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特表2024-518188抗Fel D1分子と動物消化物とを含むキャットフード栄養補助食品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-26
(54)【発明の名称】抗Fel D1分子と動物消化物とを含むキャットフード栄養補助食品
(51)【国際特許分類】
   A23K 20/147 20160101AFI20240419BHJP
   A23K 10/20 20160101ALI20240419BHJP
   A23K 50/40 20160101ALI20240419BHJP
【FI】
A23K20/147
A23K10/20
A23K50/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568363
(86)(22)【出願日】2022-04-28
(85)【翻訳文提出日】2023-11-06
(86)【国際出願番号】 IB2022053957
(87)【国際公開番号】W WO2022243769
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】63/189,450
(32)【優先日】2021-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】ラルモン, モード イザベル
(72)【発明者】
【氏名】フィリピ, アイヴァン
【テーマコード(参考)】
2B005
2B150
【Fターム(参考)】
2B005AA06
2B150AA06
2B150AB03
2B150AB10
2B150CD01
2B150DD63
(57)【要約】
ほとんどのネコアレルギーは、Fel-D1と呼ばれる小さく安定な糖タンパク質によって引き起こされる。Fel-D1は、ネコの毛づくろいの過程でネコのフケに移り、空中を浮遊するようになる。抗Fel-D1分子と動物消化物とを含む栄養補助食品をネコに与えることによって、この現象を低減することが可能である。本明細書において、この目的のために開発された組成物、方法及びシステムが開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗Fel D1分子と動物消化物とを含む、Fel D1に対するアレルギー反応を低減するための栄養補助食品。
【請求項2】
前記抗Fel D1分子がポリクローナル抗体である、請求項1に記載の栄養補助食品。
【請求項3】
前記抗Fel D1分子が、約0.0001%~約1%の量で存在する、請求項1に記載の栄養補助食品。
【請求項4】
前記動物消化物が、乾燥動物消化物である、請求項1に記載の栄養補助食品。
【請求項5】
前記動物消化物が、約1%~約90%の量で存在する、請求項1に記載の栄養補助食品。
【請求項6】
前記抗Fel D1分子の供給源として乾燥卵黄を更に含む、請求項1に記載の栄養補助食品。
【請求項7】
ビタミンE、ビタミンC、及びこれらの混合物からなる群から選択される添加剤を更に含む、請求項1に記載の栄養補助食品。
【請求項8】
抗Fel D1分子と動物消化物とを混合するステップを含む、
Fel D1に対するアレルギー反応を低減するための栄養補助食品を製造する方法。
【請求項9】
ビタミンE、ビタミンC、及びこれらの混合物からなる群から選択される添加剤を混合するステップを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記抗Fel D1分子が乾燥卵黄の一部であり、前記動物消化物が乾燥動物消化物である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
食品組成物と、
栄養補助食品と、を含む、
Fel D1に対するアレルギー反応を低減するためのシステムであって、前記栄養補助食品が、抗Fel D1分子と動物消化物とを含む、システム。
【請求項12】
前記食品組成物が、キャットフードである、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記抗Fel D1分子が乾燥卵黄の一部であり、前記動物消化物が乾燥動物消化物である、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
