(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-30
(54)【発明の名称】酸化還元感受性CRALBP突然変異タンパク質
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20240422BHJP
C07K 14/435 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
C12N15/12
C07K14/435 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571219
(86)(22)【出願日】2022-05-18
(85)【翻訳文提出日】2024-01-15
(86)【国際出願番号】 EP2022063473
(87)【国際公開番号】W WO2022243386
(87)【国際公開日】2022-11-24
(32)【優先日】2021-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】520017801
【氏名又は名称】ウニベルズィテート ベルン
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ストッカー、アヒム
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA10
4H045AA20
4H045BA10
4H045BA50
4H045CA40
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA20
(57)【要約】
本発明は、CRALBP突然変異タンパク質とCRALBP同族リガンドとの複合体を含む組成物であって、前記CRALBP突然変異タンパク質が、システインによるアミノ酸突然変異の1つまたは複数の対を含む野生型CRALBPタンパク質のムテインであり、システインの対がジスルフィド結合を形成することができる、組成物、ならびに前記複合体および前記CRALBP突然変異タンパク質に関する。さらに、本発明はさらに、前記組成物および複合体を調製する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合体を含む、好ましくは複合体からなる組成物であって、前記複合体が、
(a)CRALBP突然変異タンパク質であって、前記CRALBP突然変異タンパク質が野生型CRALBPタンパク質のムテインであり、前記ムテインが前記野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる少なくとも1対のアミノ酸突然変異を含み、システインの前記対の各々がジスルフィド結合を形成することができる、CRALBP突然変異タンパク質;および
(b)CRALBPの同族リガンドであって、好ましくはシス-レチノイドである同族リガンド、を含む組成物。
【請求項2】
システインによるアミノ酸突然変異の各対の一方のシステインが、配列番号3のアミノ酸204~229に対応するアミノ酸残基内のアミノ酸の突然変異であり、前記対のシステインによる他方の突然変異アミノ酸が、配列番号3のアミノ酸244~261に対応するアミノ酸残基内のアミノ酸の突然変異である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ムテインが、前記野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる1、2、3または4対のアミノ酸突然変異を含み、好ましくは、前記ムテインが、前記野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる1または2対のアミノ酸突然変異を含む、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記野生型CRALBPタンパク質と比較して、システインによるアミノ酸突然変異の前記対が、
(1)配列番号3のアミノ酸212に相当するアミノ酸の突然変異および配列番号3のアミノ酸250に相当するアミノ酸の突然変異;
(2)配列番号3のアミノ酸217に相当するアミノ酸の突然変異および配列番号3のアミノ酸253に相当するアミノ酸の突然変異;
(3)配列番号3のアミノ酸220に相当するアミノ酸の突然変異および配列番号3のアミノ酸254に相当するアミノ酸の突然変異;
(4)配列番号3のアミノ酸224に相当するアミノ酸の突然変異および配列番号3のアミノ酸257に相当するアミノ酸の突然変異、
から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記複合体が、前記CRALBP突然変異タンパク質と前記同族リガンドとのモノマー複合体である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記複合体が、前記CRALBP突然変異タンパク質と前記同族リガンドとのオリゴマー複合体であり、前記オリゴマー複合体が、少なくとも600kDa、好ましくは少なくとも720kDaの分子量、好ましくは最大2500kDaの分子量、さらに好ましくは最大2000kDaの分子量を有するか、または前記オリゴマー複合体が、約24~33nmの平均直径を有し、好ましくは前記オリゴマー複合体が、約25~32nmの平均直径を有し、前記平均直径が、動的光散乱(DLS)によって決定される、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記複合体が、前記CRALBP突然変異タンパク質および前記同族リガンドのモノマー複合体およびホモオリゴマー複合体を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
システインの前記対の各々がジスルフィド結合を形成する、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記野生型CRALBPタンパク質が、配列番号3のヒトCRALBPタンパク質である、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物であって、前記野生型CRALBPタンパク質が配列番号3のヒトCRALBPタンパク質であり、前記ムテインが、前記ヒト野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる1対または2対または3対のアミノ酸突然変異を含み、前記ヒト野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる前記1対のアミノ酸突然変異が、
(i)配列番号3のアミノ酸212の突然変異および配列番号3のアミノ酸250の突然変異;
(ii)配列番号3のアミノ酸217の突然変異および配列番号3のアミノ酸253の突然変異;および
(iii)配列番号3のアミノ酸220の突然変異および配列番号3のアミノ酸254の突然変異;
から選択され
前記ヒト野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる前記2対のアミノ酸突然変異が、
(a)システインによるアミノ酸突然変異の第1の対およびシステインによるアミノ酸突然変異の第2の対であって、前記システインによるアミノ酸突然変異の第1の対が、配列番号3のアミノ酸220の突然変異および配列番号3のアミノ酸254の突然変異であり、前記システインによるアミノ酸突然変異の第2の対が、配列番号3のアミノ酸224の突然変異および配列番号3のアミノ酸257の突然変異であるもの;
(b)システインによるアミノ酸突然変異の第1の対およびシステインによるアミノ酸突然変異の第2の対であって、前記システインによるアミノ酸突然変異の第1の対が、配列番号3のアミノ酸212の突然変異および配列番号3のアミノ酸250の突然変異であり、前記システインによるアミノ酸突然変異の第2の対が、配列番号3のアミノ酸224の突然変異および配列番号3のアミノ酸257の突然変異であるもの;および
(c)システインによるアミノ酸突然変異の第1の対およびシステインによるアミノ酸突然変異の第2の対であって、前記システインによるアミノ酸突然変異の第1の対が、配列番号3のアミノ酸212の突然変異および配列番号3のアミノ酸250の突然変異であり、前記システインによるアミノ酸突然変異の第2の対が、配列番号3のアミノ酸217の突然変異および配列番号3のアミノ酸253の突然変異であるもの、
から選択され、
前記ヒト野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる前記3対のアミノ酸突然変異が、
(x)システインによるアミノ酸突然変異の第1の対、システインによるアミノ酸突然変異の第2の対、およびシステインによるアミノ酸突然変異の第3の対であって、前記システインによるアミノ酸突然変異の第1の対が、配列番号3のアミノ酸212の突然変異および配列番号3のアミノ酸250の突然変異であり、前記システインによるアミノ酸突然変異の第2の対が、配列番号3のアミノ酸220の突然変異および配列番号3のアミノ酸254の突然変異であり、前記システインによるアミノ酸突然変異の第3の対が、配列番号3のアミノ酸224の突然変異および配列番号3のアミノ酸257の突然変異であるものである、組成物。
【請求項11】
前記CRALBP突然変異タンパク質が、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21および配列番号23からなる群から選択されるアミノ酸配列を有し、好ましくは、前記CRALBP突然変異タンパク質が、配列番号9および配列番号21から選択されるアミノ酸配列を有し、さらに好ましくは、前記CRALBP突然変異タンパク質が、配列番号9のアミノ酸配列を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
CRALBP突然変異タンパク質であって、前記CRALBP突然変異タンパク質が野生型CRALBPタンパク質のムテインであり、前記ムテインが前記野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる少なくとも1対のアミノ酸突然変異を含み、システインの前記対の各々がジスルフィド結合を形成することができる、CRALBP突然変異タンパク質。
【請求項13】
CRALBP突然変異タンパク質をコードする核酸配列であって、前記CRALBP突然変異タンパク質が野生型CRALBPタンパク質のムテインであり、前記ムテインが前記野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる少なくとも1対のアミノ酸突然変異を含み、システインの前記対の各々がジスルフィド結合を形成することができる、核酸配列。
【請求項14】
複合体を含む組成物を調製する方法であって、前記複合体が、
(a)CRALBP突然変異タンパク質であって、前記CRALBP突然変異タンパク質が野生型CRALBPタンパク質のムテインであり、前記ムテインが前記野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる少なくとも1対のアミノ酸突然変異を含み、システインの前記対の各々がジスルフィド結合を形成することができる、CRALBP突然変異タンパク質;
(b)CRALBPの同族リガンド;を含み、
前記方法が、
i.水溶液I中の前記CRALBP突然変異タンパク質を提供する工程であって、前記溶液I中の前記CRALBP突然変異タンパク質の濃度が1μM~5mMであり、前記溶液IのpHが5~9、好ましくは7.0~8.5、さらに好ましくは7.5~8.5であり、好ましくは前記溶液Iが塩を含み、前記塩の濃度が10mM~500mMである、工程;
ii.溶液II中のCRALBPの前記同族リガンドを提供する工程であって、前記溶液I中のSEC14様タンパク質の前記同族リガンドの濃度が5μM~500mMであり、前記溶液IIの溶媒が水溶性溶媒であり、好ましくは前記水溶性溶媒がエタノールである、工程;
iii.前記溶液Iと前記溶液IIとを組み合わせることによって溶液IIIを生成する工程であって、前記溶液III中の前記CRALBP突然変異タンパク質の濃度とCRALBPの前記同族リガンドの濃度との比が4:1~1:4(モル/モル)であり、前記溶液III中の前記水溶性溶媒の体積が0.5~8%(体積/体積)、好ましくは約1~5%(体積/体積)である、工程;
iv.前記CRALBP突然変異タンパク質およびCRALBPの前記同族リガンドを複合体に集合させる工程;
v.前記複合体を含む前記組成物を前記溶液IIIから分離する工程;を含み、
vi.場合により、前記複合体を含む前記組成物を精製する工程を含む、方法。
【請求項15】
複合体を含む組成物であって、前記複合体が、
(a)CRALBP突然変異タンパク質であって、前記CRALBP突然変異タンパク質が野生型CRALBPタンパク質のムテインであり、前記ムテインが前記野生型CRALBPタンパク質と比較して少なくとも1対のシステインによるアミノ酸突然変異を含み、システインの前記対の各々がジスルフィド結合を形成することができる、CRALBP突然変異タンパク質;
(b)CRALBPの同族リガンドであって、好ましくはシス-レチノイドである同族リガンド;を含み、前記組成物が、好ましくは、請求項2~11のいずれか一項に記載のように定義され;前記組成物が、
i.水溶液I中の前記CRALBP突然変異タンパク質を提供する工程であって、前記溶液I中の前記CRALBP突然変異タンパク質の濃度が1μM~5mMであり、前記溶液IのpHが5~9、好ましくは7.0~8.5、さらに好ましくは7.5~8.5であり、好ましくは前記溶液Iが塩を含み、前記塩の濃度が10mM~500mMである、工程;
ii.溶液II中のCRALBPの前記同族リガンドを提供する工程であって、前記溶液I中のSEC14様タンパク質の前記同族リガンドの濃度が5μM~500mMであり、前記溶液IIの溶媒が水溶性溶媒であり、好ましくは前記水溶性溶媒がエタノールである、工程;
iii.前記溶液Iと前記溶液IIとを組み合わせることによって溶液IIIを生成する工程であって、前記溶液III中の前記CRALBP突然変異タンパク質の濃度とCRALBPの前記同族リガンドの濃度との比が4:1~1:4(モル/モル)であり、前記溶液III中の前記水溶性溶媒の体積が0.5~8%(体積/体積)、好ましくは約1~5%(体積/体積)である、工程;
iv.前記CRALBP突然変異タンパク質およびCRALBPの前記同族リガンドを複合体に集合させる工程;
v.前記複合体を含む前記組成物を前記溶液IIIから分離する工程;を含む方法によって得られ、
vi.場合により、前記複合体を含む前記組成物を精製する工程を含む方法によって得られる、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CRALBP突然変異タンパク質とCRALBP同族リガンドとの複合体を含む組成物であって、前記CRALBP突然変異タンパク質が、システインによるアミノ酸突然変異の1つまたは複数の対を含む野生型CRALBPタンパク質のムテインであり、システインの対がジスルフィド結合を形成することが可能な、組成物、ならびに前記複合体および前記CRALBP突然変異タンパク質に関する。さらに、本発明はさらに、前記組成物および複合体を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞性網膜結合タンパク質(CRALBP)は、1977年にFuttermanらによってウシ網膜の可溶性画分で発見され、レチナールのシス-トランス異性体に提示された場合に11-シス-レチナールに対して最大の結合を示すことが示された(Futterman S.,et al.,1977,J.Biol.Chem.252(10):3267-3271)。Crouchらによる研究では、ロドプシン、イソロドプシンおよびイソロドプシンIIの形成は、視覚色素アポタンパク質オプシンをそれぞれ11-シス-、9-シス-および9,13-ジ-シス-レチナールと組み合わせることによって実証された(Crouch R.,et al.,1975,PNAS.72(4):1538-1542)。まとめると、これらの知見は、CRALBPが眼における退色ロドプシンの再生に関与し得るという仮定への道を開いた(Crouch R.,et al.,1975,PNAS.72(4):1538-1542;Futterman S.&Saari J.C.,1977,Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.16(8):768-71;Crouch R.,et al.,1978,Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.17(10):1024-9)。CRALBPはウシ網膜から単離され、9-シス-レチナール(Kd=53nM)、11-シス-レチナール(Kd=20nM)および11-シス-レチノール(Kd=60nM)に対してナノモル親和性を有する高親和性結合剤として同定されたが、13-シスまたは全トランス-レチナールのいずれにも結合しない。さらに、CRALBPおよびロドプシンの光異性化の一次速度定数の比を、両方とも11-シス-レチナールとの複合体において、両方のタンパク質複合体の吸光係数の既知の値と共に使用して、ロドプシンと比較したCRALBPにおける予想される4%の光異性化を推定した(Saari J.C.,et al.,1982,J.Biol.Chem.,257(22):13329-13333;Saari JC.,&Bredberg D.L.,1987,J.Biol.Chem.262(16):7618-22)。