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特表2024-518084疾患を治療するための組成物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-24
(54)【発明の名称】疾患を治療するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20240417BHJP
   A61K 35/74 20150101ALI20240417BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240417BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20240417BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240417BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240417BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20240417BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240417BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240417BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240417BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240417BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20240417BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240417BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240417BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20240417BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240417BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20240417BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240417BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240417BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240417BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20240417BHJP
   C12N 15/31 20060101ALN20240417BHJP
【FI】
C12N1/20 A ZNA
A61K35/74
A61K9/14
A61K9/16
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/19
A61P1/00
A61P29/00
A61K35/74 G
A61K35/74 D
A61P37/02
A61P1/04
A61P11/06
A61P19/02
A61P37/08
A61P29/00 101
A61P17/06
A61P1/16
A61P3/06
A61P17/00
A61P3/10
A61P9/00
A23L33/135
C12N1/20 E
C12N15/31
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023570114
(86)(22)【出願日】2022-05-10
(85)【翻訳文提出日】2024-01-10
(86)【国際出願番号】 AU2022050442
(87)【国際公開番号】W WO2022236365
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】2021901387
(32)【優先日】2021-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(31)【優先権主張番号】2022901200
(32)【優先日】2022-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523427559
【氏名又は名称】マイクロバ アイピー プロプライアタリー リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】パライク オー クイブ
(72)【発明者】
【氏名】ルッツ クラウス
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
4C076
4C087
【Fターム(参考)】
4B018LB07
4B018LB08
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE03
4B018MD85
4B018ME07
4B018ME11
4B065AA01X
4B065AC14
4B065BA30
4B065BB24
4B065CA42
4B065CA44
4C076AA29
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC04
4C076CC07
4C076CC11
4C076CC15
4C076CC16
4C076CC18
4C076CC21
4C076GG05
4C076GG06
4C076GG09
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC30
4C087BC68
4C087MA35
4C087MA37
4C087MA41
4C087MA43
4C087MA52
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA36
4C087ZA59
4C087ZA66
4C087ZA68
4C087ZA75
4C087ZA89
4C087ZA96
4C087ZB07
4C087ZB11
4C087ZB13
4C087ZB15
4C087ZC33
4C087ZC35
(57)【要約】
本発明は、概して、細菌株及び疾患の治療又は予防のための細菌株を含む治療組成物及び方法の分野に関する。より詳細には、本発明は、ヒト消化管から単離された細菌株を含む組成物、及び炎症性及び自己免疫障害の治療又は予防におけるそれらの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受託番号V21/006223、V21/006224、V21/006225若しくはV21/006226、又はその誘導体のいずれか1つの下に寄託されている、Mediterlaneibacter faecis株の細胞。
【請求項2】
細胞が、少なくとも部分的に単離される、請求項1に記載の細胞。
【請求項3】
受託番号V21/006223、V21/006224、V21/006225、V21/006225若しくはV21/006226、又はそれらの誘導体のいずれか1つの下に寄託される、Mediterlaneibacter faecis株の生物学的に純粋な培養物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の細胞、又は請求項3に記載の培養物を含む組成物。
【請求項5】
配列番号1~24のうちの1つ以上と少なくとも約97.5%、98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、若しくは99.9%同一である16S rRNA配列、又は配列番号1~24のうちの1つ以上により表される16S rRNA遺伝子を有する、単離された細菌株を含む組成物。
【請求項6】
薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、又は担体をさらに含む、請求項4又は5に記載の組成物。
【請求項7】
薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤とともに、Mediterlaneibacter faecis種の細菌株の16S rRNA配列と少なくとも約97%、98%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である16S rRNA配列を有する細菌株を含む医薬組成物。
【請求項8】
薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤とともに、M. faecis及びM. lactarisのMRCAの系統発生的子孫である細菌株を含む医薬組成物。
【請求項9】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)からのbac120系統樹のノード52630で定義される、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
細菌株が少なくとも部分的に単離されている、請求項5~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
細菌株が生きているか又は死んでいる、請求項4~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
組成物が乾燥形態である、請求項4~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
組成物が、カプセル、錠剤、丸剤、トローチ、ロゼンジ、粉末、又は顆粒に製剤化される、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
組成物が、凍結乾燥、スプレー乾燥、流動層乾燥、真空乾燥、又はそれらの組み合わせによって乾燥されている、請求項12又は請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
組成物が腸への送達のために製剤化されている、請求項4~14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
プレバイオティックをさらに含む、請求項4~15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
1つ以上の追加の細菌株をさらに含む、請求項4~16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
1つ以上の追加の細菌株が少なくとも部分的に単離されている、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
組成物が、Clostridium属の細菌を福穴井、請求項4~18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
細菌株が、細胞におけるシグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)のシグナル伝達を減弱又は障害する物質を産生する、請求項1~19のいずれか1項に記載の細胞、培養物、又は組成物。
【請求項21】
物質が小分子、ペプチド、又はヌクレオチドである、請求項20に記載の細胞、培養物、又は組成物。
【請求項22】
物質が細菌によって放出される、請求項20又は請求項21に記載の細胞、培養物又は組成物。
【請求項23】
物質が、STAT3、JAK2、TYK、又はIL-23のいずれか1つに特異的に結合する、請求項20~22のいずれか1項に記載の細胞、培養物、又は組成物。
【請求項24】
細菌株が、プロピオン酸塩、乳酸塩、酢酸塩、及びギ酸塩を含む群から選択される1種以上の代謝産物を産生する、請求項1~23のいずれか1項に記載の細胞、培養物、又は組成物。
【請求項25】
細菌株が酪酸塩を産生しない、請求項1~24のいずれか1項に記載の細胞、培養物、又は組成物。
【請求項26】
細菌株がビタミンB12を産生する、請求項1~25のいずれか1項に記載の細胞、培養物、又は組成物。
【請求項27】
細菌株がM. faecis種のものである、請求項1~26のいずれか1項に記載の細胞、培養物、又は組成物。
【請求項28】
細菌株がM. lactaris種のものである、請求項1~26のいずれか1項に記載の細胞、培養物、又は組成物。
【請求項29】
請求項4~28のいずれか1項に記載の組成物を含む食品又は飲料製品。
【請求項30】
対象において腸障壁機能を回復又は改善する方法であって、Mediterlaneibacter属の単離された細菌株を対象に投与し、それによって腸障壁機能を回復又は改善することを含む、方法。
【請求項31】
細菌株が、M. faecis及びM. lactarisのMRCAの系統発生的子孫である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)のr95からのbac120系統樹のノード52630で定義される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
細菌株がM. faecis種のものである、請求項30~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
細菌株が、M. lactaris種のものである、請求項30~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
腸障壁機能の回復又は改善が、(i)ムチンの質及び/又は量の増加;(ii)タイトジャンクションタンパク質の完全性の改善;(iii)管腔内容物の全身循環への移行の減少;又は(iv)腸潰瘍及び/又は腸創傷の減少のうちの少なくとも1つによって特徴付けられる、請求項30~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
管腔内容物がリポ多糖類(LPS)を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
腸障壁機能不全の回復又は改善が、対象における全身性炎症の減少をもたらす、請求項30~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
対象由来の試料中の炎症性サイトカイン(例えば、IL-1β、IL-8、IL-6、及びTNF)のレベルが所定の閾値を超える場合に、全身性炎症が対象において同定される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
対象において粘膜治癒を誘導又は増強する方法であって、上皮細胞の遊走及び/又は増殖を誘導するのに十分な量のMediterlaneibacter faecis属の細菌株を対象に投与し、それによって対象において粘膜治癒を誘導することを含む、方法。
【請求項40】
細菌株が、M. faecis及びM. lactarisのMRCAの系統発生的子孫である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)のr95からのbac120系統樹のノード52630で定義される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
細菌株がM. faecis種のものである、請求項39~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
細菌株が、M. lactaris種のものである、請求項39~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
粘膜治癒が、1種以上の糞便又は血清マーカーを用いて測定される、請求項39~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
1つ以上の糞便マーカーが、カルプロテクチン、ラクトフェリン、メタロプロテイナーゼ(MMP)-9、及びリポカリン-2を含む群から選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
粘膜治癒が、内視鏡スコアを用いて測定される、請求項39~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
対象の炎症を軽減する方法であって、治療有効量のMediterlaneibacter faecis属の細菌株を対象に投与し、それによって対象の炎症を軽減することを含む、方法。
【請求項48】
細菌種が、M. faecis及びM. lactarisのMRCAの系統発生的子孫である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)のr95からのbac120系統樹のノード52630で定義される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
細菌株がM. faecis種のものである、請求項47~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
細菌株がM. lactaris種のものである、請求項47~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
炎症が腸環境に局所的であるか又は全身性炎症である、請求項47~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
細菌株が、(例えば、NFκBを減少又は阻害することによって)NFκB経路を減弱する、請求項47~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
細菌株が、TNF、IFN-γ、IL-1β、IL-8、及びMCP-1を含む群から選択されるサイトカイン又はケモカインのうちの1種以上の産生を阻害する、請求項47~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
標的細胞におけるSTAT3シグナル伝達の活性化を遮断又は阻害する方法であって、標的細胞をMediterraneibacter属の細菌細胞調製物の少なくとも可溶性成分と接触させて、標的細胞におけるSTAT3シグナル伝達の活性化を遮断又は阻害することを含む、方法。
【請求項56】
細菌株がM. faecis及びM. lactarisのMRCAの系統発生的子孫である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)のr95からのbac120系統樹のノード52630で定義される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
細菌株がM. faecis種である、請求項55~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
細菌株がM. lactaris種である、請求項55~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
標的細胞が、レポーター細胞(例えば、HEK細胞)、免疫細胞(例えば、Th17免疫細胞)、上皮細胞、及び内皮細胞を含む群から選択される、請求項55~59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
細菌細胞調製物が細菌細胞培養物を含む、請求項55~60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
可溶性成分が細菌細胞培養物の上清を含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
可溶性成分が細菌細胞から実質的に枯渇している、請求項55~62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
細菌細胞調製物が細菌細胞ペレットを含む、請求項55~60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
可溶性成分が溶解細胞の可溶性画分を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
可溶性画分が、遠心分離によって不溶性細胞画分から実質的に分離される、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
方法がインビトロで実施される、請求項55~66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
対象の腸環境においてSTAT3シグナル伝達を遮断又は阻害する方法であって、Mediterlaneibacter属の細菌株を対象に投与し、対象の腸環境においてSTAT3シグナル伝達を遮断又は阻害することを含む、方法。
【請求項69】
細菌株がM. faecis及びM. lactarisのMRCAの系統発生的子孫である、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)のr95からのbac120系統樹のノード52630で定義される、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
細菌株がM. faecis種のものである、請求項68~70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
細菌株がM. lactaris種のものである、請求項68~70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
細胞が免疫細胞(例えば、Th17免疫細胞)、上皮細胞、又は内皮細胞である、請求項68~72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
細胞が上皮細胞であり、細菌株又は分子が対象におけるIL-22の産生を増加させる、請求項68~73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
細菌株が、STAT3の直接阻害剤又は間接阻害剤である分子を産生する、請求項68~74のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
細菌株が、IL-23ポリペプチド、JAK2ポリペプチド、TYK2ポリペプチド、又はSTAT3ポリペプチドのうちの少なくとも1つを直接阻害する分子を産生する、請求項68~75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
細菌株が、プロピオン酸塩、乳酸塩、及びギ酸塩のうちの1種以上の代謝産物を産生する、請求項30~76のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
細菌株がビタミンB12を産生する、請求項30~77のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
細菌株が酪酸塩を産生しない、請求項30~78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
細菌株が、M. faecis種の細菌株の16S rRNA配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%又は99.9%同一である16S rRNA配列を有するか;又は細菌株が、M. faecis種の細菌株の16S rRNA配列を有する、請求項30~79のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
細菌株が、配列番号1~24のうちの1つ以上と少なくとも約97.5%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%若しくは99.9%同一である16S rRNA配列を有するか、又は細菌株が、配列番号1~24のうちの1つ以上によって示される16S rRNA遺伝子配列を有する、請求項30~79のいずれか1項に記載の方法。
【請求項82】
細菌株が、受託番号V21/006223、V21/006224、V21/006225若しくはV21/006226のいずれか1つの下で寄託されているMediterlaneibacter faecis株、又はその誘導体である、請求項30~81のいずれか1項に記載の方法。
【請求項83】
細菌株が少なくとも部分的に単離される、請求項30~83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項84】
細菌株が、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤をさらに含む、医薬組成物として製剤化される、請求項30~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項85】
組成物が乾燥形態である、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
乾燥形態が、粒子、顆粒、及び粉末を含む群から選択される、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
組成物が、凍結乾燥、スプレー乾燥、流動層乾燥、真空乾燥、又はそれらの組み合わせによって乾燥される、請求項85又は請求項86に記載の方法。
【請求項88】
医薬組成物が経口投与用に製剤化される、請求項84~87のいずれか1項に記載の方法。
【請求項89】
対象における炎症性又は自己免疫障害を治療又は予防する方法であって、有効量のMediterraneibacter属の単離された細菌株を対象に投与し、それによって炎症性又は自己免疫障害を治療又は予防することを含む、方法。
【請求項90】
細菌株が、M. faecis及びM. lactarisのMRCAの系統発生的子孫である、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)のr95からのbac120系統樹のノード52630で定義される、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
細菌株がM. faecis種のものである、請求項89~91のいずれか1項に記載の方法。
【請求項93】
細菌株がM. lactaris種のものである、請求項89~91のいずれか1項に記載の方法。
【請求項94】
炎症性又は自己免疫障害が、炎症性腸疾患(クローン病又は潰瘍性大腸炎など);喘息(アレルギー性喘息又は好中球性喘息など);関節炎(関節リウマチ、変形性関節炎、乾癬性関節炎、又は若年性特発性関節炎など);脂肪肝疾患(非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLDなど));強直性脊椎炎;乾癬;全身性エリテマトーデス(SLE);強皮症;シェーグレン症候群;血管炎;1型糖尿病を含む群から選択される、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
炎症性又は自己免疫障害が炎症性腸疾患(IBD)である、請求項89又は請求項94記載の方法。
【請求項96】
対象に投与された場合、細菌株が、対象の少なくとも1つの細胞におけるSTAT3シグナル伝達を遮断するか、又はさもなければ阻害する、請求項89~95のいずれか1項に記載の方法。
【請求項97】
細胞が、上皮細胞、免疫細胞(例えば、Th17免疫細胞)、又は内皮細胞である、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
細菌株が、プロピオン酸塩、乳酸塩、酢酸塩、及びギ酸塩を含む群から選択される1種以上の代謝産物を産生する、請求項89~97のいずれか1項に記載の方法。
【請求項99】
細菌株が酪酸塩を産生しない、請求項89~98のいずれか1項に記載の方法。
【請求項100】
細菌株がビタミンB12を産生する、請求項89~99のいずれか1項に記載の方法。
【請求項101】
細菌株が、Mediterlaneibacter属の細菌株の16S rRNA配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%同一である16S rRNA配列を有する、請求項89~100のいずれか1項に記載の方法。
【請求項102】
細菌株が、配列番号1~24のうちの1つ以上と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、99%、99.5%若しくは99.9%同一である16S rRNA配列を有するか、又は細菌株が、配列番号1~24のうちの1つ以上によって示される16S rRNA遺伝子配列を有する、請求項89~100のいずれか1項に記載の方法。
【請求項103】
細菌株が少なくとも部分的に単離される、請求項89~102のいずれか1項に記載の方法。
【請求項104】
細菌株が、薬学的に許容される担体、希釈剤及び/又は賦形剤とともに、医薬組成物として製剤化される、請求項89~103のいずれか1項に記載の方法。
【請求項105】
組成物が乾燥形態である、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
乾燥形態が、粒子、顆粒、及び粉末を含む群から選択される、請求項105に記載の方法。
【請求項107】
組成物が、凍結乾燥、スプレー乾燥、流動層乾燥、真空乾燥、又はそれらの組み合わせによって乾燥される、請求項104又は請求項105に記載の方法。
【請求項108】
抗炎症剤が対象に同時投与される、請求項89~107のいずれか1項に記載の方法。
【請求項109】
抗炎症剤が、5-アミノサリチル酸塩、コルチコステロイド、アザチオプリン、インフリキシマブ、及びアダリムマブを含む群から選択される、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
治療することが、組成物を対象に投与する前に、対象がM. faecis腸内細菌の欠損を有することを同定することを含む、請求項30~109のいずれか1項に記載の方法。
【請求項111】
対象における欠損を同定することが、16S rRNA配列決定及び/又は全ゲノム配列決定によって、対象の糞便中のM. faecis細菌の測定を含む、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
細菌株が生きているか又は死んでいる、請求項30~111のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項113】
プレバイオティックをさらに含む、請求項30~112のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項114】
1種以上の追加の細菌株をさらに含む、請求項30~113のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項115】
対象が哺乳動物対象である、請求項30~114のいずれか1項に記載の方法。
【請求項116】
対象がヒト対象である、請求項30~115のいずれか1項に記載の方法。
【請求項117】
治療に使用するための、Mediterlaneibacter属の細菌株を含む組成物。
【請求項118】
細菌株がM. faecis及びM. lactarisのMRCAの系統発生的子孫である、請求項117に記載の組成物。
【請求項119】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)のr95からのbac120系統樹のノード52630で定義される、請求項118に記載の組成物。
【請求項120】
治療に使用するための、Mediterlaneibacter faecisの細菌株を含む組成物。
【請求項121】
治療に使用するための、Mediterlaneibacter lactarisの細菌株を含む組成物。
【請求項122】
炎症性又は自己免疫障害の治療又は予防に使用するための、Mediterlaneibacter属の細菌株を含む組成物。
【請求項123】
細菌株が、M. faecis及びM. lactarisのMRCAの系統発生的子孫である、請求項122に記載の組成物。
【請求項124】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)のr95からのbac120系統樹のノード52630で定義される、請求項123に記載の組成物。
【請求項125】
炎症性又は自己免疫障害の治療又は予防に使用するための、Mediterlaneibacter faecisの細菌株を含む組成物。
【請求項126】
炎症性又は自己免疫障害の治療又は予防に使用するための、Mediterlaneibacter lactarisの細菌株を含む組成物。
【請求項127】
炎症性又は自己免疫障害を治療するための医薬の製造におけるMediterlaneibacter属の細菌株の使用。
【請求項128】
細菌株が、M. faecis及びM. lactarisのMRCAの系統発生的子孫である、請求項127に記載の使用。
【請求項129】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)のr95からのbac120系統樹のノード52630で定義される、請求項128記載の使用。
【請求項130】
炎症性又は自己免疫障害を治療するための医薬の製造における、Mediterlaneibacter faecisの細菌株の使用。
【請求項131】
炎症性又は自己免疫障害を治療するための医薬の製造における、Mediterlaneibacter lactarisの細菌株の使用。
【請求項132】
炎症性又は自己免疫障害が、炎症性腸疾患(クローン病又は潰瘍性大腸炎など);喘息(アレルギー性喘息又は好中球性喘息など);関節炎(関節リウマチ、変形性関節炎、乾癬性関節炎、又は若年性特発性関節炎など);脂肪肝疾患(非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLDなど));強直性脊椎炎;乾癬;全身性エリテマトーデス(SLE);強皮症;シェーグレン症候群;血管炎;1型糖尿病から選択される、請求項122~131のいずれか1項に記載の組成物又は使用。
【請求項133】
炎症性又は自己免疫障害が炎症性腸疾患(例えば、クローン病又は潰瘍性大腸炎)である、請求項122~132のいずれか1項に記載の組成物又は使用。
【請求項134】
細菌株が、受託番号V21/006223、V21/006224、V21/006225若しくはV21/006226のいずれか1つの下で寄託されているMediterlaneibacter faecis株、又はその誘導体である、請求項122~133のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項135】
炎症性又は自己免疫性障害の治療に使用するための組成物であって、Mediterraneibacter属の細菌株;及び抗炎症剤を含む、組成物。
【請求項136】
細菌株が、M. faecis及びM. lactarisのMRCAの系統発生的子孫である、請求項135に記載の組成物。
【請求項137】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)のr95からのbac120系統樹のノード52630で定義される、請求項136に記載の組成物。
【請求項138】
細菌株がM. faecis種のものである、請求項135~137のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項139】
細菌株がM. lactaris種のものである、請求項135~137のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項140】
抗炎症剤が、5-アミノサリチル酸塩、コルチコステロイド、アザチオプリン、インフリキシマブ、及びアダリムマブを含む群から選択される、請求項135~139のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項141】
炎症性又は自己免疫障害の治療に使用するための組成物であって、Mediterlaneibacter属の細菌株;及び栄養補助食品を含む、組成物。
【請求項142】
細菌株がM. faecis及びM. lactarisのMRCAの系統発生的子孫である、請求項141に記載の組成物。
【請求項143】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)のr95からのbac120系統樹のノード52630で定義される、請求項142に記載の組成物。
【請求項144】
細菌株がM. faecis種のものである、請求項141~143のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項145】
