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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-30
(54)【発明の名称】金属切削旋削工具
(51)【国際特許分類】
   B23B 27/16 20060101AFI20240422BHJP
   B23B 29/04 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
B23B27/16 A
B23B29/04 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571470
(86)(22)【出願日】2021-12-14
(85)【翻訳文提出日】2024-01-16
(86)【国際出願番号】 EP2021085696
(87)【国際公開番号】W WO2022242893
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】21174952.8
(32)【優先日】2021-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520333435
【氏名又は名称】エービー サンドビック コロマント
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンソン, アダム
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクブラド, クリステル
【テーマコード(参考)】
3C046
【Fターム(参考)】
3C046EE01
3C046EE17
3C046MM01
(57)【要約】
旋削工具(1)は、旋削インサート(2)と、工具本体(3)とを備え、旋削インサート(2)は、円周方向側面(6)によって接続された相対する上面および底面(4、5)を備え、旋削工具(1)は、旋削インサート(2)用のポケット(7)を備え、ポケット(7)は、底部支持面(8)と、第1および第2のポケット側面(9、10)とを備え、第1および第2のポケット側面(9、10)は、鋭角(γ)を形成し、第1のポケット側面(9)は、第1および第2の側方支持面(11、12)を備え、第2のポケット側面(10)は、第3および第4の側方支持面(13、14)を備え、第1の凹部(15)が、第1および第2の側方支持面(11、12)の間に形成され、第2の凹部(16)が、第3および第4の側方支持面(13、14)の間に形成され、各凹部(15;16)は、円周方向側面(6)とそれぞれのポケット側面(9、10)との間に隙間(26、27)を形成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋削インサート(2)と、工具本体(3)とを備える旋削工具(1)であって、
前記旋削インサート(2)は、円周方向側面(6)によって接続された相対する上面および底面(4、5)を備え、
前記旋削工具(1)は、前記旋削インサート(2)用のポケット(7)を備え、前記ポケット(7)は、底部支持面(8)と、第1および第2のポケット側面(9、10)とを備え、
前記第1および第2のポケット側面(9、10)は、鋭角(γ)を形成する旋削工具(1)において、
前記第1のポケット側面(9)が、第1および第2の側方支持面(11、12)を備え、
前記第2のポケット側面(10)が、第3および第4の側方支持面(13、14)を備え、
第1の凹部(15)が、前記第1および第2の側方支持面(11、12)の間に形成され、
第2の凹部(16)が、前記第3および第4の側方支持面(13、14)の間に形成され、
各凹部(15;16)が、前記円周方向側面(6)と前記それぞれのポケット側面(9、10)との間に隙間(26、27)を形成する
ことを特徴とする、
旋削工具(1)。
【請求項2】
前記側方支持面(11、12;13、14)の少なくとも2つは、凸状である、
請求項1に記載の旋削工具(1)。
【請求項3】
前記旋削インサート(2)は、その中央軸(A1)に関して180度対称または割出可能であり、
前記中心軸(A1)は、前記上面および底面(4、5)と交差し、
前記旋削インサート(2)は、2つの対向するノーズ切れ刃(17、18)を備え、
上面視において、前記旋削インサート(2)は、前記ノーズ切れ刃(17、18)の間に第1の距離(D1)だけ延在し、前記第1の距離(D1)に垂直な第2の距離(D2)だけ延在し、
前記第1の距離(D1)は、前記第2の距離(D2)よりも大きい、
請求項1または2に記載の旋削工具(1)。
【請求項4】
前記旋削工具(1)は、結合部分(25)を備え、
前記結合部分(25)は、結合軸(A2)に沿って延在し、前記結合軸(A2)は、前記旋削工具(1)の長手方向軸を画定し、
