(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-24
(54)【発明の名称】AC-225生成のための過酸化トリウムに基づくジェネレータ
(51)【国際特許分類】
G21G 4/08 20060101AFI20240417BHJP
A61M 36/10 20060101ALI20240417BHJP
A61N 5/10 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
G21G4/08 G
A61M36/10
A61N5/10 U
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570231
(86)(22)【出願日】2022-05-12
(85)【翻訳文提出日】2023-11-13
(86)【国際出願番号】 US2022028906
(87)【国際公開番号】W WO2022241070
(87)【国際公開日】2022-11-17
(32)【優先日】2021-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513313945
【氏名又は名称】テラパワー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】チェルウィンスキー,ケン
(72)【発明者】
【氏名】フィツジェラルド,ヒラリー
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082AA05
4C082AC05
4C082AE05
(57)【要約】
本明細書に記載されたアクチニウムジェネレータは、トリウムの娘核種生成物である、ラジウムおよびアクチニウムからのトリウムの過酸化物沈殿に基づく。このシステムでは、「アクチニウムジェネレータ(actinium generator)」は、保護溶液の下で保存された、ある量の固体過酸化トリウムである。過酸化トリウムは、崩壊生成物であるラジウムおよびアクチニウムがサスペンション中に蓄積するように、サスペンションとして保存される。次いで、当該サスペンションが過酸化物溶液によって処理され、固相と液相とが分離される。トリウムは、固体過酸化物の形態で残る一方、可溶性のアクチニウムおよびラジウムは、濯ぎ工程において、液相とともに除去される。濯ぎ工程の後、ある量の濯ぎ溶液が、過酸化トリウム固体とともに新しい保護溶液として保持され、保存用の別のサスペンションを形成する。次いで、その後の分離サイクルのために、アクチニウムおよびラジウムがサスペンション中に再び蓄積するように、この新たなサスペンションが保存される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
229Thから
225Acおよび
225Raを生成するための方法であって、
保護溶液および固体
229Th過酸化物の第1サスペンションを用意する工程と、
少なくとも一部の
229Thが
225Acへと崩壊する第1期間の間、前記第1サスペンションを保存する工程と、
分離されたある量の固体
229Th過酸化物と、少なくとも一部の
225Acを含む第1溶液とが得られるように、前記第1サスペンションの前記保護溶液のうちの少なくとも一部から前記固体
229Th過酸化物を分離する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記保護液から前記固体
229Th過酸化物を分離する工程の後に、第2サスペンションが作られるように、分離された前記固体
229Th過酸化物にある量の新しい保護液を加える工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも一部の
229Thが
225Acへと崩壊する第2期間の間、前記第2サスペンションを保存する工程と、
分離されたある量の固体
229Th過酸化物と、少なくとも一部の
225Acを含む第2溶液とが得られるように、前記第2サスペンションの前記保護溶液のうちの少なくとも一部から前記固体
229Th過酸化物を分離する工程と、
をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記保護溶液から前記固体
229Th過酸化物を分離する工程は、
前記保護溶液から前記固体
229Th過酸化物を分離する工程よりも前に、前記第1サスペンションまたは前記第2サスペンションを攪拌する工程
をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記保護溶液から前記固体
229Th過酸化物を分離する工程は、
前記保護溶液中において余剰量の過酸化物を保つ工程
をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記保護溶液中において余剰量の過酸化物を保つ工程は、
前記保護溶液から前記固体
229Th過酸化物を分離する工程よりも前に、前記第1サスペンションまたは前記第2サスペンションにH
2O
2溶液を加える工程
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記H
2O
2溶液のH
2O
2は、5重量%から50重量%までである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記H
2O
2溶液のH
2O
2は、25重量%から35重量%までである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記第1サスペンションを用意する工程は、
229Thが溶解した溶液が得られるように、ある量の
229ThCl
4・
xH
2Oまたは
229Th(NO
3)
4・
xH
2Oを酸性溶液中に溶解させる工程と、
前記
229Thが溶解した溶液にある量のH
2O
2を加えることで、固体
229Th過酸化物と残留物液相とを形成する工程と、
前記残留物液相から前記固体
229Th過酸化物を分離する工程と、
前記第1サスペンションが作られるように、酸性保護溶液に前記固体
229Th過酸化物を加える工程と、
を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記保護溶液から前記固体
229Th過酸化物を分離する工程は、濾過、遠心分離、および重力沈降のうちの1または複数を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記保護溶液は、NaNO
3溶液である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記保護溶液は、0.01から10.0MまでのNaNO
3のNaNO
3溶液である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記保護溶液は、HNO
3溶液である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記保護溶液は、0.01から10.0MまでのHNO
3のHNO
3溶液である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1期間は、25日以下である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記第1期間は、10日以下である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第2期間は、25日以下である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記第2期間は、10日以下である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記第1サスペンションおよび/または前記第2サスペンションを、0.5から3までのpHに保つ工程をさらに含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記第1サスペンションおよび/または前記第2サスペンションを、1.5から2.0までのpHに保つ工程をさらに含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記第1サスペンションおよび前記第2サスペンションを、0.5から3までのpHに保つ工程は、
前記第1サスペンションまたは前記第2サスペンションに、KOHまたはHNO
3のいずれかの溶液を必要に応じて加える工程
をさらに含む、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
229Thから
225Acおよび
225Raを生成するためのシステムであって、
保護液による固体
229Th過酸化物のサスペンションを含む容器
を備える、システム。
【請求項23】
前記第1容器は、濾過漏斗である、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記保護液は、NaNO
3溶液である、請求項22に記載のシステム。
【請求項25】
前記保護液は、HNO
3溶液である、請求項22に記載のシステム。
【請求項26】
225Acジェネレータであって、
前記ジェネレータの第1部分と、
内部チャンバを画定するカラム本体と、
前記内部チャンバへのアクセスを提供する、前記ジェネレータの前記第1部分における第1アクセスポートと、
前記内部チャンバ内に含まれるある量の固体
229Th過酸化物と、
を備える、ジェネレータ。
【請求項27】
液相保存溶液および固体
229Th過酸化物のサスペンションをさらに備える、請求項26に記載のジェネレータ。
【請求項28】
前記液相保存溶液は、NaNO
3溶液およびHNO
3溶液から選択される、請求項27に記載のジェネレータ。
【請求項29】
前記ジェネレータの第2部分と、
前記ジェネレータの前記第2部分における第2アクセスポートと、
をさらに備え、
前記ジェネレータの前記第1部分は、前記ジェネレータの頂部部分であり、
前記第1アクセスポートは、上部バルブであり、
前記ジェネレータの前記第2部分は、前記ジェネレータの底部部分であり、
前記第2アクセスポートは、底部バルブまたはU字管である、請求項26~28のいずれか一項に記載のジェネレータ。
【請求項30】
前記内部チャンバは、前記第1アクセスポートまたは前記第2アクセスポートのうちの少なくとも一方のアクセスポートを介して前記固体
229Th過酸化物が除去されるのを防止するためのフィルタを含む、請求項26~29のいずれか一項に記載のジェネレータ。
【請求項31】
前記カラム本体は、カプセル状(球面円筒状)、円筒状、球状、円錐状、角錐状、円錐台状または角錐台状のうちのいずれかである、請求項26~30のいずれか一項に記載のジェネレータ。
【請求項32】
前記第1部分および前記第2部分は、前記内部チャンバに対するシールを形成する、請求項26~31のいずれか一項に記載のジェネレータ。
【請求項33】
前記第1部分および前記第2部分は、前記カラム本体に取り外し可能に取り付けられている、請求項26~32のいずれか一項に記載のジェネレータ。
【請求項34】
前記第1部分、前記カラム本体および前記第2部分は、一体的に形成されている、請求項26~33のいずれか一項に記載のジェネレータ。
【請求項35】
シール可能な第3アクセスポートをさらに備える、請求項26~34のいずれか一項に記載のジェネレータ。
【請求項36】
前記第2部分内にディフューザをさらに備える、請求項26~35のいずれか一項に記載のジェネレータ。
【請求項37】
前記ディフューザは、穿孔を含む多孔板を含み、
前記穿孔は、前記固体
229Th過酸化物が当該穿孔を通過するのを防止するように構成された大きさを有する、請求項26~36のいずれか一項に記載のジェネレータ。
