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特表2024-518143ニトロフェニル-アクリルアミドおよびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-25
(54)【発明の名称】ニトロフェニル-アクリルアミドおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07C 255/36 20060101AFI20240418BHJP
   C07C 323/14 20060101ALI20240418BHJP
   C07C 271/20 20060101ALI20240418BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240418BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240418BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240418BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240418BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240418BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240418BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240418BHJP
   A61K 31/397 20060101ALI20240418BHJP
   A61K 31/4025 20060101ALI20240418BHJP
   A61K 31/277 20060101ALI20240418BHJP
   A61K 31/4015 20060101ALI20240418BHJP
   A61K 31/4155 20060101ALI20240418BHJP
   A61K 31/4164 20060101ALI20240418BHJP
   A61K 31/4166 20060101ALI20240418BHJP
   A61K 31/415 20060101ALI20240418BHJP
   A61K 31/4245 20060101ALI20240418BHJP
   A61K 31/40 20060101ALI20240418BHJP
   A61K 31/4402 20060101ALI20240418BHJP
   A61K 31/505 20060101ALI20240418BHJP
   A61K 31/341 20060101ALI20240418BHJP
   C07D 205/04 20060101ALI20240418BHJP
   C07D 405/04 20060101ALI20240418BHJP
   C07D 207/27 20060101ALI20240418BHJP
   C07D 403/04 20060101ALI20240418BHJP
   C07D 207/273 20060101ALI20240418BHJP
   C07D 233/64 20060101ALI20240418BHJP
   C07D 233/66 20060101ALI20240418BHJP
   C07D 231/12 20060101ALI20240418BHJP
   C07D 413/04 20060101ALI20240418BHJP
   C07D 207/06 20060101ALI20240418BHJP
   C07D 213/30 20060101ALI20240418BHJP
   C07D 239/26 20060101ALI20240418BHJP
   C07D 307/22 20060101ALI20240418BHJP
   C07D 207/12 20060101ALI20240418BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20240418BHJP
   C12N 5/078 20100101ALN20240418BHJP
   C12N 5/0797 20100101ALN20240418BHJP
【FI】
C07C255/36 CSP
C07C323/14
C07C271/20
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 105
A61P43/00 111
A61P3/00
A61P3/04
A61P3/10
A61P25/28
A61K31/397
A61K31/4025
A61K31/277
A61K31/4015
A61K31/4155
A61K31/4164
A61K31/4166
A61K31/415
A61K31/4245
A61K31/40
A61K31/4402
A61K31/505
A61K31/341
C07D205/04
C07D405/04
C07D207/27 Z
C07D403/04
C07D207/273
C07D233/64
C07D233/66
C07D231/12 C
C07D413/04
C07D207/06
C07D213/30
C07D239/26
C07D307/22
C07D207/12
C12Q1/02
C12N5/078
C12N5/0797
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562910
(86)(22)【出願日】2022-04-15
(85)【翻訳文提出日】2023-11-29
(86)【国際出願番号】 US2022025068
(87)【国際公開番号】W WO2022221689
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】63/175,476
(32)【優先日】2021-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518223753
【氏名又は名称】ブラウン ユニバーシティ
(71)【出願人】
【識別番号】500430718
【氏名又は名称】ロード アイランド ホスピタル
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】タピノス, ニコラオス
(72)【発明者】
【氏名】ゼペッキ, ジョン
(72)【発明者】
【氏名】カラムビジ, デイビッド
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C055
4C063
4C086
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ08
4B063QR77
4B063QR90
4B063QS31
4B065AA90X
4B065AC14
4B065CA44
4B065CA46
4C055AA01
4C055BA02
4C055BA16
4C055BB02
4C055BB10
4C055CA01
4C055DA01
4C063AA01
4C063BB01
4C063CC22
4C063CC58
4C063CC75
4C063DD02
4C063DD03
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BA03
4C086BC02
4C086BC07
4C086BC08
4C086BC17
4C086BC36
4C086BC38
4C086BC42
4C086BC71
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA09
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA70
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC20
4C086ZC21
4C086ZC35
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206HA13
4C206HA22
4C206HA28
4C206JA25
4C206KA01
4C206KA17
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA01
4C206ZA70
4C206ZB21
4C206ZB26
4C206ZB27
4C206ZC20
4C206ZC21
4C206ZC35
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB28
4H006RA10
4H006TA04
(57)【要約】
ニトロフェニル-アクリルアミド化合物、それらの調製、およびそれらの使用が本明細書において提供される。本明細書に記載のニトロフェニル-アクリルアミド化合物は、脳腫瘍、例えば、神経膠芽腫の処置を含めて、有用で有効な治療薬であることが発見された。世界保健機関によれば、アクリルアミドは毒性であるので、これは驚くべきことである。神経膠芽腫は、最も一般的な原発性脳腫瘍であり、腫瘍増殖性神経膠腫幹細胞の存在により、最も致命的ながんの1種であり、本発明は、現行の療法に追加の処置選択肢を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式を有する化合物:
【化17】
またはその薬学的に許容される塩
[式中、
【化18】
は、単結合または二重結合であり;
は、C1~4アルキルであり;
は、C1~4アルキレンであり;
は、N、O、S、NH、CH、またはN-(C1~4アルキル)であり;
は、H、C1~4アルキル、または(C1~4アルキル)-OHであるか;
またはRおよびRは組み合わさって、C2~6ヘテロシクロアルキルを形成しており;
は、C(O)N(H)(C1~4アルキル)、C(O)N(H)(C2~6ヘテロシクロアルキル)、ヘテロアリール、ヘテロアリール-(C1~4アルキル)、C(O)H、CN、ピロリジノニル、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、C(O)O(C1~4アルキル)、C(O)NH、C(O)N(H)C(O)H、(C1~4アルキル)-OH、C2~6ヘテロシクロアルキル-C(O)H、またはO-(C1~4アルキル)であるか;
またはRおよびRは組み合わさって、CO、C3~7シクロアルキル、C2~6ヘテロシクロアルキル、ピロリジノニル、ピロリジノニル-(C1~4アルキル)、またはイミダゾリジノニル-OHを形成しており;
は、H、CN、C(O)H、C1~4アルキル、ヘテロアリール、O-(C1~4アルキル)、O-(C1~4アルキル)-OH、N(H)-(C1~4アルキル)、またはN(H)-(C1~4アルキル)-OHである]。
【請求項2】
が、メチルまたはエチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、メチレンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
【化19】
が、単結合であり、Rが、N、O、またはSである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
【化20】
が、二重結合であり、Rが、NHまたはCHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
