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特表2024-518149少なくとも1つの特定のジカルボン酸エチレンモノマーを、2つの不飽和を有するジエステルタイプの特定の架橋剤の存在下で重合させることによって得られる架橋ポリマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-25
(54)【発明の名称】少なくとも1つの特定のジカルボン酸エチレンモノマーを、2つの不飽和を有するジエステルタイプの特定の架橋剤の存在下で重合させることによって得られる架橋ポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/02 20060101AFI20240418BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20240418BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240418BHJP
   C08F 220/20 20060101ALI20240418BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
C08F220/02
A61K8/81
A61Q19/00
C08F220/20
C08F2/44 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565180
(86)(22)【出願日】2022-04-19
(85)【翻訳文提出日】2023-12-13
(86)【国際出願番号】 FR2022000035
(87)【国際公開番号】W WO2022223884
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】2104173
(32)【優先日】2021-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523398640
【氏名又は名称】ダイトウ カセイ ヨーロッパ ソシエテ パー アクシオン サンプリフィエ
【氏名又は名称原語表記】DAITO KASEI EUROPE SAS
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100171310
【弁理士】
【氏名又は名称】日東 伸二
(72)【発明者】
【氏名】フィラルデ,ロランス
(72)【発明者】
【氏名】ルセル,マルク
(72)【発明者】
【氏名】バロー,ジョエル
(72)【発明者】
【氏名】ギヤール,ジェローム
【テーマコード(参考)】
4C083
4J011
4J100
【Fターム(参考)】
4C083AA112
4C083AA122
4C083AC072
4C083AC122
4C083AC332
4C083AC402
4C083AC582
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD262
4C083AD352
4C083BB31
4C083CC01
4C083CC05
4C083EE01
4C083EE05
4C083FF01
4J011AA05
4J011DA01
4J011DB12
4J011PA53
4J011PC02
4J011PC06
4J100AJ08P
4J100AL62Q
4J100CA04
4J100DA37
4J100FA03
4J100FA19
4J100JA51
4J100JA60
(57)【要約】
規定された式(I)の少なくとも1つのジカルボン酸エチレン不飽和モノマーを、特定のエチレン不飽和モノカルボン酸及びポリオール由来の規定された式(II)の少なくとも1つのジエステル架橋剤の存在下で重合させることによって得られる架橋ポリマー。これらの架橋ポリマーの調製方法及び利用分野。好ましい成分を有するこのようなポリマーを含む、好ましくは化粧品向けの組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
の少なくとも1つのモノマーを、
式(II):
【化2】
の少なくとも1つの架橋剤の存在下で重合することによって得られる架橋ポリマーにおいて、
式中、
R1及びR4は、互いに独立して水素原子またはC1~C4の直鎖または分枝アルキル基を表わし、
R2はC1~C4の直鎖または分枝アルキレン基を表わし、
R3は水素原子またはC1~C4の直鎖または分枝アルキル基またはフェニル基を表わし、フェニル基の芳香核はヒドロキシ基、C1~C4の直鎖または分枝アルキルまたはアルコキシ基の中から選択された1つ以上の基によって置換され得、
R5は、C4~C5の直鎖または分枝アルキレン基を表わし、
R6は、C1~C2のアルキレン基を表わし、
nは0または1の値を表し、
M及びM’は互いに独立して、水素原子またはC1~C4の直鎖または分枝アルキル基またはアルカリ剤の残基を表わしている、
架橋ポリマー。
【請求項2】
R1及びR3が水素原子を表わし、R2がメチレン基またはエチレン基、好ましくはメチレン基を表わし、R4が水素原子またはメチル基、好ましくは水素原子を表わし、nが0の値を表わし、M及びM’が互いに独立して水素原子またはアルカリ金属またはC1~C3の直鎖または分枝アルキル基を表わし、R5がC4の直鎖または分枝アルキレン基を表わしている、請求項1に記載の架橋ポリマー。
【請求項3】
式(I)のモノマーがイタコン酸またはその塩の1つまたはそのエステルの1つ、好ましくはイタコン酸またはそのアルカリ金属塩の1つであり、式(II)の架橋剤が1,4ブタンジオールジアクリレートである、請求項1または2に記載の架橋ポリマー。
【請求項4】
少なくとも1つの多糖、好ましくはセルロースの存在下で重合された、請求項1~3のうちのいずれか一項に記載の架橋ポリマー。
【請求項5】
質量の50倍超、より良くは質量の70倍超、さらに良くは質量の100倍超の、常温及び常圧下での吸水能を有する、請求項1~4のうちのいずれか一項に記載の架橋ポリマー。
【請求項6】