1988年に、ウシおよびヒトCRALBPのcDNAのクローニングおよび配列決定が記載され(Crabb J.W.,et al.,1988,J.Biol.Chem.263(35):18688-18692)、その後、CRALBPをコードする遺伝子の突然変異が同定され、網膜色素変性症、ニューファンドランド棒状錐体ジストロフィー、眼底白点症、およびBothnia網膜ジストロフィーを含むいくつかの網膜疾患に関連した(Maw M.A.,et al.,1997,Nat.Genet.17:198-200;Golovleva I.,et al.,2003,J.Biol.Chem.278(14):12397-12402;Burstedt,M.S.et al.,2003 Vision Res.43:2559-2571;Saari,J.C.;Crabb,J.2005,W.Exp.Eye Res.81:245-246)。両方とも11-シス-レチナールと複合体化した野生型CRALBPおよびそのBothniaジストロフィー関連突然変異体R234WのX線構造解明がHeらによって報告されたが(He,X.,et al.,2009,PNAS,106(44):18545-18550)、9-シス-レチナールと複合体化した野生型CRALBPのX線構造解明はBolzeらによって解明され、結合した9-シス-レチナールを9,13-ジ-シス-レチナールに内部変換するその能力がさらに実証された(Bolze,C.S.,et al.,2014,JACS,136(1):137-146)。レチノイド視覚サイクル、すなわち全トランス-レチナールから11-シス-レチナールへの眼の生化学的再生経路におけるCRALBPの関与が報告された(Kiser PD et al.,2014,Chem.Rev.114:194-232;Kiser,P.D.et al.,2015 Nat.Chem.Biol.11:409-415)。この経路では、CRALBPはRPE65のイソメラーゼ活性を刺激し、RDH5デヒドロゲナーゼへの11-シス-レチノールの結合および細胞外の細胞質を介したRDH5からの11-シス-レチナールのシャペロン移行を促進する。RLBP1-/-ノックアウトマウスを使用して、CRALBPが哺乳動物の網膜視覚サイクルおよび錐体視覚をどのように支援するかに関する研究は、ミュラー細胞CRALBPを網膜視覚サイクルの重要な構成要素として同定し、この経路が正常な錐体駆動視覚を維持し、錐体暗順応を加速するために重要であることを実証することが報告された(Xue,Y.,et al.,2015,J.Clin.Inv.,125(2):727-738)。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、基礎となる野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる1つまたは複数の対のアミノ酸突然変異を有しており、システインの対がジスルフィド結合を形成することができる、新規な操作されたCRALBP突然変異タンパク質を記載する。そのような酸化還元感受性CRALBP突然変異タンパク質は、前記新規CRALBP突然変異タンパク質とそれらの同族リガンド、特にシス-レチノイド、好ましくはシス-レチナールとの複合体の生成を可能にし、それらの酸化状態で日光に対する有意に増加した光抵抗性を示す。これらの複合体は、還元条件下で野生型CRALBPと比較して同様の生物物理学的特性を有することがさらに示されている。したがって、そのような組成物および複合体、好ましくは酸化複合体の、貯蔵デバイスとしての使用は、好ましくはシス-レチノイドを網膜光受容体に効率的かつ安全に送達するための新しい方法を開くことができる。
【0004】
第1の実施形態および例では、本発明は、システイン残基によるヒトCRALBPの天然構造内のアラニン212およびトレオニン250の二重置換(A212C:T250C)、ならびに9-シス-レチナールおよび11-シス-レチナールへのその結合を記載する。CRALBPのA212C改変はタンパク質のコアのヘリックス10にマッピングされ、T250C改変はタンパク質の可動ゲート部分内のヘリックス12にマッピングされ、残基E243からE254まで及ぶ。
【0005】
天然のCRALBPは、低ナノモル濃度範囲で高い親和性で11-シス-レチナールおよび9-シス-レチナールリガンドの両方に結合する。リガンドが結合すると、CRALBPの可動ゲート部分はその「閉じた」立体配座状態をとり、ヘリックス12およびヘリックス10は互いにファンデルワールス距離内にある。この立体配座では、突然変異残基C212およびC250の側鎖硫黄原子は、2つのヘリックスによって形成される界面内で2.4Åの距離で互いに対向する(
図1参照)。
【0006】
本発明者らは、2つの対向するシステイン側鎖の距離および配向の両方が共有ジスルフィド結合の形成に役立つことを見出した。直接的な結果として、大気酸素への曝露および適切な酸化剤の添加の両方が、2つの電子(各硫黄原子について1つ)の損失を介して共有ジスルフィド結合の形成を誘導する。A212C:T250Cにおける可動ゲートの得られた固定化は、持続的な酸化条件下、例えば細胞外区画への進入時に、結合したリガンド(11-シス-レチナールまたは9-シス-レチナール)の増強された光保護を提供する。天然のCRALBPの活性プロファイルに関して、感光性シス-レチノイドの安定化は、形成を損なうだけでなく、CRALBP結合ポケットからのトランス-レチナールの早期放出も損なう。
【0007】
したがって、A212C:T250C点突然変異は、分子内ジスルフィド結合の可逆的形成を促進する。この観察と一致して、光異性化アッセイは、その酸化状態でA212C:T250C突然変異体に結合した場合、シス-レチナールリガンドの光保護の有意な増加を明らかにするが、その還元状態では、A212C:T250C突然変異体は、天然のCRALBPで観察されるものと同様の光保護特性を有する(
図9を参照)。
【0008】
本明細書と同様に、CRALBPのさらなるジ-システイン突然変異体は、システイン残基の体系的なインシリコ導入およびジスルフィド結合を含む得られたエネルギー最小化構造モデルの分析による計算方法によって同定された。
【0009】
したがって、第1の態様では、本発明は、複合体を含む、好ましくは複合体からなる組成物であって、前記複合体が、(a)CRALBP突然変異タンパク質であって、前記CRALBP突然変異タンパク質が野生型CRALBPタンパク質のムテインであり、前記ムテインが前記野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる少なくとも1対のアミノ酸突然変異を含み、システインの前記対の各々がジスルフィド結合を形成することが可能な、CRALBP突然変異タンパク質;および(b)CRALBPの同族リガンドであって、好ましくはシス-レチノイドである同族リガンド、を含む組成物を提供する。
【0010】
さらなる態様では、本発明は、複合体を含む、好ましくは複合体からなる組成物であって、前記複合体が、(a)CRALBP突然変異タンパク質であって、前記CRALBP突然変異タンパク質が野生型CRALBPタンパク質のムテインであり、前記ムテインが前記野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる少なくとも1対のアミノ酸突然変異を含み、システインの前記対の各々がジスルフィド結合を形成することが可能な、CRALBP突然変異タンパク質;および(b)CRALBPの同族リガンドであって、好ましくはシス-レチノイドである同族リガンド、を含む組成物を提供する。
【0011】
別の態様では、本発明は、CRALBP突然変異タンパク質を提供し、前記CRALBP突然変異タンパク質は、野生型CRALBPタンパク質のムテインであり、前記ムテインが前記野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる少なくとも1対のアミノ酸突然変異を含み、システインの前記対の各々がジスルフィド結合を形成することが可能であり、好ましくは、前記CRALBP突然変異タンパク質は、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21および配列番号23からなる群から選択されるアミノ酸配列を有し、さらに好ましくは、前記CRALBP突然変異タンパク質は、配列番号9および配列番号21から選択されるアミノ酸配列を有し、またさらに好ましくは、前記CRALBP突然変異タンパク質は、配列番号9のアミノ酸配列を有する。
【0012】
さらなる態様では、本発明は、CRALBP突然変異タンパク質をコードする核酸配列であって、前記CRALBP突然変異タンパク質が野生型CRALBPタンパク質のムテインであり、前記ムテインが前記野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる少なくとも1対のアミノ酸突然変異を含み、システインの前記対の各々がジスルフィド結合を形成することが可能な、核酸配列を提供する。
【0013】
また別の態様では、本発明は、複合体を含む組成物を調製する方法を提供し、前記複合体は、
(a)CRALBP突然変異タンパク質であって、前記CRALBP突然変異タンパク質が野生型CRALBPタンパク質のムテインであり、前記ムテインが前記野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる少なくとも1対のアミノ酸突然変異を含み、システインの前記対の各々がジスルフィド結合を形成することが可能な、CRALBP突然変異タンパク質;
(b)CRALBPの同族リガンドであって、好ましくはシス-レチノイドである同族リガンド;を含み、前記組成物は、好ましくは本明細書に記載されるように定義され;前記方法は、
i.水溶液I中の前記CRALBP突然変異タンパク質を提供する工程であって、前記溶液I中の前記CRALBP突然変異タンパク質の濃度が1μM~5mMであり、前記溶液IのpHが5~9、好ましくは7.0~8.5、さらに好ましくは7.5~8.5であり、好ましくは前記溶液Iが塩を含み、前記塩の濃度が10mM~500mMである、工程;
ii.溶液II中のCRALBPの前記同族リガンドを提供する工程であって、前記溶液I中のSEC14様タンパク質の前記同族リガンドの濃度が5μM~500mMであり、前記溶液IIの溶媒が水溶性溶媒であり、好ましくは前記水溶性溶媒がエタノールである、工程;
iii.前記溶液Iと前記溶液IIとを組み合わせることによって溶液IIIを生成する工程であって、前記溶液III中の前記CRALBP突然変異タンパク質の濃度とCRALBPの前記同族リガンドの濃度との比が4:1~1:4(モル/モル)であり、前記溶液III中の前記水溶性溶媒の体積が0.5~8%(体積/体積)、好ましくは約1~5%(体積/体積)である、工程;
iv.前記CRALBP突然変異タンパク質およびCRALBPの前記同族リガンドを複合体に集合させる工程;
v.前記複合体を含む前記組成物を前記溶液IIIから分離する工程;
vi.場合により、前記複合体を含む前記組成物を精製する工程;および
vii.前記複合体を含む前記組成物を酸化剤で場合により処理する工程であって、好ましくは前記酸化剤が周囲空気または1~1000mM酸化グルタチオンであり、さらに好ましくは前記酸化剤が1~100mM酸化グルタチオンである、工程を含む。
【0014】
またさらなる態様では、本発明は、複合体を含む組成物を提供し、前記複合体は、
(a)CRALBP突然変異タンパク質であって、前記CRALBP突然変異タンパク質が野生型CRALBPタンパク質のムテインであり、前記ムテインが前記野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる少なくとも1対のアミノ酸突然変異を含み、システインの前記対の各々がジスルフィド結合を形成することが可能な、CRALBP突然変異タンパク質;
(b)CRALBPの同族リガンドであって、好ましくはシス-レチノイドである同族リガンド;を含み、前記組成物は、好ましくは本明細書に記載されるように定義され;前記組成物は、
i.水溶液I中の前記CRALBP突然変異タンパク質を提供する工程であって、前記溶液I中の前記CRALBP突然変異タンパク質の濃度が1μM~5mMであり、前記溶液IのpHが5~9、好ましくは7.0~8.5、さらに好ましくは7.5~8.5であり、好ましくは前記溶液Iが塩を含み、前記塩の濃度が10mM~500mMである、工程;
ii.溶液II中のCRALBPの前記同族リガンドを提供する工程であって、前記溶液I中のSEC14様タンパク質の前記同族リガンドの濃度が5μM~500mMであり、前記溶液IIの溶媒が水溶性溶媒であり、好ましくは前記水溶性溶媒がエタノールである、工程;
iii.前記溶液Iと前記溶液IIとを組み合わせることによって溶液IIIを生成する工程であって、前記溶液III中の前記CRALBP突然変異タンパク質の濃度とCRALBPの前記同族リガンドの濃度との比が4:1~1:4(モル/モル)であり、前記溶液III中の前記水溶性溶媒の体積が0.5~8%(体積/体積)、好ましくは約1~5%(体積/体積)である、工程;
iv.前記CRALBP突然変異タンパク質およびCRALBPの前記同族リガンドを複合体に集合させる工程;
v.前記複合体を含む前記組成物を前記溶液IIIから分離する工程;
vi.場合により、前記複合体を含む前記組成物を精製する工程;および
vii.前記複合体を含む前記組成物を酸化剤で場合により処理する工程であって、好ましくは前記酸化剤が周囲空気または1~1000mM酸化グルタチオンであり、さらに好ましくは前記酸化剤が1~100mM酸化グルタチオンである、工程を含む。
【0015】
本発明のさらなる態様および実施形態は、この説明が続くにつれて明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】ジ-システインA212C:T250C突然変異の位置および配向が棒として強調されている、CRALBPの可動ゲート領域(閉じた立体配座)の拡大図である。突然変異は、プログラムの回転異性体ライブラリを使用して配置されたCootおよび側鎖回転異性体を使用して導入した。C212およびC250の末端スルフヒドリル基間の1.9~3.1Åの距離は、酸化条件下でジスルフィド結合(2.05Å)形成を伴って伝導性である。アルファ-TTPのアポ形態の可動ゲート部分のX線構造モデル(1oiz.pdb)による3Dオーバーレイは、閉状態と開状態との間の立体配座変化の程度を示す。
【
図2】形成されたジスルフィド結合の位置が棒として強調されている、CRALBPの4つのモノジ-システイン突然変異体の可動ゲート領域のインシリコモデルの拡大図。
【
図3】形成されたジスルフィド結合の位置が棒として強調されている、CRALBPの3つの二重および三重ジ-システイン突然変異体の可動ゲート領域のインシリコモデルの拡大図。
【
図4】可動ゲートを横切る4つの可能なジスルフィド結合を示す全てのインシリコのジ-システイン突然変異体モデルの重ね合わせ。
【
図5】9-シス-レチナールとCRALBPジ-システイン突然変異体A212C:T250Cをローディングした後のSuperdex(登録商標)200 26/60での分取GFCのクロマトグラム。
【
図6】9-シスレチナールとの複合体におけるモノマー野生型CRALBPおよびA212C:T250C突然変異体のUV-Vis吸収スペクトル。スペクトルは、約280nmでのタンパク質の最大吸収に対して正規化される。この値はタンパク質濃度に対応するが、CRALBPに結合した9-シスレチナールの吸収最大値は400nmにある。9-シスレチナールとの複合体における完全飽和CRALBPは、ε
280/ε
400=2.2の理想的なスペクトル比を特徴とすると報告されている。野生型CRALBP:9-シスレチナールおよびA212C:T250C:9-シスレチナール突然変異体について測定された比は、それぞれ2.31および2.21である。
【
図7】分析用GFCから対応する画分をプールし濃縮した後のCRALBPジ-システイン突然変異体A212C:T250Cのモノマー、HMWおよびSHMW画分の280nmでの分析GFCトレースのオーバーレイ。
【
図8】それぞれ、シス-レチナールとの複合体におけるジ-システインCRALBP突然変異体の両方の酸化還元状態の光安定性半減期(t
1/2)。CRALBP内の本発明のジ-システイン突然変異体A212C:T250Cは、1000ルクスでその光安定性を20倍増加させる視覚色素をロックする酸化還元スイッチを表す。半減期は、一次反応の標準式(t
1/2)=Ln(2)/R)を使用して計算した。
【
図9】5mMの酸化グルタチオンを使用して酸化されたときの酸化突然変異体A212C:T250Cの光異性化。予め形成された複合体を、5mM酸化グルタチオンを使用して4℃で一晩酸化した。これらのデータから、異なる分子の反応速度を比較目的のために決定した。値は以下の通りである:k(野生型)=6.324*10
-5s
-1、k(ox.A212C:T250C:11-シス-レチナール)=0.644*10
-5s
-1、k(red.A212C:T250C:11-シス-レチナール)=5.988*10
-5s
-1。酸化A212C:T250C:9-シス-レチナールの場合、光異性化は検出できなかった。
【
図10】9-シス-レチナールをローディングした後のCRALBPジ-システイン突然変異体A212C:T250Cの分取GFCからの個々の画分を特徴とするネイティブPAGEの画像。レーンの説明:M、マーカー(Invitrogen(商標)NativeMark(商標));P1およびP1.2 SHMW画分(5-8);P2 HMW画分(12-13);P4モノマー画分(26)。
【
図11】9-シス-レチナール、例えばSHWM、HMW、ダイマーおよびモノマー複合体画分をそれぞれローディングした後のCRALBPジ-システイン突然変異体A212C:T250Cの異なる複合体画分の平均サイズを誤差(±SD)を含めて示す棒グラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載および開示された実施形態、好ましい実施形態および非常に好ましい実施形態は、具体的に再度言及されているか、または簡潔性のためにその繰り返しが回避されているかにかかわらず、全ての態様および他の実施形態、好ましい実施形態および非常に好ましい実施形態に適用されるべきである。冠詞「a」および「an」は、本明細書で使用される場合、冠詞の文法的対象の1つまたは2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指す。本明細書で使用される「または」という用語は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、「および/または」を意味すると理解されるべきである。本明細書で使用される場合、任意の数値に言及する場合の「約」という用語は、記載された値の±10%の値を意味することを意図している。好ましい実施形態では、任意の数値に言及する場合の前記「約」は、記載された値の±5%の値を意味することを意図している。別の好ましい実施形態では、任意の数値に言及する場合の前記「約」は、記載された値の±3%の値を意味することを意図している。