Fel D1に対するアレルギー反応を低減する方法であって、
抗Fel D1分子と動物消化物とを含む栄養補助食品を食品組成物に添加するステップと、
前記食品組成物をネコに投与するステップと、
を含む、方法。
【請求項15】
前記投与が、定期投与である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記抗Fel D1分子が乾燥卵黄の一部であり、前記動物消化物が乾燥動物消化物である、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は2021年5月17日に出願された米国特許仮出願第63/189450号の権益及び優先権を主張するものであり、その開示の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
[0002]成人の約20%は、ネコ及び/又はネコのフケに対するアレルギーを患っている。ネコアレルギーの症状は、軽度鼻炎及び結膜炎から、生命を脅かす喘息反応までの範囲にわたり、ネコアレルギーは、ネコを飼育する際の主要な障害である。例えば、ネコアレルギーは、ネコの飼い主がネコを動物保護施設に戻す際の主要な理由となる。
【0003】
[0003]ほとんどのネコアレルギーは、Fel D1(Feline domesticus allergen number 1)と呼ばれる、小さく安定した糖タンパク質により引き起こされる。このタンパク質は、ネコの毛づくろいの過程でネコのフケに移り、空中を浮遊するようになる。Fel D1が付着したネコのフケを吸入すると、Fel D1はヒト免疫細胞により認識されるため、アレルギーカスケードが誘導される。
【0004】
[発明の概要]
[0004]本開示は、Fel D1に対するアレルギー反応を低減するための栄養補助食品に関する。概して、栄養補助食品は、追加の食品組成物と共に、又は追加の食品組成物なしでネコに与えることができる。
【0005】
[0005]一実施形態では、Fel D1に対するアレルギー反応を低減するための栄養補助食品は、抗Fel D1抗体と動物消化物とを含み得る。
【0006】
[0006]別の実施形態では、Fel D1に対するアレルギー反応を低減するための栄養補助食品を製造する方法は、抗Fel D1抗体と動物消化物とを混合するステップを含み得る。
【0007】
[0007]更に別の実施形態では、Fel D1に対するアレルギー反応を低減するためのシステム又はキットは、食品組成物と栄養補助食品とを含むことができ、栄養補助食品は、抗Fel D1抗体と動物消化物とを含む。
【0008】
[0008]更に別の実施形態では、ネコに対するヒトのアレルギー症状を低減する方法は、抗Fel D1抗体と動物消化物とを含む栄養補助食品の有効量をネコに経口投与するステップを含み得る。
【0009】
[0009]更なる特徴及び利点が本明細書において記述されており、下記の「発明を実施するための形態」から明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0010】
定義
[0010]本開示及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「a」、「an」及び「the」には、別段の指示がない限り、複数の参照物も含まれる。用語「含む/備える(comprise)」、「含む/備える(comprises)」、及び「含んでいる/備えている(comprising)」は、排他的なものではなく、他を包含し得るものとして解釈されるべきである。同様にして、用語「含む(include)」、「含む(including)」及び「又は(or)」は全て、このような解釈が文脈から明確に妨げられない限りは他を包含し得るものであると解釈されるべきである。しかしながら、本明細書において開示される装置には、具体的に開示されない任意の要素が存在しない場合がある。したがって、「含む/備える(comprising)」という用語を用いた実施形態の開示は、特定されている構成要素「を本質的に含む/から本質的に構成される(consisting essentially of)」実施形態、及び特定されている構成要素「からなる(consisting of)」実施形態の開示を含む。
