(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-24
(54)【発明の名称】粉体コーティング組成物ブレンド
(51)【国際特許分類】
C09D 201/02 20060101AFI20240417BHJP
C09D 5/03 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
C09D201/02
C09D5/03
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023569656
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(85)【翻訳文提出日】2023-12-11
(86)【国際出願番号】 EP2022062327
(87)【国際公開番号】W WO2022238259
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/092543
(32)【優先日】2021-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518326445
【氏名又は名称】オルネクス ネザーランズ ビー.ヴイ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ペンシェン
(72)【発明者】
【氏名】ブリンクフイス、リシャール ヘンドリクス ゲリット
(72)【発明者】
【氏名】シオン、ロン
(72)【発明者】
【氏名】ミネッソ、アレッサンドロ
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038DB211
4J038DG191
4J038JA34
4J038KA04
4J038MA02
4J038MA13
4J038MA14
4J038NA01
4J038NA26
4J038PC02
4J038PC06
4J038PC08
(57)【要約】
架橋性組成物及び触媒系を含む粉体コーティング組成物ブレンドであって、前記架橋性組成物は、触媒系を介した真マイケル付加(RMA)反応によって架橋可能である、架橋性ドナー成分A及び架橋性アクセプタ成分Bによって形成され、前記触媒系は、巨視物理的に分離されている触媒前駆体組成物(P)及び触媒活性化剤組成物(C)を含む分離された触媒系であり、又は架橋性ドナー成分A及び架橋性アクセプタ成分Bはマクロ物理的に分離されている、粉体コーティング組成物ブレンド。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性組成物及び触媒系を含む粉体コーティング組成物ブレンドであって、前記架橋性組成物は、前記触媒系を介した真マイケル付加(RMA)反応によって架橋可能である、架橋性ドナー成分A及び架橋性アクセプタ成分Bによって形成され、触媒系は、200℃未満、好ましくは175℃未満、より好ましくは150℃、140、130又はさらには120℃未満の硬化温度で、及び好ましくは少なくとも70℃、好ましくは少なくとも80、90又は100℃の硬化温度で、RMA架橋反応を触媒することが可能であり、
前記架橋性組成物は、
a)活性化メチレン又はメチン中に少なくとも2つの酸性C-Hドナー基を有する前記架橋性ドナー成分Aと、
b)真マイケル付加(RMA)によって成分Aと反応して架橋されたネットワークを形成する少なくとも2つの活性化不飽和アクセプタ基C=Cを有する架橋性アクセプタ成分Bと、
を含み、
並びに
前記触媒系は、巨視物理的に分離されている、触媒前駆体組成物(P)及び触媒活性化剤組成物(C)を含む分離された触媒系であり、
・前記触媒前駆体組成物(P)は、触媒前駆体P1を含み、及び
・前記触媒活性化剤組成物(C)は、触媒活性化剤C1を含み、
又は
前記架橋性ドナー成分A及び前記架橋性アクセプタ成分Bは、巨視物理的に分離されており、並びに前記触媒系は、
・前記触媒前駆体P1及び前記触媒活性化剤C1を含む潜在性触媒系、又は
・強塩基を含む非潜在性触媒系
であり、
前記触媒前駆体P1は、ドナー成分A中の前記活性化C-H基のpKaより2単位超、好ましくは3単位超、より好ましくは4単位超、さらにより好ましくは少なくとも5単位低いそのプロトン化形態のpKaを有する弱塩基であり、前記触媒活性化剤C1は硬化温度でP1と反応することができ、AとBの間でのマイケル付加反応を触媒することができる強塩基(C1P1)を生成する、
粉体コーティング組成物ブレンド。
【請求項2】
前記分離された触媒系が、A中の前記活性化C-HのpKaより2ポイント超、より好ましくは3ポイント超、さらにより好ましくは4又は5ポイント超低いpKaを有し、脱プロトン化すると、前記活性化剤C1と反応することができる弱塩基を生成して、前記架橋性組成物AとBの間での前記マイケル付加反応を触媒することができる強塩基を生成する酸である遅延剤Tをさらに含む、請求項1に記載の粉体コーティング組成物ブレンド。
【請求項3】
前記粉体コーティング組成物ブレンドが、
・前記架橋性組成物の成分A及び/又はBを前記触媒前駆体組成物(P)及び任意で前記遅延剤Tと溶融混合して前駆体押出物を得ること、
・前記架橋性組成物の成分A及び/又はBを前記触媒活性化剤組成物(C)及び任意に前記遅延剤Tと溶融混合して活性化剤押出物を得ること、
・前記前駆体押出物及び活性化剤押出物を固化及び粒状化して、前駆体粉体組成物及び活性化剤粉体組成物を得ること、
・前記前駆体及び活性化剤粉体組成物を乾式ブレンドして、前記粉体コーティング組成物ブレンドを得ること、
によって調製される、請求項1又は2のいずれか一項に記載の粉体コーティング組成物ブレンド。
【請求項4】
前記粉体コーティング組成物ブレンドが、
・前記架橋性成分Aを溶融混合してドナー押出物を得て及び/又は前記架橋性成分Bを溶融混合してアクセプタ押出物を得て、それによって前記架橋性成分A及び/又はBは前記潜在性又は前記非潜在性触媒系と溶融混合されること、
・前記ドナー及び/又は前記アクセプタ押出物を固化及び粒状化してドナー粉体組成物及び/又はアクセプタ粉体組成物を得ること、
・前記成分A及びBの両方が溶融混合されている場合には、前記ドナー粉体組成物及びアクセプタ粉体組成物を乾式ブレンドすること、又は前記粉体コーティング組成物ブレンドを得るために成分A又はBのみが溶融混合されている場合には、前記ドナー粉体組成物又は前記アクセプタ粉体組成物を、それぞれ粉砕可能な固体形態を有する前記架橋性成分B又はAと乾式ブレンドすること、
によって調製される、請求項1~3のいずれか一項に記載の粉体コーティング組成物ブレンド。
【請求項5】
前記触媒活性化剤組成物(C)が、
・前記触媒活性化剤C1が液体である場合には担体上に存在する触媒活性化剤C1
を含み、又は
前記触媒前駆体組成物(P)が、
・前記触媒前駆体が液体である場合には担体上に存在する触媒前駆体P1
を含み、又は
前記担体は、好ましくは、5~200μm、より好ましくは10~150μm、さらにより好ましくは10~100μm、最も好ましくは15~50μmの粒径(D
v
50として定義される)を有する、請求項1又は2に記載の粉体コーティング組成物ブレンド。
【請求項6】
前記粉体コーティング組成物ブレンドが、
・前記架橋性組成物の成分A及びBを前記触媒前駆体組成物(P)及び任意で前記遅延剤Tと溶融混合して前駆体押出物を得ること、
・前記前駆体押出物を固化及び粒状化して、前駆体粉体組成物を得ること、
・前記前駆体粉体組成物を担体上に存在する活性化剤と乾式ブレンドして、前記粉体コーティング組成物ブレンドを得ること、又は
・前記架橋性組成物の成分A及びBを前記触媒活性化剤組成物(C)及び任意に前記遅延剤Tと溶融混合して活性化剤押出物を得ること、
・前記活性化剤押出物を固化及び粒状化して、活性化剤粉体組成物を得ること、
・前記活性化剤押出物を担体上に存在する前駆体と乾式ブレンドして、前記粉体コーティング組成物ブレンドを得ること、
によって調製される、請求項5に記載の粉体コーティング組成物ブレンド。
【請求項7】
前記前駆体粉体組成物、活性化剤粉体組成物、前記ドナー粉体組成物及びアクセプタ粉体組成物が、最大200μm、より好ましくは最大150μm、より好ましくは100μm以下、最も好ましくは50μm未満のD
v
50として定義される粒径を有する、請求項3~6のいずれか一項に記載の粉体コーティング組成物ブレンド。
【請求項8】
乾式ブレンドし、前記粉体コーティング組成物ブレンドを得るために使用される前記前駆体粉体組成物及び活性化剤粉体組成物若しくは前記ドナー粉体組成物及びアクセプタ粉体組成物の質量比(重量%/重量%)が、20~0.05、より好ましくは10~0.1、さらにより好ましくは5~0.2、最も好ましくは2~0.5であるか、又は
前記成分が、担体上に存在する触媒前駆体若しくは活性化剤であり、総粉体組成物ブレンドに照らして、1~30重量%、好ましくは3~20重量%、より好ましくは4~15重量%の量で存在する、
請求項3~7のいずれか一項に記載の粉体コーティング組成物ブレンド。
【請求項9】
前記分離された触媒系において、
・前記活性化剤C1が、エポキシド、カルボジイミド、オキセタン、オキサゾリン若しくはアジリジン官能性成分の群、好ましくはエポキシド若しくはカルボジイミドから選択され、及び
・前記触媒前駆体P1が、カルボキシラート、ホスホナート、スルホナート、ハロゲン化物若しくはフェノラートアニオンの群から選択される弱塩基求核性アニオン若しくは非イオン性求核試薬、好ましくは第三級アミン若しくはホスフィン、より好ましくは、カルボキシラート、ハロゲン化物若しくはフェノラートアニオン若しくは1,4-ジアザビシクロ-[2.2.2]-オクタン(DABCO)若しくはN-アルキルイミダゾールの群から選択される弱塩基求核性アニオン、最も好ましくはカルボキシラートであり、及び/又は
・好ましくはプロトン化前駆体P1である前記遅延剤T
請求項1~8のいずれか一項に記載の粉体コーティング組成物ブレンド。
【請求項10】
前記触媒系において、
・前記活性化剤C1が、P1と反応性の活性化不飽和基C=C、好ましくはアクリラート、メタクリラート、フマラート、イタコナート若しくはマレアートを含むマイケルアクセプタであり、並びに
・前記触媒前駆体P1が、ホスフィン、N-アルキルイミダゾール及びフッ化物の群から選択される弱塩基であるか、若しくはXがN、P、O、S若しくはCである酸性X-H基含有化合物からの弱塩基求核性アニオンX
-であって、アニオンX
-は活性化剤C1と反応性のマイケル付加ドナーである、弱塩基求核性アニオンX
-であり、並びに/又は
・好ましくはプロトン化前駆体P1である遅延剤T、
請求項1~9のいずれか一項に記載の粉体コーティング組成物ブレンド。
【請求項11】
前記触媒前駆体P1が、酸性ではないカチオン、好ましくは、式Y(R’)
4によるカチオンを含む塩として添加され、Yは、N若しくはPを表し、各R’は、ポリマーにおそらく連結している同一の若しくは異なるアルキル基、アリール基若しくはアラルキル基であり得、又は前記カチオンはプロトン化された超強塩基性アミンであり、該超強塩基性アミンは、アミジンの群から、好ましくは1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデカ-7-エン(DBU)又はグアニジン、好ましくは1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(TMG)から好ましくは選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の粉体コーティング組成物ブレンド。
【請求項12】
・バインダ成分A及びB並びに前記分離された触媒系の総重量に対する、1~600μeq/gr、好ましくは10~400、より好ましくは20~200μeq/grの量の活性化剤C1と、
a.バインダ成分A及びB並びに前記分離された触媒系の総重量に対する、1~300μeq/gr、好ましくは10~200、より好ましくは20~100μeq/grの量の前駆体P1と、
b.任意に、バインダ成分A及びB並びに前記分離された触媒系の総重量に対する、1~500、好ましくは10~400、より好ましくは20~300μeq/gr、最も好ましくは30~200μeq/grの量の遅延剤Tと、
を含み、
c.好ましくは、C1の当量は、
i.Tが存在する場合、好ましくは1~300μeq/gr、好ましくは10~200、より好ましくは20~100μeq/grの量だけ、Tの量より多く、及び
ii.好ましくはP1の量より多く、及び
iii.より好ましくはP1とTの量の合計より多い、
請求項1~11のいずれか一項に記載の粉体コーティング組成物ブレンド。
【請求項13】
