(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-25
(54)【発明の名称】リチウム含有金属珪素の調製方法、リチウム含有金属珪素、リチウム含有SiOおよびその応用
(51)【国際特許分類】
C01B 33/02 20060101AFI20240418BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240418BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20240418BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240418BHJP
C01B 33/113 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
C01B33/02 Z
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M4/36 C
C01B33/113 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022576841
(86)(22)【出願日】2022-04-26
(85)【翻訳文提出日】2022-12-12
(86)【国際出願番号】 CN2022089403
(87)【国際公開番号】W WO2023201767
(87)【国際公開日】2023-10-26
(31)【優先権主張番号】202210424024.4
(32)【優先日】2022-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522482968
【氏名又は名称】勝華新能源科技(東營)有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHINGHWA AMPEREX TECHNOLOGY (DONGYING)CO., LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】522482979
【氏名又は名称】勝華新材料科技(眉山)有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHINGHWA ADVANCED MATERIAL TECHNOLOGY (MEISHAN) CO., LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】522482980
【氏名又は名称】勝華新材料集団股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHINGHWA ADVANCED MATERIAL GROUP CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丁 俊
(72)【発明者】
【氏名】劉 登華
(72)【発明者】
【氏名】孫 夢奇
(72)【発明者】
【氏名】丁 偉涛
【テーマコード(参考)】
4G072
5H050
【Fターム(参考)】
4G072AA01
4G072AA24
4G072BB05
4G072DD03
4G072DD04
4G072GG03
4G072HH14
4G072HH36
4G072JJ02
4G072JJ30
4G072JJ47
4G072MM02
4G072MM26
4G072MM38
4G072QQ09
4G072RR04
4G072UU30
5H050AA19
5H050BA16
5H050CA17
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5H050CB11
5H050EA08
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA05
5H050GA10
5H050GA15
5H050HA01
5H050HA05
(57)【要約】
本発明は、リチウム含有金属珪素の調製方法、リチウム含有金属珪素、リチウム含有SiOおよびその応用を開示し、原料はSiO
2鉱石粒子と還元剤を含み、SiO
2鉱石粒子の少なくとも一部と還元剤は還元炉にて加熱還元反応を行ってシリコン融液を得、原料はLi源添加剤をさらに含み、加熱還元反応中において、Li源添加剤におけるLi源の少なくとも一部は、シリコン融液とリチウム-シリコン合金を形成してリチウム含有金属珪素を得、本発明で使用される原料は豊富で入手しやすく、コストが低く、使用される調製手段は、簡単で実施しやすく、大規模な生産と応用に寄与し、生産リスクを低減でき、また、得られたリチウム含有金属珪素およびリチウム含有SiOにおけるLiは、均一に分布しており、本願で提供される、炭素被覆層を含むリチウム含有SiOを電池用負極極片の作製のための活物質原料として使用した場合、電池はより高い容量と初期クーロン効率を表現することができる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料はSiO