が、HまたはC1~4アルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
ヘテロアリールの各事例が独立に、フラニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、ピロリル、ピラゾリル、またはイミダゾリルを指す、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
およびRが組み合わさって、C2~6ヘテロシクロアルキルを形成している、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
およびRが組み合わさって、CO、C3~7シクロアルキル、ピロリジノニル、ピロリジノニル-(C1~4アルキル)、またはイミダゾリジノニル-OHを形成している、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
が、N、O、S、NH、CH、またはN-(C1~4アルキル)であり;
が、H、C1~4アルキル、または(C1~4アルキル)-OHであり;
が、C(O)N(H)(C1~4アルキル)、ヘテロアリール、ヘテロアリール-(C1~4アルキル)、C(O)H、CN、ピロリジノニル、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、C(O)O(C1~4アルキル)、C(O)NH、C(O)N(H)C(O)H、(C1~4アルキル)-OH、またはO-(C1~4アルキル)である、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
下式:
【化21】
を有する、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩
[式中、
は、
【化22-1】
【化22-2】
である]。
【請求項12】
【化23-1】
【化23-2】
【化23-3】
から選択される、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項13】
請求項1から12のうちの一項に記載の化合物を含む組成物。
【請求項14】
薬学的に許容される担体をさらに含む医薬組成物である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
それを必要とする対象においてがんを処置する方法であって、治療有効量のエンタカポンまたはその薬学的に許容される塩、請求項1から12のうちの一項に記載の化合物、または請求項13もしくは請求項14に記載の組成物を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項16】
前記がんが脳腫瘍を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記がんが神経膠芽腫またはびまん性内因性橋膠腫を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記がんが、脳癌もしくは腫瘍、白血病、乳癌、肺癌、結腸癌、膵臓癌、卵巣癌、前立腺癌、または腎臓癌を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
細胞において脂肪量肥満関連タンパク質(FTO)またはNotch1活性を阻害する方法であって、前記細胞を、有効量のエンタカポンもしくはその薬学的に許容される塩、請求項1から12のうちの一項に記載の化合物、または請求項13もしくは請求項14に記載の組成物と接触させることを含む方法。
【請求項20】
前記細胞が、脳細胞(すなわち、神経膠腫幹細胞)、血液細胞、乳房細胞、肺細胞、結腸細胞、膵臓細胞、卵巣細胞、前立腺細胞、または腎臓細胞であり、必要に応じて前記接触が、対象においてであるか;または
前記接触がin vitroであり、必要に応じて、前記細胞が、脳細胞(すなわち、神経膠腫幹細胞)、血液細胞、乳房細胞、肺細胞、結腸細胞、膵臓細胞、卵巣細胞、前立腺細胞、または腎臓細胞である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
容器内に収容されていて、必要に応じて、前記容器が前記容器を通過する可視光線または紫外線の透過を減少させる、または遮断する、請求項1から14のうちの一項に記載の化合物または組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年4月15日出願の米国仮特許出願第63/175,476号に基づく優先権を主張し、その内容全体が参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
背景
神経膠芽腫は、最も一般的な原発性脳腫瘍であり、腫瘍増殖性神経膠腫幹細胞の存在により、最も致命的ながんの1種である。現行の治療選択肢には、外科的切除、化学療法、および放射線が含まれる。これらの処置でも、ことによると一時的に有効なこともあるが、一般には、さらなる症状または再発の開始を遅延させるに過ぎず、望ましくない副作用を含む。さらに、現行の療法の有用性にも関わらず、これらの現行の選択肢を使用しての治療介入後の再発は残念なことに不可避である。したがって、追加の処置選択肢が必要とされている。
したがって、神経膠芽腫を含む脳腫瘍などの疾患を処置するために有用な化合物を本明細書において提供する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Russian Journal of Physical Chemistry B, 2019, 13, 49-61
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
要旨
一部の実施形態では、下式を有するニトロフェニル-アクリルアミド化合物:
【化1】
またはその薬学的に許容される塩を本明細書において提供する。
【0005】
一部の実施形態では、下式を有するニトロフェニル-アクリルアミド化合物:
【化2】
またはその薬学的に許容される塩を本明細書において提供する。
【0006】
一部の実施形態では、方法を本明細書において提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、エンタカポンで48時間処置された2つの患者由来神経膠腫幹細胞(GSC)におけるqPCRアレイの結果を示す。この結果は、様々ながん幹細胞転写物の著しい阻害を示す。
【0008】
図2図2は、エンタカポン処置後の66時間にわたるライブイメージングの正規化GSC侵襲面積を示す(上の線はDMSOであり、下の線は40μMエンタカポンである)。
【0009】
図3図3は、実施例7により記載されているとおりにエンタカポンにより誘導されるNotch1タンパク質発現の阻害を示す。
【0010】
図4図4は、実施例8に記載の共通のコア中間体(CORE)の合成スキームを示す。
【0011】
図5図5は、実施例9に記載の化合物1のための合成スキームを示す。
【0012】
図6図6は、実施例10に記載の化合物20のための合成スキームを示す。
【0013】
図7図7は、実施例11に記載の化合物29のための合成スキームを示す。
【0014】
図8図8は、実施例12に記載の化合物31のための合成スキームを示す。
【0015】
図9図9は、実施例13に記載の化合物33のための合成スキームを示す。
【0016】
図10図10は、実施例14に記載の化合物35のための合成スキームを示す。
【0017】
図11図11は、化合物31(四角形)による神経膠腫幹細胞侵襲の阻害を、対照DMSO(円形)と比較して示す。
【0018】
図12図12は、化合物31(右側)による神経膠腫幹細胞侵襲の阻害を、対照DMSO(左側)と比較して示す。
【0019】
図13図13は、びまん性内因性橋膠腫細胞の自己複製能の化合物31による阻害を示す。
【0020】
図14図14は、化合物31によるびまん性内因性橋膠腫細胞侵襲の阻害を、対照DMSOと比較して示す。水平な中実の黒色のバーは800μmを表す。
【0021】
図15図15は、化合物31によるびまん性内因性橋膠腫細胞侵襲の定量化阻害を、対照DMSOと比較して示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
本明細書に記載のニトロフェニル-アクリルアミド化合物は、脳腫瘍、例えば、神経膠芽腫の処置を含めて、有用で有効な治療薬であることが発見された。世界保健機関によれば、アクリルアミドは毒性であるので、これは驚くべきことである。さらに、アクリルアミドは、がん治療薬として好適ではなく、むしろ、潜在的な発がん性化学物質である。加えて、アクリルアミドの誘導体、N-(4-ニトロフェニル)アクリルアミドは、HeLa細胞において1mMのIC50で、がん細胞に対して低いin vitro毒性を有することが判明している(Russian Journal of Physical Chemistry B, 2019, 13, 49-61)。したがって、アクリルアミド、ひいてはニトロフェニル-アクリルアミドは、潜在的に発がん性であり、効果のないがん阻害薬として一般に理解されている一群の化合物を表す。
【0023】
本明細書において提供される化合物は、脂肪量と肥満に関連するタンパク質(FTO)阻害薬であることも発見された。METTL3の過剰発現またはRNAデメチラーゼFTOの阻害が神経膠腫幹細胞(GSC)増殖および自己複製を抑制するので、これは有用である。さらに、メクロフェナム酸のエチルエステルでのFTOの阻害は腫瘍進行を抑制し、GSC移植マウスの寿命を実質的に延長することが示された。したがって、本明細書に記載の化合物は、FTO阻害薬として、またはFTO関連疾患の処置において有用である。
【0024】
本明細書において提供される化合物はNotch1阻害薬であることも発見された。NotchファミリーのメンバーであるNotch1は乳癌(一部の実施形態では、三種陰性乳癌)、白血病、脳腫瘍、肺癌(一部の実施形態では、非小細胞肺癌)、および多くの他のがんを含む多くの種類のがんに関与しているので、これは有用である。したがって、本明細書に記載の化合物は、Notch1阻害薬、またはNotch1関連疾患の処置において有用である。
化合物/組成物
【0025】
したがって、ニトロフェニル-アクリルアミドおよびその使用を本明細書において提供する。一部の実施形態では、下式を有する化合物:
【化3】
またはその薬学的に許容される塩を本明細書において提供する
[式中、
【化4】
は、単結合または二重結合であり;
は、C1~4アルキルであり;
は、C1~4アルキレンであり;
は、N、O、S、NH、CH、またはN-(C1~4アルキル)であり;
は、H、C1~4アルキル、または(C1~4アルキル)-OHであるか;
またはRおよびRは組み合わさって、C2~6ヘテロシクロアルキルを形成しており;
は、C(O)N(H)(C1~4アルキル)、C(O)N(H)(C2~6ヘテロシクロアルキル)、ヘテロアリール、ヘテロアリール-(C1~4アルキル)、C(O)H、CN、ピロリジノニル、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、C(O)O(C1~4アルキル)、C(O)NH、C(O)N(H)C(O)H、(C1~4アルキル)-OH、C2~6ヘテロシクロアルキル-C(O)H、またはO-(C1~4アルキル)であるか;
