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特表2024-518057好酸球性食道炎の治療に使用するためのブデソニドを含む口腔内分散発泡錠
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-24
(54)【発明の名称】好酸球性食道炎の治療に使用するためのブデソニドを含む口腔内分散発泡錠
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/58 20060101AFI20240417BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240417BHJP
   A61K 9/46 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
A61K31/58
A61P1/04
A61K9/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568169
(86)(22)【出願日】2022-05-19
(85)【翻訳文提出日】2023-11-03
(86)【国際出願番号】 EP2022063514
(87)【国際公開番号】W WO2022243405
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】21174941.1
(32)【優先日】2021-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509274005
【氏名又は名称】ドクトル ファルク ファルマ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウイルヘルム、ルドルフ
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー、ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】グラインヴァルト、ローランド
(72)【発明者】
【氏名】プレェルス、マルクス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA48
4C076BB03
4C076BB22
4C076CC04
4C076DD25V
4C076DD43Z
4C076FF54
4C076FF61
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA12
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA35
4C086MA57
4C086NA10
4C086ZA66
4C086ZB11
4C086ZC54
(57)【要約】
ブデソニドを含む口腔内分散発泡錠を好酸球性食道炎の患者に投与し、導入期間として少なくとも6~12週間及びその後の維持治療として最長3年間、前記口腔内分散発泡錠を投与する治療計画により、完全な粘膜治癒(即ち、深い内視鏡的及び組織学的な寛解)及びさらには深い疾患寛解(即ち、深い臨床的、内視鏡的、及び組織学的な寛解)が達成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
好酸球性食道炎の治療に用いるためのブデソニドを含む口腔内分散発泡錠であって、該口腔内分散発泡錠を1日2回投与する少なくとも6週間の治療により完全な粘膜治癒が達成され、最長144週間維持できることを特徴とする、口腔内分散発泡錠。
【請求項2】
前記口腔内分散錠が、0.5 mgのブデソニドを含むことを特徴とする、請求項1に記載の使用のための口腔内分散発泡錠。
【請求項3】
前記口腔内分散錠が、1 mgのブデソニドを含むことを特徴とする、請求項1に記載の使用のための口腔内分散発泡錠。
【請求項4】
前記口腔内分散錠が、2 mgのブデソニドを含み、また1日1回投与されることを特徴とする、請求項1に記載の使用のための口腔内分散発泡錠。
【請求項5】
深い内視鏡的寛解が、内視鏡基準スコアが0ポイントであると定義されることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の使用のための口腔内分散発泡錠。
【請求項6】
深い組織学的寛解が、全ての生検における「0」個のeos/hpfと定義されることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の使用のための口腔内分散発泡錠。
【請求項7】
前記完全な粘膜治癒の導入を達成するために、0.5 mgのブデソニドを含む口腔内分散錠が1日2回、6~12週間投与されることを特徴とする、請求項1、2、5、及び6に記載の使用のための口腔内分散発泡錠。