前記2つの対向するノーズ切れ刃(17、18)の間の線は、前記結合軸(A2)に関して35~55°の角度(δ)を形成する、
請求項3に記載の旋削工具(1)。
【請求項5】
前記第1のポケット側面(9)から前記結合軸(A2)までの距離は、前記第2のポケット側面(10)から前記結合軸(A2)までの距離よりも短く、
前記結合部分(25)から前記第1の側方支持面(11)までの距離は、前記結合部分(25)から前記第2の側方支持面(12)までの距離よりも短く、
前記結合部分(25)から前記第3の側方支持面(13)までの距離は、前記結合部分(25)から前記第4の側方支持面(14)までの距離よりも短く、
前記第3の側方支持面(13)は、上面視において、前記第4の側方支持面(14)の曲率半径(R4)よりも小さい曲率半径(R3)だけ凸状に湾曲している、
請求項4に記載の旋削工具(1)。
【請求項6】
前記旋削インサート(2)は、第1および第2のノーズ部分(19、20)を備え、
前記第1のノーズ部分(19)は、前記第1のノーズ切れ刃(17)を備え、
前記第2のノーズ部分(20)は、前記第2のノーズ切れ刃(18)を備え、
各ノーズ部分(19、20)は、鋭角のノーズ角(α、β)を形成する、
請求項3から5のいずれか一項に記載の旋削工具(1)。
【請求項7】
前記第2の距離(D2)と一致する線は、前記旋削インサート(2)を前半分(21)と後半分(22)に分割し、
前記旋削インサート(2)の前記後半分(22)の前記円周方向側面(6)のみが、前記工具本体(3)と接触している、
請求項3から6のいずれか一項に記載の旋削工具(1)。
【請求項8】
前記旋削インサート(2)は、中央ボア(23)を備え、
前記中央ボア(23)は、前記2つの対向するノーズ切れ刃(17、18)の間の前記上面および底面(4、5)に開口し、
前記中央ボア(23)は、中心軸(A1)を中心に対称である、
請求項1から7のいずれか一項に記載の旋削工具(1)。
【請求項9】
上面視において、前記中央ボア(23)の一部は、2つの側方支持面(12、14)の間にある、
請求項8に記載の旋削工具(1)。
【請求項10】
各凹部(15;16)は、上面視において凹状であり、
前記隙間(26、27)は、0.05~0.30mmである、
請求項1から9のいずれか一項に記載の旋削工具(1)。
【請求項11】
前記側方支持面(11、12;13、14)と接触している前記旋削インサート(2)の前記円周方向側面(6)の部分は、平坦もしくは実質的に平坦であるか、または500mmよりも大きい曲率半径を有する凸状である、
請求項1から10のいずれか一項に記載の旋削工具(1)。
【請求項12】
前記旋削工具(1)は、シム(24)を備え、
前記シム(24)は、前記旋削インサート(2)用の前記ポケット(7)の前記底部支持面(8)を備える、
請求項1から11のいずれか一項に記載の旋削工具(1)。
【請求項13】
基準平面(RP)が、前記上面および底面(4、5)の間の途中まで延在し、
前記基準平面(RP)から前記第1のノーズ切れ刃(17)までの距離は、前記基準平面(RP)から、前記円周方向側面(6)から離間した前記上面(4)の一部までの距離よりも短い、
請求項1から12のいずれか一項に記載の旋削工具(1)。
【請求項14】
前記基準平面(RP)から任意の切れ刃(17、18、28、29、30、31)までの距離は、前記基準平面(RP)から、前記円周方向側面(6)から離間した前記上面(4)の一部までの距離よりも短い、
請求項13に記載の旋削工具(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属切削の技術分野に属する。より具体的には、本発明は、旋削の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、請求項1の前文に記載の旋削工具に関する。言い換えれば、本発明は、旋削インサートと、工具本体とを備える旋削工具に関し、旋削インサートは、円周方向側面によって接続された相対する上面および底面を備え、旋削工具は、旋削インサート用のポケットを備え、ポケットは、底部支持面と、第1および第2のポケット側面とを備え、第1および第2のポケット側面は、鋭角を形成する。
【0003】
金属切削では、旋削加工が一般的な作業である。CNC旋盤が、一般的に使用される。通常、複雑な形状は、金属ワークピースから機械加工される。従来、複数の旋削工具を使用して異なる送り方向に旋削加工することによって、長手方向をそれぞれ反対方向に旋削加工したり、内向きおよび外向きに旋削加工したりする旋削作業が行われている。例えば、90度の角を旋削する場合、従来の手法は、少なくとも2つの異なる旋削工具を使用することであった。
【0004】
欧州特許出願公開第3153261号明細書は、インサート摩耗も低減しながら、上述の欠点を克服することを目的とする旋削工具を開示している。
【0005】
