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特表2024-518131表面修飾有機充填剤及びそれを含有するゴム組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-24
(54)【発明の名称】表面修飾有機充填剤及びそれを含有するゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08H 7/00 20110101AFI20240417BHJP
   C08L 97/00 20060101ALI20240417BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
C08H7/00
C08L97/00
C08L21/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571680
(86)(22)【出願日】2022-05-19
(85)【翻訳文提出日】2023-12-15
(86)【国際出願番号】 EP2022063657
(87)【国際公開番号】W WO2022243486
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】21174916.3
(32)【優先日】2021-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522244562
【氏名又は名称】サンコール・インダストリーズ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヤーコプ・ポチュン
(72)【発明者】
【氏名】ゲルト・シュマウクス
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・シュトゥッカー
(72)【発明者】
【氏名】トビアス・ヴィットマン
(72)【発明者】
【氏名】プリヤンカ・セカール
(72)【発明者】
【氏名】ラファル・アニースカ
(72)【発明者】
【氏名】アンク・ブルーメ
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AC032
4J002AC081
4J002AE054
4J002AH003
4J002DA046
4J002DE100
4J002EF050
4J002EN070
4J002ER026
4J002EU050
4J002EV166
4J002EV326
4J002FD013
4J002FD146
4J002GN01
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1種の有機修飾剤が、(i)フェノールOH基、フェノレート基、脂肪族OH基、カルボン酸基、カルボキシレート基、及びこれらの混合物から選択される、充填剤の少なくとも1個の官能基の酸素原子の一部を少なくとも介して、及び/又は(ii)フェノールOH基及び/又はフェノレート基に対してオルト位にある、充填剤の炭素原子の一部を少なくとも介して有機充填剤に共有結合される、有機充填剤;少なくとも1種のゴムと少なくとも前記上述の充填剤とを含むゴム組成物;加硫化系を更に含む、加硫化可能なゴム組成物;そこから得ることが可能な加硫化ゴム組成物;及びタイヤ、特に空気圧タイヤ及びソリッドタイヤの生成で、好ましくはそのトレッド、サイドウォール、及び/又はインナーライナーの生成で使用される、及び/又はテクニカルラバー物品、好ましくはプロファイル、シール、ダンパー、及び/又はホースの生成で使用される、(加硫化可能な)ゴム組成物を調製するための、上述の充填剤の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.20から0.45Bq/g炭素の範囲の14C含量を有する有機充填剤であって、
少なくとも1種の有機修飾剤の、前記有機充填剤との共有結合が、(i)フェノールOH基、フェノレート基、脂肪族OH基、カルボン酸基、カルボキシレート基、及びこれらの混合物から選択される、前記充填剤の少なくとも1個の官能基の酸素原子の一部を少なくとも介して、及び/又は(ii)フェノールOH基及び/又はフェノレート基に対してオルト位にある、前記充填剤の炭素原子の一部を少なくとも介して行われることを特徴とし、
用いられる前記少なくとも1種の有機修飾剤は、前記充填剤に結合する前に、(i)前記充填剤の少なくとも1個の官能基と反応性のある及び/又は(ii)フェノールOH基及び/又はフェノレート基に対してオルト位にある炭素原子と反応性のある、官能基RFGを有する少なくとも1個の有機基を含有し、それを用いて前記充填剤との結合が行われ、前記有機修飾剤の少なくとも1個の反応性官能基RFGは、ケイ素原子を含有せず、酸基、及びこれら酸基の塩、無水物、ハロゲン化物、及びエステル、エポキシド基、チイラン基、アルコール基、チオール基、チオエステル基、アルデヒド基、イソシアネート基、及びこれらの混合物からなる群から選択され、
及び10から<200m2/gの範囲のBET表面積を有する、有機充填剤。
【請求項2】
前記有機修飾剤自体は、いかなるケイ素原子も含有しないことを特徴とする、請求項1に記載の充填剤。
【請求項3】
ゴムを含まない形で存在する及び/又はゴムを含まない形で生成されたことを特徴とする、請求項1又は2に記載の充填剤。
【請求項4】
10から150m2/gの範囲、特に好ましくは20から120m2/gの範囲、更により好ましくは30から110m2/gの範囲、特に40から100m2/gの範囲、最も好ましくは40から<100m2/gの範囲のBET表面積を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の充填剤。
【請求項5】
前記充填剤がリグニン系充填剤であり、好ましくは少なくともリグニン、更により好ましくは有機充填剤自体が、熱水処理を用いて得ることができる形で少なくとも部分的に存在し、特に好ましくは熱水処理を用いて得ることができることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の充填剤。
【請求項6】
前記有機修飾剤の少なくとも1個の反応性官能基RFGが、酸基、及びこれら酸基の塩、無水物、ハロゲン化物、及びエステル、エポキシド基、チイラン基、アルコール基、チオール基、チオエステル基、イソシアネート基、及びこれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは酸基、及びこれら酸基の塩、無水物、ハロゲン化物、及びエステル、エポキシド基、チオール基、及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の充填剤。
【請求項7】
前記少なくとも1種の有機修飾剤が、
少なくとも1個の反応性官能基RFGとは異なり、前記充填剤がゴム組成物中の少なくとも1種のゴムと一緒に用いられるときに少なくとも1種のゴム及び/又はこのゴムの少なくとも1個の官能基及び/又は前記ゴム組成物中に存在する少なくとも1つの加硫化系に対して反応性を、特に加硫化中に示す、少なくとも1個のその他の官能基FGKを有し、前記少なくとも1個のその他の官能基FGKは、好ましくは非共役及び/又は共役炭素間二重結合、好ましくはcis位での炭素間二重結合、過酸化物基及び硫黄含有基からなる群から好ましくは選択され、即ち好ましくは、メルカプト基、ブロック化されたメルカプト基、ジ-及び/又はポリスルフィド基、チオケトン基、メルカプトベンゾチアゾール基、及びジチオカルバメート基、及びこれらの混合物からなる群から選択され、
及び/又は
少なくとも1個の反応性官能基RFGとは異なり、必要に応じて存在するその他の官能基FGKとも異なる、少なくとも1個のその他の官能基FGBを有し、少なくとも1個のその他の官能基FGBは、前記有機修飾剤の結合後の前記充填剤の塩基性を増大させる官能基、特に好ましくはアミノ基、特に第一級及び第二級アミノ基からなる基から選択されるアミノ基であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の充填剤。
【請求項8】
少なくとも1つの工程a)、及び必要に応じて工程b)からd)の1つ又は複数を行うことによって得ることでき、即ち、
a)少なくとも1種の有機修飾剤と、0.20から0.45Bq/g炭素の範囲の14C含量を有し且つフェノールOH基、フェノレート基、脂肪族OH基、カルボン酸基、カルボキシレート基、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1個の官能基を有する少なくとも1種の有機充填剤FPMとを、一緒にする工程、
b)液体又は気状反応媒体中に好ましくは存在する、工程a)により得られた前記混合物を、好ましくは30℃から190℃の範囲の温度まで、特に好ましくは50℃から180℃の範囲の温度まで、より特に好ましくは70℃から170℃の範囲の温度まで必要に応じて加熱する工程、
c)(i)前記充填剤FPMの少なくとも1個の官能基の酸素原子の一部を少なくとも介した、及び/又は(ii)フェノールOH基及び/又はフェノレート基に対してオルト位にある、前記充填剤FPMの炭素原子の一部を少なくとも介した、前記修飾剤の、前記充填剤FPMとの共有結合の後、前記修飾剤の少なくとも1個の反応性官能基RFGを介して、工程a)により一緒にする工程と工程b)により必要に応じて加熱する工程とが、少なくとも1種の有機溶媒を含有する液体反応媒体中で行われる場合には、少なくとも1種の有機溶媒を必要に応じて抽出する工程、及び
d)前記修飾剤の、前記充填剤FPMとの共有結合の後、工程a)及び必要に応じて工程b)及び/又はc)を行った後に得られた生成物を、好ましくは真空下及び/又は20から100℃の範囲の温度で必要に応じて乾燥する工程
によって得ることができることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の充填剤。
【請求項9】
前記少なくとも1種の修飾剤の共有結合が行われた後、遊離フェノールOH基及び/又はフェノレート基及び/又は脂肪族OH基及び/又はカルボン酸基及び/又はカルボキシレート基が依然として存在することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の充填剤。
【請求項10】
少なくとも1種のゴムを含有する少なくとも1種のゴム成分と充填剤成分とを含む、ゴム組成物であって、
前記充填剤成分は、請求項1から9のいずれか一項に記載の少なくとも1種の有機充填剤を含有し、
及び/又は、
前記充填剤成分は、(i)フェノールOH基、フェノレート基、脂肪族OH基、カルボン酸基、カルボキシレート基、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1個の官能基を有する、14C含量が0.20から0.45Bq/g炭素の範囲にある少なくとも1種の有機充填剤FPMを含有し、前記有機充填剤FPMは、10から<200m2/gの範囲にあるBET表面積を有し、かつ、(ii)(i)前記充填剤FPMの少なくとも1個の官能基と反応性のある、及び/又は(ii)フェノールOH基及び/又はフェノレート基に対してオルト位にある前記充填剤FPMの炭素原子と反応性のある、少なくとも1個の官能基RFGを有する少なくとも1個の有機基を含有し、それを用いて少なくとも1種の有機充填剤FPMとの共有結合を行うことができる、少なくとも1種の有機修飾剤を含み、前記有機修飾剤の少なくとも1個の官能基RFGは、ケイ素原子を含有せず、酸基、及びこれらの酸基の塩、無水物、ハロゲン化物、及びエステル、エポキシド基、チイラン基、アルコール基、チオール基、チオエステル基、アルデヒド基、イソシアネート基、及びこれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは、有機修飾剤自体はいかなるケイ素原子も含有しない、ゴム組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1種のゴムが、天然ゴム(NR)、ハロブチルゴム、即ち好ましくはクロロブチルゴム(CIIR;クロロ-イソブテン-イソプレンゴム)及びブロモブチルゴム(BIIR;ブロモ-イソブテン-イソプレンゴム)、及びこれらの混合物からなる群から選択されるもの、ブチルゴム又はイソブチレン-イソプレン-ゴム(IIR;イソブテン-イソプレンゴムでもある)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、即ち好ましくはSSBR及び/又はESBR、ポリブタジエン(BR、ブタジエンゴム)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR、ニトリルゴム)及び/又はHNBR(水和NBR)、クロロプレン(CR)、ポリイソプレン(IR)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項10に記載のゴム組成物。
【請求項12】
請求項1から9のいずれか一項に記載の少なくとも1種の有機充填剤を、10から150、特に好ましくは15から130、より特に好ましくは20から120、特に40から100phrの範囲に在る量で含有し、及び/又は請求項10の(i)に規定の少なくとも1種の有機充填剤FPMを、10から150、特に好ましくは15から130、より特に好ましくは20から120、特に40から100phrの範囲に在る量で含有し、請求項10の(ii)に規定の少なくとも1種の有機修飾剤を、前記充填剤FPMの全質量に対して0.1から30質量%、特に好ましくは0.5から25質量%、より特に好ましくは1.0から15質量%、特に1.5から12質量%の範囲に在る量でそれぞれ含有することを特徴とする、請求項10又は11に記載のゴム組成物。
【請求項13】
請求項10から12のいずれか一項に記載のゴム組成物と、少なくとも酸化亜鉛及び/又は少なくとも硫黄及び/又は少なくとも1種の過酸化物を好ましくは含む、特に好ましくは少なくとも硫黄を含む加硫化系とを含む、加硫化可能なゴム組成物。
【請求項14】
パーツ(A)として請求項10から12のいずれか一項に記載のゴム組成物と、パーツ(B)として請求項13に規定の加硫化系とを、空間的に分離された形で含む、パーツのキット。
【請求項15】
請求項13に記載の加硫化可能なゴム組成物の加硫化によって、又は請求項14に記載のパーツのキットのパーツ(A)及び(B)の両方を組み合わせる及び混合することによって得ることが可能な加硫化可能なゴム組成物の加硫化によって、得ることが可能な加硫化ゴム組成物。
【請求項16】
