(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-24
(54)【発明の名称】黄色度指数を低下させ安定化させるための添加剤を含む不飽和エステル
(51)【国際特許分類】
C07C 67/62 20060101AFI20240417BHJP
C07C 47/02 20060101ALI20240417BHJP
C07C 47/575 20060101ALI20240417BHJP
C07C 47/565 20060101ALI20240417BHJP
C07C 69/54 20060101ALI20240417BHJP
C07C 47/04 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
C07C67/62
C07C47/02
C07C47/575
C07C47/565
C07C69/54 Z
C07C47/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023569760
(86)(22)【出願日】2022-04-29
(85)【翻訳文提出日】2023-12-18
(86)【国際出願番号】 EP2022061442
(87)【国際公開番号】W WO2022238144
(87)【国際公開日】2022-11-17
(32)【優先日】2021-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319013746
【氏名又は名称】レーム・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Deutsche-Telekom-Allee 9, 64295 Darmstadt, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン チュンケ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア ヴィットコフスキー
(72)【発明者】
【氏名】ベライド アイト アイサ
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ ブアクハート
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ヘルムート ケーニッヒ
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン クリル
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス リューリング
(72)【発明者】
【氏名】スヴェン バルク
(72)【発明者】
【氏名】ブルーノ ケラー
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AD40
4H006BA94
4H006GP05
4H006KC14
4H006KE00
(57)【要約】
本発明は、アルキル(メタ)アクリレート、特にMMA、および該アルキル(メタ)アクリレートから製造されたポリマーの黄色度指数を低下させる新規の方法に関する。新規の本方法は、モノマーを長期間貯蔵した後でもこの効果を発揮する。本方法では、モノマー組成物に特定のアルデヒドを添加する。この添加を、アルキル(メタ)アクリレートの各製造方法とは独立して行うことができ、したがって簡便かつ安価に実現することができる。さらに、対応するモノマー組成物は、本発明の一部を構成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキル(メタ)アクリレートの黄色度指数を低下させる方法であって、前記アルキル(メタ)アクリレートに一般式R-HC=Oのアルデヒドを0.5~500重量ppm添加し、ここで、Rは、1~20個の炭素原子を有し、かつ任意に3個までの酸素原子をエーテル基および/またはヒドロキシ基として有していてもよく、Rは、直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、芳香族基、エーテル基、またはこれらの複数の基の組み合わせであることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記アルキル(メタ)アクリレートが、メチルメタクリレートである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記アルキル(メタ)アクリレートに前記アルデヒドを1~150重量ppm添加する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記アルキル(メタ)アクリレートにさらに、1種以上の重合安定剤、好ましくはDMBP(2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノール)またはHQME(ヒドロキノンモノメチルエーテル)を1~300重量ppm添加する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記アルキル(メタ)アクリレートが、前記アルデヒドの添加の1時間後に、黄色度指数[D65/10]において少なくとも5%の低下を示す、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記アルキル(メタ)アクリレートが、前記アルデヒドの添加の1時間後に、黄色度指数[D65/10]において少なくとも15%の低下を示す、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記アルデヒドが、メタナール、アセトアルデヒド、プロパナール、イソブタナール、n-ブタナール、ペンタナール、2-メチルペンタナール、デカナール、ドデカナール、ベンズアルデヒド、3-ヒドロキシベンズアルデヒドである、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
