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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-24
(54)【発明の名称】眼圧低下方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/352 20060101AFI20240417BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240417BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20240417BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240417BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240417BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20240417BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20240417BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240417BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240417BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240417BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240417BHJP
   A61K 31/472 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
A61K31/352
A61K45/00
A61P27/06
A61P27/02
A61P43/00 121
A61K9/107
A61K47/44
A61K47/10
A61K47/26
A61K47/32
A61K47/22
A61K31/472
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570186
(86)(22)【出願日】2022-05-12
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 US2022072287
(87)【国際公開番号】W WO2022241456
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】63/187,472
(32)【優先日】2021-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523427881
【氏名又は名称】ユニバーシティ・オブ・ミシシッピー
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF MISSISSIPPI
(71)【出願人】
【識別番号】523427009
【氏名又は名称】ドゥディパラ,ナレンダー
【氏名又は名称原語表記】DUDHIPALA,Narendar
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(74)【代理人】
【識別番号】100221534
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 志穂
(72)【発明者】
【氏名】ドゥディパラ,ナレンダー
(72)【発明者】
【氏名】マジュンダル,ソウメジット
(72)【発明者】
【氏名】エルソーリー,マフムード エイ
(72)【発明者】
【氏名】グール,ワシーム
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA17
4C076BB24
4C076CC10
4C076DD38
4C076DD46F
4C076DD59
4C076EE09
4C076EE23F
4C076EE53
4C076FF70
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA22
4C084MA58
4C084NA05
4C084ZA33
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086BC30
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA22
4C086MA58
4C086NA05
4C086ZA33
4C086ZC75
(57)【要約】
本明細書では、対象の眼圧亢進の低下または予防のための方法を記載する。当該方法は、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールエステルまたはその誘導体およびRhoキナーゼ阻害薬の対象への投与に関する。デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールエステルまたはその誘導体およびRhoキナーゼ阻害薬の併用は、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールエステルまたはその誘導体およびRhoキナーゼ阻害薬の単独投与と比較した場合、眼圧の低下に有効である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする対象における眼圧(IOP)亢進の処置または予防のための方法であって、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体およびRhoキナーゼ阻害薬を対象に投与することを含む方法。
【請求項2】
Rhoキナーゼ阻害薬がネタルスジルまたはその医薬上許容される塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルが構造I
【化1】
を有し、R1がバリン、サルコシン、ロイシン、グルタミン、トリプトファン、チロシン、アラニン、4(4-アミノフェニル)酪酸、またはその塩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルの誘導体が構造II
【化2】
を有し、nが1~9の整数である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルの誘導体がデルタ-9-テトラヒドロカンナビノール-バリン-ヘミコハク酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体がナノエマルションの成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体およびRhoキナーゼ阻害薬が、対象の眼にそれぞれ局所投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも5日間、1日1回実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体、眼科的に好適な油、眼科的に好適な界面活性剤、および水を含むナノエマルション。
【請求項10】
デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルが構造I
【化3】
を有し、R1がバリン、サルコシン、ロイシン、グルタミン、トリプトファン、チロシン、アラニン、4(4-アミノフェニル)酪酸、またはその塩を含む、請求項9に記載のナノエマルション。
【請求項11】
デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルの誘導体が構造II
【化4】
を有し、nが1~9の整数である、請求項9に記載のナノエマルション。
【請求項12】
デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルの誘導体がデルタ-9-テトラヒドロカンナビノール-バリン-ヘミコハク酸である、請求項9に記載のナノエマルション。
【請求項13】
ナノエマルションが約0.01 % w/v~約2 % w/vのデルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体を含む、請求項9に記載のナノエマルション。
【請求項14】
眼科的に好適な油が、ひまし油、綿実油、大豆油、ごま油、またはそのいずれかの組み合わせを含む、請求項9に記載のナノエマルション。
【請求項15】
ナノエマルションが約1 %~約10 % w/vの眼科的に好適な油を含む、請求項9に記載のナノエマルション。
【請求項16】
眼科的に好適な界面活性剤が非イオン性界面活性剤を含む、請求項9に記載のナノエマルション。
【請求項17】
眼科的に好適な界面活性剤がポロキサマー、ポリソルベート、またはそのいずれかの組み合わせを含む、請求項9に記載のナノエマルション。
【請求項18】
ナノエマルションが約0.01 % w/v~約1 % w/vのポロキサマーおよび約0.5 % w/v~約5 % w/vのポリソルベートを含む、請求項17に記載のナノエマルション。
【請求項19】
さらに眼科的に好適なポリマーを含む、請求項9に記載のナノエマルション。
【請求項20】
眼科的に好適なポリマーが架橋型ポリアクリル酸を含む、請求項19に記載のナノエマルション。
【請求項21】
さらに眼科的に好適なポリオールを含む、請求項9に記載のナノエマルション。
【請求項22】
眼科的に好適なポリオールがグリセリンを含む、請求項21に記載のナノエマルション。
【請求項23】
さらに眼科的に好適なエトキシル化トコフェロールまたはトコトリエノールを含む、請求項9に記載のナノエマルション。
【請求項24】
眼科的に好適なエトキシル化トコフェロールまたはトコトリエノールが、D-アルファ-トコフェロールポリエチレングリコール、ビタミンEポリエトキシル化コハク酸、またはそのいずれかの組み合わせである、請求項23に記載のナノエマルション。
【請求項25】
ナノエマルションが約0.0001 % w/v~約0.01 % w/vの眼科的に好適なエトキシル化トコフェロールまたはトコトリエノールを含む、請求項23に記載のナノエマルション。
【請求項26】
約0.01 % w/v~約2 % w/vのデルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体、
約1 %~約10 % w/vの眼科的に好適な油、
約0.51 % w/v~約6 % w/vの眼科的に好適な界面活性剤、
約0.1 % w/v~約2 % w/vの眼科的に好適なポリマー、
約1 %~約5 % w/vの眼科的に好適なポリオール、
約0.0001 % w/v~約0.01 % w/vの眼科的に好適なエトキシル化トコフェロールまたはトコトリエノール、および
