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特表2024-518126コラーゲン合成刺激化合物のナノ要素を含むスキンケア組成物及びその調製方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-24
(54)【発明の名称】コラーゲン合成刺激化合物のナノ要素を含むスキンケア組成物及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/85 20060101AFI20240417BHJP
   A61K 8/84 20060101ALI20240417BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20240417BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240417BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240417BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20240417BHJP
   A61K 31/765 20060101ALI20240417BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20240417BHJP
   A61K 8/33 20060101ALI20240417BHJP
   A61K 31/122 20060101ALI20240417BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240417BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240417BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240417BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240417BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20240417BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20240417BHJP
   A61K 47/08 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
A61K8/85
A61K8/84
A61K8/35
A61Q19/00
A61K8/34
A61K8/37
A61K31/765
A61K8/36
A61K8/33
A61K31/122
A61P17/00
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/12
A61K8/31
A61K47/06
A61K47/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571655
(86)(22)【出願日】2022-05-18
(85)【翻訳文提出日】2023-11-17
(86)【国際出願番号】 IB2022054627
(87)【国際公開番号】W WO2022243899
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】2107130.3
(32)【優先日】2021-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522413102
【氏名又は名称】ランダ ラボ (2012) リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 敏明
(74)【代理人】
【識別番号】100181906
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 一乃
(72)【発明者】
【氏名】アブラモビッチ,サジ
(72)【発明者】
【氏名】アビドール,ギャル
(72)【発明者】
【氏名】ランダ,ベンジオン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA16
4C076BB31
4C076CC18
4C076DD34
4C076DD37
4C076DD38
4C076DD40
4C076DD41
4C076DD45
4C076DD46F
4C076DD47
4C076DD54
4C076DD57
4C076DD58
4C076EE23F
4C076FF43
4C083AB051
4C083AB052
4C083AC011
4C083AC111
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC151
4C083AC171
4C083AC211
4C083AC241
4C083AC371
4C083AC372
4C083AC401
4C083AC402
4C083AC422
4C083AC491
4C083AC492
4C083AC682
4C083AC792
4C083AD052
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD602
4C083AD622
4C083AD642
4C083AD662
4C083BB01
4C083BB51
4C083CC02
4C083DD39
4C083EE12
4C083EE13
4C083FF01
4C086AA01
4C086AA02
4C086FA02
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA89
4C206AA01
4C206AA02
4C206CB27
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA05
4C206MA29
4C206MA83
4C206NA14
4C206ZA89
(57)【要約】
コラーゲン合成を刺激することができる水不溶性生分解性化合物(CSSC)を含む皮膚用組成物が開示され、このCSSCは、0.6kDa以上の分子量を有し、かつ200nm以下の平均直径を有するナノ要素として極性担体中に分散される。前記皮膚用組成物の調製方法及びその使用もまた提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.6キロダルトン(kDa)以上の分子量を有する生分解性水不溶性のコラーゲン合成刺激化合物(collagen-synthesis stimulating compound:CSSC)のナノ要素を含む皮膚用組成物であって、前記ナノ要素は、極性担体中に分散され、かつ200nm以下の平均直径Dv50を有する、前記皮膚用組成物。
【請求項2】
前記CSSCは、以下の特性:
i. 前記CSSCは極性担体に不溶性であること;
ii. 前記CSSCは、高くとも300℃、高くとも250℃、高くとも200℃、高くとも180℃、高くとも150℃、又は高くとも120℃の第1の融解温度(Tm)、第1の軟化温度(Ts)、及び第1のガラス転移温度(Tg)のうちの少なくとも1つを有すること;
iii. 前記CSSCは、低くとも20℃、低くとも30℃、低くとも40℃、低くとも50℃、又は低くとも60℃の第1のTm又はTsを有すること;
iv. 前記CSSCは、-75℃以上、-50℃以上、-25℃以上、0℃以上、25℃以上、又は50℃以上の第1のTgを有すること;
v. 前記CSSCは、20℃~300℃、20℃~250℃、20℃~200℃、30℃~180℃、40℃~180℃、又は50℃~150℃の第1のTm、Ts、及びTgのうちの少なくとも1つを有すること;
vi. 前記CSSCは、0.7kDa以上、0.8kDa以上、0.9kDa以上、1kDa以上、2kDa以上、又は5kDa以上の分子量を有すること;
vii. 前記CSSCは、500kDa以下、300kDa以下、200kDa以下、100kDa以下、80kDa以下、50kDa以下、25kDa以下、又は15kDa以下の分子量を有すること;及び
viii. 前記CSSCは、0.6kDa~500kDa、0.7kDa~300kDa、0.8kDa~200kDa、1kDa~100kDa、又は2kDa~80kDaの分子量を有すること、
のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は少なくとも3つによって特徴付けられる、請求項1に記載の皮膚用組成物。
【請求項3】
前記CSSCは:
(I)脂肪族ポリエステル、ポリヒドロキシ-アルカノエート、ポリ(アルケンジカルボキシレート)、ポリカーボネート、脂肪族-芳香族コポリエステル、それらの異性体、それらのコポリマー、及びそれらの組み合わせを含むポリマー類の群から選択されるポリマー;及び
(II)コエンザイムQ10を含む群から選択されるキノン
から選択される、請求項1又は2に記載の皮膚用組成物。
【請求項4】
前記極性担体は、水、グリコール、及びグリセロールからなる群から選択される少なくとも1つの極性担体を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の皮膚用組成物。
【請求項5】
前記CSSCは不揮発性液体によって可塑化されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の皮膚用組成物。
【請求項6】
前記不揮発性液体は、単官能性又は多官能性の脂肪族エステル、脂肪エステル、環状有機エステル、脂肪酸、テルペン、芳香族アルコール、芳香族エーテル、アルデヒド、及びそれらの組み合わせを含む群から選択される、請求項5に記載の皮膚用組成物。
【請求項7】
前記不揮発性液体によって可塑化されたCSSCは、CSSCのそれぞれの第1のTm、Tg、又はTsよりも低い、第2のTm、Tg、又はTsのうちの少なくとも1つを有し、前記可塑化されたCSSCの第2のTm、Tg、及びTsのうちの少なくとも1つは、0℃~290℃、10℃~250℃、20℃~200℃、30℃~190℃、40℃~180℃、又は50℃~170℃の範囲内である、請求項5又は6に記載の皮膚用組成物。
【請求項8】
前記CSSCは第1の粘度を有し、かつ不揮発性液体により可塑化された前記CSSCは第1の粘度よりも低い第2の粘度を有し、前記第1の粘度及び第2の粘度のうちの少なくとも1つは、温度50℃、及びせん断速度10秒-1で測定する場合、10mPa・s以下、10mPa・s以下、10mPa・s以下、10mPa・s以下、又は10mPa・s以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載の皮膚用組成物。
【請求項9】
乳化剤又はハイドロトロープである少なくとも1つの界面活性剤をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の皮膚用組成物。
【請求項10】
i. 極性担体不溶性活性剤、
ii. 極性担体可溶性活性剤、及び
iii. 皮膚浸透促進剤
のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の皮膚用組成物。
【請求項11】
コラーゲン合成刺激化合物(CSSC)を含む皮膚用組成物を調製するための方法であって、前記方法は、以下の工程:
a)CSSCを提供する工程であって、ここで:
i. 前記CSSCは生分解性であり;
ii. 前記CSSCは水不溶性であり;
iii. 前記CSSCは少なくとも0.6kDaの分子量を有し;
iv. 前記CSSCは、300℃以下の第1の融解温度(Tm)、第1の軟化温度(Ts)、及び第1のガラス転移温度(Tg)のうちの少なくとも1つを有し;かつ
v. 前記CSSCは、50℃、及びせん断速度10秒-1で測定する場合、任意に、10mPa・sより高い第1の粘度を有する、
前記工程;
b)任意に、前記CSSCをそれと混和性の不揮発性液体と混合する工程であって、前記混合は、前記CSSCの第1のTm、Ts、及びTgのうちの少なくとも1つに等しい、又はそれよりも高い混合温度で行われ、これにより均質な可塑化されたCSSCが形成され、前記可塑化されたCSSCは、それぞれ第1のTm、Ts、又はTgよりも低い第2のTm、Ts、又はTgを有し、かつ第1の粘度よりも低い第2の粘度を有し、前記第1の粘度及び第2の粘度のうちの少なくとも1つは、50℃、及びせん断速度10秒-1で測定する場合、10mPa・s以下である、前記工程;
c)50℃の温度及び10秒-1のせん断速度で測定する場合、10mPa・s以下の第1の粘度又は第2の粘度を有する前記CSSC又は任意に可塑化されたCSSCと、極性担体とを組み合わせる工程;及び
d)ナノ懸濁液が得られるように、前記CSSCの第1のTm、Ts、及びTgのうちの少なくとも1つ、又は前記任意に可塑化されたCSSCの第2のTm、Ts、及びTgのうちの少なくとも1つに等しい、又はそれよりも高いせん断温度でせん断を適用することによって、工程c)の組み合わせをナノサイズ化する工程であり、これにより(任意に可塑化された)CSSCのナノ要素が前記極性担体中に分散され、前記ナノ要素は200nm以下の平均直径Dv50を有する、前記工程、
を含む、前記方法。
【請求項12】
前記CSSCは、以下の特性:
i. 前記CSSCは極性担体に不溶性であること;
ii. 前記CSSCは、高くとも250℃、高くとも200℃、高くとも180℃、高くとも150℃、又は高くとも120℃の第1のTm、Ts、又はTgのうちの少なくとも1つを有すること;
iii. 前記CSSCは、低くとも20℃、低くとも30℃、低くとも40℃、低くとも50℃、又は低くとも60℃の第1のTm又はTsを有すること;
iv. 前記CSSCは、-75℃以上、-50℃以上、-25℃以上、0℃以上、25℃以上、又は50℃以上の第1のTgを有すること;
v. 前記CSSCは、20℃~300℃、20℃~250℃、20℃~200℃、30℃~180℃、40℃~180℃、又は50℃~150℃の第1のTm、Ts、及びTgのうちの少なくとも1つを有すること;
vi. 前記CSSCは、0.7kDa以上、0.8kDa以上、0.9kDa以上、1kDa以上、2kDa以上、又は5kDa以上の分子量を有すること;
vii. 前記CSSCは、500kDa以下、300kDa以下、200kDa以下、100kDa以下、80kDa以下、50kDa以下、25kDa以下、又は15kDa以下の分子量を有すること;及び
viii. 前記CSSCは、0.6kDa~500kDa、0.7kDa~300kDa、0.8kDa~200kDa、1kDa~100kDa、又は5kDa~80kDaの分子量を有すること、
のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は少なくとも3つによってさらに特徴付けられる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
工程b)を含み、かつ前記不揮発性液体は、CSSCの重量に対して、少なくとも1:200、少なくとも1:20、少なくとも1:5、少なくとも1:1、少なくとも2:1、又は少なくとも3:1の重量比でCSSCと混合される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
工程b)を含み、かつ前記可塑化されたCSSCの第2のTm、Ts、又はTgのうちの少なくとも1つは、0℃~290℃、10℃~250℃、20℃~200℃、30℃~190℃、40℃~180℃、又は50℃~170℃の範囲内である、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
工程b)を含み、かつ前記CSSCの第1の粘度及び前記可塑化されたCSSCの第2の粘度のうちの少なくとも1つは、50℃、及びせん断速度10秒-1で測定する場合、5×10mPa・s以下、10mPa・s以下、5×10mPa・s以下、10mPa・s以下、10mPa・s以下、又は10mPa・s以下である、請求項11~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
工程b)を含み、かつ工程b)の間に:
i. 極性担体不溶性界面活性剤;
ii. 中間乳化剤;及び
iii. 極性担体不溶性活性剤
のうちの少なくとも1つを組み合わせることをさらに含む、
請求項11~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
工程c)又は工程d)の間又は後に、前記極性担体内に:
i. 極性担体可溶性界面活性剤;
ii. 中間乳化剤;
iii. 皮膚浸透促進剤;及び
iv. 極性担体可溶性活性剤
のうちの少なくとも1つを溶解することをさらに含む、請求項11~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記極性担体はナノサイズ化の圧力にて沸騰温度Tbを有し、かつ前記任意の不揮発性液体は混合の圧力にて沸騰温度Tbを有し、ナノサイズ化の温度はTbより低く、かつ任意の混合の温度はTbより低い、請求項11~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
皮膚の外観を改善するための皮膚用組成物の使用であって、前記皮膚用組成物は、0.6キロダルトン(kDa)以上の分子量を有する生分解性水不溶性のコラーゲン合成刺激化合物(CSSC)のナノ要素を含み、前記ナノ要素は、極性担体中に分散され、かつ200nm以下の平均直径Dv50を有する、前記使用。
【請求項20】
前記皮膚用組成物は、請求項1~10のいずれか一項に記載の皮膚用組成物である、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
前記皮膚用組成物は化粧品組成物であり、かつ皮膚の外観を改善することには、コラーゲンの分解に対抗すること、皮膚の老化の徴候を治療すること、シワ及び小ジワに対抗すること、衰えた皮膚に対抗すること、弛んだ皮膚に対抗すること、薄くなった皮膚に対抗すること、くすんで生気のない皮膚に対抗すること、及び皮膚の弾力性及び/又は張性の欠如に対抗することのうちの少なくとも1つが含まれる、請求項19又は20に記載の使用。
【請求項22】
前記皮膚用組成物は医薬組成物であり、かつ皮膚の外観を改善することには、皮膚病変の治療、皮膚の完全性の回復、創傷治癒の促進、皮膚病変によって引き起こされる局所炎症及び/又は局所疼痛の緩和のうちの少なくとも1つが含まれる、請求項19又は20に記載の使用。
【請求項23】
皮膚の外観を改善するために皮膚を美容的又は医薬的に治療するための方法であって、請求項1~10のいずれか一項に記載の皮膚用組成物を皮膚に適用することを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、皮膚治療、特に美容目的の皮膚治療に適した組成物に関する。これらの皮膚用組成物の調製方法もまた開示される。
【背景技術】
【0002】
皮膚は外部環境の危険から体を守る重要な役割を果たしている。また、小ジワから深いシワに至る、皮膚のたるみにつながる弾力性、張性、及びハリの低下、並びに表面のシミ又は病変など、老化の最も目に見える兆候もまた現れる。
【0003】
皮膚は内的要因及び外的要因の結果として変化する。本質的な老化要因には、遺伝、細胞代謝、ホルモン、及び代謝過程が含まれる。このような要因は、皮膚の構造的完全性を確保するために広く存在するタンパク質であるコラーゲン及びエラスチンの産生低下、並びにエラスチン及びコラーゲンとともに皮膚マトリックスに寄与する水結合分子であるグリコサミノグリカン(glycosaminoglycan:GAG)の産生低下を引き起こす可能性がある。汗腺及び脂腺の機能低下は別の内因性プロセスであり、これもまた年齢とともに皮膚が薄くなり、かつもろくなる一因となる可能性がある。外因性要因には、慢性的な光曝露、喫煙、公害、電離放射線、化学物質、毒素などが含まれる。これらは通常、皮膚の一番外側の層(角質層)の肥厚、前がん性変化(皮膚がんをもたらす可能性が高い)、そばかす及び日焼けによるシミの形成、並びにコラーゲン、エラスチン、及びGAGの過剰な喪失をもたらす。これらのプロセスは、共にあるいは単独で、皮膚に深いシワ、色ムラ、ざらつき、及び皮膚の薄さなどの外観を与える。コラーゲン、エラスチン、GAGは構造的皮膚高分子(structural skin polymer)と呼ぶことができ、健常な状態と病的な状態との両方で、皮膚の機械的特性をもたらすだけでなく生物学的機能を果たす。
【0004】
皮膚の老化を低減又は遅延するには、軽度の局所治療からより極端な外科的治療まで、多くのアプローチが存在する。老化の初期症状は、例えばレチノイド、ビタミンC、及びα-ヒドロキシ酸などの化粧品で処置(治療)することができる。ケミカルピーリング、ダーマブレージョン、マイクロニードル、超音波エネルギー機器、又はレーザーリサーフェシングは、中程度から重度の皮膚損傷に対するオプションとなり得る。例えば、ボツリヌス毒素、皮膚充填剤、あるいはコラーゲンそのものなど、加齢プロセスによって減少する皮膚タンパク質を注入することによって、より深い顔のシワを侵襲的に治療することができる。フェイスリフト、眉リフト、又はまぶたの美容整形手術などの外科的介入は、シワ及び皮膚のたるみに対して行われる、より極端な対策である。
【0005】
アンチエイジング治療に用いられるアプローチの1つは、in situでのコラーゲンの合成を高めることを含む。このような合成を誘導するための知られている薬剤は多数あり、経口、局所、又は非経口的に投与することができる。経口投与剤には、ビタミンC、朝鮮人参、及び食物由来の抗酸化物質(ブルーベリー、シナモン、特定のハーブなど)などの食品サプリメントが含まれる。アロエベラ及びレチノールは、皮膚に局所的に塗布するとコラーゲンの合成を促進することが知られている薬剤の2種である。一方、ハイドロキシアパタイトは、注入による投与の場合のみ、そのような効果を得ることができる。
【0006】
