(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-24
(54)【発明の名称】去勢抵抗性前立腺癌の治療のためのマシチニブ
(51)【国際特許分類】
A61K 31/496 20060101AFI20240417BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240417BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20240417BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20240417BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20240417BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
A61K31/496
A61P35/00
A61K31/337
A61K45/06
A61K31/573
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571134
(86)(22)【出願日】2022-05-17
(85)【翻訳文提出日】2023-12-21
(86)【国際出願番号】 EP2022063361
(87)【国際公開番号】W WO2022243339
(87)【国際公開日】2022-11-24
(32)【優先日】2021-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515084258
【氏名又は名称】エービー サイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】マウシー,アライン
(72)【発明者】
【氏名】マンズフィールド,コリン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA52
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA02
4C086BC50
4C086DA10
4C086GA08
4C086GA10
4C086GA12
4C086GA14
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA20
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、それを必要とする対象における転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)の治療における使用のためのマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物に関する。特に、本発明は、(i)250IU/L以下のベースラインのアルカリホスファターゼ(ALP)レベル、又は(ii)33以下のベースラインのハラビ予後スコア(H)、又は(iii)250IU/L以下のベースラインのALPレベルと33以下のベースラインのハラビ予後スコア(H)と関連付けられる早期mCRPCに罹患している対象におけるmCRPCの治療における使用のためのマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
したがって必要とする対象における転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)の治療における使用のための、マシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物であって、前記対象が、(i)250IU/Lに等しいまたはそれより低いベースラインでのアルカリホスファターゼ(ALP)レベル、又は(ii)33に等しいまたはそれより低いベースラインでのハラビ予後スコア(H)、又は(iii)250IU/Lに等しいまたはそれより低いベースラインでのALPレベルおよび33に等しいまたはそれより低いベースラインでのハラビ予後スコア(H)と関連付けられる早期mCRPCに罹患している、マシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項2】
前記対象が、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、又は100IU/Lに等しいまたはそれより低いベースラインでのALPレベルを有する、請求項1に記載の使用のための、マシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項3】
前記対象が、200IU/Lに等しいまたはそれより低いベースラインでのALPレベルを有する、請求項1又は2に記載の使用のための、マシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項4】
前記対象が、150IU/Lに等しいまたはそれより低いベースラインでのALPレベルを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための、マシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項5】
前記対象が、100IU/Lに等しいまたはそれより低いベースラインでのALPレベルを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための、マシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項6】
前記対象が、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、又は15に等しいまたはそれより低いベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための、マシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項7】
前記対象が、22に等しいまたはそれより低いベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための、マシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項8】
前記対象が、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト(ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニストとしても知られる)、LHRHアンタゴニスト(GnRHアンタゴニストとしても知られる)、及びアビラテロンからなる群から選択されるホルモン療法を受けた、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための、マシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項9】
マシチニブの医薬として許容される塩が、メシル酸マシチニブである、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のための、マシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項10】
前記マシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物が、約1~約12mg/kg/日(1日あたり体重1キロあたりのmg)の範囲の用量での、好ましくは約3~約6mg/kg/日の範囲の用量での投与のためである、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のための、マシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項11】
前記マシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物が、約6mg/kg/日の用量での投与のためである、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための、マシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項12】
前記マシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物が、経口投与用である、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用のための、マシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項13】
前記マシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物が、1日2回摂取での投与のためである、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のための、マシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項14】
前記マシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物が、少なくとも1つのさらなる医薬活性剤との投与のためである、請求項1~13のいずれか一項に記載の使用のための、マシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項15】
前記少なくとも1つのさらなる医薬活性剤が、化学療法剤及びコルチコイドから選択される、請求項14に記載の使用のための、マシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、前立腺癌、特に去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
前立腺癌は、男性において最も一般的な癌の1つである。2020年に世界中で診断された前立腺癌の新規症例は推定1,414,259件であり、推定される新規癌症例全体の7.3%に相当する(Sung H.ら CA Cancer J Clin.2021 May;71(3):209-249.doi:10.3322/caac.21660)。アメリカ合衆国では、2013年~2017年のデータに基づく発症率は、年間で男性10万人あたり104.6人の新規症例であった(米国癌協会、2018年-データソース:北米中央癌登録協会(NAACCR),2020)。ヨーロッパでは、平均発症率は2018年では男性10万人あたり151.2人の新規症例と推定され、同じ年の平均死亡率は10万人あたり32.8人と推定された(Hofmarcher,T.ら(2019)ヨーロッパの癌に関する比較レポート2019-病気の負担、費用及び医薬品へのアクセス(Disease Burden, Costs and Access to Medicines)。IHE Report 2019:7.IHE:Lund,Sweden)。
【0003】
前立腺癌は、テストステロン及びジヒドロテストステロン(DHT)を含む、アンドロゲンと呼ばれる男性ホルモンにより促進される。アンドロゲンレベルの低下又はアンドロゲン作用の阻止のいずれかを目的とするホルモン療法は、前立腺癌の増殖を抑制できる。通常、前立腺癌を治療するために投与されるホルモン療法の最初のタイプは、いわゆるアンドロゲン遮断療法(ADT)であり、精巣によるアンドロゲン生成を減少させる治療からなる。ADTは、そのため、外科的去勢(すなわち、精巣摘出術)及び化学的(又は医学的)去勢を含む。化学的去勢は、LHRH類似体と呼ばれることもある、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニストの投与により、又はLHRHアンタゴニストの投与により達成され得る。注目すべきことに、LHRHは、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)と呼ばれることもあり、したがって、LHRHアゴニスト(又は類似体)は、GnRHアゴニスト(又は類似体)としても知られ、およびLHRHアンタゴニストは、GnRHアンタゴニストとしても知られる。
【0004】
ほとんどの前立腺癌は、最終的にアンドロゲン遮断療法への応答を停止し、そのため、去勢(castrate)(又は去勢(castration))抵抗性になる。去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)は、アンドロゲン遮断療法にもかかわらず疾患の進行により定義され、血清前立腺特異抗原(PSA)レベルの継続的な上昇、既存の疾患の進行、及び/又は新しい転移の出現のいずれかとして現れ得る(Saadら Can Urol Assoc J.2010 Dec;4(6):380-4)。治療の選択肢は次に、アンドロゲン受容体遮断薬及びアンドロゲン合成阻害剤(例えば、アビラテロン)を含む抗アンドロゲン療法などの、さらなるホルモン療法、免疫療法、及び化学療法、特にドセタキセル又はカバジタキセル、を含む。
【0005】
注目すべきことに、アンドロゲン遮断療法はまた現在、転移性前立腺癌の標準治療の一部である。転移性前立腺癌患者の大多数は外科的去勢又は化学的去勢のいずれかに最初は応答するが、転移性前立腺癌のほとんど全ての患者もまた最終的に、去勢抵抗性を発達させる。これらの患者は次いで、転移性去勢(castrate)(又は去勢(castration))抵抗性前立腺癌(mCRPC)に苦しんでいる。mCRPCの治療選択肢は主に、寿命を延ばし、生活の質を改善することを目的とする。しかし、mCRPC患者の生存期間中央値は、最近の研究では約15~36ヶ月の範囲であり、5年生存率は、わずか28%である(Crawfordら Urol Oncol.2017 May;35S:S1-S13)。mCRPCに対し現在承認されている治療薬の報告された影響力は、依然として軽微である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、転移性去勢(castrate)(又は去勢(castration))抵抗性前立腺癌(mCRPC)に対する有効な治療の必要性が依然として存在する。特に、治療から恩恵を受ける可能性が最も高いmCRPC患者を特定することは、助けになり得る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はそのため、それを必要とする対象、特にマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物の投与から恩恵を受ける可能性が最も高い対象、例えば、250IU/L以下のベースラインでのアルカリホスファターゼレベル又は33以下のベースラインでのハラビ(Halabi)予後スコア(H)を有する対象における転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)の治療における使用のためのマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物に関する。