【0011】
[0011]「X及び/又はY」の文脈で使用される用語「及び/又は」は、「X」、又は「Y」、又は「X及びY」と解釈されるべきである。本明細書において使用する場合、用語「例(example)」及び「などの(such as)」は、特に後に用語の掲載が続く場合は、単に例示的なものであり、かつ説明のためのものであり、排他的又は包括的なものであると判断すべきではない。別途記載のない限り、本明細書で開示される任意の実施形態を、本明細書で開示される任意の別の実施形態と組み合わせることができる。
【0012】
[0012]本明細書において、範囲は、要するに、範囲内のすべての値を列挙することを避けるために使用される。範囲内の任意の適切な値を、範囲の上限値又は下限値として選択することができる。更に、本明細書における数値範囲は、その範囲内のすべての整数又は分数を含む。
【0013】
[0013]本明細書に記載する全ての百分率は、別途記載のない限り、組成物の総重量によるものである。pHについての参照がなされる場合には、値は標準的な装置により25℃にて測定されるpHに相当する。本明細書で使用するとき、数字を参照する際の「約」又は「実質的に」とは、数字の範囲、例えば参照する数字の-10%~+10%、-5%~+5%、-1%~+1%、又は一態様では-0.1%~+0.1%の範囲の数字を指すものと理解される。
【0014】
[0014]用語「アレルギー」は、「アレルギー反応(「allergic response」又は「allergic reaction」)」と同義である。それぞれの用語は、動物における免疫応答が、他の点では動物に対して有害ではない外因性の抗原(又は「アレルゲン」)に対し特異的である状態を指す。アレルギー反応の「症状」は、例えば、分子レベル(タンパク質又は転写物又は遺伝子の活性又は発現の測定を含む)、細胞レベル、臓器レベル、全身レベル、又は生物レベルでの免疫応答のいずれかの程度を指す。このような症状は、1つ以上のこのようなレベルを含み得る。「少なくとも1つの症状を低減する」とは、アレルギー反応による症状がなく、ひいてはアレルギー反応が予防されるように、症状が生じる前に当該症状を低減することを含む。一態様では、動物はヒトであり得る。
【0015】
[0015]症状としては、アトピー性皮膚炎(例えば、湿疹)、皮膚掻痒症(例えば、蕁麻疹)及び血管浮腫、並びにアレルギー性接触皮膚炎が挙げられるがこれらに限定されないアレルギー、鼻炎、浮腫、及びアレルギー性皮膚疾患に典型的に関連する炎症、呼吸不全、腫脹、又は損傷などの一般的な現象を挙げることができる。アレルギー反応の「症状」であるより具体的な現象としては、測定可能又は観察可能な任意の変化が挙げられ、例えば、細胞レベルで、例えば、細胞集団、好酸球増加、動員及び/若しくは例えば、マスト細胞及び/若しくは好塩基球を含む免疫細胞の活性化が挙げられるがこれらに限定されない局所的又は全身性の変化、並びに/又は抗原提示細胞(FcεRIを有する樹状細胞を含むがこれらに限定されない)における変化、免疫カスケード、アレルギー反応を介在する細胞内化合物(例えば、メディエータ)の放出における1つ以上の測定若しくは観察を含む細胞内若しくは分子の変化、並びに1つ以上のサイトカイン(例えば、IL-3、IL-5、IL-9、IL-4、又はIL-13)若しくは関連する化合物若しくはそれらのアンタゴニストにおける変化である。当業者であれば、本明細書で定義される特定の症状が他の症状よりも容易に測定され、いくつかは症状の主観的評価又は自己評価によって測定されることを理解するであろう。他の症状については、客観的に変化を評価するための便利な又は迅速なアッセイ又は測定が存在する。
【0016】