式(I)の単数または複数のモノマー及び式(II)の単数または複数の架橋剤がバイオ由来である、請求項1~5のうちのいずれか一項に記載の架橋ポリマー。
【請求項7】
a) アルカリ金属塩の形態、好ましくはナトリウム塩の形態で式(I)の単数または複数のモノマーを提供するステップ、
b) 単数または複数の開始剤の存在下で、好ましくは熱または光化学的な開始剤の存在下で、式(II)の単数または複数の架橋剤の存在下で好ましくはバイオ由来の架橋剤の存在下で、アルカリ金属塩の形態をした式(I)の単数または複数のモノマー、好ましくはバイオ由来のモノマーを重合させるステップ、
c) 使用前に架橋ポリマーを、好ましくは固体の形態、より好適には粉末または顆粒の形態、より良くは乾燥または凍結乾燥または微粒子化によって得られる粉末の形態に整形するステップ、
を含む、請求項1~6のうちのいずれか一項に記載の架橋ポリマーの調製方法において、
場合によってはステップb)とc)の間に補足的な精製ステップb’)を含む方法。
【請求項8】
開始剤が、熱開始剤、好ましくは過硫酸塩である、請求項7に記載の調製方法。
【請求項9】
ステップb)が、1つ以上の多糖類、好ましくはセルロースの存在下で実施され、多糖類含有量が、このステップにおいて使用される式(I)のモノマーの総重量に対して1~20重量%、より良くは2~10重量%である、請求項7または8に記載の調製方法。
【請求項10】
ステップb’)が存在し、精製が溶媒媒質を用いた洗浄によって行なわれ、溶媒媒質が好ましくは水である、請求項7~9のうちのいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項11】
食品産業、農業、園芸、塗装、繊維、紙業、電気、建設、写真、公害防止対策、水分制御、装飾、化粧品及び個人衛生の分野における、請求項1~6のうちのいずれか一項に記載の、または請求項7~10のうちのいずれか一項に記載の通りに調製された架橋ポリマーの使用。
【請求項12】
個人衛生の分野における、好ましくは、歯みがき剤、女性用生理用品、赤ちゃん用おむつ、ティッシュ、成人用尿もれ保護用品のための、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
化粧品の分野における、好ましくは、肌、唇または爪のメーキャップ、スキンケア、日焼け防止製品、セルフタンニング製品、毛髪清浄、カラーリングまたはブリーチング、ヘヤカーリングまたはスムージング、ヘヤコンディショニングのための、及び頭皮向けには炎症防止製品、ふけ防止製品、抗脂肪製品、脱毛防止製品のための、請求項11に記載の使用。
【請求項14】
組成物の総重量に対して0.01~80重量%、より良くは0.05~50重量%、さらに良くは0.1~25重量%かつ特に0.2~10重量%の濃度で、請求項1~6のうちのいずれか一項に記載のまたは請求項7~10のうちのいずれか一項に記載の通りに調製された1つ以上の架橋ポリマーを含む組成物。
【請求項15】
界面活性剤および/または油脂および/または着色剤の中から選択された1つ以上の追加成分を含む、好ましくは化粧品用の請求項14に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
超吸収性ポリマー(SAP)は、常温及び常圧で、短期的な放出がなく自身の質量に対して大量の液体を吸収できるポリマーである。
【0002】
吸収される液体は、水または有機液体であり得る。
【0003】
主要な工業用超吸収性ポリマーは、水を吸収するために使用される。
【0004】
超吸水性ポリマーは、橋かけ結合により互いに結び付けられた巨大分子鎖の絡み合いで構成された材料である。水の存在下で、水は、浸透圧勾配の作用下でこの三次元網目内に浸透する。水の浸透後、網目は空間的に拡大する。ポリマー材料は膨張する。ポリマーの化学的性質及び物理的特性、詳細にはポリマーの弾性に応じて、ポリマー材料の吸収能に応じた平衡が確立される。
【0005】
これらの吸収能は、非常に高いものであり得る。これらの材料は、実際、その質量の数十倍、さらには数百倍の水を吸収する。
【0006】
多くの場合、超吸収性ポリマーは、架橋剤の存在下で1つ以上の不飽和モノマーを重合させた結果として化学的に得られ、これらの架橋剤により、以下で言及する橋かけ結合を生成することが可能になる。
【0007】
不飽和モノマーは概して、エチレン不飽和モノマーであり、多くの場合、アクリル酸またはメタクリル酸またはそれらの塩などの酸またはその塩である。
【0008】
これらの超吸収性ポリマーは、多くの産業において利用されている。詳細には、農業、園芸、個人衛生、水分処理または化粧品を挙げることができる。
【0009】
LG CHEM LTDの国際公開第2018004161号パンフレットの欧州出願である欧州特許第3415551号明細書は、内部架橋剤の存在下で、水溶性エチレン不飽和化合物またはその塩を含むモノマー及びミクロン規模の粒子サイズを有する中空ガラス粒子を含む組成物を重合させること;次に架橋ハイドロゲルポリマーを乾燥させ、粉末化し、ふるい分けすることからなる超吸収性ポリマーの生産方法を請求している。この出願は同様に、水溶性エチレン不飽和化合物またはその塩を含有するモノマーの架橋ポリマーを含む基本ポリマー粉末と、この基本ポリマー粉末上に形成された架橋表面層とを有する超吸収性ポリマーにおいて、ミクロン規模の粒子サイズを有する中空ガラス粒子が基本ポリマー粉末の架橋ポリマーの架橋構造内に含まれている超吸収性ポリマーも請求している。
【0010】
この文書のエチレンモノマーの中には、本質的に、アニオンモノマー、非イオン性モノマー及び四級化されたまたはされていないアミン含有モノマーの中から選択された多くの化合物がある。アニオンモノマーとしては、スルホン酸モノマー、無水物、ならびに、イタコン酸を含めた1つ以上のカルボン酸官能基を有するカルボン酸モノマーがある。アクリル酸は、好ましくかつ例示されているモノマーである。架橋剤としては、多様なポリオールエステル及びアミドを含めた多くの化合物が挙げられている。ポリアクリル酸の架橋のための架橋剤としては、PEGジアクリレートが例示されている。