水、
を含むナノエマルション。
【請求項27】
さらにRhoキナーゼ阻害薬を含む、請求項26に記載のナノエマルション。
【請求項28】
Rhoキナーゼ阻害薬が、ネタルスジルまたはその医薬上許容できる塩である、請求項27に記載のナノエマルション。
【請求項29】
約0.005 % w/v~約0.05 % w/vのRhoキナーゼ阻害薬を含む、請求項27に記載のナノエマルション。
【請求項30】
平均液滴径が約200 nm~約250 nmである、請求項9から29のいずれかに記載のナノエマルション。
【請求項31】
多分散指数が約0.15~約0.25である、請求項9から29のいずれかに記載のナノエマルション。
【請求項32】
ゼータ電位が約-20 mV~約-60 mVである、請求項9から29のいずれかに記載のナノエマルション。
【請求項33】
請求項9から29のいずれかに記載のナノエマルションを対象に投与することを含む、IOP亢進を処置または予防するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は2021年5月12日に出願された米国仮特許出願第63/187,472号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(THC)は、植物のカンナビス・サティバ(マリファナ)の主な有効成分であり、薬理効果の大部分を担っている。人々は古来より、その植物(多数のカンナビノイドを含む)を薬用目的でも、その中毒性のためでも利用してきた。マリファナは主に乱用薬物として知られるが、有効成分THCには重要な薬理特性があり、適切な送達メカニズムがあれば、特定の治療効果に向けることができる。現在までに、米国食品医薬品局(FDA)が承認した最も有望な臨床適用は、化学療法に伴う悪心・嘔吐の調節と、食欲不振や消耗症候群を患うエイズ患者の食欲増進である。
【0003】
THCには数多くの生物学的活性があり、さらなる治療への適用の可能性がある。適用の可能性の1つは、緑内障の処置である。緑内障は、血流の減少または体液の排出不良によって引き起こされる眼内の眼圧(IOP)上昇など、さまざまなメカニズムによって視神経に進行性の損傷をもたらし、視力喪失につながることがあり、不可逆的な失明の主因となっている。網膜神経節細胞(RGC)の耐圧よりも眼圧亢進(elevated IOP)の状態が続くと、RGCの変性につながる。RGCは一度損傷を受けると再生されず、視力喪失が始まるまで主要な警告サインがないことから緑内障は静かなる疾患として知られる。しかし、THCの局所適用はIOPに影響を与えないという研究結果がある。さらに、米国緑内障学会は、マリファナは眼圧を低下させるが、その副作用と作用期間の短さ、さらにその使用が緑内障の経過を変えるという証拠がないことから、緑内障の処置に対し、いかなる形式でもこの薬の推奨を排除するという見解を示している。
【0004】
現在のIOP処置薬にはラタノプロストとロプレッサ(登録商標)がある。これらの製品はIOP処置に関して緩和を提供するが、現在の治療法に対する耐性の副作用または発生により、処置の選択肢の数は限られ、そのためIOPを低下させるための新たな処置や治療の必要性が依然としてある。
【発明の概要】
【0005】
本明細書に記載するのは、対象におけるIOP上昇を低下または予防するための、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体、および例えばネタルスジルまたはその医薬上許容される塩などのRhoキナーゼ阻害薬の使用である。この方法は、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体と、例えばネタルスジルまたはその医薬上許容される塩などのRhoキナーゼ阻害薬とを、対象に共投与することを含む。1つの態様において、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体およびRhoキナーゼ阻害薬は、対象に順次投与し得る。他の態様において、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体およびRhoキナーゼ阻害薬は、単一の医薬製剤として対象に投与し得る。デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体とRhoキナーゼ阻害薬との併用は、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体とRhoキナーゼ阻害薬とを独立して投与する場合と比較して、IOPをより大きく低下させるのに有効である。
【0006】
本開示の他のシステム、方法、特徴、および利点は、以下の図面および詳細な説明を調査することにより、当業者に明らかになるであろう。このようなさらなるのシステム、方法、特徴、および利点はすべて本明細書内に含まれ、本開示の範囲内にあり、添付の特許請求の範囲によって保護されることが意図される。加えて、記載される実施形態のすべての選択的および好ましい特徴および改変は、本明細書で教示される本開示のすべての態様において使用可能である。さらに、従属請求項の個別の特徴でも記載される実施形態のすべての選択的および好ましい特徴および改変でも、互いに組み合わせ可能であり、交換可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示の多くの態様は、以下の図面を参照することにより、より良く理解することができる。図面の構成要素は、必ずしも縮尺どおりであるわけではなく、代わりに本開示の原理を明確に説明することに重点が置かれている。さらに、図面において、同様の参照数字はいくつかの観点を介して対応する部分を指定する。
【0008】
図1図1は、THC-VHS-NEC、ロプレッサ(Rhopressa)(登録商標)、またはラタノプロスト(latanoprost)製剤の局所投与後のDBウサギの試験眼と対側眼の平均IOP(1日目、3日目、5日目)対時間プロファイルを示す(平均値±SD、n=6)。
【0009】
図2図2は、THC-VHS-NEC製剤、ロプレッサ(登録商標)、またはラタノプロスト製剤の局所投与後のDBウサギの試験眼と対側眼の平均IOP低下率%(1日目、3日目、5日目)対時間プロファイルを示す(平均値±SD、n=6)。
【0010】
図3図3は、THC-VHS-NEC、ロプレッサ(登録商標)、またはラタノプロスト製剤の局所投与後のDBウサギの試験眼における1日目のIOP対時間プロファイルを示す(平均値±SD、n=6)。
【0011】
図4図4は、THC-VHS-NEC、ロプレッサ(登録商標)、またはラタノプロスト製剤の局所投与後のDBウサギの対側眼における1日目のIOP対時間プロファイルを示す(平均値±SD、n=6)。
【0012】
図5図5は、THC-VHS-NEC、ロプレッサ(登録商標)、またはラタノプロスト製剤の局所投与後のDBウサギの試験眼における1日目のIOP低下率%対時間プロファイルを示す(平均値±SD、n=6)。
【0013】
図6図6は、THC-VHS-NEC、ロプレッサ(登録商標)、またはラタノプロスト製剤の局所投与後のDBウサギの対側眼における1日目のIOP低下率%対時間プロファイルを示す(平均値±SD、n=6)。
【0014】
図7図7は、THC-VHS-NEC、ロプレッサ(登録商標)、またはラタノプロスト製剤の局所投与後のDBウサギの試験眼における3日目のIOP対時間プロファイルを示す(平均値±SD、n=6)。
【0015】
図8図8は、THC-VHS-NEC、ロプレッサ(登録商標)、またはラタノプロスト製剤の局所投与後のDBウサギの対側眼における3日目のIOP対時間プロファイルを示す(平均値±SD、n=6)。
【0016】
図9図9は、THC-VHS-NEC、ロプレッサ(登録商標)、またはラタノプロスト製剤の局所投与後のDBウサギの試験眼における3日目のIOP低下率%対時間プロファイルを示す(平均値±SD、n=6)。
【0017】
図10図10は、THC-VHS-NEC、ロプレッサ(登録商標)、またはラタノプロスト製剤の局所投与後のDBウサギの対側眼における3日目のIOP低下率%対時間プロファイルを示す(平均値±SD、n=6)。
【0018】
図11図11は、THC-VHS-NEC、ロプレッサ(登録商標)、またはラタノプロスト製剤の局所投与後のDBウサギの試験眼における5日目のIOP対時間プロファイルを示す(平均値±SD、n=6)。
【0019】
図12図12は、THC-VHS-NEC、ロプレッサ(登録商標)、またはラタノプロスト製剤の局所投与後のDBウサギの対側眼における5日目のIOP対時間プロファイルを示す(平均値±SD、n=6)。
【0020】
図13図13は、THC-VHS-NEC、ロプレッサ(登録商標)、またはラタノプロスト製剤の局所投与後のDBウサギの試験眼における5日目のIOP低下率%対時間プロファイルを示す(平均±SD、n=6)。
【0021】
図14図14は、THC-VHS-NEC、ロプレッサ(登録商標)、またはラタノプロスト製剤の局所投与後のDBウサギの対側眼における5日目のIOP低下率%対時間プロファイルを示す(平均値±SD、n=6)。
【0022】
図15図15は、THC-VHS-NEC製剤の局所投与後のDBウサギの試験眼における平均および各日(1、3および5日目)のIOP対時間プロファイルを示す(平均値±SD、n=6)。
【0023】
図16図16は、THC-VHS-NEC製剤の局所投与後のDBウサギの対側眼における平均および各日(1、3および5日目)のIOP対時間プロファイルを示す(平均値±SD、n=6)。
【0024】
図17図17は、THC-VHS-NEC製剤の局所投与後のDBウサギの試験眼における平均および各日(1、3および5日目)のIOP低下率%対時間プロファイルを示す(平均値±SD、n=6)。
【0025】
図18図18は、THC-VHS-NEC製剤の局所投与後のDBウサギの対側眼における平均および各日(1、3および5日目)のIOP低下率%対時間プロファイルを示す(平均値±SD、n=6)。
【0026】
図19図19は、ロプレッサ(登録商標)製剤の局所投与後のDBウサギの試験眼における平均および各日(1、3および5日目)のIOP対時間プロファイルを示す(平均値±SD、n=6)。
【0027】
図20図20は、ロプレッサ(登録商標)製剤の局所投与後のDBウサギの対側眼における平均および各日(1、3および5日目)のIOP対時間プロファイルを示す(平均値±SD、n=6)。
【0028】
図21図21は、ロプレッサ(登録商標)製剤の局所投与後のDBウサギの試験眼における平均値および各日(1、3および5日目)のIOP低下率%対時間プロファイルを示す(平均値±SD、n=6)。
【0029】
図22図22は、ロプレッサ(登録商標)製剤を局所投与後のDBウサギの対側眼における平均値および各日(1、3および5日目)のIOP低下率%対時間プロファイルを示す(平均値±SD、n=6)。
【0030】