少なくとも97.5重量%のアルキル(メタ)アクリレートを含む組成物において、前記組成物は、一般式R-HC=Oのアルデヒドを0.5~500重量ppm含み、ここで、Rは、1~20個の炭素原子を有し、かつ任意に3個までの酸素原子をエーテル基および/またはヒドロキシ基として有していてもよく、Rは、直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、エーテル基、芳香族基、またはこれらの複数の基の組み合わせであることを特徴とする、組成物。
【請求項9】
前記アルキル(メタ)アクリレートが、メチルメタクリレート(MMA)であり、前記組成物が、少なくとも99.5重量%のMMAを含む、請求項8記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が、少なくとも99.8重量%のアルキル(メタ)アクリレートと、1~250重量ppmの前記アルデヒドとを含む、請求項8または9記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が、10~130重量ppmの前記アルデヒドを含む、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
前記アルデヒドが、メタナール、アセトアルデヒド、プロパナール、イソブタナール、n-ブタナール、ペンタナール、2-メチルペンタナール、デカナール、ドデカナール、またはこれらのアルデヒドの少なくとも2つの混合物である、請求項8から11までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が、アクリロニトリルおよび/またはメタクリロニトリルを含み、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが前記組成物中に合計で200重量ppm未満存在する、請求項8から12までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が、ジメチルフラン、ピルビン酸メチルエステルおよびジアセチルを含み、ジメチルフラン、ジアセチルおよびピルビン酸メチルエステルが前記組成物中に合計で30重量ppm未満存在する、請求項8から12までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が、n-ブタノール、tert-ブタノール、イソ酪酸メチルエステル、メチルアクリレート、1,1-ジメトキシイソブテン、メチルプロピオネートおよびエチルメタクリレートから選択される少なくとも2つの成分を含み、n-ブタノール、tert-ブタノール、イソ酪酸メチルエステル、メチルアクリレート、1,1-ジメトキシイソブテン、メチルプロピオネートおよびエチルメタクリレートが合計で700重量ppm未満存在する、請求項8から12までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物がさらに、重合安定剤、好ましくはHQME(ヒドロキノンモノメチルエーテル)を1~300重量ppm含む、請求項8から15までのいずれか1項記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキル(メタ)アクリレート、特にMMA、および該アルキル(メタ)アクリレートから製造されたポリマーの黄色度指数を低下させる新規の方法に関する。新規の本方法は、モノマーを長期間貯蔵した後でもこの効果を発揮する。本方法では、モノマー組成物に特定のアルデヒドを添加する。この添加を、アルキル(メタ)アクリレートの各製造方法とは独立して行うことができ、したがって簡便かつ安価に実現することができる。
【0002】
さらに、対応するモノマー組成物は、本発明の一部を構成する。
【0003】
先行技術
現在、メチルメタクリレート(MMA)は、C2、C3またはC4単位から出発する種々の方法によって製造されており、その際、依然として大半が、シアン化水素およびアセトンから出発して、中心中間体として形成されるアセトンシアノヒドリン(ACH)を経由する。この方法には、非常に多量の硫酸アンモニウムが生じるという欠点があり、その後処理には非常に高いコストがかかる。ACH以外の原料ベースを使用するさらなる方法は、関連特許文献に記載されており、すでに工業規模で実現されている。さらなる欠点は、製造されたC3ベースのMMAの黄色度指数が最適でないことである。この黄色度指数は、確かに比較的低いが、しかし特に光学関連用途で使用されるPMMAシート、PMMAフィルムまたはPMMA成形品の製造時に依然として障害となるわずかな黄色味を招く。
【0004】
C4原料ベースのMMAの製造方法では、イソブチレンやtert-ブタノールなどの反応物から出発し、これらの反応物が複数のプロセス段階を経て所望のメタクリル酸誘導体に転化される。この場合、第1の段階でこれらがメタクロレインに酸化され、第2の段階でメタクリル酸に酸化される。最後にエステル化により所望のアルキルエステルが得られ、特にメタノールによりMMAが得られる。この方法の詳細は、特にUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry 2012, Wiley-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA, Weinheim, Methacrylic Acid and Derivatives, DOI: 10.1002/14356007.a16_441.pub2、ならびにKrillおよびRuehling et. al. “Viele Wege fuehren zum Methacrylsaeuremethylester”, WILEY-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA, Weinheim, doi.org/10.1002/ciuz.201900869に記載されている。
【0005】
ここで、総じて、イソブチレンやtert-ブタノールが第1の段階でメタクロレインに酸化され、次いでこのメタクロレインが酸素と反応することでメタクリル酸が得られる。得られたメタクリル酸は、次いでメタノールによりMMAに転化される。この方法の詳細は、特にUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry 2012, Wiley-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA, Weinheim, Methacrylic Acid and Derivatives, DOI: 10.1002/14356007.a16_441.pub2に記載されている。