【0011】
この文書の目的は、加圧下で有効な超吸収剤を提供することにある。
【0012】
KOREA INSTITUTE OF INDDUSTRAL TECHNOLOGY(KITEC) 社の韓国特許第20170059937号明細書は、三次元網目を形成する架橋ポリイタコン酸において、架橋剤が少なくとも2つのエチレン不飽和を有する架橋ポリイタコン酸を請求している。ポリオールまたは糖、アミン、エーテル、アミド及びエステル、例えばポリエチレングリコール(またはPEG)ジアクリレートなどのエステルといった多様な構造の架橋剤の長いリストが見受けられる。実施例において、架橋剤はPEGジアクリレートである。この文書の目的は、特に加圧下での吸収においてより優れた物理的特性を有する材料を提供することにある。
【0013】
VALAGRO社の国際公開第2016087795号パンフレットは、主として、バイオ由来のイタコネート及びバイオ由来の架橋剤の重合によって得られた完全にバイオ由来の架橋ポリ(イタコネート)において、該架橋剤が、R=(CH2)n、n=2~6またはR=CH2-CH(OH)CH2で、CH2=C(-COOH)-CH2-C(=0)-O-R-O-C(=O)-CH2-C(-COOH)=CH2なる式を満たしている架橋ポリ(イタコネート)を請求している。
【0014】
したがって、この架橋剤は、好ましくは例示された1,3プロパンジオールなどのC3のジオールとイタコン酸とのジエステルである。同じく請求されているのは、超吸収剤としてのこのポリマーの使用である。
【0015】
この出願の目的は、完全にバイオ由来の超吸収性ポリマーを提供することにある。
【0016】
しかしながら、これまでに提案された製品は、完全に満足のいくものではない。
【0017】
対応する材料は、実際、多くの場合完成品中に残留する着色を有しており、これが多くの用途において障害となっている。経時的安定性も同様に、特に水の存在下で及びより複雑な調合環境において不十分であり、詳細には、放出及び着色が顕著になる。
【0018】
完成品においてこれらの材料で得られるテクスチャは、特に顆粒状の外見と共に通気性が低く不十分なものであり得る。同様に、不快なべとつく手触りが感じられる。
【0019】
また、材料は、加工しやすく、合成しやすいものでなければいけない。
【0020】
したがって、モノマーは、水性媒質中での十分な溶解度を有し、特に安全に使用されなければならない。
【0021】
最後に、使用される材料は、生態学的影響が少ないことが評価される。このためには、その構成成分は、好ましくは再生可能なバイオ由来の原料から得られることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】欧州特許第3415551号明細書
【特許文献2】国際公開第2018004161号パンフレット
【特許文献3】韓国特許第20170059937号明細書
【特許文献4】国際公開第2016087795号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
したがって、これら全ての理由から、これらの欠点を満足させる十分な吸収特性を有する新規の材料に対する実際のニーズが存在する。
【0024】
このために出願人は、式(I)
【化1】
の少なくとも1つのモノマーを、
式(II):
【化2】
の少なくとも1つの架橋剤の存在下で重合することによって得られる架橋ポリマーにおいて、
式中、
R1及びR4は、互いに独立して水素原子またはC1~C4の直鎖または分枝アルキル基を表わし、
R2はC1~C4の直鎖または分枝アルキレン基を表わし、
R3は水素原子またはC1~C4の直鎖または分枝アルキル基またはフェニル基を表わし、フェニル基の芳香核はヒドロキシ基、C1~C4の直鎖または分枝アルキルまたはアルコキシ基の中から選択された1つ以上の基によって置換され得、
R5は、C4~C5の直鎖または分枝アルキレン基を表わし、
R6は、C1~C2のアルキレン基を表わし、
nは0または1の値を表しであり、
M及びM’は互いに独立して、水素原子またはC1~C4の直鎖または分枝アルキル基またはアルカリ剤の残基を表わしている、
架橋ポリマーを推奨する。
【0025】
アルカリ剤の残基とは、本発明の意味合いにおいて、塩化反応後にカルボキシル基に結合されているアルカリ性作用物質の部分を意味する。これは多くの場合、カルボキシレートイオンの負電荷に結合された少なくとも1つの正電荷を担持する主体である。例えば水酸化物または炭酸塩タイプの無機アルカリ性作用物質については、これは正の金属対イオンである。したがって、Mおよび/またはM’は特に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化リチウムまたは重炭酸ナトリウムまたは重炭酸カリウム由来のイオン化されたナトリウムまたはカリウムまたはリチウムなどのイオン化金属残基であり得る。同様に、これは、アンモニア水由来のアンモニウムイオンでもあり得る。最後に、これは、モノエタノールアミンまたはトリエタノールアミンなどの有機塩基由来の残基でもあり得る。
【0026】
Mおよび/またはM’が水素原子を表わす場合、この原子はイオン化され得る。
【0027】
Mおよび/またはM’は、好ましくは、水素原子またはアルカリ金属またはC1~C3の直鎖または分枝アルキル基を表わす。さらに一層好適には、Mおよび/またはM’は、水素原子またはアルカリ金属を表わす。
【0028】
本発明の一変形形態において、M及びM’は同一である。
【0029】
好ましくは、式(I)中、R1は水素原子またはメチル基を表わす。
【0030】
さらに一層好ましくは、R1は水素原子を表わす。
【0031】
好ましくは、R2はメチレン基CH2またはエチレン基CH2-CH2を表わす。さらに一層好適には、R2はメチレン基を表わす。
【0032】
好ましくは、式(II)において、R3及びR4は、互いに独立して水素原子またはメチル基を表わす。さらに一層好適には、R3は水素原子を表わし、R4は水素原子またはメチル基を表わす。極めて好適には、R3及びR4は水素原子を表わす。
【0033】