またはRおよびRは組み合わさって、CO、C3~7シクロアルキル、C2~6ヘテロシクロアルキル、ピロリジノニル、ピロリジノニル-(C1~4アルキル)、またはイミダゾリジノニル-OHを形成しており;
は、H、CN、C(O)H、C1~4アルキル、ヘテロアリール、O-(C1~4アルキル)、O-(C1~4アルキル)-OH、N(H)-(C1~4アルキル)、またはN(H)-(C1~4アルキル)-OHである]。
【0026】
本明細書において提供される式の一部の実施形態では、
は、H、C1~4アルキル、または(C1~4アルキル)-OHであるか;
またはRおよびRは組み合わさって、C2~6ヘテロシクロアルキルを形成しており;
は、C(O)N(H)(C1~4アルキル)、ヘテロアリール、ヘテロアリール-(C1~4アルキル)、C(O)H、CN、ピロリジノニル、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、C(O)O(C1~4アルキル)、C(O)NH、C(O)N(H)C(O)H、(C1~4アルキル)-OH、またはO-(C1~4アルキル)であるか;
またはRおよびRは組み合わさって、CO、C3~7シクロアルキル、ピロリジノニル、ピロリジノニル-(C1~4アルキル)、またはイミダゾリジノニル-OHを形成している。
【0027】
一部の実施形態では、下式を有する化合物:
【化5】
またはその薬学的に許容される塩を本明細書において提供する
[式中、
は、C1~4アルキルであり;
は、C1~4アルキレンであり;
は、
【化6-1】
【化6-2】
である]。
【0028】
本明細書において提供される式の一部の実施形態では、Rは、メチルまたはエチルである。
【0029】
本明細書において提供される式の一部の実施形態では、Rはメチレンである。
【0030】
本明細書において提供される式の一部の実施形態では、
は、N、O、S、NH、CH、またはN-(C1~4アルキル)であり;
は、H、C1~4アルキル、または(C1~4アルキル)-OHであり;
は、C(O)N(H)(C1~4アルキル)、ヘテロアリール、ヘテロアリール-(C1~4アルキル)、C(O)H、CN、ピロリジノニル、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、C(O)O(C1~4アルキル)、C(O)NH、C(O)N(H)C(O)H、(C1~4アルキル)-OH、またはO-(C1~4アルキル)である。
【0031】
本明細書において提供される式の一部の実施形態では、Rは、N、NH、またはOである。一部の実施形態では、RはOまたはSである。
【0032】
一部の実施形態では、
【化7】
は、単結合であり、Rは、N、O、またはSである。
【0033】
一部の実施形態では、
【化8】
は、二重結合であり、Rは、NHまたはCHである。
【0034】
一部の実施形態では、Rは、HまたはC1~4アルキルである。一部の実施形態では、Rは、H、メチル、またはエチルである。
【0035】
一部の実施形態では、RおよびRは組み合わさって、C2~6ヘテロシクロアルキルを形成している。一部の実施形態では、RおよびRは組み合わさって、N、O、またはSから独立に選択される1、2または3個のヘテロ原子を有するC2~6ヘテロシクロアルキルを形成している。一部の実施形態では、RおよびRは組み合わさって、NまたはOから独立に選択される1または2個のヘテロ原子を有するC2~5ヘテロシクロアルキルを形成している。
【0036】
一部の実施形態では、RおよびRは組み合わさって、CO、C3~7シクロアルキル、ピロリジノニル、ピロリジノニル-(C1~4アルキル)、またはイミダゾリジノニル-OHを形成している。一部の実施形態では、RおよびRは組み合わさって、CO、C3~4シクロアルキル、ピロリジノニル、ピロリジノニル-(C1~2アルキル)、またはイミダゾリジノニル-OHを形成している。
【0037】
一部の実施形態では、Rは、
【化9】
である。
【0038】
一部の実施形態では、Rは、
【化10】
である。
【0039】
一部の実施形態では、Rは、
【化11】
である。
【0040】
一部の実施形態では、Rは、
【化12】
である。
【0041】
一部の実施形態では、Rは、
【化13-1】
【化13-2】
である。
【0042】
一部の実施形態では、Rは、
【化14】
である。
【0043】
一部の実施形態では、Rは、エチルであり、Rは、メチレンである。
【0044】
本明細書において提供される式の一部の実施形態では、C1~4アルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、イソブチル、またはシクロブチルを指す。
【0045】
一部の実施形態では、本明細書において提供される化合物は、表1から選択される化合物、またはその薬学的に許容される塩である。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【0046】
一部の実施形態では、C1~4アルキレンは、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、またはイソブチレンを指す。
【0047】
一部の実施形態では、ハロは、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素の1つまたは複数を指す。一部の実施形態では、C1~4ハロアルキルは、C1~4モノ-、ジ-、またはトリ-ハロアルキルを指す。一部の実施形態では、C1~4ハロアルキルは、C1~4フルオロアルキルまたはC1~4クロロアルキルを指す。一部の実施形態では、C1~4フルオロアルキルは、C1~4モノフルオロアルキル、C1~4ジフルオロアルキル、またはC1~4トリフルオロアルキルを指す。
【0048】
一部の実施形態では、ヘテロアリールは、N、O、またはSから独立に選択される1、2、3、4、5、または6個のヘテロ原子を有するC3~15ヘテロアリール(すなわち、C3~10またはC3~9)基を指す。一部の実施形態では、ヘテロアリールは、単環式である。一部の実施形態では、ヘテロアリールは、二環式または三環式であり、その環式環は、縮合しているか、または結合により連結している。一部の実施形態では、ヘテロアリールは、フラニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、ピロリル、ピラゾリル、またはイミダゾリルを指す。
【0049】
一部の実施形態では、本明細書において提供される化合物は、表1に示されている化合物、またはその薬学的に許容される塩から選択される。
【0050】
一部の実施形態では、本明細書において提供される化合物の1つまたは複数を含む組成物を本明細書において提供する。一部の実施形態では、組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含む医薬組成物である。
【0051】
一部の実施形態では、本明細書において提供される化合物または組成物は、容器内に収容することができ、必要に応じて、その容器は、容器を通過する可視光線または紫外線の透過を減少させる、または遮断する。そのような容器内に収容される化合物または組成物は、可視光線または紫外線に対して透過性である容器内に収容された場合と比較して遅い速度で分解し得る。
【0052】
本明細書に記載の化合物には、1個または複数の原子が、同じ原子番号を有するが、天然において主に見い出される原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子により置き換えられている同位体標識化合物も含まれる。本明細書に記載の化合物中に含まれるのが好適な同位体の例には、H、H、11C、13C、14C、36Cl、18F、123I、125I、13N、15N、15O、17O、18O、32P、および35Sが含まれるが、それらに限定されない。一部の実施形態では、同位体標識化合物は、薬物または基質組織分布研究において有用である。別の実施形態では、ジュウテリウムなどの重い同位体での置換は、より大きな代謝安定性(例えば、in vivo半減期の増大または投薬量要求の低減)をもたらし得る。また別の実施形態では、11C、18F、15Oおよび13Nなどの陽電子放射性同位体での置換は、基質受容体占有率を調べるための陽電子放出断層撮影法(PET)研究において有用である。同位体標識化合物は、任意の好適な方法により、または別段に使用される非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を使用するプロセスにより調製される。
【0053】
一部の実施形態では、本明細書に記載の化合物は、これに限定されないが、クロモフォアまたは蛍光部分、生物発光標識、または化学発光標識の使用を含む他の手段により標識される。
【0054】
本明細書に記載の化合物、および異なる置換基を有する他の関連化合物は、本明細書に記載の技法および物質を使用して、かつ例えば、Fieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis, Volumes 1-17 (John Wiley and Sons, 1991); Rodd's Chemistry of Carbon Compounds, Volumes 1-5 and Supplementals (Elsevier Science Publishers, 1989); Organic Reactions, Volumes 1-40 (John Wiley and Sons, 1991), Larock's Comprehensive Organic Transformations (VCH Publishers Inc., 1989), March, Advanced Organic Chemistry 4th Ed., (Wiley 1992); Carey and Sundberg, Advanced Organic Chemistry 4th Ed., Vols. A and B (Plenum 2000, 2001)、およびGreen and Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis 3rd Ed., (Wiley 1999)(これらはすべて、そのような開示について参照により援用される)に記載のとおりに合成される。本明細書に記載のとおりの化合物を調製するための一般方法は、本明細書において提供されるとおりの式において見い出される様々な部分を導入するために適切な試薬および条件の使用により変更される。
【0055】
本明細書に記載の化合物は、任意の好適な手順を使用して、市販品供給元から入手可能であるか、または本明細書に記載の手順を使用して調製される化合物から出発して合成される。
【0056】
一部の実施形態では、本明細書に記載の化合物は、実施例または図1において示されている合成スキームのいずれかを含む合成方法により調製することができる。
【0057】
一部の実施形態では、ヒドロキシル、アミノ、イミノ、チオ、またはカルボキシ基などの反応性官能基を、反応へのそれらの望ましくない参加を回避するために保護する。保護基は、保護基が除去されるまで、反応性部分の一部または全部をブロックして、そのような基が化学反応に参加することを防ぐために使用される。別の実施形態では、各保護基は、異なる手段により分離可能である。まったく共通点のない反応条件下で切断される保護基が、示差的分離の要件を満たす。
【0058】