ゴム組成物及び加硫化可能なゴム組成物を生成するための請求項1から9のいずれか一項に記載の有機充填剤の、及び/又はタイヤ、好ましくは空気圧タイヤ及びソリッドタイヤの生成で用いるための、好ましくはそのトレッド、サイドウォール、及び/又はインナーライナーでそれぞれ用いるための、及び/又はテクニカルラバー物品、好ましくはプロファイル、シール、ダンパー、及び/又はホースの生成で使用するための、請求項10から13のいずれか一項に記載のゴム組成物の、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の有機修飾剤の、有機充填剤との共有結合が、(i)フェノールOH基、フェノール基、脂肪族OH基、カルボン酸基、カルボキシレート基、及びこれらの混合物から選択される、充填剤の少なくとも1個の官能基の酸素原子の一部を少なくとも介して、及び/又は(ii)フェノールOH基及び/又はフェノレート基に関してオルト位にある、充填剤の炭素原子の一部を少なくとも介して影響を受けている有機充填剤と、少なくとも1種のゴム及び上述の少なくとも充填剤を含むゴム組成物と、加硫化系を更に含む加硫化可能なゴム組成物と、そこから得ることが可能な加硫化ゴム組成物、並びにタイヤ、好ましくは空気圧タイヤ及びソリッドタイヤの生成で、好ましくはそれらのトレッド、サイドウォール、及び/又はインナーライナーのそれぞれの生成で用いるために、及び/又はテクニカルラバー物品、好ましくはプロファイル、シール、ダンパー、及び/又はホースの生成で用いるために、(加硫化)ゴム組成物を生成するための、上述の充填剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム組成物中に強化充填剤を用いることは、従来技術で公知である。特に、この目的で使用されるファーネスカーボンブラック等の工業用カーボンブラックについて、本明細書では述べる。工業用カーボンブラックは、最大量の強化充填剤であり続ける。工業用カーボンブラックは、炭化水素の不完全燃焼又は熱分解を用いて、高芳香族石油を基に生成される。しかしながら環境の観点から、充填剤を生成するために又はそれを最低限にまで低減させるために、化石エネルギー源の使用を回避することが望ましい。工業用カーボンブラック1トンを生成するのに、カーボンブラックの比表面積に応じて約1トンのCO2が生成プロセスで放出されることをここで述べることは、特に重要である。更に、工業用カーボンブラックはしばしば、色を理由として、ある特定の適用例に使用可能ではない可能性がある。
【0003】
無機強化充填剤として工業用カーボンブラックを用いるための公知の代替例は、沈降ケイ酸又はシリカである。それらの高い比表面積に起因して、化学修飾された沈降ケイ酸は、強化充填剤としての使用に特に適している。
【0004】
タイヤ産業では、該当する化学修飾された、特にシラン化された沈降ケイ酸の使用も有利である。空気圧車両用タイヤのような車両用タイヤは、複雑な構造を有する。それに応じて、それらに対する要求は多様である。一方、短い制動距離は、乾燥した及び濡れた道路上で確実にしなければならず、他方で良好な摩耗特性及び低い転がり抵抗を持たなければならない。更に車両用タイヤは、法律の要件に従わなければならない。そのような多様な性能プロファイルを確実にするため、個々のタイヤ構成要素は特殊化し、金属、ポリマーテキスタイル材料、及び様々なゴム系成分等の複数の種々の材料からなる。特にトレッドは、駆動特性を本質的に左右する。トレッドのゴム組成は、種々の天候条件での摩耗特性及び動的駆動特性を決定する(濡れた及び乾燥した道路上、寒い及び暖かい天候で、氷及び雪の上で)。次にトレッドプロファイル設計は、ハイドロプレーニング及び濡れた条件の場合、並びに雪上の場合にタイヤの挙動を大きく左右し、そのノイズ挙動も決定する。
【0005】
乗用車の分野で用いられるタイヤトレッドゴム組成物では、工業用カーボンブラックと比較して、強化充填剤としてのシラン化沈降シリカの使用は、沈降ケイ酸とゴム組成物のエラストマーとの間の化学結合に起因して転がり抵抗を改善し、それと同時に沈降ケイ酸の表面の極性に起因してウェットグリップを改善する。タイヤ摩耗は一般に、沈降ケイ酸が使用されるときに、工業用カーボンブラックと比較して悪化するが、このことは用いられるエラストマーの適切な選択によって(例えば、ポリブタジエンを使用することによって)、相殺することができる。
【0006】
しかしながらトラック分野で用いるためのタイヤトレッドゴム組成物では、強化充填剤としてのシラン化沈降ケイ酸の使用は、工業用カーボンブラックと比較して必要な耐摩耗性を実現できず、それは主成分の天然ゴムがトラックトレッドで使用されることから、特にエラストマーを選択する際の前述の柔軟性が乗用車のタイヤの場合のようにここでは与えられないからである。
【0007】
化学修飾された、特にシラン化された沈降ケイ酸をゴム組成物中で、特に乗用車及びトラックの両方の分野でタイヤトレッドを生成するために使用する別の欠点は、小さな変形の出現によるストレス値が工業用カーボンブラックの使用よりも低いことである。これは生じ得る動的繰返し変形で、特に明らかである。したがってドライビングダイナミクスの特殊タイヤ特性を調節するために、工業用カーボンブラックの追加の使用が必要であり、しかしこれは上述の理由で望ましくないものである。
【0008】
更に、テクニカルラバー物品分野及びタイヤ工業の両方においてゴムコンパウンドはしばしば使用され、そこでは使用される沈降ケイ酸の比表面積が比較的高く、例えばBET 100から250m2/gの範囲にある。少ない熱が、乗用車トレッドで使用されるときの機械変形(ヒステリシス)中に放出され、転がり抵抗を改善するが、次いで通常はBET 30から50m2/gの範囲の更に低い比表面積を有する工業用カーボンブラックに勝る利点は、しばしばもはや目に見えない。更に、動的剛性はしばしば、強化充填剤として工業用カーボンブラックを含有するゴムコンパウンドの場合よりも低い。
【0009】
更に、ゴム組成物中の有機充填剤として、熱水的に炭素化した形(HTCリグニン)のリグニン等、リグニン系の生物学的に再生する原材料を使用することも公知である。これらは、無機充填剤及び工業用カーボンブラックと比較して、環境に優しい充填剤の代替例である。
【0010】
EP 3 470 457 A1は、HTCリグニンを含有するゴムコンパウンドについて記述する。しかしながら、ゴム組成物中にそのようなHTCリグニンを使用する欠点は、しばしば、比較的極性のあるHTCリグニンと比較的無極性のゴムとの間の適合性がしばしば低過ぎ又は不十分なことである。更に欠点は、やはり及び特に加硫化形態をとるHTCリグニンを含有するゴム組成物の耐老化性及び長期安定性に関してしばしば観察されるが、それは望ましくない反応が、HTCリグニンに含有される過剰な割合の遊離OH基に起因して生じる可能性があり、耐老化性及び長期安定性に有害な影響があるからである。
【0011】
一般にタイヤで使用されるゴム組成物の生成の分野において、とりわけWO 2017/085278 A1は、工業用カーボンブラックの充填剤代替例として、粒状炭素材料の使用、特にHTCリグニンの使用も、開示する。これはEP 3 470 457 A1に関連して上記にて記述された、同じ頻度で出現する欠点に関連付けられる。更にWO 2017/085278 A1は、この材料が、ゴム組成物への組込みの後、カップリング試薬としての有機シランによるin-situ修飾に供される可能性があることについても記述する。しかしながら、WO 2017/085278 A1に記載される炭素材料を修飾するのにそのような有機シランを使用する欠点は、しばしば、材料と有機シランカップリング試薬との間に形成されたSi-O-C化学結合の熱力学的安定性が比較的低く、したがってこの結合は比較的容易に加水分解する可能性があり、したがってゴム組成物における望ましくないデカップリング反応及びその後の不十分な充填剤-ゴム相互作用が生じる可能性があることであり、これは加硫化中及び後にゴム組成物の有害な性質をもたらし得るので、回避されることになる。更に上述の炭素材料及び有機シランカップリング試薬のカップリング効率は、しばしば用いられる有機シランの望ましくないほど高い割合の自己縮合反応があるので、しばしば低過ぎ、したがって実際の修飾にもはや利用可能ではない。別の欠点は、生成されるゴム組成物内のみの、in situでの修飾の実施からもたらされるが、これはしばしば望ましくない範囲まで、組成物及びそこに含有される構成成分の生成の自由度を、特に上述の炭素材料が、特にケイ酸/シリカ等の無機充填剤等のその他の充填剤と組み合わされて使用されるときに、制限するからである。別の欠点は、有機シランとのin-situ反応が、工業用カーボンブラックの使用と比較して、コストの理由でテクニカルラバー物品及びほとんどのタイヤ構成要素(例えば、サイドウォール、インナーライナー)の生成において通常は実施されない追加の混合段階を必要とすることである。
【0012】
最後にWO 2017/194346 A1も、空気圧タイヤの硬化したゴム成分の剛性を増大させるために、及びとりわけフェノール樹脂を置き換えるために、特に例えばヘキサ(メトキシメチル)メラミン等のメチレンドナー化合物と一緒の、空気圧タイヤ構成要素用のゴムコンパウンドにおけるHTCリグニンの使用について記述する。WO 2017/194346 A1は、カップリング試薬として有機シランを使用する、可能性あるin-situ修飾についても述べる。しかしながら、WO 2017/085278 A1に関連して上記にて述べられた同じ欠点が、これに関連付けられる。
【0013】
したがって、ゴム組成物への組込みに適した新しい有機充填剤、及びそのようなゴム組成物自体であって、上記欠点を示さないものが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】EP 3 470 457 A1
【特許文献2】WO 2017/085278 A1
【特許文献3】WO 2017/194346 A1
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】「Determination of surface-accessible acidic hydroxyls and surface area of lignin by cation dye adsorption」(Bioresource Technology 169 (2014) 80~87)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって本発明の目的は、ゴム組成物に組み込むのに、直接それ自体で適切な、環境に優しい充填剤を提供することであり、特に、タイヤトレッド等のタイヤ構成要素、及びタイヤサブ構造(カーカス)用のタイヤ構成要素を提供すること、及び/又は加硫化形態でもある、特にゴム組成物の耐老化性及び長期安定性の改善、従来技術の充填剤と比較して増大した媒体に対する耐性及び加水分解耐性、及びモジュラス、引張強さ、及び破断点伸び等の改善された機械的性質に関するテクニカルラバー物品の構成要素を提供することである。更に本発明の目的は、これらの充填剤を含有する、対応するゴム組成物自体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的は、特許クレームで請求される対象、並びに以下の明細書に記述されるこれら対象の好ましい実施形態によって達成される。
【0018】
したがって本発明の第1の対象は、0.20から0.45Bq/g炭素の範囲の14C含量を有する有機充填剤であって、
少なくとも1種の有機修飾剤の、有機充填剤との共有結合が、(i)フェノールOH基、フェノレート基、脂肪族OH基、カルボン酸基、カルボキシレート基、及びこれらの混合物から選択される、充填剤の少なくとも1個の官能基の酸素原子の一部を、少なくとも介して、及び/又は(ii)フェノールOH基及び/又はフェノレート基に対してオルト位にある、充填剤の炭素原子の一部を少なくとも介して行われることを特徴とし、
用いられる少なくとも1種の有機修飾剤は、充填剤に結合する前に、(i)充填剤の少なくとも1個の官能基と反応性のある及び/又は(ii)フェノールOH基及び/又はフェノレート基に対してオルト位にある炭素原子と反応性のある官能基RFGを有する少なくとも1個の有機基を含有し、それを用いて充填剤との結合が行われ、有機修飾剤の少なくとも1個の反応性官能基RFGは、いかなるケイ素原子も含有せず、好ましくは、有機修飾剤自体は、いかなるケイ素原子も含有せず、好ましくは少なくとも1個の反応性官能基RFGは、酸基、及びこれら酸基の塩、無水物、ハロゲン化物、及びエステル、エポキシド基、チイラン基、アルコール基、チオール基、チオエステル基、アルデヒド基、イソシアネート基、及びこれらの混合物からなる群から選択され、
及び10から<200m2/gの範囲のBET表面積を有する、有機充填剤である。
【0019】
好ましくは、本発明による有機充填剤は、ゴムが無い形で存在し及び/又はゴムが無い形で生成されている。これは特に、少なくとも1種の有機修飾剤の、この目的で用いられる充填剤(即ち、以下に記述される修飾前の充填剤FPM)との結合が、ゴム組成物中でin situで生じないが、結合は別の事前の工程で既に生じている(「ex situ」)ことを意味する。したがって言い換えれば、本発明により用いられる少なくとも1種の修飾剤を使用した修飾中に、ゴムは存在しない。
【0020】
本発明の別の対象は、少なくとも1種のゴムを含有する少なくとも1種のゴム成分と、充填剤成分とを含む、ゴム組成物であって、
充填剤成分が、本発明の第1の対象に関連して記述される、本発明による少なくとも1種の有機充填剤を含有し、
及び/又は
充填剤成分は、(i)フェノールOH基、フェノレート基、脂肪族OH基、カルボン酸基、カルボキシレート基、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1個の官能基を有する、14C含量が0.20から0.45Bq/g炭素の範囲の少なくとも1種の有機充填剤FPMであり、好ましくは10から<200m2/gの範囲のBET表面積を有する有機充填剤FPMを含有し、(ii)(i)充填剤FPMの少なくとも1個の官能基と反応性のある及び/又は(ii)フェノールOH基及び/又はフェノレート基に対してオルト位にある、充填剤FPMの炭素原子と反応性のある、少なくとも1個の官能基RFGを有する少なくとも1個の有機基を含有する少なくとも1種の有機修飾剤を含み、それを用いて少なくとも1種の有機充填剤FPMとの共有結合が行われ、有機修飾剤の少なくとも1個の官能基RFGはケイ素原子を含有せず、好ましくは酸基、及びこれら酸基の塩、無水物、ハロゲン化物、及びエステル、エポキシド基、チイラン基、アルコール基、チオール基、チオエステル基、アルデヒド基、イソシアネート基、及びこれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは、有機修飾剤自体は、いかなるケイ素原子も含有しない、ゴム組成物である。
【0021】
本発明の別の対象は、本発明によるゴム組成物を含む加硫化可能なゴム組成物と、好ましくは、少なくとも酸化亜鉛及び/又は少なくとも硫黄及び/又は少なくとも1種の好ましくは有機過酸化物を含む、特に好ましくは少なくとも硫黄を含む、加硫化系である。
【0022】
本発明の別の対象は、空間的に分離した形をとる、パーツ(A)として本発明によるゴム組成物と、パーツ(B)として本発明による加硫化可能ゴム組成物に含有されるような加硫化系と、を含む、パーツのキットである。
【0023】
