(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-24
(54)【発明の名称】弁アセンブリ
(51)【国際特許分類】
F16K 1/22 20060101AFI20240417BHJP
【FI】
F16K1/22 F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571609
(86)(22)【出願日】2022-05-18
(85)【翻訳文提出日】2023-12-07
(86)【国際出願番号】 EP2022063459
(87)【国際公開番号】W WO2022243384
(87)【国際公開日】2022-11-24
(32)【優先日】2021-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】102021205250.9
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519031896
【氏名又は名称】ヴィテスコ テクノロジーズ ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Vitesco Technologies GmbH
【住所又は居所原語表記】Siemensstrasse 12,93055 Regensburg,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミハイ ドリエノフスキ
(72)【発明者】
【氏名】デイアン ラスィチ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル ポパ
(72)【発明者】
【氏名】ドミトロ ロスプートニアク
(72)【発明者】
【氏名】パヴェル-ソリン ハン
(72)【発明者】
【氏名】コスミン イオン ベリン
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト-マリアン キータク
【テーマコード(参考)】
3H052
【Fターム(参考)】
3H052AA02
3H052BA25
3H052BA26
3H052CC01
3H052CD02
3H052CD09
3H052EA16
(57)【要約】
特にガス管路用、特に燃料電池アセンブリおよび/または自動車駆動装置アセンブリのガス管路用の弁アセンブリであって、この弁アセンブリは、流体管路(12)を備えたハウジング(10)と、流体管路(12)内に配置されていて、弁座(42)、弁フラップ(16)および弁開口を備えた弁とを有しており、弁フラップ(16)は、この弁フラップ(16)が弁座(42)に接触して弁開口を流体密に閉鎖する閉鎖位置と、弁フラップ(16)が弁開口を開放する開放位置との間で旋回軸線を中心として旋回可能であり、弁フラップ(16)は、閉鎖位置において座標系(22)のX-Y平面を規定しており、旋回軸線は、X-Y平面から離間して配置されていて、座標系(22)のY方向を規定しており、弁アセンブリは、弁フラップ(16)が弁座(42)に対して閉鎖位置にある配置形態を少なくともX方向で位置合せして確定させることができる位置合せ機構を有する、弁アセンブリ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にガス管路用、特に燃料電池アセンブリおよび/または自動車駆動装置アセンブリのガス管路用の弁アセンブリであって、
前記弁アセンブリは、流体管路(12)を備えたハウジング(10)と、前記流体管路(12)内に配置され、弁座(42)、弁フラップ(16)および弁開口を備えた弁とを有しており、
前記弁フラップ(16)は、該弁フラップ(16)が前記弁座(42)に接触して前記弁開口を流体密に閉鎖する閉鎖位置と、前記弁フラップ(16)が前記弁開口を開放する開放位置との間で、旋回軸線を中心として旋回可能であり、
前記弁フラップ(16)は、前記閉鎖位置において座標系(22)のX-Y平面を規定しており、前記旋回軸線は、前記X-Y平面から離間して配置されていて、前記座標系(22)のY方向を規定している、
