IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シェブロンジャパン株式会社の特許一覧 ▶ シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシーの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-24
(54)【発明の名称】低灰分潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/04 20060101AFI20240417BHJP
   C10M 137/10 20060101ALN20240417BHJP
   C10M 159/22 20060101ALN20240417BHJP
   C10M 159/24 20060101ALN20240417BHJP
   C10M 129/10 20060101ALN20240417BHJP
   C10M 129/54 20060101ALN20240417BHJP
   C10M 133/10 20060101ALN20240417BHJP
   C10N 10/04 20060101ALN20240417BHJP
   C10N 10/12 20060101ALN20240417BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20240417BHJP
   C10N 30/04 20060101ALN20240417BHJP
【FI】
C10M169/04
C10M137/10 A
C10M159/22
C10M159/24
C10M129/10
C10M129/54
C10M133/10
C10N10:04
C10N10:12
C10N40:25
C10N30:04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571660
(86)(22)【出願日】2022-05-20
(85)【翻訳文提出日】2023-11-17
(86)【国際出願番号】 IB2022054715
(87)【国際公開番号】W WO2022243947
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】63/191,005
(32)【優先日】2021-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391050525
【氏名又は名称】シェブロンジャパン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】598037547
【氏名又は名称】シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 勲
(72)【発明者】
【氏名】青山 恭輔
(72)【発明者】
【氏名】エリオット、イアン ジー.
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA02A
4H104BA04A
4H104BA07A
4H104BB05C
4H104BB08A
4H104BB24C
4H104BB33A
4H104BB34A
4H104BG06C
4H104BH07C
4H104DA02A
4H104DA06A
4H104DB06C
4H104DB07C
4H104FA02
4H104FA06
4H104LA02
4H104PA41
(57)【要約】
潤滑油組成物が提供される。組成物は、主要量の潤滑粘度の油、またはより多くのアルカリ土類金属清浄剤、1つ以上の窒素含有分散剤、及びジチオリン酸亜鉛からの最大で約0.10wt%の亜鉛を含む。潤滑油組成物は、最大で0.10wt%の硫黄含有量と、最大で0.30wt%の硫酸塩灰分含有量と、約20以上の1つ以上のアルカリ土類金属清浄剤からの総アルカリ土類金属濃度に対する総窒素濃度の比率とを有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油組成物であって、
a)主要量の潤滑粘度の油と、
b)1つ以上のアルカリ土類金属清浄剤と、
c)1つ以上の窒素含有分散剤と、
d)ジチオリン酸亜鉛からの最大で約0.10の亜鉛と、含み、
前記潤滑油組成物は、最大で0.10wt%の硫黄含有量と、最大で0.30wt%の硫酸塩灰分含有量と、約20以上の前記1つ以上のアルカリ土類金属清浄剤からの総アルカリ土類金属濃度に対する総窒素濃度の比率とを有する、
前記潤滑油組成物。
【請求項2】
前記潤滑油組成物は、約5.5mg KOH/g以下の総塩基数を有する、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
前記潤滑油組成物は、約200以下の粘度指数を有する、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
1つ以上の酸化防止剤を更に含み、前記酸化防止剤の総量は、前記潤滑油組成物の総重量に対して、1.5~4wt%である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
前記潤滑油組成物は、炭化水素燃料、水素燃料、天然ガス液化石油ガス(LPG)、圧縮天然ガス(CNG)、またはそれらの混合物により燃料を補給される内燃機関において使用される、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
1つ以上のモリブデン含有化合物を更に含む、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
前記総アルカリ土類金属濃度は、カルシウムもしくはマグネシウム、またはその両方からのものである、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
前記1つ以上の清浄剤は、スルホン酸塩、サリチル酸塩、またはフェネートである、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
内燃機関内の堆積物を低減させる方法であって、
a)主要量の潤滑粘度の油と、
b)1つ以上のアルカリ土類金属清浄剤と、
c)1つ以上の窒素含有分散剤と、
d)ジチオリン酸亜鉛からの最大で約0.10wt%の亜鉛と、含む潤滑油組成物により前記内燃機関を動作させることを含み、
前記潤滑油組成物は、最大で0.10wt%の硫黄含有量と、最大で0.30wt%の硫酸塩灰分含有量と、約20以上の前記1つ以上のアルカリ土類金属清浄剤からの総アルカリ土類金属濃度に対する総窒素濃度の比率とを有する、
前記方法。
【請求項10】
前記潤滑油組成物は、約5mg KOH/g以下の総塩基数を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記潤滑油組成物は、約200以下の粘度指数を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記潤滑油組成物は、1つ以上の酸化防止剤を更に含み、前記酸化防止剤の総量は、前記潤滑油組成物の総重量に対して、1.5~4wt%である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記内燃機関は、炭化水素燃料、水素燃料、天然ガス液化石油ガス(LPG)、圧縮天然ガス(CNG)、またはそれらの混合物により燃料を補給される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記潤滑油組成物は、1つ以上のモリブデン含有化合物を更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記総アルカリ土類金属濃度は、カルシウムもしくはマグネシウム、またはその両方からのものである、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記1つ以上の清浄剤は、スルホン酸塩、サリチル酸塩、またはフェネートである、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、低硫酸塩灰分を生成する潤滑油組成物及びそれを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