[0016]本明細書で使用するとき、「有効量」は、ネコに投与されたときに、当該ネコと同じ環境下(例えば、家、部屋、車、オフィス、ホテル、庭、ガレージ)にいる感作されたヒトにおけるネコアレルギーのうちの少なくとも1つの症状を低減させる、本明細書に開示される任意の組成物の量である。相対的な用語「少なくとも1つの症状を低減する」及び同様の用語は、本明細書に開示される組成物及び方法により、当該組成物及び方法が使用されていないことを除きその他の条件が同一である場合の重篤度と比較して重症度が低減することを指す。本明細書で使用するとき、「少なくとも1つの症状を低減する」は、アレルギー反応による症状がなく、ひいてはアレルギー反応が予防されるように、症状が生じる前に当該症状を低減することを含むが、これらに限定されない。
【0017】
[0017]「動物消化物」という用語は、清浄で腐敗していない動物組織の化学的加水分解及び/又は酵素加水分解から生じる材料を意味する。特定の実施形態では、本明細書で使用される「動物消化物」は、2021年1月1日時点で米国飼料検査官協会(AAFCO)によって公表されている動物消化物の定義と完全に一致する。概して、動物消化物は、「風味に関して、ペットフードは、多くの場合『消化物』を含有し、『消化物』は熱、酵素及び/又は酸で処理されて、濃縮された天然風味を形成する材料である」という米国食品医薬品局(FDA)による説明と完全に一致する。動物消化物は、概して、冷血海洋動物を含む動物組織に由来し、毛髪、角、歯、蹄、及び羽毛は除外される。当業者は、これらのような除外される部分は好ましくないものであるが、適正な製造規範の下であっても微量の検出は避けられない可能性があることを認識するであろう。動物消化物が乾燥されている場合、一般に「乾燥動物消化物」と呼ばれる。一実施形態では、乾燥動物消化物は、内蔵を除外され得る。本発明による動物消化物は、食品組成物又は飼料組成物における使用に適している。具体的には、(1)牛肉(又は家禽肉、豚肉、ラム肉、魚肉など)の消化物:清浄で腐敗していない動物組織の化学的加水分解及び/又は酵素加水分解から得られる牛肉(家禽肉、豚肉など)由来の材料;(2)牛肉(又は豚肉、ラム肉など)副産物の消化物:牛(豚、ラム、魚など)由来のレンダリングされていない清浄部分からの、清浄で腐敗していない組織の化学的加水分解及び/又は酵素加水分解により得られる、牛肉(家禽肉、豚肉など)由来の材料であって、例えば、肺、脾臓、腎臓、脳、肝臓、血液、骨、部分的に脱脂した低温脂肪組織、並びに内容物を取り除いた胃腸などの、肉以外の材料;(3)家禽肉副産物の消化物:屠殺された家禽の死骸の、頭部、脚部、内蔵などのレンダリングされていない清浄部分からの、清浄で腐敗していない組織の化学的加水分解及び/又は酵素加水分解により得られる材料、が含まれる。本明細書で使用するとき、「家禽」は、任意の種又は種類のトリ、好ましくはニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、又は他の食用種を包含する。
【0018】
[0018]用語「ペットフード」、「ペットフード製品」及び「ペットフード組成物」とは、動物に少なくとも1つの栄養素を供給する、ネコ科動物による摂取を目的とする製品又は組成物を意味する。更にこの点について、これらの用語は、製品又は組成物が即時に摂取できる形態であって、摂取可能な製品又は組成物を製造するための単なる中間体ではないことを意味するが、いくつかの実施形態では、栄養補助食品などの他の食品組成物を添加することもできる。用語「ペットフード」とは、ネコ科動物による摂取を意図した任意の食品組成物を意味する。
【0019】
[0019]用語「完全かつバランスのとれた」は、食品組成物について言及する場合、動物栄養学の分野で認められた権威の推奨に基づき、既知の必要な栄養素の全てを、適切な量及び割合で含有しており、したがって、栄養補給源を追加せずとも、生命を維持し、又は生産を促進するための食餌摂取の唯一の供給源としての役割を果たすことができる食品組成物を意味する。栄養バランスのとれたペットフード及び動物用フード組成物は、当技術分野において広く知られ、広く使用されており、例えば、米国飼料検査官協会(AAFCO)によって規定された2021年1月1日時点の基準に従って配合された完全かつバランスのとれたフード組成物である。
【0020】
