(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-24
(54)【発明の名称】埋め込まれた粒子状の薬物を含む、マクロ多孔質中実硬質マイクロニードル
(51)【国際特許分類】
A61K 9/70 20060101AFI20240417BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240417BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240417BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240417BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20240417BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240417BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20240417BHJP
A61K 31/167 20060101ALI20240417BHJP
A61P 29/00 20060101ALN20240417BHJP
A61P 23/02 20060101ALN20240417BHJP
【FI】
A61K9/70 401
A61K47/36
A61K47/34
A61K47/10
A61K47/42
A61K47/32
A61K31/192
A61K31/167
A61P29/00
A61P23/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570247
(86)(22)【出願日】2022-05-12
(85)【翻訳文提出日】2024-01-12
(86)【国際出願番号】 US2022029078
(87)【国際公開番号】W WO2022241170
(87)【国際公開日】2022-11-17
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319009901
【氏名又は名称】トラスティーズ オブ タフツ カレッジ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】サミール ソンクセール
(72)【発明者】
【氏名】アイディン サデキ
(72)【発明者】
【氏名】ホジャトラー レザエイ ネジャド
(72)【発明者】
【氏名】ジェイク ロンバード
(72)【発明者】
【氏名】コンスタンティノス ツォルツァキス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA72
4C076AA79
4C076AA81
4C076AA95
4C076BB31
4C076EE06
4C076EE23
4C076EE24
4C076EE30
4C076EE42
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA24
4C206GA18
4C206GA31
4C206KA01
4C206MA52
4C206MA83
4C206NA10
4C206ZA20
4C206ZB11
(57)【要約】
本開示は、経皮的薬物送達のためのマイクロニードル及びマイクロニードルパッチ、ならびにそれらを作成及び使用する方法に関する。マイクロニードルは多孔質であり、かつ、孔内に粒子の形態の薬物を収容する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物を送達するためのマイクロニードルであって、前記マイクロニードルは、
複数の孔を備える、中実の多孔質材料と、
尖端と、
粒子の形態の薬物と、を備え、
前記薬物は、前記孔の内部に収容される、マイクロニードル。
【請求項2】
前記薬物は、実質的に無溶媒である、請求項1に記載のマイクロニードル。
【請求項3】
前記薬物は、実質的に無水である、請求項1に記載のマイクロニードル。
【請求項4】
前記孔の90%より多くが、少なくとも1つの薬物粒子に占められている、請求項1から3のいずれか一項に記載のマイクロニードル。
【請求項5】
前記孔の95%より多くが、少なくとも1つの薬物粒子に占められている、請求項4に記載のマイクロニードル。
【請求項6】
前記孔の99%より多くが、少なくとも1つの薬物粒子に占められている、請求項5に記載のマイクロニードル。
【請求項7】
前記孔の99.9%より多くが、少なくとも1つの薬物粒子に占められている、請求項6に記載のマイクロニードル。
【請求項8】
前記孔の容積の90%より多くが、前記薬物によって占められている、請求項1から3のいずれか一項に記載のマイクロニードル。
【請求項9】
前記孔の容積の95%より多くが、前記薬物によって占められている、請求項8に記載のマイクロニードル。
【請求項10】
前記孔の容積の99%より多くが、前記薬物によって占められている、請求項9に記載のマイクロニードル。
【請求項11】
前記孔の容積の99.9%より多くが、前記薬物によって占められている、請求項10に記載のマイクロニードル。
【請求項12】
前記多孔質材料は、硬化高分子材料である、請求項1から3のいずれか一項に記載のマイクロニードル。
【請求項13】
前記マイクロニードルの軸方向長さが、約0.5mmと1.5mmの間である、請求項1から3のいずれか一項に記載のマイクロニードル。
【請求項14】
前記多孔質材料の硬度が、ショアA40からショアD90の間である、請求項1から3のいずれか一項に記載のマイクロニードル。
【請求項15】
薬物を送達するためのデバイスであって、前記デバイスは、請求項1から3のいずれか一項に記載のマイクロニードルを2つ以上備えている、デバイス。
【請求項16】
前記デバイスは、支持的なバッキング材をさらに備える、請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
前記デバイスは、粘着材をさらに備える、請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
間質液によって伝達される拡散を介した薬物送達のための、マイクロニードル式薬物送達システムであって、前記マイクロニードル式薬物送達システムは、粒子の形態の薬物を多孔質材料の内部に備える、マイクロニードル式薬物送達システム。
【請求項19】
前記多孔質材料は、硬化高分子材料である、請求項18に記載のマイクロニードル式薬物送達システム。
【請求項20】
前記硬化高分子材料は、電磁放射線で硬化された、請求項18に記載のマイクロニードル式薬物送達システム。
【請求項21】
前記多孔質材料は、金、銀、炭素、鉄、銅、黄銅、青銅、チタン、ベリリウム、アルミニウム、スズ及び亜鉛、ならびに、それらの合金及び組み合わせ、から成る群から選択された金属を含む、請求項18に記載のマイクロニードル式薬物送達システム。
【請求項22】
前記多孔質材料は、複数のニードル状突出部を含む、請求項18に記載のマイクロニードル式薬物送達システム。
【請求項23】
複数の前記ニードル状突出部は、一列に配置されている、請求項22に記載のマイクロニードル式薬物送達システム。
【請求項24】
前記ニードル状突出部の各々は、その最大寸法で2mm未満である、請求項22に記載のマイクロニードル式薬物送達システム。
【請求項25】
前記多孔質材料は、少なくとも約ショアA40の硬度を有する、請求項18に記載のマイクロニードル式薬物送達システム。
【請求項26】
前記多孔質材料は、少なくとも約ショアB80の硬度を有する、請求項18に記載のマイクロニードル式薬物送達システム。
【請求項27】
前記多孔質材料は、複数の開孔を備える、請求項18に記載のマイクロニードル式薬物送達システム。
【請求項28】
前記開孔は、相互接続されている、請求項27に記載のマイクロニードル式薬物送達システム。
【請求項29】
前記開孔は、互いに流体連通している、請求項27に記載のマイクロニードル式薬物送達システム。
【請求項30】
前記粒子の形態は、粉末である、請求項18に記載のマイクロニードル式薬物送達システム。
【請求項31】
前記粉末は、最大寸法で約100マイクロメートル未満のサイズを有する粒子を含む、請求項30に記載のマイクロニードル式薬物送達システム。
【請求項32】
前記粉末は、最大寸法で約20マイクロメートル未満のサイズを有する粒子を含む、請求項30に記載のマイクロニードル式薬物送達システム。
【請求項33】
粒子の形態の前記薬物は、水溶性である、請求項18に記載のマイクロニードル式薬物送達システム。
【請求項34】
前記硬化高分子材料は、疎水性である、請求項33に記載のマイクロニードル式薬物送達システム。
【請求項35】
粒子の形態の前記薬物は、脂溶性である、請求項18に記載のマイクロニードル式薬物送達システム。
【請求項36】
前記多孔質材料は、親水性である、請求項35に記載のマイクロニードル式薬物送達システム。
【請求項37】
前記多孔質材料は、レジンから形成される、請求項18に記載のマイクロニードル式薬物送達システム。
【請求項38】
前記多孔質材料は、複数のレジンから形成される、請求項37に記載のマイクロニードル式薬物送達システム。
【請求項39】
複数の前記レジンのうち少なくとも1つは、犠牲的である、請求項38に記載のマイクロニードル式薬物送達システム。
【請求項40】
粒子の形態の前記薬物と前記レジンは、コロイドを形成する、請求項37に記載のマイクロニードル式薬物送達システム。
【請求項41】
粒子の形態の前記薬物と前記レジンは、非混和性である、請求項37に記載のマイクロニードル式薬物送達システム。
【請求項42】
前記システムは、複数のニードル状突出部及びバンデージを備える、請求項18に記載のマイクロニードル式薬物送達システム。
【請求項43】
前記バンデージは、前記バンデージに収容される薬物の量を決定するためのセンサを備えている、請求項42に記載のマイクロニードル式薬物送達システム。
【請求項44】
時間制御式薬物送達システムであって、前記時間制御式薬物送達システムは、
開孔を備える多孔質材料を備え、前記時間制御式薬物送達システムはさらに、
前記多孔質材料の前記開孔の内部に粒子の形態の薬物を、前記多孔質材料が間質液を含む真皮環境にさらされたときに粒子の形態の前記薬物が溶解及び拡散し得るように、含む、時間制御式薬物送達システム。
【請求項45】
前記多孔質材料は、硬化されている、請求項44に記載の時間制御式薬物送達システム。
【請求項46】
前記多孔質材料は、金、銀、炭素、鉄、銅、黄銅、青銅、チタン、ベリリウム、アルミニウム、スズ及び亜鉛、ならびに、それらの合金及び組み合わせ、から成る群から選択された金属を含む、請求項44に記載の時間制御式薬物送達システム。
【請求項47】
前記多孔質材料は、複数のニードル状突出部として形成される、請求項44に記載の時間制御式薬物送達システム。
【請求項48】
複数の前記ニードル状突出部は、一列に配置されている、請求項47に記載の時間制御式薬物送達システム。
【請求項49】
前記ニードル状突出部の各々は、その最大寸法で約2mm未満である、請求項47に記載の時間制御式薬物送達システム。
【請求項50】
前記多孔質材料は、少なくとも約ショアA40の硬度を有する、請求項44に記載の時間制御式薬物送達システム。
【請求項51】
前記多孔質材料は、複数の開孔を備える、請求項44に記載の時間制御式薬物送達システム。
【請求項52】
前記複数の開孔は、相互接続されている、請求項51に記載の時間制御式薬物送達システム。
【請求項53】
前記複数の開孔は、互いに流体連通している、請求項51に記載の時間制御式薬物送達システム。
【請求項54】
前記粒子の形態は、粉末である、請求項44に記載の時間制御式薬物送達システム。
【請求項55】
前記粉末は、最大寸法で約100マイクロメートル未満のサイズを有する粒子を含む、請求項54に記載の時間制御式薬物送達システム。
【請求項56】
前記粉末は、最大寸法で約20マイクロメートル未満のサイズを有する粒子を含む、請求項44に記載の時間制御式薬物送達システム。
【請求項57】
粒子の形態の前記薬物は、水溶性である、請求項44に記載の時間制御式薬物送達システム。
【請求項58】
前記多孔質材料は、疎水性である、請求項57に記載の時間制御式薬物送達システム。
【請求項59】
粒子の形態の前記薬物は、脂溶性である、請求項44に記載の時間制御式薬物送達システム。
【請求項60】
前記真皮環境は、脂質を含む、請求項44に記載の時間制御式薬物送達システム。
【請求項61】
前記多孔質材料は、親水性である、請求項60に記載の時間制御式薬物送達システム。
【請求項62】
前記多孔質材料は、レジンから形成される、請求項44に記載の時間制御式薬物送達システム。
【請求項63】
前記多孔質材料は、複数のレジンから形成される、請求項44に記載の時間制御式薬物送達システム。
【請求項64】
複数の前記レジンのうち少なくとも1つは、犠牲的である、請求項53に記載の時間制御式薬物送達システム。
【請求項65】
粒子の形態の前記薬物と前記レジンは、コロイドを形成する、請求項52に記載の時間制御式薬物送達システム。
【請求項66】
粒子の形態の前記薬物と前記レジンは、非混和性である、請求項52に記載の時間制御式薬物送達システム。
【請求項67】
前記システムは、皮膚に付けるためのバンデージ上の複数のニードル状突出部を備える、請求項44に記載の時間制御式薬物送達システム。
【請求項68】
前記バンデージは、前記バンデージに収容される薬物の量を決定するためのセンサを備えている、請求項67に記載の時間制御式薬物送達システム。
【請求項69】
薬物送達用の合成物を作製する方法であって、前記方法は、
粒子の形態の薬物を提供することと、
粒子の形態の前記薬物をレジン材料と混合することと、
混ぜ合わせられた粒子の形態の前記薬物と前記レジン材料を形成することと、を含む、方法。
【請求項70】
混ぜ合わせられた粒子の形態の前記薬物と前記レジン材料の、前記形成することは、前記レジン材料をモールドの中に投入することを含む、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
粒子の形態の前記薬物及び前記レジン材料は、非混和性である、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
前記方法は、硬化合成物を提供するべく、前記レジン材料を硬化させることをさらに含む、請求項69に記載の方法。
【請求項73】
前記硬化させることは、電磁放射線を使用することを含む、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記硬化合成物は、少なくともショアA40の硬度を有する、請求項72に記載の方法。
【請求項75】
前記硬化合成物は、多孔質であり、かつ複数の開孔を備える、請求項72に記載の方法。
【請求項76】
前記複数の開孔は、相互接続されている、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記複数の開孔は、互いに流体連通している、請求項75に記載の方法。
【請求項78】
粒子の形態の前記薬物は、水溶性である、請求項72に記載の方法。
【請求項79】
前記硬化合成物は、疎水性である、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
粒子の形態の前記薬物は、脂溶性である、請求項72に記載の方法。
【請求項81】
前記硬化合成物は、親水性である、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
混ぜ合わせられた粒子の形態の前記薬物と前記レジン材料の、前記形成することは、複数のニードル状突出部として形成することを含む、請求項69に記載の方法。
【請求項83】