【0006】
詳細には、これをベースとする3つのMMA製造プロセスに分類される。原料として、例えば、水の脱離によりイソブテンに転化されるtert-ブタノール、あるいはメタノールの脱離によりイソブテンに転化されるメチル-tert-ブチルエーテル、あるいは例えばクラッカーから原料として入手可能なイソブテン自体が使用される。総括すると、これから以下の3つの経路が生じる:
方法A、「タンデムC4直酸」法、メタクロレインの中間単離なし:この場合、第1の段階でイソブテンからメタクロレインを製造し、これを第2の段階でメタクリル酸に酸化させた後、最後にこれを第3の段階でメタノールによりエステル化させて、MMAを得る。
【0007】
方法B、「分離C4直酸」法:この場合、第1の段階でイソブテンからメタクロレインを製造するという点では同じであり、これを第2の段階でまず単離して中間精製した後、第3の段階でメタクリル酸に酸化させ、最後にこれを第4の段階でメタノールによりエステル化させて、MMAを得る。
【0008】
方法C、「直メタ法」または直酸エステル化法:この場合にも、第1の段階でイソブテンからメタクロレインを製造し、この場合にもこれを第2の段階でまず単離して中間精製した後、第3の段階でメタノールおよび空気により直酸エステル化させて、MMAを得る。
【0009】
記載されたすべての方法は、先行技術において十分に文献に記載されており、特に(i)IHS Chemical Process Economics Program, Review 2015-05, R.J. Chang, Syed Naqvi(ii)Vapor Phase Catalytic Oxidation of Isobutene to Methacrylic Acid, Stud. Surf. Sci. Catal. 1981, 7, 755-767に記載されている。
【0010】
C4ベースのMMAの反応物および副生成物のプロファイルは、C3単位から出発して得られるものとは大きく異なるが、C4ベースのMMAでは、生成物の損失を伴う非常に手間のかかる多段階の精製を行わないと、わずかではあるが光学的最終用途に障害となる黄色味が同様に検出される。しかし、基本的には、障害とはなるものの、C4ベースの生成物における黄色味は、C3ベースの生成物における着色よりも幾分少ない傾向にある。この黄色味を、C4ベースの代替的な方法の提供によって、不十分ではあるが幾分さらに低減することができた。
【0011】
このC4ベースの代替的な方法では、イソブチレンまたはtert-ブタノールを不均一系触媒上で大気酸素により気相酸化させてメタクロレインを生成し、次いでメタノールを用いてメタクロレインを酸化的エステル化反応させることによりMMAが得られる。ASAHIが開発したこの方法は、特に米国特許第5,969,178号明細書および米国特許第7,012,039号明細書に記載されている。この方法の欠点は特に、必要なエネルギー量が非常に多いことである。この方法の一発展形態では、第1の段階でプロパナールおよびホルムアルデヒドからメタクロレインが得られる。このような方法は、国際公開第2014/170223号に記載されている。しかし、この最適化を行っても、C4ベースのMMAもしばしば重大な残留黄色度指数を有することが認められることが多い。
【0012】
この方法の代替案として、米国特許第5,969,178号明細書には、1つのカラムのみでの後処理が開示されており、このカラムでは、供給部が底部の上方に位置することが必須である。反応器排出物からの低沸点成分が、頂部を経由してこのカラムから除去される。底部に残留するのは粗製MMAと水との混合物であり、これはさらなる後処理に送られる。反応器への返送を目的として、側流を経由してメタクロレインとメタノールとの混合物が最終的にカラムから取り出されるが、側流の正確な位置を最初に決定する必要があり、こうした位置を様々なシーブトレイの追加によって調整することができる。ここで、このような方法は共沸混合物が多様であるために実施が困難であることが、米国特許第5,969,178号明細書自体で指摘されている。さらに、この場合特に、副生成物として常に存在するメタクリル酸が重要である。この方法によれば、これに関して米国特許第5,969,178号明細書には言及されてはいないが、メタクリル酸が分離されるが、メタクリル酸は廃棄に回される相中に残留しており、単離は限られた価値しか持たないであろう。しかしそれにより、この方法のメタクリル系生成物の総収率が低下する。
【0013】
米国特許第7,012,039号明細書には、酸化的エステル化の反応器排出物の、若干異なる後処理が開示されている。ここでは、第1の蒸留段階で、メタクロレインがシーブトレイを経由して頂部で留去され、MMA含有水性混合物は、底部から相分離器に送られる。この相分離器において、混合物は硫酸の添加により約2~3のpH値に調整される。次いで、硫酸で酸性化された水と有機相あるいは油相との分離が、遠心分離によって行われる。この油相は、さらなる蒸留で、高沸点成分と、頂部で取り出されるMMA含有相とに分離される。MMA含有相から、その後、第3の蒸留で低沸点成分が分離される。この後、最終精製のためにさらに第4の蒸留が行われる。
【0014】
この方法で問題となるのは、硫酸を大量に添加する必要があり、これによりプラントの一部が腐食する可能性があることである。したがって、特に相分離器や第2の蒸留塔のようなこれらの構成要素は、これに適した材料で製造されていなければならない。さらに、米国特許第7,012,039号明細書にも、同時に生成するメタクリル酸や生成物中に残留する残りのメタノールの取扱いについては言及されていない。しかし、前者は蒸留段階で一緒に除去されるのに対して、メタノールは、メタクロレインと一緒に得て返送することが部分的にしかできず、残りはおそらく第3の蒸留段階で失われるものと推測される。
【0015】