2鉱石粒子と還元剤を含み、SiO
2鉱石粒子の少なくとも一部と前記還元剤は還元炉にて加熱還元反応を行ってシリコン融液を得、前記原料はLi源添加剤をさらに含み、前記加熱還元反応中において、前記Li源添加剤におけるLi源の少なくとも一部は、シリコン融液とリチウム-シリコン合金を形成してリチウム含有金属珪素を得ることを特徴とする、リチウム含有金属珪素の調製方法。
【請求項2】
前記SiO
2鉱石粒子は、リチウム含有SiO
2鉱石粒子を含み、前記リチウム含有SiO
2鉱石粒子は、Li含有鉱物を粉砕、選別および/または浮選することによって得られ、前記Li含有鉱物には、リチウム含有輝石および/またはリチウムマイカおよび/またはペタライトおよび/またはアンブリゴナイトおよび/またはユークリプタイトが含まれることを特徴とする、請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
前記SiO
2鉱石粒子におけるSiO
2の重量部比率は30~99wt%であり、および/または前記SiO
2鉱石粒子の平均粒子径は10mm以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の調製方法。
【請求項4】
前記原料における前記Li源添加剤の重量部比率は0.05~35wt%であり、および/または前記Li源添加剤は、Liおよび/またはLi
2Oおよび/またはLi
2CO
3および/またはLiOHおよび/またはLiHおよび/またはLiFおよび/またはLi
2SiO
4および/またはリチウム合金を含み、および/または前記還元剤は、C源還元剤またはAl源還元剤またはMg源還元剤を含み、前記SiO
2鉱石粒子とそれぞれ対応して炭素熱還元反応、アルミニウム熱還元反応、マグネシウム熱還元反応を行うために使用されることを特徴とする、請求項1に記載の調製方法。
【請求項5】
前記リチウム含有金属珪素の融液を鋳塊化槽に移し、鋳塊化槽内の融液を冷却した後、固形状のリチウム含有金属珪素を得ることを特徴とする、請求項1に記載の調製方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の調製方法により調製され、前記リチウム含有金属珪素は、リチウム-シリコン合金とリチウムシリケート塩を含むことを特徴とする、リチウム含有金属珪素。
【請求項7】
請求項6に記載のリチウム含有金属珪素およびSiO
2粉末を原料として用い、リチウム含有金属珪素の少なくとも一部を前記SiO
2粉末と不均化昇華反応させて前記リチウム含有SiOを得ることを特徴とする、リチウム含有SiO。
【請求項8】
前記リチウム含有金属珪素を予め粉砕してリチウム含有金属珪素粉末とし、前記リチウム含有金属珪素粉末と前記SiO
2粉末を混合した後、ルツボ内に入れ、当該ルツボを真空蒸着炉内に置いて前記不均化昇華反応を行い、前記不均化昇華反応により生成したリチウム含有SiOガスを凝縮させて塊状のリチウム含有SiOを形成することを特徴とする、請求項7に記載のリチウム含有SiO。
【請求項9】
前記リチウム含有SiOを粉砕してリチウム含有SiO粉末とし、リチウム含有SiO粉末の少なくとも一部の外面を炭素被覆層で被覆して、炭素被覆層を含むリチウム含有SiO粉末を得ることを特徴とする、請求項7に記載のリチウム含有SiO。
【請求項10】
前記の炭素被覆層を含むリチウム含有SiO粉末を電池用負極極片の作製のための活物質原料として使用することを特徴とする、請求項7~9のいずれか一項に記載のリチウム含有SiOの応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2022年4月21日に中国国家知識産権局特許局に提出された「リチウム含有金属珪素の調製方法、リチウム含有金属珪素、リチウム含有SiOおよびその応用」と題する中国特許出願第2022104240244号の優先権を主張し、その内容全体は参照により本願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、リチウム含有金属珪素の調製方法、リチウム含有金属珪素に関し、さらに当該リチウム含有金属珪素に基づいて得られるリチウム含有SiOおよびその応用に関する。
【背景技術】
【0003】
