(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-24
(54)【発明の名称】人間工学的モーションチェア
(51)【国際特許分類】
A47C 3/02 20060101AFI20240417BHJP
【FI】
A47C3/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568480
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-12-08
(86)【国際出願番号】 US2021064019
(87)【国際公開番号】W WO2022235301
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523417077
【氏名又は名称】コリアー、マイケル ディ.
【氏名又は名称原語表記】COLLIER,Michael D.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】コリアー、マイケル ディ.
【テーマコード(参考)】
3B091
【Fターム(参考)】
3B091AB01
3B091AC09
3B091AD01
(57)【要約】
座面より上に位置決めされた第1の枢動軸線の周りの左右の動きをもたらす椅子は、ユーザに対して広い動的な可動域を可能にするが、所望の位置を維持するためにユーザ側での一定の又は過剰な動作を必要としない。椅子は、座面より上の規定の枢動軸線に沿って、座部を中立位置から左右に容易に位置決め及び調節することを可能にする構造を含む。椅子は、座面より上又は下に位置決めされた第2の枢動軸線の周りでの座部の前後の動き、ユーザの肩甲骨を動かす能力を制限することなくユーザの背中を支持する改良された背もたれ部、座部を中立位置に付勢するための改良された付勢構造、座部の位置をコンピュータコントローラとして使用できるようにするための又はユーザの運動データを収集できるようにするための埋込型コントローラ又は埋込型センサ、及び座部の前後の動きを所望の位置に保持できるようにする調節可能なロックシステムを提供することもできる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
座面を画定し、前記フレームに動作可能に固定された座部であって、前記座部が前側、後側、左側、右側、及び左右中心を有し、
前記座部が、第1の回転軸線の周りで左右に実質的に枢動可能であり、
前記第1の回転軸線が前記座面より上に位置決めされており、前記座部の前記左右中心が、前記第1の回転軸線の周りで、かつ前記第1の回転軸線より下で、進み動くようになっている、座部と、
を備える椅子。
【請求項2】
第2の回転軸線の周りで前後に実質的に枢動可能である前記座部と、
前記座面より上に位置決めされている前記第2の回転軸線と、
を更に含む、
請求項1に記載の椅子。
【請求項3】
前記座部が、前記第1の回転軸線及び前記第2の回転軸線の周りで同時に枢動可能である、
請求項2に記載の椅子。
【請求項4】
前記フレームに対する中立位置を有する前記座部を更に含み、前記座部を前記中立位置に付勢するための付勢構造を更に含む、
請求項2に記載の椅子。
【請求項5】
前記座部が、左右方向中立位置を有し、前記座部を前記左右方向中立位置に付勢するための付勢構造を更に含む、
請求項2に記載の椅子。
【請求項6】
前記座部が、前後方向中立位置を画定する第2の回転軸線の周りで前後に枢動可能であり、前記座部を前記左右方向中立位置及び前記前後方向中立位置の両方に同時に付勢するための付勢構造を更に含む、
請求項3に記載の椅子。
【請求項7】
前記付勢構造が、弾性部材を含む、
請求項6に記載の椅子。
【請求項8】
前記フレームが、細長い背骨フレーム及び基部を含み、前記座部が、前記基部を動作可能に係合する細長い背骨フレームに動作可能に固定されている、
請求項1に記載の椅子。
【請求項9】
前記座部の後部が、背骨フレームに動作可能に固定するための後部取付部分を含み、
前記座部の前部が、前記背骨フレームに動作可能に係合するための前部取付部分を含み、
前記フレームが、前記前部取付部分及び前記後部取付部分のうちの少なくとも1つに動作可能に係合するための少なくとも1つのローラを含み、それによって、前記座部が、前記第1の回転軸線の周りで左右に進み動くように実質的に枢動可能であることを可能にする、
請求項1に記載の椅子。
【請求項10】
前記背骨フレーム及び前記基部のうちの一方が、湾曲部を有し、
前記背骨フレーム及び前記基部のうちの他方が、前記湾曲部に動作可能に係合する少なくとも1つのローラを有し、前記座部が前記第2の回転軸線の周りで進み動くように実質的に枢動可能であることを可能にする、
請求項9に記載の椅子。
【請求項11】
前記フレームに動作可能に固定された背骨フレームを更に含み、
背もたれ部が、前記背骨フレームに動作可能に固定されている、
請求項1に記載の椅子。
【請求項12】
前記背骨フレームが、前記フレームに取り外し可能に固定されている、
請求項11に記載の椅子。
【請求項13】
前記第1の回転軸線が、前記椅子が使用されていないときには、前記座面の上方0.63cm(0.25インチ)~30.48cm(12インチ)の間に位置決めされている、
請求項1に記載の椅子。
【請求項14】
フレームと、
座部表面を画定し、前記フレームに動作可能に固定された座部であって、前記座部が前側、後側、左側、右側、左右中心、及び前記フレームに対する中立位置を有し、
前記座部が、第1の回転軸線の周りで左右に実質的に枢動可能であり、
前記椅子の使用時に、前記第1の回転軸線が、前記座部表面より上に位置決めされており、前記座部の前記左右中心が、投影された前記第1の回転軸線の周りで、かつ前記第1の回転軸線より下で、スイングし、動くようになっている、座部と、
を備える椅子。
【請求項15】
フレームと、
座面を画定し、前記フレームに動作可能に固定された座部であって、前記座部が前側、後側、左側、右側、及び左右中心を有し、
前記座部が、第1の回転軸線の周りで左右に実質的に枢動可能であり、
前記第1の回転軸線が、前記座面より上に位置決めされており、前記座部の前記左右中心が、前記第1の回転軸線の周りで、かつ第1の回転軸より下で、進み動くようになっている、座部と、