【請求項8】
前記完全な粘膜治癒の導入を達成するために、1 mgのブデソニドを含む口腔内分散錠が1日2回、6~12週間投与されることを特徴とする、請求項1、3、5、及び6に記載の使用のための口腔内分散発泡錠。
【請求項9】
前記完全な粘膜治癒が、食道伸展性の増加に反映されることを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載の使用のための口腔内分散発泡錠。
【請求項10】
前記完全な粘膜治癒が、深い内視鏡的寛解及び深い組織学的寛解であることを特徴とする、請求項1~8のいずれかに記載の使用のための口腔内分散発泡錠。
【請求項11】
嚥下障害のNRSが「0」であり、かつ嚥下痛のNRSが「0」であると定義される深い臨床的寛解は、治療を受けた患者の少なくとも85%で達成されることを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載の使用のための口腔内分散発泡錠。
【請求項12】
過去7日間で毎日、嚥下障害と嚥下痛の両方とも「0」と評価された(それぞれ0~10ポイントのNRSで、0ポイントが「まったく症状なし」を示し、10ポイントが「最も重篤な症状」を示す)深い臨床的寛解、EREFS=0 ポイントの深い内視鏡的寛解、及びeos=0個/hpfの深い組織学的寛解の組み合わせである深い疾患寛解は、治療を受けた患者の70%で3年間維持されることを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載の使用のための口腔内分散発泡錠。
【請求項13】
前記口腔内分散発泡錠の口腔内における溶解は、唾液の作用により2分間から最長20分間の時間幅で起こることを特徴とする、請求項1~10のいずれかに記載の使用のための口腔内分散発泡錠。
【請求項14】
前記口腔内分散発泡錠の口腔内における溶解は、唾液の作用により2分間から最長5分間の時間幅で起こることを特徴とする、請求項1~10のいずれかに記載の使用のための口腔内分散発泡錠。
【請求項15】
2 mgの1日投与量が、朝に1.0 mgのブデソニドを含む1錠及び晩に1.0 mgのブデソニドを含むもう1錠として投与されることを特徴とする、請求項1及び3に記載の使用のための口腔内分散発泡錠。
【請求項16】
前記完全な粘膜治癒が、許容可能な食道伸展性を示す、請求項1~12のいずれかに記載の使用のための口腔内分散発泡錠。
【請求項17】
前記1日投与量が、維持相に投与されるブデソニド2 mgであることを特徴とする、請求項1及び4のいずれかに記載の使用のための口腔内分散発泡錠。
【請求項18】
維持治療は、6週間から最長3年間の時間幅で行われる、請求項1~14のいずれかに記載の使用のための口腔内分散発泡錠。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
好酸球性食道炎(EoE)は、診断/治療のための米国消化器病学会コンセンサス勧告(改訂版)において概念的に「食道の機能不全の症状を引き起こし、好酸球が優勢な食道粘膜の炎症を特徴とする慢性の抗原/免疫介在性の食道疾患」と定義されている。現在、EoEは、食道機能不全の臨床症状(最も一般的には嚥下障害と胸痛)と、食道粘膜からの生検による1つの高倍率顕微鏡視野(hpf)における少なくとも15個の好酸球(eos)の組織学的所見の組み合わせによって定義され、臨床医によって全ての臨床情報と病理学的情報を考慮して診断されるべきである。これらのパラメータは、いずれも単独で解釈されるべきではない。
【0002】
好酸球性食道炎は、主にヨーロッパ、米国、カナダ、及びオーストラリア等の先進国で見られ、その有病率と発生率は増加している。Navarro PとArias A らによる最近の総説Aliment Pharmacol Ther 2019;49:1116-25によると、EoEの統合有病率は、人口10万人あたり34.4例(95% CI、23.1~47.5)で、EoEの統合年間発生率は、小児では10万人あたり6.6人(95% CI、3~11.7)、成人では 10万人あたり7.7人(95% CI、1.8~17.8)であった。男性は、女性よりも罹患することが多く、成人患者の約76%、小児患者の66%を占めている。好酸球性食道炎は、あらゆる年齢層に影響を及ぼし、20~50歳の間にピークを有する。
【0003】
成人において最も一般的に現れる臨床症状は、固形物の間欠性嚥下障害(シリーズによって29~100%の範囲)及び食物嵌入(25~100%の範囲)である。ある報告では、ある施設における食道食物嵌入症例の50%はEoEが原因であることが判明された。胃食道逆流症(GERD)様の症状も報告されている(7~100%の範囲)。嚥下活動に関係のない胸痛(1~58%の範囲)、腹痛(3~25%の範囲)、また一部の患者では下痢と体重減少が報告されている。多くの成人は、EoEと診断される前に、再発性食物嵌入等の症状を長期にわたって抱えていた。