非経口投与(痛み及び感染のリスクを伴う)又は経口投与(有効性を保持するために初回通過代謝を克服する必要がある)される組成物と比較して、局所用組成物は適用が便利であり、並びにより安全であると考えられている。それゆえ、有効性が向上した注入用組成物が依然として求められている一方で、特に上述の治療などの抗老化治療には、局所用組成物がより望まれている。
【0007】
しかしながら、皮膚への浸透を可能にするためには、このような局所用組成物の美容的活性薬剤(すなわち、薬用化粧品(cosmeceutical))又は医薬的活性薬剤(すなわち、医薬品(pharmaceutical))は、皮膚バリアを貫通し、かつ満足のいく経皮送達を達成することができるように、十分に小さくなければならない(一般的には、500g/molの分子量を有する)。そのような薬剤は、好ましくは、ナノ材料(物質)の形態であり、例えば、ナノファイバー、ナノ乳濁液、ナノスフェア、ナノカプセル、ナノ結晶、デンドリマー、リポソーム、ナノチューブなどが挙げられ、例えば、Souto E.B.らによる総説;「Nanomaterials for Skin Delivery of Cosmeceuticals and Pharmaceuticals」;Applied Sciences、2020年、10巻(5)、1594に記載されている。
【0008】
構造的皮膚タンパク質の合成を強化することが知られている上記の例示的な化合物以外に、ポリマー(タンパク質、及びペプチドとして知られるそれらの断片化型/短縮型を含む)もまた、コラーゲン、エラスチン、GAG、又は皮膚の構造的及び機能的完全性の維持に関与する他のそのような分子の産生を促進することが報告されている。他の高分子(又は同じ高分子)は、天然の皮膚タンパク質の劣化につながるプロセス又は酵素(例えば、プロテアーゼ)を(代替的又は付加的に)阻害することができる。例えば、いくつかのペプチドはコラーゲンの新合成を強化すると報告されており、一方、他のペプチドはコラーゲン分解の原因となる酵素であるコラゲナーゼを阻害すると報告されている。
【0009】
生物学的活性の種類に関係なく、そのような物質(ポリマーであるかどうかにかかわらず)は、構造的皮膚タンパク質の新合成を正に刺激する可能性、及び/又はそのような皮膚タンパク質のダウンレギュレーターを負に阻害する可能性があり、最終的な結果は、皮膚タンパク質の量の減少の低減又は遅延、そのレベルの維持、又はさらにその存在の増加にまで及び得る。このような薬剤は、本明細書ではコラーゲン合成刺激化合物(collagen-synthesis stimulating compound:CSSC)、又は特にコラーゲン合成刺激ポリマー(collagen-synthesis stimulating polymer:CSSP)と呼ぶことができ、このような薬剤のコラーゲンに関する活性には、その新合成の刺激だけでなく、代替的又は付加的にその分解の防止も含まれる。
【0010】
「ボリューマイザー(volumizer)」とも呼ばれる皮膚充填剤は、皮膚表面のシワ、くぼみ、又は折り畳まれたシワの下又は周囲のくぼみを埋めることによって、一時的にシワを「軟化」させる。皮膚充填剤は、自然に消失する構造的皮膚ポリマーを置き換えることによって皮膚を若返らせ、目に見える老化の兆候の出現を遅らせる程度へそのレベルを回復することができる。このような皮膚マトリックス成分は比較的に高分子量のポリマーであるため、それらの置き換えには一般に注入が必要であり、この方法は比較的に高価で、コンプライアンス上の問題を引き起こす。ヒアルロン酸(HA)を例にとると、通常500キロダルトン(kDa)以上の比較的に高い分子量を持つポリマーの形で皮膚に存在する。その大きさのために、これらの分子は一般的に皮膚バリアを通過することができないため、経皮適用でHAを送達することを目的とした化粧品組成物は一般的に、比較的に低い分子量を有する異なるクラスのポリマーを指す。HAの生理学的役割の可能性、あるいはその相対的な効力はポリマーの大きさによって異なり、大きいものは保水力が強く、小さいものは構造的皮膚ポリマーの新合成を強化するのにより有効であると考えられている。
【0011】
従って、製品の効力にさらなる影響を与えるであろう多くの因子のうち分子量パラメーターを考慮すると、簡単に言えば、コンプライアンス(低分子量(low molecular weight:LMW)のHAの増加)と有効性(高分子量(high molecular weight:HMW)のHAの増加)の間に矛盾がある。HAは、化粧品領域で注目されている唯一のポリマーであるということからは程遠く、局所適用によって達成されるような簡便な送達を確保すると同時に、経皮浸透後に十分な又は増強した有効性を達成するのに十分に高い分子量を持つ分子を使用するという同様の問題に直面している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Souto E.B.ら;「Nanomaterials for Skin Delivery of Cosmeceuticals and Pharmaceuticals」;Applied Sciences、2020年、10巻(5)、1594
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
皮膚の完全性(機能及び/又は構造)を可能な限り長く維持し、UV又は有毒酸素生成物などの環境因子から保護し、皮膚の乾燥状態を軽減し、又は皮膚の老化の徴候と戦うために、皮膚用の医薬又は化粧品的な製品が常に必要とされるため、上記の問題の少なくともいくつかを解決する皮膚用組成物を提供する必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
有利には、新規組成物は、単独であれ、有益な皮膚科学的活性を有する追加成分との組み合わせであれ、CSSCのより高い添加量(ローディング)、及び/又は比較的に高い平均分子量を有するCSSC(特にCSSP)の送達を可能にするであろう。
【0015】
図面の簡単な説明
次に、本開示のいくつかの実施形態を、例示として、添付の図を参照してさらに説明するが、ここで、同じ参照数字又は文字は、対応又は同じ構成要素を示す。本明細書は、図とともに、本開示のいくつかの実施形態がどのように実施され得るかを当業者に明らかにする。図は説明のためのものであり、より詳細な実施形態の構造的詳細を示そうとするものではなく、本開示の基本的理解に必要なものである。明確さ及び表示の便宜のため、図に描かれている物体の一部は必ずしも縮尺通りに示されていない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本教示の実施形態による皮膚用組成物を調製するための方法の簡略化された概略図を示す。
図2図2は、本方法の一実施形態により調製したナノ分散液中のPCLのナノ粒子の粒度分布を、DLSによって測定し、体積あたりで示す図である。
図3図3は、本方法の一実施形態により調製したナノ分散液中のPCLのナノ粒子のCryoTEM像であり、そのPSDは図2に先に示した。
図4図4は、ベースライン値に対するパーセンテージで示される、プラセボ組成物によって治療した群と比較される本教示の実施形態による皮膚用組成物によって治療した群における顔のシワの数の経時的変化を示す折れ線グラフである。
図5AB図5Aは、本教示による皮膚用組成物を適用する前のボランティアの皮膚におけるコラーゲンのレベルを示す画像である(「ベースライン」と称する)。図5Bは、本教示による皮膚用組成物の適用1ヵ月後に観察されるとおりの図5Aと同じボランティアの皮膚におけるコラーゲンのレベルを示す画像である。
図6AB図6Aは、本教示による皮膚用組成物を適用する前の線とシワを示すボランティアの顔の写真である(「ベースライン」と称する)。図6Bは、図6Aの写真に示された線とシワの概略図である。
図7AB図7Aは、本教示の実施形態による皮膚用組成物の適用3ヶ月後の図6Aに示されるのと同じボランティアの顔の写真であり、線及びシワの減少を示す。図7Bは、図7Aの写真に示された、減少した線及びシワの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
概要
本発明の態様は、極性担体中にナノ粒子又はナノ液滴として分散された、コラーゲン合成刺激ポリマー(CSSP)などの水不溶性コラーゲン合成刺激化合物(CSSC)を含む皮膚用組成物に関する。とりわけ、CSSC分子又はCSSP分子の分子量は0.6kDa以上である。一般的には、前記組成物は、CSSC、担体、又はその両方とともに少なくとも1つの界面活性剤を含み、CSSC又はCSSPに加えて、本明細書で以下に規定するとおりの少なくとも1つの活性剤を任意に含有することができる。
【0018】
これらの皮膚用組成物は、特に、CSSC(複数可)(例えば、CSSP(複数可))及び/又は特定の活性剤(複数可)の皮膚への現在の送達に関連する欠点の少なくともいくつかを克服するために開発されたものであり、局所適用による経皮送達が好ましいが、注入による非経口送達への適性が除外されるわけではない。また、このような局所用又は注入用の皮膚用組成物を調製する方法も開示されている。
【0019】
本開示の第1の態様において、0.6kDa以上の分子量を有する水不溶性生分解性コラーゲン合成刺激化合物(CSSC)のナノ要素(すなわち、ナノ粒子又はナノ液滴)を含む皮膚用組成物が提供され、前記ナノ要素は、極性担体中に分散され、かつ平均直径(例えば、Dv50)が200ナノメートル(nm)以下である。
【0020】
本開示の第2の態様において、不揮発性液体によって可塑化された水不溶性生分解性CSSCのナノ要素を含む皮膚用組成物が提供され、前記CSSCは0.6kDa以上の平均分子量を有し、可塑化されたCSSCのナノ要素は、極性担体中に分散され、かつ平均直径(例えば、Dv50)が200nm以下である。
【0021】
いくつかの実施形態では、CSSC(及び/又は可塑化されたCSSC)は、以下の構造特性の少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は少なくとも3つによって特徴付けられる:
i. CSSC及び/又は可塑化されたCSSCは極性担体に不溶であること;
ii. CSSC及び/又は可塑化されたCSSCは融解温度(melting temperature:Tm)、軟化温度(softening temperature:Ts)、又はガラス転移温度(glass transition temperature:Tg)の少なくとも1つが、高くとも300℃、高くとも250℃、高くとも200℃、高くとも180℃、高くとも150℃、又は高くとも120℃であり、前記温度は、CSSCの第1の(すなわち、天然の)Tm、Ts、又はTg、又は可塑化された場合のCSSCの第2のTm、Ts、又はTgのいずれか、又はその両方であること;
iii. CSSCは、低くとも20℃、低くとも30℃、低くとも40℃、低くとも50℃、又は低くとも60℃の第1及び/又は第2のTm又はTsを有すること;
iv. CSSCは、-75℃以上、-50℃以上、-25℃以上、0℃以上、20℃以上、30℃以上、40℃以上、50℃以上、又は60℃以上の第1及び/又は第2のTgを有すること;
v. CSSCは、20℃~300℃、20℃~250℃、20℃~200℃、30℃~180℃、40℃~180℃、又は50℃~150℃の第1及び/又は第2のTm、Ts、及びTgの少なくとも1つを有すること;
vi. CSSCは、0.7kDa以上、0.8kDa以上、0.9kDa以上、1kDa以上、2kDa以上、又は5kDa以上の分子量を有すること;
vii. CSSCは、500kDa以下、300kDa以下、200kDa以下、100kDa以下、80kDa以下、50kDa以下、25kDa以下、又は15kDa以下の分子量を有すること;及び
viii. CSSCは、0.6kDa~500kDa、0.7kDa~300kDa、0.8kDa~200kDa、1kDa~100kDa、又は2kDa~80kDaの分子量を有すること。
【0022】
いくつかの実施形態では、CSSC及び可塑化されたCSSCのうちの少なくとも1つによって満たされる少なくとも1つの構造特性は:上記の特性i)であり、上記の特性ii)であり、上記の特性iii)であり、上記の特性iv)であり、上記の特性v)であり、上記の特性vi)であり、上記の特性vii)であり、又は上記の特性viii)である。
【0023】
いくつかの実施形態では、CSSC及び可塑化されたCSSCのうちの少なくとも1つによって満たされる少なくとも2つの構造特性は、上記特性のうち、特性i)及びv)であり、特性i)及びviii)であり、又は特性v)及びviii)である。
【0024】
いくつかの実施形態では、CSSC及び可塑化されたCSSCのうちの少なくとも1つによって満たされる少なくとも3つの構造特性は、上記の特性のうち、特性i)、ii)及びv)であり;特性i)、ii)及びviii)であり;特性i)、iii)及びviii)であり;特性i)、iv)及びviii)であり;特性i)、v)及びvi)であり;特性i)、v)及びvii)であり;又は特性i)、v)及びviii)である。
【0025】
特定の実施形態では、CSSCはCSSPであり、この化学化合物は繰り返し構造単位から形成されるポリマーであり、そのようなモノマーは同一(ホモポリマー)又は異なる(ランダム又はブロックコポリマー)のいずれかである。別の特定の実施形態では、CSSPのポリマーは熱可塑性ポリマーである。非高分子化合物の分子量は通常最大2kDaであり、一般的には1kDaを超えないが、CSSPは少なくとも数kDaのより大きな分子であり得る。
【0026】
本明細書で使用されるとおり、特に、(可塑化又は非可塑化)CSSCを含有する構造体に関して使用される「ナノ要素」という用語は、200nm以下、150nm以下、100nm以下、75nm以下、又は50nm以下の平均直径を有する相対的固体ナノ粒子又は相対的液体ナノ液滴を指し、このような構造体は、均一な媒質中に(例えば、ナノサイズ化の結果として)分散され、そこにナノ懸濁液を形成する。このようなナノ要素は、一般的に平均直径2nm以上、5nm以上、10nm以上、15nm以上、又は20nm以上である。いくつかの実施形態では、本教示による組成物のナノ要素の平均直径は、2nm~200nm、5nm~150nm、10nm~100nm、15nm~75nm、又は20nm~50nmである。ナノ要素の平均直径は、任意の適切な方法によって決定することができ、動的光散乱(DLS)によって測定され、ナノ要素の体積50%について定められる要素の流体力学的直径(D50)を指し得る。
【0027】
それらの意図される使用及び/又は調製方法を考慮すると、本発明に適したCSSCは、有利には室温(約20℃)で、及び体温(例えば、ヒト対象では約37℃)まで相対的固体である。このような優先事項は、不揮発性液体とその相対量、又は製品の熱挙動に影響を与える任意のその他の物質の存在がさらに考慮される可塑化されたCSSCにも拡張される。当業者に理解され得るとおり、CSSCは熱可塑性ポリマーであり得るため、任意の特定の温度にて、そのような物質の「相対的固体性」、又はそのような物質が「相対的に固体」であるということは、それらが必ずしも固体ではなく、粘弾性挙動を示すということを指す。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、CSSCのこのような特徴は、必要な程度まで、それから作成されるナノ要素が相対的非粘着性であることを確実にする必要があり、これにより本教示による組成物中での均一な分配を容易にする。
【0028】
いくつかの実施形態では、CSSCの第1(天然)の粘度は、50℃及びせん断速度10秒-1(sec-1)で測定する場合、10ミリパスカル・秒(mPa・s)以下、10mPa・s以下、10mPa・s以下、10mPa・s以下、又は10mPa・s以下である。
【0029】
他の実施形態では、CSSC、一般的にはCSSP、の第1の(天然)の粘度は、前述の測定条件下で10mPa・sより高く、例えば最大1011mPa・sであり、この場合、CSSCを、粘度を下げ、本皮膚用組成物へのナノ要素としてのそのプロセス及び取り込みを促進するようにCSSCを可塑化又は膨潤化させる目的で、不揮発性液体と組み合わせることができる。従って、このような実施形態では、該組成物は、50℃、せん断速度10秒-1で測定する場合、CSSCの第1(天然)の粘度を、10mPa・s以下の第2(可塑化)の粘度まで少なくとも低下させるのに適した量の不揮発性液体をさらに含有する。
【0030】
いくつかの実施形態では、不揮発性液体によって可塑化されたCSSC(本明細書において、「可塑化(可塑化された)」又は「膨潤化(膨潤化された)」CSSCと称される)は、第1の粘度と比較して低下した「第2」の粘度を示し、このCSSCの第2の粘度は、50℃の温度及び10秒-1のせん断速度で測定する場合、10mPa・s以下、10mPa・s以下、10mPa・s以下、又は10mPa・s以下である。
【0031】
本発明の皮膚用組成物はナノ懸濁液の形態である。CSSC(可塑化されるもの、又は天然での所望の粘度を有するもののいずれか)のTm又はTsに応じて、該組成物は室温でナノ分散液の形態で存在することができ(すなわち、Tm又はTsが20℃を超える場合、例えば25℃~80℃の場合)、ナノ要素は相対的固体のナノ粒子であるか、又はナノ乳濁液の形態において(すなわち、Tm又はTsが20℃未満である場合)、ナノ要素は相対的液体のナノ液滴である。
【0032】
いくつかの実施形態では、CSSCは可塑化されており、(単独で、又は混合物としてそれに添加される任意の物質と組み合わせて)可塑化されていない天然CSSCの第1のTm、Ts、又はTgのそれぞれよりも低い第2のTm、Ts、又はTgのうちの少なくとも1つを示し、少なくとも1つの第2のTm、Ts、又はTgは、20℃以上、30℃以上、40℃以上、50℃以上、又は60℃以上である。他の実施形態において、可塑化又は膨潤化CSSCの第2のTm、Ts、又はTgのうちの少なくとも1つは、高くとも300℃、高くとも250℃、高くとも200℃、高くとも190℃、高くとも180℃、又は高くとも170℃である。いくつかの実施形態では、可塑化又は膨潤化CSSC、及び/又はそれを含む混合物は、第2のTm、Ts、又はTgのうちの少なくとも1つが、0℃~290℃の範囲、10℃~250℃、20℃~200℃、30℃~190℃、40℃~180℃、又は50℃~170℃の範囲にある。
【0033】
いくつかの実施形態では、CSSCはキノンであり、特にユビデカレノンであり、1,4-ベンゾキノン又はコエンザイムQ10(CoQ10)とも呼ばれる。
【0034】
他の実施形態では、CSSCはCSSPであり、このポリマーは以下を含むポリマー類の群から選択される:ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(L-ラクチド)(PLLA)、ポリ(D-ラクチド)(PDLA)、ポリ(D,L-ラクチド)(PDLLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(p-ジオキサノン)(PPDO)、及びポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)などの脂肪族ポリエステル;ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリ-3-ヒドロキシブチレート(P3HB)、ポリ-4-ヒドロキシブチレート(P4HB)、ポリヒドロキシバレレート(PHV)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)(PHBV)、ポリヒドロキシヘキサノエート(PHH)、及びポリヒドロキシオクタノエート(PHO)などのポリヒドロキシ-アルカノエート;ポリ(ブチレンサクシネート)(PBS)、ポリ(ブチレンサクシネート-コ-アジペート)(PBSA)、及びポリ(エチレンサクシネート)(PES)などのポリ(アルケンジカルボキシレート);ポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)、ポリ(プロピレンカーボネート)(PPC)、及びポリ[オリゴ-(テトラメチレンサクシネート)-コ(テトラメチレンカーボネート)などのポリカーボネート;ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)及びポリ(ブチレンアジペート-コ-テレフタレート)(PBAT)などの脂肪族-芳香族コポリエステル;これらの異性体、これらの共重合体、及びこれらの組み合わせ。
【0035】
特定の実施形態では、CSSCはCoQ10であり、又は脂肪族ポリエステルであるCSSPである。さらなる特定の実施形態において、CSSPの脂肪族ポリエステルは、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、それらの異性体、それらのコポリマー、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0036】
いくつかの実施形態では、CSSCの第1(天然)の粘度、Tm、Tg、及びTsのうちの少なくとも1つを低下させるCSSCに添加され得る不揮発性液体は、単官能及び多官能脂肪族エステル、脂肪エステル、環状有機エステル、脂肪酸、テルペン、芳香族アルコール、芳香族エーテル、アルデヒド、及びそれらの組み合わせを含む群から選択される。特定の実施形態において、不揮発性液体は、アジピン酸ジブチル、安息香酸C12~C15アルキル及び炭酸ジカプリリルから選択される。
【0037】
いくつかの実施形態では、CSSCを含むナノ要素が分散される極性担体には、水、グリコール(例えば、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、及び2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール)、グリセロール、その前駆体及び誘導体、本明細書において集合的に「グリセロール」と称されるもの(例えば、アクロレイン、ジヒドロキシアセトン、グリセリン酸、タルトロン酸、エピクロロヒドリン、グリセロール第三級ブチルエーテル、ポリグリセロール、グリセロールエステル、及びグリセロールカーボネート)、及びそれらの組み合わせが挙げられる。特定の実施形態では、極性担体は水を含むか、水からなるか、あるいは水である。