細菌株がM. lactaris種のものである、請求項141~143のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項146】
対象の健康を改善又は維持する方法であって、M. faecisの細菌株を含む組成物を該対象に投与し、それによって対象の健康を維持又は改善することを含む方法。
【請求項147】
栄養補給物を対象に投与することをさらに含む、請求項146に記載の方法。
【請求項148】
Mediterlaneibacter属の細菌株;及び栄養補助食品を含む可食性又は飲料用の製造物。
【請求項149】
細菌株が、M. faecis及びM. lactarisのMRCAの系統発生的子孫である、請求項148に記載の製造物。
【請求項150】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)のr95からのbac120系統樹のノード52630で定義される、請求項149に記載の製造物。
【請求項151】
細菌株がM. faecis種のものである、請求項148~150のいずれか1項に記載の製造物。
【請求項152】
細菌株がM. lactaris種のものである、請求項148~150のいずれか1項に記載の製造物。
【請求項153】
栄養補助食品がプレバイオティックである、請求項148~152のいずれか1項に記載の製造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本発明は、2021年5月10日に出願された「Compositions and Methods for Treating Disease」と題するオーストラリア仮出願第2021901387号、及び2022年5月6日に出願された「Compositions and Methods for Treating Disease」と題する2022901200号に対する優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、概して、細菌株及び疾患の治療又は予防のための細菌株を含む治療組成物及び方法の分野に関する。より詳細には、本発明は、ヒト消化管から単離された細菌株を含む組成物、及び炎症性及び自己免疫障害の治療又は予防におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒト腸内微生物叢は、Firmicutes、Bacteroidetes、Proteobacteria、Fusobacteria、及びVerrucomicrobiaを含むいくつかの細菌門に属する500~1000以上の異なる系統型を含む。2つの主要門、BacteroidetesとFirmicutesは腸内微生物叢の90%以上を占める(Arumugam et al., 2011)。ヒト腸管の細菌コロニー形成から生じる共生関係は、代謝、構造、防御、その他の有益な機能を多種多様に生み出している。腸内細菌は消化管(GI)に沿った消化の重要な調節因子であり、胆汁酸、脂質、アミノ酸、ビタミン、短鎖脂肪酸(SCFA)を含む多くの栄養及び代謝物の抽出、合成、及び吸収において共生細菌が重要な役割を果たしている。最近では、自然免疫細胞及び適応免疫細胞の発生、ホメオスタシス、及び機能の調節における腸内微生物叢及びその産物の免疫学的重要性が認識されている(Brestoff and Atris, 2013)。
【0004】
消化管微生物叢が宿主の腸粘膜免疫及び炎症に対する素因を調節することがますます認識されており(Geva-Zatorsky et al., 2017; Kabat et al., 2014)、新規治療介入の新たな道を開く。
【0005】
炎症性腸疾患(IBD)を含む多くの炎症性及び自己免疫疾患において微生物叢組成の劇的な変化が報告されている。ある種の細菌株が動物の消化管に及ぼす潜在的な正の効果を認識して、種々の疾患の治療に使用するために種々の株が提案されている。Lactobacillus及びBifidobacterium株を含む特定の株は、種々の腸管外炎症性及び自己免疫性疾患の治療に使用することが提案されている(Goldin & Gorbach, 2008; Azad et al., 2013を参照)。しかし、特定の細菌株が消化管及び全身に局所的に及ぼす正確な影響は解明されていない。その結果、ヒト消化管における異なる疾患と異なる細菌株との関係は、まだ明確に解明されていない。
【0006】
IBD(クローン病(CD)と潰瘍性大腸炎(UC)の2つの主要な疾患サブタイプを含む)は、消化管の発作性及び障害性炎症を特徴とする。2017年には、世界で680万人がIBDに罹患し、米国とヨーロッパで有病率が最も高いと推定されている(GBD 2017;炎症性腸疾患共同研究者、2019)。患者の最大20%が16歳以前に診断され、小児発症IBD(PIBD)は、成長及び心理社会的発達に悪影響を及ぼすより複雑で侵攻性の疾患と関連している。
【0007】
現在のところIBDの治癒はなく、長期の臨床管理には優れた安全性プロファイルを有する有効な治療薬が必要である。しかし、既存の治療法は一連の欠損を示し、寛解は一般に短い。さらに、PIBD治療薬は、早期発症とより侵攻性の疾患が重なり、進行性の腸障害及び手術の必要性をもたらす場合には効果がない。患者の生活の質を改善し、長期間にわたって寛解を維持し、手術を減らし、個人及び公衆衛生コストを削減するために、より効果的で安全な治療法を開発することが緊急に必要である。
【0008】
IBDに対する既存の治療は、強い有害作用、低いコンプライアンス(平均不遵守率50%(Chan et al., 2017参照))、及び高い費用を伴う最適ではない。さらに、長期間の無病寛解を維持する有効な解決法はない。メサルミンは、軽度から中等度の潰瘍性大腸炎の再燃及び寛解維持に最も広く使用されている第一選択薬のひとつであり、奏効率は40~70%であり、寛解率は15~20%である(Karagozian & Burakoff, 2007)。
【0009】
炎症性及び自己免疫性疾患を治療する新たな方法に対する当技術分野の要件がある。腸内細菌を用いた新しい治療法を開発するためには、腸内細菌の潜在的な影響を特徴づける必要もある。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、一部には、地中海性糞便の細菌株が腸障壁機能を増強又は改善するという発明者らの同定に基づいている。この考察に基づいて、M. faecis株は、後述するように、炎症性疾患及び自己免疫疾患の治療及び予防のための治療用途に特に適していることが提唱されている。
【0011】
本発明者らは、炎症性及び自己免疫性疾患の治療及び予防に用いることができる、種Mediterlaneibacter faecisの生存可能な細菌株を含む新しい組成物を開発した。
【0012】
従って、1つの局面において、本発明は、受託番号V21/006223、V21/006224、V21/006225、又はV21/006226のいずれか、又はその誘導体の下に寄託された地中海細菌糞便株の細胞を提供する。
【0013】
いくつかの実施形態において、細胞は、少なくとも部分的に単離される。
【0014】
別の実施形態では、本発明は、受託番号V21/006223、V21/006224、V21/006225、又はV21/006226のいずれか1つ又はそれらの誘導体の下に寄託されたMediterraneibacter faecis株の生物学的に純粋な培養物を提供する。
【0015】
別の局面において、本発明は、上述のように、又は本明細書の他の箇所で記載されるように、細胞又は培養物を含む組成物を提供する。
【0016】
さらに別の実施形態において、本発明は、配列番号1~24のいずれかと少なくとも約97.5%、98%、98.5%、99.1%、99.2%、99.2%、3.99%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%が同一である16S rRNA配列;又は配列番号1~24のいずれかにより表される16S rRNA遺伝子配列を有する細菌株を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、細菌株は、配列番号1~24に記載の16S rRNA配列から独立に選択された16S rRNA配列の2つ以上のコピー(例えば、2コピー、3コピー、4コピー、5コピー、6コピー、7コピー、8コピー)を含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、組成物は、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、又は担体をさらに含む。
【0018】
さらに別の局面において、本発明は、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤とともに、Mediterraneibacter faecisの細菌株の16S rRNA配列と少なくとも約97%、98%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である16S rRNA配列を有する細菌株を含む医薬組成物を提供する。
【0019】
関連する実施形態において、本発明は、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤とともに、M. faecis及びM. lactarisの最も最近の共通祖先(MRCA)の系統発生的子孫である有効量の細菌株を含む医薬組成物を提供する。好適には、MRCAは、ゲノム分類学データベース(GTDB)のr95からのbac120系統樹のノード52630で定義される。いくつかの実施形態において、系統樹は、GTDBの放出95によって作成されるが、任意の適切なその後の放出は、適用可能な結果を等しく与えると考えられる。このタイプのいくつかの好ましい実施形態において、細菌株はM. faecisである。いくつかの代替的実施形態において、細菌株はM. lactarisである。
【0020】
典型的には、細菌株は、少なくとも部分的に単離される。
【0021】
いくつかの実施形態において、細菌株は生きている。
【0022】
いくつかの代替的な実施形態において、細菌株は死んでいる。
【0023】
いくつかの実施形態において、組成物は、プレバイオティックをさらに含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、組成物は、乾燥形態で製剤化される。典型的には、組成物は、凍結乾燥、スプレー乾燥、流動層乾燥、真空乾燥、又はそれらの組み合わせから選択される技術を用いて乾燥される。
【0025】
いくつかの実施形態において、組成物は、経口投与のために製剤化される。
【0026】
いくつかの実施形態において、細菌株は、細胞内のシグナル伝達のシグナル伝達トランスデューサー及び転写活性化因子3(STAT3)シグナル伝達を減弱又は障害する物質を産生する。
【0027】
このタイプのいくつかの実施形態において、薬剤は、小分子、ペプチド、又はヌクレオチドである。典型的には、病原体は細菌株によって放出される。
【0028】
いくつかの実施形態において、薬剤は、STAT3、JAK2、TYK、又はIL-23のいずれか1つに特異的に結合する。
【0029】
いくつかの実施形態において、M. faecis株は、プロピオン酸塩、乳酸塩、酢酸塩、及びギ酸塩を含む群から選択される1以上の代謝産物を産生する。いくつかの同じ実施形態及びいくつかの他の実施形態において、M. faecis株は酪酸塩を産生しない。
【0030】
いくつかの実施形態において、M. faecis株はビタミンB12を産生する。
【0031】
別の実施形態において、本発明は、対象において腸障壁機能を回復又は改善する方法を提供し、この方法は、対象に種Mediterlaneibacter faecisの細菌株を投与して、それによって腸障壁機能を回復又は改善することを含む。
【0032】
いくつかの好ましい実施形態において、腸障壁機能の回復又は改善は、(i)ムチンの質及び/又は量の増加;(ii)タイトジャンクションタンパク質の完全性の改善;(iii)管腔内容物の全身循環への移行の減少;又は(iv)腸潰瘍及び/又は腸創傷の減少のうちの少なくとも1つによって特徴付けられる。
【0033】
いくつかの実施形態において、管腔内容物は、リポ多糖類(LPS)を含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、腸障壁機能の回復又は改善は、対象における全身性炎症の減少をもたらす。このタイプのいくつかの実施形態において、全身性炎症は、健常対象における炎症性サイトカインのレベルと比較して、対象における炎症性サイトカイン(例えば、IL-1βIL-8、IL-6、及びTNF)のレベルの上昇を特徴とする。
【0035】
さらに別の実施形態では、本発明は、対象において腸障壁機能を維持する方法を提供し、この方法は、対象に種Mediterlaneibacter faecisの細菌株を投与して、それによって対象において腸障壁機能を維持することを含む。
【0036】
さらに別の局面において、本発明は、対象の炎症を軽減する方法を提供し、この方法は、対象に地中海細菌株を投与して、それによって対象の炎症を軽減することを含む。
【0037】
いくつかの実施形態において、炎症は、消化管環境又は全身性炎症に局所的である。
【0038】
別の実施形態において、本発明は、対象において粘膜治癒を誘導又は増強する方法を提供し、この方法は、対象において粘膜治癒を誘導するために、上皮細胞の遊走、増殖及び/又は分化を誘導するのに十分な量の、種Mediterlaneibacter faecisの細菌株を対象に投与することを含む。
【0039】
いくつかの実施形態において、対象における粘膜治癒は、1以上の糞便又は血清マーカーを用いて測定することができる。例示的な例として、カルプロテクチン、ラクトフェリン、メタロプロテイナーゼ(MMP)-9、及びリポカリン-2を含む群から1つ以上の糞便マーカーを選択することができる。
【0040】
いくつかの実施形態において、細菌株は、NFκB経路を弱めることによって炎症を減少させる。このタイプのいくつかの実施形態において、細菌株は、NFκB、TNF、IFN-γ、IL-1β、IL-8、及びMCP-1を含む群から選択される1以上の転写因子、サイトカイン、又はケモカインの産生を阻害する。
【0041】
さらに別の実施形態において、本発明は、標的細胞におけるSTAT3シグナル伝達を遮断又は阻害する方法を提供し、この方法は、細胞を、種Mediterlaneibacter faecisの細菌細胞調製物の少なくとも可溶性成分と接触させて、細胞におけるSTAT3シグナル伝達を遮断又は阻害することを含む。典型的には、この実施形態の方法は、インビトロで実施される。
【0042】
いくつかの実施形態において、標的細胞は、レポーター細胞(例えば、HEK細胞)、免疫細胞(例えば、Th17免疫細胞)、上皮細胞、又は内皮細胞から選択される。ある実施形態において、標的細胞は、哺乳動物細胞、好ましくはヒト細胞である。
【0043】
いくつかの実施形態において、細菌細胞調製物は、細菌細胞培養物である。従って、可溶性成分は、細菌細胞培養物(例えば、細胞培養上清)の可溶性画分を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になることができる。可溶性成分は、細菌細胞培養物のいくつかの不溶性成分をさらに含むことができる。例えば、可溶性成分は、実質的に全ての細菌培養物を含み得る。好ましくは、可溶性成分は、細菌細胞を実質的に枯渇させる。
【0044】
いくつかの代替実施形態において、細菌細胞調製物は、細菌細胞溶解物である。このタイプの例示的実施形態において、可溶性成分は、細胞溶解物の可溶性画分に関することができる。可溶性画分は、遠心分離によるものを含め、任意の方法によって適切に達成することができる。
【0045】
さらにもう1つの実施形態において、本発明は、細胞内のSTAT3シグナル伝達を遮断又は阻害する方法を提供し、この方法は、種Mediterlaneibacter faecisの細菌株を対象に投与し、それによって細胞内のSTAT3シグナル伝達を遮断又は阻害することを含む。典型的には、この実施形態の方法は、インビボで実施される。
【0046】
いくつかの実施形態において、細胞は、免疫細胞(例えば、Th17免疫細胞)又は上皮細胞である。
【0047】
いくつかの実施形態において、細胞は上皮細胞であり、細菌株又は細菌株によって産生された代謝産物は、対象におけるIL-22の産生を増加させる。
【0048】
いくつかの実施形態において、細菌株は、STAT3の直接阻害剤又は間接阻害剤である分子を産生する。例えば、細菌株は、IL-23ポリペプチド、JAK2ポリペプチド、TYK2ポリペプチド、又はSTAT3ポリペプチドのうちの少なくとも1つを直接阻害する代謝産物を産生し得る。
【0049】
いくつかの実施形態において、上述の方法及び本明細書の他の箇所で使用される細菌株は、プロピオン酸塩、乳酸塩、酢酸塩、及びギ酸塩から選択される1以上の代謝物を生成する。いくつかの同じ実施形態及びいくつかの代替実施形態において、細菌株は、ビタミンB12を産生する。いくつかの実施形態において、細菌株は酪酸塩を産生しない。
【0050】
いくつかの実施形態において、細菌株は、M. faecisの細菌株の16S rRNA配列と少なくとも約97.5%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である16S rRNA配列を有する。
【0051】
いくつかの代替の実施形態において、細菌株は、配列番号1~24のいずれか1つと少なくとも約97.5%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である16S rRNA配列を有するか、又は細菌株が配列番号1~24のいずれか1つで表される16S rRNA遺伝子配列を有する場合である。いくつかの実施形態において、細菌株は、配列番号1~24に記載される16S rRNA配列から独立して選択される16S rRNA配列の2つ以上のコピー(例えば、2コピー、3コピー、4コピー、5コピー、6コピー、7コピー、8コピー)を含む。
【0052】
いくつかの実施形態において、細菌株は、M. lactarisの細菌株の16S rRNA配列と少なくとも約97.5%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である16S rRNA配列を有する。
【0053】
いくつかの代替の実施形態において、細菌株は、配列番号29~32のうちのいずれか1つ以上と少なくとも約97.5%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である16S rRNA配列を有するか、又は細菌株が配列番号29~32のいずれか1つ以上で表される16S rRNA遺伝子配列を有する16S rRNA配列を有する場合である。
【0054】
いくつかの実施形態において、細菌株は、受託番号V21/006223、V21/006224、V21/006225、又はV21/006226、又はそれらの誘導体のいずれかの下に寄託されたM. faecis株である。
【0055】
好ましくは、細菌株は、少なくとも部分的に単離される。
【0056】
いくつかの実施形態において、細菌株は、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤をさらに含む医薬組成物として処方される。ある実施形態において、医薬組成物は、乾燥組成物である。いくつかの実施形態において、乾燥組成物は、粒子、顆粒、及び粉末からなる群から選択される。例示的な例として、医薬組成物は、凍結乾燥、スプレー乾燥、流動床乾燥、真空乾燥、又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0057】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、経口投与のために製剤化される。
【0058】
さらに他の実施形態において、本発明は、炎症性疾患又は自己免疫疾患を治療又は予防するために、対象に有効量のMediterlaneibacter faecisの細菌株を投与することを含む、対象における炎症性疾患又は自己免疫疾患を治療する方法を提供する。
【0059】
いくつかの実施形態において、炎症性又は自己免疫障害は、炎症性腸疾患(クローン病又は潰瘍性大腸炎など);喘息(アレルギー性喘息又は好中球性喘息など);関節炎(関節リウマチ、変形性関節症、乾癬性関節炎、又は若年性特発性関節炎など);脂肪肝疾患(非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLDなど));強直性脊椎炎;乾癬;全身性エリテマトーデス(SLE);強皮症;シェーグレン症候群;血管炎;1型糖尿病を含む群から選択される。好ましくは、炎症性又は自己免疫性疾患は炎症性腸疾患である。
【0060】
いくつかの実施形態において、細菌株は、対象の少なくとも1つの細胞におけるSTAT3シグナル伝達をブロックするか、又はそうでなければ阻害する。典型的には、細胞は、上皮細胞、内皮細胞、又は免疫細胞(例えば、Th17免疫細胞)である。
【0061】
いくつかの実施形態において、細菌株は、プロピオン酸塩、乳酸塩、酢酸塩、及びギ酸塩を含む群から選択される1以上の代謝物を産生する。いくつかの同じ実施形態及びいくつかの他の実施形態において、細菌株は酪酸塩を産生しない。
【0062】
いくつかの実施形態において、細菌株は、ビタミンB12を産生する。
【0063】
いくつかの実施形態において、細菌株は、Mediterlaneibacter属の細菌株の16S rRNA配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、99.5%又は99.9%同一である16S rRNA配列を有する。
【0064】
別法として、いくつかの実施形態において、細菌株は、配列番号1~24と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、99.5%若しくは99.9%同一である16S rRNA配列を有するか、又は細菌株が配列番号1~24のいずれかで表される16S rRNA配列を有する。
【0065】
別法として、いくつかの実施形態において、細菌株は、配列番号29~32のいずれか1つ以上と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、99.5%若しくは99.9%同一である16S rRNA配列、又は細菌株が配列番号29~32のいずれか1つ若しくは複数で表される16S rRNA配列を有する場合を有する。
【0066】
好ましくは、細菌株は、少なくとも部分的に単離される。
【0067】
いくつかの実施形態において、細菌株は、薬学的に許容される担体、希釈剤、及び/又は賦形剤とともに、医薬組成物として処方される。いくつかの実施形態において、組成物は、粒子、顆粒、及び粉末からなる群から選択される乾燥組成物である。例えば、組成物を凍結乾燥することができる。あるいは、組成物は、スプレー乾燥、流動床乾燥、又は真空乾燥されてもよい。
【0068】
いくつかの実施形態において、組成物は、経口投与のために製剤化される。
【0069】
1つの実施形態において、本発明は、治療に使用するためのMediterraneibacter属の細菌株を含む組成物を提供する。
【0070】
別の実施形態において、本発明は、治療に使用するための、Mediterraneibacter株を含む組成物を提供する。
【0071】
別の実施形態において、本発明は、治療に使用するためのMediterraneibacter株を含む組成物を提供する。
【0072】
さらに別の実施形態において、本発明は、炎症性疾患又は自己免疫疾患の治療又は予防に使用するための、Mediterraneibacter属の細菌株を含む組成物を提供する。
【0073】
さらに別の実施形態において、本発明は、炎症性又は自己免疫性障害の治療又は予防に使用するための、Mediterraneibacter faecisの細菌株を含む組成物を提供する。
【0074】
いくつかの実施形態において、細菌株は、受託番号V21/006223、V21/006224、V21/006225、又はV21/006226、又はその誘導体のいずれかの下に寄託されたM. faecis株である。
【0075】
関連する実施形態において、本発明は、炎症性又は自己免疫疾患の治療又は予防に使用するための、Mediterraneibacter lactarisの細菌株を含む組成物を提供する。
【0076】
いくつかの実施形態において、炎症性又は自己免疫障害は、炎症性腸疾患(クローン病又は潰瘍性大腸炎など);喘息(アレルギー性喘息又は好中球性喘息など);関節炎(関節リウマチ、変形性関節炎、乾癬性関節炎、又は若年性特発性関節炎など);脂肪肝疾患(非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLDなど));強直性脊椎炎;乾癬;全身性エリテマトーデス(SLE);強皮症;シェーグレン症候群;血管炎;1型糖尿病から選択される。いくつかの好ましい実施形態において、炎症性又は自己免疫疾患は炎症性腸疾患である。
【0077】
1つの態様において、本発明は、炎症性又は自己免疫性障害を治療するのに使用するための組成物を提供し、該組成物は、細菌株の地中海条虫の糞便を含む;及び抗炎症剤を提供する。
【0078】
いくつかの実施形態において、抗炎症剤は、5-アミノサリチル酸塩、コルチコステロイド、アザチオプリン、インフリキシマブ、及びアダリムマブを含む群から選択される。
【0079】
別の局面において、本発明は、炎症性又は自己免疫性障害の治療に使用するための組成物を提供し、該組成物は、細菌株の地中海細菌糞便を含む;及び栄養補給物を含む。このタイプの実施形態において、栄養補助食品は、細菌染色の生着を改善する。
【0080】
いくつかの関連する実施形態において、本明細書に記載される技術は、プロバイオティクスの形態でそれらを含む細菌種及び組成物を提供する。好ましくは、このようなプロバイオティクスは、腸内微生物生態学を改善し、微生物異常症の症状を緩和し、健康を促進し、及び/又は炎症性及び/又は自己免疫疾患を治療及び/又は予防するのに効果的である。
【0081】
以下の図は、本明細書の一部を構成し、本開示の特定の実施形態をさらに示すために含まれる。本開示は、本明細書に提示される特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせて、これらの図の1つ以上を参照することによって、より良く理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
図1図1は、GTDBからのbac120系統樹のノード52630の集束図を示すグラフ系統樹を提供する。GTDBツリーは、120の保存された単一コピー細菌マーカー遺伝子の連結配列から構築されたゲノムツリーである(Parks et al. 2018)。M. lactaris及びM. faecis(node 52630)の最も最近の共通祖先(MRCA)を強調する。
図2図2は、広範囲の炎症性疾患及び自己免疫疾患との細菌株の関連のグラフを示す。6,020人の対象の高解像度腸メタゲノムデータを用いて、(A)M. faecis及び(B)M. lactarisが健康なヒト(暗い棒)に多くみられるが、様々な医学的状態(ストライプ棒)で枯渇していることを同定した。示された関連性はすべて、FDR<0.01(フィッシャーの直接確率検定)である。
図3図3は、M. faecis株の系統発生、代謝、形態をグラフ化したものである。(A)GTDB(リリース95)からの高品質参照ゲノムからの120の細菌特異的シングルコピーマーカー遺伝子のアラインメントで構築したゲノムツリー。1000回の反復から計算されたノンパラメトリックブートストラップ値。(B)MH-23分離株MH23-1のグラム染色は形態を示した。
図4図4は、未処置動物に対するM. faecisの影響のグラフである。(A)未処置C57Bl/6マウスに対するM. faecis MH23-1の影響を評価するために用いたモデルの概要。(B)M. faecis MH23-1の投与は、ナイーブ動物の体重にほとんど影響を及ぼさない。(C)-(D)M. faecis MH231による処理は、ナイーブ動物の溶媒処理対照と比較して、結腸の長さ又は結腸の重量/長さ比に影響を及ぼさない。(E)-(G)M. faecis MH23-1による処理は、ナイーブ動物の溶媒処理対照と比較して、上皮損傷、炎症又は血管新生に影響を及ぼさない。M. faecis MH23-1による(H)処理は、ナイーブ動物の溶媒処理対照と比較して、消化管組織学に影響を及ぼさない。すべてのデータは平均及び標準偏差として報告されている。ns、有意差なし;*p<0.05。
図5図5は、M. faecis MH23-1が腸障壁機能を回復させることを示すグラフである。(A)M. faecis MH23-1の治療効果を評価するために用いたDSSモデルの概要。(B)健康及び黄砂処理試料における溶媒、プレドニゾン、F. prausnitzii A2-165及びM. faecisの毎日の処理の効果。全投与群をDSS+溶媒群と比較した。有意性は、多重比較のためにDunnett検定を用いた双方向Anovaを用いて決定した。(C)1日目、2日目及び6日目に評価した大腸炎の内視鏡的評価。各日のDSS+溶媒群と、必要に応じてKruskal-Wallis検定を用い、多重比較(第1日)についてはDunnの補正を、多重比較についてはDunnettの補正を用いて(第2日、第6日)各群を比較した。すべてのデータは平均値と標準偏差で表示されている。(D)ビヒクル、プレドニゾン、又はM. faecis MH23-1で処理したC57Bl/6マウスの代表的な消化管組織像。(E)DSS処理は、プレドニゾンF. prausnitzii A2-165及びM. faecis MH231による処理によって改善される組織病理学的スコアの増加をもたらす。すべてのデータは平均値と標準偏差で表示されている。全群をDSS+溶媒群と比較し、多重比較のためにDunnett検定を用いて一方向Anovaを用いて有意性を決定した。(F)DSS処理は、プレドニゾン又はM. faecis MH23-1による処理によって改善される上皮損傷の増加をもたらす。すべてのデータは平均値と標準偏差で表示されている。Kruskal-Wallis検定を用い、多重比較のためにDunnの補正を用いて、全群をDSS+溶媒群と比較した。(G)DSS処理は炎症スコアの増加をもたらし、プレドニゾン又はM. faecis MH23-1による処理によって改善される。すべてのデータは平均値と標準偏差で表示されている。多重比較のために、Dunnett補正を伴う一方向Anovaを用いて、全群をDSS+溶媒群と比較した。(H)溶媒、プレドニゾン、F. prausnitzii又はM. faecis MH23-1で処理したC57Bl/6マウスの糞中のリポカルイン-2濃度。有意性は、多重比較のためのDunnett検定を伴う一方向Anovaを用いて決定した。(I)DSS処理は腸上皮細胞と比較して杯細胞数の有意な減少をもたらし、これはM. faecis MH23-1処理によって改善される。すべてのデータは平均値と標準偏差で表示されている。多重比較のためにDunnettの補正を用いて、Kruskal-Wallis検定を用いて、全群をDSS+溶媒群と比較した。(J)DSS処理は、M. faecis MH23-1処理によって改善されるがプレドニゾン及びF.prausnitzii A2-165では改善されない、アルシアンブルー染色の比の有意な減少をもたらした。すべてのデータは平均値と標準偏差で表示されている。多重比較のために、DunnettのT3補正を用いたBrown-Forsyand Welch ANOVA検定を用いて、全群をDSS+溶媒群と比較した。(n:有意ではない;*、p<0.05;**、p<0.01;****、p<0.0001)。(K)M. faecis MH23-3の治療効果を評価するために用いたDSSモデルの概要。(L)DSS+溶媒群と比較した全群の大腸炎の内視鏡的評価。すべてのデータは平均値と標準偏差で表示されている。(M)DSS処理は組織病理学的スコアの増加をもたらし、プレドニゾン及びM. faecis MH23-3による処理によって改善される。平均及び標準偏差として提示したデータはすべて、DSS+溶媒群と比較した。(N)DSS処理は、プレドニゾン又はM. faecis MH23-3による処理によって改善される上皮損傷の増加をもたらす。平均及び標準偏差として提示したデータはすべて、DSS+溶媒群と比較した。(O)DSS治療は炎症スコアの増加をもたらし、プレドニゾン又はMH23-3による治療によって改善される。C57Bl/6マウスの糞中のDSS+溶媒群(P)リポカルイン-2濃度±溶媒、プレドニゾン又はM. faecis MH23-3で処理したDSS±6マウスの糞中濃度を、平均及び標準偏差として提示したすべてのデータと比較した。平均及び標準偏差として提示したデータはすべて、DSS+溶媒群と比較した。(Q)M. faecis MH23-3の治療効果を評価するために用いたTNBSモデルの概要。(R)DSS処理は組織病理学的スコアの増加をもたらし、プレドニゾン及びM. faecis MH23-3による処理によって改善される。平均及び標準偏差として提示したデータはすべて、DSS+溶媒群と比較した。(S)溶媒、プレドニゾン、又はM. faecis MH23-1で処理したC57Bl/6マウス±TNBSの代表的な消化管組織像。(n:有意ではない;**、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.0001;***、p<0.0001)。
図6図6は、in vitroでのSTAT3及びNF-kBの活性化を抑制するM. faecisのグラフである。HEKBlue IL23レポーター細胞株をM. faecis MH23-1、MH23-3及びMH23-4の無細胞上清で処理すると、(A)-(C)STAT3シグナル伝達が阻害される(t-検定、n=3、(A)p<0.0001;(B)p<0.0001;(C)p=0.002)。(D)-(F)M. faecis株MH23-1、MH23-3及びMH23-4の無細胞上清をサイズ分画した。次いで、37℃又は97℃で熱処理した<3KDa画分は、HEKBlue IL-23レポーター細胞株を試験した。熱処理後、全ての画分は、STAT3シグナリング(t-検定、n=6;(D)p=0.0068、p=0.0186、p=0.0005;(E)p=0.0008、p=0.00021、p=0.0002;(F)p<0.0001、p<0.0001、p<0.0001)を阻害することができる。
図7図7は、腸上皮細胞におけるサイトカイン発現のグラフを提供する。(A)M. faecis MH23-1培養上清は、HCT116腸上皮細胞におけるIL-1b介在性IL-8分泌を抑制する。(B)PMA依存性のTHP-1の活性マクロファージへの成熟後、M. faecis MH23-4及びMR1上清は、LPSと共刺激すると、(A)IL-8及び(B)TNF産生のレベルを低下させる。従って、細胞をC. bolteaeのようなIBDに関連する細菌で処理すると、TNFレベルは増加する(ANOVA試験、n=3;p=0.0026)。すべてのデータは平均値と標準偏差で表示されている。
図8図8は、MH23のGPCRヒットのヒートマップを示す。M. faecis MH23-1に対するアゴニスト(青)及びアンタゴニスト(緑)ヒットのヒットマップ。右側の凡例は、各ヒットの活性化のパーセンテージを示す。
図9図9は、hPBMC由来CD3+及びCD3-細胞において、M. faecisがIL-22及びIFNgを調節することを示すグラフである。(A)M. faecis MH231及びMH23-2細胞を含まない上清処理は、非刺激PBMCにおいてのみT細胞の増加を誘導する(ANOVA試験、n=6、未処理p=0.0010、+PIM p=0.0937)。(B)-(C)M. faecis MH23-1及びMH23-2細胞を含まない上清処理は、NK細胞(B)ANOVA試験(n=6;未処理p=0.0396;+PIM p=0.0275)の増加、又は樹状細胞(C)ANOVA試験(n=6;未処理p=0.1994;+PIM p=0.3827)の減少を誘発しない。(D)-(F)CD3-及びCD3+細胞は、M. faecis MH23-1及びMH23-2の無細胞上清で処理すると、IFNgの発現を劇的に減少させる。CD3-細胞はまた、M. faecis MH23-1及びMH23-2の無細胞上清で処理すると、IL-22発現の増大を示した(ANOVA試験、n=7、(D)p<0.0001、(E)p<0.0001、(F)p=0.0189)。