国際公開第2014/170223号には、米国特許第7,012,039号明細書と同様の方法が記載されている。唯一の相違点は、実際の反応において、水酸化ナトリウムのメタノール溶液の添加によってpH値が循環路内で調整されることである。これは特に触媒を保護する役割を果たす。さらに、相分離における水相の分離は、塩の含有ゆえにより容易である。しかし、もう1つの結果は、生成したメタクリル酸の一部がナトリウム塩として存在し、後に水相とともに分離され廃棄されることである。相分離の際に硫酸を添加するという変形例では、確かに遊離酸は回収される。しかし、その代わりに硫酸(水素)ナトリウムが得られ、これが廃棄の際に別の問題を招く可能性がある。
【0016】
最後に、国際公開第2017/046110号には、酸化的エステル化から得られた粗製MMAからまず重質相を分離し、次いでこの重質相からアルコール含有軽質相を留去し、これを再び再循環させることができるという、最適化された後処理が教示されている。この方法の特徴はさらに、メタクロレインが、ここではプロパナールおよびホルムアルデヒドをベースとして得られ、前者が、C2単位、例えばエチレンおよび合成ガスをベースとして得られることである。
【0017】
全体として、使用されるメタクロレインの原料ベースに関係なく、これらの方法はすべて、モノマー自体として測定可能な黄色味を示すMMAまたは総じてアルキルメタクリレートを生じさせる。
【0018】
先行技術に示されているように、様々なMMAプロセスにおいて、原料ベースに関係なく、第一には仕様にしたがってモノマーの単離を行うため、そして第二にはモノマー最終生成物の色彩値を十分に低くするために、多数の分離段階を経る。このようにして、最終的に透明なポリマー生成物を製造することができる。
【0019】
さらに、モノマーのわずかな黄色味は、例えば貯蔵タンクでの長期の貯蔵時に、またはさらなる加工を目的とした輸送時間の結果として、基本的に容易に増加する。モノマーのわずかな黄色味は、例えば成形コンパウンドや他のポリマー、例えばプレキシガラスをベースとするペレットやMMAから出発して製造される半製品などの下流生成物の黄色味をも招く。
【0020】
したがって、この黄色味の原因を特定して、これを重合前に対応するアルキルメタクリレート、特にMMAから可能な限り効率的に除去するような改良が必要とされている。
【0021】
欧州特許第3676241号明細書では、黄色度指数を低下させるべく、酸化的エステル化の間に特定の様式でpH値および含水率を調整し、この段階の粗生成物をさらなる反応器でさらに処理し、後処理中の含水率を元の反応よりも高くし、pH値を元の反応よりも低くすることが明確に提案されている。この方法は、確かに効果的であるが、プロセス工学的に手間がかかることも証明されている。
【0022】
第三の原料の選択肢としては、さらに、アルキルメタクリレート、特にMMAを製造するためのC2ベースの方法がある。これらの方法にも、ホルムアルデヒドおよびプロパナールから製造されたメタクロレインが中間体として含まれ、後者はエチレンから得られる。C2法によるメタクロレインの製造では、第二級アミンおよび酸、通常は有機酸の存在下で、ホルマリンおよびプロピオンアルデヒドから目的生成物が得られる。この場合、反応はマンニッヒ反応により行われる。このようにして合成されたメタクロレイン(MAL)を、その後、後続の段階で気相酸化によってメタクリル酸に、または酸化的エステル化によってメチルメタクリレートに転化させることができる。このようなメタクロレインの製造法は、特に米国特許第7,141,702号明細書、米国特許第4,408,079号明細書、日本国特許第3069420号公報、日本国特許第4173757号公報、欧州特許第0317909号明細書および米国特許第2,848,499号明細書に記載されている。
【0023】
マンニッヒ反応に基づくメタクロレインの製造に適した方法は、当業者に総じて知られており、例えばUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry 2012, Wiley-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA, Weinheim, Acrolein and Methacrolein, DOI:10.1002/14356007.a01_149.pub2における対応する総説の主題である。
【0024】
この方法を経済的に利用するためには、高い収率および低い比エネルギー必要量を達成する必要がある。このC2ベースのMMAの黄色味も、代替的な原料源をベースとするMMAの場合よりもわずかである。それにもかかわらず、この場合にも、特に重合した最終生成物における黄色味を完全に回避することは、現在のところ非常に困難であり、ブルーイング剤を添加しなければ、例えばプレキシガラスシートのような、モノマーから製造された無色透明のプラスチックにおいて重大な黄色味を招く。
【0025】
総括すると、原料のエチレン、アセトンおよびイソブテンをベースとする方法には様々なものが存在すると言える。技術や後処理方法によって、また様々な製造プロセスに応じて生じる例えばMMAのモノマー品質は、実際には微量成分が異なり得る。
【0026】
C2ベースのLIMA法では、基本的に、生成物中に(メタ)アクリロニトリルは含まれていないが、メチルイソブチレートとも呼ばれるイソ酪酸メチルエステルのppm範囲での割合は比較的高いと言える。含有量は、通常は100~700ppmで変動する。その他の特徴的な微量物質は、ジメトキシイソブテンおよびジメトキシイソブタンである。
【0027】
LIMA法のように同様に原料としてのエチレンをベースとする、同様にC2をベースとするALPHA法では、基本的に、この場合にも(メタ)アクリロニトリルが含まれていないと言える。しかし、その代わりに、この場合には、メチルプロピオネートとも呼ばれるメチルプロピオネートエステルがppm範囲で比較的高い値で含まれ得る。含有量は、10~100ppmで変動する。LIMA法と比較すると、イソ酪酸メチルの存在は少ない(数十ppm)。ALPHA法で得られるMMA中の他の特徴的な微量物質は、例えばジエチルケトンやイソプロピルメチルケトンのようなペンタノンやエタノールである。
【0028】