排出規制に準拠するために内燃機関に装備された、排気後処理デバイスは、機関において使用される燃料及び潤滑油の燃焼副産物の影響を受けやすいことを証明してきた。或るデバイスは特に、燃料及び潤滑油の燃焼から結果として生じる硫酸塩灰分に影響を受けやすい。異なるタイプの後処理デバイスの耐久性を保証するために、相対的に低いレベルの硫酸塩灰分を生成する潤滑油が開発されている。
【0003】
硫酸塩灰分を制限する1つのアプローチは、存在する清浄剤の量、特に、金属塩基によって過塩基となっている量を低減させることである。しかしながら、清浄剤を低減させることは、解消することが困難であり得る堆積物形成などの他の問題につながる場合がある。
【発明の概要】
【0004】
1つの態様では、a)主要量の潤滑粘度の油と、b)1つ以上のアルカリ土類金属清浄剤と、c)1つ以上の窒素含有分散剤と、d)ジチオリン酸亜鉛からの最大で約0.10wt%の亜鉛と、含み、潤滑油組成物は、最大で約0.10wt%の硫黄含有量と、最大で約0.30wt%の硫酸塩灰分含有量と、約20以上の1つ以上のアルカリ土類金属清浄剤からの総アルカリ土類金属濃度に対する総窒素濃度の比率とを有する、潤滑油組成物が提供される。
【0005】
別の態様では、a)主要量の潤滑粘度の油と、b)1つ以上のアルカリ土類金属清浄剤と、c)1つ以上の窒素含有分散剤と、d)ジチオリン酸亜鉛からの最大で約0.10wt%の亜鉛と、含む潤滑油組成物により内燃機関を動作させることを含み、潤滑油組成物は、最大で約0.10wt%の硫黄含有量と、最大で約0.30wt%の硫酸塩灰分含有量と、約20以上の1つ以上のアルカリ土類金属清浄剤からの総アルカリ土類金属濃度に対する総窒素濃度の比率とを有する、内燃機関内の堆積物を低減させる方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書では、以下の単語及び表現は、使用される場合、及び使用されるとき、以下で帰属される意味を有する。
【0007】
用語「油溶性」は、所与の添加剤に対し、所望のレベルの活量または性能をもたらすために必要な量を、潤滑粘度の油内に溶解され、分散され、または懸濁されることによって組み込むことができることを意味する。通常、これは、添加剤の重みによって少なくとも0.001%を潤滑油組成物に組み込むことができることを意味する。
【0008】
「少量(minor amount)」は、述べられる添加剤に関して、及び添加剤の活性成分として計算される、組成物の総重量に関して表現される、組成物の50wt%未満を意味する。
【0009】
「機関」または「燃焼機関」は、燃料の燃焼が燃焼室内で発生する熱機関である。「内燃機関」は、燃料の燃焼が制限された空間(「燃焼室」)内で発生する熱機関である。「火花点火機関」は、通常は、点火プラグからの発火によって燃焼が発火される熱機関である。これは、圧縮発火機関、典型的には、ディーゼル機関とは対照的であり、燃料の注入と共に圧縮によって生じる熱が、外部点火なしに燃焼を開始するのに十分である。
【0010】
本開示の低灰分潤滑油組成物は、少なくとも一部の従来の潤滑油組成物よりも重要な性能の利点をもたらすことができることがここでは発見されている。それらの性能の利点は、硫酸塩灰分のより低い生成物、堆積物制御、より良好な潤滑性、洗浄力、並びに熱安定性及び/または酸化安定性を含む。
【0011】
低灰分潤滑油組成物は一般的に、1)主要量(major amount)の潤滑粘度の油、2)1つ以上のアルカリ土類金属清浄剤、3)1つ以上の窒素含有分散剤、及び4)ジチオリン酸亜鉛からの最大で約0.10wt%の亜鉛を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、1つ以上のアルカリ土類金属清浄剤からの総アルカリ土類金属濃度に対する総窒素濃度の比率は、約20以上である。潤滑油組成物は、ASTM D874によって決まるように、約0.10wt%以下の硫黄含有量及び約0.30wt%以下の灰分含有量を有する。
【0013】
本開示の潤滑油組成物は、約5.0mg KOH/g以下、4.75mg KOH/g以下、約4.5mg KOH/g以下、約4.25mg KOH/g以下、約4mg KOH/g以下、約3.75mg KOH/g以下、約3.5mg KOH/g以下、約3.25mg KOH/g以下、及び約3.0mg KOH/g以下など、約5.5mg KOH/g以下の総塩基数を有し得る。いくつかの実施形態では、総塩基数は、約0.75~約5mg KOH/g、約1.0~約4.5mg KOH/g、約1.25~約4.25mg KOH/g、約1.5~約4mg KOH/g、約1.75~約3.75mg KOH/g、及び約2.0~約3.5mg KOH/gなど、約0.5mg KOH/g~約5.5mg KOH/gの範囲に及び得る。
【0014】
本発明の潤滑油組成物は、炭化水素燃料、水素燃料、天然ガス液化石油ガス(LPG)、圧縮天然ガス(CNG)、またはそれらの混合物によって燃料を補給される機関を含む内燃機関を潤滑するために使用されることができる。
【0015】
より具体的に、競争力のある駆動範囲(>300マイル)を可能にする、機内自動水素貯蔵システムを開発する努力が進行中である。それらの努力は、水素を液化することなどの様々な物理的方法、あるいは、吸収もしくは脱着を可能にする水素貯蔵材料または室温及び大気圧の近くでの水素の使用などの材料に基づく方法を使用した圧縮形式で水素燃料を貯蔵することを模索する。
【0016】
清浄剤
本発明の潤滑油組成物は、金属清浄剤を含む。特に、有益な清浄剤は、油溶性スルホン酸塩(例えば、アルカリルスルホン酸塩)、ヒドロキシ芳香族カルボン酸塩(例えば、サリチル酸塩、アルキルヒドロキシ安息香酸塩など)、及びフェネートを含む。それらの清浄剤は典型的には、カルシウム及びマグネシウムなどのナトリウム及び/またはアルカリ土類金属などの1つ以上のアルカリ金属を含有する。
【0017】
潤滑油組成物の低灰分の性質に起因して、存在する清浄剤の量が重要である。いくつかの実施形態では、総アルカリ土類金属濃度は、総潤滑油組成物に対して、約0.00050~約0.025wt%、約0.0010~約0.020wt%、約0.0025~約0.020wt%、約0.0050~約0.020wt%、及び約0.0075~約0.020wt%など、約0.00010~約0.025wt%である。
【0018】
本発明の金属清浄剤は、広い範囲総塩基数(TBN)値を有し得る。例えば、金属清浄剤は、中性清浄剤、低過塩基化(low overbased)清浄剤、中過塩基化(medium overbased)清浄剤、及び高過塩基化(high overbased)清浄剤などであり得る。
【0019】
1つの態様では、清浄剤は、スルホン酸塩の1つ以上の金属塩を含み得る。スルホン酸塩は、石油の留分から得られるものなどのアルキル置換芳香族化合物のスルホン化によって、または芳香族化合物のアルキル化によって得られることが多い、スルホン酸から調製され得る。例は、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ジフェニル、またはそれらのハロゲン誘導体をアルキル化することによって得られるものを含む。アルキル化は、約3~70超の炭素原子を有するアルキル化剤との触媒の存在において行われ得る。アルカリルスルホン酸塩は通常、約9~約80またはそれよりも多くの炭素原子、好ましくは、約16~約60炭素原子、好ましくは、約16~約30炭素原子、及びより好ましくは、アルキル置換された芳香族部分ごとに20~24の炭素原子を含有する。
【0020】