a.前記弱塩基P1が、それぞれ、P1とTの合計の10~100当量%に相当し、
b.好ましくは、遅延剤Tの量が、P1の量の20~400eq%、好ましくは30~300eq%であり、
c.好ましくは、P1及びTの当量の合計に対するC1の当量の比は、少なくとも0.5、好ましくは少なくとも0.8、より好ましくは少なくとも1、好ましくは最大3、より好ましくは最大2であり、
d.Tに対するC1の当量の比は、好ましくは少なくとも1、好ましくは少なくとも1.5、最も好ましくは少なくとも2である、
請求項1~12のいずれか一項に記載の粉体コーティング組成物ブレンド。
【請求項14】
a.架橋性成分Aが、構造Z1(-C(-H)(-R)-)Z2における活性化メチレン又はメチン中に少なくとも2個の酸性C-Hドナー基を含み、Rは水素、炭化水素、オリゴマー又はポリマーであり、Z1及びZ2は、好ましくはケト基、エステル基又はシアノ基又はアリール基から選択される同一の又は異なる電子求引基であり、好ましくは式1による構造を有する活性化C-H誘導体を含み、
【化1】
式中、Rは水素又は任意に置換された、アルキル又はアリールであり、Y及びY’は同一の若しくは異なる置換基、好ましくはアルキル、アラルキル若しくはアリール若しくはアルコキシであり、又は式1において、-C(=O)-Y及び/若しくは-C(=O)-Y’は、CN若しくはアリール、1以下のアリールによって置き換えられ、又はここでY若しくはY’は、NRR’(R及びR’は、H又は任意に置換されたアルキルである。)であり得るが、好ましくは両方ともにNRR’であることはなく、ここでR、Y又はY’は、任意にオリゴマー又はポリマーへの結合を与え、前記成分Aは、好ましくはマロナート、アセトアセタート、マロンアミド、アセトアセトアミド又はシアノアセタート基であり、好ましくは架橋性成分A中のC-H酸性基の合計の少なくとも50、好ましくは60、70又はさらに80%を提供し、
b.成分Bは、少なくとも2個の活性化不飽和RMAアクセプタ基を含み、好ましくはアクリロイル、メタクリロイル、イタコナート、マレアート又はフマラート官能基から生じ、
成分A又はBの好ましくは少なくとも1つ、より好ましくは両方がポリマーであり、
好ましくは、前記組成物は、0.05~6meq/grバインダ固形分の、バインダ固形分1グラム当たりのドナー基C-H及びアクセプタ基C=Cの総量を含み、好ましくはアクセプタ基C=Cのドナー基C-Hに対する比が0.1を超え、10未満である、
請求項1~13のいずれか一項に記載の粉体コーティング組成物ブレンド。
【請求項15】
架橋性成分A若しくはB若しくはハイブリッドA/Bの少なくとも1つが、アクリルポリマー、ポリエステルポリマー、ポリエステルアミドポリマー、ポリエステルウレタンポリマーの群から好ましくは選択されるポリマーであり、前記ポリマーは、
・GPCによって測定される、少なくとも450gr/モル、好ましくは少なくとも1000、より好ましくは少なくとも1500、最も好ましくは少なくとも2000gr/モルの数平均分子量Mnを有し、
・GPCによって測定される、最大20000gr/モル、好ましくは最大15000、より好ましくは最大10000、最も好ましくは最大7500gr/モルの重量平均分子量Mwを有し、
・4未満、より好ましくは3未満の多分散性Mw/Mnを好ましくは有し、
・少なくとも150、250、350、450又は550gr/モル、好ましくは最大で2500、2000、1500、1250若しくは1000gr/モルの、C-H又はC=Cにおける等価重量EQW、及び1分子当たり1~25、より好ましくは1.5~15、さらにより好ましくは2~15、最も好ましくは2.5~10のC-H基の、反応性基C-H又はC=Cの数平均官能価を有し、
・好ましくは、60Pas未満、より好ましくは40、30、20、10若しくはさらには5Pas未満の100~140℃の範囲の温度における溶融粘度を有し、
・好ましくは、アミド結合、尿素結合若しくはウレタン結合を含み、及び/若しくは高Tgモノマー、好ましくは脂環式モノマー若しくは芳香族モノマー、特に1,4-ジメチロールシクロヘキサン(CHDM)、トリシクロデカンジメタノール(TCDジオール)、イソソルビド、ペンタスピログリコール若しくは水添ビスフェノールA及びテトラメチルシクロブタンジオールの群から選択されるポリエステルモノマーを含み、並びに/又は
・10℃/分の加熱速度でDSCによって測定した中点値として、25℃を超える、好ましくは35℃を超える、より好ましくは40、50若しくはさらには60℃を超えるTgを有するか、若しくは40℃~150、好ましくは130℃、好ましくは少なくとも50若しくはさらには70℃及び好ましくは120℃未満(10℃/分の加熱速度にてDSCによって測定)の溶融温度を有する結晶性ポリマーである、
請求項1~14のいずれか一項に記載の粉体コーティング組成物ブレンド。
【請求項16】
成分Bが、ポリエステル(メタ)アクリラート、ポリエステルウレタン(メタ)アクリラート、エポキシ(メタ)アクリラート若しくはウレタン(メタ)アクリラートであり、又はフマラート単位、マレアート単位若しくはイタコナート単位、好ましくはフマラートを含むポリエステルであり、又はイソシアナート官能性活性化不飽和基若しくはエポキシ官能性活性化不飽和基でエンドキャップされたポリエステルである、請求項1~15のいずれか一項に記載の粉体コーティング組成物ブレンド。
【請求項17】
基材を粉体コーティングする方法であって、
a.請求項1~16のいずれか一項に記載の粉体コーティング組成物ブレンドを含む層を基材表面に適用する工程であって、前記基材は、好ましくは感温性基材、好ましくはMDF、木材、プラスチック、複合材又は合金のような感温性金属基材である、工程と、
b.好ましくは赤外線加熱を使用して、75℃~200℃、好ましくは80℃~180℃、より好ましくは80℃~160、150、140、130℃、又はさらには120℃の硬化温度Tcurに加熱する工程であって、前記硬化温度Tcurでの溶融粘度が、好ましくは60Pas未満、より好ましくは40、30、20、10又はさらには5Pas未満である、工程と、
c.Tcurで、好ましくは40、30、20、15、10、又はさらには5分未満の硬化時間にわたって硬化させる工程と、
を含む、方法。
【請求項18】
請求項1~16に記載の粉体コーティング組成物ブレンドを有する粉体でコーティングされた物品であって、前記物品は、MDF、木材、プラスチック又は金属合金の群から好ましくは選択される感温性基材を好ましくは有し、好ましくは架橋密度XLDが(DMTAによって測定された場合に)少なくとも0.01、好ましくは少なくとも0.02、0.04、0.07又はさらには0.1ミリモル/mlであり、好ましくは3、2、1.5、1又はさらには0.7ミリモル/ml未満である、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真マイケル付加(RMA)を介して架橋可能な架橋性組成物と、RMAを触媒する触媒系とを含む粉体コーティング組成物ブレンド、前記粉体コーティング組成物ブレンドを使用して物品をコーティングする方法及びコーティングされた物品に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体コーティングは、乾燥した、微粉化された自由流動性の室温にて固体の材料であり、近年、液体コーティングよりも人気が高まっている。粉体コーティングは、一般に120℃~200℃の、より通例には140℃~180℃の高温にて硬化される。バインダを十分に流動させて膜を形成し、良好なコーティング面の外観を実現するためだけでなく、架橋反応の高い反応性を実現するためにも、高温が必要である。低い硬化温度では、十分な機械的特性及び耐性特性の発現が求められる場合に、短い硬化時間が許容されない反応速度に直面し得る。一方、成分の高い反応性が生成され得る系では、このようなより低温ではこのような系の粘度が比較的高いため、コーティングの外観が悪くなりがちであり、硬化反応が進むにつれて急速にさらに増大する。このような系の時間積分流動性は低すぎて、十分な均一化を達成できない(例えばProgress in Organic Coatings,72 page 26-33(2011)を参照のこと)。特に薄膜を対象とする場合、外観が制限され得る。さらに、非常に高い反応性によって、押出機で粉体塗料を処方する際の早期反応により問題が生じるおそれがある。さらに、高度に反応性の処方物は、限られた保存安定性を有し得る。
【0003】
多くの粉体コーティング組成物は、硬化後に高い光沢を有するコーティングを提供する。優れた品質を有し、低減した光沢を示すコーティングを提供する粉体塗料及び樹脂に対する需要が高まっている。さらに、中密度ファイバーボード(MDF)、木材、プラスチック及びある種の金属合金などの感熱性基材にこのようなタイプのコーティングを適用することができれば、有利である。
【0004】
国際公開第2019/145472号は、中密度ファイバーボード(MDF)、木材、プラスチック及びある種の金属合金などの感熱性基材である基材上に光沢のあるコーティングを提供し、高い硬化速度と許容され得る短い硬化時間で、低温で硬化することができる粉体コーティング組成物であって、硬化時間は、流動と融合を許容し、優れたコーティング外観で優れた膜形成を達成することを受け入れる状態を十分に長く保つ、粉体コーティング組成物を記載している。このコーティング組成物は、RMA反応を促進する触媒系を使用するRMAを介して硬化可能である。
【0005】
この系に基づく粉体コーティング組成物には、長期保存に際して早期反応の問題が生じることがなおあり得る。したがって、低温で、高い硬化速度で硬化することができ、艶消しコーティングを提供し、貯蔵時に長い保存寿命を保証する優れた特性を有する粉体コーティング組成物が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、請求項1に記載されている粉体コーティング組成物ブレンドを提供することによって、上記の問題の1つ以上に対処する。
【0007】
したがって、本発明の第1の態様は、架橋性組成物及び触媒系を含む粉体コーティング組成物ブレンドであって、前記架橋性組成物は、触媒系を介した真マイケル付加(RMA)反応によって架橋可能である、架橋性ドナー成分A及び架橋性アクセプタ成分Bによって形成され、触媒系は、200℃未満、好ましくは175℃未満、より好ましくは150℃、140、130又はさらには120℃未満の硬化温度で、及び好ましくは少なくとも70℃、好ましくは少なくとも80、90又は100℃の硬化温度で、RMA架橋反応を触媒することが可能であり、
前記架橋性組成物は、
a)活性化メチレン又はメチン中に少なくとも2つの酸性C-Hドナー基を有する架橋性ドナー成分Aと、
b)真マイケル付加(RMA)によって成分Aと反応して架橋されたネットワークを形成する少なくとも2つの活性化不飽和アクセプタ基C=Cを有する架橋性アクセプタ成分Bと、
を含み、
並びに
前記触媒系は、巨視物理的に分離されている、触媒前駆体組成物(P)及び触媒活性化剤組成物(C)を含む分離された触媒系であり、
・前記触媒前駆体組成物(P)は、触媒前駆体P1を含み、及び
・前記触媒活性化剤組成物(C)は、触媒活性化剤C1を含み、
又は
前記架橋性ドナー成分A及び前記架橋性アクセプタ成分Bは、巨視物理的に分離されており、並びに触媒系は、
・触媒前駆体P1及び触媒活性化剤C1を含む潜在性触媒系、又は
・強塩基を含む非潜在性触媒系、
であり、
前記触媒前駆体P1は、ドナー成分A中の活性化C-H基のpKaより2単位超、好ましくは3単位超、より好ましくは4単位超、さらにより好ましくは少なくとも5単位低いそのプロトン化形態のpKaを有する弱塩基であり、前記触媒活性化剤C1は硬化温度でP1と反応することができ、AとBの間でのマイケル付加反応を触媒することができる強塩基(C1P1)を生成する、
粉体コーティング組成物ブレンドに関する。
【0008】
第2の態様において、本発明は、基材を粉体コーティングするための方法であって、
・第1の態様による粉体コーティング組成物ブレンドを含む層を基材表面に適用する工程であって、前記基材は、好ましくは、感温性基材、好ましくはMDF、木材、プラスチック、複合材又は合金のような感温性金属基材である、工程と、
・好ましくは赤外線加熱を使用して、75℃~200℃、好ましくは80℃~180℃、より好ましくは80℃~160、150、140、130℃、又はさらには120℃の硬化温度Tcurに加熱する工程であって、前記硬化温度Tcurでの溶融粘度が、好ましくは60Pas未満、より好ましくは40、30、20、10、又はさらには5Pas未満である、工程と、