[0020]本明細書で使用するとき、「抗Fel D1分子」は、Fel D1(Feline domesticus allergen number)に特異的に結合することができる任意の分子、例えば、抗体、アプタマー、Fel D1のアゴニスト/アンタゴニスト又はそのような分子の一部(例えば、抗体の抗原結合フラグメント(Fab))である。用語「抗体」は、任意の種及び任意の型のポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体、並びにFv、Fab、Fab’、F(ab’)などの免疫グロブリンフラグメント、又は他の抗原結合抗体フラグメント、抗原特異的な分子と相互作用する(例えば、特異的結合を示す)配列若しくはサブ配列を含む。
【0021】
[0021]本明細書で使用するとき、「栄養補助食品」は、抗Fel D1分子と動物消化物とを含有する任意の組成物を指し、栄養補助食品の既存のペットフードとの併用(例えば、主食ペットフードと混合される、又はその上に振りかけられる)、又はペットフードの製造における栄養補助食品の使用(例えば、ペットフード組成物の製造中のベース又はコーティングの原材料として)を含む。
【0022】
[0022]一実施形態では、抗Fel D1分子は、Fel D1を用いてニワトリなどのトリを免疫することによって卵において産生される、抗体(例えば、IgY)である。抗体は、卵から分離され、動物に投与され得る。あるいは卵及び/又は卵黄などの卵の一部は、動物に投与するのに好適な食品又は他の組成物上に直接適用され得る、又はそれらと混合され得る。一態様では、抗Fel D1分子は、米国特許第8,454,953号(Wellsら)「Methods for reducing allergies caused by environmental allergens」に開示されている分子の実施形態のうちの1つであってもよく、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0023】
[0023]用語「長期投与」は、1ヶ月を超える反復投与又は反復摂取の期間を意味する。特定の実施形態では、2ヶ月、3ヶ月、又は4ヶ月超の期間を用いることができる。また、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、又は10ヶ月超を含むより長期間を用いてもよい。11ヶ月又は1年を超える期間も採用し得る。1年、2年、3年、又はそれ以上にわたる長期使用も本発明に含めることができる。特定の動物については、当該動物は、その残りの生涯にわたって定期的な摂取を続けることになるであろう。このような摂取が「長期」摂取と呼ばれる場合もある。
【0024】
[0024]用語「定期投与」の「定期」は、少なくとも月1回組成物を投与する又は組成物を摂取することを意味し、いくつかの態様では、週1回投与することを意味する。特定の実施形態では、週に2回、3回、又は7回などのより頻繁な投与又は摂取を用いることができる。更に他の実施形態では、少なくとも1日1回の摂取を含むレジメンを含む。当業者は、化合物又はその化合物の特定の代謝産物の血中濃度又はその化合物の摂取後に生じる血中濃度が、投与頻度を評価又は決定するための有用なツールであり得ることを理解するであろう。本明細書において明示的に例示されているかどうかにかかわらず、測定される化合物の所望の血中濃度を許容可能範囲内に維持することを可能にする頻度は、本明細書において有用である。当業者は、投与頻度が、摂取される又は投与される組成物に応じるものであり、いくつかの組成物は、測定される化合物に所望される血中濃度を維持するために、より高頻度又は低頻度での投与を必要とし得ることを理解するであろう。
【0025】
[0025]本明細書で開示される方法及び機器並びに他の進歩は、当業者により認識されるとおり変更可能であるので、特定の方法、手順、及び試薬に限定されるものではない。更に、本明細書で使用される用語は、具体的な実施形態を記載することのみを目的とするものであり、開示又は請求の範囲を制限するものではない。
【0026】
[0026]別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語、専門用語、並びに頭字語は、本開示の分野の当業者により、又は用語が用いられている分野において、一般的な理解がなされている意味を有している。本明細書に記載のものと類似する又は等価の任意の組成物、方法、製品、又はその他の手法若しくは材料を使用できるが、特定の装置、方法、製品、又はその他の手法若しくは材料を本明細書において記載する。