【0038】
いくつかの実施形態では、皮膚用(例えば、局所用)組成物は、乳化剤及びハイドロトロープ(Hydrotrope)から選択される少なくとも1つの界面活性剤をさらに含む。界面活性剤(複数可)は、CSSCを含有するナノ要素中(例えば、極性担体不溶性界面活性剤である場合)、極性担体を含有する液相中(例えば、極性担体可溶性界面活性剤である場合)、又はその両方(例えば、中間乳化剤(intermediate emulsifier)である場合)に存在することができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの界面活性剤は、以下を含む群から選択される乳化剤である:アルキル硫酸塩、スルホコハク酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アシルメチルタウリン酸塩、アシルサルコシン酸塩、イセチオン酸塩、プロピルペプチド縮合物、モノグリセリド硫酸塩、エーテルスルホン酸塩、エステルカルボン酸塩、脂肪酸塩、第4級アンモニウム化合物、ベタイン、アルキルアンホプロピオネート、アルキルイミノプロピオネート、アルキルアンホアセテート、脂肪アルコール、エトキシル化脂肪アルコール、ポリ(エチレングリコール)ブロックコポリマー;エチレンオキシド(EO)/プロピレンオキシド(PO)コポリマー、アルキルフェノールエトキシレート、アルキルグルコシド及びポリグルコシド、脂肪アルカノールアミド、エトキシル化アルカノールアミド、エトキシル化脂肪酸、ソルビタン誘導体、アルキル炭水化物エステル、アミンオキシド、セテアレス、オレス、アルキルアミン、脂肪エステルエステル、ポリオキシルグリセリド、天然油脂誘導体、カルボン酸エステル、及び尿素。
【0040】
いくつかの実施形態では少なくとも1つの界面活性剤は、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、尿素、トシル酸ナトリウム、アデノシン三リン酸塩、クメンスルホン酸塩、並びにトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、及びクメンスルホン酸の塩(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム)を含む群から選択されるハイドロトロープである。
【0041】
いくつかの実施形態では、皮膚用(例えば、局所用)組成物は、少なくとも1つの皮膚浸透促進剤をさらに含む。このような薬剤は通常、CSSCを含むナノ要素が分散している液相中に見出される。
【0042】
いくつかの実施形態では、皮膚用(例えば、局所用)組成物は、ナノ要素内に少なくとも1つの活性剤をさらに含み、この活性剤は、ナノ要素が分散された極性担体に実質的に不溶性である。
【0043】
いくつかの実施形態では、皮膚用(例えば、局所用)組成物は、極性担体を含む液相内に少なくとも1つの活性剤をさらに含み、活性剤は極性担体に可溶性である。
【0044】
本明細書で使用されるとおり、物質は、温度20℃において極性担体の重量に対して5wt%未満(より一般的には、4wt%未満、3wt%未満、2wt%未満、1wt%未満、又は0.5wt%未満)に担体内に溶解性(溶解度)を有して浸漬される場合、液体担体に不溶であるとみなされ、例えば、「極性担体不溶性活性薬剤」(又は「担体不溶性活性薬剤」)であるとみなされる。
【0045】
逆に、20℃の温度において極性担体の重量に対して5wt%以上(より一般的には、6wt%以上、7wt%以上、8wt%以上、9wt%以上、又は10wt%以上)に担体内に溶解性を有して浸漬される場合、その物質は液体担体に可溶であるとみなされ、例えば「極性担体可溶性活性剤」(又は「担体可溶性活性剤」)であるとみなされる。当業者には理解されるとおり、求められる活性を有する一部の物質は、ある化学形態では極性担体不溶性であり得、別の化学形態では極性担体可溶性であり得、物質の塩は一般的にその溶解性を増加させる。
【0046】
いくつかの実施形態では、皮膚用(例えば、局所)組成物は、CSSCに加えて2つ以上の活性薬剤を含み、該活性薬剤は同じ相又は異なる相のいずれかに存在する。例えば、担体不溶性である第1の活性剤をナノ要素内に含有させ、担体可溶性である第2の活性剤を極性担体相内に含有させることができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの担体不溶性活性剤は、過酸化ベンゾイル、エリスロマイシン、マクロライド、レチノール、サリチル酸、テトラサイクリン、トレチノイン、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンK、及び極性担体に不溶性の植物抽出物を含む群から選択され、このような活性剤は、特に皮膚に有益な抗アクネ、抗酸化、抗炎症、及び/又は抗老化活性を有する。特定の実施形態では、CSSCのナノ要素に取り込むことができる担体不溶性活性剤はレチノールである。
【0048】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの担体可溶性活性剤は、アゼライン酸、ビオチン、クリンダマイシン、コラーゲン、エラスチン、フォラシン、ヒアルロン酸(HA)、ナイアシン、パントテン酸 リボフラビン、チアミン、ビタミンB12、ビタミンB6、ビタミンC、及び極性担体に可溶な植物抽出物を含む群から選択され、このような活性剤は、皮膚に有益な抗アクネ、抗酸化、抗炎症、及び/又は抗老化活性を有する。特定の実施形態では、CSSCのナノ要素が分散されている極性担体に溶解可能な担体溶解性活性剤はHAである。
【0049】
有利には、本発明の皮膚用(例えば、局所用)組成物は、そのような成分を含む従来の局所用組成物と比較して、比較的に高濃度(例えば、1wt%以上)のCSSC(例えば、CSSP)及び/又は比較的に高濃度(例えば、1wt%以上)の任意の活性剤(例えば、レチノール又はHA)を有することができ、及び/又は前記CSSC(複数可)及び/又は任意の活性剤(複数可)は比較的に高い分子量を有することができる。理論に束縛されることを望むものではないが、CSSC及び/又は任意の活性剤の添加量(loading)が相対的に高いこと、及び/又はその効力が相対的に高いこと(MWに依存する場合)は、濃度の高い勾配を提供し、経皮送達を有利にし、かつ最終的に美容的又は医薬的な有効性を有利にすると予想される。
【0050】
本明細書に開示された寸法範囲内の粒径を有するCSSCのナノ粒子又はナノ液滴は、本発明者らによって予想外に見出すことに成功したことに留意されたい。なぜなら、そのような形態のCSSCは、特に可塑化されたCSSPである場合には、予期される粘着性に照らして凝集することが予想されるためである。
【0051】
本開示の第3の態様において、水不溶性CSSCを含む皮膚用組成物を調製するための方法が提供され、該方法は、以下の工程を含む:
a)水不溶性CSSCを提供する工程であって、ここで:
i. 前記CSSCは生分解性であり;
ii. 前記CSSCは、少なくとも0.6kDaの分子量を有し;
iii. 前記CSSCは、300℃以下の第1のTm、Ts、又はTgのうちの少なくとも1つを有し;及び
iv. 前記CSSCは、50℃、せん断速度10秒-1で測定する場合、任意に10mPa・sより高い第1の粘度を有する、
前記工程;
b)前記CSSCをそれと混和性のある不揮発性液体と、及び任意に少なくとも1つの界面活性剤と混合する工程であって、前記混合は、50℃かつせん断速度10秒-1で測定する場合、前記CSSCの第1のTm、Ts、又はTgのうちの少なくとも1つに等しい、又はそれより高い混合温度で行われ、それによって均質な可塑化されたCSSCが形成され、前記可塑化されたCSSCは、前記第1のTm、Ts、又はTgのそれぞれよりも低い第2のTm、Ts、又はTg、及び第1の粘度よりも低い第2の粘度を有し、前記第2の粘度は10mPa・s以下である、前記工程;
c)(任意に少なくとも1つの界面活性剤を含有する)前記可塑化されたCSSCを極性担体と組み合わせる工程;及び
d)ナノ懸濁液を得るように、前記可塑化されたCSSCの第2のTm、Ts、又はTgのうちの少なくとも1つに等しい、又はそれより高いせん断温度でせん断を適用することによって、工程c)の組み合わせをナノサイズ化する工程であって、それによって、可塑化されたCSSCのナノ要素を極性担体中に分散し、前記ナノ要素は200nm以下の平均直径(例えば、Dv50)を有する、前記工程。
【0052】
第3の態様のいくつかの実施形態では、工程b)における混合温度は、不揮発性液体のわずかな部分だけ沸騰して蒸発する温度で混合が行われる限り、CSSCの第1のTm、Ts、又はTgの少なくとも1つより5℃以上、10℃以上、20℃以上、30℃以上、又は40℃以上高い。不揮発性液体が混合工程の圧力で沸騰温度Tbを有すると仮定すると、いくつかの実施形態では、混合温度は不揮発性液体の沸騰温度Tbよりもさらに低い可能性がある。混合時間が十分に短い場合、及び/又は不揮発性液体が十分に過剰な場合、混合温度は代替的に沸騰温度Tb以上とすることができる。
【0053】
本開示の第4の態様において、水不溶性CSSCを含む皮膚用組成物を調製するための方法が提供され、該方法は、以下の工程を含む:
a)水不溶性CSSCを提供する工程であって、ここで
i. 前記CSSCは生分解性であり;
ii. 前記CSSCは、少なくとも0.6kDaの分子量を有し;
iii. 前記CSSCは、300℃以下の第1のTm、Ts、又はTgのうちの少なくとも1つを有し;及び
iv. 前記CSSCは、50℃及び10秒-1のせん断速度で測定した場合に10mPa・s以下の第1の粘度を有する、
前記工程;
b)CSSCを極性担体と、及び任意に少なくとも1つの界面活性剤と組み合わせる工程;及び
c)ナノ懸濁液を得るように、前記可塑化されたCSSCの第1のTm、Ts、又はTgのうちの少なくとも1つと等しい、又はそれより高いせん断温度でせん断を適用する工程であって、これにより、CSSCのナノ要素を極性担体中に分散し、前記ナノ要素は200nm以下の平均直径(例えば、Dv50)を有する、前記工程。
【0054】
第3及び第4の態様のそれぞれのいくつかの実施形態では、せん断温度は、前記ナノサイズ化が、極性担体のわずかな部分だけ沸騰して蒸発する温度で実行される限り、可塑化されたCSSCの第2のTm、Ts、又はTgよりも(又は、非可塑化CSSCの場合には、第1のTm、Ts、又はTgよりも)5℃以上、10℃以上、20℃以上、30℃以上、又は40℃以上高い。極性担体がナノサイズ化工程の圧力にて沸騰温度Tbを有すると仮定すると、いくつかの実施形態では、ナノサイズ化工程が実施される圧力下で、せん断温度は不揮発性液体(添加される場合)の沸点Tb及び/又は極性担体の沸点Tbよりも5℃以上、10℃以上、20℃以上、30℃以上、又は40℃以上さらに低くてもよい。ナノサイズ化の時間が十分に短い場合、及び/又は極性担体が十分に過剰な場合、ナノサイズ化の温度は、代替的に沸騰温度Tb以上とすることができる。
【0055】
第3及び第4の態様のそれぞれのいくつかの実施形態では、得られたナノ懸濁液はナノ乳濁液であり、この方法は、得られたナノ乳濁液をCSSCの第1又は第2のTm、Ts、又はTgのうちの少なくとも1つよりも低い温度に冷却するさらなる工程を含む。このような冷却は、ナノサイズ化の終了時に受動的に生じる可能性があり、いくつかの実施形態では、ナノ懸濁液の温度は、時間とともに自然に室温まで低下するが、一方で冷却が任意の適切な冷却方法によってナノ乳濁液の温度を積極的に下げることによって行われる。さらに又は代替的に、冷却はせん断の継続下、又は組成物の撹拌を維持する任意の他の方法の下で行われる。本組成物は、その能動的又は受動的な冷却後もナノ乳濁液のままであり得るが、いくつかの実施形態では、本組成物はその後ナノ分散液であり得る。
【0056】
第3及び第4の態様のそれぞれのいくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも1つの極性担体不溶性活性剤をCSSC(複数可)(及び任意に不揮発性液体(複数可)及び/又は界面活性剤(複数可))と組み合わせることをさらに含み、前記組み合わせは、a)CSSCを不揮発性液体及び/又は少なくとも1つの界面活性剤と混合しながら(場合により);b)極性担体と組み合わせる前に(場合により)、極性担体不溶性活性剤を前記可塑化されたCSSCと混合することによって実施されるか;又はc)前記CSSC(任意に可塑化されたもの)を極性担体と混合しながら、又は組成物成分をナノサイズ化しながらCSSCを含むナノ要素を得るようにして実施され、ここで前記極性担体不溶性活性剤(複数可)は、ナノ要素に含まれるか(a)又はb)のように添加される場合)、又は極性液相に別に分散される(c)のように添加される場合)。
【0057】
第3及び第4の態様のそれぞれのいくつかの実施形態では、この方法は、極性担体内に少なくとも1つの極性担体可溶性活性剤を溶解させることをさらに含む。このような活性剤の溶解は、想定される工程で適用される温度、混合条件又はせん断条件に対する活性剤の耐性に応じて、皮膚用組成物の調製中の様々な工程で行うことができる。比較的に耐性のある活性剤は、CSSCを含むナノ要素を得るために、a)CSSC(又は可塑化されたCSSC)を極性担体と組み合わせながら;又はb)該組成物成分をナノサイズ化しながら、添加することができる。あるいは、極性担体に可溶な活性剤、特にせん断に感受性のある活性剤の場合は、得られたナノ懸濁液に溶解することができ、比較的に熱に感受性のある活性剤は、好ましくは冷却後にナノ乳濁液又はナノ分散液の極性担体に溶解する。
【0058】
第3及び第4の態様のそれぞれのいくつかの実施形態では、この方法は、極性担体に不溶性である第1の活性剤をCSSCと組み合わせることをさらに含み、この組み合わせは前述のとおり行われ、極性担体に、担体可溶性である第2の活性剤を前述のとおり溶解させ、これにより調製される皮膚用組成物は、CSSCを含有するナノ要素中に第1の活性剤を含み、ナノ要素が分散しているナノ懸濁液の極性担体相中に第2の活性剤を含む。
【0059】
第3及び第4の態様のそれぞれのいくつかの実施形態では、本方法は、ナノ懸濁液の極性担体相に対して皮膚浸透促進剤を添加することをさらに含む。このような皮膚浸透促進剤の添加は、皮膚用組成物の調製中の様々な工程で、かつ一般的に極性担体に可溶な活性剤を取り込むために上述のとおりに行うことが可能である。
【0060】
第3及び第4の態様の各々のいくつかの実施形態では、CSSC、極性担体、及び皮膚用組成物の調製のために所望される場合に不揮発性液体、界面活性剤、皮膚浸透促進剤、担体不溶性活性剤及び担体可溶性活性剤は、実質的に、上記及び本明細書において詳述したとおりである。
【0061】
この文脈において、化合物は、特に調製方法に関して、本発明における主な役割に従って単純化のために分類されているが、そのような機能は互いに排他的なものではないことに留意されたい。例として、CSSCを可塑化する役割を一般的に果たす不揮発性液体は、ナノ要素用の界面活性剤としての役割も果たすことがあり;並びに分散したナノ要素用の液体媒質としての役割を果たす極性担体(例えば、グリコール)、又はナノ要素の分散性を高めることを意図した界面活性剤(例えば、尿素)は、組成物が皮膚に適用されると、皮膚浸透促進剤としての役割をさらに果たすことがある。一方の役割の他方に対する優越は、それぞれの分野における素材固有の効力に依存する場合もあるが、組成物中の素材の相対的な存在にも依存する。例えば、液相のかなり豊富な部分(例えば、20wt%超過)を構成する場合に担体とみなされる物質は、その量が比較的に少なければ、異なる機能を果たすと考えることができ、そのような量によりその副次的な役割により適合する。
【0062】
いくつかの実施形態では、本発明の皮膚用組成物は、本明細書に開示される方法に従って調製することができ、そのような組成物中に従来存在する任意の添加剤をさらに含有することができる。
【0063】
本開示の第5の態様において、本発明の皮膚用組成物の使用が提供され、前記使用は、(特に、皮膚構造タンパク質の新合成を刺激することによる、及び/又はそれらの分解を防止するための)皮膚の外観を改善するための使用である。このような使用は、一般に哺乳類の対象(例えば、ヒト)であるが、必ずしもそうではない皮膚に対して、美容的又は医薬的な効果をもたらし得る。
【0064】
本発明の皮膚用組成物は、必要に応じて皮下に注入することもできるが、主な使用は皮膚上に適用するためのものであり、CSSC(及び組成物中に存在する任意の他の活性剤)の経皮送達を可能にするものである。本組成物は、皮膚に局所的に適用することができ、化粧品組成物(例えば、抗老化治療、皮膚保護治療、皮膚充填治療、皮膚平滑化治療などとして外観を改善させるためのもの)として、又は医薬組成物(例えば、障害を緩和又は治療するためのもの)として機能することができる。
【0065】
簡略化のために美容的とみなされる場合の本組成物の効果は、皮膚の老化を遅延させ、低減させ、又は予防するための「抗老化(アンチエイジング)」と称されるが、自然な時間依存性の皮膚の老化を導くプロセスと同様のプロセスは、例を挙げれば、変性障害、又は良性及び悪性の新生物などのさらなる状況に遭遇するためにこれは限定的に解釈されるべきではない。従って、簡潔にするために、本発明は、その美容的役割及び皮膚の外観の改善(又は外観の悪化の延期及び/又は減少)について詳述されるが、本明細書に開示される組成物及び調製方法は、少なくとも、本組成物によって回復され得る1つ又は複数の構造的皮膚タンパク質が病的に低減される状態の皮膚科学的治療の領域において、より広範な有益な影響を有し得る。
【0066】
従って、本明細書で開示されるとおりの(任意に本教示の方法によって調製される)極性担体中に分散された水不溶性CSSCのナノ要素を含む皮膚用組成物の使用は、皮膚の任意の望ましい美容的改善又は医薬的改善を達成する化粧品組成物又は医薬組成物の使用として広く理解されるべきである。本発明の組成物が有益であり得るそのような効果は、一般に、組成物によって治療される現象の原因にかかわらず、皮膚の外観の改善(例えば、シワ及び/又は小ジワの数の減少、皮膚の弾力性の改善、皮膚の張性の改善、衰えた皮膚に対抗すること、弛んだ皮膚に対抗すること、薄くなった皮膚に対抗すること、皮膚の色素沈着に対抗すること、創傷治癒の促進、皮膚の完全性の促進、皮膚病変による痛みの緩和などのための組成物の使用)によって示される。
【0067】
他の実施形態において、本発明の皮膚用組成物は、皮膚病変、開放創、炎症又は疼痛の局所治療のための医薬組成物として使用され得る。
【0068】
本開示の追加の目的、特徴、及び利点は、以下の詳細な説明に記載され、一部は、当業者に本明細書から容易に明らかになるか、又は記載の本明細書及び特許請求の範囲、並びに添付図面に記載される本開示を実施することによって認識されるであろう。本開示の実施形態の様々な特徴及びサブコンビネーションは、他の特徴及びサブコンビネーションを参照することなく採用することができる。
【0069】
詳細な説明
本発明は、コラーゲンの新合成を刺激し、及び/又はコラーゲンの分解につながるプロセスを阻害することができる水不溶性化合物(特に、ポリマー)のナノ要素、例えばナノ粒子又はナノ液滴、を含む皮膚用(例えば、局所用)組成物に関し、このCSSC(例えば、CSSP)を含む前記ナノ要素は、極性担体中にナノ懸濁液として分散されている。有利には、CSSCは、0.6kDa以上の分子量を有し、所望により、可塑剤又は膨潤剤とも称することもできる不揮発性液体によって可塑化又は膨潤化させることができる。任意に可塑化されたCSSCを含むナノ要素は、組成物中のナノ要素の分散性を可能にするか、又は増加させるため、及び/又は組成物の生物学的活性をさらに増強するか、又は改質するためにそれぞれ、それと混和できる界面活性剤及び/又は活性剤をさらに含むことができる。代替的に又は追加的に、界面活性剤(複数可)、活性剤(複数可)及び/又は皮膚透過促進剤(複数可)は、極性担体に可溶であれば、極性担体中に存在することができる。このような皮膚用組成物を調製する方法、及び美容効果又は医薬効果を目的としたその使用もまた開示される。
【0070】
少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本開示は、本明細書に規定される構成要素及び/又は方法の構造及び構成の細目に対する適用において必ずしも限定されないことを理解されたい。本開示は、他の実施形態が可能であり、又は様々な方法で実施又は実行することが可能である。本明細書で使用されている語句及び用語は、説明の目的のためのものであり、限定とみなされるべきではない。
【0071】
物質(材料)、方法、及び実施例を含む前述の一般的説明及び以下の詳細な説明はいずれも、本開示の単なる例示であり、特許請求される本発明の性質及び特徴を理解するための概要又は枠組みを提供することを意図したものであり、必ずしも限定することを意図したものではないことを理解されたい。
【0072】
生物活性及び生分解性
本発明で使用可能なCSSCは、皮膚内のコラーゲン形成を促進する能力、及び/又はその分解を防止する能力に対して選択される。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、このような化合物は、皮膚に適用され浸透すると、皮膚構造タンパク質の新合成に至る生物学的シグナルを引き起こすことができると考えられている。これらの化合物が生分解性である場合、例えば生分解性ポリマーである場合、CSSCは特定の生物学的メカニズムによって分解され、局所的な炎症を引き起こすことが可能である。このプロセスは、この炎症領域を治癒する目的のコラーゲンの形成を誘発し得、この新しく合成されたコラーゲンは、肌のハリにも貢献する。
【0073】
意図される使用を考慮すると、CSSCは一般的に、経皮送達後に見られるような生理学的環境において生体親和性及び生分解性である。適切なCSSCはまた、生体内運命及び身体からの予想される排泄に応じて、一般的文献において生体再吸収性又は生体吸収性と呼ばれることもあるが、簡略化のために、このような化合物はすべて、本明細書では概して「生分解性」と称する。CSSCは、その目的を果たした後、(例えば、環境中のバクテリアによる分解プロセスによって、あるいはin vivoでの酵素的又は代謝的プロセスによって)比較的に速やかに分解され、自然に副産物をもたらす場合、生分解性であると言われる。生分解性CSSCは知られており、新しいものが開発されている。様々な環境における関連生分解性は、多くの方法によって評価することができ、目的の条件によっては、ASTM F1635などの規格に基づいた手順又は規格に変更を加えた手順であり得る。