特に出発物質としてのアセトンをベースとするC3ベースのACHスルホ法では、基本的に、(メタ)アクリロニトリルが通常は30~250ppmの濃度で含まれていると言える。メチルプロピオネートやイソ酪酸メチルエステルも同様に検出されるが、C2ベースの方法の場合よりも低濃度である。例えばジエチルケトンやイソプロピルメチルケトンのようなペンタノンやエタノールは、検出されないか、1桁ppmの範囲でしか検出されない。
【0029】
C4ベースの方法、特に気相方法として実施される方法にも他の特定の微量物質が含まれる。ここでも、メチルイソブチレートやメチルプロピオネートが検出されるが、対照的に特徴であるのは、特に微量成分としてのジメチルフランやピルビン酸であり、これらは単離されたモノマーの黄色度指数にも影響を与える。
【0030】
特定のC4ベースの方法として、ここではAsahi法を強調しなければならないが、この方法には、第2の反応段階としての直酸的液相酸化が含まれている。このMMA品質では、またもメチルイソブチレートが特徴的な微量成分として検出される。
【0031】
ほとんどの方法、特にC3ベースおよびC4ベースの両方法では、ジアセチルは着色成分であり、これは単離プロセスでの除去が必要であるが、一部が単離MMAに混入する。ここで、市販のMMAでは0~10ppm弱の含有量が検出されることがある。
【0032】
様々な方法により製造されたMMAモノマーの品質のこのような固有の組成を考慮すると、生成物の黄色味を低下させ、その後の輸送や貯蔵時の黄色味を防止することは、特に困難な課題であった。
【0033】
したがって、全体として、MMAの黄色味を効果的かつ簡便に防止することが強く求められている。特にこのニーズは、MMAの製造法に関係なく存在する。
【0034】
課題
したがって、本発明は、アルキル(メタ)アクリレート、特にMMAの黄色度指数を可能な限り容易に低下させるという課題に基づいていた。
【0035】
ここで特に、この低下をアルキル(メタ)アクリレートの製造方法に関係なく達成可能とすることが課題であった。
【0036】
さらに、黄色度指数の低下を持続的に、すなわちアルキル(メタ)アクリレートを含む組成物を長期間貯蔵した後でも存在させることが課題であった。
【0037】
さらに、黄色度指数の点で改善されたアルキル(メタ)アクリレートのモノマー生成物品質を提供することが課題であった。これに関連して、重合によりこのように製造されたポリ(メタ)アクリレートが得られた後でも、モノマーのこの光学生成物品質の改善によって、黄色度指数の低下を伴う光学特性の改善が得られるようにすることが課題であった。
【0038】
さらに、黄色度指数を持続的に低下させる方法は、毒物学的な懸念がなく、使用が容易でかつ安価であることが望ましい。
【0039】
さらに、この方法を、製造プラントに比較的大きな変更を加えることなく、比較的大きな投資をすることなく実施可能とすることが課題であった。
【0040】
明示されていないさらなる課題は、発明の詳細な説明、特許請求の範囲、実施例または本発明の明細書の全体的な文脈から明らかとなり得る。
【0041】
解決手段
これらの課題は、アルキル(メタ)アクリレートの黄色度指数を低下させる新規の方法によって解決された。本方法は、アルキル(メタ)アクリレートに一般式R-HC=Oを有するアルデヒドを0.5~500重量ppm添加することを特徴とする。驚くべきことに、ここで、アルデヒドは比較的自由に選択可能である。例えば、本発明によれば、1~20個の炭素原子を有し、かつ任意に3個までの酸素原子をエーテル基および/またはヒドロキシ基として有する基Rを有するアルデヒドが使用可能である。ここで、Rは、直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、芳香族基、エーテル基、またはこれらの複数の基の組み合わせであってよい。
【0042】
通常の直鎖状アルキル基の例としては、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基またはn-ドデシル基が挙げられる。分岐状アルキル基には、1つ以上の例えば第三級または第四級炭素原子を有するアルキル基が含まれる。これらの例としては、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、またはエチルヘキシル基が挙げられる。環状アルキル基は、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基またはメチルシクロヘキシル基であってよい。
【0043】
飽和アルキル基の他に、芳香族基、または芳香族基と飽和アルキル基との組み合わせも使用可能である。芳香族基の例としては、フェニル基またはベンジル基が挙げられる。
【0044】
本発明によれば、さらに、合計20個までの炭素原子と、1個以上のエーテル基またはヒドロキシ基の形態の追加の酸素原子とを含む基を使用することもできる。
【0045】
オレフィン性基を含むアルデヒドは、潜在的に重合活性であるため、本発明によれば使用することはできない。加えて、C2-またはC4-MMA中に様々な濃度で残留するメタクロレインから判断できるように、それらはいかなる効果も示さないようである。
【0046】
さらに、アルデヒド中の他のヘテロ原子、例えば特に窒素ヘテロ原子または硫黄ヘテロ原子は、例えば酸化し易い場合があり、それ自体が変色を引き起こす可能性があるため、除外される。ハロゲン原子は、反応性や毒物学的観点を理由として、不適当である。
【0047】
アルデヒドは、特に好ましくはアセトアルデヒド、プロパナール、3-メチルペンタナール、イソブタナールまたはn-ブタナール、およびn-ペンタナールである。
【0048】
本発明の方法は、特に好ましくは、メチルメタクリレート(MMA)のような商業的に慣用されているアルキル(メタ)アクリレートへの添加剤配合に使用される。しかし、他のモノマー、例えば特にn-またはtert-ブチルメタクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、エチルメタクリレートまたはプロピルメタクリレートへの添加剤配合も可能である。さらに、本方法は、メチルアクリレートやブチルアクリレートのようなアクリレートにも使用できる。メタクリル酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートまたはヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの重要な官能性(メタ)アクリレートの黄色度指数も低下させることができる。アルキル(メタ)アクリレートは、好ましくはメチルメタクリレートである。