前記フレームに動作可能に固定された背もたれ部であって、
前記背もたれ部が、前記座部に向かって配置された下部と、前記下部から延びている反対側の上部とを有し、
前記上部が、第1の規定幅を有し、
前記下部が、第2の規定幅を有し、
前記第1の規定幅が、前記第2の規定幅よりも小さい、背もたれ部と、
を備える椅子。
【請求項16】
前記椅子にもたれて座ったときに、ユーザの左右の肩甲骨の動きを大きく妨げることなく、前記上部がユーザの脊椎を支持する、
請求項15に記載の椅子。
【請求項17】
前記第1の規定幅が、7.62cm(3インチ)~17.78cm(7インチ)である、
請求項15に記載の椅子。
【請求項18】
前記第2の規定幅が、40.64cm(16インチ)~58.42cm(23インチ)である、
請求項15に記載の椅子。
【請求項19】
前記座部が、前後方向中立位置を画定する第2の回転軸線の周りで前後に枢動可能であり、
前記第2の回転軸線が、前記座面より下に位置決めされている、
請求項1又は14に記載の椅子。
【請求項20】
前記椅子に動作可能に固定されたセンサを更に含む、
請求項1又は14に記載の椅子。
【請求項21】
前記センサが、コンピュータシステムと通信状態である、
請求項20に記載の椅子。
【請求項22】
前記椅子が、前記座部の前後枢動を画定する第2の枢動軸線を有し、前記センサが、左右枢動軸線及び前後枢動軸線のうちの少なくとも1つに沿った前記椅子座部の動きを検出し、この検出された動きを前記コンピュータシステムに送信する、
請求項21に記載の椅子。
【請求項23】
前記コンピュータシステムが、前記センサから収集された情報を使用して、前記椅子に座っている間の前記ユーザの運動データを収集する、
請求項22に記載の椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザが着座位置を容易に最適化し調節することを可能にするアセンブリを有する人間工学的モーションチェアに関する。具体的には、本チェアは、座面より上の規定の枢動軸線に沿って、座部を中立位置から左右(side-to-side)に容易に位置決め及び調節することを可能にする構造を含む。また、本チェアは、必要に応じて、座面より上又は下に位置決めされた第2の枢動軸線の周りでの座部の前後の動き、ユーザの肩甲骨を動かす能力を制限することなくユーザの背中を支持する改良された背もたれ部、座部を中立位置に付勢するための改良された付勢構造、座部の位置をコンピュータコントローラとして使用できるようにするための、又はユーザの運動データを収集できるようにするための、埋込型コントローラ又は埋込型センサ、及び座部の前後の動きを所望の位置に保持できるようにする調節可能な傾斜ロックシステムを提供することができる。
【背景技術】
【0002】
長時間にわたって動かずに座っていることは、人の健康にとって危険であることがある。長時間動かずに座っていることで、心疾患、肥満、糖尿病、うつ病、並びに様々な整形外科的損傷及び筋肉変性などの健康上のリスクにより、寿命が短くなる可能性があることが研究で示されている。更に、動きの制限、長期にわたる関節圧迫、及び長時間にわたる着座の血行不良から、生体力学的損傷及び筋肉骨格障害が生じる可能性がある。
【0003】
人体は、多数の関節を全ての軸線において広い角度で動かすことができる。着座中に身体がその可動域に沿って動くことを可能にすることで、長時間にわたる着座の有害な影響を低減又は緩和することができる。
【0004】
今日まで、設計者らは、着座中のユーザの動きを増加させることを目的として、椅子に人間工学的な改善をもたらすために多くの試みを行ってきた。例えば、椅子の設計者らは、ユーザを大きな可動ボールの上に座らせるか、又はボールジョイントもしくは弾性構造によって基部に接続された座部の上に座らせることによって、椅子の座部を傾斜させたり切り替えたりしようと試みてきた。これらの後者の設計の例は、Robertshawに付与された米国特許第6,866,340号(特許文献1)、Bayに付与された米国特許第8,919,881号(特許文献2)、及びHarrisonらに付与された米国特許第9,211,013号(特許文献3)に見ることができる。これらのタイプの椅子では、座部を、通常、トグルポイントの周りであらゆる方向に傾斜させ、切り替えることができるため、ユーザは、着座している間に脚及び腹部の筋肉を使用してバランスを取り、座部を所望の位置に保持するなどの積極的な動作を行う必要がある。この動作は、着座中の一種の運動をもたらすが、通常、背中への支持が、全く提供されないか又は限定的なものになるという代償が伴う。更に、着座中に、ボール、ボールジョイント、ユニバーサルヒンジなどの上でぐらつくことは、長時間座っているユーザにとって、退屈で不快なものとなり、疲労を増大させる可能性がある。
【0005】
一部の設計者は、座部をフレーム内で背もたれ部に対して摺動させることによって、椅子の人間工学を改善しようと試みてきた。これらのタイプの設計の例は、Serberに付与された米国特許第8,662,586号(特許文献4)に見ることができる。これらの設計には、ユーザが椅子に腰掛けた状態で前傾すること又は後ろに寄りかかることができるようにするために、別個の背もたれ部とは独立して、座部が、通常、前後に動くことができるようにする構造が含まれる。これらのタイプの椅子には、背もたれ部を、通常、ユーザが椅子に正常に座っているときの最適な位置に事前設定することを可能にする調節構造が含まれているが、背もたれ部の事前設定位置に対する座部の摺動運動は、典型的には、背もたれ部に対するユーザの位置を変化させ、それによって、ユーザが椅子に腰掛けた状態で前傾している又は後ろに寄りかかっている間の、快適さ、椅子のフィット性、及び椅子の健康上の利点が損なわれる。
【0006】