【0074】
適切な生理学的条件下での自然に分解する傾向にかかわらず、本発明に適合する生分解性CSSCは、貯蔵中及び適用中に、その意図する使用に対して十分な安定性及び耐久性を有する必要があり、この使用が生分解性を高めるような条件を含む場合には、これは特に困難となり得る。例えば、CSSCを含有する局所用組成物を皮膚上に薄い層として広げると、高い表面領域が形成されることが予想されるが、これにより、CSSCが皮膚に浸透してその標的に到達可能になる前に、CSSCの分解を促進する因子(例えば、光、化学物質、又は微生物)に対する生じた層の曝露が増大する可能性があり、したがって、本発明の皮膚用(例えば、局所用)組成物に適したCSSCの選択は、これらの因子を考慮する必要がある。
【0075】
不溶性
生分解性に加えて、CSSCは、好ましくは、極性担体(例えば、水)を含む組成物の液相中に実質的に非溶解性であり、極性担体中にナノ要素として分散される。
【0076】
本明細書で使用されるとおり、物質(例えばCSSC、不揮発性液体、又は活性剤)の溶解性(溶解度)とは、液体媒質の透明性を維持しながら、液体(例えば、極性)担体に導入することができるそのような成分の量を指す。任意の特定の液体中の組成物の特定の成分の溶解度は、一般的には、組成物の他の可能な成分が存在しない極性担体中だけで評価されるが、代替的に担体を含む液相の最終組成に関して決定されてもよい。
【0077】
CSSC(又は本発明に関与する任意の他の物質)は、極性担体又はそれを含む液相における溶解度が、担体又は液相の重量に対して5wt%以下、4wt%以下、3wt%以下、2wt%以下、1wt%以下、0.5wt%以下、又は0.1wt%以下である場合、不溶性であるとみなされる。例えば、極性担体に非溶解性の物質は、100gの担体に5g以下しか溶解しない。この実質的な不溶性は、一般的には室温で測定されるが、好ましくは、これらの成分が組み合わされ、かつ処理されるあらゆる温度で、すなわち、比較的に高温であっても適用されるべきであり、極性担体中のこれらの化合物の溶解度は必要な範囲内にとどまる必要がある。これらの条件を満たす物質を「極性担体不溶性」物質と呼ぶことができる。
【0078】
このような物質の不溶性は、CSSCの1つ又は複数(又は、任意に可塑化されたCSSC混合物、又は界面活性剤及び/又は担体不溶性活性剤をさらに含むCSSC混合物のナノ要素の構成成分の他のいずれか1つ)の周囲媒質への溶出を防止することが期待される。このような溶出は、極性担体に可溶な物質であれば、ナノ要素の構成成分の相対的な割合、そのサイズ、又は最終的に組成物の有効性に悪影響を及ぼす可能性のある他のそのようなパラメーターに影響を及ぼす可能性がある。
【0079】
CSSCがナノ要素として分散される極性担体を含む極性液相の組成にかかわらず、CSSCは第1に、水不溶性(すなわち、室温で一般的に確立される水への溶解度が5wt%未満)であるとして特徴付けることができる。
【0080】
分子量
有利なことに、本発明は、皮膚バリアを十分に従来的に透過して何らかの有効性を示す可能性がある化合物と比較して、比較的に高分子量を有するCSSCの送達を可能にする。本発明の組成物、方法、及び使用に適切なCSSCは、0.6kDa以上、0.7kDa以上、0.8kDa以上、0.9kDa以上、1kDa以上の分子量(MW)を有することができ、CSSPはまた、2kDa以上、5kDa以上、又は10kDa以上を示す。一般的には、化合物がポリマーでない場合、その分子量は2kDaを超えず、CSSPは最大500kDaの分子量に達し、一般的には300kDa以下、200kDa以下、100kDa以下、80kDa以下、50kDa以下、25kDa以下、又は15kDa以下である。別の実施形態では、CSSCの分子量は0.6kDa~500kDa、0.7kDa~300kDa、0.8kDa~200kDa、1kDa~100kDa、又は2kDa~80kDaである。
【0081】
本明細書で使用されるとおり、「分子量」(又は「MW」)という用語は、非ポリマー性CSSCについて計算できる実際の分子量も指し、これはグラム/モルで表すこともでき、又はCSSPの重量平均MWも指し、これは、それぞれがわずかに異なる数の繰り返し単位を含むポリマーの混合であってもよく、ポリマーの重量平均MWは、一般的にはダルトンで表される。
【0082】
CSSCの分子量は、その供給業者から提供され得、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、サイズ排除クロマトグラフィー、光散乱又はマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間質量分析法MALDI-TOF MSなどを含む標準的な方法によって独自に決定することができ、これらの方法のいくつかはASTM D4001又はISO 16014-3に記載されている。
【0083】
特徴付け温度
非高分子化合物の大部分は、固相から液相に変化する融解温度によって特徴付けることができるが、高分子化合物は、Tmがない非晶質で純粋な非晶質ポリマーの場合、追加的又は代替的にガラス転移温度によって定義することができる。純粋な結晶性ポリマーはそのTmによって特徴付けることが可能であり、半結晶性ポリマーは分子内の非晶質部分と結晶質部分とのそれぞれの割合を反映する2つの特徴付け温度(例えばTgとTm)を示すことが多い。このようなポリマーはまた、融解までのlogステップの途中の軟化温度Tsによって定義することもできる。ガラス転移温度はガラス状態からゴム状態への転移を表し、軟化温度は物質の熱分析における中間的な変曲点を表すため、一般的にこれらの温度はそのプロセスが最初に観察されるであろう温度範囲又は温度に関連する。
【0084】
従って、CSSCの化学的性質に応じて、その熱的挙動を特徴付け得る温度は、融解温度(Tm)、軟化温度(Ts)、及びガラス転移温度(Tg)の少なくとも1つとすることができる。従って、CSSCが特定の範囲内の第1及び/又は第2のTm、Ts、及びTgのうちの少なくとも1つを適切に有すると定義される場合、考慮される温度はその物質に関連するものである。一部の化合物は、このような2つの特徴付け温度によって同定することができ、この場合では任意の前記2つの温度を超える温度における方法の工程の実施は、2つの温度のうちの最低温度(工程を長引かせるであろう)又は最高温度(工程を加速させるであろう)を超えることが可能であるであろう。逆に、任意の2つの温度を下回る温度において方法の工程を実行することは、2つの温度のうちの最高温度を下回るか、又は最低温度を下回り得る。例として、Tm、Ts、又はTgの順で減少する、3つの温度すべてにより特徴付けられる半結晶性ポリマーを挙げれば、Tg超過(すなわち少なくとも1つを超える)に加熱することは、Ts又はTmに達するには不十分であり得るが、一方でTs超過(すなわち少なくとも2つを超える)に加熱することはTmに達するには不十分であり得る。Tmを超える温度で加熱することのみ、加熱温度はこのような例示的ポリマーを特徴付けることができる3つの温度すべてよりも高いことを確保するであろう。
【0085】
いくつかの実施形態では、本組成物に適切なCSSCは、融解温度(Tm)、軟化温度(Ts)、又はガラス転移温度(Tg)のうちの少なくとも1つが、低くとも20℃、低くとも30℃、低くとも40℃、低くとも50℃、又は低くとも60℃であることにより特徴付けられる。他の実施形態において、CSSCのTm、Ts、及びTgの少なくとも1つは、高くとも300℃、高くとも250℃、高くとも200℃、高くとも180℃、高くとも150℃、又は高くとも120℃である。いくつかの実施形態では、CSSCのTm、Ts、及びTgのうちの少なくとも1つは、20℃~300℃、20℃~250℃、20℃~200℃、30℃~180℃、40℃~150℃、又は50℃~120℃である。CSSCのこのような熱特性は、その製造業者から提供されるか、又は標準的な方法、例えば熱分析法、例えばASTM 3418、ISO 3146、ASTM D1525、ISO 11357-3、又はASTM E1356に記載されているような示差走査熱量測定(DSC)によって独立して決定することができる。CSSCの特徴付け温度(Tm、Ts、又はTg)は、天然/未改質の化合物に関する場合は「第1の」Tm、Ts、又はTgと呼ぶことができ、例えば可塑化又は膨潤化CSSCをもたらす不揮発性液体との混合によって改質されたCSSCに関する場合は「第2の」Tm、Ts、又はTgと呼ぶことができる。
【0086】
高分子CSSC及び非高分子CSSC
いくつかの実施形態では、本組成物、方法、及び使用において使用されるコラーゲン合成刺激化合物(CSSC)は、コラーゲン合成刺激ポリマー(CSSP)である。CSSPは、いったん皮膚の生理的環境(例えば、皮膚の下)に送達されると生分解に適応することが望ましいため、このようなポリマーは一般に加水分解性官能基を含有する。
【0087】
天然由来又は合成由来であり得る適切なCSSPは、本質的に熱可塑性であり、その形状は、適切な加熱及び冷却により可逆的に変化することができる。適切なCSSPは、適切な不揮発性液体により可塑化されることもでき、このようなCSSPの任意の処理により分散したナノ成分の経皮送達を促進する程度までそのナノサイズ化を容易にする。
【0088】
合成CSSPは、脂肪族ポリエステル、ポリヒドロキシ-アルカノエート、ポリ(アルケンジカルボキシレート)、ポリカーボネート、脂肪族-芳香族コポリエステル、それらのエナンチオマー、それらのコポリマー、及びそれらの組み合わせから選択することができる。
【0089】
CSSPを形成するモノマーがキラル中心を有する限りにおいて、すべてのエナンチオマー及び立体異性体が包含される。例えば、乳酸(2-ヒドロキシプロピオン酸、LA)にはL-乳酸とD-乳酸との2つのエナンチオマーが存在するため、PLAにはポリ(L-ラクチド)(PLLA)、ポリ(D-ラクチド)(PDLA)、及びポリ(DL-ラクチド)(PDLLA)などの立体異性体が存在する。従って、CSSPは同一分子の異性体の混合物であり、又は特定の立体異性体(又は立体共重合体)である。
【0090】
いくつかの実施形態では、CSSPは、以下を含む群から選択される:ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(L-ラクチド)(PLLA)、ポリ(D-ラクチド)(PDLA)、ポリ(D,L-ラクチド)(PDLLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、及びポリ(p-ジオキサノン)(PPDO)などの脂肪族ポリエステル;ポリヒドロキシブチレート(PHB)(例えば、ポリ-3-ヒドロキシブチレート(P3HB)、ポリ-4-ヒドロキシブチレート(P4HB)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)(PHBV)、ポリヒドロキシバレレート(PHV)、ポリヒドロキシヘキサノエート(PHH)、及びポリヒドロキシオクタノエート(PHO)など)を含むポリヒドロキシ-アルカノエート(PHA);ポリ(ブチレンサクシネート)(PBS)、ポリ(ブチレンサクシネート-コ-アジペート)(PBSA)、及びポリ(エチレンサクシネート)(PES)などのポリ(アルケンジカルボキシレート);ポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)、ポリ(プロピレンカーボネート)(PPC)、及びポリ-[オリゴ(テトラメチレンサクシネート)-コ(テトラメチレンカーボネート)]などのポリカーボネート;ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)及びポリ(ブチレンアジペート-コ-テレフタレート)(PBAT)などの脂肪族-芳香族コポリエステル;それらの異性体、それらの共重合体、及びそれらの組み合わせ。
【0091】
特定の実施形態では、CSSPは、脂肪族ポリエステル、異性体、コポリマー、及びそれらの組み合わせであるか、又はそれらを含む。さらに特定の実施形態では、CSSPはPCLである。さらに別の特定の実施形態では、CSSPはPLAである。
【0092】
このようなポリマーは、当業者に知られている標準的な方法、例えばフーリエ変換赤外分光法(FTIR)によって検出可能なそれぞれの特徴的な官能基によって同定することができる。
【0093】
本発明の組成物、方法、及び使用に適した非ポリマー性CSSCには、キノンが含まれる。特定の実施形態では、非重合性CSSCはコエンザイムQ10(CoQ10)である。
【0094】
さらに、CSSCは、重合性であるか否かを問わず、異なる化合物の混合物とすることができ、その混合物の特性(例えば、特徴付ける温度、粘度など)は、適切な個々の化合物について設定された範囲を満たす。例えば、Tm、Ts、又はTgが先に適切と見なされた範囲から外れている(例えば、20℃より低い、又は300℃より高い)CSSC又はCSSPを、得られる混合物の特徴付け温度を本発明の目的に適するように「補正」するように適合されたTm、Ts又はTgを有するCSSC又はCSSPと組み合わせることができる。例示すれば、CSSCは、前述のCSSPの少なくとも1つを含む、ポリマーの混合物、又はコポリマーであることができ、このようなコポリマーは、ナノ要素の生体親和性、生分解性、並びに機械的及び光学的な特性に寄与し得る。
【0095】
粘度
CSSCは、代替的に(又は追加的に)、皮膚用組成物を調製するための本発明の方法において、それらのせん断に適合するようにそれらの粘度について選択することができる。本発明の方法、組成物、及び使用に適切なCSSCは、一般的には、温度50℃、せん断速度10秒-1で測定する場合、1011ミリパスカル・秒(mPa・s、センチポアズに相当)を超えず、5×1010mPa・s以下、1010mPa・s以下、5×10mPa・s以下、10mPa・s以下、5×10mPa・s以下、10mPa・s以下、5×10mPa・s以下、10mPa・s以下、又は5×10mPa・s以下であることが多い粘度を有することができる。
【0096】
効率的なせん断を行うためには、CSSCの粘度は、好ましくは、温度50℃、せん断速度10秒-1において、10mPa・s以下である必要がある。このような粘度は、単離された未改質CSSCの天然の性質に関連することがあり、その場合、これを「第1の粘度」と呼ぶことができ、あるいは、CSSCと混和可能な物質との混合によって改質されたCSSCの粘度を指すことがあり、その場合、これをCSSCの「第2の粘度」と呼ぶことができる。例として、第2の粘度は、適切な不揮発性液体により可塑化されたCSSPの粘度とすることができる。ASTM D3835又はASTM D440に記載されているような、通常の熱レオロジー分析によって、任意の目的温度(又はその範囲)における物質の粘度(他の物質の存在による改質の有無にかかわらず)を測定することができる。
【0097】
不揮発性液体を天然の粘度に関係なくCSSC又はCSSPに対して添加することができるが、このような物質は、CSSCが50℃及びせん断速度10秒-1にて10mPa・sを超えるような比較的に高い第1の粘度を有する場合に、典型的に本組成物又は本方法において使用される。不揮発性液体(可塑化用液体(plasticizing liquid)又は膨潤化用液体(swelling liquid)と呼ばれることもある)は、可塑化又は膨潤化されたCSSCを含むナノ要素中に含有され、前記液体は、前記CSSCにより典型的に吸収、あるいは保持される。
【0098】
このような「可塑化」又は「膨潤化」とは、一般的には、天然の形態のCSSC自体の質量又は体積と比較して、重量増加及び/又は体積増加をもたらす。CSSCのこのような可塑化により、可塑化されたCSSCは、その粘度の低下によって示されるとおり(すなわち、第2の粘度が第1の粘度より小さい)、より柔らかく、より可鍛性になり、得られるナノ要素の経皮送達を促進する程度まで、後のナノサイズ化を容易にする。
【0099】
有利には、低下した粘度は、可塑化されたCSSC(例えば、可塑化されたCSSP)をナノサイズ化するために選択されるせん断プロセス(例えば、せん断装置、せん断温度など)に適合する必要がある。例えば、不揮発性液体及びその不揮発性液体のCSSCに対する割合は、CSSCの粘度を少なくとも半対数、又は少なくとも1対数など、必要に応じて下げるように選択することができる。例として、温度50℃、せん断速度10秒-1で測定する場合、CSSCが10mPa・sの第1の粘度を有するとして、そのように可塑化されたCSSCが5×10mPa・sの第2の粘度を有する場合に可塑化用薬剤及びその量により半対数の減少を可能にし、又は(より多量の場合、又は代替的により強力な薬剤として選択される場合)、そのように可塑化されたCSSCが10mPa・sの第2の粘度を有する場合に1対数の減少を可能にするであろう。
【0100】
いくつかの実施形態では、不揮発性液体により可塑化されたCSSCの第2の粘度は、50℃で10秒-1のせん断速度で測定する場合、10mPa・s~10mPa・s、5×10mPa・s~10mPa・s、5×10mPa・s~10mPa・s、10mPa・s~5×10mPa・s、又は10mPa・s~10mPa・sである。粘度は、適切なせん断速度で目的の粘度範囲に適合するスピンドルを備えた任意の適切なレオメーターで測定することができる。
【0101】
可塑化
CSSCの粘度に対する影響については上述したが、粘度の低下が望ましい範囲で、ナノ要素中のCSSCに取り込むことができる不揮発性液体はさらなる機能を果たす可能性がある。膨潤化、特にCSSPの膨潤化は、膨潤化したポリマーが融解未満の温度にあるときに目視で観察することができる。より高い温度では、不揮発性液体の効果は、可塑化活性を介して検出することができ、可塑化活性には、天然CSSCを特徴付ける温度の少なくとも1つを下げる能力が含まれる。
【0102】
CSSCの特徴付け温度を下げると、それに伴って皮膚用組成物を調製できる処理温度を下げることができる。例示すれば、CSSCは、適切な不揮発性液体の非存在下では、200℃以下の第1(天然)のTm、Ts、又はTgを有し得るが、このような可塑化用薬剤の添加により、第1の温度よりも低い第2(改質)のTm、Ts又はTgを有する可塑化されたCSSCを得ることができ、この第2の温度は、例えば95℃以下である。不揮発性液体の存在によってもたらされる温度の低下は、記載されるほど劇的である必要はなく、天然CSSCの第1のTm、Ts又はTgの値、組成物の調製及び/又は後のナノ要素の浸透を容易にするために望まれ得る第2のTm、Ts又はTgに明らかに依存し、好ましくは、組成物中に存在し続ける液体の沸騰温度(Tb)(ただし、工程が十分に短い場合、及び/又は一部の液体が沸騰して蒸発する場合に備えて液体が過剰である場合は、必ずしもこの限りではない)、及び/又は可塑化される化合物に対する可塑化用薬剤の濃度に依存する。
【0103】
従ってさらに及び又は、CSSC(複数可)と不揮発性液体(複数可)との混合物が、ナノ要素を形成するため、又はナノ要素内に存在するために、得られる組み合わせの軟化特性に影響を及ぼす可能性のある成分(例えば、レオロジー改良剤、界面活性剤、防腐剤、又は可塑効果を有する可能性のある任意の同様の物質)をさらに含む場合、本発明に適するとみなされる熱特性は、混合物全体に適用されるであろう。
【0104】
従って、いくつかの実施形態では、可塑化されたCSSC、又はそれを含む成分の混合物は、Tm、Ts、及びTgのうちの少なくとも1つが0℃~290℃、10℃~250℃、20℃~200℃、30℃~180℃、40℃~150℃、又は50℃~120℃の範囲内にある。このような熱挙動及び特徴付け温度は、可塑化されたCSSC又はそれを含む混合物を調製している間、あるいは組成物の調製方法の完了時に評価することができる。
【0105】
不揮発性可塑化用液体
不揮発性液体の存在によりCSSCを含むナノ要素の送達の有効性を有し得る役割は無視できないが、そのような物質の選択には主に、極性担体相中のナノ要素の調製と分散とを容易にするように、CSSPの加工性を向上させる観点から検討される。特に適切な不揮発性液体は、先に別途説明したとおり、CSSCの粘度を下げること、及びTm、Ts、Tgのうちの少なくとも1つを下げることの両方が可能である。有利なことに、適切な不揮発性液体は、ナノ粒子へのせん断に適した条件下でCSSCの加工性を向上させ、このせん断温度は最初にナノ液滴の形成を引き起こす。
【0106】
第1に、その名称が示すとおり、本教示によるCSSCを可塑化するのに適合した薬剤は、CSSCが処理される温度、すなわちCSSCとの混合温度及びせん断温度のうちの少なくとも一方において液体である。このような液状薬剤はまた、室温で液状であることも可能である。
【0107】
それらの効果を確実に永続させるために、可塑化用液体は不揮発性であることが好ましい。本明細書で使用されるとおり、CSSCを可塑化し得る液体に関して使用され得る「不揮発性」という用語は、約20℃の温度で40パスカル(ニュートン/平方メートル)未満などの低い蒸気圧を示す液体を指す。このような蒸気圧の値は、通常、液体の製造元によって提供されるが、蒸気圧の範囲に応じてASTM D2879、E1194、又はE1782などに記載されているような標準的な方法によって独自に決定することができる。CSSCを可塑化するために使用し得る低い又は実質的にゼロである不揮発性液体の揮発性は、望ましい場合、可塑化されたCSSCが処理される最高温度で維持される必要がある。このような不揮発性液体の使用により、本発明の方法によって皮膚用組成物を調製する際の高温においてさえ、この液体の蒸発又は除去のリスクがなく、CSSCを可塑化又は膨潤化した状態のまま維持することが可能になる。
【0108】