【0008】
本発明は、必要とする対象における転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)の治療における使用のための、マシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物に関し、上記対象は、(i)250IU/L以下のベースラインでのアルカリホスファターゼ(ALP)レベル、又は(ii)33以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)、又は(iii)250IU/L以下のベースラインでのALPレベルと33以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)と関連付けられる早期mCRPCに罹患している。
【発明の効果】
【0009】
一実施形態では、上記対象は、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、又は100IU/L以下のベースラインでのALPレベルを有する。一実施形態では、上記対象は、200IU/L以下のベースラインでのALPレベルを有する。一実施形態では、上記対象は、150IU/L以下のベースラインでのALPレベルを有する。一実施形態では、上記対象は、100IU/L以下のベースラインでのALPレベルを有する。
【0010】
一実施形態では、上記対象は、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、又は15以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有する。一実施形態では、上記対象は、22以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有する。
【0011】
一実施形態では、上記対象は、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト(ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニストとしても知られる)、LHRHアンタゴニスト(GnRHアンタゴニストとしても知られる)、及びアビラテロンからなる群から選択されるホルモン療法を受けた。
【0012】
一実施形態では、マシチニブの医薬として許容される塩は、メシル酸マシチニブである。
【0013】
一実施形態では、マシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物は、約1~約12mg/kg/日(1日あたり体重1キロあたりのmg)の範囲の用量での、好ましくは約3~約6mg/kg/日の範囲の用量での投与のためである。一実施形態では、マシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物は、約6mg/kg/日の用量での投与のためである。
【0014】
一実施形態では、マシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物は、経口投与用である。一実施形態では、マシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物は、1日2回摂取での投与のためである。
【0015】
一実施形態では、マシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物は、少なくとも1つのさらなる医薬活性剤との投与のためである。一実施形態では、上記少なくとも1つのさらなる医薬活性剤は、化学療法剤及びコルチコイドから選択される。
【0016】
定義
本発明において、以下の用語は、以下の意味を有する:
【0017】
数字に先行する「約」は、上記数字の値のプラスマイナス10%、またはそれ未満を包含する。用語「約」が指す値もまた、それ自体が具体的に、好ましくは開示されることを理解されたい。
【0018】
「ALP」は、アルカリホスファターゼを指す。ALPは、細胞外空間に存在する有機リン酸エステルの加水分解を触媒する膜結合型糖タンパク質である。ALPは、至る所にあり、そこからそれが血液中に放出される、多くの異なる組織(例えば、胎盤、腸、腎臓、骨、及び肝臓など)で見出され得る。本明細書において使用される場合、「ALPレベル」は、血液中、特に血清中のALPレベルを指す。
【0019】
本明細書において使用される「ベースライン」は、本明細書に記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物による治療の開始に先行する時間を指す。例えば、所与の対象について、ベースラインでのALPレベルは、本明細書に記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物の対象への投与前のALPレベルである。したがって、所与の対象について、ベースラインでのハラビ予後スコア(H)は、本明細書に記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物の対象への投与前のハラビ予後スコア(H)である。
【0020】
「医薬として許容される賦形剤」又は「医薬的に許容される担体」は、対象に投与された場合に有害な、アレルギー性の又は他の好ましくない応答を生じない、賦形剤又は担体を指す。それは、例えば、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などの、任意の及び全ての溶媒を含む。医薬的に許容される賦形剤又は担体は、非毒性の固体、半固体もしくは液体の充填剤、希釈剤、封入材料又は任意のタイプの製剤補助剤を指す。ヒトへの投与の場合、調製物は、FDA(米国食品医薬品局)又はEMA(欧州医薬品庁)などの規制当局が要求する無菌性、発熱性、一般的な安全性及び純度の基準を満たす必要がある。
【0021】
「対象」は、哺乳動物、好ましくはヒトを指す。一実施形態では、哺乳動物は、ネコ、イヌ、ウシ、ブタ、ウマ、サル、類人猿及びヒトから選択される。一実施形態では、哺乳動物は、ネコ、イヌ及びヒトから選択される。一実施形態では、対象は、霊長類である。一実施形態では、対象は、ヒトである。一実施形態では、対象は、医療を受けるのを待っているか、もしくは受けているか、又は医学的処置の対象であった/である/であるだろう、又は前立腺癌の発症について監視されている「患者」、すなわち、哺乳動物、好ましくはヒトであり得る。一実施形態では、「治療を必要とする対象」は、医療を受けるのを待っているか、もしくは受けているか、又は医学的処置の対象であった/である/であるだろう、又は前立腺癌、特に転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)の発症について監視されている対象である。
【0022】
「治療的に有効な量」又は「治療的に有効な用量」は、治療を必要とする対象に顕著な負の又は有害な副作用を引き起こすことなく、以下の:(1)去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)、とりわけmCRPCの1以上の症状(複数可)の進行、悪化、もしくは憎悪を遅延する又は停止させること、及び特に、対象の生存期間、特に無増悪生存期間を延長すること;(2)CRPC、特にmCRPCの症状の改善をもたらすこと;(3)CRPC、特にmCRPCの重症度もしくは発症率を低下させること;(4)前立腺特異抗原(PSA)レベルを低下させること(例えば、ベースラインPSAレベルから少なくとも30%)、(5)CRPC、特にmCRPCを治癒すること、(6)生活の質を向上させること又は(7)疼痛強度を低下させること、の少なくとも1つをもたらす本明細書に記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物の量又は濃度を指す。
【0023】
「治療する」又は「治療」は、治療的治療、予防的(prophylactic)(又は予防的(preventative))治療、又は治療的治療と予防的(prophylactic)(又は予防的(preventative))治療の両方を指し、目的は、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)、特にmCRPCの症状(複数可)又は徴候(複数可)の1以上を予防する、低減する、又は遅延(軽減)することである。一実施形態では、対象は、もしも、本明細書に記載の治療的量の2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物を受けた後に、対象が癌細胞もしくは転移細胞の数又はパーセントの観察可能な及び/又は測定可能な減少を示すならば;及び/又はもし対象がCRPC、特にmCRPCと関連付けられる症状の1以上のある程度までの緩和;低下されたPSAレベル;軽減された疼痛;低下された罹患率と死亡率;及び/又は生活の質の問題の改善を示すならば、CRPC、特にmCRPCについて首尾よく「治療」される。一実施形態では、対象は、もしも、本明細書に記載の治療的量の2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物を受けた後に、対象が延長された生存期間、特に延長された無増悪生存期間から恩恵を得るならば、CRPC、特にmCRPCについて首尾よく「治療」される。疾患における良好な治療及び改善を評価するための上記のパラメータは、医師に馴染みのある日常的な手順により容易に測定可能である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
詳細な説明
本発明は、以下に定義されるようにそれを必要とする対象における前立腺癌の治療における使用のための、本明細書に記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物に関する。
【0025】
一実施形態によれば、前立腺癌は、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)としても知られる去勢抵抗性前立腺癌である。
【0026】
一実施形態によれば、前立腺癌は、転移性前立腺癌、特に転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)である。
【0027】
一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、又は100IU/L以下のベースラインでのアルカリホスファターゼ(ALP)レベルを有する。そのため、一実施形態によれば、本明細書に記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物による治療の前に、対象は、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、又は100IU/L以下のALPレベルを有する。
【0028】
ALPレベルを測定する方法は、当業者に周知であり、例えば、アルカリホスファターゼアイソザイム血液検査を含む。ALPレベルは、IU/L(リットルあたりの国際単位)又はリットルあたりのマイクロカタール(μkat/L)で表される。ヒトの健康な成人におけるALPレベルの正常範囲は一般に、約44~約147IU/Lであると考えられている。ALPレベルは、前立腺癌(CRPCを含む)に罹患している対象、特に転移性前立腺癌(mCRPCを含む)に罹患している対象において上昇している場合が多い。ALPレベルはそのため、転移性前立腺癌(mCRPCを含む)に罹患しているヒト対象において、最大で約1000~3000IU/Lに達し得る。
【0029】
一実施形態では、治療を必要とする対象は、250IU/L以下のベースラインでのALPレベルを有する。一実施形態では、治療を必要とする対象は、200IU/L以下のベースラインでのALPレベルを有する。一実施形態では、治療を必要とする対象は、150IU/L以下のベースラインでのALPレベルを有する。一実施形態では、治療を必要とする対象は、100IU/L以下のベースラインでのALPレベルを有する。
【0030】
一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、又は15以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有する。そのため、一実施形態によれば、本明細書に記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物による治療の前に、対象は、45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、又は15以下のハラビ予後スコア(H)を有する。
【0031】
本明細書において使用される場合、いわゆるハラビ予後スコア(H)は、参照により本明細書組み込まれるHalabiら(J Clin Oncol.2003 Apr 1;21(7):1232-7)によって記載される方法に基づく。
【0032】
より具体的には、本明細書で定義されるハラビ予後スコア(H)は、患者の生存期間をモデル化及び推定するために使用される数式を用いて得られ、これは、内臓疾患の測定(はい又はいいえ、このパラメータの値は、対象が内臓疾患に罹患している場合は1に等しく、そうでない場合は0に等しい)、初期グリソンスコア(対象について測定されたグリソンスコアが8~10の範囲の場合は1に等しく、グリソンスコアが8未満の場合は0に等しい)、ECOG(米国東海岸癌臨床試験グループ(Eastern Cooperative Oncology Group))のパフォーマンスステータス(0~2の範囲)、前立腺特異抗原(PSA)レベル(PSA、ng/mLで測定される)、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)レベル(LDH、IU/Lで測定される)、アルカリホスファターゼ(ALP)レベル(ALP又はAP、IU/Lで測定される)及びヘモグロビン(HB、g/dLで測定される)に基づく。
【0033】
一実施形態では、ハラビ予後スコア(H)(すなわち、生存期間推定値)は、以下の式を用いて計算される:
H=[0.392×(ECOG=2ならば2、ECOG=1ならば1、ECOG=0ならば0)]+[0.335×(グリソンスコアが[8~10]ならば1、又はグリソンスコア<8ならば0)+[exp(0.312×log(LDH)+0.211×log(AP)+0.093×log(PSA))]+[0.161×(内臓疾患がある場合は1、それ以外の場合は0)]-[0.082×HB]。