より最近では、発明者らは、座部フレーム内の固定された枢動点の周りで前後に回転するバケットに座ることをユーザに要求することによって、ある程度の身体の動きを依然として可能にしながら、座部の快適性を改善しようと試みた。このタイプの設計の例は、Sirpakらに付与された米国特許第3,711,152号(特許文献5)及びColonelloらに付与された米国特許第10,314,400号(特許文献6)に見ることができる。バケットを前後に枢動運動するには、ユーザが脚及び腕を使って着座位置を保持する必要があり、それによって前かがみ姿勢などが低減される。ボールの上に座るのと同様に、これらのタイプの設計では、所望の位置を保持するためにユーザの側での積極的な動作が必要となり、それによってユーザに一種の運動をもたらす。ただし、これらのタイプの設計では、他のあらゆる方向でユーザをバケットの中にかかえながら、前後の傾きのみを可能にするように動きが限定される。バケットの許容可能な動きのこの制限は、着座している間のユーザの可動域を逆に制限し、それによって、椅子のフィット性、ユーザの快適さ、及び椅子の健康上の利点が、損なわれ、制限される。
【0007】
加えて、発明者らは、ユーザが着座している間に座部が左右(side-to-side)又は前後に「ぐらつく」又は「よろめく」ことを可能にする構造を提供した。このタイプの構造の例は、Oslerらに付与された米国特許第10,010,758号(特許文献7)に見ることができる。この例では、「ハーフパイプ」又は「半球型又はドーム型動揺機構」上に座部が置かれ、その上でユーザは座部のバランスを取る必要がある。座部上でバランスを維持するには、ユーザの側での積極的な動作が必要となり、それによってユーザにある程度の運動がもたらされる。しかしながら、この構造が提供するユーザの身体の全体的可動域は限定的である。更に、ボール又はぐらつく構造物に座る場合と同様に、この座部上で着座位置を維持することは、時間が経つにつれてユーザにとって、疲労を増大させ、不安定で、退屈で、不快なものになる可能性がある。
【0008】
更に、従来のオフィスチェアは背もたれ部を有し、この背もたれ部は、ユーザが腰を掛けた状態で後ろにもたれかかったり又は寄りかかったりしている間、ユーザの背中に係合し、同時に、同じ平面内の脊柱と、背中の上部の左部分及び右部分とに係合し、それによって、特に、ユーザが自身の体重及び腕並びに重力を利用して、その前胸領域及び肩領域のより大きな伸張を達成することができる寄りかかり位置において、ユーザが自身の脊柱に対して独立してその背中の肩甲骨領域を伸張させる能力を、限定し、制約する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,866,340号明細書
【特許文献2】米国特許第8,919,881号明細書
【特許文献3】米国特許第9,211,013号明細書
【特許文献4】米国特許第8,662,586号明細書
【特許文献5】米国特許第3,711,152号明細書
【特許文献6】米国特許第10,314,400号明細書
【特許文献7】米国特許第10,010,758号明細書
【発明の概要】
【0010】
従って、椅子の人間工学及びそのフィット性を改善するための既知の構造にもかかわらず、人間工学的モーションチェアに対する必要性が残っており、この人間工学的モーションチェアとは、ユーザがそのチェアに腰掛けている間に、より多くの軸線の周りで、人体の解剖学的構造により関連した広い動的な可動域をユーザに提供するが、所望の位置を維持するためにユーザ側での一定の又は過剰な動作を必要としないものである。本発明は、本明細書に記載されるように、この必要性及び他の必要性を満たす。
【0011】
開示された一実施形態では、椅子は、座面より上に位置決めされた規定の枢動軸線に沿って、座部を中立位置から左右(side-to-side)に容易に位置決め及び調節することを可能にする構造を有する。規定の枢動軸線より下にある座部のこの左右(side-to-side)スイングの動きは、ユーザが所望の左右(side-to-side)座部位置を動的に選択し、調節し、保持することを可能にする。更に、重力によって座部が中央の左右方向(side-to-side)中立位置にバランス取るように付勢されることがあり、また付勢構造を設けて、座部を更に付勢してこの左右方向中立位置に戻すようにしてもよい。加えて、ユーザの体重がこの幾何学的形状と組み合わされると、中立位置に戻るように座部を自然に付勢するのに役立ち、他の椅子構造とは異なり、左右方向中立位置に戻るためにユーザがかける労力が著しく少なくて済む。
【0012】
これに加えて、またこれと同時に、この構造は、同じく座面より上に位置し、座部の前後の動きを提供する第2の枢動軸線を含んでもよい。座部及び背もたれ部は、第2の枢動軸線の周りで動く中央背骨部に共に接合されてもよく、それによって、第2の枢動軸線に沿った背骨部の前後の動きの間、背もたれ部位置及び座部位置を互いに対して維持することができる。背骨部に動作可能に固定された第2の付勢構造は、座部の前後方向位置を所望の前後方向中立位置に保持及び維持することができる。
【0013】
必要に応じて、この前後方向中立位置の場所は、ユーザの所望に応じて静的に調節されてもよく、第2の付勢構造は、この前後方向中立位置を所望の張力レベルに保持することができ、それによって、ユーザが、この規定の前後方向中立位置から座部を動かすために必要となる力の量を選択することを可能にする。更に、背骨部上の背もたれ部の位置の静的調節を可能にする調節構造が設けられてもよく、この調節構造は、ユーザによって一旦位置が選択されると、背骨部が第2の枢動軸線の周りで移動するときに、座部に対してその位置を保持する。
【0014】
開示された代替の可能な実施形態では、この構造は、ユーザの肩甲骨を動かす能力を制限することなくユーザの背中を支持する改良された背もたれ部、前後及び左右(side-to-side)両方の動きの方向において座部を中立位置に同時に付勢するためのモノリシックな代替の可能な弾性付勢構造、椅子の使用時に座部の位置をコンピュータコントローラとして使用できるようにするための、又は運動データを収集又は回収できるようにするための、埋込式コントローラ又はセンサ、及び座部の前後の動きを所望の位置に保持できるようにする調節可能な傾斜ロックシステムを含むことができる。
【0015】
座面が、第1及び第2の枢動軸線の周りで、左右(side-to-side)及び前後に同時にかつ同調して、回転し、スイングし、調節されることを可能にすることによって、ユーザの身体は、着座している間に、任意の他の椅子構造によるよりも多くの、無数の位置へ動くことができる。本発明の椅子機構は、座面構造より上に厳密に配置され、骨盤のほぼ中心及びその隣接する領域に配置された第1の軸線の周りで、人体に対する腰部のスイングをロック解除することになり、これによって、ユーザは、骨盤を完全に制御しつつ左右(side-to-side)に回転又はスイングさせることができ、回転軸線が使用者の身体より下に位置決めされた他の全ての設計に見られるような、座面の「傾斜」及び/又は「ぐらつき」及び/又は「バランスを取る」感覚を有することがない。