【0049】
本発明によれば、0.5~500重量ppmのアルデヒドがそれぞれのモノマー組成物に添加される。ここで、最適な量は、添加剤が配合される(メタ)アクリレートおよび使用されるアルデヒドに依存する。この量は、当業者であれば、若干の簡単な手技実験によって、それぞれの組み合わせについて決定することができる。これらの組み合わせの多くについて、好ましいアルデヒド添加量は、1~250重量ppm、特に好ましくは10~150重量ppmが有利であることが実証された。
【0050】
アルキル(メタ)アクリレートには、1~300重量ppmの1種以上の重合安定剤をさらに添加することが好ましい。重合安定剤は1種のみを使用するのが好ましい。(メタ)アクリレート用の重合安定剤は、当業者に総じて知られている。好ましくは、本発明による方法と組み合わせて、2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノール(DMBP)またはヒドロキノン、非常に特に好ましくはヒドロキノンメチルエーテル(HQME)が使用される。
【0051】
好ましくは、本発明による方法は、アルキル(メタ)アクリレートが、アルデヒドの添加の1時間後に、黄色度指数[D65/10]において少なくとも10%、特に好ましくは少なくとも15%の低下を示すように実施される。特に好ましくは、アルキル(メタ)アクリレートは、例えばイソブタナールのようなアルデヒドの添加の1時間後に、黄色度指数[D65/10]において少なくとも40%の低下を示す。
【0052】
驚くべきことに、アルキル(メタ)アクリレートの黄色度指数は、記載されたアルデヒドの単純な添加によって短時間以内に顕著に低下させることができるだけでないことが見出された。少なくとも同様に驚くべきことに、この黄色度指数の低下は、数日間貯蔵した後でも、依然として同じか少なくとも同程度に検出できるほど持続的であることが見出された。これは、例えば40℃のような高温で貯蔵した後でも観察される。
【0053】
好ましくは、本発明による方法は、ここで、アルキル(メタ)アクリレートが、アルデヒドの添加の8日後、好ましくは1ヶ月後に、黄色度指数[D65/10]において依然として少なくとも10%、特に好ましくは少なくとも15%の低下を示すように実施される。ここで、通常は、この期間中に、アルデヒドの添加の1時間後の黄色度指数と比較した組成物の黄色度指数の増加は、全くまたはごくわずかにしか認められない。
【0054】
さらに、非常に驚くべきことに、本発明により添加剤が配合されたアルキル(メタ)アクリレートから製造されたポリマーの黄色度指数も、同様に製造されたが本発明による添加剤配合がなされていないポリマーと比較して顕著に低下することが判明した。この効果は、ポリマーを長期間、例えば1ヶ月間貯蔵した後でも依然として安定である。ポリマーの耐候性試験後でも、色の安定化効果は容易に測定可能であり、驚くほど強い。
【0055】
基本的に、本発明による方法は、MMAのような純粋なアルキル(メタ)アクリレートの黄色度指数の低下だけでなく、様々なアルキル(メタ)アクリレートを主成分とするモノマー混合物の黄色度指数の低下にも使用できる。この場合、アルデヒドをモノマー混合物に添加してもよいし、あるいは混合物全体が本発明によるアルデヒド濃度で得られるように、混合モノマーにすでに1種以上のアルデヒドが本発明により混合されていてもよい。
【0056】
さらに、これらのモノマー混合物から製造されたポリマーにも、本発明による効果が及ぶ。
【0057】
驚くべきことに、上記の説明に対応する、調査された多くの、より正確にはすべてのアルデヒドが本発明による効果を示すことも見出された。実施された試験によれば、例えば、メタナール、アセトアルデヒド、プロパナール、イソブタナールまたはn-ブタナール、ペンタナール、2-メチルペンタナール、デカナール、ドデカナールが特に適している。
【0058】
芳香族アルデヒド、例えばベンズアルデヒド、3-ヒドロキシベンズアルデヒドも、純粋なアルキル基を有するアルデヒドと比較して、初期には効果が減少するものの、効果を示す。したがって、これらは本発明により使用可能であるが、さほど好ましくない。
【0059】
本発明による方法に加えて、少なくとも97.5重量%のアルキル(メタ)アクリレートを含む組成物も本発明の一部を構成する。該組成物は、本発明によれば、一般式R-HC=Oを有するアルデヒドを0.5~500重量ppm含むことを特徴とする。ここで、このアルデヒドについては、方法に関連して上述したことと同様のことが該当する。本発明による特に好ましいアルデヒドは、イソブタナール、n-ペンタナールまたは3-メチルペンタナールである。
【0060】
これに限定されるものではないが、特に好ましくは、アルキル(メタ)アクリレートは、メチルメタクリレート(MMA)である。この場合の組成物は、好ましくは少なくとも99.5重量%、理想的には少なくとも99.9重量%のMMAを含む。本発明により組成物に含まれ得るさらなるモノマーについては、方法に関する説明においてすでに示されている。
【0061】
本発明によれば、組成物は、好ましくは少なくとも97.5重量%のアルキル(メタ)アクリレートと少なくとも0.5~500重量ppmのアルデヒドとを含む。好ましくは、組成物は、99.5重量%、特に好ましくは99.8重量%のアルキル(メタ)アクリレートと、1~300重量ppm、特に20~250重量ppm、非常に特に好ましくは10~130重量ppm、特に30~90重量ppmのアルデヒドとを含む。組成物中のアルデヒドは、特に好ましくは、メタナール、アセトアルデヒド、プロパナール、イソブタナールもしくはn-ブタナール、ペンタナール、2-メチルペンタナール、デカナール、ドデカナール、またはこれらのアルデヒドの少なくとも2つの混合物である。
【0062】