【0018】
野生型CRALBPタンパク質:本明細書で使用される場合、「野生型タンパク質」という用語は、動物、好ましくは哺乳動物、さらに好ましくはヒトについて天然に存在する細胞性網膜結合タンパク質(CRALBP)を指す。したがって、好ましくは野生型CRALBPタンパク質は、配列番号3のヒト野生型CRALBPタンパク質を指す。
【0019】
ムテイン:本明細書で使用される場合、「ムテイン」という用語は、所与の参照(例えば、天然、野生型など)タンパク質またはポリペプチドと1つまたは複数のアミノ酸が異なるタンパク質またはポリペプチドを指し、そのような違いは、少なくとも1つのアミノ酸の付加、置換もしくは欠失またはそれらの組合せによって引き起こされる。好ましい実施形態は、少なくとも1つのアミノ酸の置換に由来する、好ましくは少なくとも1つのアミノ酸の保存的置換に由来する突然変異を含む。保存的置換としては、同配体置換、すなわち、アミノ酸の荷電性、極性、芳香族、脂肪族または疎水性の性質が維持される置換が挙げられる。例えば、システイン残基のセリン残基による置換は保存的置換である。本発明の好ましい実施形態では、「ムテイン」という用語は、前記野生型CRALBPタンパク質と少なくとも90%の配列同一性を有する野生型CRALBPタンパク質のムテイン、または前記野生型CRALBPタンパク質と最大で30、典型的および好ましくは最大で20もしくは10アミノ酸だけ異なる野生型CRALBPタンパク質のムテインを指す。本発明のさらに好ましい実施形態では、「ムテイン」という用語は、好ましくは配列番号3の前記野生型CRALBPタンパク質と少なくとも90%、91%、92%、93%、94、95%、96%の配列同一性を有する、好ましくは配列番号3の野生型CRALBPタンパク質のムテイン、または好ましくは配列番号3の前記野生型CRALBPタンパク質と最大で30、典型的および好ましくは最大で20もしくは10、9、8、7、6アミノ酸だけ異なる、好ましくは配列番号3の野生型CRALBPタンパク質のムテインを指す。
【0020】
アミノ酸残基に対応する位置...:別のアミノ酸配列の所与の残基に対応するアミノ酸配列上の位置は、配列アラインメントによって、典型的および好ましくはBLASTPアルゴリズムを使用して、最も好ましくは標準設定を使用して同定することができる。典型的および好ましい標準設定は以下である:期待閾値:10;ワードサイズ:3;クエリ範囲内の最大一致:0;マトリックス:BLOSUM62;ギャップコスト:存在11、拡張1;組成調整:条件付き組成スコアマトリックス調整。例として、本発明の好ましい実施形態では、システインによるアミノ酸突然変異の各対の一方のシステインは、配列番号3のアミノ酸204~229に対応するアミノ酸残基内のアミノ酸の突然変異であり、前記対のシステインによる他方の突然変異アミノ酸は、配列番号3のアミノ酸244~261に対応するアミノ酸残基内のアミノ酸の突然変異である。配列番号3がヒト野生型CRALBPを指すことを考慮すると、対応する特定の動物または哺乳動物のCRALBP位置は、したがって、前記ヒト野生型CRALBPに対応する。
【0021】
「ジスルフィド結合を形成することができる」および「ジスルフィド結合を形成することが可能」という用語は、本明細書で互換的に使用され、野生型CRALBPタンパク質と比較してアミノ酸突然変異であるシステインの対を指し、典型的および好ましくは、例3に記載される方法で典型的および好ましくは決定される、突然変異システインがジスルフィド結合を形成する能力および可能性をそれぞれ指す。
【0022】
配列同一性:2つの所与のアミノ酸配列の配列同一性は、両方の配列のアラインメントに基づいて決定される。配列同一性を決定するためのアルゴリズムは当業者に利用可能である。好ましくは、2つのアミノ酸配列の配列同一性は、「BLAST」プログラム(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)または「CLUSTALW」(http://www.genome.jp/tools/clustalw/)などの公的に利用可能なコンピュータ相同性プログラムを使用して、本明細書により、好ましくはhttp://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgiのNCBIホームページで提供される「BLAST」プログラムによって、そこに提供されるデフォルト設定を使用して決定される。典型的および好ましい標準設定は以下である:期待閾値:10;ワードサイズ:3;クエリ範囲内の最大一致:0;マトリックス:BLOSUM62;ギャップコスト:存在11、拡張1;組成調整:条件付き組成スコアマトリックス調整。
【0023】
アミノ酸交換:アミノ酸交換という用語は、アミノ酸配列中の所与のアミノ酸残基の、異なる化学構造を有する任意の他のアミノ酸残基による、好ましくは別のタンパク質原性アミノ酸残基による交換を指す。したがって、アミノ酸の挿入または欠失とは対照的に、アミノ酸交換は、前記アミノ酸配列のアミノ酸の総数を変化させない。本発明内のアミノ酸交換の場合、典型的および好ましくは非機能性アミノ酸置換に言及する場合、保存的アミノ酸置換が好ましい。保存的アミノ酸置換は、当業者によって理解されるように、同配体置換、すなわち、アミノ酸の荷電性、極性、芳香族、脂肪族または疎水性の性質が維持される置換を含み、典型的および好ましくはそれからなる。典型的な保存的置換は、以下の群のうちの1つ内のアミノ酸間の置換である:Gly、Ala;Val、Ile、Leu;Asp、Glu;Asn、Gln;Ser、Thr、Cys;Lys、Arg;ならびにPheおよびTyr。
【0024】
ポリペプチド:本明細書で使用される「ポリペプチド」という用語は、アミド結合(ペプチド結合としても知られる)によって直線的に連結されたアミノ酸モノマーで構成されるポリマーを指す。これはアミノ酸の分子鎖を示し、特定の長さの生成物を指すものではない。したがって、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチドおよびタンパク質は、ポリペプチドの定義内に含まれる。本明細書で使用される「ポリペプチド」という用語はまた、典型的および好ましくは、前に定義されたポリペプチドを指すべきであり、グリコシル化を含むがこれに限定されない翻訳後修飾などの修飾を包含する。好ましい実施形態では、本明細書で使用される前記「ポリペプチド」という用語は、前に定義されたポリペプチドを指すべきであり、グリコシル化などの翻訳後修飾などの修飾を包含しない特に、前記生物学的に活性なペプチドについては、前記グリコシル化などの前記修飾は、その後のインビボでさえ、例えば細菌によって起こり得る。
【0025】
CRALBPの同族リガンド:本明細書で使用される「CRALBPの同族リガンド」という用語は、配列番号3の野生型CRALBP、好ましくは野生型ヒトCRALBPの結合ポケットに、典型的および好ましくは少なくとも1~200nM、さらに好ましくは1~100nMのナノモル親和性で、さらに典型的および好ましくは6~80nMの親和性で(前記親和性は、典型的および好ましくは、Golovleva I.,et al.,2003,J.Biol.Chem.278(14)に記載の通りに決定される)結合する分子を指し、その分子は、典型的および好ましくはCRALBPタンパク質と機能的に関連する。機能的に関連する:本明細書で使用される「機能的に関連する」という用語は、CRALBPの生理学的機能を指す。
【0026】
シス-レチノイド:本明細書で使用される「シス-レチノイド」という用語は、天然または合成分子、典型的および好ましくはビタミンA誘導体を指し、典型的および好ましくは、1つまたは複数のメチルおよび/またはメトキシ置換基で置換されたシクロヘキセンまたはフェニル部分を含み、シクロヘキセンまたはフェニル部分は、その末端炭素原子(シクロヘキセンまたはフェニル部分へのその結合に関連する末端炭素原子)にアルコール、アルデヒド、カルボキシまたはエステル官能基を有するC6-C14直鎖または分岐アルケニル基で(さらに)置換されており、前記直鎖または分岐アルケニル基は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合、典型的および好ましくは1つ以上、最も好ましくは4つの炭素-炭素二重結合を有し、前記炭素-炭素二重結合の少なくとも1つはシス配置である。前記シス-レチノイドは、レチノール、レチナールアルデヒド、およびトレチノイン、イソトレチノイン、アリトレチノイン、エトレチネート、アシトレチン、ならびにそのエステルを含み、これらのうち、レチノールおよびレチナールアルデヒドが好ましい。シス-レチノイドが記載されている(Mukherjee S et al.,2006,Clin Interv Aging.1(4):327-48;Kiser PD et al.,2014,Chem.Rev.114:194-232)。
【0027】
「複合体」:本明細書で使用される場合、特にCRALBP突然変異タンパク質とCRALBPの同族リガンドとを含む複合体について言及する場合、用語「複合体」は、(i)前記CRALBP突然変異タンパク質とCRALBPの前記同族リガンドとの1:1モノマー複合体であって、CRALBPの前記同族リガンドが前記CRALBP突然変異タンパク質に、典型的および好ましくは少なくとも1~200nM、さらに好ましくは1~100nMのナノモル親和性(前記親和性は、典型的および好ましくは、Golovleva I.,et al.,2003,J.Biol.Chem.278(14)に記載の通りに決定される)で結合する、複合体、および/または(ii)前記CRALBP突然変異タンパク質とCRALBPの前記同族リガンドとのダイマーおよび/またはオリゴマー複合体であって、典型的および好ましくは前記1:1モノマー複合体がダイマー化および/またはオリゴマー化して、前記CRALBP突然変異タンパク質とCRALBPの前記同族リガンドとの前記ダイマーおよび/またはオリゴマー複合体を形成すると考えられるがこの理論に拘束されない、複合体を指す。典型的および好ましくは、前記CRALBP突然変異タンパク質およびCRALBPの前記同族リガンドの前記ダイマーおよび/またはオリゴマー複合体内の前記同族リガンドの数は、前記CRALBP突然変異タンパク質の数に等しい。さらに、拘束されるものではないが、前記CRALBP突然変異タンパク質とCRALBPの前記同族リガンドとの間の相互作用は、特に野生型CRALBPタンパク質およびCRALBPの前記同族リガンド、例えば9-シス-レチナールおよび11-シス-レチナールについて以前に同定されたような立体特異的相互作用に対応し、典型的な可逆的な非共有結合相互作用を表し、好ましくは水素結合、疎水力、ファンデルワールス力、静電相互作用などを含むと考えられる(He,X.,et al.,2009,PNAS,106(44):18545-18550);Bolze,C.S.,et al.,2014,JACS,136(1):137-146)。
【0028】
動物:本明細書で使用される場合、「動物」という用語は、動物(例えば、非ヒト動物)、脊椎動物、哺乳動物、げっ歯類(例えば、モルモット、ハムスター)、イヌ(例えば、犬)、ネコ(例えば、猫)、ブタ(例えば、豚)、ウマ(例えば、馬)、霊長類、またはヒトであり得る。好ましい実施形態では、前記動物は哺乳動物である。別の好ましい実施形態では、前記動物はヒトまたは非ヒト哺乳動物(例えば、犬、猫、馬など)である。非常に好ましい実施形態では、前記動物はヒトである。
【0029】
第1の態様では、本発明は、複合体を含む、好ましくは複合体からなる組成物であって、前記複合体が、(a)CRALBP突然変異タンパク質であって、前記CRALBP突然変異タンパク質が野生型CRALBPタンパク質のムテインであり、前記ムテインが前記野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる少なくとも1対のアミノ酸突然変異を含み、システインの前記対の各々がジスルフィド結合を形成することができる、CRALBP突然変異タンパク質;および(b)CRALBPの同族リガンドであって、好ましくはシス-レチノイドである同族リガンド、を含む組成物を提供する。
【0030】
さらなる態様では、本発明は、複合体を含む、好ましくは複合体からなる組成物であって、前記複合体が、(a)CRALBP突然変異タンパク質であって、前記CRALBP突然変異タンパク質が野生型CRALBPタンパク質のムテインであり、前記ムテインが前記野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる少なくとも1対のアミノ酸突然変異を含み、システインの前記対の各々がジスルフィド結合を形成することができる、CRALBP突然変異タンパク質;および(b)CRALBPの同族リガンドであって、好ましくはシス-レチノイドである同族リガンド、を含む組成物を提供する。
【0031】
別の態様では、本発明は、CRALBP突然変異タンパク質を提供し、前記CRALBP突然変異タンパク質は、野生型CRALBPタンパク質のムテインであり、前記ムテインが前記野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる少なくとも1対のアミノ酸突然変異を含み、システインの前記対の各々がジスルフィド結合を形成することができ、好ましくは、前記CRALBP突然変異タンパク質は、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21および配列番号23からなる群から選択されるアミノ酸配列を有し、さらに好ましくは、前記CRALBP突然変異タンパク質は、配列番号9および配列番号21から選択されるアミノ酸配列を有し、またさらに好ましくは、前記CRALBP突然変異タンパク質は、配列番号9のアミノ酸配列を有する。
【0032】
さらなる態様では、本発明は、CRALBP突然変異タンパク質をコードする核酸配列であって、前記CRALBP突然変異タンパク質が野生型CRALBPタンパク質のムテインであり、前記ムテインが前記野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる少なくとも1対のアミノ酸突然変異を含み、システインの前記対の各々がジスルフィド結合を形成することができる、核酸配列を提供する。
【0033】
また別の態様では、本発明は、複合体を含む組成物を調製する方法を提供し、前記複合体は、
(a)CRALBP突然変異タンパク質であって、前記CRALBP突然変異タンパク質が野生型CRALBPタンパク質のムテインであり、前記ムテインが前記野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる少なくとも1対のアミノ酸突然変異を含み、システインの前記対の各々がジスルフィド結合を形成することができる、CRALBP突然変異タンパク質;
(b)CRALBPの同族リガンドであって、好ましくはシス-レチノイドである同族リガンド;を含み、前記組成物は、好ましくは本明細書に記載されるように定義され;前記方法は、
i.水溶液I中の前記CRALBP突然変異タンパク質を提供する工程であって、前記溶液I中の前記CRALBP突然変異タンパク質の濃度が1μM~5mMであり、前記溶液IのpHが5~9、好ましくは7.0~8.5、さらに好ましくは7.5~8.5であり、好ましくは前記溶液Iが塩を含み、前記塩の濃度が10mM~500mMである、工程;
ii.溶液II中のCRALBPの前記同族リガンドを提供する工程であって、前記溶液I中のSEC14様タンパク質の前記同族リガンドの濃度が5μM~500mMであり、前記溶液IIの溶媒が水溶性溶媒であり、好ましくは前記水溶性溶媒がエタノールである、工程;
iii.前記溶液Iと前記溶液IIとを組み合わせることによって溶液IIIを生成する工程であって、前記溶液III中の前記CRALBP突然変異タンパク質の濃度とCRALBPの前記同族リガンドの濃度との比が4:1~1:4(モル/モル)であり、前記溶液III中の前記水溶性溶媒の体積が0.5~8%(体積/体積)、好ましくは約1~5%(体積/体積)である、工程;
iv.前記CRALBP突然変異タンパク質およびCRALBPの前記同族リガンドを複合体に集合させる工程;
v.前記複合体を含む前記組成物を前記溶液IIIから分離する工程;
vi.場合により、前記複合体を含む前記組成物を精製する工程;および
vii.前記複合体を含む前記組成物を酸化剤で場合により処理する工程であって、好ましくは前記酸化剤が周囲空気または1~1000mM酸化グルタチオンであり、さらに好ましくは前記酸化剤が1~100mM酸化グルタチオンである、工程を含む。
【0034】
またさらなる態様では、本発明は、複合体を含む組成物を提供し、前記複合体は、
(a)CRALBP突然変異タンパク質であって、前記CRALBP突然変異タンパク質が野生型CRALBPタンパク質のムテインであり、前記ムテインが前記野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる少なくとも1対のアミノ酸突然変異を含み、システインの前記対の各々がジスルフィド結合を形成することができる、CRALBP突然変異タンパク質;
(b)CRALBPの同族リガンドであって、好ましくはシス-レチノイドである同族リガンド;を含み、前記組成物は、好ましくは本明細書に記載されるように定義され;前記組成物は、