【0004】
好酸球性食道炎は、症状が持続または再発する慢性疾患となる傾向があるが、粘膜の潰瘍形成や破壊を特徴とせず、寿命を制限しないようである。現在では、食道狭窄と小口径食道が確認されている主な合併症である。これらは、多くの場合、食物嵌入になるまで嚥下のトラブル(即ち、嚥下障害)が発生する。放射線検査または内視鏡検査でこれらの所見があった場合は、EoEの疑いが高く、粘膜の生検標本を採取する必要がある。経過観察を慎重に長期間行うことが勧告される。その他の慢性的な問題として、子供の発育不全や摂食不耐症等が含まれる。しかし、治療せずに長期間放置すると、食道の組織修復によって狭窄が発生する。
【0005】
Dellonらは、好酸球性食道炎(EoE)に対する噴霧後嚥下療法(NEB)と粘性局所コルチコステロイド(OVB)治療を比較する無作為化治験を実施した(Gastroenterology, 2012, 143, pp 321-324)。患者は、ブデソニド1 mgを1日2回噴霧され、次いで嚥下し(NEB)、または経口用粘性スラリー(OVB)として8週間投与された。治療後、好酸球数は、経口用粘性スラリーの治療群では顕著に改善したが、噴霧された後に嚥下した群では改善しなかった。この試験は、有効性を得るには適切な食道ターゲティングの重要性を示している。
【0006】
炎症性疾患の治療に全身及び局所コルチコステロイドの非常に好ましい効果が実証されている。しかし、コルチコステロイドによる治療は、副作用が伴う。コルチコステロイドの全身投与による長期治療は、主に薬剤の投与期間と投与量によって重篤な副作用に悩まされている。
【0007】
対照的に、ブデソニドは、組織への親和性と程度の高い初回通過肝代謝により局所的に優位に作用し、EoE においてプラスの利益/リスク比を示した。ただし、長期使用によって臨床病理学的な寛解を維持できるかどうかは不明である。
【0008】
DellonらがGastroenterology, 2012において既に示したように、シンチグラフィーで計測した粘膜薬物接触時間は、経口用粘性ブデソニド懸濁液(OVB)の群の方が、噴霧されてから嚥下したブデソニド(NEB)の群よりも長かった(P<.005)。OVBにより、好酸球数の低下と相関する治療薬への食道曝露のレベルが有意に高かった。この経口用粘性スラリー製剤とブデソニド1 mgを1日2回投与すると、主に接触時間が長くなったことにより、患者の64%とNEB治療下でその27%が完全な組織学的寛解(即ち、<1個の好酸球/高倍率視野)を達成した。
【0009】
Greuterらは、嚥下した局所コルチコステロイドによる好酸球性食道炎の長期治療について記載している(アメリカン胃腸病学雑誌、2017年10月、Vol. 112、第10版、第1527~1535頁)。この試験では、喘息の治療のために調製されたコルチコステロイドが、粘稠なコルチコステロイド溶液として適応外で使用された。1.0 mgのフルチカゾンまたはブデソニドを含有する粘性懸濁液を1日に2回投与した。中央値89週間の治療後に、「深い寛解」(臨床的寛解、内視鏡的寛解、及び組織学的寛解を組み合わせ)は、達成されたと報告されている。具体的に、「深い寛解」とは、以下のように定義される:「長期間の臨床的寛解:少なくとも6か月間、制限のない栄養習慣のもとでEoEに起因する症状(嚥下障害及び嚥下に関連しない胸骨後痛)が存在しないこと;炎症の内視鏡的寛解:炎症の兆候、特に白い滲出液、溝、浮腫が完全に消失すること;炎症の組織学的寛解:ピーク好酸球数:5個未満の好酸球/hpf」。しかし、該定義は、依然としていくらかの炎症(即ち、1~4個のeos/hpf)及び狭窄疾患の内視鏡的兆候を許容している。従って、本発明に使用される寛解の定義よりも厳格ではない。以下に示す実施例は、公表されている最先端技術と比較して、本発明の介入の優れた有効性を明らかに実証している。
【発明の概要】
【0010】
EP 2 886 108及びEP 3 086 782に記載されているような口腔内分散錠は、食道ターゲティングに適した薬剤的に広く受け入れられた製剤である。これらにより、口腔内分散錠が口腔内で崩壊した後、約2分間から最長20分間、好ましくは約2~5分間かけて少量のブデソニドが食道に到達することが可能になる。この2つの欧州特許に記載されている実施形態は、本発明に従って使用されることが好ましい。
【0011】
