(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-25
(54)【発明の名称】MEMSマイクロフォン
(51)【国際特許分類】
H04R 19/04 20060101AFI20240418BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
H04R19/04
H04R3/00 320
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022575849
(86)(22)【出願日】2022-05-18
(85)【翻訳文提出日】2022-12-08
(86)【国際出願番号】 CN2022093437
(87)【国際公開番号】W WO2023201811
(87)【国際公開日】2023-10-26
(31)【優先権主張番号】202220933196.X
(32)【優先日】2022-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511027518
【氏名又は名称】エーエーシーアコースティックテクノロジーズ(シンセン)カンパニーリミテッド
【氏名又は名称原語表記】AAC Acoustic Technologies(Shenzhen)Co.,Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100128347
【氏名又は名称】西内 盛二
(72)【発明者】
【氏名】タン,シュウソン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ヤンモン
(72)【発明者】
【氏名】チュア,ティオンキー
(72)【発明者】
【氏名】蒲 景▲シン▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 睿
【テーマコード(参考)】
5D021
5D220
【Fターム(参考)】
5D021CC19
5D220BA01
5D220BA22
5D220BC01
(57)【要約】
【課題】本発明は、MEMSマイクロフォンを提供する。
【解決手段】MEMSマイクロフォンは、収容空間を有するハウジングと、前記ハウジングを貫通する音孔と、前記収容空間内に収容されたMEMSマイクロフォンチップ及びASICチップと、減算器とを含み、前記MEMSマイクロフォンチップは、少なくとも第1MEMSマイクロフォンチップ及び第2MEMSマイクロフォンチップを含み、前記第1MEMSマイクロフォンチップの周波数応答落下特性と前記第2MEMSマイクロフォンチップの周波数応答落下特性は異なり、前記第1MEMSマイクロフォンチップの出力信号及び前記第2MEMSマイクロフォンチップの出力信号は、いずれも前記減算器に出力され、且つ減算器により減算処理された後で前記ASICチップに出力される。関連技術に比べて、本発明のMEMSマイクロフォンは、耐干渉性能が良く、且つ感度が高い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容空間を有するハウジングと、前記ハウジングを貫通する音孔と、前記収容空間内に収容されたMEMSマイクロフォンチップ及びASICチップとを含むMEMSマイクロフォンであって、
前記MEMSマイクロフォンチップは、少なくとも第1MEMSマイクロフォンチップ及び第2MEMSマイクロフォンチップを含み、前記第1MEMSマイクロフォンチップの周波数応答落下特性と前記第2MEMSマイクロフォンチップの周波数応答落下特性は、異なり、前記MEMSマイクロフォンは、更に減算器を含み、前記第1MEMSマイクロフォンチップの出力信号及び前記第2MEMSマイクロフォンチップの出力信号は、いずれも前記減算器に入力され、且つ前記減算器により減算処理された後で前記ASICチップの入力信号となることを特徴とするMEMSマイクロフォン。
【請求項2】
前記第1MEMSマイクロフォンチップの周波数応答落下特性は、1KHzより小さく、前記第2MEMSマイクロフォンチップの周波数応答落下特性の範囲は、1KHz~30KHzであることを特徴とする請求項1に記載のMEMSマイクロフォン。
【請求項3】
前記第1MEMSマイクロフォンチップと前記第2MEMSマイクロフォンチップは、一体に集積され、MEMSマイクロフォンチップユニットとなることを特徴とする請求項2に記載のMEMSマイクロフォン。
【請求項4】
