(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-25
(54)【発明の名称】低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質又はその短縮型断片の医薬的使用
(51)【国際特許分類】
A61K 38/16 20060101AFI20240418BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20240418BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20240418BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240418BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240418BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240418BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240418BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20240418BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240418BHJP
A61P 19/06 20060101ALI20240418BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240418BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
A61K38/16
C07K14/47 ZNA
A61P3/06
A61P25/00
A61P9/10
A61P25/28
A61P25/16
A61P9/12
A61P3/10
A61P19/06
A61K45/00
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513552
(86)(22)【出願日】2022-04-28
(85)【翻訳文提出日】2024-01-09
(86)【国際出願番号】 CN2022089740
(87)【国際公開番号】W WO2022237548
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】202110514625.X
(32)【優先日】2021-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521132417
【氏名又は名称】西湖大学
【氏名又は名称原語表記】WESTLAKE UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】NO.18,Shilongshan Road,Cloud Town,Xihu District,Hangzhou,Zhejiang 310024 CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】▲鄒▼ ▲貽▼▲龍▼
(72)【発明者】
【氏名】石 涛涛
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 天舒
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲鳳▼翔
(72)【発明者】
【氏名】路 ▲陽▼
(72)【発明者】
【氏名】潘 子健
(72)【発明者】
【氏名】▲韓▼ 静蓉
(72)【発明者】
【氏名】彭 芹
(72)【発明者】
【氏名】王 怡心
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA19
4C084BA02
4C084BA20
4C084BA23
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA012
4C084ZA162
4C084ZA362
4C084ZA421
4C084ZA452
4C084ZC312
4C084ZC331
4C084ZC332
4C084ZC352
4C084ZC751
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA40
4H045EA20
(57)【要約】
本発明は、生物医学の分野に関し、低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質又はその短縮型断片の医薬的使用に関する。具体的には、本発明は、高脂血症、高脂血症合併症若しくは神経変性疾患を処置若しくは予防するための薬物の調製における低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質若しくはその短縮型活性断片の使用、又は血液若しくは脳脊髄液中のアポリポタンパク質レベル、低密度リポタンパク質レベル若しくは超低密度リポタンパク質レベルを低減させるための薬物の調製における低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質若しくはその短縮型活性断片の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高脂血症、高脂血症合併症若しくは神経変性疾患の処置若しくは予防のための医薬の調製における、又は血液若しくは脳脊髄液中のアポリポタンパク質のレベル、低密度リポタンパク質のレベル若しくは超低密度リポタンパク質のレベルを低減させるための医薬の調製における、低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質又はその短縮型活性断片の使用。
【請求項2】
低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質が、配列番号1~12のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質の短縮型活性断片が、配列番号13~15のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
高脂血症が、III型高脂血症である、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
高脂血症合併症が、アテローム性動脈硬化、冠動脈心疾患、高血圧、高血糖及び高尿酸血症からなる群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
神経変性疾患が、多発性硬化症、アルツハイマー病及びパーキンソン病からなる群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
アポリポタンパク質が、ヒトAPOE2、APOE3及びAPOE4からなる群から選択される1種又は複数である、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
高脂血症、高脂血症合併症若しくは神経変性疾患を処置若しくは予防するために、又は血液若しくは脳脊髄液中のアポリポタンパク質のレベル、低密度リポタンパク質のレベル若しくは超低密度リポタンパク質のレベルを低減させるために使用される、低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質又はその短縮型活性断片。
【請求項9】
低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質が、配列番号1~12のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有する、請求項8に記載の低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質又はその短縮型活性断片。
【請求項10】
低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質の短縮型活性断片が、配列番号13~15のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有する、請求項8に記載の低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質又はその短縮型活性断片。
【請求項11】
高脂血症が、III型高脂血症である、請求項8から10のいずれか一項に記載の低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質又はその短縮型活性断片。
【請求項12】
高脂血症合併症が、アテローム性動脈硬化、冠動脈心疾患、高血圧、高血糖及び高尿酸血症からなる群から選択される、請求項8から10のいずれか一項に記載の低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質又はその短縮型活性断片。
【請求項13】
神経変性疾患が、多発性硬化症、アルツハイマー症候群及びパーキンソン病からなる群から選択される、請求項8から10のいずれか一項に記載の低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質又はその短縮型活性断片。
【請求項14】
アポリポタンパク質が、ヒトAPOE2、APOE3及びAPOE4からなる群から選択される1種又は複数である、請求項8から10のいずれか一項に記載の低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質又はその短縮型活性断片。
【請求項15】
高脂血症、高脂血症合併症若しくは神経変性疾患を処置若しくは予防する方法、又は血液若しくは脳脊髄液中のアポリポタンパク質のレベル、低密度リポタンパク質のレベル若しくは超低密度リポタンパク質のレベルを低減させる方法であって、それを必要とする対象に、有効量の低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質又はその短縮型活性断片を投与する工程を含む方法。
【請求項16】
低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質が、配列番号1~12のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質の短縮型活性断片が、配列番号13~15のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
高脂血症が、III型高脂血症である、請求項15から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
高脂血症合併症が、アテローム性動脈硬化、冠動脈心疾患、高血圧、高血糖及び高尿酸血症からなる群から選択される、請求項15から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
神経変性疾患が、多発性硬化症、アルツハイマー病及びパーキンソン病からなる群から選択される、請求項15から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