弁アセンブリにおいて、
前記弁フラップ(16)が前記弁座(42)に対して前記閉鎖位置にある配置形態を少なくともX方向で位置合せして確定させることができる位置合せ機構を備えることを特徴とする、弁アセンブリ。
【請求項2】
前記弁フラップ(16)が前記弁座(42)に対して前記閉鎖位置にある前記配置形態は、前記位置合せ機構によって付加的に前記Y方向で位置合せ可能かつ確定可能であることを特徴とする、請求項1記載の弁アセンブリ。
【請求項3】
前記弁フラップ(16)が前記弁座(42)に対して前記閉鎖位置にある前記配置形態は、前記位置合せ機構によって付加的にZ方向で位置合せ可能かつ確定可能であることを特徴とする、請求項1または2記載の弁アセンブリ。
【請求項4】
前記弁は、前記弁フラップ(16)を旋回させるための軸(24)を有しており、前記位置合せ機構は、前記軸(24)への前記弁フラップ(16)の固定に関係していることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の弁アセンブリ。
【請求項5】
前記位置合せ機構は、前記軸(24)への前記弁フラップ(16)のねじ固定を含むことを特徴とする、請求項4記載の弁アセンブリ。
【請求項6】
前記軸(24)は、前記ねじ固定のねじ(34)が配置された少なくとも1つの貫通孔(32)と、該貫通孔(32)を前記軸(24)の、前記弁フラップ(16)に向けられた面で取り囲んで、前記ねじ固定により前記弁フラップ(16)に緊締された平らな第1の当接面(28)とを有することを特徴とする、請求項4または5記載の弁アセンブリ。
【請求項7】
前記ねじ(34)の外径が、前記貫通孔(32)の横断面寸法よりも小さく、これによって前記X-Y平面内での位置合せが可能であることを特徴とする、請求項6記載の弁アセンブリ。
【請求項8】
前記軸(24)は、前記弁フラップ(16)と反対側の面に、前記第1の当接面(28)に対して面平行に配置されており前記ねじ(34)の頭が支持された第2の当接面(30)を有することを特徴とする、請求項7記載の弁アセンブリ。
【請求項9】
前記弁フラップ(16)に、前記ねじ(34)がねじ込まれたねじ山付きの盲孔(38)が形成されていることを特徴とする、請求項6から8までのいずれか1項記載の弁アセンブリ。
【請求項10】
前記軸(24)は、前記流体管路(12)の管路軸線(20)の両側に配置された2つの貫通孔(32)を有しており、該2つの貫通孔(32)内にそれぞれ1つのねじ(34)が配置されていることを特徴とする、請求項5から8までのいずれか1項記載の弁アセンブリ。
【請求項11】
前記位置合せ機構は、前記軸(24)への前記弁フラップ(16)の接着固定または溶接固定を含むことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の弁アセンブリ。
【請求項12】
前記軸(24)は、前記弁フラップ(16)に形成されたピン(44)が挿入された貫通孔(32)を有しており、前記ピン(44)と前記貫通孔(32)との間に環状間隙が形成されており、該環状間隙は、前記弁アセンブリの組立て時に前記弁フラップ(16)の位置合せを可能にし、前記軸(24)への前記弁フラップ(16)の固定時に接着または溶接によって少なくとも部分的に閉鎖されることを特徴とする、請求項11記載の弁アセンブリ。
【請求項13】
特に自動車駆動装置用の燃料電池アセンブリであって、
少なくとも1つの燃料電池と、
前記少なくとも1つの燃料電池にガスを供給しかつ/または前記少なくとも1つの燃料電池からガスを導出するためのガス管路と、
弁フラップ(16)を閉鎖位置へと調節することによって前記ガス管路を遮断するための、請求項1から12までのいずれか1項記載の弁アセンブリと、
を備える、燃料電池アセンブリ。
【請求項14】
自動車であって、
管路と、
弁フラップを閉鎖位置へと調節することによって前記管路を遮断するための、請求項1から12までのいずれか1項記載の弁アセンブリと、