前記第1MEMSマイクロフォンチップと前記第2MEMSマイクロフォンチップとの周波数応答共振ピークは、同じであることを特徴とする請求項2に記載のMEMSマイクロフォン。
【請求項5】
前記第1MEMSマイクロフォンチップの周波数応答共振ピークは、前記第2MEMSマイクロフォンチップの周波数応答共振ピークより大きいことを特徴とする請求項2に記載のMEMSマイクロフォン。
【請求項6】
前記第1MEMSマイクロフォンチップの周波数応答共振ピークは、前記第2MEMSマイクロフォンチップの周波数応答共振ピークより小さいことを特徴とする請求項2に記載のMEMSマイクロフォン。
【請求項7】
前記第1MEMSマイクロフォンチップの周波数応答共振ピーク及び前記第2MEMSマイクロフォンチップの周波数応答共振ピークは、いずれも20KHzより大きいことを特徴とする請求項4~6のいずれか1項に記載のMEMSマイクロフォン。
【請求項8】
前記減算器は、前記ASICチップ内に集積されることを特徴とする請求項1に記載のMEMSマイクロフォン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響電気変換装置に関し、特にMEMSマイクロフォンに関する。
【背景技術】
【0002】
微小電気機械システム(Micro-Electro-Mechanical System、MEMS)マイクロフォンは、MEMS技術に基づいて製造された音響電気トランスデューサであり、体積が小さく、周波数応答特性が高く、ノイズが低いなどの特徴を有し、モバイル端末に不可欠なデバイスの1つである。
【0003】
従来技術のMEMSマイクロフォンは、容量検出に基づくMEMSマイクロフォンチップ、及び、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit、ASIC)チップを含み、MEMSマイクロフォンチップの容量は、入力音声信号の相違に応じて変化し、更にASICチップを利用して変化した容量信号を処理して出力することにより音声のピックアップを実現する。
【0004】
しかしながら、大電力超音波送受信器の広範な応用に伴い、MEMSマイクロフォンが当該音波周波数帯域で過負荷を起すことにより雑音を引き起こす。当該雑音の大きさは、超音波送受信器自体の電力の大きさ、MEMSマイクロフォンからの距離、MEMSマイクロフォンの当該周波数帯域における感度に依存する。オーディオハードウェアcodec規格の48KHzのサンプリングは、24KHz以上の周波数の音声をフィルタリングするが、当該歪みは、既にMEMSマイクロフォンの内部で生成され且つ低周波数に延び、振幅が小さいが聴感が明らかであるノイズを引き起こし、すなわち耐干渉性能が悪く、感度が低い。
【0005】
したがって、上記技術的課題を解決する新たなMEMSマイクロフォンを提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする技術的課題は、耐干渉性能が良く、且つ感度が高いMEMSマイクロフォンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記技術的問題を解決するために、本発明は、MEMSマイクロフォンを提供する。当該MEMSマイクロフォンは、収容空間を有するハウジングと、前記ハウジングを貫通する音孔と、前記収容空間内に収容されたMEMSマイクロフォンチップ及びASICチップとを含み、前記MEMSマイクロフォンチップは、少なくとも第1MEMSマイクロフォンチップ及び第2MEMSマイクロフォンチップを含み、前記第1MEMSマイクロフォンチップの周波数応答落下特性と前記第2MEMSマイクロフォンチップの周波数応答落下特性は、異なり、前記MEMSマイクロフォンは、更に減算器を含み、前記第1MEMSマイクロフォンチップの出力信号及び前記第2MEMSマイクロフォンチップの出力信号は、いずれも前記減算器に入力され、且つ前記減算器により減算処理された後で前記ASICチップの入力信号となる。
【0008】
好ましくは、前記第1MEMSマイクロフォンチップの周波数応答落下特性は、1KHzより小さく、前記第2MEMSマイクロフォンチップの周波数応答落下特性の範囲は、1KHz~30KHzである。
【0009】
好ましくは、前記第1MEMSマイクロフォンチップと前記第2MEMSマイクロフォンチップは、一体に集積され、MEMSマイクロフォンチップユニットとなる。
【0010】