本発明の別の対象は、本発明による加硫化可能なゴム組成物の加硫化によって、又は本発明によるパーツのキットの2つのパーツ(A)及び(B)を組み合わせ且つ混合することによって得ることが可能な加硫化可能なゴム組成物を加硫化することによって得ることができる、加硫化ゴム組成物である。
【0024】
本発明の別の対象は、タイヤ、好ましくは空気圧タイヤ及びソリッドタイヤ、特に空気圧タイヤ、好ましくはそのトレッド、サイドウォール、及び/又はインナーライナーをそれぞれ生成するのに用いられる、及び/又はテクニカルラバー物品を生成する、好ましくはプロファイル、シール、ダンパー、及び/又はホースを生成する、ゴム組成物及び加硫化可能なゴム組成物を生成するための本発明による少なくとも1種の有機充填剤の使用である。
【0025】
本発明による有機充填剤は、公知の充填剤、特に無機充填剤と、ゴム適用例でのカーボンブラックとの両方で、環境に優しい代替物であることが見出された。
【0026】
更に、本発明による有機充填剤は、ゴム組成物への組込みに、特に空気圧タイヤ及びソリッドタイヤ等のタイヤのトレッド、サイドウォール、及び/又はインナーライナーを生成するのに、及び/又はプロファイル、シール、ダンパー、及び/又はホース等のテクニカルラバー物品を生成するのに、それ自体で直接適していることが意外にも見出された。
【0027】
更に、本発明による有機充填剤は、ゴム組成物中に存在するゴムに対して良好な適合性を示すことが意外にも見出された。特に、少なくとも1種の有機修飾剤の、充填剤との有効な共有結合によって、即ち充填剤の有効な表面修飾によって、充填剤の極性の低下を、比較的無極性のゴムとの適合性が改善されるような程度まで実現できることが見出された。特に適合性は、用いられる少なくとも1種の有機修飾剤が、少なくとも1個の反応性官能基RFGとは異なり、充填剤がゴム組成物中の少なくとも1種のゴムと一緒に用いられるときに少なくとも1種のゴムと及び/又はこのゴムの少なくとも1個の官能基と及び/又は用いられる加硫化系と、特に加硫化中に反応性を示す、少なくとも1個の更なる官能基FGKを有する場合に、更に改善できることが示された。この場合、充填剤の、ゴム及び/又は加硫化系との結合も、加硫化中に可能な限り遅くすることが可能であり、したがって特に、改善された適合性に加えて加硫化組成物の強化特性(モジュラス、破断点伸び、ヒステリシス、引裂き抵抗、及び/又は引張強さ等)も更になお改善される。
【0028】
更に、本発明による有機充填剤は、加硫化形態でもあるゴム組成物の耐老化性及び長期安定性を改善させることが、意外にも見出された。意外にも本発明による有機充填剤は、従来技術の充填剤と比較して、媒体に対し、特に基材に対して増大した耐性と、加水分解耐性とを特に示すことが、示された。特に、少なくとも1種の有機修飾剤の、充填剤との共有結合、即ち充填剤の表面修飾は、前述の適合性を改善するだけでなく、遊離フェノールOH基、フェノレート基、脂肪族OH基、カルボン酸基、カルボキシレート基、及びこれらの混合物の割合も、耐老化性及び長期安定性に悪影響を及ぼすこれらの基で生じ得る望ましくない反応を防止することができる又は少なくとも低減させることができる程度まで、低減させることができることが見出された。この文脈において、特に加水分解に対する本発明による充填剤感受性は、実施された表面修飾の結果として少なくとも低減させることができること、及び媒体に対する、特に基材に対する耐性を増大させることができることが、見出された。更に加硫化組成物の強化特性も、それにより更になお改善される。
【0029】
更に、少なくとも1種の有機修飾剤の、用いられる充填剤(即ち、以下に記述される充填剤FPM)との結合は、個別の事前の工程(「ex situ」)で行うことができ、したがってin-situ結合は、ゴムの存在下、ゴム組成物中で必ずしも生じさせる必要はないことが、意外にも見出された。このことは特に、既に修飾されている本発明による有機充填剤が、それ自体でゴム組成物中に充填剤として、特に無機充填剤等のその他の充填剤、特に(非修飾)シリカと組み合わせても、目標とした方式で使用できるという利点があり、このことは特に、ゴム組成物中の有機シラン等の適切な修飾剤によるシリカ等のその他の充填剤の修飾、したがって依然としてin situで実施しなければならない修飾が企図される場合に利点を有する。したがって「ex-situ」修飾により、使用者は、ゴム組成物及びそれが含有する構成要素の生成及び形成の更なる自由度及び柔軟性が可能になる。
【0030】
更に、その反応性基RFGがSiを含まない及び好ましくはそれ自体Siを含まず、この場合に有機シランの場合のようにSi含有基を保持することができない、本発明により用いられる修飾剤の使用は、充填剤との共有結合後に、熱力学的に安定なC-O-C結合を、即ち形成された対応するSi-O-C結合よりも高い熱力学的安定性を有するC-O-C結合を、例えば有機シランが使用されるときにもたらすことが、意外にも見出された。これにより、増大した加水分解耐性も実現され、望ましくないデカップリング反応、したがってゴム組成物中のより低い充填剤-ゴム相互作用を、回避することができ又は少なくとも低減させることができる。更に、本発明による修飾剤を用いることには、有機シランが使用されたときに生じ得るような自己凝縮反応が生じないので、高いカップリング効率が実現されるという利点がある。
【0031】
更に、本発明による有機充填剤を含有する、対応するゴム組成物、特に加硫化可能なゴム組成物は、空気圧タイヤ及びソリッドタイヤ等のタイヤ、特に空気圧タイヤの生成に、好ましくはそのトレッド、サイドウォール、及び/又はインナーライナーの生成でそれぞれ使用でき、この目的に必要な要件を非常に高い程度まで、特に転がり抵抗、摩耗及び濡れ滑り、及びこれらの要件の良好なバランスに関して満たすことが、意外にも見出された。同様に、本発明による有機充填剤を含有する、対応するゴム組成物、特に加硫化可能なゴム組成物は、テクニカルラバー物品(ゴム製品)、特にプロファイル、シール、ダンパー、及び/又はホースの生成に用いるのに適していることが、意外にも見出された。
【0032】
また、本発明による加硫化ゴム組成物は、本発明により用いられる修飾剤で処理されていない有機充填剤を含有する加硫化ゴム組成物と比較して、改善された機械的性質を、特に引張強さ、ショアA硬度、及び反発弾性に関して示すことが、意外にも見出された。
【0033】
また、特に意外にも、本発明による有機充填剤を含有する、本発明によるゴム組成物、特に加硫化可能なゴム組成物は、伸び率最大200%の範囲でモジュラスが増大することを特徴とする加硫化ゴム組成物をもたらすことも見出された。このことは特に、工業用カーボンブラックが追加の充填剤として使用されないときにも見出された。
【0034】
特に意外にも、本発明による有機充填剤を含有する本発明によるゴム組成物、特に加硫化可能なゴム組成物は、本発明による有機充填剤の代わりにシラン化沈降ケイ酸を含む加硫化ゴム組成物と比較して少なくとも許容可能なタイヤ摩耗と同時に転がり抵抗及びウェットグリップの改善をもたらす、乗用車及び特にトラック分野でのタイヤトレッドとして用いられる加硫化ゴム組成物をもたらすことが、更に見出された。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、種々の有機充填剤を含有する、種々の、まだ加硫化されていないゴム組成物KV1VS、KI1VS、KI2VS、及びKI3VSのペイン効果を示す。
図2図2から、使用される修飾済みリグニンは、特に、実施される修飾の結果としてリグニンの塩基性が増大し、したがって加硫化の速度及び程度が改善されるので、良好な加硫化挙動を示すことがわかる。
図3図3から、使用された修飾済みリグニンは、熱水処理により得られた非修飾リグニンと比較して、引張強さに関して改善された機械的性質が可能になることがわかる。
図4図4から、使用された修飾済みリグニンは、熱水処理により得ることが可能な非修飾リグニンと比較して、改善されたショアA硬度をもたらすことがわかる。
図5図5から、使用された修飾済みリグニンは、熱水処理によって得ることが可能な非修飾リグニンと比較して、共に23℃であるが特に70℃で、反発弾性の改善(増大)をもたらすことがわかる。
図6】次いでl4を、非修飾有機充填剤V1と比較して、固相13C-NMR分光により、HTの結合に関して試験し、それによって図6に示されるように異なるスペクトルが形成され、有機充填剤のアルファ炭素でHTのアルキル鎖の新しいシグナルを示す。
図7図7は、HTの沸騰範囲で質量損失が生じず、したがってHTは共有結合形態でl4中に存在することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
例えば本発明によるゴム組成物、本発明による加硫化可能なゴム組成物、及び本明細書に記述されるプロセスの文脈でのプロセス又は段階に関連して、本発明で使用される「含む(comprising)」という用語は、好ましくは「~からなる(consisting of)」という意味を有する。例えば本発明によるゴム組成物及び本発明による加硫化可能なゴム組成物に関するこの文脈において、以下に記述されるように必要に応じて含有される更なる構成要素の1つ又は複数は、その中に強制的に存在する構成要素に加えて、その中に含有されてもよい。全ての構成要素は、以下に述べるそれらの好ましい実施形態のそれぞれで存在し得る。本発明による及び本明細書に記述されるプロセスに関し、これらは更なる必要に応じたプロセス工程及び段階を、必須の工程及び/又は段階に加えて有していてもよい。
【0037】
本発明によるゴム組成物及び本発明による加硫化可能なゴム組成物(それぞれの場合に、全ての必須の構成要素と、更に全ての必要に応じた構成要素とを含む)等、本明細書に記述される組成物に含有される全ての構成要素の量は、それぞれ合計すると100質量%になる。
【0038】
本発明による修飾済み有機充填剤及び本発明により用いられる有機修飾剤
本発明による有機充填剤は、14C含量が0.20から0.45Bq/g炭素の範囲の有機充填剤であり、少なくとも1種の有機修飾剤の、有機充填剤との共有結合は、(i)フェノールOH基、フェノレート基、脂肪族OH基、カルボン酸基、カルボキシレート基、及びこれらの混合物から選択される、充填剤の少なくとも1個の官能基の酸素原子の一部を少なくとも介して、及び/又はii)フェノールOH基及び/又はフェノレート基に対してオルト位にある、充填剤の炭素原子の一部を少なくとも介して、行われた。ここで「少なくとも一部を介して」と言う表現は、部分的又は完全、好ましくは部分的を意味する。フェノールOH基、フェノラート基、脂肪族OH基、カルボン酸基、カルボキシレート基、及びこれらの混合物は、好ましくは修飾に用いられる充填剤FPMの表面で局在化する(いわゆる表面利用可能基)。表面で利用可能なこのOH基の決定は、定性的に及び定量的に、Sipponenによる比色分析により実施することができる。Sipponenによる方法は、アルカリ性色素Azure Bの、充填剤表面に接触可能な酸性ヒドロキシル基上への吸着に基づく。対応する吸着が、以下に述べる文献の2.9項(p.82)の下で引用される条件下で在る場合、本発明の意味での表面利用可能基が存在する。更なる詳細は、論文「Determination of surface-accessible acidic hydroxyls and surface area of lignin by cation dye adsorption」(Bioresource Technology 169 (2014) 80~87)から得ることができる。定量的決定では、本発明の意味での表面利用可能基の量は、mmol/g充填剤で表現される。好ましくは、表面利用可能基の量は、0.05 mmol/gから40mmol/gの範囲、特に好ましくは0.1mmol/gから30mmol/g、最も特に好ましくは0.15から30mmol/gの範囲にある。
【0039】
本発明による充填剤は有機的性質のものであるので、沈降ケイ酸等の無機充填剤はこのカテゴリー下に包含されない。
【0040】
充填剤及び有機充填剤という用語は特に、当業者に公知である。好ましくは、本発明により用いられる有機充填剤は、強化充填剤、即ち活性充填剤である。強化又は活性充填剤は不活性(非強化)充填剤と比較して、ゴム組成物中のゴムと相互作用することにより、ゴムの粘弾特性を変化させることができる。例えば、ゴムの粘度に影響を及ぼすことができ、例えば引裂き強さ、引裂き抵抗、及び摩耗に関して加硫化物の破断挙動を改善することができる。一方、不活性充填剤は、ゴム母材を希釈する。
【0041】
本発明による有機充填剤は、0.20から0.45Bq/g炭素、好ましくは0.23から0.42Bg/g炭素の14C含量を有する。上記引用された、必要とされる14C含量は、バイオマスから得られる有機充填剤によって、更なるその処理又は反応によって、好ましくは分画によって実現され、この分画は、熱的に、化学的に、及び/又は生物学的に実施することができ、好ましくは熱的に及び化学的に実施される。したがって、特に化石燃料等の化石材料から得られる充填剤は、対応する14C含量を保有しないので、本発明により使用されることになる充填剤の本発明による定義下に包含されない。
【0042】
本明細書で、バイオマスは原則として、任意のバイオマスと定義され、本明細書の「バイオマス」という用語は、いわゆるファイトマス、即ち植物由来のバイオマス、ズーマス、即ち動物由来のバイオマス、及び微生物バイオマス、即ち真菌を含む微生物由来のバイオマスを含み、バイオマスは、乾燥バイオマス又は新鮮なバイオマスであり、死んだ又は生きている生物に由来する。充填剤の生成のため本明細書で特に好ましいバイオマスは、ファイトマス、好ましくは死んだファイトマスである。死んだファイトマスは、とりわけ死んだ、排除された、又は切り離された植物、及びそれらの部分を含む。これらには例えば、破壊された及び破れた葉、穀物の茎、サイドシュート、小枝及び分枝、落ち葉、倒れた又は切り払われた木、並びに種子及び果実と、それらに由来する部分が含まれるが、おが屑、鉋屑/チップ、及び木材加工に由来するその他の生成物も含まれる。
【0043】
好ましくは、本発明による有機充填剤は、無灰及び無水充填剤に対してそれぞれ60質量%から85質量%の範囲の、特に好ましくは63質量%から80質量%、より特に好ましくは65質量%から75質量%、特に68質量%から73質量%の炭素含量を有する。炭素含量を決定するための1つの方法は、以下の方法のセクションで引用される。これに関し、有機充填剤は、カーボンブラックが少なくとも95質量%の対応する炭素含量を有するので、化石原材料で作製されたカーボンブラック並びに再生原材料で作製されたカーボンブラックの両方と異なる。
【0044】
好ましくは、本発明による充填剤は、無灰及び無水充填剤に対して15質量%から30質量%の範囲の、好ましくは17質量%から28質量%、特に好ましくは20質量%から25質量%の酸素含量を有する。酸素含量は、例えばEuroEA3000 CHNS-O分析器(EuroVector S.p.A社)を使用する高温熱分解によって決定することができる。
【0045】