アポリポタンパク質が、ヒトAPOE2、APOE3及びAPOE4からなる群から選択される1種又は複数である、請求項15から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
配列番号13~15のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有する、低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質の短縮型活性断片。
【請求項23】
有効量の請求項22に記載の低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質の短縮型活性断片、及び1種又は複数の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物であって、
任意選択で、1種又は複数の血中脂質低下薬、例えばスタチンを更に含む医薬組成物。
【請求項24】
別々に包装される第1の製品及び第2の製品を含む組合せ医薬製品であって、
第1の製品が、請求項23に記載の医薬組成物を含み、
第2の製品が、1種又は複数の血中脂質低下薬、例えばスタチンを含み、
任意選択で、製品マニュアルも含まれる、組合せ医薬製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医学の分野に属し、低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質(hypoxia-inducible lipid droplet-associated protein)又はその短縮型断片の医薬的使用に関する。具体的には、本発明は、高脂血症、高脂血症合併症若しくは神経変性疾患の処置若しくは予防のための医薬の調製における、又は血液中若しくは脳脊髄液中のアポリポタンパク質のレベル若しくは低密度リポタンパク質のレベルを低減させるための医薬の調製における、低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質又はその短縮型活性断片の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
高脂血症は、現代社会における非常に一般的な代謝疾患である。その主な臨床所見は、患者の血液中のコレステロール、トリグリセリド及びアポリポタンパク質の含量の異常な増加である。疫学的調査は、高脂血症の高い発生率を明らかにしており、我が国では60歳を超える人々の間で、男性の13%超え及び女性の23%超が、高脂血症状態を示す。持続性高脂血症は、アテローム性動脈硬化を促進し、様々な心血管合併症、高血圧、高血糖、高尿酸血症及び他の関連障害を生じることが知られている。
【0003】
臨床診療において、スタチンは、最も使用される脂質低下薬である。これは主に、細胞コレステロール合成に関与する重要な酵素を阻害し、これにより、血流中へのコレステロール放出を低減させ、脂質レベルを有効に低下させることにより機能する。幅広い使用にもかかわらず、スタチンは、トリグリセリド及びリポタンパク質の低減における限られた有効性、並びに肝臓損傷及び筋痛等の有害効果を誘導する傾向を含む、著しい限定を示す。したがって、トリグリセリド及びリポタンパク質に特異的な効果を有する脂質低下薬を探索する臨床上の必要が相当にある。
【0004】
中枢神経系(CNS)疾患は、ヒトの健康を脅かす一般的な疾患である。中枢神経系は、脂質に富んでおり、脂質代謝は、神経系の正常な生理機能の維持において重要な役割を果たす。多くの中枢神経系疾患は、異常脂質代謝に密接に関係がある。研究により、脂質代謝が、多発性硬化症、アルツハイマー病及びパーキンソン病等、一部の神経変性疾患において有意に変更されることが示された。
【0005】
低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質(HILPDA)は、低酸素誘導性因子1/2(HIF1/2)又はペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)によって調節される標的タンパク質(HILPDA遺伝子によってコードされる)であり、これは、細胞における脂肪滴(脂肪滴)に主に位置し、脂肪滴におけるトリグリセリドヒドロラーゼ(ATGL)の活性を阻害することにより脂質蓄積を促進する。HILPDAは、ヒトでは63アミノ酸、マウスでは64アミノ酸からなる。
【0006】
以前に、HILPDAが、小型の分泌タンパク質として、腎明細胞癌患者の血液中に高度に発現されることには僅かな量の証拠しかなかった(Cancer Res. 2005年6月1日;65(11):4817~26頁)が、この結論はその後、別の研究チームによって却下された(FASEB J. 2010年11月;24(11):4443~58頁)ため、これが分泌タンパク質であるか否かについては、未だに議論の余地がある。本発明者らは、研究によって、HILPDAが、分泌特徴を有し、血液及び脳脊髄液を含む様々な体液中に幅広く存在することを見出した。
【0007】
アポリポタンパク質は、脂質(例えば、脂肪及びコレステロール)に結合することができる両親媒性タンパク質であり、これは、アポリポタンパク質A、アポリポタンパク質B、アポリポタンパク質C、アポリポタンパク質D、アポリポタンパク質E、アポリポタンパク質F、アポリポタンパク質H、アポリポタンパク質L、アポリポタンパク質M、アポリポタンパク質(a)を含むいくつかの主要カテゴリーへと主に分けられ、そのうち、アポリポタンパク質A(APOA)は、4種のサブタイプ:APOA1、APOA2、APOA4及びAPOA5で構成される。アポリポタンパク質B(APOB)は、2種のサブタイプ、APOB-48(主に小腸において産生される)及びAPOB-100(主に肝臓において産生される)へと分けることができる。加えて、アポリポタンパク質C(APOC)もまた、4種のサブタイプ:APOC1、APOC2、APOC3及びAPOC4へと分けることができる。アポリポタンパク質は、複合体及び多様な組合せにおいて不溶性脂質を包み囲んで、水性循環器系(例えば、血液及び脳脊髄液等)における脂質の輸送の原因となる水溶性リポタンパク質(リポタンパク質粒子としても知られており、例えば、血液系中に分布するリポタンパク質は、カイロミクロン(CM)、超低密度リポタンパク質(VLDL)、中間密度リポタンパク質(IDL)、低密度リポタンパク質(LDL)、高密度リポタンパク質(HDL)等へと主に分けられる)を形成する。リポタンパク質粒子集合及び脂質の溶解度の増加に加えて、アポリポタンパク質は、特異的な組織又は臓器(例えば、肝臓、副腎、又は脳内の一部の細胞等)に分布するリポタンパク質受容体と直接的に相互作用し、リポタンパク質受容体媒介性エンドサイトーシスを誘発し、リポタンパク質の取込み及びクリアランスを媒介し、これにより、循環器系における脂質(又はリポタンパク質)代謝恒常性を維持することもできる。
【0008】
アポリポタンパク質、又はそれが生み出すリポタンパク質の機能障害は、数多くの疾患及び代謝障害に密接に関連付けられており、心血管障害、具体的には高脂血症及び延長された高脂血症から生じるアテローム性動脈硬化、並びにアルツハイマー病等の神経変性状態において著しく強調される。説明すると、血流中のAPOC3の上昇されたレベルは、毛細血管の内皮細胞上に位置するリポタンパク質リパーゼの酵素活性を妨害し、CM、VLDL及びIDL等のトリグリセリドリッチリポタンパク質の蓄積をもたらし、これにより、高トリグリセリド血症を助長する。同様に、血流内のCM、VLDL、IDL及びLDLを含むAPOBが濃縮されたリポタンパク質の有意な蓄積は、高脂血症を助長し、重症心血管状態、特にアテローム性動脈硬化を生じうる。更に、APOE遺伝子内の遺伝的多型、特に、APOE2バリアントは、高脂血症及びそれに付随する合併症との頑強な関連を実証する。
【0009】
人体において、異なる型のアポリポタンパク質は、別個のリポタンパク質粒子の形成に関与する。例えば、APOEは、3種の異なる形態:APOE2、APOE3及びAPOE4で存在する。APOE2は、リポタンパク質受容体に対する著明に低減された親和性を示し、CM、VLDL及びIDL等のリポタンパク質のクリアランスを妨害し、これらのリポタンパク質の過剰な蓄積及びIII型高脂血症の発症を生じる。
【0010】
APOE4は、遅発型アルツハイマー病の発症に関する最強の遺伝的リスク因子の1つである考慮される。分子機構は依然として不明であるが、可能な理由の1つは、APOE3又はAPOE2と比較して、脳間質液(又は脳脊髄液)中のAPOE4が、アミロイドAβによる不溶性アミロイドプラークを形成し、遮断されたニューロン情報交換をもたらし、アルツハイマー病を引き起こす可能性がより高いことである。
【0011】
更に、関連する研究は、アポリポタンパク質APOEを欠如するマウスモデルにおけるHILPDAの欠失が、過剰な脂質を蓄積するマクロファージに由来する特徴的な細胞型である泡沫細胞の形成を低減させ、よって、アテローム性動脈硬化の進行を軽減することができることを示した。これらの知見は、特異的なAPOE欠損マウスモデルにおけるアテローム性動脈硬化の発症の促進におけるHILPDAの役割を明らかにする。しかし、この研究における遺伝的ノックアウトアプローチの利用が原因で、アテローム性動脈硬化進行の調節におけるHILPDAの関与を決定する特異的な機構は依然として解明されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Cancer Res. 2005年6月1日;65(11):4817~26頁
【非特許文献2】FASEB J. 2010年11月;24(11):4443~58頁
【非特許文献3】E.W. Martinによる「Remington's Pharmaceutical Sciences」
【非特許文献4】J. Sambrook等、「Molecular Cloning Experiment Guide」、Huang Peitang訳、第3版、Science Press
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
現在までに、血流又は脳脊髄液中のリポタンパク質及び脂質レベルを低下させるHILPDAの報告はない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
大規模な研究及び革新的な試みにより、本発明者らは、驚いたことに、低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質(本発明において脂質低下ペプチドとしても知られており、英語ではリプロリン(Liplorin)と命名される)が、in vitroで培養された様々な細胞による血液中のアポリポタンパク質(アポリポタンパク質E又はApoEと命名されるアポリポタンパク質Eを含むがこれらに限定されない)及び脂質のクリアランスを有効に促進し、これにより、血液中のアポリポタンパク質(ApoEを含むがこれらに限定されない)及びリポタンパク質のレベルを低減させることができることを見出した。加えて、本発明者らは、研究によって、HILPDAの短縮型配列が、ラットの脳脊髄液循環系におけるアポリポタンパク質E(ApoE)の含量の減少を有効に促進することができることを見出した。よって、次の発明が提供される:
【0015】
本発明の一態様は、高脂血症、高脂血症合併症若しくは神経変性疾患の処置若しくは予防のための医薬の調製における、又は脳脊髄液中のアポリポタンパク質レベル、低密度リポタンパク質レベル若しくは超低密度リポタンパク質レベルを低下させるための医薬の調製における、低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質又はその短縮型活性断片の使用に関する。
【0016】
本発明の一部の実施形態では、本使用において、低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質は、配列番号1~12のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有する。
【0017】
本発明において、他に指定がなければ、用語「その短縮型活性断片」は、低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質と同じ又は同様の生物活性又は薬理活性を有する低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質の短縮型断片を指す。
【0018】
本発明の一部の実施形態では、本使用において、低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質の短縮型活性断片は、配列番号13~15のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有する。
【0019】
本発明の一部の実施形態では、本使用において、高脂血症は、III型高脂血症である。
【0020】
本発明の一部の実施形態では、本使用において、高脂血症合併症は、アテローム性動脈硬化、冠動脈心疾患、高血圧、高血糖及び高尿酸血症からなる群から選択され;好ましくは、長期(例えば、1年間超又は3年間超)高脂血症によって引き起こされるアテローム性動脈硬化、冠動脈心疾患、高血圧、高血糖又は高尿酸血症である。
【0021】
本発明の一部の実施形態では、本使用において、神経変性疾患は、多発性硬化症、アルツハイマー病及びパーキンソン病からなる群から選択される。
【0022】
本発明の一部の実施形態では、本使用において、アポリポタンパク質は、ヒトAPOE2、APOE3及びAPOE4からなる群から選択される1種又は複数である。
【0023】
本発明の別の態様は、高脂血症、高脂血症合併症若しくは神経変性疾患の処置若しくは予防に使用されるか、又は血液若しくは脳脊髄液中のアポリポタンパク質レベル、低密度リポタンパク質レベル若しくは超低密度リポタンパク質レベルの低減に使用される、低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質又はその短縮型活性断片に関する。
【0024】
本発明の一部の実施形態では、本低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質又はその短縮型活性断片において、低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質は、配列番号1~12のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有する。
【0025】
本発明の一部の実施形態では、本低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質又はその短縮型活性断片において、低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質の短縮型活性断片は、配列番号13~15に示されるアミノ酸配列を有する。
【0026】
本発明の一部の実施形態では、本低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質又はその短縮型活性断片において、高脂血症は、III型高脂血症である。
【0027】
本発明の一部の実施形態では、本低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質又はその短縮型活性断片において、高脂血症合併症は、アテローム性動脈硬化、冠動脈心疾患、高血圧、高血糖及び高尿酸血症からなる群から選択され;好ましくは、長期(例えば、1年間超又は3年間超)高脂血症によって引き起こされるアテローム性動脈硬化、冠動脈心疾患、高血圧、高血糖又は高尿酸血症である。
【0028】
本発明の一部の実施形態では、本低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質又はその短縮型活性断片において、神経変性疾患は、多発性硬化症、アルツハイマー病及びパーキンソン病からなる群から選択される。
【0029】
本発明の一部の実施形態では、本低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質又はその短縮型活性断片において、アポリポタンパク質は、ヒトAPOE2、APOE3及びAPOE4からなる群から選択される1種又は複数である。
【0030】
本発明の更に別の態様は、有効量の低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質又はその短縮型活性断片を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、高脂血症、高脂血症合併症若しくは神経変性疾患を処置若しくは予防する方法、又は血液若しくは脳脊髄液中のアポリポタンパク質レベル、低密度リポタンパク質レベル若しくは超低密度リポタンパク質レベルを低減させる方法に関する。
【0031】
本発明の一部の実施形態では、本方法において、低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質は、配列番号1~12のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有する。
【0032】
本発明の一部の実施形態では、本方法において、低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質の短縮型活性断片は、配列番号13~15のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有する。
【0033】
本発明の一部の実施形態では、本方法において、高脂血症は、III型高脂血症である。
【0034】
本発明の一部の実施形態では、本方法において、高脂血症合併症は、アテローム性動脈硬化、冠動脈心疾患、高血圧、高血糖及び高尿酸血症からなる群から選択され;好ましくは、長期(例えば、1年間超又は3年間超)高脂血症によって引き起こされるアテローム性動脈硬化、冠動脈心疾患、高血圧、高血糖又は高尿酸血症である。
【0035】
本発明の一部の実施形態では、本方法において、神経変性疾患は、多発性硬化症、アルツハイマー病及びパーキンソン病からなる群から選択される。
【0036】
本発明の一部の実施形態では、本方法において、アポリポタンパク質は、ヒトAPOE2、APOE3及びAPOE4からなる群から選択される1種又は複数である。
【0037】
本発明の一部の実施形態では、本方法において、対象は、哺乳類、例えば、ヒト、ゴリラ、チンパンジー、サル、ラット、マウス、ブタ、ウシ、ウマ又はヒツジ、好ましくは、ヒトである。
【0038】
本発明はまた、配列番号13~15のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有する、低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質の短縮型活性断片に関する。
【0039】
本発明はまた、本発明の有効量の低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質又は有効量の低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質の短縮型活性断片、及び1種又は複数の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物に関する。
【0040】
本発明の一部の実施形態では、本医薬組成物において、低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質は、配列番号1~12のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有する。
【0041】
本発明の一部の実施形態では、本医薬組成物において、低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質の短縮型活性断片は、配列番号13~15のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有する。
【0042】
本発明の一部の実施形態では、医薬組成物は、本発明の有効量の低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質又は有効量の低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質の短縮型活性断片、及び1種又は複数の薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0043】
本発明の医薬組成物において、低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質又はその短縮型活性断片は、主な薬物(薬用成分)として使用される。
【0044】
本発明の一部の実施形態では、上に記載されている医薬組成物は、1種又は複数の血中脂質低下薬、例えばスタチンを更に含む。
【0045】
本発明の更に別の態様は、別々の包装において第1の製品及び第2の製品を含む、医薬製品の組合せであって、
第1の製品が、本発明の項目のいずれか一項に記載の医薬組成物を含み;
第2の製品が、1種又は複数の脂質低下薬、例えばスタチンを含み;
任意選択で、製品マニュアルを更に含む医薬製品の組合せに関する。
【0046】
本発明において、「第1の製品」又は「第2の製品」における「第1の」又は「第2の」は、単に区別する又は明瞭に表示するためのものであり、順序の意味はない。
【0047】
本発明において、スタチンは、ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、ロスバスタチン又はピタバスタチンを含むがこれらに限定されない、既に市販されているスタチンである。
【0048】
本発明はまた、次のものに関連する項目1~9を含む:
【0049】
1.血液循環器系等の循環器系中のアポリポタンパク質及び脂質の含量を低減させるための医薬の調製における低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質(HILPDA)の使用。
【0050】