本発明において、ブデソニドは、好ましくは、0.5 mgまたは1.0 mgまたは2.0 mgのブデソニドを含有する口腔内分散発泡錠として投与される。その発泡作用は、水性環境、特に唾液を含む口腔内でさらなる酸と協働して、ガス、好ましくはCO2を放出できる少なくとも1種の薬剤的に許容される酸の塩によって引き起こされる。前記発泡錠は、さらなる弱酸、または水性溶液におけるpH値を低下させるさらなる弱酸の塩を含有する。好ましく使用される口腔内分散発泡錠は、100~200 mg、好ましくは130~150 mgの質量を有する。好ましい実施形態では、前記口腔内分散発泡錠は、アスパルテームの代わりにスクラロースを該口腔内分散発泡錠の重量に対して約0.1~1.0重量%の量で含有する。前記薬剤的に許容される酸の塩は、口腔内の水性環境(唾液)において酸と共にガスを放出することができる。前記口腔内分散発泡錠の必須成分は、NaHCO3、Na2CO3、KHCO3、K2CO2、及びCaCO3、またはそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の炭酸塩である。薬剤的に許容される、前記水性溶液(唾液)におけるpH値を低下させるさらなる弱酸の塩は、クエン酸二ナトリウム、クエン酸一ナトリウムまたはそれらの混合物である。
【0012】
本発明の教示により好ましく使用される口腔内分散発泡錠は、舌先に置かれ、唾液と発泡系との反応により徐々に崩壊する。該錠剤は、比較的小さく、直径約5~10 mm、厚さ1.5~3.0 mmである。該錠剤は、打錠プロセスにおいて、破壊強度が約10~100 N、かつ破砕性が5%以下になるように適切な圧力を加えて調製される。
【0013】
好酸球性食道炎(EoE)は、食道の慢性的炎症性疾患である。EoEの診断には、以下の基準が考慮される:
・食道の食道機能不全及び食道の主な好酸球性炎症の有無;
・内視鏡での評価、具体的には、浮腫、リング、滲出液、縦溝、及び/または狭窄のようなEoE関連の内視鏡的な兆候。
【0014】
好酸球は、組織修復及び再構築において重要な役割を果たす後期相の炎症細胞である。好酸球性炎症は、線維症を誘発する可能性があり、内腔の狭小化と狭窄形成の結果、最終的に食道の機能障害が生じる。線維症の程度が疾患の持続期間と関連する兆候があるため、EoEが進行性の線維化狭窄症であると想定される。この疾患の進行につれて、炎症性及び線維性の特徴が共に観察される。
【0015】
食道の組織修復に関する情報を提供する、疾患の活動及び進行を評価するための潜在的な診断ツールの1つは、内視鏡画像化である。内視鏡検査中に明らかに見られるEoEの特徴的な食道異常には以下のものが含まれる:
・浮腫(血管特徴の喪失)、
・リング(気管化)、
・滲出液(白色のプラーク)、
・縦溝(縦線)、及び
・狭窄。
【0016】
これらの特徴は、平野ら、Gut.2013;62(4):489-95に公表された検証済みの内視鏡基準スコア(EREFSと呼ばれる)を用いて、その有無及び強さに基づいて評価し、段階分けをすることができる。
【0017】
主要な特徴:
固定リング(同心リング、波形食道、波形リング、リング状食道、気管化とも呼ばれる)
・グレード0:なし
・グレード1:軽度(わずかな周囲隆起)
・グレード2:中程度(標準的な成人診断用内視鏡の通過を妨げない程度の明瞭なリング(外径8~9.5 mm))
・グレード3:重度(診断用内視鏡が通過できない程度の明瞭なリング)
滲出液(白いスポットやプラークとも呼ばれる)
・グレード0:なし
・グレード1:軽度(病変が食道表面積の10%以下である)
・グレード2:重度(病変が食道表面積の10%を超える)
溝(縦線や縦溝とも呼ばれる)
・グレード0:存在せず
・グレード1:存在する
浮腫(血管特徴の減少や粘膜蒼白とも呼ばれる)
・グレード0:存在せず(明確な血管分布が存在する)
・グレード1:明確度の喪失または血管特徴の欠如
狭窄
・グレード0:存在せず
・グレード1:存在する
【0018】
非主要な特徴:
クレープ紙様食道(診断用内視鏡の通過時の粘膜脆弱または裂傷、ただし、食道拡張後は除く)
・グレード0:存在せず
・グレード1:存在する
合計スコアの範囲は、0~9ポイントである。
【0019】
「深い内視鏡的寛解」、即ち、EoEの炎症または線維化狭窄の兆候がまったくないことは、合計EREFSスコアが「0ポイント」と定義される。好酸球性食道炎の食道特徴の内視鏡評価は、平野らが教示した方法に従って計測される。本発明による深い内視鏡的寛解は、合計EREFSスコアが0ポイントに達した場合に得られる。従って、前記全ての特徴が0ポイントと評価される必要があるため、深い内視鏡的寛解の定義には高い基準が適用される。この「深い内視鏡的寛解」の定義は、さらに厳格であり、前記のGreuterらが発表したもの(アメリカン胃腸病学雑誌、2017年10月、Vol.112、第10版、第1527~1535頁)よりも達成が困難である。
【0020】