図10図10は、M. faecisがヒト腸上皮細胞の遊走を促進することを示すグラフである。(A)トランスウェル移動アッセイを用いて、M. faecis株MH23-1及びMH23-2からの無菌培養上清抽出物がHCT116結腸癌細胞の遊走に及ぼす影響を検討した。血清欠乏状態(0.5%FBS)では、未処理HCT116細胞及びTy培地抽出物で処理した細胞は、トランスウェルチャンバーの基底側への移動のバックグラウンドレベルに匹敵するレベルを示した。M. faecis抽出物のチャンバー底部への添加は、Ty対照と比較して、HCT116細胞の基底側への移動を有意に増加させた(Ty,C n=6技術的反復;MH23-1,MH23-1 n=4技術的反復、各々3個の生物学的複製;Dunnettの多重比較試験**P=0.0035,****P<0.0001)。(B)Transwell移動実験のための10倍率での代表的な明視野画像。画像サイズは703.5μm×572.5μmである。(C)細胞遊走の第2の読み出しとして、Incucyteスクラッチ創傷アッセイを行った。HCT116細胞単層を引っかいた後、2時間ごとに相対的な創合を測定した。スクラッチから24時間後に、M. faecis株MH23-1及びMH23-2からの0.3x抽出物中でインキュベートした血清飢餓HCT116細胞は、Ty培地抽出物で処理した細胞と比較して有意に高い創傷コンフルエンスを示した。(Ty,C n=27の技術的反復;MH23-1,MH23-1 n=18の技術的反復;Dunnettの多重比較検定 *p=0.0142,**p<0.0088)。(D)開始点(0時間)及び細胞単層を引っかいた24時間後と48時間後に捕獲された引っかき傷移動実験の代表的な画像(10倍)。スケールバー:400μm。図11は、M. lactarisの抗STAT3活性化活性のグラフである。(A)M. lactaris ATCC 29176無細胞培養上清及び<3kDa画分はSTAT3活性化を抑制する。(B)M. lactaris MH54無細胞培養上清及び<3kDa画分はSTAT3活性化を抑制する。試料は、対応のないt検定を用いて比較した。p<0.05、p<0.01、p<0.0001。図12は、M faecisが障壁の完全性に及ぼす影響をグラフ化したものである。(A)M. faecis MH23-1及びMH23-3無細胞培養上清アメロライトIFNiは、TEERにより評価したように、TY培地対照に対して24時間処理後にバリア完全性の変化を誘発した。(B)M. faecis MH23-1及びMH23-3無細胞培養上清アメロライトIFNiは、TEERにより評価したTY培地対照と比較して144時間の処理後に、TERのバリア完全性の変化を誘発した。(C)M. faecis MH23-3培養上清抽出物は、YG/V培地対照に対するIFN処理後のバリア完全性の回復を促進する。試料は、対応のないt検定を用いて比較した。*、p<0.05;**、p<0.01;*** p<0.001:**** p<0.0001。
【発明を実施するための形態】
【0083】
【表1】
【0084】
1.定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の実施又は試験において、本明細書に記載されたものと類似又は同等の任意の方法及び材料を使用することができるが、好ましい方法及び材料が記載される。本発明の目的のために、以下の用語を以下に定義する。
【0085】
物品「a」及び「an」は、本明細書では、物品の文法的対象物の1つ又は複数(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「要素」は、1つの要素又は複数の要素を意味する。
【0086】
本明細書で使用される用語「約」は、この技術分野の当業者に容易に知られている各値の通常の誤差範囲を指す。本明細書における値又はパラメータの「約」への言及は、その値又はパラメータそれ自体に向けられる実施形態を含む(及び説明する)。
【0087】
本明細書中で使用される「投与する」という用語は、所望の部位で薬剤の少なくとも部分的な送達をもたらす方法又は経路によって、本明細書中に開示されるような薬剤(例えば、細菌)を対象中に配置することを指す。本明細書に開示された化合物を含む組成物は、対象において有効な生物学的活性又は治療効果をもたらす任意の適切な経路によって投与することができる。ある実施形態において、投与は、身体活動(例えば、注射、摂取の行為、適用の行為、及び/又は送達装置又は機械の操作)を含む。そのような活動は、(例えば、医療専門家及び/又は治療される対象によって)実施され得る。
【0088】
具体的には、本明細書中で使用される「投与する」及び「投与」は、ある人が、別の人に、生きた細菌、死滅した細菌、細菌に由来する使用済み媒体、細菌の細胞ペレット、細菌によって産生された精製代謝物、細菌によって産生された精製タンパク質、プレバイオティクス、小分子、又はそれらの組み合わせを、特定の方法で及び/又は第二の人から受け取った指示とは独立して、又はそれに分散して、ある目的のために消費するように指示する実施形態を包含する。実施形態の非限定的な例には、ある人が、別の人に、生きた細菌、死滅した細菌、細菌に由来する使用済み媒体、細菌の細胞ペレット、細菌によって産生された精製代謝物、細菌によって産生された精製タンパク質、プレバイオティクス、小分子、又はそれらの組み合わせを、特定の方法で及び/又は第二の人から受け取った指示とは独立して、又はそれに分散して、ある目的のために消費するように指示する状況、あるいは医師が患者に一連の行動及び/又は治療を処方する場合、親が未成年のユーザー(子供など)にそのような製品を摂取するよう命令する場合、トレーナーがユーザー(スポーツ選手など)に特定の行動及び/又は治療方針の指示に従うようにアドバイスする場合、又は製造業者、流通業者、又はマーケティング担当者が、例えば、製品の販売又はマーケティングに関連して提供される梱包又はその他の材料への広告又はラベル表示を通じて、エンドユーザーに使用条件を推奨する場合を含む。いくつかの実施形態において、開示された組成物は、経口、静脈内、筋肉内、くも膜下、舌下、口腔内、直腸、眼内、眼経路、光学経路、経鼻、吸入、噴霧、皮膚、経皮、又はそれらの組み合わせによって投与することができ、薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤とともに送達するために製剤化することができる。注目すべきことに、開示された組成物は、生体異形成及びその続発症を改善するための治療のための複数の製剤及び送達モードを包含するが、プロバイオティクスのような生きた生物学的治療製品は、典型的には、静脈内、筋肉内、又は腹腔内に投与されないことに留意されたい。これらの送達様式は、細菌代謝の小分子産物のために保有する可能性がある。
【0089】
用語「同時の投与」又は「同時に投与する」又は「同時投与」などは、2つ以上の活性を含む単一組成物の投与、又は各活性の別々の組成物としての投与、及び/又は、有効な結果が、全てのそのような活性剤が単一組成物として投与されたときに得られるものと同等であるのに十分な時間内に、同時又は同時又は連続的に、別々の経路によって送達されることを指す。「同時に」とは、活性剤が実質的に同時に、望ましくは同じ製剤中に一緒に投与されることを意味する。「同時的に」とは、活性剤が、時間的に密接に投与されることを意味し、例えば、ある物質は、約1分以内から約1日以内に、次の前後に投与される。どんな同時期でも有用である。しかし、同時に投与されない場合には、薬剤は、約1分以内から約8時間以内に、適切には約1時間以内から約4時間以内に投与されることが多い。同時に投与される場合、薬剤は、対象の同じ部位で適切に投与される。用語「同一部位」は正確な位置を含むが、約0.5~約15センチメートル以内、好ましくは約0.5~約5センチメートル以内であり得る。本明細書中で使用される用語「別々に」は、薬剤が、例えば、約1日から数週間又は数ヵ月の間隔で投与されることを意味する。活性剤は、いずれかの順序で投与することができる。本明細書中で使用される用語「連続的に」は、例えば、分、時間、日又は週の間隔で、薬剤が連続して投与されることを意味する。適切であれば、活性剤は、規則的な繰り返しサイクルで投与することができる。
【0090】
用語「薬剤」は、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を誘導する化合物を含む。この用語はまた、本明細書に具体的に記載された化合物の薬学的に許容される薬学的活性成分を包含し、これには、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物、アナログなどが含まれるが、これらに限定されない。上記の用語が使用される場合、これは、薬学的に許容される、薬理学的に活性な塩、エステル、アミド、プロドラッグ、代謝物、アナログなどと同様に、活性剤自体を含むことを理解されたい。用語「薬剤」は、狭義に解釈されるべきではなく、小分子、ペプチド、ポリペプチド及びタンパク質のようなタンパク質性分子、ならびにそれらを含む組成物、ならびにRNA、DNA及び模倣物のような遺伝的分子、ならびにそれらの化学的類似体、ならびに細胞性物質に及ぶ。用語「薬剤」は、本明細書で言及されるポリペプチド、ならびにそのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを産生及び分泌することができる細胞を含む。従って、用語「薬剤」は、ウイルス又は非ウイルスベクターのようなベクター、発現ベクター及び一連の細胞における発現及び分泌のためのプラスミドを含む核酸構築物に及ぶ。
【0091】
バイオマーカーの「量」又は「レベル」は、試料中の検出可能なレベルである。これらは、当業者に公知の方法によって測定することができ、本明細書にも開示する。評価されたバイオマーカーの発現レベル又は量を用いて、治療に対する反応を決定することができる。
【0092】
本明細書で使用される「及び/又は」は、関連するリストされた項目の1つ以上の任意の可能な組み合わせ、及び代替(又は)で解釈される場合の組み合わせの欠如を指し、それらを包含する。
【0093】
用語「嫌気性」は、増殖に酸素を必要としないことを意味する。嫌気性菌株は、偏性嫌気性菌(すなわち、酸素の存在によって害を受ける菌株)、好気性嫌気性菌(すなわち、増殖に酸素を使用できないが、その存在に耐える菌株)、通性嫌気性菌(すなわち、酸素なしで増殖できるが、存在すれば酸素を使用する菌株)を含む。
【0094】
「嫌気的条件」とは、発酵媒体中の酸素濃度が、微生物が末端電子受容体として使用するには低すぎる条件と定義される。「嫌気的条件」は、さらに、3mmol/L/時未満、好ましくは2.5mmol/L/時未満、より好ましくは2mmol/L/時未満、最も好ましくは1.5mmol/L/時未満の速度で、培地に酸素を全く又は少量添加しない条件として定義することができる。「嫌気性条件」とは、特に完全に酸素を含まない(=0mmol/L/h酸素)又は少量の酸素を例えば<0.5から<1mmol/L/hの速度で培地に添加することを意味する。「嫌気的代謝」とは、NADHに含まれる電子の最終的な受容体ではない生化学的過程をいう。嫌気的代謝は、酸素以外の化合物が最終電子受容体となる嫌気的呼吸と、NADHからの電子を利用して発酵経路を介して還元産物を生成する基質レベルのリン酸化に分けられる。
【0095】
用語「炭素源」は、一般に、微生物の成長を維持するのに適した基質又は化合物を指す。炭素源は、ポリマー、炭水化物、アルコール、酸、アルデヒド、ケトン、アミノ酸、ペプチドなどを含むがこれらに限定されない、種々の形態であり得る。例えば、これらは、単糖類(グルコース、フルクトース、キシロースなど)、オリゴ糖類(スクロース、ラクトースなど)、多糖類(デンプン、セルロース、ヘミセルロースなど)、リグノセルロース系物質、脂肪酸(コハク酸、乳酸、酢酸など)、グリセロールなど、又はそれらの混合物を含み得る。炭素源は、グルコース又はセルロースのような光合成の生成物であり得る。
【0096】
炭素源として使用される単糖類は、セルロース、デンプン及びペクチンの酸又は酵素加水分解物のような多糖類の加水分解の生成物であり得る。「エネルギー源」という用語は、化学有機栄養代謝において、炭素源は、異化の間の電子供与体として、及び細胞成長の間の炭素源として使用されるので、ここでは炭素源と交換可能に使用され得る。
【0097】
用語「球菌」は、球形、卵形、又は実質的に丸い形状に近い細胞形を有することを意味する(例えば、光学顕微鏡下で検査される場合)。この形状は、ブドウ球菌属又は連鎖球菌属の細菌株のものと類似している(例えば、光学顕微鏡下で検査した場合)。細菌株(「球菌」など)の特徴的な形状は、微生物学の分野で一般的に用いられている分類基準である。
【0098】
本明細書全体を通して、文脈上別異の意味がない限り、「含む」、「含んでいる」、及び「含むこと」という用語は、記載されたステップ、要素、又はステップ若しくは要素のグループを包含するが、他のステップ若しくは要素、又はステップ若しくは要素のグループ、又は要素のグループの除外を意味するものと理解されるであろう。したがって、用語「含む」などの使用は、リストされた要素が必要又は必須であるが、他の要素は任意であり、存在しても存在していなくてもよいことを示す。「かなる」とは、語句「からなる」に続くものを含むことを意味し、これらに限定される。したがって、「からなる」という語句は、リストされた要素が必須又は必須であり、他の要素が存在しないことを示す。「から本質的になる」とは、語句の後に列挙されている要素を含み、列挙されている要素について開示に明記されている活動又は行動に干渉したり寄与したりしない他の要素に限定されることを意味する。したがって、「から本質的になる」という語句は、リストされた要素が必要又は必須であることを示し、他の要素は任意であり、リストされた要素の活動又は作用に影響を与えるか否かに応じて存在し得るか否かを示し得る。
【0099】
本明細書中で使用される「培養する」、「培養」などは、細胞の集団(又は単一の細胞)がインビトロで細胞の成長又は維持を支持することが示された条件下でインキュベートされるインビトロで使用される一組の手順を指す。当該技術分野は、広範なフォーマット、媒体、温度範囲、ガス濃度などを認識する。これらは培養系で定義する必要がある。パラメータは、選択されたフォーマット、及び本明細書に開示された方法を実施する個人の特定のニーズに基づいて変化するであろう。しかし、培養パラメータの決定は、本質的にルーチンであることが認識されている。
【0100】
用語「低下する」、「減少する」、「低下」、「減少」、「阻害」、「抑制」、「減衰」などは、すべて、本明細書において、統計的に有意な量だけ減少を意味するために使用される。いくつかの実施形態において、これらの用語は、典型的には、参照レベルと比較して少なくとも10%の減少(例えば、与えられた治療又は薬剤の不存在)を意味し、例えば、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%の減少を含むことができる。少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又はそれ以上の低下を含むことができる。本明細書中で使用される場合、「減少」、「抑制」、及び「阻害」は、参照レベルと比較して完全な阻害又は低減を必要としない。「完全阻害」等は、基準レベルと比較して100%の阻害である。減少は、好ましくは、正常範囲内(例えば、所与の障害を有さない個体について)として容認されるレベルまで下げることができる。
【0101】
用語「増加した」、「増加」、「増強」、又は「活性化」は、すべて、統計的に有意な量だけ増加することを意味するために、本明細書中で使用される。ある実施形態において、用語「増加した」、「増加」、「増強」、又は「活性化」は、参照レベル(例えば、所定の治療又は薬剤の不存在)と比較して少なくとも10%の増加を意味し得、例えば、参照レベルと比較して、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%の増加を、例えば含むことができる。参照レベルと比較して、10~100%の増加、又は参照レベルと比較して、100%の増加、又は少なくとも約2倍、若しくは少なくとも約3倍、若しくは少なくとも約3倍、若しくは少なくとも約4倍、若しくは少なくとも約5倍、若しくは少なくとも約10倍の増加、又は少なくとも約10倍と比較して、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は最大100%の増加、又は参照レベルと比較して、2倍及び10倍以上の増加、又はいずれかの増加を含む。マーカー又は症状に関連して、「増加」は、そのようなレベルにおける統計的に有意な増加である。
【0102】
本明細書中で使用される「単離された」なる用語は、(1)最初に製造されたときに関連した成分の少なくとも一部から分離された(ヒトの便のような自然界であるか、又は人工増殖培地からなるペトリプレートのような実験環境であるかを問わない)、及び/又は(2)ヒトの手で製造、調製、精製、及び/又は製造された細菌又は他の実体又は物質を包含する。単離された細菌、タンパク質、代謝産物、又はそれらの組み合わせは、それらが最初に結合した他の成分の少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%又はそれ以上から分離することができる。ある実施形態において、単離された細菌、タンパク質、代謝物、又はそれらの組み合わせは、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約99%を超える純度を有する。本明細書中で使用される場合、物質は、他の成分(他の細菌種など)を実質的に含まない場合、「純粋」である。用語「精製」、「精製」、及び「精製」とは、最初に製造又は生成されたとき(例えば、天然の場合又は実験環境の場合)、又は最初に製造された後のいずれかの時点で、細菌培養の当業者により認識されるように、又は関連する技術(例えば、化学)の少なくとも一部から分離されたバクテリア又は他の物質を指す。細菌又は細菌集団は、それが生産時又は生産後に、例えば細菌又は細菌集団を含む材料又は環境から単離され、精製された細菌又は細菌集団は、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%又は約90%以上の他の物質を含有することができ、さらに「単離された」とみなされ得る。ある実施形態において、精製された細菌及び細菌集団は、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約99%を超える純度を有する。本明細書中に提供される細菌組成物の場合、組成物中に存在する1つ以上の細菌型は、細菌型を含む材料又は環境中で産生及び/又は存在する1つ以上の他の細菌から独立して精製することができる。いくつかの実施形態において、細菌又は細菌集団は、それが細菌の単一の染色を含む場合、「単離される」。いくつかの実施形態において、そのような単離された細菌は、他の単離された細菌(例えば、単離された細菌の定義されたコムソーティウム)と混合又は投与することができる。細菌組成物及びその細菌成分は、一般に残留生息場所産物から精製される。
【0103】
本明細書中で使用される用語「ゲノム」は、微生物の遺伝子(コード核酸配列)及び非コード核酸配列を含むDNAを含み、従って、例えば、微生物のコード及び非コードDNAへの核酸の導入を含む。
【0104】
用語「グラム変数」は、グラム株試験において陽性結果及び/又は陰性結果を与えること(すなわち、クリスタルバイオレット染色試薬の色を保持すること)を意味する。細菌によるクリスタルバイオレット染色の保持は、細菌細胞壁のペプチドグリカン層の厚さと関連している。グラム陽性菌はペプチドグリカン層が厚い。グラム染色は、微生物学の分野における細菌株の分類を助けるために一般的に用いられている。
【0105】
本明細書中で使用される場合、用語「消化管」は、消化管としても知られるヒト消化管を指すと理解される。消化管には、口腔、咽頭、食道、胃、小腸(十二指腸、空腸、回腸)、大腸(盲腸及び結腸)及び直腸が含まれる。消化管全体はさまざまな種類の微生物によってコロニーを形成することができるが、腸内の微生物叢の大部分は、種数と生物体量の両面から、小腸(小腸と大腸)に存在する。
【0106】
用語「マーカー」、「バイオマーカー」などは、生物学的システムの生理学的状態の指標として測定することができる任意の化合物を指す。マーカーは、アミノ酸配列、核酸配列及びその断片を含むバイオマーカーであり得る。例示的なバイオマーカーとしては、サイトカイン、ケモカイン、増殖及び血管新生因子、転移関連分子、癌抗原、アポトーシス関連タンパク質、酵素、プロテアーゼ、接着分子、細胞シグナル伝達分子及びホルモンが挙げられるが、これらに限定されない。マーカーはまた、いくつかの実施形態において、生物学的システムにおいて有意に代謝されない糖であってもよい。糖は、例えば、マンニトール、ラクツロース、スクロース、スクラロース、及び上記のいずれかの組み合わせであり得る。
【0107】
「測定する」又は「測定」とは、試料中の所与の物質の存在、非存在、量又は量(有効量であり得る)を評価すること(そのような物質の定性的又は定量的濃度レベルの導出を含む)、又は他の方法で対象の臨床パラメータの値又は分類を評価することを意味する。別法として、用語「アッセイする」、「検出する」又は「検出」は、本明細書に記載される全ての測定又は測定を指すために使用されてもよい。
【0108】
本明細書中で使用される用語「粘膜治癒」は、障害された粘膜層を示す1以上の特徴の改善を意味する。このような特徴は、通常、結腸内視鏡検査によって決定され、限定されるものではないが、紅斑、血管パターンの喪失、脆弱性、出血、びらん及び潰瘍が挙げられる。状況によっては、粘膜治癒とは、粘膜層の障害を特徴づける有害作用の完全な改善を指す。あるいは、粘膜治癒は、障害された粘膜層を特徴付ける1つ又は複数の負の効果の減少又は改善を指すことができる。
【0109】
本明細書中で使用される用語「医薬組成物」とは、薬学的に許容される担体(例えば、製薬業界で一般的に使用される担体)と組み合わせた活性剤を指す。「薬学的に許容される」という語句は、本明細書では、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症なしに、合理的な利益/リスク比に見合ったヒト及び動物の組織と接触して使用するのに適した、化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指す。いずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、薬学的に許容される担体は、水以外の担体であり得る。ある実施形態において、薬学的に許容される担体の任意の実施形態は、クリーム、エマルジョン、ゲル、リポソーム、ナノ粒子、及び/又は軟膏であり得る。いずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、薬学的に許容される担体は、人工又は操作された担体(例えば、活性成分が天然又は天然に存在しないことが見出されるであろう担体)であり得る。
【0110】
用語「系統樹」とは、定義された系統発生的再構成アルゴリズムのセット(例えば、節約、最尤、又はベイジアン)を用いて生成される、ある遺伝的配列の別の配列に対する進化的関係のグラフ表示を指す。系統樹中のノードは異なる祖先配列を表し、どのノードの信頼性も、枝の不確実性を測定するブートストラップ又はBayesianの事後確率によって与えられる。
【0111】
いくつかの実施形態において、用語「株」は、系統発生系統樹における末端葉を指し、特定の遺伝的配列は、GTDB-tk(Chaumeil et al. 2020)又は当技術分野で公知の他のツールを用いてゲノムアセンブリから抽出された120のユビキタスシングルコピータンパク質(Parks et al. 2018)の連結アラインメントであってもよい。
【0112】
用語「クレード」とは、系統樹における安定ノードの下流の系統発生樹のメンバーのセット(ブートストラップ値>90%)を指す。クレードは、共通の祖先の系統発生上のすべての子孫を表す関連した生物のグループである。クレードは、系統発生系統樹における一連の末端葉を含み、これは別個の単系統進化単位である。
【0113】
本明細書中で使用される「プレバイオティック」とは、宿主に利益を与える(又は与えない)ことができる、消化管微生物叢中の組成及び/又は活性の両方において、特異的変化を可能にする成分を意味すると理解される。好ましいプレバイオティクスは、プロバイオティック組成物の成長又はその有益な機能を促進するが、病原体の成長又は病原性に関連する遺伝子(例えば、毒素)を促進しないものであろう。
【0114】
本明細書中で使用される場合、「プロバイオティック」は、現在、WHOによって定義されるように、「適切な量で投与された場合、宿主に健康上の利益を与える生きた微生物」を意味すると理解される。
【0115】
用語「種」は、97%を超える16SリボソームRNA(rRNA)配列相同性及び70%を超えるゲノムハイブリダイゼーションを有し、明確な単位として認識されるように他のすべての生物と十分に異なる、密接に関連する生物の集合として定義される。種及び他の系統発生的同定は、微生物学の当業者に公知の分類に従う。
【0116】
本明細書中で使用される場合、「対象」は、ヒト又は動物を意味する。通常、動物は霊長類、げっ歯類、家畜又は狩猟動物のような脊椎動物である。霊長類にはチンパンジー、カニクイザル、クモザル、マカク(たとえば、アカゲザル)が含まれる。げっ歯類には、マウス、ラット、ウッドチャック、フェレット、ウサギ、ハムスターが含まれる。家畜及び狩猟動物には、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、バッファロー、ネコ種(例えば、家猫)、イヌ種(例えば、イヌ、キツネ、オオカミ)、トリ種(例えば、ニワトリ、エム、ダチョウ)、及び魚(例えば、マス、ナマズ、及びサケ)が含まれる。ある実施形態において、対象は、哺乳動物(例えば、霊長類(例えば、ヒト))である。用語「個体」、「患者」及び「対象」は、本明細書において互換的に使用される。
【0117】
好ましくは、対象は哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ又はウシであり得るが、これらに限定されるものではない。ヒト以外の哺乳動物は、炎症性及び自己免疫性疾患の動物モデル(例えば、腸関門機能のモデル)を表す対象として有利に使用することができる。対象は、男性であっても女性であってもよい。
【0118】
本明細書中で使用される用語「治療する」、「治療」、「治療すること」などは、対象が、疾患又は障害(例えば、炎症性疾患又は自己免疫疾患)に関連する状態の進行又は重症度を逆行させ、軽減し、軽減し、抑制し、減速し、又は停止することである治療処置を指す。用語「治療」は、炎症性疾患又は自己免疫疾患に関連する状態、疾患又は障害の少なくとも1つの有害作用又は症状を低減又は軽減することを含む。1つ又は複数の症状又は臨床マーカーが低下すれば、治療は一般に「有効」である。あるいは、疾患の進行が減少又は停止した場合、治療は「効果的」である。すなわち、「治療」には、症状又はマーカーの改善だけでなく、治療を行わない場合に予想されるものと比較して、症状の進行又は悪化を停止又は少なくとも遅らせることも含まれる。有益な又は望ましい臨床結果としては、1つ以上の症状の軽減、疾患の進展の縮小、疾患の状態の安定化(すなわち、悪化しない)、疾患の進行の遅延又は遅延、疾患状態の改善又は緩和、寛解(部分的又は全体的であるか否かを問わない)、及び/又は死亡率の低下が挙げられるが、これらに限定されない。疾患の「治療」という用語には、疾患の症状又は副作用の緩和(緩和治療を含む)を提供することも含まれる。治療が効果的であると考えられる疾患(すなわち、疾患の完全な回復又は欠如)を治癒させる必要はない。
【0119】
いくつかの実施形態において、配列決定は、「16SリボソームRNA配列決定」、16S rDNA配列決定」又は「16s rRNA配列決定」とも称され得る16S rRNA遺伝子配列決定を含む。16S rRNA遺伝子の配列決定は、異なる細菌種間で高度に保存されているが、真核生物には存在しないので、遺伝学的研究に用いることができる。高度に保存された領域に加えて、16S rRNA遺伝子は種間で異なる9つの超可変領域(V1~V9)も含む。16S rRNA遺伝子配列決定は、典型的には、16S rRNA遺伝子の保存された領域に結合する複数のユニバーサルプライマーを使用し、細菌16S rRNA遺伝子領域(超可変領域を含む)を増幅し、増幅された16S rRNA遺伝子を、本明細書に記載されるような次世代配列決定技術(例えば、米国特許第5,654,418号、第6,344,316号、及び第8,889,358号、ならびに米国特許公開第2013/157号、265及び同第2018/195,111号参照。これらは、各々、その全体が参照により援用される)で配列決定することを含む。
【0120】
本明細書に記載される各実施形態は、特に断らない限り、各実施形態及び各実施形態に準用される。
【0121】
2.細菌株
本発明の組成物は、地中海菌属の細菌株を含む。これらの例は、この属の細菌が腸障壁機能の障害に関連する疾患の治療又は予防に有用であることを示す。好ましい細菌株はM. faecis種である。
【0122】
Mediterraneibacterは、Clostridia属の細菌の属である。科学的分類は、細菌(界)、Firmicutes(門)、Clostridia(類)、Oscillospirales(目)、Acutalibacterae(科)、Mediterlaneibacter(属)である。Mediterraneibacter属内の細菌は、球状のグラム反応可変、非運動性細菌であり、偏性嫌気性菌である。これらの基準は、細菌株の系統発生的分類に情報を与えることができるため、重要である。例えば、細菌種M. faecisは、特にこれらの基準に基づいて、以前はRuminococcus属及びFaecalicatena属に属するものとして分類されていた。
【0123】
M. faecis株(以前はRuminococcus faecisと特徴付けられていた)は、Kimら、2011に記載されており、現在の分類学的再分類はTogo et al., 2018によって記載されている。基準株M. faecis Eg2(=JCM 15917)をヒトの糞便から分離した(Kim et al., 2011)。M. faecis型株JCM 15917の16S rRNA遺伝子配列のGenBank登録番号はNR_116747である。
【0124】
Mediterlaneibacter属及びM. faecis種の呼気は、Genome Taxonomy Database reference tree, a taxonomic classification system as described in Oren et al., 2015 and Whitman et al., 2018により定義される通りである。
【0125】
受託番号V21/006223(すなわち、M. faecis MH23-1)の下に寄託されたM. faecis細菌を実施例で試験し、本発明の好ましい株の1つである。M. faecis株MH23-1は、Microba IP Pty Ltd (388 Queen Street, Brisbane, QLD 4000, オーストラリア)により、2021年3月31日に「Mediterlaneibacter faecis MH23-1」として国際寄託機関国立測定研究所(NMI, 1/153 Bertie Street, Port Melbourne, Victoria, 3207, Australia)に寄託され、受託番号V21/006223が割り当てられた。
【0126】
試験されたM. faecis MH23-1株についての例示的な16S rRNA配列は、配列番号1~6に記載される。M. faecis種の細菌株は、そのゲノム内に単一の16 rRNA配列を含むことができ、又はより好ましくは、そのゲノム内に2つ以上の16S rRNA配列(例えば、2コピー、3コピー、4コピー、5コピー、6コピー、7コピー、8コピー、又は8コピー以上)を含むことができる。いくつかの最も好ましい実施形態において、M. faecis MH23-1株は、配列番号1~6で同定されるように、16S rRNA配列の6コピーを有する。いくつかの実施形態において、細菌株は、当技術分野で公知の任意の方法により、配列番号1~6のいずれかに対応する16S rRNA配列を含むか否かを決定することによって、M. faecis MH23-1株であると同定することができ、M. faecis株のゲノムは、染色体及びプラスミドを含む。M. faecis株MH23-1の染色体配列を配列番号1に示す。この配列は、Illumina NovSeq6000プラットフォームを使用して生成された。
【0127】
MH23-1株と密接に関連する細菌株も、腸障壁機能の回復に有益な効果を介して、炎症性及び自己免疫疾患の治療又は予防に有効であることが実施例において示されている。
【0128】
例えば、受入番号V21/006224(すなわち、M. faecis MH23-2)の下に沈着したM. faecis細菌を実施例で試験し、本発明の好ましい株の互いに1つである。M. faecis株MH23-2は、Microba IP Pty Ltd(388クイーンストリート、ブリスベン、QLD 4000、オーストラリア)により、2021年3月31日に「地中海細菌糞便MH23-2」として、国際寄託機関国立測定研究所(NMI、1/153バーティストリート、ポートメルボルン、ビクトリア、3207、オーストラリア)に寄託され、受託番号V21/006224が割り当てられた。
【0129】
試験されたM. faecis MH23-2株の例示的16S rRNA配列は、配列番号7~12に記載される。いくつかの最も好ましい実施形態において、M. faecis MH23-2株は、配列番号7-12で同定されるように、16S rRNA配列の6コピーを有する。いくつかの実施形態において、細菌株は、当技術分野で公知の任意の方法により、配列番号7~12のいずれかに対応する16S rRNA配列を含むか否かを決定することによって、M. faecis MH23-2株のものであると同定することができ、M. faecis株のゲノムは、染色体及びプラスミドを含む。M. faecis株MH23-2の染色体配列を配列番号26に示す。
【0130】
さらに、受入番号V21/006225(すなわち、M. faecis MH23-3)の下に沈着したM. faecis細菌も実施例で試験され、本発明の好ましい株の互いに1つである。M. faecis株MH23-3は、Microba IP Pty Ltd(388 Queen Street, Brisbane, QLD 4000, Australia)により、2021年3月31日に「Mediterlaneibacter faecis MH23-3」として国際寄託機関国立測定研究所(NMI, 1/153 Bertie Street, Port Melbourne, Victoria, 3207, Australia)に寄託され、受託番号V21/006225が割り当てられた。
【0131】
試験されたM. faecis MH23-3株の例示的16S rRNA配列は、配列番号13~18に記載される。いくつかの最も好ましい実施形態において、M. faecis MH23-3株は、配列番号13-18で同定されるように、16S rRNA配列の6コピーを有する。いくつかの実施形態において、細菌株は、当技術分野で公知の任意の方法により、配列番号13-18のいずれかに対応する16S rRNA配列を含むか否かを決定することによって、M. faecis MH23-3株のものであると同定することができ、M. faecis株のゲノムは、染色体及びプラスミドを含む。M. faecis株MH23-3の染色体配列を配列番号27に示す。
【0132】
さらに、受託番号V21/006226(すなわち、M. faecis MH23-4)の下に寄託されたM. faecis細菌も実施例で試験され、本発明の好ましい株のさらに別の株である。M. faecis株MH23-4は、Microba IP Pty Ltd(388 Queen Street, Brisbane, QLD 4000, Australia)により、2021年3月31日に「Mediterlaneibacter faecis MH23-4」として国際寄託機関国立測定研究所(NMI, 1/153 Bertie Street, Port Melbourne, Victoria, 3207, Australia)に寄託され、受託番号V21/006226が割り当てられた。
【0133】
試験されたM. faecis MH23-4株についての例示的な16S rRNA配列は、配列番号19-24に記載される。いくつかの最も好ましい実施形態において、M. faecis MH23-4株は、配列番号19-24で同定されるように、16S rRNA配列の6コピーを有する。いくつかの実施形態において、細菌株は、当技術分野で公知の任意の方法により、配列番号19-24のいずれかに対応する16S rRNA配列を含むか否かを決定することによって、M. faecis MH23-4株のものであると同定することができ、M. faecis株のゲノムは、染色体及びプラスミドを含む。M. faecis株MH23-4の染色体配列を配列番号28に示す。
【0134】