蒸着材料や新エネルギー材料としてのSiOは、近年、その応用範囲が広がりつつあり、例えば、リチウムイオン電池のクーロン効率を高めるために、リチウムイオン電池の負極材料としてSiOを応用し、従来技術では、通常、金属リチウムまたはリチウム塩を高温反応によってSiOの完成品に直接埋め込むようなリチウムドーピング技術が提案されており、具体的には、公開番号第CN105789577A号の発明特許では、リチウムイオン電池用シリコン負極材料の調製方法およびそのシリコン負極材料が開示され、SiO2にシリコンを埋め込み、かつチタン酸リチウムを被覆することが提案され、さらに、公開番号第CN110993949A号の発明特許では、複数の被覆構造を有する負極材料、その調製方法および用途が開示され、その負極材料は、リチウム含有SiOと、前記SiOの表面に順に被覆されたリチウム塩被覆層、炭素被覆層および重合体被覆層とを含む。しかし、出願人は、多数の情報を検索して分析した結果、これらのリチウムドーピング技術は、いずれもSiOの完成品に基づいてドーピング処理を行うものであり、一般的に、プロセス実施コストが高く、プロセス実施リスクが高く、リチウム分布が不均一であるという欠点があることを発見した。
【0004】
本出願人は、上記の状況を踏まえ、発明者の長年にわたるシリコン系材料およびリチウムイオン電池の両分野における熱心な研究経験に基づいて、上記技術的課題を解決するための技術的解決手段を模索することにした。
【発明の概要】
【0005】
これに鑑み、本発明は、リチウム含有金属珪素の調製方法、リチウム含有金属珪素、リチウム含有SiOおよびその応用を提供することを目的とし、使用される原料は、豊富で入手しやすく、コストが低く、使用される調製手段は、簡単で実施しやすく、大規模な生産と応用に寄与し、生産リスクを低減でき、また、得られたリチウム含有金属珪素およびリチウム含有SiOにおけるLiは、均一に分布している。
【0006】
本発明で使用される技術的解決手段は、以下のとおりである。
【0007】
リチウム含有金属珪素の調製方法であって、原料はSiO2鉱石粒子と還元剤を含み、SiO2鉱石粒子の少なくとも一部と前記還元剤は還元炉にて加熱還元反応を行ってシリコン融液を得、前記原料はLi源添加剤をさらに含み、前記加熱還元反応において、前記Li源添加剤におけるLi源の少なくとも一部はシリコン融液とリチウム-シリコン合金を形成してリチウム含有金属珪素を得る。
【0008】
好ましくは、前記SiO2鉱石粒子は、リチウム含有SiO2鉱石粒子を含み、前記リチウム含有SiO2鉱石粒子は、Li含有鉱物を粉砕、選別および/または浮選することによって得られ、前記Li含有鉱物には、リチウム含有輝石および/またはリチウムマイカおよび/またはペタライトおよび/またはアンブリゴナイトおよび/またはユークリプタイトが含まれる。
【0009】
好ましくは、前記SiO2鉱石粒子におけるSiO2の重量部比率は30~99wt%であり、および/または前記SiO2鉱石粒子の平均粒子径は10mm以下である。
【0010】
好ましくは、前記原料における前記Li源添加剤の重量部比率は0.05~35wt%であり、および/または前記Li源添加剤は、Liおよび/またはLi2Oおよび/またはLi2CO3および/またはLiOHおよび/またはLiHおよび/またはLiFおよび/またはLi2SiO4および/またはリチウム合金を含み、および/または前記還元剤は、C源還元剤またはAl源還元剤またはMg源還元剤を含み、前記SiO2鉱石粒子とそれぞれ対応して炭素熱還元反応、アルミニウム熱還元反応、マグネシウム熱還元反応を行うために使用される。
【0011】
好ましくは、前記リチウム含有金属珪素の融液を鋳塊化槽に移し、鋳塊化槽内の融液を冷却した後、固形状のリチウム含有金属珪素を得る。
【0012】
好ましくは、上述したような調製方法によって調製されたリチウム含有金属珪素であり、前記リチウム含有金属珪素は、リチウム-シリコン合金とリチウムケイ酸塩を含む。
【0013】
好ましくは、上述したようなリチウム含有金属珪素およびSiO2粉末を原料として用い、リチウム含有金属珪素の少なくとも一部を前記SiO2粉末と不均化昇華反応させて前記リチウム含有SiOを得る。
【0014】
好ましくは、前記リチウム含有金属珪素を予め粉砕してリチウム含有金属珪素粉末とし、前記リチウム含有金属珪素粉末と前記SiO2粉末を混合した後、ルツボ内に入れ、当該ルツボを真空蒸着炉内に置いて前記不均化昇華反応を行い、前記不均化昇華反応により生成したリチウム含有SiOガスを凝縮させて塊状のリチウム含有SiOを形成する。
【0015】
好ましくは、前記リチウム含有SiOを粉砕してリチウム含有SiO粉末とし、リチウム含有SiO粉末の少なくとも一部の外面を炭素被覆層で被覆して、炭素被覆層を含むリチウム含有SiO粉末を得る。
【0016】
好ましくは、上述したようなリチウム含有SiOの応用であって、前記の炭素被覆層を含むリチウム含有SiO粉末を電池用負極極片の作製のための活物質原料として使用する。
【0017】