好ましくは、前記第1MEMSマイクロフォンチップと前記第2MEMSマイクロフォンチップとの周波数応答共振ピークは、同じである。
【0011】
好ましくは、前記第1MEMSマイクロフォンチップの周波数応答共振ピークは、前記第2MEMSマイクロフォンチップの周波数応答共振ピークより大きい。
【0012】
好ましくは、前記第1MEMSマイクロフォンチップの周波数応答共振ピークは、前記第2MEMSマイクロフォンチップの周波数応答共振ピークより小さい。
【0013】
好ましくは、前記第1MEMSマイクロフォンチップの周波数応答共振ピーク、及び、前記第2MEMSマイクロフォンチップの周波数応答共振ピークは、いずれも20KHzより大きい。
【0014】
好ましくは、前記減算器は、前記ASICチップ内に集積される。
【発明の効果】
【0015】
関連技術に比べて、本発明のMEMSマイクロフォンは、少なくとも2つのMEMSマイクロフォンチップを設けるとともに、2つのMEMSマイクロフォンチップの周波数応答落下特性を異ならせ、2つのMEMSマイクロフォンチップの出力がいずれも減算器に接続され、2つのMEMSマイクロフォンチップから出力された2つの信号を減算器により減算を実施した後、超音波周波数帯域信号を互いに相殺する一方、他の周波数帯域の信号を保留し、更にASICチップに出力して処理した後に発音デバイスに伝送して発音を実現することにより、MEMSマイクロフォンの耐干渉性能を効果的に向上させ且つ感度を改善する。
【0016】
本発明の実施例における技術的解決手段をより明確に説明するために、以下に実施例の説明に必要な図面を簡単に紹介し、明らかに、以下に説明する図面は、単に本発明のいくつかの実施例であり、当業者にとって、創造的労働をしない前提で、更にこれらの図面に基づいて他の図面を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に関わるMEMSマイクロフォンの実施形態1の構造ブロック図である。
【
図2】本発明に関わるMEMSマイクロフォンの第1MEMSマイクロフォンチップと第2MEMSマイクロフォンチップの周波数応答共振ピークが同じである場合の性能曲線であり、そのうち、
図2(a)は、信号処理前の性能曲線であり、
図2(b)は、信号処理後の性能曲線である。
【
図3】本発明に関わるMEMSマイクロフォンの第1MEMSマイクロフォンチップの周波数応答共振ピークが第2MEMSマイクロフォンチップの周波数応答共振ピークより大きい場合の性能曲線であり、そのうち、
図3(a)は、信号処理前の性能曲線であり、
図3(b)は、信号処理後の性能曲線である。
【
図4】本発明に関わるMEMSマイクロフォンの第1MEMSマイクロフォンチップの周波数応答共振ピークが第2MEMSマイクロフォンチップの周波数応答共振ピークより小さい場合の性能曲線であり、そのうち、
図4(a)は、信号処理前の性能曲線であり、
図4(b)は、信号処理後の性能曲線である。
【
図5】本発明に関わるMEMSマイクロフォンの実施形態2の構造ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下本発明の実施例における図面を参照して、本発明の実施例における技術的解決手段を明確で、完全に説明し、明らかに、説明された実施例は本発明の一部の実施例だけであり、全ての実施例ではない。本発明の実施例に基づいて、当業者が創造的労働をしない前提で得られた全ての他の実施例は、いずれも本発明の保護範囲に属するものとする。
【0019】
図1に示すように、本発明は、MEMSマイクロフォン100を提供し、収容空間を有するハウジング1と、前記ハウジング1を貫通する音孔と、前記収容空間内に収容されたMEMSマイクロフォンチップ2及びASICチップ3と、減算器4とを含む。
【0020】
前記MEMSマイクロフォンチップ3は、少なくとも2つのMEMSマイクロフォンチップを含み、本実施形態において第1MEMSマイクロフォンチップ21及び第2MEMSマイクロフォンチップ22を含む。
【0021】
ここで、前記第1MEMSマイクロフォンチップ21の周波数応答落下特性(roll of)と前記第2MEMSマイクロフォンチップ22の周波数応答落下特性とが異なる。
【0022】
ここで、周波数応答落下特性(roll of)は、その周波数点に対応する感度が1KHzの感度よりも3dB低い、すなわち周波数応答曲線において3dB減衰する周波数点として定義される。
【0023】