内視鏡検査では、粘膜の炎症及び線維化の兆候を視覚的に検査することしかできないが、食道自体の臓器機能の変化を検出するには適していないため、内視鏡検査を補完する客観的かつ計測可能なシステムを用いて、食道機能の変化を調べることができる。管腔機能画像化プローブ(EndoFLIP(登録商標), Crospon Ltd., Galway、アイルランド)は、市販の管腔画像化カテーテルであり、管腔の寸法とコンプライアンスを評価するための新しい標準として浮上している。このバルーンカテーテルは、患者を検査する際に、内視鏡に沿って展開され、流体で40 mmHgの低膨張圧または最大60 mLまで膨張する。該装置は、導電性の流体で膨張できる円筒形のバッグを備え、同時にCSA(断面積)とバッグ内圧力の適用体積を計測し、その機能を模倣する食道伸展性を計算する。
【0021】
管腔機能画像化プローブ(FLIP)を用いた食道伸展性の評価は、EoE患者における線維化狭窄の組織修復プロセス、及び本発明による治療下でのこれらの線維化狭窄の組織修復プロセスに対する効果を特徴付けるための客観的な尺度を提供すると考えられる。EoEの慢性炎症は、治療せずに放置すると、特徴的な環状の狭窄した食道として現れる線維化狭窄性変化に進行すると考えられ、これが食道の機械的閉塞及び関連症状、特に嚥下障害を引き起こし得る。
【0022】
治療の成功は、改変EREFSスコア「0ポイント」と定義される深い内視鏡的寛解の達成と、その生理学的結果、即ち EndoFLIP(登録商標)技術で計測される食道伸展性の増加によって判定できる。前記管腔機能画像化プローブ(FLIP)は、高解像度のインピーダンス面積測定を利用し、容積膨張時の管腔内の食道の解剖学的構造の3次元の近似を与える。多くの場合、EoE患者は、健常人の集団と比較して食道伸展性が低下している。
【0023】
本発明は、好酸球性食道炎の治療に用いるための、本明細書に記載のブデソニドを含有する口腔内分散発泡錠の治療計画を提供し、ここで、該口腔内分散発泡錠を1日2回、少なくとも6週間(42日間)の期間で投与することにより、深い内視鏡的寛解(EREFS=0ポイント)及び深い組織学的寛解(eos=0個/hpf)が、達成され、かつ少なくとも48週間にわたって維持される。深い内視鏡的寛解及び深い組織学的寛解は、本発明の意味において「完全な粘膜治癒」と呼ばれる。
【0024】
この「完全な粘膜治癒」の定義に加えて、過去7日間の毎日に、主なEoE臨床症状(即ち、嚥下トラブル(嚥下障害)及び嚥下時の痛み「嚥下痛」)が完全に欠如している(両方とも0~10ポイントの数値評価スケール(NRS)で「0」と評価される(0ポイントが「全く症状がない」ことを示し、10ポイントが「最も重度の症状」を示す))ため、深い臨床的寛解、深い内視鏡的寛解、及び深い組織学的寛解を同時に達成するための最も厳格なエンドポイントの定義が得られ、これは、本発明の意味において「深い疾患寛解」と呼ばれる。
【0025】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記治療計画は、導入期間及び維持期間を含む。驚くべきことに、6~12週間の導入期間中に、完全な粘膜治癒が既に達成されている。該導入期間中、患者は、本明細書に記載の口腔内分散発泡錠で治療され、即ち1日2回、 好ましくは朝及び晩に1 mgのブデソニドを含有する錠剤が投与される。代替的な実施形態では、導入治療では、2 mgのブデソニドを含有する口腔内分散発泡錠を1日1回投与することができる。
【0026】
導入期間の後、48週間から最長3年間の維持期間が続く。この維持期間中、口腔内分散発泡錠は、好ましくは1 mgのブデソニド錠剤で1日2回投与される。別の実施形態では、0.5 mgのブデソニドを含有する口腔内分散錠が1日に2回投与される。代替的な実施形態では、維持治療では、1 gまたは2 mgのブデソニドを含有する口腔内分散発泡錠を1日1回投与することができる。
【0027】
本治療計画で得られる最も顕著な効果の1つとして、食道の線維化狭窄性変化を回避し、かつ部分的に復元することができる。これは、患者において食道が組織変換のプロセスを開始するとすぐにその治療が非常に困難になる可能性があり、頻繁な食塊の嵌入等の長期にわたる食道機能不全の症状が発生する可能性があるため、重要な側面である。
【0028】
驚くべき別の効果として、本発明により、短い導入期間の後に完全な粘膜治癒及びさらに深い疾患寛解を得ることができ、これが長期間にわたって維持されることができる。
【0029】
本発明の投薬計画は、0.5 mgまたは1.0 mgのブデソニドを1日に2回、または2 mgのブデソニドを1日1回の用量で患者に口腔内分散発泡錠を投与することを含む。該投与は、好ましくは、1 mgのブデソニドが1 mgのブデソニドを含む1錠の口腔内分散錠として1日に2回投与する投与計画で適用される。あるいは、朝に0.5 mgブデソニドを含む2錠、晩に1 mgのブデソニドを含む1錠、または0.5 mgのブデソニドを含む2錠を投与することもできる。深い内視鏡的寛解及びさらに完全な粘膜治癒を達成するために、前記導入治療は、少なくとも6週間(42日間)から最長12週間(84日間)の期間にわたって実行すべきである。前記導入治療の後に、主治医に決められた48週間から最長3年間の維持治療が続く。