【0034】
上記の数式において、ECOGは、米国東海岸癌臨床試験グループのステータスに関するものであり、1982年に公表されかつ自身の世話をする患者の能力、日常の活動、及び身体能力(歩行、作業など)に関して患者の機能レベルを説明する尺度(Okenら,Am J Clin Oncol.1982;5:649-655)に相当する。ECOGパフォーマンスステータスは、0(完全に活動的で、制限なく全ての疾患前のパフォーマンスを実行できる)~5(死亡)の6つのグレードを含む。グレード1は、身体的に激しい活動が制限されているが、歩行可能で、軽度の又は座って行う性質の作業、例えば、軽度の家事、事務作業を実行できる患者に相当する。グレード2は、歩行可能で、全てのセルフケアが可能であるが、起きている時間の約50%を超えて起き上がって動き回れる状態で作業活動を実行できない患者に相当する。グレード3は、起きている時間の50%を超えてベッド又は椅子に拘束され、限られたセルフケアしかできない患者に相当する。そして、グレード4は、完全にベッド又は椅子に拘束され、セルフケアを行うことができない完全に障害のある患者に相当する。本発明において、対象のECOGパフォーマンスステータスは、0~2の範囲である。
【0035】
一実施形態では、対象は、0又は1のECOGパフォーマンスステータスを有し、ハラビ予後スコア(H)(すなわち、生存期間推定値)は、以下の式を用いて計算され得る:
H=[0.392×(ECOG=1ならば1、ECOG=0ならば0)]+[0.335×(グリソンスコアが[8~10]ならば1、又はグリソンスコア<8ならば0)+[exp(0.312×log(LDH)+0.211×log(AP)+0.093×log(PSA))]+[0.161×(内臓疾患がある場合は1、それ以外の場合は0)]-[0.082×HB]
【0036】
グリソンスコアは、前立腺癌患者についての予後スコアであり、顕微鏡での外観に基づいて前立腺生検試料から得られる。スコアの範囲は、2~10であり、より高い数値はより大きなリスクおよびより高い死亡率を示す。スコアを測定するために、2つのパターンが測定され、第1のパターンは優勢な又は最も一般的な細胞の形態(スコア1~5)に基づき、第2のパターンは優勢でない細胞パターン(またスコア1~5)に基づく。2つのパターンはしたがって、組み合わされて2~10の範囲のスコアを得る。グリソンのパターンは、以下である:1-小さく、均一な腺、2-腺の間のより多くの間質、3-明らかに浸潤性の周辺部分、4-腫瘍性腺の不規則な塊、及び5-時折のみの腺形成。
【0037】
内臓疾患は、主に肺及び肝臓における、転移の存在に相当する、転移性CRPCの臨床症状である。
【0038】
乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)レベル、アルカリホスファターゼ(ALP又はAP)レベル、前立腺特異抗原(PSA)レベル及びヘモグロビン(HB)レベルを測定するための方法は、当業者に周知であり、一般的に臨床検査室で実施される。
【0039】
一実施形態では、治療を必要とする対象は、33以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有する。一実施形態では、治療を必要とする対象は、27以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有する。一実施形態では、治療を必要とする対象は、22以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有する。一実施形態では、治療を必要とする対象は、21以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有する。一実施形態では、治療を必要とする対象は、19以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有する。一実施形態では、治療を必要とする対象は、18以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有する。一実施形態では、治療を必要とする対象は、17以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有する。一実施形態では、治療を必要とする対象は、16以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有する。一実施形態では、治療を必要とする対象は、15以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有する。
【0040】
一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、化学的又は外科的手段により、利用可能なアンドロゲン、テストステロン又はジヒドロテストステロン(DHT)の低下に相当する、去勢治療により以前に治療された。
【0041】
一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト(ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニストとしても知られる)、LHRHアンタゴニスト(GnRHアンタゴニストとしても知られる)、及びアビラテロンからなる群から選択されるホルモン療法を受けた。そのため、一実施形態によれば、本明細書に記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物による治療の前に、対象は、LHRHアゴニスト(GnRHアゴニストとしても知られる)、LHRHアンタゴニスト(GnRHアンタゴニストとしても知られる)、及びアビラテロンからなる群から選択されるホルモン療法を受けた。一実施形態では、治療を必要とする対象は、LHRHアゴニスト(GnRHアゴニストとしても知られる)を以前に受けた。LHRHアゴニストの例としては、ロイプロリド、ゴセレリン、トリプトレリン及びヒストレリンが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、治療を必要とする対象は、LHRHアンタゴニスト(GnRHアンタゴニストとしても知られる)を以前に受けた。LHRHアンタゴニストの例としては、デガレリックス及びレルゴリックスが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、治療を必要とする対象は、アビラテロンを以前に受けた。一実施形態では、対象は、以前に外科的去勢により治療された。
【0042】
一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、又は100IU/L以下のベースラインでのALPレベルと45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、又は15以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有する。
【0043】
一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、250IU/L以下のベースラインでのALPレベルと45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、又は15以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有する。一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、200IU/L以下のベースラインでのALPレベルと45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、又は15以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有する。一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、150IU/L以下のベースラインでのALPレベルと45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、又は15以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有する。一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、100IU/L以下のベースラインでのALPレベルと45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、又は15以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有する。
【0044】
一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、又は100IU/L以下のベースラインでのALPレベルと33以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有する。一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、又は100IU/L以下のベースラインでのALPレベルと27以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有する。一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、又は100IU/L以下のベースラインでのALPレベルと22以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有する。一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、又は100IU/L以下のベースラインでのALPレベルと21以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有する。一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、又は100IU/L以下のベースラインでのALPレベルと20以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有する。一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、又は100IU/L以下のベースラインでのALPレベルと19以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有する。一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、又は100IU/L以下のベースラインでのALPレベルと18以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有する。一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、又は100IU/L以下のベースラインでのALPレベルと17以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有する。一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、又は100IU/L以下のベースラインでのALPレベルと16以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有する。一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、又は100IU/L以下のベースラインでのALPレベルと15以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有する。
【0045】
一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、又は100IU/L以下のベースラインでのALPレベルを有し、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト(ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニストとしても知られている)、LHRHアンタゴニスト(GnRHアンタゴニストとしても知られる)、及びアビラテロンからなる群から選択されるホルモン療法を受けた。
【0046】
一実施形態では、治療を必要とする対象は、250、200、150、又は100IU/L以下のベースラインでのALPレベルを有し、LHRHアゴニスト(GnRHアゴニストとしても知られる)、LHRHアンタゴニスト(GnRHアンタゴニストとしても知られる)、及びアビラテロンからなる群から選択されるホルモン療法を受けた。
【0047】
一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、又は15以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有し、LHRHアゴニスト(GnRHアゴニストとしても知られている)、LHRHアンタゴニスト(GnRHアンタゴニストとしても知られる)、及びアビラテロンからなる群から選択されるホルモン療法を受けた。
【0048】
一実施形態では、治療を必要とする対象は、33、27、22、21、20、19、18、17、16、又は15以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有し、LHRHアゴニスト(GnRHアゴニストとしても知られる)、LHRHアンタゴニスト(GnRHアンタゴニストとしても知られる)、及びアビラテロンからなる群から選択されるホルモン療法を受けた。
【0049】
一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、又は100IU/L以下のベースラインでのALPレベル;及び45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、又は15以下のベースライでンのハラビ予後スコア(H)を有し;かつLHRHアゴニスト(GnRHアゴニストとしても知られる)、LHRHアンタゴニスト(GnRHアンタゴニストとしても知られる)、及びアビラテロンからなる群から選択されるホルモン療法を受けた。
【0050】