一部の実施形態では、保護基を酸、塩基、還元条件(例えば、水素化分解により)、または酸化条件により除去する。トリチル、ジメトキシトリチル、アセタール、およびt-ブチルジメチルシリルなどの基は、酸不安定性であり、カルボキシおよびヒドロキシ反応性部分を保護するために、水素化分解により除去可能であるCbz基、および塩基不安定性であるFmoc基で保護されたアミノ基の存在下で使用される。カルボン酸およびヒドロキシ反応性部分は、t-ブチルカルバメートなどの酸不安定性基で、または酸および塩基の両方に安定性であるが、加水分解により除去可能であるカルバメートでブロックされるアミンの存在下で、これに限定されないが、メチル、エチル、およびアセチルなどの塩基不安定性基でブロックされる。
方法
【0059】
一部の実施形態では、細胞において脂肪量肥満関連タンパク質(FTO)活性を阻害する方法であって、前記細胞を有効量のエンタカポンまたはその薬学的に許容される塩と接触させることを含む方法を本明細書において提供する。
【0060】
一部の実施形態では、細胞においてFTO活性を阻害する方法であって、前記細胞を有効量の本明細書において提供される化合物と接触させることを含む方法を本明細書において提供する。
【0061】
一部の実施形態では、それを必要とする対象においてFTO活性を阻害する方法であって、前記対象に、有効量のエンタカポンまたはその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法を本明細書において提供する。
【0062】
一部の実施形態では、それを必要とする対象においてFTO活性を阻害する方法であって、前記対象に、有効量の本明細書において提供される化合物を投与することを含む方法を本明細書において提供する。
【0063】
一部の実施形態では、細胞においてNotch1活性を阻害する方法であって、前記細胞を有効量のエンタカポンまたはその薬学的に許容される塩と接触させることを含む方法を本明細書において提供する。
【0064】
一部の実施形態では、細胞においてNotch1活性を阻害する方法であって、前記細胞を有効量の本明細書において提供される化合物と接触させることを含む方法を本明細書において提供する。
【0065】
一部の実施形態では、それを必要とする対象においてNotch1活性を阻害する方法であって、前記対象に、有効量のエンタカポンまたはその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法を本明細書において提供する。
【0066】
一部の実施形態では、それを必要とする対象においてNotch1活性を阻害する方法であって、前記対象に、有効量の本明細書において提供される化合物を投与することを含む方法を本明細書において提供する。
【0067】
一部の実施形態では、それを必要とする対象においてがんを処置する方法であって、前記対象に、治療有効量のエンタカポンまたはその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法を本明細書において提供する。
【0068】
一部の実施形態では、それを必要とする対象においてがんを処置する方法であって、前記対象に、治療有効量の本明細書において提供される化合物を投与することを含む方法を本明細書において提供する。
【0069】
本明細書に記載の方法の一部の実施形態では、がんは神経膠芽腫である。一部の実施形態では、がんはびまん性内因性橋膠腫である。
【0070】
本明細書に記載の方法の一部の実施形態では、がんは、脳癌もしくは腫瘍、白血病、乳癌、肺癌、結腸癌、膵臓癌、卵巣癌、前立腺癌、または腎臓癌を含む。
【0071】
本明細書において提供される化合物は、FTOのRNAデメチラーゼ活性と関連する疾患の処置において有用である。したがって、一部の実施形態では、全身固形腫瘍、代謝性疾患、肥満、糖尿病、または神経変性障害を処置する方法を本明細書において提供する。
【0072】
一部の実施形態では、それを必要とする対象においてFTO関連疾患を処置する方法であって、前記対象に、治療有効量のエンタカポンまたはその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法を本明細書において提供する。
【0073】
一部の実施形態では、それを必要とする対象においてFTO関連疾患を処置する方法であって、前記対象に、治療有効量の本明細書において提供される化合物を投与することを含む方法を本明細書において提供する。
【0074】
一部の実施形態では、それを必要とする対象においてNotch1関連疾患を処置する方法であって、前記対象に、治療有効量のエンタカポンまたはその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法を本明細書において提供する。
【0075】
一部の実施形態では、それを必要とする対象においてNotch1関連疾患を処置する方法であって、前記対象に、治療有効量の本明細書において提供される化合物を投与することを含む方法を本明細書において提供する。
【0076】
これらの方法の一部の実施形態では、投与される化合物は、表1の化合物またはその薬学的に許容される塩である。これらの方法の一部の実施形態では、方法は、化合物31またはその薬学的に許容される塩から選択される化合物の投与または使用を含む。
【0077】
これらの方法の一部の実施形態では、化合物を投与するか、または組成物として提供する。一部の実施形態では、化合物を、薬学的に許容される担体をさらに含む医薬組成物として投与または供給する。
【0078】
これらの方法の一部の実施形態では、エンタカポンまたはその薬学的に許容される塩を投与するか、組成物として提供する。一部の実施形態では、エンタカポン(entacopone)またはその薬学的に許容される塩を、薬学的に許容される担体をさらに含む医薬組成物として投与または供給する。
【0079】
これらの方法の一部の実施形態では、FTO関連疾患は、肥満、糖尿病、アルツハイマー病、またはがんである。
【0080】
本明細書において提供される方法の一部の実施形態では、がんは脳腫瘍である。一部の実施形態では、がんは神経膠芽腫である。一部の実施形態では、がんは、乳癌、白血病、脳腫瘍、または肺癌である。一部の実施形態では、乳癌は三種陰性乳癌である。一部の実施形態では、肺癌は非小細胞肺癌である。
【0081】
一部の実施形態では、細胞は脳細胞である。一部の実施形態では、細胞は神経膠腫幹細胞である。一部の実施形態では、細胞接触は、対象においてである。一部の実施形態では、細胞接触はin vitroである。一部の実施形態では、細胞は、造血幹細胞として始まった細胞(例えば、血液細胞)、乳房細胞、肺細胞、結腸細胞、膵臓細胞、卵巣細胞、前立腺細胞、または腎臓細胞である。一部の実施形態では、血液細胞は、多能性幹細胞である。一部の実施形態では、多能性幹細胞は、リンパ前駆細胞または骨髄前駆細胞である。一部の実施形態では、リンパ前駆細胞は、ナチュラルキラー細胞、Tリンパ球、またはBリンパ球である。一部の実施形態では、骨髄前駆細胞は、好中球、好塩基球、好酸球、単球、血小板、または赤血球である。一部の実施形態では、単球はマクロファージである。
【0082】
本明細書において考慮される対象は典型的には、ヒトである。しかしながら、対象は、処置が望ましい任意の哺乳動物であり得る。したがって、本明細書に記載の方法は、ヒトおよび獣医学用途の両方に適用することができる。
【0083】
これらの方法の一部の実施形態では、投与される活性薬剤を、本明細書に記載のいずれかの化合物であり得る第2の活性薬剤と組み合わせて投与することもできるし、または第2の活性薬剤を、本明細書に記載の使用のいずれかに好適な任意の薬剤から選択することもできる。
【0084】
これらの方法の一部の実施形態では、活性薬剤を、状況の必要性に応じて変動し得る所望の投与経路に好適な形態で提供する。例えば、一部の実施形態では、経口投与を利用することができ、薬剤を、固形剤形、ゲル剤、液剤、ペースト剤、噴霧剤、または別の好適な経口投与のための形態として製剤化することができる。一部の実施形態では、投与は、経口投与、肺投与、または静脈内投与である。一部の実施形態では、投与は全体的であり、化合物は血液脳関門を超えて、その活性を付与する。一部の実施形態では、投与は局所注射である。一部の実施形態では、投与は脳内投与である。一部の実施形態では、投与は頭蓋内投与である。
【0085】
一部の実施形態では、対象は難治性疾患を含む。一部の実施形態では、難治性疾患は難治性がんを含む。
投与/用量
【0086】
治療用組成物の製剤およびそれらの後続の投与(投薬)は、当業者の技能の範囲内である。投薬は、処置される病態の重症度および応答性に依存し、処置経過は、数日から数か月まで、または病態の十分な縮小が達成されるまで継続される。患者の身体における薬物蓄積を測定することから、最適な投薬スケジュールを計算することができる。
【0087】
当業者は、最適な投薬量、投薬方法および繰返し率を容易に決定することができる。最適な投薬量は、個々の化合物の相対効力に応じて変動し得て、一般に、in vitroおよびin vivo動物モデルにおいて有効であることが見い出されたEC50値に基づき推定することができる。一般に、投薬量は0.01μg~1g/体重kgの範囲であり得、1日、1週、1か月、もしくは1年に1回もしくは複数回、または2~20年ごとに1回でも投与することができる。当業者は、体液または組織において測定された薬物の滞留時間および濃度に基づき、投薬の繰返し率を容易に推定することができる。処置の成功後に、患者に、病態の再発を予防するために維持療法を施すことが望ましいことがあり、その際、化合物を0.01μg~1g/体重kgの範囲の維持用量で1日1回または複数回、20年ごとに1回まで投与する。
【0088】
一部の実施形態では、本明細書に記載の化合物を単独で、すなわち、別の異なる活性薬剤を伴わずに投与する。一部の実施形態では、本明細書に記載の化合物を別の(すなわち1種または複数の)異なる活性薬剤と組み合わせて投与する。
【0089】
これらの方法の一部の実施形態では、活性薬剤を、状況の必要に応じて変動し得る所望の投与経路に好適な形態で提供する。例えば、一部の実施形態では、経口投与を利用することができ、薬剤を固体剤形、ゲル剤、液剤、ペースト剤、噴霧剤、または経口投与のための別の好適な形態として製剤化することができる。一部の実施形態では、投与は、経口投与、肺投与、または静脈内投与である。一部の実施形態では、投与は包括的であり、前記化合物は血液脳関門を超えて、その活性を付与する。一部の実施形態では、投与は局所注射である。一部の実施形態では、投与は脳内投与である。一部の実施形態では、投与は頭蓋内投与である。
【0090】
一部の実施形態では、前記化合物を治療有効量または投薬量で投与する。治療有効量に相当する化合物の量は、疾患の種類、疾患のステージ、処置される患者の年齢、および他の因子に著しく依存する。
【0091】
本明細書に記載の化合物の量は本明細書に記載の特定の疾患の有効な処置をもたらすべきであるが、投与される量は好ましくは、患者に過度に毒性ではない(すなわち、その量は好ましくは、診療ガイドラインにより確立されているとおり、毒性限界の範囲内である)。一部の実施形態では、過度の毒性を予防するか、もしくは本明細書に記載の疾患のより有効な処置を得るためかのいずれか、またはその両方のために、投与される投薬量合計の制限を提供する。典型的には、本明細書において考慮される量は1日あたりである。しかしながら、半日および2日または3日サイクルも企図される。
【0092】