【0030】
各口腔内分散発泡錠の口腔内での崩壊は、少なくとも2~約10分間の時間幅、好ましくは少なくとも2~約5分間の時間幅で起こるが、最長20分間かかる場合もある。この口腔内分散発泡錠の崩壊の遅延により、崩壊中にブデソニドが懸濁する唾液が継続的に生成される。この長い崩壊時間の間に、患者は唾液を含むブデソニドを平均して10回飲み込む。唾液中に天然に存在する粘膜付着剤が食道の安定したコーティングを可能にし、それによってブデソニドが食道の外表面の細胞に密着し、ブデソニドの迅速な吸収が可能になると考えられている。
【0031】
これまで、線維化狭窄の組織修復を停止させて復元させることは、時間が必要とされる長いプロセスであると考えられていた。そのため、深い内視鏡的寛解を導入し、さらに長期間にわたって維持できる薬物治療が線維化狭窄の組織修復を停止させ、かつ部分的に復元させることもできるかどうかは不明であった。しかし、深い内視鏡的寛解を達成すると、線維化狭窄の組織修復プロセスを停止させ、さらに復元させる可能性が高まる。従って、食道伸展性の正常値への改善が見られる可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】6週目で深い内視鏡的寛解(改変EREFS「0」ポイント)となった患者の割合(LOCF)を示す。
図2】食道内で経時的に観察された放射能の割合の代表的な画像を示す。
図3】ベースラインから 6 週目までの食道伸展性の変化(LOCF)を示す。
図4】ベースライン(維持)から48週目までの食道伸展性の変化(LOCF)を示す。
図5】ブデソニド口腔内分散錠による 3 年間の維持治療中、スクリーニング(治療前)からEOT (治療終了、治療後)までの食道伸展性の変化を示す。3年間の維持治療で食道伸展性[mm]の平均(SD)は15.0 mm(2.55)から17.2 mm(2.17)に増加した(P < 0.0001)。
【0033】
驚くべきことに、前記治療計画、即ち、活動性EoE疾患を有する患者にブデソニド1 mgの口腔内分散発泡錠を1日2回投与する少なくとも6週間の治療は、図1に示されるように、プラセボと比較して有意に多くの患者を深い内視鏡的寛解に導くことができた。
【0034】
図1は、実施例でさらに説明するEOS-1臨床治験で観測された結果の概要である。寛解導入治療のベースライン時、深い内視鏡的寛解(EREFS=0ポイント)の状態にある患者はいなかった。1 mgのブデソニドを含む口腔内分散発泡錠を1日2回(BID)投与した治療では、患者の42%において6週目(治療開始後42日間)で深い内視鏡的寛解が達成されたという結果が得られた。一方、プラセボを投与された患者においては、それが0%であった。
【0035】
この口腔内分散発泡錠による目的治療の予期せぬ迅速な成功(即ち、深い内視鏡的寛解の達成)を反映して、ブデソニド1 mgの口腔内分散発泡錠を1日2回、6週間の投与で達成された、迅速な、かつ高い割合(89.8%)の深い組織学的寛解(即ち、全ての生検において「O」個のeos/hpf)も観察された。一方、プラセボ投与の場合は、それが0%であった。
【0036】
この迅速な作用発揮及び極端な有効性は、本発明の特別な医薬製剤、その放出及び食道ターゲティングプロファイルによってうまく説明され得る。
【0037】
最近のシンチグラフィー研究では、驚くべきことに、1 mgのブデソニドを含む111インジウムで標識された口腔内分散発泡錠が、5 mlの111インジウムで標識された経口用粘性ブデソニド懸濁液[0.2 mg/ml]より、食道粘膜での放射能(従って、ブデソニドも)の保持が実質的に長いことが示された。
【0038】
食道内で経時的に観察された放射能の割合の代表的な画像を図2に示している。試験は、健康なボランティア(N=10)を対象に実施した。各ボランティアは、2つの調製物の投与をそれぞれ受け、インジウムの分布を適切なシンチグラフィーカメラで観察した。特に関心のある領域は、口腔/頬側の領域、食道及び胃とした。異なる時点で、食道内の放射能を総放射能に対して設定した。
【0039】
また、わずか6週間という短い治療期間のため予想外であったが、図3に示されるように、食道伸展性(即ち、食道の直径)もプラセボと比較して有意に改善された。
【0040】
図3は、ベースラインからの食道伸展性(計測単位mm)の変化を示している。これらの値は、治療開始から42日目にEndoFLIP検査システムで計測した。プラセボ処置では、食道伸展性が低下した(食道直径の縮小を示す)。一方で、1 mgのブデソニドを含む口腔内分散発泡錠を1日2回投与された群の伸展性が有意に改善された(食道直径の拡大を示す)。
【0041】