前記複数のニードル状突出部は、一列に配置されている、請求項72に記載の方法。
【請求項84】
前記ニードル状突出部の各々は、その最大寸法で約2mm未満である、請求項72に記載の方法。
【請求項85】
前記粒子の形態は、粉末である、請求項69に記載の方法。
【請求項86】
前記粉末は、最大寸法で約100マイクロメートル未満のサイズを有する粒子を含む、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記粉末は、最大寸法で約20マイクロメートル未満のサイズを有する粒子を含む、請求項85に記載の方法。
【請求項88】
粒子の形態の前記薬物をレジン材料と混合することは、混ぜ合わせられた粒子の形態の前記薬物と前記レジン材料の、形成することに先立って起こる、請求項69に記載の方法。
【請求項89】
粒子の形態の前記薬物をレジン材料と混合することは、混ぜ合わせられた粒子の形態の前記薬物と前記レジン材料の、形成することの後に起こる、請求項69に記載の方法。
【請求項90】
薬物送達用の合成物を作製する方法であって、前記方法は、粒子の形態の薬物を提供することと、展性材料を形成することと、形成された前記展性材料内に開孔を設けることと、粒子の形態の前記薬物を形成された前記展性材料内に載置することと、を含む方法。
【請求項91】
前記展性材料は、複数のレジンを含む、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記方法は、前記開孔を形成すべく、前記複数のレジンのうち少なくとも1つを犠牲化することをさらに含む、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
複数の前記開孔は、相互接続されている、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
複数の前記開孔は、互いに流体連通されている、請求項92に記載の方法。
【請求項95】
前記展性材料は、金、銀、炭素、鉄、銅、黄銅、青銅、チタン、ベリリウム、アルミニウム、スズ及び亜鉛、ならびに、それらの合金及び組み合わせ、から成る群から選択された金属を含む、請求項90に記載の方法。
【請求項96】
前記方法は、前記開孔を形成すべく、1つ以上の金属を犠牲化することをさらに含む、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
複数の前記開孔は、相互接続されている、請求項86に記載の方法。
【請求項98】
複数の前記開孔は、互いに流体連通している、請求項86に記載の方法。
【請求項99】
形成された前記展性材料は、少なくとも約ショアB80の硬度を有する、請求項90に記載の方法。
【請求項100】
前記展性材料を形成することは、複数のニードル状突出部を形成することを含む、請求項90に記載の方法。
【請求項101】
前記複数のニードル状突出部は、一列に配置されている、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
前記複数のニードル状突出部の各々は、その最大寸法で約2mm未満である、請求項100に記載の方法。
【請求項103】
前記粒子の形態は、粉末である、請求項100に記載の方法。
【請求項104】
前記粉末は、最大寸法で約100マイクロメートル未満のサイズを有する粒子を含む、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
前記粉末は、最大寸法で約20マイクロメートル未満のサイズを有する粒子を含む、請求項103に記載の方法。
【請求項106】
粒子の形態の前記薬物は、水溶性である、請求項90に記載の方法。
【請求項107】
粒子の形態の前記薬物は、脂溶性である、請求項90に記載の方法。
【請求項108】
時間制御式薬物送達システムを提供する方法であって、前記方法は、
開孔を備える多孔質材料を提供することと、
粒子の形態の薬物を、前記多孔質材料の前記開孔の内部に提供することと、
前記多孔質材料が、間質液を含む真皮環境に接触できるようにすることであって、粒子の形態の前記薬物が前記間質液と接触して、前記薬物の前記間質液への溶解を引き起こすように、接触できるようにすることと、を含む、方法。
【請求項109】
前記多孔質材料は、電磁放射線で硬化された高分子材料である、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
前記多孔質材料は、金、銀、炭素、鉄、銅、黄銅、青銅、チタン、ベリリウム、アルミニウム、スズ及び亜鉛、ならびに、それらの合金及び組み合わせ、から成る群から選択された金属を含む、請求項108に記載の方法。
【請求項111】
前記多孔質材料は、複数のニードル状突出部として形成される、請求項108に記載の方法。
【請求項112】
複数の前記ニードル状突出部は、一列に配置されている、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
前記ニードル状突出部の各々は、その最大寸法で約2mm未満である、請求項111に記載の方法。
【請求項114】
前記多孔質材料は、少なくともショアA40の硬度を有する、請求項108に記載の方法。
【請求項115】
前記多孔質材料は、複数の開孔を備える、請求項108に記載の方法。
【請求項116】
前記複数の開孔は、相互接続されている、請求項115に記載の方法。
【請求項117】
前記複数の開孔は、互いに流体連通している、請求項115に記載の方法。
【請求項118】
前記粒子の形態は、粉末である、請求項108に記載の方法。
【請求項119】
前記粉末は、最大寸法で約100マイクロメートル未満のサイズを有する粒子を含む、請求項118に記載の方法。
【請求項120】
前記粉末は、最大寸法で約20マイクロメートル未満のサイズを有する粒子を含む、請求項119に記載の方法。
【請求項121】
粒子の形態の前記薬物は、水溶性である、請求項108に記載の方法。
【請求項122】
前記多孔質材料は、疎水性である、請求項121に記載の方法。
【請求項123】
粒子の形態の前記薬物は、脂溶性である、請求項108に記載の方法。
【請求項124】
前記多孔質材料は、親水性である、請求項123に記載の方法。
【請求項125】
前記多孔質材料は、レジンから形成される、請求項108に記載の方法。
【請求項126】
粒子の形態の前記薬物と前記レジンは、非混和性である、請求項125に記載の方法。
【請求項127】
経皮的薬物送達のためのマイクロニードルを製造するための方法であって、前記方法は、
原寸のマイクロニードル形成キャビティを備えるマイクロニードルモールドを提供することと、
前記マイクロニードル形成キャビティのサイズを拡張するように、前記マイクロニードルモールドを伸ばすことと、
前記マイクロニードルモールド上に、薬物と生体適合性レジンの混合物を投入することであって、前記混合物が拡張された前記マイクロニードル形成キャビティを充填するように行われ、前記薬物は固体の粒子の形態であり、かつ10ナノメートルから100マイクロメートルの粒子サイズを有する、投入することと、
前記マイクロニードルモールドが、前記マイクロニードル形成キャビティがその原寸を回復するように、収縮できるようにすることと、
中実で多孔質のマイクロニードルを提供すべく、前記マイクロニードル形成キャビティ内で前記混合物を硬化させることであって、前記薬物は、前記マイクロニードルの孔内に埋め込まれる、硬化させることと、
前記マイクロニードルを前記マイクロニードルモールドから取除くことと、を含む、方法。
【請求項128】
前記方法は、弾性高分子を前記マイクロニードルモールドに投入することと、
前記弾性高分子を前記マイクロニードルに結合させるべく、前記弾性高分子を硬化させることと、をさらに含む、請求項127に記載の方法。
【請求項129】
前記マイクロニードルモールドは、複数のマイクロニードル形成キャビティを備えており、かつ、前記方法は、複数の中実で多孔質のマイクロニードルを提供する、請求項127又は128に記載の方法。
【請求項130】
前記弾性高分子を硬化させることは、前記弾性高分子を、紫外線にさらすことによって光硬化させることを含む、請求項127から129のいずれか一項に記載の方法。
【請求項131】
前記方法は、やり方によって前記マイクロニードルモールドを製造することをさらに含み、前記やり方は、
第1モールドを提供すべく、第1材料内で、1つ以上のマイクロニードル形状の窪みをレーザカットすることと、
前記1つ以上のマイクロニードル形状の窪みを第2材料で充填すべく、前記第1モールド上に前記第2材料を投入することと、
前記1つ以上のマイクロニードル形状の窪みの各々の内部に形成された1つ以上のマイクロニードルを有する第2モールドを提供すべく、前記第2材料を硬化させることと、
硬化された前記第2材料を前記第1モールドから取除くことと、
前記1つ以上のマイクロニードルを有する硬化された前記第2モールドの表面をプラズマ処理することと、
硬化された前記第2モールドの前記表面に、遊離層を塗布することと、
硬化された前記第2モールドの前記表面上に、第3材料を投入することと、
前記マイクロニードル形成キャビティを有する前記マイクロニードルモールドを提供すべく、前記第3材料を硬化させることと、
前記マイクロニードルモールドを硬化された前記第2モールドから取除くことと、を含むやり方である、請求項127から130のいずれか一項に記載の方法。
【請求項132】
前記第1材料内で、前記1つ以上のマイクロニードル形状の窪みをレーザカットすることは、前記1つ以上のマイクロニードル形状の窪みの各々を、クロスオーバーラインのパターンを用いてレーザカットすることを含む、請求項131に記載の方法。
【請求項133】
前記第1材料はアクリルシートであり、前記第2材料はシリコンエラストマであり、かつ、前記第3材料は超弾性シリコンラバーである、請求項131又は132に記載の方法。
【請求項134】
前記遊離層を塗布することは、硬化された前記シリコンエラストマの前記表面を、トリクロロ(1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチル)シランでシラン化することを含む、請求項131から133のいずれか一項に記載の方法。
【請求項135】
マイクロニードルパッチは、少なくとも100個の前記マイクロニードルを含む、請求項128から134のいずれか一項に記載の方法。
【請求項136】
前記マイクロニードルパッチは、約0.5cm
2から約100cm
2のマイクロニードルの平面面積を有する、請求項128から135のいずれか一項に記載の方法。
【請求項137】
前記混合物は、前記薬物と前記生体適合性レジンの1:1の混合物である、請求項69から136のいずれか一項に記載の方法。
【請求項138】
前記混合物は、ペースト状である、請求項69から137のいずれか一項に記載の方法。
【請求項139】
前記混合物は、前記生体適合性レジンと前記薬物の乳化均一混合物である、請求項69から138のいずれか一項に記載の方法。
【請求項140】
前記生体適合性レジンは、光硬化性の硬質高分子を含む、請求項69から139のいずれか一項に記載の方法。
【請求項141】
前記生体適合性レジンは、キトサン、キトサンポリブチレンアジペートテレフタラート、ポリ(ブチレンアジペート-co-テレフタラート)、ポリエチレングリコール、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、ゼラチン、ゼラチンメタクリロイル、ポリビニルアルコール、及びシルク、から成る群から選択された高分子を含む、請求項69から140のいずれか一項に記載の方法。
【請求項142】
前記方法は、前記混合物を投入することに先立って、前記生体適合性レジンと前記薬物の前記混合物をやり方によって準備することをさらに含む、方法であって、前記やり方は、
前記薬物を、1マイクロメートルから100マイクロメートルの粒子サイズを有する微粒子になるようすり砕くことと、
粘性ペーストを提供すべく、1:1の比率のすり砕かれた前記薬物と前記生体適合性レジンを混合することと、
をさらに含むやり方である、請求項69から141のいずれか一項に記載の方法。
【請求項143】
前記混合物を硬化させることは、紫外線にさらすことによって前記混合物を光硬化させることを含む、請求項69から142のいずれか一項に記載の方法。
【請求項144】
前記混合物を硬化させることは、405nmの光にさらすことによって前記混合物を光硬化させることを含む、請求項69から143のいずれか一項に記載の方法。
【請求項145】
前記マイクロニードルは、マクロ多孔質中実硬質(マクロPOSH)マイクロニードルである、請求項69から144のいずれか一項に記載の方法。
【請求項146】
前記薬物は、イブプロフェン及びリドカインのうち1つである、請求項69から145のいずれか一項に記載の方法。
【請求項147】
前記薬物は、イブプロフェンナトリウム塩及びリドカイン塩酸塩のうち1つである、請求項69から146のいずれか一項に記載の方法。
【請求項148】
経皮的薬物送達のためのマイクロニードルであって、前記マイクロニードルは、
硬化された生体適合性レジンで形成され、かつ孔を有する、マイクロニードル体と、
前記マイクロニードル体の前記孔に埋め込まれた粒子の形態の薬物と、を備え、前記マイクロニードルは、人間の皮膚の表皮を貫通するに十分な機械強度を有しており、前記薬物は、10ナノメートルから100マイクロメートルの粒子サイズを有している、マイクロニードル。
【請求項149】
前記マイクロニードル体は、前記生体適合性レジンと前記薬物の1:1の混合物を含む、請求項148に記載のマイクロニードル。
【請求項150】
前記生体適合性レジンは、光硬化性の硬質高分子を含む、請求項148又は149に記載のマイクロニードル。
【請求項151】
前記生体適合性レジンは、キトサン、キトサンポリブチレンアジペートテレフタラート、ポリ(ブチレンアジペート-co-テレフタラート)、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジアクリレート、ゼラチン、ゼラチンメタクリロイル、ポリビニルアルコール、シルクフィブロイン、及びそれらの組み合わせ、から成る群から選択された高分子を含む、請求項148から150のいずれか一項に記載のマイクロニードル。
【請求項152】
前記薬物は、イブプロフェン及びリドカインのうち1つである、請求項148から151のいずれか一項に記載のマイクロニードル。
【請求項153】
前記マイクロニードルの尖端は、加えられた約0.26ニュートンまでの力に対して破損に抵抗する、請求項148から152のいずれか一項に記載のマイクロニードル。
【請求項154】
前記マイクロニードル体は、100ナノメートルから40マイクロメートルの間の孔径を有する孔を有する多孔質である、請求項148から153のいずれか一項に記載のマイクロニードル。
【請求項155】
(削除)
【請求項156】
前記マイクロニードルは、マクロ多孔質中実硬質(マクロPOSH)マイクロニードルである、請求項148から請求項153のいずれか一項に記載のマイクロニードル。
【請求項157】
経皮的薬物送達のためのマイクロニードルパッチであって、前記マイクロニードルパッチは、
多孔質のマイクロニードルであって、前記マイクロニードルは、硬化された生体適合性レジンで形成され、かつマイクロニードルの孔内に埋め込まれた薬物の微粒子を有し、前記マイクロニードルは、皮膚の表皮を破損することなく貫通するに十分な機械強度を有している、マイクロニードルと、
前記マイクロニードルに結合された、形状適合的な背面基質と、を備える、マイクロニードルパッチ。
【請求項158】
多孔質の前記マイクロニードルは、前記生体適合性レジンと前記薬物の1:1の混合物から形成される、請求項157に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項159】