【請求項38】
前記穿孔は、液体溶媒が当該穿孔を通過できるように構成されている、請求項26~37のいずれか一項に記載のジェネレータ。
【請求項39】
前記内部チャンバ内に含まれる前記
229Thからのアルファ放射線を遮断するように配置された遮蔽物をさらに備える、請求項26~38のいずれか一項に記載のジェネレータ。
【請求項40】
請求項1~39のいずれか一項によって生成された
225Acを含む医薬組成物。
【請求項41】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項40に記載の医薬組成物。
【請求項42】
前記
225Acは、抗体に結合している、請求項40または41に記載の医薬組成物。
【請求項43】
患者の癌を治療する方法であって、
請求項40~42のいずれか一項に記載の医薬組成物を前記患者に投与する工程を含む、方法。
【請求項44】
前記癌は、乳癌、白血病、リンパ腫、脳腫瘍、肝臓癌、肺癌、メラノーマ、卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌または骨癌である、請求項43に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本出願は、2021年5月12日に出願された米国仮出願第63/187,728号の利益および優先権を主張するPCT特許国際出願として、2022年5月12日に出願されたものである。この米国仮出願は、参照によって、本明細書に援用される。
【0002】
〔イントロダクション〕
アルファ放出放射性核種は、広範かつ多様な悪性腫瘍の治療における放射線治療剤として有望である。アルファ粒子は、高エネルギーであるために悪性腫瘍を破壊することができるとともに、透過深度が短いため、周囲の健康な組織へのダメージは限定的である。医学研究者にとって特に興味深いのは、アクチニウム(Ac)であり、特に、標的アルファ線治療(Targeted Alpha Therapy:TAT)に用いられる放射性同位体のAc-225(225Ac)である。225Acの魅力は、10日間というほぼ理想的な半減期を有すること、および、アルファ粒子の放出範囲がヒトの細胞とほぼ同じ大きさであることにある。225Acをモノクローナル抗体に結合させるために、リガンドが用いられるだろう。当該モノクローナル抗体は、これらのアルファ放出体を標的となる患部細胞へ伝達および送達されるように、あらかじめプログラムされている。
【0003】
現状では、225Acは、トリウム(Th)金属に陽子線を照射することによって生成されている。232Thを含むトリウム金属を照射すると、225Acへと崩壊する225Raを含む、潜在的な関心のある700種を超える種々の同位体を得ることができる。照射されたトリウムを酸性溶液中に溶解させることによって、陽子の照射後に、所望の放射性核種を回収することができる。そして、さまざまなクロマトグラフィー技術を使用して、トリウム出発物質およびその他の核破砕生成物から、所望のアクチニウム生成物およびラジウム生成物を分離することができる。
【0004】
アクチニウムおよびラジウムの生成に加えて、232Th金属に対する照射によって、所望の放射性核種生成物に対して、相当量の望ましくない放射性同位体が生み出される。例えば、低級ランタニド元素(lower lanthanide elements)(ランタンおよびセリウム等)の放射性同位体は、医療用途での使用が意図された放射性同位体の調製においては望ましいものではない。そのため、かかる望ましくない放射性同位体は、除去される必要がある。
【0005】
本明細書に記載された研究は、過酸化トリウムの形成が228Raおよび228Acから232Thを化学的に分離するのに適した方法であることの根拠となっている。同位体である232Th、228Raおよび228Acは、それぞれ、229Th、225Raおよび225Acの代わりとなるため、この分離手法は、225Raおよび225Acから229Thを化学的に分離する場合にも同様に適用可能であり、したがって、225Acジェネレータの基礎を形成するために利用できるものと考えられる。結果からは、pH=1.5~2.0の溶液からトリウムが沈殿することによって、ラジウムおよびアクチニウムからトリウムが分離しうることがわかる。これは、Th、RaおよびAcを含む酸性溶液に30%の過酸化水素を加え、続いて、pH=1.5~2.0になるまで塩基性溶液を加えることによって、達成される。別段の定めのない限り、本明細書に論じられるパーセンテージはすべて、重量%である。
【0006】
液体‐固体分離の方法は、Thの存在量に応じて異なる。約50mgのThを含む小規模分離は、遠心分離、およびピペットを介した溶相の除去によって、容易に達成された。1グラムを超えるThが利用される大規模分離は、単純な濾過ガラス器具を用いて達成された。大規模の場合には、ラジウムおよびアクチニウムの回収率を高めるために、pH=1.5~2.0の溶液を用いて過酸化トリウム固体を濯ぐことが必要となる。各々の濯ぎサイクルに対して30%の過酸化水素を追加すると、固相中のトリウムの保持がさらに促進されることがわかった。
【0007】
50mg規模(スケール)での初期の実験では、ラジウムおよびアクチニウムの100%近くが、区分された(分割された:partitioned)トリウムから回収されうることが実証された。2.5グラム規模での研究結果は、現在の「既製品」の濾過ガラス器具を用いて、99.998%のトリウム回収が可能であるという根拠となった。この数値は、分離装置の特殊化、および継続的な研究によって向上しうる。例えば、濾過工程の追加によって、99.999%の回収が実証されている。
【0008】
〔図面の簡単な説明〕
本出願の一部を構成する以下の図は、記載された技術を例示するものであり、特許請求される発明の範囲をなんら限定するものではない。その範囲は、本出願に添付された特許請求の範囲に基づくものとする。
【0009】
図1は、
233Uから
229Th、および後続する娘核種への崩壊連鎖の概略図である。
【0010】
図2は、規模における使用に適した過酸化物分離方法の一実施形態を示す。
【0011】
図3は、固相過酸化トリウムが液相保存溶液によるサスペンション中に含まれる、カラムの形態の単純なアクチニウムジェネレータの一例を示す。
【0012】
図4は、1グラム試験#1に使用した合成および濾過の装置を示す。
【0013】
図5は、1グラム試験#2に使用した合成および濾過の装置を示す。
【0014】
図6は、1グラム試験#3に使用した合成および濾過の装置を示す。
【0015】
図7は、1グラム試験#5に使用した合成および濾過の装置を示す。
【0016】
図8は、2.5グラム試験#1に使用した濾過装置を示す。
【0017】
〔詳細な説明〕
本文献には、Thの異なる一同位体(
229Th)から
225Acを生成するシステムおよび方法が記載されている。このシステムでは、
225Acは、
233Uに由来する
229Thから生成される。
229Thの自然崩壊によって、
225Raが生成され、
225Raがベータ崩壊して、
225Acとなる(
図1)。図示のように、
233Uは、160,000年という半減期を有し、
229Thへと崩壊する。
229Thは、7917年という半減期を有し、半減期が14.9日である
225Raへと崩壊する。
225Raは、半減期が10日である
225Acへと崩壊する。これらの半減期が比較的短いため、
225Raおよび
225Acは、
229Thから定期的に「ミルキングされる(milked)」必要がある。
【0018】
本明細書に記載されたアクチニウムジェネレータは、トリウムの娘核種生成物、特に、ラジウムおよびアクチニウムからのトリウムの過酸化物沈殿に基づく。このシステムでは、「アクチニウムジェネレータ(actinium generator)」は、硝酸ナトリウム溶液または硝酸溶液等の保護溶液(カバー溶液)の下で保存された、ある量の固体過酸化トリウムである。便宜上、本明細書では、固体過酸化トリウムと保護溶液とを合わせて、「過酸化トリウム-硝酸ナトリウムサスペンション(thorium peroxide-sodium nitrate suspension)」(硝酸ナトリウムが保護溶液である場合)、「過酸化トリウムサスペンション(thorium peroxide suspension)」、または、単に「サスペンション(懸濁液)」と、様々に称することがある。化学では、サスペンションは、液相中における固体微粒子の不均一な組み合わせであり、当該液相中において、少なくとも一部の粒子は、静置すると混合物から沈降する。サスペンションという用語は、適切には、固体が液体全体にわたって分散している場合の固体‐液体の組み合わせを指すものだが、本明細書では、二相が分散しているのか否かにかかわらず、過酸化トリウム-保護溶液の組み合わせを指すために用いられる。
【0019】
固体過酸化トリウムのサスペンションは、崩壊生成物であるラジウムおよびアクチニウムが当該サスペンション中に蓄積するように、ある期間の間、保存される。例えば、一実施形態では、ラジウムおよびアクチニウムが生成されるように、ある期間の間、過酸化トリウムサスペンションが容器内に保たれる。次いで、当該サスペンションが過酸化物溶液によって処理され、固相と液相とが分離する。このシステムでは、トリウムは、固体過酸化物の形態で残る一方、可溶性の娘核種(AcおよびRaを含む崩壊生成物)は、濯ぎ(リンス、洗浄)(rinsing)工程において、液相とともに除去される。濯ぎ工程の後、ある量の濯ぎ溶液が、過酸化トリウム固体とともに新しいナトリウム保護溶液として保持され、保存用の別の過酸化トリウムサスペンションが形成される。次いで、その後の分離サイクルに備えて、アクチニウムおよびラジウムがサスペンション中に再び蓄積するように、この新たなサスペンションが保存される。
【0020】
記載されたシステムでは、新たなトリウムが定期的に追加されない場合、残るトリウムに対して分離を行うことがもはや商業的に実行不可能なほどにトリウムの残量が少なくなるようなときまで、過酸化トリウムに対して分離が定期的に行われてもよい。225Acジェネレータについては、225Raの半減期は、14.9日であり、その娘核種である225Acの半減期は、10日であるため、一選択肢として、25日未満のミルキング周期が考えられる。必要性およびジェネレータの大きさ(すなわち、使用される229Thの質量)に応じて、20日以下のミルキング周期、15日以下のミルキング周期、10日以下のミルキング周期、5日以下のミルキング周期、4日以下のミルキング周期、3日以下のミルキング周期、2日以下のミルキング周期、毎日のミルキング周期、またはそれ以上に頻繁なミルキング周期という、より高頻度のミルキング周期が想定される。
【0021】
一実施形態では、過酸化トリウムは、複数の分離および保存のサイクルを通じて、同じ容器(例えば、濾過漏斗)内に保たれる。この実施形態では、過酸化トリウムを含む容器は、「アクチニウムジェネレータ(actinium generator)」または「ラジウムジェネレータ(radium generator)」と称されることがある。これら2つの元素が、当該容器において生成され、当該容器から定期的に得られるからである。代替的な一実施形態では、過酸化トリウムは、固体‐液体分離に用いられる容器とは異なる容器内でサスペンションとして保たれてもよく、または、固体として保たれてもよいだろう。
【0022】
一実施形態では、過酸化トリウム以外のトリウムの任意の化合物が生成されて、分離物の液相とともに失われうる可能性が防止および最小化されるように、過酸化トリウムの取り扱い全体を通じて、余剰の過酸化物が保たれる。さらに、最終的に使用されるシステムおよび装置にかかわらず、分離の際の固体の損失を防止することによっても、トリウムソースの保持が最大化されるだろう。