i.水溶液I中の前記CRALBP突然変異タンパク質を提供する工程であって、前記溶液I中の前記CRALBP突然変異タンパク質の濃度が1μM~5mMであり、前記溶液IのpHが5~9、好ましくは7.0~8.5、さらに好ましくは7.5~8.5であり、好ましくは前記溶液Iが塩を含み、前記塩の濃度が10mM~500mMである、工程;
ii.溶液II中のCRALBPの前記同族リガンドを提供する工程であって、前記溶液I中のSEC14様タンパク質の前記同族リガンドの濃度が5μM~500mMであり、前記溶液IIの溶媒が水溶性溶媒であり、好ましくは前記水溶性溶媒がエタノールである、工程;
iii.前記溶液Iと前記溶液IIとを組み合わせることによって溶液IIIを生成する工程であって、前記溶液III中の前記CRALBP突然変異タンパク質の濃度とCRALBPの前記同族リガンドの濃度との比が4:1~1:4(モル/モル)であり、前記溶液III中の前記水溶性溶媒の体積が0.5~8%(体積/体積)、好ましくは約1~5%(体積/体積)である、工程;
iv.前記CRALBP突然変異タンパク質およびCRALBPの前記同族リガンドを複合体に集合させる工程;
v.前記複合体を含む前記組成物を前記溶液IIIから分離する工程;
vi.場合により、前記複合体を含む前記組成物を精製する工程;および
vii.前記複合体を含む前記組成物を酸化剤で場合により処理する工程であって、好ましくは前記酸化剤が周囲空気または1~1000mM酸化グルタチオンであり、さらに好ましくは前記酸化剤が1~100mM酸化グルタチオンである、工程を含む。
【0035】
さらなる態様では、本発明は、複合体を含む組成物を調製する方法を提供し、前記複合体は、
(a)CRALBP突然変異タンパク質であって、前記CRALBP突然変異タンパク質が野生型CRALBPタンパク質のムテインであり、前記ムテインが前記野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる少なくとも1対のアミノ酸突然変異を含み、システインの前記対の各々がジスルフィド結合を形成することができる、CRALBP突然変異タンパク質;
(b)CRALBPの同族リガンドであって、好ましくはシス-レチノイドである同族リガンド;を含み、前記組成物は、好ましくは、好ましい実施形態において本明細書に記載されるように定義され;前記方法は、
i.水溶液I中の前記CRALBP突然変異タンパク質を提供する工程であって、前記溶液I中の前記CRALBP突然変異タンパク質の濃度が1μM~5mMであり、前記溶液IのpHが5~9、好ましくは7.0~8.5、さらに好ましくは7.5~8.5である、工程;
ii.水溶液II中のCRALBPの前記同族リガンドを提供する工程であって、前記溶液I中のCRALBPの前記同族リガンドの濃度が5μM~500mMであり;前記溶液IIが界面活性剤を含む、工程;
iii.前記溶液Iと前記溶液IIとを組み合わせることによって溶液IIIを生成する工程であって、前記溶液III中の前記CRALBP突然変異タンパク質の濃度とCRALBPの前記同族リガンドの濃度との比が4:1~1:4(モル/モル)である、工程;
iv.前記溶液IIIから前記界面活性剤を除去する工程であって、前記溶液IIIから前記界面活性剤を除去することにより、前記CRALBP突然変異タンパク質およびCRALBPの前記同族リガンドが複合体に集合することが可能になる、工程;
v.前記複合体を含む組成物を前記溶液IIIから分離する工程;
vi.場合により、前記複合体を含む前記組成物を精製する工程;および
vii.前記複合体を含む前記組成物を酸化剤で場合により処理する工程であって、好ましくは前記酸化剤が周囲空気または1~1000mM酸化グルタチオンであり、さらに好ましくは前記酸化剤が1~100mM酸化グルタチオンである、工程を含む。
【0036】
さらなる態様では、本発明は、複合体を調製する方法を提供し、前記複合体は、
(a)CRALBP突然変異タンパク質であって、前記CRALBP突然変異タンパク質が野生型CRALBPタンパク質のムテインであり、前記ムテインが前記野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる少なくとも1対のアミノ酸突然変異を含み、システインの前記対の各々がジスルフィド結合を形成することができる、CRALBP突然変異タンパク質;
(b)CRALBPの同族リガンドであって、好ましくはシス-レチノイドである同族リガンド;を含み、前記複合体は、好ましくは、好ましい実施形態において本明細書に記載されるように定義され;前記方法は、
i.水溶液I中の前記CRALBP突然変異タンパク質を提供する工程であって、前記溶液I中の前記CRALBP突然変異タンパク質の濃度が1μM~5mMであり、前記溶液IのpHが5~9、好ましくは7.0~8.5、さらに好ましくは7.5~8.5であり、好ましくは前記溶液Iが塩を含み、前記塩の濃度が10mM~500mMである、工程;
ii.溶液II中のCRALBPの前記同族リガンドを提供する工程であって、前記溶液I中のSEC14様タンパク質の前記同族リガンドの濃度が5μM~500mMであり、前記溶液IIの溶媒が水溶性溶媒であり、好ましくは前記水溶性溶媒がエタノールである、工程;
iii.前記溶液Iと前記溶液IIとを組み合わせることによって溶液IIIを生成する工程であって、前記溶液III中の前記CRALBP突然変異タンパク質の濃度とCRALBPの前記同族リガンドの濃度との比が4:1~1:4(モル/モル)であり、前記溶液III中の前記水溶性溶媒の体積が0.5~8%(体積/体積)、好ましくは約1~5%(体積/体積)である、工程;
iv.前記CRALBP突然変異タンパク質およびCRALBPの前記同族リガンドを複合体に集合させる工程;
v.前記複合体を前記溶液IIIから分離する工程;
vi.場合により、前記錯体を精製する工程;および
vii.前記複合体を含む前記組成物を酸化剤で場合により処理する工程であって、好ましくは前記酸化剤が周囲空気または1~1000mM酸化グルタチオンであり、さらに好ましくは前記酸化剤が1~100mM酸化グルタチオンである、工程を含む。
【0037】
さらなる態様では、本発明は、複合体を含む組成物を調製する方法を提供し、前記複合体は、
(a)CRALBP突然変異タンパク質であって、前記CRALBP突然変異タンパク質が野生型CRALBPタンパク質のムテインであり、前記ムテインが前記野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる少なくとも1対のアミノ酸突然変異を含み、システインの前記対の各々がジスルフィド結合を形成することができる、CRALBP突然変異タンパク質;
(b)CRALBPの同族リガンドであって、好ましくはシス-レチノイドである同族リガンド;を含み、前記複合体は、好ましくは、好ましい実施形態において本明細書に記載されるように定義され;前記方法は、
i.水溶液I中の前記CRALBP突然変異タンパク質を提供する工程であって、前記溶液I中の前記CRALBP突然変異タンパク質の濃度が1μM~5mMであり、前記溶液IのpHが5~9、好ましくは7.0~8.5、さらに好ましくは7.5~8.5である、工程;
ii.水溶液II中のCRALBPの前記同族リガンドを提供する工程であって、前記溶液I中のCRALBPの前記同族リガンドの濃度が5μM~500mMであり;前記溶液IIが界面活性剤を含む、工程;
iii.前記溶液Iと前記溶液IIとを組み合わせることによって溶液IIIを生成する工程であって、前記溶液III中の前記CRALBP突然変異タンパク質の濃度とCRALBPの前記同族リガンドの濃度との比が4:1~1:4(モル/モル)である、工程;
iv.前記溶液IIIから前記界面活性剤を除去する工程であって、前記溶液IIIから前記界面活性剤を除去することにより、前記CRALBP突然変異タンパク質およびCRALBPの前記同族リガンドが複合体に集合することが可能になる、工程;
v.前記複合体を前記溶液IIIから分離する工程;
vi.場合により、前記錯体を精製する工程、および
vii.前記複合体を含む前記組成物を酸化剤で場合により処理する工程であって、好ましくは前記酸化剤が周囲空気または1~1000mM酸化グルタチオンであり、さらに好ましくは前記酸化剤が1~100mM酸化グルタチオンである、工程を含む。
【0038】
さらなる態様では、本発明は、複合体を含む組成物を提供し、前記複合体は、
(a)CRALBP突然変異タンパク質であって、前記CRALBP突然変異タンパク質が野生型CRALBPタンパク質のムテインであり、前記ムテインが前記野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる少なくとも1対のアミノ酸突然変異を含み、システインの前記対の各々がジスルフィド結合を形成することができる、CRALBP突然変異タンパク質;
(b)CRALBPの同族リガンドであって、好ましくはシス-レチノイドである同族リガンド;を含み、前記組成物は、好ましくは、好ましい実施形態において本明細書に記載されるように定義され;前記組成物は、
i.水溶液I中の前記CRALBP突然変異タンパク質を提供する工程であって、前記溶液I中の前記CRALBP突然変異タンパク質の濃度が1μM~5mMであり、前記溶液IのpHが5~9、好ましくは7.0~8.5、さらに好ましくは7.5~8.5である、工程;
ii.水溶液II中のCRALBPの前記同族リガンドを提供する工程であって、前記溶液I中のCRALBPの前記同族リガンドの濃度が5μM~500mMであり;前記溶液IIが界面活性剤を含む、工程;
iii.前記溶液Iと前記溶液IIとを組み合わせることによって溶液IIIを生成する工程であって、前記溶液III中の前記CRALBP突然変異タンパク質の濃度とCRALBPの前記同族リガンドの濃度との比が4:1~1:4(モル/モル)である、工程;
iv.前記溶液IIIから前記界面活性剤を除去する工程であって、前記溶液IIIから前記界面活性剤を除去することにより、前記CRALBP突然変異タンパク質およびCRALBPの前記同族リガンドが複合体に集合することが可能になる、工程;
v.前記複合体を含む組成物を前記溶液IIIから分離する工程;
vi.場合により、前記複合体を含む前記組成物を精製する工程;および
vii.前記複合体を含む前記組成物を酸化剤で場合により処理する工程であって、好ましくは前記酸化剤が周囲空気または1~1000mM酸化グルタチオンであり、さらに好ましくは前記酸化剤が1~100mM酸化グルタチオンである、工程を含む。
【0039】
さらなる態様では、本発明は、複合体を提供し、前記複合体は、
(a)CRALBP突然変異タンパク質であって、前記CRALBP突然変異タンパク質が野生型CRALBPタンパク質のムテインであり、前記ムテインが前記野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる少なくとも1対のアミノ酸突然変異を含み、システインの前記対の各々がジスルフィド結合を形成することができる、CRALBP突然変異タンパク質;
(b)CRALBPの同族リガンドであって、好ましくはシス-レチノイドである同族リガンド;を含み、前記複合体は、好ましくは、好ましい実施形態において本明細書に記載されるように定義され;前記複合体は、
i.水溶液I中の前記CRALBP突然変異タンパク質を提供する工程であって、前記溶液I中の前記CRALBP突然変異タンパク質の濃度が1μM~5mMであり、前記溶液IのpHが5~9、好ましくは7.0~8.5、さらに好ましくは7.5~8.5であり、好ましくは前記溶液Iが塩を含み、前記塩の濃度が10mM~500mMである、工程;
ii.溶液II中のCRALBPの前記同族リガンドを提供する工程であって、前記溶液I中のSEC14様タンパク質の前記同族リガンドの濃度が5μM~500mMであり、前記溶液IIの溶媒が水溶性溶媒であり、好ましくは前記水溶性溶媒がエタノールである、工程;
iii.前記溶液Iと前記溶液IIとを組み合わせることによって溶液IIIを生成する工程であって、前記溶液III中の前記CRALBP突然変異タンパク質の濃度とCRALBPの前記同族リガンドの濃度との比が4:1~1:4(モル/モル)であり、前記溶液III中の前記水溶性溶媒の体積が0.5~8%(体積/体積)、好ましくは約1~5%(体積/体積)である、工程;
iv.前記CRALBP突然変異タンパク質およびCRALBPの前記同族リガンドを複合体に集合させる工程;
v.前記複合体を前記溶液IIIから分離する工程;
vi.場合により、前記錯体を精製する工程;および
vii.前記複合体を含む前記組成物を酸化剤で場合により処理する工程であって、好ましくは前記酸化剤が周囲空気または1~1000mM酸化グルタチオンであり、さらに好ましくは前記酸化剤が1~100mM酸化グルタチオンである、工程を含む。
【0040】
さらなる態様では、本発明は、複合体を提供し、前記複合体は、
(a)CRALBP突然変異タンパク質であって、前記CRALBP突然変異タンパク質が野生型CRALBPタンパク質のムテインであり、前記ムテインが前記野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる少なくとも1対のアミノ酸突然変異を含み、システインの前記対の各々がジスルフィド結合を形成することが可能な、CRALBP突然変異タンパク質;
(b)CRALBPの同族リガンドであって、好ましくはシス-レチノイドである同族リガンド;を含み、前記複合体は、好ましくは、好ましい実施形態において本明細書に記載されるように定義され;前記複合体は、
i.水溶液I中の前記CRALBP突然変異タンパク質を提供する工程であって、前記溶液I中の前記CRALBP突然変異タンパク質の濃度が1μM~5mMであり、前記溶液IのpHが5~9、好ましくは7.0~8.5、さらに好ましくは7.5~8.5である、工程;
ii.水溶液II中のCRALBPの前記同族リガンドを提供する工程であって、前記溶液I中のCRALBPの前記同族リガンドの濃度が5μM~500mMであり;前記溶液IIが界面活性剤を含む、工程;
iii.前記溶液Iと前記溶液IIとを組み合わせることによって溶液IIIを生成する工程であって、前記溶液III中の前記CRALBP突然変異タンパク質の濃度とCRALBPの前記同族リガンドの濃度との比が4:1~1:4(モル/モル)である、工程;
iv.前記溶液IIIから前記界面活性剤を除去する工程であって、前記溶液IIIから前記界面活性剤を除去することにより、前記CRALBP突然変異タンパク質およびCRALBPの前記同族リガンドが複合体に集合することが可能になる、工程;
v.前記複合体を前記溶液IIIから分離する工程;
vi.場合により、前記錯体を精製する工程;および
vii.前記複合体を含む前記組成物を酸化剤で場合により処理する工程であって、好ましくは前記酸化剤が周囲空気または1~1000mM酸化グルタチオンであり、さらに好ましくは前記酸化剤が1~100mM酸化グルタチオンである、工程を含む。
【0041】
またさらなる態様において、本発明は、(a)本発明の組成物;および(b)薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物を提供する。
【0042】
またさらなる態様において、本発明は、(a)本発明の複合体;および(b)薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物を提供する。
【0043】
好ましい実施形態では、前記同族リガンド、好ましくは前記シス-レチノイドは、(i)9-シス-レチナール;(ii)9-シス-レチノール;(iii)11-シス-レチナール;(iv)11-シス-レチノール;(v)11,13-ジ-シス-レチナール;(vi)11,13-ジ-シス-レチノール;(vii)9,13-ジ-シス-レチナール;および(viii)9,13-ジ-シス-レチノールから選択される。さらに好ましい実施形態では、前記同族リガンド、好ましくは前記シス-レチノイドは、(i)9-シス-レチナール;(ii)9-シス-レチノール;(iii)11-シス-レチナール;(iv)11-シス-レチノール;(v)9,13-ジ-シス-レチナール;および(vi)9,13-ジ-シス-レチノールから選択される。さらに好ましい実施形態では、前記同族リガンド、好ましくは前記シス-レチノイドは、(i)9-シス-レチナール;(ii)11-シス-レチナール;および(iii)9,13-ジ-シス-レチナール;および(vi)9,13-ジ-シス-レチノールから選択される。さらに好ましい実施形態では、前記同族リガンド、好ましくは前記シス-レチノイドは、(i)9-シス-レチナールおよび(ii)11-シス-レチナールから選択される。
【0044】
さらに好ましい実施形態では、前記同族リガンド、好ましくは前記シス-レチノイドは、9-シス-レチナールである。さらに好ましい実施形態では、前記同族リガンド、好ましくは前記シス-レチノイドは、9-シス-レチノールである。さらに好ましい実施形態では、前記同族リガンド、好ましくは前記シス-レチノイドは、11-シス-レチナールである。さらに好ましい実施形態では、前記同族リガンド、好ましくは前記シス-レチノイドは、11-シス-レチノールである。さらに好ましい実施形態では、前記同族リガンド、好ましくは前記シス-レチノイドは、11,13-ジ-シス-レチナールである。さらに好ましい実施形態では、前記同族リガンド、好ましくは前記シス-レチノイドは、11,13-ジ-シス-レチノールである。さらに好ましい実施形態では、前記同族リガンド、好ましくは前記シス-レチノイドは、9,13-ジ-シス-レチナールである。さらに好ましい実施形態では、前記同族リガンド、好ましくは前記シス-レチノイドは、9,13-ジ-シス-レチノールである。
【0045】