わずか6週間という短期間での食道直径の有意な改善は、ブデソニド口腔内分散発泡錠の極めて高い局所抗炎症活性によってのみ説明され得る。これは、口腔内分散発泡錠から食道粘膜へのブデソニド放出及び送達の様式及び粘膜への長い接触時間によって達成される。
【0042】
また、わずか6週間という短い治療期間のため予期外であったが、ブデソニド1 mgの口腔内分散発泡錠の製剤を1日2回投与する新しい治療計画により、90%の深い組織学的寛解率が得られた。繰り返しになるが、これは、口腔内分散発泡錠から食道粘膜へのブデソニドの放出及び送達の様式及び粘膜への長い接触時間によって引き起こされる。
【0043】
ブデソニド 1 mgの口腔内分散発泡錠(1日2回)によるわずか6週間の治療コース後に既に達成された食道伸展性の改善、深い内視鏡的寛解及び深い組織学的寛解の導入に加えて、最近の長期データでは、以下の表1に示されるように、ブデソニド1 mgまたは0.5 mgの口腔内分散発泡錠(1日2回)が、プラセボ対照二重盲検治験において48週間にわたって治療の成功を維持できたことが示された。
表1:48週間の維持治療(FAS-DB)にわたる「深い内視鏡的寛解」のコース
【0044】
また、図4に示されるように、食道伸展性(即ち、食道直径)も、ブデソニド口腔内分散発泡錠による1年間の維持治療でプラセボと比較してさらに有意に改善した(p=0.021)。食道伸展性は、ブデソニド0.5 mgの低用量でもさらに改善されたが、留意すべきことに、ブデソニド0.5 mgで得られた値の統計的分散は、ブデソニド0.5 mgを1日2回の治療において実質的に高い。従って、維持療法中にも1 mgのブデソニドを含む口腔内分散発泡錠(BUL)を1日2回(BID)投与することが好ましい。
【0045】
驚くべきことに、ブデソニド口腔内分散発泡錠を用いた2年間の長期非盲検の延長維持治療中に、臨床再発、あるいは、内視鏡的介入または内視鏡による拡張が必要な食物嵌入を経験した患者166人中2人(1.2%)のみであった。疾患の自然な経過におけるこの予期せぬ変化を反映して、この2年間の非盲検治療段階の開始時に深い内視鏡的寛解の患者の割合(内視鏡検査を受けた患者82人中55人(67.1%))が、この2年間の治療段階中に悪くならなかった。さらに驚くべきことに、ブデソニド口腔内分散発泡錠による合計3年間の治療により、患者49人中約40人(81.6%)において深い組織学的寛解、即ち、「0」個のeos/mm2 hpfを維持することができ、さらには患者56人中約39人(69.6%)において完全な粘膜治癒を維持することができた。
【0046】
さらに、BULによる3年間の継続治療により、図5に示されるように、食道伸展性が持続的かつ臨床的に改善された。これは、1 mgまたは0.5 mgのブデソニドを含有する口腔内分散発泡錠の1日2回(BID)の投与は、EoEの自然な経過を変更し、線維化狭窄の組織修復を停止させて復元し、かつそのような事象の再発をうまく防止することできることを示している。
【0047】
また、ブデソニド口腔内分散発泡錠による6週間の寛解導入治療とその後の最長3年間の長期維持治療により、大多数の患者において、3つの異なる深い寛解の基準(Greuterら(アメリカン胃腸病学雑誌、2017年10月、Vol.112、第10版、第1527~1535頁)の改変と適応)全てについて、治療の成功を達成し、かつ継続的に維持することが可能であった(表2を参照)。
表2:3年間の維持治療による「深い」寛解基準の維持
【0048】
深い内視鏡的寛解は、次のように定義された:改変EEsAI内視鏡装置サブスコアの合計は次の基準を満たすこと:固定リング=「グレード 0:なし」または「グレード 1:軽度」、滲出液=「グレード 0:なし」、溝=「グレード 0:存在せず」、及び浮腫=「グレード 0:存在せず」。
深い臨床的寛解は、嚥下障害のNRSが「0」、嚥下時の痛みのNRSが「0」であると定義された。
深い寛解は、患者が次の3つの基準を満たす場合と定義された:深い臨床的寛解、深い内視鏡的寛解、及び深い組織学的寛解(ピーク数がhpfあたり5個未満のeosであることに基づく)。
【0049】
最も厳格な「深い疾患寛解」の定義[即ち、深い臨床的寛解:過去7日間の毎日に、0~10ポイントの数値評価スケール(0ポイントが「まったく症状がない」ことを示し、10ポイントが「最も重篤な症状」を示す)で、嚥下障害及び嚥下痛は両方とも「0」と評価され;深い内視鏡的寛解(即ち、EREFS=0ポイント)及び深い組織学的寛解(即ち、eos=0個/hpf)]、及びブデソニド口腔内分散発泡錠による最長3年間の維持療法を使用すると、患者20人中14人(70%)において、このように非常に厳密に定義された「深い疾患寛解」を達成し、かつ継続的に維持することが可能であった。
【0050】