【0023】
本明細書に記載されたアクチニウムジェネレータのシステムおよび方法では、トリウムのどの同位体(すなわち、229Thまたは232Th)が原料物質(source material)として使用されるかに応じて、225Raおよび225Ac、あるいは、228Raおよび228Acのいずれかが生成されることとなる。本明細書において同位体を指定せずにアクチニウム元素、ラジウム元素またはトリウム元素を用いる場合、(例えば、下に示す実施例のように)明示的に示される場合を除き、その議論は概して、これらの元素の任意の同位体に対して適用可能である。例えば、特定の同位体を指定せずに「アクチニウムジェネレータ」という表現を用いる場合、225Acジェネレータまたは228Acジェネレータのいずれに対しても、その議論が同様に適用可能であることを、読者は理解するであろう。
【0024】
図2は、規模における使用に適した過酸化物分離方法の一実施形態を示す。方法200は、合成操作202における、出発物質からの過酸化トリウム固体の初期合成から始まる。図示の実施形態では、合成操作202において、ThCl
4・
xH
2OまたはTh(NO
3)
4・
xH
2Oの初期供給原料が、過酸化トリウムに変換される。示されているように、トリウムが溶解した溶液が得られるよう、pHが3以下の適切な酸性溶液中に、ThCl
4・
xH
2OまたはTh(NO
3)
4・
xH
2Oが溶解させられる。溶液のpHは、必要に応じて、KOHまたはHNO
3を用いて制御しうる。一実施形態では、0.5~3.0の標的pHが、溶液中に維持される。代替的な一実施形態では、1.0~2.5という、より狭い範囲が用いられる。さらに別の一実施形態では、1.5~2.0という、さらに狭い範囲のpHが維持される。
【0025】
次いで、過酸化水素溶液(例えば、5重量%から50重量%までのH2O2、10重量%から45重量%までのH2O2、または、20重量%から40重量%までのH2O2が用いられうる)を、塩化トリウムが溶解した溶液または硝酸トリウムが溶解した溶液に加える。その結果、当該酸性溶液内でトリウムが沈殿物を形成し、それによって、過酸化トリウムサスペンションが生成される。
【0026】
次いで、初期固体‐液体分離操作204において、サスペンションの固体過酸化トリウムと液相とが分離される。分離は、遠心分離、真空濾過、重力沈降、またはその他の任意の液体‐固体分離手法もしくは複数の手法の組み合わせによって行うことができる。なお、出発物質は、ある量の崩壊生成物RaおよびAcを必然的に含むこととなることに留意されたい。崩壊生成物は液相中に留まり、分離によって固相から除去される。そのため、固体‐液体分離操作204の結果、ラジウムおよびアクチニウムを有する液相と、過酸化トリウムを有する固相とが得られる。
【0027】
分離操作204の後、収集操作206において、液相が収集される。収集操作206には、(操作208で示す)放射線治療剤としてのさらなる使用のために、必要に応じて、さらなる処理(例えば、225Raと225Acとを分離)が含まれてもよい。
【0028】
次いで、保存操作210において、過酸化トリウムの固相が、次の分離サイクルまで保存される。図示の実施形態では、過酸化トリウムは、新しい保護溶液がジェネレータの内部チャンバの一部または全部を満たした状態で、ジェネレータ容器内のフィルタ(濾過器)上に保存される。
【0029】
保存したトリウムを崩壊させておく所望の期間の後、すなわち、上述したミルキング期間の後、固体過酸化トリウムは次いで、初期分離操作204と同様の、その後の固体‐液体分離操作212に供される。サスペンションとして保存されている場合には、サスペンションの複数の相は、分離しており、分離工程の前に混合されてもされなくてもよい。固体として保存されている場合には、新たなサスペンションが生成され、次いで、当該新たなサスペンションが、固体‐液体分離に供される。
【0030】
その後の固体‐液体分離操作212は、追加の過酸化物溶液(例えば、5重量%から50重量%までのH2O2、10重量%から45重量%までのH2O2、20重量%から40重量%までのH2O2、または25重量%から35重量%までのH2O2が用いられうる)を加える工程を含んでもよい。さらに、過酸化トリウムサスペンションの混合またはその他の攪拌が行われてもよい。これによって、固相中のトリウムの保持と、液相内へのラジウムおよびアクチニウムの溶解とが、ともに促進される。代替的な一実施形態では、分離には、単に、過酸化トリウムが保存されていた保存溶液を除去する工程(除去工程前の攪拌の有無は問わない)と、その保存溶液に代わる新たな溶液を加える工程と、が含まれうるだろう。
【0031】
一実施形態では、分離プロセスの一部として、過酸化水素がサスペンション中に余剰に保たれる。別の一実施形態では、トリウムがサスペンション中にある場合は常に、過酸化水素が余剰に保たれる。
【0032】
各々の分離操作212の一部として、1または複数の濯ぎサイクルが含まれてもよい。濯ぎ工程は、いくつかのある量の洗浄溶液(例えば、NaNO3溶液、HNO3溶液および/またはH2O2溶液)によって洗浄する(washing)工程を含んでもよい。本明細書においてNaNO3の溶液が用いられる場合は常に、別段の定めがない限り、0.01Mから10.0MまでのNaNO3の水溶液が用いられうる。本明細書においてHNO3の溶液が用いられる場合は常に、別段の定めがない限り、0.01Mから10.0MまでのHNO3の水溶液が用いられうる。本明細書において過酸化物溶液が用いられる場合は常に、別段の定めがない限り、5重量%から50重量%までのH2O2の水溶液、10重量%から45重量%までのH2O2の水溶液、または20重量%から40重量%までのH2O2の水溶液が用いられうる。
【0033】
一実施形態では、固相は、溶液下で遮蔽容器内に保存され、次いで、その後の固体‐液体分離操作212ごとに除去されてもよい。崩壊する229Thおよびその放射性娘核種生成物からの放射線が遮断されるように、遮蔽物が設けられる。代替的な一実施形態では、固体過酸化トリウムは、保存容器と分離容器との両方の役割を果たす反応容器内に保たれてもよい。この実施形態では、その後の分離工程212は、濯ぎサイクルが実行される場合には、追加の溶液を容器に導入し、任意の濯ぎ溶液を含む溶出液を収集することによって行われる。
【0034】
固相は、単独で(すなわち、乾燥した状態で、または実質的に乾燥した状態で)保存されてもよく、または、上述した保存溶液の下で保存されてもよい。しかしながら、方法200の注目すべき一側面は、乾燥工程が必要とされず、したがって乾燥操作のコストが節約されることである。方法200の一実施形態では、方法200は、保存されたトリウムのサスペンションから保護溶液を定期的に傾瀉し、除去された保護溶液を新しい保護溶液と交換するという、単純なものでありうるだろう。この単純な実施形態では、トリウムの取り扱いが最小限に抑えられる。例えば、各々の分離工程の一部としてトリウムを乾燥させることなく、また、各々の分離工程の一部として容器間またはカラム間でトリウムを物理的に移動させる必要なく、アクチニウムが生成される。
【0035】
図3は、固相過酸化トリウムが液相保存溶液によるサスペンション中に含まれる、カラムの形態の単純なアクチニウムジェネレータの一例を示す。本明細書において「カラム」と称されているが、ジェネレータ300は、任意の形状であってもよい。ほんのいくつかの例をあげれば、ジェネレータ300の形状には、例示したカプセル状(球面円筒状)、円筒状、球状、円錐状、角錐状、円錐台状または角錐台状が含まれる。
【0036】
図示の実施形態では、ジェネレータ300は、内部キャビティを画定する円筒状カラム本体302と、係合時に当該キャビティをシールする半球状の頂部または蓋部分304と、半球状の底部306と、を含む。頂部304、本体302および底部306は、原料物質(すなわち、過酸化トリウム)を含む内部チャンバ314を画定している。頂部304および底部306のうちの一方または両方は、原料物質をジェネレータ300に挿入し、または原料物質をジェネレータ300から除去できるように、本体302に取り外し可能に取り付けられてもよい。これは、任意の公知のシステム(例えば蓋部分上および円筒形本体内に設けられた、互いに対応するねじ山部分(図示せず)等)によって達成されてもよい。あるいは、ジェネレータ300は、単体構造であってもよく、シール可能なアクセスポート(図示せず)を通じて、またはジェネレータの製造の際に、原料物質が装填されてもよい。
【0037】
図示された実施形態では、2つの流体フローバルブ308、310が設けられている。第1バルブ308(一部の例では、出力バリュー(output value)でありうる)は、頂部304に設けられており、第2バルブ310(一部の例では、入力バルブ(input valve)でありうる)は、底部306に設けられている。さらに別の一実施形態では、ジェネレータは、例えば、ガスが流出できるように、蓋の係合時に完全にはシールされなくてもよい。バルブ308、バルブ310は、それぞれ、ジェネレータ300の頂部および底部に示されているが、当業者であれば、バルブ308、バルブ310は、任意の適切な位置および/または向きに配置することができ、必ずしもジェネレータにおける互いに反対の側に配置する必要はないことを認識するであろう。同様に、図示した単純な頂部および底部の構成に代えて、任意の種類、形状または数のバルブが用いられてもよい。例えば、入力、出力、冗長性、ならびに/または、抽出物質および/もしくはジェネレータの安全対策のいずれかのために、1つのバルブ308のみが用いられてもよく、または、図示の2つのバルブに加えて、複数のバルブが用いられてもよい。同様に、図示した単純な頂部および底部の構成に代えて、任意の種類、形状または数のバルブ、U字管または開口部がアクセスポートのために用いられてもよい。例えば、1つのバルブ2408または追加のバルブ(図示せず)が、入力、出力、冗長性、ならびに/または、抽出物質および/もしくはジェネレータの安全対策のいずれかのためのアクセスポートとして用いられてもよい。単純な一構成では、ジェネレータ2400は、例えばボトルまたはビーカーのように、1つのアクセスポートのみを有してもよい。
【0038】
ジェネレータ300は、原料物質チャンバの外部と内部との両方において、任意の形状であってもよい。任意の数、種類および構成のアクセスポート、バルブ、シャックル、コネクタ、接触点またはその他の補助コンポーネントが、所望に応じて用いられてもよい。例えば、図示の実施形態では、ジェネレータが流動床反応器または充填床接触反応器として容易に用いられうるように、ディフューザ312が設けられている。この実施形態では、ディフューザは、原料物質(例えば、粒子状物質)の通過を防止または低減するような大きさの穿孔を有する、多孔板の形態である。しかしながら、底部バルブ310から導入された溶媒は、ディフューザ312を容易に通過し、原料物質と接触するようになる。あるいは、ディフューザ312を、ガラスフリットフィルタとすることもできるだろう。これは、ジェネレータ上に設けうるであろう補助コンポーネントの、ほんの2つの例に過ぎない。例えば、追加のディフューザ、マニホールド、溶媒流を均等に分配するためのバッフル、非円筒形内部形状の原料物質チャンバ/キャビティ314、流れを導くためのバッフル等の、追加の補助コンポーネントを有するジェネレータに、種々の多くの流動床反応器設計を組み込むことができるだろう。
【0039】