2.高脂血症関連疾患を予防又は処置するための医薬の調製における低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質(HILPDA)の使用。
【0051】
3.神経変性疾患を予防又は処置するための医薬の調製におけるHILPDAの使用。
【0052】
4.高脂血症関連疾患が、高脂血症及びその合併症からなる群から選択される、項目1又は2に記載の使用。
【0053】
5.合併症が、長期高脂血症によって引き起こされるアテローム性動脈硬化、並びに長期高脂血症によって引き起こされる心血管疾患、高血圧、高血糖及び高尿酸血症を含む、項目4に記載の使用。
【0054】
6.神経変性疾患が、多発性硬化症、アルツハイマー病及びパーキンソン病を含む、項目1又は3に記載の使用。
【0055】
7.低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質が、配列番号1~15からなる群から選択されるいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有する、項目1~3のいずれか一項に記載の使用。
【0056】
8.低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質が、更に修飾される、項目1~3のいずれか一項に記載の使用。
【0057】
9.医薬が、ヒト又は他の哺乳類の処置に使用される、項目1~3のいずれか一項に記載の使用。
【0058】
本発明はまた、次の態様に関する:
【0059】
一態様では、本発明は、血液中のアポリポタンパク質及び脂質のレベルを低減させるための医薬の調製における低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質(HILPDA)の使用を提供する。
【0060】
別の態様では、本発明は、高脂血症関連疾患を予防又は処置するための医薬の調製における低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質(HILPDA)の使用を提供する。
【0061】
本発明はまた、脂質代謝に関連する神経変性疾患を予防又は処置するための医薬の調製におけるHILPDAの使用を提供する。
【0062】
一実施形態では、HILPDAは、配列番号1(MKHVLNLYLLGVVLTLLSIFVRVMESLEGLLESPSPGTSWTTRSQLANTEPTKGLPDHPSRSM)に示されるアミノ酸配列を有する、ヒト(ホモ・サピエンス(Homo sapiens))、チンパンジー(パン・トログロディテス(Pan troglodytes))又はゴリラ(ゴリラ属(Gorilla))由来のHILPDAでありうる。
【0063】
別の実施形態では、HILPDAは、配列番号2(MKFMLNLYVLGIMLTLLSIFVRVMESLGGLLESPLPGSSWITRGQLANTQPPKGLPDHPSRGVQ)に示されるアミノ酸配列を有する、マウス(ムス・ムスクルス(Mus musculus))HILPDAでありうる。
【0064】
別の実施形態では、HILPDAは、配列番号3(MKHMLNLYLLGVVLTLLSIFVRVMESLEGLLENPSPGTSWTTRSQLANTEPTKGLPDHPSRSI)に示されるアミノ酸配列を有する、ミドリザル(クロロセブス・サバエウス(Chlorocebus sabaeus))由来のHILPDAでありうる。
【0065】
別の実施形態では、HILPDAは、配列番号4(MKHVLNLYLLGVVLTLLSIFVRVMESLEGLLENPLPGTSWTTRSQLTNTEPTKGLPDHPSRSM)に示されるアミノ酸配列を有する、秦嶺キンシコウ(Qinling golden monkey)(リノピテクス・ロクセラナ(Rhinopithecus roxellana))由来のHILPDAでありうる。
【0066】
別の実施形態では、HILPDAは、配列番号5(MKHMLNLYLLGVVLTLLSIFVRVMESLEGLLENPSPGTSWTTRSQLANTEPTKGLPDHPSRSM)に示されるアミノ酸配列を有する、マカカ・ファシクラリス(Macaca fascicularis)由来のHILPDAでありうる。
【0067】
別の実施形態では、HILPDAは、配列番号6(MKQVLQLYLLGVVLTLLSVFVRLMETLGGLLESPSPGSFWTTRGQLANTEAKSLPEHPSRGV)に示されるアミノ酸配列を有する、飼育ブタ(スス・スクロファ(Sus scrofa))由来のHILPDAでありうる。
【0068】
別の実施形態では、HILPDAは、配列番号7(MKPMLNLYLLGVVLTLLSIFVRLMESLGGILESPLLGSSWTTRGHTASAEPPRAFQTIHPERCDKTSLHQL)に示されるアミノ酸配列を有する、イヌ(カニス・ファミリアリス(Canis familiaris))由来のHILPDAでありうる。
【0069】
別の実施形態では、HILPDAは、配列番号8(MKHVLNLYLLGGVLTLLSIFVRLMESLEGLLESPSPGSSWATRGQLANTEPPRAFQTIHPEGCDKTSLHRL)に示されるアミノ酸配列を有する、ヤギ(カプラ・ヒルクス(Capra hircus))由来のHILPDAでありうる。
【0070】
別の実施形態では、HILPDAは、配列番号9(MKHILNLYLLGVVLTLLSIFVRLMESLEGLLESPSPGSSWTTRSQLVSTRPPRAFQTIHPEGCDKTSVHRL)に示されるアミノ酸配列を有する、ウマ(エクウス・カバルス(Equus caballus))由来のHILPDAでありうる。
【0071】
別の実施形態では、HILPDAは、配列番号10(MKHMLNLYLLGGVMTLLSIFIGLMESLEACWRACLLGAPGPPEVSLPTQSPQGSSRPSIQRGVIRPPSTVYNLGTVSKIPPTLPVPGQASSTSVLSEN)に示されるアミノ酸配列を有する、ウシ(ボス・タウルス(Bos taurus))由来のHILPDAでありうる。
【0072】
別の実施形態では、HILPDAは、配列番号11(MKHVLNLYVLGVVLALLSIFVRVMESLESLVESPSAGNSWSTRGQLAGAEPPKGLPDPPSRGMR)に示されるアミノ酸配列を有する、オリクトラグス・クニクルス(Oryctolagus cuniculus)由来のHILPDAでありうる。
【0073】
別の実施形態では、HILPDAは、配列番号12(MKYMLNLYVLGVMLTLLSIFVRLMESLGGLLENPLPGSSWITRGHLANTQPPRGLPDHPSRGVQ)に示されるアミノ酸配列を有する、ラット(ラッツス・ノルベギクス(Rattus norvegicus))由来の対応するタンパク質でありうる。
【0074】
一実施形態では、医薬は、ヒト又は他の哺乳類の処置に使用される。他の哺乳類は、ヒト以外の哺乳類、例えば、類人猿、サル、ブタ、イヌ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ロバ、ウサギその他を指す。
【0075】
一部の実施形態では、ヒト由来のHILPDAを使用して、ヒト又は他の哺乳類を処置することができる。
【0076】
一部の実施形態では、他の哺乳類由来のHILPDAは、好ましくは、対応する哺乳類の近縁種(例えば、生殖隔離がない)の飼い慣らされたペットの処置に使用することができる。例えば、イヌ由来のHILPDAを使用して、イヌ又はオオカミを処置することができる。
【0077】
本発明において、好ましくは、HILPDAを構成するアミノ酸の中の1個又は複数のアミノ酸は、D形態のアミノ酸でありうる。
【0078】
本発明において、好ましくは、HILPDAは、更に修飾することができる。
【0079】
本発明において、修飾がHILPDAの機能を有意に変質させない限りにおいて、HILPDAは、当技術分野で知られている様々な技術的手段によって修飾して、血清中のアポリポタンパク質及びリポタンパク質の吸収を有効に促進することができる。多くの型のポリペプチド修飾が存在しており、異なる修飾部位に従って、これらは、短縮、N末端修飾、C末端修飾、側鎖修飾、アミノ酸修飾、骨格修飾、D-型アミノ酸へのL-型アミノ酸変換等へと分けることができる。ペプチド修飾は、ペプチド化合物の物理的及び化学的特性を有効に変更し、水溶性を増加させ、in vivoにおける作用時間を延長し、その体内分布を変更し、免疫原性を低減させ、毒性又は副作用を減少させることができる。
【0080】
例えば、修飾方法は、ポリペプチドの短縮、末端(例えば、N末端)にステアリン酸を接続することによる修飾、アミノ化修飾、アセチル化修飾、ビオチン化修飾、蛍光標識修飾、ポリエチレングリコール修飾、プレニル化修飾、ミリストイル化及びパルミトイル化修飾、リン酸化修飾、グリコシル化修飾、ポリペプチドコンジュゲート修飾、特殊なアミノ酸修飾等を含むがこれらに限定されない。
【0081】
特に、一実施形態では、HILPDAの短縮型配列は、配列番号13(MKHVLNLYLLGVVLTLLSIF)に示されるアミノ酸配列を有する、ヒト(ホモ・サピエンス)、チンパンジー(パン・トログロディテス)又はゴリラ(ゴリラ属)に由来する対応するタンパク質の短縮型産物でありうる。
【0082】
別の実施形態では、HILPDAの短縮型配列は、配列番号14(MKYMLNLYVLGVMLTLLSIF)に示されるアミノ酸配列を有する、ラット(ラッツス・ノルベギクス)に由来する対応するタンパク質の短縮型産物でありうる。
【0083】
別の実施形態では、HILPDAの短縮型配列は、配列番号15(MKFMLNLYVLGIMLTLLSIF)に示されるアミノ酸配列を有する、マウス(ムス・ムスクルス)に由来する対応するタンパク質の短縮型産物でありうる。
【0084】
本発明者らは、研究によって低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質(HILPDA)の新たな適用を発見した。この天然に存在する小型のタンパク質又はポリペプチドは、人体それ自体に由来するため、患者に投与されたときに低い毒性及び免疫原性の欠如を示すことが予想され、これは、臨床転換及び促進に適する。したがって、HILPDA又はその短縮型活性断片の活性は、有意な医学的及び商業的な価値を有するポリペプチド薬となるであろう。
【0085】
本発明において、「高脂血症関連疾患」は、上昇した脂質レベル及びその関連合併症によって特徴付けされた状態を指す。このような状態は、5.72mmol/Lを超える血清総コレステロールレベル、1.70mmol/Lを超える上昇した血清トリグリセリドレベル、及び0.9mmol/Lを下回る低減した血清高密度リポタンパク質コレステロール(HDL-C)レベルを包含し、高脂血症、延長された高脂血症から生じるアテローム性動脈硬化、並びに合併症、例えば、心血管疾患、高血圧、高血糖及び高尿酸血症を含むがこれらに限定されない病理学的所見を生じる。
【0086】
