(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-25
(54)【発明の名称】電気加熱装置
(51)【国際特許分類】
F27D 11/02 20060101AFI20240418BHJP
B01J 19/00 20060101ALI20240418BHJP
H05B 3/06 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
F27D11/02 B
B01J19/00 301A
H05B3/06 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562950
(86)(22)【出願日】2022-04-13
(85)【翻訳文提出日】2023-10-13
(86)【国際出願番号】 EP2022059897
(87)【国際公開番号】W WO2022219054
(87)【国際公開日】2022-10-20
(32)【優先日】2021-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390023685
【氏名又は名称】シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】ファン・デル・プルーフ,ホーバート・ゲラルドゥス・ピーター
【テーマコード(参考)】
3K092
4G075
4K063
【Fターム(参考)】
3K092PP09
3K092PP11
3K092QB03
3K092QB09
3K092QB11
3K092QB25
3K092RA06
3K092RD09
3K092VV03
4G075AA02
4G075BA10
4G075BD02
4G075CA02
4G075DA02
4G075EA01
4G075EA06
4G075EB21
4K063AA12
4K063AA19
4K063CA05
4K063FA04
4K063FA07
4K063FA13
4K063FA18
4K063FA27
(57)【要約】
本発明は、電気加熱装置(1)であって、少なくとも、
-空間(3)を画定する屋根(2A)及び壁を有する電気加熱炉(2)と、
-空間(3)を通って延びる少なくとも1つの管(10)であって、空間(3)の外側に入口(11)及び出口(12)を有する、少なくとも1つの管(10)と、
-空間(3)内に配置された電気放射加熱要素(20)であって、少なくとも1つの管(10)を加熱することができる電気放射加熱要素(20)と、を備え、
加熱要素(20)は、空間(3)の屋根(2A)から懸架され、
空間(3)の屋根(2A)は、異なる高さで懸架された加熱要素(20)を有するように構成された形状を有する、電気加熱装置を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気加熱装置であって、少なくとも、
-空間を画定する屋根と壁を有する電気加熱炉と、
-前記空間を通って延びる少なくとも1つの管であって、前記空間の外側に入口及び出口を有する、少なくとも1つの管と、
-前記空間内に配置された電気放射加熱要素であって、前記少なくとも1つの管を加熱することができる電気放射加熱要素と、を備え、
前記加熱要素は、前記空間の前記屋根から懸架され、
前記空間の前記屋根は、異なる高さで懸架された加熱要素を有するように構成された形状を有する、電気加熱装置。
【請求項2】
前記屋根は、切妻形状、階段形状、いらか段形状からなる群から選択される形状、好ましくはいらか段形状を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記加熱要素は、前記加熱要素が前記屋根を介して、好ましくは前記屋根の閉鎖可能な開口部によって交換され得るように、前記空間の前記屋根に取り外し可能に接続されている、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記空間を通って延びる少なくとも10の管を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記管は、実質的に垂直方向に延在する、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記電気放射加熱要素は、前記管と直接接触していない、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の電気加熱装置を使用して流体変換反応又は加熱を実施するための方法であって、前記方法が、少なくとも、