金属清浄剤は、炭化水素、清浄剤酸(例えば、スルホン酸)、金属酸化物または水酸化物(例えば、酸化カルシウムまたは水酸化カルシウム)、及びキシレン、メタノール及び水などの促進剤の混合物を炭化することによって生成されることができる。炭化工程の間、酸化カルシウムまたは水酸化物は、炭酸カルシウムを形成するように、二酸化炭素ガスと反応することができる。例示的な例として、カルシウムスルホン酸塩清浄剤の合成は、スルホン酸塩を形成するための、過度のCaOまたはCa(OH)とのスルホン酸の中和を伴う。
【0021】
実施形態によれば、清浄剤は、ヒドロキシ芳香族カルボン酸塩の1つ以上の金属塩を含み得る。適切なヒドロキシ芳香族化合物は、1~4のヒドロキシ基、好ましくは、1~3のヒドロキシ基を有する単核モノヒドロキシ及びポリヒドロキシ芳香族炭化水素を含む。適切なヒドロキシ芳香族化合物は、フェノール、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、及びクレゾールなどを含む。
【0022】
実施形態によれば、清浄剤は、フェネートの1つ以上の金属塩を含み得る。適切なフェネートは、アルカリ土類金属水酸化物または酸化物(例えば、CaO、Ca(OH)、MgO、またはMg(OH))をアルキルフェノールまたは硫化アルキルフェノールと反応させることによって調製されることができる。有益なアルキル基は、直鎖もしくは分岐鎖のC1~C30(例えば、C4~C20)アルキル基、またはその混合物を含む。適切なフェノールの例は、イソブチルフェノール、2-エチルヘキシルフェノール、ノニルフェノール、及びドデシルフェノールなどを含む。出発アルキルフェノールは、各々が独立した直鎖または分岐鎖である1つよりも多いアルキル置換基を含有し得ることに留意されるべきである。硫化されていないアルキルフェノールが使用されるとき、硫化生成物は、本分野において公知の方法によって得られ得る。それらの方法は、アルキルフェノール及び硫化剤(元素硫黄及び二塩化硫黄などのハロゲン化硫黄など)の混合物を加熱し、次いで、硫化フェノールをアルカリ土類金属塩基と反応させることを含む。
【0023】
窒素含有分散剤
本発明の潤滑油組成物は、窒素含有分散剤を含む。それらは、本明細書で説明されるものなどのポリアルケニルコハク酸イミド分散剤を含む。概して、潤滑油組成物に対する窒素含有分散剤からの窒素含有量は、約0.050~約0.25wt%、約0.050~約0.20wt%、及び約0.050~約0.15wt%など、約0.010wt%~約0.30wt%である。
【0024】
1つの実施形態では、ポリアルケニルビスコハク酸イミドは、以下のようにポリアルケニル置換無水コハク酸を反応させることによって得られることができる。
【化I】

Rは、ポリアミンとの、約500~約3000の数平均分子量を有するポリアルケン基から導出されるポリアルケニル置換基である。1つの実施形態では、Rは、約1000~約2500の数平均分子量を有するポリアルケン基から導出されるポリアルケニル置換基である。1つの実施形態では、約500~約3000の数平均分子量を有するポリイソブテンから導出されるポリイソブテニル置換基である。別の実施形態では、Rは、約1000~約2500の数平均分子量を有するポリイソブテンから導出されるポリイソブテニル置換基である。
【0025】
ビスコハク酸イミド分散剤を調製する際の使用のための適切なポリアミンは、ポリアルキレンポリアミンを含む。そのようなポリアルキレンポリアミンは典型的には、約2~約12の窒素原子及び約2~24の炭素原子を含有する。特に、適切なポリアルキレンポリアミンは、化学式:HN-(R’NH)x-Hを有するものであり、R’は、2または3の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、xは、1~9である。適切なポリアルキレンポリアミンの代表的な例は、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、及び重質ポリアミン(例えば、Huntsman Companyから利用可能なEthyleneamine E-100)を含む。
【0026】
一般的に、ポリアルケニル-置換無水コハク酸は、約130℃~約220℃(例えば、145℃~175℃)の温度においてポリアミンと反応する。反応は、窒素またはアルゴンなど、不活性雰囲気下で行われることができる。一般的に、ポリアルケニル-置換無水コハク酸に対するポリアミンの適切なモル電荷は、約0.35:1~約0.6:1(例えば、0.4:1~0.5:1)である。本明細書で使用されるように、「ポリアルケニル-置換無水コハク酸に対するポリアミンのモル電荷」は、無水コハク酸反応物におけるコハク酸基の数に対するポリアミンのモルの数の比率を意味する。
【0027】
適切なポリアルケニルコハク酸イミドの1つの基は、以下によって表され得る。
【化II】

R及びR’は、上記で説明されたものであり、yは、1~11である。
【0028】
ポリアルケニルコハク酸イミドの後処理
いくつかの実施形態では、コハク酸イミド分散剤は、反応性ホウ素化合物または有機炭酸塩によって後処理され得る。
【0029】
ホウ素源として使用されることができる適切なホウ素化合物は、例えば、ホウ酸、ホウ酸塩、及びホウ酸エステルなどを含む。ホウ酸の代表的な例は、オルトホウ酸、メタホウ酸、及びパラホウ酸などを含む。ホウ酸塩の代表的な例は、メタホウ酸アンモニウム、四ホウ酸アンモニウム、五ホウ酸アンモニウム、八ホウ酸アンモニウムなどのホウ酸アンモニウムを含む。ホウ酸エステルの代表的な例は、ホウ酸モノメチル、ホウ酸ジメチル、ホウ酸トリメチル、ホウ酸モノエチル、ホウ酸ジエチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸モノプロピル、ホウ酸ジプロピル、ホウ酸トリプロピル、ホウ酸モノブチル、ホウ酸ジブチル、及びホウ酸トリブチルなどを含む。
【0030】
適切な有機炭酸塩は、例えば、1,3-ジオキソラン-2-オン(エチレンカーボネート);4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン(プロピレンカーボネート);4-エチル-1,3-ジオキソラン-2-オン(炭酸ブチレン);4-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン;4,5-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン;4-エチル-1,3-ジオキソラン-2-オン;4,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン;4-メチル-5-エチル-1,3-ジオキソラン-2-オン;4,5-ジエチル-1,3-ジオキソラン-2-オン;4,4-ジエチル-1,3-ジオキソラン-2-オン;1,3-ジオキサン-2-オン;4,4-ジメチル-1,3-ジオキサン-2-オン;5,5-ジメチル-1,3-ジオキサン-2-オン;5,5-ジヒドロキシメチル-1,3-ジオキサン-2-オン;5-メチル-1,3-ジオキサン-2-オン;4-メチル-1,3-ジオキサン-2-オン;5-ヒドロキシ-1,3-ジオキサン-2-オン;5-ヒドロキシメチル-5-メチル-1,3-ジオキサン-2-オン;5,5-ジエチル-1,3-ジオキサン-2-オン;5-メチル-5-プロピル-1,3-ジオキサン-2-オン;4,6-ジメチル-1,3-ジオキサン-2-オン;4,4,6-トリメチル-1,3-ジオキサン-2-オン及びスピロ[1,3-オキサ-2-シクロヘキサノン-5,5'-1'、3'-オキサ-2'-シクロヘキサノン]などの環状炭酸エステルを含む。他の適切な環状炭酸エステルは、本分野において既知の方法によって、ソルビトール、ブドウ糖、果糖、及びガラクトースなど糖類から調製され得、C~C30のオレフィンから調製されるビシナルジオールから調製され得る。
【0031】
耐摩耗剤