ある実施形態において、本発明の細菌株は、M. faecisの細菌株の16S rRNA配列と少なくとも97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である16S rRNA配列を有する。好ましくは、本発明の細菌株は、配列番号1~24のいずれか1つと少なくとも97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である16S rRNA配列を有する。いくつかの好ましい実施形態において、本発明の細菌株は、配列番号1~6の1つ以上で表される16S rRNA配列を有する。いくつかの他の好ましい実施形態において、本発明の細菌株は、配列番号7~12の1つ以上で表される16S rRNA配列を有する。いくつかの別の好ましい実施形態において、本発明の細菌株は、配列番号13~18の1つ以上で表される16S rRNA配列を有する。さらにいくつかの他の好ましい実施形態において、本発明の細菌株は、配列番号19~24のうちの1つ以上で表される16S rRNA配列を有する。
【0135】
細菌株のゲノムは、配列番号1~6に示される16S rRNA配列の各々を含み得る。あるいは、細菌株のゲノムは、配列番号7~12に示される16S rRNA配列の各々を含んでもよい。あるいは、細菌株のゲノムは、配列番号13~18に示される16S rRNA配列の各々を含んでもよい。あるいは、細菌株のゲノムは、配列番号19-24に示される16S rRNA配列の各々を含んでもよい。
【0136】
ある実施形態において、本発明の細菌株は、配列番号25~28のいずれか1つと配列同一性を有する染色体を有する。好ましい実施形態において、本発明の細菌株は、配列番号25-28の少なくとも60%(例えば、配列番号25-28の少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、95%、96%、97%、98%、98%、99%、又は100%)のいずれかと少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも92%、94%、95%、96%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、又は100%)を有する染色体を有する。例えば、本発明の細菌株は、配列番号25~28の70%にわたって配列番号25~28のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有する染色体、又は配列番号25~28の80%にわたって配列番号25~28のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有する染色体、又は配列番号25~28の90%にわたって配列番号25~28のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有する染色体、又は配列番号25~28の100%にわたって配列番号25~28のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有する染色体、又は配列番号25~28の70%にわたって配列番号25~28のいずれか1つとの少なくとも95%の配列同一性を有する染色体、又は配列番号25~28の80%にわたって配列番号25~28のいずれか1つとの少なくとも95%の配列同一性を有する染色体、又は配列番号25~28の90%にわたって配列番号25~28のいずれか1つとの少なくとも95%の配列同一性を有する染色体、又は配列番号25~28の100%にわたって配列番号25~28のいずれか1つとの少なくとも95%の配列同一性を有する染色体、又は配列番号25~28の70%にわたって配列番号25~28のいずれか1つとの少なくとも98%の配列同一性を有する染色体、又は配列番号25~28の80%にわたって配列番号25~28のいずれか1つとの少なくとも98%の配列同一性を有する染色体、又は配列番号25~28の90%にわたって配列番号25~28のいずれか1つとの少なくとも98%の配列同一性を有する染色体、又は配列番号25~28の100%にわたって配列番号25~28のいずれか1つとの少なくとも98%の配列同一性を有する染色体を有することができる。本発明の特に好ましい株は、受託番号V21/006223の下に寄託されたMediterraneibacter faecis株である。これは、実施例に示したDSSマウスモデルで試験した例示的なM. faecis MH23-1株であり、疾患の治療に有効であることが示されている。従って、本発明は、受託番号V21/006223の下に寄託されたM. faecis株の単離された細胞、又はその誘導体を提供する。本発明はまた、受託番号V21/006223の下に寄託されたM. faecis株の細胞、又はその誘導体を含む組成物を提供する。また、本発明は、受託番号V21/006223の下に寄託されたM. faecis株の生物学的に純粋な培養物を提供する。
【0137】
いくつかの代替実施形態において、本発明は、受託番号V21/006224の下に寄託されたM. faecis株の単離された細胞、又はその誘導体などの細胞を提供する。本発明はまた、受託番号V21/006224の下に寄託されたM. faecis株の細胞、又はその誘導体を含む組成物を提供する。また、本発明は、受託番号V21/006224の下に寄託されたM. faecis株の生物学的に純粋な培養物を提供する。
【0138】
いくつかの代替実施形態において、本発明は、受託番号V21/006225の下に寄託されたM. faecis株の単離細胞などの細胞、又はその誘導体を提供する。本発明はまた、受託番号V21/006225の下に寄託されたM. faecis株の細胞、又はその誘導体を含む組成物を提供する。また、本発明は、受託番号V21/006225の下に寄託されたM. faecis株の生物学的に純粋な培養物を提供する。
【0139】
いくつかの代替実施形態において、本発明は、受託番号V21/006226の下に寄託されたM. faecis株の単離細胞などの細胞、又はその誘導体を提供する。本発明はまた、受託番号V21/006226の下に寄託されたM. faecis株の細胞、又はその誘導体を含む組成物を提供する。本発明はまた、受託番号V21/006226の下に寄託されたM. faecis株の生物学的に純粋な培養物を提供する。
【0140】
受託番号V21/006223、V21/006224、V21/006225、及びV21/006226のいずれかの下に寄託された株の誘導体は、元の株からの娘株(子孫)又は培養(サブクローン化)された株であってもよい。本発明の株の誘導体は、生物学的活性を除去することなく、例えば遺伝的レベルで修飾することができる。特に、本発明の誘導体株は、治療的に活性である。誘導体株は、それが由来する元のV21/006223、V21/006224、V21/006225、又はV21/006226株と同等の活性を有する。特に、誘導体株は、実施例に示されるように、少なくとも1つの疾患モデル(例えば、大腸炎)において同等の効果を引き出し、これは、実施例に記載される培養及び投与プロトコールを使用することによって同定することができる。V21/006223、V21/006224、V21/006225、及びV21/006226株のいずれかの誘導体は、一般に、それぞれのV21/006223、V21/006224、V21/006225、又はV21/006226株の生物型である。
【0141】
受託番号V21/006223、V21/006224、V21/006225、及びV21/006226の下に寄託されたM. faecis株の細胞への言及は、受託番号V21/006223、V21/006224、V21/006225、及びV21/006226の下に寄託された株と同じ安全性及び治療効力特性を有する任意の細胞を含み、そのような細胞は本発明に包含される。
【0142】
特定の実施形態では、本発明の細菌株は、M. lactarisの細菌株の16S rRNA配列と少なくとも97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である16S rRNA配列を有する。好ましくは、本発明の細菌株は、配列番号29~32のいずれかと少なくとも97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である16S rRNA配列を有する。いくつかの好ましい実施形態において、本発明の細菌株は、配列番号29~32で表される16S rRNA配列を有する。細菌株のゲノムは、配列番号29~32のいずれか1つに記載される16S rRNA配列の1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態において、細菌種のゲノムは、16S rRNA配列の少なくとも3コピーを含み得る。
【0143】
ある実施形態において、本発明の細菌株は、配列番号33~38のうちの少なくとも1つと配列同一性を有する染色体を有する。好ましい実施形態において、本発明の細菌株は、配列番号33~38の少なくとも60%(例えば、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、95%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%)にわたって、配列番号33~38のうちの1つ以上と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも92%、94%、95%、96%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、99%、99.5%、又は100%の配列同一性)を有する染色体を有する。例えば、本発明の細菌株は、配列番号33~38の70%にわたって配列番号33~38のうちの1つ以上と少なくとも90%の配列同一性を有する染色体、又は配列番号33~38の80%にわたって配列番号33~38のうちの1つ以上と少なくとも90%の配列同一性を有する染色体、又は配列番号33~38の90%にわたって配列番号33~38のうちの1つ以上と少なくとも90%の配列同一性を有する染色体、又は配列番号33~38の100%にわたって配列番号33~38のうちの1つ以上と少なくとも90%の配列同一性を有する染色体、又は配列番号33~38の70%にわたって配列番号33~38のうちの1つ以上と少なくとも95%の配列同一性を有する染色体、又は配列番号33~38の80%にわたって配列番号33~38のうちの1つ以上と少なくとも95%の配列同一性を有する染色体、又は配列番号33~38の90%にわたって配列番号33~38のうちの1つ以上と少なくとも95%の配列同一性を有する染色体、又は配列番号33~38の100%にわたって配列番号33~38のうちの1つ以上と少なくとも95%の配列同一性を有する染色体、又は配列番号33~38の70%にわたって配列番号33~38のうちの1つ以上と少なくとも98%の配列同一性を有する染色体、又は配列番号33~38の80%にわたって配列番号33~38のうちの1つ以上と少なくとも98%の配列同一性を有する染色体、又は配列番号33~38の90%にわたって配列番号33~38のうちの1つ以上と少なくとも98%の配列同一性を有する染色体、又は配列番号33~38の100%にわたって配列番号33~38のうちの1つ以上と少なくとも98%の配列同一性を有する染色体を有することができる。
【0144】
2.1 細菌の生物型
受託番号V21/006223、V21/006224、V21/006225、及びV21/006226のいずれかに寄託された細菌の生物型である細菌株も、炎症性疾患及び自己免疫疾患の治療又は予防に有効であることが期待される。生物型は、生理学的及び生化学的特性が同一又は非常に類似している、密接に関連した株である。
【0145】
受託番号V21/006223、V21/006224、V21/006224、V21/006225、及びV21/006226のいずれかに寄託された細菌の生物型であり、本発明での使用に適した株は、受託番号V21/006223、V21/006224、V21/006225、及びV21/006226に寄託された細菌の他のヌクレオチド配列を配列決定することによって同定することができる。例えば、実質的に全ゲノムを配列決定することができ、本発明の生物型株は、その全ゲノムの少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、90%、95%又は99%、又はその全ゲノムにわたって)にわたって、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99%、99.5%又は99.9%の配列同一性を有することができる。生物型株を同定するのに用いるのに適した他の配列としては、hsp60又はBOX、ERIC、(GTG)5、又はREPなどの反復配列が挙げられる(Masco et al., 2003; Kim et al., 2019)。生物型株は、受託番号V21/006223、V21/006224、V21/006225、及びV21/006226のいずれかの下に寄託された細菌の対応する配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%又は99.9%の配列同一性を有する配列を有することができる。
【0146】
あるいは、受託番号V21/006223、V21/006224、V21/006225、及びV21/006226のいずれかに寄託された細菌の生物型である株、ならびに制限断片分析及び/又はPCR分析、例えば、蛍光増幅断片長多型(FAFLP)及び反復DNAエレメント(rep)-PCRフィンガープリンティング、又はタンパク質プロファイリング、又は部分16S又は23s rRNA配列決定を用いることによる。好ましい実施形態において、そのような技術を使用して、他の適切なM. faecis株を同定することができる。
【0147】
特定の実施形態では、受託番号V21/006223、V21/006224、V21/006225、及びV21/006226のいずれかの下に寄託された細菌の生物型であり、本発明での使用に適している株は、例えば、Sau3AI制限酵素(例示的な方法及びガイダンスについては、Srutkovaら、2011を参照のこと)を使用する場合に、増幅リボソームDNA制限分析(ARDRA)によって分析した場合に、受託番号V21/006223、V21/006224、V21/006225、及びV21/006226のいずれかの下に寄託された細菌と同じパターンを提供する株である。あるいは、生物型株は、受託番号V21/006223、V21/006224、V21/006225、及びV21/006226のいずれかの下に寄託された細菌と同じ炭水化物発酵パターンを有する株として同定される。
【0148】
いくつかの実施形態において、本発明において有用な細菌株は、細菌株による代謝産物の産生及び消費を日常的にプロファイリングすることによって同定することができる。上記及び本明細書の他の箇所に記載された細菌株は、プロピオン酸塩、乳酸塩、酢酸塩、及びギ酸塩の産生に影響することが予測される。従って、いくつかの実施形態において、本発明の細菌株は、プロピオン酸、乳酸、酢酸、及びギ酸の1種以上の代謝産物のin vivoでの産生を誘導する。さらに、いくつかの実施形態において、本発明の細菌株は酪酸塩を産生しない。
【0149】
受託番号V21/006223、V21/006224、V21/006225、及びV21/006226のいずれかに寄託された細菌の生物型のような、本発明の組成及び方法において有用な他の地中海細菌株は、実施例に記載されたアッセイを含め、任意の適切な方法又は戦略を用いて同定することができる。例えば、本発明で使用する株は、嫌気性TY又はPYG培地中で培養すること、及び/又はDSS誘導腸障壁機能モデルに細菌を投与し、次いで実施例に記載されているようにサイトカイン/ケモカインレベルを評価することによって同定することができる。特に、受託番号V21/006223、V21/006224、V21/006225、及びV21/006226のいずれかの下に沈着した細菌に対して、同様の増殖パターン、代謝型及び/又は表面抗原を有する細菌株が、本発明において有用であり得る。有用な株は、V21/006223、V21/006224、V21/006225、及びV21/006226株のいずれかと同等の免疫調節活性を有する。特に、生物型株は宿主の腸機能に対して同等の効果を引き起こす。さらに、バイオタイプは、疾患モデル(例えば、大腸炎、喘息、関節炎、多発性硬化症及びぶどう膜炎疾患モデル)において同様の効果を有し、サイトカイン/ケモカインレベルに対する同等の効果を、実施例に示された効果と同等の効果を有し、実施例に記載された培養及び投与プロトコールを使用することによって同定され得ることが期待される。
【0150】
2.2 細菌菌株の生存率
好ましい実施形態において、本発明の組成物中の細菌株は生存可能である。好ましい実施形態において、本発明の組成物中の細菌株は生存可能であり、腸に部分的又は全体的にコロニーを形成することができる。いくつかの好ましい実施形態において、本発明の組成物中の細菌株は生きている。一例として、本発明の組成物中の細菌株は加熱殺菌されていない。本発明の細菌は、例えば、生存不可能な細菌が代謝産物を生成することができず、免疫系と異なる様式で相互作用することができないために、生存不可能な細菌によって示されないであろう免疫調節作用を有することができる。生きている細菌の細胞表面もまた、死んだ細菌、特に熱殺菌した細菌とは大きく異なっているようである。
【0151】
いくつかの代替実施形態において、その細菌は生存できない。例えば、いくつかの実施形態において、細菌は熱殺菌される。
【0152】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明で使用するための細菌株は、天然に存在する。例えば、細菌株は哺乳類の消化管から分離されている。
【0153】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明で使用するための細菌株は、遺伝子操作されていない。例えば、細菌株は組換えDNAで形質転換されていない。
【0154】
2.3 抗生物質耐性
いくつかの実施形態において、本発明で使用するための細菌株は、テトラサイクリン、バシトラシン、アモキシシリン、アルベカリシン及びジベカシン、アズロシリン、カルベンシシリン、セフトビシリン、クラリスロマイシン、ドリペネン、エリスロマイシン、フシジン酸、ゲンタマイシン、ゲンタマイシン、グレパフロキサシン、イミペネム、サマイシン、メロペネム、メゾシリン、ピペラシリン、リファンピシン、リファキシミン、ロキタマイシン、ロキサマイシン、スピラマイシン、スピラマイシン、ストレプトマイシン、スルファメトキサゾール/トリメトプリム、テリスロマイシン、チカルシリン/クラブラネート、トスフロキサシン、トリメトプリム及びバージニアマイシンのうちの1つ以上に耐性である。ある実施形態において、本発明で使用するための細菌株は、キノプリスチン-ダルフォプリスチンに対して感受性である。いくつかの好ましい実施形態において、本発明で使用するための細菌株は、テトラサイクリン及び/又はバシトラシンに耐性である。
【0155】
ある実施形態において、本発明で使用するための細菌株は、β-ラクタム抗生物質に耐性である。ある実施形態において、本発明で使用するための細菌株は、テトラサイクリンに対して耐性である。
【0156】
3.組成物
本明細書に提供される組成物は、上記及び/又は本明細書の他の箇所に記載された細菌株又は株を含み、それらからなり、又は本質的に治療有効量からなる組成物である。いくつかの実施形態において、組成物中の細菌は、菌株、種、操作的分類単位、全ゲノム配列、16S rRNA配列、又は異なるタイプの細菌を定義するための当技術分野で公知の他の方法によって同定することができる。
【0157】
3.1 最新の共通祖先(MRCA)
いくつかの実施形態において、組成物は、M. faecis及びM. lactarisのMRCAの系統発生的子孫である有効量の細菌株を含む(図1)。好ましくは、系統発生的分類は、GTDB(Parks et al., 2018)によって定義される通りである。いくつかの実施形態において、系統発生的分類は、GTDBのリリース95(r95)で定義される通りである。
【0158】
いくつかの実施形態において、細菌株がM. faecis及びM. lactarisのMRCAの子孫であるかどうかの決定は、当技術分野で公知の系統発生的グループ化手順を用いて行うことができる。いくつかの実施形態において、M. faecis、M. lactaris及び関心のある第3の分類群(例えば、分類すべき分類群)を有する根付き系統樹を使用することができ、対象のタクソンが本発明の組成物に有用であるかどうかを決定するために、以下の分析パッケージが適用される:系統発生学及び進化の分析(「類人猿」;https://cran.r-project.org/web/packages/ape/index.html)及び比較生物学のための系統発生ツール(「系統ツール」;http://cran.r-project.org/web/packages/phytools/ index.html)。類人猿も系統学もR言語で書かれたパッケージであり、分子進化と系統発生の研究に使われている。類人猿及び系統ツールパッケージは、系統発生的及び進化的分析のための方法を提供し、それらの使用は当業者に知られている。
【0159】
いくつかの実施形態では、以下のスクリプトを使用することができる。
library(“ape”)
library(“phytools”)
input.tree = read.tree(file=”tree_file”)
medi = (‘s_Mediterraneibacter_faecis’, ‘s_Mediterraneibacter_lactaris’))
medi.node = getMRCA(input.tree, medi)
medi.tree = extract.clade(input.tree, medi.node)
print(medi.tree$tip.label)
【0160】
いくつかの実施形態において、スクリプトが実行された後、対象のタクソンが印刷リスト内にある場合、それは、2つの種のMRCAの子孫である。
【0161】
他の実施形態では、異なる分析パッケージを使用し、異なるプログラミング言語に基づく方法を含め、当技術分野で公知の異なる系統発生的グループ化方法を用いて、細菌株がM. faecis及びM. lactarisのMRCAの子孫であるかどうかを決定することができる(図1)。
【0162】
他の実施形態において、細菌種は、種が、Ruminococcaceae科のメンバーとして既に同定されている種由来の16S rDNA配列と配列同一性を有する16S rDNA配列を有する場合、Ruminoccaceae科のメンバーである。一実施形態では、細菌種がルミノコッカ科のメンバーであるかどうかの同定は、Yarza et al., 2014, Nature Reviews Microbiology 12:635-645、及びStackebrandt, E. & Ebers, J., 2006, Microbiol. Today 8:6-9に記載された方法を用いて実施される。これらの文献は参照により本明細書に援用される。
【0163】
3.2 16S rRNA配列の同定
いくつかの実施形態において、16S rRNA配列は、分類すべき細菌種について得られ、又は決定される。このクエリー16S rRNA配列を、Mediterraneibacter属のメンバーとして既に分類されている細菌種由来の16S rRNA配列と比較した。いくつかの実施形態において、クエリー16S rRNA配列は、配列番号1~24のいずれか1つに記載の16S rRNA配列と比較される。いくつかの代替実施形態において、クエリー16S rRNA配列は、配列番号29~32のいずれか1つに記載された16S rRNA配列と比較される。いくつかの実施形態において、クエリー16S rRNA配列は、Mediterraneibacter属のメンバーとして既に分類されている細菌種についての全ての既知の16S rRNA配列と比較される。他の実施形態において、クエリー16S rDNA配列は、Mediterraneibacter属のメンバーとして既に分類されている細菌種についての全ての既知の16S rDNA配列のサブセットと比較される。クエリーシーケンスと比較シーケンスとの間のパーセント同一性を決定する。クエリー配列の同定率が定義された閾値を超えていると判定された場合、分類される細菌種はMediterraneibacter属のメンバーとして分類される。
【0164】
いくつかの実施形態において、閾値配列同一性は95%である。いくつかの実施形態において、閾値配列同一性は97.5%である。いくつかの実施形態において、閾値配列同一性は、99.0%である。いくつかの実施形態において、閾値配列同一性は、94.5%、94.6%、94.7%、94.8%、94.9%、95.0%、95.1%、95.2%、95.3%、95.4%、95.5%、95.6%、95.7%、95.8%、95.9%、96.0%、96.1%、96.2%、96.3%、96.4%、96.5%、96.6%、96.7%、96.8%、96.9%、97.0%、97.1%、97.2%、97.3%、97.4%、97.5%、97.6%、97.7%、97.8%、97.9%、98.0%、98.1%、98.2%、98.3%、98.4%、98.5%、98.6%、98.7%、98.8%、98.9%、99.0%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%.99.6%、99.7%、99.8%、99.9%又は100%である。
【0165】
いくつかの実施形態において、16S rDNA配列は、分類される細菌種について得られるか、又は決定される。このクエリー16S rDNA配列を、すでにRuminococcaceae科のメンバーとして分類されている細菌種由来の16S rDNA配列と比較した。いくつかの実施形態において、クエリー16S rDNA配列は、表11に列挙された16S rDNA配列と比較される。いくつかの実施形態において、クエリー16S rDNA配列は、Ruminococcaceae科のメンバーとして既に分類されている細菌種についての全ての既知の16S rDNA配列と比較される。他の実施形態において、クエリー16S rDNA配列は、Ruminococcaceae科のメンバーとして既に分類されている細菌種についての全ての既知の16S rDNA配列のサブセットと比較される。クエリーシーケンスと比較シーケンスとの間のパーセント同一性を決定する。もしクエリー配列のパーセント同定が定義された閾値を超えていると決定されるなら、分類される細菌種はRuminococcaceae科のメンバーとして分類される。
【0166】
いくつかの実施形態において、閾値配列同一性は95%である。いくつかの実施形態において、閾値配列同一性は、98.7%である。いくつかの実施形態において、閾値配列同一性は94.8%である。いくつかの実施形態において、閾値配列同一性は、94.5%、94.6%、94.7%、94.8%、94.9%、95.0%、95.1%、95.2%、95.3%、95.4%、95.5%、95.6%、95.7%、95.8%、95.9%、96.0%、96.1%、96.2%、96.3%、96.4%、96.5%、96.6%、96.7%、96.8%、96.9%、97.0%、97.1%、97.2%、97.3%、97.4%、97.5%、97.6%、97.7%、97.8%、97.9%、98.0%、98.1%、98.2%、98.3%、98.4%、98.5%、98.6%、98.7%、98.8%、98.9%、99.0%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%.99.6%、99.7%、99.8%、99.9%又は100%である。
【0167】
4.細菌株の機能的特徴
腸関門調節不全は、全身性炎症に至る典型的な機能である。実施例で示されるように、本発明の細菌株、及び該株を含む組成物は、腸障壁機能を増強するのに有効である。
【0168】
対象の全身性炎症を引き起こす腸関門調節障害によって媒介されるすべての炎症性又は自己免疫性疾患は、上述の細菌株及び/又は本明細書の他の箇所での治療に適用可能である。
【0169】
4.1 腸壁機能
腸関門(腸関門としても知られる)機能は、外界との粘膜界面での輸送及び宿主防御機構を調節する。細胞内外の流れは膜ポンプ、イオンチャネル、タイトジャンクションによって厳密に制御されており、生理学的必要性に対する透過性を調節している。いずれのレベルでも障害がみられるが、特に透過性の亢進による細菌の転座や、上皮とT細胞の相互作用の障害による口腔寛容の崩壊は、炎症や組織損傷を引き起こす可能性がある。
【0170】
リポ多糖類(LPS)及び他の炎症性化合物のような異物(すなわち、非宿主)物質の腸管内側から循環系への転位は、上皮関門によって阻害される。この上皮関門の機能の1つはタイトジャンクションである。タイトジャンクション、又は閉鎖帯は、2つの上皮細胞の密接に関連した領域であり、その膜が互いに結合して、実質的に液体に対する不透過性のバリアを形成し、それによって、血管系を消化管の内腔から分離する。このように、タイトジャンクションバリア機能の低下は、LPSのような望ましくない物質の腸管腔から循環系への移行を増加させることが示されている。
【0171】
本発明は、対象における腸障壁機能を回復又は改善する方法を提供し、この方法は、対象において腸障壁機能を回復又は改善するために、Mediterraneibacter faecisの細菌株を含む組成物を対象に投与することを含む。本明細書で使用されるように、腸壁の完全性とは腸壁の機能の尺度を指す。高い消化管バリア完全性は、消化管又は腸管の透過性の欠如と関連する可能性があり、高いレベルの消化管透過性は、低い消化管バリア完全性を示す。関連する実施形態では、本発明はまた、健常な又は正常な腸障壁機能を維持する方法を提供する。このような方法は、消化管バリア調節不全のリスクが高いと考えられる対象(例えば、IBDの寛解期の対象)を予防するために用いることができる。
【0172】
いくつかの実施形態において、試料(及び、特に生物学的試料)において測定された少なくとも1つのバイオマーカーは、変化、特に、対象の腸障壁完全性における改良を評価するために使用される。
【0173】
本明細書に提供される方法及び用途のいくつかの実施形態において、M. faecisの細菌株を含む組成物は、対象由来の試料中の腸障壁完全性の1つ又は複数のバイオマーカーのレベルを増加又は低下させ得る。ある実施形態において、特定のバイオマーカーに依存して、マーカーのレベルの増加又は減少のいずれかは、消化管バリア完全性の増加及び/又は消化管透過性の減少を示す。ある実施形態において、バイオマーカーは、サイトカイン、ケモカイン、成長因子、血管新生因子、酵素、プロテアーゼ、接着分子、細胞シグナル伝達分子、ホルモン又は糖から選択される。いくつかの実施形態において、バイオマーカーは、サイトカインを含む。ある実施形態において、マーカーは、ケモカインを含む。いくつかの実施形態において、マーカーは、成長因子を含む。いくつかの実施形態において、マーカーは、血管新生因子を含む。いくつかの実施形態において、マーカーは、酵素を含む。いくつかの実施形態において、マーカーは、プロテアーゼを含む。いくつかの実施形態において、マーカーは、接着分子を含む。いくつかの実施形態において、マーカーは、細胞シグナル伝達分子を含む。いくつかの実施形態において、マーカーは、ホルモンを含む。いくつかの実施形態において、マーカーは、糖を含む。
【0174】
この明細書は、腸透過性のバイオマーカーのためのアッセイを提供する。血液(血漿、又は血清)又は組織などの対象由来の生物学的試料を用いて、LPS、リポ多糖結合タンパク質(LPSBP)、腸脂肪酸結合タンパク質(IFABP)、ゾヌリン、細菌及び/又は16S rRNAの1つ以上を含む任意の適切なバイオマーカーのレベルを測定することができるが、これらのマーカーに限定されない。LPS、I-FABP及びゾヌリンは、酵素免疫測定法(「ELISA」)によって測定することができる。ELISAのための技術及びキットは当業者に周知であるが、いくつかの実施形態において、血液、血清、唾液、尿及び/又は血漿中の対照と比較した場合、上昇したLPS、I-FABP及び/又はゾヌリンが、腸管透過性の増加、従って、より低い腸障壁完全性のインジケーターとして使用される。
【0175】
LPSBPは、ELISAによっても測定することができる。いくつかの実施形態において、対照と比較した場合、LPSBPの有意な変化は、より高いか又はより低いかのいずれかで、腸管透過性の増加の指標として使用することができ、腸管障壁の完全性の低下を確認することができる。
【0176】
いくつかの実施形態において、細菌16S rRNAの増加は、腸管透過性の増加、従って、腸管障壁完全性の減少の指標として使用される。細菌16S rRNAは、標準的な核酸単離プロトコールを用いて、血液、血清、臓器組織又は尿から精製され得る。これらは、例えば、市販されている。単離された核酸は、細菌16S rRNA配列に特異的なプライマーを用いたqPCR増幅、又は細菌16S rRNAに特異的なプライマーを用いた増幅、及び得られたアンプリコンの配列決定によって検出することができる。
【0177】
腸上皮細胞によって発現され、腸管透過性を調節する性のバイオマーカーとしても使用され得る。いくつかの実施形態において、タイトジャンクションタンパク質は、腸管透過性及び腸管障壁完全性の変化を決定するためにアッセイされる。いくつかの実施形態において、測定されるタンパク質は、クローディン、オクルディン、ZO-1、及びE-カドヘリン(接着結合)タンパク質を含み得るが、これらに限定されない。他のタイトジャンクションタンパク質もアッセイすることができる。いくつかの実施形態において、タイトジャンクションタンパク質は、免疫組織化学的染色を用いて測定される。いくつかの実施形態において、タイトジャンクションタンパク質は、ELISAを用いて測定される。
【0178】
いくつかの実施形態において、血漿シトルリンをアッセイして、腸管透過性及び腸管障壁完全性の変化を決定する。血漿シトルリン濃度の低下は、上皮細胞量の減少に相当し、腸の障壁透過性の増加を示している。
【0179】
いくつかの実施形態において、本方法は、スクラロースのような不溶性糖の経口投与、1以上の規定された時間後の尿又は血液のような体液の収集、及び標準的な臨床分析技術を介した体液中に含まれる不溶性糖の測定を含む。不溶性糖には、マンニトール、ラクツロース、スクロース、スクラロース及び上記のいずれかの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0180】
いくつかの実施形態において、腸障壁完全性は、in vitroアッセイを用いて測定される。腸障壁機能を測定するのに特に好ましいin vitroアッセイは、経上皮電気抵抗(TEER)によるものである。このようなアッセイは、この分野で周知である(例えば、Srinivasan, 2015; Lea, 2015)。
【0181】
4.2 粘膜治癒
粘膜治癒は、炎症性及び自己免疫疾患における治療効果を評価するための重要なエンドポイントとなっている。IBD(例えば、CD及びUC)臨床試験で現在使用されている完全な粘膜治癒の定義は、「すべての炎症性及び潰瘍性病変が完全に存在しない」ことであるが、この定義は妥当性の確認を欠き、粘膜の改善及び粘膜治癒の悪性度分類を含まない。
【0182】
粘膜治癒は、主に腸炎の内視鏡的評価によって定義される。内視鏡検査における粘膜治癒の有無を評価するために、種々の内視鏡スコアリングシステムが開発されている。これらの指標は、粘膜治癒のかなり限られたエンドポイントを満たさず、それによってすべての粘膜潰瘍の完全な消失が達成されない場合でも、内視鏡的病変の改善を決定することを可能にする。1987年に導入された臨床的Mayoスコアの内視鏡的要素は、現在、臨床現場で最も使用されている粘膜層のスコアである(Schroeder et al., 1987参照)。これには、紅斑、血管パターンの消失、脆弱性、出血、びらん及び潰瘍が含まれ、0~3の範囲である。MHは古典的には0(正常粘膜)又は1(粘膜紅斑、血管パターンの減少、軽度の脆弱性)のスコアと考えられている(D’Haens, 2007)。
【0183】
いくつかの他の実施形態において、粘膜治癒は、患者が軟性S状結腸鏡検査によって評価される内視鏡サブスコアが0又は1であると判定されたときに生じたと判定される。特定のそのような実施形態において、粘膜治癒を経験する患者は、内視鏡サブスコアが0であると決定される。
【0184】
コルチコステロイド及びアミノサリチル酸はいずれも数十年間使用されており、粘膜層を修復するために最も一般的に処方される薬物の1つである(例、UC患者)(Carvalho and Cotter, 2017)。それらが粘膜炎症を減少させるメカニズムには、核因子(NF)-kB発現及び炎症性サイトカイン(上皮細胞株の細胞遊走及び増殖を直接調節する)の制御が含まれる。抗TNF薬(例、インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムアブ)は、粘膜損傷のいくつかの段階で作用し、粘膜固有層内の炎症性浸潤及びT細胞増殖を制限し(Baert, 1999)、メタロプロテアーゼ及び炎症誘発性分子の発現を下方制御する(Baert, 1999)。また、これらは、腸管透過性及び粘膜分泌を強化し、線維芽細胞を活性化し、上皮再生を維持することによって、粘膜の保護能力を回復させ、再生過程にも作用する(Suenaert, 2002)。
【0185】