・Tcurで、好ましくは40、30、20、15、10、又はさらには5分未満の硬化時間にわたって硬化させる工程と、
を含む、方法に関する。
【0009】
第3の態様において、本発明は、第1の態様による粉体コーティング組成物ブレンドを有する粉体でコーティングされた物品であって、前記物品は、MDF、木材、プラスチック又は金属合金の群から好ましくは選択される感温性基材を好ましくは有し、好ましくは、架橋密度XLDは、(動的機械的熱分析(DMTA)によって測定された場合に)少なくとも0.01、好ましくは少なくとも0.02、0.04、0.07又はさらには0.1ミリモル/mlであり、好ましくは3、2、1.5、1又はさらには0.7ミリモル/ml未満である、物品に関する。
【0010】
本発明者らは、驚くべきことに、触媒系又は架橋性成分のいずれかが巨視物理的に分離されている本発明による粉体コーティング組成物ブレンドが、低温で、高い硬化速度で硬化することができ、長い貯蔵寿命を有し、艶消し外観を有するコーティング組成物を提供する、コーティング組成物を提供することを見出した。
【0011】
本発明によれば、「巨視物理的に分離された」という用語は、反応可能な化合物が、硬化温度より下において、粉体ブレンド中での化学反応に本質的に接近できないことを意味する。これは、粉体コーティング組成物ブレンドの反応可能な成分の全てが一緒に溶融混合される(押し出されるともいう)わけではないからである。本発明では、架橋性成分が巨視物理的に分離されているか、又は触媒系が巨視物理的に分離されている。
【0012】
架橋性成分が巨視物理的に分離されている場合には、これは、架橋性ドナー成分Aが架橋性アクセプタ成分Bと溶融混合されていないことを意味する。分離された触媒系が巨視物理的に分離されている場合には、これは、触媒前駆体組成物(P)が触媒活性化剤組成物(C)と溶融混合されていないことを意味する。
【0013】
本発明者らは、成分A及びB又は(P)及び(C)が巨視物理的に分離されると、硬化されて、優れた品質を有し及び艶のない外観又は艶消し外観を有する粉体コーティングを形成することができる粉体ブレンドを提供することが可能であることを見出した。さらに、成分A及びB又は(P)及び(C)は巨視物理的に分離されているので、貯蔵中に反応が起こる可能性ははるかに低く、したがってより長い保存寿命が得られる。
【0014】
さらに、粉体コーティング組成物ブレンドは、比較的高い硬化速度、許容され得る短い硬化時間で、低温で硬化させることができ、優れたコーティング外観を有する優れた架橋を達成することができる粉体コーティングにも適している。
【0015】
本発明による粉体コーティング組成物ブレンドは、75℃~200℃、好ましくは80℃~180℃、より好ましくは100℃~160、150、140、130℃、又はさらには120℃で選択される硬化温度Tcurで硬化させることができ、好ましくは赤外線加熱も使用する。好ましくは、硬化温度における溶融粘度は、60Pas未満、より好ましくは40、30、20、10又はさらに5Pas未満である。溶融粘度は、例えばスピンドル#5を使用して、ASTM D4287に従って、Brookfield CAP 2000コーンプレート型粘度計で測定することが可能であり、反応の開始時に又は触媒活性のない粉体コーティング組成物ブレンド上で測定されるべきである。
【0016】
低い硬化温度により、感温性基材、好ましくはMDF、木材、プラスチック、複合材又は合金のような感温性金属基材を粉体コーティングするための粉体コーティング組成物ブレンドを使用することが可能になる。したがって、本発明は特に、本発明による粉体コーティング組成物ブレンドでコーティングされたそのような物品にも関する。良好なコーティング密度が良好な架橋密度XLD及び得られた良好なコーティング特性とともに得られることが見出された。
【0017】
ここで、本発明の態様をより詳細に説明する。これにより、添付の図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、調製直後及び35℃で5日間保存したときの両方で、120℃で硬化された粉体コーティング組成物PW1に対する等温DSCプロットを記載する。
【
図2】
図2は、調製直後及び35℃で30日間保存したときの両方で、120℃で硬化されたPWC3A+PWC3B1の粉体コーティング組成物ブレンドの50/50ブレンドに対する等温DSCプロットを記載する。
【
図3】
図3は、調製直後及び35℃で30日間保存したときの両方で、10~230℃の間でのPWC5A+PWC5Bの20/1ブレンドに対するDSC温度スキャンプロットを記載する。
【
図4】
図4は、100℃でのPW6及びPW8に対する等温DSCプロットを記載する。
【
図5】
図5は、-30~230℃の間でのPW6及びPW8に対するDSC温度スキャンプロットを記載する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
粉体コーティング組成物ブレンド
一実施形態において、粉体コーティング組成物ブレンドは、
・架橋性組成物の成分A及び/又はBを触媒前駆体組成物(P)及び任意に遅延剤Tと溶融混合して前駆体押出物を得る工程と、
・架橋性組成物の成分A及び/又はBを触媒活性化剤組成物(C)及び任意に遅延剤Tと溶融混合して活性化剤押出物を得る工程と、
・前駆体押出物及び活性化剤押出物を固化及び粒状化して、前駆体粉体組成物及び活性化剤粉体組成物を得る工程と、
・前駆体及び活性化剤粉体組成物を乾式ブレンドして、粉体コーティング組成物ブレンドを得る工程と、
によって調製される。
【0020】
この実施形態では、分離された触媒組成物(P)及び(C)は溶融混合されない(溶融混合は、押出とも呼ばれる)。前駆体押出物は、RMA架橋性成分A及びBの一方又は両方を含むことができる。前駆体押出物が成分Aのみを含む場合には、活性化剤押出物は少なくとも成分Bを含み、逆もまた同様である。
【0021】
別の実施形態において、粉体コーティング組成物ブレンドは、
・架橋性成分Aを溶融混合してドナー押出物を得て及び/又は架橋性成分Bを溶融混合してアクセプタ押出物を得て、それによって架橋性成分A及び/又はBは潜在性又は非潜在性触媒系と溶融混合されること
・ドナー及び/又はアクセプタ押出物を固化及び粒状化してドナー粉体組成物及び/又はアクセプタ粉体組成物を得ること、
・成分A及びBが溶融混合されている場合には、ドナー粉体組成物及びアクセプタ粉体組成物を乾式ブレンドすること、又は粉体コーティング組成物ブレンドを得るために成分A又はBのみが溶融混合されている場合には、ドナー粉体組成物又はアクセプタ粉体組成物を、それぞれ粉砕可能な固体形態を有する架橋性成分B又はAと乾式ブレンドすること、
によって調製される。
【0022】
1つの具体的な実施形態において、粉体コーティング組成物ブレンドは、
・触媒活性化剤C1が液体である場合には、担体上に存在する触媒活性化剤
を含む触媒活性化剤組成物(C)を含む。
【0023】
別の特定の実施形態において、粉体コーティング組成物ブレンドは、
・触媒前駆体P1が液体である場合には、担体上に存在する触媒前駆体
を含む触媒前駆体組成物(P)を含む。
【0024】
担体は、液体を吸収することができる多孔質の物質であり、例えばシリカ担体である。好ましくは、担体の粒径(Dv
50として定義される)は、5~200μm、より好ましくは10~150μm、さらにより好ましくは10~100μm、又は15~50μmである。
このような実施形態において、粉体コーティング組成物ブレンドは、
・架橋性組成物の成分A及びBを触媒前駆体組成物(P)及び任意に遅延剤Tと溶融混合して前駆体押出物を得ること、
・前駆体押出物を固化及び粒状化して前駆体粉体組成物を得ること、
・前駆体粉体組成物を担体上に存在する触媒活性化剤と乾式ブレンドして、粉体コーティング組成物ブレンドを得ること、又は
・架橋性組成物の成分A及びBを触媒活性化剤組成物(C)及び任意に遅延剤Tと溶融混合して活性化剤押出物を得ること、
・活性化剤押出物を固化及び粒状化して活性化剤粉体組成物を得ること、
・活性化剤粉体組成物を担体上に存在する触媒前駆体と乾式ブレンドして、粉体コーティング組成物ブレンドを得ること
によって調製され得る。
【0025】
本発明によれば、溶融混合(押出とも呼ばれる)のために、粉体樹脂を製造するために典型的に使用される標準的な方法を使用することができる。それにより、当業者に周知の押出機中で押出物が形成された後、押出物を冷却バンド上に強制的に広げることによって押出物は直ちに固化されることが典型的である。固化された押出物は、冷却バンドに沿って移動する際に固化したシートの形態をとることができる。バンドの終点にて、シートは次に粒状化され、このため、好ましくはペグブレーカ(peg breaker)によって小片に破砕されて粉体組成物となる。この時点では、統計的最大サイズが好ましいが、粒状物に有意な形状制御は適用されない。次いで、粒状物を分級マイクロナイザに移すことができ、そこで、粒状物をさらに粉砕する。次いで、粉体組成物をブレンドして、粉体コーティング組成物ブレンドを形成する。前駆体押出物及び活性化剤押出物又はドナー及びアクセプタ押出物に由来する固化されたシートを粒状化し、最終的に微粉化し、一緒にブレンドすることも可能である。一実施形態における触媒前駆体P1及び触媒活性化剤D1、又は別の実施形態におけるドナー成分A及びアクセプタ成分Bは一緒に押し出されないので、それらは粉体コーティング組成物ブレンド中で巨視物理的に分離されている。
【0026】
巨視物理的に分離された反応物(すなわち、前駆体P1及び活性化剤C1又はドナー成分A及びアクセプタ成分B)を有する粉体コーティング組成物ブレンドが粉体コーティングとして適用される場合、溶融の開始時に相補的な反応物の巨視物理的な分離をなお有する基材上に粉体層が形成される。硬化反応の進行は、この開始状況から一緒に拡散するこれらの相補的反応物に依存し、このプロセスのために必要とされる拡散長及び時間は、元の粉体ブレンドのサイズの詳細及び拡散係数に依存する。このような開始状況の組成コントラストの大きさは、適用時に無作為な積層を形成すると考えられる場合、個々の粒状物ブレンド成分の粒径及びそれらの体積比に依存する。ブレンディングのために使用される粒子がより小さい場合には、総合的な優れた架橋性能のために必要とされる拡散長及び拡散時間はより小さくなり、粒子が大きすぎると、距離が長くなりすぎて硬化工程中に乗り越えることができないことがあり得る。したがって、ブレンディングのために使用される粉体組成物は、好ましくは最大200μm、より好ましくは最大150μm、より好ましくは100μm以下、最も好ましくは50μm未満の粒径(Dv
50として定義される)を有する。
【0027】
Dv
50は、サンプルの50%がより小さく、50%がより大きいミクロン単位での粒径である。この値は、質量中央径(MMD)又は体積分布の中央値としても知られている。
【0028】
粉体コーティング組成物ブレンド中の異なる粉体組成物の質量比も役割を果たし得る。この比が著しく非対称である場合には、大部分の成分が、元の粒子スタック内の相補的粒子と直接接触する確率がより低いので、有効拡散長はより長くなる。したがって、乾式ブレンディングのために使用される前駆体粉体組成物及び活性化剤粉体組成物又はドナー粉体組成物及びアクセプタ粉体組成物の質量比(重量%/重量%)は、20~0.05、より好ましくは10~0.1、さらにより好ましくは5~0.2又は2~0.5であることが好ましい。一般に、より小さい粒子が関与する場合、より多くの非対称性が許容され得る。
【0029】
乾式ブレンディングのために使用される成分の1つが担体上に存在する触媒前駆体又は活性化剤である場合には、成分は、総粉体組成物ブレンドに対して、好ましくは1~30重量%、好ましくは3~20重量%、より好ましくは4~15重量%の量で存在する。
【0030】
粉体コーティング組成物ブレンドは、顔料、染料、分散剤、脱ガス助剤、レベリング添加剤、艶消し添加剤、難燃添加剤、膜形成特性を改善するための、コーティングの光学的外観のための、機械的特性、接着性を改善するための、又は色及びUV安定性などの安定性特性のための添加剤の群から選択される添加剤などの添加剤をさらに含み得る。これらの添加剤は、粉体コーティング組成物ブレンドの成分の1つ以上とともに溶融混合され得る。
【0031】
分離された触媒系
1つの好ましい実施形態において、触媒系は、架橋性ドナー成分Aの活性化メチレン又はメチン中の活性化C-Hドナー基のpKaより2超、好ましくは3超、より好ましくは4超、さらにより好ましくは少なくとも5ポイント低いそのプロトン化形態のpKaを有する弱塩基である触媒前駆体P1を含む触媒前駆体組成物(P)を含む分離された触媒系であり、触媒活性化剤組成物(C)は、硬化温度でP1と反応することができ、AとBの間でのマイケル付加反応を開始することができる強塩基(C1P1)を生成する触媒活性化剤C1を含む。触媒前駆体組成物(P)と触媒活性化剤組成物(C)は、巨視物理的に分離されている。