【0016】
本発明の態様を特徴付ける新規性のある利点及び特徴は、添付の特許請求の範囲において詳細に指摘される。しかしながら、新規性の利点及び特徴の理解を深めるために、本発明に関連する様々な構成及び概念を説明及び図示する以下の説明事項及び添付の図面を参照することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
前述の発明の概要及び以下の発明を実施するための形態は、添付の図面と併せて読むと、より良く理解されるであろう。
【
図1】本発明の例示的な第1の実施形態による人間工学的モーションチェアの左前方等角図である。
【
図2】
図1の人間工学的モーションチェアの左側面図であって、向きを示すために人が椅子に座った状態で、椅子の後方位置、前後方向中立位置、及び前方位置を画定する、可能な前後の動きを示す図である。
【
図3】
図2の人間工学的モーションチェアの切り欠き正面図であって、椅子が
図2の前後方向中立位置にあり、向きを示すために人が人間工学的モーションチェアに座った状態で、椅子の右スイング位置、左右方向(side-to-side)中立位置、左スイング位置を画定する、可能な左右(side-to-side)の動きを示す図である。
【
図4】
図1の人間工学的モーションチェアの切り欠き拡大部分左側面図であり、座面より上に位置決めされた、可能な前後枢動軸線を示す図である。
【
図5】
図3及び
図4の座面より上に位置決めされた、可能な左右(side-to-side)枢動軸線を示す、
図1の人間工学的モーションチェアの幾何学的配置の概略正面図である。
【
図6】人間工学的モーションチェアが
図2の前後方向中立位置かつ
図3の左右方向中立位置にある状態の、
図1の人間工学的モーションチェアの正面図である。
【
図7】人間工学的モーションチェアが
図2の前後方向中立位置かつ
図3の右スイング位置にある状態の、
図1の人間工学的モーションチェアの切り欠き正面図である。
【
図8】人間工学的モーションチェアが
図2の前後方向中立位置かつ
図3の左スイング位置にある状態の、
図1の人間工学的モーションチェアの切り欠き正面図である。
【
図9】人間工学的モーションチェアが
図2の前後方向中立位置かつ
図3の左右方向中立位置にある状態の、
図1の人間工学的モーションチェアの背面図である。
【
図10】
図2の前後方向中立位置かつ
図3の左右方向中立位置にある、
図1の人間工学的モーションチェアの左側面図である。
【
図11】内部の詳細を示すために
図6及び
図9の矢印A-Aに沿って切り欠かれた、
図10の人間工学的モーションチェアの左側面図である。
【
図12】人間工学的モーションチェアが
図2の後方位置かつ
図3の左右方向中立位置にある状態の、
図11の人間工学的モーションチェアの切り欠き図の左側面図である。
【
図13】人間工学的モーションチェアが
図2の前方位置かつ
図3の左右方向中立位置にある状態の、
図11の人間工学的モーションチェアの切り欠き図の左側面図である。
【
図14】
図1の人間工学的モーションチェアの左前方分解図である。
【
図15】人間工学的モーションチェアが
図2の前後方向中立位置かつ
図3の左右方向中立位置にある状態で、
図6及び
図9の矢印A-Aに沿って切り欠かれた、
図1の人間工学的モーションチェアの一部の拡大切り欠き等角図である。
【
図16】可能なフィット性及び向きを示すためにユーザが人間工学的モーションチェアに座っている状態の、
図12の人間工学的モーションチェアの断面図の左側面図である。
【
図17】可能なフィット性及び向きを示すためにユーザが人間工学的モーションチェアに座っている状態の、
図13の人間工学的モーションチェアの切り欠き図の左側面図である。
【
図18】可能なフィット性、向き、及び人体の解剖学的構造に対する可能な枢動場所を示すために、チェアに腰掛けて示されているユーザの切り欠きを有する、
図10の人間工学的モーションチェアの左側面図である。
【
図19】本発明の代替実施形態による、座面より上に位置決めされた枢動軸線の周りの左右の動きを提供するための代替構造を有する、可能な人間工学的モーションチェアの、
図6及び
図9の矢印A-Aに沿って切り欠かれたと同じ、矢印B-Bに沿って切り欠かれた、拡大部分左側面図である。
【
図20】
図19の人間工学的モーションチェアの断面等角図である。
【
図21】本発明の例示的な第3の実施形態による人間工学的モーションチェアの左前方等角図である。
【
図22】
図21の人間工学的モーションチェアの拡大左前方等角部分図である。
【
図23】
図21の人間工学的モーションチェアの分解等角図である。
【
図24】椅子の右スイング位置、左右方向中立位置、及び左スイング位置を画定する、可能な左右の動きを示す、
図21の人間工学的モーションチェアの正面図である。
【
図25】人間工学的モーションチェアの後方寄りかかり位置、中立位置、及び前方傾斜位置を画定する、可能な前後の動きを示し、様々な位置における可能なモノリシック付勢構造の作動を示す、
図21の人間工学的モーションチェアの切り欠き左側面図である。
【
図26】
図21の人間工学的モーションチェアの部分拡大背面図である。
【
図27】
図21の人間工学的モーションチェアの部分拡大左側面図である。
【
図28】
図21の人間工学的モーションチェアに動作可能に固定され、コンピュータシステムと通信状態のコンピュータコントローラの概略図である。
【
図29】本発明の例示的な第4の実施形態による人間工学的モーションチェアの左側面図である。
【
図30】ユーザに対する背もたれ部の可能な向きを示す、
図21の人間工学的モーションチェアの背面図である。
【
図32】ユーザに対する可能な向きを示す代替の背もたれ部の拡大図である。
【
図33】背もたれ部に係合したユーザの可能な可動域を示す、
図21の人間工学的椅子の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