ジェネレータは、用いられるある物理的形態の原料物質の挿入および除去を容易にする開口部を備えるように作製されてもよい。例えば、上述したように1または複数の大きな塊の原料物質が使用される場合、ジェネレータには、それらの塊の挿入および除去を可能にする比較的大きな開口部が設けられてもよい。これにより、原料物質が使用済みとなった後に、ジェネレータを再使用できるだろう。あるいは、ジェネレータは、原料物質が当該ジェネレータとともに処分されることを意図して、原料物質の周りに構築されてもよい。標的が十分に使用済みとなった後のジェネレータから原料物質を除去するために、廃棄物および/または廃棄物処理を低減しうるようにはなっていない。
【0040】
トリウムを保存するジェネレータはさらに、中性子の移動から遮蔽されてもよい。当技術分野で知られているような任意の種類の遮蔽が設けられてもよい。
【0041】
(実施例)
この実施例の項では、トリウム、ラジウムおよびアクチニウムに関する記述はすべて、別段の定めのない限り、232Th、228Raおよび228Acを指す。
【0042】
(出発物質)
これらの研究を行うための主な出発物質には、ThCl4・xH2Oを用いた。Th(NO3)4・xH2Oを使用していくつかの予備試験を実施したが、結果は同等であった。HNO3およびその他の硝酸塩を使用して、pHを調整し、またはイオン強度を増加させた。下流の(Ra/Acの分離/精製工程)において、硝酸塩形態が必要となるからである。pH調整には、一貫して水酸化カリウムを使用した。すべての実験に、30%過酸化水素を使用した。
【0043】
(pH範囲研究)
水酸化トリウムを利用した試験(本報告には含まれない)では、トリウムはpH=3.0を超えたときに加水分解し始めると結論づけられたため、すべての試験は、pH=3.0未満で実施した。一方、初期の試験では、過酸化トリウムはpH=0を超えたときに形成し始めると結論づけられた。したがって、pH=0.5~3.0の範囲が検討された。各pH範囲(0.5、1.0、1.5、2.0、2.5および3.0)を3回ずつ繰り返した。溶相中の[Th]の測定には、ICP-OESを用いた。溶相中の[Ac]および[Ra]ならびに回収率の決定には、ガンマスペクトロスコピーを用いた。
【0044】
約60mgのThCl4・xH2O(約28gのTh)を秤量して、15mLの遠心管に入れた。次いで、8.5mLのDI H2Oを、ThCl4・xH2Oを溶解させるために攪拌しながら、遠心管に加えた。この溶液に1.5mLの30% H2O2を加え、KOH溶液またはHNO3溶液を用いて、溶相を所望のpHに調整した。
【0045】
割り当てられた1時間の反応時間の後、試料を遠心分離し、その後のガンマ(線)分析、アルファ(線)分析およびICP-OES分析のために、ピペットで溶相を除去した。ICP-OES分析のために除去した試料を、0.45μmのシリンジフィルタで濾過した。
【0046】
(速度論(kinetics))
溶解溶液としてDI H2Oおよび0.1M NaNO3を用いて、速度論研究を行った。試料は、t=0分、15分、30分、45分、1時間、2時間および3時間において採取した。これらの実験を3回ずつ行った。1グラム規模で、追加の速度論研究を行った。
【0047】
(小規模の実験)
約60mgのThCl4・xH2O(約28gのTh)を秤量して、15mLの遠心管に入れた。8.5mLのDI H2Oまたは0.1M NaNO3を、ThCl4・xH2Oを溶解させるために攪拌しながら、遠心管に加えた。この溶液に1.5mLの30% H2O2を加え、KOH溶液を用いて、溶相をpH=1.6±0.1に調整した。所望のpHに達した時点で時刻を開始した。
【0048】
割り当てられた時間の後、試料を遠心分離し、その後のICP-OES分析のために、ピペットで1mLの溶相を除去した。除去した試料を0.45μmのシリンジフィルタで濾過した。各々の1mLの試料を除去した後に、pH=1.5のHNO3溶液1mLを遠心管に加えた。すべての試料をICP-OES分析に供した。
【0049】
(1グラム規模の実験)
100mLの丸底フラスコ内で、2.3174グラムのThCl4・xH2O(1.0626gのTh)を40mLの0.1M NaNO3中へ溶解させた。この溶液に、10mLの30% H2O2を、攪拌しながらゆっくりと加えた。次いで、pH=2.01になるまで、0.5M KOH溶液を用いてpHを調整した。所望のpHに達した時点で時刻を開始した。
【0050】
t=0、30分、1時間、2時間および3時間において、ピペットで試料を除去した。割り当てられた時間の後、ピペットで1mLの溶相を除去し、0.45μmのシリンジフィルタで濾過した。各々の1mLの試料を除去した後に、pH=2.0のHNO3溶液1mLを丸底フラスコに加えた。すべての試料をICP-OES/MS分析に供した。
【0051】
(最小量の30% H2O2)
試験は、2mLの0.1M NaNO3を約60mgのThCl4・xH2O(約28gのTh)に、溶解させるために攪拌しながら加えることで行われた。各試験に対して、ある範囲の量の30% H2O2をこの溶液に加えた。加えられた30% H2O2の量は、0.3mLから1.5mLまでの範囲であり、各試験では0.1mLずつ変化させた。pHは、KOH溶液を用いてpH=1.6±0.1に調整した。反応時間は、1時間とした。
【0052】
割り当てられた1時間の反応時間の後、試料を遠心分離し、ピペットで1mLの溶相を除去した。除去した試料を0.45μmのシリンジフィルタで濾過し、ICP-OES/MS分析に供した。
【0053】
(イオン濃度の増加)
溶液(最初にトリウムが当該溶液中へ溶解させられ、その後RaおよびAcを回収する際に過酸化物が当該溶液を用いて濯がれる)のイオン濃度を変えながら、一連の1グラム実験を行った(段落「0064」に記載)。
【0054】
(2.5グラムのThへの規模拡大(スケールアップ)、液体‐固体分離およびイオン濃度の増加)
(1グラム試験#1)
(合成)
50mLのケルダールフラスコ内で、2.2157gのThCl4・xH2O(1.0159gのTh)を40mLの0.1M NaNO3中へ溶解させた。この溶液に、10mLの30% H2O2を、攪拌しながら加えた。次いで、pH=1.64になるよう、KOH溶液を用いてpHを調整した。濯ぎ工程および濾過工程を開始する前の反応時間は、1時間とした。
【0055】
(試料収集)
デュアルシリンジポンプを用いて5mL/分で濯ぎ工程および濾過工程を行った。濯ぎ溶液(pH=2.0のHNO
3溶液)を、フラスコの底に挿入および配置した1/16”管を介して送出した(
図4)。
【0056】
過酸化トリウム固体の上に配置したChemglassファインフリット(4~5.5μm)濾管を介して、試料を除去した(
図4)。試料を収集して、6つの50mL画分(フラクション)とした。混合後に、5mLの試料をガンマ分析のために除去し、1mLを、ICP-OES分析のために除去して0.45μmのシリンジフィルタで濾過した。また、さらに1mLのアリコートをICP-OES分析のために除去したが、濾過はしなかった。
【0057】
(1グラム試験#2)
(合成)
100mLの2つ口丸底フラスコ内で、2.2322gのThCl4・xH2O(1.0235gのTh)を50mLの0.1M NaNO3中へ溶解させた。この溶液に、10mLの30% H2O2を、攪拌しながら加えた。次いで、pH=1.64となるよう、KOH溶液を用いてpHを調整した。濯ぎ工程および濾過工程を開始する前の反応時間は、1時間とした。
【0058】
(試料収集)
溶液の量を増やして、溶液にVWRミディアム(15~40μm)フリット、ブフナー濾過漏斗(15mL)を通過させて、濾過を行った。溶液を一次(ブフナー)フィルタで濾過した後、Chemglassファインフリット(4~5.5μm)濾管を用いて2回目の濾過を行った。J-KEMデュアルシリンジポンプを用いて、pH=2.0のHNO
3濯ぎ溶液を加えて5mL/分で試料を除去した(
図5)。
【0059】
試料を収集して、6つの50mL画分とした。混合後に、5mLの試料をガンマ分析のために除去し、1mLを、ICP-OES/MS分析のために除去して0.45μmのシリンジフィルタで濾過した。また、さらに1mLのアリコートをICP-OES/MS分析のために除去したが、濾過はしなかった。
【0060】
(1グラム試験#3)
(合成)
100mLの丸底フラスコ内で、2.3174gのThCl4・xH2O(1.0626gのTh)を、40mLの0.1M NaNO3中へ溶解させた。この溶液に、10mLの30% H2O2を、攪拌しながら加えた。次いで、pH=2.01となるよう、KOH溶液を用いてpHを調整した。速度論試験の詳細については、セクション5.2.2を参照。
【0061】
(移し替えおよび濾過装置)
翌日、底部バルブを備える60mLの10~20μm濾過漏斗(AceGlass品番7776-25)へ、ピペットで過酸化物を移した。フィルタをあらかじめ濡らし、濾過ガラス器具をpH=2.0のHNO
3溶液で濯いだ。過酸化物をフィルタ上へ投入する間、底部バルブを閉じて、溶液がフィルタを通って流れるのを防止し、濾過前に固体を沈降させた(
図6)。
【0062】
(試料収集)
固体が沈降したら、底部バルブを開け、J-KEMシリンジポンプでわずかに減圧した(5mL/分)。並行して、丸底フラスコを10mLのpH=2.0のHNO3で3回濯ぎ、濾過装置に加えた。50mLが、フィルタの下の50mLの梨型フラスコ内へ収集された。容易に得られる溶液はすべて、各濾過工程の際に除去した。50mLの試料を収集した後に、真空アタッチメントをChemglassファインフリット(4~5.5μm)濾管に交換した。試料を、梨型フラスコから濾管を介して5mL/分の速さで除去し、収集バイアルへ移した。
【0063】
濯ぎ画分の残りを、シリンジポンプを介して5mL/分で加えた。pH=2.0のHNO3溶液で、濯ぎ/濾過処理を10回繰り返した。試料収集の終了後、底部バルブを閉じ、pH=2.0の溶液を過酸化物に加えて当該過酸化物を濡れた状態に保った。混合後に、5mLの試料をガンマ分析のために除去し、1mLを、ICP-OES/MS分析のために除去して0.45μmのシリンジフィルタで濾過した。また、さらに1mLのアリコートをICP-OES/MS分析のために除去したが、濾過はしなかった。
【0064】
(1グラム試験#4(0.4M NaNO3))
(合成)
100mLの丸底フラスコ内で、2.3228gのThCl4・xH2O(1.0650gのTh)を40mLの0.4M NaNO3中へ溶解させた。この溶液に、10mLの30% H2O2を、攪拌しながら加えた。次いで、pH=1.72となるよう、KOH溶液を用いてpHを調整した。反応時間は、1時間とした。
【0065】
(移し替えおよび濾過装置)
1グラム試験#3に記載されたのと同じ移し替え手法および濾過装置を用いた。
【0066】
(試料収集)
固体が沈降したら、約5~10分間、底部バルブを開け、J-KEMシリンジポンプ(5mL/分)でわずかに減圧した。50mLの量がフィルタの下の50mLの梨型フラスコ内へ収集されるまで、溶液を過酸化物に加えた。常に余剰量の溶液が過酸化トリウムに加えられた(過酸化物が乾燥しないように)。50mLの試料を収集した後に、真空アタッチメントをChemglassファインフリット(4~5.5μm)濾管に交換した。試料を、梨型フラスコから濾管を介して5mL/分の速さで除去し、収集バイアルへ移した。
【0067】
pH=2.0に調整した0.4M NaNO3溶液を用いて、濯ぎおよび濾過の処理を6回繰り返した。試料収集の終了後、底部バルブを閉じ、濯ぎ溶液を過酸化物に加えて当該過酸化物を濡れた状態に保った。混合後に、5mLの試料をガンマ分析のために除去し、1mLを、ICP-OES/MS分析のために除去して0.45μmのシリンジフィルタで濾過した。また、さらに1mLのアリコートをICP-OES/MS分析のために除去したが、濾過はしなかった。
【0068】
(1グラム試験#5(0.1M NaNO3))
(合成)