本発明による有機充填剤は、好ましくは、10から<200m2/gの範囲のBET表面積(Brunauer、Emmett、及びTellerによる比全表面積)を有する。このパラメーターを決定するための方法は、以下の方法セクションで引用される。特に好ましくは、本発明による有機充填剤は、10から150m2/gの範囲のBET表面積、より特に好ましくは20から120m2/gの範囲のBET表面積、更により好ましくは30から110m2/gの範囲のBET表面積、特に40から100m2/gの範囲のBET表面積、最も好ましくは40から<100m2/gの範囲のBET表面積を有する。
【0046】
本発明による有機充填剤は、好ましくは10から<200m2/gの範囲のSTSA表面積を有する。STSA表面積(統計的厚さ表面積)を決定するための方法は、以下の方法セクションに引用される。好ましくは、有機充填剤は10から150m2/gの範囲、特に20から120m2/gの範囲、特に好ましくは30から110m2/gの範囲、特に40から100m2/gの範囲、最も好ましくは40から<100m2/gの範囲のSTSA表面積を有する。
【0047】
好ましくは、本発明による有機充填剤は、アルカリ媒体中で、特に0.1M又は0.2M NaOH中で、条件付き溶解度のみ示す。溶解度は、以下に記述される方法により決定される。好ましくは、有機充填剤の溶解度は、30%より低く、特に好ましくは25%より低く、より特に好ましくは20%より低く、更により好ましくは15%より低く、更により好ましくは10%より低く、更に好ましくは7.5%より低く、更により好ましくは5%より低く、更により好ましくは2.5%より低く、特に好ましくは1%より低い。
【0048】
好ましくは、本発明による有機充填剤は、バイオマス及び/又はバイオマス成分から生成されたリグニン系有機充填剤である。例えばリグニン系有機充填剤を生成するためのリグニンは、バイオマスから単離され抽出されてもよく、及び/又は本発明によるその修飾の前に溶解されてもよい。バイオマスからリグニン系有機充填剤を生成するためにリグニンを得るための適切な方法は、例えば加水分解的方法、又はクラフトパルプ化法等のパルプ化方法である。本明細書で使用される「リグニン系」という用語は、好ましくは、1つ若しくは複数のリグニン単位及び/又は1つ若しくは複数のリグニン足場が本発明による有機充填剤中に存在することを意味する。リグニンは、植物細胞壁に組み込まれ、したがって植物細胞のリグニン化が行われる固体バイオポリマーである。したがってリグニンはバイオマス中に存在し、特に生物学的に再生する原材料中に存在し、したがって-特に熱水的に処理された形で-環境に優しい充填剤代替物である。
【0049】
好ましくは、本発明による有機充填剤は、リグニン含量が、それぞれ本発明による有機充填剤の全質量に対して少なくとも50質量%、特に好ましくは少なくとも60質量%、より特に好ましくは少なくとも70質量%、最も好ましくは少なくとも80質量%であるリグニン系有機充填剤である。好ましくは、本発明による有機充填剤中のKlasonリグニンの含量は、少なくとも50質量%、特に好ましくは少なくとも60質量%、より特に好ましくは少なくとも70質量%、最も好ましくは少なくとも80質量%である。Klasonリグニンの含量は、TAPPI T 222に従い、好ましくは酸不溶性リグニンとして決定される。
【0050】
好ましくは、リグニン、好ましくは本発明による有機充填剤そのものは、リグニン系充填剤である場合、少なくとも部分的に熱水処理された形態で存在し、特に好ましくは、熱水処理を用いてそれぞれ得ることが可能である。特に好ましくは、本発明による有機充填剤は、熱水処理によって得ることができるリグニンをベースにする。特にリグニンの及びリグニン含有有機充填剤の、熱水処理の適切な方法は、例えばWO 2017/085278 A1及びWO 2017/194346 A1並びにEP 3 470 457 A1に記載されている。熱水処理は、液体の水の存在下、150℃から250℃の間の範囲の温度で好ましくは実施される。
【0051】
好ましくは、本発明による有機充填剤は、7から9の範囲の、特に好ましくは>7から<9の範囲の、最も好ましくは>7.5から<8.5の範囲のpHを有する。
【0052】
共有結合に用いられる少なくとも1種の有機修飾剤は、有機基を含有し、好ましくはこの有機基からなり、基は、充填剤と結合する前に、(i)充填剤の少なくとも1個の官能基と反応性のある及び/又は(ii)フェノールOH基及び/又はフェノレート基に対してオルト位にある炭素原子と反応性のある少なくとも1個の官能基RFGを有し、それを用いて充填剤との結合が行われた。
【0053】
少なくとも1種の有機修飾剤の、この目的で用いられる有機充填剤との、好ましくは充填剤に含有されるリグニンとの、共有、したがって化学結合は、フェノールOH基、フェノレート基、脂肪族OH基、カルボン酸基、カルボキシレート基、及びこれらの混合物から選択される充填剤の少なくとも1個の官能基の酸素原子の一部を介する、及び/又は(ii)フェノールOH基及び/又はフェノレート基に対してオルト位にある充填剤の炭素原子の一部を少なくとも介する化学反応によって行われ、それぞれの場合にこれらの基に対して反応性のある有機修飾剤の少なくとも1個の官能基RFGを有する。少なくとも部分的な、好ましくは部分的な反応により、充填剤の極性は有利に変化する。使用される修飾剤のタイプに応じて、追加の物理的遮蔽効果が生じ得る(例えば、1,2-エポキシ-9-デセン(ED)の場合、その比較的長い鎖の疎水性部分に起因する)。
【0054】
少なくとも1種の有機修飾剤の、有機充填剤に対する共有結合が、フェノールOH基、フェノレート基、脂肪族OH基、カルボン酸基、カルボキシレート基、及びこれらの混合物の酸素原子の一部を介してのみ、及び/又はフェノールOH基及び/又はフェノレート基に対してオルト位にある充填剤の炭素原子の一部を介してのみ行われた場合、本発明による有機充填剤は、結合後に依然として、遊離フェノールOH基、フェノレート基、脂肪族OH基、カルボン酸基、カルボキシレート基、及びこれらの混合物を提示することができる。好ましくは、これは事実である。
【0055】
少なくとも1種の有機修飾剤の、有機充填剤との共有結合が、存在するフェノールOH基、フェノレート基、脂肪族OH基、カルボン酸基、カルボキシレート基、及びこれらの混合物の酸素原子の全てを介して行われた場合、及び/又はフェノールOH基及び/又はフェノレート基に対してオルト位にある充填剤の炭素原子の全てを介して行われた場合、本発明による有機充填剤は、遊離フェノールOH基、フェノレート基、脂肪族OH基、カルボン酸基、カルボキシレート基、及びこれらの混合物をもはや持たない。当然ながら、混合形態も可能であり:例えば充填剤は、結合後にその官能基の1つ又は複数のタイプ、例えば脂肪族OH基、カルボン酸基、カルボキシレート基、及びこれらの混合物を依然として有していてもよく、それに対して既に存在する全てのフェノールOH基及びフェノレート基は、反応している。
【0056】
好ましくは、本発明による有機充填剤は、ゴムが無い形態で存在し、及び/又はゴムが無い形態で生成されている。これは特に、少なくとも1種の有機修飾剤の、用いられる充填剤(即ち、以下に記述される充填剤FPM)との結合が、ゴム組成物中でin situで生じず、結合は別の事前の工程で既に生じることを意味する(「ex situ」)。
【0057】
本発明による有機充填剤の生成では、14C含量が0.20から0.45Bq/g炭素の範囲の有機充填剤FPMは、出発材料又は前駆体として適切であり、フェノールOH基、フェノレート基、脂肪族OH基、カルボン酸基、カルボキシレート基、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1個の官能基を含有する。本発明により用いられる少なくとも1種の有機修飾剤の共有結合は、この時にまだ生じていない。少なくともこれに関し、本発明により使用される充填剤FPMは、本発明による有機充填剤とは異なる。特に有機充填剤FPMは、好ましくは10から<200m2/gの範囲のBET表面積を有する。
【0058】
好ましくは、本発明による有機充填剤は、少なくとも1つの工程a)、及び必要に応じて工程b)からd)の1つ又は複数を実施することによって得ることが可能であり、即ち、
a)本発明により用いられる少なくとも1種の有機修飾剤と、0.20から0.45Bq/g炭素の範囲の14C含量を有し且つフェノールOH基、フェノレート基、脂肪族OH基、カルボン酸基、カルボキシレート基、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1個の官能基を有する少なくとも1種の有機充填剤FPMとを、一緒にする工程、
b)液体又は気状反応媒体中に好ましくは存在する、工程a)により得られた混合物を、好ましくは30℃から190℃の範囲の温度まで、特に好ましくは50℃から180℃の範囲の温度まで、より特に好ましくは70℃から170℃の範囲の温度まで必要に応じて加熱する工程、
c)(i)充填剤FPMの少なくとも1個の官能基の酸素原子の一部を少なくとも介した、及び/又は(ii)フェノールOH基及び/又はフェノレート基に対してオルト位にある、充填剤FPMの炭素原子の一部を少なくとも介した、修飾剤の、充填剤FPMとの共有結合の後、修飾剤の少なくとも1個の反応性官能基RFGを介して、工程a)により一緒にする工程と工程b)により必要に応じて加熱する工程とが、少なくとも1種の有機溶媒を含有する液体反応媒体中で行われる場合には、少なくとも1種の有機溶媒を必要に応じて抽出する工程、及び
d)修飾剤の、充填剤FPMとの共有結合の後、工程a)及び必要に応じて工程b)及び/又はc)を行った後に得られた生成物を、好ましくは真空下及び/又は20から100℃の範囲の温度で必要に応じて乾燥する工程
により可能である。
【0059】
工程a)により一緒にする工程と、更に工程b)により必要に応じて加熱する工程も、好ましくは液体又は気状である反応媒体中で実施することができる。使用される修飾剤及び/又は充填剤FPM及び/又は得られる混合物はそれぞれ、必要に応じて液体又は気状反応媒体中に存在し得る。液体反応媒体は、少なくとも1種の有機溶媒、特に好ましくは少なくとも1種の炭化水素、最も好ましくは少なくとも1種の脂肪族及び/又は芳香族炭化水素を好ましくは含有していてもよく又はそれらからなるものであってもよい。気状反応媒体の場合、修飾剤の、充填剤FPMとの共有結合は、CVD(化学気相成長)により実現することができる。
【0060】
好ましくは、工程a)により一緒にする工程は、室温(18から<30℃)で実施される。修飾剤の、充填剤FPMとの共有結合は、これらの条件下で既に引き起こすことができる。しかしながら、必要に応じて好ましくは、工程b)が行われる。この場合、修飾剤の、充填剤FPMに対する共有結合は、工程b)に関連して既に記述された温度範囲で好ましくは生じる。
【0061】
必要に応じた工程c)による抽出は、好ましくは20から150℃の範囲の温度で実施され、必要に応じて真空下で実施されてもよい。
【0062】
好ましくは、工程a)及び必要に応じて工程b)を行った後及び/又はその最中に、反応混合物は、0.01から30時間、特に好ましくは0.01から5時間の期間にわたり、例えば撹拌によって混合されて、特に、使用される量で用いられる修飾剤との完全な反応が実現される。
【0063】
好ましくは、本発明による有機充填剤は、共有結合が生じた後、その全質量に対して、有機修飾剤を0.1から30質量%、特に好ましくは0.5から25質量%、最も好ましくは1から15質量%、特に1.5から12質量%の範囲の割合で含有する。当然ながら、修飾剤の官能基の、有機充填剤の対応する基との反応は、アルコール等の分解生成物、したがって充填剤中の修飾剤の量に寄与しない生成物を形成する可能性があることを、ここでは考慮しなければならない。
【0064】
本発明により用いられる有機修飾剤自体は、ケイ素原子を介して充填剤FPMに結合せず、好ましくはいかなるケイ素原子も含有しない。好ましくは本発明による有機充填剤は、それ自体がSi原子を含まず、修飾剤を介してそこに導入される。
【0065】
共有結合に用いられる少なくとも1種の有機修飾剤は、有機基を含有し、好ましくはこの有機基からなり、基は、充填剤に結合する前に、(i)充填剤の少なくとも1個の官能基及び/又は(ii)フェノールOH基及び/又はフェノレート基に対してオルト位にある炭素原子に反応性のある少なくとも1個の官能基RFGであってそれを用いることにより充填剤の結合が行われるものを、有する。
【0066】
好ましくは、用いられる有機充填剤の少なくとも1個の反応性官能基RFGは、酸基、及びこれらの酸基の塩、無水物、ハロゲン化物、及びエステル、エポキシド基、チイラン基、アルコール基、チオール基、チオエステル基、アルデヒド基、イソシアネート基、及びこれらの混合物からなる群から選択され、特に好ましくは、酸基、及びこれらの酸基の塩、無水物、ハロゲン化物、及びエステル、エポキシド基、チイラン基、アルコール基、チオール基、チオエステル基、イソシアネート基、及びこれらの混合物からなる群から選択され、最も好ましくは、酸基、及びこれらの酸基の塩、無水物、ハロゲン化物、及びエステル、エポキシド基、チオール基、及びこれらの混合物からなる群から選択される。酸基の例は、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、及びリン酸基である。カルボン酸基及びリン酸基及びそれらの塩、無水物、ハロゲン化物、及びエステル、並びにエポキシド基が、特に好ましい。カルボン酸基及びエポキシド基並びにチオール基が最も好ましい。
【0067】
好ましくは、用いられる少なくとも1種の有機修飾剤は、少なくとも1個の反応性官能基RFGとは異なり、充填剤がゴム組成物中の少なくとも1種のゴムと一緒に用いられるときに少なくとも1種のゴム及び/又はこのゴムの少なくとも1個の官能基及び/又はゴム組成物中に存在する加硫化系に対して反応性を、特に加硫化中に示す、少なくとも1個のその他の官能基FGKを有し、少なくとも1個のその他の官能基FGKは、好ましくは非共役及び/又は共役炭素間二重結合、特にビニル基、及び硫黄含有基、及びこれらの混合物からなる群から好ましくは選択され、特に好ましくは、cis位での炭素間二重結合、必要に応じて遮断され得るメルカプト基、並びにジ-及び/又はポリスルフィド基、チオケトン基、メルカプトベンゾチアゾール基、及びジチオカルバメート基、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0068】
好ましくは、用いられる少なくとも1個の有機修飾剤は、少なくとも1個の反応性官能基RFGとは異なり、好ましくは必要に応じて存在するその他の官能基FGKとも異なる、少なくとも1個のその他の官能基FGBを有する。好ましくは、少なくとも1個のその他の官能基FGBは、有機修飾剤の結合後の充填剤の塩基性を増大させる官能基、特に好ましくはアミノ基、特に第一級及び第二級アミノ基からなる基から選択されるアミノ基である。更に、特にこれがアミノ基である場合、有機修飾剤の少なくとも1個のその他の官能基FGBを介した充填剤との更なる化学結合も生じることが可能である。