チェアに腰掛けているユーザに対して広い動的な可動域を提供するが、所望の位置を維持するためにユーザ側での一定の又は過剰な動作を必要としない人間工学的モーションチェア100(
図1~
図18)、100’(
図19~
図20)、100’’(
図21~
図27)、100’’’(
図29)が、
図1~
図33に示される。人間工学的モーションチェアの4つの例示的な実施形態が示される。第1の可能な実施形態が
図1~
図18に示され、第2の可能な実施形態が
図19~
図20に示され、第3の可能な実施形態が
図21~
図27に示され、第4の可能な実施形態が
図29に示される。これらの実施形態の特徴を以下に記載する。過度の繰り返しを制限するために、実施形態間で同様の要素は同様の要素番号を有する。
【0019】
例示的実施例1
図3に最もよく示されるように、人間工学的モーションチェア100は、座部表面を画定する座部5を含むことができ、座部は、フレームに動作可能に固定され、フレームは、座部面8より上に位置決めされた規定の枢動軸線7に沿って、座面8を左右方向中立位置102から左右(side-to-side)9に容易かつ動的に位置決め及び調節することを可能にする構造を有する。好ましくは、
図2及び
図4に最もよく示されるように、人間工学的モーションチェア100はまた、これもまた座面8より上に位置決めされた第2の枢動軸線6を含むこともでき、この第2の枢動軸線6は、座面8を前後方向中立位置104から前後に容易かつ動的に位置決め及び調節することを可能にして、座部の前後の動きを提供する。また、左右方向(side-to-side)付勢構造11(
図4、
図9、
図14)及び前後方向付勢構造10(
図1、
図2、
図4、
図11~
図13)が、第2の枢動軸線6の周りの座部5の動きを制御及び規制するために設けられてもよい。人間工学的モーションチェア100に、この制御された、動的な、規制された、かつ調節可能な可動域を提供するための例示的な構造について、以下により詳細に説明する。
【0020】
全体構成
図1を参照すると、人間工学的モーションチェア100は、上方に延びているポール110などを支持する基部2を含み得る。従来のホイール3又はキャスターが、ロック構造の有無にかかわらず、人間工学的モーションチェア100が置かれる床に係合するために基部に取り付けられてもよい。ポール110は、概して、そこから上向きに延びている長手方向中心線44(
図2~
図5)を画定している。座部5及び背もたれ部1は、細長い座部背骨フレーム13に動作可能に係合し、背骨フレーム13は、基部のポールに固定された基部取付部112に動作可能に係合している。
【0021】
左右スイング構造
座部5は、背骨フレーム13及び背もたれ部1に対して移動可能であり、ユーザに快適にフィットするように所望に応じてパッド及び/又は輪郭を付けてもよい。座部5は、左右中心(left-to-right center)22(
図5、
図6、
図15、及び
図20)を画定する左側及び右側を有してもよい。ユーザによる使用時及び/又は非使用時に、人間工学的モーションチェア100がその前後方向中立位置104及び左右方向中立位置102にある場合、
図4及び
図6に最もよく示されるように、座部5は、概ね平坦な座部表面を提供し、この座部表面は、概ね平坦な座部表面に対して実質的に平行に位置合わせされ、座部5の最下表面に沿って位置決めされた座面8を画定している。
【0022】
一実施形態では、座部5は、
図4及び
図6~
図9に最もよく示されるように、背骨フレーム13に枢動可能に固定された座板4に動作可能に固定されている。座板4は、一方の端部がピン120(
図14、
図15)などによって背骨フレーム13に枢動可能に固定されている。座板4の反対側の端部は、下方に延びている縁部18を含み、この縁部18は、背骨フレームに動作可能に固定されたホイール17に動作可能に係合するための弓形レール14を画定し、
図7及び
図8に最もよく示されるように、スイング円弧構造27を画定する。
【0023】
代替的に、
図19及び
図20に最もよく示されるように、人間工学的モーションチェア100’の第2の可能な実施形態は、座板41を有してもよく、この座板41は、座板41から下方に延びている前方及び後方弓形カム18などを含み、スイング円弧構造27は、前方及び後方カムに動作可能に係合するための前方及び後方ホイール17、42の両方を含むことができ、それによって、左右枢動軸線7において物理的な枢動ピンを必要とすることなく、座板が左右(side-to-side)枢動軸線7に沿って左右(side-to-side)に枢動することを可能にする。座板41は、前方及び後方のホイール17、42と位置合わせされて、前方及び後方のホイール17、42によって左右(side-to-side)にスイングするように動作可能に固定され得ることが理解され、これらの前方及び後方のホイール17、42は、動作可能な固定構造43を介して背骨フレーム13に動作可能に固定され得るものである。当然ながら、ホイール及び係合するフレーム要素の場所は、ホイールが座板に動作可能に固定され、カムがフレームに埋め込まれるように、逆にしてもよい。
【0024】
この構造は、ユーザが座部に座る能力を妨げる構造をより少なくして、座部5が矢印24(
図1、
図2、
図5、及び
図20)の方向に左右枢動軸線7の周りで枢動又はスイングすることを可能にすることが理解され得る。更に、座部5の左右中心22が左右枢動軸線7より下に位置決めされているため、重力が、座部5を、左右方向(side-to-side)中立位置102に戻ってバランスを取り直すように付勢することになる。好ましくは、
図4及び
図9に示され、代替の座板41(
図19、
図20)について上述されたように、弾性付勢構造11が、背骨フレーム13と座板4との間に延びており、それによって、座部をその左右方向中立位置102(
図3)に更に付勢し、左右方向中立位置102(
図3)から離れる動きに対して選択可能でありかつ規定された抵抗をもたらす。それぞれが固有の抵抗特性を有する代替の弾性部材11を設けて、ユーザが所望に応じて付勢力を調節することができるようにしてもよい。調節可能な代替の付勢力構造も設けられてもよい。
【0025】