種々の投与レジメンを処置のために使用することができる。一部の実施形態では、上記の例示的な投薬量のいずれかなどの1日投薬量を1日1回、2回、3回、または4回、3、4、5、6、7、8、9、または10日間投与する。処置される疾患のステージおよび重症度に応じて、より短期の処置期間(例えば、最高5日間)を多い投薬量で用いることもできるし、またはより長期の処置期間(例えば、10日もしくはそれより多く、または数週間、または1か月、またはそれより長く)を低い投薬量で用いることもできる。一部の実施形態では、1日1回または2回投薬量を隔日で投与する。
【0093】
本明細書に記載の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩を、純粋な形態で、または適切な医薬組成物で、許容される投与様式または当技術分野で公知の薬剤のいずれかを介して投与することができる。前記化合物を、例えば、経口、経鼻、非経口(静脈内、筋肉内、または皮下)、局所、経皮、膣内、膀胱内、大槽内(intracistemally)、または直腸で投与することができる。剤形は、例えば正確な投薬量の簡単な投与に好適な単位剤形での、例えば、錠剤、丸剤、ソフトエラスティックまたは硬ゼラチンカプセル剤、散剤、液剤、懸濁剤、坐剤、エアロゾル剤、または同様のものなどの例えば、固体、半固体、凍結乾燥粉末、または液体剤形であってよい。特定の投与経路は経口であり、特に、処置される疾患の重症度に従って簡便な毎日投与レジメンを調節することができるものである。
【0094】
補助剤およびアジュバント剤には、例えば、防腐剤、湿潤剤、懸濁化剤、甘味剤、香味剤、香料、乳化剤、および分配剤が含まれ得る。微生物の作用の防止は一般に、様々な抗菌剤および抗真菌剤により得られる。等張化剤も含まれ得る。注射用医薬形態の長時間吸収を、吸収を遅延させる薬剤の使用によりもたらすことができる。補助薬剤には、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝剤、および抗酸化剤も含まれ得る。
【0095】
固体剤形を腸溶コーティングおよび当技術分野で周知の他のものなどのコーティングおよびシェルと共に調製することができる。それらは、安定化剤(pacifying agent)を含有してよく、活性薬剤(すなわち、本明細書に記載の化合物)を腸管のある特定の部分で、遅れて放出するような組成のものであってよい。本明細書に記載の化合物は、適切ならば、上述の担体の1種または複数を含むマイクロカプセル化形態であってもよい。
【0096】
経口投与のための液体剤形には、薬学的に許容される乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、およびエリキシル剤が含まれる。そのような剤形を、例えば本明細書に記載の化合物および必要に応じた薬学的担体を溶解、分散などして、それにより、溶液または懸濁液を形成することにより調製する。
【0097】
概して、意図された投与様式に応じて、薬学的に許容される組成物は、本明細書に記載の化合物約1重量%~約99重量%および薬学的に許容される担体99重量%~1重量%を含有する。一例では、前記組成物は、約5重量%~約75重量%が本明細書に記載の化合物であってよく、残りは、好適な薬学的担体である。
【0098】
そのような剤形を調製する実際の方法は公知であるか、または当業者には明らかであろう。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. (Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1990)を参照する。
キット
【0099】
他の実施形態では、キットを提供する。キットは、本明細書に記載の化合物、またはその組合せ、または組成物を含むパッケージを含む。一部の実施形態では、パッケージは、箱またはラッピングであってよい。医薬製品のパッケージングにおいて使用するためのパッケージング材料は、当業者に周知である。医薬品パッケージング材料の例には、これに限定されないが、ボトル、チューブ、吸入器、ポンプ、バッグ、バイアル、コンテナ、シリンジ、ならびに選択された製剤および意図された投与様式および処置に好適な任意のパッケージング材料が含まれる。
【0100】
キットは、パッケージの外側に取り付けられているか、パッケージ内に配置されている追加のアイテム、例えば、ピペットをパッケージに含んでもよい。
【0101】
キットはさらに、承認された使用のための、および本明細書に記載の化合物を患者に投与するための指示書を含んでよい。キットは、化合物のためのラベリングまたは製品インサートを含んでもよい。キットはパッケージ内に、活性薬剤を固相で、または液相で含んでよい。キットは、本明細書に記載の方法を行うために溶液を調製するための緩衝液、およびある容器から別の容器に液体を移すためのピペットを含んでもよい。
定義
【0102】
ある特定の用語を、単独で、または語句もしくは別の用語の一部として使用されるか否かに関わらず、下に定義する。
【0103】
冠詞「a」および「an」は、その冠詞の文法的目的語の1つまたは1つより多くを指す。
【0104】
尺度に関する数値は、それらの確度を限定する測定誤差に従う。この理由で、本明細書において提供されるすべての数値は、別段に示されていない限り、「約」という用語により修飾されると理解されるべきである。したがって、本明細書において提供される数値の最後の小数位はその精度を示す。他の許容誤差が示されていない場合、最大許容範囲は、丸め規則を最後の小数位に、または小数が所与の数値に存在しない場合には最後の有意な桁に、適用することにより確かめられる。
【0105】
「アルキル」という用語は、分枝または直鎖飽和炭化水素を指す。
【0106】
本明細書で使用される場合、「寛解」という用語は、病態または疾患の少なくとも1つの指標の重症度の低下を意味する。ある特定の実施形態では、寛解は、病態または疾患の1つまたは複数の指標の進行の遅延または減速を含む。指標の重症度は当業者に公知である主観的または客観的尺度により決定することができる。
【0107】
「アリール」という用語は、1、2、3、またはそれより多い環を含む炭素環式芳香族系を指す。
【0108】
「Cn~m」という用語は、n~m個の炭素原子を含む部分を指し、nおよびmは整数である。
【0109】
「シクロアルキル」という用語は、1、2、3、またはそれより多い環を含む環式アルキル部分を含むアルキル部分を指す。
【0110】
「組成物」および「医薬組成物」という用語は、少なくとも1つの本明細書に記載の化合物と薬学的に許容される担体との混合物を指す。医薬組成物は、患者または対象への化合物の投与を促進する。化合物を投与する複数の技法が存在し、これに限定されないが、静脈内、経口、エアロゾル、非経口、眼、肺、および局所投与が含まれる。
【0111】
本明細書で使用される場合、「有効量」または「治療有効量」は、所望の治療効果をもたらすために有効である単回用量として、または一連の用量の一部として対象に投与される本明細書に記載の化合物などの治療用化合物の量を指す。一般に、治療有効量を初めは、細胞培養アッセイで、または哺乳動物動物モデルで、例えば、非ヒト霊長類、マウス、ウサギ、イヌ、またはブタにおいて推定することができる。動物モデルを使用して、適切な濃度範囲および投与経路を決定することもできる。次いで、そのような情報を使用して、非ヒト対象およびヒト対象における投与に有用な用量および経路を決定することができる。
【0112】
「ハロアルキル」という用語は、1個または複数のハロゲンで置換されているアルキル部分を指す。
【0113】
「ハロゲン」および「ハロ」という用語は、F、Br、Cl、またはIから独立に選択される1個または複数の原子を指す。
【0114】
「ヘテロアリール」という用語は、O、S、またはNから選択される少なくとも1個の環ヘテロ原子を含み、各環が独立に、O、S、またはNから独立に選択される1、2、3、または4個の環ヘテロ原子を含んでよいアリール部分を指す。
【0115】
「ヘテロシクロアルキル」という用語は、1、2、3、またはそれより多い環、およびO、S、またはNから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含み、各環がO、S、またはNから独立に選択される1、2、3、または4個の環ヘテロ原子を含んでよい環式アルキル部分を含むアルキル部分を指す。
【0116】
本明細書で使用される場合、「パッケージ」という語句は、本明細書に記載の化合物または組成物を含有するために好適な任意の容器を意味する。
【0117】
「薬学的に許容される担体」という用語は、少なくとも1つの本明細書に記載の化合物を、化合物がその意図された機能を実行することができるように患者内で、または患者に運ぶ、または輸送することに関係する液体増量剤、固体増量剤、安定剤、分散剤、懸濁化剤、希釈剤、賦形剤、増粘剤、溶媒、またはカプセル化材料などの薬学的に許容される物質、組成物または担体を意味する。所与の担体は、本明細書に記載の化合物を含む特定の製剤の他の成分と適合性であり、かつ患者に対して有害ではないという意味において、「許容される」必要がある。本明細書に記載の医薬組成物に含まれてよい他の成分は当技術分野で公知であり、例えば、その内容全体が参照により本明細書に援用される「Remington's Pharmaceutical Sciences」(Genaro (Ed.), Mack Publishing Co., 1985)に記載されている。
【0118】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、親化合物が既存の酸または塩基部分をその塩形態に変換することにより修飾されている、本明細書に記載の化合物の誘導体を指す。好適な塩のリストは、それぞれその全体が参照により本明細書に援用されるRemington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1985, p. 1418およびJournal of Pharmaceutical Science, 66, 2 (1977)において見い出される。
【0119】
「難治性疾患」という用語は、本明細書において提供される化合物以外の医薬成分での処置中に進行し続ける、他の処置に対して部分的に応答する、または他の処置に対して一過性に応答する疾患を指す。この用語は、本明細書において言及される疾患のそれぞれに当てはまり得る。
【0120】
本明細書で使用される場合、「処置」という用語は、疾患の寛解のために使用される1つまたは複数の具体的手順の適用を指す。ある特定の実施形態では、具体的な手順は1種または複数の医薬品の投与である。個体(例えば、ヒト、家庭用ペット、または家畜などの哺乳動物)または細胞の「処置」は、個体または細胞の天然の経過を変更する試みにおいて使用される何らかの種の介入である。処置には、これに限定されないが、医薬組成物の投与が含まれ、予防的に、または病的事象の開始または病因因子との接触の後に行われ得る。処置は、疾患または病態の症状または病理に対して任意の望ましい効果を含み、例えば、処置される疾患または病態の1つまたは複数の測定可能なマーカーにおける軽微な変化または改善を含み得る。処置される疾患もしくは病態の進行速度の減速、疾患もしくは病態の発症の遅延、またはその発症の重症度の低減を指向し得る「予防」処置も含まれる。
【実施例
【0121】
次の実施例で、本明細書において提供される化合物および方法の態様をさらに例示する。しかしながら、これらの実施例は、本明細書に記述のとおりの教示または開示の限定では決してない。これらの実施例は説明を目的として提供される。別段に特記のない限り、本明細書において提供される合成調製手順の出発物質はすべて、商用供給者から得て、精製せずに使用した。