図23図23は、ラタノプロスト製剤の局所投与後のDBウサギの試験眼における平均値および各日(1、3および5日目)のIOP対時間プロファイルを示す(平均値±SD、n=6)。
【0031】
図24図24は、ラタノプロスト製剤の局所投与後のDBウサギの対側眼における平均値および各日(1、3および5日目)のIOP対時間プロファイルを示す(平均値±SD、n=6)。
【0032】
図25図25は、ラタノプロスト製剤の局所投与後のDBウサギの試験眼における平均値および各日(1、3および5日目)のIOP低下対時間プロファイルを示す(平均値±SD、n=6)。
【0033】
図26図26は、ラタノプロスト製剤の局所投与後のDBウサギの対側眼における平均値および各日(1、3および5日目)のIOP低下対時間プロファイルを示す(平均値±SD、n=6)。
【0034】
図27図27は、THC-VHS-NEC、ロプレッサ(登録商標)、またはラタノプロスト製剤の局所投与後のDBウサギの試験眼における、単薬投与後に得られた平均IOP(1、3、および5日目)対時間プロファイルと対照して、2つの製剤の共投与後に得られた平均IOP(1、3および5日目)対時間プロファイルを示す(平均値±SD、n=6)。
【0035】
図28図28は、THC-VHS-NEC、ロプレッサ(登録商標)、またはラタノプロスト製剤の局所共投与後の、DBウサギの試験眼と対側眼における平均IOP(1、3および5日目)対時間プロファイルを示す(平均値±SD、n=6)。
【0036】
図29図29は、THC-VHS-NEC、ロプレッサ(登録商標)、またはラタノプロスト製剤の局所投与後のDBウサギの試験眼における、単薬投与後に得られた平均IOP(1、3および5日目)対時間プロファイルを対照とする、2つの製剤の共投与後のIOP平均低下率%(1、3および5日目)対時間プロファイルを示す(平均値±SD、n=6)。
【0037】
図30図30は、DBウサギの試験眼における、単薬投与後に得られたIOP平均低下率%(1、3および5日目)対時間プロファイルを対照とする、2つの製剤の共投与後に得られたIOP平均低下率%(1、3および5日目)対時間プロファイルを示す(平均値±SD、n=6)。
【0038】
図31図31は、2つの製剤の局所共投与後のDBウサギの試験眼における1日目のIOP対時間プロファイルを示す(平均値±SD、n=6)。
【0039】
図32図32は、2つの製剤の局所共投与後のDBウサギの対側眼における1日目のIOP対時間プロファイルを示す(平均値±SD、n=6)。
【0040】
図33図33は、2つの製剤の局所共投与後のDBウサギの試験眼における1日目のIOP低下率%対時間プロファイルを示す(平均値±SD、n=6)。
【0041】
図34図34は、2つの製剤の局所共投与後のDBウサギの対側眼における1日目のIOP低下率%対時間プロファイルを示す(平均値±SD、n=6)。
【0042】
図35図35は、2つの製剤の局所共投与後のDBウサギの試験眼における3日目のIOP対時間プロファイルを示す(平均値±SD、n=6)。
【0043】
図36図36は、2つの製剤の局所的共投与後のDBウサギの対側眼における3日目のIOP対時間プロファイルを示す(平均値±SD、n=6)。
【0044】
図37図37は、2つの製剤の局所共投与後のDBウサギの試験眼における、3日目のIOP低下率%対時間プロファイルを示す(平均値±SD、n=6)。
【0045】
図38図38は、2つの製剤の局所共投与後のDBウサギの対側眼における3日目のIOP低下%対時間プロファイルを示す(平均値±SD、n=6)。
【0046】
図39図39は、2つの製剤の局所共投与後のDBウサギの試験眼における5日目のIOP対時間プロファイルを示す(平均値±SD、n=6)。
【0047】
図40図40は、2つの製剤の局所共投与後のDBウサギの対側眼における5日目のIOP対時間プロファイルを示す(平均値±SD、n=6)。
【0048】
図41図41は、THC-VHS-NEC、ロプレッサ(登録商標)およびラタノプロスト製剤の局所共投与後のDBウサギの試験眼における5日目のIOP低下率%対時間プロファイルを示す(平均値±SD、n=6)。
【0049】
図42図42は、2つの製剤の局所共投与後のDBウサギの対側眼における5日目のIOP低下率%対時間プロファイルを示す(平均値±SD、n=6)。
【0050】
図43図43は、ロプレッサ(登録商標)単独、THC-VHS-NEC単独、および2つの組合せ(THC-VHS-NEC+ロプレッサ(登録商標))を局所投与後のDBウサギの試験眼における、平均IOP(1、3、5日目)対時間プロファイルの比較を示す(平均値±SD、n=6)。
【0051】
図44図44は、THC-VHS-NEC+ロプレッサ(登録商標)製剤の局所共投与後のDBウサギの対側眼における1日目、3日目、5日目のIOPプロファイルに対する平均IOP(1、3および5日目)対時間プロファイルの比較を示す(平均値±SD、n=6)。
【0052】
図45図45は、ロプレッサ(登録商標)単独、THC-VHS-NEC単独および2つの組合せ(THC-VHS-NEC+ロプレッサ(登録商標))を局所投与後のDBウサギの試験眼における平均IOP低下率%(1、3および5日目)対時間プロファイルの比較を示す(平均値±SD、n=6)。
【0053】
図46図46は、THC-VHS-NEC+ロプレッサ(登録商標)製剤の局所共投与後のDBウサギの対側眼における1日目、3日目、5日目のIOP低下率%プロファイルに対する、平均IOP低下率%(1、3および5日目)対時間プロファイルの比較を示す(平均値±SD、n=6)。
【0054】
図47図47は、DBウサギの試験眼において、ロプレッサ(登録商標)単独、ラタノプロスト単独および両者の組合せ(ロプレッサ(登録商標)+ラタノプロスト)を局所投与後の平均IOP(1、3および5日目)対時間プロファイルの比較を示す(平均値±SD、n=6)。
【0055】
図48図48は、ロプレッサ(登録商標)+ラタノプロスト製剤の局所共投与後のDBウサギの対側眼における1日目、3日目、5日目のIOPプロファイルに対する平均IOP(1、3および5日目)対時間プロファイルの比較を示す(平均値±SD、n=6)。
【0056】
図49図49は、ロプレッサ(登録商標)単独、ラタノプロスト単独、および2つの組合せ(ロプレッサ(登録商標)+ラタノプロスト)の局所投与後のDBウサギの試験眼における平均IOP低下率%(1、3および5日目)対時間プロファイルの比較を示す(平均値±SD、n=6)。
【0057】
図50図50は、ロプレッサ(登録商標)+ラタノプロスト製剤の局所共投与後の1日目、3日目、5日目DBウサギの対側眼におけるIOP低下率%プロファイルに対する平均IOP低下率%(1、3および5日目)対時間プロファイルの比較を示す(平均値±SD、n=6)。
【0058】
図51図51は、THC-VHS-NC単独、ラタノプロスト単独および2つの組合せ(ラタノプロスト+THC-VHS-NEC)製剤の局所投与後の平均IOP(1、3および5日目)対時間プロファイルの比較を示す(平均値±SD、n=6)。
【0059】
図52図52は、ラタノプロスト+THC-VHS-NEC製剤の局所共投与後のDBウサギの対側眼における1日目、3日目、5日目のIOPプロファイルに対する平均IOP(1、3および5日目)対時間プロファイルの比較を示す(平均値±SD、n=6)。
【0060】
図53図53は、THC-VHS-NC単独、ラタノプロスト単独および2つの組合せ(ラタノプロスト+THC-VHS-NEC)製剤の局所投与後のIOP平均低下率%(1、3および5日目)対時間プロファイルの比較を示す(平均値±SD、n=6)。
【0061】
図54図54は、ラタノプロスト+THC-VHS-NEC製剤の局所共投与後のDBウサギの対側眼における1日目、3日目、5日目のIOPに対する平均IOP低下率%(1、3および5日目)対時間プロファイルの比較を示す(平均値±SD、n=6)。
【0062】
本発明の付加的な利点は、一部は以下の説明に記載され、一部は説明から明らかであるか、または本発明の実施により知ることができる。本発明の利点は、添付の特許請求の範囲において特に示されている要素および組み合わせによって実現、達成される。前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は例示的かつ説明的なものに過ぎず、特許請求の範囲に記載される発明を制限するものではないことを理解されたい。
【発明の詳細な説明】
【0063】
本明細書に開示される多くの改変および他の実施形態が、前述の説明および関連する図面に提示される教示の利益を有する、開示される組成物および方法に関連する当業者には思い浮かぶであろう。それゆえ、開示は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、改変および他の実施形態は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されると理解されたい。当業者は、本明細書に記載される態様の多くの変形および適応を認識するであろう。これらの変形および適応は、本開示の教示に含まれ、本明細書の特許請求の範囲に包含されることを意図している。
【0064】
本明細書では特定の用語が使用されているが、これらは一般的かつ記述的な意味でのみ使用されており、限定を目的とするものではない。
【0065】
本開示を読むと当業者には明らかなように、本明細書で説明および例示される個々の実施形態の各々は、本開示の範囲または精神から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離され得るか、または他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴と容易に組み合わされ得る個別の構成要素および特徴を有する。
【0066】
記載されるあらゆる方法は、記載された事象の順序で、または論理的に可能なあらゆる他の順序で実施され得る。それはすなわち、特に明示的な記載がない限り、本明細書に記載される方法または態様がそのステップが特定の順序で実行されることを要求するものとして解釈されることは意図されていない。したがって、方法の請求項が、特許請求の範囲または説明において、ステップが特定の順序に限定されることを具体的に述べていない場合、いかなる点においても、順序が暗示されることは意図されていない。このことは、ステップの配置や操作の流れに関する論理的な事項、文法的な構成や句読点から導かれる平易な意味、明細書に記載された態様の数やタイプなど、解釈のためのあらゆる可能な非明示的根拠についても同様である。
【0067】
本明細書で挙げられるすべて刊行物は、その刊行物が引用される方法および/または材料に関連して開示および記載されるために、参照により本明細書に援用される。本明細書で論じる刊行物は、本出願の出願日前の開示のためにのみ提供される。本明細書のいかなる内容も、本発明が先行発明に基づきそのような刊行物に先行する権利を有しないことを認めるものとして解釈されるものではない。さらに、本明細書において提供される公開日は、実際の公開日と異なる場合があり、独立した確認が必要となる場合がある。