さらに好ましい実施形態では、野生型CRALBPタンパク質の前記ムテインは、前記野生型CRALBPタンパク質と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、さらに好ましくは少なくとも96%、またさらに好ましくは少なくとも97%、またさらに好ましくは少なくとも98%、またより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する。さらに好ましい実施形態では、野生型CRALBPタンパク質の前記ムテインは、前記野生型CRALBPタンパク質と少なくとも95%の配列同一性を有する。さらに好ましい実施形態では、野生型CRALBPタンパク質の前記ムテインは、前記野生型CRALBPタンパク質と少なくとも96%の配列同一性を有する。さらに好ましい実施形態では、野生型CRALBPタンパク質の前記ムテインは、前記野生型CRALBPタンパク質と少なくとも97%の配列同一性を有する。さらに好ましい実施形態では、野生型CRALBPタンパク質の前記ムテインは、前記野生型CRALBPタンパク質と少なくとも98%の配列同一性を有する。さらに好ましい実施形態では、野生型CRALBPタンパク質の前記ムテインは、前記野生型CRALBPタンパク質と少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0046】
さらに好ましい実施形態では、野生型CRALBPタンパク質の前記ムテインは、前記野生型CRALBPタンパク質と最大30アミノ酸異なる。さらに好ましい実施形態では、野生型CRALBPタンパク質の前記ムテインは、前記野生型CRALBPタンパク質と最大20アミノ酸異なる。また別の好ましい実施形態では、野生型CRALBPタンパク質の前記ムテインは、前記野生型CRALBPタンパク質と最大で10アミノ酸異なる。さらに好ましい実施形態では、野生型CRALBPタンパク質の前記ムテインは、前記野生型CRALBPタンパク質と10、9、8、7、6、5、4、3、2、1アミノ酸異なる。さらに好ましい実施形態では、野生型CRALBPタンパク質の前記ムテインは、前記野生型CRALBPタンパク質と最大で8アミノ酸異なる。さらに好ましい実施形態では、野生型CRALBPタンパク質の前記ムテインは、前記野生型CRALBPタンパク質と最大で6、4または2アミノ酸異なる。
【0047】
さらに好ましい実施形態では、システインによるアミノ酸突然変異の各対の一方のシステインは、配列番号3のアミノ酸204~229に対応するアミノ酸残基内のアミノ酸の突然変異であり、前記対のシステインによる他方の突然変異アミノ酸は、配列番号3のアミノ酸244~261に対応するアミノ酸残基内のアミノ酸の突然変異である。
【0048】
さらに好ましい実施形態では、前記ムテインは、前記野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる1、2、3または4対のアミノ酸突然変異を含み、好ましくは、前記ムテインは、前記野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる1または2対のアミノ酸突然変異を含む。
【0049】
さらに好ましい実施形態では、前記ムテインは、前記野生型CRALBPタンパク質と比較して、システインによる1対のアミノ酸突然変異を含む。別の好ましい実施形態では、前記ムテインは、前記野生型CRALBPタンパク質と比較して、システインによる2対のアミノ酸突然変異を含む。さらに好ましい実施形態では、前記ムテインは、前記野生型CRALBPタンパク質と比較して、システインによる3対のアミノ酸突然変異を含む。
【0050】
さらに好ましい実施形態では、前記野生型CRALBPタンパク質と比較して、システインによるアミノ酸突然変異の前記対は、以下から選択される:
(1)配列番号3のアミノ酸212に相当するアミノ酸の突然変異および配列番号3のアミノ酸250に相当するアミノ酸の突然変異;
(2)配列番号3のアミノ酸217に相当するアミノ酸の突然変異および配列番号3のアミノ酸253に相当するアミノ酸の突然変異;
(3)配列番号3のアミノ酸220に相当するアミノ酸の突然変異および配列番号3のアミノ酸254に相当するアミノ酸の突然変異;
(4)配列番号3のアミノ酸224に相当するアミノ酸の突然変異および配列番号3のアミノ酸257に相当するアミノ酸の突然変異。
【0051】
さらに好ましい実施形態では、前記野生型CRALBPタンパク質と比較して、システインによるアミノ酸突然変異の前記対は、配列番号3のアミノ酸212に対応するアミノ酸の突然変異および配列番号3のアミノ酸250に対応するアミノ酸の突然変異である。さらに好ましい実施形態では、前記野生型CRALBPタンパク質と比較して、システインによるアミノ酸突然変異の前記対は、配列番号3のアミノ酸217に対応するアミノ酸の突然変異および配列番号3のアミノ酸253に対応するアミノ酸の突然変異である。さらに好ましい実施形態では、前記野生型CRALBPタンパク質と比較して、システインによるアミノ酸突然変異の前記対は、配列番号3のアミノ酸220に対応するアミノ酸の突然変異および配列番号3のアミノ酸254に対応するアミノ酸の突然変異である。さらに好ましい実施形態では、前記野生型CRALBPタンパク質と比較して、システインによるアミノ酸突然変異の前記対は、配列番号3のアミノ酸224に対応するアミノ酸の突然変異および配列番号3のアミノ酸257に対応するアミノ酸の突然変異である。
【0052】
さらに好ましい実施形態では、前記ムテインは、野生型CRALBPタンパク質と比較して、システインによる1対または2対または3対のアミノ酸突然変異を含み、前記野生型CRALBPタンパク質と比較して前記1対のシステインによるアミノ酸突然変異は、以下:
(i)配列番号3のアミノ酸212に相当するアミノ酸の突然変異および配列番号3のアミノ酸250に相当するアミノ酸の突然変異;
(ii)配列番号3のアミノ酸217に相当するアミノ酸の突然変異および配列番号3のアミノ酸253に相当するアミノ酸の突然変異;および
(iii)配列番号3のアミノ酸220に相当するアミノ酸の突然変異および配列番号3のアミノ酸254に相当するアミノ酸の突然変異;から選択され、前記野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる前記2対のアミノ酸突然変異は、以下:
(a)システインによるアミノ酸突然変異の第1の対およびシステインによるアミノ酸突然変異の第2の対であって、前記システインによるアミノ酸突然変異の第1の対が、配列番号3のアミノ酸220に対応するアミノ酸の突然変異および配列番号3のアミノ酸254に対応するアミノ酸の突然変異であり、前記システインによるアミノ酸突然変異の第2の対が、配列番号3のアミノ酸224に対応するアミノ酸の突然変異および配列番号3のアミノ酸257に対応するアミノ酸の突然変異であるもの;
(b)システインによるアミノ酸突然変異の第1の対およびシステインによるアミノ酸突然変異の第2の対であって、前記システインによるアミノ酸突然変異の第1の対が、配列番号3のアミノ酸212に対応するアミノ酸の突然変異および配列番号3のアミノ酸250に対応するアミノ酸の突然変異であり、前記システインによるアミノ酸突然変異の第2の対が、配列番号3のアミノ酸224に対応するアミノ酸の突然変異および配列番号3のアミノ酸257に対応するアミノ酸の突然変異であるもの;および
(c)システインによるアミノ酸突然変異の第1の対およびシステインによるアミノ酸突然変異の第2の対であって、前記システインによるアミノ酸突然変異の第1の対が、配列番号3のアミノ酸212に対応するアミノ酸の突然変異および配列番号3のアミノ酸250に対応するアミノ酸の突然変異であり、前記システインによるアミノ酸突然変異の第2の対が、配列番号3のアミノ酸217に対応するアミノ酸の突然変異および配列番号3のアミノ酸253に対応するアミノ酸の突然変異であるもの;から選択され、
前記野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる前記3対のアミノ酸突然変異は、
(x)システインによるアミノ酸突然変異の第1の対、システインによるアミノ酸突然変異の第2の対、およびシステインによるアミノ酸突然変異の第3の対であって、前記システインによるアミノ酸突然変異の第1の対が、配列番号3のアミノ酸212に対応するアミノ酸の突然変異および配列番号3のアミノ酸250に対応するアミノ酸の突然変異であり、前記システインによるアミノ酸突然変異の第2の対が、配列番号3のアミノ酸220に対応するアミノ酸の突然変異および配列番号3のアミノ酸254に対応するアミノ酸の突然変異であり、前記システインによるアミノ酸突然変異の第3の対が、配列番号3のアミノ酸224に対応するアミノ酸の突然変異および配列番号3のアミノ酸257に対応するアミノ酸の突然変異であるものである。
【0053】
さらに好ましい実施形態では、前記ムテインは、野生型CRALBPタンパク質と比較して、システインによる1対のアミノ酸突然変異を含み、前記野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる前記1対のアミノ酸突然変異は、配列番号3のアミノ酸212に対応するアミノ酸の突然変異および配列番号3のアミノ酸250に対応するアミノ酸の突然変異である。さらに好ましい実施形態では、前記ムテインは、野生型CRALBPタンパク質と比較して、システインによる1対のアミノ酸突然変異を含み、前記野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる前記1対のアミノ酸突然変異は、配列番号3のアミノ酸217に対応するアミノ酸の突然変異および配列番号3のアミノ酸253に対応するアミノ酸の突然変異である。さらに好ましい実施形態では、前記ムテインは、野生型CRALBPタンパク質と比較して、システインによる1対のアミノ酸突然変異を含み、前記野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる前記1対のアミノ酸突然変異は、配列番号3のアミノ酸220に対応するアミノ酸の突然変異および配列番号3のアミノ酸254に対応するアミノ酸の突然変異である。
【0054】
さらに好ましい実施形態では、前記ムテインは、前記野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる2対のアミノ酸突然変異を含み、前記野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる2対のアミノ酸突然変異は、システインによるアミノ酸突然変異の第1の対およびシステインによるアミノ酸突然変異の第2の対であり、前記システインによるアミノ酸突然変異の第1の対が、配列番号3のアミノ酸220に対応するアミノ酸の突然変異および配列番号3のアミノ酸254に対応するアミノ酸の突然変異であり、前記システインによるアミノ酸突然変異の第2の対が、配列番号3のアミノ酸224に対応するアミノ酸の突然変異および配列番号3のアミノ酸257に対応するアミノ酸の突然変異である。
【0055】
さらに好ましい実施形態では、前記ムテインは、前記野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる2対のアミノ酸突然変異を含み、前記野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる2対のアミノ酸突然変異は、システインによるアミノ酸突然変異の第1の対およびシステインによるアミノ酸突然変異の第2の対であり、前記システインによるアミノ酸突然変異の第1の対が、配列番号3のアミノ酸212に対応するアミノ酸の突然変異および配列番号3のアミノ酸250に対応するアミノ酸の突然変異であり、前記システインによるアミノ酸突然変異の第2の対が、配列番号3のアミノ酸224に対応するアミノ酸の突然変異および配列番号3のアミノ酸257に対応するアミノ酸の突然変異である。
【0056】
さらに好ましい実施形態では、前記ムテインは、前記野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる2対のアミノ酸突然変異を含み、前記野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる2対のアミノ酸突然変異は、システインによるアミノ酸突然変異の第1の対およびシステインによるアミノ酸突然変異の第2の対であり、前記システインによるアミノ酸突然変異の第1の対が、配列番号3のアミノ酸212に対応するアミノ酸の突然変異および配列番号3のアミノ酸250に対応するアミノ酸の突然変異であり、前記システインによるアミノ酸突然変異の第2の対が、配列番号3のアミノ酸217に対応するアミノ酸の突然変異および配列番号3のアミノ酸253に対応するアミノ酸の突然変異である。
【0057】
さらに好ましい実施形態では、前記ムテインは、前記野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる3対のアミノ酸突然変異を含み、前記野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる3対のアミノ酸変異は、システインによるアミノ酸突然変異の第1の対、システインによるアミノ酸突然変異の第2の対、およびシステインによるアミノ酸突然変異の第3の対であり、前記システインによるアミノ酸突然変異の第1の対が、配列番号3のアミノ酸212に対応するアミノ酸の突然変異および配列番号3のアミノ酸250に対応するアミノ酸の突然変異であり、前記システインによるアミノ酸突然変異の第2の対が、配列番号3のアミノ酸220に対応するアミノ酸の突然変異および配列番号3のアミノ酸254に対応するアミノ酸の突然変異であり、前記システインによるアミノ酸突然変異の第3の対が、配列番号3のアミノ酸224に対応するアミノ酸の突然変異および配列番号3のアミノ酸257に対応するアミノ酸の突然変異である。
【0058】
さらに好ましい実施形態では、前記複合体は、前記CRALBP突然変異タンパク質と前記同族リガンドとのモノマー複合体である。
【0059】
さらに好ましい実施形態では、前記複合体は、前記CRALBP突然変異タンパク質と前記同族リガンドとのダイマー複合体である。
【0060】
さらに好ましい実施形態では、前記複合体は、前記CRALBP突然変異タンパク質と前記同族リガンドとのオリゴマー複合体である。さらに好ましい実施形態では、前記複合体は、前記CRALBP突然変異タンパク質と前記同族リガンドとのホモオリゴマー複合体である。
【0061】
さらに好ましい実施形態では、前記複合体は、前記CRALBP突然変異タンパク質と前記同族リガンドとのオリゴマー複合体であり、前記オリゴマー複合体は少なくとも240kDa、好ましくは少なくとも300kDaの分子量を有し、好ましくは前記オリゴマー複合体は最大660kDaの分子量を有し、さらに好ましくは前記オリゴマー複合体は最大600kDaの分子量を有する。
【0062】
さらに好ましい実施形態では、前記複合体は、前記CRALBP突然変異タンパク質と前記同族リガンドとのオリゴマー複合体であり、前記オリゴマー複合体は少なくとも720kDa、好ましくは少なくとも800kDaの分子量を有し、好ましくは前記オリゴマー複合体は最大2500kDaの分子量を有し、さらに好ましくは前記オリゴマー複合体は最大2000kDaの分子量を有する。
【0063】
さらに好ましい実施形態では、前記複合体は、前記CRALBP突然変異タンパク質と前記同族リガンドとのオリゴマー複合体であり、前記オリゴマー複合体は少なくとも720kDa、好ましくは少なくとも800kDaの分子量を有し、好ましくは前記オリゴマー複合体は最大2500kDaの分子量を有し、さらに好ましくは前記オリゴマー複合体は最大2000kDaの分子量を有する。
【0064】
さらに好ましい実施形態では、前記複合体は、前記CRALBP突然変異タンパク質と前記同族リガンドとのオリゴマー複合体であり、前記オリゴマー複合体内の前記同族リガンドおよび前記CRALBP突然変異タンパク質の数は、6以上18以下、好ましくは8以上16以下であり、さらに好ましくは前記同族リガンドの数と前記CRALBP突然変異タンパク質の数は等しい。
【0065】
さらに好ましい実施形態では、前記複合体は、前記CRALBP突然変異タンパク質と前記同族リガンドとのオリゴマー複合体であり、前記オリゴマー複合体内の前記同族リガンドおよび前記CRALBP突然変異タンパク質の数は、20以上75以下、好ましくは22以上60以下であり、さらに好ましくは前記同族リガンドの数と前記CRALBP突然変異タンパク質の数は等しい。さらに好ましい実施形態では、前記複合体は、前記CRALBP突然変異タンパク質と前記同族リガンドとのオリゴマー複合体であり、前記オリゴマー複合体内の前記同族リガンドおよび前記CRALBP突然変異タンパク質の数は、24以上75以下、好ましくは26以上60以下であり、さらに好ましくは前記同族リガンドの数と前記CRALBP突然変異タンパク質の数は等しい。
【0066】
さらに好ましい実施形態では、前記複合体は、前記CRALBP突然変異タンパク質と前記同族リガンドとのオリゴマー複合体であり、前記オリゴマー複合体は約8~20nmの平均直径を有し、前記平均直径は動的光散乱(DLS)によって決定され、好ましくは前記オリゴマー複合体は約10~18nmの平均直径を有し、前記平均直径は動的光散乱(DLS)によって決定される。
【0067】
さらに好ましい実施形態では、前記複合体は、前記CRALBP突然変異タンパク質と前記同族リガンドとのオリゴマー複合体であり、前記オリゴマー複合体は約24~33nmの平均直径を有し、前記平均直径は動的光散乱(DLS)によって決定され、好ましくは前記オリゴマー複合体は約25~32nmの平均直径を有し、前記平均直径は動的光散乱(DLS)によって決定される。
【0068】
さらに好ましい実施形態では、前記組成物は、前記CRALBP突然変異タンパク質および前記同族リガンドのモノマー複合体およびホモオリゴマー複合体を含む。さらに好ましい実施形態では、前記複合体は、前記CRALBP突然変異タンパク質および前記同族リガンドのモノマー複合体およびホモオリゴマー複合体を含む。
【0069】
好ましい実施形態では、システインの前記対の少なくとも1つがジスルフィド結合を形成する。別の好ましい実施形態では、システインの前記対の各々がジスルフィド結合を形成する。
【0070】
好ましい実施形態では、前記野生型CRALBPタンパク質は、配列番号3のヒトCRALBPタンパク質である。
【0071】
