(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-25
(54)【発明の名称】燃料油水素化分解の方法
(51)【国際特許分類】
C10G 47/12 20060101AFI20240418BHJP
B01J 23/10 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
C10G47/12
B01J23/10 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566940
(86)(22)【出願日】2022-04-25
(85)【翻訳文提出日】2023-12-11
(86)【国際出願番号】 RU2022050137
(87)【国際公開番号】W WO2022231479
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523407263
【氏名又は名称】イリエフ,ロマン
(71)【出願人】
【識別番号】523408972
【氏名又は名称】マサルヴィッチ,ヴァレリーア
(71)【出願人】
【識別番号】523408983
【氏名又は名称】タラノヴ,エデュアルド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】イリエフ,ロマン
(72)【発明者】
【氏名】マサレヴィッチ,ヴァレリーア
(72)【発明者】
【氏名】タラノヴ,エデュアルド
(72)【発明者】
【氏名】ヴィゴニアイロ,アレクサンドル
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BC19A
4G169BC21A
4G169BC25A
4G169BC33A
4G169BC37A
4G169BC38A
4G169BC39B
4G169BC49A
4G169BC53A
4G169BC64A
4G169BC73A
4G169BC74A
4G169BC75A
4G169CC05
4G169DA06
4G169EC03Y
4G169EC04Y
4G169EC05Y
4G169EC22Y
4H129AA01
4H129CA03
4H129DA21
4H129HA13
4H129KA12
4H129KB03
4H129KC03Y
4H129KC05X
4H129KD11Y
4H129KD30Y
4H129NA23
(57)【要約】
本発明は、メタン存在下での燃料油水素化分解に関し、835~850kg/m3の密度の蒸留生成物を生成するように設計される。技術的結果は、燃料油水素化分解のプロセスを、それを低減された温度および圧力で行うことによって単純化すること、ならびに蒸留生成物の収率を高めることである。燃料油が、90~110℃に加熱され、0.8~1.2Mpaの圧力で供給されるメタンと混合され、燃料油とメタンの得られる混合物が、280~380℃に加熱され、促進触媒存在下での水素化分解のために水素化分解反応器に供給され、得られる蒸気が、精留ユニットに移され、分離されたストリームが続いて冷却されて805~850kg/m3の密度の燃料油留分を得る、燃料油水素化分解の方法が提唱される。燃料油およびメタン混合物の最適質量比は、80:20であり、触媒は、周期表の異なる周期およびいずれかの同じ周期に属する、周期表のスカンジウムおよびチタンのサブグループの元素の酸化物の混合物であり、等モル分率で取られかつ酸化アルミニウムに適用される。この場合、触媒は、第5周期金属および原子番号75~83の周期表元素からなる複合材料で促進され得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料油水素化分解の方法であって、
燃料油が、90~110℃に加熱され、
メタンが、燃料油と混合するために0.85~1.2Mpaの圧力で供給され、
燃料油とメタンの得られる混合物が、280~380℃に加熱されかつ水素化分解のために水素化分解反応器に供給され、
蒸気が、前記水素化分解反応器から精留ユニットに移され燃料油留分を得るために分離されたストリームが続いて冷却され、
水素化分解が、促進触媒の存在下で行われる、
方法。
【請求項2】