一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、250IU/L以下のベースラインでのALPレベルと45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、又は15以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有し;かつLHRHアゴニスト(GnRHアゴニストとしても知られる)、LHRHアンタゴニスト(GnRHアンタゴニストとしても知られる)、及びアビラテロンからなる群から選択されるホルモン療法を受けた。一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、200IU/L以下のベースラインでのALPレベルと45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、又は15以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有し;かつLHRHアゴニスト(GnRHアゴニストとしても知られる)、LHRHアンタゴニスト(GnRHアンタゴニストとしても知られる)、及びアビラテロンからなる群から選択されるホルモン療法を受けた。一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、150IU/L以下のベースラインでのALPレベルと45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、又は15以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有し;かつLHRHアゴニスト(GnRHアゴニストとしても知られる)、LHRHアンタゴニスト(GnRHアンタゴニストとしても知られる)、及びアビラテロンからなる群から選択されるホルモン療法を受けた。一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、100IU/L以下のベースラインでのALPレベルと45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、又は15以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有し;かつLHRHアゴニスト(GnRHアゴニストとしても知られる)、LHRHアンタゴニスト(GnRHアンタゴニストとしても知られる)、及びアビラテロンからなる群から選択されるホルモン療法を受けた。
【0051】
一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、又は100IU/L以下のベースラインでのALPレベルと33以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有し;かつLHRHアゴニスト(GnRHアゴニストとしても知られる)、LHRHアンタゴニスト(GnRHアンタゴニストとしても知られる)、及びアビラテロンからなる群から選択されるホルモン療法を受けた。
【0052】
一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、又は100IU/L以下のベースラインでのALPレベルと27以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有し;かつLHRHアゴニスト(GnRHアゴニストとしても知られる)、LHRHアンタゴニスト(GnRHアンタゴニストとしても知られる)、及びアビラテロンからなる群から選択されるホルモン療法を受けた。
【0053】
一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、又は100IU/L以下のベースラインでのALPレベルと22以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有し;かつLHRHアゴニスト(GnRHアゴニストとしても知られる)、LHRHアンタゴニスト(GnRHアンタゴニストとしても知られる)、及びアビラテロンからなる群から選択されるホルモン療法を受けた。
【0054】
一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、又は100IU/L以下のベースラインでのALPレベルと21以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有し;かつLHRHアゴニスト(GnRHアゴニストとしても知られる)、LHRHアンタゴニスト(GnRHアンタゴニストとしても知られる)、及びアビラテロンからなる群から選択されるホルモン療法を受けた。
【0055】
一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、又は100IU/L以下のベースラインでのALPレベルと20以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有し;かつLHRHアゴニスト(GnRHアゴニストとしても知られる)、LHRHアンタゴニスト(GnRHアンタゴニストとしても知られる)、及びアビラテロンからなる群から選択されるホルモン療法を受けた。
【0056】
一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、又は100IU/L以下のベースラインでのALPレベルと19以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有し;かつLHRHアゴニスト(GnRHアゴニストとしても知られる)、LHRHアンタゴニスト(GnRHアンタゴニストとしても知られる)、及びアビラテロンからなる群から選択されるホルモン療法を受けた。
【0057】
一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、又は100IU/L以下のベースラインでのALPレベルと18以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有し;かつLHRHアゴニスト(GnRHアゴニストとしても知られる)、LHRHアンタゴニスト(GnRHアンタゴニストとしても知られる)、及びアビラテロンからなる群から選択されるホルモン療法を受けた。
【0058】
一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、又は100IU/L以下のベースラインでのALPレベルと17以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有し;かつLHRHアゴニスト(GnRHアゴニストとしても知られる)、LHRHアンタゴニスト(GnRHアンタゴニストとしても知られる)、及びアビラテロンからなる群から選択されるホルモン療法を受けた。
【0059】
一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、又は100IU/L以下のベースラインでのALPレベルと16以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有し;かつLHRHアゴニスト(GnRHアゴニストとしても知られる)、LHRHアンタゴニスト(GnRHアンタゴニストとしても知られる)、及びアビラテロンからなる群から選択されるホルモン療法を受けた。
【0060】
一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、又は100IU/L以下のベースラインでのALPレベルと15以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有し;かつLHRHアゴニスト(GnRHアゴニストとしても知られる)、LHRHアンタゴニスト(GnRHアンタゴニストとしても知られる)、及びアビラテロンからなる群から選択されるホルモン療法を受けた。
【0061】
一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、もしくは100IU/L以下のベースラインでのALPレベル、及び/又は45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、もしくは15以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)と関連付けられる早期転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)に罹患している。そのため、一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、(i)250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、もしくは100IU/L以下のベースラインでのALPレベル、又は(ii)45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、もしくは15以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)、又は(iii)250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、もしくは100IU/L以下のベースラインでのALPレベルと45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、もしくは15以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)と関連付けられる早期mCRPCに罹患している。
【0062】
一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、もしくは100IU/L以下のベースラインでのALPレベル、又は45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、もしくは15以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)と関連付けられるmCRPCに罹患している。
【0063】
一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、又は100IU/L以下のベースラインでのALPレベルと45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、又は15以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)と関連付けられる早期mCRPCに罹患している。
【0064】
一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、250以下のベースラインでのALPレベル、及び/又は45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、もしくは15以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)と関連付けられる早期mCRPCに罹患している。一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、200以下のベースラインでのALPレベル、及び/又は45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、もしくは15以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)と関連付けられる早期mCRPCに罹患している。一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、150以下のベースラインでのALPレベル、及び/又は45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、もしくは15以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)と関連付けられる早期mCRPCに罹患している。一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、100以下のベースラインでのALPレベル、及び/又は45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、もしくは15以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)と関連付けられる早期mCRPCに罹患している。
【0065】
一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、又は100IU/L以下のベースラインでのALPレベルと33以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)と関連付けられる早期mCRPCに罹患している。一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、又は100IU/L以下のベースラインでのALPレベルと27以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)と関連付けられる早期mCRPCに罹患している。一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、又は100IU/L以下のベースラインでのALPレベルと22以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)と関連付けられる早期mCRPCに罹患している。一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、又は100IU/L以下のベースラインでのALPレベルと21以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)と関連付けられる早期mCRPCに罹患している。一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、又は100IU/L以下のベースラインでのALPレベルと20以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)と関連付けられる早期mCRPCに罹患している。一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、又は100IU/L以下のベースラインでのALPレベルと19以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)と関連付けられる早期mCRPCに罹患している。一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、又は100IU/L以下のベースラインでのALPレベルと18以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)と関連付けられる早期mCRPCに罹患している。一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、又は100IU/L以下のベースラインでのALPレベルと17以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)と関連付けられる早期mCRPCに罹患している。一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、又は100IU/L以下のベースラインでのALPレベルと16以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)と関連付けられる早期mCRPCに罹患している。一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、又は100IU/L以下のベースラインでのALPレベルと15以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)と関連付けられる早期mCRPCに罹患している。