本発明では、SiO2鉱物(好ましくはLi含有SiO2鉱物)を主原料として選択し、還元剤との加熱還元反応中にLi源をドープし、具体的に実施する場合、原料にLi源添加剤を添加し、加熱還元反応中において、Li源添加剤におけるLi源の少なくとも一部は、シリコン融液とリチウム-シリコン合金を形成してリチウム含有金属珪素を得、その後の応用では、当該リチウム含有金属珪素とSiO2粉末との不均化昇華反応に基づいてリチウム含有SiOを調製することができ、当該リチウム含有SiOは、公知の工程によって炭素が被覆された後、電池極片を作製するための活物質原料として直接使用することができる。
【0018】
本発明で使用される原料は豊富で入手しやすく、コストが低く、使用される調製手段は、簡単で実施しやすく、大規模な生産と応用に寄与し、生産リスクを低減でき、また、得られたリチウム含有金属珪素およびリチウム含有SiOにおけるLiは、均一に分布しており、本願で提供される、炭素被覆層を含むリチウム含有SiOを電池用負極極片の作製のための活物質原料として使用した場合、電池はより高い容量と初期クーロン効率を発現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の具体的な実施形態における、還元炉にて加熱還元反応を行う状態を示す写真である。
【
図2】本発明の具体的な実施形態で調製されたリチウム含有金属珪素の完成品の写真である。
【
図3】本発明の別の具体的な実施形態で調製されたリチウム含有金属珪素の完成品の写真である。
【
図4】本発明の具体的な実施形態で調製されたリチウム含有SiOの完成品の写真である。
【
図5】本発明の具体的な実施形態で採用されるリチウム含有SiO
2鉱石粒子のXRD走査写真である。
【
図6】本発明の具体的な実施形態で調製されたリチウム含有金属珪素のXRD走査写真である。
【
図7】本発明の具体的な実施形態で調製されたリチウム含有SiOのXRD走査写真である。
【
図8】本発明の具体的な実施形態に係るボタン電池の負極極片の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図9】本発明の具体的な実施形態に係るボタン電池の容量試験グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本実施例は、リチウム含有金属珪素の調製方法を開示し、原料はSiO2鉱石粒子と還元剤を含み、SiO2鉱石粒子の少なくとも一部と還元剤は還元炉にて加熱還元反応を行ってシリコン融液を得、原料はLi源添加剤をさらに含み、加熱還元反応中において、Li源添加剤におけるLi源の少なくとも一部は、シリコン融液とリチウム-シリコン合金を形成してリチウム含有金属珪素を得、好ましくは、本実施形態において、還元剤は、SiO2鉱石粒子の加熱還元反応が十分に行われるような重量部で添加される。
【0021】
好ましくは、本実施形態において、SiO2鉱石粒子におけるSiO2の重量部比率は30~99wt%であり、および/またはSiO2鉱石粒子の平均粒子径は10mm以下であり、その平均粒子径は、より好ましくは10μm~5mmであり、さらに好ましくは30μm~3mmである。
【0022】
好ましくは、本実施形態において、原料におけるLi源添加剤の重量部比率は0.05~35wt%であり、より好ましくは0.1~30wt%であり、さらに好ましくは1~20wt%であり、さらに好ましくは5~10wt%であり、好ましくは、本実施形態において、Li源添加剤は、Liおよび/またはLi2Oおよび/またはLi2CO3および/またはLiOHおよび/またはLiHおよび/またはLiFおよび/またはLi2SiO4(Li2SiO2、ペンタケイ酸リチウムLi2SiO5、メタケイ酸リチウムLi2SiO3などをさらに含み得る)および/またはリチウム合金を含み、好ましくは、本実施形態において、還元剤は、C源還元剤またはAl源還元剤またはMg源還元剤を含み、SiO2鉱石粒子とそれぞれ対応して炭素熱還元反応、アルミニウム熱還元反応、マグネシウム熱還元反応を行うために使用される。
【0023】
本出願人は、C源還元剤を好ましい還元剤として用い、SiO2鉱石粒子と炭素熱還元反応を行うことを提案し、好ましくは、本実施形態において、C源還元剤は、石油コークス、ピッチコークス、炭、木塊、セミコークス、低灰分炭素のうちの1つ又は複数の混合物から選ばれてもよく、さらに、その他の公知のC源還元剤を使用してもよく、好ましくは、本実施形態において、SiO2鉱石粒子の十分な加熱還元反応を実現するために、SiO2鉱石粒子とC源還元剤との重量部比率は1:1~6:1であり、より好ましくは1.3:1~4:1であり、さらに好ましくは1.5:1~3:1である。
【0024】