本明細書で開示される潤滑油組成物は、金属部分の摩耗を低減させる1つ以上の耐摩耗剤を含むことができる。適切な耐摩耗剤は、ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)などのジヒドロカルビルジチオリン酸金属塩を含む:
Zn[S-P(=S)(OR)(OR)]
及びRは、1~18(例えば、2~12)の炭素原子を有する異なるヒドロカルビルラジカルと同一であり得、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アルカリル、及び脂環式ラジカルなどのラジカルを含み得る。R及びR基として特に好ましいのは、2~8の炭素原子を有するアルキル基である(例えば、アルキルラジカルは、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、2-エチルヘキシルであり得る)。油溶性を得るために、炭素原子の総数(すなわち、R+R)は、少なくとも5である。したがって、ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を含むことができる。ジアルキルジチオリン酸亜鉛は、一次ジアルキルジチオリン酸亜鉛、二次ジアルキルジチオリン酸亜鉛、またはそれらの組み合わせである。概して、ZDDPは、ZDDPからのZnが、潤滑油組成物に対して、約0.010~約0.075wt%、約0.020~約0.050wt%、約0.025~約0.050wt%など、約0.010~約0.10wt%に存在するような量において存在し得る。
【0032】
モリブデン含有化合物
モリブデン含有化合物は、モリブデン、炭素、及び水素原子を含む有機モリブデン化合物であるが、硫黄、リン、窒素、及び/または酸素原子を含有し得る。適切な有機モリブデン化合物は、モリブデン酸化物またはモリブデン酸アンモニウムを、脂肪、グリセリドもしくは脂肪酸、または脂肪酸誘導体(例えば、エステル、アミン、アミド)と反応させることによって得られることができる、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジチオリン酸モリブデン、及びモリブデンカルボン酸塩、モリブデンエステル、モリブデンアミン、モリブデンアミドなどの様々な有機モリブデン錯体を含む。用語「脂肪質」は、10~22の炭素原子を有する炭素鎖、典型的には、直炭素鎖を意味する。
【0033】
モリブデン含有化合物は、0.25~3.75wt%、0.5~3.5wt%、0.75~3.25wt%、1.0~3.0wt%、1.25~2.75wt%、1.5~2.5wt%など、約0.10~約4.0wt%において存在し得る。1つの実施形態では、モリブデン含有化合物は、硫黄がない。
【0034】
適切なジチオカルバミン酸モリブデンは、潤滑油のための添加剤として使用されることができるいずれかのジチオカルバミン酸モリブデンを含む。本明細書における使用のためのジチオカルバミン酸モリブデンの1つのクラスは、以下によって表される。
【化III】

、R、R、及びRは各々、例として、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、及びシクロアルケニル基を含む、独立した水素基または炭化水素基であり、X、X、X、及びXは各々、独立した硫黄または酸素である。
【0035】
適切なアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第二級ブチル、第三級ブチル、ペンチル、イソペンチル、第二級ペンチル、ネオペンチル、第三級ペンチル、ヘキシル、第二級ヘキシル、ヘプチル、第二級ヘプチル、オクチル、2-エチルヘキシル、第二級オクチル、ノニル、第二級ノニル、デシル、第二級デシル、ウンデシル、第二級ウンデシル、ドデシル、第二級ドデシル、トリデシル、イソトリデシル、第二級トリデシル、テトラデシル、第二級テトラデシル、ヘキサデシル、第二級ヘキサデシル、ステアリル、イコシル、ドコシル、テトラコシル、トリアコンチル、2-ブチルオクチル、2-ブチルデシル、2-ヘキシルオクチル、2-ヘキシルデシル、2-オクチルデシル、2-ヘキシルドデシル、2-オクチルドデシル、2-デシルテトラデシル、2-ドデシルヘキサデシル、2-ヘキサデシルオクタデシル、2-テトラデシルオクタデシル、及びモノメチル分岐イソステアリルなどを含むが、それらに限定されない。
【0036】
適切なアルケニル基は、ビニル、アリル、プロペニル、ブテニル、イソブテニル、ペンテニル、イソペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、テトラデセニル、及びオレイルなどを含むが、それらに限定されない。
【0037】
適切なアリール基は、フェニル、トリル、キシリル、クメニル、メシチル、ベンジル、フェネチル、スチリル、シンナミル、ベンズヒドリル、トリチル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ブチルフェニル、ペンチルフェニル、ヘキシルフェニル、ヘプチルフェニル、オクチルフェニル、ノニルフェニル、デシルフェニル、ウンデシルフェニル、ドデシルフェニル、ビフェニル、ベンジルフェニル、スチレン化フェニル、p-クミルフェニル、α-ナフチル、及びβ-ナフチル基などを含むが、それらに限定されない。
【0038】
適切なシクロアルキル基及びシクロアルケニル基は、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、メチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、メチルシクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、メチルシクロペンテニル、メチルシクロヘキセニル、及びメチルシクロヘプテニル基などを含むが、それらに限定されない。
【0039】
実施形態では、X~Xは、硫黄原子または酸素原子から独立して選択され、X~Xの全ては、硫黄原子もしくは酸素原子、または硫黄原子及び酸素原子の混合物であり得る。摩擦低減効果と腐食性との間の平衡を考慮して、硫黄原子(複数可)/酸素原子(複数可)のモル比(数の比率)は、特に好ましくは、約1/3~約3/1の範囲にあるべきである。
【0040】
油溶性モリブデン化合物または分散された油安定性モリブデン化合物の一部は、商業的に利用可能である。例えば、X及びXがOであり、X及びXがSであり、R~RがC1327の脂肪族ヒドロカルビル基であり、モリブデンが酸化状態にある生成物は、R.T. Vanderbilt Company Inc. (Norwalk, Conn. USA)によって、抗酸化物質及び摩擦低減添加剤として、Molyvan 807及びMolyvan 822の商標で販売されている。それらのモリブデン化合物は、米国特許第3,356,702号において記載された方法によって調製され得、MoOは、アルカリ金属水酸化物溶液内で溶解することによって可溶性モリブデン酸塩に転化され、酸の添加とそれに続き第二級アミン及び二硫化炭素の添加によって中和される。別の態様では、X~Xは、Oであり、またはSは、例えば、米国特許第4,098,705号及び第5,631,213号など、本分野において既知のいくつかの方法によって調製され得る。
【0041】
一般的に、硫化オキシモリブデンジチオカーバメートは、三酸化モリブデンまたはモリブデン酸塩を硫化アルカリまたは水硫化アルカリと反応させ、その後、二硫化炭素及び第二級アミンを反応混合物に添加し、適切な温度において結果として生じる混合物を反応させることによって調製されることができる。非対称硫化オキシモリブデンジチオカーバメートを調製するために、異なる炭化水素基を有する第二級アミンの使用または上記工程における2つ以上の異なる第二級アミンの使用は、十分である。対称硫化オキシモリブデンジチオカーバメートも、同様の方式において調製されることができるが、1つの第二級アミンのみの使用により調製されることができる。
【0042】