本発明者らは、最新技術にはいくつかの欠点があり、さらに改善された旋削工具が必要であることを見出した。
【0006】
特に、本発明者らは、欧州特許出願公開第3153261号明細書に開示されている旋削工具の不利益は、切削深さの可能性が外向きに制限されることであることを見出した。
【発明の概要】
【0007】
目的は、複数の送り方向においてより大きな範囲で使用可能な改善された旋削工具を提供することである。さらなる目的は、高い精度で機械加工するために使用することができる旋削工具を提供することである。またさらなる目的は、経済的な方法で製造することができる旋削インサートを備える旋削工具を提供することである。
【0008】
前記目的の少なくとも1つは、最初に定義された旋削工具によって達成され、第1のポケット側面は、第1および第2の側方支持面を備え、第2のポケット側面は、第3および第4の側方支持面を備え、第1の凹部が、第1および第2の側方支持面の間に形成され、第2の凹部が、第3および第4の側方支持面の間に形成される。
各凹部は、円周方向側面とそれぞれのポケット側面との間に隙間を形成する。
【0009】
このような旋削工具によって、特に複数の送り方向に旋削加工する際にプレス加工および焼結加工によって作製された旋削インサートを使用する場合、インサート移動が少なくインサート位置精度が高いため、より高精度に加工面を機械加工することができる。側方接触面または側方支持面が研削または同様の時間のかかるプロセスを受けていない、プレス加工および焼結加工により作製された旋削インサートは、形状の変形、特にインサートをより凸状にする変形のリスクを増加させることが分かっている。この意味での変形とは、理想的な形状から外れた形状を意味する。これは、切れ刃の表面生成点からポケット側面と接触している側方支持面までの距離が大きすぎる場合、旋削の屈曲、さらには旋削インサートの亀裂のリスクを増大させる。
【0010】
旋削工具は、CNC旋盤、すなわちコンピュータ旋盤またはコンピュータ数値制御旋盤、すなわち、例えば旋削旋盤、マルチタスク機、ターンミル機、またはスライドヘッド機などの旋削に適した任意のCNC機用である。旋削工具は、金属ワークピースなどの金属ワークピースを機械加工するためのものであり、半径方向外面である外部表面を備え、半径方向外面は、金属ワークピースが中心として回転可能な回転軸から外方を向いている。旋削工具は、前記半径方向外面の旋削、すなわち外部旋削のためのものである。あるいは、旋削工具は、内部旋削用であってもよい。
【0011】
旋削工具は、結合部分の形態の前端および反対側の後端を備える。結合部分は、CNC旋盤、より具体的には、機械スピンドルまたはツールレボルバターレットまたは刃物台など、CNC旋盤の機械インターフェースに取り外し可能に接続可能である。
【0012】
結合部分は、断面において正方形状または長方形状を有してもよい。結合部分は、好ましくはISO規格26623-1に従って、円錐形または実質的に円錐形であってもよい。
【0013】
結合部分は、結合軸または中心軸に沿って延在し、中心軸は、旋削工具の長手方向軸を画定する。
【0014】
旋削インサートは、超硬合金などの耐摩耗性材料から作製される。工具本体は、好ましくは鋼から作製される。旋削インサートの上面は、すくい面として機能するのに適しており、切りくずの分断または切りくずの制御を向上させる突起および/または窪みなどの切りくず分断手段を備えることができる。底面は、ポケットまたはインサート座の底面と接触するのに適した接触面または着座面を備える。旋削インサートが反転可能であるように、上面および底面は同一または実質的に同一であってもよい。上面および底面は、円周方向側面によって接続され、これはクリアランス面および接触面または着座面として機能し、すなわちポケット側面と接触するのに適している。
【0015】
切れ刃が、円周方向側面と上面との間の境界に形成される。前記切れ刃は、円周状であってもよく、複数のエッジ部分を備える。
【0016】
旋削インサートは、上面視において多角形状である。好ましくは、旋削インサートは、上面視において菱形形状または実質的に菱形形状である。例えば、旋削インサートの外周は、上面視において、複数の線形セグメントを備えることができる。前記線形セグメントのうちの最も長いセグメントが菱形形状を形成する場合、旋削インサートは、菱形形状または実質的に菱形形状を有すると考えることができる。
【0017】
旋削インサート用のポケットまたはインサート座を備える旋削工具。ポケットは、旋削インサートの底面と接触するための底部支持面と、円周方向側面と接触するための第1および第2のポケット側面とを備える。
【0018】
第1および第2のポケット側面は、上面視において鋭角を形成する。
【0019】
第1および第2の側方支持面に接する第1の仮想平面は、第3および第4の側方支持面に接する第2の仮想平面と鋭角を形成する。