【0032】
最も好ましくは、触媒前駆体組成物(P)は、架橋性ドナー組成物A及び/又は架橋性アクセプタ組成物(B)をさらに含み、触媒活性化剤組成物(C)は、架橋性ドナー組成物A及び/又は架橋性アクセプタ組成物(B)をさらに含む。好ましくは、ドナー組成物(A)及びアクセプタ組成物(B)は、それらが触媒前駆体P1又は触媒活性化剤C1と一緒に溶融混合されるように、分離された触媒系中に存在する。驚くべきことに、触媒前駆体P1又は触媒活性化剤C1は架橋性ドナー組成物A及び/又は架橋性アクセプタ組成物(B)とともに押し出されると、組成物は、粉体組成物ブレンドから作製された粉体コーティングと比較して、より低い光沢及びより良好なMEK耐性を有する粉体コーティングを提供し、触媒前駆体P1又は触媒活性化剤C1は、別個の化合物として、ドナー組成物(A)、アクセプタ組成物(B)及び触媒系の相補的成分(触媒前駆体P1又は触媒活性化剤C1)のブレンドに添加されることが見出された。
【0033】
一実施形態において、触媒系は、好ましくはエポキシド、カルボジイミド、オキセタン、オキサゾリン又はアジリジン官能性成分、エポキシド又はカルボジイミドの群から好ましくは選択される活性化剤C1を含む触媒活性化剤組成物(C)を含み、好ましくはカルボキシラート、ホスホナート、スルホナート、ハロゲン化物若しくはフェノラートアニオン又は非イオン性求核試薬、好ましくは第三級アミン若しくはホスフィンの群から選択される弱塩基求核性アニオン、より好ましくは、カルボキシラート、ハロゲン化物若しくはフェノラートアニオン又は1,4-ジアザビシクロ-[2.2.2]-オクタン(DABCO)若しくはN-アルキルイミダゾールの群から選択される弱塩基求核性アニオン、最も好ましくはカルボキシラートである触媒前駆体P1を含む触媒前駆体組成物(P)を含む。
【0034】
別の実施形態において、分離された触媒系は、触媒前駆体P1がマイケル付加ドナーである触媒前駆体組成物Pと、活性化剤C1がP1と反応性の活性化不飽和基C=Cを含むマイケルアクセプタである触媒活性化剤組成物Cとを含む。このような実施形態において、C1がアクリラートである場合、P1は8未満、好ましくは7未満、より好ましくは6未満の共役酸のpKaを有し、pKaは水性環境での値として定義され、C1がメタクリラート、フマラート、イタコナート又はマレアートである場合、P1は10.5未満、好ましくは9未満、より好ましくは8未満の共役酸のpKaを有する。マイケルアクセプタ活性化剤C1は、成分Bとして定義されるのと同じ種類のものであり得、又は異なる(より反応性の)性質のものであり得る。
【0035】
この実施形態内で、触媒前駆体組成物(P)は、ホスフィン、N-アルキルイミダゾール及びフッ化物の群から好ましくは選択される弱塩基である触媒前駆体P1又は酸性X-H基含有化合物からの弱塩基求核性アニオンX-であって、XはN、P、O、S若しくはCであり、アニオンX-は活性化剤C1と反応性のマイケル付加ドナーである弱塩基求核性アニオンX-である触媒前駆体P1を含む。
【0036】
最も好ましい触媒活性化剤C1は、エポキシ基を含有する。好ましい活性化剤C1としてのエポキシドの好適な選択肢は、脂環式エポキシド、エポキシ化油及びグリシジル型エポキシドである。好適な成分C1は、例えば、US4749728、3列21~56行に記載されており、複数のエポキシ官能基を含むエポキシド官能基を有する、C10~18アルキレンオキシド及びオリゴマー及び/又はポリマーを含む。特に好適なモノエポキシドとしては、tert-ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルアセタート、バーサチックエステルのグリシジルエステル、グリシジルメタクリラート(GMA)及びグリシジルベンゾアートが挙げられる。有用な多官能性エポキシドとしては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、並びにそのようなBPAエポキシ樹脂の高級同族体、
Eponex 1510(Hexion)、ST-4000D(Kukdo)などの水添BPAのグリシジルエーテル、エポキシ化大豆油などの脂肪族オキシラン、ジグリシジルアジパート、1,4-ジグリシジルブチルエーテル、ノボラック樹脂のグリシジルエーテル、Araldite PT910及びPT912(Huntsman)などの二酸のグリシジルエステル、TGIC及びその他の市販のエポキシ樹脂が挙げられる。ビスフェノールAジグリシジルエーテル並びにその固体高分子量同族体は、好ましいエポキシドである。グリシジルメタクリラートから誘導されたエポキシド官能基を有するアクリル(コ)ポリマーも有用である。好ましい実施形態において、エポキシ成分は、少なくとも400(750、1000、1500)のMnを有するオリゴマー成分又はポリマー成分である。他のエポキシド化合物としては、2-メチル-1,2-ヘキセンオキシド、2-フェニル-1,2-プロペンオキシド(アルファ-メチルスチレンオキシド)、2-フェノキシメチル-1,2-プロペンオキシド、エポキシ化不飽和油又は脂肪エステル及び1-フェニルプロペンオキシドが挙げられる。有用で好ましいエポキシドは、カルボン酸のグリシジルエステルであり、カルボン酸官能性ポリマー上、又は好ましくはCardura E10P(バーサチック(商標)酸10のグリシジルエステル)などの高分岐疎水性カルボン酸上存在することができる。最も好ましいのは、代表的な粉体架橋剤エポキシ成分である、トリグリシジルイソシアヌラート(TGIC)、Araldite PT910及びPT912並びに周囲温度にて本質的に固体であるフェノール性グリシジルエーテル又はグリシジルメタクリラートのアクリル(コ)ポリマーである。
【0037】
触媒前駆体P1の適切な例は、カルボキシラート、ホスホナート、スルホナート、ハロゲン化物若しくはフェノラートアニオン若しくはこれらの塩の群から選択される弱塩基求核性アニオン又は非イオン性求核試薬、好ましくは第三級アミン若しくはホスフィンである。より好ましくは、弱塩基P1は、カルボキシラート、ハロゲン化物若しくはフェノラート塩、最も好ましくはカルボキシラート塩の群から選択される弱塩基求核性アニオンであるか、又は1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)若しくはN-アルキルイミダゾールである。触媒前駆体P1は、好ましくはエポキシである触媒活性化剤C1と反応して、架橋性成分A及びBの反応を開始することができる強塩基性アニオン性付加物を生成することができる。
【0038】
触媒前駆体P1の別の適切な例は、XがN、P、O、S又はCであり、アニオンX-がマイケルアクセプタ活性化剤C1と反応可能なマイケル付加ドナーであり、アニオンX-が8未満、好ましくは7未満、より好ましくは6未満の対応する共役酸X-HのpKaを特徴とする、酸性X-H基含有化合物からの弱塩基アニオンX-の群から選択される弱塩基求核性アニオンであり、pKaは水性環境での値として定義され、C1がメタクリラート、フマラート、イタコナート又はマレアートである場合、P1は10.5未満、好ましくは9未満、より好ましくは8未満の共役酸のpKaを有する。
【0039】
弱塩基P1である触媒前駆体は、好ましくは、硬化過程の時間尺度で、150℃未満、好ましくは140℃、130℃、120℃未満の温度で、及び好ましくは少なくとも70℃、好ましくは少なくとも80℃又は90℃の温度で、触媒活性化剤C1と反応する。硬化温度における弱塩基P1と活性化剤C1の反応速度は、有用なオープンタイムを与えるために十分に低く、所期の時間ウィンドウにて十分に硬化させるために十分に高い。
【0040】
触媒前駆体P1がアニオンである場合、酸性ではないカチオンを含む塩として添加されることが好ましい。酸性ではないとは、塩基について架橋性ドナー成分Aと競合する水素を有さず、このため所期の硬化温度における架橋反応を阻害しないことを意味する。好ましくは、カチオンは、架橋性組成物中のいずれの成分に対しても実質的に非反応性である。カチオンは、例えばアルカリ金属、第4級アンモニウム又はホスホニウムであり得るが、架橋性組成物中の成分A、B又はCのいずれにも非反応性であるプロトン化「超塩基」であることもできる。好適な超塩基は、当分野で既知である。
【0041】
好ましくは、塩は、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属、特にリチウムカチオン、ナトリウムカチオン若しくはカリウムカチオン、又はより好ましくは、式Y(R’)4による第4級アンモニウムカチオン若しくはホスホニウムカチオンを含み、Yは、N若しくはPを表し、各R’は、ポリマーにおそらく連結している同じ若しくは異なるアルキル基、アリール基若しくはアラルキル基であり得、又はカチオンはプロトン化された超強塩基性アミンであり、超強塩基性アミンは、アミジンの群から、好ましくは1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデカ-7-エン(DBU)若しくはグアニジン、好ましくは1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(TMG)から好ましくは選択される。当業者に既知であるように、R’は、RMA架橋化学作用を妨害しない又は実質的に妨害しない置換基で置換することができる。最も好ましくは、R’は、1~12個、最も好ましくは1~4個の炭素原子を有するアルキルである。
【0042】
任意に、いくつかの好ましい実施形態において、分離された触媒系は、架橋性ドナー成分A中の活性化C-HのpKaより2、好ましくは3、より好ましくは4、最も好ましくは5ポイント低いpKaを有する酸であり、脱プロトン化すると、P1前駆体として作用することができる弱塩基を生成し、活性化剤C1と反応して、AとBの間でのマイケル付加反応を触媒することができる強塩基を生成することができる遅延剤Tをさらに含む。遅延剤Tは、好ましくはプロトン化前駆体P1である。遅延剤Tは、触媒前駆体組成物の又は触媒活性化剤組成物の一部であり得る。遅延剤Tは、触媒前駆体組成物及び触媒活性化剤組成物の両方の一部であることもできる。好ましくは、遅延剤T及びプロトン化前駆体P1は、少なくとも120℃、好ましくは130℃、150℃、175℃、200℃又は更には250℃の沸点を有する。好ましくは、遅延剤Tはカルボン酸である。遅延剤Tの使用は、移動度の制限が顕著になる前に、硬化中に成分のより多くの相互拡散を可能にするために架橋反応を遅らせることにおいて有益な効果を有することができる。
【0043】
1つの具体的な実施形態において、触媒活性化剤C1はアクリラートアクセプタ基であり、成分P1及びTは、8未満、より好ましくは7、6又はさらには5.5未満のpKaを(酸形態で)有するX-/X-H成分、好ましくはカルボキシラート/カルボン酸化合物である。アクリラートアクセプタ含有粉体塗料組成物に有用なX-H成分の例としては、環状1,3-ジオン、例えば1,3-シクロヘキサンジオン(pKa5.26)及びジメドン(5,5-ジメチル-1,3-シクロヘキサンジオン、pKa5.15)、エチルトリフルオロアセトアセタート(7.6)、メルドラム酸(4.97)が挙げられる。好ましくは、少なくとも175℃、より好ましくは少なくとも200℃の沸点を有するX-H成分が使用される。
【0044】
別の実施形態において、触媒活性化剤C1は、メタクリラート、フマラート、マレアート又はイタコナートアクセプタ基、好ましくはメタクリラート、イタコナート又はフマラート基であり、成分P1及びTは、10.5未満、より好ましくは9.5、8未満、又はさらには7未満の酸pKaを有するX-/X-H成分である。
【0045】
本特許出願で言及されるpKa値は、周囲条件(21℃)での水性pKa値である。これらの値は文献で容易に見出すことができ、必要に応じて、当業者に既知の手順により水溶液中で求めることができる。
【0046】
硬化条件下で架橋反応の有益な遅延を提供することができるようにするために、遅延剤T及びその脱プロトン化バージョンP1と活性化剤C1との反応は、適切な速度で行われるべきである。
【0047】
好ましい分離された触媒系は、触媒活性化剤C1としてエポキシ、触媒前駆体P1としてC1のエポキシド基と反応して強塩基付加物C1を形成する弱塩基求核性アニオン基を含み、最も好ましくは遅延剤Tも含む。適切な分離された触媒系では、P1はカルボキシラート塩であり、C1はエポキシド、カルボジイミド、オキセタン又はオキサゾリンであり、より好ましくはエポキシド又はカルボジイミドであり、Tはカルボン酸である。あるいは、P1はDABCOであり、C1はエポキシであり、Tはカルボン酸である。