適切なジチオカルバミン酸モリブデン化合物の例は、硫化モリブデンジエチルジチオカーバメート、硫化モリブデンジプロピルジチオカーバメート、硫化モリブデンジブチルジチオカーバメート、硫化モリブデンジペンチルジチオカーバメート、硫化モリブデンジヘキシルジチオカーバメート、硫化モリブデンジオクチルジチオカーバメート、硫化モリブデンジデシルジチオカーバメート、硫化モリブデンジドデシルジチオカーバメート、硫化モリブデンジトリデシルジチオカーバメート、硫化モリブデンジ(ブチルフェニル)ジチオカーバメート、硫化モリブデンジ(ノニルフェニル)ジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジエチルジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジプロピルジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジブチルジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジペンチルジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジヘキシルジチオカーバメート、硫黄化オキシモリブデンジオクチルジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジデシルジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジドデシルジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジトリデシルジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジ(ブチルフェニル)ジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンブデンナムジ(ノニルフェニル)ジチオカルバメートを含むが、それらに限定されず、それらの全てのアルキル基は、直鎖または分岐鎖など、及びそれらの混合物であり得る。
【0043】
核モリブデンジアルキルジチオカルバミン酸塩は、参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許第5,888,945号及び第6,010,987号において教示されるような、本分野において既知でもある。三核モリブデン化合物は好ましくは、化学式Mo(dtc)及びMo(dtc)並びにその混合物を有するものであり、dtcは、独立して選択される有機基を含有する独立して選択されるジオルガノジチオカルバメート配位子を表し、配位子は、化合物を潤滑油内で可溶性または分散性にするように存在する化合物の配位子の全ての有機基の中で十分な数の炭素原子を有する。
【0044】
モリブデン酸エステルは、米国特許第4,889,647号及び米国特許第6,806,241号において記載された方法によって調製される。商業的な例は、R. T. Vanderbilt Company, Inc.によって製造される、MOLYVAN(登録商標)855添加剤である。
【0045】
ジチオリン酸モリブデン(MoDTP)は、以下によって表される有機モリブデン化合物である。
【化IV】

、R、R、及びRは、4~18の炭素原子(例えば、8~13の炭素原子)を有する、相互の独立した、線形アルキル基または分岐アルキル基である。
【0046】
カルボン酸モリブデンは、米国特許第RE38,929号及び米国特許第6,174,842号において記載され、よって、参照によって本明細書に組み込まれる。カルボン酸モリブデンは、いずれかの油溶性カルボン酸から導出されることができる。典型的なカルボン酸は、ナフテン酸、2-エチルヘキサン酸、及びリノレン酸を含む。モリブデン化合物の適切な例は、R. T. Vanderbilt Co., Ltd.からのMolyvan(登録商標)822、Molyvan(登録商標)A、Molyvan(登録商標)2000.Molyvan(登録商標)807、及びMolyvan(登録商標)855T、並びにAdeka Corporationから利用可能なSakura-Lube-S-165、S-200、S-300、S-310G、S-525、S-600、S-700、及びS-710などの商標名の下で販売される商業的材料と、それらの混合物とを含む。適切なモリブデン成分は、それらの全体での参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許第5,650,381、RE37,363 E1、RE38,929 E1、及びRE40,595 E1において記載されている。
【0047】
モリブデン酸アンモニウムは、油溶性アミンとの三酸化モリブデン、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、及びチオモリブデン酸アンモニウムなどの酸性モリブデン源の酸塩基反応によって、場合により、いくつか例を挙げると、硫黄、無機硫化物及び多硫化物、並びに二硫化炭素などの硫黄源が存在して調製される。好ましいアミン化合物は、一般的に使用されるエンジンオイル組成物であるポリアミン分散剤である。そのような分散剤の例は、コハク酸イミド及びマンニッヒタイプである。それらの調製への参照は、米国特許第4,259,194号、第4,259,195号、第4,265,773号、第4,265,843号、第4,727,387号、第4,283,295号、及び第4,285,822号である。
【0048】
モリブデンコハク酸イミド
1つの実施形態では、モリブデンアミンは、モリブデンコハク酸イミド錯体である。適切なモリブデンコハク酸イミド錯体は、例えば、米国特許第8,076,275号において記載されている。それらの錯体は、酸性モリブデン化合物を以下のようにポリアミンのアルキルまたはアルケニルコハク酸イミドと反応させることを含む工程によって調製される。
【化V】

【化VI】

Rは、C24~C350(例えば、C70~C128)のアルキル基またはアルケニル基であり、R’は、2~3の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、xは、1~11であり、yは、1~11である。
【0049】
モリブデンコハク酸イミド錯体を調製するために使用されるモリブデン化合物は、酸性モリブデン化合物または酸性モリブデン化合物の塩である。「酸性」は、モリブデン化合物がASTM D664またはD2896によって測定されるような塩基性窒素化合物と反応することを意味する。一般的に、酸性モリブデン化合物は、六価である。適切なモリブデン化合物の代表的な例は、三酸化モリブデン、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム及び他のモリブデン酸アルカリ金属、並びに水素塩(例えば、モリブデン酸水素ナトリウム)、MoOCl、MoOBr2、及びMoClなどの他のモリブデン塩を含む。
【0050】
錯体を調製するために使用されることができるコハク酸イミドは、多数の文献において開示され、本分野において公知である。或る基本的なタイプのコハク酸イミド及び分野「コハク酸イミド」の用語に包含される関連する材料は、米国特許第3,172,892号、第3,219,666号、及び第3,272,746号において教示される。用語「コハク酸イミド」は、形成されも得る、アミド、イミド、及びアミジン種の多くを含むとして本分野において理解される。しかしながら、主な生成物は、コハク酸イミドであり、この用語は、窒素含有化合物とのアルキルまたはアルケニル置換コハク酸または無水物の反応の生成物を意味するとして受け入れられてきた。好ましいコハク酸イミドは、約70~128の炭素原子のポリイソブテニル無水コハク酸をポリアミンと反応させることによって調製されるものである。
【0051】
好ましいポリアミンは、分子ごとに2~60の炭素原子及び2~12の窒素原子を有し得る。特に好ましいアミンは、以下の化学式によって表されるポリアルキレンアミンを含む。