適切な不揮発性液体はまた、本発明のCSSCを可塑化するために選択された液体が、皮膚用組成物の調製中又は調製後に実質的に蒸発しないことが好ましいため、室温よりも高く、体温よりも高く、かつ組成物の調製に所望され得る高温よりも高い沸点を有することによっても特徴付けられる。とはいえ、不揮発性液体がCSSCを可塑化する混合工程が、所望のとおり確実に残留するのに十分短い場合、及び/又は不揮発性液体が十分に過剰に添加されて沸騰して部分的に蒸発することが起こる可能性を補う場合には、ある程度沸騰して蒸発することは許容され得る。
【0109】
非極性液体は、それにより可塑化されるCSSCにより維持され、それを含むナノ要素に保持されることが望ましいという同様の理由のために、好ましくは極性担体相への移動が不可能である必要がある。従って、適切な不揮発性液体は、このような極性担体(例えば、水)には本質的に混和せず、純粋な極性担体又はそれを含む液相での溶解度は、CSSCについて先に詳述したとおりであり、すなわち、担体又はそれを含む相の重量に対して5wt%以下、4wt%以下、3wt%以下、2wt%以下、1wt%以下、0.5wt%以下、又は0.1wt%以下である。
【0110】
このような不揮発性液体は、組成物のCSSCと親和性である必要がある(すなわち、組成物を可塑化できる:例えば、そのTm、Ts又はTgを低下させ、及び/又は粘度を低下させる)。特定のCSSCに適合する不揮発性液体は、通常の実験によって適宜選択することができる。例えば、特定のCSSCが与えられた場合、様々な不揮発性液体を1つ又は複数の相対濃度でそれと混合することができ、可塑化されるCSSCに対するそれらの効果を、熱レオロジー(温度の関数として粘度を低下させる能力について)及び熱分析(例えば、DSCによって、天然CSSCのTm、Ts、又はTgを低下させる能力について)によってモニターすることができる。特定のCSSCに関して最も強力な不揮発性液体を適宜選択することができる。
【0111】
基本的に、物質又は化学組成物は、その活性を妨げない、又は意図された目的に重大な影響を与える程度に活性を低下させない場合、他の物質又は化学組成物と親和性である。このような親和性は、化学的な観点から、例えば類似の化学官能基を共有すること、あるいは各物質が互いに望ましい相互作用をする可能性のあるそれぞれの部分を有することなどであり得る。この種の親和性は、組み合わされた物質が異なる相に分離するのではなく、均質な混合物を形成することにより実証できる。物質はまた、組成物の調製に使用される方法に親和性である必要があり、物質がプロセスを受けることになるいずれの工程によっても悪影響を受けず、その温度(複数可)で、物質が組成物中に取り込まれる揮発物質(又はその他としては排除されるもの)でもない。当然のことながら、この物質はその意図された使用に親和性である必要もあり、この場合、例としては、生体適合性、非刺激性、非免疫原性、及び本明細書に開示される効果的な化粧品組成物又は医薬組成物に適合した濃度で規制当局の承認を得るようないずれのそのような特性を備えていることを含み得る。
【0112】
本発明に適した不揮発性液体は、以下から選択することができる:単官能又は多官能脂肪族エステル(例えば、酢酸エチル、乳酸ブチル、グルタル酸ジメチル、マレイン酸ジメチル、グルタル酸ジメチルメチル、乳酸エチル及び乳酸イソアミルエステルなど);脂肪エステル(例えば、乳酸2-エチルヘキシル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリエチルヘキシル、ヘキサン酸アリル、安息香酸ベンジル、乳酸ブチルブチリル、安息香酸C12~C15アルキル、カプリン酸カプリリル及び/又はカプリル酸カプリリルの混合物、オレイン酸デシル、アジピン酸ジブチル、炭酸ジカプリリル、マレイン酸ジブチル、セバシン酸ジブチル、コハク酸ジエチル、オレイン酸エチル、モノオレイン酸グリセリル、モノカプリン酸グリセリル、トリカプリル酸グリセリル、トリオクタン酸グリセリル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、乳酸L-メンチル、乳酸ラウリル、安息香酸n-ペンチル、PEG-6カプリル/カプリン酸グリセリド、モノラウリン酸プロピレングリコール、モノカプリル酸プロピレングリコール、トリアセチン、クエン酸トリエチル、o-アセチルクエン酸トリエチル、o-アセチルクエン酸トリス(2-エチルヘキシル)、o-アセチルクエン酸トリブチル、及びクエン酸トリブチルなど);環状有機エステル(例えば、デカン酸ラクトン、γ-デカラクトン、メンサラクトン、及びウンデカン酸ラクトンなど);脂肪酸(例えば、カプリル酸、シクロヘキサンカルボン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、リノール酸、リノレン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、パルミチン酸、及びステアリン酸など);テルペン(例えば、シトロネロール、オイゲノール、ファルネソール、ヒノキチオール、D-リモネン、リナロール、メントール、メントン、ネリドール、テルピネオール、及びチモールなど);芳香族アルコール(例えばベンジルアルコールなど);芳香族エーテル(例えばメトキシベンゼンなど);アルデヒド(例えばシンナムアルデヒドなど);及びそれらの組み合わせ。
【0113】
特定の実施形態において、本明細書で開示されるCSSCを可塑化するために使用され得る不揮発性液体は、多官能性脂肪族エステル(polyfunctional aliphatic ester:PFAE)であり、一般的なジカルボン酸のジエステル誘導体であり:すなわち、アジピン酸(C)、アゼライン酸(C)及びセバシン酸(C10)であり、ジエステルのアルコール部分は、一般に、直鎖及び分岐鎖で、なお偶数及び奇数のアルコールを含むC~C20の炭素数の範囲内である。アジピン酸ジブチル(例えば、Cetiol(登録商標)Bとして市販)は、一実施形態によれば、CSSC、特にCSSPを可塑化するのに適したPFAEの一例である。別の適切な例としてはC12~C15アルキルベンゾエート(例えば、Pelemol(登録商標)256として市販)及びジカプリリルカーボネート(例えば、Cetiol(登録商標)CCとして市販)が挙げられる。
【0114】
極性媒質
CSSCを含むナノ要素が分散している連続相を形成する液体媒質は極性である。いくつかの実施形態では、液相は本質的に極性担体からなるが、他の場合には追加の成分が極性担体中に存在し得る。このような追加の成分は、例えば、本明細書で詳述するとおり、界面活性剤、担体可溶性活性剤、又は皮膚浸透促進剤、あるいは皮膚用組成物で従来から提供されるその他の添加剤とすることができる。本発明に適した極性担体は、水、グリコール(例えば、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、及び1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、及び2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール)、グリセロールを含むグリセロール類、その前駆体及び誘導体(例えば、アクロレイン、ジヒドロキシアセトン、グリセリン酸、タルトロン酸、エピクロロヒドリン、グリセロール第三級ブチルエーテル、ポリグリセロール、グリセロールエステル、及びグリセロールカーボネート)及びそれらの組み合わせを含む群から選択することができる。
【0115】
極性媒質は、1つ又は複数の適切な極性担体から形成されてもよく、水が優勢な極性担体である場合、得られる液体は水溶液(又は水相)と呼ばれることが多い。場合によっては、極性液相全体を形成するには極性が不十分な液体が、a)主な極性担体に可溶であり(例えば、5wt%以上の水溶性を有する)、それにより固有の液相を形成すること、及びb)液相の全体的な極性が維持されることを条件として、それ自体では十分に極性がないとみなされる液体(脂肪アルコールなど)を極性担体(複数可)に加えて液相中に存在させることができる。得られる液相の極性指数は、3以上、4以上、又は5以上であってもよく、参照として極性指数9~10の水を挙げることができる。
【0116】
溶媒の極性指数は、試験溶質に溶解する相対的な能力を指すため、さらに又は別に液体は、誘電率(ε)の観点から極性又は非極性に分類され得る。一般に、誘電率が15未満の液体は非極性とみなされ、誘電率がそれより高い液体は極性とみなされ、液体の相対極性は誘電率の値とともに増加する。好ましくは、本発明の組成物に適した極性担体は、室温で確立された誘電率が20以上、30以上、40以上、50以上、又は60以上である。例えば、プロピレングリコールの誘電率は32であり、グリセロールの誘電率は46であり、水の誘電率は80である。簡単にするために、この手引きは正味の極性担体に対して提供されているが、実際にはこれは好ましくは、それにより調製される極性液相全体(例えば、追加の極性可溶性物質を含むか、及び/又は液体担体の混合物からなるもの)に対して適用される必要がある。明らかに、極性液相は、それぞれの体積が液相全体を極性とすること(例えば、ε≧15を有すること)を可能にする限り、形式的に極性の溶媒(例えば、ε≧15を有するもの)と形式的に非極性の溶媒(例えば、ε<15を有するもの)との混合物で構成することができる。液体の誘電率は、一般的に、製造元から提供されるが、ASTM-D924などに記載されているように任意の適切な方法によって独自に決定することができる。
【0117】
議論のとおり、極性液相の組成物は、CSSCを含むナノ要素が本質的に非水溶性で、かつその中に安定して分散した状態を維持でき、ナノ要素の内容物がその周囲媒質に有意に溶出しないようなものである必要がある。
【0118】
極性媒質は、その中に溶解した追加の液体及び/又は物質を含んでもよいため、極性担体は、液相の重量に対して、少なくとも50wt%、少なくとも60wt%、少なくとも70wt%、少なくとも80wt%、又は少なくとも90wt%を構成することができる。
【0119】
特定の実施形態では、極性担体は水を含むか(例えば、45wt%の水、45wt%のプロピレングリコール、及び10wt%の脂肪アルコール)、水からなるか(例えば、51wt%~80wt%の水を含む)、本質的に水からなるか(例えば、81wt%~99wt%の水を含む)、又は水である。
【0120】
界面活性剤
一部のCSSCは、その固有の化学的性質の観点から、皮膚用組成物中にナノ分散したままであり得、ナノ要素は例えば、粒子の反発を確確保にするのに十分な電荷を有しており、その結果、安定した分散が保証される。他のCSSCは、十分な程度に界面活性剤としてさらに機能する不揮発性液体により可塑化される観点から、代替的又は追加的にナノ分散状態を維持することができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、組成物は、ナノ要素が分散されたままの状態(したがって、意図されたサイズ範囲内にも分散されたままの状態)であるために、少なくとも1つの界面活性剤をさらに含んでもよい。
【0121】
本発明の目的に適した界面活性剤は、CSSCを含有するナノ要素と、それらが浸される環境との間の表面張力を低下させる。界面活性剤は、その化学式によって(並びに考慮されるCSSC及び極性担体によって)、CSSC又は極性担体と混和することができ、ナノ懸濁液が形成される。
【0122】
本発明の組成物及び方法に適した界面活性剤は一般に両親媒性であり、極性又は親水性の部分と非極性又は疎水性の部分とを含む。このような界面活性剤は、1~35の範囲内の親水性-親油性バランス(Hydrophilic-Lipophilic Balanc:HLB)値によって特徴付けられ得、HLB値は一般に水系との親和性を意味し、一般的にはグリフィンスケール(Griffin scale)で提供される。
【0123】
本発明の目的に適した界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、又は非イオン性界面活性剤であり得る。
【0124】
アニオン性界面活性剤は、以下を含む群から選択することができる:アルキル硫酸塩(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、及びラウレス硫酸アンモニウムなど);スルホコハク酸塩(例えば、ラウリルスルホコハク酸二ナトリウム、ラウレススルホコハク酸二ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、及びスルホン酸及びラウラミドプロピルベタインとのそれらの混合物など);アルキルベンゼンスルホン酸塩(例えば、トシル酸ナトリウム、クメンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸及びそれらの塩(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム)など);アシルメチルタウリン酸塩(例えば、メチルラウロイルタウリン酸ナトリウム及びメチルココイルタウリン酸ナトリウムなど);アシルサルコシン酸塩(例えば、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、ココイルサルコシン酸ナトリウム、及びミリストイルサルコシン酸ナトリウムなど);イセチオン酸塩(例えば、ブチルイセチオン酸ナトリウム、カプリロイルイセチオン酸ナトリウム、及びラウロイルイセチオン酸ナトリウムなど);プロピルペプチド縮合物;モノグリセリド硫酸塩;エーテルスルホン酸塩、及び脂肪酸塩(例えば、ステアロイル乳酸ナトリウムなど)。
【0125】
カチオン性界面活性剤は以下を含む群から選択することができる:第四級アンモニウム化合物(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ステアラルコニウム、塩化セントリモニウム、及びトリメチルアンモニウムメチル硫酸塩など)。
【0126】
両性界面活性剤は、以下を含む群から選択することができる:ベタイン(例えば、コカミドプロピルベタイン);アルキルアンホプロピオネート(例えば、ココアンホプロピオネート);アルキルイミノプロピオネート(例えば、ラウラミノプロピオン酸ナトリウム);及びアルキルアンホアセテート(例えば、ココアンホ-カルボキシグリシネート)。
【0127】
非イオン性界面活性剤は、以下を含む群から選択することができる:脂肪アルコール(例えば、セテアリルアルコール);エトキシル化脂肪アルコール(例えば、C~C18アルコールポリグリコール、ステアリン酸ポリオキシル6、及びステアリン酸ポリオキシル32);ポリ(エチレングリコール)ブロックコポリマー(例えば、ポロキサマー);エチレンオキシド(EO)/プロピレンオキシド(PO)コポリマー;アルキルフェノールエトキシレート(例えば、オクチルフェノールポリグリコールエーテル及びノニルフェノールポリグリコールエーテル);アルキルグルコシド及びポリグルコシド(例えば、ラウリルグルコシド);脂肪アルカノールアミド(例えば、ラウラミドジエタノールアミン及びコカミドジエタノールアミン);エトキシル化アルカノールアミド;エトキシル化脂肪酸;ソルビタン誘導体(例えばポリソルベート、ラウリン酸ソルビタン、ソルビトール、1,4-ソルビタン、イソソルビド、及び1,4-ソルビタントリエステル、PEG-80);アルキル炭水化物エステル(例えば、サッカロース脂肪酸モノエステル);アミンオキシド;セテアレス;オレス;アルキルアミン;脂肪酸エステル(例えば、パルミチン酸アスコルビル、ステアリン酸エチレングリコール、ポリグリセリル-6エステル、ポリグリセリル-6ペンタオレエート、ポリグリセリル-10ペンタオレエート、及びポリグリセリル-10ペンタイソステアレート);ポリオキシルグリセリド(例えば、オレイルポリオキシル-6グリセリド);天然油誘導体;エステルカルボキシレート(例えば、D-α-トコフェロールポリエチレングリコールサクシネート(ビタミンE TPGS));及び尿素。
【0128】
これらの界面活性剤は、その作用機序によって乳化剤とハイドロトロープとに分類される。乳化剤はミセルを形成しやすく(したがって臨界ミセル濃度(critical micelle concentration:CMC)値によって特徴付けられる)、その後にCSSC(又は可塑化されたCSSC)を極性担体と組み合わせてナノ懸濁液を得た際にその分散性を高めると考えられている。原則として、乳化剤とは一般的に、ある液体を別の液体に分散させることを確実にする界面活性剤に関し、その液体は逆の極性を有し、一方で分散剤とは固体の液体への分散を確実にする界面活性剤に関する。本方法はナノ乳濁液及びナノ分散液を提供することができるため、ナノ懸濁液が乳濁液である工程で乳化剤と呼ばれる界面活性剤は、最初のナノ乳濁液が低温にてナノ分散液を後に生成する範囲で、実際には分散剤になり得る。従って、本明細書で使用されるとおり、「乳化剤」という用語はまた、他として分散剤として知られている界面活性剤も含まれる。
【0129】
本来親油性である、すなわち比較的に大きな疎水性部分を含む乳化剤は、CSSC(及び極性担体に混和しない任意の他の物質、例えば不揮発性液体)と組み合わせるのにより適しており、したがって極性担体不溶性乳化剤(又は一般的に界面活性剤)と呼ばれることがある。従って、このような比較的に疎水性の乳化剤は、本組成物のナノ要素中に存在することが期待される。これらの比較的に疎水性の乳化剤は、一般的にグリフィンスケールでHLB値が9以下、8以下、7以下、又は6以下である。
【0130】
より親水性である乳化剤は本来、親水性部分が比較的に大きく、組成物の極性相との親和性がより高くなり、したがって、極性担体可溶性乳化剤(又は一般的に界面活性剤)と呼ばれ得る。このような比較的に親水性の乳化剤のHLB値は一般に11以上、13以上、15以上、17以上、又は20以上である。
【0131】
HLB値が9~11の範囲にある乳化剤は「中間」とみなされ、そのような乳化剤の疎水性部分と親水性部分とは極めて十分にバランスが取れている。このような中間乳化剤は、本方法においてCSSC又は極性担体のいずれかに添加することができ、それに応じてナノ要素又はその媒質中に見出すことができ、このような界面活性剤の一部が2相間を移動する能力も想定される。
【0132】
特定の実施形態において、乳化剤として機能する界面活性剤は以下から選択される:ビタミンE TPGS、ポリ(エチレングリコール)ブロックコポリマー;ステアリン酸ポリオキシル6(I型)、ステアリン酸エチレングリコール及びステアリン酸ポリオキシル32(I型)の混合物(例えば、Tefose(登録商標)63として市販、Gattefosse、フランス)、オリーブ油由来抽出物含有混合物(例えば、Olivatis(登録商標)の商標で市販、Medolla Iberia、スペイン)、パルミチン酸アスコルビル、ペンタオレイン酸ポリグリセリル-10、ペンタイソステアリン酸ポリグリセリル-10、オレオイルポリオキシル-6グリセリド(例えば、Labrafil(登録商標)M 1944 CSとして市販、Gattefosse、フランス)、ラウレススルホコハク酸二ナトリウム;ラウリルスルホコハク酸二ナトリウム、C14~C16オレフィンスルホン酸ナトリウム及びラウラミドプロピルベタインの混合物(例えば、Cola(登録商標)Det EQ-154として市販、Colonial Chemical、米国)、及びオリーブ油とグルタミン酸との混合物(例えばOlivoil(登録商標)glutamateとして市販、Kalichem、イタリア)。
【0133】
乳化剤として作用する界面活性剤は、一般的に、本発明の組成物のナノ要素を安定化させるのに十分であるが、CSSCが比較的に高濃度で存在する場合、本発明によって可能になるとおり、別の種類の界面活性剤、すなわちハイドロトロープの添加が満足のいく安定性を達成するのに役立つことを本発明者らは見出した。
【0134】
ハイドロトロープはまた両親媒性分子であるが、乳化剤とは逆に、比較的に短い親油性鎖を含有する。ハイドロトロープの親油性部分は一般的にミセル形成を可能にするには短すぎるため、ハイドロトロープは代わりに極性担体中の疎水性化合物を可溶化し、乳化剤とともに共乳化を可能にする。一般的に、ハイドロトロープは主にナノ懸濁液の極性担体相(例えば、水相)に混和し、10以上、12以上、15以上、又は18以上のHLB値を有することにより特徴付けられる。
【0135】
適切なハイドロトロープは、以下を含む群から選択することができる:ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、尿素、トシル酸ナトリウム、アデノシン三リン酸塩、クメンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸、及びそれらの塩。
【0136】
特定の実施形態では、ハイドロトロープは、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、尿素、キシレンスルホン酸アンモニウムなどのキシレンスルホン酸塩から選択される。
【0137】
活性化剤
本発明の皮膚用組成物は、CSSCの存在それ自体により生物学的に活性であり得るが、その使用は、有効性を高めるように類似の機能を有する活性剤、及び/又は有効性の範囲を広げるように異なる機能を有する活性剤を包含させることにより、強化及び/又は改質することができる。
【0138】
いくつかの実施形態では、皮膚用組成物は、1つ又は複数の極性担体不溶性活性剤(複数可)をさらに含む。このような担体不溶性活性剤は、一般的に、その中に含まれる成分、すなわちCSSC、並びに任意の不揮発性液体及び乳化剤と混和性であるため、ナノ要素内に含まれる。固有の相を形成する際に、ナノ要素の成分は互いに混和する。
【0139】
いくつかの実施形態では、上述のCSSC及び不揮発性液体と同様に、任意の担体不溶性活性剤は、極性担体又はそれを含む液相の重量に対して、5wt%以下、4wt%以下、3wt%以下、2wt%以下、1wt%以下、0.5wt%以下、又は0.1wt%以下の溶解度を有する必要がある。
【0140】
ナノ要素に取り込まれる担体不溶性活性剤としては、過酸化ベンゾイル、エリスロマイシン、マクロライド、レチノール、サリチル酸、テトラサイクリン、トレチノイン、ビタミンA、ビタミンD、及びビタミンKを挙げることができ、特定の実施形態では、担体不溶性活性剤はレチノールである。
【0141】