具体的に、好ましくは、還元効果を促進できるように、本実施形態において、C源還元剤は木炭と低灰分炭素の混合物を含むことが提案され、木炭と低灰分炭素との重量部比率が1:1~1:4、より好ましくは1:1.5~1:3、さらに好ましくは1:1.8~1:2.5である。
【0025】
好ましくは、本実施形態において、SiO2鉱石粒子は、リチウム含有SiO2鉱石粒子を含み、リチウム含有SiO2鉱石粒子は、Li含有鉱物を粉砕、選別および/または浮選することによって得られ、好ましくは、本実施形態において、Li含有鉱物には、リチウム含有輝石および/またはリチウムマイカおよび/またはペタライトおよび/またはアンブリゴナイトおよび/またはユークリプタイトが含まれ、もちろん他の公知のLi含有鉱物が含まれてもよく、これらはいずれも本願の実施可能な範囲である。
【0026】
本願の実施例では、原料としてリチウム含有SiO2鉱石粒子を好ましく用いることで、加熱還元反応時のLi源添加剤との相溶性にさらに寄与し、シリコン融液とLi源(通常、単体Li金属)によって形成されたリチウム-シリコン合金をより安定的に分布させることができ、さらに詳しく説明すれば、実際に実施する際に、Li源添加剤として金属Liを使用した場合、金属Liはシリコン融液と直接リチウム-シリコン合金を形成することができ、Li源添加剤としてリチウム含有化合物を使用した場合、それは炭素熱還元反応の雰囲気で単体Li金属に還元されることになり、中でも、Li2O、Li2CO3は安定性が高いため、好ましいLi源添加剤であるが、特に指摘されるように、Li2Oおよび/またはLi2CO3をLi源添加剤として使用した場合、ギブズ自由エネルギー(Gibbs free energy)を分析したところ、通常の条件では、Li2O、Li2CO3は金属Li単体に還元されにくいことが判明し、しかし、出願人は、還元炉内の極端な高温条件で、CとSiが同時に還元剤として作用し、Li2CO3をLi2OとCO2に効果的に還元することができ、かつ、生成したLi2Oが分解されていないLi2CO3を包み込み、Li2Oの一部は引き続き反応して単体Li金属を形成し、さらにシリコン融液とリチウム-シリコン合金を形成し、未反応のリチウム塩化合物の一部は、その後の還元炉でのストッキングプロセスにおいて、リチウム含有金属珪素に微量に入り込み、さらに合金を形成することを発見した。
【0027】
好ましくは、還元炉内のSiO2鉱石粒子と還元剤との加熱還元反応の効果を促進するために、本実施形態において、反応装置として公知の炭素熱還元炉を用いることができ、好ましくは、炭素熱還元炉の電極は黒鉛電極または炭素電極であり、その低圧側電圧を80~190KVに維持し、電流を35000~300000A、電極温度を2000~2400℃にし、1回の原料供給量を約100KGに制御してもよく、かつ連続反応を用い、1回の炭素熱還元反応時間を2~3時間にしてもよい。
【0028】
好ましくは、本実施形態において、リチウム含有金属珪素の融液を鋳塊化槽に移し、鋳塊化槽内の融液を冷却した後、固形状のリチウム含有金属珪素を得る。
【0029】
好ましくは、本実施形態において、本実施例に記載のような調製方法によって調製されたリチウム含有金属珪素であって、このリチウム含有金属珪素は、リチウム-シリコン合金とリチウムケイ酸塩を含み、具体的に実施する場合、鋳塊化槽内の融液を冷却した後、サンプリングして分析したところ、得られた生成物はリチウム含有金属珪素であり、リチウム含有金属珪素全体の純度を95%以上に維持することができ、好ましくは97%以上であり、リチウム含有金属珪素に含まれるリチウムは、リチウム-シリコン合金の形態で存在し、さらにLi2SiO2および/またはLi2SiO4および/またはLi2SiO5および/またはLi2SiO3および/またはその他のリチウムケイ酸塩などの形態で存在してもよく、リチウム含有金属珪素に含まれるLiは、均一に分布し、確実かつ安定的である。
【0030】
好ましくは、リチウム含有SiOであって、本実施例の上述したようなリチウム含有金属珪素およびSiO2粉末を原料として用い、リチウム含有金属珪素の少なくとも一部をSiO2粉末と不均化昇華反応させてリチウム含有SiOを得、さらに好ましくは、実際に実施する場合、リチウム含有金属珪素を予め粉砕してリチウム含有金属珪素粉末とし、リチウム含有金属珪素粉末とSiO2粉末を混合した後、ルツボ内に入れ、当該ルツボを真空蒸着炉(加熱温度範囲を1000~1400℃に制御)内に置いて不均化昇華反応を行い、不均化昇華反応により生成したリチウム含有SiOガスを凝縮室に入れて凝縮させ、塊状のリチウム含有SiOを形成し、好ましくは、本実施形態において、リチウム含有金属珪素粉末の平均粒子径は4mm以下であり、より好ましくは10μm~3mmであり、さらに好ましくは20μm~2mmであり、リチウム含有金属珪素粉末とSiO2粉末との重量部比率は、約1:2になるように選択されてもよい。