【0020】
第1のポケット側面は、旋削インサートに向かって突出する第1および第2の側方支持面または接触面を備える。
【0021】
第2のポケット側面は、旋削インサートに向かって突出する第3および第4の側方支持面または接触面を備える。
【0022】
第1の凹部が、第1および第2の側方支持面の間に形成される。第1の凹部は、上面視において凹状部分の形態である。
【0023】
第2の凹部が、第3および第4の側方支持面の間に形成される。第2の凹部は、上面視において凹状部分の形態である。
【0024】
各凹部は、円周方向側面と、凹部に対向するそれぞれのポケット側面との間に隙間を形成する。
【0025】
したがって、円周方向側面は、それぞれのポケット側面から離間している。
【0026】
円周方向側面は、4つの側方支持面のうちの少なくとも3つと接触している。
【0027】
旋削工具は、好ましくは、例えばインサートねじまたはトップクランプなど、ポケットに旋削インサートを保持するためのクランプ手段を備える。
【0028】
一実施形態によれば、側方支持面の少なくとも2つは、凸状である。
【0029】
このような旋削工具によって、側方支持面の変形は、特に旋削インサートがわずかに凸状である場合、よりゆっくりと増大する。このような旋削工具によって、特に旋削インサートの側方接触面の形状がわずかに凸状である場合、インサート移動のリスクが少なくなる。
【0030】
側方支持面の少なくとも2つ、好ましくは3つ、さらにより好ましくは4つは、上面視において凸状である。
【0031】
各側方支持面の長さは、好ましくは2~4mmである。
【0032】
一実施形態によれば、旋削インサートは、その中央軸に関して180°対称または割出可能(indexable)であり、中心軸は、上面および底面と交差し、旋削インサートは、2つの対向するノーズ切れ刃を備え、上面視において、旋削インサートは、前記ノーズ切れ刃の間に第1の距離だけ延在し、第1の距離に垂直な第2の距離だけ延在し、第1の距離は、第2の距離よりも大きい。
【0033】
このような旋削工具によって、旋削インサートは割出可能であり、したがって耐用年数が延長される。
【0034】
言い換えれば、上面視において、旋削インサートは、ノーズ切れ刃と交差する軸に沿って、前記軸に垂直な方向よりも長くなっている。ノーズ切れ刃は、凸状である。前記距離は、上面視において中心軸と交差する。第2の距離は、2つの鈍角の間である。
【0035】
一実施形態によれば、旋削工具は、結合部分を備え、結合部分は、結合軸に沿って延在し、結合軸は、旋削工具の長手方向軸を画定し、2つの対向するノーズ切れ刃の間の線は、結合軸に関して35~55°の角度を形成する。
【0036】
このような旋削工具によって、旋削インサートは、比較的大きな切削深さでより広い範囲の送り方向が可能であるように位置決めまたは着座される。そのような旋削工具は、反対方向ならびに内向きおよび外向きの軸方向旋削に使用することができる。そのような旋削工具は、45°未満の比較的低い入射角で旋削する際に使用することができ、インサート摩耗を低減する。
【0037】
上面視において、2つの対向するノーズ切れ刃の間の線は、結合軸に関して35~55°、より好ましくは40~50°の角度を形成する。上面視は、旋削インサートの上面が観察者に面している箇所である。前記線は、アクティブ位置、すなわち第1のノーズ切れ刃が金属を切削して加工面を生成することができる位置にある旋削インサートのノーズ部分の二等分線である。結合軸は、長手方向軸であり、旋削工具の前端から旋削工具の後端まで延在する。旋削インサート用のポケットまたは座は、前端に形成される。旋削工具の後端は、結合部分の形態である。結合部分は、CNC旋盤、より具体的には、機械スピンドルまたはツールレボルバターレットまたは刃物台など、CNC旋盤の機械インターフェースに取り外し可能に接続可能である。
【0038】
結合部分は、断面において正方形状または長方形状を有してもよい。結合部分は、好ましくはISO規格26623-1に従って、円錐形または実質的に円錐形であってもよい。
【0039】
一実施形態によれば、第1のポケット側面から結合軸までの距離は、第2のポケット側面から結合軸までの距離よりも短く、結合部分から第1の側方支持面までの距離は、結合部分から第2の側方支持面までの距離よりも短く、結合部分から第3の側方支持面までの距離は、結合部分から第4の側方支持面までの距離よりも短く、第3の側方支持面は、上面視において、第4の側方支持面の曲率半径よりも小さい曲率半径だけ凸状に湾曲している。
【0040】