いくつかの実施形態では、皮膚用組成物は、極性担体内に溶解するであろう1つ又は複数の極性担体可溶性活性剤をさらに含む。
【0142】
担体溶解性であり、かつ組成物の極性液相中に存在し得る例示的な活性剤は以下から選択することができる:アゼライン酸、ビオチン、クリンダマイシン、コラーゲン、エラスチン、フォラシン、ヒアルロン酸(HA)、ナイアシン、パントテン酸、リボフラビン、チアミン、ビタミンB12、ビタミンB6、及びビタミンC。特定の実施形態では、担体可溶性の美容的活性剤はHAである。
【0143】
いくつかの実施形態では、低分子量(LMW)のHA、すなわち500kDa未満のMWを有するHAと、高分子量(HMW)のHA、すなわち500kDa超過のMWを有するHAとの両方を使用することができる。いくつかの実施形態では、HAは400kDa以下、300kDa以下、200kDa以下、又は100kDa以下のMWを有するLMWのHAである。特定の実施形態では、LMWのHAは、50kDa以下、25kDa以下、又は10kDa以下の分子量を有する。
【0144】
いくつかの実施形態では、皮膚用組成物は、担体不溶性活性剤と担体可溶性活性剤との両方を含むことができる。
【0145】
活性剤として機能する植物抽出物もまた本組成物に加えることができ、担体不溶性又は担体可溶性のいずれでもよい。本明細書で使用されるとおり、「植物抽出物」という用語は、任意の適切な植物の任意の関連部分(例えば、花、果実、ハーブ、葉、皮、根、種子、茎など)から単離された天然画分と、天然抽出物の活性薬剤の合成型との両方を指す。皮膚に適用することで美容的効果又は治療効果を得るために従来使用されている天然抽出物の植物は、当業者に知られており、包括的に列挙するには多すぎる。一例として、本発明に適した活性剤を含む植物エキスは、ベルガモット、コーヒー、クルクミン、フェンネル、ガーデンアンゼリカ、朝鮮人参、グレープフルーツ、ミツバ、アカマツ、オレンジ、パプリカ、パッションフルーツ、ラズベリー、ルイボス、大豆、及び茶から単離することができる。このような植物抽出物は、特に抗アクネ作用、抗酸化作用、抗炎症作用、及び/又は抗老化作用を有することが知られている。
【0146】
本皮膚用組成物に任意に添加される担体不溶性活性剤及び/又は担体可溶性活性剤は、例えば、真皮充填効果を有するなど、化粧品としての機能を有することができ、又はそれ自体で、コラーゲン合成を促進する(及び/又はその分解を抑制する)ことが可能であり得る。ナノ要素内のCSSC又はCSSPのコラーゲン合成刺激能力それ自体を考慮すると、同様の目的を果たす可能性のあるこのような活性剤を加えることで、皮膚内でさらに高いコラーゲン形成をもたらす複合活性を生じることが可能である。活性剤の正確な美容的寄与にかかわらず、得られる皮膚用組成物は「美容的に活性」とみなすことができる。
【0147】
あるいは、活性剤(担体可溶性又は不溶性のもの)が医薬的な役割を果たし得、それにより組成物が「医薬的に活性」となり得る。
【0148】
皮膚浸透促進剤
極性担体は、皮膚を通してCSSCナノ要素の十分な送達を可能にするのに十分であり得、いくつかの界面活性剤(存在する場合)はそれを促進することができるが、いくつかの実施形態では、局所組成物は、皮膚浸透促進剤をさらに含む。
【0149】
適切な皮膚浸透促進剤は、以下を含む群から選択することができる:C~C22アルコール(例えば短鎖アルコール:エタノール、イソプロピルアルコール、及びヘキサノール、並びに脂肪アルコール:オクタノール、デカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、及びオクチルドデカノール);アミド、例えば1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン(ラウロカプラムとしても知られ、Azone(登録商標)として市販される)及びその類似体、N-アルキル-アザシクロヘプタン-2-オン(ここで、アルキルは一般式C2x+1を有し、Xは1、3~10及び14から選択される整数である)、分岐鎖及び/又は不飽和鎖によりN置換されたアザシクロヘプタン-2-オン、N-アシルアゼパン-2-オン、置換2-(2-オキソアゼパン-1-イル)アルカン酸及びそのエステル、N-アルキル-アザシクロヘプタン-2-チオン、N-アルキル-アザシクロヘプテノン、4-アルキル-1,4-オキサゼパン-5,7-ジオン;一般式C2x+1を有するアルキルによる環状アミン(式中、Xは10~12、14、16及び18から選択される整数であるもの);長鎖N-アシルアゼパン、脱水素化アザシクロヘプタン誘導体、6員環類似体(例えば:アザシクロヘプタジエン、N-置換ピペリジン-2-オン、Azone(登録商標)の6員環類似体の誘導体)、2-(2-オキソピペリジン-1-イル)酢酸のエステル、6-オキソピペリジン-2-カルボン酸のN置換誘導体、N-1-(2-アルキルスルファニルエチル)-ピペリジン-3-カルボン酸、(チオ)モルホリン、モルホリン-ジオン誘導体、長鎖N-アシルモルホリン、長鎖N-モルホリニルアルケノン、5員環類似体:長鎖N-アシルモルホリン及びモルホリノエタノール誘導体、1-ピペラジン-1-イル-アルカン-1-オン及び1-(4-メチルピペラジン-1-イル)-アルカン-1-オン;芳香族エステル(例えばサリチル酸オクチル及び4-(ジメチルアミノ)安息香酸2-エチルヘキシルなど);エーテルアルコール(例えば2-(2-エトキシ-エトキシ)エタノールなど);グリコール;ピロリドン(例えば2-ピロリドン、及びN-メチル-2-ピロリドンなど);及びスルホキシド(例えばジメチルスルホキシド(DMSO)、及びデシルメチルスルホキシドなど)。
【0150】
皮膚浸透促進剤として上記で定義されるいくつかの物質は、主な極性担体との組み合わせが液体の全体的な極性及びその中のナノ要素の溶解性の欠如に影響を与えないという条件で、液相の一部としてさらに機能し得ることに留意されたい。
【0151】
組成物
本皮膚用組成物において使用され得る様々な成分を検討した結果、適切な濃度又はそれぞれの割合を以下に示すものとする。本教示による構成要素の一部は、複数の役割を果たすことができることに留意されたい。例えば、いくつかの不揮発性液体、例えば脂肪族エステル(例えば酢酸エチル);脂肪酸(例えば、ラウリン酸、リノール酸、リノレン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びイソステアリン酸);脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチル、モノオレイン酸グリセリル、モノカプリン酸グリセリル、トリカプリル酸グリセリル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、モノラウリン酸プロピレングリコール、及びモノカプリル酸プロピレングリコール);及びテルペン(例えばオイゲノール、D-リモネン、メントール、メントン、ファルネソール、及びネリドール);などは、皮膚浸透促進特性も有し得る。別の例では、水及び特定のグリコール及びグリセロールなどの極性担体はまた、皮膚浸透を助け、又はさらに界面活性剤の役割も果たし得る。従って、例えば、組成物中の皮膚浸透促進剤の濃度に言及する際のその情報は、この役割を果たすために意図的に添加された専用の化合物のみを言及し、組成物中の別の主要な役割を有する化合物は除外される。
【0152】
いくつかの実施形態では、ナノ要素中のCSSC(又はその組み合わせ)の濃度はナノ要素の総重量に対して、0.1wt%~100wt%の範囲内である(ここで100wt%とは、可塑化用液体又は界面活性剤の存在が必要とされていないCSSC(複数可)のみを含むナノ要素を指す)。いくつかの実施形態では、CSSC(複数可)の濃度は、ナノ要素の総重量に対して、1wt%~90wt%、5wt%~80wt%、10wt%~50wt%、又は15wt%~40wt%の範囲内である。
【0153】
いくつかの実施形態では、皮膚用組成物中のCSSC(複数可)の濃度は、組成物の総重量に対して、0.1wt%~30wt%の範囲内であり、好ましくは、0.5wt%~13wt%、1wt%~10wt%、2wt%~10wt%、3wt%~10wt%、4wt%~10wt%、又は4wt%~8wt%の範囲内である。他の実施形態では、CSSC(複数可)の濃度は、組成物の総重量に対して、低くとも0.1wt%、低くとも0.5wt%、低くとも1wt%、低くとも2wt%、低くとも3wt%、又は低くとも4wt%である。他の実施形態では、CSSCの濃度は、組成物の総重量に対して、高くとも30wt%、高くとも25wt%、高くとも20wt%、高くとも15wt%、高くとも13wt%、高くとも10wt%、又は高くとも8wt%である。
【0154】
いくつかの実施形態では、極性担体(例えば、水)は、組成物の総重量に対して、30wt%~90wt%、30wt%~80wt%、40wt%~70wt%、又は30wt%~60wt%の範囲で皮膚用組成物中に存在する。
【0155】
いくつかの実施形態では、不揮発性液体(複数可)の濃度は、ナノ要素中に存在する場合、ナノ要素の総重量に対して、高くとも99wt%、高くとも90wt%、高くとも80wt%、高くとも70wt%、又は高くとも60wt%である。
【0156】
いくつかの実施形態では、不揮発性液体(複数可)の濃度は、皮膚用組成物中に存在する場合、組成物の総重量に対して、0.1wt%~50wt%の範囲内であり、好ましくは0.1wt%~45wt%、0.1wt%~40wt%、0.5wt%~35wt%、0.5wt%~30wt%、0.5wt%~25wt%、1wt%~22.5wt%、又は5wt%~20wt%の範囲内である。いくつかの実施形態では、不揮発性液体(複数可)の濃度は、皮膚用組成物の重量に対して、低くとも0.1wt%、低くとも0.5wt%、低くとも1wt%、又は少なくとも5wt%である。他の実施形態では、不揮発性液体(複数可)の濃度は、皮膚用組成物の重量に対して、高くとも50wt%、高くとも45wt%、高くとも40wt%、高くとも35wt%、高くとも30wt%、高くとも25wt%、高くとも22.5wt%、又は高くとも20wt%である。不揮発性液体(又はその組み合わせ)は、可塑化対象のCSSC(複数可)の重量に対して、少なくとも1:200、少なくとも1:20、少なくとも1:10、少なくとも1:5、又は少なくとも1:3、少なくとも1:1、少なくとも2:1、又は少なくとも3:1の重量比で可塑化のために含むことができる。いくつかの実施形態では、不揮発性液体(複数可)とCSSC(複数可)に対する重量比は、高くとも100:1、高くとも50:1、高くとも20:1、高くとも10:1、又は高くとも5:1である。
【0157】
いくつかの実施形態では、界面活性剤(複数可)の濃度は、ナノ要素中に存在する場合、ナノ要素の総重量に対して、0.1wt%~50wt%の範囲内、1wt%~50wt%の範囲内、5wt%~50wt%の範囲内、10wt%~50wt%の範囲内、15wt%~45wt%の範囲内、又は20wt%~40wt%の範囲内である。
【0158】
いくつかの実施形態では、界面活性剤(例えば、乳化剤及び/又はハイドロトロープなど)の組み合わせ濃度は、皮膚用組成物中に存在する場合、皮膚用組成物の総重量に対して、0.1wt%~60wt%の範囲内、0.5wt%~60wt%の範囲内、1wt%~60wt%の範囲内、5wt%~40wt%の範囲内、6wt%~30wt%の範囲内、7wt%~25wt%の範囲内、8wt%~20wt%の範囲内、又は5wt%~15wt%の範囲内である。いくつかの実施形態では、界面活性剤の組み合わせ濃度は、組成物の総重量に対して、低くとも5wt%、低くとも6wt%、低くとも7wt%、又は低くとも8wt%である。他の実施形態では、界面活性剤の組み合わせ濃度は、組成物の総重量に対して、高くとも40wt%、高くとも35wt%、高くとも30wt%、高くとも25wt%、高くとも20wt%、又は高くとも15wt%である。
【0159】
いくつかの実施形態では、乳化剤(複数可)の濃度は、皮膚用組成物中に存在する場合、組成物の総重量に対して、0.01wt%~60wt%、0.1wt%~50wt%、0.5wt%~40wt%、1wt%~30wt%、3wt%~25wt%、又は5wt%~20wt%の範囲内である。いくつかの実施形態では、組成物中の乳化剤(複数可)の濃度は、組成物の総重量に対して、低くとも0.01wt%、低くとも0.1wt%、低くとも0.5wt%、低くとも1wt%、低くとも3wt%、又は低くとも5wt%である。他の実施形態において、組成物中の乳化剤(複数可)の濃度は、組成物の総重量に対して、高くとも60wt%、高くとも50wt%、高くとも40wt%、高くとも30wt%、高くとも25wt%、又は高くとも20wt%である。
【0160】
いくつかの実施形態では、皮膚用組成物中に存在する場合、ハイドロトロープ(複数可)の濃度は、組成物の総重量に対して、0.01wt%~60wt%、0.05wt%~50wt%、0.1wt%~40wt%、0.1wt%~30wt%、0.5wt%~25wt%、1wt%~20wt%、又は1wt%~10wt%の範囲内である。いくつかの実施形態では、組成物中のハイドロトロープ(複数可)の濃度は、組成物の総重量に対して、低くとも0.01wt%、低くとも0.05wt%、低くとも0.1wt%、低くとも0.5wt%、又は低くとも1wt%である。他の実施形態では、組成物中のハイドロトロープ(複数可)の濃度は、組成物の総重量に対して、高くとも60wt%、高くとも50wt%、高くとも40wt%、高くとも30wt%、高くとも25wt%、高くとも20wt%、高くとも15wt%、又は高くとも10wt%である。
【0161】
いくつかの実施形態では、担体不溶性活性剤の濃度は、ナノ要素中に存在する場合、ナノ要素の総重量に対して、0.1wt%~99.9wt%の範囲内、1wt%~85wt%の範囲内、2wt%~70wt%の範囲内、3wt%~55wt%の範囲内、5wt%~45wt%の範囲内、5wt%~35wt%の範囲内、10wt%~30wt%の範囲内、又は15wt%~25wt%の範囲内である。
【0162】
いくつかの実施形態では、皮膚用組成物中の、担体可溶性若しくは担体不溶性のいずれかの活性剤の任意の1つ、又は2つ以上の場合はそれらのすべての濃度は、組成物の総重量に対して、0.01wt%~30wt%の範囲内であり、好ましくは0.05wt%~25wt%、0.1wt%~20wt%、0.5wt%~15wt%、1wt%~12.5wt%、2wt%~10wt%、3wt%~10wt%、又は5wt%~10wt%の範囲内である。いくつかの実施形態では、活性剤の任意の1つの濃度は、組成物の総重量に対して、低くとも0.01wt%、低くとも0.05wt%、低くとも0.1wt%、低くとも0.5wt%、低くとも1wt%、低くとも2wt%、低くとも3wt%、又は低くとも5wt%である。他の実施形態では、すべての活性剤又は唯一の活性剤の濃度は、組成物の総重量に対して、高くとも30wt%、高くとも25wt%、高くとも20wt%、高くとも15wt%、高くとも12.5wt%、又は高くとも10wt%である。
【0163】
いくつかの実施形態では、皮膚浸透促進剤(複数可)の濃度は、皮膚用組成物中に存在する場合、組成物の総重量に対して、0.01wt%~30wt%、0.1wt%~25wt%、1wt%~20wt%、3wt%~15wt%、又は5wt%~15wt%の範囲内である。
【0164】
好ましくは、前述の成分は、想定される濃度で化粧品としての使用が認可されている。例えば、皮膚を刺激したり、アレルギー反応を引き起こしたり、急性あるいは慢性的な悪影響を及ぼすことはない。さらに、すべての成分は互いに親和性である必要があり、そのような親和性は上述のとおりである。容易に理解されるとおり、これらの物質の化学的同一性だけでなく、意図される使用に応じた相対的な割合によっても影響を受け得る親和性のこの原則は、好ましくは本明細書に開示される組成物に必要なすべての物質の選択の指針となるべきである。
【0165】
調整方法
本発明の別の態様において、水不溶性コラーゲン合成刺激化合物(CSSC)、特に水不溶性コラーゲン合成刺激ポリマー(CSSP)のナノ要素を含む皮膚用組成物を調製するための方法が提供され、前記ナノ要素は極性液体中にナノ懸濁液として分散される。本方法で使用される物質の特性及び特徴は、各物質について上述したとおりである。本方法の工程を図1に簡単に示し、以下にさらに詳述するが、破線の輪郭を有する工程は任意である。
【0166】
方法の第1の工程(S01)において、少なくとも1つのCSSC(例えば、少なくとも1つのCSSP)が提供される。
【0167】
本方法の第2の工程(S02)において、CSSCは1つ又は複数の不揮発性液体と混合することができ、これによりCSSCは、該液体による可塑化又は膨潤化を受ける。S01で提供されたCSSCの粘度は、さらなる処理に対して十分に低い可能性があるため、この工程は任意である(例えば、温度50℃、せん断速度10秒-1で測定して10mPa・s以下)。
【0168】
CSSCの可塑化が望まれる場合、不揮発性液体との混合は、そのような配合に適した任意の混合温度及び/又は混合圧力で行うことができる。
【0169】
可塑化が実行される温度は、一般的には、例えば、CSSCを特徴付けるTs、Tm、及び/又はTg、及び任意に、不揮発性液体のTb(Tbと呼ばれる)を考慮して、プロセスに関与する物質を特徴付ける温度に従って選択される。先に詳述したとおり、混合温度は、適切には、CSSCの特徴付け温度の少なくとも1つよりも高く、かつ混合工程が実行される圧力における可塑化用液体の沸騰温度よりも低いであろうが、選択された混合温度が可塑化用液体を著しく沸騰して蒸発させない限り、この上限は必須ではない。従って、場合によっては、工程が十分に短く、及び/又は不揮発性液体が十分に過剰であり、及び/又は混合が十分に密閉されたチャンバー内で行われ、その蒸発を制限し/凝縮して混合物へ戻ることを促進する場合には、混合温度はTbであることさえある。
【0170】
これらの温度が第1の値から第2の値へ低下することにより反映される物質の特性の変化は、CSSCの可塑化を確実にする混合プロセスを担う密閉されたチャンバー内の圧力が適宜低減又は増大される場合に、より低い混合温度又はより高い混合温度で代替的に起こり得ることを容易に理解することができる。従って、本教示による組成物の調製に適切な方法の説明において、工程が標準大気圧下で実施されると仮定して、特定の温度及び持続時間に言及することができるが、このような手引きは限定的とみなすべきではなく、可塑化されたCSSCの挙動に関して同様の結果を達成するすべての温度及び持続時間が包含される。
【0171】
CSSCがCSSPである場合、ポリマーのTm及び/又はTgは、ポリマーがある温度未満及び超過で異なる挙動を示すことができる比較的に明確な温度を設定することができるが、これは一般的に、Tsには当てはまらないことに留意されたい。粘弾性特性を考慮すると、ポリマー又は可塑化されたポリマーは、その名目的な軟化点よりも適度に高い温度でも「十分に固体」のままの状態であり得る。
【0172】
可塑化は、種々の条件下、例えば、高い温度(すなわち、30℃以上、例えば、40℃以上、50℃以上、60℃以上、75℃以上、又は90℃以上)及び/又は高い圧力(すなわち、100kPa以上、例えば、125kPa以上、150kPa以上、175kPa以上、200kPa以上、250kPa以上、又は300kPa以上)で行うことができ、これにより一般的には可塑化プロセスを加速する(すなわち、可塑化期間の持続時間を短縮する)か、又は不揮発性液体が蒸発する可能性のある沸騰温度Tbの所望の変更を可能にする。高圧での混合はTbを増加させるため、可塑化が実行可能な温度範囲はそれに応じて広がる。逆に、所望により、CSSCが特定の薬剤によって可塑化される能力を評価するために任意に設定された条件よりも不利な条件、例えば50℃未満の温度及び/又は100kPa未満の減圧下などで不揮発性液体を用いてCSSCを可塑化すると、可塑化プロセスを長くすることができる。CSSCが特定の不揮発性液体によって可塑化又は膨潤化される能力は、上記の温度又は圧力条件のいずれか1つで評価することができる。
【0173】
混合物を攪拌することによって、CSSCを不揮発性液体と又は不揮発性液体内で、混合することはまた、可塑化期間を短縮することができ、そのような攪拌は、さらに、CSSCのすべての部分が比較的に均一な様式で可塑化されることを確実にし、可塑化されたCSSCは、方法の後続の工程及びそこから期待される結果に関してかなり均質的な挙動を示す。可塑化プロセス中に過剰な不揮発性液体が使用される場合、次の工程に進む前に任意に除去することができる。可塑化対象の物質が比較的に高粘度である場合、混合工程はコンパウンド(compounding)とも呼ばれ、混合装置は適宜に選択することができる。
【0174】
可塑化の期間は、特に可塑化されるCSSC、使用される不揮発性液体、可塑化条件(例えば、温度、圧力、及び/又は撹拌)、及び可塑化の所望の程度に依存する。可塑化期間は、少なくとも1分、長くて4日間であり得る。
【0175】
いくつかの実施形態では、混合工程S02の間に追加の物質が可塑化及び添加されるCSSC内に取り込まれてもよい。これらの物質(一般的には極性担体に不溶性である)は、少なくとも1つの極性担体不溶性界面活性剤(界面活性剤は乳化剤として機能する)、少なくとも1つの極性担体不溶性活性剤(活性剤は組成物の生物学的活性を増強若しくは改質する)、又は任意の望ましい添加剤であり得る。可塑化条件を、そのような追加成分の存在に対して適合させることが可能である。
【0176】
混合は、当業者に知られている任意の方法、例えば超音波処理など、ダブルジャケット式プラネタリーミキサー又は押出機の使用などにより行うことができる。混合される物質が比較的に高い粘度を有する場合、混合工程は、2本ロールミル、3本ロールミル及びそのような種類の装置を用いて行うことができる。特定の実施形態では、混合は超音波処理によって行われる。
【0177】
方法の第3の工程(S03)では、CSSC(任意に可塑化され、さらに任意に少なくとも1つの界面活性剤及び/又は少なくとも1つの担体不溶性活性剤を含むもの)を少なくとも1つの極性担体と組み合わせる。所望により、この工程で少なくとも1つの界面活性剤を加えることができ、該界面活性剤は比較的に極性の高い乳化剤又はハイドロトロープである。極性担体に可溶な追加の物質をこの工程で加えることもできるが、次のナノサイズ化工程の後に同様に導入してもよい。