前記生体適合性レジンは、光硬化性の硬質高分子を含む、請求項157又は158に記載のマイクロニードル。
【請求項160】
前記生体適合性レジンは、キトサン、キトサンポリブチレンアジペートテレフタラート、ポリ(ブチレンアジペート-co-テレフタラート)、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジアクリレート、ゼラチン、ゼラチンメタクリロイル、ポリビニルアルコール、及びシルク、から成る群から選択された高分子を含む、請求項157から159のいずれか一項に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項161】
前記薬物は、イブプロフェン及びリドカインのうち1つである、請求項157から160のいずれか一項に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項162】
前記マイクロニードルの尖端は、加えられた約0.26ニュートンの力に対して破損する、請求項157から161のいずれか一項に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項163】
前記形状適合的な背面基質は、弾性高分子で作製される、請求項157から162のいずれか一項に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項164】
前記形状適合的な背面基質は、任意の身体部分の皮膚の湾曲に対して形状適合的に適合するように構成された、請求項157から153のいずれか一項に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項165】
前記マイクロニードルパッチは、多孔質の前記マイクロニードルを複数備える、請求項157から154のいずれか一項に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項166】
前記マイクロニードルパッチは、中実で多孔質の前記マイクロニードルを少なくとも100個備える、請求項157から165のいずれか一項に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項167】
前記マイクロニードルパッチは、約0.5cm
2から約100cm
2のマイクロニードルの平面面積を有する、請求項157から166のいずれか一項に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項168】
多孔質の前記マイクロニードルは、100ナノメートルから40マイクロメートルの間の孔径を有する孔を有するマクロ多孔質である、請求項157から167のいずれか一項に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項169】
多孔質の前記マイクロニードルは、マクロ多孔質中実硬質(マクロPOSH)マイクロニードルである、請求項157から167のいずれか一項に記載のマイクロニードルパッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する相互参照)
本出願は、2021年5月13日に出願された米国仮特許出願第63/201812号明細書、及び2021年6月18日に出願された米国仮特許出願第63/212586号明細書に関連し、それらへの優先権を主張し、かつ、それらは、参照により、あらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。
【0002】
(連邦政府資金による研究の記載)
本発明は、国防総省から授与された助成金HU0001-20-2-0014号の下、政府の支援を受けて行われた。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
本出願は、一般的に、薬物送達システム及び方法に関し、特に、自動薬物送達システム及び方法に関する。
【0004】
多くの全身性薬物は、静脈注射、筋肉注射、又は皮下注射等、注射による投与を必要とする。これは、ワクチン、診断薬等の特定の治療薬にも、例えばX線造影にも、当てはまる。注射による投与は、多くの場合、経口又は他の経路では吸収が乏しいか又は予測できない薬物に必要とされる。これは、タンパク質、治療用のモノクローナル抗体等の高分子の薬物の事例が一般的であり、というのもそれらは経口ルートでは分解されてしまい吸収されないからである。プロプラノロール、モルヒネ、バンコマイシン、及びテトラヒドロカンナビノール(THC)等の幾つかの低分子薬物も、経口ルートでは吸収が乏しいか、又は不規則的である。初回通過代謝は、多くの薬物の経口吸収を妨げる。
【0005】
注射による投与は痛みを伴い、多くの場合、高額かつ不便である医療従事者のサービスを必要とする。注射によって投与される多くの薬物は、水性製剤で提供されるが、このことは、薬物はより不安定にする場合があり、輸送及び保管に不便な条件を必要とし、保存期間も短くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記の課題を解決するために、皮膚を通して、例えば経皮的に、薬物を送達することが大きく注目されてきた。しかしながら、経皮投与は、技術的な課題によって比較的一般的ではない。技術的な課題とは、表皮が、特にその最表層即ち角質層が、約500ダルトンを超える重さの分子、及び、高い親水性又は疎水性といった特定の物理化学的特性を有する分子に対して手強い障壁であるということである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
経皮吸収のために表皮を超えて薬物を送達するための1つの技術的アプローチは、薬物を装填した皮膚貫通マイクロニードルを用いることである。一般的には、このようなマイクロニードルは、(1)皮膚に穿刺するように適合された端部を有する剛性構造と、(2)典型的には1つ以上の賦形剤と組み合わせられた薬物の有効成分と、を含む。
【0008】
マイクロニードルは、薬物の長期持続放出が可能な、便利な経皮的送達ルートを提供する。マイクロニードルは、経口送達に伴う消化管における薬物の分解、肝臓の初回通過効果、ならびに静脈注射の痛み及び不便を回避する方法として注目を受けている。また、マイクロニードルの使用は、化粧品からワクチン接種に至るまで、侵襲が最低限であり、痛みが少なく、かつ自己投与可能な、薬物の送達を提供するのであり、このことが、マイクロニードルをより一層魅力的なものとしている。マイクロニードルの製造方法には、UVリソグラフィ、ドローイングリソグラフィ、深部X線リソグラフィ、マイクロミリング、深掘りRIE(DRIE)、ウェットエッチング、ならびに2D及び3Dプリント、が含まれるが、多くの複雑さが存在する。マイクロニードルの製造方法を単純化し、かつ製造プロセスを費用対効果がより高く、時間消費もより少ないものとするための努力がなされている。
【0009】
マイクロニードルは、中実、中空、溶解性、先端合体型、及び多孔質等に分類され得る。多孔質マイクロニードルは、大きな体積の分布させられた孔を有する。しかしながら、当技術分野で知られる多孔質マイクロニードルは、壊れやすい。さらに、皮膚を貫通するに十分な強度を有する硬い多孔質マイクロニードルを作製することは困難である。さらに、現在の他のほとんどのマイクロニードル技術(例えば、ヒドロゲルマイクロニードル)は、信頼性があり安定した皮膚貫通のための機械的特性を有していない。さらに、ほとんどのマイクロニードルは、限られた量の薬物しか運ぶことができない。この制限は、特に溶媒を必要とする薬物にとって問題となる。また、高い絶対用量を必要とする薬物(例えば、高分子薬物、低効力の薬物、抗生物質)にとっても問題となる。幾つかの種類のマイクロニードルは、幾つかの薬物には物理的又は化学的に不適合である。
【0010】
従って、効率的で経済的な薬物送達システムに対する必要性は存在する。より具体的には、改良されたマイクロニードル式薬物送達システム及びマイクロニードル式薬物送達システムを製造する方法が必要とされている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態による、粒子の形態の薬物を有する流動性材料を示している。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態による、キャビティを有するモールドを示している。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態による、
図2のモールドの上に投入された、
図1の粒子の形態の薬物を有する流動性材料を示している。
【
図4】
図4は、本開示の実施形態による、モールドの中の流動性材料の硬化の概略図を示している。
【
図5】
図5は、本開示の実施形態による、モールドから取除かれた後の、マイクロニードルを有する硬化高分子材料を示している。
【
図6】
図6は、本開示の実施形態による、
図5の硬化高分子材料のマイクロニードルを示している。
【
図7】
図7は、本開示の実施形態による、マイクロニードルのアレイを有するバンデージを示している。
【
図8a】
図8aは、本開示の実施形態による、真皮環境にあるマイクロニードルを示している。
【
図8b】
図8bは、本開示の実施形態による、マイクロニードルから真皮環境内への薬物の拡散を示している。
【
図9】
図9は、本開示による、マイクロニードルのアレイを示している。
【
図10】
図10は、本開示による、マイクロニードルの走査型電子顕微鏡写真を示している。
【
図13】
図13は、本開示による、マイクロニードルの走査型電子顕微鏡写真を示している。
【
図14】
図14は、本開示による、薬物放出後のマイクロニードルの走査型電子顕微鏡写真を示している。
【
図15】
図15は、本開示の実施形態による、薬物を装填された固体マトリックス及び薬物放出後の固体マトリックスの概略図を示している。
【
図16】
図16は、本開示の実施形態による、光エミッタ及び光センサを有するバンデージを示している。
【
図17】
図17は、本開示の実施形態による、合成材料を形成するために2つの流動性材料を混合することの概略図である。
【
図18】
図18は、本開示の実施形態による、モールドの上に投入された、
図17の合成材料を示している。
【
図19】
図19は、本開示の実施形態による、
図18の硬化合成材料をエッチング液内に配置することの概略図である。
【
図20】
図20は、本開示の実施形態による、エッチング液内に配置された
図18の硬化合成材料の概略図である。
【
図21】
図21は、本開示の実施形態による、マイクロニードルの形状である開孔材料を示している。
【
図22】
図22は、本開示の実施形態による、特定の形態(particular form)の薬物を含むキャリア液内に
図21の開孔材料を浸漬することの概略図である。
【
図23】
図23は、本開示の実施形態による、キャリア液の撹拌及び蒸発を示す、
図22に類似した概略図である。
【
図24】
図24は、本開示の実施形態による、粒子の形態の薬物を含む開孔材料を示している。
【
図25】
図25は、本開示の実施形態による、粒子の形態の薬物を含む開孔材料を示している。
【
図26a】
図26aは、本開示の実施形態による、厚い背面基質上にあるマイクロニードルが、被験者に貫通することの概略図である。
【
図26b】
図26bは、本開示の実施形態による、薄い背面基質上にあるマイクロニードルが、被験者に貫通することの概略図である。
【
図27】
図27は、本開示の実施形態による、レジンを通じてガスを適用することによる、開孔材料を生成することの概略図である。
【
図28a】
図28aは、本開示の実施形態による、マイクロニードルが真皮環境に入り、かつ薬物が放出される際の、異なった時間における図を示している。
【
図28b】
図28bは、本開示の実施形態による、マイクロニードルが真皮環境に入り、かつ薬物が放出される際の、異なった時間における図を示している。
【
図28c】
図28cは、本開示の実施形態による、マイクロニードルが真皮環境に入り、かつ薬物が放出される際の、異なった時間における図を示している。
【
図29a】
図29aは、本開示による、6つのサンプルについてのCD20陽性細胞の蛍光のフローサイトメトリーデータを示している。
【
図29b】
図29bは、本開示による、6つのサンプルについてのCD20陽性細胞の蛍光のフローサイトメトリーデータを示している。
【
図29c】
図29cは、本開示による、6つのサンプルについてのCD20陽性細胞の蛍光のフローサイトメトリーデータを示している。
【
図29d】
図29dは、本開示による、6つのサンプルについてのCD20陽性細胞の蛍光のフローサイトメトリーデータを示している。
【
図29e】
図29eは、本開示による、6つのサンプルについてのCD20陽性細胞の蛍光のフローサイトメトリーデータを示している。
【
図29f】
図29fは、本開示による、6つのサンプルについてのCD20陽性細胞の蛍光のフローサイトメトリーデータを示している。
【
図30a】
図30aは、本開示による、経皮的薬物送達のためにアフリカミドリザルに適用された2つのパッチ、及びそれらパッチの除去後の領域を示している。
【
図30b】
図30bは、本開示による、リツキシマブを2つのパッチで毎日投与された動物からのフローサイトメトリーデータを示している。
【
図30c】
図30cは、本開示による、リツキシマブの静脈内注射投与及びパッチ投与後の血液中のB細胞枯渇を示している。
【
図31】
図31は、本開示の実施形態による、FITC-デキストランを含むマイクロニードルのアレイの試験体を示している。
【
図32】
図32は、本開示の実施形態による、模擬真皮液中のマイクロニードルのアレイの試験体を示している。
【
図33】
図33は、本開示による、処方された2つの異なるパッチのFITC-デキストランの放出データを示している。
【
図34a】
図34aは、本開示による、マイクロニードルモールド、マイクロニードル、及びマイクロニードルパッチ、を製造するための方法の概略図を示している。
【
図34b】
図34bは、本開示による、マイクロニードルパッチを示している。
【
図35a】
図35aは、本開示による、粉砕されていないスルホローダミンB粒子を示している。
【
図35b】
図35bは、本開示による、粉砕されたスルホローダミンB粒子を示している。
【
図35c】
図35cは、本開示による、粉砕前後のスルホローダミンB粒子の粒子サイズの分布を示している。
【
図35d】
図35dは、本開示による、粉砕されていないスルホローダミンB粒子で作製されたマイクロニードルを示している(スケールバーは1mm)。
【
図35e】
図35eは、本開示による、粉砕されたスルホローダミンB粒子で作製されたマイクロニードルを示している(スケールバーは1mm)。
【
図35f】
図35fは、本開示による、粉砕されたスルホローダミンB粒子で作製されたマイクロニードルを、基部構造と共に示している(スケールバーは0.5mm)。
【
図35g】
図35gは、本開示による、弾性の背面基質及び固体アクリルリングを有するマイクロニードルのアレイの概略図を示している。
【
図35h】
図35hは、本開示による、インビトロ放出実験の概略図である。
【
図35i】
図35iは、本開示による、色素を装填されたマイクロニードルパッチの前部を示している。
【
図35j】
図35jは、本開示による、
図35iの色素を装填されたマイクロニードルパッチの背面を示している。
【
図35k】
図35kは、本開示による、
図35i、jの色素を装填されたマイクロニードルパッチからの色素の放出を示している。
【
図35l】
図35lは、本開示による、異なるタイムスタンプにおける色素を装填されたマイクロニードルパッチからの色素のゼラチン内への放出分布を示している。