【0069】
好ましくは、有機修飾剤の有機基は、脂肪族、脂環式、複素脂肪族、複素環脂肪族、及び芳香族、複素芳香族基、並びに前述の有機基の少なくとも2個の混合形態からなる群から選択される。
【0070】
これらの有機基のそれぞれは、好ましくは、少なくとも1個の反応性官能基RFGに加えて、上記にて定義された少なくとも1個のその他の官能基FGB及び/又は上記にて定義された少なくとも1個のその他の官能基FGKを有していてもよい。
【0071】
好ましくは、少なくとも1種の有機修飾剤は、脂肪族エポキシド、芳香族エポキシド、脂肪族カルボン酸及び/又はカルボン酸無水物、芳香族及び複素芳香族カルボン酸及び/又はカルボン酸無水物、脂環式及び複素脂環式カルボン酸及び/又はカルボン酸無水物、脂肪族チオール、及びこれらの混合物からなる群から選択される。これらの化合物のそれぞれは、好ましくは、少なくとも1個の反応性官能基RFGに加え、上記にて定義された少なくとも1個のその他の官能基FGB及び/又は上記にて定義された少なくとも1個のその他の官能基FGKを有する。
【0072】
少なくとも一不飽和脂肪族エポキシド、少なくとも一不飽和脂肪族カルボン酸及び/又はカルボン酸無水物、及び少なくとも一不飽和脂環式及び複素脂環式カルボン酸及び/又はカルボン酸無水物が好ましい。これらの化合物のそれぞれは、好ましくは少なくとも1個の反応性官能基RFGに加え、上記にて定義された少なくとも1個のその他の官能基FGB及び/又は上記にて定義された少なくとも1個のその他の官能基FGKを有していてもよい。
【0073】
特定の好ましい有機修飾剤の例は、シスチン、特にL-シスチン、1,2-エポキシ-9-デセン、エチレンスルフィド、チオブチロラクトン、ヘキサンチオール、ポリマージフェニルメタンジイソシアネート、及びドデセン-1-イルコハク酸無水物、並びに3-メルカプトプロピオン酸、リノール酸、3-メルカプトピリジン-3-カルボン酸、及び5-ノルボルネン-2-カルボン酸である。
【0074】
特に好ましい有機修飾剤の例は、L-シスチン、1,2-エポキシ-9-デセン、チオブチロラクトン、ヘキサンチオール、及びドデセン-1-イルコハク酸無水物である。L-シスチン及び1,2-エポキシ-9-デセン並びにヘキサンチオールが特に好ましい。
【0075】
本発明によるゴム組成物
本発明の別の対象は、少なくとも1種のゴムを含有する少なくとも1種のゴム成分と充填剤成分とを含む、ゴム組成物であり、
この充填剤成分は、本発明の第1の対象に関連して記述される本発明による少なくとも1種の有機充填剤を含有し、
及び/又は、好ましくは、又は、
充填剤成分は、(i)フェノールOH基、フェノレート基、脂肪族OH基、カルボン酸基、カルボキシレート基、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1個の官能基を有する、14C含量が0.20から0.45Bq/g炭素の範囲の少なくとも1種の有機充填剤FPMを含有し、有機充填剤FPMは、10から<200m2/gの範囲のBET表面積を好ましくは有し、(ii)(i)充填剤FPMの少なくとも1個の官能基と反応性のある及び/又は(ii)フェノールOH基及び/又はフェノレート基に対してオルト位にある充填剤FPMの炭素原子と反応性のある、少なくとも1個の官能基RFGを有する有機基を含有し、それを用いて少なくとも1種の有機充填剤FPMとの共有結合を行うことができ、好ましくは行われる、少なくとも1種の有機修飾剤を含み、有機修飾剤の少なくとも1個の官能基RFGは、ケイ素原子を含有せず、好ましくは酸基、及びこれらの酸基の塩、無水物、ハロゲン化物、及びエステル、エポキシド基、チイラン基、アルコール基、チオール基、チオエステル基、アルデヒド基、イソシアネート基、及びこれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは、有機修飾剤自体はいかなるケイ素原子も含有しない。
【0076】
好ましくは、充填剤成分は、本発明の第1の対象に関連して記述される本発明による少なくとも1種の有機充填剤を含有する。
【0077】
好ましくは、ゴム組成物は、本発明による少なくとも1種の有機充填剤を、10から150、特に好ましくは15から130、より特に好ましくは20から120、特に40から100phrに及ぶ量で含み、及び/又は(i)で既に定義された少なくとも1種の有機充填剤FPMを、10から150、特に好ましくは15から130、より特に好ましくは20から120、特に40から100phrの範囲に在る量で、及び(ii)で既に定義された少なくとも1種の有機修飾剤を、充填剤FPM全重量に対してそれぞれ0.1から30質量%、特に好ましくは0.5から25質量%、より特に好ましくは1.0から15質量%、特に1.5から12質量%の範囲に在る量で含有する。既に説明したように、形成された任意の除外生成物は、充填剤FPMの全質量に対する修飾剤の量に寄与しない。
【0078】
ゴム組成物のゴム成分
本発明によるゴム組成物は、少なくとも1種のゴムを含む少なくとも1つのゴム成分を含む。
【0079】
任意のタイプのゴムは、本発明によるゴムコンパウンドの調製に適している。天然ゴム(NR)及び合成ゴムは、当業者に馴染みがある。好ましくは、少なくとも1種のゴムは、天然ゴム(NR)、ハロブチルゴムからなる群から選択され、次に好ましくはクロロブチルゴム(CIIR;クロロ-イソブテン-イソプレンゴム)及びブロモブチルゴム(BUR;ブロモ-イソブテン-イソプレンゴム)、ブチルゴム又はイソブチレン-イソプレンゴム(IIR;同様にイソブテン-イソプレン-ゴム)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)からなる群から選択され、次に好ましくはSSBR(溶液重合されたSBR)及び/又はESBR(乳化重合されたSBR)、ポリブタジエン(BR、ブタジエンゴム)、アクリロニトリル-ブタジエン-ゴム(NBR、ニトリルゴム)及び/又はHNBR(水素化NBR)、クロロプレン(CR)、ポリイソプレン(IR)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、及びこれらの混合物から選択される。
【0080】
特に好ましくは、少なくとも1種のゴムは、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、やはり好ましくはSSBR、ポリブタジエン(BR、ブタジエンゴム)、EPDM、NR、及びアクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR、ニトリルゴム)、及びこれらの混合物からなる群から選択される。スチレン-ブタジエンゴム(SBR)が特に好ましく、同様に好ましくはSSBR及びポリブタジエン(BR、ブタジエンゴム)、及びこれらの混合物である。
【0081】
SBR及びBRの混合物の場合、SBRの割合は、好ましくはBRの割合よりも高い。
【0082】
SBRゴムの総量は、好ましくは60から100phr、好ましくは65から100phr、特に好ましくは70から100phrである。BRゴムの総量は、好ましくは0から40phr、好ましくは0から35phr、特に好ましくは0から30phrである。
【0083】
本明細書で使用されるphr(ゴムの100質量部当たりの部)仕様は、コンパウンド配合に関してゴム工業で一般に使用される量の仕様である。個々の構成要素の質量部の投与量は、常に、コンパウンド中に存在する全てのゴムの全質量の100質量部に対する。
【0084】
ゴム組成物の充填剤成分
本発明によるゴム組成物は、少なくとも1種の充填剤成分を含み、
充填剤成分は、本発明による少なくとも1種の有機充填剤を含有し、
及び/又は
充填剤成分は、(i)フェノールOH基、フェノレート基、脂肪族OH基、カルボン酸基、カルボキシレート基、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1個の官能基を有する、14C含量が0.20から0.45Bq/g炭素の範囲の少なくとも1種の有機充填剤FPMを含有し、かつ(ii)(i)充填剤FPMの少なくとも1個の官能基と反応性のある及び/又は(ii)フェノールOH基及び/又はフェノレート基に対してオルト位にある充填剤FPMの炭素原子と反応性のある、少なくとも1個の官能基RFGを有する有機基を含有し、それを用いて少なくとも1種の有機充填剤FPMとの共有結合を行うことができる、少なくとも1種の有機修飾剤を含み、有機修飾剤の少なくとも1個の官能基RFGは、いかなるケイ素原子も含有せず、好ましくは、有機修飾剤自体はいかなるケイ素原子も含有しない。
【0085】
少なくとも1種の有機充填剤FPMは、本発明による有機充填剤の生成に関連して使用される出発材料に、即ち少なくとも1種の有機修飾剤を用いてまだ修飾されていない本発明による有機充填剤の前駆体に該当する。したがって後者の代替例の場合、この修飾はin situで実施されるだけであり、即ち本発明による充填剤の場合のように別の工程で先行して実施されない。
【0086】
しかしながら、好ましくは本発明によるゴム組成物の充填剤成分は、本発明による少なくとも1種の有機充填剤を含有し、即ち、少なくとも1種の有機修飾剤が別の工程で先行して既に結合されている、充填剤を含有する。
【0087】
これら前述の充填剤とは別に、ゴム組成物は、これらの充填剤とは異なるその他の充填剤を含有し得る。
【0088】
本発明による有機充填剤が、一般的な工業用カーボンブラックの部分的置換えとしてのみ働く場合、本発明によるゴム組成物は、工業用カーボンブラック、特に例えばASTMコードN660の下で汎用目的のカーボンブラックに分類されるファーネスカーボンブラックを含有していてもよい。
【0089】
更に又は代わりに、本発明によるゴム組成物は特に、無機充填剤を、例えば加硫化挙動に影響を及ぼす可能性を有する異なる粒度、粒子表面、及び化学的性質を有するものを含有することができる。更なる充填剤が含まれる場合、これらは好ましくは、本発明によるゴム組成物で用いられる、本発明による有機充填剤に可能な限り類似した性質、特にそのpH値に関して類似した性質を有するべきである。
【0090】
その他の充填剤が用いられる場合、好ましくはクレーミネラル等のフィロシリケート、例えばタルクであり;炭酸カルシウム等の炭酸塩;例えばケイ酸カルシウム、マグネシウム、及びアルミニウム等のケイ酸塩;並びに酸化物、例えば酸化マグネシウム、及びシリカ又はケイ酸である。
【0091】
特に本発明による有機充填剤が、一般的なケイ酸又はシリカの部分的置換えとしてのみ働く場合、本発明によるゴム組成物は、シリカ又はケイ酸等のそのような無機充填剤を含有していてもよい。
【0092】
しかしながら本発明の文脈で、酸化亜鉛は、本明細書の酸化亜鉛が加硫化剤又は加硫化を促進させる添加剤の機能を有するので、無機充填剤の下に包含されない。しかしながら追加の充填剤は、例えばより高い量の酸化マグネシウムは隣接するタイヤ層への接着に悪影響を及ぼす可能性があり、シリカは、一部の加硫化系で使用されるチアゾール等の有機分子にその表面で結合する傾向があり、したがってその動作を阻害するので、慎重に選択されなければならない。
【0093】
無機充填剤、それらの中で好ましくはシリカ及びその他の充填剤であって、それらの表面にSi-OH基を保持するものは、表面処理されていてもよい(表面修飾)。特に、例えばアルキルアルコキシシラン又はアミノアルキルアルコキシシラン又はメルカプトアルキルアルコキシシラン等の有機シランによるシラン化は、有利となり得る。アルコキシシラン基は例えば、シリケート若しくはシリカの表面に又はその他の適切な基に、加水分解縮合によって結合することができ、一方、アミノ基及びチオール基は、例えば、ある特定のゴムのイソプレン単位と反応することができる。これは本発明の加硫化ゴム組成物の機械的強化を引き起こすことができる。
【0094】
本発明による有機充填剤と異なる充填剤は、個々に又は互いに組み合わせて使用することができる。
【0095】
その他の充填剤が使用される場合、それらの割合は、好ましくは40phr未満、特に好ましくは20から40phr、特に好ましくは25から35phrである。
【0096】
ゴム組成物のその他の構成要素
本発明によるゴム組成物は、更に必要に応じた構成要素、例えば軟化剤及び/又は劣化防止剤、樹脂、特に接着強化樹脂、及び更に既に加硫化剤、及び/又は加硫化促進添加剤、例えば酸化亜鉛、及び/又はステアリン酸等の脂肪酸を含有していてもよい。
【0097】
軟化剤の使用により、特に加工可能性等の非加硫化ゴム組成物の性質であるが、特に低温でのその柔軟性等、の加硫化ゴム組成物の性質にも影響を及ぼすことが可能である。本発明の文脈で特に適切な軟化剤は、パラフィン油(実質的に飽和した鎖形状の炭化水素)及びナフテン油(実質的に飽和した環形状の炭化水素)の群からの鉱油である。芳香族炭化水素油を用いることも可能であり、更に好ましい。しかしながら、例えばカーカス等、タイヤのその他のゴム含有成分に対する、ゴム組成物の接着に関し、パラフィン及び/又はナフテン油の混合物は、軟化剤としても有利である可能性がある。その他の可能性ある軟化剤は例えば、例えばアジピン酸又はセバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸のエステル、パラフィンワックス、及びポリエチレンワックスである。軟化剤の中で、パラフィン油及びナフテン油は、本発明の文脈で特に適しており;しかしながら芳香族油、特に芳香族鉱油が最も好ましい。
【0098】
好ましくは、軟化剤、及びその中で特に好ましいパラフィン及び/又はナフテン油、特に芳香族プロセス油は、0から100phr、好ましくは10から70phr、特に好ましくは20から60phr、特に20から50phrの量で用いられる。
【0099】
劣化防止剤の例は、キノリン、例えばTMQ(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン)、及びジアミン、例えば6-PPD(N-(1,3-ジメチルブチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン)である。
【0100】
いわゆる接着強化樹脂は、本発明の加硫化ゴムコンパウンドを、その他の隣接するタイヤ構成要素に接着するのを改善するのに使用することができる。特に適切な樹脂は、フェノールをベースにしたものであり、好ましくはフェノール樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、及びフェノール-アセチレン樹脂からなる群からのものである。フェノール系樹脂に加え、ExxonMobil社製のEscorezTM 1120 RM等の脂肪族炭化水素樹脂、並びに芳香族炭化水素樹脂が使用されてもよい。脂肪族炭化水素樹脂は、特に、タイヤのその他のゴム構成要素に対する接着を改善する。それらは一般に、フェノールをベースにした樹脂よりも低い接着性を有し、単独で又はフェノールをベースにした樹脂との混合物のいずれかで使用することができる。
【0101】