(実施例1)
高FTO発現は進行性GSC表現型と相関する。
【0122】
脂肪量と肥満に関連するタンパク質(FTO)発現が神経膠腫幹細胞(GSC)表現型と相関するか否かを調査するために、中央値発現カットオフを使用して、44のGSCからの生トランスクリプトームデータをFTOの高-および低-発現でクラスター化した。高および低FTO群の間での微分発現解析を、1.5およびp<0.05のFCでDEseqを用いて行った。微分解析を上部および下部25%のFTO発現試料で行った。11の高発現FTO試料を11の低発現試料と比較した。KEGG経路エンリッチメントを高FTO群の上方制御された遺伝子で行い、見い出された有意な機能カテゴリーは:FoxOシグナル伝達;幹細胞の多能性調節;スフィンゴ脂質代謝;エーテル脂質代謝;およびホスホリパーゼDシグナル伝達代謝であった。
【0123】
次に、遺伝子セットエンリッチメント解析を22の高および22の低FTO発現GSCで行った。ホールマーク遺伝子セットシグネチャーを使用して、高 対 低FTO GSC群における差を評価した。上部10の上方制御された遺伝子セットを表2に列挙する。
【表2】
【0124】
上皮間葉転換シグネチャーセットは、公称p値<0.01で高度に濃縮した。これらのデータは、高FTO発現が進行性GSC表現型と相関していることを示した。
(実施例2)
FTO阻害薬エンタカポンはGSC自己複製を阻害する。
【0125】
エンタカポンでの処置が、GSCが自己複製する能力に影響を及ぼすか否かを検討するために、GSCの系列希釈物を、神経膠芽腫を有する2人の患者から、40μMエンタカポンまたはDMSO(対照)の存在下で14日間培養した。40μM用量のエンタカポンは乾燥薬物120mgに相当し、これは、パーキンソン病を処置するために現在承認されている1日用量よりもかなり低い(800~1600mg)。このことは、幹細胞の自己複製能を決定するために広く使用されている方法であるin vitro極限希釈分析(ELDA)により調査されたとおり、エンタカポンが、神経膠芽腫を有する2人の患者からのGSCの腫瘍スフェア形成頻度を有意に減少させることを示した。
(実施例3)
化合物活性のバーチャルスクリーニング。
【0126】
分子動力学および結合自由エネルギー計算を使用して、選択された本明細書において提供される化合物についてのFTO阻害の性向を評価した。選択された本明細書において提供される化合物でのGBVI/WSA dGを表3に列挙する。
【0127】
rsynth値も、選択された本明細書において提供される化合物について決定し、表3に列挙する。rsynth値は、計算された合成可能性スコア(synthetic feasibility score)である。合成可能性スコアは、出発物質データベースにおいて見い出された逆合成フラグメントで最終的に現れる新たな構造の原子のフラクションである。1の値は、その分子がかなり合成可能であろうことを示している。rsynth値が0に近づくにつれて、合成可能である可能性、または合成の容易さが低下する。すなわち、rsynth値が0に近づくにつれて、化合物を合成する難度が上昇すると予測される。
【0128】
MOE Dock(Molecular Operating Environment (MOE), 2018.01; Chemical Computing Group Inc., 1010 Sherbooke St. West, Suite #910, Montreal, QC, Canada, H3A 2R7. 2018.)を、タンパク質をエンタカポンと分子ドッキングするために使用した。FTOの結晶構造をRSDBからダウンロードし(PDB CODE:3LFM)、分子の2D構造をChemBioDrawから得て、エネルギー最小化によりMOEで3Dに変換した。次いで、標的のプロトン付加状態および水素の配位をQuickPrepモジュールにより、7.0のPHおよび300Kの温度で最適化した。ドッキングの前に、AMBER10:EHTの力場および反応場(R-field)の陰解法モデルを選択した。FTOの結合部位を参照により同定し(Han, Z.; Niu, T.; Chang, J.; Lei, X.; Zhao, M.; Wang, Q.; Cheng, W.; Wang, J.; Feng, Y.; Chai, J., Crystal structure of the FTO protein reveals basis for its substrate specificity. Nature 2010, 464 (7292), 1205-9)、天然リガンド3DTを結合部位と定義した。ドッキングワークフローは、「誘導適合」プロトコールに従い、その際、受容体ポケットの側鎖は、それらの位置に関する制約付きで、リガンド配座により動くことできた。側鎖原子をそれらの本来の位置に係留するために使用される重みは10であった。分子のドッキングされたポーズはすべて、London dGスコアリングにより初めにランキングされ、次いで、力場精密化を上部30のポーズで実施し、GBVI/WSA dGの再スコアリングを続けた。最良とランキングされたポーズを最終結合モードとして選択した。
【0129】
化合物と天然リガンドとの結合モデルの解析を、構造ベースの薬物設計モジュールをMOEで使用して行った。GBVI/WSA dGにより化合物を最小化し、並べた。
【表3】
(実施例4)
エンタカポンはがん幹細胞遺伝子の発現を阻害する。
【0130】
GSCを40μMエンタカポンで48時間処置して、エンタカポンが幹細胞性関連転写物の発現に影響を及ぼすか否かを評価した。84の検証されたがん幹細胞マーカーでのqPCRアレイを行った(Qiagen-RT-プロファイラーPCRアレイ)。エンタカポンでの処置が、いくつかのがん幹細胞転写物の有意な阻害をもたらすことが発見された(図1)。
【化15】
(実施例5)
GSC侵襲のライブイメージング。
【0131】
マトリゲル3Dマトリックス中のGSCを40μMエンタカポンまたはDMSO(対照)で処置し、ライブイメージングを定期的な時間間隔で、Incucyte生細胞イメージングシステムを使用して行った。正規化された侵襲面積を、侵襲面積をGSCスフェアにより占められた面積で正規化した後に定量化した。図2は、エンタカポン処置後66時間のライブイメージングにわたる正規化GSC侵襲を示している。これらのデータは、エンタカポンがGSCの侵襲を阻害することを示している。
(実施例6)
FTO発現と相関する遺伝子発現の評価。
【0132】
幹関連遺伝子のセットをがん幹細胞性パネルから収集した。TCGA HG-UG133Aアフィメトリクスプラットフォームを使用して、これらの遺伝子をFTO発現に対する相関について評価した。GSCにおけるFTOとNotch1発現との有意な相関が観察された(R=0.53、p-val=1.13e-39)。
(実施例7)
Notch1阻害アッセイ。
【0133】
エンタカポンでのFTOの阻害がGSCにおけるNotch1タンパク質発現の阻害をもたらすか否かを決定するために、神経膠芽腫を有する2人の患者からのGSC(2つの異なるGSC系)を40μMエンタカポンで48時間処置し、Notch1についてのウェスタンブロットを行った(図3)。これらのデータは、エンタカポンがNotch1タンパク質発現の阻害を誘導することを示している。
(実施例8)
共通のコア中間体の合成調製。
【0134】
本明細書において提供される化合物は、共通のコア部分
【化16】
を含む。
【0135】
本明細書において提供される化合物の合成調製は、共通するコア中間体(E)-2-シアノ-3-(3,4-ジヒドロキシ-5-ニトロフェニル)アクリル酸(CORE)の使用を含む。COREの合成スキームは図4に示されており、ここで説明する。
【0136】
ピリジン(50mL)中の3,4-ジヒドロキシ-5-ニトロベンズアルデヒド(10.0g、54.6mmol)、2-シアノ酢酸(9.4g、109.2mmol)およびピペリジン(3mL)の溶液を終夜、90℃で加熱した。混合物を濃縮乾固し、残渣をアセトン(50mL)およびEtOAc(30mL×2)で洗浄して、(E)-2-シアノ-3-(3,4-ジヒドロキシ-5-ニトロフェニル)アクリル酸(5.5g、40%)を黄色の固体として得た。化合物をLC/MSおよびH NMR分光法により特徴付けた。
(実施例9)
化合物1の合成調製。
【0137】
化合物1を図5に示されている合成スキームに従って下記のとおりに調製する。
【0138】
化合物1-2の合成:MeOH(20mL)中の化合物1-1(846mg、4.52mmol)の溶液に、TEA(457mg、4.52mmol)を添加し、混合物を室温で20分間撹拌した。ベンジルエチル(2-オキソエチル)カルバメート(1.00g、4.52mmol)を添加し、撹拌を3時間継続した。ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(3.84g、18.2mmol)を添加し、撹拌を室温で16時間継続した。混合物を冷水(50mL)に注ぎ入れ、EtOAc(30mL×3)で抽出し、合わせた有機相を水(100mL)、ブライン(100mL)で洗浄し、NaSO上で乾燥し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(DCM/MeOH=50/1、v/v)により精製して、化合物1-2(1.20g、52%)を無色の油状物として得た。化合物をLC/MSおよびH NMR分光法により特徴付けた。
【0139】
化合物1-3の合成:エタノール(5mL)中の化合物1-2(500mg、1.71mmol)の溶液に、10%Pd/C(200mg)を添加し、混合物を16時間、H雰囲気下で60℃で加熱した。混合物を濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(DCM/MeOH=20/1、v/v)により精製して、化合物1-3(200mg、74%)を無色の油状物として得た。化合物をLC/MSおよびH NMR分光法により特徴付けた。
【0140】
化合物1の合成:0℃の無水DMF(5mL)中の(E)-2-シアノ-3-(3,4-ジヒドロキシ-5-ニトロフェニル)アクリル酸(316mg、1.26mmol)およびDIPEA(489mg、3.78mmol)の溶液に、HOBT(204mg、1.51mmol)およびEDCI.HCl(363mg、1.89mmol)を添加し、混合物を30分間撹拌した。次いで、無水DMF(2mL)中の化合物1-3(200mg、1.26mmol)の溶液を添加し、撹拌を室温で16時間継続した。混合物をそのまま、C18、RPカラム(Biotage、ACN/HO=20%、0.1%HCOOHで緩衝)、続いて、分取HPLC(Agilent 10 prep-C18、10μm、250×21.2mmカラム、20mL/分の流速で、0.1%ギ酸を含む水中のMeCNの勾配で溶離)により精製して、化合物1(52.0mg、11%)を赤色の固体として得た。化合物をLC/MSおよびH NMR分光法により特徴付けた。
(実施例10)
化合物20の合成調製。
【0141】
化合物20を図6に示されている合成スキームに従って下記のとおりに調製する。
【0142】