粘膜治癒を評価する他の尺度は、バイオマーカーC反応性タンパク質及びカルプロテクチンの測定を含む、当技術分野で周知である。粘膜治癒の評価のためにin vitroバイオマーカーアッセイを使用する利点は、そのようなアッセイが、典型的には、対象に対してはるかに低い侵襲性であることである。組織病理学は、炎症の別の尺度であり、粘膜治癒に特に有益であると引用されている。
【0186】
4.3 STAT3シグナル伝達経路
サイトカイン経路は、炎症及び免疫の多くの局面を含む、広範な生物学的機能を媒介する。JAK1、JAK2、JAK3及びチロシンキナーゼ2(TYK2)を含むJanusキナーゼ(JAK)は、I型及びII型サイトカイン受容体と会合し、サイトカインシグナル伝達を調節する細胞質チロシンキナーゼである。同族受容体とのサイトカインの結合は、受容体関連JAKの活性化を引き起こし、これは、JAKが媒介するシグナル伝達性転写(STAT)タンパク質のチロシンリン酸化、及び最終的には特定の遺伝子セットの転写活性化をもたらす(Schindler et al., 2007, J. Biol. Chem. 282: 20059-63)。サイトカインレセプターは、典型的にはヘテロ二量体として機能し、その結果、2種類以上のJAKキナーゼが、通常、サイトカインレセプター複合体と会合する。様々なサイトカイン受容体複合体に関連する特異的JAKは、多くの場合、遺伝学的研究によって決定され、他の実験的証拠によって裏付けられている。
【0187】
STAT3は、IBDを含むいくつかの自己免疫疾患及び炎症性疾患の活性化において重要な役割を果たしている。本発明の細菌株は、IL-23媒介STAT3活性化を有意に抑制する。従って、本発明は、対象におけるSTAT3シグナル伝達(すなわち、IL-23媒介STAT3シグナル伝達)を抑制又は阻害する方法を提供し、この方法は、上記及び/又は本明細書の他の箇所に記載された細菌株を含む組成物を対象に投与することを含む。従って、いくつかの実施形態において、本明細書に記載される細菌株は、直接的又は間接的にSTAT3活性を抑制する。ある実施形態において、M. faecis株は、STAT3ポリペプチドに直接結合する生物活性分子を産生する。いくつかの代替実施形態において、細菌株は、例えば、IL-23媒介STAT3シグナル伝達経路におけるSTAT3の上流の分子に結合することによって、又はSTAT3活性を調節する分子に結合することによって(例えば、ユビキチン化)、STAT3活性化の間接的阻害剤である。例示的な例として、生物活性剤は、IL-23媒介STAT3シグナル伝達経路を抑制するために、IL23、JAK2、又はTYK2のいずれか1つに直接結合又は拮抗し得る。
【0188】
4.4 Th17炎症反応
本発明のいくつかの細菌組成物は、Th17炎症反応を減少させるのに有効である。特に、上述の組成物及び本明細書の他の箇所での処理は、Th17経路サイトカイン(TNF、IL-22、IL-21、及びIL-17を含む)を調節し、Th17経路によって媒介される状態の動物モデルにおいて臨床的改善をもたらすことができる。従って、本発明の組成物は、炎症性及び自己免疫性障害を治療又は予防するために、及びいくつかの実施形態において、Th17によって媒介される疾患又は状態に有用であり得る。特に、本発明の組成物は、Th17炎症反応の上昇を減少又は防止するのに有用であり得る。
【0189】
Th17細胞は、他のサイトカイン、IL17A、IL17F、IL-21及びIL-22を産生するTヘルパー細胞のサブセットである。Th17細胞分化は、IL23によって駆動され得る。これらのサイトカイン及びその他は、多くの炎症性及び自己免疫疾患に寄与し、それに基礎をなす十分に確立された炎症性シグナル伝達経路であるTh17経路の重要な部分を形成する(例えば、Ye, 2015; Fabro, 2015; Yin, 2014; Cheluvappa, 2014; Schieck, 2014; Balato, 2014に記載される)。Th17によって媒介されるいくつかの疾患は、Th17経路を抑制することによって改善又は軽減することができ、これは、Th17細胞の分化の低下、又はそれらの活性の低下、又はTh17経路サイトカインのレベルの低下を介している可能性がある。Th17経路によって媒介される疾患は、IL-17A、IL-17F、IL-21、IL-22、IL-26、IL-9のようなTh17細胞によって産生されるサイトカインのレベルの増加によって特徴づけられ得る(Monteleone, 2011にレビューされた)。Th17経路によって媒介される疾患は、STAT3又はIL-23受容体のようなTh17関連遺伝子の発現増加によって特徴づけられる可能性がある。Th17経路によって媒介される疾患は、Th17細胞レベルの増加と関連している可能性がある。
【0190】
IL-17は、T細胞活性化を好中球の活性化及び動員に関連付ける重要なサイトカインであり、したがってIL-17は先天性免疫において中心的な役割を果たす。しかしながら、好中球活性化におけるその役割のために、炎症性腸疾患、乾癬、及び関節リウマチなどの炎症性自己免疫疾患に寄与し得る。本明細書中で使用されるIL-17は、IL-17A、IL-17B、IL-17C、IL-17D、IL-17E、及びIL-17Fを含むIL-17ファミリーの任意のメンバーを指すことができる。IL-17を介する疾患及び状態は、IL-17の高発現及び/又は疾患又は状態に罹患した組織におけるIL-17陽性細胞の蓄積、又は存在を特徴とする。同様に、IL-17媒介疾患及び状態は、IL-17レベルの上昇又はIL-17レベルの上昇によって悪化し、IL-17レベルの低下又はIL-17レベルの低下によって軽減される疾患及び状態である。IL-17の炎症反応は局所的又は全身的である。
【0191】
Th17経路によって媒介され得る疾患及び状態の例としては、炎症性腸疾患(クローン病及び潰瘍性大腸炎など)、多発性硬化症、関節炎、変形性関節症、乾癬性関節炎及び若年性特発性関節炎など)、視神経脊髄炎(Devic病)、強直性脊椎炎、関節炎、乾癬、全身性エリテマトーデス、セリアック病、喘息(アレルギー性喘息又は好中球性喘息など)、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPDなど)、がん(乳がん、結腸がん、肺がん又は卵巣がんなど)、ブドウ膜炎、強膜炎、血管炎、ベーチェット病、アテローム性動脈硬化症、アトピー性皮膚炎、肺気腫、歯周炎、アレルギー性鼻炎、及び同種移植片拒絶などが挙げられるが、これらに限定されない。従って、いくつかの実施形態において、本発明は、上記及び/又は本明細書の他の箇所に記載される組成物を投与することによって、これらの状態又は疾患の1つ以上を治療又は予防する方法を提供する。さらなる好ましい実施形態において、これらの状態又は疾患は、STAT3シグナル伝達経路によって媒介される。さらなる好ましい実施形態において、これらの状態又は疾患は、Th17経路を介して媒介される。
【0192】
ある実施形態において、本発明は、本発明の方法組成物を、Th17経路によって媒介される疾患又は状態の治療又は予防におけるTh17細胞分化を減少させる方法において使用するためのものである。ある実施形態において、本発明の組成物は、炎症性又は自己免疫性障害の治療又は予防に使用するためであり、ここで、該治療又は予防は、Th17炎症反応の上昇を減少又は防止することによって達成される。ある実施形態において、本発明の組成物は、炎症性又は自己免疫性障害を有する患者を治療するために使用され、患者は、IL-17レベルの上昇又はTh17細胞の上昇を有するか、又はTh17炎症反応を示す。ある実施形態において、患者は、慢性炎症性又は自己免疫性の障害又は状態と診断されていてもよく、又は本発明の組成物は、炎症性又は自己免疫性の障害又は状態を、慢性炎症性又は自己免疫性の障害又は状態に進展させるのを予防するために使用されてもよい。ある実施形態において、疾患又は状態は、TNF阻害剤による治療に反応しないことができる。本発明のこれらの用途は、前項に列挙された特定の疾患又は状態のいずれにも適用することができる。
【0193】
Th17経路はしばしば慢性炎症性疾患及び自己免疫疾患と関連しているので、本発明の組成物は、上記のような慢性疾患又は状態を治療又は予防するために特に有用であり得る。ある実施形態において、組成物は、慢性疾患の患者に使用される。ある実施形態において、組成物は、慢性疾患の発症を予防するために使用される。
【0194】
本発明の組成物は、Th17経路によって媒介される疾患及び状態を治療するため、及びTh17炎症応答を対処するために有用であり得、したがって、本発明の組成物は、慢性疾患を治療又は予防するため、他の治療(TNF阻害剤による治療など)に応答しなかった患者における疾患を治療又は予防するため、及び/又はTh17細胞に関連する組織損傷及び症状を治療又は予防するために特に有用であり得る。例えば、IL-17は、軟骨及び骨組織におけるマトリックス破壊を活性化することが知られており、IL-17は、軟骨細胞及び骨芽細胞におけるマトリックス生成に対して阻害効果を有するので、本発明の組成物は、骨びらん又は軟骨損傷を治療又は予防するのに有用であり得る。
【0195】
ある実施形態において、本発明の組成物による処理は、IL-17レベル、特にIL-17Aレベルの低下又は上昇の防止を提供する。ある実施形態において、本発明の組成物による処理は、IFN-γ又はIL-6レベルの低下又は上昇の防止を提供する。これらのサイトカインレベルの上昇のそのような低下又は予防は、炎症性及び自己免疫性の障害及び状態、特にTh17経路によって媒介される障害及び状態を治療又は予防するのに有用であり得る。
【0196】
4.5 Th1炎症反応
CD4+T細胞は炎症性疾患/疾患の病因に重要な役割を果たしており、多くのCD4+T細胞のサブセットが慢性腸炎を持続させるドライバーとして同定されている(Imam et al., 2018参照)。例えば、ヘルパーT1型(Th1)細胞はIBD患者の腸管に蓄積し、疾患と直接関連している。インターフェロン-γ(IFN-γ)はTh1細胞によって産生される定義サイトカインである。腸炎症の間、TNFと組み合わせたIFN-γは、腸上皮細胞b-カテニンシグナリングを駆動し、それらの分化及び増殖を制限することが提唱されている(Imam et al., 2018)。
【0197】
5.治療方法
いくつかの実施形態において、本発明は、対象における炎症性又は自己免疫性障害を治療又は予防する方法を提供し、その方法は、上記及び/又は本明細書の他の箇所に記載されるような細菌株を対象に投与することを含む。
【0198】
適宜、炎症性又は自己免疫疾患は、炎症性腸疾患(クローン病又は潰瘍性大腸炎など);喘息(アレルギー性喘息又は好中球性喘息など);関節炎(関節リウマチ、変形性関節症、乾癬性関節炎、又は若年性特発性関節炎など);脂肪肝疾患(非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLDなど));強直性脊椎炎;乾癬;全身性エリテマトーデス(SLE);強皮症;シェーグレン症候群;血管炎;及び1型糖尿病を含む群から選択される。
【0199】
5.1 炎症性腸疾患(IBD)
実施例は、本発明の組成物が腸障壁機能に対して有益な回復効果を有し、またそれらが抗炎症特性を有し、従ってそれらがIBDの治療に有用であり得ることを実証する。従って、いくつかの実施形態において、本発明は、炎症性腸疾患を治療又は予防する方法において使用するための、地中海細菌属の細菌株を含む組成物を提供する。本発明者らは、地中海菌株による治療が、マウス疾患モデルにおいて大腸炎の重症度を軽減することを同定した。従って、本発明の組成物は、炎症性疾患の治療に有用であり得る。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、IBDの治療又は予防に使用される。ある実施形態において、本発明は、潰瘍性大腸炎を治療又は予防する方法を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、クローン病を治療又は予防する方法を提供する。ある実施形態において、本発明は、IBDの治療、特に大腸炎及び潰瘍性大腸炎の治療における潰瘍形成及び/又は出血を治療又は予防する方法を提供する。好ましい実施形態において、本発明は、対象におけるIBDを治療又は予防する方法を提供し、該方法は、種Mediterraneibacter faecisの細菌株を含む組成物を対象に投与することを含む。さらなる好ましい実施形態において、本発明は、大腸炎(特に潰瘍性大腸炎)を対象において治療又は予防する方法を提供し、該方法は、種Mediterraneibacter faecisの細菌株を含む組成物を対象に投与することを含む。さらなる好ましい実施形態において、本発明は、潰瘍形成及び/又は出血を含む、大腸炎(特に潰瘍性大腸炎)の少なくとも1つの副作用を低減する方法を提供した。
【0200】
IBDは、複数の環境因子及び遺伝因子によって引き起こされる複雑な疾患である。IBDの発症に寄与する因子には、食事、微生物叢、腸管透過性、腸管感染に対する炎症反応の増加に対する遺伝的感受性などがある。炎症性腸疾患の症状には、腹痛、嘔吐、下痢、直腸出血、骨盤部の激しい内痙攣/筋痙攣、体重減少及び貧血がある。ある実施形態において、組成物は、IBDに関連する1以上の症状を低減するために使用される。ある実施形態において、本発明の組成物は、IBDの1以上の症状を予防するために使用される。
【0201】
IBDは、心血管疾患、神経心理学的障害、及びメタボリックシンドロームのような他の疾患又は状態を伴うことがある。ある実施形態において、本発明の組成物は、IBDに伴う1以上の疾患又は状態の治療又は予防に使用される。
【0202】
IBDは一般に生検又は結腸鏡検査によって診断される。糞便中のカルプロテクチンの測定は、IBDの予備的診断に有用である。IBDの診断のための他の臨床検査には、全血球数、赤血球沈降速度、包括的代謝パネル、便潜血検査又はC反応性蛋白検査がある。典型的には、臨床検査と生検/結腸鏡検査を組み合わせてIBDの診断を確定する。ある実施形態において、本発明の組成物は、IBDと診断された対象において使用される。
【0203】
ある実施形態において、IBDはクローン病及び/又は潰瘍性大腸炎である。上述のように、いくつかの炎症性サイトカインは、限定されるものではないが、STAT3シグナル伝達及びNFkBシグナル伝達経路媒介サイトカイン(例えば、IL-17、TNF、IL-21、IL-22)を含む、クローン病及び潰瘍性大腸炎患者の炎症性筋膜においてアップレギュレートされることが、研究によって示されている。したがって、STAT3シグナル伝達経路を介したサイトカイン活性及び/又はNFkBシグナル伝達経路を介したサイトカインの阻害は、クローン病及び潰瘍性大腸炎の治療に有用である可能性がある。ある実施形態において、本発明の組成物は、クローン病及び/又は潰瘍性大腸炎の治療又は予防に使用される。
【0204】
クローン病及び潰瘍性大腸炎は、遺伝的危険因子、食事、喫煙及びアルコール摂取のような他の生活様式因子、及びマイクロバイオーム組成を含む、一連の考えられる原因を伴う複雑な疾患である。クローン病は消化管のどこにでも発症するが、潰瘍性大腸炎は大腸と結腸によくみられる。
【0205】
IBDの消化管症状は軽度から重度までの幅があり、腹痛、下痢、便血、回腸炎、便通増加、鼓腸の増加、腸管狭窄、嘔吐、肛門周囲の不快感などがある。本発明の組成物は、クローン病及び/又は潰瘍性大腸炎の1以上の消化管症状の予防の治療に使用することができる。
【0206】
クローン病及び潰瘍性大腸炎の全身症状には、思春期の発育不良、食欲減退、発熱及び体重減少などの成長障害がある。クローン病の腸管外の特徴には、ブドウ膜炎、光子虫症、上強膜炎、胆石、血清陰性脊椎関節症、関節炎、関節炎、癒着、結節性紅斑、壊疽性膿皮症、深部静脈血栓症、肺塞栓症、自己免疫性溶血性貧血、ばち状化及び骨粗鬆症がある。腸管外の特徴は、消化管外で発現するクローン病及び/又は潰瘍性大腸炎に関連する追加の状態である。クローン病患者はまた、痙攣、脳卒中、ミオパシー、末梢神経障害、頭痛及び抑うつのような神経学的合併症に対する感受性の増加を示す。ある実施形態において、本発明の組成物は、クローン病及び/又は潰瘍性大腸炎の1以上の全身症状の治療又は予防に使用される。ある実施形態において、本発明の組成物は、クローン病及び/又は潰瘍性大腸炎の1以上の腸外特徴の治療又は予防に使用される。
【0207】
クローン病及び潰瘍性大腸炎の診断には、通常、胃鏡検査及び/又は大腸内視鏡検査及び/又は生検、典型的には回腸の生検、放射線学的検査、全血球数、C反応性蛋白検査及び赤血球沈降速度などの複数の検査及び外科的処置を実施することが含まれる。ある実施形態において、本発明の組成物は、クローン病又は潰瘍性大腸炎と診断された対象に使用するためのものである。ある実施形態において、本発明の組成物は、クローン病又は潰瘍性大腸炎と診断された対象の治療に使用される。
【0208】
クローン病及び潰瘍性大腸炎は、罹患した消化管の領域の範囲によって分類される(Gasche et al., 2000)。回腸及び結腸のクローン病は、回結腸クローン病に分類される。いくつかの実施形態において、組成物は、回結腸クローン病の治療又は予防に使用される。いくつかの実施形態において、組成物は、回腸のみが影響を受ける場合には、回結腸クローン病/クローン病回腸炎と診断された対象において使用するためのものである。クローン結腸炎は、結腸だけが侵されている場合に分類される。ある実施形態において、組成物は、クローン回腸炎の治療又は予防に使用される。いくつかの実施形態において、組成物は、クローン病回腸炎と診断された対象において使用される。ある実施形態において、組成物は、クローン結腸炎の治療又は予防に使用される。いくつかの実施形態において、組成物は、クローン病大腸炎と診断された対象において使用される。
【0209】
クローン病及び潰瘍性大腸炎は、プレドニゾンなどのコルチコステロイド、アザチオプリンなどの免疫抑制薬、又はインフリキシマブ、アダリムマブ、及びゴリムマブ、ベドリズマブ及びエトロリズマブなどの生物学的製剤などの多くの治療薬で治療することができる。ある実施形態において、本発明の組成物は、クローン病又は潰瘍性大腸炎の治療又は予防に、上記のものを含むがこれらに限定されない、さらなる治療剤と組み合わせて使用するためのものである。ある実施形態において、さらなる治療剤は、クローン病及び/又は潰瘍性大腸炎の治療又は予防に使用される。
【0210】
5.2 自己免疫疾患
ヒトでは、1型糖尿病(T1D)(Bosi, 2006)のような多くの自己免疫疾患の臨床的発症前に腸管炎症の徴候が検出される。同様に、糖尿病抵抗性ラットと比較して、糖尿病傾向ラットにおける膵島炎発症前に消化管透過性の亢進が現れる(Meddings, 1999; Neu, 2005)。これらの知見は、消化管バリア完全性の破壊とそれに続く抗原輸送の増加及び低グレード腸炎症の発生がT1Dの発症に先行し、糖尿病誘発性代謝変化(すなわち、高血糖)に続発するのではなく、その病因に直接関連していることを示している。消化管バリアは、管腔内容物と人体との接触を避けるための基本的なゲートキーパーである。関門は粘液層と腸上皮関門(IEB)から構成され、両者は腸管内腔から腸組織及び全身循環への共生細菌、病原体、及び食物抗原の通過を防ぐために極めて重要である。IEBは、密着結合接着分子(JAM)、トリセルリン、及びアングリンからなる複雑な接合系によって一緒に保持された上皮細胞の単一層であり、それらの間の相互作用及び細胞内足場タンパク質、すなわち、密着結合完全性を維持し、傍細胞輸送を制御するためには、密着結合タンパク質(ZO)との相互作用が基本である。IEBのT1D変化の患者及びラットモデルにおいて、消化管の炎症に関連して報告されている(Meddings, 1999; Sapone, 2006)。さらに、抗菌ペプチド及びムチンのような免疫調節分子を含む重要な消化管バリアである消化管粘液層の重要性が最近報告されている(Sorini et al., 2019参照)。
【0211】
いくつかの実施形態において、種Mediterlaneibacter faecis由来の細菌株は、アレルギー性喘息又は好中球性喘息のような喘息の治療又は予防において治療的利益を提供し得る。ある実施形態において、本発明の組成物は、対象における喘息の治療又は予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明は、喘息の治療又は予防に使用するために、種Mediterraneibacter faecisの細菌株を含む組成物を提供する。
【0212】
いくつかの実施形態において、M. faecis種由来の細菌株は、GVHDの治療又は予防において治療上の利益を提供し得る。ある実施形態において、本発明の組成物は、対象におけるGVHDの治療又は予防に使用するためのものである。好ましい実施形態において、本発明は、GVHDの治療又は予防に使用するためのM. faecis種の細菌株を含む組成物を提供する。
【0213】
いくつかの実施形態において、種M. faecis由来の細菌株は、関節リウマチ、変形性関節症、乾癬性関節炎、又は若年性特発性関節炎などの関節炎の治療又は予防において治療上の利益を提供し得る。ある実施形態において、本発明の組成物は、対象における関節炎の治療又は予防に使用するためのものである。ある実施形態において、本発明は、関節炎の治療又は予防に使用するためのM. faecis種の細菌株を含む組成物を提供する。
【0214】
いくつかの実施形態において、M. faecis種由来の細菌株は、多発性硬化症の治療又は予防において治療上の利益を提供し得る。ある実施形態において、本発明の組成物は、対象における多発性硬化症の治療又は予防に使用するためのものである。ある実施形態において、本発明は、多発性硬化症の治療又は予防に使用するための、M. faecis種の細菌株を含む組成物を提供する。
【0215】
いくつかの実施形態において、M. faecis種由来の細菌株は、乾癬の治療又は予防において治療上の利益を提供し得る。ある実施形態において、本発明の組成物は、対象における乾癬の治療又は予防に使用するためのものである。ある実施形態において、本発明は、M. faecis種の細菌株を含む組成物、又は乾癬の治療又は予防に使用する組成物を提供する。
【0216】
いくつかの実施形態において、M. faecis種由来の細菌株は、全身性エリテマトーデス(SLE)の治療又は予防において治療上の利益を提供し得る。ある実施形態において、本発明の組成物は、対象におけるSLEの治療又は予防に使用するためのものである。ある実施形態において、本発明は、SLEの治療又は予防に使用するための種M. faecisの細菌株を含む組成物を提供する。
【0217】
いくつかの実施形態において、M. faecis種由来の細菌株は、同種移植片拒絶の治療又は予防において治療上の利益を提供し得る。ある実施形態において、本発明の組成物は、対象における同種移植片拒絶の治療又は予防に使用される。ある実施形態において、本発明は、同種移植片拒絶の治療又は予防に使用するためのM. faecis種の細菌株を含む組成物を提供する。
【0218】
6.製剤
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、40未満の異なる細菌株を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、30未満の異なる細菌株を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、20未満の異なる細菌株を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、10未満の異なる細菌株を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、5未満の異なる細菌株を含む。いくつかの好ましい実施形態において、組成物は、3つ未満の異なる細菌株を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、Clostidium属の細菌を含まない。
【0219】
本発明の組成物は、細菌(すなわち、生きた細菌及び/又は死滅した細菌)を含む。本発明の好ましい実施形態において、組成物は、凍結乾燥形態で製剤化される。本発明の組成物は、本発明の細菌株を含む顆粒又はゼラチンカプセル、例えば硬ゼラチンカプセルを含み得る。好ましくは、本発明の組成物は凍結乾燥細菌を含む。細菌の凍結乾燥は確立された手順であり、関連するガイダンスは参考文献(Miyamoto-Shinohara, 2008; and Day & Stacey, 2007)に記載されている。
【0220】
本発明の組成物は、生きた活性細菌培養物を含み得る。実施例は、本発明の細菌の培養が治療的に有効であることを示す。
【0221】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物中の細菌株は、不活化されていない、例えば、熱不活化されていない。いくつかの実施形態において、本発明の組成物中の細菌株は殺されていない、例えば、加熱殺されていない。いくつかの実施形態において、本発明の組成物中の細菌株は、減衰されていない、例えば、熱減衰されていない。例えば、いくつかの実施形態において、本発明の組成物中の細菌株は、殺されておらず、不活化されておらず、及び/又は弱毒化されていない。例えば、いくつかの実施形態において、本発明の組成物中の細菌株は生きている。例えば、いくつかの実施形態において、本発明の組成物中の細菌株は生存可能である。例えば、いくつかの実施形態において、本発明の組成物中の細菌株は、腸に部分的又は全体的にコロニーを形成することができる。例えば、いくつかの実施形態において、本発明の組成物中の細菌株は生存可能であり、腸に部分的又は全体的にコロニーを形成することができる。
【0222】
いくつかの実施形態において、組成物は、殺された生細菌株及び細菌株の混合物を含む。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、腸への細菌株の送達を可能にするようにカプセル化される。カプセル化は、例えば、圧力、酵素活性、又は物理的崩壊などの化学的又は物理的刺激を用いて破壊することにより、組成物を、標的位置での送達まで、劣化から保護するが、これは、pHの変化によって引き起こされ得る。任意の適切なカプセル化方法を使用することができる。例示的なカプセル化技術には、多孔質マトリックス内への封入、固体キャリア表面への取り付け又は吸着、凝集又は架橋剤による自己凝集、及び微孔性膜又はマイクロカプセルの後ろの機械的封じ込めが含まれる。本発明の組成物の調製に有用であり得るカプセル化に関するガイダンスは、当該分野で広く入手可能である(例えば、Mitropoulou, 2013; and Kailasapathy, 2002)。
【0223】
組成物は経口投与することができ、錠剤、カプセル又は粉末の形態であってもよい。Mediterraneibacter属の細菌は偏性嫌気性菌であるため、被包製品が好ましい。
【0224】
本発明の組成物は、本発明の細菌株の治療有効量を含む。治療上有効な量の細菌株は、患者に有益な効果を発揮するのに十分である。治療的に有効な量の細菌株は、患者の腸への送達及び/又は部分的若しくは完全なコロニー形成をもたらすのに十分であり得る。
【0225】
適切な1日量は、例えば、成人ヒトでは、約1×10~約1×1011コロニー形成単位(CFU);例えば、約1×10~約1×1010CFU;別の例では、約1×10~約1×1010CFU;別の例では、約1×10~約1×1011CFU;別の例では、約1×10~約1×10CFU;別の例では、約1×10~約1×1011CFUであり得る。
【0226】
ある実施形態において、バクテリアの投与量は、少なくとも1010、少なくとも1011、又は1日当たり少なくとも1012細胞のような、1日当たり少なくとも10細胞である。
【0227】
ある実施形態において、組成物の投与量は、組成物の重量に関して、約1×10~約1×1011コロニー形成単位/gの量の細菌株を含み得る。用量は、成人に適していてもよい。例えば、組成物は、約1×10~約1×1011CFU/g;例えば、約1×10~約1×1010CFU/g;別の例では、約1×10~約1×1010CFU/g;別の例では、約1×107~約1×1011CFU/g;別の例では、約1×10~約1×10CFU/g;別の例では、約1×10~約1×1011CFU/g、約1×10~約1×1010CFU/gを含むことができる。例えば、約1×10~約1×1010CFU/gである。投与量は、例えば、1g、3g、5g、及び10gであり得る。
【0228】
いくつかの実施形態において、上記及び/又は本明細書の他の箇所に記載された組成物は、組成物の重量に関して、1グラム当たり約1×10~約1×1011コロニー形成単位を含み、それからなり、又は基本的にはそれらからなる。
【0229】
いくつかの実施形態において、上述の組成物及び/又は本明細書の他の箇所は、500mg~1000mg、600mg~900mg、700mg~800mg、500mg~750mg、又は750mg~1000mgの用量での細菌株を含む。ある実施形態において、本発明は、医薬組成物中の凍結乾燥細菌を、500mg~1000mg、600mg~900mg、700mg~800mg、500mg~750mg、又は750mg~1000mgの用量で投与する、上記医薬組成物を提供する。
【0230】
組成物はプロバイオティックとして処方することができる。プロバイオティックとは、FAO/WHOによって、適切な量で投与された場合に宿主に健康上の利益をもたらす生きた微生物と定義されている。
【0231】
典型的には、本発明の組成物のようなプロバイオティックは、必要に応じて、少なくとも1つの適切なプレバイオティック化合物と組み合わされる。プレバイオティック化合物は、通常、上部消化管で分解又は吸収されない、オリゴ糖又は多糖、又は糖アルコールなどの非消化性炭水化物である。既知のプレバイオティクスには、イヌリン及びトランスガラクトオリゴ糖のような市販製品が含まれる。
【0232】
他のプレバイオティック化合物(例えば、ビタミンC)は、酸素スカベンジャーとして、及びインビボでの送達及び/又は部分的又は全コロニー形成及び生存を改善するために含まれ得る。別法として、本発明のプロバイオティック組成物は、牛乳又は乳清ベースの発酵乳製品のような食品又は栄養製品として、又は医薬製品として経口投与することができる。
【0233】
ある実施形態において、本発明のプロバイオティック組成物は、総重量組成物に対して約1~約30重量%(例えば、5~20重量%)の量のプレバイオティック化合物を含む。既知のプレバイオティクスには、イヌリン及びトランスガラクトオリゴ糖のような市販製品が含まれる。
【0234】
いくつかの実施形態において、プレバイオティックは、フルクトオリゴ糖(又はFOS)、短鎖フルクトオリゴ糖、イヌリン、イソマルトリゴサッカライド、ペクチン、キシロオリゴ糖(又はXOS)、キトサノリゴ糖(又はCOS)、β-グルカン、耕地可能なガム変性及び耐性澱粉、ポリデキストロース、タガトース、アラビアゴム繊維、カラスムシ、及びカンキトラス繊維を含む、又はそれらからなる群より選択される炭水化物である。一態様では、プレバイオティクスは短鎖フルクトオリゴ糖である。短鎖FOSは消化可能な炭水化物ではない。通常、ビート糖の変換によって得られ、3つのグルコース分子が結合した糖分子を含む。
【0235】
本発明の組成物は、薬学的に許容される賦形剤又は担体、例えば、薬学的賦形剤のハンドブックに記載されているものを含んでもよい。治療的使用のための許容可能な担体又は希釈剤は、医薬分野で周知であり、例えば、レミントンの医薬科学に記載されている。適切な担体の例としては、ラクトース、デンプン、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、ソルビトールなどが挙げられる。適切な希釈剤の例としては、エタノール、グリセロール及び水が挙げられる。薬学的担体、賦形剤又は希釈剤の選択は、意図された投与経路及び標準的な薬学的実践に関して選択することができる。医薬組成物は、担体、賦形剤又は希釈剤として、又はそれに加えて、1以上の適切な結合剤、潤滑剤、懸濁剤、コーティング剤、及び/又は可溶化剤を含んでもよい。適切な結合剤の例としては、デンプン、ゼラチン、グルコースのような天然糖、無水乳糖、遊離流ラクトース、β-ラクトース、トウモロコシ甘味料、アラビアゴム、トラガカントゴム又はアルギン酸ナトリウムのような天然及び合成ゴム、カルボキシメチルセルロース及びポリエチレングリコールが挙げられる。適切な潤滑剤の例としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。保存剤、安定剤、染料、さらには香味剤も医薬組成物中に提供することができる。保存剤の例としては、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、システイン及び4-ヒドロキシ安息香酸のエステルが挙げられる。例えば、いくつかの実施形態において、保存剤は、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸及び4-ヒドロキシ安息香酸のエステルから選択される。酸化防止剤及び懸濁剤もまた使用され得る。適切な担体のさらなる例は糖である。適切な保存剤のさらなる例はシステインである。
【0236】
本発明の組成物は食品として処方することができる。例えば、食品は、栄養補助食品のような本発明の治療効果に加えて、栄養学的利益を提供することができる。同様に、食品は、本発明の組成物の味を高めるために、又は医薬組成物よりもむしろ一般的な食品物品により類似することにより、組成物を消費するのにより魅力的にするために製剤化することができる。ある実施形態において、本発明の組成物は、ミルクベースの製品として処方される。用語「ミルクベースの製品」とは、様々な脂肪含有量を有する液体又は半固体のミルクベース又はホエーベースの製品を意味する。乳ベースの製品は、例えば、ウシの乳、ヤギの乳、ヒツジの乳、脱脂乳、全乳、粉ミルクと加工されていない乳清から組換えられた乳、又はヨーグルト、凝乳、凝乳、酸味牛乳、酸味のある全乳、バターミルク及び他の酸味牛乳製品のような加工製品であり得る。あるいは、牛乳は、例えば、大豆乳、オートミルク、アーモンドミルク、ココナッツミルク、又はマカダミアミルクを含む、植物ベースの牛乳であってもよい。もう1つの重要なグループには、乳清飲料、発酵乳、濃縮乳、乳児又は乳児乳、フレーバーミルク、アイスクリームなどのミルク飲料、甘味料などのミルク含有食品が含まれる。
【0237】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示された組成物は、地中海性菌属の1つ以上の細菌株を含み、他の種由来の細菌を含まず、又は、de minimmisのみを含むか、又は他の種由来の細菌の生物学的に無関係な量を含む。従って、いくつかの実施形態において、本発明は、治療に使用するために、他の種由来の細菌を含まない、又は他の種由来の細菌のみを含む、又は生物学的に無関係な量の、Mediterraneibacter属の1つ以上の細菌株を含む組成物を提供する。
【0238】
いくつかの実施形態において、組成物は、Mediterraneibacter属の1つ以上の細菌株を含み、他のいかなる属からの細菌も含まず、又はde minimisのみを含むか、又は他の属からの細菌の生物学的に無関係な量のみを含む。いくつかの実施形態において、組成物は、Mediterraneibacter属の1つ以上の細菌株を含み、他のいかなる属の細菌も含まず、又はde minimisのみを含むか、又は他の属の細菌からの生物学的に無関係な量の細菌のみを含む。
【0239】
ある実施形態において、本明細書に開示される組成物は、単一の細菌種を含み、他のいかなる細菌種も含まない。ある実施形態において、本明細書に開示される組成物は、単一の細菌株を含み、他の細菌株を含まない。例えば、本発明の組成物は、M. faecis株のみの細菌を含むことができる。そのような組成物は、de minimisのみを含んでもよく、又は生物学的に無関係な量の他の細菌株又は種を含んでもよい。このような組成物は、他の種の生物を実質的に含まない培養物であってもよい。ある実施形態において、そのような組成物は、乾燥形態であってもよく、他の種の生物を実質的に含まない。
【0240】
いくつかの実施形態において、本発明は、他の株由来の細菌を含まない、又は治療に使用するために他の株由来の微量の細菌のみを含む、又は生物学的に無関係な量の細菌を含む、Mediterraneibacter属の単一の細菌株を含む組成物を提供する。
【0241】
ある実施形態において、本発明の組成物は、単一の細菌株又は種を含み、他の細菌株又は種を含まない。そのような組成物は、de minimisのみを含んでもよく、又は生物学的に無関係な量の他の細菌株又は種を含んでもよい。このような組成物は、他の種の生物を実質的に含まない培養物であってもよい。
【0242】