本発明の好ましい一変形形態において、R1及びR3は水素原子を表わし、R2はメチレン基またはエチレン基、好ましくはメチレン基を表わし、R4は水素原子またはメチル基、好ましくは水素原子を表わし、nは0の値を表わし、M及びM’は、互いに独立して水素原子またはアルカリ金属またはC1~C3の直鎖または分枝アルキル基を表わし、R5はC4の直鎖または分枝アルキレン基を表わす。
【0034】
好ましくは、R5は、C4の直鎖または分枝アルキレン基:すなわちCH2-CH2-CH2-CH2、CH2-CH(-CH3)-CH2、CH(-CH3)-CH2-CH2、CH(-CH3)-CH(-CH3)を表わす。さらに一層好適には、R5は、CH2-CH2-CH2-CH2基を表わす。
【0035】
本発明のさらに一層好ましい一変形形態において、式(I)のモノマーは、イタコン酸またはその塩の1つまたはそのエステルの1つであり、式(II)の架橋剤は、1-4ブタンジオールジアクリレートである。さらに一層好適には、式(I)のモノマーは、イタコン酸またはそのアルカリ金属塩の1つであり、式(II)の架橋剤は、1-4ブタンジオールジアクリレートである。
【0036】
本発明の架橋ポリマーは、好ましくは10000ダルトンまたはg/モル超の分子量を有する。
【0037】
好適には、式(II)の架橋剤と式(I)のモノマーのモル比は、0.001から0.1、より良くは0.002から0.05まで変動する。
【0038】
好ましくは、常温(20~30℃)及び常圧(1.013×10Pa)下でのその吸水能は、質量の50倍超、より良くは質量の70倍超、さらに良くは質量の100倍超である。
【0039】
吸収性粉末、特にポリマー吸収性粉末の吸水能は、異なる技術によって評価可能である。詳細には、CAMELOT SUPERABSORBENTS社の国際公開第9715367号パンフレット特許出願で言及されているような、パラメータFSを介したティーバッグの技術を挙げることができる。この方法は、透水性あるティーバッグ内に一定量の架橋ポリマー粉末(0.2gに近いW3)を挿入し、10分間撹拌しながら水中に該バッグを浸漬することからなる。水性媒質からバッグを取出してバッグの外部の水を除去した後、バッグを秤量(W1)することにより、吸収性粉末無しのバッグに対応するブランク(W2)の減算後にパラメータFSを決定することができる。
【0040】
ポリマー1グラムあたりの水のグラム数で表わしたFS=((W1-W2)/W3)-1。
【0041】
この決定は、概して、常温及び常圧下でまたは加圧下で実施される。
【0042】
同様に、ガラス瓶内で一定量P1のポリマー(例えば0.5g)に対して一定量の水(例えば200ml)を添加し、その後24時間、ポリマーの完全膨張を待つことからなる技術を利用することもできる。このとき得られたゲルは、100μmのメッシュを用いて濾過される。次に残渣は秤量され、得られた数量P2はポリマーの初期重量と比較される。このとき、ポリマー1グラムあたりの水のグラム数で表わされた吸水能WACは、P2-P1/P1の比率に等しい。
【0043】
例示用の実施例中において、常温(20~25℃)及び常圧(1.013×10Pa)でかつ本発明に係る吸水能を評価するのに役立つ技術として利用されるのは、この後者の方法である。
【0044】
好ましくは、本発明の架橋ポリマーは、ほとんどまたは全く着色されておらず、この低い着色度または無着色性は、保管時にも持続する。詳細には、強く有害な黄色変化は見られない。
【0045】
ポリマーの着色は、例えばMINOLTA CM600Dタイプの分光測色計によって、比色系LまたはCIELABを介して粉末状形態から評価され得る。L系において、Lは0(黒)から100(白)まで変化する色の明度を表わし、aは、緑赤軸に沿った色の成分を表わし、bは青-黄軸に沿った色の成分を表わす。好ましくは、本発明のポリマーは、C=((a+(b1/2として、10未満の色度Cを有する。
【0046】
好適には、本発明のポリマー鎖の化学的構造中には、式(I)のモノマー及び式(II)の架橋剤しか介入しない。さらに一層好適には、本発明のポリマーは、式(I)の単一のモノマー及び式(II)の単一の架橋剤から得られる。
【0047】
好ましくは、本発明のポリマーは、バイオ由来、好ましくは完全にバイオ由来である、すなわち式(I)の単数または複数のモノマー及び式(II)の単数または複数の架橋剤が同時にバイオ由来である、つまり天然由来で石油化学由来でない原料から得られている。さらに一層好適には、これらの構成成分は植物源から得られたものである。
【0048】
したがって、例えば、式(I)のモノマーの1つであるイタコン酸は、例えばA.terreus、A.oryzaeまたはA.niger、好ましくはA.terreusなどのAspergillus属の真菌類の存在下での、特にトウモロコシまたはサトウキビ由来のリグノセルロース系バイオマスの加水分解物の発酵によって得ることができる。
【0049】
式(II)の化合物の好ましい前駆体である1,4-ブタンジオール(HO-CH2-CH2-CH2-CH2-OH)については、Escherichia coli菌の存在下での、特にテンサイ、オレンジまたはトウモロコシ由来のリグノセルロース系バイオマスの加水分解物の発酵によってこれを得ることができる。
【0050】
同じく式(II)の化合物の好ましい前駆体の1つであるアクリル酸は、さまざまな細菌の存在下での特にトウモロコシの植物性バイオマスの加水分解物の発酵によって、または植物油から得ることができる。
【0051】
本発明の架橋ポリマーは、少なくとも1つの多糖、好ましくはセルロースの存在下で重合させられ得る。
【0052】
この最後の点は、以下で説明する調製方法において詳説される。
【0053】
同様に、本発明のポリマーにより満足のいく完成品のテクスチャ、特に化粧品の分野において高く評価されているざらざらせずにきめの細かい泡状テクスチャを得ることが可能になる。
【0054】
同様に、本発明のポリマー自体のみならずこれらのポリマーで実現された組成物においても優れた保管安定性が確認される。
【0055】
本発明のポリマーは、