NH(CH-(NH(CH-NH
nは、2~3であり、mは、0~10である。例示的な例は、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、テトラプロピレンペンタミン、及びペンタエチレンヘキサミンなどと共に、そのようなポリアミンの商業的に利用可能な混合物を含む。
【0052】
モリブデンコハク酸イミド錯体は、硫化モリブデンコハク酸イミド錯体を提供するように、適切な圧力及び120℃を超えない温度において、硫黄源により後処理され得る。硫化工程は、約0.5~5時間(例えば、0.5~2時間)の期間の間に行われ得る。適切な硫黄源は、化学式Rの元素硫黄、硫化水素、五硫化リン、有機多硫化物を含み、Rは、ヒドロカルビル(例えば、C~C10のアルキル)であり、xは、少なくとも3、C~C10のメルカプタン、無機硫化物及び多硫化物、チオアセトアミド、並びにチオ尿素である。
【0053】
摩擦調整剤
本開示の潤滑油組成物は、可動部分の間の摩擦を低下させることができる摩擦調整剤を含有することができる。当業者によって既知のいずれかの摩擦調整剤は、潤滑油組成物において使用され得る。適切な摩擦調整剤の非限定的な例は、脂肪質カルボン酸;脂肪質カルボン酸の誘導体(例えば、アルコール、エステル、ホウ酸エステル、アミド、及び金属塩など);モノアルキル置換リン酸、ジアルキル置換リン酸またはトリアルキル置換リン酸またはホスホン酸;モノアルキル置換リン酸、ジアルキル置換リン酸またはトリアルキル置換リン酸またはホスホン酸の誘導体(例えば、エステル、アミド、及び金属塩など);モノアルキル置換アミン、ジアルキル置換アミン、またはトリアルキル置換アミン;モノアルキル置換アミドまたはジアルキル置換アミド及びそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、摩擦調整剤の例は、ジチオカルバメート(例えば、DTC)、アルコキシル化脂肪質アミン;ホウ酸化脂肪質エポキシド;脂肪質亜リン酸塩、脂肪質エポキシド、脂肪質アミン、ホウ酸化アルコキシル化脂肪質アミン、脂肪質酸の金属塩、脂肪酸アミド、グリセリンエステル、ホウ酸化グリセリンエステル;及び米国特許第6,372,696号において開示されるような脂肪質イミダゾリン;C~C75、またはC~C24、またはC~C20の反応生成物から得られる摩擦調整剤、アンモニアから構成される基から選択される脂肪質酸エステル及び窒素含入化合物、アルカノールアミン、並びにそれらの混合物などを含むが、それらに限定されない。摩擦調整剤の典型的な濃縮物は、約0.10~約0.50wt%、及び約0.050~約0.10wt%など、約0.05~約0.50wt%であり得る。
【0054】
酸化防止剤
本明細書で開示される潤滑油組成物は、1つ以上の酸化防止剤を含むことができる。酸化防止剤は、サービスの間に鉱物油が劣化する傾向を低減させる。酸化的劣化は、潤滑油内の沈渣によって、金属表面上のワニスのような堆積物によって、及び粘度上昇によって証明されることができる。適切な酸化防止剤は、ヒンダードフェノール、芳香族アミン、硫化アルキルフェノール及びアルカリ、並びにそのアルカリ土類金属塩を含む。
【0055】
ヒンダードフェノール酸化防止剤は、立体障害基として第二級ブチル基及び/または第三級ブチル基を含有することが多い。フェノール基は更に、ヒドロカルビル基(典型的には線形アルキルもしくは分岐アルキル)及び/または第二級芳香族基に結合する架橋基と置き換えられ得る。適切なヒンダードフェノール酸化防止剤の例は、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-エチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-プロピル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-ブチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、及び4-ドデシル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノールを含む。他の有益なヒンダードフェノール酸化防止剤は、CibaからのIRGANOX(登録商標)L-135などの2,6-ジアルキルフェノールプロピオン酸エステル誘導体、並びに4,4’-ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)及び4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)などのビスフェノール系酸化防止剤を含む。
【0056】
典型的な芳香族アミン酸化防止剤は、1つのアミン窒素に直接結合される少なくとも2つの芳香族基を有する。典型的な芳香族アミン酸化防止剤は、少なくとも6の炭素原子のアルキル置換基を有する。本明細書で有益な芳香族アミン酸化防止剤の特定の例は、4,4’-ジオクチルジフェニルアミン、4,4’-ジノニルジフェニルアミン、N-フェニル-1-ナフチルアミン、N-(4-tert-オクチルフェニル)-1-ナフチルアミン、N-(4-オクチルフェニル)-1-ナフチルアミンを含む。アミン基を有する酸化防止剤は、窒素含有量の全体に寄与することができる。アミン酸化防止剤は、窒素の約0.020~約0.10wt%に寄与し得る。いくつかの実施形態では、酸化防止剤の総量は、潤滑油組成物の総重量に対して、1.5~3.75wt%、及び1.75~3.5wt%など、約1.5~約4.0wt%である。
【0057】
潤滑粘度の油
潤滑粘度の油(時に、「基原料」または「基油」と称される)は、潤滑油の主要な液体成分であり、その中に、最終潤滑油(または、潤滑油組成物)を生成するように、添加剤、場合によっては、油が融合される。基油は、濃縮物を作ると共に、それから潤滑油組成物を作るたえに有益であり、天然潤滑油及び合成潤滑油、並びにそれらの組み合わせから選択され得る。
【0058】
天然油は、動物油及び植物油、液体石油、並びにパラフィン系、ナフテン系、及び混合パラフィン系及びナフテン系タイプの水素化精製され、溶剤処理された鉱物潤滑油を含む。石炭またはシェールから導出される潤滑粘度の油も、基油として有益である。
【0059】
合成潤滑油は、重合及び共重合オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン-イソブチレンコポリマ、塩素化ポリブチレン、ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、ポリ(1-デセン)などの炭化水素油;アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2-エチルヘキシル)ベンゼン、ポリフェノール(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェノール)、アルキル化ジフェニルエーテル及びアルキル化ジフェニルスルフィド、並びにそれらの誘導体、類似体、及び同族体を含む。重合オレフィンも、他のオレフィンと共重合もされることができ、更に、望ましい場合に異性化されることができる、ミルセン、オシメン、及びファルネセンなどの炭化水素テルペンなどの生物由来源から導出されることができる。
【0060】
合成潤滑油の別の適切なクラスは、様々なアルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール)を有するジカルボン酸(例えば、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸、コハク酸、アルキルコハク酸及びアルケニルコハク酸、マレイン酸、フマル酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、アジピン酸、リノール酸二量体、フタル酸)のエステルを含む。それらのエステルの特定の例は、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2-エチルヘキシル)、フマル酸ジ-n-ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジイコシル、リノール酸二量体2-エチルヘキシルジエステル、並びにセバシン酸の1つのモルをテトラエチレングリコールの2つのモル及び2-エチルヘキサン酸の2つのモルと反応させることによって形成される錯体エステルを含む。