ある実施形態において、本発明の組成物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16の細菌株又は種からなる。ある実施形態において、組成物は、1~10個、好ましくは1~5個の細菌株又は種からなる。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組成物は、同一種内からの2つ以上の株(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40又は45株を超える)を含み、任意選択的に、任意の他の種由来の細菌を含まない。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組成物は、同一種内からの50株未満(例えば、45、40、35、30、25、20、15、12、10、9、8、7、6、5、4又は3株未満)を含み、任意選択的に、任意の他の種由来の細菌を含まない。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組成物は、同一種内由来の1-40、1-30、1-20、1-19、1-18、1-15、1-10、1-9、1-8、1-7、1-6、1-5、1-4、1-3、1-2、2-50、2-40、2-20、2-15、2-10、2-5、6-30、6-15、16-25、又は31-50株を含み、任意に、他の種由来の細菌を含まない。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組成物は、同一属内からの複数の種(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、17、20、23、25、30、35又は40種を超える)を含み、任意に、他の属からの細菌を含まない。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組成物は、同じ属内からの50種未満(例えば、50、45、40、35、30、25、20、15、12、10、8、7、6、5、4又は3種未満)を含み、任意に、他の属からの細菌を含まない。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組成物は、同一属内の1~50、1~40、1~30、1~20、1~15、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3、1~2、1~2、50~2、40~2、30~2、20~2、15~2、10~2、5~6、30~6、15~25、又は31~50種を含む。本発明は、上記のいずれかの組み合わせを含む。
【0243】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、2つ以上の細菌株又は種を含む。例えば、いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、同一種内からの複数の株(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40又は45株を超える)を含み、任意選択的に、任意の他の種由来の細菌を含まない。ある実施形態において、本発明の組成物は、同じ種内からの50株未満(例えば、45、40、35、30、25、20、15、12、10、9、8、7、6、5、4又は3株未満)を含み、任意に、他の種由来の細菌を含まない。ある実施形態において、本発明の組成物は、1-40、1-30、1-20、1-19、1-18、1-15、1-10、1-9、1-8、1-7、1-6、1-5、1-4、1-3、1-2、2-50、2-40、2-20、2-15、2-10、2-5、6-30、6-15、16-25、又は31-50株を含む。ある実施形態において、本発明の組成物は、同一属内に由来する複数の種(例えば、1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種、12種、15種、17種、20種、23種、25種、30種、35種、又は40種)を含み、任意に、他の属由来の細菌を含まない。ある実施形態において、本発明の組成物は、同じ属内からの50未満の種(例えば、50、45、40、35、30、25、20、15、12、10、8、7、6、5、4又は3種未満)を含み、任意に、他の属からの細菌を含まない。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、同一属内の1-50、1-40、1-30、1-20、1-15、1-10、1-9、1-8、1-7、1-6、1-5、1-4、1-3、1-2、1-2、50-2、40-2、30-2、20-2、15-2、10-2、5-6、30-6、15-25、又は31-50株を含み、任意に、他の属由来の細菌を含まない。本発明は、上記のいずれかの組み合わせを含む。
【0244】
ある実施形態において、本発明の医薬組成物は、1-50、1-40、1-30、1-20、1-19、1-18、1-17、1-16、1-15、1-14、1-13、1-12、1-11、1-10、1-9、1-8、1-7、1-6、1-5、1-4、1-3又は2種類の異なる細菌株の間のような、1-50個の異なる細菌株を含む。ある実施形態において、本発明の医薬組成物は、1-50、1-40、1-30、1-20、1-19、1-18、1-17、1-16、1-15、1-14、1-13、1-12、1-11、1-10、1-9、1-8、1-7、1-6、1-5、1-4、1-3又は2種類の異なる細菌株の間のような、1-50個の異なる細菌株を含む。
【0245】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、株V21/006223、V21/006224、V21/006225、又はV21/006226のいずれか1つと同じ安全性及び治療効力特性を有する細菌株をさらに含む。
【0246】
本発明の組成物が2つ以上の細菌株、種又は属を含むいくつかの実施形態において、個々の細菌株、種又は属は、分離、同時又は連続投与のためであり得る。例えば、組成物は、複数の細菌株、種又は属のすべてを含んでもよく、又は細菌株、種又は属は、別々に貯蔵されてもよく、別々に、同時に又は連続的に投与されてもよい。いくつかの実施形態において、2つ以上の細菌株、種又は属は、別々に貯蔵されるが、使用前に一緒に混合される。
【0247】
好ましくは、本明細書に開示された組成物は、本発明の細菌株による腸管への送達、及び/又は腸の部分的又は完全なコロニー形成を可能にするために、消化管に投与されるべきである。言い換えれば、細菌は消化管の一部又は全部にコロニーを形成する可能性があり、このようなコロニー形成は一過性又は永続的である可能性がある。より具体的には、「腸の全コロニー形成」という語句は、細菌が腸のすべての部分(すなわち、小腸、大腸及び直腸)にコロニー形成したことを意味する。さらに、又は代替的に、用語「全コロニー形成」は、細菌が腸の一部又は全部に永久的に生着することを意味する。
【0248】
同様に、「腸の部分的コロニー形成」という語句は、細菌が腸の一部ではあるがすべてではない部分にコロニー形成したことを意味する。さらに、又は代替的に、用語「部分的コロニー形成」は、細菌が腸の一部又は全部に一時的に生着することを意味する。
【0249】
細菌の生着の一過性は、投与間隔の終了後に本発明の細菌株の存在量を定期的に(例えば、毎日又は毎週)評価して、休薬期間、すなわち、投与間隔の終了から本発明の細菌株の検出可能なレベルが存在しないまでの間の期間を決定することによって(例えば、糞便試料中で)決定することができる。いくつかの実施形態において、ウォッシュアウト期間は、14日以内、12日以内、10日以内、7日以内、4日以内、3日以内、2日以内、又は1日以内である。
【0250】
いくつかの実施形態において、上記又は本明細書の他の箇所に記載された細菌は、大腸内で一時的に生着する。
【0251】
いくつかの実施形態において、本発明の細菌株は、ヒト成人糞便から得られる。本発明の組成物が複数の細菌株を含むいくつかの実施形態において、細菌株のすべては、ヒト成人糞便から得られるか、又は他の細菌株が存在する場合、それらは、最小量のみ存在する。細菌は、これらのヒト成人糞便から得られ、本発明の組成物に使用された後に培養され得る。
【0252】
いくつかの実施形態において、1以上の地中海細菌株は、本発明の組成物中の唯一の治療活性剤である/である。いくつかの実施形態において、組成物中の細菌株は、本発明の組成物中の唯一の治療活性剤である/である。
【0253】
本発明に従って使用するための組成物は、市販承認を必要とする場合もあれば、必要としない場合もある。
【0254】
ある実施形態において、本発明は、上記の医薬組成物を提供し、ここで、該細菌株は乾燥形態である。場合によっては、投与前に細菌株を再構成する。場合によっては、溶解は、本明細書に記載される希釈剤の使用による。ある実施形態において、本発明は、上記の医薬組成物を提供し、ここで、該細菌株は、スプレー乾燥される。ある実施形態において、本発明は、上記の医薬組成物を提供し、ここで、細菌株は、凍結乾燥又はスプレー乾燥され、生きている。ある実施形態において、本発明は、上記の医薬組成物を提供し、ここで、細菌株は、凍結乾燥又はスプレー乾燥され、生存可能である。ある実施形態において、本発明は、上記の医薬組成物を提供し、ここで、細菌株は凍結乾燥又はスプレー乾燥され、腸に部分的又は全体的にコロニー形成することができる。ある実施形態において、本発明は、上記の医薬組成物を提供し、ここで、細菌株は乾燥(例えば、凍結乾燥又はスプレー乾燥)され、生存可能であり、腸を部分的又は全体的にコロニー形成することができる。いくつかの同じ実施形態及びいくつかの代替実施形態において、細菌株は腸に一時的にコロニー形成する。
【0255】
場合によっては、凍結乾燥菌株又はスプレー乾燥菌株を投与前に再構成する。場合によっては、溶解は、本明細書に記載される希釈剤の使用による。
【0256】
本発明の組成物は、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体を含むことができる。
【0257】
ある実施形態において、本発明は、本発明の細菌株と、薬学的に許容される賦形剤、担体又は希釈剤とを含む医薬組成物を提供し、ここで、細菌株は、それを必要とする対象に投与された場合に、炎症性又は自己免疫性障害を治療又は予防するのに十分な量である。いくつかの好ましい実施形態において、炎症性又は自己免疫障害は、炎症性腸疾患(クローン病又は潰瘍性大腸炎など);喘息(アレルギー性喘息又は好中球性喘息など);関節炎(関節リウマチ、変形性関節炎、乾癬性関節炎、又は若年性特発性関節炎など);脂肪肝疾患(非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLDなど));強直性脊椎炎;乾癬;全身性エリテマトーデス(SLE);強皮症;シェーグレン症候群;血管炎;1型糖尿病を含む群から選択される。
【0258】
ある実施形態において、本発明は、本発明の細菌株と、薬学的に許容される賦形剤、担体又は希釈剤とを含む医薬組成物を提供し、ここで、細菌株は、STAT3シグナル伝達経路によって媒介される炎症性又は自己免疫疾患を治療又は予防するのに十分な量である。好ましい実施形態では、前記障害は、炎症性腸疾患(クローン病又は潰瘍性大腸炎など);喘息(アレルギー性喘息又は好中球性喘息など);関節炎(関節リウマチ、変形性関節症、乾癬性関節炎、又は若年性特発性関節炎など);脂肪肝疾患(非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLDなど));強直性脊椎炎;乾癬;全身性エリテマトーデス(SLE);強皮症;シェーグレン症候群;血管炎;1型糖尿病からなる群より選択される。
【0259】
ある実施形態において、本発明は、上記医薬組成物を提供し、ここで、細菌株の量は、組成物の重量に関して、約1×10~約1×1011コロニー形成単位(CFU)/gである。
【0260】
ある実施形態において、本発明は、上記の医薬組成物を提供し、ここで、組成物は、1g、3g、5g又は10gの用量で投与される。
【0261】
ある実施形態において、本発明は、上記の医薬組成物を提供し、ここで、組成物は、経口、直腸、皮下、鼻、口腔、及び舌下からなる群から選択される方法によって投与される。
【0262】
ある実施形態において、本発明は、ラクトース、デンプン、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール及びソルビトールからなる群から選択される担体を含む、上述の医薬組成物を提供する。
【0263】
ある実施形態において、本発明は、エタノール、グリセロール及び水からなる群から選択される希釈剤を含む、上述の医薬組成物を提供する。
【0264】
特定の実施形態では、本発明は、デンプン、ゼラチン、グルコース、無水乳糖、遊離流ラクトース、β-ラクトース、コム甘味料、アカシア、トラガカントゴム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム及び塩化ナトリウムからなる群から選択される賦形剤を含む、上記医薬組成物を提供する。
【0265】
ある実施形態において、本発明は、保存剤、酸化防止剤及び安定剤の少なくとも1つをさらに含む、上記医薬組成物を提供する。
【0266】
ある実施形態において、本発明は、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸及び4-ヒドロキシ安息香酸のエステルからなる群から選択される保存剤を含む、上記医薬組成物を提供する。
【0267】
ある実施形態において、本発明は、上記の医薬組成物を提供し、ここで、該細菌株は乾燥形態(例えば、凍結乾燥、スプレー乾燥、流動床乾燥など)である。
【0268】
ある実施形態において、本発明は、組成物が約4℃又は約25℃で密封容器に貯蔵され、容器が50%の相対湿度を有する雰囲気中に置かれる場合、コロニー形成単位で測定した場合、細菌株の少なくとも80%が、少なくとも約1ヵ月、3ヵ月、6ヵ月、1年、1.5年、2年、2.5年又は3年の期間後に残る、上記医薬組成物を提供する。
【0269】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、本明細書に記載される組成物を含む密封容器内に提供される。いくつかの実施形態において、密封容器は、小袋又は瓶である。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、本明細書に記載される組成物を含む注射器で提供される。
【0270】
本発明の組成物は、いくつかの実施形態において、薬学的製剤として提供され得る。例えば、組成物は、錠剤又はカプセルとして提供することができる。いくつかの実施形態において、カプセルは、ゼラチンカプセル(「ゲル-キャップ」)である。カプセルは硬質カプセルでも軟質カプセルでもよい。いくつかの実施形態において、製剤は軟質カプセルである。ソフトカプセルは、カプセルシェルに存在する例えばグリセロール、ソルビトール、マルチトール及びポリエチレングリコールのような軟化剤の添加により、ある種の弾力性及び柔軟性を有するカプセルである。軟質カプセルは、例えば、ゼラチン又はデンプンに基づいて製造することができる。ゼラチンベースの軟質カプセルは、様々な供給者から市販されている。例えば、経口又は直腸内などの投与方法に応じて、軟カプセルは、様々な形状を有することができ、例えば、丸い、卵形、長円形、又は魚雷形であってもよい。軟質カプセルは、例えば、シェーラー法、アコーゲル法、又は液滴又はブロー法などの従来の方法によって製造することができる。
【0271】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組成物は、経口投与される。経口投与では飲み込んで消化管に入ることがある。
【0272】
経口投与に適した医薬製剤には、固体プラグ、固体微粒子、半固体及び液体(多相又は分散系を含む);多粒子、液体(例えば、水溶液)、エマルジョン又は粉末を含有する軟又は硬カプセル;エマルジョン又は粉末;ロゼンジ(液体充填を含む);チュー;ゲル;高速分散剤形;フィルム;胚珠;スプレー;及び頬粘膜/粘膜接着性パッチが含まれる。
【0273】
いくつかの実施形態において、薬学的製剤は、腸溶性製剤、すなわち、経口投与による本発明の組成物の腸への送達に適した(例えば、胃のpHに抵抗性の)胃耐性製剤である。腸溶性製剤は、細菌又は組成物の他の成分が酸感受性(例えば、胃の条件下で分解されやすい)の場合に特に有用であり得る。
【0274】
いくつかの実施形態において、腸溶性製剤は腸溶性コーティングを含む。いくつかの実施形態において、製剤は、腸溶性被覆投与形態である。例えば、製剤は腸溶性錠剤又は腸溶性カプセルなどであってもよい。腸溶性コーティングは、従来の腸溶性コーティング、例えば、経口送達のための錠剤、カプセルなどのための従来のコーティングであってもよい。製剤は、例えば腸溶性ポリマー(例えば、酸不溶性ポリマー)の薄膜層などのフィルムコーティングを含んでもよい。
【0275】
いくつかの実施形態において、腸溶性製剤は、腸溶性コーティングを必要とせずに、本質的に腸溶性であり、例えば、胃溶性である。従って、いくつかの実施形態において、製剤は、腸溶性コーティングを含まない腸溶性製剤である。いくつかの実施形態において、製剤は、熱ゲル化材料から作製されたカプセルである。いくつかの実施形態において、熱ゲル化材料は、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)のようなセルロース材料である。いくつかの実施形態において、カプセルは、フィルム形成ポリマーを含まないシェルを含む。いくつかの実施形態において、カプセルは、シェルを含み、シェルは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含み、(米国特許公開第2016/0067188号に記載されているように)フィルム形成ポリマーを含まない。いくつかの実施形態において、製剤は、本質的に腸内カプセル(例えば、CapsugelからのVCAPS(登録商標))である。
【0276】
いくつかの実施形態において、組成物は、M. faecisの細菌株を含むプロバイオティック又は医療食品である。細菌は、例えば、プロバイオティックとして、カプセル、錠剤、カプレット、丸剤、トローチ、ロゼンジ、パワー、及び/又は顆粒として投与することができる。この株はまた、栄養補助食品、従来の食品、医療食品、又は薬物として処方することもできる。細菌はまた、糞便移植の一部として、又は座薬を介して投与することもできる。いくつかの実施形態において、組成物は、本明細書にさらに記載されるように、腸管への送達のために製剤化される。いくつかの実施形態において、組成物は、プレバイオティックをさらに含む。
【0277】
6.1 追加薬剤との同時投与
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される方法は、さらに、第2の物質及び/又は治療を(例えば、治療の一部として)対象に同時投与することを含むことができる。併用療法は、使用される場合、特定の適応に合わせて調整される。例えば、炎症性疾患(例えば、炎症性腸疾患)を治療するために種M. faecisを投与する場合、炎症性疾患の臨床治療のために承認された当該分野で公知の抗炎症剤又は治療と組み合わせて投与することができる。他の適応症は、同様に、例えば、本明細書に記載されているような種のM. faecis株を、当該分野で公知の薬剤と組み合わせて、又はこれらの適応症の臨床的治療のために承認された薬剤で治療することができる。
【0278】
炎症性腸疾患の治療に用いることができる適切な抗炎症剤は、必ずしも限定されるものではないが、5-アミノサリチウム酸塩、コルチコステロイド、アザチオプリン、インフリキシマブ、及びアダリムマブを含む群を含む。
【0279】
本発明は、抗炎症剤をさらに含む、上述の組成物も含む。このような組成物は、任意に、単一の組成物の形態であってもよく、又は別法として、2つ以上の別々の組成物の形態であってもよい。
【0280】
7.スクリーニング方法
本発明はまた、本発明の方法での使用に適した細菌株を同定する方法を含む。このような方法は、典型的には、特定の機能的活性を有する細菌株のスクリーニングを含む。適切なアッセイには、下記の実施例に記載されるものが含まれるが、腸障壁機能、粘膜治癒、NFkB抑制、又はSTAT3シグナル伝達の阻害を測定するための任意のアッセイは、適用可能なものと同様である。
【0281】
いくつかの実施形態において、スクリーニング方法は、Mediterrianebacterの細菌株がSTAT3シグナル伝達経路を阻害又は抑制する能力を同定する。例示的な例として、本発明は、標的細胞におけるSTAT3シグナル伝達の活性化を遮断又は阻害する方法を提供し、この方法は、標的細胞を、種Mediterlaneibacter faecisの細菌細胞調製物の少なくとも可溶性成分と接触させ、標的細胞におけるSTAT3シグナル伝達の活性化を遮断又は阻害することを含む。
【0282】
このタイプのいくつかの実施形態において、標的細胞は、機能性アカレポーター細胞(例えば、HEK細胞)、免疫細胞(例えば、Th17免疫細胞)、上皮細胞、及び内皮細胞についての細菌株のスクリーニングを含む群から選択される。
【0283】
いくつかの実施形態において、細菌細胞調製物は、細菌細胞培養物を含む。好ましくは、可溶性成分は、細菌細胞培養物の上清を含み得る。このタイプのいくつかの実施形態において、可溶性成分は、細菌細胞を実質的に枯渇させる。
【0284】
いくつかの代替実施形態において、細菌細胞調製物は、細菌細胞ペレットを含む。好ましくは、細胞ペレットの細菌細胞は、当該技術分野で公知の任意の手段によって溶解され、細胞溶解後、不溶性画分から分離される細胞溶解物可溶性画分に典型的である。細胞溶解物は、スクリーニングアッセイ中である前にさらなる処理を受けることができる。(例えば、緩衝液中で希釈された)又は処理試薬に曝された。
【0285】
8.投与方法
好ましくは、本発明の組成物は、本発明の細菌株とともに腸への送達を可能にするために、消化管に投与されるべきである。好ましくは、本発明の組成物は、本発明の細菌株とともに腸への送達を可能にするために、消化管に投与されるように製剤化される。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、本発明の細菌株による腸管の送達及び部分的又は完全なコロニー形成を可能にするために、消化管に投与されるように製剤化される。
【0286】
ある実施形態において、本発明の組成物は、発泡体、スプレー又はゲルとして投与され得る。
【0287】
ある実施形態において、本発明の組成物は、座薬、例えば、テオブロマ油(カカオ脂)、合成硬脂肪(例えば、座薬(登録商標)、WITEPSOL)、グリセロゼラチン、ポリエチレングリコール、又は石鹸グリセリン組成物の形態で投与することができる。
【0288】
ある実施形態において、本発明の組成物は、経鼻胃管、経口胃管、胃管、空腸瘻管、空腸瘻管(J-チューブ)、経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)、又は胃、空腸及び他の適切なアクセスポートへのアクセスを提供する胸壁ポートなどのポートなどの管を介して消化管に投与される。
【0289】
本発明の組成物は、1回投与することができ、又は治療レジメンの一部として連続的に投与することができる。ある実施形態において、本発明の組成物は、毎日(1回又は数回)投与される。ある実施形態において、本明細書に開示される組成物は、少なくとも1週間、2週間、1ヵ月、2ヵ月、6ヵ月、又は1年間のような延長された期間、毎日、2日ごと、又は週ごとなどの定期的に投与される。
【0290】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組成物は、7日間、14日間、16日間、21日間、又は28日間、又は7日以内、14日間、16日間、21日間、又は28日間投与される。例えば、いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組成物は、16日間投与される。
【0291】
本発明のある実施形態において、本発明による治療は、患者の腸内微生物叢の評価を伴う。本発明の株との送達及び/又は部分的若しくは完全なコロニー形成が、有効性が観察されないように達成されない場合、又は送達及び/又は部分的若しくは完全なコロニー形成が成功し、有効性が観察された場合に治療を中止することができる場合、治療を繰り返すことができる。
【0292】
ある実施形態において、本発明の組成物は、子宮内及び/又は出生後にその子供において発生する炎症性又は自己免疫疾患(本明細書に開示されているものなど)を予防するために、妊娠動物、例えばヒトなどの哺乳動物に投与することができる。
【0293】
本発明の組成物は、STAT3シグナル伝達経路によって媒介される疾患若しくは状態、又はSTAT3シグナル伝達経路によって媒介される疾患若しくは状態のリスクがあると同定された疾患若しくは状態、又は炎症性若しくは自己免疫疾患(本明細書に開示されるものなど)と診断された患者に投与することができる。本組成物はまた、健康な患者においてSTAT3シグナル伝達経路によって媒介される疾患又は状態の発現を防止するための予防手段として投与することもできる。
【0294】
本明細書に開示された組成物は、炎症性又は自己免疫性障害、特に微生物叢-腸軸によって媒介される炎症性又は自己免疫性障害と診断された患者、又は炎症性又は自己免疫性障害、特に微生物叢-腸軸によって媒介される炎症性又は自己免疫性障害のリスクがあると同定された患者に投与することができる。組成物はまた、健康な患者において、炎症性疾患又は自己免疫疾患、特に微生物叢-腸軸によって媒介される炎症性疾患又は自己免疫疾患の発現を予防するための予防手段として投与することもできる。
【0295】
本発明の組成物は、異常な腸内微生物叢を有すると同定された患者に投与することができる。例えば、患者はMediterraneibacter、特にM. faecisによるコロニー形成が減少又は欠如している可能性がある。
【0296】
本発明の組成物は、栄養補助食品のような食品として投与することができる。
【0297】
一般に、本発明の組成物は、ヒト疾患の予防又は治療のためであるが、家禽、ブタ、ネコ、イヌ、ウマ又はウサギのような単胃哺乳動物を含む動物を治療するために使用することができる。本発明の組成物は、動物の成長及び能力を高めるのに有用であり得る。動物に投与する場合には、強制経口投与することができる。
【0298】
いくつかの実施形態において、組成物が投与される対象は、成人である。いくつかの実施形態において、組成物が投与される対象は、乳児ヒトである。
【0299】
9.培養方法
本発明で使用するための細菌株は、例えば参考文献(Handbook of Microbiological Media, 2010; Hunter-Cevera, 1996)に詳述されているように、標準的な微生物学的技術を用いて培養することができる。
【0300】
培養に使用される固体又は液体培地は、例えば、TY又はPYG培地から選択され得る。
【0301】
本発明とともに使用するのに適した例示的な媒体処方は、表1に提供されるものを含む。
【0302】
【表2】
【0303】
本発明を容易に理解し、実用的に実施するために、以下の非限定的な実験例により、特定の好ましい実施形態を説明する。
【実施例
【0304】
Meditarranebacterと健康、IBD及び他の疾患との関連
炎症性腸疾患は、健常腸と比較した場合、IBD腸管における特定の腸内細菌の有病率及び存在量の両方が有意に減少するミクロソームの構造-機能変化によって特徴づけられる。いくつかの研究により、これらの細菌がIBDの病因を調節する可能性があることが示されている(Mallone et al., 2011; and Sokol et al., 2008)が、これらの細菌を用いて新しい治療法を開発する上での主要な障害は、低解像度16S rRNAに基づくプロファイリングは、低い分類学的レベル(すなわち、属、種、株)で健康及びIBD関連株を正確に識別するのに十分な解像度を提供しないことである。
【0305】
高解像度腸メタゲノムデータ及び8,000例以上の対象に関する関連宿主メタデータを含むMicroba Discovery Database(MDD)を用いて、M. faecis及びM. lactarisが健康なヒトに多くみられるが、炎症性及び自己免疫疾患ではほとんど検出されないことを同定した(図2及び表2)。IBDでは、主な潰瘍性大腸炎とクローン病の両方のサブタイプを含め、最も強い効果が観察された(図2)。
【0306】
【表3】
【0307】
M. faecisの分離及びゲノムスケール分析
4つのMH23分離株はMediterranibacter属内に位置し、平均ヌクレオチド同一性に基づいて、これまでに特徴づけられたいくつかの分離株を組み合わせている(Togo et al., 2018)。M. faecis の系統発生と機能的可能性は、ゲノム分類データベース (GTDB; gtdb.ecogenomic.org) より、公的に入手可能な Mediterraneibacter sp. の高品質ゲノムを使用して調べられた(図3)。M. faecisは現在、GTDBで利用可能な40の高品質ゲノム及びMAGを有するMediterraneibacter属の中で最も代表的な種である。Mediterraneibacter lactarisとはっきりしたクラスターを形成し、Mediterraneibacter torquesやその他の培養されていない種とは別のものである(図3A)。興味深いことに、M. faecisゲノムは2つのクレードにクラスター化しており、この種が2つのサブグループに分けられていることを示している。M. faecisゲノムの代謝再構築により、短鎖脂肪酸であるプロピオン酸、乳酸、酢酸、ギ酸を産生するが、酪酸は産生しないことが明らかになった(表3)。CAZymesの多様なプロファイルが分離株間で共有され、繊維分解における重要な役割を示唆している。M. faecisはまた、炭素源として広範囲の単糖類を使用すると予測されており(表3)、ヒト腸内微生物叢では比較的まれなラムノースも含まれる。興味深いことに、M. faecisはまた、残りの20種類の蛋白原性アミノ酸に加えてセレノシステインを合成すると予測されている。
【0308】
【表4】
【0309】
【表5】
【0310】
健康におけるM. faecisの役割とIBDの病因をよりよく理解するために、M. faecis MH23-1、MH23-2、MH23-3、及びMH23-4と名付けられた4つの新株を、3人の健康なヒトドナーから希釈-絶滅増菌を生成し、次に単一コロニーについて平板培養することによって単離した。すべての株はTY及びPYG培地上で良好に増殖し、グラム陽性、ときにグラム可変染色連鎖形成球菌として観察された(図3B)。比較ゲノム解析により、M. faecis MH23株はM. faecis種内で高い信頼性(100%ブートストラップ支持)でクラスターを形成することが明らかになった。M. faecis MH23-1及びMH23-2はいずれも非常に類似しており、遺伝子組成及びシンテニーにわずかな違いがあることから、進化の歴史が共有されていることが示唆される。対照的に、M. faecis MH23-3とMH23-4は互いに異なり、M. faecis MH23-1とMH23-2の両方が異なっていた(図3A)。M. faecis MH23-1、MH23-2及びMH23-3はクラスター1に関連しており、M. faecis MH23-4はクラスター2に関連していた。予想通り、分離株はグルコース、フルクトース及びN-アセチルグルコサミンを利用すると予測され、これは使用した増菌培地と一致した。すべてのM. faecis MH23分離株は、Firmicutesの中で比較的まれな特徴であるB12を産生すると予測された(Shelton et al., 2019)。
【0311】
M. faecis MH23-1はin vivoで腸壁機能を改善する
健常腸におけるM. faecisの役割を評価するために、ナイーブC57Bl/6 SPFマウスをM. faecis MH23-1で8日間処理した(図4A)。この治療期間中、一般的な外観、行動、姿勢、可動性及び神経学的行動に、罹患率又は変化は認められなかった。同様に、M. faecis MH23-1投与群では、溶媒対照群と比較して体重に有意な変化は認められず、結腸の長さ及び重量/長さ比も影響を受けなかった(図4B-4D)。M. faecis MH23-1は、上皮損傷、炎症、及び血管新生亢進の評価単独、又は総合的な組織病理学的スコア(図4E-4H)により測定した場合、溶媒と比較して、結腸に有意な組織学的変化をもたらさなかった。
【0312】
プレドニゾン及びF. prausnitzii A2-165を陽性対照として、DSS誘発腸関門機能不全の急性マウスモデルにおけるM. faecis MH23-1の治療効果を調べた(図5A)。DSS処理は、ビヒクル対照と比較して有意な消化管バリア機能障害をもたらした。さらに、体重の有意な減少(図5B)が認められ、これは腸障壁機能の正確かつ信頼できる指標であることが示されている(Britto et al., 2019)。予想通り、プレドニゾンはDSS誘発体重減少を悪化させたが(Yamamoto et al., 2013)、DSS誘発体重減少はM. faecis MH23-1又はF. prausnitzii A2-165の投与により改善した(図5B)。内視鏡検査では、すべての治療群において、1日目のベースラインから2日目と6日目に疾患活動性の進行性の増加が明らかになった。しかし、F. prausnitzii A2-165又はM. faecis MH23-1による治療は、溶媒投与群と比較して疾患活動性の有意な低下をもたらした(図5C)。
【0313】
DSS処置マウスの組織学的分析は、陰窩喪失、上皮びらん及び潰瘍形成を特徴とする顕著な消化管損傷を明らかにした。特に、M. faecis MH23-1による治療は、組織病理学的治癒(図5D,E)、上皮損傷及び炎症スコア(図5E-G)の改善によって証明されるように、陰窩の再形成及び再上皮化(図5D)を特徴とする病理学的に有意な改善をもたらした。これと一致して、M. faecis MH23-1を投与したところ、糞便中のリポカリン-2で測定した消化管の炎症が減少した(図5H)。組織学的分析により、M. faecis MH23-1処理後の上皮杯細胞の増加が明らかになり(図5I)、これはアルシアンブルー染色で測定したDSS処理対照と比較してムチン産生の増加と関連していた(図5J)。予想されたように、プレドニゾン及びF. prausnitzii A2-165もまた、疾患病理学における有意な改善をもたらした
【0314】
総合すると、これらのデータは、M. faecis MH231がDSS処置マウス又は未処置マウスにおいていかなる有害作用も引き起こさず、M. faecis MH23-1が最終DSS投与のわずか2日後に腸関門機能及び粘膜治癒の改善を促進することを明らかにする。
【0315】
本発明者らはまた、DSS誘発マウス大腸菌の治療モデルにおけるM. faecis MH23-3の有効性を検討した(図5K)。内視鏡分析では、プレドニゾン又はM. faecis MH23-1による治療は、溶媒投与群と比較して疾患活動性の有意な低下をもたらした(図5L)。DSS処置マウスの組織学的分析は、陰窩喪失、上皮びらん及び潰瘍形成を特徴とする顕著な消化管損傷を明らかにした。特に、M. faecis MH23-3による治療は、組織病理学的治癒、上皮損傷及び炎症スコアの改善によって証明されるように、陰窩の再形成及び再上皮化を特徴とする病理学的に有意な改善をもたらした(図5M-O)。これと一致して、M. faecis MH23-3を投与したところ、糞便中のリポカリン-2で測定した消化管の炎症が減少した(図5P)。
【0316】
TNBS誘発大腸炎の急性マウスモデルにおけるM. faecis MH23-3の治療効果も、陽性対照としてシクロスポリンAを用いて調べた(図5Q)。TNBS処理は顕著な組織学的損傷をもたらし、シクロスポリンA又はM. faecis MH23-3による処理によって改善された(図5R-S)。
【0317】
M. faecisはin vitroでSTAT3及びNF-kBの活性化を抑制する
DSS処理動物で観察された組織学的炎症及び再上皮化に対する劇的な影響を考慮して、本発明者らは次に、M. faecisがIBD関連免疫経路を調節する能力を検討した。IL-23駆動性免疫応答はIBDの病因の中心であり、臨床的に認識された標的である(Britto et al., 2019; and Yamamoto et al., 2013)。HEK-Blue(商標)IL-23レポーター細胞株を用いて、M. faecis MH23-1、MH23-3及びMH23-4のSTAT3のIL-23介在性活性化抑制能を検討した。HEK-Blue(商標)IL-23レポーター細胞株は、IL-23刺激に応答するSTAT3誘導性SEAPレポーター遺伝子を有する。予想されるように、IL-23を介したSTAT3の活性化は、トファシチニブによって抑制された(図6A-C)。TY培地で増殖させたM. faecis MH23-1、MH23-3、及びMH23-4から調製した無細胞培養上清は、SEAPレポーター活性を抑制した(図6A-C)。M. faecis培養上清による処理後に細胞毒性作用は観察されなかった。本発明者らは、サイズ分画、熱処理及びプロテイナーゼK処理により培養上清(CS)の生化学的特性を評価した。このアプローチにより、M. faecisのSTAT3抑制活性は<3kDa画分と関連し、熱処理による影響を受けないことが判明した(図6D-F)。
【0318】