このような旋削工具によって、本発明者らは、側方支持面の変形速度、ならびに特に旋削インサートの側方支持面がわずかに凸状である場合の接触点または接触面積の両方を考慮すると、旋削工具の性能が改善されることを見出した。例えば、本発明者らは、長手方向の旋削において、第4の側方支持面のようなより前方の側方支持面が、第3の側方支持面のようなより後方の側方支持面と比較して、塑性変形しやすいことを見出した。したがって、第4の側方支持面の過度に大きい変形を回避するために、キュレーチャ半径は、第3の側方支持面よりも大きくなければならない。比較的低い変形速度のために、第3の側方支持面に対する曲率半径を大きくする必要はない。より小さい曲率半径は、接触場所をより予測可能にすることができ、第4の側方支持面からより大きな距離に載置することができ、特にインサートがわずかに凸状である場合、ポケット内のインサート移動のリスクを減少させることをwnsureする。第4の側方支持面の曲率半径は、好ましくは第3の側方支持面の半径の140~400%である。第4の側方支持面の曲率半径は、好ましくは60~200mm、さらにより好ましくは80~150mmである。第3の側方支持面の曲率半径は、好ましくは20~100mm、さらにより好ましくは40~60mmである。
【0041】
好ましくは、第3の側方支持面は、上面視において、第2の側方支持面の曲率半径よりも小さい曲率半径だけ凸状に湾曲している。
【0042】
第2の側方支持面は、第1の側方支持面よりも前方にあり、前方は、旋削工具の後端から離れており、アクティブ位置、すなわち金属を切削する位置にあるノーズ切れ刃に近い。同様に、第4の側方支持面は、第3の側方支持面よりも前方にある。
【0043】
第1のポケット側面の中点から結合軸までの距離は、第2のポケット側面の中点から結合軸までの距離よりも短い。
【0044】
中心軸から第1の側方支持面までの距離は、中心軸から第2の側方支持面までの距離よりも小さい。
【0045】
中心軸から第3の側方支持面までの距離は、中心軸から第4の側方支持面までの距離よりも小さい。
【0046】
第2の側方支持面の曲率半径は、好ましくは第1の側方支持面の半径の140~400%である。第2の側方支持面の曲率半径は、好ましくは60~200mm、さらにより好ましくは80~150mmである。第1の側方支持面の曲率半径は、好ましくは20~100mm、さらにより好ましくは40~60mmである。このような旋削工具によって、側方支持面の高い変形のリスクは十分に低く、同時に接触点または接触面積は、良好な接触および低いインサート移動のリスクを確実にするために、特にわずかに凸状の側方支持面を有する旋削インサートに対して十分に離間することができる。
【0047】
一実施形態によれば、旋削インサートは、第1および第2のノーズ部分を備え、第1のノーズ部分は、第1のノーズ切れ刃を備え、第2のノーズ部分は、第2のノーズ切れ刃を備え、各ノーズ部分は、鋭角のノーズ角を形成する。
【0048】
このような旋削工具によって、より複雑な形状を機械加工することができる。このような旋削工具によって、例えば90°の角など、より多くの送り方向が可能である。第1のノーズ角は、従来、上面視において測定される。第2の切削要素の上面視は、第2のすくい面が観察者に面しているときである。好ましくは、前記第1のノーズ角は、15~85°、さらにより好ましくは25~83°である。好ましくは、第2のノーズ角は、第1のノーズ角に等しいか、または実質的に等しい。
【0049】
第1および第2の切れ刃28、29が、第1のノーズ切れ刃によって接続される。第1および第2の切れ刃の間の角度は、第1のノーズ角αを画定する。対応する方式で、第2のノーズ切れ刃18は、第3および第4の切れ刃30、31を接続し、第2のノーズ角βを形成する。
【0050】
一実施形態によれば、第2の距離と一致する線は、旋削インサートを前半分と後半分に分割し、旋削インサートの後半分の円周方向側面のみが、工具本体と接触している。
【0051】
このような旋削工具によって、比較的高い切削深さで異なる方向に機械加工する可能性がさらに改善される。
【0052】
旋削インサートの後半分の円周方向側面の一部のみが、工具本体と接触している。言い換えれば、側方支持面は、旋削インサートの後半分とのみ接触し、旋削インサートの前半分とは接触しない。
【0053】
したがって、旋削インサートの前半分の一部であるすべての切れ刃は、アクティブ位置にあり、よって旋削加工に使用することができる。
【0054】
前半分と後半分に分割する線は、好ましくは、旋削インサートの2つの鈍角の間に描かれる。前記2つの鈍角は、旋削インサートの中心軸に最も近い角である。
【0055】
旋削インサートの前半分の側面は、工具本体に面していない。
【0056】
一実施形態によれば、旋削インサートは、中央ボアを備え、中央ボアは、2つの対向するノーズ切れ刃の間の上面および底面に開口し、中央ボアは、中心軸を中心に対称である。
【0057】
このような旋削工具によって、旋削インサートは、インサートねじまたはトップクランプのいずれかによってクランプすることができる。中央ボアは、保持インサートねじの形態のクランプ手段に適している。