前記触媒は、周期表の異なる周期および任意の同じ周期に属する周期表のスカンジウムおよびチタンのサブグループの元素の酸化物の混合物であり、等モル分率で取られかつ酸化アルミニウムに適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記触媒は、第5周期金属および原子番号75~83の周期表元素からなる複合材料で促進される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記燃料油対メタンの混合物の質量比は、80:20である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタン存在下での燃料油水素化分解に関し、835~850kg/m3の密度の蒸留生成物を生成するように設計される。
【背景技術】
【0002】
2001年6月20日に公開された特許RU 2169170に記載された粗重質炭化水素の水素化分解方法が、先行技術で知られている。この水素化分解方法は、反応チャンバ中で試薬の量の20~30wt.%の量で水素または水素ガスを供給すること、およびチャンバ中のガス圧力を10~30Mpaにかつ温度を1300~1500Kにすることを含む。試薬の量の70~80wt.%の量で処理された原料が、加熱された水素を含むチャンバに供給され、水素と混合され、得られる混合物は、2~12msに等しい、原料と水素の総接触時間で分解され、次いで反応生成物は、5~10msの間、温度および圧力の同時の低下にてクエンチされ、移されて目標生成物を分離する。承認された燃料油水素化分解の方法は、98~99%の変換率で反応生成物の42.266wt.%の量のガス状生成物(CH4、C2H4、C2H6、C3H8、C4);34.096wt.%の量のガソリン(C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12);17.284wt.%の量のディーゼル燃料(C13~C20)を得ることを可能にした。
【0003】
特許RU 2169170による水素化分解方法として認識されているプロトタイプの欠点は、方法を高温および超高圧で行うこと、ならびに大量のガスが得られるため生成物収率が低いことである。
【発明の概要】
【0004】
特許請求される発明の技術的結果は、燃料油水素化分解のプロセスを、それを低減された温度および圧力で行うことにより単純化すること、ならびに蒸留生成物の収率を高めることである。
【0005】
指定される結果は、燃料油が、90~110℃に加熱され、0.8~1.2Mpaの圧力で供給されるメタンと混合され、燃料油とメタンの得られる混合物が、280~380℃に加熱され、かつ促進触媒存在下での水素化分解のための水素化分解反応器に供給され、得られる蒸気が、精留ユニットに移され、分離されたストリームが続いて冷却されて805~850kg/m3の密度の燃料油留分を得る、燃料油水素化分解の提唱される方法により達成される。
【0006】
本発明の一実施形態では、燃料油対メタン混合物の質量比は、80:20である。
【0007】
本発明の一実施形態では、触媒は、等モル分率で取られ酸化アルミニウムに適用される、周期表の異なる周期およびいずれかの同じ周期に属する、周期表のスカンジウムおよびチタンのサブグループの元素の酸化物の混合物である。この場合、触媒は、第5周期金属および原子番号75~83の周期表元素からなる複合材料で促進され得る。
【0008】
以下に、特許請求される発明を詳細に開示する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
910~1000kg/m3の密度での燃料油水素化分解の方法が、提唱される。
【0010】
原料(燃料油)は、供給タンクに供給される。供給タンクは、加熱するための加熱要素および温度コントローラを含有する。タンクにおいて、原料は、90~110℃の温度に加熱される。加熱された燃料油は、ストレーナを通して圧送されて、例えば、供給タンクおよび加熱炉を接続するパイプラインの一部として作られるスタティックミキサで、天然ガス(メタン)と混合される。燃料油の流れは、流量計によって制御される。燃料油の量を正常な条件にするために(原料の流れを制御するため)、温度補正係数が、導入されてよい:温度が20度から+100度上昇するごとに+8%の体積。
【0011】
メタンは、例えばシリンダから、0.85~1.2Mpaの圧力でスタティックミキサに供給される。シリンダは、レデューサの凍結を防ぐ加熱レデューサを含有し得る。メタンの流れもまた、流量計により制御できる。原料重量の10~20%の補正係数が、それを正常条件にするために適用され得る。