【0027】
実施形態
[0027]本開示は、概して、ヒトのネコアレルギーのうちの少なくとも1つの症状を低減する活性分子を使用する組成物及び方法に関する。より具体的には、本開示は、動物消化物と共に組み込むことによって該活性分子の安定性を増進することに関する。
【0028】
[0028]一実施形態では、Fel D1に対するアレルギー反応を低減するための栄養補助食品は、抗Fel D1分子と動物消化物とを含み得る。概して、抗Fel D1分子は、栄養補助食品又は乾燥卵粉末中に約0.0001%~約1%の量で存在し得る。様々な態様において、抗Fel D1分子は、約0.0001%、0.001%、又は0.01%から、約0.01%、0.1%、0.5%、又は更には1%まで、存在し得る。概して、動物消化物は、栄養補助食品中に約1%~約90%の量で存在し得る。様々な態様において、動物消化物は、約1%、10%、20%、30%、40%、50%、又は60%から、約30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は更には90%まで、存在し得る。
【0029】
[0029]動物消化物は、家禽肉消化物、豚肉消化物、牛肉消化物、羊消化物、ラム肉消化物、魚肉消化物、豚肉副産物消化物、牛肉副産物消化物、羊副産物消化物、ラム肉副産物消化物、家禽肉副産物消化物、魚肉副産物消化物からなる群から、より具体的には家禽肉消化物、豚肉消化物及び魚肉消化物からなる群から、並びにこれらの組合せから選択することができる。好適な消化物としては、Kemin Industries,Inc.;ADM Animal Nutrition;BASF SE;Cargill,Incorporated;Darling Ingredients Inc.;John Pointon&Sons Ltd.;DowDuPont Inc.;Omega Protein Corporation;Specialites Pet Food SAS;AFB International;Proliver;及びBHJ A/Sから入手可能なものが挙げられる。一実施形態では、動物消化物は、乾燥動物消化物であり得る。
【0030】
[0030]一実施形態では、分子の少なくとも一部はFel D1に対して特異的である。別の実施形態では、分子の少なくとも一部は、Fel D1に特異的に結合する抗体、アプタマー、若しくはアゴニスト、又は上記のいずれかの一部を含み、抗体、又は抗体の結合部分若しくは断片、又は他の結合特異的タンパク質若しくはペプチドを含む一実施形態では、抗体又は他の結合分子は、生物工学的手段、例えば、微生物の大量発酵、動物の乳や卵などの容易に手に入る畜産物での産生、又は植物若しくは農作物での産生(例えば、いわゆる「植物抗体」(plantibodies))によって産生される。一実施形態では、抗Fel D1分子はポリクローナル抗体であり得る。
【0031】
[0031]好ましい実施形態では、抗体は、卵において抗体の産生を引き起こす抗原でニワトリなどのトリを免疫することによって産生される。抗体は、卵から分離して動物に投与することができ、又は卵、若しくは卵黄などの卵の一部を、動物への投与に適した食品又は他の組成物に直接適用する又はこれらと混合することができる。トリの卵を用いて抗体を調製する方法、及び抗体を含有するトリの卵を、特に食品組成物に含めて投与する方法は、当業者には公知であり、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6、413,515号、米国特許第5,080,895号、米国特許第4,748,018号において公知である。
【0032】
[0032]特定の実施形態では、卵に抗Fel D1抗体を産生させる抗原を使用して、トリ、好ましくはニワトリを免疫し;抗Fel D1抗体を含有するトリの卵を回収し、任意選択で、卵を処理して抗体を濃縮し;上記の卵又は処理した卵を、ネコに適した食品に混合又は適用し;抗体を含有する食品をネコに与え;抗体がネコの口内のFel D1抗原と複合体を形成することでFel D1抗原の抗原性を中和し、ネコ又はネコの環境に、特にネコが舐めた物体又はFel D1アレルゲンが物体上に残る形でネコと接触した物体に、アレルギーを有する動物が接触したときの、アレルギー又はその症状を低減又は予防する。したがって、一実施形態では、乾燥卵黄は、単独で又は乾燥全卵の一部として、抗Fel D1分子の供給源となり得る。