【0066】
一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、上記で定義される早期mCRPCに罹患しており、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト(ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニストとしても知られる)、LHRHアンタゴニスト(GnRHアンタゴニストとしても知られている)、及びアビラテロンからなる群から選択されるホルモン療法を(好ましくは本明細書に記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体による治療の開始前に)受けた。
【0067】
一実施形態では、治療を必要とする対象は、成人である。本発明によれば、成人は、18歳、19歳、20歳、又は21歳を超える対象である。一実施形態では、治療を必要とする対象は、20歳、25歳、又は30歳より年上である。一実施形態によれば、治療を必要とする対象は、小児である。本発明によれば、小児は、21歳、20歳、19歳、又は18歳未満の対象である。
【0068】
一実施形態では、治療を必要とする対象は、0又は1のECOGパフォーマンスステータスを有する。別の実施形態では、治療を必要とする対象は、2のECOGパフォーマンスステータスを有する。
【0069】
一実施形態では、対象は、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト(ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニストとしても知られる)及びLHRHアンタゴニスト(GnRHアンタゴニストとしても知られる)からなる群から選択されるアンドロゲン遮断療法を受けている。
【0070】
本明細書において使用される場合、2-アミノアリールチアゾール誘導体は、第二級又は第三級アミンにより2位(すなわち、複素環の窒素原子と硫黄原子の間)で置換されたチアゾリル基の存在により特徴付けられる化合物を指し、アミンの窒素原子が、少なくとも1つのアリール基により置換される。
【0071】
一実施形態によれば、アリール基は、アリールアミド基(すなわち、NHCOアリール)により置換される。
【0072】
一実施形態では、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体は、以下の式(I):
【化1】
(式中、
R
1及びR
2は、水素、ハロゲン、(C
1~C
10)アルキル、(C
3~C
10)シクロアルキル基、トリフルオロメチル、アルコキシ、シアノ、ジアルキルアミノ、可溶化基、及び可溶化基で置換される(C
1~C
10)アルキルから独立して選択され;
mは、0~5であり;
nは、0~4であり;
R
3は、以下:
(i)アリール基(フェニルなど)であり、ハロゲン、(C
1~C
10)アルキル基、トリフルオロメチル、シアノ及びアルコキシなどの1個以上の置換基により任意に置換されている、アリール基;
(ii)ヘテロアリール基(2、3、又は4-ピリジル基など)であり、ハロゲン、(C
1~C
10)アルキル基、トリフルオロメチル及びアルコキシなどの1個以上の置換基により任意に置換されている、ヘテロアリール基;
(iii)五員環芳香族複素環基(例えば、2-チエニル、3-チエニル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリルなど)であり、ハロゲン、(C
1~C
10)アルキル基、トリフルオロメチル、及びアルコキシ基などの1個以上の置換基により任意に置換されている、芳香族複素環基
の1つである)
を有する。
【0073】
そのため、一実施形態では、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体又はその医薬として許容される塩又は溶媒和物は、式(I)の2-アミノアリールチアゾール誘導体もしくはその医薬として許容される塩又は溶媒和物である。
【0074】
一実施形態では、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体は、以下の式(II):
【化2】
(式中、
R
1は、水素、ハロゲン、(C
1~C
10)アルキル、(C
3~C
10)シクロアルキル基、トリフルオロメチル、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、可溶化基、及び可溶化基で置換される(C
1~C
10)アルキルから独立して選択され;かつ
mは、0~5である)
を有する。
【0075】
一実施形態では、式(II)のR1は、可溶化基である。一実施形態では、式(II)のR1は、可溶化基により置換される(C1~C10)アルキルである。
【0076】
一実施形態では、式(II)のR1は、(C1~C10)アルキル-(C2~C11)ヘテロシクロアルキル-(C1~C10)アルキルである。一実施形態では、式(II)のR1は、(C1~C4)アルキル-(C2~C11)ヘテロシクロアルキル-(C1~C10)アルキル-、好ましくは(C1~C2)アルキル-(C2~C11)ヘテロシクロアルキル-(C1~C10)アルキルである。一実施形態では、式(II)のR1は、(C1~C10)アルキル-(C2~C11)ヘテロシクロアルキル-(C1~C4)アルキル-、好ましくは(C1~C10)アルキル-(C2~C11)ヘテロシクロアルキル-(C1~C2)アルキルである。一実施形態では、式(II)のR1は、(C1~C10)アルキル-(C2~C6)ヘテロシクロアルキル-(C1~C10)アルキル-、好ましくは(C1~C10)アルキル-(C4)ヘテロシクロアルキル-(C1~C10)アルキルである。一実施形態では、式(II)のR1は、(C1~C4)アルキル-(C2~C6)ヘテロシクロアルキル-(C1~C4)アルキル-、好ましくは(C1~C2)アルキル-(C4)ヘテロシクロアルキル-(C1~C2)アルキル-である。一実施形態では、式(II)のR1は、(C1~C4)アルキルピペラジニル(C1~C4)アルキル-、好ましくは(C1~C2)アルキルピペラジニル-(C1~C2)アルキル-である。一実施形態では、式(II)のR1は、メチルピペラジニル-(C1~C2)アルキル-、好ましくはメチルピペラジニル-メチル-、より好ましくは4-メチルピペラジニル-メチル-である。
【0077】
そのため、一実施形態では、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体又はその医薬として許容される塩又は溶媒和物は、上記の式(II)の2-アミノアリールチアゾール誘導体又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物である。
【0078】
本明細書において使用される場合、用語「アリール基」は、単一の芳香環(すなわち、フェニル)又は一緒に縮合される(例えば、ナフチル)又は共有結合で連結される、通常5~12個の原子、好ましくは6~10個を有する複数の芳香環を有する多価不飽和の芳香族ヒドロカルビル基を指し、少なくとも1つの環が、芳香族である。芳香環は任意に、それに縮合される1~2個の追加の環(シクロアルキル、ヘテロシクリル又はヘテロアリールのいずれか)を含む。アリールはまた、本明細書で列挙される炭素環系の部分水素化誘導体を含むことが意図される。適切なアリール基の例としては、限定するものではないが、フェニル、トリル、アントラセニル、フルオレニル、インデニル、アズレニル、及びナフチル、並びに5,6,7,8-テトラヒドロナフチルなどのベンゾ縮合炭素環式部分が挙げられる。アリール基は、置換されなくてよく、又は1個以上の置換基で置換できる。一実施形態では、アリール基は単環式環であり、環は、6個の炭素原子を含み、本明細書では「(C6)アリール」と呼ばれる。
【0079】
本明細書において使用される場合、「アルキル基」という用語は、1~10個の炭素原子、好ましくは1~6個の炭素原子を有する飽和直鎖状又は分枝状の非環状炭化水素を指す。代表的な飽和直鎖アルキルは、限定するものではないが、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル及びn-デシルを含む。飽和分枝アルキルは、限定するものではないが、イソプロピル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、イソペンチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、2-メチルヘキシル、3-メチルヘキシル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシル、2,3-ジメチルブチル、2,3-ジメチルペンチル、2,4-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルヘキシル、2,4-ジメチルヘキシル、2,5-ジメチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、2,2-ジメチルヘキシル、3,3-ジメチルペンチル(dimtheylpentyl)、3,3-ジメチルヘキシル、4,4-ジメチルヘキシル、2-エチルペンチル、3-エチルペンチル、2-エチルヘキシル、3-エチルヘキシル、4-エチルヘキシル、2-メチル-2-エチルペンチル、2-メチル-3-エチルペンチル、2-メチル-4-エチルペンチル、2-メチル-2-エチルヘキシル、2-メチル-3-エチルヘキシル、2-メチル-4-エチルヘキシル、2,2-ジエチルペンチル、3,3-ジエチルヘキシル、2,2-ジエチルヘキシル、3,3-ジエチルヘキシルを含む。本発明の化合物に含まれるアルキル基は、1個以上の置換基で任意に置換されてよい。
【0080】
本明細書において使用される場合、「アルコキシ」という用語は、酸素原子により別の部分に付着されるアルキル基を指す。アルコキシ基の例としては、限定するものではないが、メトキシ、イソプロポキシ、エトキシ、tert-ブトキシが挙げられる。アルコキシ基は、1個以上の置換基で任意に置換されてよい。
【0081】
本明細書において使用される場合、「シクロアルキル」という用語は、3~10個の炭素原子を有する飽和環状アルキル基を指す。代表的なシクロアルキルは、シクロプロピル、1-メチルシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、及びシクロデシルを含む。シクロアルキル基は、1個以上の置換基で任意に置換できる。
【0082】
本明細書において使用される場合、「ハロゲン」という用語は、-F、-Cl、-Br又は-Iを指す。
【0083】
本明細書において使用される場合、「ヘテロアリール」という用語は、炭素原子環員及び1以上のヘテロ原子環員(例えば、酸素、硫黄又は窒素など)を含む単環式又は多環式の複素芳香環を指す。通常、ヘテロアリール基は、1~約5個のヘテロ原子環員及び1~約14個の炭素原子環員を有する。代表的なヘテロアリール基は、限定するものではないが、ピリジル、1-オキソ-ピリジル、フラニル、ベンゾ[1,3]ジオキソリル、ベンゾ[1,4]ジオキシニル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、イソオキサゾリル、キノリニル、ピラゾリル、イソチアゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、トリアゾリル、チアジアゾリル、イソキノリニル、インダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾフリル、インドリジニル、イミダゾピリジル、テトラゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、インドリル、テトラヒドロインドリル、アザインドリル、イミダゾピリジル、キナゾリニル、プリニル、ピロロ[2,3]ピリミジニル、ピラゾロ[3,4]ピリミジニル、イミダゾ[1,2-a]ピリジル、及びベンゾ(b)チエニルを含む。ヘテロ原子は、当業者に公知の保護基で置換されてよく、例えば、窒素上の水素がtert-ブトキシカルボニル基で置換されてよい。ヘテロアリール基は、1個以上の置換基で任意に置換されてよい。加えて、窒素又は硫黄のヘテロ原子環員は、酸化されてよい。一実施形態では、複素芳香環は、5~8員の単環式ヘテロアリール環から選択される。別の基への複素芳香族環又はヘテロアリール環の付着の位置は、複素芳香族環又はヘテロアリール環の炭素原子又はヘテロ原子のいずれかであり得る。
【0084】
本明細書において使用される場合、「複素環」という用語は、ヘテロシクロアルキル基及びヘテロアリール基を総称する。
【0085】