を備え、
前記管路は、特に自動車駆動装置および/または前記自動車の燃料電池アセンブリのガス管路である、
自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にガス管路用、特に燃料電池アセンブリおよび/または自動車駆動装置アセンブリのガス管路用の弁アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
管路、特にガス管路を開閉するための弁は、様々な要求を満たさなければならない。したがって、弁の閉鎖時に可能な限り完全な密封を達成することが求められると同時に、弁を可能な限り少ない作動力で操作することができることが求められる。耐用年数に関連して、また、汚染物を回避するためにも、互いに協働する封止面の領域に可能な限り少ない摩耗が保証されることが求められる。弁アセンブリが、例えば水素燃料電池に使用される場合には、弁の閉鎖時の封止性が特に重要視されている。なぜならば、駆動装置の停止時に、燃料電池の腐食を回避すべく、空気または酸素の侵入が阻止されなければならないからである。
【0003】
前述した要求を可能な限り十分に満たすためには、いわゆる蝶形弁が使用されることが多い。この蝶形弁では、弁フラップが、ガス管路の内部の多少なりとも中央に配置された旋回軸線を中心とした旋回運動を実施する。蝶形弁は、たいてい比較的少ない作動力で操作することができるものの、最適な密封および少ない摩損を達成するために、比較的高い製造手間を必要とする。
【0004】
欧州特許出願公開第2299151号明細書に基づき、弁ディスクの旋回軸線が2つの方向でずらされて配置されている蝶形弁が公知になっている。弁座を形成する面は、部分的に円錐形に形成されている。
【0005】
英国特許出願公開第2516094号明細書に基づき、弁部材の旋回軸線が2つの方向でずらされて配置されている蝶形弁が公知になっている。弁座を形成する面は円錐形に形成されている。
【0006】
国際公開第2014/175886号に基づき、弁部材の旋回軸線が2つの方向でずらされて配置されている蝶形弁が公知になっている。弁部材には、閉鎖位置で弁座に接触する、円形に全周にわたって延在する切刃状の縁部が形成されている。
【0007】
米国特許出願公開第2011/0272613号明細書、米国特許出願公開第2019/0203676号明細書および米国特許出願公開第2019/0136981号明細書に基づき、排ガス再循環システム用の蝶形弁が公知になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
こういったことを前提として、本発明の課題は、特に燃料電池での使用時に高い要求を満たし、特に簡単に製造することができる弁アセンブリを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、請求項1の特徴を有する弁アセンブリによって解決される。有利な構成は後続の従属請求項に記載してある。
【0010】
弁アセンブリは、特にガス管路用、特に燃料電池アセンブリおよび/または自動車駆動装置アセンブリのガス管路用に設けられている。弁アセンブリは、流体管路を備えたハウジングと、流体管路内に配置され、弁座、弁フラップおよび弁開口を備えた弁とを有しており、弁フラップは、この弁フラップが弁座に接触して弁開口を流体密に閉鎖する閉鎖位置と、弁フラップが弁開口を開放する開放位置との間で旋回軸線を中心として旋回可能であり、弁フラップは、閉鎖位置において座標系のX-Y平面を規定しており、旋回軸線は、X-Y平面から離間して配置されていて、座標系のY方向を規定している。弁アセンブリは、弁フラップが弁座に対して閉鎖位置にある配置形態を少なくともX方向で位置合せして確定させることができる位置合せ機構を特徴としている。
【0011】