【0068】
また、本明細書において使用する用語は、特定の態様を説明するためのものであり、限定することを意図するものではないことを理解されたい。特に定義されない限り、本明細書で使用するすべての技術用語および科学用語は、開示される組成物および方法が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。さらに、一般的に使用する辞書に定義されているような用語は、本明細書および関連技術の文脈における意味と一致する意味を有するものとして解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想化された意味または過度に形式的な意味で解釈されるべきではないことが理解されるであろう。
【0069】
本開示の様々な態様を説明する前に、以下の定義が提供され、特に指示がない限り使用されるべきである。さらなる用語は、本開示の他の箇所で定義され得る。
【0070】
定義
本明細書において使用する場合、「含む(comprising)」は、使用されるような記載された特徴、整数、ステップ、または構成要素の存在を特定すると解釈されるが、1つ以上の特徴、整数、ステップ、または構成要素、またはそれらの群の存在または追加を排除するものではない。さらに、「によって(by)」、「含む(comprising)」、「含む(comprises)」、「構成される(comprised of)」、「含む(including)」、「含む(incluedes)」、「含まれる(included)」「含む(involving)」、「含む(involves)」、「含まれる(involved)」、および「などの(such as)」なる用語の各々は、開放された非限定的な意味で使用され、互換的に使用され得る。さらに、用語「含む(comprising)」は、「実質的に~からなる(consisting essentially of)」および「からなる(consisting of)」なる用語によって包含される例および態様を含むことが意図される。同様に、「実質的に~からなる(consisting essentially of)」なる用語は、「からなる(consisting of)」なる用語に包含される例を含むことが意図される。
【0071】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかにそうでないことが指示されない限り、複数の参照を含む。したがって、例えば、「アミノ酸(an amino acid)」への言及は、2つ以上のそのようなアミノ酸の混合物または組み合わせなどを含むが、これらに限定されない。
【0072】
本明細書において、比、濃度、量、および他の数値データは、範囲形式で表現され得ることに留意すべきである。各範囲の終点は、もう一方の終点との関係において、もう一方の終点とは独立していることがさらに理解される。また、本明細書で開示される値は多数あり、各値は、本明細書では、値そのものに加えて、その特定の値が「約(about)」としても開示されることが理解される。例えば、値「10」が開示されている場合、「約10」も開示されている。範囲は、本明細書において、「約」ある特定の値からおよび/または「約」別の特定の値までとして表すことができる。同様に、値が近似値として表現される場合、先行詞「約」の使用により、特定の値がさらなる態様を形成することが理解される。例えば、値「約10」が開示されている場合、「10」も開示されている。
【0073】
範囲を表現する場合、さらなる態様には、ある特定の値からおよび/または他の特定の値までが含まれる。例えば、記載された範囲が限界値の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限界値の一方または両方を除く範囲も本開示に含まれ、例えば、「x~y」という表現は、「x」~「y」までの範囲だけでなく、「x」より大きく「y」より小さい範囲も含む。
【0074】
本明細書において使用する場合、「約(about)」、「近似(approximate)」、「約(at or about)」、および「実質的に(substantially)」なる用語は、問題の量または値が、正確な値、または特許請求の範囲に記載されるか、本明細書で教示されるような同等の結果または効果を提供する値であり得ることを意味する。すなわち、量、サイズ、式、パラメータ、および他の量および特性は、正確ではなく、正確である必要はないが、公差反映、換算係数、四捨五入、測定誤差など、および同等の結果または効果が得られるような当業者に公知の他の要因を反映して、所望により、近似値および/または大きくても小さくてもよいことが理解される。状況によっては、同等の結果または効果をもたらす値を合理的に決定できない場合がある。このような場合、本明細書において使用する場合、一般に、「約(about)」および「約(at or about)」は、特に指示または暗示がない限り、表示された公称値±10 %の変動を意味すると理解される。一般に、量、サイズ、製剤、パラメータ、または他の量もしくは特性は、「約(about)」、「近似(approximate)」、または「約(at or about)」であるか否かにかかわらず、「約(about)」、「近似(approximate)」、または「約(at or about)」である。定量値の前に「約(about)」、「近似(approximate)」、または「約(at or about)」が使用されている場合、特に記載がない限り、パラメータには具体的な定量値自体も含まれることが理解される。
【0075】
反対の記載がない限り、化学結合が実線としてのみ示され、くさび形または破線として示されない式は、可能性のある各異性体を意図し、例えば、各鏡像異性体およびジアステレオマー、ならびにラセミ混合物またはスカレミック混合物などの異性体の混合物である。本明細書に記載される化合物は、1つ以上の不斉中心を含み得、したがって、ジアステレオマーおよび光学異性体を生じる可能性がある。反対の記載がない限り、本発明は、そのような可能性のあるすべてのジアステレオマー、ならびにそれらのラセミ混合物、実質的に純粋な分解された鏡像異性体、可能性のあるすべての幾何異性体、およびそれらの医薬上許容される塩を含む。立体異性体の混合物、および単離された特定の立体異性体も含まれる。そのような化合物を調製するために使用される合成手順の過程で、または当業者に知られるラセミ化またはエピメリ化手順の使用において、そのような手順の生成物は、立体異性体の混合物であり得る。
【0076】
開示されるのは、本発明の方法を実施するために使用される成分、ならびに本明細書に開示される方法内で使用される組成物そのものである。これらの材料および他の材料が本明細書に開示され、これらの材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、グループなどが開示される場合、これらの化合物の各様々な個別および集合的な組み合わせおよび順列の具体的な言及を明示的に開示することはできないが、各々が本明細書において具体的に意図され、記載されることが理解される。例えば、特定の化合物が開示され、議論され、その化合物を含む多数の分子に対して行うことができる多数の修飾が議論される場合、具体的に意図されるのは、特に反対のことが示されない限り、その化合物および可能な修飾の各々およびすべての組み合わせおよび順列である。したがって、分子A、B、およびCのクラス、ならびに分子D、E、およびFのクラスが開示され、組み合わせ分子の一例であるA-Dが開示されている場合、それぞれが個別に記載されていなくても、組み合わせ、A-E、A-F、B-D、B-E、B-F、C-D、C-E、およびC-Fが開示されているとみなされることを意味し、それぞれが個別的かつ集合的に意図される。同様に、これらのいずれかのサブセットまたは組み合わせも開示される。したがって、例えば、A-E、B-F、およびC-Eのサブグループが開示されていると考えられる。この概念は、本発明の組成物を製造および使用する方法におけるステップを含むがこれらに限定されない本出願のすべての態様に適用される。したがって、実施され得る様々なさらなるステップが存在する場合、これらのさらなるステップの各々は、本発明の方法のいずれかの特定の実施形態または実施形態の組み合わせで実施され得ることが理解される。
【0077】
本明細書において使用する場合、「混合(admixing)」なる用語は、化学反応または物理的相互作用がないように2つ以上の成分を混ぜることとして定義される。「混合(admixing)」なる用語は、2つ以上の成分間の化学反応または物理的相互作用も含む。
【0078】
本明細書において互換的に使用する場合、「対象(subject)」、「個体(indivisual)」、または「患者(patient)」は、哺乳類(例えばヒト)などの脊椎動物を意味し得る。「対象」は、細胞、細胞集団、組織、器官、または生物、好ましくはヒトおよびその構成要素も意味し得る。
【0079】
本明細書において使用する場合、「処置する(treating)」および「処置(treatment)」なる用語は、一般的に、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを意味し得る。その効果は、緑内障などの疾患、症状、または状態を予防または部分的に防止するという点で、予防的であり得るが、必ずしもそうである必要はない。その効果は、疾患、状態、症状、または疾患、障害、または状態に起因する副作用の部分的または完全な治癒という点で、治療的であり得る。本明細書において使用する場合、「処置(treatment)」なる用語は、対象、特にヒトにおける緑内障のあらゆる処置を含み得、以下のいずれか1つ以上を含み得る: (a)疾患の素因を有し得るが、疾患を有するとまだ診断されていない対象において、疾患が発生するのを予防すること; (b)疾患を阻害すること、すなわち、その発症を阻止すること; および(c)疾患を緩和すること、すなわち、疾患および/またはその症状もしくは状態を軽減または回復させること。本明細書において使用する場合、「処置(treatment)」なる用語は、治療的処置のみ、予防的処置のみ、または治療的処置と予防的処置の両方を意味し得る。処置を必要とする者(処置を必要とする対象)には、既に障害を有する者、および/または障害を予防すべき者が含まれ得る。一態様において、「処置する(treating)」および「処置(treatment)」は、本明細書に記載される化合物を投与した場合に、化合物を投与しない場合(すなわち、対照)と比較して改善された薬理学的および/または生理学的効果を含む。
【0080】
本明細書において使用する場合、「用量(dose)」、「単位用量(unit dose)」、または「投薬(dosage)」は、対象における使用に適した物理的に別個の単位を意味し得、各単位はその投与に関連して所望の応答または反応を生じるように計算された所定量の開示化合物および/またはその医薬組成物を含む。
【0081】