本発明の文脈において、「高脂血症関連疾患」は、上昇した脂質レベル及びその関連合併症によって定義され、これは、6.2mmol/L以上の空腹時静脈血清総コレステロールレベル、2.3mmol/L以上の高い血清トリグリセリドレベル、4.1mmol/L以上の低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)の上昇したレベル、及び1.0mmol/Lを下回る減少した血清高密度リポタンパク質コレステロール(HDL-C)レベルを含む。このような状態は、病理学的症状、例えば、高脂血症、延長された高脂血症が原因のアテローム性動脈硬化、並びに心血管疾患、高血圧、高血糖及び高尿酸血症等の合併症を生じる。
【0087】
本発明内で、「神経変性疾患」は、中枢神経系内の脂質代謝によって影響される神経学的障害及びその関連合併症を指す。このカテゴリーは、多発性硬化症、アルツハイマー病及びパーキンソン病等の状態を含むがこれらに限定されない。
【0088】
本発明内の用語「III型高脂血症」は、ある特定の脂質物質の有意な蓄積をもたらす、身体における脂肪(脂質)の異常な分解及びクリアランスによって特徴付けされる遺伝性障害を表示する。この疾患に関連する病理学的症状は、皮膚における黄色がかった脂質が詰まった小結節の存在(黄色腫)、膵炎(膵臓の炎症)、及び血管内の脂質集積(アテローム性動脈硬化)を含む。この状態は、APOE遺伝子変異、特に、APOE2に関連付けられる。
【0089】
通常、本発明の医薬組成物は、主な薬物として0.1質量%~90質量%の低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質又はその短縮型活性断片を含有する。医薬製剤は、本分野で確立された方法を使用して調製することができる。この目的のため、必要であれば、主な薬物は、1種又は複数の固体又は液体医薬賦形剤及び/又はアジュバントと組み合わせて、ヒト使用のための適切な投与形態又は剤形を調製することができる。
【0090】
本出願における用語「アジュバント」は、主な薬物の投与に使用される賦形剤又は媒体を指し、これは、希釈剤、崩壊剤、沈殿阻害剤、界面活性剤、流動促進剤、結合剤、潤滑剤、コーティング材料等を含むがこれらに限定されない。賦形剤は、E.W. Martinによる「Remington's Pharmaceutical Sciences」に全般的に記載されている。賦形剤の例は、モノステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クロスポビドン、イソステアリン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシステアリン酸ヒドロキシオクタコサニル(hydroxyoctacosanyl hydroxystearate)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラクトース、ラクトース一水和物、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、微結晶性セルロース等を含むがこれらに限定されない。
【0091】
低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質又はその短縮型活性断片は、経口投与に適した剤形、非経口注射(例えば、静脈内、皮下注射)に適した剤形(例えば、溶液)、外用投与に適した剤形(例えば、軟膏、パッチ又はクリーム)、及び直腸投与に適した剤形(例えば、坐剤)を含む、医薬調製物へと製剤化することができる。
【0092】
処置されるべき疾患及び患者並びに投与の経路に応じて、本発明の医薬組成物は、1日に1回又は数回、異なる用量で投与することができる。投薬量は、処置又は予防されるべき徴候の重症度、患者の性別、年齢、体重及び個々の応答、投与の経路、並びに投与の頻度等の多くの因子に依存する。上述の投薬量は、単一用量の形態で、又は分割された複数用量、例えば、2、3若しくは4用量の形態で投与することができる。
【0093】
本発明の医薬組成物における主な薬物(低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質又はその短縮型活性断片)の実際の投薬量は、具体的な患者、組成物及び投与方法に対して所望の治療応答を有効に得ることができるように変化させることができる。投薬量は、投与の経路、処置されるべき状態の重症度、並びに処置されるべき患者の状態及び以前の病歴に基づき選択することができる。典型的には、所望の治療効果の達成に要求されるレベルを下回る投薬を開始し、所望の効果が達成されるまで投薬量を徐々に増加させることは、本分野における一般的な慣例である。
【0094】
用語「有効量」は、対象における本発明に記載されている疾患又は状態のために治療、予防、軽減及び/又は緩和効果を達成することができる用量を示す。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【
図1】HILPDAが、APOE含有リポタンパク質の取込みを促進するかについて評価するための戦略図を示す図である。
【
図2A】HILPDAの存在又は非存在下での細胞培養培地におけるレシピエント細胞によるAPOE取込みを示す図である;
図2Aにおいて、レシピエント細胞は、786-O細胞である。
【
図2B】HILPDAの存在又は非存在下での細胞培養培地におけるレシピエント細胞によるAPOE取込みを示す図である;
図2Bにおいて、レシピエント細胞は、769-P細胞である。
【
図2C】HILPDAの存在又は非存在下での細胞培養培地におけるレシピエント細胞によるAPOE取込みを示す図である;
図2Cにおいて、レシピエント細胞は、HuH7細胞である。
【
図2D】HILPDAの存在又は非存在下での細胞培養培地におけるレシピエント細胞によるAPOE取込みを示す図である;
図2Dにおいて、レシピエント細胞は、ES-2細胞である。
【
図3】合成されたHILPDA又はその短縮型断片についての模式的戦略図である。
【
図4A】合成されたHILPDA又はその短縮型断片についての高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及び質量分析による同定結果を示す図である。
【
図4B】合成されたHILPDA又はその短縮型断片についての高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及び質量分析による同定結果を示す図である。
【
図4C】合成されたHILPDA又はその短縮型断片についての高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及び質量分析による同定結果を示す図である。
【
図4D】合成されたHILPDA又はその短縮型断片についての高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及び質量分析による同定結果を示す図である。
【
図4E】合成されたHILPDA又はその短縮型断片についての高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及び質量分析による同定結果を示す図である。
【
図4F】合成されたHILPDA又はその短縮型断片についての高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及び質量分析による同定結果を示す図である。
【
図4G】合成されたHILPDA又はその短縮型断片についての高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及び質量分析による同定結果を示す図である。
【
図4H】合成されたHILPDA又はその短縮型断片についての高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及び質量分析による同定結果を示す図である。
【
図5】合成されたHILPDA又はその短縮型断片が、APOE含有リポタンパク質を促進するかについて評価するための図である。
【
図6】HILPDA又はその短縮型断片の存在又は非存在下での細胞培養培地におけるレシピエント細胞によるAPOE取込みの図である。
【
図7】合成されたHILPDA又はその短縮型断片が、細胞によるリポタンパク質の取込みを促進するかについて評価するための戦略図である。
【
図8A】HILPDA又はその短縮型配列の存在及び非存在下でのレシピエント細胞によるリポタンパク質取込みの結果を示す図である;
図8Aにおけるレシピエント細胞は、HuH-7細胞及びHep-G2細胞である。
【
図8B】HILPDA又はその短縮型配列の存在及び非存在下でのレシピエント細胞によるリポタンパク質取込みの結果を示す図である;
図8Bにおけるレシピエント細胞は、HuH-7細胞及びHep-G2細胞である。
【
図8C】HILPDA又はその短縮型配列の存在及び非存在下でのレシピエント細胞によるリポタンパク質取込みの結果を示す図である;
図8Cにおけるレシピエント細胞は、786-O細胞である。
【
図8D】HILPDA又はその短縮型配列の存在及び非存在下でのレシピエント細胞によるリポタンパク質取込みの結果を示す図である;
図8Dにおけるレシピエント細胞は、786-O細胞である。
【
図9】合成されたHILPDAが、ラット血液中のリポタンパク質レベルの低減を促進するかについて評価するための図である。
【
図10】HILPDA処置中のラット血液中のリポタンパク質レベルの低減の図である。
【
図11】合成されたHILPDAの短縮型断片が、ラット脳脊髄液中のAPOEレベルの減少を促進するかについて評価するための図である。
【
図12】HILPDAの短縮型断片による処置中のラット脳脊髄液中のAPOEレベルの低減の図である。
【
図13】HILPDAの存在及び非存在下での細胞培養培地におけるレシピエント細胞によるAPOE取込みの図である。
【
図14】HILPDAの存在及び非存在下での脳スライスによる細胞培養培地におけるAPOE取込みの図である。
【発明を実施するための形態】
【0096】
本発明の実施形態は、実施例と併せて下に詳細に記載される。当業者であれば、次の実施例が、本発明を単に説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものとして考慮されるべきではないことを理解するであろう。実施例において具体的な技法又は条件を指し示していないものについては、本分野における文書(例えば、J. Sambrook等、「Molecular Cloning Experiment Guide」、Huang Peitang訳、第3版、Science Pressを参照)に記載されている技法若しくは条件に従って又は製品説明書に従って実行された。製造業者を指し示していない使用された試薬又は機器については、全て市販の従来製品であった。
【実施例1】
【0097】
HILPDA-Flag融合タンパク質を発現する真核生物発現プラスミドの構築
1)ヒトHILPDA-Flag融合タンパク質(FLAGタグと融合されたHILPDAタンパク質)をコードするDNA配列を、次の通りにGENEWIZ(Genewiz社)によって直接的に合成した:
DNA配列:
【0098】
【0099】
2)対応するプライマーの設計
フォワードプライマー:
【0100】
【0101】
リバースプライマー:
【0102】
【0103】
上述の合成されたDNA配列をPCR増幅のための鋳型として使用して、標的断片を得た(下線部分は、ベクターの相同アームを指し示した)。
【0104】