【
図36a】
図36aは、本開示による、溶液中の濃度が異なるイブプロフェンのUV-Visスペクトルを示している。
【
図36b】
図36bは、本開示による、溶液中の濃度が異なるリドカインのUV-Visスペクトルを示している。
【
図36c】
図36cは、本開示による、イブプロフェン及びリドカインの検量線を示している。
【
図36d】
図36dは、本開示による、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)中のイブプロフェン/レジンマイクロニードルパッチ及びリドカイン/レジンマイクロニードルパッチの放出プロファイルであり、パッチは各々100個のマイクロニードルを有している。
【
図36e】
図36eは、本開示による、マイクロニードル内に封入されたリドカインと比較したリドカイン粉末のFTIR吸収スペクトルを示している。
【
図36f】
図36fは、本開示による、マイクロニードル内に封入されたイブプロフェンと比較したイブプロフェン粉末のFTIR吸収スペクトルを示している。
【
図37a】
図37aは、本開示による、マイクロニードルで処置されたブタの皮膚の組織切片の顕微鏡写真である(スケールバーは100マイクロメートル)。
【
図37b】
図37bは、本開示による、放出前及び放出後のレジン/薬物の表面形態を示している(スケールバーは200マイクロメートル)。
【
図37c】
図37cは、本開示による、薬物及びレジンを含む個々のマイクロニードルの力学的ふるまいのグラフを示している。
【
図37d】
図37dは、本開示による、本開示のレジン/薬物マイクロニードルの堅牢性をポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)/薬物マイクロニードルと比較した棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
出願人は、薬物が粒子の形態で組み込まれた1つ以上のマイクロニードルを含む薬物送達システムを発見した。その1つ以上のマイクロニードルが被験者の皮膚に適用されるとき、薬物は皮膚を通して拡散し、例えば全身循環又は所望の局所組織に送達される。理論によって束縛されることは望めないが、幾つかの実施形態では、薬物の拡散を助けるための溶媒が、受容被験者の間質液によって全体的又は実質的に提供される。このように、本発明を区別する幾つかの特徴のうちの1つは、薬物が、皮膚による溶媒和に適合した固体の(又は実質的に固体の)形態で任意に提供され得るということである。従って、薬物は、例えば無水であるなど、無溶媒の(又は実質的に無溶媒の)製剤形態で提供され得る。従って、非常に大量の薬物の有効成分(即ち、薬物物質)が、マイクロニードル中に装填され得る(マイクロニードルの質量あたりの薬物物質の質量又はマイクロニードルの体積あたりの有効成分の質量に基づいて測定される)のであって、例えば、35ナノリットル(1つのマイクロニードルの大体の体積)につき10マイクログラム以上の薬物物質が装填され得る。このことは、幾つかの重要な利益をもたらす。その利益とは、例えば、これまではマイクロニードル上に十分な量を装填することができなかった有効成分を、マイクロニードルによって送達する能力、生物製剤、治療用のモノクローナル抗体等の高分子量分子を送達する能力、必要とするのがより短い適用時間及び/又はより頻度の少ない再適用であり得るマイクロニードルを創出する能力、ならびに、マイクロニードルの近傍で非常に高い薬物濃度を得る能力であり、それによって大きな濃度勾配を作り出し、かつそれに対応して薬物送達を改善するという能力、等である。さらに、本発明は、オプションとして、薬物が無水でマイクロニードルに組み込まれることを可能にする。このことは、有益なことには、室温における安定性を含め、多くの薬物の、保存期間等の、安定性を向上及び延長することができる。
【0013】
本発明のマイクロニードルはまた、実用的な利益をもたらす特筆すべき物理的特徴を有してもいる。薬物粒子のサイズ及び他の物理的特性は、マイクロニードルの薬物送達の特徴、例えば薬物送達速度を変更するように調節することができる。マイクロニードルの組成及び構造は、皮膚への優れた浸透性、及び構造的な完全性を、例えば、剛性又は半剛性、及び破損に対する抵抗性を提供する。
【0014】
(マイクロニードルの構造及び製造の概略)
1つの態様では、本発明のシステムは、1つ以上のマイクロニードルを含み、そのマイクロニードルの各々は多孔質材料を含んでいる。多孔質材料は、オプションとしては、無溶媒、実質的に無溶媒、無水、かつ/又は実質的に無水である、粒子の形態の薬物を含む。
【0015】
幾つかの実施形態では、多孔質材料は、(例えば、後で硬化されて固体を形成する高分子等のレジン、又は、後で冷却されて固体を形成する合金等の流動性金属といった)流動性材料から形成されている。幾つかの実施形態では、流動性材料は、モールドに投入され、そのモールドは、1つ以上のニードル形状のモールドキャビティを備えている。モールドにおける流動性材料の固化によって、本発明のマイクロニードルが得られる。幾つかの実施形態では、モールドは、特定の幾何学的構成にあるニードル形状のモールドキャビティのアレイを含む。
【0016】
(薬物粒子)
幾つかの実施形態では、薬物粒子は、分散を得るために流動性材料と組み合わせられる。幾つかの実施形態では、薬物粒子は固体を含み、その固体は、流動性材料に不溶であるか又は実質的に不溶である。従って、幾つかの実施形態では、疎水性の薬物粒子は、親水性の流動性材料と組み合わせられる。幾つかの実施形態では、親水性の薬物粒子が、疎水性の流動性材料と組み合わせられる。幾つかの実施形態では、薬物は液滴(又はミセル、小胞、又は液相における薬物の他の集合体)として提供され、液滴(又はそのような他の集合体)は、流動性材料中では非混和性であるか又は実質的に非混和性である。本開示の目的のため、「非混和性」又は「実質的に非混和性」という表現は、例えば温度等、選択された製造条件下での混和性を指す。従って、2つの材料は、高温又は乳化剤等の添加剤の存在等、他の条件下においては混和性であったとしても、本発明の目的のためには非混和性であるということがある。
【0017】
本発明で使用するための薬物粒子は、例えば、凍結乾燥、噴霧乾燥、又は液体エマルジョン、又はミクロ流体滴の形成及びそれに続く脱水等の溶媒蒸発によって得ることができ、後に薬物粒子として流動性材料全体に分散される薬物粒子が作り出される。幾つかの実施形態では、薬物粒子のサイズ(即ち最大寸法)は、1マイクロメートルと100マイクロメートルの間である。幾つかの実施形態では、薬物粒子のサイズは、37マイクロメートルと100マイクロメートルの間である。幾つかの実施形態では、薬物粒子のサイズは、1マイクロメートルと37マイクロメートルの間である。幾つかの実施形態では、薬物粒子のサイズは、500ナノメートルと1マイクロメートルの間である。幾つかの実施形態では、薬物粒子のサイズは、100ナノメートルと500ナノメートルの間である。幾つかの実施形態では、薬物粒子のサイズは、10ナノメートルと500ナノメートルの間である。本開示を通じて、薬物粒子のサイズが記載される場合、粒子サイズがオプションとしてはサイズの分布として存在し得ることは理解されたい。従って、粒子サイズの粒子測定値が提供されるとき、この測定値は粒子サイズ分布の平均値又は中央値を表し得る。従って、幾つかの実施形態では、薬物粒子のサイズの中央値は、約1マイクロメートルと100マイクロメートルの間、約1マイクロメートルと37マイクロメートルの間、約500ナノメートルと1マイクロメートルの間、又は約100ナノメートルと500ナノメートルの間である。従って、幾つかの実施形態では、合成物中の薬物の90パーセント、95パーセント、99パーセント、又は99.9パーセントが、1マイクロメートルと100マイクロメートルの間、約1マイクロメートルと37マイクロメートルの間、約500ナノメートルと1マイクロメートルの間、又は100ナノメートルと500ナノメートルの間である。前節において、比率と粒子サイズの範囲の16個の可能なペアの組み合わせが開示されており、それらの組み合わせの各々は、本明細書において個々に記載されているかのように開示される。
【0018】
幾つかの実施形態では、薬物粒子は無溶媒であるか、実質的に無溶媒であるか、又は無溶媒で作製されている。幾つかの実施形態では、薬物粒子は無水であるか、実質的に無水であるか、又は無水で作製されている。本明細書で使用されるとき、「実質的に無溶媒」及び「実質的に無溶媒で作製」という表現は、各々、例えば薬物粒子に非共有結合的に結合した溶媒分子等の無視できる量の溶媒を含む合成物を含むが、それらに限定はされない。同様にして、本明細書で使用されるとき、「実質的に無溶媒」及び「実質的に無溶媒で作製」という表現は、各々、例えば水和物である薬物粒子中に存在する水、又は大気から受動的に吸収又は吸着された水を含む、無視できる量の水を含むが、それらに限定はされない。
【0019】
薬物粒子は、均質であっても不均質であってもよい。薬物粒子は、物理的に均一であってもよいし、又は2つ以上の部分から成っていてもよい。例えば、薬物粒子は、オプションとしては、中央コアと表層シェルとを含むことができ、かつ、表層シェルは、所望であれば、薬物粒子と流動性材料の間の物理的相互作用を最適化するように選択することができる。例えば、薬物粒子は、保護シェルによって取り囲まれた薬物の有効成分を含む中央コアを含むことができる。保護シェルは、薬物が流動性材料中に溶解してしまうことを防止するように適合されることができる。幾つかの例として、疎水性の流動性材料中での親水性保護シェルの使用、親水性の流動性材料中での疎水性保護シェルの使用、薬物の有効成分と流動性材料の間での化学反応を防止するための保護シェルの使用、又は、例えば流動性材料の硬化の間の光分解から薬物の有効成分を保護する吸収スペクトルを有する保護シェルの使用、が挙げられる。
【0020】
薬物粒子は、1つ以上の賦形剤を、例えば当該分野で公知の結合剤、緩衝材、塩、安定剤、及び/又は保存剤を、含むことができる。薬物粒子及び流動性材料を含む混合物が、1つ以上の賦形剤を、例えば当技術分野で公知の結合剤、緩衝材、塩、安定剤、及び/又は保存剤を、含んでもよい。
【0021】
薬物粒子は、単一の薬物粒子であってもよいし、又は、前述したシェル、賦形剤、又は薬物の有効成分のいずれかを含む1つ以上の薬物粒子の物理的クラスタであってもよい。
【0022】
粒子の形態の薬物の使用は、高分子量の薬物の送達のために特に興味深いものであり得る。これらの薬物は、典型的には親水性であり、かつ、例えば皮膚の間質液に可溶性である。従って、それら薬物は、上記した特定の実施形態において使用するための優れた候補である。
【0023】
薬物粒子、又は薬物粒子及び流動性材料を含む混合物は、当技術分野で公知の1つ以上の検出可能なマーカーを備えていてもよい。そのマーカーは、例えば、フルオレセイン、緑色蛍光タンパク質、又は放射性化合物等の無毒性色素を含み得る。そのようなマーカーは、マイクロニードルからの薬物放出を監視するために有用である。
【0024】
(本発明で使用する薬物)
幾つかの実施形態では、薬物は、モノクローナル抗体(例えば、リツキシマブ)、抗体、治療ペプチド、コロニー刺激因子、低分子量薬物、鎮痛剤(例えば、リドカイン)、他の麻酔用薬物、又はそれらの組み合わせ、である。出願人は、特にタンパク質のリツキシマブ、低分子量のリドカイン及びイブプロフェンの各々をマイクロニードルの内部に埋め込んだ後で、当該薬物を装填されたマイクロニードルの操作性を検証した(実施例を参照のこと)。
【0025】
幾つかの実施形態では、薬物は、鎮痛剤、麻酔薬、抗アルツハイマー病薬、抗気管支喘息剤、抗パーキンソン病薬、抗アレルギー剤、抗狭心症薬、抗不整脈薬、抗関節炎薬、抗喘息薬、抗細菌薬、抗生物質、抗がん剤、抗凝固剤、抗うつ薬、抗糖尿病薬、制吐剤、抗てんかん薬、抗真菌薬、抗緑内障薬、抗痛風薬、抗ヒスタミン薬、抗高プロラクチン血症薬、降圧剤、抗炎症剤、抗偏頭痛薬、抗腫瘍薬、抗肥満薬、抗寄生虫薬、抗原虫薬、解熱剤、抗乾せん薬、抗精神病薬、抗血栓薬、抗潰瘍薬、抗ウイルス剤、抗不安薬、前立腺肥大症薬、気管支拡張薬、カルシウムホルモン又はサプリメント、強心剤、血管作動薬、キレート剤、解毒剤、化学予防薬避妊薬、利尿剤、ドーパミン作用薬、消火器作用薬、消化管運動促進薬、造血剤、血友病薬、ホルモン剤、ホルモン補充療法薬、催眠剤、低コレステロール血症薬、抗高脂血症薬、免疫調節薬、免疫増強薬、免疫抑制剤、免疫療法薬、脂質調整剤、男性性機能障害治療薬、多発性硬化症薬、筋弛緩薬、神経弛緩薬、向知性薬、抗骨粗しょう症薬、植物エストロゲン、抗血小板剤、プロスタグランジン、放射線治療用放射線増感剤、筋弛緩剤、鎮静剤、精神安定剤及び興奮剤、呼吸窮迫症候群薬、血管拡張薬、又はビタミン、である。
【0026】
幾つかの実施形態では、本発明のマイクロニードルは、薬物の代わりにワクチンを装填されて提供される。
【0027】
本発明のマイクロニードルは、完成状態では、硬質の多孔質材料を含む。幾つかの実施形態では、多孔質材料の孔隙は、マイクロニードルの製造過程中に、流動性材料中に分散された薬物粒子の存在によって課される空間的排除によって作り出される。従って、幾つかの実施形態では、薬物粒子は、多孔質材料の孔隙内に収容される。幾つかの実施形態では、薬物粒子は、多孔質材料の孔隙の容積の実質的にすべてを占める。幾つかの実施形態では、薬物粒子は、多孔質材料の孔隙の容積の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、99%、99.9%、又は99.99%を占める。幾つかの実施形態では、実質的にすべての孔隙が、薬物粒子によって占められる。幾つかの実施形態では、孔隙の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、99%、99.9%、又は99.99%が、薬物粒子によって占められる。幾つかの実施形態では、マイクロニードルの溶媒がアクセス可能な容積の実質的にすべてが、薬物粒子によって占められる。幾つかの実施形態では、マイクロニードルの溶媒がアクセス可能な容積の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、99%、99.9%、又は99.99%が、薬物粒子によって占められる。本開示の目的のために、「溶媒がアクセス可能な容積」という語は、適切な溶媒に、例えば水に浸漬されたマイクロニードルによって吸収される最大体積を指す。
【0028】
幾つかの実施形態では、流動性材料は、生体適合性レジンであってよい。例えば、Dental SGレジンが用いられ得る。他の適切な種類の生体適合性レジンとしては、BioMedクリアレジン(RS-F2-BMCL-01)、BioMedアンバーレジン(RS-F2-BMAM-01)、Dental LTクリアレジン(RS-F2-DLCL-02)、サージカルガイドレジン(RS-F2-SGAM-01)、及びDental SGレジン(RS-F2-DGOR-01)、が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。生体適合性レジンは、光硬化性であってもよく、即ち、硬化されて硬質高分子を与え得る。幾つかの実施形態では、生体適合性レジン又はその硬化物は、キトサン、キトサンポリブチレンアジペートテレフタラート、ポリ(ブチレンアジペート-co-テレフタラート)、ポリエチレングリコール、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、ゼラチン、ゼラチンメタクリロイル、ポリビニルアルコール、シルク、及びそれらの組み合わせ、から選択された化学種を含み得る。多孔質マイクロニードルを製造するために用いられる他の材料としては、ポリ乳酸(PLA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ(エチレングリコールジアクリレート)(PEGDA)、又はUV硬化性高分子を挙げることができるが、これらに限定されるわけではない。