100mLの丸底フラスコ内で、2.3340gのThCl4・xH2O(1.0702gのTh)を40mLの0.1M NaNO3中へ溶解させた。この溶液に、10mLの30% H2O2を、攪拌しながら加えた。次いで、pH=1.81となるよう、KOH溶液を用いてpHを調整した。反応時間は、1時間とした。
【0069】
(移し替えおよび濾過装置)
1時間の反応時間の後、丸底フラスコを反転させてChemglass10~15μm濾過装置内へ過酸化トリウムを移した(
図7)。
【0070】
(試料収集)
試料収集の手順は、段落「0066」に記載された手順と同様であった。この実験に使用した濯ぎ溶液は、pH=2.0に調整した0.1M NaNO3溶液であった。
【0071】
(1グラム試験#6(1.0M NaNO3))
(合成)
100mLの丸底フラスコ内で、2.3342gのThCl4・xH2O(1.0703gのTh)を40mLの1.0M NaNO3中へ溶解させた。この溶液に、10mLの30% H2O2を、攪拌しながら加えた。次いで、pH=1.81となるよう、KOH溶液を用いてpHを調整した。反応時間は、1時間とした。
【0072】
(移し替えおよび濾過装置)
この実験の際には、1グラム試験#5に記載されたのと同じ移し替え方法と濾過装置を使用した。
【0073】
(試料収集)
試料収集の手順は、1グラム試験#5に記載された手順と同様であった。この実験に使用した濯ぎ溶液は、pH=2.0に調整した1.0M NaNO3溶液であった。
【0074】
(1グラム試験#5繰り返し)
(合成)
100mLの丸底フラスコ内で、2.3470gのThCl4・xH2O(1.0761gのTh)を40mLの0.1M NaNO3中へ溶解させた。この溶液に、10mLの30% H2O2を、攪拌しながら加えた。次いで、pH=1.94となるよう、KOH溶液を用いてpHを調整した。反応時間は、1時間とした。
【0075】
(移し替えおよび濾過装置)
移し替えの方法および濾過装置については、「1グラム試験#3」の項に記載されている。
【0076】
(試料収集)
試料収集の方法は、1グラム試験#4に記載されている。
【0077】
(1グラム試験#7(0.05M NaNO3))
(合成)
100mLの丸底フラスコ内で、2.3770gのThCl4・xH2O(1.0899gのTh)を40mLの1.0M NaNO3中へ溶解させた。この溶液に、10mLの30% H2O2を、攪拌しながら加えた。次いで、pH=1.75となるよう、KOH溶液を用いてpHを調整した。反応時間は、1時間とした。
【0078】
(移し替えおよび濾過装置)
この実験の際には、1グラム試験#5に記載されたのと同じ移し替え方法と濾過装置を使用した。
【0079】
(試料収集)
試料収集の手順は、1グラム試験#4に記載された手順と同様であった。この実験に使用した濯ぎ溶液は、pH=2.0に調整した0.05M NaNO3溶液であった。
【0080】
(2.5グラム試験#1)
(合成)
250mLの丸底フラスコ内で、5.4676gのThCl4・xH2O(2.5070gのTh)を60mLの0.1M NaNO3中へ溶解させた。この溶液に、25mLの30% H2O2を、攪拌しながら加えた。次いで、pH=1.76となるよう、KOH溶液を用いてpHを調整した。濾過装置内へ移す前の反応時間は、2時間とした。
【0081】
(移し替えおよび濾過装置)
移し替えの方法および濾過装置は、1グラム試験#3(
図8)に記載されている。
【0082】
(試料収集)
試料収集の方法は、1グラム試験#4に記載されている。各々の濯ぎ溶液は、48.3mLの0.1M NaNO3および1.7mLの30% H2O2から構成されていた。各々の濯ぎ溶液のpHを、使用前に測定した。濯ぎおよび濾過の処理を6回繰り返した。
【0083】
(ジェネレータサイクルのシミュレーション)
(1g-4 第2サイクル)
(初期調整(conditioning))
上記の1グラム試験#4(1g-4)で合成された固体を、濾過装置内に、合計9日間静置した。反応物を加える前の過酸化トリウムのpHは、pH=2.02であると決定された。過酸化トリウムに、10mLの30% H2O2を、磁気攪拌棒(magnetic stir bar)で穏やかに攪拌しながら加えた。30% H2O2を加えた後、溶相は、pH=1.76となった。
【0084】
(試料収集)
pH=2.0の0.1M NaNO3溶液20mLを5mL/分の速さで加える前に、約40分間放置した。30mLの量が装置で濾過されるまで、5mL/分でわずかに減圧した。一次フィルタでの濾過が完了した後に、底部バルブを閉じた。同時に、30mLの濯ぎ溶液を過酸化トリウムに加える一方、真空アタッチメントを除去してChemglassファインフリット(4~5.5μm)濾管に交換した。試料を、梨型フラスコから濾管を介して5mL/分の速さで除去し、収集バイアル内へ移した。
【0085】
濯ぎ/濾過サイクルを、6つの30mLの試料が収集されるまで繰り返した。混合後に、1mLを、ICP-OES/MS分析のために除去して0.45μmのシリンジフィルタで濾過した。また、さらに1mLのアリコートをICP-OES/MS分析のために除去したが、濾過はしなかった。
【0086】
(1g-4 第3サイクル)
1グラム試験#4で合成され、その後、上記の1g-4 第2サイクルに記載したように濯がれた過酸化トリウムを、4日間静置した後、この実験に使用した。
【0087】
(初期調整)
反応物を加える前の過酸化トリウムのpHは、pH=1.80であると決定された。過酸化トリウムに、10mLの30% H2O2を、磁気攪拌棒で穏やかに攪拌しながら加えた。30% H2O2を加えた後、溶相は、pH=1.70となった。
【0088】
複数の濯ぎ画分を、前もって調製した。各々の画分は、pH=2.0に調整した30mLの0.1M NaNO3および1mLの30% H2O2を含んでいた。各々の濯ぎ画分のpHは、pH=1.88~2.05であると決定された。反応時間は、約1時間とした。
【0089】
(試料収集)
濾過装置に、pH=2.0の0.1M NaNO3溶液20mLを5mL/分の速さで。30mLの量が装置で濾過されるまで、5mL/分でわずかに減圧した。一次フィルタでの濾過が完了した後に、底部バルブを閉じた。同時に、30mLの濯ぎ溶液を過酸化トリウムに加える一方、真空アタッチメントを除去してChemglassファインフリット(4~5.5μm)濾管に交換した。試料を、梨型フラスコから濾管を介して5mL/分の速さで除去し、収集バイアル内へ移した。
【0090】
濯ぎ/濾過サイクルを、6つの30mLの試料が収集されるまで繰り返した。混合後に、1mLを、ICP-OES/MS分析のために除去して0.45μmのシリンジフィルタで濾過した。また、さらに1mLのアリコートをICP-OES/MS分析のために除去したが、濾過はしなかった。
【0091】
(ガンマスペクトロスコピー)
同位体228Acは、ガンマスペクトロスコピーによる分析に、十分な光電ピークを有する(下記の228Raおよび228Acのデータは、IAEA同位体ブラウザからのデータである)。関連する崩壊は、232Thから228Thへのものである(t1/2=1.91年)。
【0092】
【0093】
ガンマデータは、一定のサンプルジオメトリへ集められる。崩壊は、228Acの関心領域についてバックグラウンド補正されている。検査された228Ac光電ピークに関する全体的な検出器効率を、既知量の232Th(36.94mg)を用いて決定した。バックグラウンド補正および検出器効率によって、収集されたスペクトロスコピーデータからBq単位の放射能が得られる。収集された試料の総放射能は、その5mLガンマ分析画分に基づいている。
【0094】
ガンマ試料中に存在する228Acは、分離された228Acの元の量、および228Raの崩壊に由来する228Acの内部成長(内部発生:ingrowth)によるものである。したがって、任意の所与の時刻における、228Acの放射能は、次式による成長および崩壊から228Acおよび228Raの初期放射能に関係する。
【0095】
【0096】
ここで、228Actは、時刻tにおける放射能であり、228Acoは、初期228Ac放射能であり、228Raoは、初期228Ra放射能であり、λは、228Acの崩壊定数であり、tは、分離からガンマ放射能測定までの時間である。ガンマ出力データは、総カウント、測定時間、開始時刻を含み、RPTファイルとして保存される。
【0097】
5mLの試料を試料ホルダ内のガンマ検出器上に装填し、3600秒間、または、911keVの関心領域において1000カウントが集まるまで、カウントするように設定して、ガンマスペクトロスコピーを行った。各カウントの開始時刻を、分離の時刻に対する正規化のために記録した。カウント時間における分散およびラベリングを有する複数の試料データセットが提供されるように、ORTECガンマ分析ソフトウェア上でジョブファイルを展開した。この収集データを、分離の時刻における228Raおよび228Acの量を決定するために使用した。0.9から0.05までのe-λtに相当する複数の時刻における複数のデータ点を収集した。
【0098】
【0099】
(データ分析)
収集したデータはRPTファイルからコピーされ、分析のためにExcelに転送された。装填試料がカラムに追加された日時を、アクチニウムおよびラジウムの崩壊の開始時刻として使用した。トリウム、ラジウムおよびアクチニウム間の平衡が乱れてからどれほどの時間が経過したかを決定するために、各試料についてのガンマデータ収集の日時から、この値を差し引いた。これから、初期アクチニウムの残存量と、ラジウムの内部から生じたものと見込まれるアクチニウムの量とが、崩壊率、ならびに、成長および崩壊の方程式を介して決定された。228Raおよび228Acの初期放射能の値は、実験データに対する最小二乗フィットによって決定された。
【0100】
(ICP-OES分析およびICP-MS分析)
(ICP-OES)
(試料調製)
収集された各試料の1mLのアリコートを採取し、9mLの2%硝酸で希釈することによって、ICP-OES(optical emission spectroscopy:発光スペクトロスコピー)試料を調製した。
【0101】
(機器分析)
希釈した試料を、ICP-OESオートサンプラー内へ装填して分析した。0.1ppmから50ppmまでの範囲のトリウム232標準を用いて、各実行の開始時に検量線を作成した。波長339.204nm、401.913nmおよび274.716nmにおいて、ピーク高さを用いて試料を分析して、各波長における強度を決定した。
【0102】
【0103】
(データ分析)
ICP-OESから収集したデータについて、Excelで分析した。各波長における各試料中のトリウムの濃度を、モル濃度からグラムへ変換し、全分率(トータル割合)を表すように算出した。次いで、これらの値を平均し、3つの波長の平均として、各試料中のトリウムの量を決定した。これらの値の間の標準偏差も算出して、各試料における誤差を決定するために用いた。これらの値をいずれもトリウムの理論的な開始量で割って、回収したトリウムの総量、分離のどの部分でそれが回収されたのか、および、誤差を求めた。
【0104】
(ICP-MS)
(試料調製)
収集された各試料の1mLのアリコートを採取し、9mLの2%硝酸で希釈することによって、ICP-OES(発光スペクトロスコピー)試料を調製した。
【0105】
(機器分析)
希釈した試料を、ICP-MSオートサンプラー内へ装填して分析した。0.1ppbから1.0ppmまでの範囲のトリウム232標準を用いて、各実行の開始時に検量線を作成した。Heガスフローありのとき、および、Heガスフローなしのときで、試料を分析した。
【0106】
(データ分析)