【0033】
[0033]一実施形態では、抗Fel D1分子は、約0.0001%~約1%の乾燥全卵粉末量で存在し得る。様々な態様において、抗Fel D1分子は、約0.0001%、0.001%、又は0.01%から、約0.01%、0.1%、0.5%、又は更には1%まで、存在し得る。一実施形態では、乾燥全卵粉末又はその任意の部分は、栄養補助食品中に約1%~約99%で存在し得る。様々な態様において、乾燥全卵粉末又はその任意の部分は、約1%、10%、20%、30%、40%、50%、又は60%から、約30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は更には90%まで、存在し得る。
【0034】
[0034]本明細書の栄養補助食品は、ミネラル類、ビタミン類、塩、抗酸化物質、栄養素、機能性添加剤、例えば、食味増強剤(palatant)、着色剤、乳化剤、抗菌剤、又は他の保存料などの物質を更に含み得る。このような組成物において有用となり得るミネラルとしては、例えば、カルシウム、リン、カリウム、ナトリウム、鉄、塩化物、ホウ素、銅、亜鉛、マグネシウム、マンガン、ヨウ素、及びセレンなどが挙げられる。本明細書において有用なビタミンの例としては、ビタミンD及びビタミンKなどの脂溶性ビタミン類、並びにビタミンB、ビタミンE、ビタミンC、ビタミンAなどが挙げられる。イヌリン、アミノ酸、タウリン、コリン、酵素、及び補酵素などは、様々な実施形態に含めるのに有用となり得る。一態様では、添加剤は、ビタミンE、ビタミンC、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。添加できる他の成分としては、サイリウム、穀類副産物、及び麦芽などの炭水化物源又は繊維源が挙げられ;他の成分としては、粗大粒子、固結防止剤、流動化剤が挙げられる。他の栄養成分としては、酵母、プロバイオティクス、及びプレバイオティクスが挙げられる。
【0035】
[0035]一実施形態では、Fel D1に対するアレルギー反応を低減するための栄養補助食品を製造する方法は、抗Fel D1分子と動物消化物とを混合するステップを含み得る。本明細書で述べたように、添加剤はまた、栄養補助食品を形成するために、一工程で又は別個に混合できる。
【0036】
[0036]別の実施形態では、Fel D1に対するアレルギー反応を低減するためのシステム又はキットは、食品組成物と栄養補助食品とを含むことができ、栄養補助食品は、抗Fel D1分子と動物消化物とを含む。一実施形態では、食品組成物は、キャットフードであってもよい。一態様では、キャットフードは、完全かつバランスのとれたキャットフードであり得る。
【0037】
[0037]そのような態様では、Fel D1に対するアレルギー反応を低減するのに適したキットは、キット構成要素に応じて、単一パッケージ内の別々の容器に、又は仮想パッケージ内の別々の容器に、(a)抗Fel D1分子と動物消化物とを含む栄養補助食品と;(b)動物による摂取に好適な1種以上の他の原材料;任意選択で、(c)動物への投与のためにキットで提供された栄養補助食品及び任意の他の原材料をどのように組み合わせるか又は調製するかについての説明書;並びに任意選択で、(d)組み合わされたキット構成要素、調製されたキット構成要素、又はその他のキット構成要素を動物の利益のためどのように使用するかについての説明書、のうちの1つ以上と、を含むことができる。構成要素は、単一のパッケージに含まれる別々の容器に入れて、又は異なるパッケージに含まれる様々な構成要素の混合物として、それぞれ提供することができる。キットは、様々な組み合わせの原材料を含むことができる。例えば、キットは、1つの容器内に栄養補助食品を含み、1つ以上の他の容器内に1つ以上の他の原材料を含み得る。他のこのような組み合わせは、原材料の特徴並びにその物理的特性及び化学的特性及び適合性に基づいて当業者が製造することができる。