【0061】
合成油として有益なエステルはまた、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、及びトリペンタエリスリトールなど、C~C12のモノカルボン酸、及びポリオール、及びポリオールエーテルから作られるものを含む。
【0062】
また、生物由来源からのエステルも、合成油として有益である。
【0063】
基油は、フィッシャー・トロプシュ合成炭化水素から導出され得る。フィッシャー・トロプシュ合成炭化水素は、フィッシャー・トロプシュ触媒を使用して、H及びCOを含有する合成ガスから作られる。そのような炭化水素は典型的には、基油として有益であるために更なる処理を必要とする。例えば、炭化水素は、当業者にとって既知の工程を使用して、水素化異性化され得、水素化分解及び水素化異性化され得、脱脂され得、または水素化異性化及び脱脂され得る。
【0064】
未精製油、精製油、及び再精製油は、本潤滑油組成物において使用されることができる。未精製油は、更なる純化処理なしに天然源または合成源から直接得られるものである。例えば、乾留操作から直接得られるシェール油、蒸留から直接得られる石油、または更なる処理なしにエステル化工程から直接得られるエステル油は、未精製油である。精製油は、それらが1つ以上の性質を改善するための1つ以上の純化工程において更に処理されていることを除き、未精製油と同様である。蒸留、溶媒抽出、酸または塩基抽出、濾過及び浸透などの多くのそのような純化技術が当業者にとって既知である。
【0065】
再精製油は、サービスにおいて既に使用されている精製油に適用される精製油を得るために使用されるものと同様の工程によって得られる。そのような再精製油も、回収された油または再加工された油として既知であり、加えて、使い果たされた添加剤及び油分解生成物の承認のための技術によって加工されることが多い。
【0066】
よって、本潤滑油組成物を作るために使用され得る基油は、American Petroleum Institute(API)Base Oil Interchangeability Guidelines(API Publication 1509)において規定される基I-V内の基油のいずれかから選択され得る。そのような基油グループは、以下の表1において要約される。
【表1】
【0067】
本明細書における使用に適切な基油は、APIグループII油、グループIII油、グループIV油、及びグループV油、並びにそれらの組み合わせ、好ましくは、それらの優れた揮発性特徴、安定性特徴、粘度特徴、及び清浄度特徴に起因したグループIII~グループVに対応する多様のもののいずれかである。
【0068】
基油とも称される、本開示の潤滑油組成物における使用のための潤滑粘度の油は典型的には、主要量、例えば、組成物の総重量に対して、50wt%よりも多い量、好ましくは、約70wt%よりも多い量、より好ましくは、約80~99.5wt%の量、最も好ましくは、約85~約98wt%の量において存在する。本明細書で使用されるような表現「基油」は、同一の仕様(供給源または製造者の位置とは独立して)に対して単一の製造者によって生成される潤滑油成分である基原料または基原料の融合物を意味すると理解されるべきであり、同一の仕様は。同一の製造者の仕様を満たし、一意な化学式、生成物識別番号、またはその両方によって識別される。本明細書における使用のための基油は、いずれかのそのような用途及び全てのそのような用途のための潤滑油組成物を組み立てる際に使用される、いずれかの現在既知の潤滑粘度の油または後に開発される潤滑粘度の油、例えば、油圧作動油、ギア油、トランスミッション液など、エンジン油、マリンシリンダ油、機能性流体であることができる。加えて、本明細書における使用のための基油は場合により、粘度調整剤または粘度指数向上剤、例えば、櫛形ポリメタクリレートポリマー/ポリアルキルメタクリレートポリマー、オレフィン系コポリマー、及びエチレン-プロピレンコポリマーまたはスチレン-ブタジエンコポリマなど、並びにそれらの混合物を含有することができる。
【0069】
当業者が容易に認識するように、基油の粘度は、用途に依存する。一般的に、機関油として使用される個々の基油は、約4cSt~約8cStの100℃における動粘度範囲を有し、所望の等級の機関油、例えば、0W、0W-8、0W-12、0W-16、0W-20、0W-30、0W-40、0W-50、0W-60、5W、5W-16、5W-20、5W-30、5W-40、5W-50、5W-60、10W、10W-20、10W-30、10W-40、10W-50、15W、15W-20、15W-30、15W-40、30、及び40などのSAE Viscosity Gradeを有する潤滑油組成物を与えるために、所望の最終用途及び完成油内の添加剤に応じて、選択または融合される。潤滑油組成物はまた、約200以下の粘度指数を有する。
【0070】
概して、本開示の潤滑油組成物無内の硫黄のレベルは、潤滑油組成物の総重量に対して、約0.10wt%以下であり、例えば、0.010wt%~0.10wt%、0.010~0.090wt%、0.010~0.080wt%、0.010~0.070wt%、0.010~0.060wt%、0.010~0.050wt%、0.010wt.%~0.040wt.%の硫黄のレベルである。1つの実施形態では、本開示の潤滑油組成物内の硫黄のレベルは、潤滑油組成物の総重量に対して、約0.10wt%以下、約0.090wt%以下、約0.080wt%以下、約0.070wt%以下、約0.060wt%以下、約0.050wt%以下である。
【0071】
1つの実施形態では、本開示の潤滑油組成物によって生成される硫酸塩灰分のレベルは、ASTM D 874によって定められるような約0.30wt.%以下であり、例えば、ASTM D 874によって定められるような約0.01~約0.30wt.%の硫酸塩灰分のレベルである。1つの実施形態では、本開示の潤滑油組成物によって生成される硫酸塩灰分のレベルは、ASTM D 874によって定められるような、約0.30wt%以下、約0.25wt%以下、約0.20wt%以下、または約0.15wt%以下である。
【0072】
潤滑油添加剤
本潤滑油組成物は、完成潤滑油組成物を与えるための補助機能を伝えるための追加の潤滑油添加剤を含有し得、完成潤滑油組成物内で、それらの添加剤が分散または溶解される。例えば、潤滑油組成物は、金属洗浄剤、防錆剤、曇り止め剤、抗乳化剤、摩擦調整剤、金属不活性化剤、流動点降下剤、粘度調整剤、消泡剤、共溶剤、パッケージ相溶化剤、腐食防止剤、染料、及び極圧剤など、酸化防止剤、無灰分散剤、耐摩耗剤、清浄剤、及びそれらの混合物と融合されることができる。様々な添加剤が既知であり、商業的に利用可能である。それらの添加剤、またはそれらの同様の化合物は、通常の融合手順による本発明の潤滑油組成物の調製のために採用されることができる。
【0073】
先述の添加剤の各々は、使用されるとき、潤滑油に所望の性質を伝えるための機能的に効果的な量において使用される。よって、例えば、添加剤が無灰分散剤である場合、この無灰分散剤の機能的に効果的な量は、潤滑油に所望の分散性特性を伝えるのに十分な量である。一般的に、それらの添加剤の各々の濃度は、使用されるとき、他に規定されない限り、約0.010~約10wt%など、約0.001~約20wt%の範囲に及び得る。
【0074】

以下の非限定的な例が提供される。
【0075】
例1
高過塩基化(HOB)Caスルホン酸塩