ICP-MSから収集したデータについて、Excelで分析した。Heガスフローありのとき、および、Heガスフローなしのときで、各試料中のトリウムの濃度を、モル濃度からグラムへ変換し、全分率を表すように算出した。次いで、これらの値を平均し、2つの検出値の平均として、各試料中のトリウムの量を決定した。これらの値の間の標準偏差も算出して、各試料における誤差を決定するために用いた。これらの値をいずれもトリウムの理論的な開始量で割って、回収したトリウムの総量と、分離のどの部分でそれが回収されたのか、および、誤差を求めた。
【0107】
(結果)
トリウム、ラジウムおよびアクチニウムに関する記述はすべて、別段の定めのない限り、232Th、228Raおよび228Acを指す。「Ac%」と「Ra%」は、実験全体を通じて収集されたラジウムおよびアクチニウムの総質量のパーセントを示す。「BLD」は、測定値が使用機器の検出限界未満であったことを意味する。
【0108】
(pH範囲研究)
ICP-OES分析結果(表3)は、pH=1.0を超えるpHでは、溶相中に微量のThしか残っていないことを示す。ガンマ(線)分析結果から、pH=2.5未満では、RaおよびAcの大部分が溶相中に留まっていることが示された。
【0109】
【0110】
(速度論研究)
速度論研究の結果から、NaNO3の追加によって反応の速度が向上することが示唆される。1グラムの結果は、1回の試験に基づくものであり、これらのデータ点をさらに精密にするためには繰り返しの試験が必要である。
【0111】
【0112】
(最小量の30% H2O2)
以下は、各試料から除去したアリコートからのICP-OES分析結果である。結果からは、約28mgのThが溶相から沈殿するためには、30% H2O2が0.3mLのみ必要であることが示唆される。
【0113】
【0114】
2.5グラムまでの規模拡大-液体‐固体分離方法-イオン濃度の増加
以下は、過酸化トリウムジェネレータのスケーラビリティ(拡張可能性)を実証するために行われた、各実験の結果である。Thの存在量を増加させるとともに、液体‐固体分離およびイオン濃度の増加のためにさまざまな方法を利用した試験がリスト化されている。
【0115】
(1グラム試験#1(1g-1) 表6)
1g-1の結果から、この実験で使用した濾過装置では、溶相からすべてのトリウムを分離するには、2段階の濾過が必要であるという根拠が得られた。このことは、「1濾過段階」と記された表3の部分から明らかである。「2濾過段階」のデータは、溶相中にトリウムがないという根拠となっている。このことから、トリウムの固体微粒子が第1濾過段階を通過することができたという結論が導かれる。アクチニウムおよびラジウムのデータから、より高い回収率を達成するためには、より多くの濯ぎ量が必要であることが示唆される。
【0116】
(1グラム試験#2(1g-2) 表7)
1g-2の結果から、2段階の濾過はより多くの固体トリウムを保持するのに役立ち、回収率は99.962±1.4・10-3%であることが示唆された(注:100回の抽出後に、96.27%のThが残る)。アクチニウムおよびラジウムのデータから、これらの回収率を高めるためには、継続的な濯ぎが必要であることが示唆される。
【0117】
(1グラム試験#3(1g-3) 表8)
表7に示す1g-2で収集したデータを受けて、濾過の方法を「重力」濾過法に変更し、固体の上方から濾過する代わりに、固体をフィルタ上に置き、下方から溶液を収集した。これによって、ラジウムおよびアクチニウムを含む溶出液の量が低減しつつ、ラジウムおよびアクチニウムの回収率が向上すると考えられた。表8の結果は、この「重力」濾過を使えば、ラジウムおよびアクチニウムの回収率が向上するであろうことを示す。残念ながら、トリウムに関する結果は、実験過程全体を通じて、トリウムが溶相中へ溶解していたことを示す。トリウムの溶解は、装置濾過試料とシリンジ濾過試料とで同様の結果が得られたことからもわかる。溶相中のトリウムが徐々に増加したことは、実験過程全体を通じて、トリウムが溶相中へ徐々に溶解していたことを示している。
【0118】
(1グラム試験#4(1g-4)(0.4M NaNO3) 表9)
1グラム試験#4では、ある範囲のイオン強度で試験を開始し、0.4M NaNO3を(ThCl4を溶解する)初期溶解溶液、および濯ぎ溶液として使用した。その結果からは、イオン強度を増加させた溶液を加えることがトリウムを固相中に保持する助けとなることは示唆されなかった。このことはまた、装置濾過試料とシリンジ濾過試料との両方でトリウムの濃度が徐々に増加したことによって実証される。ラジウムおよびアクチニウムの収量は高いままであった。
【0119】
(1グラム試験#5(1g-5)(0.1M NaNO3) 表10)
1g-5では、0.1M NaNO3を、(ThCl4を溶解する)初期溶解溶液、および濯ぎ溶液として利用した。結果は、実験過程全体を通じてトリウムが溶液中へ溶解していることを示している。ラジウムの回収率は高いままであったが、アクチニウムのデータからは、回収率を高めるにはより多くの濯ぎが必要であろうことが示唆される。
【0120】
(1グラム試験#6(1g-6)(1.0M NaNO3) 表11)
1g-6では、1.0M NaNO3を、(ThCl4を溶解する)初期溶解溶液、および濯ぎ溶液として利用した。結果は、実験過程全体を通じてトリウムが溶液中へ溶解していることを示している。ラジウムの回収率は高いままであったが、アクチニウムのデータからは、回収率を高めるにはより多くの濯ぎが必要であるだろうことが示唆される。
【0121】
(1グラム試験#5繰り返し(1g-5繰り返し) 表12)
1g-5繰り返しでは、1g-5の条件を繰り返し、0.1M NaNO3を、(ThCl4を溶解する)初期溶解溶液、および濯ぎ溶液として利用した。結果は、実験過程全体を通じてトリウムが溶液中へ溶解していることを示している。ラジウムの回収率は高いままであったが、アクチニウムのデータからは、回収率を高めるにはより多くの濯ぎが必要であろうことが示唆される。
【0122】
(1グラム試験#7(1g-7)(0.05M NaNO3) 表13)
1g-7では、0.05M NaNO3を、(ThCl4を溶解する)初期溶解溶液、および濯ぎ溶液として使用した。結果は、実験過程全体を通じてトリウムが溶液中へ溶解していることを示している。ラジウムの回収率は高いままであったが、アクチニウムのデータからは、回収率を高めるにはより多くの濯ぎが必要であろうことが示唆される。
【0123】
(2.5グラム試験#1(2.5g-1) 表14)
1g-4-第3サイクル(後述)で得られた結果を利用して、0.1M NaNO3を溶解溶液および濯ぎ溶液として使用した。各々の48.3mLの0.1M NaNO3濯ぎアリコートに、1.7mLの30% H2O2を加えた。表11の結果は、99.999%のトリウムの保持が可能であることを実証している。ラジウム回収率が高いままであった一方で、アクチニウム収量が減少した理由はわからない。過酸化アクチニウム化学種が形成される見込みがないからである。この疑問に適切に答えるには、より多くの試験が必要である。また、通常最も低い濃度のトリウムを含む最初の試料が、検出可能な量のトリウムを含む唯一の試料であった理由も不明である。
【0124】
(ジェネレータサイクルのシミュレーション)
(1グラム試験#4-第2サイクル 表15)
1g-4の第2サイクルでは、この実験の開始時においてのみであったが、30% H2O2を加えることで、溶相中のトリウムの量が劇的に減少することが実証された(上記の(1グラム試験#4(1g-4)(0.4M NaNO3) 表9)を参照)。トリウムは実験過程全体を通じて溶解し続けたが、このことは、トリウムを溶相外に保つためには、実験過程全体を通じてH2O2を加えることが必要でありうるという根拠となった。
【0125】
(1グラム試験#4-第3サイクル 表16)
1g-4の第3サイクルでは、各々の30mLの0.1M NaNO3に対して、1mLの30% H2O2とされた。結果(表16)は、現在の濾過装置を用いて、99.999%のトリウム保持が可能であることを実証している。通常最も低い濃度のトリウムを含む最初の試料が、検出可能な量のトリウムを含む唯一の試料であった理由は不明である。
【0126】
(表17 回収率の要約)
以下の表17は、トリウム、ラジウムおよびアクチニウムの回収率について、実験パラメータとともに要約したものである。
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
(考察)
トリウム、ラジウムおよびアクチニウムに関する記述はすべて、別段の定めのない限り、232Th、228Raおよび228Acを指す。
【0139】
(pH範囲)
Thが溶相から沈殿し、かつ、RaおよびAcが溶相中に留まるpH範囲を決定する初期試験によって、残りの実験に関する作業範囲(pH=1.0~2.0、主眼はpH=1.5~2.0に置かれる)がもたらされた(表1)。これらの結果(表3)が示すように、ラジウムおよびアクチニウムの100%近くが、区分されたトリウムから分離されうる。さらに研究を進めれば、この範囲は、実験パラメータに合わせてpH=1まで拡大される可能性がある。なお、溶解溶液のイオン濃度を増加させて以降、このpH範囲は再試験されていないことに留意されたい。
【0140】
(速度論)
速度論の研究から、初期合成工程に必要な時間の長さについての洞察が得られた。1つだけの研究を1グラム規模で実施したが、結果は、この工程が1時間未満で完了しうることを示している。他の1グラム規模実験からの結果によって、1時間の反応時間で十分であることがわかる。このことは、溶相中のトリウム濃度が検出限界未満であることによって示されている。濯ぎ工程前の過酸化水素の追加、およびそれに関係する速度論についての調査はまだ十分に行われていないが、初期の結果から、この工程も1時間未満で完了しうることが示される。
【0141】
(最小量の30% H2O2)
結果から、50~70mgの規模では、ほとんどの実験に関して5倍余剰の30% H2O2が使用され、1グラム実験および2.5グラム実験に関しては約2倍余剰であった。このため、必要となる30% H2O2の量の低減に関して、いくらかの余地がある。
【0142】
(2.5グラムまでの規模拡大-液体‐固体分離方法-イオン濃度の増加)
結果は、99.999%のトリウムの保持が可能であることを示している(表11および表13)。2.5g-1の結果では、濾過装置上の残留トリウムが妨げとなった可能性がある。それが以前の複数の実験で使用されていたためである。ラジウム回収率は、一貫して高いままであった。
【0143】
0.1M NaNO3を超えるように、または0.1M NaNO3を下回るように濯ぎ溶液のイオン強度を増加させても、固相中のトリウムの保持には影響がないようであった。トリウムを固相中に保つために濯ぎ工程の間に30% H2O2を加えることが有用であることを実証する前に、この試験が実施された。
【0144】
過酸化トリウムが非多孔性ガラス器具に残留するであろうという事実のため、溶相を上から濾過する最初の濾過方法が調査された。この方法の副作用によって、ラジウムおよびアクチニウムのすべてを除去するのに必要であろう濯ぎ量が増加した。「重力」濾過を利用する方法では、ラジウムおよびアクチニウムの大部分が最初の4~5個の、50mLの濯ぎ液において分離できることが実証された(表8および表9)。前述したように、トリウムの保持は以前考えられていたほど困難ではないことも実証された。
【0145】
(ジェネレータサイクルのシミュレーション)
結果は、過酸化トリウム固体が長期間(この実験では最長で9日間)濾過装置上に静置されうることを示している。保存期間中、pHは安定したままであったことから、保存期間中に実質的な化学変化は起こっていないことがわかる。濯ぎ工程前の過酸化水素の追加、およびそれに関係する速度論についての調査はまだ十分に行われていないが、これまでのところ良好な結果が得られている。さらに、各々の濯ぎ液に対してある量の過酸化水素を加えることも、良好な結果をもたらしている。