a) アルカリ金属塩の形態、好ましくはナトリウム塩の形態で式(I)の単数または複数のモノマーを提供するステップ、
b) 単数または複数の開始剤の存在下で、好ましくは熱または光化学的な開始剤の存在下で、式(II)の単数または複数の架橋剤の存在下で好ましくはバイオ由来の架橋剤の存在下で、アルカリ金属塩の形態をした式(I)の単数または複数のモノマー、好ましくはバイオ由来のモノマーを重合させるステップ、
c) 使用前に架橋ポリマーを、好ましくは固体の形態、より好適には粉末または顆粒の形態、より良くは乾燥または凍結乾燥または微粒子化によって得られる粉末の形態に整形するステップ、
を含む調製方法において、
該方法が、場合によってはステップb)とc)の間に補足的な精製ステップb’)を含む調製方法を用いて得ることができる。
【0056】
上述のように、ステップa)のアルカリ金属塩は、好ましくはナトリウム塩である。
【0057】
ステップa)は、アルカリ金属塩の形態、好ましくはナトリウム塩の形態をした式(I)のモノマーを直接使用するか、または例えば酸またはエステルの形態をした式(I)の別のモノマーからこの塩を合成することによって、結果としてもたらされる。これら後者の2つのケースにおいては、塩化または鹸化作業を実施するために、アルカリ金属水酸化物、詳細には水酸化ナトリウムを作用させる。この作業は、例えば60℃などの軽い加熱と共に行なうことができ、同様に、寄生反応を回避するために例えば窒素などの不活性雰囲気下で行なうこともできる。この反応処理は、30分から3時間の持続時間にわたって、好ましくはおよそ45分から2時間の持続時間の間行なわれ得る。その後、得られたアルカリ金属塩を単離することも、あるいは単離しないことも可能である。
【0058】
重合ステップb)は、1つ以上の開始剤(または重合開始剤)の存在下で行なわれる。
【0059】
開始剤は、好ましくは、熱または光化学開始剤である。
【0060】
光開始剤は特に、ベンゾインエーテル、ジアルキルアセトフェノン、ヒドロキシアルキルアルキルアセトフェノン、フェニルグリオキシレート、ベンジルジメチルケタール、アシルホスフィン及びα-アミノケトンの中から選択され得る。
【0061】
さらに一層好適には、単数または複数の開始剤は、ナトリウム、カリウムまたはアンモニウムの過硫酸塩などの熱開始剤、2,2-アゾビス-(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、(2,2-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2-アゾビス-(N,N-ジメチレン)イソブチルアミジン二塩酸塩、2-カルバモイルアゾイソブチロニトリル、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、4,4-アゾビス-(4-シアノ)吉草酸、などのアゾ開始剤の中から選択される。
【0062】
さらに一層好適には、単数または複数の開始剤は、過硫酸塩の中から選択される。
【0063】
本発明の好ましい一変形形態においては、単一の開始剤、好ましくは熱開始剤、好適には過硫酸塩が使用される。
【0064】
単数または複数の開始剤は概して、使用される式(I)のモノマーの重量に対して0.001~2重量%である。
【0065】
ステップb)は、好適に、バイオ由来の式(I)のモノマー及びバイオ由来の式(II)の架橋剤を用いて行なわれる。
【0066】
このステップb)は、単数または複数の添加剤の存在下で行なわれ得る。好ましい添加剤としては、多糖類を挙げることができる。使用可能な多糖類としては、セルロース、デキストロース、デキストラン、デンプン、ペクチン、キチン、グアー、イヌリン、カラギーナン、キサンタン、プルラン、グルカンを挙げることができる。セルロース、詳細には微晶質セルロースそして詳細には2μm~500μm、より良くは5μm~100μmに近い粒度分布を有するセルロースが好ましい。
【0067】
本発明の一変形形態において、ステップb)は、単数または複数の多糖類、好ましくはセルロースの存在下で行なわれる。
【0068】
存在する場合、ステップ(b)における多糖類、より詳細にはセルロースの含有量は、このステップにおいて使用される式(I)のモノマーの総重量に対して1重量%~20重量%、より良くは2重量%~10重量%である。
【0069】
好ましくは、ステップb)の添加剤はバイオ由来である。
【0070】
ステップa)と同様、重合ステップb)は、不活性雰囲気、詳細には窒素下で行なわれ得る。このステップは同様に、例えば60℃の軽い加熱と共に行なうことができる。このステップb)の持続時間は、30分から5時間、好ましくは1時間30分から2時間30分であり得る。
【0071】
この重合ステップの終了は、異なる形で、特にハイドロキノンの添加によってかまたは好適には特に固相架橋ポリマーを得ることが所望されている場合に整形作業c)によって直接実現され得る。
【0072】
ステップc)の様式は、本発明の架橋ポリマーが利用される形状によって左右される。これは、溶媒媒質中、詳細には水性媒質中または有機溶媒媒質中または水プラス有機溶媒の媒質中の溶液または分散液であり得る。これらの溶液または分散液は、添加剤、詳細には界面活性剤を含み得る。
【0073】
使用前の整形に由来する好ましい最終形状は、固体、より好適には粉末または顆粒の形態、より良くは乾燥、凍結乾燥または微粒子化によって得られる粉末の形態である。こうしてステップb)の最終媒質の濾過または蒸発とそれに続く従来の乾燥または凍結乾燥装置での真空下の乾燥または微粒子化による乾燥によって、粉末を得ることができる。
【0074】
このとき、固体の粒子の平均サイズは、好ましくは1μm~100μm、より良くは2μm~80μm、さらに良くは5μm~60μmとなる。このサイズは、レーザ粒度分布計において使用されるレーザ回析を含めた異なる方法によって測定可能である。
【0075】
本発明の方法は、追加のステップを含み得る。これらの追加ステップとしては、濾過ステップ、濃縮ステップ、特に溶媒媒質の部分的蒸発による濃縮ステップまたは乾燥ステップ及び精製ステップを挙げることができる。