3)真核生物発現ベクターpCDH-CMV-MCS-EF1-puro(カタログ番号:VT1480、Youbao Biological社)を、制限エンドヌクレアーゼXbaI(カタログ番号:R0145L、NEB社)及びBamHI(カタログ番号:R3136L、NEB社)で直鎖化した。
【0105】
4)エキソヌクレアーゼIII(カタログ番号:2170A、TAKARA社)によって媒介される相同組換え方法を使用して、標的断片及び消化された直鎖状ベクターをライゲーションし、ライゲーションされた産物を大腸菌(E. coli)DH5-αへと形質転換し、陽性コロニークローンをアンピシリン抵抗性LB固体培地プレート上に得た。
【0106】
5)陽性コロニークローンを増幅し、プラスミド精製キットを使用してプラスミドを抽出した。
【0107】
6)配列決定検証後に、正しいHILPDA融合タンパク質発現プラスミドを得た。
【実施例2】
【0108】
GFP-Flag融合タンパク質発現プラスミドの構築
1)GFP遺伝子配列は、ベクターpCDH-CMV-MCS-EF1-GFP+Puro(カタログ番号:VT8070、Youbao Biological社)に由来し、その具体的な配列は次の通りであった:
【0109】
【0110】
配列番号18の上述の配列において、小文字は、終止コドンを表した。
【0111】
2)対応するプライマーの設計
フォワードプライマー:
【0112】
【0113】
リバースプライマー:
【0114】
【0115】
上述のGFP DNA配列を鋳型として使用して、PCR増幅を実行して、標的断片GFP-Flag配列(下線部分は、ベクターの相同性アームを指し示し、太字部分は、Flag配列を指し示した)を得た。
【0116】
3)真核生物発現ベクターpCDH-CMV-MCS-EF1-puro(カタログ番号:VT1480、Youbao Biological社)を制限エンドヌクレアーゼXbaI(カタログ番号:R0145L、NEB社)及びBamHI(カタログ番号:R3136L、NEB社)で消化して、直鎖状ベクターを得た。
【0117】
4)エキソヌクレアーゼIII(カタログ番号:2170A、TAKARA社)によって媒介される相同組換え方法を使用して、標的断片及び消化された直鎖状ベクターをライゲーションし、ライゲーションされた産物を大腸菌DH5αへと形質転換し、陽性コロニークローンをアンピシリン抵抗性LB固体培地プレート上に得た。
【0118】
5)陽性コロニークローンを増幅し、プラスミド精製キットを使用してプラスミドを抽出した。
【0119】
6)配列決定検証後に、正しいGFP-Flag融合タンパク質発現プラスミドを得た。
【実施例3】
【0120】
APOE2-3xHA、APOE3-3xHA及びAPOE4-3xHA融合タンパク質発現プラスミドの構築
1)APOE3遺伝子配列は、ベクターpDONR223-APOE(カタログ番号:G118334、Youbao Biological社)に由来し、その具体的な配列は次の通りであった:
【0121】
【0122】
配列番号21の上述の配列において、小文字は、終止コドンを指し示し、下線部分は、APOEの異なるアレルの区別部位を表し、この配列では、これはAPOE3を具体的に参照した。
【0123】
2)対応するAPOE3プライマーの設計
フォワードプライマー:
【0124】
【0125】
リバースプライマー:
【0126】
【0127】
APOE3の上述のDNA配列を鋳型として使用して、PCR増幅を行って、標的断片APOE3配列(下線部分は、ベクターの相同アームを指し示した)を得た。
【0128】
3)APOE2及びAPOE4の遺伝子配列を、APOE3遺伝子配列に基づく点変異によって得た。
【0129】
(1)点変異プライマーの設計
APOE2フォワードプライマー:ATGCCGATGACCTGCAGAAGTGCCTGGCAGTGTACCAGGC(配列番号24)、
APOE2リバースプライマー:GCCTGGTACACTGCCAGGCACTTCTGCAGGTCATCGGCAT(配列番号25);
APOE4フォワードプライマー:GCGCGGACATGGAGGACGTGCGCGGCCGCCTGGTGCAGTA(配列番号26)、
APOE4リバースプライマー:TACTGCACCAGGCGGCCGCGCACGTCCTCCATGTCCGCGC(配列番号27)
【0130】
4)APOE3フォワードプライマー+APOE2リバースプライマーを使用することによって、APOE3遺伝子配列を鋳型として使用して、PCR増幅を実行して、断片1を得た;一方で、APOE2フォワードプライマー+APOE3リバースプライマーを使用することによって、APOE3遺伝子配列を鋳型として使用して、PCR増幅を実行して、断片2を得た。最後に、APOE3フォワードプライマー+APOE3リバースプライマーを使用することによって、断片1+断片2の混合物を鋳型として使用して、PCR増幅を実行して、標的断片APOE2の配列を得た。APOE2の具体的な配列は、次の通りであった:
【0131】
【0132】
配列番号28の上述の配列において、小文字は、終止コドンを指し示し、下線部分は、APOEの異なるアレルの区別部位を表し、この配列では、これはAPOE2を具体的に参照した。
【0133】
5)APOE3フォワードプライマー+APOE4リバースプライマーを使用することによって、APOE3遺伝子配列を鋳型として使用して、PCR増幅を実行して、断片1を得た;一方で、APOE4フォワードプライマー+APOE3リバースプライマーを使用することによって、APOE3遺伝子配列を鋳型として使用して、PCR増幅を実行して、断片2を得た。最後に、APOE3フォワードプライマー+APOE3リバースプライマーを使用することによって、断片1+断片2の混合物を鋳型として使用して、PCR増幅を実行して、標的断片APOE4の配列を得た。APOE4の具体的な配列は、次の通りであった:
【0134】
【0135】
上述の配列、配列番号29において、小文字は、終止コドンを指し示し、下線部分は、APOEの異なるアレルの区別部位を表し、この配列では、これはAPOE4を具体的に参照した。
【0136】
6)真核生物発現ベクターpCDH-CMV-MCS-EF1-3xHA-puro(次の通りの方法によって上述のpCDH-CMV-MCS-EF1-puroベクターにおいて自己集合)を、制限エンドヌクレアーゼXbaI(カタログ番号:R0145L、NEB社)及びXhoI(カタログ番号:R0146L、NEB社)を使用することにより二重消化して、直鎖状ベクターを得た。ベクターpCDH-CMV-MCS-EF1-3xHA-puroの構築は、次の通りであった:先ず、ベクターpCDH-CMV-MCS-EF1-puroを、XhoI(カタログ番号:R0145L、NEB社)及びNotI(カタログ番号:R3189L、NEB社)で二重消化して、直鎖状ベクターを得て、次いで、3xHA配列(TACCCTTATGACGTACCTGACTATGCTGGCGCCTACCCTTATGACGTACCTGACTATGCTGGATACCCTTATGACGTACCTGACTATGCTtaa、配列番号30)を、直鎖状ベクターpCDH-CMV-MCS-EF1-puroとライゲーションして、カルボキシル末端に3xHAタグを有するベクター、即ち、pCDH-CMV-MCS-EF1-3xHA-puroを形成した。
【0137】
7)エキソヌクレアーゼIII(カタログ番号:2170A、TAKARA社)によって媒介される相同組換え方法を使用して、標的断片APOE2、APOE3又はAPOE4を、消化された直鎖状ベクターpCDH-CMV-MCS-EF1-3xHA-puroとライゲーションし、ライゲーションされた産物を大腸菌DH5αへと形質転換し、陽性コロニークローンをアンピシリン抵抗性LB固体培地プレート上に得た。
【0138】
8)陽性コロニークローンを増幅し、プラスミド精製キットを使用することによりプラスミドを抽出した。
【0139】
9)配列決定検証後に、正しいAPOE2-3xHA、APOE3-3xHA及びAPOE4-3xHA融合タンパク質発現プラスミドを得た。
【実施例4】
【0140】
細胞培養培地における分泌性HILPDAによって促進されるアポリポタンパク質及びリポタンパク質のクリアランス
1)HEK293T細胞を10cm細胞培養皿においてDMEM培地で培養した。
【0141】
2)上述の細胞を、次のもので別々にコトランスフェクトした:
GFP-Flag発現プラスミド及びAPOE2-3xHAプラスミド、
GFP-Flag発現プラスミド及びAPOE3-3xHAプラスミド、
GFP-Flag発現プラスミド及びAPOE4-3xHAプラスミド、
HILPDA-Flag発現プラスミド及びAPOE2-3xHAプラスミド、
HILPDA-Flag発現プラスミド及びAPOE3-3xHAプラスミド、並びに
HILPDA-Flag発現プラスミド及びAPOE4-3xHAプラスミド。
【0142】
3)12時間後に、1)における古い培地を、新鮮なDMEM細胞培養培地と交換した。
【0143】
4)48時間にわたり更に培養した後に、3)における培養された細胞の培地をそれぞれ収集し、これらの培地を使用して、0.25%EDTAを含有するトリプシンで予め消化された、レシピエント細胞、例えば、786-O(カタログ番号:細胞バンクTCHu186、Type Culture Collection Committee of Chinese Academy of Sciences/Cell Resource Center of Shanghai Institutes for Life Sciences、Chinese Academy of Sciencesの細胞バンク)、769-P(カタログ番号:細胞バンクTCHu215、Type Culture Collection Committee of Chinese Academy of Sciences/Cell Resource Center of Shanghai Institutes for Life Sciences、Chinese Academy of Sciencesの細胞バンク)、HuH7(カタログ番号:TCHu182、Type Culture Collection Committee of Chinese Academy of Sciences/Cell Resource Center of Shanghai Institutes for Life Sciences、Chinese Academy of Sciencesの細胞バンク)、ES-2(カタログ番号:TCHu111、Type Culture Collection Committee of Chinese Academy of Sciences/Cell Resource Center of Shanghai Institutes for Life Sciences、Chinese Academy of Sciencesの細胞バンク)野生型細胞を直接的に培養した。
【0144】
5)24時間培養した後に、抗Flag(カタログ番号:F1804、sigma社;GFP-Flag又はHILPDA-Flag融合タンパク質を検出するため)及び抗HA抗体(カタログ番号:ab9110、abcam社;APOE2-3xHA、APOE3-3xHA又はAPOE4-3xHAの3種の異なるアレルによって発現される融合タンパク質を検出するため)を使用して、免疫蛍光染色実験を実行した。
【0145】