本明細書において使用する場合、「治療的(therapeutic)」とは、疾患、障害、状態、または副作用を処置、治癒、および/または回復させること、または疾患、障害、状態、または副作用の進行速度を低下させることを意味し得る。
【0082】
本明細書において使用する場合、「有効量(effective amount)」とは、本明細書で提供される開示された化合物または医薬組成物の、細胞、組織、システム、動物、またはヒトの有益なまたは所望の生物学的、情動的、医学的、または臨床的応答をもたらすのに十分な量を意味し得る。有効量は、1回以上の投与、適用、または投薬で投与し得る。この用語はまた、実質的に正常な生理学的機能を増強または回復させるのに有効な量をその範囲に含み得る。
【0083】
本明細書において使用する場合、「治療有効量(therapeutically effective amount)」なる用語は、所望の治療的結果を達成するのに十分な量、または望ましくない症状に対する効果を有するのに十分な量を意味するが、一般に有害な副作用を引き起こすには不十分な量である。特定の患者に対する特定の治療上有効な用量レベルは、治療される疾患および疾患の重症度、利用される特定の組成物、患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別および食事、投与時間、投与経路、利用される特定の化合物の排出速度、処置期間、利用される特定の化合物と併用または同時に使用される薬物、および医療従事者の知識および専門知識の範囲内であり、医療技術において周知であるような要因を含む様々な要因に依存する。特定の疾患または病態を処置する場合、場合によっては、望ましい反応は疾患または病態の進行を抑制することであり得る。この場合、疾患の進行を一時的に遅らせるのみに関与する。しかし、他の場合では、疾患の進行を恒久的に止めることが望まれ得る。これは、特定の疾患について当業者に知られる日常的な診断法によってモニターし得る。疾患または状態の処置に対する望ましい反応は、疾患または状態の発症を遅らせることでも、または発症を予防することでさえもあり得る。
【0084】
本明細書において使用する場合、「予防有効量(prophylactically effective amount)」なる用語とは、疾患または状態の発症または開始を予防するために有効な量を意味する。
【0085】
本明細書において使用する場合、「予防する(prevent)」または「予防(preventing)」なる用語は、特に事前の行動によって、何かが起こるのを防ぐ、回避する、除去する、防止する、止める、または妨げることを意味する。本明細書において、低下(reduce)、阻害(inhibit)、または予防(prevent)が使用される場合、特に別段の指示がない限り、他の2つの単語の使用も明示的に開示されることが理解される。
【0086】
本明細書において使用する場合、「医薬上許容される塩(pharmaceutically acceptable salts)」なる用語は、治療有効量で投与された場合に、生物システムにより許容されるか、または対象により許容されるか、または、生物システムにより許容され、かつ対象により許容される、酸または塩基を用いて調製される有効主成分の塩を意味する。本開示の化合物が比較的酸性の機能性を含む場合、塩基付加塩は、そのような化合物の中性形態と十分な量の所望の塩基とを、適切または好適な不活性溶媒中で接触させることによって取得し得る。医薬上許容される塩基付加塩の例としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノ、マグネシウム塩、リチウム塩、ストロンチウム塩または類似の塩が含まれるが、これらに限定されない。本開示の化合物が比較的塩基性の官能性を含む場合、酸付加塩は、そのような化合物の中性形態と十分な量の所望の酸とを、適切または好適な不活性溶媒中で接触させることによって取得し得る。医薬上許容される酸付加塩の例としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸(monohydrogencarbonic)、リン酸、一水素リン酸(monohydrogenphosphoric)、二水素リン酸(dihydrogenphosphoric)、硫酸、一水素硫酸(monohydrogensulfuric)、ヨウ化水素酸、またはリン酸塩などの無機酸から誘導される塩、ならびに酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などの比較的無毒性の有機酸から誘導される塩も含まれるが、これらに限定されない。アルギン酸などのアミノ酸塩、グルクロン酸やガラクツノリン酸などの有機酸塩なども含まれる。
【0087】
「眼科的に好適な(ophthalmically suitable)」なる用語は、生物学的または他の観点で望ましくないことのない物質、すなわち、許容できないレベルの望ましくない生物学的影響を引き起こすことなく、または眼に関して有害な方法で相互作用することのない物質を表す。
【0088】
本明細書において使用する場合、「眼圧(intraocular pressure)」(IOP)は、眼球の房水によって前眼部の表面領域に及ぼされる眼球の流体圧を意味する。一態様において、高い眼圧は緑内障のリスク因子であり、炎症、解剖学的問題または差異、遺伝、薬の副作用などに起因し得る。さらなる態様では、ヒトでは、正常な眼圧は典型的には10~22 mmHgの間であるが、一般的な哺乳類のIOPは典型的には8~35の間で変動し、種によって異なるが重複する範囲がある。
【0089】
一態様において、「眼圧計(tonometer)」は、ヒトまたは他の哺乳類のIOPを測定するために使用される装置である。様々なタイプの眼圧計が存在する。アプラネーション眼圧計は、乾燥した薄壁の球体内の圧力は、その表面を平らにするのに必要な力を平らにされた面積で割ったものに等しいという仮定に基づいて設計されており、使用時には角膜が平らにされる。例えば、ゴールドマンアプラネーション眼圧計やパーキンス眼圧計が含まれる。ノンコタクト眼圧測定も角膜を平らにし、エアパフ眼圧計や眼反応分析装置では、強度を増した空気柱を使用する。圧入眼圧測定は、力を加えると柔らかい眼球は硬い眼球よりも沈むという考えに基づいており、例えば、シオッツ眼圧計、空気眼圧計(pneumotonometer)、トノペン(Tono-Pens)(アプラネーションプロセスも含む)を含む。リバウンド眼圧計(Rebound tonometry)では、ワイヤー上のプラスチック球を眼球に反跳させるもので、電磁場によってワイヤーは固定され、IOPはこの装置での眼の減速速度に相関する。パスカル動的輪郭眼圧計(Pascal dynamic contour tonometer)は、眼圧計内の圧電センサを使用してIOPの動的変動を測定する。いくつかのソフトコンタクトレンズセンサは、1日の間の眼球寸法の変化を測定するために使用されることがあり、IOPとの相関が示されている。一態様では、IOPを測定するために、ヒトや他の哺乳類に多数の眼圧計を使用することができる。別の態様では、IOPの変化は、本明細書に記載されるような眼圧計または他のセンサで最初の測定を行い、処置を施し、同じ眼圧計または他のセンサで2回目の測定を行うことによって測定することができ、最初の測定と2回目の測定との差がIOPの変化を示す。
【0090】
特に指定がない限り、本明細書で意味する温度は大気圧(すなわち1気圧)に基づく。
【0091】
眼圧を低下させるための方法
本明細書において、対象におけるIOPを低下または予防するための方法を記載する。この方法は、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体およびRhoキナーゼ阻害薬を対象に投与することを含む。デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体とRhoキナーゼ阻害薬との併用は、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体とネタルスジルまたはその医薬上許容される塩とを独立に用いた場合と比較して、IOP低下に有効である。本明細書において実証されるように、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体とRhoキナーゼ阻害薬との共投与は、Rhoキナーゼ阻害薬のみの投与と比較して、投与後の初期のIOPの低下を高め、IOPの持続的な低下を提供し得る。
【0092】
一態様において、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルは構造I
【化1】
を有し、ここで、R1は1つ以上のアミノ酸残基を含む。別の態様では、アミノ酸残基は、バリン、サルコシン、ロイシン、グルタミン、トリプトファン、チロシン、アラニンおよび4(4-アミノフェニル)酪酸、またはその塩、またはそのいずれかの組み合わせを含む。
【0093】
別の態様において、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルの誘導体を本明細書で使用し得る。一態様において、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルの誘導体を生成するため、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルは、無水物またはジカルボン酸と反応させ得る。一態様において、無水物は無水コハク酸または無水グルタル酸である。別の態様において、ジカルボン酸は、マロン酸、リンゴ酸、グルタル酸、コハク酸、またはフタル酸である。一態様において、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルの誘導体は以下の構造
【化2】
を有し、ここでnは1~8の整数である。
【0094】
一態様において、誘導体は、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール-バリン-ヘミコハク酸であり、その構造は以下の
【化3】
で提供される。デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルおよびその誘導体の合成方法は、米国特許出願公開2011/0275555号に提供され、参照によりその全体が援用される。
一態様において、開示された製剤および/またはナノエマルションは、約0.01 % w/v~約5 % w/vのデルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体、または約0.01 %、0.05 %、0.1 %、0.5 %、1 %、1.5 %、2 %、2.5 %、3 %、3.5 %、4 %、4.5 %、または約5 % w/vのデルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体、または前述の値のいずれかの組み合わせ、または前述の値のいずれかを包含する範囲、を含み得る。
【0095】
デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体は、眼科用組成物として製剤化される。一態様において、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体は、ナノエマルションとして製剤化される。デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体は、ナノエマルション生成のために、1つ以上のさらなる成分とともに製剤化され得る。
【0096】
一態様において、ナノエマルションは眼科的に好適な油を含む。このような油の例としては、ヒマシ油、綿実油、大豆油、またはゴマ油を含むが、これらに限定されない。別の態様において、油は、組成物の約1 % w/v~約10 % w/v、または約1 % w/v、1.5 % w/v、2 % w/v、2.5 % w/v、3 % w/v、3.5 % w/v、4 % w/v、4. 5 % w/v、5 % w/v、5.5 % w/v、6 % w/v、6.5 % w/v、7 % w/v、7.5 % w/v、8 % w/v、8.5 % w/v、9 % w/v、9.5 % w/v、または 10 % w/vの量であり、いずれかの値を範囲の下限および上限とし得る(例えば、1.5 % w/v~4 % w/v)。
【0097】
一態様において、ナノエマルションは眼科的に好適な非イオン性界面活性剤を含む。一態様において、非イオン性界面活性剤はポロキサマーであり、このポロキサマーは、ポリオキシプロピレン(例えば、(ポリ(プロピレンオキシド))の中央の疎水性鎖がポリオキシエチレン(例えば、ポリ(エチレンオキシド))の2つの親水性鎖に挟まれて構成される非イオン性トリブロックコポリマーである。一態様において、ポロキサマーは式
HO(C2H4O)b(C3H6O)a(C2H4O)bOH
を有し、ここで、aは10~100、20~80、25~70、または50~70であり、bは5~250、10~225、20~200、50~200、100~200、または150~200である。別の態様において、ポロキサマーは、2,000~15,000、3,000~14,000、または4,000~12,000の分子量(MW)を有する。本明細書のおいて有用なポロキサマーは、BASF社製のプルロニック(Pluronic)(登録商標)という商品名で販売されている。本明細書において有用なポロキサマーの非限定的な例としては、以下の表のものが挙げられるがこれらに限定されない。一態様において、ポロキサマーはF-407(プルロニック(登録商標) F-127)である。有用なポロキサマーを表1に提示する。
【表1】
【0098】
別の態様において、非イオン性界面活性剤はポリソルベートである。ポリソルベートは、脂肪酸でエステル化されたエトキシル化ソルビタン(ソルビトールの誘導体)から誘導される油性液体である。ポリソルベートの例には、ポリソルベート20、40、60、または80を含む。
【0099】
一態様において、非イオン性界面活性剤は、ポロキサマーとポリソルベートとの組み合わせを含む。一態様において、ポロキサマーは、組成物の約0.01 % w/v~約1 % w/v、または約0.01 % w/v、0.05 % w/v、0.1 % w/v、0.2 % w/v、0.3 % w/v、0.4 % w/v、0.5 % w/v、0.6 % w/v、0.7 % w/v、0.8 % w/v、0.9 % w/v、または1 % w/vの量であり、いずれかの値を範囲の下限および上限とし得る(例えば、0.2 % w/v~0.4 % w/v)。別の態様において、ポリソルベートは、組成物の約0.5 % w/v~約5 % w/v、または約1 % w/v、1.5 % w/v、2 % w/v、2.5 % w/v、3 % w/v、3.5 % w/v、4 % w/v、4.5 % w/v、または5 % w/vの量であり、いずれかの値を範囲の下限および上限とし得る(例えば、1.5 % w/v~4 % w/v)。
【0100】
一態様において、ナノエマルションは、ナノエマルションの特定の特性を改変するために、眼科的に好適なポリマーを含む。一態様において、そのポリマーは例えばルーブリゾール(Lubrizol)社製のカーボポール940(Carbopol 940)などの架橋ポリアクリル酸である。一態様において、そのポリマーは、組成物の約0.1 % w/v~約2 % w/v、または約0.1 % w/v、0.2 % w/v、0.4 % w/v、0.6 % w/v、0.8 % w/v、1.0 % w/v、1.2 % w/v、1.4 % w/v、1.6 % w/v、1.8 % w/v、または2.0 % w/vの量であり、いずれかの値を範囲の下限および上限とし得る(例えば、0.4 % w/v~1.2 % w/v)。
【0101】
一態様において、ナノエマルションは、2つ以上のヒドロキシル基を有する化合物である、眼科的に好適なポリオールを含む。一態様において、ポリオールはグリセリンである。一態様において、ポリオールは、組成物の約1 % w/v~約5 % w/v、または約1 % w/v、1.5 % w/v、2 % w/v、2.5 % w/v、3 % w/v、3.5 % w/v、4 % w/v、4.5 % w/v、または5 % w/vの量であり、いずれかの値を範囲の下限および上限とし得る(例えば、1.5 % w/v~4 % w/v)。
【0102】
一態様において、ナノエマルションは、眼科的に好適なエトキシル化トコフェロールまたはトコトリエノールを含む。一態様において、エトキシル化トコフェロールまたはトコトリエノールはD-アルファ-トコフェロールポリエチレングリコールである。一態様において、ナノエマルションは、ビタミンEポリエトキシル化コハク酸(TPGS)を含む。一態様において、エトキシル化トコフェロールまたはトコトリエノールは、組成物の約0.0001 % w/v~約0.01 % w/v、または約0.0001 % w/v、0.0005 % w/v、0.001 % w/v、0. 002 % w/v、0.003 % w/v、0.004 % w/v、0.005 % w/v、0.006 % w/v、0.007 % w/v、0.008 % w/v、0.009 % w/v、0.01 % w/vの量であり、いずれかの値を範囲の下限および上限とし得る(例えば、0.001 % w/v~0.007 % w/v)。
【0103】
一態様において、ナノエマルションは、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体、油、ポロキサマー、ポリソルベート、架橋ポリアクリル酸、ポリオール、エトキシル化トコフェロールまたはトコトリエノール、および水から構成される。
【0104】
別の態様において、ナノエマルションは、約0.01 % w/v~約2 % w/vのデルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体、約1 %~約10 % w/vの眼科的に好適な油、約0.51 % w/v~約6 % w/vの眼科的に好適な界面活性剤、約0.1 % w/v~約2 % w/vの眼科的に好適なポリマー、約1 %~約5 % w/vの眼科的に好適なポリオール、約0.0001 % w/v~約0.01 % w/vの眼科的に好適なエトキシル化トコフェロールまたはトコトリエノール、および水を含み得る。
【0105】
いくつかの態様において、製剤および/またはナノエマルションは、Rhoキナーゼ阻害薬をさらに含み得る。一態様において、Rhoキナーゼ阻害薬は、ネタルスジルまたはその医薬上許容される塩であり得る。一態様において、製剤は、約0.005 % w/v~約0.05 % w/vのRhoキナーゼ阻害薬、または約0.005 %、0.01 %、0.015 %、0.2 %、0.25 %、0.3 %、0.35 %、0.4 %、0.45 %、もしくは約0.5 %のRhoキナーゼ阻害薬、または前述の値のいずれかの組み合わせ、または前述のいずれかの値を包含する範囲を含み得る。
【0106】
一態様では、ナノエマルションは超音波処理によって生成し得る。例えば、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体を油と混合し、その後加熱して高温の脂質相を生成する。ポロキサマー、ポリソルベートおよびポリオールを水で混合し、加熱して高温の水相を生成する。高温の水相を加熱した脂質相に一定の混合下で加え、粗いエマルションを形成する。次に、粗いエマルションを、T 25 digital Ultra-Turrax(IKA、ドイツ)を用いて、例えば11,000rpm、65℃で5分間均質化し、微細エマルションを形成する。この微細エマルションを徐冷してから氷浴に入れ、3 mmステップ型マイクロチッププローブを用いて超音波処理(SONICS(登録商標) Vibra-Cell(商標)、米国コネチカット州ニュータウン)を行った(振幅40 %; パルスオン: 10秒、パルスオフ: 15秒; 時間: 10分)。
【0107】
ナノエマルションの物理的特性は、必要に応じて改変および微調整し得る。一態様において、ナノエマルションは、動的光散乱によって(例えば、Zetasizer Nano ZS Zen3600)測定される約200 nm~約250 nm、または約200 nm、205 nm、210 nm、215 nm、220 nm、225 nm、230 nm、235 nm、240 nm、245 nm、または250 nmの平均液滴径 (z平均)を有し、いずれかの値を範囲の下限および上限とし得る(例えば、210 nm~240 nm)。
【0108】
一態様において、ナノエマルションは、動的光散乱によって測定される(例えば、Zetasizer Nano ZS Zen3600)、約0.15~約0.25、または約0.15、0.16、0.17、0.18、0.15、0.19、0.20、0.21、0.22、0.23、0.24、または0.25の多分散指数を有し、いずれかの値を範囲の下限および上限とし得る(例えば、0.18~0.23)。
【0109】
一態様において、ナノエマルションは、動的光散乱によって測定される(例えば、Zetasizer Nano ZS Zen3600)、約-20 mV~約-60 mV、または約-20 mV、-25 mV、-30 mV、-35 mV、-40 mV、-45 mV、-50 mV、-55 mV、または-60 mVのゼータ電位を有し、いずれかの値を範囲の下限および上限とし得る(例えば、-25 mV~-35 mV)。
【0110】
ある態様において、ナノエマルションは投与前に滅菌され得る。一態様において、ナノエマルションは濾過され得る。一態様において、ナノエマルションは、マイクロメートルフィルタ膜(例えば、0.22 μmフィルタ)で濾過され得る。別の態様において、ナノエマルションは湿熱滅菌され得る。明細書に記載の方法は、Rhoキナーゼ阻害薬の共投与も含む。一態様において、Rhoキナーゼ阻害薬は、AT-13148、BA-210、β-エレメンDJ4、ファスジル、GSK-576371、GSK429286A、H-1152、ヒドロキシファスジル、LX-7101、RKI-1447、リパスジル、TCS-7001、チアゾビビン、ベロスジルY-30141、Y-33075、またはY-39983である。別の態様において、Rhoキナーゼ阻害薬は、ネタルスジルまたはその医薬上許容される塩である。