a)前記管の前記入口を介して供給流を供給する工程と、
b)前記管を通って流れる前記供給流を、前記電気放射加熱要素によって生成されるような熱を使用して前記装置の前記空間内で流体変換反応又は加熱に供し、それによって、1種以上の反応生成物又は加熱供給流を得る工程と、
c)前記1種以上の反応生成物又は加熱供給流を、前記管の前記出口を介して前記装置から除去する工程と、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、ガス変換反応を行うための、又は高温で流体を加熱するための、電気加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の電気加熱反応器が、当該技術分野において周知である。
【0003】
一例として、国際公開第2020/002326(A1)号は、空間を画定する少なくとも1つの電気加熱炉を備え、少なくとも1つの反応管が炉空間内に位置付けられた、反応器構成を開示している。反応管は、少なくとも1つの電気放射加熱要素を使用して加熱される。
【0004】
上記又は他の既知の電気リアクタに関連する問題は、電気放射加熱要素の早期故障又は経年劣化の場合に、炉空間の停止又は炉空間への(人による)立入りがしばしば必要とされることである。このことは、炉及び関連するプロセスの長期の中断をもたらし、生産の関連する中断を伴う。特に、本発明が特に考慮される大規模ユニット(50MW超)の場合、このことは、生産の損失に起因して非常に高いコストをもたらし得る。
【0005】
もう1つの問題は、加熱要素に脆いセラミック材料が使用される場合、破損した加熱要素が下方に配置された加熱要素上に落下すると、破損が潜在的なドミノ効果(すなわち、他の加熱要素に影響を与える)をもたらす可能性があることである。ある種の金属加熱要素を使用する場合、同様の効果が発生する可能性があるが、これは、下方に配置された加熱要素上に溶融金属が落下し、それによって電気的故障を引き起こすことに関係する。
【0006】
本発明の目的は、上記若しくはその他の問題の1つ以上を克服又は最小化することである。
【0007】
本発明の更なる目的は、特に、(400℃超などの)高温反応、高温での流体加熱、及び(多数の管を使用する)大規模(50MW超)用途にとって好適である代替的な電気加熱装置を提供することである。
【発明の概要】
【0008】
上記又はその他の目的のうちの1つ以上は、電気加熱装置であって、少なくとも、
-空間を画定する屋根と壁を有する電気加熱炉と、
-空間を通って延びる少なくとも1つの管であって、空間の外側に入口及び出口を有する、少なくとも1つの管と、
-空間内に配置された電気放射加熱要素であって、少なくとも1つの管を加熱することができる電気放射加熱要素と、を備え、
加熱要素は、空間の屋根から懸架され、
空間の屋根は、異なる高さで懸架された加熱要素を有するように構成された形状を有する、電気加熱装置を提供することによって達成することができる。
【0009】
驚くべきことに、本発明によれば、本発明による装置において使用されるような電気放射加熱要素は、電気放射加熱要素の早期故障又は経年劣化の場合に、炉空間の停止又は炉空間への(人による)立入りを必要とせずに、容易に交換され得ることが見出された。
【0010】
更に、本発明による装置は、大規模(50MW超)用途(多数の管が使用される場合)を意図した装置において、管及び管を通って流れる流体の正確な温度制御を提供し得ることが見出された。その結果、望ましくない副生成物(コークス形成など)の発生が少なくなり、装置の稼働時間をより長くすることができる。
【0011】
本発明による装置の別の利点は、加熱要素を異なる高さに配置することによって、加熱要素が管の全長にわたって管を加熱することができることである。これは、管の長さが典型的には別個の加熱要素の長さよりも長い間である。
【0012】
本発明の更なる利点は、その原理が、適切な適合を行うことによって既存の装置にも適用され得ることである。
【0013】
当業者は、電気加熱装置が広く変化し得ること、及びいくつかの追加の要素を含み得ることを、容易に理解するであろう。当業者は電気加熱装置を設計する方法に精通しているので、これはここでは詳細に説明しない。