【0031】
好ましくは、本実施形態において、リチウム含有SiOを粉砕してリチウム含有SiO粉末とし、リチウム含有SiO粉末の少なくとも一部の外面を炭素被覆層で被覆し、炭素被覆層を含むリチウム含有SiO粉末を得、好ましくは、本実施形態において、リチウム含有SiO粉末の平均粒子径は、50μm以下であることが推奨され、より好ましくは2~30μmであり、本実施形態において、炭素被覆層の作製プロセスは、関連する公知の工程を直接参照でき、本実施例では、特別かつ一義的に限定されるものではなく、具体的には以下の例を挙げることができる。
【0032】
本実施例の炭素被覆層の作製プロセスは、特殊アスファルト、フェノール樹脂、フルフリルアルコールなどを本願の実施例で提供されるリチウム含有SiO粉末と均一に混合し、不活性雰囲気下で700~1000℃まで昇温させて焼結し、冷却した後に取り出し、粉砕・解重合して作製を完了することであってもよく、本願の実施例で提供されるリチウム含有SiO粉末を振盪床、流動床、振動床に入れ、メタン、アセチレン、プロピレン、エタノール蒸気、不活性ガスなどを通し、600~1000℃まで昇温させてクラッキング反応を行い、冷却した後に取り出して作製を完了することであってもよく、もちろん他の公知の方法で本実施例の炭素被覆層を作製してもよいが、本願では一義的に限定されるものではない。
【0033】
好ましくは、上述したようなリチウム含有SiOの応用であって、炭素被覆層を含むリチウム含有SiO粉末を電池用負極極片の作製のための活物質原料として使用し、具体的に実施する場合、電池用負極極片の調製プロセスは、任意の公知のプロセスを用いてもよく、この部分が本願の革新内容に該当せず、本願はそれに対して何ら限定するものではない。
【0034】
当業者が本発明の技術的解決手段を容易に理解できるように、以下は本発明の実施例における図面と併せて、本発明の実施例における技術的解決手段を明確かつ完全に説明し、当然ながら、記述した実施例は、本発明の実施例の一部に過ぎず、その全てではない。本発明の実施例に基づき、当業者が創造的労力を要することなく得られた他のすべての実施例は、本発明の保護範囲に含まれるものとする。
【0035】
実施例1:以下のステップ1からステップ6に従って、リチウム含有金属珪素を調製する。
ステップ1において、リシア輝石およびリチウムマイカを含有するペグマタイトを原料として、粉砕、選別、浮選によりリチウム含有SiO
2鉱石粒子(そのXRD走査画像は
図5を参照でき)を得、検出したところ、リチウム含有SiO
2鉱石粒子の平均粒子径は約1mmであり、SiO
2の重量部比率は70%であることが確認された。
【0036】
ステップ2において、ステップ1で得られたリチウム含有SiO2鉱石粒子の原料を100kg取り、炭素系還元剤としての木炭および低灰分炭素と均一に混合し、木炭と低灰分炭素の合計重量は40kgであり、木炭と低灰分炭素の重量部比率を32:68に制御する。
【0037】
ステップ3において、ステップ2で得られた混合物に、Li源添加剤としてのLi2CO3を添加し、均一に混合し、混合原料全体におけるLi源添加剤の重量部比率は6wt%である。
【0038】
ステップ4において、ステップ3で得られた混合物を適切なサイズの塊状物に成形する(具体的なサイズは実際のニーズに応じて決定することができる)。
【0039】
ステップ5において、
図1を参照し、ステップ4で得られた塊状物を三相炭素熱還元炉に入れ、電極として黒鉛電極または炭素電極を用い、低圧側電圧を80~190KVに維持し、電流を35000~300000A、電極温度を2000~2400℃にし、1回の原料供給量を100KGにし、かつ連続反応を用い、1回の炭素熱還元反応時間を2~3hにする。
【0040】
ステップ6において、
図2を参照し、ステップ5の完了後、シリコン融液を鋳塊化槽に収集し、融液の流出時間を約30minにし、鋳塊化槽のシリコン融液を冷却した後、リチウム含有金属珪素の完成品(そのXRD走査画像は
図6を参照でき)を得、サンプリングして分析したところ、得られた生成物がリチウム含有金属珪素であり、純度が約97%であり、リチウム含有金属珪素に含まれるLiは、リチウム-シリコン合金、Li
2SiO
2、Li
2SiO
4、Li
2SiO
5、Li
2SiO
3などの形態で存在する。
【0041】
本願の実施中、リチウム含有金属珪素の完成品のサイズや形状を実際のニーズに応じて選択することができ、さらに
図3を参照し、塊状のリチウム含有金属珪素の完成品として調製されてもよく、これに対し、本願では特に限定されない。
【0042】
以下のステップ7からステップ8に従って、リチウム含有SiOを調製する。
【0043】