接着強化樹脂が完全に使用される場合、好ましくはフェノールをベースにした樹脂、芳香族炭化水素樹脂、及び脂肪族炭化水素樹脂からなる群から選択される。好ましくは、それらの割合は0から15phr又は1から15phr、特に好ましくは2から10phr、より特に好ましくは3から8phrである。
【0102】
本発明によるゴム組成物は、加硫化を促進させるがそれ自体で開始できない添加剤を含有していてもよい。そのような添加剤には、例えば加硫化加速剤、例えば12から24個、好ましくは14から20個、特に好ましくは16から18個の炭素原子を有する飽和脂肪酸、例えばステアリン酸、及び前述の脂肪酸の亜鉛塩が含まれる。チアゾールは、これらの添加剤に属していてもよい。しかしながら、加硫化促進添加剤のみを、以下に記述される加硫化系に使用することも可能である。
【0103】
加硫化促進添加剤、特に上述の脂肪酸、及び/又はそれらの亜鉛塩、好ましくはステアリン酸及び/又はステアリン酸亜鉛が、本発明によるゴム組成物で使用される場合、それらの割合は0から10phr、特に好ましくは1から8phr、特に好ましくは2から6phrである。
【0104】
更に、本発明によるゴム組成物は、好ましい酸化亜鉛等、ある特定の加硫化剤を既に含有していてもよい。しかしながら、そのような加硫化剤のみを、以下に記述される加硫化系で使用することも可能である。
【0105】
酸化亜鉛等の加硫化剤が、本発明によるゴム組成物に使用される場合、それらの割合は、好ましくは0から10phr、特に好ましくは1から8phr、特に好ましくは2から6phrである。
【0106】
本発明による加硫化可能なゴム組成物
本発明の別の対象は、成分(A)として本発明によるゴム組成物を、及び成分(B)として加硫化系を含む、加硫化可能なゴム組成物であり、好ましくは加硫化系は、少なくとも酸化亜鉛及び/又は少なくとも硫黄及び/又は少なくとも1種の過酸化物、例えば特に少なくとも1種の有機過酸化物を含み、特に好ましくは少なくとも硫黄を含む。
【0107】
本発明による修飾有機充填剤に関連して既に記述された全ての好ましい実施形態は、本発明による加硫化可能なゴム組成物に関する好ましい実施形態でもある。
【0108】
加硫化系は、本明細書で本発明のゴム組成物の中にカウントされないが、それらの架橋を調整する追加の系として処理される。本発明によるゴム組成物に加硫化系を添加することにより、やはり本発明による加硫化可能ゴム組成物が得られる。
【0109】
本発明により使用され且つ少なくとも1種のゴムを含有する、本発明による加硫化可能ゴム組成物のゴム成分は、広く様々な種々の加硫化系の使用を可能にする。
【0110】
本発明のゴム組成物の加硫化は、好ましくは少なくとも酸化亜鉛及び/又は少なくとも硫黄及び/又は少なくとも1種の過酸化物、例えば少なくとも1種の有機過酸化物を特に使用することによって生じる。酸化亜鉛が使用される場合、ゴム成分(A)に又は成分(B)に添加することができる。好ましくは、酸化亜鉛は、成分(A)に添加される。硫黄が使用される場合、好ましくは成分(B)に添加される。
【0111】
好ましくは、少なくとも酸化亜鉛及び/又は少なくとも硫黄は、加硫化のために種々の有機化合物と組み合わせて使用される。種々の添加剤を用いて、加硫化挙動並びにそのように得られた加硫化ゴムの性質に、影響を及ぼすことができる。
【0112】
少なくとも酸化亜鉛をベースにする加硫化の第1の変形例では、好ましくは、12から24個、好ましくは14から20個、特に好ましくは16から18個の炭素原子を有する少量の飽和脂肪酸、例えばステアリン酸及び/又はステアリン酸亜鉛が、加硫化加速剤として酸化亜鉛に添加される。これは加硫化速度を増大させる。しかしながら最も頻繁には、加硫化の最終的な範囲は、言及される脂肪酸の使用により低減される。
【0113】
少なくとも酸化亜鉛をベースにした加硫化の第2の変形例では、いわゆるチウラム、例えば一硫化チウラム及び/又は二硫化チウラム、及び/又は二硫化テトラベンジルチウラム(TbzTD)及び/又はジチオカルバメート及び/又はスルフェンアミドが、特に安定な網状構造を形成することによりスコーチ時間を短縮するために且つ加硫化効率を改善するために、硫黄が存在しない状態で或いは硫黄の存在下で酸化亜鉛に添加される。チアゾール及びスルフェンアミドは、好ましくは、2-メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、二硫化メルカプトベンゾチアジル(MBTS)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、2-モルホリノ-チオベンゾチアゾール(MBS)、及びN-tert-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(TBBS)からなる群から選択される。
【0114】
少なくとも酸化亜鉛をベースにする加硫化剤の第3の変形例では、スコーチ時間に適応するように、特にそれを加速するように、二硫化アルキルフェノールが酸化亜鉛に添加される。別の、少なくとも酸化亜鉛をベースにする加硫化剤の第4の変形例では、酸化亜鉛とポリメチロールフェノール樹脂及びそれらのハロゲン化誘導体の組合せを用い、好ましくは硫黄も硫黄含有化合物も使用されない。
【0115】
他の、最も好ましい、少なくとも酸化亜鉛をベースにする加硫化剤の第5の変形例では、加硫化剤は、酸化亜鉛とチアゾール及び/又はチウラム及び/又はスルフェンアミドの組合せ、好ましくは硫黄を用いて実施される。そのような系への硫黄の添加は、加硫化速度と加硫化の範囲との両方を増大させ、加硫化プロセス中のゴム組成物の加工性に寄与する。この加硫化系の使用は、好ましくは、車両用タイヤのその他の成分に対して、特にカーカスのゴム組成物に対して、加硫化状態であっても良好な接着性を示す、熱及び疲労耐性加硫化材料を提供する。特に有利な加硫化システムは、酸化亜鉛、二硫化テトラベンジルチウラム(TbzTD)等のチウラム、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(TBBS)等のスルフェンアミド、及び硫黄を含む。第1の変形例と第5の変形例との組合せが特に好ましく、即ち、酸化亜鉛、二硫化テトラベンジルチウラムチウラム(TbzTD)等のチウラム、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(TBBS)等のスルフェンアミド、硫黄、並びにステアリン酸及び/又は必要に応じてステアリン酸亜鉛を含む加硫化系の使用が好ましい。
【0116】
それほど好ましくない加硫化系は、純粋な硫黄の加硫化又は過酸化物の加硫化をベースにし、後者は、特にブチルゴム又はその他のゴムが使用されるとき、分子の切断に起因して、分子量の望ましくない低減をもたらす可能性がある。
【0117】
本発明の文脈において、本発明によるゴム組成物の加硫化は、HTCリグニン等、本発明による有機充填剤の存在で実施される。
【0118】
それ自体で加硫化を開始できない加硫化系の成分は、「ゴム組成物のその他の構成成分」として本発明のゴム組成物に含有されてもよく、即ち本発明によるゴム組成物の既に部分であってもよく、したがって必ずしも加硫化系に存在しなくてもよい。したがって、既にこれまで述べたように、特にステアリン酸及び/又は必要に応じてステアリン酸亜鉛は、本発明によるゴム組成物中に既に存在することが可能であり、完全な加硫化系は、例えば少なくとも酸化亜鉛及び少なくとも硫黄を混合/添加することによってin situで形成される。
【0119】
本発明によるパーツのキット
本発明によるゴム組成物間の接続と、本発明による加硫化可能なゴム組成物の調製のためにそれらの加硫化に選択される架橋系(加硫化系)とに起因して、本発明は、パーツ(A)として本発明によるゴム組成物と、パーツ(B)として加硫化系、好ましくは少なくとも酸化亜鉛及び/又は少なくとも硫黄を含む加硫化系とを、空間的に分離した形で含む、パーツのキットにも関する。パーツのキットにおいて、本発明によるゴム組成物及び加硫化系は、互いに空間的に分離され、したがって保存することができる。パーツのキットは、加硫化可能なゴム組成物を調製する働きをする。例えば、パーツのキットの1パーツを構成する本発明によるゴム組成物は、加硫化可能なゴムコンパウンドを調製するために以下に記述されるプロセスの段階1でパーツ(A)として使用することができ、パーツのキットの第2のパーツ、即ち加硫化系は、前記プロセスの段階2でパーツ(B)として使用することができる。
【0120】
本発明によるゴム組成物の構成成分と、加硫化可能なゴム組成物を直接加硫化できるように均質に混合された加硫化系に関連あるものとの両方を既に含有する加硫化可能なゴム組成物とは対照的に、本発明によるゴム組成物及び加硫化系は、本発明によるパーツのキット内で互いに空間的に分離されている。
【0121】
本発明による加硫化可能なゴム組成物に関連して上記にてこれまで述べた全ての系は、加硫化系として使用することができる。
【0122】
本発明による有機充填剤に関連してこれまで記述された全ての好ましい実施形態、及び本発明による加硫化可能なゴム組成物は、本発明によるパーツのキットに関しても好ましい実施形態である。
【0123】
好ましくは、本発明によるパーツのキットは、
パーツ(A)として本発明によるゴム組成物と、
パーツ(B)として少なくとも酸化亜鉛及び/又は少なくとも硫黄を含む、加硫化系と、
を含み、少なくとも酸化亜鉛は、代わりにパーツ(A)内に存在することができるものである。
【0124】
特に好ましくは、本発明によるパーツのキットは、
パーツ(A)として本発明によるゴム組成物と、
パーツ(B)として、酸化亜鉛、硫黄、及び少なくとも1種のチウラムを含む加硫化系と、
を含み、少なくとも酸化亜鉛は、代わりにパーツ(A)内に存在することができる。
【0125】
更になお特に好ましくは、本発明によるパーツのキットは、
パーツ(A)として本発明によるゴム組成物と、
パーツ(B)として、酸化亜鉛、硫黄、少なくとも1種のチウラム、及び少なくとも1種の飽和脂肪酸、例えばステアリン酸及び/又は必要に応じてステアリン酸亜鉛を含む加硫化系と、
を含み、少なくとも酸化亜鉛及び/又はステアリン酸及び/又はステアリン酸亜鉛は代わりにパーツ(A)内に存在することができる。
【0126】
特に、本発明によるパーツのキットは、
パーツ(A)として本発明によるゴム組成物と、
パーツ(B)として、酸化亜鉛、硫黄、少なくとも1種のチウラム、少なくとも1種のスルフェンアミド、及び少なくとも1種の飽和脂肪酸、例えばステアリン酸及び/又は必要に応じてステアリン酸亜鉛を含む、加硫化系と、
を含み、少なくとも酸化亜鉛及び/又はステアリン酸及び/又はステアリン酸亜鉛は、代わりにパーツ(A)内に存在することができる。
【0127】
本発明によるゴム組成物を生成するための及び本発明による加硫化可能なゴム組成物を生成するための方法
本発明の別の対象は、本発明によるゴム組成物を生成するための方法、及び本発明による加硫化可能なゴム組成物を生成するための方法である。
【0128】
本発明による修飾済み有機充填剤、本発明によるゴム組成物、本発明による加硫化可能なゴム組成物、及び本発明によるパーツのキットに関連してこれまで記述された全ての好ましい実施形態は、本発明による方法に関しても好ましい実施形態である。
【0129】
本発明による加硫化可能なゴム組成物の生成は、好ましくは2段階で、即ち段階1及び2で実施され、本発明によるゴム組成物は、この2段階プロセスの第1の段階を経た後に、好ましくは得ることが可能である。
【0130】
第1の段階(段階1)では、本発明によるゴム組成物は、本発明によるゴム組成物の調製に用いられる全ての構成成分を互いに混合することにより、ベース混合物(マスターバッチ)として最初に調製される。第2の段階(段階2)では、加硫化システムの構成成分は、本発明によるゴム組成物と混合される。
【0131】
段階1
好ましくは、本発明によるゴム組成物のゴム成分に含有される少なくとも1種のゴム、並びにそれとは異なる、必要に応じて用いられ得る樹脂、好ましくは接着を改善する樹脂が、提供される。しかしながら、後者はその他の添加剤と一緒に添加することもできる。好ましくは、ゴムは少なくとも室温(23℃)を有し、又は好ましくは最高50℃、好ましくは最高45℃、特に好ましくは最高40℃の温度に予熱した後に用いられる。特に好ましくは、ゴムは、その他の構成成分が添加される前の短時間、事前に素練りされる。酸化マグネシウム等の阻害剤は、後続の加硫化制御に使用される場合、好ましくはこの時点でも添加される。
【0132】
次いで本発明による少なくとも1種の有機充填剤、及び必要に応じて他の充填剤は、本発明によるゴム組成物中の加硫化系の構成成分として使用されるので、したがって本明細書では充填剤としてみなされないので、好ましくは酸化亜鉛を除いて添加される。本発明による少なくとも1種の有機充填剤及び必要に応じてその他の充填剤の添加は、好ましくは少しずつ増やして実施される。
【0133】
有利には、しかし必須ではないが、軟化剤及びその他の構成成分、例えばステアリン酸及び/又はステアリン酸亜鉛及び/又は酸化亜鉛は、使用される場合、本発明による少なくとも1種の有機充填剤の、又はその他の充填剤の、添加に続いてのみ添加される。これは本発明による少なくとも1種の有機充填剤、及び存在する場合にはその他の充填剤の、組込みを容易にする。しかしながら、本発明による有機充填剤の一部、又は存在する場合にはその他の充填剤を、必要に応じて使用される軟化剤及び任意のその他の構成成分と一緒に組み込むことが、有利であり得る。
【0134】
第1の段階でゴム組成物の生成中に得られる最高温度(「ダンプ温度」)は、170℃を超えるべきではなく、それはこれらの温度よりも上では、本発明による反応性ゴム及び/又は有機充填剤の部分的な分解の可能性があるからである。しかしながら、特に用いられるゴムに応じて、>170℃の温度、例えば最高200℃の温度も可能になり得る。好ましくは、第1の段階のゴム組成物の生成における最高温度は、80℃から<200℃の間、特に好ましくは90℃から190℃の間、最も好ましくは95℃から170℃の間である。
【0135】
本発明によるゴム組成物の構成成分の混合は、通常、接線方向又は噛合せ(即ち、交差する)ローターを備えた内部混合器を用いて実施される。後者は通常、より良好な温度制御を可能にする。接線ローターを備えた混合器は、接線ミキサーとも呼ばれる。しかしながら混合は、例えば二重ロール混合器を使用して実施することもできる。
【0136】
ゴム組成物の調製後、第2の段階を実施する前に冷却することが好ましい。このタイプのプロセスは、熟成とも呼ばれる。典型的な熟成期間は6から24時間であり、好ましくは12から24時間である。
【0137】
段階2
第2の段階では、加硫化系の構成成分は、第1の段階のゴム組成物に組み込まれ、それによって、本発明による加硫化可能なゴム組成物が得られる。
【0138】