【0014】
上述したように、装置は、底部と共に、(炉)空間を画定する屋根及び壁を有する電気加熱炉を備える。この炉の壁、屋根、及び底部は、典型的には、炉の外側への過度の熱漏れを回避するために、いくらかの耐火材料及び断熱材を含む。電気加熱炉は、いくらかの(発熱反応の結果として提供される以外の)非電気加熱を備えていてもよいが、好ましくは、加熱の少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは全てが電気加熱によって提供される。
【0015】
上述したように、本発明による装置の炉空間の屋根は、異なる高さで懸架された加熱要素を有するように構成された形状を有する。この目的のために、屋根は、好ましくは階段形状を使用して、屋根が垂直からある角度をなすような形状を有することができる。本発明による装置の好ましい実施形態によれば、屋根は、切妻形状、階段形状、いらか段形状からなる群から選択される形状を有し、好ましくはいらか段形状を有する。これにより、加熱要素が異なる高さで懸架される(そして、管(複数可)の異なる部分に熱を提供する)ことが可能になる。この点において、当業者であれば、全ての加熱要素が異なる高さで懸架される必要はないことを容易に理解するであろう。例えば加熱要素の列が使用される場合、同じ列内の加熱要素は、典型的には同じ高さで懸架される。
【0016】
更に、加熱要素は、好ましくは屋根の閉鎖可能な開口部によって、屋根を介して加熱要素を交換することができるように、空間の屋根に取り外し可能に接続されることが好ましい。これは、加熱要素への容易なアクセスを可能にし、装置の動作中であっても早期故障又は経年劣化の場合に加熱要素を交換する可能性を提供する。加熱要素が炉の動作中に交換される場合、交換は、好ましくは、炉内の圧力を適切なレベルに維持するために(及び炉内からの熱が炉から過剰に出ることを回避するために)圧力ボックス内で行われる。
【0017】
空間を通る少なくとも1つの管(ただし、典型的にはいくつかの管)は、管が空間の外側に入口及び出口を有する限り、広く変更されてもよい。単なる例として、管は、(好ましいが)直線である必要はなく、例えば、S字型又はU字型を有してもよい。U字型管が使用される場合、管の入口及び出口の両方は、片側(例えば、上部)にあってもよい。いくつかの管が存在する場合、管は好ましくは実質的に平行に延びる。装置が反応器の形態である(したがって、単に加熱のために使用されない)場合、管は「反応器管」と称され得る。管は、コイルの形態、すなわち螺旋状に形成されてもよい。
【0018】
(炉空間内に配置される)電気放射加熱要素は、特に限定されるものではない。典型的には、電気放射加熱要素の加熱のために、電気抵抗加熱が使用される(「ジュール効果」を利用する)。一般に、電気放射加熱要素は、300℃を超える温度まで加熱されるのに適している。好ましくは、電気放射加熱要素は、400~1600℃の範囲の温度に加熱されるのに適している。好ましくは、電気放射加熱要素は、NiCr、SiC、MoSi2又はFeCrAl系抵抗加熱要素を含む。
【0019】
当業者であれば、電気放射加熱要素が、ロッド、プレート、シート、グリッド、加熱ワイヤがロッドの周りに巻き付けられた(例えばセラミック)ロッドなどの多くの異なる形状をとり得ることを、容易に理解するであろう。
【0020】
典型的には、加熱要素の長さは、管(複数可)の長さよりも短い。したがって、通常、いくつかの別個の加熱要素が、管(複数可)の全長にわたって管(複数可)を加熱するために使用される。
【0021】
好ましい実施形態によれば、装置は、空間を通って延びる少なくとも10の管を備える。好ましくは、管は実質的に平行に延びる。
【0022】
更に、管(複数可)は、実質的に垂直方向に延在することが好ましい。このような管の垂直設定では、管を通って流れる流体が下向きに流れることが好ましい。したがって、この場合、管の入口は頂部にあり、出口は底部にある。
【0023】
管の過度の過熱を回避するために、電気放射加熱要素は管と直接接触していないことが好ましい。換言すれば、加熱要素及び管は、少なくとも炉空間内では互いに接触しない。
【0024】
加熱要素は多くの形態を有し得るが、電気放射加熱要素は管状加熱要素、すなわち、ロッドの形態であることが特に好ましい。好適な管状加熱要素の実施例は、市販されている炭化ケイ素(SiC)ロッドである。
【0025】