図5は、ブデソニド口腔内分散錠による 3 年間の維持治療中、スクリーニングからEOT(治療終了)まで食道伸展性の変化を示している。単一のデータポイントは、異なる患者を反映している。統計解析から、mm単位で計測した食道伸展性の平均(SD)は、3年間の維持治療によって増加し、伸展性はスクリーニング時、即ち、治療前に得られた平均値の15.0 mm±(2.55)から17.2 mm±(2.17 (P<0.0001))まで増加したことが判明した。従って、図5は、長期的に本発明による治療によって食道伸展性が実質的に改善されたという証拠を提供している。
【実施例
【0051】
以下のように実施された臨床試験で図1~5に示される結果が得られた。
【0052】
実施例1
EOS-1寛解導入治験
背景及び目的:この治験は、活動性EoEを有する成人において、食道への薬物送達を可能にするブデソニドを含む口腔内分散発泡錠(BOT;現在は「ブデソニド口腔内分散錠」製剤と呼ばれる)、即ち、本発明の有効性及び耐容性を評価するための、無作為化されたプラセボ対照治験であった。
【0053】
方法:EOS-1は、欧州数カ国で実施された88人の成人EoE患者を対象とした重要な無作為化された二重盲検の寛解導入治験であった。患者は、BOT(1 mgを1日2回、n=59)またはプラセボ(n=29)を6週間投与する群に無作為に割り当てられた。一次エンドポイントは、臨床的及び組織学的な要素に基づいた完全な寛解であった。これには、二重盲検期の終了前の7日間の毎日に、嚥下障害及び嚥下痛の重症度が0~10のスケールで2ポイント以下(「0」=無症状、「10」=最も重篤な症状)及びピーク好酸球数が5個未満の好酸球/高倍率視野が含まれる。6週間の二重盲検期の終了時に完全な寛解に達さなかった患者をBOTによる6週間の非盲検治療(1 mgを1日2回)に供した。
【0054】
結果:6週間の時点で、BOTを投与された患者の58%が完全な臨床的寛解及び組織学的寛解を示したのに対し、プラセボを投与された患者がそれを示さなかった(P<.0001)。組織学的寛解の二次エンドポイントは、BOTを投与された患者の93%で達成されたが、プラセボを投与された患者では達成されなかった(P<.0001)。12週間後、患者の85%が寛解を達成した。6週間及び12週間のBOT投与は、安全で耐容性も良好であった。BOTを投与された患者の5%が軽度の症候性カンジダを発症したが、経口抗真菌薬で容易に治療された。
【0055】
結論:活動性EoEを有する成人を対象とした無作為化治験では、ブデソニドを含む口腔内分散発泡錠が臨床的寛解及び組織学的寛解の導入においてプラセボより有意に効果的であることを発見した。
【0056】
実施例2
EOS-2寛解維持治験
背景及び目的:好酸球性食道炎(EoE)は、慢性的炎症性障害である。嚥下可能な局所作用性コルチコステロイドは、活動性EoEを寛解させるのに有効である。しかし、これらの薬物が寛解の長期維持に有効であるかどうかは不明である。
【0057】
方法:EOS-2は、48週間にわたるEoEの寛解維持及びその後に続く推奨される BOT 0.5 mg BID による継続的な維持治療のための2年間の非盲検延長期(必要な場合は、用量をBOT 1 mg BIDに増量)におけるブデソニドを含む口腔内分散発泡錠(BOT;現在は「ブデソニド口腔内分散錠」と呼ばれる)対プラセボの2回投与の有効性と安全性を比較するための二重盲検治験であった。寛解の維持は、臨床的及び組織学的な再発がなく、何らかの理由による早期離脱がないことと定義された。29のヨーロッパの研究施設からの臨床的及び組織学的な寛解状態のEoEを有する204名の成人は、BOT 0.5 mgを1日2回(n=68)、BOT 1.0 mgを1日2回(n=68)、またはプラセボを1日2回(n=68)、最長48週間投与する群に無作為に割り当てられた。
【0058】
結果:二重盲検の48週間治療の終了時に、BOT 0.5 mgを1日2回投与された患者の73.5%及びBOT 1.0 mgを1日2回投与された患者の75%が持続的な寛解状態にあったのに対し、プラセボ群の患者の4.4%が持続的な寛解状態にあった(両方のBOTとプラセボの比較について P<.001)。プラセボ群において再発までの期間の中央値は87日であった。有害事象の頻度は、BOT 群とプラセボ群で同様であった。朝の血清コルチゾールレベルは、ベースラインで正常範囲内にあり、治療中に有意な変化はなかった。BOTを投与された4人の患者は、無症状の低血清コルチゾールレベルを発症した。BOT 0.5 mg群の患者の16.2%及びBOT 1.0 mg群の患者の11.8%において、臨床的に明らかなカンジダ症が疑われたが、全ての感染症は治療により解決した。
【0059】
結論:第3相治験では、BOT(0.5 mgまたは1.0 mgを1日2回)による最長48週間の治療は、EoEの寛解維持の面においてプラセボより優れた。どちらの用量も同様に効果があり、また耐容性も良好であった。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】