【0048】
理論に拘束されることを望まないが、求核性アニオンP1は活性化剤エポキシドC1と反応して強塩基を生成するが、この強塩基は遅延剤Tによって直ちにプロトン化されて、架橋反応を直接強く触媒しない(P1と同様の機能の)塩を生成すると考えられる。反応スキームは、遅延剤Tが実質的に完全に枯渇されるまで行われ、これによりオープンタイムが与えられるのは、架橋性成分A及びBの反応を著しく触媒するための相当量の強塩基がその時間中に存在しないためである。遅延剤Tが枯渇されると、強塩基が形成され、生残して迅速なRMA架橋反応を効果的に触媒する。
【0049】
本発明の特徴及び利点は、以下の例示的な反応スキームを参照すれば認識される。
【化1】
【0050】
具体的には、P1、C1及びT種としてカルボキシラート、エポキシド及びカルボン酸の場合には、これは、以下のように描くことができる:**図を取り換えた**
【化2】
【0051】
いくつかの事例では、活性化剤C1と前駆体P1との反応の詳細な機構は知られていないか、議論の対象となっていることがあり得、実際に反応に関与するP1のプロトン化形態が関与する反応機構が示唆され得る。そのような反応シーケンスの正味の効果は、P1の脱プロトン化形態を介したその進行に基づいて記載されたシーケンスと同様であり得る。反応がプロトン化P1経路に沿って進行すると主張され得る系は本発明に含まれる。この場合には、遅延剤Tが枯渇した後、C1は、マイケルドナー種Aとの酸-塩基平衡から生成されたプロトン化P1と反応し、その反応は、この酸-塩基平衡が脱プロトン化マイケルドナー側に傾くために架橋を活性化する。
【0052】
活性化剤がP1Hのプロトン化形態を介して反応する場合、反応スキームは、次のスキームによって示される。
【化3】
【0053】
一実施形態において、遅延剤Tは、プロトン化アニオン基P1、好ましくはカルボン酸T及びカルボキシラートP1であり、これは例えば酸官能性成分、好ましくは遅延剤Tとして酸基を含むポリマーを部分的に中和してP1上のアニオン基に部分的に変換することにより形成することができ、部分中和は、好ましくはカチオンヒドロキシド又は(バイ)カーボナート、好ましくはテトラアルキルアンモニウム又はテトラアルキルホスホニウムカチオンによって行われる。別の実施形態において、ポリマー結合成分P1は、ポリエステル中のエステル基の、前述の水酸化物による加水分解によって作製することができる。
【0054】
成分T及びP1の共役酸の沸点は、硬化条件の間のこれらの触媒系成分の制御が不十分な蒸発を防止するために、粉体コーティング組成物ブレンドの想定される硬化温度より高いことが好ましい。ギ酸及び酢酸は、硬化中に蒸発する可能性があるため、あまり好ましい遅延剤Tではない。好ましくは、遅延剤T及びP1の共役酸は、120℃より高い沸点を有する。
【0055】
あまり好ましくないが、分離された触媒系の成分P1、C1又はTの少なくとも1つは、架橋性成分A又はBの1つ又は両方の上の基であることが可能である。その場合には、P1及びC1が粉体コーティング組成物ブレンド中で確実に巨視物理的に分離されるようにしなければならない。P1、C1及びTの1つ以上の、但し全てではない基が、RMA架橋性成分A若しくはB又はその両方の上にあることが可能である。好都合な実施形態において、P1及びTの両方がRMA架橋性成分A及び/又はB上にあり、P1は、好ましくは、Tの酸基を含む酸官能性ポリマーを上記のカチオンを含む塩基で部分的に中和して、T上の酸基をP1上のアニオン性基に部分的に変換することによって形成される。別の実施形態は、ポリエステル、例えば成分Aのポリエステルの加水分解によって形成された成分P1を有し、ポリマー種として存在するであろう。
【0056】
粉体コーティング組成物ブレンドは、好ましくは、分離された触媒系の場合、
a.1~600μeq/gr、好ましくは10~400、より好ましくは20~200μeq/grの量の活性化剤C1と(μeq/grは、バインダ成分A及びB並びに分離された触媒系の総重量に対するμeqである)、
b.バインダ成分A及びB並びに分離された触媒系の総重量に対して1~300μeq/gr、好ましくは10~200、より好ましくは20~100μeq/grの量の弱塩基P1である前駆体と、
c.任意に、1~500、好ましくは10~400、より好ましくは20~300μeq/gr、最も好ましくは30~200μeq/grの量の遅延剤Tと、
を含み、
d.好ましくは、C1の当量は、
i.好ましくは1~300μeq/gr、好ましくは10~200、より好ましくは20~100μeq/grの量だけTの当量より多く、
ii.好ましくは、P1の当量より多く、及び
iii.好ましくは、P1とTの当量の和よりも多い。
【0057】
しかしながら、活性化剤C1がP1と反応性の活性化不飽和基C=Cを含むマイケルアクセプタである場合、この場合にはC1は成分Bでもあり得るので、濃度に妥当な上限は存在しない。
【0058】
分離された触媒系は、C1の量がP1の量よりも少ない状態で機能することも可能である。しかしながら、これは、未反応のP1を残すのであまり好ましくない。C1、特にエポキシドの量がP1の量よりも多い場合、C1がP1及びT又は他の求核性残留物と反応し得るために欠点は限定されるが、あまり多くの問題を伴わずに、反応後も塩基度を維持するか、又は網目中に残存し得る。それにもかかわらず、過剰量のC1は、エポキシ以外のC1のコストの点から不利であり得る。
【0059】
さらに、粉体コーティング組成物ブレンドにおいて、
a.前駆体P1は、P1とTの合計の10~100当量%に相当し、
b.好ましくは、遅延剤Tの量は、P1の量の20~400eq%、好ましくは30~300eq%であり、
c.好ましくは、P1及びTの当量の合計に対するC1の当量の比は、少なくとも0.5、好ましくは少なくとも0.8、より好ましくは少なくとも1、好ましくは最大3、より好ましくは最大2であり、
d.Tに対するC1の当量の比は、好ましくは少なくとも1、好ましくは少なくとも1.5、最も好ましくは少なくとも2である、
ことが好ましい。
【0060】
一実施形態において、RMA架橋性組成物は、ポリマー及びRMA架橋性コーティング組成物中の潜在性塩基触媒成分としてのその使用を含み、前記ポリマーは、触媒前駆体基P1及び任意に酸基Tを含み、P1基は、好ましくはポリマー上の酸基Tを部分的又は完全に中和することによって形成され、P1及びTは、好ましくはカルボキシラート及びカルボン酸基であり、ポリマーは、好ましくはアクリル、ポリエステル、ポリエステル-アミド及びポリエステル-ウレタンポリマーの群から選択され、ポリマーは、任意にC-Hドナー基、C=Cアクセプタ基又はその両方を含み、ポリマーは、好ましくは、
a)少なくとも3、より好ましくは5、7、10、15又はさらには20mgKOH/g、好ましくは100、80、70、60mgKOH/g未満の非中和形態の酸価、
b)四級アンモニウム又はホスホニウムカチオン、好ましくはテトラブチル又はエチルアンモニウムカチオン
c)少なくとも500、好ましくは少なくとも1000又はさらには2000のMn、及び20,000以下、好ましくは10,000又は6000以下のMw、
d)C-Hドナー基及び/又はC=Cアクセプタ基が存在する場合;少なくとも150、好ましくは少なくとも250、350又はさらには450g/mol及び2000以下、好ましくは1500、1200又は1000g/mol以下の反応性C-Hドナー又はC=Cアクセプタ等価重量
を有する。
【0061】
分離された架橋性成分に基づく粉体コーティング組成物ブレンド
本発明の一実施形態において、架橋性成分A及びBは巨視物理的に分離されている。その場合、触媒系は、触媒前駆体P1及び触媒活性化剤C1を含む潜在性触媒系LCS、又は強塩基(すなわち、既にRMA架橋反応を活性化することができる)を含む非潜在性触媒系である。RMA反応は、成分A及びBが互いと化学的に接近可能になり、触媒系がRMA反応を触媒する場合に硬化温度において起こるに過ぎない。
【0062】
潜在性触媒系は、上述のように成分C1、P1及び任意にTを含む。
【0063】
非潜在性触媒系は、存在するドナー及びアクセプタとのRMA架橋を開始するためにマイケルドナー基を脱プロトン化することができるのに十分に高い塩基性を有する強塩基を含む。強塩基は、文献に記載されている多くの活性触媒から構成することができ、典型的には、強塩基は、塩基性アニオン(例えば、水酸化物、カーボナート)及び非酸性カチオン(アルカリ又はアルカリ土類金属、第四級アンモニウム又はホスホニウムイオン)の塩、アミジン及びグアニジン、例えばDBU、DBN、TBD又はTMGなどの強塩基性アミン、並びに当業者に公知の他の強塩基である。
【0064】
架橋性成分A及びB
粉体コーティング組成物ブレンドは、
a)活性化メチレン又はメチン中に少なくとも2つの酸性C-Hドナー基を有する架橋性ドナー成分Aと、
b)真マイケル付加(RMA)によって成分Aと反応して架橋されたネットワークを形成する少なくとも2つの活性化不飽和アクセプタ基C=Cを有する架橋性アクセプタ成分Bと、
を含む架橋性組成物をさらに含む。
【0065】
好ましくは、架橋性成分Aは、構造Z1(-C(-H)(-R)-)Z2における活性化メチレン又はメチン中に少なくとも2個の酸性C-Hドナー基を含み、Rは、水素、炭化水素、オリゴマー又はポリマーであり、Z1及びZ2は、好ましくはケト、エステル又はシアノ又はアリール基から選択される同一の又は異なる電子求引基であり、好ましくは、式1による構造を有する活性化C-H誘導体を含み、
【化4】
式中、Rは、水素又は任意に置換された、アルキル又はアリールであり、Y及びY’は、同一の若しくは異なる置換基、好ましくはアルキル、アラルキル若しくはアリール、若しくはアルコキシであり、又は式1において、-C(=O)-Y及び/若しくは-C(=O)-Y’はCN若しくは1個以下のアリールで置き換えられており、又はY若しくはY’は、NRR’(R及びR’は、H又は任意に置換されたアルキルである。)であり得るが、好ましくは両方ともにNRR’であることはなく、R、Y又はY’は、オリゴマー又はポリマーへの接続を任意に提供し、前記成分Aは、好ましくはマロナート、アセトアセタート、マロンアミド、アセトアセトアミド又はシアノアセタート基であり、好ましくは架橋性成分A中のC-H酸性基の合計の少なくとも50、好ましくは60、70又はさらには80%を提供する。
【0066】
成分Bは、好ましくはアクリロイル、メタクリロイル、イタコナート、マレアート又はフマラート官能基に由来する少なくとも2つの活性化不飽和RMAアクセプタ基を含む。
【0067】
好ましくは、成分A又はBの少なくとも1つ、より好ましくは両方がポリマーである
【0068】
好ましくは、架橋性組成物は、0.05~6meq/grバインダ固形分のドナー基C-H及びアクセプタ基C=C/グラムバインダ固形分の総量を含み、好ましくはアクセプタ基C=Cのドナー基C-Hに対する比は、0.1超及び10未満である。
【0069】
架橋性成分A及びBを含む真マイケル付加(RMA)架橋性コーティング組成物は、架橋性成分A及びBの具体的な説明がここに含まれていると見なされる、EP2556108、EP0808860又はEP1593727において、溶剤系の系での使用について概説されている。
【0070】
成分A及びBはそれぞれ、硬化時に反応してコーティング中に架橋網目を形成するRMA反応性ドナー部分及びアクセプタ部分を含む。成分A及びBは、別個の分子上に存在できるが、ハイブリッドA/B成分と呼ばれる1個の分子上又はその組合わせ上に存在することもできる。架橋性成分A及びBが巨視物理的に分離されている場合、それらはハイブリッドA/B成分ではあり得ない。
【0071】
好ましくは、成分A及びBは別個の分子であり、それぞれ独立して、ポリマー、オリゴマー、ダイマー又はモノマーの形態である。コーティング用途では、成分A又はBの少なくとも1つが、好ましくはオリゴマー又はポリマーであることが好ましい。活性化メチレン基CH2が2個のC-H酸性基を含むことに留意されたい。最初のC-H酸性基の反応後、第2のC-H酸性基の反応はより困難であるが、例えばメタクリラートとの反応では、アクリラートと比較して、そのような活性化メチレン基の官能価は2としてカウントされる。反応性成分A及びBは、組合わせて1個のA/Bハイブリッド分子とすることもできる。粉体コーティング組成物ブレンドのこの実施形態において、C-H反応性基及びC=C反応性基の両方が1個のA-B分子中に存在する。
【0072】