少なくとも酸化亜鉛及び少なくとも硫黄をベースにした加硫化系が、加硫化系として使用される場合、少なくとも硫黄及びその他の必要に応じて構成成分、例えば特に少なくとも1種のチウラム及び/又は少なくとも1種のスルフェンアミドは、好ましくは段階2で添加される。酸化亜鉛を、更に必要に応じて少なくとも1種の飽和脂肪酸を、例えばステアリン酸も工程2で添加することが可能である。しかしながら、これらの成分を、工程1で既に本発明によるゴム組成物と一体化することが好ましい。
【0139】
第2の段階でゴム組成物に加硫化系を混合する調製中に得られる最高温度(「ダンプ温度」)は、好ましくは130℃を超えるべきではなく、特に好ましくは125℃を超えるべきではない。好ましい温度範囲は70℃から125℃の間であり、特に好ましくは80℃から120℃の間である。105℃から120℃の架橋系に関する最高温度よりも上の温度で、早期加硫化が生じ得る。
【0140】
段階2で加硫化系を混合した後、組成物は好ましくは冷却される。
【0141】
上述の2段階プロセスでは、本発明によるゴム組成物はこのように第1の段階で最初に得られ、加硫化可能なゴム組成物が形成されるように第2の段階で補足される。
【0142】
本発明による加硫化可能なゴム組成物を更に加工するための方法
加硫化の前に、このように調製された加硫化可能なゴム組成物は、好ましくは最終物品に向けてカスタマイズされた又は調整された変形プロセスを経る。ゴム組成物は、加硫化プロセスに必要とされるよう、好ましくは押出し又はカレンダー掛けによって、適切な形状に形成される。プロセスでは、加硫化は圧力及び温度を用いる加硫化金型で実施されてもよく、又は加硫化は、空気又は液体材料が伝熱をもたらす、温度制御されたチャネルで圧力なしで実施される。
【0143】
本発明による加硫化ゴム組成物
本発明の別の対象は、本発明による加硫化可能なゴム組成物を加硫化によって、又は本発明によるパーツのキットの2つのパーツ(A)及び(B)を組み合わせる及び混合することによって得ることが可能な加硫化可能なゴム組成物の加硫化によって得ることができる、加硫化されたゴム組成物である。
【0144】
本発明による修飾済み有機充填剤、本発明によるゴム組成物、本発明による加硫化可能なゴム組成物、及び本発明によるパーツのキットに関連して上記にて示された全ての好ましい実施形態、並びに本発明による方法は、本発明による加硫化ゴム組成物に関しても好ましい実施形態である。
【0145】
典型的には、加硫化は、圧力下及び/又は加熱下で実施される。適切な加硫化温度は、好ましくは140℃から200℃であり、特に好ましくは150℃から180℃である。必要に応じて、加硫化は、50から175barの範囲の圧力で実施される。しかしながら、例えばプロファイルの場合は0.1から1barの間の圧力で加硫化を実施することも可能である。
【0146】
本発明による加硫化可能なゴム組成物から得られる加硫化ゴム組成物は、好ましくは、50超から70未満の範囲の、特に好ましくは53から65の、より特に好ましくは55から62の範囲のショアA硬度、及び/又は60%超から75%未満の範囲の、特に好ましくは61%超から73%未満の、より特に好ましくは62%超から72%未満の、70℃での反発弾性を有する。ショアA硬度及び反発弾性を決定するための方法を、方法の説明において以下に引用する。
【0147】
本発明による使用
本発明の別の対象は、空気圧タイヤ及びソリッドタイヤ等のタイヤ、特に空気圧タイヤの生成に用いられる、好ましくはそのトレッド、サイドウォール、及び/又はインナーライナーにそれぞれ用いられる、及び/又はテクニカルラバー物品、好ましくはプロファイル、シール、ダンパー、及び/又はホースの生成に用いられる、ゴム組成物及び加硫化可能ゴム組成物を生成するための、本発明による少なくとも1種の有機充填剤の使用である。
【0148】
本発明による修飾済み有機充填剤、本発明によるゴム組成物、本発明による加硫化可能なゴム組成物、本発明によるパーツのキット、本発明による方法、及び本発明による加硫化ゴム組成物に関連した上記にて述べた全ての好ましい実施形態は、本発明による上述の使用に関しても好ましい実施形態である。
【0149】
「テクニカルラバー物品」という用語(メカニカルラバーグッズ、MRGでもある)は、当業者に公知である。テクニカルラバー物品に関する例は、プロファイル、シール、ダンパー、及び/又はホースである。
【0150】
本発明による加硫化可能なゴム組成物で作製されたトレッドを好ましくは含む空気圧タイヤを生成するための方法
本発明の別の対象は、本発明による加硫化可能なゴム組成物で作製されたトレッドを好ましくは含む、空気圧タイヤを生成するための方法である。
【0151】
トレッドバンドは、典型的には加圧及び/又は加熱下で、タイヤカーカス及び/又はその他のタイヤ構成要素と一緒に加硫化される。
【0152】
適切な加硫化温度は、好ましくは140℃から200℃、特に好ましくは150℃から180℃である。
【0153】
方法は、例えばプレス機を閉めることにより、グリーンタイヤが閉じた金型内で成型されるように実施することができる。この目的のため、インナーベロー(ヒーティングベロー)を、小さい圧力(<0.2bar)で加圧して、ベローがグリーンタイヤ内に適合させるようにすることができる。その後、プレス及びしたがって金型を完全に閉じる。ベロー内の圧力を増大させる(成型圧力まで、通常は約1.8bar)。それによってプロファイルがトレッドに、並びにサイドウォールラベルに刻まれる。次の作業工程では、プレス機をロックし、クランプ力を加える。クランプ力は、プレス機のタイプ及びタイヤのサイズに応じて様々であり、油圧シリンダーを使用して2,500kNまで到達させることができる。締付け力が加えられた後、実際の加硫化プロセスを開始する。プロセスにおいて、金型は水蒸気で外側から連続的に加熱される。この最中に、温度を通常は150から180℃の間に設定する。内側媒体の場合、タイヤのタイプに応じて非常に異なる変形例がある。例えば水蒸気又は温水を、加熱ベロー内で使用する。内圧は、車又はトラックのタイヤ等、タイヤのタイプに応じて様々にすることができ且つ異ならせることができる。
【0154】
決定方法
1. 硬度の決定
加硫化ゴム組成物のショアA硬度の決定は、23℃でDIN 53505に従い、Zwick 3150硬度テスターで行った。3つの測定は、各試料に対して行った。得られた結果は、これら3つの測定の平均値を表す。加硫化と試験との間に、試料を室温で少なくとも16時間保存した。
【0155】
2. 反発弾性の決定
加硫化ゴム組成物の反発弾性の決定を、Zwick/Roell 5109試験デバイスで、DIN 53512に従い実施した。反発弾性の測定は、23℃及び70℃で実施した。加硫化と試験の間に、試料を室温で少なくとも16時間保存した。
【0156】
3. 引張強さの決定
加硫化ゴム組成物の引張強さの決定を、ASTM D412に従い実施した。これらの試験に関し、加硫化試験試料にスタンプ加工して、ダンベル形状の試料にした。引張強さ試験は、クロスヘッド速度500mm/分で、Zwick/Roell Z1.0万能引張試験デバイス(ドイツ)で実施した。5つの試料のそれぞれを、引張データの評価に使用した。これら5つの試料から得られた引張特性の平均値を報告する。加硫化と試験との間で、試料を少なくとも16時間、室温で保存した。
【0157】
4. 架橋密度の決定
ゴム組成物の架橋密度を、膨潤試験により決定した。各膨潤試験の前に、加硫化試料を、アセトンによりソックスレー装置で48時間抽出して、未反応の加速剤、硬化剤、又は加硫化副生成物等の低分子量極性物質を除去した。次いで抽出した試料を、40℃で24時間、真空キャビネット内で乾燥した。アセトン抽出試料を、室温で1週間、トルエンに浸漬した。浸漬時間の終わりに、試料を取り出し、濾紙で拭い、計量ボトルに移して、膨潤した加硫化物の重量を得た。次いで試料を真空キャビネットで、105℃で24時間乾燥して、乾燥重量を得た。単位体積当たりの架橋密度(Ve)は、フローリー・レーナーの方程式(a)及び(b)に従い計算し:
【0158】
【数1】
【0159】
式中、平衡時の膨潤ゲル中のポリマーの体積分率(Vr)は、
【0160】
【数2】
【0161】
として計算することができ、
式中、χは、フローリー・ハギンスのポリマー-溶媒相互作用パラメーター(χ=0.37、SSBR/トルエン系に関して&BR/トルエンに関して、χ=0.34)であり; Vsは、溶媒のモル体積であり; mrは、ゴムの網状構造の質量であり; msは、平衡条件での膨潤試料中の溶媒の質量であり; ρs及びρrは、それぞれ溶媒及びゴムの密度である。
【0162】
5. ペイン効果の決定
充填剤-充填剤間の相互作用を、まだ加硫化されていないゴム組成物に対するペイン効果の測定により決定した。測定は、RPA Eliteゴム加工分析器(TA-Instruments、USA)を100℃で使用して行った。貯蔵弾性率(G')の値を、周波数1Hzで、0.56~100%の歪み掃引範囲での剪断変形下で記録した。
【0163】
6. 加硫化特性及び加硫化挙動の試験
加硫化特性又は加硫化挙動を、この目的に適した機器(レオメーター)(Eliteゴム加工分析器(TA Instruments、USA))を用いて、それぞれの場合で決定し、この加硫化は、ISO 3417:2008に従い、160℃で30分間にわたり、周波数1.67Hz及び伸び率(歪み)6.98%で実施した。最小及び最大トルク(ML、MH)を、測定された曲線から決定した。このことから、差Δ(MH-ML)を計算することができる。更に、測定曲線のそれぞれに関し、最小トルクMLは最大トルクMHの0%と定められ、最大トルクMHは100%に正規化した。その後、最小トルクMLの時間から開始するトルクが、最大トルクMHの2%、10%、50%、及び90%にそれぞれ到達する期間を決定した。期間を、T2、T10、T50、及びT90と示した。
【0164】
7. 有機充填剤のBET及びSTSA表面積の決定
調査されることになる充填財の比表面積を、工業用カーボンブラックに提供されるASTM D 6556 (2019-01-01)規格に従い窒素吸着によって決定した。この規格によれば、BET表面積(ブルナウアー・エメット・テラーによる比全表面積)及び外部表面積(STSA表面積;統計的厚さ表面積)は、下記の通り決定した。
【0165】
分析されることになる試料を、105℃で、乾燥質量含量≧97.5質量%まで乾燥し、その後、測定した。更に測定セルを乾燥炉内で、105℃で数時間乾燥し、その後、試料を計量した。次いで試料を、漏斗を使用して測定セル内に満たした。充填中の上方測定セルシャフトの汚染の場合、適切なブラシ又はパイプクリーナーを使用して清浄化した。強力に飛散する(静電的に)材料の場合、ガラスウールを試料中に更に計量した。ガラスウールは、ベークアウトプロセス中に飛散し得る及びユニットを汚染し得る、任意の材料を保持するのに使用した。
【0166】
分析されることになる試料を150℃で2時間ベークアウトし、Al2O3標準を350℃で1時間ベークアウトした。以下のN2投与量を決定に使用し、これは圧力範囲に依存するものである:
p/p0=0~0.01:N2投与量:5ml/g
p/p0=0.01~0.5:N2投与量:4ml/g。
【0167】
BETを決定するため、外挿をp/p0=0.05-0.3の範囲で、少なくとも6測定点で行った。STSAを決定するため、外挿を、t=0.4~0.63nm(p/p0=0.2~0.5に相当する)の吸着N2の層厚の範囲で、少なくとも7測定点で行った。
【0168】
8. 有機充填剤の灰含量の決定
試料の無水灰含量を、下記の通りDIN 51719規格に従い、熱重量分析により決定した:計量前に、試料を研削しモルタル処理した。灰の決定前に、計量された材料の乾燥物質含量を決定する。試料材料を、坩堝内に0.1mg近くまで計量した。試料を含む炉を、目標温度815℃まで、9°K/分の加熱速度で加熱し、次いでこの温度で2時間保持した。次いで炉を300℃に冷却し、その後、試料を取り出した。試料を、デシケーター内で周囲温度に冷却し、再び計量した。残りの灰は、初期質量に相関し、したがって灰の質量パーセンテージが決定された。三重になされる決定を、各試料ごとに行い、平均値を報告した。
【0169】
9. 用いられる有機充填剤のpH値の決定
pHを、下記のASTM D 1512規格に従い決定した。乾燥試料は、既に粉末形態ではない場合、モルタル処理し又は研削して粉末にした。それぞれの場合に、試料5g及び完全に脱イオン化された水50gを、ガラスビーカーに計量した。懸濁液を、加熱機能及び撹拌フリーを備えた磁気撹拌子を使用して一定に撹拌しながら60℃の温度に加熱し、温度を60℃で30分間維持した。その後、撹拌子の加熱機能を不活性化して、混合物を撹拌しながら冷却するようにした。冷却後、蒸発した水を、完全に脱イオン化された水を再び添加することによって補充し、再び5分間撹拌した。懸濁液のpH値を、較正された測定機器で決定した。懸濁液の温度は23℃(±0.5℃)であるべきである。二重の決定を各試料ごとに行い、平均値を報告した。
【0170】
10. 用いられる有機充填剤の熱損失の決定
試料の熱損失を、下記のようにASTM D 1509の線に沿って決定した。この目的で、Sartorius社製MA100水分天秤を、125℃の乾燥温度に加熱した。乾燥試料は、既に粉末形態にない場合、モルタル処理し又は研削して粉末にした。測定される約2gの試料を、水分天秤で、適切なアルミニウムパンに計量し、次いで測定を開始した。試料の質量が30秒で1mg未満変化しなくなるや否や、この質量を一定とみなし、測定を終了した。次いで加熱損失は、試料の、質量%を単位として表示された水分含量に相当する。少なくとも1回の二重になされる決定を、各試料ごとに行った。計量された平均値を報告した。
【0171】
11. 表面で利用可能なOH基の決定(OH基密度)
フェノールOH基及びフェノレート基を含む、表面で利用可能な酸性ヒドロキシル基の決定を、Sipponenにより定性的に及び定量的に、比色測定により実施した実施した。Sipponenによる方法は、充填剤表面に接触可能な酸性ヒドロキシル基へのアルカリ色素Azure Bの吸着に基づき、論文「Determination of surface-accessible acidic hydroxyls and surface area of lignin by cation dye adsorption」(Bioresource Technology 169 (2014) 80~87)に詳細に記述される。表面で利用可能な酸性ヒドロキシル基の量は、mmol/g充填剤を単位として与えられる。充填剤がどのように得られたかとは無関係に、プロセスは、リグニン系充填剤にだけではなく、例えば比較例のカーボンブラックN660にも適用された。
【0172】
12. 14C含量の決定
14C含量(生物学的に基づく炭素の含量)の決定は、DIN EN 16640:2017-08に従い放射性炭素法を用いて実施することができる。
【0173】
13. 炭素含量の決定
炭素含量は、DIN 51732:2014-7に従い元素分析によって決定することができる。
【0174】
14. 酸素含量の決定
酸素含量は、EuroVector S.p.A社のEuroEA3000 CHNS-O分析器を使用して、高温熱分解により決定することができる。
【0175】
15. 粒度分布の決定