【0111】
一態様において、市販の点眼液としてロプレッサ(登録商標)とも呼ばれるメシル酸ネタルスジルを本明細書で使用し得る。一態様において、ネタルスジルまたはその医薬上許容される塩の眼科用組成物は、眼科的に好適な緩衝剤および賦形剤とともに製剤化し得る。一態様において、ネタルスジルまたはその医薬上許容される塩は、約0.005 % w/v~約0.05 % w/v、または約0.005 % w/v、0.010 % w/v、0.015 % w/v、0.020 % w/v、0.025 % w/v、0.030 % w/v、0.035 % w/v、0.040 % w/v、0.045 % w/v、または0.050 % w/vの濃度を有する眼科用組成物として製剤化でき、いずれかの値を範囲の下限および上限とし得る(例えば、0.010 % w/v~0.030 % w/v)。一態様において、眼科用組成物は、0.02 % w/vの濃度のネタルスジルまたはその医薬上許容される塩を含む。
【0112】
一態様において、Rhoキナーゼ阻害薬およびデルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体を含むナノエマルションは、Rhoキナーゼ阻害薬またはその親油性誘導体、ならびにデルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体の両方が、エマルションの脂質相に溶解して製剤化し得る。別の態様において、Rhoキナーゼ阻害薬またはその塩はエマルションの水相に溶解し、一方でデルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体はエマルションの脂質相に溶解する。さらに、可溶化剤、界面活性剤、緩衝剤、等張化剤、浸透促進剤、粘膜接着剤、粘度向上剤、乳化安定剤などの賦形剤を、眼科用製剤に適した濃度で添加し得る。
【0113】
本発明のデルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体およびRhoキナーゼ阻害薬は、IOPの処置または予防を必要とする対象の眼に局所投与し得る。局所投与のための方法には、点眼器および眼の表面に点眼薬を適用するための他の好適な装置を含む。デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体およびネタルスジルまたはその医薬上許容される塩を投与し得る順序は変動し得る。一態様において、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体は、Rhoキナーゼ阻害薬の投与前に投与される。別の態様において、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体は、Rhoキナーゼ阻害薬の投与後に投与される。別の態様において、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体は、Rhoキナーゼ阻害薬の投与と同時に投与される。一態様において、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体およびRhoキナーゼ阻害薬は、単一の医薬製剤に製剤し得る。
【0114】
対象の状態に応じて、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体およびRhoキナーゼ阻害薬をそれぞれ一定期間にわたって複数回投与し得る。例えば、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体およびRhoキナーゼ阻害薬を、毎日、2日ごと、3日ごと、または5日ごとに投与し得る。別の態様において、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体およびRhoキナーゼ阻害薬を、1日1回または1日2回投与し得る。デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体およびRhoキナーゼ阻害薬の投与量および投与期間は、対象の症状に応じて変動し得る。一態様において、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体を、1日1回、少なくとも5日間、または1日1回、10日間以上投与する。
【0115】
また、本明細書における開示は、対象におけるIOPを処置または低下させるための方法であり、その方法は、開示される製剤および/またはナノエマルションを、対象に投与するステップを少なくとも含む。一態様において、本方法の実施は、本方法を実施する前の対象におけるIOPと比較して約15 %~約35 %、または約15、20、25、30、もしくは約35 %、またはいずれかの前述の値の組み合わせ、またはいずれかの前述の値を包含する範囲の、対象におけるIOPの減少をもたらし得る。別の態様において、本方法を実施した後、IOPの減少は少なくとも約15 %のままである。別の態様において、本方法の実施は、本方法を実施する前の対象におけるIOPと比較して、約5~約10 mmHgの、または約5、6、7、8、9、もしくは約10 mmHgの、またはいずれかの前述の値の組み合わせ、またはいずれかの前述の値を包含する範囲の、対象におけるIOPの減少をもたらし得る。一態様において、本方法を実施する前のIOPに対するIOPの最大減少は、本方法を実施した後約4時間~約7時間、または約4、5、6、または約7時間、またはいずれかの前述の値の組み合わせ、またはいずれかの前述の値を包含する範囲で起こる。一態様において、IOPの減少は、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体およびRhoキナーゼ阻害薬が投与された眼、または対側の眼、またはその両方で起こる。
【0116】
実施例において実証されたように、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体とRhoキナーゼ阻害薬との併用は、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体とRhoキナーゼ阻害薬とを独立に用いた場合と比較して、IOPの低下に有効である。一態様において、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体とRhoキナーゼ阻害薬との併用は、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体とRhoキナーゼ阻害薬のみの使用と比較して、IOPの低下を最大40 %、最大50 %、または最大60 %増加し得る。
【0117】
態様
本開示は、特許請求の範囲と混同されるべきではない以下の番号付けされた態様に従って記載され得る。
【0118】
態様1. それを必要とする対象における眼圧(IOP)亢進の処置または予防のための方法であって、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体およびRhoキナーゼ阻害薬を対象に投与することを含む方法。
【0119】
態様2. Rhoキナーゼ阻害薬がネタルスジルまたはその医薬上許容される塩である、態様1に記載の方法。
【0120】
態様3. デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルが構造I
【化4】
を有し、R1がバリン、サルコシン、ロイシン、グルタミン、トリプトファン、チロシン、アラニン、4(4-アミノフェニル)酪酸、またはその塩を含む、態様1または2に記載の方法。
【0121】
態様4. デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルの誘導体が構造II
【化5】
を有し、nが1~9の整数である、態様1または2に記載の方法。
【0122】
態様5. デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルの誘導体がデルタ-9-テトラヒドロカンナビノール-バリン-ヘミコハク酸である、態様1または2に記載の方法。
【0123】
態様6. デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体がナノエマルションの成分を含む、態様1から5のいずれかに記載の方法。
【0124】
態様7. デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体およびRhoキナーゼ阻害薬が、対象の眼にそれぞれ局所投与される、態様1から6のいずれかに記載の方法。
【0125】
態様8. 少なくとも5日間、1日1回実施される、態様1から7のいずれかに記載の方法。
【0126】
態様9. デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体、眼科的に好適な油、眼科的に好適な界面活性剤、および水を含むナノエマルション。
【0127】
態様10. デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルが構造I
【化6】
を有し、R1がバリン、サルコシン、ロイシン、グルタミン、トリプトファン、チロシン、アラニン、4(4-アミノフェニル)酪酸、またはその塩を含む、態様9に記載のナノエマルション。
【0128】
態様11. デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルの誘導体が構造II
【化7】
を有し、nが1~9の整数である、態様9に記載のナノエマルション。
【0129】
態様12. デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルの誘導体がデルタ-9-テトラヒドロカンナビノール-バリン-ヘミコハク酸である、態様9または10に記載のナノエマルション。
【0130】
態様13. ナノエマルションが約0.01 % w/v~約2 % w/vのデルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体を含む、態様9から12のいずれかに記載のエマルション。
【0131】
態様14. 眼科的に好適な油が、ひまし油、綿実油、大豆油、ごま油、またはそのいずれかの組み合わせを含む、態様9から13のいずれかに記載のナノエマルション。
【0132】
態様15. ナノエマルションが約1 %~約10 % w/vの眼科的に好適な油を含む、態様9から14のいずれかに記載のナノエマルション。
【0133】
態様16. 眼科的に好適な界面活性剤が非イオン性界面活性剤を含む、態様9から15のいずれかに記載のナノエマルション。