図5を参照すると、左右枢動軸線7に対する座面8の左右スイングが概略的に示されている。左右枢動軸線は、中立位置にあるときに、座面8より上かつ左右中心22より上に位置し、この構造は、好ましくは、左右(side-to-side)枢動角度40がいずれの方向においても約10度又は5度~15度となることを可能にし、図示のように、作動されて左右(side-to-side)スイングした座面9及び左右中心22の移動が達成されることを可能にする。
【0026】
前後滑動運動構造
図9及び
図14に最もよく示されるように、背骨フレーム13は、互いに接合された2つの平行に整列した湾曲レールによって形成され得る。レールの縁部は、
図10、
図13、及び
図15に最もよく示されるように、弓形レール14を画定するように下方に延びており、弓形レール14は、基部取付部112に動作可能に固定されたホイール15に動作可能に係合している。ガイド構造又はホイール16(
図11~
図13及び
図15)又は他の制御構造又は制御アセンブリは、レールの一部に係合して、背骨フレーム13を基部取付部112上の定位置に動作可能に保持する一方で、背骨フレーム13が前後枢動軸線6に沿って前後に滑動することを依然として可能にし得る。ホイール及び係合する弓形レール要素の場所は、ホイールが背骨フレームに動作可能に固定され、弓形レール14が基部に固定されるように、逆にしてもよいことが理解される。
【0027】
図4に最もよく示されるように、弓形レール14(
図4)の縁部の輪郭を有する部分のセクションは、前後枢動軸線6などの仮想の又は投影された回転軸線の周りでの背骨フレーム13の動きを提供するように成形することができることが理解され得る。縁部の輪郭又は弓形レール14(
図4)の輪郭は、弓形レールの半径などに応じて、座面8より上にある仮想の、投影された枢動軸線6の正確な場所をもたらすように成形され得ることが理解され得る。この輪郭成形は、スイング円弧構造27(
図7、
図8)によってもたらされる左右枢動軸7にも適用することができる。好ましくは、枢動線6は、フレームの長手方向中心線44と位置合わせされており、座面8が、図示されるように、軸線6の周りで、矢印20(
図1、
図2、
図4、
図10~
図13、及び
図20)の方向に、また、作動された座面9(
図2、
図3、
図5、
図7、
図8、
図12、
図13)で動作可能に図示されるように、動くことを可能にする。より好ましくは、背骨フレーム13の弓形レール14は、前後方向中立位置から後方に約18度又は10~25度、前後方向中立位置から前方に約10度又は5~12度の滑動角度39を許容し、最適化するように成形される。弓形レール14に沿った自由度は、構成要素28などの停止特徴部又は構造によって制御することができる。例えば、ユーザは、代替として、弓形レールを所望の位置に位置決めし、弓形レールをその所望の位置に保持する構造を係合させてもよい。
【0028】
図15を参照すると、前後方向付勢構造10は、基部取付部分112から、ローラ又はケーブルプーリ26(
図7、
図8、
図11~
図13)の周りを通って、背骨フレーム13まで延びるケーブル12を含むことができる。背骨フレームのレールに沿った間隔を空けた穴21又は他の固定構造により、ユーザは、背骨フレーム35に沿って別の穴又は所望の場所にケーブル12の取付点を調節するだけで、人間工学的モーションチェア100の所望の前後方向中立位置を予め選択することができる。ばね10などの弾性部材がケーブル12の張力を付勢し、それによって、選択された穴、又は背骨フレーム取付部35の場所をその最下点まで付勢し、それによって中立位置を画定する。
【0029】
この構成は、
図2、
図11~
図13、
図16、及び
図17に示されるように、座部が、中立位置から前方又は後方の両方に可動域全体にわたって動かされるときの張力を増加させることが理解され得る。更に、ばね10とケーブル12との間に動作可能に固定されたねじ及びナットなどの調節構造36(
図15)などによって、ケーブルの張力をユーザの体重及び好みに合わせて所望のように調節するか、又は所望のように事前設定することができる。
【0030】
必要に応じて、背もたれ部1は、
図11に示すように、背骨フレームに枢動可能に固定されてもよい。背骨フレームから背もたれ部まで延びているねじなどの調節構造46などを使用して、座部をその枢動軸線の周りの予め選択された所望の位置47(
図4及び
図11)に動かして保持することができ、それによって人間工学的モーションチェア100の快適性及びフィット性が更に改善される。背もたれ部のこの事前選択された位置は、人間工学的モーションチェア100の動的な可動域全体にわたって所定の位置に留まり得る。
【0031】
フィット性、使用、及び操作
本発明の好ましい実施形態の機械的態様を十分に説明したことで、人間工学的モーションチェア100の改善されたフィット性及び機能が明らかになった。例えば、座部に座っているユーザは、前後にのみ枢動するバケット内に拘束されるのではなく、座部に腰掛けた状態で動き回る能力を依然として提供されながら、座面より上に配置された枢動軸線の周りで左右にスイングすることができる。
【0032】
更に、位置調節可能な背もたれ部によって、一貫性のある予測可能な背中の支持が提供され得、背もたれ部は、一旦適切なフィット及び位置に調節されると、座部と共に前後方向に移動して、座部の前後可動域全体にわたって座部に対して同じ位置を維持することができる。人間工学的モーションチェアの前後可動域全体にわたって、背もたれ部に対する座部の位置が一定であるため、ユーザは人間工学的モーションチェア100の可動域全体にわたって、最適なフィット感、快適性、背中の支持を維持することができる。
【0033】
更に、座部を前後枢動軸線及び左右枢動軸線より下に吊り下げることにより、座部の位置を任意の所望の位置に無段階に調節することが可能になる一方で、ユーザに、所望の中立位置を保持するために座部上でバランスを取ることを強いることはない。むしろ、重力、ユーザの体重、及び付勢構造が、座部をその中立位置に付勢する。対照的に、ボール、ユニバーサルジョイント、又は座部より下に枢動軸線を位置決めする他の構造上に載置される座部及びバケットは、座部を所望の位置にバランスさせるために、ユーザの側で常に動作する必要がある。
【0034】