流体管路は、座標系の実質的にZ方向、つまり、閉鎖位置における弁フラップの平面に対してほぼ垂直に配置された管路軸線を有していてよい。弁フラップは旋回軸線を中心として旋回可能であり、これによって、弁フラップを閉鎖位置と開放位置との間で開閉旋回させることができる。このために、弁アセンブリは、特に電動式のアクチュエータを備えた旋回駆動装置を有していてよい。この旋回駆動装置は弁アセンブリのハウジング内に組み込まれていてよい。しかしながら、弁アセンブリを旋回駆動装置なしに、例えば逆止弁として使用することも可能である。
【0012】
弁は、弁フラップまたは弁座に配置された弾性的なシールを有していてよい。このために、弾性的な材料から成る別体の封止要素が製造され、弁座または弁フラップに結合されていてよく、例えば、Oリングが、弁フラップを取り囲むように全周にわたって延在する溝内に挿入されていてよい。このような別体のシールは、特に、弁フラップまたは弁座が、例えば金属から切削加工法で製造される場合に提供される。弁座または弁フラップが、特にプラスチックから射出成形法で製造される場合には、弾性的なシールは、別体の部材として製造型内に挿入されるかまたは弁座または弁フラップに一体成形されていてよい。
【0013】
弁フラップの旋回軸線は、X-Y平面、つまり、閉鎖位置における弁フラップの平面から離間して配置されている。つまり、旋回軸線は、「弁フラップよりも外側」に位置しており、弁座が配置された平面に対してずらされて配置されている。旋回軸線は、特にX方向でも管路軸線に対してずらされて配置されていてよい。旋回軸線のこの配置形態は蝶形弁によって知られており、二重にずらされた配置形態とも呼ばれる。
【0014】
本発明において、弁アセンブリは、弁フラップが弁座に対して閉鎖位置にある配置形態を少なくともX方向で位置合せして確定させることができる位置合せ機構を有している。公知の弁アセンブリでは、X方向での弁フラップの位置合せが旋回軸線によって予め設定されており、調整することができない。これには、製造および組立て時に不可避の誤差を小さく保ちかつ/または大幅に寸法設定された弾性的なシールによって補償することが必要となる。これに代えて、本発明では、不可避の誤差を補償するために、弁フラップの配置形態を閉鎖位置で位置合せし、次いで、この位置合せされた位置で弁フラップを確定させることが可能となる。これによって、より大きな作動力およびより高い摩耗を生じさせることなく、極めて良好な密封を達成することができる。
【0015】
一構成では、弁フラップが弁座に対して閉鎖位置にある配置形態が、位置合せ機構によって付加的にY方向で位置合せ可能かつ確定可能である。したがって、位置合せ機構によって旋回軸線の方向でも精密調整が可能となる。
【0016】
一構成では、弁フラップが弁座に対して閉鎖位置にある配置形態が、位置合せ機構によって付加的にZ方向で位置合せ可能かつ確定可能である。この付加的な位置合せ可能性によって、弁フラップの位置を弁平面内でも管路軸線の方向でも調整することができる。これによって、特に、弁座と弁フラップとの間に配置された弾性的なシールに押付け圧が影響を与えることが可能となる。
【0017】
一構成では、弁が、弁フラップを旋回させるための軸を有しており、位置合せ機構が、軸への弁フラップの固定に関係している。軸は、特に、管路の外側で、例えばハウジング内に配置された作動駆動装置に結合されていてよい。先行技術に基づき公知の蝶形弁では、弁フラップが、精密調整の可能性なしに軸に固く、特にプレス嵌めによって結合されている。本発明では、軸と弁フラップとの間に作用して、弁フラップの配置形態を軸に対して調整することができる位置合せ機構が設けられている。こうして、作動駆動装置または軸の軸受装置の側での構造的な変更を必要とすることなく、弁フラップの配置形態を簡単に調整することができる。
【0018】
一構成では、位置合せ機構が、軸への弁フラップのねじ固定を含む。こうして、ねじの締付け前に弁フラップの配置形態を軸に対して簡単に調整することができる。
【0019】
一構成では、軸が、ねじ固定のねじが配置された少なくとも1つの貫通孔と、この貫通孔を軸の、弁フラップに向けられた面で取り囲んで、ねじ固定により弁フラップに緊締された平らな第1の当接面とを有している。こうして、軸への弁フラップの簡単かつ確実な固定が達成される。軸の第1の当接面によって、弁フラップの配置形態をZ方向(閉鎖位置)で不変に予め設定することができるが、しかしながら、弁フラップの平面(X方向および/またはY方向)内では所望の位置合せが可能である。