【0012】
最終生成物の有効収率のために、ミキサ中の燃料油と天然ガスの最適質量比は80:20であることが、実用的な手段により確立されている。
【0013】
圧力0.85~1.2MPaおよび温度90~110℃での燃料油とメタンの得られる混合物は、さらなる加熱のために炉の中へとミキサから供給される。炉は、例えば、誘導加熱または別のタイプの加熱を使用できる。混合物は、280~380℃に加熱され、メタン水素化分解のために水素化分解反応器に移される。
【0014】
水素化分解反応器は、規則的な充填物を含む充填用タンクであり、同心シェルの形態の内部機械要素および流れ方向装置を含有する。工業化学または物理的化学プロセスのために設計された類似の反応器(反応チャンバ)が、先行技術から知られている。
【0015】
反応器において、2つのストリーム:ガス状ストリーム-メタンおよび液体ストリーム-燃料油の相互作用が、実現される。これは、供給混合物の水素化分解を提供する。反応器における相互作用は、規則的な充填物の形態で実現される促進触媒の存在下で起こる。規則的な充填物は、反応器カラムの軸に平行に配置された垂直板の束であり、複雑な構成の有孔波形シートで作られている。
【0016】
反応器において、促進剤および触媒の影響下で、水素は、水素の豊富な分子と水素の少ない分子の間で再分配されて、反応器内で維持される温度を超えない沸点を有する飽和炭化水素を形成する。
【0017】
反応器において使用される触媒は、以下を行うように設計される:
・分離のないC5~C18異性化、
・オレフィンメタセシス、
・硫黄分の低減、
・水素不均化、
・分解。
【0018】
等モル分率で取られる、異なる周期および任意の同じ周期に属する第3族元素および第4族元素の酸化物の混合物が、触媒として使用される。触媒の一例は、酸化スカンジウムと酸化チタンの混合物であるが、これに限定されない。酸化物は、担体、すなわち、少なくとも200m2/gの表面積を有するガンマ酸化アルミニウムに担持される。酸化物の合計割合は、担体重量の10%を超えてはならない。
【0019】
触媒は、第5周期金属および原子番号75~83の周期表元素からなる複合材料である、促進剤で促進される。75~83の元素の量は、40~75wt.%であり、第5周期金属の量は、25~60wt.%である。複合材料の一例は、ニオブ-亜鉛材料である。複合材料は、少なくとも11ミリメートルの内部断面、ならびにまっすぐな表面および曲面で構成された形状を有する密閉された鋼製カプセルに封入されなければならない。曲面の割合は、少なくとも60%でなければならない。形態の変形例-シリンダ、レンズ、球。容器の複合体充填率は、容積の45~70%である。促進剤カプセルは、化学反応の条件が変化する、空間の領域を作り出す。促進剤の存在は、工業用触媒を使用するプロセスを含む、触媒プロセスのコストを削減する。例えば、ある研究室は、活性化エネルギーにおける3.5分の1の減少を記録した。
【0020】
反応器の後に、生成物蒸気は、精留ユニットに移され、そこで、生成物ストリームは、3つの部分:重質、中質、および軽質に分離される。軽質部分は、その90vol.%以上(ロスを含む)が摂氏210度で蒸留される、軽質留分を含む(ASTM D 86法)。中質部分は、ASTM D 86法によりその90vol.%未満(ロスを含む)が摂氏210度で蒸留され、65vol.%以上(ロスを含む)が摂氏250度で蒸留される、中質留分を含む。重質部分は、その65vol.%未満(ロスを含む)がASTM D 86法により摂氏250度で蒸留されるか、または摂氏250度でのその蒸留率をこの方法により決定できない、重質留分を含む。
【0021】
精留ユニットの後に、生成物ストリームは、凝縮熱交換器および冷却熱交換器を通過する。各ストリームは、各自の収集器に移され、そこで得られる生成物が、測定(秤量)される。
【0022】
最終生成物は、805~850kg/m3の密度の留分である。
【0023】
提唱された方法は、平均で6倍、最終生成物中の硫黄分を低減すること、すなわち0.068~0.082%の硫黄分を含む留分を得ることを可能にした。留分は、類似した蒸留曲線を有する。同時に、留分の95%は、250~330℃の範囲で蒸発する。
【0024】
燃料油にメタンを添加し、それを促進触媒の影響下で蒸留生成物の混合物に変換するこのプロセスは、低コストであり、非常に穏やかな条件下で円滑に進む。
【国際調査報告】