【0146】
(結論)
トリウム、ラジウムおよびアクチニウムに関する記述はすべて、232Th、228Raおよび228Acを指す。
【0147】
これらの研究結果から、pH=1.5~2.0において過酸化トリウムを沈殿させることが、ラジウムおよびアクチニウムからトリウムを化学的に分離するための一手段であることが示される。99.998%以上のトリウム保持率が実証されており、今後の実験において期待されうる。結果からは、各々の濯ぎ液に30% H2O2を加えることが、トリウムを固相中に維持するのに有効であることがわかる。結果からはさらに、イオン濃度を増加させることには、トリウムを固相中に保つ効果がないようであることもわかる。加えられた[NO3
-]がアクチニウムの回収を妨害している可能性がある。
【0148】
現時点では、真空濾過が固体‐液体分離の最も効率的な方法であるように思われる。すべての実験は「既製品」のガラス器具を使って行われたが、これは分離方式が単純であることを示す。ガラス器具をカスタマイズすれば、より良い結果が得られ、手順がさらに簡単になるかもしれない。
【0149】
初期の実験では、ラジウムおよびアクチニウムの100%近くが、区分されたトリウムから回収されうることが実証された。大規模(1グラム)実験では、ラジウムおよびアクチニウムの大部分が最初の4~5個の、50mLの濯ぎ液において回収されうることが実証された。ラジウムの回収率は実験全体を通じて高いままであったが、アクチニウムが大規模においてどのように振る舞うのかを決定するためには、さらなる調査が必要である。
【0150】
別段の定めのない限り、本明細書および特許請求の範囲において使用される成分の量、分子量等の性質、反応条件等を表すすべての数は、すべての場合において「約」という用語によって修飾されているものと理解されたい。したがって、異なる定めがない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載された数値パラメータは、得ようとする所望の性質に応じて変化しうる近似値である。
【0151】
本技術の広範な範囲を示す数値範囲とパラメータは近似値であるにもかかわらず、具体的な実施例に示す数値は、可能な限り正確に報告されたものである。しかしながら、どのような数値であっても、それぞれの試験測定において見いだされる標準偏差から必然的に生じる一定の(certain)誤差を内在的に含んでいる。
【0152】
添付の特許請求の範囲にかかわらず、本開示は以下の条項によっても定められる:
1.
229Thから225Acおよび225Raを生成するための方法であって、
保護溶液(カバー溶液)および固体229Th過酸化物の第1サスペンションを用意する工程と、
少なくとも一部の229Thが225Acへと崩壊する第1期間の間、前記第1サスペンションを保存する工程と、
分離されたある量の固体229Th過酸化物と、少なくとも一部の225Acを含む第1溶液とが得られるように、前記第1サスペンションの前記保護溶液のうちの少なくとも一部から前記固体229Th過酸化物を分離する工程と、
を含む、方法。
【0153】
2.
前記保護液から前記固体229Th過酸化物を分離する工程の後に、第2サスペンションが作られるように、分離された前記固体229Th過酸化物にある量の新しい保護液を加える工程をさらに含む、条項1に記載の方法。
【0154】
3.
少なくとも一部の229Thが225Acへと崩壊する第2期間の間、前記第2サスペンションを保存する工程と、
分離されたある量の固体229Th過酸化物と、少なくとも一部の225Acを含む第2溶液とが得られるように、前記第2サスペンションの前記保護溶液のうちの少なくとも一部から前記固体229Th過酸化物を分離する工程と、
をさらに含む、条項2に記載の方法。
【0155】
4.
前記保護溶液から前記固体229Th過酸化物を分離する工程は、
前記保護溶液から前記固体229Th過酸化物を分離する工程よりも前に、前記第1サスペンションまたは前記第2サスペンションを攪拌する工程
をさらに含む、条項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【0156】
5.
前記保護溶液から前記固体229Th過酸化物を分離する工程は、
前記保護溶液中において余剰量の過酸化物を保つ工程
をさらに含む、条項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【0157】
6.
前記保護溶液中において余剰量の過酸化物を保つ工程は、
前記保護溶液から前記固体229Th過酸化物を分離する工程よりも前に、前記第1サスペンションまたは前記第2サスペンションにH2O2溶液を加える工程
を含む、条項5に記載の方法。
【0158】
7.
前記H2O2溶液のH2O2は、5重量%から50重量%までである、条項6に記載の方法。
【0159】
8.
前記H2O2溶液のH2O2は、25重量%から35重量%までである、条項6に記載の方法。
【0160】
9.
前記第1サスペンションを用意する工程は、
229Thが溶解した溶液が得られるように、ある量の229ThCl4・xH2Oまたは229Th(NO3)4・xH2Oを酸性溶液中に溶解させる工程と、
前記229Thが溶解した溶液にある量のH2O2を加えることで、固体229Th過酸化物と残留物液相とを形成する工程と、
前記残留物液相から前記固体229Th過酸化物を分離する工程と、
前記第1サスペンションが作られるように、酸性保護溶液に前記固体229Th過酸化物を加える工程と、
を含む、条項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【0161】
10.
前記保護溶液から前記固体229Th過酸化物を分離する工程は、濾過、遠心分離、および重力沈降のうちの1または複数を含む、条項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【0162】
11.
前記保護溶液は、NaNO3溶液である、条項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【0163】
12.
前記保護溶液は、0.01から10.0MまでのNaNO3のNaNO3溶液である、条項11に記載の方法。
【0164】
13.
前記保護溶液は、HNO3溶液である、条項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【0165】
14.
前記保護溶液は、0.01から10.0MまでのHNO3のHNO3溶液である、条項13に記載の方法。
【0166】
15.
前記第1期間は、25日以下である、条項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【0167】
16.
前記第1期間は、10日以下である、条項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【0168】
17.
前記第2期間は、25日以下である、条項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【0169】
18.
前記第2期間は、10日以下である、条項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【0170】
19.
前記第1サスペンションおよび/または前記第2サスペンションを、0.5から3までのpHに保つ工程をさらに含む、条項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【0171】
20.
前記第1サスペンションおよび/または前記第2サスペンションを、1.5から2.0までのpHに保つ工程をさらに含む、条項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【0172】
21.
前記第1サスペンションおよび前記第2サスペンションを、0.5から3までのpHに保つ工程は、
前記第1サスペンションまたは前記第2サスペンションに、KOHまたはHNO3のいずれかの溶液を必要に応じて加える工程
をさらに含む、条項19または20に記載の方法。
【0173】
22.
229Thから225Acおよび225Raを生成するためのシステムであって、
保護液による固体229Th過酸化物のサスペンションを含む容器
を備える、システム。
【0174】
23.
前記第1容器は、濾過漏斗である、条項22に記載のシステム。
【0175】
24.
前記保護液は、NaNO3溶液である、条項22に記載のシステム。
【0176】
25.
前記保護液は、HNO3溶液である、条項22に記載のシステム。
【0177】
26.
225Acジェネレータであって、
前記ジェネレータの第1部分と、
内部チャンバを画定するカラム本体と、
前記内部チャンバへのアクセスを提供する、前記ジェネレータの前記第1部分における第1アクセスポートと、
前記内部チャンバ内に含まれるある量の固体229Th過酸化物と、
を備える、ジェネレータ。
【0178】
27.
液相保存溶液および固体229Th過酸化物のサスペンションをさらに備える、条項26に記載のジェネレータ。
【0179】
28.
前記液相保存溶液は、NaNO3溶液およびHNO3溶液から選択される、条項27に記載のジェネレータ。
【0180】
29.
前記ジェネレータの第2部分と、
前記ジェネレータの前記第2部分における第2アクセスポートと、
をさらに備え、
前記ジェネレータの前記第1部分は、前記ジェネレータの頂部部分であり、
前記第1アクセスポートは、上部バルブであり、
前記ジェネレータの前記第2部分は、前記ジェネレータの底部部分であり、
前記第2アクセスポートは、底部バルブまたはU字管である、条項26~28のいずれか一項に記載のジェネレータ。
【0181】
30.
前記内部チャンバは、前記第1アクセスポートまたは前記第2アクセスポートのうちの少なくとも一方のアクセスポートを介して前記固体229Th過酸化物が除去されるのを防止するためのフィルタを含む、条項26~29のいずれか一項に記載のジェネレータ。
【0182】
31.
前記カラム本体は、カプセル状(球面円筒状)、円筒状、球状、円錐状、角錐状、円錐台状または角錐台状のうちのいずれかである、条項26~30のいずれか一項に記載のジェネレータ。
【0183】
32.
前記第1部分および前記第2部分は、前記内部チャンバに対するシールを形成する、条項26~31のいずれか一項に記載のジェネレータ。
【0184】
33.
前記第1部分および前記第2部分は、前記カラム本体に取り外し可能に取り付けられている、条項26~32のいずれか一項に記載のジェネレータ。
【0185】
34.
前記第1部分、前記カラム本体および前記第2部分は、一体的に形成されている、条項26~33のいずれか一項に記載のジェネレータ。
【0186】
35.
シール可能な第3アクセスポートをさらに備える、条項26~34のいずれか一項に記載のジェネレータ。
【0187】
36.
前記第2部分内にディフューザをさらに備える、条項26~35のいずれか一項に記載のジェネレータ。
【0188】
37.
前記ディフューザは、穿孔を含む多孔板を含み、
前記穿孔は、前記固体229Th過酸化物が当該穿孔を通過するのを防止するように構成された大きさを有する、条項26~36のいずれか一項に記載のジェネレータ。
【0189】
38.
前記穿孔は、液体溶媒が当該穿孔を通過できるように構成されている、条項26~37のいずれか一項に記載のジェネレータ。
【0190】
39.
前記内部チャンバ内に含まれる前記229Thからのアルファ放射線を遮断するように配置された遮蔽物をさらに備える、条項26~38のいずれか一項に記載のジェネレータ。
【0191】
40.