【0029】
幾つかの実施形態では、多孔質材料は、当初は薬物粒子がない状態で得られ、その後薬物粒子が多孔質材料内に導入される。本質的に、多孔質材料は、当技術分野で公知(PLGA、PVA、PDMS、アクリル樹脂、及び、PEGゼラチン、キトサンを含むヒドロゲル、を含む高分子)であるか、又は、多孔質材料は、犠牲材料と流動性材料の組み合わせによって作り出され得る。その際、その2つの材料は、(犠牲材料の相においてそうであり得るように)非混和性又は不溶性である。ひとたび流動性材料が固化すると、例えば化学的手段によって、犠牲材料を選択的に取除き、開孔を有する多孔質材料を得ることができる。その後、例えば、多孔質材料を、薬物を含むキャリア液に浸し、続いてキャリア液の蒸発又は昇華によって薬物粒子を多孔質材料内に残すことにより、薬物粒子を多孔質材料内で形成することができる。幾つかの実施形態では、薬物は水溶性でありかつ多孔質材料は疎水性である場合があり、又は薬物は脂溶性でありかつ多孔質材料は親水性であるという場合もある。本開示の目的のために、「犠牲材料」という語は、例えば空隙又はキャビティを得るために、製造過程又はその一部を通じて用いられるが、最終製品を得る前に取除かれる材料を指す。
【0030】
孔隙が流動性材料内に分散された薬物粒子の存在によって課された空間的排除によって作り出されるにせよ、又は孔隙が当初は薬物粒子がない状態で得られるにせよ、孔隙は、すべて又は実質的にすべての薬物粒子が間質液等の外部溶媒にアクセス可能であるように、相互接続されるべきである。このアクセス可能性は、本明細書では、開孔又は利用可能な薬物を形成する、と称される場合がある。
【0031】
(マイクロニードルの構造)
ここで開示されるのは、特に、マクロ多孔質構造硬質(マクロPOSH)マイクロニードルと呼称される新しいクラスのマイクロニードルである。マクロPOSHマイクロニードルは、マイクロ/ナノサイズの孔を有する高多孔質構造を有する硬質のマイクロニードルであり、非常に多量の薬物をマイクロニードルに充填することを容易化できる。同時に、本明細書で開示されるマクロPOSHマイクロニードルは、優れた構造特性を有している。作製されたマイクロニードルは、高いヤング率(ヒトの皮膚の1000倍と予測される)を有していて破損に対する抵抗性があり、かつ破損することなく様々な種類の皮膚に効果的に浸透することができる。マイクロニードルは、非常に鋭利な尖端を形成及び維持することができる(実施例を参照のこと)。
【0032】
図9は、本発明の一態様のマイクロニードルのアレイを示しており、
図10は、薬物放出前の本発明の一態様のマイクロニードルの一部の走査型電子顕微鏡写真を示している。
図11は、
図10のマイクロニードルの幾つかの拡大図を示しており、
図12は、
図10のマイクロニードルの一部のさらなる拡大図を示している。
【0033】
マイクロニードルの孔のサイズは、マイクロニードル内に装填される薬物粉末のサイズと相関されていてよい。孔のサイズは、ナノスケールからマイクロスケールの任意の寸法を有してよい。例えば、孔が、約100ナノメートルから約40マイクロメートルの範囲の径を有する場合がある。1つの特定の実施形態では、約6マイクロメートルのサイズを有する薬物粒子が、約6マイクロメートルの孔のサイズを提供する。幾つかの実施形態では、孔は、最大寸法で約100ナノメートルから100マイクロメートルの範囲であり得る。幾つかの実施形態では、孔は、約10マイクロメートルから100マイクロメートルの範囲であり得る。幾つかの実施形態では、孔は、約1マイクロメートルから100マイクロメートルの範囲であり得る。幾つかの実施形態では、孔は、約500ナノメートルから10マイクロメートルの範囲であり得る。幾つかの実施形態では、孔は、約500ナノメートルから50マイクロメートルの範囲であり得る。
【0034】
幾つかの実施形態では、マイクロニードルの軸方向長さ(即ち、尖端[即ち尖った点]から基部までで測定された長さ)は、0.5mmから10mmの間である。幾つかの実施形態では、軸方向長さは、0.5mmから8mmの間である。幾つかの実施形態では、軸方向長さは、0.5mmから6mmの間である。幾つかの実施形態では、軸方向長さは、0.5mmから5mmの間である。幾つかの実施形態では、軸方向長さは、0.5mmから4mmの間である。幾つかの実施形態では、軸方向長さは、0.5mmから3mmの間である。幾つかの実施形態では、軸方向長さは、0.5mmから2mmの間である。幾つかの実施形態では、軸方向長さは、0.5mmから1.5mmの間である。幾つかの実施形態では、軸方向長さは、0.5mmから1mmの間である。幾つかの実施形態では、軸方向長さは、1mmから1.5mmの間である。幾つかの実施形態では、軸方向長さは、0.75mmから1mmの間である。幾つかの実施形態では、軸方向長さは、1mmから1.25mmの間である。幾つかの実施形態では、軸方向長さは、0.8mmから1.2mmの間である。幾つかの実施形態では、軸方向長さは、0.9mmから1.1mmの間である。幾つかの実施形態では、軸方向長さは、0.1mmから1mmの間である。幾つかの実施形態では、軸方向長さは、0.1mmから0.75mmの間である。幾つかの実施形態では、軸方向長さは、0.1mmから0.5mmの間である。
【0035】
(背面基質)
支持目的のために、例えば粘着性の支持的なバッキング材を提供するために、かつ/又は複数のマイクロニードルをアレイに配置するために、1つ以上のマイクロニードルの基部に取付けられる材料は、本明細書では、背面基質と呼称される。幾つかの実施形態では、背面基質は、薄い弾性体であるか、又はそれを含むという場合がある(
図26B)。幾つかの実施形態では、背面基質は、可撓性の粘着材であるか、又はそれを含むという場合がある。幾つかの実施形態では、背面基質は、織物材料であるか、又はそれを含むという場合がある。幾つかの実施形態では、背面基質は、フィルムであるか、又はそれを含むという場合がある。幾つかの実施形態では、背面基質は、バンデージ又はドレッシングであるか、又はそれを含むという場合がある。幾つかの実施形態では、背面基質は、生分解性材料であるか、又はそれを含むという場合がある。幾つかの実施形態では、背面基質は、臨床適用のためのより大きなパッチに対する中間的な粘着材として機能する場合がある。幾つかの実施形態では、背面基質は、マイクロニードルを構成する同じ多孔質材料の連続である場合がある(
図5)。幾つかの実施形態では、背面基質は、薬物を装填された多孔質材料を含む、二次的な薬物を装填された材料である場合もある。
【0036】
マイクロニードルとの強力な結合を作る高分子が、背面基質を形成する材料として用いられるのがよい。背面基質を形成するために使用される材料は、適用によって、剛性である場合もあれば可撓性である場合もある。適切な可撓性材料としては、紙、織物、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パリレン、及びポリイミド、が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。弾性かつ可撓性のレジンが用いられる場合もある(例えば、Elastic 50A Resin(部品番号:FLELCL01)、Flexible 80A Resin(部品番号:FLFL8001))。例えば、マイクロニードルパッチに形状適合性、可撓性、及び弾性が必要である場合などには、UV硬化性レジンが用いられてもよい。剛性の背面基質が必要な用途のために、硬質のレジンが使用されてもよい。硬質のレジンの適切な例として、Surgical Guide Resin(部品番号:FLSGAM01)が挙げられるが、これに限定されるわけではない。
【0037】
背面基質が平面であるか又は実質的に平面である幾つかの実施形態では、パッチの「平面面積」は、背面基質によって画定された平面におけるパッチの面積として計算され得る。そのような幾つかの実施形態では、パッチの「マイクロニードルの平面面積」は、正多角形又は非正多角形の面積として計算され得る。その際、当該多角形は、(1)背面基質の平面内にあり、かつ(2)すべてのマイクロニードルをペアにして接続する、すべての直線の軌跡によって外接される、最大の面積を有する多角形として定義される。前記の幾何学的定義を改変することは望むところではないが、より平易に述べれば、マイクロニードルの平面面積は、パッチ上のマイクロニードルの外周によって定義される面積である。幾つかの実施形態では、パッチの平面面積は、約0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、16、18、20、24、25、27、28、30、32、33、35、36、40、42、45、48、50、55、56、60、63、64、65、70、72、75、80、81、85、90、95、99、100、105、110、120、121、125、130、135、140、144、145、150、160、170、180、190、200、210、215、220、又は225cm2である。幾つかの実施形態では、パッチのマイクロニードルの平面面積は、約0.1、0.2、0.25、0.3、0.4、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、16、18、20、24、25、27、28、30、32、33、35、36、40、42、45、48、50、55、56、60、63、64、65、70、72、75、80、81、85、90、95、99、100、105、110、120、121、125、130、135、140、144、145、150、160、170、180、190、200、210、215、220、225cm2である。幾つかの実施形態では、パッチの平面面積は、約0.1から1、1から5、1から10、5から10、10から20、10から100、20から50、50から100、100から150、150から200、又は200から250cm2、の間である。幾つかの実施形態では、パッチのマイクロニードルの平面面積は、約0.1から1、0.5から100、1から5、1から10、5から10、10から20、10から100、20から50、50から100、100から150、150から200、又は200から250cm2、の間である。
【0038】
(マイクロニードルの製造)
本発明のマイクロニードルを作製するプロセスの1つの例が、
図1から
図6に示されている。
図1は、レジン等である流動性材料10を示しており、その中には粒子の形態の薬物12が分散させられている(
図1の拡大領域において、図式的によりよく見られる)。材料10は、
図2に示されたキャビティ16を有するモールド14に投入される。
図3に示されているように、薬物12を有する材料10は、キャビティを充填する。薬物は、粉末等の粒子の形態で提供され得る。流動性材料と、粒子の形態又は溶解した形態である薬物の組み合わせは、本明細書では、それぞれ投入ペースト又は投入溶液と呼称される。粒子の形態を使用している場合には、粉末が微細になればなるほど、必要となるレジンであって、マイクロニードルが折れることなく真皮層への貫通及び除去が達成されるほどに堅牢な機械的特性を有した多孔質材料をもたらす使用可能な投入ペーストを作り出すために必要となるレジンは、少なくなることが、さらに発見されている(実施例の段落〔0080〕を参照のこと)。一例として、10ミクロン又はそれより大きな粒子の粉末のために、薬物粉末とレジンを1:1(w/w)の比率で混合することで、硬化された際に堅牢な機械的特性を有する投入可能なペーストを作り出すことが可能である。粒子のサイズを小さくすると(例えば、10ミクロンから1-5ミクロンへと小さくすると(これにより、より長い粉砕時間又は最適化された噴霧乾燥法へと転換し得る))、薬物粉末及びレジンは、2:1、3:1、4:1、5:1、及びさらには6:1(w/w-薬物/レジン)の比率で混合され、機械的特性を全体的に損なうことなく、マイクロニードルが、皮膚を効果的に貫通するに十分な剛性を維持し、かつ、適用の間、装着の間、かつ皮膚から除去する間に損傷がないような構造的な完全性を維持することが可能である。このことは、さらに微細な薬物粒子へと至る微細な薬物粒子によって、所定の体積のマイクロニードルに対する負荷用量をはるかに大きくすることができることを意味する。
【0039】
図4を参照すると、モールド14の内部に薬物粒子12を有する材料10を、例えば、UV又は可視光のような熱エネルギー又は電磁エネルギー16を用いて、硬化させることができる。
図5を参照すると、薬物粒子22を依然含んでいる硬化高分子材料20は、その後、モールドキャビティに由来するニードル状の形状22を保持しつつ、モールドから取り除かれることができる。
図6は、ニードル22の各々の硬化高分子材料20が、不溶性の(非混和性の)薬物粒子12を硬化高分子材料20の内部に含んでいることを、図式的に示している。硬化高分子材料は、少なくとも約ショアA40の硬度を有する。幾つかの実施形態では、硬化高分子材料の硬度は、ショアA40からショアD90の間である。幾つかの実施形態では、硬化高分子材料の硬度は、ショアD40からショアD80の間である。幾つかの実施形態では、硬化高分子材料の硬度は、ショアA60からショアD80の間である。幾つかの実施形態では、硬化高分子材料の硬度は、ショアA60からショアA100の間である。幾つかの実施形態では、硬化高分子材料の硬度は、少なくとも約ショアD80である。
【0040】
様々な態様に従って、本発明は、本発明の様々な態様に従った薬物を装填されたマイクロニードルの製造方法を提供する。2019年10月24日に公開された国際公開第2019/203888号で開示されているように、硬質のマイクロニードルと軟質のマイクロニードルの両方の利益を組み合わせたマイクロニードルを作製するため、モールドが、クロスオーバーライン(COL)レーザーリソグラフィを用いて形成されることが可能である。当該公開の開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0041】
図7は、粘着材領域32を含むバンデージ30とともに用いられる、そのようなマイクロニードル22(ニードル状の形状又は突出部として見て取られる)のアレイを示している。
【0042】
技術水準と比較して、これらのマイクロニードルは、前例のない薬物装填能力を提供する。幾つかの態様では、薬物装填能力は、1つのマイクロニードルあたりピコグラムからミリグラムの大きさであるか、又は1つのパッチごとにピコグラムからグラムの大きさであり得る。また、そのようなマイクロニードルは、信頼性の高い皮膚貫通を提供する。薬物を装填された投入ペーストを、粉末形状の薬物を生体適合性レジン(溶媒を含まないか、又は実質的に含まない)とする発明的な乾式乳化を通じて準備することが重要である。通常、乾燥された薬物粉末は、レジンには溶解しない。薬物粉末の粒子のサイズを(10μm未満に)制御し、かつ、例えばクラスIIa(折れに対する高い抵抗性を有する、長寿命の生体適合性レジン)の生体適合的無溶媒予備硬化液と1:1(w/w)の比率で混合することによって、モールドに投入され得るペースト状の拡散物である、投入ペーストを作り出すことが可能である。特定の態様では、レジンはUSP Class VIである。そのようなペーストを投入及び硬化することにより、多孔質材料が作り出される。硬質硬化レジンのマトリックスにおける孔は、完全に、又は実質的に、薬物粒子の存在によって課される空間的排除によって形成される。孔は、すべて又は実質的にすべての薬物粒子を、間質液等の外部溶媒にアクセス可能にする。
【0043】
粒子のサイズを制御することは、単に薬物装填能力に影響するだけではなく、薬物の送達速度に明確な影響を与えもする(