【0058】
一実施形態によれば、上面視において、中央ボアの一部は、2つの側方支持面の間にある。
【0059】
このような旋削工具によって、前方支持面がアクティブノーズ切れ刃に近いため、インサート移動のリスクがさらに低減される。
【0060】
中央ボアは、アクティブ位置にあるノーズ切れ刃に最も近い2つの側方支持面、より具体的には第2および第4の側方支持面の間にある。アクティブ位置にあるノーズ切れ刃は、第1および第2のポケット側面が収束する点から最も遠いノーズ切れ刃である。
【0061】
一実施形態によれば、各凹部は、上面視において凹状であり、隙間は、0.05~0.30mmである。
【0062】
最大隙間は、旋削インサートの円周方向側面に垂直な方向に測定して、0.05~0.30mmである。最大隙間は、好ましくはそれぞれの凹部の中点にある。
【0063】
このような旋削工具によって、隙間に切りくずが生じるリスクを低減しつつ、インサートの支持を適切に行うことができる。
【0064】
一実施形態によれば、側方支持面と接触している旋削インサートの円周方向側面の部分は、平坦もしくは実質的に平坦であるか、または500mmよりも大きい曲率半径を有する凸状である。
【0065】
したがって、側方支持面と接触している旋削インサートの円周方向側面の部分は、平坦であり、わずかに凸状であり、500mmよりも大きい、好ましくは2000mmよりも大きい、さらにより好ましくは5000mmよりも大きい曲率半径を有する。旋削インサートは、好ましくは完全にまたは大きな範囲で、すなわち90重量%を超えて超硬合金から作製される。前記部分は、プレス加工および焼結加工後に研削されない。
【0066】
一実施形態によれば、旋削工具は、シムを備え、シムは、旋削インサート用のポケットの底部支持面を備える。
【0067】
一実施形態によれば、基準平面が、上面および底面の間の途中まで延在し、基準平面から第1のノーズ切れ刃までの距離は、基準平面から、円周方向側面から離間した上面の一部までの距離よりも短い。
【0068】
言い換えれば、側面視で見ると、上面の少なくとも一部は、第1のノーズ切れ刃よりも高い。このような旋削インサートによって、上面に形成された盛上部分または突出部分がチップブレーカまたはチップフォーマとして機能することができるため、旋削加工において切りくずの分断を改善することができる。
【0069】
一実施形態によれば、基準平面から任意の切れ刃までの距離は、基準平面から、円周方向側面から離間した上面の一部までの距離よりも短い。
【0070】
このような旋削工具によって、切りくずの分断をさらに改善することができる。チューニングインサートは、上面および底面が支持面を備えるように両面性であってもよい。前記支持面は、好ましくは平坦であり、基準平面に平行な平面内に位置する。前記支持面は、好ましくは切れ刃から離間している。前記支持面は、好ましくは円周方向側面から離間している。
【0071】
ここで、本発明の実施形態の説明によって、および添付の図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1】第1の実施形態による旋削工具の斜視図である。
図2図1の旋削工具の正面図である。
図3図1の旋削工具の上面図である。
図4図1の旋削工具の側面図である。
図5図1の旋削工具の上面図である。
図6図5のセクションAの拡大図である。
図7図6のセクションBの拡大図である。
図8図6のセクションCの拡大図である。
図9図6のセクションDの拡大図である。
図10図1の工具本体の斜視図である。
図11図10の旋削工具の正面図である。
図12図1の旋削工具の上面図である。
図13図1の旋削工具の側面図である。
図14図1の旋削工具の上面図である。
図15図14のセクションAの拡大図である。
図16図15のセクションBの拡大図である。
図17図15のセクションCの拡大図である。
図18図15のセクションDの拡大図である。
図19図1の旋削インサートの上面図である。
図20】旋削インサートの上面図である。
図21】第2の実施形態による工具本体の上面図である。
図22】旋削インサートの正面図である。
図23図22の旋削インサートの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