【0178】
この混合物は、第4の工程(S04)でナノサイズ化されてナノ懸濁液を形成し、これにより、任意に他の極性担体不溶性物質を含有するCSSCのナノ要素が、任意に他の極性物質と組み合わされた極性担体を含む極性液体中に分散される。
【0179】
ナノサイズ化は一般的に比較的に高い温度でせん断を加えることによって行われるため、CSSCを含むナノ要素は一般にその工程間にナノ液滴となり、結果として得られるナノ懸濁液はナノ乳濁液である。
【0180】
ナノ乳濁液は、CSSC(可塑化されているか否か、又は追加の化合物を含むかにかかわらず)をせん断することができる任意の方法によって、所望の物質の混合物をナノサイズ化することによって得ることができ、せん断方法は、超音波処理、粉砕、摩擦、高圧均質化、高せん断混合、及び高せん断マイクロ流体化を含む群から選択される。特定の実施形態では、ナノサイズ化は超音波処理によって行われる。
【0181】
ナノサイズ化は、CSSCの第1のTs、Tm、及びTgのうちの少なくとも1つに少なくとも等しいせん断温度、可塑化されている場合にはCSSCの第2のTs、Tm、及びTgのうちの少なくとも1つに少なくとも等しいせん断温度、及びいくつかの実施形態では、せん断されるCSSCミックスの最も高い特徴付け温度よりも少なくとも5℃高い、少なくとも10℃高い、又は少なくとも15℃高いことが可能なせん断温度で実施される。しかしながら、これはせん断工程が十分に短時間であり、かつ/又は極性液体が十分過剰であれば必須ではないが、せん断温度は、好ましくは、かなりの量の液相が沸騰して蒸発するのを防ぐ必要がある。いくつかの実施形態では、せん断が行われるナノサイズ化温度は、せん断が行われる液相の沸騰温度、又は蒸発が防止される必要のある他の任意の液体の沸騰温度を超えない。従って、せん断温度は、一般に、ナノサイズ化工程が実施される圧力における極性担体のTb(Tbと呼ばれる)の最低値よりも低い。例えば、極性担体が水である場合、せん断温度は、ナノサイズ化が大気圧で行われると仮定して、95℃より低い温度、90℃より低い温度、85℃より低い温度、又は80℃より低い温度に選択することができる。しかしながら、ナノサイズ化を高圧で行えば、極性担体のTbは上昇し、それに伴ってせん断温度も上昇するであろう。さらに水で説明すると、そのTbは、約100kPaにて100℃であるが、この沸騰温度は約200kPaで120℃に上昇し、この場合、超えてはならないナノサイズ化温度は最大115℃であり得る。前述したとおり、これらの上限は好ましいが必須ではなく、工程が十分に短時間であり、及び/又は極性担体が十分に過剰であり、及び/又は蒸発が制限されるように/ナノ懸濁液へ凝縮して戻ることが促進されるようにナノサイズ化が十分に密閉されたチャンバー内で行われる場合、極性担体の一部の沸騰による蒸発は、さらに高い温度で防止することが可能であるであろう。
【0182】
このTs、Tm、又はTgより高く、任意にTbより低い範囲のせん断温度では、CSSC、特にCSSPは、完全に融解し、ナノサイズ化プロセスは「融解ナノ乳化」とみなすことができる。
【0183】
いくつかの実施形態では、このナノサイズ化工程で形成されたナノ要素(例えば、ナノ液滴又はナノ粒子)のすべての数(D50)又は体積(D50)の少なくとも50%は、最大200nm、最大150nm、最大100nm、最大90nm、最大80nm、又は最大70nmの流体力学的直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノ要素のメジアン径は、最小5nm、最小10nm、最小15nm、又は最小20nmである。有利なことに、このような値は、ナノ要素の体積によって決定される値として適用可能であり、数によって決定される値は一般的にはより低く、通常、室温で測定される。
【0184】
容易に理解されるとおり、ナノ要素の物質を特徴付ける温度及び/又は測定が実施され得る温度に応じて、ナノ要素は、温度が低下するにつれて、相対的に液体のナノ液滴又は相対的に固体のナノ粒子のいずれかであり得る。室温でのナノ粒子のサイズは、ナノ液滴のサイズに見合うか、わずかにコンパクトで、そのメジアン径は200nmを超えない。
【0185】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子又はナノ液滴のサイズは、当技術分野で知られているとおり、顕微鏡技術によって決定される(例えばクライオ(Cryo)TEM)。いくつかの実施形態では、ナノ要素のサイズは動的光散乱(DLS)によって決定される。DLS技術では、粒子は等価の挙動の球体に近似され、サイズは流体力学的直径に関して提供され得る。DLSはまた、ナノ要素の集団のサイズ分布を評価することも可能である。
【0186】
分布結果は、累積粒度分布の所定の割合における流体力学的直径に関して、粒子数又は体積のいずれかに関して表すことができ、一般的には累積粒度分布の10%、50%、及び90%に対して提供される。例えば、D50は、場合により試料の粒子の体積又は数の50%未満が存在する最大流体力学的直径を意味し、それぞれ体積あたりのメジアン径(D50)又は粒子数あたりのメジアン径(D50)と意味の区別なく呼ばれ、より単純には平均直径と呼ばれることが多い。
【0187】
いくつかの実施形態では、本開示のナノ要素は、D90が500nm以下、又はD95が500nm以下、又はD97.5が500nm以下、又はD99が500nm以下、すなわち、試料の粒子の体積又は数のそれぞれ90%、95%、97.5%、又は99%が500nm以下の流体力学的直径を有する累積粒度分布を有する。
【0188】
いくつかの実施形態では、ナノ要素(例えば、ナノ粒子)の集団の累積粒径分布は、所定の流体力学的直径を有する粒子を含む試料の粒子の数(Dと表記)又は体積(Dと表記)に関して評価される。
【0189】
粒子集団の90%又は95%又は97.5%又は99%の累積粒度分布を有するいずれの流体力学的直径は、試料の粒子数又は体積のいずれの点から見ても、以下では「最大直径」と呼ぶことができ、これは、すなわち、それぞれの累積粒度分布での集団中に存在する粒子の最大流体力学的直径である。
【0190】
「最大直径」という用語は、本教示の範囲を完全な球形状を有するナノ粒子に限定することを意図していないことを理解されたい。本明細書で使用するとおり、この用語は、集団の分布の少なくとも90%、例えば90%、95%、97.5%若しくは99%、又は任意の他の中間値での累積粒度分布における粒子の任意の代表的な寸法を包含する。
【0191】
ナノ粒子又はナノ液滴は、いくつかの実施形態では、均一な形状であり得、かつ/又は集団の中央値に対して対称的な分布内であり得、かつ/又は比較的に狭いサイズ分布内であり得る。
【0192】
次の条件の少なくとも1つが当てはまる場合、粒度分布は比較的に狭いと言われる:
A)ナノ要素の90%の流体力学的直径とナノ要素の10%の流体力学的直径との間の差が、200nm以下、150nm以下、又は100nm以下、又は50nm以下であることであり、数学的に:(D90-D10)≦200mなどにより表すことができること;
B)a)ナノ要素の90%の流体力学的直径とナノ要素の10%の流体力学的直径との間の差;と、b)ナノ要素の50%の流体力学的直径との間の比が、2.0以下、又は1.5以下、あるいはさらに1.0以下であることであり、数学的に:(D90-D10)/D50≦2.0などにより表すことができること;
C)ナノ要素の多分散性指数が、0.4以下、又は0.3以下、又は0.2以下であることであり、数学的に:PDI=σ2/≦0.4などにより表すことができ、式中、σは粒子分布の標準偏差であり、dは粒子の平均粒子径であり、PDIは任意に0.01以上、0.05以上、又は0.1以上であること。
【0193】
方法の第5の工程(S05)において、ナノ乳濁液は、製造において所望される場合、任意にCSSC(又は可塑化されたCSSC)のTm、Ts、又はTg未満の温度まで積極的に冷却され得、ナノ要素の相対的な固化を促進することができる。このような積極的な冷却は、ナノ懸濁液を冷蔵する(例えば、所望の低温である冷却剤に入れる)ことによって、ナノ懸濁液を継続的な攪拌にかけて熱放散を促進する(かつナノ液滴が冷却される際にナノ液滴の適切な分散を維持する)ことによって、あるいは両方のアプローチを組み合わせることによって達成することができる。この冷却工程は任意であり、ナノ乳濁液はナノサイズ化の終了時にいずれの撹拌をすることなく受動的に冷却させることが可能であり得る。
【0194】
この方法のさらなる任意の第6の工程(S06)では、極性担体可溶性活性剤及び/又は皮膚浸透促進剤を添加することができ、極性担体中で撹拌することによって溶解させることができる。図では、積極的(S05)であれ受動的であれ、ナノ懸濁液の冷却後の別個の工程として描かれているが、任意の極性担体可溶性物質の添加は、代替的に、冷却前又は冷却中に行われる可能性がある。
【0195】
上で詳述した方法では、いくつかの成分が特定の工程にて組成物中に導入される(又は任意に導入される)と記載されているが、これは限定的なものとして解釈されるべきではない。例えば、皮膚浸透促進剤は、選択される物質に応じて、実施される場合は工程S02の間に不揮発性液体に添加され得え、工程S03の間に極性担体に添加され得え、又は工程S06の本記載のとおりのナノ乳濁液の極性液相に添加され得る。あるいは、CSSCによって形成されたナノ要素が、求められる効果に十分有効な量で経皮投与されることを条件として、そのような薬剤を省略することもできる。
【0196】
従って、上述した工程を変更したり、省略したり(例えば、S02、S05又はS06)、追加の工程を含めることができる。例えば、皮膚用組成物は、保湿剤、皮膚軟化剤、湿潤剤、UV保護剤、増粘剤、防腐剤、酸化防止剤、殺菌剤、防カビ剤、キレート剤、ビタミン、及び香料などの化粧品組成物又は医薬組成物に通例となっている任意の添加剤を含んでもよく、その性質及び濃度については、本明細書でさらに詳しく説明する必要はない。添加剤は、すでに述べた方法の工程中に添加してもよいし、又は新たな工程を介して添加してもよい。さらに、組成物は、皮膚科学的使用、特にヒトの皮膚への使用に適するように、保健規則に従ってさらに処理(例えば、滅菌、濾過など)され得る。
【0197】
有利なことに、本発明の方法は、例えば埋め込み物(インプラント)を調製する場合に有効成分を連結して結合することが必要とされるような有効成分の化学的な修飾を行おうとするものではない。本組成物にこのような修飾がないことは、皮膚バリアを通過できないような大きな粒子の形成を防ぐことが期待され、及び/又はこれらの成分の皮膚への浸透が成功するとすれば、天然の(修飾されていない)形態でこれらの成分が提供し得る生物学的活性の望ましくない低下を防ぐことができると考えられる。
【0198】
他の態様において、有効量のCSSCの送達によって可能となる、特に対象の皮膚の外観を改善するための、本皮膚用組成物の美容的使用又は治療的使用が提供される。注入を介することを含めて皮膚に送達された場合にそのようなCSSCが有することが知られている、又は今後見出されるであろうすべての活性をこれらの使用は包含し、本発明は、該組成物の局所適用によってそのような使用を追加的に実施することを有利に可能にする。このような使用のための皮膚用組成物の調製及びその適用様式は、従来的に実行及び実施することが可能であり、本明細書で詳述する必要はない。
【実施例
【0199】
物質
以下の実施例で使用する物質を以下の表1に示す。報告された特性は、各供給元から提供された製品データシートから取得するか、又は標準的な方法で推定した。特に断りのない限り、すべての物質は入手可能な最高純度にて購入した。N/Aは、特定の情報が利用できないことを意味する。
【0200】
【表1】
【0201】
装置
クライオTEM:透過型電子顕微鏡(TEM)、Talos 200C、Thermo Fisher Scientific(商標)、米国、レーシーグリッド付き
DSC:示差走査熱量計DSC Q2000(TA Instruments、米国)
オーブン:DFO-240、MRC、イスラエル
粒径分析器(動的光散乱法):Zen3600ゼータサイザー(Malvern Instruments(登録商標)、英国)
ソニケーター:VCX750、Sonics&Materials、米国
サーモレオメーター:Thermo Scientific(ドイツ)Haake Mars III、C20/1°スピンドル、ギャップ0.052mm、及びせん断速度10秒-1
【0202】
実施例1:ポリカプロラクトンの可塑化に適した不揮発性液体のスクリーニング
本研究では、コラーゲン合成促進化合物(CSSC)、特にコラーゲン合成促進ポリマー(CSSP)を可塑化するのに適した不揮発性液体(可塑剤又は膨潤剤とも呼ばれる)の様々な候補を試験した。
【0203】
様々な液体の各々を、14kDaの分子量を有するPCL(PCL-14)と1:1の重量/重量比で80℃で1時間インキュベートした。すなわち2gの不揮発性液体をガラスバイアルに入れた2gのPCL-14に加え、密封したバイアルを可塑化温度まで予熱したオーブンに入れた。インキュベーション後、バイアルの内容物を手動で約30秒間、透明な溶液が得られるまで混合した。可塑化されたポリマーの試料を、固化するように室温で一晩(すなわち少なくとも12時間)冷却した。このように試験した液体はいずれも可塑化されたPCL-14からの溶出を示さず、これは重量あたりの比率がさらに高くても満足に使用できる可能性があることを示唆している。
【0204】
次いで、固体試料をレオメーターに移し、ここで10℃/分の昇温で20℃~80℃の温度関数として粘度を測定した。膨潤化していないPCL-14で作成された参照液もこの研究に含み、この対照は、温度を上げるにつれて粘度が約2×10mPa・s(50℃で測定)から約2×10mPa・s(80℃で測定)まで徐々に低下することを示した。比較のために、より高い分子量を有する可塑化していないPCL、PCL-37、PCL-45及びPCL-80(後に詳述)は、前記昇温範囲内で50℃で測定して粘度が最大約6.2×10mPa・sであった。
【0205】
重量比1:1で同様に調製した試料について、この温度範囲での粘度を追加測定したところ、以下の不揮発性液体が粘度を低下させることがわかった。PCL-14の場合、このCSSCの第1の粘度が2×10mPa・sと比較して、第2の粘度はすべて10mPa・s以下であり(50℃で測定)、よって少なくとも1.5log減少している。これらの不揮発性液体には、カプリル酸、ジカプリリルカーボネート、C12~C15アルキルベンゾエート、クエン酸トリエチル、シトロネロール、シクロヘキサンカルボン酸、アジピン酸ジブチル、ヒノキチオール、リナロール、メントール、プロピレンカーボネート、テルピノール、tert-ブチルアセテート、及びチモールが含まれ、例えばSigma-Aldrich、BASF(登録商標)、又はPhoenix Chemicalから入手可能である。
【0206】
上記のスクリーニング結果に基づいて、CSSPと不揮発性液体の最初のペア、すなわち分子量約14kDaのPCL(PCL-14)とアジピン酸ジブチルとを選択した。CSSCと不揮発性液体とのさらなる組み合わせも同様に試験し、実施例2~4に詳述されているとおり、皮膚用組成物の調製に適合することがわかった。
【0207】
実施例2:極性水相におけるCSSCのナノ懸濁液
界面活性剤混合物(乳化剤及びハイドロトロープを含む)を含有する水溶液を以下のように調製した:蒸留水6.6g、キシレンスルホン酸アンモニウム0.3g、アデノシン三リン酸塩0.1g、及びビタミンE TPGS 1gを20mlのガラスバイアルに入れ、CSSCのナノ要素の極性液相として機能することが意図される透明な水溶液が得られるまで、10分間超音波処理した(40%の出力で、7秒のパルスで作動の後に1秒の中断を挟む)。
【0208】
CSSCプレミックスを以下のように調製した:別の20mlガラスバイアルに、約62℃の天然の融解温度(DSCにより決定)を有するPCL-14 3gを、Cetiol(登録商標)B 7gと合わせ、このバイアルをPCL-14が完全に融解するまで1時間、70℃~80℃の温度のオーブンに入れた。その後、70重量%のCetiol(登録商標)Bで可塑化された30重量%の融解したPCLの透明で均質な溶液が得られるまで、このバイアルを約30秒間手動で混合した。可塑化されたポリマーの融解温度をDSCで測定したところ、約50℃であることがわかり、Cetiol(登録商標)Bで可塑化することにより、該ポリマーのTmが10℃超過、効果的に低下することがわかった。
【0209】
可塑化されたポリマーの融解溶液を含有するCSSCプレミックス2gを、界面活性剤を含む水溶液8gを含有するバイアルに加え、約70℃のせん断温度で20分間超音波処理し(前述のとおり)、水溶液中の液体ポリマーのナノ液滴を含有するナノ乳濁液を得た。
【0210】
この組成物は、表2Aに組成物2.1として報告する。追加の組成物を同様の手順に従って調製し、各組成物は、表2A~2Eに規定するとおり、異なる成分を異なる量で含有し、異なる条件下で調製した。超音波処理を行う場合は、上記のとおりに行った。表に報告されている値は、組成物の総重量に対する重量パーセント(wt%)での各成分の濃度に対応しているが、ただし、CSSCプレミックスの項の値は除き、この項の値は、その特定のプレミックスにおける各成分の重量パーセントに対応している。このように製造されたナノ乳濁液を、1時間かけて室温まで受動的に冷却し、これによりナノ液滴が相対的に固化し、ナノ分散液の形成を可能にした。このようにして製造されたナノ粒子のサイズを、水で1:100に希釈した組成物の試料に対する動的光散乱(DLS)によって測定し、測定された体積あたりのメジアン径(D50)及び数あたりのメジアン径(D50)、並びに多分散性指数(PDI)もまた以下の表に示す。
【0211】
【表2A】
【0212】
【表2B】
【0213】
【表2C】
【0214】
PCL-14を、より高い分子量、特に25kDa、37kDa、45kDa、及び80kDaのポリ乳酸及びポリカプロラクトンなどの様々なCSSPに置き換えた、追加の組成物も同様に調製した。非ポリマーCSSC、すなわちコエンザイムQ10も、可塑化せずに使用した。これらの組成物は、前述のとおりに表2Dに報告する。
【0215】
【表2D】
【0216】
Cetiol(登録商標)Bの代わりに他の不揮発性液体、すなわちPelemol(登録商標)256及びCetiol(登録商標)CCを用いて、より多くの組成物を調製した。これらの組成物は、前述のとおりに表2Eに報告する。
【0217】
【表2E】
【0218】
表2A~2Eからわかるとおり、本方法は、CSSCを含有するナノ要素のナノ懸濁液を調製するのに適しており、ナノ要素は、D50及びD50が200nmを超えず、これらの値は、上記で報告された組成物のいくつかでは100nmよりもさらに小さい。ナノ粒子の集団のPDIは最大でも約0.4であった。
【0219】
上記のプレミックスに相当する試料は、CSSCが極性担体不溶性物質と少なくとも均一に混合され、かつ不揮発性液体が存在する場合はそれによってほとんどの場合可塑化される混合工程の終了時の粘度についても追加的に試験した。粘度を、20℃~80℃の温度範囲にわたって10秒-1のせん断速度で前述のとおり測定し、このように試験したすべての試料について、50℃で測定される粘度は一般に10mPa・s未満であることがわかり、概して10mPa・s~10mPa・sであり、多くの場合5×10mPa・sを超えず、なお多くの試料は10mPa・s未満の粘度を有することがわかった。
【0220】
実施例3:極性担体不溶性活性剤を含むポリカプロラクトンのナノ懸濁液
本実施例では、CSSCに活性剤を添加した。CSSCを含むナノ要素への極性担体不溶性活性剤の取り込みを例示するために、水不溶性のパルミチン酸レチノールを用いた。
【0221】
2gのPCL-14、1gのパルミチン酸レチノール、界面活性剤として1gのOlivatis(登録商標)12C、可塑性不揮発性液体としての6gのCetiol(登録商標)Bを組み合わせることにより、CSSC/レチノールプレミックスを20mlのガラスバイアルに調製した。バイアルを約80℃の温度で2分間超音波処理し(前述のとおり)、可塑化されたCSSCの透明な均質溶液を得た。CSSC/レチノールプレミックスを、水相と混合されるまで80℃の温度のオーブンで維持した。
【0222】
別の20mlのガラスバイアルに、7.5gの蒸留水、及びハイドロトロープである追加の界面活性剤として0.5gのジオクチルスルホコハク酸ナトリウムを入れ、極性液相として機能することが意図される透明な水溶液が得られるまで約60℃の温度で1分間超音波処理した。
【0223】
次に、高温の2gのCSSC/レチノールプレミックスを8gの前記水溶液を含有するバイアルに加え、せん断温度約70~80℃で1分間超音波処理し、これにより液体PCLとパルミチン酸レチノールとのナノ液滴を含有するナノ乳濁液を水性極性相に分散させた。
【0224】
この組成物は、表3に組成物3.1として報告する。他の組成物も同様の手順で調製し、この表に記載されるとおり、異なる成分を異なる量で含有させた。表に報告されている値は、組成物の総重量に対する重量パーセント(wt%)での各成分の濃度に対応しているが、ただし、CSSC/レチノールプレミックスの項の値は除く。この項の値は、その特定のプレミックスにおける各成分の重量パーセントに対応している。このように製造されたナノ乳濁液を、1時間かけて室温まで受動的に冷却し、これによりナノ液滴が相対的に固化し、ナノ分散液の形成を可能にした。このようにして製造したナノ粒子のサイズ及びPDI値を、前述のとおりDLSで測定し、これはまた表3に示す。
【0225】
【表3】
【0226】
表3からわかるとおり、本方法は、CSSCと担体不溶性活性剤とを含有するナノ要素のナノ懸濁液を調製するのに適しており、前記ナノ要素のD50とD50とは200nmを超えず、これらの値は、上記で報告された組成物のいくつかではなお100nmよりも小さい。ナノ粒子の集団のPDIは最大でも約0.3であった。
【0227】
実施例4:極性担体可溶性活性剤を含む極性液相中のポリカプロラクトンのナノ懸濁液