6)APOE-3xHA及びHILPDA-Flagの局在を共焦点レーザー顕微鏡によって観察した(
図2A~
図2Dに示す通り)。
【0146】
図1は、HILPDAが、APOEで形成されたリポタンパク質の取込みを促進したかについて評価するための戦略を示す。
図2A~
図2Dは、HILPDAの存在及び非存在下での細胞培養培地におけるレシピエント細胞によるAPOE取込みを示す。
【0147】
実験結果は、GFP-Flag及びAPOE2-3xHAタンパク質、GFP-Flag及びAPOE3-3xHAタンパク質、又はGFP-Flag及びAPOE4-3xHAタンパク質を同時発現するHEK293T細胞の培養培地において培養されたレシピエント細胞(例えば、786-O、769-P、Huh7又はES-2)と比較して、HILPDA-Flag及びAPOE2-3xHAタンパク質、HILPDA-Flag及びAPOE3-3xHAタンパク質、又はHILPDA-Flag及びAPOE4-3xHAタンパク質を同時発現するHEK293T細胞の培養培地において培養されたレシピエント細胞は、より多く且つより強い蛍光シグナルを示したことを示し、HILPDAの存在下で、レシピエント細胞が、より多くのアポリポタンパク質APOE2、APOE3又はAPOE4(指し示される抗HA抗体群)を吸収したことを指し示し、また、HILPDAが、培養培地又は血清におけるアポリポタンパク質及びそれによって形成されたリポタンパク質のクリアランスを促進したことを示唆する(理論的には、APOE2-3xHA、APOE3-3xHA及びAPOE4-3xHAは、リポタンパク質の形態で存在した)。
【実施例5】
【0148】
HILPDA関連ポリペプチドのIn vitro合成
1)Rink Amide AM樹脂(置換度:0.15mmol/g)におけるペプチド固相合成によって、次のペプチド配列を合成した:
HILPDA P01:
【0149】
【0150】
HILPDA P02:
【0151】
【0152】
HILPDA P03:MKHVLNLYLLGVVLTLLSIF(配列番号13)
HILPDA P04:MKYMLNLYVLGVMLTLLSIF(配列番号14)
【0153】
2)TFA/iPr3SiH/H2O(90:5:5vol%)を使用して樹脂から合成ペプチドを切断し、切断プロセスは、室温で2時間行われた。
【0154】
3)窒素保護下でライセートを収集及び濃縮した。
【0155】
4)次にこれをEt2Oで冷却して、粗ペプチドを沈殿させた。
【0156】
5)遠心分離(10分間、4℃、6800rcf)後に、4)における沈殿プロセスを反復した。
【0157】
6)HPLC(ポンプA:0.1vol%TFA、100%水;ポンプB:0.1vol%TFA、100%アセトニトリル;1mL/分;214nmモニタリング)によって粗生成物を精製した。
【0158】
7)適切な画分を組み合わせ、凍結乾燥して、ポリペプチドを白色の固体として得た。
【0159】
図3は、HILPDA又はその短縮型配列の合成方法の模式図を示す。
【0160】
図4A~
図4Bは、合成されたHILPDA P01の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及び質量分析の検出結果を示す。
【0161】
図4C~
図4Dは、合成されたHILPDA P02の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及び質量分析の検出結果を示す。
【0162】
図4E~
図4Fは、合成された短縮型配列HILPDA P03の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及び質量分析の検出結果を示す。
【0163】
図4G~
図4Hは、合成された短縮型配列HILPDA P04の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及び質量分析の検出結果を示す。
【実施例6】
【0164】
HILPDA P01及びHILPDA P03は、細胞培地からのアポリポタンパク質及びリポタンパク質のクリアランスを促進する
1)HEK293T細胞を10cm細胞培養皿においてDMEM培地で培養した。
【0165】
2)上述の細胞において、APOE3-3xHA遺伝子のプラスミドを発現させた。
【0166】
3)12時間後に、1)における古い培地を、新鮮なDMEM細胞培養培地と交換した。
【0167】
4)48時間にわたり更に培養した後に、3)において培養された細胞の培地をそれぞれ収集し、これらの培地を使用して、0.25%EDTAトリプシンで予め消化されたレシピエントES-2細胞(カタログ番号:TCHu111、Typical Culture Collection Committee of Chinese Academy of Sciences/Cell Resource Center of Shanghai Institutes for Life Sciences、Chinese Academy of Sciencesの細胞バンク)を直接的に培養し、同時に10μM短縮型配列HILPDA P01、HILPDA P03又は対応する容量の溶媒(DMSO)を細胞培養培地に添加した。
【0168】
5)24時間培養した後に、抗HA抗体(カタログ番号:ab9110、abcam社;APOE3-3xHA遺伝子発現を検出するための融合タンパク質)を使用して、免疫蛍光染色実験を行った。
【0169】
6)APOE3-3xHAの取込みをレーザー共焦点顕微鏡によって観察した(
図6に示す通り)。
【0170】
図5は、合成されたHILPDA又はその短縮型配列が、APOEで形成されたリポタンパク質の取込みを促進したかについて評価するための戦略を示す。
図6は、HILPDAの存在及び非存在下での細胞培養培地におけるレシピエント細胞によるAPOE取込みを示す。
【0171】
実験結果は、溶媒処置群と比較して、より強い蛍光シグナルが、HILPDA又はその短縮型配列で処置されたレシピエント細胞において出現したことを示し、レシピエント細胞が、HILPDAの存在下で、より多くのAPOEアポリポタンパク質を吸収したことを指し示し、合成されたHILPDA又はその短縮型配列が、細胞培養培地又は血清におけるリポタンパク質のクリアランスを促進することができることを示唆する。
【実施例7】
【0172】
HILPDA P01及びHILPDA P03は、細胞における精製されたヒト低密度リポタンパク質の取込みを促進する
1)HuH-7細胞(カタログ番号:TCHu182、Type Culture Collection Committee of Chinese Academy of Sciences/Cell Resource Center of Shanghai Institutes for Life Sciences、Chinese Academy of Sciencesの細胞バンク)及びHep-G2細胞(カタログ番号:HB-8065、ATCC、USA)又は786-O細胞(カタログ番号:細胞バンクTCHu186、Type Culture Collection Committee of Chinese Academy of Sciences/Cell Resource Center of Shanghai Institutes for Life Sciences、Chinese Academy of Sciencesの細胞バンク)を10cm細胞培養皿においてDMEM培地で培養した。
【0173】
2)ヒト血漿由来の低密度リポタンパク質及びDil複合体(カタログ番号 L3482、Invitrogen社)を5μg/mLの最終濃度で上述の細胞に添加し、同時に10μM HILPDA P01、HILPDAの短縮型配列P03又は対応する容量の溶媒(DMSO)を細胞培養培地に添加した。
【0174】
3)3時間培養した後に、細胞をPBSで2回洗浄し、フローサイトメトリー実験を実行し、細胞のDilシグナル強度をPEチャネルにおいて検出した(
図8A~
図8Dに示す通り)。
【0175】
図7は、HILPDA又はその短縮型配列が、細胞によるヒト低密度リポタンパク質粒子の取込みを促進したかについて評価するための戦略を示す。
【0176】
図8A~
図8Dは、HILPDA又はその短縮型配列の存在及び非存在下での細胞培養培地におけるレシピエント細胞によるヒト低密度リポタンパク質粒子の取込みを示し;そのうち:
図8A~
図8Bは、HILPDA P01の存在又は非存在下での細胞培養培地におけるHuH-7及びHepG2細胞によるヒト低密度リポタンパク質粒子の取込みを示し、
図8Bは、
図8Aの定量的解析を示し;
図8C~
図8Dは、HILPDA P01及びHILPDAの短縮型配列P03の存在又は非存在下での細胞培養培地における786-O細胞によるヒト低密度リポタンパク質粒子の取込みを示し、
図8Dは、
図8Cの定量的解析を示す。
【0177】
実験結果は、溶媒処置群と比較して、より強い蛍光シグナルが、合成HILPDA又はその短縮型配列で処置されたレシピエント細胞において出現したことを示し、レシピエント細胞が、HILPDAの存在下で、より多くのヒト低密度リポタンパク質粒子を吸収したことを指し示し、合成HILPDA又はその短縮型配列が、血清中のリポタンパク質のクリアランスを促進することができることを示唆する。
【実施例8】
【0178】
HILPDA P02は、ラット血液中の低密度リポタンパク質コレステロールレベルを減少させる
1)SDラット(8~10週齢、雌、Shanghai Family Planning Institute)に、尾静脈を介して、1.5mg/kg(ラット体重)の用量のHILPDA P02又は同じ量の溶媒(50%DMSO+50%0.9%NaCl)を総計100μLにおいて注射した;
【0179】
2)注射の5時間後に、約1mLの血液を尾静脈から収集し、収集した血液をEDTA-K2抗凝固チューブ内に置き、1時間氷浴を受け、次いで、2000*gで4℃にて10分間遠心分離し、上清血漿を収集した;
【0180】
3)生化学的分析計(Mindray 240)を使用して、血漿中の低密度リポタンパク質コレステロール含量を解析した(
図10に示す通り)。
【0181】
図9は、HILPDAが、血漿中の低密度リポタンパク質コレステロールレベルの減少を促進したかについて評価するための戦略を示す。
【0182】
図10は、溶媒又はHILPDA P02の注射後の血漿中の低密度リポタンパク質コレステロールレベルの比較を示す。
【0183】
実験結果は、溶媒処置群と比較して、HILPDA P02で処置されたラットの血漿中の低密度リポタンパク質コレステロールレベルが有意に低減されたことを示し、HILPDAが、血液中のリポタンパク質のクリアランスを促進したことを指し示す。
【実施例9】
【0184】
HILPDA P04は、ラット脳脊髄液中のAPOEレベルを減少させる
1)SDラット(8~10週、雄、Shanghai Family Planning Institute)に、側脳室を介して、0.8mg/kg(ラット体重)の用量のHILPDAの短縮型配列P04を又は同じ量の溶媒(50%DMSO+50%0.9%NaCl)を総計20μLにおいて注射した;
【0185】
2)注射の4時間後に、ラットの脳脊髄液を収集した;
【0186】