ステップ7において、ステップ6で得られたリチウム含有金属珪素を粉砕して、平均粒子径が約0.5mmのリチウム含有金属珪素粉末とし、SiO2粉末と1:2の重量部比率で均一に混合する。
【0044】
ステップ8において、ステップ7で得られた混合物をルツボに入れ、その後、真空蒸着炉に置いて約1200℃に加熱し、SiO
2粉末とリチウム含有金属珪素粉末を不均化昇華反応を行い、反応によって生成した一酸化ケイ素SiOガスを凝縮室に入れて、凝縮・結晶化を行い、塊状のリチウム含有SiOを得る(そのXRD走査画像は
図7を参照)。
【0045】
以下のステップ9に従って、炭素被覆層を作製する。
【0046】
ステップ9において、ステップ8で得られたリチウム含有SiOを粉砕して、平均粒子径が約15μmのリチウム含有SiO粉末とし、特殊アスファルト、フェノール樹脂、フルフリルアルコールをリチウム含有SiO粉末と均一に混合し、不活性雰囲気下で900℃まで昇温させる温度条件下で焼結し、冷却した後に取り出し、粉砕・解重合して炭素被覆層を含むリチウム含有SiO粉末(平均粒子径は2~30μm)を得る。
【0047】
以下のステップS10)からステップS70)に従って、ボタン電池の負極極片を作製する。
【0048】
S10)において、ステップ9で得られた、炭素被覆層を含むリチウム含有SiO粉末を活物質として用い、同時に導電剤賦形剤としてCNTs、CMC、SBR、SPを順に秤量し、ミキサを利用して600r/minの速度で20min撹拌し、脱泡を5min行う。
【0049】
S20)において、活物質と上記の導電剤賦形剤のSP:CNTs:CMC:SBRを80:15.85:0.15:2.5の重量部比率で混合してスラリーとし、ミキサを利用して600r/minで60min撹拌し、脱泡を5min行う。
【0050】
S30において)、ガラス板を用いて銅箔をA4用紙のサイズに切断し、半自動塗工機に内側を上にして平置きし、その後、ステップS20)で得られたスラリーをスキージでさらに塗工して極片を成形する。
【0051】
S40)において、塗工終了後に加熱を開始し、極片の表面を乾燥してから、真空乾燥箱に移して、さらに約6h乾燥する。
【0052】
S50)において、乾燥した極片を真空乾燥箱から取り出し、切断、圧延を行う。圧延された極片をボタン電池スライサーでスライスし、直径12mmの円形極片(そのXRD走査画像は
図8を参照)に切断する。
【0053】
S60)において、ステップS50)で得られた円形極片を計量して負極極片とし、その負極極片、正極極片としてのリチウム片、リチウム片セパレータ、正極ケース、負極ケース、ガスケット、弾性片などをグローブボックスに移して組み立て、電池ケースのモデルは2032であり、リチウム片のサイズは16mm*0.6mmであり、リチウム片セパレータは19mmである。
【0054】
S70)において、組み立てられた電池をピンセットでボタン電池用封口装置に移動させて、電池を封口する。
【0055】
本願では、実施例1のボタン電池に対して試験を行い、使用した試験条件は以下のとおりである。
【0056】
組み立てられた電池をグローブボックスから取り出し、室温(23±2℃)で数時間放置してから熟成させ、その後、電池を試験装置にクランプして、以下の充放電条件で試験を行う。
【0057】
充放電電流は0.1C(1C=700mA/g)であり、充放電カットオフ電圧の範囲は0.001V~1.5Vであり、このような充放電条件で5回サイクルする。
【0058】
本実施例1のボタン電池の容量試験グラフは
図9(ここで、
図9の横座標は容量Specific Capacityであり、縦座標は充放電電圧Voltage)を参照し、電池の初期クーロン効率のデータは以下の表1に示すとおりである。
【0059】
【0060】
上の表からわかるように、実施例1のボタン電池の初期クーロン効率は89.89%である。
【0061】
実施例2:本実施例2では、混合原料全体におけるLi源添加剤の重量部比率が8wt%である以外、本実施例2の技術的解決手段は実施例1と同様である。
【0062】
実施例3:本実施例3では、混合原料全体におけるLi源添加剤の重量部比率が10wt%である以外、本実施例3の技術的解決手段は実施例1と同様である。
【0063】
実施例4:本実施例4では、混合原料全体におけるLi源添加剤の重量部比率が2wt%である以外、本実施例4の技術的解決手段は実施例1と同様である。
【0064】
実施例5:本実施例5では、混合原料全体におけるLi源添加剤の重量部比率が1wt%である以外、本実施例5の技術的解決手段は実施例1と同様である。
【0065】
実施例6:本実施例6では、Li源添加剤としてLi2Oを使用する以外、本実施例6の技術的解決手段は実施例1と同様である。
【0066】
実施例7:本実施例7では、Li源添加剤として金属Liを使用する以外、本実施例7の技術的解決手段は実施例1と同様である。