図33を参照のこと)。粒子のサイズに基づくこのような種類の制御を導入することは、制御されており、かつ持続性の、効率的かつ経済的な(例えば、電子回路を有さない使い捨てのパッチとしての)薬物送達システムへと向かううえで非常に重要な発見である。また、このことは、任意の追加の調節材を有しているかを問わず、薬物放出のプロファイルを改善又は調整するために、定められた薬物粒子のサイズを変化させることを含む可能性にもつながる。
【0044】
図34aに目を向けると、本開示に従う、マイクロニードルのモールド100、マイクロニードル102、及びマイクロニードルパッチ104を製造する幾つかの方法が示されている。マイクロニードルのモールド100の製造は、第1モールド108を提供すべく、クロスオーバーライン(COL)製造手順(国際公開第2019/203888号)を用いて、第1材料内で、1つ以上のマイクロニードルの形状の窪み106をレーザカットすることで始まる。第2材料は、マイクロニードルの形状の窪み106を第2材料で充填すべく、第1モールド108に投入され得る。後続する第2材料の硬化により、マイクロニードルの形状の窪み106内で形成された1つ以上のマイクロニードル112を有する第2モールド110が提供され得る。硬化された第2モールド110は、第1モールド108から取除かれ、そして、硬化された第2モールド110の表面は、マイクロニードル112の表面をアクティベートするためにプラズマ処理を受け得る。遊離層(release layer)が、硬化された第2モールド110のプラズマ処理された表面に塗布され得る。一実施形態では、遊離層は、トリクロロ(1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチル)シランで処理されることで塗布されたシラン層であり得る。シラン層の塗布に続き、第3材料が硬化された第2モールド110の表面に投入され、そして第3材料は、マイクロニードル形成キャビティ114を有するマイクロニードルモールド110を提供すべく硬化され得る。マイクロニードルモールド100は、硬化された第2モールド110から取除かれ得る。一実施形態では、第1材料はアクリルシートであり、第2材料はポリジメチルシロキサン(PDMS)等のシリコンエラストマであり、かつ第3材料はEcoFlex(登録商標)等の超弾性シリコンラバーである。
【0045】
引き続き
図34aを参照しつつ、マイクロニードル102及びマイクロニードルパッチ104の製造方法が開示される。超弾性のマイクロニードルモールド100の使用により、マイクロニードルモールド100を伸ばし、高粘性の薬物/生体適合性レジンの混合物をモールド100に埋め込むことを容易化することが可能である。さらに、超弾性のモールドの利用は、投入ペーストをモールドの小さなマイクロニードルのニードル形成キャビティに埋め込むために真空を引く手順を回避することにより、マイクロニードルの製造時間を大幅に短縮することが可能である。
図34aに示されているように、マイクロニードルモールド100は、その原寸を超えて伸ばされ、マイクロニードル形成キャビティ114のサイズを拡張することが可能である。薬物と生体適合性レジンの混合物116は、混合物116が拡張されたマイクロニードル形成キャビティ114を充填するように、マイクロニードルモールド100に投入され得る。混合物116内の薬物は、固体粒子の形態であり得る。幾つかの実施形態では、薬物粒子のサイズは、最大寸法で約1から100マイクロメートルの間である。幾つかの実施形態では、薬物粒子のサイズは、最大寸法で約37から100マイクロメートルの間である。幾つかの実施形態では、薬物粒子のサイズは、最大寸法で約1マイクロメートルから37マイクロメートルの間である。幾つかの実施形態では、薬物粒子のサイズは、最大寸法で約500ナノメートルから1マイクロメートルの間である。幾つかの実施形態では、薬物粒子のサイズは、最大寸法で約100ナノメートルから500ナノメートルの間である。幾つかの実施形態では、薬物粒子のサイズは、最大寸法で約10ナノメートルから500ナノメートルの間である。
【0046】
マイクロニードルモールド100は、その原寸へと収縮することができ、かつ生体適合性レジンは硬化されてマイクロニードル102を提供することができる。幾つかの実施形態では、生体適合性レジンは、紫外線にさらされることによって光硬化させられ得る。一実施形態では、生体適合性レジンは、405ナノメートルの光にさらされることによって光硬化させられる。結果生じるマイクロニードル102は、マイクロニードル102の孔に埋め込まれた薬物を有する、中実かつ多孔質のものであり得る。
【0047】
図34aに示されているように、弾性の高分子118はマイクロニードルモールド100に投入されてマイクロニードル102を覆い、弾性の背面基質120を提供することができる。弾性高分子118を硬化させることにより、マイクロニードル102に結合された弾性の背面基質120を有するマイクロニードルパッチ104を提供することができる。幾つかの実施形態では、弾性高分子は紫外線にさらされることによって光硬化され得る。マイクロニードルパッチ104は、マイクロニードルモールド100から取除かれ得る。
【0048】
マイクロニードル102のために硬質高分子を、かつ背面基質120のために弾性高分子を、使用することにより、組織への挿入が保証された、堅くかつ硬いマイクロニードルの利益と、弾性を有する軟性の背面基質の利益の両方が提供される。マイクロニードルの尖端は、堅牢であり、約0.26N(ニュートン)までの力の適用に対して破損に抵抗することが可能である。このことは、同じ幾何学的形状のマイクロニードルを用いて信頼性高く皮膚に挿入するために必要な力(ニードル1つにあたり0.058N)に対する4倍の安全マージンを提供する。形状適合的な背面基質120は、マイクロニードルパッチ104をあらゆる身体部位に適用するために、あらゆる身体部位の皮膚の曲率に形状適合的に適合するように構成されることが可能である。
【0049】
マクロ多孔質で金属製のマイクロニードルが提供される場合もある。ここでは、溶融金属を取扱うことができるマイクロニードルモールドが製造され得る。そのモールドは、粘土、セラミック、又は溶融金属の存在下で形状を維持できる任意の材料から作製され得る。2つの異なる金属の、例えば金属Xと金属Y(金/銀、亜鉛/銅、銀/亜鉛、鉄/チタン、又は任意の可能な合金混合物)の溶融混合物が投入され、金属製のマイクロニードルを作り出す。その金属製のマイクロニードルを、その合金金属のうち1つのエッチング液(金属Xエッチング液)の中に入れ、その金属(金属X)をエッチングする。例えば、鉄/チタンマイクロニードルが形成された場合、そのような場合にはその合成物が鉄エッチング液に入れられて鉄がエッチングされ、多孔質の形態のチタン(孔は、鉄が存在していた空間である)が残される。これにより、非常に硬く、かつ様々な経皮的センシング及び現場センシング(in situ sensing)のために、高多孔質の金属製のマイクロニードルを作り出すことができる。それを薬物送達デバイスとして用いるためには、溶解した形態の薬物をマイクロニードル上で乾燥させることができ、又は微細な薬物粉末をマイクロニードルに押し付け、ニードルの孔隙に薬物粒子を装填することも可能である。
【0050】
図17は、50で、液体の形態又は溶融した形態である、異なるレジン又は異なる金属であり得る2つの流動性材料52、54を示している。材料52、54が金属である場合、それらは、金、銀、炭素、鉄、銅、黄銅、青銅、チタン、ベリリウム、アルミニウム、スズ及び亜鉛、ならびにそれらの合金、のいずれかであってよい。材料52、54は、混ぜ合わされ、例えばミキサ58によって混合された合成材料56を形成する。材料52、54は、それらが非混和性であるが、混合されて小さな液滴の(即ち、直径5マイクロメートル未満の)状態に至ることは可能である不均質な混合物を形成するように、選ばれる。材料のうち1つは、犠牲的なものになるように選ばれる。
図18を参照すると、合成材料56は、その後モールド60に投入される(例えば、再び2019年10月24日に公開された国際公開第2019/203888号で形成されているような、モールドである。当該公開の開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0051】
次に、投入された合成材料は、(例えば、少なくとも約ショアD20の硬度まで)、冷却されるかさもなければ硬化され、そして
図19及び20を参照すると、それはエッチング液64内に配置され、好ましくは、66で図示されているように、攪拌されて犠牲材料(例えば、54)が除去される。材料52、54は、それらは非混和性であるがそれぞれ小さな部分に解体される(例えば、攪拌されて)ことは可能であるように、選択されるので、犠牲材料の除去は、(材料の混合及び容積選択により)複数の開孔を残りの材料(例えば、52)に残すように設計される。エッチング液は、犠牲材料へと流れなければならないので、孔は相互接続されるか、又は互いに流体連通される。本開示の目的のために、流体が1つの区画から他の区画へと流れるか又は拡散することができるとき、2つの区画が「流体連通されている」。流体連通は、例えば、その区画を水等の流体で満たし、第1の区画に色素又はマーカーを配置し、かつ第2の区画をサンプリングして区画間の拡散を示す色素又はマーカーの存在を確認することによって、試験することができる。
【0052】
図21は、マイクロニードル70の形状で形成されたままの、得られた開孔を有する材料68を示している。得られた開口を有する材料68は、その後、
図22の拡大図に示されたような粒子の形態の(溶解していない)高濃度の薬物74を含むキャリア液72に浸漬される。幾つかの実施形態では、薬物74は、キャリア液72に浸漬され、その後、そのキャリア液の蒸発の後で粒子の形態を回復する。開孔の浸漬のレベルは、キャリア液に浸漬された材料(例えばマイクロニードルのみ)の量を制限するように制御されてもよい。このことによって、開孔内に載置された薬物の量及び位置が制限され、例えば、薬物はマイクロニードル内のみ又はマイクロニードルの尖端内にのみ載置されるように、制限される。薬物粒子は、最大寸法で約100マイクロメートル未満のサイズを有することができ、又はさらに最大寸法で20マイクロメートル未満のサイズを有することもできる。幾つかの実施形態では、薬物粒子は最大寸法で1マイクロメートル未満のサイズを有する。幾つかの実施形態では、薬物粒子は最大寸法で100ナノメートルのサイズを有する。その後、薬物74を有するキャリア液72は、キャリア液72中の所望の量の薬物74を開口に流入させるべく、開孔を有する材料68に対して(76で示されているように)撹拌される。
図23に関して、ひとたび所望の量の薬物が開口に流入させられたならば、キャリア液は、例えば、ファン又は送風機78を用いて蒸発させられる。今、粒子の形態の薬物を含んでいる、開孔を有する材料68は、その後取除かれ、
図24に示されたような、回収され再使用され得る残留した薬物74が残される。
図25は、合成物内にある粒子の形態の薬物74を有する、開口を有する材料68を示している。
【0053】
さらなる態様では、投入、及び冷却又は硬化に先立って、ガス気泡(又は気泡形成ガス)をレジン又は液体金属を通るように注入することを通じて、開孔を有する材料が作り出される。例えば、
図27は、80で、バルブ86を介してガス84(例えば窒素)が提供されるレジン又は流体金属82を示している。ガス(及びレジン又は流体金属82の粘性)は、ガスの実質的な一部分88がレジン又は流体金属82内に(例えば、気泡の形態で)残存し、十分な高密度で残存し、開口を有する材料内を得るように、選択され得る。ガスを充填された材料82は、その後、モールドに投入され、冷却又は硬化され、そして上述されたように薬物粒子で充填される。
【0054】
一態様では、本開示は、経皮的薬物送達のためのマイクロニードルを製造する方法を提供する。本方法は以下を含み得る。すなわち、本方法は、少なくとも1つのマイクロニードル形成キャビティを有するマイクロニードルモールドを、少なくとも1つのマイクロニードル形成キャビティのサイズを拡張するように、伸ばすことと、マイクロニードルモールド上に薬物と生体適合性レジンの混合物を投入することであって、当該混合物が拡張されたマイクロニードル形成キャビティを充填するように行われ、その薬物は固体粒子の形態であり、かつ10ナノメートルから100マイクロメートルの粒子サイズを有する、投入することと、マイクロニードルモールドを、マイクロニードルモールドの原寸まで収縮できるようにさせることと、マイクロニードルを提供すべく、マイクロニードル形成キャビティ内で混合物を硬化させることであって、マイクロニードルは中実かつ多孔質であり、薬物はマイクロニードルの孔内に埋め込まれている、硬化させることと、マイクロニードルをマイクロニードルモールドから取除くことと、を含み得る。
【0055】
一態様では、本開示は、経皮的薬物送達のためのマイクロニードルパッチを製造する方法を提供する。本方法は以下を含み得る。すなわち、本方法は、マイクロニードル形成キャビティを有するマイクロニードルモールドを、マイクロニードルモールドの原寸を超えて伸ばすことと、マイクロニードルモールド上に薬物と生体適合性レジンの混合物を投入することであって、当該混合物がマイクロニードル形成キャビティを充填するように行われ、その薬物は固体粒子の形態であり、かつ10ナノメートルから100マイクロメートルの粒子サイズを有する、投入することと、マイクロニードルモールドを、マイクロニードルモールドの原寸まで収縮できるようにさせることと、マイクロニードルを提供すべく、マイクロニードル形成キャビティ内で混合物を硬化させることであって、マイクロニードルは中実かつ多孔質であり、薬物はマイクロニードルの孔内に埋め込まれている、硬化させることと、弾性高分子をマイクロニードルモールドに投入することと、弾性高分子をマイクロニードルに結合させてマイクロニードルパッチを提供すべく、弾性高分子を硬化させることと、マイクロニードルパッチをモールドから取除くことと、を含み得る。
【0056】
また、本明細書に記載の方法は、マイクロニードルモールドの製造に関するさらなるステップを含んでもよい。そのようなさらなるステップは、以下を含み得る。すなわち、第1モールドを提供すべく、第1材料内で、1つ以上のマイクロニードル形状の窪みをレーザカットするステップと、上記1つ以上のマイクロニードル形状の窪みを第2材料で充填すべく、上記第1モールド上に上記第2材料を投入するステップと、上記1つ以上のマイクロニードル形状の窪みの各々の内部に形成された1つ以上のマイクロニードルを有する第2モールドを提供すべく、上記第2材料を硬化させるステップと、硬化された上記第2材料を上記第1モールドから取除くステップと、上記1つ以上のマイクロニードルを有する硬化された上記第2モールドの表面をプラズマ処理するステップと、硬化された上記第2モールドの上記表面に、遊離層を塗布するステップと、硬化された上記第2モールドの上記表面上に、第3材料を投入するステップと、上記マイクロニードル形成キャビティを有する上記マイクロニードルモールドを提供すべく、上記第3材料を硬化させるステップと、上記マイクロニードルモールドを硬化された上記第2モールドから取除くステップと、が含まれ得る。レーザカットするステップは、クロスオーバーラインのパターンの使用を含み得る。第1材料はアクリルシートであってよく、第2材料はシリコンエラストマであってよく、かつ第3材料は超弾性シリコンラバーであってよい。遊離層を塗布するステップは、硬化されたシリコンエラストマの表面をシラン化することを含み得る。シラン化は、(1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチル)シランを用いて実施され得る。
【0057】