好ましい実施形態では、前記野生型CRALBPタンパク質は、配列番号3のヒトCRALBPタンパク質であり、前記ヒト野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによるアミノ酸突然変異の前記対は、
(1)配列番号3のアミノ酸212の突然変異および配列番号3のアミノ酸250の突然変異;
(2)配列番号3のアミノ酸217の突然変異および配列番号3のアミノ酸253の突然変異;
(3)配列番号3のアミノ酸220の突然変異および配列番号3のアミノ酸254の突然変異;
(4)配列番号3のアミノ酸224の突然変異および配列番号3のアミノ酸257の突然変異;から選択され、
好ましくは、前記ヒト野生型CRALBPタンパク質の前記ムテインは、前記ヒト野生型CRALBPタンパク質と少なくとも90%の配列同一性、好ましくは少なくとも95%の配列同一性、さらに好ましくは少なくとも96%の配列同一性、またさらに好ましくは少なくとも97%の配列同一性、またさらに好ましくは少なくとも98%の配列同一性、またさらに好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0072】
さらに好ましい実施形態では、前記野生型CRALBPタンパク質は、配列番号3のヒトCRALBPタンパク質であり、前記ヒト野生型CRALBPタンパク質の前記ムテインは、前記ヒト野生型CRALBPタンパク質と少なくとも95%の配列同一性を有する。さらに好ましい実施形態では、前記野生型CRALBPタンパク質は、配列番号3のヒトCRALBPタンパク質であり、前記ヒト野生型CRALBPタンパク質の前記ムテインは、前記ヒト野生型CRALBPタンパク質と少なくとも96%の配列同一性を有する。さらに好ましい実施形態では、前記野生型CRALBPタンパク質は、配列番号3のヒトCRALBPタンパク質であり、前記ヒト野生型CRALBPタンパク質の前記ムテインは、前記ヒト野生型CRALBPタンパク質と少なくとも97%の配列同一性を有する。さらに好ましい実施形態では、前記野生型CRALBPタンパク質は、配列番号3のヒトCRALBPタンパク質であり、前記ヒト野生型CRALBPタンパク質の前記ムテインは、前記ヒト野生型CRALBPタンパク質と少なくとも98%の配列同一性を有する。さらに好ましい実施形態では、前記野生型CRALBPタンパク質は、配列番号3のヒトCRALBPタンパク質であり、前記ヒト野生型CRALBPタンパク質の前記ムテインは、前記ヒト野生型CRALBPタンパク質と少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0073】
さらに好ましい実施形態では、前記野生型CRALBPタンパク質は、配列番号3のヒトCRALBPタンパク質であり、前記ヒト野生型CRALBPタンパク質の前記ムテインは、前記ヒト野生型CRALBPタンパク質と最大30アミノ酸異なる。さらに好ましい実施形態では、前記野生型CRALBPタンパク質は、配列番号3のヒトCRALBPタンパク質であり、前記ヒト野生型CRALBPタンパク質の前記ムテインは、前記ヒト野生型CRALBPタンパク質と最大20アミノ酸異なる。さらに好ましい実施形態では、前記野生型CRALBPタンパク質は、配列番号3のヒトCRALBPタンパク質であり、前記ヒト野生型CRALBPタンパク質の前記ムテインは、前記ヒト野生型CRALBPタンパク質と最大10アミノ酸異なる。さらに好ましい実施形態では、前記野生型CRALBPタンパク質は、配列番号3のヒトCRALBPタンパク質であり、前記ヒト野生型CRALBPタンパク質の前記ムテインは、前記ヒト野生型CRALBPタンパク質と10、9、8、7、6、5、4、3、2、1アミノ酸異なる。さらに好ましい実施形態では、前記野生型CRALBPタンパク質は、配列番号3のヒトCRALBPタンパク質であり、前記ヒト野生型CRALBPタンパク質の前記ムテインは、前記ヒト野生型CRALBPタンパク質と最大8アミノ酸異なる。さらに好ましい実施形態では、前記野生型CRALBPタンパク質は、配列番号3のヒトCRALBPタンパク質であり、前記ヒト野生型CRALBPタンパク質の前記ムテインは、前記ヒト野生型CRALBPタンパク質と最大6、4または2アミノ酸異なる。
【0074】
さらに好ましい実施形態では、前記野生型CRALBPタンパク質は、配列番号3のヒトCRALBPタンパク質であり、前記ヒト野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによるアミノ酸突然変異の前記対は、配列番号3のアミノ酸212の突然変異および配列番号3のアミノ酸250の突然変異である。さらに好ましい実施形態では、前記野生型CRALBPタンパク質は、配列番号3のヒトCRALBPタンパク質であり、前記ヒト野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによるアミノ酸突然変異の前記対は、配列番号3のアミノ酸217の突然変異および配列番号3のアミノ酸253の突然変異である。さらに好ましい実施形態では、前記野生型CRALBPタンパク質は、配列番号3のヒトCRALBPタンパク質であり、前記ヒト野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによるアミノ酸突然変異の前記対は、配列番号3のアミノ酸220の突然変異および配列番号3のアミノ酸254の突然変異である。さらに好ましい実施形態では、前記野生型CRALBPタンパク質は、配列番号3のヒトCRALBPタンパク質であり、前記ヒト野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによるアミノ酸突然変異の前記対は、配列番号3のアミノ酸224の突然変異および配列番号3のアミノ酸257の突然変異である。
【0075】
さらに好ましい実施形態では、前記野生型CRALBPタンパク質は、配列番号3のヒトCRALBPタンパク質であり、前記ムテインは、ヒト野生型CRALBPタンパク質と比較して、システインによる1対または2対または3対のアミノ酸突然変異を含み、前記ヒト野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる前記1対のアミノ酸突然変異は、以下:
(i)配列番号3のアミノ酸212の突然変異および配列番号3のアミノ酸250の突然変異;
(ii)配列番号3のアミノ酸217の突然変異および配列番号3のアミノ酸253の突然変異;および
(iii)配列番号3のアミノ酸220の突然変異および配列番号3のアミノ酸254の突然変異;から選択され前記ヒト野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる前記2対のアミノ酸突然変異は、以下:
(a)システインによるアミノ酸突然変異の第1の対およびシステインによるアミノ酸突然変異の第2の対であって、前記システインによるアミノ酸突然変異の第1の対が、配列番号3のアミノ酸220の突然変異および配列番号3のアミノ酸254の突然変異であり、前記システインによるアミノ酸突然変異の第2の対が、配列番号3のアミノ酸224の突然変異および配列番号3のアミノ酸257の突然変異であるもの;
(b)システインによるアミノ酸突然変異の第1の対およびシステインによるアミノ酸突然変異の第2の対であって、前記システインによるアミノ酸突然変異の第1の対が、配列番号3のアミノ酸212の突然変異および配列番号3のアミノ酸250の突然変異であり、前記システインによるアミノ酸突然変異の第2の対が、配列番号3のアミノ酸224の突然変異および配列番号3のアミノ酸257の突然変異であるもの;および
(c)システインによるアミノ酸突然変異の第1の対およびシステインによるアミノ酸突然変異の第2の対であって、前記システインによるアミノ酸突然変異の第1の対が、配列番号3のアミノ酸212の突然変異および配列番号3のアミノ酸250の突然変異であり、前記システインによるアミノ酸突然変異の第2の対が、配列番号3のアミノ酸217の突然変異および配列番号3のアミノ酸253の突然変異であるもの;から選択され、前記ヒト野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる前記3対のアミノ酸突然変異は、
(x)システインによるアミノ酸突然変異の第1の対、システインによるアミノ酸突然変異の第2の対、およびシステインによるアミノ酸突然変異の第3の対であって、前記システインによるアミノ酸突然変異の第1の対が、配列番号3のアミノ酸212の突然変異および配列番号3のアミノ酸250の突然変異であり、前記システインによるアミノ酸突然変異の第2の対が、配列番号3のアミノ酸220の突然変異および配列番号3のアミノ酸254の突然変異であり、前記システインによるアミノ酸突然変異の第3の対が、配列番号3のアミノ酸224の突然変異および配列番号3のアミノ酸257の突然変異であるものである。
【0076】
さらに好ましい実施形態では、前記野生型CRALBPタンパク質は、配列番号3のヒトCRALBPタンパク質であり、前記ムテインは、ヒト野生型CRALBPタンパク質と比較して、システインによる1対のアミノ酸突然変異を含み、前記ヒト野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる前記1対のアミノ酸突然変異は、配列番号3のアミノ酸212の突然変異および配列番号3のアミノ酸250の突然変異である。さらに好ましい実施形態では、前記野生型CRALBPタンパク質は、配列番号3のヒトCRALBPタンパク質であり、前記ムテインは、ヒト野生型CRALBPタンパク質と比較して、システインによる1対のアミノ酸突然変異を含み、前記ヒト野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる前記1対のアミノ酸突然変異は、配列番号3のアミノ酸217の突然変異および配列番号3のアミノ酸253の突然変異である。さらに好ましい実施形態では、前記野生型CRALBPタンパク質は、配列番号3のヒトCRALBPタンパク質であり、前記ムテインは、ヒト野生型CRALBPタンパク質と比較して、システインによる1対のアミノ酸突然変異を含み、前記ヒト野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる前記1対のアミノ酸突然変異は、配列番号3のアミノ酸220の突然変異および配列番号3のアミノ酸254の突然変異である。
【0077】
さらに好ましい実施形態では、前記野生型CRALBPタンパク質は、配列番号3のヒトCRALBPタンパク質であり、前記ムテインは、前記ヒト野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる2対のアミノ酸突然変異を含み、前記ヒト野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる2対のアミノ酸突然変異は、システインによるアミノ酸突然変異の第1の対およびシステインによるアミノ酸突然変異の第2の対であり、前記システインによるアミノ酸突然変異の第1の対が、配列番号3のアミノ酸220の突然変異および配列番号3のアミノ酸254の突然変異であり、前記システインによるアミノ酸突然変異の第2の対が、配列番号3のアミノ酸224の突然変異および配列番号3のアミノ酸257の突然変異である。
【0078】
さらに好ましい実施形態では、前記野生型CRALBPタンパク質は、配列番号3のヒトCRALBPタンパク質であり、前記ムテインは、前記ヒト野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる2対のアミノ酸突然変異を含み、前記ヒト野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる2対のアミノ酸突然変異は、システインによるアミノ酸突然変異の第1の対およびシステインによるアミノ酸突然変異の第2の対であり、前記システインによるアミノ酸突然変異の第1の対が、配列番号3のアミノ酸212の突然変異および配列番号3のアミノ酸250の突然変異であり、前記システインによるアミノ酸突然変異の第2の対が、配列番号3のアミノ酸224の突然変異および配列番号3のアミノ酸257の突然変異である。
【0079】
さらに好ましい実施形態では、前記野生型CRALBPタンパク質は、配列番号3のヒトCRALBPタンパク質であり、前記ムテインは、前記ヒト野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる2対のアミノ酸突然変異を含み、前記ヒト野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる2対のアミノ酸突然変異は、システインによるアミノ酸突然変異の第1の対およびシステインによるアミノ酸突然変異の第2の対であり、前記システインによるアミノ酸突然変異の第1の対が、配列番号3のアミノ酸212の突然変異および配列番号3のアミノ酸250の突然変異であり、前記システインによるアミノ酸突然変異の第2の対が、配列番号3のアミノ酸217の突然変異および配列番号3のアミノ酸253の突然変異である。
【0080】
さらに好ましい実施形態では、前記野生型CRALBPタンパク質は、配列番号3のヒトCRALBPタンパク質であり、前記ムテインは、前記ヒト野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる3対のアミノ酸突然変異を含み、前記ヒト野生型CRALBPタンパク質と比較してシステインによる3対のアミノ酸変異は、システインによるアミノ酸突然変異の第1の対、システインによるアミノ酸突然変異の第2の対、およびシステインによるアミノ酸突然変異の第3の対であり、前記システインによるアミノ酸突然変異の第1の対が、配列番号3のアミノ酸212の突然変異および配列番号3のアミノ酸250の突然変異であり、前記システインによるアミノ酸突然変異の第2の対が、配列番号3のアミノ酸220の突然変異および配列番号3のアミノ酸254の突然変異であり、前記システインによるアミノ酸突然変異の第3の対が、配列番号3のアミノ酸224の突然変異および配列番号3のアミノ酸257の突然変異である。
【0081】
さらに好ましい実施形態では、前記CRALBP突然変異タンパク質は、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21および配列番号23からなる群から選択されるアミノ酸配列を有し、好ましくは、前記CRALBP突然変異タンパク質は、配列番号9および配列番号21から選択されるアミノ酸配列を有し、さらに好ましくは、前記CRALBP突然変異タンパク質は、配列番号9のアミノ酸配列を有する。前述の実施形態の別の好ましい実施形態では、システインの前記対の各々がジスルフィド結合を形成し、したがって、前記本発明の複合体内で、前記CRALBP突然変異タンパク質は完全に酸化形態である。
【0082】
さらに好ましい実施形態では、前記CRALBP突然変異タンパク質は、配列番号9のアミノ酸配列を有する。さらに好ましい実施形態では、前記CRALBP突然変異タンパク質は、配列番号11のアミノ酸配列を有する。さらに好ましい実施形態では、前記CRALBP突然変異タンパク質は、配列番号13のアミノ酸配列を有する。さらに好ましい実施形態では、前記CRALBP突然変異タンパク質は、配列番号15のアミノ酸配列を有する。さらに好ましい実施形態では、前記CRALBP突然変異タンパク質は、配列番号17のアミノ酸配列を有する。さらに好ましい実施形態では、前記CRALBP突然変異タンパク質は、配列番号19のアミノ酸配列を有する。さらに好ましい実施形態では、前記CRALBP突然変異タンパク質は、配列番号21のアミノ酸配列を有する。さらに好ましい実施形態では、前記CRALBP突然変異タンパク質は、配列番号23のアミノ酸配列を有する。前述の実施形態の別の好ましい実施形態では、システインの前記対の各々がジスルフィド結合を形成し、したがって、前記本発明の複合体内で、前記CRALBP突然変異タンパク質は完全に酸化形態である。さらに好ましい実施形態では、前記CRALBP突然変異タンパク質は、配列番号9のアミノ酸配列を含み、好ましくはそれからなり、配列番号9のアミノ酸212および250のシステインの前記対はジスルフィド結合を形成する。
【0083】
さらに好ましい実施形態では、前記CRALBP突然変異タンパク質は、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21および配列番号23からなる群から選択されるアミノ酸配列からなり、好ましくは、前記CRALBP突然変異タンパク質は、配列番号9および配列番号21から選択されるアミノ酸配列からなり、さらに好ましくは、前記CRALBP突然変異タンパク質は、配列番号9のアミノ酸配列からなる。前述の実施形態の別の好ましい実施形態では、システインの前記対の各々がジスルフィド結合を形成する。したがって、前記本発明の複合体内で、前記CRALBP突然変異タンパク質は完全に酸化形態である。
【0084】
さらに好ましい実施形態では、前記CRALBP突然変異タンパク質は、配列番号9のアミノ酸配列からなる。さらに好ましい実施形態では、前記CRALBP突然変異タンパク質は、配列番号11のアミノ酸配列からなる。さらに好ましい実施形態では、前記CRALBP突然変異タンパク質は、配列番号13のアミノ酸配列からなる。さらに好ましい実施形態では、前記CRALBP突然変異タンパク質は、配列番号15のアミノ酸配列からなる。さらに好ましい実施形態では、前記CRALBP突然変異タンパク質は、配列番号17のアミノ酸配列からなる。さらに好ましい実施形態では、前記CRALBP突然変異タンパク質は、配列番号19のアミノ酸配列からなる。さらに好ましい実施形態では、前記CRALBP突然変異タンパク質は、配列番号21のアミノ酸配列からなる。さらに好ましい実施形態では、前記CRALBP突然変異タンパク質は、配列番号23のアミノ酸配列からなる。前述の実施形態の別の好ましい実施形態では、システインの前記対の各々がジスルフィド結合を形成する。したがって、前記本発明の複合体内で、前記CRALBP突然変異タンパク質は完全に酸化形態である。さらに好ましい実施形態では、前記CRALBP突然変異タンパク質は、配列番号9のアミノ酸配列からなり、配列番号9のアミノ酸212および250のシステインの前記対はジスルフィド結合を形成する。
