、曲率を調節するためにチューブ上に設置されたスリーブ型実施形態612で曲げられている。図6Bの例では、開始位置と終了位置の間の距離は約9インチであり、図6Aの例よりも約1.25インチ短い。
【0031】
図6Cは、スリーブ型実施形態622がチューブ上に設置されて70度の屈曲を生成している、気管内チューブにおける屈曲を図解するイメージ620を示す。このイメージでは、気管内チューブの一端が開始位置に設置され、チューブは、曲率を調節するために、チューブ上に設置されたスリーブ型実施形態によって曲げられる。図6Cの例では、開始位置と終了位置の間の距離は約8.75インチであり、これは、図6Aの例よりも約1.50インチ短い。
【0032】
図6Dは、スリーブ型実施形態632がチューブ上に設置されて、90度の屈曲を生成している、気管内チューブにおける屈曲を図解するイメージ630を示す。このイメージにおいて、気管内チューブの一端は、開始場所に設置され、チューブは、曲率を調節するために、チューブ上に設置されたスリーブ型実施形態によって曲げられている。図6Dの例では、開始位置と終了位置との間の距離は約8.25インチであり、これは、図6Aの例よりも約2インチ短い。図6B~6Dに示されるイメージにおいて、スリーブは、開始位置(気管内チューブの人工呼吸器端)から終了位置(気管内チューブの患者端)まで、チューブに沿った経路の約2/3の位置に設置された。スリーブは、チューブの中間点など、チューブに沿った他の場所、又は患者端に近い(開始位置から終了位置までの経路の2/3を超える)場所に設置することができる。
【0033】
図7は、例示的なスリーブ型実施形態の断面図を示す。710に示される実施形態において、スリーブは、内径が9.00mmで外径が11.00mmであり、したがって公称厚さは2.00mmである。715に示されている実施形態において、スリーブは、内径が9.40mm、外形が11.40mm、そして公称厚さが2.0mmである。スリーブの内側直径と外側直径は、外形が約3.4mmから約13mmの範囲である、異なる直径の気管内チューブに対して、調節することができる。新生児(3.4mm)から成人(最大13mm)まで、異なるサイズの患者に、異なる気管内チューブの外径が使用される。異なる外径の気管内チューブに対して、異なる内径と外径の、異なるスリーブを使用することができる。同様に、異なるサイズの三本プロング型実施形態及びクランプ型実施形態を、異なるサイズの気管内チューブ及び/又を患者のサイズ/年齢に対して使用してもよい。2mmの公称厚さも、公称厚さが2mmよりもはるかに小さいスリーブを有する小径の気管内チューブによって変わってもよい。例示的な実施形態では、9mmの内径のスリーブを、9.5mmの外径の気管内チューブにクリップ留めすることができる。幾つかの実施形態では、スリーブ内径は、気管内チューブよりもわずかに小さい直径であるが(0.1~0.75mm)、幾つかの実施形態では、スリーブは、チューブの外径と同じ内径、又はわずかに大きい内径を有することができる。各々の特定のスリーブは、一つ以上の気管内チューブ直径にクリップ留めすることができる。スリーブ材料が除去されている領域の断面図が720に示されている。幾つかの実施形態では、開口は、約100度の円弧であるが、異なる実施形態では、約80度から約120度まで変化することができる。
【0034】
図7の730において、タブ352に最も近い端部からスリーブを見たときの、図3Cに示されたタブ352のおよその回転場所が示されている。図7に735で示されているのは、タブ352に最も近い端部からスリーブを見たときの、図3Dに示されたタブ362の代替的な、およその半径方向場所である。
【0035】
図8は、処置の例を描写する。810において、この処置は、患者の口を通して気管中へ、気管の第一の所定の場所まで、気管内チューブを挿入するステップを含む。820において、この処置は、気管内チューブを、気管内チューブに沿って第二の所定の場所で所定の角度だけ曲げるために、挿入の前又は後で、気管内チューブ曲げ器具を、気管内チューブに取り付けるステップであって、曲がった気管内チューブが、患者の喉頭にかかる圧力又は力を低減又は除去する、ステップを含む。幾つかの例示的な実施形態では、気管内チューブ曲げ器具が、気道にすでに配置されて固定されている気管内チューブに適用される。このようにして、気管内チューブ曲げ器具は、口を通しての気道/気管中への気管内チューブの挿管及び設置と干渉することがない。
【0036】
様々な実施形態は、アクリル、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ナイロン、ナイロンPA-12、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルイミド、シリコーン、樹脂(例えば、4,4'-イソプロピリデンジフェノール、エトキシル化された2-メチルプロップ-2-エン酸(ethoxylated and 2-methylprop-2-enoic acid)、ウレタンジメタクリレート、メタクリレートモノマー、光開始剤を含む、バイオメッドクリアレジン(BioMed Clear Resin))、又はその他のプラスチック、ゴム、若しくはエラストマー材料の一種以上を含む、一種以上の材料を含み得る。幾つかの実施形態は、単一の材料で製作され、その他の実施形態は、材料の組合せで製作され得る。具体例として、三本プロング実施形態における基部280は、剛性のある材料で製作され、プロングはより柔軟な材料で製作されてもよい。幾つかの実施形態は、金属及び金属合金も含む。幾つかの例示的な実施形態では、スリーブ実施形態は、単一構造に作製された、背骨部分及び複数の湾曲延長部分を含んでもよい。背骨部分は、複数の湾曲部分によって捕捉された気管内チューブの曲率を維持する。別の実施例では、スリーブ実施形態には、スリーブに対してより柔軟な材料を使用して、チューブ材の曲率を維持するために、金属背骨を含めてもよい。望ましい材料には、形状を保持するのに十分な強度があり、脆すぎない生体適合性材料が挙げられる。適切な材料は、体温で安定しており、引張強度が高く、曲げ弾性率(flexural modulus)が低い必要がある。好適な材料は、柔軟性とするか、半柔軟性とするか、又は剛性とすることができる。幾つかの例示的な実施形態では、開示のデバイスは三次元プリントされている。
【0037】
上記では幾つかの変形が詳細に説明されているが、その他の変更又は追加が可能である。特に、本明細書に記載されるものに加えて、さらに別の特徴及び/又は変形が提供され得る。さらに、上述の例示的な実施形態は、開示された特徴の種々の組合せ及び部分組合せ、及び/又は上記で開示された、幾つかのさらなる特徴の組合せ及び部分組合せを対象としてもよい。加えて、添付の図に描かれている、及び/又は本明細書に記載されるロジックフローは、望ましい結果を達成するために、示されている特定の順序、又は連続的な順序を必要としない。他の実施形態も、以下の特許請求の範囲の範囲内であり得る。
【0038】
同様に、要素が特定の順序で図面に描かれているが、このことは、望ましい結果を達成するために、要素が、示された特定の順序又は連続的な順序で組み立てられるか、又は実行されること、又は全ての図示された動作が実行されることを要求するものとして理解されるべきではない。また、本特許文献に記載の実施形態における種々の要素の分割は、全ての実施形態においてそのような分割を必要とするものと理解されるべきではない。
【0039】
少数の実装例及び実施例のみが記載されており、本特許文献に記載されるもの、及び例示されるものに基づいて、他の実装、拡張及び変形を行うことができる。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8
【国際調査報告】