好ましくは、成分Aはポリマー、好ましくはポリエステル、ポリウレタン、アクリル、エポキシ又はポリカーボナートであり、官能基として成分A及び任意に1つ以上の成分B、又は触媒系Cからの成分を有する。これらのポリマータイプの混合物又はハイブリッドも可能である。好適には、成分Aは、アクリルポリマー、ポリエステルポリマー、ポリエステルアミドポリマー、ポリエステル-ウレタンポリマーの群から選択されるポリマーである。
【0073】
マロナート又はアセトアセタートは、成分Aにおける好ましいドナーの種類である。架橋性組成物の最も好ましい実施形態における高い反応性及び耐久性を考慮して、成分AはマロナートC-H含有化合物である。粉体コーティング組成物ブレンドにおいて、活性化C-H基の大部分はマロナート由来である、すなわち、粉体コーティング組成物ブレンド中の全ての活性化C-H基の50%超、好ましくは60%超、より好ましくは70%超、最も好ましくは80%超がマロナート由来であることが好ましい。
【0074】
主鎖、ペンダント又はその両方にマロナート型基を含有する、例えばポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリラート、エポキシ樹脂、ポリアミド及びポリビニル樹脂又はそのハイブリッドなどの、オリゴマー性及び/又はポリマー性マロナート基含有成分が好ましい。
【0075】
様々な架橋性成分への分布とは無関係に、バインダ固形分1グラム当たりのドナー基C-Hとアクセプタ基C=Cの総量は、0.05~6meq/g、より通例には0.10~4meq/g、さらにより好ましくは0.25~3meq/gバインダ固形分、最も好ましくは0.5~2meq/gである。好ましくは、成分AとBの間の化学量論は、反応性C=C基の反応性C-H基に対する比が0.1を超え、好ましくは0.2を超え、より好ましくは0.3を超え、最も好ましくは0.4を超え、アクリラート官能基Bの場合、好ましくは0.5を超え、最も好ましくは0.75を超え、比は好ましくは10未満、好ましくは5未満、より好ましくは3、2又は1.5未満であるように選択される。
【0076】
マロナート基含有ポリエステルは、好ましくはマロン酸のメチル又はエチルジエステルと、ポリマー性又はオリゴマー性であり得るが、他の成分とのマイケル付加反応によっても組み入れられ得る多官能性アルコールとのエステル交換によって得ることができる。本発明との使用にとりわけ好ましいマロナート基含有成分は、1分子当たり1~50個、より好ましくは2~10個のマロナート基を含有する、マロナート基含有オリゴマー性又はポリマー性エステル、エーテル、ウレタン及びエポキシエステル並びにそのハイブリッド、例えばポリエステル-ウレタンである。ポリマー成分Aは、既知の方法で、例えば活性化C-H酸(ドナー)基、好ましくはアセトアセタート又はマロナート基、特に2-(メタクリロイルオキシ)エチルアセトアセタート又はマロナートを含む部分によって官能化されたモノマー、例えば(メタ)アクリラートを含むエチレン性不飽和モノマーのラジカル重合によって作製することもできる。実際に、ポリエステル、ポリアミド及びポリウレタン(及びこのハイブリッド)が好ましい。そのようなマロナート基含有成分は、約100~約10000、好ましくは500~5000、最も好ましくは1000~4000の範囲の数平均分子量(Mn)及び20000未満、好ましくは10000未満、最も好ましくは6000未満のMw(GPCポリスチレン当量で表す)を有することも好ましい。
【0077】
好適な架橋性成分Bは概して、炭素-炭素二重結合が電子求引基、例えばα位のカルボニル基によって活性化されるエチレン性不飽和成分であることができる。このような成分の代表的な例は、US2759913(6列、35行~7列45行)、DE-PS-835809(3列、16~41行)、US4871822(2列、14行~4列、14行)、US4602061(3列、14~20行~4列、14行)、US4408018(2列、19~68行)及びUS4217396(1列、60行~2列、64行)に開示されている。
【0078】
アクリラート、メタクリラート、イタコナート、フマラート及びマレアートが好ましい。イタコナート、フマラート及びマレアートは、ポリエステル又はポリエステル-ウレタンの主鎖に組み入れることができる。活性化不飽和基を含有するポリエステル、ポリカーボナート、ポリウレタン、ポリアミド、アクリル及びエポキシ樹脂(又はそのハイブリッド)ポリエーテル並びに/又はアルキド樹脂などの好ましい例の樹脂が挙げられる。これらとしては、例えばポリイソシアナートとヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル、例えば(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル又はポリヒドロキシ成分の化学量論量未満の(メタ)アクリル酸とのエステル化によって調製された成分との反応により得たウレタン(メタ)アクリラート;ヒドロキシル基含有ポリエーテルの(メタ)アクリル酸とのエステル化によって得たポリエーテル(メタ)アクリラート;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリラートとポリカルボン酸及び/又はポリアミノ樹脂との反応によって得た多官能性(メタ)アクリラート;(メタ)アクリル酸とエポキシ樹脂との反応によって得たポリ(メタ)アクリラート並びにモノアルキルマレアートエステルとエポキシ樹脂及び/又はヒドロキシ官能性オリゴマー若しくはポリマーとの反応によって得たポリアルキルマレアートが挙げられる。グリシジルメタクリラートによってエンドキャップされたポリエステルも好ましい例である。アクセプタ成分が複数の種類のアクセプタ官能基を含有していることが考えらえる。
【0079】
最も好ましい活性化不飽和基含有成分Bは、不飽和アクリロイル官能性成分、メタクリロイル官能性成分及びフマラート官能性成分である。好ましくは、1分子当たりの活性化C=C基の数平均官能価は、2~20、より好ましくは2~10、最も好ましくは3~6である。等価重量(EQW:反応性官能基あたりの平均分子量)は100~5000、より好ましくは200~2000であり、数平均分子量は、好ましくはMn200~10000、より好ましくは300~5000、最も好ましくは400~3500g/モル、さらにより好ましくは1000~3000g/モルである。
【0080】
粉体系での使用を考慮すると、粉体の安定性が必要であるため、成分BのTgは、好ましくは25、30、35を超え、より好ましくは少なくとも40、45、最も好ましくは少なくとも50℃又はさらに少なくとも60℃である。Tgは、DSC、中点、加熱速度10℃/分で測定されたものとして定義される。当業者によって理解されるように、成分のうちの1つが50℃より実質的に高いTgを有する場合、他の処方物成分のTgはより低くなり得る。
【0081】
好適な成分Bは、ヒドロキシ及び(メタ)アクリラート官能性化合物をイソシアナートと反応させてウレタン結合を形成することによって調製されたウレタン(メタ)アクリラートであり、イソシアナートは、好ましくは少なくとも一部はジイソシアナート又はトリイソシアナート、好ましくはイソホロンジイソシアナート(IPDI)である。ウレタン結合はそれ自体で剛性を導入するが、好ましくは、脂環式又は芳香族イソシアナート、好ましくは脂環式イソシアナートなどの高Tgイソシアナートが使用される。使用されるこのようなイソシアナートの量は、好ましくは、当該(メタ)アクリラート官能性ポリマーのTgが40より高く、好ましくは45又は50℃より高くなるように選択される。
【0082】
粉体コーティング組成物ブレンドは、好ましくは、硬化後、少なくとも0.025ミリモル/cc、より好ましくは少なくとも0.05ミリモル/cc、最も好ましくは少なくとも0.08ミリモル/cc、通例3、2、1又は0.7ミリモル/cc未満の架橋密度(DMTAを使用)が求められ得るような方法で好ましくは設計される。
【0083】
粉体コーティング組成物ブレンドは、周囲条件にて流動性粉体を保持すべきであり、したがって10℃/分の加熱速度にてDSCによって測定される中点値として、25℃を超える、好ましくは30℃を超える、より好ましくは35、40、50℃を超えるTgを有する。
【0084】
上記のように、好ましい成分Aはマロナート官能性成分である。しかし、マロナート部分を含めることによりTgが低下する傾向があり、十分に高いTgを有する主成分Aとしてマロナートに基づく粉体コーティング組成物ブレンドを提供することは難題であった。
【0085】
高Tgを達成することを考慮すると、粉体コーティング組成物ブレンドは、好ましくは、ハイブリッド成分A/Bの形態であり得る、その架橋性ドナー成分A及び/若しくは架橋性アクセプタ成分Bが、アミド、尿素若しくはウレタン結合を含む架橋性組成物、並びに/又は高Tgモノマー、好ましくは脂環式若しくは芳香族モノマー、若しくはポリエステルの場合には、1,4-ジメチロールシクロヘキサン(CHDM)、トリシクロデカンジメタノール(TCDジオール)、イソソルビド、ペンタ-スピログリコール、水添ビスフェノールA及びテトラメチル-シクロブタンジオールの群から選択される1つ以上のモノマーを含む架橋性組成物を含む。
【0086】
さらに、高Tgを達成することを考慮すると、粉体コーティング組成物ブレンドは、成分B又はハイブリッド成分A/Bを含み、ハイブリッド成分A/Bは、ポリエステル(メタ)アクリラート、ポリエステルウレタン(メタ)アクリラート、エポキシ(メタ)アクリラート若しくはウレタン(メタ)アクリラートであり、又はフマラート、マレアート若しくはイタコナート単位、好ましくはフマラートを含むポリエステルであり、又はイソシアナート若しくはエポキシ官能性活性化不飽和基でエンドキャップされたポリエステルである。
【0087】
最も好ましくは、粉体コーティング組成物ブレンドは、RMA架橋性粉体コーティング組成物ブレンドにおける使用に適した特徴を有するRMA架橋性組成物を含む。特に、優れた流動及びレベリング特性、並びに優れた化学的及び機械的耐性を達成することを考慮して、好ましくは、粉体コーティング組成物ブレンドにおいては、架橋性成分A又はB又はハイブリッドA/Bの少なくとも1つは、好ましくはアクリル、ポリエステル、ポリエステルアミド、ポリエステル-ウレタンポリマーの群から選択されるポリマーであり、該ポリマーは、
a)GPCで測定した場合に、少なくとも450gr/モル、好ましくは少なくとも1000、より好ましくは少なくとも1500、最も好ましくは少なくとも2000gr/モルの数平均分子量Mnを有し、
b)GPCで測定した場合に、最大20000gr/モル、好ましくは最大15000、より好ましくは最大10000、最も好ましくは最大7500gr/モルの重量平均分子量Mwを有し、
c)好ましくは、4未満、より好ましくは3未満、及び明らかに1超の多分散性Mw/Mnを有し、
d)少なくとも150、250、350、450又は550gr/モル、好ましくは最大で2500、2000、1500、1250又は1000gr/モルのC-H又はC=Cにおける等価重量EQW及び1~25、より好ましくは1.5~15、さらにより好ましくは2~15、最も好ましくは2.5~10のC-H基/分子の、反応基C-H又はC=Cの数平均官能価を有し、
e)好ましくは、100~140℃の範囲の温度で60Pas未満、より好ましくは40、30、20、10又はさらには5Pas未満の溶融粘度を有し、
f)好ましくは、アミド、尿素若しくはウレタン結合を含み、及び/又は高Tgモノマー、好ましくは脂環式若しくは芳香族モノマー、特に1,4-ジメチロールシクロヘキサン(CHDM)、トリシクロデカンジメタノール(TCDジオール)、イソソルビド、ペンタ-スピログリコール若しくは水添ビスフェノールA及びテトラメチル-シクロブタンジオールの群から選択されるポリエステルモノマーを含み、
g)10℃/分の加熱速度でのDSCによって測定される中点値として25℃超、好ましくは35℃超、より好ましくは40、50若しくはさらに60℃超のTgを有するか、又は(10℃/分の加熱速度でのDSCによって測定された場合に)40℃~150、好ましくは130℃、好ましくは少なくとも50若しくはさらに70℃、好ましくは150、130℃未満若しくはさらに120℃の融解温度を有する結晶性ポリマーである、
ことが見出された。
【0088】
ポリマーの特徴であるMn、Mw及びMw/Mnは、一方では望ましい粉体安定性を、他方では望ましい低溶融粘度だけでなく、想定されるコーティング特性も考慮して選択される。高いMnは末端基のTg低下効果を最小限に抑えるのに好ましいが、他方、溶融粘度はMwに大きく関連し、低い粘度が望ましいため、低いMwが好ましい。したがって、低いMw/Mnが好ましい。