図18を参照すると、第1の回転軸線の最適な場所は、概して、人間のユーザの背骨32が骨盤30と交差する領域にあり得、ユーザに対する第1の回転軸線7の可能な場所が示されている。好ましい実施形態では、第1の回転軸線7の可能な場所の最適範囲29は、人体37内部にある骨盤30のほぼ頂点と、着座したときの人体の胴体及び臀部45(
図2、
図3、及び
図18)の最下部分38との間であるが、座面8のわずかに上であるのが理想的である。回転軸線は、ユーザの解剖学的構造の筋肉及び脂肪を考慮し、なおかつ本発明の利点を達成するために、着座したときに、大腿骨31及び坐骨結節骨33の最下部か又はそれらより下にあり、なおかつ座面8より上であってもよい。ユーザの身体は、図示されるように座面8より下に延びていてもよく、それによって、代替のハンモックスタイル又はメッシュの座面カバーデザインで椅子を使用する場合には、相対的座面8を下方に押し下げることになる。
【0035】
この設計による高度な改良点は、
図3においてより完全に理解することができ、ユーザは、上半身及び上部背骨32を長手方向中心線44の周りでほぼ直立位置に維持しながら、座面8を左右のスイングされた位置9に移動させ、腰部角度34及び下部胴体45を解放する。これは、高く評価されるが、それは、第1の回転軸線7が、座面8より上にあり、所望される可動性及び柔軟性の領域において人間の背骨に概ね位置合わせされてより密接に隣接しているため、少ない労力と上半身の動きとによって左右スイング運動が素早く達成され、それによって上半身の安定性が得られ、腕は、移動中にタイピングなどの他の努力を同時に行うための制限が低減されるか又は制限がなく、自由を維持することができるためである。
【0036】
第1及び第2の移動軸線の枢動と同期スイング運動とを一緒に連動するように組み合わせることにより、2つの軸線の周りの無数の角度を同時に達成することができ、自然で直感的な人体の動きとより十分に連携した2つの軸線の周りの無限の角度を、ユーザの最小限の努力で、幅広い角度で達成することができることが十分に理解され得、解釈され得る。
【0037】
更なる実施形態及び特徴
本発明の本質的な特徴及び利点のいくつかを十分に説明してきたが、これらの概念は更に最適化することができることが理解され得る。
【0038】
例えば、
図21~
図27を参照すると、例示的な第3の可能な人間工学的モーションチェア100’’は、上方に延びているポール110などを支持する基部2を含み得る。従来のホイール3又はキャスターが、ロック構造の有無にかかわらず、人間工学的モーションチェア100’’が置かれる床に係合するために基部に取り付けられてもよい。ポール110は、概して、そこから上向きに延びている長手方向中心線44を画定している。背もたれ部300は、細長い座部背骨フレーム13に動作可能に係合し、背骨フレーム13は、ポール取付部230によって基部のポール110に動作可能に固定された椅子フレーム210に動作可能に係合する。
【0039】
座部5は、背骨フレーム13及び背もたれ部300に対して移動可能であり、ユーザに快適にフィットするように所望に応じてパッド及び/又は輪郭を付けてもよい。座部5は、左右中心22(
図24及び
図26)を画定する左側及び右側を有してもよい。ユーザによる使用時及び/又は非使用時に、人間工学的モーションチェア100’’がその前後方向中立位置104(
図25)にあり、かつ左右方向中立位置102(
図24)にある場合、座部5は、概ね平坦な座部表面を提供し、この座部表面は、概ね平坦な座部表面に対して実質的に平行に位置合わせされ、座部5の最下表面に沿って位置決めされた座面8を画定している。
【0040】
座部5は、
図22、
図23、及び
図24に最もよく示されるように、椅子フレーム210に枢動可能に固定された座部プレート41’に動作可能に固定されていてもよい。座板41’は、そこから下方に延びている前方及び後方弓形カム18などを含むことができ、スイング円弧構造27は、それにより弓形スイング構造27が回転軸線を座部5より上に投影することができる前方及び後方弓形軸受スロット203などを含むことができる。前部ローラ軸受204及び後部ローラ軸受205は、取付構造50などを介して椅子フレーム210から延びており、座板41’内のそれぞれの軸受スロット203を位置合わせし、投影された軸線7の周りで座板が矢印24の方向に左右に枢動することを可能にする。
【0041】
図22に最もよく示されるように、椅子フレーム210は、前後方向軸受スロット211を含んでもよく、この前後方向軸受スロット211は、第1の好ましい実施形態と同様に、ポール基部230から延びて軸線6の周りで前後方向に滑動する前後方向ローラ軸受212に動作可能に係合する。必要に応じて、前後移動停止機構202(
図24、
図25、
図26)を設けて、ユーザが所望の前後位置を選択して保持し、それによって椅子フレーム210を一時的に停止させることができるようにしてもよい。停止機構202は、嵌合ピン受入部213に動作可能に係合するロックピン206(
図26)を含んでもよい。間隔の空いた複数のピン受入部213をポール基部230(
図25)に設けて、椅子フレーム210の様々な位置を選択して保持できるようにしてもよい。
【0042】
図23、
図25、及び
図26を参照すると、代替の好ましい付勢構造208が示されている。付勢構造208は、好ましくは、ポール取付部230の左右中心から座板4の左右中心まで延びているモノリシック弾性部材である。この向きでは、この弾性部材上の張力が、座部をその左右方向(left-to-right center)中立位置及びその前後方向中立位置の両方に戻すように付勢することが理解され得る。弾性部材の厚さ及び弾性を最適化して、座部をその中立位置に戻すために加えられる付勢力を調節することができる。必要に応じて、各々がそれ自体の信頼特性を有する複数の弾性部材を提供することができ、ユーザが、そのユーザにとって所望の付勢特性を提供する弾性部材を選択することを可能にする。調節可能な弾性部材か、又は複数の部分であるがほぼ同じ方向に取り付けられた弾性部材を、ユーザが所望の付勢張力特性を選択するために設けることができることが理解される。
【0043】
図22及び