最後に、IL-23媒介STAT3活性化に対する増殖培地依存性効果の影響を調べた。TY又はPYG培地で増殖させた菌株から調製したCSは、強力なSTAT3抑制活性を示した。株をBHI、Wilkins-Chalgren培地(WCB)又はMCM(図7G)中で増殖させた場合、STAT3抑制活性は最小であった。これは、培養中の栄養因子が他の細菌種の活性に影響するという以前の報告(例えば、Giri et al., 2019; and Toshimitsu et al., 2017)と一致している。従って、これらの結果は、M. faecisによる免疫調節性生物活性の産生が、他の細菌種について既に記載されているように、選択的栄養因子によって増強され得ることを示唆する(Wlodarska et al., 2017; Zelante et al., 2013)。
【0319】
M. faecis MH23-1及びMH23-2のNF-kB活性化阻害能を、ヒト腸上皮HCT116細胞株におけるIL-8分泌を評価することにより検討した(Kunsch et al., 1993)。IL-8の発現は、NF-kBにより調節され(Zhu et al., 2021)、予想されるように、HCT116細胞をIL-1bで処理すると、薬理学的阻害剤インドール-3-カルビノールを用いて防ぐことができるIL-8分泌の有意な増加がもたらされた(図7A)。特に、M. faecis MH23-1由来の無細胞CSは、培地対照と比較してIL-8分泌を抑制した(図7A)。さらに、M. faecis MH23-4がNF-kB活性を抑制する能力を、ヒト単球由来マクロファージにおけるTNFの発現を評価することにより試験した。THP-1細胞をLPS及びM. faecis MH23-4由来の無細胞培養上清で共刺激した。M. faecis MH23-4及びF. prausnitzii A2-165はいずれもTNFの発現を抑制することができた(図7B)。対照的に、Clostridium bolteae BAA-613(IBD関連種由来の代表株(Lloyd-Price, 2019))から調製した無細胞CSは、M. faecisの実質的な抗炎症活性の根底にあるTNF発現を抑制しなかった。まとめると、このことは、M. faecisがIBD炎症反応を下支えする重要な経路の活性化を調節することを明らかにした。
【0320】
M. faecisはGPCR活性を調節する
M. faecisが粘膜治癒を誘導する能力をよりよく理解するために、M. faecis MH23-1及びMH232の免疫調節能力を、高処理量gpcrMAX(商標)GPCRアッセイパネル及び選択スクリーン細胞に基づく経路プロファイリングアッセイを用いて評価した。gpcrMAX(商標)及びセレクトスクリーンアッセイは、それぞれ168及び38経路からなる。スクリーニングすべきサンプル数を最小限にするために、Colosimoら(Colosimo et al., 2019)の方法を用いて、低分子量の非極性代謝産物を抽出するための粗代謝産物抽出物を調製した。単接種対照培地も同様に調製し、各サンプルをアゴニスト及びアンタゴニストモードでアッセイし、ユーロフィンに概説された基準を用いて同定した自信のあるヒットを同定した。初回通過スクリーニングでは、M. faecis MH23-1及びMH23-2は閾値レベルを超えてb-アレスチン動員を誘導し、培地対照と有意に異なった。特に、M. faecis MH23-1及びMH23-2は、対照培地に対してそれぞれN-ホルミル化ペプチド及びトリプタミンの受容体であるGPCR FPR1及びHTR2Cに対してアゴニスト活性を示した。加えて、両株はDRD2Sのドーパミン媒介活性化に対してアンタゴニスト活性を示したが、M. faecis MH23-1はさらにイソプロテレノール媒介性ADRB1活性化及びドーパミン媒介性DRD3活性化に対してアンタゴニスト活性を示した。粗代謝物抽出物はアッセイの感度を低下させる可能性があるため(例えば、Colosimo et al., 2019)、厳密な閾値を満たさないが培地対照とは異なるヒットも調べた。この拡張リストから、M. faecisによって潜在的に調節されるいくつかの他のGPCRが同定された。その後、生物学的複製培養物を用いて高信頼ヒット及び中信頼ヒットを評価し、M. faecis株MH23-1及びMH23-2が培地信頼閾値でFRP1を活性化し、M. faecis MH23-1がHTR2Cをさらに活性化することを確認した(図7)。同様に、M. faecis MH23-2は、メラノタンIIを介したMC1Rの活性化及びGIPを介したGIPRの活性化に対して、中間信頼閾値で拮抗作用を示した(図8)。
【0321】
別個に、パスウェイハンターアッセイを用いて、M. faecis MH23-1及びMH23-2はともにレポーター細胞系における活性化T細胞の核因子(NFAT)のニューロトロフィン-3活性化を抑制することを決定した。
【0322】
M. faecisは、PBMC CD3+及びCD3-細胞のサイトカインを調節する
M. faecisによって産生される生理活性は末梢免疫細胞に直接作用する可能性があるという仮説が立てられた。この仮説を検討するために、まず、M. faecis培養上清がT細胞(CD3+ CD4+、CD3+ CD8+、CD3+ TCRgd+)、ナチュラルキラー細胞(CD56+)及び抗原提示細胞(CD11b+、CD11b+ CD80+、CD11c+、CD11c+CD80+)のIL-6介在性活性化を予防する能力を評価した。M. faecis MH23 CSで処理すると、総CD3+ T細胞集団及びCD3+ CD4+、CD3+ CD8+の集団を発現するCD69の蛍光強度(GMFI)の幾何平均がTY培地対照と比較して増加したが、CD3+ TCRgd+細胞亜集団は増加しなかった(図9A-C)。また、M. faecis MH23-2上清又はM. faecis MH23-1上清及びPIMで処理した後、ナチュラルキラー細胞の集団を発現するCD69のGMFIが増加した。対照的に、CD11b+ CD80+ HLA-DR+細胞(図9C)及びCD11b+(MH23-1及びMH23-2)、CD11b+ CD80+(MH23-1及びMH23-2)、CD11c+(MH23-2)及びCD11c+ CD80+(M. faecis MH23-1及びMH23-2)細胞のHLA-DR発現集団のGMFIは、TY培地対照に比べてわずかに低下した(図9A-C)。
【0323】
次に、末梢血由来のCD3+及びCD3-細胞におけるサイトカイン産生に対するM. faecis CSの影響を評価した。PMA/イオノマイシン/モネンシンで刺激したCD3+及びCD3-細胞は、IFNg産生の有意な増加によって特徴付けられた。M. faecis株MH231又はMH23-2 CSで処理すると、TY培地に対して基底レベルまでIFNg産生が阻害された(図9D-E;p<0.01)。別に、M. faecis MH23-1又はMH23-2培養上清による処理は、CD3-細胞においてTY培地に対してIL-22産生を誘導した(図9F)。まとめると、このことは、M. faecisがTh1及びTh17免疫駆動性応答の特徴と考えられる重要なサイトカインを調節できることを示している。
【0324】
M. faecisは腸上皮細胞の遊走を促進する
腸壁の損傷は、炎症及び自己免疫状態において一般的に起こる。腸上皮細胞の急速な遊走は、ホメオスタシスを再確立する創傷治癒過程の重要な構成要素である。M. faecisにより分泌された生理活性物質が腸上皮細胞の運動性に影響を及ぼすかどうかを調べるために、Transwell(登録商標)遊走試験を用いた。HCT116細胞をTranswell(登録商標)チャンバーに先端的に播種し、M. faecis抽出物のチャンバーの基底外側への移動を促進する能力を評価した。DMEM処理細胞は、基底レベルの細胞遊走を有し、これはTY培地での処理によって影響を受けなかった(図10A、B)。特に、M. faecis MH23-1及びMH23-2による処理はいずれもHCT116細胞の遊走を有意に促進した(図10A、B)。
【0325】
M. faecisの遊走促進作用は、IncuCyteスクラッチ創傷アッセイを用いてさらに確認された。スクラッチ創傷の誘導後、HCT116細胞は、TY培地で処理した対照細胞と比較して、M. faecis株MH23-1及びMH23-2からの抽出物の存在下で創傷閉鎖の加速速度を示した(図10C,D)。
【0326】
M. lactarisはIL-23媒介STAT3活性化を抑制する
上記の結果に照らして、本発明者らは、これらの結果が、炎症性疾患及び自己免疫疾患とも関連する類似の細菌種に外挿可能であることを、次に確認しようとした。この点に関して、2種のM. lactaris種(M. lactaris ATCC 29176及びM. lactaris MH54)の培養上清のSTAT3のIL-23媒介活性化抑制能を、HEK Blue IL-23レポーター細胞株を用いて評価した。HEK Blue IL-23細胞株は、IL-23によって発現が誘導されるSTAT3応答性SEAPレポーターを含む。汎JAK阻害剤であるトファシチニブによる治療は、IL-23媒介SEAP発現を阻害する。TY培地で処理すると、IL-23を介したSTAT3の活性化がわずかに抑制された(図11)。本発明者らは、培養上清及び<3kDa上清画分のSTAT3活性を調節する能力を調べた。3kDa未満の画分は、抑制効果が低分子量の生理活性に起因すると仮定されたため、評価されたが、このことは、薬剤開発により適しているという利点を有する。
【0327】
両M. lactaris株は、IL-23を介したSTAT3活性化を抑制した(図1A-B)。特に、M. lactaris<3kDa画分は、無細胞培養上清と同程度にIL-23媒介STAT3活性化を抑制した。
【0328】
M. faecisは腸の障壁機能を支持し、腸の障壁の完全性を改善する
腸上皮細胞は、宿主組織を腸内微生物及び管腔内容物から分離する物理的及び生化学的バリアを形成する(Peterson and Artis, 2014)。腸障壁機能の障害は、IBD(Vanuytsel et al., 2021)を含むいくつかの疾患の病因に関係しており、疾患の転帰を改善するための治療標的として提案されている(Sommer et al., 2021)。腸上皮細胞関門の完全性は、経上皮電気抵抗(TEER)と呼ばれる簡単な非侵襲的方法を用いて評価することができる。TEERアッセイでは、電流が上皮細胞層を横切って印加され、抵抗が測定される。TER値の低下は、障壁の低下を示している。TER測定は、単培養細胞層におけるバリア完全性の非侵襲的測定のための「ゴールドスタンダード」を構成する。
【0329】
本発明者らは、T84腸上皮細胞株を用いてM. faecisの関門機能を調節する能力を評価した。IFNで24時間処理した後、抵抗の有意な低下が認められ、バリア透過性の増加が示された。予想通り、トファシチニブ(Sayoc-Becerra et al., 2020参照)による治療は、TERの低下を有意に改善した。M. faecis株MH23-1又はMH23-3由来の<3kDa分画培養上清による処理も、TY培地対照と比較してTERの減少を改善した(図12A)。IFN処理の144時間後に、培養上清M. faecis株MH23-1又はMH23-3で処理すると、TY培地対照と比較してTERの減少が改善した(図12B)。
【0330】
本発明者らは次に、IFNg処理後のバリア完全性の回復を促進するMH23抽出物の能力を評価した。72時間のIFNg処理は、TERの有意な減少をもたらした。以前の報告(Boivin et al., 2009)と一致して、NF-kB阻害剤PDTCは、TERに対するIFNg治療の影響を改善した。YG/V培地抽出物による処理はTEERに影響を及ぼさなかったが、MH23-3培養上清抽出物はYG/V対照と比較してTEERの有意な増加をもたらし、これはバリア完全性の改善を示すものであった(図12C)。まとめると、これらのデータは、M. faecisが腸障壁の完全性の維持と回復を支持する低分子量成分を産生することを示している。
【0331】
代謝物の同定
本発明者らは、M. faecisが治療効果に寄与する代謝産物を産生するという仮説を立てた。YG/V培地対照と比較して2倍増加した無細胞培養上清中の22種類の代謝物(レベル1又は2aに分類)を同定した(表5)。これらには、炎症、免疫細胞浸潤、酸化ストレス、及び腸関門機能を調節することが以前に示された代謝物(例えば、オルニチン(Qi et al., 2019参照)、N-アセチル-システイン(例えば、Masnadi Shirazi et al., 2021, and You et al., 2009)ピロガロール(Chicas et al., 2020)及びプロピオニルカルニチン(Scioli et al., 2014)が含まれる。
【0332】
【表6】
【0333】
材料と方法
菌株、培養条件及び分析
便サンプルを、胃腸障害の病歴のない健康なヒト成人から採取し、無菌酸素遊離グリセロール溶液の容量当たり等しい重量と混合した(McSweeney et al., 2005)。供血者は糞便試料採取の3ヵ月前に抗生物質を摂取していなかった。M. faecis及びFaecalibacterium prausnitziiを、無酸素雰囲気(85%N2:10%CO:5%H)雰囲気のCoyビニル嫌気性チャンバーで日常的に処理した。M. faecisはTY又はPYG培地でルーチンに培養し(McSweeney et al., 2005に記載)、F. prausnitziiはTY培地で培養した(McSweeney, 2005)。全分離株を、3mLの活発に増殖している培養物を等量のグリセロール溶液と混合し、-80℃で保存することにより貯蔵した。
【0334】
M. faecisの分離
M. faecis MH23-1及びMH23-2の濃縮は、ドナー糞便試料に0.47%のM. faecisが相対的に存在する状態でSchaedler液体培地に接種し、次いで絶滅まで連続希釈することによって生成した。希釈-絶滅培養系列の配列を決定し、M. faecisの相対存在量14%の増菌培養を同定した。その後、この増菌をSchaedler培地で希釈して絶滅させ、M. faecisを用いた培養系では42%の相対量の増菌が同定された。コロニーは、Bacteroides Bile Esculin寒天上でのストリーキングによって回収され、アミノグリコシド系抗生物質は省略され、M. faecis MH23-1及びMH23-2と呼ばれる2株が全ゲノム配列決定によって同定された。M. faecis MH23-3は、ドナー糞便試料にM. faecisを0.12%の相対存在量で酵母N-アセチルグルコサミンブロスに接種し(表1のYG培地の処方は、グルコースが等量のN-アセチルグルコサミンに置換されることを除き、表1のYG培地に従う)、次いで連続希釈して絶滅させて作製した。47.8%のM. faecisの増菌が同定され、その後、0.5%v/vアジ化ナトリウム溶液(10%w/v)を補充したTY培地上でのストリーキングにより、アキシン分離株が産生された。全ゲノム配列決定によりM. faecis MH23-3が同定された。M. faecis MH23-4は、ドナー糞便試料にM. faecisを0.37%の相対存在量で酵母フルクトース(YF)ブイヨン(YFブロスのレシピは表1のYG培地の通りであるが、グルコースを等量のフルクトースに置き換え)に接種し、次いで連続希釈して絶滅させて作製した。94.8%のM. faecisの増菌が同定され、その後、TY培地上での線条形成によって軸索分離株が産生された。全ゲノム配列決定によりM. faecis MH23-4が同定された。
【0335】
M. lactarisの分離
M. lactaris(14.1.C2株、MH54)は、胃腸障害の既往のない健康な対象からの糞便試料を用いて分離された。M. lactaris及びM. torquesを、無酸素雰囲気(85%N:10%CO:5%H)雰囲気のCoyビニル嫌気性チャンバー内で日常的に処理した。M. lactaris及びM. torquesをTY又はYG/V培地を用いてルーチンに培養した(表1)。M. lactaris MH54をTY寒天上で単離した。全分離株を、同量のグリセロール溶液と3mLの活発に増殖している培養物を混合することにより貯蔵し、-80℃で保存した。
【0336】
代謝的再構成
タンパク質コード配列を予測し、富化M(バージョン0.5.2)の注釈関数を用いて注釈を付けた。簡単に説明すると、Mは、-pメタモードでプロジガル(バージョン2.6.3)を使用してタンパク質コード配列を同定する。次に、DIAMOND(バージョン2.0.4)を用いてUniRef100データベース(2020年11月ダウンロード)に対してアミノ酸配列を検索し、E.C.,TCDB及びeggnog分類をUniRefで配布されたidmappingファイルから継承した。Pfam(リリース33.0)、tigrfam(リリース15.0)、及びdbcan2(ダウンロード2019年9月)に対するHmmerhmsearch(バージョン3.1b2)を用いて、それぞれ機能ドメイン、主要代謝マーカー、及び炭水化物活性化(CAZy)酵素を注釈した。代謝経路は、手動で定義された代謝経路の定義に対して注釈とそのゲノム位置を評価する富化Mにおける分類機能を用いて同定した。ある経路は、必要なタンパク質の80%以上をコードし、必要なすべてのシンテニーチェックを通過する場合、ゲノム中に存在すると考えられる。その後、これらの自動的に予測された経路を手動で評価した。さらに、gutSMASH(バージョン1.0.0)を腸内微生物によってコードされる共通の生合成経路を同定するために適用した。
【0337】
系統樹
Aゲノムツリーは、Mediterranibacter属(NCBI r95)及び4つのMH23分離株の中で、checkM分析から≧90%の完全かつ≦5%の汚染と定義される高品質ゲノムから構築した。各ゲノムについて、gtdbtk同定を用いて、各ゲノムから122の細菌特異的保存マーカー遺伝子セットを抽出した。これらの遺伝子は、HMMをプロファイルするように整列させ、gtdbtk整列と1つの整列に連結し、そして最大尤度系統樹は、gtdbtk推論を用いたFastTree(バージョン2.1.10)を用いた整列から構築した。1000回の反復からゲノムTreetk(v0.1.6)を用いてノンパラメトリックブートストラップ値を推定した。
【0338】
動物実験のための細菌株の調製
M. faecis及びF. prausnitzii株をTY培地中で初期固定相まで増殖させた。個々の培養物の細胞密度は、Helber Counting Chamberを用いて計算した。細菌強制経口投与溶液を調製するために、個々の培養物を、5,000gの滅菌重鉱油層下で10分間遠心分離し、次いで、無細胞上清を捨てた。細胞ペレットを、1.5mLの滅菌嫌気性緩衝希釈剤(各38mL/Lの塩溶液2及び3(McSweeney et al., 2005)、1mL/Lの0.1%(w/v)レザズリン溶液、1g/L-システイン)中で洗浄し、次いで、再度遠心分離した。最後に、洗浄した細胞ペレットを、ハーフ強度グリセロール溶液(無酸素緩衝希釈液中の15%v/vグリセロール溶液)に再懸濁し、最終濃度1×10細胞/mLにし、必要になるまでアリコートし、-80℃で凍結した。細胞調製物の生存性は、単一アリコートを解凍し、寒天プレート上でストリーキングすることによって確認した。全ゲノム配列決定により、個々の株調製物の同一性及び純度を確認した。
【0339】
DSS誘発腸関門機能不全の急性モデル
動物資源センター(オーストラリア西部)から購入した6週齢のC57BL/6雌マウスを無作為化し、実験前7日間共飼育した。消化管関門機能障害を誘発するために、マウスに3%DSSを飲料水中で6日間自由摂取させた。未処置の同齢対照マウスを処理し、DSSを含まない飲料水を与えた。全ての処置は、DSSの供給の1日前に開始し、全てのマウスは最終DSS処理の2日後に犠牲にした。処置のために、マウスをイソフルオランで麻酔し、200μlの細菌調製物又はビヒクル対照で経口強制経口投与した。プレドニゾン(2mg/kg)を腹腔内注射による麻酔後に投与した。体重及び便の硬さを毎日記録した。糞便検体を毎日採取した。屠殺後、結腸、肝臓及び脾臓を分析のために採取した。心穿刺にて採血した。治療モデルでは、Animal Resources Centre(西オーストラリア、オーストラリア)から購入した6週齢のC57BL/6雌マウスを無作為化し、実験前に7日間共飼育した。消化管関門機能障害を誘発するために、マウスに2.5%DSSを飲料水中で6日間自由に投与した。未処置の同齢対照マウスを処理し、DSSを含まない飲料水を与えた。全ての処置は、DSS処置の完了の2日前に開始し、全てのマウスは最終DSS処置の5日後に屠殺した。処置のために、マウスをイソフルオランで麻酔し、200μlの細菌調製物又はビヒクル対照で経口強制経口投与した。プレドニゾン(2mg/kg)を腹腔内注射による麻酔後に投与した。糞便検体を毎日採取し、屠殺後、結腸を分析のために採取した。
【0340】
内視鏡的及び組織学的スコアリング
動物を小動物消化管内視鏡(Karl Storz Endoskope, Tuttlingen, Germany)を用いて1、2、6日目に検査し、結腸粘膜炎症の程度を評価した(Marks et al., 2015; and Liu et al., 2019)。簡単に説明すると、マウスをイソフルランで麻酔し、結腸鏡を直腸から挿入した。高解像度ビデオで撮影した画像を盲検下で検査し、病変の有無及び範囲を評価した(表6)。組織学的スコアリングは、本質的に、当該技術分野において既に記載された通りに実施された(Marks et al., 2015参照)。簡単に説明すると、試料を4%ホルマリン中で固定し、パラフィン包埋し、切片化した。組織切片をヘマトキシリン及びエオシン染色して疾患病理を評価し、アルシアンブルー染色してムチン産生を評価した。スライドを、Aperioデジタルイメージングシステム(Leica Biosystems,Nubetloch,Germany)を用いてイメージングした。大腸炎の重症度をグレード化するために、組織切片における炎症の程度(大腸炎の活動性、表6参照)及び上皮損傷(上皮過形成及び損傷の複合体、表6参照)を、確立されたスコアリングシステムを用いて半定量的にグレード化した(表7)。その後、サンプルを無作為化し、訓練を受けた消化管病理医が盲検下でスコア化した。
【0341】
【表7】
【0342】
【表8】
【0343】
大腸炎のTNBSモデル
雄BALB/cマウス5匹又は10匹からなる群を用いた。2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸溶液(TNBS負荷)投与2日目の前に、マウスを一晩(1日目)絶食させた。遠位大腸炎は、TNBS(50%エタノール0.1mL中1mg)の結腸内滴下によって誘発し、その後、動物を30秒間垂直位置に保ち、溶液が結腸内に残ることを確実にした。処置のために、1日目(すなわち、TNBSの1日前)から5日目(1~5日目)まで、マウスに200μlのM. faecis MH23-3を1×10細胞/日又はビヒクル(滅菌グリセロール及びリン酸塩溶液)で強制経口投与した。陽性対照のシクロスポリンAは、1日目(すなわち、TNBSの1日前)から4日目まで1日1回、計4日間、75mg/kgを強制経口投与した(1~4日目)。TNBS負荷の日に、溶媒、M. faecis MH-23.3及びシクロスポリンAをTNBSの2時間前に投与した。動物は5日目に屠殺し、全動物から心臓穿刺により血液を採取した。結腸組織も採取し、サイトカイン測定のために液体窒素で凍結した。5日目に、マウスをCO窒息により安楽死させた。それぞれの結腸を切除し、すすぎ、肛門から4cm離して切断した。組織切片を10%ホルマリン中で固定し、組織病理学的検査のために70%エタノール中に保持した。
【0344】
TNBS大腸炎の組織病理学的スコア
4マイクロメートルの組織切片を切断し、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色し、組織学的分析(結腸炎スコアリング;基本的にはDieleman LA et al., 1998により記載された通り)を光学顕微鏡下で行った(LEICA DM2700 M,USA)。組織学的基準は、粘膜構造の異常、炎症の範囲、びらん又は潰瘍形成、上皮再生、及び疾患過程による関与率であった。スコアリングは、観察者の所見に基づき、各結腸からの2つの切片を動物あたり検討した。大腸炎の総スコア(総大腸炎指数)を追加し、組織学的スコアの範囲は0~40とした。
【0345】
【表9】
【0346】
2×セクションのスコアは0~20で、合計0~40のスコアを加える。
【0347】
STAT3抑制活性の特性評価
STAT3抑制活性を評価するために、3つの独立したコロニーを接種し、初期固定相まで増殖させた。次いで、各々の種培養ブロスを用いて、3つの生物学的複製物から6つの技術的反復を生成する2つの技術的反復を接種した。技術的反復を、初期固定相まで増殖させ、次いで、前述のように、無細胞培養上清を回収した(Giri et al., 2019)。培養上清を、製造業者(Merck Millipore)の指示に従って、3kDaのCENTRICONTRICON(登録商標)カラムを通過させることによってサイズ分画した。
【0348】
STAT3活性は、HEK Blue IL-23細胞株(Invivogen)を用いて評価した。簡単に説明すると、アッセイ開始の24時間前に、1ウェル当たり50,000個の細胞を96ウェルプレートに3回播種した。細菌上清又は滅菌細菌培地を、最終濃度10%、25%又は50%v/vで、組換えヒトIL-23(rhIL-23、R&Dシステム)と5ng/mLで混合した。次いで、この混合物を細胞に直接添加し、37℃で6時間インキュベートした。STAT3活性化を抑制する上清の能力を、Janusキナーゼ阻害剤トファシチニブ(10μM)と比較した。STAT3が調節するSEAPレポーター活性は、製造業者(Invivogen)が推奨するQuanti Blue溶液を用いて評価した。結果は、少なくとも3つの独立した実験の平均値である。細胞毒性はMTTアッセイを用いて評価した。簡単に説明すると、MTTを最終濃度1.2mMで細胞に添加した。細胞を37℃で4時間インキュベートし、次いでDMSOで固定した。細胞毒性は、製造業者(Invitrogen,Thermo Fisher,Australia)により推奨されているように、540nmで吸光度を測定することにより評価した。
【0349】
サイトカイン産生アッセイ
サイトカイン産生は、Ellaシステム(R&Dシステム)を用いて、又はIL-8ヒト非被覆ELISAキット(Thermo Fisher、オーストラリア)を用いて評価した。エラベースの実験のために、THP-1細胞の1×10細胞/ウェルを96ウェルプレートに播種した。24時間インキュベーション後、THP-1を最終濃度20μMのPMAで24時間誘導し、それらをマクロファージに分化させた。分化したTHP-1細胞をLPS(1μM)で処理し、必要に応じて試料を採取し、37℃で6時間及び24時間インキュベートした。これらの時点で、細胞上清を収集し、製造者の指示に従ってEllaシステム上で分析した。
【0350】
ELISAアッセイのために、HCT116細胞の1×10細胞/ウェルを2重96ウェルプレートに播種した。HCT116細胞をIL1β(10ng)及びインドール-3-カルビノール(5μM)又は培養上清(10%v/v)で適宜処理し、37℃で16時間インキュベートした。次いで、細胞上清を収集し、製造者の指示に従ってIL-8ヒト非コーティングELISAキットを用いて分析した。
【0351】
GPCR及び細胞経路の免疫調節活性
消化管細菌のGPCR活性を調節する能力は、基本的に、Colosimo et al., (Colosimo et al., 2019)により記載されているように評価された。簡単に説明すると、単一のコロニーを接種し、初期固定相まで増殖させた。この「種培養」ブロスを用いて600mLのTYブロスを接種し、培養物を初期固定相までインキュベートした。培養上清を、4000gで30分間遠心分離し、次いで、製造業者の指示に従って3 kDaフィルターに無細胞上清を通すことにより調製した(Sartorius Vivaflow(登録商標)50 Ultrafiltration Unit 3kDa MWCO PES)。活性化アンバーライトXAD-7樹脂を、400mLの3kDa無細胞濾過上清(10% w/v)に添加し、スラリーを4℃で一晩穏やかに振盪し、樹脂を回収し、400mLの脱イオン水で洗浄し、次いで、120mLの100%メタノールと混合した。2時間、穏やかに振盪しながらインキュベーションした後、メタノール溶出物を回収した。120mLの100%メタノール中での第2の溶出を前述のように行った後、2つの溶出液を最終的に合わせ、回転蒸発器を用いて真空下で乾燥した。抽出物を100%DMSO(その後1000Xと呼ぶ)に完全に再懸濁し、-20℃で保存した。
【0352】
M. faecis調製物のGPCR調節活性は、アゴニスト及びアンタゴニスト様式でgpcrMAX(商標)GPCRアッセイパネル(米国ユーロフィン)を用いて評価した。アゴニスト及びアンタゴニストの高信頼ヒットは、ユーロフィンによって記載されているように同定された。活性/阻害%が10%以上であることを除いて、ユーロフィンに記載されているように、アゴニスト及びアンタゴニスト中程度の信頼性のヒットが同定された。アゴニストモードについては、細胞を上清抽出物とインキュベートして応答を誘導した。アゴニスト活性は、活性百分率=100%×(試験試料の平均RLU-溶媒対照の平均RLU)/(平均MAX対照リガンド-溶媒対照の平均RLU)を用いて算出した。アンタゴニストモードのために、細胞を上清抽出物と予めインキュベートし、次いで、それぞれのEC80濃度で既知のGPCR特異的アゴニストで処理した。拮抗活性は、阻害率=100%×[1-(試験試料の平均RLU-溶媒対照の平均RLU)/(EC80対照の平均RLU-溶媒対照の平均RLU)]を用いて算出した。SelectScreen(商標)Cell-based Pathwayアッセイ(米国サーモフィッシャー)は、アゴニスト及びアンタゴニストモードの上清抽出物を用いて実施した。アクチベーターアッセイにおける活性化は、以下の式を用いて計算した:パーセント活性=100%×(応答比(上清)-応答比(活性化対照なし)/(応答比(フル活性化対照)-応答比(活性化対照なし))。インヒビターアッセイにおける阻害は、以下の式を用いて計算した:パーセント阻害=100%×[1-(応答比(上清)-応答比(非活性化対照)/(応答比(EC80対照)-応答比(非活性化対照))]。アゴニストヒット及びアンタゴニストヒットは、Thermo Fisherにより記載されているように同定された。
【0353】
細胞遊走アッセイ
IncuCyte(登録商標)Live-Cellイメージングシステム(Essen BioScience)及びトランスウェルマイグレーションアッセイを用いて、M. faecisからの滅菌培養上清への曝露中のHCT116細胞の遊走を評価した。ヒトHCT116腸上皮細胞を、10%FBS及び1%Pen/Strepを補充したMcCoys 5a培地中に維持した。IncuCyte(登録商標)スクラッチ創傷アッセイのために、3.5×10 HCT116細胞を、ポリ-L-オルニチン被覆IncuCyte(登録商標)ImageLock 96ウェルプレート(Essen BioScience)上にプレートした。24時間後、IncuCyte(登録商標)WoundMakerツールを用いて、ほぼ融合した細胞単層に均一な引っかき傷を誘発した。細胞をDPBSで2回洗浄し、次いで、200μLの0.5%FBS McCoys 5a培地中のM. faecisからの固定相培養上清を1%(v/v)で添加した。未接種細菌培地(1%)を陰性対照とした。刺激剤を添加した直後、プレートをIncuCyte(登録商標)系に移し、72時間にわたって2時間ごとに各ウェルを画像化することにより細胞遊走をモニターした。統合解析ソフトウェアを用いてデータ解析を行った。
【0354】
TRANSWELL(登録商標)アッセイを介した細胞移動を評価するために、3.5×10のHCT116細胞を、24ウェルプレート(8μm孔径、Corning Costar)中のTC処理ポリカーボネート膜を有する6.5mmインサートの上部コンパートメント内の100μLの10%FBS培養培地中に播種した。600μLの10%FBS培地を下部コンパートメントに添加した。細胞を24時間沈降させた。DPBS洗浄後、上部及び下部コンパートメントにそれぞれ100μL及び600μLの0.5%FBS培地を添加した。次いで、M. faecisからの0.4倍濃縮抽出物を下部コンパートメントに添加した。これらの細菌抽出物は、前述のようにアンバーライトXAD-7樹脂を用いて調製した。16時間後、細胞をDPBSで洗浄し、膜の頂部に付着した細胞を綿チップで注意深く除去した。次いで、膜の底部上の遊走細胞を70%エタノール中で10分間固定し、次いで、0.25%クリスタルバイオレット中で5分間染色した。TRANSWELL(登録商標)インサートを水で洗浄し、乾燥し、膜をガラススライド上の50%グリセロール/水でマウントし、直ちに画像化した。TRANSWELL(登録商標)実験を生物学的及び技術的三連文で実施し、各反復について、膜の2つの代表的な画像を10倍で撮影した。移動した細胞数は、ImageJを用いて自動的にカウントし、平均細胞数を表示した。細胞遊走の程度は、3つの生物学的及び3つの技術的反復からのウェル当たりの2つの顕微鏡的場における遊走細胞の平均数として表した。
【0355】
PBMC免疫調節活性の特性評価
PBMCを、以前に記載されたように抽出した(Mallone et al., 2011)。簡単に説明すると、PBMCを、Ficoll/Lymphoprep勾配(Stemcell)を用いて血液試料から単離し、80℃で凍結し、液体窒素中に保存した。実験のために、250,000PBMC/ウェルを24ウェルプレートに播種した。PBMCをIL-1β(50ng/mL)、IL-6(10ng/mL)で37℃で14時間、PMA/イオノマイシン/モネンシン(40ng/mL、1mg/mL、2mg/mL)で37℃で4時間刺激し、未処理対照を陰性対照とした。必要に応じて、PBMCを、最終濃度10% v/vで、細菌上清又は細菌培地対照を用いて37℃で30分間前処理した。未刺激の未処理ヒトPBMC:CD3、CD4、CD8、CD69、TCRgd、CD56、CD11b、CD11c、及びCD80について抗体滴定最適化を行った後に決定した希釈を用いて、PBMCを以下の細胞マーカーについて染色した。PBMCを最終的にCytoflex S(Beckman Coulter)で分析し、データをFloJo V10で分析した。
【0356】
PBMC培養上清中に存在するサイトカインを特徴付けるために、上記のように刺激したPBMCからの細胞培養培地上清を回収し、-80℃で保存した後、これらの上清を解凍し、LEGENDplexヒト炎症パネルIアッセイ(BioLegend)で使用して、サイトカイン産生(IL-1β、IFN-α2、IFN-γ、TNF、MCP-1、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12p70、IL-17A、IL-18、IL-23、及びGM-CSF)に対する効果を測定した。未希釈上清を、特異的分析物に対する抗体に結合した捕捉ビーズとインキュベートした。洗浄後、ビオチン化検出抗体混合物を添加して、「捕獲ビーズ-分析物-検出抗体」サンドイッチを作製する。ストレプトアビジン-フィコエリトリン(SA-PE)を加えて、ビオチン化検出抗体に結合させる。最終洗浄後、混合物をフローサイトメトリーにより分析し、ここで、ビーズは、サイズ及び内部蛍光強度によって識別される。サイトカイン濃度は、PE蛍光により決定し、BioLegendのLEGENDplexデータ分析ソフトウェアを用いて、既知のサイトカイン濃度の標準曲線と比較する。ビーズの独特のサイズ及び蛍光特性により、13のサイトカインの同時測定が可能となる。
【0357】
TEER(Trans-Epithelial Electrical Resistance)を用いた上皮バリア完全性アッセイ
MH23の関門完全性の喪失を防止する能力を、T84腸上皮細胞の融合単層を横切る経上皮電気抵抗を測定することによって評価した。T84細胞をCellBank Australiaから購入し、5%ウシ胎児血清及び1%ペニシリン-ストレプトマイシンを補充したダルベッコ変法イーグル培地混合物12(DMEM/F12;ThermoFisher Scientific,Waltham,MA,USA)中で培養した。T84細胞を、400μl培地中でウェル当たり60.000細胞の密度で0.4μmの孔径(PSHT010R5)の24ウェルミリセルポリカーボネート細胞培養インサートに播種し、そして24mlの培地を単一ウェルフィーダートレイに添加した。両コンパートメントの培地交換を2日ごとに行った。培養7日後、細胞培養インサートを有するプレートアセンブリの上部をフィーダートレイから24ウェルレシーバートレイ(PSMW010R5)に移し、各ウェルに800μl培地を含有させた。次に、各ウェルのTER値を、Millicell ERS-2ボルトメータを用いて毎日測定した。実験は、すべてのウェルの細胞が1500Ωを超える安定したTEER値に達した時点で開始した。トファシチニブ(75μM)、3kDaろ過細菌培地(TY)又はT84培地中5%、10%又は20%に希釈した3kDaろ過MH23細菌上清を頂端コンパートメントに添加した。1時間前処理後、IFNg(50ng/ml)を基底外側に添加してバリア完全性を破壊し、48時間処理後に除去した。24時間毎に処理及び培地を更新し、TER値を2回測定した。2回の生物学的反復測定で得られたデータは、各々、対照(未処理T84細胞)と比較したTER値のパーセンテージ差として示された。統計的有意性は対応のないt検定によって決定した。