【0067】
実施例8:本実施例8では、Li源添加剤としてLiF、Li2SiO4を1:1で使用する以外、本実施例8の技術的解決手段は実施例1と同様である。
【0068】
実施例9:本実施例9では、ステップ1において、Li含有鉱物の原料としてペタライト、アンブリゴナイトおよびユークリプタイトを使用する以外、本実施例9の技術的解決手段は実施例1と同様である。
【0069】
実施例10:本実施例10では、ステップ1において、原料としてSiO2鉱石を使用する以外、本実施例10の技術的解決手段は実施例1と同様である。
【0070】
実施例11:本実施例11では、C源還元剤に代えてAl源還元剤を使用し、リチウム含有SiO2鉱石粒子とアルミニウム熱還元反応を発生させることと、反応条件および反応装置に対して実際の反応要件に応じて通常の調整を行ってシリコン融液を得ることができる以外、本実施例11の技術的解決手段は実施例1と同様である。
【0071】
実施例12:本実施例12では、C源還元剤に代えてMg源還元剤を使用し、リチウム含有SiO2鉱石粒子とマグネシウム熱還元反応を発生させることと、反応条件および反応装置に対して実際の反応要件に応じて通常の調整を行ってシリコン融液を得ることができる以外、本実施例12の技術的解決手段は実施例1と同様である。
【0072】
実施例1と同じ検出条件を用いて検出したところ、実施例2~12の電池容量は1200~1600mah/gに維持され、電池の初期クーロン効率は86~92%であり、実施例10は、他の実施例と比較して電池の容量および初期クーロン効率が若干に低下し、このため、実施例10は、他の実施例に対して準最適実施例である。
【0073】
比較例1:本比較例1では、ステップ3を省略し、ステップ4において、ステップ2で得られた混合物を直接適切な大きさの塊状物にする以外、本比較例1の技術的解決手段は実施例1と同様である。
【0074】
実施例1と同じ検出条件を用いて検出したところ、電池容量は約1000mah/gであり、電池の初期クーロン効率は約84%であった。
【0075】
比較例2:本比較例2では、ステップ1において原料としてSiO2鉱石を用い、かつステップ3を省略し、ステップ4において、ステップ2で得られた混合物を直接適切な大きさの塊状物にする以外、本比較例2の技術的解決手段は実施例1と同様である。
【0076】
実施例1と同じ検出条件を用いて検出したところ、電池容量は約550mah/gであり、電池の初期クーロン効率は70%以下であった。
【0077】
比較例3:CN105789577Aにおける実施例1の技術的解決手段を採用し、プロセスの実施が困難であり、運用リスクも高い。
【0078】
実施例1と同じ検出条件を用いて検出したところ、電池容量は約950mah/gであり、電池の初期クーロン効率は約79%であった。
【0079】
比較例4:CN110993949Aにおける実施例1の技術的解決手段を採用し、プロセスの実施が困難であり、運用リスクも高い。
【0080】
実施例1と同じ検出条件を用いて検出したところ、電池容量は約980mah/gであり、電池の初期クーロン効率は約87%であった。
【0081】
以上の実施例および比較例の実施効果の比較によって、本願の実施例で使用される原料は豊富で入手しやすく、コストが低く、使用される調製手段は、簡単で実施しやすく、大規模な生産と応用に寄与し、生産リスクを低減でき、また、得られたリチウム含有金属珪素およびリチウム含有SiOにおけるLiは、均一に分布しており、本願の実施例で提供される、炭素被覆層を含むリチウム含有SiOを電池用負極極片の作製のための活物質原料として使用した場合、電池はより高い容量と初期クーロン効率を発現することができるということが確認され得る。
【0082】
本発明は上記の例示的な実施例の詳細に限定されるものではなく、本発明の精神または本質的な特徴から逸脱することなく、他の具体的な形態で本発明を実施可能であることは、当業者にとって自明である。したがって、実施例は、いずれの観点からも例示的かつ非限定的であるとみなされるべきであり、本発明の範囲は、上記の説明ではなく、添付の特許請求の範囲によって限定されるため、請求項の同等の要素の意味および範囲に入るすべての変形を本発明に包含することが意図される。特許請求の範囲に付された参照番号は、当該特許請求の範囲を限定するものと見なしてはならない。
【0083】
さらに、理解されるように、本明細書は実施形態に従って記載されているが、各実施形態が1つの別個の技術的解決手段のみを含むわけではなく、本明細書でのこのような記載方式は説明を明確化するためのものに過ぎず、当業者は本明細書を全体として捉えるべきであり、各実施例の技術的解決手段はまた、当業者が理解し得る他の実施形態を形成するために適当に組み合わせることが可能である。
【国際調査報告】