第1の実施形態による金属ワークピース(図示せず)を機械加工するための旋削工具1を示す図1図6を参照する。第1の実施形態による旋削工具1は、工具本体3と、旋削インサート2と、シム24とを備える。旋削工具1は、旋削インサート2用のポケットを備える。旋削インサート2は、円周方向側面6によって接続された相対する上面および底面4、5を備える。シム24は、旋削インサート2用のポケットの底部支持面8を備える。旋削工具1は、CNC旋盤(図示せず)の機械インターフェースに接続されるのに適した結合部分25を備える。結合部分25は、結合軸A2に沿って延在し、結合軸A2は、旋削工具1の長手方向軸を画定する。結合部分25は、ISO26623-1:2014などに従うフランジ接触面を有する多角形中空テーパ接触面の形態の、テーパ状もしくは円錐形もしくは実質的に円錐形の部分およびリング形状部分、または例えばDIN69893、ISO12164-1、もしくはISO12164-1Fなどに従うフランジ接触面を有する中空テーパを備える。あるいは、結合部分は、結合軸に垂直な断面において、正方形状(図示せず)または長方形状(図示せず)であってもよい。
【0074】
図5に見られるように、側方支持面11、12;13、14は、上面視において凸状に湾曲しており、それぞれの曲率半径R1、R2、R3、およびR4を有する。2つの対向するノーズ切れ刃17、18の間の線は、結合軸A2に関して約45°の角度δを形成する。
【0075】
図6に見られるように、ポケットは、第1、第2、第3、および第4の側方支持面11、12、13、14を備える。第1の凹部または凹面15が、第1および第2の側方支持面11、12の間に形成される。第2の凹部16または凹面が、第3および第4の側方支持面13、14の間に形成される。各凹部15;16は、円周方向側面とそれぞれのポケット側面9、10との間に隙間26、27を形成する。隙間26、27は、側方支持面および各凹部15、16の中央部に垂直に測定して、0.05~0.30mmである。旋削インサート2は、その中央軸A1に関して180°対称である。中心軸A1は、上面および底面4、5と交差する。図6に見られるように、旋削インサート2は、2つの対向するノーズ切れ刃17、18を備える。上面視において、旋削インサート2は、前記ノーズ切れ刃17、18の間に第1の距離だけ延在し、第1の距離に垂直な第2の距離D2だけ延在し、第1の距離は、第2の距離D2よりも大きい。第2の距離D2と一致する線は、旋削インサート2を前半分21と後半分22に分割する。旋削インサート2の後半分22の円周方向側面6のみが、工具本体3と接触している。旋削インサート2は、上面4および底面に開口する中央ボア23を備える。中央ボア23の一部は、2つの側方支持面12、14の間にある。
【0076】
図7は、図6のセクションBの拡大画像であり、凸状の前方側方支持面14が示されており、旋削の鈍角付近での接触を確実にし、それによって安定性を改善する。
【0077】
図8は、図6のセクションCの拡大画像であり、凸状の第3の側方支持面13が示されており、旋削インサートの後端付近での接触を確実にし、それによって安定性を改善する。
【0078】
図9は、図6のセクションDの拡大画像であり、凸状の第2の側方支持面12が示されており、旋削の鈍角付近での接触を確実にし、それによって安定性を改善する。
【0079】
上述の旋削工具1の工具本体3を示す図10図15を参照する。旋削インサート用のポケット7は、第1および第2のポケット側面9、10を備える。図12に見られるように、第1および第2のポケット側面9、10は、鋭角γを形成する。第1のポケット側面9は、第1および第2の側方支持面11、12を備える。第2のポケット側面10は、第3および第4の側方支持面13、14を備える。第1の凹部または凹面15が、第1および第2の側方支持面11、12の間に形成される。第2の凹部16または凹面が、第3および第4の側方支持面13、14の間に形成される。シムおよび旋削インサートは、図示されていない。
【0080】
例えば図12に見られるように、第1のポケット側面9から結合軸A2までの距離は、第2のポケット側面10から結合軸A2までの距離よりも短い。
【0081】
図12は、工具本体3の上面図であり、それぞれのポケット側面9、10は、約55°の角度γを形成する。点線は、それぞれの側方支持面に接している。
【0082】
図13は、上述した工具本体3の側面図を示す。インサート座またはポケット7はシムなしで示されており、シムは、ポケット7の底部支持面を形成する。
【0083】
図14は、それぞれの曲率半径R1、R2、R3、R4を有する側方支持面11、12、13、14がどのように凸状に湾曲しているかを示す。第3の側方支持面13は、第4の側方支持面14の曲率半径R4よりも小さく、かつ第2の側方支持面12の曲率半径R2よりも小さい曲率半径R3だけ凸状に湾曲している。結合部分25から第1の側方支持面11までの距離は、結合部分25から第2の側方支持面12までの距離よりも短い。結合部分25から第3の側方支持面13までの距離は、結合部分25から第4の側方支持面14までの距離よりも短い。
【0084】
図15は、図14のセクションAの拡大画像である。凸状側方支持面11、12、13、14は、旋削インサートの円周方向側面の最も大きい平坦なまたはほぼ平坦な部分の両端と接触するように配置される。右向き側だけでなく左向き側に向かっても旋削を行うことができる(入射角が小さい)。また、上方(外向き)だけでなく下方(内向き)に旋削を行うこともできる。