【0076】
一変形形態において、本発明の方法は、ステップb)とc)の間に補足的な精製ステップb’)を含むことができる。
【0077】
精製ステップb’)は、アルカリ性作用物質、架橋剤の残基、場合によっては未使用モノマーの残基、微量の開始剤ならびに重合に由来する未架橋であることが多い小さなポリマーなど、最終的架橋ポリマーの特性に時として影響を及ぼし得る化合物を除去することを目的としている。この精製ステップb’)は、好適には、好ましくは精製前に固体に整形されたステップb)の終りで得られた架橋ポリマーの溶媒媒質を用いた洗浄によって実施される。この精製ステップは概して、常温で実施される。溶媒は、アセトンのような有機溶媒であり得る。好ましくは、洗浄のために使用される溶媒媒質は、水である。洗浄は1回または複数回行なうことができ、水との累積接触時間は長時間に及ぶものであり得る(例えば10~40時間)。
【0078】
本発明は同様に、請求対象の架橋ポリマー、特に上述の方法によって得られる架橋ポリマーの使用をも網羅する。これは、本発明の架橋ポリマーの超吸収剤特性のみならず、そのレオロジまたは感覚挙動といった他の特性を有効利用する使用であり得る。
【0079】
本発明のポリマーでは詳細には、食品産業、農業、園芸、塗装、繊維、紙業、電気、建設、写真、公害防止対策、水分制御、装飾、化粧品及び個人衛生の分野において使用され得る。
【0080】
好ましくは、本発明の架橋ポリマーは身体衛生または化粧品において使用されるべきものである。
【0081】
本発明の意味合いにおける個人衛生製品は、人体の内腔と接触するかまたはこれらの内腔を覆うことを目的とした製品に関連する。これは主として、歯みがき剤、女性用生理用品、赤ちゃん用おむつ、ティッシュ及び成人用尿もれ保護用品である。
【0082】
本発明の意味合いにおける化粧品は、皮膚、毛髪、唇、睫毛、眉毛、爪などの外部身体基質の表面に対する製品の分布に基づく利用分野全体に関連する。
【0083】
さらに一層好適には、本発明の架橋ポリマーは、化粧品での利用向けである。したがって、肌のメーキャップ、特にファンデーション、シャドウまたはアイシャドウにおいて、唇のメーキャップ、特にリップスティックまたはリップグロスにおいて、爪のメーキャップ、特にマニュキュアにおいてこれらを使用することができる。
【0084】
同様に、スキンケア、特に保湿製品、及びしわ防止製品、ならびに日焼け防止製品及びセルフタンニング製品のために、それらを使用することもできる。
【0085】
同様に、これらのポリマーを、毛髪の清浄、カラーリング、またはブリーチング、ヘヤカーリングまたはスムージングまたはヘヤコンディショニング(手触りの改善、光沢の改善)のために使用することもできる。最後に、頭皮のトリートメントのため、特に炎症防止製品、ふけ防止製品、抗脂肪または脱毛防止製品の中で、これらのポリマーを使用することができる。
【0086】
本発明のもう1つの目的は、請求対象の1つ以上の架橋ポリマーを含み、特に同じく上述の獲得方法によって得ることのできる組成物にある。
【0087】
本発明の組成物は、好ましくは、組成物の総重量に対して0.01~80重量%、より良くは0.05~50重量%、さらに良くは0.1~25重量%かつ特に0.2~10重量%の濃度で、本発明の1つ以上の架橋ポリマーを含有する。
【0088】
本発明の組成物は、水性または無水であり得る。
【0089】
無水とは、本発明の意味合いにおいて、常温(20~25℃)かつ常圧(1.013×10Pa)下で組成物の総重量に対して5重量%未満の水、さらに良くは1重量%未満の水しか含まない、好適には水、詳細には添加された水を全く含まない組成物を意味する。
【0090】
水性とは、本発明の意味合いにおいて、常温(20~25℃)かつ常圧(1.013×10Pa)下で組成物の総重量に対して5重量%~99.5重量%の水を含む組成物を意味する。
【0091】
本発明の組成物が水を含む場合、それは常温(20~25℃)かつ常圧(1.013×10Pa)下で組成物の総重量に対して、好ましくは5重量%~99.5重量%、より良くは10重量%~90重量%、さらに良くは30重量%~80重量%の水を含む。
【0092】
本発明の一変形形態において、組成物は水性である。このとき、これらの組成物は溶液、ジェル、エマルジョンまたは、稠密な固体の形態を呈し得る。
【0093】
エマルジョンは、水中油(O/W)型、油中水(W/O)型エマルジョンまたは多重エマルジョンであり得る。これらのエマルジョンは特に、クリームまたはミルクになり得る。
【0094】
本発明の別の変形形態において、組成物は無水である。このとき組成物は、粉末、増粘または非増粘の油、ペーストまたは稠密な固体の形態を呈し得る。
【0095】
本発明の組成物は、袋またはサッシェ、ブリックパック、ボトル、ポンプ付きまたはポンプ無しの小瓶、ジャー、チューブ、エアロゾルの中に包装することが可能である。
【0096】
組成物は同様に、紙、織物、不織布などの支持体に含浸させることができる。
【0097】
好ましくは、本発明の組成物は、化粧品用組成物である。
【0098】
本発明の組成物は、1つ以上の界面活性剤を含有し得る。これらの界面活性剤は、アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、または両性界面活性剤の中から選択され得る。詳細には清浄用組成物中で使用されるアニオン界面活性剤は、特に、脂肪酸石鹸、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシルグルタミン酸塩、アシルイセチオン酸塩及びアルキルスルホン酸塩の中から選択され得る。両性界面活性剤は特に、アルキルベタイン、アミドアルキルベタイン及びカンホジアセテートの中から選択され得る。カチオン界面活性剤は、特に、ハロゲン化トリアルキルアンモニウムなどの第4級アンモニウム塩及び第4級ジエステルの中から選択され得る。非イオン界面活性剤は特に、オキシアルキレン化またはグリセロール化脂肪アルコールまたはアミド及びアルキルポリグリコシドの中から選択され得る。