【0038】
[0038]更に別の実施形態では、Fel D1に対するアレルギー反応を低減する方法は、抗Fel D1分子と動物消化物とを含む栄養補助食品を食品組成物に添加するステップと、食品組成物をネコに投与するステップと、を含むことができる。一実施形態では、投与は、定期投与とすることができる。別の実施形態では、投与は、長期投与とすることができる。一態様では、投与は毎日とすることができる。一実施形態では、このような投与は、ネコに1日当たり約0.1mg~約5mgの投与量で抗Fel D1分子を提供することができる。一態様では、投与量は、1日当たり約0.2mg~約1mgであり得る。
【0039】
[0039]本開示の更に別の態様は、ネコに対するヒトのアレルギー症状を低減する方法である。本方法は、本明細書に開示される栄養補助食品のいずれかの有効量を、及び/又は本明細書に開示される方法のいずれかから得られる任意の栄養補助食品の有効量を、ネコに経口投与するステップを含む。栄養補助食品は、タンパク質、脂肪、炭水化物、ビタミン及びミネラルからなる群から選択される少なくとも1種の成分を更に含むペットフードの一部として投与することができる。この方法は、抗Fel D1分子をネコの口内のFel D1に結合させることによって、Fel D1によって引き起こされるアレルギーの影響を受けやすいヒト又は当該アレルギーに罹患しているヒトにおいてFel D1がアレルギー反応を誘導するのを防ぐことができる。
【実施例
【0040】
[0040]例示を目的として、かつ制限しないことを目的として、以下の非限定的な実施例により、本開示により提供される実施形態における、ネコアレルギーの症状を低減するための組成物及び方法を例示する。
【0041】
実施例1-抗Fel D1抗体の作製
[0041]ニワトリにFel d1を接種して、卵黄における抗Fel d1特異的ポリクローナル免疫グロブリンY(sIgY)の形成を誘導した。卵を回収し、処理し、噴霧乾燥して、sIgYを含有する全卵黄粉末を形成した。
【0042】
実施例2-栄養補助食品の製造
[0042]次いで、実施例1の粉末を、表1に記載のように、乾燥動物消化物(乾燥によって安定化された、熱処理された肉ベースの酵素加水分解物)、ビタミンE(ビタミンEジ-α-トコフェリルアセテート50%吸着物)、及びビタミンC(ビタミンCアスコルビン酸35%噴霧乾燥物)と組み合わせて栄養補助食品#1を形成し、乾燥動物消化物と組み合わせて栄養補助食品#2を形成した。
【0043】
【表1】
【0044】
実施例3-安定性試験
[0043]実施例2の栄養補助食品を、実施例1の抗Fel D1抗体粉末と比較して、表2に記載の様々な温度プロファイルによる安定性を評価した。
【0045】
【表2】
【0046】
[0044]表2に示すように、乾燥動物消化物を有する栄養補助食品は、対照(実施例1のsIgY粉末)と比較して経時的な損失率がより小さいことによって証明されるように、予想外に、より安定であった。140°Fでは、第1週の後、いずれの栄養補助食品も、sIgY粉末単独と比較して15%の改善があり、第2週の後には、栄養補助食品#1は、sIgY粉末と比較して21%の改善があり、栄養補助食品#2は8%の改善があった。120°Fでは、栄養補助食品#1は、1週間、2週間、3週間、4週間、及び5週間で、それぞれ21%、31%、16%、19%、及び18%の改善があった。一方、栄養補助食品#2は、1週間、2週間、3週間、4週間、及び5週間で、それぞれ11%、22%、17%、13%、及び4%の改善があった。100°Fでは、栄養補助食品#1は、2週間、4週間、8週間、及び12週間で、それぞれ14%、15%、9%、及び18%の改善があった。一方、栄養補助食品#2は、2週間、4週間、8週間、及び12週間で、それぞれ13%、13%、11%、及び2%の改善があった。
【0047】
[0045]本明細書に記載される本実施形態に対する様々な変更及び修正が、当業者には明らかであることは理解されるべきである。そのような変更及び修正は、本主題の趣旨及び範囲から逸脱することなく、かつ意図される利点を損なわずに、なされ得る。したがって、このような変更及び修正は、添付の特許請求の範囲によって包含されることが意図されている。
【国際調査報告】