3)ELISAキット(カタログ番号:E-EL-R1230c、ELabScience社)を使用して、脳脊髄液中のアポリポタンパク質APOE含量を検出した。
【0187】
図11は、HILPDAが、脳脊髄液中のアポリポタンパク質APOEレベルの低減を促進したかについて査定するための戦略を示す。
【0188】
図12は、溶媒又はHILPDAの短縮型配列P04による注射後の脳脊髄液中のアポリポタンパク質APOE含量の比較を示す。
【0189】
実験結果は、溶媒処置群と比較して、短縮型配列HILPDA P04で処置されたラットの脳脊髄液中のアポリポタンパク質APOEの含量が有意に減少されたことを示し、HILPDAが、脳脊髄液中のリポタンパク質のクリアランスを促進したことを指し示す。
【実施例10】
【0190】
分泌されたHILPDAは、神経細胞によるアポリポタンパク質取込みを促進する
1)HEK293T細胞を10cm細胞培養皿においてDMEM培地で培養した。
【0191】
2)上述の細胞は別々に:
APOE2-3xHAプラスミドを発現するようにトランスフェクトされ、
APOE3-3xHAプラスミドを発現するようにトランスフェクトされ、
APOE4-3xHAプラスミドを発現するようにトランスフェクトされ、
HILPDA-Flagを発現するプラスミド及びAPOE2-3xHAプラスミドでコトランスフェクトされ、
HILPDA-Flagを発現するプラスミド及びAPOE3-3xHAプラスミドでコトランスフェクトされ、
HILPDA-Flagを発現するプラスミド及びAPOE4-3xHAプラスミドでコトランスフェクトされた。
【0192】
3)12時間後に、1)における古い培地を、新鮮なDMEM細胞培養培地と交換した。
【0193】
4)48時間にわたり更に培養した後に、3)における培養された細胞の培地をそれぞれ収集し、これらの培地を使用して、レシピエントニューロン細胞を直接的に培養し、このニューロン細胞は、STEMdiff Neural(STEMCELL Technologits社)分化系によるヒト胚性幹細胞(WA09-H9 Wincell Research Institute)の誘導及び分化によって得られた。
【0194】
5)24時間培養した後に、抗アクチン(カタログ番号:Proteintech社、66009-1-Ig)及び抗HA抗体(カタログ番号:ab9110、abcam社;異なるアレルによって発現される3種の融合タンパク質APOE2-3xHA、APOE3-3xHA又はAPOE4-3xHAの検出に使用)を使用して、ウエスタンブロッティングを実行した。
【0195】
6)APOE-3xHAの含量を観察した(
図13に示す通り)。
【0196】
図13は、HILPDAの存在及び非存在下での細胞培養培地におけるレシピエント細胞によるAPOEの取込みを示す。
【0197】
実験結果は、APOE2-3xHA、APOE3-3xHA又はAPOE4-3xHAタンパク質を発現するHEK293T細胞を培養するための培養培地で培養されたレシピエントニューロン細胞と比較して、HILPDA-Flag及びAPOE2-3xHA、及びAPOE3-3xHA又はAPOE4-3xHAタンパク質を同時発現するHEK293T細胞を培養するための培養培地で培養されたレシピエントニューロン細胞が、より高いレベルのAPOEを有したことを示し、レシピエント細胞が、HILPDAの存在下で、より多くのアポリポタンパク質APOE2、APOE3又はAPOE4を吸収した(抗HAバンドによって指し示される)ことを指し示し、また、HILPDAが、神経系におけるアポリポタンパク質及びそれから形成されるリポタンパク質のクリアランスを促進したことを示唆する。
【実施例11】
【0198】
分泌されたHILPDAは、脳細胞によるアポリポタンパク質取込みを促進する
1)HEK293T細胞を10cm細胞培養皿においてDMEM培地で培養した。
【0199】
2)上述の細胞を、次のもので別々にコトランスフェクトした:
GFP-FLAGを発現するプラスミド及びAPOE3-3xHAプラスミド、並びに
HILPDA-Flagを発現するプラスミド及びAPOE3-3xHAプラスミド。
【0200】
3)12時間後に、1)における古い培地を、新鮮なDMEM細胞培養培地と交換した。
【0201】
4)48時間にわたり更に培養した後に、3)における培養された細胞の培地をそれぞれ収集し、これらの培地を使用して、マウス脳スライスを直接的に培養し、この脳スライスは、振動ミクロトームによって150μmの厚さに達するように新鮮なマウス脳をスライスすることにより得られた。スライスをDMEM培地において培養した。
【0202】
5)48時間培養した後に、抗HA抗体(カタログ番号:ab9110、abcam社;APOE3-3xHA融合タンパク質を検出するため)で免疫蛍光染色実験を行った。
【0203】
6)APOE3-3xHAの含量を観察した(
図14に示す通り)。
【0204】
図14は、HILPDAの存在及び非存在下での細胞培養培地における脳スライスによるAPOEの取込みを示す。
【0205】
実験結果は、GFP-Flag及びAPOE3-3xHAタンパク質を同時発現するHEK293T細胞を培養するための培養培地において培養された脳スライスと比較して、HILPDA-Flag及びAPOE3-3xHAタンパク質を同時発現するHEK293T細胞を培養するための培養培地において培養された脳スライスが、より多く且つより強い蛍光シグナルを示したことを示し、レシピエント細胞が、HILPDAの存在下で、より多くのアポリポタンパク質APOE3を吸収した(抗HA抗体群によって指し示される)ことを指し示し、また、HILPDAが、神経系におけるアポリポタンパク質及びそれから形成されるリポタンパク質のクリアランスを促進したことを示唆する。
【0206】
いかなる理論にも限定されないが、本発明者らは、HILPDAの作用機構が、一連の細胞外及び細胞内シグナル伝達経路を介して、ヒト細胞による血液又は脳脊髄液中のリポタンパク質の吸収を促進することであり、これにより、高脂血症及びアテローム性動脈硬化及び関連する併存症、並びに脂質代謝によって影響される神経変性疾患における予防又は治療効果を示すと推測する。この天然に存在する小型のタンパク質又はポリペプチドは、人体それ自体に由来するため、これは患者に投与されたときに低い毒性を有する筈であり、よって、臨床転換及び促進に適する。したがって、HILPDAは、医学的及び商業的な価値を有するポリペプチド薬となるであろう。
【0207】
本発明を実施するための具体的なモデルについて詳細に記載してきたが、当業者であれば、開示された実証の全てに基づき、このような詳細に対して様々な修正及び代替を為すことができ、このような変化は全て、本発明の範囲内にあることを理解するであろう。本発明の全範囲は、添付の特許請求の範囲及びそのいずれかの均等物によって得られる。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-01-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高脂血症、高脂血症合併症若しくは神経変性疾患の処置若しくは予防のための医薬の調製における、又は血液若しくは脳脊髄液中のアポリポタンパク質のレベル、低密度リポタンパク質のレベル若しくは超低密度リポタンパク質のレベルを低減させるための医薬の調製における、低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質又はその短縮型活性断片の使用。
【請求項2】
低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質が、配列番号1~12のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質の短縮型活性断片が、配列番号13~15のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
高脂血症が、III型高脂血症である、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
高脂血症合併症が、アテローム性動脈硬化、冠動脈心疾患、高血圧、高血糖及び高尿酸血症からなる群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
神経変性疾患が、多発性硬化症、アルツハイマー病及びパーキンソン病からなる群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
アポリポタンパク質が、ヒトAPOE2、APOE3及びAPOE4からなる群から選択される1種又は複数である、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質又はその短縮型活性断片を含む、高脂血症、高脂血症合併症若しくは神経変性疾患を処置若しくは予防するため
の、又は血液若しくは脳脊髄液中のアポリポタンパク質のレベル、低密度リポタンパク質のレベル若しくは超低密度リポタンパク質のレベルを低減させるため
の医薬。
【請求項9】
低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質が、配列番号1~12のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有する、請求項8に記載の
医薬。
【請求項10】
低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質の短縮型活性断片が、配列番号13~15のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有する、請求項8に記載の
医薬。
【請求項11】
高脂血症が、III型高脂血症である、請求項8から10のいずれか一項に記載の
医薬。
【請求項12】
高脂血症合併症が、アテローム性動脈硬化、冠動脈心疾患、高血圧、高血糖及び高尿酸血症からなる群から選択される、請求項8から10のいずれか一項に記載の
医薬。
【請求項13】
神経変性疾患が、多発性硬化症、アルツハイマー症候群及びパーキンソン病からなる群から選択される、請求項8から10のいずれか一項に記載の
医薬。
【請求項14】
アポリポタンパク質が、ヒトAPOE2、APOE3及びAPOE4からなる群から選択される1種又は複数である、請求項8から10のいずれか一項に記載の
医薬。
【請求項15】
配列番号13~15のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有する、低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質の短縮型活性断片。
【請求項16】
有効量の請求項
15に記載の低酸素誘導性脂肪滴関連タンパク質の短縮型活性断片、及び1種又は複数の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物であって、
任意選択で、1種又は複数の血中脂質低下薬、例えばスタチンを更に含む医薬組成物。
【請求項17】
別々に包装される第1の製品及び第2の製品を含む組合せ医薬製品であって、
第1の製品が、請求項
16に記載の医薬組成物を含み、
第2の製品が、1種又は複数の血中脂質低下薬、例えばスタチンを含み、
任意選択で、製品マニュアルも含まれる、組合せ医薬製品。
【国際調査報告】