好ましくは、本発明による組成物はさらに、1~300重量ppmの重合安定剤を含む。これは好ましくは2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノールまたはヒドロキノン、非常に特に好ましくはヒドロキノンメチルエーテル(HQME)である。
【0063】
驚くべきことにさらに、本発明による方法の使用または本発明による組成物の使用により、官能性または非官能性アルキル(メタ)アクリレート、特に商業的に非常に重要なMMAの色安定化を、ベースとなるそれぞれの製造法とは無関係に達成できることが判明した。しかし、本発明による効果が、MMAについては基本的に製造方法とは無関係に生じるが、その効果の程度、特に減色の程度に関してはベースとなる製造方法に非常に大きく依存することは、ここで特に驚くべきことであった。これは経験的に、各組成物中の他の成分との相互作用にのみ起因し得る。とはいえ、アルキル(メタ)アクリレート中の副成分が非常に多岐にわたるにもかかわらずこの効果が認められるとは、決して予想できるものではなかった。
【0064】
例えば、本発明による効果は、特にC3ベースのACH法によって製造されたMMAあるいは他のアルキル(メタ)アクリレートにおいて特に非常に顕著である。この驚くべき効果は、分析によれば、特に組成物がアクリロニトリルおよび/またはメタクリロニトリルを含むことに起因する。ここで特に好ましいのは、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが組成物中に合計で300重量ppm未満、特に200重量ppm未満存在する場合である。
【0065】
本発明による効果は、特にC2ベースの方法によって製造されたMMAあるいは他のアルキル(メタ)アクリレートにおいても同様に特に非常に顕著である。この驚くべき効果は、分析によれば、特に組成物がn-ブタノール、tert-ブタノール、メチルアクリレート、イソ酪酸メチルエステル、メチルプロピオネート、1,1-ジメトキシイソブテンおよびエチルメタクリレートから選択される少なくとも2つの成分を含み、特に組成物がn-ブタノール、tert-ブタノール、メチルアクリレート、メチルプロピオネートおよびエチルメタクリレートを含む場合に起因する。ここで特に好ましいのは、これらの成分のすべてが存在するが、n-ブタノール、tert-ブタノール、メチルアクリレート、メチルプロピオネートおよびエチルメタクリレートが組成物中に合計で5重量ppm未満存在する場合である。n-ブタノール、tert-ブタノール、イソ酪酸メチルエステル、メチルアクリレート、メチルプロピオネートおよびエチルメタクリレートが合計で700重量ppm未満存在する場合も同様に好ましい。
【0066】
同様に、他の場合ほど顕著ではないが、特にイソブテン、イソブタノールまたはMTBEから出発するC4ベースの方法によって製造されたMMAあるいは他のアルキル(メタ)アクリレートにおいても、本発明による効果が顕著である。
【0067】
この驚くべき効果は、分析によれば、特に組成物がジメチルフラン、ピルビン酸メチルエステルおよび/またはジアセチルを含み、好ましくは3成分すべてを含むことに起因する。ここで特に好ましいのは、これら3成分の合計が組成物中に30重量ppm未満、特に10重量ppm未満存在する場合である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【
図1】各種濃度のイソブタナールによるC2-、C3-あるいはC4-MMAの安定化に関して、実施例1~実施例12の結果を比較例VB1、2および3と比較した図を示す(表1の結果も参照)。
【
図2】各種濃度のイソブタナールによる8週間の貯蔵(50℃)にわたるC3-MMAの安定化の実施例13~実施例16の結果を比較例VB4と比較した図を示す(表2の結果も参照)。
【
図3】各種濃度のイソブタナールによる8週間の貯蔵(50℃)にわたるC4-MMAの安定化の実施例17~実施例20の結果を比較例VB5と比較した図を示す(表2の結果も参照)。
【実施例】
【0069】
黄色度指数の低下
本発明によるアルデヒドであるイソブタナールの添加による、C2、C3またはC4プロセスで得られたメチルメタクリレートの黄色度指数の低下を調べるために、メチルメタクリレートに、例えばイソブタナールのようなアルデヒドをドープした。この手順は、最初に実施例1~実施例12に関するものである。次に、あるいは所定の時点で、DIN 6167に準拠して黄色度指数Y.I. D65/10°を測定した。ドープされたメチルメタクリレート試料を製造するために、以下の原料を使用した:
- LiMA法により製造されたC2プロセス由来のRoehm社製メチルメタクリレート(以下、C2-MMAと表記)
- ACH法により製造されたC3プロセス由来のRoehm社製メチルメタクリレート(以下、C3-MMAと表記)
- すでに50ppmのヒドロキノンモノメチルエーテルで安定化されている、イソブテンから製造されたC4プロセス由来のRoehm社製メチルメタクリレート(以下、C4-MMAと表記)
- Merck KGaA社製イソブタナール
【0070】
イソブタナールをドープしたメチルメタクリレート試料を製造するため、メチルメタクリレートをガラスビーカーに装入し、その中に必要に応じてヒドロキノンモノメチルエーテル安定剤を溶解させ、イソブタナールを添加した。この混合物をマグネチックスターラーで1時間均質化した。その後、光学的品質を評価するために黄色度指数を測定した。
【0071】
比較例VB1(黄色度指数の参照例):
アルデヒドを添加せず、50ppmのヒドロキノンモノメチルエーテルで安定化させたC3-MMA
実施例1:
50ppmのヒドロキノンモノメチルエーテルで安定化させ、12ppmのイソブタナールと混合したC3-MMA
実施例2:
50ppmのヒドロキノンモノメチルエーテルで安定化させ、25ppmのイソブタナールと混合したC3-MMA
実施例3:
50ppmのヒドロキノンモノメチルエーテルで安定化させ、60ppmのイソブタナールと混合したC3-MMA
実施例4:
50ppmのヒドロキノンモノメチルエーテルで安定化させ、100ppmのイソブタナールと混合したC3-MMA
比較例VB2(参照例):
アルデヒドを添加せず、すでに50ppmのヒドロキノンモノメチルエーテルを含むC4-MMA
実施例5
すでに50ppmのヒドロキノンモノメチルエーテルを含み、12ppmのイソブタナールと混合したC4-MMA