図23に最もよく示されるように、背骨フレーム13は、ボルトなどで椅子フレーム210に取り外し可能に固定された上部背骨フレーム207を含み得る。背もたれ部300が、上部背骨フレーム207に動作可能に固定されており、それによって、全く新しい椅子を購入する必要なく、必要に応じて背もたれ部を交換することが可能になり、かつ/又はより容易な保管及び輸送のために背もたれ部を分離して容易に再設置することが可能になる。
【0044】
人間工学的モーションチェアは、コンピュータシステム402(
図28)と通信状態のコントローラ傾斜計400(
図27及び
図28)を含んでもよい。コントローラ傾斜計400は、座部5の左右(side-to-side)及び前後の同時の動きを検出及び使用して、コンピュータ画面上のカーソルを移動させることなどによって、又は機能もしくはコンピュータプログラムなどを命令することなどによって、コンピュータシステム402を制御することができ、あるいは、動作、姿勢制御、又は関連するものを理解及び分析し、健康及び身体能力の改善のために推奨される動きをユーザに知らせるために、椅子の使用時のユーザ活動に関するデータを収集することができる。
図28を参照すると、1つの可能なコントローラ400の実施形態において、コントローラは、互いに通信状態にある、電源403、プロセッサ404、送信機405、及びセンサ406を含み、座部5の動き及び位置を検出及び収集し、その情報をコンピュータシステム402に送信する。センサ406としては、二次元又は三次元の傾きセンサなど挙げることができる。電源403は、内部バッテリであってもよいし、又は有線補助電源からのものであってもよい。同様に、送信機405は、必要に応じて有線であってもよいし又は無線であってもよい。好ましくは、コントローラ400からの情報は、コンピュータシステム402に無線401で送信される。
【0045】
背もたれ部300は、
図30~
図33に最もよく示されるように、ユーザの背中との人間工学的係合を提供するように最適化することができる。好ましくは、背もたれ部300は、本発明の人間工学的モーションチェアに動作可能に固定することができる細長く狭い上部301を有するが、従来のオフィスチェア及び他の椅子に設置されたときにも利点を提供することができる。背もたれ部300は、好ましくは、背もたれ部300に背中を載せて椅子100’’に腰掛けたときにユーザ303の脊柱302を支持する第1の規定の厚さ309を有するが、第1の規定の厚さ309は、ユーザの左肩甲骨305と右肩甲骨部304との間の距離よりも小さいのが最適である。第1の規定の厚さ309の範囲は、約7.62cm~17.78cm(約3インチ~7インチ)であり、好ましい厚さは8.89cm~12.7cm(3.5インチ~5インチ)である。第1の規定の厚さ309の間の表面の幾何学形状及び輪郭は、ユーザ303の脊柱302に向かって前方に突出する、第1の規定の厚さ309の端点同士の間にある材料からなる弧又はドームを含んでもよく、従って、ユーザが寄りかかったときの脊柱302との最初の係合は、まず、その領域における支持を最大化するように、脊柱上で中心に合わせられ、位置合わせされることになる。背もたれ部300は、ユーザの下部胴体を支持するために第2のより広い規定の厚さ310を有してもよく、第2の規定の厚さは、
図31に示されるように、遠位下端部334の範囲内において、座部5に向かって、背もたれ部300の第1の規定の厚さ309から遠位下端部334に向かって変化する。厚さ310の範囲は、40.64cm~58.42cm(16インチ~23インチ)であってよく、好ましい範囲は、45.72cm~55.88cm(18インチ~22インチ)である。細長い上部背もたれ部分301の垂直方向の寸法範囲333は、12.7cm~22.86(約5インチ~9インチ)であり、好ましい範囲は、15.24cm~20.32cm(6インチ~8インチ)である。下部背もたれ部300の垂直方向の寸法範囲334は、20.32cm~33.02cm(8インチ~13インチ)であり、好ましい範囲は、22.86cm~30.48cm(9インチ~12インチ)である。ユーザの様々な体型及び身体寸法に適合するように、細長い部分301を有する背もたれ部300の複数のサイズを提供又はカスタマイズすることができることが理解される。
【0046】
図32を参照すると、背もたれ部300は、背もたれ部300の全長344にわたって実質的に均一な第1の規定の厚さ309を有する細長いパネルであってもよい。
図33を参照すると、肩甲骨304、305及びユーザの肩領域を妨げることなくユーザの背中を支持する背もたれ部300を提供することにより、ユーザは椅子100’’に寄りかかり、
図33に示すように、肩甲骨304、305及び肩領域を脊柱302の後ろで後方に伸ばし、脊柱302の周りで弧を描くことができる。この動きにより、ユーザは、椅子100’’に寄りかかったままユーザの前側胸部領域311を伸ばすために、肩及び肩甲骨領域320を解放して背もたれ面312の背後に動かすことができる。ユーザは、寄りかかって、重力と、肩甲骨及び肩領域内の非制限空間とを利用して、同時に又は独立して、前側胸部領域の伸張を最大化することができる。
【0047】
本発明の追加の特徴及び利点を十分に説明してきたが、開示された各特徴が全ての実施形態に含まれる必要はないことが理解され得る。更に、これらの特徴の多くは、既存の椅子設計を改善するために使用することができる。例えば、
図29に示すように、第4の可能な人間工学的チェア100’’’の実施形態が示される。この実施形態では、座面より上に位置決めされた枢動軸線7において座部5の左右(left-to-right)、側方方向(side-to-side)の枢動をもたらす左右(left-to-right)、側方方向(side-to-side)運動構造は、座面より下に位置する枢動軸500において座部の前後の枢動をもたらす従来の座部基部501に動作可能に固定することができる。
【0048】
加えて、例示的な第3の実施形態100’’の背もたれ部300は、例示的な第1の実施形態100、第2の実施形態100’、例示的な第4の実施形態100’’’上に設置することができるか、又は任意の他の既存の椅子設計に追加することができる。従って、本開示の実施形態を、本発明を完全に開示し、説明するために提供したが、それらは、特許請求の範囲を超えて本発明を限定するものとみなされるべきである。
【国際調査報告】