【0089】
高Tgを達成することを考慮すると、RMA架橋性ポリマーは、好ましくはアミド結合、尿素結合若しくはウレタン結合を含み、及び/又は高Tgモノマー、好ましくは脂環式モノマー若しくは芳香族モノマーを含み、又はポリエステルの場合には、1,4-ジメチロールシクロヘキサン(CHDM)、TCDジオール、イソソルビド、ペンタスピログリコール若しくは水素化ビスフェノールA及びテトラメチルシクロブタンジオールの群から選択されるモノマーを含む。
【0090】
RMA架橋性ポリマーがA/Bハイブリッドポリマーである場合、ポリマーがアクリラート又はメタクリラート、フマラート、マレアート及びイタコナート、好ましくは(メタ)アクリラート又はフマラートの群から選択される1個以上の成分B基も含むことがさらに好ましい。さらに、結晶性材料として使用される場合、RMA架橋性ポリマーは、(加熱速度10℃/分にてDSCによって測定される)40℃~130℃、好ましくは少なくとも50又はさらには70℃、好ましくは150、130又はさらには120℃未満の溶融温度を有する結晶化度を有することが好ましい。これは、ブレンド中のポリマーの融解温度ではなく(純粋な)ポリマー自体の溶融温度であることに留意されたい。
【0091】
好ましい実施形態において、RMA架橋性ポリマーは、脂環式イソシアナート又は芳香族イソシアナート、好ましくは脂環式イソシアナートに由来する尿素結合、ウレタン結合又はアミド結合を含むポリエステル、ポリエステルアミド、ポリエステル-ウレタン又はウレタン-アクリラートを含み、当該ポリマーは少なくとも40℃、好ましくは少なくとも45又は50℃及び最大120℃のTg及び450~10000、好ましくは1000~3500g/モルの数平均分子量Mn、好ましくは20000、10000又は6000g/モルの最大Mwを有し、当該ポリマーはRMA架橋性成分A若しくはB又はその両方を備えている。ポリマーは、例えば当該RMA架橋性基を含む前駆体ポリマーを、ある量の脂環式イソシアナート又は芳香族イソシアナートと反応させて、Tgを上昇させることによって得ることができる。そのようなイソシアナートの添加量又は形成される尿素/ウレタンの結合量は、Tgが少なくとも40℃、好ましくは少なくとも45又は50℃まで上昇するように選択される。
【0092】
好ましくは、RMA架橋性ポリマーは、主成分Aとしてマロナートを含み、1分子当たり1~25、より好ましくは1.5~15、さらにより好ましくは2~15、最も好ましくは2.5~10のマロナート基の数平均マロナート官能価を含むポリエステル又はポリエステル-ウレタンであり、500~20000、好ましくは1000~10000、最も好ましくは2000~6000g/モルのGPC重量平均分子量を有し、ヒドロキシ及びマロナート官能性ポリマーをイソシアナートと反応させてウレタン結合を形成することにより調製されている。
【0093】
さらに、ポリマーは、アモルファス又は(半)結晶性ポリマー又はその混合物であり得る。半結晶性とは、部分的に結晶性で部分的にアモルファスであることを意味する。(半)結晶化度はDSC溶融吸熱によって定義され、目標結晶化度は少なくとも40℃、好ましくは少なくとも50℃、より好ましくは少なくとも60℃、好ましくは最大130、120、110℃又は100℃のDSCピーク溶融温度Tmを有するとして定義される。完全なアモルファス状態のそのような成分のDSC Tgは、好ましくは40℃未満、より好ましくは30、20又はさらには10℃未満である。
【0094】
基材及びコーティング
本発明は、
a.本発明による粉体コーティング組成物ブレンドを用意すること、
b.粉体の層を基材表面に適用すること、及び
c.任意に及び好ましくは赤外線加熱を使用して、75~200℃、好ましくは80~180℃、より好ましくは80~160、150、140、130又はさらには120℃の硬化温度Tcurまで加熱すること、
d.Tcurにて好ましくは40、30、20、15、10又はさらには5分未満の硬化時間にわたって硬化させること、
を含む、基材を粉体コーティングする方法にも関する。
【0095】
この方法では、Tcurは好ましくは、成分Bの不飽和結合C=Cの変換率を時間の関数としてFTIRにより測定することにより求められる硬化プロファイルによって特徴付けられ、好ましくは60%変換率に到達するまでの時間が30、20又は10分未満であると、C=C変換率が20%から60%まで進む時間の、20%変換率に到達するまでの時間の比は1未満、好ましくは0.8、0.6、0.4又は0.3未満であり、Tcurにおける粉体コーティング組成物は、好ましくは60Pas未満の、より好ましくは40、30、20、10又はさらに5Pas未満の、硬化温度における溶融粘度を有する。溶融粘度は、反応のまさに開始時に又は触媒系のC2なしで測定される。
【0096】
方法の好ましい実施形態において、硬化温度は75~140℃、好ましくは80~120℃であり、触媒系Cは、感温性基材、好ましくはMDF、木材、プラスチック又は合金などの感温性金属基材の粉体コーティングを可能にする上記のような潜在性触媒系である。
【0097】
したがって、本発明は、本発明の粉体コーティング組成物でコーティングされ、MDF、木材、プラスチック又は金属合金などの感温性基材を好ましくは有し、好ましくはコーティングの架橋密度XLDが(DMTAによって測定される)少なくとも0.01、好ましくは少なくとも0.02、0.04、0.07又はさらに0.1ミリモル/ccであり、好ましくは3、2、1.5、1又はさらに0.7ミリモル/cc未満である、物品にも関する。
【0098】
本発明を以下の例によって説明する。
【0099】
試験方法
酸価
1:1キシレン:エタノールの新たに調製した溶媒ブレンド物を調製する。ある量の樹脂を250mlの三角フラスコ中に正確に秤量する。次いで、50~60mlの1:1キシレン:エタノールを添加する。樹脂が完全に溶解するまで溶液を穏やかに加熱し、溶液が沸騰しないようにする。次いで、溶液を室温に冷却し、当量点の後まで0.1M水酸化カリウムを用いて電位差滴定を行った。
【0100】
OH価
OH価(OHV)は、1gのサンプルのヒドロキシル基のアセチル化反応後にエステル化される酢酸の量に相当するmgKOHの数として定義される。調製したブランク及び試料フラスコの手作業での滴定によってOHVを決定した。アセチル化溶液は、250mlの三角フラスコ中で分析グレードのピリジンで希釈した15g(精度0.001)の無水酢酸を秤量することによって調製する。正確に秤量したサンプルを有するフラスコに、20mlのアセチル化混合物を添加する。サンプルを含むアセチル化された溶液を100℃の恒温槽に入れ、1時間還流させる。冷却し、未反応の無水酢酸を加水分解するための水を添加した後、サンプルを含む溶液は滴定できる状態となっている。サンプルが添加されないことを除いて同様の手順でブランク溶液を調製する。0.80gのチモールブルー及び0.25gのクレゾールレッドを1Lのメタノールに溶解することによって、指示薬溶液を作る。10滴の指示薬溶液をフラスコに添加し、次いで、標準化された0.5Nメタノール性水酸化カリウム溶液で滴定する。色が黄色から灰色ないし青色に変化し、10秒間維持される青色の呈色を与えた時点で終点に達する。次いで、以下に従ってヒドロキシル価を計算する。
ヒドロキシル価=(B-S)×N×56.1/M+AV
式中、
B=ブランク滴定に使用したKOHのml
S=サンプル滴定に使用したKOHのml
N=水酸化カリウム溶液の規定度
M=サンプル重量(ベースレジン)
AV=ベースレジンの酸価
正味のヒドロキシル価は、以下のように定義される:正味のOHV=(B-S)×N×56.1/M
【0101】
アミン価
3:1キシレン:エタノールプロパノールの新たに調製した溶媒ブレンド物を調製する。ある量の樹脂を250mlの三角フラスコ中に正確に秤量する。次いで、50~60mlの3:1キシレン:エタノールを添加する。樹脂が完全に溶解するまで溶液を穏やかに加熱し、溶液が沸騰しないようにする。次いで、溶液を室温に冷却し、当量点の後まで0.1M塩酸を用いて電位差滴定を行った。
【0102】
GPC分子量
ポリマーのモル質量分布は、Perkin-Elmer HPLCシリーズ200装置でのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって、屈折率(RI)検出器とPLgelカラムを使用し、THFを溶離液として使用し、ポリスチレン標準による較正を使用して求めた。実験的分子量は、ポリスチレン換算値で表す。
【0103】
DSC Tg
ここで報告される樹脂及び塗料のガラス転移温度は、10℃/分の加熱速度を使用した、示差走査熱量測定(DSC)から求めた中点Tgである。
【0104】
膜厚(DFT)
膜厚(DFT)は、Positector 6000 Coating Thickness Gaugeを用いて測定した。
【0105】
(60°)での光沢
コーティングの光沢は、Zehntner ZGM 1130光沢計を使用して測定する。
【0106】
耐溶剤性
硬化膜の耐溶剤性は、メチルエチルケトン(MEK)で飽和させた小さな綿球を用いて2往復擦ることによって測定する。擦り切るまで擦る回数(50回で合格)又は後述する評価システム(0~5、最良~最悪)の使用のいずれかによって判定される。
0.識別可能な変化なし。指の爪で傷をつけることができない
1.光沢のわずかな喪失
2.光沢のいくらかの喪失
3.コーティングは非常に光沢がなく、指の爪で傷をつけることができる
4.コーティングは非常に光沢がなく、極めて柔らかい
5.コーティングが割れている
【0107】
化学的保存安定性:
粉体コーティング組成物の化学的安定性は、示差走査熱量測定(DSC)を用いて、組成物の速度論的プロファイルを測定することにより求めることができる。この方法では、適切な温度での粉体コーティング組成物の反応発熱を、等温走査において時間の関数として測定する。サンプルを60℃/分の速度で関心対象の硬化温度まで加熱し、発生した熱をこの瞬間からの時間の関数として測定する。通例、ある誘導時間の後に発熱ピークが観測される。そのような反応発熱の開始時間(分)をtsとして記録する。粉体コーティング組成物が調製された直後のts(すなわち、tsf)、及び35℃で一定期間保存した後のts(すなわち、tss)を決定することができる。あるいは、関心対象の温度での誘導時間が極めて短いか又は誘導時間が全くない粉体コーティング組成物については、10~230℃の温度スキャンで反応発熱を測定することができる。この方法を使用して、反応発熱の開始が特定の温度で観察され、加熱速度が10℃/分で一定であるため、再プロットして開始時間を決定することができる。tsfとtssの差を保存時間(t)で割ることによって、保存安定性係数(SSF)を決定することができる。
SSF(DSC)=(tsf-tss)/t
【0108】
この係数は、保存中の粉体コーティング組成物中の未成熟反応の程度を示す。粉体コーティング組成物は、好ましくは0分/日に近い、好ましくは0.1分/日未満のSSF値を有する。
【0109】
粒径測定
粒径は、Aero S粉体分散ユニットを取り付けたMalvern Mastersizer 3000を用いて静的光散乱(SLS)を用いて測定する。光学チャンバ内での粉体の供給及び分散のために、比率は35%に設定され、圧力は2バールを超えなかった。体積粒径分布は、Fraunhofer回折アプローチに従って決定した。与えられた各値は、Dx(50)の5回の測定の平均である。
【0110】
【0111】
材料の調製
マロナートドナー樹脂の調製
4口蓋、金属アンカー撹拌器、Pt-100、上部温度計を備えた充填カラム、凝縮器、留出物収集容器、熱電対及びN2注入口を装備した5リットル丸底反応装置に、イソソルビド(80%)1300g、NPG950g及びTPA1983を投入した。反応装置の温度を約100℃まで穏やかに上昇させて、Ken-React(登録商標)KR46B触媒4.5gを添加した。反応温度をさらに徐々に230℃まで上昇させて、反応混合物が透明になり、酸価が2mgKOH/gより低くなるまで、窒素下で撹拌を継続しながら重合を進行させた。反応の最終部では、真空を加えて反応を完了させた。温度を120℃まで低下させて、ジエチルマロナート660gを添加した。反応装置の温度を190℃まで上昇させて、エタノールが形成されなくなるまで維持した。再び真空を加えて反応を完了させた。エステル交換が完了した後、ポリエステルのヒドロキシル価を測定した。最終OHVは27mgKOH/gであり、GPC Mnは1763及びMwは5038、Tg(DSC)は63℃であった。
【0112】
ウレタンアクリラートアクセプタ樹脂の調製