また、本明細書に記載の方法は、生体適合性レジンと薬物の混合物を作製することに関するさらなる方法ステップを含む場合もある。そのようなさらなるステップは、薬物を10ナノメートルから100マイクロメートルの粒子サイズを有する微細な粒子に粉砕するステップ、及び粉砕された薬物と生体適合性レジンを1:1の比率で混合し、投入ペーストを提供するステップ、を含み得る。
【0058】
本明細書に記載の方法の硬化させるステップは、高分子の技術における通常の技術を有する者には理解される硬化方法によって達成され得るのであって、その硬化方法には、紫外線及び/又は405nmの波長を有する光等の硬化放射線にさらすことを介した光硬化が含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0059】
薬物と生体適合性レジンの混合物、投入ペーストは、1:1の比率の薬物及び生体適合性レジンを有し得る。その混合物はペーストであり得る。その混合物は、乳化均一混合物であり得る。
【0060】
(マイクロニードルの使用及び実施)
図8A及び8Bは、多孔質の硬化高分子材料20内に粒子の形態の薬物12を有するマイクロニードル22を示している。この際、マイクロニードル22は、皮膚に適用され、そして表皮層34を貫通して延び、真皮層36内に入り、オプションとしては皮下層38に入る。様々な態様によれば、薬物は全体が多孔質の硬化高分子材料である場合もあれば、又は薬物はマイクロニードル内のみに備えられている場合もある。
図8Bに関連して図示されているように、時間が経過すると、より多くの薬物が真皮環境中へ拡散されていく。
【0061】
当初はマイクロニードル構造の外部の環境と直接接触していなかった薬物粒子は、隣接する薬物粒子が例えば皮膚の間質液等の外部溶媒によって溶解させられるにつれ、マイクロニードル内で利用可能になる。薬物の放出及び溶解に際し、使用済みのマイクロニードルは、空孔を有する高多孔質の構造となる(ここで、孔は、例えば水、溶媒、又はガスによって占有されている)。本質的には、臨床的に重要である薬物装填能力を有しつつ、皮膚を貫通することができる、硬質のマイクロニードルが提供される。薬物が水溶性かつ多孔質材料が疎水性である場合もあれば、又は薬物が脂溶性かつ多孔質材料が親水性である場合もある。
【0062】
時間が経過すると(例えば、約10分、15分、30分、1時間、数時間、7時間、8時間、10時間、12時間、24時間、2日、3日、5日、7日、14日、21日、又は30日)、マイクロニードルは、薬物を真皮環境に放出できる。
図31は、PBSと混合されたブタ皮膚由来の10%ゼラチンから成る、模擬真皮液中のマイクロニードルのアレイ(例えば、10×10又は20×20、1×20又は5×14)を有する試験体を示している。
図32に関連して、マイクロニードルは、フルオロセインイソチオシアナート-デキストラン(FITC-デキストラン)を含み得るのであって、かつ非透水性パラフィン膜を通じてシミュレーション中のブタ皮膚由来の10%ゼラチンへと提供され得る。薬物の放出速度は、時間の経過につれて小さくなる場合があるが、しかしながら2時間経過後でも依然としてある程度の量の排出が提供され得る。
【0063】
幾つかの実施形態では、薬物を装填されたマイクロニードルのアレイのパッチ(
図7)は、1分未満の間、皮膚に適用されるのがよい。幾つかの実施形態では、薬物を装填されたマイクロニードルのアレイのパッチは、約1分から5分の間、皮膚に適用されるのがよい。幾つかの実施形態では、薬物を装填されたマイクロニードルのアレイのパッチは、約5分から30分の間、皮膚に適用されるのがよい。幾つかの実施形態では、薬物を装填されたマイクロニードルのアレイのパッチは、約30分から60分の間、皮膚に適用されるのがよい。幾つかの実施形態では、薬物を装填されたマイクロニードルのアレイのパッチは、約1時間から8時間の間、皮膚に適用されるのがよい。幾つかの実施形態では、薬物を装填されたマイクロニードルのアレイのパッチは、約4時間から8時間の間、皮膚に適用されるのがよい。幾つかの実施形態では、薬物を装填されたマイクロニードルのアレイのパッチは、約8時間から12時間の間、皮膚に適用されるのがよい。幾つかの実施形態では、薬物を装填されたマイクロニードルのアレイのパッチは、約6時間から10時間の間、皮膚に適用されるのがよい。幾つかの実施形態では、薬物を装填されたマイクロニードルのアレイのパッチは、約12時間から24時間の間、皮膚に適用されるのがよい。幾つかの実施形態では、薬物を装填されたマイクロニードルのアレイのパッチは、約1時間から24時間の間、皮膚に適用されるのがよい。幾つかの実施形態では、薬物を装填されたマイクロニードルのアレイのパッチは、夜に適用され、翌朝に取除かれるのがよい。幾つかの実施形態では、薬物を装填されたマイクロニードルのアレイのパッチは、約1日から7日の間、皮膚に適用されるのがよい。幾つかの実施形態では、薬物を装填されたマイクロニードルのアレイのパッチは、約7日から14日の間、皮膚に適用されるのがよい。幾つかの実施形態では、薬物を装填されたマイクロニードルのアレイのパッチは、約14日から21日の間、皮膚に適用されるのがよい。幾つかの実施形態では、薬物を装填されたマイクロニードルのアレイのパッチは、約21日から28日の間、皮膚に適用されるのがよい。
【0064】
本明細書で前述された(かつ、追加的には国際公開第2019/203888号に記載された)製造プロセスのカスタマイズ可能な性質により、少なくとも1つのマイクロニードルから成るアレイの幾何学的形状は、多様な形状及びサイズを取り得る。マイクロニードルのアレイのパッチは、適応症及び送達のための所望の位置に応じた患者の身体の特定の位置で形状適合するように設計され得るので、このことは、使用例にとって重要である。幾つかの実施形態では、アレイは、例えば患者の四肢に沿って薬物を送達するための薄く長いストリップ(例えば、1×100又は2×200のマイクロニードル)であり得る。幾つかの実施形態では、アレイは、例えば患者の関節の周囲に薬物を送達するために、中央領域ではマイクロニードルが欠如した円形に配置され得る。幾つかの実施形態では、マイクロニードルのアレイは、商業的マーケティングのニーズに応える識別可能な形状、例えば、笑顔又は会社のロゴ等、の形態であり得る。
【0065】
マイクロニードルが溶媒が豊富な環境に導入されると、薬物の一部は周囲の環境に溶解及び拡散する。この溶解/拡散のプロセスは、多孔質材料の相互接続された孔内にあるすべて又は実質的にすべての薬物が周囲の環境に放出されるまで続く。ここで、これが機能するためには、薬物及びレジンは非混和性でなければならない。多孔質材料を製造するためのレジンの選択は、本質的には疎水性であり、従ってペプチド、タンパク質、及びモノクローナル抗体等の水溶性の薬物に最も効率的に作用する、レジンであるのがよい。薬物放出の速度は、薬物を乾燥させた粉末の粒子サイズを制御することによって、容易に調節可能であることが、示された。薬物粒子のサイズは、例えば振動に基づく小型ミル又は噴霧乾燥法を用いて、正確に制御可能である。
【0066】
図13は、薬物放出後の、本発明の一態様のマイクロニードルの一部分の走査型電子顕微鏡写真を示している(左上)。薬物放出後のマイクロニードルの拡大部は、右側に示されており、かつ、そのマイクロニードルのさらなる拡大図は、
図13の左下の側に示されている。薬物の溶解及び放出の後では、特定の(より広い)領域が空である(暗い)ことが見て取れよう。
図14は、薬物放出後のマイクロニードルの尖端のさらなる拡大図を示している。
【0067】
図28A-28Cは、マイクロニードルが(例えば、上で論じられたマイクロニードルのうちいずれかが)真皮環境に入り、かつ薬物が開口を有する材料から放出されている際の、異なる時間の図を示している。特に、マイクロニードルは、角質層及び表皮を貫通して真皮に入り、表皮、真皮、及び皮下組織の領域に薬物の放出を提供し、薬物をランゲルハンス細胞、表面血管嚢(surface vascular plexus)、リンパ管、樹状細胞、及び深部血管嚢(deep vascular plexus)に送達することを可能にすることができる。
【0068】
上記された製造プロセスは、最大浸透効率を達成するため、背面基質の機械的及び幾何学的特性を含めたマイクロニードルパッチの機構、ならびにマイクロニードルの形状を最適化するように用いることができる。幾つかの実施形態では、マイクロニードルは、マイクロニードルを形成する高分子に適合的である弾性レジンを用いることにより、薄く透明な弾性の背面基質上に確実に組立てられる。幾つかの実施形態では、背面基質はさらに粘着材の層に付着する。幾つかの実施形態では、背面基質と薄い粘着材の組み合わせは、厚さにして約100マイクロメートルである。薄く可撓性の粘着パッチを有する結果として、パッチは皮膚表面にしっかりと接着し、かつ非常に形状適合的である。薄い基質はまた、厚い基質(約1ミリメートルよりも大きな厚さ)と比較して、マイクロニードルの貫通に大きく役立ちもする。このようにして、力は(背面基質内に拡散するよりも)マイクロニードルに直接伝わり、かつ個々のマイクロニードルが力を受けて効果的な貫通を達成できる。
【0069】
薄く可撓性である背面基質の使用を活用することにより、本明細書で記述される、マクロPOSHマイクロニードルから成るマイクロニードルのアレイは、「針の筵(bed of nails)」の原則を回避できる。この原則は、力を所定の面積の複数の点にわたって同時に分散させることは、鋭利な物を使用しているにもかかわらず、非常に悪い真皮層への貫通に繋がり得るというものである。針の筵の抵抗性を回避し、かつ一貫した効果的な皮膚への貫通を確実にするため、薄く可撓性であるパッチを使用することにより、局所的な力を同時に個々のマイクロニードルに適用することができる。
【0070】
図15は、例えば薬物を装填された高分子等の固体マトリックス、及び薬物放出後の固体マトリックスを図式的に示している。
図16に関連して、本発明のさらなる態様に従う粘着材42を有するバンデージ40は、1つ以上の光エミッタ44及び1つ以上の光センサ46を備え得る。光センサ46はさらに、薬物がバンデージから完全に放出されたときをユーザが知ることができるように、バンデージを通して見ることができてもよい。
【0071】
図26Aは、厚い背面基質上のマイクロニードルのセットは、平坦ではない領域で被験者の体内に不均一に貫通する場合があることを示している。この問題は、
図26Bに示されたように解決され得る。薄い(可撓性の)背面基質上のマイクロニードルのセットは、平坦ではない領域に形状適合するように適用され、被験者の体内へのはるかに均一な貫通を提供する。
【0072】
(他の使用法)
本明細書に記載のマイクロニードル及びマイクロニードルパッチは、皮膚以外の解剖学的構造及び膜を横切る適用及び薬物送達に有用であり得る。皮膚以外の解剖学的構造及び膜とは、例えば、(口腔の、頬の内側の、舌の、鼻の)粘膜、歯肉、結膜、強膜、網膜、外耳道、鼓膜、(例えば、消化管の、呼吸器の、膣の、子宮の、小胞の、尿道の)上皮細胞、漿膜、及び、動脈又は静脈の内膜、である。
【0073】
また、本明細書で開示されるマイクロニードルは、例えばペット及び家畜の獣医学的治療薬における用途、かつ、特に哺乳類における用途も、見出され得る。
【0074】
(監視可能なシステム)
さらに、ひとたび薬物がマイクロニードルから拡散するとニードルの光学的特性が変化するので、システムはマイクロニードルからの薬物の放出を追跡することが可能になり得る(薬物対レジンの比率が大きい場合には-たとえ1:1の比率である場合にも-マイクロニードルは、製造後には光学的に半透明だが、ひとたび薬物がマイクロニードルから放出されると、構造内の孔隙が顕著に増加するため、マイクロニードルは光学的に不透明に見える(それらを作製するために用いたレジンによっては、白っぽく、又は黄色っぽく見えるなどする場合がある)ことには注意されたい)。光学的特性におけるこの大きな変化は、時間経過とともにパッチから皮膚へと放出された薬物の量を追跡するように容易に用いられることができ、従って、患者が受けた投与量をリアルタイムでデジタル追跡することができる。光センサ及びオプションの光源が、1つ以上のマイクロニードルの光透過率又は光反射率を計測することによって薬物の排出を監視するように、用いられ得る。
【0075】
上記されたように、マイクロニードルは、薬物と共に患者の体内に放出されるマーカーを有していてもよい。例えば血液又は尿のサンプルといった、患者からのサンプルを、マーカーについて試験することができる。適用部位を含む皮膚は、マーカーについて検査され得る。目又は表在血管といった他の構造物も、マーカーについて検査され得る。
【実施例】
【0076】
(マイクロニードル製造手順)
クロスオーバーライン(COL)の製造手順は、
図34aに示されているようなマイクロニードルパッチの作製のために用いられる。CO
2レーザ(米国フロリダ州サンフォードのBoss Laser,LLCの、Boss LS-1416)が、クリアスクラッチ及びUV抵抗性の投入アクリルシート(Clear Scratch- and UV- Resistant Cast Acrylic Sheets)米国ニュージャージー州プリンストンのMcMaster-Carrの、部品番号:8560K359)上に負の体積を作り出すように用いられた。彫り込まれたこのアクリル製のモールドは、イソプロパノール及び蒸留水で洗浄され、表面及び彫り込み面から塵埃及び他の異物を除去された。窒素銃を用いて、表面上の余剰の水分が除去された。その後、モールドは、大気オーブン内で、摂氏80度で30分間乾燥させられた。その後、ポリジメチルシロキサン(PDMS)(米国ミシガン州ミッドランド所在のDow Silicones CorporationのDow Sylgard(登録商標) 184 Silicone Elastomer)が、アクリルシートに投入される。PDMSが投入されたシートは、脱ガスされ、その後オーブン内で摂氏80度で2時間かけて硬化させられた。PDMSの硬化が完了した後、PDMS製のマイクロニードルは、アクリルシートから剥がされ、そしてPDMS製のマイクロニードルの表面をアクティベートすべく、酸素プラズマ処理された。その後、PDMS製のマイクロニードルは、デシケータ内の真空下で一晩かけて、トリクロロ(1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチル)シラン(米国マサチューセッツ州バーリントンのMilliporeSigmaの、SKU:448931-10G)でシラン化される。Ecoflex(米国登録商標)00-50(米国ペンシルベニア州マクンジーのSmooth-on,Incorporatedによる)は、1:1の比率で、シラン化されたPDMS製のマイクロニードルに投入され、その後、室温で硬化させられた。シラン層は、PDMS製のマイクロニードルとEcoflex製のモールドの間にバリアを作り出し、そしてそれらが結合するのを防止し、剥離を容易化する。得られたEcoflex製のモールドは非常に可撓性でありかつ伸縮可能で、かつその原寸から約3倍まで伸ばすことが可能である。伸縮可能なモールドを得たことによって、マイクロニードルパッチをはるかに短い時間で作製することが可能になった。最終的なEcoflex製のモールドは、様々な高分子から作製されたマイクロニードルを作り出すために用いることができる。薬物の溶液又は粉末を、伸ばされたモールドに投入できる。ここで、我々は、生体適合性レジン及び薬物から成る新たなペースト(「薬物を装填されたマイクロニードル」の項を参照のこと)を導入する。Ecoflex製のモールドは、伸ばされ、そしてレジン/薬物のペーストがその伸ばされたEcoflex製のモールドに投入された。その後、モールドはレストモードに置かれ、そして余剰の薬物ペーストがモールドの表面から取除かれた。Ecoflex製のモールドに埋め込まれたペーストは、その後、405nmの光にさらされることによって光硬化された。ペーストを硬化させた後、弾性高分子の薄い層が、背面基質としてモールドの表面に投入され、そしてその背面基質を硬くさせるためのUV光下で硬化させられた。最後に、当該基質を備えたマイクロニードルは、背面基質に結合されたニードルと共にモールドから剥がされた。