本明細書において使用される場合、「ヘテロシクロアルキル」という用語は、O、N又はSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を有し、かつ飽和でも又は不飽和でもよいが芳香族ではない2~11個の炭素原子を有する、単環式又は多環式基を指す。ヘテロシクロアルキル基の例としては、限定するものではないが、ピペリジニル、ピペラジニル、2-オキソピペラジニル、2-オキソピペリジニル、2-オキソピロリジニル、4-ピペリドニル、ピロリジニル、ヒダントイニル、バレロラクタミル、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロピリンジニル、テトラヒドロピリミジニル、テトラヒドロチオピラニルスルホン、テトラヒドロチオピラニルスルホキシド、モルホリニル、チオモルホリニル、チオモルホリニルスルホキシド、チオモルホリニルスルホン、1,3-ジオキソラン、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル-2-オン、テトラヒドロチエニル、及びテトラヒドロ-1,1-ジオキソチエニルが挙げられる。通常、単環式ヘテロシクロアルキル基は、3~7員を有する。好ましい3~7員の単環式ヘテロシクロアルキル基は、5又は6個の環原子を有するものである。ヘテロ原子は、当業者に公知の保護基で置換されてよく、例えば、窒素上の水素がtert-ブトキシカルボニル基で置換されてよい。さらに、ヘテロシクロアルキル基は、1個以上の置換基で任意に置換されてよい。加えて、別の基への複素環の付着の位置は、複素環の炭素原子又はヘテロ原子のいずれかであり得る。このような置換複素環基の安定な異性体のみが、この定義において企図される。
【0086】
本明細書において使用される場合、「置換基」又は「置換された」という用語は、化合物又は基上の水素ラジカルが、保護されない形態で又は保護基を使用して保護される場合に反応条件に対し実質的に安定な、任意の所望の基で置換されることを意味する。好ましい置換基の例としては、限定するものではないが、ハロゲン(クロロ、ヨード、ブロモ、又はフルオロ);アルキル;アルケニル;アルキニル;ヒドロキシ;アルコキシ;ニトロ;チオール;チオエーテル;イミン;シアノ;アミド;ホスホナト;ホスフィン;カルボキシル;チオカルボニル;スルホニル;スルホンアミド;ケトン;アルデヒド;エステル;酸素(-O);ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル);単環式又は縮合もしくは非縮合多環式であり得るシクロアルキル(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、もしくはシクロヘキシル)、又は単環式もしくは縮合もしくは非縮合多環式であり得るヘテロシクロアルキル(例えば、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、もしくはチアジニル)、単環式もしくは縮合もしくは非縮合多環式アリール又はヘテロアリール(例えば、フェニル、ナフチル、ピロリル、インドリル、フラニル、チオフェニル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、アクリジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチオフェニル、又はベンゾフラニル);アミノ(一級、二級、又は三級);CO2CH3;CONH2;OCH2CONH2;NH2;SO2NH2;OCHF2;CF3;OCF3が挙げられ、そのような部分はまた、縮合環構造又は架橋、例えば、-OCH2O-により任意に置換されてよい。これらの置換基は任意に、そのような群から選択される置換基でさらに任意に置換されてよい。ある実施形態では、「置換基」又は形容詞「置換された」という用語は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ハロアルキル、-C(O)NR11R12、-NR13C(O)R14、ハロ、-OR13、シアノ、ニトロ、ハロアルコキシ、-C(O)R13、-NRR11R12、-SR13、-C(O)OR13、OC(O)R13、-NR13C(O)NR11R12、-OC(O)NR11R12、-NR13C(O)OR14、-S(O)rR13、-NR13S(O)rR14、-OS(O)rR14、S(O)rNR11R12、-O、-S、及び-N-R13からなる群から選択される置換基を指し、ここでrは、1又は2であり;R11及びR12は、出現ごとに、独立して、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたシクロアルキル、任意に置換されたシクロアルケニル、任意に置換されたヘテロシクロアルキル、任意に置換されたアリール、任意に置換されたヘテロアリール、任意に置換されたアリールアルキル、もしくは任意に置換されたヘテロアリールアルキルであるか;又はR11及びR12は、それにそれらが付着される窒素と一緒になって、任意に置換されたヘテロシクロアルキル又は任意に置換されたヘテロアリールであり;かつR13及びR14は、出現ごとに、独立して、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたシクロアルキル、任意に置換されたシクロアルケニル、任意に置換されたヘテロシクロアルキル、任意に置換されたアリール、任意に置換されたヘテロアリール、任意に置換されたアリールアルキル、もしくは任意に置換されたヘテロアリールアルキルである。ある実施形態では、「置換基」又は形容詞「置換された」という用語は、可溶化基を指す。
【0087】
本明細書において使用される場合、「可溶化基」という用語は、実質的にイオン化でき、化合物が所望の溶媒、例えば、水又は含水溶媒中で可溶であることを可能にする任意の基(「水溶性基」)を指す。さらに、可溶化基は、化合物又は複合体の親油性を高めるものであり得る。一実施形態では、可溶化基は、各々任意にアルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボキシル、シアノで独立して置換されたアルキル基で置換されるか、又はシクロヘテロアルキルもしくはヘテロアリールで置換される1個以上のヘテロ原子、例えば、N、O、Sで置換されたアルキル基、又はリン酸塩、又は硫酸塩、又はカルボン酸から選択される。一実施形態では、可溶化基は、以下:
‐少なくとも1つの窒素又は酸素ヘテロ原子のいずれかを含むアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール基、及び/又は少なくとも1つのアミノ基又はオキソ基(限定するものではないが、2-オキソピペラジニル、2-オキソピペリジニル、2-オキソピロリジニル、4-ピペリドニル、ヒダントイニル、バレロラクタミル、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロピラニル、モルホリニル、1,3-ジオキソラン、テトラヒドロフラニル及びジヒドロフラニル-2-オンを含む)により置換されるアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール基;
‐アルキル、アルコキシカルボニル、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルバモイル、モノアルキルカルバモイル及びジアルキルカルバモイル(限定するものではないが、メチルピペリジニル、メチルピペラジニル及びメチルピロリジニルを含む)からなる群により置換されてよい飽和環状アミノ基(限定するものではないが、ピペリジニル、ピペラジニル及びピロリジニルを含む)であり得るアミノ基;
‐以下に示す構造a)~i)の1つ(式中、波線及び矢印線は、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体、例えば、式(I)又は(II)のコア構造への付着の位置に相当する)
の1つである。
【化3】
【0088】
一実施形態では、可溶化基は、以下:
‐少なくとも1つの窒素もしくは酸素のいずれかのヘテロ原子を含むアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール基、又は少なくとも1つのアミノ基もしくはオキソ基により置換されたアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール基;
‐アルキル、アルコキシカルボニル、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルバモイル、モノアルキルカルバモイル及びジアルキルカルバモイルからなる基により置換されてよい飽和環状アミノ基であり得るアミノ基;
‐上に示した構造a)~i)の1つ(式中、波線及び矢印線は、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体、例えば、式(I)又は(II)のコア構造への付着の位置に相当する)
の1つである。
【0089】
一実施形態では、可溶化基は、アルキル、アルコキシカルボニル、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルバモイル、モノアルキルカルバモイル及びジアルキルカルバモイル(限定するものではないが、メチルピペリジニル、メチルピペラジニル及びメチルピロリジニルを含む)からなる群により置換されてよい飽和環状アミノ基(限定するものではないが、ピペリジニル、ピペラジニル及びピロリジニルを含む)である。
【0090】
一実施形態では、可溶化基は、上に示される構造c)であり、式中、波線は、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体、例えば式(I)又は(ii)のコア構造への付着の位置に相当する。
【0091】
本明細書において使用される場合、「医薬として許容される塩」は、生物学的に望ましい遊離酸又は遊離塩基の塩を指し、かつ一般に、遊離塩基を適切な有機酸もしくは無機酸と反応させることにより、又は遊離酸を適切な有機もしくは無機塩基と反応させることにより調製される。適切な酸付加塩は、非毒性塩を形成する酸から形成される。例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、重炭酸塩/炭酸塩、硫酸水素塩/硫酸塩、ホウ酸塩、カムシル酸塩、クエン酸塩、サイクラミン酸塩、エジシル酸塩、エシル酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩酸塩/塩化物、臭化水素酸塩/臭化物、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフチル酸塩、ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロチン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素、リン酸塩、ピログルタミン酸塩、糖酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、トリフルオロ酢酸塩及びキシノホ酸塩(xinofoate)が挙げられる。適切な塩基性塩は、非毒性塩を形成する塩基から形成される。例としては、アルミニウム、アルギニン、ベンザチン、カルシウム、コリン、ジエチルアミン、ジオールアミン、グリシン、リジン、マグネシウム、メグルミン、オラミン、カリウム、ナトリウム、トロメタミン、2-(ジエチルアミノ)エタノール、エタノールアミン、モルホリン、4-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン及び亜鉛塩が挙げられる。酸及び塩基のヘミ塩、例えば、ヘミ硫酸塩及びヘミカルシウム塩もまた、形成され得る。
【0092】
一実施形態では、医薬として許容される塩は、例えば無機酸との医薬として許容される酸付加塩、例えば塩酸、硫酸もしくはリン酸、又は適切な有機カルボン酸もしくはスルホン酸との医薬として許容される酸付加塩、例えば脂肪族モノもしくはジカルボン酸、例えばトリフルオロ酢酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、ヒドロキシマレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸もしくはシュウ酸、又はアミノ酸、例えばアルギニンもしくはリジン、芳香族カルボン酸、例えば安息香酸、2-フェノキシ安息香酸、2-アセトキシ安息香酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、芳香族脂肪族カルボン酸、例えばマンデル酸又はケイ皮酸、複素芳香族カルボン酸、例えばニコチン酸又はイソニコチン酸、脂肪族スルホン酸、例えばメタン-、エタン-もしくは2-ヒドロキシエタン-スルホン酸、特にメタンスルホン酸、又は芳香族スルホン酸、例えばベンゼン-、p-トルエン-又はナフタレン-2-スルホン酸である。
【0093】
一実施形態では、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体の医薬として許容される塩は、メシル酸塩である。
【0094】
別段の指示がない限り、「メシル酸塩」という用語は、命名された医薬物質(式(I)又は(II)の2-アミノアリールチアゾール誘導体など)とメタンスルホン酸との塩を指すために本明細書で使用される。メシル酸以外のメシル酸塩の使用は、WHOが発行したINNM(修正国際一般名(International nonproprietary names modified))(例えば、世界保健機関(World Health Organization)(2006年2月)修正国際一般名(International Nonproprietary Names Modified) INN作業文書 05.167/3.WHO)に準拠する。
【0095】
本明細書において使用される場合、「医薬として許容される溶媒和物」は、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体と、エタノールなどの化学量論量又は準化学量論量の1以上の医薬として許容される溶媒分子とを含む分子複合体を指す。「水和物」という用語は、上記の溶媒が水である場合を指す。
【0096】
特定の一実施形態では、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物は、マシチニブ又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物である。
【0097】
マシチニブの化学名は、4-(4-メチルピペラジン-1-イルメチル)-N-[4-メチル-3-(4-ピリジン-3イルチアゾール-2-イルアミノ)フェニル]ベンズアミド-CAS番号790299-79-5:
【化4】
である。
マシチニブは、米国特許第7,423,055号及びEP 1 525 200 B1で最初に記載された。
【0098】
一実施形態では、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物は、メシル酸マシチニブである。そのため、一実施形態では、上記のマシチニブの医薬として許容される塩は、メシル酸マシチニブである。上述したように、換言すれば、マシチニブの医薬として許容される塩は、マシチニブのメタンスルホン酸塩である。
【0099】
メシル酸マシチニブの合成の詳細な手順は、WO 2008/098949に記載される。
【0100】
一実施形態では、「メシル酸マシチニブ」は、マシチニブの経口で生物学的に利用可能なメシル酸塩-CAS 1048007-93-7(MsOH);C28H30N6OS.CH3SO3H;MW 594.76:
【化5】
を指す。
【0101】
一実施形態によれば、上記のような2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物は、治療的有効用量での投与のためである。
【0102】
一実施形態では、上記のような2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物は、約1~約12mg/kg/日(1日あたりキロ体重あたりのmg)の範囲の用量での投与のためである。一実施形態では、上記のような2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物は、約1.5~約7.5mg/kg/日の範囲の用量での投与のためである。一実施形態では、上記のような2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物は、約3~約12mg/kg/日、好ましくは約3~約6mg/kg/日の範囲の用量での投与のためである。
【0103】
一実施形態では、上記のような2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12mg/kg/日の用量での投与のためである。一実施形態では、上記のような2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物は、約1.5、3、4.5、6、7.5、9、10.5、又は12mg/kg/日の用量での投与のためである。一実施形態では、上記のような2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物は、約3、4.5、又は6mg/kg/日の用量、好ましくは約6mg/kg/日の用量での投与のためである。
【0104】
一実施形態では、上記のような2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物は、最高で約7.5mg/kg/日、より好ましくは約4.5又は約6mg/kg/日に達するように、約1.5mg/kg/日の増分により段階的に増大される用量であり得る。各用量漸増は、毒性管理を受け、毒性事象なしに用量漸増が起こるのを可能にする。
【0105】
一実施形態では、2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物の用量漸増は、初回用量の投与後少なくとも4週間後かつ初回用量の投与後26週間前の任意の時点で;例えば初回用量の投与後4週、8週、12週、16週、20週、又は24週、好ましくは初回用量の投与後12週の時点で起こる。各用量漸増は、例えば:一定用量の試験治療での以前の4週間の治療期間を含み、毒性管理を受け、及び重篤な有害事象の疑いは報告されず、かつ有害事象の疑いは治療の中断につながらず、かつ有害事象の疑いは、その重症度に関係なく、用量増加の時に進行していない。
【0106】
一実施形態では、上記のような2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物は、6週間の間の約3mg/kg/日の初回用量での、その後約4.5mg/kg/日の用量での投与のためである。一実施形態では、上記のような2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物は、6週間の間の約4.5mg/kg/日の初回用量での、その後約6mg/kg/日の用量での投与のためである。一実施形態では、上記のような2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物は、12週間の間の約3mg/kg/日の初回用量での、その後約4.5mg/kg/日の用量での投与のためである。一実施形態では、上記のような2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物は、12週間の間の約4.5mg/kg/日の初回用量での、その後約6mg/kg/日の用量での投与のためである。一実施形態では、上記のような2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物は、4週間の間の約3mg/kg/日の初回用量での、その後少なくとも4週間の間の約4.5mg/kg/日の用量での、その後約6mg/kg/日の用量での投与のためであり、各用量漸増は毒性管理を受ける。
【0107】
一実施形態によれば、本明細書に示される任意の用量は、活性成分の量そのものを指し、その医薬として許容される塩もしくは溶媒和物の形態を指すものではない。そのため、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブの医薬として許容される塩もしくは溶媒和物の組成変動は、投与されるべき用量に影響しないであろう。
【0108】
一実施形態によれば、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物は、上記のような用量での投与に適合される。
【0109】
一実施形態によれば、上記のような2-アミノアリールチアゾール誘導体、好ましくはマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物は、経口、静脈内、非経口、局所、特に吸入スプレーによる吸入による、経腸、経鼻、又は頬側で投与され得る。一実施形態では、上記のような2-アミノアリールチアゾール誘導体、好ましくはマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物は、経口投与用である。
【0110】
一実施形態では、上記のような2-アミノアリールチアゾール誘導体、好ましくはマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物は、少なくとも1日1回、好ましくは1日2回の投与のためである。一実施形態では、上記のような2-アミノアリールチアゾール誘導体、好ましくはマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物は、例えば、少なくとも1、2、3、6、9、又は12ヶ月間の長期投与用である。
【0111】
一実施形態では、上記のような2-アミノアリールチアゾール誘導体は、好ましくはマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物は、経口投与のために適合されるか、又は適合された形態である。経口投与のために適合された形態の例としては、限定するものではないが、液体、ペースト又は固体組成物、より特には錠剤、丸剤、カプセル剤、液体、ゲル、シロップ剤、スラリー剤、及び懸濁液が挙げられる。
【0112】
一実施形態では、上記のような2-アミノアリールチアゾール誘導体、好ましくはマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物は、錠剤としての、好ましくは100mg又は200mg錠剤としての投与のためである。
【0113】
一実施形態によれば、上記のような2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物は、少なくとも1つのさらなる医薬活性剤との投与のためである。
【0114】
本発明によれば、上記のような2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物は、上記少なくとも1つのさらなる医薬活性剤と同時に、別々に又は連続して投与され得る。
【0115】
一実施形態では、上記のような2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物は、上記少なくとも1つのさらなる医薬活性剤と組み合わせて、例えば組み合わされた調製物、医薬組成物又は医薬で投与されるべきである。
【0116】
一実施形態では、上記のような2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物と、少なくとも1つのさらなる医薬活性剤は、別々に投与されるべきである。
【0117】
一実施形態では、上記少なくとも1つのさらなる医薬活性剤は、化学療法剤及びコルチコイドから選択される。
【0118】
一実施形態では、上記のような2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物は、化学療法剤との投与のためである。一実施形態では、上記化学療法剤は、ドセタキセル又はカバジタキセルである。
【0119】
一実施形態では、上記のような2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物は、ドセタキセルとの投与のためである。
【0120】
一実施形態では、上記のような2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物は、少なくとも1種のコルチコステロイドとの投与のためである。コルチコステロイドの例は、プレドニゾンを含むが、これに限定されない。一実施形態では、上記のような2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物は、プレドニゾンとの投与のためである。
【0121】
一実施形態では、上記のような2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物は、ドセタキセルなどの、化学療法剤、及び例えば、プレドニゾンなどの、少なくとも1つのコルチコステロイドとの投与のためである。一実施形態では、上記のような2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物は、ドセタキセル及びプレドニゾンとの投与のためである。
【0122】
本発明の別の目的は、上記のような2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物を対象に投与することを含む、上で定義されるような、それを必要とする対象における前立腺癌(好ましくはCRPC、より好ましくはmCRPC、並びに特に250IU/L以下のベースラインでのアルカリホスファターゼ(ALP)レベル、及び/又は45以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)と関連付けられる早期mCRPC)を治療するための方法である。
【0123】
一実施形態では、本方法は、本明細書で定義されるような早期mCRPCを治療するためである。
【0124】
一実施形態では、本方法は、上記のような2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物の治療的有効用量を投与することを含む。
【0125】
一実施形態では、本方法は、本明細書に記載の少なくとも1つのさらなる医薬活性剤を投与することを含む。一実施形態では、上記少なくとも1つのさらなる医薬活性剤は、化学療法剤及びコルチコイドから選択される。
【0126】
本発明の別の目的は、上で定義されるような、それを必要とする対象における前立腺癌(好ましくはCRPC、より好ましくはmCRPC、並びに特に250IU/L以下のベースラインでのアルカリホスファターゼ(ALP)レベル、及び/又は45以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)と関連付けられる早期mCRPC)を治療するための又はその治療での使用のための医薬組成物であり、上記の医薬組成物は、上で記載されるような2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物及び任意に少なくとも1つの医薬として許容される賦形剤を含む。
【0127】
一実施形態では、医薬組成物は、本明細書で定義される早期mCRPCを治療するための又はその治療での使用のためである。
【0128】
一実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載の少なくとも1つのさらなる医薬活性剤との投与のためである。本発明によれば、医薬組成物は、上記少なくとも1つのさらなる医薬活性剤と同時に、別々に又は連続して投与され得る。一実施形態では、上記少なくとも1つのさらなる医薬活性剤は、化学療法剤及びコルチコイドから選択される。
【0129】
本発明の別の目的は、上で定義されるような、それを必要とする対象における前立腺癌(好ましくはCRPC、より好ましくはmCRPC、及び特に250IU/L以下のベースラインでのアルカリホスファターゼ(ALP)レベル、及び/又は45以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)と関連付けられる早期mCRPC)の治療のための薬剤の製造のための、2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、又はその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物の使用である。
【0130】
一実施形態では、本発明は、本明細書で定義されるような早期mCRPCの治療のための薬剤の製造のための、2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、又はその医薬として許容される塩の使用に関する。
【0131】
一実施形態では、薬剤は、本明細書に記載の少なくとも1つのさらなる医薬活性剤との投与のためである。本発明によれば、薬剤は、上記少なくとも1つのさらなる医薬活性剤と同時に、別々に又は連続して投与され得る。一実施形態では、上記少なくとも1つのさらなる医薬活性剤は、化学療法剤及びコルチコイドから選択される。
【0132】
実施例
本発明は、以下の実施例によりさらに説明される。
【0133】
実施例1:
材料と方法
前向き、多施設、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、2並列群、第3相試験を、第一選択の転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)において、ドセタキセルと組み合わせたプラセボと比較して、ドセタキセルと組み合わせたマシチニブの有効性及び安全性を評価するために実施した。
【0134】
本研究の目的は、第一選択の転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)において、プラセボと組み合わせたドセタキセルと比較してドセタキセルと組み合わせたマシチニブの有効性及び安全性を評価することであった。有効性を、月単位で測定した、無増悪生存期間(PFS)に基づき評価した。
【0135】