【0020】
一構成では、ねじの外径が、貫通孔の横断面寸法よりも小さく、これによって、X-Y平面内での位置合せが可能である。つまり、ねじは、貫通孔内に正確に嵌め込まれているのではなく、ねじの外径を貫通孔の横断面寸法に対して前述の如く調整することによって遊びを伴わせ、これによって、X-Y平面内での弁フラップの配置形態が、ねじの締付けによって初めて確定する。貫通孔の横断面は円形であってよく、この事例では、横断面寸法が貫通孔の内径に相当している。しかしながら、貫通孔は、細長い横断面ジオメトリ、楕円形の横断面ジオメトリまたはその他の横断面ジオメトリを有していてもよく、特に長孔として形成されていてもよい。この事例では、横断面寸法が貫通孔の最大の開口幅に相当している。特に、ねじの外径は、貫通孔の横断面寸法よりも少なくとも2%、少なくとも10%または少なくとも15%小さくてよい。目標とする位置合せのためには、こうして生じる遊びで十分である。ねじの外径の下限は、強度要求によって予め設定される。下限は、例えば、貫通孔の横断面寸法の少なくとも10%または少なくとも20%であってよい。
【0021】
一構成では、軸が、弁フラップと反対側の面に、第1の当接面に対して面平行に配置されていてねじの頭が支持された第2の当接面を有している。当然ながら、ねじの頭は、このために、第2の当接面に直接接触している必要はなく、場合により、例えばワッシャが相互間に配置されていてよい。互いに面平行な両方の当接面によって、弁フラップとねじとにより形成されたユニットを、所望の位置合せが達成されるまで、全体的にX-Y平面内で面平行な当接面に沿って移動させることができる。
【0022】
一構成では、弁フラップに、ねじがねじ込まれたねじ山付きの盲孔が形成されている。この解決手段によって、弁フラップが位置合せ機構によって漏れを伴わないことが確保される。さらに、弁フラップは、旋回軸線と反対側の面で平滑かつ/または平らに形成されてよい。このことは、特に開放位置において流れ技術的に有利となることがある。
【0023】
一構成では、軸が、管路の中心軸線の両側に配置された2つの貫通孔を有しており、これら2つの貫通孔内にそれぞれ1つのねじが配置されている。特に、前述した両方の当接面は、両方の貫通孔を取り囲むように、つまり、言い換えると、軸の中間区分が両側から扁平加工されているように大きく形成されてよい。このことも流体技術的な利点を有しており、製造と、軸に対する弁フラップの所望の位置合せとを簡略化することができる。
【0024】
一構成では、位置合せ機構が、軸への弁フラップの接着固定または溶接固定を含む。この事例では、弁フラップが、弁アセンブリの組立て前に所望のように位置合せされ、後続の溶接または接着の完全硬化によって確定されてよい。溶接固定は、特に、熱可塑性の材料から製造された弁フラップと軸とに関連して、特にレーザ溶接によって実施されてよい。
【0025】
一構成では、軸が、弁フラップに形成されたピンが挿入された貫通孔を有しており、ピンと貫通孔との間に環状間隙が形成されており、この環状間隙が、弁アセンブリの組立て時に弁フラップの位置合せを可能にし、軸への弁フラップの固定時に接着または溶接によって少なくとも部分的に閉鎖される。環状間隙によって、X-Y平面内での弁フラップの前述した位置合せが可能となる。ピンの長さと貫通孔の長さとは、Z方向での調整後でも所望の固定が達成されるように互いに調整されていてよい。
【0026】
上述した課題は、請求項13の特徴を有する燃料電池アセンブリによっても解決される。この燃料電池アセンブリは、特に自動車駆動装置用に設けられており、少なくとも1つの燃料電池と、この少なくとも1つの燃料電池にガスを供給しかつ/またはこの少なくとも1つの燃料電池からガスを導出するためのガス管路とを有している。燃料電池アセンブリは、弁フラップを閉鎖位置へと調節することによってガス管路を遮断するための、請求項1から12までのいずれか1項記載の弁アセンブリを有している。燃料電池は、特に水素燃料電池であってよい。