実施例6:
すでに50ppmのヒドロキノンモノメチルエーテルを含み、25ppmのイソブタナールと混合したC4-MMA
実施例7:
すでに50ppmのヒドロキノンモノメチルエーテルを含み、60ppmのイソブタナールと混合したC4-MMA
実施例8:
すでに50ppmのヒドロキノンモノメチルエーテルを含み、100ppmのイソブタナールと混合したC4-MMA
比較例VB3(参照例):
アルデヒドを添加せず、すでに50ppmのヒドロキノンモノメチルエーテルを含むC2-MMA
実施例9
すでに50ppmのヒドロキノンモノメチルエーテルを含み、12ppmのイソブタナールと混合したC2-MMA
実施例10:
すでに50ppmのヒドロキノンモノメチルエーテルを含み、25ppmのイソブタナールと混合したC2-MMA
実施例11:
すでに50ppmのヒドロキノンモノメチルエーテルを含み、60ppmのイソブタナールと混合したC2-MMA
実施例12:
すでに50ppmのヒドロキノンモノメチルエーテルを含み、100ppmのイソブタナールと混合したC2-MMA
【0072】
イソブタナールをドープしたC3-MMA、C4-MMAおよびC2-MMAのメチルメタクリレート試料の各黄色度指数を、C3、C4およびC2プロセス由来の純粋なメチルメタクリレート(VB1、VBあるいはVB3)の各黄色度指数と関連付けた。これにより、出発値に対する黄色度指数の低下のパーセンテージが得られる。この値を表1に示し、
図1で視覚的に対比させた。
【0073】
【0074】
経時的な黄色度指数の低下の評価
長期間にわたる黄色度指数の安定した低下を示すために、C3-あるいはC4-MMAの試料を本発明によりアルデヒドとしてのイソブタナールと混合し、50℃で貯蔵した。対応する試験は、実施例9~実施例16あるいはこれに関連する比較例VB4およびVB5にある。黄色度指数Y.I. D65/10°を、DIN 6167に準拠して、表2に規定された時点の後に測定した。実施例1~実施例12と同じ原料を使用した。
【0075】
調査のためにイソブタナールをドープした試料を製造するために、メチルメタクリレートをガラスビーカーに装入し、その中に必要に応じてヒドロキノンモノメチルエーテル安定剤を溶解させ、イソブタナールを添加した。この混合物をマグネチックスターラーで1時間均質化した。その後、この溶液25±1gを褐色の30mLの細口ビンに充填し、50℃で空気循環式乾燥キャビネット内で貯蔵した。
【0076】
光学的品質を評価するために、50℃での貯蔵開始時、ならびに対応する貯蔵温度50℃でそれぞれ4週間および8週間の貯蔵時間後に、黄色度指数を測定した。
【0077】
比較例VB4(貯蔵後の黄色度指数の参照例):
アルデヒドを添加せず、50ppmのヒドロキノンモノメチルエーテルで安定化させ、50℃で空気循環式乾燥キャビネット内で8週間貯蔵したC3-MMA
実施例13:
50ppmのヒドロキノンモノメチルエーテルで安定化させ、12ppmのイソブタナールと混合し、50℃で空気循環式乾燥キャビネット内で8週間貯蔵したC3-MMA
実施例14:
50ppmのヒドロキノンモノメチルエーテルで安定化させ、25ppmのイソブタナールと混合し、50℃で空気循環式乾燥キャビネット内で8週間貯蔵したC3-MMA
実施例15:
50ppmのヒドロキノンモノメチルエーテルで安定化させ、60ppmのイソブタナールと混合し、50℃で空気循環式乾燥キャビネット内で8週間貯蔵したC3-MMA
実施例16:
50ppmのヒドロキノンモノメチルエーテルで安定化させ、100ppmのイソブタナールと混合し、50℃で空気循環式乾燥キャビネット内で8週間貯蔵したC3-MMA
比較例VB5(参照例):
アルデヒドを添加せず、すでに50ppmのヒドロキノンモノメチルエーテルを含み、空気循環式乾燥キャビネット内で50℃で8週間貯蔵したC4-MMA
実施例17:
すでに50ppmのヒドロキノンモノメチルエーテルを含み、12ppmのイソブタナールと混合し、50℃で空気循環式乾燥キャビネット内で8週間貯蔵したC4-MMA
実施例18:
すでに50ppmのヒドロキノンモノメチルエーテルを含み、25ppmのイソブタナールと混合し、50℃で空気循環式乾燥キャビネット内で8週間貯蔵したC4-MMA
実施例19:
すでに50ppmのヒドロキノンモノメチルエーテルを含み、60ppmのイソブタナールと混合し、50℃で空気循環式乾燥キャビネット内で8週間貯蔵したC4-MMA
実施例20:
すでに50ppmのヒドロキノンモノメチルエーテルを含み、100ppmのイソブタナールと混合し、50℃で空気循環式乾燥キャビネット内で8週間貯蔵したC4-MMA
【0078】
イソブタナールをドープしたC3-MMAおよびC4-MMAのメチルメタクリレート試料の各黄色度指数を、それぞれ、貯蔵せず、また4週間あるいは8週間貯蔵した後に、C3およびC4プロセス由来の純粋なメチルメタクリレートの各黄色度指数と関連付けた。これにより、出発値に対する黄色度指数の低下のパーセンテージが得られる。この値を表2に示し、低下のパーセンテージのデータとともに、C3-MMAについては
図2に、C4-MMAについては
図4にグラフで示す。
【0079】
【0080】
比較例VB1(参照例):
アルデヒドを添加せず、50ppmのヒドロキノンモノメチルエーテルで安定化させたC3-MMA
実施例21~実施例34:
50ppmのヒドロキノンモノメチルエーテルで安定化させ、表3に示すようにアルデヒドと混合し、50℃で空気循環式乾燥キャビネット内で8週間貯蔵し、4週間後あるいは8週間後に黄色度指数を測定したC3-MMA。結果を表3に示す。
【0081】
実施例27に関する注釈:10重量ppmのドデカナールを直接添加した後の黄色度指数の測定は、測定誤差に起因すると思われる。4あるいは8週間後の黄色度指数の低下は、本実施例でも他の実施例と一致しており、本発明により期待される結果である。
【0082】
実施例35~実施例40
50ppmのヒドロキノンモノメチルエーテルで安定化させ、表4に示すようにn-ペンタナールと混合し、50℃で空気循環式乾燥キャビネット内で8週間貯蔵し、4週間後あるいは8週間後に黄色度指数を測定したC3-MMA。結果を表4に示す。
【0083】
【0084】
【国際調査報告】