【0085】
さらに好ましい実施形態では、前記組成物は、複合体を含み、好ましくはそれからなり、前記複合体は、(a)CRALBP突然変異タンパク質(前記CRALBP突然変異タンパク質は、配列番号9のアミノ酸配列を含み、好ましくはそれからなる);および(b)CRALBPの同族リガンドを含み、前記同族リガンドはシス-レチノイドであり、好ましくは、前記シス-レチノイドは、(i)9-シス-レチナール;(ii)9-シス-レチノール;(iii)11シス-レチナール;(iv)11シス-レチノール;(v)9,13ジ-シス-レチナール;および(vi)9,13-ジ-シス-レチノールから選択され、さらに好ましくは、前記シス-レチノイドは、(i)9-シス-レチナール;(ii)11シス-レチナール;および(iii)9,13ジ-シス-レチナール;および(vi)9,13-ジ-シス-レチノールから選択され、またさらに好ましくは、前記シス-レチノイドは、(i)9-シス-レチナールおよび(ii)11-シス-レチナールから選択され;好ましくは、配列番号9のアミノ酸212および250のシステインの前記対はジスルフィド結合を形成する。
【0086】
さらに好ましい実施形態では、前記組成物は複合体を含み、好ましくはそれからなり、前記複合体は、(a)CRALBP突然変異タンパク質(前記CRALBP突然変異タンパク質は配列番号9のアミノ酸配列からなる);および(b)CRALBPの同族リガンドを含み、前記同族リガンドは、(i)9-シス-レチナールおよび(ii)11-シス-レチナールから選択され;好ましくは、配列番号9のアミノ酸212および250のシステインの前記対はジスルフィド結合を形成し、好ましくは、前記複合体は、前記CRALBP突然変異タンパク質および前記同族リガンドのオリゴマー複合体であり、前記オリゴマー複合体は、少なくとも720kDa、好ましくは少なくとも800kDaの分子量を有し、好ましくは、前記オリゴマー複合体は、最大2500kDaの分子量を有し、さらに好ましくは、前記オリゴマー複合体は、最大2000kDaの分子量を有する。
【0087】
さらに好ましい実施形態では、前記組成物は複合体を含み、好ましくはそれからなり、前記複合体は、(a)CRALBP突然変異タンパク質(前記CRALBP突然変異タンパク質は配列番号9のアミノ酸配列からなる);および(b)CRALBPの同族リガンドを含み、前記同族リガンドは、(i)9-シス-レチナールおよび(ii)11-シス-レチナールから選択され;好ましくは、配列番号9のアミノ酸212および250のシステインの前記対はジスルフィド結合を形成し、好ましくは、前記複合体は、前記CRALBP突然変異タンパク質および前記同族リガンドのオリゴマー複合体であり、前記オリゴマー複合体は、少なくとも800kDaの分子量を有し、前記オリゴマー複合体は、最大2000kDaの分子量を有する。
【0088】
さらに好ましい実施形態では、前記組成物は複合体を含み、好ましくはそれからなり、前記複合体は、(a)CRALBP突然変異タンパク質(前記CRALBP突然変異タンパク質は配列番号9のアミノ酸配列からなる);および(b)CRALBPの同族リガンドを含み、前記同族リガンドは、(i)9-シス-レチナールおよび(ii)11-シス-レチナールから選択され;配列番号9のアミノ酸212および250のシステインの前記対はジスルフィド結合を形成し、前記複合体は、前記CRALBP突然変異タンパク質および前記同族リガンドのオリゴマー複合体であり、前記オリゴマー複合体は、少なくとも720kDa、好ましくは少なくとも800kDaの分子量を有し、好ましくは、前記オリゴマー複合体は、最大2500kDaの分子量を有し、さらに好ましくは、前記オリゴマー複合体は、最大2000kDaの分子量を有する。
【0089】
さらに好ましい実施形態では、前記組成物は複合体を含み、好ましくはそれからなり、前記複合体は、(a)CRALBP突然変異タンパク質(前記CRALBP突然変異タンパク質は配列番号9のアミノ酸配列からなる);および(b)CRALBPの同族リガンドを含み、前記同族リガンドは、(i)9-シス-レチナールおよび(ii)11-シス-レチナールから選択され;配列番号9のアミノ酸212および250のシステインの前記対はジスルフィド結合を形成し、好ましくは、前記複合体は、前記CRALBP突然変異タンパク質および前記同族リガンドのオリゴマー複合体であり、前記オリゴマー複合体は、少なくとも800kDaの分子量を有し、前記オリゴマー複合体は、最大2000kDaの分子量を有する。
【0090】
さらに好ましい実施形態では、前記溶液I中の前記CRALBP突然変異タンパク質の濃度は0.1mM~1mMであり、さらに好ましくは前記溶液I中の前記CRALBP突然変異タンパク質の濃度は0.25mM~0.75mMである。さらに好ましい実施形態では、前記溶液IのpHは7~8.5、さらに好ましくは7.5~8.5である。
【0091】
さらに好ましい実施形態では、前記溶液Iは塩を含み、前記塩の濃度は10mM~500mMである。さらに好ましくは、前記塩の濃度は、30mM~350mMであり、さらに好ましくは、前記塩の濃度は、100mM~250mMである。さらに好ましい実施形態では、前記塩は、一価、二価、三価または四価の無機塩または有機塩から選択され、さらに好ましくは、前記塩は、二価、三価または四価の無機塩または有機塩から選択され、またさらに好ましくは、前記塩は、HPO4
2-、SO4
2-、酒石酸、マロン酸、D-ミオ-イノシトール1,4,5-三リン酸およびD-ミオ-イノシトール1,3,4,5-テトラキス(リン酸)カリウム塩から選択される二価、三価または四価アニオンを含む。
【0092】
さらに好ましい実施形態では、前記溶液I中のCRALBPの前記同族リガンドの前記濃度は30μM~300mMであり、さらに好ましくは前記溶液I中のCRALBPの前記同族リガンドの濃度は200μM~200mMである。
【0093】
前記溶液IIの溶媒は水溶性溶媒である。溶液IIに使用される水溶性溶媒が、少量、すなわち最大10%(v/v)の水を含んでいてもよいことは本発明の範囲内であるが、典型的および好ましくは、前記水溶性溶媒は、製造業者によって供給される場合に前記水溶性溶媒に典型的に含まれる少量の水以外のいかなる追加量の水も含まない。さらに好ましくは、前記水溶性溶媒は、8%(v/v)超、好ましくは7%(v/v)超、さらに好ましくは5%(v/v)超の水を含まない。
【0094】
本発明の好ましい実施形態では、前記水溶性溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、メチルペンタンジオールおよびグリセロールから選択され、さらに好ましくは、前記水溶性溶媒は、エタノール、イソプロパノールおよびジメチルスルホキシド(DMSO)から選択され、またさらに好ましくは、前記水溶性溶媒はエタノールである。
【0095】
溶液IIが界面活性剤を含む本発明の方法では、前記界面活性剤は、前記溶液II中のCRALBPの前記同族リガンドを可溶化するのに役立つ。好ましい実施形態では、前記界面活性剤は、非イオン性界面活性剤またはアニオン性界面活性剤から選択される。好ましくは、前記非イオン性界面活性剤は、オクチルβ-D-グルコシド、ノニルβ-D-グルコシド、デシルβ-D-グルコシド、ノニルβ-D-マルトシド、デシルβ-D-マルトシド、ウンデシルβ-D-マルトシド、ドデシルβ-D-マルトシド、Tween20(登録商標)、Tween40(登録商標)、Tween80(登録商標)TritonX100(登録商標)、Nonidet P40、ポリエチレングリコール200から選択される。好ましくは、前記アニオン性界面活性剤は、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、デオキシグリココール酸ナトリウムおよびタウロコール酸ナトリウムから選択される。さらに好ましい実施形態では、前記非イオン性界面活性剤は、オクチルβ-D-グルコシド、ノニルβ-D-グルコシド、デシルβ-D-グルコシド、ノニルβ-D-マルトシド、デシルβ-D-マルトシド、ウンデシルβ-D-マルトシド、ドデシルβ-D-マルトシド、Tween20(登録商標)、Tween40(登録商標)、Tween80(登録商標)TritonX100(登録商標)、Nonidet P40、ポリエチレングリコール200から選択される。さらに好ましい実施形態では、前記アニオン性界面活性剤は、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、デオキシグリココール酸ナトリウムおよびタウロコール酸ナトリウムから選択される。好ましい実施形態では、前記界面活性剤はアニオン性界面活性剤であり、前記アニオン性界面活性剤はコール酸ナトリウムである。
【0096】
前記溶液II中のCRALBPの前記同族リガンドを可溶化するために、濃度は使用される界面活性剤の性質に依存するので、前記溶液II中で使用される前記界面活性剤の濃度は、当業者によって決定することができ、当業者の知識に基づく。典型的および好ましくは、前記溶液II中の前記界面活性剤の濃度は、前記界面活性剤、典型的および好ましくは前記非イオン性界面活性剤または前記アニオン性界面活性剤の臨界ミセル濃度(CMC)より高い。典型的および好ましくは、前記界面活性剤、典型的および好ましくは、非イオン性界面活性剤または前記アニオン性界面活性剤の臨界ミセル濃度(CMC)は0.5mM以上であり、さらに好ましくは、前記非イオン性界面活性剤または前記アニオン性界面活性剤の臨界ミセル濃度(CMC)は10mM以上である。
【0097】
さらに好ましい実施形態では、前記溶液IIIからの前記界面活性剤の前記除去は、透析によって行われる。好ましくは、透析による前記溶液IIIからの前記界面活性剤の前記除去は、膜を横切って行われ、好ましくは、前記膜は、1~25kD、好ましくは5~20kD、さらに好ましくは10~15kDの分子量カットオフを含む。透析は、好ましくは第1の緩衝液を用いて行われ、前記第1の緩衝液はアルカリ金属のハロゲン化物を含み、好ましくはアルカリ金属の前記ハロゲン化物は塩化カリウムまたは塩化ナトリウムであり、さらに好ましくはアルカリ金属の前記ハロゲン化物は塩化ナトリウムであり、好ましくは前記第1の緩衝液中のアルカリ金属の前記ハロゲン化物、好ましくは前記塩化ナトリウムの濃度は1~1000mM、好ましくは10~500mM、より好ましくは50~250mM、最も好ましくは100~200mMである。
【0098】
透析は、好ましくは4℃~37℃の温度で行われ、好ましくは前記透析は、4~24時間にわたって行われる。
【0099】
本発明の好ましい実施形態では、前記溶液III中の前記CRALBP突然変異タンパク質の濃度と前記CRALBPの前記同族リガンドの濃度との前記比は、3:1~1:3(モル/モル)であり、好ましくは前記溶液III中の前記CRALBP突然変異タンパク質の濃度と前記CRALBPの前記同族リガンドの濃度との比は、2:1~1:2(モル/モル)である。
【0100】
本発明の別の好ましい実施形態では、前記溶液III中の前記水溶性溶媒の前記体積は1~5%(体積/体積)であり、好ましくは前記溶液III中の前記水溶性溶媒の体積は2~4%(体積/体積)である。
【0101】
本発明の好ましい実施形態では、前記CRALBP突然変異タンパク質および前記CRALBPの前記同族リガンドを複合体に集合させることは、前記溶液IIIを4~37℃の温度、好ましくは室温で1時間~24時間、好ましくは12~24時間維持することによって達成される。
【0102】
本発明のさらに好ましい実施形態では、前記溶液IIIから、前記複合体を含む前記組成物を分離すること、または前記複合体を分離することは、サイズ排除クロマトグラフィまたはアニオン交換クロマトグラフィ、好ましくはサイズ排除クロマトグラフィによって行われる。
【0103】
本発明の別の好ましい実施形態では、前記複合体を含む前記組成物を精製すること、または前記複合体を精製することは、サイズ排除クロマトグラフィまたはアニオン交換クロマトグラフィ、好ましくはサイズ排除クロマトグラフィによって行われる。本発明の別の好ましい実施形態では、前記複合体を含む前記組成物を精製すること、または前記複合体を精製することは、酸化条件下でのサイズ排除クロマトグラフィまたはアニオン交換クロマトグラフィ、好ましくは酸化条件下でのサイズ排除クロマトグラフィによって、さらに好ましくは酸化グルタチオンを使用する例8に記載のように達成される。
【0104】
本発明の別の好ましい実施形態では、前記方法は、酸化条件下でのサイズ排除クロマトグラフィまたはアニオン交換クロマトグラフィ、好ましくは酸化条件下でのサイズ排除クロマトグラフィによって、さらに好ましくは酸化グルタチオンを使用する例8に記載のように、前記複合体を含む前記組成物を精製すること、または前記複合体を精製することを含む。本発明の別の好ましい実施形態では、前記方法は、酸化条件下でのサイズ排除クロマトグラフィまたはアニオン交換クロマトグラフィ、好ましくは酸化条件下でのサイズ排除クロマトグラフィによって、前記複合体を含む前記組成物を精製すること、または前記複合体を精製することを含み、前記サイズ排除クロマトグラフィまたはアニオン交換クロマトグラフィ、好ましくは前記サイズ排除クロマトグラフィは、酸化剤の存在下で行われ、好ましくは前記酸化剤は酸化グルタチオンであり、好ましくは前記酸化剤、好ましくは前記酸化グルタチオンの濃度は1mM~7.5mM、好ましくは3mM~6mM、さらに好ましくは約5mMである。本発明の方法のさらに好ましい実施形態では、前記組成物は複合体を含み、好ましくはそれからなり、前記複合体は、(a)CRALBP突然変異タンパク質(前記CRALBP突然変異タンパク質は配列番号9のアミノ酸配列からなる);および(b)CRALBPの同族リガンドを含み、前記同族リガンドは、(i)9-シス-レチナールおよび(ii)11-シス-レチナールから選択され;配列番号9のアミノ酸212および250のシステインの前記対はジスルフィド結合を形成し、前記複合体は、前記CRALBP突然変異タンパク質および前記同族リガンドのオリゴマー複合体であり、前記オリゴマー複合体は、少なくとも720kDa、好ましくは少なくとも800kDaの分子量を有し、好ましくは、前記オリゴマー複合体は、最大2500kDaの分子量を有し、さらに好ましくは、前記オリゴマー複合体は、最大2000kDaの分子量を有し、前記方法は、酸化条件下でのサイズ排除クロマトグラフィまたはアニオン交換クロマトグラフィ、好ましくは酸化条件下でのサイズ排除クロマトグラフィによって、さらに好ましくは酸化グルタチオンを使用する例8に記載のように、前記複合体を含む前記組成物を精製すること、または前記複合体を精製することを含む。本発明の別の好ましい実施形態では、前記方法は、酸化条件下でのサイズ排除クロマトグラフィまたはアニオン交換クロマトグラフィ、好ましくは酸化条件下でのサイズ排除クロマトグラフィによって、前記複合体を含む前記組成物を精製すること、または前記複合体を精製することを含み、前記サイズ排除クロマトグラフィまたはアニオン交換クロマトグラフィ、好ましくは前記サイズ排除クロマトグラフィは、酸化剤の存在下で行われ、好ましくは前記酸化剤は酸化グルタチオンであり、好ましくは前記酸化剤、好ましくは前記酸化グルタチオンの濃度は1mM~7.5mM、好ましくは3mM~6mM、さらに好ましくは約5mMである。
【0105】
例
例1
RLBP1のクローニングおよびCRALBPの発現
RLBP1のクローニングおよびCRALBPの発現は、He et al.(He,X.,et al.,2009,PNAS,106(44):18545-18550)に記載されているように同様に行った。簡単に記載すると、ヒトRLBP1 cDNA(JRAUp969D1020D、配列番号1)を、German Center for Genomic Research GmbHから入手した。「StreamLined Restriction Digestion,Dephosphorylation and Ligation」(Promega)のプロトコルに従って、RLBP1 cDNAをpET-28a(+)ベクターのNdeIおよびXhoI部位にクローニングすることによって、CRALBP過剰発現ベクター構築物を得て、pET-28a(+)CRALBP過剰発現プラスミド(配列番号2)をもたらした。インキュベーションを37℃および750rpm(Thermomixer Compact、Eppendorf)で2.25時間行い、74℃で15分間不活性化し、1%アガロースゲルを介して分離し、Promega製の「Wizard SV Gel and PCR Clean-Up System」を用いてユーザマニュアルに従って所望の切断断片を抽出した。熱感受性アルカリホスファターゼを、pET-28a(+)標的ベクターの消化のためにのみ使用したが、RLBP1 cDNA(JRAUp969D1020D)の消化のためには使用しなかった。大腸菌のBL21(DE3)株(Invitrogen)をpET-28a(+)CRALBP過剰発現プラスミド(配列番号2)で形質転換し、30mg/mLカナマイシンを含む120mLのLB培地で37℃にて一晩撹拌培養した。一晩培養物を使用して、6LのLB培地(30mg/mLカナマイシン)に接種した。培養物を20℃で0.7のOD600まで増殖させ、次いで、1mMイソプロピル-チオガラクトピラノシドで16時間誘導した。細胞を5000gで45分間の遠心分離によって回収し、250mLの氷冷溶解緩衝液(20mMイミダゾール;100mM NaCl;20mM Tris-HCl、pH7.4;1% wt/volトリトンX-100)に再懸濁した。細胞を20分間の超音波処理によって破壊し、ヒト野生型CRALPB(配列番号3)を含む溶解物を20,000gで35分間遠心分離して破片を除去した。
【0106】
例2
ジ-シス突然変異体CRALBP A212C:T250Cのクローニングおよび発現