本研究で募集した患者は、去勢治療(化学的又は外科的手段によるアンドロゲン(例えば、テストステロン、ジヒドロテストステロン(DHT))の低下)後に進行して去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)を発症した前立腺癌に罹患している成人男性からなる。これらの患者を、第一選択の転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)の患者と見なす。
【0136】
本研究で募集した患者を、1:1の比率で2つのグループに無作為化した:
-グループ1:通常の慣行に従うマシチニブ(6mg/kg/日)+ドセタキセル(75mg/m2の6サイクル-可能であれば8又は10サイクル)+プレドニゾン;
-グループ2:通常の慣行に従うプラセボ+ドセタキセル(75mg/m2の6サイクル-可能であれば8又は10サイクル)+プレドニゾン。
ドセタキセルを、慣行のようにプレドニゾンと組み合わせた。
患者を、最小化法に従いIWRS(インタラクティブウェブ応答システム)により2つの治療群の1つに一元的にランダム化した。
【0137】
選択基準:
-組織学的又は細胞学的に確認された転移性去勢抵抗性前立腺癌の18歳以上の患者(医学的又は外科的去勢:GnRHアゴニスト又はアンタゴニストによるアンドロゲン遮断又は外科的去勢の患者;以下の基準の1つを用いて生物学的に確認されたホルモン去勢(テストステロン<0.5ng/mL):
*外科的去勢が行われる場合、テストステロン検査を行う必要はない。
〇アビラテロンで事前治療され、疾患の進行が記録された、又は
〇ドセタキセル投与を開始するための適応症(例えば、広範囲の内臓疾患又は急速に進行する疾患)を有する。
-進行性転移性疾患の証拠を有する患者。治験登録時の疾患進行は、前立腺癌における応答及び疾患症状の進行の前立腺癌臨床試験ワーキンググループ(PCWG2)の定義(Scherら J Clin Oncol.2008;26:1148-1159)に記載されるように、少なくとも1つの変化の進行に基づく:
【表1】
‐ECOG≦1の患者
‐適切な臓器機能を有する患者:
絶対好中球数(ANC)≧1.5×10
9/L
〇ヘモグロビン≧10g/dL
〇血小板(PTL)≧75×10
9/L
〇AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)/ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)≦3×基準値上限すなわちULN(肝臓転移の場合≦5×ULN)
〇ガンマグルタミルトランスフェラーゼ(GGT)≦2.5×ULN(肝臓転移の場合≦5×ULN)
〇ビリルビン≦1.5×ULN(肝臓転移の場合≦3×ULN)
〇正常なクレアチニン又は異常なクレアチニンの場合、クレアチニンクリアランス≧50mL/分(コッククロフト・ゴールト方程式)
〇尿素≦2×ULN
〇アルブミン>1×LLN(基準値下限)
〇ディップスティック上のタンパク尿<30mg/dL(1+);ディップスティック上でタンパク尿≧1+の場合、24時間のタンパク尿は1.5g/24時間以下でなければならない
‐平均余命が3ヶ月超の患者
‐BMI>18kg/m
2の患者及び体重>40kgの患者
‐研究中及び最後の治療薬摂取後3ヶ月間に女性のパートナーによる非常に効果的な避妊方法及び許容できる避妊方法を使用することに同意するか、又は研究中及び最後の治療薬摂取後3ヶ月間に女性のパートナーによる許容できる避妊方法及び非常に効果的な避妊方法を使用することに同意する、出産の可能性のある女性パートナーを有する男性患者。
【0138】
除外基準:
‐以前に化学療法で治療されたことがある患者
‐ベースライン前の12ヶ月以内に骨髄照射>40%の患者
‐基底細胞癌(及びpTa又はpT1腫瘍)を除く、登録前の3年以内に前立腺癌以外の癌について治療された患者
‐活動性中枢神経系(CNS)転移を有するか又はCNS転移の病歴のある患者
‐以下の状態の少なくとも1つにより定義される心臓障害を呈する患者:
〇以下の最近の心臓病歴(6ヶ月以内)を有する患者:
急性冠症候群
急性心不全(ニューヨーク心臓協会(NYHA)分類のクラスIII又はIV)
重大な心室性不整脈(持続性心室頻拍、心室細動、蘇生突然死)
〇NYHA分類の心不全クラスIII又はIVを有する患者
〇永続的なペーシングにより予防されない重度の伝導障害を有する患者(房室ブロック2及び3、洞房ブロック)
〇3ヶ月以内の病因が不明な失神
〇治験責任医師の判断に従い制御されない重度の高血圧、又は症候性高血圧
‐研究プロトコルを遵守する能力を妨げる不十分なコンプライアンス又は薬物/アルコール乱用の病歴を有するか、又は過度のアルコール飲料を消費した患者、又は研究プロトコルを遵守する又はインフォームドコンセントを与える能力を妨げる可能性がある現在のもしくは過去の精神疾患
‐抗腫瘍療法(放射線療法、化学療法、生物学的又はGnRH/LHRH類似体を除く抗アンドロゲン療法)による治療を受けている患者
【0139】
本研究に含まれる各患者について、(H)とも呼ばれるハラビ予後スコア(すなわち、生存期間推定値)を、以下の式を用いて計算した:
H=[0.392×(ECOG=2ならば2、ECOG=1ならば1、ECOG=0ならば0)]+[0.335×(グリソンスコアが[8~10]ならば1、又はグリソンスコア<8ならば0)+[exp(0.312×log(LDH)+0.211×log(AP)+0.093×log(PSA))]+[0.161×(内臓疾患がある場合は1、それ以外の場合は0)]-[0.082×HB]。
【0140】
本明細書において使用される場合、ハラビ予後スコア(H)は、Halabiら(J Clin Oncol.2003 Apr 1;21(7):1232-7)により記載された方法に基づき、かつ患者の生存期間の推定値として使用される。上記のように、数式は、内臓疾患の測定(はい又はいいえ、このパラメータの値は、対象が内臓疾患に罹患している場合は1に等しく、そうでない場合は0に等しい)、初期グリソンスコア(対象について測定されたグリソンスコアが8~10の範囲の場合は1に等しく、グリソンスコアが8未満の場合は0に等しい)、ECOG(米国東海岸癌臨床試験グループ)のパフォーマンスステータス(0~2の範囲)、前立腺特異抗原(PSA)レベル(PSA、ng/mLで測定される)、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)レベル(LDH、IU/Lで測定される)、アルカリホスファターゼ(ALP)レベル(ALP又はAP、IU/Lで測定される)及びヘモグロビン(HB、g/dLで測定される)に基づく。
【0141】
特に、ハラビ予後スコア(H)を、ECOGパフォーマンスステータスが0又は1である対象について、以下の手順を用いて計算した:
‐VISCERAL1:患者が内臓疾患と診断された場合に入力する(はい/いいえ)(VISCERAL_n)
‐ECOG1:患者のECOG値(0対1対2)を入力する(ecog_SCR)
‐GLEASON11:患者のグリソン値を入力する-範囲:[2~10]からの整数である必要がある(QSSCORE)
‐LDH1:患者のLDH値を入力する-範囲[6~4000 IU/L]からの10進数である必要がある(ldh_SCR)
‐AP1:患者のアルカリホスファターゼ値(AP1)を入力する-範囲[10~2500IU/L]からの10進数である必要がある(SCREEN_LOCALV)
‐HB1:患者のヘモグロビン値を入力する-範囲[10~20g/dl]からの10進数である必要がある(HEMO_SCR)
‐PSA1:患者のPSA値を入力する-範囲[0.0001~5000ng/ml]からの10進数である必要がある(PSA_SCR)。
これらの値に基づき、ランダム化に使用されるインタラクティブウェブ応答システムは、以下の統計分析システム(SAS)プログラムコードを使用してハラビ予後スコア(H)を計算した:
HALABI Score Derive;
if QSSCORE <8 then GLEASON1=0;
else if 8 <= QSSCORE <=10 then GLEASON1=1;
else GLEASON1=.;
ECOG1 = 0.392*ecog_SCR;
GLEASON11 = 0.335*GLEASON1;
LDH1 = 0.312*(log (ldh_SCR));
AP1 = 0.211*(log (SCREEN_LOCALV));
PSA1 = 0.093*(log (PSA_SCR));
VISCERAL1 = 0.161*VISCERAL_n;
HB1 = 0.082*HEMO_SCR;
d1=exp (LDH1+AP1+PSA1);
H = (ECOG1+GLEASON11+d1+VISCERAL1-HB1)。
下記のものは、以下の値を有する患者データ(001~003)を使用して作業した例である:
ECOG1 = 0 (すなわち、ECOG 0)
GLEASON11 = 1 (すなわち、グリソンスコア8~10)
LDH1 = 184
AP1 = 88
PSA1 = 3.9
VISCERAL1 = 1 (すなわち、内臓疾患)
HB1 = 13.0
したがって、この患者の場合:
H = [0.392*0] + [0.335*1] + [exp (0.312*(log (184)) + 0.211*(log (88)) + 0.093*(log (3.90)))] + [0.161*1] - [0.082*13.0] = 14.29
【0142】
結果
mCRPCを治療するためのマシチニブの有効性を、無増悪生存期間(月単位で測定した無増悪生存期間中央値(「中央値」)、それに関連する95%信頼区間(「95%CI」)及びp値と共に表される)、及び対象集団において測定した2つのパラメータに基づき評価した。最初に、プラセボ(+ドセタキセル+プレドニゾン)で治療した場合の死亡確率に対するマシチニブ(+ドセタキセル+プレドニゾン)で治療した場合の死亡確率に相当する、ハザード比(HR)を、測定する。そのため、HR<1は、マシチニブで治療した場合の死亡確率がプラセボで治療した場合の死亡確率よりも低いことを示す(かつしたがって、治療上の恩恵を示す)。第2に、ミラーサブグループと比較して、特定のサブグループにおけるマシチニブの効果を評価することを可能にする、「リスクベネフィット」を、測定する。
【0143】
得られた結果は最初に、マシチニブの治療上の恩恵が、以下の表1~4に示されるように、対象のベースラインで測定されたアルカリホスファターゼ(ALP)レベルに依存することを実証する。
表1:250IU/L以下のベースラインALPレベルに応じたPFS中央値(月単位)の観点でのマシチニブ治療効果
【表2】
表2:200IU/L以下のベースラインALPレベルに応じたPFS中央値(月単位)の観点でのマシチニブ治療効果
【表3】
表3:150IU/L以下のベースラインALPレベルに応じたPFS中央値(月単位)の観点でのマシチニブ治療効果
【表4】
表4:100IU/L以下のベースラインALPレベルに応じたPFS中央値(月単位)の観点でのマシチニブ治療効果
【表5】
【0144】
表1に示されるように、250IU/L以下のベースラインでのALPレベルを有する患者は、マシチニブに対する増加された応答を示す。加えて、表1~4に示すように、ベースラインでのより低いALPレベルは、増加されたリスクベネフィット(100IU/L以下のベースラインでのALPレベルについて47%に達する)に相当する改善されたハザード比(100IU/L以下のベースラインでのALPレベルについて0.53に達する)と関連付けられる。
【0145】
第2に、得られた結果は、マシチニブの治療上の恩恵が、以下の表5に示されるように、対象のベースラインで測定されたハラビスコア(H)に依存することを実証する。
表5:ベースラインでのハラビ予後スコア(H)に応じたPFS中央値(月単位)の観点でのマシチニブ治療効果
【表6】
【0146】
表5に示されるように、33以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有する患者は、マシチニブに対する増加された応答を示す。加えて、マシチニブの治療上の恩恵は、ベースラインでのハラビスコア(H)が減少すると増加する。
【0147】
さらに、表6~10に示されるように、マシチニブの治療上の恩恵は、ベースラインで測定される低いALPレベル(すなわち、250IU/L以下のベースラインでのALPレベル)とベースラインで測定される低いハラビスコア(H)(すなわち、33以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H))の両方を呈する患者において増加する。
表6:250IU/L以下のベースラインALPレベルと18以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)に応じたPFS中央値(月単位)の観点でのマシチニブ治療効果
【表7】
表7:250IU/L以下のベースラインALPレベルと19以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)に応じたPFS中央値(月単位)の観点でのマシチニブ治療効果
【表8】
表8:250IU/L以下のベースラインALPレベルと20以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)に応じたPFS中央値(月単位)の観点でのマシチニブ治療効果
【表9】
表9:250IU/L以下のベースラインALPレベルと21以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)に応じたPFS中央値(月単位)の観点でのマシチニブ治療効果
【表10】
表10:250IU/L以下のベースラインALPレベルと22以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)に応じたPFS中央値(月単位)の観点でのマシチニブ治療効果
【表11】
【0148】
同様の結果が、250IU/Lより低いベースラインでのALPレベルを呈する患者において得られた。例えば、200IU/L以下のベースラインでのALPレベルと18以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を呈する患者群において、測定されるハザード比は、約0.5であり、リスクベネフィットは、約50%である。150IU/L以下のベースラインでのALPレベルと18以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有する患者群において、これらの値はそれぞれ、0.46及び55%であり、100IU/L以下のベースラインでのALPレベルと18以下のベースラインでのハラビ予後スコア(H)を有する患者群においては、0.46及び56%である。
【0149】
全体として、これらのデータは、ベースラインでの低いALPレベル(例えば、250IU/L以下)及び/又はベースラインでの低いハラビスコア(H)(例えば、33以下)を呈する患者においてmCRPCを治療するためのマシチニブの強い恩恵効果を実証する。
【国際調査報告】