界面活性剤混合物(乳化剤及びハイドロトロープを含む)を含有する水溶液を以下のように調製した:4.4gの蒸留水、0.6gのキシレンスルホン酸アンモニウム、及び1gのビタミンE TPGSを20mlのガラスバイアルに入れ、前記界面活性剤を含み、かつ極性液相として機能することが意図される透明な水溶液が得られるまで10分間超音波処理した(前述のとおり)。
【0228】
別の20mlガラスバイアルに、CSSCプレミックスを以下のように調製した:3gのPCL-14と7gのCetiol(登録商標)Bとを組み合わせ、このバイアルを、PCLが可塑化して完全に溶けるまで80℃の温度のオーブンに1時間入れた。次いで、30wt%の融解したPCLが70wt%のCetiol(登録商標)Bにより膨潤化した透明で均質化された溶液が得られるまで、このバイアルを約30秒間手動で混合した。
【0229】
可塑化されたポリマーの融解溶液2gを、界面活性剤を含む前記水溶液6gを含有するバイアルに加え、約70℃のせん断温度で20分間超音波処理し(上記のとおり)、これにより水性極性相中に液体ポリマーのナノ液滴を含有するナノ乳濁液を得た。
【0230】
ナノ乳濁液を1時間かけて室温まで受動的に冷却させ、その時点でプロピレングリコール1gを加え、バイアルの内容物を10秒間手動で混合した。プロピレングリコールは皮膚透過促進剤として比較的に少量で添加されたが、その存在は液相の極性にも寄与した。その後、極性担体ー可溶性活性剤として1gのLMWヒアルロン酸を添加し、HAが極性液相に完全に溶解するまで、バイアルの内容物を再び約10秒間手動で混合した。
【0231】
この組成物は、表4に組成物4.1として報告する。追加の組成物も同様に調製し、異なる成分を異なる量で含有させた。表に報告されている値は、組成物の総重量に対する重量パーセント(wt%)での各成分の濃度に対応しているが、ただし、CSSCプレミックスの項の値は除き、この項の値は、その特定のプレミックスにおける各成分の重量パーセントに対応している。このようにして製造したナノ粒子のサイズ及びPDI値を、前述のとおりDLSで測定し、これはまた表4に示す。
【0232】
【表4】
【0233】
表4からわかるとおり、本方法は、CSSCと担体可溶性活性剤とを含有するナノ要素のナノ懸濁液を調製するのに適しており、前記ナノ要素はD50及びD50が200nmを超えず、ナノ粒子の集団のPDIは最大でも約0.2である。
【0234】
10~1,000nmの流体力学的直径を持つナノ粒子のパーセンテージ(体積あたり)を示す組成物4.1の試料の粒度分布の代表的な結果を図2に示す。
【0235】
組成物4.1のナノ粒子のサイズを、ナノ分散液の極低温切断部で撮影した画像の顕微鏡TEM測定によってさらに確認し、この画像で観察された凍結ナノ粒子は、DLSにより得られた測定値と一致するサイズを有していた。その一例の画像を図3に示す。ここでナノ粒子は濃い灰色がかった球として背景に対して現れる。
【0236】
実施例5:皮膚刺激性分析のためのパッチ試験手順
実施例2、3及び4で調製したものなど、本教示による皮膚用組成物の刺激性作用は、存在する場合、試験対象の製剤をパッチを介して適用することにより、ヒトボランティアの皮膚で試験することができる。
【0237】
各ボランティアは、所定の身体部位(例えば、背中)のボランティアの皮膚と接触するフィルター組織を有する閉塞パッチの小さなプラスチック空洞(例えば、0.64cm)に、所定の容積の試験組成物(例えば、0.02ml)を適用する。該パッチは低刺激性の不織布粘着テープで皮膚部分に貼り付けられ、試験製剤は48時間皮膚に接触した状態に保たれる。
【0238】
この局所組成物の適用前とパッチ除去後30分に、治療の外観を評価する。組成物を含まない空のパッチは、陰性対照として機能することが可能である。
【0239】
皮膚反応(紅斑(erythema)、乾燥、及び浮腫(oedema))は、試験全体を通して、あらかじめ定義された以下の採点基準に従って採点される:
紅斑
0=紅斑の痕跡なし、0.5=最小限又は疑わしい紅斑、1=わずかな発赤(redness)、斑状、及びびまん、2=中程度の均一な発赤、3=強い均一な発赤、4=燃えるような発赤。
乾燥(鱗屑)
0=鱗屑の痕跡なし、0.5=鱗屑のない乾燥;滑らかで張りのある外観、1=細かい/軽度の鱗屑、2=中程度の鱗屑、3=大きな剥離を伴う重度の鱗屑
浮腫
- =浮腫なし、+ =浮腫あり
【0240】
いずれの試験組成物で得られた結果は、対照ゾーン(空のパッチ下の未投薬の皮膚表面)で得られた結果と比較し、組成物は、前述の予想される皮膚反応に関して組成物が有する複合作用に従って、非刺激性、非常にわずかに刺激性、わずかに刺激性、中程度に刺激性、刺激性、又は非常に刺激性に分類される。
【0241】
実施例6:顔の皮膚外観に対する組成物の効果
本教示による皮膚用組成物の美容効果を、試験対象の製剤を顔の皮膚に適用することにより、健康なヒトボランティアの皮膚に対して試験した。本研究でモニターしたパラメーターは、様々な処置に対する応答における皮膚のシワ及び小ジワ(線)の数であった。ボランティアには、試験部位に皮膚科学的問題、皮膚の炎症、シミ、又は研究に支障をきたす可能性のある痕跡がなかった。試験試料には、所定濃度のCSSPを含有する局所用組成物、及び対応するプラセボ組成物(同じプロセスで調製)が含まれるが、少なくともCSSCを含まないもの(プラセボI)、又はプレミックスの調製に使用した界面活性剤を含まないもの(プラセボII)もまた含まれる。試験した組成物を表5にまとめた。
【0242】
【表5】
【0243】
臨床試験は二重盲検法で行われ、20人のボランティアが無作為に本試験の各群に割り付けられた(すなわち、CSSC組成物に各20人及びそれぞれのプラセボ組成物に各20人)。すべての群が、それぞれの組成物1mlを1日2回(朝晩)、顔の皮膚に優しく擦り込むことで適用した。
【0244】
顔の皮膚のシワに対する様々な組成物の効果は、CanlfieldのVISIAシステム(Canfield Scientific、米国)を使用して測定した。このシステムは、標準照明、交差偏光フラッシュ、及びUVフラッシュを使用して顔画像をキャプチャ及び保存するためのVISIAイメージングブース及びVISIAソフトウェアで構成されている。
【0245】
最初の適用前(ベースライン)と、試験される局所用組成物を1日2回適用した1ヵ月後(T)、2ヵ月後(T)、3ヵ月後(T)に、対象領域の測定を行った。T、T、Tの時点の結果を、各ボランティアで最初に得られたベースライン値、及び同じ時点におけるプラセボ群の結果と比較した。
【0246】
このソフトウェアは、画像に写っている顔の特定の領域を自動的に分離又は「マスク」し、その領域の広範囲な分析を実行してシワなどの皮膚の特徴を評価する。VISIAシステムによって提供されたデータを、「特徴数」として表示し、これは、それぞれの事例のサイズ又は強度に関係なく、評価される特徴(例えば、シワ及びシワの線)の異なる事例の数をカウントするものである。この値は、顔の左右の両側でカウントされたシワ(「全シワ」)、又は顔の両側それぞれでカウントされたシワの平均値(「平均シワ」)として提示することができる。同じ群の全ボランティアの結果を平均し、異なる時点での異なる群の結果を図4に示す。
【0247】
図4は、対応するプラセボ組成物「プラセボI」により治療された群と比較した、組成物2.2により治療された群の顔の皮膚の平均シワ数の経時的変化を示し、約80であったベースライン時に測定された平均シワ数に対するパーセンテージとして計算される。見てわかるとおり、プラセボ組成物を適用した群は、驚くべきことにベースラインに対して正規化すると最大20%の平均シワ数の増加を示したが、組成物2.2を適用した群は、ベースラインと比較して1ヵ月後に1.5%の減少、2ヵ月後に3.2%の減少、及び3ヵ月後に5.7%の減少を伴い、試験の3ヵ月間に平均シワ数が徐々に減少した。この傾向は、CSSCが肉眼で検出できる程度までコラーゲンの新合成を引き起こすのに3ヵ月近くかかることを考慮すれば、妥当なものである。
【0248】
CSSCを欠いたプラセボで治療した対照群のシワの平均数が急激に増加したのは、プラセボ組成物中に遊離界面活性剤が存在したことに起因すると考えられる(この界面活性剤は分散させるナノ要素を有しない)。理論に束縛されることは望まないが、遊離界面活性剤の存在は、皮膚層の脂質構造に不利な改質をもたらす可能性があり、それに伴って経表皮水分損失が増加する可能性がある。このような改質が、皮膚の外観の変化の原因である可能性があり、この試験ではシワの数の増加によって相対的な乾燥が検出された。
【0249】
対照的に、組成物2.2では、界面活性剤はほとんどCSSC(PCL)に結合しているため、遊離界面活性剤の量はプラセボ組成物に比べてはるかに少ないと予想される。組成物2.2の効果を対応するプラセボ組成物の効果と比較すると、図4で見られるとおり、組成物2.2のCSSCは、ボランティアの顔の皮膚に自然に発生するシワの数を減少させただけでなく、皮膚に適用された組成物中に存在する可能性のある遊離界面活性剤の乾燥効果も克服した。従って、例えば3ヵ月後に測定されたシワの数に対するCSSCのナノ成分の真の減少効果は、シワの数に対して反対の効果を持つ可能性のある遊離界面活性剤を実質的に含まない組成物であれば、5.7%よりも大きくなる可能性がある。
【0250】
組成物2.2の上記の明らかに中程度の効果が、液相中の遊離界面活性剤の存在に起因し得ることを確認するために、組成物2.21、2.28、及び2.29を、新たなボランティア群で同様に試験し、対応する対照群によって適用される界面活性剤を欠くプラセボIIと比較した。各群のベースライン値と比較した減少率において、組成物を1ヵ月間適用した後に得られた結果を表6にまとめた。
【0251】
【表6】
【0252】
見てわかるとおり、1ヵ月後、試験の治療組成物を適用した群は、少なくとも7.8%の平均シワ数の減少を示したのに対し、対応するプラセボIIを適用した群は、わずか0.06%の有意でない減少しか示さなかった。注目すべきことに、この研究では、80kDaもの高分子量を有するCSSCがプラセボと比較して平均シワ数を減少させることが証明された。このことは、このような分子が十分に有効な量を経皮投与可能であることを裏付けている。組成物2.2で知られ、かつ示されているとおり、CSSCは、皮膚に適用された時点と、皮膚構造タンパク質の十分な新合成後にシワなどの目に見える作用が検出される時点との間に時間差を示す可能性があるため、シワの数を減少させるこの傾向は、治療組成物の継続的な適用により経時的に継続することが予想される。このような組成物の有効性の向上は、少なくともCSSCの刺激活性によってコラーゲンが平坦(プラトー)レベルに達するまで(組成物中のCSSCの用量に応じて)期待される。
【0253】
所与の時点で本発明の組成物を適用する群の特徴数において、同じ時点でプラセボ組成物を受けた群と比較して、又は本組成物を適用する前のそれぞれのベースラインと比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、又は少なくとも20%のシワが減少したことは、満足すべきものとみなされる。
【0254】
実施例7:顔の皮膚の弾力性に及ぼす組成物の効果
皮膚弾力性に対する本発明の組成物の効果は、Dermal TorqueMeter(登録商標)(DTM310)(Dia-Stron、英国)を用いて試験され、これにより、機械的プローブが、対象の顔の皮膚表面の選択領域に所定の長さの時間、所定のトルクを及ぼし(「トルクオン」)した後に「トルクオフ」期間が続き、ここでの力は急速に解放され、皮膚はねじり力によって生じた歪みを元の状態に戻そうとする。トルクディスクの回転角度は、このプロセスを通して測定され、「トルクオン」期間と「トルクオフ」期間との比率として提供される。このような測定は、試験組成物としての組成物2.21及び対照としてのプラセボIIを用いて、実施例6に記載のとおりに実施された臨床試験のボランティアに対して行った。
【0255】
わずか1ヶ月の治療後、組成物2.21を適用した群は、ベースラインと比較して、統計的に有意に23%の弾力性の増加を示したが、プラセボIIを適用したボランティアは、皮膚の初期弾力性に変化は見られなかった。実施例6に示すとおり、組成物2.21は、プラセボIIと比較して、群の平均シワ数の減少という点では、比較的に効果の低い試料であった。それにもかかわらず、この組成物は皮膚の弾力性の有意な増加をもたらした。経時的に弾力性が増加するこの傾向は、少なくともCSSCの活性がプラトーに達するまで、治療組成物の継続的な適用によって継続すると予想される。
【0256】
実施例8:顔の皮膚の保湿に対する組成物の効果
皮膚の水分補給に対する本発明の組成物の効果を測定し、これまでの実施例で報告されたシワの数及び/又は弾力性の変化が、実際に組成物の特定のコラーゲン刺激活性に起因するものであり、皮膚表面の保湿レベル(hydration level)の変化に起因するものではないことを確認した。
【0257】
皮膚の保湿分析は、角質層の第1層(10~20μm)を貫通する電気散乱場を作用させるプローブ・キャパシタを使用して、角質層のキャパシタンスを測定するCorneometer(登録商標)CM 825(Courage+Khazaka electronic GmbH、ドイツ)を用いて行った。結果は任意単位(arbitrary unit)で報告される。
【0258】
組成物2.21をCSSC含有試験組成物とし、プラセボIIを対照として使用して、実施例6に記載したように、組成物の適用前(ベースライン)及び1ヵ月の適用後に、皮膚表面の保湿による静電容量の変化を測定した。組成物2.21を適用したボランティアは、保湿レベルが約5%のわずかな減少を示し、一方プラセボIIを適用したボランティアは、約3.9%のわずかな増加を示した。
【0259】
これらの結果は、CSSC含有組成物も対照組成物もいずれも、皮膚の保湿レベルに有意な影響を及ぼさないことを示している。保湿レベルは、本発明組成物の継続的な適用後も変化しないと予想され、このような値は比較的に急速に飽和に達し、気候条件の結果として変動するのみである。さらに重要なことに、これらの結果は、シワの数を減少させ、及び/又は皮膚の弾力性を増加させる本組成物の効果が、CSSCを含有するナノ要素に特異的に起因し得、皮膚特性に対する液相の効果から生じるものではないことを裏付けている。
【0260】
実施例9:顔の皮膚のin vivoコラーゲン産生に及ぼす組成物の効果
本組成物の有効性が、特にCSSCのナノ要素、それらの経皮送達される能力、及び新合成を刺激するという生物学的役割を果たすそれらの能力に由来することを確認するため、本組成物の適用前及び適用後に、顔の皮膚のコラーゲンレベルを測定した。測定には、DermaLab Combo(Cortex Technology、デンマーク)を使用した。DermaLab Comboは、これにより高周波数及び高分解能の分析が可能な超音波プローブを顔の対象部位に対して通過させることにより使用する皮膚分析装置である。出力には、特にコラーゲンが存在するスポットを示す色及び強度が変化する画像が含まれ、コラーゲンに対応するスポットの強度は任意単位で記録した。
【0261】
評価は、対応するプラセボ組成物のプラセボIIと比較して、組成物2.21の実施例6に記載の方法に従って、ボランティアによる適用後に行った。
【0262】
コラーゲン形成において、対照ボランティア群に対応するプラセボII組成物を1ヵ月間適用した後では1.6%というわずかな減少であったことと比較して、ボランティア群に組成物2.21を1ヵ月間適用した後では最大37%増加したことが観察された。
【0263】
コラーゲンレベルの変化はまた、上記の測定後に得られた画像において視覚的に観察することもできる。図5Aは、測定装置の出力を示し、試験組成物の適用前の一例の被検者の皮膚のコラーゲンレベルを示す。皮膚内に存在するコラーゲンリザーバーは、図5Aで小さな白い丸みを帯びた領域として見ることができる。図5Bは、測定装置の出力を示し、組成物2.21を適用して1ヶ月後に測定された同じ被検者のコラーゲンレベルを示す。この被験者のコラーゲンレベルが劇的に増加したことは、図5Bの(CSSCのコラーゲン合成刺激活性により生じる)コラーゲンの存在を示す白い領域により占められる数及び面積の増加からも明らかなように、容易に見て取ることが可能である。
【0264】
実施例10:組成物の適用後の顔の皮膚の外観
ベースラインと比較した組成物2.2の効果を視覚的に示すために、選択したボランティアに対して撮影した写真を図6A及び7Aに示し、図6B及び7Bに模式的に示す。
【0265】
図6Aは、任意の組成物を適用する前(「ベースライン」)のボランティアの顔画像を示し、そこでは、ボランティアの額にシワがはっきりと見え(図6Aの破線の矢印で示され、図6Bの上部では破線で模式的に描かれている)、かつ目の下の衰えた領域を縁取る深いシワがはっきりと見える(図6Aの下部では完全な矢印で示され、かつ図6Bの下部では完全な線で模式的に描かれている)。
【0266】
上記のとおり、組成物2.2を1日2回適用して3ヵ月後に撮影した同じボランティアの顔画像を図7Aに示す。額のシワは3ヵ月後にはもはや見えなくなり、目の下の衰えた領域を縁取るシワは深さが減少し、より平坦になった(図7Bの下部に模式的に描かれている)。
【0267】
明確にするために、別々の実施形態の文脈で記載されている本開示の特定の特徴も、単一の実施形態において組み合わせて提供され得ることが理解される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で記載されている本開示の様々な特徴もまた、別個に、又は任意の適切なサブコンビネーションにおいて、あるいは本開示の任意の他の記載の実施形態において適切に提供され得る。様々な実施形態の文脈で記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしでは作用しない場合を除き、それらの実施形態の本質的な特徴とはみなされない。
【0268】
本開示は、例示のためだけに提示された様々な特定の実施形態に関して記載されているが、そのような特定の開示の実施形態は限定的であると考えられるべきではない。本明細書における出願人の開示に基づき、当業者には、このような実施形態の他の多くの代替形態、修正、及び変形が生じるであろう。従って、そのような代替形態、修正、及び変形をすべて包含することを意図しており、本開示の精神及び本開示の範囲、並びにそれらの意味内及び同等の範囲になる任意の変更にのみ拘束されることを意図する。
【0269】
本開示の説明及び特許請求の範囲において、「comprise(含む)」、「include(含む)」、及び「have(有する)」の各動詞、並びにそれらの活用語は、動詞の1つ又は複数の目的語が、動詞の1つ又は複数の主語の特徴、部材、工程、構成要素、要素、又は部分の完全なリストであるとは限らないことを示すために使用される。しかしながら、本教示の組成物もまた、本質的に引用された成分からなるか、又は引用された成分からなり、本教示の方法もまた、本質的に引用された工程からなるか、又は引用された工程からなることが企図される。
【0270】
本明細書において、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかにそうでない場合を除き、複数形の参照語を含み、「少なくとも1つ」又は「1つ又は複数」を意味する。A及びBの少なくとも1つは、A又はBのいずれかを意味することを意図しており、いくつかの実施形態では、A及びBを意味してもよい。組成物中に単独で又は同じ種類の他の物質と組み合わせて存在し得る「物質」は、「物質(複数可)」;CSSC(複数可)、CSSP(複数可)、極性担体(複数可)、不揮発性液体(複数可)、界面活性剤(複数可)、活性剤(複数可)などと称することができ、それぞれ、少なくとも1つのCSSC、少なくとも1つのCSSP、少なくとも1つの極性担体、少なくとも1つの不揮発性液体、少なくとも1つの界面活性剤、少なくとも1つの活性剤などを指し、これらは本発明の方法において使用することができ、又は組成物中に含まれることが可能であり、又は言及されたパラメーター若しくはその適切な範囲を満たすことが可能である。
【0271】
別段の記載がない限り、選択のための選択肢のリストの最後の2つの構成要素の間に「及び/又は」という表現を使用することは、リストされた選択肢の1つ又は複数の選択が適切であり、それを行うことができることを示す。
【0272】
別段の記載がない限り、本技術の実施形態の特徴に関する範囲の外側の限度が本開示において注記されている場合、実施形態において、該特徴の可能な値は、注記された外側の限度、並びに注記された外側の限度の間の値も含み得ることが理解されるべきである。
【0273】
本明細書で使用されるとおり、別段の記載がない限り、本技術の実施形態の1つ又は複数の特徴の条件又は関係を修正する「実質的に」、「およそ」、及び「約」などの形容詞は、条件又は特徴が、それが意図される用途に対する実施形態の作用を容認可能な公差内、又は実行される測定及び/又は使用される測定装置から予想される変動内に対して定義されることを意味すると理解される。数値の前に「約」及び「およそ」という用語が付く場合は、±15%、±10%、あるいはさらに±5%だけ、並びに場合によってはその正確な数値を示すことを意図している。さらに、別段の記載がない限り、本開示で使用される条件(例えば数字)は、このような形容詞がなくても、関連する条件の正確な意味から逸脱することができ、本発明又はその関連部分が記載されるとおり、及び当業者によって理解されるとおりに作用かつ機能することを可能にすると考えられる公差を有すると解釈されるべきである。
【0274】
本開示は、特定の実施形態及び一般に関連する方法の観点から説明されてきたが、実施形態及び方法の変更及び並べ替えは、当業者には明らかであろう。本開示は、本明細書に記載された特定の実施形態によって限定されるものではないと理解されたい。
【0275】
本明細書で参照される特定のマークは、第三者のコモンロー商標又は登録商標である可能性がある。これらのマークの使用は例示であり、説明的なものとして解釈され、又は本開示の範囲をこれらのマークのみに関連する物質に限定するものではない。

図1
図2
図3
図4
図5AB
図6AB
図7AB
【国際調査報告】