【0099】
界面活性剤は、本発明の組成物中に、組成物の総重量に対して0.001~40重量%、より良くは0.05~30重量%、さらに良くは0.1~20重量%の含有量で存在し得る。
【0100】
本発明の組成物は、1つ以上の油脂を含有し得る。
【0101】
単数または複数の油脂は、油またはろうの中から選択される。
【0102】
本発明の組成物は、1つ以上の油を含有し得る。
【0103】
油とは、本発明の意味合いにおいて、常温および常圧において液体である水非混和性の化合物を意味する。
【0104】
油は、極性または無極性、揮発性または不揮発性であり得る(油は、常圧及び常温下でのその蒸気圧が水銀0.02mm未満である場合に不揮発性と言われる)。
【0105】
油は、炭化水素系、植物由来、鉱物由来または合成由来であり得る。これらの油は、シリコーン油またはフッ素油であり得る。
【0106】
シリコーン油は、場合によってアリール基、詳細にはフェニル基を有する直鎖または分枝または環状ポリジメチルシロキサンであり得る。
【0107】
無極性炭化水素油は、好ましくはパラフィン油、イソパラフィン(イソドデカン、イソデカン)、直鎖アルカン(n-ドデカン)、スクアラン、エイコサン、水素化または非水素化ポリブチレンまたはポリイソブチレン、水素化または非水素化ポリデセンの中から選択される。
【0108】
極性油は、好ましくは炭化水素極性油である。これらの油は、オレイルアルコール及びオクチルドデカノールなどの分枝または不飽和脂肪族アルコールの中から選択され得る。これらは好ましくは、植物または合成由来のトリグリセリド及びトリグリセリド以外の脂肪酸のエステルの中から選択される。
【0109】
植物由来の油としては、特にスイートアーモンド油、アルガン油、アボカド油、ピーナッツ油、ツバキ油、サフラワー油、テリハボク種子油、ナタネ油、ヤシ油、コリアンダー油、カボチャ油、小麦胚芽油、ホホバ油または液体ホホバワックス、アマニ油、マカデミア油、トウモロコシ胚芽油、ヘーゼルナッツ油、クルミ油、ベルノニア油、アプリコット核油、オリーブ油、月見草油、パーム油、クダモノトケイソウ油、グレープシード油、ひまし油、ローズヒップ油、ライ麦油、ごま油、米ぬか油、大豆油、ひまわり油を挙げることができる。
【0110】
これらの植物油は、場合によって水素添加され得る。
【0111】
好ましくは、単数または複数の油は、植物油の中から選択される。
【0112】
本発明に係る組成物は、1つ以上ろうを含有し得る。
【0113】
ろうとは、本発明の意味合いにおいて、常温および常圧において固体であり、可逆的に固体/液体状態変化し、30℃超、好ましくは120℃未満の融点を有する親油性化合物を意味する。ろうの融点は、示差走査熱量計(DSC)、例えば照合番号DSC30でMETTLER社により提案されているものを用いて測定可能である。
【0114】
ろうは、炭化水素系、シリコーン系、フッ素系であり得、かつ鉱物、動物、植物の天然由来または合成由来であり得る。ろうは、極性または無極性であり得る。
【0115】
無極性ろうとしては、微晶質ろう、パラフィンろう、オゾケライト、ポリエチレンろうを挙げることができる。
【0116】
極性ろうは、好ましくは炭化水素系であり、さらに一層好適には、少なくとも1つのエステル官能基を含むエステルろう及び、少なくとも1つのアルコール官能基を含むアルコールろうの中から選択される。
【0117】
エステルろうは、好ましくは、常温および常圧で固体形態の脂肪酸エステルおよび/または脂肪族アルコールのエステルの中から選択される。
【0118】
これらのエステルろうは、水素添加された動物性または植物性油由来であり得る。
【0119】
アルコールろうは、好ましくは、セチルアルコールまたはセチルステアリル(またはセトステアリル)アルコールなどの常温および常圧で固体形態の脂肪族アルコールの中から選択されたものである。
【0120】
天然由来のろうは、好ましくは、蜜ろう、カルナウバろう、カンデリアろう、米糠ろう、オーリキュリろう、エスパルトろう、コルク繊維ろう、サトウキビろう、日本ろう、櫨ろう、モンタンろう、オレンジろう、ローレルろう、リンゴろう、シアバター、マンゴーバターの中から選択される。
【0121】
好ましくは、単数または複数のろうは、植物性ろうの中から選択される。
【0122】
本発明に係る組成物において、油脂の含有量は、組成物の総重量に対して1~98重量%、より良くは10~95重量%、さらに良くは20~95重量%で変動し得る。
【0123】
本発明の組成物は、同様に、本発明の架橋ポリマーとは異なる1つ以上追加のポリマーを含み得る。これらのポリマーは、カチオン性、非イオン性、アニオン性、または両性ポリマーであり得る。これらのポリマーは、特にそれがカチオン性または両性である場合、化粧品の分野において皮膚または毛髪のためのコンディショニング剤として使用され得る。これらは同様に、ヘアースタイリング剤としても使用可能である。これらは同様に、粘稠剤または粘度調節剤としても使用可能である。
【0124】
これらの追加ポリマーは天然由来または合成由来であり得る。特に、グアーガムとその誘導体、セルロースとその誘導体、キサンタンガム、スクレログルカンを挙げることができる。本発明の組成物中、これらの追加のポリマーは、組成物の総重量に対して0.01~20重量%、より良くは0.1~10重量%であり得る。
【0125】
本発明の組成物は同様に、1つ以上の着色剤を含み得る。着色剤は、組成物中に不溶である顔料(常温(20~25℃)、常圧(1.013×10Pa)で0.1%未満の溶解度)、これらの同じ温度及び圧力条件下で組成物中に可溶である染料または染料前駆体であり得る。
【0126】
顔料は、無機または有機の天然由来であり得る。天然無機顔料のカテゴリでは、特に、酸化鉄及び雲母-チタンを挙げることができる。天然有機顔料のカテゴリでは、コチニールカルミン及びインディゴなどの植物由来の顔料を挙げることができる。顔料は同様に、詳細にはアゾ染料に由来する多くのメタリックラッカーなどの合成由来のものでもあり得る。
【0127】