前記第1MEMSマイクロフォンチップ21の出力信号、及び、前記第2MEMSマイクロフォンチップ22の出力信号は、いずれも前記減算器4に入力され、且つ前記減算器4により減算処理された後で前記ASICチップ3の入力信号となる。すなわち、第1MEMSマイクロフォンチップ21、及び、前記第2MEMSマイクロフォンチップ22は、減算器4に直接接続されてもよく、他の信号処理(例えば、信号増幅、フィルタリングなど)を経た後で減算器4に接続されてもよい。
【0024】
具体的には、本実施形態において、前記第1MEMSマイクロフォンチップ21の出力端、及び、前記第2MEMSマイクロフォンチップ22の出力端は、それぞれ前記減算器4の第1入力端、及び、第2入力端に接続され、前記減算器4の出力端は、前記ASICチップ3の入力端に接続される。第1MEMSマイクロフォンチップ21、及び、第2MEMSマイクロフォンチップ22がそれぞれ生成した2つの信号は、減算器4により減算された後、超音波周波数帯域信号が互いに相殺され、他の周波数帯域信号が保持される。
【0025】
好ましくは、前記減算器4は、前記ASICチップ3内に集積され、MEMSマイクロフォンに対する占有体積を効果的に減少させることができ、小型化に役立つ。
【0026】
本実施形態では、具体的には、前記第1MEMSマイクロフォンチップ21の周波数応答落下特性は、1KHzより小さく、前記第2MEMSマイクロフォンチップ22の周波数応答落下特性の範囲は、1KHz~30KHzである。2つの信号が減算により演算された後、超音波周波数帯域信号が互いに相殺され、他の周波数帯域信号が残され、前記第1MEMSマイクロフォンチップ21の周波数応答共振ピーク、及び、前記第2MEMSマイクロフォンチップ22の周波数応答共振ピークがいずれも20KHzより大きい。
【0027】
前記第1MEMSマイクロフォンチップ21と前記第2MEMSマイクロフォンチップ22との周波数応答共振ピークは、同じである。
図2に示すように、そのうち、
図2(a)は、信号処理前の性能曲線であり、
図2(b)は、信号処理後の性能曲線であり、2つの経路の信号が減算により演算された後、超音波周波数帯域信号が互いに相殺され、他の周波数帯域の信号が保持されることが分かる。
【0028】
前記第1MEMSマイクロフォンチップ21の周波数応答共振ピークは、前記第2MEMSマイクロフォンチップ22の周波数応答共振ピークより大きい。
図3に示すように、そのうち、
図3(a)は、信号処理前の性能曲線であり、
図3(b)は、信号処理後の性能曲線であり、2つの経路の信号が減算により演算された後、超音波周波数帯域信号が互いに相殺され、他の周波数帯域の信号が保持されることが分かる。
【0029】
前記第1MEMSマイクロフォンチップ21の周波数応答共振ピークは、前記第2MEMSマイクロフォンチップ22の周波数応答共振ピークより小さい。
図4に示すように、そのうち、
図4(a)は、信号処理前の性能曲線であり、
図4(b)は、信号処理後の性能曲線である。2つの信号が減算により演算された後、超音波周波数帯域信号が互いに相殺され、他の周波数帯域の信号が保持されることが分かる。
【0030】
本発明は、更に別の実施形態を提供し、それは上記実施形態と基本的に同じであり、同じ部分の説明を省略し、異なることは、
図5に示すように、前記第1MEMSマイクロフォンチップと前記第2MEMSマイクロフォンチップは、一体に集積され、MEMSマイクロフォンチップユニット20となり、それによりMEMSマイクロフォンに対する占有体積を効果的に減少させることができ、小型化に役立つ。
【0031】
関連技術に比べて、本発明のMEMSマイクロフォンは、少なくとも2つのMEMSマイクロフォンチップを設けるとともに、2つのMEMSマイクロフォンチップの周波数応答落下特性を異ならせ、2つのMEMSマイクロフォンチップの出力がいずれも減算器に接続され、2つのMEMSマイクロフォンチップから出力された2つの信号を減算器により減算を実施した後、超音波周波数帯域信号を互いに相殺し、他の周波数帯域の信号を保留し、更にASICチップに出力して処理した後に発音デバイスに伝送して発音を実現することにより、MEMSマイクロフォンの耐干渉性能を効果的に向上させ且つ感度を改善する。
【0032】
以上は本発明の実施例だけであり、本発明の特許範囲を限定するものではなく、本発明の明細書及び図面内容を利用して行われた等価構造又は等価フロー変換、又は他の関連する技術分野に直接的又は間接的に応用され、いずれも同様に本発明の特許保護範囲内に含まれる。
【国際調査報告】