SAE 5W-20の粘度等級潤滑油組成物は、以下の成分を融合することによって調製された。
a)窒素含有量に関して、1030ppmの1つ以上の窒素含有分散剤
b)410のTBNを有する2mmol/kgの過塩基化カルシウムスルホン酸塩
c)6mmol/kgの第一級ジチオリン酸亜鉛
d)モリブデン含有量に関して、680ppmのモリブデンコハク酸イミド錯体
e)0.2wt%のエステル系摩擦調整剤
f)合計で2.5wt%の1つ以上の酸化防止剤
g)2.5wt%の粘度調整剤
【0076】
潤滑油組成物の残りは、少量の消泡剤、流動点降下剤、並びに基油に関して35:65の比率にある4cStのKV100を有するグループIII基油及び6cStのKV100を有するグループIII基油の混合物を含む。完成油の灰化レベルは、0.25wt%であった。
【0077】
例2
HOB Mgスルホン酸塩
SAE 5W-20の粘度等級潤滑油組成物は、以下の成分を融合することによって調製された。
a)窒素含有量に関して、1030ppmの1つ以上の窒素含有分散剤
b)400のTBNを有する2mmol/kgの過塩基化マグネシウムスルホン酸塩
c)6mmol/kgの第一級ジチオリン酸亜鉛
d)モリブデン含有量に関して、680ppmのモリブデンコハク酸イミド錯体
e)0.2wt%のエステル系摩擦調整剤
f)合計で2.5wt%の1つ以上の酸化防止剤
g)2.5wt%の粘度調整剤
【0078】
潤滑油組成物の残りは、少量の消泡剤、流動点降下剤、並びに基油に関して35:65の比率にある4cStのKV100を有するグループIII基油及び6cStのKV100を有するグループIII基油の混合物を含む。完成油の灰化レベルは、0.24wt%であった。
【0079】
例3
低Zn
SAE 5W-20の粘度等級潤滑油組成物は、以下の成分を融合することによって調製された。
a)窒素含有量に関して、1030ppmの1つ以上の窒素含有分散剤
b)410のTBNを有する2mmol/kgの過塩基化カルシウムスルホン酸塩
c)2mmol/kgの第一級ジチオリン酸亜鉛
d)モリブデン含有量に関して、680ppmのモリブデンコハク酸イミド錯体
e)0.2wt%のエステル系摩擦調整剤
f)合計で2.5wt%の1つ以上の酸化防止剤
g)2.5wt%の粘度調整剤
【0080】
潤滑油組成物の残りは、少量の消泡剤、流動点降下剤、並びに基油に関して35:65の比率にある4cStのKV100を有するグループIII基油及び6cStのKV100を有するグループIII基油の混合物を含む。完成油の灰化レベルは、0.12wt%であった。
【0081】
例4
低過塩基化(LOB)スルホン酸塩
SAE 5W-20の粘度等級潤滑油組成物は、以下の成分を融合することによって調製された。
a)窒素含有量に関して、1030ppmの1つ以上の窒素含有分散剤
b)17のTBNを有する2mmol/kgの中性カルシウムスルホン酸塩
c)6mmol/kgの第一級ジチオリン酸亜鉛
d)モリブデン含有量に関して、680ppmのモリブデンコハク酸イミド錯体
e)0.2wt%のエステル系摩擦調整剤
f)合計で2.5wt%の1つ以上の酸化防止剤
g)2.5wt%の粘度調整剤
【0082】
潤滑油組成物の残りは、少量の消泡剤、流動点降下剤、並びに基油に関して35:65の比率にある4cStのKV100を有するグループIII基油及び6cStのKV100を有するグループIII基油の混合物を含む。完成油の灰化レベルは、0.25wt%であった。
【0083】
比較例1
高灰分
SAE5W-20の粘度等級潤滑油組成物は、以下の成分を融合することによって調製された。
a)窒素含有量に関して、1030ppmの1つ以上の窒素含有分散剤
b)410のTBNを有する30mmol/kgの過塩基化カルシウムスルホン酸塩
c)6mmol/kgの第一級ジチオリン酸亜鉛
d)モリブデン含有量に関して、680ppmのモリブデンコハク酸イミド錯体
e)0.2wt%のエステル系摩擦調整剤
f)合計で2.5wt%の1つ以上の酸化防止剤
g)2.5wt%の粘度調整剤
【0084】
潤滑油組成物の残りは、少量の消泡剤、流動点降下剤、並びに基油に関して35:65の比率にある4cStのKV100を有するグループIII基油及び6cStのKV100を有するグループIII基油の混合物を含む。完成油の灰化レベルは、0.52wt%であった。
【0085】
比較例2
高Zn
SAE5W-20の粘度等級潤滑油組成物は、以下の成分を融合することによって調製された。
a)窒素含有量に関して、1030ppmの1つ以上の窒素含有分散剤
b)410のTBNを有する2mmol/kgの過塩基化カルシウムスルホン酸塩
c)18mmol/kgの第一級ジチオリン酸亜鉛
d)モリブデン含有量に関して、680ppmのモリブデンコハク酸イミド錯体
e)0.2wt%のエステル系摩擦調整剤
f)合計で2.5wt%の1つ以上の酸化防止剤
g)2.5wt%の粘度調整剤
【0086】
潤滑油組成物の残りは、少量の消泡剤、流動点降下剤、並びに基油に関して35:65の比率にある4cStのKV100を有するグループIII基油及び6cStのKV100を有するグループIII基油の混合物を含む。完成油の灰化レベルは、0.50wt%であった。
【0087】
比較例3
低分散剤
AE5W-20の粘度等級潤滑油組成物は、以下の成分を融合することによって調製された。
a)窒素含有量に関して、516ppmの1つ以上の窒素含有分散剤
b)410のTBNを有する2mmol/kgの過塩基化カルシウムスルホン酸塩
c)6mmol/kgの第一級ジチオリン酸亜鉛
d)モリブデン含有量に関して、680ppmのモリブデンコハク酸イミド錯体
e)0.2wt%のエステル系摩擦調整剤
f)合計で2.5wt%の1つ以上の酸化防止剤
g)2.5wt%の粘度調整剤
【0088】
潤滑油組成物の残りは、少量の消泡剤、流動点降下剤、並びに基油に関して35:65の比率にある4cStのKV100を有するグループIII基油及び6cStのKV100を有するグループIII基油の混合物を含む。完成油の灰化レベルは、0.21wt%であった。
【表2】

【表2】
【0089】
性能試験
FTM 791A-3462 Panel Coker試験
Panel Coker試験は、潤滑油の相対的な安定度を判定する方法である。それは、エンジンシリンダ及びピストン内の堆積物の形成をシミュレートする、高温の金属表面と接触した潤滑油の堆積物の形成またはラカリングの傾向を評価するために使用されることが多い。試験装置は、水平から25°傾いた、矩形のステンレス鋼容器を含む。試験パネル(95mm×45mm)は、アルミニウム試験パネルまたは鋼鉄試験パネルの温度を制御するように熱電対プローブと適合する、加熱要素によって適切な場所に保持される。一連のタインと適合する、水平シャフトは、油の上に位置付けられ、1000rpmにおいて回転する。評価の下での潤滑油の300mlは、Panel Coker装置に配置され、油温度は、100℃に制御されると共に、試験パネルは、300℃に加熱される。シャフトを回転させる間、試験潤滑油及び潤滑油滴を通じたタインスイープは、加熱された試験パネル上に投下される。試験パネルは、3時間の試験持続時間の終わりに再度重量が計られ、形成された堆積物の量が判定される。試験パネルの重量増加及び試験の間に消費される試験潤滑油の量は、高温条件下での潤滑油の性能の指標である。
【表2】
【0090】
本明細書で開示される実施形態に様々な修正が行われ得ることを理解されよう。したがって、上記説明は、限定するとして解釈されるべきではないが、好ましい実施形態の例示としてのみ解釈されるべきである。例えば、上記説明され、本発明を機能させるための最良モードとして実装される機能は、例示のみを目的としている。本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、他の構成及び方法が当業者によって実装され得る。その上、当業者は、他の修正が添付の請求項の範囲及び精神内にあることを想定するであろう。
【国際調査報告】