このような管状SiC加熱要素は、炉空間のコンパクトな設計が達成されることを可能にする。
【0026】
更なる態様では、本発明は、本発明による電気加熱装置を使用して流体変換反応又は加熱を実施するための方法であって、少なくとも以下の工程を含む方法を提供する。
a)管の入口を介して供給流を供給する工程と、
b)管を通って流れる供給流を、電気放射加熱要素によって生成されるような熱を使用して装置の空間内で流体変換反応又は加熱に供し、それによって、1種以上の反応生成物又は加熱供給流を得る工程と、
c)1種以上の反応生成物又は加熱供給流を、管の出口を介して装置から除去する工程。
【0027】
限定されるものではないが、本発明による方法は、特に、大規模用途(50MW超)における加熱又は流体変換反応を対象とする。
【0028】
当業者は、流体変換反応の性質が特に限定されないことを容易に理解するであろう。非限定的であるが、好ましい例は、SMR(水蒸気メタン改質)、水蒸気分解などである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
以下、本発明を以下の非限定的な図面によって更に説明する。以下に示す。
【
図1】本発明によるいらか段切妻形状を有する装置の概略側断面図である。
【
図3】本発明による装置の概略的な断面上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本説明の目的のために、同じ参照番号は同一又は類似の構成要素を指す。
【0031】
図1の実施形態では、
図1の電気加熱装置は、一般に、参照番号1で示され、反応器として示される。しかしながら、当業者であれば、装置が流体を加熱するために、すなわち反応が起こらないように使用され得ることもまた、容易に理解するであろう。
【0032】
図1の反応器1は、その内部に炉空間3を画定する屋根2A、底部2B、及び壁2Cを有する電気加熱炉2と、多数の反応管10(
図1には1つのみが示されている)と、多数の電気放射加熱要素20とを備える。
【0033】
電気放射加熱要素20は、空間3内に配置され、屋根2Aから懸架される。空間3の屋根2Aがいらか段切妻形状を有するため、加熱要素は異なる高さで懸架される(ただし、同じ列の加熱要素は典型的には同じ高さで懸架される)。加熱要素20は、炉空間3の屋根2A、
図1の実施形態では、屋根2Aの閉鎖可能な開口部4に取り外し可能に接続される。
【0034】
図1に見られるように、反応管10は空間3を通って延び、空間3の外側に入口11及び出口12を有する。更に、反応管10は、実質的に垂直方向に延在する。
【0035】
図1に更に見られるように、電気放射加熱要素20は、反応管10と直接接触していない。
【0036】
炉空間2の屋根2A、底部2B、及び壁2Cは、典型的には、耐熱構造材料から作製され、炉2の内側からその外側への熱の過度の漏れを回避するために断熱されてもよい。
【0037】
本発明による反応器1で使用されるような電気放射加熱要素20の早期故障又は経年劣化の場合、これらの加熱要素は、反応器1の停止又は反応器1への人の立入りを必要とせずに、(屋根2Aの閉鎖可能な開口部4を介して)容易に交換することができる。
【0038】
加熱要素20が反応器の動作中に交換される場合、交換は、好ましくは、炉空間3内の圧力を適切なレベルに維持するために(及び炉空間3内からの熱が反応器から過剰に出ることを回避するために)圧力ボックス(図示せず)内で行われる。
【0039】
図2の正面図に見られるように、反応器1は、4つの平行な管10の列を含む。
【0040】
図3の上面図から明確に分かるように、加熱要素20は全て、反応器1の(いらか段切妻形状を有する)屋根2Aから容易にアクセス可能である。
【0041】
図1及び
図3の反応器の使用中、流体流(典型的にはガス)が反応器管10の入口11を介して供給される。次に、反応管10を通って流れる流体流は、電気放射加熱要素20によって生成されるような加熱を使用して、反応器1の空間3(内の反応器管10)内の流体変換反応に供され、それによって、1種以上の反応生成物を得る。
【0042】
続いて、1種以上の反応生成物は、反応器管10の出口12を介して反応器1から除去される。
【0043】
当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく多くの修正がなされ得ることを、容易に理解するであろう。
【国際調査報告】