可溶性染料も同様に、天然または合成由来であり得る。これは、顔料と同様、それ自体着色された種である。これらは時に直接染料と称される。これらの染料は、電気的に中性であるかまたはアニオン染料またはカチオン染料のように帯電している可能性がある。多くの化学的族が関係している。天然由来の可溶性染料としては、アントシアン、カロテノイド、クロロフィルを挙げることができる。合成由来の可溶性染料には、例えば、アゾ染料、キノン染料、キサンテン染料、インドアミン染料、ニトロ染料がある。
【0128】
可溶性染料前駆体は、特定の化合物、概して酸化剤の作用下で進化して着色種を形成する概して未着色の種である。酸化剤は、空気中の酸素(この場合、自動酸化性化合物と称する)または過酸化水素などの化学的酸化剤であり得る。この後者の場合には、メタアミノフェノール、メタジフェノール、メタフェニレンジアミン、およびナフタレンまたは複素環カプラを含めた酸化カプラと呼ばれる化合物の添加によって修正可能な生成色を有するパラフェニレンジアミン、パラアミノフェノール、ジアミノピラゾールなどの酸化塩基などの酸化染料前駆体である。
【0129】
着色剤は、本発明の組成物中に、組成物の総重量に対して0.001~40重量%、より良くは0.01~20重量%、さらに良くは0.1~10重量%の濃度で存在し得る。
【0130】
本発明に係る組成物は、さらに、先に定義した化合物とは異なる、当該技術分野において周知の1つ以上の従来の添加剤を含み得る。
【0131】
使用可能な添加剤の例としては、UVAおよび/またはUVBフィルタ、柔軟剤、溶媒、保湿剤、二酸化チタンなどの艶消しまたはパール化剤、ビタミン、プロビタミン、アミノ酸、香料、凝固防止剤、保存料、特に抗菌または抗真菌剤、酸化防止剤、アルカリ化剤または酸性化剤(特に水性組成物のpHを調節するためまたは成分を塩化するためのもの)、キレート化剤を挙げることができる。
【0132】
化粧品用組成物中には同様に、しわ防止剤、敏感肌用作用物質、アクネ防止剤、ふけ防止剤、脱毛防止剤、皮脂分泌防止剤、モイスチャライザを見い出すことができる。
【0133】
本発明の組成物は同様に、1つ以上植物性抽出物を含み得る。
【0134】
植物由来の抽出物は、植物界に属するあらゆるタイプの植物に由来し得る。したがって、これらの抽出物は、隠花植物に由来し得るが、より好適には、顕花植物に由来し得る。
【0135】
これらの抽出物は、詳細には、樹木、低木、観葉植物、顕花植物、サボテン科、イネ科に由来し得る。
【0136】
これらの抽出物は、植物の全ての部分、詳細には、根、茎または幹、葉、花及び果実に由来し得る。
【0137】
これらの抽出物は、常温(20~25℃)及び常圧(1.013×10Pa)で水中に可溶であるかまたは不溶であり得る。
【0138】
これらの抽出物は、特に、以上で言及した特性の1つのための活性物質として使用可能である。
【0139】
好ましくは、本発明の組成物は、界面活性剤および/または油脂および/または着色剤の中から選択された1つ以上の追加の成分を含む。
【0140】
以下の実施例は、本発明を例示するものであるが、限定的な性質を有するものではない。
【実施例
【0141】
実施例1
一般的調製方法
イタコン酸12.5g(または式(I)のモノマー0.385モル)を収容しかつ氷浴中に浸漬された100ml入りの反応装置内に、11.2mlの塩基12M(可能であれば予め冷却されている)をゆっくりと添加する。冷却器、窒素導入を設置し、その後、反応装置を、60℃で恒温に保った油浴中に浸漬する。混合物を1時間、磁気撹拌(100rpm)しながら窒素フロー下に置き、その後、0.125gの過硫酸カリウム、0.315gの1.4ブタンジオールジアクリレート(または6.4・10-3モルの式(II)の架橋剤)、及び場合によっては0.625gの多糖、詳細には微晶質セルロースを添加する。撹拌を1分間650rpmまで増大させ、次に100rpmまで減少させる。窒素フローを停止し、反応装置を閉じる。
【0142】
約2時間の反応時間の後、反応装置内に収容された混合物を適当なトレイ中に薄い層の形で置き、50℃で24時間、恒温器で乾燥させる。こうして標準的な固体生成物が得られる。
【0143】
次に、この標準固体生成物について吸水能(WAC)を測定する。
【0144】
いくつかの事例において、固体を12時間その体積の5倍の水と接触させることができ、その後、それを濾過し、得られたゲルを凍結乾燥させる。こうして、高品質生成物が得られる。
【0145】
含有量を比例調整し、Kg規模への転用によって5l入り反応装置内で同一のプロセスを実施することができる。
【0146】
本発明にしたがって実現された生成物の例が、下表に報告されている。
【0147】
【表1】
【0148】
実施例A及びBは、満足のいく吸水能を示す。
【0149】
その上、実施例Bの生成物に類似した生成物を上述の補足的処理に付して、高品質生成物B’を導いた。
【0150】
単独または水の存在下での実施例A、B、B’の全ての試料は、45~50℃でさえ経時的にほとんど色付かない。水の存在下において経時的耐性は良好である。
【0151】
比較例2
式(II)の架橋剤を同じモル含有量の別の架橋剤で置換して、実施例1の調製プロトコルを再現した。
【0152】
これによって、表2が導かれる。
【0153】
【表2】
【0154】
結論として、本発明以外の比較用の架橋剤のいずれも十分な吸水能を示さない。その上、実施例Eは吸収性ポリマーを導かないという点に留意すべきである。なお、単独または水の存在下での実施例C、D、F及びGの試料は、温度下で保管した場合に暗黄色の色調を帯びる。
【0155】
化粧品用組成物の実施例3
下表3は、皮膚用の泡クリームの組成を示す。
【0156】
【表3】
【0157】
上述の式のクリームは、常温及び45℃で放出がなく経時的に保存のきく、ざらざらがなくきめの細かい非常に快い泡構造を有する。皮膚にこれを塗布するとソフトな肌触りが得られる。
【0158】
重量対重量で実施例Aのポリマーを比較例C、D、F及びGのポリマーと置換することによって、組成物を実現した。
【0159】
本発明以外のいずれのポリマーを用いても、安定した泡クリーム構造は得られない。
【国際調査報告】