20-3の合成:0℃のTHF(15mL)中のNaHの懸濁液(油中60%懸濁液、438mg、18.3mmol)に、THF(2mL)中の化合物20-1(1.50g、12.2mmol)の溶液を滴下添加し、混合物を1時間、70℃で加熱した。混合物を室温に冷却し、化合物20-2(2.61g、13.4mmol)を添加し、撹拌を16時間、室温で継続した。混合物を冷水(50mL)に注ぎ入れ、EtOAc(30mL×2)で抽出し、合わせた有機抽出物を水(50mL)、ブライン(100mL)で洗浄し、NaSO上で乾燥し、濃縮乾固した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc=30/1、v/v)により精製して、化合物20-3(2.50g、87%)を無色の油状物として得た。化合物をLC/MSおよびH NMR分光法により特徴付けた。
【0143】
20-4の合成:DCM(5mL)中の化合物20-3(2.50g、10.5mmol)の溶液に、TFA(3.60g、31.6mmol)を滴下添加し、混合物を3時間、40℃で加熱した。混合物を濃縮乾固して、化合物20-4(1.80mg、88%)を黄色の油状物として得、これをそのまま、次のステップで使用した。
【0144】
20-5の合成:0℃のMeOH(5mL)中の化合物20-4(1.50g、8.28mmol)の溶液に、塩化オキサリル(1.4mL、16.6mmol)を滴下添加し、混合物を2時間、室温で撹拌した。混合物を濃縮乾固して、化合物20-5(1.30mg、80%)を黄色の油状物として得、これをそのまま、次のステップで使用した。
【0145】
20-6の合成:THF(2mL)中の化合物20-5(1.30g、6.66mmol)の溶液に、THF中のエチルアミンの2M溶液(35mL)を添加し、混合物を密封管内で16時間、80℃で加熱した。混合物を濃縮乾固し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc=20/1、v/v)により精製して、化合物20-6(1.10g、79%)を黄色の油状物として得た。化合物をLC/MSおよびH NMR分光法により特徴付けた。
【0146】
20-7の合成:-20℃の無水THF(5mL)中の化合物20-6(500mg、2.40mmol)の溶液に、ボラン-テトラヒドロフラン複合体(12.0mL、24.0mmol)をシリンジを介してゆっくり添加し、混合物を室温に加温し、終夜撹拌した。反応物を、メタノール(2mL)および1M HCl水溶液(10mL)の添加により慎重にクエンチし、混合物を室温で2時間撹拌し、次いで、濃縮乾固した。残渣を飽和Na2CO3水溶液(10mL)で希釈し、EtOAc(30mL×3)で抽出し、合わせた有機層をNa2SO4上で乾燥し、濃縮乾固して、化合物20-7(348mg、75%)を無色の油状物として得た。化合物をLC/MSおよびH NMR分光法により特徴付けた。
【0147】
化合物20の合成:DMF(5mL)中の(E)-2-シアノ-3-(3,4-ジヒドロキシ-5-ニトロフェニル)アクリル酸(322mg、1.29mmol)およびDIPEA(333mg、2.57mmol)の溶液に、HOBT(209mg、1.54mmol)およびEDCI.HCl(370mg、1.93mmol)を添加し、混合物を30分間撹拌した。次いで、DMF(1mL)中の化合物20-7(250mg、1.29mmol)の溶液を添加し、撹拌を室温で終夜継続した。混合物を水(50mL)で希釈し、EtOAc(30mL×2)で抽出し、合わせた有機層をブライン(50mL×2)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥し、減圧下で濃縮した。残渣を分取HPLC(Agilent 10 prep-C18、10μm、250×21.2mmカラム、20mL/分の流速で、0.1%ギ酸を含む水中のMeOHの勾配で溶離)により精製して、化合物5(72.9mg、13%)を赤色の固体として得た。化合物をLC/MSおよびH NMR分光法により特徴付けた。
(実施例11)
化合物29の合成調製。
【0148】
化合物29を図7に示されている合成スキームに従って下記のとおりに調製する。
【0149】
化合物29-2の合成:0℃のDCM(15mL)中の化合物29-1(5.0g、22.4mmol)の溶液に、デスマーチン試薬(11.4g、26.9mmol)を添加し、混合物を室温に加温し、終夜撹拌した。混合物を濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc=5/1、v/v)により精製して、化合物29-2(3.9g、79%)を薄黄色の油状物として得た。化合物をLC/MSおよびH NMR分光法により特徴付けた。
【0150】
化合物29-3の合成:MeOH(10mL)中のL-アラニンアミドヒドロクロリド(2.2g、17.62mmol)の溶液に、TEA(1.8g、17.6mmol)を添加し、混合物を室温で10分間撹拌した。化合物29-2(3.9g、17.6mmol)を添加し、1時間撹拌し、その後、Na(CN)3BH(4.4g、70.5mmol)を添加した。次いで、混合物を終夜撹拌した。反応物を水(50mL)の添加によりクエンチし、混合物をEtOAc(40mL×3)で抽出した。合わせた有機層を水(100mL×3)、ブライン(50mL)で洗浄し、NaSO上で乾燥し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(DCM/MeOH=20/1、v/v)により精製して、化合物29-3(2.4g、46%)を黄色の油状物として得た。化合物をLC/MSおよびH NMR分光法により特徴付けた。
【0151】
化合物29-4の合成:0℃のDCM(15mL)中の化合物29-3(2.4g、8.18mmol)およびTEA(2.48g、24.5mmol)の溶液に、BocO(3.85g、16.4mmol)をゆっくりと添加し、混合物を室温で終夜撹拌した。混合物を水で希釈し、DCM(40mL×3)で抽出し、合わせた有機層を水(50mL×3)、ブライン(50mL)で洗浄し、NaSO上で乾燥し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(DCM/MeOH=20/1、v/v)により精製して、化合物29-4(1.9g、59%)を薄黄色の油状物として得た。化合物をLC/MSおよびH NMR分光法により特徴付けた。
【0152】
化合物29-5の合成:MeOH中の化合物29-4(1.9g、5.59mmol)および10%Pd/C(220mg、2.07mmol)の混合物を室温でH雰囲気下で、終夜撹拌した。混合物を濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(DCM/MeOH=10/1、0.1%NH・HOで緩衝)により精製して、化合物29-5(350mg、28%)を薄黄色の油状物として得た。化合物をLC/MSおよびH NMR分光法により特徴付けた。
【0153】
化合物29-6の合成:0℃のDCM(10mL)中の(E)-2-シアノ-3-(3,4-ジヒドロキシ-5-ニトロフェニル)アクリル酸(337.5mg、1.35mmol)およびDIPEA(523.6mg、4.05mmol)の溶液に、HOBT(218.9mg、1.62mmol)およびEDCI.HCl(388.2mg、2.03mmol)を添加した。混合物を30分間撹拌した。DCM(3mL)中の化合物29-5(350mg、1.35mmol)の溶液を添加し、混合物を室温に加温し、終夜撹拌した。混合物を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(DCM/MeOH=10/1、v/v)、続いて、分取HPLC(Agilent 10 prep-C18、10μm、250×21.2mmカラム、20mL/分の流速で、0.1%ギ酸を含む水中のMeCNの勾配で溶離)により精製して、化合物29-6(40mg、6%)を赤色の油状物として得た。化合物をLC/MSおよびH NMR分光法により特徴付けた。
【0154】
化合物29の合成:HCOOH(2mL)中の化合物29-6(40mg、0.08mmol)の溶液を室温で3時間撹拌し、次いで、減圧下で濃縮して、化合物22(29mg、60%)を赤色の固体として得た。化合物をLC/MSおよびH NMR分光法により特徴付けた。
(実施例12)
化合物31の合成調製。
【0155】
化合物31を図8に示されている合成スキームに従って下記のとおりに調製する。
【0156】
化合物31-2の合成:DMF(50mL)中の化合物31-1(3.54g、20.0mmol)の溶液に、1-ブロモ-3-フルオロプロパン(2.82g、20.0mmol)およびKCO(5.53g、40.0mmol)を添加し、混合物を室温で終夜撹拌した。混合物を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(Pet.エーテル/EtOAc=10/1)により精製して、化合物31-2(2.21g、47%)を無色の油状物として得た。化合物をLC/MSおよびH NMR分光法により特徴付けた。
【0157】
化合物31-3の合成:0℃の無水DMF(15mL)中の化合物31-2(2.01g、8.50mmol)の溶液に、NaH(油中60%懸濁液、1.02g、25.5mmol)を添加し、混合物を0℃で30分間撹拌した。次いで、ヨードエタン(2.65g、17.0mmol)を滴下添加し、混合物を室温に加温し、2時間撹拌した。反応物を水でクエンチし、混合物を減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc=20/1)により精製して、化合物31-3(1.28g、57%)を無色の油状物として得た。化合物をLC/MSおよびH NMR分光法により特徴付けた。
【0158】
化合物31-4の合成:EtOAc(2mL)中の化合物31-3(280mg、1.05mmol)の溶液に、EtOAc中のHClの4M溶液(2mL)を添加し、混合物を1時間撹拌した。混合物を減圧下で濃縮して、化合物31-4(165.3mg、78%)を得、これをそのまま、次のステップで使用した。
【0159】
化合物31の合成:DMF(5mL)中の化合物31-4(165.3mg、0.822mmol)および(E)-2-シアノ-3-(3,4-ジヒドロキシ-5-ニトロフェニル)アクリル酸(250.2mg、1.00mmol)の溶液に、HOBT(202.8mg、1.50mmol)、EDCI(287.6mg、1.5mmol)およびDIPEA(387.6mg、3.0mmol)を添加し、混合物を30℃で16時間撹拌した。混合物をEtOAcで希釈し、水、ブラインで洗浄し、Na2SO4上で乾燥し、減圧下で濃縮した。残渣を分取HPLC(Agilent 10 prep-C18、10μm、250×21.3mmカラム、20mL/分の流速で、0.1%ギ酸を含む水中のACNの勾配で溶離)により精製して、化合物4(90mg、28%)を黄色の固体として得た。化合物をLC/MSおよびH NMR分光法により特徴付けた。
(実施例13)
化合物33の合成調製。
【0160】
化合物33を図9に示されている合成スキームに従って下記のとおりに調製する。
【0161】
33-1の合成:0℃のEtO(200mL)中の化合物33-1(10.0g、43.0mmol)の溶液に、MeOH(cat)およびLiBH(THF中2M溶液、28.0mL、56.0mmol)を添加した。混合物を0℃で1.5時間撹拌し、次いで、室温に加温し、さらに1.5時間撹拌した。反応物を水(150mL)でクエンチし、混合物をEtOAc(100mL×3)で抽出した。合わせた有機層を水(150mL×3)、ブライン(50mL)で洗浄し、NaSO上で乾燥し、減圧下で濃縮して、化合物33-2(7.0g、86%)を無色の油状物として得た。化合物をLC/MSおよびH NMR分光法により特徴付けた。