条項1~39のいずれか一項によって生成された225Acを含む医薬組成物。
【0192】
41.
薬学的に許容される担体をさらに含む、条項40に記載の医薬組成物。
【0193】
42.
前記225Acは、抗体に結合している、条項40または41に記載の医薬組成物。
【0194】
43.
患者の癌を治療する方法であって、
条項40~42のいずれか一項に記載の医薬組成物を前記患者に投与する工程を含む、方法。
【0195】
44.
前記癌は、乳癌、白血病、リンパ腫、脳腫瘍、肝臓癌、肺癌、メラノーマ、卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌または骨癌である、条項43に記載の方法。
【0196】
本明細書に記載されたシステムおよび方法が、言及された目的および利点、ならびにそれらに内在する目的および利点が達成されるよう十分に適合されたものであることは明らかであろう。当業者であれば、本明細書における方法およびシステムが多くの様態で実装されうるものであり、上述した例示的な実施形態および実施例によって限定されるものではないことを認識するだろう。この点に関して、本明細書に記載された種々の実施形態の任意の数の特徴が単一の一実施形態内へと組み合わせられてもよく、また、本明細書に記載された特徴のうちのすべての特徴よりも少数または多数の特徴を有する代替的な実施形態も考えられる。
【0197】
本開示の目的に関して様々な実施形態を説明してきたが、本開示によって想定される範囲内に十分含まれる、様々な変更および修正が行われてもよい。例えば、保護溶液の代わりに、分離工程と分離工程との間等のプロセスにおける時に、過酸化トリウムを保護ガス下に維持しうる。さらに、上記の実施例のうちの一部の実施例において、プロセス全体を通じて、濾過漏斗のフリットディスク上に過酸化トリウムが維持されるため、濾過漏斗は、アクチニウムジェネレータとして機能する。あるいは、ほんの少数の選択肢を挙げれば、例えば、流動床反応器、遠心分離器、ラインフィルタ(line filter)、ハイドロサイクロン等の、任意の適切な固体液体分離器を使用できるだろう。さらに、単純なジェネレータ上に1つのバルブが用いられる一実施形態では、単純な分離操作に、ジェネレータを傾けて液相が重力下でバルブを通って流出するようにする工程と、バルブが上になる向きにジェネレータを戻す工程と、次いで、保存用の新たな溶液をジェネレータに再充填する工程と、が含まれうるだろう。当業者に容易に示唆され本開示の精神(趣旨)に包含される、その他の多数の変更が行われてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0198】
【
図1】
233Uから
229Th、および後続する娘核種への崩壊連鎖の概略図である。
【
図2】規模における使用に適した過酸化物分離方法の一実施形態を示す。
【
図3】固相過酸化トリウムが液相保存溶液によるサスペンション中に含まれる、カラムの形態の単純なアクチニウムジェネレータの一例を示す。
【
図4】1グラム試験#1に使用した合成および濾過の装置を示す。
【
図5】1グラム試験#2に使用した合成および濾過の装置を示す。
【
図6】1グラム試験#3に使用した合成および濾過の装置を示す。
【
図7】1グラム試験#5に使用した合成および濾過の装置を示す。
【
図8】2.5グラム試験#1に使用した濾過装置を示す。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
229Thから
225Acおよび
225Raを生成するための方法であって、
保護溶液および固体
229Th過酸化物の第1サスペンションを用意する工程と、
少なくとも一部の
229Thが
225Acへと崩壊する第1期間の間、前記第1サスペンションを保存する工程と、
分離されたある量の固体
229Th過酸化物と、少なくとも一部の
225Acを含む第1溶液とが得られるように、前記第1サスペンションの前記保護溶液のうちの少なくとも一部から前記固体
229Th過酸化物を分離する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記保護
溶液から前記固体
229Th過酸化物を分離する工程の後に、第2サスペンションが作られるように、分離された前記固体
229Th過酸化物にある量の新しい保護
溶液を加える工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも一部の
229Thが
225Acへと崩壊する第2期間の間、前記第2サスペンションを保存する工程と、
分離されたある量の固体
229Th過酸化物と、少なくとも一部の
225Acを含む第2溶液とが得られるように、前記第2サスペンションの前記保護溶液のうちの少なくとも一部から前記固体
229Th過酸化物を分離する工程と、
をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記保護溶液から前記固体
229Th過酸化物を分離する工程は、
前記保護溶液から前記固体
229Th過酸化物を分離する工程よりも前に、前記第1サスペンションまたは前記第2サスペンションを攪拌する工程
をさらに含む、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
前記保護溶液から前記固体
229Th過酸化物を分離する工程は、
前記保護溶液中において余剰量の過酸化物を保つ工程
をさらに含む、請求項
3に記載の方法。
【請求項6】
前記保護溶液中において余剰量の過酸化物を保つ工程は、
前記保護溶液から前記固体
229Th過酸化物を分離する工程よりも前に、前記第1サスペンションまたは前記第2サスペンションにH
2O
2溶液を加える工程
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記H
2O
2溶液のH
2O
2は、5重量%から50重量%までである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記H
2O
2溶液のH
2O
2は、25重量%から35重量%までである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記第1サスペンションを用意する工程は、
229Thが溶解した溶液が得られるように、ある量の
229ThCl
4・
xH
2Oまたは
229Th(NO
3)
4・
xH
2Oを酸性溶液中に溶解させる工程と、
前記
229Thが溶解した溶液にある量のH
2O
2を加えることで、固体
229Th過酸化物と残留物液相とを形成する工程と、
前記残留物液相から前記固体
229Th過酸化物を分離する工程と、
前記第1サスペンションが作られるように、酸性保護溶液に前記固体
229Th過酸化物を加える工程と、
を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項10】
前記保護溶液から前記固体
229Th過酸化物を分離する工程は、濾過、遠心分離、および重力沈降のうちの1または複数を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項11】
前記保護溶液は、NaNO
3溶液である、請求項
1に記載の方法。
【請求項12】
前記保護溶液は、0.01から10.0MまでのNaNO
3のNaNO
3溶液である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記保護溶液は、HNO
3溶液である、請求項
1に記載の方法。
【請求項14】
前記保護溶液は、0.01から10.0MまでのHNO
3のHNO
3溶液である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1期間は、25日以下である、請求項
1に記載の方法。
【請求項16】
前記第1期間は、10日以下である、請求項
1に記載の方法。
【請求項17】
前記第2期間は、25日以下である、請求項
3に記載の方法。
【請求項18】
前記第2期間は、10日以下である、請求項
3に記載の方法。
【請求項19】
前記第1サスペンションおよび/または前記第2サスペンションを、0.5から3までのpHに保つ工程をさらに含む、請求項
3に記載の方法。
【請求項20】
前記第1サスペンションおよび/または前記第2サスペンションを、1.5から2.0までのpHに保つ工程をさらに含む、請求項
3に記載の方法。
【請求項21】
前記第1サスペンションおよび前記第2サスペンションを、0.5から3までのpHに保つ工程は、
前記第1サスペンションまたは前記第2サスペンションに、KOHまたはHNO
3のいずれかの溶液を必要に応じて加える工程
をさらに含む、請求項
19に記載の方法。
【請求項22】
229Thから
225Acおよび
225Raを生成するためのシステムであって、
保護液による固体
229Th過酸化物のサスペンションを含む容器
を備える、システム。
【請求項23】
前
記容器は、濾過漏斗である、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記保護液は、NaNO
3溶液である、請求項22に記載のシステム。
【請求項25】
前記保護液は、HNO
3溶液である、請求項22に記載のシステム。
【請求項26】
225Acジェネレータであって、
前記
225
Acジェネレータの第1部分と、
内部チャンバを画定するカラム本体と、
前記内部チャンバへのアクセスを提供する、前記
225
Acジェネレータの前記第1部分における第1アクセスポートと、
前記内部チャンバ内に含まれるある量の固体
229Th過酸化物と、
を備える、ジェネレータ。
【請求項27】
液相保存溶液および固体
229Th過酸化物のサスペンションをさらに備える、請求項26に記載のジェネレータ。
【請求項28】
前記液相保存溶液は、NaNO
3溶液およびHNO
3溶液から選択される、請求項27に記載のジェネレータ。
【請求項29】
前記
225
Acジェネレータの第2部分と、
前記
225
Acジェネレータの前記第2部分における第2アクセスポートと、
をさらに備え、
前記
225
Acジェネレータの前記第1部分は、前記
225
Acジェネレータの頂部部分であり、
前記第1アクセスポートは、上部バルブであり、
前記
225
Acジェネレータの前記第2部分は、前記
225
Acジェネレータの底部部分であり、
前記第2アクセスポートは、底部バルブまたはU字管である、請求項
26に記載のジェネレータ。
【請求項30】
前記内部チャンバは、前記第1アクセスポートまたは前記第2アクセスポートのうちの少なくとも一方のアクセスポートを介して前記固体
229Th過酸化物が除去されるのを防止するためのフィルタを含む、請求項
29に記載のジェネレータ。
【請求項31】
前記カラム本体は、カプセル状(球面円筒状)、円筒状、球状、円錐状、角錐状、円錐台状または角錐台状のうちのいずれかである、請求項
26に記載のジェネレータ。
【請求項32】
前記第1部分および前記第2部分は、前記内部チャンバに対するシールを形成する、請求項
29に記載のジェネレータ。
【請求項33】
前記第1部分および前記第2部分は、前記カラム本体に取り外し可能に取り付けられている、請求項
29に記載のジェネレータ。
【請求項34】
前記第1部分、前記カラム本体および前記第2部分は、一体的に形成されている、請求項
29に記載のジェネレータ。
【請求項35】
シール可能な第3アクセスポートをさらに備える、請求項
29に記載のジェネレータ。
【請求項36】
前記第2部分内にディフューザをさらに備える、請求項
29に記載のジェネレータ。
【請求項37】
前記ディフューザは、穿孔を含む多孔板を含み、
前記穿孔は、前記固体
229Th過酸化物が当該穿孔を通過するのを防止するように構成された大きさを有する、請求項
36に記載のジェネレータ。
【請求項38】
前記穿孔は、液体溶媒が当該穿孔を通過できるように構成されている、請求項
37に記載のジェネレータ。
【請求項39】
前記内部チャンバ内に含まれ
る
229Thからのアルファ放射線を遮断するように配置された遮蔽物をさらに備える、請求項
26に記載のジェネレータ。
【請求項40】
請求項1~
21のいずれか一項
に記載の方法によって生成された
225Acを含む医薬組成物
を製造する方法。
【請求項41】
前記医薬組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項40に記載の医薬組成物
を製造する方法。
【請求項42】
225Acは、抗体に結合している、請求項
40に記載の医薬組成物
を製造する方法。
【国際調査報告】