図34bを参照すると、形状適合性及び可撓性を有する6センチメートル×20センチメートルのマイクロニードルパッチが準備された。マイクロニードルパッチは、本手順に従って、任意の形態及び形状で製造されることができる。本方法は高い薬物装填能力を提供し、かつ薬物は低温冷却を必要とせずに分散されることができる。
【0077】
(インビトロ放出のための色素を装填されたマイクロニードルパッチ)
マイクロニードルのインビトロ放出を視覚的に示すために、レジン/色素ペーストが準備された。Formlabs(米国マサチューセッツ州サマービル)由来の生体適合性レジン(Dental SG)及びスルホローダミンB(米国マサチューセッツ州バーリントンのMilliporeSigmaの、SKU:230162-5G)が、色素として用いられた。マイクロニードルのサイズが小さいので、色素の粒子はより小さなサイズの微細な粒子へと粉砕された。粉砕されていない色素及び粉砕された色素のマイクロニードル内への封入は、粉砕されていないスルホローダミンB粒子及び粉砕されたスルホローダミンB粒子の両方を有するマイクロニードルを準備することで比較された。色素の粉砕されていない粒子及び粉砕された粒子は、
図35a及び35bにそれぞれ示されており、かつ粉砕されていない色素及び粉砕された色素のサイズ分布は、
図35cに示されている。平均的には、粉砕されていない色素粒子及び粉砕された色素粒子は、それぞれ約50マイクロメートル及び6マイクロメートルの粒子サイズを有していた。
図35dに示されているように、粉砕されていない色素粒子は、色素の粒子が大きいため、マイクロニードルへの低い封入度を示した。一方で、より小さく粉砕された色素粒子では、色素の封入の改善が観察された(
図35e及び35fを参照のこと)。
図35fは、さらなる堅牢性及び剛性のために、星型の基部構造を有する色素を装填されたマイクロニードルを示している。
図35gは、色素のインビトロ放出実験のために準備されたマイクロニードルパッチの概略図を示している。マイクロニードルパッチが容易に保持及び適用されることができるように、固体のアクリルリングが基質の外周に追加された(
図35gを参照のこと)。色素のインビトロ放出実験は、
図35hに概略的に示されている。10%のゼラチン(MilliporeSigmaのブタ皮膚由来のゼラチン、SKU:G2500-1KG)溶液がモデル組織として準備され、そしてシャーレに注がれた。その後、それは、さらなる固化のため、冷蔵庫の中に20分間配置された。その後、パラフィルムの薄い層(スイス国チューリヒのM,Amcorの、Parafilm(登録商標))が、シャーレ内のゼラチン溶液を覆う皮膚モデルとして用いられた。準備された、色素を装填されたマイクロニードルパッチの上側及び下側が、
図35i及び35jに示されている。マイクロニードルパッチをパラフィルムに覆われたゼラチン内に挿入した後で、ゼラチン溶液内への色素の目に見える放出が起こる(
図35lを参照のこと)。
図35kは、10分後の色素の放出を示している。
【0078】
(薬物を装填されたマイクロニードル)
リドカイン及びイブプロフェンは、鎮痛のために用いられる薬物である。これらの薬物は、鎮痛パッチを準備するために選択された。まず、リドカイン及びイブプロフェンのインビトロ放出プロファイルを調査し、それらの分散機構を検証した。次に、硬化レジン及び薬物(リドカイン又はイブプロフェン)がリドカイン及びイブプロフェンの特徴を維持しているかどうか、及び、それらのそれぞれの特性が変化していないかどうかを判断するために、実験が行われた。FTIR分光測定が硬化レジン/薬物に対して行われ、リドカイン及びイブプロフェンがそれらのそれぞれの特性を維持しているかどうかが調査された。さらに、薬物を装填されたマイクロニードルの機械的特性が調査された。
【0079】
(リドカイン及びイブプロフェンを有するマイクロニードルのインビトロ薬物放出)
インビトロ薬物放出実験のため、MilliporeSigma(米国マサチューセッツ州バーリントン)から購入されたイブプロフェンナトリウム塩(SKU:I1892)及びリドカイン塩酸塩一水和物(SKU:L5647)が用いられた。イブプロフェン及びリドカインの濃度は、UV-Vis分光器によってそれぞれ222nm及び263nmで検出された。様々な濃度のイブプロフェン及びリドカインが、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)(MilliporeSigmaのSKU:59331C)内への溶解によって準備された。イブプロフェン及びリドカインについて、それぞれ222nm及び263nmでの吸光度のピークが、Thermo Fisher Scientific,Inc.(米国マサチューセッツ州ウォルサム)のEvolution 220 UV-Vis分光計を用いて検出された。
図36a及び36bに示されているように、イブプロフェン及びリドカインの溶液は、様々な濃度について、それぞれ190-300nm及び254-300nmの波長で掃引された。イブプロフェン及びリドカインについての検量線が、
図36cに示されている。イブプロフェンナトリウム塩及びリドカイン塩酸塩一水和物は、より微細な粒子を作製するために、Chulux製の粉砕機(4枚刃)で3分間かけて粉砕された。その後、イブプロフェン及びリドカインの微細粒子は、1:1の比率で生体適合性レジンと混合された。その後、マイクロニードルパッチは、「マイクロニードルモールドの製造手順」の項で説明された方法によって製造された。マイクロニードルパッチの各々は、100個のマイクロニードルを有していた。DPBSを含む複数のシャーレ(各タイムスタンプにつき1つのシャーレ)が、摂氏37度のインキュベータ内に配置された。各タイムスタンプで、パッチは新しいDPBS入りシャーレに移された。
図36dに示されているように、放出プロファイルは、各パッチ(100個のマイクロニードルを含む)が、DPBS溶液中に約1ミリグラムの薬物を放出することを示している。
【0080】
(高分子のインビトロ薬物放出、及び粒子サイズに基づく放出プロファイルの調節)
図31は、例えば非透水性パラフィン膜を通じてシミュレーション中のブタ皮膚由来の10%ゼラチンへと提供され得る、FITC-デキストラン(49kDa)を含むマイクロニードルを示している。
図32は、シミュレートされた真皮液内の、マイクロニードルのアレイ(例えば、10×10)を有する試験体を示している。
図33は、形作られた2つの異なるパッチのFITC-デキストランの累積放出を示している。粒子サイズを(限界まで)小さくすることにより、薬物放出速度及び薬物放出の全体量が増加又は調節され得る。薬物放出の速度及びプロファイルを調節することは、治療濃度域に長期間留まり、そして所定の薬物についてよりよい臨床結果を得るために重要であり得る。
【0081】
(高分子と薬物の間の相互作用:FTIR分光法)
FTIR分光法は、製造プロセス中に封入された薬物における生じ得る変化を評価するために用いられた。ダイヤモンド結晶を有するSmart(商標) iTX ATRアクセサリを備えたNicolet 6700(米国マサチューセッツ州ウォルサムのThermo Scientific(登録商標))が用いられた。フーリエ変換赤外分光全反射測定法(FTIR-ATR)スペクトルは、リドカインの以下の特徴的なピークを示した。N-H基は3450cm
-1及び3385cm
-1で伸縮し、アミドのC=O基は1655cm
-1で伸縮した。アミドのC=O基に関連した1655cm
-1でのピークの明らかな強度の上昇が観察された(
図36eを参照のこと)。FTIRにおいて、ピーク強度の上昇は、通常、分子結合に関連付けられた官能基の(単位体積当たりの)量の増加を反映し、一方では、ピーク位置のシフトは、通常、分子結合の混成状態又は電子分布における変化を反映している。従って、リドカイン/レジンのサンプルにおけるアミドのC=O基の強度の低下は、サンプルにおけるリドカインの比率の減少に起因するものであった。FTIRをリドカイン塩酸塩一水和物についての製造者のデータシートで確認すると、
図36eにおける我々のデータに見られるように、3450、3400、及び3200cm
-1でピークが存在した。さらに、イブプロフェン/レジンのFTIRスペクトルにはピーク位置のシフトは見られなかった(
図36fを参照のこと)。1721cm
-1及び3400cm
-1のピークは、それぞれC=O基及びO-H基の伸縮振動を割り当てられた。これらのFTIR観察から、リドカイン及びイブプロフェンの化学的構造は、製造プロセスの間変化せずに残っていることが確かめられた。
【0082】
(組織学的試験、表面形態、及び力学的ふるまい)
マイクロニードルの皮膚への挿入を確認するため、組織学的試験を実施した。組織学的試験のために、生後4か月のヨークシャー種のブタの皮膚を使用した。その皮膚は、10#のメス刃を用いて剃毛及び裁断され、そして滅菌した0.9%の食塩水で満たされた試料容器内に配置された。マイクロニードルパッチが、親指での圧迫を用いて皮膚に挿入された。マイクロニードルパッチは、適用後間もなく剥がされた。
図37aの顕微鏡写真は、10%中性ホルマリンで固定されたH&E(ヘマトキシリン&イエオジン)染色組織片からのものである。組織学的試験により、マイクロニードルは、
図37aに示されているように、皮膚を約600マイクロメートル分貫通したことが示された。他の類似な研究において示されているように、マイクロニードルの皮膚への貫通深さは、マイクロニードル全体の長さよりも短かったが、これは高弾性である皮膚の変形によるものである。
図37bに示されているように、レジンと薬物の混合は、孔及びキャビティを作り出す。薬物は、マイクロニードルの投与後に放出され、空のキャビティが後に残される。本開示の多孔質のマイクロニードルは、レジンの高い引張強度(73メガパスカル(MPs))による高い堅牢性を示している。個々のレジン/薬物マイクロニードルの力学的ふるまいは、
図37cに示されている。Instron(米国マサチューセッツ州ノーウッド)の製品を用いた圧縮試験が実施された。これらのマイクロニードルの尖端は、ニードルごとに0.26Nの力で破損しはじめた。以前の実験によれば、このことにより、この幾何学的形状のマイクロニードルを用いた皮膚への挿入に必要な力(ニードルごとに0.058N)の4倍の安全マージンが提供される。本開示のレジン/薬物マイクロニードルは、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)ベースのマイクロニードルと比較された。PEGDA製のマイクロニードルは、先行研究において、容易に肌を貫通する強い力学的特性を示していた。ここでは、我々は、本開示のレジン/薬物マイクロニードルの高い堅牢性を、PEGDAベースのマイクロニードルと比較して確認する(
図37dを参照のこと)。PEGDA製のマイクロニードルは、1ミリリットルあたり500ミリグラムの薬物溶液、及び、1%の光開始材(2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン(MilliporeSigmaのSKU:410896-10G))と混合された分子量575のPEGDA(MilliporeSigmaのSKU:437441-500ML)、を用いて準備された。薬物溶液及びPEGDA溶液は、4:1(v/v)の比率で混合された。準備された溶液は、マイクロニードルモールドに加えられ、そして365nmの波長のUV光照射によって架橋結合させられた。
【0083】
(マイクロニードルパッチ製造後におけるモノクローナル抗体の有効性を評価するためのインビトロバイオアッセイ)
インビトロモデルにおいて、マイクロニードルを通じて送達される治療の有効性を評価するために、リツキシマブ(RTX)を薬物として使用する全血アッセイが実施された。リツキシマブは、主として免疫系B細胞の表面に見出されるタンパク質CD20に対するキメラモノクローナル抗体である。リツキシマブがこのタンパク質と結合したとき、補体依存性細胞傷害(CDC)を介した細胞死が引き起こされる。RTXは、主として全血中のCD20陽性B細胞の枯渇といった明確な薬力学的結果によって、mAb送達機構を評価するための、よいモデルである。5つの異なる量のRTX、及び一定比率の高分子-薬物を有するマイクロニードルパッチは、24ウェルプレートにおいて、採取された新しいヒトの血の中でインキュベートされた。フローサイトメトリーを用いて、各ウェル中のCD20陽性細胞及びCD19陽性細胞が計量された。
図29は、6つのサンプルのCD20陽性の蛍光を示している。CD20陽性細胞は、左側のサンプル(a)から(c)に存在しているが、右側のサンプル(d)から(f)には存在していない。その条件は以下のとおりである。(a)マイクロニードル(MN)にさらされることがなく、かつインキュベーション前である、バフィーコート及び血清、(b)MNにさらされることがなく、かつ4時間のインキュベーション後である血液、(c)不活性なMNにさらされ、インキュベーション後である血液、(d)1つのMN(20μgのRTX)を用いたインキュベーション後の血液、(e)5つのMN(100μgのRTX)を用いたインキュベーション後の血液、(f)200個のMN(4mgのRTX)を用いたインキュベーション後の血液。このように、CD20陽性細胞は、RTXを装填されたMNを用いた処置をされていない血液サンプル(a)から(c)に存在した。逆に、CD20陽性細胞は、1つ、5つ、又は200個のMNを用いて処置された血液サンプル(d)から(f)からは枯渇させられた。コントロール実験と比較すると、RTXを装填されたマイクロニードルパッチは、CD20陽性及びCD19陽性カウントの劇的な減少を示した。
【0084】
この結果は、(1)新しい血液を用いたインビトロ分析が、異なる形態のマイクロニードルパッチの薬力学を評価するために用いられ得ること、(2)RTXを装填されたマイクロニードルパッチが、B細胞枯渇という期待された薬力学上の効果を引き起こすこと、及び(3)RTXの活動は、マイクロニードルパッチの製造プロセスの完了後も保たれること、を示している。
【0085】
(非ヒト霊長類へのリツキシマブのインビボ送達)
アフリカミドリザルにおいて、リツキシマブ(RTX)の全身薬力学的効果を、静脈(IV)送達後とマイクロニードルに伝達される経皮的送達で比較すべく、霊長類のインビボ研究が実施された。
図30の(a)は、経皮的送達における、2つの適用されたパッチと、モノクローナル抗体を含むパッチを除去された後の領域と、を示している。薬力学的な効果は、フローサイトメトリーによる循環B細胞の測定によって定量化されており(これらすべてのグラフは、サイトメトリーによって生成されている)、新規のマイクロニードル製剤形態の能力及び送達技術を評価し、経皮送達後の巨大分子(例えば、モノクローナル抗体)の全身バイオアベイラビリティを達成するためのツールである化合物として、リツキシマブを用いている。リツキシマブ投与は、IV及びTDの両方とも、B細胞の枯渇を引き起こした。しかしながら、最も顕著な血液中のB細胞枯渇は、IVの投与から1週間後に観察された。RTXを装填されたマイクロニードルの2つのパッチの毎日の投与によっても、(81%に達する)顕著な枯渇が示された。このことは、
図30の(c)に示されている。
図30の(b)は、毎日の2つのパッチの投与を受けた動物からのフローサイトメトリーデータを示しており、7日目までベースラインからの顕著なB細胞の枯渇を示している(右下の象限)。0日、1日、7日、14日、及び21日間、2つのパッチを投与した場合の時間経過に対する枯渇は、
図29に示されている。
【国際調査報告】