【0027】
上述した課題は、請求項14の特徴を有する自動車によっても解決される。この自動車は、管路と、弁フラップを閉鎖位置へと調節することによって管路を遮断するための、請求項1から12までのいずれか1項記載の弁アセンブリとを有しており、管路は、特に自動車駆動装置および/または自動車の燃料電池アセンブリのガス管路である。
【0028】
以下に、本発明を図示の実施例に基づき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図2】一部断面を含む
図1に示した弁アセンブリの別の斜視図である。
【
図4】
図1に示した弁アセンブリの別の断面図である。
【
図6】さらに別の弁アセンブリの同じく断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1に示した弁アセンブリはハウジング10を有しており、このハウジング10を貫くように流体管路12が形成されている。この流体管路12は円形の横断面を有している。観察者には、ハウジング10のフランジ14が向けられており、このフランジ14を介して、弁アセンブリを別の管路片に接続することができる。
図1ならびに別の全ての図面には、弁フラップ16がその閉鎖位置で示してある。弁フラップ16の外側の円形の縁部は、弁座を形成する弾性的なシール18に接触している。
【0031】
弁フラップ16はディスク状である。この弁フラップ16は、図示の閉鎖位置では、流体管路12の管路軸線20(
図2参照)に対して直交して配置されており、各方向の詳細な説明のために使用する座標系22のX-Y平面を規定している。管路軸線20は、弁フラップ16の領域における流体管路12の中心長手方向軸線である。
【0032】
座標系22のY軸に対して平行に弁の軸24が延在している。この軸24は弁フラップ16の旋回軸線を規定している。軸24は、流体管路12を横方向に貫いて延在しており、弁アセンブリの、ハウジング10にフランジ接続された電動式のアクチュエータ26に結合されている。この電動式のアクチュエータ26は、弁用の作動駆動装置として用いられ、弁フラップ16を軸24の回動によって図示の閉鎖位置と図示していない開放位置との間で開閉運動させることができる。
【0033】
弁フラップ16を弁座に対して位置合せして確定させるための位置合せ機構は、
図1~
図4の実施例および
図5の実施例では、弁フラップ16を軸24にねじ固定することによって実現されている。
図1に認めることができるように、軸24は中間の区分に面平行な2つの当接面を有している。平らな第1の当接面28は、
図1では、軸24の、観察者と反対側の面に位置している。平らな第2の当接面30は観察者に向けられている。軸24は、管路軸線の両側に離間してかつ両方の当接面20,30の範囲内に2つの貫通孔32(
図3参照)を有しており、これら2つの貫通孔32を通して、それぞれ1つのねじ34が案内されている。
【0034】
弁フラップ16は、この弁フラップ16の、
図1で観察者に向けられた面であって、軸24にも軸の第1の当接面28にも向けられている面にドーム状の2つの付設部36を有している。これら2つの付設部36には、ねじ山付きのそれぞれ1つの盲孔38(
図3参照)が形成されている。この盲孔38内には、それぞれ1つのねじ34がねじ込まれている。こうして、弁フラップ16が第1の当接面28に緊締されている。この場合、貫通孔32の内径がねじ34の外径よりも大きいため、ねじ締結部がX方向およびY方向で遊びを伴っている。したがって、ねじ34の締付け前に弁アセンブリを組み立てる際に、弁フラップ16をX-Y平面内で位置合せし、弁座に調和させることができる。次いで、ねじ34が締め付けられる。これによって、弁座に対する弁フラップ16の配置形態が確定する。
【0035】