【0134】
態様17. 眼科的に好適な界面活性剤がポロキサマー、ポリソルベート、またはそのいずれかの組み合わせを含む、態様9から16のいずれかに記載のナノエマルション。
【0135】
態様18.ナノエマルションが約0.01 % w/v~約1 % w/vのポロキサマーおよび約0.5 % w/v~約5 % w/vのポリソルベートを含む、態様17に記載のナノエマルション。
【0136】
態様19. さらに眼科的に好適なポリマーを含む、態様9から18のいずれかに記載のナノエマルション。
【0137】
態様20. 眼科的に好適なポリマーが架橋型ポリアクリル酸を含む、態様19に記載のナノエマルション。
【0138】
態様21. さらに眼科的に好適なポリオールを含む、態様9から20のいずれかに記載のナノエマルション。
【0139】
態様22. 眼科的に好適なポリオールがグリセリンを含む、態様21に記載のナノエマルション。
【0140】
態様23. さらに眼科的に好適なエトキシル化トコフェロールまたはトコトリエノールを含む、態様9から22のいずれかに記載のナノエマルション。
【0141】
態様24. 眼科的に好適なエトキシル化トコフェロールまたはトコトリエノールが、D-アルファ-トコフェロールポリエチレングリコール、ビタミンEポリエトキシル化コハク酸、またはそのいずれかの組み合わせである、態様23に記載のナノエマルション。
【0142】
態様25 ナノエマルションが約0.0001 % w/v~約0.01 % w/vの眼科的に好適なエトキシル化トコフェロールまたはトコトリエノールを含む、態様23または24に記載のナノエマルション。
【0143】
態様26. 約0.01 % w/v~約2 % w/vのデルタ-9-テトラヒドロカンナビノールアミノ酸エステルまたはその誘導体、
約1 %~約10 % w/vの眼科的に好適な油、
約0.51 % w/v~約6 % w/vの眼科的に好適な界面活性剤、
約0.1 % w/v~約2 % w/vの眼科的に好適なポリマー、
約1 %~約5 % w/vの眼科的に好適なポリオール、
約0.0001 % w/v~約0.01 % w/vの眼科的に好適なエトキシル化トコフェロールまたはトコトリエノール、および
水、
を含むナノエマルション。
【0144】
態様27. さらにRhoキナーゼ阻害薬を含む、態様9から26のいずれかに記載のナノエマルション。
【0145】
態様28. Rhoキナーゼ阻害薬が、ネタルスジルまたはその医薬上許容できる塩である、態様27に記載のナノエマルション。
【0146】
態様29. 約0.005 % w/v~約0.05 % w/vのRhoキナーゼ阻害薬を含む、態様27または28に記載のナノエマルション。
【0147】
態様30. 平均液滴径が約200 nm~約250 nmである、態様9から29のいずれかに記載のナノエマルション。
【0148】
態様31. 多分散指数が約0.15~約0.25である、態様9から30のいずれかに記載のナノエマルション。
【0149】
態様32. ゼータ電位が約-20 mV~約-60 mVである、態様9から31のいずれかに記載のナノエマルション。
【0150】
態様33. 態様9から32のいずれかに記載のナノエマルションを対象に投与することを含む、IOP亢進を処置または予防するための方法。
【実施例
【0151】
以下の実施例は、本明細書において特許請求される化合物、組成物、物品、デバイスおよび/または方法がどのように製造され、評価されるかについての完全な開示および説明を当業者に提供するために提示され、純粋に開示の例示であることが意図され、本発明者らが開示とみなす範囲を限定することを意図していない。数値(例えば、量、温度など)に関して正確性を確保するための努力がなされているが、いくらかの誤差や逸脱は考慮されるべきである。特に指示がない限り、部は重量部であり、温度は℃で示すかまたは常温であり、圧力は大気圧または大気圧付近である。
【0152】
開発の概要
今回の一連の試験は、平均体重2.0±0.3 kgの28週齢の雄の有色(ダッチベルテッド; DB)ウサギで、ラタノプロスト、ネタルスジル(ロプレッサ(登録商標))製剤(表3)およびTHC-VHS-NEC製剤(表4および5)のIOP低下効果を比較するために実施された。ウサギを3つの群に分けた。各群には、最初の5日間は単一の製剤(THC-VHS-NEC、ラタノプロストまたはロプレッサ(登録商標))を投与し、次の5日間は2つの製剤を併用た。2つ目の製剤は1つ目の製剤投与の15分後に投与された。処置プロトコルを表2にまとめている。
【表2】
【0153】
IOPは、ウサギに単一の製剤を投与している間は1日目、3日目、5日目に測定し、併用処置を行っている間は6日目、8日目、10日目に測定した。投与はすべて局所投与(50μL)で、1日1回、左眼に投与し、対側眼(右眼)は無処置のままにした。
【表3】
【表4】
【表5】
【0154】
単一処置複数日適用試験
有色DBウサギにおける、単一製剤への複数日(QD、5日間)曝露後のIOPプロファイルを図1~26に提示する。結果は以下を含む。
【0155】
THC-VHS-NEC(図15~18)製剤は、約27.5±2.1 %のIOPの平均最大低下を示し、30分~540分まで平均21.1±1.6 %の低下を維持した。IOPは24時間以内にベースラインに戻った。IOPの最大低下までの時間は60分、420分、240分(1日目、3日目、5日目)と変動し、平均最大IOPは5日間にかけて7.2~6.0 mmHg減少した。以下の表6も参照。
【0156】
ロプレッサ(登録商標)(図19~22)は、約30.6±1.4 %のIOPの平均最大低下を示し、30分~540分まで平均25.4±2.9 %の低下を維持した。IOPは24時間以内にベースラインに戻った。IOPの最大低下は180~240分の間に生じた。以下の表7も参照。
【0157】
ラタノプロスト(図23~26)は、約21.3±2.1 %のIOPの平均最大低下を示し、30分~420分まで平均19.4±1.9 %のIOP低下を維持した。IOPは480分以内にベースラインに戻った。IOPの最大低下は1日目、3日目、5日目の60分、90分、240分の間に生じた。最大IOPは5日間にかけて6.0~4.7 mmHg減少した。以下の表8も参照。
【表6】
【表7】
【表8】
【0158】
IOPの最大低下に関しては、THC-VHS-NEC製剤よりもロプレッサ(登録商標)の方が優れていた。しかし、どちらも少なくとも9時間の作用時間を示し、投与後9時間でもIOPはベースラインより約20 %低いままであった。ロプレッサ(登録商標)とTHC-VHS-NECの両製剤は、IOPの最大低下の点でも作用時間の点でも、ラタノプロストよりも良好な成績を示した。すべての製剤は、対側眼に対応するIOP低下をもたらした。様々な処置群において、いずれのウサギの眼にも刺激や発赤(目視)は観察されなかった。結果を表9にまとめている。
【表9】
【0159】
組合せ投与複数日適用試験
共投与試験から得られたデータを図27~54に提示する(図43~46: THC-VHS-NEC+ロプレッサ(登録商標); 図47~50: ロプレッサ(登録商標)+ラタノプロスト; 図51~54:ラタノプロスト+THC-VHS-NEC)。これらの試験から得られた比較プロファイルを図27~52に提示する。
【0160】
投与は局所的で、各処置は50μLで適用した。左眼(処置眼)に1回目の薬投与から15分後に2回目の薬剤を投与した。右眼(対側眼)は無処置のままであった。結果は以下を含む。
【0161】
THC-VHS-NEC製剤に続いてロプレッサ(登録商標)を投与した場合(図43~46)、IOPの平均最大低下は約32.4±2.6 %で、30~540分まで26.5±4.4 %の平均低下を維持した。IOPは24時間以内にベースラインに戻った。IOPの最大低下は240~420分の間に生じたが、5日間かけて8.6~7.0 mmHgの圧力強度が減少した。しかし、30分の時点で、IOPは6日目と8日目にはすでにベースラインより20 %低下しており、10日目には90分までに低下していた。したがって、併用のIOP低下プロファイルはTHC-VHS-NEC製剤単独やロプレッサ(登録商標)単独よりも良好であった。以下の表10も参照。
【0162】
ロプレッサ(登録商標)に続いてラタノプロストを投与した場合(図47~50)、IOPの平均最大低下は約22.7±2.9 %であり、30~540分まで19.0±2.1 %の平均低下を維持した。IOPが最大に低下する時間は3日間でいくらかの変動を示し、6日目、8日目、10日目ではそれぞれ180分、420分、120分であった。6日目には25.7±0.8 %の最大IOP低下が観察され、一方、8日目と10日目にはそれぞれ22.5±1.3 %と19.9±2.6 %であった。このように、併用はラタノプロスト単独と同様であったが、作用はロプレッサ(登録商標)単独より有意に劣っていた。作用時間は少なくとも540分であり、その時点でもIOPはベースラインより約15 %低いままであり、24時間後までにベースラインに戻る。したがって、ラタノプロストの作用持続時間はロプレッサ(登録商標)との併用により延長したが、ロプレッサ(登録商標)単独はラタノプロストとの併用よりも良好であった。以下の表11も参照のこと。
【0163】
ラタノプロストに続いてTHC-VHS-NEC製剤を投与した場合(図51~54)、IOPの最大低下は約21.6±2.9 %であり、30~480分までの平均低下は18.1±2.1 %を維持した。IOPの最大低下は、測定された3日間すべてで90分前後に生じた。しかし、6日目には26.1±2.6 %、8日目には19.9±1.3 %、10日目には18.7±2.0 %と、より大きな最大IOP低下が観察された。IOPは540分でベースラインに戻る。この併用のIOP低下プロファイルは、ラタノプロスト単独の低下プロファイルと同様であった。したがって、THC-VHS-NECの活性はラタノプロストとの併用では明らかではない。以下の表12も参照。
【表10】
【表11】
【表12】
【0164】
したがって、ラタノプロストは併用した場合、THC-VHS-NECとロプレッサ(登録商標)両者の有効性を低下させた。これは、排出プロファイルの変化および/または代謝の変化のためであると考えられる。全体的に見て、THC-VHS-NEC製剤とロプレッサ(登録商標)の併用は、他のすべての単独処置および併用処置実験と比較して、活性時間の点でも最大IOP低下の点でも最も有効であった。結果は以下の表13にまとめている。
【表13】
【0165】
全体的に見て、ダッチベルテッドウサギにおけるTHC-VHS-NECのIOP低下プロファイルは、作用時間の点では市販のロプレッサ(登録商標)と同様であり、作用強度および作用時間の両方の点ではラタノプロストよりも優れていた。THC-VHS-NEC製剤に次いでロプレッサ(登録商標)製剤が、IOP低下プロファイルの観点で、試験したすべての製剤および併用の中で最も有効であった。
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【国際調査報告】