粒度分布は、ISO 13320:2009に従い、水に分散した材料のレーザー回折によって決定することができる。体積分率は、例えばd99(単位:μm)(試料の体積の99%の粒の直径がこの値よりも下にある)と指定される。
【0176】
16. アルカリ性媒体中の溶解度の決定
アルカリ性溶解度の決定を、下記の通り実施する:
【0177】
溶解度を、三重に決定する。この目的のため、2.0gの乾燥充填剤のそれぞれを、20gの0.1M NaOH中にそれぞれ計量する。しかしながら、決定された試料のpH値が<10の場合は試料を廃棄し、代わりに乾燥充填剤2.0gを20gの0.2M NaOH中にそれぞれ計量する。言い換えれば、pH値に応じて(<10又は≧10)、0.1M NaOHは使用され(pH≧10)又は0.2M NaOHが使用される(pH<10)。アルカリ性懸濁液を、分当たりの振盪速度200回で、室温で2時間振盪させる。液体がプロセス中に蓋に接触した場合、振盪速度を低減させて、この接触が生じるのを防止しなければならない。次いでアルカリ性懸濁液を6,000×gで遠心分離する。遠心分離の上澄みを、Por 4フリットに通して濾過する。遠心分離後の固体を蒸留水で2回洗浄し、その間、上述の遠心分離及び濾過を各洗浄ごとに繰り返す。固体を、少なくとも24時間、105℃で、質量が一定のままになるまで乾燥炉内で乾燥する。固体物質のアルカリ溶解度を下記の通り計算する:
【0178】
固体物質のアルカリ溶解度[%]=遠心分離、濾過、及び乾燥後に溶解していない割合の質量[g]×100/出発時の生成物の質量[g]
【実施例
【0179】
(実施例及び比較例)
下記の実施例及び比較例は、本発明を説明する働きをするが、如何様にも限定するものと解釈すべきではない。
【0180】
1. 修飾済み有機充填剤(本発明による)並びに非修飾済み有機充填剤(本発明によらない)の生成
1.1 非修飾済み有機充填剤
本発明によらない非修飾済み有機充填剤として、熱水処理により得ることが可能なリグニンV1を用いた。
【0181】
熱水処理により得ることが可能なリグニンV1を、WO 2017/085278 A1に記載される熱水処理により得ることが可能なリグニンを生成するための方法に従い生成した。
【0182】
再成長する原材料を含有する液体を、この目的のため提供する。最初に、水及びリグニンを混合し、その後、有機乾燥質量の含量15%を有するリグニン含有液体を調製する。その後、リグニンを、リグニン含有液体に完全に溶解する。この目的で、pH値を、NaOHを添加することによって9.8に調節する。溶液の調製は、80℃で3時間強力に混合することによって促進される。再成長する原材料を含有する液体を、熱水処理に供し、次いで固体物質を得る。プロセス中、調製された溶液を反応温度230℃に、2K/分で加熱し、次いで5時間の反応期間にわたり保持する。その後、冷却を行う。その結果、固体物質の水性懸濁液が得られる。濾過及び洗浄によって、固体物質は大幅に脱水され、洗浄される。脱水され洗浄された固体を対流乾燥キャビネットで、105℃で乾燥して、残留水分含量を3%にする。乾燥した固体を、窒素下で、NETZSCH CGS 32カウンタージェットミル上でd99<10μmに解凝集させる。後続の熱処理を、炉内で窒素下で、2K/分で180℃の温度に加熱し、それを3時間にわたり保持し、再び冷却することにより実施する。
【0183】
熱水処理によって得ることが可能なリグニンV1は、上記にて引用された方法を用いて、以下のTable 1.1(表1)に示されるように特徴付けられた。
【0184】
【表1】
【0185】
1.2 修飾済み有機充填剤
本発明によるいくつかの修飾済み有機充填剤を生成し、1.1の下で既に述べたリグニンV1を、それぞれの場合に出発材料として使用した。
【0186】
L-シスチン((2R,2’R)-3,3’-ジチオ-ビス(2-アミノ-プロパン酸; LC)、1,2-エポキシ-9-デセン(ED)、ドデセン-1-イル-コハク酸無水物(DSA)、及びヘキサンチオール(HT)を、有機修飾剤として使用した。
【0187】
本発明による修飾済み有機充填剤l1(LCによる)、l2(EDによる)、及びl3(DSAによる)、並びにl4(HTによる)の調製では、それぞれ20gのHTCリグニンV1を、250から300mLのn-デカンが入っている500mLの丸底フラスコ内に計量した。次いで得られた混合物を、150から165℃の範囲の温度に加熱した。この温度に到達したら、有機修飾剤LC(0.7g) ED(2.0g)、DSA(1.7g)、又はHT(1.2g)の1つを添加した。次いで得られた混合物を24時間にわたりこの温度で撹拌して、リグニンV1と、使用される修飾剤との完全な反応を確実にした。その後、得られた混合物をソックスレー装置に移して、溶媒、未反応の修飾剤、及び可能性ある反応副生成物を抽出した。抽出は、111℃の沸点で16時間にわたりトルエンを使用して実施した。抽出後、それぞれの場合に得られた生成物を、真空下の炉内で、70℃の温度で24時間にわたり乾燥した。このように得られた、表面修飾されたHTCリグニンl1、l2、l3、及びl4は、上述で引用された方法を用いて、以下のTable 1.2(表2)に示されるように特徴付けられ、下記のこの形態で使用された。
【0188】
【表2】
【0189】
次いでl4を、非修飾有機充填剤V1と比較して、固相13C-NMR分光により、HTの結合に関して試験し、それによって図6に示されるように異なるスペクトルが形成され、有機充填剤のアルファ炭素でHTのアルキル鎖の新しいシグナルを示す。
【0190】
l4は、熱重量分析を用いて、未反応成分に関しても試験した。図7は、HTの沸騰範囲で質量損失が生じず、したがってHTは共有結合形態でl4中に存在することを示す。同様に非修飾有機充填剤は、HTの代わりに適切な硫黄含有有機シランと反応することもできる。
【0191】
2. ゴム組成物の調製
接線ミキサー(Brabenderインターナルミキサー350S)では、構成成分及び量がTable 2.1(表3)で与えられたゴム組成物を、下記の通り調製した。
【0192】
混合開始前に、混合チャンバーを50℃に加熱した。構成成分の量をそれぞれの場合に計算して、70%の混合チャンバー充填レベルを与えた。ローターを始動した後(50rpm)、混合チャンバーにゴム(SSBR及びBR、Table 2.1(表3)のpos.1及び2による)を供給し、混合チャンバーに対して充填デバイスを空気圧でロックし、混合を1分間実施した。次いで混合チャンバーの充填デバイスを開け、Table 2.1(表3)のpos.3による有機充填剤の量の1/4を、Table 2.1(表3)のpos.4によるプロセス油(TDAE)と一緒に添加し、混合チャンバーを再び閉じ、混合を1分間実施した(合計混合時間:2分)。次いで混合チャンバーの充填デバイスを開き、Table 2.1(表3)のpos.3による有機充填剤の量の更に1/4を添加し、混合チャンバーを再び閉じ、混合を1分間実施した(合計混合時間:3分)。次いで混合チャンバーの充填デバイスを開き、Table 2.1(表3)の位置3による有機充填剤の量の更に1/4を添加し、混合チャンバーを再び閉じ、混合を1分間実施した(合計混合時間:4分)。最後に、混合チャンバーの充填デバイスを開き、Table 2.1(表3)の位置3による有機充填剤の量の最後の1/4、並びにTable 2.1(表3)によるpos.5、6、7、及び8の添加剤を添加し、混合を1分間実施した(合計混合時間:5分)。次いで混合を、合計混合時間10分に到達するまで、更に5分間継続した。速度を調節することにより、排出温度は、70から80℃の範囲に在るように目標とされ、合計混合時間の後に測定した。排出温度は、熱電対を用いて決定される。混合プロセス後、コンパウンドをミキサーから取り出し、実験室用ミル(Schwabenthan Polymix 80T 2ロールミル、その隙間は2.5mm)に放出した。
【0193】
【表3】
【0194】
Trinseo Deutschland GmbH社製の、市販の製品Sprintan(登録商標)SLR 4602を、SSBR(溶液中でのスチレン及びブタジエンの重合により生成された、スチレンブタジエンゴム)として使用した。Arlanxeo Deutschland GmbH社製の、市販の製品Buna(登録商標)CB 24を、BR(ブタジエンゴム)として使用した。TDAEは、Hansen and Rosenthal KG社製の市販の鉱油である。ZnOは酸化亜鉛である。TMQは、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンである。6-PPDは、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミンである。
【0195】
3. 加硫化可能なゴム組成物の生成
3.1 項目2の下で記述されるように得られたゴム組成物を、23℃の温度で16時間にわたり保存した。次いで加硫化系VSを、得られたゴム組成物のそれぞれと混合した。この系の構成成分を、Table 3.1(表4)にまとめる。この系を、ゴム組成物KV1及びKI1からKI3のそれぞれと混合した後、加硫化可能なゴム組成物KV1VS、KI1VS、KI2VS、及びKI3VSを得た。
【0196】
それぞれの場合に、ゴム組成物KV1及びKI1からKI3の1種を、接線ミキサー(Brabenderインターナルミキサー350S)内に導入した。混合開始前に、混合チャンバーを50℃に加熱した。構成成分の量を、それぞれの場合に計算して、70%の混合チャンバー充填レベルを与えた。ローターの始動後(30rpm)、Table 3.1(表4)のpos.9から12による構成成分を添加し、充填デバイスを混合チャンバーに対して空気圧でロックし、混合を5分間実施した(即ち、合計混合時間は5分)。速度を調節することにより、排出温度は、80から90℃の範囲にあるように目標とされ、合計混合時間の後に測定される。排出温度は、熱電対を用いて決定した。混合プロセス後、コンパウンドをミキサーから取り出し、実験室用ミル(Schwabenthan Polymix 80T 2ロールミル、その隙間は2.5mm)に放出した。
【0197】
【表4】
【0198】
DPGは、1,3-ジフェニルグアニジンである。TBBSは、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミドTbzTDが二硫化テトラベンジルチウラムである。
【0199】
加硫化可能なゴム組成物KV1VS、KI1VS、KI2VS、及びKI3VSは、空気圧タイヤのトレッドの使用に及び生成に特に適したゴム組成物である。
【0200】
3.2 まだ加硫化されていないゴム組成物を、上述の方法によるペイン効果に関して試験した。
【0201】
図1は、種々の有機充填剤を含有する、種々の、まだ加硫化されていないゴム組成物KV1VS、KI1VS、KI2VS、及びKI3VSのペイン効果を示す。特に、対照実験(非修飾リグニンV1による)と比較して、低い伸び率で貯蔵弾性率G’が、使用される種々の充填剤による修飾によって著しく増大するのを観察することができる。
【0202】
4. 加硫化ゴム組成物の生成
4.1 加硫化特性又は加硫化挙動を、上述の試験方法により決定した。
【0203】
4.2 次いで加硫化可能なゴム組成物KV1VS、KI1VS、KI2VS、及びKI3VS、完全に加硫化された試験試料KV1VS-v、KI1VS-v、KI2VS-v、及びKI3VS-vであって、それぞれ加硫化可能なゴム組成物KV1VS、KI1VS、KI2VS、及びKI3VSに相当するものを、加硫化プレス(WickertラボラトリープレスWLP 1600/5*4/3)で、160℃で100barの加硫化によって得た。設定されることになる加硫化時間は、T90時間に基づく。加硫化試験試料を、プレス時間が過ぎた後に即座に取り出し、冷却した。
【0204】
寸法が90×90×2mmの加硫化プレートを、引張強さ試験で使用した。ここで設定されることになる加硫化時間は、プレート厚さのミリメートル当たり、T90時間に1分を加えた値から得られた(即ち、2分を加える)。
【0205】
それぞれ12.5mmの太さを有する加硫化円筒状試料を、硬度及び反発弾性に関する試験に使用した。ここで設定されることになる加硫化時間は、T90時間に5分を加えた値から得られた。
【0206】
5. 加硫化試料及び加硫化挙動の試験
5.1 加硫化特性又は加硫化挙動を、4.1の下で記述されたように試験した。
【0207】
図2から、使用される修飾済みリグニンは、特に、実施される修飾の結果としてリグニンの塩基性が増大し、したがって加硫化の速度及び程度が改善されるので、良好な加硫化挙動を示すことがわかる。EDで修飾されたリグニンの場合(KI2VS)、より速い加硫化動態を、特に表面での末端鎖二重結合(即ち、ビニル基)の存在によって説明することができ、このためその他の化合物と比較して、加硫化に向かって更に反応性があり且つ充填剤-ポリマー相互作用を増大させることによりMH値を増大させる。更に、長いアルキル鎖の存在は、リグニンのフェノールOH基を有効に遮蔽することができる。LCで修飾されたリグニンの場合(KI1VS)、良好な加硫化挙動は、特にpH中和効果によって、即ち酸性COOH基と塩基性アミノ基との間に生じる平衡/安定化反応によって説明することができる。架橋反応が開始したら、L-シスチンからの硫黄は加硫化に関与し、コンパウンドの架橋密度及び充填剤-ポリマー相互作用を増大させ、その結果、MH値が増大する。
【0208】
5.2 加硫化試験試料KV1VS-v、KI1VS-v、KI2VS-v、及びKI3VS-vを、上述の方法によりいくつかの性質に関して試験した。
【0209】
引張応力試験を、上述の方法により、加硫化ゴム組成物で行った。
【0210】
図3から、使用された修飾済みリグニンは、熱水処理により得られた非修飾リグニンと比較して、引張強さに関して改善された機械的性質が可能になることがわかる。これによりこれらの修飾済みリグニンの添加は、より良好な充填剤-ポリマー相互作用を、特にEDで修飾されたリグニンの末端鎖二重結合とLCで修飾されたリグニンのジスルフィド基及びゴムの間で、硫黄の加硫化中に、より良好な反応を実現することが明らかになる。このことは、MH値とも矛盾がない。
【0211】
更にショアA硬度試験を、上述の方法に従い、加硫化ゴム組成物に行った。
【0212】
図4から、使用された修飾済みリグニンは、熱水処理により得ることが可能な非修飾リグニンと比較して、改善されたショアA硬度をもたらすことがわかる。このことは、実現された、改善された架橋特性と矛盾がない。
【0213】
更に、反発弾性に関する試験を、上述の方法に従い加硫化ゴム組成物に行った。
【0214】
図5から、使用された修飾済みリグニンは、熱水処理によって得ることが可能な非修飾リグニンと比較して、共に23℃であるが特に70℃で、反発弾性の改善(増大)をもたらすことがわかる。このことは、これらの成分の、より低い動的ヒステリシスを、即ち70℃での低いtanδを強調し、より低い転がり抵抗をもたらす。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】