図2には、流体管路12の管路軸線20が記入してある。この管路軸線20が、同じく記入してある座標系22のZ方向に沿って延在していることが認められる。両方の当接面28,30を有する中間の長手方向区分における軸の扁平加工された横断面も良好に認めることができる。また、全周にわたって延在する弾性的なシール18の複雑な横断面ジオメトリと、このシール18が、ハウジング10の、流体管路12を成す円形の開口内に挿入されていることも良好に認めることができる。軸24は、弁フラップ16の旋回軸線に沿って延在している。この旋回軸線は、弁フラップ16の平面から離間して配置されている。
【0036】
図3の断面図では、切断平面がX-Z平面に対して平行に延在している。
図3には、位置合せ機構の主要な要素を良好に認めることができる。両方の貫通孔32の内径がねじ34の外径よりも明らかに大きいため、X-Y平面内での弁座に対する弁フラップ16の位置合せが可能になることが認められる。また、弁フラップ16がねじ34を介して第1の当接面28に緊締されており、ねじ34の頭が第2の当接面30に接触していることも良好に認めることができる。軸24は、ハウジング10内に回動可能に支承されていて、電動式のアクチュエータ26(
図3では右側に部分的にしか認めることができない)に結合されている。
【0037】
図4には、
図1~
図3に示したアセンブリが別の切断平面で再び示してある。
図4では、切断平面が座標系22のX-Z平面に対して平行に延在している。弁フラップ16の軸24、ひいては旋回軸線が、流体管路12の管路軸線20に対して垂直にかつ管路軸線20に対して側方に(X方向に)ずれて配置されていることが認められる。
【0038】
図5の別の実施例には、別の弁アセンブリの幾つかの要素だけが断面図で示してある。弁フラップ16が、全周にわたって延在する溝40を有しており、この溝40内に弾性的なシール18としてOリングが挿入されていることが認められる。このOリングは弁座42を密封している。位置合せ機構として、遊びを伴って貫通孔32を通して軸24内に挿入されたねじ34によるねじ締結が同じく使用される。ねじ34は、弁フラップ16に設けられたドーム状の付設部36に形成されたねじ山付きの盲孔38内にねじ込まれている。この実施例でも、軸24は、弁フラップ16をねじ34を介して緊締する、弁フラップ16に向けられた面に設けられた平らな当接面28と、第1の当接面28に対して面平行に位置合せされ、ねじ34の頭が接触する第2の当接面30とを有している。
【0039】
図6にも同じく、別の弁アセンブリの選択された要素だけが断面図で示してある。弁フラップ16は、
図5に示した弁フラップに類似して、全周にわたって延在する溝40を有しており、この溝40内にOリングの形態の弾性的なシール18が挿入されている。しかしながら、螺合を伴わない別の位置合せ機構が設けられている。螺合の代わりに、弁フラップ16にピン44が形成されている。このピン44は、軸24に設けられた貫通孔32内に貫通案内されている。この貫通孔32の直径がピン44の外径よりも大きく選択されているため、この配置形態もまた、まずは、弁座42に対する弁フラップ16の位置合せがX方向、Y方向およびZ方向で可能となる程度に遊びを伴っている。所望の位置合せが見いだされた後、ピン44と軸24との間にレーザ溶接によって持続的な結合が形成される。この場合、ピン44と貫通孔32との間に形成される環状間隙が完全にまたは部分的に閉鎖される。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にガス管路用、特に燃料電池アセンブリおよび/または自動車駆動装置アセンブリのガス管路用の弁アセンブリであって、
前記弁アセンブリは、流体管路(12)を備えたハウジング(10)と、前記流体管路(12)内に配置され、弁座(42)、弁フラップ(16)および弁開口を備えた弁とを有しており、
前記弁フラップ(16)は、該弁フラップ(16)が前記弁座(42)に接触して前記弁開口を流体密に閉鎖する閉鎖位置と、前記弁フラップ(16)が前記弁開口を開放する開放位置との間で、旋回軸線を中心として旋回可能であり、