【0085】
図16は、図15のセクションBの拡大画像であり、凸状の前方側方支持面14が示されており、旋削の鈍角付近での接触を確実にし、それによって安定性を改善する。
【0086】
図17は、図15のセクションCの拡大画像であり、凸状の第3の側方支持面13が示されており、旋削インサートの後端付近での接触を確実にし、それによって安定性を改善する。
【0087】
図18は、図15のセクションDの拡大画像であり、凸状の第2の側方支持面12が示されており、旋削の鈍角付近での接触を確実にし、それによって安定性を改善する。
【0088】
図19は、第1の実施形態による旋削工具の一部である旋削インサート2を示す。旋削インサート2は、第1および第2のノーズ部分19、20を備える。旋削インサート2は、2つの対向するノーズ切れ刃17、18の間において、上面4および底面に開口する中央ボア23を備える。中央ボア23は、中心軸A1を中心に対称である。第1のノーズ部分19は、第1のノーズ切れ刃17を備える。第2のノーズ部分20は、第2のノーズ切れ刃18を備える。第1および第2の切れ刃28、29が、第1のノーズ切れ刃17によって接続される。第1および第2の切れ刃の間の角度は、80°である第1のノーズ角αを画定する。対応する方式で、第2のノーズ切れ刃18は、第3および第4の切れ刃30、31を接続し、80°である第2のノーズ角βを形成する。上面4の外周は、一組の切れ刃17、18、28、29、30、31を備える。旋削インサート2は、ノーズ切れ刃17、18の間の第1の距離D1として定義される方向に、第1の距離D1に垂直な第2の距離D2よりも長くなっており、第2の距離D2は、2つの鈍角の間にある。このような細長い菱形の旋削インサートによって、ノーズ角α、βを鋭角にすることができ、それによって複数の方向への効率的な旋削加工の可能性を改善する。
【0089】
図20は、上面視における旋削インサート2を示す。旋削インサート2は、中心軸A1と一致する中央ボア23を備える。理想的な旋削インサートの上面4の境界または外周は、32で示されている。理想的な外周は直線を備え、ポケット内の側方支持面と接触している平坦面をもたらす。しかし、本発明者らは、焼結加工およびプレス加工後、旋削インサート2の形状が理想的な形状から外れるリスクがあることを見出した。より正確には、外周線33で示されるように、上面の境界または外周が少なくとも部分的に凸状であるリスクがある。説明のために、凸面は誇張されている。外周線33によって示されるような旋削インサートの凸面は、インサート支持面および接触面に関する問題を引き起こし、これは、中央の凹面または凹部によって離間された凸状側方支持面によって克服されている。
【0090】
図21は、第2の実施形態による旋削工具の一部である工具本体を示す。第1の実施形態と比較した相違点は、凸状に湾曲した側方支持面11、12、13、14のそれぞれの曲率半径R1、R2、R3、R4のみである。第3の側方支持面13は、第4の側方支持面14の曲率半径R4よりも小さく、かつ第2の側方支持面12の曲率半径R2よりも小さい曲率半径R3だけ凸状に湾曲している。
【0091】
旋削インサート2は、好ましくは、図22および図23に示される平坦でない上面4を有する。図22および図23に示す旋削インサート2は、第1または第2の実施形態による旋削工具の一部とすることができ、両面性または反転可能であり、これは上面および底面4、5がすくい面および底部支持面として代替的に使用可能であることを意味する。上面および底面4、5は、図22に見られるように、上面および底面4、5の間の途中に位置する基準平面または中央平面RPに対して対称または実質的に対称に配置される。第1および第2の切れ刃28、29は、第1のノーズ切れ刃17からの距離が増加するにつれて、下方に、すなわち基準平面RPに向かって傾斜している。このような旋削インサートによって、入射角の小さい旋削加工において切りくずの分断が改善される。上面4の中央部、すなわち外周から離間した上面4の一部は、外周に関して隆起している。このような旋削インサートによって、隆起したチップブレーカを上面4に形成することができるので、旋削加工において切りくずの分断をさらに改善することができる。チップブレーカとして機能するのに適した上面4の一部は、上面4の全外周に関して隆起している。基準平面RPから第1のノーズ切れ刃17までの距離は、基準平面RPから、円周方向側面6から離間した上面4の一部までの距離よりも短い。基準平面RPから第1のノーズ切れ刃17までの距離は、基準平面RPから第1のまたは第2の切れ刃28、29の中点までの距離よりも大きい。
図1
図2
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【国際調査報告】