【0162】
33-3の合成:DCM(30mL)中の33-2(3.5g、18.4mmol)の溶液に、TEA(5.12mL、36.8mmol)および4-ニトロフェニルカルボノクロリデート(4.45g、22.1mmol)を添加し、混合物を室温で2時間撹拌した。混合物を水(50mL)で希釈し、DCM(20mL×3)で抽出し、合わせた有機層を水(30mL×3)、ブライン(15mL)で洗浄し、NaSO上で乾燥し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(Pet.エーテル/EtOAc=10/1)により精製して、化合物33-3(3.0g、46%)を無色の油状物として得た。化合物をLC/MSおよびH NMR分光法により特徴付けた。
【0163】
化合物33-4の合成:0℃のDCM(10mL)中のtert-ブチル(2-アミノエチル)(エチル)カルバメート(528mg、2.81mmol)およびDIPEA(781mg、5.62mmol)の溶液に、33-3(1g、2.81mmol)を添加し、混合物を室温で2時間撹拌した。混合物を水(20mL)で希釈し、DCM(10mL×3)で抽出し、合わせた抽出物を水(20mL)、ブライン(20mL)で洗浄し、NaSO上で乾燥し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(Pet.エーテル/EtOAc=2/1、v/v)により精製して、化合物33-4(600mg、53%)を無色の油状物として得、それをそのまま次のステップで使用した。
【0164】
化合物33-5の合成:0℃のDCM(5mL)中の化合物33-4(300mg、0.74mmol)の溶液に、ジオキサン中のHClの4M溶液(1mL)を添加し、混合物を室温で20時間撹拌した。混合物を減圧下で濃縮して、化合物33-5(150mg、89%)を得た。化合物を精製せずに次のステップで使用した。
【0165】
化合物33の合成:室温のDMF(5mL)中の(E)-2-シアノ-3-(3,4-ジヒドロキシ-5-ニトロフェニル)アクリル酸(240mg、0.96mmol)およびDIPEA(435mg、3.36mmol)の溶液に、HOBT(260mg、1.92mmol)およびEDCI.HCl(276mg、1.44mmol)を添加し、混合物を30分間撹拌した。化合物33-5(200mg、0.88mmol)を添加し、撹拌を終夜継続した。混合物を水(20mL)で希釈し、DCM(10mL×3)で抽出し、合わせた有機層を水(20mL)、ブライン(20mL)で洗浄し、NaSO上で乾燥し、減圧下で濃縮した。残渣を分取HPLC(Agilent 10 prep-C18、10μm、250×21.2mmカラム、20mL/分の流速で、0.1%ギ酸を含む水中のMeOHの勾配で溶離)により精製して、化合物13(75mg、20%)を赤色の油状物として得た。化合物をLC/MSおよびH NMR分光法により特徴付けた。
(実施例14)
化合物35の合成調製。
【0166】
化合物35を図10に示されている合成スキームに従って下記のとおりに調製する。
【0167】
35-2の合成:0℃のDMF(20mL)中のNaH(油中60%懸濁液、480mg、12.0mmol)の懸濁液に、DMF(5mL)中の化合物35-1(1.20g、6.0mmol)の溶液を添加し、混合物を1時間撹拌した。2-ブロモ酢酸エチル(1.50g、9.0mmol)を添加し、混合物を室温に加温し、16時間撹拌した。混合物を冷水(100mL)に注ぎ入れ、EtOAc(30mL×3)で抽出し、合わせた有機層を水(100mL×3)、ブライン(100mL)で洗浄し、NaSO上で乾燥し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc=30/1、v/v)により精製して、化合物35-2(900mg、52%)を無色の油状物として得た。化合物をLC/MSおよびH NMR分光法により特徴付けた。
【0168】
35-3の合成:エタノール(5mL)中の40%エタンアミン水溶液(5.00g)および化合物35-2(900mg、3.13mmol)の混合物を25mL密封管内で16時間、80℃で加熱した。混合物を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(EtOAc/石油エーテル=1/5、v/v)により精製して、化合物35-3(700mg、78%)を白色の固体として得た。化合物をLC/MSおよびH NMR分光法により特徴付けた。
【0169】
35-4の合成:-20℃の無水THF(10mL)中の化合物35-3(700mg、2.45mmol)の溶液に、ボラン-硫化メチル錯体(1.0mL、10mmol)を、シリンジを介してゆっくり添加し、混合物を室温に加温し、終夜撹拌した。反応物を、メタノール(2mL)および1M HCl水溶液(10mL)を添加することにより慎重にクエンチし、混合物を室温で20時間撹拌し、次いで、減圧下で濃縮した。残渣を飽和NaCO水溶液(10mL)で希釈し、EtOAc(20mL×5)で抽出し、合わせた有機層をNaSO上で乾燥し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(DCM/MeOH=30/1、0.5%NH・HOで緩衝)により精製して、化合物35-4(320mg、48%)を無色の油状物として得た。化合物をLC/MSおよびH NMR分光法により特徴付けた。
【0170】
化合物35-5の合成:0℃のDCM(20mL)中の(E)-2-シアノ-3-(3,4-ジヒドロキシ-5-ニトロフェニル)アクリル酸(240mg、0.96mmol)およびDIPEA(435mg、3.36mmol)の溶液に、HOBT(260mg、1.92mmol)およびEDCI・HCl(276mg、1.44mmol)を添加し、混合物を30分間撹拌した。DCM(3mL)中の化合物35-4(260mg、0.95mmol)の溶液を添加し、混合物を室温に加温し、2時間撹拌した。混合物を水(20mL)で希釈し、層を分離し、水層をDCM(10mL×3)で抽出した。合わせた有機層を水(20mL)、ブライン(20mL)で洗浄し、NaSO上で乾燥し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(DCM/MeOH=50/1、v/v)、続いて、分取TLC(DCM/MeOH=20/1、v/v)により精製して、化合物35-5(150mg、31%)を赤色の固体として得た。化合物をLC/MSおよびH NMR分光法により特徴付けた。
【0171】
化合物35の合成:0℃のDCM(2mL)中の化合物35-5(170mg、0.34mmol)の溶液に、ジオキサン中のHClの4M溶液(0.2mL)を添加し、混合物を室温で20時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残渣をC18、RPカラム(Biotage、ACN/HO、0~15%、0.1%HClで緩衝)、続いて、分取HPLC(Agilent 10 prep-C18、10μm、250×21.2mmカラム、20mL/分の流速で0.1%HClを含む水中のMeCNの勾配で溶離)により精製して、化合物20(17.6mg、12%)を赤色の固体として得た。化合物をLC/MSおよびH NMR分光法により特徴付けた。
(実施例15)
FTOのRNAデメチラーゼ活性の阻害。
【0172】
FTOに対する、本明細書において提供される化合物の阻害活性を決定し、それらをエンタカポンと比較するために、FTO活性アッセイを行った。このアッセイでは、m6Aメチル化RNA基質を脱メチル化するFTOの能力を測定する。アッセイはFTOに対して特異的であり、真核細胞における別のRNAデメチラーゼであるALKBH5の機能により影響を受けない。この実験は、化合物1および化合物31がエンタカポンと比較して有意に高いFTO阻害活性を示すことを示した(表4を参照されたい)。例えば、20μMでは、エンタカポンがFTO活性の20%未満の低下を示した一方で、化合物1および化合物31は約40%またはそれより大きいFTO活性阻害を示した。2倍の濃度の40μMでも、エンタカポンは、20μM化合物31よりも低いFTO活性阻害を示した。
【表4】
(実施例16)
成体神経膠芽腫における化合物31でのIC50の決定。
【0173】
神経膠腫幹細胞を様々な漸増濃度の化合物31と共にインキュベートし、48時間目の生細胞のパーセンテージを、Cell Titer Glo(Promega)を使用して定量化した。この実験は、114.5μMの化合物31のIC50および70μMのIC10を示した。下記の機能アッセイでは、少なくとも90%の生存率を維持するIC10を使用した。
(実施例17)
化合物31による神経膠腫幹細胞侵襲の阻害。
【0174】
患者由来の神経膠腫幹細胞(GSC)を70μM化合物31またはDMSO(対照)と共に72時間インキュベートし、周辺細胞外マトリックスへのGSC侵襲を、Incucyte Cell Imagerを用いてリアルタイムで定量化した。図11および図12に示されているとおり、化合物31はGSC侵襲の有意な阻害を誘導した(p<0.05)。GSC侵襲は、神経膠芽腫のホールマークの1つである。
(実施例18)
化合物31による小児DIPG細胞の自己複製能の阻害。
【0175】
制限希釈アッセイ(LDA)を使用して、びまん性内因性橋膠腫(DIPG)細胞(橋として公知の脳幹領域において見い出される脳腫瘍の一種)の自己複製能に対する、化合物31でのFTO阻害の作用を決定した。このアッセイでは、DIPG細胞を96ウェルプレートに、様々な数(1ウェルあたり2000細胞から1ウェルあたり1細胞まで)で播種し、細胞が自己複製してクローン腫瘍スフェアを形成する能力を2週間の期間にわたって測定する。結果(図13)は、化合物31がこの疾患のホールマークであるDIPG細胞の自己複製能を有意に阻害することを示した。
(実施例19)
化合物31による小児DIPG細胞侵襲の阻害。
【0176】
患者由来DIPG細胞を10μM化合物31またはDMSO(対照)と共に72時間インキュベートし、周辺細胞外マトリックスへのDIPG侵襲を、Incucyte Cell Imagerを用いてリアルタイムで定量化した。図14および図15に示されているとおり、化合物31はDIPG侵襲の有意な阻害を誘導する(p<0.05)。
【0177】
値および範囲が本明細書において提供される場合には常に、それらの値および範囲に包含されるすべての値および範囲、またはそれらの値および範囲の組合せが、本明細書において提供される態様および実施形態の範囲内に包含されることが意図されていることは理解されるべきである。さらに、それらの範囲内に該当するすべての値、さらに、値の範囲の上限または下限も、本出願により企図される。
【0178】
別段に定義されていない限り、本明細書において使用されるすべての技術および科学用語には、当業者に共通して公知の意味が与えられている。
【0179】
当業者は、本明細書において提供される具体的な実施形態の多くの均等物を認めるか、またはルーチン以下の実験を使用して確認することができるであろう。そのような均等物は、次の特許請求の範囲により包含されることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14
図15
【国際調査報告】