【0358】
MH23の障壁完全性の回復促進能力もMaestro Proシステムを用いて評価した。簡単に説明すると、T84細胞を、10%熱不活化ウシ胎児血清及び1%ペニシリン-ストレプトマイシンT75フラスコを補充した(DMEM/F12)中で、37℃、5%COで、約75%コンフルエントになるまで増殖させた。細胞を96ウェルCytoView-Zプレート中の全部で0.2mL/ウェル中の0.1×10細胞の密度で播種し、Maestro Proシステム(Axion BioSystems,Atlanta,GA,USA)中で37℃、5%COでインキュベートした。培地は3日ごとに更新された。スタビルTEER測定が確立されると(播種後約100時間)、細胞を組換えヒトIFNγ(100ng/mL;研究開発システム、米国ミネソタ州ミネアポリス)で刺激した。刺激後72時間に、細胞をdPBS(ThermoFisher Scientific、Waltham、米国)で洗浄し、培地をDMEM/F12のみ、又は先に概説したようにアンバーライトXAD-7樹脂を用いて調製したピロリジンジチオカルバメート(PDTC;50μM)、1×YG/V培地対照又は1×MH23-3細菌培養上清抽出物を添加したDMEM/F12で置き換えた。全条件を4重複として分析した。治療後5時間で、TER測定値を記録し、観察された治療効果を、対照(未処理T84細胞)と比較したTER値のパーセンテージ差として提示した。統計的有意性は対応のないt検定によって決定した。
【0359】
代謝分析
M. faecis MH23によって産生された代謝産物を評価するために、6つの独立したコロニーを接種し、初期固定相まで増殖させた。次いで、各種培養ブロスを用いて、6つの生物学的複製物から12の技術的反復を生成するYG/Vの2技術的反復を接種した。技術的反復を、初期固定相まで増殖させ、次いで、無細胞培養上清を、嫌気性チャンバー中で12,550gで3分間遠心分離した後に回収した。培養上清をドライアイス上でスナップ凍結し、試験まで-80℃で保存した。
【0360】
サンプル分析は、以下のようにMS-Omics(デンマーク)によって実施された。Thermo Q Exactive HF MSに結合したThermo Scientific Vanquish LCを用いて分析を行い、イオン化源としてエレクトロスプレーイオン化界面を用いた。分析は負及び正イオン化モードで行った。UPLCは、Catalinら(UPLC/MS Monitoring of Water-Soluble Vitamin Bs in Cell Culture Media in Minutes, Water Application note 2011, 720004042en)によって記載されたプロトコールのわずかに改変されたバージョンを用いて実施した。化合物検出器3.1(Thermo Scientific)を用いてピーク面積を抽出した。化合物の同定は、以下の4つのレベルで行った。レベル1:保持時間による同定(自社の標準品と比較)、正確な質量(容認された偏差3ppm)、及びMS/MSスペクトル、レベル2a:保持時間による同定(自社の標準品と比較)、正確な質量(容認された偏差3ppm)。レベル2b:正確な質量による同定(容認された偏差が3ppmの場合)、MS/MSスペクトル、レベル3:正確な質量のみによる同定(容認された偏差が3ppmの場合)。
【0361】
本明細書に引用されるすべての特許、特許出願、及び刊行物の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0362】
本明細書における引用は、そのような引用が本出願に対する「先行技術」として利用可能であることを認めるものと解釈されるべきではない。
【0363】
本明細書を通して、本発明を任意の1つの実施形態又は特徴の特定の集合に限定することなく、本発明の好ましい実施形態を説明することが目的であった。従って、当業者は、本開示に照らして、本発明の範囲から逸脱することなく、例示された特定の実施形態において種々の修正及び変更を行うことができることを理解するであろう。このような変更及び変更はすべて、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図されている。
【0364】
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図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
2024518084000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-01-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受託番号V21/006223、V21/006224、V21/006225若しくはV21/006226、又はその誘導体のいずれか1つの下に寄託されている、Mediterlaneibacter faecis株の細胞。
【請求項2】
細胞が、少なくとも部分的に単離される、請求項1に記載の細胞。
【請求項3】
受託番号V21/006223、V21/006224、V21/006225、V21/006225若しくはV21/006226、又はそれらの誘導体のいずれか1つの下に寄託される、Mediterlaneibacter faecis株の生物学的に純粋な培養物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の細胞、又は請求項3に記載の培養物を含む組成物。
【請求項5】
配列番号1~24のうちの1つ以上と少なくとも約97.5%、98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、若しくは99.9%同一である16S rRNA配列、又は配列番号1~24のうちの1つ以上により表される16S rRNA遺伝子を有する、単離された細菌株を含む組成物。
【請求項6】
薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤とともに、Mediterraneibacter faecis種の細菌株の16S rRNA配列と少なくとも約97%、98%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である16S rRNA配列を有する細菌株を含む医薬組成物であって、Clostridium属の細菌を含まない医薬組成物。
【請求項7】
薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、又は担体をさらに含む、請求項4~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤とともに、Mediterlaneibacter faecis種の細菌株の16S rRNA配列と少なくとも約97%、98%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である16S rRNA配列を有する、単離された細菌株を含む医薬組成物。
【請求項9】
薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤とともに、Mediterraneibacter faecis種の細菌株の16S rRNA配列と少なくとも約97%、98%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である16S rRNA配列を有する細菌株を含む医薬組成物であって、Clostridium属の細菌を含まない医薬組成物。
【請求項10】
薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤とともに、M. faecis及びM. lactarisのMRCAの系統発生的子孫である細菌株を含む医薬組成物。
【請求項11】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)からのbac120系統樹のノード52630で定義される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
細菌株が少なくとも部分的に単離されている、請求項5~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
細菌株が生きているか又は死んでいる、請求項4~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
組成物が乾燥形態である、請求項4~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
組成物が、カプセル、錠剤、丸剤、トローチ、ロゼンジ、粉末、又は顆粒に製剤化される、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
組成物が、凍結乾燥、スプレー乾燥、流動層乾燥、真空乾燥、又はそれらの組み合わせによって乾燥されている、請求項14又は請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
組成物が腸への送達のために製剤化されている、請求項4~16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
プレバイオティックをさらに含む、請求項4~17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
1つ以上の追加の細菌株をさらに含む、請求項4~18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
1つ以上の追加の細菌株が少なくとも部分的に単離されている、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
細菌株が、細胞におけるシグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)のシグナル伝達を減弱又は障害する物質を産生する、請求項1~20のいずれか1項に記載の細胞、培養物、又は組成物。
【請求項22】
物質が小分子、ペプチド、又はヌクレオチドである、請求項21に記載の細胞、培養物、又は組成物。
【請求項23】
物質が細菌によって放出される、請求項21又は請求項22に記載の細胞、培養物又は組成物。
【請求項24】
物質が、STAT3、JAK2、TYK、又はIL-23のいずれか1つに特異的に結合する、請求項2123のいずれか1項に記載の細胞、培養物、又は組成物。
【請求項25】
細菌株が、プロピオン酸塩、乳酸塩、酢酸塩、及びギ酸塩を含む群から選択される1種以上の代謝産物を産生する、請求項1~24のいずれか1項に記載の細胞、培養物、又は組成物。
【請求項26】
細菌株が酪酸塩を産生しない、請求項1~25のいずれか1項に記載の細胞、培養物、又は組成物。
【請求項27】
細菌株がビタミンB12を産生する、請求項1~26のいずれか1項に記載の細胞、培養物、又は組成物。
【請求項28】
細菌株がM. faecis種のものである、請求項1~27のいずれか1項に記載の細胞、培養物、又は組成物。
【請求項29】
細菌株がM. lactaris種のものである、請求項1~27のいずれか1項に記載の細胞、培養物、又は組成物。
【請求項30】
請求項4~29のいずれか1項に記載の組成物を含む食品又は飲料製品。
【請求項31】
対象において腸障壁機能を回復又は改善する方法であって、Mediterlaneibacter属の単離された細菌株を対象に投与し、それによって腸障壁機能を回復又は改善することを含む、方法。
【請求項32】
細菌株が、M. faecis及びM. lactarisのMRCAの系統発生的子孫である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)のr95からのbac120系統樹のノード52630で定義される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
細菌株がM. faecis種のものである、請求項3133のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
細菌株が、M. lactaris種のものである、請求項3133のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
腸障壁機能の回復又は改善が、(i)ムチンの質及び/又は量の増加;(ii)タイトジャンクションタンパク質の完全性の改善;(iii)管腔内容物の全身循環への移行の減少;又は(iv)腸潰瘍及び/又は腸創傷の減少のうちの少なくとも1つによって特徴付けられる、請求項3135のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
管腔内容物がリポ多糖類(LPS)を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
腸障壁機能不全の回復又は改善が、対象における全身性炎症の減少をもたらす、請求項3137のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
対象由来の試料中の炎症性サイトカイン(例えば、IL-1β、IL-8、IL-6、及びTNF)のレベルが所定の閾値を超える場合に、全身性炎症が対象において同定される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
対象において粘膜治癒を誘導又は増強する方法であって、上皮細胞の遊走及び/又は増殖を誘導するのに十分な量のMediterlaneibacter faecis属の細菌株を対象に投与し、それによって対象において粘膜治癒を誘導することを含む、方法。
【請求項41】
細菌株が、M. faecis及びM. lactarisのMRCAの系統発生的子孫である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)のr95からのbac120系統樹のノード52630で定義される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
細菌株がM. faecis種のものである、請求項4042のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
細菌株が、M. lactaris種のものである、請求項4042のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
粘膜治癒が、1種以上の糞便又は血清マーカーを用いて測定される、請求項4044のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
1つ以上の糞便マーカーが、カルプロテクチン、ラクトフェリン、メタロプロテイナーゼ(MMP)-9、及びリポカリン-2を含む群から選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
粘膜治癒が、内視鏡スコアを用いて測定される、請求項4046のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
対象の炎症を軽減する方法であって、治療有効量のMediterlaneibacter faecis属の細菌株を対象に投与し、それによって対象の炎症を軽減することを含む、方法。
【請求項49】
細菌種が、M. faecis及びM. lactarisのMRCAの系統発生的子孫である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)のr95からのbac120系統樹のノード52630で定義される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
細菌株がM. faecis種のものである、請求項4850のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
細菌株がM. lactaris種のものである、請求項4850のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
炎症が腸環境に局所的であるか又は全身性炎症である、請求項4852のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
細菌株が、(例えば、NFκBを減少又は阻害することによって)NFκB経路を減弱する、請求項4853のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
細菌株が、TNF、IFN-γ、IL-1β、IL-8、及びMCP-1を含む群から選択されるサイトカイン又はケモカインのうちの1種以上の産生を阻害する、請求項4854のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
標的細胞におけるSTAT3シグナル伝達の活性化を遮断又は阻害する方法であって、標的細胞をMediterraneibacter属の細菌細胞調製物の少なくとも可溶性成分と接触させて、標的細胞におけるSTAT3シグナル伝達の活性化を遮断又は阻害することを含む、方法。
【請求項57】
細菌株がM. faecis及びM. lactarisのMRCAの系統発生的子孫である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)のr95からのbac120系統樹のノード52630で定義される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
細菌株がM. faecis種である、請求項5658のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
細菌株がM. lactaris種である、請求項5658のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
標的細胞が、レポーター細胞(例えば、HEK細胞)、免疫細胞(例えば、Th17免疫細胞)、上皮細胞、及び内皮細胞を含む群から選択される、請求項5660のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
細菌細胞調製物が細菌細胞培養物を含む、請求項5661のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
可溶性成分が細菌細胞培養物の上清を含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
可溶性成分が細菌細胞から実質的に枯渇している、請求項5663のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
細菌細胞調製物が細菌細胞ペレットを含む、請求項5661のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
可溶性成分が溶解細胞の可溶性画分を含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
可溶性画分が、遠心分離によって不溶性細胞画分から実質的に分離される、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
方法がインビトロで実施される、請求項5667のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
対象の腸環境においてSTAT3シグナル伝達を遮断又は阻害する方法であって、Mediterlaneibacter属の細菌株を対象に投与し、対象の腸環境においてSTAT3シグナル伝達を遮断又は阻害することを含む、方法。
【請求項70】
細菌株がM. faecis及びM. lactarisのMRCAの系統発生的子孫である、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)のr95からのbac120系統樹のノード52630で定義される、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
細菌株がM. faecis種のものである、請求項6971のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
細菌株がM. lactaris種のものである、請求項6971のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
細胞が免疫細胞(例えば、Th17免疫細胞)、上皮細胞、又は内皮細胞である、請求項6973のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
細胞が上皮細胞であり、細菌株又は分子が対象におけるIL-22の産生を増加させる、請求項6974のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
細菌株が、STAT3の直接阻害剤又は間接阻害剤である分子を産生する、請求項6975のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
細菌株が、IL-23ポリペプチド、JAK2ポリペプチド、TYK2ポリペプチド、又はSTAT3ポリペプチドのうちの少なくとも1つを直接阻害する分子を産生する、請求項6976のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
細菌株が、プロピオン酸塩、乳酸塩、及びギ酸塩のうちの1種以上の代謝産物を産生する、請求項3177のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
細菌株がビタミンB12を産生する、請求項3178のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
細菌株が酪酸塩を産生しない、請求項3179のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
細菌株が、M. faecis種の細菌株の16S rRNA配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%又は99.9%同一である16S rRNA配列を有するか;又は細菌株が、M. faecis種の細菌株の16S rRNA配列を有する、請求項3180のいずれか1項に記載の方法。
【請求項82】
細菌株が、配列番号1~24のうちの1つ以上と少なくとも約97.5%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%若しくは99.9%同一である16S rRNA配列を有するか、又は細菌株が、配列番号1~24のうちの1つ以上によって示される16S rRNA遺伝子配列を有する、請求項3180のいずれか1項に記載の方法。
【請求項83】
細菌株が、受託番号V21/006223、V21/006224、V21/006225若しくはV21/006226のいずれか1つの下で寄託されているMediterlaneibacter faecis株、又はその誘導体である、請求項3182のいずれか1項に記載の方法。
【請求項84】
細菌株が少なくとも部分的に単離される、請求項3184のいずれか1項に記載の方法。
【請求項85】
細菌株が、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤をさらに含む、医薬組成物として製剤化される、請求項3154のいずれか1項に記載の方法。
【請求項86】
組成物が乾燥形態である、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
乾燥形態が、粒子、顆粒、及び粉末を含む群から選択される、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
組成物が、凍結乾燥、スプレー乾燥、流動層乾燥、真空乾燥、又はそれらの組み合わせによって乾燥される、請求項86又は請求項87に記載の方法。
【請求項89】
医薬組成物が経口投与用に製剤化される、請求項8588のいずれか1項に記載の方法。
【請求項90】
対象における炎症性又は自己免疫障害を治療又は予防する方法であって、有効量のMediterraneibacter属の単離された細菌株を対象に投与し、それによって炎症性又は自己免疫障害を治療又は予防することを含む、方法。
【請求項91】
細菌株が、M. faecis及びM. lactarisのMRCAの系統発生的子孫である、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)のr95からのbac120系統樹のノード52630で定義される、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
細菌株がM. faecis種のものである、請求項9092のいずれか1項に記載の方法。
【請求項94】
細菌株がM. lactaris種のものである、請求項9092のいずれか1項に記載の方法。
【請求項95】
炎症性又は自己免疫障害が、炎症性腸疾患(クローン病又は潰瘍性大腸炎など);喘息(アレルギー性喘息又は好中球性喘息など);関節炎(関節リウマチ、変形性関節炎、乾癬性関節炎、又は若年性特発性関節炎など);脂肪肝疾患(非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLDなど));強直性脊椎炎;乾癬;全身性エリテマトーデス(SLE);強皮症;シェーグレン症候群;血管炎;1型糖尿病を含む群から選択される、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
炎症性又は自己免疫障害が炎症性腸疾患(IBD)である、請求項90又は請求項95記載の方法。
【請求項97】
対象に投与された場合、細菌株が、対象の少なくとも1つの細胞におけるSTAT3シグナル伝達を遮断するか、又はさもなければ阻害する、請求項9096のいずれか1項に記載の方法。
【請求項98】
細胞が、上皮細胞、免疫細胞(例えば、Th17免疫細胞)、又は内皮細胞である、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
細菌株が、プロピオン酸塩、乳酸塩、酢酸塩、及びギ酸塩を含む群から選択される1種以上の代謝産物を産生する、請求項9098のいずれか1項に記載の方法。
【請求項100】
細菌株が酪酸塩を産生しない、請求項9099のいずれか1項に記載の方法。
【請求項101】
細菌株がビタミンB12を産生する、請求項90100のいずれか1項に記載の方法。
【請求項102】
細菌株が、Mediterlaneibacter属の細菌株の16S rRNA配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%同一である16S rRNA配列を有する、請求項90101のいずれか1項に記載の方法。
【請求項103】
細菌株が、配列番号1~24のうちの1つ以上と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、99%、99.5%若しくは99.9%同一である16S rRNA配列を有するか、又は細菌株が、配列番号1~24のうちの1つ以上によって示される16S rRNA遺伝子配列を有する、請求項90101のいずれか1項に記載の方法。
【請求項104】
細菌株が少なくとも部分的に単離される、請求項91103のいずれか1項に記載の方法。
【請求項105】
細菌株が、薬学的に許容される担体、希釈剤及び/又は賦形剤とともに、医薬組成物として製剤化される、請求項90104のいずれか1項に記載の方法。
【請求項106】
組成物が乾燥形態である、請求項105に記載の方法。
【請求項107】
乾燥形態が、粒子、顆粒、及び粉末を含む群から選択される、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
組成物が、凍結乾燥、スプレー乾燥、流動層乾燥、真空乾燥、又はそれらの組み合わせによって乾燥される、請求項105又は請求項106に記載の方法。
【請求項109】
抗炎症剤が対象に同時投与される、請求項90108のいずれか1項に記載の方法。
【請求項110】
抗炎症剤が、5-アミノサリチル酸塩、コルチコステロイド、アザチオプリン、インフリキシマブ、及びアダリムマブを含む群から選択される、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
治療することが、組成物を対象に投与する前に、対象がM. faecis腸内細菌の欠損を有することを同定することを含む、請求項31110のいずれか1項に記載の方法。
【請求項112】
対象における欠損を同定することが、16S rRNA配列決定及び/又は全ゲノム配列決定によって、対象の糞便中のM. faecis細菌の測定を含む、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
細菌株が生きているか又は死んでいる、請求項31112のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項114】
プレバイオティックをさらに含む、請求項31113のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項115】
1種以上の追加の細菌株をさらに含む、請求項31114のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項116】
対象が哺乳動物対象である、請求項31115のいずれか1項に記載の方法。
【請求項117】
対象がヒト対象である、請求項31116のいずれか1項に記載の方法。
【請求項118】
治療に使用するための、Mediterlaneibacter属の細菌株を含む組成物。
【請求項119】
細菌株がM. faecis及びM. lactarisのMRCAの系統発生的子孫である、請求項118に記載の組成物。
【請求項120】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)のr95からのbac120系統樹のノード52630で定義される、請求項119に記載の組成物。
【請求項121】
治療に使用するための、Mediterlaneibacter faecisの細菌株を含む組成物。
【請求項122】
治療に使用するための、Mediterlaneibacter lactarisの細菌株を含む組成物。
【請求項123】
炎症性又は自己免疫障害の治療又は予防に使用するための、Mediterlaneibacter属の細菌株を含む組成物。
【請求項124】
細菌株が、M. faecis及びM. lactarisのMRCAの系統発生的子孫である、請求項123に記載の組成物。
【請求項125】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)のr95からのbac120系統樹のノード52630で定義される、請求項124に記載の組成物。
【請求項126】
炎症性又は自己免疫障害の治療又は予防に使用するための、Mediterlaneibacter faecisの細菌株を含む組成物。
【請求項127】
炎症性又は自己免疫障害の治療又は予防に使用するための、Mediterlaneibacter lactarisの細菌株を含む組成物。
【請求項128】
炎症性又は自己免疫障害を治療するための医薬の製造におけるMediterlaneibacter属の細菌株の使用。
【請求項129】
細菌株が、M. faecis及びM. lactarisのMRCAの系統発生的子孫である、請求項128に記載の使用。
【請求項130】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)のr95からのbac120系統樹のノード52630で定義される、請求項129記載の使用。
【請求項131】
炎症性又は自己免疫障害を治療するための医薬の製造における、Mediterlaneibacter faecisの細菌株の使用。
【請求項132】
炎症性又は自己免疫障害を治療するための医薬の製造における、Mediterlaneibacter lactarisの細菌株の使用。
【請求項133】
炎症性又は自己免疫障害が、炎症性腸疾患(クローン病又は潰瘍性大腸炎など);喘息(アレルギー性喘息又は好中球性喘息など);関節炎(関節リウマチ、変形性関節炎、乾癬性関節炎、又は若年性特発性関節炎など);脂肪肝疾患(非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLDなど));強直性脊椎炎;乾癬;全身性エリテマトーデス(SLE);強皮症;シェーグレン症候群;血管炎;1型糖尿病から選択される、請求項123132のいずれか1項に記載の組成物又は使用。
【請求項134】
炎症性又は自己免疫障害が炎症性腸疾患(例えば、クローン病又は潰瘍性大腸炎)である、請求項123133のいずれか1項に記載の組成物又は使用。
【請求項135】
細菌株が、受託番号V21/006223、V21/006224、V21/006225若しくはV21/006226のいずれか1つの下で寄託されているMediterlaneibacter faecis株、又はその誘導体である、請求項123134のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項136】
炎症性又は自己免疫性障害の治療に使用するための組成物であって、Mediterraneibacter属の細菌株;及び抗炎症剤を含む、組成物。
【請求項137】
細菌株が、M. faecis及びM. lactarisのMRCAの系統発生的子孫である、請求項136に記載の組成物。
【請求項138】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)のr95からのbac120系統樹のノード52630で定義される、請求項137に記載の組成物。
【請求項139】
細菌株がM. faecis種のものである、請求項136138のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項140】
細菌株がM. lactaris種のものである、請求項136138のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項141】
抗炎症剤が、5-アミノサリチル酸塩、コルチコステロイド、アザチオプリン、インフリキシマブ、及びアダリムマブを含む群から選択される、請求項136140のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項142】
炎症性又は自己免疫障害の治療に使用するための組成物であって、Mediterlaneibacter属の細菌株;及び栄養補助食品を含む、組成物。
【請求項143】
細菌株がM. faecis及びM. lactarisのMRCAの系統発生的子孫である、請求項142に記載の組成物。
【請求項144】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)のr95からのbac120系統樹のノード52630で定義される、請求項143に記載の組成物。
【請求項145】
細菌株がM. faecis種のものである、請求項142144のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項146】
細菌株がM. lactaris種のものである、請求項142144のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項147】
対象の健康を改善又は維持する方法であって、M. faecisの細菌株を含む組成物を該対象に投与し、それによって対象の健康を維持又は改善することを含む方法。
【請求項148】
栄養補給物を対象に投与することをさらに含む、請求項147に記載の方法。
【請求項149】
Mediterlaneibacter属の細菌株;及び栄養補助食品を含む可食性又は飲料用の製造物。
【請求項150】
細菌株が、M. faecis及びM. lactarisのMRCAの系統発生的子孫である、請求項149に記載の製造物。
【請求項151】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)のr95からのbac120系統樹のノード52630で定義される、請求項150に記載の製造物。
【請求項152】
細菌株がM. faecis種のものである、請求項149151のいずれか1項に記載の製造物。
【請求項153】
細菌株がM. lactaris種のものである、請求項149151のいずれか1項に記載の製造物。
【請求項154】
栄養補助食品がプレバイオティックである、請求項149153のいずれか1項に記載の製造物。
【国際調査報告】