StratageneからのQuikChangeキットに記載される説明書に従って、pET-28a(+)CRALBP過剰発現プラスミド(配列番号2)における部位特異的突然変異誘発によって、点突然変異を連続的に導入した。対応するプライマー配列、PCR反応混合物、およびジ-シス突然変異体CRALBP A212C:T250Cを生成するために使用した温度プロトコルを、それぞれ表1および表2に示す。したがって、表1では、突然変異の位置は下線付きブロックによって特定される。T250Cの場合、点突然変異は新規制限部位の形成に直接つながる。A212C点突然変異の場合、追加のサイレント突然変異を導入した(下線および筆記体を参照)。
【表1】
【表2】
【0107】
したがって、配列番号2のヌクレオチド配列を部位特異的PCRにおける出発鋳型として使用した。逐次PCR反応の後、ジ-シス突然変異体CRALBP A212C:T250Cのアミノ酸配列番号9をコードする配列番号8の得られたヌクレオチド配列を得た。
【0108】
したがって、PCR反応後、2μlのDpnI制限酵素を反応混合物に添加し、試料を37℃で2時間インキュベートした。この後、10μlの反応混合物をコンピテント大腸菌XL10Gold細胞(Stratagene)に直接形質転換した。形質転換およびプレーティング後に得られたクローンを、分析的制限消化によって新たに導入された制限部位の存在についてチェックした。両方の制限部位を含有するクローンを、配列番号8のジ-シス突然変異体CRALBP A212C:T250C過剰発現プラスミドを単離するために使用した。プラスミドにおけるA212C:T250C点突然変異の存在を配列決定によって確認した(Microsynth AG,Balgach)。
【0109】
配列番号8のジ-シス突然変異CRALBP A212C:T250C過剰発現プラスミドで形質転換され、それを含有するBL21(DE3)細胞を、30mg/mLカナマイシンを含有する120mLのLB培地中、37℃で一晩撹拌しながら培養した。一晩培養物を使用して、6LのLB培地(30mg/mLカナマイシン)に接種した。培養物を20℃で0.7のOD600まで増殖させ、次いで、1mMイソプロピル-チオガラクトピラノシドで16時間誘導した。細胞を5000gで45分間の遠心分離によって回収し、250mLの氷冷溶解緩衝液(20mMイミダゾール;100mM NaCl;20mM Tris-HCl、pH7.4;1% wt/volトリトンX-100)に再懸濁した。細胞を20分間の超音波処理によって破壊し、配列番号9のジ-シス突然変異CRALBP A212C:T250Cを含む溶解物を20,000gで35分間遠心分離して破片を除去した。
【0110】
例3
CRALBPのインシリコ突然変異誘発
上記ジ-システイン突然変異体A212C:T250C(配列番号9)以外の、CRALBPにおける可能性として安定化するジスルフィド架橋を同定するために、インシリコシステイン突然変異誘発を行った。このために、11-シス-レチナールが結合した野生型CRALBPのX線構造モデルから切断モデルを作成した(PDBエントリ3HY5)。野生型CRALBPの2つの配列領域(配列番号3)、すなわち配列番号3のアミノ酸残基204~229)および配列番号3のアミノ酸残基244~261を、元のモデルを編集することによって定義した。システイン修飾を、FoldX V5コンピュータアルゴリズム(Schymkowitz J.,et al.,2005,Nucleic Acids Res.1;33:W382-8.doi:10.1093/nar/gki387)を使用して両鎖に体系的に導入した。アルゴリズムを使用して、野生型CRALBPの切断モデルを298K、pH7、0.1Mのイオン強度で最小化して、インシリコ参照構造(「参照-WT」)を生成した。それ自体の確率ベースの回転異性体ライブラリを実装するFoldX V5「BuildModel」コマンドを使用して、ジ-シス突然変異体A212C:T250Cを含むモデルを含有する1、2または3対のシステイン突然変異を含む8つのCRALBP突然変異タンパク質をインシリコで作製した。表3は、前記同定されたCRALBP突然変異タンパク質ならびにそれらのアミノ酸および核酸配列を列挙している。
【表3】
【0111】
FoldXからの突然変異モデルを、それぞれ単純なモデル摂動および柔軟な骨格モデリングのためにphenix.dynamic(Adams P.D.,et al.,2010,Acta Crystallogr.D Biol.Crystallogr.66(Pt 2):213-21)に供することにより、モデルを脱バイアスし、同時にジスルフィド結合を形成した。分子動力学計算を、それぞれ0.005fsの200回反復で、300Kで行い、結合形成の最大閾値を3.1Åに設定した。続いて、界面の自由エネルギーの変化をEMBL PISAサーバー17で評価した。可動ゲート(配列番号3の残基204~229および配列番号3の残基244~261)の2つの層の間の界面の形成時の溶媒和自由エネルギー利得を、Δ
iG(kcal/mol)として計算した。参照として野生型CRALBP(配列番号3)を含む記載された本発明のCRALBP突然変異体についての計算のまとめを表4に示す。
【表4】
【0112】
表面Å2は、溶媒がアクセス可能な総表面領域(平方オングストローム)であり、界面領域(Å2)は、分離構造と界面構造のアクセス可能な総表面領域の差を2で割ったものである。ΔiGは、界面形成時の溶媒和自由エネルギー利得をkcal/molで示す。-11.2kcal/molの参照値よりも負であると報告されているΔiG値はいずれも、野生型CRALBPと比較して、対応する突然変異体のさらなる安定化をもたらすと考えられる。
【0113】
図2は、形成されたジスルフィド結合の位置が棒として強調された、CRALBPの4つの記載されたモノジ-システイン突然変異体の可動ゲート領域のインシリコモデルの拡大図を個別に示し、一方、
図3では、形成されたジスルフィド結合の位置が棒として強調された、CRALBPの3つの二重および三重ジ-システイン突然変異体のそれぞれの可動ゲート領域のインシリコモデルの拡大図が示されている。CRALBPの可動ゲートを横切る4つの可能な記載されたジスルフィド結合を示す全てのインシリコジ-システイン突然変異体モデルの重ね合わせを
図4に示す。
【0114】
例4
インシリコで生成されたジ-シスCRALBP突然変異体のクローニングおよび発現
さらに同定されたジ-シスCRALBP突然変異体の核酸配列ならびにアミノ酸配列を表3に記載する。対応する突然変異RLBP1遺伝子配列のクローニングおよび対応するジ-シスCRALBP突然変異タンパク質の発現は、例1および2に記載されているのと同様に行われる。これらのさらに同定されたジ-シスCRALBP突然変異体の精製は、以下の例5に記載されるように行われる。
【0115】
例5
ジ-シスCRALBP突然変異体の精製
例2で得られた配列番号9のジ-シス突然変異体CRALBP A212C:T250Cを含む溶解物を、製造業者の指示に従って10mLのNi-NTA SUPERFLOW(Qiagen)でのアフィニティークロマトグラフィによって上清から精製した。簡単に説明すると、溶解物を、予め溶解緩衝液で平衡化したカラムにロードし、溶解緩衝液で洗浄し、35mLの溶出緩衝液(20mM Tris-HCl、pH7.4;200mMイミダゾール;100mM NaCl)で溶出した。SDS/PAGEによって判断し、比色ビシンコニン酸アッセイ(Pierce Chemical Company)を使用して決定したところ、典型的な収率は、35~40mgの純粋なジ-シス突然変異体CRALBP A212C:T250Cであった。
【0116】
例6
リガンドのローディングおよびゲル浸透クロマトグラフィ
シス-レチナールを含む全ての手順は、指定されない限り、4℃で暗赤色照明(40Wルビー電球)下で行った。親和性精製野生型CRALBPおよびCRALBPのジ-システイン突然変異体A212C:T250Cのリガンドのローディングを、エタノールに溶解した9-シス-レチナールまたは11-シス-レチナールストック(40mM)のアリコートを1.5モル過剰および2%vol/volの最終エタノール濃度でタンパク質溶液に添加することによって、溶出緩衝液(20mM Tris-HCl、pH7.4;200mMイミダゾール;100mM NaCl)中で行った。試料を4℃で30分間インキュベートし、次いで、15,000gで10分間遠心分離した。試料をVivaspin 15R Hydrosart(Sartorius)を用いて30~50mg/mlのタンパク質に濃縮し、緩衝液(10mM Tris-HCl、100mM NaCl、pH7.5)で3回洗浄した。最後に、ゲル濾過クロマトグラフィ(GFC)によってリガンド複合体から未結合レチノイドを除去した。
【0117】
例7
CRALBPのジ-シス突然変異体のゲル濾過クロマトグラフィ
CRALBPのジ-システイン突然変異体A212C:T250Cのタンパク質シス-レチナール複合体の精製を、ゲル濾過クロマトグラフィ(GFC)緩衝液(10mM Hepes、100mM NaCl、pH7.5)中のSuperdex(登録商標)200 26/60カラムで行った。総溶出体積は330mlであり、画分を5ml間隔で収集した。分取ゲル濾過は、野生型CRALBPのシス-レチナール複合体と本質的に同じクロマトグラムを明らかにする。
【0118】
ここでも、CRALBPのアポジ-システイン突然変異体A212C:T250Cにシス-レチナールをロードすると、同様の溶出体積を有する4つの有意なピークが観察され得る。
図5は、前記4つのピークを特徴とする280nmでの典型的なUV/Vis吸収トレースを示す。ピークの順序は以下の通りである:左から右へ、第1のピークは超高分子量(SHMW)画分に対応し、第2のピークは高分子量(HMW)画分に対応し、第3のピークはダイマーに対応し、第4のピークはモノマー画分にそれぞれ対応する。9-シスレチナールとの複合体におけるモノマー野生型CRALBPおよびA212C:T250C突然変異体のUV-Vis吸収スペクトルを使用して、モノマー複合体のリガンドのローディングを決定した。これのために、吸収スペクトルは、約280nmでのタンパク質の最大吸収に対して正規化した。Crabbら(Crabb JW.et al.,(1998),Protein Sci.7(3):746-57)によれば、280nmでの吸収最大値はタンパク質濃度に対応し、400nmでの吸収最大値は結合した9-シスレチナールに対応した。9-シスレチナールとの複合体における完全飽和CRALBPは、ε
280/ε
400=2.2の理想的なスペクトル比を有することが後に報告されている。本発明者らの実験では、野生型CRALBP:9-シスレチナールおよびA212C:T250C:9-シスレチナール突然変異体の比は、それぞれ2.31および2.21であり、完全飽和1:1複合体の形成を示している(
図6を参照)。
【0119】
各ピーク下のプール画分の分析用GFCを濃縮し(約4mg/ml)、Superose(登録商標)6 Increase 10/300 GLカラムで特性評価した。
図7は、280nmでのSHMW、HMWおよびモノマー分析用GFCランの重ねられたトレースを示す。
【0120】
例8
酸化条件下でのCRALBPのジ-シス突然変異体のゲル濾過クロマトグラフィ
酸化条件下でのCRALBPのジ-システイン突然変異体A212C:T250Cのタンパク質シス-レチナール複合体の精製を、ゲル濾過クロマトグラフィ(GFC)緩衝液(10mM Hepes、100mM NaCl、5mM GSSG、pH7.5)中のSuperdex(登録商標)200 26/60カラムで行った。総溶出体積は330mlであり、画分を5ml間隔で収集した。分取ゲル濾過により、CRALBPのジ-システイン突然変異体A212C:T250Cの還元シス-レチナール複合体または野生型CRALBPのシス-レチナール複合体を使用した場合、本質的に同一のクロマトグラムが明らかになった(例7、
図5~
図7を参照)。酸化グルタチオン(GSSG)をゲル濾過クロマトグラフィ中に使用して、対応する還元複合体と比較して結合したシス-レチナールの光保護が約20倍増加した酸化ジ-システインCRALBP/シス-レチナール複合体をその場で生成する(
図8参照)。
【0121】
例9
光異性化アッセイ
シス-レチナールおよび野生型CRALBPまたはCRALBPのジ-システイン突然変異体A212C:T250Cとのその複合体の光異性化アッセイを、本質的にSaari(Saari JC and Bredberg DL,(1978),J Biol Chem.262(16):7618-22)によって記載されるように行った。このために、ゲル浸透クロマトグラフィで精製したリガンド複合体を(GFC)緩衝液(10mM Hepes、100mM NaCl、pH7.5)中で26μMに希釈し、等モル量のBSAを添加して、光によって誘導される遊離全trans-レチナールの形成によるタンパク質沈殿を回避した。試料を、100Wの昼光バルブを用いて、暗室において室温で380ルクスの照度(Voltcraft MS-1300 Luxmeter)に曝露した。同時に、UV/Vis吸収スペクトルを、EvolutionアレイUV/Vis分光光度計(Thermo Scientific)を使用して合計3600秒間、180秒ごとに収集した。酸化突然変異体A212C:T250Cまたは野生型CRALBPの光異性化実験のために、5mM酸化グルタチオンを予め形成された複合体に添加し、混合物を4℃で一晩維持した。繰り返しの還元のために、まず、Vivaspin 15R Hydrosart(Sartorius)を使用して試料を体積の10分の1に3回濃縮し、続いて緩衝液(10mM Hepes、100mM NaCl、pH7.5)中で元の体積に再希釈することによって、酸化グルタチオンを試料から除去した。次いで、洗浄した試料を5mM DTTを添加することによって還元し、4℃で1時間保持した。
図9から分かるように、酸化状態の移動ゲートの閉塞があり、光異性化速度が少なくとも10倍遅くなった。5mM DTT中の試料の反復還元は、アッセイによって捕捉されたタンパク質の野生型様の挙動を再確立した。したがって、A212C:T250C二重突然変異の導入は、CRALBPの可動ゲート機能の可逆的なオンおよびオフを可能にするヒトCRALBPへの操作された酸化還元感受性オン-オフスイッチを表す。2つの突然変異は、CRALBPの可動ゲート界面の隣接位置に位置し、酸化条件下で分子内ジスルフィド結合の形成を可能にし、還元条件下でゲートの天然の機能性を回復させる。したがって、A212C:T250C:11-シス-レチナール複合体の酸化状態の光異性化アッセイは、結合した11シス-レチナールの光保護の増加を明らかにするが、還元状態はCRALBPの天然のインビトロ光感受性を回復させる。
【0122】
例10
CRALBPのジ-シス突然変異体のネイティブpage
4~16%ポリアクリルアミドゲル上のシス-レチナールとの複合体におけるCRALBPのジ-システイン突然変異体のネイティブPAGEは、シス-レチナールとの複合体における野生型CRALBPと同様のバンドを明らかにした。分取GFCの後、ジ-システイン突然変異体A212C:T250C CRALPB試料のネイティブPAGEは、野生型CRALBPの場合と同様に、ピーク1、2、3および4に由来する画分について同じタンパク質バンドパターンを示した。
図10に示すように、ピーク1およびその右側肩(P1およびP1.2)からの画分5、6、7、および8を含むレーンは、720kDaの分子量で始まり、1048kDaを超える範囲の連続タンパク質バンドを明らかにした。これらのバンドは、本発明者らが超高分子量(SHMW)と呼ぶA212C:T250C CRALBPオリゴマー複合体クラスを表す。これに続く、より小さいCRALBPオリゴマー複合体画分のレーンは、高分子量CRALBP(HMW)と呼ばれる。これらは、第2のピーク(P2)、画分12および13の試料を含み、それぞれ242kDa~720kDaの分子量を有する連続バンドを特徴とする。
【0123】
例11
動的光散乱による本発明の複合体の特性評価
分析用GFCによって特性評価された分取用GFCに由来する同じ画分も、Malvern Zetasizer S(登録商標)で動的光散乱(DLS)によって分析した。表5にまとめた設定に従って各DLS実験を行い、Malvern Zetasizerソフトウェアの自動最適化に従って、測定ごとの実行時間および実行回数を設定した。
【表5】
【0124】
動的光散乱(DLS)測定は、ゲル濾過から得られた試料ピークが、それぞれ本発明の組成物および複合体の別個の集団を表すことを示す。ジ-システインA212C:T250C CRALBPと9-シス-レチナールとのモノマー複合体の直径の平均サイズ分布は6.50±1.50nmであり、それぞれ、ダイマー複合体8.72±2.41nm、HMW 13.50±0.47nmおよびSHMW 28.28±2.13nmである(
図11参照)。
【配列表フリーテキスト】
【0125】
配列表2 <223>pET-28(+)CRALBP
配列表4 <223>プライマーfw_A212C
配列表5 <223>プライマーrv_A212C
配列表6 <223>プライマーfw_T250C
配列表7 <223>プライマーrv_T250C
配列表8 <223>A212C:T250C
配列表9 <223>A212C:T250C
配列表10 <223>T217C:V253C
配列表11 <223>T217C:V253C
配列表12 <223>L220C:V254C
配列表13 <223>L220C:V254C
配列表14 <223>V224C:F257C
配列表15 <223>V224C:F257C
配列表16 <223>L220C:V254C-V224C:F257C
配列表17 <223>L220C:V254C-V224C:F257C
配列表18 <223>A212C:T250C-V224C:F257C
配列表19 <223>A212C:T250C-V224C:F257C
配列表20 <223>A212C-T250C-T217C:V253C
配列表21 <223>A212C-T250C-T217C:V253C
配列表22 <223>212-220-224C:250-254-257C
配列表23 <223>212-220-224C:250-254-257C
【配列表】
【国際調査報告】