前記弁フラップ(16)は、前記閉鎖位置において座標系(22)のX-Y平面を規定しており、前記旋回軸線は、前記X-Y平面から離間して配置されていて、前記座標系(22)のY方向を規定している、
弁アセンブリにおいて、
前記弁フラップ(16)が前記弁座(42)に対して前記閉鎖位置にある配置形態を少なくともX方向で位置合せして確定させることができる位置合せ機構を備えることを特徴とする、弁アセンブリ。
【請求項2】
前記弁フラップ(16)が前記弁座(42)に対して前記閉鎖位置にある前記配置形態は、前記位置合せ機構によって付加的に前記Y方向で位置合せ可能かつ確定可能であることを特徴とする、請求項1記載の弁アセンブリ。
【請求項3】
前記弁フラップ(16)が前記弁座(42)に対して前記閉鎖位置にある前記配置形態は、前記位置合せ機構によって付加的にZ方向で位置合せ可能かつ確定可能であることを特徴とする、請求項1または2記載の弁アセンブリ。
【請求項4】
前記弁は、前記弁フラップ(16)を旋回させるための軸(24)を有しており、前記位置合せ機構は、前記軸(24)への前記弁フラップ(16)の固定に関係していることを特徴とする、請求項
1記載の弁アセンブリ。
【請求項5】
前記位置合せ機構は、前記軸(24)への前記弁フラップ(16)のねじ固定を含むことを特徴とする、請求項4記載の弁アセンブリ。
【請求項6】
前記軸(24)は、前記ねじ固定のねじ(34)が配置された少なくとも1つの貫通孔(32)と、該貫通孔(32)を前記軸(24)の、前記弁フラップ(16)に向けられた面で取り囲んで、前記ねじ固定により前記弁フラップ(16)に緊締された平らな第1の当接面(28)とを有することを特徴とする、請求項4または5記載の弁アセンブリ。
【請求項7】
前記ねじ(34)の外径が、前記貫通孔(32)の横断面寸法よりも小さく、これによって前記X-Y平面内での位置合せが可能であることを特徴とする、請求項6記載の弁アセンブリ。
【請求項8】
前記軸(24)は、前記弁フラップ(16)と反対側の面に、前記第1の当接面(28)に対して面平行に配置されており前記ねじ(34)の頭が支持された第2の当接面(30)を有することを特徴とする、請求項7記載の弁アセンブリ。
【請求項9】
前記弁フラップ(16)に、前記ねじ(34)がねじ込まれたねじ山付きの盲孔(38)が形成されていることを特徴とする、請求項
6記載の弁アセンブリ。
【請求項10】
前記軸(24)は、前記流体管路(12)の管路軸線(20)の両側に配置された2つの貫通孔(32)を有しており、該2つの貫通孔(32)内にそれぞれ1つのねじ(34)が配置されていることを特徴とする、請求項
5記載の弁アセンブリ。
【請求項11】
前記位置合せ機構は、前記軸(24)への前記弁フラップ(16)の接着固定または溶接固定を含むことを特徴とする、請求項
1記載の弁アセンブリ。
【請求項12】
前記軸(24)は、前記弁フラップ(16)に形成されたピン(44)が挿入された貫通孔(32)を有しており、前記ピン(44)と前記貫通孔(32)との間に環状間隙が形成されており、該環状間隙は、前記弁アセンブリの組立て時に前記弁フラップ(16)の位置合せを可能にし、前記軸(24)への前記弁フラップ(16)の固定時に接着または溶接によって少なくとも部分的に閉鎖されることを特徴とする、請求項11記載の弁アセンブリ。
【請求項13】
特に自動車駆動装置用の燃料電池アセンブリであって、
少なくとも1つの燃料電池と、
前記少なくとも1つの燃料電池にガスを供給しかつ/または前記少なくとも1つの燃料電池からガスを導出するためのガス管路と、
弁フラップ(16)を閉鎖位置へと調節することによって前記ガス管路を遮断するための、請求項
1記載の弁アセンブリと、
を備える、燃料電池アセンブリ。
【請求項14】
自動車であって、
管路と、
弁フラップを閉鎖位置へと調節することによって前記管路を遮断するための、請求項
1記載の弁アセンブリと、
を備え、
前記管路は、特に自動車駆動装置および/または前記自動車の燃料電池アセンブリのガス管路である、
自動車。
【国際調査報告】