IPDI、ヒドロキシプロピルアクリラート、グリセロールを主成分とするウレタンアクリラートは、例えば欧州特許第0585742号に記載されているように、好適な重合阻害剤を添加して調製する。温度計、撹拌器、注入漏斗及びガスバブリング入口を装備した5リットル反応装置に、IPDI1020部、ジブチルスズジラウラート1.30部及びヒドロキノン4.00部を投入する。次に、ヒドロキシプロピルアクリラート585部を投入し、温度が50℃を超えないように上昇させる。添加が完了したら、グリセリン154部を添加する。発熱反応が収まった15分後、反応生成物を金属製のトレイにキャストする。得られたウレタンアクリラートは、GPC Mn744及びMw1467、Tg(DSC)51℃、残留イソシアナート含有量0.1%未満及び理論不飽和EQW392を特徴とする。
【0113】
エポキシアクリラートアクセプタ樹脂の調製
ビスフェノールAエポキシ樹脂(Mn≒1075)640g、4-メトキシフェノール(MEHQ)3.20g、β-イオノール3.20g及びエチルトリフェニルホスホニウムブロミド4.73gを3リットル反応容器に投入して、撹拌しながら135℃まで加熱した。別のフラスコで、アクリル酸81.50gをMEHQ0.08g及びフェノチアジン0.03gと混合して、30分間にわたって反応容器に添加した。反応を130℃にて完了(AV=0)までさらに5時間進行させた。最終生成物のGPC Mnは1399、Mwは4956、Tg(DSC)は39℃、理論不飽和EQWは637である。
【0114】
カルボキシラート末端化遅延剤樹脂の調製
4口蓋、金属アンカー撹拌器、Pt-100、上部温度計を備えた充填カラム、凝縮器、留出物収集容器、熱電対及びN2注入口を装備した5リットル丸底反応装置に、NPG1180g及びIPA2000gを投入した。反応装置の温度を230℃まで上昇させて、反応混合物が透明になるまで窒素下で撹拌を継続しながら重合を進行させた。得られた最終生成物は、48mgKOH/gのAV及び55℃のTg(DSC)を有する。
【0115】
触媒前駆体の調製
触媒前駆体を調製するために、カルボキシラート末端化ポリエステル樹脂(48のAV)を溶融し、Leistritz ZSE 18二軸押出機を使用して重炭酸テトラエチルアンモニウムTEAHCO3の水溶液(41%)と混合した。押出機は、入口から出口まで以下の温度プロファイル30-50-80-120-120-120-120-100-100(℃)を維持するように設定された9つの連続する加熱ゾーンを収容するバレルを備えていた。第1のゾーンを通じて固体ポリエステル樹脂を2kg/hの速度で添加し、第2のゾーンを通じて液体TEAHCO3を0.60kg/hで注入した。ゾーン4~7の間で混合が行われ、200rpmで回転するように軸を設定した。酸塩基中和から発生した揮発性物質及び水を、ゾーン7で真空を用いて除去した。ダイから出た後、押し出されたストランドを直ちに冷却し、収集した。得られた最終生成物は、11mgKOH/gのAV、33KOH/gのアミン価及び48℃のTg(DSC)を有する。
【0116】
比較(半)結晶性ビニルエーテルウレタン樹脂CVE-1の調製
この成分は、中国特許第112457751号に開示されていることに従って記載及び製造される。4-ヒドロキシブチルビニルエーテル290g、ジブチルスズジラウラート(DBTL)0.6g及び2,5-ジ-tert-ブチル-1,4-ヒドロキノン(BHT)0.2gを、温度計、撹拌器及び蒸留装置を備えた四つ口反応装置に投入した。酸素の気流下で混合物を撹拌し、40℃に加熱した。次いで、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアナート(HDI)210gを反応装置にゆっくり滴加して反応を開始させ、プロセス温度を110℃未満に保った。全てのHDIを投入した後、反応を110℃で30分間進行させた。得られた(半)結晶性ビニルエーテルCVE-1は、それぞれ87℃及び107℃の最大及び最終DSC融解温度を有する。理論的不飽和EQW=200g/mol。
【0117】
沈降シリカ担体上への活性化剤の装填
市販のスタンドミキサーを備えた5リットル反応器に、175gのHI-SIL(登録商標)ABS-D沈降シリカ(粒径=40μm)を投入した。ミキサーを作動させて定常状態を達成した後、325gのEPONEX(登録商標)Resin 1510を反応装置にゆっくり添加した。完全な均質化が達成されるまで混合物を撹拌し続け、次いで排出した。
【0118】
粉体コーティング組成物及び粉体コーティング成分組成物の調製
粉体コーティング組成物ブレンド(PW1-2)又は粉体コーティング成分(PWC3A及び3B、4A及び4B、5A、6A、7A、8A及び8B、9A及び9B)を調製するために、Baker Perkins(旧APV)MP19 25:1 L D二軸押出機中で押し出す前に、高速Thermoprism Pilot Mixer 3予備混合機中にて、1500rpmで20秒間、まず、原料を予備混合した。押出機の速度は250rpmであり、4つの押出機バレルゾーン温度を15、25、80及び100℃に設定した。
【0119】
押出後、Kemutecラボラトリ分級マイクロナイザを使用して押出物を粉砕した。分級機は5.5rpmに設定し、ローターを7rpmに設定して、フィードを5.2rpmに設定した。Retsch GRINDOMIX GM 200ナイフミルを使用して、TGICを粉砕した。Russel Finex 100ミクロンメッシュDemi Finexラボラトリ振動ふるいを使用して、粉砕した押出物及びTCICを100μm未満にふるい分けした。PW1-2、PWC3、PWC4、PWC5、PWC6、PWC7、PWC8及びPWC9の処方物組成(重量部として)を、それぞれ表1、3、8及び10、12及び13に示す。
【0120】
結果
PW1及びPW2は粉体コーティング組成物の比較例であり、表1に列挙されている全ての化合物が一緒に押し出される。
【0121】
比較用粉体コーティング組成物PW1~PW2をパネル上に噴霧し、120℃で20分間硬化させた。MEK耐性、乾燥膜厚及び60°光沢レベルを表2に要約する。120℃等温走査を用いるDSCによって、調製直後の組成物及び時間が経過した組成物の速度論的プロファイルを測定して、保存安定性係数(SSF)を決定し、PW1について
図1に示す。発熱反応の1つの設定時間がより早く始まるため、保存中にいくつかの早期の反応が起こった。2つの比較例のSSFも表2に要約されている。
【表1】
【表2】
【0122】
粉体コーティング成分PWC3Aを粉体コーティング成分PWC3B1、PWC3B2、PWCB3又はPWC3B4とブレンドすることによって、本発明による4つの異なる粉体コーティング組成物ブレンドを調製する。ブレンドをパネル上に噴霧し、勾配オーブンを使用して120~150℃で20分間硬化させた。全ての事例で、コーティング光沢は、比較例PW1での光沢と比較してはるかに低い。さらに、120℃等温走査を使用するDSCによって調製直後のブレンド及び熟成したブレンドの速度論的プロファイルを測定して、保存安定性係数(SSF)を決定した。
図2は、PWC3A+PWC3B1の50/50ブレンドに対するそのような測定の一例を示す。SSFの全ての値はほぼゼロであるので、35℃で30日間保存した際の硬化速度の変化は無視できる(表4~7参照)。表から分かるように、全てのコーティングはMEK耐性の点で良好に機能し、低下した光沢を有する。
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【0123】
PWC4Aを異なる比率でPWC4Bとブレンドして、本発明による粉体コーティング組成物ブレンドを調製した(表8)。ブレンドをパネル上に噴霧し、勾配オーブンを使用して120~150℃で20分間硬化させた。全ての事例で、コーティング光沢は、比較例PW2と比較してはるかに低い。120℃等温走査を使用するDSCによって調製直後のブレンド及び時間が経過したブレンドの速度論的プロファイルを測定して、保存安定性係数(SSF)を決定した。SSFの全ての値はほぼゼロであるので、35℃で30日間保存した際の硬化速度の変化は無視できる(表9参照)。
【表8】
【表9】
【0124】
20/1比のPWC5A及びPWC5B(組成については表10)をブレンドし、噴霧によって、粉体コーティング組成物ブレンドとしてパネル上に適用した。ブレンドを140℃で15分間硬化させた。例PW2と比較して、光沢レベルは60°で43GUに低下している。10℃/分の一定の加熱速度で10~230℃の温度走査を使用するDSCによって、調製直後のブレンド及び熟成したブレンドの速度論的プロファイルを測定した。DSC曲線を再プロットすることにより、保存安定性係数(SSF)の決定が可能になり、
図3に示されている。SSFはほぼゼロであるので、35℃で30日間保存した際の硬化速度の変化は無視できる(表11参照)。
【表10】
【表11】
【0125】
PWC6A及びPWC7Aは、表12に示されている組成を有する粉体コーティング組成物である。これらは、中国特許第112457751号の特許出願に開示されている粉体に対応する比較用粉体コーティング組成物ブレンドPW6及びPW7を作製するために調製される。PWC6Aは、可塑剤として使用される結晶性成分であるCVE-1を含む。PWC6A及びPWC7Aは、活性化剤成分を含有しない。粉体コーティング組成物ブレンドPW6及びPW7は、それぞれPWC6A(平均粒径38um)及びPWC7A(平均粒径31um)を、活性化剤成分である粉砕されたTGIC粉末(平均粒径21um)と98:2の比率でブレンドすることによって作製される。中国特許第112457751号においては、94:6の比が使用されていることに留意する。しかしながら、ここで提供される本発明による例と比較するために、より少ない量のTGICが使用される。PW6及びPW7をそれぞれアルミニウムQパネル上に噴霧し、100℃で20分間硬化させた。
【表12】
【表13】
【0126】
前駆体粉体コーティング成分PWC8A(平均粒径36um)及び活性化剤粉体コーティング成分PWC9B(平均粒径36um)を54/46の比率でブレンドすることによって、本発明による粉体コーティング組成物ブレンドPW8を調製した。この粉体コーティングブレンドの全体的な組成は、ドナー/アクセプタ比の相対量、触媒前駆体濃度及び活性化剤濃度の観点から、PW6の比較用粉体コーティングブレンドと同一である。本発明によるブレンドをアルミニウムQパネル上に噴霧し、100℃で20分間硬化させた。比較用粉体コーティングブレンドPW6と比較して、本発明によるコーティングブレンドPW8は、より優れた耐溶剤性を達成し、より低い光沢レベルを有する。これらの適用結果を表14に要約する。
【0127】
図4は、粉体コーティングブレンド組成物PW6及びPW8の両方についての100℃でのDSC等温分析を示す。PW6については反応発熱ピークを観察することができず、100℃で硬化が全く又はほとんど生じていないことを示していることが明らかである。さらに、一組の硬化はより低い温度で開始し、反応もより早く完了するので、両粉体コーティングブレンドのDSC温度走査分析(
図5参照)は、PW6と比較してPW8の硬化速度がより速いことを示唆している。
【0128】
同様に、前駆体組成物PWC9A(平均粒径34um)及び活性化剤組成物PWC9B(平均粒径34um)を53/47の比率でブレンドすることによって、本発明による粉体コーティング組成物ブレンドPW9を調製した(表13参照)。この粉体コーティングブレンドの全体的な組成は、ドナー/アクセプタ比の相対量、触媒前駆体濃度及び活性化剤濃度の観点から、PW7の比較用粉体コーティングブレンドと同一である。本発明によるブレンドをアルミニウムQパネル上に噴霧し、120℃で20分間硬化させた。比較用粉体コーティングブレンドPW7と比較して、本発明によるコーティングブレンドPW9は、より優れた耐溶剤性を達成し、より低い光沢レベルを有する。これらの適用結果を表14に要約する。
【0129】
微粉体に粉砕された純粋なTGICの使用は、吸入又は皮膚接触を通じた純粋なTGICの微粒子に適用作業者が曝露される重大なリスクを生じさせる。TGICは重大な健康被害をもたらし、変異原性(危険有害性情報H340)、吸入による毒性(H331)、皮膚接触を通じた強い感作性(H317)及び反復曝露により臓器損傷を引き起こすこと(H373)が知られている。TGICは、欧州では高懸念物質(SVHC)として掲載されており、上記の理由により、欧州での粉体コーティングにおける使用は本質的に禁止されている。塗料適用段階における純粋なTGICの微粒子の使用は、粉体塗料組成物を処方する押出における少量成分としてのその適用を超えて、さらなる健康リスクを導入すると考えることができる。
【表14】
【国際調査報告】